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特表2024-500012メタノールからアルデヒドを製造する統合プロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】メタノールからアルデヒドを製造する統合プロセス
(51)【国際特許分類】
   C07C 45/50 20060101AFI20231222BHJP
   C07C 47/02 20060101ALI20231222BHJP
   C07C 69/54 20060101ALI20231222BHJP
   C07C 67/39 20060101ALI20231222BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
C07C45/50
C07C47/02
C07C69/54 Z
C07C67/39
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529099
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 US2021059593
(87)【国際公開番号】W WO2022119706
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/119,734
(32)【優先日】2020-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】デウィルデ、ジョセフ エフ.
(72)【発明者】
【氏名】リンバッハ、カーク ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】チャクラバーティ、リータム
【テーマコード(参考)】
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC44
4H006BD70
4H006BE20
4H006BE40
4H039CA62
4H039CL45
(57)【要約】
メタノールからアルデヒドを調製するためのプロセスは、メタノール及び水素ガスを含む供給流を、第1の反応器の反応ゾーンに導入することと、供給流を、第1の触媒の存在下で、反応ゾーンにおいて、C~Cオレフィンを含む中間流に変換することであって、第1の触媒が微多孔質触媒成分である、変換することと、中間流から水及び種C及びより重質のものを除去して、軽質流を形成することと、軽質流を、第2の反応器において、第2の触媒及び一酸化炭素の存在下で、プロピオンアルデヒドを含む生成物流に変換することと、を含む。プロピオンアルデヒドは更に、酸化的エステル化を介してメタクリル酸メチルに変換することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスであって、
メタノール及び水素を含む供給流を、第1の反応器の反応ゾーンに導入することと、
前記供給流を、第1の触媒の存在下で、前記反応ゾーンにおいて、C~Cオレフィンを含む中間流に変換することであって、
前記第1の触媒が微多孔質触媒である、変換することと、
前記中間流から水及び種C及びより重質のものを除去して、軽質流を形成することと、
前記軽質流を、第2の反応器において、第2の触媒及び一酸化炭素の存在下で、プロピオンアルデヒドを含む生成物流に変換することと、を含む、プロセス。
【請求項2】
前記生成物流が、ブチルアルデヒドを更に含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
水及び種C及びより重質のものを除去する工程が、水及び種C及びより重質のものを除去して、前記軽質流を形成することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記供給流中に存在する前記水素が、前記軽質流とともに、前記第2の反応器に送られる、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記生成物流から前記プロピオンアルデヒドを除去することを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記第1の反応器が、大気圧よりも高い圧力で運転される、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記水素が、前記供給流の総体積に基づいて、少なくとも50体積%の量で、前記供給流中に存在する、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記微多孔質触媒成分が、8-MR細孔開口部を有するモレキュラーシーブである、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記プロピオンアルデヒドを、酸化的エステル化を介してメタクリル酸メチルに変換することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、概して、メタノール含有流を、C~C炭化水素を介して、アルデヒドに効率的に変換するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつもの工業用途のために、炭化水素は、プラスチック、燃料、及び様々な下流の化学物質を製造するために使用されるか、又はそれらを製造するために使用される出発材料である。C~C炭化水素は、例えば、アルデヒド、及びメタクリル酸メチル(methyl methacrylate、MMA)などの更なる生成物を調製するなどの下流用途において特に有用である。MMAは、(メタ)アクリルポリマー及びコポリマーの製造のための高価な化学中間物である。
【0003】
石油クラッキング及び様々な合成プロセスを含む、低級炭化水素を製造するための様々なプロセスが開発されている。しかしながら、そのようなプロセスは、典型的には、いくつかの軽質種の分離を必要とし、それらはコストがかかり、分離は困難である。
【0004】
メタノールからのオレフィンの形成に対しては、他の改良が行われている。例えば、Arora et al.,Nature Catalysis 1,666-672(2018)では、水素を、メタノールからオレフィンへのプロセスに同時供給して、触媒の寿命を改善できることが開示されている。しかしながら、このプロセスは、水素が、メタノールからオレフィンへのプロセスにおいて反応物として使用されず、かつ水素が、余分な取り扱い/分離及び/又は反応器への再循環を必要とすることから、コストがかかる。
【0005】
したがって、アルデヒド及び/又はメタクリル酸メチルを、メタノールから効率的かつ高収率で製造することができるプロセス及びシステムが必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明の一態様は、メタノール及び水素ガスを含む供給流を、第1の反応器の反応ゾーンに導入することと、供給流を、第1の触媒の存在下で、反応ゾーンにおいて、C~Cオレフィンを含む中間流に変換することであって、第1の触媒が微多孔質触媒である、変換することと、中間流から水及びC及び高級炭化水素を除去して、軽質流を形成することと、軽質流を、第2の反応器において、第2の触媒及び一酸化炭素の存在下で、プロピオンアルデヒド及び/又はブチルアルデヒドを含む生成物流に変換することと、を含む、プロセスに関する。
【0007】
追加の特徴及び利点は、以下に続く発明の詳細な説明において記載され、一部は、その説明から当業者に容易に明らかになるか、又は、以下に続く詳細な説明及び特許請求の範囲を含む本明細書に記載の実施形態を実践することによって認識されるであろう。
【0008】
上記の全般的な説明及び下記の詳細な説明の両方は、様々な実施形態を説明し、特許請求される主題の性質及び特徴を理解するための概要又は枠組みの提供を意図していることを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ここで、メタノールを利用して、C~Cオレフィンを調製し、更にはアルデヒド及び/又はメタクリル酸メチルを調製するためのプロセスの実施形態を詳細に参照する。
【0010】
一般に、メタノールから炭化水素へのプロセスでは、エチレン又はプロピレンなどの所望の種から軽質種を分離するためにコストのかかる分離が行われる。しかしながら、軽質種を所望の種とともに第2の反応器に通過させて、所望のアルデヒドを製造することができ、次いで、それは、プロピオンアルデヒドをメタクリル酸メチルに変換するなどの更なる処理のために容易に分離され得ることが発見された。
【0011】
メタノールからオレフィンへの反応において形成された軽質種を分離する必要性を排除することによって、資本コスト及び運転コストを有意に節約することができる。
【0012】
本発明のプロセスでは、メタノール及び水素を含む供給流は、第1の反応器の反応ゾーンに導入される。第1の反応器では、水素は反応しないが、代わりに第1の触媒の寿命を改善する働きをする。
【0013】
水素は、供給流の総体積に基づいて、10.0体積%~90.0体積%のH2、例えば、30.0体積%~85.0体積%のH2、30.0体積%~80.0体積%のH2の量で、供給流中に存在し得る。好ましくは、供給流中の水素の量は、供給流の総体積に基づいて、少なくとも50体積%、より好ましくは少なくとも60体積%、更により好ましくは少なくとも70体積%である。供給流中の水素の量は、第1の触媒寿命における所望の改善を達成するように調節することができる。
【0014】
メタノールは、供給流の総体積に対して、3.0体積%~20.0体積%のメタノール、例えば、5.0体積%~20.0体積%のメタノール又は10.0体積%~20.0体積%のメタノールの量で、供給流中に存在し得る。
【0015】
第1の触媒は、例えば、ゼオライトなどの微多孔質触媒である。
【0016】
微多孔質触媒成分は、好ましくは、8-MR細孔開口部を有し、次の骨格型CHA、AEI、AFX、ERI、LTA、UFI、RTH、EDI、GIS、MER、RHO、及びそれらの組み合わせからなる群から選択された骨格型を有する、モレキュラーシーブから選択され、その骨格型は、国際ゼオライト協会(International Zeolite Association)の命名規則に対応している。アルミノシリケートとシリコアルミノホスフェート骨格の両方が使用され得ることを理解されたい。微多孔質触媒成分としては、四面体アルミノシリケート、ALPO類(例えば、四面体アルミノホスフェート)、SAPO類(例えば、四面体シリコアルミノホスフェート)、及びシリカのみをベースとするテクトシリケートが挙げることができる。微多孔質触媒成分は、チャバザイト(CHA)骨格型を有するシリコアルミノホスフェートであり得る。これらの例としては、SAPO-34及びSSZ-13から選択されるCHA骨格型、並びにSAPO-18などのAEI骨格型を挙げることができるが、必ずしもこれらに限定されない。上記の骨格型のうちのいずれかを有する微多孔質触媒成分の組み合わせもまた、用いられ得る。微多孔質触媒成分は、所望の生成物に応じて異なる員環細孔開口部を有し得ることを理解されたい。例えば、所望の生成物に応じて、8-MR~12-MR細孔開口部を有する微多孔質触媒成分が使用され得る。
【0017】
次に、第1反応器の反応ゾーン内の反応条件について説明する。供給流は、C2~C4オレフィンを含む中間流を形成するのに十分な反応条件下で、第1の反応器の反応ゾーンにおいて第1の触媒と接触した。中間流は、他の炭化水素、例えば、C5以上の炭化水素を更に含み得る。好ましくは、中間流は、主にC2~C4オレフィンを含む。反応条件は、例えば、300℃~500℃、例えば、380℃~450℃、380℃~440℃、380℃~430℃、380℃~420℃、380℃~410℃、380℃~400℃、又は380℃~390℃の範囲の反応ゾーン内温度を含む。
【0018】
その反応条件はまた、例えば、少なくとも周囲圧力(1バール又は100kPa)の反応ゾーン内の圧力も含む。第1の反応器中の水素の存在に起因する触媒寿命の改善を更に向上させるために、第1の反応器の反応ゾーン内のより高い圧力も使用され得る。例えば、反応ゾーン内の圧力は、5バール(500kPa)、10バール(1,000kPa)、又はそれ以上である可能性がある。
【0019】
中間流は、C2~C4オレフィン及び水素(未反応で第1の反応器を通過する)、並びに炭化水素及びパラフィンを含む。
【0020】
中間流から水が除去される。更に、C4以上の炭化水素も中間流から除去されて、軽質流を形成し、これは更なる処理又は分離なしに第2の反応器に供給される。所望のアルデヒドに応じて、C3炭化水素は、C4以上の炭化水素とともに除去することができる。あるいは、C3炭化水素は、第2の反応器におけるヒドロホルミル化又はオキソプロセスにおけるブチルアルデヒドへの変換のために、軽質流の一部として塔頂流中に送ることができる。ブチルアルデヒドは、n-ブタノール又は2-エチルヘキサノールを作製するために使用することができる。このプロセスのための触媒としては、(オルガノ)ホスフィン、ホスファイト、又は第VIII族及び第VIIIB族金属を含む二座配位子錯体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0021】
軽質流は、エチレン、及び任意選択的にC3炭化水素、例えば、プロピレン、並びに水素を含む。軽質流は、第2の反応器において、添加される一酸化炭素と、第2の触媒との存在下で、生成物流に変換される。軽質流は、第2の反応器中でヒドロホルミル化反応又はオキソプロセスに曝露されて、第2の供給流中に存在するオレフィンからアルデヒドを形成する。C3炭化水素が高級炭化水素とともに中間流から除去される場合、第2の反応器の一次生成物は、プロピオンアルデヒドである。C3炭化水素が中間流から除去されない場合、第2の反応器の生成物は、主に、プロピオンアルデヒドとブチルアルデヒドとの混合物を含む。軽質流中に存在する任意のパラフィンは、第2の反応器を通過し、供給流に再循環させることができる。
【0022】
有利には、第1の反応器を通過する水素は、オキソプロセスにおいて消費される。第2の反応器中で水素を反応させることによって、本発明のプロセスは、他の軽質ガスからの水素のコストのかかる取り扱い/分離を回避する。したがって、本発明のプロセスにおける水素の存在は、少なくとも二重の意味がある。第1の反応器において、水素は、触媒の寿命を改善する。従来のプロセスでは、次に水素を分離し、第1の反応器に再循環させる必要がある。しかしながら、水素が第2の反応器を通過してオキソプロセスで消費されることから、中間流からの水素のコストのかかる面倒な分離が回避される。オキソプロセスを出る未反応水素は再循環させることができるが、再循環させる必要があり得る水素の量は、有意に低減される。
【0023】
アルデヒド生成物、例えば、プロピオンアルデヒド及びブチルアルデヒドは、好ましくは生成物流から分離される。生成物流中の軽質ガスからのアルデヒド生成物の分離は、中間流からのエチレン及び/又はプロピレンの分離よりもはるかに容易であり、これにより、本発明のプロセスは、従来のプロセスよりも著しく効率的である。
【0024】
生成物流からのプロピオンアルデヒドを更に使用して、任意の既知の方法を使用する酸化的エステル化反応を介してメタクリル酸メチルを形成し得る。例えば、プロピオンアルデヒドは、ホルムアルデヒドの存在下で、メタクロレインに変換することができる。メタクロレインは、続いて、任意の既知の触媒を使用してメタクリル酸メチルに変換することができる。
【0025】
特許請求された主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書で記載される実施形態に様々な修正及び変更を加え得ることは当業者には明らかであろう。したがって、そのような修正及び変更が添付の特許請求の範囲及びそれらの同等物の範囲内に入る限り、本明細書に記載される様々な実施形態のそのような修正及び変更を包含することを意図している。
【国際調査報告】