(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】位置追跡システム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/20 20160101AFI20231222BHJP
【FI】
A61B34/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023532790
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2021085293
(87)【国際公開番号】W WO2022123055
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521440482
【氏名又は名称】ロビューテ
(71)【出願人】
【識別番号】518170446
【氏名又は名称】ソルボンヌ ウニベルシテ
(71)【出願人】
【識別番号】523083735
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィケ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ,クウェンティン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥプラット,ベルトランド
(72)【発明者】
【氏名】ハリヨ,シナン
(72)【発明者】
【氏名】レニエ,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】ザラダー,ピエール
(57)【要約】
-標的身体部位を取り囲む患者の硬い身体部位に固定される1つの固定要素(12)であって、固定要素(12)はマッピング要素(16)をさらに備える、1つの固定要素(12)と、-内部トラッカーをリアルタイムで追跡する、固定要素(12)に固定される1つのトラッカー要素と、-制御ユニットであって、〇内部基準(R)と、〇標的身体部位および1つの固定要素(12)を示す1つの画像とを保存するメモリを備える、制御ユニットとを備える、信号追跡システムであって、制御ユニットは、内部基準(R)内で、少なくとも1つの固定要素(12)に付随する少なくとも1つの3Dフレーム位置を規定し、標的身体部位の各点を精密に位置特定するように設計され、制御ユニットは、標的身体部位内の内部トラッカーをリアルタイムで精密に位置特定するようにさらに設計される、信号追跡システム。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の標的身体部位(22)内に位置する内部トラッカー(28)を追跡するように構成される信号追跡システム(10)であって、前記システム(10)は、
-前記患者の硬い身体部位に固定されるように設計された少なくとも1つの固定要素(12)であって、前記硬い身体部位(14)は前記標的身体部位(22)を少なくとも部分的に取り囲み、前記固定要素(12)はマッピング要素(16)をさらに備える、少なくとも1つの固定要素(12)と、
-前記固定要素(12)に固定されるように構成された少なくとも1つのトラッカー要素(18)であって、前記少なくとも1つのセンサ要素(18)は前記内部トラッカー(28)をリアルタイムで追跡するように設計される、少なくとも1つのトラッカー要素(18)と、
-前記少なくとも1つのトラッカー要素(18)からの追跡情報をリアルタイムで収集するように構成された制御ユニット(20)であって、前記制御ユニット(20)は、
〇内部基準(R)と、
〇前記患者の標的身体部位(22)の少なくとも一部または前記標的身体部位(20)内に位置する要素を示す少なくとも1つの固有の予め確立された画像であって、前記固有の予め確立された画像は、前記少なくとも1つの固定要素(12)および前記少なくとも1つのマッピング要素(16)をさらに示す、少なくとも1つの固有の予め確立された画像と、
を保存するように設計されたメモリ(26)をさらに備える、制御ユニット(20)と、
を備え、
前記内部基準(R)は、前記患者の標的身体部位(22)の少なくとも前記一部または前記標的身体部位(20)内に位置する要素を示す固有の予め確立された画像内で規定され、
前記制御ユニット(20)は、前記内部基準(R)内で、前記少なくとも1つの固定要素(12)に付随する少なくとも1つの3Dフレーム位置を規定し、前記3Dフレーム位置に対して前記標的身体部位(22)の各点を精密に位置特定するように設計され、
前記制御ユニット(20)は、前記少なくとも1つの3Dフレーム位置に対して、前記標的身体部位(22)内の内部トラッカー(28)を、前記内部基準(R)内でリアルタイムに精密に位置特定するようにさらに設計される、信号追跡システム(10)。
【請求項2】
前記メモリ(26)は、
〇前記内部基準(R)と、
〇前記患者の標的部位(22)を示す少なくとも1つの第1の予め確立された画像と、
〇前記少なくとも1つの固定要素(12)および前記少なくとも1つのマッピング要素(16)が固定されている硬い身体部位(14)を示す、少なくとも1つの第2の予め確立された画像と
を保存するようにさらに設計され、
前記内部基準(R)は、前記患者の標的身体部位(22)の少なくとも前記一部または前記標的身体部位(20)内に位置する要素を示す第1の予め確立された画像内で規定され、
前記制御ユニット(20)は、前記内部基準(R)内で、前記少なくとも1つの固定要素(12)に付随する少なくとも1つの3Dフレーム位置を規定し、前記3Dフレーム位置に対して前記標的身体部位(22)の各点を精密に位置特定するために、前記少なくとも1つの第1および第2の予め確立された画像を前記内部基準(R)内で位置合わせするように設計され、
前記制御ユニット(20)は、前記少なくとも1つの3Dフレーム位置に対して、前記標的身体部位(22)内の内部トラッカー(28)を、前記内部基準(R)内でリアルタイムに精密に位置特定するようにさらに設計される、先行請求項に記載の追跡システム(10)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのトラッカー要素(18)は、前記固定要素(12)に取り外し可能に固定されるように構成される、先行請求項のいずれか一項に記載の追跡システム(10)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの固定要素(12)は、前記患者の硬い身体部位(14)の内部に固定されるように設計され、前記少なくとも1つのトラッカー要素(18)も、前記硬い身体部位(14)の内部の固定要素(12)に固定される、先行請求項のいずれか一項に記載の追跡システム(10)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの固定要素(12)、マッピング要素(16)、およびトラッカー要素(18)は全てCT適合性であり、前記少なくとも1つの第2の画像はCT画像である、先行請求項のいずれか一項に記載の追跡システム(10)。
【請求項6】
前記固定要素(12)および前記マッピング要素(16)は両方ともMRI適合性であり、前記少なくとも1つの第1の画像はMRI画像である、先行請求項のいずれか一項に記載の追跡システム(10)。
【請求項7】
前記内部トラッカー(28)は、信号放出源である、先行請求項のいずれか一項に記載の追跡システム(10)。
【請求項8】
前記内部トラッカー(28)は、一次供給源によって放出された信号を反射するように設計された二次供給源である、先行請求項に記載の追跡システム(10)。
【請求項9】
前記一次供給源は、前記患者の身体の外部にある、先行請求項に記載の追跡システム(10)。
【請求項10】
前記一次供給源は、前記少なくとも1つのトラッカー要素(18)である、先行請求項に記載の追跡システム(10)。
【請求項11】
前記内部トラッカー(28)は、マイクロデバイスによって滴下される造影剤である、先行請求項のいずれか一項に記載の追跡システム(10)。
【請求項12】
前記内部トラッカー(28)は、マイクロデバイスの一部である、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の追跡システム(10)。
【請求項13】
先行請求項のいずれか一項に記載の追跡システム(10)を用いて、標的身体部位(22)内に位置する内部トラッカー(28)を内部基準(R)内で位置決めするように構成された信号追跡方法であって、前記方法は、論述の時系列順に以下のステップ:
-少なくとも1つのマッピング要素(16)を、少なくとも1つの固定要素(12)を用いて患者の硬い身体部位(14)に固定するステップと、
-前記患者の標的身体部位(22)の少なくとも一部または前記標的身体部位(22)内に位置する要素を示す少なくとも1つの固有画像を確立するステップであって、前記画像は、前記少なくとも1つの固定要素(12)および前記少なくとも1つのマッピング要素(16)をさらに示すステップと、
-前記少なくとも1つの固有画像を制御ユニット(20)のメモリ(26)に保存するステップと、
-前記少なくとも1つの固有画像を前記内部基準(R)と位置合わせするステップと、
-前記内部基準(R)に対して各固定要素(12)の3Dフレーム位置を決定するために、前記制御ユニット(20)を用いて、前記少なくとも1つのマッピング要素(16)の位置を検出するステップと、
-必要ならば、トラッカー要素(18)を前記固定要素(12)に固定するステップと、
-前記内部トラッカー(28)の信号放出を開始するステップと、
-前記制御ユニット(20)を用いて、前記内部トラッカー(28)をリアルタイムで追跡および位置特定するステップと、
を含む、信号追跡方法。
【請求項14】
前記方法は、論述の時系列順に以下のステップ:
-前記患者の標的身体部位(22)を示す少なくとも1つの第1の画像を確立し、それを前記制御ユニット(20)のメモリ(26)に保存するステップと、
-少なくとも1つのマッピング要素(16)を、少なくとも1つの固定要素(12)を用いて前記患者の硬い身体部位(14)に固定するステップと、
-前記少なくとも1つの固定要素(12)および前記少なくとも1つのマッピング要素(16)が固定されている硬い身体部位(14)を示す、少なくとも1つの第2の画像を確立するステップと、
-前記制御ユニット(20)を用いて、前記少なくとも1つの第1および第2の画像を前記内部基準(R)に対して位置合わせするステップと、
-前記内部基準(R)に対して各固定要素(12)の3Dフレーム位置を決定するために、前記制御ユニット(20)を用いて、前記少なくとも1つのマッピング要素(16)の位置を検出するステップと、
-必要ならば、前記トラッカー要素(18)を前記固定要素(12)に固定するステップと、
-前記内部トラッカー(28)の信号放出を開始するステップと、
-前記制御ユニット(20)を用いて、前記内部トラッカー(28)をリアルタイムで追跡および位置特定するステップと、
を含む、先行請求項に記載の信号追跡方法。
【請求項15】
前記方法は、少なくとも1つのマッピング要素(16)を、少なくとも1つの固定要素(12)を用いて前記患者の硬い身体部位(14)に固定するステップの後に行われるもう2つのステップ:
-前記患者の標的身体部位(22)を示す少なくとも1つの新しい第1の画像を確立し、前記制御ユニット(20)のメモリ(26)内の先の画像を置き換えるステップと、
-前記患者の硬い身体部位(14)を示す少なくとも1つの新しい第2の画像を確立し、前記制御ユニット(20)のメモリ(26)内の先の画像を置き換えるステップと、
を含む、先行請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者の体内の信号放出源を精密に追跡し、リアルタイムで位置特定するための追跡システムおよび位置特定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現代医学において、いくつかの外科手術またはいくつかの精密かつ標的化された薬物送達を実行するために、患者の体内に挿入された信号を放出する装置をリアルタイムで精密に位置特定することができることは、ますます重要になっている。
【0003】
これは、例えば、遺伝子治療または細胞移植、腫瘍切除の改善、および腫瘍に対して活性な薬物の局所送達に当てはまる。例として、困難な脳深部腫瘍を達成するために、外科医は、ミリメートルの装置を位置特定して、リアルタイムで手術部位に精密に到達させることができるシステムを必要としていることがよく知られている。さらに、すでに複雑な医療環境は、「使いやすい」、すなわち、最小限の侵襲性で、再現性があり、かつ患者に適用可能である追跡システムを必要とする。
【0004】
さらに、(例えば頭蓋骨などの身体の麻酔および開口部によって引き起こされる)患者への副作用の低減が望ましいことならびに精度要件の両方によって、より低侵襲性の処置がますます求められている。頭蓋骨の特定の例に関して、頭蓋骨開口部は、脳脊髄液の漏出を作り出すことによって、(潜在的に数cmまでの)脳偏位を誘発し、術前撮像技術から取得された標的手術部位(標的身体部位)を改ざんする。したがって、大きな頭蓋骨開口部に代わる解決策を見つけることは意味がある。
【0005】
侵襲性の低減は、頭蓋骨開口部(単数もしくは複数)のサイズを小さくすることによって、またはさらには開口部を全くあけないことによって達成され得る。しかしながら、脳内に位置する信号放出源の場合、これは、信号が頭蓋骨層に交差することを引き起こす。位置特定システムの性能は、信号経路に沿った深さおよび減衰の両方を増大させるこの層によって直接影響を受ける。これは、いかなる潜在的な標的身体部位に対しても言うことができる。
【0006】
身体開口部の制限または低減は、したがって、患者の体内から放出され、体外から正確に読み取られ得る信号の探索につながる。
【0007】
既知の信号追跡技術の中で、磁場技術は、およそミリメートルの位置精度を提供し、これは、ますます使用されるようになっているマイクロデバイスを位置特定するのに適していない。電磁無線周波数(EM RF)波技術は、マイクロデバイスの要件に合わないそのセンチメートルの位置精度により制限される。EM光波技術は、人体組織において強い吸収を受け、したがって、手術の深さを大幅に制限し、骨層を迂回するための侵襲性を加える。最大線量を超えるEM超高周波数(EM VHF)波は、人体組織に悪影響を及ぼすことが知られている。磁気共鳴画像(MRI)技術は、時間および空間の分解能間のその固有のトレードオフによって制限される。MRIの使用はさらに、磁性材料の使用を禁止し、埋め込み可能なシステムの数を大幅に低減する。超音波は、組織層におけるいくらかの減衰および界面での反射に苦しむが、それらの制限は、電磁技術に関連するものよりもはるかに低い。
【0008】
技術の発展に関して、高擾乱下でも精度を保ちながら、例えばロボットまたはカテーテル末端などのサブミリメートルの装置を、外科手術中にリアルタイムで位置特定することができることは、ますます重要になっている。これに関連して、追跡システムは、いくつかの基準:人体に安全であること、最小の侵襲性であること、最良の位置特定精度を示すこと、全身、特に脳の内部で動作することができること、リアルタイムで機能すること、できるだけ小さいこと、および最小量のエネルギーを消費することを満たすべきである。
【0009】
現在のニューロナビゲーションでは、例えば、外科医は、周知の基準外部3Dフレームを、脳がこの外部3Dフレームに対して移動しないという仮定で使用する。この外部3Dフレームは、患者の頭蓋骨の内部にねじ留めされ、患者の頭部全体を取り囲む、大きいケージに似た構造である。この大きい外部3Dフレームは、非常に嵩高く、重く、患者に非常に長い間動かずにいることを強いる。したがって、これは、耐えるのが非常に不快である。それはまた、長く、患者に固定するのが困難である。それはまた、手術中の外科医の自由な動きを抑制し得るいくらかの立体障害を引き起こす。それにもかかわらず、この外部3Dフレームは、外科医が、全ての画像の位置合わせを可能にする、MRIおよびCTの両方の画像に現れる基準点を有することを可能にする。
【0010】
本出願では、3Dフレームは、原点、向き、およびスケールが基準点のセットによって指定される座標系として定義される。その位置は、数学的に(数値座標値で)および物理的に(従来のマーカーによって信号が送られて)特定される。
【0011】
本発明の目的は、異なる撮像技術によって得られた異なる画像を、外科医および患者の双方にとって安全、正確かつ快適な方法で位置合わせすることができる方法を提供することである。
【発明の概要】
【0012】
本発明は、したがって、患者の標的身体部位内に位置する内部トラッカーを追跡するように構成される信号追跡システムに関し、システムは、
-患者の硬い身体部位に固定されるように設計された少なくとも1つの固定要素であって、前述の硬い身体部位は標的身体部位を少なくとも部分的に取り囲み、固定要素はマッピング要素をさらに備える、少なくとも1つの固定要素と、
-固定要素に固定されるように構成された少なくとも1つのトラッカー要素であって、少なくとも1つのセンサ要素は内部トラッカーをリアルタイムで追跡するように設計される、少なくとも1つのトラッカー要素と、
-少なくとも1つのトラッカー要素からの追跡情報をリアルタイムで収集するように構成された制御ユニットであって、制御ユニットは、
〇内部基準と、
〇患者の標的身体部位の少なくとも一部または前述の標的身体部位内に位置する要素を示す少なくとも1つの固有の予め確立された画像であって、固有の予め確立された画像は、少なくとも1つの固定要素および少なくとも1つのマッピング要素をさらに示す、少なくとも1つの固有の予め確立された画像と、
を保存するように設計されたメモリをさらに備える、制御ユニットと、
を備え、
制御ユニットは、内部基準内で、少なくとも1つの固定要素に付随する少なくとも1つの3Dフレーム位置を規定し、3Dフレーム位置に対して標的身体部位の各点を精密に位置特定するように設計され、
内部基準は、患者の標的身体部位の少なくとも一部または前述の標的身体部位内に位置する要素を示す固有の予め確立された画像内で規定され、
制御ユニットは、少なくとも1つの3Dフレーム位置に対して、標的身体部位内の内部トラッカーを、内部基準内でリアルタイムに精密に位置特定するようにさらに設計される。
【0013】
このように、解決策は、上に述べられた目的を達成することを可能にする。特に、これは、単一の内部基準内で超音波追跡情報を医用画像に登録することを可能にする。これは、前述の画像内のインプラントの自動検出により登録のエラーを最小限にすることをさらに可能にする。
【0014】
本発明に係るシステムは、互いとは別々に取られるか、または互いと組み合わされる以下の特徴:
-メモリは、
〇内部基準と、
〇患者の標的部位を示す少なくとも1つの第1の予め確立された画像と、
〇少なくとも1つの固定要素および少なくとも1つのマッピング要素が固定されている硬い身体部位を示す、少なくとも1つの第2の予め確立された画像と、
を保存するようにさらに設計され、
内部基準は、患者の標的身体部位の少なくとも一部または前述の標的身体部位内に位置する要素を示す第1の予め確立された画像内で規定され、
制御ユニットは、内部基準内で、少なくとも1つの固定要素に付随する少なくとも1つの3Dフレーム位置を規定し、3Dフレーム位置に対して標的身体部位の各点を精密に位置特定するために、少なくとも1つの第1および第2の予め確立された画像を内部基準内で位置合わせするように設計され、
制御ユニットは、少なくとも1つの3Dフレーム位置に対して、標的身体部位内の内部トラッカーを、内部基準内でリアルタイムに精密に位置特定するようにさらに設計されること、
-少なくとも1つのトラッカー要素は、固定要素に取り外し可能に固定されるように構成されること、
-少なくとも1つの固定要素は、患者の硬い身体部位の内部に固定されるように設計され、少なくとも1つのトラッカー要素も、硬い身体部位の内部の固定要素に固定されること、
-システムは、標的身体部位の周りに規則的に分配された少なくとも3つのトラッカー要素を備えること、
-少なくとも1つの固定要素、マッピング要素、およびトラッカー要素は全てCT適合性であり、少なくとも1つの第2の画像はCT画像であること、
-固定要素およびマッピング要素は両方ともMRI適合性であり、少なくとも1つの第1の画像はMRI画像であること、
-内部トラッカーは、信号放出源であること、
-内部トラッカーは、一次供給源によって放出された信号を反射するように設計された二次供給源であること、
-一次供給源は、対象の身体の外部にあること、
-一次供給源は、少なくとも1つのトラッカー要素であること、
-内部トラッカーは、マイクロデバイスによって滴下される造影剤であること、
-内部トラッカーは、マイクロデバイスの一部であること、
の1つまたはいくつかを備え得る。
【0015】
本発明はまた、先行請求項のいずれか一項に記載の追跡システムを用いて、標的身体部位内に位置する内部トラッカーを内部基準内で位置決めするように構成された信号追跡方法に関し、方法は、論述の時系列順に以下のステップ:
-少なくとも1つのマッピング要素を、少なくとも1つの固定要素を用いて患者の硬い身体部位に固定するステップと、
-患者の標的身体部位の少なくとも一部または前述の標的身体部位内に位置する要素を示す少なくとも1つの固有画像を確立するステップであって、前述の画像は、少なくとも1つの固定要素および少なくとも1つのマッピング要素をさらに示すステップと、
-少なくとも1つの固有画像を制御ユニットのメモリに保存するステップと、
-少なくとも1つの固有画像を内部基準と位置合わせするステップと、
-内部基準に対して各固定要素の3Dフレーム位置を決定するために、制御ユニットを用いて、少なくとも1つのマッピング要素の位置を検出するステップと、
-必要ならば、トラッカー要素を固定要素に固定するステップと、
-内部トラッカーの信号放出を開始するステップと、
-制御ユニットを用いて、内部トラッカーをリアルタイムで追跡および位置特定するステップと,、
を含む。
【0016】
方法は、互いとは別々に取られるか、または互いと組み合わされる以下のステップを含み得:
-方法は、論述の時系列順に以下のステップ:
-患者の標的身体部位を示す少なくとも1つの第1の画像を確立し、それを制御ユニットのメモリに保存するステップと、
-少なくとも1つのマッピング要素を、少なくとも1つの固定要素を用いて患者の硬い身体部位に固定するステップと、
-少なくとも1つの固定要素および少なくとも1つのマッピング要素が固定されている硬い身体部位を示す、少なくとも1つの第2の画像を確立するステップと、
-制御ユニットを用いて、少なくとも1つの第1および第2の画像を内部基準に対して位置合わせするステップと、
-内部基準に対して各固定要素の3Dフレーム位置を決定するために、制御ユニットを用いて、少なくとも1つのマッピング要素の位置を検出するステップと、
-必要ならば、トラッカー要素を固定要素に固定するステップと、
-内部トラッカーの信号放出を開始するステップと、
-制御ユニットを用いて、内部トラッカーをリアルタイムで追跡および位置特定するステップと、
を含み、
-方法は、少なくとも1つのマッピング要素を、少なくとも1つの固定要素を用いて患者の硬い身体部位に固定するステップの後に行われるもう2つのステップ:
-患者の標的身体部位を示す少なくとも1つの新しい第1の画像を確立し、制御ユニットのメモリ内の先の画像を置き換えるステップと、
-患者の硬い身体部位を示す少なくとも1つの新しい第2の画像を確立し、制御ユニットのメモリ内の先の画像を置き換えるステップと、
をさらに含み得、
-最後のステップは、少なくとも第1の予め確立された画像内に、またはリアルタイムで取得された画像上に、内部トラッカーをリアルタイムで可視化するステップを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】標的身体部位の周りの人体頭部に規則的に固定され、制御ユニットと通信しするいくつかの固定要素およびセンサ要素を示すシステムの斜視図である。
【
図4】本発明に係るマッピング要素の斜視図である。
【
図5】人間の頭蓋骨に固定された固定要素およびマッピング要素の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
ミリメートルもしくはサブミリメートルの、埋め込み型のもしくは導入可能な装置を含む外科手術、例えば、埋め込み型マイクロロボットシステムを使用する脳神経外科手術、またはカテーテルを使用する心臓手術を実行するために、装置は、手術の計画および/またはリアルタイムでの手術の監視に使用される医用画像に登録される必要がある。
【0019】
言い換えれば、装置は、監視されなければならない。これは、本発明の信号追跡システム10を用いて得られる。
【0020】
臨床的観点では、患者は、手術される身体部位の周りに、具体的には、脳外科手術の特定の場合ではその頭部の周りに取り付けられる専用の外部3Dフレームシステムを必要とする。この外部3Dフレームシステムは、例えば脳内で動作するマイクロロボットのような、ミリメートルまたはサブミリメートルの装置を追跡するために必須である。したがって、本発明に係る信号追跡システム10は、
-患者の硬い身体部位14、例えば頭蓋骨に固定されるように設計された少なくとも1つの固定要素12、
-少なくとも1つのマッピング要素16、
-少なくとも1つのトラッカー要素18、
-制御ユニット20
を備える。
【0021】
図1に見られるように、効率を最大化するために、追跡システム10は、外部3Dフレームシステムを作成するために標的身体部位22の周りに分配されるいくつかのトラッカー要素18を必要とする。トラッカー要素18は、外科医が十分に広い作業空間で手術することを可能にするために、標的身体部位22の周りに分配される。その観点から、いくつかのトラッカー要素18は、前述の標的身体部位22の周囲の患者の硬い身体部位14に固定される。現在記載されている実施形態では、標的身体部位22は、患者の脳であり、いくつかのトラッカー要素18は、頭蓋骨にねじ留めされる必要がある。記載されている実施形態では、各トラッカー要素18は、少なくとも1つのトラッカーヘッド18aおよび1つのトラッカー固定ロッド18bを備える(
図2参照)。各トラッカーヘッド18aは、少なくとも1つの超音波トランスデューサを備える。したがって、GPSシステムと同様に、いくつかのトラッカー要素18は、対象の頭部の周りに規則的に分配され、衛星状のインプラントを形成する。
【0022】
各トラッカーヘッド18aはさらに、制御ユニット20とリアルタイムで絶えず通信する。したがって、測定される信号は、各トラッカー要素18によって制御ユニット20に絶えずリアルタイムで送信される。
【0023】
図2に見られるように、いくつかの実施形態では、各トラッカー固定ロッド18bは、各固定要素12の内部に形成された雌ねじ山24と協働するように設計された雄ねじ山を示す(
図3参照)。各トラッカー要素18を対象の硬い身体部位14に固定するために、追跡システム10は、同じ量の固定要素12を備える。固定要素12の例が、
図3に示されている。固定要素12は、PEEK、シリコーン、またはチタンなどの、周知の生体適合性かつ不活性の材料で作製される。各固定要素12は、トラッカー要素18およびマッピング要素16が患者の頭蓋骨に安全に固定されることを可能にする。いくつかの実施形態では、トラッカー要素18は、固定要素12に取り外し可能に固定され、いくつかの他の実施形態では、それらは、同一片の一部である。いずれの場合でも、硬い身体部位14へのトラッカー要素18の固定は、患者の身体、特に、血管に富んだ組織であり、したがって切開の数を制限する患者の頭皮を開放することを必要とする。さらに、組織を開放するたびに、脳神経外科関連では特に長い手術時間とともに感染リスクが高まる。したがって、固定要素12を最低限の組織開放で素早く固定させることが重要である。いくつかの代替の実施形態では、固定要素12の接着が、硬い身体部位14へのそれらのねじ留めの代替であり得る。実施形態に応じて、トラッカー要素18を、患者の皮膚の上または下に固定することができ、いくつかの実施形態では、固定要素12は、患者の硬い身体部位14の内部に固定され、少なくとも1つのトラッカー要素18も、したがって硬い身体部位14の内部、したがって皮膚の下に固定される。これは、硬い身体部位14の内部に小さい孔をあけることを必要とするが、皮膚を閉じることができるので、安全性を改善する。
【0024】
実施形態に応じて、以下の2種類の固定要素12が可能である:
-硬い身体部位14(もしくはその一部)が標的身体部位22とトラッカー要素18との間に残ることを意味する、硬い身体部位14もしくはその内部に固定される固定要素12(示された実施形態では、これは、固定要素12が頭蓋骨にねじ留めまたは接着されることを意味する)、または、
-固定要素12が硬い身体部位14にトンネルを掘り、トラッカー要素18を押し込んで標的身体部位14と直接接触させることを意味する、硬い身体部位14を貫通して固定される固定要素12(示された実施形態では、これは、固定要素12が頭蓋骨を貫通してねじ留めされ、トラッカー要素18が脳と直接接触することを意味する)。
【0025】
直接接触実施形態は、トラッカー要素18が標的身体部位22から硬い身体部位14によって分離されていないため(この場合、それぞれ対象の脳および頭蓋骨)、追跡される信号の減衰を制限することを可能にする。この実施形態および固定要素12が硬い身体部位14の内部に固定される実施形態では、直径約1cm(最大2cm)の半穿頭孔が、外科医によって作られる。しかしながら、この行為は、例えば大量出血または部分的な頭蓋骨の崩壊などの望ましくないイベントを管理する神経麻酔医を必要とする。直接接触のない実施形態では、固定要素12の寸法は、硬い身体部位14の形状、この場合は頭蓋骨の円形形状によって制限される。固定要素12が硬い身体部位14の内部に固定される実施形態では、同じ種類の直径約1cm(最大2cm)の半穿頭孔が、外科医によって作られ、直接接触実施形態と同じ制約およびリスクが存在する。しかしながら、すでに述べたように、この実施形態は、固定要素12およびトラッカー要素18の上の皮膚を閉じることを可能にし、したがって安全性を改善する。固定要素12が硬い身体部位14上に固定される実施形態に関して、頭蓋骨の場合、各固定要素12は、頭蓋骨と接触している必要があり、曲率の大きい点に固定することはできない。
【0026】
固定要素12のサイズは、ねじのサイズ、したがって患者のストレスを低減するために最小化される。固定要素12の寸法は、局所麻酔に適合するべきであり、したがって、特に固定要素12が硬い身体部位14の内部に固定されなければならない(または内部に埋め込まれなければならない)場合、2cmの直径および1cmの高さを示す。
【0027】
すでに述べたように、ミリメートルもしくはサブミリメートルの、埋め込み型のもしくは導入可能な装置を含む外科手術を実行するために、装置は、手術の計画および/またはリアルタイムでの手術の監視に使用される医用画像に登録される必要がある。例えば対象の脳内で動作するマイクロロボット用の医用画像を得るために、外科医は、通常、MRIおよび/またはCT画像上で手術を計画し、それに従う。コンピュータ断層撮影(CT)スキャナは、回転ガントリ上で向かい合って取り付けられたシンチレーション検出器に結合されたX線管からなる。CTスキャンは、センサアレイの予め計画された平行移動および回転によって、標的組織の画像スライスを提供する。
【0028】
磁気共鳴画像法(MRI)は、人体内で移動する水素(プロトン)によって放出される信号を使用する。それらの電荷のため、それらのスピンは、検出可能な磁場を発生させる。MRI測定は、3つのステップ:
-超伝導磁石が、100万当たり数個の移動プロトンを整列させ、低エネルギー状態に到達させる定常外部磁場を発生させるステップ、
-送信コイルがRF放射線を発生させるステップ、
-RF放射線の停止後、プロトンが緩和し、それらの共鳴周波数のフォトンを放出するステップ、
-緩和時定数が測定されてMRI画像を得るステップ
からなる。
【0029】
場合によっては、例えば緊急の場合、外科医は、患者の標的身体部位22の少なくとも一部または前述の標的身体部位20内に位置する要素、ならびに少なくとも1つの固定要素12および少なくとも1つのマッピング要素16を示す少なくとも1つの固有画像を取得することができる。制御ユニット20は、次いで、少なくとも1つの固定要素12に付随する少なくとも1つの3Dフレーム位置を座標系(または内部基準R)内に規定することができ、したがって、3Dフレーム位置に対して標的身体部位22の各点を精密に位置特定することができる。
【0030】
硬い身体部位14および標的身体部位22の組織の異なる生理的特性のため、外科医は、MRIおよびCTの両方の画像上で手術を計画するのに大部分の時間を費やす(MRI画像は、軟らかい標的身体部位22のために使用され、CT画像は、硬い身体部位14のために使用される)。これらの異なる画像を、マルチモーダルな登録プロセスで位置合わせすることができる。当業者によれば、画像登録プロセスの目的は、異なる画像内の対象の構造(標的身体部位22、硬い身体部位14、および固定要素12によって形成される外部3Dフレーム)を最も良く位置合わせする最適な変換を見つけることである。本発明に関して、登録プロセスは、標的身体部位22を示す少なくとも1つの第1の画像(例えばMRI画像)を、固定要素12が固定されている硬い身体部位14を示す少なくとも1つの第2の画像(例えばCT画像)と位置合わせする。
【0031】
いくつかの代替の実施形態では、登録プロセスは、まず、少なくとも1つの第1の画像を、固定要素12が固定されている硬い身体部位14を示す画像と位置合わせする。登録プロセスは、次いで、2つの前述の画像を、固定要素12が固定されている硬い身体部位14を示す少なくとも1つの第2の画像と位置合わせする。
【0032】
当業者によく知られているように、登録プロセスは、複数の反復を通して類似性測定最大値に向かって収束し、先行技術で周知の先の幾何変換を用いて見出される座標系(または内部基準R)内に少なくとも2つの画像を位置合わせするアルゴリズムである。登録プロセスアルゴリズムは、画像情報を使用して、類似性と呼ばれる特定の測定値を確立する。それらのアルゴリズムは、通常、位置合わせされる画像におけるボクセル強度、勾配強度、周波数研究(フーリエ空間)、または強度もしくは特徴(エッジ、輪郭など)についての統計情報に基づく。このように、内部基準Rが、患者の標的身体部位22の少なくとも一部または前述の標的身体部位20内に位置する要素を示す予め確立された画像内で規定される。
【0033】
本発明は、したがって、基準として設定され、内部基準Rを規定する/含む、標的身体部位22の第1の3D画像上の内部基準を規定することを可能にする。
【0034】
外科手術中の登録プロセスの目的は、外部3Dフレームと、標的身体部位22の3Dフレームを意味する内部3Dフレームとの間の3D変換を確立することである。本発明によれば、すでに述べたように、対象の硬い身体部位14に固定されたいくつかの固定要素12は、外部3Dフレームを形成する。これは、登録プロセスを進めるために、各固定要素12が精密に検出され、その精密な位置が所定の基準R内で得られなければならないことを意味する。この基準Rは、例えば、硬い身体部位14、または画像の1つに存在する任意の他の要素であり得る。それはまた、画像で見られるものと無関係に規定される外部要素であってもよい。この内部基準Rは、制御ユニット20のメモリ26内に保存される。制御ユニット20のメモリ26はまた、
-患者の標的部位22を示す少なくとも1つの第1の画像(内部3Dフレーム)と
-固定要素12およびマッピング要素16が固定されている硬い身体部位14を示す少なくとも1つの第2の画像(外部3Dフレーム)と、
-明確かつ精密な位置合わせを得るために使用され得る任意のさらなる画像と
を保存する。
【0035】
制御ユニット20は、登録プロセスアルゴリズムを実行し、したがって、内部基準R内で全ての画像を位置合わせし、次いで、標的身体部位22の各点を前述の内部基準R内で位置特定することができるように設計される。
【0036】
この画像位置合わせは、制御ユニット20が、各固定要素12について内部基準R内で3Dフレーム位置を確立することをさらに可能にする。制御ユニット20が、外部および内部3Dフレームを位置合わせすると、各3Dフレーム位置は、したがって、標的身体部位10のいずれかの点のように内部基準R内で規定される。各固定要素12の3Dフレーム位置は、したがって、標的身体部位10に対して明確に確立される。内部基準R内での3Dフレーム位置の直接確立を可能にするために、または登録プロセスアルゴリズムの実行を可能にするために、各固定要素12は、マッピング要素16を備える。
図4に示されるように、マッピング要素16は、マッピングヘッド16aおよび接続ロッド16bを備える。示された実施形態では、マッピング要素16は、固定要素12に取り外し可能に固定され得る。示されていない他の実施形態では、マッピング要素16は、固定要素12とともに一体に形成される。示された実施形態では、各接続ロッド16bは、各固定要素12の内部に形成された雌ねじ山24と協働するように設計された雄ねじ山を示す(
図3参照)。接続ロッド16bは、したがって、固定要素12にマッピング要素16を固定するために、固定要素12と協働する。示されていないいくつかの他の実施形態が想定されてもよい。
【0037】
図4に見られるように、マッピングヘッド16aは、マッピングヘッド16aの、したがってそれが接続されている固定要素12の容易な認識および位置特定を可能にする特定の形状を示す。マッピング要素16のヘッド16aは、したがって3D正方形の基準である。
【0038】
いくつかの実施形態では、マッピング要素16およびトラッカー要素18は、全てCT適合性である。
【0039】
各固定要素12および標的身体部位10の点が内部基準R内で精密に位置特定されると、制御ユニット20およびトラッカー要素18は、任意の内部トラッカー28、例えば標的身体部位22内に位置する信号放出源を、内部基準R内でリアルタイムに精密に位置特定する。より正確には、標的身体部位画像内の少なくとも1つの固定要素12が検出されると、これが、内部基準R内でのこの固定要素12の3D位置を得ることを可能にする。各トラッカー要素18は各固定要素12に取り付けられるため、内部基準R内でのそれらの3D位置を直接知ることが可能になる。したがって、任意の内部トラッカー28を、内部基準R内で直接追跡することができる。
【0040】
これは、患者に関するものおよびシステム自体に関するものの少なくとも2つの基準を規定する必要がある他のシステムとは対照的に、より直接的な、信頼性のある効率的な追跡を可能にする。
【0041】
この内部トラッカー28はまた、トラッカー要素18によって放出されるいくつかの信号を感知するように構成された信号センサであってもよい。本出願では、「センサ」という用語は、受信器であるとして理解される。いくつかの実施形態では、内部トラッカー28は、マイクロデバイスによって滴下される造影剤であり得る。造影剤は、例えば微小気泡のような、超音波を高度に反射する約1ミクロンのサイズの任意の微小要素であり得る。いくつかの実施形態では、内部トラッカー28は、患者の体外から操縦され得るマイクロデバイスの一部であってもよい。
【0042】
内部トラッカー28が信号放出源である場合、それは、一次供給源(能動型埋め込み装置)または二次供給源であり得る。二次供給源は、別の一次供給源によって放出された信号を反射するように設計される。この二次供給源は、例えば受動マイクロトラッカーのような受動型埋め込み装置であり得る。信号放出源が二次供給源である場合、一次供給源は、患者の身体の外部にあり得、より具体的には、一次供給源は、標的身体部位22の周りに固定されたいくつかのトラッカー要素18の1つであり得る。この場合、一次供給源は、標的身体部位22の内部に信号を送信し、信号源は、この信号を反射して硬い身体部位14に固定されたトラッカー要素18に戻す。トラッカー要素18が超音波トランスデューサである特定の場合では、患者の硬い身体部位14(例えば頭蓋骨)に固定されたそれらの1つは、標的身体部位22(例えば患者の脳)の内部に超音波を送信する。いずれの場合でも、信号放出源は、1つ以上のさらなるトラッカー要素18が埋め込まれた硬い身体部位14に向かって進む波を放出する。初期送信と受信との間の飛行時間は、波が進んだ距離を得るのに使用される。少なくとも3つが関与するいくつかのトラッカー要素18を用いて、トラッカー要素18に対して相対的に信号放出源の3D位置を得ることが可能になる。
【0043】
内部トラッカー28がセンサである場合、同様の方法で機能し、トラッカー要素18からの初期送信と受信との間の飛行時間が、波が進んだ距離を得るのに使用される。少なくとも3つが関与するいくつかのトラッカー要素18を用いて、トラッカー要素18に対して相対的に内部トラッカー28の3D位置を得ることが可能になる。
【0044】
大抵のトラッカー要素18(例えば超音波トランスデューサ)は、それらの組成により、CT画像適合性であるが、MRI画像適合性ではないことが、当業者によく知られている。このことは、MRIが一般に外科医による手術中の標的身体部位22の状態のチェックを可能にするためますますMRIベースになっている臨床環境における、そのようなシステムの使用を大幅に制限する。
【0045】
しかしながら、制御ユニット20のメモリ26は、硬い身体部位14の正確な画像および固定要素12を含む外部3Dフレームと位置合わせされた標的身体部位22の正確な画像を保存するため、内部トラッカー28の位置は、したがって、制御ユニット20によって、手術中に画面上で外科医に示される画像内にリアルタイムで変換される。外科医は、したがって、患者の標的身体部位22内の内部トラッカー28を精密に可視化することができる。
【0046】
本発明に係る追跡システム10は、外科医が
図6に示されるような信号位置特定方法を実行することを可能にする。この方法は、患者の標的身体部位22内に位置する内部トラッカー28を、内部基準R内で位置特定することを可能にする。1つの固有画像のみが必要とされる場合、方法は、論述の時系列順に以下のステップ:
-少なくとも1つのマッピング要素16を、少なくとも1つの固定要素12を用いて患者の硬い身体部位14に固定するステップ、
-患者の標的身体部位22の少なくとも一部または前述の標的身体部位22内に位置する要素を示す少なくとも1つの固有画像を確立するステップであって、前述の画像は、少なくとも1つの固定要素12および少なくとも1つのマッピング要素16をさらに示すステップ、
-少なくとも1つの固有画像を制御ユニット20のメモリ26に保存するステップ、
-少なくとも1つの固有画像を内部基準Rと位置合わせするステップ、
-内部基準Rに対して各固定要素12の3Dフレーム位置を決定するために、制御ユニット20を用いて、少なくとも1つのマッピング要素16の位置を検出するステップ、
-必要ならば、トラッカー要素18を固定要素12に固定するステップ、
-内部トラッカー28の信号放出を開始するステップ、
-制御ユニット20を用いて、内部トラッカー28をリアルタイムで追跡および位置特定するステップ
を含む。
【0047】
固有画像の品質が十分に良好な場合、方法は、少なくとも1つの固有の予め確立された画像内に内部トラッカー28をリアルタイムで可視化することを含み得る。内部トラッカーはまた、リアルタイムで取得された画像上に可視化されてもよい。このリアルタイム取得画像は、外部手段、例えば超音波プローブによって取得され得る。
【0048】
2つ以上の画像が必要とされる場合、方法は、論述の時系列順に以下のステップ:
-MRI画像を用いて患者の標的身体部位22を示す少なくとも1つの第1の画像を確立し、それを制御ユニット20のメモリ26に保存するステップ、
-場合によっては、CT画像を用いて患者の硬い身体部位14を示す少なくとも1つのさらなる画像を確立し、それを制御ユニット20のメモリ26に保存するステップ、
-ロボット外科手術を規定する際の術前計画を設計するステップ、
-少なくとも1つのマッピング要素16を、少なくとも1つの固定要素12を用いて患者の硬い身体部位14に固定するステップ、
-少なくとも1つの固定要素12、少なくとも1つのマッピング要素16が固定され、トラッカー要素18および固定要素12が一体に作製されている場合はトラッカー要素18が固定されている、硬い身体部位14を示す少なくとも1つの第2の画像を確立するステップ、
-制御ユニット20を用いて、少なくとも1つの第1、第2、および第3の画像を内部基準Rに対して位置合わせするステップ、
-内部基準Rに対して各固定要素12の3Dフレーム位置を決定するために、制御ユニット20を用いて、少なくとも1つのマッピング要素16の位置を検出するステップ、
-場合によっては、トラッカー要素18が固定要素から取り外し可能な場合、トラッカー要素18を固定要素12に固定するステップ、
-内部トラッカー28の信号放出を開始するステップ、
-制御ユニット20を用いて、内部トラッカー28をリアルタイムで追跡および位置特定するステップ、
-少なくとも第1の予め確立された画像内に、またはリアルタイムで取得された画像上に、内部トラッカー28をリアルタイムで可視化するステップ
を含む。このリアルタイム取得画像は、外部手段、例えば超音波プローブによって取得され得る。
【0049】
より正確には、固定要素12の配置後に、新しいCTおよびMRI画像が取得され、制御ユニット20のメモリ26内で、固定要素12の配置前に取得された先の画像に登録される。これらの新しい画像において、固定要素12が、固定要素12に固定されたマッピング要素16のマッピングヘッド16aによって検出され、位置特定される。これは、制御ユニット20が超音波追跡と脳画像との間の登録を達成することを可能にする。大抵のセンサ要素18はMRI適合性ではないため、いくつかの実施形態では、センサ要素18は、MRI画像の確立後に固定要素12に固定される。したがって、登録プロセス後、マッピング要素16は、(取り外し可能な場合)固定要素12から取り外され、センサ要素18に置き換えられる。固定要素12およびマッピング要素16が分離不可能な要素を形成する場合、トラッカー要素18は、固定要素12に単純に固定される。そして、トラッカー要素18および固定要素12が同一片で作製されている場合、それらは両方とも、硬い身体部位10にともに固定される。実施形態に応じて、これは、トラッカー要素18がMRI適合性であることを暗示する。
【0050】
登録の概念に加えて、インプラントを、MRI画像からの幾何学的エラー、ならびにCTおよびMRI画像間の登録エラーを推定するのに使用することができる。
【0051】
硬い身体部位14に固定要素12を固定するステップの後で、
-患者の皮膚は、縫合で閉じられるか、または
-固定要素12は十分に小さい(約2~6mm)ので、単に包帯で覆われる。
【0052】
図1および
図5に見られるように、追跡システム10は、小型から非侵襲性であり、対象の身体に有害ではなく、例えば20Hzより高い周波数で、対象の標的身体部位22(例えば脳)内に100mm~500mmの深さまで、サブミリメートルの精度を提供する。
【0053】
本発明に係る追跡システム10および位置特定方法は、深い外科的介入の快適性および安全を改善する。それは、例えば、重い全身麻酔の代わりに、固定要素12ごとの局所麻酔を可能にする。
【0054】
別の非常に重要な要素はエラーの制限であり、本発明に係る追跡システムは、固定要素12の位置の手動設定を回避することを可能にする。さらに、センサ要素18を用いて、内部トラッカー28は、信号が放出または感知されるとすぐに直接検出される。
【0055】
最後に、本発明に係る追跡システム10は、装置関連の調整の必要性を取り除き、したがって、手動設定を介した人間の干渉のリスクを低減する(3Dフレームベースのシステム)。それはまた、画像誘導についての定期的な検証の必要性をキャンセルし、外科医の視覚と手の協調に依存しない。
【0056】
より正確には、主な技術的利点の1つは、例えば手術室ではなく患者に取り付けられた、ただ1つの基準を作成することである。これにより、本発明が達成する位置合わせを失うことなく患者の移動が可能になり、これは、患者の身体が手術室に位置する外部基準に対して移動するとすぐにこの位置合わせが失われる他のシステムとは対照的である。
【国際調査報告】