(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】抱合体
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20231222BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20231222BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20231222BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231222BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231222BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C12N15/113 Z ZNA
A61K31/713
A61P1/16
A61P31/12
A61P31/04
A61P31/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533634
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2021087570
(87)【国際公開番号】W WO2022136673
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521548168
【氏名又は名称】アルゴノート アールエヌエー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100149294
【氏名又は名称】内田 直人
(72)【発明者】
【氏名】カーン,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ミッチェル,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マトロック,ジョナサン
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZC20
4C086ZC41
(57)【要約】
本開示は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含み、分子のセンスRNA部分またはアンチセンスRNA部分のいずれかの3’末端に共有結合した一本鎖DNA分子をさらに含む、二本鎖RNA分子を含む核酸に関する。
【選択図】
図1(a)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
核酸分子であって、
サイレンシングされる遺伝子を含むヌクレオチド配列を参照して設計されたセンス鎖とアンチセンス鎖とを含む二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む第一の部分であって、前記サイレンシングされる遺伝子が、アポリポタンパク質Bおよびプロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9型ではない第一の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む第二の部分と
を含み、前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記センス鎖の前記3’末端に共有結合されているか、または前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記アンチセンス鎖の3’に共有結合されていて、前記一本鎖DNA分子が、前記一本鎖DNAの一部と相補的塩基対合することによってアニールして、ステムドメインおよびループドメインを含む二本鎖DNA構造を形成するようにその長さの少なくとも一部にわたって適合されたヌクレオチド配列を含み、前記核酸分子がN-アセチルガラクトサミンを含むことと、前記二本鎖阻害性RNAが天然ヌクレオチドから成ることとを特徴とする、核酸分子。
【請求項2】
前記ループドメインが、前記ヌクレオチド配列GCGAAGCを含む、請求項1に記載の核酸分子。
【請求項3】
前記一本鎖DNA分子が、前記ヌクレオチド配列TCACCTCATCCCGCGAAGC(配列番号1)を含む、請求項1または請求項2に記載の核酸分子。
【請求項4】
前記阻害性RNA分子が、2ヌクレオチドオーバーハングを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項5】
前記センス鎖および/または前記アンチセンス鎖が、ヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項6】
前記一本鎖DNA分子が、一つ以上のヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項7】
前記核酸分子がビニルホスホネート修飾を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項8】
前記ビニルホスホネート修飾が、前記アンチセンスRNA鎖の5’末端リン酸塩に対するものである、請求項7に記載の核酸分子。
【請求項9】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、長さ19~23個の近接しているヌクレオチドを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項10】
N-アセチルガラクトサミンが、一価、二価、または三価である、請求項1~9のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項11】
N-アセチルガラクトサミンが、前記阻害性RNAのアンチセンス部分または前記阻害性RNAのセンス部分のいずれかに結合されている、請求項10に記載の核酸分子。
【請求項12】
前記核酸分子が、以下の構造を含むアセチルガラクトサミン分子に共有結合されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【化1】
【請求項13】
前記核酸分子が、以下の構造を含むアセチルガラクトサミン分子に共有結合されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【化2】
【請求項14】
前記核酸分子が、以下の構造を含むアセチルガラクトサミン分子に共有結合されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【化3】
【請求項15】
前記核酸分子が、以下の構造を含むアセチルガラクトサミン分子に共有結合されている、請求項1~11のいずれか一項に記載の核酸分子。
【化4】
【請求項16】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号67(C5)に記載されたセンスヌクレオチド配列の19~23の近接しているヌクレオチドを含むか、またはそれらから成る、請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項17】
二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項16に記載の核酸分子。
【請求項18】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号109、110、111、112、113、114、115、116、117、118から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項16に記載の核酸分子。
【請求項19】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号139、140、141、142、143、144、145、146、147、148から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項16に記載の核酸分子。
【請求項20】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号31、32、33、34、35、36、37、38、39、40から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項16に記載の核酸分子。
【請求項21】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、30から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項16に記載の核酸分子。
【請求項22】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号151~650から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項16に記載の核酸分子。
【請求項23】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号66(C3)に記載されたセンスヌクレオチド配列の19~23の近接しているヌクレオチドを含むか、またはそれらから成る、請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項24】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載の核酸分子。
【請求項25】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号69、70、71、72、73、74、75、76、77、78から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載の核酸分子。
【請求項26】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号100、101、102、103、104、105、106、107、108から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載の核酸分子。
【請求項27】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載の核酸分子。
【請求項28】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、61、2、3、4、5、6、7、8、9、10から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載の核酸分子。
【請求項29】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号651~1150から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項23に記載の核酸分子。
【請求項30】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号68(MASP2)に記載されたセンスヌクレオチド配列の19~23の近接しているヌクレオチドを含むか、またはそれらから成る、請求項1~15のいずれか一項に記載の核酸分子。
【請求項31】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項30に記載の核酸分子。
【請求項32】
前記二本鎖阻害性RNA分子が、配列番号41、42、43、44、45、46、47、48、49、50から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項30に記載の核酸分子。
【請求項33】
請求項1~32のいずれか一項に記載の少なくとも一つの核酸分子を含む、医薬組成物。
【請求項34】
請求項1~33のいずれか一項に記載の核酸分子または組成物を対象に投与することを含む、肝細胞内の遺伝子の発現を阻害する方法。
【請求項35】
補体成分5の阻害から利益を得ることになる疾患または病状の治療に使用する、請求項16~22のいずれか一項に記載の核酸分子または医薬組成物。
【請求項36】
補体成分3の阻害から利益を得ることになる疾患または病状の治療に使用する、請求項23~29のいずれか一項に記載の核酸分子または医薬組成物。
【請求項37】
MASP2の阻害から利益を得ることになる疾患または病状の治療に使用する、請求項30~32のいずれか一項に記載の核酸分子または医薬組成物。
【請求項38】
前記病状が微生物感染である、請求項37~39のいずれか一項の使用による核酸分子または医薬組成物。
【請求項39】
前記微生物感染がウイルス感染の結果である、請求項38の使用による核酸分子または医薬組成物の使用。
【請求項40】
前記微生物感染が細菌感染の結果である、請求項39の使用による核酸分子または医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖RNA分子を含み、分子のセンスRNA部分またはアンチセンスRNA部分のいずれかの3’末端に共有結合した一本鎖DNA分子をさらに含む単離核酸分子に関し、前記核酸分子は任意選択的に、N-アセチルガラクトサミン(「GalNAc」とも称される)に直接または間接的に結合されている。
【背景技術】
【0002】
遺伝子機能を特異的にアブレーションする技術は、低分子阻害性または低分子干渉RNA(siRNA)とも呼ばれる二本鎖阻害性RNAを、siRNA分子に含まれる配列に相補的なmRNAの破壊をもたらす細胞内に導入することによる。siRNA分子は、二本鎖RNA分子を形成するように互いにアニーリングされたRNAの二つの相補鎖(センス鎖およびアンチセンス鎖)を含む。siRNA分子は典型的に(しかし唯一的ではない)、アブレーションされる遺伝子のエクソンに由来する。多くの生物体は、siRNAの形成につながるカスケードを活性化することによって、二本鎖RNAの存在に応答する。二本鎖RNAの存在は、リボ核タンパク質複合体の一部になる、より小さい断片(siRNA、長さおよそ21~29ヌクレオチド)に二本鎖RNAを処理するRNase IIIを含むタンパク質複合体を活性化する。siRNAは、siRNAのアンチセンス鎖に相補的なmRNAを切断するためのRNase複合体のガイドとして働き、それによってmRNAのアブレーションをもたらす。
【0003】
RNAi技術は有望な治療ツールです。しかし、siRNAは安定性と細胞/組織標的化の欠如という難点がある。安定性を増加させる方法が望ましい。US2019085328号明細書は、糖修飾、塩基修飾、および/またはクロスリンカー、デンドリマー、ナノ粒子、ペプチド、有機化合物(例えば、蛍光色素)、および/または光開裂可能化合物を含む骨格修飾などのsiRNAの安定性を高める内部修飾を有するsiRNA分子を開示している。US2009197332は、分解からsiRNAを保護する化学修飾ヌクレオチドを含むsiRNA分子を開示している。US2016193354は、siRNA抱合分子を開示していて、この場合において抱合体は、修飾されたおよび/または天然のオリゴヌクレオチド、リンカー基、硫黄、水素またはチオール保護基のいずれかを含む。しかしながら、修飾siRNA分子の安定性は増加するが、合成はしばしば困難かつ高価であり、さらに修飾は、クリニックで使用される場合に制御されなければならない毒性および有害な副作用の増加をもたらす可能性がある。
【0004】
本開示は、細胞および組織へのsiRNAの送達に関する。上述の通り、細胞/組織への誤った標的化と標的細胞/組織によるsiRNA取り込みの最大化との望ましくない効果を回避するために、特定の細胞/組織に対してsiRNA治療薬を標的化することが望ましい。siRNA分子の送達は、siRNAを一つ以上の細胞または一つ以上の器官に標的化するsiRNAにリガンドを付着させることによって補助されることができる。一例は、肝臓に対してsiRNAを標的化するN-アセチルガラクトサミンである。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、センスまたはアンチセンス阻害性RNAのいずれかの3’末端に結合された短いDNA部分の含有によって改変される、かつヘアピン構造(「湾曲(crook)」)を形成し、N-アセチルガラクトサミンをさらに任意選択的に含む、二本鎖阻害性RNAを含む核酸分子に関する。N-アセチルガラクトサミンの位置は、核酸分子内で変化させることができる。N-アセチルガラクトサミンは、DNA部分またはRNA部分に直接または間接的に結合されることができる。
【0006】
本発明による核酸分子は、阻害性RNAを含む修飾塩基および/または糖類を必要とせずに、改善された安定性を有し、主に天然塩基/糖類を使用する。N-アセチルガラクトサミンは、肝臓に対するsiRNAの特異的標的化を可能にし、非常に有効な遺伝子サイレンシングを提供する。
【0007】
本発明の一態様によると、核酸分子であって、
サイレンシングされる遺伝子を含むヌクレオチド配列を参照して設計されたセンス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む第一の部分であって、前記サイレンシングされる遺伝子が、アポリポタンパク質B(Apo B)およびプロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9型(PCSK9)ではない、第一の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む第二の部分と
を含み、前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記センス鎖の前記3’末端に共有結合されているか、または前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記アンチセンス鎖の3’に共有結合されていて、前記一本鎖DNA分子が、前記一本鎖DNAの一部と相補的塩基対合することによってアニールして、ステムドメインおよびループドメインを含む二本鎖DNA構造を形成するようにその長さの少なくとも一部にわたって適合されたヌクレオチド配列を含み、前記核酸分子がN-アセチルガラクトサミンを含むことと、前記二本鎖阻害性RNAが天然ヌクレオチドから成ることとを特徴とする、核酸分子が提供されている。
【0008】
当方は現在の出願の主張された主題から、優先出願GB1909500.9、GB1910526.1、GB2000906.4、GB2010004.6、PCT/GB2020/051573の内容を放棄する。当方は出願中の各出願において、参照アポリポタンパク質Bを用いて設計された本発明による核酸分子を開示し主張する。また、本発明によるプロタンパク質転換酵素サブチリシンケキシン9型(PCSK9)核酸分子を開示する英国特許出願GB2003756.0、GB2010276.0、およびPCT/EP2021/056540およびGB2103594.4の内容も放棄する。
【0009】
本発明の好ましい一実施形態において、前記一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のセンス鎖の3’末端に共有結合されている。
【0010】
本発明の代替的な一実施形態において、前記一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のアンチセンス鎖の3’末端に共有結合されている。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ループ部分は、ヌクレオチド配列GNAまたはGNNAを含む領域を含み、各Nは独立してグアニン(G)、チミジン(T)、アデニン(A)、またはシトシン(C)を表す。
【0012】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ループドメインは、GおよびCヌクレオチド塩基を含む。
【0013】
本発明の代替的な一実施形態において、前記ループドメインは、ヌクレオチド配列GCGAAGCを含む。
【0014】
本発明のさらに好ましい一実施形態において、前記一本鎖DNA分子は、ヌクレオチド配列TCACCTCATCCCGCGAAGC(配列番号1)を含む。
【0015】
本発明の代替的な好ましい一実施形態において、前記一本鎖DNA分子は、ヌクレオチド配列5’ CGAAGCGCCCTACTCCACT 3’(配列番号150)を含む。
【0016】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ステムドメインは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または少なくとも12ヌクレオチド長を含む。
【0017】
阻害性RNA分子は、化学修飾を必要としない天然ヌクレオチド塩基を含むか、またはそれらから成る。さらに、本発明の一部の実施形態において、湾曲DNA分子は、前記二本鎖阻害性RNAのセンス鎖の3’末端に結合されていて、アンチセンス鎖には、少なくとも2ヌクレオチド塩基オーバーハング配列が任意選択的に提供されている。2ヌクレオチドオーバーハング配列は、標的によってコードされたヌクレオチドに対応することができるか、または非コードである。2ヌクレオチドオーバーハングは、任意の配列の2つのヌクレオチド、例えばUU、AA、UA、AU、GG、CC、GC、CG、UG、GU、UC、CU、dTdTなど、任意の順番とすることができる。
【0018】
本発明の好ましい一実施形態において、前記阻害性RNA分子は、デオキシチミジンジヌクレオチド(dTdT)を含むか、またはそれから成る2ヌクレオチドオーバーハングを含む。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態において、前記dTdTオーバーハングは、前記アンチセンス鎖の5’末端に位置付けられている。
【0020】
本発明の代替的な好ましい一実施形態において、前記dTdTオーバーハングは、前記アンチセンス鎖の3’末端に位置付けられている。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態において、前記dTdTオーバーハングは、前記センス鎖の5’末端に位置付けられている。
【0022】
本発明の代替的な好ましい一実施形態において、前記dTdTオーバーハングは、前記センス鎖の3’末端に位置付けられている。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態において、前記センス鎖および/または前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態において、前記センス鎖は、ヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0025】
好ましくは、前記センス鎖の5’および/または3’末端の2つのヌクレオチドは、2つのヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態において、前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0027】
好ましくは、前記アンチセンス鎖の5’および/または3’末端の2つのヌクレオチドは、2つのヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0028】
本発明の代替的な好ましい一実施形態において、前記一本鎖DNA分子は、一つ以上のヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0029】
本発明の好ましい一実施形態において、前記核酸分子は、ビニルホスホネート修飾を含む。
【0030】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ビニルホスホネート修飾は、前記センスRNA鎖の5’末端リン酸塩に対するものである。
【0031】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ビニルホスホネート修飾は、前記アンチセンスRNA鎖の5’末端リン酸塩に対するものである。
【0032】
本発明の好ましい一実施形態において、前記二本鎖阻害性RNA分子は、長さが15~40個の近接しているヌクレオチドを含む。
【0033】
本発明の好ましい一実施形態において、前記二本鎖阻害性RNA分子は、長さが少なくとも19個の近接しているヌクレオチドを含む。
【0034】
本発明の好ましい一実施形態において、前記二本鎖阻害性RNA分子は、長さが少なくとも21個の近接しているヌクレオチドを含む。
【0035】
本発明の好ましい一実施形態において、前記二本鎖阻害性RNA分子は、長さが21~23個の近接しているヌクレオチドを含む。
【0036】
本発明の好ましい一実施形態において、前記標的化リガンドは、前記核酸分子のDNA部分に直接または間接的に結合されている。
【0037】
好ましくは、前記一つ以上の標的化リガンドは、前記核酸分子のDNAループドメインに結合されている。
【0038】
あるいは、前記一つ以上の標的化リガンドは、前記核酸分子のDNAステムドメインに結合されている。
【0039】
本発明のさらなる代替的な一実施形態において、前記一つ以上の標的化リガンドは、相補的塩基対合によって二本鎖化されていない前記DNA部分、例えば一本鎖DNA部分の一部に結合されている。
【0040】
本発明のさらなる代替的な一実施形態において、前記一つ以上の標的化リガンドは、前記阻害性RNAのアンチセンス部分または前記阻害性RNAのセンス部分のいずれかに結合されている。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態において、N-アセチルガラクトサミンは、一価、二価、または三価である。
【0042】
本発明のさらなる一実施形態において、N-アセチルガラクトサミンは、前記阻害性RNAのアンチセンス部分または前記阻害性RNAのセンス部分のいずれかに結合されている。
【0043】
好ましくは、N-アセチルガラクトサミンは、前記センスRNAの5’末端に結合されている。
【0044】
本発明の代替的な一実施形態において、N-アセチルガラクトサミンは、前記センスRNAの3’末端に結合されている。
【0045】
本発明の代替的な好ましい一実施形態において、前記N-アセチルガラクトサミンは、前記アンチセンスRNAの3’末端に結合されている。
【0046】
本発明の好ましい一実施形態において、前記核酸分子は、以下の構造を含む分子に共有結合されている:
【化1】
【0047】
本発明の代替的な一実施形態において、前記核酸分子は、以下の構造を含む分子に共有結合されている:
【化2】
【0048】
本発明の代替的な一実施形態において、前記核酸分子は、以下の構造を含む分子に共有結合されている:
【化3】
【0049】
本発明の代替的な一実施形態において、前記核酸分子は、以下の構造を含む分子に共有結合されている:
【化4】
【0050】
本発明の代替的な好ましい一実施形態において、前記核酸分子は、N-アセチルガラクトサミン4-硫酸塩を含む分子に共有結合されている。
【0051】
本発明の一態様によると、核酸分子であって、
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む第一の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む第二の部分と
を含み、前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記センス鎖の前記3’末端に共有結合されているか、または前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記アンチセンス鎖の3’に共有結合されていて、二本鎖阻害性RNAが、ヒト補体成分5またはその多型配列バリアントの一部をコードするセンスヌクレオチド配列を含むことを特徴とし、前記一本鎖DNA分子が、前記一本鎖DNAの一部と相補的塩基対合することによってアニールして、ステムドメインおよびループドメインを含む二本鎖DNA構造を形成するようにその長さの少なくとも一部にわたって適合されたヌクレオチド配列を含み、前記核酸分子がN-アセチルガラクトサミンを含むことと、前記二本鎖阻害性RNAが天然ヌクレオチドから成ることとを特徴とする、核酸分子が提供されている。
【0052】
本発明の一態様によると、核酸分子であって、
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む第一の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む第二の部分と
を含み、前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記センス鎖の前記3’末端に共有結合されているか、または前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記アンチセンス鎖の3’に共有結合されていて、二本鎖阻害性RNAが、ヒト補体成分3またはその多型配列バリアントの一部をコードするセンスヌクレオチド配列を含むことを特徴とし、前記一本鎖DNA分子が、前記一本鎖DNAの一部と相補的塩基対合することによってアニールして、ステムドメインおよびループドメインを含む二本鎖DNA構造を形成するようにその長さの少なくとも一部にわたって適合されたヌクレオチド配列を含み、前記核酸分子がN-アセチルガラクトサミンを含むことと、前記二本鎖阻害性RNAが天然ヌクレオチドから成ることとを特徴とする、核酸分子が提供されている。
【0053】
本発明の一態様によると、核酸分子であって、
センス鎖およびアンチセンス鎖を含む二本鎖阻害性リボ核酸(RNA)分子を含む第一の部分と、
一本鎖デオキシリボ核酸(DNA)分子を含む第二の部分と
を含み、前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記センス鎖の前記3’末端に共有結合されているか、または前記一本鎖DNA分子の前記5’末端が、前記二本鎖阻害性RNA分子の前記アンチセンス鎖の3’に共有結合されていて、二本鎖阻害性RNAが、ヒトMASP-2遺伝子またはその多型配列バリアントの一部をコードするセンスヌクレオチド配列を含むことを特徴とし、前記一本鎖DNA分子が、前記一本鎖DNAの一部と相補的塩基対合することによってアニールして、ステムドメインおよびループドメインを含む二本鎖DNA構造を形成するようにその長さの少なくとも一部にわたって適合されたヌクレオチド配列を含み、前記核酸分子がN-アセチルガラクトサミンを含むことと、前記二本鎖阻害性RNAが天然ヌクレオチドから成ることとを特徴とする、核酸分子が提供されている。
【0054】
多型配列バリアントは、参照配列から1、2または3つ以上のヌクレオチドで変化する。
【0055】
補体系は、動物の自然免疫の一部である。補体タンパク質は、自然免疫応答の一部である。それらは、異なる経路(古典的経路、レクチン経路、代替経路)を活性化することによって、オプソニン化(外来病原体のコーティング)、膜攻撃複合体の開始、および炎症の増強などの様々な生物学的機能を実行する。補体経路は、C3の分割または活性化を引き起こしてC3aまたはC3bを産生する共通経路に収束し、結果としてC5aおよびC5bなどの様々な生理活性分子が形成される。補体系の過剰活性化は、ウイルスまたは病原菌などの病原性微生物に応答して敗血症などにおいて重篤な臨床転帰を有することができる。
【0056】
本発明の好ましい一実施形態において、前記一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のセンス鎖の3’末端に共有結合されている。
【0057】
本発明の代替的な一実施形態において、前記一本鎖DNA分子の5’末端は、二本鎖阻害性RNA分子のアンチセンス鎖の3’末端に共有結合されている。
【0058】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ループ部分は、ヌクレオチド配列GNAまたはGNNAを含む領域を含み、各Nは独立してグアニン(G)、チミジン(T)、アデニン(A)、またはシトシン(C)を表す。
【0059】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ループドメインは、GおよびCヌクレオチド塩基を含む。
【0060】
本発明の代替的な一実施形態において、前記ループドメインは、ヌクレオチド配列GCGAAGCを含む。
【0061】
本発明のさらに好ましい一実施形態において、前記一本鎖DNA分子は、ヌクレオチド配列TCACCTCATCCCGCGAAGC(配列番号1)を含む。
【0062】
本発明の代替的な好ましい一実施形態において、前記一本鎖DNA分子は、ヌクレオチド配列5’ CGAAGCGCCCTACTCCACT 3’を含む。
【0063】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ステムドメインは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、または少なくとも12ヌクレオチド長を含む。
【0064】
阻害性RNA分子は、化学修飾を必要としない天然ヌクレオチド塩基を含むか、またはそれらから成る。さらに、本発明の一部の実施形態において、湾曲DNA分子は、前記二本鎖阻害性RNAのセンス鎖の3’末端に結合されていて、アンチセンス鎖には、少なくとも2ヌクレオチド塩基オーバーハング配列が任意選択的に提供されている。2ヌクレオチドオーバーハング配列は、標的によってコードされたヌクレオチドに対応することができるか、または非コードである。2ヌクレオチドオーバーハングは、任意の配列の2つのヌクレオチド、例えばUU、AA、UA、AU、GG、CC、GC、CG、UG、GU、UC、CU、dTdTなど、任意の順番とすることができる。
【0065】
本発明の好ましい一実施形態において、前記阻害性RNA分子は、デオキシチミジンジヌクレオチド(dTdT)を含むか、またはそれから成る2ヌクレオチドオーバーハングを含む。
【0066】
本発明の好ましい一実施形態において、前記dTdTオーバーハングは、前記アンチセンス鎖の5’末端に位置付けられている。
【0067】
本発明の代替的な好ましい一実施形態において、前記dTdTオーバーハングは、前記アンチセンス鎖の3’末端に位置付けられている。
【0068】
本発明の好ましい一実施形態において、前記dTdTオーバーハングは、前記センス鎖の5’末端に位置付けられている。
【0069】
本発明の代替的な好ましい一実施形態において、前記dTdTオーバーハングは、前記センス鎖の3’末端に位置付けられている。
【0070】
本発明の好ましい一実施形態において、前記センス鎖および/または前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0071】
本発明の好ましい一実施形態において、前記センス鎖は、ヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0072】
好ましくは、前記センス鎖の5’および/または3’末端の2つのヌクレオチドは、2つのヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0073】
本発明の好ましい一実施形態において、前記アンチセンス鎖は、ヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0074】
好ましくは、前記アンチセンス鎖の5’および/または3’末端の2つのヌクレオチドは、2つのヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0075】
本発明の代替的な好ましい一実施形態において、前記一本鎖DNA分子は、一つ以上のヌクレオチド間ホスホロチオエート結合を含む。
【0076】
本発明の好ましい一実施形態において、前記核酸分子は、ビニルホスホネート修飾を含む。
【0077】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ビニルホスホネート修飾は、前記センスRNA鎖の5’末端リン酸塩に対するものである。
【0078】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ビニルホスホネート修飾は、前記アンチセンスRNA鎖の5’末端リン酸塩に対するものである。
【0079】
本発明の好ましい一実施形態において、前記二本鎖阻害性RNA分子は、長さが15~40個の近接しているヌクレオチドを含む。
【0080】
本発明の好ましい一実施形態において、前記二本鎖阻害性RNA分子は、長さが少なくとも19個の近接しているヌクレオチドを含む。
【0081】
本発明の好ましい一実施形態において、前記二本鎖阻害性RNA分子は、長さが少なくとも21個の近接しているヌクレオチドを含む。
【0082】
本発明の好ましい一実施形態において、前記二本鎖阻害性RNA分子は、長さが21~23個の近接しているヌクレオチドを含む。
【0083】
本発明の好ましい一実施形態において、N-アセチルガラクトサミンは、一価、二価、三価、または四価である。
【0084】
本発明のさらなる一実施形態において、N-アセチルガラクトサミンは、前記阻害性RNAのアンチセンス部分または前記阻害性RNAのセンス部分のいずれかに結合されている。
【0085】
好ましくは、N-アセチルガラクトサミンは、前記センスRNAの5’末端に結合されている。
【0086】
本発明の代替的な一実施形態において、N-アセチルガラクトサミンは、前記センスRNAの3’末端に結合されている。
【0087】
本発明の代替的な好ましい一実施形態において、前記N-アセチルガラクトサミンは、前記アンチセンスRNAの3’末端に結合されている。
【0088】
本発明の好ましい一実施形態において、前記核酸分子は、以下の構造を含む分子に共有結合されている:
【化5】
【0089】
本発明の代替的な一実施形態において、前記核酸分子は、以下の構造を含む分子に共有結合されている:
【化6】
【0090】
本発明の代替的な一実施形態において、前記核酸分子は、以下の構造を含む分子に共有結合されている:
【化7】
【0091】
本発明の代替的な一実施形態において、前記核酸分子は、以下の構造を含む分子に共有結合されている:
【化8】
【0092】
本発明の好ましい一実施形態において、前記C5二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号67に記載されたセンスヌクレオチド配列の19~23個の近接しているヌクレオチドを含むか、またはそれらから成る。
【0093】
本発明の一実施形態において、前記C5二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0094】
本発明の一実施形態において、前記C5二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号109、110、111、112、113、114、115、116、117、118から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0095】
本発明の一実施形態において、前記C5二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号139、140、141、142、143、144、145、146、147、148から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0096】
本発明の一実施形態において、前記C5二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号31、32、33、34、35、36、37、38、39、40から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0097】
本発明の代替的な一実施形態において、前記C5二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号21、22、23、24、25、26、27、28、29、30から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0098】
本発明の好ましい一実施形態において、前記二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号151~650から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0099】
本発明の好ましい一実施形態において、前記C3二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号66に記載されたセンスヌクレオチド配列の19~23個の近接しているヌクレオチドを含むか、またはそれらから成る。
【0100】
本発明の一実施形態において、前記C3二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0101】
本発明の一実施形態において、前記C3二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号69、70、71、72、73、74、75、76、77、78から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0102】
本発明の一実施形態において、前記C3二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号100、101、102、103、104、105、106、107、108から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0103】
本発明の一実施形態において、前記C3二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号11、12、13、14、15、16、17、18、19、20から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0104】
本発明の代替的な一実施形態において、前記C3二本鎖阻害性RNA分子は、61、2、3、4、5、6、7、8、9、10から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0105】
本発明の好ましい一実施形態において、前記二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号651~1150から成る群から選択されるヌクレオチド配列を含む。
【0106】
本発明の好ましい一実施形態において、前記C3二本鎖阻害性RNA分子は、表1に開示の通り、センス対およびアンチセンス対を含む。
【0107】
本発明の好ましい一実施形態において、前記二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号67(MASP2)に記載されたセンスヌクレオチド配列の19~23個の近接しているヌクレオチドを含むか、またはそれらから成る。
【0108】
本発明の一実施形態において、前記MASP2二本鎖阻害性RNA分子は、51、52、53、54、55、56、57、58、59または60から成る群から選択されるアンチセンスヌクレオチド配列を含む。
【0109】
本発明の代替的な一実施形態において、前記MASP2二本鎖阻害性RNA分子は、配列番号41、42、43、44、45、46、47、48、49、50から成る群から選択されるセンスヌクレオチド配列を含む。
【0110】
本発明の好ましい一実施形態において、前記MASP-2二本鎖阻害性RNA分子は、表3に開示の通り、センス対およびアンチセンス対を含む。
【0111】
本発明のさらなる一態様によると、本発明による少なくとも一つの核酸分子を含む医薬組成物が提供されている。
【0112】
本発明の好ましい一実施形態において、前記組成物は、薬学的担体および/または賦形剤をさらに含む。
【0113】
投与される時、本発明の組成物は、薬学的に許容可能な調製物で投与される。こうした調製物は、薬学的に許容可能な濃度の塩、緩衝剤、防腐剤、適合する担体、および任意選択でコレステロール降下剤などの他の治療剤を日常的に含有してもよく、これは本発明による核酸分子とは別個に投与されてもよく、または組み合わせが適合する場合、組み合わせた調製物で投与されてもよい。
【0114】
本発明による核酸と、他の異なる治療剤との組み合わせは、同時、連続、または時間的に別個の用量として投与される。
【0115】
本発明の治療薬は、注射を含む任意の従来的経路によって、または経時的な段階的注入によって投与されることができる。投与は、例えば経口投与、静脈内投与、腹腔内投与、筋肉内投与、腔内投与、皮下投与、経皮投与または経上皮投与であってもよい。
【0116】
本発明の組成物は、有効量で投与される。「有効量」は、単独で、またはさらなる用量とともに、所望の応答を生成する発現ベクターの量である。疾患(心臓血管系の疾患または感染など)を治療する場合、所望の応答は、疾患の進行を阻害するか、または反転させることである。これは、疾患の進行を一時的に遅らせることのみを含みうるが、より好ましくは、疾患の進行を永久的に停止することを含む。これはルーチンの方法によって監視されることができる。
【0117】
そのような量は、当然ながら、治療される特定の状態、状態の重症度、年齢、身体状態、サイズ・体重、治療期間、併用療法の性質(存在する場合)、特定の投与経路を含む個々の患者パラメータ、ならびに医療従事者の知識および専門技能内の類似の因子に依存する。これらの因子は当業者に周知であり、ルーチンの実験のみで対処されることができる。個々の成分またはその組み合わせの最大用量、すなわち健全な医学的判断による最大安全用量を使用することが概して好ましい。しかしながら、当業者であれば、医学的理由、心理的理由、または事実上あらゆる他の理由により、患者がより低い用量または耐用量を主張しうることを理解するであろう。
【0118】
前述の方法で使用される医薬組成物は好ましくは、滅菌されていて、患者への投与に好適な重量または体積の単位で所望の応答を生成するための本発明による有効量の核酸分子を含有する。応答は、例えば心血管疾患の退縮および疾患症状の減少などを決定することによって測定されることができる。
【0119】
対象に投与される本発明による核酸分子の用量は、異なるパラメータに従って、特に、使用される投与モードおよび対象の状態に従って選択されることができる。他の因子には、望ましい治療期間が含まれる。対象における応答が、適用される初回用量では不十分である場合、より高い用量(または異なるより局所的な送達経路による効果的により高い用量)が、患者の耐性が許容する範囲で採用されうる。本発明による核酸の検出方法は、治療を必要とする対象に対する適切な用量の決定を容易にすることが明らかであろう。
【0120】
一般に、本明細書に開示の核酸分子の0.1mg/kg~25mg/kgの用量は概して、標準的な手順に従って製剤化され、投与される。好ましくは、用量は0.1mg/kg~5mg/kgまたは0.5mg/kg~5mg/kgの範囲とすることができる。投与量、注射のスケジュール、注射部位、投与モード、同等物が前述とは異なる、組成物の投与のための他のプロトコルは当業者に周知であろう。ヒト以外の哺乳動物への組成物の投与(例えば、試験目的または獣医学治療目的のための)は、上記と実質的に同じ条件下で実施される。本明細書で使用される対象は、哺乳類、好ましくはヒトであり、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、または齧歯類を含む。
【0121】
投与される時、本発明の医薬製剤は、薬学的に許容可能な量で、かつ薬学的に許容可能な組成物で適用される。「薬学的に許容可能な」という用語は、活性成分の生物活性の有効性に干渉しない非毒性物質を意味する。こうした調製物は、塩、緩衝剤、防腐剤、適合担体、および任意選択的に他の治療剤(例えば、スタチン)を定常的に含有してもよい。医薬で使用される時、塩は薬学的に許容可能であるべきであるが、薬学的に許容されない塩は好都合なことに、その薬学的に許容可能な塩を調製するために使用されてもよく、本発明の範囲から除外されない。そのような薬理学的および薬学的に許容可能な塩には、限定されないが、以下の酸から調製されるものを含む:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、クエン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、同等物。また、薬学的に許容可能な塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、またはカルシウム塩などのアルカリ金属塩またはアルカリ土類塩として調製されることができる。
【0122】
組成物は、所望により、薬学的に許容可能な担体と組み合わせられてもよい。本明細書で使用される「医薬的に許容可能な担体」という用語は、ヒトへの投与に適している、一つ以上の適合する固体もしくは液体のフィラー、希釈剤、またはカプセル剤を意味する。この文脈における用語「医薬的に許容可能な担体」とは、天然または合成の有機または無機の成分を指し、それと活性成分とを組み合わせて、例えば溶解性および/または安定性を促進する。本医薬組成物の構成要素はまた、所望の医薬的有効性を実質的に損なうものになる相互作用がないような様式で、本発明の分子と、および互いに混ざり合うことができる。
【0123】
医薬組成物は、塩中の酢酸、塩中のクエン酸、塩中のホウ酸、塩中のリン酸を含む、好適な緩衝剤を含有しうる。医薬組成物はまた任意選択的に、適切な防腐剤を含有してもよい。
【0124】
医薬組成物は好都合なことに、単位剤形で供されてもよく、薬学の分野で周知のいずれかの方法によって調製されてもよい。すべての方法は、活性薬剤を一つ以上の副成分を構成する担体と会合させる工程を含む。一般に、本組成物は、活性化合物を液体担体、または微細に分割された固体担体、またはその両方と均一かつ密接に会合させ、その後、必要に応じて生成物を成形することによって調製される。経口投与に適した組成物は、カプセル、錠剤、トローチなどの個別の単位として供され、それぞれが所定量の活性化合物を含有する。
【0125】
非経口投与に適した組成物は、核酸の無菌の水性または非水性調製物を含み、これはレシピエントの血液と等張であることが好ましい。この調製物は、好適な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を使用して、周知の方法に従って製剤化されうる。滅菌注射用調製物はまた、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液として、非毒性の非経口的に許容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌注射用溶液または懸濁液でありうる。採用されうる許容可能な溶媒としては、水、リンゲル溶液、等張性塩化ナトリウム溶液が挙げられる。加えて、滅菌固定油は従来的に、溶媒または懸濁媒体として採用される。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む、任意の無刺激性固定油が採用されうる。加えて、オレイン酸などの脂肪酸が、注射剤の調製に使用されうる。経口、皮下、静脈内、筋肉内などの投与に好適な担体製剤は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、ペンシルベニア州イーストン)において見つけることができる。
【0126】
本発明の一態様によると、本発明による核酸分子または組成物を対象に投与することを含む、肝細胞における遺伝子の発現を阻害する方法が提供されている。
【0127】
本発明のさらなる態様によると、有効量の核酸または核酸を含む組成物を対象に投与することを含む、本発明による核酸分子または組成物を肝細胞に送達する方法が提供されている。
【0128】
本発明の好ましい一方法において、前記対象はヒトの対象である。
【0129】
本発明の好ましい一方法において、前記細胞は肝細胞である。
【0130】
本発明の好ましい一方法において、前記細胞は肝がん細胞である。好ましくは、前記肝がん細胞は、原発性肝がん細胞である。あるいは、前記肝がん細胞は、二次肝がん細胞である。
【0131】
本明細書で使用される「肝がん」という用語は、自律的成長の能力、すなわち急速に増殖する細胞増殖によって特徴付けられる異常な状態または病状を有する細胞を指す。この用語は、転移性肝がんを含む、すべてのタイプの肝がん性増殖または腫瘍形成プロセスを含むことが意図される。
【0132】
本発明の代替的な一方法において、前記細胞はウイルス感染した肝細胞である。
【0133】
本発明の好ましい一方法において、前記ウイルス感染した肝細胞は、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、D型肝炎、またはE型肝炎に感染した肝細胞である。
【0134】
本発明のさらなる一態様によると、補体成分5の阻害から利益を得ることになる疾患または病状の治療において使用する、本発明による核酸分子または医薬組成物の有効量が提供されている。
【0135】
本発明のさらなる一態様によると、補体成分3の阻害から利益を得ることになる疾患または病状の治療において使用する、本発明による核酸分子または医薬組成物の有効量が提供されている。
【0136】
本発明のさらなる一態様によると、MASP2の阻害から利益を得ることになる疾患または病状の治療において使用する、本発明による核酸分子または医薬組成物の有効量が提供されている。
【0137】
本発明の好ましい一実施形態において、前記病状は微生物感染である。
【0138】
本発明の好ましい一実施形態において、前記微生物感染はウイルス感染の結果である。
【0139】
本発明の代替的な一実施形態において、前記微生物感染は細菌感染の結果である。
【0140】
本発明の好ましい一実施形態において、前記疾患または病状は、炎症性の疾患または病状である。
【0141】
本発明の好ましい一実施形態において、前記炎症性の疾患または病状は、関節炎、腎炎、血管炎から成る群から選択される。
【0142】
本発明の好ましい一実施形態において、前記疾患または病状は、自己免疫性の疾患または症状である。
【0143】
本発明の好ましい一実施形態において、前記疾患または病状は敗血症をもたらす。
【0144】
本発明の好ましい一実施形態において、前記疾患または病状は急性肺損傷である。
【0145】
本発明の好ましい一実施形態において、前記疾患または病状は、急性呼吸促迫症候群である。
【0146】
本明細書の説明および特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」および「含有する(contain)」という単語、ならびに当該単語の変化形、例えば「含む(comprising)」および「含む(comprises)」は、「含むが、それらに限定されない」ことを意味し、他の部分、添加剤、成分、整数、または工程を除外することを意図していない(かつ除外しない)。
【0147】
本明細書の説明および特許請求の範囲の全体を通して、文脈によって別段の解釈が要求されない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、明細書は、文脈によって別段の解釈を必要としない限り、複数性だけでなく単一性も企図するものとして理解されるべきである。
【0148】
本発明の態様、実施形態、または実施例に関連して説明される特徴、完全体、特性、化合物、化学的部分、または基は、それらと不適合でない限り、本明細書に記載の任意の他の態様、実施形態、または実施例に適用可能であると理解されるべきである。
【0149】
ここで、本発明の一実施形態を、以下の図を参照して、単に例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0150】
【
図1(a)】対照のsiRNA構築物と比較したGalNAc抱合型湾曲抗マウスApoB siRNAのインビボ活性を示すグラフ。(a)5匹の成体オス野生型C57BL/6マウスからの血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を、GalNAc抱合型ApoB湾曲siRNA(一つの投与群)の投与後96時間測定し、生理食塩水を投与した対照投与群と比較した。対応のある両側T検定アルゴリズムを使用して統計解析を適用した。結果は、GalNAc抱合型湾曲siRNAで処置されたマウスの平均血漿ApoBレベルが、対照と比較して実質的に減少したことを示す。しかし、有意性が不足し(p=0.11)、最も可能性の高い理由は、サンプルサイズが小さいことと、対照動物間でのApoBレベルのばらつきが小さいことである。
【
図1(b)】対照のsiRNA構築物と比較したGalNAc抱合型湾曲抗マウスApoB siRNAのインビボ活性を示すグラフ。(b)5匹の成体オス野生型C57BL/6マウスからの血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を、GalNAc抱合型ApoB湾曲siRNA(一つの投与群)の投与後96時間測定し、siRNA構築物非抱合型(GalNAcを含まない)ApoB湾曲siRNAを投与した対照投与群と比較した。対応のある両側T検定アルゴリズムを使用して統計解析を適用した。結果は、このGalNAc抱合型湾曲siRNA投与群では、湾曲のある対照の非抱合型siRNAと比較して、血漿ApoBレベルの著しい減少を示す(P=0.00435832)。
【
図2】PCSK9インビボサイレンシング:インビボでのマウス試験を実施し、GalNAc抱合型湾曲抗マウスPCSK9 siRNAのノックダウン活性(化合物H、
図3に図示)を、その「非湾曲」siRNA対照(化合物A、
図3に図示)と比較して評価した。化合物H(2mg/kg)は、化合物Aおよび媒体対照と比較して、SC注射の48時間後に肝臓PCSK9 mRNAの有意なノックダウンを示す。対応のある両側T検定アルゴリズム(p<0.001)を使用して統計解析を適用した。
【
図3】インビボでのPCSK9試験で投与されたsiRNA構築物(
図2):(A)化合物Aは、湾曲部分を含まないGalNAc抱合型抗マウスPCSK9 siRNAであり、(B)化合物Hは、センス鎖の3’に湾曲が付加されたGalNAc抱合型PCSK9 siRNAである。(C)GalNAc構造。c、g、a、t:DNA塩基;A、G、C、U:RNA塩基、*ヌクレオチド間結合ホスホロチオエート(PS)
【発明を実施するための形態】
【0151】
材料および方法
非抱合型および抱合型のApoB湾曲siRNAを、それぞれ静脈内(IV)経路および皮下(SC)経路により投与し、相対的な血漿および組織の曝露を調べた。用量選択の根拠は、科学文献に発表された以下の情報に基づく:
【0152】
GalNAc抱合型siRNAは、5mg/kgで皮下投与され、これによって必要なレベルの遺伝子サイレンシングが産生されるものと予想され、ここで構造的に関連するsiRNAのED80が2.5mg/kgとして報告されている(Soutschek et al., 2004)。これらの構造的に関連するsiRNAは、マウスにおいて最大25mg/kgの単回投与まで耐容性を示した(Soutschek et al., 2004)。
【0153】
スポンサーのsiRNAの非抱合型は、50mg/kgで静脈内投与される。SC用量と比較して10倍であるIVでの増加は、非抱合型siRNAが肝臓を標的にする際に有効性が低いためである。さらに、Soutschek et al (2004)は、SC投与と比較して、IV後の肝臓においてより低いレベルのRNAが測定されることを報告している。皮下沈着物からのsiRNAの放出が遅いと、長期間の曝露が生じ、受容体とリガンドの相互作用の可能性が増大し、組織への取り込みが増加すると記載されている。類似の関連siRNAは、3日間連続で最大50mg/kgのIV投与を行ったマウスで良好な耐容性が示された(Nair et al. 2014)。念のため、最初の動物IVの投与との間に15分間の観察期間を設けて、残りの動物に投与する前に、被験物質が何らかの有害作用を引き起こすかどうかを決定する。
【0154】
マウスは、被験物質の安全性試験において毒性学種の一つとして使用されているため、最適な種である。マウスはまた、湾曲siRNA調製物(ApoB)の治療標的に関連して、ヒトと非常に類似した代謝生理を有する。かなりの量の利用可能な公表済みデータがあり、それらは、この種で生成されたデータのヒトへの有意性を評価するために規制当局にとって許容可能なデータである。
【0155】
動物
20匹の健康なオスの動物を提供するのに十分なC57BL/6マウスを、承認された供給源から取得した(ApoBパイロット試験)。動物は、投与時に20~30gの目標体重範囲内である。マウスは、テールマーキングによって一意に番号付けされる。番号はランダムに割り振られる。ケージは、試験番号および動物番号を含む情報を提供するカードによってコード化される。試験室は、部屋番号および試験番号を含む情報を提供するカードによって識別される。すべての動物は受領時に、不健康の外的兆候がないか調べた。不健康な動物は試験から除外された。動物を最低5日間、環境に順応させた。実施可能な場合、研究の科学的完全性を損ねることなく、可能な限り動物に手を触れた。試験への適合性を確実にするために、投与開始前に保健検査を実施した。
【0156】
マウスは、室温20~24℃のサーモスタット制御された部屋で維持され、相対湿度を45~65%とし、毎日(公称12時間)蛍光灯に当てた。温度および相対湿度は、毎日記録される。施設は、1時間に最低15回の空気交換を行うように設計されている。代謝ケージ内または外科手術からの回復時を除き、1ケージ当たり最大5匹のマウスを性別に応じて、適切な寝具を含む適切な固形床ケージ内に収容した。
【0157】
ケージは、「Code of Practice for the Housing and Care of Animals Bred, Supplied or Used for Scientific Purposes」(Home Office, London, 2014)に適合する。動物の環境と保健の両方を充実させるために、木製(アスペン)のチューブロックとポリカーボネートのトンネルが提供された。サプライヤーは、使用したブロックのバッチごとに分析証明書を提出した。すべての動物は、5LF2 EU齧歯類用飼料14%への自由なアクセスが許可される。飼料サプライヤーは、使用した各バッチについて、特定の汚染物の濃度と一部の栄養素の分析を行った。すべての動物は、ケージに取り付けられたボトルからの水道水に自由にアクセスすることが可能であった。水道水給水の定期的な分析が実施される。
【0158】
本試験の一環として、生きた動物に対して実施されるすべての手順は、英国の国内法、1986年動物(科学的手順)法の規定の対象になる。
【0159】
作業日の始めと終わりに、動物が健康であることを確認するために、すべての動物を検査した。不健康の顕著な徴候を示す動物はすべて隔離した。瀕死の動物、または関連する英国内務省のライセンスによって課せられた重症度の限度を超える危険にさらされている動物は殺処分した。
【0160】
インビボApoB siRNA構築物
マウスにおけるApo Bのインビボでのサイレンシングについては、以下の配列を使用した(CACUGAAUACCAAU)。これは、類似の配列が以前にインビボで成功していたためである(Soutshek et al Nature 2004; 432:173-178)。
【0161】
湾曲siRNA 21mer-dsRNA構築物(1):抗マウスApoB-GalNAc
センス鎖:
5’-GUCAUCACACUGAAUACCAAU-d(tcacctcatcccgcgaagc)-3’-[Tri-GalNAc](配列番号62)
アンチセンス鎖:
5’-AUUGGUAUUCAGUGUGAUGAC-3’(配列番号63)
【0162】
【0163】
湾曲siRNA 19mer dsRNA構築物(2):非抱合型抗マウスApoB
センス鎖(パッセンジャー)
5’-GUCAUCACACUGAAUACCAAU-d(tcacctcatcccgcgaagc)-3(配列番号64)
アンチセンス鎖(ガイド)
5’-AUUGGUAUUCAGUGUGAUGAC-3(配列番号65)
【0164】
製剤の調製
被験物質を0.9%生理食塩水で希釈し、ApoB湾曲siRNA GalNAc-非抱合型および抱合型の静脈内投与および皮下投与用にそれぞれ25mg/mLおよび0.6mg/mLの濃度にした。被験物質が完全に溶解するまで、製剤を必要に応じて穏やかにボルテックスした。
PCSK9については、凍結乾燥siRNA化合物を溶解し、その後、ヌクレアーゼを含まないPBS(中性pH)中で希釈した。
【0165】
得られた製剤を、目視検査のみによって評価し、それに応じて以下の通り分類した:
(1) 透明な溶液
(2) 濁った懸濁液、粒子は見えない
(3) 可視粒子
【0166】
使用後、製剤を公称で2~8℃で冷蔵保存した。長期保存のために、製剤を-20℃または-80℃で保存した。
【0167】
投薬の詳細
各動物は、ApoB湾曲siRNA GalNAc-非抱合体の単回静脈内投与、またはApoB湾曲siRNA GalNAc-抱合体の単回皮下投与のいずれかを受けた。静脈内用量は、2mL/kgの体積で外側尾静脈にボーラスとして投与された。皮下用量は、5mL/kgの体積で皮下腔に投与された。
PCSK9の被験物質については、各動物は5ml/kgの投与量で単回皮下注射を受けた。
【0168】
体重
少なくとも、体重は到着翌日および用量投与前に記録された。必要に応じて、追加の決定を行った。
【0169】
試料の保存
試料は、必要に応じて試験番号、試料タイプ、用量群、動物番号/Debraコード、(公称)サンプリング時間、保存条件を含む情報で一意にラベル付けされた。試料は、-50℃未満の温度で保存された。
【0170】
薬物動態試験
用量群の指定
【0171】
【0172】
PCSK9
ヌクレアーゼを含まないPBS(中性pH)に被験物質を溶解し、0.4mg/mLまたは2mg/mLの濃度にして、それぞれ2mg/kgおよび10mg/kgの用量を得て、それらを5mL/kgの投与量で皮下投与した。
【0173】
PCSK9について、各動物は、GalNAc抱合型PCSK9湾曲siRNA、または非湾曲GalNAc抱合型PCSK9のいずれかを単回皮下投与され、2日目(48時間)または7日目(168時間)のいずれかで犠牲にして、肝臓PCSK9 mRNAサイレンシングを決定した。試料は、終結時に尾出血または心臓穿刺のいずれかを介して得られる。
【0174】
PCSK9湾曲siRNAのそれぞれについて
10匹のマウス SC GalNAc抱合型PCSK9湾曲siRNA、2mg/kg
10匹のマウス SC GalNAc抱合型PCSK9湾曲siRNA、10mg/kg
10匹のマウス SC GalNAc抱合型PCSK9「非湾曲」siRNA、2mg/kg
10匹のマウス SC GalNAc抱合型PCSK9「非湾曲」siRNA、10mg/kg
10匹のマウス SC PBS対照
【0175】
採血
連続血液サンプル(名目上100μL、体重に依存)を、投与後0、48、および96*時間で尾の切り込みにより収集した。動物にはイソフルランを使用して死なせるように麻酔をかけ、心臓穿刺によって最終試料(名目上0.5mL)を採取した。
【0176】
血液試料をK2EDTAマイクロキャピラリーチューブ(尾の切り込み)またはK2EDTA血液チューブ(心臓穿刺)に採取し、処理されるまで氷上に置かれた。血液を遠心分離(1500g、10分、4℃)して、分析用の血漿を生成した。等しい体積の二つのアリコートにバルク血漿を分割した。残留血液細胞は廃棄した。血液試料収集の許容可能な時間範囲を、以下の表に要約する。実際のサンプリング時間を、すべての基質について記録した。
【0177】
予定された採取時間が許容範囲外である場合、実際の採血時間が報告され、その後のPK解析に含められた。
【0178】
血清採取については、血液(>300ul)を周囲温度で血清チューブに入れ、凝固させ、次いで10,000rpmで5分間遠心分離する。
【0179】
動物の運命
動物は最終的な採血の前にペントバルビタールナトリウムの腹腔内注射を介して麻酔をかけ、イソフルラン投与によって死なせた。
【0180】
組織採取
肝臓を全動物(A群~D群)から除去し、予め秤量された管に入れた。組織試料を、UltraTurraxホモジナイゼーションプローブを使用して、5部のRNAlaterを1部の組織にホモジナイズした。以下の組織を、ApoB処置群(A群およびC群)の動物から切除し、予め秤量されたポットに入れた:
・脾臓
・脳
・心臓
・肺葉
・皮膚(鼠径部、約25mm2)
【0181】
組織は、RNase活性を避けるために、液体窒素中で瞬間凍結させた。組織は、-50℃未満の温度(公称-80℃)で保存される。
【0182】
PCSK9インビボ試験:RT-qPCRのための肝臓の処理
動物を犠牲にし、肝臓を採取し、液体窒素中で瞬間凍結させた。以下に記載の通り、全肝臓をすりつぶし、RT-qPCRによるPCSK9 mRNA発現の評価のために組織可溶化物を調製した。
・GenElute(商標)Total RNA Purification Kit(RNB100-100RXN)を使用して、すりつぶした10mgの肝組織から全RNAを抽出した。
・マウスGAPDH(VIC_PL)およびPCSK9(FAM)用のTaqManプローブを用いたThermoFisher TaqMan Fast 1-Step Master Mixを使用して、二重RT-qPCRを実施した。
・PCSK9 mRNAの相対定量(RQ)は、ΔΔCT法を使用して決定され、ここでGAPDHは内部対照として使用され、標的遺伝子の発現変化は媒体対照(PBS)に対して正規化された。
【0183】
Apo Bに対するイムノアッセイ
血漿Apo Bレベルは、Elabscience Biotechnology Inc.(カタログ番号E-EL-M0132)からの市販マウスApo B検出キットを使用して、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)を介して測定された。血漿試料を分析前に-80℃で保存し、氷上で解凍し、13,000rpmで5分間遠心分離して、アッセイ緩衝液中でアリコートを希釈し、ELISAプレートに適用した。ApoBアッセイキットは、OD450で測定された比色測定値を得るサンドイッチELISAを使用する。特定の時点(0時間および96時間)での各動物からの試料は、複製してアッセイされ、測定はキットとともに供給された標準曲線試薬に基づいて、血漿1ml当たりのマイクログラムApoBとして記録された。すべてのデータポイントは、20%未満の変動係数で測定された。
【0184】
各動物のApoBレベルの変化は、96時間値から0時間値を差し引くことによって計算され、パーセンテージとして表された。%変化値の範囲を、各試験群について照合し、対応のある両側T検定アルゴリズムを使用して統計解析を適用した。
【0185】
HepG2細胞における湾曲siRNA活性のC3、C5およびMASP2インビトロスクリーニング
本試験で評価したC3およびC5のカスタムライブラリーsiRNAの説明を表5に示す。
【0186】
HepG2逆トランスフェクション
・C3およびC5についてBio-Synthesis(テキサス州ルイスビル)によって合成されたカスタム二本鎖siRNAを、UltraPure DNaseおよびRNase遊離水に再懸濁し、10μMの原液を得た。
・原液のsiRNAを、4×384ウェルアッセイプレート(Greiner #781092またはThermo Scientific(商標)164688)に分注した。各アッセイプレート上で、各標的に対して10個のカスタムsiRNAを分注し、25nMのアッセイプレートにおける最高最終濃度から4点4倍希釈系列を生成した。siRNA処置を受けていない細胞は、陰性対照として使用した。
・Lipofectamine RNAiMAX(ThermoFisher)をOptimem培地中で希釈し、その後、ウェル当たり10μLのLipofectamine RNAiMAX:OptIMEM溶液をアッセイプレートに添加した。ウェル当たりのRNAiMAXの最終体積は0.08μLであった。
・脂質-siRNAミックスを、室温で30分間インキュベートした。
・HepG2細胞をアッセイ培地(MEM GlutaMAX (GIBCO)10% FBS 1% Pen/Strep)で希釈し、その後、4,000個のHepG2細胞をアッセイプレートの各ウェルに40μL体積で播種した。アッセイ条件ごとに、三重の技術的複製物を播種した。
・細胞の評価前に、プレートを加湿雰囲気中で、37℃、5%のCO2で72時間インキュベートした。
【0187】
二重RT-qPCR
・トランスフェクションの72時間後、Cells-to-CT 1-step TaqMan Kit(Invitrogen 4391851CまたはA25603)を使用して細胞を処理し、RT-qPCR測定をした。簡潔に述べると、細胞を50μlの氷冷PBSで洗浄し、次いで、DNase Iを含有する20μlの溶解溶液中で溶解した。5分後、2μlのSTOP溶液を2分間添加することによって溶解を停止させた。
・RT-qPCR分析のために、ウェル当たり1ulの可溶化物を、20μlのRT-qPCR反応体積のテンプレートとして96ウェルPCRプレートに分注した。
・GAPDH(VIC_PL、アッセイID Hs00266705_g1)、C3(FAM、アッセイID Hs00163811_m1)、C5(FAM、アッセイID Hs01004342_m1)用のTaqManプローブを用いて、TaqMan(登録商標)1-Step qRT-PCR MixおよびCells-to-CT 1-step TaqMan Kitを使用して、RT-qPCRを実施した。
・QuantStudio 5サーモサイクリング機器(Applied BioSystems)を使用してRT-qPCRを実施した。
・相対定量は、??CT法を使用して決定し、ここでGAPDHを内部対照として使用し、発現変化を参照試料(「未処置」細胞)に対して正規化した。
【0188】
統計
・本プロジェクトにおけるすべてのアッセイについて、各データ点について3つの技術的複製が得られた。
・平均、および平均値の標準誤差(SEM)を、ExcelまたはGraphpad Prismを使用して計算した。
【0189】
すべてのグラフはGraphpad Prismを使用して生成された。
【0190】
補体成分3、補体成分5、MASP-2を最適にサイレンシングする可能性があるsiRNA配列の選択
【表1】
【表2】
【表3】
【表4-1】
【表4-2】
【表5-1】
【表5-2】
【実施例】
【0191】
実施例1
パイロットのインビボマウス実験を実施して、GalNAc抱合型湾曲抗マウスApoB siRNAの活性を、対照siRNA構築物と比較して評価した。ApoB湾曲siRNA(GUCAUCACACUGAAUACCAAU、配列番号149)の抱合型(GalNAc)および非抱合型(GalNAcを含まない)を、「材料および方法」の項にそれぞれ前述した、皮下(SC)および静脈内(IV)の経路によって、成体オス野生型(WT)C57BL/6マウスに投与した。
【0192】
血漿ApoBを、「投与詳細」で上述の通りの4つの処置群(群当たり5匹のマウス)で示される通り、0時間(siRNA構築物の投与前)およびsiRNA構築物の投与後96時間でELISA(前述)によって測定した。
【0193】
各治療群の5匹のマウスからの血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)を使用して、平均ApoB値±平均値の標準誤差(SEM)を計算した。GalNAc抱合型湾曲siRNAのSC投与後の96時間後の血漿ApoBレベルの変化を、対照(i)媒体生理食塩水、または(ii)湾曲のある非抱合型siRNAのいずれかを投与したマウスのレベルと比較した。対応のある両側T検定アルゴリズムを使用して統計解析を適用した。
【0194】
図1(a)を参照すると、GalNAc抱合型ApoB湾曲siRNAを用いた処置の96時間後のマウスの血漿ApoBレベル(マイクログラム/mL)は、生理食塩水を投与した対照投与群と比較された。対応のある両側T検定アルゴリズムを使用して統計解析を適用した。結果は、GalNAc抱合型湾曲siRNAで処置されたマウスの平均血漿ApoBレベルが、対照と比較して実質的に減少したことを示す。ただし、有意性が不足し(p=0.11)、最も可能性の高い理由は、サンプルサイズが小さいことと、対照動物間でのApoBレベルのばらつきが小さいことである。
【0195】
図1(b)を参照すると、GalNAc抱合型ApoB湾曲siRNAの投与後96時間で測定した血漿ApoBレベル(マイクログラム/ml)は、非抱合型(GalNAcを含まない)ApoB湾曲siRNAのsiRNA構築物で処置した対照群と比較された。対応のある両側T検定アルゴリズムを使用して統計解析を適用した。
【0196】
結果は、このGalNAc抱合型湾曲siRNA投与群の血漿ApoBレベルが、湾曲のある対照の非抱合型siRNAと比較して著しく減少したことを示す(P=0.00435832)。
【0197】
実施例2
PCSK9インビボサイレンシング
図2を参照すると、インビボでのマウス試験が実施され、GalNAc抱合型湾曲抗マウスPCSK9 siRNA(化合物H)のノックダウン活性が、その「非湾曲」siRNA対照(化合物A)と比較されて評価された(
図3を参照)。成体オス野生型(WT)C57BL/6マウスに、試験siRNA化合物を2mg/kgまたは10mg/kgのいずれかで、皮下(SC)注射により投与した(投与群当たり5つの複製)。5つの複製物の媒体(PBS)群は、陰性対照の役目を果たした。
【0198】
48時間後、マウスを犠牲にし、「材料および方法」の項に記載の通りに、RT-qPCRによるPCSK9 mRNAの定量のために肝臓全体を採取した。
【0199】
化合物H(2mg/kg)は、化合物Aおよび媒体対照と比較して、SC注射の48時間後の肝臓PCSK9 mRNAのおよそ50%ノックダウンを示す。対応のある両側T検定アルゴリズムを使用して統計解析を適用した。
【0200】
結果は、GalNAc抱合型PCSK9湾曲siRNA投与群(H)での肝臓PCSK9 mRNA血漿が、GalNAc抱合型PCSK9「非湾曲」siRNA投与群(A)および媒体(PBS)対照と比較して、非常に有意に減少したことを示す(p<0.001 対 対照)。
【0201】
実施例3
C3インビトロサイレンシング
表6を参照すると、C3を標的にする10個の「湾曲」siRNA(表5に列挙)のカスタムライブラリーを評価するために、HepG2細胞におけるRNAiスクリーニングが実施された。HepG2細胞は、10個のsiRNAで逆トランスフェクトされた。トランスフェクションの72時間後に、C3 mRNAレベルを二重RT-qPCRによって定量化し、C3 mRNAレベルをハウスキーピング参照遺伝子GAPDH mRNAのレベルに対して正規化した。
【0202】
幾つかのsiRNA配列(COMPC3-5、COMPC3-6, COMPC3-8, COMPC3-9、COMPC3-10)は、未処置対照と比較して、最高用量(25nM)でC3 mRNAの80%超のノックダウンを示し、最も性能の高い配列COMPC3-07は90%ノックダウンを示した。
【表6】
【0203】
実施例5
C5インビトロサイレンシング
表7を参照すると、C5を標的にする10個の「湾曲」siRNA(表5に列挙)のカスタムライブラリーを評価するために、HepG2細胞におけるRNAiスクリーニングが実施された。HepG2細胞は、10個のsiRNAで逆トランスフェクトされた。トランスフェクションの72時間後に、C5 mRNAレベルを二重RT-qPCRによって定量化し、C5 mRNAレベルをハウスキーピング参照遺伝子GAPDH mRNAのレベルに対して正規化した。siRNA配列COMPC5-09については、中程度のレベルのC5 mRNAサイレンシングを示し、未処置対照と比較して、最高用量(25nM)でほぼ50%のノックダウンを示す。siRNA配列COMPC5-01は、C5 mRNAのほぼ60%のノックダウンを示し、最も性能の高い配列COMPC5-10は、ほぼ70%のノックダウンを示した。
【表7】
【0204】
参考文献
Nair, J.K., Willoughby, J.L., Chan, A., Charisse, K., Alam, M.R., Wang, Q., Hoekstra, M., Kandasamy, P., Kel’in, A.V., Milstein, S. and Taneja, N., 2014. Multivalent N-acetylgalactosamine-conjugated siRNA localizes in hepatocytes and elicits robust RNAi-mediated gene silencing. Journal of the American Chemical Society, 136(49), pp.16958-16961.
Soutschek, J., Akinc, A., Bramlage, B., Charisse, K., Constien, R., Donoghue, M., Elbashir, S., Geick, A., Hadwiger, P., Harborth, J. and John, M., 2004. Therapeutic silencing of an endogenous gene by systemic administration of modified siRNAs. Nature, 432(7014), p.173.
【配列表】
【国際調査報告】