(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】老視に対する角膜片を作成するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/01 20060101AFI20231222BHJP
A61F 9/008 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
A61F9/01 110
A61F9/008 120E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533655
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 IB2021061505
(87)【国際公開番号】W WO2022130135
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】319008904
【氏名又は名称】アルコン インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100165995
【氏名又は名称】加藤 寿人
(72)【発明者】
【氏名】ゾルト ボル
(72)【発明者】
【氏名】マリオ クラフケ
(72)【発明者】
【氏名】ヨハンネス クラウゼ
(72)【発明者】
【氏名】キース ワタナベ
(57)【要約】
ある特定の実施形態において、眼の角膜において角膜片を作成するための眼科手術システムは、制御可能なコンポーネント(レーザ源及びスキャナを含む)と、コンピュータとを含んでいる。レーザ源はレーザビームを生成し、スキャナはレーザビームの焦点位置を向いている。コンピュータは、後方側及び前方側を有する角膜片のための角膜片デザインを特定する。後方側又は前方側のどちらか一方は、中央部分及び周辺部分を有する。角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成され、ここで主レンズレットは、正視を矯正するようデザインされている。角膜片デザインは、主レンズレットから副レンズレットを取り去ることによって形成され、ここで副レンズレットの除去は、中央部分を生じる。コンピュータは、制御可能なコンポーネントのうちの1つ以上に角膜片を作成するよう指示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の角膜において角膜片を作成するための眼科手術システムであって、
複数の制御可能なコンポーネントであって、
複数の超短パルスを有するレーザビームを生成するよう構成されるレーザ源であって、前記レーザビームの伝播方向はz軸を規定する、レーザ源と、
前記z軸に直交するxy平面内に、及び前記z軸に平行なz方向に前記レーザビームの焦点を向けるよう構成されるスキャナと、を備える制御可能なコンポーネントと、
コンピュータであって、
後方側及び前方側を有する前記角膜片のための角膜片デザインを特定することであって、前記後方側又は前記前方側のどちらか一方は、中央部分及び周辺部分を有し、前記角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成され、前記主レンズレットは、正視を矯正するようデザインされ、前記角膜片デザインは、前記主レンズレットから前記副レンズレットを取り去ることによって形成され、前記副レンズレットの前記除去は、前記中央部分を生じるよう、特定し、
前記制御可能なコンポーネントのうちの1つ以上に、前記角膜片を作成するよう、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記後方側を作成することと、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記前方側を作成することと、を実行するよう指示するよう構成されるコンピュータと、を備える、
眼科手術システム。
【請求項2】
前記中央部分は、前記角膜の表面に対して球状に凹状である、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項3】
前記副レンズレットは、1~4ミリメートルの直径を有する、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項4】
前記副レンズレットの中心は、5~50マイクロメートルの厚さを有する、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項5】
前記主レンズレットは、近視を治療するようデザインされ、前記主レンズレットの中心は、前記主レンズレットの周辺部よりも大きい厚さを有する、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項6】
前記主レンズレットは、遠視を治療するようデザインされ、前記主レンズレットの周辺部は、前記主レンズレットの中心よりも大きい厚さを有する、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項7】
前記主レンズレットは、前記副レンズレットの除去に適応する平行層を備える、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項8】
前記平行層は、前記副レンズレットの除去に適応し、中央緩衝ゾーンを生じる、請求項7に記載の眼科手術システム。
【請求項9】
前記コンピュータは、
前記副レンズレットの最も厚い部分を特定することと、
前記副レンズレットの前記最も厚い部分における前記主レンズレットの厚さを特定することと、
前記副レンズレットの除去を可能にするよう前記主レンズレットによって必要とされる追加の厚さを特定することと、
前記追加の厚さに従って前記平行層の前記厚さを計算することと、によって、
前記平行層の厚さを特定するよう構成される、請求項7に記載の眼科手術システム。
【請求項10】
前記副レンズレットの除去を可能にするよう前記主レンズレットによって必要とされる追加の厚さを特定することは、更に、
前記副レンズレットの除去を可能にするよう前記主レンズレットによって必要とされ、中央緩衝ゾーンを生じる前記追加の厚さを特定することを含む、
請求項9に記載の眼科手術システム。
【請求項11】
前記コンピュータは、更に、
前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成し、
前記レーザフォーカルスポットパターンを視軸のxy位置に対して整列させて、前記角膜片を作成するよう構成される、
請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項12】
前記コンピュータは、更に、
前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成することであって、前記レーザフォーカルスポットパターンの点は、前記中央部分の中心を表すよう、生成し、
前記眼の視軸のxy位置を特定し、
前記レーザフォーカルスポットパターンの前記点を前記視軸の前記xy位置に対して整列させて、前記角膜片を作成するよう構成される、
請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項13】
眼の角膜において角膜片を作成するための方法であって、
1つ以上の制御可能なコンポーネントのレーザ源によって、複数の超短パルスを有するレーザビームを生成することであって、前記レーザビームの伝播方向はz軸を規定する、ことと、
前記1つ以上の制御可能なコンポーネントのスキャナによって、前記z軸に直交するxy平面内に、及び前記z軸に平行なz方向に前記レーザビームの焦点を向けることと、
コンピュータによって、後方側及び前方側を有する前記角膜片のための角膜片デザインを特定することであって、前記後方側又は前記前方側のどちらか一方は、中央部分及び周辺部分を有し、前記角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成され、前記主レンズレットは、正視を矯正するようデザインされ、前記角膜片デザインは、前記主レンズレットから前記副レンズレットを取り去ることによって形成され、前記副レンズレットの前記除去は、前記中央部分を生じる、ことと、
前記コンピュータによって、前記制御可能なコンポーネントのうちの1つ以上に、前記角膜片を作成するよう、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記後方側を作成することと、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記前方側を作成することと、を実行するよう指示することと、を含む、
方法。
【請求項14】
前記中央部分は、前記角膜の表面に対して球状に凹状である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記副レンズレットは、1~4ミリメートルの直径を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記副レンズレットの中心は、5~50マイクロメートルの厚さを有する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記主レンズレットは、前記副レンズレットの除去に適応する平行層を備える、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
更に、
前記コンピュータによって、前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成することと、
前記コンピュータによって、前記レーザフォーカルスポットパターンを視軸のxy位置に対して整列させて、前記角膜片を作成することと、含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項19】
更に、
前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成することであって、前記レーザフォーカルスポットパターンの点は、前記中央部分の中心を表すことと、
前記眼の視軸のxy位置を特定することと、
前記レーザフォーカルスポットパターンの前記点を前記視軸の前記xy位置に対して整列させて、前記角膜片を作成することと、を含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項20】
眼の角膜において角膜片を作成するための眼科手術システムであって、
複数の制御可能なコンポーネントであって、
複数の超短パルスを有するレーザビームを生成するよう構成されるレーザ源であって、前記レーザビームの伝播方向はz軸を規定する、レーザ源と、
前記z軸に直交するxy平面内に、及び前記z軸に平行なz方向に前記レーザビームの焦点を向けるよう構成されるスキャナと、を備える制御可能なコンポーネントと、
コンピュータであって、
後方側及び前方側を有する前記角膜片のための角膜片デザインを特定することであって、前記後方側又は前記前方側のどちらか一方は、中央部分及び周辺部分を有し、前記角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成され、前記主レンズレットは、正視を矯正するようデザインされ、前記主レンズレットは、前記副レンズレットの除去に適応し、中央緩衝ゾーンを生じるよう平行層を備え、前記副レンズレットは、1~4ミリメートルの直径を有し、前記副レンズレットの中心は、5~50マイクロメートルの厚さを有し、前記角膜片デザインは、前記主レンズレットから前記副レンズレットを取り去ることによって形成され、前記副レンズレットの前記除去は、前記中央部分を生じ、前記中央部分は、前記角膜の表面に対して球状に凹状であるよう、特定し、
前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成し、
前記眼の視軸のxy位置を特定し、
前記レーザフォーカルスポットパターンを前記視軸の前記xy位置に対して整列させ、
前記制御可能なコンポーネントのうちの1つ以上に、前記角膜片を作成するよう、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記後方側を作成することと、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記前方側を作成することと、を実行するよう指示するよう構成されるコンピュータと、を備える、
眼科手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、眼科手術システムに関し、特に、老視に対する角膜片を作成するための眼科手術システムに関する。
【背景技術】
【0002】
眼の水晶体は、遠近両方の物体を見ることができるように、形状を変化させて光を網膜上に集束させる。若者の場合、レンズは柔軟で可撓性があり、容易に形状を変化させる。老視は、一般的には、水晶体がより硬くなり、容易に形状を変化させることができない40歳以降に生じる。これにより、眼は、近くの物体を見る場合に、網膜上ではなく後方に光を集束させ、近見視力を低下させる。
【0003】
世界中に約17億人の老視の人々がおり、米国の人口の約3分の1が老視である。老視に対する治療は、レンズ(例えば、眼鏡及びコンタクトレンズ)、インプラント(眼内レンズ(IOL)、強膜インプラント、及び角膜インレー)、並びに手術(角膜移植及び屈折矯正手術)を含む。しかし、現在の治療は、ある特定の状況において満足のいく結果を提供することができない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
ある特定の実施形態において、眼の角膜において角膜片を作成するための眼科手術システムは、制御可能なコンポーネント(レーザ源及びスキャナを含む)と、コンピュータとを含んでいる。レーザ源は、超短パルスを有するレーザビームを生成し、レーザビームの伝播方向はz軸を規定する。スキャナは、z軸に直交するxy平面内に、及びz軸に平行なz方向にレーザビームの焦点を向ける。コンピュータは、後方側及び前方側を有する角膜片のための角膜片デザインを特定する。後方側又は前方側のどちらか一方は、中央部分及び周辺部分を有する。角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成され、ここで主レンズレットは、正視を矯正するようデザインされている。角膜片デザインは、主レンズレットから副レンズレットを取り去ることによって形成され、ここで副レンズレットの除去は、中央部分を生じる。コンピュータは、制御可能なコンポーネントのうちの1つ以上に、角膜片を作成するよう、角膜片デザインに従って角膜片の後方側を作成することと、角膜片デザインに従って角膜片の前方側を作成することと、を実行するよう指示する。
【0005】
実施形態は、以下の特徴のいずれも含まなくてよいか、又は1つ、幾つか、若しくは全てを含んでいてもよい。
【0006】
中央部分は、角膜の表面に対して球状に凹状である。
【0007】
副レンズレットは、1~4ミリメートルの直径を有する。
【0008】
副レンズレットの中心は、5~50マイクロメートルの厚さを有する。
【0009】
主レンズレットは、近視を治療するようデザインされ、主レンズレットの中心は、主レンズレットの周辺部よりも大きな厚さを有する。
【0010】
主レンズレットは、遠視を治療するようデザインされ、主レンズレットの周辺部は、主レンズレットの中心よりも大きな厚さを有する。
【0011】
主レンズレットは、副レンズレットの除去に適応する平行層を備える。平行層は、副レンズレットの除去に適応してもよく、中央緩衝ゾーンを生じてもよい。コンピュータは、副レンズレットの最も厚い部分を特定することと、副レンズレットの最も厚い部分における主レンズレットの厚さを特定することと、副レンズレットの除去を可能にするよう主レンズレットによって必要とされる追加の厚さを特定することと、追加の厚さに従って平行層の厚さを計算することと、によって平行層の厚さを特定してもよい。コンピュータは、副レンズレットの除去を可能にするよう主レンズレットによって必要とされ、中央緩衝ゾーンを生じる追加の厚さを特定してもよい。
【0012】
コンピュータは、更に、角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成し、レーザフォーカルスポットパターンを視軸のxy位置に対して整列させて、角膜片を作成するよう構成される。
【0013】
コンピュータは、更に、角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成することであって、レーザフォーカルスポットパターンの点は、中央部分の中心を表すよう、生成し、眼の視軸のxy位置を特定し、レーザフォーカルスポットパターンの点を視軸のxy位置に対して整列させて、角膜片を作成するよう構成される。
【0014】
ある特定の実施形態において、眼の角膜において角膜片を作成するための方法は、1つ以上の制御可能なコンポーネントのレーザ源によって、複数の超短パルスを有するレーザビームを生成することであって、レーザビームの伝播方向はz軸を規定する、ことと、1つ以上の制御可能なコンポーネントのスキャナによって、z軸に直交するxy平面内に、及びz軸に平行なz方向にレーザビームの焦点を向けることと、コンピュータによって、後方側及び前方側を有する角膜片のための角膜片デザインを特定することであって、後方側又は前方側のどちらか一方は、中央部分及び周辺部分を有し、角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成され、主レンズレットは、正視を矯正するようデザインされ、角膜片デザインは、主レンズレットから副レンズレットを取り去ることによって形成され、副レンズレットの除去は、中央部分を生じる、ことと、を含む。方法は、更に、コンピュータによって、制御可能なコンポーネントのうちの1つ以上に、角膜片を作成するよう、角膜片デザインに従って角膜片の後方側を作成することと、角膜片デザインに従って角膜片の前方側を作成することと、を実行するよう指示することを含む。
【0015】
実施形態は、以下の特徴のいずれも含まなくてよいか、又は1つ、幾つか、若しくは全てを含んでいてもよい。
【0016】
中央部分は、角膜の表面に対して球状に凹状である。
【0017】
副レンズレットは、1~4ミリメートルの直径を有する。
【0018】
副レンズレットの中心は、5~50マイクロメートルの厚さを有する。
【0019】
主レンズレットは、副レンズレットの除去に適応する平行層を備える。
【0020】
方法は、更に、コンピュータによって、角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成することと、コンピュータによって、レーザフォーカルスポットパターンを視軸のxy位置に対して整列させて、角膜片を作成することと、含む。
【0021】
方法は、更に、角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成することであって、レーザフォーカルスポットパターンの点は、中央部分の中心を表すことと、眼の視軸のxy位置を特定することと、レーザフォーカルスポットパターンの点を視軸のxy位置に対して整列させて、角膜片を作成することと、を含む。
【0022】
ある特定の実施形態において、眼の角膜において角膜片を作成するための眼科手術システムは、制御可能なコンポーネント(レーザ源及びスキャナを含む)と、コンピュータとを含んでいる。レーザ源は、超短パルスを有するレーザビームを生成し、レーザビームの伝播方向はz軸を規定する。スキャナは、z軸に直交するxy平面内に、及びz軸に平行なz方向にレーザビームの焦点を向ける。コンピュータは、後方側及び前方側を有する角膜片のための角膜片デザインを特定する。後方側又は前方側のどちらか一方は、中央部分及び周辺部分を有する。角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成され、ここで主レンズレットは、正視を矯正するようデザインされている。主レンズレットは、副レンズレットの除去に対応し、中央緩衝ゾーンを生じるよう平行層を備える。副レンズレットは、1~4ミリメートルの直径を有し、副レンズレットの中心は、5~50マイクロメートルの厚さを有する。角膜片デザインは、主レンズレットから副レンズレットを取り去ることによって形成され、副レンズレットの除去は、角膜の表面に対して球状に凹状である中央部分を生じる。コンピュータは、角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成し、眼の視軸のxy位置を特定し、レーザフォーカルスポットパターンを視軸のxy位置に対して整列させる。コンピュータは、制御可能なコンポーネントのうちの1つ以上に、角膜片を作成するよう、角膜片デザインに従って角膜片の後方側を作成することと、角膜片デザインに従って角膜片の前方側を作成することと、を実行するよう指示することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1は、ある特定の実施形態による、老視を治療するよう角膜において角膜片を作成するよう構成される眼科手術システムの一実施例を示す。
【
図2A-2B】
図2A―2Bは、
図1のシステムにより作成され得る角膜片の一実施例を示す。
【
図3A-3C】
図3A-3Cは、
図1のシステムが近視性老視矯正のための角膜片を作成するために用いてもよい角膜片デザインの一実施例を示す。
【
図4A-4B】
図4A-4Bは、
図1のシステムが遠視性老視矯正のための角膜片を作成するために用いてもよい角膜片デザインの一実施例を示す。
【
図5A-5D】
図5A-5Dは、
図1のシステムが低ジオプトリー近視性老視矯正のための角膜片を作成するために用いてもよい角膜片デザインの一実施例を示す。
【
図6】
図6は、ある特定の実施形態による、
図1のシステムによって実行されてもよい角膜において角膜片を作成するための方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
ここで、説明及び図面を参照して、開示される装置、システム及び方法の例示的な実施形態を詳細に示す。説明及び図面は、網羅的であることも、図面に示され、説明で開示される特定の実施形態に特許請求の範囲を限定することも意図しない。図面は、可能な実施形態を表すが、図面は、必ずしも原寸に比例しておらず、実施形態をよりよく示すために特定の特徴を簡略化、誇張、削除又は部分的に分割している場合がある。
【0025】
一般に、眼科手術システムは、眼の角膜内に角膜片を作成する。角膜片は、近見視力のためにデザインされる中央部分と、遠見視力のための周辺部分とを有する。角膜片は、角膜を再形成するよう角膜から除去される。得られた角膜の中央部分は近見視力を提供し、周辺部分は遠見視力を提供する。
【0026】
図1は、ある特定の実施形態による、眼22の角膜において老視を治療する角膜片を作成するよう構成される眼科手術システム10の一実施例を示している。実施形態において、システム10のコンピュータは、角膜片のための角膜片デザインを特定し、ここで、角膜片の後方及び/又は前方側は、中央部分及び周辺部分を有する。角膜片デザインは、主レンズレットから副レンズレットを取り去ることによって形成される。主レンズレットは正視を矯正するようデザインされている。副レンズレットの除去は、近見視力矯正を提供する凹状中央部分をもたらす。コンピュータは、システム10の1つ以上の制御可能なコンポーネントに、角膜片デザインに従って角膜片を作成するよう命令する。
【0027】
図示の実施例において、システム10は、図示のように結合されるレーザ装置15、患者インターフェース20、カメラ38、及び制御コンピュータ30を含む。レーザ装置15は、図示のように結合されるレーザ源12、スキャナ16、1つ以上の光学要素17、及び/又は集束対物レンズ18等の制御可能なコンポーネントを含む。コンピュータ30は、図示のように結合されるロジック31と、(コンピュータプログラム34を格納する)メモリ32と、ディスプレイ36とを含む。患者インターフェース20は、図示のように結合される接触部分24(当接面26を有する)及びスリーブ28を含む。
【0028】
動作の概要の一実施例によれば、レーザ源12は、超短パルスを有するレーザビームを生成し、ここでレーザビームの伝播方向は、z軸及び/又はz方向を規定する。スキャナ16は、z軸に直交するxy平面内にレーザビームの焦点を向ける。対物レンズ18は、眼22の角膜に向かって焦点を合わせる。コンピュータ30は、主レンズレット及び副レンズレットを用いて角膜片のための角膜片デザインを特定する。コンピュータ30はまた、システム10の1つ以上の制御可能なコンポーネントに、角膜片デザインに従って角膜片を作成するよう命令する。
【0029】
システム10の部品に目を向けると、レーザ源12は、超短パルスを有するレーザビームを生成する。超短パルスとは、ピコ秒、フェムト秒、又はアト秒等のオーダーのナノ秒未満の持続時間を有する光パルスを指す。レーザビームは、300~1500ナノメートル(nm)の範囲の波長、例えば、300~650、650~1050、1050~1250、及び/又は1250~1500nm、例えば340~350nmの範囲の波長、例えば345nm±1nm等の任意の適切な波長を有していてもよい。レーザビームの焦点は、組織(例えば、角膜)においてレーザ誘起光破壊(laser-induced optical breakdown、LIOB)を生じさせて、組織において光破壊を生じさせることができる。レーザビームは、正確な光破壊を生じさせるために正確に集束され得、このことにより他の組織の不必要な破壊を低減又は回避し得る。
【0030】
スキャナ16は、レーザビームの焦点を長手方向及び横方向に向ける。長手方向とは、レーザビーム伝播方向、即ちz方向を意味する。スキャナ16は、任意の適切な仕方でレーザビームを長手方向に向けてもよい。例えば、スキャナ16は、長手方向に調節可能なレンズ、可変屈折力レンズ、又は焦点のz位置を制御することができる変形可能なミラーを備えてもよい。横方向とは、ビーム伝播方向に直交する方向、即ちx、y方向を意味する。スキャナ16は、任意の適切な方法でレーザビームを横方向に向けることができる。例えば、スキャナ16は、互いに垂直な軸に対してチルトすることができる、一対のガルバノメトリック駆動型スキャナミラーを含んでもよい。別の実施例として、スキャナ16は、レーザビームを電気光学的に操縦できる電気光学結晶を含んでもよい。
【0031】
1つ(又は複数)の光学要素17は、レーザビームを集束対物レンズ18の方に向ける。光学要素17は、レーザビームに作用する(例えば、透過、反射、屈折、回折、コリメート、調整、成形、集束、変調、及び/又は作用する)ことができる。光学要素の例には、レンズ、プリズム、ミラー、回折光学要素(DOE)、ホログラフィック光学要素(HOE)、及び空間光変調器(SLM)が含まれる。この例では、光学要素17はミラーである。集束対物レンズ18は、患者インターフェース20を介して眼22のポイントの方にレーザビームの焦点を集束させる。この例では、集束対物レンズ18は対物レンズ、例えばfシータ対物レンズである。
【0032】
患者インターフェース20は、眼22の角膜とインターフェースして、眼22をレーザ装置15に結合する。この例では、患者インターフェース20は、接触部分24に結合されたスリーブ28を有する。スリーブ28は、集束対物レンズ18に取り外し可能に結合する。接触部分24は、レーザビームに対して半透明又は透明であってもよく、角膜と接合する当接面26を有する。当接面26は、任意の好適な形状、例えば、平面、凸面、又は凹面を有していてもよい。
【0033】
カメラ38は、眼22内に作成されたマーカの動きを含む、眼22の動きの画像を記録する。カメラ38の例には、ビデオ、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)、又は視線追跡カメラが含まれる。カメラ38は、眼22の記録された画像を表す画像データをコンピュータ30に出力する。コンピュータ30は、例えば、角膜片の作成を容易にするために、画像データを用いてもよい。
【0034】
コンピュータ30は、角膜片のための角膜片デザインを特定する。幾つかの実施形態において、コンピュータ30は、主レンズレット及び副レンズレットを特定し、主レンズレットから副レンズレットを取り去ることによって、角膜片デザインを特定してもよい。これらの実施形態において、コンピュータ30は、後方側及び前方側を有する角膜片のための角膜片デザインを特定する。前方側及び/又は後方側は、中央部分及び周辺部分を有する。角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成される。主レンズレットは正視を矯正するようデザインされている。角膜片デザインは、主レンズレットから副レンズレットを取り去ることによって形成される。コンピュータはまた、システム10の1つ以上の制御可能なコンポーネントに、以下を実行して角膜片を作成するよう命令する:角膜片デザインに従って角膜片の後方側を作成すること、及び、角膜片デザインに従って角膜片の前方側を作成すること。
【0035】
他の実施形態において、コンピュータ30は、メモリ32からデザインを検索することによって角膜片デザインを特定してもよく、ここでデザインは、上で説明したように主及び副レンズレットから特定されていた。
【0036】
幾つかの実施形態において、コンピュータ30は、角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成し、及び/又はスポットパターンを眼の軸(例えば、光軸又は視軸)に対して位置合わせして、角膜片を作成する。コンピュータ30は、角膜片デザインによって説明される角膜片に対応する表面を計算し、次いで、表面をもたらすレーザスポットを特定することによって、3次元スポットパターンを生成してもよい。ある特定の場合において、レーザフォーカルスポットパターンの特定の点は、中央部分の中心を表している。コンピュータ30は、軸の位置を識別する測定値又は座標(例えば、xy座標)を受信し、次いで、軸においてスポットパターンを整列させることによって、眼の軸に対してスポットパターンを整列させてもよい。ある特定の実施形態において、コンピュータ30は、米国特許出願第63/010293号明細書(2020年4月15日出願)及び同第63/033327号明細書(2020年6月2日出願)において説明される方法に従って、視軸のxy位置を特定してもよい。ある特定の場合において、コンピュータ30は、中央部分の中心を表す特定の点を視軸のxy位置と整列させてもよい。
【0037】
コンピュータ30は、角膜片を生成するよう角膜組織を光切断する(コンピュータプログラム34に格納されてもよい)命令に従って、制御可能なコンポーネント(例えば、レーザ源12、スキャナ16、光学要素17、及び/又は集束対物レンズ18)を制御する。幾つかの実施形態において、コンピュータ30は、システム10の制御可能なコンポーネントに、角膜片デザインに従って角膜片の後方側を作成し、角膜片デザインに従って角膜片の前方側を作成するよう命令する。
【0038】
図2A及び2Bは、
図1のシステム10により作成され得る角膜片50の一実施例を示している。
図2Aは、角膜52内に作成される角膜片50を示しており、
図2Bは、角膜片50の除去後の角膜52を示している。角膜片50は、前方側56及び後方側58を有する。前方側56及び/又は後方側58は、中央部分55及び周辺部分57を有してもよい。中央部分55は、角膜片50の中心を略中心とし、周辺部分57は、中央部分55から角膜片50の縁部まで延在する。ある特定の実施形態において、中央部分55は近見視力矯正を提供し、周辺部分57は遠見視力矯正を提供する。
【0039】
角膜片50は、中央でより薄く、そのため、角膜片50の除去により、中央部分55に突出部が生じる。除去後、上皮は、中央部分55の上でより薄くなる可能性がある。この上皮の薄化は、「上皮代償作用」と呼ばれる。上皮代償作用は、角膜の前方側を滑らかにして良好な光学的品質を維持することに役立つ上皮の固有の特性である。上皮の薄化は、一般に、中央突出部の高さを低減させるが、それを無くすわけではない。
【0040】
中央部分55のデザインは、主レンズレットから副レンズレットを除去することによって特定される。ある特定の実施形態において、副レンズレットの除去により、角膜表面に対して凹状であり、球状に凹状であってもよい中央部分55が生じる。凹状中央部分55は、眼22の視野の中央部分における近見視力矯正を提供する。
【0041】
主及び副レンズレットは、任意の適切な大きさ及び/又は形状を有していてもよく、コンピュータ30は、任意の適切な方法で主及び副レンズレットの寸法を特定してもよい。ある特定の実施形態において、コンピュータ30は、屈折矯正を説明する情報を受信し、情報から寸法を特定してもよい。実施形態において、コンピュータ30は、遠見視力矯正を説明する情報から主レンズレットの寸法を計算してもよい。ある特定の実施例において、主レンズレットの直径は4~11ミリメートル(例えば、6~9ミリメートル)であり、後方側58の手術前の深さは90~300マイクロメートルである。ある特定の実施例において、14~18マイクロメートルの厚さは、約1ジオプトリーの矯正に対応し、例えば、14~18マイクロメートルは、-1ジオプトリーの矯正に対応し、30~36マイクロメートルは、-2ジオプトリーの矯正に対応する、等である。厚さの位置(例えば、角膜片の中心又は周辺部)は、矯正が近視のためであるか遠視のためであるかによって決まり、
図3A~5Dにおいて説明する。
【0042】
ある特定の実施形態において、主レンズレットは、近視又は遠視を正視に矯正するようデザインされてもよい。正視は、無限遠にある遠くの物体が、中立又は弛緩状態にある眼の水晶体により鮮明に焦点が合っている視力状態である。正視は、+1~-1ジオプトリーの範囲であってもよい。近視及び遠視矯正のための主レンズレットの実施例を、
図3A~5Dにおいて説明している。
【0043】
実施形態において、コンピュータ30は、近見視力矯正を説明する情報から副レンズレットの寸法を計算してもよい。ある特定の実施例において、副レンズレットの直径は1~4ミリメートル(例えば、1~2、2~3、及び/又は3~4ミリメートル)であり、副レンズレットの中心は5~50マイクロメートル(例えば、5~10、10~20、20~30、30~40、及び/又は40~50マイクロメートル)の厚さを有する。一般に、より大きい中心厚さを有する副レンズレットは、より大きい老視矯正を提供する。一実施例において、球形形状、2ミリメートルの直径、及び30マイクロメートルの中心厚さを有する副レンズレットは、2.5~4.0ジオプトリーの度数を追加する。
【0044】
図3A~3Cは、
図1のシステム10が近視性老視矯正のための角膜片50を作成するために用いられてもよい角膜片デザイン53(53a)の一実施例を示している。
図3Aは、角膜片50の本体を形成する主レンズレット54(54a)を示している。図示の実施例において、主レンズレット54aは近視を矯正する。従って、主レンズレット54aの前方側56aは、主レンズレット54aの中心が周辺部よりも厚くなるように、主レンズレット54aの後方側58aよりも大きな曲率を有している。ある特定の実施例において、中心における14~18マイクロメートルの厚さは、約1ジオプトリーの矯正に対応する。
【0045】
図3Bは、最終的な角膜片デザイン53を生じるよう主レンズレット52から除去される副レンズレット60(60a)を示している。図示の実施例において、副レンズレットの直径dは1~4ミリメートルであり、副レンズレットの中心は5~50マイクロメートルの厚さtを有する。
図3Cは、凹状の中央部分62a(即ち、角膜表面に対して凹状)を生じる、主レンズレット52aから副レンズレット60aを除去した後の最終的な角膜片デザイン53aを示している。
【0046】
図4A及び4Bは、
図1のシステム10が遠視老視矯正のための角膜片50を作成するために用いられてもよい角膜片デザイン53(53b)の一実施例を示している。図示の実施例において、主レンズレット54bは遠視を矯正する。従って、主レンズレット54bの後方側58bは、主レンズレット54aの周辺部が中心よりも厚くなるように、主レンズレット54bの前方側56bよりも大きな曲率を有している。「周辺部」は、主レンズレット54bの縁部、並びに縁部に近接する範囲、例えば縁部から5ミリメートル以内の領域を包含してもよい。ある特定の実施例において、中心と周辺部の縁部との間の14~18マイクロメートルの厚さの差は、約1ジオプトリーの矯正に対応する。
【0047】
図4Bは、最終的な角膜片デザイン53bを生じるよう主レンズレット52bから除去される副レンズレット60(60b)を示している。主レンズレット52bから副レンズレット60bの除去により、凹状中央部分62b(即ち、角膜表面に対して凹状)が得られる。
【0048】
図5A~5Dは、
図1のシステム10が低ジオプトリー近視性老視矯正のための角膜片50を作成するために用いられてもよい角膜片デザイン53(53c)の一実施例を示している。
図5A及び5Bは、例えば-3ジオプトリー未満の低ジオプトリー矯正のための主レンズレット54cと、除去される副レンズレット60cとを示している。低ジオプトリーの主レンズレット54cは、レンズレット54cの中心でさえ、極めて薄い可能性がある。幾つかの場合において、低ジオプトリーの主レンズレット54cの中心は、除去される副レンズレット60cの厚さtよりも薄い可能性があるか、又は除去後に十分な残留緩衝ゾーンを許容しない可能性がある。緩衝ゾーンは、例えば、角膜片50を引き裂くことなく角膜片50の除去を可能にする十分な厚さの(例えば、5又は10マイクロメートルよりも大きい)領域であってもよい。中央緩衝ゾーンは、角膜片50の中央領域に位置する緩衝ゾーンであってもよい。
【0049】
図5Cは、低ジオプトリーの主レンズレット54cの後方側58cに追加される平行層64cを示している。平行層64cは、厚さ及び任意に緩衝ゾーンを提供して、副レンズレット60cの効率的な除去を可能にする略均一な厚さの層であり、実質的に屈折力を有していない。ある特定の実施形態において、平行層64cの前方側及び後方側は、平行であってもよい。実施形態において、平行層64cの厚さは、以下によって特定されてもよい:(1)副レンズレット60cの最も厚い部分を特定すること、(2)この部分における主レンズレット54cの厚さを特定すること、(3)少なくとも、例えば、5又は10マイクロメートルの任意の緩衝ゾーンをもたらす副レンズレットの除去を可能にするよう、主レンズレット54cによって必要とされる追加の厚さを計算すること。
【0050】
図5Dは、平行層64cが主レンズレット54cに追加され、副レンズレット60cが主レンズレット54cから除去された後の最終的な角膜片デザイン53cを示している。平行層64cは、残留緩衝ゾーン59を残しながら、副レンズレット60cの除去を可能にする。
【0051】
図6は、ある特定の実施形態による、
図1のシステム10によって実行されてもよい眼の角膜において角膜片を作成するための方法を示している。方法はステップ110において開始され、ここでコンピュータ30は、角膜片を作成するための外科手術を説明する外科的入力を受信する。外科的入力は、コンピュータ30が角膜片を説明する角膜片デザインを検索又は計算するために用いることができる情報を含んでいてもよい。外科的入力は、患者の眼、例えば、球面誤差、円柱誤差、円柱誤差の軸、追加度数(読書距離補正のための球面誤差)、及び/又は視軸のxy位置を説明してもよい。
【0052】
コンピュータ30は、ステップ112において、外科的入力から角膜片デザインを特定する。角膜片デザインは、ステップ113において格納されてもよいか、又は計算される必要があってもよい。角膜片デザインがステップ113において格納されている場合、方法はステップ114に進み、ここでコンピュータ30は格納されている角膜片デザインを検索して取り出す。次いで、方法はステップ126に進み、ここでコンピュータ30は角膜片の作成を開始する。
【0053】
ステップ113において格納された角膜片デザインがない場合、方法はステップ116から124に進み、ここでコンピュータ30は角膜片デザインを計算する。コンピュータ30は、ステップ116において、主レンズレットを特定する。ある特定の場合において、主レンズレットは、近視を治療するようデザインされてもよく、主レンズレットの前方側は、主レンズレットの後方側よりも大きい曲率を有する。他の場合において、主レンズレットは、遠視を治療するようデザインされてもよく、主レンズレットの後方側は、主レンズレットの前方側よりも大きい曲率を有する。コンピュータ30は、ステップ117において、副レンズレットを特定する。副レンズレットは、任意の適切な形状及び/又は大きさ有していてもよい。ある特定の実施例において、副レンズレットの直径は1~4ミリメートルであり、副レンズレットの中心は5~50マイクロメートルの厚さを有する。
【0054】
ステップ118において、主レンズレットは、副レンズレットの除去に適応することができない薄い角膜片を生じ、残留緩衝ゾーンを生じる可能性がある。ステップ118において、主レンズレットが薄い角膜片を生じる場合、方法はステップ120に進み、ここでコンピュータ30は、平行層を主レンズレットに追加し、次いでステップ124に進む。ステップ118において、主レンズレットが薄い角膜片を生じない場合、方法は直接ステップ124に進む。コンピュータ30は、ステップ124において、主レンズレットから副レンズレットを取り去って、角膜片デザインを特定する。
【0055】
ステップ126において、コンピュータ30は、角膜片デザインのためのスポットパターンのxy位置を眼の視軸と整列させる。ある特定の実施形態において、コンピュータ30は、角膜片デザインによって説明される角膜片に対応する表面を計算し、次いで、表面をもたらすレーザスポットの座標を特定することによって、ポットパターンを生成してもよい。ある特定の実施形態において、コンピュータ30は、軸の位置を識別する測定値又は座標を受信し、次いで、スポットパターンを軸と整列させることによって、眼(例えば、光学又は視覚)の軸に対してスポットパターンを整列させてもよい。
【0056】
コンピュータ30は、ステップ128において、制御可能なコンポーネントに、角膜片の後方側を作成するよう指示する。コンピュータ30は、ステップ130において、制御可能なコンポーネントに、角膜片の前方側を作成するよう指示する。その後、方法が終了する。
【0057】
本明細書に開示のシステム及び装置の(制御コンピュータ等の)コンポーネントは、インターフェース、ロジック、及び/又はメモリを含んでいてもよく、これらのうちの任意のものは、コンピュータハードウェア及び/又はソフトウェアを含んでいてもよい。インターフェースは、コンポーネントへの入力を受信し、且つ/又はコンポーネントから出力を送信することができ、通常、例えばソフトウェア、ハードウェア、周辺機器、ユーザ及びこれらの組み合わせ間で情報を交換するために使用される。ユーザインターフェース(例えば、グラフィカルユーザインターフェース(GUI))は、ユーザがコンピュータと対話するために利用され得るインターフェースの一種である。ユーザインターフェースの例には、ディスプレイ、タッチスクリーン、キーボード、マウス、ジェスチャセンサ、マイク及びスピーカが含まれる。
【0058】
ロジックは、コンポーネントの動作を実行することができる。ロジックは、データを処理する、例えば命令を実行して入力から出力を生成する1つ以上の電子デバイスを含んでいてもよい。そのような電子デバイスの例には、コンピュータ、プロセッサ、マイクロプロセッサ(例えば、中央処理装置(CPU))及びコンピュータチップが含まれる。ロジックは、動作を実行するために電子デバイスによって実行され得る命令をエンコードするコンピュータソフトウェアを含み得る。コンピュータソフトウェアの例には、コンピュータプログラム、アプリケーション及びオペレーションシステムが含まれる。
【0059】
メモリは、情報を格納することができ、有形のコンピュータ読取可能及び/又はコンピュータ実行可能なストレージ媒体を備えていてもよい。メモリの例には、コンピュータメモリ(例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)又は読み出し専用メモリ(ROM))、マスストレージ媒体(例えば、ハードディスク)、リムーバブルストレージ媒体(例えば、コンパクトディスク(CD)又はデジタルビデオ若しくは多用途ディスク(DVD))、データベース、ネットワークストレージ(例えば、サーバ)及び/又は他のコンピュータ可読媒体が含まれる。特定の実施形態は、コンピュータソフトウェアを用いてエンコードされたメモリを対象とすることができる。
【0060】
特定の実施形態に関して本開示を説明してきたが、実施形態の修正形態(例えば、変更形態、置換形態、追加形態、省略形態及び/又は他の修正形態)が当業者に明らかになるであろう。従って、本発明の範囲から逸脱することなく、実施形態に対する修正が行われてもよい。例えば、本明細書で開示されたシステム及び装置に対する修正が行われてもよい。当業者に明らかであるように、システム及び装置のコンポーネントは、統合若しくは分離され得るか、又はシステム及び装置の動作は、より多い、より少ない若しくは他のコンポーネントによって実行され得る。別の例として、本明細書で開示された方法に対する修正形態がなされ得る。当業者に明らかであるように、方法は、より多い、より少ない又は他のステップを含み得、ステップは、任意の適当な順序で実行され得る。
【0061】
特許庁及び読者が請求項を解釈するのを助けるために、出願人は、特定の請求項において「のための手段(means for)」又は「のためのステップ(step for)」という単語が明示的に使用されていない限り、請求項又は請求項要素のいずれもが、35U.S.C.§112(f)を想起することを意図していないことを言及しておく。請求項内の他の用語(例えば、「機構」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「コンポーネント」、「要素」、「部材」、「装置」、「機械」、「システム」、「プロセッサ」、又は「コントローラ」)の使用は、出願人により、関連技術における当業者に知られている構造を指すと理解され、35U.S.C.§112(f)を想起することを意図していない。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
特許庁及び読者が請求項を解釈するのを助けるために、出願人は、特定の請求項において「のための手段(means for)」又は「のためのステップ(step for)」という単語が明示的に使用されていない限り、請求項又は請求項要素のいずれもが、35U.S.C.§112(f)を想起することを意図していないことを言及しておく。請求項内の他の用語(例えば、「機構」、「モジュール」、「デバイス」、「ユニット」、「コンポーネント」、「要素」、「部材」、「装置」、「機械」、「システム」、「プロセッサ」、又は「コントローラ」)の使用は、出願人により、関連技術における当業者に知られている構造を指すと理解され、35U.S.C.§112(f)を想起することを意図していない。
本願は、以下の発明を包含する。
[発明1]
眼の角膜において角膜片を作成するための眼科手術システムであって、
複数の制御可能なコンポーネントであって、
複数の超短パルスを有するレーザビームを生成するよう構成されるレーザ源であって、前記レーザビームの伝播方向はz軸を規定する、レーザ源と、
前記z軸に直交するxy平面内に、及び前記z軸に平行なz方向に前記レーザビームの焦点を向けるよう構成されるスキャナと、を備える制御可能なコンポーネントと、
コンピュータであって、
後方側及び前方側を有する前記角膜片のための角膜片デザインを特定することであって、前記後方側又は前記前方側のどちらか一方は、中央部分及び周辺部分を有し、前記角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成され、前記主レンズレットは、正視を矯正するようデザインされ、前記角膜片デザインは、前記主レンズレットから前記副レンズレットを取り去ることによって形成され、前記副レンズレットの前記除去は、前記中央部分を生じるよう、特定し、
前記制御可能なコンポーネントのうちの1つ以上に、前記角膜片を作成するよう、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記後方側を作成することと、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記前方側を作成することと、を実行するよう指示するよう構成されるコンピュータと、を備える、
眼科手術システム。
[発明2]
前記中央部分は、前記角膜の表面に対して球状に凹状である、発明1に記載の眼科手術システム。
[発明3]
前記副レンズレットは、1~4ミリメートルの直径を有する、発明1に記載の眼科手術システム。
[発明4]
前記副レンズレットの中心は、5~50マイクロメートルの厚さを有する、発明1に記載の眼科手術システム。
[発明5]
前記主レンズレットは、近視を治療するようデザインされ、前記主レンズレットの中心は、前記主レンズレットの周辺部よりも大きい厚さを有する、発明1に記載の眼科手術システム。
[発明6]
前記主レンズレットは、遠視を治療するようデザインされ、前記主レンズレットの周辺部は、前記主レンズレットの中心よりも大きい厚さを有する、発明1に記載の眼科手術システム。
[発明7]
前記主レンズレットは、前記副レンズレットの除去に適応する平行層を備える、発明1に記載の眼科手術システム。
[発明8]
前記平行層は、前記副レンズレットの除去に適応し、中央緩衝ゾーンを生じる、発明7に記載の眼科手術システム。
[発明9]
前記コンピュータは、
前記副レンズレットの最も厚い部分を特定することと、
前記副レンズレットの前記最も厚い部分における前記主レンズレットの厚さを特定することと、
前記副レンズレットの除去を可能にするよう前記主レンズレットによって必要とされる追加の厚さを特定することと、
前記追加の厚さに従って前記平行層の前記厚さを計算することと、によって、
前記平行層の厚さを特定するよう構成される、発明7に記載の眼科手術システム。
[発明10]
前記副レンズレットの除去を可能にするよう前記主レンズレットによって必要とされる追加の厚さを特定することは、更に、
前記副レンズレットの除去を可能にするよう前記主レンズレットによって必要とされ、中央緩衝ゾーンを生じる前記追加の厚さを特定することを含む、
発明9に記載の眼科手術システム。
[発明11]
前記コンピュータは、更に、
前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成し、
前記レーザフォーカルスポットパターンを視軸のxy位置に対して整列させて、前記角膜片を作成するよう構成される、
発明1に記載の眼科手術システム。
[発明12]
前記コンピュータは、更に、
前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成することであって、前記レーザフォーカルスポットパターンの点は、前記中央部分の中心を表すよう、生成し、
前記眼の視軸のxy位置を特定し、
前記レーザフォーカルスポットパターンの前記点を前記視軸の前記xy位置に対して整列させて、前記角膜片を作成するよう構成される、
発明1に記載の眼科手術システム。
[発明13]
眼の角膜において角膜片を作成するための方法であって、
1つ以上の制御可能なコンポーネントのレーザ源によって、複数の超短パルスを有するレーザビームを生成することであって、前記レーザビームの伝播方向はz軸を規定する、ことと、
前記1つ以上の制御可能なコンポーネントのスキャナによって、前記z軸に直交するxy平面内に、及び前記z軸に平行なz方向に前記レーザビームの焦点を向けることと、
コンピュータによって、後方側及び前方側を有する前記角膜片のための角膜片デザインを特定することであって、前記後方側又は前記前方側のどちらか一方は、中央部分及び周辺部分を有し、前記角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成され、前記主レンズレットは、正視を矯正するようデザインされ、前記角膜片デザインは、前記主レンズレットから前記副レンズレットを取り去ることによって形成され、前記副レンズレットの前記除去は、前記中央部分を生じる、ことと、
前記コンピュータによって、前記制御可能なコンポーネントのうちの1つ以上に、前記角膜片を作成するよう、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記後方側を作成することと、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記前方側を作成することと、を実行するよう指示することと、を含む、
方法。
[発明14]
前記中央部分は、前記角膜の表面に対して球状に凹状である、発明13に記載の方法。
[発明15]
前記副レンズレットは、1~4ミリメートルの直径を有する、発明13に記載の方法。
[発明16]
前記副レンズレットの中心は、5~50マイクロメートルの厚さを有する、発明13に記載の方法。
[発明17]
前記主レンズレットは、前記副レンズレットの除去に適応する平行層を備える、発明13に記載の方法。
[発明18]
更に、
前記コンピュータによって、前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成することと、
前記コンピュータによって、前記レーザフォーカルスポットパターンを視軸のxy位置に対して整列させて、前記角膜片を作成することと、含む、
発明13に記載の方法。
[発明19]
更に、
前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成することであって、前記レーザフォーカルスポットパターンの点は、前記中央部分の中心を表すことと、
前記眼の視軸のxy位置を特定することと、
前記レーザフォーカルスポットパターンの前記点を前記視軸の前記xy位置に対して整列させて、前記角膜片を作成することと、を含む、
発明13に記載の方法。
[発明20]
眼の角膜において角膜片を作成するための眼科手術システムであって、
複数の制御可能なコンポーネントであって、
複数の超短パルスを有するレーザビームを生成するよう構成されるレーザ源であって、前記レーザビームの伝播方向はz軸を規定する、レーザ源と、
前記z軸に直交するxy平面内に、及び前記z軸に平行なz方向に前記レーザビームの焦点を向けるよう構成されるスキャナと、を備える制御可能なコンポーネントと、
コンピュータであって、
後方側及び前方側を有する前記角膜片のための角膜片デザインを特定することであって、前記後方側又は前記前方側のどちらか一方は、中央部分及び周辺部分を有し、前記角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成され、前記主レンズレットは、正視を矯正するようデザインされ、前記主レンズレットは、前記副レンズレットの除去に適応し、中央緩衝ゾーンを生じるよう平行層を備え、前記副レンズレットは、1~4ミリメートルの直径を有し、前記副レンズレットの中心は、5~50マイクロメートルの厚さを有し、前記角膜片デザインは、前記主レンズレットから前記副レンズレットを取り去ることによって形成され、前記副レンズレットの前記除去は、前記中央部分を生じ、前記中央部分は、前記角膜の表面に対して球状に凹状であるよう、特定し、
前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成し、
前記眼の視軸のxy位置を特定し、
前記レーザフォーカルスポットパターンを前記視軸の前記xy位置に対して整列させ、
前記制御可能なコンポーネントのうちの1つ以上に、前記角膜片を作成するよう、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記後方側を作成することと、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記前方側を作成することと、を実行するよう指示するよう構成されるコンピュータと、を備える、
眼科手術システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の角膜において角膜片を作成するための眼科手術システムであって、
複数の制御可能なコンポーネントであって、
複数の超短パルスを有するレーザビームを生成するよう構成されるレーザ源であって、前記レーザビームの伝播方向はz軸を規定する、レーザ源と、
前記z軸に直交するxy平面内に、及び前記z軸に平行なz方向に前記レーザビームの焦点を向けるよう構成されるスキャナと、を備える制御可能なコンポーネントと、
コンピュータであって、
後方側及び前方側を有する前記角膜片のための角膜片デザインを特定することであって、前記後方側又は前記前方側のどちらか一方は、中央部分及び周辺部分を有し、前記角膜片デザインは、主レンズレット及び副レンズレットを用いて形成され、前記主レンズレットは、正視を矯正するようデザインされ、前記角膜片デザインは、前記主レンズレットから前記副レンズレットを取り去ることによって形成され、前記副レンズレットの前記除去は、前記中央部分を生じるよう、特定し、
前記制御可能なコンポーネントのうちの1つ以上に、前記角膜片を作成するよう、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記後方側を作成することと、
前記角膜片デザインに従って前記角膜片の前記前方側を作成することと、を実行するよう指示するよう構成されるコンピュータと、を備える、
眼科手術システム。
【請求項2】
前記中央部分は、前記角膜の表面に対して球状に凹状である、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項3】
前記副レンズレットは、1~4ミリメートルの直径を有する、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項4】
前記副レンズレットの中心は、5~50マイクロメートルの厚さを有する、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項5】
前記主レンズレットは、近視を治療するようデザインされ、前記主レンズレットの中心は、前記主レンズレットの周辺部よりも大きい厚さを有する、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項6】
前記主レンズレットは、遠視を治療するようデザインされ、前記主レンズレットの周辺部は、前記主レンズレットの中心よりも大きい厚さを有する、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項7】
前記主レンズレットは、前記副レンズレットの除去に適応する平行層を備える、請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項8】
前記平行層は、前記副レンズレットの除去に適応し、中央緩衝ゾーンを生じる、請求項7に記載の眼科手術システム。
【請求項9】
前記コンピュータは、
前記副レンズレットの最も厚い部分を特定することと、
前記副レンズレットの前記最も厚い部分における前記主レンズレットの厚さを特定することと、
前記副レンズレットの除去を可能にするよう前記主レンズレットによって必要とされる追加の厚さを特定することと、
前記追加の厚さに従って前記平行層の前記厚さを計算することと、によって、
前記平行層の厚さを特定するよう構成される、請求項7に記載の眼科手術システム。
【請求項10】
前記副レンズレットの除去を可能にするよう前記主レンズレットによって必要とされる追加の厚さを特定することは、更に、
前記副レンズレットの除去を可能にするよう前記主レンズレットによって必要とされ、中央緩衝ゾーンを生じる前記追加の厚さを特定することを含む、
請求項9に記載の眼科手術システム。
【請求項11】
前記コンピュータは、更に、
前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成し、
前記レーザフォーカルスポットパターンを視軸のxy位置に対して整列させて、前記角膜片を作成するよう構成される、
請求項1に記載の眼科手術システム。
【請求項12】
前記コンピュータは、更に、
前記角膜片デザインに対応するレーザフォーカルスポットパターンを生成することであって、前記レーザフォーカルスポットパターンの点は、前記中央部分の中心を表すよう、生成し、
前記眼の視軸のxy位置を特定し、
前記レーザフォーカルスポットパターンの前記点を前記視軸の前記xy位置に対して整列させて、前記角膜片を作成するよう構成される、
請求項1に記載の眼科手術システム。
【国際調査報告】