(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】層間接着性が強化された3Dプリンティング
(51)【国際特許分類】
B29C 64/314 20170101AFI20231222BHJP
C08L 101/00 20060101ALI20231222BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20231222BHJP
C08L 51/00 20060101ALI20231222BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231222BHJP
C08L 67/04 20060101ALI20231222BHJP
C08L 27/06 20060101ALI20231222BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20231222BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20231222BHJP
B29C 64/118 20170101ALI20231222BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231222BHJP
B33Y 70/10 20200101ALI20231222BHJP
B29K 105/06 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
B29C64/314
C08L101/00
C08L33/04
C08L51/00
C08K3/013
C08L67/04
C08L27/06
B33Y70/00
B33Y80/00
B29C64/118
B33Y10/00
B33Y70/10
B29K105:06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533764
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 US2021061511
(87)【国際公開番号】W WO2022132441
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ネルカー、マノージュ
(72)【発明者】
【氏名】ケッツ、リチャード ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ドレイク、イアン ジェイ.
【テーマコード(参考)】
4F213
4J002
【Fターム(参考)】
4F213AA13
4F213AA15
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(57)【要約】
三次元プリンティング用フィラメントは、熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂100当たり0.1~20部(phr)の範囲の量のアクリルポリマー添加剤と、を含む。フィラメントから調製された、3Dプリンティングされた物品、及び三次元プリンティング用フィラメントを調製するためのプロセスも開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三次元プリンティング用フィラメントであって、
熱可塑性樹脂と、
前記熱可塑性樹脂100当たり0.1~20部(phr)の範囲の量のアクリルポリマー添加剤と、
を含む、フィラメント。
【請求項2】
前記アクリルポリマー添加剤が、アルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーの反応生成物であるアクリルコポリマーである、請求項1に記載のフィラメント。
【請求項3】
前記アクリルポリマー添加剤が、メチルメタクリレートモノマーと、エチル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートモノマーから選択される少なくとも1つの追加のモノマーとの反応生成物であるアクリルコポリマーを含む、請求項1又は2に記載のフィラメント。
【請求項4】
前記アクリルポリマー添加剤が、メチルメタクリルモノマー、ブチルアクリレートモノマー、並びにエチルアクリレート及びブチルメタクリレートモノマーから選択される少なくとも1つの追加のモノマーの反応生成物であるアクリルコポリマーを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のフィラメント。
【請求項5】
前記アクリルポリマー添加剤が、コアシェルアクリル添加剤を含む、請求項1に記載のフィラメント。
【請求項6】
前記コアが、アルキル(メタ)アクリレートモノマーと、架橋モノマー、グラフト結合性モノマー、及びこれらの混合物から選択されるモノマーとの反応生成物を含み、前記シェルが、アルキル(メタ)アクリレートモノマーと1つ以上の連鎖移動剤との反応生成物を含む少なくとも1つの層を含む、請求項5に記載のフィラメント。
【請求項7】
前記コアシェルアクリル添加剤が、メタクリレートブタジエンスチレンコアシェルポリマーを含む、請求項5に記載のフィラメント。
【請求項8】
前記メタクリレートブタジエンスチレンコアシェルポリマーの前記シェルが、メチルメタクリレートを含む、請求項7に記載のフィラメント。
【請求項9】
炭素繊維、木質繊維、金属粉末、及び黒鉛から選択される充填剤を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のフィラメント。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂が、ポリ乳酸(PLA)、塩化ポリビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレントリメチレンテレフタレート(PETT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(ナイロン)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、及びこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載のフィラメント。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が、ポリ塩化ビニル及びポリ乳酸からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載のフィラメント。
【請求項12】
前記アクリルポリマー添加剤が、0.5~10phrの範囲の量で存在する、請求項1~11のいずれか一項に記載のフィラメント。
【請求項13】
1.0~5.0mmの範囲の平均直径を有する、請求項1~12のいずれか一項に記載のフィラメント。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のフィラメントから調製された、3Dプリンティングされた物品。
【請求項15】
三次元プリンティング用フィラメントを調製するプロセスであって、
熱可塑性樹脂及びアクリルポリマー添加剤を組み合わせてブレンドを形成することであって、前記アクリルポリマー添加剤が、前記熱可塑性樹脂100当たり0.1~20部(phr)の範囲の量で存在する、ことと、
前記ブレンドをフィラメントの形態で押出すことと、
を含む、プロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的には、3Dプリンティングに関し、より具体的には、層間接着性が強化された3Dフィラメントに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元(3D)プリンティングは、三次元物体を迅速に作製するための強力なツールとなっている。産業におけるラピッドプロトタイピング部品から家庭で3Dデザインを作成する愛好家まで、3Dプリンティングは、複雑な物体を作製するための有用かつ柔軟なツールである。3Dプリンティングはまた、機能的使用のための部品を生産するためにも使用されている。これらの部品は、複雑な形状を有していたり、3Dプリンティングが提供できる高精度を必要としていたりする場合がある。
【0003】
3Dプリンティングの1つの一般的な形態は、溶融堆積モデリングであり、この形態では、ポリマーフィラメントを、加熱ノズルに通して供給してフィラメントを加熱し、3D物体を形成するために予め形成された層上にポリマーを付加的に堆積させることができるように、ポリマーを押出す。
【0004】
現在の3Dプリンティング技術に関する問題の1つは、層間接着性が低いことである。3Dプリンティングの付加的な性質のため、予め堆積させた材料に材料が良好に接着することが重要である。層間接着は、ポリマー融合によって駆動される。
【0005】
典型的な熱可塑性樹脂では、ポリマー溶融は、溶融加工中の温度及び剪断によって駆動される。典型的には、高剪断になると、融合が速くなる。
【0006】
3Dプリンティングプロセスにおいて、剪断は取るに足りない要素である。剪断が欠如すると、堆積させた材料の層間の接着が不十分になる場合がある。次いで、接着が不十分であると、3Dプリンティングされた物体の構造破壊が生じる場合がある。不十分な層間接着はまた、材料が3D物体内で適切に接着できないことにより、収縮及び反りを引き起こす場合もある。
【0007】
したがって、層間接着が改善された3Dプリンティングフィラメントを提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、熱可塑性樹脂と、熱可塑性樹脂100当たり0.1~20部(phr)の範囲の量のアクリルポリマー添加剤と、を含む、三次元プリンティング用フィラメントを提供する。
【0009】
フィラメントから調製された、3Dプリンティングされた物品も開示される。
【0010】
本発明は更に、熱可塑性樹脂及びアクリルポリマー添加剤を組み合わせてブレンドを形成することであって、当該アクリルポリマー添加剤が0.1~20phrの範囲の量で存在する、ことと、当該ブレンドをフィラメントの形態で押出すことと、を含む、三次元プリンティング用フィラメントを調製するためのプロセスに関する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、例えば溶融堆積モデリング(FDM)等の3Dプリンティング用のフィラメントを提供する。フィラメントは、以下に記載するように、優れた強度及び層間接着を有する。3Dプリンティング用のフィラメントを調製するプロセスも提供され、以下に説明される。
【0012】
フィラメントは、熱可塑性樹脂及びアクリルポリマー添加剤を含む。
【0013】
本発明に従って使用することができる熱可塑性プラスチック樹脂の例としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリ塩化ビニル(PVC)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレントリメチレンテレフタレート(PETT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアミド(ナイロン)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリスチレン(PS)、高耐衝撃性ポリスチレン(HIPS)、及びこれらのブレンドが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、熱可塑性樹脂は、ポリカーボネートとABS、PET、又はPBTとのブレンド等の熱可塑性樹脂のブレンドを含んでもよい。好ましくは、熱可塑性樹脂は、PLA又はPVCから選択される。より好ましくは、熱可塑性樹脂は、PVCである。
【0014】
アクリルポリマー添加剤は、アクリルホモポリマー又はコポリマーを含んでもよい。例えば、アクリルコポリマーは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーから選択される1つ以上のモノマーの反応生成物であり得る。アルキル(メタ)アクリレートモノマーの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシルアクリレート、及びイソオクチルアクリレート等の、1~12個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐アルキル基を含むアルキル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、アルキル(メタ)アクリレートモノマーは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、及びブチル(メタ)アクリレートモノマーから選択されるモノマーを含む。
【0015】
好ましくは、アクリルポリマー添加剤は、アクリルポリマー添加剤の総重量に基づいて少なくとも25重量%の、メチルメタクリレートモノマーに由来する単位を含む。より好ましくは、アクリルポリマー添加剤は、アクリルポリマー添加剤の総重量に基づいて少なくとも30重量%、更により好ましくは少なくとも35重量%、更により好ましくは少なくとも40重量%の、メチルメタクリレートモノマーに由来する単位を含む。例えば、アクリルポリマー添加剤は、アクリルポリマー添加剤の総重量に基づいて少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、又は少なくとも80重量%の、メチルメタクリレートモノマーに由来する単位を含んでもよい。
【0016】
例示的なアクリルポリマー添加剤としては、メチルメタクリレートと、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、及びブチルメタクリレートから選択される少なくとも1つの追加のモノマーとのコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、アクリルポリマー添加剤は、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、及びブチルメタクリレートのターポリマー、又はメチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びブチルメタクリレートのターポリマー等のターポリマーを含んでもよい。
【0017】
アクリルコポリマー添加剤は、例えば、スチレンモノマー又は官能性モノマー等の追加のモノマーに由来する単位を更に含み得る。本明細書で使用される場合、「官能性モノマー」は、アクリルコポリマーが組成物中の熱可塑性樹脂又は他の成分に対して共有結合又は水素結合を形成することを可能にする官能基等の追加の官能基を含むモノマーである。官能性モノマーの例としては、ヒドロキシル基を有するモノマーが挙げられる。
【0018】
アクリルポリマー添加剤は、メチルメタクリレートモノマー、ブチルアクリレートモノマー、スチレンモノマー、及びこれらの組み合わせから選択されるモノマーの反応生成物を含み得る。例えば、アクリルポリマー添加剤は、メチルメタクリレートモノマー及びブチルアクリレートモノマーの組み合わせの反応生成物、又はメチルメタクリレートモノマー、ブチルアクリレートモノマー、及びスチレンモノマーの組み合わせからの反応生成物であり得る。
【0019】
アクリルポリマー添加剤は、直鎖ポリマーであっても分岐ポリマーであってもよい。あるいは、アクリルポリマー添加剤は、架橋成分を含んでもよく、その場合、架橋成分がアクリルポリマー添加剤の一部又は全部のいずれかを構成する。例えば、アクリルポリマー添加剤は、架橋されたコア及びアクリルホモポリマー又はコポリマーを含むシェルを有する、コアシェルアクリル添加剤を含んでもよい。
【0020】
架橋されたコアは、アルキル(メタ)アクリレートからなる群から選択される1つ以上のモノマーの、1つ以上の架橋性モノマー、グラフト結合性モノマー、又はこれらの組み合わせとの反応生成物であり得る。例えば、アルキル(メタ)アクリレートモノマーに由来する単位の量は、コアの95~99.9重量%の範囲であり得、架橋性モノマー及び/又はグラフト結合性モノマーに由来する単位の量は、0.1~5重量%の範囲であり得る。
【0021】
コアシェルアクリル添加剤のシェルは、例えばアルキル(メタ)アクリレート、スチレンモノマー、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される1つ以上のモノマーに由来する単位を含み得る、1つ以上の層を含んでもよい。シェルの1つ以上の層はまた、1つ以上の連鎖移動剤に由来する単位を含んでもよい。
【0022】
例えば、コアシェルアクリル添加剤のシェルは、98.5~100重量%の、アルキル(メタ)アクリレート、スチレンモノマー、及びこれらの2つ以上の組み合わせからなる群から選択される1つ以上のモノマーに由来する単位と、0~1.5重量%の、1つ以上の連鎖移動剤に由来する単位と、を各々が含む1つ以上の層を含んでもよい。
【0023】
架橋されたコア又はシェルで使用されるアルキル(メタ)アクリレートのアルキルは、1~12個の炭素原子を有する直鎖状又は分岐アルキル基であり得る。例示的なモノマーとしては、ブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、及びイソ-オクチルアクリレートが挙げられる。
【0024】
コアシェルアクリル添加剤の架橋されたコア又はシェルで有用な架橋性及び/又はグラフト結合性モノマーの例としては、例えば、ブタンジオールジアクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジアリルマレエート、アリルメタクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルフタレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、これらのトリメチロールプロパントリメタクリレートブレンド、及びこれらの2つ以上の組み合わせが挙げられ得る。
【0025】
コアシェルアクリル添加剤は、多段乳化重合等の任意の従来のプロセスによって製造され得る。
【0026】
アクリルポリマー添加剤が直鎖又は分岐ポリマーである場合、アクリルポリマーは、少なくとも1,000,000g/molの重量平均分子量、例えば、少なくとも1,250,000g/mol又は少なくとも1,500,000g/molの重量平均分子量を有し得る。好ましくは、アクリルコポリマーは、7,500,000g/mol未満、例えば、6,000,000g/mol未満又は5,000,000g/mol未満等の重量平均分子量を有する。アクリルポリマー添加剤が架橋成分を含む場合、重量平均分子量はより低くてもよく、例えば、1,000,000g/mol未満又は750,000g/mol未満等であってよい。
【0027】
アクリルポリマー添加剤は、熱可塑性樹脂100当たり0.1~20部、すなわち、熱可塑性樹脂100重量部当たり0.1~20重量部のアクリルポリマー添加剤の範囲の量でフィラメント中に存在する。好ましくは、アクリルポリマー添加剤は、少なくとも0.25phr、例えば少なくとも0.5phr又は1phr等の量で存在する。好ましくは、アクリルポリマー添加剤は、15phr未満又は10phr未満の量で存在する。
【0028】
フィラメントは、3Dプリンティングに好適な直径を有し得る。例えば、3Dプリンティング用の一般的なフィラメントサイズとしては、1.75mm及び2.85mmが挙げられる。また、他のサイズを使用してもよい。
【0029】
概して言えば、アクリルポリマー添加剤によって、様々な利点を実現することが可能になる。3Dプリンティングプロセスにおいてフィラメントを使用する場合、アクリルポリマー添加剤は、プリンティングされた物品の層間接着を改善することができる。アクリルポリマー添加剤はまた、改善された収縮及び反り等の追加の利点を提供することができる。
【0030】
組成物は、例えば、安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、耐衝撃性改質剤、可塑剤、紫外線剤、難燃剤、着色剤(例えば、顔料、染料)、又は充填剤等の追加の成分を更に含んでもよい。例えば、フィラメントは、炭素繊維、天然繊維(例えば、木質繊維、竹繊維、セルロース)、鉱物充填剤(例えば、炭酸カルシウム、雲母)、金属粉末、及び黒鉛から選択される充填剤を更に含んでもよい。これらの充填剤は、フィラメント及び/又はプリンティングされた物品に追加の特性を付与し得る。例えば、炭素繊維は、追加の強度を付与することができ、金属粉末及び/又は黒鉛は、材料を伝導性にするために使用することができる。これらの成分は、当該技術分野において既知であり、従来の慣行に従って使用され得る。
【0031】
3Dプリンティング用のフィラメントを調製するためのプロセスも提供される。方法は、熱可塑性樹脂及びアクリルポリマー添加剤を組み合わせてブレンドを形成することと、当該ブレンドをフィラメントの形態で押出すことと、を含む。
【0032】
熱可塑性樹脂及びアクリルポリマー添加剤を組み合わせる工程は、例えば、着色剤/染料、充填剤、又は他の成分(例えば、安定剤、酸化防止剤、潤滑剤、耐衝撃性改質剤、可塑剤、紫外線剤、難燃剤)等の追加の成分を熱可塑性樹脂及びアクリルポリマー添加剤と組み合わせることを更に含んでもよい。
【0033】
組成物の成分は、任意の順序で、任意の好適な様式により組み合わせてよい。例えば、熱可塑性ポリマー添加剤及びアクリルポリマー添加剤を乾燥成分としてブレンドし、次いで、押出してフィラメントを形成してよい。あるいは、アクリルポリマー添加剤を粉末として溶融熱可塑性樹脂に添加してもよい。
【0034】
フィラメントを調製するためのブレンドされた組成物は、例えば、好適な混合装置を用いて、混合、加熱、又は剪断下で形成され得る。例えば、組成物は、攪拌機及び/又は混合ブレード、又は実験室2本ロールミルを備えた容器内で形成され得る。容器は、例えば、バンバリー型、シグマ(Z)ブレード型、又はキャビティ移動型ミキサー等の内部ミキサーであってよい。あるいは又は更に、組成物は、任意の押出機、例えば、回転及び/若しくは往復(コニーダー)スクリューを備えた単軸押出機、並びに接線方向で又は部分的/完全に噛み合って整列され得、共回転若しくは逆回転方向のいずれかに回転する2つ以上のスクリューを備える多軸装置であり得る押出機内で形成され得るか、又はそれによって加工され得る。あるいは、組成物を形成するために、円錐形押出機を使用してもよい。次いで、ブレンドされた組成物を、適切な形状のダイを通して押出して、本明細書に記載のフィラメントを形成してよい。プロセスはまた、フィラメントが押出された後にフィラメントを冷却することを含んでもよい。
【0035】
本発明は例示的な様式で記載されており、使用されている用語は、限定というよりむしろ説明語の性質であるように意図されることを理解されたい。明らかに、本発明の多くの修正及び変更が上記教示から可能である。本発明は、具体的に記載した方法のとおり以外の方法でも実施され得る。
【実施例】
【0036】
実施例では、PVC樹脂(Formosa Plasticsから入手可能なFORMOLON(登録商標)614)を様々なレベルの2つの異なるアクリルポリマー添加剤とブレンドすることによって、組成物を調製した。重量平均分子量が1,250,000g/molを超える、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、及びブチルメタクリレートのターポリマーを含む第1のアクリルポリマー添加剤(APA1)をそれぞれ2phr及び4phrブレンドすることによって、実施例1及び2を調製した。第1のアクリルポリマー添加剤(APA1)は、約80重量%のメチルメタクリレートを含んでいた。メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びブチルメタクリレートのターポリマーを含み、当該メチルメタクリレートが約85重量%の主成分であり、重量平均分子量が1,500,000g/molを超える第2のアクリルポリマー添加剤(APA2)をそれぞれ2phr及び4phrブレンドすることによって、実施例3及び4を調製した。実施例の組成を以下の表1に示し、表中、全ての量はPVC樹脂100部に対する重量部で示される。アクリルポリマー添加剤を含まない同様の組成物を比較例1として調製した。
【表1】
【0037】
処方表1に示した材料を逐次添加することによって、例示的なポリ塩化ビニル処方物を調製した。室温でPVC粉末をGunther Papenmeier/Welexブレンダーに添加し、出力を15Aに上げ、125°Fで安定剤TM181を添加し、150°Fで潤滑剤パッケージを添加し、170°Fでアクリル加工助剤を添加し、190°FでTiO2を、195°FでCaCO3を添加することによって、乾燥ブレンドを調製した。最後に、粉末乾燥ブレンドを室温まで冷却した。
【0038】
組成物の層間接着を試験するために、直径4.763mmのダイを用いて各組成物を押出して、スパイラルコイルを形成した。スパイラルコイルを形成するために、押出物(すなわち、フィラメント)を直径1.5インチのロッドに巻き付けた。Tinius Olsen汎用試験機を用いて層間接着を測定した。スパイラルコイルの2つの端部を汎用試験機の2つのグリップに固定し、次いで、スパイラルコイルの層が分離するか又はサンプルが破損するまで二軸に引っ張った。アクリルポリマー添加剤を含むサンプルは分離しなかったが、破損し、一方、アクリルポリマー添加剤を含まないサンプルは、層が分離したことにより破壊した。層が分離し、サンプルが破損するのに必要な荷重を表2に示す。表2に示すように、本発明による実施例は、比較例1と比較して層間接着が実質的に改善された。
【表2】
【0039】
用語の定義及び使用
【0040】
本明細書の文脈により別段の指示がない限り、全ての量、比率、及びパーセンテージは重量によるものであり、全ての試験方法は、本開示の出願日現在のものである。冠詞「a」、「an」、及び「the」は各々、1以上を指す。添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」を表現するために、かつそこに記載される特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、添付の特許請求の範囲の範疇の特定の実施形態間で異なり得ることを理解されたい。様々な実施形態の特定の特徴又は態様を説明するための本明細書に依拠する任意のマーカッシュグループに関して、全ての他のマーカッシュメンバーから独立したそれぞれのマーカッシュグループの各メンバーから異なる、特別な、かつ/又は予期しない結果が得られる可能性がある。マーカッシュ群の各々の要素は、個々にかつ又は組み合わされて依拠とされ得、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に適切な根拠を提供し得る。
【0041】
更に、本発明の様々な実施形態を説明する際に依拠とされる任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は一部の値が明記されていなくても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分等に描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9」の範囲は、更に、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に描かれ得、これらは、個々に及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、そして添付の特許請求の範囲内の具体的な実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。更に、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」「未満」「以下」等に関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲等を本質的に含み、そして各々の部分範囲は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、そして十分なサポートを提供している。最終的に、開示した範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。例えば、「1~9」の範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば4.1を含み、これは、添付の特許請求の範囲内の特定の実施形態に、依拠され得、そして十分なサポートを提供している。
【0042】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、組成物を構成する材料、並びに組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を含む。
【0043】
「含む」という用語及びその派生語は、それらが本明細書において開示されているかどうかにかかわらず、任意の追加の成分、工程、又は手順の存在を排除することを意図するものではない。あらゆる疑いを回避するために、「含む」という用語の使用を通じて本明細書において特許請求される全ての組成物は、矛盾する記述がない限り、ポリマー性であるかどうかにかかわらず、任意の追加の添加剤、補助剤、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲からあらゆる他の成分、工程、又は手順を除外する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる成分、工程、又は手順を除外する。
【0044】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類であろうと異なる種類であろうと、モノマーを重合させることによって調製されたポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれている場合もあるという理解の下に、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために用いられる)、及びコポリマーという用語(1種を超えるポリマーから調製されたポリマーを指すために使用される)を包含する。微量の不純物が、ポリマーに及び/又はポリマー内に組み込まれる場合がある。
【0045】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」、及び同様の用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。そのようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。そのようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。そのようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当該技術分野で既知の任意の他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含有しても、そうでなくてもよい。ブレンドは、積層体ではないが、積層体の1つ以上の層が、ブレンドを含有し得る。
【国際調査報告】