(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】物品
(51)【国際特許分類】
B29C 65/48 20060101AFI20231222BHJP
B32B 27/32 20060101ALI20231222BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20231222BHJP
B65D 30/02 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
B29C65/48
B32B27/32
B32B27/00 D
B65D30/02 BRH
B65D30/02 BSF
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533958
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-02
(86)【国際出願番号】 US2021058621
(87)【国際公開番号】W WO2022125247
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】ウォーカー、ジェームズ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】エフラー、ローレンス ジェイ.ジュニア
(72)【発明者】
【氏名】デワスターレ、スダンワ ディ.
(72)【発明者】
【氏名】マリーン、アミラ エイ.
(72)【発明者】
【氏名】セカラン、マネシュ ナドゥッパランビル
(72)【発明者】
【氏名】マーティン、ジル エム.
(72)【発明者】
【氏名】チェン、マイ
(72)【発明者】
【氏名】グオ、インゾン
(72)【発明者】
【氏名】ガンディ、クリストファー アイ.
【テーマコード(参考)】
3E064
4F100
4F211
【Fターム(参考)】
3E064BA26
3E064BB03
3E064BC19
4F100AK03
4F100AK03A
4F100AK04
4F100AK04A
4F100BA01
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4F211TA03
4F211TC01
4F211TD11
4F211TN42
4F211TW21
(57)【要約】
(a)少なくとも1つのポリオレフィンポリマーと、(b)リサイクル特性を有する水性接着剤組成物であって、水性接着剤組成物のリサイクル特性が、水性接着剤組成物を有する物品が再加工される場合に、水性接着剤組成物を有する物品が、水性接着剤組成物を有する物品と同じ方法で再加工される、水性接着剤組成物を有しない対照物品と比較して、40%未満の性能の低下した変化を示すようなものである、水性接着剤組成物と、の組み合わせを含む、リサイクル特性を有する物品、(a)少なくとも1つの第1のポリマーフィルム層と、(β)上記水性積層用接着剤組成物の少なくとも1つの層と、を含むリサイクル可能な積層構造体、及び上記リサイクル可能な積層構造体を製造するためのプロセス。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクル特性を有する第1の物品であって、
(a)少なくとも1つのポリオレフィンポリマーと、
(b)リサイクル特性を有する水性接着剤組成物であって、前記水性接着剤組成物の前記リサイクル特性が、前記水性接着剤組成物を有する前記物品が再加工される場合に、前記水性接着剤組成物を有する前記物品が、前記水性接着剤組成物を有する前記物品と同じ方法で再加工される、前記水性接着剤組成物を有しない対照物品と比較して、40パーセント未満の性能の低下した変化を示すようなものである、水性接着剤組成物と、の組み合わせを含む、第1の物品。
【請求項2】
前記ポリオレフィンポリマーが、ポリエチレンである、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記水性積層用接着剤組成物が、アクリル系接着剤組成物である、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記水性アクリル系接着剤が、水分散性アクリレート架橋剤、イソシアネート架橋剤、及びこれらの混合物を含む、請求項3に記載の物品。
【請求項5】
前記第1の物品が、単層又は多層フィルム、多層積層体、及び包装材料又は製品からなる群から選択される、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
請求項5に記載の第1の物品のいずれか1つから作製された、第2の物品。
【請求項7】
前記第2の物品が、ペレット、単層又は多層フィルム、多層積層体、及び包装材料又は製品からなる群から選択される、請求項6に記載の第2の物品。
【請求項8】
リサイクル特性を有する物品を生成するためのプロセスであって、
(a)少なくとも1つのポリオレフィンポリマーと、
(b)リサイクル特性を有する水性接着剤組成物であって、前記水性接着剤組成物の前記リサイクル特性が、前記水性接着剤組成物を有する前記物品が再加工される場合に、前記水性接着剤組成物を有する前記物品が、前記水性接着剤組成物を有する前記物品と同じ方法で再加工される、前記水性接着剤組成物を有しない対照物品と比較して、40パーセント未満の性能の低下した変化を示すようなものである、水性接着剤組成物と、を一緒に接触させる、プロセス。
【請求項9】
リサイクル特性を有するフィルム構造体であって、
(α)少なくとも1つの第1のポリマーフィルム層と、
(β)リサイクル特性を有する少なくとも1つの層の水性接着剤組成物であって、前記水性接着剤組成物の前記リサイクル特性が、前記水性接着剤組成物を有する前記物品が再加工される場合に、前記水性接着剤組成物を有する前記物品が、前記水性接着剤組成物を有する前記物品と同じ方法で再加工される、前記水性接着剤組成物を有しない対照物品と比較して、40パーセント未満の性能の低下した変化を示すようなものである、少なくとも1つの層の水性接着剤組成物と、を含み、水性積層用接着剤組成物が、前記少なくとも第1のポリマーフィルム層と相溶性であり、前記水性積層用接着剤組成物が、前記少なくとも1つの第1のポリマーフィルム層の表面上に配置されている、フィルム構造体。
【請求項10】
リサイクル特性を有する多層積層構造体であって、
(i)少なくとも1つの第1のポリマーフィルム層と、
(ii)少なくとも1つの第2のポリマーフィルム層と、
(iii)リサイクル特性を有する水性積層用接着剤組成物の少なくとも1つの層であって、前記水性接着剤組成物の前記リサイクル特性が、前記水性接着剤組成物を有する前記物品が再加工される場合に、前記水性接着剤組成物を有する前記物品が、前記水性接着剤組成物を有する前記物品と同じ方法で再加工される、前記水性接着剤組成物を有しない対照物品と比較して、30パーセント未満の性能の低下した変化を示すようなものである、水性積層用接着剤組成物の少なくとも1つの層と、を含み、前記水性積層用接着剤組成物が、前記第1及び第2のフィルム層と相溶性であり、前記水性積層用接着剤組成物の前記層が、前記第1のフィルム層と前記第2のフィルム層とを一緒に結合するために、前記第1のフィルム層及び前記第2のフィルム層の層のうちの少なくとも1つの表面上に配置されている、多層積層構造体。
【請求項11】
多層積層構造体を生成するためのプロセスであって、
(I)(i)少なくとも1つの第1のポリマー基材フィルム層と、(ii)少なくとも1つの第2のポリマー基材フィルム層と、(iii)前記第1のフィルム層を前記第2のフィルム層に接着させるための、前記第1及び第2の基材フィルム層と相溶性である水性積層用接着剤組成物の少なくとも1つの層と、を提供する工程であって、前記接着剤組成物が、リサイクル特性を有し、前記接着剤組成物の前記リサイクル特性が、前記接着剤組成物を有する物品が再加工される場合に、前記接着剤組成物を有する前記物品が、前記接着剤組成物を有する前記物品と同じ方法で再加工される、前記接着剤組成物を有しない対照物品と比較して、30パーセント未満の性能の低下した変化を示すようなものである、提供する工程と、
(II)工程(I)からの前記水性積層用接着剤組成物を、工程(I)の前記第1及び第2の基材層の前記層のうちの少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に塗布して、前記第1のフィルム層と前記第2のフィルム層とを一緒に結合するために、前記第1のフィルム層と前記第2のフィルム層との間に配置された前記接着剤組成物層の層を形成する工程と、
(III)多層積層構造体を形成するのに十分なように、前記接着剤層とともに前記第1及び第2の基材フィルム層を組み合わせる工程と、
(IV)工程(III)の前記多層積層構造体を硬化させて、硬化積層体を形成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項12】
請求項11に記載の多層積層構造体から作製された、包装物品。
【請求項13】
請求項12に記載の包装物品から、再加工された第2の物品を生成するためのプロセスであって、
(A)請求項12に記載の包装物品を提供する工程と、
(B)工程(A)からの前記包装物品を断片化して、所定のサイズの複数の断片を生成する工程と、
(C)工程(B)からの前記複数の断片をペレット化して、所定のサイズの複数のペレットを形成する工程と、
(D)工程(C)からの前記ペレットを処理して、再加工された第2の物品を形成する工程と、を含む、プロセス。
【請求項14】
請求項13に記載のプロセスによって作製された、前記再加工された第2の物品から生成された、第3の物品。
【請求項15】
前記第3の物品が、ペレット、単層又は多層フィルム、多層積層体、及び包装材料又は製品からなる群から選択される、請求項14に記載の第3の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品に関し、より具体的には、本発明は、ポリオレフィンポリマーとリサイクル特性を有する水性積層用接着剤組成物との組み合わせを含む、物品に関する。
【背景技術】
【0002】
これまで、プラスチック製品、例えば包装産業用の包装材料の使用は、世界的に著しく増加している。残念ながら、プラスチック製品に対する需要の増加は、プラスチック製品が消費者によって使用された後、プラスチック製品は消費者によって廃棄されるため、プラスチック廃棄物の著しい増加をもたらし、プラスチック廃棄物は世界中の多くの国において環境に悪影響を及ぼす。プラスチック廃棄物問題を軽減又は低減するために、製造元は、元のプラスチック製品がその本来の目的のために使用された後に、他の後続のプラスチック製品にリサイクルされ、再加工され得るプラスチック製品を生成しようと試みてきた。しかしながら、全てリサイクル可能な材料から作製されたプラスチック製品の開発は、限られた成功しか収めていない。
【0003】
典型的には、積層フィルム構造体などのプラスチック製品は、様々な異なる材料の組み合わせから作製された複合構造体であり、そのいくつかはリサイクル可能であり、いくつかはリサイクル可能ではない。例えば、国際公開第201927527号は、ポリエチレンなどの全てリサイクル可能な材料から作製されているリサイクル可能な積層フィルム構造体を開示している。しかしながら、国際公開第201927527号の積層フィルム構造体はまた、バリア接着剤を利用しており、国際公開第201927527号のバリア接着剤は、リサイクル可能であるか又はリサイクル特性を有するものとして開示されていない。したがって、国際公開第201927527号は、その積層フィルム構造体自体がリサイクル可能であると考えられることを開示しているが、国際公開第201927527号は、バリア接着剤がリサイクル特性を有すること、又はバリア接着剤がリサイクル可能であるための基準を満たすことを開示していない。2つのポリマーフィルム基材を一緒に接着するために使用される従来の接着剤は、通常、ポリマーフィルム基材と相溶性でないことが周知である。したがって、2つの非相溶性成分層又は非相溶性接着剤を含有する既知のフィルム構造体は、得られるリサイクル材料が、リサイクル材料から次の物品を製造するプロセスにおいて不十分にしか機能しないので、「そのまま」リサイクルすることができない。更に、フィルム基材層成分は互いに相溶性ではないので、異なる基材及び異なる接着剤を含有するそのような2層(又はそれ以上)多成分フィルム構造体がコンバータによってリサイクルされることが望まれる場合、コンバータは、層/接着剤をリサイクルする前に層を互いに分離する必要があり、これはリサイクルプロセスを複雑にし、非効率的にし、高価にする。
【0004】
したがって、(1)少なくとも1つのポリオレフィンポリマーと、(2)リサイクル特性を有し、ポリオレフィンポリマーと相溶性である水性積層用接着剤組成物と、の組み合わせを含む第1のプラスチック物品を提供して、第1の物品が、その本来の使用後に再加工(リサイクル)されて、様々な用途のための第2のプラスチック物品として有用であるのに十分な性能特性を有する後続の第2のプラスチック製品を形成することができるようにすることが望ましい。その結果、環境に優しい第1のプラスチック物品を廃棄し、地球規模のプラスチック廃棄物を増加させることを回避することができる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、(a)フィルムの形態のポリマーなどの少なくとも1つのポリオレフィンポリマーと、(b)リサイクル特性を有する水性接着剤組成物と、の組み合わせを含む物品を対象とする。いくつかの実施形態では、水性接着剤組成物のリサイクル特性は、上記物品を水性接着剤組成物で再加工(リサイクル)して、再加工(リサイクル)物品を形成することによって判定され、次いで、水性接着剤組成物を有する元の物品から作製されたリサイクル物品の特性が、リサイクル物品と同じ方法で再加工される、水性接着剤組成物を有しない対照物品に対して測定される。本発明の元の物品は、水性接着剤組成物を有する元の物品から作製されたリサイクル物品が、対照物品と比較して40パーセント(%)未満(<)の低下した特性の変化を示す場合に、リサイクル特性を有する。
【0006】
いくつかの実施形態では、本発明は、ペレット、単層又は多層フィルム、単層又は多層積層体、包装材料、成形製品などの第1の物品を含む。
【0007】
いくつかの実施形態では、本発明は、上記の第1の物品のうちのいずれか1つから作製された後続の第2の物品を含む。いくつかの実施形態では、第2の物品としては、例えば、プラスチック複合材、成形品、積層構造体、収縮性フィルム、ストレッチラップフィルムなどの工業用フィルム、及び農業用フィルムを挙げることができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、本発明は、(a)少なくとも1つのポリオレフィンポリマーと、(b)リサイクル特性を有する水性接着剤組成物と、を一緒に接触させることを含む、リサイクル特性を有する第1の物品を生成するためのプロセスを含む。
【0009】
有利なことに、上記水性接着剤組成物を組み込んで作製された第1の物品は、包装産業のための現在のリサイクル性ガイドラインに従ってリサイクルプロセスに供することができる。例えば、アクリル系システムである本発明の水性積層用接着剤組成物を、2.25グラム/平方メートル(grams per square meter、gsm)の全ポリエチレン(polyethylene、PE)高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)フィルムなどのポリマーフィルム構造体と組み合わせて利用することにより、いかなる接着剤も添加せずに同じように再加工される対照フィルムに対して、<30%の性能の低下した変化を示す特性を有する新しい単層フィルムを作製するように再加工することができるフィルム構造体が提供される。例えば、水性接着剤を用いて作製された積層構造体は、コンバータが、(1)積層構造体を構成する材料を分離する必要なく、積層構造体を全体として直接機械的に再加工すること、及び(2)再加工された積層構造体から新しいフィルムを生成することであって、新しいフィルムは、十分な望ましい性能範囲を有する、生成することを可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0010】
相反する記載がなく、文脈から暗示されておらず、又は当該技術分野で慣例的でない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量に基づくものであり、全ての温度は、摂氏(℃)であり、全ての試験方法は、本開示の出願日の時点において最新のものである。
【0011】
接着剤を有する第1の物品に関して、本明細書における「リサイクル可能」又は「リサイクル性」という用語は、機械的リサイクル可能又はリサイクル性を意味し、接着剤を有する第1の物品が、所望の性能範囲を有する第2の物品を生成するように機械的に再加工可能であることを意味し、第2の物品は、接着剤を有さず、かつ第2の物品と同じ方法で再加工される対照物品の性能に対して、少なくとも<40%の性能の低下した変化を有する。プラスチック物品のリサイクル性を判定するための試験方法及びガイドラインの例は、刊行物「Benchmark Polyethylene Film and Flexible Packaging Innovation Test Protocol,Film-B-01」(2018年)及び刊行物「PE Film Standard Laboratory Processing Practices」、The Association of Plastic Recyclers(APR)の文書番号FPE-P-00(2020年)に見出すことができるが、これらに限定されるものではない。
【0012】
本明細書で使用する場合、「組成物」という用語は、組成物を構成する材料、並びに組成物の材料から形成される反応生成物及び分解生成物の混合物を指す。
【0013】
「ポリマー」は、同じ種類であるか又は異なる種類であるかにかかわらず、モノマーを重合させることによって調製されるポリマー化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下に、1種類のモノマーのみから調製されるポリマーを指すために用いられる)及び本明細書において以下に定義されるインターポリマーという用語を包含する。微量の不純物(例えば、触媒残渣)は、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれ得る。ポリマーは、単一のポリマー、ポリマーブレンド、又は重合中にその場で形成されるポリマーの混合物を含むポリマー混合物であってもよい。
【0014】
本明細書で使用する場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2種類の異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、インターポリマーという総称は、コポリマー(2種類の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために用いられる)及び2種類を超える異なる種類のモノマーから調製されるポリマーを含む。
【0015】
本明細書で使用する場合、「オレフィン系ポリマー」又は「ポリオレフィン」という用語は、(ポリマーの重量に基づいて)過半量のオレフィンモノマー、例えば、エチレン又はプロピレンを重合形態で含み、任意選択的に1つ以上のコモノマーを含み得るポリマーを指す。
【0016】
本明細書で使用する場合、「エチレン/α-オレフィンインターポリマー」という用語は、重合形態で、過半量(50モル%[mol%]超[>])の、エチレンモノマーに由来する単位と、残りの量の、1つ以上のα-オレフィンに由来する単位と、を含む、インターポリマーを指す。エチレン/α-オレフィンインターポリマーの形成に使用される典型的なα-オレフィンは、C3~C10アルケンである。
【0017】
本明細書で使用する場合、「エチレン/α-オレフィンコポリマー」という用語は、2種類のみのモノマーとして、過半量(50mol%超)のエチレンモノマーと、α-オレフィンと、を重合形態で含む、コポリマーを指す。
【0018】
本明細書で使用する場合、「α-オレフィン」という用語は、1位又はアルファ(α)位に二重結合を有するアルケンを指す。
【0019】
「ポリエチレン(PE)」又は「エチレン系ポリマー」は、過半量(50モル%超)の、エチレンモノマーに由来する単位を含む、ポリマーを意味するものとする。これには、ポリエチレンホモポリマー、エチレン/α-オレフィンインターポリマー、及びエチレン/α-オレフィンコポリマーが挙げられる。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態としては、低密度ポリエチレン(low density polyethylene、LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(linear low density polyethylene、LLDPE)、極低密度ポリエチレン(ultra low density polyethylene、ULDPE)、超低密度ポリエチレン(very low density polyethylene、VLDPE)、中密度ポリエチレン(medium density polyethylene、MDPE)、高密度ポリエチレン(high density polyethylene、HDPE)、強化ポリエチレン、ポリエチレンエラストマー、及びポリエチレンプラストマーが挙げられる。これらのPE材料は、一般に、当該技術分野において既知である。しかしながら、以下の記載は、これらの異なるPE樹脂のうちのいくつかの間の差異を理解するのに役立つ場合がある。
【0020】
「LDPE」という用語はまた、「高圧エチレンポリマー」、又は「高分岐ポリエチレン」と称される場合もあり、ポリマーが、過酸化物などのフリーラジカル開始剤を使用して、14,500ポンド/平方インチ(pounds per square inch、psi)(100メガパスカル[MPa])超の圧力で、オートクレーブ又は管型反応器内で部分的又は完全にホモ重合又は共重合されることを意味すると定義される(例えば、米国特許第8,916,667号、同第8,871,887号、同第8,822,601号、同第9,228,036号、及び同第9,765,160号を参照)。LDPE樹脂は、典型的には、0.916グラム/立方センチメートル(g/cm3)~0.935g/cm3の範囲の密度を有する。
【0021】
「LLDPE」という用語は、従来のチーグラー・ナッタ触媒系及びクロム系触媒系、並びにビス-メタロセン触媒(「m-LLDPE」と称される場合もある)、幾何拘束型触媒(constrained geometry catalysts、CGC)、及び分子触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製される両方の樹脂を含む。樹脂としては、直鎖状の、実質的に直鎖状の、又は不均一な、ポリエチレンコポリマー又はホモポリマーが挙げられる。LLDPEは、LDPEよりも少ない長鎖分岐を含有し、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第5,582,923号、及び同第5,733,155号に更に定義されている実質的に直鎖状のエチレンポリマー、米国特許第3,645,992号に記載のものなどの、均質に分岐した直鎖状エチレンポリマー組成物、米国特許第4,076,698号に開示されているプロセスに従って調製されたものなどの不均質に分岐したエチレンポリマー、及びそれらのブレンド(米国特許第3,914,342号又は米国特許第5,854,045号に開示されているものなど)を含む。LLDPEは、気相、液相若しくはスラリー重合、又はそれらの任意の組み合わせを介して、当該技術分野において既知である任意のタイプの反応器又は反応器構成を使用して作製することができる。
【0022】
「MDPE」という用語は、0.926g/cm3~0.940g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。「MDPE」は、典型的には、クロム触媒若しくはチーグラー・ナッタ触媒を使用して、又はビス-メタロセン触媒、幾何拘束型触媒及び分子触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を使用して作製され、典型的には、>2.5の分子量分布(molecular weight distribution、「MWD」)を有する。
【0023】
「HDPE」という用語は、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又はビス-メタロセン触媒及び幾何拘束型触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を用いて一般に調製される、0.940g/cm3超かつ最大0.970g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0024】
「ULDPE」という用語は、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、又はビス-メタロセン触媒及び幾何拘束型触媒を含むがこれらに限定されないシングルサイト触媒を用いて一般に調製される、0.880g/cm3~0.912g/cm3の密度を有するポリエチレンを指す。
【0025】
「ポリエチレンプラストマー/エラストマー」は、エチレンに由来する単位及び少なくとも1つのC3~C10α-オレフィンコモノマー、若しくは少なくとも1つのC4~C8α-オレフィンコモノマー、若しくは少なくとも1つのC6~C8α-オレフィンコモノマーに由来する単位を含む均一な短鎖分岐分布を含有する、実質的に直鎖状又は直鎖状の、エチレン/α-オレフィンコポリマーである。ポリエチレンプラストマー/エラストマーは、0.870g/cm3、又は0.880g/cm3、又は0.890g/cm3~0.900g/cm3、又は0.902g/cm3、又は0.904g/cm3、又は0.909g/cm3、又は0.910g/cm3、又は0.917g/cm3の密度を有する。ポリエチレンプラストマー/エラストマーの非限定的な例としては、AFFINITY(商標)プラストマー及びエラストマー(Dow Chemical Companyから入手可能)、EXACTプラストマー(ExxonMobil Chemicalから入手可能)、TAFMER(商標)(Mitsui Chemicalsから入手可能)、NEXLENE(商標)(SK Chemicals Co.から入手可能)、及びLUCENE(商標)(LG Chemical Ltd.から入手可能)、並びにこれらの混合物を含む。
【0026】
「ブレンド」、「ポリマーブレンド」、及び同様の用語は、2つ以上のポリマーの組成物を意味する。このようなブレンドは、混和性であっても、そうでなくてもよい。このようなブレンドは、相分離していても、していなくてもよい。このようなブレンドは、透過電子分光法、光散乱、X線散乱、及び当該技術分野で既知の任意の他の方法から決定されるような、1つ以上のドメイン構成を含有しても、そうでなくてもよい。ブレンドは、積層体ではないが、積層体の1つ以上の層が、ブレンドを含有してもよい。このようなブレンドは、乾燥ブレンドとして調製され得るか、その場で(例えば、反応器内で)、溶融ブレンドとして、又は当業者に既知の他の技法を使用して形成され得る。
【0027】
「接着接触」などの用語は、両方の層の層間表面(すなわち、接触している対向面(facial surfaces)に損傷を与えることなく一方の層を他方の層から除去することができないように、1つの層の1つの対向面と別の層の1つの対向面とが互いに触れており、かつ結合接触していることを意味する。
【0028】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語及びそれらの派生語は、あらゆる追加の成分、工程、又は手順の存在を、それらが具体的に開示されているか否かにかかわらず、除外することを意図するものではない。いかなる疑念も避けるために、「含む(comprising)」という用語の使用を通して特許請求される全ての組成物は、別段矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別のものであるかにかかわらず、任意の追加の添加剤、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲から任意の他の成分、工程、又は手順を除外する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる成分、工程、又は手順を除外する。
【0029】
本発明の目的は、第1の用途で使用するために元の成分から第1の物品を生成し、次いで、第1の物品が使用された後、使用された第1の物品を全体として再加工して(すなわち、使用された第1の物品に、例えばリサイクルプロセスを施すことができる)、再加工された第1の物品から直接第2の物品を形成することである。次いで、第2の物品は、別の後続の第2の用途において使用することができる。
【0030】
第1の物品は、(a)少なくとも1つのポリオレフィンポリマーと、(b)水性接着剤組成物と、の組み合わせを含む。驚くべきことに、第1の物品において使用される水性接着剤組成物は、第1の物品に付与されるリサイクル特性を有し、したがって、いくつかの実施形態では、第1の物品は、リサイクル可能であり、様々な他の用途のための第2の物品を製造するために使用することができることが見出された。
【0031】
いくつかの非限定的な実施形態では、本発明の第1の物品は、例えば、以下:ペレット、単層又は多層フィルムなどのフィルム、多層積層体、包装製品などの物品のうちの1つ以上を含み得る。いくつかの非限定的な実施形態では、本発明の第2の物品はまた、例えば、以下:ペレット、単層又は多層フィルムなどのフィルム、多層積層体、包装製品などの物品のうちの1つ以上を含み得る。
【0032】
本発明の第1の物品を作製するために有用なポリオレフィンポリマー、成分(a)は、1つ以上のポリオレフィンを含むことができる。第1の物品は、例えば、ポリオレフィンフィルムであり得る。一般に、フィルムのポリマー部分は、一実施形態では少なくとも80%のポリオレフィンポリマー、別の実施形態では少なくとも85%のポリオレフィンポリマー、更に別の実施形態では少なくとも90%のポリオレフィンポリマーから構成される。一実施形態では、ポリオレフィンポリマーは、少なくとも1つのPEポリマーである。例えば、PEポリマーは、HDPE、LDPE、LLDPE、及びこれらの混合物のうちの1つ以上を含むことができる。ポリオレフィンフィルムは、単層又は多層フィルムであってもよく、機械方向延伸(machine direction orientation、MDO)若しくは二軸延伸プロセスによって延伸された延伸フィルムであってもよい。別の好ましい実施形態では、ポリオレフィンは、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、延伸PP(oriented PP、OPP)、二軸延伸PP(biaxially oriented PP、BOPP)、及びそれらの混合物である。フィルムの非ポリオレフィン部分は、ポリ(ビニルアルコール)(EVOH)又はポリアミド(例えば、ナイロン)などのポリマー、官能化結合層ポリマー、及び米国特許第10,300,686号に記載されるような相溶化剤から構成され得る。
【0033】
本発明の第1の物品を作製するために有用な水性接着剤組成物、成分(b)は、上記で定義したようなリサイクル特性を有する1つ以上の水性接着剤組成物を含むことができる。水性接着剤組成物は、水性接着剤組成物を有する第1の物品が再加工(リサイクル)される場合に、水性接着剤組成物を有する第1の物品が、水性接着剤組成物を有しない対照の第1の物品と比較して、40%未満の性能の低下した変化を示すようなものである。第1の物品及び対照の第1の物品は両方とも、それらのそれぞれのリサイクル特性を判定するために同じ方法で再加工及び試験される。
【0034】
上述したように、本発明は、フィルム、積層体、又は包装などの多種多様な第1の物品を含むことができる。したがって、本発明の単なる例示としてであって、それによって限定されるものではないが、本発明は、単層又は多層積層構造体、より具体的には多層積層構造体である好ましい実施形態を参照して本明細書に記載される。しかしながら、多くの他の物品が積層体以外の第1の物品を含むことができ、本発明がそれに限定されないことが当業者によって理解される。
【0035】
いくつかの実施形態では、本発明は、例えば、多層積層構造体を含む。他の実施形態では、本発明は、多層積層構造体を製造するための接着積層プロセスを含み、更に他の実施形態では、本発明は、多層積層構造体を使用して作製された包装物品を対象とする。
【0036】
1つの広い実施形態では、本発明は、積層包装材料を生成するために使用することができる第1の物品としての多層積層構造体を含み、積層包装材料は、次に、更なる処理のために店頭でリサイクルすることができる。多層積層体は、上記の水性接着剤組成物の層によって一緒に接着された少なくとも2つのポリオレフィン層基材の組み合わせを含む。例えば、多層積層構造体は、(i)ポリエチレン(PE)フィルムなどの少なくとも第1のポリマーフィルムウェブと、(ii)第1の層と同じPEフィルム又は異なる材料であってもよい少なくとも第2のポリマーフィルムウェブと、(iii)第1及び第2のポリオレフィンフィルムウェブを一緒に接着するための上記のリサイクル特性を有する水性アクリル系積層用接着剤組成物の層と、を含み、水性積層用接着剤組成物の層は、第1及び第2のフィルム層と相溶性であり、水性積層用接着剤組成物の層は、第1のフィルム層と第2のフィルム層とを一緒に結合するために、第1のフィルム層及び第2のフィルム層の層のうちの少なくとも1つの表面上に配置されている。所望であれば、1つ以上の他の任意選択的なフィルム層基材を、複数の層の間に添加された接着剤とともに上記積層構造体に添加して、2つを超える層を含む多層積層構造体を生成することができる。
【0037】
本発明の多層積層体を作製するために使用される成分(i)である第1のポリオレフィンフィルムウェブは、1つ以上のポリオレフィンを含むことができる。例えば、第1のポリオレフィンウェブは、HDPE、LDPE、LLDPE、MDO PE、BOPE、及びこれらの混合物などの1つ以上のポリオレフィン層を含むことができる。
【0038】
1つの好ましい実施形態では、ポリオレフィンフィルムウェブは、第2の層に接着される、機械方向又は二軸延伸プロセスのいずれかを使用して作製された延伸単層又は多層PEフィルムを含むことができる。
【0039】
別の好ましい実施形態では、ポリオレフィンフィルムウェブは、HDPE、LLDPE、及びLDPEの1つ以上の層を含む多層フィルムであり得る。
【0040】
更に別の好ましい実施形態では、ポリオレフィンフィルムウェブは、PPフィルムウェブ又はBOPPフィルムウェブであり得る。
【0041】
更に他の好ましい実施形態では、ポリオレフィンフィルムウェブは、一実施形態では少なくとも80%のポリオレフィンポリマー、別の実施形態では少なくとも85%のポリオレフィンポリマー、及び更に別の実施形態では90%のポリオレフィンポリマーから構成される。この実施形態では、米国特許第10,300,686号に記載されているように、EVOH及びポリアミドなどの非ポリオレフィンポリマー、並びに官能性結合層及び相溶化剤を使用し得る。
【0042】
本発明のリサイクル可能な積層体を形成するために使用される第1のポリオレフィンフィルムウェブの厚さは、例えば、一実施形態では10ミクロン(μm)~150μm、別の実施形態では15μm~100μm、更に別の実施形態では20μm~50μmであり得る。
【0043】
本発明の積層体を作製するために使用される成分(ii)である第2のポリオレフィンフィルムウェブは、第1のポリオレフィンフィルムウェブと同じであっても異なっていてもよい1つ以上のポリオレフィンを含むことができる。例えば、第2のポリオレフィンフィルムウェブは、LDPE、LLDPE、及びこれらの混合物などの1つ以上のポリオレフィンフィルムを含むことができる。
【0044】
1つの好ましい実施形態では、第2のポリオレフィンフィルムウェブは、例えば、接着剤を介して第1のウェブに接着されるポリエチレンフィルムウェブを含むことができる。
【0045】
別の好ましい実施形態では、第2のフィルムウェブは、米国特許第9,421,743号に記載されているようなHDPE、LLDPE、及びLDPEの1つ以上の層を含む多層構造である。
【0046】
更に別の好ましい実施形態では、第2のフィルムウェブは、1つの層がEVOH又はナイロン層、並びに米国特許第10,200,686号に記載されているような機能的結合層及び相溶化剤である多層構造である。
【0047】
更に別の好ましい実施形態では、第2のフィルムウェブは、第1のフィルムウェブに積層される金属化層を有する。
【0048】
更に別の好ましい実施形態では、第2のフィルムウェブ外側層は、シール開始温度が75℃~120℃の範囲である。
【0049】
本発明のリサイクル可能な積層体を形成するために使用されるポリオレフィンフィルム第2の層の厚さは、例えば、一実施形態では10μm~150μm、別の実施形態では15μm~100μm、更に別の実施形態では20μm~50μmであり得る。
【0050】
成分(i)及び(ii)である第1及び第2の層をそれぞれ結合するために使用される、成分(iii)である積層用接着剤組成物の層は、第1及び第2の層を一緒に接着するために予め使用され、硬化積層構造体を形成した後に有利にリサイクルすることができる積層用接着剤である。物品、例えば包装物品が、積層用接着剤組成物を含有する積層構造体から製造される場合、積層用接着剤組成物は、リサイクル可能な積層構造体から作製される包装物品に、許容可能なリサイクル特性を付与して、使用後に包装物品をリサイクルすることを可能にする。
【0051】
本発明において有用な水性積層用接着剤組成物としては、例えば、ポリプロピレングリコールと混合され、イソシアネートで硬化された、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸、メタクリル酸などのアクリルモノマーからのアクリルエマルジョンからのアクリル系材料が挙げられる。1つの好ましい実施形態では、接着剤は、例えば、アクリレート、イソシアネート、ポリエステル、及びそれらの混合物を含むことができる。本発明の接着剤は、生鮮及び冷凍食品、一般的なスナック包装などの製品において有用である。
【0052】
第1及び第2のフィルムウェブを接着し、かつ本発明の多層積層構造体を形成するために使用される接着剤層の厚さ/接着剤重量は、例えば、1つの一般的な実施形態では、2μm~5μmであり得る。2μm未満又は5μm超の任意の接着剤重量は、接着に関する問題を引き起こす可能性があり、加工プロセスの残りの間に破損をもたらす。
【0053】
接着剤層の接着剤コーティング重量は、1つの一般的な実施形態では、1.62gsmから最大6gsmまでの範囲であり得る。1.62gsm未満又は6gsmを超える任意の接着剤重量は、接着に関する問題を引き起こす可能性があり、変換プロセスの残りの間に破損をもたらす。
【0054】
積層の60分(min)後の接着剤の接着値又は接着強度は、積層構造体のポリオレフィンフィルム層に依存し得る。例えば、PE層を有する積層体は、一実施形態では、15ミリメートル当たり50グラム(g/15mm)超、別の実施形態では、150g/15mm超、更に別の実施形態では、500g/15mm超、更に別の実施形態では1,000g/15mm超であり得、フィルム引裂の破壊モードを伴う。1つの好ましい実施形態では、本発明の接着剤の接着強度は、例えば、50g/15mm~2,000g/15mmである。
【0055】
本発明において有用な接着剤は、他の既知の積層接着剤と比較して、いくつかの他の有益な特性を有し、例えば、接着剤は、透明性及び積層装置上での走行性に関して優れた性能を有する。
【0056】
本発明の積層構造体は、上記成分層(i)~(iii)に加えて、他の任意選択的な層状基材、成分(iv)を含むことができる。例えば、所望であれば、EVOH、PVDC、OPA及びこれらの混合物などの基材を上記の第1及び第2の層に積層(接着)することができる。
【0057】
1つの一般的な実施形態では、本発明の多層積層体は、例えば、
(I)上記の、(i)第1のフィルム基材、(ii)第2の織物布地基材、及び(iii)接着剤組成物を提供する工程と、
(II)接着剤組成物を第1又は第2の基材(「キャリアウェブ」としても知られる)の表面の少なくとも一部分に塗布して、第1又は第2のフィルム基材の表面上に接着剤層を形成する工程と、
(III)第1及び第2の基材の間に配置された積層体層を形成するのに十分なように、接着剤でコーティングされたフィルム基材を接着剤とともに第1及び第2のフィルム基材の各々と接触させることによって、第1及び第2のフィルム基材を接着剤層とともに組み合わせる工程と、
(IV)工程(III)の構造体において、接着剤組成物を、例えば室温(約[~]25℃)又は高温で硬化させて、2つのフィルム基材を一緒に結合させて、多層積層体を形成する工程と、を含むプロセスによって生成される。
【0058】
接着剤組成物の塗布は、接着剤組成物又は配合物をフィルム基材に塗布する当該技術分野で既知の従来の手段によって実行されることができる。例えば、接着剤組成物は、オーブン乾燥能力を有するロトグラビア積層装置を使用して接着剤を塗布することを含む、従来の積層装置及びプロセスを使用して塗布することができる。
【0059】
上記のプロセスに従って生成された多層積層体に付与されたリサイクル特性に加えて、得られた多層積層体によって示される別の有利な特性は、例えば、実質的に曇りのない特性を有する積層体を含むことができる。例えば、MDO PE及びBOPEフィルムは、8%未満の濁度値を有することができ、標準インフレーションフィルムは、典型的には8%より高い。一実施形態では、本発明の多層積層体は、一般に、6%~50%の濁度値を有する。別の実施形態では、多層積層体は、一般に、10%~40%の濁度値を有する。
【0060】
一般に、本発明の積層体は、リサイクル前に、例えば、様々な包装材料及び製品を製造するための包装用途を含む広範囲の用途に使用することができる。例えば、積層体は、食物粒/豆類のバルク包装、種子の包装、レンズマメ及び穀類の包装、肥料の包装、油料種子の包装、糖の包装、塩の包装、医薬品の包装、他の食料品の包装、及びバスソルト、洗剤ポッドなどのパーソナルケア物品に使用することができる。フィルムはまた、お尻拭き製品、女性用衛生製品、シリアルバー、プロテインバー、チーズ及び菓子製品の包装材として使用され得る。食品粒/豆類のヘビーデューティ包装に使用される場合、包装物品は、接着剤が24時間(hr)硬化した後に、積層体におけるトンネリング/層間剥離/変形の兆候を示さない。リサイクル可能な積層体についての、物品を包装するために使用される場合の他の有利な機能及び用途は、例えば、厳しい気象条件に対する耐性、高い引張強度、堅牢な落下試験耐性、優れた光学的外観、及び漏出に対する耐性を含む。本発明のリサイクル材料は、非包装材料を再生するために使用することもできる。
【0061】
本発明の利点のうちの1つは、本発明の積層体から作製された使用済みのバージン品(第1の物品)を再加工することができる、すなわち、リサイクルプロセスによって処理することができることである。リサイクル後、先のバージン品からのリサイクル材料を使用して、先のバージン品に非常に近い特性及び性能を有する、後続のリサイクル積層体、ひいてはリサイクル物品(すなわち、第2の物品)を作製することができる。本発明の1つの目的は、第1の物品と同様に、又はそれよりも良好に機能する第2の物品を生成することであり、すなわち、第2の物品の特性は、第1の物品の特性と100%同じか、又はそれを上回って機能する。最低でも、第2の物品の特性は、別の用途に有用である第2の物品を提供するのに十分な性能レベルに維持される。
【0062】
例えば、再生物品(第1の物品)からの再生材料を用いて作製された新しい単層フィルム構造体(第2の物品)は、バージン品と同じ方法で再加工される、いかなる接着剤も添加されていない対照フィルムに対して、<40%の性能の低下した変化を示す特性を有することができる。いくつかの実施形態では、新しい単層フィルム構造体(第2の物品)は、一実施形態では<40%、一実施形態では<30%、
別の実施形態では<25%、更に別の実施形態では<15%の性能の低下した変化を示す特性を有することができる。いくつかの実施形態では、新しい単層フィルム構造体は、一実施形態では0%~<40%、別の実施形態では0.01%~<40%、更に別の実施形態では0.1%~<40%の範囲の性能の低下した変化を示す特性を有することができる。いくつかの実施形態では、新しい単層フィルム構造体は、一実施形態では0%~<25%、別の実施形態では0.01%~<25%、更に別の実施形態では0.1%~<25%の範囲の性能の低下した変化を示す特性を有することができる。いくつかの実施形態では、新しい単層フィルム構造体は、一実施形態では0%~<10%、別の実施形態では0.01%~<10%、更に別の実施形態では0.1%~<10%の範囲の性能の低下した変化を示す特性を有することができる。
【0063】
一般的な実施形態では、例えば、第1の包装物品(すなわち、バージン品)から、再加工された第2の物品を生成するためのプロセスは、(A)本発明の積層体から作製された第1の包装物品を提供する工程と、(B)工程(A)からの包装物品を断片化して、所定のサイズの複数の断片を生成する工程と、(C)工程(B)からの複数の断片をペレット化して、所定のサイズの複数のペレットを形成する工程と、(D)工程(C)からのペレットを処理して、再加工された第2の物品を形成する工程と、を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、第3の物品は、上記の一般的なプロセスによって作製された、再加工された第2の物品から生成することができる。例えば、第3の物品は、ペレット、単層又は多層フィルム、多層積層体、及び包装材料又は製品からなる群から選択することができる。
【実施例】
【0065】
以下の実施例は、本発明を更に詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。別途指示されない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量による。
【0066】
本発明の実施例(Inv.Ex.)及び比較例(Comp.Ex.)において使用される様々な材料を、以下に、表Iで説明する。
【0067】
【0068】
フィルムの生成のための一般的手順
表II、シーラントウェブフィルム構造体に記載されるシーラントウェブフィルム、及び表III、印刷ウェブフィルム構造体に記載される印刷ウェブフィルムは、7つの層を有して生成され、7つの層の各々の組成物は、それぞれ表II及びIIIに記載される。フィルムは以下の一般的なプロセスを使用して生成した。フィルムの各々は、7層インフレーションフィルムライン(Hosokawa-Alpineから入手可能)で作製した。ラインは、2mmのダイギャップを有する250mm直径のスパイラルマンドレルダイに供給する、7つの50ミリメートル(mm)直径の30L/D押出機を利用する。出力速度は、148キログラム/時(kg/hr)であり、溶融温度は、約185℃~245℃の範囲であった。フィルムをブローする際に2.5ブローアップ比を使用し、フィルムをシングルリップエアリング及び内部バブル冷却で冷却した。ライン速度は、約17メートル/分(m/分)であり、フィルムをコロナ処理して、平均表面エネルギーを43ダイン/センチメートルにした。
【0069】
【0070】
【0071】
上記の2つのフィルム(シーラントウェブフィルム及び印刷ウェブフィルム)の2つの別個のロールを製造した後、本明細書において以下に記載されるプロセス「フィルム積層のための一般的手順」を使用して、2つのフィルムの第1のセットを本発明の水性接着剤組成物とともに積層し、2つのフィルムの第2のセットを従来のポリウレタン積層用接着剤とともに積層する。
【0072】
得られた複合フィルム積層体の各々は、本明細書において以下に記載される手順を使用して、フィルムを細断し、フィルムをペレット化し、ペレットを押出し/配合し、第1の複合フィルム積層体の各々に由来する配合ペレットから第2のフィルムを形成することによって再加工される。
【0073】
続いて、第2のフィルムを以下に記載の試験手順を使用して試験し、試験の結果を表VI及びVIIに記載した。
【0074】
フィルム積層のための全般手順
積層は、Super-Combi3000シリーズの市販のラミネータ(Nordmeccanicaから入手可能)を使用することによって達成される。ラミネータは、1,320mmの最大フィルム幅及び600mmの最小フィルム幅を有する。更に、ラミネータは、2つのモジュール式コーティングデッキ:(1)水性積層のための水性デッキ、並びに(2)水性及び溶媒系接着剤/コーティングのためのグラビアデッキを含む。ラミネータはまた、一次フィルム及び二次フィルムの両方に対して、2つのゾーン強制空気乾燥機、及び7.5キロワット(kilowatt、KW)のコロナ処理装置(Enercon Industries Corporationから入手可能)を含む。ラミネータの最大ライン速度は、400メートル/分(m/分)(又は1,312フィート/分)である。全ての巻出しは、76mm又は152mmのコアを使用し、巻戻しは、152mmのコアのみを使用する。ラミネータは、ポリエステル、配向ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、紙、箔(二次のみ)などのほとんどの包装フィルムを走行させることができる。本発明の目的のために、実施例で使用される本発明の水性積層用接着剤は、ROBOND(商標)L-90M/CR9-101(The Dow Chemical Companyから入手可能)であり、ラミネータのグラビアデッキを利用して、2.4gsmの目標接着剤塗布で、フィルム及び接着剤をラミネータ上で実行した。積層が完了したら、フィルムのロールを室温で7日間完全に硬化させた。
【0075】
フィルム細断/ペレット化のための一般的手順
細断及びペレット化は、INTAREMA(登録商標)605Kペレタイザーユニット(EREMAから入手可能)を使用して達成される。ペレタイザーのバレルゾーンを171℃で走行させ、ペレタイザーゾーンを176℃で走行させる。
【0076】
ブレンド比を配合するための一般的手順
上記ペレタイザーを使用して生成されたペレットは、既知の標準的な装置及び手順を利用して配合される。本明細書に開示されるフィルムに関して、二軸押出機、LabTech26mm二軸押出機、タイプLTE26-44(パートII)(LabTech Engineering Company,LTDから入手可能)である。上記の押出機の走行パラメータを表IVに記載している。
【0077】
【0078】
製造ライン
ブレンドは、20mm二軸押出機(LabTech Engineering Company LTD[「LabTech」]から入手可能)に供給する振動トレイによって接続された6つの重量測定フィーダー(Movacolorから入手可能)を使用して生成される。2つの混合ゾーンは、押出機出口での一貫した組成を確実にする。押出機の下流には、3.0立方センチメートル/回転(cm3/rev)ギアポンプがあり、これは、インフレーションフィルムダイを通して材料を押し出すための高い定常圧力を提供する。6つのスパイラルチャネル及び1.0mmのダイギャップを有する標準5.08センチメートル(cm)(2インチ)直径の円筒状スパイラルマンドレルダイ(LabTech)を使用した。加圧空気は、フィルムバブルを2.5ブローアップ比(blow-up ratio、BUR)~4BUR(「BUR」は最大バブル直径をダイ径で割ったものとして定義される)に膨張させる。可変速度送風機(Labtech)によって駆動されるデュアルリップエアリングを全ての実験に使用する。フロストライン高さ(frost line height、FLH)は、127mmから330mmまで変化させることができ、送風機速度及びエアリング煙突を変更することによって制御される。ニップローラーの速度を調整することにより、典型的には、フィルム厚さを±10%以内に制御する。レイフラットを150mm(6インチ)の幅にトリミングし、2つのロールに巻き上げる。標準条件及び可能な条件範囲を表Vに要約する。
【0079】
【0080】
フィルム試験
実施例で調製したフィルムを、物理的特性:ダート、引裂、割線係数、及び引張について試験した。試験は、以下のASTM試験方法に記載されているように行った:ASTM D1709を使用して、落下ダートを測定した;ASTM D1922を使用して、エルメンドロフ引裂を測定した;ASTM D882を使用して、割線係数を測定した;ASTM D822を使用して、引張を測定した;及びASTM D1003を使用して、濁度を測定した。
【0081】
実施例1~3及び比較例A~D
表VI及びVIIは、対照フィルム(Comp.Ex.A)と比較した、本発明のフィルム(Inv.Ex.1~3)を試験した結果を提供する。再加工された対照フィルムは、印刷ウェブ及びシーラントウェブフィルムの1:1ブレンドからなり、積層用接着剤を含有しない。サンプル対照フィルムは、全ての積層フィルムが比較されるサンプルである。
【0082】
全ての積層含有フィルムを印刷ウェブ及びシーラントウェブに積層して、1つの得られたフィルムを作製した。次いで、この得られたフィルムを細断し、ペレット化し、対照フィルムから作製された対照ペレットの複数の比でブレンドした。
【0083】
フィルムのパラメータは、Inv.Ex.1~3及びComp.Ex.A~Dのフィルムの各々のフィルム厚さを含み、それは、2ミル±0.5ミル以下の厚さであった。Inv.Ex.1~3のフィルムの全ての他の特性は、対照フィルムサンプルに対して、40%超の性能の低下した変化を有することができない。
【0084】
比較サンプルとして使用した別の積層用接着剤は、ADCOTE(商標)577であり、このような接着剤を比較例B~Dのフィルムサンプルに使用した。
【0085】
結果
本発明の試験された接着剤組成物(表VI、Inv.Ex.1~3)の各々は、アクリル官能性を有する水性積層用接着剤である。表VIに記載の結果は、本発明の接着剤組成物が、例えば、表VIに示された全てのカテゴリーにおいて、「<40%の性能の低下した変化」試験に合格することを示す。例えば、ダート性能は、十分に、Comp.Ex.Aの性能に対して40%以上の性能の低下した変化である性能限界内にある。本発明の接着剤組成物を含有するペレットが10%~50%の量で使用される場合、本発明の接着剤組成物はリサイクル性試験に合格することが判定された。
【0086】
積層用接着剤ADCOTE(商標)577/CR87-124を含有する2つの溶媒系サンプルを、表VIIに記載されるように試験した。Comp.Ex.B~Dで使用した積層用接着剤は、高架橋PU系である。Comp.Ex.B~Dのサンプルは、30%超の性能低下変化でダート試験に不合格であった(表VII、Comp.Ex.B~Dを参照)。Comp.Ex.B~Dは、高度に架橋された接着剤材料によって付与された剛性による可能性が高いことが理論付けられる。10%~50%の量での40%超のダートの落下は、リサイクル性の基準を満たさないComp.Ex.B~Dの接着剤をもたらす。
【0087】
【0088】
【国際調査報告】