(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ダンプハンド着用の保湿用グローブ
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20231222BHJP
A41D 19/04 20060101ALI20231222BHJP
A41D 19/00 20060101ALI20231222BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20231222BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231222BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20231222BHJP
C08J 7/04 20200101ALI20231222BHJP
【FI】
C09D201/00
A41D19/04 A
A41D19/00 P
C09D5/02
C09D7/63
C09D133/00
C08J7/04 Z CEQ
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534190
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 US2021061930
(87)【国際公開番号】W WO2022125405
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518263531
【氏名又は名称】オーアンドエム ハリヤード インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】モダ、シャンティラル・エイチ
(72)【発明者】
【氏名】バーナム、ジェイソン・エー
(72)【発明者】
【氏名】セーリム、タンティマ
(72)【発明者】
【氏名】ライト、オードラ
(72)【発明者】
【氏名】グリースバッハ、サード・ヘンリー・エル
【テーマコード(参考)】
3B033
4F006
4J038
【Fターム(参考)】
3B033AA27
3B033AC03
4F006AA04
4F006AB24
4F006AB64
4F006BA09
4F006CA09
4F006DA04
4J038CG141
4J038DF022
4J038JA02
4J038JA21
4J038KA11
4J038MA10
4J038NA09
4J038NA27
4J038PC07
(57)【要約】
可撓性を有する物品をコーティングするためのブレンド、及びコーティングされた柔軟な物品が改善された摩擦係数を有するようにその製造方法を提供する。ブレンドは、室温で固体形態の少なくとも1つのアクリルポリマーと少なくとも1つの水不溶性エモリエントとの水性エマルションを含み、水不溶性エモリエントはブレンド中に均一かつ安定に分散している。可撓性層で形成された基材によって構成されたグローブであって、基材は、グローブの着用側を形成する第1の表面と、グローブのグリップ側を形成する第2の表面とを有する。少なくとも1つのアクリルポリマーと少なくとも1つの水不溶性エモリエントの混合物を含む室温で固体のコーティングは、改善された摩擦係数を有する。コーティングされたグローブの製造方法も開示される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品をコーティングするための水性ブレンドであって、
少なくとも1つのポリマーの水性エマルションと、
少なくとも1つの水不溶性エモリエントと、を有し、
前記水不溶性エモリエントは、前記ポリマーの水性エマルション中に均一かつ安定に分散している、水性ブレンド。
【請求項2】
前記少なくとも1つのポリマーの水性エマルションが、Averbond SL113NSFの水性エマルションである、請求項1に記載の水性ブレンド。
【請求項3】
前記少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、約20℃~約25℃の範囲の温度において固相であるペトロラタムである、請求項1に記載の水性ブレンド。
【請求項4】
前記水性エマルションは、モノマーから形成されるアクリルポリマーを含有し、
前記モノマーは、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアルコール、エチレンオキシド、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の水性ブレンド。
【請求項5】
前記少なくとも1つの水不溶性エモリエントが、シアバター、ミツロウ、ステアリン酸ブチル、セラミド、パルミチン酸セチル、ユーセリット、イソヘキサデカン、パイミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミンク油、鉱油、ナッツ油、オレイルアルコール、ワセリンまたはペトロラタム、ステアリン酸グリセロール、アボカド油、ホホバ油、ラノリン(すなわちウールワックス)、ラノリン誘導体、ビタミンA誘導体、セテアリルアルコール、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ミリスタールミリスチン酸、脂質、オレイン酸デシル、ヒマシ油、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の水性ブレンド。
【請求項6】
少なくとも1つのヒューメクタントをさらに含む、請求項1に記載の水性ブレンド。
【請求項7】
前記ヒューメクタントが、アラニン、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヒアルロン酸、天然保湿因子(皮膚の天然ヒューメクタントの1つであるアミノ酸と塩との混合物)、異性化糖、乳酸ナトリウム、ソルビトール、尿素、またはそれらの組み合わせを含む、請求項6に記載の水性ブレンド。
【請求項8】
活性剤をさらに含む、請求項1に記載の水性ブレンド。
【請求項9】
前記水性ブレンドは、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約0.5~約1.5重量部の前記少なくとも1つのポリマーの水性エマルションを含む、請求項1に記載の水性ブレンド。
【請求項10】
物品をコーティングするための水性ブレンドを形成する方法であって、
少なくとも1つのポリマーの水性エマルションを提供するステップであって、前記水性エマルションは約10~約25%の範囲の総固形分を有する、該ステップと、
少なくとも1つの水不溶性エモリエントを提供するステップであって、前記少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、約50%を超える総固形分を有する、該ステップと、
前記少なくとも1つの水不溶性エモリエントを、前記少なくとも1つのポリマーの水性エマルションと、高剪断混合条件下でブレンドするステップと、を含む、方法。
【請求項11】
1重量部の水不溶性エモリエントあたり約0.5~約1.5重量部の前記少なくとも1つのポリマーの水性エマルションが提供される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つのポリマーの水性エマルションが、Averbond SL113NSFの水性エマルションである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの水不溶性エモリエントがペトロラタムである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記水性エマルション中の前記少なくとも1つのポリマーは、モノマーから形成されるアクリルポリマーを含有し、
前記モノマーは、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアルコール、エチレンオキシド、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つの水不溶性エモリエントが、シアバター、ミツロウ、ステアリン酸ブチル、セラミド、パルミチン酸セチル、ユーセリット、イソヘキサデカン、パイミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミンク油、鉱油、ナッツ油、オレイルアルコール、ワセリンまたはペトロラタム、ステアリン酸グリセロール、アボカド油、ホホバ油、ラノリン(すなわちウールワックス)、ラノリン誘導体、ビタミンA誘導体、セテアリルアルコール、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ミリスタールミリスチン酸、脂質、オレイン酸デシル、ヒマシ油、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
ヒューメクタント及び/または活性剤を混合するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
グローブであって、
可撓性を有するグローブ基材の層を含むグローブ本体であって、
前記グローブ本体の着用面を形成する内面と、
前記グローブ本体の把持面を形成する外面と、を備えた該グローブ本体と、
前記グローブ基材の前記内面を覆う実質的に均一なコーティングであって、
少なくとも1つのアクリルポリマーと、
約20℃~約25℃の範囲の温度で固相にある少なくとも1つの水不溶性エモリエントと、を備えた該コーティングと、を有する、グローブ。
【請求項18】
前記少なくとも1つのアクリルポリマーが、Averbond SL113NSFから形成されたアクリルポリマーである、請求項17に記載のグローブ。
【請求項19】
前記少なくとも1つの水不溶性エモリエントがペトロラタムである、請求項17に記載のグローブ。
【請求項20】
前記アクリルポリマーはモノマーから形成され、
前記モノマーは、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアルコール、エチレンオキシド、それらの誘導体、またはそれらの組み合わせを含む、請求項17に記載のグローブ。
【請求項21】
前記少なくとも1つの水不溶性エモリエントが、シアバター、ミツロウ、ステアリン酸ブチル、セラミド、パルミチン酸セチル、ユーセリット、イソヘキサデカン、パイミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミンク油、鉱油、ナッツ油、オレイルアルコール、ワセリンまたはペトロラタム、ステアリン酸グリセロール、アボカド油、ホホバ油、ラノリン(すなわちウールワックス)、ラノリン誘導体、ビタミンA誘導体、セテアリルアルコール、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ミリスタールミリスチン酸、脂質、オレイン酸デシル、ヒマシ油、またはそれらの組み合わせから選択される、請求項17に記載のグローブ。
【請求項22】
前記コーティングが少なくとも1つのヒューメクタントをさらに含む、請求項17に記載のグローブ。
【請求項23】
前記ヒューメクタントが、アラニン、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヒアルロン酸、天然保湿因子(皮膚の天然ヒューメクタントの1つであるアミノ酸と塩との混合物)、異性化糖、乳酸ナトリウム、ソルビトール、尿素、またはそれらの組み合わせを含む、請求項22に記載のグローブ。
【請求項24】
前記コーティングが活性剤をさらに含む、請求項17に記載のグローブ。
【請求項25】
前記グローブがエラストマー製のグローブである、請求項17に記載のグローブ。
【請求項26】
前記グローブは、1未満の乾燥摩擦係数を有する、請求項17に記載のグローブ。
【請求項27】
前記グローブが湿気を含んでいるときに、前記グローブは、0.5未満の摩擦係数を有する、請求項17に記載のグローブ。
【請求項28】
グローブを作製する方法であって、
型の表面を凝固剤溶液及び離型剤でコーティングするステップと、
前記凝固剤溶液及び前記離型剤でコーティングされた前記型を部分的に乾燥させるステップと、
部分的に乾燥した前記型をゴムラテックスエマルションに浸漬させることにより、前記型の表面に凝固したゴムラテックスの層を形成するステップと、
前記ゴムラテックスエマルションから前記型を取り出すステップと、
前記凝固したゴムラテックスを含む前記型を水溶液バスに浸漬させることにより過剰な凝固剤を除去した後、前記凝固したゴムラテックスを乾燥させることにより前記型にグローブ本体を形成するステップと、
前記グローブ本体を含む前記型を、エラストマー物品をコーティングするための水性ブレンドに浸漬させるステップであって、前記水性ブレンドは、少なくとも1つのポリマーの水性エマルションと、少なくとも1つの水不溶性エモリエントと、を有し、前記水不溶性エモリエントは、前記ポリマーの前記水性エマルション中に均一かつ安定に分散している、該ステップと、
前記グローブ本体のコーティングされた外側の面が前記グローブ本体の内面を形成するように、前記グローブ本体を反転させることによって前記グローブ本体を前記型から取り外すステップと、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2020年12月7日に出願された米国仮出願第63/122,099号に対する優先権を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、一般に、エラストマー製グローブの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
手術用グローブや検査用グローブなどのきつくフィットするエラストマー製品は、グローブのエラストマー自体が張り付く傾向があるブロッキングに起因して、着用が難しい。このため、グローブの着用者の皮膚と接触する面には、着用を容易にするために粉末状の潤滑剤が含まれることがしばしばある。既知の解決策の1つの例として、製造中に、エピクロロヒドリン処理された架橋コーンスターチがグローブの内面に振りかけられる。コーンスターチを使用するとグローブの着用特性は改善されるが、すべての用途に適しているわけではない。そのような状況の1つは、手術用グローブの用途に粉末を使用することである。粉末の一部が誤って手術部位に入ると、患者に合併症を引き起こす可能性がある。例えば、粉末に感染病原体が含まれている可能性や、患者が粉末に対してアレルギーを有している可能性がある。
【0004】
手術用グローブや検査用グローブの着用特性を改善するために、他の技術が使用される場合もある。これらの技術には、例えば、改質されたラテックスからのグローブの製造、親水性ポリマーの内層の使用、グローブの内面への潤滑粒子の提供などが含まれる。これらの技術及びコーティングは、ドライ着用(dry donning)に対してはある程度の改善をもたらすが、ダンプ着用(damp donning)に対する改善レベルは小さい。さらに、グローブの着用面に保湿剤が添加されると、これらの従来の着用コーティングによってもたらされる着用上の利点が大幅に減少するか、完全に排除される可能性がある。したがって、ダンプ着用特性が改善されたグローブなどのエラストマー物品が必要とされている。また、ダンプ条件下で摩擦係数が低減されたグローブなどのエラストマー物品も必要とされている。このようなエラストマー物品(例えば、グローブ)を作製するための簡易で実用的かつ経済的な方法も必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で議論される困難及び問題に応えて、本発明は、グローブなどの物品をコーティングするための水性ブレンド、及びこのようなブレンドのコーティングを含むグローブを提供する。ブレンドは、少なくとも1つのポリマー(例えば、アクリルポリマーなどの硬質のガラス状ポリマー)の水性エマルションと、少なくとも1つの水不溶性エモリエントと、を有し、水不溶性エモリエントは、水性ポリマーの水性エマルション中に均一かつ安定に分散し、水不溶性エモリエントは通常の室温(例えば、約20℃~約25℃)で固体である。
【0006】
本発明の一態様では、水性エマルションは、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアルコール、エチレンオキシド、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノマーから形成されるアクリルポリマーなどのポリマーを有する。望ましくは、少なくとも1つのアクリルポリマーの水性エマルションは、Averbond SL113NSFの水性エマルションである。
【0007】
本発明によれば、少なくとも1つの水不溶性エモリエントはワセリンまたはペトロラタムである。一般的に言えば、水不溶性エモリエントは、通常の室温(例えば、約20℃~約25℃)において固体の形態または固相を有する。しかしながら、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、ラノリン、シアバター、ミツロウ、ステアリン酸ブチル、セラミド、パルミチン酸セチル、ユーセリット(登録商標)、イソヘキサデカン、パイミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミンク油、鉱油、ナッツ油、オレイルアルコール、ステアリン酸グリセロール、アボカド油、ホホバ油、ラノリン(すなわちウールワックス)、ラノリンアルコールなどのラノリン誘導体、パルミチン酸レチニル(ビタミンA誘導体)、セテアリルアルコール、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ミリスタールミリスチン酸(myristal myristate)、各種の脂質、オレイン酸デシル、ヒマシ油、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0008】
本発明によれば、水性ブレンドは、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約0.5~約1.5重量部の少なくとも1つのアクリルポリマーの水性エマルションを含む。例えば、水性ブレンドは、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約0.75~約1.25重量部の少なくとも1つのアクリルポリマーの水性エマルションを含む。さらに別の例として、水性ブレンドは、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約1重量部の少なくとも1つのアクリルポリマーの水性エマルションを含む。
【0009】
水性ブレンドは、少なくとも1つのヒューメクタントをさらに含んでいてもよい。ヒューメクタントは、アラニン、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヒアルロン酸、天然保湿因子(皮膚の天然ヒューメクタントに含まれるアミノ酸と塩との混合物)、異性化糖、乳酸ナトリウム、ソルビトール、尿素、及びそれらの組み合わせから選択され得る。水性ブレンドはさらに活性剤を含んでいてもよい。
【0010】
本発明は、例えばグローブなどの物品をコーティングするための水性ブレンドを形成する方法も包含する。物品は、例えばエラストマー製グローブなどのエラストマー物品であることが望ましい。このプロセスは一般に、少なくとも1つのポリマー(例えば、アクリルポリマー)の水性エマルションを提供するステップを含む。水性エマルションは、約10~約25%の範囲の総固形分を有し得る。例えば、水性エマルションは、約15~約20%(例えば、約16%~約19%)範囲の総固形分を有し得る。
【0011】
この処理はまた、通常の室温(例えば、約20℃~約30℃)において固相である少なくとも1つの水不溶性エモリエントを提供するステップを含む。一般的に言えば、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、約50%を超える総固形分含量を有し得る。例えば、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、約75%を超える総固形分含量を有し得る。別の例として、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、約90%を超える総固形分含量を有し得る。
【0012】
物品をコーティングするための水性ブレンドを形成する方法によれば、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、高剪断混合条件下で、少なくとも1つのポリマーの水性エマルションとブレンドされる。すなわち、高剪断ミキサーを使用することにより、水不溶性エモリエントは、水性ブレンドである主相に分散される。望ましくは、混合は、水性ブレンドが安定になるような平衡混合を達成する。
【0013】
この方法の一態様では、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約0.5~約1.5重量部の少なくとも1つのアクリルポリマーの水性エマルションが提供され、材料は高剪断混合によってブレンドされる。例えば、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約0.75~約1.25重量部の少なくとも1つのアクリルポリマーの水性エマルションが供給され、材料は高剪断混合によってブレンドされる。別の例として、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約1重量部の少なくとも1つのアクリルポリマーの水性エマルションが供給され、材料は高剪断混合によってブレンドされる。
【0014】
この方法によれば、水性エマルションは、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアルコール、エチレンオキシド、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノマーから形成されるアクリルポリマーを含む。望ましくは、少なくとも1つのアクリルポリマーの水性エマルションは、Averbond SL113NSFの水性エマルションである。少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、ワセリンまたはペトロラタムである。しかしながら、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、ラノリン、シアバター、ミツロウ、ステアリン酸ブチル、セラミド、パルミチン酸セチル、ユーセリット(登録商標)、イソヘキサデカン、パイミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミンク油、鉱油、ナッツ油、オレイルアルコール、ステアリン酸グリセロール、アボカド油、ホホバ油、ラノリン(すなわちウールワックス)、ラノリンアルコールなどのラノリン誘導体、パルミチン酸レチニル(ビタミンA誘導体)、セテアリルアルコール、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ミリスタールミリスチン酸(myristal myristate)、各種の脂質、オレイン酸デシル、ヒマシ油、及びそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0015】
この方法は、ヒューメクタント及び/または活性剤を混合するステップをさらに含んでもよい。
【0016】
本発明は、グローブ本体と、グローブの内面すなわち着用面を覆う実質的に均一なコーティングと、を有するグローブを包含する。グローブ本体は可撓性を有する層であり、例えばポリ(塩化ビニル)またはエラストマーゴムなどの材料で形成され得る。エラストマーゴムは、天然源または合成源から形成され得る。例えば、エラストマーゴムは、ニトリルゴムラテックス(すなわち、ニトリル-ブタジエンゴムラテックス)から形成されたエラストマーニトリルゴム(すなわち、ニトリル-ブタジエンゴム)であってもよい。代替的に、及び/または追加的に、エラストマーゴムは、天然ゴムラテックスから形成されたエラストマー天然ゴム(すなわち、天然ゴム)であってもよい。望ましくは、グローブ本体はエラストマーゴムの単層である。すなわち、グローブ本体は、エラストマーゴムの単層から構成され得る。グローブ本体は、グローブ本体の着用面を形成する内面と、グローブ本体の把持面を形成する外面と、を有する。
【0017】
本発明によれば、コーティングは、少なくとも1つのポリマーと、通常の室温(例えば、約20℃から約25℃)で固相にある少なくとも1つの水不溶性エモリエントと、のブレンドを含む。ポリマーは、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアルコール、エチレンオキシド、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせから選択されるモノマーから形成されるアクリルポリマーであってもよい。望ましくは、アクリルポリマーは、Averbond SL113NSFから形成されたアクリルポリマーである。
【0018】
少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、ワセリンまたはペトロラタムであることが望ましい。しかしながら、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、ラノリン、シアバター、ミツロウ、ステアリン酸ブチル、セラミド、パルミチン酸セチル、ユーセリット(登録商標)、イソヘキサデカン、パイミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミンク油、鉱油、ナッツ油、オレイルアルコール、ステアリン酸グリセロール、アボカド油、ホホバ油、ラノリン(すなわちウールワックス)、ラノリンアルコールなどのラノリン誘導体、パルミチン酸レチニル(ビタミンA誘導体)、セテアリルアルコール、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ミリスタールミリスチン酸(myristal myristate)、各種の脂質、オレイン酸デシル、ヒマシ油、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0019】
コーティングは、少なくとも1つのヒューメクタントをさらに含んでいてもよい。ヒューメクタントは、アラニン、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヒアルロン酸、天然保湿因子(皮膚の天然ヒューメクタントに含まれるアミノ酸と塩との混合物)、異性化糖、乳酸ナトリウム、ソルビトール、尿素、またはそれらの組み合わせであってもよい。コーティングはまた、活性剤を含むか、あるいは組み込んでいてもよい。
【0020】
グローブは、1未満の乾燥摩擦係数を有していてもよい。さらに、グローブが湿気を含んでいるときの摩擦係数が0.5未満であってもよい。
【0021】
本発明は、グローブの作製方法も包含する。この方法は一般に、型の表面を凝固剤溶液及び離型剤でコーティングするステップと、凝固剤溶液及び離型剤でコーティングされた型を部分的に乾燥させるステップと、部分的に乾燥した型をラテックスエマルションに浸漬させることにより、型の表面に凝固したラテックスの層を形成するステップと、ラテックスエマルションから型を取り出すステップと、凝固したラテックスを含む型を水溶液バス(aqueous bath)に浸漬させることにより過剰な凝固剤を除去した後、凝固したラテックスを乾燥させることにより型にグローブ本体を形成するステップと、グローブ本体を含む型を、物品をコーティングするための水性ブレンドに浸漬させるステップであって、ブレンドは、少なくとも1つのポリマーの水性エマルションと、約20℃~約25℃の範囲の温度で固相の少なくとも1つの水不溶性エモリエントと、を有し、水不溶性エモリエントは、水性ポリマーのエマルション中に均一かつ安定に分散している、該ステップと、グローブ本体のコーティングされた外側の面がグローブ本体の内面を形成するように、グローブ本体を反転させることによってグローブ本体を型から取り外すステップと、を含む。ラテックスエマルションはゴムラテックスエマルションであってもよい。例えば、ラテックスエマルションは、天然ゴムまたは合成ゴムのラテックスエマルションであってもよい。
【0022】
本発明の一態様では、物品をコーティングするための水性ブレンドは、初期濃度から、より低い濃度まで希釈され得る。例えば、ブレンドは、約20重量%以上の初期の総固形分から、約5重量%以下の総固形分を有する、より低い濃度まで水で希釈され得る。別の例として、ブレンドは、約20重量%以上の初期の総固形分から、約2.5重量%~約1重量%以下の総固形分を有する、より低い濃度まで水で希釈され得る。
【0023】
本発明によれば、ゴムラテックスエマルションは、約14重量%~約20重量%のラテックス総固形分を有するニトリル-ブタジエンゴムラテックスエマルションであってもよい。望ましくは、ニトリル-ブタジエンゴムラテックスエマルションは、約15重量%~約19重量%のラテックス総固形分を有し得る。さらにより望ましくは、ニトリル-ブタジエンゴムラテックスエマルションは、約16重量%~約18重量%のラテックス総固形分を有し得る。
【0024】
本発明の一態様では、ニトリル-ブタジエンゴムラテックスエマルションは、望ましくは、エラストマーニトリル-ブタジエンゴムがアクリロニトリル、ブタジエン、及びカルボン酸のターポリマーであり、アクリロニトリルポリマーの含有量が約20重量%~約30重量%であり、カルボン酸の含有量が約4重量%~約6重量%であり、かつターポリマー組成物の残りの部分がブタジエンであるものである。
【0025】
本開示の他の目的、利点、及び応用は、以下の詳細な説明によって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明によるエラストマー物品、すなわちグローブの斜視図である。
【
図2】線2-2に沿った
図1の物品の概略断面図であり、物品は基材及びコーティングを含む。
【
図3】従来の医療検査用グローブと比較した、本発明によって作製されたグローブの評価結果の図であり、着用前に石鹸及び水で手を準備した場合のグローブの比較を評価している。
【
図4】従来の医療検査用グローブと比較した、本発明によって作製されたグローブの評価結果の図であり、着用前にアルコール手指消毒剤で手を準備した場合のグローブの比較を評価している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、1以上の実施形態を詳細に参照し、その実施例を図面に示す。一実施形態の一部として図示または説明した特徴を別の実施形態とともに使用して、さらなる実施形態を生み出すことができることを理解されたい。特許請求の範囲には、本開示の範囲及び趣旨に含まれるこれら及び他の修正及び変形が含まれることが意図されている。
【0028】
本明細書で使用するとき、「約」、「およそ」または「略」という用語は、値を変更するために使用される場合、その値が5%増減する可能性があり、開示された実施形態の範囲内にとどまることを示す。さらに、複数の範囲が提供される場合、複数の範囲に記載される最小値と最大値との任意の組み合わせが本発明に含まれる。例えば、「約20%から約80%まで」及び「約30%から約70%まで」という範囲が記載されている場合、「約20%から約70%まで」の範囲、または「約30%から約80%まで」の範囲も本発明によって企図される。
【0029】
身体に着用されるエラストマー物品の望ましい特性は、ポリマー材料の柔らかさ、あるいは柔軟性である。本発明は、ニトリルポリマー配合物から作られるグローブなどの弾性物品の作製について説明する。本明細書で使用するとき、「弾性」または「エラストマー」という用語は、一般に、力を加えると、偏った長さまで伸びることができる材料を指す。引き伸ばす付勢力を解放すると、材料は、ほぼ最終形状または元の寸法に実質的に回復する。
【0030】
本発明は、一般に、コンドームまたはグローブなどの可撓性物品、及び、このような可撓性物品を形成する方法に関する。可撓性物品は、例えばポリ塩化ビニルなどの材料で作製され得る。可撓性物品はエラストマー物品であり得る。本明細書で使用するとき、「エラストマー物品」という用語は、主にエラストマー材料から形成された物品を指す。本明細書で使用するとき、「エラストマー材料」という用語は、容易に伸長または拡張でき、かつ、伸長または拡張力を解放すると実質的に元の形状に戻るポリマー材料を指す。
【0031】
一態様では、本発明は、物品をコーティングするための水性ブレンドを提供する。ブレンドは、少なくとも1つのポリマーの水性エマルションと、少なくとも1つの水不溶性エモリエントと、を有し、水不溶性エモリエントは、通常の室温(例えば、約20℃~約25℃)において固相であり、水性ポリマーのエマルション中に均一かつ安定に分散している。
【0032】
一般的に言えば、水性エマルションは、硬質のガラス状ポリマーとして特徴付けられるポリマーを含む。望ましくは、ポリマーは、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアルコール、エチレンオキシド、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されるモノマーから形成されるアクリルポリマーであり得る。さらにより望ましくは、水性エマルションは、マレーシア、クアラルンプール所在のAverex Technology Sdn Bhd社から入手可能なAverbond SL113NSFの水性エマルションである。
【0033】
本発明によれば、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、通常の室温(例えば、約20℃~約25℃)において固相であるワセリンまたはペトロラタムであってもよい。しかしながら、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、シアバター、ミツロウ、ステアリン酸ブチル、セラミド、パルミチン酸セチル、ユーセリット(登録商標)、イソヘキサデカン、パイミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミンク油、鉱油、ナッツ油、オレイルアルコール、ステアリン酸グリセロール、アボカド油、ホホバ油、ラノリン(すなわちウールワックス)、ラノリンアルコールなどのラノリン誘導体、パルミチン酸レチニル(ビタミンA誘導体)、セテアリルアルコール、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ミリスタールミリスチン酸(myristal myristate)、各種の脂質、オレイン酸デシル、ヒマシ油、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0034】
本発明によれば、水性ブレンドは、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約0.5~約1.5重量部の少なくとも1つのアクリルポリマーの水性エマルションを含む。例えば、水性ブレンドは、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約0.75~約1.25重量部の少なくとも1つのアクリルポリマーの水性エマルションを含む。さらに別の例として、水性ブレンドは、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約1重量部の少なくとも1つのアクリルポリマーの水性エマルションを含む(すなわち、少なくとも1つのポリマーの水性エマルションと水不溶性エモリエントとの比率が1:1である)。
【0035】
水性ブレンドは、少なくとも1つのヒューメクタントを含んでいてもよい。ヒューメクタントは、アラニン、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヒアルロン酸、天然保湿因子(皮膚の天然ヒューメクタントに含まれるアミノ酸と塩の混合物)、異性化糖、乳酸ナトリウム、ソルビトール、尿素、及びそれらの組み合わせから選択され得る。
【0036】
水性混合物はさらに活性剤を含んでいてもよい。活性剤は、コーティングユーザに組み込まれ、コーティングから制御可能に放出され得ることにより、ユーザに何らかの利益を与える。具体的には、予想される使用条件により、洗浄時にユーザの手に付着した水、哺乳動物の汗腺から分泌される湿気などの、様々な発生源からの湿気にコーティングが曝される。
【0037】
一般的に言えば、「活性剤」とは、望ましい結果をもたらし得る任意の化合物またはその混合物である。固体または液体の形態であっても、活性剤は通常、水性系において十分な溶解性または混和性を有し、これにより、コーティングから放出され得る。このような活性剤の例としては、以下に限定しないが、例えば、薬物、スキンコンディショナー(皮膚保湿剤など)、植物性薬剤などが含まれる。「薬物」には、動物に局所的または全身的な作用をもたらす生理学的または薬学的活性を有する任意の物質が含まれる。送達され得る薬剤としては、以下に限定しないが、例えば、抗炎症薬、免疫抑制薬、抗菌薬、麻酔薬、鎮痛薬、ホルモン、抗ヒスタミン薬などが含まれる。多くのこのような化合物は当業者に知られており、例えば、The Pharmacological Basis of Therapeutics,Hardman,Limbird,Goodman&Gilman,McGraw-Hill,New York(1996)、並びに、Niemiecらの米国特許第6,419,913号明細書、Mantelleらの米国特許第6,562,363号明細書、Rothbardらの米国特許6,593,292号明細書、Allen,Jr.らの米国特許第6,567,693号明細書、及びLaviらの米国特許第6,645,181号明細書に記載されており、これらはすべて、あらゆる目的のために、参照により、その全体が本書に組み込まれる。
【0038】
水性ブレンドは、ポリマーの存在なしに水性エマルション中に均一かつ安定に分散される水不溶性エモリエントから構成され得ることが企図される。すなわち、水性ブレンドは、そのような水不溶性エモリエントが水性エマルション中に均一かつ安定に分散している限り、通常の室温において固体である1以上の水不溶性エモリエントのエマルションから構成され得る。
【0039】
本発明はまた、可撓性グローブまたはエラストマーグローブなどの物品をコーティングするための水性ブレンドを形成する方法も包含する。この処理は一般に、少なくとも1つのポリマー(望ましくは、アクリルポリマー)の水性エマルションを提供するステップを含む。水性エマルションは、約10~約25%の範囲の総固形分を有し得る。例えば、水性エマルションは、約15~約20%の範囲の総固形分を有し得る。
【0040】
この方法はまた、少なくとも1つの水不溶性エモリエントを提供するステップを含む。一般的に言えば、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、約50%を超える総固形分含量を有し得る。例えば、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、約75%を超える総固形分含量を有し得る。別の例として、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、約90%を超える総固形分含量を有し得る。
【0041】
物品をコーティングするための水性ブレンドを形成する方法によれば、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、高剪断混合条件下で少なくとも1つのポリマーの水性エマルションとブレンドされる。すなわち、高剪断ミキサーを使用することにより、水不溶性エモリエントは、水性ブレンドである主相に分散される。望ましくは、混合は、水性混合物が安定になるような平衡混合を達成する。
【0042】
このプロセスの一態様では、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約0.5~約1.5重量部の少なくとも1つのポリマー(例えば、アクリルポリマー)の水性エマルションが提供され、材料は高剪断混合によってブレンドされる。例えば、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約0.75~約1.25重量部の少なくとも1つのポリマーの水性エマルションが提供され、材料は高剪断混合によってブレンドされる。別の例として、1重量部の水不溶性エモリエントあたり約1重量部の少なくとも1つのポリマーの水性エマルションが供給され(すなわち、1:1の比率)、材料は高剪断混合によってブレンドされる。
【0043】
本発明によって作製された物品(例えば、可撓性グローブまたはエラストマーグローブ)は、粉末を使用することなく、特に、湿気を有する(damp)または湿った身体部分によって着用される場合に、改善された着用特性を特徴とする。物品は、ポリマーエマルションと水不溶性エモリエントとのブレンドから形成されたコーティングを含む。これは、余分な粉末を除去するために追加の処理ステップが必要であり、かつ手術用グローブなどの一部の用途には適さない粉末コーティング物品に比べて、大きな利点をもたらす。さらに、本発明は、グローブの着用面に添加される従来のヒューメクタントに比べて大きな利点をもたらす。このような従来のヒューメクタントは、従来の着用コーティングによってもたらされる着用上の利点を大幅に減少させるか、完全に排除する可能性がある。
【0044】
本発明は、改善されたダンプ着用特性を有し、かつ皮膚保湿効果を提供する、可撓性を有するグローブまたはエラストマーグローブなどのコーティングされた物品を提供する。例えば、本発明は、皮膚に保湿効果をもたらすとともに、ダンプ条件下で摩擦係数が低減されたグローブなどのエラストマー物品を提供する。
【0045】
図面の
図1を参照すると、本発明によって作製された物品(例えばグローブ20)は、一般に、内面22と、外面24とを含むことを特徴とする。本明細書で使用するとき、「内面」は、着用者の身体に接触する物品の面を指す。本明細書で使用するとき、「外面」は、着用者の身体に対して遠位側の物品の表面を指す。グローブは、第1の面28及び第2の面30を有する基材本体26を含む(
図2)。本明細書で使用するとき、「第1の面」は、着用者の身体に対して近位側の基材の面を指す。本明細書で使用するとき、「第2の面」は、着用者の身体に対して遠位側の基材の面を指す。
【0046】
本発明の物品は、必要に応じて、単一の層または複数の層を含んでいてもよい。基材本体のみを含む単層グローブでは、第1の面がグローブの内面を形成する。しかし、着用者の身体に対して近位側に追加の層を有する多層グローブでは、追加の層はそれぞれ、必要に応じて、内面の一部または内面の全体を形成する。同様に、基材本体のみを含む単層グローブでは、第2の面がグローブの外面を形成する。しかし、着用者の身体に対して遠位側に追加の層を有する多層グローブでは、追加の層はそれぞれ、必要に応じて、外面の一部または外面の全体を形成する。
【0047】
例えば、
図2に示すように、物品は、基材本体26の第1の面28の少なくとも一部を覆う着用層32を含む。このような物品では、着用層32は、内面22の少なくとも一部を形成する。物品は、着用層32の少なくとも一部を覆う追加層などの他の層も含むことが企図される。そのような物品では、追加層は、グローブ20の内面22の少なくとも一部を形成する。
【0048】
基材本体26は、任意の適切な材料から形成される。望ましくは、基材は、一般的には天然ゴムラテックスとして提供される天然ゴムなどのエラストマー材料から形成される。他の実施形態では、エラストマー材料は、ニトリルブタジエンゴムを含んでもよく、特に、カルボキシル化ニトリルブタジエンゴムを含んでいてもよい。本明細書では天然ゴム及びニトリルゴムから形成された物品について詳細に説明するが、他の適切なポリマーまたはポリマーの組み合わせが本発明で使用されてもよいことを理解されたい。例えば、基材本体は、スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン(S-EB-S)ブロック共重合体から形成されてもよい。いくつかの実施形態では、本体は、2以上のエラストマー材料から形成されてもよい。例えば、本体は、Buddenhagenらの米国特許第5,112,900号明細書及び第5,407,715号明細書に記載されている2以上のS-EB-Sブロック共重合体から形成されてもよく、いずれも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。他の実施形態では、エラストマー材料は、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエンブロック共重合体、合成イソプレン、クロロプレンゴム、ポリ塩化ビニル、シリコーンゴム、またはそれらの組み合わせを含む。さらに他の実施形態では、基材本体は、ポリ(塩化ビニル)などの非エラストマー材料で形成されてもよい。
【0049】
本発明によれば、グローブは、グローブの内面を覆う着用層32と呼ばれる実質的に均一なコーティングを含む。コーティングは、アクリルポリマーなどの少なくとも1つのポリマーと、少なくとも1つの水不溶性エモリエントとのブレンドによって構成される。アクリルポリマーは、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアルコール、エチレンオキシド、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせから選択されるモノマーから形成され得る。望ましくは、アクリルポリマーは、Averbond SL113NSFから形成されたアクリルポリマーである。
【0050】
少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、通常の室温(例えば、約20℃~約25℃)において固相である形態のワセリンまたはペトロラタムであることが望ましい。しかしながら、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、シアバター、ミツロウ、ステアリン酸ブチル、セラミド、パルミチン酸セチル、ユーセリット(登録商標)、イソヘキサデカン、パイミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミンク油、鉱油、ナッツ油、オレイルアルコール、ワセリンまたはペトロラタム、ステアリン酸グリセロール、アボカド油、ホホバ油、ラノリン(すなわちウールワックス)、ラノリン誘導体、ビタミンA誘導体、セテアリルアルコール、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ミリスタールミリスチン酸、脂質、オレイン酸デシル、ヒマシ油、及びそれらの組み合わせであり得る。
【0051】
コーティングは、少なくとも1つのヒューメクタントをさらに含んでいてもよい。ヒューメクタントは、アラニン、グリセリン、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヒアルロン酸、天然保湿因子(皮膚の天然ヒューメクタントの1つであるアミノ酸と塩との混合物)、異性化糖、乳酸ナトリウム、ソルビトール、尿素、及びそれらの組み合わせであり得る。コーティングはまた、活性剤を含むか、あるいは組み込んでいてもよい。
【0052】
グローブは、「フォーマー」と呼ばれる手の形をした型で成形される。フォーマーは、ガラス、金属、磁器などの任意の適切な材料から作製される。フォーマーの表面は、製造されるグローブの表面の少なくとも一部を画定する。
【0053】
一般に、グローブは、所望のグローブ特性を得るために、必要に応じて複数の組成物にフォーマーを浸漬させることによって形成される。グローブは層間で固化され得る。任意の層の組み合わせを使用することができ、本明細書では特定の層について説明するが、必要に応じて他の層及び他の層の組み合わせが使用されてもよいことを理解されたい。
【0054】
天然ゴムのグローブを形成するときのように、凝固剤ベースの方法を使用するとき、最初に予熱したオーブンにフォーマーを移して、フォーマーの洗浄で生じた水分を蒸発させる。続いて、フォーマーを、一般的には凝固剤、粉末源、界面活性剤、及び水を含むバスに浸漬させる。残留熱により凝固剤混合物中の水が蒸発し、例えば硝酸カルシウム、炭酸カルシウム粉末、及び界面活性剤がフォーマーの表面に残る。凝固剤は、例えば天然ゴムラテックスまたはニトリルゴムラテックスなどのポリマーラテックスをフォーマー上に堆積させることを可能にするカルシウムイオン(例えば、硝酸カルシウム)を含んでいてもよい。粉末は、完成したグローブをフォーマーから取り外すことを助ける炭酸カルシウム粉末であってもよい。界面活性剤は湿潤性を高め、メニスカスの形成や、特にカフ領域におけるフォーマーと堆積したラテックスとの間の空気の捕捉を回避する。しかしながら、Joungの米国特許第4,310,928号明細書に記載されているものを含む、任意の適切な凝固剤組成物が使用されてもよく、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
続いて、コーティングされたフォーマーを、基材本体を形成するエラストマー材料を含むラテックスに浸漬させる。いくつかの実施形態では、エラストマー材料は、配合された天然ゴムラテックスとして供給され得る天然ゴムを含む。したがって、バスは、例えば、配合された天然ゴムラテックス、安定剤、酸化防止剤、硬化活性化剤、有機促進剤、加硫剤などを含有していてもよい。安定剤には、リン酸系界面活性剤が含まれていてもよい。酸化防止剤はフェノール系であってもよく、例えば2,2'-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)であってもよい。硬化活性化剤は酸化亜鉛であってもよい。有機促進剤はジチオカルバメートであってもよい。加硫剤は硫黄または硫黄含有化合物であってもよい。塊(クラム)の形成を避けるために、最初にボールミルを使用して安定剤、酸化防止剤、活性化剤、促進剤、及び加硫剤を水に分散させた後、天然ゴムラテックスと組み合わせてもよい。
【0056】
浸漬処理中、フォーマー上の凝固剤によってエラストマー材料の一部が局所的に不安定になり、フォーマーの表面に凝固する。エラストマー材料は合体し、凝固するエラストマー材料の表面で凝固剤組成物中に存在する粒子を捕捉する。フォーマーはエラストマー材料のバスから取り出され、凝固層が完全に合体することが可能になり、これにより、基材本体が形成される。所望のグローブの厚さを得るために、フォーマーを1以上のラテックス浴に十分な回数浸漬させる。いくつかの実施形態では、基材本体は、約0.004インチ(0.1mm)から約0.012インチ(0.3mm)の厚さを有し得る。
【0057】
続いて、熱水が循環する浸出槽にフォーマーを浸漬させ、天然ゴムラテックスに含まれる残留硝酸カルシウムやタンパク質などの水溶性成分を除去する。続いて、グローブをフォーマー上で乾燥させることにより基材本体を固化させ、安定化させる。基材本体を形成するために、様々な条件、処理、及び材料が使用され得ることを理解されたい。
【0058】
他の層は、追加の浸漬処理を含めることによって形成されてもよい。このような層は、グローブに追加の属性を与えるために使用される。これらの処理が完了すると、フォーマーは追加のコーティングプロセスを受けて、グローブの内層すなわち着用層32を形成する。着用層を形成するために、浸漬(ディッピング)、噴霧、イマージョン、プリンティング、タンブリング、または他の適切な技術などの任意のプロセスが使用され得ることを理解されたい。
【0059】
したがって、例えば、浸漬処理を用いる場合、フォーマーは、物品をコーティングするための水性ブレンドを含む組成物中に浸漬される。ブレンドは、少なくとも1つのポリマー(例えば、アクリルポリマー)の水性エマルションと、通常の室温において固相である少なくとも1つの水不溶性エモリエントとを有し、水不溶性エモリエントは水性ポリマーエマルション中に均一かつ安定に分散している。
【0060】
一般的に言えば、水性エマルションは、ビニルピロリドン、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ビニルピリジン、アクリルアミド、ビニルアルコール、エチレンオキシド、それらの誘導体、及びそれらの組み合わせからなる群より選択されたモノマーから形成されるアクリルポリマーを含有する。望ましくは、水性エマルションは、Averbond SL113NSFの水性エマルションである。
【0061】
本発明によれば、少なくとも1つの水不溶性エモリエントはワセリンまたはペトロラタムであってもよい。しかしながら、少なくとも1つの水不溶性エモリエントは、シアバター、ミツロウ、ステアリン酸ブチル、セラミド、パルミチン酸セチル、ユーセリット(登録商標)、イソヘキサデカン、パイミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ミンク油、鉱油、ナッツ油、オレイルアルコール、ワセリンまたはペトロラタム、ステアリン酸グリセロール、アボカド油、ホホバ油、ラノリン(すなわちウールワックス)、ラノリン誘導体、ビタミンA誘導体、セテアリルアルコール、スクワラン、スクワレン、ステアリン酸、ステアリルアルコール、ミリスタールミリスチン酸、脂質、オレイン酸デシル、ヒマシ油、またはそれらの組み合わせであってもよい。
【0062】
本発明の一態様によれば、水性ブレンドを初期濃度からより低い濃度まで希釈した後、物品をコーティングするためにフォーマーを水性ブレンドに浸漬させることが望ましい。例えば、ブレンドは、約20重量%以上の初期の総固形分から、約5重量%以下の総固形分を有する、より低い濃度まで水で希釈され得る。別の例として、ブレンドは、約20重量%以上の初期の総固形分から、約2.5重量%~約1重量%以下の総固形分を有する、より低い濃度まで水で希釈され得る。
【0063】
着用層は、最終エラストマー物品中に任意の適切な量で存在し、いくつかの実施形態では、着用層は、エラストマー物品の約0.1重量%~約0.25重量%の量で存在する。他の実施形態では、着用層は、エラストマー物品の約0.25重量%~約1.5重量%の量で存在する。さらに他の実施形態では、着用層は、エラストマー物品の約0.5重量%の量で存在する。
【0064】
フォーマーを組成物から取り出すと、着用層組成物によってコーティングされた基材本体を硬化ステーションに移送し、加硫ステーションでエラストマー材料を通常はオーブン内で加硫する。硬化ステーションは、最初にフォーマー上のコーティングに残っている水を蒸発させ、その後、高温の加硫に進む。乾燥は約85℃~約95℃の温度で行われ、加硫ステップは約110℃~約120℃の温度で行われる。例えば、グローブ20は、単一のオーブン内で、115℃の温度で約20分間加硫される。あるいは、オーブンを4つの異なるゾーンに分割し、温度が上昇するゾーンを通してフォーマーを運んでもよい。例えば、オーブンには4つのゾーンがあり、最初の2つのゾーンは乾燥専用であり、2番目の2つのゾーンは主に加硫専用であってもよい。各ゾーンの温度は他のゾーンの温度に対してわずかに高くてもよく、例えば、最初のゾーンは約80℃、第2のゾーンは約95℃、第3のゾーンは約105℃、最後のゾーンは約105℃であってもよい。各ゾーン内でのフォーマーの滞留時間は約10分である。フォーマーのラテックスコーティングに含まれる促進剤及び加硫剤は、天然ゴムを架橋するために使用される。加硫剤は異なるゴムセグメント間に硫黄架橋を形成し、促進剤は急速な硫黄架橋の形成を促進するために使用される。
【0065】
本発明の水性ブレンド(すなわち、少なくとも1つのアクリルポリマーの少なくとも1つの水性エマルション、及び水性アクリルポリマーエマルション中に均一かつ安定に分散している少なくとも1つの水不溶性エモリエント)の使用は、本発明のエラストマー物品を形成する際に、高いプロセス柔軟性をもたらすことが見出された。特に、着用層は、上述したように物品を硬化する前に形成されてもよく、実施例に記載したように基材本体を硬化した後に形成されてもよいことが見出された。
【0066】
所望のポリマー層がすべて形成され、グローブが固化すると、フォーマーは剥離ステーションに移送され、剥離ステーションではグローブがフォーマーから取り外される。剥離ステーションでは、グローブをフォーマーから自動または手動で取り外すことができる。例えば、一実施形態では、グローブは手動で取り外され、フォーマーから剥離されるときに裏返しにされる。
【0067】
本発明を以下の実施例によりさらに説明する。しかしながら、そのような実施例は、本発明の趣旨または範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0068】
実施例
【0069】
エラストマー物品の形成
【0070】
このセクションでは、「フォーマー」と呼ばれる手の形をした型によるエラストマー製の物品、より具体的にはグローブの形成について説明する。フォーマーは、磁器などの任意の適切な材料から作製される。フォーマーの表面は、完成したグローブの外面を画定する。
【0071】
ステップ1
【0072】
フォーマーを、セントラルチェーン(10m/分-15m/分の速度)に乗せて予熱されたオーブン内を移送し、これにより、フォーマーに存在する水分を蒸発させた。続いて、フォーマーを、硝酸カルシウム(凝固剤として)、ワックス、ステアリン酸カルシウム(ステアリン酸亜鉛またはステアリン酸マグネシウムの代替)、界面活性剤、消泡剤、及び水を含む凝固剤配合物を通常含むバスに浸漬させた。オーブンからの残留熱により、凝固剤配合物の水分が蒸発し、フォーマーが残留物によって比較的均一にコーティングされた状態になった(前述の成分の機能は以下のとおりであるが、これらは本発明の重要な側面であるとはみなされない:硝酸カルシウムは、その後の凝固を引き起こすカルシウムイオンの供給源である。ワックス及びステアリン酸塩は、完成したグローブのフォーマーからの取り外しを助け、遊離粒子は最小限または無い。界面活性剤は、フォーマーへの、及びフォーマーの湿潤性を向上させる(その後の浸漬に関して重要である)。消泡剤は、凝固剤配合物中の泡の発生を防止する)。
【0073】
ステップ2
【0074】
次に、コーティングされたフォーマーをニトリルラテックス及び水のバスに浸漬させた。ニトリルラテックスは、ニトリルゴム、安定剤、酸化防止剤、硬化活性剤、有機促進剤、加硫剤、及び水を含むエマルションである。未処理の(as-received)ニトリルエマルションの一般的な固形分含有量は40~45%である。コーティングされるべきグローブを形成するために適したニトリルラテックスのバスの一例は、ニトリルラテックス固形分を約20%に希釈したものである(グローブの厚さを考慮して)。この浸漬処理中、フォーマー上の凝固剤によってニトリルラテックスがフォーマーの周囲で比較的均一な層に合体し、これにより、凝固剤配合物を覆った。フォーマーをバスから取り出し、ニトリルラテックスの凝固層を完全に合体させた。複数回の浸漬も可能であるが(例えば、ニトリルラテックス層を厚くするため)、所望のグローブの厚さ(例えば、手のひら領域で0.07mm)を達成するには、1回の浸漬のみでよい(ニトリルラテックスバスの固形分含有量も、コーティングされるグローブの厚さも、本発明の重要な側面ではない)。
【0075】
ステップ3
【0076】
次に、ラテックスを含むフォーマーを熱水が循環する浸出タンクに浸漬させ、残留硝酸カルシウムやその他の浸出性物質などの水溶性成分を除去した。この浸出プロセスには、約48℃-66℃の水温で約3-10分かかった。続いて、ラテックスを含むフォーマーを37℃-44℃で乾燥させて表面から余分な水分を取り除いた。
【0077】
ステップ4
【0078】
次に、浸出ラテックスを含むフォーマーを、アクリルポリマー、エモリエント、及び水を含む水性着用コーティングバス(aqueous donning coat bath)に浸漬させて、浸出したラテックスの外側にポリマー/エモリエントの均一な薄層コーティングを堆積させた。本発明の重要な側面は、以下のステップ4Aに記載されるアクリル-エモリエントブレンドの調製である。続いて、アクリル-エモリエントブレンドを、以下のステップ4Bに記載するように、水性アクリルポリマーエマルション、水、及び任意選択で他の成分に添加した。
【0079】
ステップ4A-アクリル-エモリエントブレンドの生成
【0080】
15~20%の総固形分(TSC)を含有する約1重量部のアクリルポリマー水性エマルションを、約1重量部のペトロラタム及び任意選択で約0.1重量部の脱イオン水と、高剪断混合条件下、室温で混合した。予想外なことに、この混合物は、ペトロラタムをアクリルポリマー水性エマルション中に均一かつ安定して分散させた。(アクリル-エモリエントブレンドを形成するための)アクリルポリマー水性エマルションへのペトロラタムの分散を実証した特定の成分を表1に列挙する。これらの成分を、シルバーソン社のブレンダーを用いて高剪断混合条件で混合した。
【0081】
【0082】
ステップ4B-水性着用コーティングバスの生成
【0083】
アクリルポリマーエマルションを水で希釈することにより、中間バス中でアクリルポリマーエマルションの総固形分が約1.5-2重量%であるエマルションを形成した。このバスにおける循環は、均一な混合を達成及び維持するために確立された。ステップ4Aで配合した或る量のアクリル-エモリエントブレンドをこのバスに注ぎ、水性の着用コーティングバスを作成した。任意選択で、追加の成分を、アクリル-エモリエントブレンドと同様の方法で水性着用コーティングバスに添加した。
【0084】
浸出ラテックスによってフォーマーをコーティングするために使用される様々な水性着用コーティングバス、比較バス、及び対応するグローブの例を、次の「最終ステップ」というタイトルのセクションで説明する。
【0085】
最終ステップ
【0086】
次に、浸出したラテックスとポリマー-エモリエントブレンドのコーティングとを有するフォーマーをオーブンに移送し、ラテックスとポリマー-エモリエントブレンドのコーティングを乾燥及び硬化させて完成グローブを得た。完成グローブを備えたフォーマーを剥離ステーションに移送し、剥離ステーションでは、グローブをフォーマーから取り外し、裏返しにした。グローブを裏返すと、ポリマー-エモリエントのブレンドによって形成されたコーティングがグローブの内側になり、例示的な着用層として機能する。
【0087】
着用コーティング-アクリルエマルション及び水非混和性エモリエント
【0088】
簡単に比較できるように、以下の実施例を表2に示す。
【0089】
比較例1(DOE対照):ステップ4を除き、上記のステップにしたがってグローブを作製し、完成したグローブを備えたフォーマーを剥離ステーションに移送する前に塩素化ステップを追加した。
【0090】
比較例2(DOE1):アクリル-エモリエントブレンドを水性着用コーティングバスに添加しなかった(0%)ことを除き、先のステップに従ってグローブを作製した。水性着用コーティングバスは、1.5重量%のアクリルポリマーエマルション及び水から構成された。アクリルポリマーエマルションはByodon NBR4(約20%TSC)であった。
【0091】
比較例3(DOE8及び11):ステップ4Aでアクリルポリマーエマルションをシリコーンエマルションに代えたことを除き、先のステップに従ってグローブを作製した。水性着用コーティングバスは、比較例2の1.5%のアクリルポリマーエマルション、0.4%のシリコーンエマルション、ステップ4の0.35%のアクリルポリマーエマルション、及び水から構成された。シリコーンエマルションはSM2140であった。
【0092】
実施例1(DOE27):先のステップ1-4Bに従ってグローブを作製した。水性着用コーティングバスは、比較例2の2%のアクリルポリマーエマルション、ステップ4Aの0.5%のアクリルポリマーエマルション、ステップ4Aの0.5%のペトロラタム、及び水から構成された。
【0093】
実施例2(DOE31):先のステップに加えて、ステップ4Bにおいてシアバターを含めてグローブを作製した。水性着用コーティングバスは、比較例の2重量%のアクリルポリマーエマルション、ステップ4Aの0.5重量%のアクリルポリマーエマルション、ステップ4Aの0.5重量%のペトロラタム、0.5重量%のPEG50シアバター(Rita Corporation社のSheaBu WS)、及び水から構成されていた。
【0094】
実施例3(DOE32):実施例3のステップに加えて、ステップ4Bにおいてグリセロールを含めてグローブを作製した。水性着用コーティングバスは、比較例の2重量%のアクリルポリマーエマルション、ステップ4Aの0.5重量%のアクリルポリマーエマルション、ステップ4Aの0.5重量%のペトロラタム、実施例2の0.5重量%のシアバター、0.2重量%のグリセロール、及び水から構成された。
【0095】
実施例4(DOE33):実施例4のステップに加えて、ステップ4Bにおいてシリコーンエマルションを含めてグローブを作製した。水性着用コーティングバスは、比較例2の2重量%のアクリルポリマーエマルション、ステップ4Aの0.5重量%のアクリルポリマーエマルション、ステップ4Aの0.5重量%のペトロラタム、実施例2の0.5重量%のシアバター、0.2重量%のグリセロール、比較例3の0.2重量%のシリコーンエマルション、及び水から構成された。
【0096】
ポリマー/エモリエントコーティングを着用側層として塗布するための前述のステップは、浸漬処理によって作製された他の種類(例えば、天然ゴムラテックス、その他の合成ラテックス、及びビニール)のグローブにも適用できると考えられる。
【0097】
【0098】
摩擦係数
【0099】
表2に示す各グローブのサンプルを試験し、ドライ状態とダンプ状態との両方でそれぞれのニトリルグローブの摩擦特性を測定することにより、ダンプ状態においてどのグローブが最も容易に着用できるかを判定した。KES表面試験機(KES-SE)を使用して、ニトリルグローブサンプルの摩擦特性を測定した。シリコーンで覆われたプローブ(10mmx10mm)を使用した。試験速度を1mm/秒に設定した。接触力を25gに設定した。各サンプルを両面テープでテストフレームに取り付け、サンプルの折り目や皺をすべて取り除いた。サンプルを、乾燥状態及び湿潤状態で試験した。サンプルを濡らすために、まず綿棒を脱イオン水の入ったトレイに浸漬させ、その後サンプル上で軽く前後に7回拭いた。各サンプル上の水の量を、表面試験を実行する前に測定及び記録した。サンプル上の平均の水の量は0.031+/-0.007gであった。
【0100】
2つのテストパラメータが生成された:摩擦係数の平均値(「COF」、無次元)及び摩擦係数の平均偏差(「MMD」、無次元)である。結果を以下の表3に示す。
【0101】
【0102】
摩擦係数は、2つのすべり面を相互に動かすために必要な力と、2つのすべり面を保持する力の比として定義される。値0は摩擦がまったくないことを意味し、値1は摩擦力が法線力と等しいことを意味し、摩擦係数が1より大きいことは、摩擦力が法線力よりも強いことを意味し、これは動きに対する高レベルの摩擦または抵抗を示す。表3に示すように、処理されたグローブ(実施例1-4)のCOF値は、乾燥条件と湿潤条件との両方で対照のCOF値よりも有意に低く、これは、処理されたグローブの摩擦力が非常に低く、対照のグローブと比較して、乾いた手(ドライハンド)と湿った手(ダンプハンド)との両方の条件下で、より容易に着用できる可能性があることを示している。MMD値が低いほど、グローブの表面の平坦さまたは均一性が高いことを示す。表3に示すように、処理されたグローブ(実施例1-4)は、乾燥状態と湿潤状態との両方で対照よりも有意に低いMMD値を示し、これにより、処理されたグローブのそれぞれが対照よりも優れた表面均一性を有することが示された。換言すれば、グローブの内側に施された処理により、グローブ表面の均一性が向上した。
【0103】
さらに、以下の表4に示す各グローブのサンプルを試験し、乾燥状態と湿潤状態との両方でそれぞれのニトリルグローブの摩擦特性を測定することにより、ダンプ状態においてどのグローブが最も容易に着用できるかを判定した。試験を、上記の表2のグローブの試験について上述したステップと同様のステップで実施した。KES表面試験機(KES-SE)を使用して、ニトリルグローブサンプルの摩擦特性を測定した。シリコーンで覆われたプローブ(10mmx10mm)を使用した。試験速度を1mm/秒に設定した。接触力を25gに設定した。各サンプルを両面テープでテストフレームに取り付け、サンプルの折り目や皺をすべて取り除いた。サンプルを、乾燥状態及び湿潤状態で試験した。サンプルを濡らすために、まず綿棒を脱イオン水の入ったトレイに浸漬させ、その後サンプル上で軽く前後に7回拭いた。各サンプル上の水の量を、表面試験を実行する前に測定及び記録した。サンプル上の平均の水の量は0.034+/-0.0085gであった。2つのテストパラメータが生成された:摩擦係数の平均値(「COF」、無次元)及び摩擦係数の平均偏差(「MMD」、無次元)である。結果を以下の表5に示す。
【0104】
【0105】
【0106】
表5に示すように、処理されたグローブ(実施例1-3)のCOF値は、乾燥条件及び湿潤条件との両方で、経年劣化条件及び非経年劣化条件において対照のCOF値よりも有意に低く、これは、処理されたグローブの摩擦力が非常に低く、対照のグローブと比較して、乾いた手(ドライハンド)と湿った手(ダンプハンド)との両方の条件下で、より容易に着用できる可能性があることを示している。さらに、実施例1(コード59-4)のグローブは、経年劣化条件と非経年劣化条件との両方で、実施例2(コード61)及び実施例3(コード65)のグローブよりも有意に高い平均COFを有していた。コード61とコード65とのグローブの間に有意な差はなかった。しかしながら、経年劣化は、実施例1(コード59-4)及び実施例2(コード61)のグローブのCOF値の低下に何らかの影響を与えているようであった。経年劣化は、実施例3(コード65)のCOFには影響を与えていないようであった。
【0107】
MMD値が低いほど、グローブの表面の平坦さまたは均一性が高いことを示す。表5に示すように、処理されたグローブ(実施例1-3)は、乾燥状態と湿潤状態との両方で対照よりも有意に低いMMD値を示し、これにより、処理されたグローブのそれぞれが対照よりも優れた表面均一性を有することが示された。換言すれば、グローブの内側に施された処理により、グローブ表面の均一性が向上した。
【0108】
臨床家による装着の改善の認識
【0109】
上記の表4に示す各グローブのサンプルを評価して、本発明の処理を受けていない、対照の市販ニトリルグローブと比較して、本発明の処理されたニトリル試作グローブの改善された着用特性を決定した。追加の属性(触覚感度、着用感、性能、触ったあとの手の皮膚特性)も追跡し、対照に対して、試作品で劣化がないことを確認した。すべての属性の許容レベルは70%を超える必要があった。
【0110】
ある実験例では、各臨床家がそれぞれの作業環境で通常行うように、臨床家が石鹸及び水で手を準備し、紙を折りたたんだハンドタオルで手を乾燥させた。次に、各臨床家がそれぞれの作業環境で通常行うように、ハンドタオルを乾燥させたあと、臨床家がグローブを着用した。臨床家は、触覚感度、乾燥状態での把持、湿潤状態での把持、グローブの取り外し、触ったあとの手、グローブに付いた指紋を評価するために様々なアクティビティを実施した。次に、各臨床家に対し、4つのグローブすべてを評価したあと、総合的な好みの順にグローブをランク付けするよう求めた。評価に参加した臨床家は全員、病院で、少なくとも週に3日定期的に勤務し、かつ勤務中は1日あたり少なくとも4組の検査用グローブを着用する看護師であった。
【0111】
図3に示すように、3つの試作グローブはすべて、対照よりも有意に着用しやすく、かつ、対照よりも取り外すのが簡単であった。
図3にさらに示すように、以下の属性については有意な差異は認められなかった:着用中の破れ、乾燥状態での把持及び湿潤状態での把持の許容性、指の動き、手の疲労、グローブの湿潤/乾燥、取り外し後の高温/低温、及びグローブ全体の許容性。グローブを取り外すときの「手触り」については、実施例3(コード65)が実施例1(コード59-4)及び対照グローブよりも有意に高く評価された。
【0112】
別の実験例では、臨床家はアルコールジェル手指消毒剤で手を準備した。具体的には、臨床家は石鹸及び水で手を準備し、紙を折りたたんだハンドタオルで手を乾燥させ、5分待ち、アルコールベースの手指消毒ジェルを塗布し、乾燥するまで3.5分待ち、アルコールベースの手指消毒ジェルを塗布し、乾燥するまで3.5分待ち、臨床家が病院環境で通常行うように、アルコールベースの手指消毒ジェルを塗布し、グローブを着用した。次に、臨床家は、触覚感度、乾燥状態での把持、湿潤状態での把持、グローブの取り外し、触ったあとの手、及びグローブに付いた指紋を評価するために様々なアクティビティを実施した。次に、各臨床家に対し、4つのグローブすべてを評価したあと、総合的な好みの順にグローブをランク付けするよう求めた。評価に参加した臨床家は全員、病院で、少なくとも週に3日定期的に勤務し、かつ勤務中は1日あたり少なくとも4組の検査用グローブを着用する看護師であった。
【0113】
石鹸及び水の評価と同様、3つの試作グローブはすべて、
図4に示すように、アルコールジェル手指消毒剤で手を準備したあと、対照よりも着用が有意に容易であった。さらに、実施例3(コード65)は実施例1(コード59-4)及び対照よりも着用が有意に容易であり、実施例2(コード61)は対照よりも着用が有意に容易であった。
図4に示すように、以下の属性については有意な差異は認められなかった:着用中の破れ、グローブの手触り、触覚感度、乾燥状態での把持及び湿潤状態での把持の許容性、指の動き、手の疲労、グローブの濡れ/乾燥、作業後のグローブの快適さ、グローブを取り外したあとの手触り、及びグローブ全体の受容性。
【0114】
本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明したが、本発明に含まれる主題はそれらの特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。反対に、本発明の主題には、特許請求の範囲の趣旨及び範囲内に含まれるすべての代替物、修正物、及び均等物が含まれることが意図されている。
【国際調査報告】