(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】リポ多糖とリポタイコ酸を活用した抗炎症及び再生機能が強化された高濃度幹細胞エクソソーム生産方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0797 20100101AFI20231222BHJP
A61K 35/51 20150101ALI20231222BHJP
A61K 35/12 20150101ALI20231222BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20231222BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20231222BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20231222BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20231222BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231222BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C12N5/0797
A61K35/51
A61K35/12
A61K8/98
A61P17/00
A61K9/06
A61Q19/00
A61P29/00
C12Q1/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534203
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 KR2021018354
(87)【国際公開番号】W WO2022119417
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0168689
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522388176
【氏名又は名称】プリモリス セラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン ヒ-ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ イェ-イン
(72)【発明者】
【氏名】イ ドン-ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ナ キュ-フム
【テーマコード(参考)】
4B063
4B065
4C076
4C083
4C087
【Fターム(参考)】
4B063QA20
4B063QQ08
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4B065CA44
4C076AA09
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4C087MA28
4C087MA63
4C087NA14
4C087ZA89
4C087ZB11
(57)【要約】
本発明は、LPSとLTAを活用した抗炎症機能が強化された高濃度幹細胞エクソソーム生産方法と、前記方法により生産可能な抗炎症及び/又は再生誘導組成物に関する。本発明による抗炎症組成物の生産方法は、リポ多糖(LPS)及びリポタイコ酸(LTA)からなる群より選ばれた1つ以上を幹細胞培養時に処理する第1のステップと、選択的に第1のステップの結果物である幹細胞、この培養液、及び/又は、このエクソソームを分離する第2のステップとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
未処理臍帯血幹細胞に対して、臍帯血幹細胞培養時に分泌されるエクソソームの濃度を増加させるために、リポ多糖(LPS)及びリポタイコ酸(LTA)からなる群より選ばれた1つ以上が添加された無血清バッジで、臍帯血幹細胞を培養する第1のステップと、
選択的に第1のステップの結果物である臍帯血幹細胞、この培養液、及び/又は、このエクソソームを分離する第2のステップとを含むことが特徴とするエクソソーム生産方法。
【請求項2】
前記エクソソームは、未処理臍帯血幹細胞由来エクソソームに対して、抗炎症及び/又は再生機能が強化したことを特徴とする請求項1に記載のエクソソーム生産方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の生産方法で得られたエクソソーム、又は、これを含む培養液を有効性分として含むことを特徴とする皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物。
【請求項4】
化粧料組成物、医薬外品組成物、又は、薬学組成物であることを特徴とする請求項3に記載の皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物。
【請求項5】
臍帯血幹細胞のエクソソームは、経皮透過型キャリアとして用いられることを特徴とする請求項3に記載の皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物。
【請求項6】
高分子と混合してゲル化した剤形であり、体温条件では、ゾル化することを特徴とする請求項3に記載の皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物。
【請求項7】
リポ多糖(LPS)及びリポタイコ酸(LTA)からなる群より選ばれた1つ以上を、幹細胞培養時に処理する第1のステップと、
選択的に第1のステップの結果物である幹細胞、この培養液、及び/又は、このエクソソームを分離する第2のステップとを含むことを特徴とする抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法。
【請求項8】
第1のステップは、幹細胞培養時、リポ多糖(LPS)及びリポタイコ酸(LTA)を全て処理することを特徴とする請求項7に記載の抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法。
【請求項9】
リポ多糖(LPS)は、グラム陰性(Gram Negative)菌の細胞壁成分であり、リポタイコ酸(LTA)は、ググラム陽性(Gram Positive)菌の細胞壁成分であることを特徴とする請求項7に記載の抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法。
【請求項10】
第1のステップは、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)の処理により、幹細胞培養時、未処理幹細胞に対して抗炎症性サイトカインのmRNA発現量及び/又は分泌量が増加し、分泌されるエクソソーム内の抗炎症性サイトカイン含有量が高いことを特徴とする請求項7に記載の抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法。
【請求項11】
第1のステップは、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)の処理により、幹細胞の免疫反応を活性化させることを特徴とする請求項7に記載の抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法。
【請求項12】
第1のステップにおいて、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)は、幹細胞の炎症反応を誘導することを特徴とする請求項7に記載の抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法。
【請求項13】
第1のステップの結果物であるエクソソームは、LPS及び/又はLTAを含有しないことを特徴とする請求項7に記載の抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法。
【請求項14】
第1のステップの結果物を細胞に処理すると、炎症誘導因子の発現量を減少させ、炎症誘導抑制因子の発現量を増加させることを特徴とする請求項7に記載の抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法。
【請求項15】
抗炎症組成物は、第1のステップの結果物である幹細胞が分泌されたエクソソーム、又は、これを含有する培養液であることを特徴とする請求項7に記載の抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法。
【請求項16】
第1のステップにおいて、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)により幹細胞が分泌されるエクソソーム生産量が増加することを特徴とする請求項7に記載の抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法。
【請求項17】
幹細胞は、臍帯血幹細胞であることを特徴とする請求項7乃至16のいずれか一項に記載の抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法。
【請求項18】
請求項7乃至16のいずれか一項に記載の生産方法で得られることを特徴とする抗炎症及び/又は再生誘導組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LPS(Lipopolysaccharide)とLTA(Lipoteichoic Acid)を活用した抗炎症及び/又は再生機能が強化された高濃度幹細胞エクソソーム生産方法、及び前記方法により生産可能な抗炎症及び再生誘導組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
人間の身体を構成する細胞は、周辺細胞と疎通のための信号伝達物質として、脂質二重層を有する様々なサイズの細胞外小胞(Extracellular Vesicles)を分泌する。細胞外小胞は、サイズによって、Exosome(30~200nm)、Micro-vesicle(200~1000nm)、Apoptotic Body(1um~5um)に分類される。
【0003】
エクソソームには、miRNAのような核酸とタンパク質などが含まれている。成体幹細胞から分泌されるエクソソームは、周辺細胞の再生と抗炎症効果に優れる効能を表す多くの研究がなされており、これを活用した様々な治療剤を開発するための研究が行われている。
【0004】
エクソソームを機能的に向上するための方法としては、エクソソームを分泌する細胞の特性を調節する方法と、エクソソーム分離後、特定の物質を搭載する方法で、エクソソームを、治療物質を運送する目的として活用する方法とがある。
【0005】
エクソソームを分離する方法としては、Ultracentrifuge、Ultrafiltration、Chromatographyなどの方法があり、分離方法によって、エクソソームの機能的特性、純度、濃度、サイズが変わることになる。
【0006】
幹細胞の種類としては、胚芽幹細胞、成体幹細胞、逆分化幹細胞があり、これらのうち、成体幹細胞は、血液、骨髄、脂肪などから抽出するため、胚芽幹細胞とは異なり、倫理的な問題で自由である。骨髄、脂肪由来幹細胞の場合、供与者から侵襲的な方法で抽出され、臍帯血幹細胞の場合、出産後に廃棄される臍帯血から抽出して、供与者に侵襲的な方法を使用せず、供与者間の臍帯血幹細胞の効能差が少ないというメリットがある。特に、幹細胞の有効因子に対する皮膚内浸透力を高めることができる技術開発に関する研究がなされており、その1つが、エクソソームを活用することである。
【0007】
【0008】
表皮(epidermis)を満たす細胞は、角質細胞(keratinocytes)、メラニン細胞(melanocytes)、樹脂状細胞(dendritic cells)、及び触覚細胞(tactile cells)を含む。殆どの表皮細胞は、角質細胞である。角質細胞の主な機能は、熱、紫外線、水分損失、病原性バクテリア、カビ、寄生虫、及びウイルスによる環境被害に対するバリア形成である。多数の構造タンパク質(filaggrin、keratin)、酵素(プロテアーゼ)、脂質、及び抗菌性ペプチド(defensins)は、皮膚の重要なバリア機能を維持することに寄与する。
【0009】
真皮層は、表皮層(0.04mm~1.6mm)の15~40倍の厚さを示し、皮膚の殆どを占め、皮膚の弾力を維持する層であって、表皮と皮下組織の間の結合組織(connective tissue)として作用する。皮膚附属器、血管、リンパ管、筋肉、神経などがあり、大別して、真皮乳頭層(papillary dermis)と、真皮網状層(reticular dermis)の2つの層に分けられる。
【0010】
真皮乳頭層は、真皮全体の厚さにおいて、極めて一部を占めており、コラーゲン、血管、繊維細胞(fibrocyte)からなる。血管のない(avascular)表皮の基底層に栄養分を供給する。真皮網状層は、真皮の殆どを占める層であり、エラスチンとコラーゲン繊維が太い束をなして配列されており、皮膚に強度と柔軟性を付与し、弾力繊維及び様々な基質タンパク質からなる。コラーゲンは、結合織総タンパク質の約25%を占め、真皮層の引張強度に重要な役割を果たす。一方、MMP(matrix metalloprotease)は、細胞外基質(extracellular matrix、ECM)を加水分解する亜鉛依存性のエンドペプチダーゼ(zinc-dependent endopeptidase)である。MMPは、ECMを分解して、細胞の移動能を増加し、皮膚組織を循環させるが、しわを形成して皮膚老化を促進させ、癌細胞の転移を促進し、紫外線、ストレス、抗生剤などにより形成が促進される。フィブロネクチン(Fibronectin)は、細胞表面、結合組織、血液中に存在する糖蛋白質である。細胞は、直接してコラーゲンと連結されていなく、フィブロネクチンを介して連結されている。
【0011】
線維芽細胞(fibroblast)は、角質細胞が要する成長因子及びサイトカインをいずれも生産及び分泌する。角質細胞は表皮細胞で、環境に最も容易に露出する細胞である。線維芽細胞は、角質細胞を通じて活性化し、活性化により細胞外基質を再形成して、皮膚層をムラなくする。
【0012】
皮膚は、全身を覆う最も大きい器官である。角質細胞(KC)は、主な構成要素である。KCは、ケラチンタンパク質を作って、外因性刺激に対する保護膜の役割を果たす。KCは、様々な種類のサイトカインを生産することと立証されたため、皮膚は、身体の免疫及び炎症反応に重要な役割をする。サイトカインは、他の細胞と器官に影響して、細胞成長と分化はもちろん、炎症と免疫反応を媒介する。そこで、サイトカインは、細胞及び細胞間の恒常性を維持する。様々な皮膚疾患において、調節障害とサイトカインの異常な生成が感知される。特定疾病の病因又は重症度に対するサイトカインの相当な寄与を表す証拠が蓄積されている。
【0013】
人体の皮膚は、身体の最も外側に位置して、バリア機能により、外部ストレスから人体を保護する器官であるが、環境汚染及び紫外線のような外部刺激のため、活性酸素(Reactive oxygen species; ROS)を作る器官でもある。
【0014】
皮膚に最も容易に露出される紫外線は、細胞濃度を正常に維持、Vit.Dの生成及び殺菌作用など、有益な作用をするが、真皮層に到達して、線維芽細胞(dermal fibroblast)内のROSを増加して、MMP(matrixmetalloproteinase)の発現を誘導して、結合組織であるコラーゲン、エラスチン、グリコサミノグリカン(glycosaminoglycane)(GAG)、ヒアルロン酸鎖の切断及び繊維を分解して、最終的に皮膚しわを生成、皮膚老化を加速化する。また、生体内ROSによる脂質過酸化は、脂質過酸化が起きる部位だけでなく、遠く離れた箇所まで過酸化ラジカルが血液に乗って移動して、他の部位の過酸化を誘発し、このような酸化反応は、高血圧、動脈硬化、心不全、リュウマチ関節炎、アレルギー、癌、脳卒中、パーキンソン病、認知症などのような脳疾患及び骨粗鬆症の原因となる。その他にも、ROSは、アトピー皮膚炎、にきび、乾癬などを誘発又は悪化させ、細胞内でのDNA損傷と皮膚癌及び皮膚老化を招く炎症過程(inflammatory processes)とアレルギー反応(allergic responses)にも関与する。
【0015】
一酸化窒素(NO)とプロスタグランジン(Prostaglandin)E2(PGE2)は、免疫細胞の代表的な炎症因子であって、NOは、細胞内恒常性維持、神経伝達物質運搬、抗癌作用及び細胞毒性などに関与する信号伝達者であるが、過量存在する場合、細胞損傷及び炎症反応につながる。PGsは、恒常性維持、血管拡張、平滑筋刺激、及び炎症媒介体として活動し、PGsのうち、PGE2は、細胞を死滅から保護することに対し、炎症と痛みを誘発することで、NOと同様に両面的な作用をする。
【0016】
バクテリアは、生命体のうち、一番多く盛んでいる微生物である。人体、動物、土壌のどこでも暮らしている単細胞生命体であるバクテリアは、条件だけ合わせると、20分毎に分裂して生存する。体内の特定の菌は、ビタミンKを作り、腸内で飲食物の消化を手伝う。また、他の菌は、ヨーグルトやキムチのような発酵食品を作ることに用いられ、また、あるものは、汚染した環境を浄化し、有害な菌を統制するなど、多くの有益な役割を果たすため、人間には必須不可欠であると言える。極めて一部の病原性菌は、感染時、肺炎のような各種の細菌性疾病を招くか、敗血症のような深刻な副作用を来して、宿主が死亡に至ったりする。敗血症は、サイトカインストーム(cytokine storm)を誘導して、細胞、器官、及び組織に損傷を与える。
【0017】
細菌は、原核生物の特徴をそのまま有しており、核膜やミトコンドリア、葉緑体のような構造を有していない。細菌の構造のうち、免疫学的な観点で最も注目される部分が細胞壁であるが、細菌の細胞壁は、サイズと形状を維持し、滲透圧による細胞破裂を防止する役割を果たす。
【0018】
グラム陰性(Gram Negative)菌の細胞壁は、リポ多糖(LPS)とペプチドグリカン(peptidoglycan)で構成されており(
図10)、Lipid Aと多数の多糖類で構成されて、極微量でも、強力な免疫活性を誘導する。ググラム陽性(Gram Positive)菌の細胞壁成分であるリポタイコ酸は、グラム陰性(Gram Negative)菌のリポ多糖と構造が類似しており、最近、乳酸菌死菌体のリポタイコ酸が腸内細菌とムチンの生産を変化して、腸内炎症を緩和することができるという研究が発表されており、細胞の抗炎症効能に関する物質の分泌を促進するような多くの研究がなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、幹細胞エクソソームの生産において、リポ多糖(LPS)とリポタイコ酸(LTA)を前処理して、幹細胞に弱い炎症反応を誘導して、幹細胞の免疫反応を活性化した後、抗炎症反応が誘導された幹細胞が分泌する、抗炎症及び再生機能が強化された高濃度エクソソームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の第1の様態は、未処理臍帯血幹細胞に対する臍帯血幹細胞培養時に分泌されるエクソソームの濃度を増加するため、リポ多糖(LPS)及びリポタイコ酸(LTA)からなる群より選ばれた1つ以上が添加した無血清バッジで臍帯血幹細胞を培養するaステップと、選択的にaステップの結果物である臍帯血幹細胞、この培養液及び/又はこのエクソソームを分離するbステップとを含むことが特徴であるエクソソーム生産方法を提供する。
【0021】
前記エクソソームは、未処理臍帯血幹細胞由来エクソソームに対する抗炎症及び/又は再生機能が強化されたものである。
【0022】
本発明の第2の様態は、第1の様態の生産方法で修得されたエクソソーム、又はこれを含む培養液を有効性分として含む皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物を提供する。
【0023】
前記皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物は、化粧料組成物、医薬外品組成物、又は、薬学組成物である。
【0024】
前記皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物において、エクソソームは、経皮透過型運搬体として用いられる。
【0025】
本発明の第3の様態は、リポ多糖(LPS)及びリポタイコ酸(LTA)からなる群より選ばれた1つ以上を、幹細胞培養時に処理する第1のステップと、選択的に第1のステップの結果物である幹細胞、この培養液、及び/又は、このエクソソームを分離する第2のステップとを含むことを特徴とする抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法を提供する。
【0026】
第1のステップにおいて、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)により幹細胞が分泌するエクソソーム生産量が増加する。
【0027】
本発明の第4の様態は、第3の様態の生産方法で修得された抗炎症及び/又は再生誘導組成物を提供する。
【0028】
以下、本発明を説明する。
【0029】
本発明によるエクソソーム生産方法は、未処理臍帯血幹細胞に対する臍帯血幹細胞の培養時に分泌されるエクソソームの濃度を増やすために、リポ多糖(LPS)及びリポタイコ酸(LTA)からなる群より選ばれた1つ以上が添加された無血清バッジで、臍帯血幹細胞を培養するaステップと、選択的にaステップの結果物である臍帯血幹細胞、この培養液、及び/又は、このエクソソームを分離するbステップとを含む。
【0030】
また、本発明による抗炎症及び/又は再生誘導組成物の生産方法は、リポ多糖(LPS)及びリポタイコ酸(LTA)からなる群より選ばれた1つ以上を、幹細胞培養時に処理する第1のステップと、選択的に第1のステップの結果物である幹細胞、この培養液、及び/又は、このエクソソームを分離する第2のステップとを含む。
【0031】
本発明により、LPSとLTAを前処理した臍帯血幹細胞より分離培養されるエクソソームは、通常の条件で培養された幹細胞から分離したエクソソームよりも抗炎症及び再生効能に優れ、エクソソームの濃度が高い。ここで、エクソソームのサイズは、対照群と相違しないことを確認した。また、本発明により抗炎症及び再生機能が強化されたエクソソームを処理した細胞において、細胞毒性は現れなく、炎症反応も誘導されなかった。また、エクソソームを処理することで、皮膚細胞と角質細胞の増殖率と細胞移動性が増加することで、組織再生に効果があることを確認した。そこで、本発明により、生産、分離、及び精製されたエクソソームは、抗炎症及び組織再生に関する医薬品組成物、皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物として有用に使用可能である。本発明は、これに基づいて、完成した。
【0032】
要するに、本発明は、抗炎症及び/又は再生機能が強化された高濃度幹細胞エクソソームを生産するため、幹細胞の培養時に、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)の処理により、幹細胞の炎症反応を誘導して、幹細胞の免疫反応を活性化、すなわち、免疫活性を誘導させた後、抗炎症反応を誘導することを特徴とする。
【0033】
通常、炎症反応(inflammatory responses)は、微生物の感染や外部の損傷から生体を保護するための防御紀伝であって、先天免疫及び疾病に連携している。
【0034】
本明細書において、抗炎症反応が誘導された幹細胞は、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)処理により、幹細胞培養時に、未処理幹細胞に対する少なくとも1つの抗炎症性サイトカインのmRNA発現量及び/又は分泌量が増加し、分泌されるエクソソーム内の少なくとも1つの抗炎症性サイトカイン含有量が高い。
【0035】
本発明のエクソソームは、幹細胞培養時、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)を前処理して、幹細胞に弱い炎症反応を誘導して、幹細胞の免疫反応を活性化した後、抗炎症反応が誘導された幹細胞が分泌するエクソソームであり、前記抗炎症反応が誘導された幹細胞に物理的な力を加えて、粉砕して提供することもできる。
【0036】
更に、組織再生に関与する物質が豊かであると知られた臍帯血幹細胞を活用して、エクソソーム分泌を誘導することで、エクソソーム内に関連する物質が自然に搭載されるようにして、抗炎症機能と同時に、組織再生機能を共に発揮するエクソソームを高濃度に確保することができる。
【0037】
また、本明細書において、抗炎症及び/又は再生機能が強化された細胞外小胞も、本発明のエクソソームの範疇に属する。
【0038】
本明細書において、皮膚の上位概念として、生体メンブレンがある。生体メンブレンは、結合組織(connective tissue)の下部層(underlying layer)に結合された上皮組織(epithelium)からなる連続的な多細胞シート(continuous multicellular sheets)である。生体メンブレンには、皮膚膜(Cutaneous Membrane)、粘膜(Mucous Membranes)、腸液膜(Serous Membranes)がある。
【0039】
1. リポ多糖(LPS)及びリポタイコ酸(LTA)
本明細書において、リポ多糖(LPS)は、グラム陰性(Gram Negative)菌の細胞壁成分であり、リポタイコ酸(LTA)は、ググラム陽性(Gram Positive)菌の細胞壁成分である。
【0040】
バクテリアは、細胞壁の構成成分を基準に、大きく2つに分けられる。1つは、脂質多糖体(LPS)を外に有しており、細胞壁と細胞膜の間にペプチドグリカン(peptidoglycan)を有しているグラム陰性菌と、他の1つは、ペプチドグリカンとリポタイコ酸(LTA)を有しているグラム陽性菌とに分けられる(
図10)。グラム陽性菌の細胞壁は、多層のペプチドグリカン層が厚く覆っており、細胞壁の約80~90%がペプチドグリカンである。それに対して、グラム陰性菌の細胞壁は、ペプチドグリカン層が一重で非常に薄く、細胞壁の10~20%を占める。グラム陰性菌の細胞外壁には、リン脂質、リポ多糖、リポタンパク質などからなる外膜が覆っている形状からなる。
【0041】
グラム陽性菌としては、ブドウ状球菌、連鎖状球菌、肺炎菌、ハンセン病菌、ジフテリア菌、破傷風菌、炭疽菌、放線菌などがあり、これらは、色素や薬剤に対する感受性が高く、代謝作用には、アミノ酸とビタミンを要する。これらのうち、一部は、菌体外毒素を放出するし、この毒素の毒作用は、菌種には強力であるが、加熱すると、容易に破壊される。この毒素は、生体内で抗原性が高く、これらの抗体が毒素と結合すると、毒素に固有な機能を無くすか、中和させる特異性を有している。その他に、外毒素に特定の処理(例えば、ホルマリン処理)をすることになると、毒性がなくなるので、これらの非活性毒素(toxoid)を用いて免疫を誘導すると、毒素除去用抗体を多量生産することになる。
【0042】
乳酸菌も、病原性細菌と同様な細胞壁構造を有したグラム陽性菌であるが、敗血症を誘導せず、むしろ、有害細菌の体内感染及び繁殖を抑制するプロバイオティクス(probiotics)の機能を有する。
【0043】
グラム陰性菌は、一般に、トリフェニルメタン系やアクリフラビン色素に対する抵抗力が強く、界面活性剤にも耐性が強い特徴を有する。また、生存に必要な栄養要求が簡単であるため、単なる構成の培養液でもよく成長し、毒素は菌体内毒素で、加熱しても容易に破壊されない。これらの毒素も、抗体反応を誘導することはでき、様々な範囲の免疫性を現わすことと知られている。リポ多糖(LPS)は、グラム陰性菌の膜構造を形成する病原菌の内毒素であり、マクロファージ(Macrophage)の免疫反応において、非常に重要な役割を果たす。LPSによるマクロファージ活性は、様々な炎症媒介物質を誘導して、Arachidonic acidがPGsとNOを生成するため、炎症反応を研究に多く使用している。NOとPGE2など、炎症媒介体の活性を直接して抑制する物質は、にきび、アトピー性皮膚炎、リュウマチ性関節炎、悪性新生物などのような各種の炎症に関する疾患を抑制する抗炎症剤として開発可能性が高い。
【0044】
バクテリアの細胞壁の構成成分は、人間や動物の体内で最も先に認知対象の役割を果たす箇所であって、免疫反応の研究に必須として求められる。グラム陰性菌の代表的な免疫活性要素であるリポ多糖(LPS)は、細胞の表面を構成する物質であって、病原性細菌と真核核生物間の相互作用に、非常に重要な役割を果たすと知られている。動物モデルや人間において、LPSによる敗血症の発生紀伝はよく知られているが、LPSは、lipid Aと多数の多糖類からなり、極微量でも強力な免疫活性を誘導し、体内でLPS-binding protein(LBP)及びCD14受容体と結合した後、toll-like receptor(TLR)4を活性化して、interferon(IFN)-βを生成する。IFN-βは、細胞受容体と結合して、STAT1をリン酸化し、inducible nitric oxide synthase(iNOS)の生産を誘導して、結果として、nitric oxide(NO)を生成し、血管細胞のmyosin phosphataseとpotassium channelを活性化することで、血管を拡張させる。NOは、敗血症ショックと密接な関連がある。
【0045】
グラム陽性菌は、LPSがなく、主とした敗血症原因であるにもかかわらず、その発生紀伝が明確になっていないが、グラム陽性菌の細胞壁成分として、LPSのようにfatty acidからなるlipid部分と、多数の多糖類が含まれたリポタイコ酸(LTA)が、昔から敗血性ショックの誘発物質と知られてきた。
【0046】
LTAの構造は、グラム陽性菌の種によって異なり、リビートール(ribitol)又はグリセロールホスフェートの長鎖を含む。LTAは、ジアシルグリセロール(diacylglycerol)により、細胞膜に固定される。LTAは、細胞壁自己分解酵素(autolytic wall enzymes)であるmuramidasesの調節子の役割を果たす。特異な免疫反応を刺激できる抗原特性を有している。
【0047】
LTAは、膜リン脂質を通じて非特異的に標的細胞に結合するか、CD14及びToll-類似受容体に特異的に結合する。TLR-2に対する結合は、NF-κB発現(central transcription factor)を誘導して、pro-及び抗アポトーシス(anti-apoptotic)遺伝子の発現を増加することと現れた。その活性化はまた、PI3キナーゼ(phosphoinositide 3-kinase)活性化と共に、マイトジェン活性タンパク質キナーゼ(mitogen-activated protein kinases(MAPK))活性化を誘導する。
【0048】
LTAの分子構造は、全バクテリアのうち、最も強力な疎水性結合を有する。LTAは、単球(monocytes)において、PD-1水準を上向調節して、PD-LによるPD-1の結合後、単球によるIL-10生産を誘導することで、CD4 T-細胞拡張及び機能(CD4 T-cell expansion and function)に対するIL-10依存的抑制を誘発する。
【0049】
下記表1では、商業的に販売、又は、実験実績方法(ブタノール)で抽出したS.aureusと、B. subtilisa LTAのchain長さと置換基を比較している。
【0050】
【0051】
微生物感染による免疫反応は、自然免疫系(innate immunity)と獲得免疫系(acquired immunity)に区分される。獲得免疫系が抗原に対する特異性が高く、体内に侵入した微生物を非常に効率よく除去できることに対して、作用するまで時間がかかるという不都合がある。これに対して、自然免疫系は、微生物感染初期に一定様式の抗原群(PAMP; pathogen-associated molecular pattern)を認知して、侵入した微生物を除去すると共に、獲得免疫系を効率よく誘発する媒介体としての機能を担当する。多糖類抗原、LTA及びLPSは、このPAMPに該当する一般の抗原であり、toll-like receptor(TLR)により、免疫反応が誘発される。すなわち、LTAとLPSは、binding protein又はcarrier proteinと結合して、TLRを活性化し、TNF-αのような炎症誘発サイトカイン発現を誘導する。さらに、バクテリア感染が深刻な場合、免疫細胞の過敏反応で、毒性がひどい炎症因子(inflammatory factors)が過分泌され、多数の臓器に致命的な損傷を来して、患者を死亡に至らせる敗血症症候群(sepsis syndrome)に、LPSとLTAが決定的な役割をすると知られている。
【0052】
本発明により、幹細胞培養時、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)を処理して生産された、抗炎症機能が強化された高濃度幹細胞エクソソームは、LPS及び/又はLTAを含有しないことを特徴とする。
【0053】
本明細書において、「エクソソームがLPS及び/又はLTAを含有しない」とは、細胞に前記エクソソーム処理において、細胞生存能力(Cell Viability)が減少しないということを意味する。
【0054】
本発明により、幹細胞培養において、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)処理して生産された、抗炎症機能が強化された高濃度幹細胞エクソソームは、細胞に処理時、炎症誘導因子の発現量を減少させ、炎症誘導抑制因子(例:TGF-β1とIL-10)の発現量を増加させることを特徴とする。
【0055】
また、抗炎症因子と共に、臍帯血幹細胞が固有に有している再生に関する因子を共に含んだまま、エクソソームを分泌するため、皮膚細胞や角質細胞に該当エクソソームを処理するとき、細胞の増殖と移動能が増加する特徴がある。
【0056】
2. 炎症誘導因子である炎症性サイトカイン
炎症誘発性サイトカイン(proinflammtory cytokines)は、炎症反応を好む免疫調節サイトカインである。炎症性サイトカインは、炎症反応を開始する役割をし、自然免疫系反応を媒介する重要な役割をして、病原体に対する宿主防御を調節する。
【0057】
炎症誘発性サイトカインは、主に、炎症反応の上向き調節により生成され、これに関与する。ヘルパーT細胞(Th)及びマクロファージのような免疫細胞、及び炎症を促進する特定の他の細胞類型で分泌する信号分子(サイトカイン)の一類である。ここには、インターロイキン-1(IL-1)、IL-12及びIL-18、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-α)、インターフェロンガンマ(IFNγ)、及び顆粒口-マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)が含まれる。
【0058】
インターロイキン(IL)-1と腫瘍壊死因子(TNF)は、炎症誘発性サイトカインであり、人間に投与すると、発熱、炎症、組織破壊を起こし、場合によって、ショックと死亡を起こす。IL-1及びTNFは、白血球が内皮表面に接着後、組織に移住することに必須的な内皮接着分子の誘導剤である。IL-1β、IL-6、及びTNF-αのような炎症誘発性サイトカインは、病的痛みを誘発する。IL-1βは、単球とマクロファージにより放出されるが、痛覚水溶性DRGニューロン(nociceptive DRG neurons)にも存在する。IL-6は、損傷に対する神経反応(neuronal reaction)で役割をする。TNF-αは、ニューロンと神経コロイド(glia)に存在するよく知られた炎症誘発性サイトカインである。TNF-αは、たびたび細胞でアポトーシス(apoptosis)を調節するために、他の信号伝達経路に関与する。
【0059】
炎症誘発作用により、炎症誘発性サイトカインは、発熱、炎症、組織破壊を誘発し、場合によって、ショックと死亡まで誘発して、疾病自体、又は疾病に関する症状を悪化させる傾向がある。過度な量の炎症誘発性サイトカインは、有害な影響を及ぼす。
【0060】
また、炎症性サイトカインの過度な慢性生産(Excessive chronic production of inflammatory cytokines)は、炎症性疾患に寄与し、炎症性疾患は、粥上動脈硬化症及び癌のような他の疾病に関連している。調節障害(Dysregulation)は、鬱病及びその他の神経疾患と関連がある。健康を維持するためには、炎症性サイトカインと抗炎症性サイトカインの間の均衡(balance between proinflammatory and anti-inflammatory cytokines)が必要である。老化と運動は、炎症性サイトカインの放出による炎症の量に影響を及ぼす。
【0061】
炎症性疾患を治療する治療法には、炎症性サイトカイン、又は、その受容体を中和させる単一クローン抗体が含まれる。
【0062】
3. 炎症誘導抑制因子である抗炎症性サイトカイン及びサイトカイン抑制剤
炎症反応の順効果は、炎症誘発性サイトカイン及び抗炎症性サイトカインの間のバランスにより決められる。
【0063】
炎症/免疫反応は、保護と損傷の2つの面を有している生理的現象であるので、組織や刺激に対する選択的な調節の他に、量的・時間的でも正確に調節されなければならず、問題が解決されると、反応が終了しなければならない。そこで、抗炎症薬物の作用も、量的、質的、及び時間的に精密に調節されることで、疾患の治療に助けになるわけである。もし、薬物が炎症反応を調和で正確に調節できないと、治療ではなく、損傷を深化させて疾病を悪化させるか、更なる疾病を誘発することができる。そこで、炎症反応の調節による疾病の治療及び予防のためには、炎症反応に対する正確な理解が先行されなければならない。
【0064】
主な抗炎症性サイトカイン及びサイトカイン抑制剤(cytokine inhibitors)は、下記表2に示されている。抗炎症サイトカインは、IL-1, 腫瘍壊死因子(TNF)、及び他の主要な炎症誘発サイトカインの合成を抑制する能力を有したサイトカインである。
【0065】
【0066】
4. 幹細胞培養液
本明細書において、培養液は、幹細胞を培養した細胞培養上澄液を称する。幹細胞培養液は、幹細胞の培養過程で、細胞から分泌されるエクソソームを含む様々な生理活性物質を含有している。また、前記生理活性物質は、細胞や身体の機能に影響するサイトカイン、細胞成長因子、免疫調節因子などを称する。
【0067】
本発明により、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)を幹細胞培養時に処理すると、培養液に幹細胞が分泌するエクソソーム生産量が増加することを特徴とする。前記エクソソームは、未処理幹細胞由来エクソソームに対して、抗炎症機能が強化されたものであるので、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)が処理された幹細胞、この培養液、及び/又は、このエクソソームは、皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物、及び/又は、抗炎症組成物の有効性分として用いられる。
【0068】
また、前述したように、炎症/免疫反応は、保護と損傷の2つの面を有しており、炎症反応の順効果は、炎症誘発性サイトカイン及び抗炎症性サイトカインの間のバランスにより決められるので、抗炎症薬物の作用も、量的、質的、及び時間的に精密に調節されなければならない。そこで、本発明により幹細胞培養に際して、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)を処理して、体外で抗炎症機能が強化したエクソソームを大量生産すると、所望する投与時期、投与部位、及び/又は、投与量を調節して、体内適用することが可能である。
【0069】
成体幹細胞は、必要時に、特定の組織の細胞に分化する未分化状態の細胞である。成体幹細胞は、間葉系幹細胞、間葉系幹細胞(mesenchymal stromal cell)、又は、多分化能幹細胞であるが、これに限定されるものではない。成体幹細胞は、人間胚芽から抽出した胚芽幹細胞と異なり、骨髄や脳細胞など、既に成長した身体組織から抽出するため、倫理論争を避けられるというメリットがある。本発明において、成体幹細胞は、臍帯、臍帯血、骨髄、脂肪、筋肉、神経、皮膚、羊膜、又は、胎盤から由来したものであるが、これに限定されるものではない。
【0070】
間葉系幹細胞は、表皮細胞成長因子(Epithelial growth factor)、線維芽細胞成長因子(Fibroblast growth factor)のような様々な成長因子(growth factor)とサイトカインを分泌する。
【0071】
臍帯血由来幹細胞は、脂肪又は骨髄由来成体幹細胞とは異なり、供与者の妊娠周期(40週)の間に形成された臍帯血を使用するため、供与者の状態による効能差が発生しないというメリットがある。
【0072】
バッジは、生体外(in vitro)で、細胞の成長と増殖に必要な必須成分を含む組成物を意味し、当該分野で通常使用される幹細胞培養用バッジを含み、例えば、DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI 1640、 DMEM/F-10(Dulbecco's Modified Eagle's Medium: Nutrient Mixture F-10)、DMEM/F-12(Dulbecco's Modified Eagle's Medium: Nutrient Mixture F-12)、α-MEM(α-Minimal essential Medium)、G-MEM(Glasgow's Minimal Essential Medium)、IMDM(Isocove's Modified Dulbecco's Medium)、KnockOut DMEMなどの商業的に製造されたバッジ、又は、人為的に合成したバッジを利用するが、これに限定されるものではない。本明細書において、バッジは、一般に、炭素源、窒素源、及び微量元素成分を含み、アミノ酸、抗生剤の他、様々な成長因子などをさらに含む。
【0073】
5. 幹細胞分泌エクソソーム
本発明の皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物、及び/又は、抗炎症及び/又は再生誘導組成物は、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)を幹細胞培養時に処理した結果物である幹細胞が分泌したエクソソーム、又は、これを含む培養液である。
【0074】
エクソソームは、細胞膜を横切って物質を伝達することができ、薬物伝達のための理想的な小胞として評価されており、このような脂質二重層小胞システムは、皮膚浸透の問題点を解決することができるので、薬物を皮膚真皮層まで伝達するための最も効果的な戦略の1つとして評価されている(Saahil Arora et al.、Asian Journal of Pharmaceutics、6, 4, 237-244, 2012)。
【0075】
また、エクソソームは、該当エクソソームが由来した細胞タイプを反映するRNA、タンパク質、脂質、及び代謝物質を含む。エクソソームは、該当エクソソームが由来した細胞の様々な分子構成成分(例、タンパク質及びRNA)を含む。エクソソームのタンパク質組成は、該当エクソソームが由来した細胞及び組織(tissue)により様々であるが、多くのエクソソームは、進化的に保存された共通のタンパク質分子セットを含有する。
【0076】
エクソソームは、細胞を培養した後に得られた培養液より分離して取得することができ、エクソソームのサイズ及び含量は、エクソソームを生産する細胞が受けた分子信号により、影響を受ける。本発明により、LPS及び/又はLTAを前処理した臍帯血幹細胞より分離培養されるエクソソームは、一般の条件で培養された幹細胞から分離したエクソソームよりも、抗炎症及び/又は再生効能に優れ、エクソソームの濃度が高い。また、エクソソームのサイズは、未処理対照群と同様である。
【0077】
本発明は、エクソソームを分離することがなく、培養液自体を原料として使用することができ、エクソソームを分離して使用することもできる。また、品質保証などのために、培養液内のエクソソームのサイズ物性を確認するために、エクソソームを分離することができる。
【0078】
培養液からエクソソームを分離するための方法として、遠心分離法、免疫結合法、ろ過法などを活用する。
【0079】
エクソソーム分離方法のうち、通常使用される超遠心分離(Ultracetrifugation)は、一回に多量のエクソソームを分離することができず、高価な装備が必要であり、分離に多くの時間がかかり、強い遠心分離により、エクソソームに物理的に損傷が発生することがあり、特に、分離されたエクソソームの純度が低下するなどの不都合がある。このような問題を改善するための方法のうち、エクソソームの膜(membrane)に存在するタンパク質であるホスファチジルセリン(phosphatidylserine、PS)に特異的に結合する物質を利用することで、分離されるエクソソームの純度を高めたPS親和性方法(PS affinity method)がある。これは、超遠心分離方法と比較して、高い純度のエクソソームを分離することができるが、収率が低いという不都合がある。他の方法の1つであるろ過法の場合、エクソソームサイズの孔を介して培養液を流出して、エクソソームだけを分離・濃縮することができる方式であり、代表的に、タンジェンシャルフロー(tangential flow filter(TFF))があり、現在まで、最も安全にエクソソームを分離する技術として知られている。
【0080】
臍帯血間葉系幹細胞(UCB-MSC)培養液内のエクソソームは、脂肪組織由来間葉系幹細胞又は骨髄由来間葉系幹細胞の培養液内のエクソソームよりも高い水準で、EGF、VEGF、TGF、HGF、FGF、IGF、及びPDGFなどの様々な成長因子を含有している。EGFなどの成長因子は、皮膚構成細胞である線維芽細胞の増殖を促進し、細胞の移動及びコラーゲン合成などを促進するので、前記UCB-MSC由来エクソソームは、皮膚再生、皮膚弾力改善、皮膚しわ防止又は改善、皮膚老化防止又は改善、毛髪成長又は縮小した毛嚢復元などの優れた皮膚状態改善効果及び傷治癒効果を奏する。
【0081】
本発明により製造された幹細胞培養液内には、エクソソームを多量含有するだけでなく、これにより、特有の脂質二重層構造により、皮膚真皮層まで浸透するナノサイズのエクソソームも多量に提供することができ、エクソソーム内に抗炎症性サイトカインだけでなく、様々な成長因子を多量含有しているので、抗炎症効果だけでなく、皮膚構成細胞である線維芽細胞の増殖と活性化による皮膚再生及び抗老化効果、コラーゲン合成増加、毛髪成長、縮小した毛嚢復元、及び傷治癒の効果を奏することができる。
【0082】
本発明は、臍帯血幹細胞の細胞培養により、経皮を透過する約100nmサイズのエクソソームを大量生産することができ、本発明により製造された臍帯血由来幹細胞培養液は、皮膚のような生体メンブレンの透過度が高いので、皮膚(skin)のような生体メンブレン塗布用剤形(薬学組成物、化粧料、医薬外品)、及び/又は、抗炎症剤のような治療剤に望ましいだけでなく、同時に再生を誘導する効果があり、使用において優れた効能を発揮する。
【0083】
そこで、本発明により臍帯血幹細胞培養時に分泌される高濃度の抗炎症性サイトカイン含有エクソソームを多量含有する幹細胞培養液、又は、これより分離されたエクソソームは、皮膚(skin)のような生体メンブレン塗布用組成物、又は、抗炎症及び再生誘導組成物の有効性分である。
【0084】
本発明のエクソソームは、これを含有した培養液に生産又は使用され、前記培養液から細胞を除去した状態で、生産又は使用される。細胞を除去した、エクソソーム含有培養液は、cell-free(セルフリー)製剤であるため、発癌の危険性が少なく、移植拒否反応の問題がないだけでなく、全身投与時、微細血管に閉塞を起こす虞がなく、細胞ではなく、分離物質として、オフザシェルフ(off the shelf)製品への薬剤開発が可能であるので、製造コストを低くすることができる。
【0085】
6. 様々な剤形化
本発明により、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)を処理して培養された幹細胞が分泌したエクソソーム含有培養液及び/又は培養液から分離されたエクソソームは、使用目的によって、様々に剤形化することができる。
【0086】
例えば、エクソソーム含有培養液及び/又は培養液から分離されたエクソソームを、ゲル化(gelation)するか、凍結及び/又は乾燥して粉末化することができる。
【0087】
ヒドロゲル、ゼラチンなどの成分と混合して、成分の含量比による粘性差によるゲル化とゾル化の調節が可能な皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物として使用可能であり、poloxamerなどの成分と混合して、4℃でゲル化し、体温条件でゾル化するように、剤形を設計することができる。
【0088】
化粧料組成物は、溶液、外用軟膏、クリーム、フォーム、栄養化粧水、柔軟化粧水、香水、パック、柔軟水、乳液、メイクアップベース、エッセンス、石鹸、液体洗浄料、入浴剤、サンスクリーンクリーム、サンオイル、懸濁液、乳濁液、ペースト、ゲル、ローション、パウダー、石鹸、界面活性剤含有クレンジング、オイル、粉末ファンデーション、乳濁液ファンデーション、ワックスファンデーション、パッチ、及びスプレーからなる群より選ばれる剤形に製造することができるが、これに限定されるものではない。
【0089】
化粧料組成物は、一般の皮膚化粧料に配合される化粧品学的に許容可能な担体を、1種以上更に含むことができ、通常の成分として、例えば、油分、水、界面活性剤、保湿剤、低級アルコール、増粘剤、キレート剤、色素、防腐剤、香料などを適切に配合することができるが、これに限定されるものではない。
【0090】
化粧料組成物に含まれる化粧品学的に許容可能な担体は、前記化粧料組成物の剤形によって多様である。
【0091】
剤形が軟膏、ペースト、クリーム、又は、ゲルの場合は、担体成分として、動物性油、植物性油、ワックス、パラフィン、澱粉、トラカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛などが利用可能であるが、これに限定されるものではない。これらは、単独又は2種以上混合して使用可能である。
【0092】
剤形がパウダー又はスプレーである場合は、担体成分として、ラックトス、タルク、シリカ、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、ポリアミドパウダーなどが利用され、特に、スプレーである場合は、更に、クロロプルオロヒドロカーボン、プロパン/ブタン又は、ジメチルエーテルのような推進剤を含むことができるが、これに限定されない。これらは、単独又は2種以上混合して使用可能である。
【0093】
剤形が溶液又は乳濁液である場合は、担体成分として、溶媒、可溶化剤、又は、遺託話題などが利用され、例えば、水、グリセリン、エタノール、イソプロパノール、炭酸ジエチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチルグリコールオイルなどが利用され、特に、綿実油、ピーナッツオイル、トウモロコシ背腫オイル、オリーブオイル、ピマジャオイル、及び胡麻オイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、又は、ソルビタンの脂肪酸エステルが利用されるが、これに限定されない。これらは、単独又は2種以上混合して使用可能である。
【0094】
剤形が懸濁液の場合は、担体成分として、水、グリセリン、エタノール、又は、プロピレングリコールのような液状の希釈剤、エトキシ化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル、及びポリオキシエチレンソルビタンエステルのような懸濁液剤、微小結晶性セルロース、アルミニウム金属水酸化物、ベントナイト、寒天又はトラガカントなどが利用されるが、これに限定されない。これらは、単独又は2種以上混合して使用可能である。
【0095】
剤形が石鹸の場合は、担体成分として、脂肪酸のアルカリ金属塩、脂肪酸ヘミエステル塩、加水分解物 脂肪酸タンパク質加水分解物、イセチオネート、ラノリン誘導体、脂肪族アルコール、植物性油、グリセロール、糖などが利用されるが、これに限定されない。これらは、単独又は2種以上混合して使用可能である。
【0096】
化粧料組成物において、前記エクソソームは、前記化粧料組成物総重量の0.0001乃至50重量%を含み、より望ましくは、0.0005乃至10重量%を含む。エクソソームが前記範囲に含まれると、優れた皮膚状態改善の効能を示すというメリットがあり、組成物の剤形が安定化するというメリットがある。
【0097】
通常、医薬外品は、人間や動物の疾病を診断、治療、改善、軽減、処置、又は、予防する目的に使用される物品のうち、医薬品より作用が軽微であるか、医薬品の用途として使用される物品を除いたものを意味する。人間や動物の疾病治療や予防に使われる製品、人体に対する作用が軽微であるか、直接作用しない製品などが含まれる。
【0098】
医薬外品組成物は、ボディクレンザー、フォーム、石鹸、マスク、軟膏剤、クリーム、ローション、エッセンス、及びスプレーからなる群より選ばれる剤形として製造することができるが、これに限定されるものではない。
【0099】
本発明が皮膚(skin)のような生体メンブレン塗布用、又は、抗炎症及び/又は再生誘導組成物である場合、エクソソームを有効性分として含むことに加えて、薬学的に許容可能な担体を更に含むことができる。
【0100】
「薬学的に許容可能」とは、投与時、生物体を刺激しないながらも、投与される化合物の生物学的活性及び特性を阻害しない、薬学分野で通常使用されることを意味する。
【0101】
投与量は、皮膚状態の改善のために、薬学的に有効な量である。前記用語である「薬学的に有効な量」とは、医学的治療に適用可能な合理的な受益/危険割合で疾患を治療するに十分な量を意味し、有効容量水準は、個体種類及び重症度、年齢、性別、疾患の種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路、及び排出割合、治療期間、同時使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野でよく知られた要素により決められる。また、有効量は、当業者に認識されているように、処理の経路、賦形剤の使用、及び他の薬剤と共に使用可能な可能性により変わることができる。
【0102】
担体の種類は、特に限定されず、当該技術分野において、通常使用される担体であれば、いずれも使用可能である。具体例として、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、アルブミン注射溶液、ラクトース、デキストロース 、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトル、マルチトール、マルトデキストリン、グリセロール、エタノールなどが挙げられる。これらは、単独又は2種以上を混合して使用可能である。
【0103】
また、必要な場合、賦形剤、希釈剤、抗酸化剤、緩衝液、又は、静菌剤など、その他の薬学的に許容可能な添加剤を添加して使用可能であり、充填剤、増量剤、湿潤剤、崩壊剤、分散剤、界面活性剤、結合剤、又は潤滑剤などを更に添加して使用することができる。
【0104】
前記皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物において、本発明のエクソソームは、経皮透過型キャリアとして使用可能である。
【0105】
一方、経皮投与経路は、通常、経皮パッチを通じて薬物を皮膚に適用することで、全身効果を得るために使われる。吸収速度は、適用部位皮膚の物理的特性だけでなく、薬物脂溶性によって、非常に多様である。
【0106】
本発明による抗炎症組成物、及び/又は、皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物は、エクソソーム含有経皮用パッチの形態である。経皮用パッチは、皮膚付着時に、製品を保護する不透過性支持体(backing film)、薬物の殆どを含有する薬物貯蔵層(drug reservoir)、薬物放出メンブレン(drug-release membrane)、及び付着粘着剤層(Contact adhesive)を備える。包装時に製品を保護するフィルムとして使用するとき、除去する剥離紙(Release liner)をさらに備えることができる。
【0107】
薬物放出メンブレン(drug-release membrane)は、薬物が透過されるとき、その吸収率を調節する高分子膜である。また、付着粘着剤層(Contact adhesive)は、7日間、皮膚に付着するように設計された低刺激粘着剤層(PSA : Pressure Sensitive Adhesive)である。
【発明の効果】
【0108】
本発明は、培養時、リポ多糖(LPS)及び/又はリポタイコ酸(LTA)を前処理して、幹細胞に弱い炎症反応を誘導し、幹細胞の免疫反応を活性化させた後、抗炎症反応が誘導された幹細胞を用いて、抗炎症機能が強化された高濃度エクソソームを提供することができる。また、組織再生物質を高含量に含んでいる臍帯血幹細胞から分泌されたもので、組織再生を誘導するエクソソームを提供することができる。本発明のエクソソームは、抗炎症及び/又は再生誘導組成物及び/又は、皮膚又は生体メンブレン塗布用組成物の他に、様々な剤形に適用可能な有効性分として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【
図1】
図1は、LPSとLTAを前処理した臍帯血幹細胞と培養液内炎症抑制因子発現量分析グラフである。
【
図2】
図2は、LPSとLTAを前処理して生産した臍帯血幹細胞のエクソソーム濃度及びサイズを示すグラフである。
【
図3】
図3は、LPSとLTAを前処理して生産した幹細胞のエクソソーム内炎症関連因子含有量分析グラフである。
【
図4】
図4は、炎症反応を誘導したヒト角化細胞にエクソソーム処理後、細胞生存能力分析グラフである。
【
図5】
図5は、炎症を誘導したヒト角質細胞にエクソソーム処理後、炎症誘導因子発現分析グラフである。
【
図6】
図6は、炎症を誘導したヒト角質細胞にエクソソーム処理後、炎症抑制因子発現分析グラフである。
【
図7】
図7は、皮膚細胞と角質細胞にエクソソームを処理して、細胞増殖増加率を分析したグラフである。
【
図8】
図8は、皮膚細胞と角質細胞にエクソソームを処理して、細胞の移動性促進可否を確認するために、細胞を染色後、撮影した写真である。
【
図9】
図9は、皮膚に居住する様々な細胞類型の概略図である。
【
図10】
図10は、グラム陽性菌(左側)とグラム陰性菌(右側)の細胞壁構造を示す概念図である。
【
図11】
図11は、リポ多糖(LPS)の構造(Structure)を示す図である。(Kdo residues in red(core)、glucosamine residues in blue、acyl chains in black and phosphate groups in green)。
【
図12】
図12は、S. aureusのリポタイコ酸(LTA)構造を示す図である。
【
図13】
図13は、KC由来サイトカインの様々な効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0110】
以下、本発明を実施例を通じてより具体的に説明する。但し、下記の実施例は、本発明の技術的特徴を明確に示しているだけであり、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0111】
[材料]
リポ多糖は、Merck Sigma-Aldrich(cat no. L1329)から購入しており、生物学的な源泉は、Escherichia coli(O127:B8)である。
【0112】
リポタイコ酸は、Merck Sigma-Aldrich(cat no. L2515)から購入しており、生物学的な源泉は、Staphylococcus aureusである。
【0113】
実施例1. 細胞培養
1.1 臍帯血幹細胞(Umbilical cord blood stem cell)
臍帯血幹細胞は、10%ウシ胎児血清(Fetal bovine serum)及びFGF2(Fibroblast growth factor 2)を含有するDMEM/F12バッジに、37℃ 5% CO2培地で培養した。
【0114】
1.2 ヒト角化細胞(Human Keratinocyte)とヒト皮膚線維芽細胞(Human Fibroblast)
ヒト角化細胞は、10%ウシ胎児血清(Fetal bovine serum)を含むRPMI-1640バッジに、37℃ 5% CO2培地で培養した。
【0115】
ヒト皮膚線維芽細胞(Human Fibroblast)は、10%ウシ胎児血清(Fetal bovine serum)を含むDMEMバッジに37℃ 5% CO2培地で培養した。
【0116】
実施例2. 臍帯血幹細胞培養液生産
2.1 細胞培養
培養した臍帯血幹細胞をPBS洗浄後、Trypsin EDTAで細胞を浮遊させた後、Trypsin EDTA処理量2倍の培養バッジを入れて、Trypsin EDTAを非活性化した。浮遊させた細胞を遠心分離して、上層液を除去した。細胞ペリット(Pellet)を培養バッジで再懸濁した後、細胞数を測定して、4~10×103cells/cm2で播種(Seeding)した。
【0117】
2.2 臍帯血幹細胞培養液生産
臍帯血幹細胞のセル密集度(Cell Confluency)が60~90%となったとき、PBSで培養バッジを洗浄した後、無血清バッジ(Serum Free Media)にバッジを入れ替った後、2~7日間、培養した。2~7日間培養後、細胞を除いた上層液を全部回収して、1000xgで3分間、遠心分離して、細胞と不純物を除去した後、0.2umフィルタを活用して、培養液をろ過した。
【0118】
2.3 LPS(Lipopolysaccharide)とLTA(Lipoteichoic Acid)を前処理した臍帯血幹細胞培養液生産
臍帯血幹細胞の播種後、無血清バッジにバッジ交替を基準に、12~48時間の間、リポ多糖(Lipopolysaccharide_10~1000ng/ml)とリポタイコ酸(Lipoteichoic Acid _10~1000ng/ml)をそれぞれ又は共に処理して培養した後、PBSで培養バッジを洗浄して、無血清バッジにバッジを交替した後、2~7日間、培養した。2~7日間培養後、細胞を除いた上層液を全部回収して、1000xgで3分間遠心分離して、細胞と不純物を除去した後、0.2umフィルタを活用して、培養液をろ過した。
【0119】
2.4 LPSとLTAを前処理した臍帯血幹細胞と培養液内炎症抑制因子の発現量分析
臍帯血幹細胞に、LPSとLTAをそれぞれ又は共に前処理した臍帯血幹細胞と培養液内抗炎症関連因子の発現量を分析した。
【0120】
図1に示しているように、(A)対照群(実施例2.2)に対して、LPSとLTAを前処理した臍帯血幹細胞(実施例2.3)において、抗炎症関連因子であるTGF-β1とIL-10のmRNA発現量が増加した。(B) 対照群に対してLPSとLTAを前処理後、生産した培養液内抗炎症関連因子であるTGF-β1の含有量が増加することを確認した。一方、IL-10の場合、実験群別に含有量の差がなかった。
【0121】
実施例3. 臍帯血幹細胞エクソソーム分離
実施例2の各条件で生産して、0.2umフィルタでろ過した培養液を、CapturemTM Exosome Isolation Kit(Takara Bio)を用いて、エクソソームを抽出した。
【0122】
3.1 LPSとLTAを前処理して生産した臍帯血幹細胞エクソソーム濃度及びサイズ分析
各条件別に培養した臍帯血幹細胞培養液から抽出したエクソソームに対して、Nanosight_NS300(Malvern)を活用して、エクソソームのサイズ別分布及び濃度を測定した。
【0123】
図2に示しているように、各条件別にエクソソームを分析した結果、対照群に比べて、LPS及び/又はLTAを前処理した臍帯血幹細胞から分離したエクソソームの濃度が増加することを確認し、エクソソームのサイズは、対照群と同様であることを確認した。
【0124】
3.2 LPSとLTAを前処理して生産した幹細胞エクソソーム内炎症関連因子の含有量分析
各条件別に臍帯血幹細胞エクソソーム内に存在する抗炎症関連因子の含有量を、ELISAで分析した。
図3に示しているように、各条件別エクソソームを分析した結果、(A)炎症抑制因子であるTGF-β1とIL-10のエクソソーム内含有量が、未処理対照群(DMEM)に比べて、LPSとLTAを前処理した臍帯血幹細胞エクソソームで高く、(B)炎症誘導因子であるTNF-αとIFN-γの場合、対照群と同様であることを確認した。
【0125】
実施例4. ヒト角質細胞におけるエクソソーム抗炎症効能の分析
4.1 炎症反応を誘導したヒト角化細胞にエクソソーム処理後、細胞生存能力分析
ヒト角化細胞を12well Plateに播種した後、10%ウシ胎児血清が含まれたRPMI-1640で培養して、80%セル密集度になると、TNF-α(10ng/ml)とIFN-γ(10ng)が含まれたSerum Free RPMI-1640 Basal Mediaにバッジを入れ替った。バッジ交替6時間後、炎症反応を誘導したヒト角化細胞に、実施例2の各培養液から抽出したエクソソームを、1~10×108個添加して、24時間培養した後、CCK-8Assayを通じて、細胞生存能力を確認した(A)。
【0126】
また、実施例2の各条件別エクソソームを、ヒト角化細胞に6時間前処理後、炎症誘導物質であるTNF-αとIFN-γをそれぞれ、10ng/ml濃度で処理した後、24時間後、細胞生存能力を分析した(B)。
【0127】
図4(A)に示しているように、炎症誘導物質であるTNF-αとIFN-γをそれぞれ、10ng/ml濃度で、ヒト角化細胞に6時間前処理後、実施例2の各条件別エクソソームを処理した結果、炎症を誘導した対照群(グラフ内2番目control)において、そうではない対照群(グラフ内1番目control)に比べて、細胞生存能力が大いに減少し、実施例2.3の各条件別エクソソームを処理した実験群において、細胞生存能力が回復することを確認した。
【0128】
図4(B)に示しているように、実施例2の各条件別エクソソームを、ヒト角化細胞に6時間前処理後、炎症誘導物質であるTNF-αとIFN-γをそれぞれ、10ng/ml濃度で処理してから、24時間後に細胞生存能力を分析した結果、炎症を誘導した対照群(グラフ内2番目control)において、そうではない対照群(グラフ内1番目control)に比べて、細胞生存能力が大いに減少し、実施例2.3の各条件別にエクソソームを処理した実験群において、細胞生存能力が回復することを確認した。
【0129】
また、
図4(A)、(B)に示しているように、LPSとLTAを前処理して生産したエクソソームを処理した実験群(LPS、LTA、LPS+LTA)において、細胞生存能力が減少されず、LPSとLTAがエクソソーム内に残存しないことを類推することができる。
【0130】
4.2 抗炎症効能確認試験
ヒト角化細胞を12 well Plateに播種した後、10%ウシ胎児血清が含まれたRPMI-1640で培養して、80%セル密集度になると、炎症誘導物質であるTNF-α(10ng/ml)とIFN-γ(10ng)が含まれたSerum Free RPMI-1640Basal Mediaでバッジを交替した。バッジ交替6時間後、実施例2の各培養液から抽出したエクソソームを、2~10×108個添加して、24時間培養後、培養液と細胞を回収した。
【0131】
4.2.1 炎症を誘導したヒト角質細胞にエクソソーム処理後、炎症誘導因子発現分析
炎症反応誘導後、実施例2のエクソソームを処理したヒト角化細胞からtotal RNAを抽出して、炎症誘発性サイトカインであるTNF-αとIL-6のmRNA発現量を分析し、炎症反応誘導後、実施例2のエクソソームを処理したヒト角化細胞の培養液を、ELISAを活用して、炎症誘発性サイトカインであるTNF-αとIL-6のタンパク質発現量を分析した。
【0132】
炎症反応を誘導したヒト角化細胞に、実施例2の各条件別エクソソームを処理した後、細胞内炎症誘導因子発現を分析した結果、
図5(A)に示しているように、炎症を誘導した対照群(グラフ内2番目control)において、そうではない対照群(グラフ内1番目control)に比べて、炎症誘導因子のmRNA発現量が大いに増加し、実施例2、3の各条件別エクソソームを処理した実験群(LPS、LTA、LPS+LTA)において、様々な様相に減少することを確認した。
【0133】
また、
図5(B)に示しているように、(B)炎症を誘導した対照群(グラフ内2番目control)において、そうではない対照群(グラフ内1番目control)に比べて、炎症誘導因子のタンパク質発現量が大いに増加し、実施例2、3の各条件別エクソソームを処理した実験群(LPS、LTA、LPS+LTA)において、様々な様相に減少することを確認した、
【0134】
特に、LPSとLTAを全て前処理した実験群で処理しない実験群に対して、炎症誘導因子の発現量が更に減少して、LPSとLTAの前処理でエクソソームの抗炎症効能が増加することを確認した。
【0135】
4.2.2 炎症を誘導したヒト角質細胞にエクソソーム処理後、炎症抑制因子発現分析
【0136】
炎症反応を誘導したヒト角化細胞に、実施例2の各条件別エクソソームを処理した後、細胞内炎症抑制因子発現を分析した。
図6に示しているように、実施例2.3の各条件別エクソソームを処理した実験群(LPS、LTA、LPS+LTA)で、様々な様相に炎症抑制因子発現が調節された。
【0137】
特に、LPSとLTAを全部前処理した実験群で、処理しない実験群に対して、炎症誘導抑制因子TGF-β1とIL-10の発現量が更に増加して、LPSとLTAの前処理でエクソソームの抗炎症効能が増加したことを確認し、それに対して、炎症誘導物質であるIL-4の発現量が増加しないことを確認した。
【0138】
実施例5. エクソソーム処理後、再生誘導効能分析
実施例2の条件で、LPSとLTAを同時に処理した後、分離したエクソソームを活用して、組織再生の特性で確認可能な細胞増殖能と細胞移動能について分析した。
【0139】
5.1 ヒト角質細胞とヒト線維芽細胞にエクソソーム処理後、細胞増殖能分析
角質細胞と線維芽細胞(fibroblast)をそれぞれ、10%ウシ胎児血清が添加されているRPMI-1640とDMEMにバッジを活用して、培養皿に塗布後、一日間、付着を誘導、翌日にエクソソームを処理した。以後、24時間の間隔でCCK-8を処理して、細胞生存能力を測定した結果、2つの細胞でいずれもエクソソームを処理した実験群が、対照群に比べて、はるかに細胞増殖速度が速いことを確認した(
図7)。
【0140】
5.2 ヒト角質細胞とヒト線維芽細胞にエクソソーム処理後、細胞移動能分析
角質細胞と線維芽細胞(fibroblast)を、porous membraneが装着されているトランズウェル(Trans well)に、セル密集度(cell confluency)が100%となるように塗抹して、付着を誘導した後、エクソソームを処理し、48時間の間培養して、孔を介して移動するように誘導した。一定の時間経過後、membraneの反対側をクリスタルバイオレット(crystal violet)で染めて、孔を介して移動した細胞を確認した。結果として、エクソソームを処理した実験群の細胞が、対照群に比べてはるかに高い染色程度を示すことで、エクソソームにより細胞の移動が促進したことを確認した(
図8)。
【国際調査報告】