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特表2024-500063GDF-3を高発現する臍帯血幹細胞の分離及び培養方法、並びにGDF-3の用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】GDF-3を高発現する臍帯血幹細胞の分離及び培養方法、並びにGDF-3の用途
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20231222BHJP
   C12N 5/0735 20100101ALI20231222BHJP
   C12N 5/077 20100101ALI20231222BHJP
   A61K 38/18 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 8/64 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C12P21/02 A
C12N5/0735
C12N5/077
A61K38/18
A61P43/00 107
A61P17/00
A61Q19/00
A61K8/64
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534204
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 KR2021018355
(87)【国際公開番号】W WO2022119418
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】10-2020-0168691
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.Witepsol
(71)【出願人】
【識別番号】522388176
【氏名又は名称】プリモリス セラピューティクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェ-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン ヒ-ジン
(72)【発明者】
【氏名】イ イェ-イン
(72)【発明者】
【氏名】イ ドン-ヨル
(72)【発明者】
【氏名】ナ キュ-フム
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C083
4C084
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA10
4B064CC03
4B064CD08
4B064CD19
4B064CD20
4B064DA01
4B065AA93X
4B065AC14
4B065BB18
4B065BB19
4B065BB20
4B065CA24
4B065CA44
4C083AD411
4C083AD412
4C083CC01
4C083CC02
4C083CC03
4C083EE12
4C083EE13
4C084AA02
4C084AA03
4C084AA06
4C084BA44
4C084CA18
4C084CA56
4C084DB61
4C084NA14
4C084ZA891
4C084ZA892
4C084ZB221
4C084ZB222
(57)【要約】
本発明は、GDF-3を高発現する臍帯血幹細胞の分離及び培養方法に関したのである。本発明によって分離培養された臍帯血幹細胞の場合GDF-3を高発現する特性を見せる。通常的に継代が進行されることによって幹細胞の増殖が減少して十分な量の細胞数確保が難しいが、GDF-3高発現される幹細胞の場合継代が進行されても細胞の増殖陵夷対照群に比べて高く維持されて元気な状態の幹細胞を大量として確保することができる長所がある。また、幹細胞の増殖率が高いことによって細胞が分泌する細胞外基質成分濃度も高いことで確認されてGDF-3高発現臍帯血幹細胞を活用した細胞及び培養液組成物生産時効能/効果が優れている原料を生産することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臍帯血幹細胞を培養して、GDF-3を発現させることを特徴とするGDF-3製造方法。
【請求項2】
臍帯血幹細胞の細胞増殖速度は、24時間以下で生長速度がはやい臍帯血幹細胞を分離培養したことを特徴とする請求項1に記載のGDF-3製造方法。
【請求項3】
臍帯血幹細胞は、DMEM/F12に、FGF-2、EGF、TGF-βスーパーファミリー成長因子、アスクロビン酸、及びヘパリンを更に添加したバッジで、所望する生長速度を有した臍帯血幹細胞を分離培養したことを特徴とする請求項1に記載のGDF-3製造方法。
【請求項4】
前記GDF-3は、線維芽細胞の生長を増加させることを特徴とする請求項1に記載のGDF-3製造方法。
【請求項5】
前記GDF-3により生長を増加させる線維芽細胞は、ヒト上皮細胞(Human Dermal Fibroblast, HDF)であることを特徴とする請求項4に記載のGDF-3製造方法。
【請求項6】
前記GDF-3は、線維芽細胞において、GDF-3, コラーゲン、及びフィブロネクチンからなる群より少なくとも1つ選ばれたタンパク質の遺伝子の発現を増加させることを特徴とする請求項1に記載のGDF-3製造方法。
【請求項7】
前記GDF-3は、細胞の増殖及び/又は再生促進に関与する有効物質の合成を促進することを特徴とする請求項1に記載のGDF-3製造方法。
【請求項8】
GDF-3高発現臍帯血幹細胞を確保するために、生長速度がはやい臍帯血幹細胞を分離培養することを特徴とするGDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法。
【請求項9】
分離培養された臍帯血幹細胞の増殖速度が大きいほど、分離培養された臍帯血幹細胞のGDF-3発現量が高いことを特徴とする請求項8に記載のGDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法。
【請求項10】
前記GDF-3高発現臍帯血幹細胞に対する細胞銀行を構築するために使用されることを特徴とする請求項8に記載のGDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法。
【請求項11】
臍帯血路から分離された臍帯血単核細胞を、TGF-βスーパーファミリー成長因子含有のバッジに播種して、培養する第1のステップと、
培養皿に付着されて、相対的に早く増殖する単核細胞を選択的に分離して培養する第2のステップとを含むことを特徴とする請求項8に記載のGDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法。
【請求項12】
前記GDF-3発現臍帯血幹細胞は、これを培養して、GDF-3含有培養液を製造することに用いられることを特徴とする請求項8に記載のGDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法。
【請求項13】
前記GDF-3発現臍帯血幹細胞は、継代が進行するほど、GDF-3の発現量が逐次増加することを特徴とする請求項8に記載のGDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法。
【請求項14】
前記GDF-3高発現臍帯血幹細胞を確保するために、GDF-3発現臍帯血幹細胞は、継代5又はそれ以上の継代であることを特徴とする請求項8に記載のGDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法。
【請求項15】
臍帯血幹細胞を大量確保するために、GDF-3発現臍帯血幹細胞を継代培養することを特徴とする請求項8に記載のGDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法。
【請求項16】
細胞外基質成分の分泌能に優れた臍帯血幹細胞を大量確保するために、GDF-3発現臍帯血幹細胞を継代培養することを特徴とする請求項8に記載のGDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法。
【請求項17】
臍帯血から分離された臍帯血単核細胞を、TGF-βスーパーファミリー成長因子含有のバッジに播種して培養し、培養皿に付着して相対的に早く増殖する単核細胞を選択的に分離して培養することを特徴とするGDF-3発現臍帯血幹細胞。
【請求項18】
GDF-3を含有することを特徴とする線維芽細胞生長増加用組成物。
【請求項19】
前記線維芽細胞は、ヒト上皮細胞(HDF)であることを特徴とする請求項18に記載の線維芽細胞生長増加用組成物。
【請求項20】
GDF-3は、線維芽細胞において、GDF-3、コラーゲン、及びフィブロネクチンからなる群より少なくとも1つ選ばれたタンパク質の遺伝子の発現を増加させることを特徴とする請求項18に記載の線維芽細胞生長増加用組成物。
【請求項21】
前記GDF-3は、細胞の増殖及び/又は再生促進に関与する有効物質の合成を促進することを特徴とする請求項18に記載の線維芽細胞生長増加用組成物。
【請求項22】
GDF-3を含有することを特徴とする皮膚再生用組成物。
【請求項23】
化粧料組成物又は薬学組成物であることを特徴とする請求項22に記載の皮膚再生用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GDF-3を高く発現する臍帯血幹細胞の分離及び培養方法、並びにGDF-3の様々な用途に関する。
【背景技術】
【0002】
動物細胞培養は、初代培養と継代培養(subculture)がある。初代培養とは、組織片より細胞を分離して培養する過程である。継代培養とは、初代培養により得た細胞を持続的に維持するために培養する方法である。
【0003】
正常の動物細胞系統(cell line)は、死滅性(mortal)であるため、細胞分裂回数が限定されている。正常細胞を培養する場合は、殆ど、未分化幹細胞(undifferentiated stem cell)や前駆細胞の状態で生長し、分化が始まって増殖が停止する。それに対して、腫瘍組織から由来した細胞の場合は、生長と分化がまざっているので、持続して生長する。
【0004】
継代培養は、細胞増殖のために、2~7日毎に周期的に新たな培養皿に移して、細胞の代をつないで培養する方法である。制限された培養皿内では、栄養分が不足しており、分泌する代謝産物により細胞が増殖を止めることになるので、これを防止し、細胞が増殖できるように、新たな空間を提供することである。継代培養方法は、最も基本的に細胞が単層に育って止まるので、培養皿から細胞を取り外して、新たな培養皿で培養する。その他に、cell diskやmicro-carrierを活用して、専用の培地内で三次元培養する方法がある。
【0005】
動物組織から由来した細胞は、1次、2次、3次など、続けて培養する。しかし、多くの細胞は、このような継代培養を続ける場合、ある程度培養すると、更に増殖せず、細胞が死ぬことになる。多くの細胞は、分裂回数が増加することにつれ、細胞老化(culture senescence)現象が現れ、細胞の性質が時間によって変わるため、一定回数分、継代培養をすることができる。
【0006】
幹細胞は、自己増殖能と様々な組織細胞に分化する能力を有した未分化細胞であって、胚芽幹細胞、成体幹細胞、逆分化幹細胞に分けられる。胚芽幹細胞(embryonic stem cell)は、背盤胞内細胞塊から分離した幹細胞であって、人体の全ての細胞や組織に分化可能な全分化能(Pluripotency)を有していて、治療目的に使用されるが、移植に際して、腫瘍が形成される可能性が大きいことと倫理的な問題がある。逆分化幹細胞は、大人の体細胞に逆分化を起こす遺伝子を取り入れて、胚芽幹細胞のような分化能を有する細胞であって、胚芽幹細胞の倫理的な問題を解決したが、逆分化効率が低く、遺伝子導入にウイルスが使われて、実体の治療目的に使用するには危険が伴われる。成体幹細胞は、身体組織に存在する未分化細胞であって、死ぬ又は損傷した細胞を代替する役割を果たす。胚芽幹細胞とは異なり、安定して分化されて、腫瘍発生可能性が低く、受精卵を破壊しないため、倫理的な問題とならない。
【0007】
成体幹細胞は、脂肪、骨髄、臍帯血などから採取することができ、脂肪及び骨髄幹細胞は、供与者から浸湿法を用いて採取し、供与者の年齢及び健康状態によって、幹細胞の機能と効能に差が生じる。臍帯血幹細胞は、浸湿法を使用することなく、廃棄される臍帯血を活用し、類似した妊娠週令(40週)の臍帯血を使うため、供与者間の幹細胞機能と効能の差がほとんどない。
【0008】
成体幹細胞の再生及び抗炎症機能を活用した多数の細胞治療剤が開発中であり、このような成体幹細胞の再生及び抗炎症機能の機序は、成体幹細胞が作り出す物質によるもので、コラーゲン(Collagen)、TGF-β1、そして、miRNAのようなタンパク質及び誘電体がある。幹細胞治療剤の場合、細胞の生着可否と、完全に解消していない腫瘍発生に対する問題で、これを解決するために、幹細胞培養液及び細胞外小胞の研究が活発になされている。
【0009】
間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells)は、組織や器官の分化された細胞の間に存在する未分化された成体幹細胞であり、自ら増殖する自己再生能力(self-renewal)を有している。また、体外で容易に増殖が可能で、脂肪細胞、骨細胞、軟骨細胞、筋細胞など、様々な組織細胞に分化可能であり、分化機能を用いた組織再生に使われる。
【0010】
間葉系幹細胞は、表皮細胞成長因子、線維芽細胞成長因子(Fibroblast growth factor)のような様々な成長因子(growth factor)とサイトカインを分泌して、線維芽細胞からコラーゲンの生成を促進させて、皮膚の再生に重要な役割をすると知られている。
【0011】
また、人体から分離された間葉系幹細胞を治療に適するように改善することができ、幹細胞から分泌される様々な成長因子又はタンパク質を用いて、免疫調節、抗炎症など、様々な疾患に適用することができる。
【0012】
幹細胞から分泌される様々な成長因子又はタンパク質は、医薬又は化粧品など、産業的に活用することができる。幹細胞培養液又は幹細胞由来組成物内の成長因子を高濃度に含有するようにする技術は、まだ不備な実情であり、高濃度の成長因子を含む細胞外基質合成促進のための培養液又は組成物を製造するための新たな方法が要求される。
【0013】
細胞外基質(extracellular matrix)は、細胞が細胞外に分泌した様々な物質が形成する細胞の構造物であり、細胞間の空間を充填(filling)し、細胞と組織を連結する。細胞外基質は、細胞の構造的支持と細胞間の連結を設けるだけでなく、信号伝達を始めとした細胞と細胞の間の疎通のための役割と、胚芽の発生と、細胞の分化においても重要な機能をする。基本的に細胞外基質は、水とタンパク質、多糖類などからなり、それぞれの組織は、生成が始まるときからそれに合う形状と位相の細胞外基質を形成して保有している。細胞外基質と細胞との接合は、インテグリン(integrins)、ディスコイジンドメイン受容体(discoidin domain receptor)、シンデカン(syndecans)のような細胞外基質受容体(Extracellular matrix receptor)により行われ、このような接合は、細胞骨格と細胞外基質を連結させる。また、細胞外基質は、非常にダイナミックな構造を有していて、持続的に再形成され、細胞外基質の物理的、生化学的な特性は、生物体内器官が引張力や弾力など、固有の物理的特性を持たせるようにする。細胞外基質は、2つの大きい分子からなり、1つは、タンパク質と複合された多糖類であるプロテオグリカン(proteoglycan、PG)であり、他の1つは、コラーゲン、ケラチンのような水で溶けない繊維状タンパク質(fibrous protein)である。
【0014】
プロテオグリカンは、細胞と組織の間に一番多く存在する物質で、水素化ゲル(hydrated gel)形状に存在し、緩衝作用、水和作用、結合、及び抵抗作用などの性質を用いて、様々な役割を担当している。
【0015】
繊維状タンパク質の多数の種類のうち、最も豊かなタンパク質であるコラーゲンは、多細胞動物の総タンパク質の約30%を占めている。コラーゲンは、細胞外基質の構造を担当し、弾性力と細胞付着機構及び細胞移動と組織の発達に関与し、他の繊維状タンパク質であるエラスチン(elastin)と連携されている。エラスチン繊維は、反復的な伸張作用を要求する組織の伸縮性に関与する。しかし、エラスチン繊維の伸張は、コラーゲン繊維と緊密に連結されているので、非常に制限的である。また、他の繊維状タンパク質としては、フィブロネクチン(fibronectin、FN)があり、これは、細胞外基質の間を組織化し、細胞と細胞外基質の連結を担当する。
【0016】
一方、幹細胞マーカー(Stem cell marker)GDF-3(Growth Differentiation Factor-3)は、TGF-βスーパーファミリーであり、Nodal Signalingを活性化して、コラーゲン、フィブロネクチン、TGF-BIのような皮膚再生に関するタンパク質の転写作用を活性化させる。GDF-3と幹細胞の相関関係は、主に胚芽幹細胞(embryonic stem cells、ESC)で研究されており、GDF-3がESCのstemnessマーカーとして知られているが、その他の成体幹細胞におけるGDF-3の機能に対しては、明かしたところがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、GDF-3遺伝子を高く発現する臍帯血幹細胞の製造方法、及びGDF-3の様々な用途を提供することである。
【0018】
具体的に、本発明は、臍帯血から分離した単核細胞をフィブロネクチンが塗抹された培養容器内で新しく設計された幹細胞培養用バッジを活用して、増殖が速い臍帯血幹細胞を確保することを特徴とする臍帯血由来高効能の幹細胞分離方法を提供しようとする。また、本発明は、幹細胞内GDF-3発現増加誘導により、細胞増殖の持続性と細胞外基質成分の分泌を向上させる方法を提供しようとする。また、これを基に、GDF-3高発現臍帯血幹細胞を用いた細胞増殖及び細胞外基質成分の分泌を誘導して、細胞外基質成分が含有されている培養液組成物を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の第1の様態は、臍帯血幹細胞を培養して、GDF-3を発現させる、GDF-3製造方法を提供する。
【0020】
本発明の第2の様態は、GDF-3高発現臍帯血幹細胞を確保するために、生長速度(cell doubling time)がはやい臍帯血幹細胞を分離培養する、GDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の第3の様態は、臍帯血から分離した臍帯血単核細胞をTGF-βスーパーファミリー成長因子(superfamily growth factor)含有バッジに播種(Seeding)して培養し、培養皿に付着して、相対的に早く増殖する単核細胞を選択的に分離して培養した、GDF-3高発現臍帯血幹細胞を提供する。
【0022】
本発明の第4の様態は、GDF-3を含有する、線維芽細胞生長増加用組成物を提供する。
【0023】
本発明の第5様態は、GDF-3を含有する、皮膚再生用組成物を提供する。
【0024】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明者は、幹細胞自体を多量確保することで、マスタ細胞銀行(Master Cell Bank)の構築に容易であろ、これを活用して、有効性分が高含量に含有された細胞及び培養液の大量確保が可能であるということを考えて、様々な実験を行った結果、(i) GDF-3高発現は、細胞の増殖と再生促進に関与する有効物質の合成を促進すること、(ii) 分離培養された臍帯血幹細胞のGDF-3発現量と分離培養された臍帯血幹細胞の増殖速度は、相関関係があるということ、(iii) 臍帯血幹細胞でGDF-3の遺伝子発現が高く現れること、(iv) ヒト上皮細胞(HDF)にGDF-3処理するとき、細胞の形状が長くて短い形状を表し、増殖に有利な形状を有しており、持続的に細胞が増加すること(実施例5及び図7)、(v) ヒト上皮細胞(HDF)にGDF-3の処理において、皮膚再生に関与するコラーゲンとフィブロネクチンのような皮膚構成物質の遺伝子発現も増加すること(実施例6及び図8)を見出し、本発明は、これに基づいている。
【0025】
本発明により分離培養された臍帯血幹細胞の場合、GDF-3を高発現する特性を表す。通常、継代が行われることにつれ、幹細胞の増殖が減少して、十分な量の細胞数の確保が難しいが、GDF-3が高発現される幹細胞の場合、継代が進行されても、細胞の増殖能が対照群と比較して、高く維持されて、元気な状態の幹細胞を大量に確保できるメリットがある。また、幹細胞の増殖率が高いことにつれ、細胞が分泌する細胞外基質成分の濃度も高いことと確認されて、GDF-3高発現の臍帯血幹細胞を活用した培養液組成物の生産において、効能・効果に優れる原料を生産することができる。
【0026】
本発明の一様態によるGDF-3高発現幹細胞の分離及び培養方法は、新たに設計された幹細胞培養用バッジを活用したことを特徴とする。ここで、新たに設計された幹細胞培養用バッジは、TGF-βスーパーファミリーを含む様々な成長因子が添加された。
【0027】
本発明により分離及び培養する臍帯血幹細胞は、24時間未満の生長速度(cell doubling time)を有した臍帯血幹細胞を確保できるようにする。
【0028】
本発明から確認したように、GDF-3は、線維芽細胞の生長を増やす(図8)。GDF-3により生長を増やす線維芽細胞の非制限的な例として、ヒト上皮細胞(Human Dermal Fibroblast)がある。
【0029】
本発明から確認したように、GDF-3は、これにより、線維芽細胞でGDF-3、コラーゲン及び/又はフィブロネクチンの各遺伝子の発現を増加することができる(図8)。
【0030】
一方、分離培養された臍帯血幹細胞のGDF-3発現量と分離培養された臍帯血幹細胞の増殖速度は、相関関係があるという発見に基づいて、本発明の一様態によるGDF-3高発現臍帯血幹細胞の製造方法は、GDF-3高発現臍帯血幹細胞を確保するために、生長速度がはやい臍帯血幹細胞を分離培養することを特徴とする。
【0031】
分離培養された臍帯血幹細胞の増殖速度が大きいほど、分離培養された臍帯血幹細胞のGDF-3発現量が高い。
【0032】
そこで、本発明は、GDF-3高発現臍帯血幹細胞に対する細胞銀行(cell bank)を構築することができる。例えば、臍帯血路から分離した臍帯血単核細胞をTGF-βスーパーファミリー成長因子含有バッジに播種して培養し、培養皿に付着して相対的に早く増殖する単核細胞を選択的に分離して培養した、GDF-3高発現臍帯血幹細胞を細胞銀行で構築することができる。
【0033】
また、本発明の一様態によるGDF-3高発現臍帯血幹細胞の製造方法は、バッジで生長速度がはやい臍帯血幹細胞を分離培養することを特徴とする(実施例1)。
【0034】
一具体例により、GDF-3高発現臍帯血幹細胞の製造方法は、臍帯血路から分離した臍帯血単核細胞を、TGF-βスーパーファミリー成長因子含有バッジに播種して培養する第1のステップと、培養皿に付着して相対的に早く増殖する単核細胞を選択的に分離して培養する第2のステップとを含む。
【0035】
第2のステップは、培養皿に付着していない細胞は除去し、付着した単核細胞のみを培養することができる。
【0036】
本発明により製造されたGDF-3発現臍帯血幹細胞は、脂肪(Adipocyte)、軟骨(Chondrocyte)、及び/又は、骨細胞(Osteocyte)に分化可能である。そこで、GDF-3高発現臍帯血幹細胞は、細胞治療剤として使用可能である。
【0037】
幹細胞培養に際して生産される成長因子の種類、この組み合わせ、及びその含量は、幹細胞由来により、この培養方法により、異なる。そこで、本発明により製造されたGDF-3発現臍帯血幹細胞は、これを培養して、GDF-3含有培養液を製造することに使用可能である。特に、本発明は、GDF-3を高発現する臍帯血由来幹細胞を分離培養してGDF-3含有培養液を生産することができる。
【0038】
驚いたことに、本発明により製造されたGDF-3発現臍帯血幹細胞は、継代が進行するほど、GDF-3の発現量が逐次増加することを見出した(図5)。そこで、GDF-3高発現臍帯血幹細胞を確保するために、継代5~継代7、又は、それ以上継代のGDF-3発現臍帯血幹細胞を使用することができる(図3)。
【0039】
本発明の一様態によるGDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法は、TGF-βスーパーファミリー成長因子含有バッジで、臍帯血幹細胞を分離培養することを特徴とする。この場合、継代培養において、生長能に優れたGDF-3高発現臍帯血幹細胞を確保することができる。
【0040】
そこで、本発明の一様態によるGDF-3発現臍帯血幹細胞の製造方法は、TGF-βスーパーファミリーを含む様々な成長因子含有バッジから臍帯血幹細胞を分離培養し、これを継代培養して、臍帯血幹細胞を大量確保することができる(図3)。
【0041】
本発明の一様態によるGDF-3発現臍帯血幹細胞を継代培養して、細胞外基質成分分泌能に優れた臍帯血幹細胞を大量確保することができる(図4)。
【0042】
前述したように、幹細胞マーカーであるGDF-3は、TGF-βスーパーファミリーである。TGF-βは、多面発現性因子(pleiotropic factor)であり、多重機能成長因子(Multifunctional growth factor)という特性を有する。
【0043】
TGF-β(Transforming growth factor-β)信号伝達は、様々な生物学的過程で決定的な役割を果たし、細胞成長抑制、細胞死滅、分化及び上皮間葉転換(epithelial-mesenchymal transition; EMT)のような様々な機能を果たす。TGF-β信号伝達系は、厳しく調節され、細胞恒常性の維持と共に、発生及び器官形成に決定的な役割を果たす。そこで、TGF-β信号伝達の撹乱は、癌、纖維症、及び先天性奇形のような生命を脅かす疾患を誘発する。
【0044】
TGF-βは、癌化過程の初期段階では、癌抑制活性を表わすが、癌化過程の後期には、癌成長を促進させることと知られている。TGF-β1は、多くの癌組織で多量発現され、TGF-β1の発現が高い癌患者の場合、悪性である場合が多く、予後も良くないことと知られている。
【0045】
細胞から分泌されたTGF-βは、タイプI及びタイプII受容体からなる2つのタイプの受容体の異種複合体に結合して、信号伝達を開始する。TGF-βは、II型受容体に結合することになると、I型受容体は、これを認識して、II型受容体に結合するようになるが、ここで、II型受容体がI型受容体のGS部位をリン酸化させると、I型受容体キナーゼが活性化するようになる。リン酸化したTGF-β1型受容体は、Smad2及びSmad3というTGF-β信号伝達媒介体のC-末端セリン残期をリン酸化することで、Smad2及びSmad3の活性化を誘発する。活性化されたSmad2及びSmad3は、Smad4と複合体を形成して、核に移動し、標的遺伝子の発現に関与する。
【0046】
TGF-βの腫瘍抑制の役割は、様々な研究で立証された。これとは逆に、TGF-βは、癌の進行段階で、腫瘍成長、浸潤、及び転移を促進する。このように相反する癌進行過程におけるTGF-βの役割の変化に対する詳細な分子機序は、まだ明確に究明されていない。
【0047】
TGF-βは、免疫系の多くの構成要素の機能と拡張を阻害することで、免疫恒常性(homeostasis)と寛容(tolerance)を決定づける重要な執行者の役割をすることと知られている。TGF-βが免疫耐性と炎症反応を調節する。TGF-β信号は、CD8+T細胞の細胞毒性プログラムを直接的に抑制する。
【0048】
腫瘍微細環境において、癌細胞で生産された過量のTGF-β1は、癌細胞の信号伝達系に過度な変化を誘発させる。このような変化は、癌細胞と腫瘍-てんかんの相互作用に悪影響を及ぼすことになる。細胞と細胞の間のcross-talkが正常になされないと、permissive stroma(許容的なてんかん)を作って、腫瘍細胞がよく広がって行く環境を作る。癌細胞から分泌されたTGF-βは、EMTと癌幹細胞(CSC)に類似した形質を有する細胞で、癌細胞を誘導する。
【0049】
EMTを経験する細胞は、移動能力(migratoryability)が増加して、転移を起こしやすくなるが、これらの細胞は、紡錘形状(spindle-shape)に変わり、細胞骨格に変化を起こして、他の臓器への移動が易くなり、転移が容易となる。
【0050】
上皮細胞では、上皮細胞の付着に必要なタンパク質であるE-cadherinの消失、及びN-cadherin、ビタミン、及びフィブロネクチンのような間葉標識子の発現増加がEMT過程で現れる。TGF-βは、SNAI1/2、Twist、及びZEB1/2を始めとした様々な転写調節因子を活性化させるEMTの真正な媒介体である。EMTを経験する腫瘍細胞は、癌幹細胞(CSC)性質を取得することになる。
【0051】
このように、多面発現性因子(pleiotropic factor)であり、多重機能成長因子(Multifunctional growth factor)という特性を有したTGF-βは、癌進行過程で相反する役割をし、このような役割の転換に対する詳細な分子機序は、まだ明確に究明されていない。そこで、TGF-βスーパーファミリーの一種であるGDF-3も、同一の副作用を引き起こす可能性が大きいので、本発明により分離培養された臍帯血幹細胞を用いて、体外でGDF-3を大量生産後、所望する投与時期、投与部位、及び/又は、投与量を調節して、体内適用することが望ましい。
【0052】
本明細書において、「バッジ」は、生体外(in vitro)で細胞の成長と増殖に必要な必須成分を含む組成物を意味し、当該分野において通常使用される幹細胞培養用バッジを全て含み、例えば、DMEM(Dulbecco's Modified Eagle's Medium)、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI 1640, DMEM/F-10(Dulbecco's Modified Eagle's Medium: Nutrient Mixture F-10)、DMEM/F-12(Dulbecco's Modified Eagle's Medium: Nutrient Mixture F-12)、α-MEM(α-Minimal essential Medium)、G-MEM(Glasgow's Minimal Essential Medium)、IMDM(Isocove's Modified Dulbecco's Medium)、KnockOut DMEMなど、商業的に製造されたバッジ又は人為的に合成したバッジを用いることができ、これに限定されない。本明細書において、バッジは、一般に、炭素源、窒素源、及び微量元素成分を含み、アミノ酸、抗生剤などを更に含むことができる。
【0053】
また、本発明で確認したように、GDF-3は、線維芽細胞において、GDF-3, コラーゲン、及びフィブロネクチンからなる群より少なくとも1つ選ばれたタンパク質の遺伝子の発現を増加、及び/又は、細胞の増殖及び/又は再生促進に関与する有効物質の合成を促進することができるので、線維芽細胞生長増加用組成物の有効性分として使用可能である(図6図8)。線維芽細胞の非制限的な例としては、ヒト上皮細胞(Human Dermal Fibroblast, HDF)がある。
そこで、本発明において、GDF-3は、皮膚再生用組成物の有効性分として使用可能である。
【0054】
皮膚再生用組成物としては、皮膚再生又はしわ改善用化粧組成物、経皮投与型薬学組成物、 及び皮膚再生又はしわ治療用薬学組成物がある。本発明の薬学組成物は、前記有効性分の薬剤学的に許容可能な塩を含むことができる。
【0055】
「皮膚再生」は、皮膚の外部及び内部原因による損傷に対して、皮膚組織が回復することを意味する。前記外部原因による損傷は、紫外線、外部汚染物質、創傷、外傷などが挙げられ、前記内部原因による損傷は、ストレスなどが挙げられる。
【0056】
「皮膚しわ」は、皮膚が衰えて生じた細い線を意味し、遺伝子による原因、皮膚真皮に存在するコラーゲンとエラスチンの減少、外部環境などにより誘発される。
【0057】
「皮膚しわ改善」とは、皮膚にしわが生成されるのを抑制又は阻害するとか、既に生成されたしわを緩和させることをいう。本発明の目的上、前記皮膚再生及びしわ改善は、皮膚弾力増進を含む。
【0058】
「しわ治療」は、皮膚にしわが生成されることを少なくとも部分的・一時的に停止させることを意味する。
【0059】
「皮膚弾力」は、真皮層に存在するエラスチン(elastin)で構成された弾力繊維により現れ、このような弾力繊維は、ゴムのように非常に低い弾性係数を有しており、小さい力によっても容易に変形し、また、その力が除去されたときは、容易に元に戻る。また、弾力繊維は、エラスチンという無定形の基質に微小繊維(microfibrils)が差し込まれている形状を帯びており、エラスチンは、リジンから由来したデスモシン(desmosine)とアイソデスモシン(isodesmosine)という弾力繊維でのみ見出されるとても独特なアミノ酸からなるタンパク質である。このようなデスモシンとアイソデスモシンなどは、長いペプチド鎖内で架橋(cross-links)を形成しており、このような構造がエラスチンにとって、ゴムのような性質を持たせる。
【0060】
「皮膚弾力増進」は、エラスチンからなる弾力繊維が、コラーゲン(collagen)という膠原纖維と共に存在するが、エラスチンとコラーゲンが十分存在する状態で、皮膚弾力が維持又は増加されることをいう。
【0061】
前記有効性分を化粧料組成物に用いる場合、一般の油化剤形及び可溶化剤形の形態に製造することができる。例えば、柔軟化粧水又は栄養化粧水などのような化粧水、フェイシャルローション、ボディローションなどのような乳液、栄養クリーム、水分クリーム、アイクリームなどのようなクリーム、エッセンス、スプレー、ジェル、パック、サンスクリーン、メイクアップベース、液体タイプ、パウダー、クレンジングクリーム、クレンジングローション、クレンジングオイルのようなメイクアップ除去剤、クレンジングフォーム、石鹸、ボディウォッシュなどのような洗浄剤などの剤形を有する。
【0062】
また、前記化粧料組成物は、前記有効性分に更に、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発泡剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型又は非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤化剤、必須オイル、染料、顔料、親水性又は親油性活性剤、脂質小胞又は化粧品に通常使われる任意の他の成分のような化粧品学分野で通常使われる補助剤を含有する。
【0063】
前記有効性分を皮膚外用剤に用いる場合、更に、脂肪物質、有機溶媒、溶解剤、濃縮剤、及びゲル化剤、軟化剤、抗酸化剤、懸濁化剤、安定化剤、発布剤(foaming agent)、芳香剤、界面活性剤、水、イオン型又は非イオン型乳化剤、充填剤、金属イオン封鎖剤、及びキレート化剤、保存剤、ビタミン、遮断剤、湿潤話題、必須オイル、染料、顔料、親水性又は親油性活性剤、脂質小胞又は皮膚用外用剤に、通常使用される任意の他の成分のような皮膚科学分野で通常使用される補助剤を含有する。また、前記成分は、皮膚科学分野で一般に使用される量に導入される。
【0064】
また、前記有効性分が皮膚外用剤剤形に提供される場合、これに限定されるものではないが、軟膏、パッチ、ゲル、クリーム、又は、噴霧剤のような剤形を有する。
【0065】
前記有効性分の薬剤学的に許容可能な塩は、有機酸又は無機酸を用いて形成された酸付加塩であり、前記有機酸は、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、乳酸、ブチル酸ン、イソブチル酸、トリフルオロ酢酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、フマル酸、コハク酸、コハク酸モノアミド、グルタミン酸、酒石酸、シュウ酸、クエン酸ン、グリコール酸、グルクロン酸、アスクロビン酸、ベンゾ酸、フタル酸、サリチル酸、アントラニル酸、ジクロロ酢酸、アミノオキシ酢酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、及びメタンスルホン酸系塩を含み、無機酸は、例えば、塩酸、臭素酸、硫酸、リン酸、硝酸、炭酸、及びほう酸系塩を含む。望ましくは、塩酸塩又は酢酸塩の形態であり、より望ましくは、塩酸塩の形態である。
【0066】
前述した酸付加塩は、a) 前記有効性分及び酸を直接混合するか、b) これらのうち、1つを溶媒又は含水溶媒中に溶解させ混合させるか、又は、c) 有効性分を溶媒又は含水溶媒中の酸に位置させ、これらを混合する一般の塩製造方法で製造される。
【0067】
前記とは別に更に塩が可能な形態は、カバ塩、カバペンチン塩、プレガバリン塩、ニコチン酸塩、アジピン酸塩、ヘミマロン酸塩、システイン塩、アセチルシステイン塩、メチオニン塩、アルギニン塩、リジン塩、オルニチン塩、アスパラギン酸塩などがある。
【0068】
また、本発明の前記有効性分を医薬品に使用する場合、更に同一又は類似した機能を表わす有効性分を1種以上含有することができる。例えば、公知の皮膚再生又はしわ改善成分を含むことができる。更なる皮膚再生又はしわ改善成分を含むことになると、本発明の培養液の皮膚再生又はしわ改善の効果は、更に増進される。前記成分を追加するときは、複合使用による皮膚安全性、剤形化の容易性、有効成分の安定性を考えることができる。追加の成分は、全体組成物重量に対して、0.0001重量%乃至10重量%に含まれ、前記含量の範囲は、皮膚安全性、前記有効性分の剤形化時の容易性などの要件により調節される。
【0069】
また、本発明の薬学組成物は、薬学的に許容可能な担体をさらに含む。
【0070】
薬学的に許容される担体は、緩衝液、注射用滅菌水、一般食塩水、又は燐酸塩緩衝食塩水、スクロース、ヒスチジン、塩、及びポリソルベートなどのような多数の成分を含む。
【0071】
本発明の薬学組成物は、経口又は非経口(例、経皮)で投与することができ、一般医薬品製剤の形態、例えば、臨床投与時、経口及び非経口の様々な剤形で投与可能であり、製剤化する場合は、通像使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤、又は、賦形剤を使用して調剤される。
【0072】
経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、本発明の薬学組成物に少なくとも1つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム(Calcium carbonate)、スクロース(Sucrose)又は、ラクトース(Lactose)、ゼラチンなどを混ぜて調剤される。
【0073】
単なる賦形剤の他に、ステアリン酸マグネシウムタルクのような潤滑剤も使われる。経口のための液状製剤としては、懸濁剤、内容液剤、乳剤、シロップ剤などが該当し、よく使われる単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他に、様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれる。
【0074】
非経口投与のための製剤には、滅菌水溶液、非水生溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水生溶剤、懸濁剤としては、プロピレングリコール(Propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エティルオレイトのような注射可能なエステルなどが使用される。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリーン、グリセロジェラチンなどが使用される。
【発明の効果】
【0075】
本発明では、GDF-3が高く発現される成体幹細胞を臍帯血路から分離してGDF-3の臍帯血幹細胞内役割を分析した結果、臍帯血幹細胞がGDF-3を高く発現すると、細胞増殖能と細胞外基質分泌能が増加されていることを明かし、このようなGDF-3が幹細胞だけでなく、一般の体細胞においても、細胞増殖と細胞外基質分泌能にも影響することを確認した。
【0076】
このような特性により、成体幹細胞の継代可能回収が増加することにつれ、さらに多くの幹細胞を確保することができ、幹細胞自体と幹細胞が分泌する有効物質を大量に確保することができる。これは、GDF-3高発現臍帯血幹細胞と細胞分泌物質を活用した様々な組成物の開発に有用に作用することができる。
【0077】
そこで、本発明により製造されたGDF-3高発現臍帯血幹細胞は、次世代バイオ医薬品領域で、1つの主原料として活用することができる。
【0078】
また、GDF-3により細胞外基質分泌能が増加した場合、これを含む細胞培養液の効能が高くなることによる培養液を活用した化粧品及び医薬品の製造に適用可能な組成物開発に有用に作用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
図1】実施例1で分離培養した臍帯血幹細胞が固有表面タンパク質を発現するか否かを分析したグラフである。
図2】一般のDMEMバッジ(CTR)と新規幹細胞培養用バッジ(PMS)で臍帯血幹細胞分離後、継代別細胞形状と増殖速度を比較している。
図3】一般のDMEMバッジ(CTR)と新規幹細胞培養用バッジ(PMS)の間の後期継代(P7以後)時、細胞の増殖程度を比較したグラフである。
図4】一般のDMEMバッジ(CTR)と新規幹細胞培養用バッジ(PMS)を活用して、臍帯血幹細胞培養時、細胞が分泌する細胞外基質物質、フィブロネクチンの分泌量を比較したグラフである。
図5】一般のDMEMバッジ(CTR)と新規幹細胞培養用バッジ(PMS)で臍帯血幹細胞を培養時、継代培養初期(P3)から後期(P7)まで、細胞で発現するGDF-3遺伝子発現特性を分析したグラフである。
図6】一般の皮膚細胞(dermal fibroblast)培養時、GDF-3タンパク質処理後、GDF-3遺伝子高発現を確認している。
図7】ヒト上皮細胞(HDF)生長に及ぶGDF-3の影響を示すグラフである。GDF-3が高発現される皮膚細胞の場合、細胞の増殖がはやく、持続的に進行されることを確認している。
図8】GDF-3高発現が誘導された一般の皮膚細胞が対照群の皮膚細胞と比較して、細胞外基質成分であるコラーゲンとフィブロネクチンの遺伝子発現が高く現れることを確認している。
【発明を実施するための形態】
【0080】
以下、本発明を、実施例を参照してより具体的に説明する。但し、下記実施例は、本発明の技術的特徴を明確に例示しているだけであり、本発明の保護範囲を限定するものではない。
【0081】
実施例1. 臍帯血幹細胞分離
1.1.臍帯血単核細胞分離
産婦から採取した臍帯血を、HetasepTMと混合して赤血球を除去した後、Ficoll-plaqueを処理して遠心分離後、臍帯血単核細胞を分離して、PBSで洗浄した。フィブロネクチン(50ug/ml)でコートした(24hrs 、4℃)培養皿に、臍帯血単核細胞を播種した。ここで使用される培養バッジは、DMEM/F12に、FGF-2、EGF、TGF-βスーパーファミリー成長因子、アスコルビン酸、ヘパリンを更に添加して開発した新規自体バッジを用いた。
【0082】
1.2. 臍帯血幹細胞分離
臍帯血単核細胞を48時間培養後、培養皿に付着していない細胞は除去し、付着した単核細胞だけを培養し、早く増殖する単核細胞を選択的に分離して培養した後、幹細胞マーカーを分析した。ここで、培養バッジは、2~3日間隔で入れ替え、cell doubling timeが24時間未満の臍帯血幹細胞を分離した。
【0083】
1.3. 臍帯血幹細胞固有表面マーカー発現分析
1.2.で臍帯血幹細胞分離後、分離した細胞が臍帯血幹細胞であるか否かを確認するために、フローサイトメトリー実験をした。細胞表面抗原フェノタイピング(phenotyping)のために、3~4継代の細胞を修得して、フルオレセインイソチオシアネート(fluorescein isothiocyanate(FITC))、又は、フィコエリトリン(phycoerythrin)(PE)が結合した抗体で染め、FACS(CytoFLEX、BECKMAM COULTER、CA)で分析した。
【0084】
1.2.で分離した臍帯血幹細胞の特性を分析するために、陽性標識抗原として、CD44(間葉系幹細胞マーカー)、CD73(間葉系幹細胞マーカー)、CD105(間葉系幹細胞マーカー)を使用しており、陰性標識抗原として、CD11b(造血母幹細胞マーカー)、CD19(免疫細胞マーカー)、CD34(造血母幹細胞マーカー)、CD45(非造血母幹細胞マーカー)、HLA-DR(免疫拒絶反応関連マーカー)を使用した。この結果として、臍帯血幹細胞のCD抗原に対する陽性細胞割合は、表1及び、これをグラフで示した図1の通りである。
【0085】
【表1】
【0086】
比較例1
1.1臍帯血単核細胞分離、及び1.2臍帯血幹細胞分離において、バッジ対照群としてDMEMを使用したことを除き、実施例1と同様な方法で、臍帯血路から幹細胞を分離培養した。
【0087】
実施例2.帯血幹細胞培養及び増殖能分析
実施例1及び比較例1でそれぞれ分離された臍帯血幹細胞は、10%ウシ胎児血清(Fetal bovine serum)及びFGF2(Fibroblast growth factor 2)を含有するDMEM/F12バッジに基づく新規幹細胞培養用バッジを添加して、37℃5%CO2培地で培養した。これから細胞増殖率を比較した(図2及び図3)。
【0088】
図2で比較しているように、実施例1で分離培養された臍帯血幹細胞(PMS)が、比較例1で分離培養された臍帯血幹細胞(CTR)よりに増殖速度がはやい。
【0089】
また、図3で比較しているように、比較例1で分離培養された臍帯血幹細胞(CTR)は、7継代以後、細胞生長が止められるが、実施例1で分離培養された臍帯血幹細胞(PMS)は、8継代以上も、細胞増殖が誘導された。そこで、本発明は、より多い幹細胞の大量確保が可能である。
【0090】
実施例3. 臍帯血幹細胞の細胞外基質(ECM)物質の分泌能比較
実施例1と比較例1で分離された臍帯血幹細胞に対して、各継代別臍帯血幹細胞を4~10×10cells/cm2に播種してから、24時間後、PBS洗浄後、無血清培地(Serum Free Media)にバッジ交換した後、2~7日間培養して、臍帯血幹細胞培養液を作った。
【0091】
各継代別臍帯血幹細胞培養液を、ELISA Kitを活用して、フィブロネクチンの発現量を分析した(図4)。
【0092】
図4に示しているように、GDF-3高発現が維持された実施例1で分離された臍帯血幹細胞を継代培養した臍帯血幹細胞培養液内のフィブロネクチンの含有量が、比較例1で分離された臍帯血幹細胞を継代培養した対照群と比較して、高いことを確認した。
【0093】
実施例1で分離された臍帯血幹細胞は、比較例1で分離された臍帯血幹細胞に対して、細胞増殖だけでなく、ECM成分分比量も増加した。
【0094】
実施例4. Passage別GDF-3 mRNA発現量分析
実施例1と比較例1で分離された臍帯血幹細胞に対して、各継代別臍帯血幹細胞をPBS洗浄し、Trypsin EDTAで細胞を浮遊させた後、Trypsin EDTA処理量の2倍の培養バッジを入れて、Trypsin EDTAを非活性化させた。浮遊させた細胞を遠心分離して、上層液を除去した。細胞ペレット(Pellet)をPBSで再懸濁した後、遠心分離して、上層液を除去した。
【0095】
PureLinkTM RNA Mini Kit(Invitrogen)でTotal RNAを分離後、定量して、cDNA合成した。
【0096】
合成された臍帯血幹細胞cDNAを、表2のPrimerでReal-Time PCRを進行して、各継代別GDF-3の発現量を確認した。この時、ローディング対照群(loading control)として、一種のハウスキーピング遺伝子(house keeping gene)であるGAPDHを用いた(図5)。
【0097】
【表2】
【0098】
図5のグラフから分かるように、増殖がはやい原因は、GDF-3の高発現のためである。
【0099】
また、図5に示しているように、実施例1で分離された臍帯血幹細胞(PMS)において、GDF-3の発現量が、比較例1で分離された臍帯血幹細胞対照群(Control)と比較して、高く現れることを確認した。特異的に継代が進行するほど、GDF-3の発現量が逐次増加することと確認された。
【0100】
実施例5. GDF-3が処理されたヒト上皮細胞(HDF)の特性分析
ヒト上皮細胞(HDF)培養の間、GDF-3を処理した後、処理しない対照群との細胞特性をmRNA分析により行った。図6に示しているように、実験結果、GDF-3処理実験群において、GDF-3遺伝子発現が高く現れることを確認することができた。
【0101】
実施例6. HDFの生長に及ぶGDF-3の影響
ヒト上皮細胞(HDF)をDMEMバッジに培養する間、48時間間隔でGDF-3を1~100ng/ml範囲で処理した結果、図7に示しているように、GDF-3処理実験群において、未処理群よりもHDFの生長が増加することを確認した。GDF-3処理群において、細胞の形状がより長くて短い形状を見せ、増殖に有利な形状を有しており、96時間以上の長期間培養時にも、細胞増殖が停滞及び減少することなく、持続的に細胞が増加することを確認した。これは、GDF-3が細胞の持続的な生長に影響することを意味する(図7)。
【0102】
実施例7. GDF-3高発現HDFの細胞外基質遺伝子発現量の確認
GDF-3処理により、皮膚再生に関与するコラーゲンとフィブロネクチンのような皮膚構成物質の遺伝子発現も増加することを、Real-Time PCR技法で確認した(図8)。
【0103】
図8に示しているように、HDFでGDF-3高発現が維持されると、ECM成分の遺伝子発現量が増加することを確認した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】