(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】改善された音響性能を有する防音フローリングの調製及び防音フローリング
(51)【国際特許分類】
E04F 15/20 20060101AFI20231222BHJP
E04F 15/10 20060101ALI20231222BHJP
E04F 15/16 20060101ALI20231222BHJP
E04F 15/18 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
E04F15/20
E04F15/10 104A
E04F15/16 A
E04F15/18 601Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534333
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-06
(86)【国際出願番号】 US2021061510
(87)【国際公開番号】W WO2022125360
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ネルカー、マノージュ
(72)【発明者】
【氏名】ロバートソン、イアン ディ.
(72)【発明者】
【氏名】ソータ、マノージュ
【テーマコード(参考)】
2E220
【Fターム(参考)】
2E220AA19
2E220AC01
2E220AC03
2E220BB04
2E220GB11X
2E220GB32X
2E220GB43X
(57)【要約】
防音フローリングを調製する方法は、フローリング基材を提供することと、液体アクリル防音組成物のコーティングをフローリング基材の表面に適用することと、コーティングを乾燥させることと、任意選択的に、コーティング上に1つ以上の追加の層を形成することと、を含む。また、防音フローリングも開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
防音フローリングを調製する方法であって、
フローリング基材を提供することと、
液体アクリル防音組成物のコーティングを前記フローリング基材の表面に適用することであって、前記液体アクリル防音組成物は、アクリル振動減衰ポリマー及び少なくとも1つの充填剤を含む、適用することと、
前記コーティングを乾燥させることと、
任意選択的に、前記コーティング上に1つ以上の追加の層を形成することと、を含む、方法。
【請求項2】
前記液体アクリル防音組成物の前記コーティングが、0.5~8kg/m
2の使用量で適用される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記液体アクリル防音組成物の前記コーティングが、2~6kg/m
2の使用量で適用される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記液体アクリル防音組成物の前記コーティングが、カーテンコータ、スプレーコータ、又は押出機によって適用される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記防音フローリングが、浮き床設置のために構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの充填剤が、前記液体アクリル防音組成物の総体積に基づいて、0.5~15体積%の範囲の量で、少なくとも1つの板状充填剤を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの板状充填剤が、雲母、グラファイト、タルク、及びカオリンからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記アクリル振動減衰ポリマーが、線状アクリルポリマー又はコポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記アクリル振動減衰ポリマーが、ホスフェート官能化線状アクリルコポリマーを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記アクリル振動減衰ポリマーが、線状アクリルコポリマーコアを含むコアシェルポリマーを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の方法によって製造される、防音フローリング。
【請求項12】
前記防音フローリングが、ビニルフローリング、集成材フローリング、及び積層フローリングから選択される、請求項11に記載の防音フローリング。
【請求項13】
前記コーティングが、前記防音フローリング上の最外層である、請求項11又は12に記載の防音フローリング。
【請求項14】
前記コーティングが、前記基材と追加の層との間の拘束層である、請求項11又は12に記載の防音フローリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防音フローリング及び防音フローリングを作製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フローリングには様々な形態がある。中実堅木張り床及びセラミックタイルは、そのような床と関連がある外観及び特性の故にしばしば好まれる。中実堅木及びセラミックタイルはコストがかかるため、より安価な代替品、例えば、弾性ビニルフローリング、集成材フローリング、及び積層フローリングなどが開発されている。
【0003】
集成材フローリングは、典型的には、合板及び繊維板などの木材又は木繊維複合材の層の上に無垢材の薄い層を備えている。
【0004】
積層フローリングは、合板又は繊維板などの木材複合材の層に積層されている透明層又は摩耗層でしばしば覆われた印刷層又は装飾層を含む。
【0005】
弾性ビニルフローリングには、ソリッドコア、フォームコア、及び軟質フローリングを含む多くの形態がある。軟質フローリングは、可塑剤を含有するが、ソリッドコアフローリングは可塑剤を有してない。その名前が示唆しているように、フォームコアフローリングはフォーム層を含有する。
【0006】
弾性ビニルフローリングは、典型的には、基層、印刷層又は装飾層、及び透明層又は摩耗層を含み得る様々な層から作製される。基層は、典型的には、炭酸カルシウムで充填されたポリ塩化ビニル(polyvinyl chloride、PVC)などの高充填熱可塑性樹脂であり、典型的には、弾性ビニルフローリングの主な成分である。印刷層は美的外観を提供し、透明層は、耐摩耗性を提供し、印刷層が見えることを可能にする。摩耗層の上に、紫外線コーティングを適用して摩耗性能を向上させ得る。
【0007】
過去数年間で、高級ビニルタイル(luxury vinyl tile、LVT)は、堅木又はセラミックタイルの外観を備えたLVTをメーカーが製造することを可能にするイノベーションによって後押しされ、急速に成長しているセグメントになっている。
【0008】
LVTを含むビニルフローリングの主な欠点のうちの1つは、ビニルフローリングの音が外観と一致しないことである。弾性ビニルフローリングは、使用中に独特の音を有する。ビニルの音は、レコードコレクションを聴いているオーディオ愛好家にとっては魅力的であり得るが、ビニルフローリングの音は、堅木及びセラミックタイルのフローリングの特徴的な音と比べると、魅力的ではない。
【0009】
使用中、弾性ビニルフローリングは、部屋の中での動きによる騒音(ヒールのコツコツという音)又は部屋の下の階への騒音(足音、家具の引き摺り音)のいずれかを発生する。どちらの場合も、ビニルフローリングの典型的な音響特性は望ましくない。木材は、その上を歩くと部屋の中で独特の音を出すことが知られている。ビニルフローリングは、木材のような外観を有しているとしても、それが作り出す音は、木材とは異なり、錯視を台無しにする。加えて、床から下の部屋に伝わる振動の量を制限するニーズが存在する。医療施設、学校、及び図書館などの特定の用途では、音の伝播が低いことが必要である。
【0010】
集成材フローリング及び積層フローリングはまた、弾性ビニルフローリングと同じ音響的な問題を抱えており、中実堅木又はセラミックの床と同じ音響特性を有していない。したがって、弾性ビニルフローリングのように、集成材フローリング及び積層フローリングは、中実堅木又はセラミックの床のような高級感のある外観を有し得るが、音響的には単調になってしまう。
【0011】
しばしば、弾性ビニルフローリング、集成材フローリング及び積層フローリングでは、フロアタイルは、床に直接固定されることなく、互いにかみ合うように構成されている。対照的に、中実堅木張り床は、典型的には、基礎床に釘付けされ、セラミックの床は、基礎床に接着され、それにより、床と基礎床との間の反響空間が排除されることによって、一般的に、より静かな床になる。
【0012】
現在、騒音を低減するために、フォーム、コルク、又はゴムシートなどの様々な下敷き材が取り付けられている。しかしながら、下敷きを使用すると、手間のかかる追加の設置手順が必要になり、下敷きは、依然として騒音低減の目標を達成できない可能性がある。更に、下敷きは、床の音響的な特性を変えることなく、床の容積を単純に減らすことができる。
【0013】
フローリングの積層構造において拘束層を使用することによって、フローリングに制振材を使用する試みが行われている。拘束層は、積層構造内に含有される層であり、すなわち、拘束層は、拘束層の上下に少なくとも1つの追加の剛性層を有する。
【0014】
例えば、米国特許第8,640,824号は、クラムラバー成分、ポリウレタン発泡体、及び樹脂結合剤を含む、拘束音響部分を有するビニルタイルを開示している。クラムラバーは、リサイクルされたタイヤ又はスニーカーゴムから作製することができる。
【0015】
米国特許出願公開第2014/0302294号は、任意の様々なゴム、コルク、及びポリウレタンフォームから選択された個々の層を含む音響学的なビニルタイルにおける拘束層を開示している。
【0016】
米国特許第8,146,310号は、騒音を制御するためのシステムを含む騒音制御システムを開示している。そのシステムは、空所を作出するために複数のポリマーフィラメントと空気とを有するネット層を含む多層で構成されている。
【0017】
騒音を低下させるこれらの試みには、既存の生産ラインへの複雑な変更、並びに騒音を軽減するための複数の成分が必要である。
【0018】
米国特許第9,157,241号は、タイルに結合された制振材の層を有するセラミックタイルを開示している。制振材はビチューメン、スチレンアクリル系ポリマー、及びポリビニルブチラールを含んでいてもよく、制振材の層はセラミックタイルに接着されていなければならず、完成したタイルは追加の接着層によって基礎床に接着されていなければならない。したがって、このセラミックタイルは、セラミックタイルを製造するための複数のステップ、及びタイルを取り付けるための追加のステップを必要とする。
【0019】
上で確認した問題のうちの1つ以上を解決する改善された音響プロファイルを有するフローリングに対する大きなニーズが存在する。
【発明の概要】
【0020】
本発明は、フローリング基材を提供することと、液体アクリル防音組成物のコーティングをフローリング基材の表面に適用することと、コーティングを乾燥させることと、任意選択的に、コーティングの上に1つ以上の追加の層を形成することと、を含む、防音フローリングを調製するための方法を提供する。その液体アクリル防音組成物は、アクリル振動減衰ポリマーと、少なくとも1つの充填剤とを含む。
【0021】
更に、防音ビニルフローリングが、本発明によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態による、シェーカ入力電圧に対する防音ビニル床タイルの速度スペクトルを示している。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、防音フローリングを調製する方法を提供する。方法は、フローリング基材を提供することと、液体アクリル防音組成物のコーティングをフローリング基材の表面に適用することと、コーティングを乾燥させることと、任意選択的に、コーティングの上に1つ以上の追加の層を形成することと、を含む。
【0024】
本明細書で使用される場合、「フローリング基材」は、床タイルの多層を含む剛性層又は積層体を指す。好ましくは、フローリング基材は、完成した床タイルの上部を含み、液体アクリル防音組成物によって形成されたコーティング及びそのコーティング上に形成されたあらゆる任意選択の追加の層は、完成した床タイルの下部を形成し得る。より好ましくは、フローリング基材は、アクリル防音コーティングを除いて、完成した床タイルに似ている。弾性ビニルフローリングは、典型的には、基層、印刷又は装飾層、及び透明層又は摩耗層を含有する。弾性ビニルフローリングの場合、フローリング基材は、基層及び任意の追加の層を含み得る。例えば、フローリング基材は、基層、印刷層又は装飾層、及び透明層又は摩耗層の積層体を含み得る。代替的に、弾性ビニルフローリングのためのフローリング基材は、基層を含んでいてもよく、他の層は、液体アクリル防音組成物をコーティングした後に形成される。
【0025】
本明細書で使用される場合、「床タイル」は、複数のピースを含むシステムの一部であり、タイル及び厚板の両方を包含することが意図される単一のフローリングピースを指す。床タイルは、正方形、長方形、又は他の幾何学的形状であり得る。好ましくは、床タイルは、各床タイルが隣接する床タイルと相互連結することを可能にするインターロック機構を有するように構成される。更により好ましくは、床タイルは、床タイルが、インターロックし、かつ基礎床に接着又は機械的に固定されていない浮き床であるように構成される。
【0026】
本発明の防音フローリングは、弾性ビニルフローリング、集成材フローリング、又は積層フローリングであり得る。
【0027】
液体アクリル防音組成物は、以下に記載するように、フローリングにおける防音層として使用されるとき、優れた防音性能を提供する。
【0028】
その液体アクリル防音組成物は、アクリル振動減衰ポリマーと、少なくとも1つの充填剤とを含む。液体アクリル防音組成物は、担体を更に含み得る。本明細書で使用される場合、「アクリル振動減衰ポリマー」は、フローリングにおいて振動又は音を軽減することができるアクリルポリマー又はコポリマーを指す。アクリル振動減衰ポリマーは、振動の単一周波数、全ての周波数若しくは振動、又は振動周波数のうちの1つ以上の帯域を軽減し得る。例えば、アクリル振動減衰ポリマーは、人が床を歩くときに、足音によって生じる振動周波数を軽減し得る。
【0029】
アクリル振動減衰ポリマーは、好ましくは、線状アクリルポリマー又はコポリマーを含む。代替的に、アクリル振動減衰ポリマーの少なくとも一部は、架橋又は分岐状成分も含み得る。
【0030】
アクリル振動減衰ポリマーは、1つ以上のアルキル(メタ)アクリレートモノマーから調製され得る。アクリル振動減衰ポリマーの調製において使用され得るアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、エチル(メタ)アクリレート、エチルヘキシル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、グリシジルメタクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール)メタクリレート、及び1,3-ブチレングリコールジメタクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「アルキル(メタ)アクリレート」は、アルキルアクリレート及びアルキルメタクリレートの両方を指す。
【0031】
少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートモノマーに加えて、追加のモノマーを使用して、アクリル振動減衰ポリマーを調製してもよい。例えば、アクリル振動減衰ポリマーは、少なくとも1つのアルキル(メタ)アクリレートモノマー及び追加のモノマーから調製してもよい。追加のモノマーは、例えば、スチレンモノマー及びアクリルアミドモノマー、例えば、ジメチルアクリルアミド及びジアセトンアクリルアミドから選択され得る。
【0032】
追加のモノマーはまた、ホスフェート官能化アクリル振動減衰ポリマーを形成するために、少なくとも1つのエチレン性不飽和及びリン酸基を含有するリン酸モノマーも含み得る。リン酸モノマーは、酸の形態であっても、又はリン酸基の塩であってもよい。リン酸モノマーの例としては、以下のものが挙げられ:
【0033】
【化1】
式中、Rは、アクリルオキシ、メタクリルオキシ、又はビニル基を含有する有機基であり、R’及びR’‘は、独立して、H及び第2の有機基から選択される。第2の有機基は、飽和又は不飽和であり得る。好適なリン酸モノマーとしては、リン酸二水素官能性モノマー、例えば、アルコールのリン酸二水素エステルが挙げられ、そのアルコールは、重合性ビニル又はオレフィン基、例えば、リン酸アリル、ビス(ヒドロキシ-メチル)フマレート又はイタコネートのモノホスフェート又はジホスフェート、(メタ)アクリル酸エステルの誘導体、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどを含むヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのホスフェートも含有する。他の好適なリン含有酸モノマーは、国際公開第99/25780(A1)号に開示されるホスホネート官能性モノマーであり、これには、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンホスホン酸、α-ホスホノスチレン、2-メチルアクリルアミド-2-メチルプロパンホスホン酸が含まれる。更なる好適なリン官能性モノマーは、米国特許第4,733,005号に開示される1,2-エチレン性不飽和(ヒドロキシ)ホスフィニルアルキル(メタ)アクリレートモノマーであり、(ヒドロキシ)ホスフィニルメチルメタクリレートが挙げられる。好ましいリン酸モノマーは、リン酸二水素モノマーであり、2-ホスホエチル(メタ)アクリレート、2-ホスホプロピル(メタ)アクリレート、3-ホスホプロピル(メタ)アクリレート、及び3-ホスホ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。存在する場合、リン酸モノマーは、アクリル振動減衰ポリマーを形成するモノマーの総重量に対して、0.03~3重量%の範囲の量で存在し得る。
【0034】
アクリル振動減衰ポリマーは、コア-シェルアクリルポリマーを含み得る。例えば、コア-シェルアクリルポリマーは、ブチルアクリレートコア及びメチルメタクリレートシェルを含み得る。好ましくは、コアは、線状アクリルポリマーを含む。シェルは、例えば、架橋メチルメタクリレートなどの架橋ポリマーを含み得る。
【0035】
アクリル振動減衰ポリマーは、-20℃~30℃の範囲のガラス転移温度Tgを有し得る。好ましくは、アクリル振動減衰ポリマーは、-10℃~20℃、より好ましくは0℃~10℃の範囲のTgを有する。Tgは、フォックス方程式[Bulletin of the American Physical Society 1,3 Page 123(1956)]を使用して計算される。フォックス方程式は、以下のようにTgを計算する:
【0036】
【0037】
フォックス方程式では、w1及びw2は、反応器に充填されたモノマーの重量に基づいた2つのコモノマーの重量分率を指し、Tg(1)及びTg(2)は、ケルビン度の2つの対応するホモポリマーのガラス転移温度を指す。3つ以上のモノマーが存在する場合、追加の項(wn/Tg(n))が添加される。本発明の目的のためのホモポリマーのガラス転移温度は、J.Brandrup and E.H.Immergut,Interscience Publishers,1966によって編集された「Polymer Handbook」に報告されたものであるが、その出版物が特定のホモポリマーのTgを報告していない場合、ホモポリマーのTgは、示差走査熱量測定(differential scanning calorimetry、DSC)によって測定される。DSCによってホモポリマーのガラス転移温度を測定するために、ホモポリマー試料を調製し、アンモニア又は一級アミンの不在下で維持する。ホモポリマー試料を、乾燥させ、120℃まで予熱し、-100℃まで急速に冷却し、次いで、データを収集しながら20℃/分の速度で150℃まで加熱する。ホモポリマーのガラス転移温度は、半値法を使用して変曲の中点で測定される。
【0038】
アクリル振動減衰ポリマーは、液体アクリル防音組成物の総重量に基づいて、5~50重量%の範囲の量で、液体アクリル防音組成物中に存在し得る。好ましくは、アクリル振動減衰ポリマーは、液体アクリル防音組成物の総重量に基づいて、10~40重量%の範囲の量で、より好ましくは15~35重量%の範囲の量で、存在する。
【0039】
少なくとも1つの充填剤は、液体アクリル防音組成物の総重量に基づいて、15~75重量%の範囲の量で存在する。好ましくは、少なくとも1つの充填剤は、液体アクリル防音組成物の総重量に基づいて、25~70重量%、例えば35~65重量%の範囲の量で存在する。
【0040】
少なくとも1つの充填剤は、無機充填剤を含み得る。無機充填剤の例としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、珪灰石、粘土(例えば、カオリン)、及び雲母が挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも1つの充填剤はまた、例えば、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維、及びグラファイトなどの他の充填剤も含み得る。
【0041】
少なくとも1つの充填剤は、板状充填剤を含んでいてもよく、それは、板状形状又は小板形状を有する充填剤である。少なくとも1つの充填剤が板状充填剤を含む場合、板状充填剤は、液体アクリル防音組成物の総重量に基づいて、0.5~15重量%の範囲の量で存在し得る。板状充填剤の例としては、雲母、グラファイト、タルク、及びカオリンが挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、液体アクリル防音組成物が板状充填剤を含む場合、板状充填剤は、雲母又はグラファイトであり、より好ましくは雲母である。
【0042】
少なくとも1つの充填剤は、2つ以上の無機充填剤の組み合わせを含み得る。例えば、液体アクリル防音組成物は、炭酸カルシウム及び雲母を含み得る。
【0043】
液体アクリル防音組成物は、担体を含む。担体は、液体アクリル防音組成物中の固体の量を調整するために存在する。担体は、水又は有機材料を含み得る。好ましくは、担体は水である。
【0044】
担体は、液体アクリル防音組成物の総重量に基づいて、10~50重量%、例えば、20~40重量%の範囲の量で存在し得る。
【0045】
液体アクリル防音組成物は、追加の成分を更に含み得る。例えば、液体アクリル防音組成物は、消泡剤、分散剤、顔料、合体剤、皮膜形成剤、及び増粘剤から選択される添加剤を含み得る。
【0046】
液体アクリル防音組成物のコーティングは、0.5~8kg/m2の範囲の使用量で適用され得る。一般に、使用量が多いほど、乾燥した防音組成物の得られる防音が高くなる。好ましくは、液体アクリル防音組成物のコーティングは、2~6kg/m2の範囲の使用量で、より好ましくは3~5kg/m2の範囲の使用量で適用される。
【0047】
液体アクリル防音組成物は、任意の既知の方法を使用してフローリング基材上にコーティングされ得る。例えば、液体アクリル防音組成物は、カーテンコータ、スプレーコータ、又は押出機を使用して適用され得る。
【0048】
次いで、液体アクリル防音組成物の適用されたコーティングを有するフローリング基材を乾燥させる。適用された液体アクリル防音組成物は、コーティングされたフローリング基材を加熱することによって、又はコーティングを、空気中で、強制空気若しくは非強制空気のいずれかで乾燥させることによって、乾燥させることができる。担体の種類及び量は、適用されたコーティングの乾燥を助けるように選択され得る。
【0049】
好ましくは、液体アクリル防音組成物は、フローリング基材の底面、すなわち、フローリングと基礎床との間の表面に適用される。フローリング基材の底部に適用される場合、フローリングを製造するためのプロセスは、最小限に改変され得る。例えば、既存の製造ラインは、別の方法で完成した床タイルを液体アクリル防音組成物でコーティングすることによってプロセスの最後に追加のステップを追加することによって、変更することができる。
【0050】
代替的に、液体アクリル防音組成物は、フローリング基材内の別の表面に、例えば、床タイル内の内部層又は拘束層として、適用することができる。このプロセスは、既存の製造プロセスの追加的な変更を必要とし得るが、防音層が適用される場所についてはより柔軟に対応することが可能となる。防音層が拘束層である場合、第2の剛性層は、好ましくは、防音層をフローリング基材との間にサンドイッチする。
【0051】
本発明の方法によって製造された床タイルは、防音層が下敷きとして機能し得るので、追加の下敷きを必要としない場合がある。従来の浮き床では、フォーム、コルク、ゴム、又はフェルトなどの下敷きが最初に基礎床の上に設置され、次いで、下敷きの上にフローリングが設置される。下敷きは、防音を提供し、足の下の床の感触を和らげ、及び/又は防湿層として作用するために使用される。本発明の防音層は、従来の下敷きと同じ機能のうちの1つ以上を提供し得る。
【0052】
本発明は例示的な様式で記載されており、使用されている用語は、限定というよりむしろ説明語の性質であるように意図されることを理解されたい。明らかに、本発明の多くの修正及び変更が上記教示から可能である。本発明は、具体的に記載した方法のとおり以外の方法でも実施され得る。
【実施例】
【0053】
液体アクリル防音組成物は、IKA RW28ベンチミキサーを使用して、表1に示した成分を、示した順序でゆっくりと添加することによって、準備した。増粘剤を添加するにつれて、混合速度を増加させて、粘度が増加しても完全な混和を維持した。配合が完了したら、その液体アクリル防音組成物を、数分間更に混合して均質性を確保した。
【0054】
【0055】
液体アクリル防音組成物のコーティングを、3.2mmの金型中の12×12インチ(30.5×30.5cm)のビニル床タイルの下側にドローダウンし、72時間空気乾燥させた。液体アクリル防音組成物を、10×10インチ(25.4×25.4cm)の面積に0.922lb/ft2(4.5kg/m2)の使用量で適用した。ビニル床タイルを床に垂直に保持するために、ビニル床タイルの2つの隣接する角に取り付けられた2つのゴムバンドを使用して、コーティングされたビニル床タイルを空気中に自由に吊るした。ゴムバンドで吊り下げられた側と反対側の縁に沿って、吊り下げられたビニル床タイルにシェーカを取り付けた。シェーカ取り付け点は、一方の側よりも、もう一方の側の近くに配置した。
【0056】
ビニル床タイルは、シェーカからの広帯域振動信号を使用して励振され、吊り下げられたビニル床タイルからある距離に置かれたレーザ振動計を使用して、ビニル床タイルの速度を測定した。振動計は、ビニル床タイルの表面に沿っていくつかの点を走査し、平均ビニル床タイル速度及び周波数スペクトルを得るために、Polytechデータ取得及び分析ソフトウェアを使用した。同一であるがコーティングされていないビニル床タイルもまた比較のために試験した。
【0057】
シェーカ入力電圧に対して正規化されたビニル床タイルの速度スペクトルが、図中の両方のビニル床タイルについて提供される。コーティングされていないビニル床タイルは、固有振動モードに対応する速度応答におけるピークを示した。本発明による液体アクリル防音組成物でコーティングされたビニル床タイルは、図に示されているように、固有モードを効果的に抑制し、全周波数範囲において振動挙動の実質的な改善を示した。
【0058】
用語の定義及び使用
本明細書の文脈により別段の指示がない限り、全ての量、比率、及びパーセンテージは重量によるものであり、全ての試験方法は、本開示の出願日現在のものである。冠詞「a」、「an」、及び「the」は各々、1以上を指す。添付の特許請求の範囲は、「発明を実施するための形態」を表現するために、かつそこに記載される特定の化合物、組成物、又は方法に限定されず、添付の特許請求の範囲内に収まる特定の実施形態間で異なり得ることを理解されたい。様々な実施形態の特定の特徴又は態様を説明するための本明細書に依拠する任意のマーカッシュ群に関して、全ての他のマーカッシュ要素から独立したそれぞれのマーカッシュ群の各要素から、異なる、特別な、かつ/又は予期しない結果が得られる可能性がある。マーカッシュ群の各要素は、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に、個々に及び又は組み合わされて依拠され得、十分なサポートを提供する。
【0059】
更に、本発明の様々な実施形態を説明する際に依拠とされる任意の範囲及び部分範囲は、独立して及び包括的に、添付の特許請求の範囲内に入り、本明細書にその中の全部及び/又は一部の値が明記されていなくても、そのような値を包含する全範囲を説明及び想到するものと理解される。当業者であれば、列挙された範囲及び部分範囲が、本発明の様々な実施形態を十分に説明し、可能にし、そのような範囲及び部分範囲は、更に関連性がある2等分、3等分、4等分、5等分などに描かれ得ることを容易に認識する。単なる一例として、「0.1~0.9の」範囲は、下方の3分の1、すなわち、0.1~0.3、中央の3分の1、すなわち、0.4~0.6、及び上方の3分の1、すなわち、0.7~0.9に更に描かれ得、これらは、個々に及び包括的に、添付の特許請求の範囲内であり、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、十分なサポートを提供する。加えて、範囲を定義する、又は修飾する言葉、例えば「少なくとも」、「超」、「未満」、「以下」などに関して、そのような言葉は、部分範囲及び/又は上限若しくは下限を含むと理解されるべきである。別の例として、「少なくとも10」の範囲は、少なくとも10~35の部分範囲、少なくとも10~25の部分範囲、25~35の部分範囲などを本質的に含み、各部分範囲は、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に、個々に及び/又は包括的に依拠され得、十分なサポートを提供する。最終的に、開示した範囲内の個々の数は、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に依拠され得、十分なサポートを提供する。例えば、「1~9の」範囲は、様々な個々の整数、例えば3、並びに、小数点(又は分数)を含む個々の数、例えば4.1を含み、これは、添付の特許請求の範囲内で、特定の実施形態に依拠され得、十分なサポートを提供する。
【0060】
本明細書で使用される「組成物」という用語は、組成物を含む材料、並びに組成物の材料から形成された反応物、及び分解物を含む。
【0061】
「含むこと」という用語及びその派生語は、それらが本明細書において開示されているかどうかにかかわらず、あらゆる追加の成分、ステップ、又は手順の存在を排除することを意図していない。あらゆる疑いも回避するために、「含むこと」という用語の使用を通じて本明細書において特許請求される全ての組成物は、矛盾する記述がない限り、ポリマー性か又は別様かにかかわらず、任意の追加の添加剤、補助剤、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる以降の記述の範囲からあらゆる他の成分、ステップ、又は手順を除外する。「からなる(consisting of)」という用語は、具体的に描写又は列記されていないあらゆる成分、ステップ、又は手順を除外する。
【0062】
本明細書で使用される場合、「ポリマー」という用語は、同じ種類のものか、又は異なる種類のものかにかかわらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという一般的な用語は、ホモポリマーという用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下に、1種類のみのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いた)、及びコポリマー(2つ以上の種類のモノマーから調製されたポリマーを指すために用いた)という用語を包含する。
【国際調査報告】