(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】シリコーン組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 83/07 20060101AFI20231222BHJP
C08L 83/05 20060101ALI20231222BHJP
C08L 71/02 20060101ALI20231222BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20231222BHJP
C08K 3/08 20060101ALI20231222BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20231222BHJP
C09J 9/02 20060101ALI20231222BHJP
C09J 183/05 20060101ALI20231222BHJP
C09J 183/07 20060101ALI20231222BHJP
C09J 11/04 20060101ALI20231222BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08L71/02
C08K3/013
C08K3/08
C08K9/02
C09J9/02
C09J183/05
C09J183/07
C09J11/04
C09J11/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535405
(86)(22)【出願日】2020-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 CN2020138587
(87)【国際公開番号】W WO2022133794
(87)【国際公開日】2022-06-30
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128761
【氏名又は名称】田村 恭子
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ウェンジェ
(72)【発明者】
【氏名】シュー、イーファン
(72)【発明者】
【氏名】レン、フア
(72)【発明者】
【氏名】スー、フォンイー
(72)【発明者】
【氏名】スーツマン、ジョセフ ロナルド
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002CH023
4J002CH053
4J002CP024
4J002CP042
4J002CP121
4J002CP131
4J002CP141
4J002DA076
4J002DA086
4J002DA096
4J002DA117
4J002DD007
4J002EC038
4J002FB076
4J002FD116
4J002FD142
4J002FD157
4J002FD208
4J002GJ01
4J040EE012
4J040EK041
4J040EK081
4J040HA066
4J040HA346
4J040HD35
4J040JB02
4J040JB10
4J040KA03
4J040KA14
4J040KA19
4J040KA30
4J040KA32
4J040KA42
4J040LA07
4J040LA08
4J040LA09
4J040MA02
4J040MA10
4J040NA12
4J040NA16
4J040NA19
4J040PA30
(57)【要約】
(A)導電性充填剤、(B)ポリジオルガノシロキサンポリマー、(C)ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、(D)ヒドロシリル化反応触媒、(E)ポリマー添加剤、及び所望により(F)ヒドロシリル化反応阻害剤を含むシリコーン組成物は、混合時に低い複素粘度を有し、硬化時に高い導電性及び熱老化後の良好な導電性保持率を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン組成物であって、前記シリコーン組成物の総重量に基づく重量比で、
(A)66%~89%の導電性充填剤と、
(B)5%~40%の、式(I)のポリジオルガノシロキサンポリマーであって、
(R
1
3SiO
1/2)
2(R
1
2SiO
2/2)
n(I)、
式中、各R
1が、独立して、一価の脂肪族炭化水素基であり、nが、35~1,000の範囲であり、前記ポリオルガノシロキサンポリマーが、1分子当たり平均少なくとも2個のアルケニル基を含有する、式(I)のポリジオルガノシロキサンポリマーと、
(C)式(II)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
(R
2
3SiO
1/2)
2(R
2
2SiO
2/2)
m(II)
式中、各R
2が、独立して、水素又は1~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、mが、5~200の範囲であり、前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、1分子当たり平均少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する、式(II)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(D)ヒドロシリル化反応触媒と、
(E)0.1%~1.5%の、2,000超~20,000g/molの分子量を有するポリマー添加剤であって、ポリプロピレングリコール、アルコール開始エチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマー、又はこれらの混合物からなる群から選択される、ポリマー添加剤と、
(F)0~0.3%のヒドロシリル化反応阻害剤と、を含む、シリコーン組成物。
【請求項2】
前記アルコール開始エチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマーが、式(III)の構造を有し、
(A)
zB(III)
Aが、HO-(CHR
p-CHR
q-O)
x-(CH
2-CH
2-O)
y-を表し、xが、8~40であり、yが、1~20であり、R
p及びR
qが異なり、水素及び-CH
3から選択され、zが、1~12であり、Bが、水素、又は3~18個の炭素原子を有する一価、二価、若しくは多価の炭化水素基である、請求項1に記載のシリコーン組成物。
【請求項3】
前記アルコール開始エチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマーが、前記コポリマーの重量に基づいて50重量%~99重量%のプロピレンオキシド単位を含む、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項4】
前記アルコール開始エチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマーが、3,000~14,000g/molの分子量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項5】
前記導電性充填剤が、銀若しくはその合金、銀被覆ニッケル粒子、銀被覆ガラス粒子、銀被覆アルミニウム粒子、銀被覆銅粒子、又はこれらの混合物からなる粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項6】
式(I)において、nが35~500であり、R
1で表される一価の脂肪族炭化水素基の少なくとも50モル%がメチルである、請求項1~5のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項7】
前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの重量に基づいて0.38重量%~2重量%の量で前記ケイ素結合水素原子を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項8】
前記ヒドロシリル化反応触媒が白金を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項9】
前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子の、前記シリコーン組成物の全ての構成成分中のアルケニル基に対するモル比が、0.5~10である、請求項1~8のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項10】
R
M
3SiO
1/2単位及びSiO
4/2単位から本質的になり、各R
Mが、独立して、アルキル又はアルケニルであるポリオルガノシリケート樹脂を更に含み、前記ポリオルガノシリケート樹脂が、平均3モル%~20モル%のアルケニル基を含有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項11】
接着促進剤を更に含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項12】
前記接着促進剤が、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヒドロキシ末端、ビニル官能性ポリジメチルシロキサン、又はこれらの組み合わせから選択される、請求項11に記載のシリコーン組成物。
【請求項13】
前記導電性充填剤、前記ポリジオルガノシロキサンポリマー、前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、前記ヒドロシリル化反応触媒、前記ポリマー添加剤、及び使用される場合には前記ヒドロシリル化反応阻害剤を混合することを含む、請求項1に記載のシリコーン組成物の調製プロセス。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載のシリコーン組成物の硬化生成物を含む、シリコーン接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン組成物及びこのような組成物から製造される導電性シリコーン接着剤である。
【0002】
序論
シリコーン接着剤は、自動車、電子、建築、電化製品、及び航空宇宙産業などの種々の用途において有用である。シリコーン樹脂の固有の絶縁特性に起因して、シリコーン組成物は、導電性接着剤及び電磁界干渉(EMI)遮蔽材料などの導電性用途のために、それから作製される硬化生成物の電気的性能を改善するために、導電性充填剤を組み込む必要がある。
【0003】
導電性充填剤の量を増加させると、シリコーン接着剤の導電性を改善し得るが、得られる高充填シリコーン組成物は、コストが増加し、所望の低複素粘度、例えば、シリコーン組成物の全ての構成成分を一緒に混合して2時間以内に測定した場合に、室温(23±2摂氏度(℃))で350,000パスカル秒(Pa・s)以下の配合物複素粘度を達成することが困難である。したがって、容易な加工性及び適用のために低い複素粘度を維持しながら、改善された電気的性能を有するシリコーン接着剤を与えるシリコーン組成物が、引き続き必要とされている。
【0004】
更に、導電性金属充填剤は、経時的に酸化し、最終的に非導電性になる傾向がある。このような充填剤を含むシリコーン接着剤は、一般に、高温(例えば、80~150℃)で不良な電気的安定度を示すが、これは、80~125℃で1ヶ月間使用した場合の体積抵抗率(Volume Resistivity、VR)の10~100倍の増加によって示される。したがって、長期間の熱老化後のシリコーン接着剤のVR変動を低減することもまた困難である。
【0005】
上述の問題のない導電性接着剤を調製するのに好適なシリコーン組成物を発見することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、上述の問題のないシリコーン組成物を見出すという課題を解決する。本発明は、導電性充填剤(A)、ポリジオルガノシロキサンポリマー(B)、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン(C)、ヒドロシリル化反応触媒(D)、及び特定のポリマー添加剤(E)、並びに所望によりヒドロシリル化反応阻害剤(F)を含む新規シリコーン組成物を提供する。シリコーン組成物は、シリコーン組成物中の全ての構成成分を混合した後2時間以内に測定して、室温(23±2℃)で350,000パスカル秒(Pa・s)以下の複素粘度を有する。シリコーン組成物はまた、硬化時に、ポリマー添加剤(E)のみを含まない類似のシリコーン組成物(以下、「既存のシリコーン組成物」)から作製された硬化生成物よりも低い体積抵抗率(VR)によって示されるように、改善された導電性を有するシリコーン接着剤などの硬化生成物を提供する。本発明のシリコーン組成物はまた、熱老化後に導電性の良好な保持をもたらす場合があり、例えば、シリコーン組成物の硬化生成物は、既存のシリコーン組成物から作製されたものと比較して、125℃で20日間以上の熱老化後に、より少ないVR変動を示す。これらの上記特性は、以下の実施例の章に記載する試験方法に従って測定される。
【0007】
第1の態様では、本発明は、シリコーン組成物の総重量に基づく重量比で、
(A)66%~89%の導電性充填剤と、
(B)5%~40%の、式(I)のポリジオルガノシロキサンポリマーであって、
(R1
3SiO1/2)2(R1
2SiO2/2)n(I)、
式中、各R1は、独立して、一価の脂肪族炭化水素基であり、nは、35~1,000の範囲であり、ポリオルガノシロキサンポリマーは、1分子当たり平均少なくとも2個のアルケニル基を含有する、式(I)のポリジオルガノシロキサンポリマーと、
(C)式(II)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
(R2
3SiO1/2)2(R2
2SiO2/2)m(II)
式中、各R2は、独立して、水素又は1~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、mは、5~200の範囲であり、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子当たり平均少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する、式(II)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(D)ヒドロシリル化反応触媒と、
(E)0.1%~1.5%の、2,000超~20,000グラム/モル(g/mol)の分子量を有するポリマー添加剤であって、ポリプロピレングリコール、アルコール開始エチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマー、又はこれらの混合物からなる群から選択されるポリマー添加剤と、
(F)0~0.3%のヒドロシリル化反応阻害剤と、を含む、シリコーン組成物を提供する。
【0008】
第2の態様では、本発明は、第1の態様のシリコーン組成物を調製するためのプロセスを提供する。本プロセスは、導電性充填剤、ポリジオルガノシロキサンポリマー、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、ヒドロシリル化反応触媒、ポリマー添加剤、及び使用される場合にはヒドロシリル化反応阻害剤を混合することを含む。
【0009】
第3の態様では、本発明は、第1の態様のシリコーン組成物の硬化生成物を含むシリコーン接着剤を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のシリコーン組成物は、構成成分(A)として1種以上の導電性充填剤を含む。「導電性充填剤」は、GB/T351-2019(China national standard for metallic materials-resistivity measurement method)によって決定されるように、20℃で1オームセンチメートル(Ωcm)未満の固有の抵抗率を示す任意の充填剤を指す。導電性充填剤は、典型的には、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、又はこれらの合金からなる群から選択される金属の少なくとも外側表面を有する粒子を含む。導電性充填剤は、銀、金、白金、パラジウム、ニッケル、銅、又はこれらの合金、好ましくは、銀からなる粒子を含んでもよい。あるいは、導電性充填剤は、銀、金、白金、パラジウム、又はこれらの合金からなる外側表面のみを有する粒子、及び外側表面とは異なるコア(「金属被覆粒子」とも称される)を含んでもよい。このような粒子のコアは、外側表面を支持し、シリコーン組成物から作製されたシリコーン接着剤(すなわち、シリコーン組成物の硬化生成物)の電気特性に悪影響を及ぼさない任意の材料、導電体又は絶縁体であり得る。コアのためのこのような材料の実施例としては、銅、グラファイト、アルミニウム、中実ガラス若しくは中空ガラスなどのガラス、マイカ、ニッケル、又はセラミック繊維が挙げられる。好ましくは、導電性充填剤は銀被覆粒子を含む。導電性充填剤としては、例えば、銀被覆ニッケル粒子、銀被覆アルミニウム粒子、銀被覆銅粒子、銀被覆ガラス粒子、又はこれらの混合物が挙げられてもよい。銀被覆粒子は、典型的には、誘導結合プラズマ質量分析(Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry、ICP-MS)によって決定されるように、銀被覆粒子の重量に基づいて、1重量%以上、2重量%以上、3重量%以上、4重量%以上、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、8重量%以上、9重量%以上、10重量%以上、11重量%以上、あるいは12重量%以上、かつ同時に、60重量%以下、55重量%以下、50重量%以下、45重量%以下、あるいは40重量%以下の銀含有量を有する。
【0011】
本発明において有用な導電性充填剤は、典型的には、フレーク、ロッド、繊維、又は球状若しくはその他の不規則形状の形状を有する粉末の形態を有する。本発明において有用な導電性充填剤としては、上述の粒子の表面を少なくとも1種の有機ケイ素化合物で処理することによって調製される充填剤が挙げられてもよい。好適な有機ケイ素化合物としては、シリカ充填剤を処理するために典型的に使用されるもの、例えば、オルガノクロロシラン、オルガノシロキサン、オルガノジシラザン、オルガノアルコキシシラン、又はこれらの混合物が挙げられる。導電性充填剤は、上記のような単一の導電性充填剤、又は以下の特性である、組成、表面積、表面処理、粒径、及び粒子形状、のうちの少なくとも1つが異なる、2種以上のこのような充填剤の混合物であり得る。
【0012】
本発明において有用な導電性充填剤は、0.5ミクロン(μm)以上、1μm以上、5μm以上、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、あるいは40μm以上、かつ同時に、100μm以下、90μm以下、80μm以下、75μm以下、70μm以下、65μm以下、60μm以下、あるいは50μm以下の中央粒径を有してもよい。本発明における「中央粒径」は、以下の実施例の章に記載する試験方法に従って測定した際のD50粒径を指す。
【0013】
本発明のシリコーン組成物に使用するのに好適な導電性充填剤を調製する方法は、当該技術分野において周知である。例えば、銀、金、白金、若しくはパラジウム、又はこれらの合金の粉末は、典型的には、薬品沈殿、電解析出、又はセメンテーションによって製造される。上述の金属のフレークは、典型的には、金属粉末を粉砕又はミリングすることによって製造される。上記の金属の少なくとも1つの外側表面のみを有する粒子は、典型的には、電解析出、無電解析出、又は真空蒸着などの方法を使用して適切なコア材料を金属化することによって製造される。導電性充填剤が、粒子の表面を有機ケイ素化合物で処理することによって調製される充填剤である場合、粒子は、シリコーン組成物のその他の成分と混合する前に処理され得る、又は粒子は、シリコーン組成物の調製中にその場で処理され得る。
【0014】
本発明のシリコーン組成物中の導電性充填剤は、シリコーン組成物に所望の粘度を与え、シリコーン組成物から製造されるシリコーン接着剤に導電性を付与する量で存在してもよい。シリコーン組成物の所望の複素粘度は、以下の実施例の章に記載される試験方法に従って決定されるように、シリコーン組成物の全ての構成成分を一緒に混合して2時間以内に測定される場合に、典型的には、室温(23±2℃)で350,000Pa.s以下である。導電性充填剤の濃度は、所望の電気特性、充填剤の表面積、充填剤の密度、充填剤粒子の形状、充填剤の表面処理、及びシリコーン組成物中のその他の成分の性質に依存する。導電性充填剤は、シリコーン組成物の総重量に基づいて、66重量%以上、69重量%以上、70重量%以上、70重量%以上、71重量%以上、あるいは72重量%以上、かつ同時に、89重量%以下、88重量%以下、87重量%以下、86重量%以下、85重量%以下、84重量%以下、83重量%以下、あるいは82重量%以下の量で存在してもよい。
【0015】
本発明において有用な導電性充填剤は、これらの以下の3つの種類の導電性充填剤:(a1)銀被覆ニッケル粒子、(a2)銀被覆アルミニウム粒子、及び(a3)銀被覆ガラス粒子、のうちの2種以上の1つ又はこれらの組み合わせから選択され得る。例えば、銀被覆ニッケル粒子(a1)は、シリコーン組成物の総重量に基づいて、0以上、35重量%以上、40重量%以上、45重量%以上、50重量%以上、あるいは55重量%以上、かつ同時に、89重量%以下、88重量%以下、87重量%以下、86重量%以下、85重量%以下、84重量%以下、あるいは83重量%以下の量で存在してもよい。銀被覆アルミニウム粒子(a2)は、シリコーン組成物の総重量に基づいて、0以上、15重量%以上、18重量%以上、20重量%以上、22重量%以上、25重量%以上、あるいは27重量%以上、かつ同時に、82重量%以下、80重量%以下、78重量%以下、73重量%以下、70重量%以下、68重量%以下、あるいは66重量%以下の量で存在してもよい。銀被覆ガラス粒子(a3)は、シリコーン組成物の総重量に基づいて、ゼロ以上、15重量%以上、20重量%以上、25重量%以上、30重量%以上、40重量%以上、50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、あるいは72重量%以上、かつ同時に、82重量%以下、80重量%以下、78重量%以下、76重量%以下、更に73重量%以下の量で存在してもよい。
【0016】
本発明のシリコーン組成物はまた、構成成分(B)として1つ以上のポリジオルガノシロキサンポリマーを含む。ポリジオルガノシロキサンポリマーは、式(I)を有する。
(R1
3SiO1/2)2(R1
2SiO2/2)n(I)
式中、各R1は、独立して、一価の脂肪族炭化水素基であり、nは、35~1,000の範囲であり、ポリオルガノシロキサンポリマーは、1分子当たり平均少なくとも2個のアルケニル基を含有する。
【0017】
式(I)におけるnの値は、35以上、50以上、100以上、150以上、200以上、250以上、あるいは300以上、かつ同時に、1,000以下、900以下、800以下、700以下、650以下、あるいは600以下であり得る。
【0018】
好適な一価の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基及びアルケニル基が挙げられてもよい。「アルキル」は、環状、分岐状又は非分岐状の飽和一価炭化水素基を意味する。R1で表されるアルキル基は、典型的には、1~20個の炭素原子、1~12個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~3個の炭素原子、又は1~2個の炭素原子を有する。好適なアルキル基の実施例としては、メチル、エチル、プロピル(例えば、イソ-プロピル及び/又はn-プロピル)、ブチル(例えば、イソブチル、n-ブチル、tert-ブチル、及び/又はsec-ブチル)、ペンチル(例えば、イソペンチル、ネオペンチル、及び/又はtert-ペンチル)、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、及びデシル、並びに6個以上の炭素原子の分岐状アルキル基、並びにシクロペンチル及びシクロヘキシルなどの環式アルキル基が挙げられる。好ましいアルキルは、メチルである。「アルケニル」とは、1つ以上の炭素-炭素二重結合を有する分岐状又は非分岐状の一価の炭化水素基を意味する。R1によって表されるアルケニル基は、典型的には、2~10個の炭素原子、2~8個の炭素原子、又は2~6個の炭素原子を有する。好適なアルケニル基の実施例としては、ビニル、アリル、プロペニル(例えば、イソプロペニル及び/又はn-プロペニル)と、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、及びヘプテニル(4~7個の炭素原子の分岐状異性体及び直鎖状異性体を含む)と、シクロヘキセニルと、が挙げられる。好ましくは、アルケニル基はビニルである。ポリジオルガノシロキサンポリマー中のアルケニル基は、末端位置、ペンダント位置、又は末端位置とペンダント位置の両方に位置していてもよい。好ましくは、R1で表される一価の脂肪族炭化水素基の少なくとも50モル%、60モル%以上、70モル%以上、あるいは80モル%以上が、メチルである。本明細書におけるメチルのモル百分率は、核磁気共鳴(Nuclear Magnetic Resonance、NMR)分析によって決定され得る。本発明において有用なポリジオルガノシロキサンポリマーとしては、例えば、ViMe2SiO(Me2SiO)nSiMe2Vi、ViMe2SiO(Me2SiO)0.98n(MeViSiO)0.02nSiMe2Vi、及びMe3SiO(Me2SiO)0.95n(MeViSiO)0.05nSiMe3が挙げられてもよく、式中、Me及びViは、それぞれメチル及びビニルを表し、nは上記で定義した通りである。
【0019】
好適なポリジオルガノシロキサンポリマーの実施例としては、b1)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、b2)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、b3)ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、b4)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、b5)トリメチルシロキシ末端ポリメチルビニルシロキサン、b6)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、b7)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン)、b8)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/ジフェニルシロキサン)、b9)フェニル、メチル、ビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、b10)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、b11)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、b12)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、b13)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、b14)トリメチルシロキシ末端ポリメチルヘキセニルシロキサン、b15)ジメチルヘキセニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、b16)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルヘキセニルシロキサン)、又はこれらの組み合わせが挙げられる。好ましくは、ポリジオルガノシロキサンポリマーは、b1)ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、b2)ジメチルビニルシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチルビニルシロキサン)、又はb1)及びb2)の組み合わせからなる群から選択される。
【0020】
ポリジオルガノシロキサンポリマーは、当該技術分野において周知であり、対応するオルガノハロシランの加水分解及び縮合、又は環状ポリジオルガノシロキサンの平衡化などの方法によって調製されてもよい。
【0021】
ポリジオルガノシロキサンポリマーは、単一のポリジオルガノシロキサンであり得る、又は次の特徴である、構造、平均分子量、シロキサン単位、及び配列、のうちの少なくとも1つが異なる、2つ以上のポリジオルガノシロキサンを含む混合物であり得る。
【0022】
本発明において有用なポリジオルガノシロキサンポリマーは、シリコーン組成物の総重量に基づいて、5重量%以上、6重量%以上、7重量%以上、7.5重量%以上、9重量%以上、10重量%以上、12重量%以上、15重量%以上、18重量%以上、あるいは20重量%以上、かつ同時に、40重量%以下、38重量%以下、35重量%以下、32重量%以下、30重量%以下、28重量%以下、あるいは25重量%以下の量で、シリコーン組成物中に存在してもよい。
【0023】
本発明のシリコーン組成物は、構成成分(C)として1つ以上のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含む。本ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、式(II)を有する。
(R2
3SiO1/2)2(R2
2SiO2/2)m(II)
式中、各R2は、独立して、水素又はアルキル基であり、mは、5~200の範囲であり、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、1分子当たり平均少なくとも3個のケイ素結合水素原子(SiH)を有する。R2で表されるアルキル基は、例えば、メチル、エチル、プロピル、及びブチルを含む、1~20個の炭素原子、1~12個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~6個の炭素原子、1~3個の炭素原子、又は1~2個の炭素原子を有してもよい。
【0024】
式(II)におけるmの値は、5以上、7以上、10以上、20以上、30以上、40以上、あるいは50以上、かつ同時に、200以下、150以下、140以下、130以下、120以下、110以下、あるいは100以下であってもよい。
【0025】
本発明において有用なポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、ケイ素結合水素原子を、ポリオルガノハイドロジェンシロキサンの重量に基づいて、0.38重量%以上、0.5重量%以上、0.6重量%以上、あるいは0.75重量%以上、かつ同時に、2重量%以下、1.9重量%以下、1.8重量%以下、1.75重量%以下、1.7重量%以下、あるいは1.6重量%以下の量で含んでもよい。ケイ素結合水素原子の含有量は、NMR分析によって決定され得る。
【0026】
オルガノヒドリドハロシランの加水分解及び縮合などのポリオルガノハイドロジェンシロキサンの調製方法は、当該技術分野において周知である。好適なポリオルガノハイドロジェンシロキサンの実施例としては、c1)トリメチルシロキシ末端ポリ(ジメチル/メチル水素)シロキサン、c2)トリメチルシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、c3)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、c4)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリ(ジメチルシロキサン/メチル水素シロキサン、c5)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ポリメチルハイドロジェンシロキサン、c6)H(CH3)2SiO1/2単位及びSiO4/2単位から本質的になる樹脂、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0027】
ポリオルガノハイドロジェンシロキサンは、ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子の、(ポリジオルガノシロキサンポリマー(B)中のアルケニル基、及び使用される場合には、後述のポリオルガノシリケート樹脂(G)などのアルケニル基を含有するその他の構成成分中のアルケニル基を含む)シリコーン組成物の全ての構成成分中のアルケニル基に対するモル比(SiH/Vi比と称される)が、0.5~10、例えば、0.7~8、0.8~7、0.9~6、1~5、又は1.05~2になるのに十分な量で存在する。シリコーン組成物は、典型的には、シリコーン組成物の総重量に基づいて、0.2重量%以上、0.3重量%以上、0.4重量%以上、0.5重量%以上、かつ同時に、2重量%以下、1.8重量%以下、1.6重量%以下、1.5重量%以下、あるいは1.2重量%以下の量のポリオルガノハイドロジェンシロキサンを含む。
【0028】
本発明のシリコーン組成物は、構成成分(D)として1種以上のポリマー添加剤を含む。ポリマー添加剤は、ポリプロピレングリコール(PPG)、アルコール開始エチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマー(以下、「アルコール開始EO/POコポリマー」)、又はこれらの混合物からなる群から選択される。
【0029】
本発明において有用なポリマー添加剤は、1分子あたり2以上、2.1以上、2.5以上、あるいは3以上、かつ同時に、12以下、10以下、8以下、あるいは6以下の平均数のヒドロキシル基を有してもよい。
【0030】
好ましくは、本発明において有用なポリマー添加剤は、1つ以上のアルコール開始EO/POコポリマーを含む。アルコール開始EO/POコポリマーは、直鎖状又は分岐状ランダムコポリマーであり得る。
【0031】
本発明において有用なアルコール開始EO/POコポリマーは、式(III)の構造を有してもよい。
(A)zB(III)
Aは、HO-(CHRp-CHRq-O)x-(CH2-CH2-O)y-を表し、xは、8~40であり、yは1~20であり、Rp及びRqは異なり、水素及び-CH3から選択され、zは、1~12であり、Bは、水素、又は3~18個の炭素原子を有する一価、二価、若しくは多価の炭化水素基である。
【0032】
式(III)のセグメントA中のエチレンオキシド単位(-CH2CH2-O)-)及びプロピレンオキシド単位(-(CH2CHCH3-O)-)の配列は、ランダムであってもよい、又はエチレンオキシド単位の単一ブロック及びプロピレンオキシド単位の単一ブロックなどの任意の種類のブロック構成で配向されていてもよい。
【0033】
式(III)において、x及びyは、それぞれプロピレンオキシド単位及びエチレンオキシド単位の平均数である。xの値は、8~40、10~35、15~30、又は20~28であり得る。yの値は、1~20、1~18、又は1~16であり得る。
【0034】
式(III)において、zは1~12、2~10、3~8、又は4~6であり得る。
【0035】
式(III)において、(x+y+z)の値は、アルコール開始EO/POコポリマーに対して以下に記載する分子量を与えるのに十分である。
【0036】
式(III)において、Bは、3~18個の炭素原子、3若しくは12個の炭素原子、3~10個の炭素原子、3~8個の炭素原子、又は4~6個の炭素原子を有してもよい。
【0037】
Bが一価又は二価の炭化水素基である場合、式(III)は直鎖状構造を表す。Bが多価(例えば、三価以上)の炭化水素基である場合、式(III)は分岐状構造を表す。Bは以下のようにソルビトールから誘導される基であり得る。
【化1】
【0038】
あるいは、Bは、以下のようにグリセロールから誘導される基であり得る。
【化2】
【0039】
本発明において有用なアルコール開始EO/POコポリマーは、3個以上の炭素原子、4個以上の炭素原子、5個以上の炭素原子、あるいは6個以上の炭素原子を有し、かつ同時に、典型的には、18個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、あるいは6個以下の炭素原子を有するアルコール開始剤から調製され得る。アルコール開始剤は、直鎖アルコール又は分岐鎖アルコールであってよく、好ましくは分岐鎖アルコールである。アルコール開始剤は、モノ、ジオール、トリオール、テトロール、ペントール又はヘキソールであり得る。好ましくは、アルコール開始剤はヘキソールである。好ましくは、EO/POコポリマーを調製するためのアルコール開始剤は、ソルビトール、グリセロール、又はこれらの混合物である。アルコール開始EO/POコポリマーの調製に使用される方法及び条件は、当業者に周知であり、例えば、20~180℃又は100~160℃の範囲の温度である。アルコール開始EO/POコポリマーの調製は、例えば、J.Herzbergerら、「Polymerization of ethylene oxide,propylene oxide,and other alkylene oxides:synthesis,novel polymer architectures,and bioconjugation」、Chemical Reviews、Volume 116、Issue No.4、ページ2170-2243(2016年)に見出すことができる。
【0040】
本発明において有用なアルコール開始EO/POコポリマーは、アルコール開始EO/POコポリマーの重量に基づいて、50重量%以上、52重量%以上、55重量%以上、58重量%以上、60重量%以上、62重量%以上、あるいは65重量%以上、同時に、99重量%以下、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下、あるいは95重量%以下の量のプロピレンオキシド単位(プロピレンオキシド鎖としても)を含んでもよい。
【0041】
本発明において有用なポリマー添加剤は、2,000g/mol超、例えば、2,100g/mol以上、2,200g/mol以上、2,300g/mol以上、2,500g/mol以上、2,600g/mol以上、2,700g/mol以上、2,800g/mol以上、2,900g/mol以上、3,000g/mol以上、3,200g/mol以上、3,500g/mol以上、3,800/mol以上、4,000g/mol以上、4,500g/mol以上、5,000g/mol以上、5,500g/mol以上、6,000g/mol以上、6,500g/mol以上、7,000g/mol以上、7,500g/mol以上、8,000g/mol以上、あるいは9,000g/mol以上、同時に、20,000g/mol以下、19,000mol以下、18,000mol以下、17,000g/mol以下、16,000g/mol以下、15,000g/mol以下、14,000g/mol以下、13,000g/mol以下、12,000g/mol以下、11,000g/mol以下、あるいは10,000g/mol以下の分子量を有する。本明細書における分子量は、数平均分子量(Mn)を指し、(56100*f/OHVによって計算され、式中、fは、ポリマー添加剤の1分子当たりのヒドロキシル基の平均数(「OH官能値」とも称される)を表し、OHVは、ASTM D4274-2011によって決定される、mg KOH/gの単位でのポリマー添加剤のヒドロキシル価を表す。
【0042】
本発明のシリコーン組成物は、シリコーン組成物の総重量に基づいて、0.1重量%以上、0.12重量%以上、0.15重量%以上、0.18重量%以上、0.2重量%以上、0.22重量%以上、0.25重量%以上、0.28重量%以上、あるいは0.3重量%以上、かつ同時に、1.5重量%以下、1.4重量%以下、1.3重量%以下、1.2重量%以下、1.1重量%以下、1重量%以下、0.9重量%以下、0.8重量%以下、あるいは0.7重量%以下のポリマー添加剤を含んでもよい。
【0043】
本発明のシリコーン組成物は、構成成分(E)として1種以上のヒドロシリル化反応触媒を含む。ヒドロシリル化反応触媒は、構成成分(B)と構成成分(C)との付加反応を促進し得る。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金族金属触媒が挙げられてもよい。このようなヒドロシリル化反応触媒は、(e1)白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、オスミウム、及びイリジウム、好ましくは白金から選択される金属、(e2)例えば、クロリドトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)(ウィルキンソン触媒)、[1,2-ビス(ジフェニルフォスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム若しくは[1,2-ビス(ジエチルフォスフィノ)エタン]ジクロロジロジウム]などのロジウムジホスフィンキレート、塩化白金酸(スピアー触媒)、塩化白金酸六水和物、又は二塩化白金を含む金属などの化合物、(e3)白金族化合物と低分子オルガノポリシロキサンとの錯体、(e4)白金族化合物がマトリックス若しくはコアシェル型構造にマイクロカプセル化されたもの、又はこれらの組み合わせ、(e5)錯体が樹脂マトリックスにマイクロカプセル化されたもの、又はこれらの組み合わせを含んでもよい。白金と低分子量オルガノポリシロキサンとの錯体としては、1,3-ジエテニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンの白金錯体(カルステッド触媒)が挙げられる。代表的なヒドロシリル化反応触媒は、米国特許第3,159,601号及び同3,220,972号に記載されている。
【0044】
ヒドロシリル化反応触媒の濃度は、ケイ素結合水素原子及びアルケニル基のヒドロシリル化反応を触媒するのに十分な濃度である。典型的には、ヒドロシリル化反応触媒の濃度は、シリコーン組成物の総重量に基づいて、1百万分率(ppm)以上、5ppm以上、10ppm以上、20ppm以上、あるいは30ppm以上、同時に、6,000ppm以下、5,000ppm以下、4,000ppm以下、3,000ppm以下、2,000ppm以下、1,000ppm以下、500ppm以下、100ppm以下、あるいは50ppm以下の白金族金属を提供するのに十分である。
【0045】
本発明のシリコーン組成物は、構成成分(F)として、1種以上のヒドロシリル化反応阻害剤(阻害剤)を含んでもよく、これは、阻害剤を除いた同じ出発材料の反応速度と比較して、シリコーン組成物中のケイ素結合水素原子とアルケニル基との反応速度を変更するために、所望により使用されてもよい。好適な阻害剤としては、メチルブチノール、エチニルシクロヘキサノール、ジメチルヘキシノール、及び3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、1-ブチン-3-オール、1-プロピン-3-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3-メチル-1-ペンチン-3-オール、3-フェニル-1-ブチン-3-オール、4-エチル-1-オクチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、及び1-エチニル-1-シクロヘキサノール、並びにこれらの組み合わせなどの、アセチレン系アルコールと、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラビニルシクロテトラシロキサン、1,3,5,7-テトラメチル-1,3,5,7-テトラヘキセニルシクロテトラシロキサン、及びこれらの組み合わせによって例示されるメチルビニルシクロシロキサンなどの、シクロアルケニルシロキサンと、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン、及びこれらの組み合わせなどの、エン-イン化合物と、ベンゾトリアゾールなどのトリアゾールと、ホスフィンと、メルカプタンと、ヒドラジンと、テトラメチルエチレンジアミン、3-ジメチルアミノ-1-プロピン、n-メチルプロパルギルアミン、プロパルギルアミン、及び1-エチニルシクロヘキシルアミンなどのアミンと、フマル酸ジエチルなどのフマル酸ジアルキル、フマル酸ジアリル、フマル酸ジアルコキシアルキルなどのフマル酸ジアルケニル、マレイン酸ジアリル、マレイン酸ジエチルなどのマレイン酸塩と、ニトリルと、エーテルと、一酸化炭素と、シクロオクタジエン、ジビニルテトラメチルジシロキサンなどのアルケンと、ベンジルアルコールなどのアルコールと、又はこれらの組み合わせと、が挙げられる。
【0046】
本発明において有用なヒドロシリル化反応阻害剤は、シリコーン組成物の総重量に基づいて、0以上、0.01重量%以上、0.02重量%以上、0.03重量%以上、0.05重量%以上、あるいは0.1重量%以上、かつ同時に、0.3重量%以下、0.25重量%以下、0.2重量%以下、あるいは0.15重量%以下の量で、シリコーン組成物中に存在してもよい。
【0047】
本発明のシリコーン組成物は、構成成分(G)として1種以上のポリオルガノシリケート樹脂を含んでもよい。ポリオルガノシリケート樹脂は、式RM
3SiO1/2の一官能性単位(「M」単位)、及び式SiO4/2の四官能性シリケート単位(「Q」単位)を含み、ここで、各RMは、独立して、アルキル又はアルケニルである。RMによって表されるアルキル基は、典型的には、1~6個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を有する。アルキル基の実施例としては、メチル、エチル、プロピル、ペンチル、ヘキシル、及びシクロヘキシルが挙げられる。RMによって表されるアルケニル基は、典型的には、2~6個の炭素原子を有する。アルケニル基の実施例としては、ビニル、アリル、ブテニル、及びヘキセニルが挙げられる。好ましくは、アルキル基はメチルであり、アルケニル基はビニルである。
【0048】
本発明において有用なポリオルガノシリケート樹脂は、典型的には、RM
3SiO1/2単位及びSiO4/2単位から本質的になる。「本質的に~からなる(Consists essentially of)」とは、ポリオルガノシリケート樹脂中のM単位とQ単位との合計量が、ポリオルガノシリケート樹脂の総重量に基づいて98重量%以上であることを意味する。ポリオルガノシリケート樹脂はまた、HOSiO3/2単位(TOH単位)を含有するが、これは、ポリオルガノシリケート樹脂のケイ素結合ヒドロキシル含有量を占める。NMR分析によって決定されるポリオルガノシリケート樹脂のケイ素結合ヒドロキシル含有量は、典型的には、ポリオルガノシリケート樹脂の総重量に基づいて2重量%未満又は1重量%未満である。ポリオルガノシリケート樹脂は、米国特許出願公開第2,676,182号に記載されているダウト(Daudt)らの方法に従った樹脂の調製における副生成物である、式(RMSiO)4Siを有するネオペンタマーオルガノポリシロキサンを含有してもよく、これはポリオルガノシリケート樹脂の作製方法を教示するために参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
ポリオルガノシリケート樹脂中のM単位対Q単位のモル比は、典型的には、NMR分析によって決定されるように、0.5~1.5、0.65~1.3、又は0.8~1.2の範囲である。M/Q比は、ポリオルガノシリケート樹脂中のM単位の総数対Q単位の総数を表し、存在する場合には任意のネオペンタマーからの寄与を含む。
【0050】
本発明において有用なポリオルガノシリケート樹脂は、平均で3モル%以上、4モル%以上、あるいは5モル%、かつ同時に、20モル%以下、17モル%以下、あるいは15モル%以下のアルケニル基を含有してもよい。本樹脂中のアルケニル基のモル百分率は、樹脂中のシロキサン単位の総モル数に対する、樹脂中のアルケニル基含有シロキサン単位のモル数の比に、100%を乗じたものとして、本明細書では定義される。樹脂中のシロキサン単位の総モル数は、上記のM、Q、及びTOH単位を含むが、これは、NMR分析によって決定され得る。
【0051】
好ましいポリオルガノシリケート樹脂は、CH=CH(CH3)2SiO1/2単位、(CH3)3SiO1/2単位、及びSiO4/2単位から本質的になり、ここで、M単位(CH=CH(CH3)2SiO1/2単位及び(CH3)3SiO1/2単位)対Q単位(すなわち、SiO4/2単位)は0.8であり、樹脂は、5モル%及び1.8重量%のビニル基を含有する。NMR分析によって決定される樹脂中のビニル基の重量百分率は、ここでは、樹脂の分子量に対する樹脂中のビニル基の総モル重量に100%を乗じたものとして定義される。
【0052】
本発明のシリコーン組成物は、構成成分(H)として1種以上の接着促進剤を含んでもよい。接着促進剤は、不飽和又はエポキシ官能性アルコキシシランを含むアルコキシシラン、アルコキシシランとヒドロキシ官能性ポリオルガノシロキサンとの組み合わせ(すなわち、物理的ブレンド及び/又は反応生成物)、又はこれらの混合物を含んでもよい。好適なエポキシ官能性アルコキシシランの実施例としては、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジメトキシシラン、(エポキシシクロヘキシル)エチルジエトキシシラン、又はこれらの混合物が挙げられる。好適な不飽和アルコキシシランの実施例としては、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ウンデシレニルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0053】
好ましくは、接着促進剤は、エポキシ官能性アルコキシシランと、ヒドロキシ末端ビニルポリオルガノシロキサンなどのヒドロキシ末端ポリオルガノシロキサンとの反応生成物及び/又はブレンドである。接着促進剤は、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端ビニルポリジメチルシロキサンとの組み合わせ(すなわち、物理的ブレンド及び/又は反応生成物)、好ましくは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーとのブレンド及び/又は反応生成物を含んでもよい。好適な市販の接着促進剤としては、例えば、全てDow Silicones Corporation(Midland、Michigan、USA)から入手可能なSYL-OFF(商標)297、SYL-OFF(商標)397、及びSYL-OFF(商標)SL9250が挙げられてもよい(SYL-OFFはDow Silicones Corporationの商標である)。
【0054】
本発明において有用な接着促進剤は、シリコーン組成物の総重量に基づいて、ゼロ以上、0.01重量%以上、0.05重量%以上、0.1重量%以上、あるいは0.5重量%以上、かつ同時に、5重量%以下、4.5重量%以下、4重量%以下、3.5重量%以下、3重量%以下、2.5重量%以下、2重量%以下、1.5重量%以下、あるいは1重量%以下の量で、シリコーン組成物中に存在してもよい。
【0055】
上記の構成成分に加えて、本発明のシリコーン組成物は、以下の添加剤である、導電性充填剤以外の充填剤、顔料、及び酸化防止剤のうちの1種以上を更に含んでもよい。これらの添加剤は、シリコーン組成物の総重量に基づいて、0~0.5重量%、0.01重量%~0.2重量%、又は0.05重量%~0.15重量%の総量で、シリコーン組成物中に存在してもよい。
【0056】
本発明のシリコーン組成物は、構成成分(A)~(E)及び(F)(使用される場合)、並びに上記のいずれかの任意の構成成分を、典型的には室温で混合することによって、調製され得る。シリコーン組成物は、一成分系組成物又は多成分系組成物であり得る。シリコーン組成物中の構成成分の混合は、バッチプロセス又は連続プロセスのいずれかで、粉砕、ブレンド、及び撹拌などの当該技術分野で周知の技術のいずれかによって達成され得る。シリコーン組成物は、所望の低い複素粘度を依然として達成しながら、溶媒の助けなしに調製され得る。したがって、本発明のシリコーン組成物は、無溶媒であり得る(すなわち、溶媒を含有しないか、又はシリコーン組成物中の構成成分の送達からの微量の残留溶媒を含有する場合がある)。本明細書において「低い複素粘度」とは、シリコーン組成物の全ての構成成分を一緒に混合して2時間以内に測定した場合に、室温で350,000Pa・s以下であるシリコーン組成物の複素粘度、例えば、以下の実施例の章に記載の試験方法に従って測定した際に、1,000Pa・s以上、1,500Pa・s以上、2,000Pa・s以上、かつ同時に、350,000Pa・s以下、200,000Pa・s以下、100,000Pa・s以下、20,000Pa・s以下、15,000Pa・s以下、あるいは10,000Pa・s以下の複素粘度を指す。本発明のシリコーン組成物は、典型的には、空気及び水分への曝露を防止するために密封容器中に保存される。本発明のシリコーン組成物は、シリコーン組成物から作製された硬化生成物(例えば、シリコーン接着剤)の特性を何ら変化させることなく、室温で数週間、又は0℃未満、好ましくは-30~-20℃の温度で数ヶ月間、保存してもよい。本発明のシリコーン組成物は、ポリマー添加剤(E)のみを含まない類似のシリコーン組成物(すなわち、既存のシリコーン組成物)よりも安定し得る。例えば、本発明のシリコーン組成物は、室温で3ヶ月以上保存した後、肉眼で観察される表面上の油様液体のブリードアウトを示さない(すなわち、光沢のある表面を示さない)。
【0057】
本発明のシリコーン組成物は、種々の用途に有用であり、例えば、シリコーン組成物は、硬化して、導電性接着剤、導電性コーティング、電磁界干渉(EMI)遮蔽材料、剥離コーティング、成形化合物と、電子回路、平面、繊維若しくは小粒子、又はガスケット材料のための保護コーティング材と、を形成する。シリコーン組成物は硬化性組成物である。硬化時に、シリコーン組成物は、高い導電性を有する硬化生成物を形成する。ここで、「高い導電性」とは、中国国家標準規格GB/T1552-1995(China national standard test method for measuring resistivity of monocrystal silicon and germanium with a collinear four-probe array)に準拠して測定した体積抵抗率が0.01オームcm以下、好ましくは0.001オームcm以下、より好ましくは0.0001オームcm以下であることを示す。本発明のシリコーン組成物は、導電性シリコーン接着剤の製造に特に有用である。
【0058】
また、本発明は、シリコーン組成物の硬化生成物を含むシリコーン粘着剤、すなわち、シリコーン組成物をヒドロシリル化反応により硬化させることによって形成されるシリコーン粘着剤に関する。シリコーン接着剤は、シリコーン組成物を基材に塗布することによって、基材上に接着剤物品を形成するために使用されてもよい。基材へのシリコーン組成物の塗布は、例えば、分注、薄膜コーティングのスピニング、噴射、噴霧、浸漬、流し込み、スクリーン印刷、押出成形を含む種々の手段によって、又はブラシ、ローラ若しくはコーティングバーの使用によって実施され得る。基材は、シリコーン組成物を硬化して基材上にシリコーン接着剤を形成するために使用される、以下に記載する硬化条件に耐え得る任意の材料であり得る。好適な基材としては、例えば、エポキシ、ポリカーボネート、ポリ(ブチレンテレフタレート)樹脂、ポリアミド樹脂及びこれらのブレンド、例えばポリアミド樹脂とシンジオタクチックポリスチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、スチレン改質ポリ(フェニレンオキシド)、ポリ(フェニレンスルフィド)、ビニルエステル、ポリフタルアミド、ポリイミド、ケイ素、アルミニウム、ステンレス鋼合金、チタン、銅、ニッケル、銀、金、又はこれらの組み合わせとのブレンドが挙げられてもよく、好ましくは、電子用途に使用され得る基材である。例えば、本発明は、基材と、基材上に配置されたシリコーン組成物又はシリコーン接着剤とを含む電子デバイスを提供し得る。シリコーン組成物の硬化は、室温又は200℃までの高温、例えば、70~200℃、125~175℃で、シリコーン組成物を硬化させるのに十分な時間(例えば、1~3時間)実施されてもよい。既存のシリコーン組成物と比較して、本発明のシリコーン組成物は硬化して、より低い体積抵抗率によって示されるように、改善された導電性を有するシリコーン接着剤を形成する。例えば、本発明のシリコーン組成物から作製されたシリコーン接着剤は、既存のシリコーン組成物から作製されたシリコーン接着剤の体積抵抗率(VR)の少なくとも50%のVR減少、例えば、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、あるいは少なくとも99%のVR減少を示し得る。本発明のシリコーン接着剤は、上記のように高い導電性を示し得る。本発明のシリコーン接着剤はまた、少なくとも20日間、30日間以上、あるいは60日間以上の125℃での熱サイクル時に、これらの電気特性のより良好な保持を示す場合がある。例えば、本発明のシリコーン接着剤のVR変動は、既存のシリコーン組成物から作製されたシリコーン接着剤のVR変動の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、あるいは少なくとも99%の減少を示す場合がある。
【0059】
本発明はまた、第1の基材を第2の基材に結合させる方法を提供する。本方法は、(i)基材の少なくとも1つの表面にシリコーン組成物を適用することと、(ii)2つの基材を、それらの間に存在するシリコーン組成物と接触させることと、(iii)シリコーン組成物を硬化させることと、を含む。2つの基材は、上記のものであり、同じであっても異なっていてもよい。シリコーン組成物の硬化は、上記のように実施され得る。
【実施例】
【0060】
次に、本発明のいくつかの実施形態を以下の実施例において説明するが、全ての部及び百分率は、別段明記されない限り、重量による。実施例では以下の材料を使用する。
【0061】
Potters Industriesから入手可能な導電性充填剤としては、以下のものが挙げられる。
CONDUCT-O-FIL(商標)SN08P40銀被覆ニッケル顆粒粒子(粒径:8μm、銀含有量40重量%)、
CONDUCT-O-FIL SN40P18銀被覆ニッケル顆粒粒子、40μmの粒径(銀含有量18重量%)、
CONDUCT-O-FIL S3000S3N銀被覆ガラス球状粒子(粒径:34μm、銀含有量12重量%)、及び
CONDUCT-O-FIL SA300S20銀被覆アルミニウム顆粒粒子(粒径:40μm、銀含有量20重量%)(CONDUCT-O-FILはPotters Industries,Inc.の商標である)。
【0062】
TCIから入手可能な1-エチニル-1-シクロヘキサノール(ETCH)を阻害剤として使用する。
【0063】
TCIから入手可能な阻害剤Aは、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールである。
【0064】
Gelestから入手可能なPt(白金)触媒は、キシレン中のSIP6831.2白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、2%Pt(Pt触媒の重量に基づく)である。
【0065】
以下の材料は全て、Dow Silicones Corporationから入手可能である。
【0066】
ヒドリドポリジメチルシロキサン(PDMS)は(CH3)3SiO-[(CH3)2SiO]3.34-[HCH3SiO]5.32-Si(CH3)3の構造を有する。
【0067】
ビニル末端PDMSは、CH2=CH-(CH3)2SiO-[(CH3)2SiO]m-Si(CH3)2-CH=CH2の構造を有し、式中、mは、ビニル末端PDMS-A、ビニル末端PDMS-B、ビニル末端PDMS-C及びビニル末端PDMS-Dについて、それぞれ162、324、41、554である。
【0068】
ビニルキャップされたMQ樹脂は、平均化学構造:MVi
0.05M0.4Q0.55を有し、5モル%及び1.8重量%のVi含有量を有し(Vi基のモル含有量及び重量含有量は、上記のポリオルガノシリケート樹脂の章で定義した通りである)、式中、MViは、CH2=CH(CH3)2SiO1/2を示し、Viは、CH2=CH-を示す。
【0069】
DOWSIL(商標)193C Fluid(「DC-193C SPE」)は、シリコーン変性ポリエーテルである(以下のGPCによって測定されるように、Mn:3,096g/molであり、DOWSILはDow Silicones Corporationの商標である)。
【0070】
粘着促進剤は、グリシドキシプロピルトリメトキシシランとヒドロキシ末端メチルビニル/ジメチルシロキサンコポリマーとの組み合わせである。
【0071】
以下の表に示すポリオールは全て、The Dow Chemical Companyから入手可能である。
【表1】
1OHVは、ASTM D4274-2011によって決定されるアルコールアルコキシレートのヒドロキシル価を表し、N/A-利用不可能、
2Mnは、56100(mg/mol)*f/OHV(mgKOH/g)によって計算され、
3POの重量%は、アルコールアルコキシレートの総重量に対するプロピレンオキシド単位の重量含有量を指す。
CARBOWAX、TERGITOL及びDOWFAXは、The Dow Chemical Companyの商標である。
【0072】
実施例において、並びに本明細書に記載の特性及び特徴を決定する際には、以下の標準的な分析機器及び方法を使用する。
【0073】
NMR
米国特許第9,593,209号の第32欄の参照実施例2に記載されている29Si及び13C核磁気共鳴(NMR)技術を使用して、メチルのモル百分率、ケイ素結合水素原子の重量含有量、シリコーン結合ヒドロキシル含有量、M(RM
3SiO1/2)及びQ(SiO4/2)単位のモル比、並びに上記のアルケニル(例えば、ビニル)基のモル百分率及び重量百分率を測定した。
【0074】
GPC
シリコーン変性ポリエーテルの数平均分子量(Mn)は、GPC分析を使用して決定した。クロマトグラフィ装置は、真空脱気装置を装備したWaters2695分離モジュール、及びWaters2414屈折率検出器から構成された。分離は、3本のStyragel(商標)HRカラム(300ミリメートル(mm)×7.8mm)(分子量分離範囲100~4,000,000)、その後にStyragel(商標)ガードカラム(30mm×4.6mm)を使用して行われ、StyragelはWaters Technologies Corporationの商標である。分析は、溶出液として1.0ミリリットル/分(mL/min)で流れる認定グレードのテトラヒドロフラン(THF)を使用して実行され、カラムと検出器は両方とも35℃に加熱された。0.050gをガラスバイアル(8mL)に計量し、5mLのTHFで希釈することによって、1.0重量%/vの試料を調製した。試料溶液を、0.45μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルタで濾過した後、ガラス製オートサンプラバイアルに移した。100マイクロリットル(μL)の注入量が使用され、データは37分間収集された。Waters Empower GPCソフトウェアを使用して、データの収集と分析を行った。平均分子量を、474~1,270,000の分子量範囲に及ぶ標準ポリスチレンを使用して作成された較正曲線(3次)に対して決定した。
【0075】
体積抵抗率(VR):
シリコーン組成物をガラススライド上の型(20mm×6mm×0.4mm(厚さ))に流し込み、150℃で2時間硬化させて硬化試料を形成した。硬化した試料を、VR試験の前に室温で12時間置いた。GB/T1552-1995に従って、Suzhou Jingge Electronic Co.,Ltd.(China)からの4プローブ体積抵抗率試験機(ST2253)によって、硬化試料の体積抵抗率を測定した。
【0076】
ガラススライド上の調製されたままの硬化試料を4プローブVR試験機下に置き、試料の初期VRを測定し、VRInitialとして示した。次に、試料をオーブンに入れて125℃で一定期間(20~60日)熱老化させた後、12時間を超えて室温まで冷却した。熱老化後の試料のVRを測定し、VRAgingとして示した。VRVariationとして示される熱老化前後のVRの変動は、以下の式に基づいて計算される。
VRVariation=(VRAging-VRInitial)/VRInitial*100%
【0077】
導電性充填剤の中央粒径
Beckman Coulterのレーザ回折粒径分析器(モデルLS13 320)を使用して、108の粒子の体積加重粒径分布を決定することにより、充填剤の中央粒径、すなわちD50粒径を決定する。
【0078】
複素粘度
シリコーン組成物の全ての構成成分を一緒に混合した。2時間以内に、得られたシリコーン組成物の複素粘度を、TA DHR-III レオメータ(TA Instruments)を用いて、25枚の平行クロスハッチプレート間で、1%の歪み及び0.1ラジアン/秒(rad/s)の角度周波数で、室温で、振動周波数掃引及びCox-merz変換を使用して測定した。シリコーン組成物は、測定された複素粘度に基づいて以下のように分類される。
【0079】
「粉末状」は>550,000Pa・sの粘度を表し、「ガム」は>350,000~550,000Pa・sの範囲の粘度を表し、「ペースト」は>10,000~350,000Pa・sの範囲の粘度を表し、「粘性」は1,000~10,000Pa・sの範囲の粘度を表す。
【0080】
貯蔵寿命
シリコーン組成物中の全ての構成成分を最初に混合し、次に得られたシリコーン組成物を室温で3ヶ月間貯蔵することによって、シリコーン組成物の貯蔵寿命を決定する。貯蔵前後のシリコーン組成物の外観をそれぞれ観察し、記録した。貯蔵後にシリコーン組成物の表面上に油様液体が肉眼で観察されない(すなわち、ブリード又は光沢のある表面がない)場合、シリコーン組成物は安定である。そうでなければ、貯蔵後のシリコーン組成物が光沢のある表面を示す場合、シリコーン組成物は安定ではない。
【0081】
本発明の実施例(IE)1~22及び比較実施例(CE)1~20シリコーン組成物
プレミックスS-1の調製:表1-1に列挙されたプレミックスS-1中の全ての構成成分をポリプロピレン(PP)ボトルに添加し、歯科用ミキサを使用することによって毎分3,000回転(rpm)で30秒間、2回混合することによって、プレミックスS-1を得た。
【0082】
プレミックスS-2(S-2)を、表1-2に列挙される構成成分に基づいて、上記のプレミックスS-1の調製と同じ手順に従って調製した。
【0083】
次に、特定量の調製したままのプレミックスS-1又はプレミックスS-2を別々のボトルに入れ、歯科用ミキサを使用して真空下で2,000rpmで1分間、表2~7に示すシリコーン組成物中のその他の構成成分と混合して、シリコーン組成物を得た。得られたシリコーン組成物を上記の試験方法に従って粘度及びVR性能について評価し、結果を表2~7に示した。
【表2】
*重量%は、プレミックスS-1の総重量に対する重量百分率を指す。
【表3】
*重量%は、プレミックスS-2の総重量に対する重量百分率を指す。
【0084】
表2に示すように、IE1~4のシリコーン組成物は全て、所望の粘度を示した。対照的に、CE1のシリコーン組成物は、望ましくない高い複素粘度を示し、ガムのように見えた。IE1~4のシリコーン組成物は、CE1~5よりも低いVRによって示されるように、はるかに良好な導電性を有する、それから作製された硬化生成物を提供した。特に、IE1~4のシリコーン組成物は、硬化時に、CE1と比較してVRの100倍の減少を示し、1,000g/molのM
nを有するPPGを含む硬化生成物(CE4)のVRの50%超のVR減少を示した。
【表4】
mΩcmはミリオーム-センチメートルを表す。
【0085】
表3に示すように、硬化時のIE2~4のシリコーン組成物は、いずれのポリマー添加剤もを含まないCE1の組成物、又はそれぞれP400PPG、PEG600及びSPEを含むCE3及び6~7の組成物と比較して、はるかに少ないVR変動を提供した。
【表5】
N.C.非伝導性
【0086】
表4に示すように、IE5~10のシリコーン組成物は全て、所望の粘度を示した。対照的に、CE8のシリコーン組成物は、望ましくない高い複素粘度を示し、ガムのように見えた。IE5及び8のシリコーン組成物は、CE8から作製された硬化生成物のVRの70%超が減少するVRによって示されるように、CE8のものよりもはるかに良好な導電性を有する、それらから作製された硬化生成物を提供した。IE6及び9のシリコーン組成物は、CE9から作製された硬化生成物のVRの80%超が減少するVRによって示されるように、CE9のものよりもはるかに良好な導電性を提供した。IE7及びIE10のシリコーン組成物は、CE10から作製された硬化生成物のVRの99%超が減少するVRによって示されるように、CE10のものよりもはるかに良好な導電性を提供した。IE5~10のシリコーン組成物はまた、硬化時に、CE11及びCE12のものよりもはるかに良好な導電性も提供した。
【表6】
【0087】
表5に示されるように、硬化時のIE9のシリコーン組成物は、いずれのポリマー添加剤をも含まないCE9又はSPEを含有するCE14と比較して、はるかに少ないVR変動を提供した。IE11及びIE12のシリコーン組成物はまた、硬化時に、いずれのポリマー添加剤をも含まないCE13と比較して、はるかに少ないVR変動を提供した。
【表7】
【0088】
表6に示すように、IE13~18のシリコーン組成物は全て、所望の粘度を示した。更に、室温で3ヶ月間貯蔵した後、CE16のシリコーン組成物は、著しいブリード(すなわち、光沢のある表面)を示したが、同じ充填剤添加量のシリコーン組成物(IE14及びIE17)についてはブリードは観察されなかった。
【0089】
IE13及び16のシリコーン組成物は、CE15から作製された硬化生成物のVRの75%超のVR減少を伴って、それらから作製された硬化生成物を提供した。IE14及び17のシリコーン組成物は、CE16から作製された硬化生成物のVRの50%超のVR減少を伴って、それらから作製された硬化生成物を提供した。IE15及び18のシリコーン組成物は、CE17から作製された硬化生成物のVRの99%超のVR減少を伴って、それらから作製された硬化生成物を提供した。それは、IE13及び16、IE14及び17、IE15及び18のシリコーン組成物が、それぞれCE15、CE16、及びCE17のものよりもはるかに良好な初期導電性を伴って、それらから作製された硬化生成物を提供したことを示す。なお、IE13及びIE16のシリコーン組成物は、硬化時に、CE15よりもはるかに少ないVR変動を提供し、IE16は、IE13よりも更に少ないVR変動を提供した。
【表8】
N/A-利用不可能
【0090】
表7に示すように、IE19~22のシリコーン組成物は全て、所望の粘度を示した。更に、室温で3ヶ月間貯蔵した後、CE19のシリコーン組成物は、著しいブリード(すなわち、光沢のある表面)を示したが、同じ充填剤添加量でDF-163を有するシリコーン組成物(IE20)についてはブリードは観察されなかった。
【0091】
IE19及びIE22のシリコーン組成物は、CE18と比較して60%を超えるVRの減少をもたらした。IE20から製造された硬化生成物は、CE19から作製された硬化生成物のVRの65%のVR減少を示し、IE21から作製された硬化生成物は、CE20から作製された硬化生成物のVRの99%のVR減少を提供した。それは、IE19及び22、IE20、並びにIE21のシリコーン組成物が、それぞれCE18、CE19、及びCE20のものと比較してはるかに良好な初期導電性を伴って、それらから作製された硬化生成物を提供したことを示す。なお、IE19及びIE22のシリコーン組成物は、硬化時に、CE18よりもはるかに少ないVR変動を提供するが、これは、CE18よりも良好な導電性の保持を示す。
【表9】
N/A-利用不可能
【手続補正書】
【提出日】2023-06-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーン組成物であって、前記シリコーン組成物の総重量に基づく重量比で、
(A)66%~89%の導電性充填剤と、
(B)5%~40%の、式(I)のポリジオルガノシロキサンポリマーであって、
(R13SiO1/2)2(R12SiO2/2)n(I)、
式中、各R1が、独立して、一価の脂肪族炭化水素基であり、nが、35~1,000の範囲であり、前記ポリオルガノシロキサンポリマーが、1分子当たり平均少なくとも2個のアルケニル基を含有する、式(I)のポリジオルガノシロキサンポリマーと、
(C)式(II)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンであって、
(R23SiO1/2)2(R22SiO2/2)m(II)
式中、各R2が、独立して、水素又は1~20個の炭素原子を有するアルキル基であり、mが、5~200の範囲であり、前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサンが、1分子当たり平均少なくとも3個のケイ素結合水素原子を有する、式(II)のポリオルガノハイドロジェンシロキサンと、
(D)ヒドロシリル化反応触媒と、
(E)0.1%~1.5%の、2,000超~20,000g/molの分子量を有するポリマー添加剤であって、ポリプロピレングリコール、アルコール開始エチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマー、又はこれらの混合物からなる群から選択される、ポリマー添加剤と、
(F)0~0.3%のヒドロシリル化反応阻害剤と、を含む、シリコーン組成物。
【請求項2】
前記アルコール開始エチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマーが、式(III)の構造を有し、
(A)zB(III)
Aが、HO-(CHRp-CHRq-O)x-(CH2-CH2-O)y-を表し、xが、8~40であり、yが、1~20であり、Rp及びRqが異なり、水素及び-CH3から選択され、zが、1~12であり、Bが、水素、又は3~18個の炭素原子を有する一価、二価、若しくは多価の炭化水素基である、請求項1に記載のシリコーン組成物。
【請求項3】
前記アルコール開始エチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマーが、前記コポリマーの重量に基づいて50重量%~99重量%のプロピレンオキシド単位を含む、請求項1に記載のシリコーン組成物。
【請求項4】
前記アルコール開始エチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマーが、3,000~14,000g/molの分子量を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項5】
前記導電性充填剤が、銀若しくはその合金、銀被覆ニッケル粒子、銀被覆ガラス粒子、銀被覆アルミニウム粒子、銀被覆銅粒子、又はこれらの混合物からなる粒子を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項6】
式(I)において、nが35~500であり、R1で表される一価の脂肪族炭化水素基の少なくとも50モル%がメチルである、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項7】
前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン中のケイ素結合水素原子の、前記シリコーン組成物の全ての構成成分中のアルケニル基に対するモル比が、0.5~10である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項8】
RM3SiO1/2単位及びSiO4/2単位から本質的になり、各RMが、独立して、アルキル又はアルケニルであるポリオルガノシリケート樹脂を更に含み、前記ポリオルガノシリケート樹脂が、平均3モル%~20モル%のアルケニル基を含有する、請求項1~3のいずれか一項に記載のシリコーン組成物。
【請求項9】
前記導電性充填剤、前記ポリジオルガノシロキサンポリマー、前記ポリオルガノハイドロジェンシロキサン、前記ヒドロシリル化反応触媒、前記ポリマー添加剤、及び使用される場合には前記ヒドロシリル化反応阻害剤を混合することを含む、請求項1に記載のシリコーン組成物の調製プロセス。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載のシリコーン組成物の硬化生成物を含む、シリコーン接着剤。
【国際調査報告】