(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】粉体の粉砕方法、材料のコーティング方法、金属粒子、コーティングされた材料およびこれらの使用
(51)【国際特許分類】
B22F 9/04 20060101AFI20231222BHJP
B22F 1/068 20220101ALI20231222BHJP
B22F 1/05 20220101ALI20231222BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20231222BHJP
B02C 15/00 20060101ALI20231222BHJP
C04B 35/56 20060101ALN20231222BHJP
C04B 35/486 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
B22F9/04 C
B22F1/068
B22F1/05
B22F1/00 M
B22F1/00 L
B22F1/00 N
B22F1/00 K
B22F1/00 S
B22F1/00 R
B02C15/00
C04B35/56 220
C04B35/486
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535435
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 FR2021052244
(87)【国際公開番号】W WO2022123178
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブロティア,メリル
(72)【発明者】
【氏名】ヴォド,ステファヌ
【テーマコード(参考)】
4D063
4K017
4K018
【Fターム(参考)】
4D063EE13
4D063EE18
4D063GB02
4D063GB05
4K017AA02
4K017BA01
4K017BA02
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4K017BA05
4K017BA06
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4K017BB01
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4K017BB05
4K017BB06
4K017BB10
4K017CA03
4K017CA07
4K017EA03
4K018BA01
4K018BA02
4K018BA04
4K018BA08
4K018BA10
4K018BA13
4K018BA20
4K018BB01
4K018BB04
4K018BD09
4K018KA01
4K018KA32
4K018KA70
(57)【要約】
本発明は、以下の工程を含む、少なくとも1つの粉体を低温粉砕する方法に関する。
(a)低温流体を、磨砕手段を備える磨砕ミルに導入する工程;
(b)1つまたは複数の粉体を磨砕ミルに導入する工程;および
(c)磨砕ミルを回転動作に設定する工程;
ここで、
- 磨砕手段の体積V
MAと低温流体の体積V
FCの合計に対する磨砕手段の体積V
MAの比率V
MA/(V
MA+V
FC)が、0.2と0.8の間であり、且つ
- 工程(c)の間の磨砕ミルの回転速度は、100rpmと20,000rpmの間である。
また本発明は、金属粒子または金属合金の粒子、その使用、それらを使用するコーティング方法、およびそのコーティングされた材料の使用に関する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの粉体を低温液体粉砕する方法であって、以下の工程を含み:
(a)低温流体を、磨砕手段を備える磨砕機内に導入する工程;
(b)粉体を磨砕機内に導入する工程;
(c)磨砕機を回転自在に動作させて、それによって粉体を低温粉砕して粒子にする工程;および
(d)任意に粒子を回収する工程;
ここで、
- 各粉体は、有利には、金属粉体、金属合金粉体、1種以上の金属酸化物の粉体、セラミック粉体、有機粉体およびグラファイト粉体から選択され、
前記方法は、
- 磨砕手段の体積V
MAと低温流体の体積V
FCの合計に対する磨砕手段の体積V
MAの比率V
MA/(V
MA+V
FC)が、0.2と0.8の間、有利には0.3と0.7の間であり、且つ
- 工程(c)の間の磨砕機の回転速度は、100rpmと20,000rpmの間であることを特徴とする、粉砕方法。
【請求項2】
粉体が金属粉体または金属合金粉体である請求項1に記載の粉砕方法であって:
- 粉体の金属はAu、Ag、Cu、Al、Sn、Pt、Pd、Pb、Zn、FeおよびNiから選択され、且つ、
- 比率V
MA/(V
MA+V
FL)が、0.2≦V
MA/(V
MA+V
FL)≦0.7である、粉砕方法。
【請求項3】
粉体の金属が、Au、Ag、Cu、Al、Sn、Pt、Pd、ZnおよびFeから選択され、有利にはAg、SnおよびCuから選択され、金属または金属の1つが好ましくはCuである、請求項2に記載の粉砕方法。
【請求項4】
磨砕手段が、好ましくは鋼鉄またはセラミック、例えば炭化ジルコニウムもしくはジルコニアのビーズ、棒またはローラーで形成される、請求項1~3のいずれか一項に記載の粉砕方法。
【請求項5】
低温流体が、窒素、アルゴンおよびクリプトンから選択され、好ましくは窒素である、請求項1~4のいずれか一項に記載の粉砕方法。
【請求項6】
工程(a)と(b)が連続的に実施される、請求項1~5のいずれか一項に記載の粉砕方法。
【請求項7】
工程(c)の後に、工程(c)のものとは異なる磨砕手段を必要に応じて使用して、磨砕機を回転自在に動作させる少なくとも1つの補足的な工程(c’)をさらに含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の粉砕方法。
【請求項8】
1つ以上の補足的工程(c’)が、工程(d)の前に実施される、請求項7に記載の粉砕方法。
【請求項9】
請求項2~8のいずれか一項に記載の金属粉体または金属合金粉体を低温液体粉砕する方法によって得られる金属粒子または金属合金粒子であって、
これらの粒子はe、lおよびLと表記される3つの寸法を有するシート状の形態であり、eとLはそれぞれ粒子の最小寸法と最大寸法であり、粒子の金属は、Au、Ag、Cu、Al、Sn、Pt、Pd、Pb、Zn、FeおよびNiから選択され、
粒子が以下の形態学的特性:
- eは、e≦1μmであり、有利にはe≦200nmであり、好ましくは10nm≦e≦100nmであり;
- 比率L/eは、10≦L/e≦100であり;
- 比表面積(BET法で測定)は、1m
2/g以上、有利には10m
2/g以上、好ましくは25m
2/gと200m
2/gの間である;
を有することを特徴とする、金属粒子または金属合金粒子。
【請求項10】
さらに以下の特性:
- Θと表記され、ISO 9045:1990(fr)に準拠して測定された静的安息角が、30°と60°の間である、および/または
- Θsと表記される二次動的安息角が、80°と130°の間である;
を有する、請求項9に記載の金属粒子または金属合金粒子。
【請求項11】
粒子が以下の形態学的特性:
- 200nm以下のシートの平面度公差、および/または
- 10%以下のシートの凸性偏差;
をさらに有する、請求項9または10に記載の金属粒子または金属合金粒子。
【請求項12】
金属が、Au、Ag、Cu、Al、Sn、Pt、Pd、ZnおよびFeから選択され、有利にはAg、SnおよびCuから選択され、金属または金属の1つが好ましくはCuである、請求項9~11のいずれか一項に記載の金属粒子または金属合金粒子。
【請求項13】
金属コーティングをその表面の全部または一部に含む部品を製造するための、請求項9~12のいずれか一項に記載の金属粒子または金属合金粒子の使用であって、
この金属コーティングは、前記部品の表面の全部または一部を保護、処理または装飾することを目的とすることができる、使用。
【請求項14】
機械産業、エレクトロニクスもしくはマイクロエレクトロニクス産業、光学分野、建築分野、包装分野、デザイン分野、化粧品分野、または医療もしくは医療補助分野における、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
以下の工程を含む、材料のコーティング方法:
(1)請求項2~8のいずれか一項に記載の方法を実施することによって金属粒子または金属合金粒子を調製する工程;次いで、
(2)工程(1)で調製した金属粒子または金属合金粒子を材料の全部または一部に被覆させ、これによりコーティングされた材料を得る被覆工程。
【請求項16】
エネルギーを印加して、または補完的コーティングを適用して、材料の全体または一部のコーティングを強固にする工程(3)をさらに含む、請求項15に記載のコーティング方法。
【請求項17】
被覆工程(2)が、静電引力によって、あるいは粒子と被覆が行われる材料の表面との間に電位差を印加することによって実施される、請求項15または16に記載のコーティング方法。
【請求項18】
材料が、分割された形態または一体の形態である、請求項15~17のいずれかに一項に記載のコーティング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つ以上の粉体、特に金属粉体を低温液体粉砕する方法に関する。
【0002】
本発明はまた、特定の三次元構造によって特徴付けられる金属粒子に関し、その粒子は、上述の粉砕方法によって得られる可能性が高い。
【0003】
本発明はまた、その金属粒子の使用に関する。
【0004】
最後に、本発明は、これらの金属粒子を採用した材料をコーティングする方法、特に材料の全部または一部に保護金属コーティングまたは表面金属コーティングを形成する方法、およびそのコーティングされた材料の使用に関する。
【背景技術】
【0005】
現在、材料もしくは部品上に金属コーティングまたは被膜を形成するための多くの方法があり、これらの方法は、特にコーティングを被覆するために実施される技術、および/または被覆される配合物にしたがってまとめることができる。
【0006】
金属コーティングは、例えば、ブラシ、ローラーまたはスプレーガンを用いて、コーティングされる部品の表面に金属化塗料を塗布することによって得ることができる。しかしながら、これらの塗料の配合は、これらの塗料を十分に塗布するために必要な粘度および/または湿潤性を分散、安定化および/または提供するために添加剤に頼っている。特に、これらの配合物には、健康や環境に悪影響を及ぼすことがよく知られている揮発性有機化合物(VOC)だけでなく、有毒である可能性のある溶剤が使用されている。さらに、これらの配合物は、最適化されていない量の金属化合物を使用している。
【0007】
金属コーティングは、インクを塗布することによっても得ることができる。インク配合物は数多くあり、それぞれがコーティングされる材料の性質および/または想定される用途に特に適合している。しかし、一部のインク配合物は錯体であり、毒性があり、特に含まれる微細な金属粉体と化学的相互作用が起こりうるため不安定である。特に、これらの金属粉体はサイズが小さいため、酸化しやすい。
【0008】
金属コーティングは、化学蒸着法(CVD)または物理蒸着法(PVD)によっても得ることができる。CVD法の場合、ガス状の化学前駆体を適切な温度と圧力にすることで、所望の蒸着が可能になる。CVD法は比較的一般的であるが、必要な前駆体が常に入手可能であるとは限らず、および/または実施が容易でない場合があるという欠点がある。PVD法の場合、蒸着される材料は、制御された温度および圧力条件下で、イオンビームまたは電子ビームによって噴霧される。しかしながら、これらのCVD法とPVD法はいずれも、重工業設備、特に蒸着するために必要な温度と圧力を管理および制御できる反応器の使用に頼っている。
【0009】
共粉砕による粉体被覆は、金属コーティングも形成できる方法である。この方法は、粉体状の第一の材料を、同様に粉体状の第二の材料上に被覆させることからなる。この方法は従来、粒径を制御した粉体を使用してボールグラインダーで行われていた。しかしながら、当然のこととして、そのような方法は、平坦な表面上に金属被膜を形成するのには適しておらず、この平坦な表面が大きい場合にはさらに適さない。
【0010】
「コールドスプレー」法としても知られるコールドメタライゼーション法は、金属コーティングを形成する別の方法である。この方法では、加熱した金属粉体を加圧ガスによってコーティングされる部品の表面に超高速で吹き付ける。被膜の品質を保証するのは、粉体粒子が表面に与える衝撃力である。この衝撃力の作用として、コールドメタライゼーション法は比較的均一な被膜を製造することができるが、高温(1100℃を超える可能性がある)と高圧の比較的高価な加熱と噴霧の装置を備えた重工業設備を導入する必要がある。さらに、この方法は粉体の比較的大きい損失を発生させる。
【0011】
完全を期すために、金属コーティングを作製する別の方法についても言及する。この方法は、比較的微細な金箔(0.1μm~0.2μm程度)を表面に被覆させることからなる金箔被覆法である。これらの金箔は、事前に徹底的にハンマーで叩いて得られるものであり、従来は手作業でコーティングされる表面に被覆していた。したがって、そのような方法は比較的小規模であるため、工業的な実施には適していない。
【0012】
上述の通り、ここで説明したコーティング方法では、実際に部品上に金属コーティングを施すことができるものの、いずれも1つ以上の欠点を有する。
【0013】
本発明の目的は、従来技術のこれらのコーティング方法の欠点を克服し、その結果、工業的に実施することができ、特に工業的コストを抑制する観点から、被覆させる金属材料の損失を可能な限り抑制しながら、その形態がどのようなものであっても部品上に均質な金属被覆またはコーティングを行うことを可能にするコーティング方法を提供することである。また、このコーティング方法では、健康および/または環境リスクをもたらす化合物を使用すべきではなく、CVD、PVDおよびコールドスプレー法に関連するタイプの重く高価な工業設備を使用すべきではない。さらに、この方法では、部品の表面の全部または一部、および粉体などの分割された形態の材料の両方に金属コーティングを施すことができなければならない。
【0014】
本発明の別の目的は、従来技術のコーティング方法の欠点を克服するために、上記のコーティング方法で実施できる金属粒子だけでなく、その金属粒子を得るために金属粉体を粉砕する方法も提供することである。
【0015】
最後に、より一般的には、本発明の別の目的は、金属粉体の粉砕のみに限定されず、他の種類の粉体、例えばセラミック粉体もしくは有機材料、さらにはグラファイト粉体の粉砕にも適用できる粉砕方法を提供することである。
【0016】
アクチニド粉体、特にUO2、PuO2および/またはCeO2などのアクチニド酸化物粉体を粉砕する方法が記載された特許文献1が知られている。この粉砕方法は、とりわけ、固化した低温ガス状の粉砕媒体を含む低温粉砕装置によって実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】仏国特許出願公開第3072308号明細書
【発明の概要】
【0018】
[発明の開示]
上記の目的および他の目的は、第1に、少なくとも1つの粉体を低温液体粉砕する方法によって達成される。
【0019】
本発明によれば、この方法は以下の工程を含む:
(a)低温流体を、磨砕手段を備える磨砕機内に導入する工程;
(b)粉体を磨砕機内に導入する工程;
(c)磨砕機を回転自在に動作させて、それによって粉体を低温粉砕して粒子にする工程;および
(d)任意に粒子を回収する工程;
- 各粉体は、有利には、金属粉体、金属合金粉体、1種以上の金属酸化物の粉体、セラミック粉体、有機粉体およびグラファイト粉体から選択され、
- 磨砕手段の体積VMAと低温流体の体積VFCの合計に対する磨砕手段の体積VMAの比率VMA/(VMA+VFC)が、0.2と0.8の間、有利には0.3と0.7の間であり、且つ
- 工程(c)の間の磨砕機の回転速度は、100rpmと20,000rpmの間である。
【0020】
したがって、本発明による方法は、低温流体を用いて1種以上の粉体を粉砕することからなり、この粉砕により均一な粒径を有する粒子によって形成された1種以上の粉砕粉体を得ることができ、この均一性は、比較的緊密で狭い粒径分布を特徴とし、さらに特に微細であってもよく、100nm未満の比較的大きな粒径値を特徴とすることができ、そのような均一で、適切な場合には特に微細な粒径は、従来の粉砕方法では達成することができない。
【0021】
本明細書で使用される上記の表現「・・・と・・・の間」は、区間の値だけでなく、この区間の境界の値も定義するものとして理解されなければならないと定められる。
【0022】
本発明による方法は、その筐体内に、磨砕媒体またはモビールとも呼ばれる磨砕手段を備える磨砕機によって実施される。
【0023】
これらの磨砕手段は、球状または実質的に球状の可動要素によって形成される。すなわち、磨砕媒体はビーズの形態をとることができるが、棒またはローラーの形態をとることもできる。
【0024】
磨砕手段の形態がどのようなものであっても、十分な機械的強度と硬度を有し、粉砕される粉体の性質に適合した材料で形成される。
【0025】
したがって、本発明による粉砕方法の有利なバージョンでは、磨砕手段は鋼鉄またはセラミックで形成され、セラミックは特に炭化ジルコニウムZrC、炭化タングステンWCまたはジルコニアとしても知られる二酸化ジルコニウムZrO2である。
【0026】
有利な変形例では、磨砕手段は、形態、サイズおよび構成材料の点で同一である。しかしながら、形態、サイズおよび/または構成材料が異なる磨砕手段の実施を妨げるものではない。
【0027】
本発明による粉砕方法の工程(a)の間に、低温流体が、磨砕手段を備えた磨砕機に導入される。
【0028】
低温流体とは、低温、通常は0℃未満の温度で液体状態に保たれた液化ガスを意味する。この液化ガスは、本発明による方法の実施条件下で粉砕される粉体に対して化学的に不活性である。
【0029】
この低温流体は、特に窒素、アルゴンおよびクリプトンから選択することができる。好ましくは、低温流体は窒素である。
【0030】
本発明による粉砕方法の工程(b)の間、粉砕される粉体は、磨砕手段を備えた磨砕機に導入される。
【0031】
この粉体またはこれらの粉体は、有利には、金属粉体、金属合金粉体、1種以上の金属酸化物の粉体、セラミック粉体、有機粉体およびグラファイト粉体から選択される。
【0032】
換言すると、単一の粉体、またはそれとは逆に、2つ、3つ、もしくはそれ以上の異なる粉体の混合物を磨砕機に導入することができる。
【0033】
金属粉体とは、酸化レベル0の金属の粉体を意味する。金属は、元素周期表の金属元素、特にアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、ランタニドおよびアルミニウムなどの貧金属から選択することができる。
【0034】
金属合金粉体とは、元素周期表の金属元素のうち少なくとも2種類を組み合わせて形成された粉体を意味する。
【0035】
金属酸化物粉体とは、元素周期表の1つの金属元素の酸化物粉体を意味する。いくつかの金属酸化物の粉体である場合、同じ金属元素の2種以上の異なる酸化物から形成された粉体であってもよいし、2種以上の異なる金属元素の1種以上の酸化物から形成された粉体であってもよい。
【0036】
この粉体がセラミック粉体である場合、特にアルミナ、ジルコニア、およびムライトから選択することができる。
【0037】
粉体が有機粉体である場合、特に薬用粉体であってもよい。
【0038】
半金属粉体、例えばホウ素粉体を粉砕することの検討を妨げるものはない。
【0039】
工程(a)と(b)は、任意の順序で実施できる。
【0040】
しかしながら、本発明による方法の有利な変形例では、これらの工程(a)と(b)は連続的に実施される。
【0041】
工程(c)の間、磨砕機は、例えば攪拌シャフトによって回転自在に動作する。磨砕手段と低温流体(水と比較して、非常に冷たく、粘度が低く、表面張力が低い)の存在により、磨砕機の筐体内に存在する粉体は、動作する磨砕手段によって発生する衝突力と剪断力を同時に受け、これにより粉体を十分に粉砕することができる。実際、粉体は温度によって脆化し、低温流体によって形成された液相は、粉砕が進むにつれて発生する微小クラックに深く浸透し、粉砕された粒子の分離を促進することができる。このため、粉砕エネルギーは、粉体の解凝集に限定されるほとんどの従来型粉砕機の場合よりも効果的に使用される。
【0042】
工程(c)の終了時に、粒子の低温懸濁液の形態の粒子がこうして得られる。懸濁液に保持されたこれらの粒子は、酸化の危険性から保護される。
【0043】
任意に、本発明による粉砕方法は、粒子を回収する工程(d)をさらに含むことができ、この回収工程(d)は、実際の粉砕工程(c)の後に実施される。
【0044】
回収後、粒子は、有利には不活性ガスによる不活性下、例えば窒素下で保存することができる。
【0045】
特定の実施形態において、本発明による粉砕方法は、工程(c)の後に、磨砕機を回転自在に動作させる少なくとも1つの補足的な工程(c’)をさらに含む。
【0046】
1つ以上の補足的な工程(c’)を実施することにより、必要に応じて、工程(c)における粉体の低温粉砕から生じる粒子のサイズを所望の粒径まで小さくすることが可能になる。
【0047】
この追加工程またはこれらの追加工程(c’)は、工程(c)の間に使用されるものとは異なる磨砕手段を使用して実施することができる。特に、これらの磨砕手段は、様々な形態、サイズおよび/または構成材料であってよい。有利には、これらの補足的な磨砕手段の平均直径は、工程(c)で使用された磨砕手段の平均直径よりも小さい。しかしながら、補足的工程(c’)で使用される磨砕手段が何であれ、比率VMA/(VMA+VFC)は常に不等式0.2≦VMA/(VMA+VFC)≦0.8を確認し、有利には0.3≦VMA/(VMA+VFC)≦0.7を確認する。
【0048】
この補足的工程またはこれらの補足的工程(c’)は、粒子回収工程(d)の前または後のいずれかで実施することができる。
【0049】
しかしながら、時間節約の観点から、この補足的工程またはこれらの補足的工程(c’)は、粒子回収工程(d)の前に実施されることが好ましい。
【0050】
本発明による粉砕方法の有利な変形例では、粉体の低温粉砕をインラインで制御またはモニターすることができ、これにより、粉砕された粉体の粒径の進行状態の関数として、工程(c)を中断するタイミングおよび/または1つ以上の追加工程(c’)の実施が必要か否かを決定することが可能になる。
【0051】
この粒径モニタリングは、特にレーザー回折計を用いてその場で確実に行うことができ、低温流体の透明な性質によって粒径測定が容易になることが明示されている。
【0052】
本発明による粉砕方法のさらに特に好ましい変形例では、粉体は金属粉体または金属合金粉体であり、粉体の金属はAu、Ag、Cu、Al、Sn、Pt、Pd、Pb、Zn、FeおよびNiから選択され、比率VMA/(VMA+VFL)は、0.2≦VMA/(VMA+VFL)≦0.7である。
【0053】
このような特定の実施条件と金属を選択することで、そのすべてが特定の展性と組み合わされた特定の延性を有し、本発明による粉砕方法により、以下に詳述する非常に特異な形態学的特性を有する金属および金属合金粒子を調製することが可能となる。
【0054】
特定の実施形態によれば、粉体中の金属はAu、Ag、Cu、Al、Sn、Pt、Pd、ZnおよびFeから選択され、有利にはAg、SnおよびCuから選択され、金属または金属の1つは好ましくはCuである。
【0055】
第2に、本発明は、e、lおよびLと表記される3つの寸法を有するシート状の金属または金属合金粒子に関する。eとLはそれぞれ粒子の最小寸法と最大寸法であり、粒子の金属は、Au、Ag、Cu、Al、Sn、Pt、Pd、Pb、Zn、FeおよびNiから選択される。
【0056】
本発明によれば、これらの金属または金属合金粒子は、以下の形態学的特性を有する:
- eは、e≦1μmであり、有利にはe≦200nmであり、好ましくは10nm≦e≦100nmであり;
- 比率L/eは、10≦L/e≦100であり;
- 比表面積(BET法で測定)は、1m2/g以上、有利には10m2/g以上、好ましくは25m2/gと200m2/gの間である。
【0057】
これらの金属または金属合金粒子は、非常に特異な形態学的特性を有する。実際、これらの粒子は、平均アスペクト比L/eが10と100の間の非常に薄いシートで形成され、最小の寸法eは、例えばe≦1μmであり、他の2つの寸法Lとlに比べて無視できる程度である。したがって、二次元金属もしくは二次元金属合金粒子、または2D金属または2D金属合金粒子と呼ぶことができる。
【0058】
寸法L、l、eの測定は、直接法で行うことが規定されている:
- 100nm以上の寸法の値については走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、
- 20nmと100nmの間の値については透過型電子顕微鏡(TEM)を使用する。
【0059】
20nm以下の寸法、特に最小寸法eの寸法を決定する場合、測定は、以下の式を適用することにより、間接的な測定によって行うことができる。シートは平らな円筒形で厚さeが小さいと見なされる:
【0060】
【0061】
式中、
ρ:粉体の密度
SBET:粉体の比表面積
R:シートの平均半径
e:シートの平均厚さ
【0062】
本発明によれば、これらの金属または金属合金粒子は、先に定義した金属または金属合金粉体を低温液体粉砕する方法によって得ることができる。
【0063】
より詳細には、これらの金属または金属合金粒子は、以下の工程を含む金属または金属合金粉体から粒子を調製する方法によって得ることができる:
(a)低温流体を、磨砕手段を備える磨砕機内に導入する工程;
(b)粉体を磨砕機内に導入する工程;
(c)磨砕機を回転自在に動作させて、それによって粉体を低温粉砕して粒子にする工程;および
(d)任意に粒子を回収する工程;
ここで、
- 粉体の金属が、Au、Ag、Cu、Al、Sn、Pt、Pd、Pb、Zn、FeおよびNiから選択され、
- 磨砕手段の体積VMAと低温流体の体積VFCの合計に対する磨砕手段の体積VMAの比率VMA/(VMA+VFC)が、0.2≦VMA/(VMA+VFC)≦0.7であり、且つ
- 工程(c)の間の磨砕機の回転速度が、100rpmと20,000rpmの間である。
【0064】
特定の変形例によれば、粉体の金属は、Au、Ag、Cu、Al、Sn、Pt、Pd、ZnおよびFeから選択され、有利にはAg、SnおよびCuから選択され、金属または金属の1つは好ましくはCuである。
【0065】
特定の変形例によれば、本発明による金属または金属合金粒子は、以下の補足的な特性を有する:
- Θと表記され、ISO 9045:1990(fr)に準拠して測定された静的安息角が、30°と60°の間である、および/または
- Θsと表記される二次動的安息角が、80°と130°の間である。
【0066】
2018年3月6日付のB.-J.R.Mungyeko Bisulanduによる論文「Modelling the energy input by alternative fuels in cement production rotary kilns(セメント製造用ロータリーキルンにおける代替燃料によるエネルギー投入のモデル化)」の図を示す
図Aに示されるように、静的安息角Θは、安息角または自然安息角とも呼ばれ、圧縮されていない積み重ねられた材料の山の傾斜が水平方向となす角度である。この静的安息角Θは、ISO 9045:1990(fr)「Industrial Screens and Screening(工業用検査とスクリーニング)」にしたがって決定される。
【0067】
この同じ
図Aにも示されているように、二次動的安息角Θsは、圧縮されていない積み重ねられた材料の山を、その山によって形成された斜面が崩れるまで回転させて、当該崩れた斜面が水平方向となす角度に対応させて決定する。この二次動的傾斜角Θsは、2003年11月14日付のS.Courrech du Pontの論文「Granular avalanches in a fluid medium(流体媒体中の粒状なだれ)」に記載されたプロトコルにしたがって決定することができる。
【0068】
本発明による金属または金属合金粒子が示す静的安息角および二次動的安息角のこれらの特有の値は、これらの粒子の完全にオリジナルのレオロジー挙動を反映したものであり、その非常に特殊な形態によって説明することができる。
【0069】
特定の変形例によれば、本発明による金属または金属合金粒子は、以下の補足的な形態学的特性の少なくとも1つをさらに有する:
- 200nm以下のシートの平面度公差、および
- 10%以下のシートの凸性偏差。
【0070】
平面度は、すべての構成部分が平面に内接する面の性質を表す。
図Aを参照すると、平面度公差は、点線で示された2つの平行な平面に囲まれたゾーンの高さ(hと表記する)に相当し、このゾーンの内側に問題の表面が存在する必要がある。本発明の範囲では、このシートの平面度公差は200nm以下である。
【0071】
凸性偏差は、
図Cにおいて灰色で示されている表面積と白色で示されている表面積の合計に対する、
図Cにおいて灰色で示されているシートの総表面積の比率に相当する。
【0072】
第3に、本発明は、先に述べた金属または金属合金粒子の様々な使用に関する。
【0073】
本発明によれば、これらの金属または金属合金粒子は、金属コーティングをその表面の全部または一部に含む部品を製造するために使用することができる。
【0074】
そのような金属コーティングは、特に、前記部品の表面の全部または一部を保護、処理または装飾することを目的とすることができる。
【0075】
これらの金属または金属合金粒子は、先ほど言及した部品と同様に、多くの分野、特に機械産業、エレクトロニクスもしくはマイクロエレクトロニクス産業、光学分野、建築分野、包装分野、デザイン分野、化粧品分野、または医療もしくは医療補助分野で使用することができる。
【0076】
第4に、本発明は材料をコーティングする方法に関する。
【0077】
本発明によれば、この方法は以下の工程を含む:
(1)粉体が金属または金属合金粉体であり、金属がAu、Ag、Cu、Al、Sn、Pt、Pd、Pb、Zn、FeおよびNiから選択され、比率VMA/(VMA+VFL)が0.2≦VMA/(VMA+VFL)≦0.7となる場合に、上記で定義した方法を実施することによって金属または金属合金粒子を調製する工程;そして、
(2)工程(1)で調製した金属または金属合金粒子を材料の全部または一部に被覆させ、これによりコーティングされた材料を得る被覆工程。
【0078】
先に詳述した特定の形態学的特性によって特徴付けられる金属または金属合金粒子を実施することによって、本発明によるコーティング方法は、このコーティングの作製に必要な金属または金属合金粒子の量を制限しながら、均質な金属コーティングを含む材料を得ることを可能にする。
【0079】
以下の例からわかるように、少なくとも5g/m2、さらには少なくとも10g/m2の表面被覆量を特徴とする金属または金属合金コーティングを容易に得ることができる。
【0080】
そのような被覆量は、単層に相当する被覆物に比較的近いことに留意すべきである。実際、平均厚さeを1μmとすると、1平方メートルあたりの銅粒子の単層コーティングの質量Mは以下のように表される:
【0081】
【0082】
式中、
e:シートの平均厚さ
S:表面積
ρ:粉体の密度
【0083】
銅粒子の場合、この表面密度は9g/m2程度である。
【0084】
以下の例からもわかるように、金属コーティングによって400超の隠蔽率を達成することもできる。
【0085】
金属または金属合金粒子を調製する工程(1)に関しては、これらの粒子の調製に関連して前述したものを参照することができ、この方法の有利な特徴は単独で、または組み合わせて利用することができる。
【0086】
本発明によるコーティング方法の工程(2)は、金属または金属合金粒子を材料の全部または一部に被覆させて、コーティングされた材料を得ることからなる。
【0087】
この被覆工程(2)は、粉体から材料上に金属コーティングを形成するために従来使用されている任意のコーティング方法によって行うことができ、上述の最先端の方法(塗料、インクなど)を含む。それとは別に、帯電した金属または金属合金粒子の低温懸濁液の生成により、コーティングされる表面の浸漬被覆(浴中被覆)を実施することが可能になる。
【0088】
有利には被覆工程(2)は静電引力によって、あるいは本発明による金属または金属合金粒子と、被覆が行われる材料の表面との間に電位差を印加することによって実施される。
【0089】
このために2つの帯電技術を使用することができる。第一の技法は、金属または金属合金粒子に沿って電場を印加し、その間にこれらの金属または金属合金粒子を帯電させることからなる。第二の技法は、トライボロジーによる帯電を実行すること、すなわち金属または金属合金粒子を表面に沿ってこすることにより表面電子を引き剥がすことによる帯電を実行することからなる。通常トライボロジーによる帯電の方が効果的であり、また実施も容易であるため、この第二の技法が好ましい。
【0090】
上述の被覆法は、工業的に実施するのが比較的容易であり、重くて高価な工業設備に頼らないという利点がある。さらに、共粉砕、浴中、帯電、あるいは積層による被覆の場合、金属または金属合金粒子は、健康および/または環境に害を及ぼす可能性のある溶剤やその他の添加剤が存在しない状態で被覆することができる。
【0091】
被覆工程(2)の終了時に、材料の全体にわたって、または一部でコーティングを強固にすることを目的とした工程(3)を実施することで、コーティングの強度および/または耐久性を向上させることができる。
【0092】
したがって、特定の実施形態によれば、本発明によるコーティング方法は、例えばコーティングされた表面(または、例えばラッカーもしくはワニスタイプの補完的コーティング)を加熱することによる熱エネルギーなどのエネルギーを印加する工程(3)をさらに含むことができる。
【0093】
本発明によるコーティング方法は、分割された形態または一体の形態とすることができる材料に対して実施することができる。
【0094】
この材料が分割された形態である場合、特に粒状または小板状であってもよく、この分割された形態はその後一体化することができる。
【0095】
この材料が一体の形態である場合、この部品は、新しい部品、すなわち、一度も使用されたことのない部品であることも、またはメンテナンス中の部品、すなわち、すでに使用され、コーティングを施すことでその特性が改善される部品に相当することも、容易にあり得る。
【0096】
第5および第6に、本発明は、金属コーティングを含む材料およびその使用に関し、このコーティングされた材料は、上記で定義したコーティング方法によって得られ、この方法の有利な特徴は単独で、または組み合わせて利用することができる。
【0097】
先に説明した金属または金属合金粒子と同様に、このコーティングされた材料は、特に、機械産業、エレクトロニクスもしくはマイクロエレクトロニクス産業、光学分野、建築分野、包装分野、デザイン分野、化粧品分野、または医療もしくは医療補助分野で使用することができる。
【0098】
非限定的な例として金属粒子が銅粒子である場合、その粒子から得られるコーティングされた材料と同様に、殺菌性および殺ウイルス性を付与するために医療もしくは医療補助分野で有利に使用することができる。
【0099】
また、錫粒子、銀および銅粒子、または銀と銅の合金粒子を用いて本発明によるコーティング方法を実施し、現行の非常に高価な銀コーティングの代わりに、錫コーティング、銀および銅コーティング、または銀と銅の合金コーティングをそれぞれ含む印刷回路または電子回路を製造することも考えられる。錫と銅は電気伝導性に優れている。
【0100】
本発明の他の特徴と利点は、Fe3O4酸化鉄粒子、シリカ粒子、および銅粒子の調製例、様々な表面(ポリカーボネート、ガラス、グラファイト)上のこれらの銅粒子を用いた金属コーティングの製造例、およびこれらの粒子と金属コーティングの特性評価に関する以下の説明を読むことにより明らかになるであろう。
【0101】
当然に、これらの実施例は、本発明の目的を説明するためにのみ示されており、決してこの目的を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【
図1】
図Aは、静的安息角特性と二次動的安息角特性を模式的に示す図である。
図Bは、シートの平面度公差特性を模式的に示す図である。
図Cは、シートの凸性偏差特性を模式的に示す図である。
図1A、
図1Bおよび
図1Cは、それぞれ、本発明による金属酸化物粒子を調製するために実施例1で使用したFe
3O
4粉体P
1、第1の粉砕から得られた粉体P
2、および第2の粉砕から得られた粉体P
3の走査型電子顕微鏡(SEM)により撮影した写真に対応する。
【
図2】
図2は、
図1Aの粉体P
1の粒径の経時変化を示し(P
1と表記した曲線);第1粉砕工程の実施30分後に得られた粉体P
1’の粒径の経時変化を示し(P
1’と表記した曲線);および第1粉砕工程の終了時に得られた粉体P
2の粒径の経時変化を示す(P
2と表記した曲線)。この経時変化は、粒子の平均直径(dと表記し、μmで表す)の関数としての体積%(Vと表記し、%で表す)によって評価される。
【
図3】
図3は、
図1Aの粉体P
1の粒径の経時変化を示し(P
1と表記した曲線)、および第2粉砕工程の終了時に得られた粉体P
3の粒径の経時変化を示す(P
3と表記した曲線)。この経時変化は、粒子の平均直径(dと表記し、μmで表す)の関数としての体積%(Vと表記し、%で表す)によって評価される。
【
図4】
図4は、粉砕前のシリカ粉体P
4の粒径の経時変化を示し(P
4と表記した曲線);第1粉砕工程の終了時に得られた粉体P
5の粒径の経時変化を示し(P
5と表記した曲線);および第2粉砕工程の終了時に得られた粉体P
6の粒径の経時変化を示す(P
6と表記した曲線)。この経時変化は、粒子の平均直径(dと表記し、μmで表す)の関数としての体積%(Vと表記し、%で表す)によって評価される。
【
図5】
図5は、本発明による金属粒子の調製に使用される銅粉を走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真に対応する。
【
図6】
図6は、本発明による方法を実施して調製した銅粒子の走査型電子顕微鏡(SEM)で撮影した写真に対応する。
【
図8】
図8は、
図5の粉体を形成する銅粒子、第1粉砕工程後に得られた粉体を形成する銅粒子、および第2粉砕工程後に得られた粉体を形成する銅粒子の粒径の経時変化を示し、この経時変化は、粒子の平均直径(dと表記し、μmで表す)の関数としての体積%(Vと表記し、%で表す)によって評価される。
【
図9】
図9は、本発明による粉体P
9の安息角Θと二次動的安息角Θsを示す2枚の写真である。
【
図10】
図10Aは、本発明による方法により円筒形のポリカーボネート支持体上に作製した金属コーティングの写真である。
図10Bは、本発明による方法により正方形のポリカーボネート支持体上に作製した金属コーティングの写真である。
【
図11】
図11は、本発明による方法により正方形のガラス支持体上に作製した金属コーティングの写真である。
【
図12】
図12は、
図11の金属コーティングによってもたらされる隠蔽率を決定するために使用される装置の概略図である。
【
図13】
図13は、本発明による方法によりグラファイトリード上に作製した金属コーティングの写真である。
【0103】
図A~Cについては、上記の「発明の開示」の項で、すでに説明されている。
【実施例】
【0104】
実施例1:Fe3O4酸化鉄粒子の粉砕
P1として示されるFe3O4酸化鉄粉体は、低温流体として液体窒素を使用し、様々な直径のジルコニアビーズによって形成された磨砕手段を使用する、2回の連続的な粉砕工程に供された。
【0105】
第1粉砕工程を実施するために、125ml(V
FL)の液体窒素、次いで27.8gのFe
3O
4を、文献WO2017/076944 A1の
図1または3に示されるタイプの磨砕機(125ml(V
MA)の直径5mmのビーズを含む)に導入した。
【0106】
この第1粉砕工程では、したがって比率VMA/(VMA+VFL)は0.50に等しい。
【0107】
その後、磨砕機を回転速度1250rpmで90分間、回転自在に動作させた。
【0108】
この第1粉砕工程の終了時に、ジルコニアビーズと24.4gの粉砕されたFe3O4粉体P2を磨砕機から取り出した。
【0109】
こうして調製されたFe3O4粉体P2のサンプルを分析した。液体窒素の沸騰温度(-196℃)での窒素吸着によるBET法にしたがって測定すると、この第1粉砕工程の終了時に得られたFe3O4粉体P2の比表面積は、10m2/gのオーダーである。
【0110】
第2粉砕工程を実施するために、125ml(VMA)の直径1.25mmのジルコニアビーズと17.5gのFe3O4粉体P2を磨砕機に導入した。
【0111】
この第2粉砕工程では、比率VMA/(VMA+VFL)は依然として0.50に等しく、液体窒素の体積VFLは依然として125mlである。
【0112】
その後、磨砕機を再び回転速度1250rpmで90分間、回転自在に動作させた。
【0113】
この第2粉砕工程の終了時に、ジルコニアビーズと9.2gの粉砕されたFe3O4粉体P3を磨砕機から取り出した。
【0114】
こうして調製されたFe3O4粉体P3のサンプルを分析した。液体窒素の沸騰温度(-196℃)での窒素吸着によるBET法にしたがって測定すると、この第2粉砕工程後に得られた粉体P3の比表面積は、30m2/gのオーダーである。
【0115】
図1A、1B、1Cは、それぞれFe
3O
4粉体P
1、P
2、およびP
3のSEM写真に対応する。
【0116】
粉砕前、第1粉砕工程中および終了時のFe
3O
4粒子の粒径の経時変化をモニターし、
図2に示した。粉体P
1、P
1’およびP
2を形成するFe
3O
4粒子の平均直径の関数としての体積パーセントを表わす対応する曲線は、
図2においてそれぞれ[P
1]、[P
1’]および[P
2]と表記される。粉体P
1、P
1’およびP
2のFe
3O
4粒子のこの平均直径は、レーザー粒度分析法(レーザー回折法による)により測定したことを明記する。
【0117】
粉砕前、および第2粉砕工程後のFe
3O
4粒子の粒径の経時変化をモニターし、
図3に示した。粉体P
1およびP
3を形成するFe
3O
4粒子の平均直径の関数としての体積パーセントを表わす対応する曲線は、
図3においてそれぞれ[P
1]および[P
3]と表記される。粉体P
1、およびP
3のFe
3O
4粒子のこの平均直径は、レーザー粒度分析法(レーザー回折法による)により測定したことを明記する。
【0118】
実施例2:SiO2シリカ粒子の粉砕
P4として示されるSiO2シリカ粉体は、低温流体として液体窒素を使用し、様々な直径のジルコニアビーズで形成された磨砕手段を使用することにより、2つの連続した粉砕工程に供された。
【0119】
第1粉砕工程を実施するために、125ml(V
FL)の液体窒素、次いで12.7gのP
4として示されるSiO
2粉体を、文献WO2017/076944 A1の
図1または
図3に表されるもの(ただし、単段のみを含む)にしたがった、125ml(V
MA)の直径3mmのビーズを含む磨砕機に導入した。
【0120】
この第1粉砕工程では、したがって比率VMA/(VMA+VFL)は0.5に等しい。
【0121】
その後、磨砕機を回転速度1250rpmで10分間、回転自在に動作させた。
【0122】
この第1粉砕工程の終了時に、ジルコニアビーズと12.2gの粉砕されたSiO2粉体P5を磨砕機から取り出した。
【0123】
第2粉砕工程を実施するために、直径1.25mmのジルコニアビーズ125ml(VMA)と5.6gのSiO2粉体P5を磨砕機に導入した。
【0124】
この第2粉砕工程では、比率VMA/(VMA+VFL)は依然として0.5に等しく、液体窒素の体積VFLは125mlである。
【0125】
その後、磨砕機は再び回転速度1250rpmで10分間、回転自在に動作させた。
【0126】
この第2粉砕工程の終了時に、ジルコニアビーズと4.7gの粉砕されたSiO2粉体P6を磨砕機から取り出した。
【0127】
粉砕前、第1粉砕工程後、および第2粉砕工程後のSiO
2粒子の粒径の経時変化をモニターし、
図4に示した。粉体P
4、P
5およびP
6を形成するSiO
2粒子の平均直径の関数としての体積パーセントを表わす対応する曲線は、
図4においてそれぞれ[P
4]、[P
5]および[P
6]と表記される。粉体P
4、P
5およびP
6のシリカ粒子のこの平均直径は、レーザー粒度分析法(レーザー回折法による)により測定したことを明記する。
【0128】
実施例3:本発明による銅粒子の調製
本発明による金属粒子は、いわゆる「ミリメートル」銅粉から調製した(以下、「P7」と表記する)。
【0129】
この銅粉P
7のSEM写真に対応する
図5を参照すると、三次元の粒子で形成されており、その三次元の寸法e、l、Lは、300μmと500μmの間の同程度の大きさであることが観察される。この銅粉の粒子は明らかにシート状ではない。
【0130】
この銅粉P7は、低温流体として液体窒素を使用し、直径の異なるジルコニアビーズで形成された磨砕手段を使用することにより、2つの連続する粉砕工程を経た。
【0131】
第1粉砕工程を実施するために、200ml(V
FL)の液体窒素、次いで5gの銅粉P
7を、文献WO2017/076944 A1の
図1または
図3に表されるものにしたがった、125ml(V
MA)の直径5mmのビーズを含む単段磨砕機に導入した。
【0132】
この第1粉砕工程では、したがって比率VMA/(VMA+VFL)は0.38に等しい。
【0133】
その後、磨砕機を回転速度1200rpmで30分間、回転自在に動作させた。
【0134】
この第1粉砕工程の終了時に、直径5mmのジルコニアビーズはすべて磨砕機から取り除き、こうして調製されたP8として示される銅粉のサンプルを採取し、分析した。
【0135】
この粉体P8を形成する銅粒子のアスペクト比は、最大寸法と最小寸法の比L/eに相当し、50である。
【0136】
第2粉砕工程を実施するために、直径1.25mmのジルコニアビーズ125ml(VMA)を磨砕機に導入した。
【0137】
この第2粉砕工程では、比率VMA/(VMA+VFL)は0.38に等しく、液体窒素の体積VFLは依然として200mlである。
【0138】
その後、磨砕機を再び回転速度1200rpmで30分間、回転自在に動作させた。
【0139】
この第2粉砕工程の終了時に、直径1.25mmのジルコニアビーズはすべて磨砕機から取り除かれ、こうして調製された銅粉(P9と表記する)を回収し、分析した。
【0140】
第2粉砕工程で得られたこの銅粉を形成する銅粒子のアスペクト比(または、比率L/e)は10である。
【0141】
この第2粉砕工程の間に、銅粉P8を形成するシートが切断され、その際にアスペクト比が低下する。
【0142】
図6は、第2粉砕工程の終了時に得られた銅粉のSEM写真に対応する。この粉体は、3つの寸法e、l、およびLがもはや全く同じオーダーの大きさではないシート状の粒子で形成されていることが観察される。
【0143】
特に、
図7Bの写真を参照すると、シートの最小寸法eが1μm程度であることが観察される。
【0144】
第2粉砕工程の終了時に得られた銅粉P9の比表面積は、液体窒素の沸騰温度(-196℃)での窒素吸着によるBET法にしたがって測定したところ、28m2/g程度であった。
【0145】
粉砕前、第1粉砕工程後、および第2粉砕工程後の銅粒子の粒径の経時変化をモニターし、
図8に示した。粉体P
7、P
8およびP
9を形成する銅粒子の平均直径の関数としての体積パーセントを表わす対応する曲線は、
図8においてそれぞれ[P
7]、[P
8]および[P
9]と表記される。粉体P
7、P
8およびP
9の銅粒子のこの平均直径は、レーザー粒度分析法(レーザー回折法による)により測定したことを明記する。
【0146】
図9は粉体P
9によって示される安息角を示す。粉体P
9は、二次動的安息角Θsが垂直方向に対して負であるか、または水平方向に対して90°を超えることが特徴であることが観察される。この非典型的な特性は、特に粉体P
9中の銅粒子の特殊な形態と関連している。
【0147】
実施例4:ポリカーボネート表面への金属コーティングの作製
上記実施例3のプロトコルにしたがって調製した0.1gの粉体P9の最初の被覆を、高さ5cm、半径1cmのポリカーボネートの円筒の内側側面上に静電スプレーすることによって行った。
【0148】
図10Aの写真に示すように、31.83g/m
2の被覆量を特徴とする均一な単層コーティングが得られる。
【0149】
2回目の被覆は、静電被覆によって、辺が3.5cmの正方形のポリカーボネート板の片面上に、0.02gの同じ粉体P9で行った。
【0150】
図10Bの写真に示すように、16.33g/m
2の被覆量を特徴とする均一な単層コーティングが得られた。
【0151】
実施例5:ガラス表面への金属コーティングの作製
静電被覆法により、0.02gの上記粉体P9を、辺が3.5cmの正方形のガラス板の一方の面に被覆した。
【0152】
図11の写真に示すように、ガラス板の表面に16.32g/m
2の均一なコーティングが得られる。
【0153】
このようにしてガラス板に被覆されたコーティングの隠蔽率の評価は、コーティングされたガラス板に照射される照度(Iaと表記する)と、コーティングされたガラス板が透過させる照度(Irと表記する)の比Ia/Irを測定することによって行われる。
【0154】
そのために、
図12を参照すると、銅コーティング2を含むガラス板1は垂直に配置される。コーティング2を含むプレート1の面は、55,000ルクスの水平照度I
aに曝露される。プレート1によって反映される水平照度I
rは120ルクスである。
【0155】
したがって、この実施例5で作製された単層の銅コーティングは、隠蔽率Ia/Irが458.33であることを特徴とする。
【0156】
実施例6:グラファイト表面への金属コーティングの作製
実施例3の粉体P9の静電引力による被覆を、直径1μmのグラファイトリード上に行った。
【0157】
この被覆は、粉体P9を、この粉体P9と反対の電荷のグラファイトリードと接触させることによって行った。
【0158】
図13の写真は、こうして得られた銅コーティングを示しており、本発明による金属粉が、たとえ小さな表面であっても、単純な接触によって均一に被覆する性質を示している。
【国際調査報告】