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特表2024-500098医療用カテーテルおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】医療用カテーテルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20231222BHJP
【FI】
A61M25/00 624
A61M25/00 610
A61M25/00 620
A61M25/00 504
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536377
(86)(22)【出願日】2021-11-24
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 CN2021132607
(87)【国際公開番号】W WO2022127536
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】202011496765.0
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516346171
【氏名又は名称】マイクロポート・ニューロテック(シャンハイ)・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ユンユン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,チンロン
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,シュエリ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,ユーメイ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA02
4C267AA03
4C267BB02
4C267BB03
4C267BB04
4C267BB11
4C267BB12
4C267BB13
4C267BB15
4C267BB38
4C267BB40
4C267BB63
4C267CC08
4C267FF01
4C267HH03
4C267HH17
(57)【要約】
医療用カテーテルおよびその製造方法が開示される。医療用カテーテルは、軸方向に沿って順次配置される近位部(1)および遠位部(2)を含むカテーテル本体(100)を備える。近位部(1)の剛性は遠位部(2)の剛性よりも大きい。遠位部(2)はその近位端から遠位端にかけて移行部(21)および可撓部(22)を含む。可撓部(22)の剛性は移行部(21)の剛性よりも小さい。移行部(21)の剛性はその近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなる。移行部(21)の軸方向長さに対する可撓部(22)の軸方向長さの比率は0.05~0.4である。この医療用カテーテルの軸方向の剛性により、アクセス性とサポート性能との間でバランスを実現することができ、より良い外科的処置の治療効果をもたらすことができる。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル本体を備える医療用カテーテルであって、
前記カテーテル本体は、軸方向に沿って近位端から遠位端にかけて順次配置される近位部および遠位部を含み、
前記近位部の剛性は前記遠位部の剛性よりも大きく、
前記遠位部は、近位端から遠位端にかけて順次配置される移行部および可撓部を含み、
前記可撓部の剛性は前記移行部の剛性よりも小さく、
前記移行部の剛性は近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなり、
前記移行部の軸方向長さに対する前記可撓部の軸方向長さの比率が0.05~0.4である、医療用カテーテル。
【請求項2】
前記移行部の軸方向長さに対する前記可撓部の軸方向長さの比率が0.1~0.25である、請求項1に記載の医療用カテーテル。
【請求項3】
前記カテーテル本体は前記遠位部に対して遠位に位置する先端部をさらに含み、前記先端部の剛性は前記近位部の剛性よりも小さく、前記先端部の軸方向長さは0.2cm~6cmである、請求項1に記載の医療用カテーテル。
【請求項4】
前記先端部は少なくとも1つの放射線不透過性マーカーを含み、前記放射線不透過性マーカーは、放射線不透過性リング、放射線不透過性バンド、放射線不透過性ばね、および放射線不透過性ドットのいずれか1つ、またはこれらの組み合わせである、請求項3に記載の医療用カテーテル。
【請求項5】
前記近位部の二点曲げ強さに対する前記可撓部の二点曲げ強さの比率は0.005~0.7であり、および/または、前記可撓部の二点曲げ強さは0.01N~1.0Nである、請求項1に記載の医療用カテーテル。
【請求項6】
前記移行部の軸方向長さは18cm~33cmであり、前記可撓部の軸方向長さは1.2cm~10cmである、請求項1に記載の医療用カテーテル。
【請求項7】
前記遠位部の軸方向長さは25cm~35cmであり、前記カテーテル本体の軸方向全長は100cm~160cmである、請求項1に記載の医療用カテーテル。
【請求項8】
前記医療用カテーテルは、径方向に沿って外側から内側にかけて外層と、中間層と、内層とを含み、前記外層および前記内層はそれぞれ高分子材料で作られており、前記中間層は編組構造物および/または螺旋構造物である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用カテーテル。
【請求項9】
前記中間層が編組構造物である場合、前記中間層の遠位端の編組密度は前記中間層の近位端の編組密度よりも低くもしくは高く、または、前記中間層が螺旋構造物である場合、前記中間層の螺旋密度は近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなる、請求項8に記載の医療用カテーテル。
【請求項10】
前記中間層は一本撚りのワイヤを螺旋状に巻くことにより形成され、もしくは、前記中間層は、多重撚りのワイヤを編み組むことにより形成され、および/または、多重撚りのワイヤを螺旋状に巻くことにより形成されている、請求項8に記載の医療用カテーテル。
【請求項11】
前記外層の高分子材料の剛性は近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなっており、および/または、前記外層の肉厚は近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなり、且つ前記外層の内径が一定である、請求項8に記載の医療用カテーテル。
【請求項12】
前記医療用カテーテルの内径は0.40mm~2.24mmであり、前記医療用カテーテルの外径は0.42mm~2.8mmである、請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用カテーテル。
【請求項13】
軸方向に沿って近位端から遠位端にかけて順次配置される近位部および遠位部を含み、前記近位部の剛性が前記遠位部の剛性よりも大きいカテーテル本体を提供することと、
近位端から遠位端にかけて順次配置される移行部および可撓部を含むように前記遠位部を形成し、前記可撓部の剛性が前記移行部の剛性よりも小さく、前記移行部の剛性が近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなることと、
前記移行部の軸方向長さに対する前記可撓部の軸方向長さの比率を0.05~0.4に設定することと、
を含む、医療用カテーテルの製造方法。
【請求項14】
前記移行部の軸方向長さに対する前記可撓部の軸方向長さの比率が0.1~0.25である、請求項13に記載の医療用カテーテルの製造方法。
【請求項15】
前記可撓部の二点曲げ強さおよび前記近位部の二点曲げ強さは、
および/または、
を満たし、
式中、F2は前記可撓部の二点曲げ強さであり、その単位はNであり、F1は前記近位部の二点曲げ強さであり、その単位はNである、請求項13に記載の医療用カテーテルの製造方法。
【請求項16】
前記移行部の軸方向長さは18cm~33cmであり、前記可撓部の軸方向長さは1.2cm~10cmである、請求項13に記載の医療用カテーテルの製造方法。
【請求項17】
前記遠位部の軸方向長さは25cm~35cmであり、前記カテーテル本体の軸方向全長は100cm~160cmである、請求項13に記載の医療用カテーテルの製造方法。
【請求項18】
径方向に沿って外側から内側にかけて外層と、中間層と、内層とを含むように前記カテーテル本体を形成し、前記外層および前記内層はそれぞれ高分子材料で作られており、前記中間層は編組構造物および/または螺旋構造物であること、をさらに含む、請求項13~17のいずれか一項に記載の医療用カテーテルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療機器の技術分野に関し、特に、医療用カテーテルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターベンショナル治療の分野における非常に重要な装置として、カテーテルは通常、血管などの生物学的管腔に挿入され、その生物学的管腔の中を通過して、処置や診断の必要がある損傷部位にアクセスする。損傷部位にアクセスすると、カテーテルを使って医療機器を送達したり、そこから薬剤で治療したり、閉塞物質を引き抜いたりする。
【0003】
この作用様式によると、カテーテルは生物学的管腔に損傷を与えることなく、良好な方法で生物学的管腔内を通過できなければならない。血管内のインターベンショナル処置において、カテーテルは通常、橈骨動脈または大腿動脈を介して人体に導入される。処置によっては、特に頭蓋内血管処置においては、カテーテルは曲がりくねった血管の中を通過して遠位部位に到達しなければならないので、アクセス性が良好である必要がある。カテーテルのアクセス性は一般にその可撓性と関連しており、カテーテルがより柔軟であるほど、曲がりくねった血管の中を容易に通過する傾向にある。さらに、カテーテルが損傷部位に到達すると、医療機器または薬剤がそこを通して送達されたり、閉塞物質がそこを通して引き抜かれたりする。医療機器や薬剤の良好な送達や閉塞物質の引き抜きを確実に行うために、カテーテルは送達や引き抜きの動作のもとで変位なく、安定した状態のままでいる能力が良好であることが望ましい。すなわち、カテーテルはサポート性能が良好であることが望ましい。カテーテルのサポート性能は一般にその剛性に関連しており、適正な剛性を持ったカテーテルは医療機器などがその中を通過する間、望まれるように静止したままでいることができる。
【0004】
要するに、カテーテルは良好な可撓性を有し、それによって良好なアクセス性をカテーテルにもたらすことができることが望ましい。さらに、カテーテルは適正な剛性も有し、それによって良好なサポート性能をカテーテルにもたらすことができることが望ましい。従って、カテーテルは一般に、その近位端の周辺が硬く、その遠位端の周辺が柔軟な構造として設計される。しかしながら、柔軟な遠位部はカテーテルのサポート性能には好ましくなく、硬い近位部分はカテーテルのアクセス性には役に立たない。従来のカテーテルには、アクセス性とサポート性能とのバランスが良くとれているものはない。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、既存のカテーテルに関連したアクセス性とサポート性能とのバランスが悪いという問題を克服する、医療用カテーテルおよびそのカテーテルを製造する方法を提供することである。
【0006】
この目的を達成するために、本発明で提供される医療用カテーテルは、カテーテル本体を備える。前記カテーテル本体は、軸方向に沿って近位端から遠位端にかけて順次配置される近位部および遠位部を含み、前記近位部の剛性は前記遠位部の剛性よりも大きく、前記遠位部は、近位端から遠位端にかけて順次配置される移行部および可撓部を含み、前記可撓部の剛性は前記移行部の剛性よりも小さく、前記移行部の剛性は近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなり、前記移行部の軸方向長さに対する前記可撓部の軸方向長さの比率が0.05~0.4である。
【0007】
任意選択で、前記医療用カテーテルにおいて、前記移行部の軸方向長さに対する前記可撓部の軸方向長さの比率が0.1~0.25であってもよい。
【0008】
任意選択で、前記カテーテル本体は前記遠位部に対して遠位に位置する先端部をさらに含み、前記先端部の剛性は前記近位部の剛性よりも小さく、前記先端部の軸方向長さは0.2cm~6cmであってもよい。
【0009】
任意選択で、前記先端部は少なくとも1つの放射線不透過性マーカーを含み、前記放射線不透過性マーカーは、放射線不透過性リング、放射線不透過性バンド、放射線不透過性ばね、および放射線不透過性ドットのいずれか1つ、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0010】
任意選択で、前記医療用カテーテルにおいて、前記近位部の二点曲げ強さに対する前記可撓部の二点曲げ強さの比率は0.005~0.7であり、および/または、前記可撓部の二点曲げ強さは0.01N~1.0Nであってもよい。
【0011】
任意選択で、前記医療用カテーテルにおいて、前記移行部の軸方向長さは18cm~33cmであり、前記可撓部の軸方向長さは1.2cm~10cmであってもよい。
【0012】
任意選択で、前記医療用カテーテルにおいて、前記遠位部の軸方向長さは25cm~35cmであり、前記カテーテル本体の軸方向全長は100cm~160cmであってもよい。
【0013】
任意選択で、前記医療用カテーテルは、径方向に沿って外側から内側にかけて外層と、中間層と、内層とを含み、前記外層および前記内層はそれぞれ高分子材料で作られており、前記中間層は編組構造物および/または螺旋構造物であってもよい。
【0014】
任意選択で、前記医療用カテーテルにおいて、前記中間層が編組構造物である場合、前記中間層の遠位端の編組密度は前記中間層の近位端の編組密度よりも低くもしくは高く、または、前記中間層が螺旋構造物である場合、前記中間層の螺旋密度は近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなってもよい。
【0015】
任意選択で、前記医療用カテーテルにおいて、前記中間層は一本撚りのワイヤを螺旋状に巻くことにより形成され、もしくは、前記中間層は、多重撚りのワイヤを編み組むことにより形成され、および/または、多重撚りのワイヤを螺旋状に巻くことにより形成されていてもよい。
【0016】
任意選択で、前記医療用カテーテルにおいて、前記外層の高分子材料の剛性は近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなっており、および/または、前記外層の肉厚は近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなり、且つ前記外層の内径が一定であってもよい。
【0017】
任意選択で、前記医療用カテーテルの内径は0.40mm~2.24mmであり、前記医療用カテーテルの外径は0.42mm~2.8mmであってもよい。
【0018】
この目的を達成するために、本発明で提供される医療用カテーテルの製造方法は、軸方向に沿って近位端から遠位端にかけて順次配置される近位部および遠位部を含み、前記近位部の剛性が前記遠位部の剛性よりも大きいカテーテル本体を提供することと、
近位端から遠位端にかけて順次配置される移行部および可撓部を含むように前記遠位部を形成し、前記可撓部の剛性が前記移行部の剛性よりも小さく、前記移行部の剛性が近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなることと、
前記移行部の軸方向長さに対する前記可撓部の軸方向長さの比率を0.05~0.4に設定することと、を含む。
【0019】
任意選択で、前記製造方法において、前記移行部の軸方向長さに対する前記可撓部の軸方向長さの比率が0.1~0.25であってもよい。
【0020】
任意選択で、前記製造方法において、前記可撓部の二点曲げ強さおよび前記近位部の二点曲げ強さは、
および/または、
を満たし、
式中、F2は前記可撓部の二点曲げ強さであり、その単位はNであり、F1は前記近位部の二点曲げ強さであり、その単位はNであってもよい。
【0021】
任意選択で、前記製造方法において、前記移行部の軸方向長さは18cm~33cmであり、前記可撓部の軸方向長さは1.2cm~10cmであってもよい。
【0022】
任意選択で、前記製造方法において、前記遠位部の軸方向長さは25cm~35cmであり、前記カテーテル本体の軸方向全長は100cm~160cmであってもよい。
【0023】
任意選択で、前記製造方法は、径方向に沿って外側から内側にかけて外層と、中間層と、内層とを含むように前記カテーテル本体を形成し、前記外層および前記内層はそれぞれ高分子材料で作られており、前記中間層は編組構造物および/または螺旋構造物であること、をさらに含んでもよい。
【0024】
上述した医療用カテーテルでは、カテーテル本体は近位部および遠位部を含むように形成され、近位部の剛性は遠位部の剛性よりも大きい。特に、遠位部は移行部および可撓部を含み、可撓部の剛性は移行部の剛性よりも小さい。さらに、移行部の剛性はその近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなる。特に、移行部の軸方向長さに対する可撓部の軸方向長さの比率は、0.05から0.4までの範囲である。この構成によると、遠位部の長さおよび剛性を適切に設定することによって、医療用カテーテルのサポート性能とアクセス性との間、ゆえにサポート性能と湾曲部を通り抜ける能力との間でバランスを実現することができる。その結果、医療用カテーテルは、曲がりくねった血管を通り抜けることができ、医療機器や他の物体が医療用カテーテルの管腔に送達されているときに、最小の変位で所望の位置にできるだけ静止したままでいることができる。従って、医療用カテーテルを使用した外科的処置において、治療効果の影響下で変位なく、医療用カテーテルは比較的遠い損傷位置に到達することができる。これにより処置の治療効果を向上し、その処置に必要な時間を短縮することができる。
【0025】
より詳細には、遠位部が過剰に長いと、医療用カテーテルはアクセス性が良くなるものの、そのサポート性能は悪くなる。逆に、遠位部が短すぎると、医療用カテーテルはサポート性能が良くなるものの、そのアクセス性は悪くなる。医療用カテーテルのサポート性能とアクセス性との間でバランスを実現するために、医療用カテーテルの遠位部の長さおよび剛性を適切に設定する必要があり、これによって、医療用カテーテルのサポート性能とアクセス性との間のバランスを取ることができる。さらに、遠位部の可撓部と移行部との比率は、大きすぎても小さすぎてもよくない。その比率が過剰に大きいと、移行部の長さが短くなりすぎる。それ故に、カテーテルの遠位端の可撓性は適切なレベルに到達することができず、カテーテルのアクセス性が悪くなってしまう。あるいは、カテーテルが遠位端に適切なレベルの可撓性を有していても、可撓性/剛性の急激な移行により、移行部のよじれ耐性が悪くなってしまう。その比率が小さすぎると、可撓部の長さが過剰に短くなってしまう。これにより製造の複雑性とコストがあがり、短い可撓部によりカテーテル先端が湾曲部を通り抜ける能力が悪くなってしまう。
【0026】
医療用カテーテルの近位部に対する可撓部の二点曲げ強さの比率を前述の範囲内に設定することによって、医療用カテーテルは全面的に柔らかい部分と硬い部分との間の移行が良好で、送達の際にカテーテルが遭遇する抵抗、およびカテーテルがよじれる恐れをさらに低減し、これによって医療用カテーテルを使用した外科的処置の複雑性や必要時間を短縮することができる。これに加えて、可撓部の二点曲げ強さを前述の範囲内に設定することによって、医療用カテーテルの遠位端は非常に適切な可撓性を有することになるので、過度に高い剛性により曲がりにくくなったり、血管を容易に損傷してしまったりすることがない。さらに、過度に高い可撓性により、サポート性能や力伝達に影響することもない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
添付の図面は本発明のより良い理解を促すために提供されるものであり、その範囲をいかなる意味においても限定するものではないことが、当業者には理解されるであろう。いくつかの図にわたって、同様の符号は同様の要素を示す。
図1】本発明の好適な実施形態による医療用カテーテルの全体構造を示す略線図である。
図2】本発明の好適な実施形態による医療用カテーテルの軸方向断面図である。
図3】本発明の好適な実施形態による医療用カテーテルの横断面図である。
図4】本発明の好適な実施形態による遠位部の模式図である。
図5】本発明の好適な実施形態による外層の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の目的、利点および特徴は、添付図面を参照して特定の実施形態を手段として説明された、本発明の以下のより詳細な説明を読んでより明白となる。なお、図面は、実施形態の簡潔で明確な説明を手助けする目的のためだけに、必ずしも正確な寸法を示さない非常に簡素化された形態で提供される。
【0029】
本明細書において、単数形の「1つ」および「該」は、特に明確に示す場合を除き、複数の参照対象を含む。本明細書および添付の特許請求の範囲において、用語「または」は、明確に示す場合を除き、概して「および/または」の意味で採用され、「複数の」は概して「2つ以上の」の意味で採用され、「いくつかの」は概して「不定数の」の意味で採用される。本明細書において、用語「近位端」は、明確に示す場合を除き、概して医療機器を操作するオペレータに近い端について言及し、用語「遠位端」は概して最初に患者の身体に入る機器の端について言及する。
【0030】
図1は、本発明の好適な実施形態による医療用カテーテルの全体構造を示す略線図である。図2は、本発明の好適な実施形態による医療用カテーテルの軸方向断面図である。図3は、本発明の好適な実施形態による医療用カテーテルの横断面図であり、医療用カテーテルの軸と垂直な横断面に沿って切断した横断面図である。図4は、本発明の好適な実施形態による遠位部の模式図である。図5は、本発明の好適な実施形態による外層の軸方向断面図である。
【0031】
図1に示されるように、本発明の一実施形態では、軸方向に沿って順次配置される近位部1および遠位部2を含むカテーテル本体100を備える、医療用カテーテルを提供する。カテーテル本体100は、遠位部2に対して遠位に位置する先端部3をさらに含む。近位部1の剛性は、遠位部2の剛性よりも大きい。さらに、近位部1の剛性は、先端部3の剛性よりも大きい。本発明者らは、遠位部2の長さおよび剛性が医療用カテーテルのサポート性能およびアクセス性(すなわち、湾曲部を通り抜ける能力)に顕著な影響を与えることを見出している。遠位部2が過剰に長いと、医療用カテーテルはアクセス性が良くなるものの、そのサポート性能は悪くなる。逆に、遠位部2が短すぎると、医療用カテーテルはサポート性能が良くなるものの、そのアクセス性は悪くなる。医療用カテーテルのサポート性能とアクセス性との間でバランスを実現するためには、医療用カテーテルの遠位部2の長さおよび剛性を合理的に制御する必要がある。
【0032】
図4に示されるように、遠位部2は、軸方向に沿って近位端から遠位端にかけて順次配置される移行部21および可撓部22を含む。可撓部22の剛性は移行部21の剛性よりも小さい。移行部21の剛性は、近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなる。移行部21はカテーテルの一部である。移行部21の剛性が徐々に小さくなることによって、カテーテルの剛性は、近位部1の剛性から可撓部22の剛性に移行する。ここで、「剛性が徐々に小さくなる」とは、剛性が小さくなった後、一定のままとなり、さらにその後小さくなってもよく、継続的に小さくなってもよく、あるいは別の方法で小さくなってもよい、ということを意図している。すなわち、本発明は、確実に剛性が全体として近位端から遠位端にかけて小さくなっている限り、剛性が小さくなる方法については特定の方法に限定されるものではない。移行部21の軸方向長さL21に対する可撓部22の軸方向長さL22の比率は0.05~0.4であり、より好ましくは0.1~0.25であり、例えば0.05、0.08、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4である。この設計によると、遠位部2の長さおよび剛性を適切に設定することによって、医療用カテーテルのサポート性能と湾曲部を通り抜ける能力との間でバランスを実現することができる。その結果、医療用カテーテルは、曲がりくねった血管の中を通過することができるとともに、医療機器や他の物体が医療用カテーテルの管腔に送達されているときに、最小の変位で所望の位置にできるだけ静止したままでいることができる。このように、処置の間、医療用カテーテルは比較的遠い損傷部位に到達することができ、治療効果の影響下で変位しない。これにより所望の治療効果を確保し、カテーテルを使用した処置に必要な時間を短縮できる。さらに重要なことには、移行部21の軸方向長さL21に対する可撓部22の軸方向長さL22の比率を適切に制御することによって、カテーテルのサポート性能とアクセス性との間でさらに良いバランスを実現することができる。その比率が過剰に大きいと、移行部21の軸方向長さが短くなりすぎる。それ故に、カテーテルの遠位端の可撓性は適切なレベルに到達することができず、カテーテルのアクセス性が悪くなってしまう。あるいは、カテーテルが遠位端に適切なレベルの可撓性を有していても、可撓性/剛性の急激な移行により、移行部21のよじれ耐性が悪くなってしまう。その比率が小さすぎると、遠位の可撓部22の軸方向長さが過剰に短くなってしまう。これにより製造の複雑性とコストがあがり、短い可撓部22によりカテーテル先端が湾曲部を通り抜ける能力が悪くなってしまう。
【0033】
移行部21の軸方向長さL21は、18cm、20cm、25cm、28cm、30cm、33cm等の18cmから33cmまでの範囲である。可撓部22の軸方向長さL22は、1.2cm、1.5cm、2cm、3cm、5cm、8cm、10cm等の1.2cmから10cmまでの範囲である。遠位部2の軸方向長さは25cmから35cmまでの範囲であり、好ましくは28cm、29cm、30cm、32cm等の28cmから32cmまでの範囲である。先端部3の軸方向長さは0.2cmから6.0cmまでの範囲であり、好ましくは2cm、1.5cm、1.8cm、2cm、3cm等の1cmから3cmまでの範囲である。カテーテル本体100の軸方向全長は100cmから160cmまでの範囲であり、好ましくは115cm、120cm、125cm、150cm等の105cmから150cmまでの範囲である。本発明の医療用カテーテルの実装例は、頭蓋内に使用するものを含むが、これらに限定されない。さらに、医療機器または薬剤の送達のために使用するものに限定されず、閉塞物質を引き抜いたり、取り除いたり、他の適切な作業を行ったりするために使用することもできる。
【0034】
カテーテル本体100の内径は、0.4mm、1mm、1.2mm、1.8mm、2mm、2.24mm等の0.40mmから2.24mmまでの範囲である。カテーテル本体100の外径は、0.42mm、0.8mm、1.2mm、1.5mm、1.8mm、2mm、2.5mm、2.8mm等の0.42mmから2.8mmまでの範囲である。好ましくは、カテーテル本体100の内径は一定であり、その外径は近位端から遠位端にかけて小さくなる。従って、医療用カテーテルの肉厚は変化し、遠位端ではより小さく、近位端ではより大きくなる。これにより、医療用カテーテルの近位端でのサポート性能と、遠位端での湾曲部を通り抜ける能力とをさらに強化することができる。例えば、カテーテルの近位端での外径は2.12mmであり、遠位端での外径は2.08mmである。
【0035】
図2および図3に示されるように、カテーテル本体100は、好ましくは、互いに同軸に配置される径方向の外層101と、径方向の中間層102と、径方向の内層103とを備える。外層101および内層103の両方は高分子材料から形成される。中間層102は強化層であり、編組構造物および/または螺旋構造物である。中間層102は、カテーテルのサポート強度を高め、その軸力伝達を強化し、よじれ耐性を向上する役目を果たす。中間層102は、編み組まれたおよび/または螺旋状に巻かれた、金属ワイヤまたは高分子ワイヤから形成されてもよい。内層103は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリオレフィン、ポリエーテルブロックアミド、およびポリウレタンのいずれか1つ、またはこれらの組み合わせから形成されてもよい。中間層102は、金属ワイヤまたは高分子ワイヤ、もしくはその両方から形成されてもよい。外層101は、ポリアミド、Pebax、ポリウレタン、およびポリオレフィンの少なくとも1つで作られてもよい。内層103は、好ましくはその内表面に親水性コーティングまたは疎水性コーティングを施され、それにより医療用カテーテルの管腔の摩擦係数または内表面の摩擦抵抗を低減することができる。その上、中間層102は、その遠位端の編組密度がその近位端の編組密度よりも低くても、高くてもよい。あるいは、中間層102の螺旋密度は近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなってもよい。このように編組密度または螺旋密度を介して中間層102の剛性を制御することにより、カテーテルのサポート性能およびアクセス性をさらに調整することができる。
【0036】
一実施形態では、中間層102は編組構造物である。そして、医療用カテーテルは、そのさまざまな部位(例えば、移行部の位置)で、異なる編組密度(PPI:Pitch per inch、すなわち、軸方向において1インチごとの編組交点の数)が設定されている。例えば、PPIの相違によって、中間層102は、軸方向に順次接続されたn1個のセグメントを含んでもよい。ここで、n1は1から10までの範囲である。遠位セグメントの編組密度はより低く、近位セグメントの編組密度はより高くてもよい。あるいは、近位セグメントの編組密度はより低く、遠位セグメントの編組密度はより高くてもよい。もしくは、外層101の移行位置で、適切に大きくなる編組密度が存在してもよい。中間層102の編組密度は、40PPIから300PPIまでの範囲であってもよい。
【0037】
他の実施形態では、中間層102は螺旋構造物である。その螺旋密度(PPI:Pitch per inch、すなわち、軸方向において1インチごとの螺旋の数)は近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなる。同じく、その螺旋構造物の螺旋密度は、40PPIから300PPIまでの範囲であってもよい。例えば、螺旋密度は近位端で60PPI、遠位端で125PPIであってもよい。それと共に、中間層102が螺旋構造物である場合、医療用カテーテルは、そのさまざまな部位で異なる螺旋密度を有してもよい。例えば、PPIの相違によって、中間層102は、軸方向に順次接続されたn1個のセグメントを含んでもよい。ここで、n1は1から10までの範囲である。
【0038】
中間層102は、二本撚りのラウンドワイヤ、二本撚りのフラットワイヤ、一本撚りのラウンドワイヤ、一本撚りのフラットワイヤ、多重撚りのラウンドワイヤ、および多重撚りのフラットワイヤのうちの1つ以上から編み組まれ、および/または螺旋状に巻かれてもよい。中間層102のワイヤは、好ましくは直径が0.0005~0.03インチのニッケルチタン、ステンレス鋼、コバルトクロム、ポリマー、またはその他の医療用のワイヤであってもよい。実施形態によっては、中間層102は、「2つの上に2つ」または「1つの上に1つ」の様式で4~64のワイヤから編み組まれてもよい。別の実施形態によっては、中間層102は、カテーテルの軸に対して5~90°の角度で螺旋状に巻かれた1つ以上のワイヤで構成された構造物であってもよい。好ましい一実施形態では、中間層102は、幅が0.006インチ、厚さが0.002インチの、一本撚りのステンレス鋼のフラットワイヤまたはニッケルチタン合金のフラットワイヤで作られたばね構造物である。好ましい別の実施形態では、中間層102は、直径が0.01インチの、一本撚りのステンレス鋼のラウンドワイヤまたはニッケルチタン合金のラウンドワイヤで作られたばね構造物である。
【0039】
カテーテルの近位端で良好なサポート性能を確保しながら、カテーテルの遠位端での可撓性をさらに強化するために、外層101は、剛性が近位端から遠位端にかけて小さくなるように設計されることが好ましい。実施形態によっては、外層101の高分子材料の剛性は近位端から遠位端にかけて小さくなる。別の実施形態では、外層101は、その内径を一定に維持しながら、肉厚が近位端から遠位端にかけて小さくなってもよい。より具体的には、外層101は、異なった剛性を有する同じ高分子材料を突き合わせることにより形成され、または異なった高分子材料を突き合わせることにより形成される。すなわち、外層101は、複数のセグメントを突き合わせた構造を採用してよく、各セグメントの高分子材料の剛性が異なる。異なった高分子材料を突き合わせる場合、外層101は、軸方向に順次接続されたn2個のセグメントを含んでもよい。ここで、n2は3から20までの範囲である。n2個のセグメントの剛性は、近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなる。一例として、図5に示されるように、外層101は、全体の剛性が遠位端から近位端にかけて大きくなる3つのセグメントを有してもよい。具体的には、3つのセグメントは、その遠位端から近位端にかけて順次配置される第1セグメント101a、第2セグメント101b、および第3セグメント101cである。第1セグメント101aは最も低い剛性を有し、第3セグメント101cは最も高い剛性を有し、第2セグメント101bの剛性は、第1セグメント101aの剛性と第3セグメント101cの剛性との間である。
【0040】
他の実施形態では、外層101は、異なった剛性を有する異なる高分子材料を突き合わせることにより形成されてもよい。すなわち、外層101は、複数のセグメントを突き合わせた構造を採用している。同様に、異なった剛性を有する異なる高分子材料を突き合わせる場合、外層101は、軸方向に順次接続されたn2個のセグメントを含んでもよい。ここで、n2は3から20までの範囲である。n2個のセグメントの剛性は、近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなる。例えば、第1セグメント101aは軸方向長さL1を有するポリウレタンセグメントであり、第2セグメント101bは軸方向長さL2を有するPebaxセグメントであり、第3セグメント101cは軸方向長さL3を有するポリアミドセグメントである。
【0041】
第1セグメント101aの軸方向長さL1は、30mmから150mmまでの範囲であってもよい。第2セグメント101bの軸方向長さL2は、200mmから500mmまでの範囲であってもよい。第3セグメント101cの軸方向長さL3は、700mmから1200mmまでの範囲であってもよい。外層101の内径は、0.021インチから0.10インチまでの範囲であってもよく、その外径は0.03インチから0.11インチ(0.76mmから2.8mm)までの範囲であってもよい。
【0042】
外層101が異なった剛性を有するように設計されることにより、医療用カテーテルの、近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなる剛性プロファイルの形成の容易性を高め、それにより遠位端での医療用カテーテルの可撓性を上昇し、医療用カテーテルの送達性能と安全性をさらに保証することが理解されるであろう。
【0043】
図1を引き続き参照して、医療用カテーテルは、応力拡散チューブ200および近位接続部材300をさらに含む。応力拡散チューブ200は、カテーテル本体100の近位端に連結されている。近位接続部材300には、流体入力インターフェース、管腔インターフェース等のさまざまなインターフェースが設けられてもよい。
【0044】
図1を引き続き参照して、医療用カテーテルの先端部3は、放射線不透過性マーカー104を含む。放射線不透過性マーカー104は、放射線不透過性リング、放射線不透過性バンド、放射線不透過性ばね、および放射線不透過性ドットのいずれか1つまたはこれらの組み合わせであってもよい。放射線不透過性マーカー104は、白金、タングステンまたは金等の放射線不透過性金属、もしくはその中に放射線不透過性金属粉末を混合した高分子材料で作られてもよい。好ましい一実施形態では、放射線不透過性マーカー104は放射線不透過性リングである。放射線不透過性マーカー104は、カテーテル先端の位置を示す働きをして、外科的処置の間に、外科医がカテーテルの位置および状況を視覚的に把握し、それに基づいてカテーテルの送達経路および応力条件を調整することができる。
【0045】
医療用カテーテルの性能をさらに向上させるために、近位部1の二点曲げ強さに対する可撓部22の二点曲げ強さの比率は、
を満たすように設計されることが好ましい。
式中、F2は可撓部22の二点曲げ強さであり、その単位はNであり、F1は近位部1の二点曲げ強さであり、その単位はNである。
【0046】
このような比率により、医療用カテーテルは全面的に柔らかい部分と硬い部分の間の移行が良好で、送達されているときにカテーテルが遭遇する抵抗やカテーテルがよじれる恐れをさらに低減することができる。
【0047】
さらに、可撓部22の二点曲げ強さは、
を満たすことが好ましい。
【0048】
可撓部22の二点曲げ強さF2が上記範囲内で設計されると、医療用カテーテルの遠位部は非常に適切な可撓性を有することになるので、高い剛性により曲がりにくくなったり、血管を容易に損傷してしまったりすることがない。さらに、高い可撓性により、サポート性能や力伝達に影響することもない。
【0049】
本発明の実施形態では、医療用カテーテルを製造する方法も提供される。その製造方法は、
軸方向に沿って近位端から遠位端にかけて順次配置される近位部1および遠位部2を含み、先端部3をさらに含み、近位部1の剛性が遠位部2の剛性および先端部3の剛性のそれぞれよりも大きいカテーテル本体100を提供することと、
近位端から遠位端にかけて順次配置される移行部21および可撓部22を含むように遠位部2を形成し、可撓部22の剛性が移行部21の剛性よりも小さく、移行部21の剛性が近位端から遠位端にかけて徐々に小さくなることと、
移行部21の軸方向長さに対する可撓部22の軸方向長さの比率を0.05~0.4に設定することと、
を含む。
【0050】
製造方法は、
径方向に沿って外側から内側にかけて外層101と、中間層102と、内層103とを含むようにカテーテル本体100を形成し、外層101および内層103はそれぞれ高分子材料で作られ、中間層102は編組構造物および/または螺旋構造物であってもよい。
【0051】
以下、具体的なテストデータを参照し、本発明の医療用カテーテルの利点についてさらに説明する。しかしながら、このようなテストで使用されるパラメータは、本発明の医療用カテーテルの構造を制限することを意図していないことが理解されるであろう。
【0052】
本実施例では、医療用カテーテルの近位部1の二点曲げ強さはF1と示され、遠位部2の可撓部22の二点曲げ強さはF2と示される。カテーテル本体でより良い力伝達を可能にするために、F2/F1は0.005から0.7までの範囲であり、F2は0.01Nから1.0Nまでの範囲である。
【0053】
二点曲げ強さは医療用カテーテルの可撓性を評価するためのものであり、二点曲げ強さが低いほど、医療用カテーテルの可撓性が良いことを示すことが理解されるであろう。二点曲げ強さは、カテーテル試験サンプルから約2cm(近位部から2cm、可撓部から2cm)のピースを切り出し、各ピースの近位部分を下側挟持治具のチャックに挿入し、ピースの残りの遠位部分をチャックの外側に残す。チャックを締めた後、ピースの10mmから15mmの長さを露出させる。挟持治具を調整して、押圧ヘッドをピースとちょうど接触するまで下げる。その後、ピースの遠位端が押圧ヘッドに適合するようにピースを調節し、力が生じないように押圧ヘッドをピースと接触させる。関連付けられているプログラムに、下向きの押圧ストロークdを2.5mm、および押圧速度を2.5mm/minと設定し、最大の押圧力N1を記録する。試験条件および結果を表1に示す。
【0054】
4つの試験サンプルおよび5つの比較サンプルの試験を行った。可撓部の二点曲げ強さF2は0.1Nと測定され、近位部1の二点曲げ強さF1は1.4と測定された。このように、F22/F1≒0.071となる。
【0055】
さらに、3Dの脳血管モデルで、4つの試験サンプルおよび5つの比較サンプルの前進に対する抵抗およびサポート性能の試験を行った。前進に対する最大抵抗(単位:gf)は、脳血管モデルの頭蓋内血管の部位M2(中大脳動脈の島部)まで前進する間にサンプルが遭遇する最大抵抗として測定された。サポート性能は、モデルの1か所にカテーテルサンプルを固定し、カテーテルサンプルにステントを通し、さらにステントをカテーテルから所定距離押し出した後、カテーテル先端がモデルから後退した距離を測定した。後退した距離が小さいほど、カテーテルが所望の位置に静止したままでいる能力が良いことが示された。最終の試験結果を表2にまとめる。
【0056】
表2から分かるように、5つの比較サンプルに比べて、4つの試験サンプルは遭遇した前進に対する抵抗が著しく低下しており、大いに向上したサポート性能を示した。比較サンプル1および4は、遭遇した前進に対する抵抗がはるかに大きく、比較サンプル2および3は移行部に対する可撓部の軸方向長さの比率が過剰に大きいために、非常に悪いサポート性能を示した。比較サンプル5は遭遇した前進に対する抵抗が低かったが、そのサポート性能は不十分であった。4つすべての試験サンプルが、前進に対する抵抗およびサポート性能の両方に関して優れていることは明白である。従って、試験サンプル(すなわち、本発明の医療用カテーテル)の設計は、サポート性能と湾曲部を通り抜ける能力との間で良いバランスを実現でき、効果が顕著である。
【0057】
上記の説明は、単に本発明のいくつかの好適な実施形態のものであり、いかなる意味でもその範囲を限定するものではない。上記の教示に基づいて当業者によって加えられる任意のおよびすべての変更および修正は、本発明の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0058】
100 カテーテル本体、
1 近位部
2 遠位部
3 先端部
21 移行部
22 可撓部
L22 可撓部の軸方向長さ
L21 移行部の軸方向長さ
101 外層
102 中間層
103 内層
101a 外層の第1セグメント
101b 外層の第2セグメント
101c 外層の第3セグメント
L1 外層の第1セグメントの軸方向長さ
L2 外層の第2セグメントの軸方向長さ
L3 外層の第3セグメントの軸方向長さ
200 応力拡散チューブ
300 近位接続部材
104 放射線不透過性マーカー
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】