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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】化合物の固体形態
(51)【国際特許分類】
   C07D 271/10 20060101AFI20231222BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 25/18 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 25/20 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C07D271/10 CSP
A61K31/4245
A61P25/28
A61P25/00
A61P21/00
A61P25/14
A61P25/16
A61P25/18
A61P3/10
A61P19/08
A61P25/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536429
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-07-04
(86)【国際出願番号】 US2021064069
(87)【国際公開番号】W WO2022133236
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/127,816
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518086619
【氏名又は名称】デナリ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Denali Therapeutics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヘイル, クリストファー アール. エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】ラン, インチン
(72)【発明者】
【氏名】スダカール, アナンサ
【テーマコード(参考)】
4C086
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC71
4C086GA15
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA02
4C086ZA05
4C086ZA15
4C086ZA16
4C086ZA18
4C086ZA94
4C086ZA96
4C086ZC35
4C086ZC54
(57)【要約】
本明細書で化合物Iと称するもの、2-(4-クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[シス-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペンタニル]アセトアミド、を調製し、及び、固形物状態を特徴とする。化合物Iの製造プロセス及び、形態の使用方法も提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2-(4-クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[シス-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペント-1-イル]アセトアミドの形態C多形であって、±0.2度2-シータが示す、18.5、23.3、25.1、及び25.8でピークを有するX線粉末回折パターンを示し、また、前記X線粉末回折パターンは、CuKα放射線を使用して形成する、前記形態C多形。
【請求項2】
±0.2度2-シータが示す17.3、17.9、及び20.2から選択する1つ以上のピークをさらに含む、請求項1に記載の形態C多形。
【請求項3】
±0.2度2-シータが示す14.4、17.3、17.9、20.2、及び20.6から選択する2つ以上のピークをさらに含む、請求項1または2に記載の形態C多形。
【請求項4】
X線粉末回折パターンが、16.4、16.9、22.2、22.6、及び22.9、±0.05°2θにピークを実質的に持たない、請求項1~3のいずれか1項に記載の形態C多形。
【請求項5】
前記回折パターンが、実質的に図5に示した通りである、請求項1~4のいずれか1項に記載の形態C多形。
【請求項6】
約132.3℃で吸熱開始を示す示差走査熱量測定(DSC)曲線を特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の形態C多形。
【請求項7】
前記示差走査熱量測定(DSC)曲線が、実質的に図6に示した通りである、請求項1~6のいずれか1項に記載の形態C多形。
【請求項8】
前記動的蒸気収着(DVS)等温線が、実質的に図7に示した通りである、請求項1~7のいずれか1項に記載の形態C多形。
【請求項9】
前記多形が、無水和物である、請求項1~8のいずれか1項に記載の形態C多形。
【請求項10】
前記多形が、約1.02マイクログラム/mLの水溶解度を有する、請求項1~9のいずれか1項に記載の形態C多形。
【請求項11】
2-(4-クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[シス-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペント-1-イル]アセトアミドの形態A多形であって、±0.2度2-シータが示す、22.2、22.6、及び22.9でピークを有するX線粉末回折パターン示し、また、前記X線粉末回折パターンは、CuKα放射線を使用して形成する前記化合物を、高エネルギーミリングに供することにより生成する、請求項1~10のいずれか1項に記載の形態C多形。
【請求項12】
2-(4-クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[シス-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペント-1-イル]アセトアミドの形態A多形であって、±0.2度 2-シータが示す、22.2、22.6、及び22.9でピークを有するX線粉末回折パターン示し、また、前記X線粉末回折パターンは、CuKα放射線を使用して形成する、また、前記化合物を、粉砕化する、前記形態A多形。
【請求項13】
±0.2度2-シータが示す17.8、20.0、20.8、及び21.0から選択する1つ以上のピークをさらに含む、請求項12に記載の形態A多形。
【請求項14】
±0.2度2-シータが示す17.8、20.0、20.8、21.0、及び26.7から選択する2つ以上のピークをさらに含む、請求項12に記載の形態A多形。
【請求項15】
X線粉末回折パターンを有しており、16.4、16.9、18.5、23.3、25.1、及び25.8±0.05度2-シータ±0.05°2θにピークを実質的に持たない、請求項12~14のいずれか1項記載の形態A多形。
【請求項16】
前記回折パターンは実質的に図1に記載したものである、請求項12~15のいずれか1項に記載の形態A多形。
【請求項17】
約126.5℃で吸熱開始を示す示差走査熱量測定(DSC)曲線を特徴とする請求項12~16のいずれか1項に記載の形態A多形。
【請求項18】
前記DSC曲線が実質的に図2に記載したものである、請求項12~17のいずれか1項に記載の形態A多形。
【請求項19】
前記動的水蒸気吸収(DVS)等温線が、実質的に図3に記載したものである、請求項12~18のいずれか1項に記載の形態A多形。
【請求項20】
前記形態Aが、無水物である、請求項12~19のいずれか1項に記載の形態A多形。
【請求項21】
前記形態Aが、約9.7マイクログラム/mLの水溶解度を有する請求項12~20のいずれか1項に記載の形態A多形。
【請求項22】
室温で、2-(4-クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[シス-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペント-1-イル]アセトアミドの溶液に蒸気の溶媒向流を拡散して生成する、請求項12~21のいずれか1項に記載の形態A多形。
【請求項23】
前記多形が、実質的に純粋な形態である、請求項1~22のいずれか1項に記載の多形。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか1項に記載の多形と、医薬として許容可能な1つ以上の担体とを含む医薬組成物。
【請求項25】
2-(4-(クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[シス-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペント-1-イル]アセトアミドの少なくとも99%が結晶形態である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項26】
前記2-(4-(クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[シス-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペント-1-イル]アセトアミドの少なくとも95%が結晶形態である、請求項24に記載の医薬組成物。
【請求項27】
請求項1~23のいずれか1項に記載の結晶性化合物、または請求項24~26のいずれか1項に記載の医薬組成物の有効量を、真核生物開始因子2Bが少なくとも一部を媒介する疾患または状態の治療を必要とする患者に投与する、ことを含む治療方法。
【請求項28】
前記疾患または状態が、神経変性疾患である請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記疾患が、アレクサンダー病、アルパー病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病(別名、シュピールマイヤー-フォークト-シェーグレン-バッテン病)、ウシ海綿状脳症(BSE)、カナバン病、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト-ヤコブ病、前頭側頭型認知症、白質消失病、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー症候群、ハンチントン病、HIV-関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、クールー、レビー小体型認知症、マシャド-ジョセフ病(脊髄小脳失調症3型)、多発性硬化症、多系統萎縮症、ナルコレプシー、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリゼウス-メルツバッハー病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する亜急性脊髄連合変性症、統合失調症、脊髄小脳失調症(様々な特徴を有する複数のタイプ)、脊髄性筋萎縮症、スティール-リチャードソン-オルシェフスキー病、インスリン抵抗性、または脊髄癆である、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記疾患が、アルツハイマー病、ALS、パーキンソン病、または認知症である、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記認知症が、前頭側頭型認知症(FTD)である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記疾患が、ALSである、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
請求項1~23のいずれか1項に記載の結晶性化合物、または請求項24~26のいずれか1項に記載の医薬組成物の有効量を、認知記憶を改善することを必要とする患者に投与することを含む、認知記憶を改善する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下に、2020年12月18日に出願された米国仮出願第63/127,816号に基づく優先権及び利益を主張するものであり、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0002】
本開示は、概して、真核生物開始因子2B(EIF2B)を調節する化合物の固体形態、その医薬組成物、その治療的使用、及び固体形態を作るためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
本開示は、真核生物開始因子2B(EIF2B)の低分子調節薬、及びその治療剤としての使用、例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、白質消失病、ALS及び前頭側頭型認知症などの疾患を治療することにおける使用に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、化合物I(CAS登録番号2278265-85-1)の、ならびにその塩、共結晶、溶媒和物及び水和物の、多形及び/または非晶質形態を提供する。さらに本明細書に記載されるのは、化合物Iの形態を作るためのプロセス、化合物Iの形態を含む医薬組成物、ならびにEIF2Bによって媒介される疾患の治療においてそのような形態及び医薬組成物を使用する方法である。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1】Aは、化合物I形態AのX線粉末回折図である。Bは、化合物I形態Aの長時間X線粉末回折図である。
図2】化合物I形態Aの熱重量分析(TGA)(上側の線)及び示差走査熱量計(DSC)曲線(下側の線)である。
図3】化合物I形態Aの動的水蒸気吸着(DVS等温プロット)である。
図4】化合物I形態BのX線粉末回折図である。
図5】Aは、化合物I形態CのX線粉末回折図である。Bは、化合物I形態Cの長時間X線粉末回折図である。
図6】化合物I形態Cの熱重量分析(TGA)(上側の線)及び示差走査熱量計(DSC)曲線(下側の線)である。
図7】化合物I形態Cの動的水蒸気吸着(DVS等温プロット)である。
図8】化合物I形態Aの加熱-冷却-加熱示差走査熱量計(DSC)研究である。下側の線は化合物I形態DのDSCを表す。
図9】作りたての(下)、及び異なる条件下で7日間貯蔵した場合の、化合物I形態DのX線粉末回折図を示す。
図10】Aは、化合物I形態A、非対称単位分子1の熱楕円体(ORTEP)図を表す。Bは、化合物I形態A、非対称単位分子2の熱楕円体(ORTEP)図を表す。
図11A】化合物I形態C非対称単位(-OCFの乱れの第1部)の熱楕円体図を示す。
図11B】化合物I形態C非対称単位(-OCFの乱れの第2部)の熱楕円体図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
化合物2-(4-クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[cis-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペンタニル]アセトアミドは、本明細書において化合物Iと呼称されるが、以下の式:
【化1】
を有する。
【0007】
化合物Iは、真核生物開始因子2Bの調節薬である。その合成、及び使用方法は、PCT国際出願公開第WO2019/032743号に記載されており、参照によりその全体を本明細書に援用する。
【0008】
1.定義
本明細書で使用される場合、以下の語及び語句は、通常、以下の示される意味を有することを意図したものであり、但し、それらが使用されている文脈が別様の指示をしている場合を除く。
【0009】
「含む(comprise)」という用語、及びその変化形、例えば、「含む(comprises)」及び「含んでいる(comprising)」は、開放型の包含的意味に、つまり、「含んでいる(including)がしかしそれに限定されない」、と解釈されるべきである。さらには、単数形「a」、「an」及び「the」は複数形の意味を含み、但し、そうでないことが文脈から明らかに読み取れる場合を除く。したがって、「化合物」への言及は複数のそのような化合物を含んでおり、「アッセイ」への言及は、1つ以上のアッセイ、及びそれと等価な、当業者に知られているものへの言及を含んでいる。
【0010】
本明細書において「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータそのものに関する実施形態を含んでいる(及び記載している)。ある特定の実施形態では、「約」という用語は、示された量±10%を含む。他の実施形態では、「約」という用語は、示された量±5%を含む。他のある特定の実施形態では、「約」という用語は、示された量±2.5%を含む。他のある特定の実施形態では、「約」という用語は、示された量±1%を含む。また、「約X」という用語には「X」の記載も含まれる。
【0011】
本開示の全体にわたって、値の数値範囲の列挙は、範囲を画定している値を含めた、範囲内に入る別個の各値に個別に言及することの簡潔な表記としての役割を果たすことを意図したものであり、別個の各値は、あたかもそれが個別に本明細書に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【0012】
化合物Iの、またはその塩、共結晶、溶媒和物もしくは水和物の形態が本明細書に提供される。一実施形態では、化合物Iの、またはその塩、共結晶、溶媒和物もしくは水和物の形態への言及は、組成物中に存在する化合物Iまたはその塩、共結晶、溶媒和物もしくは水和物の少なくとも50%~99%(例えば、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、または少なくとも99%)が、指定された形態にあることを意味する。例えば、一実施形態では、化合物I形態Aへの言及は、組成物中に存在する化合物Iの少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%または少なくとも99%が形態Aであることを意味する。
【0013】
「固体形態」という用語は、非晶質及び結晶質形態を含めた、固体状態の材料の一種を指す。「結晶質形態」という用語は、多形、及び溶媒和物、水和物などを指す。「多形」という用語は、特定の物理特性、例えば、X線回折、融点などを有する特定の結晶構造を指す。
【0014】
「共結晶」という用語は、非共有結合的相互作用によって連結された、本明細書に開示される化合物と1つ以上の非イオン化共結晶形成剤との分子複合体を指す。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される共結晶は、化合物Iの非イオン化形態(例えば、化合物I遊離形態)と1つ以上の非イオン化共結晶形成剤とを含み得、非イオン化化合物Iと共結晶形成剤(複数可)とが非共有結合的相互作用によって連結されている。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される共結晶は、化合物Iのイオン化形態(例えば、化合物Iの塩)と1つ以上の非イオン化共結晶形成剤とを含み得、イオン化された化合物Iと共結晶形成剤(複数可)とが非共有結合的相互作用によって連結されている。共結晶は、さらには、無水、溶媒和または水和形態で存在していてもよい。場合によっては、共結晶は、親形態(すなわち、遊離分子、両性イオンなど)または親化合物の塩に比べて改善された特性を有し得る。改善された特性は、向上した溶解度、向上した溶解性、向上した生物学的利用率、増大した用量応答、低下した吸湿性、向上した安定性、通常であれば非晶質である化合物の結晶質形態、塩形成し難いまたは塩形成不可能な化合物の結晶質形態、低下した形態多様性、より望ましい形態学などであり得る。共結晶を作る及び特性評価する方法は、当業者に知られている。
【0015】
「共結晶形成剤」または「共形成剤」という用語は、化合物Iまたは本明細書に開示される他の任意の化合物に関連して本明細書に開示される1つ以上の薬学的に許容される塩基または薬学的に許容される酸を指す。
【0016】
「溶媒和物」という用語は、溶媒分子と溶質の分子またはイオンとの組合せによって形成される複合体を指す。溶媒は、有機化合物、無機化合物、または両方の混合物であり得る。本明細書で使用される場合、「溶媒和物」という用語は、「水和物」(すなわち、水分子と溶質の分子またはイオンとの結合によって形成された複合体)、半水和物、チャネル水和物などを含む。溶媒のいくつかの例としては、メタノール、N,N-ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド及び水が挙げられるが、これらに限定されない。総じて溶媒和形態は非溶媒和形態と等価であり、本開示の範囲に包含される。
【0017】
「脱溶媒和された」という用語は、本明細書に記載の溶媒和物であり、そこから溶媒分子が部分的または完全に除去されている、化合物I形態を指す。脱溶媒和形態を生成するための脱溶媒和技術としては、化合物I形態(溶媒和物)を真空に曝露すること、上昇した温度に溶媒和物を曝すこと、溶媒和物をガス、例えば、空気もしくは窒素、またはその任意の組合せの流れに曝露することが挙げられるが、これらに限定されない。したがって、脱溶媒和された化合物I形態は、無水、すなわち溶媒分子を全く有さないもの、または溶媒分子が化学量論量もしくは非化学量論量で存在している部分的に溶媒和されたものであり得る。
【0018】
「非晶質」という用語は、材料が温度に依存して分子レベルで広範囲にわたって秩序を欠き、固体または液体の物理特性を呈し得る、状態を指す。典型的には、そのような材料は、明確なX線回折パターンを示さず、固体の特性を呈するとはいえ、より形式的には液体という見方がなされる。加熱すると、状態の変化、典型的には二次的変化(ガラス転移)によって特徴付けられる、固体から液体特性への変化が起こる。
【0019】
化合物Iを含めて本明細書に示される任意の式または構造は、化合物の非標識形態及び同位体標識形態も表すことを意図している。任意の所与の原子において同位体が、本質的にそれらの天然の出現率に応じた比率で存在してもよく、または当業者に知られている合成方法を用いて1つ以上の特定原子が1つ以上の同位体に関して改善されていてもよいことは、理解される。したがって、水素は、例えば、H、H、Hを含み;炭素は、例えば、11C、12C、13C、14Cを含み;酸素は、例えば、16O、17O、18Oを含み;窒素は、例えば、13N、14N、15Nを含み;硫黄は、例えば、32S、33S、34S、35S、36S、37S、38Sを含み;フルオロは、例えば、17F、18F、19Fを含み;クロロは、例えば、35Cl、36Cl、37Cl、38Cl、39Clを含む、といった具合である。
【0020】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、「療法(therapy)」、「療法(therapies)」という用語、及び類似する用語は、材料、例えば、本明細書に記載の化合物Iの任意の1つ以上の固体、結晶質または多形を、疾患または病状、すなわち適応症の1つ以上の症候を予防、緩和または改善するのに有効な及び/または治療されようとしている対象の生存期間を延長するのに有効な量で投与することを指す。
【0021】
「投与すること」という用語は、対象への経口投与、坐剤としての投与、局所接触、静脈内、腹腔内、筋肉内、病巣内、鼻腔内または皮下投与、または徐放性装置、例えば小型浸透圧ポンプの埋植を指す。投与は、非経口及び経粘膜(例えば、頬側、舌下、口蓋、歯肉、経鼻、膣内、直腸内または経皮)を含めた任意の経路によるものである。非経口投与としては、例えば、静脈内、筋肉内、細動脈内、皮内、皮下、腹腔内、脳室内及び頭蓋内が挙げられる。他の送達様式としては、リポソーム製剤の使用、静脈内輸注、経皮パッチなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本明細書で使用される場合、「調節すること」または「調節する」という用語は、生物学的活性、特に、EIF2Bなどの特定生体分子に関連する生物学的活性を変化させる作用を指す。例えば、特定生体分子のアゴニストまたはアンタゴニストは、生体分子の活性を増大させること(例えば、アゴニスト、活性化剤)あるいは低下させること(例えば、アンタゴニスト、阻害剤)によってその生体分子、例えばEIF2Bの活性を調節する。そのような活性は、例えばEIF2Bに関する、阻害剤または活性化剤としての化合物の、それぞれ阻害濃度(IC50)または励起濃度(EC50)によって表されるのが典型的である。
【0023】
本明細書で使用される場合、「EIF2B媒介疾患または病状」という用語は、任意のその変異体を含めたEIF2Bの生物学的機能が疾患または病状の進展、経過及び/または症候に影響を及ぼしている、及び/またはEIF2Bの調節が疾患または病状の進展、経過及び/または症候を変化させている、疾患または病状を指す。EIF2B媒介疾患または病状としては、EIF2B調節によってそれに対する治療的利益がもたらされる疾患または病状、例えば、本明細書に記載の化合物Iの1つ以上の固体、結晶質または多形を含めた化合物(複数可)による治療によって疾患もしくは病状に罹患しているまたはそのリスクがある対象に治療的利益がもたらされる疾患または病状が挙げられる。
【0024】
本明細書で使用される場合、「組成物」という用語は、任意のその固体形態を含めた薬学的活性化合物を少なくとも1つ含有する、治療目的のための意図した対象への投与に適する医薬調製物を指す。組成物は、化合物の製剤の改良をもたらすための少なくとも1つの薬学的に許容される成分、例えば好適な担体または賦形剤を含み得る。
【0025】
「高エネルギーミリング」は、粉砕機で固体をより小さなナノ粒子へと機械的に小さくすることを指す。高エネルギーミリングまたはナノミリングの例としては、湿式粉砕、ジェットミリング、流動床ジェットミリング、撹拌ビーズミリング、及びボールミリングが挙げられる。いくつかの実施形態では、高エネルギーミリングまたはナノミリングは、粒径を約1ミクロン未満に減少させる。いくつかの実施形態では、ナノミリングされた材料のd90は、約900nm未満、約800nm未満、約700nm未満、約600nm未満、約500nm未満、約400nm未満、約300nm未満、約200nm、または約100nm未満である。いくつかの実施形態では、ナノミリングされた材料のd90は約100nm未満である。いくつかの実施形態では、ナノミリングされた材料のd90は100~1nmである。
【0026】
「D90」(またはd90)は、試料の90%が、言及された径よりも小さいことを意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」は、本明細書に記載の化合物で治療される生物を指し、これには、任意の哺乳動物、例えば、ヒト、他の霊長類、競技用動物、商用動物、例えば、ウシ、農業用動物、例えば、ウマ、または愛玩動物、例えば、イヌ及びネコが含まれるが、これらに限定されない。
【0028】
「薬学的に許容される」という用語は、示された材料が、治療される疾患または病状及び個別の投与経路を考慮して合理的に分別のある医師が患者への材料の投与を回避させるであろう特性を、有していないことを表す。例えば、そのような材料は、例えば注射薬のために、本質的に無菌であることが一般的に求められる。
【0029】
本発明の文脈において、「治療的に有効」または「有効量」という用語は、材料または材料の量が、疾患または医学的病状の1つ以上の症候を予防、緩和または改善するのに有効である、及び/または治療されようとしている対象の生存期間を延長するのに有効であることを表す。治療的有効量は、化合物、障害または病状、及びその重症度、ならびに治療する哺乳動物の年齢、体重などに応じて様々であろう。例えば、有効量は、有益な、または所望の臨床転帰をもたらすのに十分な量である。有効量は、単回投与で一度に、または有効量を提供する部分量で数回の投与で、提供され得る。有効量とみなされるであろう量の厳密な決定は、各対象の個別の因子、例えば、彼らのサイズ、年齢、損傷、及び/または治療されようとしている疾患または損傷、ならびに損傷が発生してからまたは疾患が開始してからの時間量に基づき得る。当業者であれば、当技術分野では慣例的であるこれらの考慮事項に基づいて、所与の対象のための有効量を決定することができるであろう。
【0030】
いくつかの実施形態では、「実質的に図に示される」という語句は、X線粉末回折図に適用される場合には±0.2°の2θまたは±0.1°の2θの変動を含むことを意味し、DSCサーモグラムに適用される場合には摂氏±3°の変動を含むことを意味し、熱重量分析(TGA)に適用される場合には重量減少の±2%の変動を含むことを意味する。
【0031】
「(多形の)実質的に純粋な形態」は、いくつかの実施形態では、言及された材料において、材料の少なくとも99.9%が、言及された多形であることを意味する。「(多形の)実質的に純粋な形態」は、いくつかの実施形態では、言及された材料において、材料の少なくとも99.5%が、言及された多形であることを意味する。「(多形の)実質的に純粋な形態」は、いくつかの実施形態では、言及された材料において、材料の少なくとも99%が、言及された多形であることを意味する。「(多形の)実質的に純粋な形態」は、いくつかの実施形態では、言及された材料において、材料の少なくとも98%が、言及された多形であることを意味する。「(多形の)実質的に純粋な形態」は、いくつかの実施形態では、言及された材料において、材料の少なくとも97%が、言及された多形であることを意味する。「(多形の)実質的に純粋な形態」は、いくつかの実施形態では、言及された材料において、材料の少なくとも96%が、言及された多形であることを意味する。「(多形の)実質的に純粋な形態」は、いくつかの実施形態では、言及された材料において、材料の少なくとも95%が、言及された多形であることを意味する。調節薬であるまたはあり得る化合物の使用、試験またはスクリーニングの文脈において、「接触させる」という用語は、化合物(複数可)を、当該化合物と他の指定の材料との間での潜在的結合相互作用及び/または化学反応が起こり得るような特定の分子、複合体、細胞、組織、生物、または他の指定の材料に、十分に接近させることを意味する。
【0032】
加えて、本明細書で使用される略称は以下のそれぞれの意味を有する:
【表1】
【0033】
2.化合物Iの形態
上に概略を記載したとおり、本開示は、化合物、2-(4-クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[cis-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-イル]アセトアミド(以後、「化合物I」の「化合物」)の、及びその塩、共結晶、溶媒和物または水和物の、結晶質形態を提供する。本明細書では、化合物Iの、及びその塩、共結晶、溶媒和物または水和物の結晶質形態、ならびに化合物Iの、及びその塩、共結晶、溶媒和物または水和物の他の形態(例えば非晶質形態)を、まとめて「化合物Iの形態」と呼ぶ。
【0034】
いくつかの実施形態では、化合物Iは遊離塩基である。いくつかの実施形態では、化合物Iは塩または共結晶である。いくつかの実施形態では、化合物Iは、薬学的に許容される塩または共結晶である。いくつかの実施形態では、化合物Iは溶媒和物である。いくつかの実施形態では、化合物Iは水和物である。いくつかの実施形態では、化合物Iは無水物である。
【0035】
いくつかの実施形態では、化合物Iは非晶質形態である。
【0036】
化合物I形態A
一実施形態では、化合物Iは結晶質であり、22.2、22.6及び22.9の2シータの±0.2度において表される特徴的なピークを有するX線粉末回折パターン(以後、XRPDまたは回折図)を呈する形態A多形(以後、「化合物I形態A」または「形態A」)である。
【0037】
一実施形態では、X線粉末回折パターンは、CuKα放射線を使用して行われる。一実施形態では、XRPDは、約1.54Åの波長のCuKα放射線を使用する回折装置で得られる。
【0038】
一実施形態では、本明細書に提供されるのは、微粒子化形態A多形である。
【0039】
一実施形態では、形態A多形の回折図は、17.8、20.0、20.8及び21.0から選択される2シータの±0.2度において表される1つ以上のピークをさらに含む。一実施形態では、形態A多形の回折図は、17.8、20.0、20.8、21.0及び26.7から選択される2シータの±0.2度において表される2つ以上のピークをさらに含む。一実施形態では、形態A多形の回折図は、15.9、17.8、19.5、20.0、20.8、21.0及び26.7から選択される2シータの±0.2度において表される3つ以上のピークをさらに含む。一実施形態では、形態A多形の回折図は、15.9、17.8、19.5、20.0、20.8、21.0、22.2、22.6、22.9及び26.7から選択される2シータの±0.2度において表される1つ以上のピークをさらに含む。
【0040】
一実施形態では、化合物は、16.4、16.9、18.5、23.3、25.1及び25.8の2シータの±0.05度にピークを実質的に含まないX線粉末回折パターンを有する形態A多形である。
【0041】
一実施形態では、化合物I形態Aは、実質的に図1に示されるX線粉末回折図によって特徴付けられる。
【0042】
一実施形態では、化合物I形態Aは、約126.5℃(開始温度)における吸熱を含む示差走査熱量測定(DSC)曲線によって特徴付けられる。一実施形態では、化合物I形態Aは、実質的に図2に示されるDSC曲線(下側の線)によって特徴付けられる。
【0043】
一実施形態では、化合物I形態Aは、最高約150℃までで約0.08%の重量減少を示している熱重量分析(TGA)サーモグラムによって特徴付けられる。一実施形態では、化合物I形態Aは、実質的に図2に示されるサーモグラム(上側の線)によって特徴付けられる。
【0044】
一実施形態では、化合物I形態Aは、実質的に図3に示されるDVS等温線によって特徴付けられる。一実施形態では、化合物I形態Aは無水物である。一実施形態では、化合物I形態Aは、約9.7マイクログラム/mLの水溶解度を有する。
【0045】
いくつかの実施形態は、単位胞パラメータ:a=16.8593(8)Å、b=11.0992(5)Å、c=22.4326(10)Åを有する化合物I形態Aを提供する。いくつかの実施形態は、単位胞パラメータ:α=90°、β=96.816(2)°、γ=90°、及びV=4168.0(3)Åを有する化合物I形態Aを提供する。
【0046】
一実施形態では、化合物I形態Aの単結晶は、単斜晶系及びP2/cの空間群にある。一実施形態では、化合物I形態Aは、表1の結晶構造パラメータの1つ以上によって特徴付けられる。
【0047】
一実施形態では、形態A多形は、以下に記載される形態B多形の真空乾燥によって得られた多形である。
【0048】
一実施形態では、形態A多形は、化合物Iの溶液を室温の対溶媒の拡散に供することによって生成される。非晶質化合物Iが、例えば、溶媒中、例えばジメチルアセトアミド中に溶かされ得、対溶媒、例えば、水などの対溶媒の蒸気の、蒸気拡散に供され得る。溶媒と対溶媒との他の対としては、化合物Iのジクロロメタン溶液の中へ拡散されるヘプタン蒸気、または化合物Iの1,4-ジオキサン溶液の中へのシクロヘキサン蒸気拡散が挙げられるが、これらに限定されない。
【0049】
化合物I形態B
一実施形態では、化合物Iは結晶質であり、16.4及び16.9の2シータの±0.2度において表される特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを呈する形態B多形(以後、「化合物I形態B」)である。
【0050】
一実施形態では、X線粉末回折パターンは、CuKα1放射線を使用して行われる。一実施形態では、XRPDは、約1.54Åの波長のCuKα1放射線を使用する回折装置で得られる。
【0051】
一実施形態では、形態Bの回折図は、19.2及び22.6から選択される2シータの±0.2度において表される1つ以上のピークをさらに含む。一実施形態では、形態Bの回折図は、10.2、13.6、19.2及び22.6から選択される2シータの±0.2度において表される2つ以上のピークをさらに含む。一実施形態では、形態Bの回折図は、10.2、13.6、19.2、22.2、22.6及び27.9から選択される2シータの±0.2度において表される3つ以上のピークをさらに含む。一実施形態では、形態Bの回折図は、10.2、13.6、16.4、16.9、19.2、22.2、22.6及び27.9から選択される2シータの±0.2度において表される1つ以上のピークをさらに含む。
【0052】
一実施形態では、化合物は、18.5、22.9、23.3、25.1及び25.8の2シータの±0.05度にピークを実質的に含まないX線粉末回折パターンを有する形態B多形である。
【0053】
一実施形態では、化合物I形態Bは、実質的に図5に示されるX線粉末回折図によって特徴付けられる。
【0054】
一実施形態では、形態B多形は、1,4-ジオキサン溶媒和物である。
【0055】
一実施形態では、形態B多形は、真空乾燥によって、22.2、22.6及び22.9の2シータの±0.2度において表されるピークを含むX線粉末回折図によって特徴付けられる形態Aに変換される。
【0056】
化合物I形態C
一実施形態では、結晶質化合物Iは、18.5、23.3、25.1及び25.8の2シータの±0.2度において表される特徴的なピークを有するX線粉末回折パターンを呈する形態C多形(以後、「化合物I形態C」)である。
【0057】
一実施形態では、X線粉末回折パターンは、CuKα放射線を使用して行われる。一実施形態では、XRPDは、約1.54Åの波長のCuKα放射線を使用する回折装置で得られる。
【0058】
一実施形態では、本明細書に提供されるのは、微粒子化形態C多形である。
【0059】
一実施形態では、形態C多形の回折図は、17.3、17.9及び20.2から選択される2シータの±0.2度において表される1つ以上のピークをさらに含む。一実施形態では、形態C多形の回折図は、14.4、17.3、17.9、20.2及び20.6から選択される2シータの±0.2度において表される2つ以上のピークをさらに含む。一実施形態では、形態C多形の回折図は、14.4、17.3、17.9、20.2、20.6、26.2及び26.7から選択される2シータの±0.2度において表される3つ以上のピークをさらに含む。一実施形態では、形態C多形の回折図は、14.4、17.3、17.9、18.5、20.2、20.6、23.3、25.1、25.8、26.2及び26.7から選択される2シータの±0.2度において表される1つ以上のピークをさらに含む。
【0060】
一実施形態では、化合物は、16.4、16.9、22.2、22.6及び22.9の2シータの±0.05度にピークを実質的に含まないX線粉末回折パターンを有する形態C多形である。
【0061】
一実施形態では、化合物I形態Cは、実質的に図6に示されるX線粉末回折図によって特徴付けられる。一実施形態では、化合物I形態Cは、約132.3℃における吸熱開始を含む示差走査熱量測定(DSC)曲線によって特徴付けられる。一実施形態では、化合物I形態Cは、実質的に図7に示されるDSC曲線によって特徴付けられる。一実施形態では、化合物I形態Cは、実質的に図8に示されるDVS等温線によって特徴付けられる。
【0062】
一実施形態では、化合物I形態Cは無水物である。一実施形態では、化合物I形態Cは、約1.02マイクログラム/mLの水溶解度を有する。
【0063】
いくつかの実施形態は、単位胞パラメータ:a=10.8945(2)Å、b=39.9519(5)Å、c=10.28331(18)Åを有する化合物I形態Cを提供する。いくつかの実施形態は、単位胞パラメータ:α=90°、β=111.735(2)°、γ=90°、及びV=4157.67(12)Åを有する化合物I形態Cを提供する。
【0064】
いくつかの実施形態では、化合物I形態Cの単結晶は、単斜晶系及びP2/c空間群にある。一実施形態では、化合物I形態Cは、表2の結晶構造パラメータの1つ以上によって特徴付けられる。
【0065】
予想外なことに、形態Aを高エネルギーミリングに供した場合に新たな多形が得られた。一実施形態では、22.2、22.6及び22.9の2シータの±0.2度において表されるピークを有するX線粉末回折パターンであってCuKα放射線を使用して得られる当該X線粉末回折パターンを呈する、2-(4-クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[cis-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-イル]アセトアミドの形態A多形を、高エネルギーミリングに供することによって、形態C多形が生成される。形態Aを、逆溶剤添加、固体蒸気拡散、液体蒸気拡散、スラリー、蒸発、低速冷却、ポリマー誘導結晶化、粉砕及び湿度誘導相転移を含めた100回の多形スクリーニング実験に供したが、これらの実験はどれも、形態Cを含めた他のいかなる安定結晶ももたらさなかった。形態Cは、多形形態を同定するための慣例的な方法ではない高エネルギーミリングの一形態であるナノミリングに形態Aを供しない限り得られなかった。ナノミリングは、粉砕チャンバ及び専用ビーズ(例えば、ナノミリングに適した硬度及び粒径を有するビーズ)を備えた専用機器を必要とする。いくつかの実施形態では、ビーズは直径が0.8mm以下である。そのような実施形態のいくつかでは、ビーズは、ジルコニアビーズまたはイットリウム安定化ジルコニアビーズである。
【0066】
一実施形態では、本明細書に記載されるいかなる結晶質化合物も、実質的に純粋な形態にある。一実施形態では、形態C多形は実質的に純粋である。
【0067】
化合物I形態D
本開示は、一実施形態では、2-(4-クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[cis-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペンタニル]アセトアミドの非晶質形態(「化合物I、形態D」または「形態D」)を提供する。一実施形態では、化合物I形態Dは、加熱-冷却-加熱示差走査熱量測定(DSC)サイクルからの約27℃のガラス転移温度によって特徴付けられる(化合物I形態D)。
【0068】
一実施形態では、化合物I形態Dは、約26.8℃の吸熱(開始温度)を含む示差走査熱量測定(DSC)曲線によって特徴付けられる。一実施形態では、化合物I形態Dは、実質的に図8(下側の線)に示されるDSCによって特徴付けられる。
【0069】
化合物Iの任意の形態(例えば、形態Aまたは形態C)の微粒子化は、標準的な微粒子化手順、例えばジェットミルを用いて成し遂げられる。微粒子化後に得られる粒径は、多くの因子、例えば、初期粒径、微粒子化装置内への通過回数、供給速度、供給圧、ミル圧力などによって決まる。いくつかの実施形態では、微粒子化化合物I(例えば、微粒子化形態A、微粒子化形態C)は、約1μm~約50μm、1μm~約40μm、1μm~約30μm、約1μm~約20μm、約5μm~約20μm、約5μm~約15μm、または約6μm~約9μmの範囲の粒径分布d90を有する。いくつかの実施形態では、微粒子化化合物I(例えば、微粒子化形態A、微粒子化形態C)は、10μm未満のd90を有する。
【0070】
他のいくつかの実施形態では、化合物I(例えば、形態A、形態C)は、ナノミリングされ、1μm未満のd90を有する。他のいくつかの実施形態では、化合物I(例えば、形態A、形態C)は、ナノミリングされ、約1μm~約1nmの範囲の粒径分布d90を有する。いくつかの実施形態では、化合物I(例えば、形態A、形態C)は、ナノミリングされ、0.5μm(500nm)未満のd90を有する。いくつかの実施形態では、化合物I(例えば、形態A、形態C)は、ナノミリングされ、0.1μm(100nm)未満のd90を有する。いくつかの実施形態では、化合物I(例えば、形態A、形態C)は、ナノミリングされ、0.01μm(10nm)未満のd90を有する。
【0071】
3.医薬組成物、キット及び投与様式
本明細書に記載の化合物Iの形態は、医薬組成物中に入った状態で投与され得る。したがって、本明細書に提供されるのは、本明細書に記載の化合物Iの形態の1つ以上、ならびに1つ以上の薬学的に許容されるビヒクル、例えば、担体、アジュバント及び賦形剤を含む、医薬組成物である。好適な薬学的に許容されるビヒクルには、例えば、不活性固体希釈剤及び充填剤、希釈剤、例えば無菌水溶液及び様々な有機溶媒、透過促進剤、可溶化剤、ならびにアジュバントが含まれ得る。そのような組成物は、医薬分野でよく知られている方法で調製される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Co.,Philadelphia,Pa.17th Ed.(1985)、及びModern Pharmaceutics,Marcel Dekker,Inc.3rd Ed.(G.S.Banker & C.T. Rhodes,Eds.)を参照されたい。医薬組成物は、単独で、または他の治療剤と組み合わせて投与され得る。
【0072】
いくつかの実施形態は、治療的有効量の本明細書に記載の化合物Iの固体形態を含む医薬組成物に関する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、化合物I形態A、化合物I形態B、化合物I形態C及び化合物I形態Dから選択される固体形態;ならびに1つ以上の薬学的に許容される担体を含む。
【0073】
いくつかの実施形態は、本明細書に記載の化合物Iの結晶質形態または非晶質形態、及び1つ以上の薬学的に許容される担体を含む、医薬組成物に関する。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも95%が、本明細書に記載の結晶質形態にある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも95%が、本明細書に記載の非晶質形態にある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも95%が形態Aにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも95%が形態Bにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも95%が形態Cにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも95%が形態Dにある。
【0074】
一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも97%が、本明細書に記載の結晶質形態または非晶質形態にある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも97%が形態Aにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも97%が形態Bにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも97%が形態Cにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも97%が形態Dにある。
【0075】
一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99%は、本明細書に記載の結晶質形態にある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99%が形態Aにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99%が形態Bにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99%が形態Cにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99%が、非晶質形態、すなわち形態Dにある。
【0076】
一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99.5%が、本明細書に記載の結晶質形態にある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99.5%が形態Aにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99.5%が形態Bにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99.5%が形態Cにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99.5%が、非晶質形態、すなわち形態Dにある。
【0077】
一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99.9%が、本明細書に記載の結晶質形態にある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99.9%が形態Aにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99.9%が形態Bにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99.9%が形態Cにある。一実施形態では、医薬組成物は化合物Iを含み、化合物Iの少なくとも99.9%が、非晶質形態、すなわち形態Dにある。
【0078】
いくつかの実施形態では、組成物は、薬学的に許容される担体または賦形剤、例えば、充填剤、結合剤、崩壊剤、滑剤、滑沢剤、錯化剤、可溶化剤及び界面活性剤を含むが、これらは、特定の経路による化合物の投与を容易にするために選択され得る。担体の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、例えば、ラクトース、グルコースまたはスクロース、数種類の澱粉、セルロース誘導体、ゼラチン、脂質、リポソーム、ナノ粒子などが挙げられる。担体としてはまた、溶媒または懸濁液としての生理学的に適合する液体も挙げられ、これには、例えば、注射用水(WFI)の無菌溶液、生理食塩水、デキストロース溶液、ハンクス液、リンガー液、植物油、鉱油、動物油、ポリエチレングリコール、流動パラフィンなどが含まれる。賦形剤にはまた、例えば、コロイド状二酸化ケイ素、シリカゲル、タルク、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、三ケイ酸マグネシウム、粉末セルロース、大型結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム、安息香酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ステアリン酸、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリルフマル酸ナトリウム、syloid、stearowet C、酸化マグネシウム、澱粉、澱粉グリコール酸ナトリウム、モノステアリン酸グリセリル、ジベヘン酸グリセリル、パルミトステアリン酸グリセリル、水添植物油、水添綿実油、ヒマシ油 鉱油、ポリエチレングリコール(例えば、PEG4000~8000)、ポリオキシエチレングリコール、ポロキサマー、ポビドン、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム、アルギン酸、カゼイン、メタクリル酸ジビニルベンゼンコポリマー、ドクサートナトリウム、シクロデキストリン(例えば、2-ヒドロキシプロピル-.デルタ.-シクロデキストリン)、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、セトリミド、TPGS(ポリエチレングリコール1000コハク酸d-アルファ-トコフェロール、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールの二脂肪酸エステル、またはポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンエステルTween(登録商標))、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、例えば、脂肪酸、例えば、オレイン酸、ステアリン酸またはパルミチン酸からのソルビタン脂肪酸エステル、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、マルトース、ラクトース、ラクトース一水和物または噴霧乾燥ラクトース、スクロース、フルクトース、リン酸カルシウム、二塩基性リン酸カルシウム、三塩基性リン酸カルシウム、硫酸カルシウム、デキストレート、デキストラン、デキストリン、デキストロース、酢酸セルロース、マルトデキストリン、シメチコン、ポリデキストロース、キトサン、ゼラチン、HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、HPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、ヒドロキシエチルセルロースなども含まれ得る。
【0079】
医薬製剤は、単位用量あたりの所定量の有効成分を含有する単位用量形態で提供され得る。そのような単位は、治療されようとしている病状、投与経路、ならびに患者の年齢、体重及び病状に応じて、例えば、0.5mg~1g、または1mg~700mg、または5mg~100mgの、(任意の形態で、遊離酸、溶媒和物(水和物を含む)または塩としての)本開示の化合物を含有し得る。いくつかの実施形態では、単位投薬量の製剤は、1日用量、週用量、月用量、小用量またはその適切な小部分の、有効成分を含有するものである。さらには、そのような医薬製剤は、薬学分野でよく知られている方法のいずれかによって調製され得る。
【0080】
本明細書に記載の化合物I及びその形態のいずれかは、通常、医薬組成物の形態で投与される。したがって、本明細書に記載の化合物I及びその形態のいずれか、その薬学的に許容される塩、立体異性体、立体異性体の混合物またはプロドラッグの1つ以上、ならびに担体、アジュバント及び賦形剤から選択される1つ以上の薬学的に許容されるビヒクルを含有する、医薬組成物も、本明細書に提供される。好適な薬学的に許容されるビヒクルとしては、例えば、不活性固体希釈剤及び充填剤、希釈剤、例えば無菌水溶液及び様々な有機溶媒、透過促進剤、可溶化剤、ならびにアジュバントが挙げられる。そのような組成物は、医薬分野でよく知られている方法で調製される。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mace Publishing Co.,Philadelphia,Pa.17th Ed.(1985)、及びModern Pharmaceutics,Marcel Dekker,Inc.3rd Ed.(G.S. Banker & C.T.Rhodes,Eds.)を参照されたい。
【0081】
医薬組成物は、単回あるいは複数回の用量で投与され得る。医薬組成物は、例えば、直腸、頬側、鼻腔内及び経皮経路を含めた、様々な方法によって投与され得る。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、動脈内注射によって、静脈内に、腹腔内に、非経口的に、筋肉内に、皮下に、経口的に、局所に、または吸入剤として、投与され得る。
【0082】
投与のための1つの様式は、非経口的なもの、例えば、注射によるものである。注射による投与のために本明細書に記載の医薬組成物が組み込まれ得る形態としては、例えば、水性もしくは油性懸濁液、またはゴマ油、トウモロコシ油、綿実油もしくは落花生油、及びエリキシル、マンニトール、デキストロースを使用したエマルジョン、または無菌水溶液、ならびに類似する医薬ビヒクルが挙げられる。
【0083】
経口投与は、本明細書に記載の化合物の投与のためのもう1つの投与経路であり得る。投与は、例えば、カプセル剤または腸溶性コーティング錠剤によるものであり得る。少なくとも1つの、本明細書に記載の化合物、またはその薬学的に許容される塩、同位体濃縮類縁体、立体異性体、立体異性体の混合物もしくはプロドラッグを含む、医薬組成物を作る際に、有効成分は通常、賦形剤で希釈される、及び/またはカプセル、予包剤、紙もしくは他の容器の形態であり得るような担体の中に封入される。賦形剤が希釈剤としての役割を果たす場合、それは、有効成分のためのビヒクル、担体または媒体として作用するものである固体、半固体または液体材料の形態にあり得る。したがって、組成物は、錠剤、丸剤、散剤、口内錠、予包剤、カシェ剤、エリキシル剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤、(固体としての、または液体媒体で作った)エアゾール剤、膏剤、軟及び硬ゼラチンカプセル剤、無菌注射液剤、ならびに無菌包装散剤の形態にあり得る。いくつかの実施形態では、経口送達は、スティックパックによって成し遂げられ得る。スティックパックは、散剤/顆粒剤/ゲル剤に適した小型の携帯型単位用量形態を提供する。スティックパックの成分は、食品または水へ振り掛けられ得るかまたはそれと混合され得る。他の実施形態では、経口送達は、食品または水へ振り掛けられ得るかまたはそれと混合され得る散剤/顆粒剤/ゲル剤が入った予包剤またはパウチ剤の使用によって成し遂げられ得る。
【0084】
好適な賦形剤のいくつかの例としては、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、澱粉、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、トラガカント、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微結晶セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、無菌水、シロップ及びメチルセルロースが挙げられる。製剤は、滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム及び鉱油;湿潤剤;乳化剤及び懸濁化剤;保存剤、例えばヒドロキシ安息香酸メチル及びプロピル;甘味剤;ならびに着香剤をさらに含み得る。
【0085】
本明細書に記載の化合物Iの形態の少なくとも1つを含む組成物は、当技術分野で知られている手順を採用することによって、対象への投与の後の有効成分の速やかな持続放出または遅延放出を提供するように製剤化され得る。経口投与のための放出制御薬送達システムとしては、ポリマーで被覆された貯留部または薬物-ポリマーマトリックス製剤を収容した浸透圧ポンプシステム及び溶解システムが挙げられる。本明細書に開示される方法に使用するための別の製剤は、経皮送達装置(「パッチ」)を採用する。そのような経皮パッチは、制御された量での本明細書に記載の化合物の連続的または断続的な輸注を提供するために使用され得る。医薬剤の送達のための経皮パッチの構築及び使用は当技術分野でよく知られている。そのようなパッチは、医薬剤の連続的な、脈動的な、または要求に応じた送達のために構築され得る。
【0086】
錠剤などの固体組成物を調製するためには、主たる有効成分は、医薬賦形剤と混合されて、本明細書に記載の化合物I及びその形態のいずれかの均一混合物を含有する固体予備配合組成物を形成し得る。これらの予備配合組成物を均一であると言うとき、有効成分は、等しく有効である単位剤形、例えば、錠剤、丸剤及びカプセル剤に組成物が容易に細分され得るように、組成物の全体にわたって一様に分散したものであり得る。
【0087】
本明細書に記載の化合物I及びその形態のいずれかの錠剤または丸剤は、長期作用の利益をもたらす剤形を提供するように、または胃の酸性環境から防御するように、被覆あるいは複合化され得る。例えば、錠剤または丸剤は内側投薬量及び外側投薬量成分を含み得、後者は、前者を覆った外皮の形態にある。2つの成分は、胃内での分解に耐えて内側成分が完全な状態で十二指腸を通過するかまたは放出が遅れるのを可能にする役割を果たす腸溶性層によって分離され得る。様々な材料がそのような腸溶性層またはコーティングのために使用され得、そのような材料には、複数の高分子酸、ならびに高分子酸とシェラック、セチルアルコール及び酢酸セルロースのような材料との混合物が含まれ得る。
【0088】
吸入または吹送のための組成物には、薬学的に許容される水性もしくは有機溶媒またはその混合物で作った液剤及び懸濁剤、ならびに散剤が含まれ得る。液体または固体組成物は、本明細書に記載される好適な薬学的に許容される賦形剤を含有し得る。いくつかの実施形態では、組成物は、局所または全身作用のために経口または経鼻呼吸経路によって投与される。他の実施形態では、薬学的に許容される溶媒で作った組成物が不活性ガスの使用によって噴霧され得る。噴霧された液剤は、噴霧装置から直接吸入され得るか、または噴霧装置が顔面マスクテントもしくは間欠的陽圧呼吸器に取り付けられ得る。液剤、懸濁剤または散剤組成物は、製剤を適切な様式で送達する装置から、いくつかの実施形態では経口的または経鼻的に、投与され得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の任意の組成物は、透過促進剤をさらに含み得る。
【0090】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載される化合物I及びその形態のいずれか、または本明細書に記載されるその医薬組成物のいずれかを含む、キットまたは容器を提供する。いくつかの実施形態では、化合物または組成物は例えばバイアル、瓶、フラスコに入れられ、これが例えば箱、封筒または袋でさらに梱包され得る;化合物または組成物は米国食品医薬品局または類似する規制当局によって哺乳動物、例えばヒトへの投与が承認される;化合物または組成物は、ブロモドメインタンパク質媒介疾患または病状のための、哺乳動物、例えばヒトへの投与が承認される;本明細書に開示されるキットまたは容器は、使用説明書、及び/または化合物もしくは組成物がブロモドメイン媒介疾患もしくは病状のための哺乳動物、例えばヒトへの投与に適しているかもしくはそれが承認されているという他の指示書を含み得る;ならびに化合物または組成物は、単位用量または単回用量形態、例えば、単回用量丸剤、カプセル剤などの状態で包装され得る。
【0091】
投与される様々な化合物の量は、因子、例えば、化合物活性(in vitro、例えば標的に対する化合物IC50、または動物有効性モデルにおけるin vivo活性)、動物モデルでの薬物動態結果(例えば、生物学的半減期または生物学的利用率)、対象の年齢、サイズ及び体重、ならびに対象に関連する障害を考慮して、標準的手法によって決定され得る。これら及び他の因子の重要性は当業者によく知られている。通常、用量は、約0.01~50mg/kg被治療対象、また、約0.1~20mg/kg被治療対象の範囲内にあるであろう。複数回用量を用いてもよい。
【0092】
4.投薬
任意の特定の対象のための、本明細書に記載の化合物I及びその形態のいずれかの特異的用量レベルは、採用される特異的化合物の活性、年齢、体重、全身健康状態、性別、食事、投与の時間、投与経路及び排出速度、薬物併用、ならびに療法を受けている対象における特定の疾患の重症度を含めた様々な因子によって決まるであろう。例えば、投薬量は、対象の体重1キログラムあたりの本明細書に記載の化合物のミリグラム数(mg/kg)として表され得る。約0.1~150mg/kgの投薬量が適切であり得る。いくつかの実施形態では、約0.1~100mg/kgが適切であり得る。他の実施形態では、0.5~60mg/kgの投薬量が適切であり得る。いくつかの実施形態では、1日あたりで体重1kgあたり約0.0001~約100mgの投薬量、体重1kgあたり約0.001~約50mgの化合物、または体重1kgあたり約0.01~約10mgの化合物が適切であり得る。対象の体重による正規化は、小児及び成人の両方において薬物を使用するときに起こるような大幅なサイズ違いの対象の間で投薬量を調整する場合、またはイヌなどの非ヒト対象での有効投薬量をヒト対象に適する投薬量に換算する場合に特に有用である。
【0093】
5.適応疾患及びEIF2Bの調節
真核生物開始因子2Bは、真核生物開始因子2上でのグアノシン-5’-二リン酸(GDP)とグアノシン-5’-三リン酸(GTP)との交換を触媒するグアニンヌクレオチド交換因子(GEF)として機能し、それによって、GTPに結合した真核生物開始因子2が開始メチオニン転移RNAに結合してタンパク質合成を開始することを可能にする。
【0094】
真核生物開始因子2Bと真核生物開始因子2との相互作用は、統合的ストレス応答(ISR)経路において重要な役割を果たす。この経路の活性化は、ATF4(活性化転写因子4)発現及びストレス顆粒形成を引き起こす一因となる。異常なISR活性化は複数の神経変性疾患においてみられ、RNA結合/ストレス顆粒タンパク質TAR DNA結合タンパク質(TARDBP)、別名TDP43によって特徴付けられる病理との強い機能的関連性を有する。eIF2Bの活性化は、ISR、及びISR依存的ストレス顆粒形成を阻害し、神経保護的であることが複数の疾患モデルにおいて分かっている。
【0095】
真核生物開始因子2B活性の障害は、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、アルツハイマー病、白質消失病(VWMD)及び前頭側頭型認知症を含めた様々な神経変性疾患に関係があるとされるISR経路の活性化と相関している。
【0096】
タンパク質翻訳を障害する、EIF2Bにおける機能喪失変異は、進行性神経変性症候群を招き得る。いくつかの神経変性疾患では、小胞体におけるミスフォールドタンパク質の蓄積に対する細胞応答の一部として非適応的なPERK活性化及びEIF2B阻害が起こる(Stutzbach L.D.et al.,2013,Acta Neuropathol Commun.Jul 6;1(1):31)。結果として生じるタンパク質合成不足は、シナプス機能障害及び記憶障害の誘因となる。EIF2B阻害はまた、ストレス顆粒形成及び病原性タンパク質凝集とも関連付いている。
【0097】
EIF2B活性を回復させることが、プリオン病、前頭側頭型認知症及びALSの前臨床モデルにおいて神経変性を防御するために示された(Smith H.L.and Mallucci,G.R.,2016,Brain.139(Pt 8):2113-21.Epub 2016 May 11)。
【0098】
特定の実施形態では、化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれかは、がん性細胞増殖性障害及び、非がん性細胞増殖性障害の両方を含む細胞増殖性障害を治療するために使用することができる。細胞増殖性障害の治療として、細胞増殖の急速な増殖などの阻害を含み得るが、これに限定されない。化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれかは、がん腫、肉腫、リンパ腫、白血病、及び胚細胞腫瘍などを含むが、これらに限定されない、あらゆるタイプのがんを治療するために使用することを企図している。例示的ながんとして、副腎皮質細胞癌、肛門癌、虫垂癌、基底細胞癌、胆管癌、膀胱癌、骨癌、骨肉腫または悪性線維性組織球腫、脳腫瘍(例えば、脳幹神経膠腫、星状細胞腫(例えば、小脳、脳など)、奇形腫様/棒状腫瘍、中枢神経系胚性腫瘍、悪性神経膠腫、頭蓋咽頭腫、上衣芽腫、上衣腫、髄芽腫、髄質上皮腫、中間分化の松果体実質腫瘍、小脳テント上の未分化神経外胚葉性腫瘍、及び/または松果体芽腫、視覚経路及び/または視床下部神経膠腫、脳及び脊髄腫瘍など)、乳癌、気管支腫瘍、カルチノイド腫瘍(例えば、胃腸癌など)、原発不明のがん腫、子宮頸癌、脊索腫、慢性骨髄増殖性疾患、結腸癌、大腸癌、胚性腫瘍、中枢神経系癌、子宮内膜癌、上衣腫、食道癌、ユーイングファミリーの腫瘍、眼癌(例えば、眼内黒色腫、網膜芽細胞腫など)、胆嚢癌、胃癌、消化管腫瘍(例えば、カルチノイド腫瘍、間質腫瘍(消化管間質腫瘍)、間質細胞腫など)、胚細胞腫(例えば、頭蓋外腫瘍、性腺外腫瘍、卵巣腫瘍など)、妊娠性絨毛性腫瘍、頭頸部癌、肝細胞癌、下咽頭癌、視床下部及び視覚経路神経膠腫、眼内黒色腫、膵島細胞腫、カポジ肉腫、腎臓癌、大細胞腫瘍、喉頭癌(例えば、急性リンパ芽球性、急性骨髄性等)、白血病(例えば、骨髄性、急性骨髄性、急性リンパ芽球性、慢性リンパ球性、慢性骨髄性、多発性骨髄性、有毛細胞など)、口唇癌及び/または口腔癌(oral cavity cancer)、肝臓癌、肺癌(例えば、非小細胞、小細胞など)、リンパ腫(例えば、エイズ関連、バーキット、皮膚T細胞、ホジキン、非ホジキン、原発性中枢神経系、皮膚T細胞、ワルデンストレームマクログロブリン血症など)、骨及び/または骨肉腫の悪性線維性組織球腫、髄芽腫、髄質上皮腫、メルケル細胞癌、中皮腫、転移性頸部扁平上皮癌、口腔癌(mouth cancer)、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患(例えば、骨髄増殖性疾患、慢性など)、鼻腔及び/または副鼻腔癌、鼻咽頭癌、神経芽細胞腫、口腔癌(oral cancer);口腔癌(oral cavity cancer)、口腔咽頭癌;骨肉腫及び/または骨の悪性線維性組織球腫;卵巣癌(例えば、卵巣上皮癌、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍など)、膵臓癌(例えば、膵島細胞腫瘍など)、乳頭腫症、副鼻腔及び/または鼻腔癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌(pharyngeal cancer)、褐色細胞腫、中間分化の松果体実質腫瘍、松果体芽細胞腫及び小脳テント上の未分化神経外胚葉性腫瘍、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、胸膜肺芽腫、前立腺癌、直腸癌、腎細胞癌、移行細胞癌、第15染色体上のnut遺伝子が関与する気道癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺癌、肉腫(例えば、ユーイングファミリーの腫瘍、カポジ、軟部組織、子宮など)、セザリー症候群、皮膚癌(例えば、非黒色腫、黒色腫、メルケル細胞など)、小腸癌、扁平上皮癌、潜在性原発を伴う頸部扁平上皮癌、転移性、胃癌、小脳テント上の未分化神経外胚葉性腫瘍、精巣癌、咽頭癌(throat cancer)、胸腺腫及び/または胸腺癌、甲状腺癌、腎臓、骨盤及び/または尿管の移行細胞癌(例えば、絨毛性腫瘍、未知の原発部位癌、尿道癌、子宮癌、子宮内膜、子宮肉腫など)、膣癌、視覚伝導路及び/または視床下部神経膠腫、外陰癌、ウィルムス腫瘍等があるが、これらに限定されない。非がん性細胞増殖性障害の例として、線維腺腫、腺腫、乳管内乳頭腫、乳頭腺腫、腺疾患、線維嚢胞性疾患、または乳房の変化、形質細胞増殖障害(PCPD)、再狭窄、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、筋線維腫症、線維性過誤腫、顆粒リンパ球増殖性障害、前立腺の良性過形成、重鎖疾患(HCD)、リンパ増殖性障害、乾癬、特発性肺線維症、強皮症、肝硬変、IgA腎症、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、膜増殖性糸球体腎炎、血管腫、眼内の血管、及び非血管の増殖性疾患などがあるが、これらに限定されない。
【0099】
特定の実施形態では、化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれかを、肺損傷及び/または肺炎を治療するために使用することができる。
【0100】
特定の実施形態では、化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれかを、がん、前がん性症候群、及び、活性化した折り畳みタンパク質応答経路に関連する疾患/傷害、例えば、アルツハイマー病、神因性疼痛、脊髄損傷、外傷性脳損傷、虚血性脳卒中、脳卒中、パーキンソン病、糖尿病、メタボリック症候群、代謝障害、ハンチントン病、クロイツフェルト-ヤコブ病、致命的な家族性不眠症、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー症候群、及び、関連するプリオン病、筋萎縮性側索硬化症、進行性核上性麻痺、心筋梗塞、心血管疾患、炎症、臓器線維症、肝臓の慢性及び急性の疾患、脂肪肝疾患、肝脂肪症、肝線維症、肺の慢性及び急性疾患、肺線維症、腎臓の慢性及び急性疾患、腎線維症、慢性外傷性脳症(CTE)、神経変性、認知症、前頭側頭型認知症、タウオパチー、ピック病、ネイマンピック病、アミロイド症、認知障害、アテローム性動脈硬化症、眼疾患、不整脈の治療、臓器移植、及び移植のための臓器の輸送のために使用することができる。
【0101】
実施形態では、化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれかを使用して、がん、アルツハイマー病、脳卒中、1型糖尿病、パーキンソン病、ハンチントン病、筋萎縮性側索硬化症、心筋梗塞、心血管疾患、アテローム性動脈硬化症、不整脈、または加齢黄斑変性症の重症度を治療または軽減することができる。
【0102】
特定の実施形態では、化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれかを使用して、神経因性疼痛を治療することができる。
【0103】
特定の実施形態では、化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれかを使用して、眼疾患/血管新生の重症度を治療または軽減することができる。特定の実施形態では、眼疾患として、血管漏出(例えば、虹彩ルベオーシス、血管新生緑内障、翼状片、血管新生緑内障、濾過胞、結膜乳頭腫などの閉塞性または炎症性網膜血管疾患のあらゆる浮腫または新生血管)、脈絡膜新生血管(例えば、血管新生加齢黄斑変性症(AMD)、近視、ブドウ膜炎の既往歴、外傷、または特発性)、黄斑浮腫(例えば、術後黄斑浮腫、黄斑浮腫に続発する網膜及び/または脈絡膜炎症、糖尿病に続発する黄斑浮腫、及び、網膜血管閉塞性疾患に続発する黄斑浮腫を含むブドウ膜炎(すなわち、枝状及び中心網膜静脈閉塞症))、糖尿病による網膜新生血管(例えば、網膜静脈閉塞、ブドウ膜炎、頸動脈疾患からの眼虚血症候群、眼または網膜動脈閉塞、鎌状赤血球網膜症、その他の虚血性または閉塞性血管新生網膜症、未熟児網膜症、またはエール病)、及び、遺伝性疾患(例えば、フォンヒッペルリンダウ症候群)がある。特定の実施形態では、血管新生加齢黄斑変性症は、湿性加齢黄斑変性症である。特定の実施形態では、新生血管加齢黄斑変性症は、乾性加齢黄斑変性症であり、患者は、湿性加齢黄斑変性症を発症するリスクが高い、ことが特徴である。
【0104】
特定の実施形態では、化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれかを、ウイルス感染を治療するために(例えば、ウイルスタンパク質合成の開始を予防するために)使用することができる。本明細書に開示した化合物を使用して治療することができる例示的なウイルスとしては、限定をするものではないが、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、トガウイルス科(例えば、脳炎ウイルス、黄熱病ウイルス、風疹ウイルスなど)、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルス)、パラミクソウイルス科(例えば、呼吸器合胞体ウイルス、麻疹ウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、パラインフルエンザウイルスなど)、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルス)、コロナウイルス科、ブニヤウイルス科、フラビウイルス科、フィロウイルス科、アリーナウイルス科、ブニヤウイルス科、及び、レトロウイルス科(例えば、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)など)、パポバウイルス科(例えば、パピローマウイルス)、アデノウイルス科(例えば、アデノウイルス)、ヘルペスウイルス科(例えば、単純ヘルペスウイルス)、及び、ポックスウイルス科(例えば、天然痘ウイルス)がある。特定の実施形態では、ウイルス感染は、B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、及び/またはHIVが引き起こす。
【0105】
特定の実施形態では、化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれかを、ウイルス感染に関連する障害を治療するために使用することができる。このような障害として、限定をするものではないが、神経学的症状(例えば、脳炎、髄膜脳炎、麻痺、脊髄症、神経障害、無菌性髄膜炎、片麻痺、認知症、嚥下障害、筋肉協調の欠如、視力障害、昏睡など)、消耗症状(例えば、炎症性細胞浸潤、血管の血管周囲への細胞浸潤、脱髄、壊死、反応性神経膠症など)、胃腸炎症状(例えば、下痢、嘔吐、痙攣など)、肝炎症状(悪心、嘔吐、右上腹部痛、肝酵素値上昇(例えば、AST、ALTなど)、黄疸など)、出血熱症状(例えば、頭痛、発熱、悪寒体痛、下痢、嘔吐、めまい、錯乱、異常行動、咽頭炎、結膜炎、赤面、赤首、出血、臓器不全など)、発がん性症状(例えば、肉腫、白血病など、ならびに「まれな」悪性腫瘍、例えば、カポジ肉腫、口腔毛状白板症、リンパ腫など)、免疫不全症状(例えば、日和見感染症、消耗、まれな悪性腫瘍、神経疾患、発熱、下痢、皮膚発疹など)、病変(例えば、疣贅(例えば、一般的な疣贅、扁平疣贅、深部角質増殖性掌蹠疣贅、表在モザイク型掌蹠疣贅等))、表皮異形成、粘膜病変、潰瘍、及び全身症状(例えば、発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛、骨痛、関節痛、咽頭炎、扁桃炎、副鼻腔炎、中耳炎、気管支炎、肺炎、気管支肺炎、吐き気、嘔吐、唾液分泌の増加、発疹、黄斑、リンパ節腫脹、関節炎、潰瘍、光線過敏症、体重減少、過敏性、落ち着きのなさ、不安、昏睡、死亡など)がある。
【0106】
特定の実施形態では、化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれかを使用して、1つ以上の変異体及び/または野生型タンパク質の望ましくない合成及び/または異常な蓄積を特徴とする障害を治療することができる。翻訳開始を阻害して、次いで、タンパク質折り畳み機構への負荷を減らすことができ、したがって、障害の重症度を低減し得る本明細書に開示した化合物を企図している。1つ以上の変異型及び/または野生型タンパク質の望ましくない合成及び/または異常な蓄積に関連する障害として、限定するものではないが、テイ-サックス病、嚢胞性線維症、フェニルケトン尿症、ファブリー病、アルツハイマー病、ハンチントン病、パーキンソン病、前頭側頭型認知症、コンゴレッド親和性血管障害、プリオン関連障害(すなわち、クロイツフェルト-ヤコブ病などの伝染性海綿状脳症、クールー、致命的な家族性不眠症、スクレイピー、ウシ海綿状脳症など)などがある。
【0107】
化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれか、及び、本明細書に開示した組成物は、プリオン病などの神経細胞死を阻害することができる、ことを企図している。一般的に、この方法は、治療有効量の化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれか、または本明細書に記載した組成物を、必要とする患者に投与することを含む。
【0108】
一部の実施形態では、障害は、神経変性疾患である。用語「神経変性疾患」は、対象の神経系の機能を損なう疾患または状態のことを指す。神経変性疾患の例として、例えば、アレクサンダー病、アルパー病、アルツハイマー病、筋萎縮性側索硬化症、毛細血管拡張性運動失調症、バッテン病(別名、シュピールマイヤー-フォークト-シェーグレン-バッテン病)、ウシ海綿状脳症(BSE)、カナバン病、コケイン症候群、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト-ヤコブ病、前頭側頭型認知症、白質消失病、ゲルストマン-シュトラウスラー-シャインカー症候群、ハンチントン病、HIV-関連認知症、ケネディ病、クラッベ病、クールー、レビー小体型認知症、マシャド-ジョセフ病(脊髄小脳失調症3型)、多発性硬化症、多系統萎縮症、ナルコレプシー、神経ボレリア症、パーキンソン病、ペリゼウス-メルツバッハー病、ピック病、原発性側索硬化症、プリオン病、レフサム病、サンドホフ病、シルダー病、悪性貧血に続発する亜急性脊髄連合変性症、統合失調症、脊髄小脳失調症(様々な特徴を有する複数のタイプ)、脊髄性筋萎縮症、スティール-リチャードソン-オルシェフスキー病、インスリン抵抗性または脊髄癆がある。
【0109】
その他の実施形態は、治療法における本明細書に記載した本開示の化合物I、及び、その形態のいずれかの使用を含む。一部の実施形態は、神経変性疾患の治療でのそれらの使用を含む。
【0110】
その他の実施形態では、本明細書に記載した本開示の化合物I、及び、その形態のいずれかを使用して、アルツハイマー病、パーキンソン病、白質消失病、認知症、またはALSの治療することを提供する。一部の実施形態では、認知症は、前頭側頭型認知症である。
【0111】
その他の実施形態では、認知記憶を改善するために、本明細書に記載した本開示の化合物I、及び、その形態のいずれかを使用することを提供する。
【0112】
その他の実施形態では、本明細書に記載した本開示の化合物I、及び、その形態のいずれかを使用して、神経変性疾患を治療するための医薬の製造をすることを提供する。
【0113】
その他の実施形態では、本明細書に記載した本開示の化合物I、及び、その形態のいずれかを使用して、アルツハイマー病、パーキンソン病、白質消失病、認知症、またはALSを治療するための医薬の製造をすることを提供する。
【0114】
6.生化学的アッセイ
細胞ストレスは、4つの真核生物開始因子2αキナーゼの1つを介する統合ストレス応答経路の活性化を招き、かつ全体的な翻訳を停止させる一方で、細胞ストレスに対する応答に重要なATF4(転写因子4を活性化する)などの選択した転写産物の翻訳を可能にする。通常の状態では、ATF4の5’UTRの小さなオープンリーディングフレーム(ORF)がリボソームを占有し、及びATF4のコード配列の翻訳を妨げるが、ストレス条件下では、リボソームは、これらの過去の上流ORFをスキャンし、及び、ATF4のコード配列で優先的に翻訳を開始する。このようにして、ATF4の翻訳、ひいてはタンパク質レベルは、ISR経路活性化の読み出しレベルとなる。したがって、uORFの融合と、ナノルシフェラーゼのような一般的な細胞レポーターに対するATFのコード配列の始まりが、ISR経路活性を、高感度かつハイスループットで読み出すことを可能にする。
【0115】
化合物I、または本明細書に記載したその形態のいずれかは、以下のアッセイにおいて試験し得る。ATF4ナノルシフェラーゼレポーターは、ヒト全長5’非翻訳領域(5’-UTR)と、その開始コドンが欠けているナノルシフェラーゼ(NLuc)コード配列の上流にあるATF4遺伝子のコード配列のごく一部を融合させて構築した。具体的には、ヌクレオチド+1~+364(ATF4転写産物バリアント2(NCBI NM_182810.2)の転写開始部位に対して)は、5’をEcoRI制限酵素部位に隣接させ、及び、3’をBamHI制限酵素部位に隣接させ、合成し、及び、pLVX-EF1a-IRES-Puroレンチウイルスベクター(Clontech)のEcoRI/BamHIクローニング部位にクローニングした。レンチウイルス粒子は、製造業者の指示に従って、Lenti-Xシングルショット(VSV-G、Clontech)で生成をしており、ヒトH4神経膠腫細胞株(ATCC HTB-148)の形質導入に使用した。H4細胞は、1.25μg/mLのプロマイシン、及び、限界希釈で生成したクローン細胞株で選択した。我々は、この細胞株を利用して統合ストレス応答(ISR)アッセイを生成し、発光の読み出しを介して、ISR経路阻害剤の活性を評価した。H4 ATF4-NLuc(クローン17)細胞株を、DMEM +10%ウシ胎児血清において、それぞれ、96ウェルまたは384ウェルに、15,000個または2,50個の細胞の密度で播種する。24時間後、ジメチルスルホキシド(DMSO)で希釈した試験化合物を、摂氏37度で30分間かけて添加し、続いて、50umの亜ヒ酸ナトリウム水溶液で、ISR経路をさらに6時間活性化する。Nano Gloルシフェラーゼ試薬(N1150、Promega)を、製造業者の指示に従って加え、及び、発光シグナル(ATF4翻訳のレベル、したがって、ISR経路活性化に対応する)は、発光検出機能を備えた標準プレートリーダーで読み取られる。化合物Iは、このアッセイにおいて、1μM未満のIC50を示す。
【0116】
特定の実施形態では、本開示は、本明細書に記載した疾患または状態を治療するための医薬の製造において、化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれか、または本明細書に記載したその医薬組成物のいずれかの使用を提供する。その他の実施形態では、本開示は、本明細書に記載した化合物I、及び、本明細書に記載したその形態のいずれか、または本明細書に記載したその医薬組成物のいずれかを、本明細書に記載した疾患または状態を治療において使用するために提供する。
【実施例
【0117】
機器技術
X線粉末回折
標準的なXRPDパターンは、Bruker D8 Advance回折計を使用して得た。X線源は、40kV及び40mAで作動したCu管である。軸方向ソラーは、4.1°であり、及び発散スリットは、0.6mmであった。粉末試料は、試料表面を平坦にするために手動光圧を使用して、ゼロバックグラウンドSiホルダーで調製した。それぞれの試料は、3~45°2θの有効ステップサイズ0.02°2θと20秒の曝露時間で分析した。XRPD測定期間が長くなると、条件は異なった:軸方向ソラーは、2.5°であった;発散スリットは、0.2mmであった;ステップサイズは、0.01°であった;露光時間は、6秒であった。
【0118】
実験XRPDを、以下のパラメーターを使用してPANa1ytical X’Pert粉末回折計で回収した。
【表2】
【0119】
示差走査熱量測定及び熱重量分析
TGA特徴決定は、TA Instruments Discovery 55で実施した。計量用天秤を、標準重量を使用して校正し、及び、温度校正を、ニッケルを使用して行った。窒素パージは、天秤で毎分40mL、及び、炉で毎分60mLにて行った。それぞれの試料を、予めタール処理した白金パンに入れ、及び25℃~300℃まで、10℃/分の速度で加熱した。DSC分析は、TA Instruments Discovery 2500で実施した。機器温度及びセル定数の較正は、インジウムを使用して行った。DSC細胞を、それぞれの分析の間は、毎分60mLの窒素パージ下に保った。試料を、ピンホール付きのTゼロ密閉パンに入れ、25℃~250℃まで、10℃/分の速度で加熱した。
【0120】
動的蒸気収着
DVS分析は、Surface Measurement System DVS Intrinsic分析装置を使用して行った。この機器は、標準重量で校正した。約15~20mgの試料を、分析のためにパンに入れた。試料は、25℃で、10%相対湿度(RH)ステップで、0~95%RH(吸着サイクル)、及び95~0%RH(脱着サイクル)の分析を行った。あるステップから次のステップへの移動は、0.002%の重量変化(dm/dt)の平衡基準を満たした後に行う、または平衡基準が満たされなかった場合は10時間後に移動する。
【0121】
実施例1.化合物Iの合成
2-(4-クロロフェノキシ)-N-[1-(ヒドラジンカルボニル)-3-ビシクロ[1.1.1]ペンタニル]アセトアミド
メチル3-[[2-(4-クロロフェノキシ)アセチル]アミノ]ビシクロ[1.1.1]ペンタン-1-カルボキシレート(270mg,0.87mmol)を含むEtOH(0.25~0.1M)懸濁液に対して、水加ヒドラジン(131mg,2.6mmol)を含むEtOH(3.5mL)を加え、及び、反応混合物を、90℃で、一晩、加熱した。反応混合物を室温にまで冷却すると、生成物が溶液から結晶化することがよくあった。この固形物を、上清を除去して回収した。生成物が結晶化しない場合、溶液を濃縮し、及び、この粗生成物は、後続の工程で使用する上で十分に純粋であった。
LC-MS m/z: = 310.1[M+H]
【0122】
2-(4-クロロフェノキシ)-N-[3-[5-[シス-3-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]-1-ビシクロ[1.1.1]ペンタニル]アセトアミド
2-(4-クロロフェノキシ)-N-[1-(ヒドラジンカルボニル)-3-ビシクロ[1.1.1]ペンタニル]アセトアミド(200mg、0.65mmo1)、3-シス-(トリフルオロメトキシ)シクロブタンカルボン酸(131mg、0.71mmol;8:1~10:1の比率のシス-:トランス-)、及びトリエチルアミン(NEt(0.45mL,3.23mmol)を、EtOAc(2.6mL)に溶解し、及び、T3P溶液(0.58mL、1.94mmol、50%のEtOAc)を加えた。得た反応混合物を、一晩、100℃にまで加熱し、室温にまで冷却し、及び、飽和NaHCO水溶液(10mL)及び、EtOAc(10mL)で希釈した。層を分離し、及び、水層をEtOAc(3×10mL)で抽出した。合わせた有機層を無水MgSOで乾燥し、濾過し、及び減圧下で濃縮した。粗反応混合物を、逆相分取HPLCを使用して精製して、所望の産物を、透明な油状物として送達した。H-NMR(400 MHz;CDCl):δ7.33-7.29(m,2H),7.03(s,1H),6.91-6.87(m,2H),4.76-4.69(m,1H),4.44(s,2H),3.39-3.30(m,1H),2.92-2.84(m,2H),2.74-2.68(m,2H),2.67(s,6H).LC-MS m/z: = 458.20[M+H]
【0123】
あるいは、2-(4-クロロフェノキシ)酢酸(50mg、0.27mmol)、NEt(123mg、1.21mmol)及び、T3P(185mg、0.29mmol、純度50%)の混合物を含むDCM(1mL)を、0℃で、1時間撹拌した。この混合物に対して、0℃で、1-[5-[3-シス-(トリフルオロメトキシ)シクロブチル]-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル]ビシクロ[1.1.1]ペンタン-3-アミンHCl塩(8:1~10:1でシス-ジアステレオマーを好む)(70mg、0.24mmol)を添加した。この混合物を、25℃で、12時間撹拌した。この反応物に、飽和NaHCO水溶液(4mL)を加えた。水相を、DCM(5mL、3mL)で抽出した。合わせた有機相を、ブライン(10mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮して、標記化合物を得た。
【0124】
実施例2.化合物I形態A
化合物I(1.6kg)を、50℃で、イソプロパノール(4.8L)に溶解して、均一な溶液を得た。N-ヘプタン(12L)を、50℃で、反応混合物に添加した。この溶液を、15~20℃に冷却し、及び、30分間撹拌した。懸濁液を、20℃で、12時間撹拌した。懸濁液を濾過し、及び、濾過ケーキを予め混合した溶液(イソプロパノール/n-ヘプタン=3/7.5、v/v、1.0v)及び、n-ヘプタン(1.6L、1.0v)で洗浄した。この濾過ケーキを、真空下、50℃で、12時間乾燥して、形態A(1.05kg)を得た。
【0125】
形態Aは、MeOH、EtOH、IPA、IPAc、EtOAc、THF、MTBE、DCM、CHCl、トルエン、2-MeTHF、及び、EtOAc/アセトン(1:1)、及び/またはそれらのあらゆる組み合わせを含む溶媒に化合物Iを含む溶液の緩慢な蒸発、抗溶媒添加、固形物蒸気拡散、液体蒸気拡散、スラリー、蒸発、徐冷、ポリマー誘導結晶化、粉砕、及び湿度誘導相転移、またはその他の適切な技術などの代替方法によって生成することもできる。
【0126】
代替方法では、20mgの形態D(非晶質)を、0.1mLの2-メトキシエタノールに溶解した。調製して得た澄明な溶液を含むバイアルを、水を含むより大きなバイアル(水雰囲気)に入れて、室温での蒸気拡散を可能にして、形態Aの固形物を生成した。また、形態Aは、ヘプタンの蒸気拡散を介して、形態Dから形態D DCM溶液に調製すること、またはシクロヘキサン蒸気拡散を介して、形態D 1,4-ジオキサン溶液へ調製することもできる。
【0127】
形態Aの微粉化:供給速度=約4~5kg/時;ベンチュリ圧=120psi;ミル圧力=60psi。未微粉化化合物1形態A(d90=420.7um)を、上掲のパラメーターに従って微粉化した。粒度分布を測定したところ、d90は、6.2μmであることが判明した。
【0128】
化合物I形態Aは、XRPD、DSC、TGA、偏光顕微鏡(PLM)、DVS、及び、単結晶X線回折で特徴決定した。XRPDは、単結晶X線回折実験から計算した理論XRPDと一致した。TGAの重量減少は少ないことを示し、及びDSCは127℃付近で単一の鋭い融解を示した。DVSは、形態Aが非吸湿性であり、湿度に曝した後でも形態変化が無いことを示した。PLMで検査したところ、不定形な形状の板状粒子が認められた。
【0129】
ブロック状結晶から好適な単結晶を選択し、及び単結晶X線回折装置で分析した。
【0130】
結晶成長手順
SCXRD特徴決定に使用する形態Aのブロック状単結晶を、DMAc(溶媒)とHO(逆溶剤)の溶媒混合物から液体蒸気拡散によって結晶化した。
【0131】
データ収集
ブロック状結晶試料から回折品質が良好な好適な単結晶を選択し、及びParatone-N(油性凍結保護剤)で包んだ。結晶を、マイラーループ上にランダムな方向に取り付け、119.99Kの窒素気流に浸した。予備検査とデータ収集を、Bruker D8 Venture(CuKα放射線、λ=1.54178Å)回折計で行い、及び、APEX3ソフトウェアパッケージで分析した。データ収集のためのセルパラメーターと配向行列を取得し、及びSAINT(Bruker、V8.37A、2013年以降)APEX3ソフトウェア、3.983°<θ<66.686°の範囲内の9708反射の設定角度を使用したソフトウェアで精査した(最小二乗精密化)。このデータでは、最小回折角(θ)2.639°、及び最大回折角(θ)66.760°のものを収集した。データセットは99.0%完了しており、平均I/σは33.6であり、D min(Cu)は、0.84Åであった。
【0132】
データ整理
フレームをSAINT(Bruker、V8.37A、2013年以降)と統合した。合計で58799の反射を収集しており、その内の7337は独特のものであった。マルチスキャン吸収補正は、SADABS-2014/5(Bruker,2014/5)を使用して行った。この材料の吸収係数μは、この波長では、2.165mm-1であり(λ=1.54178Å)、ならびに、最小透過率及び最大透過率は、0.6197及び0.7528である。Rint値は、強度に基づいて、4.54%であった。
【0133】
単結晶構造の解析と改善点
この構造は、固有相を用いたShelXT構造解法プログラムを使用して空間群P2/cで解析し、及び、OLEX2に含まれるFでの全行列最小二乗法を用いたShelXL(バージョン2017/1)細分化パッケージで精査した。すべての非水素原子を、異方的に精製した。すべての水素原子の位置を幾何学的に計算し、ライディングモデルを使用して精査した。
【0134】
計算したX線粉末回折(XRPD)パターン
計算したXRPDパターンは、水銀プログラム、ならびに単結晶構造からの原子座標、空間群、及び、単位格子パラメーターを使用してCu放射線に関して生成した。
【0135】
単結晶構造図
結晶構造図は、OlEX2及びダイヤモンドで作成した。熱楕円体図は、ORTEP-IIIで作成した。
【0136】
理論XRPDパターン
理論XRPDパターンは、水銀プログラム、ならびに単結晶構造からの原子座標、空間群、及び、単位格子パラメーターを使用してCu放射線に関して生成した。
【表3】
【0137】
SCXRDの特徴決定及び構造分析は、単結晶の結晶系が単斜晶系であり、かつ、空間群がP2/cであることを示唆しており、セルパラメーターは:a=16.8593(8)Å、b=11.0992(5)Å、c=22.4326(10)Å、α=90°、β=96.816(2)°、γ=90°、V=4168.0(3)Aである。式量は、Z=457.83g・mo1-1で、Z=8であり、計算した密度は、1.459g・cmである。単結晶から計算した化合物I形態AのXRPDパターンは、実験的XRPDパターンと一致した。
【0138】
実施例3.化合物I形態B
形態Aの1,4-ジオキサン溶液を、澄明な溶液が得られるまで、20mgを、0.2~1.0mLの1,4-ジオキサンで溶解して調製した。その後、沈殿物が出現するまで、磁気攪拌を維持しながら水を加えた。形態Bは、室温で真空乾燥した後に形態Aに変換した。XRPDデータは、乾燥前のウェットケーキに関して得た。
【0139】
形態Bの不安定性が故に、XRPDだけの特徴決定を行った。調製方法に基づいて、1,4-ジオキサン溶媒和物であると考えられる。図4は、化合物I形態BのX線粉末回折図である。
【0140】
実施例4.化合物I形態C
200gの0.8mmジルコニアビーズ(粉砕媒体)を、DynoMill RLの粉砕シリンダーに入れた。次いで、約50gの形態A材料を、400mLのビヒクル(0.5%.HPMC E5、0.5% PVP K30、0.2% SLSを含む水)に懸濁し、及び、供給ホッパーに加えた。次に、この懸濁液を、d90<500nmのPSD標的が達成(ナノ粉砕)されるまで、3000rpmで、約3時間、及び、2000rpmで、約2時間かけて粉砕を行った。次いで、懸濁液をミルから排出し、及び、ミルを濯ぎ、及び、50mLのビヒクルで2回の循環を改めて行った。次いで、湿式ナノ懸濁液を、マンニトール(1:1のマンニトール:形態A質量比)と混合し、及び以下のパラメーターに従って、ProCepT 4M8Trixを使用して噴霧乾燥した。次いで、噴霧乾燥粉末を、真空下、30℃で、一晩、乾燥させた。
【表4】
【0141】
次いで、2gの上記で生成した噴霧乾燥ナノ懸濁液(SDN)を、5mLの水に懸濁し、及び25℃で、約18時間撹拌した。次いで、固形物を遠心分離によって単離し、及び水で5回濯ぎ、40℃で、真空下で乾燥させ、ならびに形態Cを明らかにしたDSC及びXRPDによって特徴決定を行った。
【0142】
形態Aをナノ粉砕して形態Cを得ることに続いて、上記したように、形態Cは、形態Cが従前に形成した箇所、または従前に形態Cに曝露した箇所で、その他の方法でも得ることができる。このような環境下では、形態Cは、MeOH、EtOH、nPrOH、IPA、アセトン、MIBK、EtOAc、IPAc、ギ酸エチル、ギ酸ブチル、1,4-ジオキサン、ジエチルエーテル、MTBE、2-メトキシエタノール、ジメトキシエタン、アセトニトリル、トルエン、DCM、クロロホルム、及び、THF、及び/またはそれらのあらゆる組み合わせ、抗溶媒添加、固形物蒸気拡散、液体蒸気拡散、スラリー、蒸発、徐冷、ポリマー誘起結晶化、粉砕、及び、湿度誘起相転移、またはその他の適切な技術において、化合物Iの溶液の緩慢な蒸発を含む様々な条件下でも形成することが認められた。
【0143】
形態Cの微粉化:形態Cを播種を含むその他の方法で得た場合、形態Cを、以下のパラメーターを使用して任意に微粉化した:供給速度=約1.5kg/時間;供給圧力=6.0バール;ミル圧力=5.5バール。未微粉化化合物I形態C(d90=90μm)は、これらの記載されたパラメーターに従って、合計で4回通して微粉化して9μmのd90を達成した。1回、2回、3回通した後のd90は、それぞれ、19、13、および10μmであった。微粉化方法は公知であり、ジェットミリング、高剪断湿式ミリング、及び、ボールミリングがあるが、これらに限定されない。
【0144】
形態Cは、XRPD、単結晶X線回折、TGA、DSC、PLM、及び、DVSで特徴決定を行った。XRPDは、結晶構造を明らかにし、及び、計算したXRPDパターンは実験データと一致した。TGAは、重量損失が小さいことを示し、DSCは、約133℃で単一の鋭い溶融を示した。DVS研究は、湿度に曝した後に、重量変化及び多形変化が無いことを示した。PLMは、棒状の粒子形態を示した。データは、無水物形態として存在する形態Cと一致する。
【0145】
結晶成長手順
飽和形態A IPA/水溶液の調製の間に、溶液を冷却した後に、結晶性の高い形態C結晶が得た。IPA/水溶液を冷却して調製した結晶の融点は、約133.8℃である。この方法で得た結晶は、結晶性の高い形態Cである。大きさが、0.1×0.08×0.05mmの大きさの結晶を、SCXRDに使用した。
【0146】
単結晶X線回折法(SCXRD)
SCXRDは、Rigaku SuperNova回折計を使用して回収した。X線源は、Cu管であり、50kV及び0.8mAで動作する。適切な単結晶を選択し、及びガラス繊維上に置いた。結晶は、データを収集している間に223Kの安定した温度に保った。データは、フレームあたり1.0°のωスキャンを使用して、2.0/8.0秒間測定した。予備調査とデータ収集を行って、CrysAlisProソフトウェアパッケージで分析した。データ収集のためのセルパラメーターと配向行列は、4.3550°<θ<75.9450°の範囲で、8555反射の設定角度を使用して、CrysAlisProソフトウェアで取得及び精査した(最小二乗精密化)。これらのデータは、最小回折角(θ)4.37°及び、最大回折角(θ)76.05°に対して収集した。最終的なデータの完全度は、97.50%であり、平均I/σは20.3、D分(Cu)は0.79Åであった。
【0147】
データ整理
フレームは、CrysAlisPro(Rigaku OD,2018)と統合した。合計で17775の反射を収集し、その内の8457が独特のものであった。マルチスキャン吸収補正は、SCALE3 ABSPACKで実装している球面調和関数を使用して実行した。この材料の吸収係数μは、2.170mm-1であり、最小及び最大透過率は、0.82248及び1.00000である。強度に基づいたRint値は、3.95%であった。
【0148】
単結晶構造の解析と改善点
この構造は、直接解法を使用するXS(Sheldrick,2008)構造解プログラムを使用して空間群P21/cにおいて、グラフィカルインターフェースとしてOlex2(Dolomanov et al.,2009)を使用して解いた。このモデルは、F2最小化に関する全行列最小二乗法を使用して、XH(Sheldrick,2008)のバージョンで精査した。すべての非水素原子を、異方的に精製した。すべての水素原子の位置を幾何学的に計算し、ライディングモデルを使用して精査した。
【0149】
単結晶構造図
結晶構造表現及び熱楕円体図面を、ダイヤモンドで生成した。
【0150】
理論XRPDパターン
理論XRPDパターンは、水銀プログラム、ならびに単結晶構造からの原子座標、空間群、及び、単位格子パラメーターを使用してCu放射線に関して生成した。
【表5】
【0151】
形態Cの単結晶構造を、首尾よく決定した。単結晶の結晶系は単斜晶系であり、空間群はP21/cであり、セルパラメーターは:a=10.8945(2)Å、b=39.9519(5)Å、c=10.28331(18)Å、α=90°、β=111.735(2)°、γ=90°、V=4157.67(12)Å3である。式量は、Z=8で、457.83g・mol-1である。不斉単位で認められる分子は、式Iの化学構造と一致しており、及び、不斉単位には2つの式Iの分子が存在する。単結晶構造から計算した理論XRPDは、形態Cの実験XRPDと一致した。
【0152】
標準状態のXRPDでは、10°2θ未満の回折ピークは明白ではないが、長時間のXRPD測定では明確に観察し得ることに留意されたい。観測した低角度回折ピークは、理論XRPDで検証される。
【0153】
実施例5.化合物I形態D
形態Aは、すべての固形物が融解するまで150℃のオーブン内に置いた。溶融物を150℃で5分間保持した後に、オーブンから取り出し、及び、室温にまで冷却した。形態Dは、5℃で保存した場合、7日間安定であったが、室温~60℃で形態Cに変換した。
【0154】
形態Dは、XRPD及びDSCで特徴決定をした。XRPDトレース(図9)は、有意な回折ピークを持たない特徴的なアモルファスハローを明らかにした。加熱-冷却-加熱DSCサイクルからのDSCは、形態Dのガラス転移温度が、27℃付近であることを示した(図8)。これらのデータは、形態Dが、非晶質かつ非結晶性であることを示している。
【0155】
実施例6.化合物Iの形態間の相互変換
形態A及びCは、安定な無水結晶形であるのに対し、形態B及びDは、準安定形態である。
【0156】
形態Bは、形態Cを完全に排除した場所でのみ調製することができるが、そうでなければ、形態Bを調製する条件(上記)は、代わりに、同定した最も熱力学的に安定な形態である形態Cを生成する。形態Cを除外した場合、真空乾燥すると、形態Bは脱溶媒を受けて形態Aになる。
【0157】
形態Dは、室温または室温より高い温度(例えば、25℃~50℃)で、数日間、放置すると形態Cに変換する。
【0158】
形態Aスラリーは、形態Cを播種して存在する箇所で形態Cに変換する。例えば、形態A(10mg)及び、形態C(10mg)を、飽和IPA/水、及びMeCN/水で、5~60℃の範囲の温度で撹拌した。6~8日後に、固形物を、XRPD及びDSCで分析したところ、それらの結果は、形態Cだけが存在したことを示している。これらの結果は、形態Cが、5~60℃の温度で、形態Aよりも熱力学的に安定であることを示している。逆の実験も実施しているが、形態Cがさらに安定な形態であることを示した-すなわち、形態Aは、形態Cが準備された箇所に形態Aを含む化合物I溶液を播いても得ることができなかった。形態Aは、形態Cで汚染されていない箇所(例えば、形態Cが従前に存在しなかった箇所)でしか準備できなかった。
【表6】
【0159】
形態Aは、形態Cを従前に生成した実験室などにおいて播種せずとも形態Cに変換することができる。例えば、形態A(3g)を、1:1 IPA:ヘプタン(24mL)に懸濁させ、及び、60~65℃に加熱すると完全溶解を達成した。この溶液を、約55℃にまで冷却し、及び、ヘプタン(24mL)を徐々に加えた。得られたスラリーを、0~5℃に冷却し、及び濾過して単離した。得られた固形物は、DSC分析によって形態Cであることが判明した。上記した溶液に形態A(0.1%)を播種しても、形態C結晶が得られる。以下の表4は、本明細書に記載した化合物I形態をまとめたものである。
【表7】
【0160】
実施例7.形態A及びCの生物学的関連媒体溶解性
形態A及びCの生体関連媒体溶解性を、37℃の水、SGF、FaSSIF、及びFeSSIFで研究した。10~20mgの形態AまたはCを、2~3mLのガラスバイアルに秤量し、及び、約5mg/mLの固形分重量を達成するために培地を加えた。それぞれのスラリーを、37℃で、750~1000rpmで磁気攪拌し、遠心分離して濾過し、及び、上清をHPLCで分析して溶解性を決定した。すべての事例において、濾過した固形分のXRPD分析によって認められた多形形態の変化は無かった。結果を、以下の表5にまとめた。形態Cの溶解性は、形態Aよりも低かった。また、形態Cは、より高い溶融温度を有しており、形態Cが、形態Aよりも熱力学的に好ましいことを示している。
【表8】
【0161】
実施例8.形態A及びCの安定性
固形物の形態安定性を評価するために、形態A及びCを、25℃/60%RH(開放)、40℃/75%RH(開放)、及び、60℃下で、最長で4週間保存した。試料は、XRPD、TGA、DSC、及び、HPLC純度によって分析した。以下の表6に示すように、形態AまたはCのいずれの固形物についても、形態変化、重量増加、または純度に変化は認められなかった。
【表9】
【0162】
実施例9.サルにおける形態C(微粉化)と比較した場合の形態A(微粉化及び非微粉化)の血漿薬物動態(PK)の研究
非ナイーブな雄のカニクイザルを、投薬前に少なくとも7日間のウォッシュアウト期間を設けて、この研究で使用した。微粉化形態A、未微粉化形態A、または微粉化形態C粉末をカプセルに入れて、動物に対して、15mg/kgを単回経口投与で投与した。カプセルは、投与日の動物の体重に従って調製した。血液試料を、投与後の0.25、0.5、1、2、4、8、24、48、及び、72時間で採取した。血漿試料での化合物Iの濃度は、LC/MC/MSで決定した、及び、そのデータを以下の表に示す。
【表10】
【0163】
微粉化形態A及び形態Cは、15mg/kgで投与したカニクイザルにおいて同等の曝露及びPKプロファイルを示した。未微粉化形態Aは、微粉化形態Aと比較して比較的小さいAUC及びCmaxを示した。
【0164】
実施例10.ラットにおける形態A及び形態Cの血漿薬物動態(PK)研究
ウィスターハンラットに、形態Aまたは形態Cのナノ懸濁液を、25mg/kgで単回経口投与した。ナノ懸濁液は、ナノ粉砕した形態Aまたは形態Cを脱イオン水(2.5mg/mL)に懸濁して、不透明な均質な懸濁液を得て調製した。血液試料は、投与して、0.25、0.5、1、2、4、8、24、48、及び、72時間後に採取した。血漿試料での化合物Iの濃度は、LC/MS/MSで決定した。
【表11】
【0165】
熱力学的安定性及び溶解性の低下が、バイオアベイラビリティの低下をもたらし得るので、驚くべきことに、形態Cは、同等の全身曝露(AUC及びCmax)を持ちながらも、より良好な安定性を有しており、形態Aよりも優れていることが認められた。
【0166】
実施例11.サルにおける形態A及び形態Cの血漿薬物動態(PK)研究
非ナイーブな雄のカニクイザルを、投薬前に少なくとも7日間のウォッシュアウト期間を設けて、この研究で使用した。形態Cのナノ懸濁液を、動物に対して、25mg/kgの単回経口投与として投与した。ナノ懸濁液は、ナノ粉砕した形態Cを脱イオン水(5mg/mL)に懸濁して、不透明な均質な懸濁液を得て調製した。血液試料を、投与後0.25、0.5、1、2、4、8、24、48、及び72時間で採取した。血漿試料での化合物Iの濃度は、LC/MS/MSで決定した。
【0167】
形態Aのナノ懸濁液に関する別の研究を行った。
【0168】
形態C及び形態Aのサルでの研究の結果を、以下の表に提供する。
【表12】
【0169】
熱力学的安定性及び溶解性の低下が、バイオアベイラビリティの低下をもたらし得るので、驚くべきことに、形態Cは、同等の全身曝露(AUC及びCmax)を持ちながらも、より良好な安定性を有しており、形態Aよりも優れていることが認められた。
【0170】
本明細書で引用したすべての特許及びその他の参考文献は、本開示に関係する当業者の技術レベルを示すものであり、かつ、それぞれの参考文献が個々に参照によりそれらの全内容が組み込まれたのと同じ程度に、あらゆる表及び図面を含むそれらの全内容が参照により組み込まれる。
【0171】
当業者であれば、本開示が、言及した目的及び利点、ならびにそこに内在するものを首尾良く得ることを容易に理解するであろう。実施形態の代表例として本明細書に記載した方法、変化、及び、組成物は例示的であり、及び、開示の範囲に対して制限を課すものではない。当業者であれば、そこでの変更及びその他の使用を想到するであろうが、これらのことは、開示した技術思想の範囲内のものであり、特許請求の範囲によって定義されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B
【国際調査報告】