(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】分離装置および複合膜
(51)【国際特許分類】
B01D 71/02 20060101AFI20231222BHJP
B01D 69/00 20060101ALI20231222BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20231222BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20231222BHJP
B01D 63/08 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
B01D71/02
B01D69/00
B01D69/10
B01D69/12
B01D63/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536442
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 SG2021050793
(87)【国際公開番号】W WO2022132051
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10202012652S
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509034605
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティ オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲヴァラ カリオ ホアン アルフレド
(72)【発明者】
【氏名】カストロ ネト アントニオ エリオ
(72)【発明者】
【氏名】グラニエロ エチェヴェリガレイ セルジオ
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA25
4D006HA41
4D006JA02B
4D006JA14A
4D006JA18A
4D006KA67
4D006MA03
4D006MA09
4D006MA22
4D006MA31
4D006MB09
4D006MC01
4D006MC03
4D006MC05
4D006PA01
4D006PA02
4D006PB14
4D006PB32
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1つの、酸化グラフェン、グラフェンナノプレートレット、またはそれらの混合物などの2D材料と、石膏、ケイ酸塩、またはアルミナなどの無機多孔質材料とを含む複合膜に関する。本明細書に記載の複合膜は、1つまたは複数のガス状化合物の選択的透過に使用できる分離装置内に収容することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの二次元材料と、無機多孔質材料とを含む複合膜。
【請求項2】
前記無機多孔質材料が親水性の無機多孔質材料である、請求項1に記載の複合膜。
【請求項3】
前記無機多孔質材料は、セラミック、粘土、石膏、ヒドロキシアパタイト、ケイ酸塩、工業用セラミック、粉末冶金材料、ゼオライト、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載の複合膜。
【請求項4】
前記無機多孔質材料が石膏である、請求項1~3のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項5】
前記二次元材料は、前記無機多孔質材料中に均一に分散され、および/または前記無機多孔質材料の少なくとも1つの表面に積層される、請求項1~4のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項6】
前記無機多孔質材料は、前記複合膜の総重量に対して、70重量%~99.9重量%の量で存在する、請求項1~5のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項7】
前記二次元材料は、酸化グラフェン、グラフェンナノプレートレット、還元酸化グラフェン、二硫化モリブデン、六方晶窒化ホウ素、フォスフォレン、遷移金属ジカルコゲニド、キセン、およびそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項8】
前記二次元材料は、酸化グラフェン、グラフェンナノプレートレット、またはそれらの混合物から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項9】
前記二次元材料は、前記複合膜の総重量に対して、0.1重量%~20重量%の量で存在する、請求項1~8のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項10】
前記二次元材料は、前記複合膜の総重量に対して、0.25重量%~10重量%の量で存在する、請求項1~9のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項11】
0.1μm~50μmの平均孔径を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項12】
0.5μm~10μmの平均孔径を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項13】
有機物を実質的に含まない、請求項1~12のいずれか一項に記載の複合膜。
【請求項14】
ガス状成分を受け入れるように構成されている密閉された上部チャンバーと、
前記上部チャンバーと流体連通し、少なくとも1つのガス状成分を含む流体流を受け入れるように構成されている密閉された下部チャンバーと、
を有し、
前記上部チャンバーと前記下部チャンバーは、前記ガス状成分が前記下部チャンバーから前記上部チャンバーへ通過できるように構成されている、少なくとも1つの複合膜によって仕切られており、
前記複合膜は請求項1~13のいずれか一項に記載の複合膜である、
分離装置。
【請求項15】
前記複合膜の厚さは1mm~10mmである、請求項14に記載の分離装置。
【請求項16】
前記複合膜の表面積は0.001~0.6m
2である、請求項14または15に記載の分離装置。
【請求項17】
前記上部チャンバーと前記下部チャンバーの容積は、それぞれ独立して、70cm
3~0.005m
3であってもよい、請求項14~16のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項18】
前記上部チャンバーは、前記ガス状成分を排出するための出口をさらに有し、前記下部チャンバーは、減少した量の前記ガス状成分を含む前記流体流を排出するための出口をさらに有する、請求項14~17のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項19】
排出された前記流体流は前記ガス状成分を実質的に含まない、請求項14~18のいずれか一項に記載の分離装置。
【請求項20】
請求項14~19のいずれか一項に記載の分離装置を複数有し、前記複数の分離装置は直列に操作されてもよいし、共通の原材料から流体流を受け入れるように操作されてもよい、分離器械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
2020年12月16日に出願されたシンガポール特許出願第10202012652Sに含まれる開示内容は、すべて本願に援用される。
【0002】
本発明は、気液混合物を分離するための、分離装置および該装置内に収容された複合膜に関する。
【背景技術】
【0003】
気液分離は通常、沸点、分子の大きさ、吸光度など、成分の物理特性および化学特性の違いに基づき、液体、または液体/蒸気混合物から蒸気の形で成分を抽出することを含む。気液分離は、様々な工業プロセスにおいて不可欠である。例えば、飲料/アルコール業界では、発酵または蒸留プロセスから発生する蒸気を収集するために、液体、気液分離が使用され得る。化学反応の間に、反応混合物から成分を蒸気の形で抽出することも、反応を促進し、反応効率を向上するのに有効であり得る。
【0004】
従来、液体混合物からの気体の分離は、例えば、以下のような蒸留を含んでもよい。すなわち、液体を高温(例えば、所望の成分の沸点を超える温度)にさらして、1つまたは複数の所望の成分を蒸気へ相転移させ、その後、例えば、蒸留塔における側方からの抜き出しを介して、排出し、収集する蒸留である。しかし、従来の分離処理は通常、エネルギーを大量に消費し、高い運用コストを必要とする。さらに、分離に必要な高温により、不活性化または分解される可能性のある物質、特に製薬および食品産業における有効成分に悪影響を与える可能性がある。
【0005】
膜を使った分離は、高温気液分離の代替手段として検討されてきた。このような分離において、気体分離膜は、気体/気体または気体/液体混合物中の特定の種の選択的透過を可能にするバリアとして機能する。ポリアクリロニトリル膜およびポリ(ビニルアルコール)膜などのポリマー系膜は、その柔軟性および改良のしやすさのために、分離膜として一般に使用される。しかしながら、ポリマー膜は、蒸気分子がその分子鎖に浸透するとき、(例えば、120℃を超える)高温で膨潤する傾向がある。したがって、このようなポリマー膜は、工業的規模の運用における過酷な条件下での長期間の使用には適さない場合がある。
【0006】
二次元材料を有する膜は、気体/液体分離の分野でも検討されてきた。しかし、これまでのところ、二次元材料を使用した膜を開発する取り組みは実験室規模の研究に限定されてきた。二次元材料の剛性により、そのような膜を大規模な工業的運用において使用することが困難になる場合があるからである。
【0007】
したがって、上述の欠点の1つまたは複数を克服または少なくとも改善する、分離装置用の新規な膜を提供することが求められている。
【発明の概要】
【0008】
一態様では、少なくとも1つの二次元材料と、無機多孔質材料と、を有する複合膜が提供される。有利なことに、本明細書に記載の複合膜は、気体/気体、気体/液体、または液体/液体混合物中の特定のガス状成分に対する選択性を示す。複合膜の選択性は、二次元材料の固有の物理化学的特性に起因すると考えられ、すなわちこの二次元材料は、無機多孔質材料中に分散および/または無機多孔質材料上に積層されており、複合膜と適合する特性を有するガス状成分の優先的な通過を可能にする。
【0009】
さらに有利なことに、本明細書に記載の複合膜は、複合膜の機械的強度、圧縮強度および引張強度を損なうことなく、気体/気体、気体/液体、または液体/液体混合物からガス状成分を選択的に分離する。無機多孔質材料と2D材料の組み合わせることで、最大12.0MPaの圧縮強度、最大5MPaの曲げ強度、最大5500GPaのヤング率が得られ、複合膜の分離効率を低下させることなく、2週間以上の複合膜の連続使用が可能になる。
【0010】
別の態様では、ガス状成分を受け入れるように構成されている密閉された上部チャンバーと、上部チャンバーと流体連通し、少なくとも1つのガス状成分を含む流体流を受け入れるように構成されている密閉された下部チャンバーと、を有する分離装置が提供され、上部チャンバーと下部チャンバーは、少なくとも1つの複合膜によって仕切られており、複合膜は、前記ガス状成分が下部チャンバーから上部チャンバーへ通過できるように構成され、前記複合膜は、無機多孔質材料および少なくとも1つの二次元(2D)材料を含む。
【0011】
分離装置内の複合膜は、有利なことに流体流と接触せずに、または膜と混合せずにガス状成分を分離でき、これは有利なことに分離処理中の膜の汚染を防止し、膜の寿命を改善する。流体流と接触せずに行われるガス状成分の拡散は、膜を横断するガス状成分の濃度勾配、または蒸気分圧差によって引き起こされうる。特に、流体流を受け入れる下部チャンバーからのより高い蒸気分圧により、ガス状成分のより低い分圧を有する上部チャンバーへのガス成分の拡散が引き起こされる。上部チャンバーと下部チャンバーとを仕切る複合膜は、複合膜に対してより高い親和性を有するガス成分の通過を有利なことに可能にする。
【0012】
さらに有利なことに、二次元材料を無機多孔質材料と組み合わせると、気体/気体、気体/液体、または液体/液体混合物から除去されるガス状成分の選択性が向上し、そのため分離された気体成分を実質的に含まない残留流が生成される。また、構造強度と耐摩耗性が得られることで、複合膜をより大規模な工業運用において使用することが可能になる。
【0013】
別の態様では、本明細書に記載の、複数の分離装置を含む分離器械が提供され、複数の分離装置は直列に操作されてもよいし、共通の原材料から流体流を受け入れるように操作されてもよい。
【0014】
定義
本明細書で使用される以下の単語および用語は、以下に示される意味を有するものとする。
「2D材料」、「2次元材料」という用語、およびその文法的変形は、原子の単層、数層、および多層を含む材料を含むように広く解釈されるべきである。このような材料の非限定的な例としては、遷移金属ジカルコゲニド、グラフェン(例えば、ナノプレートレット(GNP)、酸化グラフェン(GO)、還元酸化グラフェン(rGO))、六方晶窒化ホウ素材料、またはそれらの組み合わせが挙げられる。
【0015】
「多孔率(多孔性)」という用語およびその文法的変形は、材料内の空の空間、チャネル、または空隙を測定することを指す。材料の多孔率は、材料の総体積に対する空隙の体積割合として表すことができる。
【0016】
本明細書で使用する「均質な」という用語は、同じ成分または要素を含む物質を指す。この用語は、また複数の成分が全体に均一に分布している混合物を指す。均質な混合物は、全体にわたって同じ成分または元素の組成を有していてもよい。本明細書に記載されるように、均質な混合物は、物の1つの相、例えば、液体、固体または気体のみを含有してもよい。
【0017】
本明細書で使用する「孔径」という用語は、実質的に丸いまたは球形の細孔の直径を指す。本明細書に記載の細孔の形状は、規則的であっても不規則であってもよい。規則的な形状の細孔は、球形、円筒形、長円形、または楕円形であってもよい。細孔の形状が球形でない場合、粒子径は、測定された細孔の最長直径とする。
【0018】
用語「有機材料」または「有機物」またはその文法的変形は、他の元素で置換されてもよい炭化水素系の材料または物を指すと解釈されるべきである。
【0019】
「積層」という用語またはその文法上の変形は、平らであってもよい表面を覆う一層の材料を指す。したがって、「積層された」材料は、複数の材料層(すなわち、多層の材料)を含むことができ、これらの層は、同じ材料であっても異なる材料であってもよい。
【0020】
「実質的に」という言葉は「完全に」を排除するものではなく、例えば、Yを「実質的に含まない」組成物は、Yを完全に含まないこともある。必要に応じて、「実質的に」という言葉は本発明の定義から省略することができる。
【0021】
特に指定のない限り、「含んでいる、有している」および「含む、有する」という用語、およびその文法的変形は、記載された要素を含むだけでなく、追加の記載されていない要素の包含も許容するような、「オープンな」または「包括的な」言葉を表すことを意図している。
【0022】
本明細書で使用する「約」という用語は、処方の成分濃度の文脈において、典型的には、記載された値の+/-5%、より典型的には記載された値の+/-4%、より典型的には記載された値の+/-3%、より典型的には記載された値の+/-2%、さらにより典型的には記載された値の+/-1%、さらにより典型的には記載された値の+/-0.5%を意味する。
【0023】
本開示を通して、特定の実施形態が範囲形式で開示される場合がある。範囲形式での説明は、単に便宜上および簡潔化のためであり、開示された範囲に対する柔軟性のない限定として解釈されるべきではないことを理解されたい。したがって、範囲の説明は、具体的に開示された全ての可能な下位範囲、ならびにその範囲内の個々の数値を具体的に開示したものとみなされるべきである。例えば、1~6などの範囲の説明は、1~3、1~4、1~5、2~4、2~6、3~6などの具体的に開示された下位範囲、ならびにその範囲内の個々の数、例えば、1、2、3、4、5、および6を有するとみなされるべきである。このことは、範囲の広さにかかわらず適用される。
【0024】
特定の実施形態はまた、本明細書において広く一般的に説明され得る。一般的な開示に含まれる、より狭い種および下位一般的なグループのそれぞれも、本開示の一部を形成する。これには、範囲から主題を削除するただし書きまたは否定的な限定を伴う実施形態の一般的な説明が、切り出された主題が本明細書に具体的に記載されているか否かにかかわらず含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
添付の図面は、開示された実施形態を示し、開示された実施形態の原理を説明するために使用される。しかしながら、図面は、例示のみを目的として提供されており、本発明の限定の定義としてではないことを理解されたい。
【0026】
【
図1A】分離装置の外観構造を3次元(3D)で示す図である。
【
図1C】分離装置の内部ユニットおよび液体流と気体流を示す断面図である。
【
図2】寸法をミリメートル単位で示す、分離装置VPM-01の断面図である。
【
図3】分離装置VPM-01の下部チャンバーを3Dで概略的に示す図である。
【
図4】分離装置VPM-01の上部チャンバーを3Dで概略的に示す図である。
【
図5】分離装置VPM-01における複合膜用の支持棒を概略的に示す図である。
【
図6】分離装置VPM-01の上部チャンバーと下部チャンバーとの間に複合膜を配置するように構成された膜金属フレームを概略的に示す図である。
【
図7A】金属フレームに固定された複合膜を概略的に示す図である。
【
図7B】金属フレームに固定された複合膜の断面図である。
【
図8A】金属フレームと、金属フレーム内に固定された複合膜を示す画像である。
【
図8B】下部チャンバーと、下部チャンバーに取り付けられた支持棒と金属フレームを示す画像である。
【
図9】供給流および気体流が分離装置に提供される側(横側)の断面図であり(上画像)、寸法をミリメートル単位で示す、分離装置VPM-02の前側の断面図である(下画像)。
【
図10A】分離装置VPM-02の下部チャンバーを概略的に示す図である。
【
図10B】分離装置VPM-02の上部チャンバーを概略的に示す図である。
【
図11A】無機多孔質材料の表面に積層された2D材料の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【
図11B】2D材料が内部で均一に分散されている無機多孔質材料の表面に積層された、2D材料の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【
図11C】無機多孔質材料と2D材料との組み合わせに基づく複合膜の走査型電子顕微鏡写真(SEM)である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明に係る、複合膜、複合膜を含む分離装置、少なくとも1つの分離装置を含む分離器械、および気体/気体または液体/気体混合物の分離のための方法の例示的かつ非限定的な実施形態は、以下でさらに開示されるものとする。本明細書に記載されるような複合膜の調製方法も開示される。
【0028】
一態様では、少なくとも1つの二次元材料と無機多孔質材料とを有する複合膜が提供される。複合膜は、少なくとも1つの二次元材料および無機多孔質材料から本質的に構成され得るか、またはそれらから構成され得る。複合膜は、気体/気体、液体/気体、または液体/液体混合物の分離に適合した分離装置内に収容されてもよい。
【0029】
別の態様では、1つまたは複数の複合膜と、密閉された下部チャンバーと、密閉された上部チャンバーと、を有する分離装置が提供される。複合膜は、密閉された下部チャンバーと、密閉された上部チャンバーとを仕切ってもよく、下部チャンバーから上部チャンバーへの前記ガス状成分の選択的通過のみを可能にするように構成されてもよい。下部チャンバーは、少なくとも1つのガス状成分を含む流体流(供給物)を受け入れるように構成されてもよい。上部チャンバーは、選択されたガス状成分(透過物)を受け入れるように構成されてもよい。
【0030】
本明細書に記載の分離装置は、少なくとも1つの液体成分および/または少なくとも1つの気体成分を含む気体、液体、およびそれらの混合物を分離するための工業プロセスで使用されてもよい。特に、複合膜は、少なくとも1つのガス状成分の通過を可能にするように構成されてもよい。上記の構成は、本明細書に記載の無機多孔質材料および少なくとも1つの二次元材料を含む複合膜の提供によって達成され得る。
【0031】
無機多孔質材料は、結晶構造、非晶質構造、または粒子構造を有する任意の材料を含んでもよい。無機多孔質材料は、親水性の無機多孔質材料であってもよい。無機多孔質材料としては、工学分野で通常利用される無機材料からできていてもよい。有利なことに、容易に入手できる無機多孔質材料を使用することにより、複合膜を費用効果の高い方法で工業的使用のためにスケールアップすることができる。
【0032】
好適な無機多孔質材料は、結晶構造、半結晶構造、非晶質構造、または粒子構造を有するミクロ多孔質、メソ多孔質、ナノ材料、ナノ複合材料、またはナノ構造の複合材料を含んでもよい。このような無機多孔質材料は、気体、液体または蒸気が通過できる隙間または細孔を含んでもよい。無機多孔質材料は、2D材料と組み合わせて使用される場合、特定のガス状化合物、例えば、エタノール、メタノール、二酸化炭素などを優先的に通過させてもよい。
【0033】
無機多孔質材料に、複合膜の調製前に物理的および/または化学的前処理を施してもよい。これらの前処理は、粉砕、焼成、焼結、密閉圧密、および水または有機溶媒による活性化の内、1つ以上の工程を含んでもよい。いくつかの実施形態において、無機多孔質材料は、複合膜の調製のために水で活性化されてもよい。
【0034】
無機多孔質材料は、ケイ酸塩、加工セラミック、金属、またはそれらの組み合わせを含んでもよい。例示的なケイ酸塩としては、カオリナイト、スメクタイト、ノントロナイト、サポナイト、モンモリロナイト、イライト、クロライト、バーミキュライト、タルク、パイロフィライト、ゼオライト、ホウケイ酸塩、またはそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。加工セラミックとしては、アルミナ、酸化ベリリウム、セリア、ジルコニア、炭化タングステン、炭化ケイ素、炭化物、ホウ化物、窒化物、ケイ化物、チタニア、またはそれらの混合物が挙げられる。金属または粉末冶金材料には、鉄、鋼、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、スズ、マグネシウム、チタン、タングステン、またはそれらの混合物などが挙げられる。このような冶金材料は、不活性雰囲気中で焼結または鋳造して、多孔質構造を得ることができる。
【0035】
例えば、クリノプチロライト、チャバザイト、フィリップサイト、モルデナイトなどの天然ゼオライト、およびゼオライトA、ベータゼオライト、Y型ゼオライト、ZSM-5などの合成ゼオライトを、本明細書に記載の複合膜に使用することができる。
【0036】
無機多孔質材料は、セラミック(すなわち、加工セラミック)、粘土、石膏、ヒドロキシアパタイト、工業用セラミック、粉末冶金材料、ケイ酸塩、ゼオライト、およびそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。一実施形態において、無機質多孔質材は、石膏、すなわちCaSO4・2H2Oを含む。
【0037】
有利なことに、石膏と2D材料との組み合わせにより、気体を含む混合物の分離において選択性を示す複合膜が得られた。特に、本明細書に記載の、石膏と2D物質との組み合わせにより、7.5~12MPaの圧縮強度、2.5~5MPaの曲げ強度、および500~5500GPaのヤング率を維持しながら、混合物中の特定のガス状成分の選択的通過を促進するのに十分な孔径を備えた複合膜が提供される。複合膜に使用されたときの石膏の極性も、膜を横断する極性ガス状成分の輸送に寄与すると考えられる。
【0038】
さらに有利なことに、石膏を含む複合膜は、その使用の間中、複合膜の分離効率を維持しながら2ヶ月以上連続して使用することができる。この特徴は、複合膜を通るガス状成分の拡散によって影響を受けない、本明細書に記載の複合膜の強度に起因するとも考えられる。
【0039】
無機多孔質材料は、複合膜の総重量に対して、約70重量%~99.9重量%であってもよい。例えば、無機多孔質材料は、複合膜の総重量に対して、72重量%~99.9重量%、または74重量%~99.9重量%、または76重量%~99.9重量%、または78重量%~99.9重量%、または80重量%~99.9重量%、または82重量%~99.9重量%、または84重量%~99.9重量%、または86重量%~99.9重量%、または88重量%~99.9重量%、好ましくは89重量%~99.9重量%、さらにより好ましくは89重量%~99.8重量%であってもよい。いくつかの実施形態において、無機多孔質材料の含有量は、89.75重量%、93.85重量%、94.00重量%および99.75重量%である。
【0040】
無機多孔質材料は、複合膜の調製中に、二次元材料に化学的に結合されてもよく、または物理的に接着されてもよい。複合膜は、単一の二次元材料または2つ以上の二次元材料の混合物を含んでもよい。2D材料は、無機多孔質材料内に均一に分散され、および/または無機多孔質材料の少なくとも1つの表面上に積層されてもよい。したがって、複合膜は、無機多孔質材料内に均一に分散した二次元材料を含んでもよく、少なくとも1つの表面が二次元材料の積層である無機多孔質材料を含んでもよく、またはその組み合わせを含んでもよい。例えば、複合膜は、内部に2D材料が均一に分散した無機多孔質材料の少なくとも1つの表面上に積層された2D材料を含んでもよい。
【0041】
複合膜に添加され得る二次元材料には、酸化グラフェン、グラフェンナノプレートレット、還元酸化グラフェン、二硫化モリブデン、六方晶窒化ホウ素、フォスフォレン、遷移金属ジカルコゲニド、キセン、またはそれらの混合物などが挙げられる。いくつかの実施形態において、二次元材料は、酸化グラフェン、グラフェンナノプレートレット、またはグラフェンナノプレートレットと酸化グラフェンとの混合物であってもよい。
【0042】
積層体の、層間距離、表面電荷、連結構造などの二次元材料の物理的および化学的特性は、複合膜の調製に利用されてもよい。2D材料の固有のナノ構造、例えばナノ細孔、ナノ層、またはナノチャネルは、無機多孔質材料の多孔性と組み合わせることで、特定のガス状成分に対する選択性を有利に示す複合膜を提供することができる。さらに、無機多孔質材料および2D材料の化学的および物理的安定性により、膜の工業規模の調製が有利に可能になる。
【0043】
分離される特定のガス状成分に基づき異なる二次元材料を使用することで、複合膜の親水性、疎水性、または有機親和性が最適化されてもよい。特に、2D材料が複合膜の親水性、疎水性、または有機親和性を最適化するように選択されてもよく、そうすることで複合膜に対する親和性のより高いガス状成分の通過が調整され、可能になる。
【0044】
いくつかの実施形態において、二次元材料は、複合膜の有機親和性を調整するように選択されてもよい。有利なことに、ブタノールなどの有機化合物は、複合膜にわずか約0.25重量%の2D材料を組み込むことによって分離された。有機成分の分離は、複合膜に組み込まれたグラフェンナノプレートレット材料の疎水性に起因し得、複合膜への親和性を有するブタノールなどのガス状成分の通過を可能にする。
【0045】
二次元材料の含有量は、気体/気体または気体/液体混合物中の特定のガス状成分を分離するように選択されてもよい。二次元材料は、複合膜の総重量の約0.1~20重量%を構成していてもよい。二次元材料の重量および重量比の説明は、複数の二次元材料が使用されている複合膜中の二次元材料の総重量を指すことを理解されたい。複合膜における二次元材料含有量は、約0.1重量%~18重量%、または約0.1重量%~16重量%、または約0.1重量%~14重量%、または約0.1重量%~12重量%、または約0.1重量%~11重量%、好ましくは約0.2重量%~10.5重量%、さらにより好ましくは約0.25重量%~10重量%の範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、二次元材料の含有量は、約0.25重量%、約6重量%、約6.15重量%、または約10.25重量%であってもよい。
【0046】
有利なことに、約0.25重量%~10.5重量%の二次元材料を含む複合膜は、気体/気体、気体/液体、または液体/液体混合物中の特定の成分に対する選択性を示し、その結果、特定のガス状成分を実質的に含まない透過物が得られる。特に、二次元材料含有量を複合膜の約0.25重量%~10重量%に維持することにより、最大100g/モル、好ましくは最大75g/モルの分子量を有するガス状成分の分離が達成されることが見出された。例えば、ブタノール/水混合物からのブタノールの選択的分離は、2D材料の含有量がわずか0.25重量%である複合膜を用いて達成された。
【0047】
さらに有利なことに、複合膜中の二次元材料含有量を約10.25重量%に維持することによって、水/エタノール混合物から水と同程度の小さな分子の選択的分離を達成することができ、実質的に水を含まない残留物が得られる。
【0048】
複合膜の選択的分離は、2D材料の固有のナノ構造と無機多孔質材料の多孔性との組み合わせに起因すると考えられる。
【0049】
二次元材料と無機多孔質材料との重量比もまた、複合膜の機械的強度および曲げ強度を損なうことなく、気体/気体、または気体/液体混合物中の特定の気体成分を優先的に分離できるように選択されてもよい。二次元材料と無機多孔質材料との重量比は、約1:5~約1:500、または約1:5~約1:480、または約1:5~約1:460、または約1:5~約1:440、または約1:5~約1:420、または約1:5~約1:400、または約1:6~約1:400、または約1:7~約1:400、または約1:8~約1:400、または好ましくは約1:9~約1:400の範囲であってもよい。一実施形態において、二次元材料と無機多孔質材料との重量比は、約1:400である。
【0050】
二次元材料および無機多孔質材料はまた、約1:5~約1:350、または約1:5~約1:300、または約1:5~約1:250、または約1:5~約1:200、または約1:5~約1:150、または約1:5~約1:100、または約1:5~約1:50、または約1:5~約1:40、または約1:5~約1:30、または約1:5~約1:20、または約1:5~約1:18、または約1:6~約1:18、または約1:8~約1:18、または約1:9~約1:18、または約1:9~約1:16の重量比で提供されてもよい。他の実施形態では、複合膜における、二次元材料と無機多孔質材料との重量比は約1:9、約1:15、または約1:16である。
【0051】
無機多孔質材料および二次元材料の含有量は、気体蒸気の優先的な通過または透過を可能にする孔径を有する複合膜を提供するように選択されてもよい。複合膜は、0.1μm~50μmの平均孔径を提供できるような含有量の無機多孔質材料および二次元材料含有物を含んでもよい。複合膜の平均孔径または孔径は、約0.1μm~50μm、または約0.1μm~45μm、または約0.1μm~40μm、または約0.1μm~35μm、または約0.1μm~30μm、または約0.1μm~25μm、または約0.1μm~20μm、または約0.1μm~15μm、または約0.5μm~15μm、または約0.5μm~12μm、または好ましくは約0.5μm~10μmであってもよい。いくつかの実施形態において、複合膜の孔径は、約0.5μm~3μm、約1μm~3μm、約0.5μm~3μm、または約1μm~10μmの範囲である。
【0052】
有利なことに、気体/気体、気体/液体、液体/液体混合物中のガス状成分の輸送は、複合材料の孔径を約0.5μm~10μmの範囲内に維持することによって促進され得る。特に、0.5μm~10μmの孔径を有する複合膜が提供されると、毛細管力を利用して、複合膜を通るガス状成分の連続的な輸送を促進することができる。複合材料の孔径と2D材料の特性の組み合わせにより、複合膜を横断するガス状成分の連続的かつ選択的な輸送が有利に提供される。
【0053】
本明細書に記載の複合膜組成物は、気体および/または液体の混合物から気体/蒸気を分離するのに十分な多孔率が得られるように最適化されてもよい。膜の多孔率は、膜の体積の約10~30%であってもよい。膜の体積の、約12~30%、または約14~30%、または約16~30%、または約18~30%、または約20~30%、または約22~30%、または約24~30%、または約26~30%、または好ましくは約26~28%の多孔率を有する複合膜であってもよい。いくつかの実施形態において、複合膜は、膜の体積の約27%の多孔率を有する。
【0054】
本明細書に記載される複合膜は、検出可能な量の有機材料または有機物を実質的に含まなくてもよい。それゆえ、無機多孔質材料および二次元材料を含む複合膜は、実質的に有機分子で官能化がされていなくてもよい。本明細書で使用される「有機材料」または「有機物」という用語は、極性または非極性であってもよく、窒素、塩素、フッ素、臭素などを含むがこれらに限定されない他の原子で必要に応じて官能化されていてもよい、炭化水素骨格または主鎖に基づく化合物を指すことを理解されたい。しかしながら、そのような膜を調製するための有機溶媒の使用を排除するものではない。
【0055】
複合膜は、本明細書で提供される分離装置の上部チャンバーと下部チャンバーとの間の仕切りに配置され得る。膜の厚さ、形状および大きさは、分離装置の寸法および実行される分離の規模に基づいて変化させてもよい。本明細書に記載される膜は、気体/気体または液体/気体混合物を工業規模で分離するのに適した厚さで調製されてもよい。例えば、複合膜は、約1mm~10mm、または約1mm~9mm、または約1mm~8mm、または約1mm~7mm、または約1mm~6mm、または約2mm~6mm、または約3mm~6mm、または好ましくは約3mm~5mmの厚さで調製されてもよい。いくつかの実施形態において、複合膜の厚さは、約3mmまたは5mmであってもよい。
【0056】
有利なことに、無機多孔質材料を2D材料と組み合わせて使用すると、複合膜に機械的強度(圧縮および引張強度)を与えることができ、それにより寿命(すなわち、膜の交換が必要とされるまでの期間)が改善される。平らなシートとして提供される場合、本明細書に記載される複合膜は、3500~5500GPaのヤング率、7.5~12.0Mpaの圧縮強度、および2.5~5Mpaの曲げ強度を示し得る。複合膜の強度は、作業条件下での膜の最大変形からも観察でき、これは約30μmであってもよい。
【0057】
さらに有利なことに、複合膜の分離効率は最長2ヶ月の連続使用後でも維持され、これは本明細書に記載の複合膜の強度および耐久性に起因すると考えられる。
【0058】
複合膜の表面積は、工業的分離の規模に応じて選択されてもよい。例えば、複合膜の表面積は、約0.001m2~約1m2、または約0.002m2~約1m2、または約0.003m2~約1m2、または約0.004m2~約0.8m2、または約0.001m2~約0.6m2、または約0.004m2~約0.6m2、または約0.005m2~約0.6m2、または約0.005m2~約0.5m2、または好ましくは約0.005m2から約0.45m2の範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、分離装置用に製造された複合膜は、約0.0058m2または約0.44104m2の表面積を有するように調製される。
【0059】
分離装置の形状および大きさ(すなわち、寸法)も、実行される分離規模に従って変化させることができる。分離装置の長さ、幅、および高さは、工業規模の分離を実行するのに十分な体積を提供するように最適化されてもよい。例えば、分離装置は、気体/気体または液体/気体混合物の流体流が下部チャンバーを通過する際に、ガス状成分が複合膜と接触して複合膜を通過できるのに十分な長さを有するように調製されてもよい。分離装置、特に下部チャンバーの深さは、複合膜とは接触せずに、ガス状成分の透過を可能にするのに十分な深さであってもよい。
【0060】
装置の上部チャンバーと下部チャンバーの容積は、最大0.01m3または10Lの工業規模の分離が実行可能なように変化させてもよい。上部チャンバーと下部チャンバーの容積は同じであっても、異なっていてもよい。下部チャンバーは、上部チャンバーと下部チャンバーとを仕切る複合膜に液体流を接触させることなく、気体および/または液体混合物の分離を可能にするように適合されてもよい。例えば、分離装置の上部チャンバーと下部チャンバーの容積は、それぞれ独立して、約70cm3~0.01m3、または約70cm3~0.008m3、または約70cm3~0.007m3、または約70cm3~0.006m3、または約70cm3~0.005m3、または約70cm3~0.004m3、または約70cm3~0.003m3、または約80cm3~0.003m3、または約80cm3~0.0025m3、または好ましくは約90cm3~0.0025m3の範囲であってもよい。一実施形態において、分離装置は、約96cm3の等しい容積を有する上部チャンバーと下部チャンバーとを備えるように調製される。別の実施形態において、分離装置の上部チャンバーの容積は約0.00135m3であり、下部チャンバーの容積は0.00225m3である。
【0061】
分離装置の上部チャンバーは、ガス状成分を上部チャンバーから排出するための出口をさらに有していてもよい。出口は、分離されたガス状成分を液相で収集するために、必要に応じて凝縮ユニットに接続されていてもよい。上部チャンバーからのガス状成分の排出は、入口を通じて上部チャンバーに不活性ガスまたは乾燥空気の流れを供給することによって促進されてもよい。不活性ガスは、窒素またはアルゴンであってもよい。
【0062】
分離装置の上部チャンバーおよび下部チャンバーは、上部チャンバーに供給される気体流に加えて、流体流の流れおよび膜を通るガス状成分の通過から生じる高圧に耐えるように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、上部チャンバーと下部チャンバーは、最大10barの処理圧力に耐えるように構成されていてもよい。例えば、上部チャンバーおよび下部チャンバーは、最大2bar、最大5bar、または最大8barの処理圧力に耐えるように構成されていてもよい。上部チャンバーおよび下部チャンバーを製造するために使用される材料は、処理圧力に十分耐えることができれば特に限定されない。
【0063】
本明細書に記載される複合膜は、別に製造され、その後、膜に機械的支持を提供するように適合された膜フレーム上に配置されてもよい。あるいは、複合膜は膜フレーム上に直接製造されてもよい。膜フレームは、分離装置の下部チャンバーに設けられた凹部に配置されてもよい。必要に応じて、支持棒またはメッシュにより膜フレームにさらなる機械的支持を提供してもよい。
【0064】
漏れにくい分離装置を提供するために、分離装置の構成要素の間、例えば上部チャンバーと下部チャンバーの間に密閉手段を設けてもよい。密閉手段はガスケット、好ましくは平らなゴム製ガスケットであってもよく、膜金属フレームと下部チャンバーの内縁との間に設けてもよい。漏れにくい分離装置を提供するために、分離装置の上部チャンバーと下部チャンバーの間に密閉手段を設けてもよい。密閉手段はまた、上部チャンバーと下部チャンバーとを固定するナットおよびボルトを有していてもよい。
【0065】
下部チャンバーは、液体/液体、液体/気体、または気体/気体の分離を実行するための流体流の定常流を受け入れるように構成されていてもよい。特に、分離のために下部チャンバーに流体流を供給するための入口が、下部チャンバーに設けられてもよい。入口は、少なくとも1つのガス状成分を含む定常流体流を提供するように構成されたポンプに接続されてもよい。下部チャンバーはまた、残留流体流を排出するための出口を備えていてもよい。好ましくは、分離装置から排出される流体流が、ガス状透過物を実質的に含まないか、または全く含まないものであってもよい。
【0066】
本明細書に記載の分離装置は、工業規模で実行される液体/液体、液体/気体、または気体/気体の分離のための分離器械に設けられてもよい。一態様では、本明細書に記載の複数の分離装置を有する分離器械が提供され、複数の分離装置は直列に操作されてもよいし、共通の原材料から流体流を受け入れるように操作されてもよい。例えば、一連の分離装置は、分離装置の下部チャンバーを通して流体流を供給する原材料タンクに接続されてもよい。
【0067】
複合膜を調製する方法も本明細書で提供される。この方法は、(a)二次元材料の分散液を無機多孔質材料またはその前駆体と接触させる工程と、(b)工程(a)から得られた混合物を乾燥する工程とを含んでもよい。
【0068】
二次元材料、無機多孔質材料、または無機多孔質材料前駆体は、液体分散液または溶媒中の懸濁液として提供されてもよい。二次元材料の分散液を無機多孔質材料またはその前駆体と接触させる工程は、二次元材料の液体分散液を無機多孔質材料またはその前駆体と混合して均一な混合物を提供する工程を含んでもよい。得られる複合膜は、無機多孔質材料内に均一に分散した二次元材料を含んでいてもよい。
【0069】
無機多孔質材料前駆体の懸濁液は、前駆体を溶媒活性化することによって調製されてもよい。例えば、無機多孔質材料が石膏を含む場合、無機多孔質材料前駆体の懸濁液は、硫酸カルシウム半水和物、すなわちCaSO4・0.5H2Oを水中で活性化することによって調製されてもよい。溶媒中での前駆体の活性化は、前駆体と水または水溶液(好ましくは水)とを混合することによって行うことができる。
【0070】
溶媒(好ましくは水)と、無機多孔質材料またはその前駆体との質量比は、約1:1~約1:5、または約1:1~約1:4.5、または約1:1~約1:4、または約1:1~約1:3.5、または約1:1~約1:3、または約1:1~約1:2.5、または約1:1~約1:2、または約1:1.2~約1:2、または好ましくは約1:1.2~約1:2、より好ましくは約1:1.2~約1:1.8、さらにより好ましくは約1:1.2~約1:1.5の範囲であってもよい。いくつかの実施形態において、無機多孔質材料が石膏、すなわちCaSO4・2H2Oを含む場合、無機多孔質材料の水性懸濁液は、前駆体CaSO4・0.5H2Oを水に、約10:7の質量比で添加することによって調製される。
【0071】
二次元材料の水性分散液は、適量の二次元材料を水溶液と混合することにより調製してもよい。複合膜は、1:1~1:20の体積比で提供される、二次元材料の水性分散液と、無機多孔質材料またはその前駆体の水性懸濁液とから調製されてもよい。二次元材料の水性分散液と無機多孔質材料またはその前駆体との懸濁液との体積比は、約1:1~約1:20、または約1:1~約1:18、または約1:1~約1:16、または約1:1~約1:15、または約1:1~約1:14、または約1:1~約1:12、または好ましくは約1:1~約1:10であってもよい。
【0072】
0.1重量%~15重量%の二次元材料を含む複合膜が望ましい場合、二次元材料の水性分散液と、無機多孔質材料またはその前駆体との懸濁液との体積比は約1:1であり得る。1重量%未満の二次元材料を含む複合膜は、二次元材料の水性分散液と無機多孔質材料またはその前駆体との懸濁液を約1:2~約1:10の重量比で有していてもよい。
【0073】
あるいは、接触させる工程(a)は、入手可能なまたは調製された無機多孔質材料の表面上に二次元材料の液体混合物を流延(casting)する工程を含んでもよい。このような方法によって調製された複合膜は、無機多孔質材料上に積層された二次元材料を含んでもよい。無機多孔質材料は、二次元材料の液体分散液を流延する前に、所望の厚さを有する平らなシートとして提供されてもよい。好ましくは、無機多孔質材料は、1mm~10mmの範囲の厚さを有する平らな固体シートとして提供され得る。
【0074】
無機多孔質材料は、二次元材料の液体混合物を流延する直前に、無機多孔質材料前駆体から調製されてもよい。これは、無機多孔質材料前駆体の懸濁液を型に注入し、室温で乾燥させることで懸濁液を固化させることによって実施することができる。
【0075】
必要に応じて、2D材料の液体分散液を、均一に分散した2D材料を内部に有する無機多孔質材料の少なくとも1つの表面上に流延してもよい。したがって、そのような方法によって調製される複合膜は、その内部に均一に分散した2D材料を含む無機多孔質材料の、少なくとも1つの表面の上に積層された2D材料の層を含み得る。積層された層内の2D材料は、無機多孔質材料内に均一に分散された2D材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、第2の2D材料の液体分散液が、その内部に均一に分散した第1の2D材料を含む無機材料の表面の上に流延される。第2の2D材料は、第1の2D材料と同じであっても異なっていてもよい。
【0077】
二次元材料の分散液は、二次元材料の乾燥粉末を水系中で混合することによって調製されてもよい。水溶液は、水または塩基性溶液であってもよい。例えば、0.1M~0.5Mの濃度で提供される、NH4OH、NaOH、KOHまたはそれらの混合物を含む塩基性溶液を、二次元材料の分散に使用してもよい。得られる二次元材料の分散液の濃度は、約1g/L~10g/Lの範囲であってもよい。必要に応じて、二次元材料の水性分散液に対し、十分な時間(例えば1時間)、緩やかに超音波処理を行ってもよい。いくつかの実施形態において、複合膜は、0.1Mおよび0.5M塩基性溶液中へ2D材料の1g/L、2g/L、2.5g/Lおよび5g/L分散液を使用して調製された。
【0078】
二次元材料と無機多孔質材料前駆体または無機多孔質材料との混合物は、続いて固体複合膜を形成するために乾燥されてもよい。乾燥工程は、残留溶媒を除去するのに十分な時間、混合物を室温に放置することによって実施してもよい。いくつかの実施形態において、複合膜を得るために、無機多孔質材料の表面上に二次元材料の分散液を流延することで調製した複合膜を室温で24時間放置して乾燥させてもよい。必要に応じて、乾燥した複合膜に対して熱処理を行ってもよい。
【0079】
二次元材料と無機多孔質材料前駆体または無機多孔質材料との混合物を乾燥する工程は、低温の焼結または焼成によって行ってもよい。いくつかの実施形態において、二次元材料と無機多孔質材料前駆体の均一な混合物が調製される場合、混合物を所望の形状および大きさの型に注ぎ、室温で24時間乾燥させた後、熱処理を行ってもよい。
【0080】
複合膜の熱処理が行われる場合、複合膜は、複合膜から残留溶媒または残留水を除去するのに十分な期間、高めの温度にさらされてもよい。例えば、複合膜に対し、25℃~80℃の温度で1~18時間、オーブン中で熱処理を行ってもよい。
【0081】
複合膜はまた、膜の調製から有機物および残留溶媒を除去するのに十分な時間、300℃~600℃の温度で焼成に供されてもよい。例えば、複合膜は最大10時間焼成してもよい。
【0082】
本開示は、少なくとも1つのガス状成分を含む混合物を分離する方法も提供する。この方法は、分離装置における下部密閉チャンバー内に、少なくとも1つのガス状成分を含む流体流を通過させる工程を含み、下部密閉チャンバーは上部チャンバーと流体連通している。
【0083】
下部チャンバーは、少なくとも1つのガス状成分を含む流体流を受け入れるように構成されてもよい。流体流は、流体流からのガス状成分が上部チャンバーと下部チャンバーとを仕切る複合膜を透過できるのに十分な液体流量で提供されてもよい。例えば、流体流は、1時間あたり最大30リットルの液体流量で提供されてもよい。流体流は、液体混合物と、少なくとも1つのガス状成分または2つ以上のガスの混合物とを含んでもよい。いくつかの実施形態において、流体流は、気体/気体、液体/液体、または液体/気体の混合物である。分離される混合物中に液体が存在する場合、流体流は、上部チャンバーと下部チャンバーとを仕切る複合膜に接触することなく、下部チャンバーに供給される。
【0084】
混合物を分離する方法は、ガス状成分を、本明細書に記載の複合膜を通って、ガス状成分を受け入れるように構成された上部チャンバーへと透過させる工程をさらに含んでもよい。上部チャンバーには、好ましくは凝縮ユニットにおいて、上部チャンバーからガス状成分を収集ユニットへと排出するための不活性ガス流が提供されてもよい。上部チャンバーは、上部チャンバーを通るガス状成分の通過および不活性ガスの流れから生じる蒸気圧に耐えるように構成されてもよい。
【0085】
液体の分離は周囲温度で行ってもよいし、より高い温度で行ってもよい。それゆえ、分離装置の上部チャンバーおよび下部チャンバーは、最大250°Cの温度と最大10barの圧力に耐えるように製造されてもよい。好ましくは、液体の分離は、80℃を超えない温度、好ましくは60℃を超えない温度、例えば、60℃、45℃、30℃の温度、または25℃の周囲温度で行われる。有利なことに、気液混合物の分離を60℃を超えない温度で行うことにより、混合物中の構成成分の分解を防止しながら、ガス状成分の選択的分離を達成することができる。ガス状成分の低温分離は、特に温度感受性の高い材料および成分を含む混合物に使用し得る。
【0086】
開示された複合膜、分離装置、および分離器械は、化学反応を最後まで完了可能にプロセス反応器に直接連結されて、蒸気を除去することで反応収率および効率を改善し得ることが想定される。最適な収率を達成するには化学反応に必要な時間は短い方がいい場合があるため、上記の構成はエネルギー消費の削減に有利に寄与する。高温での分離が不要となりえるため、工業プロセスに通常使用される熱分離システムおよび材料の数も削減できうる。したがって、本明細書に記載の装置および分離器械は、工業プロセスの環境への影響を軽減するために使用することができる。
【0087】
図1は、分離モジュールの三次元斜視図(
図1A)、分離モジュールの断面の斜視図(
図1B)および分離モジュールの断面図(
図1C)を提供する。
【0088】
図1Aは、上部チャンバー102および下部チャンバー104を備える例示的な分離装置100を示し、2つのチャンバーは、ナットおよびボルト106によって互いに接合され得るように設計されている。下部チャンバーの端部には、入口と出口が設けられており、流体流がチャンバーを流れることができるようになっている。同様に、上部チャンバーにはチャンバーの両端部にそれぞれ位置する入口と出口が設けられており、チャンバーを通って気体が流れ、収集されたガス状成分を排出できるようになっている。
【0089】
図1Bは、例示的な分離装置の内部構造を示し、分離装置は下部チャンバーの上部に取り付けられた金属フレーム108を備えてもよい。3本の支持棒110は、フレームと並行して、フレームより下に配置されてもよい。
【0090】
図1Cの例示的な分離装置の断面を参照すると、金属フレーム108に取り付けられた膜がゴム製ガスケット112で密閉されている。分離処理を開始するには、まず、少なくとも1つのガス状成分を含む流体流114が一定の流量で下部チャンバー104を通過できるようにする。上部チャンバー102へのガス状成分の、膜を介する通過を促進するために、適切な温度と圧力をチャンバーに加えてもよい。分離されたガス状成分は、出口116から収集されてもよい。連続的な分離を確実におこなうために、流体流はポンプにより下部チャンバーを通るように、連続的に供給されてもよい。一実施形態において、ガス状成分の収集を促進するために、不活性ガス流118を上部チャンバー102に供給してもよい。出口116は凝縮システムに接続されていてもよい。別の実施形態において、凝縮システム内へとガス状成分が抽出および収集されるために上部チャンバーに真空を適用する。
【0091】
図2は、例示的な分離装置VPM-01の概略図である。この装置は、最大126mm(長さ)×46mm(幅)×5mm(厚さ)の寸法の複合膜を収容するように設計されている。分離装置VPM-01は、次の仕様に従って設計されている。
i.下部チャンバーと上部チャンバーの両方に使用される材料:グレード316のステンレス鋼(SS316)
ii.供給物コネクタと残留物コネクタの材料:真鍮製ストレートホースコネクタ、1/4インチ、Gオス、ID3/8インチ
iii.透過物コネクタ:1/4インチ(11.07mm)、国内管用雌ネジ(FNPT)
iv.上部チャンバーと下部チャンバーとを接続するネジ:金属ワッシャー付き12×M4のナットとボルト
v.膜の密閉:平らなゴム製ガスケット
vi.分離装置の全体寸法:160mm(長さ)×80mm(幅)×60mm(高さ)
vii.各チャンバーの寸法(
図2):140mm(外長)、130mm(内長)、25mm(深さ)、60mm(幅)
viii.ボルトとナットとを取り付けることで上部チャンバーと下部チャンバーとを接合する金属プレート:160mm(長さ)、5mm(高さ)
ix.最大処理圧力:5bar
x.最高処理温度:200℃
xi.真空:1mbar~1bar、好ましくは500mbar
xii.供給ポンプ容量:毎時10リットル(LPH)
【0092】
図3を参照すると、下部チャンバーは、寸法80mm(長さ)×30mm(幅)のSS316シームレス金属バーから構築される。チャンバーは、コンピュータ数値制御(CNC)機械加工によってバーから形成されてもよい。凹部302は、厚さ5mm、面積0.0058m
2の膜フレーム/スラブを下部チャンバーの最上部に配置するために設けられている。また、金属フレームの下にかつ金属フレームに対してシームレスに配置される支持棒のために、凹部304が設けられてもよい。漏れ防止のための密閉がなされるように、下部チャンバーの外縁に位置するスロット310に平らなゴム製ガスケットを配置してもよい。VPM-01の下部チャンバーの液体保持容量は0.000096m
3、すなわち30~40mlの液体が保持される。下部チャンバーは、最大10LPHの液体流量および最大150℃の動作温度の条件下で連続的に動作するように設計されている。液体流を供給するために、真鍮製ストレートホースコネクタ(1/4インチ、Gオス、ID3/8インチ)を下部チャンバーの両端部(306および308)に取り付けてもよい。
【0093】
図4を参照すると、上部チャンバーは、寸法80mm×30mmのSS316シームレス金属バーから構築される。チャンバーはCNC機械加工によりバーから形成される。上部チャンバーは、装置を漏れないように密閉するため、下部チャンバーの平らなゴム製ガスケットと接触する、長く延びたガスケットスロットライン401を有していてもよい。上部チャンバーの気体保持容量は0.000096m
3である。上部チャンバーは、最大5LPMの気体流量および最大150℃の動作温度の条件下で連続的に動作するように設計されている。1/4インチFNPTは、ガスチューブ接続用に上部チャンバーの両側に取り付けられている。
【0094】
図5を参照すると、支持棒/メッシュは、CNC機械加工により、SS316シームレス金属バー(46×5×3mm)から構築されてもよい。このサポートは、膜金属フレームまたは膜スラブにさらなる機械的支持を提供するために使用される。
【0095】
図6を参照すると、膜フレームは、CNC機械加工により、SS316シームレス金属バー(126×46×5mm)から構築されている。このフレームは、平らな膜スラブにさらなる機械的支持を提供するために使用され、スラブ上に直接製造してもよい。また、温度や圧力の上昇などのより高い運転条件下においてもモジュール運転中の漏れ防止を可能にする。
【0096】
図7を参照すると、分離装置に取り付けるために膜を金属フレーム内に固定してもよい。
図8に示すように、金属フレームを下部チャンバーに配置してもよい。漏れにくい分離装置を提供するために、平らなゴム製ガスケットを下部チャンバー周りのスロット内に配置してもよい。上部チャンバーを下部チャンバー上に配置し、公差を確保するための金属ワッシャーとともにナットとボルトで密閉することで、この装置を閉じてもよい。
【0097】
図9は、大規模な分離処理のために設計された、例示的な分離装置VPM-02の概略図であり、VPM-01と同様のデザインおよび構造を有する。分離装置VPM-02は、最大298mm(長さ)×148mm(幅)×10mm(厚さ)の大きさの複合膜を収容するように設計されている。この分離装置は、次の仕様に従って設計されている。
i.下部チャンバーと上部チャンバーの両方に使用される材料:SS316
ii.供給物コネクタと残留物コネクタの材料:真鍮製ストレートホースコネクタ、1/4インチ、Gオス、ID3/8インチ
iii.透過物コネクタ:1/4インチ(11.07mm)、国内管用雌ネジ(FNPT)
iv.上部チャンバーと下部チャンバーとを接続するネジ:金属ワッシャー付き12×M4のナットとボルト
v.膜の密閉:平らなゴム製ガスケット
vi.分離装置の全体寸法:400mm(長さ)×169.28mm(幅)×90mm(高さ)
vii.各チャンバーの寸法(
図9):336mm(長さ)、33mm(深さ)、136mm(幅)
viii.ボルトとナットとを取り付けることで上部チャンバーと下部チャンバーとを結合する金属プレート(
図9):400mm(長さ)、12mm(高さ)、169.28mm(幅)
ix.最大処理圧力:2bar
x.最高処理温度:膜の種類によって異なる
xi.真空:1mbar~1bar、好ましくは10mbar
xii.供給ポンプ容量:25LPH
【0098】
図10Aを参照すると、下部チャンバーはSS316Lグレードのステンレス鋼金属シートから構築され、
図10Aに示すように溶接される。厚さ5~10mm、面積0.441m
2の膜フレーム/スラブ、支持棒、および平らなゴム製ガスケットを下部チャンバーの上部に配置するための凹部が設けられている。液体保持容量は0.00135m
3、すなわち1.35~1.5Lの液体が保持される。チャンバーは、10~25LPHの液体流量および最大120℃の動作温度の条件下で連続的に動作するように設計されている。膜スラブにさらなる機械的支持を提供するために、2本の支持棒を使用してもよい。液体流を下部チャンバーへ供給するために、真鍮製ストレートホースコネクタ(1/4インチ、Gオス、ID3/8インチ)を下部チャンバーの両端部に取り付けてもよい。
【0099】
図10Bを参照すると、VPM-02の上部チャンバーはSS316Lグレードのステンレス鋼金属シートから構築されてもよく、上記のように溶接される。この設計は、平らなゴム製ガスケットとの漏れ防止のための接触を提供するために、ガスケット用の拡張アームを有する。上部チャンバーの気体保持容量は0.00225m
3、すなわち2.25Lである。上部チャンバーは、10~20LPMの気体流量および最大120℃の動作温度の条件下で連続的に動作するように設計されていてもよい。1/4インチFNPTは、ガスチューブ接続用に上部チャンバーの両側に取り付けられている。
【0100】
支持棒/メッシュは、CNC機械加工により、SS316シームレス金属バー(148×5×3mm)から構築されてもよい。このサポートは、膜金属フレームまたは膜スラブにさらなる機械的支持を提供するために使用されてもよい。
【0101】
膜フレームは、SS316シームレス金属バー(298×148×5mm)から構築されてもよく、CNC機械加工により中空フレームになるように湾曲される。このフレームは、平らな膜スラブにさらなる機械的支持を提供するために使用されるもので、スラブ内に直接製造される。また、温度や圧力の上昇などのより高い運転条件下においてもモジュール運転中の漏れ防止が可能である。
【0102】
本明細書に記載される複合膜は、モジュールVPM-01に対して行われたのと同様に金属フレーム内に固定されてもよい。金属フレームは下部チャンバー内に固定される。動作中に漏れ防止のための密閉を可能にするために、ゴム製の平らなガスケットが下部チャンバーのスロット内に配置される。上部チャンバーを下部チャンバーの最上部に配置し、十分な公差を有する金属ワッシャーとともにナットとボルトでボルト締めすることで、この装置を閉じてもよい。
【0103】
実施例
本発明の非限定的な実施例を、特定の実施例を参照してさらに詳細に説明するが、これらはいかなる形でも本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0104】
モジュールは、さまざまな液体混合物を処理し、混合物から商業価値のある生成物を分離するために使用される。分離されるさまざまな生成物に応じて、異なるグラフェン系の膜が実装され、テストされた。これらの処理において、長期にわたる物理的および化学的安定性と分離効率とが示された。分離係数は個々の処理によって異なり、処理量に関連付けられる。以下に示す実施例において、有意な効率が得られる。
【0105】
気液分離処理における分離係数(α)は、上部チャンバーに収集された透過物中の、分離される生成物の重量比を、処理後に下部チャンバーに残った残留物中の生成物の重量比で割ることにより計算される。
分離処理の生産性は、全質量流量Jtotalで表され、Jtotalは次のように計算される。
【数1】
【0106】
式中、mは膜の面積Aあたり、時間tにわたって収集された透過物の質量である。
パーベーパレーション分離指数(pervaporation separation index:PSI)は次のように計算される。
【数2】
【0107】
複合膜の孔径は、電圧2.0kV、電流100pAで走査型電子顕微鏡(SEM)を使用し、倍率200倍から50000倍で測定した。複合膜の多孔率は、気体または液体の吸収(ピクノメトリー)から測定可能である。ピクノメトリー測定は窒素ガスを使用して実施した。
【0108】
本明細書に記載の複合膜を用いたガス状成分の分離を、少なくとも2ヶ月の期間連続的に実施した。分離効率はこの期間を通して維持された。
【0109】
実施例1―ブタノール
水(初期ブタノール濃度12g/L)から、分離装置VPM-02を使用してブタノールを分離した。
【0110】
本実施形態における複合膜は、99.75重量%のCaSO4・2H2Oと0.25重量%のグラフェンナノプレートレットの積層とを含み、総厚さ5mm、多孔率約27%、孔径0.5~3μmを有する。下部チャンバー内の液体流量は3.0L/hであり、上部チャンバー内の気体流量は2L/分であった。分離処理は60℃の温度および大気圧の条件で実施した。25.7±1の分離係数と~1.0kg/m2hのPSIにより、初期供給量の約40%および最大130g/Lのブタノール濃度を含む透過物が生成された。この分離装置は、工業化準備前の量へとスケールアップする一環として、週あたり最大5Lの供給混合物を処理するように設定された。
【0111】
結果として、発酵培養液からのブタノールの分離にも成功した。この場合、リボフラビンまたはビタミンB2は残留物中に残った。
【0112】
実施例2―アルコール飲料
アルコール濃度4.00%~6.00%(v/v)のアルコール飲料から、分離装置VPM-01を使用してエタノールを分離した。テストに使用したアルコール飲料は、ビール、リキュール、および実験室で調製された合成混合物である。
【0113】
本実施形態で使用される複合膜は、94重量%のCaSO4・2H2O中に均一に分散された6重量%の酸化グラフェンを含み、総厚さ3mm、多孔率約27%、孔径1~10μmを有する。下部チャンバー内の液体流量は0.4L/hであり、上部チャンバー内の気体流量は0.8m3/sであった。分離処理は室温および大気圧の条件で実施した。最大14.5±1の分離係数と最大0.5kg/m2hのPSIが達成された。この処理により、供給量の約91%の残留物が生成され、アルコール濃度は0.5%以下であった。
【0114】
実施例3―エタノール
水(エタノール濃度10%(w/w)以下)から、分離装置VPM-01を使用してエタノールを分離した。
【0115】
本実施形態で使用される複合膜は、93.85重量%のCaSO4・2H2O中に均一に分散された6重量%の酸化グラフェンと、0.15重量%の酸化グラフェンの積層とを含み、総厚さ3mm、多孔率約27%、孔径1~3μmを有する。下部チャンバー内の液体流量は0.4L/hであり、上部チャンバー内の気体流量は2L/分であった。分離処理は30℃~60℃の温度および大気圧の条件で実施した。最大6.0±1の分離係数と約1.3kg/m2hのPSIが達成された。
【0116】
この処理により、エタノール濃度が最大約62%(w/w)の透過物と、供給量の約93%およびエタノール濃度が1%(w/w)以下の残留物が生成された。
【0117】
実施例4―水
エタノール(エタノール濃度95%(w/w)以上)から、分離装置VPM-01を使用して水を分離した。
【0118】
本実施形態で使用される複合膜は、89.75重量%のCaSO4・2H2O中に均一に分散された10重量%のグラフェンナノプレートレットと、0.25重量%の酸化グラフェンの積層とを含み、総厚さ~3mm、多孔率約27%、孔径0.5~3.0μmを有する。下部チャンバー内の液体流量は0.4L/hであった。分離処理は50℃の温度および大気圧の条件で実施した。7.2±1の分離係数と~0.2kg/m2hのPSIが達成された。この処理により、エタノール濃度が少なくとも0.5%(w/w)増加した、初期供給量の約93%の残留物が生成された。残留物中の最終エタノール濃度が、最大99.8%(w/w)に達することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0119】
開示された複合膜、分離装置および分離器械は、液体-気体混合物からガス状成分を非接触で分離するために使用されてもよい。例えば、分離装置および分離器械は、液体-気体混合物からエタノールなどの揮発性物質を分離するために利用されてもよい。このような分離は、飲料産業における発酵培養液からのエタノールの分離に特に有用であり得る。工業生産において、分離装置を化学反応器と連結させてガス状成分を除去してもよく、それにより化学反応の平衡を促進しうる。
【0120】
本発明は、好ましい実施形態および任意選択の特徴によって具体的に開示されてきたが、本明細書に開示されている本発明の修正例および変形例は、当業者によって利用可能であり、そのような修正例および変形例は、本発明の範囲内にあると考えられることを理解されたい。
【国際調査報告】