(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】差動電力増幅器
(51)【国際特許分類】
H03F 3/24 20060101AFI20231222BHJP
H03F 1/02 20060101ALI20231222BHJP
H03F 3/45 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
H03F3/24
H03F1/02
H03F3/45
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536504
(86)(22)【出願日】2022-03-31
(85)【翻訳文提出日】2023-06-15
(86)【国際出願番号】 CN2022084372
(87)【国際公開番号】W WO2023040238
(87)【国際公開日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】202122255557.8
(32)【優先日】2021-09-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521079271
【氏名又は名称】深▲せん▼▲飛▼▲驤▼科技股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】謝 志▲遠▼
(72)【発明者】
【氏名】趙 宇霆
(72)【発明者】
【氏名】郭 嘉▲帥▼
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AA01
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5J500DN01
5J500DP01
5J500LV08
5J500WU08
(57)【要約】
本発明の実施例は差動電力増幅器を開示し、順に直列接続された入力整合ネットワーク、第1段増幅回路、第1段間整合ネットワーク、第2段増幅回路、第2段間整合ネットワーク、第3段増幅回路及び出力整合ネットワークを備え、前記第1段増幅回路及び第2段増幅回路はシングル入力シングル出力回路であり、前記第3段増幅回路はデュアル入力デュアル出力回路であり、前記第2段間整合ネットワークは1つの第1変圧器T1、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、第1インダクタL1及び第2インダクタL2を備え、前記出力整合ネットワークは1つの第2変圧器T2を備え、これにより変圧器で段間整合ネットワークと出力整合ネットワークを実現し、段間整合の難易度を効果的に低減し、入力リターンロスとゲインを効果的に最適化し、出力電力を向上させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動電力増幅器であって、
入力整合ネットワークと、第1段増幅回路と、第1段間整合ネットワークと、第2段増幅回路と、第2段間整合ネットワークと、第3段増幅回路と、出力整合ネットワークとを備え、
前記第1段増幅回路及び第2段増幅回路はシングル入力シングル出力回路であり、前記第3段増幅回路はデュアル入力デュアル出力回路であり、前記第2段間整合ネットワークは1つの第1変圧器T1、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、第1インダクタL1及び第2インダクタL2を備え、前記出力整合ネットワークは1つの第2変圧器T2を備え、
前記入力整合ネットワークの入力端子と出力端子がシングルエンドRF入力信号RFinと第1段増幅回路の入力端子にそれぞれ接続され、前記第1段増幅回路の出力端子が前記第1段間整合ネットワークの入力端子に接続され、前記第1段間整合ネットワークの出力端子が前記第2段増幅回路の入力端子に接続され、前記第1変圧器T1の2つの入力端子が前記第2段増幅回路の出力端子と給電電圧Vcc2にそれぞれ接続され、前記第2段増幅回路からのシングルエンド信号を一対の差動信号に変換して前記第3段増幅回路の2つの入力端子にそれぞれ入力し、前記第3段増幅回路の2つの出力端子が前記第2変圧器T2の2つの入力端子にそれぞれ接続され、前記第2変圧器T2は、1つの出力端子が接地され、別の出力端子がシングルエンドRF出力信号RFoutを出力することに用いられ、
前記第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の一方の端子が前記第1変圧器T1の2つの入力端子にそれぞれ接続され、前記第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の他方の端子がそれぞれ接地され、前記第1インダクタL1及び前記第2インダクタL2の一方の端子が前記第1変圧器T1の2つの出力端子にそれぞれ接続され、前記第1インダクタL1及び前記第2インダクタL2の他方の端子がそれぞれ接地されることを特徴とする差動電力増幅器。
【請求項2】
前記第1段増幅回路は1つの第1トランジスタQ1を備え、前記第2段増幅回路は1つの第2トランジスタQ2を備え、前記第3段増幅回路は2つの第3トランジスタQ3を備え、
前記第1トランジスタQ1のベース、コレクタ及びエミッタはそれぞれ前記入力整合ネットワークの出力端子、前記第1段間整合ネットワークの入力端子及び接地端子に接続され、前記第2トランジスタQ2のベース、コレクタ及びエミッタはそれぞれ前記第1段間整合ネットワークの出力端子、前記第1変圧器T1の1つの入力端子及び接地端子に接続され、2つの前記第3トランジスタQ3のベースはそれぞれ前記第1変圧器T1の2つの出力端子に接続され、2つの前記第3トランジスタQ3のコレクタはそれぞれ前記第2変圧器T2の2つの入力端子に接続され、2つの前記第3トランジスタQ3のエミッタがそれぞれ接地されることを特徴とする請求項1に記載の差動電力増幅器。
【請求項3】
前記差動電力増幅器は前記第1トランジスタQ1のコレクタとベースとの間に接続された負帰還ネットワークをさらに備え、前記負帰還ネットワークは直列接続された第1抵抗R1及び第3コンデンサC3を備え、
前記第1段増幅回路は、前記入力整合ネットワークと前記第1トランジスタQ1のベースとの間に直列接続され、前記負帰還ネットワークに並列接続された第2抵抗R2をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の差動電力増幅器。
【請求項4】
前記第2段間整合ネットワークは第4コンデンサC4、第5コンデンサC5及び第3インダクタL3をさらに備え、
前記第4コンデンサC4は前記第1変圧器T1の1つの出力端子と1つの第3トランジスタQ3のベースとの間に直列接続され、前記第5コンデンサC5は前記第1変圧器T1の別の出力端子と別の第3トランジスタQ3のベースとの間に直列接続され、前記第3インダクタL3は前記第1変圧器T1の入力端子と給電電圧Vcc2との間に直列接続されることを特徴とする請求項2に記載の差動電力増幅器。
【請求項5】
前記出力整合ネットワークは第6コンデンサC6、第7コンデンサC7、第8コンデンサC8及び第4インダクタL4をさらに備え、
前記第6コンデンサC6及び前記第7コンデンサC7の一方の端子がそれぞれ前記第2変圧器T2の2つの入力端子に接続され、前記第6コンデンサC6及び前記第7コンデンサC7の他方の端子がそれぞれ接地され、前記第8コンデンサC8の一方の端子が前記第2変圧器T2の接地用出力端子に接続され、前記第8コンデンサC8の他方の端子が接地され、前記第4インダクタL4は前記第2変圧器T2の接地用出力端子と接地端子との間に直列接続されることを特徴とする請求項2に記載の差動電力増幅器。
【請求項6】
前記入力整合ネットワークは第9コンデンサC9、第10コンデンサC10、第5インダクタL5及び第6インダクタL6を備え、
前記第9コンデンサC9の一方の端子が第5インダクタL5の一方の端子に接続され、接続ノードは前記シングルエンドRF入力信号RFinを入力することに用いられ、前記第5インダクタL5の他方の端子が接地され、前記第9コンデンサC9の他方の端子が前記第10コンデンサC10の一方の端子に接続され、前記第10コンデンサC10の他方の端子が前記第1段増幅回路の入力端子に接続され、前記第6インダクタL6の一方の端子が前記第9コンデンサC9と第10コンデンサC10との間に接続され、前記第6インダクタL6の他方の端子が接地されることを特徴とする請求項1に記載の差動電力増幅器。
【請求項7】
前記第2段増幅回路は第3抵抗R3をさらに備え、前記第3抵抗R3は前記第1段間整合ネットワークの出力端子と前記第2段増幅回路の入力端子との間に直列接続されることを特徴とする請求項1に記載の差動電力増幅器。
【請求項8】
各前記トランジスタのベースに1対1で接続されたベースバイアス回路をさらに備え、
前記ベースバイアス回路は第4トランジスタQ4、第5トランジスタQ5、第6トランジスタQ6、第4抵抗R4、第5抵抗R5、第6抵抗R6及び第11コンデンサC11を備え、
前記第4トランジスタQ4のベースとコレクタ、前記第5トランジスタQ5のベース、前記第4抵抗R4の一方の端子及び前記第11コンデンサC11の一方の端子は接続され、前記第4抵抗R4の他方の端子が給電電圧Vregに接続され、前記第4トランジスタQ4のエミッタ、前記第6トランジスタQ6のコレクタ及びベースは接続され、前記第6トランジスタQ6のエミッタが第5抵抗R5の一方の端子に接続され、前記第5抵抗R5の他方の端子が接地され、前記第11コンデンサC11の他方の端子が接地され、前記第5トランジスタQ5のコレクタは給電電圧Vbatに接続され、前記第5トランジスタQ5のエミッタが第6抵抗R6の一方の端子に接続され、前記第6抵抗R6の他方の端子が対応するトランジスタのベースに接続されることを特徴とする請求項2に記載の差動電力増幅器。
【請求項9】
前記第1段間整合ネットワークは第7インダクタL7、第8インダクタL8、第14コンデンサC14及び第15コンデンサC15を備え、
前記第7インダクタL7の一方の端子と前記第14コンデンサC14の一方の端子がいずれも前記第1段増幅回路の出力端子に接続され、前記第7インダクタL7の他方の端子が給電電圧Vcc1に接続され、前記第14コンデンサC14の他方の端子、第8インダクタL8の一方の端子及び第15コンデンサC15の一方の端子は接続され、前記第15コンデンサC15の他方の端子が第2段増幅回路の入力端子に接続され、前記第8インダクタL8の他方の端子が接地されることを特徴とする請求項1に記載の差動電力増幅器。
【請求項10】
前記第1変圧器T1と前記第2変圧器T2はいずれも対称式相互巻き変圧器であることを特徴とする請求項1に記載の差動電力増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力増幅器の技術分野に関し、特に差動電力増幅器に関する。
【背景技術】
【0002】
5G無線通信システムにおいて、キーモジュールは送信機の最終段に位置するRF電力増幅器(RF Power Amplifier)であり、その作用は出力信号を増幅することであり、アンテナによって増幅された信号を送信する。RF電力増幅器は送信機システムの出力電力、効率、ゲイン、線形性、動作帯域幅、反射係数などの様々性能指標に直接影響、決定し、これにより5G無線通信システム全体の各性能指標に影響、決定する。従来の整合構造は1つ又は複数の静電容量インダクタンスを直並列により組み合わせたものであり、静電容量インダクタンスの整合構造の目的は電力増幅器の入出力ポートを50オームポートに接続する時にインピーダンス変化を実現し、異なる増幅器のニーズに応じて最大ゲイン伝送又は最大電力伝送等の効果を達成することである。従来のインピーダンス整合は「Π型」、「T型」、「L型」整合ネットワークである場合が多く、異なるインピーダンス点に基づいて最適な整合構造及び整合デバイスを選択することができる。
【0003】
5G移動通信におけるRF電力増幅器の出力電力に対する要求がより大きく、そのため、高電力を設計及び実現するためにより多くのトランジスタを必要とし、整合の難易度を向上させる。また、高周波でのコンデンサ、インダクタ、抵抗は大きな寄生効果を生成し、その結果、デバイスの実際値と理想値との間に一定の差があり、これにより、高周波でのインピーダンス整合がより困難になることが分かる。実際の設計において、コンデンサ、インダクタの従来の整合構造のみを用いると、入力リターンロス、ゲインを良好な状態に整合することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施例は、整合の難易度を低減することができ、高いゲインと出力電力を有し、入力リターンロスを最適化することができる差動電力増幅器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記技術的課題を解決するために、本発明は、入力整合ネットワークと、第1段増幅回路と、第1段間整合ネットワークと、第2段増幅回路と、第2段間整合ネットワークと、第3段増幅回路と、出力整合ネットワークとを備え、
前記第1段増幅回路及び第2段増幅回路はシングル入力シングル出力回路であり、前記第3段増幅回路はデュアル入力デュアル出力回路であり、前記第2段間整合ネットワークは1つの第1変圧器T1、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、第1インダクタL1及び第2インダクタL2を備え、前記出力整合ネットワークは1つの第2変圧器T2を備え、
前記入力整合ネットワークの入力端子と出力端子がシングルエンドRF入力信号RFinと第1段増幅回路の入力端子にそれぞれ接続され、前記第1段増幅回路の出力端子が前記第1段間整合ネットワークの入力端子に接続され、前記第1段間整合ネットワークの出力端子が前記第2段増幅回路の入力端子に接続され、前記第1変圧器T1の2つの入力端子が前記第2段増幅回路の出力端子と給電電圧Vcc2にそれぞれ接続され、前記第2段増幅回路からのシングルエンド信号を一対の差動信号に変換して前記第3段増幅回路の2つの入力端子にそれぞれ入力し、前記第3段増幅回路の2つの出力端子が前記第2変圧器T2の2つの入力端子にそれぞれ接続され、前記第2変圧器T2は、1つの出力端子が接地され、別の出力端子がシングルエンドRF出力信号RFoutを出力することに用いられ、
前記第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の一方の端子が前記第1変圧器T1の2つの入力端子にそれぞれ接続され、前記第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の他方の端子がそれぞれ接地され、前記第1インダクタL1及び前記第2インダクタL2の一方の端子が前記第1変圧器T1の2つの出力端子にそれぞれ接続され、前記第1インダクタL1及び前記第2インダクタL2の他方の端子がそれぞれ接地される差動電力増幅器を提供する。
【0006】
さらには、前記第1段増幅回路は1つの第1トランジスタQ1を備え、前記第2段増幅回路は1つの第2トランジスタQ2を備え、前記第3段増幅回路は2つの第3トランジスタQ3を備え、
前記第1トランジスタQ1のベース、コレクタ及びエミッタはそれぞれ前記入力整合ネットワークの出力端子、前記第1段間整合ネットワークの入力端子及び接地端子に接続され、前記第2トランジスタQ2のベース、コレクタ及びエミッタはそれぞれ前記第1段間整合ネットワークの出力端子、前記第1変圧器T1の1つの入力端子及び接地端子に接続され、2つの前記第3トランジスタQ3のベースはそれぞれ前記第1変圧器T1の2つの出力端子に接続され、2つの前記第3トランジスタQ3のコレクタはそれぞれ前記第2変圧器T2の2つの入力端子に接続され、2つの前記第3トランジスタQ3のエミッタがそれぞれ接地される。
【0007】
さらには、前記差動電力増幅器は前記第1トランジスタQ1のコレクタとベースとの間に接続された負帰還ネットワークをさらに備え、前記負帰還ネットワークは直列接続された第1抵抗R1及び第3コンデンサC3を備え、
前記第1段増幅回路は、前記入力整合ネットワークと前記第1トランジスタQ1のベースとの間に直列接続され、前記負帰還ネットワークに並列接続された第2抵抗R2をさらに備える。
【0008】
さらには、前記第2段間整合ネットワークは第4コンデンサC4、第5コンデンサC5及び第3インダクタL3をさらに備え、
前記第4コンデンサC4は前記第1変圧器T1の1つの出力端子と1つの第3トランジスタQ3のベースとの間に直列接続され、前記第5コンデンサC5は前記第1変圧器T1の別の出力端子と別の第3トランジスタQ3のベースとの間に直列接続され、前記第3インダクタL3は前記第1変圧器T1の入力端子と給電電圧Vcc2との間に直列接続される。
【0009】
さらには、前記出力整合ネットワークは第6コンデンサC6、第7コンデンサC7、第8コンデンサC8及び第4インダクタL4をさらに備え、
前記第6コンデンサC6及び前記第7コンデンサC7の一方の端子がそれぞれ前記第2変圧器T2の2つの入力端子に接続され、前記第6コンデンサC6及び前記第7コンデンサC7の他方の端子がそれぞれ接地され、前記第8コンデンサC8の一方の端子が前記第2変圧器T2の接地用出力端子に接続され、前記第8コンデンサC8の他方の端子が接地され、前記第4インダクタL4は前記第2変圧器T2の接地用出力端子と接地端子との間に直列接続される。
【0010】
さらには、前記入力整合ネットワークは第9コンデンサC9、第10コンデンサC10、第5インダクタL5及び第6インダクタL6を備え、
前記第9コンデンサC9の一方の端子が第5インダクタL5の一方の端子に接続され、接続ノードは前記シングルエンドRF入力信号RFinを入力することに用いられ、前記第5インダクタL5の他方の端子が接地され、前記第9コンデンサC9の他方の端子が前記第10コンデンサC10の一方の端子に接続され、前記第10コンデンサC10の他方の端子が前記第1段増幅回路の入力端子に接続され、前記第6インダクタL6の一方の端子が前記第9コンデンサC9と第10コンデンサC10との間に接続され、前記第6インダクタL6の他方の端子が接地される。
【0011】
さらには、前記第2段増幅回路は第3抵抗R3をさらに備え、前記第3抵抗R3は前記第1段間整合ネットワークの出力端子と前記第2段増幅回路の入力端子との間に直列接続される。
【0012】
さらには、各前記トランジスタのベースに1対1で接続されたベースバイアス回路をさらに備え、
前記ベースバイアス回路は第4トランジスタQ4、第5トランジスタQ5、第6トランジスタQ6、第4抵抗R4、第5抵抗R5、第6抵抗R6及び第11コンデンサC11を備え、
前記第4トランジスタQ4のベースとコレクタ、前記第5トランジスタQ5のベース、前記第4抵抗R4の一方の端子及び前記第11コンデンサC11の一方の端子は接続され、前記第4抵抗R4の他方の端子が給電電圧Vregに接続され、前記第4トランジスタQ4のエミッタ、前記第6トランジスタQ6のコレクタ及びベースは接続され、前記第6トランジスタQ6のエミッタが第5抵抗R5の一方の端子に接続され、前記第5抵抗R5の他方の端子が接地され、前記第11コンデンサC11の他方の端子が接地され、前記第5トランジスタQ5のコレクタは給電電圧Vbatに接続され、前記第5トランジスタQ5のエミッタが第6抵抗R6の一方の端子に接続され、前記第6抵抗R6の他方の端子が対応するトランジスタのベースに接続される。
【0013】
さらには、前記第1段間整合ネットワークは第7インダクタL7、第8インダクタL8、第14コンデンサC14及び第15コンデンサC15を備え、
前記第7インダクタL7の一方の端子と前記第14コンデンサC14の一方の端子がいずれも前記第1段増幅回路の出力端子に接続され、前記第7インダクタL7の他方の端子が給電電圧Vcc1に接続され、前記第14コンデンサC14の他方の端子、第8インダクタL8の一方の端子及び第15コンデンサC15の一方の端子は接続され、前記第15コンデンサC15の他方の端子が第2段増幅回路の入力端子に接続され、前記第8インダクタL8の他方の端子が接地される。
【0014】
さらに、前記第1変圧器T1と前記第2変圧器T2はいずれも対称式相互巻き変圧器である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の差動電力増幅器は、入力整合ネットワークと、第1段増幅回路と、第1段間整合ネットワークと、第2段増幅回路と、第2段間整合ネットワークと、第3段増幅回路と、出力整合ネットワークとを備え、前記第2段間整合ネットワークは1つの第1変圧器T1、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、第1インダクタL1及び第2インダクタL2を備え、前記出力整合ネットワークは1つの第2変圧器T2を備え、前記第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の一方の端子が前記第1変圧器の2つの入力端子にそれぞれ接続され、前記第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の他方の端子がそれぞれ接地され、前記第1インダクタL1及び前記第2インダクタL2の一方の端子が前記第1変圧器の2つの出力端子にそれぞれ接続され、前記第1インダクタL1及び前記第2インダクタL2の他方の端子がそれぞれ接地され、これにより、変圧器で段間整合ネットワークと出力整合ネットワークを実現することにより、段間整合の難易度を効果的に低減し、入力リターンロスとゲインを効果的に最適化することができ、また、出力電力を向上させることができ、コンデンサC1、C2、インダクタL1、L2の作用で、変圧器の整合帯域幅を増加し、変圧器整合の挿入損失を低減することができる。
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の具体的な実施形態について詳細に説明することにより、本発明の技術的解決手段及びその有益な効果を明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施例に係るRF電力増幅器の回路図である。
【
図2】本発明の実施例に係るベースバイアス回路の回路図である。
【
図3】本発明の実施例に係る対称式相互巻き変圧器の原理図である。
【
図4】本発明の実施例に係る対称式相互巻き変圧器のレイアウトである。
【
図5】本発明の実施例に係る差動電力増幅器の小信号のシミュレーション波形図である。
【
図6】本発明の実施例に係る差動電力増幅器の大信号のシミュレーション波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図面を参照して、同じ構成要素の符号は同じ構成要素を表し、本発明の原理は適切な演算環境で実施することを例に挙げて説明する。以下の説明は例示された本発明の具体的な実施例に基づくものであり、本発明に詳述されていない他の具体的な実施例を制限するものと見なされるべきではない。
【0019】
図1を参照して、本発明の実施例の差動電力増幅器100は、順に直列接続された入力整合ネットワーク11、第1段増幅回路12、第1段間整合ネットワーク13、第2段増幅回路14、第2段間整合ネットワーク15、第3段増幅回路16及び出力整合ネットワーク17を備える。
【0020】
前記第1段増幅回路12及び第2段増幅回路14はシングル入力シングル出力回路であり、すなわち第1段増幅回路12及び第2段増幅回路14はいずれも1つの入力端子及び1つの出力端子を有する回路であり、前記第3段増幅回路16はデュアル入力デュアル出力回路である。前記第2段間整合ネットワーク15は第1変圧器T1、第1コンデンサC1、第2コンデンサC2、第1インダクタL1及び第2インダクタL2を備え、前記出力整合ネットワーク17は第2変圧器T2を備える。
【0021】
ここで、前記入力整合ネットワーク11の入力端子と出力端子がそれぞれシングルエンドRF入力信号RFinと第1段増幅回路12の入力端子に接続され、前記第1段増幅回路12の出力端子が前記第1段間整合ネットワーク13の入力端子に接続され、前記第1段間整合ネットワーク13の出力端子が前記第2段増幅回路14の入力端子に接続され、前記第1変圧器T1の2つの入力端子が前記第2段増幅回路14の出力端子と給電電圧Vcc2にそれぞれ接続され、前記第2段増幅回路14からのシングルエンド信号を一対の差動信号に変換して前記第3段増幅回路16の2つの入力端子にそれぞれ入力し、前記第3段増幅回路16の2つの出力端子が前記第2変圧器T2の2つの入力端子にそれぞれ接続され、前記第2変圧器T2の1つの出力端子が接地され、別の出力端子がシングルエンドRF出力信号RFoutを出力することに用いられる。
【0022】
ここで、前記第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の一方の端子が前記第1変圧器T1の2つの入力端子にそれぞれ接続され、前記第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の他方の端子がそれぞれ接地され、前記第1インダクタL1及び前記第2インダクタL2の一方の端子が前記第1変圧器T1の2つの出力端子にそれぞれ接続され、前記第1インダクタL1及び前記第2インダクタL2の他方の端子がそれぞれ接地される。ここで、前記第1インダクタL1と第2インダクタL2は同じインダクタ素子を用いて実現することができ、両者の大きさが同じである。
【0023】
したがって、本発明の実施例において、差動電力増幅器100は三段増幅回路を用いて実現し、これにより高いゲインを得ることができ、変圧器で段間整合ネットワークと出力整合ネットワークを実現することにより、段間整合の難易度を効果的に低減し、入力リターンロスとゲインを効果的に最適化することができ、出力電力の向上に有利であり、コンデンサC1、C2、インダクタL1、L2の作用で、変圧器の整合帯域幅を増加し、変圧器整合の挿入損失を低減することができる。
【0024】
本考案のいくつかの実現態様において、第1段増幅回路12、第2段増幅回路14及び第3段増幅回路16はHBTトランジスタを用いて実現することができ、当然のことながら、他のいくつかの実現態様において、他のプロセスを用いて実現してもよく、例えば、各段増幅回路は、COMSトランジスタ、HEMTトランジスタ又はPHEMTトランジスタを用いて実現してもよい。
【0025】
HBTトランジスタを例に挙げると、前記第1段増幅回路12は1つの第1トランジスタQ1を備え、前記第2段増幅回路14は1つの第2トランジスタQ2を備え、前記第3段増幅回路16は2つの第3トランジスタQ3を備える。
【0026】
ここで、前記第1トランジスタQ1のベース、コレクタ及びエミッタはそれぞれ前記入力整合ネットワーク11の出力端子、前記第1段間整合ネットワーク13の入力端子及び接地端子に接続され、前記第2トランジスタQ2のベース、コレクタ及びエミッタはそれぞれ前記第1段間整合ネットワーク13の出力端子、前記第1変圧器T1の1つの入力端子及び接地端子に接続され、2つの前記第3トランジスタQ3のベースはそれぞれ前記第1変圧器T1の2つの出力端子に接続され、2つの前記第3トランジスタQ3のコレクタはそれぞれ前記第2変圧器T2の2つの入力端子に接続され、2つの前記第3トランジスタQ3のエミッタがそれぞれ接地される。
【0027】
さらには、前記差動電力増幅器100は前記第1トランジスタQ1のコレクタとベースとの間に接続された負帰還ネットワーク18をさらに備え、前記負帰還ネットワーク18は直列接続された第1抵抗R1及び第3コンデンサC3を備える。前記第1段増幅回路12は第2抵抗R2をさらに備え、前記第2抵抗R2は前記入力整合ネットワーク11と前記第1トランジスタQ1のベースとの間に直列接続され、前記負帰還ネットワーク18に並列接続される。このように、抵抗値が小さい第2抵抗R2を第1トランジスタQ1のベースに直列接続し、第1トランジスタQ1のコレクタとベースとの間に負帰還ネットワーク18を付加することにより、安定性を高めるとともに第1段増幅回路12のゲイン及び出力電力を低下させることができ、ここで、第1抵抗R1の作用で帰還の深さを調節することができる。
【0028】
図1から分かるように、本発明の実施例において、第1段増幅回路12は第1トランジスタQ1を用いて1つの増幅回路を実現し、他の実施例において、第1トランジスタQ1の数は1つに限定されるものではなく、並列接続された複数の第1トランジスタQ1を用いて第1段増幅回路12を実現することができ、複数の第1トランジスタQ1の並列接続を実現する方式は複数の第1トランジスタQ1のベースがそれぞれ1つの第2抵抗R2に直列接続されてから並列接続され、第1トランジスタQ1のコレクタが並列接続されて第1段増幅回路12の出力端子となり、第1トランジスタQ1のエミッタがいずれも接地されることである。同様に、
図1に示される実施例において、第2段増幅回路14も1つの第2トランジスタQ2を用いて1つの増幅回路を実現し、他の実施態様において、第2段増幅回路14も並列接続された複数の第2トランジスタQ2を用いて実現することができ、並列接続された複数の第2トランジスタQ2は、ベースが並列接続され、コレクタが並列接続され、エミッタがいずれも接地される。また、第3段増幅回路16は2つの第3トランジスタQ3を用いてそれぞれ2つの増幅回路を実現し、他の実施態様において、第3段増幅回路16の各増幅回路は並列接続された複数の第3トランジスタQ3を用いて実現することができ、各回路において、並列接続された複数の第3トランジスタQ3は、ベースが並列接続され、コレクタが並列接続され、エミッタが接地される。
【0029】
さらに、前記第2段間整合ネットワーク15は第4コンデンサC4、第5コンデンサC5及び第3インダクタL3をさらに備える。前記第4コンデンサC4は前記第1変圧器T1の1つの出力端子と1つの第3トランジスタQ3のベースとの間に直列接続され、前記第5コンデンサC5は前記第1変圧器T1の別の出力端子と別の第3トランジスタQ3のベースとの間に直列接続され、前記第3インダクタL3は前記第1変圧器T1の入力端子と給電電圧Vcc2との間に直列接続される。第4コンデンサC4及び第5コンデンサC5は直流阻止コンデンサであり、同じコンデンサ素子を用いて実現することができ、両者の大きさが同じであり、第3段増幅回路16のゲインを調整する役割を果たすことができる。
【0030】
ここで、前記出力整合ネットワーク17は第6コンデンサC6、第7コンデンサC7、第8コンデンサC8及び第4インダクタL4をさらに備える。
【0031】
前記第6コンデンサC6及び前記第7コンデンサC7の一方の端子が前記第2変圧器T2の2つの入力端子にそれぞれ接続され、前記第6コンデンサC6及び前記第7コンデンサC7の他方の端子がそれぞれ接地され、前記第8コンデンサC8の一方の端子が前記第2変圧器T2の接地用出力端子に接続され、前記第8コンデンサC8の他方の端子が接地され、前記第4インダクタL4は前記第2変圧器T2の接地用出力端子と接地端子との間に直列接続される。
【0032】
ここで、全体回路の挿入リターンロスを最適化するために、前記入力整合ネットワーク11は2段LC整合、すなわちインダクタが並列接続されて接地し、コンデンサと直列接続されて形成されたハイパス整合構造を用いて実現し、これは安定性を増加するとともに第1段増幅回路12のゲイン及び出力電力を低下させることに有利である。具体的には、入力整合ネットワーク11は第9コンデンサC9、第10コンデンサC10、第5インダクタL5及び第6インダクタL6を備える。前記第9コンデンサC9の一方の端子が第5インダクタL5の一方の端子に接続され、接続ノードは前記シングルエンドRF入力信号RFinを入力することに用いられ、前記第5インダクタL5の他方の端子が接地され、前記第9コンデンサC9の他方の端子が前記第10コンデンサC10の一方の端子に接続され、前記第10コンデンサC10の他方の端子が前記第2抵抗R2の一方の端子に接続され、すなわち第2抵抗R2は前記第10コンデンサC10と第1トランジスタQ1のベースとの間に直列接続され、前記第6インダクタL6の一方の端子が前記第9コンデンサC9と第10コンデンサC10との間に接続され、前記第6インダクタL6の他方の端子が接地される。
【0033】
さらに、第2段増幅回路14は、第3抵抗R3をさらに備える。前記第1段間整合ネットワーク13も2段LC整合を用いて実現し、LC整合構造もハイパス整合構造である。具体的には、第1段間整合ネットワーク13は第7インダクタL7、第8インダクタL8、第14コンデンサC14及び第15コンデンサC15を備え、前記第7インダクタL7の一方の端子と前記第14コンデンサC14の一方の端子がいずれも前記第1トランジスタQ1のコレクタに接続され、前記第7インダクタL7の他方の端子が給電電圧Vcc1に接続され、該第7インダクタL7はチョークインダクタであり、前記第14コンデンサC14の他方の端子、第8インダクタL8の一方の端子及び第15コンデンサC15の一方の端子は接続され、前記第15コンデンサC15の他方の端子が第3抵抗R3の一方の端子に接続され、第3抵抗R3の他方の端子が第2トランジスタQ2のベースに接続され、前記第8インダクタL8の他方の端子が接地される。第1段間整合ネットワーク13及び第3抵抗R3の作用で、さらに第2段増幅回路14の安定性を向上させ、挿入リターンロスを最適化することができる。そして、回路全体の誤差ベクトル振幅(EVM)値が低いことを保証するために、第2段増幅回路14の出力電力に大きな余裕を持たせ、該段回路の1dB電力圧縮点での電力を第3段増幅回路16に必要な入力電力よりも4dBm程度大きくする。
【0034】
ここで、給電電圧Vcc1、Vcc2は対応するデバイスに給電することに用いられ、その大きさが同じであっても異なってもよく、実際のニーズに応じて選択することができる。
【0035】
ここで、差動電力増幅器100は各前記トランジスタのベースに1対1で接続されたベースバイアス回路をさらに備え、すなわち第1トランジスタQ1のベースにベースバイアス回路191が接続され、第2トランジスタQ2のベースにベースバイアス回路192が接続され、第3トランジスタQ3のベースにベースバイアス回路193が接続され、各ベースバイアス回路はバイアス電圧を対応するトランジスタのベースに供給することに用いられる。ベースバイアス回路191、ベースバイアス回路192及びベースバイアス回路193の構成は同じであっても異なっていてもよく、本実施形態において、3つのバイアス回路は同じ回路構成で実現される。
【0036】
具体的には、
図2に示すように、前記ベースバイアス回路は第4トランジスタQ4、第5トランジスタQ5、第6トランジスタQ6、第4抵抗R4、第5抵抗R5、第6抵抗R6及び第11コンデンサC11を備える。
【0037】
前記第4トランジスタQ4のベースとコレクタ、前記第5トランジスタQ5のベース、前記第4抵抗R4の一方の端子及び前記第11コンデンサC11の一方の端子は接続され、前記第4抵抗R4の他方の端子が電圧信号Vregに接続され、前記第4トランジスタQ4のエミッタ、前記第6トランジスタQ6のコレクタ及びベースは接続され、前記第6トランジスタQ6のエミッタが第5抵抗R5の一方の端子に接続され、前記第5抵抗R5の他方の端子が接地され、前記第11コンデンサC11の他方の端子が接地され、前記第5トランジスタQ5のコレクタが電圧信号Vbatに接続され、前記第5トランジスタQ5のエミッタが第6抵抗R6の一方の端子に接続され、前記第6抵抗R6の他方の端子が対応するトランジスタのベースに接続され、例えば、ベースバイアス回路191における第6抵抗R6は、一方の端子が第5トランジスタQ5のエミッタに接続され、他方の端子が第1トランジスタQ1のベースに接続され、以下は同様である。
【0038】
ここで、第4抵抗R4及び第5抵抗R5は分圧抵抗であり、第6抵抗R6は熱効果を抑制する抵抗であり、I1、I2は電流であり、第11コンデンサC11はフィルタコンデンサである。第4トランジスタQ4と第6トランジスタQ6はクランプ電圧を構成し、電流I2を定常電流にし、電流I2の大きさは第4抵抗R4と第5抵抗R5の大きさを調整することによって調整することができる。第4トランジスタQ4と第5トランジスタQ5はカレントミラーを構成して、第5トランジスタQ5の増幅機能により、第5トランジスタQ5のエミッタ電流はミラー増幅され、I2は定常電流であるため、I1=βI2となる。第1トランジスタQ1に接続されるベースバイアス回路191を例とし、入力電力が増大し、電力増幅器が大電力動作状態である場合、第1トランジスタQ1の直流電流が増加し、トランジスタの自己熱効果及びダイオードの整流特性により、第1トランジスタQ1のベース電位が低下し、RF回路における信号がバイアス回路に漏洩する。コンデンサC11が存在するため、信号は第5トランジスタQ5のエミッタ、第5トランジスタQ5のベース、コンデンサC11を順に経てグランドに至る。これにより、第5トランジスタQ5のベース電位が変化しないため、電力増幅器の線形性が効果的に向上する。第5トランジスタQ5のベースとエミッタは整流作用のため、該ベースとエミッタとの間の電圧が低下し、第5トランジスタQ5のベース電位が変化しないため、第1トランジスタQ1のベース電圧の低下を効果的に補償し、第1トランジスタQ1が高入力や高出力電力の状態で静止点を維持するようにし、ゲイン圧縮を効果的に抑制する。
【0039】
図3及び
図4を参照し、本発明の実施例において、第1変圧器T1及び第2変圧器T2はいずれも対称式相互巻き変圧器であり、接地点は対称軸にあり、これにより出力信号の位相変換時に位相の正確性を十分に確保することができ、差動信号を伝送する上で大きな利点を有する。また、対称式相互巻き変圧器は大きなトランスを有するため、その結合係数Kの値が0.7~0.9と大きく、Kの値が大きいほど、変圧器が理想状態に近づき、その帯域幅が広く、挿入損失が小さい。該変圧器の一次コイルと二次コイルのポートが変圧器の両端にあるため、前後段回路のカスケードに非常に適する。例えば、第1変圧器T1を例とし、変圧器のE、F端子がそれぞれ第2トランジスタQ2の出力端子とアイソレーション端子(すなわち直流給電端子Vcc2)に接続され、E、F端子及びその接続コイルは一次コイルであり、M、N端子は第3段増幅回路の2つの差動信号の入力端子に接続され、M、N端子及びその接続コイルは二次コイルであり、一次コイルと二次コイルの巻き数の比は2:1~1:1である。
【0040】
ここで、本発明の実施例の変圧器は、3層が積層された金属層を用いて実現され、変圧器の一次コイルは2層目の金属層を用いて実現され、二次コイルは1層目及び3層目の金属層を用いて実現される。
【0041】
図5に示すように、
図5は本発明の差動電力増幅器の小信号のシミュレーション及びテスト波形図であり、ここで、小信号は入力リターンロスS11、ゲインS21及び出力リターンロスS22を含み、すなわち
図5は入力リターンロスS11、ゲインS21及び出力リターンロスS22のシミュレーション及びテスト波形図である。ここで、シミュレーション及びテスト条件としては、各Vcc(バイアス回路におけるVcc及びVcc1~Vcc3を含む)の電圧信号がいずれも5Vであり、3つのバイアス回路のVbatがいずれも4.2Vであり、バイアス回路191のVreg1が2.8Vであり、バイアス回路192のVreg2及びバイアス回路193のVreg3がいずれも3Vであり、各段の静止電流としては、ICC1では20.5mA、ICC2では82.7mA、ICC3では268mAである。3.3~4.2GHz動作周波数において、ゲインS21のシミュレーション結果は36.5~38.5dBであり、ゲインS21のテスト結果は36~38dBであり、ゲインは所望の指標に達し、回路全体は高いゲインを実現し、挿入リターンロスS11のシミュレーション結果は-15~-11dBであり、挿入リターンロスS11のテスト結果は-13~-10.2dBであり、N77動作全周波数領域の挿入リターンロスS11は-10dBよりも小さく、回路整合結果が良好である。テスト結果とシミュレーション結果はいずれも近い。出力リターンロスS22は比較的悪く、シミュレーション段階では-7.5~-11dBであり、テスト段階では-7~-10.5dBであり、より良好な挿入リターンロスとゲインが得られる。
【0042】
図6を参照し、
図6は本発明の差動電力増幅器の大信号のシミュレーション波形図であり、ここで、大信号は出力電力や電力付加効率(効率)などを含む。なお、
図6に示す波形図において、左縦座標の「Gain」はゲインを示し、右縦座標の[PAE]は電力付加効率を示し、横座標の[Pout]は出力電力を示す。波形図から分かるように、3.3GHz、3.6GHz、3.9GHz、4.2GHzの4つの周波数点のいずれにおいても、P1dBは37dBmよりも大きく、これら4つの周波数点のいずれの電力付加効率もP1dBでは45%よりも大きい。
図6のゲイン圧縮曲線は、P1dB点から飽和電力点まで約1dBm増加し、ゲインは出力電力がP1dBに到達した後の1dB内で急速に低下し、該出力電力性能が高く、出力線形電力が大きい。本願の電力増幅器はABタイプの静止点を採用し、高効率を得ることができる。
【0043】
また、実験データから分かるように、出力電力が29dBmである場合、左右側波帯のACLR(隣接チャネル漏洩比)テスト結果はそれぞれ-42.5dBc及び-42.3dBcであり、設計要件を満たす。
【0044】
本発明の差動電力増幅器は、段間整合と全体整合の挿入リターンロスを改善し、高いゲイン、出力電力及び効率を有し、電力増幅器のACLRがよく、出力電力が29dBmである場合、ACLR(隣接チャネル電力漏洩比)は-42dBcよりも小さく、変圧器を用いて段間整合を行うことにより、チップの面積を小さくすることができ、電力増幅器の面積を1mm2より小さくすることができる。
【0045】
以上は本発明の実施例に係る差動電力増幅器について詳細に説明しており、本明細書では、具体例によって本発明の原理及び実施形態について説明したが、以上の実施例の説明は本発明の方法及びその核心思想の理解を助けるためのものである。また、当業者であれば、本発明の思想に基づき、具体的な実施形態及び応用範囲のいずれも変更することができ、以上により、本明細書の内容は本発明を制限するものと解釈すべきではない。
【国際調査報告】