(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20231222BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231222BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20231222BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537014
(86)(22)【出願日】2021-11-15
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 KR2021016665
(87)【国際公開番号】W WO2022131572
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0178633
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】511038879
【氏名又は名称】ポスコ ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】クウォン、 オーミン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、 サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 クォン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ジュン フン
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】パク、 インチョル
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050EA11
5H050EA12
5H050FA17
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050HA01
5H050HA02
(57)【要約】
リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関するものであって、前記リチウム二次電池用正極活物質はNi含有量が80モル%以上であるリチウムニッケル系化合物を含むコア、および前記コア表面の少なくとも一部に位置するコーティング物質を含み、前記コーティング物質は5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上、およびSを含む第1コーティング物と、B、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を含む第2コーティング物を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Ni含有量が80モル%以上であるリチウムニッケル系化合物を含むコア;および
前記コア表面の少なくとも一部に位置するコーティング物質を含み、
前記コーティング物質は5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上、およびSを含む第1コーティング物と、B、LiOH、Li
2CO
3およびLi
2SO
4を含む第2コーティング物を含む、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記正極活物質は、前記コアおよび前記コーティング物質を含む1次粒子の少なくとも一つが造粒された2次粒子を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記リチウム二次電池用正極活物質をエネルギー分散型X線分光分析(Energy-dispersive X-ray spectroscopy)時、前記1次粒子の境界に存在するNiとSの相対強度比の比が下記式1を満足する、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[式1]
0.1≦[I
Ni/I
S]≦2.0
(ここで、I
Niは前記1次粒子の境界に存在するNiの相対強度、I
sは前記1次粒子の境界に存在するSの相対強度を意味する。)
【請求項4】
前記リチウムニッケル系化合物は、下記化学式1で表されるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[化学式1]
Li(Ni
1-(x+y)Co
xMn
yX
z)O
2、
(上記化学式1中、0<(x+y)<0.2、0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、および0≦z≦0.2であり、
XはZr、Al、Ti、B、Mg、Ce、Si、Na、Znのうちの少なくとも一つ以上を含む)
【請求項5】
前記第1コーティング物は、前記1次粒子表面の少なくとも一部と、前記2次粒子表面の少なくとも一部に位置する、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記第2コーティング物は、前記2次粒子表面の少なくとも一部に位置する、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上は、V、Nb、Wまたはこれらの組み合わせである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記5族元素および6族元素の含有量は、前記正極活物質全体を基準にして、10ppm~10000ppmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項9】
前記LiOHの含有量は、前記正極活物質全体を基準にして、100ppm~10000ppmである、請求項1に記載のリチウム二次転移用正極活物質。
【請求項10】
前記Li
2SO
4の含有量は、前記正極活物質全体を基準にして、10ppm~3000ppmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項11】
ニッケル、コバルト、およびマンガンを含む前駆体化合物、リチウム含有化合物およびX含有化合物(XはZr、Al、Ti、B、Mg、Ce、Si、NaおよびZnのうちの少なくとも一つ以上である)を混合して第1混合物を製造する段階;
前記第1混合物を1次熱処理し冷却して冷却生成物を製造する段階;
前記冷却生成物を5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素含有化合物およびS原料源を含む溶液で洗浄して洗浄生成物を製造する段階;
前記洗浄生成物をLiOH、ボロン化合物、およびLi
2SO
4と混合して第2混合物を形成する段階;および
前記第2混合物を2次熱処理する段階
を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記溶液は、5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素含有化合物を0.0001M~0.005Mで含む、請求項11に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記溶液は、S原料源を0.01M~0.5Mで含む、請求項11に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項14】
請求項1~10のうちのいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極;
負極;および
非水電解質
を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、ITモバイル機器および小型電力駆動装置(e-bike、小型EVなど)の爆発的な需要増大、走行距離400km以上の電気自動車受用にこたえて、これを駆動するための高容量、高エネルギー密度を有する二次電池の開発が全世界的に活発に行われている。
【0003】
このような高容量電池を製造するためには高容量正極活物質が要求されている。このような高容量正極活物質として、特に層状系(layered)高容量正極活物質であって容量が最も優れたLiNiO2(275mAh/g)が提示されたが、この活物質は充放電時、構造崩壊が起こりやすく、酸化数問題による熱的安定性が低いため、商用化が難しいのが実情である。
【0004】
よって、高容量正極活物質に対する研究が引き続き行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一実施形態は、電気化学的安定性に優れたリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
他の一実施形態は、リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
また他の一実施形態は、前記正極活物質を含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態によれば、Ni含有量が80モル%以上であるリチウムニッケル系化合物を含むコアおよび前記コア表面の少なくとも一部に位置するコーティング物質を含み、前記コーティング物質は5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上、およびSを含む第1コーティング物と、B、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を含む第2コーティング物を含む、リチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0007】
前記コアはリチウムニッケル系化合物を含む1次粒子少なくとも一つが造粒された2次粒子を含むことができる。
【0008】
前記リチウム二次電池用正極活物質をエネルギー分散型X線分光分析(Energy-dispersive X-ray spectroscopy)時、前記1次粒子の境界に存在するNiとSの相対強度比の比が下記式1を満足することができる。
[式1]
0.1≦[INi/IS]≦2.0
(ここで、INiは前記1次粒子の境界に存在するNiの相対強度、Isは前記1次粒子の境界に存在するSの相対強度を意味する。)
【0009】
前記リチウムニッケル系化合物は、下記化学式1で表されるものであってもよい。
[化学式1]
Li(Ni1-(x+y)CoxMnyXz)O2、
(上記化学式1中、0<(x+y)<0.2、0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、および0≦z≦0.2であり、
XはZr、Al、Ti、B、Mg、Ce、Si、Na、Znのうちの少なくとも一つ以上を含む)
【0010】
前記第1コーティング物は、前記1次粒子表面の少なくとも一部と、前記2次粒子表面の少なくとも一部に配置されてもよい。また、前記第2コーティング物は、前記2次粒子表面の少なくとも一部に配置されてもよい。
【0011】
前記5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上は、V、Nb、Wまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0012】
前記5族元素および6族元素の含有量は、前記正極活物質全体を基準にして、10ppm~10000ppmであってもよい。
【0013】
前記LiOHの含有量は、前記正極活物質全体を基準にして、100ppm~10000ppmであってもよい。
【0014】
前記Li2SO4の含有量は、前記正極活物質全体を基準にして、10ppm~3000ppmであってもよい。
【0015】
他の一実施形態によれば、ニッケル、コバルト、およびマンガンを含む前駆体化合物、リチウム含有化合物およびX含有化合物(XはZr、Al、Ti、B、Mg、Ce、Si、NaおよびZnのうちの少なくとも一つ以上である)を混合して第1混合物を製造する段階;前記第1混合物を1次熱処理し冷却して冷却生成物を製造する段階;前記冷却生成物を5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素含有化合物およびS原料源を含む溶液で洗浄して洗浄生成物を製造する段階;前記洗浄生成物をLiOH、ボロン化合物、およびLi2SO4と混合して第2混合物を形成する段階;および前記第2混合物を2次熱処理する段階を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0016】
前記溶液は、5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素含有化合物を0.0001M~0.005Mで含むことができる。また、前記溶液は、S原料源を0.01M~0.5Mで含むことができる。
【0017】
また他の一実施形態によれば、前記正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および非水電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
一実施形態によるリチウム二次電池用負極活物質の製造方法は、経済的な工程で、比表面積の小さい活物質を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】一実施形態によるリチウム二次電池の構造を概略的に示した図である。
【
図2】実施例1によって製造された正極活物質のTEM写真およびEDS分析写真である。
【
図3】実施例1によって製造された正極活物質の断面(cross-sectional)EDSラインプロファイル写真およびグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。但し、これは例示として提示されるものであって、これによって本発明は制限されず、本発明は特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0021】
本明細書で、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%を意味する。
【0022】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質はNi含有量が80モル%以上であるリチウムニッケル系化合物を含むコアおよび前記コア表面の少なくとも一部に位置するコーティング物質を含み、前記コーティング物質は5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上、およびSを含む第1コーティング物と、B、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を含む第2コーティング物を含む。
【0023】
コーティング物質として、第1コーティング物と、第2コーティング物を含むことによって、正極活物質の高容量を確保することができ、優れた高温サイクル特性を得ることができ、初期抵抗および抵抗増加率を減少させることができる。このようなコーティング物質を含むことによる効果は、5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上、およびSを含む第1コーティング物と、B、LiOH、Li2CO3およびLi2SO4を含む第2コーティング物を全て含む場合に得られるものである。
【0024】
また、このようなコーティング物質を使用することによる効果は、コアとしてNi含有量が80モル%以上である高ニッケル(High-Ni)リチウムニッケル系化合物、例えば、下記化学式1で表される化合物を使用する場合、さらに優れるように得られる。一実施形態による第1コーティング物および第2コーティング物を含むコーティング物質を含んでも、コアとしてNi含有量が80モル%未満であるリチウムニッケル系化合物を使用するか、ニッケルを含まない化合物を使用する場合には、抵抗増加率および抵抗が十分に低い理由で、第1コーティング物および第2コーティング物を含むことによる効果が得られない。
【0025】
[化学式1]
Li(Ni1-(x+y)CoxMnyXz)O2、
上記化学式1中、0<(x+y)<0.2、0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、および0≦z≦0.2であり、
XはZr、Al、Ti、B、Mg、Ce、Si、Na、Znのうちの少なくとも一つ以上を含む。
【0026】
一実施形態によれば、XはZrおよびAlであってもよい。ZrはZrイオンがLiサイト(site)を占めるので、一種のピラー(pillar)としての役割を果たすようになり、充電および放電過程中にリチウムイオン経路(lithiu mion path)の収縮を緩和させて層状構造をさらに安定化させることができる。また、Alは正極活物質の層状構造をさらに安定化させることができる。これにより、リチウム二次電池の寿命特性をより向上させることができる。
【0027】
前記コアは、前記リチウムニッケル系化合物を含む1次粒子の少なくとも一つが造粒された2次粒子を含むことができる。この時、前記第1コーティング物は前記1次粒子表面の少なくとも一部と、前記2次粒子表面の少なくとも一部に全て配置されてもよく、前記第2コーティング物は前記2次粒子表面の少なくとも一部にのみ配置されてもよい。このように、第1コーティング物は1次粒子および2次粒子表面全てに位置し、第2コーティング物は2次粒子表面にのみ位置することによって、抵抗増加率抑制および寿命改善効果を得ることができる。このような効果は、第1コーティング物と第2コーティング物が全て2次粒子表面にのみ位置する場合には得ることができず、これは1次粒子表面が劣化するためである。または、第1コーティング物と第2コーティング物が1次粒子表面および2次粒子表面に全て位置する場合にも、一実施形態による抵抗増加率抑制および寿命改善効果を得ることができず、これは抵抗が増加するためである。同時に、第1コーティング物が2次粒子表面にのみ位置し、第2コーティング物が1次粒子および2次粒子表面全てに位置する場合にも抵抗が増加するため、目的とする効果が得られない。
【0028】
一実施形態において、前記リチウム二次電池用正極活物質をエネルギー分散型X線分光分析(Energy-dispersive X-ray spectroscopy)したとき、前記1次粒子の境界に存在する(grain boundary)NiとSの相対強度比の比が下記式1を満足することができる。
【0029】
[式1]
0.1≦[INi/IS]≦2.0
ここで、INiは前記1次粒子の境界に存在するNiの相対強度、ISは前記1次粒子の境界に存在するSの相対強度を意味する。
【0030】
一実施形態において相対強度比とは、エネルギー分散型X線分光分析グラフで、y軸に示すNiとSの含有量(重量%)の比を意味する。
【0031】
前記INi/ISは0.2~1.5であってもよく、0.4~1.5であってもよく、0.4~1.0または0.4~0.8であってもよい。
【0032】
一実施形態において、上記式1のINi/ISが前記範囲に含まれる場合、1次粒子表面での副反応が抑制されて抵抗増加率抑制および寿命改善効果を得ることができる。
【0033】
前記第1コーティング物中、5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上はV、Nb、Wまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0034】
前記正極活物質において、前記5族元素および6族元素の含有量は前記正極活物質全体を基準にして、10ppm~10000ppmであってもよく、30ppm~5000ppmであってもよく、80ppm~2000ppm、300ppm~800ppmであってもよい。正極活物質で、前記5族元素および6族元素の含有量が前記範囲に含まれる場合、抵抗増加率増加なく、優れたサイクル寿命特性を示すことができる。
【0035】
前記LiOHの含有量は、前記正極活物質全体を基準にして、100ppm~10000ppm、より具体的に500ppm~7000ppm、さらに具体的に1200ppm~3000ppm範囲であってもよい。正極活物質で、LiOHの含有量が前記範囲を満足する場合、優れた初期充放電効率および、サイクル寿命特性をさらに向上させることができる。
【0036】
前記Li2CO3の含有量は前記正極活物質全体を基準にして、1000ppm~5000ppm、より具体的に1500ppm~4000ppm、さらに具体的に2000ppm~3500ppm範囲であってもよい。Li2CO3の含有量が前記範囲を満足する場合、優れた常温および高温寿命特性をさらに向上させることができ、抵抗増加率をさらに減少させることができる。
【0037】
前記Li2SO4の含有量は前記正極活物質全体を基準にして、10ppm~10000ppm、より具体的に80ppm~3000ppm、さらに具体的に100ppm~2000ppm、さらに具体的に100ppm~800ppm、さらに具体的に100ppm~400ppm範囲であってもよい。Li2SO4の含有量が前記範囲を満足する場合、優れた容量特性をよく確保することができ、同時にサイクル寿命特性をさらに向上させ、初期抵抗値をさらに減少させることができる。
【0038】
前記Bの含有量は前記正極活物質全体を基準にして、300ppm~2000ppmであってもよく、300ppm~1000ppmであってもよい。Bの含有量が前記範囲を満足する場合、優れた容量特性をよく確保することができ、同時にサイクル寿命特性をさらに向上させ、初期抵抗値をさらに減少させることができる。
【0039】
他の一実施形態は、前記正極活物質の製造方法を提供する。この製造方法は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む前駆体化合物と、X含有化合物(XはZr、Al、Ti、B、Mg、Ce、Si、NaおよびZnのうちの少なくとも一つ以上である)を混合して第1混合物を製造する段階;前記第1混合物を1次熱処理し冷却して冷却生成物を製造する段階;前記冷却生成物を5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素含有化合物およびS原料源を含む溶液で洗浄して洗浄生成物を製造する段階;前記洗浄生成物をLiOH、ボロン化合物およびLi2SO4と混合して第2混合物を形成する段階;および前記第2混合物を2次熱処理する段階を含む。
【0040】
以下、製造方法についてより詳細に説明する。
【0041】
まず、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む前駆体化合物、リチウム含有化合物および、X含有化合物(XはZr、Al、Ti、B、Mg、Ce、Si、NaおよびZnのうちの少なくとも一つ以上である)を混合して第1混合物を製造する。
【0042】
前記ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む前駆体化合物はニッケル原料物質、コバルト原料物質およびマンガン原料物質を水中で混合して金属塩水溶液を製造した後、共沈反応を実施し、ろ過および乾燥して形成することができる。この時、ニッケル原料物質、コバルト原料物質およびマンガン原料物質の使用量は前記化学式1の最終コア組成が得られるように適切に調節することができる。
【0043】
前記共沈反応は金属イオンの酸化を防止するために、不活性ガスをパージング(purging)して実施することができ、10℃~70℃温度で実施することができる。
【0044】
前記不活性ガスは、N2、アルゴンガスまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0045】
また、前記共沈反応は、キレーティング剤およびpH調節剤を前記金属塩水溶液に添加して実施することができる。前記キレーティング剤としてはNH4(OH)が挙げられるが、これに限定されるのではなく、前記pH調節剤としてはNaOHがあるが、これに限定されるのではない。
【0046】
前記乾燥工程は、10℃~70℃で1時間~48時間実施することができる。
【0047】
前記前駆体化合物の平均粒径(D50)は3μm~20μmであってもよいが、これに限定されるのではない。本明細書で別途の定義がない限り、平均粒子直径(D50)は粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径を意味し、PSA(particle size analyzer)で測定することができる。
【0048】
前記リチウム化合物としては、リチウムヒドロキシド、リチウムカーボネート、リチウムナイトレート、これらの水和物またはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0049】
前記X含有原料物質としては、X含有酸化物、X含有ナイトレート、X含有ヒドロキシドまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0050】
前記前駆体化合物、前記リチウム化合物、および前記X含有原料物質の混合比は、前記化学式1のコアが得られるように適切に調節することができる。
【0051】
その次に、前記第1混合物を1次熱処理し冷却して冷却生成物を製造する。前記1次熱処理工程は例えば、300℃~500℃範囲で予備熱処理を実施した後、1℃/分~15℃/分の昇温速度で700℃~900℃範囲まで昇温させ、この温度で、1時間~48時間維持する工程で実施することができる。前記1次熱処理工程は、酸素を100ml/分~100,000ml/分で流入しながら実施することができる。
【0052】
前記1次熱処理工程を前記温度条件で、特に酸素を流入しながら実施する場合、寿命が改善される長所があり得る。前記1次熱処理工程によって前記化学式1のコア1次粒子が造粒されて2次粒子が形成できる。
【0053】
前記冷却工程は通常の方法、例えば自然冷却で常温まで実施することができる。
【0054】
前記冷却生成物を5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素含有化合物を含む第1溶液およびS原料源を含む第2溶液で洗浄して洗浄生成物を製造する。この工程により生成物表面の残留リチウムを除去することができ、また、前記冷却生成物を5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素含有化合物およびS原料源を含む溶液でコーティングすることができる。この時、前記第1溶液および前記第2溶液は前記1次粒子に含浸されて存在することがある。
【0055】
前記5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素含有化合物は、アンモニウムメタ-タングステート(ammonium meta-tungstate)、アンモニウムパラ-タングステート(ammonium para-tungstate)、タングステン酸化物(tungsten oxide)、タングステンハライド(tungsten halide、ハライドはF、Cl、Iまたはこれらの組み合わせであってもよい)、タングステンヘキサエトキシド(tungsten hexaethoxide)、タングステンイソプロポキシド(tungsten isopropoxide)、タングステンボライド(tungsten boride)、タングステンニトリド(tungsten nitride)、タングステンカルボニル(tungsten carbonyl)またはこれらの組み合わせであってもよく、前記S原料源はアンモニウムスルフェート(ammonium sulfate)、Li2SO4、S、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0056】
前記溶液で、溶媒としては水、エタノール、プロパノールまたはこれらの組み合わせであってもよい。
【0057】
前記溶液は5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素含有化合物を0.0001M~0.1Mで含むことができ、または0.001M~0.005Mで含むこともできる。また、前記溶液はS原料源を0.01M~0.5Mで含むことができ、0.01M~0.2Mで含むこともできる。前記溶液が前記元素含有化合物およびS原料源を前記範囲で含む場合、優れた初期効率および初期抵抗を維持しながら、さらに向上したサイクル寿命特性および低い抵抗増加率を有する正極活物質を効果的に製造することができる。
【0058】
その次に、前記洗浄生成物を第2コーティング原料物質と混合して第2混合物を形成する。前記混合工程は、溶媒を使用しない乾式工程で実施することができる。前記第2コーティング原料物質は、ボロン化合物、LiOH、およびLi2SO4を含むことができる。即ち、最終的に得られる正極活物質の第2コーティング物に含まれるLi2CO3は製造過程で投入された他の原料の内部反応によって形成されたものであり、別途の原料を投入して形成させたものではない。
【0059】
前記ボロン化合物は、H3BO3、ボロン酸化物、ボロンニトリド、B4C、B2H6、B2F4、B2Cl4、B2Br4、B2I4またはこれらの組み合わせであってもよい。前記ボロン化合物の使用量は、前記第2コーティング原料物質全体を基準にして、ボロンが300ppm~2000ppm、より具体的に300ppm~1000ppmが含まれるように使用することができる。
【0060】
前記LiOHの使用量は前記第2コーティング原料物質全体を基準にして、100ppm~1000ppm、より具体的に50ppm~700ppm、さらに具体的に120ppm~300ppm範囲であってもよい。第2コーティング原料物質として投入するLiOHの含有量が前記範囲を満足する場合、残留リチウムによるスラリーのゲル化(gelation)現象を抑制して正極製造時電極に塗布可能な状態のスラリー製造が可能である。
【0061】
Li2SO4含有量は前記第2コーティング原料物質全体を基準にして、10ppm~500ppm、より具体的に10ppm~200ppm、さらに具体的に10ppm~100ppm、さらに具体的に20ppm~5ppm範囲であってもよい。前記Li2SO4の含有量が前記範囲を満足する場合、表面でLi-B-C-SO4系のイオン伝導体を形成するため正極活物質表面でのリチウムイオンの移動性を向上させて優れた寿命特性を有するリチウム二次電池を実現することができる。
【0062】
即ち、一実施形態においてLiOHおよびLi2SO4の投入量は、最終的に得られる正極活物質の第2コーティング物として存在するLiOHおよびLi2SO4より少ない。これは第2コーティング原料物質と混合後、2次熱処理過程でリチウム金属酸化物内に存在するリチウムおよび金属原料の反応によるものと予測される。
【0063】
その次に、前記第2混合物を第2熱処理することができる。この第2熱処理工程は200℃~450℃温度範囲で実施することができ、熱処理時間は1時間~12時間範囲であってもよい。
【0064】
第2熱処理工程を実施することによって、第1溶液および第2溶液に含まれている5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素含有化合物とS原料源が分解されて、正極活物質内に5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素と、Sの第1コーティング物が存在するようになる。また、ボロン化合物も分解されて、正極活物質内にボロン(B)として存在するようになる。
【0065】
前記5族元素および6族元素のうちのいずれか一つ以上の元素含有化合物とS原料源は溶液形態で使用するので、前述のように、1次粒子の間に含浸され、2次粒子表面にも存在することになるので、最終的に得られる活物質内で、1次粒子表面の少なくとも一部および2次粒子表面の少なくとも一部に存在するようになる。これによって、抵抗増加率をより効果的に減少させることができる。
【0066】
また、LiOH、ボロン化合物、およびLi2SO4との混合は乾式工程で実施するので、LiOH、B、およびLi2SO4は2次粒子表面にのみ存在するようになる。同時に、第2熱処理工程によって、LiOH中の一部は大気のCO2と反応して、Li2CO3を形成することができ、このLi2CO3が正極活物質内に存在することになる。
【0067】
また他の一実施形態によれば、正極、負極、および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0068】
前記正極は、電流集電体およびこの電流集電体に形成された正極活物質を含む正極活物質層を含む。前記正極活物質は一実施形態による正極活物質を含む。
【0069】
前記正極において、前記正極活物質の含有量は正極活物質層全体重量に対して90重量%~98重量%であってもよい。
【0070】
一実施形態において、前記正極活物質層はバインダーおよび導電材をさらに含むことができる。この時、前記バインダーおよび導電材の含有量は、正極活物質層全体重量に対してそれぞれ1重量%~5重量%であってもよい。
【0071】
前記バインダーは正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーの代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリレーテッドスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0072】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能である。導電材の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0073】
前記電流集電体としてはアルミ箔、ニッケル箔またはこれらの組み合わせを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0074】
前記正極活物質層は正極活物質、バインダーおよび選択的に導電材を溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この活物質組成物を電流集電体に塗布して形成する。このような活物質層形成方法は当該分野に広く知られた内容であるので、本明細書で詳細な説明は省略する。前記溶媒としてはN-メチルピロリドンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0075】
前記負極は、電流集電体およびこの電流集電体に形成され、一実施形態による前記負極活物質を含む負極活物質層を含むことができる。
【0076】
前記負極活物質層において負極活物質の含有量は負極活物質層全体重量に対して80重量%~98重量%であってもよい。
【0077】
前記負極活物質層はバインダーを含み、選択的に導電材をさらに含むこともできる。前記負極活物質層で、バインダーの含有量は負極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であってもよい。また導電材をさらに含む場合には、負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電材を1重量%~5重量%使用することができる。
【0078】
前記負極活物質はリチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープ可能な物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0079】
前記リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては炭素物質であって、リチウム二次電池で一般に使用される炭素系負極活物質はいずれのものでも使用することができ、その代表的な例としては結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用することができる。
【0080】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属の合金を使用することができる。
【0081】
前記リチウムをドープおよび脱ドープ可能な物質としては、Si、SiOx(0<x<2)、Si-Y合金(前記Yはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO2、Sn-Y(前記Yはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられる。
【0082】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。前記負極活物質層はまた、バインダーを含み、選択的に導電材をさらに含むこともできる。
【0083】
前記バインダーは負極活物質粒子を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。前記バインダーとしては非水溶性バインダー、水溶性バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0084】
前記非水溶性バインダーとしては、エチレンプロピレン共重合体、ポリアクリルニトリル、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0085】
前記水溶性バインダーとしては、スチレンブタジエンゴム、アクリレーテッドスチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせであってもよい。
【0086】
前記負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系列化合物をさらに含むことができる。このセルロース系列化合物としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。前記アルカリ金属としてはNa、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤使用含有量は負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であってもよい。
【0087】
前記導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能である。導電材の例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料が挙げられる。
【0088】
前記負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0089】
前記負極は負極活物質、バインダーおよび選択的に導電材を溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この活物質組成物を電流集電体に塗布して形成する。前記溶媒としては水を使用することができる。
【0090】
このような負極形成方法は当該分野に広く知られた内容であるので、本明細書で詳細な説明は省略する。
【0091】
前記電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0092】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質役割を果たす。
【0093】
前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。
【0094】
前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、デカノリド(decanolide)、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。前記エーテル系溶媒としてはジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができる。また、前記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどを使用することができる。また、前記アルコール系溶媒としてはエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、前記非プロトン性溶媒としてはR-CN(ここで、Rは炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類、スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0095】
前記非水性有機溶媒は単独でまたは一つ以上混合して使用することができる。一つ以上混合して使用する場合の混合比率は目的とする電池性能によって適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者には広く理解されるはずである。
【0096】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートを混合して使用することがよい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは1:1~1:9の体積比で混合して使用するときに電解液の性能が優れることになり得る。
【0097】
前記非水性有機溶媒を混合して使用する場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートの混合溶媒、環状カーボネートとプロピオネート系溶媒の混合溶媒または環状カーボネート、鎖状カーボネートおよびプロピオネート系溶媒の混合溶媒を使用することができる。前記プロピオネート系溶媒としては、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネートまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0098】
この時、環状カーボネートと鎖状カーボネートまたは環状カーボネートとプロピオネート系溶媒を混合使用する場合には1:1~1:9の体積比で混合して使用するとき、電解液の性能が優れることになり得る。また、環状カーボネート、鎖状カーボネートおよびプロピオネート系溶媒を混合して使用する場合には1:1:1~3:3:4体積比で混合して使用することができる。もちろん、前記溶媒の混合比は所望の物性によって適切に調節することもできる。
【0099】
前記非水性有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含んでもよい。この時、前記カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は、1:1~30:1の体積比で混合することができる。
【0100】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記化学式2の芳香族炭化水素系化合物を使用することができる。
【0101】
【0102】
(上記化学式2中、R1~R6は互いに同一であるか異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、ハロアルキル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。)
【0103】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0104】
前記電解質は、電池寿命を向上させるためにビニレンカーボネートまたは下記化学式3のエチレン系カーボネート系化合物を寿命向上添加剤としてさらに含んでもよい。
【0105】
【0106】
(上記化学式3中、R7およびR8は互いに同一であるか異なり、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)、およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択され、前記R7とR8のうちの少なくとも一つはハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO2)、およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択されるが、但しR7およびR8が全て水素ではない。)
【0107】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合、その使用量は適切に調節することができる。
【0108】
前記電解質はビニルエチレンカーボネート、プロパンスルトン、スクシノニトリルまたはこれらの組み合わせをさらに含むことができ、この時、使用量は適切に調節することができる。
【0109】
前記リチウム塩は有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。このようなリチウム塩の代表的な例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO2C2F5)2、Li(CF3SO2)2N、LiN(SO3C2F5)2、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば1~20の整数である)、LiCl、LiI、およびLiB(C2O4)2(リチウムビス(オキサラト)ボレート(lithium bis(oxalato)borate;LiBOB)からなる群より選択される一つまたは二つ以上を支持(supporting)電解塩として含む。リチウム塩の濃度は0.1M~2.0M範囲内で使用することがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動可能である。
【0110】
リチウム二次電池の種類によって正極と負極の間にセパレータが存在することもある。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニリデンフルオライドまたはこれらの2層以上の多層膜を使用することができ、ポリエチレン/ポリプロピレンの2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜を使用することができるのはもちろんである。
【0111】
図1に本発明の一実施形態によるリチウム二次電池の分解斜視図を示した。一実施形態によるリチウム二次電池は角型であることを例として説明するが、本発明がこれに制限されるわけではなく、円筒型、パウチ型など多様な形態の電池に適用できる。
【0112】
図1を参照すれば、一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極10と負極20の間にセパレータ30を介して巻き取られた電極組立体40と、前記電極組立体40が内蔵されるケース50を含むことができる。前記正極10、前記負極20、および前記セパレータ30は電解液(図示せず)に含浸されていてもよい。
【実施例】
【0113】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。しかし、下記の実施例は本発明の一実施例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【0114】
製造例1:正極活物質前駆体の製造
ニッケル原料物質としてはNiSO4・6H2O、コバルト原料物質としてはCoSO4・7H2O、マンガン原料物質としてはMnSO4・H2Oを使用し、これら原料を蒸留水に溶解させて金属塩水溶液を製造した。
前記金属塩水溶液を、共沈反応器を用いて、N2をパージング(purging)し、反応器温度は50℃を維持しながら、前記共沈反応器にキレーティング剤としてNH4(OH)を投入し、pH調節のためにNaOHを使用して、共沈工程を実施した。
共沈工程によって得られた沈殿物をろ過し、蒸留水で洗浄した後、100℃オーブンで24時間乾燥して、平均粒度の直径が14.8μmである(Ni0.92Co0.04Mn0.04)(OH)2正極活物質前駆体を製造した。
【0115】
比較例1:Ni含有量85%の正極活物質製造
前記製造例1で製造した正極活物質前駆体1モルを基準にして、LiOH・H2O(森田化学、battery grade)1.05モルとX含有化合物を均一に混合して第1混合物を製造した。この時、X含有化合物はZrO2(Aldrich、3N)およびAl(OH)3(Aldrich、4N)を使用した。この時、X含有化合物使用量は目的とする化合物組成が得られる含有量で使用した。
前記第1混合物をチューブ炉(tube furnace)に装入して、酸素を200mL/minで流入させながら1次熱処理した。1次熱処理工程は480℃で5時間予備熱処理し、その次に、昇温速度5℃/分で760℃まで昇温した後、この温度で16時間維持する工程で実施した。その次に、1次熱処理生成物を25℃まで自然冷却してLiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される冷却生成物である正極活物質を製造した。前記冷却生成物は1次粒子が造粒された2次粒子で形成された。
【0116】
比較例2:LiOHを2500ppm、Li2CO3を2000ppm、Bを500ppm、およびLi2SO4を300ppm含むNi含有量85%の正極活物質製造
前記比較例1で製造された冷却生成物を、蒸留水を用いて水洗した後にろ過し乾燥した。
得られた乾燥生成物を、LiOHが500ppm、H3BO3が500ppm、およびLi2SO4が30ppmとなる割合で乾式混合し、この混合物を280℃で5時間2次熱処理して、LiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含むコアおよび、このコア表面に2500ppmのLiOH、2000ppmのLi2CO3、500ppmのB、および3300ppmのLi2SO4を含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0117】
比較例3:Wを200ppm、LiOHを2500ppm、Li2CO3を2000ppm、Bを500ppm、およびLi2SO4を300ppm含むNi含有量85%の正極活物質
前記比較例1で製造された冷却生成物を蒸留水に0.0004Mのアンモニウムメタ-タングステート(AMT:ammonium meta-tungstate)が添加された水溶液を用いて水洗工程を実施し、ろ過し乾燥した。
得られた乾燥生成物を、LiOHが500ppm、H3BO3が500ppm、およびLi2SO4が30ppmとなる割合で乾式混合し、この混合物を280℃で5時間2次熱処理してLiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含むコアおよび、このコア表面に2500ppmのLiOH、2000ppmのLi2CO3、500ppmのBおよび300ppmのLi2SO4を含むコーティング層が形成された正極活物質を製造した。
【0118】
実施例1:Wを200ppm、LiOHを2500ppm、Li2CO3を2000ppm、Bを500ppm、およびLi2SO4を500ppm含むNi含有量85%の正極活物質
前記比較例1で製造された冷却生成物を蒸留水に0.0004MのAMT(ammonium meta-tungstate)と0.04Mのアンモニウムスルフェート(AS:ammonium sulfate)が添加された水溶液を用いて水洗した後にろ過し乾燥した。
得られた乾燥生成物をLiOHが500ppm、H3BO3が500ppm、およびLi2SO4が30ppmとなる割合で乾式混合し、この混合物を280℃で5時間2次熱処理して、正極活物質を製造した。製造された正極活物質はLiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含むコアと、このコア表面に位置するコーティング物質を含み、前記1次粒子表面に位置するWおよびS、および2次粒子表面に、W、S、LiOH、Li2CO3、B、およびLi2SO4を含み、この時、W含有量は200ppm、LiOH含有量は2500ppm、Li2CO3含有量は2000ppm、B含有量は500ppm、そしてLi2SO4含有量は500ppmであった。
【0119】
実施例2:Wを50ppm、LiOHを2500ppm、Li2CO3を2000ppm、Bを500ppm、およびLi2SO4を500ppm含むNi含有量85%の正極活物質
前記比較例1で製造された冷却生成物を蒸留水に0.0001MのAMT(ammonium meta-tungstate)と0.04Mのアンモニウムスルフェート(AS:ammonium sulfate)が添加された水溶液を用いて水洗した後にろ過し乾燥した。
得られた乾燥生成物を、LiOHが500ppm、H3BO3が500ppm、およびLi2SO4が30ppmとなる割合で乾式混合し、この混合物を280℃で5時間2次熱処理して、正極活物質を製造した。製造された正極活物質はLiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含むコアと、このコア表面に位置するコーティング物質を含み、前記1次粒子表面に位置するWおよびS、および2次粒子表面に、W、S、LiOH、Li2CO3、B、およびLi2SO4を含み、この時、W含有量は50ppm、LiOH含有量は2500ppm、Li2CO3含有量は2000ppm、B含有量は500ppm、そしてLi2SO4含有量は500ppmであった。
【0120】
実施例3:Wを100ppm、LiOHを2500ppm、Li2CO3を2000ppm、Bを500ppm、およびLi2SO4を500ppm含むNi含有量85%の正極活物質
前記比較例1で製造された冷却生成物を蒸留水に0.0002MのAMT(ammonium meta-tungstate)と0.04Mのアンモニウムスルフェート(AS:ammonium sulfate)が添加された水溶液を用いて水洗した後にろ過し乾燥した。
得られた乾燥生成物をLiOHが500ppm、H3BO3が500ppm、およびLi2SO4が30ppmとなる割合で乾式混合し、この混合物を280℃で5時間2次熱処理して、正極活物質を製造した。製造された正極活物質はLiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含むコアと、このコア表面に位置するコーティング物質を含み、前記1次粒子表面に位置するWおよびS、および2次粒子表面に、W、S、LiOH、Li2CO3、B、およびLi2SO4を含み、この時、W含有量は100ppm、LiOH含有量は2500ppm、Li2CO3含有量は2000ppm、B含有量は500ppm、そしてLi2SO4含有量は500ppmであった。
【0121】
実施例4:Wを300ppm、LiOHを2500ppm、Li2CO3を2000ppm、Bを500ppm、およびLi2SO4を500ppm含むNi含有量85%の正極活物質
前記比較例1で製造された冷却生成物を蒸留水に0.001MのAMT(ammonium meta-tungstate)と0.04Mのアンモニウムスルフェート(AS:ammonium sulfate)が添加された水溶液を用いて水洗した後にろ過し乾燥した。
得られた乾燥生成物をLiOHが500ppm、H3BO3が500ppm、およびLi2SO4が30ppmとなる割合で乾式混合し、この混合物を280℃で5時間2次熱処理して、正極活物質を製造した。製造された正極活物質はLiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含むコアと、このコア表面に位置するコーティング物質を含み、前記1次粒子表面に位置するWおよびS、および2次粒子表面に、W、S、LiOH、Li2CO3、B、およびLi2SO4を含み、この時、W含有量は300ppm、LiOH含有量は2500ppm、Li2CO3含有量は2000ppm、B含有量は500ppm、そしてLi2SO4含有量は500ppmであった。
【0122】
実施例5:Wを500ppm、LiOHを2500ppm、Li2CO3を2000ppm、Bを500ppm、およびLi2SO4を500ppm含むNi含有量85%の正極活物質
前記比較例1で製造された冷却生成物を蒸留水に0.002MのAMT(ammonium meta-tungstate)と0.04Mのアンモニウムスルフェート(AS:ammonium sulfate)が添加された水溶液を用いて水洗した後にろ過し乾燥した。
得られた乾燥生成物をLiOHが500ppm、H3BO3が500ppm、およびLi2SO4が30ppmとなる割合で乾式混合し、この混合物を280℃で5時間2次熱処理して、正極活物質を製造した。製造された正極活物質はLiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含むコアと、このコア表面に位置するコーティング物質を含み、前記1次粒子表面に位置するWおよびS、および2次粒子表面に、W、S、LiOH、Li2CO3、B、およびLi2SO4を含み、この時、W含有量は500ppm、LiOH含有量は2500ppm、Li2CO3含有量は2000ppm、B含有量は500ppm、そしてLi2SO4含有量は500ppmであった。
【0123】
実施例6:Wを50ppm、LiOHを2500ppm、Li2CO3を2000ppm、Bを500ppm、およびLi2SO4を00ppm含むNi含有量85%の正極活物質
前記比較例1で製造された冷却生成物を蒸留水に0.0001MのAMT(ammonium meta-tungstate)と0.01Mのアンモニウムスルフェート(AS:ammonium sulfate)が添加された水溶液を用いて水洗した後にろ過し乾燥した。
得られた乾燥生成物をLiOHが500ppm、H3BO3が500ppm、およびLi2SO4が30ppmとなる割合で乾式混合し、この混合物を280℃で5時間2次熱処理して、正極活物質を製造した。製造された正極活物質はLiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含むコアと、このコア表面に位置するコーティング物質を含み、前記1次粒子表面に位置するWおよびS、および2次粒子表面に、W、S、LiOH、Li2CO3、B、およびLi2SO4を含み、この時、W含有量は50ppm、LiOH含有量は2500ppm、Li2CO3含有量は2000ppm、B含有量は500ppm、そしてLi2SO4含有量は300ppmであった。
【0124】
実施例7:Wを100ppm、LiOHを2500ppm、Li2CO3を2000ppm、Bを500ppm、およびLi2SO4を400ppm含むNi含有量85%の正極活物質
前記比較例1で製造された冷却生成物を蒸留水に0.0002MのAMT(ammonium meta-tungstate)と0.02Mのアンモニウムスルフェート(AS:ammonium sulfate)が添加された水溶液を用いて水洗した後にろ過し乾燥した。
得られた乾燥生成物をLiOHが500ppm、H3BO3が500ppm、およびLi2SO4が30ppmとなる割合で乾式混合し、この混合物を280℃で5時間2次熱処理して、正極活物質を製造した。製造された正極活物質はLiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含むコアと、このコア表面に位置するコーティング物質を含み、前記1次粒子表面に位置するWおよびS、および2次粒子表面に、W、S、LiOH、Li2CO3、B、およびLi2SO4を含み、この時、W含有量は100ppm、LiOH含有量は2500ppm、Li2CO3含有量は2000ppm、B含有量は500ppm、そしてLi2SO4含有量は400ppmであった。
【0125】
実施例8:Wを300ppm、LiOHを2500ppm、Li2CO3を2000ppm、Bを500ppm、およびLi2SO4を700ppm含むN含有量85%の正極活物質
前記比較例1で製造された冷却生成物を蒸留水に0.001MのAMT(ammonium meta-tungstate)と0.08Mのアンモニウムスルフェート(AS:ammonium sulfate)が添加された水溶液を用いて水洗した後にろ過し乾燥した。
得られた乾燥生成物をLiOHが500ppm、H3BOが500ppm、およびLi2SO4が30ppmとなる割合で乾式混合し、この混合物を280℃で5時間2次熱処理して、正極活物質を製造した。製造された正極活物質はLiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含むコアと、このコア表面に位置するコーティング物質を含み、前記1次粒子表面に位置するWおよびS、および2次粒子表面に、W、S、LiOH、Li2CO3、B、およびLi2SO4を含み、この時、W含有量は300ppm、LiOH含有量は2500ppm、Li2CO3含有量は2000ppm、B含有量は500ppm、そしてLi2SO4含有量は700ppmであった。
【0126】
実施例9:Wを500ppm、LiOHを2500ppm、Li2CO3を2000ppm、Bを500ppm、およびLi2SO4を1000ppm含むNi含有量85%の正極活物質
前記比較例1で製造された冷却生成物を蒸留水に0.002MのAMT(ammonium meta-tungstate)と0.2Mのアンモニウムスルフェート(AS:ammonium sulfate)が添加された水溶液を用いて水洗した後にろ過し乾燥した。
得られた乾燥生成物をLiOHが500ppm、H3BO3が500ppm、およびLi2SO4が30ppmとなる割合で乾式混合し、この混合物を280℃で5時間2次熱処理して、正極活物質を製造した。製造された正極活物質はLiNi0.85Co0.09Mn0.06Zr0.0037Al0.0001O2で表される1次粒子が造粒された2次粒子を含むコアと、このコア表面に位置するコーティング物質を含み、前記1次粒子表面に位置するWおよびS、および2次粒子表面に、W、S、LiOH、Li2CO3、B、およびLi2SO4を含み、この時、W含有量は500ppm、LiOH含有量は2500ppm、Li2CO3含有量は2000ppm、B含有量は500ppm、そしてLi2SO4含有量は1000ppmであった。
【0127】
前記実施例1~9および前記比較例1~3で使用されたAMT含有量およびAS含有量と、活物質に含まれているWおよびLi2SO4含有量を下記表1に整理して示した。
【0128】
【0129】
(製造例2)半電池製造
実施例1~9および比較例1~3によって製造された正極活物質、デンカブラック導電材、およびポリビニリデンフルオライドバインダー(商品名:KF1100)を92.5:3.5:4の重量比で混合し、この混合物を固形分が約30重量%になるようにN-メチル-2-ピロリドン(N-Methyl-2-pyrrolidone)溶媒に添加して正極活物質スラリーを製造した。
前記スラリーを、ドクターブレード(Doctor blade)を用いて正極集電体であるアルミ箔(Al foil、厚さ:15μm)上にコーティングし、乾燥させた後、圧延して正極を製造した。前記正極のローディング量は14.6mg/cm2であり、圧延密度は3.1g/cm3であった。
前記正極、リチウム金属負極(200μm、Honzo metal)、電解液とポリプロピレンセパレータを使用して通常の方法で2032コイン型半電池を製造した。前記電解液は1MのLiPF6をエチレンカーボネート(EC)、ジメチルカーボネート(DMC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(混合比EC:DMC:EMC=3:4:3体積比)に溶解させ、得られた生成物全体100重量%に対して1.5重量%のビニレンカーボネートを添加した混合溶液を使用した。
【0130】
実験例1:充放電容量、初期効率および常温(25℃)初期抵抗評価
製造されたコイン型半電池を常温(25℃)で10時間エイジング(aging)した後、充放電を実施した。
充放電は定電流/定電圧で2.5V~4.25Vで、1/20Cカット-オフ条件で、0.1C充電および0.1C放電で1回実施して、充電容量および放電容量を求めて、その結果を下記表1に示した。また、充電容量に対する放電容量比を求めて、その結果を1回効率として下記表2に示した。容量評価時、基準容量は215mAh/gとした。 初期抵抗は0.2Cで4.25V満充電(充電率:100%)し、0.2C放電しながら、60秒後の電圧値と、この時印加された電流に対する電圧値の変動、即ち、60秒間の電圧変動を測定して計算した。その結果を下記表2に示した。
【0131】
実験例2:高温(45℃)サイクル寿命および抵抗増加率評価
製造されたコイン型半電池を45℃で定電流/定電圧で2.5V~4.25Vで、1/20Cカット-オフ条件で、0.3C充電および0.3C放電で30回実施した。30回サイクル時放電容量に対する1回放電容量比を求めて、その結果をサイクル寿命特性として下記表3に示した。
また、抵抗増加率は高温(45℃)で0.2Cで4.25V満充電(充電率:100%)し、0.2C放電し、60秒間の電圧変動を測定して、1回抵抗を求め、前記満充電および放電を30回実施した後、60秒間の電圧変動で測定された30回抵抗を求めて、その結果を下記表3に示した。また、1回抵抗に対する30回抵抗比を求めて、その結果を下記表3に示した。
【0132】
【0133】
【0134】
上記表1に示したように、実施例1~9の正極活物質を用いた半電池は低い初期抵抗および優れた1回効率と高温サイクル寿命を維持しながら、低い高温抵抗増加率を示すことが分かる。
【0135】
(実験例3)正極活物質に対するTEMおよびEDS分析
前記実施例1で製造された正極活物質に対するTEM(Transmission Electron Microscope)分析およびEDS(Energy Dispersive X-Ray Spectrometer)分析を行って
図2および
図3にそれぞれ示した。
【0136】
図2の(A)結果から、タングステンおよびSが2次粒子表面に位置し、
図1の(B)結果から、タングステンおよびSが1次粒子の間に侵入して位置することが分かる。
【0137】
また、
図3の(A)は実施例1によって製造された正極活物質の断面(Cross-sectional)EDSラインプロファイル(line profile)イメージを示したものであり、正極活物質の1次粒子表面にWおよびSが均一に分布していることが分かる。
【0138】
この時、EDSラインプロファイル(line profile)結果から、AとBラインに存在するO、Ni、S含有量を求めて、その結果を
図3の(B)に示したのであり、この結果から、NiとSピークの強度値(即ち、含有量、重量%)の比(I
Ni/I
W)を求めた結果、約0.95が得られた。
図3の(B)で0nmは
図3の(A)でA地点を示すものであり、約470nmの増加する方向がB地点を示すものである。
【0139】
本発明は前記実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造でき、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せず他の具体的な形態に実施できるのを理解することができるはずである。したがって、以上で記述した実施例は全ての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
【国際調査報告】