(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】リチウムイオン二次電池用金属系-炭素系複合負極材、その製造方法およびこれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20231222BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537404
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-19
(86)【国際出願番号】 KR2021019339
(87)【国際公開番号】W WO2022131873
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179044
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】チョ、 ムンキュ
(72)【発明者】
【氏名】キム、 ヨン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ウ、 ジュン ギュ
(72)【発明者】
【氏名】ユ、 スン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク、 スン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】カン、 ウン-テ
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA02
5H050AA07
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB07
5H050CB11
5H050EA10
5H050EA28
5H050GA05
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
本開示は、粉砕工程を通じて金属系物質をナノ粒子に粉砕する段階;非晶質炭素系前駆体物質、前記金属粒子、導電性物質および導電性添加剤を混合および複合化し、金属系-炭素系複合体を収得する段階;および前記複合体を炭化させる段階;を含み、前記導電性添加剤は、炭素ナノチューブであって、前記炭素ナノチューブの含有量は、複合体内金属粒子対比0.2乃至2.3重量%の製造方法より収得されたリチウム二次電池用負極活物質およびこれを含む二次電池に関するものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素系マトリックス;および前記炭素系マトリックス内に担持された金属系物質ナノ粒子を含む複合体であり、
前記複合体内に導電性物質および導電性添加剤をさらに含み、
前記導電性物質は、麟片状黒鉛であって、
前記導電性添加剤は、炭素ナノチューブであり、
前記炭素ナノチューブの含有量は、複合体内金属系物質ナノ粒子対比0.2乃至2.3重量%である、リチウム二次電池用負極活物質。
【請求項2】
前記金属系物質ナノ粒子は、シリコン、錫およびアルミニウムからなる群より選択された一つに由来する、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項3】
前記金属系物質ナノ粒子は、粉砕型金属系物質ナノ粒子である、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項4】
前記粉砕型金属系物質ナノ粒子は、粒度D50が30乃至200nmであり、粉砕型金属系物質ナノ粒子全体重量の90重量%以上の縦横比が1.5超過の針状型である、請求項3に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項5】
前記導電性物質の粒度D50は、3乃至12μmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用負極活物質。
【請求項6】
粉砕工程を通じて金属系物質を金属系物質ナノ粒子に粉砕する段階;
前記粉砕された金属系物質ナノ粒子、導電性物質、導電性添加剤と共に球形化して球形化された粒子を収得する段階;
前記球形化された粒子を非晶質炭素系前駆体物質と複合化して複合体を収得する段階;および
前記複合体を炭化させる段階;を含み、
前記導電性物質は、麟片状黒鉛であって、
前記導電性添加剤は、炭素ナノチューブであり、
前記炭素ナノチューブの含有量は、複合体内金属系物質ナノ粒子対比0.2乃至2.3重量%である、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項7】
複合体を収得する段階;は、
前記球形化された粒子と非晶質炭素系前駆体物質とを乾式方法または湿式方法で混合して結着させる段階である、請求項6に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項8】
前記非晶質炭素系前駆体物質は、石炭系ピッチ、石油系ピッチ及びこれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含む、請求項6に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項9】
前記非晶質炭素系前駆体物質は、固定炭素が50乃至85重量%であって、軟化点が300℃未満である、請求項6に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項10】
前記金属系物質は、シリコン、錫およびアルミニウムからなる群より選択された一つである、請求項6に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項11】
前記金属系物質ナノ粒子は、粉砕型金属系物質ナノ粒子である、請求項6に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項12】
前記粉砕型金属系物質ナノ粒子は、粒度D50が30乃至200nmであり、粉砕型金属系物質ナノ粒子全体重量の90重量%以上の縦横比が1.5超過の針状型である、請求項11に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項13】
前記導電性物質の粒度D50は、3乃至12μmである、請求項6に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項14】
前記複合体を炭化させる段階;は、
800乃至1000℃の温度で0.5乃至2時間炭化させる段階である、請求項6に記載のリチウム二次電池用負極活物質の製造方法。
【請求項15】
正極;
負極;および
電解質を含み、
前記負極は、請求項1~5のいずれか一に記載のリチウム二次電池用負極活物質を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負極活物質およびその製造方法およびこれを含む二次電池に関するものである。具体的に本発明は、金属系-炭素系複合負極活物質およびその製造方法およびこれを含む二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、現在携帯用電子通信機器および電気自動車、そして、エネルギー貯蔵装置まで最も広範囲に用いられる二次電池システムである。このようなリチウムイオン電池は、商業用水系二次電池(Ni-Cd、Ni-MHなど)と比較して高いエネルギー密度と作動電圧そして、相対的に小さい自己放電率などの長所を持っていて関心の焦点になっている。しかしながら、携帯用機器におけるより効率的な使用時間、電気自動車におけるエネルギー特性向上などを考慮する際、依然として電気化学的特性の改善は解決しなければならない技術的な問題に残っている。これによって、正極、負極、電解液、分離膜などの4大原材料にかけて多くの研究と開発が現在も進められているのが実情である。
【0003】
これらの原材料のうちで、負極については、優れる容量保存特性および効率を示す黒鉛系物質が商品化されている。しかしながら、黒鉛系物質の相対的に低い理論容量値(LiC6:372mAh/g)と低い放電容量比率とは、市場で要求する電池の高エネルギー、高出力密度の特性と合うには多少不足したのが現実である。したがって、多くの研究者らが周期律表上のIV族元素(Si、Ge、Sn)に関心を示しており、その中でも特にシリコンは、非常に高い理論容量(Li15Si4:3600mAh/g)と低い作動電圧(~0.1Vvs.Li/Li+)の特性によって、非常に魅力的な材料として脚光を浴びている。しかしながら、一般的な金属系負極材料の場合、既存の黒鉛負極材と対比して大きい体積変化と共に低い放電容量比率の特性を示すので実際に電池に適用が難しいという短所がある。
【0004】
最近、リチウムと電気化学的に反応が可能な金属系(例え:シリコン)と伝導性物質(例え:黒鉛あるいはカーボン)とを、複合化して可逆性を向上させる金属系-炭素系複合負極材(複合体、カーボンテンプレート内に金属系が内包すること)に関する研究が活発に進められているが、このような複合体の場合、金属系の膨張制御問題と長寿命とを実現することに問題があるので、これに対する研究が必要なのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、金属系-炭素系複合負極活物質を提供することにおいて、金属粒子、非晶質カーボン系物質および導電性物質を含む既存の金属系-炭素系複合負極活物質の構成に、導電性添加剤を追加で含めることによって、高効率、長寿命および低膨張特性を改善させようとする。また、その製造方法およびこれを含む二次電池を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、炭素系マトリックス;および前記炭素系マトリックス内に担持された金属系物質ナノ粒子を含む複合体であり、前記複合体内に導電性物質および導電性添加剤をさらに含み、前記導電性物質は、麟片状黒鉛であって、前記導電性添加剤は、炭素ナノチューブであり、前記炭素ナノチューブの含有量は、複合体内金属系物質ナノ粒子対比0.2乃至2.3重量%である、リチウム二次電池用負極活物質を提供する。
【0007】
金属系物質ナノ粒子は、シリコン、錫およびアルミニウムからなる群より選択された一つに由来することができる。
【0008】
金属系物質ナノ粒子は、粉砕型金属系物質ナノ粒子であることができる。
【0009】
粉砕型金属系物質ナノ粒子は、粒度D50が30乃至200nmであり、粉砕型金属系物質ナノ粒子全体重量の90重量%以上の縦横比が1.5超過の針状型であることができる。
【0010】
導電性物質の粒度D50は、3乃至12μmであることができる。
【0011】
本発明の他の一態様は、粉砕工程を通じて金属系物質を金属系物質ナノ粒子に粉砕する段階;前記粉砕された金属系物質ナノ粒子、導電性物質、導電性添加剤と共に球形化し、球形化された粒子を収得する段階;前記球形化された粒子を非晶質炭素系前駆体物質と複合化して複合体を収得する段階;および前記複合体を炭化させる段階;を含み、前記導電性物質は、麟片状黒鉛であって、前記導電性添加剤は、炭素ナノチューブであり、前記炭素ナノチューブの含有量は、複合体内金属系物質ナノ粒子対比0.2乃至2.3重量%である、リチウム二次電池用負極活物質の製造方法を提供する。
【0012】
複合体を収得する段階;は、前記球形化された粒子と非晶質炭素系前駆体物質とを、乾式方法または湿式方法で混合して結着させる段階であることができる。
【0013】
非晶質炭素系前駆体物質は、石炭系ピッチ、石油系ピッチおよびこれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含むことができる。
【0014】
非晶質炭素系前駆体物質は、固定炭素が50乃至85重量%であり、軟化点が300℃未満であることができる。
【0015】
金属系物質は、シリコン、錫およびアルミニウムからなる群より選択された一つであることができる。
【0016】
金属系物質ナノ粒子は、粉砕型金属系物質ナノ粒子であることができる。
【0017】
粉砕型金属系物質ナノ粒子は、粒度D50が30乃至200nmであり、粉砕型金属系物質ナノ粒子全体重量の90重量%以上の縦横比が1.5超過の針状型であることができる。
【0018】
導電性物質の粒度D50は、3乃至12μmであることができる。
【0019】
複合体を炭化させる段階;は、800乃至1000℃の温度で0.5乃至2時間炭化させる段階であることができる。
【0020】
正極;負極;および電解質を含み、前記負極は、請求項1乃至5のいずれか一項に記載のリチウム二次電池用負極活物質を含むことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、金属粒子、非晶質炭素系物質および導電性物質を含む金属系-炭素系複合体を製造する際、追加的に導電性物質の炭素ナノチューブを含めることによって、単一の伝導性物質対比初期効率、長寿命、そして、膨張制御問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】金属系-炭素系複合体の構成図を示したものである。
【
図2】負極活物質内炭素ナノチューブのTEMイメージを示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1、第2および第3等の用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるがこれらに限られない。それらの用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためだけに用いられる。したがって、以下で述べる第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を超えない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションで言及されることができる。
【0024】
ここで用いられる専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで用いられる単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態をも含む。明細書で使用する「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化しながら、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0025】
ある部分が他の部分の「うえに」または「上に」あると言及する場合、これは直ぐに他の部分のうえにまたは上にあることができたり、その間に他の部分が伴ったりすることができる。対照的にある部分が他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介されない。
【0026】
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
【0027】
改めて定義しなかったが、ここで使用する技術用語および科学用語を含むすべての用語は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同一な意味を有する。普通の使用する辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を持つことに追加解釈され、定義されない限り、理想的だとか非常に公式的な意味で解釈されない。
【0028】
以下、本発明の実施形態に対して本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかしながら、本発明は、色々な異なる形態に具現されながらここで説明する実施形態に限られない。
【0029】
以下、各段階に対して具体的に説明する。
【0030】
本発明の一態様に応じたリチウム二次電池用負極活物質製造方法は、粉砕工程を通じて金属系物質を金属系物質ナノ粒子に粉砕する段階;前記粉砕された金属系物質ナノ粒子、導電性物質、導電性添加剤と共に球形化し、球形化された粒子を収得する段階;前記球形化された粒子を非晶質炭素系前駆体物質と複合化して複合体を収得する段階;および前記複合体を炭化させる段階;を含み、前記導電性物質は、麟片状黒鉛であって、前記導電性添加剤は、炭素ナノチューブであることができる。
【0031】
金属系物質を金属系物質ナノ粒子に粉砕する段階;は、大きい金属系物質粒子をミリング(milling)するTop-down方式で、ナノサイズの金属系物質粒子を収得する段階である。金属系物質ナノ粒子、具体的に、粉砕型金属系物質ナノ粒子を収得するために、大きい金属系物質粒子をミリングする段階は湿式で進めることができ、この過程で湿式粉砕溶液内の水分および熱によって、粉砕型金属系物質ナノ粒子の表面に1乃至10重量%に酸化となることができる。そして、前記金属系物質は、リチウムと電気化学的に反応することができる。
【0032】
球形化された粒子を収得する段階;は、粉砕された金属系物質ナノ粒子、導電性物質、導電性添加剤と共に均一に乾式混合および分散後、湿式噴霧乾燥工程からなる方式で実施されることができる。
【0033】
複合体を収得する段階;は、前記球形化された粒子を非晶質炭素系前駆体物質と共に混合しながらせん断力を与えて緻密に複合化して、金属系-炭素系複合体を収得する段階であることができる。
【0034】
複合体を収得する段階;は、乾式方法または湿式方法で実施されることができる。具体的にプラネタリミキサー、3D-ミキサー、V-ミキサー、メカノフュージョン、ハイブリッドダイザー(Hybridizer)、ノビルタ(Nobilta)、ホモミキサー、ヘンシェルミキサー、インラインミキサーおよび噴霧乾燥機からなる群の中で選択された1種以上の方法で混合および複合化することができる。
【0035】
具体的に、前記複合化段階を通じて、非晶質炭素系前駆体物質に金属系物質ナノ粒子を含む球形化された粒子を付着、決着させた後、炭化させて負極活物質を収得すれば、電池に適用する場合、サイクリングに応じた体積膨張および収縮現像にもかかわらず、金属系物質ナノ粒子が他の物質との電気的接触が維持できる。即ち、非晶質炭素系原料物質が金属系物質ナノ粒子の膨張を制御することができる。
【0036】
複合体を炭化させる段階;は、800乃至1000℃の温度で0.5乃至2時間不活性雰囲気で複合体を炭化させる段階である。具体的に、前記条件で熱処理を実施する理由は、金属系物質ナノ粒子の酸化を防止し、非晶質炭素系前駆体物質の揮発性分(VM、Volatile Matter)を除去してより良質の非晶質炭素系物質に転換させると同時に、球形化段階の噴霧乾燥工程に通じて金属系物質ナノ粒子と導電性物質で構成されている粒子内部に非晶質炭素系物質の固定炭素が緻密に浸漬および生成されるようにするためである。前記複合体を炭化させることによって、揮発性分(VM、Volatile matter)が除去された非晶質炭素系物質の固定炭素が球形化された粒子の内外部を支持し、コンタクト(伝導性)を維持させる役割を果たすマトリックス(matrix)を形成することができる。
【0037】
複合体を炭化させる段階;前に、複合体を成形する段階をさらに含むことができる。好ましくは複合体を、加圧成形した成形体を収得する段階をさらに含むことができる。即ち、複合体を炭化させる段階は、複合体を加圧成形した成形体を炭化させる段階であることができる。
【0038】
複合体を炭化させる段階;以降に、炭化した成形体を粉砕および分級する段階をさらに含むことができる。好ましくは炭化した成形体のD50が9乃至15μmになるように粉砕して分級する段階であることができる。
【0039】
非晶質炭素系前駆体物質、前記金属系物質ナノ粒子および導電性物質の複合体に導電性添加剤をさらに含めることによって、線接触(1-dimension)機能を付与できる。リチウム二次電池内シリコンは、電気化学的に充電、放電を繰り返しながら膨張および収縮の動きを示すが、その際、導電性添加剤の線接触機能によってナノ粒子間のコンタクトを維持させることができる。
【0040】
また、導電性添加剤をさらに含めることによって、複合体内で導電性物質と伝導性役割を相互補完しながら、複合体の可逆性を高めて膨張抑制および寿命特性を向上させることができる。
【0041】
非晶質炭素系前駆体物質は、石炭系ピッチ、石油系ピッチおよびこれらの組み合わせからなる群より選択された一つを含むことができる。非晶質炭素系前駆体物質を用いる場合、熱処理を通じて炭化した後に、構造安定性を強化させる金属系-炭素系複合体のマトリックスとしての役割を演ずることができる。
【0042】
非晶質炭素系前駆体物質は、固定炭素が50乃至85重量%であり、軟化点が300℃未満であることができる。具体的に、固定炭素が65乃至80重量%であることがあって、軟化点が100乃至270℃であることができる。本特性を満たす非晶質炭素系前駆体物質は、炭化段階でVMのような低分子が揮発除去され、炭化後に、固定炭素が95%以上の炭素となる。このような非晶質炭素系マトリックスは、リチウム二次電池の充電、放電サイクルが度重なっても負極活物質の金属系-炭素系複合体の構造が崩壊するのを防止することができる。また、非晶質炭素系マトリックスの固定炭素値が増加すればするほど自己伝導度が低いSiと導電性パス(Path)とを生成させて、容量および効率増大を誘導することができる。また、固定炭素値が前記範囲を満たす場合、本実施形態の負極活物質内部気孔を減少させられる。そのために電解液との副反応なお、減少させることができるので、電池の初期効率上昇に寄与することができる。
【0043】
金属系物質は、シリコン、錫およびアルミニウムからなる群より選択された一つであることができる。好ましくは、シリコンであることができる。金属系物質ナノ粒子は、前記で言及した通り、大きい金属系物質をミリング(milling)するTop-down方式で、ナノサイズの金属系物質粒子を収得することによって得ることができる。
【0044】
金属系物質ナノ粒子は、粉砕型金属系物質ナノ粒子であることができる。
【0045】
金属系物質ナノ粒子は、粒度D50が30乃至200nmであることができる。具体的に、金属系物質ナノ粒子が粉砕型金属系物質ナノ粒子の場合、長辺基準でD50は30乃至200nm、具体的には、85乃至130nmであることができ、追加的に粉砕型金属系物質ナノ粒子の縦横比は、粉砕型金属系物質ナノ粒子の全体重量に対して90重量%以上が1.5超過であることができる。即ち、粉砕型金属系物質ナノ粒子は、針状型であることができる。前記金属系物質ナノ粒子の粒度D50が200nmを超過する場合は、リチウム二次電池の充電、放電の過程時、体積膨張による寿命劣化を招くことができる。
【0046】
導電性物質の麟片状黒鉛を含むことによって、複合体内のナノ粒子が集まったクラスターの導電性を維持させる面接触機能を付与し、負極活物質内部の電気化学的可逆性および導電性を向上させることができる。
【0047】
導電性物質の粒度D50は、3乃至12μmであることができる。具体的に、6乃至11μmであることができる。前記粒度D50が3μm未満の場合は、導電性および膨張の劣位があり得るし、12μm超過の場合は、複合体内に混ざり合いにくい。
【0048】
本発明の他の一態様に応じた負極活物質は、リチウム二次電池用負極活物質として、炭素系マトリックス;に、金属系物質ナノ粒子;導電性物質;および導電性添加剤;を含む炭化した金属系-炭素系複合体であって、前記導電性添加剤は、炭素ナノチューブであり、前記炭素ナノチューブの含有量は、複合体内金属系物質ナノ粒子対比0.2乃至2.3重量%であることができる。
【0049】
前記負極活物質は、前記の記述した製造方法より製造された負極活物質であることができる。
【0050】
炭化した金属系-炭素系複合体は、炭素系マトリックスに金属系物質ナノ粒子、導電性物質および導電性添加剤が均一に分散したものであり得る。炭化した金属系-炭素系複合体に含まれる炭素系マトリックスは、製造方法中の非晶質炭素系前駆体物質から由来したものであることができる。具体的に、前記炭素系マトリックスは、非晶質炭素系前駆体物質が炭化したものであることができる。
【0051】
負極活物質を構成する各炭素系マトリックス、金属系物質ナノ粒子、導電性物質および導電性添加剤などに対する具体的な内容は、前述した製造方法での説明と同一なゆえ、ここでは省略する。特に、金属系物質ナノ粒子、導電性添加剤および導電性物質は、炭化段階を経てもその混合比率、大きさ、縦横比などの物質特性には変化がない。
【0052】
前記収得された負極活物質は、リチウム二次電池の負極に用立てて用いることができる。即ち、一実施形態に応じたリチウム二次電池は、正極と共に前述した負極活物質を含む負極および電解質を含む。
【0053】
一実施形態に応じたリチウム二次電池は、正極、負極、そして、前記正極および負極の間に配置されたセパレーターを含む電極組立体を含むことができる。このような電極組立体は、ワインディングされたり、折り畳まれたりしてケースに受容されることによって、リチウム二次電池を構成する。
【0054】
その際、ケースは、円筒形、角型、薄膜型などの形態を持ちながら、適用しようとする装置の種類によって適切に変形することができる。
【0055】
前記負極は、負極活物質、バインダーおよび選択的に導電材を混合し、負極活物質層形成用組成物を製造した後、これを負極集電体に塗布して製造できる。
【0056】
前記負極集電体は、例えば、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、またはこれらの組み合わせであることができる。
【0057】
前記バインダーは、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース/スチレンーブタジエンラバー、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチレセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどが用いられるが、これに限定されない。前記バインダーは、前記負極活物質層形成用組成物の総量に対して1重量%乃至30重量%に混合することができる。
【0058】
前記導電材としては、電池に化学的変化を誘発しないながら導電性を持つなら、特別に制限されるわけではなくて、具体的には、天然黒鉛、人造黒鉛などの黒鉛;アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ポネイスブラック、ランプブラック、サマーブラックなどのカーボンブラック;炭素繊維、金属繊維などの導電性繊維、弗化カーボン、アルミニウム、ニッケル粉末などの金属粉末;酸化亜鉛、ティタンサンカリウムなどの導電性ウィスキ-;酸化チタンなどの導電性金属酸化物;ポリフェニレン誘導体などの導電性素材などが使用されることができる。前記導電材は、前記負極活物質層形成用組成物の総量に対して0.1重量%乃至30重量%に混合することができる。
【0059】
次に、前記正極は、正極活物質、バインダーおよび選択的に導電材を混合して、正極活物質層形成用組成物を製造した後、この組成物を正極集電体に塗布して製造することができる。その際、バインダーおよび導電材は、前述した負極の場合と同一に用いられる。
【0060】
前記正極集電体は、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したものを用いることができる。
【0061】
前記正極活物質は、リチウムの可逆的なインターカレーションおよびデインターカレーションが可能な化合物(リチエートインターカレーション化合物)を用いることができる。
【0062】
前記正極活物質は、具体的にコバルト、マンガン、ニッケルまたはこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物中、1種以上のものを用いることができ、その具体的な例としては、下記の化学式のいずれか一つに表現される化合物を使用することができる。LiaA1-bRbD2(前記式において、0.90≦a≦1.8および0≦b≦0.5である);LiaE1-bRbO2-cDc(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、および0≦c≦0.05である);LiE2-bRbO4-cDc(前記式において、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiaNi1-b-cCobRcDα (前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cCobRcO2-αZ2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbRcDα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α≦2である);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZα(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNi1-b-cMnbRcO2-αZ2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05および0<α<2である);LiaNibEcGdO2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5および0.001≦d≦0.1である);LiaNibCocMndGeO2(前記式において、0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5および0.001≦e≦0.1である);LiaNiGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である);LiaCoGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である);LiaMnGbO2(前記式において、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である);LiaMn2GbO4(前記式において、0.90≦a≦1.8および0.001≦b≦0.1である);QO2;QS2;LiQS2;V2O5;LiV2O5;LiTO2;LiNiVO4;Li(3-f)J2(PO4)3(0≦f≦2);Li(3-f)Fe2(PO4)3(0≦f≦2);およびLiFePO4。
【0063】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Rは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであって;Dは、O、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mnまたはこれらの組み合わせであって;Zは、F、S、Pまたはこれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、Vまたはこれらの組み合わせであって;Qは、Ti、Mo、Mnまたはこれらの組み合わせであり;Tは、Cr、V、Fe、Sc、Yまたはこれらの組み合わせであって;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cuまたはこれらの組み合わせである。
【0064】
前記リチウム二次電池に充填される電解質としては、非水性電解質または公知された固体電解質などを用いることができ、リチウム塩が溶解したものを用いることができる。
【0065】
前記リチウム塩は、例えば、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiClO4、LiCF3SO3、Li(CF3SO2)2N、LiC4F9SO3、LiSbF6、LiAlO4、LiAlCl4、LiClおよびLiIからなる群より選択された1種以上を用いることができる。
【0066】
前記非水性電解質の溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネート;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、γ-ブチロラクトンなどのエステル類;1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、 テトラヒドロフラン、1,2-ジオキサン、2-メチルテトラヒドロフランなどのエーテル類;アセトニトリルなどのニトリル類;ジメチルホルムアミドなどのアミド類などが用いられるが、これに限定されるのではない。これらを単独または複数個を組み合わせて用いることができる。特に、環状カーボネートと鎖状カーボネートとの混合溶媒を好ましく用いることができる。
【0067】
また、電解質として、ポリエチレンオキシド、ポリアクリロニトリルなどの重合体電解質に電解液を含浸したゲル状重合体電解質や、LiI、Li3Nなどの無機固体電解質が可能である。
【0068】
前記セパレーターは、耐薬品性および疎水性のポリプロピレンなどのオレフィン系ポリマー;ガラス繊維、ポリエチレン等で作られたシートや不織布などが用いることができる。電解液として、ポリマーなどの固体電解液が用いられる場合、固体電解液が分離膜を兼ねることもできる。
【実施例】
【0069】
以下、本発明の実施例に対して、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように詳しく説明する。しかしながら、本発明は、色々な異なる形態に具現されながら、ここで説明する実施例に限られない。
【0070】
負極活物質および半電池の製造
(1)負極活物質の製造
炭素系マトリックスにピッチを用い、金属系物質ナノ粒子に粉砕型シリコンナノ粒子を用い、導電性物質として麟片状黒鉛を用いた。
【0071】
用いたピッチは、固定炭素が70乃至80wt%であり、軟化点が240乃至260℃であった。
【0072】
用いた粉砕型シリコンナノ粒子は、D50が100乃至125nmであり、全体重量の90重量%以上の縦横比が1.5超過の針状型であった。
【0073】
用いた麟片状黒鉛は、D50が7乃至9μmであった。
【0074】
複合体100重量部に対して、粉砕型シリコンナノ粒子45乃至60重量部と、麟片状黒鉛20乃至30重量部とを混合し、ここに炭素ナノチューブを下記表1のような含有量でさらに添加して混合した後、残量部に非晶質系炭素を複合化して複合物を収得し、これを温度900℃で1時間不活性雰囲気で炭化させて負極活物質を収得した。
【0075】
(2)リチウム二次電池(Half-cell)の製造
前記1の負極活物質、バインダー(SBR-CMC)および導電材(Super P)を負極活物質:バインダー:導電材の重量比が75:24:1となるように準備した後、蒸溜水に投入して均一に混合してスラリーを製造した。
【0076】
前記のスラリーを銅(Cu)集電体に均一に塗布した後、ロールプレスでプレスした後乾燥して負極を製造した。具体的に、Loading量5mg/cm2、電極密度が1.2乃至1.3g/ccを持つようにした。
【0077】
相対電極としては、リチウム金属(Li-metal)を用い、電解液としては、エチレンカーボネート(EC、Ethylene Carbonate):ジメチルカーボネート(DMC、Dimethyl Carbonate)の体積比率が3:7の混合溶媒に1モルのLiPF6溶液の溶解したものを用いた。
【0078】
前記負極、リチウム金属および電解液を用い、通常の製造方法によりCR2032半電池(half coin cell)を製作した。
【0079】
電気化学特性測定
(1)初期効率測定
下記表1の組成で製造された負極活物質を半電池にそれぞれ適用して実験した。
【0080】
具体的に、0.1C、0.005V、0.05C cut off充電および0.1C、1.5V cut-off放電の条件で電池を駆動し、初期効率を測定して下記表1に記載した。
【0081】
(2)50th寿命
寿命は、半電池を製造して測定した。
【0082】
具体的に、初期効率を測定した後、0.5C(0.005V、0.05C cut off充電)/0.5C(1.5V cut-off放電)条件で50回の充放電を通じて長期寿命を測定し、その結果を表1に記載した。電極のLoading量は、5mg/cm2、電極密度が1.2乃至1.3g/ccを持つようにし、長期寿命の試験のための電解液は、EC:EMC=3:7(1.0MLiPF6)を用いた。
【0083】
(3)膨張率
膨張率は、下記式のように計算して表1にその結果を記載した。
【0084】
膨張率(%)=(((50thcycleが経った後の電極の厚さーCu集電体厚さ)ー(Fresh電極の厚さーCu集電体の厚さ))/(Fresh電極の厚さ-Cu集電体の厚さ))*100(%)
【0085】
【0086】
前記表1より分かるように、導電性添加剤である炭素ナノチューブを添加しなかったり、炭素ナノチューブの含有量を複合体内粉砕型シリコンナノ粒子対比2.3重量%を超えて添加したりする比較例1および2の場合には、前記炭素ナノチューブの含有量を複合体内粉砕型シリコンナノ粒子対比0.2乃至2.3重量%の範囲で添加した一実施例1乃至4に比べて初期容量、初期効率特性、長期寿命特性および膨張率特性が全て劣位したことを確認することができた。
【0087】
本発明は、実施例に限られるわけではなく、互いに異なる多様な形態に製造されることができ、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更しなくても、他の具体的な形態に実施されるということを理解するはずである。したがって、以上で記述した一実施例は、全ての面で例示的なものであって、限定的ではないことに理解しなければならない。
【国際調査報告】