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特表2024-500148固体電解質、その製造方法およびこれを含む全固体電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】固体電解質、その製造方法およびこれを含む全固体電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0562 20100101AFI20231222BHJP
【FI】
H01M10/0562
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537412
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 KR2021018976
(87)【国際公開番号】W WO2022131751
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10-2020-0178622
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0167376
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100171310
【弁理士】
【氏名又は名称】日東 伸二
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,オーミン
(72)【発明者】
【氏名】ムン,ジ ウン
(72)【発明者】
【氏名】ナム,サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン スン
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ06
5H029AJ14
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL12
5H029AM12
5H029CJ02
5H029CJ03
5H029DJ17
5H029HJ00
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ14
5H029HJ15
(57)【要約】
固体電解質およびこれを含む全固体電池に関するものであって、該固体電解質は、下記化学式1に示す硫黄化合物を含み、Bを10ppm乃至100,000ppmの含有量で含む。
[化学式1]
Li7-xPS6-xCl1-yBr
(前記化学式1において、1<x<2、0≦y<1である)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1に示した硫黄化合物を含み、Bを10ppm乃至100,000ppmの含有量で含むものである
固体電解質。
[化学式1]
Li7-xPS6-xCl1-yBr
(前記化学式1において、1<x<2、0≦y<1である)
【請求項2】
前記固体電解質は、下記化学式2に示したものである請求項1に記載の固体電解質。
[化学式2]
Li7-xPS6-xCl1-yBr3/2z
(前記化学式2において、1<x<2、0≦y<1であり、0<z≦0.5である)。
【請求項3】
前記B含有量は、1000ppm乃至100,000ppmである請求項1に記載の固体電解質。
【請求項4】
前記固体電解質は、アルジロダイト型である請求項1に記載の固体電解質。
【請求項5】
リチウム含有硫化物、PおよびS含有硫化物、Cl含有化合物およびBを含む化合物を混合して混合物を製造する段階;
前記混合物を圧縮してペレットを製造する段階;および
前記ペレットを熱処理する段階を含み、
前記Bを含む化合物は、HBO、LiBO、BBr、BClまたはこれらの組み合わせである固体電解質の製造方法。
【請求項6】
前記混合は、100rpm乃至2000rpmの速度で実施するものである請求項5に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項7】
前記圧縮は、100MPa乃至500MPaの圧力下で実施するものである請求項5に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理工程は、400℃乃至600℃で実施するものである請求項5に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項9】
負極;
正極;および
前記負極と前記正極の間に位置し、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の固体電解質
を含む全固体電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
固体電解質、その製造方法およびこれを含む固体電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近、ITモバイル機器および小型電力駆動装置(e-bike、小型EVなど)等の電池を用いる電子機構の急速な普及に伴って、小型軽量であり、相対的に高容量のリチウム二次電池の需要が急速に増大している。
【0003】
このようなリチウム二次電池の爆発的な需要増大によって、安全問題が主要イシューに浮上している。
【0004】
リチウム二次電池中、安全性を改善し、エネルギー密度を向上させるため、全固体電池が大きい関心を受けている。このような全固体電池は、すべての物質が固体から構成された電池として、特に固体電解質を用いる電池である。このような全固体電池は、電解液漏出の危険がなくて安全性に優れ、薄形の電池製作が容易であるという長所がある。
【0005】
前記固体電解質としては、アルジロダイト(argyrodite)の構造を有し、LiPSClのような組成を有する硫化物系固体電解質が主に研究されている。しかしながら、このような硫化物系固体電解質は、水分との副反応により一般的な大気での扱いにくい問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一実施例は、イオンの伝導度および電池性能劣化なしに、水分安定性を改善させることができる固体電解質を提供するものである。
【0007】
他の一実施例は、前記固体電解質の製造方法を提供するものである。
【0008】
他の一実施例は、前記固体電解質を含む全固体電池を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
一実施例は、下記の化学式1に示す硫黄化合物を含み、Bを10ppm乃至100,000ppmの含有量で含むものである固体電解質を提供する。
[化学式1]
Li7-xPS6-xCl1-yBr
(前記化学式1において、1<x<2、0≦y<1である)
【0010】
前記固体電解質は、下記の化学式2に示すことができる。
[化学式2]
Li7-xPS6-xCl1-yBr3/2z
(前記化学式2において、1<x<2、0≦y<1であり、0<z≦0.5である)。
【0011】
一実施例において、前記B含有量は、1000ppm乃至100,000ppmであり得る。
【0012】
前記固体電解質は、アルジロダイト型であることができる。
【0013】
他の一実施例は、リチウム含有化合物、PおよびS含有化合物、Cl含有化合物およびB含有化合物を混合して混合物を製造する段階;前記混合物を圧縮してペレットを製造する段階;および前記ペレットを熱処理する段階を含み、前記Bを含む化合物は、B、HBO、LiBO、BBr、BClまたはこれらの組み合わせである固体電解質の製造方法を提供する。
【0014】
前記混合する工程は、100rpm乃至2000rpmの速度で実施することができる。
【0015】
前記圧縮は、100MPa乃至500MPaの圧力下で実施することができる。
【0016】
前記熱処理工程は、400℃乃至600℃で実施することができる。
【0017】
そして、他の一実施例は、負極、正極および前記負極と前記正極の間に位置する前記固体電解質を含む全固体電池を提供する。
【発明の効果】
【0018】
一実施例に応じた固体電解質は、全固体電池は優れる出力特性およびサイクル寿命特性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、これによって本発明が制限せず、本発明は、後述する請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0020】
本明細書で特別な言及のない限り、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるという時、これは他の部分の「直上に」ある場合のみならず、その中間にまた他の部分がある場合も含む。
【0021】
また、特に言及しない限り、%は重量%を意味し、1ppmは0.0001重量%である。
【0022】
一実施例に応じた固体電解質は、下記の化学式1に示す化合物を含むことができる。
【0023】
[化学式1]
Li7-xPS6-xCl1-yBr
(前記化学式1において、1<x<2、0≦y<1である)。
【0024】
前記固体電解質はBを含み、その際、B含有量は10ppm乃至100,000ppmであることができ、1000ppm乃至100,000ppmであることもできる。B含有量が前記範囲に含まれる場合、これを利用した全固体電池の充放電時、HSガス発生量を減少させることができ、サイクル寿命特性を向上させることができる。
【0025】
このように、Bを含む固体電解質は、下記の化学式2に示すこともできる。
【0026】
[化学式2]
Li7-xPS6-xCl1-yBrOz3/2z
(前記化学式2において、1<x<2、0≦y<1であり、0<z≦0.5である)。
【0027】
このように、一実施例に応じた固体電解質は、アルジロダイト型(agyrodite)固体電解質であり、Bを含むものとして、B含有によりイオン伝導度および電池性能劣化なしに、水分安全性を向上させることができる。これはBが焼結材および酸素供給材の役割を果たすためだと考えられる。もしBの代わりに、MgOのような金属酸化物、Br、Fなどのようなハロゲン化合物を含む場合には、Mgまたはハロゲンが構造内ドーピングされないため、水分安全性は確保できても、イオンの伝導度および電池性能が劣化して適切ではない。
【0028】
また、Bではない、Al、Ga、またはInを含む場合にも、金属-酸素間の結合力が非常に強いので、アルジロダイト構造の水分安定性を改善させることには適切ではない。
【0029】
このようなBを含むことに応じた効果は、先に説明したB含有量が10ppm乃至100,000ppmの場合に得ることができ、もしBを含んでも、B含有量が10ppm未満であれば、HSガス発生量が増加して適切ではなく、B含有量が100,000ppmを超える場合には、イオン伝導度の劣化問題があり得る。
【0030】
一般的なアルジロダイト型固体電解質は、通常Li7-xPS6-xClの組成式によりClの量が減少するほどLiの量が増加する構造であるが、一実施例は、化学式2に示したように、Li7-xPS6-xCl1-yBrOz3/2zとして、ハロゲン元素とLiとの連係性を遮断して、LiS分率だけ低減させることができる長所があって、これによって水分安定性を改善させることができる。
【0031】
一実施例に応じた固体電解質は、リチウム含有硫化物、PおよびS含有化合物、Cl含有化合物およびBを含む化合物を混合して混合物を製造する段階、前記混合物を圧縮してペレットを製造する段階、および前記混合物を熱処理する段階で製造されることができる。その際、前記Bを含む化合物は、B、LiBO、BBr、BClまたはこれらの組み合わせであり得る。前記Bを含む化合物として、このような化合物を使用する場合、Bを含んでもHBOを使用する場合に比べて、熱処理工程中の水分が発生しない効果を得ることができる。
【0032】
前記リチウム含有硫化物は、LiS、Liまたはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。前記PおよびS含有化合物は、P、Pまたはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0033】
前記Cl化合物は、LiCl、LiBr、LiIまたはこれらの組み合わせであることができるが、これに限定されるものではない。
【0034】
前記混合物を製造する工程において、リチウム含有化合物の含有量は、前記混合物全体100モル%に対して、10モル%乃至60モル%であり得る。前記リチウム含有化合物の含有量が前記範囲に含まれる場合、製造された固体電解質でハロゲン元素とLiとの連係性が遮断されることができ、高イオン伝導および水分安定性改善の長所があり得る。
【0035】
前記Bを含む化合物は、最終固体電解質重量に対して、10ppm乃至100,000ppm重量で使用することができる。Bを含む化合物を前記含有量で使用する場合、充放電時に発生するHSガス量を減少させることができ、寿命特性に優れる固体電解質を製造することができる。また、Bを含む化合物を前記使用量で使用する場合、最終生成物においてB含有量が10ppm乃至100,000ppmであり得る。
【0036】
前記PおよびS含有化合物および前記Cl含有化合物の含有量は、前記化学式1の組成が得られる範囲内で適切に調節することができる。
【0037】
前記混合工程は、機械的な工程で実施することもでき、化学的工程で実施することもできる。
【0038】
前記混合工程を機械的な工程で実施する場合、ミリング工程で実施することができ、その際、ボールミル、プラネタリーミル(planetary mill)、マカーノフュージョン(mechano fusion)のような機械的エネルギーを付与しながら、キシレン(xylene)、ヘプタン(heptane)、オクタン(octane)等の無極性有機溶媒(non-polar organic solvent)を使って粉砕する機械的工程で実施することができる。
【0039】
前記混合工程を化学的工程で実施する場合、テトラヒドロフラン(THF)、エタンオール、プロパノール、水またはこれらの組み合わせのような極性有機溶媒(polar organic solvent)を使用する化学的工程で実施することもできる。
【0040】
前記混合工程は、100rpm乃至2000rpmの速度で実施することができ、その速度で実施する場合、均一混合による高イオン伝導の長所を得ることができる。
【0041】
また、前記混合工程を実施する時間は、混合工程の速度により適切に調節でき、例えば、1時間乃至50時間実施できるが、これに限定されるものではない。併せて、前記混合工程は、乾燥工程をさらに実施することができ、その際、乾燥工程は、溶媒が実質的にほとんど除去されるように実施すれば良く、乾燥温度および乾燥時間を限定する必要はない。
【0042】
前記圧縮してペレットを製造する段階において、圧縮は、100MPa乃至500MPaの圧力下で実施することができる。圧縮工程を前記圧力下で実施する場合、均一反応による高イオン伝導の長所を得ることができる。
【0043】
前記熱処理工程は、400℃乃至600℃で実施することができる。熱処理工程を前記温度範囲で実施する場合、均一反応による高イオン伝導の長所を得ることができる。また、前記熱処理工程は、非活性雰囲気で実施することができ、前記非活性雰囲気は、Ar雰囲気、N2雰囲気、またはこれらの組み合わせであることができる。
【0044】
他の一実施例は、前記固体電解質を含み、この固体電解質を挟んで、位置する負極および正極を含む全固体電池を提供する。即ち、前記全固体電池は、負極、正極およびその負極と正極との間に位置する一実施例に応じた固体電解質を含む。
【0045】
前記負極は、リチウム金属、またはリチウム合金を用いることができ、負極電流集電体上に負極活物質を含む負極合材が塗布されたものを用いることができる。前記負極合材は、必要によりバインダーおよび導電材をさらに含むこともできる。
【0046】
前記負極活物質は、リチウム金属、リチウム合金、リチウム金属複合酸化物、リチウム含有チタニウム複合酸化物、またはこれらの組み合わせであることができる。
【0047】
前記リチウム合金は、リチウムと、Na、K、Rb、Cs、In、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、AlおよびSnから選択される少なくとも一つの金属からなる合金を用いることができる。また、リチウム金属複合酸化物は、リチウムとSi、Sn、Zn、Mg、Cd、Ce、NiおよびFeからなる群から選択されたいずれか一つの金属(Me)酸化物(MeO)であり得る。前記リチウム金属複合酸化物の一例として、LiFe(0<x≦1)またはLiWO(0<x≦1)を挙げることができる。
【0048】
また、前記負極活物質として、SnMe1-xMe’(Me:Mn、Fe、Pb、Ge;Me’:Al、B、P、Si、周期律表の1族、2族、3族元素、ハロゲン 0<x≦1;1≦y≦3;1≦z≦8)等の金属複合酸化物SnO、SnO、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、BiおよびBi等の酸化物などを用いることができ、結晶質炭素、非晶質炭素または炭素複合体のような炭素系物質が単独でまたは2種以上が混用されて使用されることができる。
【0049】
前記負極合材層は、場合によっては一実施例に応じた固体電解質を負極合材層全体重量を基準に、0.1重量%乃至60重量%、詳しくは10重量%乃至50重量%で含むこともできる。
【0050】
前記バインダーは、特に限らず、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリ四弗化エチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリ弗化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。前記バインダーの含有量は、負極活物質を固定することができる程度なら、特に限らず、負極合材層全体重量に対して1重量%乃至10重量%であることができる。
【0051】
前記導電材は、正極の導電性を向上させることができれば、特に限らず、ニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどを例示することができる。前記カーボンは、詳しくは、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維およびフラーレンからなる群から選択されたいずれか一つまたはこれらの中で1種以上であることができる。前記導電材の含有量は、導電材の種類などのその他電池の条件を考慮して選択されることができ、例えば、負極合材全体重量に対して、1重量%乃至10重量%であることができる。
【0052】
前記負極電流集電体は、全固体電池に化学的変化を誘発せず、導電性を持つものなら、特に制限されなく、例えば、銅、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、銅やステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの、アルミニウム-カドミウム合金などが用いられる。また、前記負極集電体は、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、フォイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布などの多様な形態が使用されることができる。
【0053】
前記正極は、正極電流集電体およびその正極電流集電体上に位置する正極活物質を含む正極合材層を含む。その正極合材層は、必要に応じてバインダー、導電材をさらに含むことができる。
【0054】
前記正極活物質は、リチウムイオンを可逆的に吸蔵および放出できる正極活物質であり得る。正極活物質の例としては、Li1-b (0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5);Li1-b 2-c (0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5);Li2-b 4-c (0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5);LiNi1-b-cCo α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α≦2);LiNi1-b-cCo 2-α α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α<2);LiNi1-b-cCo 2-α (0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α<2);LiNi1-b-cMn α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α≦2);LiNi1-b-cMn 2-α α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α<2);LiNi1-b-cMn 2-α (0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.5、0<α<2);LiNi(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1);LiNiCoMn(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1);LiNiG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiCoG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiMnG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);LiMn(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiI;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);またはLiFePOが挙げられる。
【0055】
前記化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり;Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはこれらの組み合わせであり;Dは、O、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり;Eは、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり;Fは、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり;Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはこれらの組み合わせであり;Qは、Ti、Mo、Mn、またはこれらの組み合わせであり;Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはこれらの組み合わせであり;Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせである。
【0056】
前記正極活物質の形状は、特に限らず、粒子形、例えば、球形、楕円形、直六面体形などであり得る。正極活物質の平均粒径は、1乃至50μm範囲内であることもできるが、これだけで限定されるものではない。正極活物質の平均粒径は、例えば、走査型電子顕微鏡によって観察される活物質の粒径を測定し、その平均値を計算することによって得ることができる。
【0057】
前記バインダーは、特に限らず、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ポリ四弗化エチレン(polytetrafluoroethylene)、ポリ弗化ビニリデン(polyvinylidene fluoride)、ポリエチレン(polyethylene)などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0058】
前記バインダーの含有量は、正極活物質を固定できる程度なら、特に限らず、正極合材層全体重量に対して、1重量%乃至10重量%であり得る。
【0059】
前記導電材は、正極の導電性を向上させることができれば、特に限らず、ニッケル粉末、酸化コバルト、酸化チタン、カーボンなどを例示することができる。前記カーボンは、詳しくは、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、炭素繊維およびフラーレンからなる群から選択されたいずれか一つまたはこれらの中で1種以上であることができる。
【0060】
前記導電材の含有量は、導電材の種類などのその他の電池の条件を考慮して選択されることができ、例えば、正極合材全体重量に対して、1重量%乃至10重量%であり得る。
【0061】
前記正極合材は、場合によっては、リチウムイオンの伝導度を高めるために、一実施例により固体電解質を正極合材層全体重量を基準に、0.1重量%乃至60重量%、詳しくは、10重量%乃至50重量%で含むことができる。
【0062】
前記正極集電体は、該電池に化学的変化を誘発せず、高い導電性を持つものなら、特に限らず、例えば、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素、またはアルミニウムやステンレススチールの表面にカーボン、ニッケル、チタン、銀等で表面処理したもの等が用いることができる。また、表面に微細な凹凸が形成されたフィルム、シート、フォイル、ネット、多孔質体、発泡体、不織布などの多様な形態が用いることができる。
【実施例
【0063】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。このような下記の実施例は、本発明の一実施例であり、本発明が下記した実施例のみに限定されるものではない。
【0064】
(比較例1)
LiS、PおよびLiClをプラネタリーミルを利用して8時間300rpmで混合して混合物を製造した。その際、前記LiS含有量は、0.017モルを用い、PおよびLiClは、それぞれ0.0039モルおよび0.0078モルを用いた。
前記混合物を300MPa圧力で圧縮してペレットを製造し、そのペレットをAr雰囲気下で、550℃で8時間熱処理を実施して、アルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。
【0065】
(実施例1)
LiS、P、LiClおよびBをプラネタリーミルを利用して8時間300rpmで混合して混合物を製造した。その際、前記LiS含有量は、0.017モルを用い、PおよびLiClは、それぞれ0.0039モルおよび0.0078モルを用いた。また、Bは、0.027g、即ち、最終固体電解質2gに対して、13000ppmとなるように用いた。
前記混合物を300MPa圧力で圧縮してペレットを製造し、そのペレットをAr雰囲気下で、550℃で8時間熱処理を実施し、Bを13000ppm含むアルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。製造された固体電解質の組成は、Li5.5PS4.750.05ClO0.075であった。
前記固体電解質を利用し、前記比較例1と同一に実施して全固体電池を製造した。
【0066】
(実施例2)
を26000ppm用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施し、Bを26000ppm含むアルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。製造された固体電解質の組成は、Li5.5PS4.750.1ClO0.15であった。
前記固体電解質を利用し、前記比較例1と同一に実施して全固体電池を製造した。
【0067】
(実施例3)
を39000ppm用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施し、Bを39000ppm含むアルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。製造された固体電解質の組成は、Li5.5PS4.750.15ClO0.225であった。
前記固体電解質を利用し、前記比較例1と同一に実施して全固体電池を製造した。
【0068】
(実施例4)
を52000ppm用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施し、Bを52000ppm含むアルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。製造された固体電解質の組成は、Li5.5PS4.750.2ClO0.3であった。
前記固体電解質を利用し、前記比較例1と同一に実施して全固体電池を製造した。
【0069】
(実施例5)
を65000ppm用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施し、Bを2000ppm含むアルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。製造された固体電解質の組成は、Li5.5PS4.750.25ClO0.375であった。
前記固体電解質を利用し、前記比較例1と同一に実施して全固体電池を製造した。
【0070】
(実施例6)
を6500ppm用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施し、Bを6500ppm含むアルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。製造された固体電解質の組成は、Li5.5PS4.750.025ClO0.0375であった。
前記固体電解質を利用し、前記比較例1と同一に実施して全固体電池を製造した。
【0071】
(実施例7)
を20ppm用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施し、Bを20ppm含むアルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。
前記固体電解質を利用し、前記比較例1と同一に実施して全固体電池を製造した。
【0072】
(実施例8)
を100,000ppm用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施し、Bを100,000ppm含むアルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。
前記固体電解質を利用し、前記比較例1と同一に実施して全固体電池を製造した。
【0073】
(実施例9)
を500ppm用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施し、Bを500ppm含むアルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。
前記固体電解質を利用し、前記比較例1と同一に実施して全固体電池を製造した。
【0074】
(実施例10)
を1,000ppm用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施し、Bを1,000ppm含むアルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。
前記固体電解質を利用し、前記比較例1と同一に実施して全固体電池を製造した。
【0075】
(比較例2)
を200,000ppm用いたことを除いては、前記実施例1と同一に実施し、Bを200,000ppm含むアルジロダイト型Li5.5PS4.75Cl固体電解質を製造した。
前記固体電解質を利用し、前記比較例1と同一に実施して全固体電池を製造した。
【0076】
実験例1)容量、効率およびサイクル寿命特性測定
【0077】
前記実施例1乃至10および前記比較例1と2の固体電解質をヘプタンまたはキシレン、Butyl Butyrateを添加して固体電解質スラリーを製造し、前記スラリーを離型ポリテトラフルオロエチレンフィルム上にキャスティングし、常温乾燥して厚さが5μmの固体電解質膜を製造した。
【0078】
LiNi0.8Co0.1Mn0.1正極活物質、前記実施例1乃至10および前記比較例1と2の固体電解質およびデンカブラック導電材を70:29:1の重量比でN-メチルピロリドン溶媒中に混合して正極活物質スラリーを製造した。前記正極活物質スラリーを0.785cmの面積を有するアルミニウムフォイルに20mgのローディング量でローディングし、300MPaに圧縮して正極を製造した。
【0079】
前記正極、前記固体電解質膜およびリチウム金属対極を位置させた後、50MPaに接合させて全固体電池を製造した。
【0080】
製造された全固体電池を2時間常温(25℃)でエージング(aging)した後、CC(定電流)/CV(定電圧)1.9V乃至3.60V、1/20Cカットオフ条件で、0.1Cで1回充放電を実施した後、充電容量および放電容量を測定した。その結果を下記表1に示した。その際、基準容量は、180mAh/gとした。
【0081】
また、充電容量に対する放電容量比を求めて、その結果を1回効率として下記表1に示した。
【0082】
併せて、前記実施例1乃至10と、前記比較例1および2により製造された全固体電池を45℃でCC(定電流)/CV(定電圧)1.9V乃至3.60V、1/20Cカットオフ条件で、0.3Cで30回充放電を実施して1回放電容量に対する30回放電容量比を求めた。その結果を下記表1に寿命特性に示した。
【0083】
実験例2)HS発生量測定
【0084】
前記実施例1乃至10と、前記比較例1および2により製造された固体電解質をそれぞれチャンバー(chamber)へ位置させた。
【0085】
乾燥空気(dryair)に水を通過させて、一定量の水分を含有している気体を形成し、その気体を前記固体電解質が位置したチャンバーに5分間パージし、チャンバーをロックした後、HSガス測定器で発生するHSガスの量を1時間測定した。
【0086】
その結果を下記表1に示した。
【0087】
【表1】
【0088】
前記表1に示したように、Bを含まない固体電解質を用いた比較例1に比べて、Bを10ppm乃至100,000ppm含む固体電解質を用いた実施例1乃至10の全固体電池は、優れる充放電容量および効率を維持しながら、優れる寿命特性を示すことが分かる。また、実施例1乃至10の固体電解質のHSガス量が比較例1に比べて低く示したことが分かる。
【0089】
併せて、Bを含む固体電解質を用いても、B含有量が200,000ppmで過度に高い場合、充放電容量、効率および寿命特性が全てで劣化して適切ではないことが分かる。
【0090】
以上を通じて、本発明の望ましい実施例について説明したが、本発明は、これに限らず、特許請求の範囲と発明の詳細な説明および添付した図面の範囲内で多様に変形して実施することが可能であり、これも本発明の範囲に属することは当然である。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1に示した硫黄化合物を含み、Bを10ppm乃至100,000ppmの含有量で含むものである
固体電解質。
[化学式1]
Li7-xPS6-xCl1-yBr
(前記化学式1において、1<x<2、0≦y<1である)
【請求項2】
前記固体電解質は、下記化学式2に示したものである請求項1に記載の固体電解質。
[化学式2]
Li7-xPS6-xCl1-yBr3/2z
(前記化学式2において、1<x<2、0≦y<1であり、0<z≦0.5である)。
【請求項3】
前記B含有量は、1000ppm乃至100,000ppmである請求項1に記載の固体電解質。
【請求項4】
前記固体電解質は、アルジロダイト型である請求項1に記載の固体電解質。
【請求項5】
リチウム含有硫化物、PおよびS含有化合物、Cl含有化合物およびBを含む化合物を混合して混合物を製造する段階;
前記混合物を圧縮してペレットを製造する段階;および
前記ペレットを熱処理する段階を含み、
前記Bを含む化合物は、HBO、LiBO、BBr、BClまたはこれらの組み合わせである固体電解質の製造方法。
【請求項6】
前記混合は、100rpm乃至2000rpmの速度で実施するものである請求項5に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項7】
前記圧縮は、100MPa乃至500MPaの圧力下で実施するものである請求項5に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項8】
前記熱処理工程は、400℃乃至600℃で実施するものである請求項5に記載の固体電解質の製造方法。
【請求項9】
負極;
正極;および
前記負極と前記正極の間に位置し、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の固体電解質
を含む全固体電池。
【国際調査報告】