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特表2024-500153ヒト化TSLP遺伝子、ヒト化TSLP受容体遺伝子、及び/又はヒト化IL7RA遺伝子を有する非ヒト動物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】ヒト化TSLP遺伝子、ヒト化TSLP受容体遺伝子、及び/又はヒト化IL7RA遺伝子を有する非ヒト動物
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20231222BHJP
   A01K 67/027 20240101ALI20231222BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231222BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20231222BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231222BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20231222BHJP
   C12N 5/0789 20100101ALI20231222BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20231222BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20231222BHJP
   G01N 33/15 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C12N15/09 100
A01K67/027 ZNA
C12N5/10
C12N15/113 Z
C12N15/12
C12N15/11 Z
C12N5/0789
C12Q1/04
G01N33/50 Z
G01N33/15 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537555
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-07-20
(86)【国際出願番号】 US2021064270
(87)【国際公開番号】W WO2022140221
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/128,258
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】597160510
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】REGENERON PHARMACEUTICALS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】タン, ヤジュン
(72)【発明者】
【氏名】ブリッジズ, スザンナ
(72)【発明者】
【氏名】スリバットサン, スバシニ
(72)【発明者】
【氏名】フリータ, ダボル
(72)【発明者】
【氏名】ギュラー, ケーガン
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー, アンドリュー ジェイ.
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2G045AA40
4B063QA20
4B063QQ20
4B063QR80
4B065AA91X
4B065AA93Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065CA44
(57)【要約】
本明細書において、ヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、ヒト化Il7ra遺伝子、又はそれらの組み合わせを含むように遺伝子改変された齧歯類(マウス及びラットなどであるが、これらに限定されない)が開示される。このような遺伝子改変齧歯類を作製するための組成物及び方法、並びにアレルギー性疾患及びがんなどの疾患のための動物モデルとしてそのような遺伝子改変齧歯類を使用する方法が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遺伝子改変齧歯類動物であって、そのゲノム中に、
齧歯類Tslp核酸配列と、
ヒトTSLP核酸配列と、を含む、ヒト化Tslp遺伝子を含み、
前記ヒト化Tslp遺伝子が、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一の成熟タンパク質配列を含むヒト化Tslpポリペプチドをコードする、遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項2】
前記ヒト化Tslp遺伝子ポリペプチドが、前記ヒトTSLPタンパク質の前記成熟タンパク質配列と少なくとも95%の同一性を有する成熟タンパク質配列を含む、請求項1に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項3】
前記ヒト化Tslpポリペプチドが、前記ヒトTSLPタンパク質の前記成熟タンパク質配列と同一の成熟タンパク質配列を含む、請求項1に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項4】
前記ヒト化Tslpタンパク質が、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一のシグナルペプチドを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項5】
前記ヒト化Tslpタンパク質が、前記齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと少なくとも95%の同一性を有するシグナルペプチドを含む、請求項4に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項6】
前記ヒト化Tslpタンパク質が、内因性齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと同一のシグナルペプチドを含む、請求項4に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項7】
前記ヒトTSLP核酸配列が、前記ヒトTSLPタンパク質の前記成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードする、先行請求項のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項8】
前記ヒトTSLP核酸配列が、前記ヒトTSLPタンパク質の前記成熟タンパク質配列をコードする、請求項7に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項9】
前記ヒトTSLP核酸配列が、ヒトTSLP遺伝子の前記成熟タンパク質配列の第1のアミノ酸のコドンから、エクソン4における終止コドンまでエクソン1を含む、請求項8に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項10】
前記齧歯類Tslp核酸配列が、前記齧歯類Tslpシグナルペプチドをコードする齧歯類Tslp遺伝子のエクソン配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項11】
前記齧歯類動物が、マウスであり、前記齧歯類核酸配列が、マウスTslp遺伝子のシグナルペプチドアミノ酸をコードするエクソン1と、エクソン2の5’部分と、を含む、請求項10に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項12】
前記齧歯類Tslp核酸配列が、前記齧歯類Tslp遺伝子の3’UTRを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項13】
前記齧歯類Tslp遺伝子が、内因性Tslp遺伝子である、請求項10~12のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項14】
前記齧歯類動物が、マウスであり、前記ヒト化Tslp遺伝子が、(i)マウスTslp遺伝子のシグナルペプチドアミノ酸をコードするエクソン1、及びエクソン2の5’部分、並びに(ii)ヒトTSLP遺伝子の前記成熟タンパク質配列の第1のアミノ酸のコドンから、エクソン4における終止コドンまでエクソン1を含む、請求項1に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項15】
前記ヒト化Tslp遺伝子が、前記マウスTslp遺伝子の3’UTRを更に含む、請求項14に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項16】
前記ヒト化Tslp遺伝子が、齧歯類Tslpプロモーターに作動可能に連結されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項17】
前記齧歯類Tslpプロモーターが、内因性齧歯類Tslpプロモーターである、請求項16に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項18】
前記ヒト化Tslp遺伝子が、内因性齧歯類Tslp座位に位置する、請求項1~17のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項19】
前記ヒト化Tslp遺伝子が、内因性齧歯類Tslp座位での齧歯類TslpゲノムDNAの、前記ヒトTSLP核酸による置換の結果として形成される、請求項18に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項20】
前記ヒト化Tslp遺伝子が、前記内因性齧歯類Tslpタンパク質の前記成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードするエクソン配列を含む齧歯類ゲノムDNAの、前記ヒトTSLPタンパク質の前記成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードする前記ヒトTSLP核酸による置換の結果として形成される、請求項19に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項21】
前記ヒト化Tslp遺伝子が、前記内因性齧歯類Tslpタンパク質の前記成熟タンパク質配列をコードするエクソン配列を含む齧歯類ゲノムDNAの、前記ヒトTSLPタンパク質の前記成熟タンパク質配列をコードする前記ヒトTSLP核酸による置換の結果として形成される、請求項20に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項22】
前記齧歯類動物がマウスであり、置換される前記マウスゲノムDNAが、前記内因性マウスTslp遺伝子の前記成熟マウスTslpタンパク質の第1のアミノ酸のコドンからエクソン5における終止コドンまでエクソン2を含み、前記ヒトゲノムDNAが、ヒトTSLP遺伝子の前記成熟ヒトTSLPタンパク質の第1のアミノ酸からエクソン4における終止コドンまでエクソン1を含む、請求項21に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項23】
前記齧歯類が、前記ヒト化Tslp遺伝子に対してホモ接合性である、請求項1~22のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項24】
前記齧歯類が、前記ヒト化Tslp遺伝子に対してヘテロ接合性である、請求項1~22のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項25】
前記齧歯類が、前記齧歯類動物が、前記ヒト化Tslpポリペプチドを発現する、先行請求項のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項26】
そのゲノムが、内因性齧歯類Tslpr座位にヒト化Tslpr遺伝子、内因性齧歯類Il7ra座位にヒト化Il7ra遺伝子、又はそれらの組み合わせを更に含む、先行請求項のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項27】
前記齧歯類が、マウス又はラットである、先行請求項のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項28】
単離齧歯類組織又は細胞であって、そのゲノムが、齧歯類Tslp 核酸配列及びヒトTSLP核酸配列を含むヒト化Tslp遺伝子を含み、前記ヒト化Tslp遺伝子が、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一の成熟タンパク質配列を含むヒト化Tslpポリペプチドをコードする、単離齧歯類組織又は細胞。
【請求項29】
前記ヒト化Tslpポリペプチドが、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と少なくとも95%の同一性を有する成熟タンパク質配列を含む、請求項28に記載の単離齧歯類組織又は細胞。
【請求項30】
前記齧歯類細胞が、齧歯類胚性幹細胞である、請求項28又は29に記載の単離齧歯類組織又は細胞。
【請求項31】
前記齧歯類が、マウス又はラットである、請求項28~30のいずれか一項に記載の単離された齧歯類組織又は細胞。
【請求項32】
請求項30に記載の齧歯類胚性幹細胞を含む、齧歯類胚。
【請求項33】
遺伝子改変齧歯類を作製する方法であって、
ヒト化Tslp遺伝子を含むように齧歯類ゲノムを改変することであって、前記ヒト化Tslp遺伝子が、齧歯類Tslp 核酸配列及びヒトTSLP核酸配列を含み、かつヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一の成熟タンパク質配列を含むヒト化Tslpポリペプチドをコードする、改変することと、
前記改変された齧歯類ゲノムを含む齧歯類を作製することと、を含む、方法。
【請求項34】
前記ヒト化Tslpポリペプチドが、前記ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と少なくとも95%の同一性を有する成熟タンパク質配列を含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記改変することが、
前記ヒト核酸配列を含む核酸分子を、齧歯類胚性幹(ES)細胞のゲノム内に導入することと、
前記ヒトTSLP核酸配列が、齧歯類TslpゲノムDNAを置換するために内因性Tslp座位内に組み込まれており、それによって前記ヒト化Tslp遺伝子を形成する、齧歯類ES細胞を取得することと、
前記取得された齧歯類ES細胞から齧歯類動物を生成することと、を含む、請求項33又は34に記載の方法。
【請求項36】
前記核酸分子が、前記ヒトTSLP核酸配列に隣接する5’相同アーム及び3’相同アームを更に含み、前記5’相同アーム及び3’相同アームが、置換される前記齧歯類TslpゲノムDNAに隣接する前記内因性齧歯類座位における核酸配列と相同である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記ヒト化Tslp遺伝子が、前記内因性齧歯類Tslp座位において前記内因性齧歯類Tslpプロモーターに作動可能に連結されている、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記ヒトTSLP核酸配列が、前記ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードする、請求項33~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記齧歯類が、マウス又はラットである、請求項33~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
標的化核酸構築物であって、
齧歯類Tslp座位においてヌクレオチド配列に相同である5’ヌクレオチド配列及び3’ヌクレオチド配列が隣接する、内因性齧歯類Tslp座位で齧歯類Tslp遺伝子内に組み込まれるべきヒトTSLP核酸を含み、
前記齧歯類Tslp遺伝子内への前記ヒトTSLP核酸配列の組み込みが、齧歯類TslpゲノムDNAの前記ヒトTSLP核酸配列による置換をもたらし、それによってヒト化Tslp遺伝子を形成し、
前記ヒトTSLP核酸配列が、ヒトTSLPタンパク質の前記成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードする、標的化核酸構築物。
【請求項41】
前記齧歯類がマウス又はラットである、請求項40に記載の標的核酸。
【請求項42】
遺伝子改変齧歯類動物であって、そのゲノム中に、
齧歯類Tslpr核酸配列と、
ヒトTSLPR核酸配列と、を含む、ヒト化Tslpr遺伝子を含み、
前記ヒト化Tslpr遺伝子が、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一の細胞外ドメインを含むヒト化Tslprポリペプチドをコードする、遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項43】
前記ヒト化Tslprタンパク質が、前記ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと少なくとも95%の同一性を有する細胞外ドメインを含む、請求項42に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項44】
前記ヒト化Tslprタンパク質が、前記ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと同一の細胞外ドメインを含む、請求項42に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項45】
前記ヒト化Tslprタンパク質が、齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一の膜貫通型細胞質配列を含む、請求項42~44のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類。
【請求項46】
前記ヒト化Tslprタンパク質が、齧歯類Tslprタンパク質の前記膜貫通型細胞質配列と少なくとも95%の同一性を有する膜貫通型細胞質配列を含む、請求項45に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項47】
前記ヒト化Tslprタンパク質が、内因性齧歯類Tslprタンパク質の前記膜貫通型細胞質配列を含む、請求項46に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項48】
前記ヒト化Tslprタンパク質が、齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一なシグナルペプチドを含む、請求項42~47のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項49】
前記ヒト化Tslprタンパク質が、前記齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドと少なくとも95%の同一性を有するシグナルペプチドを含む、請求項48に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項50】
前記ヒト化Tslprタンパク質が、前記齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドを含む、請求項49に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項51】
前記ヒトTSLPR核酸配列が、前記ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする、請求項40~50のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項52】
前記ヒトTSLPR核酸配列が、ヒトTSLPR遺伝子のエクソン2からエクソン6における最後の細胞外ドメインアミノ酸のコドンまでを含む、請求項51に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項53】
前記齧歯類Tslpr核酸配列が、齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通細胞質配列の少なくとも実質的な部分をコードする齧歯類Tslpr遺伝子のエクソン配列を含む、請求項40~52のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項54】
前記齧歯類動物がマウスであり、前記齧歯類Tslpr核酸配列が、マウスTslpr遺伝子の前記膜貫通ドメインの第1のアミノ酸のコドンからエクソン8までエクソン6を含む、請求項53に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項55】
前記齧歯類Tslpr核酸配列が、前記齧歯類Tslprシグナルペプチドをコードする齧歯類Tslpr遺伝子のエクソン配列を含む、請求項40~54のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項56】
前記齧歯類動物がマウスであり、前記齧歯類核酸配列が、マウスTslpr遺伝子のエクソン1を含む、請求項55に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項57】
前記齧歯類Tslpr遺伝子が、内因性Tslpr遺伝子である、請求項53~56のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項58】
前記齧歯類動物がマウスであり、前記ヒト化Tslpr遺伝子が、(i)マウスTslpr遺伝子のエクソン1、(ii)ヒトTSLPR遺伝子のエクソン6における細胞外ドメインの最後のアミノ酸のコドンまでエクソン2、及び(iii)マウスTslprの遺伝子の膜貫通ドメインの第1のアミノ酸のコドンからエクソン8までエクソン6を含む、請求項40に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項59】
前記ヒト化Tslpr遺伝子が、齧歯類Tslprプロモーターに作動可能に連結されている、請求項40~58のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項60】
前記齧歯類Tslprプロモーターが、内因性齧歯類Tslprプロモーターである、請求項59に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項61】
前記ヒト化Tslpr遺伝子が、内因性齧歯類Tslpr座位に位置する、請求項40~60のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項62】
前記ヒト化Tslpr遺伝子が、内因性齧歯類Tslpr座位での齧歯類TslprゲノムDNAの、前記ヒトTSLPR核酸による置換の結果として形成される、請求項61に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項63】
前記ヒト化Tslpr遺伝子が、前記内因性齧歯類Tslprタンパク質の前記細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするエクソン配列を含む齧歯類ゲノムDNAの、前記ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする前記ヒトTSLPR核酸による置換の結果として形成される、請求項62に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項64】
前記齧歯類動物がマウスであり、置換される前記マウスゲノムDNAが、前記内因性マウスTslpr遺伝子のエクソン6における細胞外ドメインの最後のアミノ酸のコドンまでエクソン2を含み、前記ヒトゲノムDNAが、ヒトTSLPR遺伝子のエクソン6における前記細胞外ドメインの最後のアミノ酸のコドンまでエクソン2を含む、請求項63に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項65】
前記齧歯類が、前記ヒト化Tslpr遺伝子に対してホモ接合性である、請求項40~64のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項66】
前記齧歯類が、前記ヒト化Tslpr遺伝子に対してヘテロ接合性である、請求項40~62のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項67】
前記齧歯類が、前記ヒト化Tslprポリペプチドを発現する、請求項40~66のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項68】
そのゲノムが、内因性齧歯類Tslp座位にヒト化Tslp遺伝子を、内因性齧歯類Il7ra座位にヒト化Il7ra遺伝子を、又はそれらの組み合わせを、更に含む、請求項40~67のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項69】
前記齧歯類が、マウス又はラットである、請求項40~68のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項70】
単離された齧歯類組織又は細胞であって、そのゲノムが、齧歯類Tslpr核酸配列及びヒトTSLPR核酸配列を含むヒト化Tslpr遺伝子を含み、前記ヒト化Tslpr遺伝子が、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一である細胞外ドメインを含むヒト化Tslprポリペプチドをコードする、単離された齧歯類組織又は細胞。
【請求項71】
前記ヒト化Tslprポリペプチドが、ヒトTSLPRタンパク質の前記細胞外ドメインと少なくとも95%の同一性を有する細胞外ドメインを含む、請求項70に記載の単離齧歯類組織又は細胞。
【請求項72】
前記齧歯類細胞が、齧歯類胚性幹細胞である、請求項70又は71に記載の単離齧歯類組織又は細胞。
【請求項73】
前記齧歯類が、マウス又はラットである、請求項70~72のいずれか一項に記載の単離齧歯類組織又は細胞。
【請求項74】
請求項72に記載の齧歯類胚性幹細胞を含む、齧歯類胚。
【請求項75】
遺伝子改変齧歯類を作製する方法であって、
ヒト化Tslpr遺伝子を含むように齧歯類ゲノムを改変することであって、前記ヒト化Tslpr遺伝子が、齧歯類Tslpr 核酸配列と、ヒトTSLPR核酸配列とを含み、ヒトTSLPタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一である細胞外ドメインを含むヒト化Tslprポリペプチドをコードする、改変することと、
前記改変された齧歯類ゲノムを含む齧歯類を作製することと、を含む、方法。
【請求項76】
前記ヒト化Tslprポリペプチドが、ヒトTSLPタンパク質の前記細胞外ドメインと少なくとも95%の同一性を有する細胞外ドメインを含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記改変することが、
前記ヒトTSLPR核酸配列を含む核酸分子を、齧歯類胚性幹(ES)細胞のゲノム内に導入することと、
前記ヒトTSLPR核酸配列が、齧歯類TslprゲノムDNAを置換するために内因性Tslpr座位内に組み込まれており、それによって前記ヒト化Tslpr遺伝子を形成する、齧歯類ES細胞を取得することと、
前記取得された齧歯類ES細胞から齧歯類動物を生成することと、を含む、請求項75又は76に記載の方法。
【請求項78】
前記核酸分子が、前記ヒトTSLPR核酸配列に隣接する5’相同アーム及び3’相同アームを更に含み、前記5’相同アーム及び3’相同アームが、置換される前記齧歯類TslprゲノムDNAに隣接する前記内因性齧歯類座位における核酸配列と相同である、請求項75に記載の方法。
【請求項79】
前記ヒト化Tslpr遺伝子は、前記内因性齧歯類Tslpr座位において前記内因性齧歯類Tslprプロモーターに作動可能に連結されている、請求項77又は78に記載の方法。
【請求項80】
前記ヒトTSLPR核酸配列が、前記ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする、請求項75~79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
前記齧歯類が、マウス又はラットである、請求項75~80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
標的化核酸構築物であって、
齧歯類Tslpr座位でヌクレオチド配列に相同である5’ヌクレオチド配列及び3’ヌクレオチド配列が隣接する、内因性齧歯類Tslpr座位で齧歯類Tslpr遺伝子内に組み込まれるべきヒトTSLPR核酸を含み、
前記齧歯類Tslpr遺伝子内への前記ヒトTSLPR核酸配列の組み込みが、齧歯類TslprゲノムDNAの前記ヒトTSLPR核酸配列による置換をもたらし、それによってヒト化Tslpr遺伝子を形成し、
前記ヒトTSLPR核酸配列が、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする、標的化核酸構築物。
【請求項83】
前記齧歯類が、マウス又はラットである、請求項82に記載の標的核酸。
【請求項84】
遺伝子修飾齧歯類動物であって、そのゲノム中に、
齧歯類Il7ra核酸配列と、
ヒトIL7RA核酸配列と、を含む、ヒト化Il7ra遺伝子を含み、
前記ヒト化Il7ra遺伝子が、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一の細胞外ドメインを含むヒト化Il7raポリペプチドをコードする、遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項85】
前記ヒト化Il7raポリペプチドが、ヒトIL7RAタンパク質の前記細胞外ドメインと少なくとも95%の同一性を有する細胞外ドメインを含む、請求項84に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項86】
前記ヒト化Il7raポリペプチドが、前記ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと同一の細胞外ドメインを含む、請求項84に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項87】
前記ヒト化Il7raタンパク質が、齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一の膜貫通型細胞質配列を含む、請求項84~86のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項88】
前記ヒト化Il7raタンパク質が、齧歯類Il7raタンパク質の前記膜貫通型細胞質配列と少なくとも95%の同一性を有する膜貫通型細胞質配列を含む、請求項87に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項89】
前記ヒト化Il7raタンパク質が、前記内因性齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列を含む、請求項87に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項90】
前記ヒト化Il7raタンパク質が、前記齧歯類Il7raタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一のシグナルペプチドを含む、請求項84~89のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項91】
前記ヒト化Il7raタンパク質が、齧歯類Il7raタンパク質の前記シグナルペプチドと少なくとも95%の同一性を有するシグナルペプチドを含む、請求項90に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項92】
前記ヒト化Il7raタンパク質が、前記内因性齧歯類Il7raタンパク質のシグナルペプチドを含む、請求項90に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項93】
前記ヒトIL7RA核酸配列が、前記ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする、請求項84~92のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項94】
前記ヒトIL7RA核酸配列が、ヒトIL7RA遺伝子の成熟ヒトIL7RAタンパク質の第1のアミノ酸をコードするエクソン2におけるコドンからエクソン5までを含む、請求項93に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項95】
前記齧歯類Il7ra核酸配列が、前記齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列の少なくとも実質的な部分をコードする齧歯類Il7ra遺伝子のエクソン配列を含む、請求項84~94のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項96】
前記齧歯類動物がマウスであり、前記齧歯類Il7ra核酸配列が、マウスIl7ra遺伝子のエクソン6からエクソン8までを含む、請求項95に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項97】
前記齧歯類Il7ra核酸配列が、齧歯類Il7raタンパク質のシグナルペプチドをコードする齧歯類Il7ra遺伝子のエクソン1の一部を含む、請求項84~96のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項98】
前記齧歯類Il7ra核酸配列が、前記齧歯類Il7ra遺伝子のエクソン1の5’UTR部分を含む、請求項97に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項99】
前記齧歯類Il7ra遺伝子が、内因性Il7ra遺伝子である、請求項95~98のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項100】
前記齧歯類動物がマウスであり、前記ヒト化Il7ra遺伝子が、(i)5’UTR及びマウスIl7raのシグナルペプチドをコードする配列を含むマウスIl7ra遺伝子のエクソン1の一部、(ii)成熟ヒトIL7RAタンパク質の第1のアミノ酸をコードするヒトIL7RA遺伝子のエクソン1のコドンからヒトIL7RA遺伝子のエクソン5まで、及び(iii) マウスIl7ra遺伝子のエクソン6からエクソン8までを含む、請求項84に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項101】
前記ヒト化Il7ra遺伝子が、齧歯類Il7raプロモーターに作動可能に連結される、請求項84~100のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項101】
前記齧歯類Il7raプロモーターが、内因性齧歯類Il7raプロモーターである、請求項101に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項102】
前記ヒト化Il7ra遺伝子が、内因性齧歯類Il7ra座位に位置する、請求項84~101のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項103】
前記ヒト化Il7ra遺伝子が、内因性齧歯類Il7ra座位での齧歯類Il7raゲノムDNAの、前記ヒトIL7RA核酸による置換の結果として形成される、請求項102に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項104】
前記ヒト化Il7ra遺伝子が、前記内因性齧歯類Il7raタンパク質の前記細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするエクソン配列を含む齧歯類ゲノムDNAの、前記ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする前記ヒトIL7RA核酸による置換の結果として形成される、請求項103に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項105】
前記齧歯類動物がマウスであり、置換される前記マウスゲノムDNAが、前記内因性マウスIl7ra遺伝子の、前記成熟マウスIl7raタンパク質の第1のアミノ酸をコードするエクソン1におけるコドンからエクソン5までを含み、前記ヒトゲノムDNAが、ヒトIL7RA遺伝子の、前記成熟ヒトIL7RAタンパク質の第1のアミノ酸をコードするエクソン1におけるコドンからエクソン5までを含む、請求項105に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項106】
前記齧歯類が、前記ヒト化Il7ra遺伝子に対してホモ接合性である、請求項84~105のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項107】
前記齧歯類が、前記ヒト化Il7ra遺伝子に対してヘテロ接合性である、請求項84~105のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項108】
前記齧歯類が、前記ヒト化Il7raポリペプチドを発現する、請求項84~107のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項109】
そのゲノムが、内因性齧歯類Tslp座位にヒト化Tslp遺伝子を、内因性齧歯類Tslpr座位にヒト化Tslpr遺伝子を、又はそれらの組み合わせを、更に含む、請求項84~108のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項110】
前記齧歯類が、マウス又はラットである、請求項84~109のいずれかに記載の遺伝子改変齧歯類動物。
【請求項111】
単離齧歯類組織又は細胞であって、そのゲノムが、齧歯類Il7ra 核酸配列及びヒトIL7RA核酸配列を含むヒト化Il7ra遺伝子を含み、前記ヒト化Il7ra遺伝子が、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一である細胞外ドメインを含むヒト化Il7raポリペプチドをコードする、単離齧歯類組織又は細胞。
【請求項112】
前記ヒト化Il7raポリペプチドが、前記ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと少なくとも95%の同一性を有する細胞外ドメインを含む、請求項111に記載の単離齧歯類組織又は細胞。
【請求項113】
前記齧歯類細胞が、齧歯類胚性幹細胞である、請求項111又は112に記載の単離齧歯類組織又は細胞。
【請求項114】
前記齧歯類が、マウス又はラットである、請求項111~113のいずれか一項に記載の単離齧歯類組織又は細胞。
【請求項115】
請求項113に記載の齧歯類胚性幹細胞を含む、齧歯類胚。
【請求項116】
遺伝子改変齧歯類を作製する方法であって、
ヒト化Il7ra遺伝子を含むように齧歯類ゲノムを改変することであって、前記ヒト化Il7ra遺伝子が、齧歯類Il7ra 核酸配列及びヒトIL7RA核酸配列を含み、かつヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一の細胞外ドメインを含むヒト化Il7raポリペプチドをコードする、改変することと、
前記改変された齧歯類ゲノムを含む齧歯類を作製することと、を含む、方法。
【請求項117】
前記ヒト化Il7raポリペプチドが、前記ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと少なくとも95%の同一性を有する細胞外ドメインを含む、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記改変することが、
前記ヒトIL7RA核酸配列を含む核酸分子を、齧歯類胚性幹(ES)細胞のゲノム内に導入することと、
前記ヒトIL7RA核酸配列が、齧歯類Il7raゲノムDNAを置換するために内因性Il7ra座位内に組み込まれており、それによって前記ヒト化Il7ra遺伝子を形成する、齧歯類ES細胞を取得することと、
前記取得された齧歯類ES細胞から齧歯類動物を生成することと、を含む、請求項116又は117に記載の方法。
【請求項119】
前記核酸分子が、前記ヒトIL7RA核酸配列に隣接する5’相同アーム及び3’相同アームを更に含み、前記5’相同アーム及び3’相同アームが、置換される前記齧歯類Il7raゲノムDNAに隣接する前記内因性齧歯類座位における核酸配列と相同である、請求項118に記載の方法。
【請求項120】
前記ヒト化Il7ra遺伝子が、前記内因性齧歯類Tslpr座位で前記内因性齧歯類Il7raプロモーターに作動可能に連結されている、請求項118又は119に記載の方法。
【請求項121】
前記ヒトIL7RA核酸配列が、前記ヒトIL7RAタンパク質の前記細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする、請求項116~120のいずれか一項に記載の方法。
【請求項122】
前記齧歯類が、マウス又はラットである、請求項116~121のいずれか一項に記載の方法。
【請求項123】
標的化核酸構築物であって、
齧歯類Il7ra座位でヌクレオチド配列に相同である5’ヌクレオチド配列及び3’ヌクレオチド配列が隣接する、内因性齧歯類Il7ra座位で齧歯類Il7ra遺伝子内に組み込まれるべきヒトIL7RA核酸配列を含み、
前記齧歯類Il7ra遺伝子内への前記ヒトIL7RA核酸配列の組み込みが、齧歯類Il7raゲノムDNAの前記ヒトIL7RA核酸配列との置換をもたらし、それによってヒト化Il7ra遺伝子を形成し、
前記ヒトIL7RA核酸配列が、前記ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする、標的化核酸構築物。
【請求項124】
前記齧歯類がマウス又はラットである、請求項123に記載の標的化核酸。
【請求項125】
ヒト化Sirpα遺伝子を更に含み、前記齧歯類が、RAG2-/-及びIL2RG-/-に対してホモ接合性である、請求項1~27、42~69、又は84~110のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類。
【請求項126】
前記齧歯類が、ヒト化Tpo遺伝子、及び/又はヒト化GM-CSF/IL-3座位を更に含む、請求項125に記載の遺伝子改変齧歯類。
【請求項127】
アレルギー性疾患(例えば、喘息又は皮膚炎症)又はがんの齧歯類動物モデルの調製における、請求項1~27、42~69、84~110、又は125~126のいずれか一項に記載の遺伝子改変齧歯類動物の使用。
【請求項128】
アレルギー状態を治療するための候補薬剤を試験する方法であって、
請求項1~27、42~69、84~110、又は125~126のいずれかによって定義される遺伝子改変齧歯類動物においてアレルギー状態を誘導することと、
前記遺伝子改変齧歯類動物に候補薬剤を投与することと、
前記候補薬剤が前記遺伝子改変齧歯類動物において前記アレルギー状態を阻害するかどうかを決定することと、を含む、方法。
【請求項129】
がんを治療するための候補薬剤を試験する方法であって、
請求項1~27、42~69、84~110、又は125~126のいずれかよって定義される遺伝子改変齧歯類動物にヒトがん細胞を移植することと、
前記遺伝子改変齧歯類動物に候補薬剤を投与することと、
前記候補薬剤が、前記遺伝子改変齧歯類動物における前記がん細胞の増殖を阻害するかどうかを決定することと、を含む、方法。
【請求項130】
前記候補薬剤が、小分子化合物、核酸、又は抗体である、請求項128又は129に記載の方法。
【請求項131】
遺伝子改変齧歯類細胞を生成するためのインビトロ方法であって、
請求項40又は41に記載の標的化核酸構築物を齧歯類細胞に導入することを含み、これにより、ヒトTSLP核酸配列が内因性齧歯類Tslp遺伝子内に組み込まれ、その結果、齧歯類TslpゲノムDNAが前記ヒトTSLP核酸配列で置換されてヒト化Tslp遺伝子が形成され、それによって前記遺伝子改変齧歯類細胞を生成する、方法。
【請求項132】
前記齧歯類細胞が、齧歯類ES細胞である、請求項131に記載の方法。
【請求項133】
遺伝子改変齧歯類細胞を生成するためのインビトロ方法であって、
請求項82又は83に記載の標的化核酸構築物を齧歯類細胞に導入することを含み、これにより、ヒトTSLPR核酸配列が内因性齧歯類Tslpr遺伝子内に組み込まれ、その結果、齧歯類TslprゲノムDNAが前記ヒトTSLPR核酸配列で置換されてヒト化Tslpr遺伝子が形成され、それによって前記遺伝子改変齧歯類細胞を生成する、方法。
【請求項134】
前記齧歯類細胞が、齧歯類ES細胞である、請求項133に記載の方法。
【請求項135】
遺伝子改変齧歯類細胞を生成するためのインビトロ方法であって、
請求項123又は124に記載の標的化核酸構築物を齧歯類細胞に導入することを含み、これにより、ヒトIL7RA核酸配列が内因性齧歯類Il7ra遺伝子内に組み込まれ、その結果、齧歯類Il7raゲノムDNAが前記ヒトIL7RA核酸配列で置換されてヒト化Il7ra遺伝子が形成され、それによって前記遺伝子改変齧歯類細胞を生成する、方法。
【請求項136】
前記齧歯類細胞が、齧歯類ES細胞である、請求項135に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月21日出願の米国仮特許出願第63/128,258号の優先権の利益を主張するものであり、当該仮特許出願の内容全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表の参照による組み込み
2021年12月2日に作製され、EFS-Webを介して米国特許商標庁に提出された37301_10589WO01_SequenceListingという名称の192KBのASCIIテキストファイルの形態をとる配列表が、参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
胸腺間質リンパポエチン(TSLP)は、TSLPに特異的な鎖(TSLPR又はTslprと称される)及びIL7受容体α鎖から構成されるヘテロ二量体受容体を介して作用し、アレルギー性疾患及び特定のがんに関係している。効果的なインビボシステムは、アレルギー性疾患及びがんの病因のより良い理解を得るために、及び治療法の開発のために望まれる。
【発明の概要】
【0004】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるのは、そのゲノム中にヒト化Tslp遺伝子を含む遺伝子改変齧歯類動物であって、このヒト化Tslp遺伝子が、齧歯類Tslp核酸配列とヒトTSLP核酸配列を含み、かつこのヒト化Tslp遺伝子が、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一の成熟タンパク質配列を含むヒト化Tslpポリペプチドをコードする、遺伝子改変齧歯類動物である。
【0005】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpポリペプチドは、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と同一の成熟タンパク質配列を含む。
【0006】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一のシグナルペプチドを含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、齧歯類Tslpタンパク質、例えば、内因性齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと同一のシグナルペプチドを含む。
【0007】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中のヒトTSLP核酸配列は、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードする。一部の実施形態では、ヒトTSLP核酸配列は、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列、例えば、ヒトTSLPタンパク質(例えば、配列番号3に記載されるヒトTSLPタンパク質)のアミノ酸29~159をコードする。一部の実施形態では、ヒトTSLP核酸配列は、ヒトTSLP遺伝子の成熟タンパク質配列の第1のアミノ酸をコードするコドンからのエクソン1を、エクソン4における終止コドンまで含む。
【0008】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中の齧歯類Tslp核酸配列は、齧歯類Tslpシグナルペプチドをコードする齧歯類Tslp遺伝子(例えば、内因性齧歯類Tslp遺伝子)のエクソン配列を含む。一部の実施形態では、齧歯類動物はマウスであり、ヒト化Tslp遺伝子中の齧歯類核酸配列は、マウスTslp遺伝子のシグナルペプチドアミノ酸をコードするエクソン1、及びエクソン2の5’部分を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中の齧歯類Tslp核酸配列は、齧歯類Tslp遺伝子(例えば、内因性齧歯類Tslp遺伝子)の3’UTRも含む。
【0009】
一部の実施形態では、齧歯類動物はマウスであり、ヒト化Tslp遺伝子は、(i)マウスTslp遺伝子のシグナルペプチドアミノ酸をコードするエクソン1、及びエクソン2の5’部分、並びに(ii)ヒトTSLP遺伝子の成熟タンパク質配列の第1のアミノ酸をコードするコドンからのエクソン1を、エクソン4における終止コドンまで含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、マウスTslp遺伝子の3’UTRを更に含む。様々な実施形態では、マウスTslp遺伝子は、内因性マウスTslp遺伝子である。
【0010】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、内因性齧歯類Tslpプロモーターなどの齧歯類Tslpプロモーターに作動可能に連結されている。
【0011】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、内因性齧歯類Tslp座位以外の座位に位置する。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、内因性齧歯類Tslp座位に位置する。
【0012】
ヒト化Tslp遺伝子が、内因性齧歯類Tslp座位に位置する一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、内因性齧歯類Tslp座位における齧歯類TslpゲノムDNAのヒトTSLP核酸による置換の結果として形成される。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、内因性齧歯類Tslpタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードするエクソン配列を含む齧歯類ゲノムDNAの、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードするヒトTSLP核酸による置換の結果として形成される。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、内因性齧歯類Tslpタンパク質の成熟タンパク質配列をコードするエクソン配列を含む齧歯類ゲノムDNAの、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列をコードするヒトTSLP核酸による置換の結果として形成される。一部の実施形態では、齧歯類動物はマウスであり、置換されるマウスゲノムDNAは、内因性マウスTslp遺伝子の成熟マウスTslpタンパク質の第1のアミノ酸をコードするコドンからのエクソン2を、エクソン5における終止コドンまで含み、ヒトゲノムDNAは、ヒトTSLP遺伝子の成熟ヒトTSLPタンパク質の第1のアミノ酸をコードするコドンからのエクソン1を、エクソン4における終止コドンまで含む。
【0013】
一部の実施形態では、齧歯類動物は、ヒト化Tslp遺伝子に対してホモ接合性である。一部の実施形態では、齧歯類動物は、ヒト化Tslp遺伝子に対してヘテロ接合性である。
【0014】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpポリペプチドは、齧歯類動物においてヒト化Tslp遺伝子から発現される。
【0015】
一部の実施形態では、齧歯類動物は、そのゲノム中にヒト化Tslpr遺伝子、ヒト化Il7ra遺伝子、又はそれらの組み合わせを更に含む。
【0016】
一部の実施形態では、齧歯類は、マウス又はラットである。
【0017】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるヒト化Tslp遺伝子をゲノムに含む、単離齧歯類細胞又は組織が、本明細書に開示される。一部の実施形態において、齧歯類細胞は、齧歯類胚性幹細胞である。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、卵子又は精子である。一部の実施形態では、単離齧歯類組織又は細胞は、マウス組織若しくは細胞、又はラット組織若しくは細胞である。
【0018】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるヒト化Tslp遺伝子を含む齧歯類胚性幹細胞を含む齧歯類胚が、本明細書に開示される。
【0019】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類を作製する方法が本明細書に開示される。一部の実施形態では、方法は、ヒト化Tslp遺伝子を含むように齧歯類ゲノムを改変することであって、ヒト化Tslp遺伝子が、齧歯類Tslp 核酸配列及びヒトTSLP核酸配列を含み、かつヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一の成熟タンパク質配列を含むヒト化Tslpポリペプチドをコードする、改変することと、この改変齧歯類ゲノムを含む齧歯類を作製することと、を含む。
【0020】
一部の実施形態では、齧歯類ゲノムを改変することが、ヒトTSLP核酸配列を含む核酸分子を齧歯類胚性幹(ES)細胞のゲノム内に導入するステップと、ヒトTSLP核酸配列が内因性齧歯類Tslp座位に組み込まれて、齧歯類TslpゲノムDNAを置換し、それによってヒト化Tslp遺伝子が形成される、齧歯類ES細胞を取得するステップと、得られた齧歯類ES細胞から齧歯類動物を生成するステップとを、を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLP核酸配列は、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードする。一部の実施形態では、ES細胞に導入される核酸分子は、ヒトTSLP核酸配列に隣接する5’相同アーム及び3’相同アームを更に含み、5’及び3’相同アームは、置換される齧歯類TslpゲノムDNAに隣接する内因性齧歯類座位で核酸配列と相同である。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、齧歯類Tslpプロモーター、例えば内因性齧歯類Tslp座位での内因性齧歯類Tslpプロモーターに作動可能に連結されている。
【0021】
一部の方法の実施形態では、齧歯類は、マウス又はラットである。
【0022】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslp座位で齧歯類Tslp遺伝子に組み込まれる、その齧歯類Tslp座位でヌクレオチド配列と相同である5’ヌクレオチド配列及び3’ヌクレオチド配列が隣接する、ヒトTSLP核酸配列を含む、標的化核酸構築物が本明細書に開示され、この齧歯類Tslp遺伝子へのヒトTSLP核酸配列の組み込みの結果、齧歯類TslpゲノムDNAの、ヒトTSLP核酸配列による置換が生じ、それによってヒト化Tslp遺伝子を形成し、このヒトTSLP核酸配列が、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードする。一部の標的化核酸の実施形態では、齧歯類は、ラット又はマウスである。
【0023】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類細胞を生成するためのインビトロ方法が、本明細書に開示され、ヒトTSLPヌクレオチド配列の内因性齧歯類Tslp座位への組み込みを媒介する齧歯類相同アームが隣接する、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードするヒトTSLP核酸配列を含む標的化ベクターを、齧歯類細胞に導入することを含み、その結果、齧歯類TslpゲノムDNAの、ヒトTSLP核酸配列による置換が生じ、本明細書に記載されるヒト化Tslp遺伝子が形成され、それによって遺伝子改変齧歯類細胞を生成する。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、齧歯類ES細胞であり、本方法は、遺伝子改変齧歯類ES細胞を生成する。
【0024】
一部の実施形態では、本明細書に開示されるのは、そのゲノム中にヒト化Tslpr遺伝子を含む遺伝子改変齧歯類動物であって、このヒト化Tslpr遺伝子が、齧歯類Tslpr核酸配列とヒトTSLPR核酸配列を含み、かつこのヒト化Tslpr遺伝子が、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一の細胞外ドメインを含むヒト化Tslprポリペプチドをコードする、遺伝子改変齧歯類動物である。
【0025】
一部の実施形態では、ヒト化Tslprタンパク質は、齧歯類Tslprタンパク質(例えば、内在性齧歯類Tslprタンパク質)の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一の膜貫通型細胞質配列を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslprタンパク質は、齧歯類Tslprタンパク質(例えば、内在性齧歯類Tslprタンパク質)の膜貫通型細胞質配列と同一の膜貫通型細胞質配列を含む。
【0026】
一部の実施形態では、ヒト化Tslprタンパク質は、齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一のシグナルペプチドを含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslprタンパク質は、齧歯類Tslprタンパク質(例えば、内因性齧歯類Tslprタンパク質)のシグナルペプチドと同一のシグナルペプチドを含む。
【0027】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子中のヒトTSLPR核酸配列は、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子中のヒトTSLPR核酸配列は、ヒトTSLPR(例えば、配列番号23に記載されるヒトTSLPRタンパク質)のアミノ酸29~231をコードする。一部の実施形態では、ヒトTSLPR核酸配列は、ヒトTSLPR遺伝子のエクソン2を、エクソン6における最後の細胞外ドメインアミノ酸をコードするコドンまで含む。
【0028】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子中の齧歯類Tslpr核酸配列は、齧歯類Tslprタンパク質(例えば、内因性齧歯類Tslprタンパク質)の膜貫通型細胞質配列の少なくとも実質的な部分をコードする齧歯類Tslpr遺伝子のエクソン配列を含む。一部の実施形態では、齧歯類動物はマウスであり、齧歯類Tslpr核酸配列は、マウスTslpr遺伝子(例えば、内因性マウスTslpr遺伝子)の膜貫通ドメインの第1のアミノ酸をコードするコドンからのエクソン6をエクソン8まで含む。
【0029】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子中の齧歯類Tslpr核酸配列は、齧歯類Tslprタンパク質(例えば、内因性齧歯類Tslprタンパク質)のシグナルペプチドをコードする齧歯類Tslpr遺伝子のエクソン配列を含む。一部の実施形態では、齧歯類動物はマウスであり、齧歯類核酸配列は、マウスTslpr遺伝子(例えば、内因性マウスTslpr遺伝子)のエクソン1を含む。
【0030】
一部の実施形態では、齧歯類動物はマウスであり、ヒト化Tslpr遺伝子は、(i)マウスTslpr遺伝子(例えば、内因性マウスTslpr遺伝子)のエクソン1、(ii)ヒトTSLPR遺伝子のエクソン2を、エクソン6における細胞外ドメインの最後のアミノ酸をコードするコドンまで、及び(iii)マウスTslpr遺伝子の膜貫通ドメインの第1のアミノ酸をコードするコドンからのエクソン6をエクソン8まで含む。
【0031】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、内因性齧歯類Tslprプロモーターなどの齧歯類Tslprプロモーターに作動可能に連結されている。
【0032】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、内因性齧歯類Tslpr座位以外の座位に位置する。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、内因性齧歯類Tslpr座位に位置する。
【0033】
ヒト化Tslpr遺伝子が内因性齧歯類Tslpr座位に位置する一部の実施形態では、このヒト化Tslpr遺伝子は、内因性齧歯類Tslpr座位で齧歯類TslprゲノムDNAのヒトTSLPR核酸による置換の結果として形成される。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、内因性齧歯類Tslprタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするエクソン配列を含む齧歯類ゲノムDNAの、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするヒトTSLPR核酸による置換の結果として形成される。一部の実施形態では、齧歯類動物はマウスであり、置換されるマウスゲノムDNAは、内因性マウスTslpr遺伝子のエクソン2を、エクソン6における細胞外ドメインの最後のアミノ酸をコードするコドンまで含み、ヒトゲノムDNAは、ヒトTSLPR遺伝子のエクソン2を、エクソン6における細胞外ドメインの最後のアミノ酸をコードするコドンまで含む。
【0034】
一部の実施形態では、齧歯類動物は、ヒト化Tslpr遺伝子に対してヘテロ接合性である。一部の実施形態では、齧歯類動物は、ヒト化Tslpr遺伝子に対してヘテロ接合性である。
【0035】
一部の実施形態では、ヒト化Tslprポリペプチドは、齧歯類動物においてヒト化Tslpr遺伝子から発現される。
【0036】
一部の実施形態では、齧歯類動物は、そのゲノム中にヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Il7ra遺伝子、又はそれらの組み合わせを更に含む。
【0037】
一部の実施形態では、齧歯類は、マウス又はラットである。
【0038】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるヒト化Tslpr遺伝子をゲノムに含む、単離齧歯類細胞又は組織が、本明細書に開示される。一部の実施形態において、齧歯類細胞は、齧歯類胚性幹細胞である。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、卵子又は精子である。一部の実施形態では、単離齧歯類組織又は細胞は、マウス組織若しくは細胞、又はラット組織若しくは細胞である。
【0039】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるヒト化Tslpr遺伝子を含む齧歯類胚性幹細胞を含む齧歯類胚が、本明細書に開示される。
【0040】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類を作製する方法が本明細書に開示される。一部の実施形態では、方法は、ヒト化Tslpr遺伝子を含むように齧歯類ゲノムを改変することであって、ヒト化Tslpr遺伝子が、齧歯類Tslpr 核酸配列及びヒトTSLPR核酸配列を含み、かつヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一の細胞外ドメインを含むヒト化Tslprポリペプチドをコードする、改変することと、この改変齧歯類ゲノムを含む齧歯類を作製することと、を含む。
【0041】
一部の実施形態では、齧歯類ゲノムを改変することが、ヒトTSLPR核酸配列を含む核酸分子を齧歯類胚性幹(ES)細胞のゲノム内に導入するステップと、ヒトTSLPR核酸配列が内因性齧歯類Tslpr座位に組み込まれて、齧歯類TslprゲノムDNAを置換し、それによってヒト化Tslpr遺伝子が形成される、齧歯類ES細胞を取得するステップと、得られた齧歯類ES細胞から齧歯類動物を生成するステップとを、を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPR核酸配列は、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする。一部の実施形態では、ES細胞に導入される核酸分子は、ヒトTSLPR核酸配列に隣接する5’相同アームと3’相同アームを更に含み、5’相同アームと3’相同アームは、置換される齧歯類TslprゲノムDNAに隣接する内因性齧歯類座位の核酸配列と相同である。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、齧歯類Tslprプロモーター、例えば内因性齧歯類Tslp座位での内因性齧歯類Tslprプロモーターに作動可能に連結されている。
【0042】
一部の方法の実施形態では、齧歯類は、マウス又はラットである。
【0043】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslpr座位で齧歯類Tslpr遺伝子に組み込まれる、その齧歯類Tslpr座位でヌクレオチド配列と相同である5’ヌクレオチド配列及び3’ヌクレオチド配列が隣接する、ヒトTSLPR核酸配列を含む、標的化核酸構築物が本明細書に開示され、この齧歯類Tslpr遺伝子へのヒトTSLPR核酸配列の組み込みの結果、齧歯類TslprゲノムDNAの、ヒトTSLPR核酸配列による置換が生じ、それによってヒト化Tslpr遺伝子を形成し、このヒトTSLPR核酸配列が、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする。一部の標的化核酸の実施形態では、齧歯類は、ラット又はマウスである。
【0044】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類細胞を生成するためのインビトロ方法が、本明細書に開示され、ヒトTSLPRヌクレオチド配列の内因性齧歯類Tslpr座位への組み込みを媒介する齧歯類相同アームが隣接する、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするヒトTSLPR核酸配列を含む標的化ベクターを、齧歯類細胞に導入することを含み、その結果、齧歯類TslprゲノムDNAの、ヒトTSLPR核酸配列による置換が生じ、本明細書に記載されるヒト化Tslpr遺伝子が形成され、それによって遺伝子改変齧歯類細胞を生成する。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、齧歯類ES細胞であり、本方法は、遺伝子改変齧歯類ES細胞を生成する。
【0045】
一部の実施形態では、そのゲノム中にヒト化Il7ra遺伝子を含む遺伝子改変齧歯類動物が本明細書に開示され、ヒト化Il7ra遺伝子が、齧歯類Il7ra核酸配列及びヒトIL7RA核酸配列を含み、ヒト化Il7ra遺伝子が、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一の細胞外ドメインを含むヒト化Il7raポリペプチドをコードする。
【0046】
一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、齧歯類Il7raタンパク質(例えば、内在性齧歯類Il7raタンパク質)の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一の膜貫通型細胞質配列を含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、齧歯類Il7raタンパク質(例えば、内在性齧歯類Il7raタンパク質)の膜貫通型細胞質配列と同一の膜貫通型細胞質配列を含む。
【0047】
一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、齧歯類Il7raタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一のシグナルペプチドを含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、齧歯類Il7raタンパク質(例えば、内因性齧歯類Il7raタンパク質)のシグナルペプチドと同一のシグナルペプチドを含む。
【0048】
一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子中のヒトIL7RA核酸配列は、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子中のヒトIL7RA核酸配列は、ヒトIL7RAタンパク質のアミノ酸21~236をコードする(例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質)。一部の実施形態では、ヒトIL7RA核酸配列は、ヒトIL7RA遺伝子の成熟タンパク質の第1のアミノ酸をコードするエクソン1におけるコドンからエクソン5まで含む。
【0049】
一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子中の齧歯類Il7ra核酸配列は、齧歯類Il7raタンパク質(例えば、内因性齧歯類Il7raタンパク質)の膜貫通型細胞質配列の少なくとも実質的な部分をコードする、齧歯類Il7ra遺伝子の配列を含む。一部の実施形態では、齧歯類動物はマウスであり、齧歯類Il7ra核酸配列は、マウスIl7ra遺伝子(例えば、内因性マウスIl7ra遺伝子)のエクソン6をエクソン8まで含む。
【0050】
一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子中の齧歯類Il7ra核酸配列は、齧歯類Il7raタンパク質(例えば、内因性齧歯類Il7raタンパク質)のシグナルペプチドをコードする齧歯類Il7ra遺伝子のエクソン1の一部を含む。一部の実施形態では、齧歯類動物はマウスであり、齧歯類核酸配列は、5’UTRの両方を含み、マウスIl7raのシグナルペプチドをコードするマウスIl7ra遺伝子(例えば、内因性マウスIl7ra遺伝子)のエクソン1の一部を含む。
【0051】
一部の実施形態では、齧歯類動物はマウスであり、ヒト化Il7ra遺伝子は、(i)マウスIl7raタンパク質のシグナルペプチドをコードする、マウスIl7ra遺伝子(例えば、内因性マウスIl7ra遺伝子)のエクソン1の一部、(ii)ヒトIL7RA遺伝子の成熟タンパク質の第1のアミノ酸をコードするコドンからエクソン5までエクソン1を、及び(iii)マウスIl7ra遺伝子のエクソン6をエクソン8まで含む。
【0052】
一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、内因性齧歯類Il7raプロモーターなどの齧歯類Il7raプロモーターに作動可能に連結されている。
【0053】
一部の実施形態では、ヒト化l7ra遺伝子は、内因性齧歯類l7ra座位以外の座位に位置する。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、内因性齧歯類Il7ra座位に位置する。
【0054】
ヒト化Il7ra遺伝子が内因性齧歯類Il7ra座位に位置する一部の実施形態では、このヒト化Il7ra遺伝子は、内因性齧歯類Il7ra座位で齧歯類Il7raゲノムDNAのヒトIL7RA核酸による置換の結果として形成される。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、内因性齧歯類Il7raタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするエクソン配列を含む齧歯類ゲノムDNAの、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするヒトIL7RA核酸による置換の結果として形成される。一部の実施形態では、齧歯類動物はマウスであり、置換されるマウスゲノムDNAは、内因性マウスIl7ra遺伝子の成熟タンパク質配列の第1のアミノ酸をコードするエクソン1におけるコドンから、エクソン5まで含み、ヒトゲノムDNAは、ヒトIL7RA遺伝子の成熟タンパク質配列の第1のアミノ酸をコードするエクソン1におけるコドンから、エクソン5までを含む。
【0055】
一部の実施形態では、齧歯類動物は、ヒト化Il7ra遺伝子に対してヘテロ接合性である。一部の実施形態では、齧歯類動物は、ヒト化Il7ra遺伝子に対してホモ接合性である。
【0056】
一部の実施形態では、ヒト化Il7raポリペプチドは、ヒト化Il7ra遺伝子由来の齧歯類動物で発現される。
【0057】
一部の実施形態では、齧歯類動物は、そのゲノム中にヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、又はそれらの組み合わせを更に含む。
【0058】
一部の実施形態では、齧歯類は、マウス又はラットである。
【0059】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるヒト化Il7ra遺伝子をそのゲノムに含む、単離齧歯類細胞又は組織が、本明細書に開示される。一部の実施形態において、当該齧歯類細胞は、齧歯類胚性幹細胞である。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、卵子又は精子である。一部の実施形態では、単離齧歯類組織又は細胞は、マウス組織若しくは細胞、又はラット組織若しくは細胞である。
【0060】
一部の実施形態では、本明細書に記載されるヒト化Il7ra遺伝子を含む齧歯類胚性幹細胞を含む齧歯類胚が、本明細書に開示される。
【0061】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類を作製する方法が本明細書に開示される。一部の実施形態では、方法は、ヒト化Il7ra遺伝子を含むように齧歯類ゲノムを改変することであって、ヒト化Il7ra遺伝子が、齧歯類Il7ra 核酸配列及びヒトIL7RA核酸配列を含み、かつヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一の細胞外ドメインを含むヒト化Il7raポリペプチドをコードする、改変することと、この改変齧歯類ゲノムを含む齧歯類を作製することと、を含む。
【0062】
一部の実施形態では、齧歯類ゲノムを改変することが、ヒトIL7RA核酸配列を含む核酸分子を齧歯類胚性幹(ES)細胞のゲノム内に導入するステップと、ヒトIL7RA核酸配列が内因性齧歯類Il7ra座位に組み込まれて、齧歯類Il7raゲノムDNAを置換し、それによってヒト化Il7ra遺伝子を形成している齧歯類ES細胞を取得するステップと、得られた齧歯類ES細胞を使用して齧歯類動物を生成するステップと、を含む。一部の実施形態では、ヒトIL7RA核酸配列は、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする。一部の実施形態では、ES細胞に導入される核酸分子は、ヒトIL7RA核酸配列に隣接する5’相同アーム及び3’相同アームを更に含み、5’及び3’相同アームは、置換される齧歯類Il7raゲノムDNAに隣接する内因性齧歯類座位で核酸配列と相同である。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、齧歯類Il7raプロモーター、例えば内因性齧歯類Il7ra座位での内因性齧歯類Il7raプロモーターに作動可能に連結されている。
【0063】
一部の方法の実施形態では、齧歯類は、マウス又はラットである。
【0064】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Il7ra座位で齧歯類Il7ra遺伝子に組み込まれ、その齧歯類Il7ra座位でヌクレオチド配列と相同である5’ヌクレオチド配列及び3’ヌクレオチド配列が隣接するヒトIL7RA核酸配列を含む、標的化核酸構築物が、本明細書に開示され、この齧歯類Il7ra遺伝子へのヒトIL7RA核酸配列の組み込みが齧歯類Il7raゲノムDNAの、ヒトIL7RA核酸配列による置換をもたらし、それによってヒト化Il7ra遺伝子を形成し、このヒトIL7RA核酸配列が、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする。一部の標的化核酸の実施形態では、齧歯類は、ラット又はマウスである。
【0065】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類細胞を生成するためのインビトロでの方法が、本明細書に開示され、ヒトIL7RAヌクレオチド配列の内因性齧歯類Il7ra座位への組み込みを媒介する齧歯類相同アームが隣接する、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするヒトIL7RA核酸配列を含む標的化ベクターを、齧歯類細胞に導入することを含み、その結果、齧歯類Il7raゲノムDNAの、ヒトIL7RA核酸配列による置換が生じ、本明細書に記載されるヒト化Il7ra遺伝子が形成され、それによって遺伝子改変齧歯類細胞を生成する。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、齧歯類ES細胞であり、本方法は、遺伝子改変齧歯類ES細胞を生成する。
【0066】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、ヒト化Sirpα遺伝子、内因性RAG2遺伝子の破壊、内因性IL-2RG遺伝子の破壊、ヒト化Tpo遺伝子、及びヒト化GM-CSF/IL-3座位などのゲノム内に1つ以上の追加の遺伝子改変を含む。齧歯類は、そのような追加の遺伝子改変のいずれかについてヘテロ接合性又はホモ接合性であり得る。
【0067】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tslp遺伝子及びヒト化Sirpα遺伝子を含み、RAG2遺伝子とIL-2RG遺伝子の両方に対してホモ接合ヌルである。一部のこうした実施形態では、齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tpo遺伝子及び/又はヒト化GM-CSF/IL-3座位を更に含む。齧歯類は、ヒト化遺伝子に対してヘテロ接合性又はホモ接合性であり得る。
【0068】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、及びヒト化Sirpα遺伝子を含み、RAG2遺伝子とIL-2RG遺伝子の両方に対してホモ接合ヌルである。一部のこうした実施形態では、齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tpo遺伝子及び/又はヒト化GM-CSF/IL-3座位を更に含む。齧歯類は、ヒト化遺伝子に対してホモ接合性又はヘテロ接合性であり得る。
【0069】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、ヒト化Il7ra遺伝子、及びヒト化Sirpα遺伝子を含み、RAG2遺伝子とIL-2RG遺伝子の両方に対してホモ接合ヌルである。一部のこうした実施形態では、齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tpo遺伝子及び/又はヒト化GM-CSF/IL-3座位を更に含む。齧歯類は、ヒト化遺伝子に対してホモ接合性又はヘテロ接合性であり得る。
【0070】
一部の実施形態では、本明細書に開示される、ヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、ヒト化Il7ra遺伝子、又はそれらの組み合わせを含み、任意選択的に1つ以上の追加の遺伝子改変を有する、遺伝子改変齧歯類動物は、アレルギー性疾患(例えば、気道又は皮膚炎症)又はがんの齧歯類動物モデルの調製に使用される。
【0071】
一部の実施形態では、アレルギー状態を治療するための候補薬剤を試験する方法が本明細書に開示され、本方法は、本明細書に開示される遺伝子改変齧歯類動物においてアレルギー状態を誘導することと、齧歯類動物に候補薬剤を投与することと、候補薬剤が齧歯類動物におけるアレルギー状態を阻害するかどうかを決定することと、を含む。
【0072】
一部の実施形態では、がんを治療するための候補薬剤を試験する方法が本明細書に開示され、本方法は、本明細書に開示される遺伝子改変齧歯類動物にヒトがん細胞を移植することと、齧歯類動物に候補薬剤を投与することと、候補薬剤が齧歯類動物におけるがん細胞の増殖を阻害するかどうかを決定することと、を含む。一部の実施形態では、がんは、例えば、乳がん、肺がん、及び膵がんを含む、Th2駆動性がん(Th2 driven cancer)である。
(図面の簡単な説明)
【0073】
本特許又は本出願のファイルには、カラーで制作された図面が少なくとも一点含まれている。カラー図面を含む本特許のコピーは、請求及び必要料金の支払いに応じて特許商標庁から提供される。
【0074】
本明細書において援用され、かつ本明細書の一部を成す添付の図面は、いくつかの実施形態を例証し、説明とともに、本開示の組成物及び方法を例証する。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1-1】マウスTslp座位のヒト化のための戦略の例示的実施形態を図示する。マウスTslp遺伝子及びヒトTSLP遺伝子は、水平線で表され、そのエクソンは、線の上方に配置されたボックスで表される。内因性マウスTslp座位におけるアミノ酸20をコードするエクソン2におけるコドンから始まり、エクソン5における終止コドンまでの3486bpの連続するマウスTslpゲノム断片は、ヒトTSLPエクソン1におけるアミノ酸29をコードするコドンから始まり、エクソン4における終止コドンまでの4100bpのヒトTSLPゲノム断片によって置換されている。置換の結果、マウスTslpシグナルペプチド及びヒト成熟TSLPポリペプチドを含むマウス-ヒトハイブリッド(「ヒト化」)Tslpタンパク質が得られる。図1D及び1Fも参照されたい。
図1-2】マウスTSLP座位のヒト化のための戦略である、マウスTslp座位を含む核酸並びにヒト化マウスTslp座位を含む標的化核酸構築物の例示的実施形態を図示し(正確な縮尺ではない)、そこではマウスTslp座位での3.49kBのマウスゲノム断片が、1.9 kbのヒトゲノム断片1(ヒトTLSPの、アミノ酸29をコードするエクソン1におけるコドンからエクソン3の3’末端の後の257bpまで)、4.4kbのFloxed HUb-Puroカセット(ヒトTLSPイントロン3に挿入される)、及び2.2kbのヒトゲノム断片2(ヒトTLSPの、エクソン3の末端後258bpからエクソン4における終止コドンまで)を含むヒト化断片によって置換されている。標的化構築物中のヒト化断片は、114.3kbのマウス5’相同アーム及び65.3kbのマウス3’相同アームに隣接している。ヒト化マウスTslp座位を含む標的化核酸構築物は、マウスゲノム内のマウスTslp遺伝子への標的化挿入のためにマウス胚性幹細胞に導入することができる。正しい標的化を確認するために、ヒト対立遺伝子の獲得アッセイ及びマウス対立遺伝子喪失アッセイで使用されるプライマー及びプローブの位置も示されている。プライマー及びプローブの配列を表6に記載する。
図1-3】マウスTSLP対立遺伝子のヒト化のための戦略の例示的実施形態である、図1Bで上述したマウスTslpゲノム断片の、ヒト断片1、Floxed HUb-Puroカセット、及びヒトゲノム断片2を含むヒト化断片による置換の結果として生じる、MAID#7466として指定されるヒト化Tslp対立遺伝子を図示する(正確な縮尺ではない)。Floxed HUb-Puroカセットが除去された後、ヒト化Tslp対立遺伝子はMAID#7467として指定される。
図1-4】マウスTslp(配列番号1)、ヒトTSLPアイソフォーム1(配列番号3)(太字斜体)、及びヒト化(ハイブリッド)Tslp(配列番号5)(ヒト部分を太字斜体で表記)のタンパク質配列の例示的実施形態を示す。各タンパク質配列ではシグナルペプチドに下線を付している。
図1-5】マウスTslp(配列番号2)、ヒトTSLPアイソフォーム1(配列番号4)(太字斜体)、及びヒト化(ハイブリッド)Tslp(配列番号6)(ヒト部分を太字斜体で表記)のmRNA配列の例示的実施形態を示す。各mRNAにでは、シグナルペプチドをコードする部分に下線を付している。
図1-6】マウスTslp(「mTslp」、配列番号1)、ヒトTSLPアイソフォーム1(「hTSLP」、配列番号3)、及びヒト化(ハイブリッド)Tslp(配列番号5)タンパク質配列の例示的実施形態のアラインメントを示す。タンパク質のシグナルペプチドは枠で囲まれている。ヒト化(ハイブリッド)Tslpタンパク質の形成におけるマウス配列とヒト配列との間の接合部は、分子の5’(N末端)及び3’(C末端)の矢印によって示される。三角形は、Floxed HUb-Puroカセットが挿入されるヒトイントロン3(2429bp)の位置を表す。
図1-7】例示的実施形態において、n実施例1に記載されるTslpヒト化に対してヘテロ接合性のマウスが、マウス血清中で成熟ヒトTSLPタンパク質を発現したこと(中央)を、陰性対照としてTslpヒト化を行わないマウス(左)及び陽性対照として正常なヒト血清(右)とともに示す。各点は、1匹のマウスを表す。
図2-1】マウスTslpr座位のヒト化のための戦略の例示的実施形態を図示する。マウスTslpr遺伝子及びヒトTSLPR遺伝子は、水平線で表され、それらのエクソンは、線の上方に配置されたボックスで表される。エクソン2の前の328bpでイントロン1から始まり、エクソン6の47番目のbpで終わる内因性マウスTslpr座位における2362bpの連続マウスTslprゲノム断片は、エクソン2の前の909bpでイントロン1から始まり、エクソン6の47番目のbpで終わる13743bpのヒトTSLPRゲノム断片によって置換されている。この置換の結果、マウスTslprのアミノ酸27~243の欠失が生じるが、マウスTslprシグナルペプチド(アミノ酸1~19)、マウスTslpr成熟タンパク質の最初の7個のアミノ酸、及びマウスTslpr膜貫通ドメイン(アミノ酸244~264)及び細胞内ドメインは保存され、ヒトTSLPR細胞外ドメインの実質的な部分を挿入する(アミノ酸27から始まり、 アミノ酸232~252のヒト膜貫通ドメインの直前の、アミノ酸231で終わる)。図2Dも参照されたい。
図2-2】マウスTslpr座位のヒト化のための戦略である、マウスTslpr座位を含む核酸並びにヒト化マウスTslpr座位を含む標的化核酸構築物の例示的実施形態を図示し(正確な縮尺ではない)、そこではマウスTslpr座位での2.36kBのマウスゲノム断片が、4.8kbのFloxed HUb-Neoカセット(ヒトTLSPイントロン3に挿入される)、及び13.7kbのヒトゲノム断片(ヒトTLSPRの、イントロン1の3’部分、エクソン2からエクソン6の47番目のbpまで)を含むヒト化断片によって置換されている。標的化構築物中のヒト化断片は、29.1kbのマウス5’相同アーム(マウスTslprのエクソン2の前最大328bp)及び133.2kbのマウス3’相同アーム(マウスTslprのエクソン6における48番目のbpからエクソン8まで、続いてマウス3’ゲノム配列)に隣接している。ヒト化マウスTslpr座位を含む標的化核酸構築物は、マウスゲノム内への標的化挿入のためにマウス胚性幹細胞に導入することができる。正しい標的化を確認するために、ヒト対立遺伝子の獲得アッセイ及びマウス対立遺伝子喪失アッセイで使用されるプライマー及びプローブの位置も示されている。プライマー及びプローブの配列を表9に記載する。
図2-3】マウスTSLP対立遺伝子のヒト化のための戦略の例示的実施形態である、図2Bで上述したマウスTslprゲノム断片の、4.8kbのFloxed HUb-Neoカセット及び13743bpのヒトTSLPRゲノム断片を含むヒト化断片による置換の結果として生じる、MAID#7558として指定されるヒト化Tslpr対立遺伝子を図示する(正確な縮尺ではない)。Floxed HUb-Neoカセットが除去された後、ヒト化Tslpr対立遺伝子はMAID#7559として指定される。
図2-4】マウスTslpr(配列番号21)、ヒトTSLPR(配列番号23)(太字斜体)、及びヒト化(ハイブリッド)Tslpr(配列番号25)(ヒト部分を太字斜体で表記)のタンパク質配列の例示的実施形態を示す。各タンパク質配列では、シグナルペプチド(「SP」)及び膜貫通セグメント(「TM」)に下線を付している。
図2-5】マウスTslpr(配列番号22)、ヒトTSLPR(配列番号24)(太字斜体)、及びヒト化(ハイブリッド)Tslpr(配列番号26)(ヒト部分を太字斜体で表記)のmRNA配列の例示的実施形態を示す。各mRNAにおいて、シグナルペプチド及び膜貫通セグメントをコードする部分にそれぞれ下線を付している。
図2-6】同上。
図2-7】マウスTslpr(「mTslpr」、配列番号21)、ヒトTSLPR(「hTSLPR」、配列番号23)、及びヒト化(ハイブリッド)Tslpr(配列番号25)タンパク質配列の例示的実施形態のアラインメントを示す。タンパク質のシグナルペプチドは破線で囲まれている。膜貫通ドメインは、実線で囲まれている。ヒト化(ハイブリッド)Tslprの形成におけるマウス配列とヒト配列との間の接合部は、分子の5’(イントロン1内)及び3’(エクソン6内)で三角形によって示される。
図3-1】マウスIl7ra座位のヒト化のための戦略の例示的実施形態を図示する。マウスIl7ra遺伝子及びヒトIL7RA遺伝子は、水平線で表され、それらのエクソンは、線の上方に配置されたボックスで表される。内因性マウスIl7ra座位における、エクソン1のコード配列における69番目のbpから始まりイントロン5の5’部分までの、19235bpの連続マウスIl7raゲノム断片は、エクソン1のコード配列における69番目のbpからイントロン5の5’部分までを含む17232bpのヒトIL7RAゲノム断片によって置換される。置換により、マウスIL7raシグナルペプチド、実質的にヒトの細胞外ドメイン(最後の2つのアミノ酸、Gly-Trpを除く)、及びマウスIl7raの膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインを含むマウス-ヒトハイブリッド(「ヒト化」)Tslpタンパク質が生成される。図3Dも参照されたい。
図3-2】は、マウスIL7ra座位のヒト化のための戦略である、マウスIL7ra座位を含む核酸並びにヒト化マウスIL7ra座位を含む標的化核酸構築物の例示的実施形態を図示し(正確な縮尺ではない)、そこではマウスIL7ra座位での19.2kBのマウスゲノム断片が、126bpのヒトゲノム断片1(ヒトIL7RAの、エクソン1の最後の14bp及びイントロン1の最初の112bpを含む)、5.2kbのFloxed HUb-Hygカセット(ヒトIL7RAイントロン1に挿入される)、及び17106bpのヒトゲノム断片2(ヒトIL7RAの、イントロン1の3’部分、エクソン2からエクソン5、及びイントロン5の5’部分を含む)を含むヒト化断片によって置換されている。標的化構築物中のヒト化断片は、48.8kbのマウス5’相同アーム及び124.3kbのマウス3’相同アームに隣接している。ヒト化マウスIl7ra座位を含む標的化核酸構築物は、マウスゲノム内への標的化挿入のためにマウス胚性幹細胞に導入することができる。正しい標的化を確認するために、ヒト対立遺伝子の獲得アッセイ及びマウス対立遺伝子喪失アッセイで使用されるプライマー及びプローブの位置も示されている。プライマー及びプローブの配列を表12に記載する。
図3-3】マウスIL7ra対立遺伝子のヒト化のための戦略の例示的実施形態である、図3Bで上述したマウスIl7raゲノム断片の、ヒトゲノム断片1(126bp)、Floxed HUb-Hygカセット、及びヒトゲノム断片2(17106bp)を含むヒト化断片による置換の結果として生じる、MAID#7266として指定されるヒト化Il7ra対立遺伝子を図示する(正確な縮尺ではない)。Floxed HUb-hygカセットが除去された後、ヒト化Il7ra対立遺伝子はMAID#7267として指定される。
図3-4】マウスIl7ra(配列番号41)、ヒトIL7RA(配列番号43)(太字斜体)、及びヒト化(ハイブリッド)Il7ra(配列番号45)(ヒト部分は太字斜体で表記)のタンパク質配列を示す。各タンパク質配列では、シグナルペプチド及び膜貫通ドメインに下線を付している。
図3-5】マウスIl7ra(配列番号42)、ヒトIL7RA(配列番号44)(太字斜体)、及びヒト化(ハイブリッド)Il7ra(配列番号46)(ヒト部分は太字斜体で表記)のコード配列(CDS)の例示的実施形態を示す。ヒト化に使用されるヒトIL7RA配列の部分に下線を付している。ヒト起源を有するハイブリッドIl7ra配列の部分にも下線を付している。
図3-6】同上。
図3-7】は、マウスIl7ra(配列番号41、上)及びヒトIL7RA(配列番号43、下)タンパク質配列の例示的実施形態のアラインメントを示す。タンパク質のシグナルペプチド及び膜貫通セグメント(枠内)が示されている。図3A~3Eに記載されるヒト化(ハイブリッド)Il7raを形成する際のマウス配列とヒト配列との間の接合部は、N末端の垂直線(「5’接合部」)及び細胞外ドメインのC末端付近の線(「3’接合部」)によって示される。ヒト化に関与する細胞外ドメインのアミノ酸が強調表示される(5’接合部の直後のアミノ酸から始まり、3’接合部で終わる)。三角形は、コード配列内のエクソンの接合部を表す。
図4-1】0日目及び14日目に、生理食塩水及びミョウバン(ミョウバンのみ)又はオボアルブミン及びミョウバン(Ova-ミョウバン)のいずれかでマウスを腹腔内で感作させ、続いて21日目~24日目にOvaで4回の連続的な鼻腔内チャレンジを行った。25日目に、更なる分析のために肺組織及び血清を収集した。4A.フローサイトメトリーによる肺細胞浸潤の評価。肺組織好酸球の細胞頻度を、全生細胞の頻度としてプロットする。4B.リアルタイムqPCRにより測定され、β2m(β2-ミクログロブリン)対照mRNA発現と比較して発現されたMuc5acmRNA発現レベルの評価。血清Ova特異的IgE(4C)及びOva特異的IgG1(4D)のELISA分析。各点は、1匹のマウスを表す。記号は、生理食塩水対照と比較して統計的有意性を表す(*)。4Eは、実験スキームを図示する:0日目及び14日目に、生理食塩水及びミョウバン(ミョウバンのみ)又はオボアルブミン及びミョウバン(Ova-ミョウバン)のいずれかでマウスを腹腔内で感作させ、続いて21日目~24日目にOvaで4回の連続的な鼻腔内チャレンジを行った。25日目に、4A~4Dに示されるパラメータの更なる分析のために肺組織及び血清を収集した。
図4-2】同上。
図4-3】同上。
図4-4】同上。
図4-5】同上。
【発明を実施するための形態】
【0076】
本明細書において、ヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、ヒト化Il7ra遺伝子、又はそれらの組み合わせを含むように遺伝子改変された齧歯類(マウス及びラットなどであるが、これらに限定されない)が開示される。本明細書に開示される齧歯類は、例えば、限定されないが、Th2駆動性(Th2-driven)アレルギー性疾患のモデルとして、又は炎症性Th2駆動性がんのモデルとして使用することができる。このような遺伝子改変齧歯類を作製するための組成物及び方法、並びにアレルギー又はがんの治療のための候補治療薬剤を試験するためにそのような遺伝子改変齧歯類を使用する方法が提供され、更に以下に記載される。
【0077】
Tslpヒト化齧歯類
胸腺間質リンパ球新生(TSLP)は、4ヘリックス束サイトカインファミリーのメンバーであり、インターロイキン-7(IL-7)の遠位パラログである。TSLPは、マウス胸腺間質細胞株の培養上清において最初に発見され、T細胞及びB細胞の増殖因子として作用することが実証されている。例えば、Tsilingiri et al.,Cell Mol.Gastroenterology & Hepatology 2017;3:174-182を参照、これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。TSLP発現細胞には、上皮細胞、ケラチノサイト、線維芽細胞、間質細胞、樹状細胞、マスト細胞、及び好塩基球が含まれる。上記、Tsilingiri et al.(2017)を参照されたい。ヒトには2つのTSLPアイソフォームが存在する:定常状態で低い/検出不能レベルで発現され、複数の組織において炎症中に上方制御され、複数のTh2関連疾患(例えば、限定されるものではないが、アトピー性皮膚炎、喘息、アレルギー反応、及び特定の種類のがん)におけるTh2応答の悪化を特徴とする長いTSLPアイソフォーム(アイソフォーム1)及び、別個のプロモーターから構成的に発現され、腸及び胸腺において特定の免疫恒常性機能を媒介する、短いTSLPアイソフォーム(アイソフォーム2)。上記、Tsilingiri et al.(2017)を参照されたい。特に示されない限り、ヒトTSLP遺伝子のエクソン番号付けは、長いアイソフォーム(ヒトTSLPタンパク質アイソフォーム1)をコードするエクソンに基づく。
【0078】
ヒトTSLPアイソフォーム1、マウスTslp、ラットTslp、及びヒト化Tslpの核酸配列及びタンパク質配列を含む例示的配列が、配列表に開示され、表1に要約されている。マウス及びラットTslp遺伝子は、ヒトTSLP遺伝子のように4つのエクソンの代わりに、小さなコードエクソン1及び合計5つのエクソンを有する。ヒトTSLPアイソフォーム1、マウスTslp、及びヒト化(ハイブリッド)Tslpタンパク質配列のアラインメントを図1Fに提供する。
【表1】
【0079】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、生殖細胞系にヒト化Tslp遺伝子を含む。
【0080】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、齧歯類Tslp遺伝子のヌクレオチド配列及びヒトTSLP 遺伝子のヌクレオチド配列をそのゲノム中に含むヒト化Tslp遺伝子を含む。本明細書において使用される場合、「遺伝子のヌクレオチド配列」は、遺伝子の全部又は一部のゲノム配列、mRNA配列又はcDNA配列を含む。例えば、ヒトTSLP 遺伝子のヌクレオチド配列は、ヒトTSLP 遺伝子の全部又は一部のゲノム配列、mRNA配列、又はcDNA配列であってもよく、齧歯類Tslp遺伝子のヌクレオチド配列は、齧歯類Tslp遺伝子(例えば、内因性齧歯類Tslp遺伝子)の全部又は一部のゲノム配列、mRNA配列、又はcDNA配列であってもよい。げっ歯類Tslp 遺伝子のヌクレオチド配列とヒトTSLP遺伝子のヌクレオチド配列は、げっ歯類ゲノム中のヒト化Tslp遺伝子が、Tslpタンパク質の機能、例えば、Tslp受容体(Tslpr)への結合を果たす、ヒト化Tslpタンパク質をコードするように、互いに作動可能に連結されている。
【0081】
本明細書において使用される場合、「ヒトTSLP」遺伝子及びタンパク質は、ヒト起源のTSLP遺伝子及びタンパク質を指す。
【0082】
一部の実施形態では、ヒトTSLPタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPタンパク質は、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0083】
本明細書で使用される場合、「齧歯類Tslp」遺伝子及びタンパク質は、齧歯類(例えば、マウス又はラット)起源のTslp遺伝子及びタンパク質を指す。
【0084】
一部の実施形態では、マウスTslpタンパク質は、
配列番号1のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、マウスTslpタンパク質は、
配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の
実施形態では、マウスTslpタンパク質は、
配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、マウスTslpタンパク質は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0085】
一部の実施形態では、ラットTslpタンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ラットTslpタンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ラットTslpタンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ラットTslpタンパク質は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0086】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、そのゲノム中にヒト化Tslp遺伝子を含み、ヒト化Tslp遺伝子は、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列(配列番号3に記載されるようなヒトTSLPタンパク質など)と実質的に同一である成熟タンパク質配列を含むヒト化Tslpタンパク質をコードする。
【0087】
「成熟タンパク質」は、N末端シグナルペプチドが切断された後のタンパク質の部分を指す。
【0088】
ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列は、(i)ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質と少なくとも95%同一であるポリペプチド配列、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質と少なくとも98%同一であるポリペプチド配列、又はヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質と少なくとも99%同一であるポリペプチド配列であり得る。ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列は、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と同一のポリペプチド配列であってもよい。ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列は、代替的に又は追加的に、(ii)ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列とは5アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド配列、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列とは4アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド配列、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列とは3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド配列、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列とは2アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド配列、又はヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列とは1アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド配列であり得る。ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列は、代替的に又は追加的に、(iii)例えば、成熟タンパク質のN末端部分又はC末端部分にアミノ酸(5アミノ酸を超えない)の付加、欠失又は置換を有することによって、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列とは、ドメインのN末端部分又はC末端部分でのみ異なるポリペプチドであってもよく、「成熟タンパク質のN末端部分又はC末端部分」とは、成熟タンパク質のN末端又はC末端からの5~10アミノ酸内を意味する。ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列は、代替的に又は追加的に、(iv)上記(i)~(iii)に記載される特徴のうちの1つ以上を有するポリペプチドであり得、例えば、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質と少なくとも95%同一でありかつヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列とは、ドメインのN末端部分又はC末端部分でのみ5アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、又はヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質と少なくとも98%同一でありかつヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列とは、ドメインのN末端部分又はC末端部分でのみ3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、であり得る。
【0089】
一部の実施形態では、ヒトTSLPタンパク質は、配列番号3に記載されるヒトTSLPタンパク質アイソフォーム1であり、アミノ酸29~159は成熟タンパク質配列を構成する。したがって、一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、配列番号3のアミノ酸29~159に記載されるアミノ酸配列と実質的に同一である成熟タンパク質配列を含むヒト化Tslpタンパク質をコードする、ヒト化Tslp遺伝子をそのゲノム中に含む。。一部の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、配列番号3のアミノ酸29~159を含む成熟タンパク質配列を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、配列番号3のアミノ酸30~159を含む成熟タンパク質配列を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、配列番号3のアミノ酸31~159を含む成熟タンパク質配列を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、配列番号3のアミノ酸32~159を含む成熟タンパク質配列を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、配列番号3のアミノ酸29~158を含む成熟タンパク質配列を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、配列番号3のアミノ酸29~157を含む成熟タンパク質配列を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、配列番号3のアミノ酸29~156を含む成熟タンパク質配列を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、配列番号3のアミノ酸29~159に示される成熟タンパク質配列を含む。
【0090】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、ヒトTSLPタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドを含むヒト化Tslpタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒトTSLPタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドは、ヒトTSLPタンパク質のシグナルペプチドと配列において少なくとも95%同一であるシグナルペプチドである。ヒトTSLPタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドは、ヒトTSLPタンパク質のシグナルペプチドと同一のシグナルペプチドであってもよい。追加的又は代替的に、ヒトTSLPタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドは、ヒトTSLPタンパク質のシグナルペプチドとは、3アミノ酸を超えずに異なる、2アミノ酸を超えずに異なる、又は1アミノ酸を超えずに異なる、シグナルペプチドであってもよい。特定の実施形態では、ヒトTSLPタンパク質のシグナルペプチドは、配列番号3のアミノ酸1~28に記載されるアミノ酸配列を含む。
【0091】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、内因性齧歯類Tslpタンパク質などの、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドを含むヒト化Tslpタンパク質をコードする。一部の実施形態では、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドは、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと配列において少なくとも95%同一であるシグナルペプチドであり、一部の実施形態では、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドは、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと配列において同一であるシグナルペプチドである。一部の実施形態では、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドは、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドとは3アミノ酸を超えずに異なるシグナルペプチドであり、一部の実施形態では、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドは、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドとは2アミノ酸を超えずに異なるシグナルペプチドであり、一部の実施形態では、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドは、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドとは1アミノ酸を超えずに異なるシグナルペプチドである。特定の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、マウスTslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチド、例えば、配列番号1のアミノ酸1~19に記載されるシグナルペプチドを含む。特定の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、ラットTslpタンパク質、例えば、配列番号7に記載されるラットTslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドを含む。
【0092】
上述のように、遺伝子改変齧歯類のゲノム中のヒト化Tslp遺伝子は、ヒトTSLP遺伝子のヌクレオチド配列(「ヒトTSLPヌクレオチド配列」)及び齧歯類Tslp遺伝子のヌクレオチド配列(「内因性齧歯類Tslpヌクレオチド配列」内因性齧歯類Tslpヌクレオチド配列)を含む。
【0093】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中のヒトTSLPヌクレオチド配列は、ヒトTSLPタンパク質(例えば、ヒトTSLPタンパク質アイソフォーム1)の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードする。成熟Tslpタンパク質配列の「実質的な部分」は、成熟タンパク質配列のほぼ全長であるポリペプチドを指す。一部の実施形態では、成熟タンパク質配列の実質的な部分は、全長成熟タンパク質配列の少なくとも95%であるポリペプチドを指し、一部の実施形態では、成熟タンパク質配列の実質的な部分は、全長成熟タンパク質配列の少なくとも98%であるポリペプチドを指し、一部の実施形態では、成熟タンパク質配列の実質的な部分は、全長成熟タンパク質配列の少なくとも99%であるポリペプチドを指す。一部の実施形態では、成熟タンパク質配列の実質的な部分は、成熟タンパク質配列のN末端又はC末端での5アミノ酸を超えない欠如によって成熟タンパク質配列とは異なるポリペプチドを指し、一部の実施形態では、成熟タンパク質配列の実質的な部分は、成熟タンパク質配列のN末端又はC末端での4アミノ酸を超えない欠如によって成熟タンパク質配列とは異なるポリペプチドを指し、一部の実施形態では、成熟タンパク質配列の実質的な部分は、成熟タンパク質配列のN末端又はC末端での3アミノ酸を超えない欠如によって成熟タンパク質配列とは異なるポリペプチドを指し、成熟タンパク質配列の実質的な部分は、成熟タンパク質配列のN末端又はC末端での2アミノ酸を超えない欠如によって成熟タンパク質配列とは異なるポリペプチドを指し、成熟タンパク質配列の実質的な部分とは、成熟タンパク質配列のN末端又はC末端での1アミノ酸を超えない欠如によって成熟タンパク質配列とは異なるポリペプチドを指す。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中のヒトTSLPヌクレオチド配列は、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列(例えば、配列番号3に記載されるヒトTSLPタンパク質アイソフォーム1などのヒトTSLPタンパク質アイソフォーム1)をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中のヒトTSLP核酸配列は、配列番号3のアミノ酸29~159をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中のヒトTSLP核酸配列は、配列番号3のアミノ酸30~159をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中のヒトTSLP核酸配列は、配列番号3のアミノ酸31~159をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中のヒトTSLP核酸配列は、配列番号3のアミノ酸32~159をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中のヒトTSLP核酸配列は、配列番号3のアミノ酸29~158をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中のヒトTSLP核酸配列は、配列番号3のアミノ酸29~157をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中のヒトTSLP核酸配列は、配列番号3のアミノ酸29~156をコードする。
【0094】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中のヒトTSLP核酸配列は、cDNA配列である。一部の実施形態では、ヒトTSLPヌクレオチド配列は、ヒトTSLP遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトTSLPヌクレオチド配列は、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードするエクソン配列を含むゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトTSLPヌクレオチド配列は、ヒトTSLPタンパク質(例えば、配列番号3に記載されるヒトTSLPタンパク質アイソフォーム1などのヒトTSLPタンパク質アイソフォーム1)の成熟タンパク質配列をコードするエクソン配列を含むゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトTSLPヌクレオチド配列は、ヒトTSLP遺伝子のゲノム断片であり、その断片は、成熟タンパク質アミノ酸をコードしているエクソン1、エクソン2、エクソン3の部分、及びエクソン4のコード部分(すなわち、エクソン4における終止コドンまで)を含む。
【0095】
一部の実施形態では、ヒトTSLPヌクレオチド配列は、ヒトTSLP遺伝子のゲノム断片であり、その断片は、ヒトTSLP遺伝子の3’UTR(ヒトTSLPエクソン4の3’部分)も含む。
【0096】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子中の齧歯類Tslpヌクレオチド配列は、齧歯類Tslpタンパク質(例えば、内因性齧歯類Tslpタンパク質)のシグナルペプチドと実質的に同一のポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一のポリペプチドは、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと配列において少なくとも95%同一であるポリペプチドを含む。一部の実施形態では、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一のポリペプチドは、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドとは3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチドを含む。一部の実施形態では、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一なポリペプチドは、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドとは2アミノ酸を超えずに異なるポリペプチドを含む。一部の実施形態では、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一なポリペプチドは、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドとは1アミノ酸を超えずに異なるポリペプチドを含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子における齧歯類Tslpヌクレオチド配列は、齧歯類Tslpタンパク質(例えば、内因性齧歯類Tslpタンパク質、例えば、マウス又はラットTslpタンパク質)のシグナルペプチドをコードする。一部の実施形態では、齧歯類Tslpヌクレオチド配列は、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドをコードする齧歯類Tslp遺伝子のエクソン配列を含む。一部の実施形態では、齧歯類Tslpヌクレオチド配列はマウスTslpヌクレオチド配列であり、一部の実施形態では、マウスTslpヌクレオチド配列は、マウスTslp遺伝子(例えば、内因性マウスTslp遺伝子)のエクソン1と、エクソン2のシグナルペプチドアミノ酸コード部分とを含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子における齧歯類Tslpヌクレオチド配列は、齧歯類Tslp遺伝子(例えば、マウス又はラットTslp遺伝子、例えば内因性マウス又はラットTslp遺伝子)の5’UTRを含む。
【0097】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、例えば、ヒト化Tslp遺伝子の発現が齧歯類Tslp 5’制御配列の制御下におかれるように、内因性齧歯類Tslp座位での内因性齧歯類5’転写制御配列などの、齧歯類Tslp遺伝子のプロモーター及び/又はエンハンサーのような5’転写制御配列など、齧歯類Tslp制御配列に作動可能に連結されている。
【0098】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、内因性齧歯類Tslp座位にある。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、例えば、ランダムな組み込みの結果として、内因性齧歯類Tslp座位以外の座位にある。ヒト化Tslp遺伝子が内因性齧歯類Tslp座位以外の座位にある一部の実施形態では、齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Tslp遺伝子の不活性化(例えば、全部又は一部の欠失)の結果として、齧歯類Tslpタンパク質を発現することができない。
【0099】
ヒト化Tslp遺伝子が内因性齧歯類Tslp座位にある一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、内因性齧歯類Tslp座位で内因性齧歯類Tslp遺伝子がヒトTSLP遺伝子のヌクレオチド配列により置換された結果、生じ得る。
【0100】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslp座位で齧歯類Tslp遺伝子のゲノム断片を置換するヒトTSLP遺伝子のヌクレオチド配列は、cDNA配列である。一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslp座位で齧歯類Tslp遺伝子のゲノム断片を置換するヒトTSLPヌクレオチド配列は、ヒトTSLP遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトTSLPヌクレオチド配列は、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的部分をコードする。一部の実施形態では、ヒトTSLPヌクレオチド配列は、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードする、ヒトTSLP遺伝子のエクソンの全部又は一部を含む、ヒトTSLP遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトゲノム断片は、ヒトTSLP遺伝子のエクソン1、エクソン2、エクソン3の成熟タンパク質アミノ酸のコード部分、及びエクソン4のコード部分を含む。一部の実施形態では、ヒトゲノム断片は、ヒトTSLP遺伝子のエクソン4の3’UTR部分を更に含むことができる。
【0101】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslp座位に組み込まれたヒトヌクレオチド配列は、齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一のポリペプチドをコードする齧歯類Tslpヌクレオチド配列に作動可能に連結される。一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslp座位に組み込まれたヒトヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Tslpタンパク質のシグナルペプチドを実質的コードする内因性齧歯類Tslpゲノム配列に作動可能に連結される。一部の実施形態では、ヒトヌクレオチド配列は、内因性マウスTslp座位に組み込まれ、マウスTslpタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一のポリペプチドをコードするマウスTslpヌクレオチド配列に作動可能に連結され、一部のそのような実施形態では、マウスTslpヌクレオチド配列は、マウスTslp遺伝子(例えば、内因性マウスTslp遺伝子)のエクソン1と、エクソン2のシグナルペプチドアミノ酸コード部分とを含む。
【0102】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslp座位での内因性齧歯類Tslpタンパク質の成熟タンパク質配列をコードするエクソン配列を含むゲノム断片(例えば、成熟マウスTslpタンパク質の第1のアミノ酸をコードするエクソン2におけるコドンから始まり、終止コドンまでのマウスゲノム断片)は、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列をコードするエクソン配列を含むヒトTSLP遺伝子のヒトゲノム断片(例えば、成熟ヒトTSLPタンパク質の第1のアミノ酸をコードするエクソン1におけるコドンから始まり、エクソン4における終止コドンまでのゲノム断片)によって置換されている。結果として、ヒト化Tslp遺伝子は、内因性齧歯類Tslp座位で形成される。一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、内因性マウスTslp座位で形成され、マウスTslpエクソン1、マウスTslpエクソン2のシグナルペプチドアミノ酸コード部分、成熟ヒトTSLPタンパク質の第1のアミノ酸をコードするヒトTSLPエクソン1のコドンからヒトTSLPエクソン4における終止コドンまで、及びマウスTslpエクソン5のマウス3’UTRを含む。このようなヒト化Tslp遺伝子は、マウスTslpシグナルペプチド及び成熟ヒトTSLPポリペプチドを含むヒト化Tslpタンパク質をコードする。
【0103】
一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒト化Tslp遺伝子に対しヘテロ接合性である。一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒト化Tslp遺伝子に対しホモ接合性である。
【0104】
一部の実施形態では、ヒト化Tslp遺伝子は、齧歯類において、例えば齧歯類の血清において、コードされたヒト化Tslpタンパク質の発現をもたらす。一部の実施形態では、ヒト化Tslpタンパク質は、対応する齧歯類Tslpタンパク質が対照齧歯類(例えば、ヒト化Tslp遺伝子を有しない齧歯類)で発現される細胞及び組織で、例えば、皮膚、腸、肺及び眼組織の上皮細胞及びケラチノサイト、並びに樹状細胞、マスト細胞及び好塩基球で、発現される。例えば、上記、Tsilingiri et al.(2017)を参照されたい。
【0105】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Tslp遺伝子の不活性化(例えば、全部又は一部の欠失)又は置換(全部又は一部)の結果として、齧歯類Tslpタンパク質を発現することができない。
【0106】
TSLPRヒト化
TSLPは、TSLPに特異的な鎖(“TSLPR”又は“Tslpr”と称される)及びIL7受容体α鎖から構成されるヘテロ二量体を介して作用する。TSLPRは、シグナルペプチド、細胞外ドメイン(extracellular domain)(「ECD」又は「細胞外ドメイン(ectodomain)」)、膜貫通ドメイン、及び細胞内(細胞質)ドメインを含有する。
【0107】
ヒトTSLPRアイソフォーム1、マウスTslprアイソフォーム1、ラットTslprアイソフォーム1、及びヒト化(マウス-ヒトハイブリッド)Tslprの核酸配列及びタンパク質配列を含む例示的な配列が、配列表に開示され、表2に要約されている。ヒトTSLPRアイソフォーム1、マウスTslprアイソフォーム1、及びヒト化(マウス-ヒトハイブリッド)Tslprタンパク質配列のアラインメントを図2Fに提供する。特に示されない限り、ヒト及びマウス遺伝子のエクソンの番号付けは、ヒト及びマウスのタンパク質アイソフォーム1をコードするエクソンに基づく。
【表2-1】
【表2-2】
【0108】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、生殖細胞系にヒト化Tslpr遺伝子を含む。
【0109】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、齧歯類Tslpr遺伝子(例えば、内因性齧歯類Tslpr遺伝子)のヌクレオチド配列及びヒトTSLPR遺伝子のヌクレオチド配列をそのゲノム中に含む、ヒト化Tslpr遺伝子を含む。本明細書において使用される場合、「遺伝子のヌクレオチド配列」は、遺伝子の全部又は一部のゲノム配列、mRNA配列又はcDNA配列を含む。非限定的な例として、ヒトTSLPR遺伝子のヌクレオチド配列には、ヒトTSLPR遺伝子の全部又は一部のゲノム配列、mRNA配列又はcDNA配列が含まれる。齧歯類Tslpr遺伝子のヌクレオチド配列とヒトTSLPR遺伝子のヌクレオチド配列は、齧歯類ゲノム中のヒト化Tslpr遺伝子が、Tslprタンパク質構造(細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを含む)を有するヒト化Tslprタンパク質をコードし、Tslpr機能(例えば、Tslpタンパク質を結合し、IL-7受容体とヘテロ二量体を形成する)を実行するように、互いに作動可能に連結されている。
【0110】
本明細書において使用される場合、「ヒトTSLPR」遺伝子及びタンパク質は、ヒト起源のTSLPR遺伝子及びタンパク質を指す。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質は、配列番号23のアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0111】
本明細書で使用される場合、「齧歯類Tslpr」遺伝子及びタンパク質は、齧歯類(例えば、マウス又はラット)起源のTslpr遺伝子及びタンパク質を指す。一部の実施形態では、マウスTslprタンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、マウスTslprタンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、マウスTslprタンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、マウスTslprタンパク質は、配列番号21のアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ラットTslprタンパク質は、配列番号27のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ラットTslprタンパク質は、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ラットTslprタンパク質は、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ラットTslprタンパク質は、配列番号27のアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0112】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、そのゲノム中にヒト化Tslpr遺伝子を含有し、このヒト化Tslpr遺伝子は、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一の細胞外ドメインを含有するヒト化Tslprタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一である細胞外ドメインは、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと同じ機能性(例えば、リガンド結合特性)を呈示する。「ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一」である細胞外ドメイン又はポリペプチドは、(i)ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと配列において少なくとも95%同一であるポリペプチド、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと配列において少なくとも98%同一であるポリペプチド、又はヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと配列において少なくとも99%同一であるポリペプチドであり得る。「ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一」である細胞外ドメイン又はポリペプチドは、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと配列において100%同一であるポリペプチドであり得る。代替的に又は追加的に、「ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一」である細胞外ドメイン又はポリペプチドは、(ii)ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは10アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは7アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは5アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは4アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは2を超えずに異なるポリペプチド、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは1アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、であり得る。代替的に又は追加的に、「ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一」である細胞外ドメイン又はポリペプチドは、(iii)例えば、細胞外ドメインのN末端及び/又はC末端部分(すなわち、細胞外ドメインのN又はC末端から5~10アミノ酸以内)にアミノ酸の付加、欠失、及び/又は置換を有することによって、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは、細胞外ドメインのN末端又はC末端部分でのみ異なるポリペプチドであってもよい。代替的に又は追加的に、「ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一」である細胞外ドメイン又はポリペプチドは、(iv)上記(i)~(iii)に詳述される特徴のうちの1つ以上を有するポリペプチドであり得、例えば、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと配列において少なくとも95%同一でありかつヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは、細胞外ドメインのN末端部分又はC末端部分でのみ10アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと配列において少なくとも95%同一でありかつヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは、細胞外ドメインのN末端部分又はC末端部分でのみ5アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、又はヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと配列において少なくとも98%同一でありかつヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは、細胞外ドメインのN末端部分又はC末端部分でのみ3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、であり得る。特定の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質は、配列番号23に記載されるアミノ酸配列を含み、その細胞外ドメインは、配列番号23のアミノ酸23~231で構成されている。。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、その細胞外ドメインが配列番号23に記載されるヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一である、すなわち、配列番号23のアミノ酸23~231と実質的に同一であるヒト化Tslprタンパク質をコードする。例えば、ヒト化Tslpr遺伝子は、配列番号23のアミノ酸23~231、24~231、25~231、26~231、27~231、28~231、23~230、23~229、23~228、23~227、又は23~226を含む細胞外ドメインを有するヒト化Tslprタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、配列番号23のアミノ酸23~231を含む細胞外ドメインを有するヒト化Tslprタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、配列番号23のアミノ酸25~231を含む細胞外ドメインを有するヒト化Tslprタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、配列番号23のアミノ酸27~231を含む細胞外ドメインを有するヒト化Tslprタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、配列番号23のアミノ酸23~228を含む細胞外ドメインを有するヒト化Tslprタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、配列番号23のアミノ酸23~226を含む細胞外ドメインを有するヒト化Tslprタンパク質をコードする。
【0113】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、齧歯類Tslpr(例えば、内因性齧歯類Tslpr)の細胞外ドメインのN末端からのアミノ酸を含む細胞外ドメインと、それに続くヒトTSLPR又はその実質的な部分の細胞外ドメインとを有するヒト化Tslprタンパク質をコードする。ヒトTSLPR(又は齧歯類Tslpr)タンパク質の「細胞外ドメインの実質的な部分」は、タンパク質のほぼ完全な細胞外ドメインであるポリペプチドを指す。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、ヒトTSLPRタンパク質の全長細胞外ドメインの少なくとも95%であるポリペプチドを指す。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、ヒトTSLPRタンパク質の全長細胞外ドメインの少なくとも98%であるポリペプチドを指す。配列一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、細胞外ドメインのN末端又はC末端での10アミノ酸を超えない欠如によって、全長の細胞外ドメインとは異なるポリペプチドを指す。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、細胞外ドメインのN末端又はC末端での5アミノ酸を超えない欠如によって全長の細胞外ドメインとは異なるポリペプチドを指す。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、細胞外ドメインのN末端又はC末端での4アミノ酸を超えない欠如によって全長の細胞外ドメインとは異なるポリペプチドを指す。例えば、配列番号23に記載されるヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインは、アミノ酸23~231によって定義され、細胞外ドメインの実質的な部分の例には、配列番号23のアミノ酸25~231、26~231、27~231、23~228、23~227、又は23~226が含まれ得る。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸25~231を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸27~231を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸23~228を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸23~226を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslprタンパク質の細胞外ドメインは、齧歯類Tslpr(例えば、内因性齧歯類Tslpr)の細胞外ドメインのN末端からの6~8アミノ酸と、それに続くヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslprタンパク質の細胞外ドメインは、齧歯類Tslpr(例えば、内因性齧歯類Tslpr)の細胞外ドメインのN末端からの7アミノ酸と、それに続く配列番号23のアミノ酸27~231を含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、配列番号25のアミノ酸20~231に記載される細胞外ドメインを含有するヒト化Tslprタンパク質をコードし、-この細胞外ドメインは、マウスTslpr細胞外ドメインのN末端からの7アミノ酸とそれに続く配列番号23のアミノ酸27~231(ヒトTslpr)を含み、細胞外ドメインのN末端における配列番号23のヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは異なるが(配列番号23のヒトTSLPRにおける「QGGA」(配列番号68)とは対照的に、配列番号25のヒト化TSLPRにおける「AAAVTSR」(配列番号67))、残りのame205アミノ酸はヒトTSLP細胞外ドメインと同一である。
【0114】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、齧歯類Tslprタンパク質、例えば内因性齧歯類Tslprタンパク質の、膜貫通型細胞質配列と実質的に同一である膜貫通型細胞質配列(すなわち、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインの両方を含む配列)を含有するヒト化Tslprタンパク質をコードする。一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一である膜貫通型細胞質配列は、内因性齧歯類Tslprタンパク質などの齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と同じ機能性(例えば、シグナル伝達及び/又は細胞内分子との相互作用)を呈示する。「齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一である」膜貫通型細胞質配列又はポリペプチドは、(i)齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と配列において少なくとも95%同一であるポリペプチド、又は齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と配列において少なくとも98%同一であるポリペプチドであり得る。「齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一である」膜貫通型細胞質配列又はポリペプチドは、齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と同一であるポリペプチドであり得る。代替的に又は追加的に、「齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一」である膜貫通型細胞質配列又はポリペプチドは、(ii)齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは5アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは4アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは2アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、又は齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは1アミノ酸を超えずに異なるポリペプチドであり得る。代替的に又は追加的に、「齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一」である膜貫通型細胞質配列又はポリペプチドは、(iii)一部の実施形態では、例えば、膜貫通型細胞質配列のN末端又はC末端部分にアミノ酸の付加、欠失又は置換を有することによって、齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは、N末端又はC末端でのみ異なるポリペプチドであり得る。代替的に又は追加的に、「齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一」である膜貫通型細胞質配列又はポリペプチドは、(iv)上記(i)~(iii)に詳述される特徴の1つ以上を有するポリペプチドであり得、例えば、齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と配列において少なくとも95%同一でありかつ齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは、N末端又はC末端でのみ5アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、又は齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と配列において少なくとも95%同一でありかつ齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは、N末端又はC末端でのみ3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、であり得る。「膜貫通型細胞質配列のN又はC末端部分」とは、膜貫通ドメインのN末端から5~10アミノ酸内、又は細胞質ドメインのC末端から5~10アミノ酸内を意味する。一部の実施形態では、ヒト化Tslprタンパク質は、マウスTslprタンパク質(内因性マウスTslprタンパク質など)の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一である膜貫通型細胞質配列を含有する。一部の実施形態では、ヒト化Tslprタンパク質は、ラットTslprタンパク質(内因性ラットTslprタンパク質など)の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一である膜貫通型細胞質配列を含有する。
【0115】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、齧歯類Tslprタンパク質(例えば内因性齧歯類Tslprタンパク質)のシグナルペプチドと実質的に同一であるシグナルペプチドを含むヒト化Tslprタンパク質をコードする。「齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一である」シグナルペプチドは、(i)齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドと配列において少なくとも95%同一であるポリペプチド、又は齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドと配列において同一であるポリペプチドであり得る。代替的に又は追加的に、「齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一」であるシグナルペプチドは、(ii)内因性齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドとは3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、内因性齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドとは2アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、又は内因性齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドとは1アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、であり得る。代替的に又は追加的に、「齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一」であるシグナルペプチドは、例えば、シグナルペプチドのN末端又はC末端部分にアミノ酸の付加、欠失又は置換を有することによって、内因性齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドとは、N末端又はC末端でのみ異なるポリペプチドであってもよい。代替的に又は追加的に、「齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一」であるシグナルペプチドは、(iv)上記(i)~(iii)に詳述される特徴のうちの1つ以上を有するポリペプチドであり得、例えば、齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドと少なくとも95%同一であり、齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドとはN末端又はC末端で3アミノ酸を超えずに異なるのみのポリペプチドであり得る。「シグナルペプチドのN又はC末端部分」とは、シグナルペプチドのN又はC末端から5アミノ酸以内を意味する。一部の実施形態では、ヒト化Tslprタンパク質は、マウスTslprタンパク質(内因性マウスTslprタンパク質など)のシグナルペプチドと実質的に同一なシグナルペプチドを含む。一部の実施形態では、ヒト化Tslprタンパク質は、ラットTslprタンパク質(内因性ラットTslprタンパク質など)のシグナルペプチドと実質的に同一なシグナルペプチドを含む。
【0116】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類のゲノム中のヒト化Tslpr遺伝子には、ヒトTSLPR遺伝子のヌクレオチド配列(「ヒトTSLPRヌクレオチド配列」)、及び齧歯類Tslpr遺伝子のヌクレオチド配列(「齧歯類Tslprヌクレオチド配列」、例えば内因性齧歯類Tslprヌクレオチド配列)を含み、ヒトTSLPRヌクレオチド配列は、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする。上述のように、ヒトTSLPRの細胞外ドメインの実質的な部分の例には、配列番号23のアミノ酸25~231、26~231、27~231、23~228、23~227、又は23~226が含まれ得る。一部の実施形態では、細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸27~231を含む。一部の実施形態では、細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸25~231を含む。一部の実施形態では、細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸23~228を含む。一部の実施形態では、細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸23~226を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPRヌクレオチド配列は、cDNA配列である。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子中のヒトTSLPRヌクレオチド配列は、ヒトTSLPRタンパク質(例えば、配列番号23に定義されるヒトTSLPRタンパク質アイソフォーム1)の細胞外ドメインをコードする。一部の実施形態では、ヒトTSLPRヌクレオチド配列は、ヒトTSLPR遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトTSLPRヌクレオチド配列は、エクソン2からヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの最後のアミノ酸をコードするエクソン6のコドンまでを含むヒトTSLPR遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトTSLPRゲノム断片は、ヒトTSLPRアイソフォーム1の細胞外ドメインのN末端に4アミノ酸が存在しない、ヒトTSLPRアイソフォーム1のアミノ酸27~231をコードする。一部の実施形態では、ヒトTSLPRゲノム断片は、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの最後のアミノ酸をコードするエクソン6のコドンを通して、エクソン2に作動可能に連結されたイントロン1の3’部分を更に含む。
【0117】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類のゲノム中のヒト化Tslpr遺伝子は、齧歯類Tslprヌクレオチド配列及びヒトTSLPRヌクレオチド配列を含み、齧歯類Tslprヌクレオチド配列は、齧歯類Tslprタンパク質(例えば、内因性齧歯類Tslprタンパク質)の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一のポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子中に存在する齧歯類Tslprヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子中に存在する齧歯類Tslprヌクレオチド配列は、マウスTslprヌクレオチド配列であり、一部の実施形態では、マウスTslprヌクレオチド配列は、マウスTslpr遺伝子(例えば、内因性マウスTslpr遺伝子)の、エクソン6(マウスTslpr膜貫通ドメインの第1のアミノ酸をコードするコドンから始まる)からのエクソン8までの一部を含む。
【0118】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類のゲノム中のヒト化Tslpr遺伝子は、ヒトTSLPRヌクレオチド配列の上流(5’)に齧歯類Tslprヌクレオチド配列を含み、齧歯類Tslprヌクレオチド配列は、齧歯類Tslprタンパク質(例えば、内因性齧歯類Tslprタンパク質)のシグナルペプチドと実質的に同一のポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、齧歯類Tslprタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一なポリペプチドをコードする齧歯類Tslprヌクレオチド配列は、マウスTslprヌクレオチド配列(例えば、内因性マウスTslprヌクレオチド配列)、又はラットTslprヌクレオチド配列(例えば、内因性ラットTslprヌクレオチド配列)である。一部の実施形態では、齧歯類Tslprヌクレオチド配列は、齧歯類Tslprタンパク質の、シグナルペプチド配列、及び細胞外ドメインのN末端からのアミノ酸(例えば、6~8アミノ酸)を含むポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、齧歯類Tslprヌクレオチド配列は、齧歯類Tslprタンパク質の、シグナルペプチド配列及び細胞外ドメインのN末端からの7アミノ酸を含むポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、齧歯類Tslprヌクレオチド配列は、マウスTslpr遺伝子(例えば、内因性マウスTslpr遺伝子)のエクソン1を含むマウスTslprヌクレオチド配列であり、一部のこのような実施形態では、マウスTslprヌクレオチド配列は、マウスTslpr遺伝子のイントロン1の5’部分を更に含む。
【0119】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、ヒト化Tslpr遺伝子の発現が齧歯類Tslpr 5’制御配列の制御下におかれるように、内因性齧歯類Tslpr制御配列などの齧歯類Tslpr 5’制御配列、例えばプロモーター及び/又はエンハンサーなどの5’転写制御配列に作動可能に連結されている。
【0120】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、内因性齧歯類Tslpr座位にある。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、例えば、ランダムな組み込みの結果として、内因性齧歯類Tslpr座位以外の座位にある。ヒト化Tslpr遺伝子が内因性齧歯類Tslpr座位以外の座位にある一部の実施形態では、齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Tslpr遺伝子の不活性化(例えば、全部又は一部の欠失)の結果として、齧歯類Tslprタンパク質を発現することができない。
【0121】
ヒト化Tslpr遺伝子が内因性齧歯類Tslpr座位にある一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、内因性齧歯類Tslpr座位における内因性齧歯類Tslpr遺伝子のヌクレオチド配列の、ヒトTSLPR遺伝子のヌクレオチド配列による置換の結果生じ得る。
【0122】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslpr座位での置換される内因性齧歯類Tslpr遺伝子のヌクレオチド配列は、齧歯類Tslprタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分コードする内因性齧歯類Tslpr遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、齧歯類はマウスであり、置換されるマウスTslprゲノム断片は、内因性マウスTslprタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする。例えば、配列番号21のマウスTslprの細胞外ドメインは、アミノ酸20~243によって定義され、細胞外ドメインの実質的な部分の例には、配列番号21のアミノ酸21~243、22~243、23~243、24~243、25~243、26~243、27~243、20~241、20~240、20~239、及び20~238が含まれ得る。一部の実施形態では、マウスTslprタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号21のアミノ酸27~243を含む。一部の実施形態では、マウスTslprタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号21のアミノ酸25~243を含む。一部の実施形態では、マウスTslprタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号21のアミノ酸20~240を含む。一部の実施形態では、マウスTslprタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号21のアミノ酸20~238を含む。一部の実施形態では、置換されるマウスTslprゲノム断片は、エクソン2から細胞外ドメインの最後のアミノ酸をコードするエクソン6のコドンまでを含む。
【0123】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslpr座位で齧歯類Tslpr遺伝子のゲノム断片を置換するヒトTSLPR遺伝子のヌクレオチド配列は、cDNA配列である。一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslpr座位で齧歯類Tslpr遺伝子のゲノム断片を置換するヒトTSLPRヌクレオチド配列は、ヒトTSLPR遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslpr座位で齧歯類Tslpr遺伝子のゲノム断片を置換するヒトTSLPR遺伝子のゲノム断片は、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする、ヒトTSLPR遺伝子のエクソンの全部又は一部を含む。上述のように、ヒトTSLPRの細胞外ドメインの実質的な部分の例には、配列番号23のアミノ酸23~231、24~231、25~231、26~231、27~231、28~231、23~230、23~229、23~228、23~227、又は23~226が含まれ得る。一部の実施形態では、ヒトTSLPRの細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸25~231を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPRの細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸27~231を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPRの細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸23~228を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPRの細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号23のアミノ酸23~226を含む。一部の実施形態では、ヒトゲノム断片は、ヒトTSLPR細胞外ドメインのヒトTSLPRエクソン2から最後のアミノ酸をコードするエクソン6のコドンを含む。
【0124】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslpr座位内に挿入されるヒトTSLPRヌクレオチド配列は、齧歯類Tslprタンパク質(例えば、内因性齧歯類、マウス又はラットTslprタンパク質など)の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一のポリペプチドをコードする齧歯類Tslpr遺伝子のゲノム配列に作動可能に連結されている。齧歯類がマウスである実施形態では、マウスTslpr遺伝子のゲノム配列は、一部の実施形態では、マウスTslpr遺伝子(例えば、内因性マウスTslpr遺伝子)の膜貫通ドメインの第1のアミノ酸をコードするコドンからエクソン8までエクソン6を含む。
【0125】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Tslpr座位内に挿入されるヒトTSLPRヌクレオチド配列は、齧歯類Tslprタンパク質(例えば、内因性齧歯類、マウス又はラットTslprタンパク質など)のシグナルペプチドと実質的に同一のポリペプチドをコードする齧歯類Tslpr遺伝子のゲノム配列に作動可能に連結されている。齧歯類がマウスである実施形態では、マウスTslpr遺伝子のゲノム配列は、一部の実施形態では、マウスTslpr遺伝子(例えば、内因性マウスTslpr遺伝子)のエクソン1、及び任意選択的にイントロン1の、全部又は一部を含む。
【0126】
一部の実施形態では、齧歯類はマウスであり、内因性マウスTslpr座位において、マウスTslpr細胞外ドメインのエクソン2を、最後のアミノ酸をコードするエクソン6におけるコドンまで含む、内因性マウスTslpr遺伝子のゲノム断片は、ヒトTSLPR細胞外ドメインのエクソン2を、最後のアミノ酸をコードするエクソン6におけるコドンまで含む、ヒトTSLPR遺伝子のゲノム断片で置換されている。一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、内因性齧歯類Tslpr座位で形成され、マウスTslpr遺伝子のエクソン1、ヒトTSLPR遺伝子のエクソン2を最後のアミノ酸をコードするエクソン6のコドンまで、及びマウスTslpr遺伝子の、マウスTslpr膜貫通ドメインの第1のアミノ酸をコードするコドンから開始するエクソン6をエクソン8まで含む。
【0127】
一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒト化Tslpr遺伝子に対しヘテロ接合性である。一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒト化Tslpr遺伝子に対しホモ接合性である。
【0128】
一部の実施形態では、ヒト化Tslpr遺伝子は、齧歯類において、コードされるヒト化Tslprタンパク質の発現を生じさせる。一部の実施形態では、ヒト化Tslprタンパク質は、細胞及び組織で発現され、対照齧歯類(例えば、ヒト化Tslpr遺伝子を有しない齧歯類)における対応する齧歯類Tslprタンパク質が、典型的には、例えば、樹状細胞、CD4+ T細胞、及びグループ2の自然リンパ球系細胞、並びに上皮、内皮及び平滑筋細胞などの非免疫細胞型で発現される。
【0129】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Tslpr遺伝子の不活性化(例えば、全部又は一部の欠失)又は置換(全部又は一部)の結果として、齧歯類Tslprタンパク質を発現することができない。
【0130】
IL7RAヒト化
TSLPは、TSLPに特異的な鎖(「TSLPR」又は「Tslpr」と称される)、及びIL7受容体α鎖(ヒトについては「IL7RA」、非ヒト又はヒト化分子については「Il7ra」)から構成されるヘテロ二量体を介して作用する。IL7RAは、シグナルペプチド、細胞外ドメイン(extracellular domain)(「ECD」又は「細胞外ドメイン(ectodomain)」)、膜貫通ドメイン、及び細胞内(細胞質)ドメインを含有する。
【0131】
ヒトIL7RA、マウスIl7ra、ラットIl7ra、及びヒト化(マウス-ヒトハイブリッド)Il7raの核酸配列及びタンパク質配列を含む例示的な配列が、配列表に開示され、表3に要約されている。ヒトIL7RA及びマウスIl7raタンパク質配列のアラインメントを図3Fに提示する。
【表3-1】
【表3-2】
【0132】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、生殖細胞系にヒト化Il7ra遺伝子を含む。
【0133】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、齧歯類Il7ra遺伝子(例えば、内因性齧歯類Il7ra遺伝子)のヌクレオチド配列及びヒトIL7RA遺伝子のヌクレオチド配列を含む、ヒト化Il7ra遺伝子をそのゲノム中に含む。本明細書において使用される場合、「遺伝子のヌクレオチド配列」は、遺伝子の全部又は一部のゲノム配列、mRNA配列又はcDNA配列を含む。非限定的な例として、ヒトIL7RA遺伝子のヌクレオチド配列には、ヒトIL7RA遺伝子の全部又は一部のゲノム配列、mRNA配列又はcDNA配列が含まれる。齧歯類Il7ra遺伝子のヌクレオチド配列とヒトIL7RA遺伝子のヌクレオチド配列は、齧歯類ゲノム中のヒト化Il7ra遺伝子が、Il7raタンパク質構造(細胞外ドメイン、膜貫通ドメイン、及び細胞質ドメインを含む)を有するヒト化Il7raタンパク質をコードし、Il7ra機能(例えば、Il7タンパク質を結合し、Tslpを結合するTslprとヘテロ二量体を形成する)を実行するように、互いに作動可能に連結されている。
【0134】
本明細書で使用される場合、「ヒトIL7RA」遺伝子及びタンパク質は、ヒト起源のIL7RA遺伝子及びタンパク質を指す。一部の実施形態では、ヒトIL7RAタンパク質は、配列番号43のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトIL7RAタンパク質は、配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトIL7RAタンパク質は、配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ヒトIL7RAタンパク質は、配列番号43のアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0135】
本明細書において使用される場合、「齧歯類Il7ra」遺伝子及びタンパク質は、齧歯類(例えば、マウス又はラット)起源のIl7rar遺伝子及びタンパク質を指す。一部の実施形態では、マウスIL7raタンパク質は、配列番号41のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、マウスIL7raタンパク質は、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、マウスIL7rarタンパク質は、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、マウスIL7rarタンパク質は、配列番号41のアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ラットIL7raタンパク質は、配列番号47のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ラットIL7raタンパク質は、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも95%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ラットIL7raタンパク質は、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも98%同一のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態では、ラットIL7raタンパク質は、配列番号47のアミノ酸配列と少なくとも99%同一のアミノ酸配列を含む。
【0136】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類は、そのゲノム中にヒト化Il7ra遺伝子を含有し、このヒト化Il7ra遺伝子は、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一の細胞外ドメインを含有するヒト化Il7raタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一である細胞外ドメインは、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと同じ機能性(例えば、リガンド結合特性)を呈示する。「ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一」である細胞外ドメイン又はポリペプチドは、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと配列において少なくとも95%同一であるポリペプチド、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと配列において少なくとも98%同一であるポリペプチド、又はヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと配列において少なくとも99%同一であるポリペプチドであり得る。「ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一」である細胞外ドメイン又はポリペプチドは、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと配列において100%同一であるポリペプチドであり得る。代替的に又は追加的に、「ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一」である細胞外ドメイン又はポリペプチドは、(ii)ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインとは10アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインとは7アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインとは5アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインとは4アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは3アミノを超えずに異なるポリペプチド、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは2アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、又はヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインとは1アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、であり得る。代替的に又は追加的に、「ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一」である細胞外ドメイン又はポリペプチドは、(iii)例えば、細胞外ドメインのN末端及び/又はC末端部分(すなわち、細胞外ドメインのN又はC末端から5~10アミノ酸以内)でアミノ酸の付加、欠失、及び/又は置換を有することによって、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインとは、細胞外ドメインのN末端又はC末端部分でのみ異なるポリペプチドであってもよい。代替的に又は追加的に、「ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一」である細胞外ドメイン又はポリペプチドは、上記(i)~(iii)に詳述される特徴のうちの1つ以上を有するポリペプチドであり得、例えば、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと配列において少なくとも95%同一でありかつヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインとは、細胞外ドメインのN末端部分又はC末端部分でのみ5アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、又はヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと配列において少なくとも98%同一でありかつヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインとは、細胞外ドメインのN末端部分又はC末端部分でのみ3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、であり得る。特定の実施形態では、ヒトIL7RAタンパク質は、配列番号43に記載されるアミノ酸配列を含み、その細胞外ドメインは、配列番号43のアミノ酸21~238により定義される。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra 遺伝子は、その細胞外ドメインが配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと実質的に同一である、すなわち、配列番号43のアミノ酸21~238と実質的に同一であるヒト化Il7ra タンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、配列番号43のアミノ酸21~238を含む細胞外ドメインを含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、配列番号43のアミノ酸21~237を含む細胞外ドメインを含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、配列番号43のアミノ酸21~236を含む細胞外ドメインを含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、配列番号43のアミノ酸22~238を含む細胞外ドメインを含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、配列番号43のアミノ酸24~238を含む細胞外ドメインを含む。
【0137】
一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、ヒトIL7RAの細胞外ドメイン又はその実質的な部分と、それに続く齧歯類Il7ra(例えば、内因性齧歯類Il7ra)の細胞外ドメインのC末端由来のアミノ酸を含む細胞外ドメインを有するヒト化Il7raタンパク質をコードする。ヒトIL7RA(又は齧歯類IL7ra)タンパク質の「細胞外ドメインの実質的な部分」は、ヒトIL7RA(又は齧歯類IL7ra)タンパク質のほぼ完全な細胞外ドメインであるポリペプチドを指す。一部の実施形態では、細胞外ドメインの実質的な割合は、少なくとも95%の全長細胞外ドメイン配列を含む。一部の実施形態では、細胞外ドメインの実質的な割合は、少なくとも98%の全長細胞外ドメイン配列を含む。一部の実施形態では、細胞外ドメインの実質的な割合は、細胞外ドメインのN末端又はC末端での10アミノ酸を超えない欠如によって細胞外ドメインとは異なる。一部の実施形態では、細胞外ドメインの実質的な割合は、細胞外ドメインのN末端又はC末端での7アミノ酸を超えない欠如によって細胞外ドメインとは異なる。一部の実施形態では、細胞外ドメインの実質的な割合は、細胞外ドメインのN末端又はC末端での5アミノ酸を超えない欠如によって細胞外ドメインとは異なる。一部の実施形態では、細胞外ドメインの実質的な割合は、細胞外ドメインのN末端又はC末端での3アミノ酸を超えない欠如によって細胞外ドメインとは異なる。例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインは、アミノ酸21~238によって定義され、この細胞外ドメインの実質的な部分の例には、配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質のアミノ酸22~238、23~238、24~238、21~237、21~236、21~235が 含まれ得る。一部の実施形態では、ヒトIL7RAの細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号43のアミノ酸21~236を含む。一部の実施形態では、ヒトIL7RAの細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号43のアミノ酸21~237を含む。一部の実施形態では、ヒトIL7RAの細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号43のアミノ酸22~238を含む。一部の実施形態では、ヒトIL7RAの細胞外ドメインの実質的な部分は、配列番号43のアミノ酸23~238を含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質の細胞外ドメインは、ヒトIL7RAの細胞外ドメインの実質的な部分と、それに続く齧歯類Il7ra(例えば、内因性齧歯類Il7ra)の細胞外ドメインのC末端由来の1~3アミノ酸を含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質の細胞外ドメインは、配列番号43のアミノ酸21~236と、それに続く齧歯類Il7raの細胞外ドメインのC末端由来の2アミノ酸を含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、配列番号45のアミノ酸21~238を含む細胞外ドメインを含有するヒト化Il7raタンパク質をコードする、-この細胞外ドメインは、配列番号43のアミノ酸21~236(ヒトIL7RA)及びマウスIl7raの細胞外ドメインのC末端由来の最後の2アミノ酸(「GW」)を含み、配列番号43のヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインとは、細胞外ドメインのC末端の2つのアミノ酸において異なり(配列番号43のヒトIL7RAにおける「EM」とは対照的に、配列番号45のヒト化Il7raにおける「GW」を伴う)、及びそれ以外はヒトIL7RA細胞外ドメインと同一である。
【0138】
一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、齧歯類Il7raタンパク質、例えば内因性齧歯類Il7raタンパク質の、膜貫通型細胞質配列と実質的に同一である膜貫通型細胞質配列(すなわち、膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインの両方を含む配列)を含有するヒト化Il7raタンパク質をコードする。一部の実施形態では、内因性齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一である膜貫通型細胞質配列は、内因性齧歯類Il7raタンパク質などの齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列と同じ機能性(例えば、シグナル伝達及び/又は細胞内分子との相互作用)を呈示する。「齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一」である膜貫通型細胞質配列又はポリペプチドは、一部の実施形態では、(i)齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列と配列において少なくとも95%同一であるポリペプチド、又は齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列と配列において少なくとも98%同一であるポリペプチドであり得る。「齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一」である膜貫通型細胞質配列又はポリペプチドは、齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列と配列において同一であるポリペプチドであり得る。代替的に又は追加的に、「齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一」である膜貫通型細胞質配列又はポリペプチドは、(ii)齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは5アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは4アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは2アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは1アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、であり得る。代替的に又は追加的に、「齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一」である膜貫通型細胞質配列又はポリペプチドは、(iii)、例えば、膜貫通型細胞質配列のN末端又はC末端部分にアミノ酸の付加、欠失又は置換を有することによって、齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは、N末端又はC末端でのみ異なるポリペプチドであってもよい。代替的に又は追加的に、「齧歯類Tslprタンパク質の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一」である膜貫通型細胞質配列又はポリペプチドは、(iv)上記(i)~(iii)に詳述される特徴のうちの1つ以上を有するポリペプチドであり得、例えば、齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列と配列において少なくとも95%同一でありかつ齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列とは、N末端又はC末端でのみ3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、であり得る。「膜貫通型細胞質配列のN又はC末端部分」とは、膜貫通ドメインのN末端から5~10個のアミノ酸内、又は細胞質ドメインのC末端から5~10個のアミノ酸内を意味する。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、マウスIl7raタンパク質(内因性マウスIl7raタンパク質など)の膜貫通型細胞質配列、又はラットIl7raタンパク質(内因性ラットIl7raタンパク質など)の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一の膜貫通型細胞質配列を含有する。
【0139】
一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、齧歯類Il7raタンパク質(例えば、内因性齧歯類Il7raタンパク質)のシグナルペプチドと実質的に同一のシグナルペプチドを含有するヒト化Il7raタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、ヒトIL7RAタンパク質(例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質)のシグナルペプチドと実質的に同一のシグナルペプチドを含有するヒト化Il7raタンパク質をコードする。参照タンパク質(ヒトIL7RAタンパク質又は齧歯類Il7raタンパク質のいずれか)のシグナルペプチドと「実質的に同一」なシグナルペプチドは、(i)参照タンパク質のシグナルペプチドと配列において少なくとも95%同一であるポリペプチド、又は参照タンパク質のシグナルペプチドと配列において同一であるポリペプチドであってよい。代替的に又は追加的に、参照タンパク質のシグナルペプチドと「実質的に同一」であるシグナルペプチドは、(ii)参照タンパク質のシグナルペプチドとは3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、参照タンパク質のシグナルペプチドとは2アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、又は一部の実施形態では、参照タンパク質のシグナルペプチドとは1アミノ酸を超えずに異なるポリペプチドであり得る。代替的に又は追加的に、参照タンパク質のシグナルペプチドと「実質的に同一」であるシグナルペプチドは、(iii)例えば、シグナルペプチドのN末端若しくはC末端部分にアミノ酸の付加、欠失若しくは置換を有することによって、参照タンパク質のシグナルペプチドとは、N末端若しくはC末端でのみ異なるポリペプチドであってもよく、又は(iv)上記(i)~(iii)に詳述される特徴のうちの1つ以上を有するポリペプチド、例えば、参照タンパク質のシグナルペプチドと少なくとも95%同一でありかつ参照タンパク質のシグナルペプチドとは、N末端又はC末端でのみ3アミノ酸を超えずに異なるポリペプチド、であってもよい。「シグナルペプチドのN又はC末端部分」とは、シグナルペプチドのN又はC末端から5アミノ酸以内を意味する。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、マウスIl7raタンパク質(内因性マウスIl7raタンパク質など)のシグナルペプチドと実質的に同一のシグナルペプチドを含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、ラットIl7raタンパク質(内因性ラットIl7raタンパク質など)のシグナルペプチドと実質的に同一のシグナルペプチドを含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、ヒトIL7RAタンパク質(例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質)のシグナルペプチドと実質的に同一のシグナルペプチドを含む。
【0140】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類のゲノム中のヒト化Il7ra遺伝子は、ヒトIL7RA遺伝子のヌクレオチド配列(「ヒトIL7RAヌクレオチド配列」)及び齧歯類Il7ra遺伝子のヌクレオチド配列(「齧歯類Il7raヌクレオチド配列」、例えば内因性齧歯類Il7raヌクレオチド配列)を含み、ヒトIL7RAヌクレオチド配列は、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAヌクレオチド配列は、cDNA配列である。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子中のヒトIL7RAヌクレオチド配列は、ヒトIL7RAタンパク質(例えば、配列番号43のヒトIL7RAタンパク質)の細胞外ドメインをコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAヌクレオチド配列は、ヒトIL7RA遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトIL7RAヌクレオチド配列は、成熟タンパク質配列中の第1のアミノ酸をコードするエクソン2のコドンから、エクソン5まで(すなわち、ヒトIL7RAタンパク質の膜貫通セグメントの開始前の2アミノ酸であるアミノ酸残基をコードするコドンまでを含む、ヒトIL7RA遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RAタンパク質(例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質)のアミノ酸21~238をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RAタンパク質(例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質)のアミノ酸21~237をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RAタンパク質(例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質)のアミノ酸21~236をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RAタンパク質(例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質)のアミノ酸21~235をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RAタンパク質(例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質)のアミノ酸22~238をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RAタンパク質(例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAタンパク質)のアミノ酸24~238をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、イントロン5の5’部分を更に含む。
【0141】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類のゲノム中のヒト化Il7ra遺伝子は、齧歯類Il7raヌクレオチド配列及びヒトIL7RAヌクレオチド配列を含み、齧歯類Il7raヌクレオチド配列は、齧歯類Il7raタンパク質(例えば、内因性齧歯類Il7raタンパク質)の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一のポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子中に存在する齧歯類Il7raヌクレオチド配列は、内因性齧歯類Il7raタンパク質の膜貫通型細胞質配列をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子中に存在する齧歯類Il7raヌクレオチド配列は、マウスIl7raヌクレオチド配列であり、一部のそのような実施形態では、マウスIl7raヌクレオチド配列は、マウスIl7ra遺伝子(例えば、内因性マウスIl7ra遺伝子)のイントロン5の3’部分及びエクソン6からエクソン8までを含む。
【0142】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類のゲノム中のヒト化Il7ra遺伝子は、ヒトIL7RAヌクレオチド配列の上流(5’)に齧歯類Il7raヌクレオチド配列を含み、齧歯類Il7raヌクレオチド配列は、齧歯類Il7raタンパク質(例えば、内因性齧歯類Il7raタンパク質)のシグナルペプチドと実質的に同一のポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、齧歯類Il7raタンパク質のシグナルペプチドと実質的に同一のポリペプチドをコードする齧歯類Il7raヌクレオチド配列は、マウスIl7raヌクレオチド配列(例えば、内因性マウスIl7raヌクレオチド配列)、又はラットIl7raヌクレオチド配列(例えば、内因性ラットIl7raヌクレオチド配列)である。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子中のマウスIl7raヌクレオチド配列は、マウスIl7raのシグナルペプチドをコードするマウスIl7ra遺伝子(例えば、内因性マウスIl7ra遺伝子)のエクソン1部分を含み、一部の実施形態では、マウスIl7raヌクレオチド配列は、マウスIl7ra遺伝子のエクソン1の5’UTRも含む。
【0143】
一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、ヒト化Il7ra遺伝子の発現が齧歯類Il7ra 5’制御配列の制御下におかれるように、内因性齧歯類Il7ra制御配列などの齧歯類Il7ra 5’制御配列、例えばプロモーター及び/又はエンハンサーなどの5’転写制御配列に作動可能に連結されている。
【0144】
一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、内因性齧歯類Il7ra座位にある。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、例えば、ランダムな組み込みの結果として、内因性齧歯類Il7ra座位以外の座位にある。ヒト化Il7ra遺伝子が内因性齧歯類Il7ra座位以外の座位にある一部の実施形態では、齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Il7ra遺伝子の不活性化(例えば、全体又は部分的な欠失)の結果として、齧歯類Il7raタンパク質を発現することができない。
【0145】
ヒト化Il7ra遺伝子が内因性齧歯類Il7ra座位にある一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、内因性齧歯類Il7ra座位で内因性齧歯類Il7ra遺伝子がヒトIL7RA遺伝子のヌクレオチド配列により置換された結果、生じる。
【0146】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Il7ra座位での置換される内因性齧歯類Il7ra遺伝子のヌクレオチド配列は、齧歯類Il7raタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする内因性齧歯類Il7ra遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、齧歯類はマウスであり、置換されるマウスIl7raゲノム断片は、内因性マウスIl7raタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする。内因性マウスIl7raタンパク質の細胞外ドメインの実質的な部分の例としては、内因性マウスIl7raタンパク質(例えば、配列番号41)のアミノ酸22~238、23~238、24~238、21~237、21~236、又は21~235が挙げられる。一部の実施形態では、置換されるマウスIl7raゲノム断片は、内因性マウスIl7raタンパク質(例えば、配列番号41)のアミノ酸21~235をコードする。一部の実施形態では、置換されるマウスIl7raゲノム断片は、内因性マウスIl7raタンパク質(例えば、配列番号41)のアミノ酸21~236をコードする。一部の実施形態では、置換されるマウスIl7raゲノム断片は、内因性マウスIl7raタンパク質(例えば、配列番号41)のアミノ酸21~237をコードする。一部の実施形態では、置換されるマウスIl7raゲノム断片は、内因性マウスIl7raタンパク質(例えば、配列番号41)のアミノ酸21~238をコードする。一部の実施形態では、置換されるマウスIl7raゲノム断片は、内因性マウスIl7raタンパク質(例えば、配列番号41)のアミノ酸22~238をコードする(例えば、配列番号41)。一部の実施形態では、置換されるマウスIl7raゲノム断片は、内因性マウスIl7raタンパク質(例えば、配列番号41)のアミノ酸23~238をコードする。一部の実施形態では、置換されるマウスIl7raゲノム断片は、マウスIl7ra遺伝子の成熟Il7raタンパク質の第1のアミノ酸をコードするエクソン1におけるコドンからエクソン5まで、及び一部の実施形態では、イントロン5の5’部分までを含む。
【0147】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Il7ra座位で齧歯類Il7ra遺伝子のゲノム断片を置換するヒトIL7RA遺伝子のヌクレオチド配列は、cDNA配列である。一部の実施形態では、内因性齧歯類Il7ra座位で齧歯類Il7ra遺伝子のゲノム断片を置換するヒトIL7RAヌクレオチド配列は、ヒトIL7RA遺伝子のゲノム断片である。一部の実施形態では、内因性齧歯類Il7ra座位で齧歯類Il7ra遺伝子のゲノム断片を置換するヒトIL7RA遺伝子のゲノム断片は、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードする、ヒトIL7RA遺伝子のエクソンの全部又は一部を含む。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RA、例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAのアミノ酸21~238をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RA、例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAのアミノ酸21~237をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RA、例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAのアミノ酸21~236をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RA、例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAのアミノ酸21~235をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RA、例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAのアミノ酸22~238をコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAゲノム断片は、ヒトIL7RA、例えば、配列番号43に記載されるヒトIL7RAのアミノ酸24~238をコードする。一部の実施形態では、ヒトゲノム断片は、ヒトIL7RA遺伝子の、成熟ヒトIL7RAタンパク質の第1のアミノ酸をコードするエクソン1におけるコドンからエクソン5まで、及び一部の実施形態では、イントロン5の5’部分をまでを含む。
【0148】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Il7ra座位内に挿入されるヒトIL7RAヌクレオチド配列は、齧歯類Il7raタンパク質(例えば、内因性齧歯類、マウス又はラットIl7raタンパク質など)の膜貫通型細胞質配列と実質的に同一のポリペプチドをコードする齧歯類Il7ra遺伝子のゲノム配列に作動可能に連結されている。齧歯類がマウスである実施形態では、マウスIl7ra遺伝子のゲノム配列は、一部の実施形態では、マウスIl7ra遺伝子(例えば、内因性マウスIl7ra遺伝子)のエクソン6からエクソン8を含み、一部の実施形態では、マウスIl7ra遺伝子(例えば、内因性マウスIl7ra遺伝子)のイントロン5の3’部分からエクソン8を含む。
【0149】
一部の実施形態では、内因性齧歯類Il7ra座位内に挿入されるヒトIL7RAヌクレオチド配列は、齧歯類Il7raタンパク質(例えば、内因性齧歯類、マウス又はラットIl7raタンパク質など)のシグナルペプチドと実質的に同一のポリペプチドをコードする齧歯類Il7ra遺伝子のゲノム配列に作動可能に連結されている。齧歯類がマウスである実施形態では、マウスIl7ra遺伝子のゲノム配列は、一部の実施形態では、マウスIl7ra遺伝子のシグナルペプチドをコードするマウスIl7ra遺伝子(例えば、内因性マウスIl7ra遺伝子)のエクソン1の部分を含み、一部の実施形態では、マウスIl7ra遺伝子(例えば、内因性マウスIl7ra遺伝子)のエクソン1の5’ UTR及びマウスIl7raのシグナルペプチドをコードするのエクソン1の部分を含む。
【0150】
一部の実施形態では、齧歯類がマウスであり、内因性マウスIl7ra座位で、第1の成熟Il7raアミノ酸をコードするエクソン1の第1のコドンからエクソン5まで(又は一部の実施形態では、イントロン5の5’部分まで)を含む内因性マウスIl7ra遺伝子のゲノム断片が、第1の成熟IL7RAアミノ酸をコードするエクソン1の第1のコドンからエクソン5まで(又は一部の実施形態では、イントロン5の5’部分まで)を含むヒトIL7RA遺伝子のゲノム断片により置換されている。一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、内因性齧歯類Il7ra座位で形成され、マウスIl7ra遺伝子のエクソン1の5’UTR及びシグナルペプチドコード部分、ヒトIL7RA遺伝子のエクソン1からエクソン5までの成熟アミノ酸コード部分、及びマウスIl7ra遺伝子のエクソン6からエクソン8まで、一部のそのような実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子のイントロン5には、ヒトのイントロン5の5’部分及び内因性マウスイントロン5の3’部分が含まれている。
【0151】
一部の実施形態では、齧歯類は、内因性マウスIl7ra座位にヒト化Il7ra遺伝子を含むマウスであり、ヒト化Il7ra遺伝子は、ヒトIL7RAタンパク質のシグナルペプチドと少なくとも実質的に同一なシグナルペプチド、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインと少なくとも実質的に同一な細胞外ドメイン、及び内因性マウスIl7raタンパク質の膜貫通型細胞質ドメインを含む、ヒト化Il7raタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質はヒトIL7RAタンパク質の全長細胞外ドメインを含む。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質の細胞外ドメインは、(i)ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインのC末端の2アミノ酸を除いて、ヒトIL7RAタンパク質のほぼ全長の細胞外ドメインと、(ii)内因性マウスIl7raタンパク質の細胞外ドメインのC末端の2アミノ酸とを含む。一部の実施形態では、齧歯類は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、CN111808882Aに記載される内因性マウスIl7ra座位にヒト化Il7ra遺伝子を含むマウスである。
【0152】
一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒト化Il7ra遺伝子に対しヘテロ接合性である。一部の実施形態では、本明細書に提供される齧歯類は、そのゲノムにおいて、ヒト化Il7ra遺伝子に対しホモ接合性である。
【0153】
一部の実施形態では、ヒト化Il7ra遺伝子は、齧歯類においてコードされたヒト化Il7raタンパク質の発現を生じさせる。一部の実施形態では、ヒト化Il7raタンパク質は、対照齧歯類(例えば、ヒト化Il7ra遺伝子を有しない齧歯類)における対応する齧歯類Il7raタンパク質が通常、例えばTリンパ球上で発現される、細胞及び組織において発現される。
【0154】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、例えば、内因性齧歯類Il7ra遺伝子の不活性化(例えば、全体又は部分的な欠失)又は置換(全体又は部分的な)の結果として、齧歯類Il7raタンパク質を発現することができない。
【0155】
更なる遺伝的特徴
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中にヒト化Sirpα遺伝子を更に含む。齧歯類Sirpα遺伝子のヒト化は、例えば、WO2015/042557A1(Regeneron Pharmaceuticals Inc.)及びUS2019/0373867A1(Beijing Biocytogen)に記載されており、それらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0156】
一部の実施形態では、ヒト化Sirpa遺伝子は、ヒトSIRPαタンパク質の細胞外ドメインの全部又は一部を含むヒト化Sirpαタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Sirpa遺伝子は、リガンド結合(すなわち、CD47への結合)に関与するヒトSIRPαタンパク質の細胞外部分を含むヒト化Sirpαタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Sirpa遺伝子は、ヒトSIRPαタンパク質、例えば、GenBank登録番号NP_001035111.1に記載されるヒトSIRPαタンパク質のアミノ酸残基28~362を含むヒト化Sirpαタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Sirpa遺伝子は、齧歯類Sirpαタンパク質(例えば、内因性齧歯類Sirpαタンパク質)の膜貫通ドメイン及び細胞質ドメインを含むヒト化Sirpαタンパク質をコードする。一部の実施形態では、ヒト化Sirpα遺伝子は、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2、3、及び4を含む。一部の実施形態では、ヒト化Sirpα遺伝子は、内因性齧歯類Sirpα座位に位置する。一部の実施形態では、ヒト化Sirpα遺伝子は、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2~4による内因性齧歯類Sirpα座位での内因性齧歯類Sirpα遺伝子のエクソン2~4の置換の結果として形成される。一部の実施形態では、ヒト化Sirpα遺伝子は、内因性齧歯類Sirpα座位に位置し、内因性齧歯類Sirpα遺伝子のエクソン1、ヒトSIRPα遺伝子のエクソン2~4、及び内因性齧歯類Sirpα遺伝子のエクソン5~8を含み、この場合においてヒト化Sirpα遺伝子は、内因性齧歯類Sirpα座位で齧歯類Sirpαプロモーターに作動可能に連結される。一部の実施形態では、齧歯類は、ヒト化Sirpα遺伝子に対してヘテロ接合性である。一部の実施形態では、齧歯類は、ヒト化Sirpα遺伝子に対してホモ接合性である。一部の実施形態では、ヒト化 Sirpα遺伝子を含む齧歯類は、ヒトSIRPαタンパク質の細胞外ドメインと齧歯類Sirpαタンパク質の膜貫通型細胞質ドメインとを含むタンパク質などのヒト化Sirpαタンパク質を発現する。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、内因性齧歯類Sirpαタンパク質を発現することができない(例えば、内因性齧歯類Sirpα遺伝子の破壊又は置換の結果として)。
【0157】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中にヒト化Tpo(トロンボポエチン)遺伝子を更に含む。齧歯類Tpo遺伝子のヒト化は、例えば、米国特許第8541646号(Regeneron Pharmaceuticals Inc.、Yale University、及びInstitute for Research in Biomedicine IRB)、及びRongvaux et al.(Proc Natl Acad Sci USA.2011;108(6):2378-2383)に記載されており、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、ヒト化は、内因性齧歯類Tpo遺伝子のヒトTPO遺伝子による置換を含む。一部の実施形態では、齧歯類は、ヒト化Tpo遺伝子からヒトTPOタンパク質を発現する。一部の実施形態では、齧歯類は、ヒト化Tpo遺伝子に対してヘテロ接合性である。一部の実施形態では、齧歯類は、ヒト化Tpo遺伝子に対してホモ接合性である。一部の実施形態では、ヒト化Tpo遺伝子を含む齧歯類は、内因性齧歯類Tpoタンパク質を発現することができない(例えば、内因性齧歯類Tpo遺伝子の破壊又は置換の結果として)。
【0158】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中にヒト化GM-CSF/IL-3座位を更に含み、内因性齧歯類GM-CSF遺伝子がヒトGM-CSF遺伝子で置換され、内因性齧歯類IL-3遺伝子がヒトIL-3遺伝子で置換されている。齧歯類GM-CSF/IL-3座位のヒト化は、例えば、米国特許第8541646号(Regeneron Pharmaceuticals Inc.、Yale University、及びInstitute for Research in Biomedicine IRB)及びWillinger et al.(PNAS,108(6):2390-2395,2011)に記載されており、両者ともそれらの全体が本明細書に組み込まれる。一部の実施形態では、齧歯類は、ヒト化GM-CSF/IL-3座位に対してヘテロ接合性である。一部の実施形態では、齧歯類は、ヒト化GM-CSF/IL-3座位に対してホモ接合性である。一部の実施形態では、齧歯類は、ヒト化GM-CSF/IL-3座位からヒトGM-CSF及びヒトIL-3を発現する。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、内因性齧歯類GM-CSFタンパク質を発現することができず、内因性齧歯類IL-3タンパク質を発現することができず、(例えば、内因性齧歯類GM-CSF/IL-3座位の破壊又は置換の結果として)。
【0159】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、その内因性RAG2遺伝子が破壊されており、一部の実施形態では、齧歯類は、破壊に対してホモ接合性であり(RAG2-/-又はRAGノックアウト)、内因性RAG2タンパク質を発現することができない。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、その内因性IL-2RG遺伝子が破壊され、一部の実施形態では、齧歯類は、破壊に対してホモ接合性であり(IL-2RG-/又はIL-2RGノックアウト)、内因性IL-2RGタンパク質(「γc」としても知られる)を発現することができない。RAG2及びIL-2RGダブルノックアウト(DKO)齧歯類は、既知の免疫不全齧歯類であり(例えば、Traggiai E et al.(2004) Development of a human adaptive immune system in cord blood cell-transplanted mice,Science 304:104-107を参照、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)かつ、市販により容易に入手可能である(例えば、Taconic Biosciences,Inc.、New Yorkから)。
【0160】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tslp遺伝子及びヒト化Sirpα遺伝子を含み、RAG2遺伝子とIL-2RG遺伝子の両方に対してホモ接合ヌルである。一部のこのような実施形態では、齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tpo遺伝子、及び/又はヒト化GM-CSF/IL-3座位を更に含む。齧歯類は、ヒト化遺伝子に対してヘテロ接合性又はホモ接合性であり得る。
【0161】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、及びヒト化Sirpα遺伝子を含み、RAG2遺伝子とIL-2RG遺伝子の両方に対してホモ接合ヌルである。一部のこのような実施形態では、齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tpo遺伝子及び/又はヒト化GM-CSF/IL-3座位を更に含む。齧歯類は、ヒト化遺伝子に対してホモ接合性又はヘテロ接合性であり得る。
【0162】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、ヒト化Il7ra遺伝子、及びヒト化Sirpα遺伝子を含み、RAG2遺伝子とIL-2RG遺伝子の両方に対してホモ接合ヌルである。一部のこのような実施形態では、齧歯類は、そのゲノム中に、ヒト化Tpo遺伝子、及び/又はヒト化GM-CSF/IL-3座位を更に含む。齧歯類は、ヒト化遺伝子に対してホモ接合性又はヘテロ接合性であり得る。
【0163】
齧歯類種及び系統
一部の実施形態では、本開示の齧歯類は、非限定的な例として、マウス、ラット、及びハムスターを含む。一部の実施形態では、齧歯類はMuroidea上科から選択される。一部の実施形態では、本開示の齧歯類は、ヨルマウス科(Calomyscidae)(例えば、カンガルーハムスター)、キヌゲネズミ科(Cricetidae)(例えば、ハムスター、新世界ラット及びマウス、ハタネズミ)、ネズミ科(Muridae)(純種のマウス及びラット、アレチネズミ、トゲマウス、タテガミネズミ)、アシナガマウス科(Nesomyidae)(キノボリマウス(climbing mice)、ロックマウス、オジロラット(with-tailed rat)、マダガスカルラット及びマウス)、トゲヤマネ科(Platacanthomyidae)(例えば、トゲヤマネ)、及びメクラネズミ科(Spalacidae)(例えば、メクラネズミ、タケネズミ、及び高原モグラネズミ(zokor))から選択された科由来の動物である。一部の実施形態では、本開示の齧歯類は、純種のマウス又はラット(ネズミ科)、アレチネズミ、トゲマウス、及びタテガミネズミから選択される。一部の実施形態では、本開示のマウスは、ネズミ科のメンバー由来のものである。
【0164】
一部の実施形態では、齧歯類は、マウスである。一部の実施形態では、齧歯類は、C57BL/A、C57BL/An、C57BL/GrFa、C57BL/KaLwN、C57BL/6、C57BL/6J、C57BL/6ByJ、C57BL/6NJ、C57BL/10、C57BL/10ScSn、C57BL/10Cr、及びC57BL/Olaから選択されるC57BL系統のマウスである。一部のある実施形態では、齧歯類は、129P1、129P2、129P3、129X1、129S1(例えば、129S1/SV、129S1/SvIm)、129S2、129S4、129S5、129S9/SvEvH、129/SvJae、129S6(129/SvEvTac)、129S7、129S8、129T1、129T2である系統からなる群から選択される129系統のマウスである(例えば、Festing et al.,1999,Mammalian Genome 10:836; Auerbach et al.,2000,Biotechniques 29(5):1024-1028,1030,1032を参照)。一部の実施形態では、齧歯類は、129系統及びC57BL/6系統を混合したマウスである。一部の実施形態では、齧歯類は、前述の129系統の混合、又は前述のBL/6系統の混合であるマウスである。一部の実施形態では、齧歯類は、BALB系統、例えば、BALB/c系統のマウスである。一部の実施形態では、齧歯類は、BALB系統及び別の前述の系統の混合であるマウスである。
【0165】
一部の実施形態では、齧歯類は、ラットである。一部の特定の実施形態では、ラットは、ウィスター(Wistar)ラット、LEA系統、Sprague Dawley系統、フィッシャー(Fischer)系統、F344、F6、及びDark Agoutiから選択される。一部の実施形態では、本明細書に記載のラット系統は、ウィスター(Wistar)、LEA、Sprague Dawley、フィッシャー(Fischer)、F344、F6、及びDark Agoutiからなる群から選択される2つ以上の系統の混合である。
【0166】
遺伝子改変齧歯類の組織及び細胞
一部の実施形態では、そのゲノムがヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、ヒト化Il7ra遺伝子、又はそれらの組み合わせを含む単離齧歯類細胞又は組織が本明細書に開示される。一部の実施形態では、単離齧歯類の細胞又は組織は、上述の追加の遺伝子改変(例えば、ヒト化Sirpα遺伝子、RAG2-/-及びIL-2RG-/-、ヒト化Tpo遺伝子、又はヒト化GM-CSF/IL-3座位)のうちの1つ以上を更に含む。
【0167】
一部の実施形態では、組織は、脂肪、膀胱、脳、乳房、骨髄、目、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、筋肉、膵臓、血漿、血清、皮膚、脾臓、胃、胸腺、精巣、卵子、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0168】
一部の実施形態では、細胞は、上皮細胞、ケロチノサイト、樹状細胞、リンパ球(例えば、B細胞又はT細胞)、マクロファージ、マスト細胞、及び好塩基球から選択される。一部の実施形態では、単離齧歯類細胞は、齧歯類胚性幹細胞である。一部の実施形態では、単離齧歯類細胞は、齧歯類卵子、又は齧歯類精子である。
【0169】
ヒト化齧歯類を作製するための組成物及び方法
本明細書に記載されるヒト化遺伝子を形成するために齧歯類座位に組み込まれることが望ましい、ヒトTSLPヌクレオチド配列、ヒトTSLPRヌクレオチド配列、又はヒトIL7RAヌクレオチド配列を含む標的化ベクター(又は核酸構築物)が本明細書に開示される。
【0170】
一部の実施形態では、標的化ベクターは、本明細書で上述したヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードするヒトTSLPヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPヌクレオチド配列は、配列番号3のアミノ酸29~159を含むポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒトTSLP核酸配列は、ヒトTSLP遺伝子の、成熟タンパク質配列の第1のアミノ酸をコードするコドン開始するエクソン1から、エクソン4における終止コドンまでを含む。
【0171】
一部の実施形態では、標的化ベクターは、本明細書に記載されるヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするヒトTSLPRヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、ヒトTSLPRヌクレオチド配列は、配列番号23のアミノ酸27~231を含むポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒトTSLPRヌクレオチド配列は、ヒトTSLPR遺伝子のエクソン2から最後の細胞外ドメインアミノ酸をコードするエクソン6のコドンまでを含む。
【0172】
一部の実施形態では、標的化ベクターは、本明細書で上述したヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするヒトIL7RAヌクレオチド配列を含む。一部の実施形態では、ヒトIL7RAヌクレオチド配列は、配列番号43のアミノ酸21~236を含むポリペプチドをコードする。一部の実施形態では、ヒトIL7RAヌクレオチド配列は、ヒトIL7RA遺伝子の成熟IL7RAタンパク質の第1のアミノ酸をコードするエクソン1におけるコドンから、エクソン5まで(及び一部の実施形態では、イントロン5の5’部分まで)を含む。
【0173】
標的化ベクターはまた、5’及び3’相同アームとしても知られる、組み込まれるヒトヌクレオチド配列に隣接する5’及び3’齧歯類配列を含み、これは、相同組換え及びヒトヌクレオチド配列の標的齧歯類座位(例えば、内因性齧歯類Tslp座位、内因性齧歯類Tslpr座位、又は内因性齧歯類Il7ra座位)への組み込みを媒介して、本明細書で上述したヒト化遺伝子を形成する。典型的には、5’及び3’の隣接齧歯類配列は、ヒトヌクレオチド配列によって置換されるべき対応する齧歯類ヌクレオチド配列に標的齧歯類座位で隣接する、ヌクレオチド配列である。一部の実施形態では、標的化ベクターは、本明細書で上述したヒト化遺伝子を含む。一部の実施形態では、標的化ベクターは、本明細書で上述したヒトTSLPヌクレオチド配列及び齧歯類Tslpヌクレオチド配列を含むヒト化Tslp遺伝子を含む。一部の実施形態では、標的化ベクターは、本明細書で上述したヒトTSLPRヌクレオチド配列及び齧歯類Tslpaヌクレオチド配列を含むヒト化Tslpr遺伝子を含む。一部の実施形態では、標的化ベクターは、本明細書で上述したヒトIL7RAヌクレオチド配列及び齧歯類Il7raヌクレオチド配列を含むヒト化Il7ra遺伝子を含む。
【0174】
一部の実施形態では、標的化ベクターは選択マーカー遺伝子を含む。選択マーカー遺伝子は、組み込まれるヒトゲノム配列のイントロンに挿入され得る。一部の実施形態では、選択マーカー遺伝子は、ヒトヌクレオチド配列の組み込みに成功した後に欠失させられ得る自動欠失カセットとして提供される。
【0175】
例示的な実施形態では、標的化ベクターは、細菌相同組換え及びVELOCIGENE(登録商標)技術を使用して齧歯類Tslp、Tslpr、又はIl7raゲノムDNAを保有する細菌人工染色体(BAC)クローンから生成される(例えば、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、U.S.6,586,251、及びValenzuela et al.(2003) Nature Biotech.21(6):652-659を参照されたい)。細菌相同組換えの結果として、齧歯類ゲノム配列は、BACクローンから欠失させられ、ヒトヌクレオチド配列が挿入され、その結果、5’及び3’齧歯類相同アームが隣接したヒトヌクレオチド配列を保持する改変BACクローンが得られる。一部の実施形態では、ヒトヌクレオチド配列は、cDNA配列又はヒトゲノムDNAであり得る。改変BACクローンは、直線化されると、齧歯類胚性幹(ES)細胞に導入することができる。
【0176】
一部の実施形態では、本発明は、改変齧歯類胚性幹(ES)細胞を作るための本明細書に記述された標的化ベクターの利用法を提供する。標的化ベクターは、例えばエレクトロポレーションによって齧歯類ES細胞に導入することができる。マウスES細胞とラットES細胞の両方が、共に当技術分野で説明されている。例えば、マウスES細胞、及び遺伝子改変マウスを作製するVELOCIMOUSE(登録商標)法について記述するUS 7,576,259、US 7,659,442、US 7,294,754、及びUS2008-0078000 A1(これらの全てはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)、ラットES細胞、及び遺伝子改変ラットを作製する方法について記述するUS 2014/0235933 A1(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.)、US 2014/0310828 A1(Regeneron Pharmaceuticals,Inc.)、Tong et al.(2010) Nature 467:211-215、及びTong et al.(2011) Nat Protoc.6(6):doi:10.1038/nprot.2011.338(これら全てはその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい、これらを使用して改変齧歯類胚を作製することができ、次いでこれを使用して齧歯類動物を作製することができる。
【0177】
一部の実施形態では、ゲノムに組み込まれた所望のヒトヌクレオチド配列(例えば、ヒトTSLP、ヒトTSLPR、又はヒトIL7RAヌクレオチド配列)を有するES細胞を選択することができる。一部の実施形態では、ES細胞は、齧歯類対立遺伝子の喪失及び/又はヒト対立遺伝子の獲得アッセイに基づいて選択される。一部の実施形態では、次いで選択されたES細胞を、ドナーES細胞として、VELOCIMOUSE(登録商標)法(例えば、それら全てがその全体が参照により組み込まれる、US 7,576,259、US 7,659,442、US 7,294,754、及びUS2008-0078000 A1を参照)、又は、両方ともその全体が参照により組み込まれる、US 2014/0235933 A1及びUS2014/0310828 A1に記載の方法を使用することにより、前桑実胚期の胚(例えば、8細胞期胚)への注入に使用する。一部の実施形態では、ドナーES細胞を含む胚はインキュベートし、代理母に移植して、F0齧歯類を産生する。ヒトヌクレオチド配列を保有する齧歯類の仔は、齧歯類対立遺伝子の喪失及び/又はヒト対立遺伝子の獲得アッセイを使用した、尾部断片から単離されたDNAの遺伝子型決定により特定することができる。
【0178】
一部の実施形態では、ヒト化遺伝子に対してヘテロ接合性の齧歯類を交雑させ、ホモ接合性齧歯類をする生成することができる。
【0179】
本明細書に記載されるヒト化齧歯類(すなわち、ヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、ヒト化Il7ra遺伝子、又はそれらの組み合わせを含む齧歯類)は、別の齧歯類と交配又は交雑させることができる。したがって、交配の方法並びにかかる交配から得られた子孫もまた、本開示の実施形態である。
【0180】
一部の実施形態では、本明細書で上述した第1の齧歯類、例えば、そのゲノムがヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、ヒト化Il7ra遺伝子、又はそれらの組み合わせを含む齧歯類を、第2の齧歯類と交配させて、ゲノムがヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、及び/又はヒト化Il7ra遺伝子を含む子孫齧歯類を得ることを含む方法が提供される。子孫は、交配で使用される第2の齧歯類から受け継ぐ他の望ましい表現型又は遺伝子改変を有してもよい。一部の実施形態では、子孫齧歯類は、第1の齧歯類からのヒト化遺伝子(又は複数の遺伝子)に対してヘテロ接合性である。一部の実施形態では、子孫齧歯類は、第1の齧歯類からのヒト化遺伝子に対してホモ接合性である。一部の実施形態では、交配に使用される第2の齧歯類は、ヒト化Sirpα遺伝子、RAG2-/-及びIL-2RG-/-、ヒト化Tpo遺伝子、又はヒト化GM-CSF/IL-3座位などの追加の遺伝子改変のうちの1つ以上を含む。
【0181】
一部の実施形態では、ゲノムがヒト化Tslp遺伝子、ヒト化Tslpr遺伝子、ヒト化Il7ra遺伝子、又はそれらの組み合わせを含む子孫齧歯類が提供され、この子孫齧歯類は、そのゲノムがヒト化遺伝子又は複数のヒト化遺伝子を含む第1の齧歯類を、第2の齧歯類と交配させることを含む方法によって産生される。一部の実施形態では、子孫齧歯類は、第1の齧歯類からのヒト化遺伝子(又は複数の遺伝子)に対してヘテロ接合性である。一部の実施形態では、子孫齧歯類は、第1の齧歯類からのヒト化遺伝子(又は複数の遺伝子)に対してホモ接合性である。
【0182】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類細胞を生成するためのインビトロでの方法が、本明細書に開示され、ヒトTSLPヌクレオチド配列の内因性齧歯類Tslp座位への組み込みを媒介する齧歯類相同アームが隣接する、ヒトTSLPタンパク質の成熟タンパク質配列の少なくとも実質的な部分をコードするヒトTSLP核酸配列を含む標的化ベクターを、齧歯類細胞に導入することを含み、その結果、齧歯類TslpゲノムDNAの、ヒトTSLP核酸配列による置換が生じ、本明細書に記載されるヒト化Tslp遺伝子が形成され、それによって遺伝子改変齧歯類細胞を生成する。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、齧歯類ES細胞であり、本方法は、遺伝子改変齧歯類ES細胞を生成する。
【0183】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類細胞を生成するためのインビトロ方法が、本明細書に開示され、ヒトTSLPRヌクレオチド配列の内因性齧歯類Tslpr座位への組み込みを媒介する齧歯類相同アームが隣接する、ヒトTSLPRタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするヒトTSLPR核酸配列を含む標的化ベクターを、齧歯類細胞に導入することを含み、その結果、齧歯類TslprゲノムDNAの、ヒトTSLPR核酸配列による置換が生じ、本明細書に記載されるヒト化Tslpr遺伝子が形成され、それによって遺伝子改変齧歯類細胞を生成する。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、齧歯類ES細胞であり、本方法は、遺伝子改変齧歯類ES細胞を生成する。
【0184】
一部の実施形態では、遺伝子改変齧歯類細胞を生成するためのインビトロ方法が、本明細書に開示され、ヒトIL7RAヌクレオチド配列の内因性齧歯類Il7ra座位への組み込みを媒介する齧歯類相同アームが隣接する、ヒトIL7RAタンパク質の細胞外ドメインの少なくとも実質的な部分をコードするヒトIL7RA核酸配列を含む標的化ベクターを、齧歯類細胞に導入することを含み、その結果、齧歯類Il7raゲノムDNAの、ヒトIL7RA核酸配列による置換が生じ、本明細書に記載されるヒト化Il7ra遺伝子が形成され、それによって遺伝子改変齧歯類細胞を生成する。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、マウス細胞又はラット細胞である。一部の実施形態では、齧歯類細胞は、齧歯類ES細胞であり、本方法は、遺伝子改変齧歯類ES細胞を生成する。
【0185】
ヒト化齧歯類を用いる方法
本明細書に開示される齧歯類は、特に、Th2駆動性アレルギー性疾患、喘息、がんなどのTSLPシグナル伝達に関連する疾患を含む、ヒト疾患治療に対する可能性のある化合物を同定し及び試験するための有用なインビボシステム及び生体材料の供給源を提供する。
【0186】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、例えば、ヒトTSLP、ヒトTSLPR、又はヒトIL7RAを標的とすることを介して、TSLPシグナル伝達を標的とする薬剤を開発するために使用される。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類は、ヒトTSLP、ヒトTSLPR、又はヒトIL7RAに特異的に結合する候補薬剤(例えば、抗体)をスクリーニング及び開発するために使用される。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、薬剤(例えば、抗体)の結合プロファイルを決定するために使用される。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、ヒトTSLP、ヒトTSLPR、又はヒトIL7RA活性を遮断又は調節する効果を測定するために使用される。一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、ヒトTSLPに結合してこれを阻害する候補薬剤に曝露され、ヒトTSLP依存性プロセスに対する効果について分析される。
【0187】
一部の実施形態では、本明細書に記載の遺伝子改変齧歯類は、アレルギー性疾患のモデルとして使用される。一部の実施形態では、アレルギー性疾患は気道炎症(例えば、喘息)が含まれる
【0188】
一部の実施形態では、肺炎症のova-ミョウバンモデルが、Tslpシグナル伝達を評価するために使用される。肺炎症のova-ミョウバンモデルは、当技術分野で十分に文書化されている(Al-Shami et al.,JEM Vol.202,No.6,829-839,2005、Chu et al.,J.Allergy Clin Immunol 2013;131:187-200、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる)。一部の実施形態では、水酸化アルミニウム中に乳化させたOVA、又は水酸化アルミニウム単独(対照として)を、齧歯類動物(例えば、本明細書に開示されるTslp、Tslpr、及び/又はIl7raのうちの1つ以上に関してヒト化されたマウスなどのマウス、又はヒト化されていない野生型マウス)に腹腔内投与する。次いで、マウスを、OVAを用いて鼻腔内にチャレンジし、続いて、例えば、血清ova特異的IgE及びova特異的-IgG1、杯細胞化生、及び/又は肺組織好酸球増多を含む、肺炎症を示すパラメータについて分析する。一部の実施形態では、喘息肺の気道に過剰に発現される代表的ムチン遺伝子であるMuc5acの肺発現は、チャレンジ後に分析され、杯細胞化生の代替エンドポイントとして供され得る。例示的なプロトコルでは、2mgの水酸化アルミニウム中に乳化させた50μgのOVA、又は2mgの水酸化アルミニウム単独を、齧歯類動物(例えば、1日目及び14日目に、Tslp及びTslprについて二重にヒト化されたマウス、Tslp、Tslpr、及びIl7raについて三重にヒト化されたマウス、又はヒト化されていない野生型マウスなどのマウス)に腹腔内投与する。麻酔をかけたマウスは、21日目から開始して、4日間、PBS中の150μgのOVAを用いて鼻腔内にチャレンジする。マウスを、最後のチャレンジから24時間後に、血清Ova特異的IgE及びOva特異的-IgG1、杯細胞化生、及び/又は肺組織好酸球増多ついて分析する。一部の実施形態では、喘息肺の気道に過剰に発現される代表的ムチン遺伝子であるMuc5acの肺発現が、チャレンジ後に分析され、杯細胞化生の代替エンドポイントとして供され得る。
【0189】
一部の実施形態では、気道炎症は、アレルゲン(例えば、イエダニ抽出物又は“HDM”モデル)の鼻腔内投与を1回以上の用量で一定期間行うことによって齧歯類に誘導させてもよく、気道炎症は、粘液蓄積、気管支肺胞洗浄液中の好酸球浸潤細胞、総循環IgEのレベル、及び/又はマイクロアレイ発現分析によって測定可能な発現プロファイルの変化に基づいて測定されてもよい。候補治療薬の効果は、ova-ミョウバンモデル又はHDMモデルのいずれかにおいて、薬剤の投与の結果として気道炎症の程度が軽減されるかどうかを測定することによって決定することができる。気道炎症を誘導するために使用されるアレルゲン及び試験される薬剤は、同時に又は異なる時期に投与できる。一部の実施形態では、アレルゲンは1回以上の投与で齧歯類に与えられ、試験される薬剤は、少なくとも1回のアレルゲン投与が齧歯類になされた後に齧歯類に投与される。
【0190】
一部の実施形態では、アレルギー性疾患は、皮膚炎症又はアトピー性皮膚炎が含まれる。皮膚に損傷を与え、損傷した皮膚をアレルゲン(例えば、細菌毒素又はイエダニ抽出物)に一定期間、1回以上の用量で曝露することによって齧歯類に皮膚炎症を誘導させることができる。薬剤の効果は、皮膚炎症(例えば、IgEレベル、そう痒症、表皮の肥厚、及びアトピー性皮膚炎の他の典型的な症状を評価することによって決定される)が、薬剤の投与の結果として軽減されるかどうかを測定することによって決定することができる。
【0191】
一部の実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、例えば、ヒトがん細胞を標的とする治療剤の有効性を評価するために、Th2駆動性がんなどのがんの動物モデルとして使用される。様々な実施形態では、本明細書に開示される齧歯類動物は、ヒトがん細胞が移植され、このようなヒトがん細胞を標的とする薬剤候補が齧歯類動物に投与される。薬剤の治療有効性は次に、薬剤投与後の齧歯類動物中のヒトがん細胞をモニタリングすることによって、例えば、齧歯類動物中のヒトがん細胞の増殖又は転移が、薬剤の投与の結果として阻害されるかどうかを評価することによって、決定される。齧歯類動物への移植に適したヒトがん細胞としては、例えば、とりわけ、乳がん細胞、肺がん細胞、膵がん細胞、結腸がん細胞、黒色腫が挙げられる。非ヒト動物で試験できる薬剤には、小分子化合物、すなわち1500kD、1200kD、1000kD、又は800ダルトン未満の分子量の化合物、及び大分子化合物(タンパク質など、例えば抗体)の両方を含み、これらはヒト細胞を標的化する(例えば、結合する及び/又は作用する)ことによって、ヒトの疾患及び状態の治療に対する治療効果を意図するものである。
【0192】
本説明は、以下の実施例によって更に説明されるが、これらは決して限定するものとして解釈されるべきではない。全ての引用参考文献(本出願全体で引用される文献参照、発行特許、及び公開された特許出願を含む)の内容は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例
【0193】
以下の実施例は、本明細書に請求される化合物、組成物、物品、デバイス、及び/又は方法がどのようになされて評価されるのかに関して、当業者に完全な開示及び説明を提供するように示されるものであり、単に例示的であることを意図しており、本開示を限定することを意図するものではない。
【0194】
実施例1 ヒト化Tslpマウスの生成
マウスTslp座位は、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用してヒト化された(例えば、米国特許第6,586,251号及びValenzuela et al.(2003) High-throughput engineering of the mouse genome couple with high-resolution expression analysis.Nat.Biotech.21(6):652-659を参照されたい。両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。得られたヒト化Tslp座位には、マウスTslpプロモーター、マウスTslpエクソン1、マウスTslpエクソン2の一部(エクソン2の5’末端からマウスTslpシグナルペプチドの最後のアミノ酸をコードするコドンまで)、ヒトTSLPエクソン1の一部(成熟ヒトTSLPタンパク質の第1のアミノ酸をコードするコドンから、エクソン1の3’末端まで)、から、ヒトTSLPエクソン4における終止コドンまで、その後にマウスTslp 3’ UTR及び下流のマウスゲノム配列が含まれていた。図1A図1Cを参照されたい。
【0195】
マウスTslp座位をヒト化するために、以下のマウス配列及びヒト配列に基づいて標的化核酸構築物を生成した:
【表4】
【表5-1】
【表5-2】
【0196】
標的化核酸構築物は5’から3’まで以下を含有した:
(i)成熟マウスTslpタンパク質の第1のアミノ酸をコードする、マウスTslpエクソン2のコドンの114.3kb 上流の5’マウス相同アーム、図1B参照、
(ii)成熟ヒトTSLPタンパク質(アミノ酸29)の第1のアミノ酸をコードするヒトTSLPエクソン1におけるコドンから始まり、ヒトTSLPエクソン3の終わり後257bpで終わる、「ヒトゲノム断片1」として指定される、1.9kbのヒトTSLPゲノム配列、図1B参照、
(iii)ヒトTSLPのイントロン3に挿入された、4.4kbの「Floxed HUb-Puro」(LoxP部位に隣接する、ヒトユビキチンプロモーターに作動可能に連結されたピューロマイシン耐性遺伝子)として指定される選択カセット、図1B参照、
(iv)ヒトTSLPエクソン3の終わり後258bpから始まり、ヒトTSLPエクソン4における終止コドンで終わる、「ヒトゲノム断片2」として指定される、2.2kbのヒトTSLPゲノム配列、図1B参照、及び
(v)マウスTslpエクソン5の3’UTR配列及び下流マウスゲノム配列を含む、約65.3kbの3’マウス相同アーム、図1B参照。
【0197】
標的化核酸構築物を、F1H4マウス胚性幹(ES)細胞にエレクトロポレーションした。組み込みの成功は、例えば、上記のValenzuela et al.に記載される対立遺伝子改変(MOA)アッセイによって確認された。ヒトTSLP配列の存在を検出し、マウスTslp配列の喪失及び/又は保持を確認するためにMOAアッセイに使用されるプライマー及びプローブを表6に示し、それらの位置を図1Bに示す。
【表6-1】
【表6-2】
【0198】
適正に標的化されたES細胞クローンを選択した後、ピューロマイシン選択カセットを切除した。ヒト化Tslp遺伝子のコード配列及びコードされるアミノ酸配列を、それぞれ配列番号6及び配列番号5に記載する。マウスTslp(配列番号1)、ヒトTSLP(配列番号3)、及びヒト化Tslp(配列番号5)タンパク質配列のアラインメントを図1Fに提供する。
【0199】
ポジティブに標的化されたES細胞をドナーES細胞として使用し、VELOCIMOUSE(登録商標)法により、前桑実胚(8細胞)期のマウス胚に顕微注入した(例えば、US 7,576,259、US 7,659,442、US 7,294,754、及びUS2008-0078000 A1を参照されたい、これらの全てが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ドナーES細胞を含むマウス胚をインビトロでインキュベートし、次に代理母に移植して、完全にドナーES細胞に由来するF0マウスを産生した。ヒト化Tslp遺伝子を保有するマウスを、上述のMOAアッセイを使用した遺伝子型決定により同定した。ヒト化Tslp遺伝子に対してヘテロ接合性のマウスを、ホモ接合性になるまで交配させた。
【0200】
Tslpヒト化に対してホモ接合性のマウスがヒト化Tslpタンパク質を発現したかどうかを決定するために、マウスを安楽死させ、心臓穿刺を介して採血した。血液を血清分離管に収集し、血清を調製した。血清中のヒトTSLPレベルを、製造業者の指示に従って、Human Quantikine TSLP ELISA(R&Dシステム、カタログ番号DTSLP0)を使用して決定した。ELISAの種特異性を検証するために、1000pg/mLの組換えマウスTslp(R&Dシステムカタログ番号555-TS-010)も、陰性対照として使用し(データは示さず)、正常なヒト血清(NHS)を陽性対照として使用した。上記のTslpヒト化に対してヘテロ接合性のマウスは、血清中で成熟ヒトTSLPを発現することが見出された(図1G)。
【0201】
実施例2.ヒト化Tslprマウスの生成
マウスTslpr座位は、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用してヒト化された(例えば、米国特許第6,586,251号及びValenzuela et al.(2003) High-throughput engineering of the mouse genome couple with high-resolution expression analysis.Nat.Biotech.21(6):652-659を参照されたい。両方とも参照により本明細書に組み込まれる)。得られたヒト化Tslpr座位には、マウスTslprプロモーター、マウスTslprエクソン1(5’UTR、及びマウスTslprシグナルペプチドをコードする配列及びマウスTslpr成熟タンパク質の第1の7アミノ酸を含む)、マウスTslprイントロン1の一部(エクソン2の前に最大328bp)、ヒトTSLPRイントロン1の一部(エクソン2の前に909bpから始まる)、ヒトTSLPRエクソン2からエクソン6の最初の47bp(実質的にヒトTSLPR細胞外ドメイン、すなわち、アミノ酸27から膜貫通ドメインの直前までをコードする)、マウスTslprエクソン6の48番目のbpから始まりエクソン8まで(マウスTslpr膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインをコードし、マウスTslpr 3’UTRを含む)、その後に下流のマウスゲノム配列が含まれていた。図2A図2Cを参照されたい。
[0207] マウスTslpr座位をヒト化するために、以下の配列情報に基づいて標的化核酸構築物を生成した:
【表7】
【表8】
【0202】
標的化核酸構築物は5’から3’まで以下を含有した:
(i)マウスTslprエクソン2の前の約29.1kb~最大328bpの5’マウス相同アーム、図2B参照、
(ii)LoxP部位に隣接する、ヒトユビキチンプロモーターに作動可能に連結されたネオマイシン耐性遺伝子を含有する自動欠失選択カセット(「Floxed HUb-Neo」)、図2B参照、
(iii)ヒトTSLPRのエクソン2の前の909 bpから始まり、エクソン6の最初の47 bpまでの、実質的にヒトTSLPR細胞外ドメイン、すなわちアミノ酸27からアミノ酸231(ヒトTSLPRにおいて:シグナルペプチドを構成するアミノ酸1~22、及び膜貫通ドメインを構成するアミノ酸232~252)をコードする、13743bpのヒトTSLPR核酸配列、図2B参照、及び
(iv)エクソン6の48番目のbpから始まり、エクソン8までの、マウスTslpr膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインをコードし、マウスTslpr 3’ UTRとその後に下流マウスゲノム配列を含む、約133.2kbの3’マウス相同アーム、図2B参照。
【0203】
標的化核酸構築物を、マウス胚性幹(ES)細胞にエレクトロポレーションした。組み込みの成功は、例えば、上記のValenzuela et al.に記載される対立遺伝子改変(MOA)アッセイによって確認された。ヒトTSLPR配列の存在を検出し、マウスTslpr配列の喪失及び/又は保持を確認するためにMOAアッセイに使用されるプライマー及びプローブを表9に示し、それらの位置を図2Bに示す。適正に標的化されたES細胞クローンを選択した後、ネオマイシン選択カセットを切除できる。カセットを有する、及び有さない標的(ヒト化)Tslpr対立遺伝子のゲノム配列を、配列番号63及び64にそれぞれ記載する。ヒト化Tslpr遺伝子のコード配列及びコードされるアミノ酸配列を、それぞれ配列番号26及び配列番号25に記載する。マウスTslpr(配列番号21)、ヒトTSLPR(配列番号23)、及びヒト化Tslpr(配列番号25)タンパク質配列のアラインメントを図2Fに提供する。
【表9-1】
【表9-2】
【0204】
ポジティブに標的化されたES細胞をドナーES細胞として使用し、VELOCIMOUSE(登録商標)法により、前桑実胚(8細胞)期のマウス胚に顕微注入した(例えば、US 7,576,259、US 7,659,442、US 7,294,754、及びUS2008-0078000 A1を参照されたい、これらの全てが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ドナーES細胞を含むマウス胚をインビトロでインキュベートし、次に代理母に移植して、完全にドナーES細胞に由来するF0マウスを産生した。ヒト化Tslpr遺伝子を保有するマウスを、上述のMOAアッセイを使用した遺伝子型決定により同定した。ヒト化Tslpr遺伝子に対してヘテロ接合性のマウスを、ホモ接合性になるまで交配させた。
【0205】
実施例3.ヒト化Il7raマウスの生成
マウスIl7ra座位は、VELOCIGENE(登録商標)技術を使用してヒト化された(例えば、米国特許第6,586,251号及びValenzuela et al.(2003)High-throughput engineering of the mouse genome couple with high-resolution expression analysis.Nat.Biotech.21(6):652-659を参照されたい。両者とも参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。得られたヒト化Il7ra座位には、マウスIl7raプロモーター、マウスIl7raエクソン1の一部(5’UTR及び開始コドンから始まる最初の68bpを含み、マウスIl7raシグナルペプチドとマウスIl7ra成熟タンパク質の最初の3アミノ酸とをコードする)、ヒトIL7RAエクソン1の一部(エクソン1の最後の14bp)、ヒトIL7RAイントロン1、ヒトIL7RAエクソン2からエクソン5、ヒトIL7RAイントロン5の一部、マウスIl7raイントロン5の一部、マウスIl7raエクソン6からエクソン8まで(マウスIl7ra細胞外ドメインの最後の2つのアミノ酸、マウスIl7raの膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインをコードし、マウスIl7ra 3’UTRを含む)が含まれていた。図3A図3Fを参照されたい。
【0206】
マウスIl7ra座位をヒト化するために、以下の配列情報に基づいて標的化核酸構築物を生成した:
【表10】
【表11】
【0207】
標的化核酸構築物は5’から3’まで以下を含有した:
(i)約48.8kbまでの5’マウス相同アーム(マウスIl7ra 5’配列からエクソン1の一部まで、すなわち、5’UTR及び開始コドンから始まる最初の68bp)、図3B及び図3E参照、
(ii)126bpのヒトゲノム断片1(配列番号69)(これにはヒトIL7RAのエクソン1の最後の14bp及びイントロン1の最初の112bpが含まれる)、図3B及び図3E参照、
(iii)LoxP部位に隣接する、ヒトユビキチンプロモーターに作動可能に連結されたハイグロマイシン耐性遺伝子を含有する約5.2kbの自動欠失選択カセット(「Floxed HUb-Hyg」)、図3B参照、
(iv)ヒトIL7RAのイントロン1の3’部分、エクソン2からエクソン5及びイントロン5の5’部分を含む、17106bpのヒトゲノム断片2、図3B参照、及び
(v)マウスIl7raのイントロン5の3’部分、エクソン6からエクソン8まで(マウスIl7ra 3’ UTRを含む)、その後に下流マウスゲノム配列が含まれる、約124.3kbの3’マウス相同、図3B及び3F参照。マウスIl7raのエクソン6からエクソン8は、マウスIl7raの細胞外ドメインの最後の2つのアミノ酸(Gly-Trp)、膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインをコードする。
【0208】
標的化核酸構築物を、F1H4マウス胚性幹(ES)細胞にエレクトロポレーションした。組み込みの成功は、例えば、上記のValenzuela et al.に記載される対立遺伝子改変(MOA)アッセイによって確認された。ヒトIL7RA配列の存在を検出し、マウスIl7ra配列の喪失及び/又は保持を確認するためにMOAアッセイに使用されるプライマー及びプローブを表12に記載し、それらの位置を図3Bに示す。適正に標的化されたES細胞クローンを選択した後、ハイグロマイシン選択カセットを切除できる。カセットを有する、及び有さない標的(ヒト化)Il7ra対立遺伝子のゲノム配列を、配列番号65及び66にそれぞれ記載する。ヒト化Il7ra遺伝子のコード配列及びコードされたアミノ酸配列を、それぞれ配列番号46及び配列番号45に記載する。マウスIl7ra(配列番号41)及びヒトIL7RA(配列番号43)タンパク質配列のアラインメントを図3Fに提供する。
【表12】
【0209】
ポジティブに標的化されたES細胞をドナーES細胞として使用し、VELOCIMOUSE(登録商標)法により、前桑実胚(8細胞)期のマウス胚に顕微注入した(例えば、US 7,576,259、US 7,659,442、US 7,294,754、及びUS2008-0078000 A1を参照されたい、これらの全てが参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。ドナーES細胞を含むマウス胚をインビトロでインキュベートし、次に代理母に移植して、完全にドナーES細胞に由来するF0マウスを産生した。ヒト化Il7ra遺伝子を保有するマウスを、上述のMOAアッセイを使用した遺伝子型決定により同定した。ヒト化Il7ra遺伝子に対してヘテロ接合性のマウスを、ホモ接合性まで交配させた。
【0210】
実施例4.野生型、二重ヒト化マウス(Tslp hu/hu/Tslpr hu/hu 及び三重ヒト化マウス(Tslp hu/hu/Tslpr hu/hu/Il7rahu/hu)におけるOva-ミョウバン誘導性2型駆動性炎症(type 2 driven inflammation)
種々のヒト化マウス系統が、2型駆動性炎症のモデルにおいて同等の病理を有することを確認するために、TSLPの役割が以前に報告されているオボアルブミン(OVA)/ミョウバン(alum)誘導性肺炎症モデルが採用された(Chu,et al.,J Allergy Clin Immunol 2013;131:187-200.e1-8、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。従来の2型炎症のエンドポイント、例えば循環レベルの抗原特異的IgE及びIgG1、肺組織好酸球浸潤及び喘息肺の気道に過剰発現される代表的なムチン遺伝子、Muc5acの肺発現、並びに杯細胞化生(GCM)の代替エンドポイント(Wills-Karp,et al.,Science 1998; 282:2258-61、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)を、マウスの3系統:野生型マウス(WT)、二重ヒト化マウス(Tslphu/hu/Tslprhu/hu)、及び三重ヒト化マウス(Tslphu/hu/Tslprhu/hu/IL7Rhu/hu)で評価した。Tslp分子、Tslpr分子、及びIL7R分子の各々に対するヒト化は、それぞれ実施例1、2及び3に記載される通りである。
【0211】
肺は高度に血管形成された器官であるため、好酸球をゲーティングする前に、肺を浸潤する細胞(肺組織)を、肺血管系を循環する細胞(肺循環)とCD45ベースの血管内標識技術(Anderson,et al.,Nat Protoc 2014;9:209-22、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる)を使用して区別した。予想通り、TSLP/OVA投与は、マウス系統全体にわたって同等のレベルで肺組織好酸球の増加を誘導した(図4A)。更に、TSLP/OVAは、同等のレベルのMuc5acの肺発現(図4B)並びに同等レベルのOva特異的IgE(図 4C)及びOva特異的IgG1(図 4D)の循環レベルを誘導した。
【0212】
方法
Ova-ミョウバン誘導性肺炎症。2mgの水酸化アルミニウム(Sigma Aldrich)で乳化させた50μgのOVA(グレードV、Sigma Aldrich)又は2mgの水酸化アルミニウム単独を、1日目と14日目にWT Balb/cマウスに腹腔内投与した。麻酔をかけたマウスは、21日目から開始して、4日間、20μLのPBS中の150μgのOVA(グレードIII、Sigma Aldrich)を用いて鼻腔内にチャレンジした。最後のチャレンジの24時間後にマウスを分析した。
【0213】
研究の終わりに、マウスを屠殺し、肺組織中の好酸球浸潤、リアルタイムqPCRによる肺遺伝子発現、及び循環血清免疫グロブリンレベルの分析のために血液及び肺を収集した。
【0214】
フローサイトメトリー分析。肺の循環免疫細胞と組織浸潤免疫細胞のフローサイトメトリー分析を可能にするために、屠殺の5分前にマウスに抗CD45 BV650抗体(BD Biosciences)を静脈内注射して、肺実質に浸潤した細胞を標識されないままにしつつ、血管系にまだある免疫細胞を選択的に標識した。マウス尾側肺葉を消化し、リベラーゼTH(Roche)及びDNase I(Roche)の溶液を使用して単細胞懸濁液を調製し、続いて機械的解離を行った。次いで、細胞をLIVE/DEAD Fixable Dead Cell Stain(BD Biosciences)で染色し、死細胞を除去し、その後、以下に対する抗体で処理した:CD45、CD26、Siglec-F、Ly6G、Ly6C、CD11b、CD19、SIRPα、CD23、CD127、Sca-1、CD44、CD4、CD8、TCRb、CD69 CD62L(BD Biosciences);CD64、XCR1、I-A/I-E、CD11c、CD301b(Biolegend);MerTK、ST2((eBioscience)。試料は、HTSアタッチメント(BD)を使用する、LSR FortessaX-20又は FACSymphony cellアナライザーで取得した。FlowJov10 Software(BD)を使用してデータ分析を行った。
【0215】
血清IgE及び抗原特異的IgE又はIgG1の測定。全血をMicrotainer SST血清チューブに収集し、4℃、15,000gで10分間遠心分離することによってペレット化した。血清サンプルを使用して濃度を決定した:IgEサンドイッチELISA OptEIAキット(BD Biosciences社)による総IgE濃度、間接ELISA(Chondrex社)による総抗Ova IgE及び抗Ova IgG1濃度、サンドイッチELISA(Chondrex社)による総抗HDM IgE、及び社内サンドイッチELISAによる総抗HDM IgG1力価。全てのELISAキットについて、製造業者の指示に従った。
【0216】
Muc5acの測定。肺Muc5ac遺伝子発現は、リアルタイムqPCRによって採取された肺組織で検出され、ハウスキーピング遺伝子対して正規化された。簡潔に述べると、試験の最後に、マウスを放血させ、各マウスから右肺の副葉を取り出し、その後400μLのRNAを含有するチューブに入れ、-20℃で保存した。全ての試料をTRIzol中でホモジナイズし、相分離にクロロホルムを使用した。総RNAを含有する水相を、製造業者の仕様書に従って、Microarrays Total RNA Isolation Kit(Life TechnologiesによるAmbion)用のMagMAX(商標)-96を使用して精製した。ゲノムDNAを、RNase-Free DNase Set(Qiagen社)を使用して除去した。SuperScript(登録商標)VILO(商標)Master Mix(Life TechnologiesによるInvitrogen )を使用して、mRNAをcDNAに逆転写した。cDNAを2ng/uLに希釈し、10ng cDNAを、ABI 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems)を使用してSensiFAST Probe Hi-ROX(Meridian)により増幅した。内部標準のハウスキーピング遺伝子を使用して、cDNAインプットの差異を標準化した。対照マウスに対する肺組織mRNA発現レベルの倍率変化を測定し、ハウスキーピングmRNA発現に対して表した。
【表13】
【0217】
結論
Ova-ミョウバンモデルは、肺好酸球浸潤、肺遺伝子発現分析、及び循環抗体抗体レベルの分析に基づき、二重ヒト化マウス(Tslphu/hu/Tslprhu/hu)及び三重ヒト化マウス(Tslphu/hu/Tslprhu/hu/Il7rahu/hu)において、同程度のレベルの2型駆動性炎症を誘導した。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図1-6】
図1-7】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図3-6】
図3-7】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図4-4】
図4-5】
【配列表】
2024500153000001.app
【国際調査報告】