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特表2024-500157正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20231222BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231222BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538025
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 KR2021019440
(87)【国際公開番号】W WO2022139387
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】10-2020-0179684
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】592000691
【氏名又は名称】ポスコホールディングス インコーポレーティッド
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】511038879
【氏名又は名称】ポスコ ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ソン、 ジュン フン
(72)【発明者】
【氏名】ナム、 サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】イ、 サンヒョク
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 クォン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】パク、 インチョル
(72)【発明者】
【氏名】クウォン、 オーミン
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
5H050AA05
5H050AA07
5H050AA08
5H050BA17
5H050CA08
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050CB29
5H050HA02
5H050HA13
(57)【要約】
本開示は、正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関する。一実施例によれば、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む金属酸化物粒子、および前記金属酸化物粒子にドーピングされた5種のドーピング元素を含むリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む金属酸化物粒子;および
前記金属酸化物粒子にドーピングされた5種のドーピング元素
を含むリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記5種のドーピング元素は、Al、Nb、B、ZrおよびTiである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記Alのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.006モル乃至0.029モルである、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記Nbのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.00025モル乃至0.005モルである、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記Bのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.001モル乃至0.015モルである、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記Zrのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.001モル乃至0.007モルである、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記Tiのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.0002モル乃至0.0015モルの範囲である、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記Nb、AlおよびZrのドーピング量は、下記式1の関係を満たすものである、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[式1]
4<([Zr]+[Al])/[Nb]<210
(式1で、[Nb]、[Al]および[Zr]は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルを基準にした各元素のドーピング量を意味する)
【請求項9】
前記Nb、TiおよびBのドーピング量は、下記式2の関係を満たすものである、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[式2]
3<([B]+[Ti])/[Nb]<120
(式2で、[Nb]、[Ti]および[B]は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルを基準にした各元素のドーピング量を意味する。)
【請求項10】
前記正極活物質は、下記化学式1で表されるものである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
[化学式1]
Li[NiCoMn1-t(AlNbZrTi2-pX2
(前記化学式1で、
Xは、F、N、およびPを含む群より選択された一つ以上の元素であり、
aは、0.8≦a≦1.3であり、
tは、0.008≦t≦0.05であり、
0.6≦x≦0.95、0<y≦0.2、0<z≦0.2、0.006≦h≦0.025、0.00025≦i≦0.005、0.001≦j≦0.007、0.006≦k≦0.029、0.0002≦m≦0.015、0≦p≦0.02である。)
【請求項11】
前記正極活物質の初期拡散係数は、6.91*10-9/sec乃至7.58*10-9/sec範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項12】
前記金属酸化物粒子の結晶粒サイズは、1,036Å乃至1,440Å範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項13】
前記金属酸化物粒子の(110)面に対する半値幅(FWHM)値は、0.126乃至0.204範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項14】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、X線回折パターンの測定時、
(104)面のピーク強度に対する(003)面のピーク強度比であるI(003)/I(104)は、1.186乃至1.204範囲である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項15】
前記金属酸化物粒子でニッケルの含有量は、
前記ニッケル、コバルトおよびマンガンの総和1モルを基準に、0.8モル以上である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項16】
請求項1乃至15のいずれか一項に記載の正極活物質を含む正極;
負極;および
非水電解質
を含むリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、電気自動車の爆発的な需要増大と走行距離増大要求に応えてこれに適用させることができる高容量および高エネルギー密度を有する二次電池の開発が全世界的に活発に行われている。
【0003】
特に、このような高容量電池を製造するためには、高容量の正極活物質を使用しなければならない。そこで、高容量の正極活物質としてニッケルの含有量が高いニッケルコバルトマンガン系正極活物質を適用する方法が提案されている。
【0004】
しかし、ニッケルの含有量が高いニッケルコバルトマンガン系正極活物質は、ニッケル含有量の増加により結果的に、1)容量減少による効率減少、2)表面酸素発生によるNiO岩塩構造状の形成およびサイクル特性低下、および3)抵抗増加などの問題点が現れるようになる。
【0005】
したがって、ニッケル含有量が高いニッケルコバルトマンガン系正極活物質の問題点を解決することができる正極活物質の開発が至急である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本開示の目的は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む金属酸化物粒子に5種の元素をドーピングすることによってニッケル含有量が高い正極活物質で現れる性能低下の問題点を解決すると同時に、電気化学的特性を顕著に改善することができる正極活物質およびこれを含むリチウム二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む金属酸化物粒子、および前記金属酸化物粒子にドーピングされた5種のドーピング元素を含むことができる。
【0008】
前記5種のドーピング元素は、Al、Nb、B、ZrおよびTiであり得る。
【0009】
本実施形態で、前記Alのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.006モル乃至0.029モルの範囲であり得る。
【0010】
前記Nbのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.00025モル乃至0.005モルの範囲であり得る。
【0011】
前記Bのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.001モル乃至0.015モルの範囲であり得る。
【0012】
前記Zrのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.001モル乃至0.007モルの範囲であり得る。
【0013】
前記Tiのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.0002モル乃至0.0015モルの範囲であり得る。
【0014】
前記Nb、AlおよびZrのドーピング量は、下記式1の関係を満たすものであり得る。
【0015】
[式1]
4<([Zr]+[Al])/[Nb]<210
(式1で、[Nb]、[Al]および[Zr]は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルを基準にした各元素のドーピング量を意味する)
前記Nb、TiおよびBのドーピング量は、下記式2の関係を満たすものであり得る。
【0016】
[式2]
3<([B]+[Ti])/[Nb]<120
(式2で、[Nb]、[Ti]および[B]は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルを基準にした各元素のドーピング量を意味する)
前記正極活物質は、下記化学式1で表されるものであり得る。
【0017】
[化学式1]
Li[NiCoMn1-t(AlNbZrTi2-pX2
(前記化学式1で、
Xは、F、N、およびPを含む群より選択された一つ以上の元素であり、
aは、0.8≦a≦1.3であり、
tは、0.008≦t≦0.05であり、
0.6≦x≦0.95、0<y≦0.2、0<z≦0.2、0.006≦h≦0.025、0.00025≦i≦0.005、0.001≦j≦0.007、0.006≦k≦0.029、0.0002≦m≦0.015、0≦p≦0.02である。)
前記正極活物質の初期拡散係数は、6.91*10-9/sec乃至7.58*10-9/sec範囲であり得る。
【0018】
前記金属酸化物粒子の結晶粒サイズは、1,036Å乃至1,440Å範囲であり得る。
【0019】
前記金属酸化物粒子の(110)面に対する半値幅(FWHM)値は、0.126乃至0.204範囲であり得る。
【0020】
前記リチウム二次電池用正極活物質は、X線回折パターンの測定時、(104)面のピーク強度に対する(003)面のピーク強度比であるI(003)/I(104)は、1.186乃至1.204範囲であり得る。
【0021】
前記金属酸化物粒子でニッケルの含有量は、前記ニッケル、コバルトおよびマンガンの総和1モルを基準に、0.8モル以上であり得る。
【0022】
他の実施形態によるリチウム二次電池は、一実施形態による正極活物質を含む正極、負極、および非水電解質を含むことができる。
【発明の効果】
【0023】
本開示による正極活物質は、NCM金属酸化物粒子に少なくとも5種の元素をドーピングすることによってこれを適用する場合、リチウム二次電池の容量を増加させながらも、常温および高温寿命特性、初期効率、初期抵抗、抵抗増加率および熱安定性を顕著に向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
第1、第2および第3などの用語は、多様な部分、成分、領域、層および/またはセクションを説明するために使用されるが、これらに限定されない。これら用語は、ある部分、成分、領域、層またはセクションを他の部分、成分、領域、層またはセクションと区別するためだけに使用される。したがって、以下で叙述する第1部分、成分、領域、層またはセクションは、本発明の範囲を逸脱しない範囲内で第2部分、成分、領域、層またはセクションと言及され得る。
【0025】
ここで使用される専門用語は、単に特定の実施形態を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。ここで使用される単数の形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数の形態も含む。明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分の存在や付加を除外させるものではない。
【0026】
ある部分が他の部分の「上に」あると言及する場合、これは直ちに他の部分の上にあるか、またはその間に他の部分が介され得る。対照的に、ある部分が他の部分の「真上に」あると言及する場合、その間に他の部分が介されない。
【0027】
異なって定義しなかったが、ここで使用される技術用語および科学用語を含む全ての用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が一般的に理解する意味と同一の意味を有する。通常使用される辞書に定義された用語は、関連技術文献と現在開示された内容に符合する意味を有すると追加解釈され、定義されない限り、理想的または非常に公式的な意味に解釈されない。
【0028】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、ニッケル、コバルトおよびマンガンを含む金属酸化物粒子、および前記金属酸化物粒子にドーピングされた5種のドーピング元素を含むことができる。
【0029】
このとき、前記5種のドーピング元素は、Al、Nb、B、ZrおよびTiであり得る。
【0030】
リチウム金属酸化物をドーピングして寿命および多様な電気化学的性能を確保するためには、ドーピング元素の選定が重要である。現在まで知られたドーピング元素としては、例えば、Ag、Naのような1価イオン(mono-valent)とCo2+、Cu2+、Mg2+、Zn2+、Ba2+、Al3+、Fe3+、Cr3+、Ga3+、Zr4+、Ti4+のような2価以上の多価イオン(multi-valent)などがある。このような元素別に電池の寿命および出力特性に及ぼす影響が異なる。
【0031】
本実施形態では、このようなドーピング元素中にAl、Nb、B、ZrおよびTiを含むことによって、高容量を確保しながらも、常温および高温寿命特性と熱安定性を向上させ、初期抵抗特性および抵抗増加率を顕著に減少させることができる。
【0032】
具体的に、Ti4+は、NCM層状構造内にドーピングされる場合、Ni2+がLiサイトに移動することを抑制させて正極活物質の構造を安定化させることができる。
【0033】
また、Al3+は、Alイオンが正方晶系格子サイト(tetragonal lattice site)に移動して層状構造がスピネル構造に劣化することを抑制する。層状構造は、Liイオンの脱、挿入が容易であるが、スピネル構造はLiイオンの移動が円滑でない。
【0034】
Zr4+は、ZrイオンがLiサイト(site)を占めるため、一種のピラー(pillar)の役割を果たすようになり、充放電過程中のリチウムイオン経路(lithium ion path)の収縮を緩和させて層状構造の安定化をもたらすようになる。このような現象は、つまり、カチオンミキシング(cation mixing)を減少させ、リチウム拡散係数(lithium diffusion coefficient)を増加させてサイクル寿命を増加させることができる。
【0035】
また、Nbは、初期容量および初期効率を改善することができる。
【0036】
前記ドーピング元素と共にB(Boron)をドーピングする場合、正極活物質の焼成時、結晶粒サイズを減少させて初期抵抗を減少させることができる。また、寿命特性および熱分解温度を増加させることができる。
【0037】
本実施形態で前記Alのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.006モル乃至0.029モル、より具体的に、0.0085モル乃至0.025モルの範囲であり得る。Alの含有量が前記範囲を満たす場合、初期効率および熱安定性に優れ、常温寿命および高温寿命が顕著に向上したリチウム二次電池を実現することができる。
【0038】
次に、前記Nbのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.00025モル乃至0.005モル、より具体的に、0.0005モル乃至0.0025モルの範囲であり得る。Nbのドーピング量が前記範囲を満たす場合、リチウム二次電池の常温寿命、高温寿命、抵抗増加率および平均漏れ電流値を全て向上させることができるという点から非常に有利な効果を実現することができる。また、リチウム二次電池の拡散係数が増加し、インピーダンス分析時に抵抗増加率を効果的に低減させることができる。
【0039】
Bのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.001モル乃至0.015モル、より具体的に、0.005モル乃至0.01モルの範囲であり得る。Bのドーピング量が前記範囲を満たす場合、正極活物質の焼成時、結晶粒サイズを減少させるため、初期抵抗値を減少させることができ、常温および高温寿命特性および熱分解温度を増加させることができる。
【0040】
次に、前記Zrのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.001モル乃至0.007モル、より具体的に、0.002モル乃至0.005モルまたは0.0035モル乃至0.005モルの範囲であり得る。Zrドーピング量が前記範囲を満たす場合、リチウム二次電池の高温寿命および常温寿命特性を顕著に向上させることができる。
【0041】
前記Tiのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.0002モル乃至0.0015モルの範囲であり、具体的に0.0005モル乃至0.001モルの範囲であり得る。Tiのドーピング量が前記範囲を満たす場合、優れた放電容量および効率を確保することができ、常温および高温寿命特性を向上させることができ、抵抗増加率および平均漏れ電流値を減少させることができる。
【0042】
本実施形態で前記Nb、AlおよびZrのドーピング量は、下記式1の関係を満たすものであり得る。
【0043】
[式1]
4<([Zr]+[Al])/[Nb]<210
式1で、[Nb]、[Al]および[Zr]は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルを基準にした各元素のドーピング量を意味する。
【0044】
より具体的に、式1は、5以上および70以下の範囲であり得、または10以上および50以下の範囲であり得る。
【0045】
式1が前記範囲を満たす場合、構造安定性が改善されてサイクル特性および初期抵抗増加率が改善される。
【0046】
一方、前記Nb、TiおよびBのドーピング量は、下記式2の関係を満たすものであり得る。
【0047】
[式2]
1<([B]+[Ti])/[Nb]<40
式2で、[Nb]、[Ti]および[B]は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルを基準にした各元素のドーピング量を意味する。
【0048】
より具体的に、式2は、2以上および30以下の範囲であり得、または3以上および15以下の範囲であり得る。
【0049】
式2が前記範囲を満たす場合、初期抵抗、初期容量およびヨル安定性が改善される。
【0050】
本実施形態のリチウム二次電池用正極活物質は、下記化学式1で表され得る。
【0051】
[化学式1]
Li[NiCoMn1-t(AlNbZrTi2-pX2
前記化学式1で、
Xは、F、N、およびPを含む群より選択された一つ以上の元素であり、
aは、0.8≦a≦1.3であり、
tは、0.008≦t≦0.05であり、
0.6≦x≦0.95、0<y≦0.2、0<z≦0.2、0.006≦h≦0.025、0.00025≦i≦0.005、0.001≦j≦0.007、0.006≦k≦0.029、0.0002≦m≦0.015、0≦p≦0.02である。
【0052】
また、前記金属酸化物粒子でニッケルの含有量は、前記ニッケル、コバルトおよびマンガンの総和1モルを基準に、0.8モル以上および0.99モル以下であり得、より具体的に、0.85モル乃至0.99モルの範囲であり得る。
【0053】
本実施形態のように金属酸化物内のニッケルの含有量が、ニッケル、コバルトおよびマンガンの総和1モルに対して0.8モル以上である場合、高出力特性を有する正極活物質を実現することができる。このような組成を有する本実施形態の正極活物質は、体積当たりのエネルギー密度が高くなるため、これを適用する電池の容量を向上させることができ、電気自動車用として使用するにも適する。
【0054】
一方、本実施形態による正極活物質の初期拡散係数は、6.91*10-9/sec乃至7.58*10-9/sec範囲、より具体的に7.03*10-9/sec乃至7.58*10-9/sec、より好ましくは7.33*10-9/sec乃至7.58*10-9/sec範囲であり得る。初期拡散係数が前記範囲を満たす場合、正極活物質内のLiイオンの移動が効果的であり、これによって正極材の初期容量およびレート特性が高くなる。反面、拡散係数が6.91*10-9/sec未満である場合、正極活物質内の抵抗が高くなり、これによってサイクル特性が大幅に低減するようになる。拡散係数が7.58*10-9/secを超える場合には、抵抗が改善されて容量改善効果はよいが、構造的に不安定性が高くなってサイクル特性が悪くなる。
【0055】
次に、前記金属酸化物粒子の結晶粒サイズは、1,036Å乃至1,440Å範囲、より具体的に1,036Å乃至1,086Å範囲であり得る。結晶粒サイズが前記範囲を満たす場合、初期容量の低減なしに高温寿命が改善される。
【0056】
また、前記金属酸化物粒子の(110)面に対する半値幅(FWHM)値は、0.126乃至0.204範囲、より具体的に0.170乃至0.204範囲であり得る。(110)面に対する半値幅(FWHM)値が前記範囲を満たす場合、高温寿命が大幅に向上する特性を有するようになる。
【0057】
本実施形態の正極活物質は、X線回折パターンの測定時、(104)面のピーク強度に対する(003)面のピーク強度比であるI(003)/I(104)は、1.186乃至1.204範囲であり得る。
【0058】
一般的にピーク強度値は、ピークの高さ値またはピークの面積を積分して得た積分面積値を意味し、本実施形態でピーク強度値は、ピークの面積値を意味する。
【0059】
ピーク強度比I(003)/I(104)が前記範囲に含まれる場合には、容量減少なしに、構造安定化が増進されて、正極活物質の熱安全性を向上させることができる。
【0060】
また、ピーク強度比I(003)/I(104)は、カチオンミキシングインデックス(cation mixing index)で、I(003)/I(104)値が減少する場合、正極活物質の初期容量およびレート特性が低下することがある。しかし、本実施形態では、I(003)/I(104)が1.186乃至1.204範囲を満たすところ、容量およびレート特性に優れた正極活物質を実現することができる。
【0061】
一方、本実施形態の正極活物質は、大粒径粒子および小粒径粒子が混合されたバイモーダル(bi-modal)形態であり得る。前記大粒径粒子は、平均粒径(D50)が10μm乃至20μm範囲であり得、前記小粒径粒子は、平均粒径(D50)が3μm乃至7μmであり得る。このとき、前記大粒径粒子および前記小粒径粒子も少なくとも一つの1次粒子が造粒された2次粒子の形態であり得ることはもちろんである。また、大粒径粒子および小粒径粒子の混合比率は、全体100重量%を基準に大粒径粒子が50乃至80重量%であり得る。このようなバイモーダル粒子の分布によりエネルギー密度を改善させることができる。
【0062】
本発明の他の実施形態では、前述した本発明の一実施形態に係る正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、および前記正極および負極の間に位置する電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0063】
前記正極活物質と関連した説明は、前述した本発明の一実施形態と同一であるため省略する。
【0064】
前記正極活物質層は、バインダーおよび導電材を含むことができる。
【0065】
前記バインダーは、正極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また正極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たす。
【0066】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能である。
【0067】
前記負極は、集電体および前記集電体の上に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は、負極活物質を含む。
【0068】
前記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0069】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質としては、炭素物質であって、リチウムイオン二次電池において一般的に使用される炭素系負極活物質は如何なるものでも使用することができ、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらを共に使用することができる。
【0070】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属との合金を使用することができる。
【0071】
前記リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiO(0<x<2)、Si-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、第14族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Sn、SnO、Sn-Y(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、第13族元素、第14族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられる。
【0072】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられる。前記負極活物質層はまた、バインダーを含み、選択的に導電材をさらに含むこともできる。
【0073】
前記バインダーは、負極活物質粒子を互いに良好に付着させ、また負極活物質を電流集電体に良好に付着させる役割を果たす。
【0074】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を招かない電子伝導性材料であれば如何なるものでも使用可能である。
【0075】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0076】
前記負極と正極は、活物質、導電材および結着剤を溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を電流集電体に塗布して製造する。このような電極製造方法は、当該分野に広く知られた内容であるため、本明細書で詳細な説明は省略する。前記溶媒としては、N-メチルピロリドンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0077】
前記電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0078】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質の役割を果たす。
【0079】
前記リチウム塩は、有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極との間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0080】
リチウム二次電池の種類により正極と負極との間にセパレータが存在することもできる。このようなセパレータとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデンまたはこれらの2層以上の多層膜を使用することができ、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレンの3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレンの3層セパレータなどのような混合多層膜を使用することができることはもちろんである。
【0081】
リチウム二次電池は、使用するセパレータと電解質の種類によりリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池およびリチウムポリマー電池に分類することができ、形態により円筒型、角型、コイン型、パウチ型などに分類することができ、サイズによりバルクタイプと薄膜タイプに分類することができる。これら電池の構造と製造方法は、当該分野に広く知られているため、詳細な説明は省略する。
【実施例
【0082】
以下、本発明の実施例を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものであり、本発明はこれによって制限されず、本発明は後述する請求の範囲の範疇のみにより定義される。
【0083】
製造例1-NCM前駆体の製造
正極活物質前駆体は、一般的な共沈法により製造した。
【0084】
ニッケル原料物質としてはNiSO・6HO、コバルト原料物質としてはCoSO・7HO、マンガン原料物質としてはMnSO・HOを利用した。これら原料を蒸溜水に溶解して金属塩水溶液を製造した。
【0085】
共沈反応器を準備した後、共沈反応時に金属イオンの酸化を防止するためにNをパージング(purging)し、反応器温度は50℃を維持した。
【0086】
前記共沈反応器にキレート剤としてNH(OH)を投入し、pH調節のためにNaOHを使用した。共沈工程により得られた沈殿物をろ過し、蒸溜水で洗浄した後、180℃のケーキドライヤー(Cake dryer)で乾燥して正極活物質前駆体を製造した。
【0087】
製造された前駆体の組成は(Ni0.92Co0.04Mn0.04)(OH)であり、大粒径前駆体の平均粒径(D50)は14.3μmであり、小粒径前駆体の平均粒径(D50)は4.5μmであった。
【0088】
実施例1-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.0001モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体、リチウム原料およびドーピング原料を均一に混合した混合物をチューブ炉で酸素雰囲気下で焼成した。焼成条件は480℃で5時間、以降740~780℃で15時間を維持し、昇温速度は5℃/minであった。
【0089】
使用されたリチウム原料としては、LiOH・HO(Samchun Chemical社、battery grade)を使用し、ドーピング原料としてはZrO(Aldrich社、3N)、Al(OH)(Aldrich社、3N)、TiO(Aldrich社、3N)、HBO(Aldrich社、3N)、およびNb(Aldrich社、3N)を使用した。
【0090】
このとき、ドーピング量は、金属元素がドーピングされていないLiNi0.92Co0.04Mn0.04を基準にM=Ni0.92Co0.04Mn0.04で表記し、Mとドーピングされた量の総和を1molになるようにドーピング原料の投入量を調節した。つまり、 Li(M)1-x(D)(M=NCMA、D=ドーピング素材)構造を有するようになる。このように製造された5種の元素がドーピングされた大粒径および小粒径の正極活物質の全体組成は、Li(M)0.9704Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.0001であった。
【0091】
焼成された大粒径および小粒径の正極活物質は、重量比で80:20(大粒径:小粒径)の比率で均一に混合してバイモーダル(bi-modal)形態に実施例1の正極活物質を製造した。
【0092】
実施例2-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.00025モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0093】
実施例2により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.97025Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.00025であった。
【0094】
実施例3-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.0005モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0095】
実施例3により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.97Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.0005であった。
【0096】
実施例4-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.001モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0097】
実施例4により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.9695Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.001であった。
【0098】
実施例5-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0099】
実施例5により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.968Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0100】
参考例1-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.005モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0101】
参考例1により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.9655Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.005であった。
【0102】
参考例2-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.01モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0103】
参考例2により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.9605Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.01であった。
【0104】
実施例6-0.002モルZr+0.015モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0105】
実施例6により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.9719Zr0.002Al0.015Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0106】
実施例7-0.005モルZr+0.015モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0107】
実施例7により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.9665Zr0.005Al0.015Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0108】
参考例3-0.008モルZr+0.015モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してアルミニウム原料およびドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0109】
参考例3により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.9635Zr0.008Al0.015Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0110】
参考例4-0.0035モルZr+0.005モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0111】
参考例4により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.978Zr0.0035Al0.005Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0112】
実施例8-0.0035モルZr+0.0085モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0113】
実施例8により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.9745Zr0.0035Al0.0085Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0114】
実施例9-0.0035モルZr+0.02モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0115】
実施例9により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.963Zr0.0035Al0.02Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0116】
参考例5-0.0035モルZr+0.025モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0117】
参考例5により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.958Zr0.0035Al0.025Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0118】
参考例6-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.0001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0119】
参考例6により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.9689Zr0.0035Al0.015Ti0.00010.01Nb0.0025であった。
【0120】
実施例10-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.0005モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0121】
実施例10により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.9685Zr0.0035Al0.015Ti0.00050.01Nb0.0025であった。
【0122】
実施例11-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.0015モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0123】
実施例11により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.9675Zr0.0035Al0.015Ti0.00150.01Nb0.0025であった。
【0124】
参考例7-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.0025モルNb+0.01モルB+0.002モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0125】
参考例7により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.967Zr0.0035Al0.015Ti0.0020.01Nb0.0025であった。
【0126】
参考例8-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.0025モルNb+0.001モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0127】
参考例8により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.977Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.001Nb0.0025であった。
【0128】
実施例12-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.0025モルNb+0.005モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0129】
実施例12により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.973Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.005Nb0.0025であった。
【0130】
参考例9-0.0035モルZr+0.015モルAl+0.0025モルNb+0.015モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1で製造した前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0131】
参考例9により製造された正極活物質の全体組成は、Li(M)0.963Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.015Nb0.0025であった。
【0132】
前記比較例1、実施例1乃至12および参考例1乃至9により製造された正極活物質のドーピング量および全体組成は、下記表のとおりである。
【0133】
【表1】
【0134】
比較例2-0.8モルNi+0.0035モルZr+0.015モルAl+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1と同様な方法で(Ni0.80Co0.10Mn0.10)(OH)組成を有する大粒径および小粒径前駆体を製造した。
【0135】
次に、前記前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0136】
比較例2により製造された正極活物質の全体組成は、Li(Ni0.80Co0.10Mn0.100.9705Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01であった。
【0137】
比較例3-0.83モルNi+0.0035モルZr+0.015モルAl+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1と同様な方法で(Ni0.83Co0.12Mn0.05)(OH)組成を有する大粒径および小粒径前駆体を製造した。
【0138】
次に、前記前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0139】
比較例3により製造された正極活物質の全体組成は、Li(Ni0.83Co0.12Mn0.050.9705Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01であった。
【0140】
比較例4-0.85モルNi+0.0035モルZr+0.015モルAl+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1と同様な方法で(Ni0.85Co0.075Mn0.075)(OH)組成を有する大粒径および小粒径前駆体を製造した。
【0141】
次に、前記前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0142】
比較例4により製造された正極活物質の全体組成は、Li(Ni0.85Co0.075Mn0.0750.9705Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01であった。
【0143】
比較例5-0.86モルNi+0.0035モルZr+0.015モルAl+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1と同様な方法で(Ni0.86Co0.07Mn0.07)(OH)組成を有する大粒径および小粒径前駆体を製造した。
【0144】
次に、前記前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0145】
比較例5により製造された正極活物質の全体組成は、Li(Ni0.86Co0.06Mn0.060.9705Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01であった。
【0146】
比較例6-0.88モルNi+0.0035モルZr+0.015モルAl+0.01モルB+0.001モルTiドーピング
前記製造例1と同様な方法で(Ni0.88Co0.05Mn0.07)(OH)組成を有する大粒径および小粒径前駆体を製造した。
【0147】
次に、前記前駆体を利用してドーピング原料の量を調節したことを除き、前記実施例1と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0148】
比較例6により製造された正極活物質の全体組成は、Li(Ni0.88Co0.05Mn0.070.9705Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01であった。
【0149】
参考例10-0.8モルNi+実施例5と同一のドーピング
前記製造例1と同様な方法で(Ni0.80Co0.10Mn0.10)(OH)組成を有する大粒径および小粒径前駆体を製造した。
【0150】
次に、前記前駆体を利用したことを除き、前記実施例5と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0151】
参考例10により製造された正極活物質の全体組成は、Li(Ni0.80Co0.10Mn0.100.968Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0152】
参考例11-0.83モルNi+実施例5と同一のドーピング
前記製造例1と同様な方法で(Ni0.83Co0.12Mn0.05)(OH)組成を有する大粒径および小粒径前駆体を製造した。
【0153】
次に、前記前駆体を利用したことを除き、前記実施例5と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0154】
参考例11により製造された正極活物質の全体組成は、Li(Ni0.83Co0.12Mn0.050.968Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0155】
実施例13-0.85モルNi+実施例5と同一のドーピング
前記製造例1と同様な方法で(Ni0.85Co0.07Mn0.08)(OH)組成を有する大粒径および小粒径前駆体を製造した。
【0156】
次に、前記前駆体を利用したことを除き、前記実施例5と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0157】
実施例13により製造された正極活物質の全体組成は、Li(Ni0.85Co0.07Mn0.080.968Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0158】
実施例14-0.86モルNi+実施例5と同一のドーピング
前記製造例1と同様な方法で(Ni0.86Co0.07Mn0.07)(OH)組成を有する大粒径および小粒径前駆体を製造した。
【0159】
次に、前記前駆体を利用したことを除き、前記実施例5と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0160】
実施例14により製造された正極活物質の全体組成は、Li(Ni0.86Co0.07Mn0.070.968Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0161】
実施例15-0.88モルNi+実施例5と同一のドーピング
前記製造例1と同様な方法で(Ni0.88Co0.05Mn0.07)(OH)組成を有する大粒径および小粒径前駆体を製造した。
【0162】
次に、前記前駆体を利用したことを除き、前記実施例5と同様な方法でバイモーダル形態の正極活物質を製造した。
【0163】
実施例15により製造された正極活物質の全体組成は、Li(Ni0.88Co0.05Mn0.070.968Zr0.0035Al0.015Ti0.0010.01Nb0.0025であった。
【0164】
比較例2乃至6および実施例13乃至15、参考例10乃至11により製造した正極活物質の前駆体組成およびドーピング量は、下記表のとおりである。
【0165】
【表2】
【0166】
実験例1-XRD分析結果
実施例1乃至5、参考例1乃至2および比較例1により製造された正極活物質の格子定数をに対してCuKα線を使用してX線回折測定により得た。測定されたa軸長さ、b軸長さおよびc軸長さを下記表3に示した。
【0167】
また活物質の単位格子体積および結晶粒サイズ(crystalline size)を測定して、下記表3に示した。
【0168】
次に、ドーピングによる結晶学的考察のために商用ソフトウェアであるハイスコアプラス(High Score Plus 4.0)プログラムを利用してリートベルト(Rietveld)分析を行い、これに対する結果を表1に示した。XRD測定範囲は10°~130°で行い、リートベルト法(Rietveld refinement)を通じてフィッティング(fitting)した。GOF(Goodness of Fitness)値は2.0以内でマッチング(matching)した。
【0169】
XRD装備(Panalytical社のX’pert3 powder diffraction)を使用してスキャンスピード(°/S)0.328で(003)面および(104)面の強度(ピーク面積)と(110)面の強度を測定した。この結果からI(003)/I(104)、(110)面の半値幅(Full Width at Half Maximum、FWHM)を求めて、表3に示した。
【0170】
また、測定サンプル共に18.7°付近で(003)面が主ピーク(peak)としてよく発達しており、37.5°と38.5°との間の(006)/(102)ピーク(peak)、63.5°と35.5°との間で(108)/(110)ピーク(peak)のスプリッティング(splitting)が現れることを確認したところ、六方晶系層(hexagonal layer)の良好な結晶秩序(crystalline ordering)を有していることが分かり、典型的なα-NaFeO(space group R-3m)構造を示すことが分かった。
【0171】
【表3】
【0172】
表3を参照すれば、ドーピング元素およびドーピング量によりXRD分析結果、結晶構造の因子値が変化していることが分かる。
【0173】
具体的に、NCM活物質にZr、Al、Ti、Bをドーピングした比較例1の正極活物質と比較する時、NCMにZr、Nb、Ti、BおよびNBをドーピングした実施例1乃至5および参考例1乃至2の(110)面のFWHM値が増加し、結晶粒サイズが減少することを確認できる。また、結晶構造定数であるa、b値は実施例5で最大値を有し、c値は実施例5で最大値を有することが分かった。単位格子体積(Unit cell volume)の場合にも実施例4で最大値を有することが分かった。カチオンミキシングインデックス(Cation mixing index)を示す(003)/(104)の強度比率および面積比率は、実施例3で最も高い傾向を示しており、適切な量のNbのドーピングは、カチオンミキシング(cation mixing)を抑制する効果を有していることが分かる。
【0174】
つまり、本実施例で、Nbのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.0001モル乃至0.005モルの範囲であり得、0.0001モル乃至0.0025モルの範囲であることが好ましいことを確認できる。
【0175】
実験例2-電気化学評価
(1)コイン型半電池の製造
前記のように製造された正極活物質を利用してCR2032コインセルを製造した後、電気化学評価を進行した。
【0176】
具体的に、正極活物質、導電材(Denka Black)およびポリフッ化ビニリデンバインダー(商品名:KF1100)を92.5:3.5:4の重量比で混合し、この混合物を固形分が約30重量%になるようにN-メチル-2-ピロリドン(N-Methyl-2-pyrrolidone)溶媒に添加して正極活物質スラリーを製造した。
【0177】
前記スラリーをドクターブレード(Dоctor blade)を利用して正極集電体であるアルミニウム箔(Al foil、厚さ:15μm)上にコーティングし、乾燥した後に圧延して正極を製造した。前記正極のローディング量は約14.6mg/cmであり、圧延密度は約3.1g/cmであった。
【0178】
前記正極、リチウム金属負極(厚さ300μm、MTI)、電解液とポリプロピレンセパレータを使用して通常の方法で2032コイン型半電池を製造した。前記電解液は1M LiPFをエチレンカーボネート、ジメチルカーボネートおよびエチルメチルカーボネート(EMC)の混合溶媒(混合比EC:DMC:EMC=3:4:3体積%)に溶解して混合溶液を製造した後、ここにビニレンカーボネート(VC)3重量%を添加して使用した。
【0179】
(2)充放電特性の評価
前記(1)で製造されたコイン型半電池を常温(25℃)で10時間エイジング(aging)した後、充放電テストを進行した。
【0180】
容量評価は、205mAh/gを基準容量にし、充放電条件は定電流(CC)/定電圧(CV)2.5V乃至4.25V、1/20Cカット-オフを適用した。
【0181】
初期容量は、0.1C充電/0.1C放電後の放電容量を測定し、0.2C充電/0.2C放電を実施した後、初期効率を計算してその結果を下記表4に示した。
【0182】
(3)寿命特性の測定
常温サイクル寿命特性は常温(25℃)で、高温サイクル寿命特性は高温(45℃)で0.3C充電/0.3C放電条件で30回を測定した。
【0183】
(4)抵抗特性の測定
常温初期抵抗(直流内部抵抗:DC-IR(Direct current internal resistance))は、電池を25℃で定電流-定電圧2.5V乃至4.25V、1/20Cカット-オフ条件で、0.2C充電および0.2放電を1回実施し、4.25V充電100%で放電電流の印加後、60秒後の電圧値を測定した後、これを計算した。
【0184】
抵抗増加率は、常温(25℃)で初期に測定した抵抗(常温初期抵抗)と対比してサイクル寿命30回後の抵抗を初期抵抗測定方法と同様に実施して測定し、その上昇率を百分率(%)で換算した。
【0185】
平均漏れ電流(Average leakage current)は、45℃の高温で半電池を4.7Vに維持時、120時間経過する間の電流発生を測定して、その値の平均値を求める方法で測定した。
【0186】
(5)熱安定性の評価
示差走査熱量(DSC:Differential Scanning Calorimetry)分析は、半電池を初期0.1C充電条件で4.25Vまで充電後、半電池を分解して正極のみを別途に得て、この正極をジメチルカーボネートで5回洗浄して準備した。DSC用ルツボに洗浄された正極を電解液で含浸させた後、温度を265℃まで上昇させながらDSC機器としてメトラー・トレド社(Mettler toledo)のDSC1 star systemを利用して、熱量変化を測定して、得られたDSCピーク温度を示した。
【0187】
実験例2-1.B含有量による効果
実施例1乃至5、参考例1乃至2および比較例1により製造された正極活物質に対して実験例2の方法で行った電気化学特性の評価結果を下記表4に示した。
【0188】
【表4】
【0189】
実施例1乃至5、参考例1乃至2は、Ni含有量が90モル%以上である前駆体にZr、Nb、Ti、BおよびNbを共にドーピングした場合、そのドーピング量による電気化学特性を測定した結果である。
【0190】
表4を参照すれば、NCM前駆体に5種の元素、つまり、Zr、Nb、Ti、BおよびNbをドーピングした実施例1乃至5の正極活物質は、NCM前駆体にZr、Nb、TiおよびBをドーピングした比較例1の正極活物質と比較する時、放電容量、初期効率、常温寿命、高温寿命、常温抵抗、抵抗増加率、漏れ電流およびDSCピーク温度の改善が効果的に行われたことを確認できる。
【0191】
しかし、Nbを0.005モルをドーピングした参考例1の正極活物質は、放電容量が低下し、抵抗増加率が顕著に増加した。また、Nbを0.01モルをドーピングした参考例2の正極活物質は、放電容量、初期効率、常温寿命および高温寿命が顕著に低下することを確認できる。
【0192】
したがって、本実施例でNbのドーピング量は、前述のように、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素を含む金属酸化物1モルに対して、0.00025モル乃至0.005モル、より具体的に、0.0005モル乃至0.0025モルの範囲であることが好ましいことを確認できる。
【0193】
実験例2-2.Zr含有量による効果
実施例6乃至7および参考例3により製造された正極活物質に対して実験例2の方法で行った電気化学特性の評価結果を下記表5に示した。比較のために実施例4の結果も共に表示した。
【0194】
【表5】
【0195】
実施例6乃至7および参考例3は、Alのドーピング量は0.015mol、Nbのドーピング量は0.0025mol、Bのドーピング量は0.01mol、Nbのドーピング量は0.0025molに固定させた状態でZrのドーピング量のみを変化させたものである。
【0196】
表5を参照すれば、Zrのドーピング量が0.002モルから0.008モルまで増加することによって、一部の特性は改善され、一部の特性は悪化することを理解できる。
【0197】
具体的に、実施例4、6、7の結果を参照すれば、Zrのドーピング量が増加するほど高温寿命および常温寿命が改善されることが分かる。しかし、参考例3のようにZrドーピング量が0.008molに増加する場合、放電容量および初期効率が大幅に低下することを確認できる。
【0198】
したがって、本実施例で適切なZrのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素1モルに対して、0.001モル乃至0.007モルの範囲であり、具体的に0.002モル乃至0.005モルまたは0.0035モル乃至0.005モルの範囲であり得る。
【0199】
実験例2-3.Al含有量による効果
実施例8乃至9、参考例4乃至5により製造された正極活物質に対して実験例2の方法で行った電気化学特性の評価結果を下記表6に示した。比較のために実施例4の結果も共に表示した。
【0200】
【表6】
【0201】
実施例8乃至9、参考例4乃至5は、ドーピング量はZr 0.0035mol、Nb 0.0025mol、B 0.01mol、Ti 0.001molに固定した状態でAlドーピング量のみを変化させたものである。
【0202】
表6を参照すれば、Al原料の量が増加することによって、常温寿命、高温寿命が大幅に増加し、常温初期抵抗、抵抗増加率、漏れ電流は減少することを確認できる。特に、DSCピーク温度が顕著に増加した。
【0203】
しかし、混合されるAlのドーピング量が0.005モルである参考例4の場合には、高温寿命が顕著に減少し、抵抗増加率も増加することが分かる。また、Alのドーピング量が0.025molである参考例5の場合には、放電容量が大幅に減少し、これによって初期効率も顕著に低下することが分かる。
【0204】
したがって、本実施例でAlのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング原料1モルに対して、0.006モル乃至0.029モル、より具体的に、0.0085モル乃至0.025モルの範囲であり得る。
【0205】
実験例2-4.Ti含有量による効果
実施例10乃至11および参考例6乃至7により製造された正極活物質に対して実験例2の方法で行った電気化学特性の評価結果を下記表7に示した。比較のために実施例4の結果も共に表示した。
【0206】
【表7】
【0207】
実施例10乃至11および参考例6乃至7のドーピング量は、Zr 0.0035mol、Al 0.015mol、B 0.01mol、Nb 0.0025molに固定した状態でTiドーピング量のみを変化させたものである。
【0208】
表7を参照すれば、Ti含有量が増加するほど常温寿命、高温寿命および抵抗特性が増加することを確認できる。
【0209】
しかし、Tiを0.0001モルドーピングした参考例6の場合には、常温抵抗が顕著に増加し、平均漏れ電流も高くなるという問題点がある。また、Tiを0.002モルドーピングした参考例7の場合には、放電容量が大幅に減少し、初期効率も急激に低下することを確認できる。
【0210】
したがって、本実施例で適切なTiのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素1モルに対して、0.0002モル乃至0.0015モルの範囲であり、具体的に0.0005モル乃至0.001モルの範囲であり得る。
【0211】
実験例2-5.B含有量による効果
実施例12および参考例8乃至9により製造された正極活物質に対して実験例2の方法で行った電気化学特性の評価結果を下記表8に示した。比較のために実施例4の結果も共に表示した。
【0212】
【表8】
【0213】
実施例12および参考例8乃至9のドーピング量は、Zr 0.0035mol、Al 0.015mol、Ti 0.001mol、Nb 0.0025molに固定した状態でBドーピング量のみを変化させたものである。
【0214】
表8を参照すれば、Bの含有量が増加するほど一般的な寿命および抵抗増加率が改善されることを確認できる。
【0215】
しかし、Bのドーピング量が0.001モルである参考例8の場合には、常温抵抗が急激に増加し、Bのドーピング量が0.015モルである参考例9の場合には、放電容量が顕著に減少するという問題点がある。
【0216】
したがって、本実施例でBのドーピング量は、ニッケル、コバルト、マンガンおよびドーピング元素の総和1モルに対して、0.001モル乃至0.015モルの範囲であり得、0.005モル乃至0.01モルの範囲であることが好ましいことを確認できる。
【0217】
実験例2-6.Ni含有量による効果
比較例2乃至6、参考例10乃至11および実施例13乃至15により製造された正極活物質に対して実験例2の方法で行った電気化学特性の評価結果を下記表9に示した。比較のために比較例1および実施例5の結果も共に表示した。
【0218】
【表9】
【0219】
比較例1乃至6は、NCM前駆体に四元系ドーピングをした場合であり、参考例10乃至11および実施例13乃至15は、NCM前駆体に五元系ドーピングを実施した正極活物質である。
【0220】
表9を参照すれば、参考例10および11の場合、Niの含有量が85%未満である場合には、五元系ドーピングをしてもNbの添加時にむしろ放電容量および初期効率が減少して一部抵抗として作動することが分かる。しかし、実施例13乃至15を参照すれば、Niの含有量が85%以上である場合、Nbを含む五元系ドーピングをする場合、放電容量および初期効率が大幅に増加していることが分かる。
【0221】
これはたとえNb自体の抵抗の特性は、Niが少ない含有量が含まれている場合に発生する抵抗に比べては高いが、Niが増加することで現れる抵抗特性よりは低いため、Ni 85%以上で発生される急激な抵抗増加効果を相殺させる効果があるとみられる。つまり、ハイニッケルNCM正極材の場合、Niの増加により発生される急激な抵抗増加現象がNbがドーピングされることによってある程度抑制することができるとみられる。これによって、高温寿命および常温寿命も全体的に増加し、抵抗増加率の特性も改善される。結論的に、Niの含有量が85%以上の製品に(Zr、Al、Ti、B、Nbの五元系素材がドーピングされた場合、放電容量増加および初期効率増加効果が非常に卓越しており、その他物性も全体的に改善されることを理解できる。したがって、本実施例の五元系ドーピング素材がNi 85%以上の領域で効果が極大化されることを確認できる。
【0222】
実験例3-拡散係数およびインピーダンス分析
実施例1乃至5、参考例1乃至2および比較例1により製造された正極活物質に対して拡散係数およびインピーダンス分析を実施して下記表10に示した。
【0223】
拡散係数は、GITT法を通じて測定し、30分充電後50分維持を進行し、このときに得られたデータを下記式3を利用して分析した。
【0224】
[式3]
【0225】
【数1】
【0226】
式3で、
:正極活物質のモル体積
A:拡散係数の測定時の電極面積
F:ファラデー(Faraday)定数
Li:+1
:0.1C
x:リチウムが電極内に存在するフラクション(fraction)
dE:維持区間で得られた電圧(voltage)変化量、
dE:充電区間で得られた電圧(voltage)変化量
t:時間(sec)
具体的に、正極活物質のモル体積は、XRD測定結果を通じて分析された単位体積を利用して計算した。Aは、拡散係数の測定時の電極面積で、本拡散係数の測定時に使用されたコインセルの場合、面積が1.538cmの大きさを有する。Iは、0.1C電流値を意味する。Xは、全体充放電区間を100%に仮定して計算することができる。例えば、初期30分充電区間に該当するxは0.05、2番目の30分充電区間に該当するx値は0.1に表現することができ、中間区間に該当するxは0.5に表現可能である。
【0227】
インピーダンス分析は、3.7Vで得られたインピーダンスグラフを利用して分析し、拡散係数と同様に下記表10に示した。得られたインピーダンス値を実数軸と虚数軸に分離してナイキスト線図(Nyquist plot)をした時に得られる図形を二つの半円形態に分けてフィッティング(fitting)してRseiとRctで求めた。このとき、高周波領域で生成された半円により得られた抵抗値をRseiに命名し、低周波領域で生成された半円により得られた抵抗値をRctに命名して抵抗値を求めた。
【0228】
【表10】
【0229】
表10を参照すれば、ドーピング元素としてZr、Nb、B、Al、Tiを使用した実施例でRseiとRctのサイクル後の抵抗増加率は顕著に低くなることを確認できる。つまり、これら元素を同時ドーピングすることによってRseiとRct抵抗増加率が効果的に抑制されることを確認できる。
【0230】
本発明は、前記実施例に限定されるのではなく、互いに異なる多様な形態に製造することができ、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態に実施可能であることを理解できはずである。したがって、以上で記述した実施例は、全ての面で例示的なものであり、限定的なものではないことを理解しなければならない。
【国際調査報告】