(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】熱可塑性ポリマー構造及びそれを作製する方法
(51)【国際特許分類】
C08F 283/00 20060101AFI20231222BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20231222BHJP
B32B 17/10 20060101ALI20231222BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20231222BHJP
C03C 27/12 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C08F283/00
C08F2/44 C
B32B17/10
B32B27/40
C03C27/12 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538050
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 US2021064319
(87)【国際公開番号】W WO2022140243
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521518057
【氏名又は名称】エスヴェーエム ルクセンブルク
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100136249
【氏名又は名称】星野 貴光
(72)【発明者】
【氏名】ガリカ ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
4J011
4J026
【Fターム(参考)】
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4J026GA07
(57)【要約】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)及び第2の成分を、組成物の約3%~約60質量%の範囲の量で含む、組成物、及び組成物を製造するための方法が、提供される。第2の成分は、少なくとも1種の反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマー(RDMO)を含む。RDMO及び/又はTPUは半相互貫入ポリマーネットワーク又は相互貫入ポリマーネットワークを形成するように架橋されてもよい。RDMOは、TPUに対し、改善された物理的性質、例えば剛性、耐久性、及び強度を提供する。ポリマーネットワークは、柔軟性及び強度を改善し、粉砕を阻止し、及び/又は引掻き及び染みに抵抗するために、窓及びフローリングなどのある特定の適用例に向けて、その他の層に結合されてもよい。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)と、
組成物の約3%~約60質量%の範囲にある量の第2の成分と
を含み、前記第2の成分が、少なくとも1種の反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマー(RDMO)を含む、
組成物。
【請求項2】
前記第2の成分が、単官能性アクリレート、二官能性アクリレート、三官能性アクリレート、単官能性メタクリレート、二官能性メタクリレート、三官能性メタクリレート、4~6個の官能基を有するアクリレート又はメタクリレート、ペンタエリスリチルトリアクリレート、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(silsequioxane)、及びトリアリルイソシアヌレートからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記第2の成分が、半相互貫入ポリマーネットワークを形成するように架橋される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記第2の成分及び前記TPUが、相互貫入ポリマーネットワークを形成するように架橋される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第2の成分が、前記組成物の約20質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記第2の成分が、前記組成物の約5質量%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記第2の成分が、二官能性アクリレート、三官能性アクリレート、及び三官能性トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、及び三官能性アクリレートペンタエリスリチルトリアクリレート(PETA)からなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記第2の成分が、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(silsequioxane)を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記多面体オリゴマーシルセスキオキサン(silsequioxane)が、ビニル基、有機メタクリレート基、及び有機イソオクチル基から本質的になる群の1種に取着された5質量%の無機シルセスキオキサン(silsequioxane)を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記5質量%の無機シルセスキオキサン(silsequioxane)が、有機イソオクチル基に取着され、3個の活性シラノール官能基をさらに有する、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記第2の成分が、2種又はそれよりも多くの反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリウレタンが、脂肪族ポリウレタンである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、30℃で1秒の負荷持続に関して約10よりも大きいヤング率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、30℃で1秒の負荷持続に関して少なくとも約18.34のヤング率を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
硬化剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項16】
前記硬化剤が、UV活性化光開始剤、過酸化物、及びアゾ化合物からなる群から選択される、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記硬化剤が、過酸化物である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記第2の成分が、少なくとも摂氏約60度のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項19】
第1の層と、
熱可塑性ポリウレタン(TPU)の第2の層と
を含み、第2の成分が、前記第2の層の約3%~約60質量%の範囲の量にあり、前記第2の成分が、少なくとも1種の反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマー(RDMO)を含む、
積層構造。
【請求項20】
第3の層をさらに含み、前記第2の層が、前記第1及び第3の層の間に配置される、請求項19に記載の積層構造。
【請求項21】
前記第1及び第3の層が、ガラス層を含む、請求項19に記載の積層構造。
【請求項22】
前記第2の層が、前記ガラス層の間に中間層を形成し、前記中間層及び前記ガラス層を分離する剥離ライナーをさらに含む、請求項21に記載の積層構造。
【請求項23】
前記第2の成分が、半相互貫入ポリマーネットワークを形成するように架橋される、請求項19に記載の積層構造。
【請求項24】
前記第2の成分及び前記TPUが、相互貫入ポリマーネットワークを形成するように架橋される、請求項19に記載の積層構造。
【請求項25】
前記第2の成分が、前記第2の層の約20質量%である、請求項19に記載の積層構造。
【請求項26】
前記第2の成分が、前記第2の層の約5質量%である、請求項19に記載の積層構造。
【請求項27】
前記第2の成分が、二官能性アクリレート、三官能性アクリレート、及び三官能性トリアリルイソシアヌレート(TAIC)、及び三官能性アクリレートペンタエリスリチルトリアクリレート(PETA)からなる群から選択される、請求項19に記載の積層構造。
【請求項28】
前記第2の成分が、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(silsequioxane)を含む、請求項19に記載の積層構造。
【請求項29】
前記多面体オリゴマーシルセスキオキサン(silsequioxane)が、ビニル基、有機メタクリレート基、及び有機イソオクチル基から本質的になる群の1種に取着された5質量%の無機シルセスキオキサン(silsequioxane)を含む、請求項28に記載の積層構造。
【請求項30】
前記5質量%の無機シルセスキオキサン(silsequioxane)が、有機イソオクチル基に取着され、3個の活性シラノール官能基をさらに有する、請求項29に記載の積層構造。
【請求項31】
請求項19に記載の前記積層構造を含む、ガラス構造。
【請求項32】
請求項19に記載の前記積層構造を含む、屋根構造。
【請求項33】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)を、組成物の約3%~約60質量%の範囲の量で第2の成分と混合することであって、前記第2の成分が、少なくとも1種の反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマー(RDMO)を含むものであること、及び
硬化剤を、前記TPU及び前記第2の成分と混合すること
を含む、組成物を作製する方法。
【請求項34】
前記混合するステップの前に、前記TPUを溶融することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記混合するステップが、約120℃までの温度で少なくとも5分間実行される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記TPU及び前記第2の成分を溶融状態で冷却することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記熱可塑性ポリウレタン、前記第2の成分、及び前記硬化剤を混合して前駆体を形成すること、及び前記前駆体を硬化して、相互貫入ポリマーネットワーク又は半相互貫入ポリマーネットワークを形成することをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記硬化剤が、重量測定的添加又はブレンドによって添加される、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記硬化剤が、前記第2の成分及び前記TPUと同時に混合される、請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記硬化剤が、UV活性化光開始剤、過酸化物、及びアゾ化合物からなる群から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記硬化剤が、過酸化物である、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記過酸化物が、151.8℃で1時間の半減期を有する2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、又は149.1℃で1時間の半減期を有するジ(t-ブチル)ペルオキシド、又は140.3℃で1時間の半減期を有する2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンである、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記過酸化物が、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及び3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナンからなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記硬化剤が、光開始剤である、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記硬化剤が、アゾ化合物である、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記組成物を、第1及び第2の層の間に挟むことをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項47】
前記第1及び第2の層が、ガラス層である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記組成物及び前記ガラス層を積層することをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、参照によりその全開示の全体が全ての目的で本明細書に組み込まれる2020年12月21日に出願された米国仮出願第63/128,632号の、利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)などの熱可塑性ポリマーは、窓及びフローリングなどの広く様々な製品の材料として、特にそれらの高い引張り及び引裂き強度、低温での高い柔軟性、極めて良好な耐摩耗及び引掻き性のために使用される。層として頻繁に提供される、TPU層の特定の組成物は、それらの特定の適用例に向けて変性させることができる。例えば、自動車のガラスに使用されるポリマーフィルムは、粉砕を防止するために変性させることができる。さらに、防弾ガラスに使用されるポリマーフィルムは、柔軟性及び強度を改善するように調整することができる。さらに、フローリングで使用されるポリマーフィルムは、引掻き及び染みに耐えるように調整することができる。
これらのTPUフィルムは、かなり将来性があったが、剛性、靭性、耐久性、及び/又は強度など、TPUフィルムのある特定の物理的性質を改善することが望ましい。これらの性質を、ポリマー構造のその他の特性を実質的に変化させることなく改善することが、特に望ましい。
【発明の概要】
【0003】
熱可塑性ポリマー(TPU)組成物又は構造が提供される。熱可塑性ポリマー構造は、柔軟性、強度、剛性、靭性、及び/又は耐久性を改善し、粉砕を阻止し、耐摩耗及び損耗性を増大させ、及び/又は引掻き及び染みに抵抗するため、窓、屋根、フローリング、壁、ファサード、及び同様のものなどのある特定の適用例に向けて、その他の層に結合されてもよい。
一態様では、組成物は、TPU及び第2の成分を、組成物の約3%~約60質量%の範囲の量で含む。第2の成分は、少なくとも1種の反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマー(RDMO)を含む。第2の成分は、剛性及び強度など、改善された物理的性質をTPUに提供する。
第2の成分は、半相互貫入ポリマーネットワークを形成するように架橋されてもよい。第2の成分及びTPUは、相互貫入ポリマーネットワークを形成するように共に架橋されてもよい。
【0004】
第2の成分は、2種又はそれよりも多くの反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマーを含んでもよい。第2の成分は、単官能性アクリレート、二官能性アクリレート、三官能性アクリレート、単官能性メタクリレート、二官能性メタクリレート、三官能性メタクリレート、4~6個の官能基を有するアクリレート又はメタクリレート、ペンタエリスリチルトリアクリレート、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(silsequioxane)、及びトリアリルイソシアヌレートからなる群から選択されてもよい。
一実施形態では、第2の成分は、組成物の約20質量%である。第2の成分は、単官能性アクリレート、二官能性アクリレート、三官能性アクリレート、単官能性メタクリレート、二官能性メタクリレート、三官能性メタクリレート、4~6個の官能基を有するアクリレート又はメタクリレート、ペンタエリスリチルトリアクリレート、及びトリアリルイソシアヌレートを含んでもよい。
一実施形態では、第2の成分は、20%の単官能性アクリレート、20%の二官能性アクリレート、及び20%の三官能性アクリレートからなる群から選択されてもよい。一実施形態では、第2の成分は、6個までの官能基を有するメタクリレートであってもよい。1つの例示的な実施形態では、第2の成分は、20%の二官能性メタクリレートを含んでもよい。別の例示的な実施形態では、三官能性アクリレートは、ペンタエリスリチルトリアクリレート(PETA)であってもよい。
【0005】
別の実施形態では、第2の成分は、組成物の約5質量%である。第2の成分は、その他の基に取着された多面体オリゴマーシルセスキオキサン(silsequioxane)などの無機シルセスキオキサン(silsequioxane)を含んでもよい。その他の基は、有機メタクリレート基、有機イソクチル(isoctyl)基、有機ビニル基、及び/又は活性シラノール官能基を含んでもよい。
1つの例示的な実施形態では、第2の成分は、トリアリルイソシアヌレートを含んでもよい。例えば、第2の成分は、20%のトリアリルイソシアヌレートを含んでもよい。
熱可塑性ポリウレタン(TPU)は、例えばポリエーテル脂肪族ポリウレタン又はポリエステル脂肪族ポリウレタンなどの、脂肪族ポリウレタンであってもよい。別の実施形態では、TPUは、例えばポリエーテル非脂肪族ポリウレタン又はポリエステル非脂肪族ポリウレタンなどの、非脂肪族ポリウレタンであってもよい。
組成物は、硬化剤を含んでもよい。硬化剤は、UV活性化光開始剤、過酸化物、及びアゾ化合物からなる群から選択されてもよい。
【0006】
1つの例示的な実施形態では、硬化剤は過酸化物であってもよく、約1.5質量%の量であってもよい。過酸化物は、151.8℃で1時間の半減期を有する2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、又は149.1℃で1時間の半減期を有するジ(t-ブチル)ペルオキシド、又は140.3℃で1時間の半減期を有する2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンであってもよい。他の実施形態では、過酸化物は、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及び3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナンからなる群から選択されてもよい。UV活性化光開始剤、又はフリーラジカル発生反応基を持つ化合物を含む、過酸化物に対する代替の硬化剤が使用されてもよいことが理解される。
【0007】
別の態様では、組成物は、TPU及び第2の成分を含む。第2の成分は、少なくとも1種の反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマー(RDMO)を、剛性(例えば、剛性率又は弾性率係数)を改善する量で含む。例えば、ある特定の実施形態では、組成物は、約10よりも大きい、好ましくは少なくとも18.34のヤング率を、30℃で1秒の負荷持続に関して有し、及び約3.83よりも大きい、好ましくは少なくとも6.58のヤング率を、30℃で約2カ月の負荷持続に関して有する。さらに別の実施例では、組成物は、約3.69よりも大きいヤング率を、60℃で約1秒の負荷持続に関して有し、及び約2.39よりも大きい、好ましくは少なくとも2.86のヤング率を、60℃で1時間の負荷持続に関して有する。
別の態様では、組成物は、TPUと、少なくとも1種の反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマー(RDMO)を含む、第2の成分を含む。第2の成分は、少なくとも摂氏約-60度のガラス転移温度(Tg)を有する。一部のその他の実施形態では、第2の成分は、摂氏約60度よりも高い、好ましくは摂氏約110度よりも高いTgを有することができる。
【0008】
別の態様では、積層構造が設けられる。積層構造は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)と第2の成分の組成物を含んでもよく、第2の成分は少なくとも1種の反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマー(RDMO)を組成物の約3%~約60質量%の範囲の量で、並びに少なくとも1つのその他の層を含む。
一実施形態では、組成物は、2つのその他の層の間に位置決めされる。ある特定の態様では、2つのその他の層はガラス層を含んでもよく、組成物は、ガラスの2層の間に中間層を形成する。組成物中間層及びガラス層を分離する剥離ライナーがあってもよく、したがって最終構成は下記:ガラス/剥離ライナー/変性TPU/剥離ライナー/ガラスのようになる。
別の実施形態では、組成物は、単層に結合されて、例えば屋根、フローリング、壁、又はファサード構造を形成する。
【0009】
第2の成分は、2種又はそれよりも多くの反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマーを含んでもよい。第2の成分は、単官能性アクリレート、二官能性アクリレート、三官能性アクリレート、単官能性メタクリレート、二官能性メタクリレート、三官能性メタクリレート、4~6個の官能基を有するアクリレート又はメタクリレート、ペンタエリスリチルトリアクリレート、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(silsequioxane)、及びトリアリルイソシアヌレートからなる群から選択されてもよい。
第2の成分は、半相互貫入ポリマーネットワークを形成するように架橋されてもよい。第2の成分及びTPUは、相互貫入ポリマーネットワークを形成するように共に架橋されてもよい。
別の態様では、組成物を作製する方法は、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を第2の成分と混合することであって、この第2の成分が、少なくとも1種の反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマー(RDMO)を、組成物の約3%~約60質量%の範囲の量で含むものであること、及び硬化剤を、TPU及び第2の成分と混合することを含む。
【0010】
この混合は、熱可塑性ポリウレタンを溶融するステップ、そこに第2の成分を添加するステップ、及び熱可塑性ポリウレタンと第2の成分とを混合するステップを、含んでもよい。一部の実施形態では、混合することは、約120℃までの温度に設定された混合機を使用して、少なくとも5分間実行されてもよい。別の実施形態では、方法は、熱可塑性ポリウレタン及び第2の成分を溶融状態で冷却することをさらに含んでもよい。
硬化剤は、変性TPUに添加される。一部の実施形態では、硬化剤の添加は、熱可塑性ポリウレタンに対する第2の成分の添加と同時に行われる。他の実施形態では、硬化剤は、TPUと第2の成分との混合後に添加される。方法は、TPU、第2の成分、及び硬化剤を混合して、相互貫入又は半相互貫入ポリマーネットワークに対する前駆体を形成することをさらに含んでもよい。硬化剤は、重量測定的添加又はブレンドによって添加されてもよい。方法は、前駆体を硬化して相互貫入又は半相互貫入ポリマーネットワークを形成することをさらに含んでもよい。方法は、少なくとも5分の持続時間を有し且つ混合機を使用して実行される、混合ステップを含んでもよい。
【0011】
一実施形態では、押出し物は、熱可塑性ポリウレタン、第2の成分、及び硬化剤から、押出し機を使用することによって、及び温度を最高約120℃に維持して硬化剤の架橋を防止することによって、形成されてもよい。他の実施形態では、第2の成分は、より大きい熱安定性を示してもよく、したがって温度は、架橋を依然として防止しながら最高約140℃に維持されてもよい。方法は、押出し物を押し出すこと、押出し物を平らにすること、及び平らにした押出し物を冷却することを含んでもよい。熱可塑性ポリウレタン、第2の成分、及び硬化剤は、同時に積層され硬化されてもよい。
【0012】
一実施形態では、積層は、上部及び底部チャンバーを有する真空ラミネーターで、60℃で1サイクル60分間、真空積層することによって実現することができる。当業者に公知の代替の真空積層ステップが使用されてもよい。一部の実施形態では、真空積層ステップは、上部及び底部の両方のチャンバーの10分の排気を含んでもよく、次いで残りの時間は、部分大気圧を使用して上部チャンバーを完全大気圧まで加圧し、それと共に積層構造を、底部チャンバー内で真空下で維持し、その結果、積層体中で変性TPUの加圧及び硬化がもたらされる。
一実施形態では、排気とその後に続く加圧及び硬化は、最初の10分間にわたり、ラミネーターの上部及び底部チャンバーで完全真空を維持しながら生じてもよい。加圧及び硬化は、部分から完全大気圧を真空ラミネーターの上部チャンバーで維持しながら生じてもよい。
本明細書に組み込まれ且つその一部を構成する図は、例示的な実施形態を示し、且つ詳細な説明と一緒になって、本記述の原理を説明する働きをする。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】第1及び第2の層の間にポリマー構造を有する積層体構造の例示的な実施形態を例示する、断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)及び第2の成分を含む、熱可塑性ポリマー構造が提供される。第2の成分は、少なくとも1種の反応性希釈剤、モノマー、又はオリゴマー(RDMO)を、組成物の約3%~約60質量%の範囲の量で含む。第2の成分は、TPU樹脂母材への反応性希釈剤/モノマー/オリゴマー(RDMO)の添加によって、TPU中間層の物理的性質及び強度を変化させる。
熱可塑性ポリマー構造は、柔軟性、耐久性、剛性、及び/又は強度を改善し、粉砕を阻止し、及び/又は引掻き及び染みに抵抗するため、窓、屋根、フローリング、壁、ファサード、及び同様のものなどの、ある特定の適用例に向けてその他の層に結合されてもよい。例えば、熱可塑性ポリマー層を持つガラス構造は、車両、航空機、船舶、建物、潜水艦を含む軍用艦艇で、保護の目的で、警察署、刑務所、拘置所、又は国境用の設備で、銀行、大使館、又は政府の建物で、博物館の芸術作品を含むショーケースの芸術作品のために、ショーケースの商品のために、動物園で使用するために、消防車で使用するために、又は保護ヘルメットで使用するために、使用されてもよい。別の実施例では、熱可塑性構造は、別の層に結合されて、改善された耐摩耗及び損耗性を有する屋根、フローリング、壁、又はファサード構造を形成してもよい。
【0015】
ある特定の態様では、構造ポリマーネットワークは、相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)又は半相互貫入ポリマーネットワーク(半IPN)であってもよい。相互貫入ポリマーネットワーク(IPN)は、2種又はそれよりも多くのポリマーの組合せであり、これらは互いに共有結合しているのではなく、互いの存在下で重合され又は架橋されている(又はその結合は、2種若しくはそれよりも多くのポリマーの間では無視できる)。半IPNは、1つ又は複数のネットワークと、1種又は複数の直鎖状又は分岐状ポリマーとを含むポリマーであり、高分子の少なくとも一部によるネットワークの少なくとも1つの分子規模での貫入を特徴とする。本明細書に開示されるTPU中間層の一部の実施形態は、二重ネットワークでTPUと絡み合った鎖を形成する、過酸化物のフリーラジカルによるRDMOの架橋に起因して、半IPNである。例えば、架橋TPUの形成は、ポリマーと、TPUの両端に末端官能ラジカル重合性基を有するTPUとを架橋することによって形成される化学結合を含むことができる。これらのIPNは、TPU単独と比較して改善された透明性及び硬さを含む、有利な属性を持つTPUを提供することができる。一部の実施形態では、TPUの属性は、RDMOの選択を経て調整される。実施形態では、TPUフィルムの剛性及び硬さは、例えば高いガラス転移温度(Tg)及び低い分子量を有するRDMOを添加することなどにより、TPUにおける複雑な化学構造を増大させることによって改善される。
【0016】
構造的TPU中間層の性質は、RDMOの選択を通して調整することができる。物理的強度に影響を与える属性は、化学構造、官能性の程度、分子量、及びTg(ガラス転移温度)を含む。出願人は、複雑な化学構造及び増大する官能性が、構造的TPU中間層の剛性及び強度に前向きな影響を及ぼすことを発見した。同様に、RDMOのガラス転移温度が高くなるほど、得られる構造的TPU中間層の剛性は大きくなる。RDMOの分子量が低下するほど、強度及び剛性は高くなる。
図1は、ポリマーフィルム層を有する積層構造100の実施例を例示する、断面図を示す。一部の実施形態では、変性TPUは、変性TPU及び少なくとも1つのその他の層を含む、積層体構造に含まれてもよい。一実施形態では、組成物は、2つのその他の層の間にある。一実施形態では、2つのその他の層は、ガラス層を含む。
一部の実施形態では、積層体構造100は、第1の層110、第2の層120、並びに第1の層110と第2の層120との間のポリマー中間層130を含む。一部の実施形態では、第1の層110及び第2の層120は、ガラスとすることができる。例えば、第1の層110及び第2の120は、自動車の板ガラス、建築用ガラス、又はその他の適切なタイプのガラスとすることができる。
【0017】
一部の実施形態では、ポリマー中間層130は、第1の層110に結合された上面及び第2の層120に結合された下面を有する、実質的に平面フィルムである。一部の実施形態では、ポリマー中間層130は、最大約3ミリメートルの厚さを有することができる。一部の実施形態では、ポリマー中間層130の厚さは、約50マイクロメートル~約1ミリメートルの範囲にあってもよい。他の実施形態では、ポリマー中間層130の厚さは、約50マイクロメートル~約5ミリメートルの範囲にあってもよい。積層構造は追加の層を含むことができること、及びこれらの層は、種々の厚さ、長さ、及び幅を有することができることが理解される。他の実施形態では、例えば射出成型などの種々のタイプの成型を使用して、組成物を種々の形状に成型してもよい。
【0018】
一部の実施形態では、ポリマー中間層130がTPUである。TPUポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを反応させることによって形成することができる。ポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールを含むことができる。一部の実施形態では、ポリオールは、ポリカプロラクトンをベースにすることができる。別の実施形態では、TPUは、脂肪族のポリカプロラクトンをベースにした熱可塑性ポリウレタンとすることができる。一部の実施形態では、ポリマー中間層130は、過酸化物のフリーラジカルによって架橋した1種又は複数のRDMO添加剤を使用して脂肪族TPUから形成された、半IPNを含むことができる。例えば、脂肪族TPUは、ドイツ、LudwigshafenのBASF SEにより提供されるELASTOLLAN(登録商標)とすることができる。一部の実施形態では、適切なRDMOは:アクリレート、メタクリレート、多面体オリゴマーシルセスキオキサン(POSS)、及びトリアリルイソシアヌレート(TAIC)を含む。アクリレート及びメタクリレートモノマー又はオリゴマーは、単官能性又は多官能性とすることができる。一部の実施形態では、アクリレート又はメタクリレートは、単に多官能性である。一部の実施形態では、多官能性アクリレート又はメタクリレートは、最大6個の官能基を有する。一部の実施形態では、メタクリレート又はアクリレートは、二官能性メタクリレート、二官能性アクリレート、又は三官能性アクリレートペンタエリスリチルトリアクリレート(PETA)である。一部の実施形態では、POSSは、コアにあり且つ有機ビニル基が取着された無機シルセスキオキサン(silsequioxane)、コアにあり且つ有機メタクリレート基が取着された無機シルセスキオキサン(silsequioxane)、有機イソオクチル基を持ち且つ3個の活性シラノール官能基が取着された無機シルセスキオキサン(silsequioxane)である。一部の実施形態では、TAICが三官能性TAICである。
【0019】
一部の実施形態では、ポリマー中間層130は、ASTM D4065標準試験法を使用して、少なくとも25MPaのヤング率を、30℃で1秒間の負荷持続に関して有することができる。一部の実施形態では、ポリマー中間層130は、少なくとも6MPaのヤング率を、30℃で1カ月の負荷持続にわたり有することができる。一部の実施形態では、ポリマー中間層は、60℃で1秒の負荷持続にわたり、少なくとも4MPaのヤング率を有することができる。一部の実施形態では、30℃で行われた3秒の負荷持続試験では、ヤング率が約1.5メガパスカル(MPa)~約23MPaに及んでもよい。一部の実施形態では、ポリマー中間層130は、約5MPa~約40MPaに及ぶヤング率を有することができる。一部の実施形態では、ポリマー中間層130は、約15MPa~約35MPaに及ぶヤング率を有することができる。
表2は、一部の変性TPUに関する、30℃で種々の時間の長さにわたる組成物の、一部の実施形態に関するヤング率の値を示す。表3は、一部のTPUに関する、種々の時間の長さにわたる60℃の負荷での組成物の、一部の実施形態のヤング率の値を示す。
【0020】
別の例示的な実施形態によれば、上記組成物を作製する方法が提供される。方法は、熱可塑性ポリウレタン、第2の成分、及びフリーラジカル硬化剤を、例えば二軸スクリュー押出しによって一緒に混合することを含んでもよい。当然ながら、その他の混合技法が用いられてもよいことが理解される。例えば、一軸スクリュー押出しが使用されてもよい。第2の成分及び硬化剤の添加は、例えばFarrel連続混合機(FCM(商標))、C.W.Brabenderローラーブレード混合機を使用する、又は二軸スクリュー押出しによるなど、従来の溶融配合法を使用して行うことができる。
【0021】
一部の実施形態では、TPUの小規模又は実験室規模の変性が望まれるとき、TPUを変性する方法は、最高約120℃の温度でTPUを溶融するステップ、TPUにRDMO成分を投与して、各用量が組み込まれた後に次の用量の添加を行うようにするステップ、及びTPUと第2の成分とを、混合機を使用して少なくとも5分間混合するステップを含んでもよい。一部の実施形態では、硬化剤は、同じ方法を使用して、RDMOを添加した後に又はその添加と同時に添加されてもよい。例えば大きな商業的規模のTPU変性が望まれるときなどの、他の実施形態では、二軸スクリュー押出しを含むその他の混合方法が使用されてもよい。一部の実施形態では、方法は、押出し機内での架橋により明らかにされるように、熱安定性が課題になる場合、スコーチ防止剤を使用して、押出しのためにRDMOを安定化させることを含んでもよい。
【0022】
一部の実施形態では、RDMOは、組成物の約3%~約60質量%の範囲とすることができる。一部の実施形態では、RDMOは:20%の単官能性アクリレート、コアにあり且つ有機ビニル基が取着された5%の無機シルセスキオキサン(silsequioxane)、コアにあり且つ有機メタクリレート基が取着された5%の無機シルセスキオキサン(silsequioxane)、20%の二官能性、20%の二官能性アクリレート、20%の三官能性アクリレートPETA、20%の三官能性TAIC、及びこれらのブレンドの、1種又は複数とすることができる。一部の実施形態では、RDMOは、摂氏約-60度のTgを有することができる。一部のその他の実施形態では、RDMOは、摂氏約60度よりも高いTgを有することができる。一部のその他の実施形態では、RDMOは、摂氏約85度よりも高いTgを有することができる。一部のその他の実施形態では、RDMOは、摂氏約110度よりも高いTgを有することができる。
【0023】
一部の実施形態では、方法は、RDMO及び硬化剤で変性したTPUを押し出すことを含むことができる。一部の実施形態では、方法は、TPUとRDMO及び硬化剤とを同時に、例えば混合機でブレンドすることを含むことができる。ブレンドは、重量測定的添加又はその他の従来の方法を通して行ってもよい。一部の実施形態では、ブレンドは、摂氏約100度よりも高い温度で行うことができる。一部の実施形態では、ブレンドは、摂氏約120度で行うことができる。一部の実施形態では、例えばTPUを熱安定な成分と配合することによるなど、架橋を防止するために熱安定性を維持できる場合、ブレンドは摂氏約140度で行うことができる。他の実施形態では、方法は、RDMOと混合され且つ過酸化物とブレンドされたTPUを押し出すことを含むことができる。一部の実施形態では、方法は、押出し物を例えば室温に冷却することを含むことができる。一部の実施形態では、方法は、従来のTPUペレット化法を使用してTPUをペレット化することを含むことができる。一部の実施形態では、加工温度は、TPUの押出しを可能にしながら、過酸化物フリーラジカル開始剤の安定性を維持するよう最小限に抑えられる。一部のRDMOはモノマーでありしたがって低分子量を有し、それらはTPU内で可塑剤のように振る舞うようになり、化合物の溶融粘度を低減させるので(そのメルトフローが増大する)、より低い加工温度を使用することができる。
【0024】
一部の実施形態では、硬化剤が過酸化物であってもよく、その選択は、加工温度での、過酸化物の半減期温度に基づく。一部の実施形態では、過酸化物は、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、ジ(t-ブチル)ペルオキシド、又は2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンであって、それぞれ151.8℃、149.1℃、及び140.3℃で1時間の半減期を有するものとすることができる。他の適切な過酸化物は、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-アミルヒドロペルオキシド、クミルヒドロペルオキシド、1,1,3,3-テトラメチルブチルヒドロペルオキシド、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、イソプロピルクミルヒドロペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、及び3,6,9-トリエチル-3,6,9-トリメチル-1,4,7-トリペルオキソナンを含んでもよい。
【0025】
他の実施形態では、硬化剤は、光開始剤、例えば2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン、1-ヒドロキシシクロヘキシル-フェニルケトン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィネート-L、及びビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドなどであってもよい。さらに他の実施形態では、硬化剤は、ジアゼニル官能基を持つ化合物(アゾ化合物)であってもよい。
【0026】
一部の実施形態では、方法は、加圧、圧縮成型、又はその他の適切な加工など、押出し物を平らにすることを含んでもよい。一部の実施形態では、成型又は平らにすることは、ブレンド直後に行われる。一部の実施形態では、平らにした又は成型された押出し物を、例えば室温まで冷却する。一部の実施形態では、方法は、平らにされた押出し物を使用して積層構造を形成することを含むことができる。一部の実施形態では、平らにされた押出し物は、2つのガラス層(例えば、層110及び120)の間の層である。他の実施形態では、平らにされた押出し物は、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)剥離ライナーなど、2つの剥離ライナー層の間の層である。一部の実施形態では、中間層として平らにされた押出し物を持つ2つの剥離ライナーは、それ自体が2つのガラス層の間にある。一部の実施形態では、方法は、押出し物の上面と第1のガラス層とを結合すること、及び押出し物の下面と第2のガラス層とを結合することを含む。
【0027】
一部の実施形態では、方法は、押出し物と共に形成された積層構造を硬化することを含むことができる。例えば、積層構造は、剥離ライナーとガラスとの間に挟み、標準的な積層サイクルで真空ラミネーターで硬化することができる。一部の実施形態では、これらの積層サイクルは、当業者に公知の典型的なサイクル手順を含むと考えられる。他の実施形態では、積層し硬化する方法は、オートクレーブ又は真空キルンを使用して行ってもよい。一実施形態では、真空バッグ及びオートクレーブを使用して積層し硬化する加工は、下記:室温及び大気圧での真空バッグ密封積層体上で15分の真空引きステップを実行し、その後、≧2Barの圧力で、90℃までの、30分の温度上昇を行うこと、圧力≧2Barを維持しながら90℃で90分間溶融し、90℃~150℃まで60分で温度上昇させること、150℃で硬化し、冷却が終わるまで、圧力を≧2Barで維持したまま、150℃から周囲温度まで冷却するステップを含んでもよい。
本発明の記述は、本出願で記述される特定の実施形態に関して限定されず、様々な態様の例示として意図される。多くの修正及び変更を、当業者に明らかにされるように、その精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。
【実施例】
【0028】
(実施例1)
TPU Elastollan(登録商標)のペレット、BASFから購入された脂肪族ポリウレタン(Ludwigshafen、ドイツ、製品番号L1275A10)を、C.W.Brabender Instruments,Inc.のローラーブレード混合機(South Hackensack,NJ,USA)で、120℃に設定されたBrabender(登録商標)の加工温度で溶融した。溶融したTPUを、Brabender(登録商標)で、25rpmで混合した。次いでTPUを小用量の第2の成分と合わせて、変性TPU配合物を生成した。表1は、これらの実験で生成された、全ての配合物(対応する第2の成分を含む)の完全なリストを示す。表1の添加剤に加え、配合物のそれぞれは1.5質量%の過酸化物も含有した。
【0029】
【表1】
TPUへのRDMO小さい実験室規模の混合を実現するため、添加剤の各用量を、溶融したTPU中に組み込ませ、その後、次の用量を添加した。これを、表1に従い、添加剤の目標の質量%に達するまで繰り返した。添加剤を、混合機で、最短5分間均質化した。
混合機の回転速度を調節して、溶融温度を120℃又はそれよりも低く維持して、過酸化物を、最終組成物の1.5質量%まで添加した。過酸化物も混合機で均質化した。過酸化物の選択は、加工温度に対する過酸化物の半減期温度に基づいた。表1に列挙される配合物に関し、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシンを過酸化物剤として使用した。(好ましい過酸化物は、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン、ジ(t-ブチル)ペルオキシド、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサンであって、1時間の半減期を、それぞれ151.8℃、149.1℃、及び140.3℃で有するものを含む。その他の硬化剤が使用され得ることが理解される。
【0030】
十分混合されたTPUを、可能な限り平らにし、冷却した。次いでアルミ箔で包み、ポリエチレン(PE)バッグ内に入れ、獲得された空気を室温で除去できるようにした。バッグに油性マーカー(Sharpie(登録商標))ペンで標識し、ラミネーターまで輸送して、従来のオートクレーブ積層方法を使用してさらなる加工を行った。
4インチ×4インチの積層体に組み立てるため、5グラムの変性TPUを、光沢のあるポリエチレンテレフタレート(PET)と鋼板との間で225°Fで加圧して、約25ミルのフィルムを得た。次いでフィルムを、2つのフッ素化エチレンプロピレン(FEP)層の間に配置した(剥離ライナーとして一般に使用され、硬化後の変性TPUの除去を確実にする)。FEP層の自由表面にガラス層を配置し、最終構成が下記:ガラス/FEP/変性TPU/FEP/ガラスになるようにした。
【0031】
次いで積層体を、300°Fで60分のサイクルを使用して、真空ラミネーターで硬化した。サイクルステップは、上部及び底部の両方のチャンバーからの10分の排気を含んでおり、残りの時間は、部分大気圧を使用して上部チャンバーを加圧して完全大気圧にし、それと共に積層構造を底部チャンバー内で真空下で維持し、その結果、積層体中の変性TPUの加圧及び硬化がもたらされた。表2は、構造的TPU-IPNを積層し硬化するための、150℃での真空バッグ及びオートクレーブに関する典型的な出発条件を提供する。
【0032】
【表2】
引張り強度の機械的性質(ヤング率)を、ASTM D4065標準試験法の下、動的機械式分析器(DMA)を使用して、表1の配合物に関して決定した。ヤング率の値を、以下の表3において、いくつかの配合物に関して示す。30°及び60℃でのヤング率に関する試験を、時間温度重ね合わせ(TTS)を使用して実行して、負荷持続試験結果を決定した。負荷持続試験は、これらの試験が可能である全ての配合物に関し、30℃で1秒、3秒、1分、1時間、1日、1カ月、及び10年間行った。BASF L1275A10(非変性)TPUは、対照として働いた。
【0033】
30℃試験に関する結果を、表3に概略的に示す。BASF L1275A10(非変性)TPUは、10.02MPa、8.69MPa、6.39MPa、及び3.83MPaのヤング率をそれぞれ1秒、3秒、1分、及び1カ月間示した。対象TPUと比較して、より高いヤング率の値が、以下の配合物に関して観察された:LR01936-05(コアにあり且つ有機メタクリレート基が取着されて1.5%の過酸化物を含む、5%無機シルセスキオキサン(silsequioxane))、LR01942-02(1.5%の過酸化物を含む、20%の二官能性アクリレート)、LR01942-03(1.5%の過酸化物を含む、20%の三官能性アクリレートPETA)、及びLR01942-04(1.5%の過酸化物を含む、20%の三官能性TAIC)。例えば、1秒試験では、これら4種の配合物に関する結果は、それぞれ18.34MPa、23.89MPa、25.04MPa、及び18.45MPaであった。20%の三官能性アクリレートPETA変性TPUを含むLR01942-03は、1カ月30℃の負荷持続試験において6.58MPaで、BASF L1275A 10非変性TPUよりも顕著に優れており、対照と比較してヤング率が1.7倍高かった。
【0034】
【0035】
(実施例2)
配合物を、BASF L1275A10非変性TPUベースポリマー対照に対しても、表4に示される持続時間にわたり実行される60℃のヤング率試験で比較した。ASTM D4065標準試験法をこれらの試験に関しても使用した。より高い温度で、BASF L1275A10非変性TPUは、3秒で3.51MPaを、及び1時間で2.39MPaを示した。LR01942-03は、この試験においても対照より優れており、3秒で3.62MPa及び1時間で2.86MPaを示した。この分析に含まれる全ての組成物に関する結果を、表3に示す。とりわけLR01942-04、20%の三官能性TAICを含む配合物は、1時間で、2.39MPaでの対照と同じヤング率値をもたらした。
【0036】
【表4】
より高い温度で生じる可能性のある、過酸化物との架橋の効果に起因して、120℃を超えるBrabenderでの混合温度の上昇は、POSSを含むもの以外、配合物の全てを作製する方法に負の影響を及ぼすことを見い出した。POSS変性TPUでは、架橋に対するさらに低い感受性が、140℃などのより高い混合温度で観察された。
この時点で、予備構造的TPU中間層が、RDMO、及び未反応(非架橋)のままのフリーラジカル化酸化物硬化剤と、完全に配合される。中間層の外観/審美性は、従来のTPU中間層と同一である。予備構造的中間層は、通常通り包装され、ガラスラミネーターまで輸送されて、従来のオートクレーブ積層加工が行われる。
【0037】
ガラス積層及び構造的TPUの硬化は、標準積層法によって同時に実現される。積層加工は、予備構造的中間層を2つのガラスレンズの間に挟むことによって開始され、次いで複合積層体は真空バッグに入れられて、取り込まれた空気を除去し、その後、従来のオートクレーブ積層法により加工して、安全性のあるガラス積層体を生成する。第1のステップは、真空バッグを介した、室温での構造的TPUの初期脱気からなる。次に、バッグに入れられた積層構造をオートクレーブに移し、室温で1大気圧よりも大きく過圧して、空気の取込みを排除し、熱加工中の空隙形成を防止する。次いで積層体を、室温から、制御された融解段階を経て、次いで最終的には目標とする硬化温度で平坦域に至る、設計された温度プロファイルを使用して加熱する。硬化温度になったら、積層体のコア温度を適切な量で維持して、内部過酸化物フリーラジカル硬化剤をTPU中間層のRDMO成分との架橋(硬化)を開始する。硬化したら、積層体を、ヘイズ形成を最小限に抑える冷却速度に矛盾のない手法で冷却する。最終硬化積層構造は、標準的なTPU中間層に対して増強された構造的性質を持つ架橋構造的TPU(TPU/半IPN)中間層から構成される。
【0038】
本明細書で論じられる組成物、積層体、及び方法について、そのある特定の好ましい実施形態に従い本明細書で詳述してきたが、多くの修正及び変更が当業者により行われてもよい。したがって前述の記述は、それによって限定されると解釈すべきではなく、そのような前述の明らかな変形例を含み且つ以下の特許請求の範囲の精神及び範囲によってのみ限定されると解釈すべきである。
【国際調査報告】