(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】クジノシド系化合物を含有する安定な液状医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/7048 20060101AFI20231222BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231222BHJP
A61K 36/185 20060101ALI20231222BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231222BHJP
A61K 9/12 20060101ALI20231222BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20231222BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231222BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20231222BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20231222BHJP
A61K 47/18 20170101ALI20231222BHJP
【FI】
A61K31/7048
A61P11/00
A61K36/185
A61K9/08
A61K9/12
A61K9/10
A61K47/02
A61K47/10
A61K47/26
A61K47/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538063
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2021139611
(87)【国際公開番号】W WO2022135331
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】202011517217.1
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516294609
【氏名又は名称】上海凱屹医薬科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】SHANGHAI KE PHARMACEUTICAL CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】408G Main Building, No.63 Runan Blvd, Huangpu District, Shanghai, China
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】馬 明
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076AA22
4C076AA24
4C076BB21
4C076CC15
4C076DD08E
4C076DD26Z
4C076DD38E
4C076DD39Q
4C076DD49Q
4C076EE23E
4C076FF15
4C076FF63
4C086AA01
4C086EA11
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA23
4C086MA56
4C086NA10
4C086ZA59
4C088AB12
4C088BA08
4C088BA13
4C088BA23
4C088BA32
4C088CA03
4C088NA10
4C088ZA59
(57)【要約】
本発明は、治療有効量のクジノシド系化合物と、緩衝有効量のpH6.5~7.5の緩衝液と、薬学的に許容される担体とを含む、クジノシド系化合物を含有する安定な液状医薬組成物を開示する。本発明に開示された液状医薬組成物は、半透過性容器中での長期保管に適している。前記半透過性容器は、好ましくは、低密度ポリエチレンボトルと医薬品用アルミホイル袋の組み合わせであり、且つ前記低密度ポリエチレンボトルと医薬品用アルミホイル袋との間は真空又は真空に近い状態にある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療有効量のクジノシド系化合物と、緩衝有効量のpH6.5~7.5の緩衝液と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする、安定な液状医薬組成物。
【請求項2】
前記クジノシド系化合物は、一般式(I)で示される化合物であることを特
徴とする、請求項1に記載の液状医薬組成物。
【化1】
(ただし、
A環、B環、C環、D環又はE環はそれぞれ独立に完全に飽和された若しくは部分的に飽和された環である;
C2、C11、C12及びC19位はそれぞれ独立に任意的に-OHに置換される;
R
1は糖残基であり、好ましくは単糖残基又はオリゴ糖残基である;
R
2a及びR
2bは共に-CO
2-を形成する;
R
3a及びR
3bは共にCH
2=を形成し、或いはそれぞれ独立に-CH
3又は-CH
2-OHから選ばれる。)
【請求項3】
一般式(I)において、A環、B環、C環、E環は完全に飽和された環であり、D環は部分的に飽和された環であり、C12及びC19位はそれぞれ独立に-OHに置換され、R
1は単糖残基又はオリゴ糖残基であり、R
3a及びR
3bは-CH
3である;或いは
一般式(I)において、A環、B環、C環、E環は完全に飽和された環であり、D環は部分的に飽和された環であり、C11及びC19位はそれぞれ独立に-OHに置換され、R
3a及びR
3bはそれぞれ-CH
3であり、R
1は単糖残基又はオリゴ糖残基である;或いは
一般式(I)において、A環、B環、E環は完全に飽和された環であり、C環、D環は部分的に飽和された環であり、C19位は-OHに置換され、R
3a及びR
3bはそれぞれ-CH
3であり、R
1は単糖残基又はオリゴ糖残基である;
好ましくは、一般式(I)に示す化合物は、下記式(II)、(III)又
は(IV)で示される構造を有する:
【化2】
【化3】
【化4】
式(II)、(III)及び(IV)において、R
1は単糖残基又はオリゴ糖残基である;好ましくは、単糖はアラビノース、グルクロン酸、2-デオキシ-グルクロン酸、グルコース又はラムノースである;オリゴ糖残基は二糖残基、三糖残基又は四糖残基である;好ましくは、オリゴ糖残基はグルコース、アラビノースとラムノースの任意の組み合わせを含むことを特徴とする、請求項2に記載の液状医薬組成物。
【請求項4】
前記クジノシド系化合物は、クジノシドA、クジノシドB、クジノシドC、クジノシドD、クジノシドE、クジノシドF、クジノシドI、クジノシドJ、イレクジノシドH、イレクジノシドI、イレクジノシドJからなる群から選ばれる;好ましくは、前記クジノシド系化合物は、クジノシドA、クジノシドB、クジノシドC、クジノシドD、クジノシドI、イレクジノシドI、イレクジノシドJからなる群から選ばれる;より好ましくは、前記クジノシド系化合物は、3β-12α-19α-トリヒドロキシ-ウルサン-13(18)-エン-28,20β-ラクトン-3-O-[β-D-グルコシル-(1→3)-[α-L-ラムノシル-(1→2)]-α-L-アラビノシド及び/又は3β-12β-19α-トリヒドロキシ-ウルサン-13(18)-エン-28,20β-ラクトン-3-O-[β-D-グルコシル-(1→3)-[α-L-ラムノシル-(1→2)]-α-L-アラビノシドであることを特徴とする、請求項1に記載の液状医薬組成物。
【請求項5】
前記クジノシド系化合物は、モチノキ科モチノキ属植物から単離されたものである;
好ましくは、前記モチノキ科モチノキ属植物は、モチノキ苦丁茶、タラヨウ、ヒイラギモチ、五陵苦丁茶、華中ヒイラギモチ又は霍山モチノキからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1に記載の液状医薬組成物。
【請求項6】
前記液状医薬組成物は溶液又は懸濁液であり、好ましくは吸入用溶液又は吸入用懸濁液の剤形であることを特徴とする、請求項1に記載の液状医薬組成物。
【請求項7】
前記クジノシド系化合物が液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.001%~0.050%、好ましくは0.006%~0.030%、より好ましくは0.010%~0.030%、最も好ましくは0.015%であることを特徴とする、請求項1に記載の液状医薬組成物。
【請求項8】
前記pH6.5~7.5の緩衝液は、リン酸塩緩衝液であり、好ましくはリン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液又はそれらの組み合わせであり、より好ましくはリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液であり、さらに好ましくはpH6.5のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、pH6.9のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、pH7.0のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、pH7.4のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、又はpH7.5のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液であることを特徴とする、請求項1に記載の液状医薬組成物。
【請求項9】
前記薬学的に許容される担体は、薬学的に許容される溶媒、可溶化剤、安定化剤又はそれらの組み合わせを含むことを特徴とする、請求項1に記載の液状医薬組成物。
【請求項10】
前記薬学的に許容される溶媒は、水、エタノール又はそれらの組み合わせから選ばれ、好ましくはエタノール水溶液である;より好ましくは、前記薬学的に許容される溶媒の中で、エタノールが液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、1.0%~5.0%、より好ましくは2.5~4.0%、最も好ましくは3.5%であることを特徴とする、請求項9に記載の液状医薬組成物。
【請求項11】
前記可溶化剤は、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400又はツイーン80からなる群から選ばれ、好ましくはツイーン80である;好ましくは、前記可溶化剤が液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.1%~0.8%、好ましくは0.2%~0.5%である;
より好ましくは、前記可溶化剤はツイーン80であり、それが液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.1%~0.5%、さらに好ましくは0.3%であることを特徴とする、請求項9に記載の液状医薬組成物。
【請求項12】
前記安定化剤は、フェニルエタノール又はエデト酸二ナトリウムから選ばれ、好ましくはエデト酸二ナトリウムである;好ましくは、前記安定化剤が液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.05%~0.20%、好ましくは0.05%~0.15%である;
さらに好ましくは、前記安定化剤はエデト酸二ナトリウムであり、それが液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.05%~0.20%、好ましくは0.05%~0.10%、より好ましくは0.072%~0.088%であることを特徴とする、請求項9に記載の液状医薬組成物。
【請求項13】
液状医薬組成物であって、前記液状医薬組成物の緩衝系はリン酸水素二ナトリウム-リン酸水素二カリウムであり、当該組成物のpHは約7.0である;ただし、当該液状医薬組成物の合計重量で、前記液状医薬組成物は、
0.006%~0.030%のクジノシドA;
約3.5%のエタノール;
0.1%~0.5%のツイーン80;及び
0.072%~0.088%のエデト酸二ナトリウムを含有することを特徴とする、液状医薬組成物。
【請求項14】
前記液状医薬組成物は、液状医薬組成物の合計重量で、約0.006%のクジノシドA、約3.5%のエタノール、約0.1%のツイーン80、約0.072%のエデト酸二ナトリウム及び約96.2%の水を含有すること;或いは約0.015%のクジノシドA、約3.5%のエタノール、約0.3%のツイーン80、約0.08%のエデト酸二ナトリウム及び約95.8%の水を含有すること;或いは約0.03%のクジノシドA、約3.5%のエタノール、約0.5%のツイーン80、約0.088%のエデト酸二ナトリウム及び約95.2%の水を含有することを特徴とする、請求項13に記載の液状医薬組成物。
【請求項15】
薬学的に許容される包装材で形成された密封可能な容器を備え、前記密封可能な容器内には、請求項1~14のいずれか一項に記載の液状医薬組成物が含有されることを特徴とする、包装された医薬製品。
【請求項16】
前記薬学的に許容される包装材は、ポリマー材、アルミホイル材又はそれらの組み合わせからなる群から選ばれる;
ただし、前記ポリマー材は、低密度ポリエチレンフィルム、低密度ポリエチレン袋、低密度ポリエチレンボトル、高密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンボトル、ポリプロピレンボトル、ポリエチレンテレフタレートボトル、ガラスボトル、ポリエステル/アルミニウム/ポリエチレン複合フィルム、ポリエステル/アルミニウム/ポリエチレン複合袋又はそれらの組み合わせからなる群から選ばれる;
前記アルミホイル材はアルミホイル袋を含み、好ましくは医薬品用アルミホイル袋である;
好ましくは、前記薬学的に許容される包装材は、低密度ポリエチレンボトルとアルミホイル袋の組み合わせであることを特徴とする、請求項15に記載の包装された医薬製品。
【請求項17】
前記液状医薬組成物は、前記ポリマー材とアルミホイル材からなる密封可能な容器に密封されており、且つポリマー材と前記アルミホイル材との間は、真空又は真空に近い状態にあることを特徴とする、請求項16に記載の包装された医薬製品。
【請求項18】
前記低密度ポリエチレンボトルの厚さは、0.5~2.0mm、好ましくは0.8~1.2mm、より好ましくは1.0~1.2mmであることを特徴とする、請求項16又は17に記載の包装された医薬製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は化学製薬分野に属し、具体的には、クジノシド系化合物を含有する安定な液状医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease、COPD)は、気流の閉塞を特徴とする慢性気管支炎や肺気腫であり、さらに肺性心や呼吸不全に進行することがある。COPDの特徴的な病理的変化として、細菌やガス曝露による小気道や肺の慢性炎症、酸化ストレスやプロテアーゼ増加などのメカニズムの組み合わせによる肺実質の障害や小気道の線維化などが含まれる。COPDは、地球環境と世界人口の年齢構成の変化に伴い、その発症率と死亡率が上昇しており、世界中で40歳以上での発症率は9~10%にもなり、患者の生活や仕事に重大な影響を及ぼしてしまう。
【0003】
現在、COPDの治療には主に薬物が採用されており、それらは病気の進行を有効に抑え、症状を緩和させることができる。COPDの治療薬には主に、気管支拡張剤(β2アドレナリン作動薬、テオフィリン系薬、抗コリン薬)、グルココルチコイド、抗菌薬、粘液溶解剤などが含まれる。COPDの発症メカニズムや病理的特徴がさらに解明されることにつれて、抗プロテアーゼ製剤、ホスホジエステラーゼ阻害剤、P38マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ阻害剤、ホスファチジルイノシトール-3キナーゼ阻害剤など、COPDを治療するための様々な新薬が登場した。
【0004】
気管支喘息(略して喘息)は、気道の慢性的なアレルギー性炎症を特徴とする疾患であり、その過程には様々な細胞やサイトカインが関与している。喘息は気道過敏性を引き起こし、喘鳴、息苦しさ、咳などを繰り返して発作させ、且つその持続発作により死に至ることもある。喘息は夜間や早朝に発症することが多く、環境、気流、ダニや花粉などのアレルゲンとの接触や、自己免疫などに関連していることが多い。国際的に約3億人が、中国では約2,000万人以上が喘息を罹患しており、且つその発症率は上昇傾向にある。喘息の高い発症率は、人々の心身の健康や生活の質に影響を及ぼし、公衆衛生に深刻な脅威を与える主要な慢性疾患の一つとなっている。
【0005】
現在、国際的に言えば、既に開発に成功した喘息の治療薬としては、気道平滑筋弛緩薬と抗炎症薬という2種類があり、主にβ受容体作動薬、グルココルチコイド、アミノフィリンなどがある。これらの薬物はいずれも、短期的な治療効果が顕著であるものの、生存率の向上や生活の質の向上において効果が顕著ではない。その主な原因は、これらの薬物の副作用が酷く、心臓や腎臓の機能にある程度のダメージを与えるためである。これらの問題を解決するために、毒性がより低くて治療効果がより良好な抗喘息薬を得るように、新しい剤形が開発されつつある。
【0006】
苦丁茶は、中国南部のあらゆる民族の人々がよく飲む植物茶で、伝統的な薬用植物でもある。それは、ハーブ、つる植物、低木、中木、高木などの植物の葉に由来する、苦味と甘味の度合いが異なる植物の大群の総称である。苦丁茶の原植物は12科に関連し、30種以上あり、そのうちの下記の2科は現在で広く栽培されて且つ良く使用されているものである:1つ目はモチノキ科モチノキ属苦丁茶であり、主にモチノキ苦丁茶(Ilex kudingcha C.J.Tseng)、タラヨウ(Ilex latifolia Thunb.)、ヒイラギモチ(Ilex cornute Lindl.)、五陵苦丁茶(Ilex. Pentag-ona S.K.Chen. Y.X.Feng et C.F.L iang)、華中ヒイラギモチ(Ilex cent rochinensis S.Y.Hu)及び霍山モチノキ(I. houshanensis Y.H.He)を含む;2つ目はモクセイ科苦丁茶であり、即ち主に貴州、四川、雲南や重慶などの南西地域の省・市で開発されたイボタノキ属苦丁茶であり、当該属の苦丁茶は「麗葉女貞苦丁茶」(Ligustrum henryi Hemsl)と称される。
【0007】
現代の科学的研究により、苦丁茶の葉にはカフェイン、タンニン酸、タンパク質、ウルソール酸、芳香油、クジノシド、α-アカロイド樹脂、β-シトステロール、ウルソル酸、及び様々なビタミンや微量元素が含まれており、清熱・解毒、消炎・殺菌、止咳・化痰、健胃・消化、明目・益思、コレステロール降下、血圧降下、血脂降下、疲労回復、抗老化などの薬理的保健機能が実証された。特許文献1では、喘息、COPDなどの肺疾患の治療におけるクジノシド系化合物の使用が開示され、これらの化合物は吸入により投与することができ、効能を迅速に発現させることや、肺との接触表面積が大きいなどの利点を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Triterpenes and triterpenoid saponins from the leaves of Ilex kudincha
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
これらのクジノシド系化合物について、安定な化学製剤を得ることは、製薬業界にとって緊急に解決すべき課題である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、治療有効量のクジノシド系化合物と、緩衝有効量のpH6.5~7.5の緩衝液と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする、安定な液状医薬組成物を提供する。
【0012】
一つの好ましい実施形態において、前記クジノシド系化合物は、モチノキ科モチノキ属植物から単離されたものである;より好ましくは、前記モチノキ科モチノキ属植物は、モチノキ苦丁茶、タラヨウ、ヒイラギモチ、五陵苦丁茶、華中ヒイラギモチ又は霍山モチノキからなる群から選ばれる。
【0013】
もう一つの好ましい実施形態において、前記クジノシド系化合物は、一般式(I)で示される化合物である:
【化1】
ただし、A環、B環、C環、D環又はE環はそれぞれ独立に完全に飽和された若しくは部分的に飽和された環である;C2、C11、C12及びC19位はそれぞれ独立に任意的に-OHに置換される;R
1は糖残基から選ばれる;R
2a及びR
2bは共に-CO
2-を形成する;R
3a及びR
3bは共にCH
2=を形成し、或いはそれぞれ独立に-CH
3又は-CH
2-OHから選ばれる。
【0014】
一つの好ましい実施形態において、前記糖残基は単糖残基又はオリゴ糖残基である。一つの好ましい実施形態において、単糖はアラビノース(Ara)、グルクロン酸又は2-デオキシ-グルクロン酸(GlcA)、グルコース(Glc)又はラムノース(Rha)である。ある実施形態において、オリゴ糖残基は二糖残基、三糖残基又は四糖残基である。ある実施形態において、前記オリゴ糖残基はグルコース、アラビノース、グルクロン酸とラムノースの任意の組み合わせを含む。
【0015】
一つの好ましい実施形態において、A環、B環、C環、E環は完全に飽和された環であり、D環は部分的に飽和された環であり、C12及びC19位はそれぞれ独立に-OHに置換され、R1は単糖残基又はオリゴ糖残基であり、R3a及びR3bは-CH3である。
一つの好ましい実施形態において、A環、B環、C環、E環は完全に飽和された環であり、D環は部分的に飽和された環であり、C11及びC19位はそれぞれ独立に-OHに置換され、R3a及びR3bはそれぞれ-CH3であり、R1は単糖残基又はオリゴ糖残基である。
一つの好ましい実施形態において、A環、B環、E環は完全に飽和された環であり、C環、D環は部分的に飽和された環であり、C19位は-OHに置換され、R3a及びR3bはそれぞれ-CH3であり、R1は単糖残基又はオリゴ糖残基である。
【0016】
一つの好ましい実施形態において、一般式(I)で示される化合物は、下記式(II)、(III)又は(IV)で示される構造を有する:
【化2】
【化3】
【化4】
【0017】
各式において、R1は単糖残基又オリゴ糖残基である。一つの好ましい実施形態において、式(II)、(III)及び(IV)では、単糖はアラビノース(Ara)、グルクロン酸、2-デオキシ-グルクロン酸(GlcA)、グルコース(Glc)又はラムノース(Rha)である;オリゴ糖残基は二糖残基、三糖残基又は四糖残基である;オリゴ糖残基はグルコース、アラビノースとラムノースの任意の組み合わせを含む。
【0018】
一つの好ましい実施形態において、前記クジノシド系化合物は、クジノシドA、クジノシドB、クジノシドC、クジノシドD、クジノシドE、クジノシドF、クジノシドI、クジノシドJ、イレクジノシドH、イレクジノシドI及びイレクジノシドJからなる群から選ばれる。
一つの好ましい実施形態において、前記クジノシド系化合物は、クジノシドA、クジノシドB、クジノシドC、クジノシドD、クジノシドI、イレクジノシドI及びイレクジノシドJからなる群から選ばれる。
一つのより好ましい実施形態において、前記クジノシド系化合物は、クジノシドAの2種類の異性体:3β-12α-19α-トリヒドロキシ-ウルサン-13(18)-エン-28,20β-ラクトン-3-O-[β-D-グルコシル-(1→3)-[α-L-ラムノシル-(1→2)]-α-L-アラビノシド又は3β-12β-19α-トリヒドロキシ-ウルサン-13(18)-エン-28,20β-ラクトン-3-O-[β-D-グルコシル-(1→3)-[α-L-ラムノシル-(1→2)]-α-L-アラビノシドから選ばれる。
【0019】
一つの最も好ましい実施形態において、前記クジノシド系化合物が液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.001%~0.050%、好ましくは0.006%~0.030%、より好ましくは0.010%~0.030%、最も好ましくは0.015%である。
もう一つの好ましい実施形態において、前記pH6.5~7.5の緩衝液は、リン酸塩緩衝液から選ばれ、好ましくはリン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液又はそれらの組み合わせであり、より好ましくはリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液である。
一つのより好ましい実施形態において、前記pH6.5~7.5の緩衝液は、pH6.5のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、pH6.9のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、pH7.0のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、pH7.4のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、又はpH7.5のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液からなる群から選ばれる。
【0020】
一つの好ましい実施形態において、前記薬学的に許容される担体は、薬学的に許容される溶媒、可溶化剤、安定化剤を含む。
一つの好ましい実施形態において、前記薬学的に許容される溶媒は、水、エタノール又はそれらの組み合わせから選ばれ、好ましくはエタノール水溶液である。
一つのより好ましい実施形態において、前記薬学的に許容される溶媒の中で、エタノールが液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、1.0%~5.0%、好ましくは2.5~4.0%、より好ましくは3.5%である。
もう一つの好ましい実施形態において、前記可溶化剤は、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400又はツイーン80からなる群から選ばれ、好ましくはツイーン80である。
【0021】
一つのより好ましい実施形態において、前記可溶化剤が液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.1%~0.8%、好ましくは0.2%~0.5%である。
一つのより好ましい実施形態において、前記可溶化剤はツイーン80であり、それが液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.1%~0.5%、好ましくは0.2%~0.4%、より好ましくは0.3%である。
【0022】
さらに一つの好ましい実施形態において、前記安定化剤は、フェニルエタノール及びエデト酸二ナトリウムから選ばれ、好ましくはエデト酸二ナトリウムである。
一つのより好ましい実施形態において、前記安定化剤が液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.05%~0.20%、好ましくは0.05%~0.15%である。
一つのより好ましい実施形態において、前記エデト酸二ナトリウムが液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.05%~0.20%、好ましくは0.05%~0.10%、より好ましくは0.072%~0.088%である。
【0023】
一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物の緩衝系はリン酸水素二ナトリウム-リン酸水素二カリウムであり、当該組成物のpHは約7.0である;ただし、当該液状医薬組成物の合計重量で、前記液状医薬組成物は、0.006%~0.030%のクジノシドA、約3.5%のエタノール、0.1%~0.5%のツイーン80及び0.072%~0.088%のエデト酸二ナトリウムを含有する。
一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物は、液状医薬組成物の合計重量で、約0.006%のクジノシドA、約3.5%のエタノール、約0.1%のツイーン80、約0.072%のエデト酸二ナトリウム及び約96.2%の水を含有すること;或いは約0.015%のクジノシドA、約3.5%のエタノール、約0.3%のツイーン80、約0.08%のエデト酸二ナトリウム及び約95.8%の水を含有すること;或いは約0.03%のクジノシドA、約3.5%のエタノール、約0.5%のツイーン80、約0.088%のエデト酸二ナトリウム及び約95.2%の水を含有することを特徴とする。
【0024】
一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物は溶液又は懸濁液である。
一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物の剤形は、吸入用溶液又は吸入用懸濁液である。
一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物は、密閉した薬学的に許容される包装材中に保管される。
【0025】
一つの好ましい実施形態において、前記薬学的に許容される包装材は、ポリマー材、ガラスボトル、アルミホイル材又はそれらの組み合わせを含む。
一つの好ましい実施形態において、前記ポリマー材は、低密度ポリエチレンフィルム、低密度ポリエチレン袋、高密度ポリエチレンフィルム、低密度ポリエチレンボトル、高密度ポリエチレンボトル、ポリプロピレンボトル、ポリエチレンテレフタレートボトル、ポリエステル/アルミニウム/ポリエチレン複合フィルム、ポリエステル/アルミニウム/ポリエチレン複合袋又はそれらの組み合わせを含む。
一つの好ましい実施形態において、前記アルミホイル材はアルミホイル袋を含み、好ましくは医薬品用アルミホイル袋である。
【0026】
一つのより好ましい実施形態において、前記薬学的に許容される包装材は、低密度ポリエチレンボトルとアルミホイル袋の組み合わせである。
一つのさらに好ましい実施形態において、前記低密度ポリエチレンボトルとアルミホイル袋との間は、真空又は真空に近い状態にある。
一つの最も好ましい実施形態において、前記低密度ポリエチレンボトルの厚さは、0.5~2.0mm、好ましくは0.8~1.2mm、より好ましくは1.0~1.2mmである。
【0027】
本発明にかかる液状医薬組成物の調製過程において、クジノシド系化合物(例えばクジノシドA)の溶解度が小さいことから、当該系の化合物が十分に溶解できるように、製造プロセスを調整し続ける必要がある。
一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物の製造プロセスは:水(例えば精製水や注射用水)を秤量し、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、エデト酸二ナトリウムを加え、均一に攪拌し、pHを調節し、緩衝液を作製する;その後、エタノールとツイーン80を秤量し、上記溶液を加えて均一に攪拌する;最後に、クジノシド系化合物(例えばクジノシドA)を加え、完全に溶解されるまで攪拌する。
【0028】
もう一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物の製造プロセスは:水(例えば精製水や注射用水)を秤量し、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、エデト酸二ナトリウムを加え、均一に攪拌し、pHを調節し、緩衝液を作製する;それと同時に、エタノールとツイーン80を秤量し、作製した緩衝液の一部を取ってそれらに加え、均一に攪拌し、エタノール濃度が約50%の溶液を調製し、それにクジノシド系化合物(例えばクジノシドA)を加え、完全に溶解されるまで攪拌する;最後に、残りの緩衝液を加え、均一に攪拌する。
【0029】
さらに一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物の製造プロセスは:水(例えば精製水や注射用水)を秤量し、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、エデト酸二ナトリウムを加え、均一に攪拌し、pHを調節し、緩衝液を作製する;それと同時に、エタノールとツイーン80を秤量し、作製した緩衝液の一部を取ってそれらに加え、均一に攪拌し、エタノール濃度が約30%の溶液を調製し、それにクジノシド系化合物(例えばクジノシドA)を加え、完全に溶解されるまで攪拌する;最後に、残りの緩衝液を加え、均一に攪拌する。
【0030】
さらに一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物の製造プロセスは:水(例えば精製水や注射用水)を秤量し、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、エデト酸二ナトリウムを加え、均一に攪拌し、pHを調節し、緩衝液を作製する;それと同時に、エタノールとツイーン80を秤量し、クジノシド系化合物(例えばクジノシドA)を加え、完全に溶解されるまで攪拌し、母液に調製する;最後に、母液を緩衝液と混合し、均一に攪拌する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1A】長期試験(温度:25℃±2℃;湿度:40%±5%)において、サンプル1~3におけるエタノール含有量(%)の変化。
【
図1B】長期試験(温度:25℃±2℃;湿度:40%±5%)において、サンプル4~6におけるエタノール含有量(%)の変化。
【
図1C】長期試験(温度:25℃±2℃;湿度:40%±5%)において、サンプル7~9におけるエタノール含有量(%)の変化。
【
図2A】加速試験(温度:40℃±2℃;湿度:22%±5%)において、サンプル1~3におけるエタノール含有量(%)の変化。
【
図2B】加速試験(温度:40℃±2℃;湿度:22%±5%)において、サンプル4~6におけるエタノール含有量(%)の変化。
【
図2C】加速試験(温度:40℃±2℃;湿度:22%±5%)において、サンプル7~9におけるエタノール含有量(%)の変化。
【
図3A】高温試験(温度:60℃±2℃)において、サンプル1~3におけるエタノール含有量(%)の変化。
【
図3B】高温試験(温度:60℃±2℃)において、サンプル4~6におけるエタノール含有量(%)の変化。
【
図3C】高温試験(温度:60℃±2℃)において、サンプル7~9におけるエタノール含有量(%)の変化。
【
図4A】クジノシド系化合物の構造を示し、クジノシドA、クジノシドB、クジノシドC、クジノシドI、イレクジノシドI、イレクジノシドJを示す。
【
図4C】クジノシドD、クジノシドE、クジノシドJを示す。
図1A~1C、2A~2C及び3A~3Cにおいて、横座標はエタノール含有量を検出する時間を表す;縦座標はエタノールが液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量を表す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本明細書において、特に断らない限り、関わる各成分またはそれらの好ましい成分は、互いに組み合わせて新たな技術方案を形成することができる。
本明細書において、特に断らない限り、本文に記載の全ての実施形態および好ましい実施形態は、互いに組み合わせて新たな技術方案を形成することができる。
本明細書において、特に断らない限り、本文に記載の全ての技術特徴および好ましい技術特徴は、互いに組み合わせて新たな技術方案を形成することができる。
特に断らない限り、本明細書に用いられる用語の「1種」とは、「少なくとも1種」を意味する。
【0033】
本文において、「範囲」は下限と上限の形式で開示される。下限と上限はそれぞれ、一つまたは複数であってもよい。所定範囲は一つの下限と一つの上限を決定することによって限定される。決定された下限と上限によっては、特定の範囲の境界が限定される。この方式によって限定できる範囲は全て、含むことも、組み合わせることもでき、即ち、いずれかの下限はいずれかの上限と組み合わせて一つの範囲を形成することができる。本文において、「約」で限定される範囲は通常、実験誤差の範囲である。例えば、実験誤差が0.1であると、「約7」とは7±0.1を指す。
【0034】
具体的には、本発明は、治療有効量のクジノシド系化合物と、緩衝有効量のpH6.5~7.5の緩衝液と、薬学的に許容される担体とを含むことを特徴とする、安定な液状医薬組成物を提供する。ここで、用語の「含む」とは、当該薬物には他の成分が何でも含有しても良いことを意味し、これらの成分は、そのような含有量で存在する該成分が人体にとって許容され、且つ本発明にかかる医薬組成物における活性成分の生物的活性に実質的な影響を及ぼさない含有量であれば、任意の含有量で存在しても良い。
一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物は、治療有効量のクジノシド系化合物と、緩衝有効量のpH6.5~7.5の緩衝液と、可溶化剤と、安定化剤と、及び薬学的に許容される溶媒とを含む。
【0035】
本発明にかかるクジノシド系化合物は液状又は固体状にある。市販のものを購入することもできるが、従来技術でモチノキ科モチノキ属の植物から単離することや、化学合成法で入手することもできる。前記モチノキ科モチノキ属の植物は、モチノキ苦丁茶(Ilex kudingcha C.J.Tseng)、タラヨウ(Ilex latifolia Thunb.)、ヒイラギモチ(Ilex cornute Lindl.)、五陵苦丁茶(Ilex. Pentag-ona S.K.Chen. Y.X.Feng et C.F.L iang)、華中ヒイラギモチ(Ilex cent rochinensis S.Y.Hu)、霍山モチノキ(I. houshanensis Y.H.He)又はそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
【0036】
一つの好ましい実施形態において、前記クジノシド系化合物としては、クジノシドA、クジノシドB、クジノシドC、クジノシドD、クジノシドE、クジノシドF、クジノシドI、クジノシドJ、イレクジノシドH、イレクジノシドI、イレクジノシドJが好ましい(それらの化学構造式は既にCN106456657A及び文献「モチノキ属苦丁茶におけるトリテルペノイド及びそれらのサポニン系化合物」中で説明されており、詳細は図面4A~Cに参照する);3β-12α-19α-トリヒドロキシ-ウルサン-13(18)-エン-28,20β-ラクトン-3-O-[β-D-グルコシル-(1→3)-[α-L-ラムノシル-(1→2)]-α-L-アラビノシド又は3β-12β-19α-トリヒドロキシ-ウルサン-13(18)-エン-28,20β-ラクトン-3-O-[β-D-グルコシル-(1→3)-[α-L-ラムノシル-(1→2)]-α-L-アラビノシドがより好ましい。
【0037】
用語の「治療有効量」とは、本発明にかかる液状医薬組成物の、疾患(例えば喘息、COPDやその他の関連疾患)の治療に適用される時の濃度(投与量)を意味する。一般的には、「治療有効量」のクジノシド系化合物が液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.001%~0.050%、例えば0.006~0.030%である。ある実施形態において、「治療有効量」のクジノシド系化合物が液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.001%~0.050%、好ましくは0.006%~0.030%、より好ましくは0.010%~0.030%、さらに好ましくは0.015%である。
【0038】
用語の「薬学的に許容される担体」とは、本発明にかかる薬物におけるクジノシド系化合物と共に混合すると、通常では薬物の治療効果を大幅に低下させない物質を意味し、中国国家薬品監督管理局で使用が許可されたアジュバント、賦形剤、可溶化剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、調味剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定化剤、等張化剤、溶剤又は乳化剤を含むが、それらに限定されない。ある実施形態において、薬学的に許容される担体は一種又は多種の非活性医薬成分を含んでもよい。薬学的に許容される担体における非活性医薬成分は、安定化剤、防腐剤、添加剤、アジュバント、スプレー剤、医薬品有効化合物と適切に併用できる他の非活性医薬成分、圧縮空気又はその他の適切な気体を含む。
【0039】
一つの好ましい実施形態において、前記薬学的に許容される溶媒は、無菌水、脱二酸化炭素水、エタノール、エタノール水溶液、ソルビトール水溶液、生理食塩水及びそれらの組み合わせからなる群から選ばれる。
発明者らは、無菌水、脱二酸化炭素水、エタノール、エタノール水溶液、ソルビトール水溶液、生理食塩水を含む汎用の薬学的に許容される溶媒を、それぞれクジノシド系化合物と混合した結果、エタノール水溶液と上記のクジノシド系化合物は、最高の溶解性を示し、安定な溶液又は懸濁液を形成できる。
そのゆえ、一つの好ましい実施形態において、前記薬学的に許容される溶媒はエタノール水溶液である。
【0040】
一つのより好ましい実施形態において、前記薬学的に許容される溶媒の中で、エタノールが液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、1.0%~5.0%、好ましくは2.5~4.0%、より好ましくは3.5%である。
薬学的に許容される可溶化剤とは、溶剤における薬物の溶解度を向上させるために加えられ、難溶性の薬物と可溶性の分子間錯体、会合体や複塩などを形成し、且つ通常では薬物の治療効果を大幅に低下させない化合物を意味する。
一つの好ましい実施形態において、前記薬学的に許容される可溶化剤は、プロピレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール200、ポリエチレングリコール400又はツイーン80からなる群から選ばれ、好ましくはツイーン80である。通常、選択される可溶化剤の種類にもよるが、可溶化剤が液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.1~1.0%の範囲内にあり、例えば0.1~0.8%又は0.1~0.5%であっても良い。
一つの好ましい実施形態において、可溶化剤はツイーン80であり、それが液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.1%~0.5%、好ましくは0.2%~0.4%、より好ましくは0.3%である。
【0041】
薬学的に許容される安定化剤とは、溶液、コロイド、固体、混合物の安定性能を向上できる化合物を意味する。安定化剤は、反応を遅延させ、化学平衡を保ち、表面張力を低下させ、光/熱分解又は酸化分解を防ぐことで、安定化の作用を達成することができ、通常では薬物の治療効果を大幅に低下させない。
【0042】
一つの好ましい実施形態において、前記薬学的に許容される安定化剤は、フェニルエタノール及びエデト酸二ナトリウムから選ばれ、好ましくはエデト酸二ナトリウムである。通常、選択される安定化剤の種類にもよるが、安定化剤が液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.01~0.50%の範囲内にあり、例えば0.05~0.20%であっても良い。
一つの好ましい実施形態において、安定化剤はエデト酸二ナトリウムであり、それが液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量は、0.05%~0.20%、好ましくは0.05%~0.10%、より好ましくは0.072%~0.088%である。
【0043】
本発明にかかる「緩衝液」は、当業者に熟知されるものであり、且つ安全に薬学製剤に適用することができ、グリシン-塩酸緩衝液、フタル酸-塩酸緩衝液、リン酸水素二ナトリウム-クエン酸緩衝液、クエン酸-水酸化ナトリウム-塩酸緩衝液、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム緩衝液、リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、リン酸二水素カリウム-水酸化ナトリウム緩衝液、バルビタールナトリウム-塩酸緩衝液、Tris-塩酸緩衝液、ホウ酸-ホウ砂緩衝液、グリシン-水酸化ナトリウム緩衝液、ホウ砂-水酸化ナトリウム緩衝液、炭酸ナトリウム-炭酸水素ナトリウム緩衝液、PBS緩衝液(リン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素ナトリウム-塩化ナトリウム緩衝液)などを含むが、それらに限定されない。当業者は、市販のものから上記の緩衝液を入手することができるが、必要に応じて所定のpH値の緩衝液を調製することもできる。特に断らない限り、本発明に記載の「pH値」はいずれも、25℃の条件下で測定されるpH値である。
【0044】
本発明にかかる液状医薬組成物において、pH6.5~7.5の緩衝液が好ましく適用される。一つの好ましい実施形態において、前記pH6.5~7.5の緩衝液は、リン酸塩緩衝液から選ばれ、好ましくはリン酸ナトリウム緩衝液、リン酸カリウム緩衝液又はそれらの組み合わせであり、より好ましくはリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液であり、最も好ましくはpH6.5のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、pH6.9のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、pH7.0のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、pH7.4のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液、又はpH7.5のリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液である。
【0045】
用語の「緩衝有効量」とは、前記緩衝液の濃度が、前記液状医薬組成物のpH値を特定のpH?(好ましくはpH6.5~7.5)±0.5(より好ましくは±0.3、さらに好ましくは±0.2、最も好ましくは±0.1)個のpH単位内に維持するのに十分であることを意味する。例えばpH6.5±0.2(即ちpH6.3~6.7)、pH6.5±0.3(即ちpH6.2~6.8)などを含むが、それらに限定されない。前記緩衝液の具体的な濃度は、緩衝液の種類、pH値、医薬組成物全体の具体的な組成などの要因に関連しているが、当業者が有限の日常的な実験により容易に決定することができる。一般的には、前記緩衝液の濃度は5mM~500mM(好ましくは5mM~100mM、より好ましくは5mM~50mM、さらに好ましくは5mM~20mM)。
【0046】
一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物の緩衝系はリン酸水素二ナトリウム-リン酸水素二カリウムであり、当該組成物のpHは約7.0である;ただし、当該液状医薬組成物の合計重量で、前記液状医薬組成物は、0.006%~0.030%のクジノシドA、約3.5%のエタノール、0.1%~0.5%のツイーン80及び0.072%~0.088%のエデト酸二ナトリウムを含有する。
一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物は、液状医薬組成物の合計重量で、約0.006%のクジノシドA、約3.5%のエタノール、約0.1%のツイーン80、約0.072%のエデト酸二ナトリウム及び約96.2%の水を含有すること;或いは約0.015%のクジノシドA、約3.5%のエタノール、約0.3%のツイーン80、約0.08%のエデト酸二ナトリウム及び約95.8%の水を含有すること;或いは約0.03%のクジノシドA、約3.5%のエタノール、約0.5%のツイーン80、約0.088%のエデト酸二ナトリウム及び約95.2%の水を含有することを特徴とする。
【0047】
特許文献1の開示内容によれば、本発明にかかる液状医薬組成物は、気道平滑筋を拡張することができ、COPDや喘息などの疾患の治療に適合するが、現在、喘息の治療には吸入療法が最もよく推奨されており、吸入療法に用いられる剤形は、吸入エアゾール剤、乾燥粉末吸入剤、ネブライザー吸入剤、吸入溶液又は懸濁液などを含む。
そのゆえ、一つの好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物は溶液又は懸濁液である。
一つのより好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物の剤形は、吸入用溶液又は吸入用懸濁液である。本発明の具体的な実施形態において、長期安定性試験は主に、エタノールとクジノシド系化合物の含有量などの指標について調査する。前記液状医薬組成物におけるエタノールの含有量を100%とし、所定の条件下で所定の期間を経って、同様な検出手段を用いて検出すると、そのエタノール含有量が初期含有量の70%以上(好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上)に変化し、且つクジノシド系化合物の含有量は、所定の条件下で所定の期間を経って、その含有量も初期含有量の90%~110%(好ましくは95%~105%、より好ましくは98%~102%)に変化する場合、当該液状医薬組成物が「安定」なものであり、喘息、COPDやその他の関連疾患の治療にも信頼的なものであると認定する。
【0048】
ある好ましい実施形態において、本発明にかかる液状医薬組成物におけるクジノシド系化合物はクジノシドAであり、前記液状医薬組成物は以下の一つ又は複数の特徴を有する:
(1)温度が40℃±2℃で、湿度≦25%の加速試験条件下で9ヶ月の試験を経った後、クジノシドAの含有量は≧95%であり、不純物であるクジノシドDの含有量は≦0.30%であり、不純物であるクジノシドEの含有量は≦0.30%であり、且つ不純物は合計で1.0%を超えない;
(2)温度が30℃±2℃で、湿度が35%±5%の長期試験条件下で9ヶ月の試験を経った後、クジノシドAの含有量は≧100%であり、不純物であるクジノシドDの含有量は≦0.10%であり、不純物であるクジノシドEの含有量は≦0.10%であり、且つ不純物は合計で0.50%を超えない;
(3)温度が25℃±2℃で、湿度が40%±5%の長期試験条件下で9ヶ月の試験を経った後、クジノシドAの含有量は≧100%であり、不純物であるクジノシドDの含有量は≦0.10%であり、不純物であるクジノシドEの含有量は≦0.05%であり、且つ不純物は合計で0.30%を超えない。
【0049】
ある好ましい実施形態において、本発明にかかる液状医薬組成物におけるクジノシド系化合物はクジノシドAであり、前記液状医薬組成物は以下の一つ又は複数の特徴を有する:
(1)温度が40℃±2℃で、湿度≦25%の加速試験条件下での9ヶ月の試験期間において、クジノシドAの含有量は98%~106%であり、不純物であるクジノシドDの含有量は≦0.30%であり、不純物であるクジノシドEの含有量は≦0.30%であり、且つ不純物は合計で1.0%を超えない;
(2)温度が30℃±2℃で、湿度が35%±5%の長期試験条件下での18ヶ月の試験期間において、クジノシドAの含有量は99%~106%であり、不純物であるクジノシドDの含有量は≦0.20%であり、不純物であるクジノシドEの含有量は≦0.15%であり、且つ不純物は合計で0.60%を超えない;
(3)温度が25℃±2℃で、湿度が40%±5%の長期試験条件下での18ヶ月の試験期間において、クジノシドAの含有量は99%~106%であり、不純物であるクジノシドDの含有量は≦0.15%であり、不純物であるクジノシドEの含有量は≦0.02%であり、且つ不純物は合計で0.40%を超えない;
【0050】
一つの好ましい実施形態において、本発明にかかる液状医薬組成物は、密閉した薬学的に許容される包装材中に保管される。
用語の「薬学的に許容される包装材」とは、容器シール材と内容物との間に酷い相互作用がなく、製品の活性・安定性の変化や毒性が発生するリスクがなく、且つ通常の保管・使用条件下で包装材の成分と製品との間に何らかの影響があっても、製品の品質や包装に許容できない変化をもたらすことがない包装材を意味する。前記薬学的に許容される包装材は、ポリマー材、ガラスボトル、アルミホイル材又はそれらの組み合わせを含む。
【0051】
一つの好ましい実施形態において、前記ポリマー材は、低密度ポリエチレンフィルム、低密度ポリエチレン袋、低密度ポリエチレンボトル、高密度ポリエチレンフィルム、高密度ポリエチレンボトル、ポリプロピレンボトル、ポリエチレンテレフタレートボトル、ポリエステル/アルミニウム/ポリエチレン複合フィルム、ポリエステル/アルミニウム/ポリエチレン複合袋、アルミホイル袋、ガラスボトル又はそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない;前記アルミホイル材はアルミホイル袋を含み、好ましくは医薬品用アルミホイル袋である。
【0052】
本発明は、長期保管(例えば室温で180日間又はそれ以上の保管)において、本発明にかかる液状医薬組成物におけるエタノールの揮発量(即ち、その初期含有量に対する揮発したエタノール含有量の割合)を30%以下、好ましくは20%以下、より好ましくは10%以下の範囲内に制御できれば、安定な液状医薬組成物を提供できることを見出した。
従って、一つのより好ましい実施形態において、前記薬学的に許容される包装材は、低密度ポリエチレンボトルとアルミホイル袋の組み合わせであり、それはより有効にエタノールの揮発を防げる。
【0053】
一つのより好ましい実施形態において、前記液状医薬組成物は、低密度ポリエチレンボトル包装、好ましくは厚さが0.5~2.0mmの低密度ポリエチレンボトル、より好ましくは0.8~1.2mmの低密度ポリエチレンボトル、最も好ましくは1.0~1.2mmの低密度ポリエチレンボトルを採用し、それをアルミホイル袋中に置く。なお、液状医薬組成物を溶解する溶媒が空気との接触により揮発して薬物の析出を引き起こすことを抑えるために、前記低密度ポリエチレンボトルとアルミホイル袋との間は、真空又は真空に近い状態にある。本文に記載の真空に近い状態とは通常、圧力≦50Kpa、好ましくは圧力≦20Kpa、より好ましくは圧力≦10Kpa、最も好ましくは圧力≦1Kpaを意味する。
【0054】
本発明にかかる液状医薬組成物の製造方法は、下記のことを含む:安定化剤(例えばエデト酸二ナトリウム)が溶解された緩衝液(例えばリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液)を調製し、溶媒(例えばエタノール水溶液)と可溶化剤(例えばツイーン80)を全て当該緩衝液に溶解させ、クジノシド系化合物(例えばクジノシドA)を加え、完全に溶解されるまで攪拌する;或いは、まず得られた混合液におけるエタノールが液状医薬組成物全体に占める質量百分率含有量が100%(好ましくは50%)未満になるように、溶媒(例えばエタノール水溶液)、安定化剤(例えばエデト酸二ナトリウム)と可溶化剤(例えばツイーン80)及び一部の緩衝液(例えばリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液)を加え、その後にクジノシド系化合物(例えばクジノシドA)を加え、完全に溶解されるまで攪拌してから、残りの緩衝液(例えばリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液)を加える;或いは、前記方法は、安定化剤(例えばエデト酸二ナトリウム)が溶解された緩衝液(例えばリン酸水素二ナトリウム-リン酸二水素カリウム緩衝液)と、クジノシド系化合物(例えばクジノシドA)が溶媒(例えばエタノール水溶液)と可溶化剤(例えばツイーン80)に溶解された母液をそれぞれ調製し、緩衝液と母液を混合することで、本発明にかかる液状医薬組成物を製造することを含む。
【0055】
以下、実施例を参照して、本発明をさらに詳しく説明する。しかし、これらの実施例は、単に説明するためのものだけであり、本発明の範囲を限定するためのものではないことが理解されるべきである。
本発明の実施例に採用された化合物は、クジノシドA、即ち3β-12α-19α-トリヒドロキシ-ウルサン-13(18)-エン-28,20β-ラクトン-3-O-[β-D-グルコシル-(1→3)-[α-L-ラムノシル-(1→2)]-α-L-アラビノシド(以下はKAと略称される)であり、それは市販のものから入手することができるが、その製造方法も当業者に熟知されるものであり、例えば特許文献1及び非特許文献2に参照できる。
【実施例1】
【0056】
(KA製剤の製造)
(一)溶液の調製
表1の製剤配合に従い、配合量の注射用水を秤量し、配合量のリン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、エデト酸二ナトリウムを加え、均一に攪拌し、pHを7程度に調節し、緩衝液を作製した;それと同時に、配合量のエタノールとツイーン80を秤量し、作製した緩衝液の一部を取ってそれらに加え、均一に攪拌し、エタノール濃度が約50%の溶液を調製し、それに配合量のクジノシドAを加え、完全に溶解されるまで攪拌した;最後に、残りの緩衝液を加え、均一に攪拌した。3種類の配合製剤を獲得した。
【0057】
【0058】
(二)充填
ブロー・充填・シール(blowing, filling and sealing、BFS)一体化生産ライン充填により、3種類の配合をそれぞれ3種類の異なる厚さ(0.6mm、1.0mm、1.2mm)の低密度ポリエチレン(Low Density Polyethylene、LDPE)ボトルに、1ボトルにつき2mlで充填した。
【0059】
(三)包装
包装1:充填サンプルに何の処理もしなかった。
包装2:充填サンプルをアルミホイル袋で包装して密封した。
包装3:充填サンプルをアルミホイル袋で包装し、且つ低密度ポリエチレンボトルとアルミホイル袋との間を、圧力が≦20Kpaになるまで真空引きした。
下記の9種類のサンプルを作製し、詳細は表2のサンプル1~サンプル9に参照する:
【0060】
【実施例2】
【0061】
(KA製剤におけるエタノール含有量安定性の検出)
現在、吸入製剤では、薬物と直接に接触する包装材として、ブロー・充填・シール法によって生産される低密度ポリエチレンボトル(LDPEボトル)が使用されており、LDPEボトルには、従来使用されていたガラスアンプルに比べ、顆粒が純粋で、添加物が少なく、後段の開封が容易であるなどのメリットがある。しかし、LDPEボトルの半透過性により、それに保管されている溶剤(例えばエタノール)の含有量は蒸発によって低下することがある。エタノール含有量の低下により、活性化合物KAの溶解度は低下し、最終的にKAが析出してしまうため、発明者らは製剤の安定性を高め、その保管期間を延長するために、エタノール揮発を防止する必要があった。このため、発明者らは、表2中の異なるサンプル製剤におけるエタノール含有量の安定性を検討した。
【0062】
実施例1の表2で得られた9種類のKA製剤サンプルを取り、エタノール含有量の安定性試験を実施し、長期試験、加速試験及び高温試験の条件(詳細は表3に参照する)下での製剤におけるエタノール含有量の変化を検討した。
【0063】
【表3】
「2020年版薬局方(第四部)」の一般的な技術要求という部分に記載されている、高速液体クロマトグラフィー法による定量的分析法である外部標準法に従い、エタノール含有量を測定した。ただし、高速液体クロマトグラフィー法に適用された条件パラメーターは、下記の通りである:
【0064】
(1)気相条件:
装置:FID検出器と自動ヘッドスペースインジェクター付きガスクロマトグラフ;
クロマトグラフィーカラム:30m×0.53mm、膜厚3.0μm、(6%)シアノプロピルフェニル-(94%)ジメチルポリシロキサンを固定液とするキャピラリーカラムを、クロマトグラフィーカラムとした;
カラム温度:開始温度を40℃とし、2分間保持した後、3℃/分の速度で65℃まで昇温し、次に25℃/分の速度で200℃まで昇温し、10分間保持した;
キャリアガス:窒素;スプリット比:1:1;
注入口温度:200℃;
FID検出器温度:220℃。
(2)ヘッドスペース注入条件:
恒温炉温度:85℃;
サンプルボトル保温時間:20分間。
【0065】
測定されたエタノール含有量は、下表4~6及び図面1A~1C、2A~2C、3A~3Cに示される:
【0066】
【0067】
【0068】
【0069】
表4~6及び図面1A~1C、2A~2Cと3A~3Cに示す結果から分かるように:長期試験、加速試験及び高温試験の条件下で、サンプル1、4及び7におけるエタノール含有量は著しく減少したことから、サンプルを保管するポリエチレンボトルに包装処理が施されない場合、保管されるサンプルにおけるエタノール含有量は時間の経過に伴って減少し続けることが示唆された;また、安定性試験の条件によらず、サンプル6とサンプル9におけるエタノール含量は実質的に安定していたことから、所定の厚さ(例えば0.6mm以上、好ましくは1.0mm以上)の低密度ポリエチレン材料を使用し、アルミホイル袋で包装し、且つそれと低密度ポリエチレンボトルとの間を真空引きすることは、エタノール含有量を維持するのに最も有利であることが示唆された。
【0070】
一方、長期試験の条件下で、サンプル1、4及び7はいずれも180日目に沈殿し始めた;加速試験の条件下で、サンプル1、4及び7はそれぞれ90、120及び150日目に沈殿し始めた;高温試験の条件下で、サンプル1、4及び7はいずれも30日目に、サンプル2は90日目に、サンプル5は120日目に、サンプル3は150日目に、サンプル8は180日目に沈殿を始めた;サンプル6及び9は最後まで沈殿しなかったことが観察された。これで、エタノール含有量が減少すると、一部のサンプルにおいてKAが析出することが示唆された。
【0071】
以上から分かるように、所定の厚さ(例えば0.6mm以上、好ましくは1.0mm以上)の低密度ポリエチレンボトルとアルミホイル袋の複合包装を採用し、且つ両者の間が真空又は真空に近い状態にあると、保管されるサンプルにおけるエタノール含有量は実質的に安定しており、且つクジノシドAが析出しないため、サンプルの保管に有利である。
【実施例3】
【0072】
(KA製剤の安定性試験)
実施例1に示すサンプル6を選択し、表7に示す条件で安定性試験を実施した。
【0073】
【0074】
「中国薬局方」(2020年版、第4部)の総則0512に準拠した高速液体クロマトグラフィー法による外部標準法に従い、KAの含有量を測定した。ただし、高速液体クロマトグラフィー法に適用されたクロマトグラフィー条件パラメーターは、下記の通りである:
クロマトグラフィーカラム:C18(2.1*100mm,1.8μm);
移動相:アセトニトリル:水(26:74);
流速:0.6mL/min;
カラム温度:38℃;
検出波長:225nm;
注入量:5μL;
溶出時間:28min。
【0075】
「中国薬局方」(2020年版、第4部)の総則0512に準拠した高速液体クロマトグラフィー法による補正因子を用いた主成分自己制御法に従い、製剤中の関連物質の含有量を測定した。ただし、超高圧液体クロマトグラフィー法のクロマトグラフィー条件は、下記の通りである:
クロマトグラフィーカラム:C18(2.1*100mm,1.8μm);
移動相:A相は水で、B相はアセトニトリルである;
カラム温度:50℃;
検出波長:225nm;
注入量:5μL;
勾配溶出の条件は下表に示す:
【0076】
【表7B】
3種類の異なる条件下で測定された安定性試験結果は、下表8~10に示す:
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
表8~10に示す結果から分かるように、実施例1で調製したKA製剤のサンプル6を選択した場合、試験条件によらず、規定される品質標準を満たすことができ、良好な安定性が示唆される。
【0081】
本発明では具体的な例を説明したが、本発明の精神および範囲を逸脱しない限り、本発明に対する各種の変更や修正が可能である点は、当業者にとって明らかである。よって、添付される請求の範囲には、本発明の範囲内に入るそれらの変更が全て含まれる。
【国際調査報告】