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特表2024-500169大ストークスシフト蛍光色素を使用して多重化リアルタイムPCRを行うための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】大ストークスシフト蛍光色素を使用して多重化リアルタイムPCRを行うための方法
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/686 20180101AFI20231222BHJP
   C12Q 1/6848 20180101ALI20231222BHJP
【FI】
C12Q1/686 Z
C12Q1/6848 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538086
(86)(22)【出願日】2021-12-21
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2021087165
(87)【国際公開番号】W WO2022136477
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/129,423
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100166165
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 英直
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ニース
(72)【発明者】
【氏名】ワン チン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ファンニエン
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ42
4B063QR08
4B063QR55
4B063QR62
4B063QR66
4B063QS25
4B063QS34
4B063QX02
(57)【要約】
本発明は、大ストークスシフト(LSS)蛍光色素で作られた蛍光発生PCRプローブを使用することによって、一般的なPCRデバイスの多重化能力の拡大を可能にする。この手法では、機器内のハードウェ
ア又はソフトウェア構成要素の変更は必要とされない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の少なくとも2つの標的核酸配列を検出するための方法であって、
(a)前記少なくとも2つの標的核酸配列を含有すると疑われる前記試料を、単一の反応容器内で、以下:
i.第1の標的核酸配列の各鎖に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーの第1の対、及び第2の標的核酸配列の各鎖に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーの第2の対;
ii.前記第1の標的核酸配列に少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列を含み、オリゴヌクレオチドプライマーの前記第1の対によって境界付けられた前記第1の標的核酸配列内にアニーリングする第1のオリゴヌクレオチドプローブであって、検出可能なシグナルを生成することができる大ストークスシフト(LSS)蛍光色素及び前記LSS蛍光色素によって生成された前記検出可能なシグナルをクエンチングすることができる第1のクエンチャー部分で標識され、前記LSS蛍光色素がヌクレアーゼ感受性切断部位によって前記第1のクエンチャー部分から分離されている、第1のオリゴヌクレオチドプローブ;
iii前記第2の標的核酸配列に少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列を含み、オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2の対によって境界付けられた前記第2の標的核酸配列内にアニーリングする第2のオリゴヌクレオチドプローブであって、検出可能なシグナルを生成することができる小ストークスシフト(SSS)蛍光色素及び前記SSS蛍光色素によって生成された前記検出可能なシグナルをクエンチングすることができる第2のクエンチャー部分で標識され、前記SSS蛍光色素がヌクレアーゼ感受性切断部位によって前記第2のクエンチャー部分から分離されており、前記SSS蛍光色素が、前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ上の前記LSS蛍光色素の吸収ピーク最大値と有意に異なる吸収ピーク最大値と、前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ上の前記LSS蛍光色素の発光ピーク最大値と類似する発光ピーク最大値と、を有し、前記有意差が波長において少なくとも80ナノメートルである、第2のオリゴヌクレオチドプローブ
と接触させる工程;
(b)5’から3’ヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって第1の標的核酸配列及び第2の標的核酸配列を増幅し、それにより、各PCRサイクルの伸長ステップの間に、前記核酸ポリメラーゼの前記5’から3’ヌクレアーゼ活性が、前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ上の前記第1のクエンチング部分からの前記LSS蛍光色素の切断及び分離、並びに前記第2のオリゴヌクレオチドプローブ上の前記第2のクエンチング部分からの前記SSS蛍光色素の切断及び分離を可能にする工程;
(c)前記LSS蛍光色素の前記吸収ピーク最大値の波長又はその付近での励起によって前記LSS蛍光色素からの前記検出可能なシグナルを測定し、及び、前記SSS蛍光色素の前記吸収ピークの波長又はその付近での励起によって前記SSS蛍光色素からの前記検出可能なシグナルを測定する工程;
(d)工程(b)及び工程(c)を複数のPCRサイクルで繰り返して、前記第1の標的核酸配列及び第2の標的核酸配列から所望の量の増幅産物を産生する工程;
(e)前記LSS蛍光色素から検出された前記シグナルから前記第1の標的核酸配列の存在を検出し、及び前記SSS蛍光色素から検出された前記シグナルから前記第2の標的核酸配列の存在を検出する工程
を含む、方法。
【請求項2】
前記LSS蛍光色素の前記吸収ピーク最大値と前記SSS蛍光色素の前記吸収ピーク最大値との差が、波長において80ナノメートルより大きい、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記LSS蛍光色素の前記吸収ピーク最大値と前記SSS蛍光色素の前記吸収ピーク最大値との差が、波長において100ナノメートルより大きい、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記LSS蛍光色素が、ALEXA FLUOR 430、ATTO 430LS、ATTO 490LS、ATTO 390LS、CASCADE YELLOW、CF350、CHROMEO 494、CYTO 500 LSS、CYTO 510 LSS、CYTO 514 LSS、CYTO 520 LSS、DAPOXYL、DY 480XL、DY 481XL、DY 485XL、DY 510XL、DY 511XL、DY 520XL、DY 521XL、DY 601XL、DY 350XL、DY 360XL、DY 370XL、DY 375XL、DY 380XL、DY 395XL、DY 396XL、DYLIGHT 515-LS、DYLIGHT 485-LS、DYLIGHT 510-LS、DYLIGHT 521-LS、FURA 2、INDO 1、KROME ORANGE、LUB 04、LUCIFER YELLOW、NBD X、NILE RED、PULSAR 650、PYMPO、STAR 440SXP、STAR 470SXP、STAR 520SXP、VIOGREEN、CF 350、SETAU 405、及びPACIFIC ORANGEからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記LSS蛍光色素が、DY 396XL又はCHROMEO 494から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記LSS蛍光色素が、100℃までの温度で安定なままである蛍光シグナル強度を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記LSS蛍光色素がATTO 490LSである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ、前記第2のオリゴヌクレオチドプローブ、又は前記第1のオリゴヌクレオチドプローブと前記第2のオリゴヌクレオチドプローブの両方が、TAGS技術に適合するタグ付きプローブである、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記反応容器が、細管であり、前記細管が、
(i)試料を導入可能な開口部を有する近位端;
(ii)遠位端;及び
(iii)少なくとも、少なくとも1つの核酸抽出試薬を含有する第1のセグメント、前記第1のセグメントの遠位にあり洗浄試薬を含有する第2のセグメント、及び前記第2のセグメントの遠位にあり、1つ又は複数の増幅試薬を含有する第3のセグメントであって、前記セグメントの各々が、
(A)前記細管によって画定されており;
(B)前記細管の対向する壁部分を互いに結合することによって形成された流体密封シールによって少なくとも部分的に流体的に隔離され、その結果、
(1)前記シールが、前記シールによって部分的に流体的に隔離されたセグメントに流体圧力を加えることによって破壊され;かつ
(2)前記シールが、前記シールによって部分的に流体的に隔離されたセグメントに流体圧力を加えることによって前記シールが破壊されるのを防止するために、前記シールを破壊することなく、前記細管の前記対向する壁部分が結合される場所でクランプされることが可能であり;
(C)別のセグメントから排出された流体の体積を受け取るくらい拡張可能であり、圧縮された場合に実質的に流体を含まないくらいに圧縮可能である、少なくとも、第1のセグメント、第2のセグメント、及び第3のセグメント;
(iv)前記開口部を閉じるためのキャップであって、前記細管と流体連通するチャンバを含み、気体の自由な流出を可能にするが、全ての液体体積及び感染病原体を管内に保持する、キャップ;
(v)前記細管の近位端及び遠位端が保持される剛性フレーム;並びに
(vi)一体型細管張力付与機構、又は前記細管の圧縮及び平坦化を容易にするように十分にピンと張った状態に前記細管を引っ張る前記フレームへの前記細管のアタッチメント
を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
試料中の少なくとも2つの標的核酸配列を検出するための方法であって、
(a)前記少なくとも2つの標的核酸配列を含有すると疑われる前記試料を、単一の反応容器内で、以下:
i.第1の標的核酸配列の各鎖に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーの第1の対、及び第2の標的核酸配列の各鎖に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーの第2の対;
ii.前記第1の標的核酸配列に少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列を含み、オリゴヌクレオチドプライマーの前記第1の対によって境界付けられた前記第1の標的核酸配列内にアニーリングする第1のオリゴヌクレオチドプローブであって、検出可能なシグナルを生成することができる大ストークスシフト(LSS)蛍光色素及び前記LSS蛍光色素によって生成された前記検出可能なシグナルをクエンチングすることができる第1のクエンチャー部分で標識され、前記LSS蛍光色素がヌクレアーゼ感受性切断部位によって前記第1のクエンチャー部分から分離されている、第1のオリゴヌクレオチドプローブ;
iii前記第2の標的核酸配列に少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列を含み、オリゴヌクレオチドプライマーの前記第2の対によって境界付けられた前記第2の標的核酸配列内にアニーリングする第2のオリゴヌクレオチドプローブであって、検出可能なシグナルを生成することができる小ストークスシフト(SSS)蛍光色素及び前記SSS蛍光色素によって生成された前記検出可能なシグナルをクエンチングすることができる第2のクエンチャー部分で標識され、前記SSS蛍光色素がヌクレアーゼ感受性切断部位によって前記第2のクエンチャー部分から分離されており、前記SSS蛍光色素が、前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ上の前記LSS蛍光色素の吸収ピーク最大値と有意に異なる吸収ピーク最大値と、前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ上の前記LSS蛍光色素の発光ピーク最大値と類似する発光ピーク最大値と、を有し、前記有意差が波長において少なくとも80ナノメートルである、第2のオリゴヌクレオチドプローブ
と接触させる工程;
(b)5’から3’ヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって第1の標的核酸配列及び第2の標的核酸配列を増幅し、それにより、各PCRサイクルの伸長ステップの間に、前記核酸ポリメラーゼの前記5’から3’ヌクレアーゼ活性が、前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ上の前記第1のクエンチング部分からの前記LSS蛍光色素の切断及び分離、並びに前記第2のオリゴヌクレオチドプローブ上の前記第2のクエンチング部分からの前記SSS蛍光色素の切断及び分離を可能にする工程;
(c)前記LSS蛍光色素の前記吸収ピーク最大値の波長又はその付近での励起によって前記LSS蛍光色素からの前記検出可能なシグナルを測定し、及び、前記SSS蛍光色素の前記吸収ピークの波長又はその付近での励起によって前記SSS蛍光色素からの前記検出可能なシグナルを測定する工程;
(d)工程(b)及び工程(c)を複数のPCRサイクルで繰り返して、前記第1の標的核酸配列及び第2の標的核酸配列から所望の量の増幅産物を産生する工程;
(e)前記LSS蛍光色素から検出された前記シグナルから前記第1の標的核酸配列の存在を検出し、及び前記SSS蛍光色素から検出された前記シグナルから前記第2の標的核酸配列の存在を検出する工程
を含む、方法。
【請求項11】
前記LSS蛍光色素の前記発光ピーク最大値と前記SSS蛍光色素の前記発光ピーク最大値との差が、波長において80ナノメートルより大きい、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記LSS蛍光色素の前記発光ピーク最大値と前記SSS蛍光色素の前記発光ピーク最大値との差が、波長において100ナノメートルより大きい、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記LSS蛍光色素が、ALEXA FLUOR 430、ATTO 430LS、ATTO 490LS、ATTO 390LS、CASCADE YELLOW、CF350、CHROMEO 494、CYTO 500 LSS、CYTO 510 LSS、CYTO 514 LSS、CYTO 520 LSS、DAPOXYL、DY 480XL、DY 481XL、DY 485XL、DY 510XL、DY 511XL、DY 520XL、DY 521XL、DY 601XL、DY 350XL、DY 360XL、DY 370XL、DY 375XL、DY 380XL、DY 395XL、DY 396XL、DYLIGHT 515-LS、DYLIGHT 485-LS、DYLIGHT 510-LS、DYLIGHT 521-LS、FURA 2、INDO 1、KROME ORANGE、LUB 04、LUCIFER YELLOW、NBD X、NILE RED、PULSAR 650、PYMPO、STAR 440SXP、STAR 470SXP、STAR 520SXP、VIOGREEN、CF 350、SETAU 405、及びPACIFIC ORANGEからなる群から選択される、請求項10~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記LSS蛍光色素が、DY 396XL又はCHROMEO 494である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記LSS蛍光色素が、100℃までの温度で安定なままである蛍光シグナル強度を有する、請求項10~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記LSS蛍光色素がATTO 490LSである、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のオリゴヌクレオチドプローブ、前記第2のオリゴヌクレオチドプローブ、又は前記第1のオリゴヌクレオチドプローブと前記第2のオリゴヌクレオチドプローブの両方が、TAGS技術に適合するタグ付きプローブである、請求項10~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記反応容器が、細管であり、前記細管が、
(i)試料を導入可能な開口部を有する近位端;
(ii)遠位端;及び
(iii)少なくとも、少なくとも1つの核酸抽出試薬を含有する第1のセグメント、前記第1のセグメントの遠位にあり洗浄試薬を含有する第2のセグメント、及び前記第2のセグメントの遠位にあり、1つ又は複数の増幅試薬を含有する第3のセグメントであって、前記セグメントの各々が、
(A)前記細管によって画定されており;
(B)前記細管の対向する壁部分を互いに結合することによって形成された流体密封シールによって少なくとも部分的に流体的に隔離され、その結果、
(1)前記シールが、前記シールによって部分的に流体的に隔離されたセグメントに流体圧力を加えることによって破壊され;かつ
(2)前記シールが、前記シールによって部分的に流体的に隔離されたセグメントに流体圧力を加えることによって前記シールが破壊されるのを防止するために、前記シールを破壊することなく、前記細管の前記対向する壁部分が結合される場所でクランプされることが可能であり;
(C)別のセグメントから排出された流体の体積を受け取るくらい拡張可能であり、圧縮された場合に実質的に流体を含まないくらいに圧縮可能である、少なくとも、第1のセグメント、第2のセグメント、及び第3のセグメント;
(iv)前記開口部を閉じるためのキャップであって、前記細管と流体連通するチャンバを含み、気体の自由な流出を可能にするが、全ての液体体積及び感染病原体を管内に保持する、キャップ;
(v)前記細管の近位端及び遠位端が保持される剛性フレーム;並びに
(vi)一体型細管張力付与機構、又は前記細管の圧縮及び平坦化を容易にするように十分にピンと張った状態に前記細管を引っ張る前記フレームへの前記細管のアタッチメント
を備える、請求項10~17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のための方法に関し、特に、大ストークスシフト蛍光色素を使用して多重化リアルタイムPCRを行うための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、生物医学研究、疾患のモニタリング及び診断のユビキタスなツールとなっている。PCRによる核酸配列の増幅は、米国特許第4,683,195号明細書、米国特許第4,683,202号明細書、及び米国特許第4,965,188号明細書に記載されている。PCRは現在、当該技術分野でよく知られており、科学文献に広く記載されている。PCR Applications,((1999)Innis et al.,eds.,Academic Press,San Diego)、PCR Strategies,((1995)Innis et al.,eds.,Academic Press,San Diego);PCR Protocols,((1990)Innis et al.,eds.,Academic Press,San Diego)、及びPCR Technology,((1989)Erlich,ed.,Stockton Press,New York)を参照のこと。「リアルタイム」PCRアッセイは、標的配列の開始量の増幅と検出及び/又は定量を同時に行うことができる。DNAポリメラーゼの5’から3’ヌクレアーゼ活性を用いる基本的なTaqManリアルタイムPCRアッセイは、Holland et al.,(1991)Proc.Natl.Acad.Sci.88:7276-7280及び米国特許第5210015号明細書に記載されている。ヌクレアーゼ活性を伴わないリアルタイムPCR(ヌクレアーゼフリーアッセイ)は、米国特許出願公開第20100143901号明細書に記載されている。リアルタイムPCRにおける蛍光プローブの使用は、米国特許第5538848号明細書に記載されている。
【0003】
蛍光プローブを用いた典型的なリアルタイムPCRプロトコルは、各標的配列に特異的な標識プローブの使用を含む。プローブは、好ましくは、特定の波長の光を吸収して放出する1つ又は複数の蛍光部分で標識される。標的配列又はそのアンプリコンにハイブリダイズすると、プローブは、プローブハイブリダイゼーション又は加水分解の結果として蛍光発光の検出可能な変化を示す。
【0004】
しかしながら、リアルタイムアッセイの主な課題は、単一のチューブ内の多数の標的を分析する能力のままである。医学及び診断の事実上あらゆる分野において、目的の遺伝子座の数は急速に増加する。例えば、いくつか例を挙げると、法医学DNAプロファイリング、病原性微生物検出、多遺伝子座遺伝子疾患スクリーニング及び多遺伝子発現研究において、複数の遺伝子座を分析しなければならない。
【0005】
現在の方法の大半は、アッセイを多重化する能力は、検出機器によって制限されている。具体的には、同じ反応における複数のプローブの使用は、異なる蛍光標識の使用を必要とする。複数のプローブを同時に検出するには、機器が各プローブにより放射される光シグナルを識別できる必要がある。市場に出回っている現在の技術の大半は、同じ反応容器内で4~7を超える別々の波長を検出することができない。したがって、標的ごとに1つの一意的に標識されたプローブを使用すると、同一容器内で4~7以下の別々の標的を検出できるにすぎない。実際には、少なくとも1の標的は、通常、対照核酸である。したがって、実際には、同一チューブ内で3~6以下の実験標的が検出されるにすぎない。蛍光色素の使用もまた、約6又は7の色素のみが顕著な重複干渉なしに可視スペクトル内に適合できるスペクトル帯域幅が原因で、制限される。したがって、増幅及び検出戦略に根本的な変化が生じない限り、アッセイを多重化する能力は、臨床的必要性に追いつかないであろう。
【0006】
リアルタイム増幅反応を多重化するさらなる能力は、PCR後融解アッセイによって提供される。米国特許出願公開第20070072211号明細書を参照されたい。融解アッセイでは、増幅された核酸は、その固有の融解プロファイルによって同定される。融解アッセイは、二本鎖標的、又は標識プローブと標的との間の二重鎖の融解温度(融点)を決定することを含む。米国特許第5,871,908号明細書に記載されているように、蛍光標識プローブを使用して融解温度を決定するために、標的核酸とプローブとの間の二重鎖を制御された温度プログラムで徐々に加熱(又は冷却)する。二重鎖の解離は、相互作用するフルオロフォア間又はフルオロフォアとクエンチャーとの間の距離を変化させる。相互作用するフルオロフォアは、米国特許第6,174,670号明細書に記載されているように、別個のプローブ分子にコンジュゲートされ得る。あるいは、米国特許第5,871,908号明細書に記載されているように、一方のフルオロフォアをプローブにコンジュゲートさせ、他方のフルオロフォアを核酸二重鎖にインターカレートさせてもよい。さらに別の代替として、フルオロフォアは、単一プローブオリゴヌクレオチドにコンジュゲートされてもよい。二重鎖が融解すると、フルオロフォアとクエンチャーがここでは一本鎖プローブ内で一緒にされるので、蛍光が消光される。
【0007】
核酸二重鎖の融解は、蛍光の関連する変化を測定することによって監視される。蛍光の変化は、「融解プロファイル」と呼ばれるグラフ上に表すことができる。異なるプローブ-標的二重鎖は異なる温度で融解(又は再アニーリング)するように設計され得るので、各プローブは固有の融解プロファイルを生成する。適切に設計されたプローブは、同じアッセイにおいて他のプローブの融解温度と明確に区別可能な融解温度を有するであろう。多くの既存のソフトウェアツールは、これらの目的を念頭に置いて、同一チューブ多重アッセイ用のプローブを設計することを可能にする。例えば、Visual OMP(商標)ソフトウェア(DNA Software,Inc.,Ann Arbor,Mich.)は、様々な反応条件下で核酸二重鎖の融解温度を決定することを可能にする。
【0008】
蛍光検出及びその後の増幅後融解アッセイを使用するマルチプレックスPCRの方法は、米国特許第6,472,156号明細書に記載されている。そのような方法によって検出可能な標的の数は、検出可能な波長の数と識別可能な融解プロファイルの数との積である。したがって、融解アッセイを色検出に加えることは、複数の標的を検出する能力の前進であった。
【0009】
増幅後融解アッセイは、定性的目的、すなわち標的核酸を同定するために最も一般的に使用される(米国特許第6,174,670号明細書;米国特許第6,427,156号明細書;及び米国特許第5,871,908号明細書を参照のこと)。融解曲線関数を微分することで融解ピークを得ることが知られている。Ririe et al.(「Product differentiation by analysis of DNA melting curves during the polymerase chain reaction」(1997)Anal.Biochem.245:154-160)は、微分が、生成物の混合物によって生成される融解曲線の解決に役立つことを観察した。微分後、混合物の各成分によって生成された融解ピークは容易に識別可能になる。増幅後融解シグナル、すなわち融解ピークが、試料中の核酸の量に比例してより高いことも以前から知られていた。例えば、米国特許第6,245,514号明細書は、二重鎖インターカレーティング色素を使用して微分融解ピークを生成し、次いで独自のソフトウェアを使用してピークを積分する増幅後融解アッセイを教示している。積分は、増幅の効率及び増幅された核酸の相対量に関する情報を提供する。
【0010】
実際には、定性的アッセイを超えて、同じ試料中の複数の標的を定量できることが望ましいであろう。例えば、Sparano et al.「Development of the 21-gene assay and its application in clinical practice and clinical trials」J.Clin.Oncol.(2008)26(5):721-728を参照のこと。標的の量を定量する能力は、患者の血清中のウイルス量の決定、薬物療法に応答した遺伝子の発現レベルの測定、又は治療に対するその応答を予測するための腫瘍の分子シグネチャの決定などの臨床用途に有用である。
【0011】
リアルタイムPCRアッセイでは、標識プローブによって生成されたシグナルを使用して、投入された標的核酸の量を推定することができる。投入が大きいほど、蛍光シグナルが所定の閾値(Ct)を早期に横切る。したがって、試料を互いに、又は既知量の核酸を有する対照試料と比較することによって、標的核酸の相対量又は絶対量を決定することができる。しかしながら、既存の方法は、複数の標的を同時に定量する能力に限界がある。複数の標的の定性的検出と同様に、制限因子は、スペクトル的に分解可能なフルオロフォアの利用可能性である。上記で説明したように、最先端の蛍光標識技術は、同一チューブ内の6つ又は7つを超える別個の蛍光標識プローブから別個のシグナルを得ることができない。したがって、リアルタイムPCR中に多数の核酸標的の増幅及び検出を可能にするためには、根本的に異なる実験アプローチが必要である。
【0012】
自動化ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のための市販の蛍光ベースのデバイスは、異なる色のフルオロフォアから光を区別することによって、単一の反応容器内の複数の標的を検出することができる(多重化)。色素の選択は、それらのスペクトル重複を最小化することを特徴とする。アンサンブル内の全てのフルオロフォアは、吸収極大又はその付近の光で励起され、放出された光(蛍光)は、蛍光極大又はその付近で検出される。光学フィルタにより励起及び発光の波長(帯域)の範囲を制限することにより、個々のフルオロフォアを区別することができる。励起帯域と同時に検出された発光帯域との特定の組み合わせは光チャネルを規定し、それぞれが1つのPCR標的の同定を可能にする。達成可能な光チャネルの最大数は、利用可能なスペクトル範囲、励起光強度、フルオロフォアの輝度、フルオロフォアのスペクトル幅、フィルタ帯域幅、及び検出器感度などの多数の相互に関連する要因に依存する。蛍光ベースの検出技術を有する最先端のPCRデバイスは、励起及び発光経路あたり4~6個までの光学フィルタを使用する。したがって、標準的なフルオロフォアでは、4~6個のPCR標的を区別することができる。本発明は、大ストークスシフト(LSS)蛍光色素で作られた蛍光発生PCRプローブを使用することによって、一般的なPCRデバイスの多重化能力を拡大することを可能にする。この手法では、機器内のハードウェア又はソフトウェア構成要素の変更は必要とされない。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)中に単一の反応容器内で同時に検出可能な標的の数を増加させる(多重化する)ための大ストークスシフト(LSS)を有する蛍光色素の使用に関し、添付の特許請求の範囲で定義される。LSS色素は、分子イメージング、細胞イメージング、組織イメージング、及びPCR反応における対照参照色素として使用されてきたが、リアルタイムPCRにおける蛍光シグナル検出のために設計されたPCR機器の多重化能力を拡大するという特定の目的のためには使用されてこなかった。
【0014】
したがって、一態様では、本発明は、試料中の少なくとも2つの標的核酸配列を検出するための方法であって、(a)該少なくとも2つの標的核酸配列を含有すると疑われる該試料を、単一の反応容器内で、以下:i.第1の標的核酸配列の各鎖に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーの第1の対、及び第2の標的核酸配列の各鎖に相補的なヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプライマーの第2の対;ii.第1の標的核酸配列に少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列を含み、オリゴヌクレオチドプライマーの第1の対によって境界付けられた第1の標的核酸配列内にアニールする第1のオリゴヌクレオチドプローブであって、検出可能なシグナルを生成することができる大ストークスシフト(LSS)蛍光色素と、LSS蛍光色素によって生成された検出可能なシグナルをクエンチングすることができる第1のクエンチャー部分とによって標識され、LSS蛍光色素はヌクレアーゼ感受性切断部位によって第1のクエンチャー部分から分離されている、第1のオリゴヌクレオチドプローブ;iii第2の標的核酸配列と少なくとも部分的に相補的なヌクレオチド配列を含み、オリゴヌクレオチドプライマーの第2の対によって境界付けられた第2の標的核酸配列内にアニールする第2のオリゴヌクレオチドプローブであって、検出可能なシグナルを生成することができる小ストークスシフト(SSS)蛍光色素と、SSS蛍光色素によって生成された検出可能なシグナルをクエンチングすることができる第2のクエンチャー部分とで標識されており、SSS蛍光色素が、ヌクレアーゼ感受性切断部位によって第2のクエンチャー部分から分離されており、SSS蛍光色素が、第1のオリゴヌクレオチドプローブ上のLSS蛍光色素の吸収ピーク最大値と有意に異なる吸収ピーク最大値と、第1のオリゴヌクレオチドプローブ上のLSS蛍光色素の発光ピーク最大値と類似する発光ピーク最大値と、を有し、有意差が波長において少なくとも80ナノメートルである、第2のオリゴヌクレオチドプローブと接触させる工程;(b)5’から3’ヌクレアーゼ活性を有する核酸ポリメラーゼを使用するポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって第1の標的核酸配列及び第2の標的核酸配列を増幅し、それにより、各PCRサイクルの伸長ステップの間に、核酸ポリメラーゼの5’から3’ヌクレアーゼ活性が、第1のオリゴヌクレオチドプローブ上の第1のクエンチング部分からのLSS蛍光色素の切断及び分離、並びに第2のオリゴヌクレオチドプローブ上の第2のクエンチング部分からのSSS蛍光色素の切断及び分離を可能にする工程;(c)LSS蛍光色素の吸収ピーク最大値の波長又はその付近での励起によってLSS蛍光色素からの検出可能なシグナルを測定し、及び、SSS蛍光色素の吸収ピークの波長又はその付近での励起によってSSS蛍光色素からの検出可能なシグナルを測定する工程;(d)工程(b)及び工程(c)を複数のPCRサイクルで繰り返して、第1の標的核酸配列及び第2の標的核酸配列から所望の量の増幅産物を産生する工程;(e)LSS蛍光色素から検出されたシグナルから第1の標的核酸配列の存在を検出し、及びSSS蛍光色素から検出されたシグナルから第2の標的核酸配列の存在を検出する工程、を含む、方法を提供する。
【0015】
一実施形態では、第2のオリゴヌクレオチドプローブ上のSSS蛍光色素は、第1のオリゴヌクレオチドプローブ上のLSS蛍光色素の発光ピーク最大値と有意に異なる発光ピーク最大値と、第1のオリゴヌクレオチドプローブ上のLSS蛍光色素の吸収ピーク最大値と類似する吸収ピーク最大値と、を有し、有意差は波長において少なくとも80ナノメートルである。別の実施形態では、LSS蛍光色素の吸収ピーク最大値とSSS蛍光色素の吸収ピーク最大値との差は、波長において80ナノメートルより大きい。さらに別の実施形態では、差は、波長において100ナノメートルより大きい。さらなる実施形態では、LSS蛍光色素の発光ピーク最大値とSSS蛍光色素の発光ピーク最大値との差は、波長において80ナノメートルより大きい。さらに別の実施形態では、差は、波長において100ナノメートルより大きい。
【0016】
一実施形態では、LSS蛍光色素は、ALEXA FLUOR 430、ATTO 430LS、ATTO 490LS、ATTO 390LS、CASCADE YELLOW、CF350、CHROMEO 494、CYTO 500 LSS、CYTO 510 LSS、CYTO 514 LSS、CYTO 520 LSS、DAPOXYL、DY 480XL、DY 481XL、DY 485XL、DY 510XL、DY 511XL、DY 520XL、
DY 521XL、DY 601XL、DY 350XL、DY 360XL、DY 370XL、DY 375XL、DY 380XL、DY 395XL、DY 396XL、DYLIGHT 515-LS、DYLIGHT 485-LS、DYLIGHT 510-LS、DYLIGHT 521-LS、FURA 2、INDO 1、KROME ORANGE、LUB 04、LUCIFER YELLOW、NBD X、NILE RED、PULSAR 650、PYMPO、STAR 440SXP、STAR 470SXP、STAR 520SXP、VIOGREEN、CF 350、SETAU 405、及びPACIFIC ORANGEからなる群から選択される。さらなる実施形態では、LSS蛍光色素はDY396XLである。またさらなる実施形態では、LSS蛍光色素はCHROMEO 494である。別の実施形態では、LSS蛍光色素はATTO 490LSである。
【0017】
一実施形態では、LSS蛍光色素は、100℃までの温度で安定なままである蛍光シグナル強度を有する。一実施形態では、LSS蛍光色素はATTO 490LSである。別の実施形態では、第1のオリゴヌクレオチドプローブ、第2のオリゴヌクレオチドプローブ、又は第1のオリゴヌクレオチドプローブと第2のオリゴヌクレオチドプローブの両方が、TAGS技術に適合するタグ付きプローブである。
【0018】
別の実施形態では、本発明の方法は、細管である単一反応容器内で行われ、細管は、(i)試料を導入可能な開口部を有する近位端;(ii)遠位端;及び(iii)少なくとも、少なくとも1つの核酸抽出試薬を含有する第1のセグメント、第1のセグメントの遠位にあり洗浄試薬を含有する第2のセグメント、及び第2のセグメントの遠位にあり1つ又は複数の増幅試薬を含有する第3のセグメントであって、セグメントの各々が、(A)細管によって画定されており;(B)細管の対向する壁部分を互いに結合することによって形成された流体密封シールによって少なくとも部分的に流体的に隔離され、その結果、(1)シールが、シールによって部分的に流体的に隔離されたセグメントに流体圧力を加えることによって破壊され;かつ(2)シールが、シールによって部分的に流体的に隔離されたセグメントに流体圧力を加えることによってシールが破壊されるのを防止するために、シールを破壊することなく、細管の対向する壁部分が結合される場所でクランプされることが可能であり;(C)別のセグメントから排出された流体の体積を受け取るくらい拡張可能であり、圧縮された場合に実質的に流体を含まないくらいに圧縮可能である、少なくとも、第1のセグメント、第2のセグメント、及び第3のセグメント;(iv)開口部を閉じるためのキャップであって、細管と流体連通するチャンバを含み、気体の自由な流出を可能にするが、全ての液体体積及び感染病原体を管内に保持する、キャップ;(v)細管の近位端及び遠位端が保持される剛性フレーム;並びに(vi)一体型細管張力付与機構、又は前記細管の圧縮及び平坦化を容易にするように十分にピンと張った状態に前記細管を引っ張る前記フレームへの前記細管のアタッチメント、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】6色PCR機器のためのチャネル割り当てマトリックス。励起フィルタと発光フィルタの新しい組み合わせによって、6色PCR機器の従来の光チャネルをどのように拡張して21の可能な検出チャネルをもたらすことができるかについての概念図。励起フィルタ及び発光フィルタの中心波長は、ナノメートルで示されている。励起及び発光の記述子は、UV(u)、青色(b)、緑色(g)、琥珀色(a)、赤色(r)、IR、(i)である。1つの励起フィルタと1つの発光フィルタとを組み合わせることによって光チャネルが形成される。例えば、UVにおける励起及び緑色における発光についての2文字チャネル記述子は「ug」である。明るい灰色で強調表示されたチャネルは、標準的な短ストークシフト(SSS)フルオロフォアでアクセス可能な従来のチャネルに対応する。白色フィールドは、現在入手可能なLSS色素でアクセス可能なチャネルに対応する。濃い灰色で強調表示されたチャネルは、共鳴電子移動(RET)プローブによってアクセス可能である。
図2】6色PCR機器(cobas(登録商標)Liat(登録商標)分析器)に関する吸収(左)及び発光スペクトル(右)。4つの標準SSS蛍光色素及び1つのLSS色素(Chromeo 494)のスペクトルを示す。スペクトルを任意の吸収及び蛍光単位(AU/FU)に対して正規化した。光学フィルタによってカバーされる波長領域は、水平線として示されている。494nm/628nmに励起/発光最大値を有するChromeo 494(破線)は、青色光で励起され、琥珀色及び/又は赤色発光フィルタ(ba及び/又はbrチャネル)で検出することができる。
図3】6色PCR機器(cobas(登録商標)Liat(登録商標)分析器)の吸収(左)及び発光スペクトル(右)。4つの標準SSS蛍光色素及び1つのLSS色素(Dy396XL)のスペクトルを示す。スペクトルを任意の吸収及び蛍光単位(AU/FU)に対して正規化した。光学フィルタによってカバーされる波長領域は、水平線として示されている。392nm/572nmに励起/発光最大値を有するDy396XL(破線)は、UV光で励起され、緑色発光フィルタ(ugチャネル)で検出することができる。
図4】3×LoDレベルでの標的投入によるcobas(登録商標)Liat(登録商標)CT/NG/TV/MG試験における6つのTaqManプローブのリアルタイムPCR成長曲線。cobas(登録商標)Liat(登録商標)分析器における多重化は、4つのSSS色素を2つのLSS色素(Chromeo494、Dy395XL)と組み合わせることによって達成された。成長曲線のベースラインを比較のために0に正規化した。
図5】5チャネルcobas(登録商標)Liat(登録商標)CT/NG/MG試験におけるDy395XL又はDy396XLで標識されたMGPBプローブの統計分析。MG-Dy395XLプローブとMG-Dy396XLプローブとのベースラインの違いにより、ベースライン比に従って、より高いベースラインを有するプローブの性能(Ct、振幅、及びKexp)を正規化した。
図6】5チャネルcobas(登録商標)Liat(登録商標)CT/NG/MG試験におけるDy395XL又はDy396XLで標識されたMGPCプローブの統計分析。MG-Dy395XLプローブとMG-Dy396XLプローブとのベースラインの違いにより、ベースライン比に従って、より高いベースラインを有するプローブの性能(Ct、振幅、及びKexp)を正規化した。
図7A】cobas(登録商標)Liat(登録商標)分析器用の細管を含む試料管の例示的な実施形態。図7Aは、正面図である。
図7B】cobas(登録商標)Liat(登録商標)分析器用の細管を含む試料管の例示的な実施形態。図7Bは、分析器の内部に配置された試料管の断面図である。
図8A】cobas(登録商標)Liat(登録商標)分析器用の細管を含む試料管の別の例示的な実施形態。図8Aは、断面図である。
図8B】cobas(登録商標)Liat(登録商標)分析器用の細管を含む試料管の別の例示的な実施形態。図8Bは、試料管の斜視図である。
図9】5色PCR機器のための光チャネル割り当てマトリックス。励起フィルタと発光フィルタの新しい組み合わせによって、5色PCR機器の従来の光チャネルをどのように拡張することができるかについての概念図。励起フィルタ及び発光フィルタの中心波長は、ナノメートルで示されている。対角フィールド(明灰色)上の光チャネルは、標準的な短ストークシフト(SSS)フルオロフォアでアクセス可能である。暗灰色のフィールドは、LSS色素でアクセスされた光チャネルに対応する。一実施形態では、標的を、495nmでの励起及び645nmでの検出によってLSS色素で検出した(ATTO 490LS色素)。別の実施形態では、標的を、435nmでの励起及び580nmでの検出によってLSS色素で検出した(RLS色素)。白色フィールドは、LSS色素又は共鳴電子移動(RET)プローブで概念的にアクセス可能なさらなるチャネルに対応する。
図10】5色PCR機器(LightCycler(登録商標)及びcobas(登録商標)x800分析器)に関する吸収(左)及び発光スペクトル(右)。495nmでの励起及び645nmでの検出によって検出することができる5つの標準SSS蛍光色素及び1つのLSS色素ATTO 490LSのスペクトルが示されている。スペクトルを任意の吸収及び蛍光単位(AU/FU)に対して正規化した。光学フィルタによってカバーされる波長領域は、水平線として示されている。
図11】5色PCR機器(LightCycler(登録商標)及びcobas(登録商標)x800分析器)に関する吸収(左)及び発光スペクトル(右)。435nmでの励起及び580nmでの検出によって検出することができる5つの標準蛍光色素及び1つのLSS色素(RLS)のスペクトルが示されている。スペクトルを任意の吸収及び蛍光単位(AU/FU)に対して正規化した。光学フィルタによってカバーされる波長領域は、水平線として示されている。
図12】LSS色素に基づく拡張された光多重化と温度ベースの多重化との適合性を実証するリアルタイムPCR成長曲線。注目すべき例は、3つの熱チャネル(TC)にわたるATTO 490LS光チャネル(495nm/645nm)における3つの標的の個々の検出を示す。TC1は、ATTO 490LS及び58℃での蛍光読み取り値を有する標準的なTaqManプローブに基づく。TC2及びTC2は、それぞれ80℃及び91℃で標的蛍光シグナルを生成するATTO 490LSによるタグ付きプローブ設計に基づく。標的濃度は1000cp/反応であり、標的とされた全ての試料が存在した。陽性PCRシグナルが予想される各熱チャネルのPCR成長曲線にアスタリスクを付けた。より高い熱チャネルでは、標的が存在しない場合のわずかな上向き又は下向きの傾きは、蛍光色素の最適化されていない熱補正係数によって引き起こされる。データは、LightCycler(登録商標)480分析器で生成した。
図13】LSS色素に基づく拡張された光多重化と温度ベースの多重化との適合性を実証するリアルタイムPCR成長曲線。注目すべき例は、3つの熱チャネル(TC)にわたるRLS光チャネル(435nm/580nm)における3つの標的の個々の検出を示す。TC1は、RLS色素及び58℃での蛍光読み取り値を有する標準的なTaqManプローブに基づく。TC2及びTC2は、それぞれ80℃及び91℃で標的蛍光シグナルを生成するRLS色素によるタグ付きプローブ設計に基づく。各標的の濃度は、テンプレートなし対照(NTC)を除いて、1000cp/反応であった。より高い熱チャネルでは、標的が存在しない場合のわずかな上向き又は下向きの傾きは、蛍光色素の最適化されていない熱補正係数によって引き起こされる。データは、LightCycler(登録商標)480分析器で生成した。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用される用語「試料」は、核酸を含む任意の検体又は培養物(例えば微生物培養物)を含む。「試料」という用語はまた、生物学的試料及び環境試料の両方を含むことを意味する。試料は、合成起源の検体を含むことができる。生物学的試料には、全血、血清、血漿、臍帯血、絨毛膜絨毛、羊水、脳脊髄液、髄液、洗浄液(例えば、気管支肺胞上皮、胃、腹膜、管、耳、関節鏡視下の)、生検試料、尿、糞便、痰、唾液、鼻粘液、前立腺液、精液、リンパ液、胆汁、涙液、汗、母乳、母体液(breast fluid)、胚細胞、及び胎児細胞が含まれる。好ましい実施形態では、生物学的試料は血液であり、より好ましくは血漿である。本明細書で使用される場合、用語「血液」は、一般的な定義のとおり、全血又は血液の任意の画分(血清及び血漿など)を包含する。血漿とは、抗凝固剤で処理した血液の遠心分離から生じる全血の画分をいう。血清とは、血液試料が凝固した後に残った体液の水様性部分をいう。環境試料は、表面物質、土壌、水及び工業試料などの環境物質、並びに食品及び乳製品の加工機器、装置、器具、設備、用具、使い捨て及び非使い捨てアイテムから得られた試料を含む。これらの例は、本発明に適用可能な試料の種類を制限するものとして解釈されてはならない。
【0021】
本明細書で使用される用語「標的」又は「標的核酸」は、その存在が検出若しくは測定されるか、又はその機能、相互作用若しくは特性が研究される任意の分子を意味することが意図されている。したがって、標的は、検出可能なプローブ(例えば、オリゴヌクレオチドプローブ)又はアッセイが存在するか、又は当業者によって産生され得る本質的に任意の分子を含む。例えば、標的は、検出可能なプローブと結合するか、そうでなければ接触することができる生体分子、例えば核酸分子、ポリペプチド、脂質又は炭水化物であり得(例えば、抗体)、検出可能なプローブはまた、本発明の方法によって検出することができる核酸を含む。本明細書で使用される場合、「検出可能プローブ」は、目的の標的生体分子にハイブリダイズ又はアニーリングすることができ、本明細書に記載の標的生体分子の特異的検出を可能にする任意の分子又は薬剤を指す。本発明の一態様では、標的は核酸であり、検出可能なプローブはオリゴヌクレオチドである。用語「核酸」及び「核酸分子」は、本開示を通して互換的に使用されることができる。上記用語は、オリゴヌクレオチド、オリゴ、ポリヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド(DNA)、ゲノムDNA、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、相補的DNA(cDNA)、細菌DNA、ウイルスDNA、ウイルスRNA、RNA、メッセージRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、siRNA、触媒RNA、クローン、プラスミド、M13、P1、コスミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)、増幅核酸、アンプリコン、PCR産物及び他のタイプの増幅核酸、RNA/DNAハイブリッド、及びポリアミド核酸(PNA)を指し、これらは全て、一本鎖か二本鎖形態のいずれかであり得、特に限定しない限り、天然由来のヌクレオチドと同様の機能を果たすことができる天然ヌクレオチドの既知のアナログ、並びにそれらの組み合わせ及び/又は混合物を包含する。したがって、用語「ヌクレオチド」は、ヌクレオシドトリ、ジ、及びモノホスフェートと、ポリ核酸又はオリゴヌクレオチド内に存在するモノホスフェートモノマーとを含む、天然ヌクレオチド及び修飾/非天然ヌクレオチドの双方を指す。ヌクレオチドはまた、リボヌクレオチド;2’-デオキシヌクレオチド;又は2’,3’-デオキシヌクレオチド、並びに当該技術分野においてよく知られている無数の他のヌクレオチド模倣物であってもよい。模倣物には、3’-O-メチル、ハロゲン化塩基又は糖置換などの鎖終結ヌクレオチド;非糖、アルキル環構造を含む代替糖構造;イノシンを含む代替塩基;デアザ修飾;カイ(chi-)、及び/又はプシー(psi-)、リンカー修飾;質量標識修飾;ホスホロチオエート、メチルホスホネート、ボラノホスフェート、アミド、エステル、エーテルを含むホスホジエステル修飾又は置換;及び/又は光開裂性二トロフェニル部分などの開裂結合を含む、塩基の又は完全なインターヌクレオチド置換が含まれる。
【0022】
標的の有無は、定量的又は定性的に測定できる。標的は、例えば単純若しくは複雑な混合物又は実質的に精製された形態を含む、様々な異なる形態があり得る。例えば、標的は、他の成分を含有する試料の一部であっても、又は試料の唯一の若しくは主要な成分であってもよい。したがって、標的は、細胞又は組織全体の成分、細胞若しくは組織抽出物、その分画ライセート、又は実質的に精製された分子であり得る。また、標的は、既知又は未知の配列又は構造のいずれかを有し得る。
【0023】
用語「増幅反応」とは、核酸の標的配列のコピーを増やすためのあらゆるインビトロの手段を意味する。
【0024】
「増幅」とは、増幅を可能にするのに十分な条件に溶液を供する工程をいう。増幅反応の成分は、例えば、プライマー、ポリヌクレオチドテンプレート、ポリメラーゼ、ヌクレオチド、dNTP等を含むが、これらに限定されない。用語「増幅」は、典型的には、標的核酸の「指数関数的」増加を指す。しかしながら、本明細書で使用される「増幅」は、核酸の選択された標的配列の数の直線的増加を指すこともできるが、1回限りの単一プライマー伸長工程とは異なる。
【0025】
「ポリメラーゼ連鎖反応」又は「PCR」とは、標的二本鎖DNAの特定のセグメント又はサブ配列が等比数列で増幅される方法を指す。PCRは当業者にはよく知られており、例えば、米国特許第4683195号及び第4683202号;及びPCR Protocols:A Guide to Methods and Applications,Innis et al.,eds,1990を参照されたい。
【0026】
本明細書で使用される「オリゴヌクレオチド」とは、ホスホジエステル結合又はその類似体によって結合された天然又は修飾ヌクレオシドモノマーの線状オリゴマーを指す。オリゴヌクレオチドは、標的核酸に特異的に結合することができる、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、それらのアノマー形態、ペプチド核酸(PNA)等を含む。通常、モノマーは、ホスホジエステル結合又はそのアナログによって結合され、数個のモノマー単位(例えば3~4個)から数十個のモノマー単位(例えば40~60個)までのサイズのオリゴヌクレオチドを形成する。オリゴヌクレオチドが「ATGCCTG」などの文字の配列で表される場合、特に断りのない限り、ヌクレオチドは、左から右へ5’-3’の順序であり、「A」はデオキシアデノシンを、「C」はデオキシシチジンを、「G」はデオキシグアノシンを、「T」はデオキシチミジンを、「U」はリボヌクレオシドであるウリジンを示すことが理解されるであろう。通常、オリゴヌクレオチドは、4種類の天然デオキシヌクレオチドを含むが、それらはまた、上記のように、リボヌクレオシド又は非天然ヌクレオチドアナログも含むことができる。酵素が活性のための特定のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質要件(例えば一本鎖DNA、RNA/DNA二本鎖など)を有する場合、オリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチド基質の適切な組成の選択は、十分当業者の知識の範囲内である。
【0027】
本明細書で使用される場合、「オリゴヌクレオチドプライマー」又は単に「プライマー」は、標的核酸テンプレート上の配列にハイブリダイズし、オリゴヌクレオチドプローブの検出を容易にするポリヌクレオチド配列を指す。本発明の増幅実施形態において、オリゴヌクレオチドプライマーは、核酸合成の開始点として働く。非増幅実施形態においては、オリゴヌクレオチドプライマーを使用して、切断剤によって切断することが可能な構造を作成することができる。プライマーの長さは様々とすることができ、多くの場合、50ヌクレオチド長未満、例えば12~25ヌクレオチド長である。PCRに使用するためのプライマーの長さ及び配列は、当業者にとって既知の原理に基づいて設計されることができる。
【0028】
本明細書で使用される用語「オリゴヌクレオチドプローブ」とは、目的の標的核酸にハイブリダイズしたりアニーリングしたりすることができ、かつ標的核酸の特異的検出を可能にするポリヌクレオチド配列を指す。
【0029】
「レポーター部分」又は「レポーター分子」は、検出可能なシグナルを与える分子である。検出可能な表現型は、例えば比色、蛍光又は発光であり得る。蛍光レポーター部分の例としては、例えば、フルオレセイン(FAM)、ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、JA270(Roche Molecular Systems)、シアニン色素(例えば、CY3.5、CY5又はCY5.5)が挙げられる。
【0030】
「クエンチャー部分」又は「クエンチャー分子」は、レポーター部分からの検出可能なシグナルをクエンチすることができる分子である。蛍光レポーターと共に使用されるクエンチャー部分の例としては、例えば、いわゆるダーククエンチャー、例えば、Black Hole Quenchers(BHQ-1又はBHQ-2)(LGC BioSearch Technologies)又はIowa Black(Integrated DNA Technologies);及び蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を使用する蛍光部分、例えば上記のシアニン色素等が挙げられる。
【0031】
「ミスマッチヌクレオチド」又は「ミスマッチ」とは、その位置(複数可)で標的配列に相補的でないヌクレオチドを指す。オリゴヌクレオチドプローブは、少なくとも1のミスマッチを有していてもよいが、2、3、4、5、6又は7あるいはそれ以上のミスマッチヌクレオチドを有していてもよい。
【0032】
本明細書で使用される用語「多型」は、対立遺伝子変異体を指す。多型には、単純配列長多型だけでなく、一塩基多型(SNPs)も含まれ得る。多型は、別の対立遺伝子と比較したある対立遺伝子での1又は複数のヌクレオチド置換に起因する可能性があり、又は挿入若しくは欠失、重複、逆位、及び当該技術分野で知られている他の改変に起因する可能性がある。
【0033】
本明細書で使用される用語「修飾」は、分子レベル(例えば、塩基部分、糖部分又はリン酸骨格)でのオリゴヌクレオチドプローブの改変を指す。ヌクレオシド修飾には、切断ブロッカー又は切断誘導剤の導入、マイナーグルーブバインダーの導入、同位体濃縮、同位体枯渇、重水素の導入、及びハロゲン修飾が含まれるが、これらに限定されない。ヌクレオシド修飾には、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーを増加させる部分、又はオリゴヌクレオチドプローブの融解温度を増加させる部分も含まれ得る。例えば、ヌクレオチド分子を2’及び4’炭素を連結する余分なブリッジで修飾し、ヌクレアーゼによる切断に抵抗性であるロックド核酸(LNA)ヌクレオチドをもたらすことができる(Imanishiらの米国特許第6268490号及びWengelらの米国特許第6794499号に記載されているとおりである)。オリゴヌクレオチドプローブのタグ部分とクエンチングオリゴヌクレオチド分子の組成は、安定な二本鎖を形成するそれらの能力によってのみ制限される。したがって、これらのオリゴヌクレオチドは、DNA、L-DNA、RNA、L-RNA、LNA、L-LNA、PNA(ペプチド核酸、Nielsenらの米国特許第5539082号に記載)、BNA(架橋核酸、例えば、Rahman et al.,J.Am.Chem.Soc.2008;130(14):4886-96に記載の2’,4’-BNA(NC)[2’-O,4’-C-アミノメチレン架橋核酸]、L-BNA等(ここで「L-XXX」は、核酸の糖単位のL-エナンチオマーを指す)、又はヌクレオチド塩基、糖、若しくはホスホジエステル骨格の任意の他の既知の変化及び修飾を含み得る。
【0034】
ヌクレオシド修飾の他の例には、オリゴヌクレオチドの糖部分に導入されるハロ、アルコキシ及びアリルオキシ基などの様々な2’置換が含まれる。2’-置換-2’-デオキシアデノシンポリヌクレオチドはDNAよりもむしろ二本鎖RNAに似ているというエビデンスが提示されている。Ikehara et al.(Nucleic Acids Res.,1978,5,3315)は、ポリA、ポリI又はポリCとその相補体との二本鎖中での2’-フルロ置換基が標準的な融解アッセイによって決定されるリボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドポリ二本鎖よりも有意に安定であることを示している。Inoue et al.(Nucleic Acids Res.,1987,15,6131)は、全ての核酸ヌクレオチド上に2’-OMe(O-メチル)置換基を含有する混合オリゴヌクレオチド配列の合成を記載している。混合された2’-OMe-置換オリゴヌクレオチドは、同じ配列RNA-DNAヘテロ二本鎖よりも有意に強いRNA-RNA二本鎖と同程度に強くそのRNA相補体にハイブリダイズした。糖の2’位における置換の例には、F、CN、CF3、OCF3、OMe、OCN、O-アルキル、S-アルキル、SMe、SO2Me、ONO2、NO2、NH3、NH2、NH-アルキル、OCH3=CH2、及びOCCHが含まれる。
【0035】
標的ポリヌクレオチドに対するプローブなど、1つの分子のもう1つ別の分子への結合に関する用語「特異的」又は「特異性」とは、この2つの分子間の認識、接触、及び安定な複合体の形成と共に、その分子とその他の分子との大幅に弱い認識、接触又は複合体形成を指す。本明細書で使用される「アニール」という用語は、2つの分子間の安定な複合体の形成を指す。特に、「アニール」は、相補的オリゴヌクレオチド間の安定な二本鎖複合体の形成を指すことができる。
【0036】
プローブの少なくとも1つの領域が核酸配列の相補体の少なくとも1つの領域と実質的な配列同一性を共有する場合、プローブは、核酸配列に「アニーリングすることができる」。「実質的な配列同一性」は、少なくとも約80%、好ましくは少なくとも約85%、より好ましくは少なくとも約90%、95%又は99%、最も好ましくは100%の配列同一性である。DNA配列とRNA配列の配列同一性を決定するために、UとTは同じヌクレオチドと見なされることが多い。例えば、配列ATCAGCを含むプローブは、配列GCUGAUを含む標的RNA配列にハイブリダイズすることができる。
【0037】
本明細書で使用される用語「切断剤」とは、オリゴヌクレオチドプローブを切断して断片を得ることができる任意の手段を指し、酵素を含むがこれに限定されない。増幅が起こらない方法の場合、切断剤は、オリゴヌクレオチドプローブの第2の部分又はその断片を切断し、分解するか、さもなければ分離するためにのみ役立ち得る。切断剤は、酵素であってもよい。切断剤は、天然でも合成でも、修飾されていてもいなくてもよい。
【0038】
増幅が起こる方法の場合、切断剤は、好ましくは、合成(又は重合)活性及びヌクレアーゼ活性を有する酵素である。このような酵素は、核酸増幅酵素であることが多い。核酸増幅酵素の一例は、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ又はE.coliDNAポリメラーゼIなどの核酸ポリメラーゼ酵素である。酵素は、天然に存在していてもよく、修飾されていなくてもよく、又は修飾されていてもよい。
【0039】
「核酸ポリメラーゼ」とは、核酸へのヌクレオチドの取り込みを触媒する酵素を指す。例示的な核酸ポリメラーゼには、DNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼ、末端転移酵素、逆転写酵素、テロメア伸長酵素などが含まれる。
【0040】
「耐熱性DNAポリメラーゼ」とは、選択された期間高温にさらされたときに、安定であり(すなわち、分解又は変性に抵抗し)、かつ、十分な触媒活性を保持するDNAポリメラーゼを指す。例えば、耐熱性DNAポリメラーゼは、二本鎖核酸を変性させるのに必要な時間高温にさらされたとき、その後のプライマー伸長反応を引き起こすのに十分な活性を保持する。核酸変性に必要な加熱条件は当該技術分野で周知であり、米国特許第4683202号及び第4683195号に例示されている。本明細書で使用されるように、耐熱性ポリメラーゼは、典型的には、ポリメラーゼ連鎖反応(「PCR」)などの温度サイクル反応における使用に適している。熱安定性核酸ポリメラーゼの例としては、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermus sp.Z05ポリメラーゼ、Thermus flavusポリメラーゼ、Thermotoga maritimaポリメラーゼ、例えばTMA-25ポリメラーゼ、TMA-30ポリメラーゼ、及びThermus thermophilus DNAポリメラーゼなどが挙げられる。
【0041】
「修飾」ポリメラーゼとは、少なくとも1のモノマーが参照配列と異なるポリメラーゼ、例えば、ポリメラーゼの天然若しくは野生型、又はポリメラーゼの別の修飾型を指す。このような修飾ポリメラーゼは、例えば、米国特許出願公開第20110294168号明細書及び米国特許出願公開第20140178911号明細書に記載されている。例示的な修飾には、モノマー挿入、欠失及び置換が含まれる。修飾ポリメラーゼはまた、2以上の親に由来する識別可能な構成要素配列(例えば構造又は機能ドメインなど)を有するキメラポリメラーゼを含む。また、修飾ポリメラーゼの定義の中には、参照配列の化学修飾を含むものも含まれる。修飾ポリメラーゼの例としては、G46E E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A D640G S671F CS5 DNAポリメラーゼ、G46E L329A D640G S671F E678G CS5 DNAポリメラーゼ、G46E E678G CS6 DNAポリメラーゼ、Z05 DNAポリメラーゼ、ΔZ05ポリメラーゼ、ΔZ05-Goldポリメラーゼ、ΔZ05Rポリメラーゼ、E615G Taq DNAポリメラーゼ、E678G TMA-25ポリメラーゼ、及びE678G TMA-30ポリメラーゼなどが挙げられる。
【0042】
用語「5’から3’ヌクレアーゼ活性」又は「5’-3’ヌクレアーゼ活性」は、典型的には核酸鎖合成に関連する核酸ポリメラーゼの活性を指し、それによりヌクレオチドは核酸鎖の5’末端から除去され、例えばE.coliDNAポリメラーゼIはこの活性を有するが、クレノウ断片はそうではない。5’から3’ヌクレアーゼ活性を有する酵素の中には、5’から3’エキソヌクレアーゼがある。このような5’から3’エキソヌクレアーゼの例は、B.subtilis由来のエキソヌクレアーゼ、脾臓由来のホスホジエステラーゼ、ラムダエキソヌクレアーゼ、酵母由来のエキソヌクレアーゼII、酵母由来のエキソヌクレアーゼV、及びNeurospora crassa由来のエキソヌクレアーゼが含まれる。
【0043】
本発明の様々な態様は、核酸ポリメラーゼの特殊な性質に基づく。核酸ポリメラーゼは、いくつかの活性、中でも5’から3’ヌクレアーゼ活性を有することができ、これにより、核酸ポリメラーゼは、モノヌクレオチド又は小さなオリゴヌクレオチドを、より大きな相補的なポリヌクレオチドにアニーリングされたオリゴヌクレオチドから切断することができる。切断が効率よく起こるためには、上流のオリゴヌクレオチドも、同じより大きなポリヌクレオチドにアニーリングされていなければならない。
【0044】
5’から3’ヌクレアーゼ活性を利用する標的核酸の検出は、米国特許第5210015号;第5487972号;及び第5804375号;並びにHollandら,1988,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 88:7276-7280に記載されているように、「TaqMan(登録商標)アッセイ」又は「5’-ヌクレアーゼアッセイ」により実施することができる。TaqMan(登録商標)アッセイでは、増幅反応中に増幅領域内でハイブリダイズする標識検出プローブが存在する。このプローブは、それがDNA合成のためのプライマーとして作用しないように改変される。増幅は、5’から3’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼを用いて実施される。増幅の各合成工程の間、伸長されているプライマーから下流で標的核酸にハイブリダイズする任意のプローブは、DNAポリメラーゼの5’から3’エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。したがって、新しい標的鎖の合成もプローブの分解をもたらし、分解産物の蓄積は標的配列の合成の尺度となる。
【0045】
分解産物の検出に好適ないずれの方法も、5’-ヌクレアーゼアッセイに使用することができる。多くの場合、検出プローブは2つの蛍光色素で標識され、そのうちの1つ(「クエンチャー」又は「クエンチング部分」)は他の色素(「レポーター」又は「レポーター部分」)の蛍光をクエンチングすることができる。色素は、典型的にはレポーター色素又は検出色素が5’末端に結合し、クエンチング色素が内部部位に結合した状態でプローブに結合し、その結果、プローブが非ハイブリダイズ状態にあるときにクエンチングが起こり、DNAポリメラーゼの5’から3’へのエキソヌクレアーゼ活性によるプローブの切断が2つの色素の間で起こる。増幅は、色素間のプローブの切断をもたらし、これは、クエンチングの同時の排除と最初にクエンチングされた色素から観察可能な蛍光の増加とを伴う。分解産物の蓄積は、反応蛍光の増加を測定することによって監視される。米国特許第5,491,063号及び第5,571,673号は、増幅と同時に生じるプローブの分解の代替的検出方法を説明している。
【0046】
標的核酸の検出のための5’ヌクレアーゼアッセイは、5’から3’エキソヌクレアーゼ活性を有する任意のポリメラーゼを使用することができる。いくつかの実施形態において、5’-ヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼは、耐熱性及び熱活性核酸ポリメラーゼである。そのような熱安定性ポリメラーゼには、真正細菌属Thermus、Thermatoga、及びThermosiphoの様々な種由来のポリメラーゼの天然及び組換え形態、並びにそのキメラ形態が含まれるが、これらに限定されない。例えば、本発明の方法で使用することができるThermus種ポリメラーゼには、Thermus aquaticus(Taq)DNAポリメラーゼ、Thermus thermophilus(Tth)DNAポリメラーゼ、Thermus種Z05(Z05)DNAポリメラーゼ、及びThermus種sps17(sps17)DNAポリメラーゼ(例えば、米国特許第5,405,774号;米国特許第5,352,600号;米国特許第5,079,352号;米国特許第4,889,818号;米国特許第5,466,591号;米国特許第5,618,711号;米国特許第5,674,738号、及び5,795,762に記載されている)が含まれる。本発明の方法で用いることができるThermatogaポリメラーゼには、例えば、Thermatoga maritimaDNAポリメラーゼ及びThermatoga neapolitanaDNAポリメラーゼが含まれ、一方、用いることができるThermosiphoポリメラーゼの例は、Thermosipho africanusDNAポリメラーゼである。Thermatoga maritima及びThermosipho africanusDNAポリメラーゼの配列は、国際特許出願番号PCT/US91/07035号及び公開WO92/06200号に公開されている。Thermatoga neapolitanaの配列は、国際特許公開WO97/09451号に見出すことができる。
【0047】
5’ヌクレアーゼアッセイにおいて、増幅検出は、典型的には、増幅と同時に行われる(すなわち「リアルタイム」)。いくつかの実施形態では、増幅検出は定量的であり、増幅検出はリアルタイムである。いくつかの実施形態では、増幅検出は定性的である(例えば、標的核酸の存在又は非存在の終点検出)。いくつかの実施形態では、増幅検出は増幅の後である。いくつかの実施形態では、増幅検出は定性的であり、増幅検出は増幅の後である。
【0048】
「タグ付きプローブ」又は「タグ付きオリゴヌクレオチドプローブ」という用語は、異なる温度で蛍光を測定することによって同じ光チャネル内の複数の標的の識別を可能にするDNAプローブアーキテクチャに基づくオリゴヌクレオチドプローブを指し、米国特許出願公開第2018/0073064号に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる「TAGS(Temperature assisted generation of signal)」技術に関連する。1つのレポーター部分(例えば、1つの蛍光色素)のみを使用するマルチプレックスPCRアッセイは、様々な融解温度(Tm)でそれぞれのクエンチングオリゴヌクレオチド分子にハイブリダイズしたタグ部分を有するタグ付きプローブを設計することによって可能である。低Tmタグ-クエンチオリゴヌクレオチド二重鎖を有する第1のタグ付きプローブを使用して、そのTm温度以上の第1の温度で計算された蛍光値を測定することによって、第1の標的核酸を検出することができる。高いTmタグ-クエンチングオリゴヌクレオチド二重鎖を有する第2のタグ付きプローブを使用して、そのTm温度以上であって第1の温度よりも高い第2の温度で計算された蛍光値を測定することによって、第2の標的を検出することができる。したがって、所与の色素の各光チャネルは、異なる温度での蛍光測定値を表す異なる「熱チャネル」で読み取ることができる。
【0049】
ストークスシフト及び大ストークスシフト色素
蛍光色素のストークスシフトは、同じ電子遷移に対する吸収ピーク最大値と発光ピーク最大値との間の波長、周波数、又はエネルギー差として定義される。小分子フルオロフォアの大部分は、10~25nm程度、典型的には80nm未満のストークスシフトを示す(本明細書では「小ストークスシフト」(SSS)色素と呼ばれる)。SSS色素には、PCRアッセイで使用される従来の蛍光色素、例えばFAM、HEX、CFR610及びQuasar670が含まれる。ストークスシフトが著しく大きいフルオロフォアは、「大ストークスシフト」(LSS)色素、「高ストークスシフト」色素、又は「メガストークス」色素と総称される。この用語は明確に定義されていないが、80nmを超えるストークスシフトを有する色素は、典型的には「大きい」又は「高い」という形容詞を伴って作り出されるが、「メガ」という用語は、100nmを大幅に超えるストークスシフトを有する色素に一般的に使用されているようである。大ストークスシフトの発生を説明するために、2つの光物理的機構が文献で論じられている。分子幾何学型機構は、励起状態のフルオロフォアの配座緩和及び結果として生じる溶媒双極子の再配列に基づく。ストークスシフトは、基底状態及び励起状態における(平衡化された)分子幾何形状と双極子モーメントとの間の差が大きくなるにつれて成長する。電子型機構に対する大ストークスシフト蛍光は、励起状態における分子内電荷移動(ICT)に起因する。
【0050】
小ストークスシフトのフルオロフォアの一般的な問題は、蛍光の内部クエンチングである。このようなセルフクエンチングは、励起及び発光のスペクトル重複によって引き起こされ、特に高いフルオロフォア濃度で一般的である。LSS色素はより良好に分離されたスペクトル帯域を有し、光子の再吸収を最小限に抑える。フルオロフォアがその主要な励起ピークの外側で励起する確率はゼロではない。結果として、1つの色素からの蛍光は、必然的に、複数の発光チャネルにおいて検出される全光に寄与する。このスペクトル「クロストーク」又は「ブリードスルー」は、所定の補正係数を使用することによって、ある程度計算的に補償することができる。さらに、励起光の散乱は、隣接するチャネルのバックグラウンド蛍光を増加させる。LSS色素は、他のフルオロフォアからのクロストーク及び散乱を低減又は回避することさえ可能にする。LSS色素は、多くのフルオロフォアが強いバックグラウンドシグナルを生成する実験環境において特に有用である。LSS色素のような大きなスペクトル分離は、励起光のより効果的なフィルタリングを可能にし、それによって標的検出の感度を高める。LSS色素は、以前はアクセスできなかった光チャネルからの蛍光データへのアクセスを与える。広いスペクトル分離によって促進され、標準的なフルオロフォアと組み合わせて使用される場合、LSS色素は、蛍光PCRデバイスの多重化能力を高めることを可能にする。このようにして、LSS標識は、確立された4~6色の機器への追加のチャネルの実装を可能にする。原則として、21個のチャネルは、6色機器のフィルタの組み合わせから構成することができる(図1)。しかしながら、実際には、チャネルの数は、十分に大きいストークスシフトを有するLSS色素の商業的入手可能性によって制限される。現在市販されているLSS色素の150nmのストークスシフトに基づいて、9つの追加のチャネルを実施することができる(図1、白いチャネル)。標準的な色素のチャネルは明灰色で強調されているが、暗灰色は、適切なLSS色素が現在利用できないチャネルを示す。代わりに、共鳴電子移動(RET)プローブは、大きな「仮想」ストークスシフトを生成し、これらのチャネルにアクセスするために使用することもできる。
【0051】
市販のLSS色素の例としては、以下:ALEXA FLUOR 430、ATTO 430LS、ATTO 490LS、ATTO 390LS、CASCADE YELLOW、CF350、CHROMEO 494、CYTO 500 LSS、CYTO 510 LSS、CYTO 514 LSS、CYTO 520 LSS、DAPOXYL、DY 480XL、DY 481XL、DY 485XL、DY 510XL、DY 511XL、DY 520XL、
DY 521XL、DY 601XL、DY 350XL、DY 360XL、DY 370XL、DY 375XL、DY 380XL、DY 395XL、DY 396XL、DYLIGHT 515-LS、DYLIGHT 485-LS、DYLIGHT 510-LS、DYLIGHT 521-LS、FURA 2、INDO 1、KROME ORANGE、LUB 04、LUCIFER YELLOW、NBD X、NILE RED、PULSAR 650、PYMPO、STAR 440SXP、STAR 470SXP、STAR 520SXP、VIOGREEN、CF 350、SETAU 405、及びPACIFIC ORANGEが挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
記載された利点にもかかわらず、ストークスシフトの増加は価格で生じる。LSS色素は、標準的なフルオロフォアと比較して低い蛍光量子収率を有する。フルオロフォアの輝度がモル吸光係数と蛍光量子収率との乗算積として定義されるため、LSS色素もまたあまり明るくない。別の態様は、標準的なフルオロフォアの40~50 nmのピーク幅がLSS色素について2倍又は3倍になり得ることである。それにもかかわらず、多重化目的のために、LSS色素の優れたスペクトル分離は、低下した輝度及びより大きなピーク幅よりも重要である。
【0053】
COBAS(登録商標)LIAT、複数セグメント細管PCRシステム
本開示はまた、多セグメント細管PCRデバイス、消耗品、並びにそのような装置及び消耗品を使用して試料を処理するための方法を記載する。そのようなシステムの例は、cobas(登録商標)Liat(登録商標)PCR System(Roche Molecular Systems,Pleasanton,CA)である。
【0054】
cobas(登録商標)Liat(登録商標)Systemは、Liat(登録商標)管及びLiat(登録商標)分析器(機器)から構成される。このアッセイは、試料調製物及びリアルタイムPCR試薬を保持し、試料調製及びリアルタイムPCRプロセスを容易にする単回使用の使い捨てLiat(登録商標)管を利用する。Liat(登録商標)管は、試薬使用の順序で、脆弱なシールによって分離されたチューブセグメントに予め充填された全ての必要な単位用量試薬を含む。
【0055】
Liat(登録商標)分析器は、生体試料中の標的配列の試料調製、核酸増幅、検出及び定量を自動化及び統合する。Liat(登録商標)分析器は、臨床試料から全ての分析工程を実行し、分析結果を自動的に報告する。試験プロセス中、分析器の複数の試料処理アクチュエータは、Liat(登録商標)管を圧縮してチューブセグメントから試薬を選択的に放出し、試料をあるセグメントから別のセグメントに移動させ、反応体積、温度及び時間を制御して、試料調製、核酸抽出、標的濃縮、阻害剤除去、核酸溶出及びリアルタイムPCRを行う。埋込式マイクロプロセッサは、これらのアクチュエータの動作を制御及び調整して、閉じたLiat(登録商標)管内で必要な全ての分析プロセスを実行する。アッセイを実行するために、ユーザは試料をLiat(登録商標)管に装填し、装填したLiat(登録商標)管をLiat(登録商標)分析器に入れる。分析器は、試料調製、リアルタイムPCR、結果の計算及び報告を行う。全てのプロセスは、アッセイスクリプトによって制御される。
【0056】
熱サイクリングプロファイルを制御するアッセイスクリプトの一部を以下の表1に示す。この実施形態では、FAM標識からの蛍光読み取り値を、サイクル#6から始まる各サイクルについて58℃及び高温で取得した。当業者は、表1に記載されたパラメータが必要に応じて変更されてもよく、例えば、温度、持続時間、及びサイクル数は全て必要に応じて変更されてもよいことを認識するであろう。
【表1】
【0057】
いくつかの実施形態では、セグメント化された細管は、生物学的試料を受容、保存、処理、及び/又は分析するための便利な容器を提供する。特定の実施形態では、セグメント化された細管は、複数の処理工程を含む試料処理プロトコルを容易にする。特定の実施形態では、試料を試料細管に収集し、次いで細管を分析器に配置することができる。次いで、分析器は、細管及びその内容物を操作して試料を処理することができる。
【0058】
一実施形態では、可撓性細管は、破壊可能なシールによって区画にセグメント化され得る。個々のセグメントは、試料を処理するための様々な試薬及び緩衝液を含み得る。分析器内のクランプ及びアクチュエータは、流体の移動を指示し、破壊可能なシールを破裂させるために、様々な組み合わせで、様々なタイミングで細管に力を加え、保持し、及び/又は解放することができる。破壊可能なシールのこの破裂は、流体の流れに対する障害物が実質的にない内細管表面を作り出すことができる。いくつかの実施形態では、生物学的試料の流れは、処理が進行するにつれて細管の遠位端に向けられてもよく、廃棄物の流れは、試料が最初に入力された細管の開口部に向かって反対方向に移動するように強制されてもよい。この試料入口は、任意に恒久的に、ロック機構を備えたキャップによって密封することができ、廃棄物チャンバは、貯蔵のために廃棄物を受け入れるためにキャップ内に配置することができる。この手法の大きな利点は、処理された試料が、処理されていない試料が触れた表面と接触しないことである。その結果、細管の壁を被覆する可能性がある未処理の試料中に存在する微量の反応阻害剤は、処理された試料を汚染する可能性が低い。
【0059】
いくつかの実施形態では、細管は、複数のセグメントの各々からある量の流体を1つのセグメント内に受け取ることができるように拡張可能であり得る。これにより、試料及び試薬が1つのセグメントにおいて特定の処理工程を経ることが可能になり、アッセイを実行するためのより単純な機械的構造をもたらすことができる。そのように拡張可能であり得る細管を使用する実施形態の別の利点は、同じ細管構造を使用して異なる体積の試薬をセグメント内にパッケージングすることができ、実行されるアッセイに応じて異なる方法で同じ細管をパッケージングできることである。
【0060】
図7A~B及び図8A~Bを参照すると、透明な可撓性細管10は、16、110、120、130、140、150、160、170、180、及び/又は190などの複数のセグメントに構成することができ、圧縮によって実質的に平坦化することができる。一実施形態では、細管は少なくとも2つのセグメントを有し得る。可撓性細管は、約2℃~105℃の間の動作機能性、試料、標的及び試薬との適合性、低いガス透過性、最小蛍光特性、並びに/又は繰り返しの圧縮及び屈曲サイクル中の弾性を提供することができる。細管は、様々な材料で作製されてもよく、その例には、ポリプロピレン若しくはポリエチレンなどのポリオレフィン、ポリウレタン、ポリオレフィンコポリマー及び/又は適切な特性を提供する他の材料が含まれるが、これらに限定されない。透明性、湿潤特性、表面平滑性、表面電荷及び熱弾性などの細管特性は、細管の性能に影響を及ぼし得る。これらの特性は、シーディング、プラズマ処理、添加剤の添加、及び照射などの例示的なプロセスによって改善され得る。いくつかの実施形態では、選択された特性を改善するために、添加材料をプラスチックに添加することができる。例えば、エルカミド及び/又はオレアミドなどのスリップ添加剤を添加してもよい。いくつかの実施形態では、いわゆる「アンチブロック」添加剤を添加してもよい。添加剤は、約0.01%~約5.0%の範囲のプラスチック中の濃度を有し得る。
【0061】
細管は、押出、射出成形及びブロー成形などの多種多様な適切な方法によって製造することができる。一実施形態では、細管は連続的に押し出される。細管を製造するための代替技術には、例えば、二次加工操作によって適切な細管に成形することができるフィルムの鋳造、押出又は吹き込みが含まれる。細管壁材料は、共押出又はフィルムラミネートによって複数の層を含んでもよい。例えば、高い生体適合性のために内層を選択してもよく、低いガス透過性のために外層を選択してもよい。さらなる例として、内部層は、剥離可能なシールなどの破壊可能なシール14(図8A~B)に容易に形成することができ、外部層は、弾性であり、非常に不透過性であり得る。例えば、細管は、約0.03mm~約0.8mm、好ましくは0.03mm~約0.5mmの壁厚を有することができ、細管は、約1気圧の印加された外部圧力で実質的に平坦化することができる。
【0062】
図8Aを参照すると、特定の実施形態では、試料細管10のセグメントは、隣接するセグメントを流体的に隔離するために破壊可能なシール14によって画定される。このシール特徴は、例えば、乾燥試薬を液体試薬から、2つが特定のアッセイを実施するために再構成され得るまで分離する際、又は反応が所望されるまで化学反応性種を分離するために有用であり得る。破壊可能なシール14は、対向する壁が実質的に接合されているが、細管又は以前にシールされた表面を著しく損なうことなく後に壁が剥がれるのを防ぐほど強く接合されていない細管10の領域に形成されてもよい。そのようなシールは、「剥離可能」シールと呼ばれることがある。いくつかの実施形態では、剥離可能なシール領域は、細管の軸に直交するバンドであってもよい。それは、約0.5mm~5mm、又は約1mm~約3mm、最も好ましくは約1mmの範囲の細管長に及び得る。シールは、好ましくは、セグメントをシールするように細管の全幅に及ぶ。いくつかの実施形態では、シールバンドは、高さ又は形状が変化してもよく、及び/又は細管の軸を横切る角度で配向されてもよい。このようなばらつきは、剥離特性を変化させることができる。
【0063】
剥離可能なシールの形態の破壊可能なシール14は、制御された量のエネルギーを剥離可能なシールが望まれる位置の細管に印加することによって、細管の対向する壁の間に形成することができる。例えば、温度制御シーリングヘッドは、特定の時間間隔の間、固定アンビルに対して特定の圧力で細管を押圧することができる。所望のサイズ及び剥離強度のシールを形成するために、温度、圧力及び時間の様々な組み合わせを選択することができる。エネルギーは、例えば、ポリプロピレンチュービング材料を加熱するために105℃~140℃の一定温度に維持された温度制御シーリングヘッド;所望のシール領域にわたって3~100気圧の精密な圧力をもたらすことができるアクチュエータ;及びアクチュエータのシーケンシングを1~30秒の特定のサイクル時間に駆動するための制御システムによって送達されてもよい。この方法を使用して、約1気圧の内圧にさらされたときに剥がれて開く良好なシールがポリプロピレン細管に作り出された。細管にシーリングエネルギーを送達するための代替技術には、RF溶接及び超音波溶接が含まれる。
【0064】
他の実施形態では、代替の細管材料及び材料のブレンドを使用して、剥離可能なシール性能を最適化することができる。例えば、異なる溶融温度の2つのポリプロピレンポリマーを、組成及び溶融特性が剥離可能なシール形成のために最適化されるような比率でブレンドすることができる。図7Bを参照すると、破壊可能なシール14に加えて、又はその代わりに、可撓性細管は、可撓性細管のセグメントに制御された力を加えることによって試験の動作中に可逆的に開閉することができる1つ又は複数の圧力ゲート194をさらに有することができる。
【0065】
フィルタは、細管セグメントに埋め込むことができる。好ましい実施形態では、フィルタは、可撓性フィルタ材料の複数の層を積層することによって形成することができる。試料と直接接触するフィルタの最上層は、濾過のために選択された孔径を有していてもよく;フィルタの底層は、濾過中に圧力が加えられたときに最上層のための支持構造を提供するために、はるかに大きい孔径を有する材料を含んでもよい。この好ましい実施形態では、フィルタは折り畳まれてバッグを形成することができ、その開放端の縁部は細管壁にしっかりと取り付けられている。フィルタバッグを有するセグメントは、細管の外部を圧縮することによって実質的に平坦化することができる。
【0066】
例示的な実施形態では、1つ又は複数の試薬は、乾燥物質として及び/又は液体溶液として細管セグメントに保存することができる。試薬が乾燥フォーマットで保存され得る実施形態では、試薬溶液の再構成を容易にするために、液体溶液を隣接するセグメントに保存することができる。代表的な試薬としては、溶解試薬、溶出緩衝液、洗浄緩衝液、DNase阻害剤、RNase阻害剤、プロテイナーゼ阻害剤、キレート剤、中和試薬、カオトロピック塩溶液、洗剤、界面活性剤、抗凝固剤、発芽液(germinant solution)、イソプロパノール、エタノール溶液、抗体、核酸プローブ、ペプチド核酸プローブ、及びホスホロチオエート核酸プローブ等が挙げられる。試薬の1つがカオトロピック塩溶液である実施形態では、好ましい成分は、グアニジニウムイソシアネート若しくはグアニジニウム塩酸塩、又はそれらの組み合わせである。いくつかの実施形態では、試料が投入される開口部に対して試薬が細管内に貯蔵され得る順序は、管を利用する方法において試薬が使用され得る順序を反映する。いくつかの実施形態では、試薬は、試料の予め選択された成分への特異的な結合が可能な物質を含む。例えば、物質は核酸に特異的に結合し得るか、又は核酸プローブは特定の塩基配列を有する核酸に特異的に結合し得る。
【0067】
他の実施形態では、固相基質は、細管セグメント内に含まれ、標的微生物又は核酸などの試料の1つ又は複数の選択された成分(そのような成分が試料中に存在する場合)を捕捉するために使用することができる。捕捉は、標的成分を濃縮し、反応阻害剤を試料から除去するのに役立ち得る。基質は、規定の化学的条件及び温度条件下で標的細胞、ビリオン、核酸、又は他の選択された成分を捕捉することができ、異なる化学的条件及び温度条件下で成分を放出することができる固相材料であり得る。
【0068】
いくつかの実施形態では、試薬を基質上にコーティングすることができる。コーティング可能な試薬の例は、受容体、リガンド、抗体、抗原、核酸プローブ、ペプチド核酸プローブ、ホスホロチオエート核酸プローブ、バクテリオファージ、シリカ、カオトロピック塩、プロテイナーゼ、DNase阻害剤、RNase阻害剤、DNase阻害剤、RNase阻害剤、及び発芽液である。いくつかの実施形態では、基質は細管の乾燥セグメントに保存することができ、他の実施形態では、液体に浸漬して保存することができる。いくつかの実施形態では、基質及び試料が投入される開口部に対して試薬が細管内に貯蔵され得る順序は、装置を利用する方法において試薬及び基質が使用され得る順序を反映する。
【0069】
基質は、ビーズ、パッド、フィルタ、シート、及び/又は細管壁面の一部又は収集ツールであり得る。基質が複数のビーズである実施形態では、ビーズは、シリカビーズ、磁気ビーズ、シリカ磁気ビーズ、ガラスビーズ、ニトロセルロースコロイドビーズ、及び磁化ニトロセルロースコロイドビーズであり得る。ビーズが常磁性であり得るいくつかの実施形態では、ビーズは磁場によって捕捉され得る。官能基でコーティングされた表面への核酸分子の選択的吸着を可能にし得る試薬の例は、例えば、米国特許第5,705,628号明細書;米国特許第5,898,071号明細書;及び米国特許第6,534,262号明細書に記載されている。分離は、溶液のイオン強度及びポリアルキレングリコール濃度を操作して、核酸を固相表面に選択的に沈殿させ、可逆的に吸着させることによって達成することができる。
【0070】
これらの固相表面が常磁性微粒子である場合、標的核酸分子が吸着された磁性粒子は、核酸を保持するが他の分子を保持しない条件下で洗浄することができる。このプロセスを通して単離される核酸分子は、キャピラリー電気泳動、ヌクレオチドシーケンシング、逆転写、クローニング、トランスフェクション、形質導入、哺乳動物細胞のマイクロインジェクション、遺伝子治療プロトコル、RNAプローブのインビトロ合成、cDNAライブラリー構築及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)増幅に適している。いくつかの会社は、QIAGENのMagAttract(商標)、Cortex BiochemのMagaZorb(商標)、Roche Applied ScienceのMagNA Pure LC(商標)、及びMerck&CoのMagPrep(登録商標)シリカなどの磁気ベースの精製システムを提供している。これらの製品は全て、負に帯電した粒子を使用し、緩衝液条件を操作して、様々な核酸をビーズに選択的に結合させ、ビーズを洗浄し、水性緩衝液中でビーズを溶出させる。これらの会社によって使用される製品の多くは、カオトロピック塩を使用して、磁性ビーズ上への核酸の沈殿を助ける。例は、米国特許第4,427,580号明細書;米国特許第4,483,920号明細書;及び米国特許第5,234,809号明細書に記載されている。
【0071】
いくつかの実施形態では、基質はパッドであってもよい。さらなる実施形態では、基質パッドは、紙、異なる疎水性を有する紙の交互層、ガラス繊維フィルタ、又は所定の孔径を有するポリカーボネートフィルタを含むことができる。いくつかの実施形態では、パッドは、パッドの表面の選択された部分を覆うためのフィルタ又は不透過性シートであってもよく、フィルタは所定の孔径を有する。そのような濾過デバイスは、全血及び/又は他の試料からの白血球及び赤血球(又はウイルス若しくは微生物などの他の粒子)の分離に使用することができる。パッドは、細管壁及び/又は試料収集ツールに取り付けることができる。いくつかの実施形態では、パッドを試薬溶液に浸漬することができるが、他の実施形態では、パッドを乾燥試薬でコーティングすることができる。
【0072】
好ましい例示的な実施形態は、2つ以上の細管セグメント110、120、130、140、150、160、170、180、及び/又は190(図7B)の線形配置を含み得る。線形配置は、試料及び結果として生じる廃棄物及び標的を、制御された方法でチューブを通して移動させることを容易にする。生の生物学的試料は、細管の第1のセグメント110(図7B)の第1の開口部12(図8B)を通して投入することができる。その後、処理された試料からの廃棄物は、標的が反対側の端部に向かって押されている間に第1の開口部に向かって戻されることができ、それにより、細管壁に付着した可能性がある反応阻害剤による標的の汚染を最小限に抑え、標的を、標的のさらなる操作のための適切な試薬を含有することができる細管の清浄なセグメントに限定する。いくつかの実施形態は、各々が少なくとも1つの試薬を含む複数の少なくとも3つのセグメントを使用することができる。いくつかの実施形態では、これらのセグメントは、以下の順序で試薬を含有し得る:第2のセグメント中の試薬は、溶解試薬、希釈若しくは洗浄緩衝液、又は基質のいずれかであり得る。第3セグメントの試薬は、基質、溶解試薬、洗浄緩衝液、又は中和試薬のいずれであり得る。第4のセグメント中の試薬は、洗浄緩衝液、懸濁緩衝液、溶出試薬、又は核酸増幅及び検出試薬であり得る。いくつかの実施形態では、3つのセグメントは連続的に配置されてもよいが、他の実施形態では、これらの3つのセグメントは、破壊可能なシールを介して間にある別の1つ又は複数のセグメントによって分離されてもよい。
【0073】
いくつかの実施形態では、圧力ゲート194(図7B)を組み込んで、細管の遠位端に位置する第2の開口部を選択的に開閉して、試験中に生成された生成物を、さらなる処理のために細管から細管の外側に収集することができる。いくつかの実施形態では、この第2の開口部は、試料処理セグメントからの生成物を貯蔵するために、2つの圧力ゲート194及び196によって画定されたセグメント198内に配置され得る。いくつかの実施形態では、細管の内容物を第2の開口部に移送するために、破壊可能なシールと圧力ゲートとの組み合わせを設けることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、試料投入後にチューブを閉じるためのチューブ閉鎖デバイスは、キャップ20(図7B)及び/又はクランプ310を備えることができる。キャップと可撓性細管の第1の開口との間のインターフェース又はアダプタ52は、確実な気密シールを確保するために使用され得る。例示的な実施形態では、このインターフェースは、ねじ山を付けることができ、キャップ及び/又は適切に剛性のチューブフレーム50上にテーパ状特徴62を含むことができ、それにより、一緒に締結されたときに、ねじ山64が係合してテーパ状特徴62をチューブフレームとキャップとの間に嵌合させて適切なロックを提供することができる。この例示的な実施形態では、キャップは、チューブホルダから完全に取り外し又は取り付けるために1/2~1回転を必要とし得る。接合部のねじ山ピッチとテーパ角の組み合わせは、製造が容易であるとともに、効果的なシールが形成されたことをユーザに知らせるためのフィードバック抵抗を提供するように選択することができる。他の実施形態では、キャップロックデバイスは、キャップとチューブホルダとの間のスナップ嵌め、プレス嵌め、及び/又は他のタイプの「捩じりロック」機構、並びにキャップをヒンジ止め又は係留することなどによってキャップが細管に恒久的に取り付けられる同様の構成を含むことができる。
【0075】
キャップ20及びチューブフレーム50の両方は、ポリプロピレンなどの適切な射出成形プラスチックで作ることができる。次に、チューブフレーム50は、恒久的な気密シールによって可撓性チューブに固定することができる。キャップの外側部分は、その取り扱いを容易にするために隆起部又はフィンガグリップで覆われてもよい。さらに、キャップ20は、試料識別マーク又はラベルを取り付けるための領域を含んでもよい。さらなる代替として、キャップは、気密シールを形成するために、可撓性チューブ開口部をキャップ内の突出部に対して圧縮する圧入又はカラーを介して第1の開口部可撓性チューブに直接取り付けられてもよい。チューブキャップとチューブホルダとの間のロックは、試料処理及び可撓性細管の平坦化を容易にするために、キャップに組み込まれた収集ツール36又は特徴がチューブに対して明確に配向され得るようにキー止め又は案内され得る。さらに、キャップは、可撓性チューブの開口部に取り付けられた後にキャップが取り外されるのを防止するために、ラチェット又は同様の安全機構などの機構を組み込むことができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、細管を閉じるために使用されるキャップ20は、キャップ本体を実質的に中空にすることによって、その中に空洞22を含むことができる。いくつかの実施形態では、中空部分は、キャップ本体の上部からキャップ本体の基部のオリフィスまで延在する。チャンバを形成するために、空洞上部は、カバーをキャップ本体に締結することによって閉じられてもよい。カバーは、キャップ本体と同じ部品で構成されてもよい。カバーは、通気孔26を組み込んでもよく、又は固定された微生物バリア、フィルタ、又は液体若しくは特定の温度にさらされたときに通気孔を閉じるように膨張する材料をさらに組み込んでもよい。チャンバの底部は、破壊可能なセプタム又はバルブによって開放又は閉鎖されたままであってもよい。中空チャンバは、可撓性膜又はセプタム24をさらに組み込んでもよい。この可撓性セプタムは、浸漬成形、液体射出シリコーン成形、ブロー成形、及び/又は薄いエラストマー構造の作成に適した他の方法を使用して製造することができる。可撓性セプタムは、キャップがチューブ上の所定の位置に置かれた後にチューブの内部を外部環境から効果的に隔離するように、キャップ本体空洞22アセンブリに挿入することができる。可撓性セプタムは、外部から加えられる圧力がない場合に、その固有の剛性が好ましい既知の変形状態にあることを保証するように設計することができる。さらなる実施形態として、可撓性セプタムはプランジャに置き換えられてもよい。例示的な実施形態では、高さ約30mm×直径14mmのキャップ本体は、適切な熱可塑性樹脂で射出成形され、少なくとも500uLの利用可能な容積を有する内部空洞を含むことができる。キャップ本体内のチャンバは、試薬の保持又は分注、廃液を保持するためのリザーバとしての機能、一体型収集ツールのための引込み空間としての機能、又はそれらの組み合わせなどの有用な目的に適合させることができる。
【0077】
キャップ20は、液体及び固体試料の収集及び細管へのそれらの挿入を容易にするために、スワブ、毛細管、液体滴下器、接種ループ、シリンジ、吸収パッド、鉗子、スコップ又はスティックなどの一体型収集ツール30(図8B)を有することができる。収集ツールは、所定量の材料を収集してチューブ内に堆積させるように設計されてもよい。試薬は、収集ツール自体に保存されてもよい。例えば、収集ツールは、スワブが水和されたときにスワブから塩を懸濁させて溶液にするように、乾燥塩が含浸されたスワブを含んでもよい。さらに、収集ツール及びキャップは、試料を細管に沈着させた後に収集ツール部分がキャップ本体内に後退して、細管セグメントが実質的に邪魔されないままになるように設計されてもよい。
【0078】
キャップ20内のチャンバ22は、試薬を貯蔵するように形作られてもよい。これを達成するために、例えば、チャンバの基部は、キャップが圧迫されるとセプタムが破壊されて試薬が放出されるように、破壊可能なセプタム又はバルブ(図示せず)によって閉じられてもよい。そのような特徴は、例えば、キャップがスワブ又はスティックなどの収集ツールと一体的に形成されている場合に有用であろう。この場合、キャップチャンバから放出された試薬を使用して、試料を収集ツールからチューブセグメントに洗い流すか、又は収集ツールに収容された試料を溶解することができる。可撓性チューブセグメントを圧縮して流体をチューブからキャップチャンバ内に押し上げることによって生成された圧力を使用して破壊可能なセプタムを開くことによって、試薬をキャップチャンバから放出することもできる。キャップ内のチャンバは、細管内での処理に由来する廃液を貯蔵するように形作られてもよい。別の実施形態では、チャンバの基部は、可撓性細管の第1の開口部に接続されたときに、細管とチャンバとの間に流体通路が形成されるように開いたままであってもよい。流体がキャップチャンバ内に移動すると、内部に収容された可撓性セプタム24は、新しい流体の流入に対応するように初期位置から上方に移動することができる。このセプタムの移動は、キャップ本体カバーに通気孔26を組み込むことによって容易にすることができる。
【0079】
図7Bを参照すると、流体がキャップチャンバ内に移送された後、分析器内のクランプ310又はアクチュエータ312は、細管を圧縮し、細管セグメントからキャップチャンバ容積を効果的に密封するように作用することができる。代替の実施形態として、キャップチャンバは、キャップチャンバからチューブセグメント内に戻る流体の流れを禁止するために圧力ゲート又はチェックバルブ(図示せず)を組み込むことができる。さらなる代替として、収容されたガスの自由な逃避を可能にするが、チューブ内の全ての液体体積及び感染病原体を保持するために、キャップチャンバカバーが微生物バリアを含む状態で、可撓性セプタムを省略することができる。さらなる代替として、可撓性セプタムは、チューブセグメントからキャップチャンバに移送される追加の流体量に対応するために軸方向上方に移動するプランジャと交換することができる。キャップチャンバ内に流体廃棄物を収容する他の方法は、本開示の範囲から逸脱することなく容易に想定することができる。
【0080】
実質的に剛性のフレーム50(図7A)を設けて、少なくとも細管の近位端及び遠位端を拘束することによって、可撓性細管10を適切にピンと張った状態に保持することができる。例示的な実施形態では、チューブの第1の開口部の周りのフレームに細管を恒久的に取り付けてシールするために、第1の拘束を設けることができる。このシールは、熱及び/又は超音波源を使用して可撓性細管をフレームに溶接することによって形成され得る。あるいは、シールは、エチレンビニルアセテートによるホットメルト接着接合部を使用して、又はUV硬化エポキシ若しくは他の接着剤を使用して接合部を作製することによって作製されてもよい。さらなる実施形態では、細管は、機械的にシールされてもよく、又はフレームと共にインサート成形されてもよい。細管をフレームの基部に取り付けて密封するために、第2の拘束が設けられてもよい。この第2の拘束の例示的な実施形態では、細管のこの端部は、平らにシールされ、熱及び/又は超音波溶接技術によって剛性フレームに取り付けられてもよい。あるいは、この接合及びシールは、接着又は機械的手法を使用して形成されてもよい。代替的な実施形態では、第2のシールは、第1のシールと同様であってもよく、第2の開口部から可撓性細管の内容物へのアクセスを可能にするために実質的に開いている。細管及びフレーム材料は、接合製造のために最適化することができる。例えば、フレームは、1つ又は複数の溶接ゾーンにわたってより均一な溶融を確実にするために、より薄い細管よりも低い融点を有するポリプロピレンで作ることができる。細管とフレームとの間の溶接を容易にするために、接合領域は、エネルギーディレクタ又は他の一般的に使用される特徴が溶接性能を高めるように、テーパ状又は他の形状にすることができる。例示的な実施形態では、剛性フレームは、その寸法が約150mmの高さ×25mmの幅である射出成形によって任意の適切なプラスチックで作製することができる。
【0081】
剛性フレーム50は、可撓性細管の圧縮及び平坦化を容易にするためにいくつかの特徴を組み込むことができる。例えば、例示的な実施形態では、可撓性細管10は、その2つの軸方向端部でのみ拘束されて、最大径方向自由度を可能にして、圧縮される際に細管の径方向移動を妨げることを回避してもよい。別の実施形態では、圧縮は、チューブの第1の開口部の近くのフレーム内にレリーフ領域を含めることによって容易にすることができる。このレリーフ領域は、細管セグメント内の実質的に圧縮された形状から第1の開口部での実質的に開いた形状への可撓性細管の移行を容易にするために使用され得る。可撓性細管の圧縮を容易にすることができる剛性フレームの他の有用な特徴は、一体型細管張力付与機構を含むことができる。例示的な実施形態では、この張力機構は、カンチレバー又は板型ばねなどの特徴を剛性フレームに直接成形して、フレームとのその取り付け点の1つでピンと張った状態に細管を引っ張ることによって製造することができる。
【0082】
剛性フレーム50は、チューブの識別、取り扱い、試料の装填、及びチューブキャップとのインターフェースを容易にすることができる。例えば、フレームは、それに貼付されたラベル又は書き込み80を通してチューブを識別するための追加の領域を提供することができる。フレームのプラスチック材料は、装置及びその機能を識別するのを助けるためにキャップ材料で色分けされてもよい。フレームは、厚さの変化又はキーなどの特別な特徴を組み込んで、その向きを受容機器に、又は製造中に案内することができる。フレームは、偶発的な取り扱いによる損傷、光暴露、及び/又は熱暴露から可撓性細管を被覆又は保護するスリーブ90又は包装にインターフェースすることができる。剛性フレームの本体はまた、チューブを保持するための便利な構造を提供することができる。フレームは、装置内への試料収集を容易にするために、デフレクタ又はスコップなどの一体型収集ツール32を有することができる。フレームの試料受容端部はまた、収集された試料を可撓性チューブ内に案内するためにテーパ状又は漏斗状の内面を組み込んでもよい。
【0083】
いくつかの実施形態では、前の段落に記載の装置を使用することによって生体試料から核酸を抽出する方法が企図される。特定の実施形態では、そのような試験における一連の事象は、以下を含み得る:1)生物学的試料を収集ツールを用いて収集することができ、2)収集された試料を、試験中に必要とされる試薬を含み得る複数のセグメントを含むことができる可撓性細管内に、細管内の第1の開口を通して配置することができ、3)少なくとも1つの基質を、設定されたインキュベーション期間中に標的生物又は核酸を捕捉するために制御された温度及び/又は他の条件に設定することができ、4)未処理の試料中の、基質に結合し得ない生物又は分子を、したがって液体を廃棄物リザーバに移送することによって除去することができ、5)廃棄物を廃棄物リザーバに貯蔵することができ、それを細管に対して圧縮されたクランプ及び/又はアクチュエータによって標的から分離することができ、6)細管の別のセグメントから放出された洗浄緩衝液を添加して反応阻害剤を除去することができ、7)別のセグメントからの溶出試薬を添加して、制御された温度でのインキュベーション後に基質に結合した標的を放出することができ、8)核酸を、当業者に周知の技術によって検出され得るか、又は細管の第2の開口部を通して収集され得る。例示的な実施形態では、試料の流れは、試験が進行するにつれて、細管の第1の開口部から遠位端に向かって流れてもよく、一方、廃棄物は、細管の閉じた試料投入開口部に向かって流れてもよく、細管のキャップ内の廃棄物チャンバは、貯蔵のために廃棄物を受け取る。その結果、処理された試料と、処理されていない試料が触れた反応容器の表面との間の望ましくない接触が回避され、それにより、処理されていない試料中に存在し、反応容器の壁を被覆し得る微量の反応阻害剤による反応阻害が防止される。
【0084】
いくつかの実施形態は、細管の長手方向軸を横断し得、試薬、例えば試薬210、221、222、230、240、250、260、270、280及び/又は試薬290を含み得る、複数のセグメント、例えばセグメント16、110、120、130、140、150、160、170、180、及び/又は190に分割された可撓性細管10を有する試験管1(図7A~B);並びに、アクチュエータ312、322、332、342、352、362、372、382、及び/又は392などの複数のアクチュエータと、クランプ310、320、330、340、350、360、370、380、及び/又は390などのクランプと、ブロック、例えば314、344、及び/又は394(簡略化のために他は番号を付けられていない)とを有することができる分析器;の使用を、アクチュエータ及びクランプを対向させて試料を処理するために、組み込むことができる。これらのアクチュエータ、クランプ、及び/又はブロックの様々な組み合わせを使用して、細管を効果的に閉じてクランプし、それによって流体を分離することができる。例示的な実施形態では、アクチュエータ又はブロックの少なくとも1つは、試料処理のために細管セグメントの温度を制御するための熱制御要素を有してもよい。試料処理装置は、セグメントに磁場を印加可能な少なくとも1つの磁場源430をさらに有することができる。試料処理装置は、細管内で起こるか又は完了した反応を監視するために、光度計又はCCDなどの検出デバイス492をさらに有することができる。
【0085】
チューブと分析器の併用は、多くの試料処理操作を可能にすることができる。血液、唾液、血清、土壌、組織生検、便又は他の固体若しくは液体試料などの試料の収集は、キャップ20に組み込まれ得る試料収集ツール30、又はチューブフレーム50上の特徴32を使用することによって達成することができる。適切な量の試料が収集された後、キャップをチューブの第1の開口部に配置してチューブを閉じ、試料を第1のセグメント内に堆積させることができる。この工程に続いて、収集ツールに収容された試料は、キャップの一部を圧縮することによって、キャップ内の別個のチャンバに収容された試薬で洗い落とされるか、又は再懸濁され得る。次いで、チューブをさらなる処理のために分析器に装填することができる。バーコード又はRFタグなどの識別機能は、分析器及び/又はユーザが読み取ることができる形式で試料の識別を指定するためにチューブ上に存在することができる。
【0086】
細管セグメントの破壊可能なシールを開くことは、可撓性細管に圧力を加えて細管壁の結合面を不可逆的に分離することによって達成することができる。アクチュエータを使用して、必要な圧力を加えて流体を含む細管セグメントを圧縮し、破壊可能なシールを開くことができる。セグメントが2つの破壊可能なシールA及びBによって画定される実施形態では、分析器は、シールAを破壊するために圧力がセグメントに加えられている間にシールBが破壊するのを防ぐためにアクチュエータ又はクランプによってシールB領域を物理的に保護することによって、シールAを優先的に破壊することができる。あるいは、シールAは、シールAに隣接するセグメントに正確に圧力を加えることによって優先的に開放されてもよく;その結果、シールAは、隣接するセグメント内に生成された圧力によって最初に開かれ;シールAが破壊された後、2つのセグメント間の圧力は、追加の組み合わされたセグメント容積に実質的に起因して低下し;組み合わされたセグメント内の減圧は、シールBを破壊するには不十分である。この方法は、保護アクチュエータ及び/又はクランプを使用せずに、破壊可能なシールを1度に1つずつ開くために使用することができる。さらなる代替案として、シールAの粘着性は、シールAがシールBよりも低い圧力で破壊することができるように、シールBの粘着性よりも劣っていてもよい。
【0087】
あるセグメントから別のセグメントに流体を移動させるプロセスは、例えば、第1のセグメントの一端のクランプを解放することと、第1のセグメントの他端のクランプを圧縮することと、第2のセグメントのアクチュエータを解放することと、第1のセグメントのアクチュエータを圧縮して液体を第1のセグメントから第2のセグメントに移動させることとを含んでもよい。あるいは、クランプは省略されてもよく、又は第2のセグメント上のアクチュエータを解放した後に開かれてもよい。
【0088】
隣接するセグメントに配置された、少なくとも1つが液体である2つの物質を混合するプロセスは、2つのセグメント間のクランプを解放し、第1のセグメントに収容された液体を、開いた破壊可能なシールを通して第2のセグメントに移動させるか、あるいは、第2のセグメント及び第1のセグメントを圧縮して、セグメント間に液体を流すことによって達成することができる。
【0089】
攪拌は、アクチュエータで細管セグメントを交互に圧縮及び減圧し、一方、アクチュエータに隣接する両方のクランプは細管を圧縮していることによって行うことができる。別の実施形態では、攪拌は、少なくとも2つのセグメントの間で液体を交互に移動させることによって達成することができる。
【0090】
細管セグメントがプロトコルに必要な体積を超える体積を有する液体を含み得る実施形態では、セグメント内の液体の体積を調整するプロセスは、以下によって実行することができる:細管セグメントを圧縮して管壁間のギャップを減少させ、セグメントの体積を所望のレベルに設定し、過剰な液体が、セグメントの端部のクランプ又は隣接するアクチュエータを越えて、隣接するセグメントに流れることを可能にし;クランプ又はアクチュエータで細管セグメントを閉鎖し、セグメント内に調節された体積の液体が残るようにする。
【0091】
気泡を除去するプロセスは、気泡状液体を含むセグメントを撹拌することを含んでもよい。気泡を除去する別のプロセスは、液体を含む第1のセグメントを撹拌し、一方で第2のセグメントを閉じること;第2のセグメントを開放し、液体を第1のセグメントから第2のセグメントに移動させること;第2のセグメントを攪拌し、第2のアクチュエータの位置を調整して、液体-空気界面を第2のセグメントの上端の近く又は上方に移動させ、次いで、第2のセグメントの上端をクランプして、気泡のない完全に液体が注入されたセグメントを形成することを含んでもよい。
【0092】
液体移動プロセスを使用して希釈プロセスを行うことができ、セグメントの一方は希釈剤を含み、他方は希釈される物質を含む。
【0093】
異なる細管セグメント又はサブセグメントに別々に貯蔵された乾燥成分及び液体成分から試薬を再構成するプロセスは、液体成分を含む細管セグメント又はサブセグメントを圧縮して、乾燥試薬セグメントに接続する破壊可能なシールを開くことと、液体を乾燥試薬セグメント又はサブセグメントに移動させることと、混合プロセスを使用して乾燥試薬成分及び液体成分を混合することとを含んでもよい。
【0094】
セグメント中の内容物のインキュベーションは、対応するアクチュエータ及び/又はブロック温度を設定し、セグメントに圧力を加えて、セグメントの細管壁とアクチュエータ及びブロックとの間の十分な表面接触を確実にし、細管セグメントの内容物を周囲のアクチュエータ及び/又はブロック温度と実質的に同じ温度にすることによって達成することができる。インキュベーションは、関与する全てのセグメントの温度が必要に応じて設定される限り、全ての処理条件で行うことができる。
【0095】
インキュベーションのための迅速な温度ランピングは、第1のセグメント内の流体を第1の温度でインキュベートし、第1のセグメントに隣接する第2のセグメントに第2の温度を設定し、第1の温度でのインキュベーションが終了した後、液体を第1のセグメントから第2のセグメントに迅速に移動させ、第2の温度でインキュベートすることによって達成することができる。
【0096】
流路プロセスを通る流れの駆動は、中心に配置されたアクチュエータ、及び存在する場合はその隣接クランプで細管を圧縮して、セグメントを通る約1~約500μm、好ましくは約5~約500μmのギャップを有する薄層流路を形成することによって実行することができる。隣接するアクチュエータは、流路と液体連通する隣接するセグメント上で緩やかに圧縮して、オフセットされた内圧を生成し、薄層流路の実質的に均一なギャップを確保する。次いで、2つの隣接するアクチュエータを、それぞれのセグメントで細管の圧力を交互に圧縮及び解放して、制御された流量で流れを生成することができる。任意の流れ、圧力、及び/又は力センサを組み込んで、流れ挙動の閉ループ制御を可能にすることができる。流路プロセスは、洗浄、基質結合効率の向上、及び検出に使用することができる。
【0097】
磁気ビーズ固定化及び再懸濁プロセスを使用して、試料液体からビーズを分離することができる。磁気源430(図7B)によって生成された磁場は、磁気ビーズ懸濁液230を含むセグメント130に印加され、ビーズを捕捉して管壁に固定することができる。捕捉プロセス中に撹拌プロセスを使用することができる。別の実施形態では、磁場が印加されたセグメント上に流路を形成することができ、捕捉効率を高めるために磁気ビーズを流動下で捕捉することができる。固定化されたビーズを再懸濁するために、磁場をオフ又は除去することができ、撹拌又は流路プロセスを再懸濁に使用することができる。
【0098】
残留デブリ及び反応抑制剤を基質から除去するための洗浄プロセスは、以下の3つの基本的な工程を使用して実施することができる。第1に、アクチュエータは、固定化ビーズ又はシートなどの基質を含むセグメントを圧縮して、このセグメントから液体を実質的に除去することができる。第2に、乾燥成分及び液体成分から試薬を再構成するプロセスと同様のプロセスを使用して、洗浄緩衝液をセグメントに移動させることができる。ビーズベースの基質の場合、ビーズ再懸濁プロセスを使用し、続いて細管壁でビーズを再捕捉することができる。第3に、混合又は撹拌プロセスの後、アクチュエータは、セグメントを圧縮して、セグメントから使用済み洗浄液を除去することができる。別の実施形態では、固定化ビーズ又はシートのいずれかであり得る基質を含むセグメントに流路を形成することができる。層流特性を有する一方向流洗浄が、基質を有する流路を通して生成される。最後に、全てのアクチュエータ及びクランプ(存在する場合)を閉じて、セグメントから実質的に全ての液体を除去することができる。さらなる実施形態では、希釈に基づく洗浄と層流に基づく洗浄との組み合わせを使用して、洗浄効率をさらに高めることができる。
【0099】
溶解は、試料を設定温度で加熱することによって、又は熱及び化学薬剤の組み合わせを使用して、開放細胞膜、細胞壁又はコーティングされていないウイルス粒子を破壊することによって達成することができる。別の実施形態では、溶解は、プロテイナーゼKなどの化学試薬及びカオトロピック塩溶液を使用して達成することができる。化学試薬は、1つ又は複数の細管セグメントに保存し、上に開示されたプロセスを使用して試料と組み合わせることができる。いくつかの実施形態では、化学細胞溶解、機械的粉砕及び加熱などの複数のプロセスを組み合わせて、固体試料、例えば生検から採取した組織を分解して性能を最大化することができる。
【0100】
標的微生物の捕捉は、基質を使用することによって達成することができる。一実施形態では、プローブ又は標的生物に相補的な特定の核酸標的配列を捕捉するために、基質の表面を、抗原に対する抗体、リガンド又は受容体、標的生物(ASA)の表面上の受容体又はリガンド、核酸(NA)、ペプチド核酸(PNA)及びホスホロチオエート(PT)核酸プローブなどの少なくとも1つの結合試薬でコーティングすることができる。別の実施形態では、表面は、実質的に核酸のみを可逆的に捕捉するために、シリカ又はイオン交換樹脂でコーティングされた表面などの静電的に帯電した(EC)表面を有するか、又は形成するようにコーティングされるように選択されてもよい。いくつかの実施形態では、基質は、乾燥形態で細管セグメント又はサブセグメントに予め充填されてもよく、液体結合緩衝液が別のセグメントに充填されてもよい。基質及び緩衝液は、上述のプロセスを使用することによって再構成することができる。
【0101】
いくつかの実施形態では、隣接セグメントからの試薬を使用して、基質とのインキュベーションの前に試料を希釈することができる。いくつかの実施形態では、微生物を溶解する前に標的生物を基質に捕捉することができる。一方、他の実施形態では、標的捕捉工程の前に溶解工程を実施することができる。好ましい実施形態では、撹拌下での基質のインキュベーションは、所望の温度で、例えば、生菌捕捉のために4℃で、又はウイルス捕捉のために室温で行うことができる。捕捉の後に洗浄プロセスを行って、細管セグメントから試料の残留物及び望ましくない成分を除去することができる。
【0102】
いくつかの実施形態では、標的を捕捉するための基質として磁気ビーズを使用することができ、磁気ビーズ固定化及び再懸濁プロセスを使用して試料液体からビーズを分離することができる。基質がパッド又はシートであり得る他の実施形態では、基質は、収集ツールに組み込まれてもよく、及び/又はセグメント内の細管壁に接着されてもよい。
【0103】
溶出は、高温で細管セグメント中の溶液中で基質を加熱及び/又はインキュベートすることによって達成することができる。溶出のための好ましい温度は50℃~95℃である。別の実施形態では、溶出は、基質が懸濁又は包埋される溶液のpHを変化させることによって達成され得る。例えば、例示的な実施形態では、洗浄液のpHは4~5.5であり得、溶出緩衝液のpHは8~9であり得る。
【0104】
胞子発芽プロセスは、細菌胞子を含有する試料を発芽溶液と混合し、混合物を適切な条件でインキュベートすることによって行うことができる。発芽液は、L-アラニン、イノシン、L-フェニルアラニン及び/又はL-プロリンの少なくとも1つ、並びに胞子から放出された前栄養細胞の部分的増殖を可能にするいくつかの豊富な増殖培地を含有し得る。発芽のための好ましいインキュベーション温度は、20℃~37℃の範囲である。基質を抗胞子抗体でコーティングすることによって、生胞子及び/又は死胞子の両方を含有する試料から栄養細胞を選択的に濃縮することができる。生胞子は、基質から複数の栄養細胞を放出することができ、これをさらに処理して、細菌種に特徴的な核酸配列を検出することができる。いくつかの実施形態では、発芽液はパッドに吸収され得る。
【0105】
特定の実施形態では、生物学的試料から抽出された核酸は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ローリングサークル増幅(RCA)、リガーゼ連鎖反応(LCR)、転写増幅法(TMA)、核酸配列に基づく増幅(NASBA)、及び鎖置換増幅反応(SDA)からなる群からの少なくとも1つの方法を使用して核酸を増幅することによってさらに処理され得る。いくつかの実施形態では、生物から抽出される核酸はリボ核酸(RNA)であり得、それらの処理は、TthポリメラーゼとTaqポリメラーゼ又は逆転写酵素とTaqポリメラーゼなどの酵素の組み合わせを使用する共役逆転写及びポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)を含み得る。いくつかの実施形態では、ニックを入れた環状核酸プローブを、T4 DNAリガーゼ又はAmpligase(商標)及びガイド核酸、例えばDNA又はRNA標的を用いて環状化し、その後、インビトロ選択プロセス後に閉じた環状化プローブの形成を検出することができる。そのような検出は、当業者に公知の酵素を使用したPCR、TMA、RCA、LCR、NASBA又はSDARによるものであり得る。例示的な実施形態では、核酸増幅中の蛍光の増加を検出するために、蛍光標識核酸プローブ又はDNAインターカレート色素、並びに分子分析器内の光度計又は電荷結合素子を使用することによって、核酸の増幅をリアルタイムで検出することができる。これらの蛍光標識プローブは、当業者に周知の検出スキーム(すなわち、TaqMan(商標)、分子ビーコン(商標)、蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)プローブ、Scorpon(商標)プローブ)を使用し、一般に、特定の核酸の合成又は存在を検出するために蛍光クエンチング並びに一方のレポーターから他方のレポーターへのクエンチング又は蛍光エネルギー移動の放出を使用する。
【0106】
細管セグメントからのシグナルのリアルタイム検出は、ブロック490などのブロックに接続された光度計、分光計、CCDなどのセンサ492(図7B)を使用することによって達成することができる。例示的な実施形態では、アクチュエータ392によって細管セグメント190に圧力を加えて、細管セグメントの形状を適切に画定することができる。シグナルのフォーマットは、蛍光、スペクトル、及び/又は画像(細胞の画像又は量子ドット等の人工要素等)等の特定の波長における光の強度とすることができる。蛍光検出のため、光学系からの光の励起を使用して反応を照らすことができ、発光を光度計によって検出することができる。特定の波長を有する複数のシグナルを検出するために、専用の検出チャネル又は分光計によって異なる波長シグナルを直列又は並列に検出することができる。
【0107】
開示されたデバイス及び方法は、医学、農業及び環境監視の実施、並びに多くの他の生物学的試料試験用途に広く適用することができる。外科医によって除去された腫瘍を取り囲む組織生検試料から単離された核酸を使用して、前癌性組織を検出することができる。これらの用途では、腫瘍抑制遺伝子及び癌原遺伝子におけるホットスポット突然変異を、当業者に周知の遺伝子型決定技術を用いて検出することができる。前癌性組織は多くの場合、核酸源として全血を使用して、生検試料を用いた遺伝子型判定試験の結果を患者の遺伝子型と比較することによって容易に同定することができる体細胞突然変異を有する。当業者に周知の遺伝子タイピング技術を使用して、白血球から単離された核酸を使用して、遺伝的変異体及び生殖系列突然変異を検出することができる。そのような突然変異の例は、American College of Medical Genetics及びAmerican College of Obstetricians and Gynecologistsによる出生前診断のために推奨されるCFTR遺伝子のおよそ25の既知の変異体である。遺伝的変異体の例は、抗マラリア薬プリマキンなどの治療薬に対する感受性に影響を及ぼすグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼの高頻度対立遺伝子である。
【0108】
臨床的関連性を有する遺伝的変異の別の例は、V因子Leiden対立遺伝子などの病的症状のリスク増加及び静脈血栓症のリスク増加に関する対立遺伝子である。細菌から単離された核酸を使用して遺伝子コード配列を検出し、細菌株の病原性を評価することができる。そのような遺伝子の例は、Bacillus anthracisのPXO1プラスミド上のLethal Factor、Protective Antigen A及びEdema因子遺伝子並びにB.anthracisのPXO2プラスミド上のCapsular抗原A、B及びCである。これらの配列の存在は、研究者がB.anthracisと無害な土壌細菌とを区別することを可能にする。RNAウイルスから単離された核酸を使用して、遺伝子コード配列を検出してウイルスの有無を検出するか、又は感染個体の治療的処置を導くためにウイルスを定量することができる。
【0109】
そのようなアッセイの特に有意な有用性は、抗レトロウイルス療法を導くためのヒト免疫不全ウイルス(HIV)の検出である。DNAウイルスから単離された核酸は、血液由来製品の製造に使用する前に、血液中のウイルスの有無を検出するための遺伝子コード配列を検出するために使用することができる。血液試料のプールにおけるB型肝炎ウイルスの検出は、当業者にとってこの有用性の周知の例である。すり身牛肉中のベロ毒素大腸菌の存在は、装置の潜在的な農業用途の良い例である。表面上のノーウォークウイルスの検出は、公衆衛生環境監視用途の一例である。
【0110】
いくつかの実施形態は、デバイスの長手方向軸を横断し得、試薬、例えば試薬210、221、222、230、240、250、260、270、280及び/又は試薬290を含み得る、複数のセグメント、例えばセグメント16、110、120、130、140、150、160、170、180、及び/又は190に分割された可撓性デバイス10を有する試験管1;並びに、アクチュエータ312、322、332、342、352、362、372、382、及び/又は392などの複数の圧縮部材と、クランプ310、320、330、340、350、360、370、380、及び/又は390などのクランプと、ブロック、例えば314、344、及び/又は394(簡略化のために他は番号を付けられていない)とを有することができる分析器;の使用を、アクチュエータ及びクランプを対向させて試料を処理するために、組み込むことができる。これらのアクチュエータ、クランプ、及び/又はブロックの様々な組み合わせを使用して、デバイスを効果的に閉じてクランプし、それによって流体を分離することができる。例示的な実施形態では、アクチュエータ又はブロックの少なくとも1つは、試料処理のためにデバイスセグメントの温度を制御するための熱制御要素を有してもよい。試料処理装置は、セグメントに磁場を印加可能な少なくとも1つの磁場源430をさらに有することができる。試料処理装置は、デバイス内で起こるか又は完了した反応を監視するために、光度計又はCCDなどの検出デバイス492をさらに有することができる。
【0111】
流体は、中央に配置されたアクチュエータ、及び存在する場合はその隣接クランプでデバイスを圧縮することによって流路を通って駆動され、各セグメントを通る約1~約500μm、好ましくは約5~約500μmのギャップを有する流路を形成することができる。隣接するアクチュエータは、流路と液体連通する隣接するセグメントを緩やかに圧縮して、オフセットされた内圧を生成し、流路の実質的に均一なギャップを確保する。次いで、2つの隣接するアクチュエータを、それぞれのセグメントでデバイスの圧力を交互に圧縮及び解放して、制御された流量で流れを生成することができる。任意の流れ、圧力、及び/又は力センサを組み込んで、流れ挙動の閉ループ制御を可能にすることができる。流路プロセスは、洗浄、基質結合効率の向上、及び検出に使用することができる。
【0112】
粒子の固定化及び再懸濁プロセスを使用して、試料液体から粒子を分離することができる。磁気源によって生成された磁場は、磁気粒子懸濁液を含むセグメントに印加され、粒子を捕捉して管壁に固定することができる。捕捉プロセス中に撹拌プロセスを使用することができる。別の実施形態では、磁場が印加されたセグメント内に流路を形成することができ、捕捉効率を高めるために磁気粒子を流れに捕捉することができる。固定化された粒子を再懸濁するために、磁場をオフ又は除去することができ、撹拌又は流路プロセスを再懸濁に使用することができる。
【0113】
本発明の実施形態を、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を限定するものではない以下の実施例でさらに説明する。
【実施例
【0114】
実施例1:大ストークスシフト蛍光色素
LSS色素を用いてPCRを多重化する概念は、cobas(登録商標)Liat(登録商標)システムのための性行為感染症用パネル(STI)を開発することによって実証された。2つの蛍光発生PCRプローブ(TaqManプローブ)を市販のLSS色素;Dy396XL「Mega-Stokes」色素(Dyomics,GmbH,Jena,Germany)及びChromeo 494色素(Active Motif,Carlsbad,CA,U.S.A.)から調製した。図2は、4つの標準的な蛍光色素及びDy396XL(392nm/572nm)の励起及び発光スペクトルをまとめたものであり、UVチャネルで励起され、緑色チャネルで読み出しが行われる。同様に、図3は、Chromeo 494色素(494nm/628nm)を用いた同様の設定をまとめたものであり、青色チャネルからの光で励起され、琥珀色及び/又は赤色チャネルで読み出しが行われる。
【0115】
実施例2:Cobas(登録商標)LiatシステムでLSS色素を用いたマルチプレックスPCR
LSS色素(Dy395XL及びChromeo494)の導入により、cobas(登録商標)Liat(登録商標)システムの多重化レベルは、4つの検出チャネル(bb,gg,aa,rr)から6つの検出チャネル(ug及びbrが追加)に増加した。表2は、6チャネルcobas(登録商標)Liat(登録商標)CT/NG/TV/MG試験の例を提供する。LSS色素Dy395XL及びChromeo494を使用して、MGプローブ及びNGプローブをそれぞれ標識した。図4は、cobas(登録商標)Liat(登録商標)CT/NG/TV/MG試験における6つのTaqManプローブのリアルタイムPCR成長曲線をまとめたものである。
【表2】
【0116】
6チャンネルcobas(登録商標)Liat(登録商標)CT/NG/TV/MG試験では、4つの従来のチャンネル(FAM、HEX、CFR610、Quasar670)をug及びbrチャンネル(それぞれDy395XL及びChromeo494)と組み合わせることの実現可能性が実証された(表3)。クロストーク補正後、対応する標的なしではシグナルが観察されなかった。
【表3】
【0117】
実施例3:Dy395XLとDy396XLの比較
LSS色素のさらなる機能性及び製造性評価は、Dy395XLの蛍光強度がかなり弱い(ε=20,600M-1cm-1)であり、DNAとのカップリングは、水混和性有機溶媒への並外れた低い溶解度及び問題のある精製のためにスケールアップできないことを示した。より高い吸光係数(ε=26,600M-1cm-1)を有するDy395XL類似体であるDy396XLは、DNAとのカップリングの実現可能な製造可能性を示した。図5~6は、各々がDy395XL又はDy396XLのいずれかでそれぞれ標識された2つのMGプローブの性能比較を示す。MG-Dy396XLプローブのベースラインは、MG-Dy395XLプローブのベースラインよりも1.5~2.5倍高かった。統計分析は、MG-Dy396XLプローブの性能が、MG-Dy395XLプローブよりもCt及び振幅の点で優れていること(より早いCt及びより高い振幅)を示した。MG-Dy396XLプローブのより高いKexp値(指数期の傾き)もまた、MG-Dy396XLプローブについてよりロバストな成長曲線を示唆した。
【0118】
実施例4:LightCycler(登録商標)480分析器でLSS色素及びTAGS技術を用いたマルチプレックスPCRの実験セットアップ
以下の実施例は、LSS色素による拡張光多重化の概念を他の多重化方法と組み合わせることができることを示している。TAGS(Temperature assisted generation of signal)技術を用いたPCRは、異なる温度で蛍光を測定することによって同じ光チャネル内の複数の標的の識別を可能にするDNAプローブアーキテクチャに基づく(米国特許出願公開第2018/0073064号に開示され、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。LSS色素の蛍光シグナル強度が100℃までの温度で安定なままであるという条件で、TAGSに基づく熱多重化を光多重化と組み合わせることができる。
【0119】
3つの熱チャネル(TC)を有するTAGS技術モデルシステムを用いたマルチプレックスPCRが、より高次の多重化を実証するために構築されている。TC1については、5’-フルオロフォア及び内部BHQ-2クエンチャーを含有する標準的なTaqManプローブを使用し、TC2及びTC3はタグ付きTAGSプローブを使用した。タグ付きプローブは、5’-BHQ-2蛍光クエンチャーを有する標的特異的DNA配列と、それぞれの熱及び光チャネルに特異的な共有結合した「Rタグ」配列とから構成された。Rタグ配列は、蛍光色素を担持し、第2の3’-BHQ-2蛍光クエンチャー(クエンチングオリゴヌクレオチド、「Qタグ」)を担持する別の相補的L-DNA鎖に対して規定された融点を有する非天然L-DNAで作製された。TC2及びTC3に対するタグ付きプローブは、L-DNA断片の長さのみが異なる。
【0120】
LSS色素を含有する通常のTaqManプローブ及びタグ付きTAGSプローブは、固相DNA合成中にアミノ修飾を導入し、色素のin situ活性化カルボン酸で合成後標識することによって調製した(米国特許出願公開第2020/0017895号に開示されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。オリゴヌクレオチドを、酢酸トリエチルアンモニウム緩衝液及びアセトニトリルを使用する逆相クロマトグラフィで精製した。最終タグ付きプローブをポリアクリルアミドゲル電気泳動によって精製した。
【0121】
TAGS技術との適合性を実証するために、熱安定性蛍光を有する2つのLSS色素;市販のATTO 490LS色素(ATTO-TEC GmbH,Siegen,Germany)及びRLSと呼ばれる別の専売色素が選択されている。LightCycler(登録商標)及びcobas(登録商標)x800システムでは、ATTO 490LS(496nm/661nm)をFAM励起チャネル(495nm)で励起することができ、読み出しはLCR発光チャネルで行われる(645nm)。RLS色素(468nm/553nm)は、COU励起チャネル(435nm)からの光で励起することができ、HEX発光チャネル(580nm)で読み出しが行われる。5色LightCycler(登録商標)480及びcobas(登録商標)x800分析器上の5つの標準色素(COU、FAM、HEX、LCR、Cy5.5)及び2つのLSS色素チャネル(ATTO 490LS及びRLS)の光チャネル割り当てマトリックスを図9に示す。ATTO 490LS及びRLS色素と組み合わせた5つの標準蛍光色素の励起及び発光スペクトルの概要をそれぞれ図10及び図11に示す。
【0122】
実施例5:Atto490LS色素及びTAGS技術を用いたマルチプレックスPCR
この実施例では、LSS光チャネルにおける熱多重化及び検出を伴うPCR反応を行った。分枝プローブを、クエンチングオリゴヌクレオチドと1:20のモル比でインキュベートした。混合物を、典型的には、60mMのトリシン、120mMの酢酸カリウム、5.4%のDMSO、0.027%のアジ化ナトリウム、3%のグリセロール、0.02%のTween(登録商標) 20、43.9μMのEDTA、0.2U/μLのUNG、400μLのdATP、400μMのCTP、400μMのdGTP、800μMのdUTP、3.3mMの酢酸マンガン、0.9UのZ05酵素、800nMのQタグ、400nMの各プライマー、及び40nMの分岐プローブを含む50μLの反応液でサイクルした。典型的なPCR増幅反応に類似するサイクル条件を以下の表4に示す。
【表4】
【0123】
図12は、3つの熱チャネルにわたるATTO490LSチャネルにおけるリアルタイムPCR成長曲線を示す。データは、LightCycler(登録商標)480分析器で生成した。TC1は、ATTO 490LS色素及び58℃での蛍光読み取り値を有する標準的なTaqManプローブに基づく。TC2及びTC3は、それぞれ80℃及び91℃で蛍光読み取り値を生成するATTO 490LS色素によるタグ付きTAGSプローブ設計に基づく。3つの熱チャネルにわたる全ての可能な標的の組み合わせを、8つの個々のPCR反応(試料A~H)で試験した。陽性PCRシグナルが予想される各熱チャネルの成長曲線にアスタリスクを付けた。予想通り、標的が存在する場合にのみシグナルが得られた。対応する標的なしではシグナルが観察されなかった。より高い熱チャネルでは、標的が存在しない場合のわずかな正又は負の傾きは、蛍光色素の最適化されていない熱クロストーク補正によって引き起こされた。標的の濃度は1000cp/反応であった。
【0124】
実施例6:RLS色素及びTAGS技術を用いたマルチプレックスPCR
蛍光検出を、RLSと呼ばれる独自のLSS色素を使用して異なるLSSチャネルで行ったことを除いて、実施例5に記載したものと同様の実験を行った。以前のように、標的が存在する場合にのみシグナルが得られた。特に、ATTO 490LS及びRLSは、2つの別々のLSSチャネルを占有する。標準的な光チャネルとLSS色素チャネルとの間のクロストークは無視でき、ATTO 490LSとRLSを同時に使用できることを示している。図13は、対応するリアルタイムPCR成長曲線を示す。
【0125】
結論:
上記の実施例は、LSS色素の導入により、LightCyler(登録商標)及びcobas(登録商標)x800システムでの多重化レベルを、5つの従来の検出チャネル(COU、FAM、HEX、LCR、Cy5.5)から少なくとも7つの検出チャネル(ATTO 490LS及びRLSを追加)に増加させることができることを実証している。本明細書で実証されるように、LSS色素による多重化と3つの温度チャネルによるTAGS多重化とを組み合わせることにより、21個の個々の標的の検出が可能になる。
【0126】
原理的には、色素の蛍光特性が機器の光学フィルタと一致する場合、より高次の光学多重化は、任意の蛍光ベースのPCRプラットフォームと互換性がある。このようにして、機器ハードウェアの変更は必要とされない。2つの異なるPCRシステム、cobas(登録商標)Liat及びLightCycler(登録商標)480(これはcobas(登録商標)x800システムに直接移行可能である)に前記概念を首尾よく適用することによって、光多重化技術のプラットフォーム独立性も示された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
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図11
図12
図13
【国際調査報告】