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特表2024-500174増加した免疫原性を有する改変パラポックスウイルス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】増加した免疫原性を有する改変パラポックスウイルス
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/863 20060101AFI20231222BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20231222BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 39/275 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231222BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231222BHJP
   C12N 15/39 20060101ALN20231222BHJP
   C12N 15/50 20060101ALN20231222BHJP
   C12N 15/44 20060101ALN20231222BHJP
   C12N 15/47 20060101ALN20231222BHJP
   C12N 15/33 20060101ALN20231222BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20231222BHJP
   C12N 15/19 20060101ALN20231222BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20231222BHJP
【FI】
C12N15/863 Z ZNA
C12N7/01
C12N5/10
A61K39/275
A61K35/76
A61P37/04
A61K48/00
A61K31/7088
C12N15/39
C12N15/50
C12N15/44
C12N15/47
C12N15/33
C12N15/31
C12N15/19
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538102
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2021085775
(87)【国際公開番号】W WO2022136034
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20216201.2
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523057910
【氏名又は名称】プライム ベクター テクノロジーズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】アマン,ラルフ
(72)【発明者】
【氏名】サロモン,フェルディナンド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C086
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AA95X
4B065AA95Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA45
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB09
4C085AA03
4C085DD62
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB09
4C087AA01
4C087AA02
4C087CA12
4C087CA20
4C087NA14
4C087ZB09
(57)【要約】
本発明は、増加した免疫原性を有する、改変パラポックスウイルス、好ましくはパラポックスウイルスベクター、前記改変パラポックスウイルスを含む生物学的細胞、前記改変パラポックスウイルスベクターおよび/または前記細胞を含む、医薬組成物、好ましくはワクチン、ならびに前記改変パラポックスウイルスの新規使用に関する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
「アンキリンリピート1」(ANK-1)をコードするウイルスオープンリーディングフレーム(ORF)中に少なくとも1つの機能的変異を含む改変パラポックスウイルスであって、前記ウイルスは、前記機能的変異を有さない同一のベクターと比較して増加した免疫原性を含む、改変パラポックスウイルス。
【請求項2】
前記機能的変異は、非変異ANK-1よりもANK-1の活性の低下をもたらす、請求項1に記載の改変パラポックスウイルス。
【請求項3】
パラポックスウイルスベクターである、請求項1または2に記載の改変パラポックスウイルス。
【請求項4】
前記パラポックスウイルスはParapoxvirus ovis(Orfウイルス、ORFV)であるか、または前記パラポックスウイルスベクターはORFVベクターである、先行する請求項のいずれか一項に記載の改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクター。
【請求項5】
前記ORFVは、D1701株、好ましくはD1701-V株のものである、請求項4に記載の改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクター。
【請求項6】
前記ANK-1は、ウイルスオープンリーディングフレーム126(ORF126)によってコードされ、好ましくは、前記ORFは、ヌクレオチド位置nt22.055±100~nt23.546±100に位置している、先行する請求項のいずれか一項に記載の改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクター。
【請求項7】
以下をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクター:
(1)導入遺伝子をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、および
(2)前記導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列の発現を制御する少なくとも1つのプロモーター。
【請求項8】
前記導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列は、前記ANK-1をコードするウイルスORFに挿入されており、または/および、前記ANK-1をコードするウイルスORFは、前記導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列によって置き換えられている、請求項6に記載の改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルス。
【請求項9】
導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列を2つ以上含み、好ましくは導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列の数は、2、3、4、またはそれ以上からなる群から選択される、請求項6~8のいずれか一項に記載のパラポックスウイルスベクター。
【請求項10】
前記プロモーターは、初期ORFVプロモーターである、請求項6~9のいずれか一項に記載の改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクター。
【請求項11】
前記初期ORFVプロモーターは、配列番号1(eP1)、配列番号2(eP2)、配列番号3(「最適化された初期」)、配列番号4(7.5kDaプロモーター)、および配列番号5(VEGF)からなる群から選択されるヌクレオチド配列を含む、請求項10に記載の改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクター。
【請求項12】
前記導入遺伝子は、以下の抗原の群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクター:
-ウイルス抗原、好ましくは、
スパイク(S)、エンベロープ(E)、およびヌクレオカプシド(N)タンパク質を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)抗原;
糖タンパク質(RabG)を含む、狂犬病ウイルス抗原;
核タンパク質(NP)、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)を含む、A型インフルエンザ抗原;
-腫瘍抗原、好ましくはHPV選択的ウイルス腫瘍抗原を含む、ウイルス腫瘍抗原;
-HPV選択的ウイルス腫瘍関連抗原を含む、ウイルス腫瘍関連抗原を含む、腫瘍関連抗原;
-寄生虫抗原、好ましくはマラリア原虫抗原;
-サイトカイン;
-哺乳動物、好ましくは哺乳動物レシピエントに由来する(originated)か、または由来する(derived)、タンパク質。
【請求項13】
先行する請求項のいずれか一項に記載の改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターを含む、生物学的細胞、好ましくは哺乳動物細胞、さらに好ましくはVero細胞、HEK293細胞、または抗原提示細胞。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の改変パラポックスウイルスもしくはパラポックスウイルスベクター、または/および、請求項13に記載の細胞と、薬学的に許容可能な担体とを含む、医薬組成物、好ましくはワクチン。
【請求項15】
生物、好ましくは哺乳動物またはヒトにおける免疫応答の誘導のための、ANK-1をコードするウイルスオープンリーディングフレーム(ORF)中に少なくとも1つの機能的変異を含む改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターの、使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、増加した免疫原性を有する、改変パラポックスウイルス、好ましくはパラポックスウイルスベクター、前記改変パラポックスウイルスを含む生物学的細胞、前記改変パラポックスウイルスベクターおよび/または前記細胞を含む、医薬組成物、好ましくはワクチン、ならびに前記改変パラポックスウイルスの新規使用に関する。
【0002】
改変ウイルス、例えばウイルスベクターは、バイオサイエンス、医学およびプロセス工学において複数の用途を有する。例えば、ウイルスベクターベースのワクチンは、任意の種類の抗原ペプチドに対する細胞性および体液性の免疫応答を引き起こすことが期待されている。ポックスウイルス科のパラポックスウイルス属において、Parapoxvirus ovis(Orfウイルス;ORFV)D1701-V株は、ベクタープラットフォーム技術の開発に特に好ましい様々な特性を含み、様々なワクチン接種アプローチを促進することが示された。
【0003】
しかしながら、改変ウイルスまたはウイルスベクターの技術分野において見出すことができる1つの問題は、低い免疫原性である。低い免疫原性は、ウイルスベクターベースのワクチンの有効性を低下させる。この問題に対処するための現在の戦略は、ワクチンの免疫応答を改善する薬理学的または免疫学的薬剤と併せて、免疫調節エレメントの実施またはウイルスベクターの製剤化を使用する。しかしながら、これらのアプローチは、完全には成功していない。いくつかのウイルスベクターは、パッケージング能力が限られており、免疫調節エレメントの発現は、ウイルスを操作不能にすることが非常に多い。さらに、アジュバントは、ワクチン接種された生物に対してしばしば毒性であり、そのため、ウイルスベクターベースのワクチン接種は、副作用を伴うことが多い。
【0004】
この背景に対して、当技術分野で知られている問題が低減されるか、または回避さえされる、ウイルスベクターベースのワクチンおよび他の適用の有効な製造のために使用することができる、新規の改変ウイルス、特にウイルスベクターを提供することが当技術分野で必要とされている。
【0005】
したがって、本発明の根底にある目的は、免疫調節エレメントの包含またはアジュバントを有するベクターの製剤化を必要としない、増加した免疫原性を特徴とする、そのような改変ウイルスまたはウイルスベクターをそれぞれ提供することである。
【0006】
本発明は、「アンキリンリピート1」(ANK-1)をコードするウイルスオープンリーディングフレーム(ORF)中に少なくとも1つの機能的変異を含む、改変パラポックスウイルス、好ましくはパラポックスウイルスベクターであって、前記ベクターは、前記機能的変異を有さない同一のベクターと比較して増加した免疫原性を含む、改変パラポックスウイルス、好ましくはパラポックスウイルスベクターを提供することによって、これらおよび他のニーズを満たす。
【0007】
本発明によれば、「パラポックスウイルス」は、ポックスウイルス科およびコルドポックスウイルス亜科のウイルスの属である。ポックスウイルス科の全てのメンバーと同様に、それらは、楕円形の比較的大きな二本鎖DNAウイルスである。パラポックスウイルスは、それらを他のポックスウイルスと区別する特有の螺旋コートを有する。パラポックスウイルスは、哺乳動物の広い選択を含む脊椎動物、およびヒトに感染する。本発明によれば、全ての種類のパラポックスウイルスが適しているが、Orfウイルスが好ましい。
【0008】
本発明によれば、「改変」パラポックスウイルスは、野生型のカウンターパートに対して技術的に改変されたパラポックスウイルス由来ウイルスを指す。
【0009】
本発明によれば、「パラポックスウイルスベクター」は、パラポックスウイルスゲノムベースであるか、またはパラポックスウイルスゲノムからなり、生物学的細胞、好ましくは哺乳動物細胞およびヒト細胞のトランスフェクションのために形成され、さらに好ましくは生物学的細胞における(への)導入遺伝子または外来遺伝子の輸送および/または発現のためにも形成された、ベクターまたはプラスミドを指す。
【0010】
本発明によると、「アンキリンリピート1」(ANK-1)は、ループによって分けられた2つのアルファヘリックスからなるタンパク質モーチブ(motives)の群に属し、最初、酵母Cdc10およびショウジョウバエノッチにおけるシグナル伝達タンパク質において発見された。しかしながら、アンキリンリピート(ANK)は、生物界を通して至るところに存在し、しかしながら、ポックスウイルス科、特にコロドポックスウイルスを除くほとんどのウイルスにおいて不在である。モチーフは、タンパク質-タンパク質相互作用を促進するために重要であり且つORFV D1701-V(ORF123、-126(ANK-1)、-128(ANK-2)および-129(ANK-3))によってコードされる4つのタンパク質において見出される、タンデムリピートコンセンサスドメインからなる。多量の細胞内ANKタンパク質が、細胞-細胞シグナル伝達、細胞骨格の全体性(integrity)、転写の制御および細胞周期、炎症性応答、またはタンパク質輸送に関与していると記載されており、ただ少し、ポックスウイルスのANKタンパク質の機能について知られている。これら4つのタンパク質は、特定の基質を基質結合ドメインを介してSCF1ユビキチンリガーゼに動員し得、したがって、細胞のユビキチン-プロテアソーム機構を活用し得るF-ボックス様モチーフを有している、ということが実証されている。これらのタンパク質のうちの1つ、ORF126がコードするANK-1タンパク質は、必須のアンキリンリピート8および9を介して、ミトコンドリアと共局在することが示された。それにもかかわらず、生理学的な結果は未だ実証されていない。さらに、最近の研究は、低酸素症誘導性因子(HIF)経路に対する、ORFVがコードするANKタンパク質の影響を報告した。この経路は、低酸素症に対する細胞応答の制御において重要な役割を担っているが、下流の対象様脈管形成-および抗-アポトーシスプログラムは、ウイルスの病因に有利に働く。HIF阻害因子(FIH)が、増強されたHIFの活性化をもたらすORFV感染に対するANKタンパク質によって、隔離されたということが示されている。
【0011】
本発明によれば、「機能的変異」は、非変異野生型と比較して、活性および/または機能の変化をもたらす、遺伝子およびコードされたタンパク質の遺伝子変化を指す。機能的変異には、ノックアウト、ポイント、欠失、フレームシフト、および置換変異などが含まれるが、これらに限定されず、これらは全て、ANK-1機能の変化をもたらし、それぞれ、機能不全のANK-1が結果となるか、またはANK-1の発現が抑制、低減、または回避され得る。
【0012】
本発明によれば、「免疫原性」は、パラポックスウイルスベクターがヒトの動物の体内で免疫応答を引き起こす能力、すなわち、体液性および/または細胞媒介性の免疫応答を誘導する能力である。免疫原性は、当業者に周知の様々な方法によって測定することができる。そのような方法の概要は、Madhwa et al. (2015), Immunogenicity assessment of biotherapeutic products: An over-view of assays and their utility, Biologicals Vol. 43, Is. 5, pp. 298-306に見られる。
【0013】
本発明者らは、機能的に変異した、好ましくは不活性化したANK-1を有するパラポックスウイルスベクターが、非変異カウンターパートベクターまたは野生型ウイルスのそれぞれと比較して、特定の固体および上昇した免疫原性を特徴とすることを認識することができた。増加した免疫原性は、末梢血単核細胞を活性化するか、またはインビトロで抗原特異的免疫応答を誘導するベクターの能力によって実証された。同時に、本発明者らは、本発明に係る改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターが依然として優れた増殖挙動を示し、誘導遺伝子または外来遺伝子を発現する能力を有することを見出した。本発明者らによって行われた分析は、ベクターベースのワクチンの設計のための高い可能性を実証する。
【0014】
同定された増加した免疫原性により、本発明に係る改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターは、腫瘍溶解性ウイルスまたはベクター、免疫刺激剤、遺伝子治療のためのツール、または不活性化ウイルスなどの他のアプリケーションにも、それぞれ十分に適格である。
【0015】
本発明者らの知見は驚くべきものであり、当業者によって予想することができなかった。ANK-1をコードするORFは、機能性および複製可能性またはパラポックスウイルスゲノムにとって、結果として、パラポックスウイルスベースのベクターにとって必須であるか、または少なくとも好ましいと想定することができた。言い換えれば、パラポックスウイルスベクターにおいて、ANK-1をコードするORF無しですますことができないことを想定することができた。さらに、ウイルスORFにおける機能的変異は、典型的には免疫原性の欠失をもたらし、それは、パラポックスウイルスにおいてANK-1をコードするORFを変異させる場合、同一の効果を予想することができた。したがって、当該技術分野は、本発明が指し示す方向とは反対の方向を指す。
【0016】
本発明の根底にある問題は、これによって完全に達成される。
【0017】
本発明の一実施形態では、機能的変異は、非変異ANK-1よりもANK-1の活性の低下をもたらす。
【0018】
本実施形態は、それぞれ、ANK-1の機能の欠失(機能の欠失の変異)をもたらすか、または野生型カウンターパートと比較して、ANK-1の発現または活性の有意な低下をもたらす、ANK-1をコードするORFにおける任意の種類の遺伝子変化を含む。したがって、本実施形態は、完全な不活性化である必要がないANK-1機能の下方制御を包含する。しかしながら、ANK-1の完全な不活性化またはゼロまでの活性の減少が、本発明の一実施形態において好ましい。変異には、ノックアウト、ポイント、欠失、フレームシフト、および置換変異などが含まれるが、これらに限定されず、これらは全て、ANK-1機能の不活性化をもたらし、それぞれ、機能不全のANK-1が結果となるか、またはANK-1の発現が抑制、低減、または回避され得る。
【0019】
本発明の一実施形態では、改変パラポックスウイルスは、Parapoxvirus ovis(Orfウイルス、ORFV)であるか、またはパラポックスウイルスベクターはParapoxvirus ovis(Orfウイルス、ORFV)ベクターである。
【0020】
Parapoxvirus ovisまたはOrfウイルス(ORFV)は、パラポックスウイルスの属のプロトタイプであり、ポックスウイルス科に属する。ORFVは、エンベロープを有し、かつ、羊毛の球を思い出させる形態であって、約260×160nmの平均サイズを有する形態を有している複合体dsDNAウイルスである。それらは高いGC含量および約130~150kbpのサイズを有する直鎖状DNAゲノムを含み、その中央領域はITR領域(「逆方向末端反復」)によって両側が区切られ、両DNA一本鎖を互いに共有結合的に連結するヘアピン構造で終わる。ゲノムの中央領域には、主にウイルスの複製および形態形成に必須であり、かつポックスウイルスの間で高度に保存されている遺伝子が、主に存在する。対照的に、ITR領域には、宿主範囲、病原性および免疫調節を大きく決定し、したがってウイルスを特徴付ける、いわゆる非保存毒性遺伝子が存在する。
【0021】
ORFVは、組換えワクチンの産生にとって興味深いものとなり、他の技術よりもそれを好む様々な特徴を有する。オルソポックスウイルスに比べて、ORFVは、ヒツジおよびヤギを含む非常に狭い天然の宿主指向性を特徴とする。結果として、ワクシニアおよびアデノウイルスの最も一般的なウイルスベクターにおいて観察され得るような、自然感染によって引き起こされる、ヒトにおけるベクターに対する「前免疫」の阻害は、ほとんど除外され得る。さらに、例外的に弱く短寿命のORFV特異的ベクター免疫は、さらなる病原体を標的としたORFVベースのワクチンによる非常に効果的なブースターおよび/またはリフレッシュワクチン接種または免疫化を可能にする。
【0022】
本発明の別の実施形態では、前記ORFVは、D1701株、好ましくはD1701-V株のものである。
【0023】
この手法は、弱毒化され、宿主において漸近感染のみを引き起こすそのようなウイルスまたはベクターが使用されるという利点を有する。本発明によれば、D1701-BおよびD1701-Vを含む、D1701の全ての変異体がカバーされるが、後者が好ましい。D1701-V株の特徴は、Rziha et al. (2019;l.c.)に開示されている。
【0024】
別の実施形態では、前記ANK-1は、ウイルスオープンリーディングフレーム126(ORF126)によってコードされ、好ましくは、前記オープンリーディングフレーム(ORF)は、ヌクレオチド位置nt22.055±100~nt23.546±100に位置している。
【0025】
この手法で、ORFV D1701においてANK-1をコードする不活性化の標的として特定のオープンリーディングフレームが提供される。したがって、当業者は、変異の場所の詳細な情報を受け取る。この文脈において、示されたヌクレオチド位置は、図2bに示されるように、Rziha, H.-J.の公開されていないデータによって決定されるように、ORFV D1701-Vゲノムの右側部分によってコードされるDNA配列を含む、31.805ntを指す。
【0026】
さらなる実施形態では、本発明に係る改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターは、以下をさらに含む:
(1)導入遺伝子をコードする少なくとも1つのヌクレオチド配列、および
(2)導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列の発現を制御する少なくとも1つのプロモーター。
【0027】
本発明によれば、「導入遺伝子」、または同義的に外来遺伝子は、パラポックスウイルスゲノムに由来しない遺伝子またはオープンリーディングフレーム(ORF)を指す。
【0028】
本発明によれば、「プロモーター」は、本発明のパラポックスウイルスベクターにおける導入遺伝子の調節された発現を可能にするそのような核酸部分を指す。好ましくは、それはORFVプロモーター、すなわち、野生型ORFVゲノムに存在するプロモーターもしくはそれに由来するプロモーター、または、ポックスウイルスプロモーター、CMVプロモーターなどの人工プロモーターを指す。
【0029】
この手法は、本発明に係るウイルスまたはベクターが、抗原などの任意の外来タンパク質の産生のための遺伝的ツールとして使用されるという利点を有する。ベクターの優れた免疫原性特性と共に、そのような実施形態は、ワクチン組成物の活性物質または構成要素としての本発明に係るウイルスまたはベクターの適性を改善する。
【0030】
本発明のなおさらなる実施形態では、前記導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列は、前記ANK-1をコードするウイルスORFに挿入されており、および/または、代替的に、前記ANK-1をコードするウイルスORFは、前記導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列によって置き換えられている。
【0031】
本発明によれば、「前記ANK-1をコードするウイルスORFに挿入されている」は、ANK-1をコードする配列またはオープンリーディングフレームが、それぞれ、任意の位置で欠失または開かれ、そのプロモーターと共に導入遺伝子をコードする配列が挿入されていることを意味する。ANK-1コード配列の部分は、前記手順によって除去されてもよいし、除去されなくてもよい。本発明によれば、「前記導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列によって置き換えられている」は、ANK-1をコードするウイルスORF全体がウイルスまたはベクターから除去され、配列ギャップがそのプロモーターと共に導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列を受け取ることを意味する。本実施形態は、導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列の挿入がANK-1の機能的変異または不活性化を提供するという利点を有する。
【0032】
別の実施形態では、本発明に係る前記改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターは、導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列を2つ以上含み、好ましくは、導入遺伝子をコードするヌクレオチド配列の数は、2、3、4、またはそれ以上からなる群から選択される。
【0033】
本実施形態では、それぞれの導入遺伝子または導入遺伝子をコードする配列はすべて、ANK-1をコードするウイルスORF中に位置することができる。しかしながら、代替的に、様々な導入遺伝子をコードする配列は、ウイルスまたはベクターゲノムまたはコンストラクト中の同一のまたは異なる位置の他の場所にそれぞれ位置することもできる。挿入遺伝子座毎において、複数の外来遺伝子、好ましくは、2、3、4、またはそれ以上の外来遺伝子を発現させることができる。例えば、ORFV D1701またはD1701-Vにおいて、導入遺伝子をコードする配列は、好ましくは、ウイルスORFs112、119、126などのいずれかに位置することができる。
【0034】
この手法は、本発明に係る単一の改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターによって、複数の外来または導入遺伝子を発現させることができるという利点を有する。本実施形態は、同時に多数の抗原性構造体に対して向けられた、多価ワクチンの製造に特に適している。
【0035】
本発明に係る改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターの別の実施形態では、プロモーターは、初期ORFプロモーターであり、好ましくは、配列番号1(eP1)、配列番号2(eP2)、配列番号3(最適化された「初期」)、配列番号4(7.5kDaのプロモーター)、および配列番号5(VEGF)から選択される、ヌクレオチド配列を含む。
【0036】
この手法は、導入遺伝子の高発現レベルおよび発現の標的制御を可能にするそのようなプロモーターが使用されるという利点を有する。プロモーターeP1およびeP2は、本発明者らによって開発され、Rziha, H.-J., et al. (2019; l.c.)に公開されている。残りのプロモーターは、ワクシニアウイルスに由来し、他の繋がりにおいて、Davidson and Moss (1989), Structure of Vacciniavirus late promoters, J. Mol. Biol., Vol. 210, pp- 771-784、およびYang et al. (2011), Genome-wide analysis of the 5′ and 3′ ends of Vaccinia Virus early mRNAs delineates regulatory sequences of annotated and anomalous transcripts, J. Virology, Vol. 85, No. 12, pp. 5897-5909、Broyles (2003), Vaccinia virus transcription, J. Gene. Virol., Vol. 84, No. 9, pp. 2293-2303に記載されている。本発明者らの知見によれば、P2は、eP1と比較して発現強度の有意な増加を引き起こす。これは、プロモーターeP1がワクシニアウイルスからのコンセンサス配列に100%対応するが、eP2は対応しないため、驚くべきことであった。ORFV(パラポックス)における「最適である」ワクシニアウイルスプロモーター(オルソポックス)の低発現は矛盾しており、驚くべきことである。eP2プロモーターが強い発現をもたらすことも驚くべきことである。
【0037】
本発明に係る改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターの別の実施形態では、導入遺伝子は以下の抗原の群から選択される:
-ウイルス抗原、好ましくは、
スパイク(S)、エンベロープ(E)、およびヌクレオカプシド(N)タンパク質を含む、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)抗原;
糖タンパク質(RabG)を含む、狂犬病ウイルス抗原;
核タンパク質(NP)、血球凝集素(HA)、ノイラミニダーゼ(NA)を含む、A型インフルエンザ抗原;
-腫瘍抗原、好ましくはHPV選択的ウイルス腫瘍抗原を含む、ウイルス腫瘍抗原;
-HPV選択的ウイルス腫瘍関連抗原を含む、ウイルス腫瘍関連抗原を含む、腫瘍関連抗原;
-寄生虫抗原、好ましくはマラリア原虫抗原;
-サイトカイン;
-哺乳動物、好ましくは哺乳動物レシピエントに由来する(originated)か、または由来する(derived)、タンパク質。
【0038】
この手法は、特にワクチンの製造のための特に重要な抗原が、本発明に係る改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターを介して発現可能であるという利点を有する。
【0039】
本発明の別の主題は、本発明に係る改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターを含む、生物学的細胞、好ましくは哺乳動物細胞、さらに好ましくはVero細胞、HEK293細胞、または抗原提示細胞に関する。
【0040】
Vero細胞およびHEK293細胞は、現在、本発明に係る改変ウイルスまたはベクターの産生のために使用されている。しかしながら、宿主では、ウイルスは抗原提示細胞として取り込まれる。
【0041】
本発明の別の主題は、本発明の改変パラポックスウイルスもしくはパラポックスウイルスベクター、および/または、本発明の細胞と、薬学的に許容可能な担体とを含む、組成物、好ましくは医薬組成物に関する。医薬組成物は、好ましくはワクチン、さらに好ましくは多価ワクチン、免疫刺激剤、遺伝子治療のためのツールなどであり得る。
【0042】
薬学的に許容可能な担体は、当技術分野において周知である。薬学的に許容可能な担体には、安定剤、結合剤、希釈剤、塩、アジュバント、緩衝剤、脂質などが含まれるが、これらに限定されない。概要は、Rowe (2020), Handbook of Pharmaceutical Excipients, 9thedition, Pharmaceutical Pressに見出すことができる。
【0043】
本発明に係る改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターの特性、利点、特徴、およびさらなる発展は、本発明の細胞および本発明の組成物に、対応する方法で適用される。
【0044】
本発明の別の主題は、生物、好ましくは哺乳動物またはヒトにおける免疫応答の誘導のための、ANK-1をコードするウイルスオープンリーディングフレーム(ORF)における少なくとも1つの不活性化変異を含む改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターの、使用に関する。
【0045】
本発明に係る改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターの特性、利点、特徴、およびさらなる発展は、対応する方法で本発明の使用に適用される。
【0046】
前述の特徴および以下に説明される特徴は、それぞれの場合に示される組み合わせにおいてのみ使用されるのではなく、本発明の範囲から逸脱しない、他の組み合わせにおいて、または単離された位置においても使用されることができることが理解されるべきである。
【0047】
〔実施形態〕
ここで、本発明を、本発明の追加の特徴、特性、および利点をもたらす実施形態の方法によってさらに説明する。実施形態は純粋な例示的性質のものであり、本発明の範囲(scope)または範囲(range)を限定するものではない。特定の実施形態において言及された特徴は、本発明の特徴であり、特定の実施形態において適用可能ではないが、本発明の任意の実施形態の文脈において単離された方法でもある一般的な特徴として見られてもよい。添付の図面を参照すると、以下が示される。
【0048】
図1:pDel126-2-AcGFPのプラスミドチャート。
【0049】
図2:D1701-VゲノムにおけるORF126欠失の図画による説明。A)Rziha et al. (2019; l.c.)によって最近公開されたORFV D1701-V株のゲノムマップを示す。B)ゲノムの右側部分によってコードされるオープンリーディングフレーム(ORF);DNA配列を含む31.805ntを、Rziha, H.-J.の公開されていないデータによって決定した。C)各遺伝子欠失によって影響を受けるゲノム部位の拡大。対応する配列を配列番号6に示す。
【0050】
図3:GFPは、Del126に安定的に組み込まれている。Vero細胞におけるVCh126GFPの継代1回、5回、10回、15回、および20回後の126PCRは、遺伝子126の定常的な欠失を示し(A)、一方、d126PCRは、Del126遺伝子座に挿入されたGFPに特異的な1360bpの断片をもたらす(B)。1%アガロースゲル;ni=非感染Vero細胞からのDNA;M=使用準備済み 1kb Ladder、Nippon Genetics。
【0051】
図4:pDel126のプラスミドチャート。
【0052】
図5:新たなDel部位組換え体VCh126GFPは、Vero細胞においてGFPおよびmCherryの発現を誘導する。新たなDel部位組換え体および参照ウイルスVChD12GFPによる感染の5日後に、単一プラークの蛍光顕微鏡検査を行った。明視野顕微鏡、単一GFPおよびmCherryチャネルから得られた画像、ならびにマージされた画像が示され、スケールバーは500μmを表す。
【0053】
図6:Del部位組換え体VCh126GFPにおける導入遺伝子gfpおよびmcherryの遺伝的安定性。10回の連続継代(P1~P10)の間、感染したVero細胞によるフルオロフォアの発現を、感染後72時間後の単一プラーク計数によって決定した。単一のGFPの発現プラークの頻度(A)および単一のmCherryの発現プラークの頻度(B)、ならびに単一の蛍光を示すプラークの全頻度(C)を、96ウェル限界希釈から得られたDel部位組換え体当たり3つのウイルスクローンについて示す。単一の蛍光プラークの平均の全頻度を計算し、(D)にプロットした。
【0054】
図7:Del部位組換え体の単一段階増殖曲線。感染細胞(MOI1)を洗浄し、吸着の2時間後(0hpi)、および、示された感染後の時間(hours post infection;hpi)に回収し、一方、全細胞ライセートをVero細胞上に滴定してウイルス力価(PFU/ml)を決定した。組換え体VCh126GFPのウイルス増殖曲線は、120時間後にコントロールのVChD12GFPと同等のウイルス力価に達する。
【0055】
図8:Vero細胞におけるGFPおよびmCherry発現の比較。Vero細胞を新たなDel部位組換え体VCh126GFPおよび参照ウイルスVChD12GFPに感染させ、24hpiおよび48hpiに回収した。GFPの幾何平均蛍光強度(MFI)をFACS分析によって決定し、VChD12GFPのそれに対して正規化した。3つの独立した実験の2回の繰り返しを示す。統計解析は、95%の信頼区間を持つ対応なしt検定を用いて行った:ns=p≧0.05、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001。
【0056】
図9:単球性THP-1細胞におけるGFPおよびmCherry発現の比較。THP-1細胞を新たなDel部位組換え体VCh126GFPおよび参照ウイルスVChD12GFPに感染させ、24hpiおよび48hpiに回収した。mCherry(A)およびGFP(B)の幾何平均蛍光強度(MFI)をFACS分析によって決定し、VChD12GFPのそれに対して正規化した。それぞれの独立した試験の平均値を計算し、95%の信頼区間を持つ対応なしt検定を用いて統計解析を行った:ns=p≧0.05、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001。
図10:moDCsにおけるGFPおよびmCherry発現の比較。moDCsを新たなDel部位組換え体VCh126GFPおよび参照ウイルスVChD12GFPに感染させ、24hpiおよび48hpiに回収した。GFPの幾何平均蛍光強度(MFI)をFACS分析によって決定し、VChD12GFPのそれに対して正規化した。統計解析は、95%の信頼区間を持つ対応なしt検定を用いて行った:ns=p≧0.05、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001。
図11:ヒトmoDCsの感染率および生存率。10人の異なるドナーのmoDCsを、VCh126GFPおよび参照組み替え体VChD12GFPに感染させた。5つの独立に実施された実験および平均のそれぞれについて、mCherry発現(A)およびZombie Aqua染色(B)によってそれぞれ決定した、感染細胞および生存細胞の割合を示す。統計解析は、95%の信頼区間を持つ対応ありt検定を用いて行った:ns=p≧0.05、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001。
図12:新たなDel部位組換え体VCh126GFPによる、ヒトmoDCsの活性化。5人の異なるドナーのmoDCsを、VCh126GFPおよび参照組み替え体VChD12GFPに感染させた。感染細胞の割合をmCherry発現によって決定し、非感染細胞に対して正規化することにより、フローサイトメトリーを経て、CD40(a)、CD80(b)、CD83(c)、CD86(d)およびHLA-DR(e)によるmoCDsの相対的な活性化の分析が可能となった。5つの独立に実施された実験および平均のそれぞれについて、発現強度の変化を示す。統計解析は、95%の信頼区間を持つ対応ありt検定を用いて行った:ns=p≧0.05、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001。
図13:SARS-CoV-2 ORFV組換え体によって刺激された体液性および細胞性免疫応答。N-またはS1-SARS-CoV-2タンパク質を発現する107PFUのコントロールのORFV組換え体、またはORF126欠失を含むORFVベクターにより、2週間の間隔で2回、CD1マウスを免疫した。A)-B)ORFVベクターによって誘導されたN-およびS1-特異的結合総IgGを、2回目の免疫化後に、ELISAによって評価した。C)脾臓細胞においてORFVベクターによって引き起こされたS1-特異的細胞性応答を、IFN-γELISPOT測定によって測定した。Dunnettの多重比較試験による一元配置ANOVAを用いて、コントロールのORFV群と比較した結合抗体エンドポイント力価間の差、またはIFN-γスポット形成ユニット(PFU)間の差、を評価した。
【0057】
〔1.緒言〕
本発明は、生物における増加した免疫応答の誘導のためのツール、およびさらなる開発において誘導遺伝子または外来遺伝子の発現のためのツール、としての改変パラポックスウイルスまたはパラポックスウイルスベクターの使用に関する。単一のパラポックスウイルスベクターへの複数の導入遺伝子の挿入を可能にするために、本発明はまた、導入遺伝子発現のための挿入部位としての、Parapoxvirus ovis(Orfウイルス、ORFV)D1701株およびD1701-V株におけるORF126などの「アンキリンリピート1」(ANK-1)をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)の適合性に関する。新規な欠失変異体を、挿入されたAcGFP(GFP)レポーターコンストラクトの遺伝的安定性、それらの増殖挙動、およびインビトロで異なる標的細胞において導入遺伝子発現を誘導する能力の詳細な特徴付けに供した。さらに、変異体の免疫原性を、末梢血単核細胞および抗原提示細胞を活性化する、またはインビトロおよびインビボで抗原特異的免疫応答を誘導するその能力によって分析した。まとめると、実施された分析は、ANK-1をコードするORFのノックアウトをパラポックスウイルスゲノムに組み込むことによって、多価単一ベクターワクチンの設計の高い可能性を実証している。したがって、レポーター遺伝子GFPとのオープンリーディングフレームの交換は、所望の導入遺伝子を発現する安定なベクターの効率的な複製をもたらしただけでなく、新たに作製された組換え体に顕著な免疫原性特性をももたらした。
【0058】
〔2.導入〕
ORFV D1701-V株は、D1701-B株を適用したウシ腎臓細胞株BK-KL3Aから得られ、アフリカ緑色サル細胞株Veroでの成長のための適応後に、いくつかのゲノム再編成が示された;Cottone, R., et al. (1998), Analysis of genomic rearrangement and subsequent gene deletion of the attenuated Orf virus strain D1701, Virus Research 56(1), p. 53-67;Rziha, H.J., et al. (2000), Generation of recombinant parapoxviruses: non-essential genes suitable for insertion and expression of foreign genes, Journal of Biotechnology 83(1), p. 137-145。これらのゲノム再構成は、株の複製に必須ではなく、欠失領域D(D遺伝子座)などの導入遺伝子発現に適していることが示された遺伝子の欠失を含む;Rziha, H.-J., et al. (2019; l.c.)。さらに、血管新生因子VEGF-Eは、ヒツジにおける血性病変の誘導に関与する主要な病原性決定因子であると予測されRziha, H.J., et al. (2000; l.c.)、したがって、異なる宿主においていくつかのウイルス性疾患に対する高い予防効果を有する長期持続性免疫を誘発するORFV組換え体を作製するために、挿入部位として使用された。これらの成功裏に使用された挿入部位に加えて、導入遺伝子発現に潜在的に適した他の遺伝子が、D1701-Vゲノムの末端において同定されていた。ポックスウイルスの中心領域は一般に、位置、間隔、および配向において保存された必須遺伝子をコードするので、これらの領域は、病原性、病因、または宿主範囲に影響を及ぼす因子をコードし、インビトロ増殖には不可欠であると考えられる。これらの因子は、宿主によって誘発される細胞性および体液性の免疫応答の最適な誘導を妨害すると予測されるが、これらの免疫調節遺伝子の欠失は、D1701-Vベクターの免疫原性をさらに増強し得る。したがって、本研究は、「NF-κBインヒビター」をコードする遺伝子の欠失、および導入遺伝子発現のための挿入部位としてのその使用に焦点を当てる。
【0059】
(アンキリンリピート1(ANK-1)-ORF126
「アンキリンリピート1」(ANK-1)は、ループによって分けられた2つのアルファヘリックスからなるタンパク質モーチブ(motives)の群に属し、最初、酵母Cdc10およびショウジョウバエノッチにおけるシグナル伝達タンパク質において発見された。しかしながら、アンキリンリピート(ANK)は、生物界を通して至るところに存在し、しかしながら、ポックスウイルス科、特にコロドポックスウイルスを除くほとんどのウイルスにおいて存在しない(Herbert, M.H. et al. (2015), Poxviral ankyrin proteins. Viruses 7(2): p. 709-38.を参照されたし)。モチーフは、タンパク質-タンパク質相互作用を促進するために重要であり且つORFV D1701-V(ORF123、-126(ANK-1)、-128(ANK-2)および-129(ANK-3))によってコードされる4つのタンパク質において見出される、タンデムリピートコンセンサスドメインからなる(Rziha, H.-J., et al. (2019), Genomic Characterization of Orf Virus Strain D1701-V (Parapoxvirus) and Development of Novel Sites for Multiple Transgene Expression. Viruses 11(2): p. 127;およびRziha, H.J., et al. (2003), Relatedness and heterogeneity at the near-terminal end of the genome of a parapoxvirus bovis 1 strain (B177) compared with parapoxvirus ovis (Orf virus). J. Gen. Virol. 84(Pt 5): p. 1111-6.を参照されたし)。多量の細胞内ANKタンパク質が、細胞-細胞シグナル伝達、細胞骨格の全体性(integrity)、転写の制御および細胞周期、炎症性応答、またはタンパク質輸送に関与していると記載されており(Mosavi, L.K., et al. (2004), The ankyrin repeat as molecular architecture for protein recognition. Protein Sci. 13(6): p. 1435-48)、ただ少し、ポックスウイルスのANKタンパク質の機能について知られている。これら4つのタンパク質は、特定の基質を基質結合ドメインを介してSCF1ユビキチンリガーゼに動員し得、したがって、細胞のユビキチン-プロテアソーム機構を活用し得るF-ボックス様モチーフを有している、ということが実証されている(Sonnberg, S., et al. (2008), Poxvirus ankyrin repeat proteins are a unique class of F-box proteins that associate with cellular SCF1 ubiquitin ligase complexes. Proc Natl Acad Sci U S A 105(31): p. 10955-60.を参照されたし)。これらのタンパク質のうちの1つ、ORF126がコードするANK-1タンパク質は、必須のアンキリンリピート8および9を介して、ミトコンドリアと共局在することが示された。それにもかかわらず、生理学的な結果は未だ実証されていない(Lacek, K., et al. (2014), Orf virus (ORFV) ANK-1 protein mitochondrial localization is mediated by ankyrin repeat motifs. Virus Genes 49(1): p. 68-79.を参照されたし)。さらに、最近の研究は、低酸素症誘導性因子(HIF)経路に対する、ORFVがコードするANKタンパク質の影響を報告した(Chen, D.Y., et al. (2017), Ankyrin Repeat Proteins of Orf Virus Influence the Cellular Hypoxia Response Pathway. J. Virol. 91(1).を参照されたし)。この経路は、低酸素症に対する細胞応答の制御において重要な役割を担っているが、下流の対象様脈管形成-および抗-アポトーシスプログラムは、ウイルスの病因に有利に働く(Cuninghame, S., R. et al. (2014), Hypoxia-inducible factor 1 and its role in viral carcinogenesis. Virology 456-457: p. 370-83.を参照されたし)。それらの研究において、Chenらは、HIF阻害因子(FIH)が、増強されたHIFの活性化をもたらすORFV感染に対するANKタンパク質によって、隔離されたということを示すことができた(Chen et al. (2017; l.c.)を参照されたし)。
【0060】
〔3.材料および方法〕
(新たなDel部位組換え体の作製および特性評価)
本研究で使用されるORFV組換え体を作製するために、Invitrogenから合成され得られた導入遺伝子をトランスファープラスミドにクローニングした。ORFVゲノムへの導入遺伝子の安定な組み込みは、ヌクレオフェクションによるトランスフェクションおよびその後のVero細胞の感染後に、トランスファープラスミドと親ウイルスのゲノムDNAとの間の相同組換えによって達成された。
【0061】
(トランスファープラスミドの作製)
DNAインサートならびにプラスミドベクターを同一の制限酵素を用いて消化し、目的の断片を精製し、ライゲーションした。続いて、細菌を、ライゲーションしたプラスミドで形質転換し、コロニーを選択してトランスファープラスミドを作製した。検証のために、制限酵素を用いたコントロール消化の後にアガロースゲル電気泳動を行い、一方、挿入特異的プライマーを用いたDNA配列決定により、プラスミドベクターへの導入遺伝子の正しい挿入が確認された。以下の表は、作製されたトランスファープラスミドをまとめたものであり、一方、プラスミドチャートおよび対応する配列(配列番号7)を図1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
(ORFV感染Vero細胞のトランスフェクション)
組換え体ORFVの作製は、Vero細胞を、ORFVによる感染の前にトランスファープラスミドでトランスフェクトする2つのステップに従った。トランスフェクションは、ヌクレオフェクションと呼ばれるエレクトロポレーションに基づくトランスフェクション法によって行った。トランスファープラスミドおよびORFVゲノム上の相同配列に起因して、インサートは、相同組換えを介してORFVゲノムに組み込まれ得る。この目的のために、Vero細胞を、トリプシンを用いて分離し、5mlのNF停止溶液中に再懸濁し、計数した。それぞれのトランスフェクションバッチについて、2.5×10細胞を1.5mlエッペンドルフカップに移し、63rcfで10分間遠心分離した。細胞ペレットを100μlのトランスフェクション溶液(1:4.5の比率で混合された、AmaxaトランスフェクションキットのトランスフェクションサプリメントおよびCLBトランスフェクションバッファー)に再懸濁し、2μgのプラスミドDNAを補充し、トランスフェクションキュベットに移した。トランスフェクションのために、CLBトランスフェクションデバイスを使用した。続いて、ヌクレオフェクションされた細胞をNF停止溶液中に再懸濁し、パスツールピペットを用いて6mlの予熱したVero細胞培地を含むT25細胞培養フラスコに移した。細胞を直ちに親ウイルス(MOI1)に37℃および5%COで4時間感染させ、6mlの予熱したPBSを用いて洗浄し、新鮮なVero細胞培地中、37℃および5%COで72時間インキュベートした。ウイルスプラークまたは細胞変性効果(CPE)を観察することができた場合、細胞を、-80℃および水浴中37℃で、それぞれ、3回凍結および解凍し、細胞を破壊し、ウイルスの子孫を放出させた。
【0064】
(ORFV組換え体の選択)
相同組換えは、トランスファープラスミドの挿入とORFVゲノム中の標的領域との間で約1:10000の比率で起こる事象である。このまれな事象を選択し、組換え体ORFVを親ウイルスから分離するために、異なる選択方法を使用することができる。
【0065】
(ORFV組換え体のFACSに基づく選択)
蛍光活性化細胞選別(FACS)による選択は、GFPまたはmCherryなどの蛍光標識の損失または獲得に基づく。この目的のために、3×10Vero細胞を、3mlのVero細胞培地を含む6ウェルプレートに播種した。トランスフェクションのライセートを連続希釈の感染に使用し、37℃および5%COで20~24時間行った。最適な選択方法を確実にするために、約1~5%の低い感染率を有する細胞を回収し、400rcfで5分間遠心分離した。続いて、細胞を1mlのPBEを有するスライス(thrice)で洗浄し、最終的には500μlのPBEに再懸濁した。BD FACSjazz(Biosciences)を用いて、150μlのVero細胞培地中で、ウェル当たり10Vero細胞を含む96ウェルプレート中で、単一細胞FACS選別を行った。37℃および5%COで72時間インキュベートした後、組換え体ORFVの単一ウイルスプラークを示すウェルを、さらなる増殖および分析のために採取することができた。
【0066】
(限界希釈によるORFV組換え体の選択)
FACSに基づく選別またはMACS選択後の組換えウイルスのさらなる選択および精製を、限界希釈によって行った。この目的のために、25mlのVero細胞培地中の2×10Vero細胞を、12ウェルピペッティングリザーバーに分割し、ここで、最初のウェルおよび残りのウェルは、それぞれ、3mlまたは2mlの細胞液のいずれかを含んでいた。最初のウェルに、MACS選択の3×10細胞または50~100μlのウイルスライセートのいずれかを補充し、最初のウェルから最後のウェルまでそれぞれ1:3に希釈した。それぞれの希釈液の150μlを96ウェルプレートの対応するウェルに移し、37℃および5%COで72時間インキュベートした。72時間後、単一ウイルスプラークを含むウェルを、(蛍光)顕微鏡法によるさらなる処理のために選択することができた。
【0067】
(連続継代による遺伝的安定性の決定)
フルオロフォアコード部位の遺伝的安定性を調べるために、それぞれのORFV組換え体の10回の連続継代を行った。このために、5×10Vero細胞を、3mlのVero細胞培地を含む6ウェルプレートに播種した。最初に、限界希釈で1つの単一のプラークを示すウイルスライセートを連続希釈での感染に使用し、37℃および5%COで2時間行った。細胞をPBSで2回洗浄し、続いて37℃および5%COで72時間、3mlのVero細胞培地中でインキュベートした。Eclipse Ti2顕微鏡(Nikon)を用いて、100~200個のプラークを示すウェルについて、蛍光プラーク数を決定した。次に、細胞を-80℃で凍結し、RTで解凍し、50μlのウイルスライセートを使用して、上記のように新しく播種されたVero細胞を感染させた。
【0068】
(ドナー血液からのPBMCsの単離)
末梢血単核細胞(PBMCs)は、テュービンゲンの献血センターから得られた献血から単離することができた。まず、血液をPBSで総体積100mlに希釈した。次に、50mlチューブ中の4×15mlのFicollを、それぞれ25mlの希釈血液で重ね合わせ、700×gおよびRTで20分間遠心分離した。密度勾配遠心分離後の白色層の形成によって同定することができる白血球を2つの50mlチューブに移し、それぞれに50mlの体積までPBSを補充した。400×gおよびRTで10分間遠心分離した後、細胞ペレットを50mlのPBSに再懸濁し、300×gおよびRTで10分間遠心分離した。PBMCsをマージし、50mlの体積までPBSを補充し、細胞数を決定した。
【0069】
(PBMCsからの単球の単離)
PBMCsから単球を単離する原理は、単球によるCD14の発現に依存する。したがって、PBMCsを300×gおよびRTで10分間遠心分離し、ペレットを4mlのPBEおよび100μlのα-CD14マイクロビーズに再懸濁した。懸濁液を4℃で15分間インキュベートし、PBEで平衡化したLSカラムにロードした。カラムを3mlのPBEで3回洗浄した後、CD14+単球を5mlのPBEでカラムから溶出し、計数することができた。
【0070】
単球のmoDCsへの分化
精製した単球の樹状細胞(moDCs)への分化は、5日間、37℃および5%COで、86nm/mlのGM-CSFおよび10ng/mlのIL-4による刺激で行った。
【0071】
(フローサイトメトリー)
生存率および感染率、ならびに、表面および細胞内分子の発現を、BD LSRFortessaフローサイトメトリーシステム(BD Biosciences)を用いて分析した。試料の調製および蛍光標識抗体による細胞の染色を、96ウェルU底プレート中で行い、一方、遠心分離を4℃および400×gで5分間行った。感染率を決定するために、細胞を200μlのPFEAで2回洗浄し、50μlのPFEAに再懸濁させるか、または任意にFACS分析のために固定した。
【0072】
(Fc受容体の阻害)
非特異的抗体結合を防止するために、Fc受容体を発現する細胞を、染色手順の前に、製造業者の説明書に従ってFcブロックで処理した。
【0073】
(マルチマーによる染色)
マルチマーは、抗原特異的T細胞を同定および定量するために頻繁に使用される。テトラマーは、蛍光標識されたストレプトアビジン複合体に結合した4つの組換えMHC分子からなる。対照的に、デキストラマーは、いくつかのフルオロフォアおよびMHC分子を保有するデキストラン骨格からなる。マルチマーは、特定のT細胞によって認識されるペプチド-MHC複合体を形成するために、目的のペプチドがロードされ、したがって、フローサイトメトリーによって検出することができる。このために、細胞を200μlのPBSで2回洗浄し、50μlのテトラマー溶液またはPBSにそれぞれ再懸濁した。50μlのテトラマー溶液で染色する前に、PE結合HLAテトラマーをテトラマーバッファーと1:50で混合し、13.000×gで10分間遠心分離した。デキストラマーによる染色は、デキストラマーをPBSと1:10の比で混合することによる同一の手順に従った。インキュベートは、RTで30分間、暗所で行った。
【0074】
(細胞生存率の測定)
細胞生存率は、Zombie Aqua染色によって決定した。Zombie Aquaは、生細胞に浸透することはできないが、損なわれた膜を有する細胞に入るアミン反応性蛍光色素である。したがって、それは、生存哺乳類細胞と死滅哺乳類細胞とを区別するために使用することができる。Zombie Aqua染色のために、細胞を200μlのPBSで2回洗浄し、50μlのZombie Aqua(PBSで1:400に希釈)に、30分間4℃で、暗所で再懸濁した。
【0075】
(細胞外抗体染色)
表面分子発現の分析のために、細胞を200μlのPFEAで2回洗浄し、PFEA中の50μlの新しく調製された抗体混合物に再懸濁し、30分間4℃で、暗所でインキュベートした。
【0076】
(細胞内サイトカイン染色)
細胞内サイトカインの検出のために、細胞を10μg/mlのブレフェルジンAで処理して、タンパク質の分泌を防ぎ、それぞれの合成ペプチドで12~14時間刺激した。細胞内サイトカイン染色の前に、細胞を200μlのPFEAで2回洗浄し、50μlのCytofix/Cytopermで30分間、4℃で、暗所でインキュベートすることによって透過処理した。次に、細胞を再懸濁し、200μlのPermwashで2回洗浄し、その後、30分間4℃で、暗所で、Permwash中の50μlの抗体混合物で染色した。
【0077】
(細胞の固定)
4時間を超える保存のために、細胞を固定した。このために、細胞を200μlのPFEAで2回洗浄し、50μlのPFEA+1%ホルムアルデヒドに再懸濁し、4℃で暗所に保存した。試料の分析は10日以内に行った。
【0078】
(マウス免疫)
少なくとも6週齢の非近交系CD1マウス(N=10)をCharles River(Charles River Laboratories、Germany)から入手し、ドイツのテュービンゲン大学のバイオセーフティレベル1の動物施設に収容した。すべての動物は、良い動物操作、並びに、地方の動物実験および倫理委員会の指針に従い、厳密に従い取り扱われた-実験はプロジェクトライセンス(Nr.IM1/20G)に基づいて実施された。マウスは、10プラーク形成単位(PFU)のORFV組換え体で、2週間の間隔で2回、前脛骨の筋肉内(i.m.)に免疫化された。体液性免疫分析のための血液試料を、ブースター免疫の2週間後に後眼窩の出血によって収集した。動物を人道的に安楽死させた後、細胞性免疫分析のための脾細胞を、ブースター免疫の2週間後に収集し、標準的な手順によって単離した。
【0079】
IFN-γELISPOT測定
ELISOP測定は、マウスIFN-γELISpot PLUSキット(ALP)(カタログ番号:3321-4APW-10、Mabtech、Schweden)を用いて、製造業者の指示に従って、行った。ウェルあたり、2×105脾臓細胞を、最終濃度2μg/mlのS1ペプチドのオーバーラッピングプール(カタログ番号:130-127-041、Miltenyi、Germany)で、21時間、刺激した。発達したスポットを、ImmunoSpot S5 analyzer(Cellular Technology Limited, USA)およびImmnoSpotソフトウェアを使用して、自動的に計測した。
【0080】
〔4.結果〕
(新たなDel部位組換え体の作製)
トランスファープラスミドの作製に成功した後、新たなORFV組換え体を、方法に詳細に記載されるように作製した。したがって、プラスミドpDel126-2-AcGFPをヌクレオフェクションによってVero細胞に移入し、その後、親ウイルスV12-Cherryに感染させた。ORFVゲノム中の相同配列およびトランスファープラスミドの挿入隣接領域のため、相同組換えは、ORFV D1701-Vゲノム中のGFPによるORF126の安定な交換をもたらした(図2)。D1701-V(Rziha, H.-J.、公開されていない、図2B)のDNA配列を含む31.805ntの右側部分におけるORF126の正確な位置を以下の表に示す:
【表2】
【0081】
次に、新たなORFV組換え体を、FACS選別および限界希釈によって選択された感染GFPおよびmCherry発現Vero細胞から単離することができた。DNA単離、続いて挿入および遺伝子座特異的PCRタイピングにより、図3に示すように、精製されたORFV組換え体の遺伝的均一性をモニタリングすることができた。ここで、126およびd126PCRにより、ORF126の欠失およびGFPコード配列との交換の両方が証明された。その後、新たなORFV組換え体を、上記のようにラージスケールで増殖させた。
【0082】
組換えORFV欠失変異体も作製することができ、これは、GFPの挿入を伴わないORF126の欠失、したがって、親ウイルスと比較して増強された免疫原性をもたらす機能欠失変異のORF126遺伝子産物のみをもたらした。対応するトランスファープラスミドおよび配列は、図4および配列番号8に見出すことができる。
【0083】
(GFPは新たなDel部位に安定的に挿入されている)
新たなDel部位へ挿入されたGFPの安定性を調べるために、Vero細胞を新たなDel部位組換え体VCh126GFPおよび参照ウイルスVChD12GFPに感染させ、20回の連続継代を行った。GFPおよびmCherry蛍光は両方とも、図5に示されるように、この実験を通して新たなDel部位組換え体によるVero細胞感染に起因する単一プラーク中で蛍光顕微鏡によって観察することができた。
【0084】
さらに、ウイルスDNAを、継代1回、5回、10回、15回、および20回後に感染したVero細胞から単離し、欠失した遺伝子特異的ならびに遺伝子座特異的PCRを行って、Del遺伝子座の完全性を調べた。示されるように、20回の継代の間に126PCRにおいてORF126特異的273bp断片を検出することはできなかったが(図3A)、欠失部位は、d126PCRを用いてDel126遺伝子座に挿入されたGFPに特異的な1360bp断片を示した(図3B)。
【0085】
最後に、新たなDel部位に挿入された導入遺伝子の安定性を、ORFV D1701-V組換え体の3つの生物学的反復(ウイルスクローン)の10回の連続継代の間に調べた。72時間の感染後、100~200個のプラークを含むウェルを使用して、GFPおよびmCherryフルオロフォアの両方、またはGFPもしくはmCherryのいずれかを発現する単一プラークの量を蛍光顕微鏡によって決定した。10回の連続継代の間に1つのフルオロフォアのみを発現するプラークのパーセンテージを図6に示す。
【0086】
結果は、VCh126GFPを用いて、1%未満の単一GFPおよびmCherry発現プラークの頻度を実証している。まとめると、提示された結果は、GFPが新たなDel部位組換え体に感染したVero細胞において安定に発現し、予測されるゲノム遺伝子座において20回の継代にわたって検出することができることを示唆している。さらに、新たなDel部位またはvegf遺伝子座におけるGFPおよびmCherryの両方の遺伝的安定性は、それぞれ、感染したVero細胞の蛍光を研究する10回の連続継代において検証された。それぞれの新たなDel部位組換え体に感染したすべての計数された溶解性プラークの少なくとも99%は10回の継代後に同時にGFPおよびmCherryを発現したので、これらの結果は試験されたゲノム遺伝子座の遺伝的安定性を示している。
【0087】
(新たなDel部位組換え体の増殖挙動の特性評価)
新たなDel部位組換え体に導入された欠失が参照ウイルスVChD12GFPと比較してORFV許容性Vero細胞におけるインビトロ増殖特性を変化させるかどうかを調べるために、単一工程の増殖曲線実験を行った。このために、Vero細胞を新たなDel部位組換え体VCh126GFPに感染させ、24時間後に約20~25%の感染率をもたらした。感染細胞を洗浄し、吸着の2時間後(0時間と指定)、または感染の6時間後、24時間後、48時間後、72時間後、96時間後、および120時間後に回収した。ウイルスライセートをVero細胞上に滴定して、1ml当たりのプラーク形成単位(PFU/ml)で測定した感染性粒子の数を決定した。各組換え体について3回実験を行った。結果を図7に示す。
【0088】
Del部位組換え体VCh126GFPの増殖特性は、120hpi後に約10PFU/mlの最終力価と同等に達する参照ウイルスVChD12GFPについて得られたものに似ている。特に、VCh126GFPの増殖曲線は、VChD12GFPの増殖曲線について使用されるように、より低いウイルス入力を示し、実験を通してコントロールと比較して、わずかに減少した最終ウイルス力価のみを示した(図7)。それにもかかわらず、これらの結果は、VCh126GFPが、許容性細胞株Veroにおいて感染性子孫を産生することができるような複製効率であることを示唆している。
【0089】
(新たなDel部位を用いた発現強度の分析)
新たなDel部位組換え体による導入遺伝子発現の可能性を調べるために、ORF126に組み込まれたレポーター遺伝子GFP、およびvegf遺伝子座に挿入されたmCherryを使用し、Vero細胞、単球性細胞株THP-1およびヒト初代単球由来樹状細胞(moDCs)のORFV感染後のそれらの発現強度を比較した。このために、細胞を播種し、VCh126GFPおよび参照ウイルスVChD12GFPに24時間または48時間感染させた。続いて、FACS分析を行い、細胞において発現されたGFPおよびmCherryの幾何平均蛍光強度(MFI)を決定した。moDCsの分析のために、いくつかのドナーからの細胞を用いて実験を行い、個体間の差を推定した。新たなDel部位組換え体の感染から同定されたMFIを、同じ実験のVChD12GFP由来MFIの平均に対して正規化した。Vero細胞、THP-1細胞およびmoDCsから得られた結果を、それぞれ図8図9および図10に示す。
【0090】
Vero細胞について、3つの独立した実験を2回繰り返して行った。図8に示されるように、VCh126GFPによって誘導されたGFPレベルは、参照ウイルスVChD12GFPと比較して、24時間後に有意に増強した。
【0091】
単球性THP-1細胞におけるGFPおよびmCherryの発現強度を、感染24時間後の3~6回の反復を含む4回の独立した実験、および感染48時間後の3回の反復を含む2回の独立した実験、のそれぞれにおいて分析した。ここで、VCH126GFPに感染したTHP1細胞について、48時間後、有意に増加したmCherryが、参照ウイルスに感染したそれらと比較して、検出された(図9A)。さらに、図9Bにおいて実証されるように、GFP発現は、VChD12GFPと比較してVCh126GFPについて、24時間後および48時間後に有意に加速された。VChD12GFPと比較してこれらの上昇した導入遺伝子レベルを考慮すると、OF126に挿入された導入遺伝子はTHP-1細胞においてD遺伝子座によってコードされるものよりも強く発現されるのに対して、ORF126の欠失はvegf遺伝子座に組み込まれた導入遺伝子の発現を促進するように思われた。
【0092】
初代細胞において、参照ウイルスVChD12GFPと比較して導入遺伝子の発現を研究するために、moDCsを作製し、感染させた。3人のドナーのそれぞれについて、6つの技術的複製のGFPおよびmCherry MFIsが、感染24時間後および48時間後、FACSにより評価された。図10において実証されるように、VCh126GFPに感染させたmoDCsにおいてGFP発現は、24時間後に有意に増加し、48時間後に有意に上昇し、したがって、moDCsにおいて、D遺伝子座に起因するそれらと比較して、発現レベルは増加した。
【0093】
結論として、発現強度の分析は、ORFV D1701-Vによってコードされた選択されたORFsの欠失およびgfpによるその置換が、vegf遺伝子座に挿入された導入遺伝子の発現の変化を引き起こすことを示す。特に、ANK-1をコードするORF126の欠失は、挿入された導入遺伝子の発現動態に影響を及ぼすように思われる。ほとんどの新たなDel部位組換え体によって誘導された蛍光レポーターGFPおよびmCherryの発現は減少したように見えたが、一方、VCh126GFP感染時にTHP-1およびmoDCsにおいて同等またはより高い発現レベルが達成され得る。
【0094】
(新たなDel部位組換え体による感染による樹状細胞の活性化)
以前に、Muellerら(2019年、準備中)は異なる導入遺伝子をコードするD1701-V ORFV組換え体の取り込みが、樹状細胞またはPBMCsの範囲内での単球のような抗原提示細胞(APCs)の活性化を変化させることができることを示すことができた。D1701-Vゲノムに導入されたORF126欠失の影響力を明らかにするために、moDCsをVCh126GFPおよび参照ウイルスVChD12GFPに感染させ、一方、非感染細胞をネガティブコントロールとして供した。一人のドナーの中で極めて同等な感染率を示したmCherry発現細胞の、活性化マーカーCD40、CD80、CD83、CD86およびHLA-DRの発現をFACS分析によって決定するため、24時間後、細胞を回収した。LPS処理細胞および非感染細胞をコントロールとして供したが、それらの活性化マーカーの発現は、mCherryネガティブ細胞において測定した。
【0095】
全体で、活性化マーカーの発現は、10人の健康なドナーに由来するmoDCsの感染moDCsにおいて決定した。異なるドナーからのmoDCsの感染率は、5%~20%の範囲内であり、平均レベルが10%から15%までの間であった(図11A)。感染moDCsの平均生存率は、感染率と相関関係が無く、約60%のレベルであった。これらのデータを比較するため、活性化マーカーの発現を、非感染細胞から得られた幾何平均蛍光強度に対して正規化した。図12aおよびbに示される結果は、活性化マーカーCD40およびCD80の相対的な発現は参照ウイルスVChD12GFPまたはVCh126GFPによる感染時と有意な相違はない、ということを示している。しかしながら、CD83、CD86およびHLADRの発現は、図12c、dおよびeにおいて図示されるように、VCh126GFPによるmoDCs感染後、有意に増加した。要約すれば、ORFV D1701-VにおけるORF126の欠失は、分析した活性化マーカーの表面発現にポジティブな影響を与える。
【0096】
(SARS-CoV-2 ORFV組換え体のインビボ免疫原性)
スパイク(S1)および核タンパク質(N)をコードするSARS-CoV-2 ORFV組換え体の免疫原性を、2回の筋肉内(i.m.)免疫後の非近交系CD1マウスにおいて比較した。ブースター免疫後、すべてのワクチン群で高力価のN-およびS1-抗原特異的結合抗体が検出された(図13)。ORF126ノックアウトを有するORFV組換え体は、コントロールのORFVと比較して、SARS-CoV-2 N-およびS1-特異的結合抗体力価を引き起こした(図13AおよびB)。一方、ORF126ノックアウト変異体によるプライム・ブースト免疫化を受けたマウスは、2つの他の群と比較して、T-細胞を産生するIFN-γの最も高い数を示した(図13C)。
【0097】
〔5.概要〕
まとめると、新たなDel部位組換え体について実施された分析は、ORF126ノックアウトをORFV D1701-Vゲノムに組み込むことによって、多価、単一ベクターワクチンの設計の高い可能性を実証している。ORF126の欠失およびそれぞれのDel部位へのレポーターコンストラクトGFPの同時組み込みは、所望の導入遺伝子を発現する安定なベクターの効率的な複製をもたらしただけでなく、新たに作製された組換え体に対する顕著な免疫原性特性にも起因した。したがって、ANK-1をコードするORF126を欠く欠損変異体は、インビトロにおいてmoDC活性化マーカーの発現増強、および、インビボにおいて参照変異体と比較して類似の体液性免疫応答および優れた細胞性免疫応答の誘発を刺激することが示された。さらに、Del部位126に挿入されたGFPの発現動態は、導入遺伝子の強い発現のためのその最適性が示されているもっとも強いレポーターレベルを導く。したがって、本研究の知見は、vegf遺伝子座およびDel部位126からいくつかの抗原および免疫調節エレメントを同時に発現するORF126欠失を有する組換え体が強力で、持続的かつ効率的な細胞性および体液性免疫応答の誘導をもたらす、好ましい特性を有するORFV D1701-Vベクターワクチンの作製のための道を開き得る。
【0098】
〔6.配列〕
配列番号1:eP1プロモーターのヌクレオチド配列
配列番号2:eP2プロモーターのヌクレオチド配列
配列番号3:「最適化された初期」プロモーターのヌクレオチド配列
配列番号4:7.5kDaのプロモーターのヌクレオチド配列
配列番号5:VEGFプロモーターのヌクレオチド配列
配列番号6:D1701-V ORF125-126-127(nt1-2380)のヌクレオチド配列
ORF125:nt1-519
ORF126:nt629-2119
ORF120:nt2204-2758
配列番号7:ヌクレオチド配列pDel126-4-2-AcGFP(nt1-2057)
HL(ホモログの左腕)ORF125:nt1-447
初期プロモーターeP2:nt632-668
AcGFP:nt700-1416
HR(ホモログの右腕)ORF127:nt1488-2057
配列番号8:ヌクレオチド配列pDel126(nt1-1132)
HL(ホモログの左腕)ORF125:nt1-447
HR(ホモログの右腕)ORF127:nt563-1132
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】pDel126-2-AcGFPのプラスミドチャート。
図2】D1701-VゲノムにおけるORF126欠失の図画による説明。A)Rziha et al. (2019; l.c.)によって最近公開されたORFV D1701-V株のゲノムマップを示す。B)ゲノムの右側部分によってコードされるオープンリーディングフレーム(ORF);DNA配列を含む31.805ntを、Rziha, H.-J.の公開されていないデータによって決定した。C)各遺伝子欠失によって影響を受けるゲノム部位の拡大。対応する配列を配列番号6に示す。
図3】GFPは、Del126に安定的に組み込まれている。Vero細胞におけるVCh126GFPの継代1回、5回、10回、15回、および20回後の126PCRは、遺伝子126の定常的な欠失を示し(A)、一方、d126PCRは、Del126遺伝子座に挿入されたGFPに特異的な1360bpの断片をもたらす(B)。1%アガロースゲル;ni=非感染Vero細胞からのDNA;M=使用準備済み 1kb Ladder、Nippon Genetics。
図4】pDel126のプラスミドチャート。
図5】新たなDel部位組換え体VCh126GFPは、Vero細胞においてGFPおよびmCherryの発現を誘導する。新たなDel部位組換え体および参照ウイルスVChD12GFPによる感染の5日後に、単一プラークの蛍光顕微鏡検査を行った。明視野顕微鏡、単一GFPおよびmCherryチャネルから得られた画像、ならびにマージされた画像が示され、スケールバーは500μmを表す。
図6】Del部位組換え体VCh126GFPにおける導入遺伝子gfpおよびmcherryの遺伝的安定性。10回の連続継代(P1~P10)の間、感染したVero細胞によるフルオロフォアの発現を、感染後72時間後の単一プラーク計数によって決定した。単一のGFPの発現プラークの頻度(A)および単一のmCherryの発現プラークの頻度(B)、ならびに単一の蛍光を示すプラークの全頻度(C)を、96ウェル限界希釈から得られたDel部位組換え体当たり3つのウイルスクローンについて示す。単一の蛍光プラークの平均の全頻度を計算し、(D)にプロットした。
図7】Del部位組換え体の単一段階増殖曲線。感染細胞(MOI1)を洗浄し、吸着の2時間後(0hpi)、および、示された感染後の時間(hours post infection;hpi)に回収し、一方、全細胞ライセートをVero細胞上に滴定してウイルス力価(PFU/ml)を決定した。組換え体VCh126GFPのウイルス増殖曲線は、120時間後にコントロールのVChD12GFPと同等のウイルス力価に達する。
図8】Vero細胞におけるGFPおよびmCherry発現の比較。Vero細胞を新たなDel部位組換え体VCh126GFPおよび参照ウイルスVChD12GFPに感染させ、24hpiおよび48hpiに回収した。GFPの幾何平均蛍光強度(MFI)をFACS分析によって決定し、VChD12GFPのそれに対して正規化した。3つの独立した実験の2回の繰り返しを示す。統計解析は、95%の信頼区間を持つ対応なしt検定を用いて行った:ns=p≧0.05、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001。
図9】単球性THP-1細胞におけるGFPおよびmCherry発現の比較。THP-1細胞を新たなDel部位組換え体VCh126GFPおよび参照ウイルスVChD12GFPに感染させ、24hpiおよび48hpiに回収した。mCherry(A)およびGFP(B)の幾何平均蛍光強度(MFI)をFACS分析によって決定し、VChD12GFPのそれに対して正規化した。それぞれの独立した試験の平均値を計算し、95%の信頼区間を持つ対応なしt検定を用いて統計解析を行った:ns=p≧0.05、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001。
図10】moDCsにおけるGFPおよびmCherry発現の比較。moDCsを新たなDel部位組換え体VCh126GFPおよび参照ウイルスVChD12GFPに感染させ、24hpiおよび48hpiに回収した。GFPの幾何平均蛍光強度(MFI)をFACS分析によって決定し、VChD12GFPのそれに対して正規化した。統計解析は、95%の信頼区間を持つ対応なしt検定を用いて行った:ns=p≧0.05、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001。
図11】ヒトmoDCsの感染率および生存率。10人の異なるドナーのmoDCsを、VCh126GFPおよび参照組み替え体VChD12GFPに感染させた。5つの独立に実施された実験および平均のそれぞれについて、mCherry発現(A)およびZombie Aqua染色(B)によってそれぞれ決定した、感染細胞および生存細胞の割合を示す。統計解析は、95%の信頼区間を持つ対応ありt検定を用いて行った:ns=p≧0.05、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001。
図12】新たなDel部位組換え体VCh126GFPによる、ヒトmoDCsの活性化。5人の異なるドナーのmoDCsを、VCh126GFPおよび参照組み替え体VChD12GFPに感染させた。感染細胞の割合をmCherry発現によって決定し、非感染細胞に対して正規化することにより、フローサイトメトリーを経て、CD40(a)、CD80(b)、CD83(c)、CD86(d)およびHLA-DR(e)によるmoCDsの相対的な活性化の分析が可能となった。5つの独立に実施された実験および平均のそれぞれについて、発現強度の変化を示す。統計解析は、95%の信頼区間を持つ対応ありt検定を用いて行った:ns=p≧0.05、*=p<0.05、**=p<0.01、***=p<0.001。
図13】SARS-CoV-2 ORFV組換え体によって刺激された体液性および細胞性免疫応答。N-またはS1-SARS-CoV-2タンパク質を発現する107PFUのコントロールのORFV組換え体、またはORF126欠失を含むORFVベクターにより、2週間の間隔で2回、CD1マウスを免疫した。A)-B)ORFVベクターによって誘導されたN-およびS1-特異的結合総IgGを、2回目の免疫化後に、ELISAによって評価した。C)脾臓細胞においてORFVベクターによって引き起こされたS1-特異的細胞性応答を、IFN-γELISPOT測定によって測定した。Dunnettの多重比較試験による一元配置ANOVAを用いて、コントロールのORFV群と比較した結合抗体エンドポイント力価間の差、またはIFN-γスポット形成ユニット(PFU)間の差、を評価した。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
2024500174000001.app
【国際調査報告】