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特表2024-500177圧力タンク用のボスおよびガス動力式の車両用の圧力タンク
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】圧力タンク用のボスおよびガス動力式の車両用の圧力タンク
(51)【国際特許分類】
   F17C 1/16 20060101AFI20231222BHJP
   F17C 1/06 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
F17C1/16
F17C1/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538110
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 EP2021084093
(87)【国際公開番号】W WO2022135872
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】102020134624.7
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506408818
【氏名又は名称】フォイト パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】VOITH PATENT GmbH
【住所又は居所原語表記】St. Poeltener Str. 43, D-89522 Heidenheim, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ハートムート フレンツ
(72)【発明者】
【氏名】ルーカス ヴェッセルス
(72)【発明者】
【氏名】マーク ブライシュヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ランツル
【テーマコード(参考)】
3E172
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172BB12
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC04
3E172BC05
3E172CA12
3E172DA41
3E172EA02
3E172EB02
(57)【要約】
ガス動力式の車両においてガスを貯蔵する圧力タンク(1)のためのボス(4,4’)であって、圧力タンク(1)の壁部に取り付けるために適しており、壁部は、ガスを貯蔵する中空室(2)を有し、壁部は、繊維強化プラスチックから成る補強層(6)と、密閉のための内側に位置するライナ(3)とを有し、ボス(4,4’)は、ライナ(3)の適合する雌ねじ山に結合可能な雄ねじ山(10)を有している、ボス(4,4’)。ならびに2つのこのようなボス(4,4’)を有している圧力タンク(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス動力式の車両においてガスを貯蔵する圧力タンク(1)用のボス(4,4’)であって、前記圧力タンク(1)の、前記ガスを貯蔵する中空室(2)を取り囲んでいる壁部に結合するために適しており、前記壁部は、繊維強化プラスチックから成る補強層(6)と、密閉のための内側に位置するライナ(3)とを含んでいる、ボス(4,4’)において、
前記ボス(4,4’)は、雄ねじ山(10)を有し、該雄ねじ山(10)は、前記ライナ(3)の適合する雌ねじ山に結合されることができ、かつ前記雄ねじ山(10)は、前記圧力タンク(1)の長手方向軸線(L)に対して同心に配置されていることを特徴とする、ボス(4,4’)。
【請求項2】
前記雄ねじ山(10)は、少なくとも4個~最大10個のねじ条を有している、請求項1記載のボス(4,4’)。
【請求項3】
前記雄ねじ山(10)は、一方の端部において、別のねじ山隆起部(10.1)よりも低いねじ山隆起部(10.4)を備えた少なくとも1つの不完全ねじ条を有し、他方の端部において、別のねじ山凹部(10.2)よりも小さなねじ山凹部を備えた少なくとも1つの不完全ねじ条を有している、請求項1または2記載のボス(4,4’)。
【請求項4】
前記ボス(4,4’)は、ホルダ内に収容するためのネック領域(4.1)を含み、該ネック領域(4.1)は、前記ネック領域の最も細い箇所で測定して、外径(a)の少なくとも50%である長さ(b)を有し、該長さ(b)は、好適には40mm~80mmであり、特に好適には前記ネック領域(4.1)は、前記長さ(b)において円筒形の外側輪郭を備えて形成されている、請求項1から3までのいずれか1項記載のボス(4,4’)。
【請求項5】
前記雄ねじ山(10)は、円筒形のねじ山として構成されており、前記雄ねじ山の直径(d)は、前記ねじ山隆起部(10.1)の尖端部に関して少なくとも60mm、好適には少なくとも90mm、最大で180mmである、請求項1から4までのいずれか1項記載のボス(4,4’)。
【請求項6】
前記ボス(4,4’)は、環状のシール面(4.2)を有し、該シール面(4.2)は、前記長手方向軸線(L)に対して垂直に配置されている、または前記長手方向軸線(L)と70°~110°の角度を形成する、請求項1から5までのいずれか1項記載のボス(4,4’)。
【請求項7】
前記ボス(4,4’)は、雌ねじ山として構成されたねじ込みねじ山(12)を有し、該ねじ込みねじ山(12)を介して、ブシュ(7)をねじ込むことができ、該ブシュ(7)は、ばね要素(9)により前記ライナ(3)を前記ボス(4,4’)のシール面(4.2)に押し付けることができるように働く、請求項1から6までのいずれか1項記載のボス(4,4’)。
【請求項8】
ガス動力式の車両に組み付けるための、ガスを貯蔵するための圧力タンク(1)であって、該圧力タンク(1)は、中間領域では円筒形で、両端部においてアーチ状の極キャップにより閉じられている回転対称的の細長い形状を有し、かつ前記圧力タンク(1)は、ガスを貯蔵するための中空室(2)を取り囲む壁部と、各極キャップに設けられたそれぞれ1つの金属製の接続部材、いわゆるボス(4,4’)とを有し、前記壁部は、繊維強化プラスチックから成る補強層(6)と、密閉のための内側に位置するライナ(3)とを含む、圧力タンク(1)において、
両ボス(4,4’)は、請求項1から7までのいずれか1項記載のように構成されていることを特徴とする、圧力タンク(1)。
【請求項9】
一方の前記ボス(4)において、雄ねじ山(10)が右ねじ山として構成されていて、他方の前記ボス(4’)において、前記雄ねじ山(10)が左ねじ山として構成されている、請求項8記載の圧力タンク(1)。
【請求項10】
前記ライナ(3)の、前記雄ねじ山(10)に適合する雌ねじ山が、前記ライナにおいて切削により製造されている、請求項8または9記載の圧力タンク(1)。
【請求項11】
密閉のために、前記ボス(4,4’)に結合されたブシュ(7)と、押圧リング(8)と、ばね要素(9)とが設けられ、前記ばね要素(9)が前記ブシュ(7)において支持されて、前記押圧リング(8)を前記ライナ(3)に押し付け、かつこれにより該ライナ(3)を前記ボスのシール面(4.2)に押し付けるように、構成されている、請求項8から10までのいずれか1項記載の圧力タンク(1)。
【請求項12】
前記押圧リング(8)は、前記ブシュ(7)と一緒に前記ばね要素(9)を完全に取り囲む、請求項8から11までのいずれか1項記載の圧力タンク(1)。
【請求項13】
前記押圧リング(8)は、前記ブシュ(7)に対して長手方向軸線(L)の方向で移動可能である、請求項8から12までのいずれか1項記載の圧力タンク(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス動力式の車両に組み付けるための、ガスを貯蔵する圧力タンクであって、圧力タンクが、中間領域では円筒形で、両端部においてアーチ形の極キャップにより閉じられている回転対称の細長い形状を有している、圧力タンクに関する。圧力タンクは、ガスを貯蔵するための中空室を取り囲む壁部と、各極キャップに設けられた金属製の接続部材、いわゆるボスとを有しており、壁部は、繊維強化プラスチックから成る補強層と、密閉のための内側に位置するライナとを含んでいる。
【0002】
さらに本発明は、このような圧力タンクのためのボスに関する。
【0003】
ガス動力式の車両は、例えば、ガス機関または駆動装置として電動モータを備えた燃料電池を有している。十分な燃料を貯蔵することができるように、とりわけ水素であり得るガスが、高圧下でタンク内に貯蔵される。このような圧力タンクにとって典型的には、圧力は200バールを上回り、しばしば600バールにまで、それどころか一部では700バールまたは875バールにまで達する。すなわち圧力タンクは、この圧力下で気密性でなければならないだけでなく、高い機械的な安定性も必要とする。
【0004】
従来技術において、ガス動力式の車両ための圧力タンクが公知である。この圧力タンクは、壁部を有しており、壁部は、密閉のために、例えば熱可塑性樹脂から成る、内側に位置するライナを含んでおり、かつ機械的な安定性を得るために、繊維強化プラスチックから成る補強層を含んでいる。好適には、補強層は巻き付けられていて、かつCFK層として構成されている。CFKは、炭素繊維強化プラスチックを表す。
【0005】
ボスは、貫通孔と接続ねじ山とを有している。2つのボスのうちの少なくとも一方のボスに、圧力タンクへの充填または圧力タンクからの制御されたガスの取出しを可能にするタンク用フィッティングが接続されている。他方のボスにおいて、貫通開口は、閉鎖体により密閉されている、またはこの他方のボスに別のタンク用フィッティングまたは安全弁が設けられている。
【0006】
このような圧力タンクでは、金属製の接続部材、つまりボスと、ライナとの間の結合部に特に注意が払われなければならない。なぜならば、この結合部において、製造時に大きな力が発生するとともに、後の運転中に、機械的に負荷が加えられた場合、内部圧力が変動する場合、また、温度変動が大きな場合にも、密閉性に関して高い要求が課せられるからである。特に、150kgを超える総質量を有する大型の水素圧力タンクでは、このことは大きな課題である。
【0007】
ボスとライナとの間の結合のために、従来技術において公知の様々な解決手段が存在する。したがって例えば、欧州特許出願公開第550951号明細書に示されているように、ライナ(内側のライニングと称される)とボス(環状のフランジと称される)との間で形状結合式の結合部を使用することができる。しかしながら、例えば鳩尾結合部であるこのような形状結合式の結合部は、今のところ、ライナの極キャップが射出成形法または類似の方法で製造される場合にしか製造可能ではない。
【0008】
射出成形法とは異なる別の方法においても、形状結合式の結合部を形成することができれば有利であろう。
【0009】
別の公知の可能性は、独国特許出願公開第102011010685号明細書、国際公開第2011/103687号および欧州特許出願公開第2115343号明細書に開示されている。これらの可能性において、ボス(基体もしくは金属体と称される)が、ライナ鍔(内側容器もしくはコア容器と称される)上にねじ被せられる。このためには、ボスが雌ねじ山を有している。密閉は、Oリングシールを支持する、ボス内にねじ込まれた金属製シリンダによって保証される。したがって、ライナは、外側のボスと内側の金属製シリンダとの間で緊締される。次いで、ボスの外面に、CFKから成る補強層が巻き付けられる。
【0010】
これらの公知の構成は、補強層の製造時に、特に、例えば燃料電池を用いて駆動されるべき商用車のために必要とされるような比較的大きな圧力タンクでは、困難を引き起こすという欠点を有しており、ボスは十分に位置固定されていない。商用車用のためのこのような新規の圧力タンクは、600mmまでの直径および2500mmの長さに達し得る。補強層は、通常、巻付け法で製造される。このためには、前製品として既にボスに結合されているライナが、巻取り機内に緊締されて、回転させられる。トルクは、1つまたは複数のボスを介してライナに導入される。ライナにはスライバまたはファイバロービングが巻き付けられる。この場合、プロセスに起因するロービングまたはスライバの引出し張力により、高い引張り力が接線方向でライナに作用する。したがって、巻付け時に、ボスとライナとの間の結合部に大きなトルクが作用する。梃子腕は、直径とともに増大し、比較的大きな圧力タンクでは複数のロービングが同時に巻き付けられるので、荷重は比較的大きな圧力タンクでは相応して比較的高くなる。従来公知の結合部の構成は、この増大した力に耐えることができない。ライナとボスとの間の結合部が損傷されると、この損傷は機械的な故障または非密閉性をもたらしてしまう。
【0011】
本発明の課題は、ライナとボスとの間のより良好な結合部を有し、これにより新規の比較的大きな圧力タンクをも簡単かつ確実に製造することができる、圧力タンクもしくは圧力タンクのためのボスを考案することにある。
【0012】
上記課題は、第1には請求項1記載のボスにより解決される。別の有利な特徴は、それぞれの従属請求項に挙げられている。
【0013】
本発明によれば、請求項1記載のボスは、ボスが、雄ねじ山を有しており、雄ねじ山が、ライナの適合する雌ねじ山に結合されてもよく、かつ雄ねじ山が、圧力タンクの長手方向軸線Lに対して同心に配置されていることを特徴とする。ボスに設けられた雄ねじ山を結合のために使用することによって、ボスの貫通孔の直径を増大させる必要なしに、このボス-ライナ結合部の直径を拡大し、ひいてはその負荷耐性を高めることができる。雄ねじ山におけるねじ山直径を増大させることにより、結合部はより高いトルクを伝達することができる。
【0014】
さらに、ボスに設けられた雄ねじ山、ひいてはボスとライナとの間の良好な結合部は、ライナが、ライナとボスとの間のシール面において力が加えられていないように働く。このことは、雄ねじ山が、シール面よりも半径方向で長手方向軸線tからさらに遠ざけられていて、ひいてはあらゆるトルク負荷が、さらに内側に位置するシール面から遠ざけられているため可能である。さらに、ボスとライナとの間の結合部における拡大された直径により、ボスとライナとの間の、さらに内側に位置するシール面も拡大されて、より良好に密閉されているように構成され得る。
【0015】
雄ねじ山が、少なくとも4個~最大10個のねじ条を有していると、特に良好な結合部が、同時に省スペースの、ひいては重量削減した構成において生じる。本明細書では、隣接するねじ山凹部を備えたねじ山隆起部から成る、周面において1周する1つの刻み目が、ねじ条と見なされる。
【0016】
特に好適な或る構成では、雄ねじ山は円筒形のねじ山として形成されており、ねじ山隆起部の尖端部に関して少なくとも60mm、好適には少なくとも90mm、最大で180mmの直径を有している。これにより、結合部の、後の巻付け過程のために十分に良好な負荷耐性が保証されると同時に、ボスの大き過ぎない重量も可能にされる。
【0017】
さらに、雄ねじ山が、一方の端部において、別のねじ山隆起部よりも低いねじ山隆起部を備えた少なくとも1つの不完全ねじ条を有していて、他方の端部において、別のねじ山凹部よりも小さなねじ山凹部を備えた1つの少なくとも不完全ねじ条、好適には少なくとも1つの完全なねじ条を有していると有利である。特に、ねじ山隆起部の高さは、ねじ山の一方の端部に向かって線形に減少する。つまり、ねじ山隆起部はその一方の端部に向かって連続的に減じられる。特に、ねじ山凹部の深さは、ねじ山の他方の端部に向かって線形に減少する。つまり、ねじ山凹部は、その他方の端部に向かって連続的に減じられる。ねじ山ピッチは、局所的にねじ山隆起部またはねじ山凹部に適合させることができる。
【0018】
特に好適には、低いねじ山隆起部を備えたねじ条は、中空室に面した端部に位置しており、小さなねじ山凹部を備えたねじ条は、補強層に面している端部に位置している。ライナの雌ねじ山は、相応して正反対に構成されている。
【0019】
このような特殊なねじ山は、ボスとライナとの間の形状結合部を成し、結合部の安定性を高める。ボスがライナ内にねじ込まれると、ねじ山のそれぞれの端部に設けられた、変更された不完全ねじ条または完全なねじ条により、ライナに対するボスの回転位置を、繰り返し精度をもって決定することができる。これにより、ボスに設けられた雄ねじ山は、ねじ込まれた状態において、ライナの雌ねじ山により正確に埋められて、これにより高い負荷を加えることができる結合部が達成される。さらに、製造精度が低く、これにより完全にねじ込まれていないボスにおいてさえ、ボスとライナとの間のねじ山において大きな間隙は残らない。なぜならば、ねじ山の端部におけるそれぞれのねじ山凹部が、より小さな体積を有しているからである。このことは、結合部の隙間が大きな場合には、甚大な内圧によって、普段は高い剪断力がライナに作用して、このライナを損傷してしまうので、有利である。
【0020】
圧力タンクを車両またはタンクモジュールにおいて良好に取り付けるための好適な1つの可能性は、ボスが、ホルダ内に収容するためのネック領域を含んでいるように、ボスを構成することである。ホルダは、ボスのネック領域を取り囲み、これにより圧力タンクの重量を支持することができる。このことは、圧力タンクの壁部上での緊締ベルトを用いた圧力タンクの従来通常であった取付けに対する利点をもたらす。
【0021】
特に、ネック領域は、ネック領域の最も細い箇所で測定して、外径の少なくとも50%である長さを有しており、長さが、好適には40mm~80mmであり、特に好適にはネック領域が、この長さにおいて円筒形の外側輪郭を備えて形成されている。これによりネック領域は、ホルダにおける安定的な収容部を形成するために十分に長い。
【0022】
本発明による別の或る構成では、ボスが、長手方向軸線(L)に対して垂直に配置されている、または長手方向軸線(L)と70°~110°の角度を形成する、環状のシール面をさらに有している。このシール面に、ライナが付加的に、例えばばね要素により押し付けられ得るので、密閉はさらに改良される。
【0023】
特にボスは、雌ねじ山として構成されたねじ込みねじ山を有していてもよく、このねじ込みねじ山を介して、ブシュをねじ込むことができる。このブシュは、ばね要素によりライナをボスのシール面に押し付けるために働く。
【0024】
上記課題は、他方では請求項8記載の圧力タンクにより解決される。別の有利な特徴は、それぞれの従属請求項に挙げられている。
【0025】
本発明に係る圧力タンクは、該圧力タンクが本発明に係る2つのボスを含んでいることを特徴とする。したがって、両ボスが雄ねじ山を介して、この雄ねじ山に適合する雌ねじ山を有するライナに結合されている。このような圧力タンクは、例えばまずは前製品を形成することにより製造することができる。ライナは、熱可塑性樹脂、特にポリアミドから、例えばブロー成形法で製造され、次いで両ボスがライナ内にねじ込まれる。
【0026】
別の或る方法ステップにおいて、ライナとボスとから製造された前製品に、繊維強化プラスチック、特にCFK(炭素繊維強化プラスチック)から成るテープが、圧力タンクの補強層を形成するために巻き付けられる。テープは、好適には既に、巻付け後に硬化させられる適切なプラスチック樹脂(いわゆるトウプレグ)で浸漬されている。このようなトウプレグ(Towpreg)は、巻付け時にさらに高い引張り力をもたらす。なぜならば、トウプレグは、粘性の樹脂に基づき、貯蔵ボビンから繰り出すために比較的高い引出し力を必要とするからである。本発明によるボスの構成により、ライナとの結合部は、従来技術による結合部におけるよりも大幅に負荷を加えることができるようになっており、これによっていずれの場合も、結合箇所を損傷することなしに、円滑な巻付けが保証されている。
【0027】
さらに、一方のボスにおいて、雄ねじ山が右ねじ山として構成されていて、他方のボスにおいて、雄ねじ山が左ねじ山として構成されており、ライナが各側においてに対応して適合する雌ねじ山を有していると、有利である。これにより、両ボス-ライナ結合部は、1つの共通の回転方向で比較的高い回転力を受け止めることができ、これにより巻取り過程中のねじり出しに対してより良好に保護されている。したがって、この構成では、巻取り過程時の駆動を、両ボスを介して行うことができる。
【0028】
代替的には、両ボスが同一の回転方向の雄ねじ山を備えて(両ボスが右ねじ山を備えている、または両ボスが左ねじ山を備えて)構成されていてもよい。これにより、その都度両ボスのうちの一方のボスがトルクを受け止めることによって、前製品および圧力タンクにおいて両回転方向のトルクを受け止めることができる。
【0029】
好適には、ライナの、雄ねじ山に適合する雌ねじ山は、ライナにおいて切削により製造される。これにより、正確に適合する雌ねじ山を形成することができ、このことは、結合部の密閉性および負荷耐性を高める。さらに、ボスのねじ込み時の亀裂形成の恐れが減じられる。なぜならば、雄ねじ山が、ライナの表面に食い込む必要がないからである。
【0030】
ライナとボスとの間の密閉は、密閉のためにボスに結合されたブシュと、押圧リングと、ばね要素とが設けられ、ばね要素がブシュに支持されて、押圧リングをライナに押し付け、かつこれによりライナをボスのシール面に押し付けるように、構成されている場合に、改善することができる。
【0031】
好適な或る変化形では、ブシュが、ねじ込みねじ山を介してボスに取り付けられており、特に押圧リングが押し付けられる力を、ブシュを介して変化させることができる。したがって例えば、ブシュが、ボスに設けられた雌ねじ山に係合する雄ねじ山を有していてもよい。ボス内へのブシュの様々な深さのねじ込みによって、ブシュと押圧リングとの間のばねを、様々な強さで圧縮することができる。したがって、予荷重を意図的に調節することができる。
【0032】
代替的には、ブシュは、緊締部を介してボスに取り付けられていてもよい。この場合、緊締部は、ばね力によって解除することができないように構成されていなければならない。
【0033】
ボスに結合可能なブシュと、押圧リングと、ばね要素とは、ブロー成形法でのライナの製造時に、いわゆるブローピンに配置されていてもよい。ブロー成形法では、ライナ用のプラスチックがノズルから押し出され、これにより、まずチューブが生じる。次いで、ブロー成形工具の2つ以上の部分が組み合わせられ、これにより、圧力タンクのために形成すべきライナの形状のキャビティが形成される。このキャビティ内に、押出されたチューブが位置する。いわゆるブローピン、つまりノズルを介して、ガスがチューブ内に吹き込まれ、これによりチューブがブロー成形工具の内面に当て付けられる。これにより、ライナは所望の形状になる。プラスチック材料の固形化後に、ライナは離型することができる。ブローピンは除去される。好適には、ライナは熱可塑性プラスチック材料、例えばポリアミドから製造される。熱可塑性のプラスチックは、冷却後に固化する。これにより、押圧リングとばね要素とは、ライナの製造後にライナの内面に位置することが可能であり、ブシュが後からボスに結合されると、ばね要素が、ブシュに支持されて、押圧リングをライナに押し付け、かつライナをブシュの面に押し付けることができる。
【0034】
この構成における主要な利点は、ばね要素に基づいて、かつブシュおよび押圧リングを備えた2部分から成る構成に基づいて、密閉するための予荷重をライナとボスとの間のシール面に加えることができる、という点にある。シール面は、ライナがボスに押し付けられる領域に位置している。このようにして形成された予荷重に基づいて、例えば内圧が小さな場合、または温度差による膨張時にも、常に十分な密閉性が与えられている。さらに、ばね力の調整された調節により、ライナの過剰な押圧、ひいては非密閉性をもたらす変形を回避することができる。
【0035】
ばね要素とは、本明細書では、圧縮時に十分な弾性的なばね力を加えることができる要素であると理解される。例えばばね要素は、いわゆる「ばねプレート(Federfluegel)」を有する、ばね鋼から成る環状の要素として形成されていてもよく、特にばね要素は、U字形またはV字形の横断面を有していてもよい。代替的には、ばね要素を、ブシュと押圧リングとの間に配置された複数の板ばねまたはコイルばねから形成することができる。ばねの別の種類および形状を使用することもできる。別のばね材料として、例えば弾性的なポリマ(エラストマまたは架橋された熱可塑性樹脂)または繊維複合プラスチックから成るばね要素を使用することができる。
【0036】
機能を持続的に保証するためには、押圧リングが、ブシュと一緒にばね要素を完全に取り囲んでいると有利である。したがって、ばね要素は保護され、所望の位置に留まる。さらにこの構成は、より簡単な組付けも提供する。これらの利点は、とりわけ、既にブロー成形法でのライナの形成時にも有利に作用する。「完全に取り囲む」とは、この意図において、個別の開口または間隙がまだ存在している場合にも当てはまる。完全に封止されている必要はない。
【0037】
予荷重が良好に形成され、良好な密閉性が得られるようにするために、押圧リングは、ブシュに対して長手方向軸線Lの方向で移動可能である。したがって押圧リングは、シール面にわたる均一な圧着ひいては信頼性のよい密閉が達成されるように、剛性に構成することができる。
【0038】
好適には、ブシュは、ライナと面状に接触しないように配置されている。密閉のための圧着は、押圧リングの面を介してのみ伝達される。
【0039】
本発明の別の有利な特徴を、実施例に基づき図面を参照しながら説明する。挙げられた各特徴は、図示された組合せにのみにおいて有利に実現されるだけでなく、個別に互いに組み合わせられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】本発明に係る圧力タンクの概略図である。
図2】本発明による構成における、ボスと壁部との間の結合部を示す詳細図である。
図3】雄ねじ山を備えた、本発明に係るボスを示す図である。
図4】本発明に係るボスの特別な雄ねじ山を示す概略図である。
【0041】
以下に、図面をより詳しく説明する。同一あるいは類似の構成部材または構成要素には同一の参照符号が付されている。
【0042】
図1は、両極キャップにおいてそれぞれ1つのボス4,4’を備えた圧力タンク1を示している。ボス4には、ガスを充填して、制御して取り出すためのタンク用フィッティング5がねじ込まれている。ボス4’は、閉鎖体により密閉されている。代替的には、ボスは、安全弁を収容することができる。圧力タンク1の壁部は、中空室2を取り囲んでいて、内側に位置するライナ3と補強層6とにより形成される。ライナ3は、好適には熱可塑性のプラスチック、例えばポリアミドから成っており、本発明による方法では、ブロー成形法において製造される。補強層6は、繊維強化プラスチック、好適にはCFKから成るテープの巻付け法により製造される。圧力タンク1は、長手方向軸線Lを中心として回転対称である。このような圧力タンクでは、ボス4,4’とライナ3との間の密閉性および結合部に特に注意が払われなければならない。特に、十分な航行距離を可能にするために商用車において必要とされるような大きな圧力タンクでは、ボスとライナとの間の良好な結合は大きな課題である。ボス4,4’は、本発明によれば雄ねじ山を介してライナ3にねじ締結されている。好適には、一方のボス4は、右ねじ山を有していて、他方のボス4’は、左ねじ山を有している。
【0043】
図2は、圧力タンク1の一部Bを拡大して示しており、これにより、ボスとライナとの間の結合を改善するための本発明による構成が確認可能である。ボス4は、雄ねじ山10を有している。ライナ3は、対応して適合する雌ねじ山を有している。好適には、この雌ねじ山は、ライナ3が例えばブロー成形法で形成された後に、切削により製造されている。雄ねじ山10の比較的大きな直径に基づいて、結合部は比較的大きな負荷に耐えることができる。したがって、補強層6のためのテープの円滑な巻付けが可能である。
【0044】
付加的にボスがシール面4.2を有している。押圧リング8およびばね要素9は、ライナ3の内部、つまり中空室2内に位置している。ボス4に結合されているブシュ7を介して、ばね要素9に予荷重が加えられており、ばね要素9は、押圧リング8をライナ3に押し付け、ひいてはライナ3をボス4に押し付けている。ボス4とブシュ7との間の結合部は、ねじ込みねじ山12を介して形成されており、ブシュ7上には対応する雄ねじ山がある。ブシュ7とライナ3とは面状に接触しておらず、単にライナ3の端面においていくらかの接触が生じている。ボスのシール面4.2へのライナ3の圧着は、押圧リング8を介してのみ行われる。この押圧リング8は、ブシュ7に対して可動であり、長手方向軸線Lの方向に移動させられる。押圧リング8とブシュ7とは一緒にばね要素9を取り囲んでいて、これによりばね要素9は良好に保護されている。さらに、これによりこれらの構成要素は良好に組み付けられる。このために、ボス4の貫通穴を通って挿入され得る特殊工具が使用される。
【0045】
ライナ3に押し付けられる押圧リング8の面と、ボス4に押し付けられるライナ3の面とは、長手方向軸線Lに対して実質的に垂直に向けられている。同様に、ばね要素9が支持されているブシュ7の鍔は、長手方向軸線Lに対して実質的に垂直に配置されている。したがって、ねじ締結部12によって、ばね要素9のばね力は、完全に押圧リング8を介して、ボス4とライナ3との間のシール面に伝達される。最大+/-20°の、これらの面、特にシール面4.2の傾斜位置により、常にまだ十分な力伝達を達成することができる。さらに、シール面4.2の傾斜位置は、ライナ製造中のシール鍔からのより良好な脱気のために寄与する。この傾斜位置により、金型半部の組み合わせ時に空気がより良好に押し潰し箇所から漏れ出ることができる。
【0046】
押圧リング8がライナ3をボス4に押し付けているボス4の領域は、シール面4.2または締付け位置(Drosselstelle)と呼ばれる。圧力タンク内でのガス内圧の密閉、ひいては締付けは、ばね要素9のばね力およびガス内圧自体に基づくボス4に対するライナ3の圧着により行われる。
【0047】
押圧リング8は、ばね要素9が接触している側で、好適には、力伝達のためにできるだけ大きな接触面が使用されるように成形されている。この場合、押圧リング8は、U字形の横断面を有するばねリングの弧に相当する湾曲した形状を有している。
【0048】
本発明による構成のためには、ここでは例として示され、使用されているばね要素とは別のばね要素も使用することができる。
【0049】
さらにボス4には、雌ねじ山11が設けられており、この雌ねじ山11を介して、例えばタンク用フィッティング、安全弁または閉鎖体をねじ込むことができる。さらにボスは、圧力タンクを車両に取り付けるためにホルダに収容されるように適しているネック領域4.1を有している。
【0050】
ライナ3との確実かつ安定的な結合のために、ボスに雄ねじ山10を備えた本発明による構成は、ここに図示されたボスの構成とは異なる構成においても使用することができる。ゆえに、例えばシール面4.2におけるライナ3とボス4との間の密閉を、別の手段によって改善することができる、または密閉を、図示された押圧リング8とは異なる形式で行うことができる。
【0051】
図3には、ライナと結合するための雄ねじ山10、シール面4.2およびネック領域4.1を備えた、ボス4の本発明による構成が図示されている。ネック領域4.1と雄ねじ山10との間には、鍔が位置しており、鍔には、後に補強層のためのテープが巻き付けられ、この鍔は、完成した圧力タンク内では補強層とライナとの間に配置されている。好適には、雄ねじ山10は円筒形のねじ山である。雄ねじ山10の直径は、好適には60mm~180mmである。
【0052】
シール面4.2は、ライナが適切な装置によってこのシール面に押し当てられ、これにより内圧に対して密閉された締付け位置が生じるように設けられている。
【0053】
付加的に、シール面4.2に、数10分の1ミリメートルの高さの環状の隆起部が設けられ得る。これらの隆起部は、接触しているライナ内に押し入り、したがってより良好な密閉のために働く。
【0054】
さらにボスは、圧力タンクを車両に取り付けるためにホルダに収容されるように適しているネック領域4.1を有している。好適には、ネック領域は、円筒形の外側輪郭を備えて構成されていて、かつ少なくともこの外径aの50%の長さbを有している。
【0055】
図4は、ボス4の、本発明による特別な雄ねじ山10を断面図で示している。ねじ山隆起部10.1は、外径dに至るまで延びていて、ねじ山隆起部10.4を除いて、同一の高さを有している。ねじ山凹部10.2も同様に、ねじ山凹部10.3を除いて、同一の深さを有している。ねじ山隆起部10.1とねじ山凹部10.2とから成る一周するそれぞれ1つの刻み目が1つのねじ条を形成する。ここに図示された雄ねじ山10は、7個のねじ条を有している。
【0056】
雄ねじ山の一方の端部における不完全ねじ条または完全なねじ条は、より小さな高さを有するねじ山隆起部10.4を有している。特に、それぞれのねじ山隆起部の高さは、雄ねじ山のこの端部に向かって線形に減少してもよい。この端部は、圧力タンクの中空室2に面している。
【0057】
補強層もしくはボス4の上述の鍔に面している、雄ねじ山の他方の端部には、より小さな深さを有するねじ山凹部10.3を有する不完全ねじ条または完全なねじ条が配置されている。特に、ねじ山凹部は、雄ねじ山のこの端部に向かって線形に減少するように構成されていてもよい。
【0058】
ねじ山の特別な構成に基づいて、対応して適合された正反対のねじ山を備えたライナが、回転方向の位置決めが正確に予め規定されているようにねじ被せられてもよく、このことは上述の利点を提供する。
【符号の説明】
【0059】
1 圧力タンク
2 中空室
3 ライナ
4,4’ ボス
4.1 ネック領域
4.2 シール面
5 タンク用フィッティング
6 補強層
7 ブシュ
8 押圧リング
9 ばね要素
10 雄ねじ山
10.1 ねじ山隆起部
10.2 ねじ山凹部
10.3 ねじ山凹部
10.4 ねじ山隆起部
11 雌ねじ山
12 ねじ込みねじ山
a ネック領域の外径
b ネック領域の長さ
d 雄ねじ山の直径
L 圧力タンクおよびボスの長手方向軸線
R 圧力タンクおよびボスの半径方向
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】