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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】繊維芽細胞活性化タンパク質阻害剤
(51)【国際特許分類】
   C07D 401/14 20060101AFI20231222BHJP
   A61K 31/555 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20231222BHJP
   A61K 51/04 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
C07D401/14 CSP
A61K31/555
A61K31/4709
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P29/00
A61P9/10
A61P19/04
A61K51/04 200
A61K51/04 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561418
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-28
(86)【国際出願番号】 CN2021139591
(87)【国際公開番号】W WO2022135326
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】202011519183.X
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523237361
【氏名又は名称】ブームレイ ファーマシューティカルズ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BOOMRAY PHARMACEUTICALS CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Building 7,No.19 Yong’an Road,Suzhou High-tech Zone,Suzhou City,Jiangsu Province,215011,China
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】リュー,ジボ
(72)【発明者】
【氏名】シュー,メンキン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ジュンイ
【テーマコード(参考)】
4C063
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA03
4C063BB07
4C063CC47
4C063DD14
4C063EE01
4C084AA12
4C084MA17
4C084MA66
4C084NA14
4C084ZA45
4C084ZA96
4C084ZB11
4C084ZB26
4C084ZC02
4C084ZC78
4C085HH01
4C085JJ02
4C085KA09
4C085KA36
4C085KB11
4C085KB12
4C085KB15
4C085LL01
4C085LL18
4C085LL20
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC58
4C086DA31
4C086GA07
4C086GA08
4C086GA12
4C086GA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZA45
4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB26
4C086ZC02
4C086ZC78
(57)【要約】
【要約】本開示は、一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、立体異性体または溶媒和物を提供し、ここで、Cはキレート剤ユニットであり、ABはアルブミン結合ユニットであり、FAPIは線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤ユニットである。本開示は、さらに上記化合物及び放射性核種のキレート、医薬組成物、及び疾患の診断及び治療のための線維芽細胞活性化タンパク質の阻害剤としてのそれらの用途を提供する。
C-AB-FAPI (I)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体または溶媒和物であって、
C-AB-FAPI (I)
ここで、
Cはキレート剤ユニットであり、
ABはアルブミン結合ユニットであり、
FAPIは線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤ユニットである。
【請求項2】
Cユニットが以下から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
FAPIユニットが以下から選択される、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
Cユニットは
FAPIユニットは
である、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
ABユニットが4-ヨード-フェニル末端基
を含み、好ましくは、前記ABユニットが
から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
ABユニットが、FAPIユニットの末端
とアミド結合を形成することによってFAPIユニットに結合し、ABユニットがCユニットの末端カルボニルとアミド結合を形成することによってCユニットに結合する、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項7】
前記化合物が、
またはその薬学的に許容される塩、異性体または溶媒和物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物及び放射性核種を含むキレート。
【請求項9】
前記放射性核種が、18F51Cr、67Ga、68Ga、111In、99mTc、186Re、188Re、139La、140La、175Yb、153Sm、 166Ho、86Y、88Y、90Y、149Pm、165Dy、169Er、177Lu、47Sc、142Pr、159Gd、212Bi、213Bi、72As、72Se、97Ru、109Pd、105Rh、101mRh、119Sb、128Ba、123I、124I、131I、197Hg、211At、151Eu、153Eu、169Eu、201Tl、203Pb、212Pb、64Cu、67Cu、188Re、186Re、198Au、225Ac、227Th、及び199Agから選択される1種以上である、請求項8に記載のキレート。
【請求項10】
前記放射性核種が、68Ga、86Y、または177Luである、請求項9に記載のキレート。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の少なくとも1つのキレート、任意に、及び薬学的に許容される賦形剤を含むか、またはそれらからなる医薬組成物。
【請求項12】
被験者における線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤(FAP)の過剰発現を特徴とする疾患の診断または治療のために用いられる試薬の調製における、請求項8~10のいずれか一項に記載のキレートまたは請求項11に記載の医薬組成物の用途。
【請求項13】
線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の過剰発現を特徴とする疾患は、癌、慢性炎症、アテローム性動脈硬化、線維症、組織リモデリング及び瘢痕疾患から選択され、好ましくは、癌は乳癌、膵臓がん、小腸がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、肝細胞がん、食道がん、下咽頭がん、上咽頭がん、喉頭がん、骨髄腫瘍細胞、膀胱がん、胆管がん、腎明細胞がん、神経内分泌腫瘍、発がん性骨軟化症、肉腫、CUP(原発不明がん)、胸腺がん、神経膠腫、神経膠腫、星状細胞腫細胞腫瘍、子宮頸がん及び前立腺がんから選択される1種以上である、請求項12に記載の用途。
【請求項14】
請求項8~10のいずれか一項に記載のキレートまたは請求項11に記載の医薬組成物、及び疾患の診断及び治療のためのマニュアルを含むか、またはそれらからなる試薬キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年12月21日に提出された中国特許出願番号202011519183.Xの優先権を主張するものである。前記出願は、参照によって全体的に本明細書に組み込まれる。
【0002】
[技術分野]
本開示は、医学的治療及び診断の分野に関し、特に線維芽細胞活性化タンパク質を阻害するための化合物、キレート、組成物及びその用途に関する。
【0003】
[背景技術]
腫瘍は人々の健康を脅かす第2位死因である。腫瘍は、悪性細胞の集合だけでなく、血管細胞、炎症細胞、線維芽細胞を含む間質細胞の集合とも考えることができる。乳がん、結腸がん、膵臓がんなどの線維増殖反応を伴う腫瘍では、間質が腫瘍内に90%以上存在する場合がある。癌関連線維芽細胞(CAF)と呼ばれる腫瘍間質内の線維芽細胞の亜集団は、腫瘍の増殖、移動、進行、さらには化学療法に対する耐性及び免疫抑制に関与している。
【0004】
腫瘍周囲の腫瘍微小環境(TME)は腫瘍の発生及び進行に重要な役割を果たしており、TMEは活性化癌関連線維芽細胞(CAF)を中心としている。線維芽細胞活性化タンパク質(fibroblast activation protein、FAP)は、ジペプチジルペプチダーゼ(DPP)ファミリーに属するII型膜貫通セリンタンパク質分解酵素である。FAPは90%以上の上皮性悪性腫瘍のCAFに選択的に発現し、正常組織ではほとんど発現せず、特別な生物学的特徴及び遺伝子の安定性を備えている。FAPはさまざまな腫瘍の微小環境で広く発現しているため、固形腫瘍全体の大部分を占める膵臓がん、乳がん、肺がんなどのさまざまな腫瘍実体を標的にすることができる。したがって、FAPは腫瘍の早期診断のための生物学的マーカーとして使用できるほか、標的療法の良好な生物学的特性も備えており、悪性腫瘍の臨床診断及び治療において重要な役割を果たすことが期待される。
【0005】
現在、FAP阻害剤の研究は十分に進んでおらず、最初に臨床試験に投入されたFAP活性阻害剤はタラボスタット(Talabostat)であるが、さまざまながんに対して不十分な臨床活性が示されたため、さらなる開発は行われてない。その後、一部の研究者は131I標識抗FAP抗体シブロツズマブ(sibrotuzumab)を腫瘍治療の研究に使用したが、クリアランス率が低く、臨床活性が欠如しているなどの欠陥がある。
【0006】
過去2年間で、ドイツのハイデルベルク大学のハーバコルン.ウーヴェ(Haberkorn Uwe)チームは、診断及び治療のためにFAPを標的とする一連のキノリンベースの小分子放射性医薬品を開発した(WO2019154886A1を参照)。得られた阻害剤は、ヒト及びマウスのFAPに迅速、且つほぼ完全に結合し、且つ、DPPファミリーのメンバーであるDPP4と交差反応しないため、さらなる発展のために基礎を築いた。このようなFAP阻害剤(FAPI)をキレート剤 DOTAと接続させることにより、良好な薬物動態特性を備えた放射性核種トレーサーが形成された。トレーサーの中で最も注目されているのがFAPI-04であり、それはFAPとの親和性が高く、血液中から速やかに除去され、腎臓からも除去される。これらの特性により、68Ga- FAPI -04 PET/CTの腫瘍イメージングが高コントラスト且つ高感度で実現される。しかし、FAPI-04は生体内で急速に溶出するため、腫瘍核種治療への応用は制限されている。したがって、その優れたターゲティング特性を維持しながら、FAP阻害剤の小分子の循環時間が短いという問題を解決することが特に望ましい。
【0007】
[発明の内容]
本開示の一態様は、一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、立体異性体または溶媒和物を提供し、
C-AB-FAPI (I)
ここで、Cはキレート剤ユニットであり、ABはアルブミン結合ユニットであり、FAPIは線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤ユニットである。
【0008】
いくつかの実施形態において、一般式(I)のCユニットは以下から選択される:
【0009】
いくつかの実施形態において、一般式(I)のFAPIユニットは以下から選択される:
【0010】
いくつかの実施形態において、一般式(I)のABユニットは、4-ヨード-フェニル末端基
を含む。
【0011】
いくつかの実施形態において、一般式(I)のABユニットは、
から選択される。
【0012】
いくつかの実施形態において、ABユニットが、FAPIユニットの末端
とアミド結合を形成することによってFAPIユニットに結合し、ABユニットがCユニットの末端カルボニルとアミド結合を形成することによってCユニットに結合する。
【0013】
いくつかの実施形態において、一般式(I)の化合物が、
またはその薬学的に許容される塩、異性体または溶媒和物である。
【0014】
本開示の別の態様は、上記一般式(I)の化合物及び放射性核種を含むキレートを提供する。
【0015】
かの実施形態において、放射性核種が、18F51Cr、67Ga、68Ga、111In、99mTc、186Re、188Re、139La、140La、175Yb、153Sm、 166Ho、86Y、88Y、90Y、149Pm、165Dy、169Er、177Lu、47Sc、142Pr、159Gd、212Bi、213Bi、72As、72Se、97Ru、109Pd、105Rh、101mRh、119Sb、128Ba、123I、124I、131I、197Hg、211At、151Eu、153Eu、169Eu、201Tl、203Pb、212Pb、64Cu、67Cu、188Re、186Re、198Au、225Ac、227Th、及び199Agから選択される1種以上である。
【0016】
いくつかの実施形態において、放射性核種が、68Ga、86Y、または177Luである。
【0017】
本開示のさらに別の態様は、少なくとも1つの上記一般式(I)の化合物、任意に、及び薬学的に許容される賦形剤を含むか、またはそれからなる医薬組成物を提供する。
【0018】
本開示のさらに別の態様は、さらに、被験者における線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の過剰発現を特徴とする疾患の診断または治療のために用いられる試薬の調製における、上記キレートまたは医薬組成物の用途を提供する。
【0019】
本開示のさらに別の態様は、さらに、治療を必要とする被験者に有効量の上記キレートまたは医薬組成物を投与することによって、被験者における線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の過剰発現を特徴とする疾患の診断または治療のための方法を提供する。
【0020】
本開示のさらに別の態様は、さらに、被験者における線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の過剰発現を特徴とする疾患の診断または治療のための上記キレートまたは医薬組成物を提供する。
【0021】
いくつかの実施形態において、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の過剰発現を特徴とする疾患は、癌、慢性炎症、アテローム性動脈硬化、線維症、組織リモデリング及び瘢痕疾患から選択され、好ましくは、癌は乳癌、膵臓がん、小腸がん、結腸がん、直腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、肝細胞がん、食道がん、下咽頭がん、上咽頭がん、喉頭がん、骨髄腫瘍細胞、膀胱がん、胆管がん、腎明細胞がん、神経内分泌腫瘍、発がん性骨軟化症、肉腫、CUP(原発不明がん)、胸腺がん、神経膠腫、神経膠腫、星状細胞腫細胞腫瘍、子宮頸がん及び前立腺がんから選択される1種以上である。
【0022】
本開示のさらに別の態様は、さらに、上記キレートまたは医薬組成物、及び疾患の診断及び治療のためのマニュアルを含むか、またはそれらからなる試薬キットを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の実施例の技術的解決策をより明確に説明するために、実施例の添付図面を以下に簡単に紹介するが、以下の説明における添付図面は、本発明のいくつかの実施形態にのみ関連するものであり、本発明を限定するものではないことは明らかである。
図1図1は、68Ga-TEFAPI-06を用いた健康なマウスイメージングによる生体内での半減期の測定結果を示す。
図2図2は、膵臓がんのPDXマウスモデルにおける68Ga-TEFAPI-06を用いたPETイメージングの結果を示す。
図3図3は、膵臓がんのPDXマウスモデルにおける86Y-TEFAPI-06を用いた長期PETイメージング結果を示す。
図4図4は、PDX膵臓癌マウスにおけるTEFAPI-06の競合阻害実験の結果を示す。
図5図5は、177Lu-TEFAPI-06によるPDX膵臓癌マウスの治療の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本開示の実施例の目的、技術的解決策及び利点をより明確にするために、本開示の実施例の技術的解決策を、本開示の実施例の添付図面と併せて以下に明確かつ完全に説明する。明らかに、記載された実施例は、本開示の実施例の一部であり、すべての実施例ではない。記載された本開示の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働なしに得た他のすべての実施例は、本発明の保護範囲内に含まれるものとする。
【0025】
本発明は、本発明の本質的な特質から逸脱することなく、他の特定の形態で実施することができる。本発明の任意の実施形態及びすべての実施形態は、矛盾がないことを前提として、他の実施形態または複数の他の実施形態の技術的特徴と組み合わせて追加の実施形態を得ることができることを理解されたい。本発明は、そのようなさらなる実施形態をもたらす組み合わせを含む。
【0026】
本開示で言及されるすべての刊行物及び特許は、参照によりその全体が本開示に組み込まれる。参照により組み込まれる出版物及び特許で使用される使用法または用語が、本開示で使用される使用法または用語と矛盾する場合、本開示での使用法及び用語を基準とする。
【0027】
本明細書で使用されるセクションの見出しは、記事の整理のみを目的としており、記載される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0028】
特に定義されていない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、特許請求された主題が属する技術分野における通常の意味を有する。用語に対して複数の定義が存在する場合は、本明細書の定義を基準とする。
【0029】
特に明記しない限り、何らかの種類の範囲が開示または請求される場合、該範囲が合理的に包含し得る可能性のある各値が、そこに包含される部分範囲を含めて、個別に開示または請求されることが意図されている。例えば、置換基の数が1~5である場合は、該範囲内の整数を示し、ここで、1~5は、1、2、3、4、5を含み、また1~4及び1~3の部分範囲も含むと理解されるべきである。
【0030】
本開示の明細書は、化学結合の法則及び原理に従って解釈されるべきである。場合によっては、所定の位置に置換基を導入するために水素原子を除去する場合がある。
【0031】
本開示で使用される用語「含む」、「含有」、または「包含」など類似の用語は、その用語の前に現れる要素が、その単語の後に列挙される要素及びそれらの等価物をカバーすることを意味し、言及されていない要素を排除するものではない。本明細書で使用される「含有」または「含む(包含)」という用語は、開放型、半閉鎖型、及び閉鎖型であり得る。換言すれば、前記用語には、「基本的に~からなる」または「~からなる」も含まれる。
【0032】
本出願における「薬学的に許容される」という用語は、化合物または組成物が、製剤を構成する他の成分及び/またはそれを用いて疾患または症状を予防または治療するヒトまたは哺乳動物と化学的及び/または毒物学的に適合性があることを意味する。
【0033】
本出願における「被験者」または「患者」という用語には、ヒト及び哺乳類が含まれる。
【0034】
本出願の文脈では、特に反対の記載がない限り、用語「治療」には予防も含まれることがあり得る。
【0035】
本出願における「溶媒和物」という用語は、一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩と溶媒との組み合わせによって形成される複合体を指す。本明細書に記載の疾患または症状の診断または治療に使用される式(I)の化合物のすべての溶媒和物は、異なる特性(薬物動態学的特性を含む)を提供する可能性があるが、一旦被験者に吸収されると、式(I)の化合物の使用がそれぞれ式(I)の化合物の任意の溶媒和物の使用をカバーするように、式(I)の化合物が得られるということを理解されたい。
【0036】
「水和物」という用語は、上記用語「溶媒和物」における溶媒が水である場合を指す。
【0037】
さらに、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は溶媒和形態で単離することができ、したがって前記溶媒和物はいずれも本発明の範囲内に含まれることを理解されたい。例えば、式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩は、非溶媒和形態でも、薬学的に許容できる溶媒(水、エタノールなど)との溶媒和形態でも存在し得る。
【0038】
「薬学的に許容される塩」という用語は、本開示の化合物の比較的非毒性の付加塩を指す。例えば、S.M.Bergeらの「Pharmaceutical Salts」、J. Pharm. Sci. 1977、66、1-19を参照されたい。
【0039】
本開示の化合物の適切な薬学的に許容される塩としては、例えば、鎖または環内に窒素原子を担持するのに十分な塩基性を有する本開示の化合物の酸付加塩、例えば以下のような無機酸と形成する酸付加塩が挙げられる。例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸。以下のような有機酸と形成する酸付加塩が挙げられる。例えば、ギ酸、酢酸、アセト酢酸、ピルビン酸、トリフルオロ酢酸、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、安息香酸、サリチル酸、2-(4-ヒドロキシベンゾイル基)安息香酸、樟脳酸、桂皮酸、シクロペンタンプロピオン酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、パモ酸、ペクチン酸、過硫酸、3-フェニルプロピオン酸、ピクリン酸、ピバリン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、イタコン酸、スルファミン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ラウリル硫酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、2-ナフタレンスルホン酸、ナフタレンジスルホン酸、カンファースルホン酸、クエン酸、酒石酸、ステアリン酸、乳酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、アジピン酸、アルギン酸、マレイン酸、フマル酸、D-グルコン酸、マンデル酸、アスコルビン酸、グルコヘプタン酸、グリセロリン酸、アスパラギン酸、スルホサリチル酸、チオシアン酸が挙げられる。
【0040】
さらに、十分に酸性を有する本発明の化合物の別の適切な薬学的に許容される塩としては、ナトリウムまたはカリウムなどのアルカリ金属塩、カルシウムまたはマグネシウムなどのアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、または生理学的に許容されるカチオンを提供する有機塩基と形成する塩、例えば、N-メチルグルカミン、ジメチルグルカミン、エチルグルカミン、リジン、ジシクロヘキシルアミン、1,6-ヘキサメチレンジアミン、エタノールアミン、グルコサミン、サルコシン、セリノール、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、アミノプロピレングリコール、1-アミノ-2,3,4-ブタントリオールなどの物質と形成する塩が挙げられる。さらに、塩基性窒素含有基は、以下の試薬で四級化することが可能である:メチル、エチル、プロピル、ブチルの塩化物、臭化物、ヨウ化物などの低級アルキルハロゲン化物;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル、硫酸ジペンチルなどのジアルキル硫酸塩;デシル、ラウリル、ミリスチル、ステアリン塩化物、臭化物、ヨウ化物などの長鎖ハロゲン化物、ベンジル、臭化フェネチルなどのアラルキルハロゲン化物が挙げられる。
【0041】
当業者はまた、特許請求の範囲に記載の化合物の酸付加塩が、多くの既知の方法のいずれかによって前記化合物を適切な無機酸または有機酸と反応させることによって調製できることを認識するであろう。または、本開示の酸性化合物のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩は、それらを様々な既知の方法によって適切な塩基と反応させることによって調製される。
【0042】
本発明は、本開示の化合物のすべての可能な塩を含み、それらは単一の塩であってもよいし、任意の割合での前記塩の任意の混合物であってもよい。
【0043】
本出願で使用される「本開示の化合物」という用語は、文脈に応じて、式(I)で示される化合物、その薬学的に許容される塩、その溶媒和物、その薬学的に許容される塩の溶媒和物、及びそれらの混合物を含み得ることが理解されるべきである。
【0044】
本開示の化合物は、所望の様々な置換基の位置及び性質に応じて、1つまたは複数の不斉中心を含み得る。不斉炭素原子は(R)または(S)配置で存在することが可能であり、1つの不斉中心を有する場合はラセミ混合物、複数の不斉中心を有する場合はジアステレオマー混合物が得られる。場合によっては、中心結合が特定の化合物の2つの置換芳香環に接続されるなど、特定の結合を中心とした回転が妨げられることによる非対称の存在もあり得る。
【0045】
好ましい化合物は、より所望の生物学的活性を生み出す化合物である。本開示の化合物の単離、精製、または部分精製された異性体及び立体異性体、またはラセミ体混合物またはジアステレオマー混合物は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。このような物質の精製及び単離は、当技術分野の既知の標準的な技術によって達成することができる。
【0046】
一般式(I)の化合物に関して本開示で言及される「キレート剤ユニット」とは、キレート剤に由来する分子断片を指す。例えば、キレート剤ユニットは1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N,N’-四酢酸(DOTA)に由来する分子断片であり、それはDOTAのカルボキシル基を介してアミド
を形成することにより、一般式(I)の化合物に導入してもよい。
【0047】
一般式(I)の化合物に関して本開示で言及される「線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤ユニット」とは、線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤に由来する分子断片を指す。例えば、阻害剤がWO2019154886A1の表1及び表3に記載のFAPI系化合物である場合、 「線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤ユニット」は、該FAPI系化合物からR8を除いた分子断片である。
【0048】
一般式(I)の化合物に関して本開示で言及される「アルブミン結合ユニット」とは、アルブミンに対して高親和性を有する分子断片を指し、且つ、該分子断片は、キレート剤ユニットと線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤と結合した基を有する。
【0049】
一般式(I)の化合物に関して本開示で言及される「FAPIユニットとCユニットと一緒に形成」とは、一般式(I)の化合物においてFAPIユニットとCユニットとが直接接続していることを意味するものではなく、一般式(I)の化合物におけるFAPIユニットとCユニットとを抽出して接続(中間のアルブミン結合ユニットを除去)するという、仮想的な状況を指す。
【0050】
本開示で使用される単数形(例えば「1つ」)というのは、特に明記しない限り、複数の指示対象を含み得ることを理解されたい。
【0051】
特に明記しない限り、本開示は分析化学、有機合成化学、及び配位化学の標準命名法及び標準実験室の手順及び技術を採用する。特に明記しない限り、本開示は質量分析法及び元素分析の伝統的な方法を採用し、各手順及び条件は当該技術分野における従来の操作ステップ及び条件を参照することができる。
【0052】
本開示で使用される試薬及び出発物資は市販のものでもよく、従来の化学合成法によって調製してもよい。
【0053】
本明細書において、「任意」という用語を用いてある状況を説明する場合は、その状況が発生する場合もあれば発生しない場合もあるということを意味する。例えば、「任意に置換される」という用語は、非置換であるか、または非置換類似体が有する所望の特性を破壊しない少なくとも1つの非水素置換基を有することを意味する。例えば、医薬組成物に関して、本明細書で使用される「任意に、及び薬学的に許容される賦形剤」という表現は、薬学的に許容される賦形剤が医薬組成物中に存在してもよいし、存在しなくてもよいということを意味する。
【0054】
本開示において、特に明記しない限り、記載の「置換」の数は1以上であってもよく、複数ある場合には、2、3または4個であってもよい。また、記載の「置換」が複数ある場合、記載の「置換」は同一であっても異なっていてもよい。
【0055】
本開示において、特に明記しない限り、「置換」の位置は任意であり得る。
【0056】
本明細書で使用される「C1 ~ C10アルキル」という用語は、 1~10個の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖のアルカン鎖を指す。例えば、C1 ~ C6アルキルの代表例としては、メチル(C1)、エチル(C2)、n-プロピル(C3)、イソプロピル(C3)、n-ブチル(C4)、tert-ブチル(C4)、sec-ブチル (C4)、イソブチル(C4) 、n-ペンチル(C5)、3-ペンチル(C5)、ネオペンチル (C5)、3-メチル-2-ブタニル(C5)、tert-アミル(C5)、n-ヘキシル(C6)などが挙げられるが、これらに限定されない。「低級アルキル」という用語は、1~4個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖のアルキルを指す。「置換されたアルキル」とは、任意の利用可能な結合点において、1つ以上の置換基、好ましくは1~4個の置換基で置換されたアルキル基を指す。「ハロアルキル」という用語は、-CH2Br、-CH2I、-CH2Cl、-CH2F、-CHF2及び-CF3のような基を含むがこれらに限定されない、1つまたは複数のハロゲン置換基を有するアルキル基を指す。
【0057】
本明細書で使用される「アルキレン」という用語は、「アルキル」について上述したとおりであるが、2つの結合点を有する二価の炭化水素基を指す。例えば、メチレンは-CH2-基であり、エチレンは-CH2-CH2-基である。
【0058】
本明細書で使用される「アルコキシ」及び「アルキルチオ」という用語は、それぞれ酸素結合(-O-)または硫黄結合(-S-)を介して結合した上述したアルキル基を指す。「置換されたアルコキシ」及び「置換されたアルキルチオ」という用語は、それぞれ、酸素結合または硫黄結合を介して結合した置換されたアルキル基を指す。「低級アルコキシ」は、Rが低級アルキル(1~4個の炭素原子を含むアルキル)であるOR基である。
【0059】
本明細書で使用される「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、ヨウ素または臭素を指す。
【0060】
アルブミンは薬物担体としてますます広く使用されており、薬物の血行動態特性を改善し、それによって血中半減期を延長するためによく使用されている。アルブミンはヒトの血漿中に最も豊富に含まれるタンパク質であり、体内でさまざまな貯蔵及び輸送の役割を果たしている。腫瘍組織は正常な組織に比べて血管が豊富で、血管内皮間の隙間が大きいため、高分子物質であるアルブミンは、腫瘍組織には浸透できるが、正常組織には浸透できない。また、分子量が小さい物質は腫瘍間質からの除去が早いが、高分子は捕捉される。この効果は腫瘍組織における高分子の透過性強化及滞留効果(enhanced permeability and retention effect、EPR)としても知られている。さらに、腫瘍微小環境では、gp60受容体やSPARC134などのアルブミン結合受容体が高発現しており、これらによりさらにアルブミンが腫瘍付近に滞留される。したがって、抗がん剤の担体としてアルブミンを使用すると、これらの薬剤の半減期が改善されるだけでなく、腫瘍への薬剤の送達及び滞留も改善される。アルブミン薬物負荷システムには、主に、化学的結合及び物理的結合したアルブミン負荷薬物が含まれる。
【0061】
本開示では、アルブミン結合剤を、キレート剤ユニット及びFAP阻害剤ユニットに結合して、FAP及びアルブミンと二重標的化が可能な小分子化合物(TEFAPI)を形成することにより、FAPI分子の血液循環の半減期を延長し、腫瘍の摂取を増加させる目的を達成する。
【0062】
本開示は、一般式(I)の化合物、またはその薬学的に許容される塩、異性体または溶媒和物を提供し、
C-AB-FAPI (I)
ここで、Cはキレート剤ユニットであり、ABはアルブミン結合ユニットであり、FAPIは線維芽細胞活性化タンパク質阻害剤ユニットである。
【0063】
一実施形態において、Cユニットは以下から選択されるキレート剤に由来する:1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N,N’-四酢酸(DOTA)、エチルジアミン四酢酸(EDTA)、1,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、イミノ二酢酸、ジエチレントリアミン-N,N,N’,N’,N”-ペンタ酢酸(DTPA)、ビス-(カルボキシメチルイミダゾール)グリシンまたは6-ヒドラジノピリジン-3-カルボン酸(HYNIC)。
【0064】
例えば、Cユニットが
である場合、これは1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-N,N’,N,N’-四酢酸(DOTA)に由来し、DOTAの一つのカルボキシル基を介してアミド
を形成することにより、一般式(I)の化合物に導入されることが可能である。
【0065】
例えば、Cユニットが
である場合、これは11,4,7-トリアザシクロノナン-1,4,7-三酢酸(NOTA)に由来し、NOTAの一つのカルボキシル基を介してアミド
を形成することにより、一般式(I)の化合物に導入されることが可能である。
【0066】
一実施形態において、一般式(I)の化合物中のCユニットは、以下から選択される:
【0067】
一実施形態において、一般式(I)の化合物中のFAPIユニットは
から選択される。
【0068】
一実施形態において、一般式(I)の化合物中のFAPIユニット及びCユニットは以下の条件を満たす:
FAPIユニットとCユニットとを接続(中間のアルブミン結合ユニットを除去)する場合、接続によって得られる新規の化合物は以下から選択される:
【0069】
つまり、該実施形態において、一般式(I)の化合物は、化合物FAPI-02、FAPI-04、FAPI-21、FAPI-34、FAPI-42、FAPI-46、FAPI-52、FAPI-69、FAPI-70、FAPI-71、FAPI-72、FAPI-73、FAPI-74の分子構造にアルブミン結合ユニットABが挿入されたものとみなすことができる。化合物FAPI-02、FAPI-04、FAPI-21、FAPI-34、FAPI-42、FAPI-46、FAPI -52、FAPI-69、FAPI-70、FAPI -71、FAPI-72、FAPI-73、FAPI-74は、WO2019154886A1号においてFAP阻害剤として開示されている。
【0070】
好ましい実施形態において、一般式(I)の化合物中のFAPIユニット及びCユニットは以下の条件を満たす:
FAPIユニットと C ユニットとを接続(中間のアルブミン結合ユニットを除去)する場合、接続によって得られる新規の化合物は、FAPI-04、FAPI-21、またはFAPI-46から選択される。一実施形態において、一般式(I)の化合物中のFAPIユニット及びCユニットは、以下の条件を満たす:FAPIユニットとCユニットとを接続(中間のアルブミン結合ユニットを除去)する場合、接続によって得られる新規の化合物はFAPI-04である。
【0071】
一実施形態において、ABユニットは4-ヨード-フェニル末端基を含む。
【0072】
一実施形態において、ABユニットは
から選択される。
【0073】
一実施形態において、ABユニットは、 FAPIユニットの末端
とアミド結合を形成することによってFAPIユニットに結合し、ABユニットは、Cユニットの末端カルボニルとアミド結合を形成することによってCユニットに結合する。
【0074】
一実施形態において、一般式(I)の化合物は、
または、その薬学的に許容される塩、異性体または溶媒和物である。
【0075】
Jansenらによって設計された高親和性小分子FAP阻害剤(FAPI)に基づいて、Loktevらはまず、ヒト及びマウスの細胞におけるFAPに迅速に結合して内部移行できる放射性トレーサーFAPI-01及びFAPI-02を開発した。正常組織における集積が非常に少なく、クリアランスが速いため、PETイメージングにおいて高いコントラストが得られる。さらに、FAPI-02は、腎実質に保持されることなく腎クリアランスを通じて生体から迅速に除去されるため、治療用途に有益である。腫瘍への摂取及びトレーサー保持を最適化するために、一連のFAPI-02に基づいた化合物が開発された。そのうちのFAPI-04のPETイメージングでは、腫瘍での摂取が高く、滞留時間がより長く、且つ正常な臓器の活性が大幅に増加していないことが示された。 FAPI-04は、臨床試験において28種類のがん患者を対象にPETイメージング検査を行った結果、がん部位のみ摂取しており、正常組織にはほとんど摂取されていないという優れたがん標的特性を示し、現在該診断試薬はすでに臨床試験に適用されている。FAP標的が優れた治療標的でもあるため、転移性末期患者にとって、手術、放射線療法、化学療法などの従来の方法では腫瘍の進行を抑制し、患者の寿命を延ばすことができないため、FAP阻害剤を使用して放射性核種治療法を実行することは期待される治療法である。したがって優れた標的特性を維持するという前提の下で、FAP阻害剤の小分子の循環時間が短いという問題を解決することが期待される。
【0076】
TEFAPI-06は、FAPI-04の構造に4-(p-ヨードフェニル)酪酸誘導体構造を導入した構造である。FAPI-04の構造にこのようなアルブミンに対して高親和性を有するヨードベンゼン構造をに導入すると、生体内での線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)阻害剤の血液循環時間が延長され、腫瘍部位での特異的な高摂取が可能となる。PETイメージング検査によって画像学的代謝規則を測定した結果、血中半減期が元の26分から400分に延長されたことが判明した。ルテチウム177放射線療法実験では、マウスの腫瘍が大幅に抑制された。TEFAPI-06は、さまざまながんのイメージングや放射性核種担体に使用されることが期待される。
【0077】
本開示は、さらに以下を含むキレートを提供する:
上記一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩、異性体または溶媒和物、及び放射性核種。
【0078】
前記キレートにおいて、キレート剤ユニットは放射性核種と直接キレート化(例えば、68GaがDOTA由来のキレート剤ユニットとキレート化される)されるか、またはほかの金属とのキレート化によって間接的に放射性核種が導入(例えば、Al3+がDOTA由来のキレート剤ユニットとキレート化され、放射性核種18Fが対イオンとしてキレートに導入される)。
【0079】
一実施形態において、放射性核種は以下から選択される:18F 51Cr67Ga、68Ga、111In、99mTc、186Re、188Re、139La、140La、175Yb、153Sm、166Ho、86Y、88Y、90 Y、149Pm、165Dy、169Er、177Lu、47Sc、142Pr、159Gd、212Bi、213Bi、72As、72Se、97Ru、109Pd、105Rh、101mRh、119Sb、128Ba、123I、124I、131I、197Hg、211At、151Eu、153Eu、169Eu、201Tl、203Pb、212Pb、64Cu、67Cu、188Re、186Re、198Au、225Ac、227Th、及び199Ag。例えば、前記放射性核種は68Ga、86Y、または177Luである。
【0080】
本開示は、さらに以下を含むか、またはそれらからなる医薬組成物を提供する:
少なくとも1つの上記キレート、
任意に、及び薬学的に許容される賦形剤。
【0081】
一実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1つの上記キレートを含むか、またはそれらからなる。別の実施形態において、医薬組成物は、少なくとも1つの上記キレート及び薬学的に許容される賦形剤を含むか、またはそれらからなる。
【0082】
本開示の組成物はさらに必要に応じて、または所望に応じて、意図した投与経路に応じてキレートを調製するための薬学的に許容される賦形剤を含んでもよい。賦形剤には、希釈剤、崩壊剤、沈殿阻害剤、界面活性剤、流動促進剤、結合剤、滑沢剤、コーティング材料などが含まれるが、これらに限定されない。賦形剤は一般に、E.W.Martinによる「Remington’s Pharmaceutical Sciences」に記載されている。賦形剤の例には、モノステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスポビドン、イソステアリン酸グリセリル、モノステアリン酸グリセリル、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシオクタシルヒドロキシステアリン酸、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、乳糖、乳糖一水和物、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、結晶セルロースなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0083】
適切な場合、意図した投与経路に応じて前記組成物を調製するための試薬は、以下を含む:
酸味料(例としては、酢酸、クエン酸、フマル酸、塩酸、硝酸が挙げられるが、これらに限定されない);
アルカリ化剤(例としては、アンモニア水、炭酸アンモニウム、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、水酸化カリウム、ホウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン(triethanolamine)、トロラミン(trolamine)が挙げられるが、これらに限定されない);
緩衝剤(例としては、メタリン酸カリウム、リン酸水素二カリウム、酢酸ナトリウム、無水クエン酸ナトリウム、及びクエン酸ナトリウム二水和物が挙げられるが、これらに限定されない);など。
【0084】
WO2019154886A1には、哺乳類またはヒトにおける線維芽細胞活性化タンパク質の過剰発現を特徴とする疾患の診断または治療のためのFAPIシリーズ化合物及び放射性核種を含むキレートまたは組成物の使用が開示されている。本開示では、WO2019154886A1に開示されているFAPI化合物の構造にアルブミン結合ユニットを導入することにより、その優れたFAP標的化を維持すると共に、FAP阻害剤の循環時間を延長した。
【0085】
本開示の別の態様は、哺乳動物またはヒトにおける線維芽細胞活性化タンパク質の過剰発現を特徴とする疾患の診断または治療に使用するための上記キレートまたは組成物に関する。例えば、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)の過剰発現を特徴とする疾患は、癌、慢性炎症、アテローム性動脈硬化、線維症、組織リモデリング及び瘢痕疾患から選択され、好ましくは、癌は、乳癌、膵臓癌、小腸癌、結腸がん、直腸がん、肺がん、頭頸部がん、卵巣がん、肝細胞がん、食道がん、下咽頭がん、上咽頭がん、喉頭がん、骨髄腫細胞、膀胱がん、胆管がん、腎明細胞がん、神経内分泌腫瘍、発がん性骨軟化症、肉腫、CUP(原発不明癌)、胸腺癌、神経膠腫、神経膠腫、星状細胞腫、子宮頸癌、及び前立腺癌から選択される。
【0086】
本開示のさらに別の態様は、上記キレートまたは上記医薬組成物、及び疾患の診断または治療のための説明書を含むか、またはそれらからなる試薬キットに関する。好ましい実施形態において、前記疾患は、線維芽細胞活性化タンパク質の過剰発現を特徴とする上記疾患である。

[実施例]
【0087】
実施例の出発物質は、市販のもの及び/または有機合成分野の当業者に周知の様々な方法で調製することができる。有機合成分野の当業者であれば、以下に記載の合成方法における反応条件(溶媒、反応雰囲気、反応温度、実験時間、後処理を含む)を適宜選択するであろう。有機合成分野の当業者であれば、分子の各部分に存在する官能基が、提案された試薬及び反応に適合する必要があることを理解するであろう。
【0088】
次の略語はそれぞれ以下のとおりである。
1. TEFAPI-06の化学合成
合成されたすべての試薬及び化合物は、中国(香港、マカオ、台湾を除く)の一般的な商業ルートを通じて購入できる。供給先には以下が含まれる:Sinopharm Chemical Reagent Co., Ltd.、Sa’en Chemical Technology (Shanghai) Co., Ltd、Jiuding Chemical (Shanghai) Technology Co., Ltd、Beijing Bailingwei Technology Co., Ltd.、Beijing Tongguang Fine Chemicals Co., Ltd.、Shanghai Bid Pharmaceutical Technology Co., Ltd.、Beijing yinguokai Technology Co., Ltd.、Shanghai McLean Biochemical Technology Co., Ltd.、Sigma Aldrich (Shanghai) Trading Co., Ltd。そのうちの主要な出発材料については、いずれもルートマップ上でCAS番号が付けられている。
【0089】
TEFAPI-06は上記の化学的経路により合成されている。具体的には、ブロック4の合成、ブロック12の合成、ブロック13の合成、ブロック20の合成、及びブロック接続、合計5つの部分に分解でき、お互いに一定の事前要件が存在する。
【0090】
ブロック4の合成:
【0091】
a)化合物5978-22-3(20g、53.64mmol、1eq、HCl)のジクロロメタン(200mL)溶液に、テトラヒドロピラン-2,6-ジオン(9.18g、80.45mmol、1.5eq)を加え、溶液を0℃に冷却し、続いてトリエチルアミン(16.28g、160.91mmol、22.40mL、3eq)を滴下し、20℃で1時間撹拌しながら反応させる。反応終了後、濃縮して、無色油状液体の化合物1(20g、粗生成物)を得る。
MS(ESI+):m/z 451.2(M+H)+
【0092】
b)化合物1(20g、44.39mmol、1eq)のメタノール(200mL)溶液に、Pd/C(8g、純度10%)を添加し、続いてH2(15psi)雰囲気中で12時間反応させる。反応終了後、減圧濃縮し、無色油状液体の化合物2(14g、粗生成物)を得る。
MS(ESI+ ):m/z 317.2(M+H)+
【0093】
c)0℃で、化合物 27913-58-2(15g、51.71mmol、1eq)のジクロロメタン(150mL)溶液に、1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(6.55g、56.88mmol、1.1eq)及びジシクロヘキシルカルボジイミド(12.80g、62.05mmol、12.55mL、1.2eq)を加え、次いで室温に戻してから1時間反応させる。反応終了後、ろ過によりろ液を得、減圧濃縮して淡黄色固体を得た後、ジメチルホルムアミド(120mL)に溶解する。そして、化合物2(12g、37.93mmol、1eq)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(14.71g、113.78mmol、19.82mL、3eq)を加え、室温で2時間反応させる。反応混合物を濃縮し、分取HPLCによって精製して、無色油状液体の化合物3(10g、16.57mmol、収率43.68%、純度97.5%)を得る。
MS(ESI+ ):m/z 533.1(M/2+H)+
【0094】
d)Trt-Cl樹脂(3.85g、76.3mmol、1eq)/ジクロロメタン(500mL)溶液に、化合物71989-26-9(42.90g、91.56mmol、1.2eq)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(29.58g、228.90mmol、39.87mL、3eq)を加え、室温で撹拌し、48時間窒素バブリングした後、混合物を順にジクロロメタン(5×500mL)、CH3 OH(5×500mL)、及びジメチルホルムアミド(5×500mL)で洗浄する。次いで、ピペリジン/ジメチルホルムアミド(v/v=1:5、400mL)溶液を添加し、20分間窒素バブリングした後、ジメチルホルムアミド(5×300mL)で洗浄する。次いで、ジメチルホルムアミド(300mL)を加え、反応物を0℃に下げてから、化合物3(18.14g、30.43mmol、1.1eq)、6-クロロベンゾトリアゾール-1,1,3,3-テトラメチル尿素ヘキサフルオロリン酸HCTU(22.84g、56.96mmol、2eq)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールHOBT(1.92g、14.14mmol、0.5eq)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン(10.8g、86.44mmol、14.9mL、3eq)を順に加え、室温に戻してから2時間反応させる。次いで、ジメチルホルムアミド(4×400mL)及びジクロロメタン(4×400mL)で洗浄してから、ジクロロメタン/トリフルオロ酢酸(v/v=100:1、600mL)を添加し、バブリングし、20分間反応させてから、ろ過する。濾液をNaHCO3(aq)で中性に調整し、ジクロロメタン(200mL×3)及び水(200mL×3)で抽出し、合わせた有機相をクエン酸(200mL×3)で洗浄した後、減圧下で蒸発乾固して、黄色固体の化合物4(6g、7.11mmol、収率74.99%、純度96.77%)を得る。
1 H NMR(400MHz、CDCl3 )δ=1.30~1.40(m、2H)、1.43~1.51(m、24H)、1.91~1.93(m、6H)、2.16~2.21(m、7H)、2.56-2.60(分、3H)、3.07-3.11(分、3H)、3.47-3.49(分、1H)、4.48-4.50(分、1H)、4.57-4.60(分、1H)、4.76-4.79(分、1H) )、5.86(br s、1H)、6.90-6.94(m、2H)、7.58-7.61(m、2H)、7.88-7.91(m、1H)、8.09-8.12(m、1H)。MS(ESI+ ):m/z 817.4(M+H)+
【0095】
ブロック12の合成:
【0096】
a)0℃で、20分以内にNH3(28.89g、1.70mol、45eq)のMeOH(125mL)溶液を、化合物203866-15-3(10g、37.70mmol、1eq)のMeOH(25mL)溶液にゆっくり加える。次いで、温度を室温に戻し、N2(15psi)雰囲気下で18時間撹拌しながら反応させる。反応終了後、減圧下で蒸発及び濃縮し、PE/MTBEでスラリー化して、黄色固体の化合物8(8.9g、35.57mmol、収率94.34%)を得る。
1 H NMR ( 400MHz DMSO ): δ 1.28-1.45(m, 9H)、2.16-2.38(m, 1H)、2.59-2.87(m, 1H)、3.55-3.84(m, 2H)、4.08-4.36(m) 、1H)、6.97-7.19(分、1H)、7.36-7.61(分、1H)
【0097】
b)0℃で、20分以内に化合物8(8.9g、35.57mmol、1eq)のジクロロメタン(100mL)溶液に、ピリジン(3.38g、42.68mmol、3.44mL、1.2eq)をゆっくり加える。0℃に保ちながら、トリフルオロ酢酸無水物(8.96g、42.68mmol、5.94mL、1.2eq)を加えた後、反応物を室温に戻し、18時間撹拌してから、減圧下で濃縮する。PE/MTBEを使用してスラリー化を行って、黄色固体の化合物9(7.5g、32.30mmol、収率90.81%)を得る。
1 H NMR (400MHz クロロホルム-d ): δ 1.33-1.66(m, 9H)、2.71(br t, J =9.04 Hz, 2H)、3.80(br s, 2H)、4.52-4.90(m, 1H)
【0098】
c)化合物9(7.0g、30.14mmol、1eq)のアセトニトリル(200mL)溶液に、HCl/ジオキサン(4M、14.00mL、1.86eq)を加え、18時間反応させる。固体をろ過し、MTBE(100mL)で洗浄して、白色固体の化合物10(2.2g、13.05mmol、収率43.30%、HCl)を得る。
1 H NMR ( 400MHz DMSO ) δ 2.64-3.13(m, 2H)、3.48-3.89(m, 2H)、4.99(br t, J =6.95 Hz, 1H)、9.80(br s, 2H)
【0099】
d)ジメチルホルムアミド 10mLに、2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)酢酸(779.41mg、4.45mmol、1.5eq)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾールHOBT (80.16mg、593.22umol、0.2eq)、2- (1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルイソ尿素六フッ化リンHBTU(2.25g、5.93mmol、2eq)及び化合物10(500mg、2.97mmol、1eq、HCl)を加え、30分間撹拌しながら反応させる。次いで、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(1.15g、8.90mmol、1.55mL、3eq)を加え、16時間撹拌する。反応終了後、水(20mL)を加え、酢酸エチル(50mL)で抽出し、有機相を濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(PE:酢酸エチル=1:1)で精製して、化合物11( 0.625g、2.13mmol、収率71.68%)を得る。
1 H NMR( 400MHz DMSO): δ1.38(m、9H)、2.78(m、2H)、3.77(m、2H)、 4.06 (m、1H)、4.23(m、1H)、5.07(d、 J = 5.2Hz、1H)、7.14(m、1H)
【0100】
e)0℃で、化合物11(0.4g、1.38mmol、1eq)のアセトニトリル(13.5mL)溶液に、HCl/ジオキサン(4M、2.67mL、7.71eq)を添加し、室温に戻してから16時間反応させる。濃縮して、白色固体の化合物12(322mg、1.28mmol、収率92.89%、純度90%、HCl)を得る。
1 H NMR(400MHz DMSO): δ2.81-3.01(m、2H)、3.57(s、2H)、3.69(br d、 J =5.01Hz、1H)、3.78-3.89(m、1H)、3.91-4.14 (m, 2H)、4.24(ddd, J =15.59, 11.41, 4.11 Hz, 1H)、5.19(dd, J =8.70, 3.34 Hz, 1H)、8.38(br s, 3H)
【0101】
ブロック13の合成:
【0102】
a)化合物137076-54-1(150mg、261.90μmol、1eq)をアセトニトリル(15mL)に溶解し、1-ヒドロキシピロリジン-2,5-ジオン(33.16mg、288.09μmol、1.1eq)、HBTU(109.26mg、288.09μmol、1.1 eq)を順に加え、12時間撹拌してから、混合物を減圧下で乾燥し、分取TLC(EA:CAN=7:1)を用いて精製して、淡黄色固体の化合物 13(115mg、171.69umol、収率65.56%)を得、次のステップで直接使用する。
【0103】
ブロック20の合成:
【0104】
a)化合物52351-75-4(20g、112.89mmol、1eq)及びKOH(69.68g、1.24mol、11eq)をH2O(200mL)に溶解し、ピルビン酸(10.94g、124.18 mmol、8.75mL、1.1eq)に添加し、反応混合物を40℃で15時間反応させる。次いで、反応物を15℃に冷却し、塩酸でpH=3に酸性化し、固体を濾過し、脱イオン水で洗浄して、オフホワイトの固体の化合物14(24g、92.23mmol、収率81.70%、純度95%)を得る。
1 H NMR( 400MHz DMSO): δ3.70-4.24(m、3H)、7.58(dd、 J =9.24、2.80Hz、1H)、8.15(d、 J =9.30Hz、1H)、8.26(d、 J = 2.74 Hz、1H) 、8.53(s、1H)、13.75(br s、2H)。
MS(ESI+) : m/z 248.1(M+H)+
【0105】
b)化合物14(24g、97.09mmol、1eq)に、ニトロベンゼン(150mL)を加え、220℃で1.5時間撹拌してから、反応物を15℃に冷却し、PE(150mL)を加え、沈殿した固体をPE(100mL)で洗浄して、オフホワイトの固体の化合物15(16.8g、82.68mmol、収率85.16%)得る。
1 H NMR ( 400MHz DMSO) δ 3.72-4.14(m, 3H)、7.49(dd, J =9.23, 2.75 Hz, 1H)、7.93(d, J =4.40 Hz, 1H)、8.02(d, J =9.17) Hz、1H)、8.18(d、 J =2.69 Hz、1H)、8.87(d、 J =4.40 Hz、1H)、13.76(br s、1H)。
MS(ESI+) : m/z 202.1(MH)-
【0106】
c)化合物15(40g、196.86mmol、1eq)に、臭化水素(1L、48%水溶液)を加え、130℃で12時間撹拌してから、30%水酸化ナトリウム水溶液350mlを加え、反応液をpH=6に塩基性化し、多量の沈殿物を析出させ、沈殿物を濾過した後、メタノールで洗浄し、乾燥して粗生成物を得る。これをメタノールで数回洗浄して、褐色固体の化合物16(30g、128.93mmol、収率65.50%、純度81.3%)を得る。
1 H NMR (400 MHz、DMSO- d6 ) δ ppm 13.66(br s、1H)、10.24(s、1H)、8.77(d、 J = 4.5 Hz、1H)、8.06(d、J = 2.6 Hz、1H)、7.95(d、J = 9.1 Hz、1H)、7.84(d、 J = 4.4 Hz、1H)、7.36(dd、J = 2.7、9.1 Hz、1H)。
MS (ESI- ): m/z 377.0(2M-H)-
【0107】
d)化合物16(30g、158.59mmol、1 eq)のジメチルホルムアミド(300mL)溶液に、炭酸カリウム(87.67 g、634.36 mmol、4eq)及び1-ブロモ-3-クロロ-プロパン(24.97g、158.59mmol、15.60mL、1eq)を加え、反応物を60℃で12時間撹拌する。蒸発及び濃縮後、水200mLを加え、多量の固体を沈殿させてから、反応混合物を25℃で15分間撹拌し、吸引濾過する。酢酸エチルで粉砕し、濾過して、褐色固体の化合物17(37.58g、130.13mmol、収率86.15%、純度92%)を得る。
1 H NMR (400MHz、 DMSO- d 6 ) δppm 2.26~2.98(m、2H)、3.83~3.88(m、2H)、4.22~4.25(m、2H)、7.54(dd、 J =9.19、2.69) Hz、1H)、7.96(d、 J = 4.38Hz、1H)、8.03~8.11(m、1H)、8.19(d、J = 2.63Hz 、1H)、8.90(d、 J = 4.38Hz) 、1H)。
MS (ESI+ ): m/z 266.1(M+H)+
【0108】
e)化合物17(30g、112.91mmol、1eq)を、N-メチルピロリドン(300mL)に加えてから、ピペラジン-1-カルボン酸tert-ブチルエステル(105.15g、564.56mmol、5eq)及びヨウ化カリウム(9.37g、56.46mmol、0.5eq)を加え、続いて60℃で12時間撹拌する。反応混合物を室温に冷却し、濾過し、粗生成物を分取HPLC(0.1%FA)によって精製して、黄色固体の化合物18(42.96g、96.16mmol、収率85.16%、純度93%)を得る。
1 H NMR (400MHz、 DMSO- d 6 ) δppm 8.82(d、 J =4.4Hz、1H)、8.19~8.16(m、1H)、7.99(d、 J =9.3Hz、1H)、7.85(d) 、 J = 4.4 Hz、1H)、7.45(dd、 J = 2.8、9.1 Hz、1H)、4.15(br t、 J = 6.2 Hz、2H)、2.62 - 2.50(m、6H)、2.42(br t、J = 4.6 Hz、4H)、1.99(br d、 J = 6.6 Hz、2H)、1.39(s、9H) 。
MS (ESI+ ): m/z 416.1(M+H)+
【0109】
f)化合物18(12.00g、26.57mmol、純度92%、1.02eq)のジメチルホルムアミド(120mL)溶液に、O-ベンゾトリアゾール-1-イル-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸(19.76g、52.10mmol、2eq)、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール(7.04 g、52.10 mmol、2eq)、 N , N-ジイソプロピルエチルアミン(10.10 g、78.15 mmol、13.61 mL、3eq)を加えてから、続いて化合物12(5.88g、26.05mmol、1.00eq、HCl)を添加し、反応物を25℃で12時間撹拌する。ろ過後、ろ液を分取HPLC( HCl )を用いて精製し、黄色固体の化合物19(11.27g、17.29mmol、収率66.37%、純度90%)を得る。
1 H NMR (400 MHz、 DMSO- d 6 ) δ ppm 1.41(s, 9 H)、2.27 ~ 2.33(m, 2 H)、3.27 ~ 3.29(m, 5 H)、3.43 ~ 3.55(m, 2 H) )、3.93 - 4.21(m、10 H)、5.19(dd、 J = 9.26、2.75 Hz、1 H)、7.59(dd、 J = 9.26、2.63 Hz、1 H)、7.69(d、 J = 4.63 Hz) 、1 H)7.87 - 8.00(m、1 H)、8.14(d、 J = 9.26 Hz、1 H)、8.95(d、 J = 4.63 Hz、1 H)、9.24(br t、 J = 5.82 Hz、 1 時間)、11.00(br s、1 時間) 。
(ESI+ ): m/z 587.2(M+H)+
【0110】
g)化合物19(2g、3.41mmol、1eq)を、酢酸エチル(40mL)に溶解し、塩酸/酢酸エチル溶液(4M、4mL、4.69eq )を加え、25℃で6時間反応させる。反応混合物を蒸発及び濃縮後、直接使用して、黄色固体の化合物20(1.5g、粗製、HCl)を得る。
MS (ESI- ): m/z 485.1(M+H)+
【0111】
ブロックの接続
【0112】
a)化合物4(858.97mg、1.05mmol、1.1eq)を、ジメチルホルムアミド(5mL) に溶解し、HBTU(453.23mg、1.20mmol、1.25eq)、HOBT(167.94 mg、1.24 mmol、1.3 eq )、N,N -ジイソプロピルエチルアミン(617.83mg、4.78mmol、832.65uL、5eq)及び化合物20(229.65mg、333.04umol、1eq)を加え、混合物を12時間撹拌する。反応生成物を濃縮した後、分取 HPLC(HCl)によって精製して、白色固体の化合物21(230mg、170.00umol、収率17.78%、純度95%)を得る。
MS ( ESI+ ): m/z 1285.4(M+H)+
【0113】
b)化合物21(150mg、116.71μmol、1eq)を、ジクロロメタン(10mL)に溶解し、トリフルオロ酢酸(3.08g、27.01mmol、2mL、231.45eq)を加え、反応物を4時間撹拌してから、蒸発及び濃縮して、黄色油状液体の粗生成物の化合物22(150mg、粗生成物、トリフルオロ酢酸)を直接得る。
MS (ESI+ ): m/z 1129.3 (M+H)+
【0114】
c)化合物22(150mg、120.67μmol、1eq、トリフルオロ酢酸)を、ジメチルホルムアミド(1.6mL)に溶解し、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(124.77mg、965.36μmol、168.15μL、8eq)及び化合物13(88.91mg、 132.74μmol、1.1eq)を順に添加し、反応物を12時間撹拌してから、真空中で濃縮し、溶媒を除去して、黄色油状の粗生成物の化合物23(220mg、粗生成物)を得る。
MS (ESI+ ): m/z 1684.9 (M/2+H)+
【0115】
d) 化合物23(210mg、124.72μmol、1eq)に、トリフルオロ酢酸(3.23g、28.36mmol、2.10mL、227.41eq)を加え、3時間撹拌する。次いで、減圧下で濃縮し、分取HPLC(トリフルオロ酢酸)によって精製して、白色固体の化合物24(TEFAPI-06)(30mg、26.40μmol、収率21.16%、純度100%)を得る。
【0116】
白色固体の化合物24(TEFAPI-06)の表現は以下のとおりである。
LCMS (ESI+ ): m/z 758.4 1/2(M+2H)+ Rt: 1.959 分。
LC条件:Kinetex C18 50 * 2.1 mmカラム(粒径5μm)1.0 ml/min
グラジエント: A相 0.05% トリフルオロ酢酸/水、B相 0.05% トリフルオロ酢酸/アセトニトリル。 0~0.40分 5%B、0.40~3.00分 5~95%B、3.00~4.00分 95%B。
HPLC :Rt:2.266分。
LC 条件: Luna-C18 2.0*50mmカラム (粒子サイズ 5μm)、A相0.05% トリフルオロ酢酸/水、B相 0.05% トリフルオロ酢酸/アセトニトリル。
LC グラジエント: 0.00 ~ 4.90 分: 10 ~ 80% B 0.8 mL/分、4.90 ~ 5.50 分: 0% B 1.2 mL/分。
1 H NMR (400MHz、 DMSO- d6
δ ppm 9.18 - 9.07(m, 1H)、8.84(d, J = 4.4 Hz, 1H)、8.49(br s, 1H)、8.18 - 7.97(m, 3H)、7.89(br d, J = 2.4 Hz 、 1H)、7.78(br t、 J = 5.8 Hz、1H)、7.62(br d、 J = 8.1 Hz、2H)、7.55(d、 J = 4.4 Hz、1H)、7.46(br dd、 J = 2.7 Hz) 、9.1 Hz、1H)、7.00(br d、 J = 8.1 Hz、2H)、5.15(br dd、 J = 3.3、9.0 Hz、1H)、4.69(br s、1H)、4.47 - 4.08(m、6H) )、4.07 - 3.69(m、13H)、3.64 - 3.22(m、11H)、3.21 - 2.69(m、14H)、2.47(br s、2H)、2.33 - 1.90(m、9H)、1.87 - 1.18(メートル、18H)。
19 F NMR (400 MHz、 DMSO -d6) -73.867
1 H NMR (400MHz、メタノール-d4
δ ppm 8.85(d, J = 4.6 Hz, 1H)、8.22 ~ 7.97(m, 2H)、7.71 ~ 7.53(m, 4H)、6.99(d, J = 8.3 Hz , 2H)、5.15(br d , J ) = 9.3Hz、1H)、4.83 - 4.74(m、4H)、4.49 - 4.30(m、6H)、4.30 - 4.08(m、4H)、3.90 - 3.38(m、17H)、3.20 - 2.74(m、16H) )、2.58(s、2H)、2.40(br s、2H)、2.30 - 2.15(m、6H)、2.02 - 1.82(m、6H)、1.77 - 0.99(m、11H)。
18 F NMR (400 MHz、メタノール-d4 ) -77.161
【0117】
2. 68Ga -TEFAPI-06を用いた健康なマウスイメージングによる体内半減期の測定
5mLの0.6 M高純度塩酸を用いてゲルマニウム-ガリウム発生器を洗浄し、Ga-68塩酸溶液を取得する。すすいだGa-68溶液1mLを取り、100μlの3M水酸化ナトリウム、130μlの3M酢酸ナトリウムを加えて酸性度を調整し、最終pHが4.0となると、50μgのTEFAPI -06前駆体を加え、反応混合物を90℃に加熱し、10分間保持する。反応溶液をC18カラムによって遊離イオンを除去し、エタノール溶液でC18カラムを溶出して、標識された68Ga-TEFAPI-06を得る。
【0118】
37 MBq標識製品を取り、200μlの生理食塩水を加えて希釈し、後で使用するためにインスリンシリンジを用いて薬剤を抽出しておく。ここで、薬剤のエタノール含有量は5%以下である。健康なマウスは事前に麻酔し、PET/CTの採取台上に置き、尾静脈に留置針を留置する。シリンジを留置針に接続し、針を押した時点からPETデータ収集を開始する。収集時点はそれぞれ0~60分間、2時間、3時間、4時間、及び 5時間である。収集完了後、専門的なソフトウェアを使用してデータを再構成し、再構成条件は最初の5分間は1分ごとにデータを再構成し、5~60分間は5分ごとにデータを再構成し、その他の時点のデータを再構成する。図1Aに示すように、収集されたデータは、PET再構成ソフトウェアによって処理され、連続画像が得られる。PET処理ソフトウェアにおいて、マウスの心臓に固定領域を描画し、心臓のSUV-Mean及びSUV-Max値を取得する。得られたSUVはデータ処理ソフトウェアでシミュレーションされる。図1に示すように、対応する血中半減期が得られ、TEFAPI-06の半減期は398分として得られた。
【0119】
3.膵臓癌PDXマウスモデルにおける68Ga-TEFAPI-06のPETイメージング
5mLの0.6M高純度塩酸を用いてゲルマニウム-ガリウム発生器を洗浄し、Ga-68塩酸溶液を取得する。すすいだGa-68溶液1mLを取り、100μlの3M水酸化ナトリウム、130μlの3M酢酸ナトリウムを加えて酸性度を調整し、最終pHが4.0となると、50μgのTEFAPI -06前駆体を加え、反応混合物を90℃に加熱し、10分間保持する。反応溶液をC18カラムによって遊離イオンを除去し、エタノール溶液でC18カラムを溶出して、標識された68Ga-TEFAPI-06を得る。標識された68Ga-TEFAPI-06を生理食塩水で希釈し、各マウスに3.7MBqを注射する。 0.5 時間、1.5時間、2.5 時間の時点でPETイメージングを実行し、PET画像処理ソフトウェアを用いて再構成する。得られたイメージングを図2に示すように、該プローブが腫瘍部位に明らかに摂取されていることがわかる。
【0120】
4.膵臓がんPDXマウスモデルにおける86Y-TEFAPI-06の長期PETイメージング
Y- 86は半減期が最大14.6時間の陽電子核種であり、DOTAによって放射性標識できるため、体内でのTEFAPI分子の分布の長期検出に非常に適している。1mLのY-86塩酸溶液を取り、100μlの3M水酸化ナトリウム、130μlの3M酢酸ナトリウムを加えて酸性度を調整し、最終pHが4.0となると、50μgのTEFAPI-06前駆体を加え、反応混合物を90℃で加熱し、10分間保持する。反応溶液をC18カラムによって遊離イオンを除去し、エタノール溶液でC18カラムを溶出して、標識された86Y-TEFAPI-06を得る。標識された86Y-TEFAPI-06を生理食塩水で希釈し、各マウスに7.4MBq注射する。 注射後0.5、2、6、12、18、24、及び36時間時点で、PET画像処理ソフトウェアで再構成する。得られたPET画像は、図3に示すように、マウスの腫瘍及び心臓にSUV値を描画し、SUV値の経時変化を曲線化した。腫瘍摂取のSUV摂取曲線によると、腫瘍摂取は、最初の24時間で継続的に増加し、血液循環時間が長く、且つ、腎臓から継続的に除去される。
【0121】
5. PDX膵臓がんマウスにおけるTEFAPI-06の競合阻害実験
AP標的に対するTEFAPI-06の特異性を検証するために、競合阻害実験における阻害の前後で、同じマウスに対してPETイメージングを実行した。Y-86の長期PETイメージングによると、腫瘍の摂取は、薬物注射後18時間から24時間の間にピークに達する。したがって、先に腫瘍を持つマウスに対して68Ga-FAPI-04イメージングを実行し、マウスの腫瘍摂取を確認する。68Ga-FAPI-04の代謝を確実にするために48時間待った後、この2匹のマウスに300μgのTEFAPI-06分子を注射し、18時間後、TEFAPI-06分子を注射されたマウスに対して68Ga -FAPI-04のPET分子イメージングを実施した。注射後30分の68Ga-FAPI-04のPETイメージング結果によると、TEFAPI-06注射前の腫瘍には顕著な摂取が見られたが、TEFAPI-06分子注射後のマウスの腫瘍には追加の摂取がない。
【0122】
図4に示すように、阻害を実施したマウスの腫瘍では追加摂取がほとんどないが、阻害を実施しなかった同じグループのマウスは、腫瘍での摂取が高かった。その結果、TEFAPI-06の標的部位はFAPであることが判明した。
【0123】
6. 177Lu-TEFAPI-06によるPDX膵臓がんマウスの治療
TEFAPI-06の腫瘍標的化及びマウス代謝規則に基づき、その優れた腫瘍/正常組織の摂取比が18時間後に10より大きく、且つ腎代謝が基本的にクリアであるため、PDX膵臓がんマウスに対してLu-177の放射性標的療法を行った。各グループのマウスは5匹で、治療計画は以下の図のとおりであり、治療用量は3.7MBqであり、腫瘍増殖曲線に示すように、治療グループの腫瘍は完全に抑制されている。治療効果を評価するために、治療前後のマウスに対して、FAPI-04イメージング検査を実施した。結果は図5に示すように、治療後、マウスにおける元の腫瘍の摂取が基本的に消失していることが分かる。
【0124】
上記の説明は、本発明の単なる例示的な実施形態であり、本発明の保護範囲を限定するものではない。本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】