IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サイトゼリックス,インク.の特許一覧

特表2024-500188胆道送達方法、その使用のための組成物及びキット
<>
  • 特表-胆道送達方法、その使用のための組成物及びキット 図1
  • 特表-胆道送達方法、その使用のための組成物及びキット 図2
  • 特表-胆道送達方法、その使用のための組成物及びキット 図3
  • 特表-胆道送達方法、その使用のための組成物及びキット 図4A
  • 特表-胆道送達方法、その使用のための組成物及びキット 図4B
  • 特表-胆道送達方法、その使用のための組成物及びキット 図5A
  • 特表-胆道送達方法、その使用のための組成物及びキット 図5B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-04
(54)【発明の名称】胆道送達方法、その使用のための組成物及びキット
(51)【国際特許分類】
   A61K 48/00 20060101AFI20231222BHJP
   A61K 31/785 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231222BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20231222BHJP
【FI】
A61K48/00
A61K31/785
A61P1/16
A61P3/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023562635
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 US2021064359
(87)【国際公開番号】W WO2022140261
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/128,983
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/175,693
(32)【優先日】2021-04-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/236,574
(32)【優先日】2021-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523236032
【氏名又は名称】サイトゼリックス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【弁理士】
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】クレー、 ホイットニー
(72)【発明者】
【氏名】ヘフナー、 ガレット
【テーマコード(参考)】
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4C084AA13
4C084NA13
4C084ZA751
4C084ZA752
4C084ZB212
4C084ZC751
4C086AA01
4C086AA02
4C086FA03
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA56
4C086NA13
4C086ZA75
4C086ZC33
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、胆道系を含む、胆汁が存在する場所への治療用生物製剤の送達のための組成物及び方法、並びにそのような方法において使用するための組成物及びキットを提供する。また、治療用生物製剤の送達のための胆道治療用エンハンサーを含む組成物、及び胆道治療用エンハンサーを用いる方法も提供される。本明細書に記載される治療用生物製剤の胆道送達の方法は、一般に、関連する生物製剤及び胆道治療用エンハンサーの1回以上の投与を含む。胆道送達組成物は、一般に、1つ以上の胆道治療用エンハンサー及び治療用生物製剤を含む。胆汁の存在下での治療用生物製剤の活性の減少と比較して、本開示の組成物、方法、及びキットは、胆汁の存在下での治療剤の活性の増加、増強及び/又はレスキューをもたらす。例えば、記載される方法、組成物及びキットにおける胆道治療用エンハンサーの使用も提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の症状を処置する方法であって、前記方法が、
有効量の治療用生物製剤及び有効量の胆道治療用エンハンサーを前記対象の胆道系に直接投与し、それによって前記対象の症状を処置すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記症状が肝臓症状である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記肝臓症状が、急性間欠性ポルフィリン症、急性肝不全、アラジール症候群、アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、アルコール性肝疾患、α1-アンチトリプシン欠乏症、アメーバ性肝膿瘍、自己免疫性肝炎、胆汁性肝硬変、バッド・キアリ症候群、化学物質及び薬物誘発性肝損傷、胆汁うっ滞、慢性肝炎、慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、慢性D型肝炎、末期肝疾患、赤芽球性プロトポルフィリン症、肝蛭症、脂肪性肝疾患、限局性結節性過形成、肝包虫症、肝性脳症、肝梗塞、肝不全、肝性ポルフィリン症、肝結核、肝静脈閉塞性疾患、肝炎、肝細胞癌、肝造血性ポルフィリン症、肝レンズ核変性症、肝腫大、肝肺症候群、肝腎症候群、遺伝性コプロポルフィリン症、肝膿瘍、肝細胞腺腫、肝硬変、肝不全、肝腫瘍、広範性肝壊死、非アルコール性脂肪性肝疾患、寄生虫性肝疾患、肝紫斑病、晩発性皮膚ポルフィリン症、門脈圧亢進症、化膿性肝膿瘍、ライ症候群、異型ポルフィリン症、ウイルス性肝炎、A型ウイルス性肝炎、B型ウイルス性肝炎、C型ウイルス性肝炎、D型ウイルス性肝炎、E型ウイルス性肝炎、及びツェルウェガー症候群からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記投与が、前記対象の肝臓への前記治療用生物製剤の逆行性管送達を含み、それによって前記治療用生物製剤の局所肝臓濃度の増加をもたらす、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記治療用生物製剤が遺伝子治療剤又はタンパク質を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記遺伝子治療剤が、非ウイルスベクター又はウイルスベクターを含み、任意選択で、前記遺伝子治療剤が、エンベロープウイルスベクターの脂質ナノ粒子を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記胆道治療用エンハンサーが1つ以上の胆汁酸隔離剤を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の胆汁酸隔離剤が、
式(I)の化合物:
【化1】
(式中、
m及びnは、約500~約1000のMWに相当し、
pは、1~3の整数であり、
Xは、求電子性脱離基であり、
は、水素、C~C20アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はC~C20アルキルアンモニウム基からなる群から選択され、
ここで、前記アルキルは、OH又はアルキルアンモニウムで必要に応じて置換されている);
式(II)の化合物:
【化2】
(式中、
nは、約100~約500のMWに対応し、
は、C~C10アリール又はC~C10ヘテロアリールからなる群から選択され、前記アリール又はヘテロアリールは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されている);
式(V)の化合物:
【化3】
(式中、
m及びnは、約100~約500のMWに相当し、
及びRの各々は、独立して、アミノ、アルキルアミノ又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される);及び
式(VII)の化合物:
【化4】
(式中、
mは、約100~約500のMWに相当し、
aは、1~6の整数であり
bは、1~6の整数であり
cは、1~3の整数である)
からなる群から選択される化合物を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記1つ以上の胆汁酸隔離剤が、コレセベラム、コレスチラミン、コレスチポール、及びセベラマーからなる群から選択される、請求項7又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記胆道治療用エンハンサーが、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、
式(III)の化合物:
【化5】
(式中、
x、y及びzの各々は、独立して1~250の整数である);
式(IVa)又は(IVb)の化合物:
【化6】
(式中、
nは、約50000~約200000のMWに対応し、
xは、1~6の整数であり
は、1つ以上のC~Cアルキル基で必要に応じて置換されたアミノ基である);及び
式(VI)の化合物:
【化7】
(式中、
mは、約100~約600のMWに相当し、
xは、1~10の整数であり、
yは、1~6の整数であり、
Xは、求電子性脱離基であり、
各Rは、独立して、水素又はC~Cアルキル基である)
からなる群から選択される化合物である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、ポリブレン、硫酸プロタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ-L-リジン、及びF108からなる群から選択される、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記治療用生物製剤及び前記胆道治療用エンハンサーが共投与され、任意選択で、前記治療用生物製剤及び前記胆道治療用エンハンサーが単一の医薬組成物中に共製剤化される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記胆道治療用エンハンサーが前記治療用生物製剤の前に投与される、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
医薬組成物であって、
胆道系への送達のための液体として構成される薬学的に許容され得る担体と、
有効量の治療用生物製剤と、
胆道治療用エンハンサーと
を含む、医薬組成物。
【請求項16】
前記治療用生物製剤が遺伝子治療剤又はタンパク質を含み、任意選択で、前記遺伝子治療剤が非ウイルスベクター又はウイルスベクターを含み、任意選択で、前記遺伝子治療剤がエンベロープウイルスベクターの脂質ナノ粒子を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記胆道治療用エンハンサーが胆汁酸隔離剤を含み、任意選択で、前記胆汁酸隔離剤が、
式(I)の化合物:
【化8】
(式中、
m及びnは、約500~約1000のMWに相当し、
pは、1~3の整数であり、
Xは、求電子性脱離基であり、
は、水素、C~C20アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はC~C20アルキルアンモニウム基からなる群から選択され、
ここで、前記アルキルは、OH又はアルキルアンモニウムで必要に応じて置換されている);
式(II)の化合物:
【化9】
(式中、
nは、約100~約500のMWに対応し、
は、C~C10アリール又はC~C10ヘテロアリールからなる群から選択され、前記アリール又はヘテロアリールは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されている);
式(V)の化合物:
【化10】
(式中、
m及びnは、約100~約500のMWに相当し、
及びRの各々は、独立して、アミノ、アルキルアミノ又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される);及び
式(VII)の化合物:
【化11】
(式中、
mは、約100~約500のMWに相当し、
aは、1~6の整数であり、
bは、1~6の整数であり、
cは、1~3の整数である)
からなる群から選択される化合物である、請求項15又は16に記載の組成物。
【請求項18】
前記胆汁酸隔離剤が、コレセベラム、コレスチラミン、コレスチポール、及びセベラマーからなる群から選択される、請求項15~17のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項19】
前記胆道治療用エンハンサーがカチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーを含む、請求項15~18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項20】
キットであって、
液体の薬学的に許容され得る担体と、
治療用生物製剤と、
胆道治療用エンハンサーと
を含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年8月24日に出願された米国仮特許出願第63/236,574号、2021年4月16日に出願された米国仮特許出願第63/175,693号、及び2020年12月22日に出願された米国仮特許出願第63/128,983号の利益を主張するものであり、これらの出願はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
米国だけでも、急性肝疾患の患者は100,000人を超え、非代償性肝硬変の患者は50万人を超える。肝疾患は、米国では年間62,000人が死亡し、世界中ではおよそ200万人が死亡しており、具体的には130万人が肝硬変により死亡している。2019年現在、肝硬変は世界で11番目に多い死因であり、米国では12番目に多い死因であった。世界中では約20億人がアルコールを消費し、更に約20億人の成人が肥満又は過体重であり、4億人の成人が糖尿病を患っている。アルコール消費、肝臓脂質沈着、及びインスリン抵抗性は全て、線維症及び最終的に肝硬変の発症における主要な危険因子であると考えられている。更に、薬物誘発性肝損傷は急性肝炎の主な原因として増加し続けているが、ウイルス性肝炎の世界有病率は高いままである。
【0003】
肝移植は、利用可能で且つ成功すれば、2番目に最も一般的な固形臓器移植を代表する人生を変える治療である。しかしながら、適切な肝臓は、急性肝不全などの容態が急速に衰えていく対象にとって、必要な量又は時間内に利用可能でないことが多い。上記の広範な疾患有病率と比較して、9,000件未満の肝臓移植が米国で行われた。
【0004】
多数の生物製剤を含む多くの他の療法が、機構的に又は前臨床研究のいずれかで有望であることが示されているが、臨床試験を通じて進歩したもの、又はヒト対象において有意な陽性転帰を示したものはほとんどない。例えば、リシルオキシダーゼ(LOX)ファミリー酵素のモノクローナル抗体阻害による、線維症における必須のプロセスであるコラーゲン架橋の標的化は、インビトロ及び前臨床研究における可能性を示した(例えば、Ikenaga et al.Gut(2017)66:1697-1708を参照されたい)。しかしながら、皮下注射又は静脈内注入のいずれかによって投与されたセロンセルチブの臨床試験は、臨床的有効性を実証しなかった(Harrison et al.Gastroenterology(2018)155(4):1140-1153)。肝疾患、又はその病理学的特徴、例えば、線維症及び肝硬変を対象として他の治療は、初期には期待されたものの、満足のいく臨床転帰は得られないという類似のパターンを示している。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、胆道系を含む、胆汁が存在する場所への治療用生物製剤の送達のための方法、並びにそのような方法において使用するための組成物及びキットを提供する。また、治療用生物製剤の送達のための胆道治療用エンハンサーを含む組成物(例えば、医薬組成物)、及び胆道治療用エンハンサーを用いる方法も提供される。胆道送達組成物(例えば、医薬組成物)は、1つ以上の治療用生物製剤及び/又は1つ以上の胆道治療用エンハンサー(例えば、隔離剤)を含み、これらは、別個の組成物に含まれてもよく、且つ/又は単一の組成物(例えば、医薬組成物)に組み合わされてもよい。本明細書に記載の治療用生物製剤の胆道系送達方法は、一般に、本明細書に記載の関連する生物製剤、胆道治療用エンハンサー及び/又は組成物の1回又は複数回の投与を含む。胆汁の存在下での治療用生物製剤の活性の減少と比較して、本開示の組成物、方法、及びキットは、胆汁の存在下での治療剤の活性の驚くべき且つ予想外の増加、増強及び/又はレスキューをもたらす。例えば、記載される方法、組成物及びキットにおける胆道治療用エンハンサーの使用も提供される。
【0006】
いくつかの態様では、1つ以上の治療用生物製剤及び/又は1つ以上の胆道治療用エンハンサー(例えば、1つ以上の隔離剤及び/又は1つ以上の形質導入エンハンサーを含む組成物が本明細書に記載される。治療用生物製剤及び/又は胆道治療用エンハンサーは、同じ組成物又は1つ以上の異なる組成物(例えば、1つ以上の治療用生物製剤を含む1つ以上の別個の組成物及び1つ以上の胆道治療用エンハンサーを含む1つ以上の別個の組成物、又は1つ以上の治療用生物製剤と1つ以上の胆道治療用エンハンサーとを含む1つ以上の組み合わせ組成物)に製剤化してもよい。いくつかの実施形態では、組成物は、少なくとも1つの治療用生物製剤と少なくとも1つの胆道治療用エンハンサーとの組み合わせを含む。特定の実施形態では、組成物の少なくとも1つの胆道治療用エンハンサーは、少なくとも1つの胆汁隔離剤を含む。他の実施形態では、少なくとも1つの胆道治療用エンハンサーは、形質導入エンハンサーを含む。更なる実施形態では、組成物は、少なくとも1種の隔離剤と少なくとも1種の形質導入エンハンサーとの組み合わせを含む。本発明の組成物は、医薬組成物であってもよく、1つ以上の薬学的に許容され得る医薬品添加剤、緩衝剤、及び/又は他の試薬を更に含んでもよい。任意の量(投薬量)の治療用生物製剤及び胆道治療用エンハンサーが、本明細書に記載の別個の又は組み合わされた組成物において使用され得る。別個に又は一緒に投与される治療用生物製剤及び/又は胆道治療用エンハンサーの有用な投薬量は、容易に決定され得る。
【0007】
従って、本開示の態様はまた、医薬組成物を含み、そのような組成物は、胆道系への送達のための液体として構成された薬学的に許容され得る担体と、有効量の1つ以上の治療用生物製剤と、1つ以上の胆道治療用エンハンサーとを含む場合を含む。医薬組成物(製剤)は、治療用生物製剤と同じ又は異なる製剤中に1つ以上の胆道治療用エンハンサーを含んでもよい。特定の実施形態では、1つ以上の胆道治療用エンハンサーは、追加の成分と共に(例えば、1つ以上の治療用生物製剤と共に)製剤化されてもよい。他の実施形態では、成分のいずれかの別個の医薬組成物(製剤)を用いることもでき、例えば、1つ以上の治療用生物製剤を、1つ以上の胆道治療用エンハンサーとは異なる1つ以上の製剤に製剤化してもよい。
【0008】
いくつかの態様では、組成物は、胆汁によって不活性化されやすい治療用生物製剤を含んでもよい。いくつかの態様では、組成物の治療用生物製剤は、限定されないが、遺伝子治療剤(例えば、1つ以上の治療用タンパク質又はその一部をコードする核酸構築物、非コード核酸など)、及び/又は限定されないが、非ウイルスベクター、ウイルスベクター、脂質ナノ粒子(LNP)、エンベロープウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター、治療用ペプチド、及び/又は抗体を含むタンパク質を含んでもよい。特定の実施形態では、ウイルス(例えば、レンチウイルス若しくはAAV)又は非ウイルスベクターは、例えば、肝疾患において欠如している(すなわち、欠損している及び/又は存在しない)タンパク質を含む、本明細書に記載のタンパク質を含むがこれに限定されない、1つ以上のタンパク質(例えば、治療用タンパク質、抗体など)をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。
【0009】
いくつかの態様では、組成物の胆道治療用エンハンサーは、限定されないが、ポリアミン又はポリエーテルポリマーを含んでもよい。いくつかの例において、胆道治療用エンハンサーは、例えば、コレセベラム、コレスチラミン、コレスチポール、及びセベラマーを含むがこれらに限定されない1つ以上の胆汁酸隔離剤を含む。いくつかの例において、胆道治療用エンハンサーは、例えば、ポリブレン、硫酸プロタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ-L-リジン、及びF108を含むがこれらに限定されない、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーであってもよい。任意の胆道治療用エンハンサー(例えば、1つ以上の隔離剤及び/又は1つ以上の形質導入エンハンサーの組み合わせが使用されてもよい。
【0010】
本開示の態様はまた、対象の肝臓症状を処置するために対象の胆道系に治療用生物製剤を送達するための胆道治療用エンハンサーを含む液体組成物の使用を含む。いくつかの態様では、そのような使用の胆道治療用エンハンサーは胆汁酸隔離剤であり、任意選択で、胆汁酸隔離剤はポリアミン又はポリエーテルポリマーである。いくつかの態様では、そのような使用の胆道治療用エンハンサーは、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーであり、任意選択で、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーはポリアミン又はポリエーテルポリマーである。
【0011】
胆汁酸分泌阻害剤はまた、別個の組成物中に、且つ/又は1つ以上の治療用生物製剤及び/若しくは胆道治療用エンハンサーを含む組成物と共に含まれてもよい。胆汁酸分泌阻害剤としては、ファルネソイドXレセプター(FXR)又はNR1H4(核内レセプターサブファミリー1、グループH、メンバー4)としても知られる胆汁酸レセプター(BAR)のアゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、胆汁酸分泌阻害剤はFXRアゴニストである。
【0012】
本開示の態様は、例えば、本明細書に記載の1つ以上の組成物(治療用生物製剤及び/又は胆道治療用エンハンサーを含む組成物)を使用して、有効量の1つ以上の治療用生物製剤及び有効量の1つ以上の胆道治療用エンハンサーを対象の胆道系に直接投与し、それによって対象の症状を処置することを含む、対象の症状を処置する方法を含む。
【0013】
いくつかの態様では、本明細書に記載の方法及び組成物によって処置される症状は、限定されないが、遺伝性疾患、単一遺伝子疾患、代謝性疾患、又は肝臓症状であってもよい。対象の症状としては、例えば、急性間欠性ポルフィリン症、急性肝不全、アラジール症候群、アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、アルコール性肝疾患、α1-アンチトリプシン欠乏症、アメーバ性肝膿瘍、自己免疫性肝炎、胆汁性肝硬変、バッド・キアリ症候群、化学物質及び薬物誘発性肝損傷、胆汁うっ滞、慢性肝炎、慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、慢性D型肝炎、末期肝疾患、赤芽球性プロトポルフィリン症、肝蛭症、脂肪性肝疾患、限局性結節性過形成、肝包虫症、肝性脳症、肝梗塞、肝不全、肝性ポルフィリン症、肝結核、肝静脈閉塞性疾患、肝炎、肝細胞癌、肝造血性ポルフィリン症、肝レンズ核変性症、肝腫大、肝肺症候群、肝腎症候群、遺伝性コプロポルフィリン症、肝膿瘍、肝細胞腺腫、肝硬変、肝不全、肝腫瘍、広範性肝壊死、非アルコール性脂肪性肝疾患、寄生虫性肝疾患、肝紫斑病、晩発性皮膚ポルフィリン症、門脈圧亢進症、化膿性肝膿瘍、ライ症候群、異型ポルフィリン症、ウイルス性肝炎、A型ウイルス性肝炎、B型ウイルス性肝炎、C型ウイルス性肝炎、D型ウイルス性肝炎、E型ウイルス性肝炎、ツェルウェガー症候群を挙げることができる。いくつかの態様では、症状は、高脂血症、二次性脂質異常症、胆汁酸吸収不良症状、及び/又は糖尿病症状以外の症状であってもよい。
【0014】
いくつかの態様では、本明細書に記載の治療用生物製剤、胆道治療用エンハンサー及び/又は組成物の逆行性管(retroductal)送達は、対象の肝臓に治療薬を送達するために用いられる。いくつかの例において、治療用生物製剤の直接的な逆行性管送達は、治療用生物製剤の増強された局所肝臓濃度をもたらす。いくつかの例において、治療用生物製剤は、胆汁による不活性化を受ける(受けやすい)。
【0015】
本方法のいくつかの態様では、治療用生物製剤は、限定されないが、遺伝子治療剤、又は限定されないが、非ウイルスベクター、ウイルスベクター、脂質ナノ粒子、エンベロープウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、治療用ペプチド、又は肝疾患の対象における(すなわち、欠損している及び/又は存在しない)抗体を含むタンパク質を含んでもよい。
【0016】
いくつかの態様では、胆道治療用エンハンサーは、限定されないが、ポリアミン及び/又はポリエーテルポリマーを含んでもよい。いくつかの例において、胆道治療用エンハンサーは、例えば、コレセベラム、コレスチラミン、コレスチポール、及び/又はセベラマーを含むがこれらに限定されない、胆汁酸隔離剤であってもよい。いくつかの例において、胆道治療用エンハンサーは、例えば、ポリブレン、硫酸プロタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ-L-リジン、及び/又はF108を含むがこれらに限定されない、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーであってもよい。
【0017】
いくつかの態様では、治療用生物製剤及び胆道治療用エンハンサーは、共投与されてもよい。本方法のいくつかの態様では、治療用生物製剤及び胆道治療用エンハンサーは、単一の医薬組成物中に共製剤化されてもよい。本方法のいくつかの態様では、胆道治療用エンハンサーは、治療用生物製剤の前に投与されてもよい。本方法のいくつかの態様では、例えば、2つ以上の胆道治療用エンハンサーが胆汁酸隔離剤及びカチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーを含む場合を含めて、2つ以上の胆道治療用エンハンサーが投与されてもよい。2つ以上の胆道治療用エンハンサーが投与され得る方法のいくつかの態様では、2つ以上の胆道治療用エンハンサーは、単一の医薬組成物中で共投与又は共製剤化されてもよい。
【0018】
いくつかの態様では、本方法は更に、対象に、限定されないが、例えば、胆汁酸分泌阻害剤がFXRアゴニストであり、任意選択で、FXRアゴニストがオベチコール酸又はFGF19類似体から選択される場合を含む、胆汁酸分泌阻害剤を投与することを含んでもよい。
【0019】
本開示の態様はまた、例えば、液体の薬学的に許容され得る担体;治療用生物製剤;及び/又は胆道治療用エンハンサーを含む、本明細書に記載の組成物及び/又は試薬のいずれかを含み得るキットを含む。キットは更に、組成物を使用するため、及び/又は本明細書に記載の方法を実施するための説明書を含んでもよい。
【0020】
いくつかの態様では、キットの胆道治療用エンハンサー及びキットの液体の薬学的に許容され得る担体は、キットの容器中で一緒に製剤化される。いくつかの態様では、キットの治療用生物製剤は、胆汁による不活性化を受けやすい。のいくつかの態様では、治療用生物製剤は、限定されないが、遺伝子治療剤、又は限定されないが、非ウイルスベクター、ウイルスベクター、脂質ナノ粒子、エンベロープウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(AAV)、治療用ペプチド、又は抗体を含むタンパク質を含んでもよい。特定の実施形態では、ウイルスベクター又は非ウイルスベクターは、1つ以上のタンパク質(例えば、治療用タンパク質、抗体など)、例えば、1つ以上の肝臓症状において欠如している(すなわち、欠損している及び/又は存在しない)本明細書に記載の1つ以上のタンパク質をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを含む。
【0021】
いくつかの態様では、キットの胆道治療用エンハンサーは、限定されないが、ポリアミン又はポリエーテルポリマーを含んでもよい。いくつかの例において、胆道治療用エンハンサーは、例えば、コレセベラム、コレスチラミン、コレスチポール、及びセベラマーを含むがこれらに限定されない、胆汁酸隔離剤であってもよい。いくつかの例において、胆道治療用エンハンサーは、例えば、ポリブレン、硫酸プロタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ-L-リジン、及びF108を含むがこれらに限定されない、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーであってもよい。
【0022】
いくつかの態様では、キットは、限定されないが、デバイスが治療用生物製剤の肝臓への逆行性管送達のために構成される場合を含む、デバイスを含んでもよい。いくつかの態様では、キットは、本明細書に記載の症状の処置のために使用されてもよい。
【0023】
本開示の態様は、細胞を形質導入又はトランスフェクトする方法であって、胆汁の存在下で細胞を胆道形質導入エンハンサーと接触させて形質導入/トランスフェクション組成物を生成すること;及び細胞内への外因性核酸の形質導入又はトランスフェクションに十分な条件下で、形質導入/トランスフェクション組成物を、外因性核酸を含む遺伝子治療剤と接触させ、それによって細胞を外因性核酸で形質導入又はトランスフェクトすることを含む方法を含む。
【0024】
いくつかの態様では、細胞は、肝細胞、任意選択で肝実質細胞である。いくつかの態様では、遺伝子治療剤は、脂質ナノ粒子又はエンベロープウイルスベクターを含む、非ウイルスベクター又はウイルスベクターを含んでもよい。いくつかの態様では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである。
【0025】
いくつかの態様では、外因性核酸はコード配列を含み、コード配列は、転写因子、治療用ペプチド、又は抗体をコードすることを含む。いくつかの態様では、胆道治療用エンハンサーは、ポリアミン又はポリエーテルポリマーを含む。いくつかの態様では、胆道治療用エンハンサーは、コレセベラム、コレスチラミン、コレスチポール、又はセベラマーなどの胆汁酸隔離剤である。いくつかの態様では、胆道治療用エンハンサーは、ポリブレン、硫酸プロタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ-L-リジン、又はF108などのカチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーである。いくつかの態様では、細胞を胆道形質導入エンハンサーと接触させることは、細胞を胆汁酸隔離剤及びカチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーの両方と接触させることを含んでもよいいくつかの態様では、胆道形質導入エンハンサー及び遺伝子治療剤は、接触させる前に製剤中に一緒に存在する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本発明は、添付の図面と併せて読むと、以下の詳細な説明から最もよく理解される。一般的な慣行に従って、図面の様々な特徴は縮尺通りではないことが強調される。逆に、様々な特徴の寸法は、明確にするために任意に拡大又は縮小されている。図面には、以下の図が含まれる。
【0027】
図1】胆汁酸隔離剤を形質導入反応に添加することにより、さもなければ胆汁の存在下で実質的に低減される相対ルシフェラーゼ単位(「RLU」)によって測定される、レンチウイルスベクター(脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーターによって駆動される2Aペプチドを介して連結されたルシフェラーゼ及びEmerald GFP導入遺伝子を含む「LV-SFFV-LUC2-P2A-EmGFP」)の活性をレスキューすることを実証する、HeLaRC32細胞におけるレンチウイルス形質導入アッセイからの結果を示すグラフである。
【0028】
図2】異なる形質導入エンハンサー(ポリエチレンイミン「PEI」又はポリエチレングリコール)の存在下で一連の胆汁希釈物において行われたレンチウイルス形質導入アッセイからの結果を示すグラフであり、形質導入エンハンサー単独で、さもなければ胆汁の存在下で失われるレンチウイルスベクター活性をレスキューできることを実証している。
【0029】
図3】15%ラット胆汁への曝露によるレンチウイルスベクター(「LVV」)の不活性化の時間的動態を実証する胆汁時系列からの結果を示すグラフである。
【0030】
図4A】緑色蛍光タンパク質マーカー(GFP)をコードするmRNAを有するLNPの形質導入効率に及ぼす胆汁隔離剤及び/又はエンハンサーの効果を示すグラフである。図4Aは、示された濃度の隔離剤(コレセベラム)又は形質導入エンハンサー(F108)でGFPを発現する細胞のパーセントを示す。図4Bは、図4Aの結果を対数形式で示すグラフである。「胆汁」は、30%ラット胆汁のみを含むサンプルを指す。「胆汁+コレセベラム」は、胆汁及びコレセベラムを(示された濃度で)含有するサンプルを指す。「胆汁+F108」は、胆汁及びF108を含有するサンプルを指し、「処置なし」は、胆汁、隔離剤又はエンハンサーを含まない対照を指す。
図4B】緑色蛍光タンパク質マーカー(GFP)をコードするmRNAを有するLNPの形質導入効率に及ぼす胆汁隔離剤及び/又はエンハンサーの効果を示すグラフである。図4Aは、示された濃度の隔離剤(コレセベラム)又は形質導入エンハンサー(F108)でGFPを発現する細胞のパーセントを示す。図4Bは、図4Aの結果を対数形式で示すグラフである。「胆汁」は、30%ラット胆汁のみを含むサンプルを指す。「胆汁+コレセベラム」は、胆汁及びコレセベラムを(示された濃度で)含有するサンプルを指す。「胆汁+F108」は、胆汁及びF108を含有するサンプルを指し、「処置なし」は、胆汁、隔離剤又はエンハンサーを含まない対照を指す。
【0031】
図5A】賦形剤又はルシフェラーゼ導入遺伝子を有するレンチウイルスベクター(LVV)で処置した動物由来の代表的なルシフェラーゼ染色肝臓切片を示す。図5Aは、賦形剤で処置した動物からの肝臓切片を示す。図5Bは、LVVで処置した動物からの切片を示す。示されるように、LVVで処置した動物のみがインビボでそれらの肝臓においてルシフェラーゼを発現した(図5B)。
図5B】賦形剤又はルシフェラーゼ導入遺伝子を有するレンチウイルスベクター(LVV)で処置した動物由来の代表的なルシフェラーゼ染色肝臓切片を示す。図5Aは、賦形剤で処置した動物からの肝臓切片を示す。図5Bは、LVVで処置した動物からの切片を示す。示されるように、LVVで処置した動物のみがインビボでそれらの肝臓においてルシフェラーゼを発現した(図5B)。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本開示は、胆道系を含む、胆汁が存在する場所への治療用生物製剤の送達を増強するための組成物及び方法、並びにそのような方法において使用するための組成物及びキットを提供する。また、治療用生物製剤の送達のための胆道治療用エンハンサーを含む組成物、及び胆道治療用エンハンサーを用いる方法も提供される。本明細書に記載される治療用生物製剤の胆道送達の方法は、一般に、関連する生物製剤及び胆道治療用エンハンサーの1回以上の投与を含む。胆道送達組成物は、一般に、1つ以上の胆道治療用エンハンサー及び治療用生物製剤を含む。胆汁の存在下での治療用生物製剤の活性の減少と比較して、本開示の組成物、方法、及びキットは、胆汁の存在下での治療剤の活性の増加、増強及び/又はレスキューをもたらす。例えば、記載される方法、組成物及びキットにおける胆道治療用エンハンサーの使用も提供される。
【0033】
本発明をより詳細に説明する前に、本発明は、説明される特定の実施形態に限定されず、従って、当然ながら変化し得ることを理解されたい。本発明の範囲は添付の「特許請求の範囲」によってのみ限定されるので、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0034】
値の範囲が提供される場合、文脈が別途明確に指示しない限り、その範囲の上限と下限との間の下限の単位の10分の1までの各介在値、及びその記載された範囲内の任意の他の記載値又は介在値は、本発明に包含されることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、より小さい範囲に独立して含まれてもよく、また、記載された範囲内の任意の具体的に除外された限界に従って、本発明に包含される。記載された範囲が限界の一方又は両方を含む場合、それらの含まれる限界のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。
【0035】
特定の範囲は、本明細書において、「約」という用語が先行する数値で示される。「約」という用語は、本明細書では、それが先行する正確な数、並びにその用語が先行する数に近いか又は近似している数に対する文字通りの裏付けを提供するために使用される。ある数が具体的に列挙された数に近いか又は近似しているかどうかを決定する際に、その近いか又は近似している列挙されていない数は、それが提示されている文脈において、具体的に列挙された数の実質的な等価物を提供する数であってもよい。
【0036】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載の方法及び材料に類似の、又は同等の任意の方法及び材料も、本発明の実施、又は試験に使用され得るが、代表的な例示的な方法及び材料をここに記載する。
【0037】
本明細書に引用される全ての刊行物及び特許は、個々の刊行物又は特許が具体的且つ個別に参照により組み込まれることが示されているかのように参照により本明細書に組み込まれ、刊行物が引用される方法及び/又は材料を開示及び記載するために参照により本明細書に組み込まれる。任意の刊行物の引用は、出願日より前のその開示のためであり、本発明が、先行発明によってそのような刊行物に先行する権利がないことを認めるものと解釈されるべきではない。更に、提供される刊行物の日付は、独立して確認される必要があり得る実際の刊行日とは異なり得る。
【0038】
本明細書及び添付の「特許請求の範囲」で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含むことに留意されたい。特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように作成され得ることに更に留意されたい。従って、この記述は、特許請求の範囲の要素の列挙に関連して「単独で(solely)」、「のみ(only)」などの排他的な用語の使用、又は「否定的」限定の使用のための先行詞としての役割を果たすことが意図される。
【0039】
本開示を読んだ当業者には明らかであるように、本明細書に記載及び図示される個々の実施形態の各々は、本発明の範囲又は精神から逸脱することなく、他のいくつかの実施形態のいずれかの特徴から容易に分離され得るか、又は組み合わせられ得る別個の構成要素及び特徴を有する。任意の列挙された方法は、列挙された事象の順序で、又は論理的に可能な任意の他の順序で実行することができる。
【0040】
装置及び方法は、機能的な説明を伴う文法的な流動性のために記載されているが、特許請求の範囲は、米国特許法第112条の下で明示的に定式化されていない限り、「手段」又は「ステップ」の限定の構成によって必ずしも限定されるものと解釈されるべきではなく、均等物の法理論の下で特許請求の範囲によって提供される定義の意味及び均等物の全範囲が与えられるべきであり、特許請求の範囲が米国特許法第112条の下で明示的に定式化されている場合には、米国特許法第112条の下で完全な法定均等物が与えられるべきであることが明確に理解されるべきである。
【0041】
定義
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。以下の定義は、適用可能な場合、それらの様々な文法形態も含むことが意図される。本明細書で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、又は「その(the)」は、文脈が別途明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。従って、例えば、「細胞」への言及は、複数のそのような細胞を含み、「薬剤」への言及は、当業者に公知の1つ以上の薬剤への言及などを含む。
【0042】
参照数値に関する「約」という用語は、その値から±10%の値の範囲を含むことができる。例えば、量「約10」は、9、10、及び11の値を含む、9~11の値を含む。参照数値に関する「約」という用語はまた、その値からプラス又はマイナス10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、又は1%の値の範囲を含み得る。
【0043】
本開示の特定の実施形態を説明する前に、本開示を説明する際に使用される定義を記載することが有用であろう。
【0044】
「胆道治療用エンハンサー」という用語は、胆汁の存在下で、1つ以上の肝細胞への生物製剤の送達を増強する、任意の化合物、分子、又は1つ以上の化合物及び分子の製剤を指す。肝細胞は、限定されないが、生きている対象において(肝臓全体としてインビボで)単離されてもよく(例えば、成熟若しくは肝幹細胞の単離された集団)、又は対象から得て、同じ若しくは異なる対象に導入してもよい(エクスビボで)。この用語は、1つ以上の胆汁隔離剤(「隔離剤」とも呼ばれる)及び/又は1つ以上の形質導入エンハンサーを含むが、これらに限定されず、これらは、同時に(同じ若しくは異なる製剤で)又は任意の順序で連続して(同じ若しくは異なる製剤で)投与されてもよい。
【0045】
「推定する」という用語は、任意の形態の測定を含み、要素が存在するか否かを決定することを含む。「決定する」、「測定する」、「評価する」、「推定する」及び「アッセイする」という用語は互換的に使用され、定量的及び定性的決定を含む。推定することは、相対的又は絶対的であり得る。
【0046】
「対照」、「対照アッセイ」、「対照サンプル」などの用語は、例えば、関連する実験サンプルから得られた結果が信頼できるかどうかを示すために、関連する実験結果が真の結果を示す信頼度を示すために、及び/又は実験結果の較正を可能にするために、予想される結果が高い確実性で知られているサンプル、試験、又は実験若しくは診断手順若しくは実験設計の他の部分を指す。例えば、いくつかの例において、対照は、実験者が陰性対照アッセイが陽性結果をもたらさない高い確実性を有し得るように、アッセイの必須成分が除外されるような「陰性対照」アッセイであってもよい。いくつかの例において、対照は、実験者が陽性対照アッセイが陽性結果をもたらさない高い確実性を有し得るように、特定のアッセイの全ての成分が特徴付けられ、組み合わされたときに、実施されるアッセイにおいて特定の結果をもたらすことが知られているような「陽性対照」アッセイであってもよい。対照はまた、「ブランク」サンプル、「標準」サンプル(例えば、「ゴールドスタンダード」サンプル)、検証済みサンプルなどを含んでもよい。
【0047】
「特異的結合」、「特異的に結合する」などの用語は、溶液又は反応混合物中の他の分子又は部分と比較して、ある分子への非共有結合性又は共有結合性の優先的結合を指す(例えば、抗体は、他の利用可能なポリペプチド又はエピトープと比較して、特定のポリペプチド又はエピトープに特異的に結合する)。いくつかの実施形態では、1つの分子の、それが特異的に結合する別の分子に対する親和性は、10M以下のKD(解離定数)によって特徴付けられる(例えば、10M以下、10M以下、10M以下、10M以下、1010M以下、1011M以下、1012M以下、10’’13M以下、1014M以下、1015M以下、又は1016M以下)。「親和性」は、結合の強度を指し、増加した結合親和性は、より低いKDと相関する。
【0048】
「レシピエント」、「個体」、「対象」、「宿主」、及び「患者」という用語は、本明細書において互換的に使用され、診断、処置、又は治療が望まれる任意の哺乳動物対象、例えばヒト対象を指す。処置の目的のための「哺乳動物」は、ヒト、家畜及び農場動物、並びに動物園、スポーツ、又はペット動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ラクダなどを含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。いくつかの実施形態では、哺乳動物はヒトである。いくつかの場合において、本発明の方法は、実験動物において、獣医学的適用において、及び/又はマウス、ラット、及びハムスター;ウサギ、イヌ、ネコ、非ヒト霊長類、及び他の動物を含む齧歯類を含むがこれらに限定されない動物モデルの開発において使用される。
【0049】
「処置」、「処置すること」、「処置する」などの用語は、本明細書において、一般に、所望の薬理学的及び/又は生理学的効果を得ることを指すために使用される。効果は、疾患若しくはその症候を完全に若しくは部分的に予防するという点で予防的であり得、且つ/又は疾患及び/若しくは疾患に起因する有害作用の部分的若しくは完全な安定化若しくは治癒という点で治療的であり得る。例えば、防止的処置、すなわち、予防的処置は、症状(例えば、肝臓症状)を効果的に予防する処置、又は症状(例えば、肝臓症状)の進行を効果的に予防若しくは制御する処置を含み得る。いくつかの例において、処置は、完全寛解又は部分寛解などの処置応答をもたらし得る。「処置」という用語は、哺乳動物、特にヒトにおける疾患の任意の処置を包含し、(a)疾患又は症候に罹患しやすい可能性があるが、まだ罹患していると診断されていない対象において、疾患及び/又は症候が発生するのを予防すること;(b)疾患及び/又は症候を阻害すること、すなわち、疾患及び/又は関連症候の発症を停止させること;(c)疾患及び関連症候を軽減すること、すなわち、疾患及び/又は症候の退行を引き起こすことを含む。
【0050】
処置を必要とする者としては、既に罹患している者(例えば、肝臓症状(例えば、急性肝臓症状、慢性肝臓症状など)を有する者、肝硬変を有する者、線維症を有する者など)、並びに予防が所望される者(例えば、肝臓症状に対する感受性が増加している者;肝臓症状を有することが疑われる者;肝臓症状を発症するリスクが増加した者;肝臓症状を引き起こす診療又は薬剤への環境曝露が増加した者;肝臓症状に対する遺伝的又は行動的素因を有する疑いのある者;肝臓症状を有する者;肝臓症状のリスクの増加を示すスクリーニングの結果を有する者;肝臓症状について陽性と検査された者;肝臓症状などの1つ以上のバイオマーカーについて陽性と検査された者)を挙げることができる。
【0051】
治療的処置は、対象が投与前に罹患している処置であり、予防的処置は、対象が投与前に罹患していない処置である。いくつかの実施形態では、対象は、罹患する可能性が高いか又は罹患する可能性が高いと疑われ(例えば、標準と比較して、例えば、平均的な個体と比較して、例えば、対象は症状に対する遺伝的素因及び/又はリスクの増加を示す家族歴を有し得る)、この場合、処置は予防的処置であってもよい。
【0052】
本明細書で使用される場合、「小分子」という用語は、50ダルトン超且つ約2,500ダルトン未満の分子量を有する小さな有機又は無機化合物を指す。薬剤は、タンパク質との構造的相互作用、特に水素結合に必要な官能基を含んでもよく、少なくともアミン、カルボニル、ヒドロキシル又はカルボキシル基を含んでもよく、少なくとも2つの官能化学基を含有してもよい。小分子薬剤は、1つ以上の官能基で置換された環状炭素若しくは複素環式構造及び/又は芳香族若しくは多環芳香族構造を含んでもよい。小分子薬剤はまた、ペプチド、糖類、脂肪酸、ステロイド、プリン、ピリミジン、誘導体、構造類似体又はそれらの組み合わせを含む生体分子の中にも見出される。
【0053】
「組換え」という用語は、核酸分子を記載するために本明細書で使用される場合、ゲノム、cDNA、ウイルス、半合成、及び/又は合成起源のポリヌクレオチドを意味し、これは、その起源又は操作によって、天然に関連するポリヌクレオチド配列の全部又は一部と関連しない。タンパク質又はポリペプチドに関して使用される組換えという用語は、組換えポリヌクレオチドからの発現によって産生されるポリペプチドを意味する。宿主細胞又はウイルスに関して使用される組換えという用語は、組換えポリヌクレオチドが導入された宿主細胞又はウイルスを意味する。組換えはまた、本明細書において、材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質、又はベクター)に関して、材料が異種材料(例えば、細胞、核酸、タンパク質、又はベクター)の導入によって改変されていることを指すために使用される。
【0054】
本明細書で互換的に使用される「核酸」及び「ポリヌクレオチド」という用語は、リボヌクレオチド又はデオキシリボヌクレオチドのいずれかであり、その類似体を含む、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。これらの用語は、分子の一次構造のみを指す。従って、この用語は、二本鎖及び一本鎖DNA、三本鎖DNA、並びに二本鎖及び一本鎖RNAを含む。それはまた、例えばメチル化及び/又はキャッピングによって修飾された形態、並びにポリヌクレオチドの非修飾形態を含む。この用語はまた、天然に存在しないヌクレオチド又は合成ヌクレオチド並びにヌクレオチド類似体を含む分子を含むことが意図される。核酸及びポリヌクレオチドの非限定的な例としては、直鎖状及び環状核酸、メッセンジャーRNA(mRNA)、cDNA、組換えポリヌクレオチド、ベクター、プローブ、プライマー、一本鎖、二本鎖、又は多重鎖DNA若しくはRNA、ゲノムDNA、DNA-RNAハイブリッド、化学的又は生化学的に修飾された、非天然の、又は誘導体化されたヌクレオチド塩基、修飾された又は非天然のヌクレオチド塩基を含有するオリゴヌクレオチド(例えば、ロックド核酸(LNA)オリゴヌクレオチド)、及び干渉RNAが挙げられる。いくつかの例において、ポリヌクレオチドは、生物のゲノム中に存在する対応する配列から少なくともいくつかの非コード配列を除外する連続オープンリーディングフレームポリヌクレオチドであってもよい。
【0055】
「核酸治療薬」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、例えば、本明細書に記載されるような遺伝子治療の文脈において適用されるような、対象の症状を処置するための治療の文脈において投与され得る核酸を指す。核酸治療薬の非限定的な例としては、症状に関連する遺伝子の発現を抑制するための干渉核酸、欠損遺伝子発現又は異常遺伝子発現の置換のためのコード配列(例えば、発現カセット、プラスミド、ベクターゲノムなどに配置される)、治療効果を提供する異種遺伝子産物の発現のためのコード配列などが挙げられる。
【0056】
「ポリペプチド」という用語は、「ポリペプチド」及び「タンパク質」という用語と互換的に使用され、アミノ酸残基のポリマーを指す。ポリペプチドは、本質的に任意の長さの機能的タンパク質フラグメント並びに完全長タンパク質を含む。「ペプチド」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、40個以下のアミノ酸のポリペプチド鎖を指す。「ペプチド治療薬」は、確立された治療機能を有するペプチドである。
【0057】
「抗体」及び「免疫グロブリン」という用語は、任意のアイソタイプの抗体又は免疫グロブリン、Fab、Fv、scFv、及びFdフラグメントを含むがこれらに限定されない抗原への特異的結合を保持する抗体のフラグメント、キメラ抗体、ヒト化抗体、単鎖抗体(scAb)、単一ドメイン抗体(dAb)、単一ドメイン重鎖抗体、単一ドメイン軽鎖抗体、ナノボディ、二重特異性抗体、多重特異性抗体、並びに抗体の抗原結合(本明細書では抗原結合とも呼ばれる)部分及び非抗体タンパク質を含む融合タンパク質を含む。Fab’、Fv、F(ab’)、及び/又は抗原への特異的結合を保持する他の抗体フラグメント、並びにモノクローナル抗体もこの用語に包含される。本明細書で使用される場合、モノクローナル抗体は、同一の細胞の群によって産生される抗体であり、これらの全ては、反復細胞複製によって単一細胞から産生された。すなわち、細胞のクローンは単一の抗体種のみを産生する。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ産生技術を使用して産生され得るが、当業者に公知の他の産生方法もまた使用され得る(例えば、抗体ファージディスプレイライブラリーに由来する抗体)。抗体は、一価又は二価であり得る。抗体は、4つのポリペプチド鎖:ジスルフィド結合によって連結された2つの重鎖及び2つの軽鎖からなる「Y字型」分子であるIg単量体であり得る。
【0058】
本明細書で使用される「モノクローナル抗体」という用語は、ハイブリドーマ技術によって産生される抗体に限定されない。「モノクローナル抗体」という用語は、任意の真核生物、原核生物、又はファージクローンを含む単一クローンに由来する抗体を指し、それが産生される方法を指すものではない。本開示に関連して有用なモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ、組換え、及びファージディスプレイ技術又はそれらの組み合わせの使用を含むがこれらに限定されない多種多様な技術を使用して調製することができる。
【0059】
「形質導入」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、ウイルスベクターを使用した細胞への外来核酸の導入を指し、「トランスフェクション」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、非ウイルス法によって細胞に核酸を導入するプロセスを指す。しかしながら、当業者には容易に明らかである本開示全体を通してのいくつかの例において、「形質導入」及び「トランスフェクション」という用語は互換的に使用されてもよい。いくつかの例において、形質導入という用語の使用は、核酸の非ウイルス送達を除外してもよい。いくつかの例において、トランスフェクションという用語の使用は、核酸のウイルス送達を除外してもよい。
【0060】
「ベクターコピー数」又は「VCN」という用語は、細胞に導入されたベクター又はその一部のコピー数を指す。平均VCNは、細胞集団から、又は個々の細胞コロニーから決定されてもよい。VCNを決定するための例示的な方法としては、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及びフローサイトメトリーが挙げられる。
【0061】
「ウイルス粒子」、「ウイルス」などの用語は、例えば、バキュロウイルス粒子、レンチウイルス粒子、アデノウイルス粒子などを含む感染性ウイルス因子を指す。ウイルス及びウイルス粒子は、天然に存在するもの、組換え体、操作されたもの、又は合成のものであってもよい。
【0062】
「ベクター」又は「発現ベクター」は、プラスミド、ファージ、ウイルス、又はコスミドなどのレプリコンであり、これに別のDNAセグメント、すなわち「インサート」を付着させて、細胞内で付着したセグメントの複製をもたらすことができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「レトロウイルス」という用語は、そのゲノムRNAを直鎖二本鎖DNAコピーに逆転写し、続いてそのゲノムDNAを宿主ゲノムに共有結合的に組み込むRNAウイルスを指す。レトロウイルスは、遺伝子送達のための一般的なツールである。例示的なレトロウイルスとしては、モロニーマウス白血病ウイルス(M-MuLV)、モロニーマウス肉腫ウイルス(MoMSV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV)、マウス乳癌腫瘍ウイルス(MuMTV)、テナガザル白血病ウイルス(GaLV)、ネコ白血病ウイルス(FLV)、スピューマレトロウイルス属、フレンドマウス白血病ウイルス、マウス幹細胞ウイルス(MSCV)及びラウス肉腫ウイルス(RSV))及びレンチウイルスが挙げられるが、これらに限定されない。
【0064】
本明細書で使用される場合、「レンチウイルス」という用語は、複合レトロウイルスの群(又は属)を指す。例示的なレンチウイルスとしては、HIV(ヒト免疫不全ウイルス;HIV 1型及びHIV 2型を含む);ビスナ-マエディウイルス(VMV)ウイルス;ヤギ関節炎脳炎ウイルス(CAEV);ウマ伝染性貧血ウイルス(EIAV);ネコ免疫不全ウイルス(FIV);ウシ免疫不全ウイルス(BIV);及びサル免疫不全ウイルス(SIV)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、HIVベースのベクター骨格(すなわち、HIVシス作用性配列エレメント)が用いられ得る。
【0065】
レトロウイルスベクター、より具体的には、レンチウイルスベクターが、本発明の実施において使用され得る。従って、本明細書で使用される「レトロウイルス」又は「レトロウイルスベクター」という用語は、それぞれ「レンチウイルス」及び「レンチウイルスベクター」を含むことを意味する。
【0066】
組成物及び方法
本開示は、胆汁が標的送達位置に存在し得る状況において治療用生物製剤を送達するための胆道治療用エンハンサーを含む組成物及び方法を含み、それによって生物製剤から改善された治療効果を提供する。
【0067】
本明細書に記載及び実証されるように、胆汁の存在は、治療用生物製剤の活性に対して破壊的な効果を有し、生きている対象におけるそのような生物製剤の治療効果を減少、阻害、又は消失させる。従って、生物製剤が、胆汁が存在する対象内の標的位置に送達される場合、治療効果は、例えば、胆汁の非存在下で予想される活性と比較して低減され得るか、又は完全に失われ得る。生物製剤に対する胆汁のこの有害な影響は、所望の治療効果を依然として達成しながら、生物製剤治療薬が投与され得るインビボ位置を制限する。
【0068】
多数の生物製剤治療薬が、肝臓症状の処置のために開発されており、これらは、インビトロ及び前臨床研究において有望であることが示されているが、臨床試験においてヒト対象に全身投与される場合、これらの生物製剤の多くは、臨床的有効性を実証しない。肝臓指向性治療を改善し、及び/又は肝臓指向性治療用生物製剤の臨床的有効性を増加させるための1つの代替的なアプローチは、治療薬を肝臓に集中させ、従って、例えば、全身的に及び/又は肝臓以外の位置での生物製剤の比較的低い濃度と比較して、肝臓の中及び/又は周囲での治療薬の高い局所濃度を達成することである。本明細書に記載されるように、肝臓における関連する生物製剤治療薬の局所濃度の増加は、生物製剤を胆道系に直接送達し、肝臓への生物製剤の逆行移動を可能にすることによって達成され得る。このアプローチは、増加した肝臓濃度、より低い用量、より迅速な曝露などを含む種々の利点を提供するが、胆道系における胆汁の存在は、本明細書に記載されるように、送達された生物製剤の活性に対して有害な影響を及ぼし得る。
【0069】
本開示は、少なくとも部分的に、胆汁を含有する混合物への特定の試薬の添加が、その時点又はその後に胆汁含有混合物と接触し得る生物製剤治療薬の活性に対する胆汁の有害な影響を減少させ得るか、又はそうでなければ、胆汁が存在する環境に存在する場合に生物製剤の活性を増加させ得るという発見に基づく。従って、そのような試薬は、胆汁の存在下で送達される治療薬の効果を増強し、本明細書では胆道治療用エンハンサーと呼ばれる。本明細書に記載される方法及び組成物は、生物製剤治療薬の胆道系への直接送達後に予想外に優れた結果、例えば、治療有効性の増加をもたらす肝臓における局所濃度の増加を含むがこれに限定されない様々な利点を提供する。
【0070】
本明細書には、1つ以上の治療用生物製剤及び/又は1つ以上の胆道治療用エンハンサーを含む組成物が記載される。特定の実施形態では、組成物は、少なくとも1つの治療用生物製剤と少なくとも1つの胆道治療用エンハンサーとの組み合わせを含む。本発明の組成物は、医薬組成物であってもよく、1つ以上の薬学的に許容され得る医薬品添加剤、緩衝剤、及び/又は他の試薬を更に含んでもよい。追加の薬剤がまた、別個の組成物中に、且つ/又は1つ以上の治療用生物製剤及び/若しくは胆道治療用エンハンサーを含む組成物と共に含まれてもよい。例えば、いくつかの例において、胆汁酸分泌阻害剤はまた、別個の組成物中に、且つ/又は1つ以上の治療用生物製剤及び/若しくは胆道治療用エンハンサーを含む組成物と共に含まれてもよい。胆汁酸分泌阻害剤としては、ファルネソイドXレセプター(FXR)又はNR1H4(核内レセプターサブファミリー1、グループH、メンバー4)としても知られる胆汁酸レセプター(BAR)のアゴニストが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、胆汁酸分泌阻害剤はFXRアゴニストである。任意の量(投薬量)の治療用生物製剤及び胆道治療用エンハンサーが、本明細書に記載の別個の又は組み合わされた組成物において使用され得る。そのような投薬量は容易に決定することができる。
【0071】
本開示の態様は、本明細書に記載の方法のうちの1つ以上を実施するための医薬組成物を含み、そのような医薬組成物は、本明細書に記載される投与のために適切に製剤化された治療用生物製剤及び/又は胆道治療用エンハンサーを含んでもよい。いくつかの例において、医薬組成物は、本明細書に記載される投与のために適切に製剤化された治療用生物製剤と2つ以上の胆道治療用エンハンサー(例えば、胆汁酸隔離剤及びカチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサー)とを含んでもよい。いくつかの例において、医薬組成物は、本明細書に記載される投与のために適切に製剤化された2つ以上の治療用生物製剤及び胆道治療用エンハンサーを含んでもよい。
【0072】
医薬組成物の活性薬剤は、組み合わせられ得る(すなわち、2つ以上の活性薬剤の組成物として)か、又は別個の組成物に個々に製剤化され得る。いくつかの例において、各活性薬剤と共に個別に製剤化された医薬組成物は、本明細書に記載されるように、それぞれが1つ以上の活性薬剤(例えば、生物製剤治療薬、胆道治療用エンハンサー、胆汁酸隔離剤、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーなど)を有する2つ以上の組成物の併用処置で対象を処置するためのキットの形態で提供され得る。
【0073】
1つ以上の化合物を含む医薬組成物は、単独で、又は他の補助活性剤と組み合わせて、患者に投与され得る。医薬組成物は、従来の混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、封入、及び凍結乾燥を含むがこれらに限定されない様々なプロセスのいずれかを使用して製造することができる。医薬組成物は、滅菌溶液、懸濁液、エマルジョン、凍結乾燥物、錠剤、丸剤、ペレット、カプセル剤、散剤、シロップ、エリキシル、又は投与に適した任意の他の剤形を含むがこれらに限定されない様々な形態のいずれかをとることができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、例えば、注射又は注入によるものを含む、胆道系への送達を可能にする液体調製物又は液体懸濁液として構成されてもよい。適切な液体調製物は、所望の製剤に応じて、使用又は送達の直前に調製され得るか、あるいは十分に前もって調製され、そして使用前に保存され得る。
【0075】
1つ以上の化合物を含む本明細書に記載の組成物は、疾患症状又は症候の所望の低減をもたらすことができる任意の好都合な手段を使用して宿主に投与することができる。従って、化合物は、治療的投与のための様々な製剤に組み込むことができる。より具体的には、化合物は、適切な薬学的に許容され得る担体又は希釈剤と組み合わせることによって医薬組成物に製剤化することができ、様々な製剤に製剤化することができる。
【0076】
医薬組成物の製剤についてのガイダンスは、容易に入手可能である。例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences,by E.W.Martin,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,19th Edition,1995は、開示される化合物の薬学的送達に適した例示的な製剤(及びその成分)を記載している。化合物の少なくとも1つを含む医薬組成物は、ヒト又は獣医学における使用のために製剤化することができる。開示される医薬組成物の特定の製剤は、例えば、投与様式及び/又は処置される罹患領域の位置に依存し得る。いくつかの実施形態では、製剤は、少なくとも1つの有効成分に加えて、薬学的に許容され得る担体を含む。他の実施形態では、例えば、処置される苦痛に対して同様の、関連する、又は相補的な効果を有する他の医薬品又は薬剤も、医薬組成物中の有効成分として含めることができる。
【0077】
開示された方法及び組成物に有用な薬学的に許容され得る担体は、容易に入手可能である。薬学的担体の性質は、使用される特定の投与様式に依存する。例えば、液体製剤は、通常、薬学的及び生理学的に受容され得る流体(例えば、水、生理食塩水、平衡塩類溶液、水性デキストロース、グリセロールなど)を賦形剤として含む注射可能な流体を含む。固体組成物(例えば、散剤、丸剤、錠剤、又はカプセル剤の形態)の場合、従来の非毒性固体担体は、例えば、医薬品グレードのマンニトール、ラクトース、デンプン、又はステアリン酸マグネシウムを含むことができる。生物学的に中性の担体に加えて、投与されるべき医薬組成物は、必要に応じて、少量の非毒性補助物質(例えば、医薬品添加剤)、例えば、湿潤剤又は乳化剤、防腐剤、及びpH緩衝剤など;例えば、酢酸ナトリウム又はモノラウリン酸ソルビタンを含み得る。他の非限定的な医薬品添加剤としては、クレモフォールなどの非イオン性可溶化剤、又はヒト血清アルブミン若しくは血漿調製物などのタンパク質が挙げられる。
【0078】
薬学的に許容され得る担体として役立ち得る物質のいくつかの例としては、以下が挙げられる:(1)糖、例えば、ラクトース、グルコース及びスクロース;(2)デンプン、例えばトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプン;(3)セルロース及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース;(4)トラガカント粉末;(5)麦芽;(6)ゼラチン;(7)タルク;(8)医薬品添加剤、例えばカカオバター及び坐剤ワックス;(9)油、例えば落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油、大豆油;(10)グリコール、例えばプロピレングリコール;(11)ポリオール、例えばグリセリン、ソルビトール、マンニトール;(12)エステル、例えばオレイン酸エチル及びラウリン酸エチル;(13)寒天;(14)緩衝剤、例えば水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウム;(15)アルギン酸;(16)発熱物質を含まない水;(17)等張生理食塩水;(18)リンガー溶液;(19)エチルアルコール;(20)pH緩衝溶液;(21)ポリエステル、ポリカーボネート及び/又はポリ無水物;並びに(22)医薬製剤に用いられる他の非毒性の適合性物質。
【0079】
開示される医薬組成物及び/又はその成分は、開示される化合物の薬学的に許容され得る塩として製剤化され得る。薬学的に許容され得る塩は、遊離塩基の所望の薬理活性を有する化合物の遊離塩基形態の非毒性塩である。これらの塩は、無機酸又は有機酸から誘導され得る。適切な無機酸の非限定的な例は、塩酸、硝酸、臭化水素酸、硫酸、ヨウ化水素酸、及びリン酸である。適切な有機酸の非限定的な例は、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、マロン酸、コハク酸、リンゴ酸、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メチルスルホン酸、サリチル酸、ギ酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、グルコン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸などである。他の適切な薬学的に許容され得る塩のリストは、Remington’s Pharmaceutical Sciences,17th Edition,Mack Publishing Company,Easton,PA,1985に見出される。薬学的に許容され得る塩はまた、組成物の浸透圧を調節するのに役立ち得る。
【0080】
1つ以上の成分化合物を含む医薬組成物は、それらを水性溶媒又は非水性溶媒、例えば、植物油又は他の類似の油、合成脂肪酸グリセリド、高級脂肪酸のエステル又はプロピレングリコールに溶解、懸濁又は乳化することによって、注射用調製物に製剤化され得、所望される場合、従来の添加剤、例えば、可溶化剤、等張剤、懸濁化剤、乳化剤、安定剤及び保存剤と共に製剤化され得る。
【0081】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、連続送達システムによって送達することができる。「連続送達システム」という用語は、本明細書では「制御送達システム」と互換的に使用され、カテーテル、注射デバイスなどと組み合わせた連続(例えば、制御)送達デバイス(例えば、ポンプ)を包含し、その多種多様なものが容易に入手可能である。
【0082】
「単位剤形」という用語は、本明細書で使用される場合、ヒト及び動物対象のための単位投薬量として適した物理的に別個の単位を指し、各単位は、薬学的に許容され得る希釈剤、担体、又は賦形剤と関連して所望の効果を生じるのに十分な量で計算された本明細書に記載の組成物の所定の量(又はその所定の量)を含有する。本明細書に記載される組成物の仕様は、用いられる特定の化合物及び達成されるべき効果、並びに宿主における各化合物に関連する薬力学に依存する。開示される医薬組成物の剤形は、選択される投与様式によって決定される。
【0083】
組成物の各治療用化合物又は個々の成分は、独立して、本明細書に記載されるものなどの任意の剤形であってもよく、本明細書に記載されるように様々な方法で投与することもできる。例えば、化合物は、組み合わせ製品として、単一投与単位(すなわち、カプセル、錠剤、散剤、液体、又は懸濁液などの1つの形態で一緒に組み合わされる)で一緒に製剤化され得る。あるいは、単一投与単位中に一緒に製剤化されない場合、個々の化合物は、別の治療用化合物と同時に、又は任意の順序で連続して投与され得る。いくつかの例において、固体形態(例えば、カプセル、錠剤、散剤など)で提供される量又は投薬量の液体送達のために、固体形態は、使用前に溶解、懸濁、乳化、再水和などされてもよい。
【0084】
本明細書でより詳細に記載されるように、組成物の送達の順序(記載される方法におけるステップ)は変化してもよい。例えば、限定するものではないが、いくつかの例において、本方法は、胆道治療用エンハンサーを胆汁と接触させ、続いて生物製剤治療薬を添加又は投与することを含み得る。いくつかの実施形態では、胆道治療用エンハンサー組成物は、胆道系に直接送達され得、次いで、生物製剤組成物は、例えば、同じ経路によって、胆道系に直接投与され得る。従って、胆道治療用エンハンサー及び生物製剤はインビボで組み合わせることができる。いくつかの例において、胆道治療用エンハンサー及び生物製剤治療薬は、同時に又は本質的に同時に胆汁と接触され得る。いくつかの実施形態では、胆道治療用エンハンサーは、投与前(エクスビボ)、胆道系への直接送達前に、生物製剤と混合されてもよい。いくつかの例において、胆道治療用エンハンサー及び生物製剤治療薬の両方を含む組成物を胆汁と一緒に接触させてもよい。本明細書に記載される組成物、例えば、組み合わせ組成物は、投与の直前、数秒前、数分前、数時間前、数日前又は数ヶ月前を含む、投与前の任意の時点で調製され得る。特定の実施形態では、組成物は、投与の十分前に調製されてもよく、組成物は、その後、胆道系に直接投与されてもよい。更に、本明細書に記載される組成物の連続投与及び/又は同時投与は、任意の順序及び任意の回数で行われ得、これには、同じ組成物又は異なる組成物の1回以上の連続投与及び/又は投与が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
上記に要約されるように、本開示の方法は、胆汁含有溶液を、本明細書に記載されるような胆道治療用エンハンサー、治療用生物製剤及び/又は1つ以上の組成物と接触させることを含んでもよく、例えば、溶液を、治療用生物製剤、胆道治療用エンハンサー、治療用生物製剤及び/又は1つ以上の組成物と後で又は同時に接触させる場合を含む。胆汁含有溶液は様々であり、本質的に胆汁の任意の溶液、又は胆汁若しくは一次胆汁成分を含有する液体を含む。典型的には、胆汁含有溶液は、本明細書に記載される組成物で又は方法に従って処置される対象からの胆汁を含む。胆汁は、主に抱合胆汁酸塩、コレステロール、リン脂質、ビリルビン、及び電解質から構成され、透明、黄色、又はオレンジ色の液体をもたらす。胆汁は肝臓によって産生され、胆嚢に濃縮物として貯蔵され、消化に必要なときに胆管を介して小腸内に放出される。胆汁は、腸内容物のアルカリ化並びに脂肪の乳化、吸収及び消化を補助する。肝臓で産生される胆汁酸塩は、グリシン又はタウリンと抱合した胆汁酸から作られる。グリコ胆汁酸及びタウロ胆汁酸は抱合胆汁酸とも呼ばれる。グリシン又はタウリン結合は、胆汁酸塩の水溶性を増加させる。胆汁酸は、コレステロールに由来するステロイド酸であり、一次(すなわち、肝臓で合成されるもの、例えば、コール酸及びケノデオキシコール酸)及び二次(すなわち、腸内細菌によって一次胆汁酸から産生され、腸肝循環によって肝臓に戻されるもの、例えば、デオキシコール酸及びリトコール酸)として分類され得る。ヒト肝臓は、1日あたり約200~600mgの胆汁酸を合成する。
【0086】
胆汁含有溶液の非限定的な例としては、胆汁(例えば、胆管に天然に存在するもの;対象から抽出されたもの;)、希釈された胆汁(例えば、希釈剤、緩衝液、培地、又は他の溶液の添加若しくはそれらによる洗浄後に胆管中に存在するもの;胆汁からエクスビボで調製されたもの;)などが挙げられる。胆汁溶液は様々であってよく、例えば、0.01%以下の胆汁、0.01%以上の胆汁、0.1%以下の胆汁、0.1%以上の胆汁、1%以下の胆汁、1%以上の胆汁、2%以下の胆汁、2%以上の胆汁、3%以下の胆汁、3%以上の胆汁、4%以下の胆汁、4%以上の胆汁、5%以下の胆汁、5%以上の胆汁、6%以下の胆汁、6%以上の胆汁、7%以下の胆汁、7%以上の胆汁、8%以下の胆汁、8%以上の胆汁、9%以下の胆汁、9%以上の胆汁、10%以下の胆汁、10%以上の胆汁、15%以下の胆汁、15%以上の胆汁、20%以下の胆汁、20%以上の胆汁、25%以下の胆汁、25%以上の胆汁、30%以下の胆汁、30%以上の胆汁、40%以下の胆汁、40%以上の胆汁、50%以下の胆汁、50%以上の胆汁、60%以下の胆汁、60%以上の胆汁、70%以下の胆汁、70%以上の胆汁、75%以下の胆汁、75%以上の胆汁、80%以下の胆汁、80%以上の胆汁、90%以下の胆汁、90%以上の胆汁、95%以下の胆汁、95%以上の胆汁、97%以下の胆汁、97%以上の胆汁、98%以下の胆汁、98%以上の胆汁、99%以下の胆汁、99%以上の胆汁、又は100%の胆汁を含むが、これらに限定されない、様々な量の胆汁を含有してよい。
【0087】
有用な胆道治療用エンハンサーは様々であり、いくつかの例においてポリマー又は樹脂を含んでもよい。いくつかの例において、有用な胆道治療用エンハンサーは、ポリアミンポリマー又はポリエーテルポリマーを含む。
【0088】
有用な胆道治療用エンハンサーとしては、例えば、胆汁酸隔離剤が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例において、有用な胆汁酸隔離剤としては、ポリマー及び/又は樹脂胆汁酸隔離剤、例えば、ポリアミンポリマー胆汁酸隔離剤及び/又はポリエーテルポリマー胆汁酸隔離剤などが挙げられる。
【0089】
胆汁酸隔離剤には、胃腸管内の胆汁酸に結合してそれらの再循環を防止するポリマー樹脂のクラスに属する薬剤が含まれる。従来、このクラスの薬剤は経口投与され、高い血清コレステロールレベルを処置するために使用される。胆汁酸隔離剤は、腸から血流に有意に吸収されない。従って、胆汁酸隔離剤は、薬物に結合した任意の胆汁酸と共に、胃腸管を通過した後に糞便経路を介して排出される。有用な胆汁酸隔離剤の非限定的な例としては、コレセベラム、コレスチラミン(colestyramine)(cholestyramineとしても知られる)、コレスチポール、セベラマー、並びにそれらの様々な塩及び任意の誘導体が挙げられる。いくつかの例において、オレイン酸などであるがこれに限定されない結合エンハンサーを、1つ以上の対象胆汁酸隔離剤と共に使用又は組み合わせてもよい。一般に、このような結合エンハンサーは、溶液中に一緒に存在する場合、対象の胆汁酸隔離剤の胆汁酸結合能力を増加させ、例えば、オレイン酸と一緒に存在する場合、セベラマーの結合を増強させるが、これに限定されない。
【0090】
有用な胆汁酸隔離剤としてはまた、米国特許第5607669号、同第5679717号、及び同第7229613号、米国特許公開第201000331516号、並びにCamilleri&Gores,Am J Physiol Gastrointerst Liver Physiol,(2015)309(4)G209~G 215に記載されるものが挙げられ、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
胆汁酸隔離剤としては、アンモニウム基を有する架橋ポリマー又はカチオン性ヒドロゲルが挙げられ、その隔離活性は、主に、カチオン性に荷電したポリマーとアニオン性に荷電した胆汁酸との間の静電相互作用に基づく。適切な胆汁酸隔離剤としては、例えば、第四級アンモニウム基を含有するポリ(メタ)アクリレート、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリアルキルアミン及びポリアリルアミンに基づく両親媒性ポリマー;シクロデキストリン及び他の糖類ベースの隔離剤;並びに胆汁酸及び塩に選択的に結合する、分子インプリンティング法を介して調製された隔離剤が挙げられる。
【0092】
有用な胆道治療用エンハンサーとしては、例えば、形質導入エンハンサーも挙げられるが、これらに限定されない。「形質導入エンハンサー」という用語は、本明細書で使用される場合、一般に、インビトロ形質導入(又はトランスフェクション)反応の効率を増強するために使用される薬剤を指す。この用語は、標的細胞への核酸のウイルス導入及び非ウイルス導入の両方において有用な薬剤を含むので、有用な形質導入エンハンサーとしては、ウイルス形質導入及び非ウイルス形質導入の両方並びにトランスフェクション反応を増強する薬剤が挙げられる。形質導入エンハンサーは、形質導入及び/又はトランスフェクションを増強するそれらの機構において異なる。任意の量の1つ以上のエンハンサーが使用され得、そのような量は容易に決定され得る。
【0093】
形質導入エンハンサーの非限定的な例としては、16,16-ジメチルプロスタグランジンE2、1-オレオイルリゾホスファチジルコリン、AdenoBlast(商標)(Nordic Diagnostica AB)、AdenoBOOST(商標)(Sirion-Biotech GmbH)、Akti-1/2、BX795、コレステロール基連結オリゴヌクレオチド、コンドロイタンベースのプロテオグリカン、シクロスポリンA、シクロスポリンH、ダウノルビシン塩酸塩、DEAE-デキストラン、デキサメタゾン、Eeyarestatin I、エトポシド、F108、F127、グリセロール、インテグリン結合ペプチド、LentiBlast(商標)(Nordic Diagnostica AB)、LentiBOOST(商標)(Sirion-Biotech GmbH)、直鎖状デキストランノナサッカリド、リゾホスファチチド、リゾホスファチジルコリン、リゾホスファチジルエタノールアミン、リソソーム破壊ペプチド、MG132、PF03814735、ポリ(エチレングリコール)、ポリブレン、ポリアミン(PEI)、ポリ-L-リジン、プロスタグランジンE2、硫酸プロタミン、Protransduzin(商標)(JPT Peptide Technologies Inc.)、ロスバスタチンカルシウム、SAHA、スタウロスポリン、硫酸化プロテオグリカン、Transdux(商標)MAX(System Biosciences,LLC.)、TransPlus(商標)(ALSTEM,INC.)などが挙げられる。
【0094】
胆道治療用エンハンサーとして有用な形質導入エンハンサーとしては、例えば、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが挙げられる。いくつかの実施形態では、カチオン性形質導入エンハンサー又は複数の異なるカチオン性形質導入エンハンサーの組み合わせが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサー又は複数の異なる非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーの組み合わせが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、カチオン性形質導入エンハンサーと非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーとの組み合わせ、2つ以上の異なるカチオン性形質導入エンハンサーと非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーとの組み合わせ、又はカチオン性形質導入エンハンサーと2つ以上の異なる非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーとの組み合わせが使用されてもよい。いくつかの例において、有用な形質導入エンハンサー、例えば、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーは、ポリマー形質導入エンハンサー、例えば、カチオン性ポリマー又は非イオン性ポリマー両親媒性形質導入エンハンサー、例えば、ポリアミンポリマー形質導入エンハンサー及び/又はポリエーテルポリマー形質導入エンハンサーを含んでもよい。いくつかの例において、有用なカチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーは、ポリブレン(1,5-ジメチル-1,5-ジアザ-ウンデカ-メチル-ポリメトブロミド)、硫酸プロタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ-L-リジン、又はF108であってもよい。いくつかの例において、有用な形質導入エンハンサーとしては、米国特許第9771599号及び同第10815498号、米国特許公開第20020019358号、同第20150064788号、同第20180016600号、及び同第20200124505号、並びにPCT公開WO2020197400号及びWO2018208960号に記載されるものが挙げられ、これらの開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
いくつかの例において、有用な形質導入エンハンサーは、例えば、12.8kDa~約15kDaの分子量を有するポロキサマーを含むが、これらに限定されないポロキサマーである。「ポロキサマー」という用語は容易に理解され、ポリオキシエチレンの2つの親水性鎖に隣接するポリオキシプロピレンの中心疎水性鎖から構成される非イオン性トリブロックコポリマーを指す。適切なポロキサマー形質導入エンハンサーとしては、ポリ(エチレングリコール)-ブロック-ポリ(プロピレングリコール)-ブロック-ポリ(エチレングリコール)を様々な比率で含有するトリブロックコポリマー(Pluronics)が挙げられる。ポロキサマー形質導入エンハンサーの例は、Pluronic(登録商標)F108又はSynperonic(登録商標)F108(HO-[CHCH20-[CH40-[CHCH20であり、ここで、x+y=265.45及び=50.34である)。
【0096】
いくつかの実施形態では、胆汁酸隔離剤は、式(I)を有する化合物を含む:
【化1】
式中、
pは、1~3の整数であり
Xは、求電子性脱離基であり、
は、水素、C~C20アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はC~C20アルキルアンモニウム基からなる群から選択され、
アルキルは、OH又はアルキルアンモニウムで必要に応じて置換されている。
【0097】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物について、Xは、Cl又はBrから選択される。いくつかの実施形態では、XはClである。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物について、Rは、H又はC~C20アルキルである。いくつかの実施形態では、Rは、水素又は必要に応じて置換されたC~C20アルキルから選択される。
【0098】
いくつかの実施形態では、胆汁酸隔離剤は、構造(Ia)を有する式(I)の化合物を含む:
【化2】
式中、(a)は、1-ブロモデカン又は(6-ブロモヘキシル)-トリメチルアンモニウムブロミドアルキル化剤のいずれによってもアルキル化されておらず、エピクロロヒドリンによっても架橋されていないアリルアミンモノマー単位を表し、(b)は、エピクロロヒドリンで架橋されたアリルアミン単位を表し、(c)は、デシル基でアルキル化されたアリルアミン単位を表し、(d)は、(6-トリメチルアンモニウム)ヘキシル基でアルキル化されたアリルアミン単位を表す。いくつかの実施形態では、a、b、c及びdは、各々独立して存在するか又は存在しない。
【0099】
いくつかの実施形態では、胆汁酸隔離剤は、式(II)を有する化合物を含む:
【化3】
式中、
は、C~C10アリール又はC~C10ヘテロアリールからなる群から選択され、アリール又はヘテロアリールは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されている。
いくつかの実施形態では、式(II)の化合物について、Rは、C~Cアルキル又はハロゲン化アルキルアンモニウム基で必要に応じて置換されたC~C10アリールである。いくつかの実施形態では、Rは、C~Cアルキル又はハロゲン化アルキルアンモニウム基で必要に応じて置換されたベンジルである。いくつかの実施形態では、Rは、C~Cアルキル基で置換されたベンジルである。いくつかの実施形態では、Rは、CH(CHCl基で置換されたベンジルである。
【0100】
いくつかの実施形態では、胆汁酸隔離剤は、構造(IIa)を有する式(II)の化合物を含む:
【化4】
【0101】
いくつかの実施形態では、胆道治療用エンハンサーは、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーであり、式(III)を有する化合物を含む:
【化5】
式中、
x、y及びzの各々は、独立して1~250の整数である。
【0102】
いくつかの実施形態では、胆汁酸隔離剤は、式(III)を有する化合物を含み、式中、xは10~150の整数であり、yは10~100の整数であり、zは10~150の整数である。いくつかの実施形態では、胆汁酸隔離剤は、式(III)を有する化合物を含み、式中、x及びzは各々130~140であり、yは40~60である。
【0103】
いくつかの実施形態では、胆道治療用エンハンサーは、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーであり、式(IVa)又は式(IVb)を有する化合物を含む:
【化6】
式中、
xは、1~6の整数であり、
は、1つ以上のC~Cアルキル基で必要に応じて置換されたアミノ基である。
【0104】
いくつかの実施形態では、胆汁酸隔離剤は、式(V)を有する化合物を含む:
【化7】
式中、
及びRの各々は、独立して、アミノ、アルキルアミノ又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される。
【0105】
いくつかの実施形態では、胆汁酸隔離剤は、構造(Va)を有する式(V)の化合物を含む:
【化8】
【0106】
いくつかの実施形態では、胆道治療用エンハンサーは、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーであり、式(VI)を有する化合物を含む:
【化9】
式中、
xは、1~10の整数であり、
yは、1~6の整数であり、
Xは、求電子性脱離基であり、
各Rは、独立して、水素又はC~Cアルキル基である。
【0107】
いくつかの実施形態では、式(I)の化合物について、Xは、Cl又はBrから選択される。いくつかの実施形態では、XはBrである。いくつかの実施形態では、各Raは水素である。いくつかの実施形態では、各RaはC1~C3アルキルである。いくつかの実施形態では、各Raはメチルである。
【0108】
いくつかの実施形態では、胆汁酸隔離剤は、構造(VIa)を有する式(VI)の化合物を含む:
【化10】
【0109】
いくつかの実施形態では、胆汁酸隔離剤は、式(VII)を有する化合物を含む:
【化11】
式中、
aは、1~6の整数であり、
bは、1~6の整数であり、
cは、1~3の整数である。
【0110】
いくつかの実施形態では、胆汁酸隔離剤は、式(VII)の化合物を含み、式中、a及びbは、第一級アミン基の数を表し、cは、架橋基の数を表し、mは、拡張ポリマーネットワークを示す大きな数を表す。いくつかの実施形態では、a、b、及びcは、それぞれ独立して存在するか又は存在しない。いくつかの実施形態では、a+b=9及びc=1である。
【0111】
式(I)~(VII)の上記化合物の全てにおいて、反復単位の総数は、所望の生物学的活性に応じて所望の分子量を達成するために変化させることができる。従って、式(I)~(VII)の化合物中のn又はmの値は、3~10000、3~1000、3~500、3~300若しくは3~100、又はこれらの値の間及びこれらの値を包含する任意の値で変動し得る。式(I)、(Ia)、(II)、(IIa)、(III)、(IVa)、(IVb)、(V)、(Va)、(VI)、(VIa)、及び(VII)の化合物の各々の所望の平均分子量(MW)は、約100~約500000g/mol若しくはダルトン(約100~約1000、約1000~約5000、約5000~約10000、約10000~約50000、約50000~約100000、約100000~約300000、約300000~約500000を含む)の範囲であり得、これらの値の任意の2つの間の範囲及びこれらの値の任意の2つを含む範囲であり得る。いくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、約500~約1000のMWに対応するm及びnの値を有し得る。いくつかの実施形態では、式(Ia)の化合物は、約500~約1000のMWに対応するmの値を有し得る。いくつかの実施形態では、式(II)及び(IIa)の化合物は、約100~約500のMWに対応するnの値を有し得る。いくつかの実施形態では、式(III)の化合物は、約10000~約15000のMWに対応するx、y及びzの値を有し得る。いくつかの実施形態では、式(IVa)及び(IVb)の化合物は、約50000~約200000のMWに対応するnの値を有し得る。いくつかの実施形態では、式(V)の化合物は、約100~約500のMWに対応するm及びnの値を有し得る。いくつかの実施形態では、式(VI)及び(VIa)の化合物は、約100~約600のMWに対応するnの値を有し得る。いくつかの実施形態では、式(VII)の化合物は、約100~約500のMWに対応するmの値を有し得る。
【0112】
上記に要約したように、本明細書に記載の方法のいくつかの実施形態では、胆道治療用エンハンサーは、治療用生物製剤の前に投与されてもよい。それに対応して、いくつかの実施形態では、生物製剤の標的細胞は、治療用生物製剤と接触させる前に、胆道治療用エンハンサーと接触させてもよい。本明細書に記載される方法のいくつかの実施形態では、胆道治療用エンハンサーは、治療用生物製剤と一緒に(同時又は本質的に同時に、を含める)投与され得る。それに対応して、いくつかの実施形態では、生物製剤の標的細胞を、胆道治療用エンハンサー及び治療用生物製剤と同時に又は本質的に同時に接触させてもよい。本明細書に記載されるように、いくつかの実施形態では、胆道治療用エンハンサー及び治療用生物製剤は、共投与され得る。いくつかの実施形態では、本開示の方法は、例えば、胆道治療用エンハンサー及び治療用生物製剤が共製剤化される場合を含む、共製剤が使用されてもよい。
【0113】
いくつかの実施形態では、例えば、2~10、3~10、4~10、5~10、2~5、3~5、2、2以上、3、3以上、4、4以上、5、5以上、6、6以上、7、又は7以上の胆道治療用エンハンサーが使用される場合を含むがこれらに限定されない、2つ以上の胆道治療用エンハンサーが使用されてもよい。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの胆汁酸隔離剤及び少なくとも1つの形質導入エンハンサーが使用されてもよい。いくつかの例において、1つの胆汁酸隔離剤及び少なくとも2つの形質導入エンハンサーが使用されてもよい。いくつかの例において、2つ以上の胆汁酸隔離剤が使用されてもよい。2つ以上の胆道治療用エンハンサーの組み合わせが使用される場合、組み合わせの個々の要素は、同時に、本質的に同時に、又は連続して、標的細胞に投与及び/又は接触され得る。従って、2つ以上の胆道治療用エンハンサーの組み合わせを共投与及び/又は共製剤化することができる。
【0114】
いくつかの例において、少なくともコレセベラムと少なくともポリブレンとの組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレセベラムとポリブレンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレセベラムと少なくとも硫酸プロタミンとの組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレセベラムと硫酸プロタミンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレセベラムと少なくともポリエチレンイミン(PEI)との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレセベラムとポリエチレンイミン(PEI)とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレセベラムと少なくともポリ(エチレングリコール)(PEG)との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレセベラムとポリ(エチレングリコール)(PEG)とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレセベラムと少なくともポリ-L-リジンとの組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレセベラムとポリ-L-リジンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレセベラムと少なくともF108との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレセベラムとF108とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。
【0115】
いくつかの例において、少なくともコレスチラミンと少なくともポリブレンとの組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレスチラミンとポリブレンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレスチラミンと少なくとも硫酸プロタミンとの組み合わせが使用されてもよく、例えば、コレスチラミンと硫酸プロタミンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は逐次投与される場合が挙げられる。いくつかの例において、少なくともコレスチラミンと少なくともポリエチレンイミン(PEI)との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレスチラミンとポリエチレンイミン(PEI)とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレスチラミンと少なくともポリ(エチレングリコール)(PEG)との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレスチラミンとポリ(エチレングリコール)(PEG)とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレスチラミンと少なくともポリ-L-リジンとの組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレスチラミンとポリ-L-リジンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレスチラミンと少なくともF108との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレスチラミンとF108とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。
【0116】
いくつかの例において、少なくともコレスチポールと少なくともポリブレンとの組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレスチポールとポリブレンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレスチポールと少なくとも硫酸プロタミンとの組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレスチポールと硫酸プロタミンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレスチポールと少なくともポリエチレンイミン(PEI)との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレスチポールとポリエチレンイミン(PEI)とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレスチポールと少なくともポリ(エチレングリコール)(PEG)との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレスチポールとポリ(エチレングリコール)(PEG)とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレスチポールと少なくともポリ-L-リジンとの組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレスチポールとポリ-L-リジンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともコレスチポールと少なくともF108との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、コレスチポールとF108とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。
【0117】
いくつかの例において、少なくともセベラマーと少なくともポリブレンとの組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、セベラマーとポリブレンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともセベラマーと少なくとも硫酸プロタミンとの組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、セベラマーと硫酸プロタミンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともセベラマーと少なくともポリエチレンイミン(PEI)との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、セベラマーとポリエチレンイミン(PEI)とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともセベラマーと少なくともポリ(エチレングリコール)(PEG)との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、セベラマーとポリ(エチレングリコール)(PEG)とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともセベラマーと少なくともポリ-L-リジンとの組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、セベラマーとポリ-L-リジンとが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。いくつかの例において、少なくともセベラマーと少なくともF108との組み合わせが使用されてもよく、これには、例えば、セベラマーとF108とが共投与されるか、共製剤化されるか、又は連続して投与される場合が含まれる。
【0118】
上記の組み合わせは、単に代表的なものであり、非限定的である。上記で提供されるように、本開示は、本明細書に記載される胆道治療用エンハンサーの全ての組み合わせ、並びに本明細書に記載される全ての治療用生物製剤とのそのような組み合わせを明示的に企図し、記載する。
【0119】
様々な治療用生物製剤が、本明細書に記載される方法、組成物、及びキットにおいて使用される。「治療用生物製剤」という用語は、本明細書では「生物製剤治療薬」、「生物製剤」、及び「治療薬」と互換的に使用され、一般に、修飾又は非修飾のポリヌクレオチド又はポリペプチド、及びそれらの組み合わせ/組成物に由来するか、それらからなるか、又はそれらを少なくとも部分的に含む治療効果を有する薬剤を指す。生物製剤は、例えば、ヒト、動物、若しくは微生物を含むがこれらに限定されない様々な供給源から単離されてもよく、又はバイオテクノロジー若しくは組換え法によって産生されてもよい。生物製剤は、全体的又は部分的に合成されたものであってもよく、例えば、天然に存在するポリヌクレオチド又はポリペプチドなどの修飾形態を含んでもよい。
【0120】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法で使用される治療用生物製剤は、胆汁による不活性化を受けやすい場合がある。生物製剤のそのような胆汁不安定活性は、胆汁の存在によって部分的に又は完全に不活性化され得る。胆汁による特定の生物製剤の不活性化の機構は、生物製剤の性質、生物製剤の治療作用の機構、生物製剤の組成構成などを含む様々な因子に応じて変化する。例えば、いくつかの例において、胆汁不安定生物製剤は、胆汁の存在下で、部分的又は完全に分解されることを含めて、分解され得る。非排他的且つ非限定的な例として、例えば、エンベロープウイルスベクター、脂質ナノ粒子などであるがこれらに限定されない脂質成分を含む生物製剤は、胆汁の存在下で分解され得、従って、そのような胆汁不安定性生物製剤を不活性にする。別の非排他的且つ非限定的な例として、生物製剤の活性、又は生物製剤の活性に必要ないくつかの事象、例えば、レセプター、リガンド、細胞などへの結合は、生物製剤が胆汁の存在下で機能的に不活性にされるように、胆汁の1つ以上の成分によってブロックされ得るか、減速され得るか、又は別の方法で阻害され得る。別の非排他的且つ非限定的な例として、生物製剤の化学的特徴は、胆汁の存在によって変化し、生物製剤を不活性にし得る。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法において有用な治療用生物製剤は、遺伝子治療剤であってもよい。「遺伝子治療」という用語は、本明細書で使用される場合、対象のある症状を処置するための、対象の細胞への、遺伝子ペイロードと呼ばれることもある核酸治療薬の送達を指す。従って、本明細書で使用される場合、「遺伝子治療剤」は、一般に、送達賦形剤及びベクターなどの、細胞への核酸の送達において使用される治療用核酸及び任意の関連成分(存在する場合)を指す。遺伝子治療剤の核酸は様々であり、例えば、宿主細胞における欠損遺伝子の修正、細胞における異種遺伝子産物のコード及び/又は発現、細胞における内因性遺伝子産物の1つ以上の更なるコピーのコード及び/又は発現、細胞における遺伝子又は遺伝子産物の発現の阻害などを含む様々な機能を提供し得る。遺伝子治療剤としては、1つ以上のタンパク質(例えば、治療用タンパク質、抗体など)をコードする1つ以上のポリヌクレオチドを有するウイルスベクター及び/又は非ウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子治療は、生物内の細胞にインビトロで、又は生物から取り出された細胞にエクスビボで投与することができる。
【0122】
遺伝子治療における有用な核酸治療薬としては、例えば、発現カセット、組換えmRNA、組換えベクターゲノム(例えば、組換えウイルスゲノムなど)、組換えプラスミド、ミニサークルプラスミド、ミニ遺伝子、マイクロ遺伝子、人工染色体、干渉核酸(例えば、siRNA、shRNAなど)などが挙げられるが、これらに限定されない。遺伝子治療の実施において、核酸治療薬は、例えば、裸の核酸(例えば、裸のDNA、裸のプラスミドなど)として、核酸-タンパク質複合体(例えば、DNA-タンパク質複合体、リボ核タンパク質(RNP)複合体などのRNA-タンパク質複合体など)として、ウイルスベクター内の核酸として、非ウイルスベクター内の核酸としてなどを含むがこれらに限定されない、種々の方法で送達され得る。いくつかの例において、DNA結合タンパク質、RNA結合タンパク質、ヌクレアーゼなどの酵素、及びそれらの組み合わせなどであるがこれらに限定されないタンパク質を遺伝子治療剤に組み込むことができる。
【0123】
有用な遺伝子治療剤としては、ウイルスベクターが挙げられる。いくつかの実施形態では、有用なウイルスベクターは、非複製(すなわち、複製欠損)ウイルスベクターを含む。ウイルスベクターは、組み込み型あっても非組み込み型であってもよい。有用なウイルスベクターの非限定的な例としては、レトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターなどが挙げられる。有用な遺伝子治療剤には、ウイルス粒子を使用しない送達手段であり、一般に3つのカテゴリー:裸の核酸、粒子ベース(例えば、ナノ粒子)、又は化学物質ベースに分類されると考えられ得る非ウイルスベクターも含まれる。非ウイルスベクターの非限定的な例としては、リポプレックス(例えば、カチオン性脂質ベースのリポプレックス)、エマルジョン(例えば、脂質ナノエマルジョンなど)、脂質ナノ粒子(LNP)、固体脂質ナノ粒子、ペプチドベースのベクター、ポリマーベースのベクター(例えば、ポリマーソーム、ポリプレックス、ポリエチレンイミン(PEI)ベースのベクター、キトサンベースのベクター、ポリ(DL-ラクチド)(PLA)及びポリ(DL-ラクチド-コ-グリコシド)(PLGA)ベースのベクター、デンドリマー、ビニルベースのポリマー(例えば、ポリメタクリレートベースのベクター)など)、無機ナノ粒子などが挙げられる。
【0124】
(核酸治療薬の送達のための)遺伝子治療剤は、プロモーター配列(例えば、構成的、組織特異的など)、ターミネーター、リボソーム結合部位及び内部リボソーム進入部位などの翻訳調節配列、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界エレメント、複製起点、マトリックス付着部位及び/又は遺伝子座制御領域を更に含み得る。更に、複数の核酸治療薬は、例えば、自己切断2Aペプチド又はIRES配列によって分離された1つのオープンリーディングフレーム中の個々の成分(導入遺伝子)を連結することによって、1つの遺伝子治療剤から発現され得る。
【0125】
レトロウイルスベクター、例えば、レンチウイルスベクターを含むベクターは、プロモーターなどのシス作用性エレメント、5’LTR及び3’LTR及びそのエレメントを含む末端反復配列(LTR)及び/又はそのエレメント、セントラルポリプリントラクト(cPPT)エレメント、DNAフラップ(FLAP)エレメント、エクスポートエレメント(例えば、rev応答エレメント(RRE)、B型肝炎ウイルス転写後調節エレメント(HPRE)など)、転写後調節エレメント(例えば、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント(WPRE)、B型肝炎ウイルス調節エレメント(HPRE)など)、ポリアデニル化部位、転写終結シグナル、インスレーターエレメント(例えば、β-グロビンインスレーター、例えば、ニワトリHS4)などを含む様々なエレメントを含んでもよい(又は必要に応じて除外してもよい)。種々のベクター中に存在し得るか又は存在し得ない他のエレメントとしては、エンハンサー、非翻訳領域(UTR)、Kozak配列、ポリアデニル化シグナル、更なる制限酵素部位、マルチクローニング部位、内部リボソーム進入部位(IRES)、リコンビナーゼ認識部位(例えば、LoxP、FRT、及びAtt部位)、終止コドン、転写終結シグナル、及び自己切断ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、エピトープタグ、相同組換え修復(HDR)において有用な相同性領域などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0126】
有用なLTRとしては、例えば、U3領域、R領域及び/又はU5領域、並びにそれらの部分を含むLTRが挙げられるが、これらに限定されない。LTRは、レトロウイルス遺伝子の発現(例えば、遺伝子転写物の促進、開始及びポリアデニル化)並びにウイルス複製のための機能を提供する。LTRは、転写制御エレメント、ポリアデニル化シグナル、並びにウイルスゲノムの複製及び組み込みに必要な配列を含む多数の調節シグナルを含み得る。U3領域は、エンハンサーエレメント及びプロモーターエレメントを含み得る。U5領域は、ポリアデニル化配列を含み得る。R(反復)領域は、一般に、U3及びU5領域に隣接している。U3、R及びU5領域から構成されるLTRは、ウイルスゲノムの5’及び3’末端の両方に出現し得る。ウイルスゲノムは、ウイルスRNAの粒子への効率的なパッケージング(例えば、Psi部位)などのために、ゲノムの逆転写において機能する5’LTRに隣接する配列(例えば、tRNAプライマー結合部位)を含み得る。
【0127】
様々な実施形態では、ベクターは、改変された5’LTR及び/又は3’LTRを含む。3’LTRの改変は、しばしば、ウイルスを複製欠損にすることによって、レンチウイルス系又はレトロウイルス系の安全性を改善するために行われる。本明細書で使用される場合、「複製欠損」という用語は、感染性ビリオンが産生されないように、完全で効果的な複製ができないウイルス(例えば、複製欠損レンチウイルス子孫)を指す。「複製コンピテント」という用語は、ウイルスのウイルス複製が感染性ビリオン(例えば、複製コンピテントレンチウイルス子孫)を産生することができるように、複製することができる野生型ウイルス又は突然変異ウイルスを指す。
【0128】
いくつかの実施形態では、有用なベクターは、自己不活性化型であり得る。ベクターに関する「自己不活性化」(SIN)という用語は、例えば、U3領域を含む右(3’)LTRエンハンサー-プロモーター領域が、ウイルス複製の第1ラウンド以降のウイルス転写を防止するように改変されている(例えば、欠失及び/又は置換によって)、複製欠損ベクター、例えば、レトロウイルス又はレンチウイルスベクターを指す。更なる実施形態では、3’LTRは、U5領域が、例えば、異種又は合成ポリ(A)配列、1つ以上のインスレーターエレメント、及び/又は誘導性プロモーターで置き換えられるように改変され得る。LTR、例えば、3’LTR又は5’LTRへの言及が、改変されたLTR又はLTRへの改変、例えば、3’LTR、5’LTR、又は3’LTR及び5’LTRの両方への改変を含み得ることは、当業者に容易に明らかである。
【0129】
いくつかの例において、レトロウイルスベクターは、異種プロモーターを含み得る。例えば、5’LTRのU3領域を異種プロモーターで置き換えて、ウイルス粒子の産生中にウイルスゲノムの転写を駆動することができる。有用な異種プロモーターの例としては、例えば、ウイルス性シミアンウイルス40(SV40)(例えば、初期又は後期)、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、最初期)、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMLV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)、単純ヘルペスウイルス(HSV)、脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーターなどが挙げられる。特定の実施形態では、異種プロモーターは誘導性であり得、そのため、1つ以上の誘導因子が存在する場合にのみウイルスゲノムの全部又は一部の転写が生じる。誘導因子としては、宿主細胞が培養される1つ以上の化合物又は生理学的条件、例えば、温度又はpHが挙げられるが、これらに限定されない。
【0130】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターはTARエレメントを含み得る。「TAR」という用語は、レンチウイルス(例えば、HIV)LTRのR領域に位置する「トランス活性化応答」遺伝子エレメントを指す。このエレメントは、レンチウイルストランス活性化因子(tat)遺伝子エレメントと相互作用して、ウイルス複製を増強する。いくつかの実施形態では、ベクターは、例えば、5’LTRのU3領域が異種プロモーターによって置き換えられている場合を含めて、TARエレメントを含まなくてもよい。
【0131】
いくつかの例において、ベクターはシュードタイプ化ベクターであってもよい。本明細書で使用される「シュードタイプ」又は「シュードタイピング」という用語は、好ましい特徴を有する別のウイルスのエンベロープタンパク質で置換された1つ以上のウイルスエンベロープタンパク質を有するウイルスを指す。例えば、HIVは、水疱性口内炎ウイルスGタンパク質(VSV-G)エンベロープタンパク質でシュードタイプ化することができる。いくつかの実施形態では、レンチウイルスエンベロープタンパク質は、VSV-Gでシュードタイプ化される。いくつかの実施形態では、VSV-Gエンベロープ糖タンパク質でシュードタイプ化された組換えレトロウイルス、例えばレンチウイルスを産生するパッケージング細胞を使用することができる。
【0132】
ベクター(ウイルス及び非ウイルスの両方)は、ウイルス由来の構造エレメント及び/若しくは遺伝エレメント、又はそれらの部分を含み得る。レトロウイルスベクターは、レトロウイルス由来の構造エレメント及び/若しくは遺伝エレメント、又はそれらの部分を含み得る。レンチウイルスベクターは、主にレンチウイルスに由来するLTRを含む、構造的及び機能的遺伝子エレメント、又はその部分を含み得る。いくつかの例において、例えば、ハイブリッドベクターが、レトロウイルス、例えば、レンチウイルス配列及び非レトロウイルス、例えば、非レンチウイルスウイルス配列の両方を含むLTR又は他の核酸を含む場合を含めて、ハイブリッドベクターが使用され得る。いくつかの実施形態では、ハイブリッドベクターは、逆転写、複製、組み込み及び/又はパッケージングのためのレトロウイルス配列、例えばレンチウイルス配列を含むベクターを含み得る。
【0133】
いくつかの例において、本明細書に記載の組成物及び方法において用いられるベクターは、例えば、エンベロープウイルスベクター、脂質ナノ粒子などであるが、これらに限定されない脂質成分を含み得る。いくつかの例において、ベクターは脂質成分を有していなくてもよい。いくつかの例において、本明細書に記載の組成物及び方法において用いられる1つ以上の胆道治療用エンハンサーは、ベクターの任意の成分(例えば、本方法においても用いられる非ウイルスベクター中に存在する脂質又はポリマーなど)を含まなくてもよい(又は全ての成分を除外してもよい)。いくつかの例において、1つ以上のベクターは、胆道治療用エンハンサーのいずれの成分も含まなくてもよく(又は全ての成分を排除してもよく)、例えば、本方法においても使用される、エンハンサー中に存在する形質導入エンハンサー又はその成分などである。
【0134】
本明細書に記載の組成物及び方法において使用される任意のベクターは、1つ以上の異種コード配列を含む組換え体であり得る。例えば、いくつかの例において、ベクターは、対象における症状を処置するのに有用な異種タンパク質又はペプチドのコード配列を含み得る。いくつかの例において、ベクターによってコードされる異種タンパク質又はペプチドは、肝臓転写因子、肝細胞上で発現されるレセプターのリガンド、肝細胞によって発現されるタンパク質のエピトープに特異的に結合する抗体(モノクローナル抗体など)、肝細胞上又は肝臓微小環境内で活性な酵素などの肝臓指向性治療薬であってもよい。いくつかの例において、ベクターは、例えば肝細胞の遺伝子産物の発現を阻害する干渉核酸などであるがこれらに限定されない、肝臓発現遺伝子の発現を阻害する治療用核酸を含んでもよい。いくつかの例において、肝細胞は、肝臓症状以外の症状を処置する際に有用な異種遺伝子産物を、送達されたベクターによって発現するために使用され得る。非限定的な例として、例えばインスリンなどのホルモンをコードするベクターは、例えば糖尿病などの非肝臓症状を処置するために、ホルモンが肝細胞によって発現及び分泌されるように、肝細胞に送達され得る。
【0135】
例えば、非コード核酸、並びに例えば、本明細書に記載の治療用タンパク質及び/又はペプチドのうちの1つ以上を含むが、これらに限定されない、1つ以上のタンパク質及び/又はペプチドをコードする核酸を含むが、これらに限定されない、様々なペイロードが、遺伝子治療剤によって送達され得る。いくつかの実施形態では、ペイロードは、例えば、ヌクレアーゼ、DNA塩基エディター、RNAエディターなどの酵素をコードする核酸配列を含み得る。いくつかの実施形態では、ペイロードは、単独で又は他のペイロードエレメントと共に、例えば、マイクロRNA(すなわち、miRNA)、shRNA、siRNA、piRNA、snoRNA、snRNA、exRNA、sCaRNA、lncRNA、ガイドRNA(gRNA、sgRNAなど)などの非コード核酸を含み得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、遺伝子治療剤のペイロードは、標的遺伝子座を編集するためのエレメントを含み得る。例えば、遺伝子治療ベクターは、所望の編集を含む配列に隣接する標的部位に対する相同性領域を含む外因性鋳型核酸を含んでもよい。遺伝子編集ペイロードは、例えば、相同組換え修復(HDR)を含む様々な機構によって、標的遺伝子座において所望の編集を修復又は別様に導入し得る。従って、いくつかの例において、遺伝子治療剤ペイロードは、例えば、導入遺伝子、治療用ポリペプチド又はペプチドなどをコードするコード配列などのコード配列を含まなくてもよい。それに対応して、いくつかの例において、遺伝子治療剤ペイロードは、例えば、本明細書に記載されるもの(例えば、プロモーター、ターミネーター、エンハンサー、ポリアデニル化配列など)を含むがこれらに限定されない、発現のための1つ以上のエレメントを除外し得る。いくつかの例において、遺伝子治療剤は、コード配列からタンパク質若しくはポリペプチドを発現せず、且つ/又は非コード核酸を発現しない。
【0137】
ゲノム遺伝子座を標的とする相同性領域は、「相同性アーム」と呼ばれることもあり、又は別々に「5’相同性アーム」及び「3’相同性アーム」と呼ばれることもあり、それぞれ標的部位の内因性核酸5’及び3’に対する相同性を共有する。相同性アームは様々であり得、200nt以下~2000nt以上のサイズの範囲であり得、例えば、200nt以上、500nt以上、500nt~1000ntなどが挙げられるがこれらに限定されない。本質的に、任意の核酸編集が導入され得、有用な編集には、単一ヌクレオチド編集(すなわち、ある塩基の別の塩基に対する変化、例えば、AからC、AからT、AからG、CからA、CからG、CからT、GからA、GからC、GからT、TからA、TからC、又はTからGへの塩基変化)、2つ以上のヌクレオチドの変化(すなわち、2つ以上の部位における別の塩基の変化)、単一ヌクレオチド挿入、2つ以上のヌクレオチドの挿入、単一コドン挿入(すなわち、3つのヌクレオチドの挿入)、2つ以上のコドンの挿入、異種コード配列の挿入、単一ヌクレオチド欠失、2つ以上のヌクレオチドの欠失、1つ以上のコドンの欠失、1つ以上のエクソンの欠失、コード領域又はその一部の欠失、非コード領域又はその一部の欠失、遺伝子置換、遺伝子の一部の置換などが含まれ得る。
【0138】
遺伝子編集ペイロードを含有する遺伝子治療剤は、例えば、1つ以上のガイドRNA(例えば、gRNA、sgRNAなど)、ヌクレアーゼ(例えば、Casヌクレアーゼ(例えば、Cas9)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼなど)又は1つ以上のヌクレアーゼをコードする配列、ニッカーゼ又は1つ以上のニッカーゼをコードする配列、塩基編集酵素(例えば、シトシン塩基エディター、アデニン塩基エディター、デュアルデアミナーゼエディターなど)又は1つ以上の塩基編集酵素をコードする配列などを含むが、これらに限定されない様々な他のエレメントを含み得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法において有用な治療用生物製剤は、治療用タンパク質又はペプチドであり得る。有用な治療用タンパク質及びペプチドとしては、例えば、分泌因子、ホルモン、ケモカイン、サイトカイン、転写因子、レセプターに対するリガンド、レセプター遮断タンパク質及びペプチド、酵素、細胞外マトリックスタンパク質、シグナル伝達タンパク質、抗体などが挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、治療用タンパク質は、肝疾患において欠如している(すなわち、欠損している及び/又は存在しない)機能的タンパク質を含む。
【0140】
治療用タンパク質及びペプチドの非限定的な例としては、レピルジン、セツキシマブ、ドルナーゼアルファ、デニロイキンジフチトクス、エタネルセプト、ビバリルジン、ロイプロリド、ペグインターフェロンアルファ-2a、アルテプラーゼ、インターフェロンアルファ-n1、ダルベポエチンアルファ、レテプラーゼ、エポエチンアルファ、サケカルシトニン、インターフェロンアルファ-n3、ペグフィルグラスチム、サルグラモスチム、セクレチン、ペグインターフェロンアルファ-2b、アスパラギナーゼ、チロトロピンアルファ、抗血友病因子、アナキンラ、グラミシジンD、静注用免疫グロブリン、アニストレプラーゼ、インスリンレギュラー、テネクテプラーゼ、メノトロピン、インターフェロンガンマ-1b、インターフェロンアルファ-2a、組換え体、凝固第VIIa因子、オプレルベキン、パリフェルミン、グルカゴン組換え体、アルデスロイキン、ボツリヌス毒素B型、オマリズマブ、ルトロピンアルファ、インスリンリスプロ、インスリングラルギン、コラゲナーゼ、ラスブリカーゼ、アダリムマブ、イミグルセラーゼ、アブシキマブ、α1プロテイナーゼインヒビター、ペグアスパラガーゼ、インターフェロンβ1a.ペガデマーゼウシ、ヒト血清アルブミン、エプチフィバチド、ヨウ化人血清アルブミン、インフリキシマブ、フォリトロピンβ、バソプレシン、インターフェロンβ-1b、インターフェロンアルファコン-1、ヒアルロニダーゼ、インスリン、ブタ、トラスツズマブ、リツキシマブ、バシリキシマブ、ムロモナブ、ジゴキシン免疫Fab(ヒツジ)、イブリツモマブ、ダプトマイシン、トシツモマブ、ペグビソマント、ボツリヌストキシンA型、パンクレリパーゼ、ストレプトキナーゼ、アレムツズマブ、アルグルセラーゼ、カプロマブ、ラロニダーゼ、ウロフォリトロピン、エファリズマブ、血清アルブミン、コリオゴナドトロピンアルファ、抗胸腺細胞グロブリン、フィルグラスチム、凝固第IX因子、ベカプレミン、アガルシダーゼβ、インターフェロンα-2b、オキシトシン、エンフビルチド、パリビズマブ、ダクリズマブ、ベバシズマブ、アルシツモマブ、エクリズマブ、パニツムマブ、ラニビズマブ、イデュルスルファーゼ、アルグルコシダーゼアルファ、エキセナチド、メカセルミン、プラムリンチド、ガルスルファーゼ、アバタセプト、コシントロピン、コルチコトロピン、インスリンアパート、インスリンデテミル、インスリングルリシン、ペガプタニブ、ネシリチド、チマルファシン、デフィブロチド、天然型αインターフェロンORマルチフェロン、グラチラマー酢酸塩、プレオタクト、テイコプラニン、カナキヌマブ、イピリムマブ、スロデキサイド、トシリズマブ、テリパラチド、ペルツズマブ、リロナセプト、デノスマブ、リラグルチド、ゴリムマブ、ベラタセプト、ブセレリン、ベラグルセラーゼアルファ、テサモレリン、ブレンツキシマブベドチン、タリグルセラーゼアルファ、ベリムマブ、アフリベルセプト、アスパラギナーゼエルウィニアクリサンテミ、オクリプラスミン、グルカルピダーゼ、テデュグルチド、ラキシバクマブ、セルトリズマブペゴル、インスリン、イソフェン、エポエチンゼータ、オビヌツズマブ、フィブリノリシンプラスミン(Fibrinolysin aka plasmin)、フォリトロピンアルファ、ロミプロスチム、ルシナクタント、ナタリズマブ、アリスキレン、ブタクサ花粉エキス、セキヌマブ、ソマトトロピン組換え体、ドロトレコジンアルファ、アレファセプト、OspAリポ蛋白、ウロキナーゼ、アバレリックス、セルモレリン、アプロチニン、ゲムツズマブオゾガマイシン、サツマブペンデチド、アルビグルチド、アリロクマブ、アンセシム、アンチトロンビンアルファ、アンチトロンビンIIIヒト、アスフォターゼアルファ、アテゾリズマブ、自家培養軟骨細胞、ベラクタント、ブリナツモマブ、C1エステラーゼインヒビター(ヒト)、凝固第XIII因子Aサブユニット(組換え体)、コネスタットアルファ、ダラツムマブ、デシルジン、デュラグルチド、エロスルファーゼアルファ、エロツズマブ、エボロクマブ、フィブリノゲン濃縮物(ヒト)、フィルグラスチム-sndz、胃内在因子.B型肝炎免疫グロブリン、ヒトカルシトニン、ヒトクロストリジウムテタニトキソイド免疫グロブリン、ヒト狂犬病ウイルス免疫グロブリン、ヒトRho(D)免疫グロブリン、ヒアルロニダーゼ(ヒト組換え体)、イダルシズマブ、免疫グロブリンヒト、ベドリズマブ、ウステキヌマブ、ツロクトコグアルファ、ツベルクリン精製タンパク質誘導体、シモクトコグアルファ、シルトキシマブ、セベリパーゼアルファ、サクロシダーゼ、ラムシルマブ、プロトロンビン複合濃縮物、ポラクタントアルファ、ペムブロリジズマブ、ペグインターフェロンβ1a、オファムマブ、オベルトキサキマブ、ニボルマブ、ネシツムマブ、メトレレプチン、メトキシポリエチレングリコール-エポエチンβ、メポリズマブ、イクセキズマブ、インスリンポーク、インスリンデグルデク、インスリンビーフ、サイログロブリン、炭疽免疫グロブリンヒト、抗凝固剤複合体、抗胸腺細胞グロブリン(ウマ)、抗胸腺細胞グロブリン(ウサギ)、ブロダルマブ、C1エステラーゼインヒビター(組換え体)、カナキヌマブ、絨毛性ゴナドトロピン(ヒト)、絨毛性ゴナドトロピン(組換え体)、凝固因子Xヒト、ディヌツキシマブ、エフモロクトコグアルファ、第IX因子複合体(ヒト)、A型肝炎ワクチン、ヒト水痘帯状疱疹免疫グロブリン、イブリツモマブチウキセタン、レノグラスチム、ペグロチカーゼ、硫酸プロタミン、タンパク質Sヒト、シプリューセルT、ソマトロピン組換え体、スソコグアルファ、トロンボモデュリンアルファなどが挙げられる。本開示の方法は、標的細胞をタンパク質若しくはペプチドと接触させることによって、又は標的細胞をタンパク質若しくはペプチドをコードする遺伝子治療剤と接触させることによって、上記で同定されたものなどのタンパク質及びペプチドを投与することを含み得る。
【0141】
いくつかの例において、有用な治療用タンパク質は、標的タンパク質に特異的に結合するタンパク質を含み、そのような結合は治療効果をもたらす(例えば、標的タンパク質に結合して治療効果をもたらす治療用抗体)。治療用抗体の非限定的な例としては、9E10、8H9、アバゴノマブ、アバタセプト、アブシキシマブ、アビツズマブ、アブリルマブ、アクトクスマブ、アダリムマブ、アデカツムマブ、アデュカヌマブ、アフェリモマブ、アフェリムマブ、アフェツズマブ、アラクチズマブペゴール、ALD518、アレファセプト、アレムツズマブ、アリロクマブ、アルツモマブペンタテート、アマツキシマブ、アナツマブマフェナトックス、アネツマブラブタンシン、アニフロルマブ、アンルキンズマブ、アポリズマブ、アルシツモマブ、アスクリンバクマブ、アセリズマブ、アタシセプト、アテゾリズマブ、アチヌマブ、アトリズマブ/トシリズマブ、アトロリムマブ、AVE1642、バピヌズマブ、バシリキシマブ、バビツキシマブ、ベクトモマブ、ベゲロマブ、ベリムマブ、ベンラリズマブ、ベルチリムマブ、ベシレソマブ、ベバシズマブ、ベバシズマブ/ラニビズマブ、ベズロトクスマブ、ビシロマブ、ビマグルマブ、ビメキズマブ、ビバツズマブメルタンシン、ブリナツモマブ、ブロソズマブ、BMS-936559、ボコシズマブ、ブレンツキシマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブリアキヌマブ、ブロダルマブ、ブロルシズマブ、ブロンチシツズマブ、カナキヌマブ、カンツズマブメタンシン、カンツズマブラブタンシン、カプラシズマブ、カプロマブペンデチド、カルルマブ、カツマキソマブ、cBR96-ドキソルビシン免疫コンジュゲート、CDP791、セデリズマブ、セルトリズマブ、セツキシマブ、Ch.14.18、シタツズマブボガドックス、シクスツムマブ、クラザキズマブ、クレノリクスマブ、クリバツマブテトラキセタン、コドリツズマブ、コルツキシマブラブタンシン、コナツマブ、コンシズマブ、CP-751871、CR6261、クレネスマブ、CS-1008、ダセツズマブ、ダクリズマブ、ダロツズマブ、ダピロリズマブペゴル、ダラツムマブ、デクトレクマブ、デムシズマブ、デニツズマブマフォドチン、デノスマブ、デルロツキシマブビオチン、デツモマブ、ディヌツキシマブ、ディリダブマブ、ドルリモマブアリトックス、ドロジツマブ、デュリゴツマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、デュシジツマブ、エクロマキシマブ、エクリズマブ、エドバコマブ、エドレコロマブ、エファリズマブ、エフングマブ、エルデルマブ、エルゲムツマブ、エロツズマブ、エルシリモマブ、エマクトツズマブ、エミベツズマブ、エナバツズマブ、エンフォルマブベドチン、エンリモマブペゴル、エノブリツズマブ、エノキズマブ、エノチツマブ、エンシツキシマブ、エピツモマブシツセタン、エプラツズマブ、エルリズマブ、エルツマクソマブ、エタネルセプト、エタラシズマブ、エトロリズマブ、エビナクマブ、エボルクマブ、エクスビルマブ、F19、ファノレソマブ、ファラリモマブ、ファレツズマブ、ファシヌマブ、FBTA05、フェルビズマブ、フェザキヌマブ、フィクラツズマブ、フィギツムマブ、フィリブマブ、フランボツマブ、フレティクマブ、フォントリズマブ、フォラルマブ、フォラビルマブ、フレソリムマブ、フルラヌマブ、フツキシマブ、ガリックスマブ、ガニツマブ、ガンテンネルマブ、ガビリモマブ、ゲムツズマブ、ゲボキズマブ、ギレンツキシマブ、グレバツムマブベドチン、ゴリムマブ、ゴミリキシマブ、グセルクマブ、HGS-ETR2、イマリズマブ、イブリツモマブ、イクルクマブ、イダルシズマブ、イゴモマブ、IIIA4、IM-2C6、IMAB362、イマルマブ、IMC-A12、イムシクロマブ、イムガツズマブ、インクラクマブ、インダツキシマブラブタンシン、インデュサツマブベドチン、インフリキシマブ、イノリモマブ、イノツズマブオゾガミシン、インテツムマブ、イピリムマブ、イラツムマブ、イサツキシマブ、イトリズマブ、イクセキズマブ、KB004、ケリキシマブ、ラベツズマブ、ラムブロリズマブ、ラムパリズマブ、レブリキズマブ、レマレソマブ、レンジルマブ、レルデリムマブ、レキサツムマブ、リビビルマブ、リファスツズマブベドチン、リゲリズマブ、リロトマブサテトラキセタン、リンツズマブ、リリルマブ、ロデルシズマブ、ロキベトマブ、ロルボツズマブメルタンシン、ルカツムマブ、ルリズマブペゴル、ルミリキシマブ、ルムレツズマブ、マパツムマブ、マルゲツキシマブ、マシリモマブ、マツズマブ、マビリリムマブ、MEDI4736、メポリズマブ、メテリムマブ、ミラツズマブ、ミンレツモマブ、ミルベツキシマブソラブタンシン、ミツモマブ、MK-0646、モカムリズマブ、モロリムマブ、モロリムマブ免疫、モタビズマブ、モキセツモマブパスドトクス、MPDL33280A、ムロモナブ-CD3、ナコロマブタフェナトクス、ナミルマブ、ナプツモマブエスタフェトクス、ナルナツマブ、ナタリズマブ、ネバクマブ、ネシツムマブ、ネモリズマブ、ネレリモマブ、ネスバクマブ、ニモツズマブ、ニボルマブ、ノフェツモマブペルペンタン、オビトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オカラツズマブ、オクレリズマブ、オデュリモマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オロキズマブ、オマリズマブ、オナルツズマブ、オンツキシズマブ、オピシヌマブ、オポルツズマブモナトクス、オレゴマブ、オルチクマブ、オテリキシズマブ、オトレルツズマブ、オキセルマブ、オザネズマブ、オゾラリズマブ、パギバキシマブ、パリビズマブ、パンツムマブ、パンコマブ、パンバクマブ、パルサツズマブ、パスコリズマブ、パソツキシズマブ、パテクリズマブ、パトリツマブ、ペムブロリズマブ、ペムツモマブ、ペラキズマブ、ペルツズマブ、ペキセリズマブ、ピジリズマブ、ピナツズマブベドチン、ピンツモマブ、プラクルマブ、ポラツズマブベドチン、ポネズマブ、プリリキシマブ、プリトキサキシマブ、プリツムマブ、PRO140、クィリズマブ、R1507、ラコツモマブ、ラドレツマブ、ラフィビルマブ、ラルパンシズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、ラファネズマブ、ラガビルマブ、レシリズマブ、リロツムマブ、リヌクマブ、リツキシマブ、ロバツムマブ、ロレデュマブ、ロモソズマブ、ロンタリズマブ、ロベリズマブ、ルプリズマブ、サシツズマブゴビテカン、サマリズマブ、サリルマブ、サツモマブペンデチド、セクキヌマブ、セリバンツマブ、セトキサキシマブ、セビルマブ、SGN-CD19A、SGN-CD33A、シブロツマブ、シファリムマブ、シルツキシマブ、シムツズマブ、シプリズマブ、シルクマブ、ソフィツズマブベドチン、ソラネズマブ、ソリトマブ、ソネプシズマブ、ソンツズマブ、スタムルマブ、スレソマブ、スビズマブ、タバルマブ、タカツズマブテトラキセタン、ダドシズマブ、タリズマブ、タネズマブ、タプリツモマブパプトクス、タレクスツマブ、テファバズマブ、テリモマブアリトクス、テナツモマブ、テネリキシマブ、テプリズマブ、テプロツムマブ、テシロルマブ、テツロマブ、TGN1412、チシリムマブ/トレメリムマブ、チガツズマブ、チドラキズマブ、TNX-650、トシリズマブ、トラリズマブ、トサトクスマブ、トベツマブ、トラロキヌマブ、トラスツズマブ、TRBS07、トレガリズマブ、トレメリムマブ、トレボグルマブ、ツコツズマブセルモロイキン、ツビルマブ、ウブリツキシマブ、ウロクプルマブ、ウレルマブ、ウルトキサズマブ、ウステキヌマブ、バンドルツズマブベドチン、バンチクツマブ、バンチクツマブ、バンシズマブ、バパリキシマブ、バリルマブ、バテリズマブ、ベドリズマブ、ベルツズマブ、ペバリモマブ、ベセンクマブ、ビシリズマブ、ボロシキシマブ、ボルセツズマブマフォドチン、ボツムマブ、ザルツムマブ、ザノリムマブ、ザツキシマブ、ジラリムマブ、ゾリモマブなどが挙げられる。本開示の方法は、標的細胞を抗体と接触させることによって、又は標的細胞を、抗体をコードする遺伝子治療剤と接触させることによって、上記で同定されたものなどの抗体を投与することを含み得る。
【0142】
任意の量(投薬量)の治療用生物製剤を使用することができ、これは当業者によって容易に決定することができる。特定の実施形態では、治療用生物製剤はウイルス遺伝子ベクターを含み、その投薬量は容易に決定することができる。
【0143】
いくつかの実施形態では、本開示の方法は、胆汁酸の分泌を阻害する1つ以上の追加の薬剤の投与を更に含み得る。本明細書において胆汁酸分泌阻害剤と呼ばれるそのような追加の薬剤は、本明細書に記載される胆汁経路を含む本質的に任意の経路によって投与され得る。いくつかの例において、そのような胆汁酸分泌阻害剤は、本明細書に記載される胆道治療用エンハンサーの投与の前、同時、又は後に投与され得る。いくつかの例において、そのような胆汁酸分泌阻害剤は、本明細書に記載される生物製剤治療薬の投与の前、同時、又は後に投与され得る。有用な胆汁酸分泌阻害剤は様々であり、胆汁酸類似体及び誘導体(例えば、ケノデオキシコール酸及びその誘導体)、アゴニスト(例えば、FXRアゴニスト)、成長因子、成長因子類似体などを含み得るが、これらに限定されない。いくつかの例において、有用なFXRアゴニストには、オベチコール酸、FGF19類似体、胆汁酸類似体、又はそれらの誘導体が含まれ得るが、これらに限定されない。
【0144】
上記で要約したように、本開示の方法は、生物製剤治療薬及び胆道治療用エンハンサーを胆汁酸と接触させることを含む。従って、本明細書に記載の方法は、本明細書に記載の薬剤を、胆汁を含有するインビボ位置、例えば、胆道系などに投与することを含んでもよい。いくつかの例において、本明細書に記載の薬剤は、個々に又は組成物として一緒に、胆道系に直接投与される。いくつかの例において、本明細書に記載の薬剤は、左肝管、右肝管、胆嚢管、総肝管、総胆管、又はそれらのいくつかの組み合わせ(左肝管、右肝管、胆嚢管、総肝管、及び総胆管の全てを含む)に投与される。
【0145】
本明細書に記載の組成物及び方法は、例えば、左肝管、右肝管、総肝管、及び/又は総胆管を通る逆行性管送達を含む、胆道系への生物製剤の逆行性管送達を介した肝臓への治療用生物製剤の逆行性管送達を用いてもよい。いくつかの例において、胆道系を介した肝臓への逆行性管送達は、胆管から十二指腸への流出を遮断することを伴い得る。使用される場合、胆管からの流出を遮断する任意の好都合な方法が使用されてもよく、例えば、バルーンカテーテルなどのカテーテルの使用を通して、例えば、ファーター膨大部又は胆道系に沿った別の点を閉塞することを含むが、これに限定されない。
【0146】
胆道系への任意の直接送達が、本発明の実施において使用され得る。明確にするために、胆道系への直接送達は、任意の試薬の経口送達又は全身送達を含まない。いくつかの例において、内視鏡は、胆道系又はその中の部位などの標的部位への試薬の誘導送達のために使用されてもよい。有用な内視鏡は、カメラと、例えば、カテーテル、バルーン、プローブ、ステントなどであるが、これらに限定されない、1つ以上の追加の的内視鏡器具とを含んでもよい。いくつかの実施形態では、内視鏡は、対象の食道、胃、及び十二指腸を通して誘導されてもよく、膨大部において、注入デバイスは、総胆管の中へナビゲートされ、薬剤は、肝臓に向かって逆行方向に注入デバイスを使用して、胆道系の中へ直接注入される。いくつかの例において、内視鏡デバイスの構成要素は、膨大部又は胆道系の他の部分を閉塞し、流出を防ぐことができる。いくつかの例において、流出は、バルーンカテーテルを膨張させることによって防止される。必要に応じて、胆道系又はその一部は、薬剤を注射する前に洗い流され得る。例えば、緩衝生理食塩水を含むが、これらに限定されない、任意の適切な洗浄媒体が用いられてもよい。
【0147】
いくつかの例において、胆道系への薬剤の直接送達のために、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)、又はその技法及び/若しくは機器が用いられてもよい。いくつかの例において、例えば、磁気共鳴胆道膵管造影法(MRCP)及び超音波内視鏡などであるがこれらに限定されない撮像技法が、個別に、一緒に、及びERCPと共に、又はERCPなしで用いられてもよい。いくつかの例において、本開示の方法は、胆道系への薬剤の低侵襲性直接送達を含む。いくつかの例において、侵襲的手技が用いられてもよい。いくつかの実施形態では、胆道系への薬剤の直接送達は、外科的総胆管探索を含んでもよく、又はその一部として行われてもよい。いくつかの例において、胆道系又は隣接器官にアクセスするために、開腹術が行われてもよい。いくつかの例において、胆嚢を通してカテーテルを挿入し、所望の送達部位までナビゲートすることができる。いくつかの例において、対象は、胆道系への薬剤の送達のためにカニューレ挿入され得る。
【0148】
活性治療用生物製剤の胆道系への直接送達(例えば、逆行性管送達を介して)は、多くの利点を提供する。例えば、そのような方法は、胆道系内及び/又は肝臓内の治療薬の局所濃度の増加をもたらす。従って、治療薬の局所濃度の増加は、標的位置、例えば肝臓で、又は標的細胞、例えば肝細胞、肝星細胞(HSC)、クッパー細胞(KC)、肝類洞内皮細胞(LSEC)、管細胞、若しくはそれらの組み合わせ内で十分な治療効果を達成しながら、治療効果の上昇及び/又はより少ない治療薬を送達する能力を提供する。
【0149】
上記で要約したように、肝臓症状並びに肝臓に関連する症状以外の症状を含む様々な症状を有する対象を、本明細書に記載の方法に従って処置することができる。いくつかの例において、対象は、例えば、単一遺伝子疾患などの遺伝性疾患について処置され得る。例えば、限定するものではないが、例えば、単一遺伝子疾患などの遺伝性疾患を有する対象に、本明細書に記載の方法を介して遺伝性疾患を標的とする遺伝子治療を投与することができる。いくつかの例において、対象は、代謝性疾患が遺伝性疾患であってもなくてもよい場合を含む、代謝性疾患について処置され得る。本明細書に記載の方法による代謝疾患の処置は、例えば、補充酵素又は代謝産物などの投与を介して、対象の代謝性疾患を処置するための遺伝子療法及び/又はタンパク質若しくはペプチドの送達を含み得る。
【0150】
上記で要約したように、いくつかの例において、本明細書に記載の方法に従って、並びに/又は本明細書に記載の組成物及び/若しくはキットを用いて処置される対象は、肝臓症状について処置され得る。処置され得る肝臓症状の非限定的な例としては、急性間欠性ポルフィリン症、急性肝不全、アラジール症候群、アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、アルコール性肝疾患、α1-アンチトリプシン欠乏症、アメーバ性肝膿瘍、自己免疫性肝炎、胆汁性肝硬変、バッド・キアリ症候群、化学物質及び薬物誘発性肝損傷、胆汁うっ滞、慢性肝炎、慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、慢性D型肝炎、末期肝疾患、赤芽球性プロトポルフィリン症、肝蛭症、脂肪性肝疾患、限局性結節性過形成、肝包虫症、肝性脳症、肝梗塞、肝不全、肝性ポルフィリン症、肝結核、肝静脈閉塞性疾患、肝炎、肝細胞癌、肝造血性ポルフィリン症、肝レンズ核変性症、肝腫大、肝肺症候群、肝腎症候群、遺伝性コプロポルフィリン症、肝膿瘍、肝細胞腺腫、肝硬変、肝不全、肝腫瘍、広範性肝壊死、非アルコール性脂肪性肝疾患、寄生虫性肝疾患、肝紫斑病、晩発性皮膚ポルフィリン症、門脈圧亢進症、化膿性肝膿瘍、ライ症候群、異型ポルフィリン症、ウイルス性肝炎、A型ウイルス性肝炎、B型ウイルス性肝炎、C型ウイルス性肝炎、D型ウイルス性肝炎、E型ウイルス性肝炎、及びツェルウェガー症候群を挙げることができる。いくつかの例において、対象は、線維症又は線維症症状について処置され得る。いくつかの例において、対象は、肝硬変又は肝硬変症状について処置され得る。
【0151】
いくつかの例において、例えば、胆汁酸隔離剤が胆道治療用エンハンサーとして使用される場合、本開示の方法に従って対象が処置される症状は、例えば、高脂血症、二次性脂質異常症、胆汁酸吸収不良症状、又は糖尿病症状を含むがこれらに限定されない、胆汁酸隔離剤が従来投与される症状ではない症状であってもよい。
【0152】
いくつかの例において、対象が処置される症状は、肝臓症状ではない。本開示の方法は、肝臓症状以外の様々な疾患を処置するために使用され得る。例えば、肝臓又はその細胞は、非肝臓症状を処置する細胞外因性因子の発現のために利用され得、例えば、いくつかの実施形態では、使用される生物製剤は、糖尿病症状又は他の内分泌障害を処置するために、肝細胞によるインスリン又は別のホルモンの発現を生じる遺伝子治療剤であり得る。
【0153】
本方法は、1つ以上の薬剤の共投与を含んでもよい。「共投与」及び「と組み合わせて」という用語は、2つ以上の薬剤を同時に、並行して、又は特定の時間制限なしに連続して投与することを含む。一実施形態では、薬剤は、溶液、体液、標的組織、細胞、細胞環境、及び/若しくは対象の体内に同時に存在するか、又はそれらの化学的、生物学的、若しくは治療効果を同時に発揮する。一実施形態では、薬剤は、同じ組成物又は単位剤形中にある。他の実施形態では、薬剤は、別個の組成物又は単位剤形中にある。特定の実施形態では、第1の薬剤は、第2の薬剤の投与の前(例えば、数秒、数分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、数週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間前)、同時、又は後(例えば、数分、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、数週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、又は12週間後)に投与することができる。
【0154】
本明細書に記載の処置は、慢性的に(すなわち、連続的に)又は非慢性的に(すなわち、非連続的に)行われてもよく、慢性的に(すなわち、連続的に)又は非慢性的に(すなわち、非連続的に)1つ以上の薬剤の投与を含んでもよい。本明細書に記載の方法による1つ以上の薬剤の慢性投与は、例えば、対象が、例えば、慢性肝臓症状(例えば、慢性肝疾患、肝硬変、アルコール性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)、慢性ウイルス性肝炎などである。)、慢性遺伝的肝臓症状(α1-アンチトリプシン欠損症、遺伝性ヘモクロマトーシス、ウィルソン病など)、慢性肝臓関連自己免疫症状(例えば、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、原発性硬化性胆管炎(PSC)、自己免疫性肝炎(AIH)など)などを含む慢性症状を有する場合を含めて、様々な例において使用され得る。慢性症状のための1つ以上の薬剤の投与は、数ヶ月、1年又はそれを超える、数年にわたる薬剤の投与を含み得るが、これらに限定されない。このような慢性投与は、例えば、毎日、1日2回、毎週、週2回、毎月、毎月2回などを含むが、これらに限定されない任意の好都合且つ適切な投与スケジュールで行われ得る。いくつかの例では、例えば、遺伝的症状又は他の持続的遺伝子治療の場合、慢性症状は、1回又は数回(例えば、2、3、4、若しくは5回)の処置によって処置され得る。1つ以上の薬剤の非慢性的な投与は、限定されないが、1ヶ月以下の投与、例えば、数週間、1週間、数日間、限定された回数の用量(例えば、単回用量を含めて、10用量未満、例えば、9用量以下、8用量以下、7用量以下など)を含む投与を含み得る。
【0155】
投与経路は、処置される症状、使用される製剤及び/又はデバイス、処置される患者などを含むが、必ずしもこれらに限定されない様々な要因に従って選択され得る。有用な投与経路としては、経口経路及び非経口経路、例えば、静脈内(iv)、腹腔内(ip)、直腸、局所、眼、鼻、及び経皮が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載されるように、特定の送達経路用に製剤化された医薬組成物を用いることができる。
【0156】
いくつかの実施形態では、外科的開腹術、ERCPなどを含むがこれらに限定されない任意の好都合な方法によって胆道系にアクセスする場合を含む、胆道又は管内投与経路を用いることができる。
【0157】
対象化合物の有効量は、少なくとも、特定の使用方法、処置される対象、苦痛の重症度、治療用組成物の投与様式、及び治療薬の作用機序に依存する。組成物の「治療有効量」は、処置される対象において所望の効果を達成するのに十分な特定の化合物の量である。
【0158】
本明細書に記載される1つ以上の組成物の治療有効用量は、本明細書に開示される適用可能な化合物のEC50又はIC50と少なくとも同程度に高い局所(例えば、組織)濃度を達成することを目標として、当業者によって決定され得る。遺伝子治療の場合、状況に応じて、治療有効用量は、いくつかの例において、標的細胞のいくつかの所望の割合(例えば、少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、90%超など)を、1つ以上(例えば、2以上、3以上、4以上、5以上、10以上など)のウイルス若しくは非ウイルス粒子又は外因性遺伝物質のコピーで形質導入又はトランスフェクトすることを含み得る。
【0159】
任意の特定の対象に対する特定の用量レベル及び投薬頻度は様々であり得、組成物の活性、その化合物の安定性及び作用の長さ、対象の年齢、体重、全身の健康状態、性別及び食事、投与の様式及び時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、並びに治療を受ける宿主の症状の重篤度を含む種々の因子に依存する。使用され得る用量の非限定的な例は、1ng~1グラム(又は任意のナノグラム、マイクログラム若しくはグラム量を含むその間の任意の値)の範囲の組成物及び/又は製剤の1つ以上の用量を含む。
【0160】
上記に列挙した治療の例は、限定するものとして解釈されるべきではなく、本質的に、記載されるように同定された対象において所望の治療結果を生じる任意の適切な治療が用いられ得る。
【0161】
キット
本開示の態様はまた、キット、及びいくつかの例では、キットと共に又はその中で使用するためのデバイスを含む。キットは、例えば、本開示の組成物及び方法に関して上述した構成要素のいずれかのうちの1つ以上を含み得る。薬剤は、別個の容器中にあってもよく、又は任意の記載された組み合わせ若しくは適切な組み合わせに従って、共有容器中に組み合わされてもよい。有用な容器としては、バイアル、チューブ、シリンジ、ボトル、バッグ、アンプルなどが挙げられる。
【0162】
上記で要約したように、いくつかの例において、本開示のキットは、本開示の組成物を含んでもよく、本開示の組成物は、例えば、有効量の治療用生物製剤及び胆道治療用エンハンサーを含む医薬組成物を含む医薬組成物であってもよい。そのような医薬組成物は、例えば液体として、胆道系への送達のために構成された薬学的に許容され得る担体を含み得る。
【0163】
1つ以上の組成物を含むキット、及び/又は本明細書に記載される方法における使用のためのキットも提供される。キットは、方法を実施するための構成要素及び組成物の任意の組み合わせを含む。キットは、例えば、方法に関して上述した構成要素のいずれかの1つ以上を含んでもよい。薬剤は、別個の容器中にあってもよく、又は任意の記載された組み合わせ若しくは適切な組み合わせに従って、共有容器中に組み合わされてもよい。有用な容器としては、バイアル、チューブ、シリンジ、ボトル、バッグ、アンプルなどが挙げられる。
【0164】
いくつかの実施形態では、有用なキットは、デバイスを更に含み得る。有用なデバイスは様々であり、1つ以上の薬剤又は組成物を対象に送達するための注射又は注入デバイスを含んでもよい。いくつかの例において、本開示のキットは、本開示の1つ以上の薬剤又は組成物の対象の胆道系への内視鏡送達のための内視鏡の構成要素であるか、又はその構成要素と適合性である送達デバイスを含み得る。いくつかの例において、本開示の送達デバイスは、ERCP手技中に、本明細書に説明されるような方法に従って、薬剤の送達に適合するであろう。
【0165】
上記の構成要素に加えて、キットは、(特定の実施形態では)本方法を実施するための説明書を更に含み得る。これらの説明書は、様々な形態でキット中に存在してもよく、そのうちの1つ以上がキット中に存在してもよい。これらの説明書が存在し得る1つの形態は、適切な媒体又は基材、例えば、情報が印刷された1枚以上の紙に印刷された情報として、キットの包装内に、パッケージ挿入物内などである。これらの説明書の更に別の形態は、情報が記録されているコンピュータ可読媒体、例えば、ディスケット、コンパクトディスク(CD)、フラッシュドライブなどである。存在し得るこれらの説明書の更に別の形態は、離れた場所で情報にアクセスするためにインターネットを介して使用され得るウェブサイトアドレスである。
【0166】
添付の特許請求の範囲にかかわらず、本開示は、以下の実施形態によっても定義される:
1.対象の症状を処置する方法であって、この方法が、
有効量の治療用生物製剤及び有効量の胆道治療用エンハンサーを対象の胆道系に直接投与し、それによって対象の症状を処置すること
を含む、方法。
2.症状が遺伝性疾患であり、任意選択で、この遺伝性疾患が単一遺伝子疾患である、実施形態1に記載の方法。
3.症状が代謝性疾患である、実施形態1又は実施形態2に記載の方法。
4.症状が肝臓症状である、実施形態1~3のいずれか一つに記載の方法。
5.肝臓症状が、急性間欠性ポルフィリン症、急性肝不全、アラジール症候群、アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、アルコール性肝疾患、α1-アンチトリプシン欠乏症、アメーバ性肝膿瘍、自己免疫性肝炎、胆汁性肝硬変、バッド・キアリ症候群、化学物質及び薬物誘発性肝損傷、胆汁うっ滞、慢性肝炎、慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、慢性D型肝炎、末期肝疾患、赤芽球性プロトポルフィリン症、肝蛭症、脂肪性肝疾患、限局性結節性過形成、肝包虫症、肝性脳症、肝梗塞、肝不全、肝性ポルフィリン症、肝結核、肝静脈閉塞性疾患、肝炎、肝細胞癌、肝造血性ポルフィリン症、肝レンズ核変性症、肝腫大、肝肺症候群、肝腎症候群、遺伝性コプロポルフィリン症、肝膿瘍、肝細胞腺腫、肝硬変、肝不全、肝腫瘍、広範性肝壊死、非アルコール性脂肪性肝疾患、寄生虫性肝疾患、肝紫斑病、晩発性皮膚ポルフィリン症、門脈圧亢進症、化膿性肝膿瘍、ライ症候群、異型ポルフィリン症、ウイルス性肝炎、A型ウイルス性肝炎、B型ウイルス性肝炎、C型ウイルス性肝炎、D型ウイルス性肝炎、E型ウイルス性肝炎、及びツェルウェガー症候群からなる群から選択される、実施形態4に記載の方法。
6.投与が、対象の肝臓への治療用生物製剤の逆行性管送達を含み、それによって治療用生物製剤の局所肝臓濃度の増加をもたらす、実施形態1~5のいずれか一つに記載の方法。
7.治療用生物製剤が胆汁による不活性化を受けやすい、実施形態1~6のいずれか一つに記載の方法。
8.治療用生物製剤が遺伝子治療剤又はタンパク質を含む、実施形態1~7のいずれか一つに記載の方法。
9.遺伝子治療剤が、非ウイルスベクター又はウイルスベクターを含む、実施形態8に記載の方法。
10.遺伝子治療剤が、脂質ナノ粒子又はエンベロープウイルスベクターを含む、実施形態9に記載の方法。
11.エンベロープウイルスベクターがレンチウイルスベクターであり、任意選択で、レンチウイルスベクターが、5’LTR、プロモーター、コード配列、及び3’LTRを含む、実施形態10に記載の方法。
12.脂質ナノ粒子が胆道治療用エンハンサーを含まない、実施形態10に記載の方法。
13.ウイルスベクターがアデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態9に記載の方法。
14.タンパク質が治療用ペプチドである、実施形態8に記載の方法。
15.タンパク質が抗体である、実施形態8に記載の方法。
16.胆道治療用エンハンサーがポリアミン又はポリエーテルポリマーを含む、実施形態1~15のいずれか一つに記載の方法。
17.胆道治療用エンハンサーが1つ以上の胆汁酸隔離剤を含む、実施形態1~16のいずれか一つに記載の方法。
18.1つ以上の胆汁酸隔離剤が、式(I)の化合物を含む、実施形態17に記載の方法:
【化12】
式中、
m及びnは、約500~約1000のMWに相当し、
pは、1~3の整数であり
Xは、求電子性脱離基であり、
は、水素、C~C20アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はC~C20アルキルアンモニウム基からなる群から選択され、
アルキルは、OH又はアルキルアンモニウムで必要に応じて置換されている。
19.1つ以上の胆汁酸隔離剤が、式(II)の化合物を含む、実施形態17に記載の方法:
【化13】
式中、
nは、約100~約500のMWに対応し、
は、C~C10アリール又はC~C10ヘテロアリールからなる群から選択され、アリール又はヘテロアリールは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されている。
20.1つ以上の胆汁酸隔離剤が、式(V)の化合物を含む、実施形態17に記載の方法:
【化14】
式中、
m及びnは、約100~約500のMWに相当し、
及びRの各々は、独立して、アミノ、アルキルアミノ又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される。
21.1つ以上の胆汁酸隔離剤が、式(VII)の化合物を含む、実施形態17に記載の方法:
【化15】
式中、
mは、約100~約500のMWに相当し、
aは、1~6の整数であり、
bは、1~6の整数であり、
cは、1~3の整数である。
22.1つ以上の胆汁酸隔離剤が、コレセベラム、コレスチラミン、コレスチポール、及びセベラマーからなる群から選択される、実施形態17~21のいずれか一つに記載の方法。
23.胆道治療用エンハンサーが、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーを含む、実施形態1~22のいずれか一つに記載の方法。
24.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(III)の化合物である、実施形態23に記載の方法:
【化16】
式中、
x、y及びzの各々は、独立して1~250の整数である。
25.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(IVa)又は(IVb)の化合物である、実施形態23に記載の方法:
【化17】
式中、
nは、約50000~約200000のMWに対応し、
xは、1~6の整数であり、
は、1つ以上のC~Cアルキル基で必要に応じて置換されたアミノ基である。
26.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(VI)の化合物である、実施形態23に記載の方法:
【化18】
式中、
mは、約100~約600のMWに相当し、
xは、1~10の整数であり、
yは、1~6の整数であり、
Xは、求電子性脱離基であり、
各Rは、独立して、水素又はC~Cアルキル基である。
27.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、ポリブレン、硫酸プロタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ-L-リジン、及びF108からなる群から選択される、実施形態23~26のいずれか一つに記載の方法。
28.治療用生物製剤及び胆道治療用エンハンサーが共投与される、実施形態1~27のいずれか一つに記載の方法。
29.治療用生物製剤及び胆道治療用エンハンサーが単一の医薬組成物中に共製剤化される、実施形態1~28のいずれか一つに記載の方法。
30.胆道治療用エンハンサーが治療用生物製剤の前に投与される、実施形態1~29のいずれか一つに記載の方法。
31.2つ以上の胆道治療用エンハンサーを投与することを含む、実施形態1~30のいずれか一つに記載の方法。
32.2つ以上の胆道治療用エンハンサーが、胆汁酸隔離剤とカチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーとを含む、実施形態31に記載の方法。
33.2つ以上の胆道治療用エンハンサーが共投与される、実施形態31又は32に記載の方法。
34.2つ以上の胆道治療用エンハンサーが、単一の医薬組成物中に共製剤化される、実施形態33に記載の方法。
35.胆汁酸分泌阻害剤を対象に投与することを更に含む、実施形態1~34のいずれか一つに記載の方法。
36.胆汁酸分泌阻害剤がFXRアゴニストであり、任意選択で、FXRアゴニストがオベチコール酸又はFGF19類似体から選択される、実施形態35に記載の方法。
37.症状が、高脂血症、二次性脂質異常症、胆汁酸吸収不良症状、及び/又は糖尿病症状ではない、実施形態1~36のいずれか一つに記載の方法。
38.医薬組成物であって、
胆道系への送達のための液体として構成される薬学的に許容され得る担体、
有効量の治療用生物製剤;及び/又は
胆道治療用エンハンサー
を含む、医薬組成物。
39.治療用生物製剤が胆汁による不活性化を受けやすい、実施形態38に記載の組成物。
40.治療用生物製剤が遺伝子治療剤又はタンパク質を含む、実施形態38又は39に記載の組成物。
41.遺伝子治療剤が、非ウイルスベクター又はウイルスベクターを含む、実施形態40に記載の組成物。
42.遺伝子治療剤が、脂質ナノ粒子又はエンベロープウイルスベクターを含む、実施形態41に記載の組成物。
43.エンベロープウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、実施形態42に記載の組成物。
44.脂質ナノ粒子が胆道治療用エンハンサーを含まない、実施形態42に記載の組成物。
45.ウイルスベクターがアデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態41に記載の組成物。
46.タンパク質が治療用ペプチドである、実施形態40に記載の組成物。
47.タンパク質が抗体である、実施形態40に記載の組成物。
48.胆道治療用エンハンサーがポリアミン又はポリエーテルポリマーを含む、実施形態38~40のいずれか一つに記載の組成物。
49.胆道治療用エンハンサーが胆汁酸隔離剤である、実施形態38~48のいずれか一つに記載の組成物。
50.胆汁酸隔離剤が、式(I)の化合物である、実施形態49に記載の組成物:
【化19】
式中、
m及びnは、約500~約1000のMWに相当し、
pは、1~3の整数であり
Xは、求電子性脱離基であり、
は、水素、C~C20アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はC~C20アルキルアンモニウム基からなる群から選択され、
アルキルは、OH又はアルキルアンモニウムで必要に応じて置換されている。
51.胆汁酸隔離剤が、式(II)の化合物である、実施形態49に記載の組成物:
【化20】
式中、
nは、約100~約500のMWに対応し、
は、C~C10アリール又はC~C10ヘテロアリールからなる群から選択され、アリール又はヘテロアリールは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されている。
52.胆汁酸隔離剤が、式(V)の化合物である、実施形態49に記載の組成物:
【化21】
式中、
m及びnは、約100~約500のMWに相当し、
及びRの各々は、独立して、アミノ、アルキルアミノ又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される。
53.胆汁酸隔離剤が、式(VII):の化合物である、実施形態49に記載の組成物:
【化22】
式中、
mは、約100~約500のMWに相当し、
aは、1~6の整数であり、
bは、1~6の整数であり、
cは、1~3の整数である。
54.胆汁酸隔離剤が、コレセベラム、コレスチラミン、コレスチポール、及びセベラマーからなる群から選択される、実施形態49~53のいずれか一つに記載の組成物。
55.胆汁酸隔離剤が治療量以下の量で医薬組成物中に存在する、実施形態49~54のいずれか一つに記載の組成物。
56.胆道治療用エンハンサーが、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーである、実施形態38~48のいずれか一つに記載の組成物。
57.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(III)の化合物である、実施形態56に記載の組成物:
【化23】
式中、
x、y及びzの各々は、独立して1~250の整数である。
58.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(IVa)又は(IVb)の化合物である、実施形態56に記載の組成物:
【化24】
式中、
nは、約50000~約200000のMWに対応し、
xは、1~6の整数であり、
は、1つ以上のC~Cアルキル基で必要に応じて置換されたアミノ基である。
59.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(VI)の化合物である、実施形態56に記載の組成物:
【化25】
式中、
mは、約100~約600のMWに相当し、
xは、1~10の整数であり、
yは、1~6の整数であり、
Xは、求電子性脱離基であり、
各Rは、独立して、水素又はC~Cアルキル基である。
60.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、ポリブレン、硫酸プロタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ-L-リジン、及びF108からなる群から選択される、実施形態56~59のいずれか一つに記載の組成物。
61.対象の症状を処置する方法であって、この方法が、
有効量の実施形態38~60のいずれか一つに記載の医薬組成物を対象の胆道系に直接投与し、それによって対象の症状を処置すること
を含む、方法。
62.症状が遺伝性疾患であり、任意選択で、この遺伝性疾患が単一遺伝子疾患である、実施形態61に記載の方法。
63.症状が代謝性疾患である、実施形態61又は実施形態62に記載の方法。
64.症状が肝臓症状である、実施形態61~63のいずれか一つに記載の方法。
65.肝臓症状が、急性間欠性ポルフィリン症、急性肝不全、アラジール症候群、アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、アルコール性肝疾患、α1-アンチトリプシン欠乏症、アメーバ性肝膿瘍、自己免疫性肝炎、胆汁性肝硬変、バッド・キアリ症候群、化学物質及び薬物誘発性肝損傷、胆汁うっ滞、慢性肝炎、慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、慢性D型肝炎、末期肝疾患、赤芽球性プロトポルフィリン症、肝蛭症、脂肪性肝疾患、限局性結節性過形成、肝包虫症、肝性脳症、肝梗塞、肝不全、肝性ポルフィリン症、肝結核、肝静脈閉塞性疾患、肝炎、肝細胞癌、肝造血性ポルフィリン症、肝レンズ核変性症、肝腫大、肝肺症候群、肝腎症候群、遺伝性コプロポルフィリン症、肝膿瘍、肝細胞腺腫、肝硬変、肝不全、肝腫瘍、広範性肝壊死、非アルコール性脂肪性肝疾患、寄生虫性肝疾患、肝紫斑病、晩発性皮膚ポルフィリン症、門脈圧亢進症、化膿性肝膿瘍、ライ症候群、異型ポルフィリン症、ウイルス性肝炎、A型ウイルス性肝炎、B型ウイルス性肝炎、C型ウイルス性肝炎、D型ウイルス性肝炎、E型ウイルス性肝炎、及びツェルウェガー症候群からなる群から選択される、実施形態64に記載の方法。
66.投与が、対象の肝臓への治療用生物製剤の逆行性管送達を含み、それによって治療用生物製剤の局所肝臓濃度の増加をもたらす、実施形態61~65のいずれか一つに記載の方法。
67.キットであって、
液体の薬学的に許容され得る担体と、
治療用生物製剤と、
胆道治療用エンハンサーと
を含む、キット
68.胆道治療用エンハンサーと、液体の薬学的に許容され得る担体とが容器中で一緒に製剤化される、実施形態67に記載のキット。
69.治療用生物製剤が胆汁による不活性化を受けやすい、実施形態67又は68に記載のキット。
70.治療用生物製剤が遺伝子治療剤又はタンパク質を含む、実施形態67~69のいずれか一つに記載のキット。
71.遺伝子治療剤が、非ウイルスベクター又はウイルスベクターを含む、実施形態70に記載のキット。
72.遺伝子治療剤が、脂質ナノ粒子又はエンベロープウイルスベクターを含む、実施形態71に記載のキット。
73.エンベロープウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、実施形態72に記載のキット。
74.脂質ナノ粒子が胆道治療用エンハンサーを含まない、実施形態72に記載のキット。
75.ウイルスベクターがアデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態71に記載のキット。
76.タンパク質が治療用ペプチドである、実施形態70に記載のキット。
77.タンパク質が抗体である、実施形態70に記載のキット。
78.胆道治療用エンハンサーがポリアミン又はポリエーテルポリマーを含む、実施形態67~77のいずれか一つに記載のキット。
79.胆道治療用エンハンサーが胆汁酸隔離剤である、実施形態67~78のいずれか一つに記載のキット。
80.胆汁酸隔離剤が、式(I)の化合物である、実施形態79に記載のキット:
【化26】
式中、
m及びnは、約500~約1000のMWに相当し、
pは、1~3の整数であり
Xは、求電子性脱離基であり、
は、水素、C~C20アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はC~C20アルキルアンモニウム基からなる群から選択され、
アルキルは、OH又はアルキルアンモニウムで必要に応じて置換されている。
81.胆汁酸隔離剤が、式(II)の化合物である、実施形態79に記載のキット:
【化27】
式中、
nは、約100~約500のMWに対応し、
は、C~C10アリール又はC~C10ヘテロアリールからなる群から選択され、アリール又はヘテロアリールは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されている。
82.胆汁酸隔離剤が、式(V)の化合物である、実施形態79に記載のキット:
【化28】
式中、
m及びnは、約100~約500のMWに相当し、
及びRの各々は、独立して、アミノ、アルキルアミノ又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される。
83.胆汁酸隔離剤が、式(VII)の化合物である、実施形態79に記載のキット:
【化29】
式中、
mは、約100~約500のMWに相当し、
aは、1~6の整数であり、
bは、1~6の整数であり、
cは、1~3の整数である。
84.胆汁酸隔離剤が、コレセベラム、コレスチラミン、コレスチポール、及びセベラマーからなる群から選択される、実施形態79~83のいずれか一つに記載のキット。
85.胆道治療用エンハンサーが、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーである、実施形態67~78のいずれか一つに記載のキット。
86.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(III)の化合物である、実施形態85に記載の組成物:
【化30】
式中、
x、y及びzの各々は、独立して1~250の整数である。
87.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(IVa)又は(IVb)の化合物である、実施形態85に記載の組成物:
【化31】
式中、
nは、約50000~約200000のMWに対応し、
xは、1~6の整数であり、
は、1つ以上のC~Cアルキル基で必要に応じて置換されたアミノ基である。
88.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(VI)の化合物である、実施形態85に記載の組成物:
【化32】
式中、
mは、約100~約600のMWに相当し、
xは、1~10の整数であり、
yは、1~6の整数であり、
Xは、求電子性脱離基であり、
各Rは、独立して、水素又はC~Cアルキル基である。
89.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、ポリブレン、硫酸プロタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ-L-リジン、及びF108からなる群から選択される、実施形態85~88のいずれか一つに記載のキット。
90.治療用生物製剤の肝臓への逆行性管送達のために構成されたデバイスを更に含む、実施形態67~89のいずれか一つに記載のキット。
91.対象の症状を処置するための、実施形態38~60又は67~90のいずれか一つに記載の1つ以上の組成物及び/又は1つ以上のキットの使用であって、任意選択で、症状が肝臓症状であり、任意選択で、肝臓症状が、急性間欠性ポルフィリン症、急性肝不全、アラジール症候群、アルコール性脂肪性肝疾患、アルコール性肝炎、アルコール性肝硬変、アルコール性肝疾患、α1-アンチトリプシン欠乏症、アメーバ性肝膿瘍、自己免疫性肝炎、胆汁性肝硬変、バッド・キアリ症候群、化学物質及び薬物誘発性肝損傷、胆汁うっ滞、慢性肝炎、慢性B型肝炎、慢性C型肝炎、慢性D型肝炎、末期肝疾患、赤芽球性プロトポルフィリン症、肝蛭症、脂肪性肝疾患、限局性結節性過形成、肝包虫症、肝性脳症、肝梗塞、肝不全、肝性ポルフィリン症、肝結核、肝静脈閉塞性疾患、肝炎、肝細胞癌、肝造血性ポルフィリン症、肝レンズ核変性症、肝腫大、肝肺症候群、肝腎症候群、遺伝性コプロポルフィリン症、肝膿瘍、肝細胞腺腫、肝硬変、肝不全、肝腫瘍、広範性肝壊死、非アルコール性脂肪性肝疾患、寄生虫性肝疾患、肝紫斑病、晩発性皮膚ポルフィリン症、門脈圧亢進症、化膿性肝膿瘍、ライ症候群、異型ポルフィリン症、ウイルス性肝炎、A型ウイルス性肝炎、B型ウイルス性肝炎、C型ウイルス性肝炎、D型ウイルス性肝炎、E型ウイルス性肝炎、及びツェルウェガー症候群からなる群から選択される、使用。
92.対象の肝臓症状を処置するために対象の胆道系に治療用生物製剤を送達するための、実施形態38~60又は86~88のいずれか一つに記載の1つ以上の組成物及び/又は胆道治療用エンハンサーを含む液体組成物の使用。
93.胆道治療用エンハンサーが胆汁酸隔離剤であり、任意選択で、胆汁酸隔離剤はポリアミン又はポリエーテルポリマーである、実施形態92に記載の使用。
94.胆道治療用エンハンサーが、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーであり、任意選択で、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーはポリアミン又はポリエーテルポリマーである、実施形態92に記載の使用。
95.細胞を形質導入又はトランスフェクトする方法であって、この方法が、
胆汁の存在下で細胞を胆道形質導入エンハンサーと接触させて、形質導入/トランスフェクション組成物を生成することと、
形質導入/トランスフェクション組成物を、外因性核酸を含む遺伝子治療剤と、外因性核酸の細胞への形質導入又はトランスフェクションに十分な条件下で接触させ、それによって細胞を外因性核酸で形質導入又はトランスフェクトすることと
を含む、方法。
96.細胞が肝細胞であり、任意選択で、肝細胞が肝実質細胞である、実施形態95に記載の方法。
97.遺伝子治療剤が、非ウイルスベクター又はウイルスベクターを含む、実施形態95又は96に記載の方法。
98.遺伝子治療剤が、脂質ナノ粒子又はエンベロープウイルスベクターを含む、実施形態97に記載の方法。
99.エンベロープウイルスベクターがレンチウイルスベクターである、実施形態98に記載の方法。
100.脂質ナノ粒子が胆道治療用エンハンサーを含まない、実施形態98に記載の方法。
101.ウイルスベクターがアデノウイルスベクター又はアデノ随伴ウイルス(AAV)ベクターである、実施形態97に記載の方法。
102.外因性核酸がコード配列又はその一部を含み、任意選択で、コード配列が、転写因子、治療用ペプチド、抗体又はその一部をコードする、実施形態95~101のいずれか一つに記載の方法。
103.外因性核酸が非コード配列を含む、実施形態95~101のいずれか一つに記載の方法。
104.胆道治療用エンハンサーがポリアミン又はポリエーテルポリマーを含む、実施形態95~103のいずれか一つに記載の方法。
105.胆道治療用エンハンサーが1つ以上の胆汁酸隔離剤を含む、実施形態95~104のいずれか一つに記載の方法。
106.1つ以上の胆汁酸隔離剤が、式(I)の化合物を含む、実施形態105に記載の方法:
【化33】
式中、
m及びnは、約500~約1000のMWに相当し、
pは、1~3の整数であり
Xは、求電子性脱離基であり、
は、水素、C~C20アルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はC~C20アルキルアンモニウム基からなる群から選択され、
アルキルは、OH又はアルキルアンモニウムで必要に応じて置換されている。
107.1つ以上の胆汁酸隔離剤が、式(II)の化合物を含む、実施形態105に記載の方法:
【化34】
式中、
nは、約100~約500のMWに対応し、
は、C~C10アリール又はC~C10ヘテロアリールからなる群から選択され、アリール又はヘテロアリールは、C~Cアルキル、C~Cアルケニル、C~Cアルキニル、又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される1~3個の置換基で必要に応じて置換されている。
108.1つ以上の胆汁酸隔離剤が、式(V)の化合物を含む、実施形態105に記載の方法:
【化35】
式中、
m及びnは、約100~約500のMWに相当し、
及びRの各々は、独立して、アミノ、アルキルアミノ又はハロゲン化アルキルアンモニウム基からなる群から選択される。
109.1つ以上の胆汁酸隔離剤が、式(VII)の化合物を含む、実施形態105に記載の方法:
【化36】
式中、
mは、約100~約500のMWに相当し、
aは、1~6の整数であり、
bは、1~6の整数であり、
cは、1~3の整数である。
110.1つ以上の胆汁酸隔離剤が、コレセベラム、コレスチラミン、コレスチポール、及びセベラマーからなる群から選択される、実施形態105~109のいずれか一つに記載の方法。
111.胆道治療用エンハンサーが、カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーを含む、実施形態95~110のいずれか一つに記載の方法。
112.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(III)の化合物である、実施形態111に記載の方法:
【化37】
式中、
x、y及びzの各々は、独立して1~250の整数である。
113.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(IVa)又は(IVb)の化合物である、実施形態111に記載の方法:
【化38】
式中、
nは、約50000~約200000のMWに対応し、
xは、1~6の整数であり、
は、1つ以上のC~Cアルキル基で必要に応じて置換されたアミノ基である。
114.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、式(VI)の化合物である、実施形態111に記載の方法:
【化39】
式中、
mは、約100~約600のMWに相当し、
xは、1~10の整数であり、
yは、1~6の整数であり、
Xは、求電子性脱離基であり、
各Rは、独立して、水素又はC~Cアルキル基である。
115.カチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーが、ポリブレン、硫酸プロタミン、ポリエチレンイミン(PEI)、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ-L-リジン、及びF108からなる群から選択される、実施形態111~114のいずれか一つに記載の方法。
116.胆道形質導入エンハンサーと接触させることが、細胞を胆汁酸隔離剤とカチオン性又は非イオン性の両親媒性形質導入エンハンサーとの両方と接触させることを含む、実施形態105~115のいずれか一つに記載の方法。
117.胆道形質導入エンハンサー及び遺伝子治療剤が、接触させる前に製剤中に一緒に存在する、実施形態95~116のいずれか一つに記載の方法。
【実施例
【0167】
以下の実施例は、当業者に、本発明の作製及び使用方法の完全な開示及び説明を提供するために提示される。本発明者らが本発明とみなす範囲を限定することを意図するものではない。別段の指示がない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は摂氏であり、圧力は大気圧又は大気圧付近である。
【0168】
分子生化学及び細胞生化学における一般的な方法は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,4th Ed.(Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press 2012);Short Protocols in Molecular Biology,4 th Ed.(Ausubel et al.eds.,John Wiley&Sons 1999);Protein Methods(Bollag et ak,John Wiley&Sons 1996);及びCell and Tissue Culture:Laboratory Procedures in Biotechnology(Doyle&Griffiths,John Wiley&Sons 1998)などの標準的な教科書に見出すことができ、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。本開示において言及される試薬、抗体、細胞、組織サンプルなど、及びキットは、限定されないが、本明細書において特定される供給業者などの商業的供給業者から入手可能である。
【0169】
実施例1:レンチウイルス形質導入に対する胆汁の効果
ヒト肝細胞を含むヒト細胞のレンチウイルス形質導入に対する胆汁の存在の効果を評価するために、アッセイを設計した。脾臓フォーカス形成ウイルス(SFFV)プロモーターの制御下で、自己切断ペプチド(P2A)によって分離された、ホタルルシフェラーゼ(Luc2)及びEmerald GFP(EmGFP)レポーターをコードするレンチウイルスベクター(LV-SFFV-Luc2-P2A-EmGFP)を使用して、様々な濃度のSprague Dawleyラット胆汁の非存在下又は存在下で、首尾よく形質導入されたHepG2又はHeLa-RC32細胞の検出を容易にした。簡潔には、10MOIのLV-SFFV-Luc2-P2A-EmGFPベクターを、別々の容器中で、100%PBS、99.9%PBS/0.1%胆汁、99%PBS/1%胆汁、90%PBS/10%胆汁、50%PBS/50%胆汁、又は100%胆汁と共に37℃で1時間インキュベートした。次いで、細胞及び形質導入エンハンサーを含有する細胞培地をベクター溶液と混合し、72時間インキュベートして形質導入を行った。胆汁曝露後の形質導入及びレンチウイルスベクター活性を定量的に推定するために、ONE-gloルシフェラーゼアッセイシステム(Promega社、ウィスコンシン州マディソン在)を使用した。細胞生存率及び胆汁の細胞毒性をアッセイするために、細胞を、レンチウイルスベクターを含まない前述の胆汁、細胞培地、及び形質導入エンハンサー混合物中で72時間インキュベートし、プレートをCellTiter-Gloアッセイシステム(Promega社、ウィスコンシン州マディソン在)を使用してアッセイした。
【0170】
レポーターは、100%PBS陽性対照で処理したサンプルにおいて容易に検出され、これは、形質導入細胞におけるレンチウイルス提供導入遺伝子からの形質導入及び発現の成功を示した。しかしながら、わずか0.1%の胆汁で処理したサンプルでは低いRLU測定値が得られ、低濃度であっても、胆汁の存在がレンチウイルスベクターによる形質導入の成功に有害であることが実証された。これらのデータは、レンチウイルスベクターによる標的細胞の形質導入が胆汁不安定性プロセスであることを示し、胆汁の存在が、胆汁が存在する場所に送達される治療用生物製剤に対して有し得る負の影響を明確に示す。
【0171】
実施例2:胆汁酸隔離剤は、胆汁の存在下でレンチウイルス形質導入をレスキューする
胆汁酸樹脂とも呼ばれる胆汁酸隔離剤は、腸内の胆汁酸に結合して、胆汁酸脂溶性化活性を阻害し、従ってコレステロール吸収を遮断し、胆汁酸再吸収を阻害する抗脂血剤のクラスであり、これは、胆汁酸プールの収縮を引き起こし、続いて肝臓におけるコレステロール合成と競合する胆汁酸合成を増加させる。このプロセスは、最終的に血清コレステロールレベルの低下をもたらす。種々の胆汁酸隔離剤が臨床用途に利用可能である。全て経口経路によってのみ投与される。
【0172】
胆汁酸隔離剤は、胆汁の存在下でレンチウイルスベクターの形質導入を改善するための候補試薬として調査した。この実施例では、60μg/mLの隔離剤、コレセベラム又はコレスチラミンを、100%PBS、99.9%PBS/0.1%胆汁、99.7%PBS/0.3%胆汁、99%PBS/1%胆汁、97%PBS/3%胆汁、90%PBS/10%胆汁、又は70%PBS/30%胆汁を含有する混合物に添加し、混合物を室温で30分間インキュベートした。上記のレンチウイルスベクターを各混合物に添加し、混合物を37℃で1時間インキュベートした。生存率推定のために、隔離剤と胆汁との対応する混合物を同様に室温で30分間、次いで37℃で1時間インキュベートしたが、この場合、レンチウイルスベクターは添加していない。インキュベーション後、溶液を細胞培地及び形質導入エンハンサーと共に細胞に添加し、細胞を72時間形質導入/インキュベートした。上記のように、ONE-glo及びCellTiter-Gloアッセイを使用して、それぞれ形質導入及び生存率を推定した。
【0173】
生存率アッセイの結果を表1に示す。これらの結果は、隔離剤の存在が胆汁で処理された細胞の生存率を改善することを実証する。胆汁の存在下での形質導入効率に対する隔離剤の効果の分析のために、ルシフェラーゼレベルを、HeLa-RC32細胞において、LV-SFFV-Luc2-P2A-EmGFPによる処理の72時間後に、種々の胆汁濃度の存在下で、隔離剤の存在下又は非存在下で測定した。これらの測定値を細胞生存率について補正し、この分析の結果を図1に示す。
【表1】
【0174】
示されるように、胆汁の非存在下(0%ラット胆汁)では、試験した全ての条件が、レンチウイルスベクターの効率的な形質導入を実証した。隔離剤の非存在下(「隔離剤なし」)では、1%を超える胆汁レベルで、形質導入の完全な欠如に近づく形質導入レベルの大幅な低下が観察され、これもまた、約1%胆汁の胆汁濃度で、60%を超える形質導入が失われたことを示している。しかしながら、隔離剤、コレセベラム又はコレスチラミンのいずれかの添加は、形質導入をレスキューし、0%胆汁条件で観察されたレベルに匹敵する1%胆汁での生存率調整ルシフェラーゼレベルを達成した。更に、両方の隔離剤は、予想外にも、1%を超える胆汁レベルで形質導入をレスキューし、試験した最も高い胆汁レベルである30%胆汁で効率的な形質導入を達成した。胆汁酸隔離剤であるセベラマーを同様の方法を用いて別々に試験したところ、隔離剤の非存在下で胆汁で観察された形質導入のレベルと比較して、形質導入の増強も示された。
【0175】
まとめると、これらのデータは、胆汁が存在する形質導入組成物への胆汁酸隔離剤の添加が、それがなければ少量の胆汁によっても低減又は除去されるレンチウイルス形質導入を効果的にレスキューすることを実証する。従って、この研究は、胆汁酸隔離剤の使用が、胆汁が存在する位置に標的化された送達組成物又は治療方法にこのような隔離剤が含まれる場合、胆汁不安定性生物製剤の得られる活性を増強することを示す。
【0176】
実施例3:隔離剤及び形質導入エンハンサーは、胆汁の存在下でレンチウイルス形質導入を個々に増強及びレスキューする。
先の実施例は、形質導入培地中に形質導入エンハンサーを使用した。胆汁含有培地における胆汁酸隔離剤の形質導入増強効果をより良好に評価するために、隔離剤及び形質導入エンハンサーの役割を別々に評価した。簡潔には、LV-SFFV-Luc2-P2A-EmGFPベクターによるHeLa-RC32細胞の形質導入を、0.1%~100%ラット胆汁に及ぶ胆汁希釈系列中の形質導入エンハンサー(F108、1000μg/mL)、隔離剤(コレセベラム、250μg/mL)、又は形質導入エンハンサー及び隔離剤の組み合わせ(1000μg/mL F108+250μg/mLコレセベラム)を用いて、本質的に上記のように72時間行った。添加剤、形質導入エンハンサー及び/又は隔離剤をベクターと共製剤化し、形質導入前に60分間インキュベートした。胆汁なし(0%)対照及び「添加剤なし」(すなわち、隔離剤又は形質導入エンハンサーなし)対照を含む対照も評価した。本質的に本明細書に記載されるように定量化を行い、測定値を細胞生存率について補正した。
【0177】
結果は、胆汁酸隔離剤が、胆汁を含有するが隔離剤も形質導入エンハンサーも含有しない形質導入反応と比較して、様々な胆汁濃度の存在下でレンチウイルスベクターの有意に増加した形質導入を提供することを実証した。具体的には、「添加剤なし」対照は、胆汁のレベルの増加と共にトランスフェクションのレベルの低下を示したが、形質導入エンハンサーと隔離剤との組み合わせの添加は、0~100%の範囲の全ての胆汁希釈でトランスフェクションレベルの増加をもたらし、従って、前述の実施例に記載された知見を補強した。
【0178】
更に、形質導入エンハンサーを含有しない胆汁酸隔離剤組成物は、それにもかかわらず、「添加剤なし」対照と比較して、様々な胆汁レベルで増強された形質導入を示した。従って、本実施例は、胆汁不安定性レンチウイルスに対する隔離剤の形質導入増強効果が、形質導入エンハンサーの存在に依存しないことを示した。むしろ、隔離剤単独で、胆汁の存在下で増強された形質導入を実証した。
【0179】
更に、形質導入エンハンサーF108は、予想外にも、種々の胆汁濃度にわたって隔離剤の非存在下であっても形質導入をレスキューすることが見出され、このことは、形質導入エンハンサー単独でも、それがなければレンチウイルスベクターの胆汁不安定活性を回復できることを示している。他の形質導入エンハンサーも試験した。本明細書で実証されるように、レンチウイルス形質導入に対する0.1%胆汁の有害な影響にもかかわらず、他の形質導入エンハンサーもまた、1%超の胆汁濃度の存在下で、LV-SFFV-Luc2-P2A-EmGFPベクターの形質導入に対して正の効果を有することが見出された。例えば、図2に示されるように、ポリエチレンイミン(PEI、15μg/mL)又はポリエチレングリコール(PEG、15μg/mL)を含有する形質導入組成物は、ベクターによる形質導入の72時間後の形質導入されたHeLa-RC32細胞における生存率補正ルシフェラーゼ発現によって測定されるように、10%以下のラット胆汁濃度でベクター形質導入をレスキューした。比較すると、形質導入エンハンサーを含有しない陰性対照(「形質導入エンハンサーなし」)は、試験した全ての濃度で胆汁の存在下で形質導入レベルの大幅な低下を示した。
【0180】
まとめると、これらの結果は、胆汁が形質導入環境に存在する場合、形質導入エンハンサー及び胆汁酸隔離剤が、個々に又は組み合わせて、形質導入をレスキューし、胆汁不安定レンチウイルスベクターの活性を増強し得ることを実証する。この知見は、少量の胆汁(例えば、1%未満)であっても、レンチウイルスが標的細胞に形質導入し、レポーター導入遺伝子の発現をもたらす能力に大きな影響を及ぼすことが認められたことを考えると、特に予想外であった。
【0181】
実施例4:ヒト胆汁の存在下でのレンチウイルスベクターの不活性化及びベクター活性のレスキューの動態
胆汁へのレンチウイルスベクター曝露の時間的動態を推定するために、胆汁曝露時系列を実施した。具体的には、LV-SFFV-Luc2-P2A-EmGFPベクターを、500μg/mLのF108を含有する培養培地中で、新しいロットのラット胆汁から調製した15%胆汁に、1分~1時間の範囲の様々な時間曝露した。指定された時間、胆汁媒体溶液中でベクターをインキュベートした後、HeLaRC32細胞を72時間形質導入し、ベクターの形質導入効率に対する異なる胆汁曝露時間の得られた影響を、本明細書に記載されるルシフェラーゼレポーター導入遺伝子を測定することによって推定した。図3は、この胆汁曝露時系列の結果を、生存率について補正された胆汁の非存在下(「胆汁なし対照」)で観察されたベクター活性のパーセンテージとして表されるベクター活性と共に提供する。示されるように、15%胆汁への15分の曝露後、ベクター活性の97%が失われ、胆汁曝露時間が15分を超える期間に増加させた場合、活性の99%超が失われた。対照的に、ベクターを15%胆汁に1分間曝露した場合、約5%の活性しか失われなかった。
【0182】
これらの知見は、胆汁によるレンチウイルスベクターの不活性化が迅速に起こるが、経時的に連続的に起こることを実証しており、胆汁の濃度が増加するとベクター活性が減少するという前述の知見に加えている。これらの知見は、胆汁が存在する環境において増強された形質導入を達成するために、形質導入組成物、並びに処置時間、及び他の形質導入パラメーターを最適化する機会を強調する。
【0183】
形質導入組成物及び他の形質導入パラメーターを最適化することに加えて、胆汁含有環境はまた、インビボで調節されて、対象内で行われるウイルス形質導入の間に局所的に存在する胆汁の量に影響を与え得る。例えば、胆管への形質導入組成物の送達の前に、この管は、局所環境内の胆汁の濃度を減少させるために洗い流してもよく、従って、ウイルスベクターを含有する形質導入組成物の低胆汁環境へのその後の導入を可能にする。しかしながら、少なくとも胆汁が絶えず生成されるので、例えば、胆管のフラッシングが、生きている対象において胆管から胆汁を完全に欠乏させ得る可能性は低いままである。
【0184】
上記を考慮して、レンチウイルスベクターの活性をヒト胆汁希釈系列において評価した。簡潔には、HeLa-RC32細胞を、0.01%未満から10%超の範囲の様々な濃度の胆汁の存在下で72時間、LV-SFFV-Luc2-P2A-EmGFPベクターで形質導入し、ベクター活性を、胆汁を含有しない対照において測定されたレポーターの生存率補正パーセンテージとして推定した。10%超のヒト胆汁レベルは、細胞に対して毒性であることが観察された。しかしながら、結果は、本明細書に記載される増強が効率的な形質導入を提供し得る実行可能なウィンドウが、インビボ設定で達成可能な10%未満のヒト胆汁レベルで存在することを示した。
【0185】
1%及び0.1%のヒト胆汁濃度の存在下でレンチウイルスベクターの活性を増強する胆汁酸隔離剤又は形質導入エンハンサーの能力を評価するために、形質導入を行った。簡潔には、LV-SFFV-Luc-P2A-EmGFPベクターを、それぞれのヒト胆汁濃度において、様々な濃度のコレセベラム又はF108(10μg/mL未満から1000μg/mL超の最終ウェル内濃度の範囲)と共に1時間インキュベートした。次いで、HeLa-RC32細胞の形質導入を行い、ベクター活性を72時間でのレポーター発現によって推定した。結果を報告し、胆汁に曝露されていないベクターによる対照形質導入において測定されたもののパーセンテージとして表される生存率補正レポーター活性として比較した。結果は、隔離剤又は形質導入エンハンサーのいずれかの量を増加させると、0.1%又は1%ヒト胆汁への曝露後にレンチウイルスベクター活性が増強され、少なくとも部分的にレスキューされることを実証した。
【0186】
まとめると、これらの知見は、ラット胆汁で観察されたものがヒト胆汁環境に移行可能であることを示し、胆汁酸隔離剤及び形質導入エンハンサーが、個別に及び組み合わせの両方で、胆汁が存在する状況において、レンチウイルスベクターなどの胆汁不安定性治療剤の活性を増強するように機能することを更に実証する。従って、本明細書で提供される実施例は、胆汁の存在下で通常不活性化される生物製剤が、胆汁酸隔離剤及び/又は形質導入エンハンサーなどの試薬も使用する場合、胆汁が存在する環境(胆道など)に有効に投与され得ることを示しており、胆汁酸隔離剤及び/又は形質導入エンハンサーは、胆汁の存在下での生物製剤に対する胆汁の有害な影響を低減し、且つ/又はそうでなければ生物製剤の活性を増強する。
【0187】
実施例5:胆汁酸隔離剤及び形質導入エンハンサー製剤は、胆汁不安定性非ウイルスベクターによる細胞のトランスフェクションを改善する
非ウイルスベクターに対する胆汁の効果も推定した。具体的には、HeLa-RC32細胞を24ウェルプレートに40,000細胞/ウェルの密度で一晩プレーティングした。EGFP mRNAを含有する脂質ナノ粒子(LNP)非ウイルスベクターを、PBS中の30%ラット(Sprague Dawley)胆汁の溶液、又は胆汁を含まないPBSを含有する陽性対照溶液と37℃で1時間プレインキュベートした。次いで、混合物を細胞培地で10倍に希釈し、細胞をベクター-胆汁溶液と共に37℃で24時間にわたって5%CO2でインキュベートした。従って、細胞を、試験群において3%の最終胆汁濃度に曝露した。インキュベーション後、EGFP発現及び細胞生存率をフローサイトメトリーによって推定した。
【0188】
陽性対照では、細胞の90%がEGFP発現を示し、トランスフェクションの成功及び導入されたmRNAからのEGFP発現を示した。しかしながら、30%胆汁に曝露されたLNPベクターで処理した細胞は、陽性対照と比較して、LNP駆動型EGFP蛍光の100%喪失を示し、胆汁の存在によるLNP EGFP mRNAベクターの活性の完全な障害を示した。従って、これらのデータは、LNPベクターなどの非ウイルスベクターの活性が、胆汁の存在下で分解しやすいことを実証する。
【0189】
胆汁酸隔離剤と形質導入エンハンサーとの組み合わせが、胆汁の存在下で非ウイルスベクターの活性を増加させる能力も推定した。具体的には、上記のアッセイと並行して、EGFP mRNAを含有するLNP非ウイルスベクターを、30%ラット胆汁の溶液並びに胆汁酸隔離剤及び形質導入エンハンサー(DPBS中250μg/mLコレセベラム及び10mg/mL F108)を含有する製剤と共に37℃で1時間にわたってプレインキュベートした。次いで、上記のように、混合物を細胞培地中で10倍に希釈し(3%胆汁、25μg/mLコレセベラム及び1mg/mL F108の最終濃度をもたらす)、細胞をベクター-胆汁溶液と共に37℃で24時間にわたって5%CO2でインキュベートした。次いで、細胞を、フローサイトメトリーによってEGFP発現及び細胞生存率について推定し、結果を、上記のように胆汁曝露LNPで処理した細胞から得られた結果と比較した。
【0190】
隔離剤及び形質導入エンハンサーで処理したサンプルは、EGFP発現の予想外の増加を示し、トランスフェクションの成功及び胆汁の存在下で失われたLNPベクター活性の部分的なレスキューを示した。具体的には、LNP、胆汁、隔離剤、及び形質導入エンハンサーを含有する培地で処理した細胞の11%が、胆汁を含有するが隔離剤及び形質導入エンハンサーを含有しない対応するサンプルにおいて観察されたLNP駆動型EGFP発現の完全な欠如と比較して、LNP駆動型EGFP発現を示した。
【0191】
まとめると、これらの結果は、ベクターが胆汁に曝露される場合、及び/又は胆汁がトランスフェクション環境に存在する場合、胆汁隔離剤及び形質導入エンハンサーが、非ウイルスベクターのトランスフェクションをレスキューし得、そして胆汁不安定性非ウイルスベクターの活性を増加させ得ることを実証する。この知見は、LNPベクターに対する胆汁の深刻な影響が、さもなければ陽性対照において90%のトランスフェクション及び発現をもたらしたベクターの活性の完全な障害をもたらしたことを考えると、特に予想外であった。
【0192】
実施例6:胆汁酸隔離剤及び形質導入エンハンサー製剤は、胆汁の存在下でLNP媒介形質導入の効率を個々に改善する
胆汁の存在下での非ウイルスベクターの形質導入に対する個々の製剤成分の影響を推定した。個々の製剤成分、隔離剤コレセベラム又は形質導入エンハンサーF108の量を、本質的に実施例5に記載されるように、GFPコード核酸のLNP媒介形質導入反応において滴定した。
【0193】
HeLa-RC32細胞を24ウェルプレートに40,000細胞/ウェルの密度で一晩プレーティングした。LNPにおけるGFPをコードするmRNAの形質導入反応を、様々な濃度の30%ラット胆汁単独(「胆汁」)、胆汁及びコレセベラム(「胆汁+コレセベラム」)、又は胆汁及びF108(「胆汁+F108」)の存在下、37℃で30分間行った。胆汁の非存在下でのLNP形質導入も対照(「処置なし」)として実施した。様々な形質導入反応の24時間後に、GFP発現をフローサイトメトリーによってアッセイした。
【0194】
図4Aに容易に見られるように、隔離剤は、隔離剤を含まない胆汁含有形質導入反応において見られるGFP発現細胞の数と比較して、GFP発現細胞の数の増加によって証明されるように、LNP形質導入を改善した。更に、種々のコレセベラム処置は、胆汁の非存在下で観察されるレベルまでのLNP形質導入のほぼ完全なレスキューをもたらした(例えば、コレセベラム濃度6.1μg/mL、2.0μg/mL、及び0.68μg/mLで測定された%GFP+細胞を、「処置なし」対照で測定された%GFP+細胞と比較されたい)。
【0195】
図4Bは、図4Aに提示されたデータの対数スケールレンダリングを提供する。図4Bに見られるように、形質導入反応におけるF108エンハンサーの存在はまた、F108の添加なしの胆汁の存在下で観察された形質導入効率と比較して、胆汁の存在下での形質導入効率を改善した。
【0196】
この実施例は、胆汁が存在する形質導入反応における形質導入エンハンサー及び/又は胆汁酸隔離剤の包含が、それぞれ個々に非ウイルスベクターの形質導入効率を改善すること、及び隔離剤の添加が、形質導入が胆汁の非存在下で行われる場合に観察されるレベルまで形質導入効率をレスキューし得ることを実証する。
【0197】
実施例7:レンチウイルスベクター及び胆道治療用エンハンサー製剤の管内送達後の肝臓のインビボマーキング
胆汁酸隔離剤及び形質導入エンハンサー含有組成物中のルシフェラーゼをコードするLVVの管内送達による肝細胞のマーキングを推定した。簡潔には、外付けの胆管カテーテルを外科的に移植されたC67/Bl6マウスを、商業的供給業者から購入した。標準的な技術に従って、ルシフェラーゼ発現カセット(すなわち、ルシフェラーゼをコードする配列に作動可能に連結された合成MNDプロモーターなどの遍在性構成プロモーター)を有する7.5E7 TU/マウスレンチウイルスベクターを含有する希釈剤、胆汁酸隔離剤、並びに最終濃度50μg/mLコレセベラム及び500μg/mL F108の形質導入エンハンサーを含有する形質導入組成物150μLを用いて、胆管に逆行性注射を行った。注入は30秒にわたって行った。注入後、注射用シリンジを5分間適所に保持してベクター流出を防止した。対照動物には、ルシフェラーゼ発現構築物保有ベクターを含有しない賦形剤組成物を注入した。処置後、動物を標準条件下で維持した。
【0198】
注入されたマウスを、LVV又は賦形剤注入の4日後に剖検した。剖検した動物から左葉、中葉及び右葉の肝臓サンプルを採取し、10%中性緩衝ホルマリン中で24~48時間固定した後、70%エタノールに移した。ブロックされた組織を切片化し、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)染色免疫組織化学を、抗ルシフェラーゼ抗体を使用して実施して、形質導入細胞によって発現されるルシフェラーゼの存在を検出した。
【0199】
図5A及び5Bは、それぞれ賦形剤及びベクター(LVV-ルシフェラーゼ)処置動物からの肝臓の代表的な切片を提供する。図5BにおけるDAB陽性細胞(暗褐色)の存在は、ルシフェラーゼをコードするLVV、胆汁酸隔離剤、及び形質導入エンハンサーを含有する組成物を管内投与されたマウスの肝細胞におけるルシフェラーゼの形質導入及び発現の成功を実証する。図5Aに示すように、対照組織では陽性細胞は検出されなかった。
【0200】
本実施例は、胆汁酸隔離剤及び形質導入エンハンサーを含有する記載される組成物を使用した、管内LVV送達による肝細胞のインビボ形質導入の成功、及び送達された導入遺伝子の発現を実証する。本開示の送達組成物を使用して、生きている動物における肝細胞は、使用された送達経路における胆汁の存在にもかかわらず、胆汁不安定性ベクターで首尾よく形質導入された。
【0201】
前述の発明は、理解を明確にする目的で例示及び実施例によっていくらか詳細に記載されているが、本発明の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の精神又は範囲から逸脱することなく特定の変更及び改変がなされ得ることが、当業者に容易に明らかである。
【0202】
従って、上記は単に本発明の原理を説明するものである。当業者であれば、本明細書に明示的に記載又は図示されていないが、本発明の原理を具現化し、その趣旨及び範囲内に含まれる様々な構成を考案することができることが理解されよう。更に、本明細書に列挙された全ての例及び条件付き言語は、主に、本発明の原理及び本発明者らが当該技術を促進するのに寄与した概念を読者が理解するのを助けることを意図しており、そのような具体的に列挙された例及び条件に限定されないと解釈されるべきである。更に、本発明の原理、態様、及び実施形態、並びにそれらの特定の例を記載する本明細書における全ての記述は、それらの構造的均等物及び機能的均等物の両方を包含することが意図される。更に、そのような均等物は、現在知られている均等物及び将来開発される均等物、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実行する開発された任意の要素の両方を含むことが意図される。更に、本明細書で開示されるものは、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかにかかわらず、公衆に捧げられることを意図されていない。
【0203】
従って、本発明の範囲は、本明細書に示され説明された例示的な実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明の範囲及び精神は、添付の特許請求の範囲によって具体化される。特許請求の範囲において、米国特許法第112条(f)又は米国特許法第112条(6)は、正確な語句「~のための手段(means for)」又は正確な語句「~のためのステップ(step for)」が特許請求の範囲におけるそのような限定の始めに記載されている場合にのみ、特許請求の範囲における限定のために呼び出されるものとして明示的に定義される。そのような正確な語句が請求項における限定において使用されない場合、米国特許法第112条(f)又は米国特許法第112条(6)は行使されない。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
【国際調査報告】