(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-05
(54)【発明の名称】液化天然ガスを製造するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20231225BHJP
F25J 3/08 20060101ALI20231225BHJP
F02C 7/22 20060101ALI20231225BHJP
F02G 5/02 20060101ALI20231225BHJP
F01K 23/06 20060101ALI20231225BHJP
F01N 5/02 20060101ALI20231225BHJP
H02P 9/04 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
F25J1/00 B
F25J3/08
F02C7/22 B
F02G5/02 B
F01K23/06 P
F01N5/02 J
F01N5/02 F
H02P9/04 F
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533835
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 EP2021025467
(87)【国際公開番号】W WO2022117228
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】102020000030023
(32)【優先日】2020-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517029381
【氏名又は名称】ヌオーヴォ・ピニォーネ・テクノロジー・ソチエタ・レスポンサビリタ・リミタータ
【氏名又は名称原語表記】Nuovo Pignone Tecnologie S.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】アミデイ、シモーネ
(72)【発明者】
【氏名】ブラート、アンドレア
(72)【発明者】
【氏名】カルデラーロ、アンドレア
【テーマコード(参考)】
3G081
4D047
5H590
【Fターム(参考)】
3G081BA02
3G081BA18
3G081BB04
3G081BB10
3G081BC04
3G081BC07
3G081BD00
4D047AA10
4D047AB08
4D047BB00
4D047CA11
4D047CA16
5H590AA02
5H590CA01
5H590CA08
5H590CE01
(57)【要約】
システム(1)は、天然ガス供給部(3)と、少なくとも1つの冷媒流体を圧縮するように適合された圧縮機(47)と、圧縮機(47)を駆動するように適合された駆動部(31)と、天然ガス(NG)の流れを天然ガス供給部(3)から受け取り、冷媒流体との熱交換によって天然ガス(NG)の流れから熱を除去するように適合された熱交換器(17)と、を含む、冷凍回路を有する天然ガス液化設備(7)と、を備える。ヒートポンプ(23)は、天然ガス液化設備(7)から廃棄された低温熱エネルギーを収集し、収集した熱エネルギーをより高い温度で熱エネルギー貯蔵システムに移動させる。システム(1)は、熱エネルギー貯蔵システム(21)からの熱エネルギーによって動力を供給される処理設備(5、41)を更に備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガス液化システム(1)であって、
天然ガス供給部(3)と、
冷凍回路であって、
-少なくとも1つの冷媒流体を圧縮するように適合された冷凍圧縮機(47)と、
-前記冷媒流体から低温熱エネルギーを除去するように適合された冷媒冷却器(13)と、
-前記冷凍圧縮機(47)を駆動するように適合された駆動部(31)と、
-天然ガス(NG)の流れを前記天然ガス供給部(3)から受け取り、冷媒流体との熱交換によって前記天然ガス(NG)の流れから熱を除去するように適合された熱交換器(17)と、を含む、冷凍回路と、
前記天然ガス液化システム(1)から廃棄された低温熱エネルギーを回収し、廃棄された前記熱エネルギーを、前記熱エネルギーが廃棄された温度よりも高い温度で熱エネルギー貯蔵システム(21)に移動させるように適合されたヒートポンプ(23)と、を備える、天然ガス液化システム(1)。
【請求項2】
前記ヒートポンプ(23)は、前記冷媒冷却器(13)によって廃棄された熱エネルギーを回収するように適合されている、請求項1に記載のシステム(1)。
【請求項3】
前記熱エネルギー貯蔵システム(21)からの熱エネルギーによって動力を供給される、少なくとも1つの処理設備(5、41)を更に備える、請求項1又は2に記載のシステム(1)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの処理設備(5、41)は、原料天然ガス(RNG)を受け取り、前記天然ガスを天然ガス液化設備(7)に送達する前に、前記原料天然ガスを前処理するように適合されたガス前処理設備(5)を含む、請求項3に記載のシステム(1)。
【請求項5】
前記駆動部(31)は、少なくとも1つの電気モータを含み、電気エネルギーを生成して、前記電気モータ(31)に動力を供給するように構成された少なくとも1つの発電機(33、33A、33B)と、熱エネルギーを機械エネルギーに変換し、それによって前記少なくとも1つの発電機(33、33A、33B)を駆動するように適合された熱エネルギー変換システム(35)と、を更に備える、請求項1~4の一項以上に記載のシステム(1)。
【請求項6】
前記熱エネルギー変換システム(35)は、前記天然ガス供給部(3)によって直接又は間接的に送達される天然ガス(NG)を燃料とする内燃機関(91)、好ましくはガスタービン機関を含む、請求項5に記載のシステム(1)。
【請求項7】
前記内燃機関(91)から廃熱を回収し、廃熱を前記熱エネルギー貯蔵システム(21)に移動させるように適合された廃熱回収ユニット(100)を更に備える、請求項6に記載のシステム(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの処理設備(5、41)は、前記内燃機関(91)から煙道ガスを受け取り、前記煙道ガスから二酸化炭素を除去するように適合された二酸化炭素捕捉設備(41)を含む、請求項6又は7に記載のシステム(1)。
【請求項9】
前記熱エネルギー変換システム(35)は、前記熱エネルギー貯蔵システム(21)から熱エネルギーを受け取るように適合された熱力学回路を含む、請求項5~8の一項以上に記載のシステム(1)。
【請求項10】
前記熱力学回路は、前記少なくとも1つの発電機(33、33B)に駆動連結されたスチーム又は蒸気タービン(51)を含む、請求項9に記載のシステム(1)。
【請求項11】
前記熱エネルギー変換システム(35)は、前記内燃機関(91)から廃熱を受け取るように構成された低温熱力学回路(35B)を更に含み、好ましくは、前記低温熱力学回路(35B)は、前記少なくとも1つの発電機(33B)に駆動連結されたスチーム又は蒸気タービン(51)を含む、請求項6~8の一項以上に記載のシステム(1)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの発電機(33、33A、33B)は、前記ヒートポンプ(23)、及び前記少なくとも1つの処理設備のうちの少なくとも1つに電気的に接続されている、請求項5~11の一項以上に記載のシステム(1)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの発電機(33、33A、33B)は、前記少なくとも1つの発電機(33、33A、33B)によって生成された余剰エネルギーを貯蔵するように適合されたエネルギー貯蔵設備(81)に機能的に連結されている、請求項5~12の一項以上に記載のシステム(1)。
【請求項14】
再生可能エネルギー源からエネルギーを収集するように適合された再生可能エネルギー収集器(71、77、83)を更に備える、請求項1~13の一項以上に記載のシステム(1)。
【請求項15】
前記再生可能エネルギー収集器(71、77、83)は、再生可能エネルギー資源からのエネルギーを貯蔵可能なエネルギーに、好ましくは、熱エネルギー及び電気エネルギーのうちの一方に変換するように適合されており、前記再生可能エネルギー収集器は、前記熱エネルギー貯蔵システム(21)及び追加のエネルギー貯蔵システム(81)のうちの少なくとも1つに機能的に連結されている、請求項14に記載のシステム(1)。
【請求項16】
液化天然ガス貯蔵積み出し設備(19)を更に備え、前記液化天然ガス貯蔵積み出し設備(19)は、前記少なくとも1つの発電機(33、33A、33B)によって生成された電気エネルギーによって動力を供給される、請求項1~15の一項以上に記載のシステム(1)。
【請求項17】
モジュール式スキッドであって、
天然ガス供給部と連結するように構成された冷凍回路であって、前記冷凍回路は、
少なくとも1つの冷媒流体を圧縮するように適合された冷凍圧縮機(47)と、
前記冷媒流体から低温熱エネルギーを除去するように適合された冷媒冷却器(13)と、
天然ガス(NG)の流れを前記天然ガス供給部(3)から受け取り、前記冷媒流体との熱交換によって前記天然ガス(NG)の流れから熱を除去するように適合された熱交換器(17)と、を含む、冷凍回路と、
低温廃棄熱エネルギー源に連結され、熱エネルギー貯蔵システム(21)と連結するように適合されたヒートポンプ(23)であって、前記ヒートポンプは、廃棄された低温熱エネルギーを収集し、前記廃棄された熱エネルギーをより高い温度で前記熱エネルギー貯蔵システムに移動させるように適合された、ヒートポンプ(23)と、を備える、モジュール式スキッド。
【請求項18】
前記ヒートポンプ(23)の低温側は、前記冷媒冷却器(13)から熱を回収するように構成されている、請求項17に記載のモジュール式スキッド。
【請求項19】
天然ガス液化システム(1)を用いて天然ガスを液化するための方法であって、前記天然ガス液化システム(1)は、熱交換器(17)と、冷媒流体を圧縮するように適合された冷凍圧縮機(47)と、前記冷媒流体から低温熱エネルギーを除去するように適合された冷媒冷却器(13)と、前記冷凍圧縮機(47)を駆動するように適合された駆動部(31)と、を備え、前記方法は、以下の:
前記熱交換器(17)に天然ガス(NG)を流し、前記冷媒流体との熱交換によって前記天然ガスから熱エネルギーを除去するステップと、
前記冷媒冷却器(13)を通って前記冷媒流体から低温熱エネルギーを除去するステップと、
ヒートポンプ(23)を通って、前記天然ガス液化システム(1)から廃棄された低温熱エネルギーを回収し、廃棄された前記熱エネルギーを、より高い温度で熱エネルギー貯蔵システム(21)に移動させるステップと、を含む、方法。
【請求項20】
前記天然ガス液化システム(1)から廃棄された低温熱エネルギーを回収する前記ステップは、前記冷媒冷却器(13)を通って前記冷媒流体から除去された低温熱エネルギーを回収するステップを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記熱エネルギー貯蔵システム(21)から、前記天然ガス液化システム(1)の少なくとも1つの処理設備(5、41)に熱エネルギーを送達するステップを更に含む、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの処理設備は、ガス前処理設備(5)を含み、前記方法は、前記天然ガス(NG)を前記熱交換器(17)に導入する前に、前記ガス前処理設備において原料天然ガス(RNG)の流れを処理するステップを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記天然ガス液化システム(1)から廃棄された低温熱エネルギーを回収する前記ステップは、前記ガス前処理設備(5)から廃棄された熱エネルギーを回収するステップを含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記駆動部(31)は、電気モータを含み、前記方法は、以下の:
少なくとも1つの熱力学サイクルにおいて熱エネルギーを機械エネルギーに変換するステップと、
少なくとも1つの発電機(33、33A、33B)を用いて機械エネルギーを電気エネルギーに変換し、それによって前記電気モータに動力を供給するステップと、を更に含む、請求項19~23の一項以上に記載の方法。
【請求項25】
熱エネルギーを機械エネルギーに変換する前記ステップは、天然ガスを用いて内燃機関(91)に、好ましくはガスタービン機関に動力を供給するステップを含み、機械エネルギーを電気エネルギーに変換する前記ステップは、前記内燃機関(91)を用いて前記少なくとも1つの発電機(33、33A)を駆動するステップを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記熱エネルギー貯蔵システム(21)からの熱エネルギーを動力とする二酸化炭素捕捉設備(41)において、前記内燃機関(91)によって生成された煙道ガスから二酸化炭素を捕捉するステップを更に含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記内燃機関(91)から廃熱を収集し、低温熱力学サイクル(35B)を用いて前記廃熱を機械エネルギーに更に変換するステップを更に含む、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記内燃機関(91)から廃熱を収集し、前記収集された廃熱を前記熱エネルギー貯蔵システム(21)に移動させるステップを更に含む、請求項25、26、又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記少なくとも1つの発電機(33、33A、33B)によって生成された電気エネルギーを用いて前記ヒートポンプ(23)に動力を供給するステップを更に含む、請求項24~28の一項以上に記載の方法。
【請求項30】
再生可能エネルギー源からエネルギーを収集するステップを更に含み、前記収集されたエネルギーを貯蔵するステップ、又は前記収集されたエネルギーを電気エネルギーに変換し、前記電気エネルギーを前記少なくとも1つの処理設備(5、41)において使用するステップのうちの少なくとも1つを更に含む、請求項19~29の一項以上に記載の方法。
【請求項31】
前記収集されたエネルギーを貯蔵する前記ステップは、前記収集されたエネルギーを熱エネルギーに変換し、変換された前記熱エネルギーを前記熱エネルギー貯蔵システム(21)に貯蔵するステップを含む、請求項30に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、天然ガス液化システム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主にメタンから構成され、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの少量のより重い炭化水素、並びに場合によっては二酸化炭素を含む天然ガスは、その大きな利用可能性及び環境への影響の低減により、ますます人気のあるエネルギー源になりつつある。しかしながら、天然ガス源が利用可能である抽出現場からエンドユーザへの天然ガスの輸送は、主要な懸念事項である。天然ガスを長距離にわたって輸送する1つの費用効率が高く安全な方法は、天然ガスを液化し、これをLNGタンカーと呼ばれることが多いタンカー船で輸送することである。目的地において、液化天然ガスは、変換されて液化天然ガスの気体状態に戻され、エンドユーザにとって利用可能にされる。
【0003】
単一の又は組み合わされた冷凍回路を使用して天然ガス(natural gas、NG)を液化し、液化天然ガス(liquefied natural gas、LNG)を製造するための様々なシステム及び技術が開発されており、1つ以上の冷媒流体は、凝縮器内で周期的に圧縮及び凝縮され、膨張され、天然ガス及び/又は別の冷媒流体との熱交換の関係において加熱される。熱エネルギーは、冷媒流体によって天然ガスから除去され、凝縮器を通って環境に廃棄され、凝縮器では、圧縮された冷媒は、冷熱源、例えば、空気又は水との熱交換によって冷やされ、凝縮される。
【0004】
いくつかの様々な天然ガス液化システム及び方法が、数十年にわたって開発されており、当業者に知られている。
【0005】
天然ガス液化は、エネルギーを消費するプロセスであり、LNG製造システムの全体的な効率を改善するための継続的な努力がなされている。
【0006】
具体的には、冷媒(複数可)を圧縮するのに必要な圧縮機を駆動するためのエネルギーが必要とされる。限定されるものではないが、ガス前処理設備などの天然ガス液化システムの補助設備及びユニットによって、更なるエネルギーが必要とされる。これらのエネルギーは、液化の前に、ガス田由来の原料天然ガスから望ましくない成分を除去するために必要とされる。原料天然ガスから除去される成分としては、例えば、ペンタンなどの重炭化水素(heavy hydrocarbon、HHC)、及びより重い炭化水素であるベンゼン、トルエン、キシレン、メルカプタン、硫化水素(hydrogen sulfide、H2S)、二酸化炭素、並びに水分(H2O)が挙げられる。
【0007】
上述の望まれない成分のうちの1つ以上を除去するために、いくつかの天然ガス前処理設備が使用される。例として、このような前処理設備は、二酸化炭素及び他の酸性ガス成分(硫化水素、メルカプタンなど)を除去するように適合されたスイートニング設備、水分を除去するように適合された脱水設備、任意選択で、重炭化水素を除去及び回収するように適合された分留システムなどを含むが、これらに限定されない。
【0008】
天然ガス液化システム及び方法のエネルギー効率を更に改善することが継続的に必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
一態様によれば、本明細書では、天然ガス供給部と、冷凍回路を有する天然ガス液化設備と、を備える、液化天然ガスを製造するためのシステムが開示される。冷凍回路は、少なくとも1つの冷媒流体を圧縮するように適合された冷凍圧縮機と、冷凍圧縮機を駆動するように適合された駆動部と、圧縮中又は圧縮後に冷媒流体から熱(熱エネルギー)を除去するための冷却器と、天然ガス供給部から天然ガスの流れを受け取り、膨張した冷媒流体との熱交換によって天然ガスの流れから熱を除去するように構成された熱交換器と、を備える。
【0010】
液化天然ガスを製造するためのシステムは、低温で天然ガス液化システムによって廃棄され、ヒートポンプによって回収された熱エネルギーを受け取り、これを内部に貯蔵するように適合された熱エネルギー貯蔵システムを更に含む。ヒートポンプは、天然ガス液化システムから廃棄された低温熱エネルギーを収集し、廃棄された熱エネルギーを、より高い温度で、すなわち、熱エネルギーが廃棄された温度よりも高い温度で熱エネルギー貯蔵システムに移動させるように適合されている。
【0011】
更に、システムは、熱エネルギー貯蔵システムからの熱エネルギーによって動力を供給される、少なくとも1つの処理設備を備え得る。いくつかの実施形態では、熱エネルギー貯蔵システムに貯蔵された熱エネルギーは、発電のために使用され得る、すなわち、熱エネルギーは、熱エネルギーを機械エネルギーに変換し、その後、電気エネルギーに変換する熱力学サイクルに送達することができる。
【0012】
本明細書で使用される場合、「冷媒」又は「冷媒流体」という用語は、液化される天然ガスから熱を抽出し、天然ガスから除去された熱エネルギーを廃棄するために、圧縮、冷却、及び膨張の熱力学変換を受けることができる任意の流体である。
【0013】
多くのLNGシステムでは、天然ガス自体とは異なる1つ以上の冷媒流体が様々な組み合わせで使用され、閉ループ、すなわち、閉サイクルにおいて処理される。しかしながら、いくつかのLNGシステムは、天然ガス自体とは異なる追加の冷媒流体を必要とせずに、開ループ、すなわち、開回路において冷媒流体として液化天然ガスの流れを使用する。本明細書に開示される新規な特徴は、いくつかの例示的な実施形態を参照して以下に説明されるように、両方の種類のLNGシステムにおいて使用することができる。
【0014】
ヒートポンプを通って回収された熱エネルギーは、冷媒流体の圧縮中又は圧縮後、膨張前に冷媒流体から廃棄された熱エネルギーの一部であってもよい。
【0015】
追加的又は代替的に、いくつかの実施形態では、回収された低温廃棄熱エネルギーは、冷凍回路とは異なるLNGシステムの1つ以上の処理設備から廃棄された熱を含んでもよい。例えば、廃棄された熱は、天然ガス前処理設備における液化の前に原料天然ガスから水分を除去するために設けられた脱水ユニットのバッチ式運転再生によって回収することができる。
【0016】
LNGシステムのエネルギー効率は、廃棄された熱エネルギーの少なくとも一部が環境中に放出されず、むしろ熱エネルギー貯蔵システムに収集されて、例えば、補助処理設備の運転のために熱エネルギーを必要とする補助処理設備によって使用されるか、又は発電などの他の用途のために使用されるので、改善される。
【0017】
ヒートポンプは、廃棄温度よりも高い温度で熱エネルギーを貯蔵することを可能にし、熱エネルギーを熱力学サイクルで使用するためにより有益なものにする。ヒートポンプを駆動するのに必要な動力は、ヒートポンプを通って回収される有用な動力よりも小さい。
【0018】
例えば、天然ガス液化システムは、天然ガスを天然ガス液化設備に送達する前に、天然ガスを受け取って前処理するように適合された1つ以上の前処理設備を含んでもよい。前処理は、熱エネルギーを必要とし、熱エネルギーは、熱エネルギー貯蔵システムによって完全に又は少なくとも部分的に提供することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、冷凍回路の冷却圧縮機又は圧縮機列を回転駆動する駆動部は、電気モータを含み得る。電気モータは、熱エネルギーを機械エネルギーに変換し、それによって少なくとも1つの発電機を駆動するように適合された熱エネルギー変換システムによって駆動される発電機によって生成された電力によって動力を供給することができる。
【0020】
熱エネルギー変換システムは、天然ガス供給部によって直接又は間接的に送達される天然ガスを燃料とする、特にガスタービン機関などの内燃機関を含むことができる。有利な実施形態では、システムのエネルギー効率を更に改善するために、内燃機関から廃熱を回収するように適合され、廃熱を熱エネルギー貯蔵システムに移動させるように更に適合された廃熱回収ユニットを設けることができる。
【0021】
LNGシステムは、内燃機関から煙道ガスを受け取り、煙道ガスから二酸化炭素を除去するように適合された二酸化炭素捕捉設備を更に含み得る。二酸化炭素捕捉設備を運転するのに必要な熱エネルギーは、熱エネルギー貯蔵システムによって少なくとも部分的に提供することができる。
【0022】
本開示によるシステムの更なる実施形態及び追加の特徴は、添付の図面を参照して以下に記載されている。
【0023】
別の態様によれば、本開示は、天然ガス液化システムを用いて天然ガスを液化するための方法に関する。
【0024】
本方法は、天然ガス液化システムの熱交換器内に天然ガスを流し、冷媒流体との熱交換によって天然ガスから熱エネルギーを除去することを含む。低温熱エネルギーは、冷媒冷却器を通って冷媒流体から除去される。更に、本方法は、ヒートポンプを通って、天然ガス液化システムから廃棄された低温熱エネルギーを回収し、廃棄された熱エネルギーを、熱エネルギーが廃棄された温度よりも高い温度で熱エネルギー貯蔵システムに移動させるステップを含む。
【図面の簡単な説明】
【0025】
ここで、添付図面を簡単に参照する。
【
図1】天然ガス液化システムの一実施形態の図である。
【
図2】天然ガス液化設備の冷凍圧縮機を駆動するために電気エネルギーを使用する天然ガス液化システムの一実施形態の図である。
【
図3】天然ガス液化システムの更なる実施形態のより詳細な図である。
【
図4】天然ガス液化システムのまた更なる実施形態のより詳細な図である。
【
図6】本開示のヒートポンプ及び熱エネルギー貯蔵システムと組み合わせて使用され得る代替的な天然ガス液化設備の概略図である。
【
図7】本開示のヒートポンプ及び熱エネルギー貯蔵システムと組み合わせて使用され得る代替的な天然ガス液化設備の概略図である。
【
図8】本開示のヒートポンプ及び熱エネルギー貯蔵システムと組み合わせて使用され得る代替的な天然ガス液化設備の概略図である。
【
図9】本開示のヒートポンプ及び熱エネルギー貯蔵システムと組み合わせて使用され得る代替的な天然ガス液化設備の概略図である。
【
図10】本開示のヒートポンプ及び熱エネルギー貯蔵システムと組み合わせて使用され得る代替的な天然ガス液化設備の概略図である。
【
図11】本開示のヒートポンプ及び熱エネルギー貯蔵システムと組み合わせて使用され得る代替的な天然ガス液化設備の概略図である。
【
図12】本開示のヒートポンプ及び熱エネルギー貯蔵システムと組み合わせて使用され得る代替的な天然ガス液化設備の概略図である。
【
図13】本開示のヒートポンプ及び熱エネルギー貯蔵システムと組み合わせて使用され得る代替的な天然ガス液化設備の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
概して、天然ガス液化システムの全体的な効率を改善するように適合されたシステム及び方法が本明細書で開示され、天然ガス液化システムによって廃棄される熱エネルギー(熱)は、システムを動作させるために必要とされるエネルギーの量を低減するために利用される。具体的には、液化プロセス中に天然ガスから除去された低温熱エネルギーの一部は、環境中に放出される代わりに、回収され、様々な目的のために使用される。回収された低温熱エネルギーは、ヒートポンプを使用して、廃棄された温度よりも高い温度で熱エネルギー貯蔵システムに移動される。ヒートポンプは、冷凍サイクルの冷凍圧縮機を駆動するためにも使用される電気エネルギーによって駆動することができる。したがって、システムの設備を必要とする1つ以上の熱エネルギーを動作させるために低温熱エネルギーが利用されるので、システムの全体的なエネルギー効率が向上する。LNG製造システムのエコロジカルフットプリントを低減することができる。
【0027】
1つ以上の冷凍サイクルの冷媒から熱エネルギーを回収することに加えて、低温熱エネルギーは、熱エネルギーが周囲温度より十分に高い温度で廃棄される天然ガス液化システムの任意の場所から回収することができる。
【0028】
複数の冷凍回路が使用される場合、廃棄された熱エネルギーは、冷凍回路のうちの少なくとも1つから回収することができる。実施形態では、1つ以上の冷凍回路は、2つ以上の圧縮機又は圧縮機段を含み得る。熱エネルギーは、2つの連続して配置された圧縮機又は圧縮機段の間で、例えば、中間冷却熱交換器を通って、又は最後の圧縮機若しくは圧縮機段の下流で、場合によっては冷媒凝縮器の上流で回収することができる。
【0029】
一般に、廃棄された熱エネルギー全体が回収されるのではなく、その一部のみが回収され、周囲温度に近い温度の熱エネルギーの残りの部分は、環境内に廃棄され得る。
【0030】
冷媒の圧縮後に冷媒から熱エネルギーを回収することは特に有益であるが、熱エネルギーは、他の廃棄熱エネルギー源からも回収することができる。回収可能な低温熱エネルギーの好適な供給源は、例えば、反応器及び/又は乾燥機再生システムの出口における、LNGシステムの前処理セクションであり得る。
【0031】
ここでは、本明細書に開示されるシステム、デバイス、及び方法の構造、機能、及び使用の原理の全体的な理解をもたらすために、特定の例示的な実施形態を記載する。これらの実施形態の1つ以上の例が、添付の図面に例示されている。当業者は、本明細書に明確に記載され、添付の図面に例示されるシステム、デバイス、及び方法が、非限定的な例示的な実施形態であること、並びに本発明の範囲が特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。例示的な一実施形態に関連して記載又は例示される特徴は、他の実施形態の特徴と組み合わされ得る。このような修正例及び変形例は、本発明の範囲内に含まれることが意図される。
【0032】
ここで図面を参照すると、
図1は、本明細書に開示される実施形態による、液化天然ガスを製造するためのシステム1の幾分簡略化された図を示す。システム1は、原料天然ガス(raw natural gas、RNG)をシステム1に供給する天然ガス供給部3を備える。原料天然ガスRNGは、ガス前処理設備5で前処理することができる。簡潔にするために、本明細書では、単一のガス前処理設備5について言及するが、当業者であれば、原料天然ガスRNGから除去される望まれない成分の種類に応じて、複数のシステム又は設備が予見され得ることを理解するであろう。例えば、ガス前処理設備5は、次に、スイートニングシステム、ガス脱水システム、重炭化水素(HHC)除去システム、液体天然ガス(natural gas liquid、NGL)除去システム、又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0033】
酸性ガス(二酸化炭素、硫化水素、メルカプタン)、重炭化水素、及びこれらからの水分などの望まれない成分を除去した後、前処理された天然ガス(NG)は、ガス前処理設備5から、冷凍回路を含む、7で概略的に示される天然ガス液化設備に送達される。天然ガス液化設備7は、当技術分野で知られている任意の天然ガス液化設備として構成することができる。限定ではなく例として、天然ガス液化設備7は、任意の好適な液化プロセスの使用に基づくことができる。限定ではなく単なる例として、以下のタイプの液化プロセスのいずれかを使用することができる。窒素サイクル及び単一混合冷媒サイクルなどの単一冷凍サイクル、プロパン混合冷媒LNGサイクルなどの二重冷凍サイクル、二重混合冷媒サイクル、3つの冷媒サイクルなど。
【0034】
天然ガス液化設備7は、使用される天然ガス液化設備7の種類に応じて、天然ガス流を1つ以上の冷媒流体と熱交換関係にするように適合された1つ以上の熱交換器と組み合わせて、1つ以上の冷凍回路を含み得る。概して、天然ガス液化設備7は、少なくとも1つの冷媒流体を圧縮する、すなわち、加圧するように適合された1つ以上の圧縮機から構成される少なくとも1つの圧縮装置を含む。駆動装置は、1つ以上の圧縮機を回転駆動する。駆動装置は、次に、1つ以上の駆動部を含み得る。圧縮された冷媒流体は、凝縮装置において冷却及び凝縮され、凝縮装置は、次に、圧縮された冷媒流体から熱を除去するように適合された1つ以上の凝縮器を含み得る。冷媒膨張装置は、天然ガス液化設備7に更に含まれ、冷却及び凝縮された冷媒(複数可)を膨張させるように適合されている。天然ガス液化設備7の熱交換器は、天然ガスの流れを受け取り、膨張した冷媒流体との熱交換によって天然ガスの流れから熱を除去するように構成されており、熱交換器は、1つ以上の熱交換器ユニットを含むことができる。
【0035】
天然ガス液化設備7の様々な構成要素の構造、配置、及び動作は、変更することができ、使用されるガス液化技術に大きく依存する。本開示のために、重要なことは、天然ガス液化設備7が、1つ以上の冷媒流体に周期的な熱力学変換を受けさせ、それにより、熱エネルギーが、LNG製造システム1を通って流れる天然ガスNGから除去され、天然ガス液化設備7から廃棄されるように、1つ以上の圧縮機及び関連する駆動部(複数可)、凝縮器、膨張器、並びに熱交換器の組み合わせから構成される圧縮装置を含むことである。
【0036】
簡略化のために、天然ガス液化設備7は、説明される好適な動力源から動力11を受け取ることができる冷媒圧縮システム9と、冷媒圧縮システムにおいて処理された冷媒流体から熱エネルギー(熱)を廃棄するように適合された凝縮器又は他の冷媒冷却器13と、膨張器15と、天然ガスNGから熱を除去して天然ガスを液化するための熱交換器17との組み合わせとして
図1に簡単に表されている。圧縮システム9によって圧縮された冷媒流体は、凝縮器13においてそこからの熱抽出によって冷却及び凝縮され、膨張器15において膨張され、天然ガスNGと熱交換関係にある熱交換器17に流されて、天然ガスから熱を除去する。
【0037】
熱交換器17において天然ガスNGから冷媒流体に移動された熱エネルギーは、凝縮器13において冷媒流体から除去される。以下の説明から明らかになるように、様々な実施形態によれば、天然ガス液化システム1は、2つ以上の凝縮器、及び/又は異なる冷媒冷却器を組み合わせて含んでもよく、これらの凝縮器及び/又は異なる冷媒冷却器から、天然ガスから抽出された熱が廃棄される。
【0038】
液化天然ガスLNGは、LNG貯蔵タンク22及び低温ポンプ20を含む液化天然ガス貯蔵積み出し設備19に収集される。
【0039】
システム1のエネルギー効率を改善するために、熱エネルギー貯蔵システム21が設けられ、天然ガス液化設備7によって廃棄された熱エネルギーは、廃棄温度、すなわち、熱エネルギー又はその一部が天然ガス液化設備7から廃棄される温度よりも高い温度で収集される。
【0040】
電気モータ25によって駆動されるヒートポンプ23は、冷媒流体から廃棄された低温熱エネルギーを回収し、当該熱エネルギーを、より高い温度で熱エネルギー貯蔵システム21に移動させるために設けられている。低温熱移動流体回路23Aは、凝縮器13と、ヒートポンプ23の低温側との間に設けられ、高温熱移動流体回路23Bは、ヒートポンプ23の高温側と熱エネルギー貯蔵システム21との間に設けられている。熱移動流体は、ポンプ(図示せず)によってそれぞれの回路23A、23B内を循環する。
【0041】
一実施態様では、ヒートポンプ23は、トランスクリティカルヒートポンプとすることができる。
【0042】
電気モータ25によって生成された機械的動力を使用して、熱エネルギーを凝縮器13におけるより低い温度から熱エネルギー貯蔵システム21におけるより高い温度へ移動させる。
【0043】
電気モータ25及び圧縮システム9は、以下の図を参照して後でより詳細に説明されるように、配電網によって動力を供給することができる。
【0044】
現在の技術のLNGシステムのように、環境中の天然ガスから除去された熱エネルギーを廃棄する代わりに、当該熱エネルギーは、少なくとも部分的に収集され、システム1の他の処理設備での使用に好適な温度で熱エネルギー貯蔵システム21に貯蔵される。
【0045】
図1の例示的な実施形態では、熱エネルギー貯蔵システム21は、ガス前処理設備5を運転するために必要な熱エネルギーの少なくとも一部を提供する。熱移動流体回路27は、熱移動流体を熱エネルギー貯蔵システム21からガス前処理設備5に循環させ、このガス前処理設備5から熱エネルギー貯蔵システム21に戻す。熱エネルギー貯蔵システム21がガス前処理設備5の熱需要全体をカバーすることができない場合、追加の熱発生器(図示せず)を提供する選択肢、又はシステム1又はその近くで利用可能な追加の熱源からの熱を使用する選択肢は除外されない。
【0046】
図1のシステム1によって実施される天然ガス液化及び熱回収方法は、
図5のフローチャートに要約されている。具体的には、第1のステップ(201)は、液化天然ガス製造設備7の熱交換器に天然ガスの流れを導入することを含む。第2のステップ(202)は、天然ガスの流れから低温熱エネルギーを除去することを含む。第3のステップ(203)は、熱エネルギーを、ヒートポンプ23を通ってより高い温度で熱エネルギー貯蔵システム21に移動させることを提供する。最後に、第4のステップ(204)は、熱エネルギーを、熱エネルギー貯蔵システム21から少なくとも1つの処理設備に送達することを含む。
【0047】
引き続き
図1を参照すると、液化天然ガスを製造するためのシステム1の更なる実施形態を
図2に示す。
図2において、
図1と同じ参照番号は、同じ部品若しくは同等の部品、構成要素、又は要素を示すものであり、それらについては再度説明しない。
【0048】
図2では、冷媒流体の冷却及び凝縮は、圧縮システム9の圧縮装置47の送達側の下流に順次配置された2つの冷却ユニット又は凝縮ユニット13、13Aを使用して達成される。実施形態では、第1のユニット13は、熱エネルギーの一部をより高い温度で冷媒流体から除去する冷却器とすることができ、第2のユニット13Aは、更なる熱エネルギーが、冷媒流体が凝縮されるまでより低い温度で除去される実際の凝縮器とすることができる。
【0049】
冷却器13で廃棄された熱は、ヒートポンプ23を介して回収され、凝縮器13Aで廃棄された熱は、環境中に廃棄される。したがって、一般に、冷媒流体から廃棄された熱エネルギーの一部のみが、天然ガス液化設備7で使用される圧縮された冷媒流体(複数可)から回収される。ヒートポンプ23を通って回収される熱エネルギーの量及び環境中に廃棄される熱エネルギーの量は、ヒートポンプ23の低温側の温度及び冷媒流体が凝縮する温度に依存する。
【0050】
図2では、ヒートポンプ23の電気モータ25に動力を供給する電気エネルギー分配網29が示されている。
図2の実施形態では、電気エネルギー分配網29は、冷凍圧縮システム9を駆動する電気モータ31などの駆動部に更に動力を供給する。電気エネルギー分配網29と、LNG貯蔵積み出し設備19の低温ポンプ20との間の電気接続部が、
図2に更に示されている。ポンプ20は、例えば、液化天然ガスを貯蔵タンク22からLNGタンカー(図示せず)に積み込む。
【0051】
一実施態様では、電気エネルギーは、本明細書では簡単に熱力学システム35とも称される熱エネルギー変換システム35によって駆動される発電機33によって生成することができ、熱エネルギー変換システム35は、熱出力を機械的動力に変換する。熱力学システム35は、ガスタービン機関を使用するBrytonサイクルなどの開放熱力学サイクルを含み得る。ガスタービン機関は、天然ガス供給部3からの天然ガスNGを燃料とし得る。他の実施形態では、熱力学システム35は、水又は有機流体を作動流体として使用するRankineサイクルなどの閉鎖熱力学サイクルを含み得る。
【0052】
実施形態では、熱力学システム35は、組み合わされた上部高温サイクル及び下部低温サイクル、例えば、高温ガスタービンサイクルを含んでもよく、その廃熱は、下部Rankineサイクル、例えば、スチーム又は有機Rankineサイクルに動力を供給するために使用される。
【0053】
図2に概略的に示すように、熱力学システム35は、熱移動流体が循環する熱移動回路37を介して熱エネルギー貯蔵システム21と熱交換関係にある。熱エネルギーは、熱力学システム35から熱エネルギー貯蔵システム21に、又はその逆に移動することができる。例えば、低温熱エネルギーは、熱エネルギー貯蔵システム21から、熱力学システム35の低温熱力学サイクルに送達され、そこで、機械エネルギーに変換されて発電機33を駆動することができる。
【0054】
引き続き
図1及び
図2を参照すると、更なる実施形態のより詳細な図が
図3に示されており、同じ参照番号は、
図1及び
図2に示された同じ要素又は対応する要素を示す。
【0055】
図3のシステム1は、ガス前処理設備5で前処理される原料天然ガス(RNG)を供給する天然ガス供給部3を備える。原料天然ガスから、酸性ガス(二酸化炭素、硫化水素、メルカプタン)、重炭化水素、及び水分などの望まれない成分を除去した後、前処理された天然ガス(NG)は、天然ガス液化設備7に送達される。
【0056】
上述したように、天然ガス液化設備7は、本明細書では、単純な冷凍回路を含むものとして簡略化して表されている。実施形態では、天然ガス液化設備7は、使用される天然ガス液化設備7の種類に応じて、天然ガス流を1つ以上の冷媒流体と熱交換関係にするように適合された1つ以上の熱交換器と組み合わせて、1つ以上の閉鎖冷凍回路又は開放冷凍回路を含み得る。
【0057】
図1及び
図2のように、天然ガス液化設備7は、
図3では、冷凍圧縮システム9と、圧縮された冷媒流体から熱を除去するための冷媒冷却器13及び凝縮器13Aを含む冷媒流体冷却装置と、凝縮された冷媒流体を膨張させるように適合された膨張器15と、熱交換器17とから構成される冷凍回路を含むものとして簡単に表されている。圧縮システム9によって圧縮された冷媒流体は、冷却器13及び凝縮器13Aにおいて冷却及び凝縮され、膨張器15において膨張され、天然ガスNGから熱を除去するために、天然ガスNGと熱交換関係にある熱交換器17を流れる。
【0058】
熱交換器17において天然ガスNGから除去され、冷媒流体によって吸収された熱エネルギーは、冷却器13及び凝縮器13Aにおいて冷媒流体から除去され、少なくとも部分的に、電気モータ25によって駆動されるヒートポンプ23及び関連する回路23A、23Bを介して、熱が冷却器13から放出される温度よりも高い温度で熱エネルギー貯蔵システム21に移動される。
【0059】
天然ガスNGは、液体状態に達するまで冷却され、液化天然ガスLNGは、貯蔵タンク22及び低温ポンプ20を含むLNG貯蔵積み出し設備19に収集される。
【0060】
先に説明した実施形態のように、
図3の実施形態でも、貯蔵システム21に貯蔵された熱エネルギーを使用して、ガス前処理設備5に動力を供給することができる。熱移動流体回路27は、熱移動流体を熱エネルギー貯蔵システム21からガス前処理設備5に循環させ、このガス前処理設備5から熱エネルギー貯蔵システム21に戻す。
【0061】
図2の実施形態と同様に、
図3では、電気エネルギー分配網29が、ヒートポンプ23の電気モータ25と、9で概略的に示される圧縮システムの一部を形成する圧縮機47を駆動するように適合された電気モータ31とに電気的に連結されている。とりわけ、使用される液化技術に応じて、2つ以上の圧縮機47及び関連する電気モータ駆動部を使用してもよいことに留意されたい。
【0062】
図3の実施形態では、Rankineサイクルを含む熱力学システム35によって電力が生成される。熱力学システム35は、単一のスチーム又は蒸気タービン51として
図3に概略的に表される、1つ以上のスチーム又は蒸気タービンを含む回路を備える。スチーム又は蒸気タービン51は、発電機33に駆動連結されており、次に、発電機33は、電気エネルギー分配網29に電気的に連結されている。スチーム又は蒸気タービン51が一部を形成する熱力学システム35は、概略的に、熱移動流体が循環する回路55を通って熱エネルギー貯蔵システム21からの熱によって動力を供給されるボイラ及び蒸発器53を含む。
【0063】
いくつかの実施形態では、熱エネルギー貯蔵システム21からの熱エネルギーが十分でない場合に、熱力学システム35のプロセス流体(スチーム又は蒸気)に更なる熱エネルギーを加えるために、更なる加熱ユニット、例えば、加熱器及び/又は過熱器を設けることができる。
図3の概略図では、過熱器57が示されており、過熱器57は、天然ガス供給部3からの天然ガスNGによって、かつ/又はLNG貯蔵積み出し設備19のボイルオフガス(boil-off gas、BOG)ダクト59から動力を供給することができる。
【0064】
スチーム又は蒸気タービン51の熱力学回路は、凝縮器59、作動流体貯蔵タンク60、及びポンプ61を更に含む。
【0065】
熱力学システム35の作動流体は、例えば、スチームRankineサイクルが使用される場合には水とすることができ、有機Rankineサイクル(organic Rankine cycle、ORC)が使用される場合にはペンタン、シクロペンタン、二酸化炭素などの有機流体とすることができる。
【0066】
システム1の全体的なエネルギー効率を更に改善するために、いくつかの実施形態では、システム1は、太陽エネルギー又は風力エネルギーなどの再生可能エネルギー源からエネルギーを収集して利用するために、1つ以上の再生可能エネルギー収集器を更に含み得る。一実施態様では、集光型太陽光発電装置(concentrated solar power、CSP装置)71を熱エネルギー貯蔵システム21に機能的に連結することができる。CSP装置71は、例えば、ヘリオスタット、パラボラトラフなどを使用する任意の種類の太陽集光器を含むことができる。太陽エネルギーは、熱の形態で収集され、熱移動回路73を介して熱エネルギー貯蔵システム21に移動され、熱エネルギー貯蔵システム21に貯蔵される。
【0067】
更なる実施形態では、再生可能エネルギー源を使用して電力を生成してもよく、次に、その電力は、電気エネルギー分配網29を介して、これに接続された1人以上のユーザ又はユニットに分配することができる。
図3では、太陽光発電パネルの領域が77で示されている。参照番号79は、電気エネルギー分配網29及び太陽光発電パネル77に電気的に連結され、太陽光発電パネル77によって生成されたCC電力をAC電力に変換するように適合されたインバータ又は複数のマイクロインバータを示す。過剰な電気エネルギーは、エネルギー貯蔵設備81に、それ自体で、又はより容易に貯蔵することができる異なる形態のエネルギーに変換した後に貯蔵され得る。例えば、太陽光発電パネル77によって発電されたCC電力を使用して水素を製造したり、燃料として使用される水素を貯蔵したりする選択肢は除外されない。
【0068】
太陽光発電パネル77に加えて、又は太陽光発電パネル77の代わりに、異なる種類のエネルギー収集器を使用して、インバータ85を介して電気エネルギー分配網29に電気的に連結された再生可能な供給源、例えば、風力発電所の風力タービン83からエネルギーを収集することができる。
【0069】
引き続き
図1、
図2、及び
図3を参照すると、天然ガスの液化のためのシステム1の更なる実施形態が
図4に示されている。
図3で使用される同じ参照番号は、
図4のシステム1の同じ部品若しくは同等の部品又は要素を示すものであり、それらについては再度説明しない。
【0070】
図4のシステム1は、主に熱力学システム35に関して、
図3のシステム1とは異なる。
図4の実施形態では、熱力学システム35は、上部熱力学サイクル35A及び下部熱力学サイクル35Bを含み、下部熱力学サイクル35Bは、上部熱力学サイクル35Aからの廃熱を使用する。
【0071】
より具体的には、上部熱力学サイクル35Aは、内燃機関を含むことができる。一実施態様では、上部熱力学サイクル35Aは、空気圧縮機93、動力タービン95、及び燃焼室97から構成されるガスタービン機関91を含む。ガスタービン機関91は、天然ガス供給部3(ダクト99)からの天然ガス、及び/又はBOGダクト59からの天然ガスを燃料とすることができる。ガスタービン機関91は、ガスタービン機関91によって生成された機械的動力を電力に変換するために、発電機33Aに駆動連結されており、この電力は、電気エネルギー分配網29に送達される。
【0072】
廃熱は、廃熱回収ユニット100においてガスタービン機関91の煙道ガスから回収することができる。一実施態様では、廃熱回収ユニット100は、廃熱回収熱交換器101(簡単にWHR熱交換器101と称される)を含む。閉鎖下部熱力学サイクル35Bの作動流体は、ガスタービン機関91からの煙道ガスと熱交換関係でWHR熱交換器101内を循環する。下部熱力学サイクル35Bは、好ましくは有機流体を使用するRankineサイクルとすることができる。加圧された作動流体は、WHR熱交換器101において気化され、場合によっては過熱され、蒸気タービン51において膨張され、凝縮器59において冷却及び凝縮され、タンク60に収集され、ポンプ61によって再度WHR熱交換器101に圧送される。
図3のように、
図4でも、Rankineサイクルは簡略化して示されているが、当業者であれば、実際には、Rankineサイクルは、複数の過熱を含むより複雑なサイクルであってもよく、かつ/又は再生サイクルであってもよいことを理解するであろう。
【0073】
実施形態では、更なる熱出力は、WHR熱交換器101の下流で煙道ガス経路に沿って配置された、廃熱回収ユニット100の補助廃熱回収熱交換器103(補助WHR熱交換器103)において煙道ガスから回収することができる。補助WHR熱交換器103で回収された廃熱は、熱移動回路107を通って熱エネルギー貯蔵システム21に送達される。
【0074】
補助WHR熱交換器101内の廃熱の温度が、熱エネルギー貯蔵システム21に直接移動するには低すぎる場合、当該廃熱は、ヒートポンプ23によって、又は同じ目的のための更なるヒートポンプ(図示せず)によって熱エネルギー貯蔵システム21に圧送することができる。
【0075】
WHR熱交換器101(及び任意選択で補助WHR熱交換器103)からの煙道ガスは、煙道ガスから二酸化炭素を除去するために、スタック105を通って環境中に放出される前に二酸化炭素捕捉設備41で処理され、したがってシステム1の環境への影響を低減することができる。
【0076】
二酸化炭素は、更なる使用のために、炭化水素燃焼によって生成された二酸化炭素を分離及び濃縮することを目的とする任意の好適な燃焼後炭素捕捉システム又は同等のシステムを使用して、二酸化炭素捕捉設備41において捕捉することができる。本開示の実施形態では、熱エネルギー貯蔵システム21からの熱出力を使用して、二酸化炭素捕捉設備41に全体的又は部分的に動力を供給することができる。
図4では、回路43が設けられ、熱移動流体が循環して、熱エネルギー貯蔵システム21から二酸化炭素捕捉設備41に熱を移動させる。
【0077】
二酸化炭素捕捉設備41は、二酸化炭素の後処理及び搬出を含むことができる。二酸化炭素補足設備41から流れる二酸化炭素、及びガス前処理設備5から流れる二酸化炭素は、
図4に概略的に示すように、集められてLNGシステム1の外部に移動させることができる。
【0078】
先に説明した実施形態では、熱力学システム35によって生成された電気エネルギーは、ヒートポンプ21及び天然ガス液化設備7の圧縮装置47の両方を駆動するために使用されるが、他の実施形態では、圧縮装置47は、ガスタービン機関などの内燃機関によって駆動することができ、同じ内燃機関又は追加の内燃機関によって駆動される発電機は、システム1のヒートポンプ23並びに他の補助装置及び設備に動力を供給するために使用することができる。
【0079】
本開示の特徴は、任意の天然ガス液化システムと組み合わせて有益であり得るので、上記の説明では、一般的な天然ガス液化設備7を参照した。
【0080】
引き続き
図1、
図2、
図3、
図4、及び
図5を参照すると、
図6、
図7、
図8、
図9、
図10、
図11、
図12、及び
図13は、様々な閉鎖冷凍回路又は開放冷凍回路を使用する天然ガス液化設備の概略図を示す。これらの天然ガス液化設備の各々は、上述したような廃熱回収装置と組み合わせて使用することができる。これらの回路は、天然ガス液化の当業者に一般に知られており、詳細には説明しない。
【0081】
例として、
図6及び
図7は、単一混合冷媒サイクルの例示的な実施形態を示しており、廃棄された熱エネルギー(熱)Qは、駆動部31によって駆動される圧縮システム9の2つの圧縮機47A、47Bの送達側で収集することができる。
【0082】
図8は、駆動部31A、31B、31Cによって駆動される第1、第2、及び第3の圧縮装置47A、47B、47Cを有する圧縮システム9を含む三重サイクル混合冷媒カスケードシステムを示す。各圧縮装置は、それぞれの冷媒凝縮器13X、13Y、13Zを含み、これらから熱Qが廃棄され、これらから廃棄された熱の少なくとも一部をヒートポンプ23(
図1~
図4)を介して回収することができる。
図8の概略図では、熱は、圧縮装置47Cの2つの連続して配置された段の間でも、中間冷却器13Wを通って廃棄される。中間冷却器13Wにおいて廃棄された熱エネルギーの少なくとも一部は、同様に、ヒートポンプ23を介して回収することができる。
【0083】
図9は、3つの冷凍サイクルを使用するカスケードLNGシステムを示しており、各冷凍サイクルは、異なる冷媒を処理し、各冷凍サイクルは、駆動部31A、31B、31Cによって駆動されるそれぞれの圧縮装置47A、47B、47Cを備える。参照番号13X,13Y,13Zは、それぞれの冷媒凝縮器を表しており、これらから廃棄された熱Qは、ヒートポンプ23を通って回収することができる。
【0084】
図10は、駆動部31Aを有するプロパン圧縮機47A、及び駆動部31Bを有する混合冷媒圧縮機47Bを含むプロパン/混合冷媒LNGシステムを示す。プロパン凝縮器13X及び混合冷媒凝縮器13Yは、ヒートポンプ23を通って部分的に回収することができる熱Qを廃棄する。
【0085】
図11は、追加の冷媒圧縮機47C及びそれぞれの凝縮器13Zを備えた、
図10のサイクルと同様の二重冷媒LNGサイクルを示しており、これらの凝縮器から廃棄された熱Qをヒートポンプ23によって収集することができる。
【0086】
図12は、複数の窒素圧縮機41A、41B、41C、41Dと、それぞれの凝縮器13X、13Y及び中間冷却器13Wとを含む二重窒素LNGサイクルを示しており、これらの凝縮器及び中間冷却器から廃棄された熱Qをヒートポンプ23によって回収することができる。
【0087】
上述の全てのサイクルでは、1つ以上の冷媒が閉回路で処理されるが、同じ液化天然ガスが冷媒として使用される開放冷凍回路を使用するLNGシステムが知られている。ヒートポンプ23を介した廃棄された熱回収は、このような開回路LNGシステムにおいても提供することができる。天然ガス液化のための冷媒としてLNGを使用する例示的な開回路が
図13に概略的に示されている。
図13には、2つの圧縮機47A、47Bと、凝縮器13Yと、中間冷却器13Wとが概略的に示されている。廃棄された熱Qは、凝縮器13Yから、かつ中間冷却器13Wから回収することができる。
【0088】
冷凍回路の冷媒冷却器から廃棄された低温熱エネルギーを回収することに加えて、いくつかの実施形態では、低温熱エネルギーは、システム1の他の低温熱源からも、例えば、前処理セクション5から、そこで実施されるバッチ式再生サイクル中に回収することができる。
【0089】
本発明は、様々な特定の実施形態に関して説明されてきたが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく多くの修正、変更、及び省略が可能であることが、当業者には明らかであろう。加えて、本明細書で別段の指定がない限り、いずれのプロセス又は方法ステップの順序又は配列も、代替的な実施形態に従って変更又は再配列され得る。
【国際調査報告】