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特表2024-500231分析物および無細胞ヘモグロビン濃度に基づく干渉臨界の決定
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-05
(54)【発明の名称】分析物および無細胞ヘモグロビン濃度に基づく干渉臨界の決定
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/72 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
G01N33/72 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538715
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2021086911
(87)【国際公開番号】W WO2022136327
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20216633.6
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】トーゴー,ミケール
(72)【発明者】
【氏名】フリシャウフ,ピーダ
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045DA04
2G045DA42
2G045DA51
2G045DB07
2G045DB09
2G045DB10
2G045DB16
(57)【要約】
分析物および無細胞ヘモグロビンを含む液体試料(102)中の分析物濃度を自動的に測定するため、ならびに無細胞ヘモグロビン干渉臨界を自動的に決定するための装置(100)が提示され、上記装置は、液体試料中の分析物濃度および液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度を測定するための1つまたは複数のセンサ(104)を備え、また、プロセッサを備えるデータ処理デバイス(106)をさらに備え、データ処理デバイス(106)は、無細胞ヘモグロビン濃度および分析物濃度に基づいて、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定し、少なくとも無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内である場合、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号(108)を出力するように構成される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物および無細胞ヘモグロビンを含む液体試料(102)中の分析物濃度を自動的に測定するための、ならびに無細胞ヘモグロビン干渉臨界を自動的に決定するための装置(100)であって、前記装置は、
1つまたは複数のセンサ(104)であって、
前記液体試料中の前記分析物濃度、および
前記液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度
を測定するための、1つまたは複数のセンサ(104)と、
プロセッサを備えるデータ処理デバイス(106)であって、
前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を、
前記無細胞ヘモグロビン濃度、および
前記分析物濃度
に基づいて決定し、
少なくとも前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号(108)を出力するように構成される、データ処理デバイス(106)と
を備える、装置(100)。
【請求項2】
試料入口、例えば単一の試料入口において、赤血球を含む全血試料の形態にある前記液体試料を受容するために、および前記赤血球を含む、またはこれと液体接続状態にある前記液体試料の少なくとも一部分において、少なくとも前記無細胞ヘモグロビン濃度を測定するために配置される、請求項1に記載の装置(100)。
【請求項3】
前記無細胞ヘモグロビン濃度が測定された前記液体試料の少なくとも同じ部分において、および/または前記無細胞ヘモグロビン濃度が測定された前記液体試料の少なくとも前記部分と液体接続状態にある試料の一部分において、少なくとも前記分析物濃度を測定するためにさらに配置される、請求項1または2に記載の装置(100)。
【請求項4】
前記液体試料中の前記分析物濃度および前記液体試料中の前記無細胞ヘモグロビン濃度を、互いから1m未満、例えば75cm未満、例えば50cm未満、例えば25cm未満、例えば10cm未満、例えば1cm未満の空間位置において測定するために配置され、例えば、前記装置の最大寸法は、2m未満、例えば1m以下、例えば75cm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項5】
第1の時間点t1で、赤血球を含む全血試料の形態にある前記液体試料を試料入口において受容するため、および少なくとも前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、第2の時間点t2で、前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号(108)を出力するように配置され、前記第1の時間点と前記第2の時間点との間の時間期間は、10分以下、例えば5分以下、例えば2分以下、例えば1分以下、例えば45秒以下、例えば35秒以下、例えば30秒以下、例えば10秒以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項6】
多孔性鏡などの多孔性要素をさらに備え、多孔性要素の1つまたは複数の孔内に位置付けられる前記液体試料の一部分において、少なくとも前記無細胞ヘモグロビン濃度を測定するために配置される、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項7】
前記分析物濃度は、カリウムイオンの濃度である、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項8】
前記データ処理デバイス(106)は、
前記分析物濃度に基づいて無細胞ヘモグロビン干渉しきい値を決定すること、
前記無細胞ヘモグロビン濃度に基づいて無細胞ヘモグロビン干渉値を決定すること、
前記無細胞ヘモグロビン干渉値を、前記無細胞ヘモグロビン干渉しきい値と比較すること、および
前記比較の結果に基づいて前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定すること
によって、前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するように構成される、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項9】
分析物濃度に基づいた前記無細胞ヘモグロビン干渉しきい値は、絶対値であり、例えば、前記分析物濃度の関数として前記無細胞ヘモグロビン干渉しきい値を説明する関数は、非線形である、請求項8に記載の装置(100)。
【請求項10】
分析物濃度に基づいた前記無細胞ヘモグロビン干渉しきい値は、前記分析物濃度に相対的である相対値であり、例えば、前記分析物濃度の関数として前記無細胞ヘモグロビン干渉しきい値を説明する関数は、非線形など、非定常である、請求項8に記載の装置(100)。
【請求項11】
前記データ処理デバイス(106)は、
前記分析物濃度に基づいて無細胞ヘモグロビン濃度しきい値を決定すること、
前記無細胞ヘモグロビン濃度または前記無細胞ヘモグロビン濃度に基づいたパラメータを、前記無細胞ヘモグロビン濃度しきい値と比較すること、および
前記比較の結果に基づいて前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定すること
によって、前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するように構成される、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項12】
前記分析物濃度に基づいた無細胞ヘモグロビン濃度しきい値は、絶対値であり、例えば、前記分析物濃度の関数として前記無細胞ヘモグロビン濃度しきい値を説明する関数は、非線形である、請求項11に記載の装置(100)。
【請求項13】
前記分析物濃度に基づいた無細胞ヘモグロビン濃度しきい値は、前記分析物濃度に相対的である相対値であり、例えば、前記分析物濃度の関数として前記無細胞ヘモグロビン濃度しきい値を説明する関数は、非線形など、非定常である、請求項11に記載の装置(100)。
【請求項14】
前記無細胞ヘモグロビンしきい値は、前記分析物濃度の関数であり、前記関数は、少なくとも1つの分析物濃度間隔内で、分析物濃度が増加するにつれて数値的に変化する、例えば、ゼロよりも大きい範囲を有する少なくとも1つの分析物濃度間隔内で厳密に増加する、関数の結果など、分析物濃度が増加するにつれて増加する、または分析物濃度が増加するにつれて減少するなど、分析物濃度に対して非定常である、請求項11に記載の装置(100)。
【請求項15】
前記無細胞ヘモグロビンしきい値は、前記分析物濃度の関数であり、前記関数は、少なくとも1つの分析物濃度間隔内で、分析物濃度が増加するにつれて数値的に変化する、例えば、ゼロよりも大きい範囲を有する少なくとも1つの分析物濃度間隔内で厳密に増加する、関数の結果など、分析物濃度が増加するにつれて増加する、または分析物濃度が増加するにつれて減少するなど、分析物濃度に対して非線形である、請求項11~14のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項16】
前記データ処理デバイス(106)は、ストレージデバイス(110)に動作可能に接続され、前記ストレージデバイスは、
既定のカテゴリ化スキームを備え、例えば、前記既定のカテゴリ化スキームは、分析物濃度に基づいて液体試料をカテゴリ化することを可能にし、
前記データ処理デバイス(106)は、
前記分析物濃度を、測定した特定の臨床像に帰するなど、前記分析物濃度に基づいて前記液体試料の測定されたカテゴリを決定すること、
調節した分析物濃度など、調節した濃度を決定することであって、前記調節した濃度は、前記無細胞ヘモグロビンの干渉効果に対して調節される、前記測定した分析物濃度など、前記分析物濃度に基づき、前記無細胞ヘモグロビンの前記干渉効果は、前記無細胞ヘモグロビン濃度に基づく、調節した濃度を決定すること、
前記分析物濃度を、調節した特定の臨床像に帰するなど、前記調節した濃度に基づいて前記液体試料の調節したカテゴリを決定すること、および
前記測定したカテゴリと前記調節したカテゴリとの差の度合いに基づいて前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定すること
によって、前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するように構成される、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項17】
前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、低いか、高いかのいずれかであり、前記既定のカテゴリ化スキームは、1次元であり、少なくとも3つのカテゴリを含み、前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、
前記測定したカテゴリおよび前記調節したカテゴリが、同一であるか、前記既定のカテゴリ化スキーム内で隣接している場合、低く、
前記測定したカテゴリおよび前記調節したカテゴリが、前記既定のカテゴリ化スキーム内で少なくとも1つのカテゴリによって分離されていない場合、高い、請求項16に記載の装置(100)。
【請求項18】
前記分析物濃度は、
カリウムイオン、
ナトリウムイオン、
カルシウムイオン、
塩素イオン、
クレアチニン、および
乳酸
からなる群から選択される分析物の濃度である、請求項1~17のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項19】
前記分析物濃度は、分析物の複数の分析物濃度であり、前記分析物のうちの少なくとも2つについて、
前記データ処理デバイス(106)は、
前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を、
前記無細胞ヘモグロビン濃度、および
前記分析物濃度
に基づいて決定し、
少なくとも前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号(108)を出力するように構成され、
前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界と分析物濃度との関係性は、少なくとも2つの分析物について固有など、分析物ごとに異なる、請求項1~18のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項20】
ユーザ入力を受信するために配置されるユーザインターフェース(112)をさらに備え、
前記データ処理デバイスは、
前記ユーザ入力に基づいて前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するように構成される、請求項1~19のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項21】
少なくとも1つの第1の分析物濃度について、無細胞ヘモグロビン干渉臨界における第1の変化は、第1の無細胞ヘモグロビン濃度において無細胞ヘモグロビン濃度が増加するにつれて変化し、
少なくとも1つの第2の分析物濃度について、無細胞ヘモグロビン干渉臨界における第2の変化は、第2の無細胞ヘモグロビン濃度において無細胞ヘモグロビン濃度が増加するにつれて変化し、
前記第1の変化および前記第2の変化が各々、無細胞ヘモグロビンしきい値を超えることに相当するなど、前記第1の変化は、前記第2の変化と実質的に同一、または同一であり、
前記第1の分析物濃度は、前記第2の分析物濃度より小さく、
前記第1の無細胞ヘモグロビン濃度は、前記第2の無細胞ヘモグロビン濃度より小さい、または大きいなど、前記第2の無細胞ヘモグロビン濃度とは異なる、請求項1~20のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項22】
例えば血液ガス分析器である、前記装置は、以下:
二酸化炭素、例えばCO
酸素、例えばO、および
pH
のうちの1つまたは複数またはすべての液体試料中の濃度を測定するためにさらに配置される、請求項1~21のいずれか一項に記載の装置(100)。
【請求項23】
分析物および無細胞ヘモグロビンを含む液体試料(102)中の分析物濃度を自動的に測定するための、ならびに無細胞ヘモグロビン干渉臨界を自動的に決定するための方法(700)であって、
a.前記液体試料中の前記分析物濃度を測定するステップ(720)と、
b.前記液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度を測定するステップ(722)と、
c.プロセッサを備えるデータ処理デバイス(106)に、
前記分析物濃度、
前記無細胞ヘモグロビン濃度
を提供するステップと、
d.前記データ処理デバイスを用いて、
前記無細胞ヘモグロビン濃度、および
前記分析物濃度
に基づいて、前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を自動的に決定するステップ(724)と、
e.少なくとも前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号を前記データ処理デバイスから出力するステップ(726)と
を含む方法(700)。
【請求項24】
前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界の決定は、
既定のカテゴリ化スキームにさらに基づき、例えば、前記既定のカテゴリ化スキームは、分析物濃度に基づいて液体試料をカテゴリ化することを可能にし、
前記方法は、
前記分析物濃度を、測定した特定の臨床像に帰するなど、前記分析物濃度に基づいて前記液体試料の測定されたカテゴリを決定すること、
調節した分析物濃度など、調節した濃度を決定することであって、前記調節した濃度は、前記無細胞ヘモグロビンの干渉効果に対して調節される、前記測定した分析物濃度など、前記分析物濃度に基づき、前記無細胞ヘモグロビンの前記干渉効果は、前記無細胞ヘモグロビン濃度に基づく、調節した濃度を決定すること、
前記分析物濃度を、調節した特定の臨床像に帰するなど、前記調節した濃度に基づいて前記液体試料の調節したカテゴリを決定すること、および
前記測定したカテゴリと前記調節したカテゴリとの差の度合いに基づいて無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定すること
によって、前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するステップを含む、請求項23に記載の方法(700)。
【請求項25】
前記液体試料(102)は、少なくとも部分的に、例えば部分的または全体的に、
赤血球などの細胞を含む試料、
赤血球などの細胞を含む試料から導出される試料、
ヒト全血試料などの全血試料、または
希釈全血試料である、および/もしくはヒト全血試料の分画であるなど、血清もしくは血漿などの全血試料から導出される、例えば、ヒト全血試料から導出される、試料である、請求項23または24に記載の方法(600)。
【請求項26】
コンピュータプログラム製品などのコンピュータプログラムであって、コンピュータによって実行されるとき、
分析物濃度に基づいた第1の情報を受信すること、
無細胞ヘモグロビン濃度に基づいた第2の情報を受信すること、
無細胞ヘモグロビン干渉臨界を、
前記無細胞ヘモグロビン濃度、および
前記分析物濃度
に基づいて決定すること、ならびに
少なくとも前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、前記無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号を出力すること(726)
を、コンピュータに行わせる命令を含む、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体試料中の分析物濃度を自動的に測定するための装置、およびより詳細には、液体試料中の分析物濃度を自動的に測定し、干渉物質の臨界を決定するための装置に関し、またさらには、対応する方法およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
液体試料中の分析物の濃度を決定することは、多数の用途、例えば、血液試料の診断試験、訓練状況もしくは栄養価を示すパラメータについて血液試料から情報を得ること、および/または、アルコール、麻薬、もしくはパフォーマンス強化薬など、血液試料中の特定の物質について試験することにおいて関連性がある。しかしながら、試料中の測定された分析物濃度は、真の濃度から逸脱する場合があり、真の濃度とは、被検者(試料が採取された人など)内の上記分析物の濃度であると理解され得る。例えば、干渉物質として知られる特定の物質が、分析物の濃度の測定に干渉する場合があり、分析物の濃度の、おそらくは著しいレベルにさえ至る、誤った測定につながる。結果として、干渉は、分析物の濃度の測定の誤った結果をもたらし得、および/またはリソースを要求する再試験を必要不可欠にし得る。別の例として、溶血は、血液試料の赤血球から血漿相へ細胞間成分(被検者の血液中の濃度を目的とする分析物と同一の成分など)を放出し、このことは、試料内の測定された濃度が被検者内の真の濃度から逸脱するという意味で、例えば、血液試料中のいくつかの分析物の濃度の測定と干渉し得る。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施形態の目的は、無細胞ヘモグロビンを含む液体試料中の分析物濃度を自動的に測定するための改善された装置、方法、およびコンピュータプログラム製品を提供すること、ならびに特に、分析物の濃度の測定の誤った結果の悪影響を軽減もしくは除去し得る、および/または再試験の必要性を少なくとも部分的に不必要にし得る、無細胞ヘモグロビンを含む液体試料中の分析物濃度を自動的に測定するための装置、方法、およびコンピュータプログラム製品を提供することである。
【0004】
第1の態様によると、本発明は、分析物および無細胞ヘモグロビンを含む液体試料中の分析物濃度を自動的に測定するための、ならびに無細胞ヘモグロビン干渉臨界を自動的に決定するための装置を提供し、上記装置は、
1つまたは複数のセンサであって、
液体試料中の分析物濃度、および
液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度
を測定するための、1つまたは複数のセンサと、
プロセッサを備えるデータ処理デバイスであって、
無細胞ヘモグロビン干渉臨界を、
無細胞ヘモグロビン濃度、および
分析物濃度
に基づいて決定し、
少なくとも無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号を出力するように構成される、データ処理デバイスと
を備える。
【0005】
本発明の考えられる利点は、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を無細胞ヘモグロビン濃度および分析物濃度の両方に基づくことによって、データ処理デバイスが、無細胞ヘモグロビン干渉臨界の決定において既定の命令(無細胞ヘモグロビン干渉臨界と分析物濃度との非定常、例えば非線形の関係性を必然的に伴う既定の命令など)を考慮することができ、これにより、無細胞ヘモグロビン干渉臨界の適用性を改善することを可能にすることである。
【0006】
例えば、本発明は、無細胞ヘモグロビン干渉臨界が無細胞ヘモグロビン濃度および分析物濃度のいずれかのみに依存した場合、様々なシナリオにおいて、高すぎる無細胞ヘモグロビン干渉臨界および低すぎる無細胞ヘモグロビン干渉臨界の両方をもたらし得るなかで、いずれかのみに依存しないことを可能にする。無細胞ヘモグロビン干渉臨界が無細胞ヘモグロビン濃度および分析物濃度の一方のみに依存する場合、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、他方の濃度のいくつかの値については高すぎ、他方の濃度の他の値については低すぎる場合がある。故に、高すぎる無細胞ヘモグロビン干渉臨界値の多すぎるケースと低すぎる無細胞ヘモグロビン干渉臨界値の多すぎるケースとを有することの間で妥協がなされなければならなかった。本発明により、無細胞ヘモグロビン干渉臨界の決定は、分析物濃度および無細胞ヘモグロビン濃度の任意の対または値に対して改善または最適化され得る。
【0007】
本発明は、高速の、あらかじめ定められた、系統的な、および/もしくはエラーのない様式で、ならびに/または専門家スキルを必要としない様式(例えば、ポイントオブケアの文脈において、特に関連性があり得る)で上記決定を支援することなど、例えば、分析物のある特定の測定した濃度に対してどのように反応するか、についての決定に対する支援として有利であり得る。
【0008】
‘液体試料中の分析物濃度を自動的に測定するための装置’とは、液体中、例えば、液体試料中の分析物濃度を自動的に-例えば、液体試料を装置に提供した後に人間の介入を必要とすることなく-測定することができる任意の装置、例えば、液体および/または液体中の分析物の光学的、電気的、および/または他の性質をプローブし、分析物濃度に関する情報を導出することができる装置と理解され得る。
【0009】
‘分析物’とは、任意のエンティティ、物質、または組成物と理解され、特に、原子、イオン、および/または分子であり得る。‘分析物’は、分析物の群、またはエンティティ、物質、もしくは組成物の群、例えば、化学的性質または構造学的もしくは物理的性質など、1つもしくは複数の性質を共有するエンティティ、物質、もしくは組成物の群を包含することが理解される。
【0010】
‘無細胞ヘモグロビン’(cfHb)は、当該技術分野において共通であるように、および特に、赤血球の外側のヘモグロビンとして理解される。
無細胞ヘモグロビン(裸ヘモグロビンとも呼ばれる)は、赤血球に封入されていないヘモグロビンである。無細胞ヘモグロビンは、赤血球(red bloodcell/erythrocyte)の破裂(溶解)およびそれらの内容物(細胞質)の周囲の液体(例えば、血漿)内への放出である溶血の結果として、血漿内へ放出され得る。溶血は、インビボまたはインビトロ(身体の内側または外側)で発生し得る。
【0011】
‘無細胞ヘモグロビン干渉’とは、液体試料中の無細胞ヘモグロビンが、分析物の濃度における相対または絶対変化(例えば、分析物濃度と同じ単位または1単位当たりの数量を用いる)など、分析物の測定した濃度を有する、もしくは有し得る、もしくはこれを表し得る、もしくは表す、効果もしくは影響(濃度における変化は、測定した濃度-干渉の影響を受けている-と、任意選択的に干渉からの推定寄与を推測することによって獲得される、真の濃度または真の濃度の推定値との差として得られ得る)、ならびに/または、液体試料中の無細胞ヘモグロビンが、別の高需要濃度、例えば、それ以前(患者内および/またはエクスビボ/インビトロ溶血前など)の試料の濃度に対して示す効果もしくは影響と理解される。干渉物質の効果は、センサが分析物と干渉物質とを識別することができないこと、ならびに故に、センサが干渉物質からの測定した寄与を誤って分析物のものと見なし、および故に、濃度を、干渉および真の分析物濃度に基づくのではなく、真の分析物濃度のみに基づいて提供することが原因であり得る。しかしながら、干渉物質の効果はまた、干渉物質が分析物の干渉量に(相同的に)結合されることが原因であり得る(故に、干渉物質は、液体試料中に存在するが、それにもかかわらず、真の分析物濃度を推定する目的のために無視されるべきであるが、センサは、干渉物質を自然な理由で考慮する)。例えば、血液試料中で決定されるべき分析物濃度(カリウムイオン濃度など)は、インビボ分析物濃度(すなわち、例えば、血液試料が採取される人における分析物濃度)であるが、無細胞ヘモグロビンは、血液試料の引き出し後に血液試料内に放出される分析物(カリウムイオンなど)の量と(相同的に)結合され得、故に、血液試料中のカリウムイオンの測定した(および実際の、実)濃度は、真のインビボ分析物濃度(カリウムイオンの)を過大評価することになる。
【0012】
‘干渉’は、故に、限定されるものではないが、1つのエンティティが別のエンティティの濃度の測定と干渉することも、1つのエンティティが別のエンティティの濃度の変化を、そのような他のエンティティの以前の(高需要)濃度に対して表すことも包含しないことなど、当該技術分野において共通であるように理解される。
【0013】
実施形態(分析物がカリウムイオンである実施形態など)において、‘干渉’は、1つのエンティティが別のエンティティの濃度の変化を、そのような他のエンティティの以前の(高需要)濃度に対して表すことに関連すると理解される。例えば、これらの実施形態において、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、例えば、‘無細胞ヘモグロビン相同(効果)臨界’と交換され得る。
【0014】
ヘモグロビンを周囲の液体へ放出すること以外に、溶血は、追加的に、分析物などの他の物質を放出し得る。故に、溶血が体外で起こる場合、そのような物質(複数可)(分析物(複数可))の濃度の測定は、試料が元々採取された人(患者)内の濃度の真の値を表さない場合がある。
【0015】
本出願全体を通して、この効果は、簡便性のため、干渉と称される。しかしながら、完全性のため、本発明の実施形態によると、‘干渉’は、ヘモグロビンが分析物の真の濃度の測定を邪魔する(これと干渉する)ようなものではないことが理由で、試料の測定した濃度が干渉に起因して試料中の分析物の真の濃度に対して誤っているという意味では、干渉ではなく、それは、真の試料濃度が真の患者濃度に対して(おそらくは)異なることを単に示す、ということに留意されたい。この理由から、本出願における、および本出願の全体を通して(本段落を除く)‘干渉(臨界)’の使用は、それらの実施形態(例えば、カリウムに対する無細胞ヘモグロビンの‘干渉’について)の文脈においては、試料中の測定した分析物濃度が真の試料濃度から必ずしも逸脱しないが、相同(以下にさらに詳細に説明される)に起因して、試料中の測定した分析物濃度が真の患者濃度から逸脱し得ることを示すことを視野に入れて、‘無細胞ヘモグロビン相同効果(臨界)’などの‘相同効果(臨界)’と交換され得る。
【0016】
‘無細胞ヘモグロビン干渉臨界’とは、無細胞ヘモグロビン干渉が、液体試料中の真の値、もしくはかく乱前の液体試料の真の値(例えば、試料が採取される、または由来する患者における)など、真の分析物濃度を(測定した分析物濃度に基づいて)推定するため、ならびに/または分析物濃度の意義のある使用もしくは解釈を可能にするために重大である、例えば、パラメータ(罹患率または死亡率など)を推定するために分析物濃度を使用することに関して重大である、程度の尺度と理解される。例えば、既定の命令は、推定した無細胞ヘモグロビン干渉と分析物濃度との比または比較に基づいて無細胞ヘモグロビン干渉臨界を評価するように設定され得(例えば、無細胞ヘモグロビン干渉しきい値は、分析物濃度のパーセンテージとして表現され得る)、例えば、低い分析物濃度は、高い無細胞ヘモグロビン濃度をもたらす一方、高い分析物濃度は、低い無細胞ヘモグロビン干渉臨界をもたらす。代替的に、例えば、おそらくはより高度な既定の命令によると、既定の命令は、無細胞ヘモグロビン干渉臨界が、パラメータに対する無細胞ヘモグロビン干渉の影響が特定の影響値を下回る場合、専ら‘低い’(およびさもなければ、すなわち、上記影響が上記影響値に等しいか、これを上回る場合、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、専ら‘高い’)ことを要求し得、これは、無細胞ヘモグロビン干渉臨界が(推定した)無細胞ヘモグロビン干渉あり、および、なしでのパラメータにおける差に依存することを必然的に伴う。
【0017】
無細胞ヘモグロビン干渉しきい値は、分析物濃度の分画またはパーセンテージとして表現され得、分析物濃度に対して、非線形または線形、例えば一定または非定常、例えば正比例またはオフセットであり得る。
【0018】
代替的に、無細胞ヘモグロビン干渉しきい値は、絶対的に表現され得、分析物濃度に対して、非線形または線形、例えば一定または非定常、例えば正比例またはオフセットであり得る。
【0019】
パラメータと分析物濃度との(関数)関係は、非線形など、非定常であり得る。
‘非線形’とは、本出願の文脈においては、概して、aが定数である、y=axの形式で表すことができない、例えば、aおよびbが定数である、y=ax+bの形式で表現することができない、xおよびyなどのエンティティ間の関係と理解される。例えば、yは、無細胞ヘモグロビン干渉しきい値(無細胞ヘモグロビン干渉臨界を評価する目的で無細胞ヘモグロビン干渉との比較のための)であり得、xは、分析物濃度であり得る。
【0020】
無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、例えば、ただ2つのみの相互排他的なカテゴリ(または可能性のある結果値)、例えば、‘高’および‘低’、‘0’および‘1’、または‘公開’(例えば、臨床診断のために分析物濃度を公開せよとの命令を提供すること)もしくは‘再試験’(無細胞ヘモグロビン干渉が高すぎることと関連付けられたリスクに起因して再試験をせよという命令など)を有する試料空間を提供する、2値など、定性的であり得る。
【0021】
代替的に、無細胞ヘモグロビン試料空間は、序数型測定スケール(この場合測定は、増加した無細胞ヘモグロビン干渉臨界と関連付けられたランク付けされた群、例えば、3つ、または4つ、または5つ、またはそれ以上の群(または結果値)へと分類され得る)、または、数値スコアを前提とするなど、無細胞ヘモグロビン干渉臨界が定量化され得る時間隔または比率型測定尺度に従うものであり得、例えば、上記数値スコアは、測定した濃度(および任意選択的に、既定の命令に従うさらなる値)に基づいて客観的に計算される。例えば、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、ある間隔以内、例えば[0;100]、の(例えば、任意の)実数または整数として表現され得、低い方の数字が低い方の臨界を示し、数字がますます高くなるほど臨界が増加することを示す。
【0022】
‘無細胞ヘモグロビン干渉臨界’は、既定の命令に従って、ならびに分析物濃度および無細胞ヘモグロビン濃度に基づいて決定される‘臨界尺度’または‘分析物特異の臨界尺度’または‘意思決定支援尺度’または‘意思決定判定尺度’などの尺度と交換可能と理解されるべきである。
【0023】
既定の命令は、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を無細胞ヘモグロビン濃度および分析物濃度に基づいてどのように決定すべきかを決定する情報を含み得る。
データ処理デバイスは、既定の命令を含むか、またはこれへのアクセスを有し(例えば、データ処理デバイス内に動作可能に含まれる、および/またはプロセッサに接続されるデジタルストレージデバイスを介して)、例えば、データ処理デバイスが入力として無細胞ヘモグロビン濃度および分析物濃度を取り込み、既定の命令に従って無細胞ヘモグロビン濃度および分析物濃度に基づいて無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定することを可能にする。代替的に、既定の命令は、アルゴリズムまたはルックアップテーブルとして、またはこれに基づいて、実装され得る。既定の命令は、例えば、分析物濃度に依存する無細胞ヘモグロビンしきい値として実装され得、例えば、上記しきい値は、分析物濃度の関数として実装され、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、2値様式で、測定した無細胞ヘモグロビンが上記しきい値を超えるかどうかに依存する。代替的に、既定の命令は、入力として分析物濃度および無細胞ヘモグロビン濃度を取り込み、実数として無細胞ヘモグロビン干渉臨界を出力する(考えられる結果数を有する試料空間は、少なくとも3、例えば少なくとも10、例えば少なくとも100、例えば少なくとも1000である)アルゴリズムまたはルックアップテーブルとして実装され得る。
【0024】
既定の命令は、無細胞ヘモグロビン干渉臨界と(測定した)分析物濃度および(測定した)無細胞ヘモグロビン濃度の両方との関係性が、非線形など、非定常であるように設定され得る。既定の命令は、無細胞ヘモグロビン干渉臨界cfHbicが、分析物濃度cAおよび無細胞ヘモグロビン濃度ccfHbに依存する関数cfHbic=f(cA,ccfHb)によって得られる、またはこれによって説明され得るように設定され得、上記関数f(cA,ccfHb)の上記の1つまたは複数の輪郭線は、非線形である。
【0025】
既定の命令は、パラメータに対する分析物濃度の特定のカテゴリ化またはパラメータ化および1つまたは複数の規則を反映し得るか、またはこれを組み込み得、これに基づいて無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定する。例えば、既定の命令は、数パラメータカテゴリ、例えば、パラメータ値{1,・・・,N}に従うN個のカテゴリへの分析物濃度のカテゴリ化に基づき得、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するための規則は、例えば、無細胞ヘモグロビン干渉の効果が推定され、また真の分析物濃度の推定が、測定した分析物濃度および推定した無細胞ヘモグロビン干渉に基づく、液体試料に対する測定など、真の分析物濃度に基づいたカテゴリ化と比較して、推定した無細胞ヘモグロビン干渉が、液体試料に対する測定に直接的に基づくカテゴリ化を少なくとも2つのカテゴリだけ変化させ得る場合に、無細胞ヘモグロビン干渉臨界が高いことを述べ得る。
【0026】
カテゴリ化またはパラメータ化は、罹患率および/または死亡率に従ってランク付けされるカテゴリへのカテゴリ化など、臨床的評価に従うものであり得る。規則(これに基づいた命令の基礎となる)は、特定の測定した分析物濃度および特定の無細胞ヘモグロビン濃度に基づいて、特に、誤ったカテゴリ化のリスクを増加させる方向における誤診断(誤ったカテゴリ化が、例えば、罹患率および/または死亡率を実際よりも低いものとして誤って示す、特に関連性のあるケースなど)など、誤診断のリスクを低減する役割を果たし得る。
【0027】
‘無細胞ヘモグロビン干渉臨界を自動的に決定すること’とは、本装置が、液体試料中の分析物濃度および無細胞ヘモグロビン濃度を自動的に-例えば、液体試料を装置に提供した後に人間の介入なしに-測定し、分析物濃度および無細胞ヘモグロビン濃度を入力として取り込み(およびおそらくは、既定の命令など、他の情報を入力として有する、これにアクセスする、または別途これを取り込む)、出力として無細胞ヘモグロビン干渉臨界を提供することができる装置と理解される。
【0028】
‘センサ’は、当該技術分野において共通であるように理解され、例えば、電位差滴定センサなど、イオン選択性電気化学センサであり得る。
‘濃度を測定すること’とは、モル濃度を測定することなど、濃度を定量的に測定することと理解されるべきである。
【0029】
‘データ処理デバイス’は、当該技術分野において共通であるように、ならびに特に、デジタル情報を受信、処理、および出力することができる任意のデバイスとして理解される。
【0030】
‘プロセッサ’は、当該技術分野において共通であるように、および特に、コンピュータプログラム、例えば、中央処理装置(CPU)などの処理装置を構成する命令を実行することができる電子回路と、理解される。
【0031】
無細胞ヘモグロビン干渉臨界を無細胞ヘモグロビン濃度および分析物濃度に基づいて決定するように配置されるデータ処理デバイスを有することによって、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、2つの濃度のうちのいずれかの値における変化を伴って、少なくとも他方の濃度の1つまたは複数の値について、値を変化させ得ることが理解される。
【0032】
‘信号を出力する’は、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示すデータ処理デバイス情報を外部から提供することなど、当該技術分野において共通であるように理解される。出力および信号の形式は、例えば、デジタルまたはアナログ信号として、異なる形態をとり得る。例えば、信号の出力は、定量的または定性的形式で無細胞ヘモグロビン干渉臨界を表すデジタル情報であり得る。別の例において、信号の出力は、視覚および/または可聴信号である。
【0033】
‘少なくとも無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内である場合に’信号を出力することとは、信号が、いくつかの実施形態においては、無細胞ヘモグロビン干渉臨界の値にかかわらず出力され得ると理解され得る。他の実施形態において、信号は、無細胞干渉臨界が既定の範囲内、例えば‘高’または‘50超’、代替的に‘低’または‘50以下’である場合にのみ出力される。故に、信号が、無細胞ヘモグロビン干渉臨界の値にかかわらず出力されること、信号が、特定のカットオフ値を上回る無細胞ヘモグロビン臨界についてのみ出力されること(例えば、無細胞ヘモグロビン臨界が高い場合に、ユーザに単に伝える、またはフラグを立てる、または再試験をすることを提案する)、または、信号が、特定のカットオフ値を下回る無細胞ヘモグロビン臨界についてのみ出力されること(例えば、無細胞ヘモグロビン臨界が低い場合にユーザに単に伝える)が包含される。
【0034】
測定した分析物濃度を使用(公開)するべきか否か、またはそれを使用しない(および代わりに再試験する)ことについての決定(支援)または提案(測定した濃度に基づく)は、例えば一元的に、例えば、正しい決定を行うのにおそらくは非常に少ない時間しか有さずにおそらくは資格の上で劣った人材に依拠するのではなく、十分な時間を用いて資格のある人材によって、効果的に決定され得る/あらかじめ講じられ得る。
【0035】
一実施形態において、試料入口、例えば単一の試料入口において、赤血球を含む全血試料の形態にある液体試料を受容するために、および赤血球を含む、またはこれと液体接続状態にある液体試料の少なくとも一部分において、少なくとも無細胞ヘモグロビン濃度を測定するために配置される、装置が提示される。例えば、本装置は、全血試料を受容するため、およびその試料を、分析物濃度および無細胞ヘモグロビン濃度の両方を測定するための測定設定(複数可)/センサ(複数可)へと(微小)流体的にハンドリングするために配置される、試料入口、例えば排他的に単一の試料入口を備え、例えば、両方の濃度は、液体試料の同じ(部分)に対して決定され、すなわち、液体試料中の分析物濃度が決定される部分は、無細胞ヘモグロビン濃度が決定される部分と同一であるか、またはこれと流体接続状態にある。これの利点は、単一の液体試料のみが必要とされること、および/または単一の試料入口のみが必要とされることであり得る。さらには、試料が、流体接続状態にない別個の部分へ分けられる必要がないことは有利であり得、このことは、空間および時間の両方における要件を低減することに有益であり得、例えば、互いと流体接続状態にない試料の部分を遠ざける必要がない、および/または試料の異なる部分の(液体)分離に時間を費やす必要がない。さらには、(微小)流体ハンドリングなどの装置が、より単純にされ得る。1つの実施形態において、赤血球が液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度の測定に影響を及ぼす問題は、多孔性要素の孔内に、例えば拡散および/または毛細管力によって、位置付けられる試料の一部分を測定することによって解決される。
【0036】
一実施形態において、無細胞ヘモグロビン濃度が測定された液体試料の少なくとも同じ部分において、および/または無細胞ヘモグロビン濃度が測定された液体試料の少なくとも部分と液体接続状態にある試料の一部分において、少なくとも分析物濃度を測定するためにさらに配置される、装置が提示される。これは、複雑性、ならびに空間および時間に関する要件(上の記載を参照)を低減するのに有利であり得る。
【0037】
一実施形態において、液体試料中の分析物濃度および液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度を、互いから1m未満、例えば75cm未満、例えば50cm未満、例えば25cm未満、例えば10cm未満、例えば1cm未満の空間位置において測定するために配置される装置であって、例えば、装置の最大寸法は、2m以下、例えば1m以下、例えば75cm以下である、装置が提示される。これの利点は、比較的小さい装置が、そうでなければ非現実的な用途、例えば、ポイントオブケア(POC)用途、および/または、装置が、例えば、急に、もしくは測定の間に一人の人間によって、動かされることになる用途を可能にし得ることである。比較的小さいサイズは、装置(複数可)を患者のより近くに提供することを可能にし得、このことが、時間、および一般に、患者から採取される血液試料が装置に提供され測定に供される前の試料に対する影響を低減することを可能にし得、このことが、より精密な結果を可能にし得る(例えば、血液試料が真の値から離れる方へあまり変化しなかったため)。
【0038】
一実施形態において、第1の時間点t1で、赤血球を含む全血試料の形態にある液体試料を試料入口において受容するために、および少なくとも無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、第2の時間点t2で、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号を出力するように配置される装置であって、第1の時間点と第2の時間点との間の時間期間は、10分以下、例えば5分以下、例えば2分以下、例えば1分以下、例えば45秒以下、例えば35秒以下、例えば30秒以下、例えば10秒である、装置が提示される。これの利点は、本装置が貴重な時間を節約することを可能にすることであり得る。別の考えられる利点は、時間、および故に一般に、血液試料が測定に供される前に、患者から採取される試料に対する影響、を低減することが、より精密な結果を可能にし得ることである(例えば、血液試料、例えばその測定可能な値が、真の値に対してあまり変化しなかったため)。
【0039】
一実施形態において、多孔性鏡などの多孔性要素をさらに備え、多孔性要素の1つまたは複数の孔内に位置付けられる液体試料の一部分において少なくとも無細胞ヘモグロビン濃度を測定するために配置される、装置が提示される。
【0040】
一実施形態によると、本装置は、液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度を測定するために配置される、例えば多孔性鏡(PM)を備える、光学測定設定、および/または、分析物濃度を測定するための、電気分析測定設定、例えばイオン選択電極センサ、例えばイオン選択電極膜センサを備える(分析物濃度は、一般に、細胞外相内の分析物濃度であると理解され得る)。
【0041】
一実施形態において、分析物濃度は、Kイオンなど、カリウムイオンの濃度である。例えば、血液試料において、既定の範囲からの逸脱は、著しい罹患率および死亡率と関連付けられ得、故に、カリウムイオンの濃度、およびさらには無細胞ヘモグロビン干渉リスク臨界を獲得して、例えば、測定したカリウムイオン濃度に対してどのように反応すべきかに関する決定を支援することが有利であり得る。
【0042】
一実施形態において、装置であって、データ処理デバイスは、
分析物濃度に基づいて無細胞ヘモグロビン干渉しきい値を決定すること、
無細胞ヘモグロビン濃度に基づいて無細胞ヘモグロビン干渉値を決定すること、
無細胞ヘモグロビン干渉値を、無細胞ヘモグロビン干渉しきい値と比較すること、
比較の結果に基づいて無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定すること
によって、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するように構成される、装置が提示される。
【0043】
無細胞ヘモグロビン干渉しきい値に基づいて決定および比較することの考えられる利点は、それが、最も関連性のあるパラメータとして見られ得る、分析物濃度に対する実際のおよび/または推定した効果など、実際のおよび/または推定した干渉値を考慮することであり得る。
【0044】
一実施形態において、装置であって、分析物濃度に基づいた無細胞ヘモグロビン干渉しきい値は、絶対値であり、例えば、分析物濃度の関数として無細胞ヘモグロビン干渉しきい値を説明する関数は、非線形である、装置が提示される。絶対値を使用することの考えられる利点は、それが比較的単純であることであり得る。非線形である上記関数を有することの考えられる利点は、それが、臨床的に関連性のある像へとより正確に調整することを可能にすることであり得る。
【0045】
一実施形態において、装置であって、分析物濃度に基づいた無細胞ヘモグロビン干渉しきい値は、分析物濃度に相対的である相対値であり、例えば、分析物濃度の関数として無細胞ヘモグロビン干渉しきい値を説明する関数は、非線形など、非定常である、装置が提示される。相対値を使用することの考えられる利点は、それが、比較的単純な様式で、分析物濃度に対してスケーリングすることなど、分析物濃度を考慮することを可能にし得ることである。非線形など、非定常である上記関数を有することの考えられる利点は、それが、臨床的に関連性のある像へとより正確に調整することを可能にすることであり得る。
【0046】
一実施形態において、データ処理デバイスは、
分析物濃度に基づいて無細胞ヘモグロビン濃度しきい値を決定すること、
無細胞ヘモグロビン濃度、または無細胞ヘモグロビン干渉など、無細胞ヘモグロビン濃度に基づいたパラメータを、無細胞ヘモグロビン濃度しきい値と比較すること、および
比較の結果に基づいて無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定すること
によって、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するように構成される。
【0047】
この実施形態は、しきい値を有することによって提供される単純性に起因して有利であり得る。例えば、既定の命令に従って、各分析物濃度は、無細胞ヘモグロビンまたは無細胞ヘモグロビン濃度に基づいたパラメータに対する寛容(例えば、無細胞ヘモグロビンまたは無細胞ヘモグロビン干渉の許容量に相当する)と関連付けられ得、これは、非定常および任意選択的に非線形のしきい値など、無細胞ヘモグロビンおよび/または無細胞ヘモグロビン干渉のためのしきい値としてデータ処理デバイス内に実装され、これは、無細胞ヘモグロビン濃度または無細胞ヘモグロビン干渉と比較されて、この比較に基づいて無細胞ヘモグロビン干渉臨界を提供し得、例えば、1つのオプションに従うと、“~超”もしくは“~未満”、または別のオプションに従うと、しきい値と無細胞ヘモグロビン濃度または無細胞ヘモグロビン濃度に基づいたパラメータとの間の符号付きの差を示す実数などの、情報を含む出力信号を結果としてもたらす。
【0048】
無細胞ヘモグロビン濃度しきい値に基づいて決定および比較することの考えられる利点は、それが、干渉値を推定することを必要としないなど、比較的単純であることであり得る。
【0049】
‘無細胞ヘモグロビン濃度しきい値’は、相対または絶対(ccfHbまたは分析物濃度と同じ単位または1単位当たりの数量を用いるなど)値として表現され得、相対値は、分析物の濃度に応じて表現され得る。
【0050】
無細胞ヘモグロビン濃度しきい値は、分析物濃度の分画またはパーセンテージとして表現され得、分析物濃度に対して、非線形または線形、例えば一定または非定常、例えば正比例またはオフセットであり得る。
【0051】
一実施形態において、装置であって、分析物濃度に基づいた無細胞ヘモグロビン濃度しきい値は、分析物濃度に相対的である相対値であり、例えば、分析物濃度の関数として無細胞ヘモグロビン濃度しきい値を説明する関数は、非線形など、非定常である、装置が提示される。相対値を使用することの考えられる利点は、それが、比較的単純な様式で、分析物濃度に対してスケーリングすることなど、分析物濃度を考慮することを可能にし得ることである。非線形など、非定常である上記関数を有することの考えられる利点は、それが、臨床的に関連性のある像へとより正確に調整することを可能にすることであり得る。
【0052】
代替的に、無細胞ヘモグロビン濃度しきい値は、絶対的に表現され得、分析物濃度に対して、非線形または線形、例えば一定または非定常、例えば正比例またはオフセットであり得る。
【0053】
一実施形態において、装置であって、分析物濃度に基づいた無細胞ヘモグロビン濃度しきい値は、絶対値であり、例えば、分析物濃度の関数として無細胞ヘモグロビン濃度しきい値を説明する関数は、非線形である、装置が提示される。絶対値を使用することの考えられる利点は、それが比較的単純であることであり得る。非線形である上記関数を有することの考えられる利点は、それが、臨床的に関連性のある像へとより正確に調整することを可能にすることであり得る。
【0054】
無細胞ヘモグロビン濃度しきい値は、(1)溶血検出についての文献値、および/または(2)例えば、干渉が、液体試料のカテゴリ化を1つのカテゴリから別のカテゴリへと境界を越えて動かすことができることは許容であるが、カテゴリを迂回する(すなわち、カテゴリ全体/2つの境界を越えて動かす)ことは許されない規則を用いて、分析物濃度をパラメータに関連させるモデル(特定の臨床像を分析物濃度の範囲に帰するモデルなど)に基づいて決定され得る。
【0055】
さらなる実施形態において、装置であって、無細胞ヘモグロビンしきい値は、分析物濃度の関数であり、該関数は、少なくとも1つの分析物濃度間隔内で、分析物濃度が増加するにつれて数値的に変化する、例えば、ゼロよりも大きい範囲を有する少なくとも1つの分析物濃度間隔内で厳密に増加する(区分的に一定なセグメント間の値における差に排他的に起因して非定常である関数を除外するなど、(ヘビサイド)ステップ関数を除外するなど)、関数の結果など、分析物濃度が増加するにつれて増加する、または分析物濃度が増加するにつれて減少するなど、分析物濃度に対して非定常である、装置が提示される。実施形態において、関数は、厳密に増加することも厳密に減少することも(1つもしくは複数の極小値および/または1つもしくは複数の極大値を有することなど)ない。
【0056】
無細胞ヘモグロビンしきい値と分析物濃度との間に非定常関係を有することによって、特定の(比較的高い)無細胞ヘモグロビン濃度が、すべての分析物濃度にとって必ずしも重大または有害(その後の意思決定のためなど、その後の使用のため)ではないこと、同時に、別の特定の(比較的低い)無細胞ヘモグロビン濃度が、いくつかの分析物濃度にとって重大または有害(その後の意思決定のためなど、その後の使用のため)であり得ることが考慮され得る。
【0057】
‘無細胞ヘモグロビンしきい値は分析物濃度の関数である’は、無細胞ヘモグロビンしきい値(所与の分析物濃度について)が、分析物濃度の関数として(またはしきい値関数を介して)決定され得ることを示唆すると理解される。
【0058】
別のさらなる実施形態において、装置であって、無細胞ヘモグロビンしきい値は、分析物濃度の関数であり、該関数は、少なくとも1つの分析物濃度間隔内で、分析物濃度が増加するにつれて数値的に変化する、例えば、ゼロよりも大きい範囲を有する少なくとも1つの分析物濃度間隔内で厳密に増加する、関数の結果など、分析物濃度が増加するにつれて増加する、または分析物濃度が増加するにつれて減少するなど、分析物濃度に対して非線形である、装置が提示される。無細胞ヘモグロビンしきい値と分析物濃度との間に非線形関係を有することによって、パラメータと分析物濃度との間のより複雑な(非線形などの)関係など、より複雑な(非線形などの)状況が考慮され得る。
【0059】
例えば、分析物濃度における誤差(無細胞ヘモグロビン干渉の結果として真の分析物濃度から逸脱する測定した分析物濃度に起因する)のパラメータ(測定した分析物濃度によって決定される)に対する既定の効果は、忍容性が認められ得る。しきい値と分析物濃度との間に非線形関係を有することによって、パラメータと分析物濃度との間の非線形関係を考慮することが可能である(また、分析物濃度にわたって許容レベルに従って無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定することが依然として可能である)。これは、例えば、パラメータが(干渉)誤差によりあまり変化しない状況において高すぎる臨界値を決定しないこと、またはパラメータが(同一サイズの干渉)誤差によりかなり変化する状況において低すぎる臨界値を決定しないことを視野に入れて、非常に有益であると見なされ得る。
【0060】
非定常および非線形しきい値についての上で述べた利点は、変更すべきところは変更して、しきい値なしの実施形態にも同様に当てはまる。
一実施形態によると、データ処理デバイスは、ストレージデバイスに動作可能に接続され、ストレージデバイスは、
既定のカテゴリ化スキームを備え、例えば、既定のカテゴリ化スキームは、分析物濃度に基づいて液体試料をカテゴリ化すること(特定の臨床像へとカテゴリ化することなど)を可能にし、
データ処理デバイスは、
分析物濃度を、測定した特定の臨床像に帰するなど、分析物濃度に基づいて液体試料の測定されたカテゴリを決定すること(例えば、(生の)測定した分析物濃度は、無細胞ヘモグロビンの干渉効果に対して調節されない)、
調節した分析物濃度など、調節した濃度を決定することであって、調節した濃度は、無細胞ヘモグロビンの干渉効果に対して調節される、(生の)測定した分析物濃度など、分析物濃度に基づき、無細胞ヘモグロビンの干渉効果は、無細胞ヘモグロビン濃度に基づく、調節した濃度を決定すること、
分析物濃度を、調節した特定の臨床像に帰するなど、調節した濃度に基づいて液体試料の調節したカテゴリを決定すること、および
測定したカテゴリと調節したカテゴリとの差の度合いに基づいて無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定すること
によって、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するように構成される。
【0061】
利点は、それが、異なる範囲の分析物濃度が、‘命に関わる低カリウム血症’、‘重度の低カリウム血症’、‘中程度の低カリウム血症’、‘正常’、‘中程度の高カリウム血症’、‘重度の高カリウム血症’、および‘命に関わる高カリウム血症’など、特定の臨床像への帰属を必然として伴う、臨床カテゴリ化スキームなど(特定の臨床像へとカテゴリ化することなど)の、既定のカテゴリ化スキームを利用することを可能にすることであり得る。
【0062】
さらなる実施形態によると、装置であって、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、低いか、高いかのいずれかであり、既定のカテゴリ化スキームは、1次元であり、少なくとも3つのカテゴリを含み、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、
測定したカテゴリおよび調節したカテゴリが、同一であるか、既定のカテゴリ化スキーム内で隣接している場合、低く、
測定したカテゴリおよび調節したカテゴリが、既定のカテゴリ化スキーム内で少なくとも1つのカテゴリによって分離される場合、高い(例えば、少なくとも1つのカテゴリが測定したカテゴリと調節したカテゴリとの間に存在する)、装置が提示される。
【0063】
この実施形態は、提供される単純性に起因して有利であり得る。代替の策定において、測定したカテゴリから調節したカテゴリへのステップが1つのカテゴリから別のカテゴリへ横断することは許されるが、ステップがカテゴリを迂回することは許されない。
【0064】
一実施形態によると、データ処理デバイスは、無細胞ヘモグロビン干渉臨界しきい値を超える無細胞ヘモグロビン干渉臨界を条件として信号を出力するように構成される。この実施形態の考えられる利点は、ユーザは、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を心配する理由が存在する場合にのみ通知される(または邪魔される)ことである。
【0065】
別の実施形態によると、データ処理デバイスは、無細胞ヘモグロビン干渉臨界の値の条件なしに信号を出力するように構成される。これの考えられる利点は、ユーザは、無細胞ヘモグロビン干渉臨界に関して(明示的に)通知され得ることであり得る。
【0066】
一実施形態によると、分析物濃度は、
イオンなど、カリウムイオン、
Na+イオンなど、ナトリウムイオン、
Ca2+イオンなど、カルシウムイオン、
グルコース、
クレアチニン、および
乳酸
からなる群から選択される分析物の濃度である。
【0067】
これの利点は、列挙された分析物のうちの任意の1つは、人間の健康、および故に、(例えば、血液試料中の)それらの濃度の各々に関連性があり得、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、人間の健康の評価に関連性があることであり得る。
【0068】
一実施形態によると、先行するクレームのいずれかによる装置であって、分析物濃度は、分析物の複数の分析物濃度であり、分析物のうちの少なくとも2つについて、
データ処理デバイスは、
無細胞ヘモグロビン干渉臨界を、
無細胞ヘモグロビン濃度、および
分析物濃度
に基づいて決定し、
少なくとも無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号を出力するように構成され、
無細胞ヘモグロビン干渉臨界と分析物濃度との関係は、少なくとも2つの分析物について固有など、分析物ごとに異なる、装置が提示される。
【0069】
利点は、複数のイオンについて、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号が出力され得ること(おそらくは専門家でないユーザに、干渉が重大である、または重大であり得ることを警告するなど)であり得る。別の考えられる利点は、異なる分析物が、無細胞ヘモグロビンによって異なって影響を受け得ること(異なる分析物濃度の測定が、他の分析物の濃度の測定と比較して特定のccfHbに関して異なって影響を及ぼされ得る/干渉され得ることを明らかにする、表I~II内の本発明者らのデータも参照されたい)、および/または、特定の臨床像への分析物濃度の帰属が、異なる分析物では異なり得ること(例えば、2つの分析物の各々の特定の濃度における特定のレベルの干渉の場合でさえ、cfHb干渉臨界は、上記干渉が、上記濃度に基づいた特定の臨床像への帰属を、他方の分析物と比較して一方の分析物の場合により大きい度合いまで変化させるリスクを冒し得ることに起因して、異なり得る)が考慮され得ることであり得る。一実施形態によると、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、無細胞ヘモグロビン干渉効果を各分析物について計算することによって(すなわち、干渉が各分析物に対して有する絶対的な定量的効果、これは分析物ごとに異なり得る)、少なくとも2つの分析物について決定され、本装置は、上記少なくとも2つの分析物の各々が同じ濃度を有する場合でさえ、同様のサイズの干渉効果が異なる無細胞ヘモグロビン干渉臨界を結果として生じ得るように配置される。
【0070】
一実施形態によると、信号を表す情報を視覚的に出力するために配置される、グラフィックユーザインターフェースなどのユーザインターフェースをさらに備える装置が提示される。これの考えられる利点は、ユーザが信号を表す情報を視覚的に観察することができることであり得る。別の考えられる利点は、情報の内容、例えば、無細胞ヘモグロビン干渉臨界値(’45.876’など)および/またはどのように進めるべきかについてのガイド(‘無細胞ヘモグロビン干渉臨界が許容値を超えています-再試験してください’など)が、非専門家ユーザを含むユーザに提示され得、ユーザが関連情報を非常に素早く(例えば、対応する情報を可聴またはデジタルで出力することと比較して)獲得することを可能にすることである。
【0071】
一実施形態によると、装置であって、
特定の分析物濃度についての無細胞ヘモグロビン濃度しきい値など、ユーザ入力を受信するために配置される、グラフィックユーザインターフェースなどのユーザインターフェースをさらに備え、
データ処理デバイスは、
ユーザ入力に基づいて無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するように構成される、装置が提示される。
【0072】
考えられる利点は、ユーザが、ユーザ入力を提供すること、例えば、所定の命令、または単に特定の分析物濃度についての無細胞ヘモグロビン濃度しきい値に提供することができ、データ処理デバイスが次いで、例えば、所定の命令に従って、または特定の分析物濃度についての提供された無細胞ヘモグロビン濃度しきい値を含む非定常無細胞ヘモグロビン濃度しきい値を提供することによって、これを考慮することができることであり得る。故に、ユーザは、任意選択的に半自動化様式で、無細胞ヘモグロビン臨界がどのように決定されるかについて既定の命令を提供する、またはこれに影響を及ぼすことができる。例えば、研究室管理者またはポイントオブケア管理者は、正常な試料濃度(例えば、4mMでのK)について許容検出限界を選択し、このとき、しきい値は、Kのすべての分析物濃度について自動的に決定される。
【0073】
一実施形態によると、装置であって、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、ルックアップテーブル、またはアルゴリズム、または数学関数などの関数に基づいて決定される、装置が提示される。
【0074】
一実施形態によると、装置であって、
少なくとも1つの第1の分析物濃度について、無細胞ヘモグロビン干渉臨界における第1の変化は、第1の無細胞ヘモグロビン濃度において無細胞ヘモグロビン濃度が増加するにつれて変化し、
少なくとも1つの第2の分析物濃度について、無細胞ヘモグロビン干渉臨界における第2の変化は、第2の無細胞ヘモグロビン濃度において無細胞ヘモグロビン濃度が増加するにつれて変化し、
第1の変化および第2の変化が各々、無細胞ヘモグロビンしきい値を超えることに相当するなど、第1の変化は、第2の変化と実質的に同一、または同一であり、
第1の分析物濃度は、第2の分析物濃度より小さく、および
第1の無細胞ヘモグロビン濃度は、第2の無細胞ヘモグロビン濃度より小さい、または大きいなど、第2の無細胞ヘモグロビン濃度とは異なる、装置が提示される。
【0075】
この実施形態の利点は、無細胞ヘモグロビン臨界における変化が、一定分析物濃度で発生することに限られないことであり得る。
一実施形態によると、装置であって、少なくとも2つの異なる分析物濃度について、
2つの異なる分析物濃度のうちの低い方に基づいた無細胞ヘモグロビンしきい値は、2つの異なる分析物濃度のうちの高い方に基づいた無細胞ヘモグロビンしきい値よりも、小さい、または大きいなど、これと異なる、装置が提示される。
【0076】
この実施形態の利点は、無細胞ヘモグロビンしきい値が、分析物濃度に対して一定であることに限られないことである。
一実施形態によると、装置であって、例えば血液ガス分析器である装置は、以下:
二酸化炭素、例えばCO
酸素、例えばO、および
pH
のうちの1つまたは複数またはすべての液体試料中の濃度を測定するためにさらに配置される、装置が提示される。
【0077】
そのような(血液ガス分析器)装置を有することの利点は、さらなる関連液体(血液)試料パラメータを提供することを可能にすることであり得、例えば、出力を介して、ユーザ(専門家ではない)ユーザ(でさえ)は、再試験が必要であり得るなど、例えば、1つまたは複数の分析物が高い(高すぎる)無細胞ヘモグロビン干渉臨界と関連付けられ得るかどうかを通知され得る。利点は、例えば、それが、高速応答時間、専門家ではないユーザへの関連出力、および複数のパラメータのうちの1つもしくは複数またはすべてが特に関連性があり得るポイントオブケア試験のための関連ソリューションを提供することである。
【0078】
本発明の第2の態様によると、分析物および無細胞ヘモグロビンを含む液体試料中の分析物濃度を自動的に測定するための、ならびに無細胞ヘモグロビン干渉臨界を自動的に決定するための方法であって、
a.液体試料中の分析物濃度を測定するステップと、
b.液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度を測定するステップと、
c.プロセッサを備えるデータ処理デバイスに、
分析物濃度、
無細胞ヘモグロビン濃度
を提供するステップと、
d.データ処理デバイスを用いて、
無細胞ヘモグロビン濃度、および
分析物濃度
に基づいて、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を自動的に決定するステップと、
e.少なくとも無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号をデータ処理デバイスから出力するステップと
を含む方法が提示される。
【0079】
一実施形態において、方法であって、無細胞ヘモグロビン干渉臨界の決定は、
a.既定のカテゴリ化スキームにさらに基づき、例えば、既定のカテゴリ化スキームは、分析物濃度に基づいて液体試料をカテゴリ化することを可能にし、
本方法は、
b.分析物濃度を、測定した特定の臨床像に帰するなど、分析物濃度に基づいて液体試料の測定されたカテゴリを決定すること、
c.調節した分析物濃度など、調節した濃度を決定することであって、調節した濃度は、無細胞ヘモグロビンの干渉効果に対して調節される、測定した分析物濃度など、分析物濃度に基づき、無細胞ヘモグロビンの干渉効果は、無細胞ヘモグロビン濃度に基づく、調節した濃度を決定すること、
d.分析物濃度を、調節した特定の臨床像に帰するなど、調節した濃度に基づいて液体試料の調節したカテゴリを決定すること、および
e.測定したカテゴリと調節したカテゴリとの差の度合いに基づいて無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定すること
によって、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するステップを含む、方法が提示される。
【0080】
一実施形態において、方法であって、液体試料は、少なくとも部分的に、例えば部分的または全体的に、
赤血球などの細胞を含む試料、
赤血球などの細胞を含む試料から導出される試料、
ヒト全血試料などの全血試料、または
希釈全血試料である、および/もしくはヒト全血試料の分画であるなど、血清もしくは血漿などの全血試料から導出される、例えば、ヒト全血試料から導出される、試料である、方法が提示される。
【0081】
この実施形態の利点は、溶血が発生した可能性があり、これにより干渉を引き起こした可能性があり(例えば、患者からの引き出しの後にカリウムイオンを液体試料内へ放出することによって)、またこれが、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定することによって対処され得ることであり得る。
【0082】
一実施形態において、方法であって、無細胞ヘモグロビン臨界が無細胞ヘモグロビン干渉臨界しきい値を超える場合、本方法は、
分析物および無細胞ヘモグロビンを含む別の液体試料を獲得し、ステップa~eを繰り返すステップ
をさらに含む、方法が提示される。
【0083】
考えられる利点は、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定することが、特定の行為をトリガする(これにより、無細胞ヘモグロビン干渉臨界しきい値を超えない無細胞ヘモグロビン干渉臨界をもたらし得る)ことであり得る。
【0084】
本発明の第3の態様によると、コンピュータプログラム製品などのコンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータによって実行されるとき、
分析物濃度に基づいた第1の情報を受信すること、
無細胞ヘモグロビン濃度に基づいた第2の情報を受信すること、
無細胞ヘモグロビン干渉臨界を、
無細胞ヘモグロビン濃度、および
分析物濃度
に基づいて決定すること、
少なくとも無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号を出力すること
をコンピュータに行わせる命令を含む、コンピュータプログラムが提示される。
【0085】
別の態様によると、第3の態様のコンピュータプログラムが格納されているコンピュータ可読データキャリアが提示される。
別の態様によると、第2の態様の方法を実施するように適合される、および/または第3の態様によるコンピュータプログラムを実行するように適合される、プロセッサを備えるデータ処理装置が提示される。
【0086】
別の態様によると、既定の命令、例えば上記既定の命令に基づいた装置および/またはコンピュータプログラムを提供するための方法であって、
既定のカテゴリ化スキームを獲得するステップであって、例えば、既定のカテゴリ化スキームは、分析物濃度に基づいて液体試料をカテゴリ化することを可能にする、ステップと、
各々の想定される対または分析物濃度および無細胞ヘモグロビン濃度について、
分析物濃度を、測定した特定の臨床像に帰するなど、分析物濃度に基づいて液体試料の測定されたカテゴリを決定すること、
調節した分析物濃度など、調節した濃度を決定することであって、調節した濃度は、無細胞ヘモグロビンの干渉効果に対して調節される、測定した分析物濃度など、分析物濃度に基づき、無細胞ヘモグロビンの干渉効果は、無細胞ヘモグロビン濃度に基づく、調節した濃度を決定すること、
分析物濃度を、調節した特定の臨床像に帰するなど、調節した濃度に基づいて液体試料の調節したカテゴリを決定すること、
測定したカテゴリと調節したカテゴリとの差の度合いに基づいて無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定すること、
ルックアップテーブルまたはアルゴリズムなど、分析物濃度および無細胞ヘモグロビン濃度の各々の想定される対を決定した無細胞ヘモグロビン干渉臨界と結びつけるデータのセットとして、既定の命令を提供すること
によって、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を決定するステップと
を含む、方法が提示される。
【0087】
ポイントオブケア測定システム(当該技術分野においては‘ベッドサイト’システムとも称される)および同様の研究室環境の文脈において、血液ガス分析は、多くの場合、血液ガス分析器の使用および/または結果の解釈に関して訓練を受けたユーザではない場合のある、看護師などのユーザによって行われる。これは、不必要な再試験(例えば、正しい解釈が、再試験が必要でなかったことを明らかにした場合でさえ、干渉が問題であり得る試料について、慎重すぎるぐらい慎重なユーザに起因する)、または、正しい解釈が、結果に依拠しないこと導き出していた状況で、結果(例えば、干渉に起因する誤診断のリスクに起因して、依拠されるべきではなかった結果)に誤って依拠すること、を引き起こし得る。
【0088】
本発明の別の態様によると、
無細胞ヘモグロビン干渉臨界を、
無細胞ヘモグロビン濃度、および
分析物濃度
に基づいて決定し、
少なくとも無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号を出力するための、
ポイントオブケア(POC)のための本発明の第2の態様による装置の使用の使用が提示される。
【0089】
POC測定は、当該技術分野において‘ベッドサイト’測定とも称される。本文脈において、用語‘ポイントオブケア測定’は、患者に近接して実行される測定、すなわち、研究室で実行されない測定を意味するものと理解されるべきである。故に、この実施形態によると、血液ガス分析器などの装置のユーザは、血液試料が採取される患者に近接して、例えば、患者のベッドを収容する病室もしくは病棟内で、または同じ診療科の近くの室内で、ハンドヘルド血液試料容器内の全血試料の測定を実施する。そのような使途では、ユーザの専門知識のレベルは、多くの場合、新人から熟達者まで様々であり、故に、センサ入力を基に各々個々のユーザのスキルにマッチする命令を自動的に出力する血液ガス分析器の能力は、そのような環境において特に有益である。
【0090】
代替の第3の態様によると、第1の態様による装置に第2の態様の方法のステップを実行させる命令を含む、コンピュータプログラム製品などのコンピュータプログラムが提示される。
【0091】
さらなる態様によると、第3の態様のコンピュータプログラムおよび/または代替の第3の態様のコンピュータプログラムが格納されているコンピュータ可読媒体が提示される。
【0092】
本発明の第1、第2、および第3の態様は各々、他の態様のいずれかと組み合され得る。本発明のこれらおよび他の態様は、以後説明される実施形態を参照して、明らかにされ、解明される。
【0093】
本発明による、無細胞ヘモグロビンを含む液体試料中の分析物濃度を自動的に測定するための装置、方法、およびコンピュータプログラム製品は、これより、添付の図に関してより詳細に説明される。図は、本発明を実装する1つのやり方を示し、添付のクレームセットの範囲内に入る他の考えられる実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】液体試料中の分析物濃度を自動的に測定するための装置100の概略図である。
図2】一実施形態による、所定の命令に従う無細胞ヘモグロビン濃度(ccfHb)しきい値の例を示す図である。
図3】一実施形態による、所定の命令に従う無細胞ヘモグロビン濃度(ccfHb)しきい値の別の例を示す図である。
図4】一実施形態による、所定の命令に従う無細胞ヘモグロビン濃度(ccfHb)しきい値の別の例を示す図である。
図5】一実施形態による、関数のワイヤフレーム3D表面を示す図である。
図6図5にも描写される関数のワイヤフレーム輪郭プロットを示す図である。
図7】液体試料102中の分析物濃度を自動的に測定するための方法700を示す図である。
図8】例1による固定および非定常無細胞ヘモグロビン(干渉)しきい値を示す図である。
図9】例2による固定および非定常無細胞ヘモグロビン(干渉)しきい値を示す図である。
図10】例3による固定および非定常無細胞ヘモグロビン(干渉)しきい値を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
図1は、分析物および無細胞ヘモグロビンを含む液体試料102中の分析物濃度を自動的に測定するための、ならびに無細胞ヘモグロビン干渉臨界を自動的に決定するための装置100の概略図であり、上記装置は、
1つまたは複数のセンサ104であって、
液体試料中の分析物濃度、および
液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度を測定するための、1つまたは複数のセンサ104と、
プロセッサを備えるデータ処理デバイス106であって、
無細胞ヘモグロビン干渉臨界を、
無細胞ヘモグロビン濃度、および
分析物濃度
に基づいて決定し、
少なくとも無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号108を出力するように構成される、データ処理デバイス106と
を備える。
【0096】
描写した実施形態において、1つまたは複数のセンサ104は、液体試料中の分析物濃度、および液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度を各々測定するための2つのセンサを含む。図1の概略図は、さらに、液体試料入口112、微小流体システム114、ストレージデバイス116、ユーザインターフェース118を示し、ユーザインターフェースは、信号を表す情報を視覚的に出力するために配置される出力ユニット120(描写した実施形態における出力ユニットは、無細胞ヘモグロビン干渉臨界が許容値を超えること、および測定した分析物濃度を用いた進行に対する警告が発行されることをユーザに示す信号108を描写するディスプレイユニットである)、および入力ユニット122(キーボードなど)を備える。細線矢印は、1つまたは複数のセンサ104からデータ処理デバイス106へ流れる、液体試料中の分析物濃度および液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度などの情報の流れ、データ処理デバイス106からユーザインターフェース118(およびより詳細には、出力ユニット120)へ流れる出力信号、入力ユニット122からデータ処理デバイス106へ流れるユーザ入力(それは、データ処理デバイスがストレージデバイス116内の既定の命令を修正することができるように処理され得る)、およびストレージデバイス116からデータ処理デバイス106へ流れる既定の命令を示す。
【0097】
1つまたは複数のセンサ104は、例えば液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度を測定するための、多孔性鏡などの多孔性要素を備え得る。手短に言えば、多孔性鏡(PM)は、全血(WB)試料の血漿相の吸光度測定を提供するための技術である。それは、無細胞ヘモグロビン(ccfHb)の濃度を決定するために使用され得る。実施形態において、それは、ccfHbが赤血球(RBC)より小さい孔サイズを有する多孔性PETP膜内へ拡散することを可能にすることによって機能する。RBCは、こうして、孔内へ入らないように締め出される。孔は、膜の内側で非貫通であるため、1mmあたり120万個の孔の各々が、試料に近接してナノキュベットを構成する(φ=400nm、長さ=25μm)。ccfHbおよび他の血漿成分は、拡散によりナノキュベット内外へ輸送される。多孔性膜の前側(試料に対向する)は、貴金属(Pd、厚さ=100nm)で覆われるが、依然として、試料に対向する孔端部では開口している。膜の前の金属層は、膜の裏側からの孔の内側のヘモグロビン(Hb)の透過様測定を可能にする光反射(PM内の鏡)を可能にする。簡便には、試料中のRBC内のHbおよび/または他の粒子状物質からの光学干渉は、同じ光学遮蔽金属層によって、無視できるレベルまで抑制される。多孔性鏡デバイスは、光学プローブによる液体中の分析物の検出のための多孔性鏡であって、
前側、および前側と反対を向く裏側を有する透光性のスラブであって、前側は、流体と接触するように適合される、透光性のスラブと、
透光性のスラブの前側における反射層であって、透光性のスラブの裏側から反射層に到達する光を反射するように適合される、反射層と
を備え、
透光性のスラブは、孔を含み、孔は、前側におけるそれぞれの開口部から、反射層を通って、透光性のスラブ内へ延在する非貫通孔であり、
孔の開口部の断面寸法は、流体中の分析物が拡散により孔へ入ることを可能にしながら、より大きい粒子または細片が、流体に含まれる場合、孔に入ることを防ぐように寸法決定される、多孔性鏡であり得る。多孔性鏡(PM)技術は、WO2017/085162A1に説明され、これは、参照により全体が本明細書に組み込まれ、特に、WO2017/085162A1のクレーム1、ならびにさらに図1および24~25頁の付随する文に説明される。
【0098】
図2は、一実施形態による所定の命令に従う無細胞ヘモグロビン濃度(ccfHb)しきい値の例を示し、上記しきい値は、非定常および線形であり、特に、分析物濃度(cA)に対して正比例である。
【0099】
図3は、一実施形態による所定の命令に従う無細胞ヘモグロビン濃度(ccfHb)しきい値の別の例を示し、上記しきい値は、非定常および線形であり、しきい値は、分析物濃度(cA)に対する、比例定数k=ccfHb/cAによって規定される(それが正比例でないにもかかわらず)。
【0100】
図4は、一実施形態による所定の命令に従う無細胞ヘモグロビン濃度(ccfHb)しきい値の別の例を示し、上記しきい値は、非定常および非線形であり、すなわち、しきい値は、分析物濃度(cA)に対する比例定数k=ccfHb/cAによって規定することができない。示される特定の実施形態において、しきい値の値と分析物濃度との関係は、二次多項式によって規定される。示される特定の実施形態において、しきい値の値は、分析物濃度に対して厳密に増加することも厳密に減少することもない。
【0101】
図5図6は、無細胞ヘモグロビン干渉臨界が、0~15の尺度で実数として提供されるなど、間隔または比率尺度で決定(定性化)される実施形態に関する。関数は、分析物濃度(cA)および無細胞ヘモグロビン濃度(ccfHb)を引数に取り、結果として無細胞ヘモグロビン干渉臨界(z)を提供する。
【0102】
図5は、無細胞ヘモグロビン干渉臨界が、0~15の尺度での実数など、間隔または比率尺度での値として関数によって決定(定性化)される実施形態による関数のワイヤフレーム3D表面を示す。関数は、分析物濃度(cA)および無細胞ヘモグロビン濃度(ccfHb)を引数に取り、結果として無細胞ヘモグロビン干渉臨界(z)を提供する。
【0103】
図6は、図5にも描写される関数のワイヤフレーム輪郭プロットを示し、輪郭線610は、非線形である(すなわち、図内では直線ではない)。
図7は、分析物および無細胞ヘモグロビンを含む液体試料102中の分析物濃度を自動的に測定するための、ならびに無細胞ヘモグロビン干渉臨界を自動的に決定するための方法700(ブロック719で開始する)を示し、上記方法は、
a.液体試料中の分析物濃度を測定するステップ720と、
b.液体試料中の無細胞ヘモグロビン濃度を測定するステップ722と、
c.プロセッサを備えるデータ処理デバイス106に、
分析物濃度、
無細胞ヘモグロビン濃度
を提供するステップと、
d.データ処理デバイスを用いて、
無細胞ヘモグロビン濃度、および
分析物濃度
に基づいて、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を自動的に決定するステップ724と、
e.少なくとも無細胞ヘモグロビン干渉臨界が既定の範囲内にある場合、無細胞ヘモグロビン干渉臨界を示す信号をデータ処理デバイスから出力するステップ726と
を含む。
【0104】
図8は、さらに、濃度を測定するステップ718、および無細胞ヘモグロビン臨界が無細胞ヘモグロビン干渉臨界しきい値を超えるかどうかを決定するステップ728、分析物および無細胞ヘモグロビンを含む別の液体試料を獲得し、ステップa~eを繰り返すステップ732(無細胞ヘモグロビン臨界が無細胞ヘモグロビン干渉臨界しきい値を超える場合)、または分析物濃度をユーザに公開するなど、方法を終了するステップ730(無細胞ヘモグロビン臨界が、無細胞ヘモグロビン干渉臨界しきい値に等しいか、これを下回るある場合)を示す。
【0105】
臨床的に関連性のある装置および方法を提供するために(臨床的に関連性のある測定した分析物濃度に対する無細胞ヘモグロビンの臨床的に関連性のある影響を評価することを可能にすることなど)、関連分析物に対する無細胞ヘモグロビンの干渉に関する(定量的)データを獲得することが重要であり得る。したがって、いくつかの分析物に対する無細胞ヘモグロビンの干渉の概要を伴う干渉試験表が以下の表Iに提供され、上記データは、無細胞ヘモグロビン濃度(ccfHb)に関して決定される。
【0106】
【表1】
【0107】
さらには、干渉は、全血試料に対する測定により(‘相関係数’により)定量化され、結果は表IIに示される。
【0108】
【表2】
【0109】
表IIから、カリウムイオンについて、測定した分析物濃度cA、無細胞ヘモグロビンからの干渉は、相関係数と無細胞ヘモグロビン濃度との積、すなわち、+0.3mM/(100mg/dL cfHb)×ccfHbとして推定され得ることが導出され得る(すなわち、干渉が測定した分析物濃度を真の分析物濃度よりも高くする効果を有し、その結果として、真の分析物濃度cAは、cA=cA-0.3mM/(100mg/dL cfHb)×ccfHbとして推定され得る。
【0110】
臨床的に関連性のある無細胞ヘモグロビン干渉臨界値を提供するために、例えば、溶血を伴う試料について重度の低カリウム血症を検出することができること、および/または溶血に起因して誤った高カリウム血症を検出することができることを視野に入れて、臨床的に関連性のある情報を既定の命令へと反映させることが重要であり得る。単純化したモデルによると、カリウムイオン濃度のための臨床像は、以下の通りである(非新生児の場合):
・1<K≦2.5mM 重度の低カリウム血症
・2.5<K≦3.5mM 軽度の低カリウム血症
・3.5<K≦5mM 正常
・5<K≦6mM 軽度の高カリウム血症
・K>6 重度の高カリウム血症
新生児の場合、モデルはわずかに異なる:
・1<K≦3.5mM 重度の低カリウム血症
・3.5<K≦4.5mM 軽度の低カリウム血症
・4.5<K≦6mM 正常
・6<K≦7mM 軽度の高カリウム血症
・K>7 重度の高カリウム血症
上記の範囲は、既定のカテゴリ化スキームを具現化するなど、特定の臨床像を表すカテゴリへの分析物濃度のカテゴリ化を具現化する。
【0111】
本発明の実施形態によると(以下では、Kへの非限定的な参照を用いて説明され、例えば、使用される関数は、異なり得、同じタイプのモデルが、例えば、NaおよびCa2+のために使用され得ることに留意されたい)、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、(Kのすべてのレベルにおいて同じ無細胞ヘモグロビン濃度しきい値を使用する代わりに)低Kレベルにおいてはより低く、正常Kおよび高K濃度についてはより高く設定されるしきい値によって決定され得、このことは、すべてのKレベルの高品質モニタリングを結果としてもたらし得ると共に、液体試料中の溶血の不必要な検出の数が少ない。
【0112】
新生児領域からの試料は、異なる参照レベルを有するが(以下を参照)、本発明の概念概念は、成人試料に関して同じしきい値を用いて適用され得るということに留意されたい。
【0113】
以下は、1)成人試料の場合の0.3mMでの、臨床的に許容の非定常レベル、対、分析的に許容の一定レベル、2)成人試料の場合の0.5mMでの、臨床的に許容の非定常レベル、対、分析的に許容の一定レベル、および3)新生児試料の場合の1.0mMでの、臨床的に許容の非定常レベル、対、分析的に許容の一定レベルについて、K濃度依存溶血検出(溶血検出は、無細胞ヘモグロビン推測臨界しきい値を超えることの検出に等価または同一と見なされ得る)概念の例が示される。‘分析的’とは、一般的には、直接的に臨床的検討を考慮することなく、むしろ濃度に直接的に依存することと理解され、‘臨床的’とは、一般的には、むしろ臨床的検討に依存することと理解される。
【0114】
以下の例において、インビトロ溶血の前提の下で出される‘真の患者値’に対して参照がなされる(インビボ溶血の場合、試料濃度も真の患者値であることが理由である)。
【実施例
【0115】
実施例1:低カリウム血症の安全な検出(設定しきい値:0.3mM):
3人の異なる患者が、[K濃度、cA]=2.8mM、5.5mM、および6.3mMを測定した。
【0116】
測定した[ccfHb]=130mg/dLおよび設定しきい値:0.3mM(100mg/dL)。
真の患者値、cA:Kに対する測定したK影響、
式中、Kに対する影響=130mg/dL×0.3mM/(100mg/dL cfHb)=0.39mM。
【0117】
【表3】
【0118】
に対する動的最大影響は、基礎となる臨床像(複数可)を十分に考慮して決定された値であり、この値は、無細胞ヘモグロビン(干渉)しきい値が、0.3mMにおける固定しきい値も示される図8に描写されるような分析物濃度に対して二次多項式関数として説明可能であるということを結果としてもたらす。
【0119】
本発明による非定常しきい値は、固定試料の場合は再試験をすることが必要であったのに対して、2つの試料の分析物濃度が公開されるために(非定常しきい値を用いて実証される際には再試験が必要でなかった試料)、有利であることがこの例から分かる。
【0120】
実施例2:低カリウム血症の安全な検出(設定しきい値:0.5mM):
3人の異なる患者が、[K濃度、cA]=2.9mM、5.0mM、および6.4mMを測定した。
【0121】
測定した[ccfHb]=151mg/dLおよび設定しきい値:0.5mM(165mg/dL)。
真の患者値、cAt:Kに対する測定したK影響、
式中、Kに対する影響=151mg/dL×0.3mM/(100mg/dL cfHb)=0.45mM。
【0122】
【表4】
【0123】
に対する動的最大影響は、基礎となる臨床像(複数可)を十分に考慮して決定された値であり、この値は、無細胞ヘモグロビン(干渉)しきい値が、0.5mMにおける固定しきい値も示される図9に描写されるような分析物濃度に対して二次多項式関数として説明可能であるということを結果としてもたらす。
【0124】
本発明による非定常しきい値は、固定試料の場合はそれが公開されていたのに対して(非定常しきい値を用いて実証される際には再試験が必要であったのにかかわらず)、1つの試料の分析物濃度が公開されず、代わりに再試験が要求されるため、有利であることがこの例から分かる。これは、例えば、固定しきい値によると、測定したK濃度cA=2.9mMを有する試料に対する測定が公開され、すなわち、それが、軽度の低カリウム血症を示すものとしてそれをカテゴリ化し得る人材に提供され得ることが理由で、関連性があり得る。しかしながら、推定した真の患者K濃度(2.4mM)によると、(真の患者)カテゴリ化は、実際には、重度の低カリウム血症であった。しかしながら、本発明のこの実施形態による(動的)しきい値を用いると、無細胞ヘモグロビン干渉臨界は、許容できないほど高いと評価され、再試験が代わりに要求される。
【0125】
実施例3:低カリウム血症の安全な検出(設定しきい値:1.0mM):
3人の異なる患者が、[K濃度、cA]=3.8mM、4.5mM、および7.0mMを測定した。
【0126】
測定した[ccfHb]=290mg/dLおよび設定しきい値:1.0mM(330mg/dL)。
真の患者値、cA:Kに対する測定したK影響、
式中、Kに対する影響=290mg/dL×0.3mM/(100mg/dL cfHb)=0.87mM。
【0127】
【表5】
【0128】
に対する動的最大影響は、基礎となる臨床像(複数可)を十分に考慮して決定された値であり、この値は、無細胞ヘモグロビン(干渉)しきい値が、0.5mMにおける固定しきい値も示される図10に描写されるような分析物濃度に対して二次多項式関数として説明可能であるということを結果としてもたらす。
【0129】
本発明による非定常しきい値は、固定試料の場合はそれが公開されていたのに対して(非定常しきい値を用いて実証される際には再試験が必要であったのにかかわらず)、2つの試料の分析物濃度が公開されず、代わりに再試験が要求されるため、有利であることがこの例から分かる。
【0130】
本発明は特定の実施形態に関連して説明されているが、提示された例にいかようにも限定されないものであると解釈されるべきである。本発明の範囲は、添付のクレームセットによって明記される。クレームの文脈において、用語“備えること”または“備える”は、他の考えられる要素またはステップを除外しない。また、“1つの(a)”または“1つの(an)”などの参照の記載は、複数を除外するものと解釈されるべきではない。図に示される要素に関するクレーム内の参照符号の使用もまた、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。さらには、異なるクレームに記載される個々の特徴は、おそらくは、有利に組み合わされ得、異なるクレームにおけるこれらの特徴の記載は、特徴の組み合わせが可能および有利ではないことを除外しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】