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特表2024-500233電流を伝送する接触装置及びこの種の接触装置を有する機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-05
(54)【発明の名称】電流を伝送する接触装置及びこの種の接触装置を有する機械
(51)【国際特許分類】
   H01R 39/08 20060101AFI20231225BHJP
   H02K 13/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
H01R39/08
H02K13/00 P
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538717
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 EP2021061743
(87)【国際公開番号】W WO2022135748
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/087799
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516193830
【氏名又は名称】シュンク カーボン テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン フーバー
(72)【発明者】
【氏名】マルクス ベーバー
(72)【発明者】
【氏名】ヨアヒム クルツ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ミュレガー
【テーマコード(参考)】
5H613
【Fターム(参考)】
5H613AA03
5H613AA06
5H613BB15
5H613GA09
5H613GB06
5H613GB12
5H613QQ03
5H613SS04
5H613SS13
(57)【要約】
本発明は、ロータ部分が軸(11)及び/又はスリップリングによって形成されている、機械のロータ部分から電流を伝送するための接触装置、機械及びディスチャージ装置の使用に関するものであって、ディスチャージ装置は電気的に導通するスリップ接触部(16)を形成するための接触要素(10)を備え、スリップ接触部(16)は、このスリップ接触部を形成するために設けられ、接触要素のスリップ接触面(13)と軸又はスリップリングのロータ接触面(14)との間にあり、スリップ接触面内に切り欠きが形成され、接触要素が少なくとも部分的に、特に少なくともそのスリップ接触面の領域内で、オイル状の流体によって湿潤されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸(11、22)及び/又はスリップリングで形成された機械のロータ部分から電流を伝送する接触装置であって、
前記接触装置は電気的に導通するスリップ接触部(16)を形成するための接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)を備え、前記スリップ接触部(16)は、該スリップ接触部を形成するために設けられた、前記接触要素のスリップ接触面(13、24、26、32、38、46、54、59、64)と、前記軸(11、22)又は前記スリップリングのロータ接触面(14)との間にある、接触装置において、
前記スリップ接触面内に切り欠きが形成され、
前記接触要素は少なくとも部分的に、特に少なくともそのスリップ接触面の領域内で、オイル状の流体によって湿潤されている、ことを特徴とする接触装置。
【請求項2】
前記オイル状の流体が、エンジンオイル及び/又はトランスミッションオイルである、ことを特徴とする請求項1に記載の接触装置。
【請求項3】
前記スリップ接触面(13、24、26、32、38、46、54、59、64)内の前記切り欠きが、少なくとも1つの孔(33、42、43、45、48、52、55、58、65)及び/又はスリットによって形成されている、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の接触装置。
【請求項4】
前記スリップ接触面(13、24、26、32、38、46、54、59、64)内に2つ以上の切り欠きが形成されている、ことを特徴とする請求項1~3の何れか一項に記載の接触装置。
【請求項5】
前記切り欠きは少なくとも1つの通路(34、37、41、49、56)として形成され、該通路が前記接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)を貫通し、かつ前記スリップ接触面(13、24、26、32、38、46、54、59、64)内に、かつ前記スリップ接触面とは逆の前記接触要素の外面内に、それぞれ開口部を形成している、ことを特徴とする請求項1~4の何れか一項に記載の接触装置。
【請求項6】
前記接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)の外面、特に側面(47、53、60)又は背面(29、35、39、50)内の前記通路の横断面(d2)に対する、前記スリップ接触面(13、24、26、32、38、46、54、59、64)内の通路(34、37、41、49、56)の横断面(d1)の比は、≧1.1である、ことを特徴とする請求項5に記載の接触装置。
【請求項7】
前記通路(34、37、41、49、56)は、縦断面において、減少する直径(d1、d2)をもって、かつ/又は互いに対して縦及び/又は横に延びる通路部をもって、円錐形状に形成されている、ことを特徴とする請求項5又は6に記載の接触装置。
【請求項8】
前記スリップ接触面(13、24、26、32、38、46、54、59、64)に対する前記スリップ接触面内の前記切り欠きの面積の比は、≧0.08である、ことを特徴とする請求項1~7の何れか一項に記載の接触装置。
【請求項9】
前記接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)が少なくとも部分的に前記接触装置のガイド装置内に収容され、かつ摺動可能であり、前記接触要素が前記ガイド装置及び/又は前記機械の保持要素と電気的に導通するように接続され、かつ前記接触要素はばね部材によって前記ロータ接触面(14)の方向に付勢され、前記ガイド装置が前記機械のステータ部分と電気的に導通するように接続可能である、ことを特徴とする請求項1~8の何れか一項に記載の接触装置。
【請求項10】
前記接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)は、前記ガイド装置又は前記機械の保持要素と、好ましくは低抵抗のストランド(30)によって電気的に導通するように接続され、前記ストランドが一方の端部において前記接触要素内へ圧入され、又は埋め込まれ、かつ他方の端部において前記ガイド装置と好ましくは溶接され、又は半田付けされ、又は圧着されている、ことを特徴とする請求項9に記載の接触装置。
【請求項11】
前記接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)は実質的に炭素-金属-混合物、特にグラファイトと金属の混合物から形成され、前記金属の全体積割合は、好ましくは少なくとも30体積%であって、前記接触要素の少なくとも前方の、前記スリップ接触面(13、24、26、32、38、46、54、59、64)を有する領域(27)内に、金属として好ましくは銀が設けられ、かつ前記接触要素の後方の領域(28)内に、金属として好ましくは銅が設けられ、前記接触要素は前記スリップ接触面の領域内で、好ましくは銅を有していない、ことを特徴とする請求項1~10の何れか一項に記載の接触装置。
【請求項12】
前記接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)は棒形状に形成されたブラシであり、前記スリップ接触面(13、24、26、32、38、46、54、59、64)は好ましくは矩形又は方形に形成されている、ことを特徴とする請求項1~11の何れか一項に記載の接触装置。
【請求項13】
前記接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)の横断面(62)は、少なくとも部分的に円錐状、特に弓形状に形成されている、ことを特徴とする請求項1~12の何れか一項に記載の接触装置。
【請求項14】
軸(11、22)及び/又はスリップリングを有するロータ部分と、請求項1~13の何れか一項に記載の接触装置とを有する機械、特に駆動モータ又はトランスミッションであって、
前記接触装置の前記接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)は、スリップ接触部(16)を形成するために、スリップ接触面(13、24、26、32、38、46、54、59、64)を前記軸(11、22)又は前記スリップリングと接触させる、機械。
【請求項15】
前記接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)は、前記軸(11)又は前記スリップリングの周面(15)と接触する、ことを特徴とする請求項14に記載の機械。
【請求項16】
前記接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)の長手軸線(18)は、前記軸(11)の回転軸線(19)に対して間隔(A)で延びるように配置されている、ことを特徴とする請求項14又は15に記載の機械。
【請求項17】
前記接触要素(21)は、軸(22)又はスリップリングの端面(23)と接触し、前記接触要素は前記軸に対して好ましくは実質的に同軸に配置されている、ことを特徴とする請求項14に記載の機械。
【請求項18】
前記軸(11)又は前記スリップリング及び接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)に接して、少なくとも前記スリップ接触部(16)を包囲する空間内に、オイル状の流体、特にエンジンオイル又はトランスミッションオイルが設けられている、ことを特徴とする請求項14~17の何れか一項に記載の機械。
【請求項19】
軸(11、22)及び/又はスリップリングを形成された、機械のロータ部分から電流を伝送するための接触装置の使用であって、
前記接触装置は、電気的に導通するスリップ接触部(16)を形成するための接触要素(10、17、21、25、31、36、40、44、51、57、63)を備え、前記スリップ接触部(16)は、該スリップ接触部を形成するために設けられた、前記接触要素のスリップ接触面(13、24、26、32、38、46、54、59、64)と前記軸(11、22)又は前記スリップリングのロータ接触面(14)との間にあり、
前記スリップ接触面内に切り欠きが形成され、
前記接触要素は、少なくとも部分的に、特に少なくともスリップ接触面の領域内で、オイル状の流体によって湿潤される、接触装置の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸及び/又はスリップリングを形成された、機械のロータ部分から電流を伝導するための接触装置に関し、接触装置は電気的に導通するスリップ接触部を形成するための接触要素を備え、スリップ接触部は、このスリップ接触部を形成するために設けられた接触要素のスリップ接触面と、軸又はスリップリングのロータ接触面との間にある。さらに本発明は、この種の接触装置を有する機械とその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の接触装置は、従来技術から様々な実施形態において知られている。特に、低周波の電流を伝導するために炭素ブラシを使用することが知られており、その炭素ブラシは軸を中心に軸方向又は径方向に分配して配置されており、かつピグテールを介してステータと接触されている。保持装置又はブラシホルダ内に収容された炭素ブラシは、その電気的抵抗が小さいことに基づいて電流の直接的伝導又は伝送を可能にし、したがって軸の軸受箇所を介しての望ましくない電流ガイドを回避することができ、それは、点状の溶接に基づいて軸受ボディ又は軸受リングの表面損傷をもたらすことがあり得るものである。さらに、たとえば電気モータである場合に、炭素ブラシは、ステータからロータへ電流を伝送するために用いることもできる。その場合には規則的に、軸に設けられた1つ又は複数のスリップリングが、接触要素と接触される。スリップリングというのは、ここでは、整流子と考えることもできる。
【0003】
「軸」という概念は、ここでは「ロータ部分」又は「軸棒」という概念と同義語として使用される。したがって「軸」という概念は、すべての回転する機械部分と考えられ、その機械部分のために固定のステータ部分又は機械の機械部分内又はその間で電流を伝導し又は伝送することができる。
【0004】
接触装置は、規則的に、鉄道技術においても使用され、そこでは交流電流又は作業電流も車軸を介して流出することができる。この種の接触装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0005】
一般的に電気機械においても、たとえば自動車のために、電流を放出し又は伝送する措置が必要である。モータ駆動軸又はそれに接続されているトランスミッション軸又は他の機能的コンポーネントにおいて、連続的に変動する交流電圧又は電流と高周波の電流パルスが発生することがあり、それがロータ軸又はトランスミッション軸の軸受箇所を損傷することもあって、したがってここでは規則的に接触装置が必要である。
【0006】
記述した接触装置及びこの種の接触装置を有する機械における問題は、電気的及び機械的損失による高い熱発生にあって、その熱発生が接触装置と機械(たとえばエンジン、トランスミッション)の高い熱負荷をもたらす。この問題をある程度制御するために、これまで特に換気装置を介して発生する熱の搬出が行われていた。もちろんこの種の換気装置を介してでは、熱的な構成部品負荷の低減は部分的にしか得られない。この種の換気装置の他の欠点は、この種の換気装置を該当する機械内へ統合するために必要な、組込み空間大きさが著しく大きくなることにある。
【0007】
さらに、既知の接触装置又は軸と接触する接触要素は、これらがたとえば軸受に隣接して組み込まれている場合に、組み込み空間が狭いために容易にエンジンオイル又はトランスミッションオイルと接触することがある。明らかにされているように、特に軸に接触要素を径方向に配置する場合に、オイルと接触すると、スリップ接触部の電気抵抗が高まり、それが接触装置の機能を阻害する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102010039847(A1)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、従来技術の上述した欠点を克服することである。本発明の課題は特に、電流の確実な伝送を保証することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、請求項1の特徴を有する接触装置、請求項14の特徴を有する機械及び請求項19の特徴を有する接触装置の使用によって解決される。
【0011】
軸及び/又はスリップリングを形成された、機械のロータ部分から電流を伝送するための本発明に係る接触装置は、電気的に導通するスリップ接触部を形成するための接触要素を有し、スリップ接触部は、このスリップ接触部を形成するために設けられた、接触要素のスリップ接触面と、軸又はスリップリングのロータ接触面との間にあり、スリップ接触面内に切り欠きが形成され、接触要素が少なくとも部分的に、特に少なくともスリップ接触面の領域内で、オイル状の流体によって湿潤されている。
【0012】
本発明に係る接触装置によって、容量的に結合された高周波の電圧、又はいわゆる寄生の交流電圧(電気的ドライブから使用されるパワーエレクトロニクス(パルス幅変調)に基づいて形成される)を確実に伝導し、又は電流を電気的ドライブのロータへ伝送することが、可能である。接触装置は、該当する軸又はスリップリングに接する比較的小さい組み込み空間の内部にも配置することができ、かつオイル状の流体によって湿潤することができる。オイル状の流体で湿潤することによって、軸又はスリップリングとの摩擦接触によって生じる熱をオイル状の流体を用いて囲い込み、又は導出することも可能である。特に本発明においては、熱的負荷を減少させるために、たとえば換気装置のような、特殊な冷却装置が必要である。それによって、たとえば電気モータのような、機械の構造を、これまで知られているシステムにおけるよりも簡単かつそれに伴ってより効果的に、そしてモジュールの冷却をより効率的に形成することができる。たとえば特にラジアル軸シールリングによる摩擦影響もなくなる。さらに、機械寸法設計全体をより小さくすることができる。接触要素のスリップ接触面の領域内に切り欠きが形成されていることによって、軸上に望ましいやり方又は望ましくないやり方で、たとえばオイルフィルムが形成された場合に、軸又はスリップリングに接して接触要素が浮き上がることを阻止することができる。接触要素と軸又はスリップリングの間に、オイル状の流体からなるフィルムが形成されることに基づいて、場合によっては生じるハイドロダイナミック効果は、切り欠きによって効果的に回避することができる。すなわちスリップ接触面内の切り欠きの内部にオイル状の流体が集まり、又は切り欠き内へ押し出すことができるので、場合によっては生じるオイル状の流体からなるフィルムが中断され、又はきわめて薄く形成されるだけである。それによって、スリップ接触部の、又は接触要素と軸又はスリップリングとの間の、特に低い電気的抵抗を形成することが、可能である。すなわち可能な接触要素の浮き上がりが阻止され、かつ軸又はスリップリングと接触要素との間に場合によっては生じる電気的接触損失を回避することができる。接触要素は、軸又はスリップリングの径方向側又は軸方向側においてそれと接触することができる。
【0013】
通常、オイル状の流体はエンジンオイル及び/又はトランスミッションオイルとすることができ、それは大体において、エンジン又はトランスミッション内に初めから存在することができ、本発明に係る接触装置はその中に設けられている。
【0014】
切り欠きは、スリップ接触面の内部に少なくとも1つの孔又はスリットによって形成することができる。接触要素内の孔は、特に簡単に形成することができる。孔は、袋孔又は貫通孔とすることができる。接触要素が摩耗した場合、又は接触要素の材料がすり減った場合も、この孔によって、スリップ接触面の内部に切り欠きが存在することを、常に保証することができる。
【0015】
さらに、スリップ接触面の内部に2つ以上の切り欠きを形成することができる。それぞれスリップ接触面の大きさに応じて、唯一の比較的大きい切り欠きの代わりに、スリップ接触面の内部に複数の小さい切り欠きを設けると、有意義であり得る。
【0016】
切り欠きは、少なくとも1つの通路として形成することができ、その通路は接触要素を貫通し、かつスリップ接触面内及び接触要素の、スリップ接触面とは逆のジャケット面内に、それぞれ開口部を形成する。通路は、スリップ接触面を該当する外面と接続する。袋孔とは異なり、通路によって、オイル状の流体を接触要素を通して導出することも、可能である。通路内に流体が集まることができ、かつ外面内の開口部において再び流出することができる。すなわち、軸を通してオイル状の流体を連続的に移送し、又は移動させる場合に、切り欠き内に逆流が形成されることを、阻止することができる。
【0017】
接触要素の外面、特に側面又は背面内の通路の横断面又は直径に対する、スリップ接触面内の通路の横断面又は直径の比は、≧1.1とすることができる。したがってスリップ接触面内の通路の横断面は、外面内の通路の横断面よりも少なくとも10%大きい。スリップ接触面内の横断面と外面内の横断面は、たとえば円又は直径として形成することができる。円は、特に孔によって簡単に形成される。
【0018】
通路は、縦断面において接触要素に関して円錐状に減少する直径をもって、及び/又は互いに対して長手方向及び/又は横方向に延びる通路部をもって形成することができる。したがって通路は、貫通孔としてスリップ接触面から背面へ延びるように、又は接触要素の側面から横孔をもって形成することができ、その横孔が、スリップ接触要素内にある孔と交差し、又はそれに連通する。
【0019】
スリップ接触面に対する、スリップ接触面の内部の切り欠きの面の比は、≧0.08とすることができる。この比において、スリップ接触面が電流を伝導するためにまだ充分な大きさであることを、保証することができる。同時に、切り欠きを介して、オイル状の流体の可能なフィルムを著しく減少させることができる。
【0020】
接触要素は、少なくとも部分的に接触装置のガイド装置内に収容することができ、かつ摺動可能とすることができ、接触要素はガイド装置及び/又は機械の保持要素と電気的に導通するように接続することができ、かつ接触要素はばね部材によってロータ接触面の方向に付勢することができ、ガイド装置は機械のステータ部分と電気的に導通するように接続可能である。
【0021】
接触要素は、ガイド装置及び/又は機械の保持要素と、好ましくは低抵抗の、ストランドを用いて電気的に導通するように接続することができ、ストランドは一方の端部において接触要素内に圧入又は埋め込むことができ、かつ他方の端部においてガイド装置と好ましくは溶接し、又は半田付け又は圧着することができる。ガイド装置は、好ましくは少なくとも部分的に低抵抗の材料から、特に金属、好ましくはアルミニウム、アルミニウム合金、銅及び/又は真鍮から形成されている。
【0022】
本発明に係る接触要素の特に好ましい実施形態において、接触要素は実質的に炭素-金属-混合物から、特にグラファイトと電気的に良導性の金属の混合物から形成されており、少なくとも接触要素のスリップ接触面の領域内に金属として好ましくは銀が設けられており、かつ接触要素の後方の領域内には金属として好ましくは銅が設けられており、接触要素はスリップ接触面の領域内では好ましくは銅を含んでいない。接触要素内の金属の割合は、好ましくは少なくとも30体積%である。したがって接触要素は、スリップ接触面の領域内で好ましくは銅を含んでいない。というのは、この金属は電流通路と化合してオイル状の流体の触媒変化をもたらすことがあるからであって、それは結果としてこの流体の物理的特性をネガティブに変化させることがある。この理由から、さらに後に詳しく記述する本発明に係る機械の軸又はスリップリングも同様に、少なくとも軸又はスリップリングが接触要素と接触する領域内では、銅を含まず、又はわずかな銅添加物しか有していない。
【0023】
すべての駆動状態のもとでシステム抵抗をできる限り低く抑えるために、本発明に係る接触装置の抵抗も低く選択しなければならない。低抵抗の材料と金属-炭素-混合物からなる接触要素とを有する上述した実施形態によって、装置全体の抵抗を低く抑えることができる。他方でシステム抵抗は、標準的に、軸表面と接触要素のスリップ接触面との間の電圧降下によって調節される。これが、システム全体内で最大の割合を占める。したがってこれは、同様に低く抑えなければならない。連続的な注油のもとでこれを保証するために、一方で、軸への接触要素の高い固有の圧接が効果的である。この値は、少なくとも10N/cmに選択することができる。他方で、接触要素においてスリップ接触面の領域内で、オイル状の流体との化合における電気化学的反応がもたらされてはならない。これは、全寿命にわたって摩耗する、接触要素の領域内の銀-グラファイト-材料によって保証される。
【0024】
接触要素は、棒形状に形成されたブラシとすることができ、スリップ接触面は好ましくは矩形又は方形に形成することができる。上述したブラシは、型プレスとそれに続く熱処理とによって形成することができる。
【0025】
接触要素の横断面は、少なくとも部分的に円錐状、特に弓形状に形成することができる。円錐状又は円錐台形状に延びる横断面は、軸又はスリップリングの回転方向又は優先回転方向に抗する方向に延びることができる。したがって接触要素におけるオイル状の流体のための乗り上げエッジの形成は、回避することができる。オイル状の流体は、接触要素の、先細りに形成されている外面に沿って排除することができるので、スリップ接触面上のオイル状の流体からなるフィルムの形成は、難しくなる。
【0026】
本発明に係る機械、特に電気的駆動モータ又はトランスミッションには、軸及び/又はスリップリングを有するロータ部分と本発明に係る接触装置が形成されており、接触装置の接触要素は、スリップ接触部を形成するために、軸又はスリップリングをそのスリップ接触面と接触させる。この機械によって、スリップ接触面の領域内にオイル状の流体が存在する場合において、軸又はスリップリングと接触要素との接触の改良という、すでに上述した利点が得られる。それによって、接触装置は完全にオイル状の流体、特にエンジンオイル又はトランスミッションオイル内で支承することができる。好ましくはオイル状の流体は、特に、軸又はスリップリングとガイド装置との間の空間内に設けられており、その空間は接触装置によって橋渡しされる。したがって、オイル状の流体を接触装置上、特に接触装置の接触要素上に吹き付け、滴下し、又は霧の形状で供給することも、考えられる。
【0027】
機械の実施形態によれば、接触要素は軸又はスリップリングの周面に接触することができる。この実施形態において、軸又はスリップリングと接触要素との間の浮き上がりによる電気的接触損失を抑圧するために、接触要素は、好ましくは接触すべき軸又はスリップリングの優先回転方向に抗して横断面内で幾何学的に先細りにすることができる。
【0028】
さらに、接触要素の長手軸線は、軸の回転軸線に対して距離をおいて延びるように配置することができる。接触要素の長手軸線は、軸の回転軸線と整合しないので、接触要素は回転軸線に対して斜め又は横方向に延びるように、軸又はスリップリングに位置決めされている。接触要素は、軸又はスリップリングの回転方向又は優先回転方向に抗して鈍角で次のように、すなわち軸又はスリップリング上にあるオイル状の流体が接触要素によって形成された刃によって軸又はスリップリングから掻き取られるように、配置することができる。流体を掻き取ることによって、同様にスリップ接触面上の潤滑剤フィルムの形成を抑圧することができる。
【0029】
他の実施形態によれば、接触要素は軸又はスリップリングの端面に接触することができ、接触要素は、軸に対して好ましくは実質的に同軸に配置することができる。この種の軸系接地は、接触損失を回避するために効果的に提供される。というのは、回転する軸の軸偏心は大体において小さいからである。接触要素を軸の回転点の近傍に位置決めすることによって、周速度が減少され、かつそれによって接触要素の寿命にわたって実際的に見た走行距離も非常に大きく減少される。それに直接影響されるのが、接触要素の摩耗であって、それは大体において走行距離と比例的に関連する。走行距離の減少によって、接触要素の摩耗はわずかなままであり、それによって結果的に、接触要素の全摩耗長さにわたるばね部材のパワー損失も、同様に最少である。これが、すでに上で挙げたコスト的に好ましい圧縮コイルばねの使用を可能にする。さらに、軸又はスリップリングの回転軸線の近傍の低い周速度が、連続して電気的に絶縁する潤滑剤フィルムの形成の危険を減少させ、それによって圧接力を、周速度が高い場合に必要となるよりも、低く抑えることができる。回転軸線の近傍で軸又はスリップリングを端面側で接触させる他の利点は、回転点からの径方向の距離が小さいことによる摩擦モーメントの減少である。摩擦力がきわめて大きい場合でも、摩擦力xと走行半径の積としての摩擦モーメントは、小さいままである。したがってさらにその結果において、軸速度(回転数と等価)と組み合わせても、摩擦出力は低く、したがってシステム損失は小さいままである。
【0030】
少なくとも、軸又はスリップリングと接触要素とに接した、スリップ接触部を包囲する空間内に、オイル状の流体、特にエンジンオイル又はトランスミッションオイルを設けることができる。
【0031】
機械の他の好ましい実施形態は、装置請求項1に帰属する下位請求項の特徴の説明から得られる。
【0032】
軸及び/又はスリップリングを形成された、機械のロータ部分から電流を伝送するための接触装置の本発明に係る使用において、接触装置は、スリップ接触部を形成するために設けられた、接触要素のスリップ接触面と軸又はスリップリングのロータ接触面との間に電気的に導通するスリップ接触部を形成するための接触要素を有しており、スリップ接触面内に切り欠きが形成されており、接触要素は少なくとも部分的に、特に少なくともスリップ接触面の領域内で、オイル状の流体によって湿潤される。この使用の利点については、本発明に係る接触装置の利点説明を参照するよう指示する。使用の他の好ましい実施形態は、装置の請求項1に帰属する下位請求項の特徴の説明から得られる。
【0033】
他の特徴は、図面及び下位請求項との組合せにおいて、以下の図説明から明らかにされる。個々の特徴は単独で、又は互いに組み合わせて実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は第1の実施形態に基づく接触要素を有する軸を示している。
図2図2は第2の実施形態に基づく接触要素を有する軸を示している。
図3図3は第3の実施形態に基づく接触要素を有する軸を示している。
図4図4は接触要素の側面図を示している。
図5図5は第1の実施形態に基づく接触要素の平面図を示している。
図6図6図5に示す接触要素の縦断面図を示している。
図7図7は接触要素の第2の実施形態の縦断面図を示している。
図8図8は接触要素の第3の実施形態の縦断面図を示している。
図9図9は接触要素の第4の実施形態の縦断面図を示している。
図10図10は接触要素の第5の実施形態の縦断面図を示している。
図11図11は接触要素の第6の実施形態の平面図を示している。
図12図12は接触要素の第7の実施形態の平面図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、詳細には示されない機械の軸11に設けられた、同様に詳しく示されない接触装置の接触要素10の純粋に図式的な表示を示している。軸11は、同様に見ることのできない、オイル状の流体によって湿潤されており、かつ矢印12の方向に回転する。接触要素10は、スリップ接触面13を形成し、かつ、軸11の周面15によって形成されるロータ接触面14に添接している。スリップ接触面13とロータ接触面14が一緒になって、軸11と接触要素10の間のスリップ接触部16を形成し、それを介して軸11から電流を導き出すことができる。スリップ接触面13の内部に切り欠きが形成されており、それはここでは見ることができない。原理的に、記述するすべての実施形態において、ロータ接触面はスリップリングによって形成することができる。
【0036】
図2は、接触要素17を示しており、その接触要素が軸11に添接し、接触要素17の長手軸線18は軸11の回転軸線19に対して間隔Aで延びるように配置されている。そのようにして特に接触要素17にカッティングエッジ20が形成され、そのカッティングエッジによって周面15からオイル状の流体を掻き取ることができる。
【0037】
図3は、軸22に接する接触要素21を示しており、接触要素21は軸22の軸方向の端面23に接触する。接触要素21は、スリップ接触面24内に、ここでも詳しく示されない切り欠きを有している。
【0038】
図4は、接触要素25を示しており、この接触要素は実質的に炭素-金属-混合物、特にグラファイトと金属の混合物からなる。接触要素25の、スリップ接触面26を有する前方の領域27内には、金属として銀が設けられており、接触要素25の後方の領域28内には、金属として銅が設けられている。接触要素25の背面29において、接触要素25にストランド30が固定されている。スリップ接触面26の内部には、ここには詳しく示されない切り欠きが形成されている。
【0039】
図5と6を一緒に見ると、スリップ接触面32を有する接触要素31が示されており、そのスリップ接触面の内部に孔33が形成されており、その孔は接触要素31を貫通する通路34を形成している。孔33は、スリップ接触面32内に直径d1を形成し、その直径は、接触要素31の背面35における直径d2に相当する。したがって孔33は、接触要素31を通って同軸に延びている。
【0040】
図7は、接触要素36を示しており、その接触要素において通路37は円錐状に形成されている。スリップ接触面38内の直径d1は、接触要素36の背面35内の直径d2に比較して大きく形成されている。
【0041】
図8は、通路41を有する接触要素40を示しており、その通路は第1の孔42と第2の孔43から形成されている。第1の孔42は、直径d1を有する第2の孔43よりも比較的小さい直径d2を有している。
【0042】
図9は、スリップ接触面46内に止り孔45を有する接触要素44を示している。接触要素44の側面47には、他の止り孔48が形成されており、それが止り孔45を横切っている。このように形成された通路49を介して、オイル状の流体を側面47へ導出することが可能である。これは特に、接触要素44の背面50に、構造的理由から開口部を設けることができない場合に、有意義である。
【0043】
図10は、貫通孔52を有する接触要素51を示しており、その貫通孔は接触要素51の2つの側面53を接続する。スリップ接触面54内に2つの止り孔55が形成されており、それら2つが貫通孔52内へ連通している。したがって2つの通路56が形成される。
【0044】
図11は、スリップ接触面59内に孔58を有する接触要素57を示しており、ここでは平行な側面60が部分的に斜面61を備えて、接触要素57の横断面62に関して、円錐状に形成されている。スリップ接触面59にオイル状の流体が流着した場合に、この流体は少なくとも部分的に斜面61の領域内で側面60に沿って排出することができる。
【0045】
図12は、接触要素63を示しており、その接触要素においてスリップ接触面64に2つの孔65が形成されている。これら2つの孔65は、ここには図示されない軸の移動方向に対してスリップ接触面64の横軸線66上に位置している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】