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特表2024-500235抗血小板剤および水溶性マトリックス材料を含有する血液サンプラー
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-05
(54)【発明の名称】抗血小板剤および水溶性マトリックス材料を含有する血液サンプラー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
G01N33/48 K
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538720
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2021087289
(87)【国際公開番号】W WO2022136545
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20216444.8
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【弁理士】
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ハンスン,クレスチャン・メドム
(72)【発明者】
【氏名】ハンスン,トマス・スティーン
(72)【発明者】
【氏名】ブルクハルト,メラニー・アンドレア
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045BB34
2G045CA25
(57)【要約】
血液サンプラーが、開示される。血液サンプラーは、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリン、EP157((Z)-7-[(1R,2R,3R,4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)、FK-788(2-[[(6R)-6-(ジフェニルカルバモイルオキシメチル)-6-ヒドロキシ-7,8-ジヒドロ-5H-ナフタレン-1-イル]オキシ]酢酸)およびタプロステンならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される化合物を含む固体混合物を含有し、ここで、前記の化合物は、水溶性ポリマー材料および/または糖のマトリックス中で分散している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリン、EP157((Z)-7-[(1R,2R,3R,4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)、FK-788(2-[[(6R)-6-(ジフェニルカルバモイルオキシメチル)-6-ヒドロキシ-7,8-ジヒドロ-5H-ナフタレン-1-イル]オキシ]酢酸)およびタプロステンならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される化合物を含む固体混合物を含有する血液サンプラーであって、前記化合物が水溶性ポリマーおよび/または糖のマトリックス中に分散されている血液サンプラー。
【請求項2】
請求項1に記載の血液サンプラーであって、該血液サンプラーがシリンジ、毛細管、試験管およびキュベットから、例えばシリンジ、毛細管および試験管から選択される血液サンプラー。
【請求項3】
請求項1または2に記載の血液サンプラーであって、該水溶性ポリマーが、ポリエチレンオキシド(PEO)、PEO誘導体、ポロキサマー、ポロキサミン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートスクシネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(イソプロピルアクリルアミド)、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール(PEG)、PEO/ポリプロピレングリコールコポリマー、PEG修飾デンプン、酢酸ビニル-ビニルピロリドンコポリマー、ポリアクリル酸コポリマー、ポリメタクリル酸コポリマー、植物タンパク質、タンパク質加水分解物、高分子電解質、ポリビニルアルコール、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリエチレンイミン、ククルビト[n]ウリル水和物、無水マレイン酸コポリマー、ポリホスフェート、ポリホスファゼン、キサンタンガム、ペクチン、キトサン誘導体、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、セルロースエーテル、ヒアルロン酸、アルブミン、デンプンおよびデンプン誘導体ならびにそれらの混合物から選択される血液サンプラー。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、該水溶性ポリマーが、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースから選択される血液サンプラー。
【請求項5】
請求項3に記載の血液サンプラーであって、該水溶性ポリマーが、PVP、ヒプロメロースおよびそれらの混合物から選択される血液サンプラー。
【請求項6】
請求項3に記載の血液サンプラーであって、該水溶性ポリマーがPVPである血液サンプラー。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、該水溶性ポリマーが1000~450000Daの範囲、例えば2000~100000Daの範囲、例えば3000~60000Daの範囲の分子量を有する血液サンプラー。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される化合物を含む血液サンプラー。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、イロプロストまたはイロプロストの塩、好ましくはイロプロストの塩、例えばトロメタモール塩を含む血液サンプラー。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、該イロプロストが、イロプロストの8S、9S、11R、12S、16S-異性体である血液サンプラー。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、該固体混合物中に含まれる該化合物の量が、該固体混合物の0.01~20.0%(w/w)の範囲である血液サンプラー。
【請求項12】
請求項8に記載の血液サンプラーであって、該固体混合物中に含まれる該化合物の量が、該固体混合物の0.05~5.0%(w/w)の範囲、例えば該固体混合物の0.1~2.5%の範囲である血液サンプラー。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、該固体混合物がさらに緩衝材料を含む血液サンプラー。
【請求項14】
請求項13に記載の血液サンプラーであって、該緩衝材料がトリス緩衝剤である血液サンプラー。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、さらにヘパリンまたはその塩を含有する血液サンプラー。
【請求項16】
請求項15に記載の血液サンプラーであって、該ヘパリンまたはその塩が電解質平衡ヘパリンである血液サンプラー。
【請求項17】
請求項15および16のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、該ヘパリンまたはその塩が該水溶性ポリマー材料のマトリックスとは別である血液サンプラー。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、該固体混合物が、さらに該水溶性ポリマーのマトリックス中で分散した糖類を含み、好ましくは該糖類が、グルコース、ラフィノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルツロース、トレハロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される血液サンプラー。
【請求項19】
請求項1~18のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、該マトリックス材料が、水溶性ポリマーおよび全マトリックス材料の5重量%未満の糖類を含む血液サンプラー。
【請求項20】
請求項1~18のいずれか1項に記載の血液サンプラーであって、該マトリックス材料が、糖類および全マトリックス材料の5重量%未満の水溶性ポリマーを含む血液サンプラー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロスタサイクリン類似体を含む血液サンプラーに関する。プロスタサイクリン類似体は、水溶性ポリマー中に分散されており、それは、化合物を安定に保ち、血液試料と接触させた際のプロスタサイクリン類似体の十分な溶解および溶解速度を可能にする。
【背景技術】
【0002】
血液検査への迅速なアクセスは、急性疾患の診断および処置における頼みの綱である。酸素化状態および酸塩基平衡は、動脈血ガス(BG)分析によって決定され、救命救急における現代の根拠に基づく処置アルゴリズムの中心部分を構成する。さらに、救命救急検査に関して意図されたデバイスは、例えば電解質、腎機能(クレアチニン)、炎症(C反応性タンパク質)および心臓バイオマーカーの評価を可能にする。
【0003】
基礎代謝パネル(BMP)は、ある人の腎臓の状態ならびにそれらの電解質および酸/塩基平衡、ならびにそれらの血中グルコースレベル(その全てが人の代謝に関連している)をチェックするために使用される。それは、入院患者ならびに特定の既知の病気、例えば高血圧および低カリウム血症を有する人々をモニターするために用いられることもできる。
【0004】
さらに、白血球の数(WBC)は、いくつかの疾患に関する重要なバイオマーカーであり、差次的なWBCの数は、5つの異なるタイプの血液細胞(“5-diff”または“5-part diff”)、すなわち好中球、リンパ球、単球、好酸球および好塩基球さえも識別することができる。あるいは、WBCは、顆粒球(一群として報告される好中球、好塩基球および好酸球)、リンパ球および単球に識別されることができる(“3-diff”あるいは“3-part diff”)。それぞれが、百分率として報告される。百分率における変化は、病的な状態を示している可能性がある。
【0005】
さらに、血小板(栓球とも呼ばれる)は、別のパラメーターとして計数されることができる。血小板は、正常な凝血に不可欠である細胞の小さい断片である。血小板数は、血塊形成に関する問題を引き起こし得る様々な疾患および病気に関してスクリーニングする、またはそれらを診断するために使用されることができる。それは、少し例を挙げるだけでも出血性障害、骨髄疾患または過剰凝血障害の精密検査の一部として使用されることができる。
【0006】
その検査は、基礎となる病気を有する、または血小板に影響を与えることが知られている薬物による処置を受けている人々に関するモニタリングツールとして使用されることができる。それは、血小板障害に関して処置されている人をモニターして療法が有効であるかどうかを決定するために使用されることもできる。
【0007】
しかし、血液試料は、通常は上記のパラメーターの診断的測定のために異なる方法で調製されなければならない。例えば、BGおよびBMPパラメーターの分析に関して、標準的な抗凝固剤は、ヘパリンである。ヘパリンは、血液凝固を防ぐが、それは、血小板(栓球)の活性化および凝集を防がず、それは、血小板凝集体の形成につながる。従って、ヘパリンは、最近では、WBC、血小板の計数、3分類(3-diff)または5分類(5-diff)、赤血球(RBC)濃度、ヘマトクリット、ヘモグロビン濃度およびRBC記述的パラメーターを含む全血球計算(CBC)分析には使用されない。ヘパリン処理された血液中の測定された血小板数は、特に単一の血小板と凝集した血小板の塊を識別することができない現状技術の自動血液学分析装置を使用する場合には、少なく見積もられるであろう。代わりに、血小板凝集体は、血液学分析装置により間違って白血球と分類される可能性があり、従って間違って高いWBC数が得られ、それは結果として欠陥のある診断またはフラグおよびエラーメッセージをもたらして結果を使用不能にする可能性がある。
【0008】
エチレンジアミン四酢酸(EDTA)は、二ナトリウム、二カリウムまたは三カリウム塩のいずれかで血液学において一般的に使用される別の標準的な抗凝固剤である。EDTAの使用は、一般に全血球計算値を得るために安全かつ信頼性が高いと認められている。加えて、EDTA塩類は、血液塗抹標本の標準的な染色プロトコルと適合可能であり、すなわちそれに干渉しない。EDTA依存性の偽性血小板減少症に関する問題が発生した場合、シトレートが代替の抗凝固剤として使用される。
【0009】
しかし、EDTAまたはシトレートは、これらの抗凝固剤が電解質の測定に強く干渉するため、BGおよびBMPのパラメーター分析には使用されることができない。例えば、EDTAおよびシトレートは、Ca2+と複合体を形成し、そうしてCa2+の測定に干渉し、これらの抗凝固剤は、自動分析装置のカルシウムセンサーを破壊する可能性さえある。
【0010】
以前には、血液学分析および特にCBCは、EDTAまたはシトレートで抗凝固処置された血液試料に対して実施され、ヘパリン処理された血液試料に対しては実施されなかった。結果として、CBC、BGおよびBMPパラメーターの包括的分析は、別々の装置で別々の異なる方法で抗凝固処置された血液試料を用いて実施される必要があった。
【0011】
国際公開第2019/096598号は、抗凝固剤、例えばヘパリンと抗血小板剤、例えばイロプロストを組み合わせた血液試料を調製するための方法を開示している。この組み合わせは、BG、BMPおよび血小板数の“3-in-1”分析ならびにWBC(またはCBC)計数を可能にする。
【0012】
国際公開第2020/229580号はさらに、血液試料が低温のようなストレスに晒されている場合でさえもそのような方法が実施されることができることを開示している。
日本特許H01 280466号は、ポリアクリルアミドをプロスタサイクリンと一緒に有機溶媒中で重合させ、得られた粒子を乾燥させ、次いでその乾燥した粒子を有機溶媒中のポリマー溶液中で分散させ、ポリマーのフィルムを得るまで乾燥させておくことによる抗血小板剤プロスタサイクリンの配合物の調製を開示している。そのポリマーは、水溶性ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2019/096598号
【特許文献2】国際公開第2020/229580号
【特許文献3】日本特許H01 280466号
【発明の概要】
【0014】
従って、診断測定のための血液試料を調製するための新しいアプローチに関する必要性が、存在する。
イロプロストのような抗血小板剤および/またはヘパリンのような抗凝固剤を上記で論じられた方法のような方法ですぐに使用できる血液サンプラーに含めることができれば、有利であろう。
【0015】
いくつかのプロスタサイクリン類似体(プロスタグランジン類似体と呼ばれることもある)は、抗血小板活性を有する。しかし、それらは典型的にはにあまり安定ではない。一例として、イロプロストは吸入溶液としてVentavis(登録商標)という商標名の下で販売されており、それは、肺高血圧症の処置に関して承認されている。欧州医薬品庁は、イロプロストを温度、光および酸性の条件に敏感であると特性付けている。分解生成物は、主に2つのイロプロスト分子の付加によって形成される二量体エステルである。
【0016】
従って、プロスタサイクリン類似体、例えばイロプロストを既知の分解を防止するかまたは遅延させる一方で血液試料への曝露の際にプロスタサイクリン類似体の十分に急速な溶解も可能にする方法で血液サンプラーに含有させる必要性が存在する。
【0017】
この必要性は、本発明によって満たされ、それは、一側面において、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリン、EP157((Z)-7-[(1R,2R,3R,4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)、FK-788(2-[[(6R)-6-(ジフェニルカルバモイルオキシメチル)-6-ヒドロキシ-7,8-ジヒドロ-5H-ナフタレン-1-イル]オキシ]酢酸)およびタプロステン(taprostene)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される化合物を含む固体混合物を含有する血液サンプラーに関し、ここで、前記の化合物は、水溶性のポリマーおよび/または糖のマトリックス中に分散させられている。
【0018】
さらなる側面において、本発明は、血液試料中のアルブミン、アルカリホスファターゼ、乳酸脱水素酵素、アラニントランスアミナーゼ、アスパラギン酸トランスアミナーゼ、アミラーゼ、リパーゼ、総コレステロール、高密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質、トリグリセリド、甲状腺刺激ホルモン、トロポニン、クレアチンキナーゼ、ミオグロビン、D二量体、脳性ナトリウム利尿ペプチドのN末端プロホルモン(NT-proBNP)、プロカルシトニン(PCT)、C反応性タンパク質(CRP)、ベータ-ヒト絨毛性ゴナドトロピン、CBC、BGおよびBMPパラメーターを測定するための本発明に従う血液サンプラーの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、イロプロスト、PVPおよびトリスの混合物を調製した試験管を、-18℃、5℃、室温または32℃で開放管または閉鎖管として保管し、管の製造時(時間0、t0)の濃度と比較した相対イロプロスト濃度結果を示す。
図2図2は、管製造時(時間0)のイロプロスト濃度と比較した相対イロプロスト濃度を、イロプロスト/PVP/トリススプレーされた採血管に関して、32℃の温度でおおよそ1週間、1ヶ月間および2ヶ月間開放または閉鎖のどちらかで保管したイロプロスト/トリスおよびイロプロスト(非配合)と比較した結果を示す。
図3図3は、イロプロストの迅速な溶解を達成することに対するイロプロスト配合物の作用を示す。
図4図4は、イロプロストの溶解速度に対する異なる水溶性ポリマーの作用を示す。
図5図5は、イロプロスト配合物に使用される糖類の乾燥配合イロプロストの溶解速度への作用を示す。
図6図6は、イロプロスト配合物において使用されるポリマーおよび糖混合物の乾燥配合イロプロストの溶解速度への作用を示す。
図7図7は、乾燥配合されたベラプロストナトリウム、イロプロストおよびトレプロスチニルの溶解速度を示す。
図8図8は、抗血小板剤イロプロスト、ベラプロストナトリウムおよびトレプロスチニルを有する管に引き出された血液について全血試料の血液分析結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
定義
本発明の文脈において、用語“血液サンプラー”は、血液の収集のためのデバイス、例えばシリンジ、毛細管または試験管、例えば吸引サンプラーまたは自己吸引サンプラー、例えばPICO(商標)シリンジ(Radiometer Medical ApS)、真空試験管または血液サンプリングに指定された類似のデバイスを意味することが意図されている。一態様において、血液サンプラーは、血液の収集のためのデバイスである。さらなる態様において、血液サンプラーは、シリンジ、毛細管、試験管およびキュベットから選択される。なおさらなる態様において、血液サンプラーは、シリンジ、毛細管、および試験管から選択される。
【0021】
本明細書において用いられる際、用語“抗凝固剤”は、血液の凝固、すなわちフィブリン重合、従ってフィブリン塊の形成につながる凝固カスケードを防止または低減する物質を意味する。抗凝固剤は、それによって最初の血小板凝集後の凝血因子による凝固カスケードを阻害することによって、凝血時間を延長する。
【0022】
本明細書で使用される際、用語“抗血小板剤”は、血小板凝集を減少させる、および/または血栓形成を阻害する物質、すなわち血液凝固の最初の血小板凝集を阻害する物質を意味する。従って、抗血小板剤は、フィブリン線維、他の細胞外マトリックス構成要素に接着するかまたは凝集して血小板凝集体になることができる活性化された血小板をもたらす血小板活性化カスケードに干渉する。凝固カスケードおよび血小板凝集カスケードは、たとえ一部のタンパク質、例えばトロンビンが両方のカスケードにおいて役割を果たし得るとしても、2つの別々のカスケードであることが、強調される。抗血小板薬は、血小板活性化に関与するプロセスを可逆的または不可逆的に阻害することができ、その結果、血小板が互いに、および損傷した血管内皮に、または例えば血液サンプラー材料のような異物表面に付着する傾向が減少する。抗血小板剤の例は、イロプロストである。イロプロストは6個の不斉炭素原子を有し、そのうちの5個は、天然のプロスタサイクリン中のものと共通である。従って、分子の立体配置は、すなわち8S、9S、11R、12Sおよび15Sである。C16のメチル基は、2つの異性体:16Rおよび16Sを生じさせる。従って、イロプロストは、2つの光学活性なジアステレオ異性体からなる。イロプロストはまた、炭素-炭素二重結合の2つの定義された立体配置5Eおよび13Eを含有する-この立体特異的形成は、プロスタサイクリン化学において一般的である。別の例は、エポプロステノールとも呼ばれるプロスタサイクリン自体である。
【0023】
本明細書で使用される際、用語“血液試料”又は“血液分析試料”は、診断または分析目的に適した血液の試料を指す。従って、血液試料は、比較的少量の血液(20pL~10mLの血液)を含み、すなわち、例えば、献血に必要とされる量(約450mLに及ぶ血液)を含まない。“BGおよびBMPパラメーター分析および血小板計数に適した血液試料”は、血液試料がBG、BMPパラメーターの決定、ならびに血小板計数の実施における使用に適していることを意味し、ここで、抗凝固剤および/または抗血小板剤は、パラメーターの1つの決定に干渉しないかまたは少なくとも実質的には干渉しない。
【0024】
本発明の文脈において、用語“糖”は、単、ニまたは三糖を指す。本発明の文脈における糖類の例は、グルコース、ラフィノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルツロースおよびトレハロースを含む。
【0025】
本発明の文脈において、用語“マトリックス材料”は、マトリックスを形成するために使用される材料を指し、ここで、抗血小板剤が分散される。マトリックス材料は、水溶性ポリマー、糖、または両方であることができる。
【0026】
本明細書においてポリマーの分子量に言及する場合、他に何も明記されない限り、重量平均分子量を指す。
水溶性ポリマー
固体混合物の水中での可溶性は、血液試料に関するその意図された使用の観点から有利である。多数の水溶性ポリマーが、例えば錠剤等のための賦形剤のような医薬的適用において知られている。これらは化学的に不活性であり、プロスタサイクリンまたはその類似体のような有効化合物に干渉しない。本発明における使用に適した既知の水溶性ポリマーとしては、ポリエチレンオキシド(PEO)、PEO誘導体、ポロキサマー、ポロキサミン、ポリビニルピロリドン(PVP)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、フタル酸ヒプロメロース、ヒプロメロースアセテートスクシネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(イソプロピルアクリルアミド)、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール(PEG)、PEO/ポリプロピレングリコールコポリマー、PEG修飾デンプン、酢酸ビニル-ビニルピロリドンコポリマー、ポリアクリル酸コポリマー、ポリメタクリル酸コポリマー、植物タンパク質、タンパク質加水分解物、高分子電解質、ポリビニルアルコール、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリエチレンイミン、ククルビト[n]ウリル水和物、無水マレイン酸コポリマー、ポリホスフェート、ポリホスファゼン、キサンタンガム、ペクチン、キトサン誘導体、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、セルロースエーテル、ヒアルロン酸、アルブミン、ならびにデンプンおよびデンプン誘導体が挙げられる。従って、一態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PEO誘導体、ポロキサマー、ポロキサミン、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、フタル酸ヒプロメロース、ヒプロメロースアセテートスクシネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(イソプロピルアクリルアミド)、ポリアクリルアミド、PEG、PEO/ポリプロピレングリコールコポリマー、PEG修飾デンプン、酢酸ビニル-ビニルピロリドンコポリマー、ポリアクリル酸コポリマー、ポリメタクリル酸コポリマー、植物タンパク質、タンパク質加水分解物、高分子電解質、ポリビニルアルコール、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリエチレンイミン、ククルビト[n]ウリル水和物、無水マレイン酸コポリマー、ポリホスフェート、ポリホスファゼン、キサンタンガム、ペクチン、キトサン誘導体、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、セルロースエーテル、ヒアルロン酸、アルブミン、デンプンおよびデンプン誘導体、ならびにそれらの混合物から選択される。さらなる態様において、水溶性ポリマーは、PEO、ポロキサマー、ポロキサミン、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、フタル酸ヒプロメロース、ヒプロメロースアセテートスクシネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ(イソプロピルアクリルアミド)、ポリアクリルアミド、PEG、PEO/ポリプロピレングリコールコポリマー、酢酸ビニル-ビニルピロリドンコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリ(2-オキサゾリン)、ポリホスフェート、ポリホスファゼン、キサンタンガム、ペクチン、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、セルロースエーテル、ヒアルロン酸、デンプンおよびデンプン誘導体ならびにそれらの混合物から選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、PEG、PEO/ポリプロピレングリコールコポリマー、ポリビニルアルコール、ポリホスフェート、キサンタンガム、ペクチン、デキストラン、カラギーナン、グアーガム、デンプンおよびデンプン誘導体ならびにそれらの混合物から選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコール、キサンタンガム、グアーガム、デンプンおよびデンプン誘導体ならびにそれらの混合物から選択される。別の態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物から選択される。さらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロースおよびそれらの混合物から選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロースおよびそれらの混合物から選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PVPである。
【0027】
水溶性ポリマーは、典型的には多くの異なる分子量で入手可能であり、より低い分子量は、典型的にはより高い水溶性およびより速い溶解を有する。一態様において、水溶性ポリマーは、1000~450000Daの範囲の分子量を有する。さらなる態様において、水溶性ポリマーは、2000~100000Daの範囲の分子量を有する。さらなる態様において、水溶性ポリマーは、3000~60000Daの範囲の分子量を有する。
【0028】
プロスタサイクリン類似体
プロスタサイクリンおよびその類似体は、一次止血(血餅形成の一部)に関与する血小板血栓の形成を防止する。それらは、血小板活性化を阻害することによってこれを行う。それらは、有効な血管拡張剤でもある。本発明の文脈では、プロスタサイクリン類似体は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリン、EP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)、FK-788(2-[(6R)-6-(ジフェニルカルバモイルオキシメチル)-6-ヒドロキシ-7、8-ジヒドロ-5H-ナフタレン-1-イル]オキシ]酢酸)およびタプロステンを含む。これらの化合物は、遊離酸の形態であることも、その塩の形態であることもできる。さらに、それらは様々な立体異性形態で存在する。従って、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリン、EP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)、FK-788(2-[(6R)-6-(ジフェニルカルバモイルオキシメチル)-6-ヒドロキシ-7、8-ジヒドロ-5H-ナフタレン-1-イル]オキシ]酢酸およびタプロステンならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される。
【0029】
一態様において、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される。さらなる態様において、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロストおよびカルバサイクリンならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される。なおさらなる態様において、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される。
【0030】
別の態様において、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロストまたはイロプロストの塩である。さらに別の態様において、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロストの塩、例えばトロメタモール塩である。さらに別の態様において、イロプロストは、イロプロストの8S、9S、11R、12S、16S-異性体である。
【0031】
当業者は、プロスタサイクリン類似体の量は血液サンプラー中に装填されるべき血液試料に対してその抗血小板作用を発揮するのに十分な量であるべきであることを理解するであろう。当業者は、さらに、実用的な適用において、プロスタサイクリン類似体の量が経済的考慮のために制限されるであろうことを理解するであろう。さらに、特定の理論に束縛されるものではないが、高すぎる濃度を回避する量は、イロプロストに関して知られている二量体エステルのような分解生成物を回避するのに役立つであろう。一態様において、イロプロストまたはその塩のような固体混合物中に含まれる化合物の量は、固体混合物の0.01~20.0%(w/w)の範囲である。さらなる態様において、イロプロストまたはその塩のような固体混合物中に含まれる化合物の量は、固体混合物の0.05~5.0%(w/w)の範囲、例えば固体混合物の0.1~2.5%の範囲、例えば固体混合物の0.2~1.5%の範囲である。別の態様において、イロプロストまたはその塩のような固体混合物中に含まれる化合物の量は、固体混合物の0.5~10.0%(w/w)の範囲、例えば固体混合物の0.7~4.0%の範囲である。
【0032】
抗凝固薬
上記で論じられたように、“3-in-1”の方法は、抗血小板剤に加えて抗凝固剤の使用を含む。抗凝固剤は、血液サンプラーに含まれることができ、またはそれは別に添加されることもできる。従って、一態様において、血液サンプラーは、さらに抗凝固剤を含む。さらなる態様において、血液サンプラーに含まれる抗凝固剤は、水溶性ポリマー材料のマトリックスとは別個である。
【0033】
多くの抗凝固剤が、当業者に知られている。これらは、ヘパリネート類およびヘパリノイド類を含む。ヘパリネート類は、ヘパリン、例えば未分画ヘパリン、高分子量ヘパリン(HMWH)、ベミパリンを含む低分子量ヘパリン(LMWH)、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、パルナパリン(pamaparin)、レビパリン、チンザパリン;およびオリゴ糖、例えばフォンダパリヌクスおよびイドラパリヌクスを含む。ヘパリノイド類は、ダナパロイド、デルマタン硫酸およびスロデキシドを含む。一態様において、抗凝固剤は、ヘパリン、例えば未分画ヘパリン、高分子量ヘパリン(HMWH)、ベミパリンを含む低分子量ヘパリン(LMWH)、セルトパリン、ダルテパリン、エノキサパリン、ナドロパリン、パルナパリン(pamaparin)、レビパリン、チンザパリン;ならびにオリゴ糖、例えばフォンダパリヌクスおよびイドラパリヌクスならびにそれらの塩類から選択されるヘパリネートである。別の態様において、抗凝固剤は、ヘパリンを含む。
【0034】
ヘパリンは、血栓症をもたらすプロセスである凝固を阻害する天然に存在する多糖である。天然ヘパリンは、様々な長さまたは分子量の分子鎖からなる。それは、抗凝固薬(血液シンナー)としても使用されている。それは、酵素阻害剤アンチトロンビンIII(AT)に結合し、その反応部位ループの柔軟性の増加を通してその活性化をもたらす立体構造変化を引き起こす。活性化されたATは、次いでトロンビン、第Xa因子および他のプロテアーゼを不活性化する。
【0035】
一態様において、抗凝固剤は、電解質平衡ヘパリン(“平衡ヘパリン”とも呼ばれる)である。ヘパリンは、正に荷電した電解質に結合することが知られており、これは、電解質測定に干渉し得る。電解質平衡ヘパリンの配合物は、ヘパリンのリチウム、亜鉛、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムおよび/またはアンモニウム塩を含むことができる。さらなる態様において、電解質平衡ヘパリンは、ヘパリンのナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩および/またはマグネシウム塩を含む。
【0036】
別の態様において、ヘパリンは、ヒトヘパリン、豚ヘパリンまたは合成ヘパリンである。さらに別の態様において、ヘパリンは、豚ヘパリンである。さらなる態様において、抗凝固剤は、未分画ヘパリンである。
【0037】
一態様において、抗凝固剤は、“液体ヘパリン”とも呼ばれる液体形態または例えば乾燥平衡ヘパリンのような乾燥形態であり得る。抗凝固剤の乾燥形態の一例は、凍結乾燥された抗凝固剤、例えば凍結乾燥されたヘパリンまたは凍結乾燥された平衡ヘパリンである。さらなる態様において、抗凝固剤は、凍結乾燥形態である。
【0038】
緩衝剤及び糖類
本発明によるプロスタサイクリン類似体の一部は、特定のpH条件に感受性である。一例として、イロプロストは、酸性pHに感受性である。従って、ある場合には、緩衝剤を固体混合物に添加することが有益であり得る。従って、一態様において、固体混合物は、緩衝材料をさらに含む。さらなる態様において、緩衝材料は、トリス緩衝剤である。
【0039】
多くの異なる緩衝剤が、利用可能であり、0~14の正常範囲内のほとんどのpH値は、緩衝剤を用いて達成され得る。ある場合には、例えばイロプロストの場合、アルカリ性pHを提供する緩衝剤が、有益である。従って、一態様において、緩衝剤は、7.5~12.0の範囲のpHを提供する。さらなる態様において、緩衝剤は、7.6~11.0の範囲のpHを提供する。なおさらなる態様において、緩衝剤は、7.7~10.0の範囲のpHを提供する。なおさらなる態様において、緩衝剤は、7.8~9.5の範囲のpHを提供する。別の態様において、緩衝剤は、7.9~9.0の範囲のpHを提供する。
【0040】
いかなる理論にも拘束されるものではないが、一部のプロスタサイクリン類似体は、固体混合物中に糖を含めることによって、安定性の増加から利益を得ることができることが、さらに企図される。従って、一態様において、固体混合物は、さらに水溶性ポリマーのマトリックス中に分散された糖を含む。別の態様において、糖は、グルコース、ラフィノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルツロース、トレハロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される。さらに別の態様において、糖は、グルコース、ラフィノース、スクロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0041】
糖は、それ自体で水溶性マトリックスをもたらす可能性があり、本明細書で定義される水溶性ポリマーと同様のレベルでの溶解度の増大を提供する可能性があることも、見出されている。従って、一側面において、本発明は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリン、EP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)、FK-788(2-[(6R)-6-(ジフェニルカルバモイルオキシメチル)-6-ヒドロキシ-7、8-ジヒドロ-5H-ナフタレン-1-イル]オキシ]酢酸およびタプロステンならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される化合物を含む固体混合物を含有する血液サンプラーに関し、ここで、前記の化合物は、糖のマトリックス中に分散している。一態様において、糖は、グルコース、ラフィノース、ガラクトース、フルクトース、キシロース、スクロース、ラクトース、マルトース、イソマルツロース、トレハロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される。別の態様において、糖は、グルコース、ラフィノース、スクロースおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
一態様において、マトリックス材料は、糖および全マトリックス材料の5重量%未満、例えば全マトリックス材料の2重量%未満、例えば全マトリックス材料の1重量%未満の水溶性ポリマーを含む。別の態様において、マトリックス材料は、糖のみを含み、水溶性ポリマーを含まない。
【0043】
さらなる態様において、マトリックス材料は、水溶性ポリマーおよび全マトリックス材料の5重量%未満、例えば、全マトリックス材料の2重量%未満、例えば、全マトリックス材料の1重量%未満の糖を含む。なおさらなる態様において、マトリックス材料は水溶性ポリマーのみを含み、糖を含まない。
【0044】
さらに別の態様において、マトリックス材料は、水溶性ポリマーおよび糖の両方を含む。さらなる態様において、マトリックス材料は、70:30~30:70の重量比で、例えば重量比60:40~40:60で、例えば重量比50:50で水溶性ポリマーおよび糖を含む。
【0045】
さらなる態様
上記で論じられた本発明の特徴のそれぞれに関して、特定の態様が開示される。本発明は、これらの態様の組み合わせに向けられ得ることが、さらに企図される。従って、一態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される。さらなる態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0046】
別の態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロースおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロースおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロースおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0047】
さらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0048】
別の態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物中に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から固体混合物の0.05~5.0重量%の範囲の量で選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.05~5.0重量%の範囲の量で選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、固体混合物の0.05~5.0重量%の範囲の量のイロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0049】
さらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロースおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.05~5.0重量%の範囲の量で選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロースおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.05~5.0重量%の範囲の量で選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロースおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、固体混合物の0.05~5.0重量%の範囲の量のイロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0050】
別の態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物中に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.05~5.0重量%の範囲の量で選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、およびトレプロスチニル、ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.05~5.0重量%の範囲の量で選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、固体混合物の0.05~5.0重量%の範囲の量のイロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0051】
さらなる態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.1~2.5重量%の範囲の量で選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコール、およびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.1~2.5重量%の範囲の量で選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、固体混合物の0.1~2.5重量%の範囲の量のイロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0052】
さらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロース、およびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.1~2.5重量%の範囲の量で選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロース、およびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.1~2.5重量%の範囲の量で選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロースおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、固体混合物の0.1~2.5重量%の範囲の量のイロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0053】
別の態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.1~2.5重量%の範囲の量で選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.1~2.5重量%の範囲の量で選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、固体混合物の0.1~2.5重量%の範囲の量のイロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0054】
別の態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.2~1.5重量%の範囲の量で選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.2~1.5重量%の範囲の量で選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PEO、PVP、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース、PEG、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、固体混合物の0.2~1.5重量%の範囲の量のイロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0055】
さらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロース、およびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.2~1.5重量%の範囲の量で選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロースおよびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.2~1.5重量%の範囲の量で選択される。なおさらなる態様において、水溶性ポリマーは、PVP、ヒプロメロース、およびそれらの混合物から選択され、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、固体混合物の0.2~1.5重量%の範囲の量のイロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0056】
別の態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロスト、トレプロスチニル、シカプロスト、カルバサイクリンおよびEP 157((Z)-7-[(1R、2R、3R、4S)-3-[(Z)-ベンズヒドリルオキシイミノメチル]-2-ビシクロ[2.2.2]オクタ-5-エニル]ヘプタ-5-エン酸)ならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.2~1.5重量%の範囲の量で選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、イロプロスト、ベラプロストおよびトレプロスチニルならびにそれらのあらゆる立体異性体および塩類から、固体混合物の0.2~1.5重量%の範囲の量で選択される。さらに別の態様において、水溶性ポリマーは、PVPであり、本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物に含まれる化合物は、固体混合物の0.2~1.5重量%の範囲の量のイロプロストまたはイロプロストの塩である。
【0057】
固体混合物の調製
本発明による血液サンプラーに含有される固体混合物は、化合物および水溶性ポリマーを水またはエタノールのような適切な溶媒中で溶解させ、攪拌し、溶液を乾燥させることによって調製されることができる。固体混合物はまた、化合物および水溶性ポリマーを含有する溶液のスプレー乾燥によって調製されることもできる。特に有用なスプレー乾燥技術は、超音波スプレーコーティングである。超音波スプレーコーティングでは、液体の霧化を生成するために超音波が使用される。スプレーミストをノズルから離れて所望の表面に向けるために、小さな空気流が使用される。非常に少量の液体が、再現可能な方法で適用されることができる。この技術は、管およびシリンジのような血液サンプラーの内面をスプレーコーティングするのに有用である。スプレーノズルは、血液サンプラー中に入り、ノズルがサンプラーから引き出される際にスプレーする。霧化されたスプレーは、従来の圧力駆動霧化よりも狭い液滴サイズ分布を有し、それは、スプレーの再現性を増大させる。超音波スプレーコーティング装置は、とりわけSono-Tek社から入手可能である(例えばExactaCoat(登録商標)コーティングシステム)。
【実施例
【0058】
溶液の調製
A.酢酸メチル中の5mg/mLのイロプロスト溶液(例えばCayman Chemical)の1mLを25mLのメスフラスコ中でエタノールで希釈し、0.2mg/mLの溶液濃度を得る。
【0059】
B.25mMトリス溶液は、0.07571gのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Merck番号1.08382.0500)を25mLのメスフラスコ中でMilli-Q水に溶解させることにより作製される。
【0060】
C.PVP-トリス溶液は、50mLのメスフラスコ中で1.166gのPVP-10(例えばMerck(Mw 10,000))をおおよそ35mLのMilli-Q水中で溶解させ、7.292mLの25mMトリス溶液(B)を添加し、50mLのマークまでMilli-Q水を充填することにより作製される。
【0061】
D.最終溶液は、1442μLのイロプロスト溶液(A)を1224μLのPVP-トリス溶液(C)と混合することによって作製される。
他のマトリックスポリマーおよび糖類を試験する場合、PVPは、PVP-トリス溶液(C)中で質量基準で置換される。ポリマーおよび糖類の混合物に関して、等体積のポリマー-トリスおよび糖-トリス溶液(それぞれ612μL)をPVP-トリス溶液の代わりに用いる。水溶性ポリマーに関して、以下の製品が使用されていた:HPMC(Merck,製品番号H8384)、PVP(Mw 10’000)、Kolliphor P407(Merck,製品番号62035)、PEG 10’000(Merck,製品番号92897)、PEG 35’000(Merck,製品番号81310)およびPVP 40’000(Merck,製品番号PVP 40)。糖に関しては、以下の製品が使用されていた:D-(-)-フルクトース(Merck、製品番号F3510)、D-(+)-ガラクトース(Merck、製品番号G5388)、グルコース(Merck)、ラフィノース(Merck、製品番号R0514)およびスクロース(Merck、製品番号S7903)。
【0062】
他の抗血栓剤を試験する場合、同じモル濃度を達成するように溶液Aに対する置換がなされる。ベラプロストナトリウム(例えばMerck)は、まず生理食塩水中で10mM溶液に希釈され、次いで水中30%エタノールでさらに希釈され、A中のイロプロストと同じモル濃度の溶液を得る。トレプロスチニル(例えばMerck)は、直接エタノール中で溶解させられる。
【0063】
最終溶液(D)10μLを採血管に添加し、それを乾燥させ、3mLのMilli-Q水を添加することは、理論的に1000nMのイロプロスト濃度を与える。
【0064】
管の調製
3mLの採血管(無添加管、Greiner Bio-one、参照番号454001)を試験に使用した。
【0065】
保管安定性および全血安定化試験のために、超音波スプレーのためにSono-Tek製のExactaCoatを使用して、管にそれぞれ10μLの混合物(D)をスプレーした。静脈穿刺による血液の引き出しの間に3mLの全血の充填を可能にするように、スプレー後に管を排気した。
【0066】
溶解試験のために、10μLの溶液混合物(D)を採血管中にピペットで入れ、少なくとも一夜放置して乾燥させた。
【0067】
溶解試験
2mm×7mmの丸みを帯びたPTFEコーティングされた磁石を各採血管に添加し、次いでそれを920rpmで磁気撹拌機上のホルダー中に垂直に置いた。時間0において、3mLのMilli-Q水を添加し、時間10秒、60秒、および300秒において、100μLを採血管から取り出し、イロプロスト濃度を、HPLC-MSで標準曲線と比較して決定した。ベラプロストおよびトレプロスチニルは、イロプロストの標準曲線と比較され、従ってベラプロストおよびトレプロスチニルの濃度は、推定値にすぎない。
【0068】
実施例1-保管安定性
それらを試験環境に曝露する前に、閉鎖管を閉鎖し、開放管をMilli-Q水中のNaClの飽和溶液と一緒にエキシケーター(exicator)中でそれらの蓋と一緒に保管し、75% RH雰囲気(-18℃を除く)を得て、示された温度で保管した。示された保管時間に、3mLのMilli-Q水を各管に添加した。管を少なくとも3回回転または振盪して、少なくとも10分の間、適切な溶解を確実にした。イロプロストの濃度を、1nM~1500nMのイロプロストの標準溶液から作成した曲線と比較して、HPLC-MSで測定した。
【0069】
イロプロスト、PVPおよびトリスの混合物に関して上記のように調製した試験管を、-18℃、5℃、室温または32℃で開放管または閉鎖管として保管した。管の製造時(時間0、t0)の濃度と比較した相対イロプロスト濃度を、おおよそ1週間、1ヶ月、2ヶ月および3ヶ月後に測定した。
【0070】
結果を図1に示す。それらは、安定性は-18℃で最も高いこと、しかし特に閉鎖管では32℃でもかなり高いことを示している。
管製造時(時間0)のイロプロスト濃度と比較した相対イロプロスト濃度も、イロプロスト/PVP/トリススプレーされた採血管に関して、32℃の温度でおおよそ1週間、1ヶ月間および2ヶ月間開放または閉鎖のどちらかで保管したイロプロスト/トリスおよびイロプロスト(非配合)と比較して決定した。結果を図2に示す。それらは、PVPマトリックスにより安定性が高まっていることおよびトリスも安定性に寄与していることを示している。
【0071】
実施例2-マトリックスありおよびなしでの溶解速度
イロプロストの迅速な溶解を達成することに対するイロプロスト配合物の作用を試験した。採血管中のイロプロスト/トリスおよびイロプロストに対する乾燥配合されたイロプロスト/PVP(10’000)/トリスから抽出されたイロプロスト濃度を決定した。イロプロスト濃度は、n=4の複製管の10秒、1分および5分の抽出時間で決定された。結果を図3に示す。それらは、PVPマトリックスでは溶解速度が著しく増大することを実証している。
【0072】
実施例3-異なるポリマーでの溶解速度
イロプロストの溶解速度に対する異なる水溶性ポリマーの作用を試験した。乾燥配合されたイロプロスト/ポリマー/トリスを有する管から抽出されたイロプロスト濃度を、ポリマーHPMC、PVP(Mw 10’000;IloPVPTrisと標識した)、Kolliphor P407、PEG 10’000、PEG 35’000およびPVP 40’000に関して決定した。イロプロスト濃度を、n=4の複製管の10秒、1分および5分の抽出時間に関して決定した。
【0073】
結果を図4に示す。それらは、異なる分子量のPVPポリマーが同等に十分に機能することを実証している。それらはさらに、HPMCのようなセルロース誘導体が同様のレベルの溶解を提供することを実証している。
【0074】
実施例4-異なる糖での溶解速度
イロプロスト配合物に使用される糖類の乾燥配合イロプロストの溶解速度への作用を試験した。乾燥配合イロプロスト/糖/トリスを有する管から抽出したイロプロスト濃度を、糖フルクトース(IloFruTris)、ガラクトース(IloGalTris)、グルコース(IloGluTris)、ラフィノース(IloRafTris)およびスクロース(IloSucTris)に関して決定した。n=3または4複製管の10秒、1分および5分の抽出時間に関してイロプロスト濃度を決定した。
【0075】
結果を図5に示す。それらは、糖類自身が水溶性ポリマーを用いて得られた溶解と類似した溶解を達成し得ることを実証している。
イロプロスト配合物において使用されるポリマーおよび糖混合物の乾燥配合イロプロストの溶解速度への作用も試験した。乾燥配合イロプロスト/ポリマー+糖混合物/トリスを用いて管から抽出されたイロプロスト濃度を、PVP(10’000)およびグルコース混合物(IloPVPGluTris)ならびにPVP(10’000)およびラフィノース混合物(IloPVPRafTris)に関して決定した。イロプロスト濃度を、n=3複製管の10秒、1分および5分の抽出時間に関して決定した。
【0076】
結果を図6に示す。それらは、PVPの半分をグルコースまたはラフィノースのどちらかで置き換えることは類似の溶解を提供することを実証している。
【0077】
実施例5-他の抗血小板剤の溶解速度
乾燥配合されたベラプロストナトリウム、イロプロストおよびトレプロスチニルの溶解速度を試験した。乾燥配合された抗血小板剤ベラプロスト(BerPVPTris)、イロプロスト(IloPVPTris)およびトレプロスチニル(TrePVPTris)を有する管から抽出された抗血小板剤濃度(イロプロスト濃度標準曲線から推定された)を決定した。濃度は、n=4または5複製管の10秒、1分および5分の抽出時間に関して決定された。
【0078】
結果を図7に示す。それらは、ベラプロストおよびトレプロスチニルのマトリックス配合物の溶解がイロプロストと同様のレベルで達成されることを実証している。
【0079】
実施例6-全血の安定性
それぞれPVP (分子量10’000)/トリスマトリックスと共に配合された、スプレーされた抗血小板剤イロプロスト、ベラプロストナトリウムおよびトレプロスチニルを有する管を、上記のように超音波スプレーにより調製した。スプレーは、1)添加剤を含まない管中に行い、スプレー後、ヘパリン化濾紙レンガ(Hepレンガ)を管に添加したか、または2)市販のリチウムヘパリン管(LiHep)中にスプレーを行ったかのどちらかで行った。配合物は、全血中で1μMの最終抗血小板剤濃度を達成するように調製された。調製後、静脈穿刺の間に正確な全血量の引き出しを可能にするように、管を真空にし、蓋を閉じた。3人の異なる健康なボランティアからの血液を、調製された採血管ならびに参照標準EDTAおよびリチウムヘパリン(LiHep)管中に引き出した。全血試料を、血液試料の引き出し後6時間以内にSysmex XN-9000血液学分析装置で分析した。
【0080】
結果を図8に示す。Y軸は、EDTA試料に対する標準化PLT濃度である。結果は、ヘパリン単独とは異なり、イロプロスト、トレプロスチニルおよびベラプロストの抗血小板活性がEDTAのものと同じくらい高いことを実証している。従って、抗血小板剤の安定性および溶解速度を増大させることに加えて、本発明のマトリックス配合物は、抗血小板活性に干渉しない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】