(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-05
(54)【発明の名称】液体中の分析物の時間応答値の決定
(51)【国際特許分類】
G01N 21/03 20060101AFI20231225BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20231225BHJP
G01N 33/483 20060101ALI20231225BHJP
G01N 33/72 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
G01N21/03 Z
G01N21/27 Z
G01N33/483 C
G01N33/72 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538721
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2021086912
(87)【国際公開番号】W WO2022136328
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【氏名又は名称】寺地 拓己
(74)【代理人】
【識別番号】100220098
【氏名又は名称】宮脇 薫
(72)【発明者】
【氏名】ケーア,トマス
【テーマコード(参考)】
2G045
2G057
2G059
【Fターム(参考)】
2G045AA13
2G045CA26
2G045DA38
2G045DA53
2G045FA13
2G057AA01
2G057AB01
2G057AC01
2G057BA10
2G057BD01
2G057CA01
2G057DC07
2G057JA02
2G057JB05
2G059AA01
2G059BB04
2G059BB13
2G059CC16
2G059EE01
2G059EE12
2G059FF04
2G059HH02
2G059JJ17
(57)【要約】
液体(99)中の分析物または分析物の群(96)の1つまたは複数の時間応答値を決定するための装置が提示され、本装置は、孔(6)を含む透光性素子であって、孔(6)は、透光性素子内のそれぞれの開口部(7)から透光性素子内へ延在する非貫通孔(6)であり、孔(6)の開口部(7)の断面寸法は、液体(99)中の分析物または分析物の群が拡散により孔(6)に入ることを可能にしながら、より大きい粒子または細片が孔(6)に入ることを防ぐように寸法決定される、透光性素子と、透光性素子(2)内の少なくとも孔(6)を照明するように適合される1つまたは複数の光源(10)と、複数の時間点の各々において、1つまたは複数の光源による照明(11)に応答して孔(6)から出射する光(21)を受信するように適合される光検出器(20)であって、光検出器は、受信した光に基づいて1つまたは複数の信号を生成するようにさらに適合され、1つまたは複数の信号の各々は、時間的に分解され、受信した光の少なくとも一部を表す、光検出器(20)と、を備え、本装置は、1つまたは複数の信号に基づいて1つまたは複数の時間応答値を決定するように構成されるプロセッサを備えるデータ処理デバイスをさらに備える。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体(99)中の分析物または分析物の群(96)の1つまたは複数の時間応答値を決定するための装置であって、
孔(6)を含む透光性素子であって、前記孔(6)は、前記透光性素子内のそれぞれの開口部(7)から前記透光性素子内へ延在する非貫通孔(6)であり、前記孔(6)の前記開口部(7)の断面寸法は、前記液体(99)中の前記分析物または前記分析物の群が拡散により前記孔(6)に入ることを可能にしながら、より大きい粒子または細片が前記孔(6)に入るのを防ぐように寸法決定される、透光性素子、
前記透光性素子(2)内の少なくとも前記孔(6)を照明するように適合される1つまたは複数の光源(10)、および
複数の時間点の各々において、前記1つまたは複数の光源による照明(11)に応答して前記孔(6)から出射する光(21)を受信するように適合される光検出器(20)を備え、
前記光検出器は、前記受信した光に基づいて1つまたは複数の信号を生成するようにさらに適合され、前記1つまたは複数の信号の各々が、時間的に分解され、前記受信した光の少なくとも一部を表し、
前記装置は、
プロセッサを備えるデータ処理デバイスをさらに備え、前記データ処理デバイスは、
前記1つまたは複数の信号に基づいて1つまたは複数の時間応答値を決定するように構成される、装置。
【請求項2】
前記1つまたは複数の光源および/または前記光検出器は、プロセッサを備えるデータ処理デバイスに動作可能に結合され、プロセッサを備える前記データ処理デバイスは、
異なる波長間隔について複数の信号を獲得することであって、例えば、前記複数の信号内の各信号は、前記複数の信号内の残りの信号のための波長間隔に対して、固有の波長間隔について獲得される、獲得すること、および
前記複数の信号内の前記信号の各々について時間応答値を決定することによって、複数の時間応答値を決定することであって、例えば、各時間応答値は、前記複数の信号内の前記残りの信号のための前記波長間隔に対して、固有の波長間隔について獲得されるなど、異なる波長信号について獲得される信号に基づいて決定される、決定すること
を行うようにさらに配置される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記データ処理デバイスは、
調節された時間応答値を決定するようにさらに構成され、前記調節された時間応答値は、前記複数の時間応答値内の少なくとも2つの時間応答値に基づいて決定され、例えば、1つの時間応答値は、別の応答値にとっての基準として機能し、前記2つの時間応答値は、異なる、例えば固有の、波長間隔について獲得される信号について獲得されている、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記1つまたは複数の光源および/または前記光検出器は、
異なる波長間隔について複数の信号を獲得するために配置され、例えば、前記複数の信号内の各信号は、前記複数の信号内の前記残りの信号のための波長間隔に対して、固有の波長間隔について獲得される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記データ処理デバイスは、
調節された時間応答値を決定するようにさらに構成され、前記調節された時間応答値は、少なくとも2つの時間応答値に基づいて決定され、例えば、1つの時間応答値は、別の応答値にとっての基準として機能し、前記2つの時間応答値は、異なる、例えば固有の、波長間隔について獲得される信号について獲得されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記データ処理デバイスは、
比を決定することであって、
415nmなど、第1の波長間隔について獲得される時間応答値と、
450nmなど、第2の波長間隔について獲得される時間応答値と
の比を決定することを行うようにさらに構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記1つもしくは複数の光源および/または前記光検出器は、プロセッサを備える前記データ処理デバイスに動作可能に結合され、プロセッサを備える前記データ処理デバイスは、
実質的に415nmを中心とする第1の波長間隔など、第1の波長間隔で第1の信号を獲得すること、
第2の波長間隔で第2の信号を獲得することであって、前記第2の波長間隔は、前記第1の波長間隔に対して、異なる、例えば固有であり、例えば、前記第2の波長間隔は、実質的に450nmを中心とする、第2の信号を獲得すること、および
比を決定することであって、
前記第1の波長間隔について獲得される第1の時間応答値と、
前記第2の波長間隔について獲得される第2の時間応答値と
の比を決定すること、を行うようにさらに配置される、請求項1~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記1つまたは複数の時間応答値は、
前記1つもしくは複数の信号の各々内の信号値における1つもしくは複数の差に基づき、前記信号値が異なる時間点で獲得される、および/または
1つもしくは複数の特徴的な時間であり、例えば、前記1つもしくは複数の特徴的な時間は各々、パラメータにおける変化持続時間もしくは特定の変化量を表す、請求項1~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記データ処理デバイスは、
前記1つまたは複数の信号に基づいて前記液体中の前記分析物または前記分析物の群の濃度を決定するようにさらに構成される、請求項1~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記液体中の前記分析物または前記分析物の群の前記決定された濃度は、前記1つまたは複数の時間応答値に基づく、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記データ処理デバイスは、
前記液体中の前記分析物または前記分析物の群の濃度が、第1の既定の濃度値を上回るかどうか、および/または第2の既定の濃度値を下回るかどうか、例えば、既定の間隔内であるかどうか、を決定するようにさらに構成される、請求項9または10に記載の装置。
【請求項12】
前記孔は、機能化される、例えば、ヒト血清アルブミンなどの1つまたは複数のバイオレセプタにより機能化される、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記データ処理デバイスは、1つまたは複数の時間応答値など、前記1つまたは複数の時間応答値、および前記液体中の1つまたは複数の分析物の濃度に基づいて、分析物と、異なる分子量および場合によっては類似の光学的性質を有する、1つまたは複数の他の分析物とを識別するなど、前記分析物または前記分析物の群を検出するように配置される、請求項1~12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記データ処理デバイスは、前記1つまたは複数の時間応答値に基づいて、前記液体中の2つ以上の既定の分析物の間の濃度における、絶対または相対差などの差を示す差異尺度を決定するようにさらに配置される、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記透光性素子は、いかなる界面効果も無視するなどした、材料を通過する光の、場合によっては部分的または全体的に拡散する透過係数が、100マイクロメートルの材料を通る長さの場合は少なくとも50%である、例えば、材料の長さを通らない光の割合が、少なくとも、400~520nmなど、380nm~750nmの範囲内、例えば400~460nmの範囲内、例えば415~420nmの範囲内、例えば、415nmもしくは約415nm、または416nmもしくは約416nm、または450nmもしくは約450nm、または455nmもしくは約455nmの1つの波長の場合、100マイクロメートルの50%以下、例えば100マイクロメートルの40%以下、例えば100マイクロメートルの20%以下、例えば100マイクロメートルの10%以下、例えば100マイクロメートルの5%以下であるように減衰係数を有する材料を含む、例えば主に含む、例えば少なくとも50w/w%含む、例えばこれからなる、請求項1~14のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
導光コアを備える光学アセンブリをさらに備え、前記導光コアは、入力分岐、出力分岐、および前側と反対の前記透光性素子の後ろ側(4)に接触するように配置される結合界面を備え、例えば、前記入力分岐および前記出力分岐は、前側表面に垂直に配置される共通導光面に配置される、請求項1~15のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
軸方向を画定する流路によって貫通されるハウジングをさらに備え、前記流路は、試料空間を備え、前側を伴う前記多孔性ユニットが、前記液体が前記試料空間内にあるときなど、前記液体に接触するためのセンサ表面を画定するように配置され、前記センサ表面は、前記試料空間の方を向き、例えば、前記孔は、前記試料空間との拡散液体連通のために前記液体中の前記分析物に関して構成される、請求項1~16のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記装置は、前記前側(3)の、前記後ろ側(4)に対向する側から、前記孔(6)の内側に配設される前記液体を光学的にプローブするために配置される、請求項1~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記1つまたは複数の光源および前記検出器の各々は、前記前側の、前記後ろ側と同じ側の、前記透光性素子の外側など、前記前側の、前記後ろ側に対向する側に置かれる、請求項1~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記1つまたは複数の光源(10)は、前記前側(3)の、前記後ろ側(4)に対向する側から、前記透光性素子(2)内の少なくとも前記孔(6)を照明するように適合され、
前記検出器(20)は、前記1つまたは複数の光源(10)などの1つまたは複数の光源による照明(11)に応答して発せられるなど、前記孔(6)から出射する光(21)を受信するように配置され、前記光検出器(20)は、前記孔から、前記後ろ側(4)に対向する方向の前記前側(3)から離れる方向に発せられた、例えば主に発せられた、前記受信した光を表す信号を生成するように適合される、請求項1~19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記1つまたは複数の光源(10)は、例えば、前記前側(3)の、前記後ろ側(4)に対向する側から、前記透光性素子(2)内の少なくとも前記孔(6)を照明するように適合され、前記孔に到達する前記1つまたは複数の光源からの光は、前記孔と流体接続されており、前記前側の、前記後ろ側とは反対の側など、前記透光性素子の外側にある、体積を横断している必要はなく、
前記光検出器(20)は、前記1つまたは複数の光源(10)などの1つまたは複数の光源による照明(11)に応答して発せられるなど、前記孔(6)から出射する光(21)を受信するように配置され、前記光検出器(20)は、前記受信した光を表す信号を生成するように適合され、前記孔(6)から発せられ、前記光検出器(20)に到達する光は、前記孔と流体接続されており、前記前側の、前記後ろ側とは反対の側など、前記透光性素子の外側にある、体積を横断している必要はない、請求項1~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
前記装置は、前記孔内の液体の吸光度など、吸光度を測定するために構成される、請求項1~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
液体(99)中の分析物(96)または分析物の群の1つまたは複数の時間応答値を決定するための方法であって、
請求項1~22のいずれか一項に記載の装置(1)を提供するステップと、
前記装置(1)の孔を前記液体(99)と接触させるステップと、
透光性素子(2)内の少なくとも前記孔(6)を1つまたは複数の光源を用いて照明するステップと、
複数の時間点の各々において、前記照明(11)に応答して前記孔(6)から出射する光(21)を受信するステップと、
前記受信した光に基づいて1つまたは複数の信号を生成するステップであって、前記1つまたは複数の信号の各々が、時間的に分解され、前記受信した光の少なくとも一部を表す、ステップと、
前記1つまたは複数の信号に基づいて1つまたは複数の時間応答値を決定するステップと、を含む方法。
【請求項24】
前記分析物は、
遊離ビリルビンなどのビリルビン、もしくは
HSA-ビリルビンなどのヒト血清アルブミン結合ビリルビンであり、
前記分析物の群は、
遊離ビリルビンなどのビリルビン、および/もしくは
HSA-ビリルビンなどのヒト血清アルブミン結合ビリルビン
を含む群であり、
前記分析物は、
ハプトグロビンに結合されない無細胞ヘモグロビン、およびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体などのハプトグロビン結合ヘモグロビンである、または
前記分析物の群は、
ハプトグロビンに結合されない無細胞ヘモグロビン、およびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体などのハプトグロビン結合ヘモグロビンを含む群である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記方法は、前記1つまたは複数の時間応答値に基づいて、前記液体中の2つ以上の既定の分析物の間の濃度における、絶対または相対差などの差を示す差異尺度を決定するステップをさらに含む、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記2つの既定の分析物は、
HSA-ビリルビンなどのヒト血清アルブミン結合ビリルビン、および遊離ビリルビンなどのヒト血清アルブミンに結合されないビリルビン、または
ハプトグロビンに結合されない無細胞ヘモグロビン、およびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体などのハプトグロビン結合ヘモグロビンである、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
命令を含むコンピュータプログラム製品などのコンピュータプログラムであって、前記命令は、前記プログラムがコンピュータによって実行されるとき、データ処理デバイスが1つもしくは複数の光源および/もしくは検出器にさらに動作可能に接続される第2の態様による装置など、請求項1~22のいずれか一項に記載の装置に、請求項23~26のいずれか一項に記載の方法のステップを前記コンピュータに実行させ、
ならびに/または
受信した光を表す1つもしくは複数の信号を受信することであって、前記1つもしくは複数の信号の各々が、時間的に分解され、前記受信した光の少なくとも一部を表す、受信すること、
前記1つもしくは複数の信号に基づいて1つもしくは複数の時間応答値を決定すること、および
任意選択的に、前記1つもしくは複数の時間応答値に基づいて、2つ以上の既定の分析物の間の濃度における、絶対もしくは相対差などの差を示す差異尺度を決定すること
を前記コンピュータに行わせる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体中の分析物または分析物の群の1つまたは複数の時間応答値を決定するための装置に関し、またより詳細には、液体中の分析物または分析物の群の1つまたは複数の時間応答値を決定するための透光性の多孔性素子を備える装置、ならびに対応する方法およびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
液体中の分析物に関する情報を得ることは、一般的に、1つまたは複数の理由から有利であり得る。例えば、分析物に関連したパラメータに関する知識を得ることは、既知または未知であり得る分析物についての知見を提供し得る。1つまたは複数の未知の分析物を含む液体について、それは、1つまたは複数の追加パラメータが液体中の1つまたは複数の分析物について決定され得る場合、例えば1つまたは複数の分析物を互いから識別することを含め、検出を可能にし得る。
【0003】
特定の装置および方法について、液体中の分析物の追加パラメータを得る可能性は、情報が、装置によって別途提供される情報を捕捉するものである場合、特に、追加パラメータが、追加パラメータがないときに装置によって提供される1つまたは複数のパラメータに基づいて別途識別不可能である分析物を識別することを可能にする場合、特に重要であり得る。
【0004】
したがって、改善された装置、方法、およびコンピュータプログラム、ならびに特に、追加パラメータを決定するための改善された装置、方法、およびコンピュータプログラムが必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明の目的は、改善された装置、方法、およびコンピュータプログラム、ならびに特に、追加パラメータを決定するための改善された装置、方法、およびコンピュータプログラムを提供することであり得る。
【0006】
第1の態様によると、本発明は、液体中、例えば全血中、例えば全血試料中の、分析物または分析物の群の1つまたは複数の時間応答値を決定するための装置であって、
孔を含む透光性素子であって、孔は、透光性素子内のそれぞれの開口部から透光性素子内へ延在する非貫通孔であり、孔の開口部の断面寸法は、液体中の分析物または分析物の群が拡散により孔に入ることを可能にしながら、より大きい粒子または細片が孔に入るのを防ぐように寸法決定される、透光性素子、
透光性素子内の少なくとも孔を照明するように適合される1つまたは複数の光源、および
複数の時間点の各々において、1つまたは複数の光源による照明に応答して孔から出射する光を受信するように適合される検出器
を備え、
光検出器は、受信した光に基づいて1つまたは複数の信号を生成するようにさらに適合され、1つまたは複数の信号の各々が、時間的に分解され、受信した光の少なくとも一部を表し、
本装置は、プロセッサを備えるデータ処理デバイスをさらに備え、データ処理デバイスは、1つまたは複数の信号に基づいて1つまたは複数の時間応答値を決定するように構成される、装置を提供する。
【0007】
本発明の考えられる利点は、それが、液体中の分析物または分析物の群の1つまたは複数の時間応答値に関する情報を得ることを可能にすることであり、これは、拡散分析物に関する情報、例えば、サイズ(例えば、長さまたは直径または体積など、分子量および/または分子範囲)および/もしくは形状(例えば、球状または細長)、ならびに/または、液体に関する情報、例えば、粘度および/もしくは温度を導出するのに有益であり得る。
【0008】
別の考えられる利点は、それが、さもなければ識別不可能な分析物または分析物の群を識別することを可能にすることである。例えば、光学的に同様の分析物または分析物の群の場合、本発明なしでは分析物または分析物の群を識別することは困難または不可能であり得るが、それらが拡散係数に影響を及ぼすパラメータ(例えば、分子量、形状、および/または広がり)において異なる場合、このパラメータは拡散係数に影響を及ぼし、この拡散係数が、時間応答値に影響を及ぼすか、またはこれを決定し得、故にこの時間応答値は、それが決定される際に、特定の分析物または分析物の群の(定性的)存在(既定の絶対または相対しきい値を上回る濃度での存在など)、およびおそらくはさらに、特定の分析物または分析物の群の絶対または相対濃度の(定量的)尺度に関する結論を描くことを可能にする。
【0009】
本発明はさらに、ろ過が、外部エネルギーが必要とされない拡散によって実施される、または実施され得ることから、透光性素子の孔内の1つまたは複数の分析物の1つまたは複数の時間応答値を獲得する可能性を提供することに有利であり得る。別の考えられる利点は、拡散が高速であるため、透光性素子の孔内へ拡散した液体に対する測定が、液体が液体入口を通って多孔性の透光性素子を備える測定チャンバ内に導入された直後など、多孔性の透光性素子に到着した直後に(またはその後短時間内に)実施され得ることである。別の考えられる利点は、本装置が、部品が少なく、ろ過および測定中に位置を移動または変化させる必要がある部品のない、単純なものであり得ることである。別の考えられる利点は、本装置が小さいサイズに保たれ得、測定に必要とされる体積が、通常のろ過デバイスを備える装置と比較して非常に小さいことである。
【0010】
別の考えられる利点は、本装置が、1つまたは複数の時間応答値に加えて、捕捉情報を決定することを可能にすることである。例えば、吸光度測定および/または分光測定など、他の光学測定などの1つまたは複数の他の様式では、情報が獲得され得、液体中の分析物(複数可)の濃度および/またはタイプに関する知識を導出することを可能にする(識別性に関する先のコメントと類似して、同様または同一の時間応答値を有する分析物または分析物の群を識別することを可能にし得る)。
【0011】
一般に、光学識別性などの識別性に言及するとき、それは、特許請求された装置の文脈において理解され得る。例えば、2つの分析物は、例えば、本発明による装置(の実施形態)内で吸光度に基づいて、光学的にそれらを識別することを可能にしない場合でも、他の装置、例えば、より高度な装置(例えば、より高い光強度および/またはより良好なスペクトル分解能を有する)が、実際には、同じ分析物を光学的に識別することを可能にし得るとした場合、本文脈において光学的に識別可能であると見なされ得る。
【0012】
‘(1つまたは複数の信号の各々が)時間的に分解される’とは、1つまたは複数の信号の各々が一連の時間点または時間間隔において獲得されることなど、1つまたは複数の信号の各々が、異なる明確に定義された時間点など、異なる時間点に対応する、またはこれを表すデータを含むと理解され得る。
【0013】
‘時間応答値’とは、液体中の分析物または分析物の群を含むシステムの過渡応答の時間尺度を、数値化するなど、これを示す値と理解され得る。
例えば、時間応答値は、実施形態によると、一次の線形時不変系のステップ入力への応答を特徴とするパラメータである、通常ギリシャ文字τ(タウ)で示される、物理学および工学において用いられるような‘時定数’であり得、例えば、時間tの関数としての孔内の分析物濃度Cpにおける変化率dCp/dtは、比例定数1/τで、孔内の濃度Cpと孔の開口部における濃度Coとの間の差Cp-Coと正比例である。1つの例によると、孔内の分析物の濃度Cpおよび孔の開口部における分析物Coの濃度は各々、孔の開口部における分析物の濃度Coが直ちに濃度K0になる時間t=0(ステップ関数またはヘビサイド関数H(t)を参照)までゼロであり、これは以下のように説明され得る。
【0014】
dCp/dt+τ-1Cp=K0H(t)
これは以下の解を有する。
Cp(t)= K0(1-e-t/r)
故に、時間t=0においてゼロである孔内の濃度は、t=τにおいてK0(1-e-1)(≒0.63K0)になり、無限に接近するt(t→∞)ではK0に接近する。
【0015】
別の例または実施形態によると、時間応答値は、別の関数表現における1つまたは複数の定数によって表され得る。
別の例または実施形態によると、時間応答値は、時間的に離間した間隔でサンプリングされる信号についてなど、特定の時間点における変化率によって表され得、時間応答値は、2つの隣接する信号値など、2つの信号値の間の差であり得る。
【0016】
しかしながら、他の例によると、時間応答は、例えば、一次の線形時不変系のステップ入力への応答によって拡散を適切に説明することができないシナリオを含む、より高度な形態など、他の形態をとり得る。例えば、複数の相(例えば、無細胞ヘモグロビン、cfHb、の場合、全血試料の浸透性血漿相および全血試料の赤血球の内側の非浸透性相)。別の例は、分析物を徐々に拡散させること、および迅速に拡散させることの両方からの寄与を含む信号であり得る。代替的に、どんな理由にせよ、獲得した信号が、不足減衰ステップ応答と同様または同一である場合、1つまたは複数の時間応答値は、立ち上り時間、第1のピークまでの時間、セトリング時間、および期間のうちの1つまたは複数を表す1つまたは複数の値を含み得る。
【0017】
‘1つまたは複数の時間応答値’とは、いくつかの時間応答値が液体中の分析物または分析物の群について決定され得ると理解される。第一に、例えば、複数の波長が用いられ得、それらの各々が、例えば、分析物の群内の特定の分析物(または分析物の下位群)を表す信号をもたらす各波長に起因して、1つまたは複数の時間応答値を提供し得る。第二に、例えば、単一の波長の場合でさえ、時間応答は、いくつかのパラメータの結果であり得、これは、時間応答が、対応する複数のいくつかの時間応答値(例えば、迅速に拡散する分析物の時間応答を示す第1の時間応答値、および徐々に拡散する分析物の時間応答を示す第2の時間応答値)に関して、説明され得る、または最も正確に説明されることを必然的に伴う。
【0018】
‘過渡応答’は、平衡からの、および/または平衡へ向かう(または平衡へ向かう特定の構成からの)変化に対する応答など、当該技術分野において共通であるように理解される。例えば、1つまたは複数の分析物を含む液体が孔の開口部に置かれ、孔が1つまたは複数の分析物のない、対応する液体のみを含む状況からの変化、この場合、過渡応答が発生し、例えば、この場所で、1つまたは複数の分析物が、平衡が発生するまで孔内へ拡散する。
【0019】
‘分析物’とは、任意のエンティティ、物質、または組成物と理解され、特に、原子、イオン、および/または分子であり得る。‘分析物の群’とは、任意選択的に、化学的性質または構造学的もしくは光学的もしくは物理的性質など、1つまたは複数の性質を共有する分析物の群と理解され得る。
【0020】
用語“液体”は、全血、全血の血漿分画、脊髄液、尿、胸膜、腹水、廃水、あらゆる種類の注射のための予め調製された液体、分光法により検出することが可能な成分を有する液体など、任意の液体を指す。液体は、例えば、416nmもしくは約416nmまたは455nmもしくは約455nmで、1.50以下、例えば1.45以下、例えば1.40以下、例えば1.38以下、例えば1.36以下の屈折率(そうした屈折率の実部)を有すると理解され得る。
【0021】
実施形態において、液体は、液体試料である。用語“試料”は、本発明の装置を用いた分析において使用される、または必要とされる液体の部分を指す。
用語“全血”は、血漿および細胞成分で構成される血液を指す。血漿は、体積の約50%~60%を表し、細胞成分は、体積の約40%~50%を表す。細胞成分は、赤血球(erythrocyte/red blood cells)、白血球(leucocyte/white blood cells)、および血小板(thrombocyte/platelets)である。好ましくは、用語“全血”は、人間の被検者の全血を指すが、動物の全血も指し得る。赤血球は、すべての血液細胞の合計数の約90%~99%を構成する。それらは、変形されていない状態で約2μmの厚さを有する直径約7μmの両凹の円盤として造られる。赤血球は、非常に可撓性であり、これにより、その直径を約1.5μmまで減少させて非常に狭い毛細血管を通過することを可能にする。赤血球の1つの中核成分は、ヘモグロビンであり、これが、組織への輸送のために酸素に結合し、次いで、酸素を解放し、老廃物として肺に送達されるべき二酸化炭素に結合する。ヘモグロビンは、赤血球の赤い色、したがって全体としての血液の赤い色の原因となる。白血球は、すべての血液細胞の合計数の約1%未満を構成する。それらは、約6~約20μmの直径を有する。白血球は、例えば、細菌またはウイルス侵入に対する、身体の免疫系に関与する。血小板は、約2~約4μmの長さおよび約0.9~約1.3μmの厚さを有する最も小さい血液細胞である。それらは、凝固に重要な酵素および他の物質を含有する細胞片である。特に、それらは、血管内の破損を封止するのに役立つ一時的な血小板血栓を形成する。
【0022】
用語“血漿(blood plasmaまたはplasma)”は、血液の体積の約半分(例えば、体積で約50%~60%)を構成する血液およびリンパ液の液体部分を指す。血漿は、細胞を持たない。それは、すべての凝固因子、特にフィブリノゲンを含み、体積で約90%~95%の水を含む。血漿成分は、電解質、脂質代謝物質、例えば感染または腫瘍のためのマーカ、酵素、基質、タンパク質、およびさらなる分子成分を含む。
【0023】
用語“廃水”は、洗い流し、フラッシングに関して、または製造プロセスにおいて、使用された水を指し、そのため、老廃物および/または粒子を含有し、故に、飲用および食品調理には好適ではない。
【0024】
‘分析物または分析物の群の1つまたは複数の時間応答値を決定すること’とは、例えば、時間応答値が特定のしきい値を上回る/下回るか、または特定の間隔内/外であるかどうか(YES/NO)を定性的に決定すること、および、例えば、順序、間隔、または比率タイプの尺度などで、時間応答値を定量的に決定することの両方と理解され得る。
【0025】
1つまたは複数の時間応答値を決定すること、およびより具体的には、1つまたは複数の時間応答値を決定するためのデータ取得は、液体の少なくとも一部分(孔の内側の液体の一部分など)に光を照射し、光の少なくとも一部分を受信して、受信した光が(おそらくは)その中の分析物に関する情報を導出することを可能にするなど、当該技術分野において共通であるように理解される‘光学プローブ’に依拠すると理解され得る。
【0026】
一実施形態において、本装置は、液体中の分析物または分析物の群の1つまたは複数の時間応答値を自動的に決定するために配置され得る。‘液体中の分析物または分析物の群の1つまたは複数の時間応答値を自動的に決定するための装置’とは、液体中の分析物または分析物の群の関連性のある光学的性質をプローブし、液体中の分析物または分析物の群の1つまたは複数の時間応答値を決定することができる装置など、例えば、液体(試料)を装置に提供した後で人間の介入を必要とすることなく、液体中の分析物または分析物の群の1つまたは複数の時間応答値、液体試料中など、液体中の分析物濃度を決定することが自動的にできる任意の装置と理解され得る。
【0027】
用語“透光性”は、光が通過することを可能にする材料の性質を指す。用語“透明”は、光が散乱されることなしに材料を通過することを可能にする材料の性質を指す。故に、用語“透明”は、用語“透光性”に対する部分集合と見なされる。
【0028】
好ましくは、1つまたは複数の層などの膜は、積分球で試験されるときの検出のスペクトル範囲、すなわち、関連性のある血漿成分を表す信号が展開されるスペクトル範囲において、例えば、垂直入射光の場合、例えば、380nm~750nm、400~525nmの範囲内、または416nmもしくは約416nm、または455nmもしくは約455nmで、25%超、例えば30%超、例えば35%超、例えば40%超、例えば50%超、例えば75%超、例えば90%超、さらには99%超の反射性を示す(透光性素子と1つまたは複数の層との間の界面においてなど)。
【0029】
(おそらくは散光である、または散光を含む光の)界面からの反射率、または界面を通るもしくは(バルク)材料の長さを通る透過率を測定するために適用される技術は、フーリエ変換赤外(FTIR)分析に依拠することなど、積分球を使用することであり得る。光は、透光性素子と1つまたは複数の層との間の界面などの(おそらくは拡散する)試料(バルク材料の界面または一部分など)に、1つまたは複数の層に対してノーマル90°角度で当たる。反射および/または透過光は、試料と相互作用するときに散乱される。積分球は、光が検出器に到達するまで‘跳ね返る’球壁の高反射表面を使用する、拡散試料からの散乱した透過および/または反射光が収集されるデバイスである。このやり方では、散乱に起因して低い反射率または透過率を通常もたらす表面からの正確な結果が達成され得る。
【0030】
‘透光性の(素子)’とは、一般に、透光性の材料を含む素子と理解され得、例えば、上記材料(透光性の材料および/または透光性素子の材料など)は、減衰係数を有し、その結果として、材料を通る(任意の界面効果を無視するなど)光の(任意選択的に部分的または全体的に拡散する)透過係数は、100マイクロメートルの材料を通る長さの場合は少なくとも50%であり、例えば、材料の長さを通らない光の割合は、例えば、416nmもしくは約416nmまたは455nmもしくは約455nmの波長では、100マイクロメートルの50%以下、例えば100マイクロメートルの40%以下、例えば100マイクロメートルの20%以下、例えば100マイクロメートルの10%以下、例えば100マイクロメートルの5%以下である。これの利点は、それが、光子を透光性素子内へ取り入れるおよび/または外へ取り出すことを可能にすることであり得る。‘透光性素子’という表現は、‘透光性の材料を含む素子’と同義に理解および使用され得る。一実施形態において、任意の界面効果を無視するなど、例えば、前側および/または後ろ側に対して直角の方向において前側から後ろ側へ、透光性素子を通る光の透過係数は、380nm~750nmの範囲内の、例えば400~520nm、例えば400~460nm(または415~420nm)、例えば415nmもしくは約415nm、または416nmもしくは約416nm、または450nmもしくは約450nm、または455nmもしくは約455nmの、波長、例えば少なくとも1つの波長、を有する電磁放射線(または光)の場合など、少なくとも10%、例えば少なくとも25%、例えば少なくとも50%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも90%、例えば少なくとも95%、例えば少なくとも99%である。
【0031】
用語‘後ろ側(back sideおよびbackside)’は、同意および同義に使用される。
‘減衰係数’とは、Napierian減衰係数uと理解され得、例えば、材料を通じた透過Tは、以下のように得られ、
T=exp(-int(u(z)dz)
式中、‘exp’は、指数関数を示し、‘int’は、積分(材料の長さを通る)を示し、zは、材料および対応する座標を通る対応する軸を示す)。
【0032】
減衰係数は、例えば、1cmキュベットを通した吸光を測定する標準分光光度計における測定によるなど、当該技術分野において共通であるように獲得され得る。A(またはAbs)によって示される、測定した吸光度は、標準装置において、A=log(I0/I)として決定され、式中、logは、底-10対数であり、I0は、キュベットの前の強度であり、Iは、キュベットの後の強度である。故に、測定した吸光度は、自然対数のための基本数を示すe=2.71828でA=log(e)int(u(z)dzとしてNapierian減衰係数に関連する。
【0033】
一般に、本出願全体を通して光学的性質(例えば、透光性、吸光、内部反射、反射)に言及するとき、それは全般的に、380nm~750nmの範囲内、例えば400~520nm、例えば400~460nm(または415~420nm)、例えば415nmもしくは約415nm、または416nmもしくは約416nm、または450nmもしくは約450nm、または455nmもしくは約455nmの波長、例えば少なくとも1つの波長を有する電磁放射線(または光)を参照してなされると理解され得る。
【0034】
透光性素子は、前側、および前側と反対を向く後ろ側を有し、前側は、
液体と直接的に接触される(1つまたは複数の層が透光性の層の前側に存在しない)ように適合され得るか、または
透光性素子の前側における1つまたは複数の層によって、液体から排他的に分離されるなど、液体から分離されるように適合され得、1つまたは複数の層は、
透光性素子から、少なくとも1つの入射角で、例えば、少なくとも法線入射で、1つもしくは複数の層に到達する光に対して非反射性であるように適合され、
反射性であるように適合され(上記1つもしくは複数の層は、透光性としてそれを無視する消散係数を有する、金属および/もしくは材料であるか、これを含む)、1つもしくは複数の層の屈折率が、透光性素子の屈折率に等しいか、もしくはこれよりも高い、ならびに/または
外部界面などの界面において、透光性素子から界面に到達する光の、全内部反射などの内部反射を可能にするように適合され、
非貫通孔は、前側において非貫通孔を液体と流体接続するそれぞれの開口部から透光性素子内へ(存在する場合1つまたは複数の層を通じて)延在する。
【0035】
‘液体と直接的に接触される’とは、透光性素子の前側表面が固体-液体界面であると理解され得、例えば、1つまたは複数の層が、透光性素子を、液体などの透光性素子の外部の素子から分離しない。‘透光性素子の前側において1つまたは複数の層によって液体から分離される’とは、薄膜層(100マイクロメートル厚以下である薄膜層など)などの1つまたは複数の層が、透光性素子の前側における固体-液体界面に存在すると理解される。‘排他的に分離される’とは、他の層が透光性素子を液体から分離していないと理解され得る。
【0036】
‘少なくとも、1つの入射角で、1つまたは複数の層に到達する光に対して非反射性であるように適合される’とは、少なくとも、1つの入射角(法線入射など)では、入射光(416nmもしくは約416nm、または455nmもしくは約455nmでの)が透光性素子を通る方向に入ってくるとき、光が1つまたは複数の層からわずかしかまたは全く反射されない(例えば、反射係数は、0.95未満、例えば0.9未満、例えば0.8未満、例えば0.7未満、例えば0.6未満、例えば0.5未満、例えば0.4未満、例えば0.3未満、例えば0.1未満、例えば0.01未満である)と理解され得る。
【0037】
例えば、非反射性は、吸光および/または透過に起因し得る。少なくとも1つの入射角は、法線入射であり得る。
一実施形態によると、透光性素子であって、透光性素子の前(側)は、透光性素子の前側において1つまたは複数の層によって、液体から排他的に分離されるなど、液体から分離され、1つまたは複数の層は、透光性素子から法線入射で前側に到達する光に対して透光性であるように適合される、透光性素子が提示される。
【0038】
一実施形態によると、透光性素子であって、透光性素子の前(側)は、透光性素子の前側において1つまたは複数の層によって、液体から排他的に分離されるなど、液体から分離され、1つまたは複数の層は、透光性素子から法線入射で前側に到達する光に対して吸光性であるように適合される、透光性素子が提示される。
【0039】
‘吸光性’とは、少なくとも1つの入射角(法線入射など)において(416nmもしくは約416nmでの、または455nmもしくは約455nmでの)入射光の1%超、例えば10%超、例えば25%超、例えば40%超、例えば50%超、例えば60%超、例えば75%超、例えば90%超が、1つまたは複数の層から透光性素子内へと反射されることも、1つまたは複数の層を透過されることもないと理解され得る。
【0040】
‘少なくとも、1つの入射角で、1つまたは複数の層に到達する光に対して反射性であるように適合される’とは、入射光が透光性素子を通る方向に入ってくるとき、少なくとも、1つの入射角で、光が、1つまたは複数の層から反射される(例えば、反射係数は、少なくとも0.25、例えば少なくとも0.4、例えば少なくとも0.5、例えば少なくとも0.6、例えば少なくとも0.75、例えば少なくとも0.90、0.95、例えば、少なくとも0.99、例えば416nmもしくは約416nm、または455nmもしくは約455nm、および/または法線入射である)と理解され得、1つまたは複数の層の屈折率は、透光性素子の屈折率に等しいか、これよりも高い。そのような‘反射性の’実施形態によると、1つまたは複数の層は、金属層(白金、パラジウム、主成分として白金もしくはパラジウムを含む合金、銀、および/またはアルミニウムを含む、例えばこれからなる、層など)、および/または透光性として上記層を無視する消散係数を有する材料を含む層であり得るか、またはこれを含み得る。
【0041】
一実施形態によると、透光性素子であって、透光性素子、および/または透光性素子の前側を液体から分離する、例えば、排他的に分離する1つもしくは複数の層は、一方の側における透光性素子および/または1つもしくは複数の層と他方の側における液体との間の界面において、全内部反射などの内部反射を可能にするために配置される、透光性素子が提示される。
【0042】
‘内部反射を可能にするように適合される’とは、(内部)反射が、入射および反射光を含む媒体の間の界面において可能にされる、および可能であると理解され、例えば、入射光および反射光の両方が進行している媒体は、(相対的に)より低い屈折率の媒体である界面の反対側における媒体と比較して、(相対的に)より高い屈折率の媒体であり、例えば、反射係数は、例えば、416nmもしくは約416nm、または455nmもしくは約455nm、および/または法線入射もしくは非法線入射、例えば、法線に対して45°角度で、少なくとも0.25、例えば少なくとも0.4、例えば少なくとも0.5、例えば少なくとも0.6、例えば少なくとも0.75、例えば少なくとも0.90、0.95、例えば少なくとも0.99である)。実施形態において、両方の媒体(すなわち、界面の各側面における各媒体)の消散係数は、各材料が透光性として要件に入るために十分に低い消散係数(または減衰係数)である。
【0043】
一実施形態によると、透光性素子は、透光性のスラブであり、例えばスラブは、モノリシックであると理解される。
小孔の各々は、開口部を有し、この開口部を通じて、透光性素子の前側における液体空間と連通することができる。故に、孔は、孔と液体空間との間の液体連通を可能にするために1つまたは複数の層(存在する場合)を貫通する。孔は、後ろ側へ向かう方向に、前側におけるそれぞれの開口部から透光性素子内へ延在する。孔は、孔が透光性素子内で終了することを意味する“非貫通”である。孔は、透光性素子全体を通り抜けて後ろ側まで、または素子の内側の任意の共通の容器もしくは受容器まで継続しない。孔は、透光性素子の前側における液体空間とのみ液体連通状態にある。いくつかの実施形態において、非貫通孔は、十字交差であり得、故に孔の少なくともいくつかは、互いに接続され得、X形状、Y形状、V形状、または同様の相互接続された形状を形成するということに留意されたい。そのような構成は、孔が前側からのみ充填され、孔が互いに交差するとしても、孔を通過する著しい正味質量輸送が動作下で発生しないため、非貫通であると等しく見なされる。前側における孔の開口部を適切に寸法決定することにより、全血試料の血漿分画中または液体中の関連成分が孔に入ることを可能にしながら、透光性素子の前側において全血試料の赤血球または液体中の細片が孔に入ることを防ぐことが可能であり、関連成分は、全血試料の血漿分画内に存在する、およびセンサを使用して測定/検出されることになる物質である。特に、ビリルビンおよび二酸化炭素は、関連成分である。
【0044】
動作下で、透光性素子の前側は、全血試料または液体と接触される。透光性素子内の小孔は、前側内の開口部を通る全血試料または液体と連通する。孔開口部は、選択的に、全血試料の血漿相の副試料を抽出するか、または分析物を含む液体の副試料を抽出するために寸法決定される。赤血球は、透光性素子の前側の開口部を通って孔に入ることができない。孔直径よりも大きいものは、例えば、液体内に含まれる任意の細片を締め出す孔に入ることができない。述べたように、孔は、非貫通であり、透光性素子の前側とのみ連通しており、すなわち、副試料は、孔の内側の光学プローブのために抽出され、測定後、透光性素子の前側内の同じ開口部を取って再び放出される。副試料体積は、孔の合計内部容積に相当する。ろ過および任意のろ液の正味質量輸送が、任意の共通のろ液受容器内へも、任意のろ液出口へも、孔含有層を通じて発生することはない。次いで、光検出が、孔内に含有される副試料に対してのみ実施されることになる。
【0045】
関連成分の代表的な内容物を有する小さい副試料は、任意の好適な様式で孔へ移動され得る。小さい非貫通孔は、毛細管力および/または拡散により、前側内の開口部を通る全血試料または液体からの、光学プローブのための副試料の非常に効率的かつ高速の抽出を可能にする。
【0046】
典型的な動作モードにおいて、透光性素子の前側表面は、前側を、分析されることになる全血試料または液体と接触させる前に、リンス液によって接触される。これにより、孔は、全血試料または液体と親和性がある液体、および特に、血液分析器におけるリンス、較正、および/または品質制御目的のために一般的に使用される水溶液など、液体が全血である場合は血漿相と親和性がある液体の予充填により‘プライムされる’。例えば、全血分析器システムにおいて洗い流しのために使用される典型的なリンス液が、そのような液体として使用され得る。リンス液は、人間の血漿に対応する濃度でK+、Na+、Cl-、Ca2+、O2、pH、CO2、およびHCO3
-を含む水溶液である。リンス、較正、および/または品質制御目的のために一般的に使用される好適な溶液の非限定的な例は、以下にさらに挙げられる。全血試料または液体が、その後、血漿親和性の液体でプライムされる前側表面と接触されるとき、全血試料の血漿相内の成分の、または液体の、代表的な副試料が、予充填された孔内への関連成分の拡散により、非常に効率的かつ穏やかな様式で、抽出および移動される。特に、孔内の液体と基準液との間の分析物の含有量における任意の濃度勾配が、拡散移動をもたらし、以て、孔内に、液体中の分析物濃度を表す分析物濃度を有する副試料を産生する。
【0047】
一実施形態によると、透光性素子であって、孔が、拡散によって、例えば拡散のみによって、リンスされるように配置される、透光性素子が提示される。
別の動作モード(分析物の濃度が測定される実施形態における使用のためなど)において、乾いたセンサの前側を全血試料または液体と直接的に接触させることも想起され得る。さらに好ましくは、この動作モードにおいて、孔の内側表面は、親水性であり、以て、毛細管力により、透光性素子の前側における全血試料または液体から孔内へ副試料を抽出する。このモードで透光性素子を動作させるとき、較正は、多孔性の膜材料の同じバッチから生産される透光性素子が等しい感度(透光性素子を形成する同じバッチからの多孔性の膜材料の異なる片から生産される透光性素子を使用して、同一の液体に対して測定を行うとき、等しい吸光)を有する傾向があるため、バッチ較正を介して発生する。代替的に、透光性素子の孔は、分析物とは異なる吸光特徴を有する較正染料を含有し得る。較正染料は、検出/測定されるべき、血漿試料中の物質、例えば、ビリルビン、から分光学的に識別可能でありながら、光学プローブ信号を正規化/較正するのに有用である。較正染料は、実際の液体中には存在しないため、較正染料は、測定中にセンサの外に拡散し、その間、分析物は、センサの孔内に拡散する。液体を取得する前および後に孔を光学的にプローブすることにより、検出されるべき物質(例えば、ビリルビン)の定量的尺度が、較正基準信号および液体物質信号の比較により、展開され得る。
【0048】
孔の内容物は、透光性素子の後ろ側から、またはより一般的には、前面/前側、および/もしくは、1つもしくは透光性素子の方を向く複数の層(存在する場合)の側から、簡便に光学的にプローブされ得、1つまたは複数の層(存在する場合、および吸光層を含む)は、孔を含む光学プローブ領域を、透光性素子の前側に接触する液体から光学的に分離し、以て、プローブ光が、ユニットまたは透光性素子の前側において液体に到達してこれと相互作用することを防ぐ。故に、光学プローブは、孔の内側の副試料に対してのみ選択的に実施される。‘(透光性素子の)後ろ側から(光学的に)プローブされる’とは、一般的に、孔への入射プローブ光が後ろ側から前側へ向かう方向に進行し(後ろ側から前側への方向に後ろ側を介して透光性素子に入るなど)、孔から光検出器などの受信ユニットへ発せられる光は、前側から離れる方向に後ろ側から発せられるなど、前側から後ろ側への方向に発せられると理解され得る。
【0049】
‘透光性素子内の少なくとも孔を照明するように適合される1つまたは複数の光源’とは、十分な光(またはより具体的には、関連波長範囲内の、または分析物を光学的にプローブすることを可能にする、十分なスペクトル束)を提供することができる任意の光源など、任意の光源と理解される。1つまたは複数の光源は、例えば、白熱光源(タングステン電球など)、蛍光光源(水銀灯など)、LED光源、またはLASER光源(アルゴン-イオンガスレーザなど)を含み得る。
【0050】
‘複数の時間点の各々において、1つまたは複数の光源よる照明に応答して孔から出射する光を受信するように適合される光検出器’は、当該技術分野において共通であるように理解され、また、特に、“各時間点”は、有限の時間間隔に相当する対応する時間点など、間隔(ビンなど)と関連付けられた時間スタンプを指し得ると理解され得る。‘光検出器’は、例えば、信号を電気的におよび/またはデジタルで出力する、電動式の光検出器など、当該技術分野において共通であるように理解される。‘光検出器’は、本文脈においては全般的に、‘検出器’と同意および同義に使用されると理解される。“光検出器”は、複数の(下位の)光検出器を含み得る、または包含し得ることがさらに理解され得る。
【0051】
‘光検出器は、受信した光に基づいて1つまたは複数の信号を生成するようにさらに適合され、1つまたは複数の信号の各々が、時間的に分解され、受信した光の少なくとも一部を表す’ことがさらに理解され得、例えば、光検出器は、受信した光の対応する値(光の受信した合計強度、または、おそらくは受信した光の一部にすぎない特定の波長間隔内の受信した強度など)の少なくとも2つ(3、5、10、100、1000、または10000のうちの少なくともいずれか1つなど)の対および時間を含む、デジタルまたはアナログ信号などの時間的に分解された信号を提供するように配置される。
【0052】
入射光は、光が孔を横断し、その中の(副試料)液体と相互作用することを確実にするように、光学プローブ領域(孔を含む)へと誘導/指向される。好ましくは、プローブ光は、光が、プローブされるべき液体で充填された孔を横断することを確実にするために、透光性素子の前側の表面および/または1つもしくは複数の層(存在する場合)の平面上の表面法線に対して斜め入射でプローブ領域内へ送られ、以て、最大の光学的相互作用路程を確実にする。
【0053】
照明に応答して孔から出射する光は、孔内の副試料と相互作用しており、故に、副試料に関する情報を保有する。出射光、および/または、出射光を表す信号、例えば1つまたは複数の信号は、次いで、データ処理デバイスを用いるなどして、その情報に対して、1つまたは複数の時間応答値、および任意選択的に追加的に、全血試料中または液体中の分析物含有量を表す値(孔内の安定状態の濃度など)を決定するために分析され得る。分析は、出射/検出光を分光学的に分析すること、ならびに/または、例えば、獲得した信号を較正/基準試料について獲得した信号と比較するため、ノイズフィルタリングのため、補正を適用するため、およびアーチファクトを除去するための、信号/データ処理を含み得る。分光分析は、入射光内の複数の波長、および検出信号内の波長を分解するための手段(例えば、異なる波長の入射光の周波数変調または時間もしくは空間分離、および/または波長感度検出)を含む任意の方法によってなど、当該技術分野において知られるように実行され得る。
【0054】
‘データ処理デバイス’は、当該技術分野において共通であるように、ならびに特に、デジタル情報などの情報を受信、処理、および出力することができる任意のデバイスとして理解される。
【0055】
‘プロセッサ’は、当該技術分野において共通であるように、および特に、コンピュータプログラム、例えば、中央処理装置(CPU)などの処理装置を構成する命令を実行することができる電子回路と、理解される。
【0056】
データ処理デバイスを、1つまたは複数の信号に基づいて1つまたは複数の時間応答値を決定するように配置させることにより、1つまたは複数の時間応答値は、1つまたは複数の信号内の値(複数可)の変化と共に変化し得ることが理解される。
【0057】
データ処理デバイスは、さらに、1つまたは複数の時間応答値に基づいて信号(出力信号)を出力するために配置され得る。‘信号を出力すること’は、データ処理デバイスに、1つまたは複数の時間応答値(‘211ミリ秒’など)および/またはそれに基づいたパラメータ(そのような‘液体(試料)中に存在するハプトグロビン結合ヘモグロビン’、これは、そのような複合体が存在する1つまたは複数の時間応答値に基づいてさらに導出される場合)を示す情報を外部から提供することなど、当該技術分野において共通であるように理解される。
【0058】
(出力)信号の内容および形式は、異なる形態をとり得、例えば、形式は、デジタル信号またはアナログ信号であり得る。例えば、出力信号は、デジタル情報であり得る。別の例において、信号の出力は、視覚および/または可聴信号である。内容は、例えば、定性的または定量的な値であり得る。
【0059】
データ処理デバイスは、データ処理デバイスが入力として1つまたは複数の信号を取り入れ、この1つまたは複数の信号に基づいて1つまたは複数の時間応答値を決定することを可能にする既定の命令など、既定の命令への(例えば、データ処理デバイス内に動作可能に含まれる、および/またはプロセッサに接続されるデジタルストレージデバイスを介した)アクセスを含み得る、または有し得る。既定の命令は、例えば、アルゴリズムもしくはルックアップテーブルとして、またはこれに基づいて、実施され得る。既定の命令は、例えば、数学モデルなどのモデルを含む関数もしくはアルゴリズムとして、またはこれに基づいて、実施され得、1つまたは複数の信号のデータ点は、例えば、回帰分析を用いて、モデルにフィッティングされ、未知のモデルパラメータ(τ(タウ)など)の推測を得る。
【0060】
一実施形態によると、装置であって、1つまたは複数の光源および/または光検出器が、プロセッサを備えるデータ処理デバイスに動作可能に結合され、プロセッサを備えるデータ処理デバイスは、
異なる波長間隔について複数の信号を獲得することであって、例えば、複数の信号内の各信号が、複数の信号内の残りの信号のための波長間隔に対して、固有の波長間隔について獲得される、獲得すること、および
複数の信号内の信号の各々について時間応答値を決定することによって、複数の時間応答値を決定することであって、例えば、各時間応答値は、複数の信号内の残りの信号についての波長間隔に対して固有の波長間隔について獲得されるなど、異なる波長信号について獲得される信号に基づいて決定される、決定すること
を行うようにさらに配置される、装置が提示される。
【0061】
これの利点は、本装置が、故に、例えば、分析物およびバックグラウンドを表し得る異なる波長信号から獲得される複数の時間応答値を決定することが可能であり得、これが今度は、バックグラウンドを考慮した調節された時間応答値を提供すること、故に、例えば、バックグラウンド調節された時間応答値に基づいた濃度の、より正確な推定値を提供することに使用され得る。
【0062】
‘動作可能に結合される’とは、プロセッサを備えるデータ処理デバイスが、1つもしくは複数の光源および/または光検出器と動作すること、例えば、これを制御すること、および/またはこれからデータを受信することができることと理解され得る。
【0063】
‘異なる波長間隔’とは、おそらくは重複する波長間隔など、実質的に非重複など、非重複の波長間隔など、非同一と理解され得る。
一実施形態によると、装置であって、データ処理デバイスが、
調節された時間応答値を決定することであって、調節された時間応答値は、複数の時間応答値内の少なくとも2つの時間応答値に基づいて決定され、例えば、1つの時間応答値は、別の応答値にとっての基準として機能し、例えば、2つの時間応答値は、異なる、例えば固有の、波長間隔について獲得される信号について獲得されている、調節された時間応答値を決定すること
を行うようにさらに構成される、装置が提示される。
【0064】
これの利点は、本装置が、故に、例えば、バックグラウンドを考慮するために、調節された時間応答値を決定すること(上の記載を参照)、および故に、例えば、バックグラウンド調節された時間応答値に基づいた濃度の、より正確な推定値を提供することが可能であり得ることであり得る。
【0065】
一実施形態によると、装置であって、1つまたは複数の光源および/または光検出器は、異なる波長間隔について複数の信号を獲得するように配置され、例えば、複数の信号内の各信号が、複数の信号内の残りの信号のための波長間隔に対して、固有の波長間隔について獲得される、装置が提示される。考えられる利点は、複数の分析物に関する情報を並列様式で獲得することを可能にすることなど、複数の信号が、異なる分析物を反映し得ることである。別の考えられる利点は、別の信号においてバックグラウンドを考慮することを可能にすることなど、少なくとも1つの信号が、基準またはバックグラウンド信号として用いられ得ることである。例えば、時間応答値を決定する前に、基準信号(目的の分析物が光学的に活性ではない、またはあまり光学的に活性ではない(例えば最高活性波長において、プローブ光の波長における活性の30%未満など、20%未満など、10%未満などの)波長または波長間隔で獲得される信号など)は、別の信号(目的の分析物が光学的に活性である波長または波長間隔で獲得される信号など)から差し引かれ、例えば、結果として生じる信号は(理想的には、または原則的に)、重なったバックグラウンド信号なしに分析物を表す。‘異なる波長’とは、非同一の間隔と理解されるものとし、そのような間隔は、部分的にまたは完全に重複しているか、非重複である。
【0066】
実施形態において、例えば、明確に定義された試料(希釈試料など)において、単一の波長(例えば、WL1)について獲得される、時間応答値は、例えば、いくつかの(おそらくは本発明なしでは識別不可能である)分析物のうちのどれが存在するかを決定するために分析され得る。
【0067】
一実施形態によると、装置であって、データ処理デバイスは、調節された時間応答値を決定するようにさらに構成され、調節された時間応答値は、少なくとも2つの時間応答値に基づいて決定され、例えば、1つの時間応答値は、別の応答値にとっての基準として機能し、例えば、2つの時間応答値は、異なる、例えば固有の、波長間隔について獲得される信号について獲得されている、装置が提示される。考えられる利点は、分析物寄与を含む信号内のバックグラウンド寄与の影響が低減されるか、最小限にされることである。例えば、少なくとも2つの時間応答値は、異なる波長(分析物が、それぞれ、光学的に活性であるもの、光学的に活性ではないものなど)で獲得され得る。例において、調節された時間応答値は、2つの時間応答値の間の比または差として得られる。
【0068】
WL1信号はまた、WL4信号を減算することによってクリーンにされ得、その後、クリーンにされたWL1とWL4信号との比を計算する。
WL1への言及は、本出願全体を通して、415nm(有利には、415nmまたは416nmでのヘモグロビンピーク波長へのその同一性または近似性に起因して用いられ得る)など、第1の特定の波長であると理解され得る。
【0069】
WL4への言及は、本出願全体を通して、450nm(有利には、415nmまたは416nmでのヘモグロビンピーク波長へのその遠隔性に起因して用いられ得、この遠隔性が450nmを基準波長としての使用に好適にし得る)など、第2の特定の波長であると理解され得る。
【0070】
一実施形態によると、装置であって、データ処理デバイスは、比を決定することであって、
415nmの単一の波長など、第1の波長間隔について獲得される時間応答値と、
450nmの単一の波長など、第2の波長間隔について獲得される時間応答値と
の比を決定することを行うようにさらに構成される、装置が提示される。
【0071】
考えられる利点は、分析物寄与を含む信号内のバックグラウンド寄与の影響が低減されるか、最小限にされることである。比が適用されるのは、それが、内部参照として別の信号を利用するためであり、これは最も精密な方法であり得る。例えば、少なくとも2つの時間応答値は、異なる波長(分析物が、それぞれ、光学的に活性であるもの、光学的に活性ではないものなど)で獲得され得る。
【0072】
波長間隔は、‘単一の波長’であり得ることが一般的に理解され、以て、当業者が認識するように、実用目的のため、単一の(中心)波長に効果的に対応する狭い間隔、例えば、中心波長の周辺を中心とするピーク、例えば、20nm未満、例えば10nm未満、例えば5nm未満、例えば2nm未満、例えば1nmのFWHM(全幅、半値幅)を有するガウス関数と理解される。
【0073】
1つもしくは複数の光源および/または光検出器は、プロセッサを備えるデータ処理デバイスに動作可能に結合され、プロセッサを備える前記データ処理デバイスは、
実質的に415nmを中心とする第1の波長間隔など、第1の波長間隔で第1の信号を獲得すること、
第2の波長間隔で第2の信号を獲得することであって、第2の波長間隔は、第1の波長間隔に対して、異なる、例えば固有であり、例えば、第2の波長間隔は、実質的に450nmを中心とする、第2の信号を獲得すること、および
比を決定することであって、
第1の波長間隔について獲得される時間応答値と、
第2の波長間隔について獲得される第2の時間応答値と
の比を決定すること
を行うようにさらに配置される、先行する請求項のいずれかに記載の装置。
【0074】
これの利点は、本装置が、故に、異なる波長信号から獲得される時間応答値を決定すること、および比を決定することができ、これにより、分析物寄与を含む信号におけるバックグラウンド寄与の影響が低減されるか、最小限にされることであり得る。比が適用されるのは、それが、内部参照として別の信号を利用するためであり、これは最も精密な方法であり得る。例えば、少なくとも2つの時間応答値は、異なる波長(分析物が、それぞれ、光学的に活性であるもの、光学的に活性ではないものなど)で獲得され得る。
【0075】
一実施形態によると、装置であって、1つまたは複数の時間応答値は、
1つもしくは複数の信号の各々内の信号値における1つもしくは複数の差に基づき、上記信号値が異なる時間点で獲得される、および/または
1つもしくは複数の特徴的な時間であり、例えば、1つもしくは複数の特徴的な時間は各々、パラメータにおける変化持続時間もしくは特定の変化量を表す、装置が提示される。
【0076】
‘信号値における1つまたは複数の差に基づく’とは、例えば、時間応答値が、信号値における差に基づいて計算されることと理解され得、例えば、時間応答値は、信号値における特定の差を有するデータ点の間の時間差、例えば、ベースライン信号値から特定の偏差を超える信号値を有する第1の点と、特定のしきい値を超える信号値を有する第2の点との間の時間差に等しく、例えば、しきい値は、‘立ち上り時間’など、(後続の)安定状態または飽和信号値の63%など、パーセンテージとして表現される。そのような様式で計算される時間応答値は、(それが時間の経過と共に増加し、次第に安定することを除き)信号の時間的推移に関する(モデル)仮定とは独立し得る。
【0077】
代替的に、‘信号値における1つまたは複数の差に基づく’とは、信号値における変化率など、異なる時間に獲得される信号値についての信号値間の差と理解され得る。例えば、2つの異なる波長についての信号値の変化率が獲得され得、差異尺度を決定するために使用され得る。
【0078】
‘特徴的な時間’とは、システムの応答時間の尺度と理解され得る。例えば、一次の線形時不変系であるシステム、または一次の線形時不変系としてモデル化されるシステムの場合、特徴的な時間は、以前に説明されるようにτ(タウ)として提供され得る。
【0079】
一実施形態によると、装置であって、本装置は、複数の時間点の各々において生成される1つまたは複数の信号が孔内の分析物または分析物の群の濃度を表すように配置される、装置が提示される。当業者は、少なくとも特定の濃度について、複数の時間点の各々において生成される1つまたは複数の信号が孔内の分析物または分析物の群の濃度を表すような装置を想起することが容易に可能である。例えば、本装置は、信号値が、高需要の分析物が吸光する波長における吸光度、または蛍光強度(光源は、第1の波長で、分析物の蛍光色素分子を励起し、検出器は、別の波長で、発せられた蛍光色素分子を検出する)のうちの任意の1つまたは複数を反映するように配置され得る。
【0080】
一実施形態によると、装置であって、データ処理デバイスが、1つまたは複数の信号に基づいて液体中の分析物または分析物の群の濃度を決定するようにさらに構成される、装置が提示される。
【0081】
考えられる利点は、1つまたは複数の時間応答値が獲得されるだけでなく、濃度も獲得されるなど、追加の情報が取得されることであり得る。液体中の濃度は、孔内の安定状態または飽和濃度として決定され得る。孔内の濃度は、例えば、モデリング、計算、および/または較正に基づいて決定され得る。
【0082】
一実施形態によると、装置であって、液体中の分析物または分析物の群の決定された濃度は、1つまたは複数の時間応答値に基づく、装置が提示される。液体中の分析物または分析物の群の濃度は、飽和信号値などの信号値により単独で決定されない場合がある。これは、特に、複数の光学的に識別不可能な分析物が存在する場合に当てはまり得る。例えば、2つの光学的に識別不可能な分析物が存在する場合、飽和信号値-さもなければ直接的に濃度を導出することが可能である-は、(加重)和など、両方の分析物からの寄与の結果である。しかしながら、時間応答値は、分析物のうちのどれが存在するか、および/またはそれらの比を決定することを可能にし得、これにより、信号値に対するそれらの別個の寄与を解き明かすこと、および一方または両方の分析物の各々の濃度を導出することを可能にする。
【0083】
代替的に、または加えて、分析物の決定された濃度は、1つまたは複数の時間応答値に基づいて、分析物の(直接的に)測定された濃度に対して調節され得る。例えば、特定のカリウムイオン濃度、およびハプトグロビン結合ヘモグロビンの特定の濃度が測定される場合、カリウムの決定された濃度は、測定値から推定干渉値を引くことによって得られ得、決定された濃度は、真の患者カリウム値を推定することを目指し、すなわち、インビトロ溶血からのカリウム寄与(ハプトグロビン結合ヘモグロビンの濃度によって決定されるような)を除外する。
【0084】
より具体的には、例えば、カリウムイオンでは、ハプトグロビンが存在する場合、cfHbからのインパクトファクタまたは干渉効果は、cfHbがハプトグロビンに結合されるか否かにかかわりなく、比例因子(0.3mM/(100mg/dL cfHb))を測定されたcfHb濃度で乗算することによって推定される。真の患者値カリウムイオン濃度の推定値は、測定されたカリウム濃度から上記インパクトファクタを引いたものとして推定される(ハプトグロビンの存在は、溶血がインビトロで発生したという指標であり、故に、赤血球からのカリウムイオンは、患者内のカリウム濃度に対して試料中のカリウム濃度が増加したという仮定に起因する)。同様の原則が他の分析物のために適用可能であり、実施形態によると、本方法は、決定されたインビトロ/エクスビボ溶血のために、K+、Ca++、および/またはNa+などの溶血感度パラメータを補正するステップをさらに含む。
【0085】
一実施形態によると、装置であって、データ処理デバイスは、液体中の分析物または分析物の群の濃度が第1の既定の濃度値を上回るかどうか、および/または第2の既定の濃度値を下回るかどうか、例えば、既定の間隔内であるかどうか、を決定するようにさらに構成される、装置が提示される。これの考えられる利点は、時間応答値に基づいて分析物を互いから識別することが、特定の濃度範囲内で、例えば特定の濃度範囲内でのみ、特によく機能し得ること、および、濃度がそのような範囲内にあるかどうかをチェックすることによって、時間応答値に基づいて分析物を識別する可能性または妥当性に関する情報が取得され得ることであり得る。
【0086】
一実施形態によると、装置であって、孔は、機能化される、例えば、ヒト血清アルブミンなどの1つまたは複数のバイオレセプタにより機能化される、装置が提示される。‘機能化される’とは、例えば、特異性または感受性が増加するように、酵素、抗体、およびアプタマーなどの化学または生体認識素子を孔内に(両側で、または行列で)固定することを含む、化学的または生物学的機能化など、素子が、特定の(センサ)目的に向けて、孔の機能性を増加させることを視野に入れて、孔に追加されることと理解され得る。
【0087】
一実施形態によると、装置であって、データ処理デバイスは、1つまたは複数の時間応答値など、1つまたは複数の時間応答値、および液体中の1つまたは複数の分析物の濃度に基づいて、異なる分子量および任意選択的に同様の光学的性質を有する、分析物と1つまたは複数の他の分析物とを識別することなど、分析物または分析物の群を検出するように配置される、装置が提示される。‘分析物または分析物の群を検出する’とは、分析物の存在を定性的に検出すること(YES/NO)、および、順序、間隔、または比率タイプの尺度などで、濃度を定量的に決定することの両方と理解され得る。
【0088】
一実施形態によると、装置であって、データ処理デバイスは、1つまたは複数の時間応答値に基づいて、液体中の2つ以上の既定の分析物の間の濃度における、絶対または相対差などの差を示す差異尺度を決定するようにさらに配置される、装置が提示される。‘差異尺度’は、例えば、2つの分析物の間の比などの関係、例えば、2つの(おそらくは光学的に識別不可能な)分析物の間の比Concentrationanalyte1/Concentrationanalyte2であり得る。代替的に、‘差異尺度’は、Concentrationanalyte1からConcentrationanalyte2を差し引いた差など、絶対値であり得る。考えられる利点は、本実施形態が、分析物の濃度に関する情報を提供することを可能にすることであり、これは、分析物が光学的に識別不可能である場合に特に重要であり得る。
【0089】
一実施形態によると、装置であって、2つの既定の分析物は、HSA-ビリルビンなどのヒト血清アルブミン結合ビリルビン、および遊離ビリルビンなどのヒト血清アルブミンに結合されないビリルビンである、装置が提示される。
【0090】
特に有利な実施形態において、光学的にプローブされるビリルビンによる血漿の色付けは、例えば、分光的に分解された吸光度測定を使用することによるもの、または、液体副試料中のビリルビンの存在を示すスペクトル範囲内、例えば、波長380nm~750nmのスペクトル範囲内、例えば、波長400nm~520nmのスペクトル範囲内、もしくは約455nmの既定の帯域幅にわたって分光的に統合した吸光度を測定することによるものである。
【0091】
一実施形態によると、装置であって、2つの既定の分析物が、ハプトグロビンに結合しない無細胞ヘモグロビン、およびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体などのハプトグロビン結合ヘモグロビンである、装置が提示される。
【0092】
一実施形態によると、装置であって、本装置、例えば、血液ガス分析である上記装置は、以下:
二酸化炭素、例えばCO2、
酸素、例えばO2、および
pH
のうちの1つまたは複数またはすべての液体試料中の濃度を測定するためにさらに配置される、装置が提示される。
【0093】
そのような(血液ガス分析器)装置を有する利点は、さらなる関連液体(血液)試料パラメータを提供することを可能にすることであり得、例えば、出力を介して、ユーザ(専門家ではないユーザでさえ)は、再試験が必要であり得るなど、例えば、1つまたは複数の分析物が高い(高すぎる)無細胞ヘモグロビン干渉臨界と関連付けられ得るかどうかを通知され得る。利点は、例えば、それが、高速の応答時間、専門家ではないユーザへの関連出力、および複数のパラメータのうちの1つもしくは複数またはすべてが特に関連し得るポイントオブケア試験のための関連ソリューションを提供することであり得る。
【0094】
一実施形態によると、装置であって、本装置は、前側の、後ろ側に対向する側から、孔の内側に配設される液体を光学的にプローブするために配置される、装置が提示される。考えられる利点は、光が、孔の外側の液体内の成分からの光学プローブ信号への寄与(その汚染など)をもたらしていた可能性のある、孔へのおよび/または孔からの道中に孔の外側(前側の前など)の液体を横断しなければならないということを回避することを可能にすることであり得る(孔は、それ自体が、孔に入るのに十分に小さい成分からのみ信号を獲得することを可能にする目的のため、液体を効果的にフィルタリングするのに有益であり得るということに留意されたい)。
【0095】
一実施形態によると、1つまたは複数の光源など、1つまたは複数の光源、および光検出器など、少なくとも光検出器の両方を備える装置であって、1つまたは複数の光源および光検出器の各々は、前側の、後ろ側と同じ側の、透光性素子の外側など、前側の、後ろ側に対向する側に置かれる、装置が提示される。これは、前側の、後ろ側に対向する側から孔の内側に配設される液体を光学的にプローブすることなど、単純および/または効率的な装置を促進することに有利であり得る。
【0096】
一実施形態によると、装置であって、
1つまたは複数の光源は、前側の、後ろ側に対向する側から、透光性素子内の少なくとも孔を照明するように適合され、および/または
光検出器は、1つまたは複数の光源などの1つまたは複数の光源による照明に応答して発せられるなど、孔から出射する光を受信するように配置され、光検出器は、後ろ側を向く方向に前側から離れる方向において孔から発せられた、例えば主に発せられた、受信した光を表す信号を生成するように適合される、装置が提示される。
【0097】
これは、前側の、後ろ側に対向する側から孔の内側に配設される液体を光学的にプローブすることなど、単純および/または効率的な装置を促進することに有利であり得る。
一実施形態によると、装置であって、
1つもしくは複数の光源は、例えば、前側の、後ろ側に対向する側から、透光性素子内の少なくとも孔を照明するように適合され、孔に到達する1つもしくは複数の光源からの光は、孔と流体接続されており、前側の、後ろ側とは反対の側など、透光性素子の外側にある、体積を横断する必要はなく、および/または
光検出器は、1つもしくは複数の光源などの1つもしくは複数の光源による照明に応答して発せられるなど、孔から出射する光を受信するように配置され、光検出器は、受信した光を表す信号を生成するように適合され、孔から出射して光検出器に到達する光は、孔と流体接続されており、前側の、後ろ側とは反対の側など、透光性素子の外側にある体積を横断している必要はない、装置が提示される。考えられる利点は、光が、孔へのおよび/または孔からの道中に孔の外側(前側の前など)の液体を横断しなければならないということを回避することによって、孔の外側の液体内の成分からの光学プローブ信号への寄与(その汚染など)は、低減され得る、最小限にされ得る、または除去され得ることであり得る(孔は、それ自体が、孔に入るのに十分に小さい成分からのみ信号を獲得することを可能にする目的のため、液体を効果的にフィルタリングするのに有益であり得るということに留意されたい)。
【0098】
一実施形態によると、透光性素子であって、孔の開口部の断面寸法が、1μm以下、例えば800nm以下、例えば500nm以下、例えば400nm以下であり、ならびに/または、孔に沿った軸方向における孔の長さが、100μm未満および任意選択的に5μm超、例えば50μm未満、例えば30μm未満、例えば25μmである、透光性素子が提示される。
【0099】
約1μm以下、または好ましくは、サブミクロン範囲内の、例えば約800nm以下、例えば約500nm以下、または約400nm以下の、最大断面寸法を有する透光性素子の前側の平面に開口部を有する孔を使用することによって、赤血球、白血球、および血小板(thrombocyte/platelet)を含むいかなる細胞成分も孔に入ることが防がれる。
【0100】
さらに驚くべきことには、約500nm以下の断面寸法を有する開口部を伴う孔は、約800nm以上の断面寸法を有する開口部を有するが、同じ合計孔体積/体積気孔率を有する孔など、より大きい孔と比較して増大された感度を有する。
【0101】
最も好ましくは、孔は、許容可能な信号対雑音比で依然としてプローブされ得る十分に大きい副試料の効率的な抽出を可能にするために、それぞれの最小孔体積を有する最小開口部を有する。有利には、孔は、約30nm以上、または50nm以上、または100nm以上、または約200nm以上の開口部を有する。
【0102】
好適な孔は、例えば、孔が一端で閉じられる改良を伴って、IT4IP社(IT4IP s.a./avenue Jean-Etienne Lenoir1/1348 Louvain-la-Neuve/Belgium)から市販されているものに類似した、いわゆるトラックエッチングされた孔を有する透明高分子膜から生産され得る。膜内の通り抜け孔は、例えば、多孔性膜の後ろ側にバックシートをラミネートすることによって、または、イオン衝撃トラック、および故に、これらのトラックに続くエッチングされた孔が、透明高分子膜内で停止して非貫通孔を形成するように、イオンを減速させることによって、閉じられ得る。膜は、典型的には、透光性素子に適切な機械的強度を提供するために、固い透明の素子によって裏打ちされる。
【0103】
一実施形態によると、多孔性であって、透光性素子が透明高分子で作製される、多孔性が提示される。
一実施形態によると、多孔性であって、孔が、透光性素子において、および任意選択的に、存在する場合1つまたは複数の層において、トラックエッチングされる、多孔性が提示される。
【0104】
透明の素子は、好ましくは、光を吸収しない材料で作製されるべきであり、同時に、例えば、材料をトラックエッチングすることによって、材料内に非貫通孔を産生することが可能でなければならない。これに好適な材料は、ポリエチレンテレフタレート(PETまたはPETE)、またはPETの類似物質(ポリエチレンテレフタレートポリエステル(PETPまたはPET-P))、またはポリカーボネート(PC)である。透明の素子は、孔内への拡散を増加させるために、例えばポリエチレングリコール(PEG)の、親水性コーティングを含み得る。親水性コーティングは、透光性素子の使用に従って選択され得る。いくつかの用途において、透光性素子は、一旦使用されると、決して乾くことはなく、したがって、それは、始動時にのみ親水性である必要がある。透光性素子の他の使途では、透光性素子は、透光性素子が乾き、その後、透光性素子がさらなる使用のために再湿潤されるときに依然として使用可能であるように、それを永久的に親水性に保つコーティングを必要とする。
【0105】
一実施形態によると、透光性素子であって、
孔を含む透光性素子の所与の体積の多孔性は、体積で50%~5%、例えば、体積で30%~10%、例えば、体積で15%である、透光性素子が提示される。
【0106】
孔は、孔の開口部が分布される対応する前側表面積を伴って、透光性素子内に(または透光性素子の所与の領域内に)多孔性を作り出す。多孔性は、孔によって透光性素子内に作り出される空所の体積、すなわち、孔体積に関して特徴付けられ得、孔体積は、孔によって貫通される透光性素子の体積を指す。この体積は、ここでは、孔が分布される前側領域と、透光性素子の前側に垂直の軸方向において見られるような透光性素子内への孔の貫通の最大深さだけ透光性素子内へシフトされる同一の平行領域との間の体積と定義される。
【0107】
それに加えて、多孔性は、光学プローブが利用可能である副試料体積に等しい、統合した孔体積に関してさらに特徴付けられ得る。孔体積は、簡便には、孔開口部が分布される対応する前側領域について言及される孔体積である、等価の孔体積深さDELTAとして表現され得る。したがって、透光性素子の多孔性は、以下のように等価の孔体積深さDELTAへと変換され得る。所与の前側領域A内に開口部を有する孔は、総孔体積Vを有する。等価の孔体積深さは、このとき、総孔体積を所与の前側領域で割ったものとして計算される:DELTA=V/A。
【0108】
一実施形態によると、透光性素子であって、
等価の孔体積深さ(DELTA)は、20μm未満、例えば10μm未満、例えば5μm以下であり、等価の孔体積深さ(DELTA)は、孔の総体積(V)を、孔の開口部が分布される前側領域(A)で割ったものである、透光性素子が提示される。
【0109】
以て、関連成分のそれぞれの濃度を伴う小さい副試料が獲得される。小さい副試料体積は、高速副試料交換を促進し、以て、透光性素子の応答時間、および透光性素子を使用した測定のサイクル時間を低減するために、望ましい。小さい副試料体積は、透光性素子の前側に近い全血試料内の血漿分画の境界層の逓減の効果を回避するために、さらに望ましい。そのような逓減効果はさもなければ、小さい静置試料において発生し得、このような試料においては、例えば、等価の孔体積深さが臨界値を超える場合、赤血球が、透光性素子の前側において境界層の方への全血試料の体積からの関連成分の効率的な拡散交換を妨害し得る。
【0110】
好ましくは、等価の孔体積深さDELTAは、少なくとも1μm、代替的に少なくとも2μm、または3μm~5μmの範囲内であり、等価の孔体積深さは、上記のように定義される。より大きい副試料体積は、より大きい副試料体積が血漿内の関連成分に関する光学的にプローブされた情報に寄与することから、より良好な信号対雑音レベルを達成するために望ましい。
【0111】
さらに、いくつかの実施形態によると、一方では、応答時間を減少させること、サイクル時間を減少させること、および/または小さい静置全血試料または液体において逓減効果を回避すること、ならびに他方では、必要とされるまたは所望される信号対雑音比、との間の有用な折衷案が、1μm~20μmの範囲内、好ましくは2μm~10μmの範囲内、または約4μm~5μmの等価の孔体積深さDELTAについて見出される。
【0112】
有利には、1つの実施形態によると、透光性素子は、透光性素子の後ろ側に付着される透光性の裏材によって支持される。以て、強化された機械的安定性が達成される。
一実施形態によると、透光性素子であって、透光性素子の透明の裏材スライドが、外側空気と透明裏材スライドとの間の屈折率におけるシフトの効果を最小限にするために、前側表面に対して、60°に角度付けされた表面など、45°~75°に角度付けされた表面を伴って提供される(例えば、透光性素子の外側に90°の角がなく、角は、45°~75°、例えば、60°の表面を代わりに獲得するために“切り落とされる”)、透光性素子が提示される。
【0113】
さらに、本発明による透光性素子の1つの実施形態によると、透光性素子の後ろ側に付着される透明の裏材は、光源からの、および検出器への光が、孔区域に到達する光のための増大された入射角を有するように、60°プリズム(すなわち、透光性素子の外側に90°の角がなく、角は、60°の表面を代わりに獲得するために“切り落とされる”)が、透明の裏材の外側に位置付けられるような厚さを有する。例えば、60°プリズムを有することの考えられる利点はまた、光が裏材の表面で反射され、そのため、出射光が検出器に到達する前に複数の反射が存在することになることが理由で、透光性素子の内側を進行する光の機会を増加させる。
【0114】
さらに、本発明による透光性素子の1つの実施形態によると、孔の内壁面は、親水性であり、例えば、親水性コーティングで覆われる。以て、乾いた孔の液体による効率的な毛細管駆動の充填が達成される。さらには、親水性コーティングは、疎水性染料、ヘモグロビン、および他のタンパク質などの特定の疎水性物質が、孔の内側に堆積することを防ぎ、さもなければ、水溶液で洗い流すことが困難であるセンサの段階的な汚れをもたらすことになる。故に、高速および高信頼応答での液体中の分析物の検出のための改善されたデバイスが可能にされ得る。
【0115】
一実施形態によると、透光性素子であって、孔の内壁面が親水性コーティングで覆われる、透光性素子が提示される。
さらに、本発明による装置の1つの実施形態によると、光源は、透光性素子の後ろ側から、斜め入射の照明ビームを提供するために構成され、照明角度は、透光性素子の前側によって画定される基準面の面法線に対する入射ビームの角度と定義される。以て、増大した光学相互作用長が達成され、こうして、入射光が検出器による検出のためにプローブ領域を出る前に、孔の内容物との入射光の相互作用を強化する。さらには、孔開口部を通じた液体内へのプローブ光の浸透は、孔開口部の低減された明白な断面、ならびに、孔開口部を通って、反射層の反対側の液体空間内へよりも、プローブ領域内へ光を広げる増大された散乱に起因して、防がれる。
【0116】
光源は、原則的に、本システムが機能するように孔内の分析物が光を吸収する領域において光を伝送する任意の光源であり得るが、好ましくは、光源は、平坦なスペクトル特徴を有するべきであり、すなわち、平坦な特徴がより良好な応答をもたらすことになるため、スペクトルは、ピーク振幅を含有しない。光源が、非平坦なスペクトルを有する場合、すなわち、光源が、ピーク振幅を有する場合、ピークにおけるわずかな変化が、吸光における変化として誤って解釈され得る。発光ダイオードが、サイズ、重量、効率性などに関するそれらの性質に起因して、多くの場合好ましい。さらに、本発明によるセンサの1つの実施形態によると、検出器は、透光性素子の後ろ側から斜めに出射する光を収集するように構成され、検出角度は、透光性素子の前側によって画定される基準面の面法線に対する、検出器へ向かう出射光の伝搬の角度と定義される。検出器は、光学プローブ構成の光源による照明に応答して出射する光を収集するように構成される。透光性素子の後ろ側から斜めに出射する光を検出することは、全血試料から出射し、前側表面および1つまたは複数の層(存在する場合)を通ってプローブ領域内へ漏れる光からの検出信号への寄与を低減する。
【0117】
検出器は、スペクトル全体において吸光を検出することができる光ダイオードまたは分光器であり得る。代替的に、アレイまたはダイオードが使用され得、各ダイオードは、異なる波長で光を発し、光ダイオードは、検出器として使用される。ダイオードは、異なる間隔で光を発するために多重化され得る。次いで、吸光は、光ダイオードによって検出される光と比較される、その特定の間隔にあるダイオードから発せられる光を比較することによって、見出される。
【0118】
さらに、本発明による装置の1つの実施形態によると、入射面および検出面は、面法線で交差して、少なくとも0度、および180度未満、好ましくは160度未満、好ましくは130度未満、または好ましくは約90度未満の方位角を包囲し、入射面は、照明ビームの方向および基準面への面法線によって張られ、検出面は、検出器へ向かう出射光伝搬の方向および基準面への面法線によって張られる。以て、プローブ領域を通過する前の光界面における部分反射からのグレアの検出信号への寄与は低減される。プローブ領域内で副試料と相互作用しなかった光のそのようなグレアは、関連情報を含まず、したがって、信号対雑音比に有害である。
【0119】
光学プローブ光は、任意の好適な光学プローブ構成によって実施され得る。そのような光学プローブ構成は、光のビームを透光性素子の後ろ側にだけ向け、光検出器の入力を照明領域へ向けることを含み得る。光学構成は、透光性素子内へのプローブ光の結合を改善し、検出器入力内への透光性素子から出射する光の結合を改善する、さらなる光学素子を含み得る。そのような光学素子は、透光性素子の後ろ側に直接的に付着/接着される1つまたは複数のプリズムおよび/またはレンズ構成を含み得る。好ましくは、結合光学系は、光学プローブの“反射”性に対応し、入ってくるプローブ光および検出された出射光は、透光性素子の前側表面の同じ側面に維持される。さらなる改善は、例えば、第1の端においてプローブ光を透光性素子内へ結合し、プローブ領域内の光が、透光性素子の前側表面に沿って透光性素子の前側に平行の方向に本質的に伝搬して孔を横断することを強いて、第1の端を横断し得るか、その反対側であり得る透光性素子の別の端から出射光を収集することによって、孔とのプローブ光の光学的相互作用を強化することにおいて見出され得る。
【0120】
光源が古くなると、それらは、例えば、発する光が少なくなるなど、特徴が変化し得るか、またはドリフトが、ピーク振幅に影響を及ぼし得る。これは、検出器が、透光性、例えば、透明の素子内の孔が、クリーンである、すなわち、光を吸収する孔内の分子を含有しないことが予期される状況において、透光性、例えば、透明の素子を通って受信される光を測定する、フィードバック較正プロセスを使用することによって補われ得る。受信される光の振幅が予期したものよりも小さい場合、光源へのフィードバックループは、光源の劣化を補うために、光源への電流または電圧が増大されることを制御し得る。代替的に、光源が特徴を変化させた場合、測定のときの実際の吸光の計算は、元の工場較正と比較して、発せられた光のこのような変化に対して調節し得る。
【0121】
有利には、1つの実施形態によると、検出器は、分光光度計を含み、光学プローブデバイスは、透光性素子内のプローブ領域から出射する光の分光光度分析のために構成される。これは、プローブ領域内の副試料から出射する光における1つまたは複数の関連成分の分光的特徴を分解することを可能にする。
【0122】
さらに、特に有利な実施形態によると、光学プローブデバイスは、吸光度を測定するために構成される。以て、驚くほど著しい信号が、比較的単純な光学的設定で獲得される。これは、血液分析器システムなど、より複雑な分析設定とのセンサの容易な統合を可能にする。
【0123】
いくつかの光学的に活性の成分は、血液、例えば、ビリルビン、二酸化炭素(CO2)、Patent Blue V、およびメチレンブルーにおいて見出され得る。透光性素子は、平常な成人ビリルビン濃度を報告することができるほど十分に高い感度でビリルビンを検出することを可能にする。染料Patent Blue Vは、リンパ管を色付けするために、リンパ管造影およびセンチネルリンパ節生検において使用され得る。それはまた、歯の歯垢を示すための染色剤として、歯垢染め出しタブレットにおいて使用され得る。メチレンブルーは、患者内の高メトヘモグロビン濃度に対する治療、およびいくつかの尿路感染症の治療において使用される。
【0124】
透光性素子からの結果として生じるスペクトルを分析するとき、全血または血漿からの吸光スペクトルが負のベースラインを有することが明らかになった。負のベースラインは、リンスと比較して、全血または血漿について測定するとき、検出器の方への入ってくる光のより高い割合を反射する透光性素子によって引き起こされる。この効果は、ヘモグロビンが吸光しない高い波長(600~700nm)で見られ得る。この効果は、リンスと比較して、血漿内の高いタンパク質含有量によって引き起こされるより高い屈折率から生じる。この効果は、ヘモグロビンピーク波長(416nm)で約15mAbsを有するヘモグロビンと比較して、約5mAbsである(吸光度Absは、光単位であり、1Absは、元の光強度の10%への減衰を引き起こし、mAbsは、ミリAbsを指す)。光源からの光強度の基準決定を利用する検出器では、約1~5g/Lの検出限度で、全血試料のタンパク質(ヒト血清アルブミン、HSA)含有量を検出することが可能である。
【0125】
しかしながら、ベースライン(シフト)の振幅(および振幅の符号)は、設定の幾何学に依存する(入る光と出る光の間の角度が小さい(約40°を下回る)場合、正のベースラインが観察され、角度が大きい場合は反対である)。
【0126】
透光性素子は、発色/色消耗アッセイのための読み取りデバイスとして使用され得る。アッセイの前に血漿を産生する必要がないということが利点である。
以下のタイプのアッセイが、透光性素子と共に使用され得る:
・受容体リガンドが膜チャネルの内側で結合される、サンドイッチアッセイ。
・一部が孔内で結合されるアッセイ、例えば、色付き複合体を特にアルブミンを用いて形成するためにブロモクレゾールグリーンを使用する、ブロモクレゾールグリーンアルブミンアッセイ。620nmで測定される色の強度は、液体中のアルブミン濃度に正比例する。
・アスパラギン酸塩からα-ケトグルタル酸へのアミノ基の転移が、グルタミン酸の生成を結果としてもたらし、存在するAST酵素活性に比例する比色分析(450nm)生成物の生産が結果として生じる、例えば、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)活性アッセイキットとしての、酵素活性アッセイ。
【0127】
透光性素子はまた、ビール醸造、廃水分析、食品試験、および染料生産など、非医療応用に使用され得る。ビール醸造においては、精密な色が所望される。透光性素子は、液体を測定し、正しい色の液体による読み取りと比較することによって、ビールが所望の色を有するか否かを決定するために使用され得る。廃水は、ある成分の存在または不在について分析され得る。ミルク、ジュース、および他のスラリーなどの液体の食品試験においては、透光性素子は、ある成分または分析物の存在または不在についての分析のために使用され得る。他の化学反応器、例えば、染料産業は、それらの液体について所望の色、内容物、または他の化学的性質を獲得するために透光性素子を使用し得る。
【0128】
有利には、いくつかの実施形態によると、透光性素子、または透光性素子を備える血液分析システムまたは装置は、液体中の分析物レベルの定量的尺度を展開するために検出器によって生成される信号を既定の較正基準と比較するように構成されるプロセッサをさらに備える。
【0129】
さらに有利には、いくつかの実施形態によると、較正基準は、タルトラジン染料を含む水溶液など、染料ベースの較正溶液について獲得される。好ましくは、染料ベースの水溶液は、タルトラジンなどの較正染料を追加した典型的なリンス液から調製される。
【0130】
一実施形態によると、装置であって、透光性素子は、任意の界面効果を無視することなど、材料を通過する光の、任意選択的に部分的または全体的に拡散する透過係数が、100マイクロメートルの材料を通る長さの場合は少なくとも50%である、例えば、材料の長さを通らない光の割合が、少なくとも、400~520nmなどの380nm~750nmの範囲内、例えば400~460nmの範囲内、例えば415~420nmの範囲内、例えば、415nmもしくは約415nm、または416nmもしくは約416nm、または450nmもしくは約450nm、または455nmもしくは約455nmの1つの波長の場合、100マイクロメートルの50%以下、例えば100マイクロメートルの40%以下、例えば100マイクロメートルの20%以下、例えば100マイクロメートルの10%以下、例えば100マイクロメートルの5%以下であるように減衰係数を有する材料を含む、例えば主に含む、例えば50w/w%以上含む、例えばこれからなる、装置が提示される。これは、単純な様式で、透光性素子の透光性の性質を得ることを可能にし得る。
【0131】
一実施形態によると、多孔性ユニットを備える装置であって、本装置は、透光性素子を備え、導光コアを備える光学アセンブリをさらに備え、導光コアは、入力分岐、出力分岐、および前側と反対の透光性素子の後ろ側(4)に接触するように配置される結合界面を備え、例えば、入力分岐および出力分岐は、前側表面に垂直に配置される共通導波面に配置される。任意選択的に多孔性ユニットの後ろ側に結合される光学アセンブリは、本文内の他の場所にも開示されるなど、多孔性ユニットの後ろ側から(後ろ側から前側へ向かう方向に入る孔への入射プローブ光、および、前側から後ろ側への方向に発せられる、孔から光検出器へ発せられる光など)、孔内の、液体などの流体に対して、選択的な光学測定など、光学測定を実施する(例えば、効率的な、単純な、および/または十分に制御された様式で実施する)ことを可能にし得る。光学アセンブリを多孔性ユニットの後ろ側に、結合、例えば剛結合させることの考えられる利点は、多孔性ユニットおよび光学アセンブリが、このとき、センサユニットまたはセンサカセットなどのユニットまたはカセットを一緒に形成し得、これが(センサ)システムまたは装置に挿入され、そこから除去され得、例えば、多孔性ユニットの摩耗および/または汚染(孔の汚染など)に伴う問題を、交換によって、効率的な様式で克服することを可能にし得る消耗品を形成し、1つまたは複数の周辺機器、例えば、光源および/または光検出器などの受信ユニットなど、光学周辺機器との統合、例えば、効果的な統合が、光学アセンブリを介して可能にされ得る、および/または促進され得ることであり得る。一実施形態において、光学アセンブリは、参照により本明細書にその全体が組み込まれる国際特許出願第WO2021123441A1号に説明される(それは、光学部分組立品と称される)ようなもの、例えば、
図1~
図9および上記出願の添付の文章に説明されるようなものであり、これらは参照により追加的に具体的に本明細書に組み込まれる。入力および出力分岐は、透光性素子の後ろ側など、光学アセンブリと透光性素子との間の結合界面の方へ向けられ得る。
【0132】
一実施形態によると、多孔性ユニットを備える装置であって、本装置は、透光性素子多孔性ユニットを備え、軸方向を画定する流路によって貫通されるハウジングをさらに備え、流路は、試料空間を備え、前側を伴う多孔性ユニットが、液体が試料空間内にあるときなど、液体に接触するためのセンサ表面を画定するように配置され、センサ表面は、試料空間の方を向き、例えば、孔は、試料空間との拡散液体連通のために液体中の分析物に関して構成される、装置が提示される。多孔性ユニットの前側など、多孔性ユニットに任意選択的に剛結合される、そのようなハウジングを有することの考えられる利点は、多孔性ユニットおよびハウジング(および任意選択的に、さらに光学アセンブリ)が、このとき、センサユニットまたはセンサカセットなどの、ユニットまたはカセットを一緒に形成し得、これが(センサ)システムまたは装置に挿入され、そこから除去され得、例えば、多孔性ユニットの摩耗および/または汚染(孔の汚染など)に伴う問題を、交換によって、効率的な様式で克服することを可能にし得る消耗品を形成し、1つまたは複数の周辺機器、例えば、(マイクロ)流体システム(および光学アセンブリの場合は光学周辺機器)との統合、例えば、効果的な統合が、光学アセンブリを介して可能にされ得る、および/または促進され得ることであり得る。一実施形態において、ハウジング(および任意選択的に、光学アセンブリ)は、参照により本明細書にその全体が組み込まれる国際特許出願第WO2021123441A1号に説明される(光学アセンブリは、おそらくは光学部分組立品と称される)ようなもの、例えば、
図1~
図9および上記出願の添付の文章に説明されるようなものであり、これらは参照により追加的に具体的に本明細書に組み込まれる。
【0133】
一実施形態によると、多孔性ユニットを備える装置であって、本装置は、透光性素子および光学アセンブリおよび任意選択的にハウジングを備え、多孔性ユニットは、装置の部分を形成し得るコヒーレントユニットなど、カセットを形成し、例えば、カセットは、動作可能に、および可逆的に(任意選択的に非破壊様式で)装置の残部に接続され得る、装置が提示される。さらなる実施形態において、カセットおよび装置の残部は、可逆性摩擦ばめなど、中間ばめによって、接続され得る。‘中間ばめ’とは、部品が一緒に保持されるはめ合いが固く保持されるが、分解されること、例えば、器具なしで分解されること、例えば、普通の人など、人間の手によって分解されることができないほどには固くないと理解される。さらなる実施形態において、設備の異なる部分は、以下のうちの1つもしくは複数またはすべてなど、機械的係止部材によって一緒にされる:ピン(スプリットピン、またはばねピンなど)、クリックロック(一つの部分に位置付けられたばね荷重係合部材が、組み立ての際に別の部分の空洞または縁と係合し、そのため、ばね力が分解の前に弱められなければならない、ロックなど)、ディテントボール、トミーねじまたはウイングねじなどの手で操作可能なねじ。機械的係止部材のいずれかは、部品を一緒に保持する機能を果たし得ること、しかしながら、機械的係止部材のいずれかは、任意選択的に、普通の人など、人間の手によってなど、器具なしに弱められる、または取り外され得ることが理解され得る。
【0134】
一実施形態によると、多孔性ユニットを備える装置であって、本装置は、透光性素子および光学アセンブリおよび任意選択的にハウジングを備え、例えば、上記多孔性ユニットは、装置の残部と動作可能に、および可逆的に接続可能であるカセットである、装置が提示される。
【0135】
一実施形態によると、装置であって、本装置は、孔内の液体の吸光度など、(任意選択的に分光的に分解された)吸光度を測定するために構成される、装置が提示される。これの利点は、それが、孔内の液体中の分析物の情報、例えば、濃度の情報を、単純なやり方で獲得することを可能にすることであり得る。
【0136】
いくつかの実施形態によると、液体中の分析物を光学的に検出する方法は、上に開示されるような透光性素子を提供するステップ、孔を基準液で充填するように透光性素子を基準液と接触させるステップ、透光性素子の前側を液体と接触させるステップ、液体中の分析物の孔内への拡散を可能にして安定化させるために拡散時間の間待機するステップ、孔の内側の液体を光学的にプローブするステップ、および光学プローブの結果に基づいて、液体の分析物レベルを確立するステップを含む。好ましくは、基準液は、液体と、ならびに特に、リンス、較正、および/または品質制御のための液体など、孔に入り得る液体の分画と親和性がある、水溶液である。最も有利には、分析物は、抽出した副試料内の代表的な量における分析物の存在に起因する色変化によって、孔内で光学的に検出される。
【0137】
有利には、いくつかの実施形態によると、光学プローブは、透光性素子を後ろ側からプローブ光で照明すること、およびプローブ光への光応答として透光性素子の後ろ側から出射する光の分光光度分析を実施することを含む。
【0138】
有利には、いくつかの実施形態によると、光学プローブは、吸光度を測定している。
有利には、いくつかの実施形態によると、本方法は、液体中の分析物レベルの定量的尺度を展開するために、光応答を既定の較正基準と比較するステップをさらに含む。
【0139】
さらに有利には、本方法のいくつかの実施形態によると、較正基準は、タルトラジン染料を含む水溶液など、染料ベースの較正溶液について獲得される。好ましくは、染料ベースの水溶液は、タルトラジンなどの較正染料を追加した典型的なリンス液から調製される。
【0140】
一実施形態によると、方法であって、分析物は、
無細胞ヘモグロビン、
ビリルビン、および/または、
総タンパク質含有量である
方法が提示される。
【0141】
一実施形態において、方法であって、液体は全血試料であるか、液体は全血試料の血漿相である、方法が提示される。
一実施形態によると、方法であって、
基準液で孔を充填するように、例えば、拡散によって孔を充填するように、透光性素子を基準液と接触させるステップ、および/または
液体中の分析物の、孔内への拡散を可能にして安定化させるために拡散時間の間待機するステップをさらに含む、方法が提示される。
【0142】
ポイントオブケア測定システムまたは装置(当該技術分野においては‘ベッドサイト’システムまたは装置とも称される)および同様の研究室環境の文脈において、血液ガス分析は、多くの場合、例えば、血液ガス分析器の使用に関して訓練を受けたユーザではない場合のある、看護師などのユーザによって行われる。
【0143】
本発明の別の態様によると、全血試料中など、全血などの液体中の分析物または分析物の群のポイントオブケア決定1つまたは複数の時間応答値のためなど、ポイントオブケア(POC)測定のための本発明の第1の態様による装置の使用が提示される。
【0144】
POC測定は、当該技術分野において‘ベッドサイト’測定とも称される。本文脈において、用語‘ポイントオブケア測定’は、患者に近接して実行される測定、すなわち、研究室で実行されない測定を意味すると理解されるべきである。故に、この実施形態によると、血液ガス分析器である装置などの装置のユーザは、血液試料が採取される患者に近接して、例えば、患者のベッドを収容する病室もしくは病棟内で、または同じ診療科の近くの室内で、ハンドヘルド血液試料容器内の全血試料の測定を実施する。そのような使途では、ユーザの専門知識のレベルは、多くの場合、新人から熟達者まで様々であり、故に、センサ入力に基づいて各々個々のユーザのスキルに一致する命令を自動的に出力する血液ガス分析器の能力は、そのような環境において特に有益である。
【0145】
本発明の第2の態様によると、液体中、例えば全血中、例えば全血試料中の、分析物または分析物の群の1つまたは複数の時間応答値を決定するための方法であって、
第1の態様による装置を提供するステップと、
装置の孔を液体と接触させるステップと、
透光性素子内の少なくとも孔を1つまたは複数の光源を用いて照明するステップと、
複数の時間点の各々において、照明に応答して孔から出射する光を受信するステップと、
受信した光に基づいて1つまたは複数の信号を生成するステップであって、1つまたは複数の信号の各々が、時間的に分解され、受信した光の少なくとも一部を表す、ステップと、
1つまたは複数の信号に基づいて1つまたは複数の時間応答値を決定するステップと
を含む方法が提示される。
【0146】
一実施形態によると、方法であって、1つまたは複数の時間応答値など、1つまたは複数の時間応答値、および液体中の1つまたは複数の分析物の濃度に基づいて、異なる分子量および任意選択的に同様の光学的性質を有する、分析物と1つまたは複数の他の分析物とを識別することなど、分析物または分析物の群を検出するステップをさらに含む、方法が提示される。
【0147】
一実施形態によると、方法であって、
分析物は、
遊離ビリルビンなどのビリルビン、もしくは
HSA-ビリルビンなどのヒト血清アルブミン結合ビリルビンであり、
分析物の群は、
遊離ビリルビンなどのビリルビン、および/もしくは
HSA-ビリルビンなどのヒト血清アルブミン結合ビリルビン
を含む群であり、
分析物は、
ハプトグロビンに結合されない無細胞ヘモグロビン、もしくは
ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体などのハプトグロビン結合ヘモグロビンであり、または
分析物の群は、
ハプトグロビンに結合されない無細胞ヘモグロビン、および/もしくは
ヘモグロビン-ハプトグロビン複合体などのハプトグロビン結合ヘモグロビン
を含む群である、方法が提示される。
【0148】
ハプトグロビンに結合されない無細胞ヘモグロビン、および/またはヘモグロビン-ハプトグロビン複合体などのハプトグロビン結合ヘモグロビンを決定することの考えられる利点は、試料内の溶血がインビボで発生したか、インビトロで発生したかを決定することを可能にすることであり、このことが今度は、試料中の特定のエンティティ(カリウムイオンなど)の濃度が真の患者値を表すかどうかを決定することを可能にし得、および/または、任意選択的に、測定値から真の患者値を予測することを可能にする。
【0149】
一実施形態によると、方法であって、1つまたは複数の時間応答値に基づいて、液体中の2つ以上の既定の分析物の間の濃度における、絶対または相対差などの差を示す差異尺度を決定するステップをさらに含む、方法が提示される。
【0150】
一実施形態によると、方法であって、2つの既定の分析物は、
HSA-ビリルビンなどのヒト血清アルブミン結合ビリルビン、および遊離ビリルビンなどのヒト血清アルブミンに結合されないビリルビン、または
ハプトグロビンに結合されない無細胞ヘモグロビン、およびヘモグロビン-ハプトグロビン複合体などのハプトグロビン結合ヘモグロビンである、方法が提示される。
【0151】
一実施形態によると、方法であって、孔を基準液で充填するように、装置を基準液と接触させるステップ、および/または、液体中の分析物または分析物の群の孔内への拡散を安定状態に到達させるために拡散時間の間待機するステップをさらに含む、方法が提示される。
【0152】
第3の態様によると、コンピュータプログラム製品などのコンピュータプログラムであって、プログラムがコンピュータによって実行されるとき、
受信した光を表す1つまたは複数の信号を受信することであって、1つまたは複数の信号の各々が、時間的に分解され、受信した光の少なくとも一部を表す、受信すること、
1つまたは複数の信号に基づいて1つまたは複数の時間応答値を決定すること、ならびに
任意選択的に、1つまたは複数の時間応答値に基づいて、2つ以上の既定の分析物の間の濃度における、絶対もしくは相対差などの差を示す差異尺度を決定すること
をコンピュータに行わせる命令を含む、コンピュータプログラムが提示される。
【0153】
代替の第3の態様によると、コンピュータプログラム製品などのコンピュータプログラムであって、第1の態様による装置(または、データ処理デバイスが1つまたは複数の光源および/または検出器にさらに動作可能に接続される、第1の態様による装置)に、第2の態様の方法のステップを実行させる命令を含む、コンピュータプログラムが提示される。
【0154】
さらなる態様によると、第3の態様のコンピュータプログラムおよび/または代替の第3の態様のコンピュータプログラムが格納されているコンピュータ可読媒体が提示される。本発明の第1、第2、および第3の態様は各々、他の態様のいずれかと組み合され得る。本発明のこれらおよび他の態様は、以後説明される実施形態を参照して、明らかにされ、解明される。
【0155】
本発明による装置、方法、およびコンピュータプログラムは、これより、添付の図に関してより詳細に説明される。図は、本発明を実装する1つのやり方を示し、添付のクレームセットの範囲内に入る他の考えられる実施形態に限定するものと解釈されるべきではない。
【0156】
本発明の好ましい実施形態は、添付の図面に関連してより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【
図1】動作条件下の、1つの実施形態による多孔性ユニットを概略的に示す図である。
【
図2】液体と直接的に接触される多孔性ユニットを概略的に示す図である。
【
図3】低屈折率層を含む多孔性ユニットを概略的に示す図である。
【
図4】測定セルの断面側面図を概略的に示す図である。
【
図6】
図6aは、さらなる実施形態による、透明の裏材の外側にプリズム様を有する測定セルの断面側面図を概略的に示す図である。
図6bは、さらなる実施形態による、透明の裏材の外側にプリズム様を有する測定セルの断面側面図を概略的に示す図である。
【
図8】血漿中のビリルビンの反応の例を示すグラフである。
【
図9】CO
2およびH
2OのIRスペクトルを示すグラフである(2016年11月8日のhttp://www.randombio.com/co2.htmlから取得される)。
【
図10】分光光度測定のための較正および品質制御基準として染料(タルトラジン)を使用する例を示すグラフである。
【
図11】ヒト全血中のタンパク質(HSA)の異なる濃度に対する反応の例を示すグラフである。
【
図12】多孔性ユニットのための時間的に分解された信号を示すグラフである。
【
図13】cfHbの4つの異なる濃度における波長WL1およびWL4での複数の時間的に分解された信号を示す図である。
【
図14】
図13のデータから導出されるような特徴的なタウ-時間を示す図である。
【
図15】cfHbの関数としてのtau_ratioおよびtau_WL1を示す図である。
【
図16】cfHbの関数としてのtau_ratioおよびtau_WL1を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0158】
図1は、多孔性ユニット1の断面図を概略的に示す。多孔性ユニット1は、前側3および後ろ側4を伴う透光性素子2を備える。前側3には、内部反射を可能にする1つまたは複数の層5が提供される(代替の実施形態において、1つまたは複数の層は存在せず、さらに別の代替の実施形態において、1つまたは複数の透光性の層が存在し、またさらに別の代替の実施形態において、1つまたは複数の吸光層が存在する)。透光性素子2は、前側3における開口部7から、1つまたは複数の層5を通って、透光性素子2のバルク内へ延在する非貫通孔6をさらに備え、透光性素子2のバルクにおいて非貫通孔6は終端する。
図1の概略図ではそのように示されるが、孔は、前側3に垂直、または互いに平行である必要はない。動作下で、孔開口部7を有する多孔性ユニットの前側3は、液体99と接触される。液体は、赤血球または粒子98を含む細胞分画または特定の分画、および検出されるべき関連成分、ここでは分析物96を有する血漿分画/液体分画97を有し得る。孔6の開口部7の断面寸法は、分析物96が孔6に入ることを可能にしながら、赤血球または粒子98が孔6に入ることを防ぐように寸法決定される。
【0159】
孔6は、液体99と、特に液体分画97と親和性のあるリンス溶液8で予充填され得る。液体99が、予充填された孔6を有する多孔性ユニット1の前側3に接触するとき、分析物96の孔6内への拡散移動が発生し、以て、液体99中の分析物96の濃度を表す分析物96の濃度を有する孔6の内側の副試料9を確立する。
【0160】
孔6を予充填するために使用されるリンス溶液8は、液体99と親和性のある任意の水溶液であり得る。好適なリンス溶液は、血液パラメータ分析器において、リンス、較正、および/または品質制御目的のために一般的に使用されるものを含む。そのような溶液組成は、典型的には、有機緩衝剤、無機塩、界面活性剤、防腐剤、抗凝固剤、酵素、着色剤、および時として代謝産物を含む。光検出は、光源10および検出器20を伴う光学プローブ構成を使用して後ろ側から実施される。光源10は、液体99とは反対を向く1つまたは複数の層5の側から、透光性素子2の多孔性部分におけるプローブ体積を照明する。プローブ光11は、孔6内の副試料9と相互作用する斜め入射ビームである。出射光21は、斜角でプローブ領域を見るように同様に配置される検出器20によって検出される。検出器20は、出射光を表す信号を生成し、孔6内の副試料9との相互作用に起因して、特に分析物96の濃度に関する情報を含む。生成した信号を処理することにより、液体中の分析物のレベルを展開することが可能である。較正を使用すると、液体中の分析物のレベルは、定量的であり得る。以下の例におけるすべての測定について使用される光学プローブ技術は、例えば、約380nm~750nm、約400nm~520nmの範囲内、または455nmもしくは約455nmの波長を用いた、電磁スペクトルの可視範囲内の分光的に分解された吸光度測定を使用する。
【0161】
測定サイクルは、孔6を予充填するために使用されるリンス溶液8などのリンス溶液で液体を洗い流すことによって締めくくられる。以て、センサデバイスは、再び初期化され、次の液体を受容する準備が整う。
【0162】
図2は、
図2内の多孔性ユニットが1つまたは複数の層を含まない、すなわち、透光性素子が液体と直接的に接触される(1つまたは複数の層が透光性の層の前側に存在しない)ことを除き、
図1内のような多孔性ユニットを示す。
【0163】
図3は、透光性素子と光の層5との間の界面であって、該光が透光性素子から界面に到達する、界面において、全内部反射などの内部反射を可能にする低屈折率層5(透光性素子の屈折率と比較して)を含む多孔性ユニットを示す。
【0164】
図4および
図5は、測定セル100を概略的に示し、測定セル100は、多孔性ユニット1を、その前側3が測定セル100の内側の液体体積101内へ対向する状態で含み、例えば、測定セル100は、ハウジングであり、液体体積101は、試料空間である。液体体積は、液体を供給および排出するため、ならびにプライミング、リンス、および洗い流しステップを実施するための、液体入力および出力ポート(図示せず)と連通する。多孔性ユニットの後ろ側は、多孔性ユニット1の後ろ側4からプローブ領域への光学アクセスのための窓としても作用する、透明の裏材スライド30によって機械的に安定化される。光学プローブは、
図1に関連して上に説明されるような光源10および検出器20を伴う構成を使用して実施され、プローブビームおよび検出の方向は、多孔性ユニット1の前側3の面における面法線へのそれぞれの角度で傾斜される。さらには、
図5において最もよく分かるように、入射プローブ光11の面および検出21の面は、好ましくは、グレア効果を回避するために180度未満の角度で、および好ましくは約90度以下の尖った角度で互いと交差する。下に提供される例の測定において、入射プローブ光11の面および出射光21の面は、小さい鏡素子52の対称面に平行の方向に対して対称に配置される。
【0165】
図6a、
図6b、および
図7は、多孔性ユニット1の透光性素子2の後ろ側4と直接接触状態にある透明の裏材スライド31を概略的に示す。入射プローブ光11が、60°プリズム32において表面を有する透光性素子2の裏スライド4に入るとき、空気と高分子との間の屈折率におけるシフトは、入射プローブ光11に影響を及ぼさず、光は、光の角度の変化なしに透光性素子2の孔6(見えない)に入り、出射光21は検出器20に到達する。
図6bは、入射プローブ光11が、出射光21が検出器20に到達する前に、透明の裏材スライド31内で数回反射され得ることを示す。さらには、
図7において最もよく分かるように、入射プローブ光11の面および出射光21の面は、好ましくは、グレア効果を回避するために180度未満の角度で、および好ましくは約90度以下の尖った角度で互いと交差し、プリズム32は、入射プローブ光11にも出射光21にも影響を及ぼさない。
【0166】
図1、
図4、
図5、
図6a、
図6b、および
図7において、孔は、透光性素子2の後ろ側4から光学的にプローブされ、すなわち、孔6への入射プローブ光11は、後ろ側4から前側3へ向かう方向に進行し、すなわち、後ろ側4から前側3への方向に後ろ側4を介して透光性素子2に入り、孔6から光検出器20などの受信ユニットへ発せられる光21は、前側から後ろ側への方向に、すなわち、前側から離れる方向に後ろ側から、発せられる。
【0167】
図1、
図4、
図5、
図6a、
図6b、および
図7において、入射光および発せられた光は、空気または空の空間内を伝搬するものとして描写されるが、実施形態において、上記入射光および発せられた光は、導光コアを備える光学アセンブリ内を伝搬し得、導光コアは、入力分岐、出力分岐、および前側3と反対の透光性素子2の後ろ側4に接触するように配置される結合界面を備え、例えば、入力分岐および出力分岐は、前側表面に垂直に配置される共通導波面に配置される。
【実施例】
【0168】
反射パラジウム層を有する透光性素子-安定状態測定
以下において
図8~
図11を参照すると、試験ラン測定のデータは、多孔性鏡の性能の異なる態様を例証する例として提供され、多孔性鏡は、透光性素子(例においては、スラブである)の前側に反射パラジウム層を含む多孔性ユニットに相当し、反射パラジウム層は、透光性素子の後ろ側から反射パラジウム層に到達する光を反射するように適合され、多孔性鏡からの
図8~
図11内のデータは、本発明の実施形態による多孔性ユニットを理解するのに有用な例として提示される。
【0169】
これらの例の実験のために使用される多孔性鏡は、片面トラックエッチングされた線形孔が提供される総厚49μmの透明PETP膜から生産された。孔は、親水性PVP処理を施されて25μmの孔深さおよび0.4μmの孔直径を有する。面孔密度は、1.2E8/cm2である。故に、孔は、PETP膜の片側に開口部を有する非貫通であり、透光性のスラブとして機能するPETP膜内へ本質的に半分のところで終了する。膜(透光性のスラブ)の多孔性の側は、0度の角度でパラジウムにより、および100nmのおよその層厚で、スパッタリングコーティングされる。これは、膜(透光性のスラブ)の多孔性の前側に金属コーティング、および孔の内側の片側に小コーティングを提供し、こうして、前側に向けて孔の開口部に隣接した孔の口部分に小さい凹面鏡を形成する。スパッタリングされた多孔性PETP膜は、孔内の小さな鏡の凹面が、光源からの導光と分光器入力からの導光との間の真ん中を指しているように、両面接着テープを使用して特注のキュベットへラミネートされる。およそ10μLのシリコンゴムの液滴が、膜上にピペットされ、次いでカバーガラスが、センサ膜(透光性のスラブ)の機械的な支持として膜の後ろ側に固定される。多孔性鏡は、液体、時間間隔、およびデータサンプリングの自動ハンドリングのための試験台に装着される。データ取得は、およそ3秒かかり、液体取得後14秒まで遅延される。
【0170】
試験台には、光源として2つの発光ダイオード(紫色および‘白色’LED)、および検出器として小型分光器が装備される。小型分光器内の標準スリットは、光および感度を増加させるために、125μmスリットと交換されている。測定が反射測定であるため、光源および検出器は共に、多孔性膜の後ろ側(非多孔性側)に置かれる。膜の多孔性金属コート側は、測定チャンバの内側に位置付けられ、故に、鏡および孔は、チャンバ内で液体に直接的に曝露される。2つの光ダイオードからの光は、光を多孔性鏡膜の小スポット(およそ2mm×2mm)へ集束させるために端部にレンズを有する共通の導光ファイバを通じて導かれる。デカルト座標を参照すると、膜の面(透光性のスラブの前側)は、座標系のZX面として規定され得る。光は、Y軸、すなわち、ZX面への面法線に対して(および、座標系のYZ面において)45°度で膜外側表面(透光性のスラブの後ろ側)に入る。検出器は、Y軸に対して60°の極角で位置付けられ、光源の入射面に対して(例えばYX面において)90°の方位角だけ、YZ面に対して回転される。Y軸に対する光入射および検出方向の比較的高い角度は、収集された光が孔内の副試料のより大きい長さを通って進行していることから、ヘモグロビンに対する改善された検出感度を結果としてもたらす。
【0171】
液体は、全血試料にビリルビンを混ぜることによって調製される。血漿に基づいた干渉溶液は、血漿に干渉物質を特定の値まで混ぜることによって調製される。血漿は、1500Gで15分の遠心分離によって産生される。基準として、試験されるすべての全血試料からの遠心分離導出された血漿の吸光スペクトルもまた、Perkin Elmer Lambda19 UV-Vis分光計上で測定される。
【0172】
スペクトル
図8は、ビリルビンを含有する血漿を有するもの、および血漿のみを有するものという2つの液体についての分光的に分解された吸光度データを示す。約455nmの波長で、顕著なピークが観察され、異なる液体の吸光度最大値は、明らかに、それらのビリルビンの含有量に従って線形に拡大する。
【0173】
スペクトル
図9は、二酸化炭素(CO
2)および水(H
2O)の分光的に分解された赤外線データを示す。水と比較したCO
2の非重複ピークは、たとえ水が流体内に存在するとしても、CO
2含有量が、CO
2含有流体において本発明の多孔性鏡を使用して決定され得ることを示す。
【0174】
スペクトル
図10は、染料ベースの較正溶液について獲得される、一連の分光的に分解された吸光度データ、および比較のために、リンス溶液について獲得されるデータを用いた例を示す。スペクトルは、互いの直後に連続サイクルで獲得された。染料ベースの較正溶液は、1Lのリンスあたり0.5gタルトラジンの追加を伴うリンス溶液である。一連の測定溶液は、以下の通り:第一に、リンス溶液、次いで、染料ベースの較正溶液、次いで、再びリンス溶液、再び同じ染料ベースの溶液、であり、一連の3つの連続した測定はすべて、リンス溶液に対して実施される。すべてのスペクトルが、同じスケール上に、および互いの上に、プロットされる。実験は、再度、獲得した結果の非常に良好な安定性および再現性を示す。さらにより重要なことには、データは、互いの上に合致する2つの染料ベースの溶液スペクトル、および同様に互いの上に合致する5つすべてのリンス溶液スペクトルの驚くほど明白な分離を示す。光学データはすべて、多孔性鏡のプローブ体積においてプローブされるということに留意されたい。これは、上述のタルトラジン染色されたリンス溶液など、染料ベースの分光光度較正溶液を使用するときにも、孔内の副試料の抽出および洗い流しのための非常に効率的かつ完全な拡散交換を示す。
【0175】
スペクトル
図11は、リンスと比較して血漿中の高いタンパク質含有量によるより高い屈折率によって引き起こされる負のベースラインの分光的に分解された吸光度データを示す。多孔性鏡は、リンスと比較して、全血または血漿について測定するとき、検出器の方への入ってくる光のより高い割合を反射する。この効果は、全血中のヘモグロビンが吸光しない高い波長(600~700nm)で見られる。この効果は、ヘモグロビンピーク波長(416nm)で約10-15mAbsを有するヘモグロビンと比較して、約5mAbsである。約1~5g/Lの検出限度で全血試料のタンパク質(HSA)の含有量を検出することが可能である。2つの異なるHSA濃度(20%および8%)が測定され、高い方の濃度はまた、液体中の遊離(すなわち、赤血球の外側のヘモグロビン)により測定される。液体中のヘモグロビンの存在は、600nm未満のスペクトルの部分にのみ影響を及ぼす。600nmを上回ると、HSA含有量は、スペクトルに対する主たる影響であり、より負のベースラインほど、全血試料中のタンパク質含有量は高くなる。
【0176】
本発明のデバイスおよび方法は、幅広い態様による、ビリルビンの検出に関して特に論じられているが、本明細書に開示されるデバイスおよび方法は、全血試料の血漿分画中または液体中の他の光学的に活性な物質の検出にも等しく適用可能であり、“光学的に活性という用語”は、分光学的光学プローブ技術によって直接検出され得る物質を指す。そのような物質は、代謝物質、医薬物質、薬物、またはビタミンを含み得るが、これらに限定されない。
【0177】
層なしの透光性素子-複数の、時間分解された(過渡)信号
図12は、
図8~
図11に提示されるデータを獲得するために使用される設定と同様である、および特に、多孔性ユニットが液体と直接的に接触状態にある(すなわち、1つまたは複数の層が存在しない)、設定についての、光学的に検出された(吸光度)信号を示す。すべてのスケールは線形である。水平軸は、秒単位の時間を示す。垂直軸は、光学(吸光度)信号を示す。すべての曲線は、時間発展(拡散)を示し、サブグラフは、左から右へ、それぞれ0、45、55、および65%のヘマトクリット(Hct)レベルを有する液体を示す。各サブグラフにおいて、4つの曲線(または4つの曲線を効果的に描写するマーカのセット)が示され、各々は、異なる波長に相当する(しかしながら、同じ4つの波長(WL1、WL2、WL3、およびWL4)が各サブグラフにおいて用いられる)。
【0178】
多孔性ユニットおよび設定は、
図8~
図11に関して説明される多孔性鏡および設定と同様であるか、または同様であってもよく、特にその設定に対する変更は、多孔性ユニットが液体と直接的に接触状態にあるなど、多孔性ユニットの前側に1つまたは複数の層がないこと(および特に、反射、金属、パラジウム層がないこと)を含む。
【0179】
Hap-cfHbおよびcfHbを識別することを可能にする時間応答値
ハプトグロビン(Hap)は、無細胞ヘモグロビン(cfHb)を結合し、それを肝臓へと運び、肝臓でそれは分解され、鉄(Fe)が再使用され得る。血漿は、平均約160mg/dL Hapを含有し、これは、およそ100mg/dL cfHbを結合することができる。インビボ溶血の間、Hapは素早く消耗されてしまうため、ハプトグロビン結合無細胞ヘモグロビン(Hap-cfHb)の決定は、潜在的に、溶血がインビボで発生したか、インビトロで発生したかを決定するために使用され得る。この例は、本発明の実施形態により獲得されるような時間応答値を使用してHap-cfHbを定量化する可能性を立証する。
結論
・ハプトグロビン決定は、わずかな溶血間隔(100~165mg/dL cfHb)を上回る試料において特に関連性がある。
・ひどく溶血した試料(cfHb>330mg/dL)では、考えられる補正(cfHbに起因する干渉によるものなどの影響を受ける値の)は、あまり精度が高くない。故に、Hapの存在は、100~330mg/dLの溶血間隔においてのみ識別される必要があり得る。
・溶血した試料中のハプトグロビンの存在は、第2の波長における特徴的な(‘タウ’-)時間tau_WL4に対する、第1の波長における特徴的な(‘タウ’-)時間tau_WL1の比の増加によって、重要な溶血間隔において識別され得、‘タウ’は、先に説明されるように、一次の時不変系における特徴として決定される。
・tau_WL1/tau_WL4タウ増加は、HapがcfHbに結合すること、および故に、平均MWおよび拡散のタウを増加させることによってもたらされる。WL4信号は、試料内の内部タウ基準として利用される。
・結果は、本発明による透光性素子を有する装置が、同一の光学的性質を有する(少なくとも上記装置について)が分子量(MW)の異なる2つの化合物を識別する能力を実証することから、画期的である。これは、通常の分光光度計では不可能である。
・Hapは、165mg/dl cfHb、またはその周辺の試料において特によく検出され得る。
データ
cfHbがHapに結合されるとき、複合体のMWは増加する。本装置は、信号構築のための時定数を決定し、Hapが試料中に存在するかどうかを決定することを可能にする。干渉に対して非感受性の値を獲得するために、WL1(415nmである第1の波長であると理解される)でのcfHb信号のタウ(特徴的な時間であると理解される)は、血漿信号(WL4(450nmである第2の波長であると理解される))のタウと比較され得る。平均血漿タンパク質含有物は、色を有さないが、血漿のより高い屈折率(RI)が、すべての波長(WLs)で信号を引き起こし、WL4ではHb吸光は存在しない。tau_ratio(tau_ratio=100*((tau_WL1-tau_WL4)/tau_WL4)の決定は、故に、試料がHapを含有するかどうかを解明する。
【0180】
図13は、cfHbの4つの異なる濃度における波長WL1およびWL4での複数の時間的に分解された(正規化)信号を示す。図は、0および330mg/dLの濃度では、特徴的なタウ-時間が、おおよそ同様であるが、165mg/dLでは、WL1は、WL4よりも遅く、1000mg/dLでは反対であることを示す。先に述べたように、平均血清Hapは、約100mg cfHbを結合することができ、故に、tau_ratioは、ccfHb=1000mg/dL(ccfHbは、無細胞cfヘモグロビンHbの濃度cの略称である)ではあまり影響を受けないことが予測される。同様に、ccfHb 0mg/dLでは、cfHbは存在せず、tau_WL1は、WL4信号を構成する同じタンパク質によって決定され、故にtau_ratioは、ゼロ近くにあることが予測される。
【0181】
図14は、
図13のデータから導出されるような特徴的なタウ-時間を示す。
図15は、ccfHbの関数としてのtau_ratio(tau_WL1/tau_WL4)およびtau_WL1を示す。試料は、溶血(HB)試料、または血漿がHapなしの試料を獲得するために8%HSAによって置換される血液試料(WB-HSA)のいずれかである。すべての試料は、45%のヘマトクリット(Hct.)値を含む。
【0182】
図15において観察され得るように、HB試料は、0および1000mg/dLと比較して、ccfHb=165mg/dLにおいてより高いtau_ratioを示す。
図16は、ccfHbの関数としてのtau_ratio(tau_WL1/tau_WL4)およびtau_WL1を示す。試料は、溶血した血漿(PL)、または(Hapなしの試料を獲得するために)8%HSA(PL-HSA)のいずれかである。両方の試料タイプが赤血球なしである。
【0183】
図16において観察され得るように、PL試料は、0および1000mg/dLと比較して、ccfHb=165mg/dLにおいてより高いtau_ratioを示す。
図15~
図16は、タウ比がHctに対してかなり非感受性であることを示す。
【0184】
さらには、
図14~
図16は、液体中の2つ以上の既定の分析物の間の濃度における、絶対または相対差などの差を示す差異尺度が、1つまたは複数の時間応答値に基づいて提供され得ることを示す。例えば、タウ比tau_WL1/tau_WL4、または、例えば、tau_WL1のみに基づいて、二進法で差異尺度を(少なくともcfHbの特定の関連濃度について)推定または決定することが可能である(Hap-cfHb濃度とHap未結合cfHpの濃度との間の比、濃度
Hap-cfHb/濃度
cfHbは、特定のしきい値を超え、これが、例えば、(著しく、および測定可能に)しきい値を超えるtau_WL1/tau_WL4比を結果としてもたらす)。例えば、tau_WL1/tau_WL4の値、対、濃度
Hap-cfHb/濃度
cfHbの比の値の定量的較正により、比tau_WL1/tau_WL4の測定値から濃度
Hap-cfHb/濃度
cfHbの比の定量的な相対値を獲得することが可能である。さらに、例えば、Hap-cfHbおよびHap未結合cfHpの合計の絶対濃度(濃度
Hap-cfHb+濃度
cfHb)を測定することによって、Hap-cfHbおよびHap未結合cfHpの各々の濃度ならびに絶対差(尺度)を決定することが可能である。
【0185】
本発明は、特定の実施形態に関連して説明されているが、提示された例にいかようにも限定されないものであると解釈されるべきである。本発明の範囲は、添付のクレームセットによって明記される。クレームの文脈において、用語“備えること”または“備える”は、他の考えられる素子またはステップを除外しない。また、“1つの(a)”または“1つの(an)”などの参照の言及は、複数を除外するものと解釈されるべきではない。図に示される素子に関するクレーム内の参照符号の使用もまた、本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。さらには、異なるクレームにおいて言及される個々の特徴は、おそらくは、有利に組み合わされ得、異なるクレームにおけるこれらの特徴の言及は、特徴の組み合わせが可能および有利ではないことを除外しない。
【国際調査報告】