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特表2024-500237抗原提示細胞に対するMOMP VS4抗原の標的化に基づくクラミジアワクチン
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  • 特表-抗原提示細胞に対するMOMP  VS4抗原の標的化に基づくクラミジアワクチン 図1A
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  • 特表-抗原提示細胞に対するMOMP  VS4抗原の標的化に基づくクラミジアワクチン 図2
  • 特表-抗原提示細胞に対するMOMP  VS4抗原の標的化に基づくクラミジアワクチン 図3A
  • 特表-抗原提示細胞に対するMOMP  VS4抗原の標的化に基づくクラミジアワクチン 図3B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-05
(54)【発明の名称】抗原提示細胞に対するMOMP VS4抗原の標的化に基づくクラミジアワクチン
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20231225BHJP
   C12N 15/13 20060101ALI20231225BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231225BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231225BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20231225BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231225BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C12N15/62 Z ZNA
C12N15/13
C07K19/00
C12N15/63 Z
C12P21/08
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C07K16/28
C12N15/31
A61P37/04
A61K39/395 D
A61K39/395 R
A61K48/00
A61P31/00
A61K39/395 Y
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538722
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-17
(86)【国際出願番号】 EP2021087211
(87)【国際公開番号】W WO2022136508
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】20306668.3
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507002516
【氏名又は名称】アンセルム(アンスティチュート・ナシオナル・ドゥ・ラ・サンテ・エ・ドゥ・ラ・ルシェルシュ・メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】591140123
【氏名又は名称】アシスタンス ピュブリク-オピトー ドゥ パリ
【氏名又は名称原語表記】ASSISTANCE PUBLIQUE - HOPITAUX DE PARIS
(71)【出願人】
【識別番号】509004712
【氏名又は名称】ベイラー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】BAYLOR RESEARCH INSTITUTE
(71)【出願人】
【識別番号】518322621
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・パリ・エ・クレテイユ・ヴァル・ドゥ・マルヌ
(74)【代理人】
【識別番号】110003421
【氏名又は名称】弁理士法人フィールズ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イヴ、レヴィ
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァン、カルディノ
(72)【発明者】
【氏名】ミレイユ、セントリヴァー
(72)【発明者】
【氏名】リディ、デュドネ
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ、ジュラフスキ
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール、ジュラフスキ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA10
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA03
4B064DA15
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA87X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA45
4B065CA46
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA13
4C084NA14
4C084ZB091
4C084ZB092
4C085AA03
4C085AA13
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB36
4C085CC22
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA11
4H045BA10
4H045BA41
4H045DA76
4H045EA31
4H045EA52
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
クラミジアは、種々の感染症の原因となる細胞内病原性微生物である。本発明者らは、抗原提示細胞(すなわち、樹状細胞)の表面抗原(すなわち、CD40)に向けられた抗体を作製し、その重鎖および/または軽鎖は、ワクチンとして使用するために、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)のMOMP VS4ドメインにコンジュゲートしている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原提示細胞の表面抗原に向けられた抗体であって、重鎖および/または軽鎖が、配列番号1の282番目のアミノ酸残基から358番目のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するVS4ポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、抗体。
【請求項2】
前記抗体の重鎖が、配列番号1の282番目のアミノ酸残基から358番目のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する前記VS4ポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
前記抗体の軽鎖が、配列番号1の282番目のアミノ酸残基から358番目のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する前記VS4ポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
前記抗体の重鎖と軽鎖が、両方とも、配列番号1の282番目のアミノ酸残基から358番目のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する前記VS4ポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
IgG抗体、好ましくはIgG1またはIgG4抗体、またはさらにより好ましくはIgG4抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
キメラ抗体、特にキメラマウス/ヒト抗体またはヒト化抗体である、請求項1に記載の抗体。
【請求項7】
DC免疫受容体(DCIR)、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF-44、CMRF-56、DCIR、DC-ASPGR、CLEC-6、CD40、BDCA-2、MARCO、DEC-205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN-1、B7-1、B7-2、IFN-γ受容体およびIL-2受容体、ICAM-1、Fey受容体、LOX-1、およびASPGRに特異的に結合する抗体から選択される、請求項1に記載の抗体。
【請求項8】
CD40に対して特異的である、請求項1に記載の抗体。
【請求項9】
・12E12抗体に由来し、
○相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖(CDR1Hはアミノ酸配列GFTFSDYYMY(配列番号3)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列YINSGGGSTYYPDTVKG(配列番号4)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列RGLPFHAMDY(配列番号5)を有する)、
○および相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖(CDR1Lはアミノ酸配列SASQGISNYLN(配列番号6)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列YTSILHS(配列番号7)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列QQFNKLPPT(配列番号8)を有する)を含む、
・または11B6抗体に由来し、
○相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖(CDR1Hはアミノ酸配列GYSFTGYYMH(配列番号9)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列RINPYNGATSYNQNFKD(配列番号10)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列EDYVY(配列番号11)を有する)、および
○相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖(CDR1Lはアミノ酸配列RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号12)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列KVSNRFS(配列番号13)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列SQSTHVPWT(配列番号14)を有する)を含む、
・または12B4抗体に由来し、
○相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖(CDR1Hはアミノ酸配列GYTFTDYVLH(配列番号15)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列YINPYNDGTKYNEKFKG(配列番号16)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列GYPAYSGYAMDY(配列番号17)を有する)、および
○相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖(CDR1Lはアミノ酸配列RASQDISNYLN(配列番号18)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列YTSRLHS(配列番号19)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列HHGNTLPWT(配列番号20)を有する)を含む、
請求項8に記載の抗体。
【請求項10】
前記抗CD40抗体が、表Aに記載されたmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5およびmAb6からなる群から選択される、請求項8に記載の抗体。
【請求項11】
CD40アゴニスト抗体である、請求項8に記載の抗体。
【請求項12】
前記CD40アゴニスト抗体の重鎖または軽鎖(すなわち、前記VS4ポリペプチドにコンジュゲートまたは融合していない鎖)が、CD40LのCD40結合ドメイン(配列番号2)にコンジュゲートまたは融合している、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
前記CD40LのCD40結合ドメインが、必要に応じてリンカー、好ましくはFlexV1リンカーを介して、前記CD40アゴニスト抗体の軽鎖または重鎖のC末端に融合している、請求項12に記載の抗体。
【請求項14】
前記抗体の重鎖が、前記VS4ポリペプチドに融合またはコンジュゲートしており、前記軽鎖が、前記CD40LのCD40結合ドメイン(配列番号2)にコンジュゲートまたは融合している、請求項12に記載の抗体。
【請求項15】
ランゲリンに対して特異的である、請求項1に記載の抗体。
【請求項16】
・15B10抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖および15B10抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖、または
・2G3抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖および2G3抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖、または
・4C7抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖および4C7抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖
を含む、請求項15に記載の抗体。
【請求項17】
表Bに記載されたmAb7、mAb8、mAb9、mAb10、mAb11およびmAb12からなる群から選択される、請求項15に記載の抗体。
【請求項18】
前記重鎖および/または前記軽鎖が、FlexV1、f1、f2、f3、およびf4からなる群から選択されるリンカーを介して、前記VS4ポリペプチドに融合している、請求項1に記載の抗体。
【請求項19】
i)ドックリンドメインを介して配列番号38に規定されているアミノ酸配列からなるコヒーシン融合タンパク質にコンジュゲートしている重鎖または軽鎖を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項20】
配列番号44に規定されている重鎖、および配列番号45に規定されているアミノ酸配列を有する軽鎖を含む、請求項9に記載の抗体。
【請求項21】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体の重鎖および/または軽鎖をコードする、核酸。
【請求項22】
請求項21に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項23】
請求項21に記載の核酸、および/または請求項22に記載のベクターによってトランスフェクト、感染または形質転換されている、宿主細胞。
【請求項24】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体を含む、ワクチン組成物。
【請求項25】
治療有効量の請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体を投与することを含む、それを必要とする対象に、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)のワクチン接種をするための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、医薬の分野、特にワクチン学の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
クラミジアは、種々の感染症の原因となる細胞内病原性微生物である。例えば、クラミジア・トラコマチス(Chlamydia trachomatis)は、ヒト性行為感染症および眼感染(トラコーマ)の病原体である。世界中で9200万人がクラミジア・トラコマチスに性的に感染すると推計されている。クラミジア・トラコマチスによる泌尿生殖器感染症は、有病率が高く、また、子宮外妊娠および不妊のリスク因子であることから、公衆衛生上の懸念事項である。これに加えて、クラミジア・トラコマチス感染は、HIVの伝染を助長し、HPVによって誘発される子宮頸癌におけるコファクターとして働くことが示されている。治療しないと、生殖器のクラミジア・トラコマチス感染は長引く可能性があり、最初の12か月以内には、完全なクリアランスには至らないことが多い。ヒトでの研究から、生殖器再感染に対するある程度の防御免疫が生じることが知られているが、良くても部分的であると思われる。感染は、抗生物質療法によって効果的に管理することができる。しかしながら、無症候性の症例の有病率が高いことから、効果的なクラミジアワクチンが開発された場合に初めて、持続可能な疾病管理を考えることができることが示唆される。
【0003】
MOMPは、中和抗体の古典的な標的抗原であり、記述された最初の抗原性分子の一つである。これは、構造的(ポリン)特性を有する表面に露出した膜貫通型タンパク質である。MOMPは、クラミジア・トラコマチスの膜におけるタンパク質のおよそ60%を占める40kDaのタンパク質であり、また、イン・ビトロ(in vitro)とイン・ビボ(in vivo)の両方で有効性が証明されている中和抗体の標的である。MOMPは、5つの定常セグメントによって分けられた4つの可変性の表面露出ドメイン(VS1~VS4)からなり、また、クラミジアの血清型(約15)分類の分子的基盤である。クラミジア・トラコマチスの泌尿生殖器血清型の分布プロファイルは、世界中の地域について記述されており、これによってMOMPベースのワクチンに必要とされる血清型カバー率の疫学データが提供されている。
【0004】
MOMPは、ヒトおよび動物において非常に免疫原性が高く、したがって、組換えによる未変性で精製されたタンパク質として、ならびにDNAワクチンとして、ワクチン候補として非常に詳細に研究されている。VS4領域は可変領域中に埋め込まれた高度に保存された種特異的エピトープを含むことが示されているため、主にVS4が免疫原として関心を集めてきた。重要なことに、VS4領域におけるこの保存的エピトープは、交差反応性が広い免疫応答を誘発することができ、これによって多数の血清型、なかでも最も蔓延している血清型D、EおよびFを中和することができる。VS4領域を利用した場合に保護を欠く理由は多数である可能性があり、抗原提示細胞の標的化効率が低いことも含まれる。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、特許請求の範囲によって規定される。特に、本発明は、抗原提示細胞の表面抗原に向けられた抗体に関し、ここで、重鎖および/または軽鎖は、クラミジア・トラコマチスのMOMP VS4ドメインにコンジュゲートまたは融合している。
【発明を実施するための形態】
【0006】
発明の詳細な説明
定義
本明細書で使用される場合、用語「対象」または「それを必要とする対象」は、ヒトまたは非ヒト哺乳動物を意図している。典型的には、患者は、クラミジア・トラコマチスに冒されているか、または感染している可能性がある。
【0007】
本明細書で使用される場合、用語「クラミジア・トラコマチス」は、当該技術分野における通常の意味を有し、ヒト性行為感染症および眼感染(トラコーマ)の病原体である細菌を指し、トラコーマ、鼠径リンパ肉芽腫、非淋菌性尿道炎、子宮頸管炎、卵管炎、骨盤内炎症性疾患を含む、種々の様式で顕在化し得る。クラミジア・トラコマチスは、失明の最も一般的な感染性の病因であり、また、性行為で感染する最も一般的な細菌である。
【0008】
本明細書で使用される場合、用語「無症候性」は、クラミジア感染について、検出可能な症状を経験しない対象を指す。本明細書で使用される場合、用語「症候性」は、クラミジア感染の検出可能な症状を経験する対象を指す。クラミジア感染の症状としては、それらに限定されないが、排尿時の痛み、異常な腟分泌物、腹部または骨盤の痛み、性交中の痛み、性交後の出血、生理と生理の間の出血および排尿時の痛み、ペニスの尖端からの白く、濁ったまたは水様の分泌物、尿道(尿を体から運び出す管)内の焼けつくような痛みもしくはかゆみ、または男性の睾丸の痛みがあげられる。
【0009】
本明細書で使用される場合、用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、あらゆる長さのアミノ酸のポリマーを指すために、本明細書において互換的に使用される。これらの用語は、また、修飾されているアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、リン酸化、または標識成分とコンジュゲーションされているアミノ酸ポリマーを包含する。ポリペプチドは、遺伝子療法の文脈で議論されている場合、それぞれのインタクトなポリペプチド、またはそれらのあらゆるフラグメントもしくは遺伝子改変誘導体を指し、インタクトなタンパク質の所望の生化学的機能を保持している。
【0010】
本明細書で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、デオキシリボヌクレオチドもしくはリボヌクレオチド、またはそれらのアナログを含む、あらゆる長さのヌクレオチドのポリマー形態を指す。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチドアナログなどの修飾ヌクレオチドを含んでいてもよく、非ヌクレオチドコンポーネントによって中断されていてもよい。もしあれば、ヌクレオチド構造に対する修飾は、ポリマーが形成される前に行われてもよく、または後に行われてもよい。用語ポリヌクレオチドは、本明細書で使用される場合、互換的に、二本鎖または一本鎖分子を指す。別段の記載または必要がない限り、ポリヌクレオチドである本明細書に記載されている本発明のあらゆる実施形態は、二本鎖形態と、二本鎖形態を形成することが知られているかまたは予想されている2つの相補的一本鎖形態のそれぞれの、両方を包含する。
【0011】
本明細書で使用される場合、表現「由来の」は、プロセスであって、それによって第1のコンポーネント(例えば、第1のポリペプチド)、または第1のコンポーネントからの情報が、異なる第2のコンポーネント(例えば、第1のポリペプチドとは異なる第2のポリペプチド)を単離、誘導、または生成するために使用されるプロセスを指す。
【0012】
本明細書で使用される場合、用語「コードする」は、ヌクレオチドの特定の配列(例えば、rRNA、tRNAおよびmRNA)またはアミノ酸の特定の配列のいずれか、およびそれに起因する生物学的特性を有する、生物学的プロセスにおける他のポリマーまたは巨大分子を合成するための鋳型として働く、ポリヌクレオチド(例えば、遺伝子、cDNA、またはmRNAなど)中のヌクレオチドの特定の配列に内在する特性を指す。よって、遺伝子、cDNA、またはRNAは、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳によって細胞または他の生物学的システム内でタンパク質が生成する場合、そのタンパク質をコードしている。コード鎖(そのヌクレオチド配列は、mRNA配列と同一であり、通常、配列表に示される)、および非コード鎖(遺伝子またはcDNAの転写のための鋳型として使用される)は、両方とも、タンパク質またはその遺伝子もしくはcDNAの他の産物をコードすると言われ得る。別段の記載がない限り、「アミノ酸配列をコードするヌクレオチド配列」は、相互に縮重した形態であり、かつ同じアミノ酸配列をコードする全てのヌクレオチド配列を含む。語句「タンパク質またはRNAをコードするヌクレオチド配列」は、また、そのタンパク質をコードするヌクレオチド配列が、ある様式でイントロン(単数または複数)を含有し得る限り、イントロンも含み得る。
【0013】
本明細書で使用される場合、用語「ベクター」、「クローニングベクター」および「発現ベクター」は、ビヒクルであって、それによってDNAまたはRNA配列(例えば、外来性遺伝子)が宿主細胞の中に導入され、それによって宿主が形質転換され、導入された配列の発現(例えば、転写および翻訳)が誘導され得るビヒクルを意味する。
【0014】
本明細書で使用される場合、用語「プロモーター/制御配列」は、細胞の合成機構または導入された合成機構によって認識される、ポリヌクレオチド配列の特異的な転写を開始するために必要とされる核酸配列(例えば、DNA配列など)を指し、それによってプロモーター/制御配列に作動可能に連結された遺伝子産物の発現が可能になる。いくつかの例において、この配列は、コアプロモーター配列であってもよく、他の例において、この配列は、遺伝子産物の発現に必要とされるエンハンサー配列および他の調節エレメントも含んでいてもよい。プロモーター/制御配列は、例えば、組織特異的な様式で遺伝子産物を発現するものであってもよい。
【0015】
本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結された」または「転写調節」は、異種核酸配列の発現を引き起こす、制御配列と異種核酸配列の間の機能的な連結を指す。例えば、第1の核酸配列が、第2の核酸配列と機能的な関係を持って配置されている場合、第1の核酸配列は、第2の核酸配列と作動可能に連結されている。例えば、プロモーターが、コード配列の転写または発現に影響を与える場合、プロモーターは、コード配列に作動可能に連結されている。作動可能に連結されたDNA配列は、互いに近接していてもよく、また、例えば、2つのタンパク質コード領域を連結する必要がある場合、同じリーディングフレーム内にある。
【0016】
本明細書で使用される場合、用語「形質転換」は、宿主細胞内への、「外来性」(例えば、外在性または細胞外の)遺伝子、DNAまたはRNA配列の導入を意味し、その結果、宿主細胞は、導入された遺伝子または配列を発現し、所望の物質、典型的には導入された遺伝子または配列によってコードされるタンパク質または酵素が産生されることになる。導入されたDNAまたはRNAを受け入れ、かつ発現する宿主細胞は、「形質転換」されている。
【0017】
本明細書で使用される場合、用語「発現系」は、宿主細胞と、例えばベクターによって運搬され、宿主細胞に導入される外来性DNAによってコードされるタンパク質を発現するために、適切な条件に適合したベクターとを意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、2つの配列の間の「同一性(%)」は、配列と配列の間で共有されている同一の位置の数の関数であり(すなわち、同一性(%)=同一の位置の数/位置の総数×100)、ギャップの数、各ギャップの長さが考慮され、これを2つの配列の最適なアライメントのために取り入れる必要がある。配列の比較および2つの配列の間の同一性(%)の決定は、以下に示す数学的アルゴリズムを使用して実現することができる。2つのアミノ酸配列の間の同一性(%)は、NeedlemanとWunschのアルゴリズム(Needleman, Saul B. & Wunsch, Christian D. (1970). "A general method applicable to the search for similarities in the amino acid sequence of two proteins". Journal of Molecular Biology. 48 (3): 443-53)を使用して決定することができる。2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の同一性(%)は、また、例えばEMBOSS Needle(ペアワイズアライメント;www.ebi.ac.ukで利用可能)などのアルゴリズムを使用して決定することもできる。例えば、EMBOSS Needleは、BLOSUM62マトリックスで、「ギャップオープンペナルティ」を10、「ギャップエクステンドペナルティ」を0.5、「エンドギャップペナルティ」をfalse、「エンドギャップオープンペナルティ」を10、および「ギャップエンドエクステンドペナルティ」を0.5に設定して使用してもよい。一般に、「同一性(%)」は、マッチした位置の数を比較する位置の数で割り、100を掛けた関数である。例えば、2つの比較する配列の間で、アライメントの後、10個の配列の位置のうち6個が同一である場合には、同一性は60%である。同一性(%)は、典型的には、解析が行われるクエリ配列の全長にわたって決定される。同じ一次アミノ酸配列または核酸配列を有する2つの分子は、いかなる化学的および/または生物学的修飾があろうとも、同一である。本発明により、第2のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有する第1のアミノ酸配列とは、第1の配列が、第2のアミノ酸配列に対して、80;81:82;83:84;85:86;87:88;89:90;91:92;93:94;95:96;97:98;99または100%の同一性を有することを意味する。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「MOMP」は、クラミジア・トラコマチスの主要外膜タンパク質(major outer membrane protein)を指す。MOMPは、構造的(ポリン)特性を有する、表面に露出した膜貫通型タンパク質である。MOMPは、クラミジア・トラコマチスの膜におけるタンパク質のおよそ60%を占める40kDaのタンパク質であり、また、イン・ビトロとイン・ビボの両方で有効性が証明されている中和抗体の標的である。MOMPは、5つの定常セグメントによって分けられた4つの可変性の表面露出ドメイン(VS1~VS4)からなり、また、クラミジアの血清型(約15)分類の分子的基盤である。MOMPの例示的アミノ酸配列は、配列番号1に示されており、VS4ドメインは、配列番号1の282番目のアミノ酸残基から358番目のアミノ酸残基の範囲である。
【0020】
配列番号1>sp|Q46409|MOMPD_CHLTR 主要外膜ポリン、血清型D OS=クラミジア・トラコマチス(D/UW-3/Cx株)OX=272561 GN=ompA PE=2 SV=1。VS4ドメインは、配列中の下線で示す。
【化1】
【0021】
本明細書で使用される場合、用語「コンジュゲート」または互換的に「コンジュゲートポリペプチド」は、1以上のポリペプチドの共有結合によって形成された複合体またはキメラ分子を指すことを意図している。用語「共有結合」または「コンジュゲーション」は、ポリペプチドと非ペプチド部分が、直接的に互いに共有的に結合すること、または、そうでなければ、間にはさまる部分、たとえばブリッジ、スペーサー、または結合部分(単数または複数)などによって、間接的に互いに共有的に結合すること、のいずれかを意味する。特定のコンジュゲートは、融合タンパク質である。
【0022】
本明細書で使用される場合、用語「融合タンパク質」は、別々のタンパク質を起源とする2つ以上のポリペプチドの結合によって生成されるタンパク質を指す。特に、融合タンパク質は、組換えDNA技術によって生成させることができ、また、典型的には、生物学的研究または治療学において使用される。融合タンパク質は、また、複数の融合タンパク質のポリペプチド部分の間の、リンカーを用いた、または用いない化学的な共有コンジュゲーションによっても生成させ得る。融合タンパク質において、2つ以上のポリペプチドは、直接的に、またはリンカーを介して融合している。
【0023】
本明細書で使用される場合、用語「直接的に」は、第1のポリペプチドのN末端における1番目のアミノ酸が、第2のポリペプチドのC末端における最後のアミノ酸に融合することを意味する。この直接的な融合は、(Vigneron et al., Science 2004, PMID 15001714)、(Warren et al., Science 2006, PMID 16960008)、(Berkers et al., J. Immunol. 2015a, PMID 26401000)、(Berkers et al., J. Immunol. 2015b, PMID 26401003)、(Delong et al., Science 2016, PMID 26912858)(Liepe et al., Science 2016, PMID 27846572)、(Babon et al., Nat. Med. 2016, PMID 27798614)に記載されているように、自然に起こり得る。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「リンカー」は、当該技術分野における通常の意味を有し、タンパク質が確実に適切な二次または三次構造を形成するために十分な長さのアミノ酸配列を指す。いくつかの実施形態において、リンカーは、少なくとも1個であるが30個未満のアミノ酸を含むペプチド性リンカー、例えば2~30アミノ酸の、好ましくは10~30アミノ酸の、より好ましくは15~30アミノ酸の、さらにより好ましくは19~27アミノ酸の、最も好ましくは20~26アミノ酸のペプチド性リンカーである。いくつかの実施形態において、リンカーは、2;3;4;5;6;7;8;9;10;11;12;13;14;15;16;17;18;19;20;21;22;23;24;25;26;27;28;29;30アミノ酸残基を有する。典型的には、リンカーは、化合物が適切な立体構造をとることを可能にするものである。最も適切なリンカー配列は、(1)フレキシブルな延びた立体構造を取り、(2)融合タンパク質の機能ドメインと相互作用し得る規則的な二次構造を形成する傾向を示さず、かつ(3)機能性タンパク質ドメインとの相互作用を促進し得る疎水性または荷電特性が最小限になる。
【0025】
本明細書で使用される場合、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子、および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に免疫学的に特異的に結合する抗原結合部位を含む分子を指す。げっ歯類および霊長類の天然の抗体において、2つの重鎖は、ジスルフィド結合によって互いに連結され、かつ各重鎖は、ジスルフィド結合によって軽鎖に連結されている。2種類の軽鎖、すなわちラムダ(l)およびカッパ(k)が存在する。抗体分子の機能的活性を決定する、5つの主要な重鎖クラス(アイソタイプ)、すなわちIgM、IgD、IgG、IgAおよびIgEが存在する。各鎖は、特異な配列ドメインを含む。典型的なIgG抗体において、軽鎖は、2つのドメイン、すなわち可変領域(VL)および定常領域(CL)を含む。重鎖は、4つのドメイン、すなわち可変領域(VH)および3つの定常領域(CH1、CH2およびCH3、まとめてCHと呼ぶ)を含む。軽鎖(VL)と重鎖(VH)の両方の可変領域は、抗原に対する結合認識および特性を決定する。軽(CL)鎖および重(CH)鎖の定常領域ドメインは、抗体鎖の会合、分泌、経胎盤移行性、補体結合、およびFc受容体(FcR)に対する結合などの、重要な生物学的特性を与える。Fvフラグメントは、免疫グロブリンのFabフラグメントのN末端部分であり、1つの軽鎖の可変領域と、1つの重鎖の可変領域からなる。抗体の特異性は、抗体の結合部位と抗原決定基の間の構造的相補性に存在する。抗体の結合部位は、超可変領域または相補性決定領域(CDR)に主に由来する残基から形成されている。場合により、非超可変領域またはフレームワーク領域(FR)由来の残基が、抗体の結合部位に加わり得、またはドメイン構造の全体に影響を与え、それによって結合部位に影響を与え得る。相補性決定領域またはCDRは、天然の免疫グロブリン結合部位のネイティブのFv領域の結合親和性および特性を一緒に決定する、複数のアミノ酸配列を指す。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖は、それぞれL-CDR1、L-CDR2、L-CDR3と、H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3と呼ばれる、3つのCDRをそれぞれ有する。したがって、抗原結合部位は、典型的には、重鎖V領域と軽鎖V領域のそれぞれに由来するCDRのセットを含む、6つのCDRを含む。フレームワーク領域(FR)は、CDRとCDRの間に挿入されたアミノ酸配列を指す。したがって、軽鎖および重鎖の可変領域は、典型的には、以下の配列、すなわちFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4の、4つのフレームワーク領域と3つのCDRを含む。抗体可変領域中の残基は、慣習的に、Kabatらによって考案されたシステムに従って番号が付けられる。このシステムは、Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services, NIH, USA(Kabat et al., 1992、以後「Kabat et al.」)におけるKabat et al., 1987に記載されている。Kabatの残基の呼称は、配列番号の配列におけるアミノ酸残基の直線的なナンバリングに常に直接的に対応しているわけではない。実際の直鎖アミノ酸配列は、基本的な可変領域構造の構造的なコンポーネント(フレームワークか相補性決定領域(CDR)のいずれか)の短縮、またはそこへの挿入に対応する、厳密なKabatナンバリングにおけるアミノ酸と比較して、より少ないアミノ酸または追加のアミノ酸を含んでいる可能性がある。残基の修正Kabatナンバリングは、所与の抗体について、抗体の配列における相同性を有する残基を、「標準的な」Kabat番号が付いた配列とアライメントすることによって決定され得る。重鎖可変領域のCDRは、Kabatナンバリングシステムによる残基31~35(H-CDR1)、残基50~65(H-CDR2)および残基95~102(H-CDR3)に位置する。軽鎖可変領域のCDRは、Kabatナンバリングシステムによる残基24~34(L-CDR1)、残基50~56(L-CDR2)および残基89~97(L-CDR3)に位置する。以下に説明するアゴニスト抗体について、CDRは、www.bioinf.org.ukからのCDR発見アルゴリズムを使用して決定された(抗体のページの中の《How to identify the CDRs by looking at a sequence》というタイトルのセクションを参照のこと)。
【0026】
本明細書で使用される場合、用語「免疫グロブリンドメイン」は、抗体鎖の球状の領域(例えば、重鎖抗体の鎖または軽鎖など)、またはそのような球状の領域から本質的になるポリペプチドを指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、用語「Fc領域」は、ネイティブ配列のFc領域および変異Fc領域を含む、免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。ヒトIgG重鎖Fc領域は、一般に、IgG抗体のC226の位置から、またはP230の位置からカルボキシル末端までのアミノ酸残基を含むものとして定義される。Fc領域における残基のナンバリングは、KabatのEUインデックスによるものである。Fc領域のC末端リジン(残基K447)は、例えば、抗体の産生または生成の間に除去されていてもよい。したがって、本発明の抗体の組成物は、全てのK447残基が除去された抗体集団、K447残基が全く除去されていない抗体集団、およびK447残基を有する抗体とK447残基を欠く抗体の混合物を含む抗体集団を含み得る。
【0028】
本明細書で使用される場合、用語「キメラ抗体」は、非ヒト抗体のVHドメインおよびVLドメイン、ならびにヒト抗体のCHドメインおよびCLドメインを含む抗体を指す。一つの実施形態において、「キメラ抗体」は、(a)抗原結合部位(可変領域)が、異なるまたは改変されたクラス、エフェクター機能および/または種の定常領域に連結されるように、またはキメラ抗体に対して新たな特性を付与する全く異なる分子、例えば、酵素、毒素、アゴニスト分子例えばCD40リガンド、ホルモン、増殖因子、薬物などに連結されるように、定常領域(すなわち重鎖および/または軽鎖)またはその部分が、改変、置換または交換されている;または(b)可変領域またはその部分が、異なるまたは改変された抗原特性を有する可変領域によって改変、置換または交換されている、抗体分子である。キメラ抗体は、また、霊長類化抗体、特にヒト化抗体も含む。さらに、キメラ抗体は、レシピエント抗体中に見られない、またはドナー抗体中に見られない残基を含んでいてもよい。これらの改変は、抗体の能力をさらに改良するために行われる。さらなる詳細については、Jones et al., Nature 321:522-525 (1986);Riechmann et al., Nature 332:323-329 (1988);およびPresta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照のこと。(米国特許第4,816,567号;およびMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855 (1984)を参照のこと)。
【0029】
本明細書で使用される場合、用語「ヒト化抗体」は、マウス抗体の6つのCDRと、ヒト化されたフレームワークおよび定常領域を有する抗体を含む。より具体的には、用語「ヒト化抗体」は、本明細書で使用される場合、別の哺乳動物種、例えばマウスなどの生殖系列由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含み得る。
【0030】
本明細書で使用される場合、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、ヒト免疫グロブリン配列由来の可変領域と定常領域を有する抗体を含むことを意図している。本発明のヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列によってコードされていないアミノ酸残基(例えば、イン・ビトロでランダムもしくは部位特異的変異によって、またはイン・ビボで体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかしながら、一つの実施形態において、用語「ヒトモノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、別の哺乳動物種、例えばマウスなどの生殖系列由来のCDR配列が、ヒトフレームワーク配列に移植されている抗体を含むことを意図していない。
【0031】
本明細書で使用される場合、用語「免疫応答」は、宿主の体内における、抗原に対する免疫系の応答を指し、抗原特異的抗体および/または細胞毒性反応が含まれる。最初の抗原曝露に対する免疫応答(一次免疫応答)は、典型的には、数日から2週間の遅延期間の後に検出可能となる;その後の同じ抗原による刺激に対する免疫応答(二次免疫応答)は、一次免疫応答の場合よりも急速である。導入遺伝子産物に対する免疫応答には、導入遺伝子によってコードされる免疫原性産物によって誘発され得る体液性免疫応答(例えば、抗体応答)と細胞性免疫応答(例えば、細胞溶解性T細胞応答)の両方が含まれ得る。免疫応答の程度は、当該技術分野で知られている方法によって(例えば、抗体価を測定することによって)測定することができる。
【0032】
本明細書で使用される場合、用語「APC」または「抗原提示細胞」は、T細胞を活性化することができる細胞を指し、それらに限定されないが、ある特定のマクロファージ、B細胞および樹状細胞が含まれる。
【0033】
本明細書で使用される場合、用語「樹状細胞」または「DC」は、リンパ系または非リンパ系組織に見られる、形態学的に類似する細胞型の多様な集団のいずれかのメンバーを指す。これらの細胞は、その特有の形態、高レベルの表面MHCクラスII発現(Steinman, et al., Ann. Rev. Immunol. 9:271 (1991)(そのような細胞の説明について、参照により本明細書に援用される))によって特徴付けられる。
【0034】
本明細書で使用される場合、用語「CD40」は、当該技術分野における通常の意味を有し、ヒトCD40ポリペプチド受容体を指す。いくつかの実施形態において、CD40は、UniProtKB-P25942(ヒトTNR5とも呼ばれる)によって報告されるように、ヒトカノニカル配列のアイソフォームである。
【0035】
本明細書で使用される場合、用語「CD40L」は、当該技術分野における通常の意味を有し、例えば、UniProtKB-P25942によって報告されるように、配列番号2のCD40結合ドメインを含むヒトCD40Lポリペプチドを指す。CD40Lは、可溶性ポリペプチドとして発現され得、また、CD40受容体の天然のリガンドである。
【0036】
配列番号2>CD40L結合ドメイン
【化2】
【0037】
本明細書で使用される場合、用語「CD40アゴニスト抗体」は、細胞アッセイ、例えばB細胞増殖アッセイにおいて、CD40L非存在下で、CD40媒介性シグナル伝達活性を増大させる抗体を指すことを意図している。特に、CD40アゴニスト抗体は、(i)フローサイトメトリー分析によって、またはCFSE標識細胞の複製的希釈の分析によってイン・ビトロで測定されるように、B細胞の増殖を誘導し;および/または(ii)樹状細胞活性化アッセイによってイン・ビトロで測定されるように、サイトカイン、例えばIL-6、IL-12、またはIL-15などの分泌を促進する。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語「ランゲリン」は、当該技術分野における通常の意味を有し、ヒトC型レクチンドメインファミリー4メンバーKポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、ランゲリンは、UniProtKB-Q9UJ71(ヒトCD207とも呼ばれる)によって報告されるように、ヒトカノニカル配列のアイソフォームである。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語「治療」または「治療する」は、予防的治療、ならびに治癒的治療または疾患修飾治療の両方を指し、疾患に罹患するリスクがあるか、または疾患に罹患していることが疑われる患者、ならびに病気であるか、または疾患もしくは医学的状態を患っていると診断されている患者の治療を含み、また、臨床的再発の抑制を含む。治療は、医学的障害を有するか、または最終的に障害を負う可能性がある患者に対して、障害または再発性の障害の1以上の症状の予防、治療、発症の遅延、重症度の低減、もしくは改善のために、またはそのような治療を行わない場合に予期される生存期間を越えて患者の生存期間を延長するために施され得る。「治療レジメン」は、病気の治療のパターン、例えば、治療の間に使用される投与のパターンなどを意味する。治療レジメンは、誘導レジメンおよび維持レジメンを含み得る。語句「誘導レジメン」または「誘導期」は、疾患の初期治療のために使用される治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。誘導レジメンの一般的な目的は、治療レジメンの初期期間の間に、患者に対して高レベルの薬物を投与することである。誘導レジメンは、「負荷レジメン」を(部分的に、または全体として)利用してもよく、これは、維持レジメンの間に医師が利用しようとする用量よりも高用量の薬物を投与すること、維持レジメンの間に医師が投与しようとする頻度よりも高頻度で薬物を投与すること、または両方を含み得る。語句「維持レジメン」または「維持期間」は、例えば、患者を長期間(数か月または数年)にわたって緩解状態に保つために、病気の治療の間、患者を維持するために使用される治療レジメン(または治療レジメンの一部)を指す。維持レジメンは、連続的な療法(例えば、薬物を一定の間隔(例えば、毎週、毎月、毎年など)で投与すること)または間欠的な療法(例えば、断続的な治療、間欠的な治療、再発時の治療、または予め決められた特定の基準[例えば、痛み、疾患の顕在化など]を満たした際の治療)を利用し得る。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語「医薬組成物」は、担体および/または賦形剤などの他の薬剤との、本明細書に記載されている組成物、または医薬として許容できるその塩を指す。本明細書で提供される医薬組成物は、典型的には、医薬として許容できる担体を含む。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語「医薬として許容できる担体」としては、所望の特定の剤形に適した、あらゆる溶媒、希釈剤、または他の液体ビヒクル、分散または懸濁補助剤、界面活性剤、等張化剤、増粘または乳化剤、保存剤、固体結合剤、滑沢剤などがあげられる。Remington's Pharmaceutical-Sciences, Sixteenth Edition, E. W. Martin(Mack Publishing Co., Easton, Pa., 1980)は、医薬組成物の製剤化に使用される種々の担体、およびその調整のための既知の技術を開示している。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語「ワクチン接種」または「ワクチン接種をする」は、それらに限定されないが、対象において、特定の抗原に対する免疫応答を誘発するプロセスを意味する。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語「ワクチン組成物」は、免疫系応答を誘発するためにヒトまたは動物に対して投与することができる組成物を意味することを意図しており、この免疫系応答は、ある特定の細胞、特にAPC、Tリンパ球およびBリンパ球の活性化を引き起こし得る。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、MHC分子によって分解および提示された場合に、抗体によって、またはT細胞受容体(TCR)によって、特異的に結合され得る分子を指す。抗原は、さらに、免疫系によって認識され得、ならびに/または液性免疫応答および/もしくは細胞性免疫応答を誘発し、Bおよび/もしくはTリンパ球の活性化を引き起こし得る。抗原は、1以上のエピトープまたは抗原性部位(B-またはT-エピトープ)を有し得る。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語「アジュバント」は、対象または動物に投与された場合、抗原に対する免疫応答を誘発および/または増強し得る化合物を指す。特定の抗原に対する特定の免疫応答の質を、一般に、加速、延長、または増強するように働く物質を意味することも意図している。本発明の文脈において、用語「アジュバント」は、自然免疫応答の一過性の応答に影響を与えることによって自然免疫応答を増強し、かつ抗原提示細胞(APC)、特に樹状細胞(DC)の活性化および成熟によって適応免疫応答のより長続きする効果を増強する化合物を意味する。
【0046】
本明細書で使用される場合、表現「治療有効量」は、医学的処置に適用できる合理的なベネフィット・リスク比で免疫応答を誘発するために十分な、本発明の活性成分の量を意味する。
【0047】
本発明の抗体
本発明の第1の目的は、抗原提示細胞の表面抗原に向けられた抗体に関し、ここで、重鎖および/または軽鎖は、配列番号1の282番目のアミノ酸残基から358番目のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列(すなわち、VS4ポリペプチド)に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0048】
いくつかの実施形態において、抗体の重鎖は、配列番号1の282番目のアミノ酸残基から358番目のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列(すなわち、VS4ポリペプチド)に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0049】
いくつかの実施形態において、抗体の軽鎖は、配列番号1の282番目のアミノ酸残基から358番目のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列(すなわち、VS4ポリペプチド)に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0050】
いくつかの実施形態において、抗体の重鎖と軽鎖は、両方とも、配列番号1の282番目のアミノ酸残基から358番目のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列(すなわち、VS4ポリペプチド)に対して少なくとも80%の同一性を有するポリペプチドにコンジュゲートまたは融合している。
【0051】
いくつかの実施形態において、抗体は、IgG抗体、好ましくはIgG1またはIgG4抗体、さらにより好ましくはIgG4抗体である。
【0052】
いくつかの実施形態において、抗体は、キメラ抗体、特にキメラマウス/ヒト抗体である。
【0053】
いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト化抗体である。
【0054】
キメラまたはヒト化抗体は、上記のように調製したマウスモノクローナル抗体の配列に基づいて調製し得る。重鎖および軽鎖免疫グロブリンをコードするDNAは、興味の対象となるマウスハイブリドーマから得ることができ、標準的な分子生物学的技術を使用して、非マウス(例えば、ヒト)免疫グロブリン配列を含むように子操作することができる。例えば、キメラ抗体を作成するために、マウス可変領域を、当該技術分野で知られている方法を使用して、ヒト定常領域に結合することができる(Cabillyらに対する米国特許第4,816,567号を参照のこと)。ヒト化抗体を作成するために、マウスCDR領域を、当該技術分野で知られている方法を使用して、ヒトフレームワークの中に挿入することができる。Winterに対する米国特許第5,225,539号;ならびにQueenらに対する米国特許5,530,101号;5,585,089号;5,693,762号および6,180,370号を参照のこと。
【0055】
いくつかの実施形態において、抗体は、ヒト抗体である。いくつかの実施形態において、ヒト抗体は、マウス免疫系の代わりに、ヒト免疫系の要素を保持するトランスジェニックまたはトランスクロモソミックマウスを使用して同定され得る。これらのトランスジェニックおよびトランスクロモソミックマウスは、本明細書において、それぞれHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、本明細書において、まとめて「ヒトIgマウス」と呼ぶ。HuMAbマウス(登録商標)(Medarex, Inc.)は、内在的μおよびγ鎖遺伝子座を不活性化する標的変異を含むと共に、再編成されていないヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座(miniloci)を含む(Lonberg, et al., 1994 Nature 368(6474): 856-859を参照のこと)。別の実施形態において、ヒト抗体は、ヒト重鎖導入遺伝子とヒト軽鎖導入染色体を保持するマウスなど、導入遺伝子と導入染色体上に、ヒト免疫グロブリン配列を保持するマウスを使用して産生させることができる。このようなマウス(本明細書において「KMマウス」と呼ぶ)は、Ishidaらによる国際特許出願公開WO02/43478に詳細に記載されている。
【0056】
いくつかの実施形態において、抗体は、プロフェッショナルAPCの細胞表面マーカーに対して特異的である。抗体は、別のプロフェッショナルAPC、例えばB細胞またはマクロファージなどの細胞表面マーカーに対して特異的であってもよい。
【0057】
いくつかの実施形態において、抗体は、DC免疫受容体(DCIR)、MHCクラスI、MHCクラスII、CD1、CD2、CD3、CD4、CD8、CD11b、CD14、CD15、CD16、CD19、CD20、CD29、CD31、CD40、CD43、CD44、CD45、CD54、CD56、CD57、CD58、CD83、CD86、CMRF-44、CMRF-56、DCIR、DC-ASPGR、CLEC-6、CD40、BDCA-2、MARCO、DEC-205、マンノース受容体、ランゲリン、DECTIN-1、B7-1、B7-2、IFN-γ受容体およびIL-2受容体、ICAM-1、Fey受容体、LOX-1、およびASPGRに対して特異的に結合する抗体から選択される。
【0058】
いくつかの実施形態において、抗体は、CD40に対して特異的である。
【0059】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体は、12E12抗体に由来し、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖(CDR1Hはアミノ酸配列GFTFSDYYMY(配列番号3)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列YINSGGGSTYYPDTVKG(配列番号4)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列RGLPFHAMDY(配列番号5)を有する)、
・および相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖(CDR1Lはアミノ酸配列SASQGISNYLN(配列番号6)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列YTSILHS(配列番号7)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列QQFNKLPPT(配列番号8)を有する)
を含む。
【0060】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体は、11B6抗体に由来し、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖(CDR1Hはアミノ酸配列GYSFTGYYMH(配列番号9)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列RINPYNGATSYNQNFKD(配列番号10)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列EDYVY(配列番号11)を有する)、および
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖(CDR1Lはアミノ酸配列RSSQSLVHSNGNTYLH(配列番号12)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列KVSNRFS(配列番号13)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列SQSTHVPWT(配列番号14)を有する)
を含む。
【0061】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体は、12B4抗体に由来し、
・相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖(CDR1Hはアミノ酸配列GYTFTDYVLH(配列番号15)を有し、CDR2Hはアミノ酸配列YINPYNDGTKYNEKFKG(配列番号16)を有し、CDR3Hはアミノ酸配列GYPAYSGYAMDY(配列番号17)を有する)、および
・相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖(CDR1Lはアミノ酸配列RASQDISNYLN(配列番号18)を有し、CDR2Lはアミノ酸配列YTSRLHS(配列番号19)を有し、CDR3Lはアミノ酸配列HHGNTLPWT(配列番号20)を有する)
を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体は、表Aに記載されたmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5およびmAb6からなる群から選択される。
【0063】
【表1】
【0064】
配列番号21(ヒト化11B6の重鎖可変領域(VH)(v2)のアミノ酸配列)
【化3】
【0065】
配列番号22(ヒト化11B6 VLの可変軽鎖(VL)Vk(v2)のアミノ酸配列)
【化4】
【0066】
配列番号23(ヒト化11B6の可変重鎖領域VH(v3)のアミノ酸配列)
【化5】
【0067】
配列番号24(mAb3のVHアミノ酸配列(12B4))
【化6】
【0068】
配列番号25(mAb3のVLアミノ酸配列(12B4))
【化7】
【0069】
配列番号26(mAb4のVHアミノ酸配列(24A3 HC))
【化8】
【0070】
配列番号27(mAb4のVLアミノ酸配列(24A3 KC))
【化9】
【0071】
配列番号28(mAb5のVHアミノ酸配列)
【化10】
【0072】
配列番号29(mAb5のVLアミノ酸配列)
【化11】
【0073】
配列番号30(mAb6のVHアミノ酸配列(12E12 H3ヒト化HC))
【化12】
【0074】
配列番号31(mAb6のVLアミノ酸配列(ヒト化K2 12E12))
【化13】
【0075】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体は、CD40アゴニスト抗体である。CD40アゴニスト抗体は、WO2010/009346、WO2010/104747およびWO2010/104749に記載されている。開発中の他の抗CD40アゴニスト抗体としては、ファイザーによって開発されている完全ヒトIgG2 CD40アゴニスト抗体であるCP-870,893があげられる。これは、CD40に結合し、KDは3.48×10-10Mであるが、CD40L(米国特許第7,338,660号を参照のこと)の結合をブロックしない。および、Seattle Geneticsによってマウス抗体クローンS2C6から開発されたヒト化IgG1抗体であり、免疫原としてヒト膀胱癌細胞株を使用して作成されたSGN-40。これは、CD40に結合し、KDは1.0×10-9Mであり、CD40とCD40Lの間の相互作用を促進することによって機能し、それによって部分アゴニスト作用を示す(Francisco J A, et al., Cancer Res, 60: 3225-31, 2000)。さらにより具体的には、CD40アゴニスト抗体は、表Aに記載されたmAb1、mAb2、mAb3、mAb4、mAb5およびmAb6からなる群から選択される。
【0076】
いくつかの実施形態において、CD40アゴニスト抗体の重鎖または軽鎖(すなわち、VS4ポリペプチドにコンジュゲートまたは融合していない鎖)は、CD40LのCD40結合ドメインにコンジュゲートまたは融合している。
【0077】
いくつかの実施形態において、CD40LのCD40結合ドメインは、必要に応じてリンカー、好ましくは以下に記載されているFlexV1リンカーを介して、前記CD40アゴニスト抗体の軽鎖または重鎖のC末端に融合している。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、CD40アゴニスト抗体からなり、ここで、抗体の重鎖は、VS4ポリペプチドに融合またはコンジュゲートしており、軽鎖は、CD40LのCD40結合ドメイン(配列番号2)にコンジュゲートまたは融合している。
【0079】
いくつかの実施形態において、抗体は、ランゲリンに対して特異的である。いくつかの実施形態において、抗体は、ATCC寄託番号PTA-9852の抗体15B10に由来する。いくつかの実施形態において、抗体は、ATCC寄託番号PTA-9853の抗体2G3に由来する。いくつかの実施形態において、抗体は、WO2011032161に記載されている抗体91E7、37C1、または4C7に由来する。
【0080】
いくつかの実施形態において、抗ランゲリン抗体は、15B10抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と、15B10抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖を含む。
【0081】
いくつかの実施形態において、抗ランゲリン抗体は、2G3抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と、2G3抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖を含む。
【0082】
いくつかの実施形態において、抗ランゲリン抗体は、4C7抗体の相補性決定領域CDR1H、CDR2HおよびCDR3Hを含む重鎖と、4C7抗体の相補性決定領域CDR1L、CDR2LおよびCDR3Lを含む軽鎖を含む。
【0083】
いくつかの実施形態において、抗体は、表Bに記載されたmAb7、mAb8、mAb9、mAb10、mAb11およびmAb12からなる群から選択される。
【0084】
【表2】
【0085】
配列番号32(15B10の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列)
【化14】
【0086】
配列番号33(15B10の可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列)
【化15】
【0087】
配列番号34(2G3の重鎖可変領域(VH)のアミノ酸配列)
【化16】
【0088】
配列番号35(2G3の可変軽鎖(VL)のアミノ酸配列)
【化17】
【0089】
配列番号36(4C7の重鎖のアミノ酸配列)
【化18】
【0090】
配列番号37(4C7の軽鎖のアミノ酸配列)
【化19】
【0091】
本発明の抗体は、当該技術分野において知られている技術、例えば、それらに限定されないが、あらゆる化学的、生物学的、遺伝学的または酵素学的技術など(単独で、または組み合わせて、のいずれか)によって作製することができる。所望の配列のアミノ酸配列を知っていれば、当業者は、ポリペプチドを作製するための標準的な技術によって、ポリペプチドを容易に作製することができる。例えば、本発明の抗体は、現在当該技術分野においてよく知られている組換えDNA技術によって合成することができる。例えば、これらのフラグメントは、所望の(ポリ)ペプチドをコードするDNA配列を発現ベクターの中に組み込み、そのベクターを、所望のポリペプチドを発現することになる適切な真核または原核宿主の中に導入することによって、DNA発現産物として得ることができ、そこから、よく知られている技術を使用して、そのフラグメントを後で単離することができる。
【0092】
抗体の重鎖および/または軽鎖は、VS4ポリペプチドのC末端にコンジュゲートまたは融合している。いくつかの実施形態において、抗体の重鎖および/または軽鎖は、VS4ポリペプチドのN末端に融合している。
【0093】
いくつかの実施形態において、抗体の重鎖および/または軽鎖は、VS4ポリペプチドに、化学的カップリングを使用することによってコンジュゲートする。抗体をコンジュゲート部分に結合またはコンジュゲーションするためのいくつかの方法が当該技術分野において知られている。ある部分を抗体にコンジュゲートするために使用されているリンカー種の例としては、それらに限定されないが、ヒドラゾン、チオエーテル、エステル、ジスルフィドおよびペプチド含有リンカー、例えば、バリン-シトルリンリンカーがあげられる。例えば、リソソームの区画内で低pHによって切断されやすい、またはプロテアーゼ、例えば腫瘍組織内で優先的に発現されるカテプシン(例えば、カテプシンB、C、D)などのプロテアーゼによって切断されやすいリンカーを選択してもよい。ポリペプチドをコンジュゲートするための技術は、特に、当該技術分野においてよく知られている(例えば、Arnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy,” in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy (Reisfeld et al. eds., Alan R. Liss, Inc., 1985);Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery,” in Controlled Drug Delivery (Robinson et al. eds., Marcel Deiker, Inc., 2nd ed. 1987);Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,” in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications (Pinchera et al. eds., 1985);“Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy,” in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy (Baldwin et al. eds., Academic Press, 1985);およびThorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62:119-58を参照のこと;また、例えば国際出願公開WO89/12624も参照のこと)。典型的には、ペプチドは、抗体上のリジンまたはシステイン残基に、それぞれN-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはマレイミド官能基を介して共有的に結合される。コンジュゲートの均質性を改善するために、操作されたシステインまたは非天然アミノ酸の組み込みを使用するコンジュゲーションの方法が報告されいる(Axup, J.Y., Bajjuri, K.M., Ritland, M., Hutchins, B.M., Kim, C.H., Kazane, S.A., Halder, R., Forsyth, J.S., Santidrian, A.F., Stafin, K., et al. (2012). Synthesis of site-specific antibody-drug conjugates using unnatural amino acids. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109, 16101-16106.; Junutula, J.R., Flagella, K.M., Graham, R.A., Parsons, K.L., Ha, E., Raab, H., Bhakta, S., Nguyen, T., Dugger, D.L., Li, G., et al. (2010).Engineered thio-trastuzumab-DM1 conjugate with an improved therapeutic index to target human epidermal growth factor receptor 2-positive breast cancer. Clin. Cancer Res.16, 4769-4778)。Junutula et al.(Nat Biotechnol. 2008; 26:925-32)は、従来のコンジュゲーション方法と比較して改善された治療指数を示すと主張する、「THIOMAB」と呼ばれるシステインベースの部位特異的コンジュゲーション(TDC)を開発した。抗体に組み込まれている非天然アミノ酸に対するコンジュゲーションもまた、ADCのために探索されている。しかしながら、このアプローチの普遍性は未だ確立されていない(Axup et al., 2012)。特に、当業者は、アシルドナーグルタミン含有タグ(例えば、Gin含有ペプチドタグまたはQタグ)、または(例えば、ポリペプチド上のアミノ酸の欠失、挿入、置換、または変異による)ポリペプチド操作によって活性化された内在性グルタミンによって操作されたFc含有ポリペプチドも予想し得る。次いで、グルタミン転移酵素は、アミンドナー剤(例えば、反応性アミンを含むか、または反応性アミンに結合した小分子)と共有的に架橋し、操作されたFc含有ポリペプチドコンジュゲートの安定で均質な集団を形成することができ、このアミンドナー剤は、アシルドナーグルタミン含有タグ、またはアクセス可能な/露出した/反応性の内在性グルタミン(WO2012059882)によって、Fc含有ポリペプチドに部位特異的にコンジュゲートしている。
【0094】
いくつかの実施形態において、抗体の重鎖および/または軽鎖は、US20160031988A1およびUS20120039916A1に記載されているように、ドックリンドメイン(1つまたは多数)によってVS4ポリペプチドにコンジュゲートし、これによってコヒーシン融合タンパク質に対する非共有的なカップリングが可能になる。いくつかの実施形態において、抗体の重鎖または軽鎖は、ドックリンドメインによって、配列番号38に規定されているアミノ酸配列からなるコヒーシン融合タンパク質にコンジュゲートする。
【0095】
配列番号38 optSLAML-Avitag-ThermoCohesin-FlexV1-Momp_ChTrD_VS4-EPEA Tag
【化20】
【0096】
いくつかの実施形態において、抗体の重鎖および/または軽鎖は、VS4ポリペプチドに融合し、融合タンパク質を形成する。
【0097】
いくつかの実施形態において、VS4ポリペプチドは、直接的に、またはリンカーを介して、のいずれかで、重鎖および/または軽鎖に融合される。本明細書で使用される場合、用語「直接的に」は、VS4ポリペプチドのN末端における1番目のアミノ酸が、重鎖または軽鎖のC末端における最後のアミノ酸に融合されることを意味する。この直接的な融合は、(Vigneron et al., Science 2004, PMID 15001714)、(Warren et al., Science 2006, PMID 16960008)、(Berkers et al., J. Immunol. 2015a, PMID 26401000)、(Berkers et al., J. Immunol. 2015b, PMID 26401003)、(Delong et al., Science 2016, PMID 26912858)(Liepe et al., Science 2016, PMID 27846572)、(Babon et al., Nat. Med. 2016, PMID 27798614)に記載されているように、自然に起こり得る。
【0098】
いくつかの実施形態において、リンカーは、下記のFlexV1、f1、f2、f3、またはf4からなる群から選択される。
【0099】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【0100】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、抗CD40抗体(「CD40.MOMP-VS4」と名付けられた)からなり、ここで、抗CD40抗体の重鎖は、配列番号1の282番目のアミノ酸残基から358番目のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列に対して少なくとも80%の同一性を有するVS4ポリペプチドに融合している。
【0101】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、抗CD40抗体(「CD40.MOMP-VS4」と名付けられた)からなり、ここで、抗CD40抗体の重鎖は、配列番号1の282番目のアミノ酸残基から358番目のアミノ酸残基の範囲のアミノ酸配列を有するVS4ポリペプチドに融合している。
【0102】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体の重鎖は、リンカーを介して、特にFlexV1を介して、VS4ポリペプチドに融合している。
【0103】
いくつかの実施形態において、抗CD40抗体は、12E12抗体に由来する。
【0104】
いくつかの実施形態において、本発明の抗体は、配列番号44に規定されている重鎖と、配列番号45に規定されているアミノ酸配列を有する軽鎖を含む。
【0105】
配列番号44>[hAnti-CD40VH3-LV-hIgG4H-C-Flex-v1-hMOMP/VS4-EPEA]
【化26】
【0106】
配列番号45>[hAnti-CD40VK2-LV-hIgG4H-C]
【化27】
【0107】
本発明の核酸、ベクターおよび宿主細胞
本発明のさらなる目的は、抗原提示細胞の表面抗原に向けられた抗体の、VS4ポリペプチドに融合した重鎖および/または軽鎖をコードする核酸に関する。
【0108】
典型的には、そのような核酸は、DNAまたはRNA分子であり、何らかの適切なベクター、例えばプラスミド、コスミド、エピソーム、人工染色体、ファージまたはウイルスベクターなどに含まれていてもよい。
【0109】
よって、本発明のさらなる目的は、本発明の核酸を含むベクターに関する。
【0110】
このようなベクターは、対象に投与した際に前記抗体の発現を引き起こすか、または指示するために、調節エレメント、例えばプロモーター、エンハンサー、ターミネーターなどを含んでいてもよい。動物細胞のための発現ベクターにおいて使用されるプロモーターとエンハンサーの例としては、SV40の初期プロモーターとエンハンサー、モロニーマウス白血病ウイルスのLTRプロモーターとエンハンサー、免疫グロブリンH鎖のプロモーターとエンハンサーなどがあげられる。ヒト抗体C領域をコードする遺伝子を挿入および発現することが可能である限り、動物細胞のためのあらゆる発現ベクターを使用することができる。適切なベクターの例としては、pAGE107、pAGE103、pHSG274、pKCR、pSG1ベータd2-4などがあげられる。プラスミドの他の例としては、複製起点を含む複製型プラスミド、または組込みプラスミド、例えば、pUC、pcDNA、pBRなどがあげられる。ウイルスベクターの他の例としては、アデノウイルス、レトロウイルス、ヘルペスウイルスおよびAAVベクターがあげられる。このような組換えウイルスは、当該技術分野において知られている技術によって、例えば、パッケージング細胞をトランスフェクトすることによって、またはヘルパープラスミドまたはウイルスによる一過性トランスフェクションによって作製することができる。ウイルスパッケージング細胞の典型的な例としては、PA317細胞、PsiCRIP細胞、GPenv+細胞、293細胞などがあげられる。このような複製欠損組換えウイルスを作製するための詳細なプロトコルは、例えば、WO95/14785、WO96/22378、US5,882,877、US6,013,516、US4,861,719、US5,278,056およびWO94/19478に見出すことができる。
【0111】
本発明のさらなる目的は、本発明による核酸および/またはベクターによってトランスフェクト、感染または形質転換されている宿主細胞に関する。
【0112】
本発明の核酸は、適切な発現系において本発明の抗体を産生させるために使用され得る。一般的な発現系としては、E.coli宿主細胞とプラスミドベクター、昆虫宿主細胞とバキュロウイルスベクター、および哺乳動物宿主細胞とベクターがあげられる。宿主細胞の他の例としては、それらに限定されないが、原核細胞(例えばバクテリアなど)および真核細胞(例えば酵母細胞、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞など)があげられる。特定の例としては、E.coli、KluyveromycesまたはSaccharomyces酵母があげられる。哺乳動物宿主細胞としては、DHFR選択マーカーと共に使用されるdhfr-CHO細胞(Urlaub and Chasin, 1980に記載されている)を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO細胞)、CHOK1 dhfr+細胞株、NSOミエローマ細胞、COS細胞およびSP2細胞、例えばGS Xceed(商標)遺伝子発現システム(Lonza)と組み合わせたGS CHO細胞株、またはHEK細胞があげられる。
【0113】
本発明は、また、本発明によるポリペプチドを発現する組換え宿主細胞を産生させる方法にも関し、この方法は、(i)コンピテント宿主細胞の中に、イン・ビトロまたはエクス・ビボで、上記の組換え核酸またはベクターを導入するステップ;(ii)得られた組換え宿主細胞を、イン・ビトロまたはエクス・ビボで培養するステップ;および(iii)必要に応じて、前記抗体を発現および/または分泌する細胞を選択するステップを含む。このような組換え宿主細胞は、本発明の抗体の産生のために使用することができる。
【0114】
よって、本明細書に開示されている宿主細胞は、本発明の抗体を産生させるために特に適している。実際に、組換え発現が哺乳動物宿主細胞に導入された場合、宿主細胞における抗体の発現、および、必要に応じて、宿主細胞が増殖している培養培地中への抗体の分泌に十分な期間にわたって宿主細胞を培養することによって、ポリペプチドが産生される。抗体は、例えば、それらが分泌された培養培地から、標準的なタンパク質精製方法を使用して、回収および精製することができる。
【0115】
医薬およびワクチン組成物
本明細書に記載されている抗体は、1以上の医薬組成物の部分として投与することができる。あらゆる通常の担体培地の使用は、例えば何らかの望ましくない生物学的効果が生じるか、またはそれ以外の形で医薬組成物の他のいずれかの成分(単数または複数)と有害な様式で相互作用することによって本発明の抗体と不適合である場合を除き、本発明の範囲内であることが意図されている。医薬として許容できる担体として機能し得る材料のいくつかの例としては、それらに限定されないが、ラクトース、グルコースおよびショ糖などの糖;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロースおよびカルボキシメチルセルロースナトリウムなどの誘導体、エチルセルロースおよび酢酸セルロース;トラガント末;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび座剤ワックスなどの賦形剤;ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油および大豆油などの油;グリコール、例えばプロピレングリコールなど;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;パイロジェンフリー水;等張食塩水;リンゲル液;エチルアルコール、およびリン酸緩衝液があげられ、ならびに、ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの他の非毒性の適合する滑沢剤、ならびに着色剤、剥離剤、コーティング剤、甘味剤、風味剤および香味剤、保存料および抗酸化剤もまた、製剤化する者の判断によって、組成物中に存在してもよい。
【0116】
本明細書に記載されている抗体は、ワクチン組成物を調製するために特に適している。よって、本発明のさらなる目的は、本発明の抗体を含むワクチン組成物に関する。
【0117】
いくつかの実施形態において、本発明のワクチン組成物は、アジュバントを含む。いくつかの実施形態において、アジュバントは、ミョウバンである。いくつかの実施形態において、アジュバントは、重量比率(w/w)で、30~70%、好ましくは40~60%、より好ましくは45~55%存在するフロイント不完全アジュバント(IFA)または他のオイルベースのアジュバントである。いくつかの実施形態において、本発明のワクチン組成物は、TLR1、TLR2、TLR3、TLR4、TLR5、TLR6、TLR7、およびTLR8アゴニストからなる群から選択される少なくとも1つのToll様受容体(TLR)アゴニストを含む。
【0118】
治療方法
本明細書に記載されている抗体ならびに医薬またはワクチン組成物は、クラミジア・トラコマチスに対する免疫応答を誘導するために特に適しており、よって、ワクチンの目的で使用することができる。
【0119】
したがって、本発明のさらなる目的は、治療有効量の本発明の抗体を投与することを含む、それを必要とする対象に、クラミジア・トラコマチスのワクチン接種をするための方法に関する。
【0120】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載されている抗体ならびに医薬またはワクチン組成物は、トラコーマの治療のために特に適している。
【0121】
いくつかの実施形態において、対象は、ヒト、またはクラミジア感染に対する感受性がある他のあらゆる動物(例えば、トリおよび哺乳動物)(例えば、ネコおよびイヌなどの飼育動物;ウマ、ウシ、ブタ、ニワトリなどの家畜など)であり得る。典型的には、前記対象は、非霊長類(例えば、ラクダ、ロバ、シマウマ、ウシ、ブタ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ラット、およびマウス)および霊長類(例えば、サル、チンパンジー、およびヒト)を含む哺乳動物である。いくつかの実施形態において、対象は、非ヒト動物である。いくつかの実施形態において、対象は、家畜またはペットである。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。いくつかの実施形態において、対象は、幼児である。いくつかの実施形態において、対象は、小児である。いくつかの実施形態において、対象は、成人である。いくつかの実施形態において、対象は、高齢者である。いくつかの実施形態において、対象は、未熟児である。
【0122】
いくつかの実施形態において、対象は、症候性または無症候性であり得る。
【0123】
典型的には、本発明の活性成分(すなわち、本明細書に記載されている抗体および医薬またはワクチン組成物)は、治療有効量で対象に投与される。本発明の化合物および組成物の1日の合計使用量は、適切な医学的判断の範囲内で、主治医によって決定されることになることが理解されよう。いずれかの特定の対象のための特定の治療有効用量のレベルは、治療される疾患およびその疾患の重症度;使用する特定の化合物の活性;使用する特定の組成物;対象の年齢、体重、一般的な健康状態、性別および食事;使用する特定の化合物の投与時間、投与経路、および排出速度;治療の継続期間;使用する特定のポリペプチドと組み合わせて、または同時に使用される薬物;および医療技術においてよく知られている同様の因子を含む、種々の因子に左右されるであろう。例えば、望ましい治療効果を達成するために必要なレベルよりも低いレベルで化合物の投与を開始し、望ましい効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることは、十分に当該技術分野の技術の範囲内である。しかしながら、前記産物の1日の用量は、大人1人につき、1日あたり0.01~1,000mgの幅広い範囲にわたって変更され得る。特に、組成物は、治療を受ける対象に対する用量を症状に基づいて調節するために、0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、250および500mgの活性成分を含有する。薬剤は、典型的には、約0.01mg~約500mgの活性成分、特に1mg~約100mgの活性成分を含有する。薬物の有効量は、通常、1日あたり0.0002mg/kg~約20mg/kg(体重)、特に1日あたり約0.001mg/kg~7mg/kg(体重)という用量のレベルで供給される。
【0124】
本明細書に記載されている抗体および医薬またはワクチン組成物は、任意の投与経路で、特に経口、経鼻、直腸、局所、バッカル(例えば、舌下)、非経口(例えば、皮下、筋肉内、皮内、または静脈内)および経皮投与で対象に投与してよいが、いずれかの定められたケースにおいて最も適切な経路は、治療される状態の性質および重症度に左右され、かつ使用される特定の活性薬剤の性質に左右されるであろう。
【0125】
以下、図面および実施例により本発明をさらに説明する。しかしながら、これらの実施例および図面は、いかなる意味においても、本発明の範囲を限定するものと解釈すべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0126】
図1A】組換えDC標的化ワクチンの結合アッセイ A.MOMP/VS4-コヒーシン抗原とドックリン抗CD40DC標的化ベクターの結合の概略図。
図1B】組換えDC標的化ワクチンの結合アッセイ B.ワクチンによって標的化されたヒトDCは、抗hIgG抗体を使用して明らかにされたが、クラミジアMOMPビオチン化コヒーシン抗原の抗CD40に対する結合は、蛍光ストレプトアビジンによって検出された。
図2】ワクチン抗原に対する液性応答。21人のクラミジア感染患者(10人のHIV+患者を含む)の血漿を、MOMP/VS4-ワクチン抗原に対してELISAによって試験した。対照として、臍帯血由来の4つの血漿を含めた。全ての患者は、HIV+であってもそうでなくても、検出可能なレベルのMOMP/VS4特異的IgG(平均力価1.64)を示した。Holm-Sidak多重比較検定(****、P<0.0001;***、P<0.001)。
図3A】抗CD40ワクチンコンストラクトによる、C.trachomatis MOMP特異的メモリーT細胞のイン・ビトロ増殖。9人のドナーのPBMCを、MOMP/VS4抗原と結合した抗CD40 mAb、または無関係な対照としてエボラGPで刺激した。A.培養10日後のIFN-γを産生するCD4+T細胞の割合(%)。著しいクラミジア応答が検出された(Wilcoxon検定、p<0.05)。
図3B】抗CD40ワクチンコンストラクトによる、C.trachomatis MOMP特異的メモリーT細胞のイン・ビトロ増殖。9人のドナーのPBMCを、MOMP/VS4抗原と結合した抗CD40 mAb、または無関係な対照としてエボラGPで刺激した。B.ワクチンによって刺激されたCD4+T細胞(IFN-γレスポンダー)によって産生されたTh1およびTh2サイトカインのプロファイル。
図3C】抗CD40ワクチンコンストラクトによる、C.trachomatis MOMP特異的メモリーT細胞のイン・ビトロ増殖。9人のドナーのPBMCを、MOMP/VS4抗原と結合した抗CD40 mAb、または無関係な対照としてエボラGPで刺激した。C.抗CD40.MOMP/VS4(クラミジア、Chltr)かGP(エボラ)抗原で刺激した後のドナー918の抗MOMP/VS4多機能性プロファイル(CD4+T細胞;同時に産生されたサイトカインの数が示されている)。
図3D】抗CD40ワクチンコンストラクトによる、C.trachomatis MOMP特異的メモリーT細胞のイン・ビトロ増殖。9人のドナーのPBMCを、MOMP/VS4抗原と結合した抗CD40 mAb、または無関係な対照としてエボラGPで刺激した。D.Th17+細胞(IL-17A+IL-17E+IL-22+)は、抗CD40.Mom/VS4コンストラクトによって、わずかに増殖したように見えた(n=5)。
図4】標的化ワクチン(抗CD40)か非標的化ワクチン(IgG4対照)によるPBMCのイン・ビトロ刺激。培養上清を第2日に集めた。IFN-γの濃度をインハウスのELISAで測定した。非特異的なバックグラウンド(点線)は、エボラの糖タンパク質と結合した抗CD40 mAbを使用して評価した。予備的な試験が2人のドナーに対して行われ、CD40受容体を介したクラミジア抗原の標的化が抗原特異的T細胞応答を改善することが示された。
図5】FlexV1リンカーを介した、抗CD40 DC標的化抗体に対するMOMP/VS4抗原のコンジュゲーションの模式図。
【実施例
【0127】
抗CD40-MOMP/VS4ワクチン、すなわち重鎖がドックリンドメインによってMOMP/VS4-コヒーシンにコンジュゲートした抗CD40抗体の免疫原性が生じた(図1A)。結果を図1~4に示す。
【0128】
本発明は、重鎖がリンカーFlexV1を介してMOMP/VS4にコンジュゲートした抗CD40抗体も生み出した(図5)。
【0129】
参考文献:
本明細書全体にわたって、種々の参考文献によって、本発明が関係する技術の水準が説明されている。これらの参考文献の開示は、この結果、参照によって本開示に援用される。
図1A
図1B
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
【配列表】
2024500237000001.app
【国際調査報告】