(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ENPP1およびCDNPの阻害剤としてのホスホネート類
(51)【国際特許分類】
C07F 9/6561 20060101AFI20231225BHJP
A61K 31/675 20060101ALI20231225BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231225BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231225BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C07F9/6561 Z
A61K31/675
A61P31/04
A61P35/00
A61P35/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023559968
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 US2021062328
(87)【国際公開番号】W WO2022125613
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520030279
【氏名又は名称】スティングレイ・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156144
【氏名又は名称】落合 康
(72)【発明者】
【氏名】カシバトラ,スリニバス ラオ
(72)【発明者】
【氏名】シャルマ,スニル
(72)【発明者】
【氏名】カーディゲ,モハン
(72)【発明者】
【氏名】ウエストン,アレクシス
(72)【発明者】
【氏名】ソード,トレイソン
【テーマコード(参考)】
4C086
4H050
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086DA38
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA35
4C086MA52
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA14
4C086ZB26
4C086ZB27
4C086ZB35
4H050AA01
4H050AA03
4H050AB20
(57)【要約】
本発明は、ENPP1、CdnPまたは両方の阻害剤としての活性を有する化合物を提供するものである。いくつかの実施形態は、下記の構造(I)または(II):
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7a、R
7b、R
7b、R
7c、R
25、R
26、R
27a、R
27b、R
27c、L
1、L
5、L
6、G
1、G
2、G
3およびG
6は、本明細書に規定されている)の内の1つを有する化合物、あるいはその医薬的に許容される塩、互変異生体、立体異性体またはプロドラッグを提供する。本開示は、前記化合物の製造および使用に関連する方法、前記化合物を含む医薬組成物およびENPP1に関連する疾患、例えば、哺乳類における制御不能な細胞増殖、癌およびウイルス感染または細菌感染を治療するための方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造(I):
【化1】
[式中、
G
1は、NまたはCHであり
G
2は、NまたはCR
9であり;
G
3は、NまたはCR
10であり;
L
1は、直接結合、C
1-C
6アルキレンまたはC
1-C
6アミニルアルキレンであるが、但し、G
1がCHである場合に限り、L
1は、直接結合である;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
9およびR
10は、各々独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシアルキル、アミニルカルボニルアルキル、アミニルアルキル、アミニルカルボニル、アミニル、アルキルカルボニル、-C(=O)Oアルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり;
R
6は、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシまたはヒドロキシアルキルであり;
R
7aは、OまたはSであり;
R
7bおよびR
7cは、各々独立して、-O
-、-OH、-S
-、-SHまたは-NR
8aR
8bであり;および
R
8aおよびR
8bは、各々独立して、水素またはアルキルである]
を有する化合物、またはその立体異性体、互変異生体または医薬的に許容される塩。
【請求項2】
G
1が、Nである、請求項1記載の化合物。
【請求項3】
G
2が、CHである、請求項1記載の化合物。
【請求項4】
G
2が、CR
9である、請求項1~3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項5】
R
9が、水素またはシアノである、請求項1~4のいずれか1項記載の化合物。
【請求項6】
G
2が、Nである、請求項1~3のいずれか1項記載の化合物。
【請求項7】
G
3が、CR
10である、請求項1~6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項8】
G
3が、CHである、請求項1~7のいずれか1項記載の化合物。
【請求項9】
G
3が、Nである、請求項1~6のいずれか1項記載の化合物。
【請求項10】
R
1、R
2、R
3、R
4およびR
5が、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミニルカルボニル、アミニル、-C(=O)Oアルキルまたは5~6員ヘテロアリールである、請求項1~9のいずれか1項記載の化合物。
【請求項11】
R
1が、水素またはアルコキシである、請求項1~10のいずれか1項記載の化合物。
【請求項12】
R
1が、水素またはメトキシである、請求項1~11のいずれか1項記載の化合物。
【請求項13】
R
2が、水素またはアルコキシである、請求項1~12のいずれか1項記載の化合物。
【請求項14】
R
2が、水素またはメトキシである、請求項1~13のいずれか1項記載の化合物。
【請求項15】
R
3が、水素またはアルコキシである、請求項1~14のいずれか1項記載の化合物。
【請求項16】
R
3が、水素またはメトキシである、請求項1~15のいずれか1項記載の化合物。
【請求項17】
R
4が、水素またはアルコキシである、請求項1~16のいずれか1項記載の化合物。
【請求項18】
R
4が、水素またはメトキシである、請求項1~17のいずれか1項記載の化合物。
【請求項19】
R
5が、水素である、請求項1~18のいずれか1項記載の化合物。
【請求項20】
R
6が、水素である、請求項1~19のいずれか1項記載の化合物。
【請求項21】
R
7aが、Oである、請求項1~20のいずれか1項記載の化合物。
【請求項22】
R
7bが、-O
-または-OHである、請求項1~21のいずれか1項記載の化合物。
【請求項23】
R
7cが、-O
-または-OHである、請求項1~22のいずれか1項記載の化合物。
【請求項24】
L
1が、所望によりオキソで置換されていてもよいC
1-C
6アルキレンである、請求項1~23のいずれか1項記載の化合物。
【請求項25】
L
1が、非置換のメチレンである、請求項1~24のいずれか1項記載の化合物。
【請求項26】
L
1が、非置換のエチレンである、請求項1~24のいずれか1項記載の化合物。
【請求項27】
L
1が、非置換のプロピレンである、請求項1~24のいずれか1項記載の化合物。
【請求項28】
表1Aの構造の内の1つを有する、化合物。
【請求項29】
下記の構造(II):
【化2】
[式中、
G
6は、NまたはCR
28であり;
L
5は、C
1-C
6アルキレン、-NR
29-、-N(R
29)CH
2CH
2O-、-O-、ヘテロアリーレンまたは-S(O)
t-であり、式中のtは、0、1または2であり;
L
6は、C
1-C
6アルキレンまたはC
1-C
6アルケニレンであり;
R
25、R
26およびR
28は、各々独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシアルキル、アミニルカルボニルアルキル、アミニルアルキル、アミニルカルボニル、アミニル、アルキルカルボニル、-C(=O)Oアルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり;
R
27aは、OまたはSであり;
R
27bおよびR
27cは、各々独立して、-O
-、-OH、-S
-、-SHまたは-NR
30aR
30bであり;
R
29は、水素またはC
1-C
6アルキルであり;および
R
30aおよびR
30bは、各々独立して、水素またはアルキルである]
を有する化合物、またはその立体異性体、互変異生体または医薬的に許容される塩。
【請求項30】
G
6が、Nである、請求項29記載の化合物。
【請求項31】
G
6が、CHである、請求項29記載の化合物。
【請求項32】
R
25およびR
26は、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミニルカルボニル、アミニル、-C(=O)Oアルキルまたは5~6員ヘテロアリールである、請求項29~31のいずれか1項記載の化合物。
【請求項33】
R
25が、水素またはアルコキシである、請求項29~32のいずれか1項記載の化合物。
【請求項34】
R
25が、水素またはメトキシである、請求項29~33のいずれか1項記載の化合物。
【請求項35】
R
26が、水素またはアルコキシである、請求項29~34のいずれか1項記載の化合物。
【請求項36】
R
26が、水素またはメトキシである、請求項29~35のいずれか1項記載の化合物。
【請求項37】
R
27aが、Oである、請求項29~36のいずれか1項記載の化合物。
【請求項38】
R
27bが、-O
-または-OHである、請求項29~37のいずれか1項記載の化合物。
【請求項39】
R
27cが、-O
-または-OHである、請求項29~38のいずれか1項記載の化合物。
【請求項40】
L
5が、分枝鎖C
1-C
6アルキレンである、請求項29~39のいずれか1項記載の化合物。
【請求項41】
L
5が、4~10員ヘテロアリーレンである、請求項29~39のいずれか1項記載の化合物。
【請求項42】
L
5が、所望により置換されていてもよいピリジニレンである、請求項29~39のいずれか1項記載の化合物。
【請求項43】
L
5が、-O
-である、請求項29~39のいずれか1項記載の化合物。
【請求項44】
L
5が、-NH-である、請求項29~39のいずれか1項記載の化合物。
【請求項45】
L
5が、-N(CH
3)-である、請求項29~39のいずれか1項記載の化合物。
【請求項46】
L
5が、-S-である、請求項29~39のいずれか1項記載の化合物。
【請求項47】
L
5が、-N(R
29)CH
2CH
2O-である、請求項29~39のいずれか1項記載の化合物。
【請求項48】
L
5が、-N(H)CH
2CH
2O-である、請求項29~39のいずれか1項記載の化合物。
【請求項49】
L
6が、C
1-C
6アルキレンである、請求項29~48のいずれか1項記載の化合物。
【請求項50】
L
6が、非置換である、請求項29~49のいずれか1項記載の化合物。
【請求項51】
表1Bに記載の構造の内の1つを有する化合物。
【請求項52】
請求項1~51のいずれか1項記載の化合物、およびその医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む、医薬組成物。
【請求項53】
請求項1~51のいずれか1項記載の化合物または請求項52記載の医薬組成物を投与することを特徴とする、疾患を治療するための方法。
【請求項54】
疾患がマイコバクテリウム感染症である、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
マイコバクテリウムCdnPまたは宿主ENPP1を阻害することを特徴とする、請求項53または54に記載の方法。
【請求項56】
疾患が、癌である、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
疾患が、固形腫瘍、白血病、リンパ腫または乳癌である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
ENPP1を阻害することを特徴とする、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、ならびに下記の構造(III):
【化3】
[式中、
Aは、C
3-C
8シクロアルキレン、4~10員ヘテロシクリレン、C
6-C
10アリーレン、4~10員ヘテロアリーレンであり;
L
2は、所望により、オキソで置換されていてもよいC
1-C
6アルキレンであり;
G
4は、NまたはCHであり;
G
5は、NまたはCHであり;
R
11、R
12、R
13、R
14およびR
15は、各々独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、-NH(C=O)アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニレンヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリールまたはヘテロアリールであるか、またはR
11およびR
12の組み合わせ、R
12およびR
13の組み合わせ、またはR
13およびR
14の組み合わせが、それらに結合している炭素原子と共に一体となって、4~6員シクロアルキル、4~10員アリール、4~6員ヘテロシクリルまたは4~10員ヘテロアリールを形成しており;
R
16aは、OまたはSであり;
R
16bおよびR
16cは、各々独立して、-O
-、-OH、-S
-、-SHまたは-NR
17aR
17bであり;ならびに
R
17aおよびR
17bは、各々独立して、水素またはアルキルである]
を有する化合物、あるいはその立体異性体、互変異生体または医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することを特徴とする、マイコバクテリア感染症を治療するための方法。
【請求項60】
Aが、4~10員ヘテロシクリレンである、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
Aが、6または7員ヘテロシクリレンである、請求項59または60記載の方法。
【請求項62】
Aが、下記の構造:
【化4】
の内の1つを有する、請求項59~61のいずれか1項記載の方法。
【請求項63】
Aが、下記の構造:
【化5】
の内の1つを有する、請求項59~62のいずれか1項記載の方法。
【請求項64】
G
4が、Nである、請求項59~63のいずれか1項記載の方法。
【請求項65】
G
4が、CHである、請求項59~63のいずれか1項記載の方法。
【請求項66】
G
5が、Nである、請求項59~65のいずれか1項記載の方法。
【請求項67】
G
5が、CHである、請求項59~65のいずれか1項記載の方法。
【請求項68】
R
11、R
12、R
13、R
14およびR
15は、各々独立して、水素、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アルコキシまたはハロアルコキシであるか、あるいはR
2およびR
3は、それらに結合している炭素原子と共に一体となって、4~6員ヘテロシクリルを形成している、請求項59~67のいずれか1項記載の方法。
【請求項69】
R
11が、水素またはアルコキシである、請求項59~68のいずれか1項記載の方法。
【請求項70】
R
11が、水素またはメトキシである、請求項59~69のいずれか1項記載の方法。
【請求項71】
R
12が、水素またはアルコキシである、請求項59~70のいずれか1項記載の方法。
【請求項72】
R
12が、水素またはメトキシである、請求項59~71のいずれか1項記載の方法。
【請求項73】
R
13が、水素またはアルコキシである、請求項59~71のいずれか1項記載の方法。
【請求項74】
R
13が、水素またはメトキシである、請求項59~73のいずれか1項記載の方法。
【請求項75】
R
14が、水素またはアルコキシである、請求項59~74のいずれか1項記載の方法。
【請求項76】
R
14が、水素またはメトキシである、請求項59~75のいずれか1項記載の方法。
【請求項77】
R
15が、水素である、請求項59~76のいずれか1項記載の方法。
【請求項78】
R
16aが、Oである、請求項59~77のいずれか1項記載の方法。
【請求項79】
R
16bが、-O
-または-OHである、請求項59~78のいずれか1項記載の方法。
【請求項80】
R
16cが、-O
-または-OHである、請求項59~79のいずれか1項記載の方法。
【請求項81】
化合物が、表1Aまたは表2に記載した構造の内の1つを有する、請求項59~80のいずれか1項記載の方法。
【請求項82】
マイコバクテリアCdnPを阻害することを特徴とする、請求項53~81のいずれか1項記載の方法。
【請求項83】
宿主EPP1活性を阻害することを特徴とする、請求項53~82のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示の実施形態は、化合物および化合物の製造方法、ならびに治療薬または予防薬としての使用、例えば、マイコバクテリア感染症および/または癌(例えば、固形癌および血液癌)の治療のための使用に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術分野の説明
エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ(ENPP)ファミリーメンバーには7つのアイソフォームENPP1~7が含まれ、それらはII型膜貫通糖タンパク質または細胞外酵素(ectoenzyme)である。370を超えるタンパク質ターゲットからの質量分析およびプロテオミクス分析によって、高い加水分解活性を示すトップヒットの一つとして細胞外タンパク質ENPP1が同定された。ATPは、同定されたENPP1の基質であり、加水分解されてAMPおよびPPiとなる。CD73は、AMPをアデノシンおよび無機リン酸塩(Pi)に変換する。速度実験データは、ENPP1がATPを加水分解できることを示している。これらのエクトヌクレオチド酵素は、三リン酸塩、オリゴヌクレオチドおよびヌクレオシド5'-一リン酸を生じさせるものなどの細胞外ヌクレオチドにおけるピロリン酸塩(PPi)およびホスホジエステル結合の加水分解に関与する。主要なアイソフォームの一つであるENPP1(血漿細胞膜糖タンパク質-1、PC-1)は、様々な生理プロセス、例えば、発達、形成および輸送ならびに病態生理学的状態に関与している。異常なENPP1発現が、正常な乳腺上皮に比べて乳がんにおいて検出されており、これは、骨転移の発症(約80%の症例で起こる)、ホジキンリンパ腫、肝細胞癌、濾胞性リンパ腫、膠芽細胞腫および他の悪性腫瘍組織においてENPP1が関与する可能性を示す証拠である。さらに、ENPP1活性は、細菌および/またはウイルスによって引き起こされる疾患にも関与していることから、ENPP1のモジュレータを用いて、細菌性および/またはウイルス性の疾患および症状を治療することができる。
【0003】
結核菌(M. tuberculosis)は、宿主細胞の防御反応を阻害し、感染細胞内で生存する能力を持つ頑強な病原体である。宿主の免疫システムを回避するためにいくつかのメカニズムを進化させてきたが、その一つが宿主のシグナル伝達分子、特にヌクレオチドセカンドメッセンジャーを破壊することである。CdnPは、細菌(c-di-AMP)と宿主(2'3'-cGAMP)の両方のCDNを分解するため、細菌のCDNを宿主が認識するのを防ぐとともに、宿主の2'3'-cGAMPを分解することによる、2機能タンパク質として機能する。CdnPを破壊した結核菌の病原性は、マウスモデルにおいて野生株と比較して大幅に低下し、変異株を感染させたマウスは、野生株を感染させたマウスよりも6ヶ月長生きすることが示された。このことから、CdnPは、結核菌治療のための治療ターゲットとなり得ることが示唆された。中間体直鎖ジヌクレオチドpApA基質のアナログであるpA(S)Aは、CdnPの活性を阻害し、CDNシグナルを増強することが示されている。しかし、透過性が悪いため、これらのアナログは、結核菌による細胞感染性という点では中程度の効果を示した。CdnPは、宿主の2'3'-cGAMPを特異的に分解し、STINGシグナル伝達経路の活性化を阻害する酵素である宿主のENPP1と予測される相同性を共有している。ENPP1は、CdnPと同様に細菌のc-di-AMPを切断することができるが、その速度は遅く、ENPP1を除くと感染細胞での結核菌の増殖が阻害される。このように、CdnPおよびENPP1は共に、STING-IRF3-IFN経路の活性化に必要な細菌および宿主のCDNリガンドを破壊することにより、病原性微生物と細胞内微生物の生存を促進する重要な役割を担っていると考えられる。細菌のCdnPまたは宿主のENPP1、あるいはその両方を阻害することは、マイコバクテリア感染と戦うための魅力的な治療戦略となる可能性がある。
【0004】
従って、ENPP1、CdnPまたはその両方の改善された阻害剤、様々な疾患を治療するために当該阻害剤の使用対についての必要が存在する。本願発明は、前記阻害剤およびその関連する利点を提供する。
【0005】
発明の要約
簡単に言うと、本開示の実施形態は、ENPP1、CdnPまたはその両方の阻害剤としての活性を有する化合物(これには、化合物の医薬的に許容される塩、立体異性体および互変異性体を含む)を提供する。ある実施形態は、下記の構造(I):
【化1】
(式中、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
6、R
7a、R
7b、R
7b、R
7c、L
1、G
1、G
2およびG
3は、本明細書に定義された通り)
を有する化合物、あるいはその医薬的に許容される塩、互変異性体、立体異性体またはプロドラッグを提供する。別の実施形態により、1以上の構造(I)の化合物、ならびに医薬的に許容される担体または賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0006】
本発明の別の実施形態は、ENPP1、CdnPまたはその両方の阻害剤としての活性を有する化合物(これには、化合物の医薬的に許容される塩、立体異性体および互変異性体を含む)を提供する。ある実施形態は、下記の構造(II):
【化2】
(式中、R
25、R
26、R
27a、R
27b、R
27c、L
5、L
6およびG
6は、本明細書に定義された通り)を有する化合物、あるいはその医薬的に許容される塩、互変異性体、立体異性体またはプロドラッグを提供する。別の実施形態により、1以上の構造(II)の化合物、ならびに医薬的に許容される担体および賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0007】
一つの具体的な実施形態は、医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、ならびに下記の構造(III):
【化3】
(式中、R
11、R
12、R
13、R
14、R
15、R
16a、R
16b、R
16c、G
4、G
5、L
2およびAは、本明細書において定義されている)
を有する化合物、あるいはその立体異性体、互変異性体または医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することを特徴とする、マイコバクテリア感染症を治療するための方法を提供する。本開示のまた別の実施形態において、疾患または障害(例えば、抗酸菌感染または癌)のための治療方法が提供され、この方法は、有効量の構造(I)、(II)または(III)の化合物を哺乳類に投与することを特徴とする。本発明のこれらの態様およびその他の態様は、以下の詳細な説明を参照することにより明白に理解されよう。
【0008】
(発明の詳細な説明)
以下の説明では、本発明の様々な実施形態の完全な理解を提供するために、ある特定の詳細が記載されている。しかし、当業者は、本発明は、これらの詳細な説明が無くとも実施され得ることを理解するであろう。
【0009】
文脈が別の意味を要求しない限り、本明細書および特許請求の範囲全体を通して、用語「含む」およびその変形は、例えば、「含む」および「含んでいる」は、非限定的で包括的な意味、即ち「含むが、これに限定されない」として解釈されるべきものである。
【0010】
本明細書において、濃度範囲、割合範囲、%範囲または整数範囲は、別段の指示が無い限り、言及された範囲内の任意の整数および適切な場合にはその端数(整数の10分の1および100分の1など)の値を含むものと理解される。また、ポリマーサブユニット、サイズまたは厚さなどの物理的特徴に関する本明細書で言及される数値範囲は、別段の指示が無い限り、言及される範囲内の任意の整数を含むと理解される。本明細書で使用される場合、用語「約」および「おおよそ」は、別段の指示が無い限り、所定の範囲、値または構造の±20%、±10%、±5%または±1%を意味する。本明細書で使用される冠詞「a」および「an」は、列挙された成分の「1つ以上」を意味することを理解されたい。代替物の使用(例えば、「または」)は、代替物のいずれか一方、両方またはそれらの任意の組み合わせを意味すると理解されるべきである。
【0011】
本明細書を通じて「一実施形態」または「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造または特性が、本開示の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。従って、本明細書を通じて様々な場所で「ある実施形態において」または「一実施形態において」という表現が現れる場合、必ずしも全てが同じ実施形態を指しているわけではない。さらに、特定の特徴、構造または特性は、1以上の実施形態において、任意の適切な方法で組み合わせることができる。別に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書および特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈から明らかに別の意味が指示されない限り、複数の言及を含む。
【0012】
「アミノ」は、-NH2基を意味する。
「カルボキシ」または「カルボキシル」は、-CO2H基を意味する。
「シアノ」は、-CN基を意味する。
「ヒドロキシ」または「ヒドロキシル」は、-OH基を意味する。
「オキソ」は、=O基を意味する。
「ニトロ」は、-NO2基を意味する。
「チオール」または「チオ」は、-SH基を意味する。
「カルボニル」は、-C(=O)-基を意味する。
【0013】
「アルキル」とは、炭素原子および水素原子のみから構成される飽和、直鎖または分岐の炭化水素鎖の基を言い、例えば、1~12個の炭素原子(C1-C12アルキル)、1~8個の炭素原子(C1-C8アルキル)または1~6個の炭素原子(C1-C6アルキル)を持ち、分子の残りの部分に単結合で結合されており、例えば、以下の通り、メチル、エチル、n-プロピル、1-メチルエチル(イソプロピル)、n-ブチル、n-ペンチル、1,1-ジメチルエチル(t-ブチル)、3-メチルヘキシル、2-メチルヘキシル等である。本明細書において具体的な別段の記載がない限り、アルキル基は、所望により置換されていてもよい。
【0014】
「アルキレン」または「アルキレン鎖」は、分子の残りの部分を、炭素および水素のみから構成される置換基と結合する直鎖または分枝二価炭化水素鎖を指し、飽和であり、例えば、1~24個の炭素原子(C1-C24アルキレン)を有する、1~15個の炭素原子(C1-C15アルキレン)、1~12個の炭素原子(C1-C12アルキレン)、1~8個の炭素原子(C1-C8アルキレン)、1~6個の炭素原子(C1-C6アルキレン)、2~4個の炭素原子(C2-C4アルキレン)、1~2個の炭素原子(C1-C2アルキレン)を有しており、例えば、メチレン、エチレン、プロピレン、n-ブチレンなどである。アルキレン鎖は、単結合を介して分子の残りの部分と、単結合を介して官能基と結合している。アルキレン鎖の分子の残りの部分と官能基との結合点は、鎖内の1つの炭素または任意の2つの炭素を介することが可能である。本明細書において別段の記載がない限り、アルキレン鎖は、所望により置換されていてもよい。
【0015】
「アルコキシ」は、式-ORaの基を指し、式中のRaは、1~12個の炭素原子(C1-C12アルコキシ)、1~8個の炭素原子(C1-C8アルコキシ)または1~6個の炭素原子(C1-C6アルコキシ)またはこれらの範囲内の任意の値を含む上で定義したアルキル基をいう。本明細書において別段の記載がない限り、アルコキシ基は所望により置換されていてもよい。
【0016】
「アルキルカルボニル」は、式-RaRbの基を指し、式中のRaは上記で定義されるカルボニルであり、Rbは上記で定義されるアルキルである。本明細書において別段の記載がない限り、アルキルカルボニル基は、所望により置換されていてもよい。
【0017】
「アミニル」とは、式-NRaRb基を指し、式中のRaは、上記に定義されたアルキルであり、Rbは、水素であるか、または上記に定義されたアルキルである。本明細書において別段の記載がない限り、アミニル基は所望により置換されていてもよい。
【0018】
「アミニルアルキル」とは、式-RaNRbRc基を指し、式中のRaおよびRbは、各々独立して、上記に定義されたアルキルであり、RbはHであるか、または上記に定義されたアルキルである。明細書において具体的に別段の記載が無ければ、アミニルアルキル基は、所望により置換されていてもよい。
【0019】
「アミニルアルキレン」とは、式-NRaRb基を指し、式中のRaは、上記に定義されたアルキレンであり、Rbは、Hであるか、または上記に定義されたアルキルである。明細書において具体的に別段の記載が無ければ、アミニルアルキレン基は、所望により置換されていてもよい。
【0020】
「アミニルカルボニル」とは、式-RaNRbRc基を指し、式中のRaは、上記に定義されたカルボニルであり、Rbは、上記に定義されたアルキルであり、Rcは、Hであるか、または上記に定義されたアルキルである。明細書において具体的に別段の記載が無ければ、アミニルカルボニル基は、所望により置換されていてもよい。
【0021】
「アミニルカルボニルアルキル」とは、式-RaRbNRcRd基を指し、式中のRaは、上記に定義されたアルキルであり、Rbは、上記に定義されたカルボニルであり、Rcは、上記に定義されたアルキルであり、Rdは、Hであるか、または上記に定義されたアルキルである。明細書において具体的に別段の記載無ければ、アミニルカルボニルアルキル基は、所望により置換されていてもよい。
【0022】
「芳香族環」とは、同じ原子のセットを有するその他の結合配置に比べて高い安定性を示す共鳴結合の環を有する分子(即ち、基)の環状平面部分をいう。一般に、芳香族環は、共有結合した共平面原子のセットを含み、4の倍数ではない偶数(即ち、4n+2個のπ電子、ここでn=0、1、2、3など)のπ電子(例えば、二重結合と単結合を交互)を構成する。芳香族環としては、フェニル、ナフテニル、イミダゾリル、ピロリル、ピリジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリドニル、ピリダジニル、ピリミドニルなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。本明細書において別段の記載がない限り、「芳香族環」は、所望により置換されていてもよい全ての基を包含する。
【0023】
「アリール」は、6~18個の炭素環原子および少なくとも1個の芳香族環を含む炭素環系(即ち、各環原子が炭素である環系)基を指す。本開示の実施形態の目的上、アリール基は、単環式、二環式、三環式または四環式環系であり、縮合環系または架橋環系を含み得る。アリール基には、アセアントリレン、アセナフチレン、アセフェナントリレン、アントラセン、アズレン、ベンゼン、クリセン、フルオランセン、フルオレン、as-インダセン、s-インダセン、インダン、インデン、ナフタレン、フェナレン、フェナントレン、プレイアデン、ピレンおよびトリフェニレンから得られるアリール基が挙げられるが、これらに限定するものではない。本明細書において別段の記載がない限り、用語「アリール」または接頭辞「ar-」(例えば、「アラルキル」など)は、所望により置換されていてもよいアリール基を含むことを意味する。
【0024】
接尾語「-エン」の付加は、2価または多価基への置換基の改変を意味する。例えば、「アリーレン」という用語は、分子の一部が、1つの反応基または2つ以上の反応基に結合しているか、または最初の分子の一部が、第2の分子の一部に結合している上記に定義したような2価または多価のアリール基を指す。
【0025】
「アリールアルキル」または「アラルキル」は、式-RbRfの基を指し、式中のRbは上記で定義したアルキレン鎖であり、Rfは上記で定義したアリール基である。本明細書において別段の記載がない限り、アルキルアリール基は、所望により置換されていてもよい。
【0026】
「アリールオキシ」は、式-ORbの基を指し、式中のRbは、上記に定義されたアリール基である。アリールオキシ基のアリール部分は、所望により上記に定義された通りに置換されていてもよい。
【0027】
「シクロアルキル」は、安定な非芳香族単環式または多環式炭素環基を指し、縮合環系または架橋環系を含んでもよく、3~15個の炭素原子、好ましくは3~10個の炭素原子を有し、飽和または部分不飽和にて単結合により分子の残部と結合している。単環式基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチルが挙げられる。多環式基としては、例えば、アダマンチル、ノルボルニル、デカリニル、7,7ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタニル等が挙げられる。本明細書において別段の記載が無い限り、シクロアルキル基は所望により置換されていてもよい。
【0028】
「縮合」とは、本開示の化合物における既存の環構造と縮合される本明細書に記載の任意の環構造を指す。縮合環が、ヘテロシクリル環またはヘテロアリール環である場合、縮合ヘテロシクリル環または縮合ヘテロアリール環の一部となる既存の環構造上の任意の炭素原子は、窒素原子で置き換えられる。
【0029】
「ハロ」または「ハロゲン」とは、ブロモ(Br)、クロロ(Cl)、フルオロ(F)またはヨウ素(I)である。
【0030】
「ハロアルキル」とは、上記に定義した通りのアルキル基を指し、上記に定義した通りの1または1以上のハロ基により置換されており、例えば、トリフルオロメチル、ジフルオロメチル、トリクロロメチル、2,2,2-トリフルオロエチル、1,2-ジフルオロエチル、3-ブロモ-2-フルオロプロピル、1,2-ジブロモエチルなどが挙げられる。明細書において具体的に別段の記載が無ければ、ハロアルキル基は、所望により置換されていてもよい。
【0031】
「ヘテロシクリル」または「複素環」は、1~12個の環炭素原子(例えば、2~12個)と、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1~6個の環ヘテロ原子を有する安定な3~18員非芳香族環基を指す。本明細書において別段の記載がない限り、ヘテロシクリル基は、単環式、二環式、三環式または四環式環系であり、縮合環系、スピロ環系(「スピロヘテロシクリル」)および/または架橋環系を含み得る;ならびに、ヘテロシクリル基中の窒素、炭素または硫黄原子は、所望により酸化されていてもよく;窒素原子は、所望により四級化されており;前記ヘテロシクリル基は、部分的または完全に飽和されている。前記ヘテロシクリル基の例示には、ジオキソラニル、チエニル[1,3]ジチアニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、オキサゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、キヌクリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロフリル、トリチアニル、テトラヒドロピラニル、チオモルホリニル、チアモルホリニル、1-オキソ-チオモルホリニル、1,2,3,4-テトラヒドロキノリニルおよび1,1-ジオキソ-チオモルホリニルが挙げられるが、これらに限定するものではない。明細書において具体的に別段の記載が無ければ、ヘテロシクリル基は、所望により置換されていてもよい。
【0032】
「ヒドロキシアルキル」とは、少なくとも1個のヒドロキシル置換基を含むアルキル基のことをいう。-OH置換基は、一級、二級または三級炭素上に存在することができる。本明細書において別段の記載がない限り、ヒドロキシアルキル基は、所望により置換されてもよい。
【0033】
「ヘテロアリール」は、1~13個の環炭素原子、窒素、酸素および硫黄からなる群から選択される1~6個の環ヘテロ原子ならびに少なくとも1個の芳香族環を含む5~18員(例えば、5~6員)環系の基をいう。ヘテロアリール基は、単環式、二環式、三環式または四環式の環系であってもよく、これには縮合環系または架橋環系が含まれてもよく;ヘテロアリール基中の窒素、炭素または硫黄原子は、所望により酸化されてもよく;窒素原子は、所望により四級化されていてもよい。例示としては、アゼピニル、アクリジニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンズインドリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾ[b][1,4]ジオキセピニル、1,4-ベンゾジオキサニル、ベンゾナフトフラニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾジオキシニル、ベンゾピラニル、ベンゾピラノニル、ベンゾフラニル、ベンゾフラノニル、ベンゾチエニル(ベンゾチオフェニル)、ベンゾトリアゾリル、ベンゾ[4,6]イミダゾ[1,2-a]ピリジニル、カルバゾリル、シンノリニル、ジベンゾフラニル、ジベンゾチオフェニル、フラニル、イソチアゾリル、イミダゾリル、インダゾリル、インドリル、インダゾリル、イソインドリル、インドリニル、イソインドリニル、イソキノリル、インドリジニル、イソオキサゾリル、ナフチリジニル、オキサジアゾリル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリル、1-オキシドピリジニル、1-オキシドピリミジニル、1-オキシドピラジニル、1-オキシドピリダジニル、1-フェニル-1H-ピロリル、フェナジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、フタラジニル、プテリジニル、プリニル、ピロリル、ピラゾリル、ピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリニル、チアゾリル、チアジアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、トリアジニルおよびチオフェニル(即ち、チエニル)が挙げられるが、これらに限定するものではない。明細書において具体的に別段の記載が無ければ、ヘテロアリール基は、所望により置換されていてもよい。
【0034】
「ハロアルコキシ」は、式-ORaの基を意味し、式中のRaは、1~12個の炭素原子を含む上記に定義した通りのハロアルキル基である。明細書において具体的に別段の記載が無ければ、ハロアルコキシ基は、所望により置換されてもよい。
【0035】
「ヘテロシクリルアルキル」は、式-RbReの基を指し、式中のRbは、上記に定義された通りのアルキレン鎖であり、Reは、上記に定義された通りのヘテロシクリル基であり、そして前記ヘテロシクリルが窒素含有ヘテロシクリルであるならば、このヘテロシクリルは、所望により窒素原子でアルキル基に結合されてもよい。明細書において具体的に別段の記載が無ければ、ヘテロシクリルアルキル基は、所望により置換されてもよい。
【0036】
「ヘテロアリールアルキル」は、式-RbRfの基を指し、式中のRbは上記に定義された通りのアルキレン鎖であり、Rfは上記に定義された通りのヘテロアリール基である。本明細書において別段の記載がない限り、ヘテロアリールアルキル基は、所望により置換されていてもよい。本明細書で使用される用語「置換された」は、少なくとも1つの水素原子(例えば、1、2、3または全ての水素原子)が、水素以外の置換基との結合により置き換えられている上記の基のいずれかを意味する。水素以外の置換基の例示には次のものを挙げられるが、これらに限定するものではない:アミノ、カルボキシル、シアノ、ヒドロキシル、ハロ、ニトロ、オキソ、チオール、チオオキソ、アルキル、アルケニル、アルキルカルボニル、アルコキシ、アリール、シアノアルキル、シクロアルキル、ハロアルキル、ヘテロシクリル、ヘテロシクリルアルキル、ヘテロアリール、ヘテロアリールアルキルおよび/またはヒドロキシルアルキル基であり、これらの各々は、所望により1以上の上記置換基で置換されていてもよい。
【0037】
ある実施形態において、選択基は、アミノ、カルボキシル、シアノ、ハロ、ヒドロキシル、C1-6アルキル、C1-6アルキルアミノ、C1-6ハロアルキル、C1-6アルキルカルボニル、C1-6アルコキシ、C1-6ハロアルコキシ、C1-6アルコキシカルボニル、C6-C10アリールおよびC6-C10ヘテロアリールからなる群から選択される。
【0038】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7a、R7b、R7b、R7c、L1、G1、G2およびG3についての各選択基は、別段の記載が無い限り、置換により全ての原子価が満たされる場合には、上記のように、所望により置換されてもよいことが理解される。具体的には、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7a、R7b、R7b、R7c、L1、G1、G2およびG3についての各選択基は、別段の記載がない限り、そのような置換が安定な分子となる場合には(例えば、Hおよびハロなどの基は、所望により置換されない)、所望により置換されていてもよい。
【0039】
本明細書に使用される通り、用語「ENPP1」は、エクトヌクレオチドピロホスファターゼ/ホスホジエステラーゼ1を指す。
【0040】
本明細書に使用される通り、用語「CdnP」は、環状ジヌクレオチドホスホジエステラーゼを指す。
【0041】
「有効量」または「治療上有効な量」という用語は、以下に定義されるような疾患の治療を含むがこれに限定されない、目的とする適用を効果的に行うのに十分な本明細書に記載の化合物の量を指す。治療上有効な量は、目的とする治療用途(インビボ)または治療される対象者および病状、例えば、対象者の体重および年齢、病状の重症度、投与方法などに応じて変更することができ、これは当業者により容易に決定することが出来る。この用語はまた、標的細胞における特定の応答、例えば、血小板の接着および/または細胞移動の低下を誘導する用量に適用される。特定の用量は、選択された特定の化合物、従うべき投与レジメン、他の化合物と組み合わせて投与されるかどうか、投与のタイミング、投与される組織および化合物が送達される物理的送達システムによって変化する。
【0042】
本明細書において使用される通り、「治療」または「治療すること」とは、疾患、障害または医学的状態に関して有益または望ましい結果を得るためのアプローチをいい、例えば、治療的利益および/または予防的利益を含むが、これらに限定するものではない。「治療的利益」とは、治療される基礎疾患の根絶または緩和を意味する。また、治療上の利益とは、対象者が既に基礎疾患に罹患している可能性があるにもかかわらず、対象者において改善がみられるような、基礎疾患に関連する生理学的症状の1つ以上の根絶または緩和が達成されることである。特定の実施形態においては、予防的利益のために、組成物は、特定の疾患を発症するリスクのある対象者、またはこの疾患の診断がなされていない可能性があるにもかかわらず、疾患の1つ以上の生理的症状を報告する対象者に投与される。
【0043】
本明細書で使用されるような「治療効果」は、上記のような治療上の利益および/または予防上の利益を包含する。予防的効果には、疾患または状態の出現の遅延または排除、疾患または状態の症状の発症の遅延または排除、疾患または状態の進行の遅延、停止または回復、あるいはそれらの任意の組合せが含まれる。
【0044】
本明細書で使用される用語「共投与」、「併用投与」およびそれらの文法的等価物は、ヒトを含む動物に、2種以上の薬剤を投与することを包含し、両方の薬剤および/またはそれらの代謝物が同時に対象者中に存在するようにする投与である。共投与には、別々の組成物の同時投与、別々の組成物を用いる異なる時間での投与、または両方の薬剤が存在する組成物の投与が含まれる。
【0045】
「医薬的に許容される塩」には、酸付加塩および塩基付加塩の両方が含まれる。
【0046】
「医薬的に許容される酸付加塩」とは、遊離塩基の生物学的効果および特性を保持し、生物学的またはその他の点で望ましくない塩ではなく、無機酸(例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸など)ならびに以下のような有機酸を用いて形成されるが、これらに限定されない:酢酸、2,2-ジクロロ酢酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4-アセトアミド安息香酸、カンファー酸、カンフル-10-スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、炭酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン-1,2-ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2-ヒドロキシエタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、グルコン酸、グルクロン酸、グルタミン酸、グルタル酸、2-オキソグルタル酸、グリセロリン酸、グリコール酸、馬尿酸、イソ酪酸、乳酸、ラクトビオン酸、ラウリン酸、マレイン酸、マロン酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸、ナフタレン-2-スルホン酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、ニコチン酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、プロピオン酸、ピログルタミン酸、ピルビン酸、サリチル酸、4-アミノサリチル酸、セバシン酸、ステアリン酸、コハク酸、酒石酸、チオシアン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ウンデシル酸など。
【0047】
「医薬的に許容される塩基付加塩」とは、遊離酸の生物学的効果および特性を保持し、生物学的またはその他の点で好ましくない塩ではないものを指す。これらの塩は、遊離の酸に無機塩基または有機塩基を付加することで製造される。無機塩基から得られる塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩、アンモニウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、マンガン塩、アルミニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。好ましい無機塩としては、アンモニウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩が挙げられる。有機塩基から得られる塩としては、第1級アミン、第2級アミン、第3級アミン、天然由来の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、塩基性イオン交換樹脂の塩、例えば、アンモニア、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、ディアノール、2ジメチルアミノエタノール、2-ジエチルアミノエタノール、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、ベンタミン、ベンザチン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、トリエタノールアミン、トロメタミン、プリン体、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に好ましい有機塩基は、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トリメチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、コリンおよびカフェインである。
【0048】
「対象者」とは、哺乳類(例えば、ヒト)のような動物を指す。本明細書に記載される方法は、ヒトの治療学および獣医学的応用の両方において有用であり得る。いくつかの実施形態においては、対象者は哺乳類であり、いくつかの実施形態においては、対象者はヒトである。この用語は、特定の年齢または性別を表すものではない。従って、成人および新生児の対象者ならびに男性または女性にかかわらず胎児を対象とすることが意図される。「哺乳類」は、ヒトと、実験動物または家庭用ペットなどの家畜(例えば、ネコ、イヌ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ウマ、ウサギ)および野生動物などの家畜以外の両方を含む。
【0049】
患者とは、疾患または障害に罹患している対象者を指す。「患者」という用語は、ヒト対象および獣医学的対象を含む。開示された方法のいくつかの態様において、対象者は、投与工程の前に、ENPP1機能不全に関連する制御不能な細胞増殖の障害の治療が必要であると診断されている。開示された方法のいくつかの態様において、前記対象者は、投与工程の前に、ENPP1の阻害が必要であると診断されている。
【0050】
開示された化合物のプロドラッグは、様々な実施形態に含まれる。「プロドラッグ」は、生理的条件下または加溶媒分解によって、本明細書に記載の生物学的に活性な化合物(例えば、構造(I)の化合物)に変換され得る化合物を示すことを意味している。従って、「プロドラッグ」という用語は、医薬的に許容される生物学的に活性な化合物の前駆体を指す。いくつかの態様において、プロドラッグは、対象者に投与される時には不活性であるが、例えば、加水分解により、インビボで活性な化合物へと変換される。プロドラッグ化合物は、哺乳類における溶解性、組織適合性または遅延放出の利点を提供する場合が多い:例えば、Bundgard, H., Design of Prodrugs (1985), pp.7-9, 21-24 (Elsevier, Amsterdam)を参照されたい。プロドラッグについての議論は、Higuchi, T., et al., "Pro-drugs as Novel Delivery Systems," A.C.S. Symposium Series, Vol.14, and in Bioreversible Carriers in Drug Design, ed. Edward B. Roche, American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987に記載されており、この両文献は出典明示により本明細書に完全に組み込まれる。「プロドラッグ」という用語は、所望により共有結合した担体を含み、そのようなプロドラッグが哺乳類の対象者に投与された場合に、インビボで活性化合物を放出する。本明細書に記載する活性化合物のプロドラッグは、通常、活性化合物中に存在する官能基を、通常の操作またはインビボのいずれかで親の活性化合物に切断されるように修飾することにより製造される。プロドラッグには、活性化合物のプロドラッグを哺乳動物の対象者に投与した場合に、ヒドロキシ基、アミノ基またはメルカプト基が開裂して、各々遊離ヒドロキシ基、遊離アミノ基または遊離メルカプト基を形成するように任意の基に結合している化合物が挙げられる。プロドラッグの例としては、ヒドロキシ官能基の酢酸塩、ギ酸塩および安息香酸塩誘導体、または活性化合物のアミン官能基の酢酸アミド、ホルムアミドおよびベンズアミド誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0051】
用語「インビボ」とは、対象者の体内で起こる事象を意味する。
【0052】
本明細書に開示された実施形態はまた、異なる原子質量または質量数を有する原子によって置換された1以上の原子を有することによって同位体標識される構造(I)、(II)または(III)の全ての医薬的に許容される化合物(即ち、構造(I)、(II)または(III)の化合物の「同位体形態」)を包含することを意図する。開示された化合物に組み込むことができる同位体の例としては、水素、炭素、窒素、酸素、リン、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体、例えば、2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、31P、32P、35S、18F、36Cl、123Iおよび125Iの各々同位体が挙げられる。これらの放射性標識化合物は、例えば、作用部位もしくは作用様式、または医薬的に重要な作用部位への結合親和性を特徴付けることにより、化合物の有効性を決定または測定するのに役立つ可能性がある。構造(I)、(II)または(III)の化合物の特定の同位体標識化合物、例えば、放射性同位体を組み込んだ化合物は、薬剤および/または基質の組織分布研究に有用である。放射性同位体であるトリチウム(即ち、3H)および炭素14(即ち、14C)は、組み込み易さ、および検出手段の用意の観点から、この目的に特に有用である。
【0053】
重水素、即ち2Hのような重い同位体への置換は、より高い代謝安定性、例えば、インビボ半減期の増加または投与量の低下から生じる特定の治療上の利点をもたらす可能性があるため、ある状況下において好ましいものである。
【0054】
陽電子放出同位体、例えば、11C、18F、15Oおよび13Nによる置換は、基質受容体占有率を調べるための陽電子放出トポグラフィー(PET)研究において有用であり得る。構造(I)、(II)または(III)の化合物の同位体標識化合物は、一般に、当業者には公知の従来技術により製造できるか、または以前に用いた非標識試薬の代わりに適切な同位体標識試薬を用いて、以下に示す実施例に記載した方法に類似する方法により製造することができる。
【0055】
特定の実施形態はまた、開示された化合物のインビボでの代謝生成物を包含することを意味する。前記生成物は、例えば、主に酵素プロセスに起因する投与された化合物の酸化、還元、加水分解、アミド化、エステル化等から生じ得る。従って、実施形態は、本開示の化合物を、その代謝生成物をもたらすのに十分な期間、哺乳動物に投与することを含むプロセスによって生成される化合物を含む。そのような生成物は、通常、ラット、マウス、モルモット、サルまたはヒトなどの動物において検出可能な用量で本発明の放射性標識化合物を投与して、代謝が起こるのに十分な時間を与えて、尿、血液または他の生体試料からその変換生成物を単離することによって特定される。
【0056】
「安定な化合物」および「安定な構造」とは、反応混合物から有用な純度まで単離して、有効な治療剤として製剤化するのに十分な頑強性を有する化合物を意味する。
【0057】
多くの場合、結晶化により、本開示の化合物の溶媒和物が生成される。本明細書で使用される場合、用語「溶媒和物」は、本開示の化合物の1以上の分子と、1以上の分子の溶媒とを含む凝集体を指す。いくつかの実施形態において、溶媒は水であり、この場合、溶媒和物は水和物である。あるいは、他の実施形態においては、溶媒は有機溶媒である。したがって、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、水和物(例えば、一水和物、二水和物、半水和物、セスキ水和物、三水和物および四水和物)ならびに対応する溶媒和物として存在することができる。いくつかの態様において、本開示の化合物は、真の溶媒和物であるが、他の態様において、本開示の化合物は、単に不定形の水を保持するか、または水と何らかの不定形溶媒との混合物である。
【0058】
「任意」または「所望により」とは、その後続して記載される事象または状況が、発生しても、発生しなくてもよく、その記載には、当該事象または状況が発生する例と発生しない例とが含まれることを意味する。例えば、「所望により置換されたアリール」は、アリール基が置換されていてもいなくてもよく、置換されたアリール基と置換されていないアリール基の両方を含むことを意味する。
【0059】
「医薬組成物」とは、本開示の化合物と、哺乳類(例えば、ヒト)に生物学的に活性な化合物を送達するために当該技術分野で一般に認められている媒体との製剤を指す。そのような媒体には、そのための全ての医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤が含まれる。
【0060】
「医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤」には、ヒトまたは家畜に使用することが認められている米国食品医薬品局によって承認されたアジュバント、担体、賦形剤、滑剤、甘味料、希釈剤、保存料、色素/着色料、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張剤、溶剤または乳化剤が挙げられるが、これらに制限するものではない。
【0061】
本開示の化合物(即ち、構造(I)、(II)または(III)の化合物およびその実施形態)、またはそれらの医薬的に許容される塩は、1以上の幾何学的非対称性の中心を含み得、したがって、絶対立体化学の観点から、アミノ酸について(R)または(S)として、あるいは(D)または(L)として規定されるエナンチオマー、ジアステレオマーおよび他の立体異性体形態を生じさせる場合がある。従って、実施形態は、前記の全ての可能な異性体、ならびにそれらのラセミ体および光学的に純粋な形態を含む。光学活性な(+)および(-)、(R)および(S)、または(D)および(L)異性体は、キラルシントンまたはキラル試薬を使用して製造され得るか、または従来の技術、例えば、クロマトグラフィーおよび分別結晶化を使用して分割され得る。個々のエナンチオマーを製造/単離するための従来技術には、適切な光学的に純粋な前駆体からのキラル合成、または例えば、キラル高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いたラセミ体(または、塩もしくは誘導体のラセミ体)の分離がある。本明細書に記載の化合物が、オレフィン性二重結合または幾何学的非対称性の他の中心を含む場合、および別段の指定がない限り、化合物は、EおよびZ幾何異性体の両方を含むことが意図される。同様に、全ての互変異性体もまた含まれる。
【0062】
本開示は、本開示の化合物のあらゆる態様のロタマーおよびコンフォメーション的に拘束された状態を含む。
【0063】
「立体異性体」とは、同じ原子が同じ結合で結合しているが、異なる三次元構造を有する化合物を指し、互いに置き換えることはできない。本開示は、様々な立体異性体およびその混合物を目的しており、分子が互いに重なり合わない鏡像である2つの立体異性体を意味する「エナンチオマー」を含む。特段の記載がない限り、立体異性体には、ラセミ体、エナンチオマーおよびジアステレオマーが含まれる。
【0064】
「互変異性体」は、分子の1つの原子から同じ分子の別の原子へのプロトン移動を言及する。したがって、実施形態は、開示された化合物の互変異性体を含む。
【0065】
本明細書で使用される化合物の命名プロトコルおよび構造式は、ACD/Name Version 9.07ソフトウェアプログラムおよび/またはChemDraw Ultra Version 11.0.1 ソフトウェア命名プログラム(CambridgeSoft)を使用して、I.U.P.A.C命名システムの改変形である。本明細書で採用する複雑な化合物名では、置換基は、通常、その置換基が結合する基の前に記載される。例えば、シクロプロピルエチルは、エチル骨格にシクロプロピル基を有するものである。後述する場合を除き、本明細書の化学構造式では、一部の炭素原子上の結合を除き、全ての結合が特定されており、これらの結合は、原子価を満たすのに十分な水素原子と結合していると考えられる。
【0066】
化合物
上記に詳述した通り、本発明は、ENPP1阻害剤、CdnP阻害剤としての活性、または両方の活性を有する化合物を提供する。
【0067】
ある実施形態において、化合物は、制御不能な細胞増殖の障害の治療において有用である。さらなる実施形態においては、制御不能な細胞増殖の障害は、癌または腫瘍である。さらに別の実施形態においては、制御不能な細胞増殖の障害は、本明細書でさらに説明するように、ENPP1機能障害と関連している。
【0068】
別の実施形態において、化合物は、細菌またはウイルス起源の疾患(例えば、CdnPにより媒介される疾患)の治療に有用である。従って、本開示は、細菌またはウイルスに起因する疾患を治療する方法であって、治療有効量の本開示の化合物、またはそれから得られる組成物を対象者に投与することを特徴とする方法を提供する。
【0069】
従って、一態様は、下記の構造(I):
【化4】
[式中、
G
1は、NまたはCHであり;
G
2は、NまたはCR
9であり;
G
3は、NまたはCR
10であり;
L
1は、直接結合、C
1-C
6アルキレンまたはC
1-C
6アミニルアルキレンであり、但し、G
1がCHである場合に限り、L
1は直接結合である;
R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、R
9およびR
10は、各々独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシアルキル、アミニルカルボニルアルキル、アミニルアルキル、アミニルカルボニル、アミニル、アルキルカルボニル、-C(=O)Oアルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり;
R
6は、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシまたはヒドロキシアルキルであり;
R
7aは、OまたはSであり;
R
7bおよびR
7cは、各々独立して、-O
-、-OH、-S
-、-SHまたは-NR
8aR
8bであり;ならびに
R
8aおよびR
8bは、各々独立して、水素またはアルキルである]
を有する化合物、またはその立体異性体、互変異生体または医薬的に許容される塩が提供される。
【0070】
ある実施形態において、G1は、Nである。特定の実施形態において、G2は、CHである。いくつかのより具体的な実施形態において、G2は、CR9である。より具体的な特定の実施形態において、R9は、水素またはシアノである。ある実施形態において、G2は、Nである。特定の実施形態において、G3は、CR10である。いくつかの具体的な実施形態において、G3は、CHである。ある特定の実施形態において、G3は、Nである。
【0071】
特定の実施形態において、R1、R2、R3、R4およびR5は、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミニルカルボニル、アミニル、-C(=O)Oアルキルまたは5~6員ヘテロアリールである。より具体的な実施形態において、R1は、水素またはアルコキシである。ある実施形態において、R1は、水素またはメトキシである。
【0072】
ある実施形態において、R2は、水素またはアルコキシである。特定の実施形態において、R2は、水素またはメトキシである。
【0073】
いくつかの具体的な実施形態において、R3は、水素またはアルコキシである。ある特定の実施形態において、R3は、水素またはメトキシである。
【0074】
いくつかのより具体的な実施形態において、R4は、水素またはアルコキシである。より具体的な特定の実施形態において、R4は、水素またはメトキシである。
【0075】
ある実施形態において、R5は、水素である。特定の実施形態において、R6は、水素である。
【0076】
特定の実施形態において、R7aは、Oである。いくつかのより具体的な実施形態において、R7bは、-O-または-OHである。特定の実施形態において、R7cは、-O-または-OHである。
【0077】
いくつかの具体的な実施形態において、L1は、所望によりオキソで置換されていてもよいC1-C6アルキレンである。ある特定の実施形態において、L1は、非置換のメチレンである。いくつかのより具体的な実施形態において、L1は、非置換のエチレンである。ある実施形態において、L1は、非置換のプロピレンである。
【0078】
構造(I)の化合物のいくつかのより具体的な実施形態において、化合物は、以下の表1Aから選択される。前記実施形態のいずれか一つにおいて、化合物の立体異性体、互変異生体、プロドラッグまたは医薬的に許容される塩もまた包含される。
【0079】
【0080】
いくつかの実施形態において、化合物(例えば、表1Aの化合物)は、塩基付加塩、例えば、二ナトリウム塩として提供される。
【0081】
別の実施形態は、下記の構造(II):
【化5】
[式中、
G
6は、NまたはCR
28であり;
L
5は、C
1-C
6アルキレン、-NR
29-、-N(R
29)CH
2CH
2O-、-O-、ヘテロアリーレンまたは-S(O)
t-であり、ここでtは、0、1または2であり;
L
6は、C
1-C
6アルキレンまたはC
1-C
6アルケニレンであり;
R
25、R
26およびR
28は、各々独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシアルキル、アミニルカルボニルアルキル、アミニルアルキル、アミニルカルボニル、アミニル、アルキルカルボニル、-C(=O)Oアルキル、ヘテロシクリルまたはヘテロアリールであり;
R
27aは、OまたはSであり;
R
27bおよびR
27cは、各々独立して、-O
-、-OH、-S
-、-SHまたは-NR
30aR
30bであり;
R
29は、水素またはC
1-C
6アルキルであり;および
R
30aおよびR
30bは、各々独立して、水素またはアルキルである]
を有する化合物、あるいはその立体異性体、互変異生体または医薬的に許容される塩を提供する。
【0082】
ある実施形態において、G6は、Nである。特定の実施形態において、G6は、CHである。
【0083】
より具体的なある実施形態において、R25およびR26は、各々独立して、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アミニルカルボニル、アミニル、-C(=O)Oアルキルまたは5~6員ヘテロアリールである。特定のより具体的な実施形態において、R25は、水素またはアルコキシである。いくつかのより具体的な実施形態において、R25は、水素またはメトキシである。
【0084】
ある実施形態において、R26は、水素またはアルコキシである。特定の実施形態において、R26は、水素またはメトキシである。
【0085】
いくつかの具体的な実施形態において、R27aは、Oである。より具体的な実施形態において、R27bは、-O-または-OHである。ある実施形態において、R27cは、-O-または-OHである。
【0086】
特定の実施形態において、L5は、分枝鎖C1-C6アルキレンである。より具体的な実施形態において、L5は、4~10員ヘテロアリーレンである。特定の具体的な実施形態において、L5は、所望により置換されていてもよいピリジニレンである。その他の実施形態において、L5は、-O-である。さらに別の実施形態において、L5は、-NH-である。特定のその他の実施形態において、L5は、-N(CH3)-である。その他のある特定の実施形態において、L5は、-S-である。その他の特定の実施形態において、L5は、-N(R29)CH2CH2O-である。特定の実施形態において、L5は、-N(H)CH2CH2O-である。
【0087】
ある実施形態において、L6は、C1-C6アルキレンである。いくつかのより具体的な実施形態において、L6は、非置換である。
【0088】
構造(II)の化合物のいくつかのより具体的な実施形態において、化合物は、以下の表1Bから選択される。前記実施形態のいずれか1つにおいて、化合物の立体異性体、互変異生体、プロドラッグまたは医薬的に許容される塩もまた含まれる。
【0089】
表1B:構造(II)の代表的な化合物
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【0090】
ある実施形態において、化合物(例えば、表1Bの化合物)が、塩基付加塩として、例えば、二ナトリウム塩として提供される。
【0091】
医薬組成物
その他の実施形態は、医薬組成物に関する。ある実施形態において、医薬組成物は、構造(I)、(II)または(III)の前記化合物(または、その医薬的に許容される塩)のいずれか1つ(または複数)、および医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む。いくつかの実施形態において、医薬組成物は、経口投与のために製剤化される。別の実施形態において、医薬組成物は、注射のために製剤化される。さらに多くの実施形態において、医薬組成物は、本明細書に開示されるような化合物と、追加の治療薬を含む。前記治療剤の非限定的な例は、本明細書において以下に説明される。
【0092】
適切な投与経路には、経口、静脈内、経直腸、エアロゾル、非経口、経眼、経肺、経粘膜、経皮、経膣、経耳、経鼻および局所投与が含まれるが、これらに限定されるものではない。さらに、例示に過ぎないが、非経口送達には、筋肉内注射、皮下注射、静脈内注射、髄内注射のほか、髄腔内注射、直接静脈内注射、腹腔内注射、リンパ内注射および鼻腔内注射がある。
【0093】
特定の実施形態において、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、全身的ではなく局所的に、例えば、臓器に直接化合物を注射することにより投与され、これらはデポー製剤または持続放出製剤で投与されることが多い。具体的な実施形態においては、長期作用型製剤は、インプラント(例えば、皮下または筋肉内)によるか、または筋肉内注射によって投与される。さらに、その他の実施形態においては、薬剤は、標的化薬物送達システム、例えば、器官特異的抗体でコーティングされたリポソームで送達される。このような実施形態においては、リポソームは、臓器に対して標的化され、臓器により選択的に取り込まれる。さらにその他の実施形態においては、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、即時放出性製剤の形態で、徐放性製剤の形態で、または中間放出製剤の形態で提供される。さらに他の実施形態において、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、局所的に投与される。
【0094】
本開示の化合物は、広い範囲の投与量にわたり有効である。例えば、成人ヒトの治療において、0.01~1000mg、0.5~100mg、1~50mg/日および5~40mg/日の用量は、いくつかの実施形態において使用される用量の例示である。例示的な投与量は、1日あたり10~30mgである。正確な投与量は、投与経路、化合物が投与される形態、治療される対象者、治療される対象者の体重および主治医の判断や経験に依って変化する。
【0095】
ある実施形態において、本開示の化合物は、単回用量で投与される。通常、前記投与は、薬剤を迅速に導入するために、静脈内注射などの注射により投与される。しかし、適切な場合には、その他の経路が使用される。本開示の化合物の単回用量もまた、急性症状を治療するために使用され得る。
【0096】
いくつかの実施形態においては、本開示の化合物は、複数の用量で投与される。いくつかの実施形態においては、投薬は、1日あたり約1回、2回、3回、4回、5回、6回または6回以上である。その他の実施形態においては、投薬は、約1ヶ月に1回、2週間に1回、1週間に1回、または1日おきに1回である。別の実施形態においては、本開示の化合物および別の薬剤は、1日あたり約1回~1日あたり約6回一緒に投与される。別の実施形態においては、本開示の化合物および薬剤の投与は、約7日間未満継続される。さらに別の実施形態においては、投与は、約6、10、14、28日、2ヶ月、6ヶ月または1年以上継続される。場合により、連続投与を行い、必要な限り維持される。
【0097】
本開示の化合物の投与は、必要な限り継続することができる。いくつかの実施形態においては、本開示の化合物は、1、2、3、4、5、6、7、14または28日を超える期間投与される。いくつかの実施形態においては、本開示の化合物は、28、14、7、6、5、4、3、2または1日未満に投与される。いくつかの実施形態においては、本開示の化合物は、継続的に、例えば、慢性効果の治療のために長期的に投与される。
【0098】
いくつかの実施形態において、本開示の化合物は、複数の投与量にて投与される。化合物の薬物動態が対象者間で変動するために、投与レジメンの個別化が、最適治療のために必要であることは当技術分野で知られている。本開示の化合物についての投与量は、本願開示に照らして、日常的な実験によって見出され得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、医薬組成物に製剤化される。特定の実施形態においては、医薬組成物は、活性化合物を医薬的に使用できる製剤に加工することを容易にする賦形剤および補助剤を含む1以上の生理学的に許容できる担体を用いて、従来の方法で製剤化される。適切な剤形は、選択された投与経路に依って変更する。任意の医薬的に許容される技術、担体および賦形剤は、本明細書に記載の医薬組成物を製剤化するために適切な場合に使用される:Remington:The Science and Practice of Pharmacy, Nineteenth Ed (Easton, Pa.: Mack Publishing Company, 1995); Hoover, John E., Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Pennsylvania 1975; Liberman, H.A. and Lachman, L., Eds., Pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y., 1980; および Pharmaceutical Dosage Forms and Drug Delivery System, Sevenh Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 1999)。
【0100】
本明細書において提供されるのは、構造(I)、(II)または(III)の化合物、および医薬的に許容される希釈剤(複数可)、賦形剤(複数可)または担体(複数可)を含む医薬組成物である。特定の実施形態において、記載される化合物は、併用療法の場合、構造(I)、(II)または(III)の化合物が他の有効成分と混合された医薬組成物として投与される。本明細書に包含されるのは、以下の併用療法の項および本明細書全体にわたって規定される有効成分の全ての組み合わせである。特定の実施形態においては、医薬組成物は、構造(I)、(II)または(III)の1以上の化合物を含む。
【0101】
本明細書で使用される医薬組成物は、構造(I)、(II)または(III)の化合物とその他の化学成分、例えば、担体、安定剤、希釈剤、分散剤、懸濁剤、増粘剤および/または賦形剤の混合物を意味する。特定の実施形態において、医薬組成物は、生物への化合物の投与を容易にする。いくつかの実施形態においては、本明細書で提供される治療方法または使用方法を実施することにより、治療有効量の本明細書で提供される構造(I)、(II)または(III)の化合物が、医薬組成物にて治療されるべき疾患、障害または病状を有する哺乳動物に投与される。特定の実施形態においては、哺乳類は、ヒトである。特定の実施形態においては、治療上有効な量は、疾患の重症度、対象者の年齢および相対的な健康状態、使用される化合物の効力およびその他の要因に応じて変化する。構造(I)、(II)または(III)の化合物は、単独で使用されるか、または1つ以上の治療剤と組み合わせて、混合物の成分として使用される。
【0102】
ある実施形態において、1以上の構造(I)、(II)または(III)の化合物は、水溶液に製剤される。特定の実施形態において、水溶液は、単なる例示に過ぎないが、生理学的適合緩衝液、例えば、ハンク液、リンゲル液または生理的食塩水緩衝液から選択される。他の実施形態においては、構造(I)、(II)または(III)の1以上の化合物は、経粘膜投与のために製剤化される。特定の実施形態において、経粘膜製剤は、浸透させるバリアに適切な浸透剤を含む。構造(I)、(II)または(III)の化合物が、その他の非経口注射のために製剤化されるというさらに別の実施形態においては、適切な製剤は、水性または非水性の溶液を含む。具体的な実施形態においては、そのような溶液は、生理学的に適合する緩衝液および/または賦形剤を含む。
【0103】
別の実施形態において、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、経口投与のために製剤化される。構造(I)、(II)または(III)の化合物は、活性化合物を、例えば、医薬的に許容される担体または賦形剤と組み合わせることによって製剤化される。様々な実施形態において、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、単なる例示に過ぎないが、錠剤、粉末、丸薬、糖衣錠、カプセル、液体、ゲル、シロップ、エリキシル、スラリー、懸濁液などを含む経口投与形態に製剤化される。
【0104】
特定の実施形態において、経口使用のための医薬製剤は、1以上の固体賦形剤を構造(I)、(II)または(III)の化合物の1つまたは複数と混合して得られ、適宜、得られた混合物を粉砕し、所望により適切な補助剤を加えた後に顆粒混合物を加工して、錠剤または糖衣錠を得ることにより得られる。適切な賦形剤には、特に、糖など(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトール)の充填剤;セルロース調製物:例えば、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、ガムトラガカント、メチルセルロース、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース;またはその他:ポリビニルピロリドン(PVPまたはポビドン)またはリン酸カルシウムなどである。特定の実施形態においては、崩壊剤は、所望により添加される。崩壊剤には、単なる例示に過ぎないが、架橋したクロスカルメロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、寒天またはアルギン酸またはアルギン酸ナトリウムのようなその塩が挙げられる。
【0105】
ある実施形態においては、糖衣錠および錠剤などの剤形は、1以上の適切なコーティングを備える。特定の実施形態においては、濃縮された糖液は、この剤形をコーティングするために使用される。糖液は、所望により、追加の成分、例えば、単なる例示に過ぎないが、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カーボポールゲル、ポリエチレングリコールおよび/または二酸化チタン、ラッカー液および適切な有機溶媒または溶媒混合物を含む。染料および/または顔料も、識別目的のために所望によりコーティングに添加される。さらに、染料および/または顔料は、活性化合物の用量の異なる組み合わせを特徴付けるために所望により用いられる。
【0106】
特定の実施形態において、構造(I)、(II)または(III)の化合物の少なくとも1つの治療上有効な量は、その他の経口剤形に製剤化される。経口剤形には、ゼラチン製のプッシュフィットカプセル剤、ならびにゼラチン製およびグリセロールまたはソルビトールなどの可塑剤製の軟質密封カプセルが挙げられる。特定の実施形態においては、プッシュフィットカプセルは、1以上の充填剤との混合物中に有効成分を含有する。充填剤には、単なる例示に過ぎないが、ラクトース、デンプンなどの結合剤および/またはタルクやステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤、ならびに所望により安定剤などが挙げられる。他の実施形態においては、ソフトカプセルは、適切な液体中に溶解または懸濁された1以上の活性化合物を含む。適切な液体には、単なる例示に過ぎないが、1つ以上の脂肪油、液体パラフィンまたは液体ポリエチレングリコールが含まれる。さらに、安定剤を、所望により添加されてもよい。
【0107】
その他の実施形態においては、構造(I)、(II)または(III)の化合物の少なくとも1つの治療上有効な量は、頬側または舌下投与のために製剤化される。頬側または舌下投与に適した製剤には、単なる例示に過ぎないが、錠剤、ロゼンジまたはゲルが挙げられる。さらに他の実施形態においては、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、ボーラス注射または連続点滴に適した製剤を含めた非経口注射として製剤化される。特定の実施形態において、注射用の製剤は、単位投与形態(例えば、アンプル中)または複数回用量容器中で提供される。保存剤は、所望により、注射用製剤に添加される。さらにその他の実施形態においては、医薬組成物は、油性または水性ビヒクル中の無菌の懸濁液、溶液またはエマルションとして非経口注射に適した形態で製剤化される。非経口注射用製剤は、所望により、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤のような医薬用推奨剤を含む。特定の実施形態において、非経口投与のための医薬製剤は、水溶性の形態の活性化合物の水溶液を含む。追加の実施形態においては、活性化合物(例えば、構造(I)、(II)または(III)の化合物)の懸濁液は、適切な油性注射用懸濁液として製造される。構造(I)、(II)または(III)の医薬組成物において使用するための適切な親油性溶媒またはビヒクルには、単なる例示に過ぎないが、ゴマ油などの脂肪油またはオレイン酸エチルまたはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステルまたはリポソームがある。ある特定の実施形態においては、水性注射用懸濁液は、懸濁液の粘度を増加させる物質、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールまたはデキストランなどを含む。所望により、懸濁液は、高濃度溶液の調製を可能にするために、化合物の溶解度を増加させる適切な安定剤または薬剤を含む。あるいは、その他の実施形態においては、有効成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば、滅菌されたパイロジェン不含水を用いて構成するための粉末形態において存在している。
【0108】
さらに他の実施形態においては、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、局所的に投与される。構造(I)、(II)または(III)の化合物は、様々な局所投与可能な組成物、例えば、溶液、懸濁液、ローション、ゲル、ペースト、薬用スティック、バーム、クリームまたは軟膏などに製剤化される。このような医薬組成物は、所望により、可溶化剤、安定化剤、強壮剤、緩衝剤および保存剤を含む。
【0109】
さらに他の実施形態においては、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、経皮投与のために製剤化される。具体的な実施形態において、経皮製剤には、経皮送達デバイスおよび経皮送達パッチが採用され、親油性乳濁液または緩衝水溶液であり得、ポリマーまたは接着剤に溶解および/または分散され得る。様々な実施形態において、このようなパッチは、医薬製剤を、連続的に、間欠的に、またはオンデマンドで送達するために作成される。追加の実施形態において、構造(I)、(II)または(III)の化合物の経皮送達化は、イオントフォレーシスパッチなどの手段によって達成される。特定の実施形態において、経皮パッチは、構造(I)、(II)または(III)の化合物の制御型送達の形成を提供する。特定の実施形態において、吸収速度は、速度制御膜を使用することによるか、または化合物をポリマーマトリックスもしくはゲル内に捕捉することによって遅くする。別の実施形態においては、吸収促進剤を使用して、吸収を増加させる。吸収促進剤または担体は、皮膚の透過を補助する吸収性の医薬的に許容される溶媒を含む。例えば、ある実施形態においては、経皮デバイスは、裏打ち部材、化合物を所望により担体と共に含むリザーバ、化合物を長時間にわたり制御された所定の速度で宿主の皮膚に送達する速度制御バリアおよびデバイスを皮膚に固定する手段を含む包帯の形態にて存在する。
【0110】
他の実施形態において、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、吸入による投与のために製剤化される。吸入による投与に適した様々な形態には、エアロゾル、ミストまたは散剤が挙げられるが、これらに限定されるものではない。構造(I)、(II)または(III)の化合物のいずれかの医薬組成物は、好適には、適切な推進剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素またはその他の適切なガス)を使用して、加圧パックまたはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態にて送達される。具体的な実施形態において、加圧エアロゾルの投与単位は、計量された量を送達するためのバルブを取り付けることによって決定される。特定の実施形態において、カプセル剤およびそのカートリッジ、例えば、単なる例示に過ぎないが、吸入器または送気器において使用するためのゼラチン剤は、化合物の粉末混合物とラクトースまたはデンプンなどの適切な粉末基剤を含んで製剤化される。
【0111】
さらに他の実施形態においては、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、従来の坐剤基剤(例えば、カカオバターまたはその他のグリセリド)ならびに合成ポリマー(例えば、ポリビニルピロリドン、PEGなど)を含む直腸用組成物(例えば、浣腸、直腸ゲル、直腸形態、直腸エアロゾル、坐剤、ゼリー坐剤など)に配合される。組成物の坐剤形態においては、所望によりカカオバターと組み合わせた脂肪酸グリセリドの混合物のような(しかし、これに限定されない)低融点ワックスが最初に溶ける。
【0112】
特定の実施形態において、医薬組成物は、活性化合物を医薬的に使用できる製剤に加工することを容易にする賦形剤および補助剤を含む1以上の生理学的に許容できる担体を使用して、任意の従来方法で製剤化される。適切な製剤は、選択された投与経路に依って変化する。医薬的に許容される技術、担体および賦形剤は、好適な場合に、適宜使用される。構造(I)、(II)または(III)の化合物を含む医薬組成物は、従来の方法で、例えば、単なる例示に過ぎないが、従来の混合、溶解、造粒、糖衣化、粉体化、乳化、カプセル化、封入または圧縮プロセスにより製造される。
【0113】
医薬組成物は、少なくとも1つの医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤と、有効成分として少なくとも1つの構造(I)、(II)または(III)の化合物を含む。有効成分は、遊離酸または遊離塩基の形態、または医薬的に許容される塩の形態において存在する。さらに、構造(I)、(II)または(III)の方法および医薬組成物には、N-オキシド、結晶形(多形としても知られる)および同じ種類の活性を有するこれらの化合物の活性代謝物の使用も含まれる。構造(I)、(II)または(III)の化合物の全ての互変異性体は、本明細書に提示された化合物の範囲に含まれる。さらに、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、水、エタノールなどの医薬的に許容される溶媒との溶媒和形態だけでなく、非溶媒和形態も包含する。本明細書に示された化合物の溶媒和物形もまた、本明細書に開示される範囲であると考えられる。さらに、医薬組成物には、所望により、その他の薬効成分または医薬成分、アジュバント(例えば、担体、保存剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤)、溶液促進剤、浸透圧調節のための塩、緩衝剤および/または他の治療上有益な物質も含まれる。
【0114】
従って、ある実施形態は、本明細書に記載の構造(I)、(II)または(III)の化合物のいずれか1つの医薬的に許容される塩を提供する。より具体的な実施形態においては、医薬的に許容される塩は、酸付加塩(例えば、トリフルオロ酢酸塩または塩酸塩)である。
【0115】
構造(I)、(II)または(III)の化合物を含む組成物の製造方法は、固体、半固体または液体を形成するために、1以上の不活性で医薬的に許容される賦形剤または担体と構造(I)、(II)または(III)の化合物を配合することを含む。固体組成物には、散剤、錠剤、分散性顆粒剤、カプセル剤、カシュ剤および坐剤が挙げられるが、これらに限定するものではない。液体組成物には、化合物が溶解した溶液、化合物を含む乳濁液または本明細書に開示される化合物を含むリポソーム、ミセルまたはナノ粒子を含む溶液が挙げられる。半固形組成物には、ゲル、懸濁液、クリームが挙げられるが、これらに限定するものではない。構造(I)、(II)または(III)の医薬組成物の形態には、液体溶液または懸濁液、使用前の液体中で溶液または懸濁液に適した固体形態または乳濁液としての形態が含まれる。これらの組成物はまた、所望により、湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などの無毒の補助物質を少量含んでもよい。
【0116】
ある実施形態において、構造(I)、(II)または(III)の少なくとも1つの化合物を含む医薬組成物は、実例としては、薬剤が溶液中、懸濁液中またはその両方で存在する液体の形態をとる。通常、組成物が溶液または懸濁液として投与される場合、薬剤の第1の部分は溶液中に存在し、薬剤の第2の部分は粒子状で存在し、液体マトリクス中の懸濁液中に存在する。ある実施形態において、液体組成物は、ゲル製剤を含む。他の実施形態において、液体組成物は、水性である。
【0117】
特定の実施形態において、有用な水性懸濁液は、懸濁化剤として1以上のポリマーを含む。有用なポリマーには、セルロース系ポリマー、例えば、ヒドロキシプロピルメルチルセルロースなどの水溶性ポリマーおよび架橋カルボキシル含有ポリマーなどの水不溶性ポリマーが挙げられる。本明細書に記載される特定の医薬組成物は、例えば、カルボキシメチルセルロース、カルボマー(アクリル酸ポリマー)、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリカルボフィル、アクリル酸/ブチルアクリレートコポリマー、ナトリウムアルギン酸塩およびデキストランから選択される粘膜付着性ポリマーを含んでいる。
【0118】
有用な医薬組成物もまた、所望により、構造(I)、(II)または(III)の化合物の可溶性を補助するための可溶化剤を含む。「可溶化剤」という用語は、一般に、薬剤のミセル溶液または真の溶液を形成させる薬剤を含む。特定の許容される非イオン性界面活性剤、例えば、ポリソルベート80は、可溶化剤として有用であり、また眼科的に許容されるグリコール、ポリグリコール、例えば、ポリエチレングリコール400およびグリコールエーテルも可能である。
【0119】
さらに、有用な組成物は、所望により1以上のpH調整剤または緩衝剤、例えば、酢酸、ホウ酸、クエン酸、乳酸、リン酸および塩酸などの酸;水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウムおよびトリスヒドロキシメチルアミノメタンなどの塩基;および、クエン酸/デキストロース、重炭酸ナトリウムおよび塩化アンモニウムなどの緩衝剤を含む。前記の酸、塩基および緩衝剤は、組成物のpHを許容範囲内に維持するのに必要な量で含まれる。
【0120】
さらに、有用な組成物はまた、所望により、組成物の浸透圧を許容範囲とするために必要な量の1以上の塩を含む。そのような塩には、ナトリウム、カリウムまたはアンモニウムカチオンと、塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、チオ硫酸塩または亜硫酸水素塩のアニオンとを有するものがある;適切な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウムおよび硫酸アンモニウムが挙げられる。
【0121】
その他の有用な医薬組成物には、微生物の活性を抑制するために1つ以上の保存剤が、所望により含まれる。適切な保存剤としては、水銀含有物質、例えば、メルフェンおよびチオメルサルなど;安定型二酸化塩素;および第四級アンモニウム化合物、例えば、塩化ベンザルコニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、塩化セチルピリジニウムが挙げられる。
【0122】
さらにその他の有用な組成物は、物理的安定性を高めるため、またはその他の目的のために1以上の界面活性剤を含む。適切な非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドおよび植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油;およびポリオキシエチレンアルキルエーテルおよびアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40が挙げられる。
【0123】
さらにその他の有用な組成物は、必要に応じて化学的安定性を高めるために、1以上の酸化防止剤を含む。適切な酸化防止剤としては、単なる例示に過ぎないが、アスコルビン酸およびメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0124】
特定の実施形態において、水性懸濁組成物は、1回分の再開封出来ない容器に包装される。あるいは、複数回分の再利用可能な容器が使用され、この場合、組成物に保存剤を含めることが一般的である。
【0125】
別の実施形態においては、疎水性医薬化合物のためのその他の送達系が採用される。リポソームおよび乳濁液は、本明細書で有用な送達用ビヒクルまたは担体の例示である。特定の実施形態において、N-メチルピロリドンなどの有機溶媒もまた用いられる。追加の実施形態において、構造(I)、(II)または(III)の化合物は、治療薬を含む固体疎水性ポリマーの半透過性マトリックスなどの持続放出システムを使用して送達される。本明細書では、様々な徐放性材料が有用である。ある実施形態において、徐放性カプセル剤は、化合物を数週間から100日以上かけて放出する。治療薬の化学的性質および生物学的安定性に応じて、タンパク質安定化のための追加の戦略が用いられる。
【0126】
特定の実施形態において、本明細書に記載の製剤は、1以上の抗酸化剤、金属キレート剤、チオール含有化合物および/または他の一般的な安定化剤を含んでいる。このような安定化剤の例としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない:(a)約0.5%~約2%w/vのグリセロール、(b)約0.1%~約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%~約2%w/vモノチオグリセロール、(d)約1mM~約10mM EDTA、(e)約0.01%~約2% w/vアスコルビン酸、(f)0.003%~約0.02% w/vのポリソルベート80、(g)0.001%~約0.05% w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)デキストラン硫酸、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリスルフェートおよびその他のヘパリノイド、(m)マグネシウムおよび亜鉛などの二価カオン;または(n)これらの組み合わせ。
【0127】
ある実施形態において、医薬組成物において提供される構造(I)、(II)または(III)の化合物の濃度は、100%、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19%、18%、17%、16%、15%,14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%または0.0001%(w/w、w/vまたはv/v)未満である。
【0128】
ある実施形態において、医薬組成物において提供される構造(I)、(II)または(III)の化合物の濃度は、90%、80%、70%、60%、50%、40%、30%、20%、19.75%、19.50%、19.25%、19%、18.75%、18.50%、18.25%、18%、17.75%、17.50%、17.25%、17%、16.75%、16.50%、16.25%、16%、15.75%、15.50%、15.25%、15%、14.75%、14.50%、14.25%、14%、13.75%、13.50%、13.25%、13%、12.75%、12.50%、12.25%、12%、11.75%、11.50%、11.25%、11%、10.75%、10.50%、10.25%、10%、9.75%、9.50%、9.25%、9%、8.75%、8.50%、8.25%、8%、7.75%、7.50%、7.25%、7%、6.75%、6.50%、6.25%、6%、5.75%、5.50%、5.25%、5%、4.75%、4.50%、4.25%、4%、3.75%、3.50%、3.25%、3%、2.75%、2.50%、2.25%、2%、1.75%、1.50%、125%、1%、0.5%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.09%、0.08%、0.07%、0.06%、0.05%、0.04%、0.03%、0.02%、0.01%、0.009%、0.008%、0.007%、0.006%、0.005%、0.004%、0.003%、0.002%、0.001%、0.0009%、0.0008%、0.0007%、0.0006%、0.0005%、0.0004%、0.0003%、0.0002%または0.0001%(w/w、w/vまたはv/v)を超える。
【0129】
ある実施形態において、医薬組成物において提供される構造(I)、(II)または(III)の化合物の濃度は、約0.0001%~約50%、約0.001%~約40%、約0.01%~約30%、約0.02%~約29%、約0.03%~約28%、約0.04%~約27%、約0.05%~約26%、約0.06%~約25%、約0.07%~約24%、約0.08%~約23%、約0.09%~約22%、約0.1%~約21%、約0.2%~約20%、約0.3%~約19%、約0.4%~約18%、約0.5%~約17%、約0.6%~約16%、約0.7%~約15%、約0.8%~約14%、約0.9%~約12%または約1%~約10%(w/w、w/vまたはv/v)の範囲である。
【0130】
ある実施形態において、医薬組成物において提供される構造(I)、(II)または(III)の化合物の濃度は、約0.001%~約10%、約0.01%~約5%、約0.02%~約4.5%、約0.03%~約4%、約0.04%~約3.5%、約0.05%~約3%、約0.06%~約2.5%、約0.07%~約2%、約0.08%~約1.5%、約0.09%~約1%、約0.1%~約0.9%(w/w、w/vまたはv/v)の範囲である。
【0131】
ある実施形態において、医薬組成物において提供される構造(I)、(II)または(III)の化合物の量は、10g、9.5g、9.0g、8.5g、8.0g、7.5g、7.0g、6.5g、6.0g、5.5g、5.0g、4.5g、4.0g、3.5g、3.0g、2.5g、2.0g、1.5g、1.0g、0.95g、0.9g、0.85g、0.8g、0.75g、0.7g、0.65g、0.6g、0.55g、0.5g、0.45g、0.4g、0.35g、0.3g、0.25g、0.2g、0.15g、0.1g、0.09g、0.08g、0.07g、0.06g、0.05g、0.04g、0.03g、0.02g、0.01g、0.009g、0.008g、0.007g、0.006g、0.005g、0.004g、0.003g、0.002g、0.001g、0.0009g、0.0008g、0.0007g、0.0006g、0.0005g、0.0004g、0.0003g、0.0002gまたは0.0001gと同一か、または未満である。
【0132】
ある実施形態において、医薬組成物において提供される構造(I)、(II)または(III)の化合物の量は、0.0001g、0.0002g、0.0003g、0.0004g、0.0005g、0.0006g、0.0007g、0.0008g、0.0009g、0.001g、0.0015g、0.002g、0.0025g、0.003g、0.0035g、0.004g、0.0045g、0.005g、0.0055g、0.006g、0.0065g、0.007g、0.0075g、0.008g、0.0085g、0.009g、0.0095g、0.01g、0.015g、0.02g、0.025g、0.03g、0.035g、0.04g、0.045g、0.05g、0.055g、0.06g、0.065g、0.07g、0.075g、0.08g、0.085g、0.09g、0.095g、0.1g、0.15g、0.2g、0.25g、0.3g、0.35g、0.4g、0.45g、0.5g、0.55g、0.6g、0.65g、0.7g、0.75g、0.8g、0.85g、0.9g、0.95g、1g、1.5g、2g、2.5、3g、3.5、4g、4.5g、5g、5.5g、6g、6.5g、7g、7.5g、8g、8.5g、9g、9.5gまたは10gである。
【0133】
ある実施形態において、医薬組成物において提供される構造(I)、(II)または(III)の化合物の量は、0.0001~10g、0.0005~9g、0.001~8g、0.005~7g、0.01~6g、0.05~5g、0.1~4g、0.5~4gまたは1~3gの範囲である。
【0134】
キット/製品
本明細書に記載された治療用途に使用するために、キットおよび製品も提供される。ある実施形態において、このようなキットは、バイアル、チューブなどの1以上の容器が入るように区画が分離されれたキャリア、パッケージまたは容器を含み、各容器(複数可)は、本明細書に記載の方法で使用される別々の要素の1つを含む。適切な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、シリンジおよび試験管が挙げられる。容器は、ガラスまたはプラスチックのような様々な材料から形成される。
【0135】
本明細書で提供される製品は、包装材を含む。医薬品の包装に使用するための包装材料には、例えば、米国特許第5,323,907号、同第5,052,558号および同第5,033,252号に記載されているものが挙げられる。医薬包装材料の例としては、ブリスターパック、ボトル、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、注射器、ボトルおよび選択した製剤および意図した投与および治療の様式に適した任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定するものではない。例えば、容器(複数可)は、本明細書に開示されるような組成物中または別の薬剤を組み合わせて、所望により、1以上の構造(I)、(II)または(III)の化合物を含む。容器(複数可)は、所望により、無菌アクセスポート(例えば、容器は、静脈内溶液バッグまたは皮下注射針により刺通可能なストッパーを有するバイアル)を有する。このようなキットは、所望により、本明細書に記載の方法におけるその使用に関する識別説明またはラベルもしくは指示書を有する化合物を含む。
【0136】
例えば、キットは、通常、構造(I)、(II)または(III)の化合物を使用するために商業的およびユーザー的観点から望ましい様々な材料(例えば、試薬、所望により濃縮された形態および/または装置)の1つまたは複数を含む1以上の追加の容器を各々含む。このような材料の非限定的な例としては、緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、キャリア、パッケージ、容器、内容物および/または使用説明書を記載したバイアルおよび/またはチューブラベル、ならびに使用説明書を記載したパッケージ添付文書が挙げられるが、これらに限定されない。説明書のセットも通常含まれる。ラベルは、所望により、容器上または容器に付随している。例えば、ラベルを形成する文字、数字または他の文字が容器自体に取り付けられ、成形され、またはエッチングされている場合、ラベルは容器上にあり、ラベルは、例えば、パッケージ添付文書として、容器も保持する容器またはキャリア内に存在する場合、容器と関連づけられている。さらに、ラベルは、内容物が特定の治療用途に使用されることを示すために使用される。さらに、ラベルは、本明細書に記載される方法のような内容物の使用に関する用法を示す。特定の実施形態において、医薬組成物は、本明細書において提供される化合物を含む1以上の単位剤形を含むパックまたはディスペンサー装置に存在する。パックは、例えば、ブリスターパックのような金属またはプラスチックホイルを含んでいる。あるいは、パックまたはディスペンサー装置には、投与に関する説明書が添付されている。あるいは、パックまたはディスペンサーは、医薬品の製造、使用または販売規制に係る政府機関によって規定された形式の容器に関連する通知を伴っており、この通知は、ヒトまたは獣医学的投与のための医薬品の形態の政府機関による承認を示すものである。このような通知は、例えば、米国食品医薬品局(FDA)が処方薬に対して承認したラベルや承認された製品の添付文書である。ある実施形態において、適合する医薬担体に本明細書で提供される化合物を配合した組成物を製造し、適切な容器に入れ、適応症状の治療用にラベルを付ける。
【0137】
治療および投与方法
本発明の実施形態は、開示された化合物、あるいはその医薬的に許容される塩、互変異性体、アイソマー、水和物、溶媒和物、多形体またはそれらから得られる医薬組成物の有効量を、哺乳類に投与する工程を特徴とする、哺乳類におけるENPP1活性、CdnP活性または両方の障害に関連する疾患を治療する方法を提供する。
【0138】
別の実施形態において、少なくとも1つの開示された化合物の有効量を哺乳類に投与する工程を含む、哺乳類におけるENPP1活性、CdnP活性または両方を阻害するための方法を提供するか、またはその医薬的に許容される塩、互変異性体、アイソマー、水和物、溶媒和物、多形体またはそれらから誘導される医薬組成物を哺乳類に投与する工程を特徴とする、哺乳類におけるENPP1活性の阻害方法を提供する。
【0139】
別の実施形態において、少なくとも1つの細胞におけるENPP1活性、CdnP活性または両方を阻害するための方法であって、少なくとも1つの細胞を、少なくとも1つの本開示の化合物、またはその医薬的に許容される塩、互変異性体、アイソマー、水和物、溶媒和物、多形体またはそれらから得られる医薬組成物の有効量と接触させる工程を特徴とする方法を提供する。
【0140】
また哺乳類における免疫療法応答を誘発することにより、哺乳類におけるENPP1活性、CdnP活性または両方の障害に関連する疾患を治療する方法であって、有効量の本開示の化合物、またはその医薬的に許容される塩、互変異性体、アイソマー、水和物、溶媒和物、多形体またはそれらから得られる医薬組成物を哺乳類に投与することを特徴とする方法を提供するものであって、この投与は、ENPP1活性、CdnP活性または両方に関連する疾患の治療に有益な免疫治療応答を引き起こす。このような疾患は、ENPP1活性、CdnP活性または両方が関与している任意のタイプの癌、または細菌および/またはウイルスによって引き起こされる任意の疾患であるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
従って、一実施形態により、構造(I)または(II)の化合物、あるいは構造(I)または(II)の化合物および医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤を含む医薬組成物を投与することを特徴とする、疾患を治療するための方法を提供する。
【0142】
ある実施形態において、疾患は、マイコバクテリウム感染症である。ある別の実施形態において、疾患は、癌(例えば、固形癌または乳癌)である。いくつかのより具体的な実施形態において、この方法は、ENPP1活性、CdnP活性または両方を阻害することを含む。いくつかのより具体的な実施形態において、本方法は、CdnP活性(例えば、マイコバクテリウムCdnP活性)を阻害することを含む。
【0143】
1つの具体的な実施形態により、医薬的に許容される担体、希釈剤または賦形剤、および下記の構造(III):
【化6】
[式中、
Aは、C
3-C
8シクロアルキレン、4~10員ヘテロシクリレン、C
6-C
10アリーレン、4~10員ヘテロアリーレンであり;
L
2は、所望によりオキソで置換されていてもよいC
1-C
6アルキレンであり;
G
4は、NまたはCHであり;
G
5は、NまたはCHであり;
R
11、R
12、R
13、R
14およびR
15は、各々独立して、水素、アルキル、ハロ、ヒドロキシ、シアノ、アミノ、-NH(C=O)アルキル、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシ、ヒドロキシアルキル、アルケニレンヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクリル、アリール、ヘテロアリールであるか、またはR
11およびR
12の組み合わせ、R
12およびR
13の組み合わせ、またはR
13およびR
14の組み合わせは、それらに結合している炭素原子と共に一体となって、4~6員シクロアルキル、4~10員アリール、4~6員ヘテロシクリルまたは4~10員ヘテロアリールを形成し;
R
16aは、OまたはSであり;
R
16bおよびR
16cは、各々独立して、-O
-、-OH、-S
-、-SHまたは-NR
17aR
17bであり;ならびに
R
17aおよびR
17bは、各々独立して、水素またはアルキルである]
を有する化合物、またはその立体異性体、互変異生体または医薬的に許容される塩を含む医薬組成物を投与することを特徴とする、マイコバクテリウム感染症の治療方法が提供される。
【0144】
ある実施形態において、Aは、4~10員ヘテロシクリレンである。特定の実施形態において、Aは、6または7員のヘテロシクリレンである。ある具体的な実施形態において、Aは、下記の構造:
【化7】
の内の1つを有する。
【0145】
特定の実施形態において、Aは、下記の構造:
【化8】
の内の1つを有する。
【0146】
いくつかのより具体的な実施形態において、G4は、Nである。ある実施形態において、G4は、CHである。いくつかの具体的な実施形態において、G5は、Nである。特定の実施形態において、G5は、CHである。
【0147】
ある実施形態において、R11、R12、R13、R14およびR15は、各々独立して、水素、アルキル、ハロ、ハロアルキル、アルコキシ、ハロアルコキシであるか、またはR2およびR3は、それらに結合している炭素原子と共に一体となって、4~6員ヘテロシクリルを形成する。
【0148】
ある実施形態において、R11は、水素またはアルコキシである。特定の実施形態において、R11は、水素またはメトキシである。
【0149】
いくつかのより具体的な実施形態において、R12は、水素またはアルコキシである。いくつかのより具体的な実施形態において、R12は、水素またはメトキシである。
【0150】
特定の実施形態において、R13は、水素またはアルコキシである。ある実施形態において、R13は、水素またはメトキシである。
【0151】
特定の実施形態において、R14は、水素またはアルコキシである。特定の実施形態において、R14は、水素またはメトキシである。
【0152】
いくつかの具体的な実施形態において、R15は、水素である。
【0153】
特定の実施形態において、R16aは、Oである。ある実施形態において、R16bは、-O-または-OHである。特定の実施形態において、R16cは、-O-または-OHである。
【0154】
ある実施形態において、本方法は、CdnP(例えば、マイコバクテリウムCdnP)を阻害することを含む。ある実施形態において、本方法は、ENPP1(例えば、宿主ENPP1)を阻害することを含む。
【0155】
より具体的な実施形態において、化合物は、表1または表2の構造の内の1つを有する。例えば、構造(I)の化合物のいくつかのより具体的な実施形態において、化合物は、表1Aから選択され、構造(II)の化合物は、表1Bから選択されるか、または構造(III)の化合物は、以下の表2から選択される。前記実施形態のいずれか1つにおいて、前記化合物の立体異性体、互変異生体、プロドラッグまたは医薬的に許容される塩もまた包含される。
【0156】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【表18】
【表19】
【表20】
【表21】
【表22】
【表23】
【表24】
【表25】
【表26】
【表27】
【表28】
【0157】
いくつかの実施形態において、化合物(例えば、表2の化合物)は、塩基性付加塩、例えば二ナトリウム塩として提供される。
【0158】
ENPP1の阻害または欠失は、細菌またはウイルスの病原性を低下させることができる。さらに、細菌またはウイルスの感染によって、特に、高ENPP1発現細胞においてIFN-βおよびNF-κBが低下する。ウイルスの感染または細菌感染時のENPP1の分子メカニズムを検討した結果、感染細胞またはトランスフェクト細胞ではENPP1が、cGAMPの加水分解に関与しており、それがIRF3リン酸化を阻害せしめ、IFN-βの分泌を減少させることがわかった。これらの結果は、ヒトcGASと組み合わせて、ENPP1がcGASを介して作用して、cGAMPレベルを維持し、ウイルス感染または細菌感染に寄与するという仮説をさらに実証するものである。さらに多くの実施形態には、医薬的に許容される担体と、有効量の本開示の化合物、またはその医薬的に許容される塩、互変異性体、アイソマー、水和物、溶媒和物もしくは多形体を含む医薬組成物が挙げられる。
【0159】
また、少なくとも1つの本開示の化合物、またはその医薬的に許容される塩、互変異性体、アイソマー、水和物、溶媒和物または多形体を含むキットも開示される。
【0160】
また、少なくとも1つの本開示の化合物または少なくとも1つの本開示の生成物を、医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることを特徴とする、医薬品の製造方法も開示される。別の実施形態において、本開示は、ENPP1活性機能不全、CdnP活性機能不全または両方に関連する疾患を治療するための医薬品製造における本開示の化合物の使用に関するものである。別の実施形態において、本開示は、制御不能な細胞増殖の疾患を治療するための医薬品製造における本開示の化合物の使用に関するものである。
【0161】
また、哺乳類におけるENPP1機能不全に関連する疾患の治療のための医薬品製造における本開示の化合物または本願生成物の用途が開示される。
【0162】
本開示はまた、哺乳類における制御不能な細胞増殖の疾患の治療のための方法を提供し、この方法は、本開示の化合物のいずれかの有効量を哺乳類に投与する工程を含む。
【0163】
本開示はまた、哺乳類におけるENPP1活性、CdnP活性または両方を低下させるための方法を提供し、この方法は、本開示の化合物のいずれかの有効量を哺乳類に投与する工程を含む。
【0164】
本開示はまた、哺乳類におけるENPP1活性、CdnP活性または両方を阻害するための方法を提供し、この方法は、本開示の化合物(即ち、構造(I)または構造(II)または構造(III)の化合物)のいずれかの有効量を哺乳類に投与する工程を含む。
【0165】
ENPP1タンパク質活性の阻害または負の調節を必要とする治療状態では、適切な用量レベルは、通常は、約0.01~500mg/kg患者体重/日であり、単回投与または複数回投与で投与することができる。好ましくは、用量レベルは約0.1~約250mg/kg/日であり;より好ましくは、0.5~100mg/kg/日である。好適な用量レベルは、約0.01~250mg/kg/日、約0.05~100mg/kg/日、または約0.1~50mg/kg/日であることができる。この範囲内では、用量は、0.05~0.5、0.5~5.0または5.0~50mg/kg/日であることができる。経口投与について、組成物は、好ましくは、治療される患者の用量に関する症状調節のためには、有効成分1.0~1000mg、特に有効成分1.0、5.0、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900および1000mgを含む錠剤の形態で提供される。当該化合物は、1~4回/日、好ましくは1回または2回/日の投与レジメンで投与することができる。この投与レジメンを調節して、最適な治療応答を提供することができる。
【0166】
しかし、特定の患者についての具体的な用量レベルは、各種要因によって決まることは理解されよう。そのような要因には、患者の年齢、体重、全身の健康状態、性別および食事などがある。他の要素には、投与の時刻および経路、排出速度、併用薬剤ならびに治療を受ける特定の疾患の種類および重症度などがある。
【0167】
本開示はさらに、哺乳動物(例えば、ヒト)におけるENPP1タンパク質活性、CdnPタンパク質活性または両方の阻害または負の調節(例えば、制御不能な細胞増殖の障害、またはENPP1および/またはCdnP機能不全に関連する1以上の神経変性障害の治療)のための医薬品の製造方法であって、1以上の本開示の化合物、生成物または組成物を医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることを特徴とする方法に関するものである。従って、一態様において、本開示は、医薬品の製造方法であって、少なくとも一つの本開示の化合物または少なくとも一つの本開示の生成物を医薬的に許容される担体または希釈剤と組み合わせることを特徴とする方法に関するものである。
【0168】
本開示の化合物は、患者または対象者が、ENPP1、CdnPまたは両方の阻害もしくは負の調節から恩恵を受けると考えられる様々な障害を治療、予防、改善、管理またはリスク低下するために有用である。ある実施形態において、対象者における障害の治療または予防方法であって、対象者における障害を治療するのに有効な用量および量で、少なくとも一つの本開示の化合物;少なくとも一つの本願医薬組成物;および/または少なくとも一つの本願生成物を対象者に投与する工程を含む方法が提供される。
【0169】
ENPP1/CdnP阻害が対象者において有効であると予想される1以上の障害の治療方法であって、対象者における障害を治療するのに有効な用量および量で、少なくとも一つの本開示の化合物;少なくとも一つの本願医薬組成物;および/または少なくとも一つの本願生成物を対象者に投与する工程を含む方法も提供される。
【0170】
別の実施形態において、制御不能な細胞増殖の障害を治療する方法であって、その対象者に対して、その対象者における障害を治療するのに有効な用量および量で、少なくとも一つの開示された化合物;少なくとも一つの開示された医薬組成物;および/または少なくとも一つの開示された生成物を投与することを含む方法が提供される。さらなる態様において、神経変性障害の治療または予防方法であって、その対象者に対して、その対象者における障害を治療するのに有効な用量および量で、少なくとも一つの開示された化合物;少なくとも一つの本願医薬組成物;および/または少なくとも一つの開示された生成物を投与することを特徴とする方法が提供される。哺乳動物における障害の治療方法であって、その哺乳動物に、少なくとも一つの開示された化合物、組成物または医薬を投与する工程を含む方法も提供される。
【0171】
本開示は、患者(好ましくは、ヒト)における、1以上の本開示の化合物または生成物を投与することで、ENPP1阻害が治療効果を有すると予測される疾患または障害、例えば、制御不能な細胞増殖の障害(例えば、がん)および神経変性障害、例えば、アルツハイマー病、ハンチントン病、およびパーキンソン病、細菌および/またはウイルスによって引き起こされる疾患を治療するための記載の化学組成物の使用に関するものである。
【0172】
本発明の化合物は、免疫療法にも用いることができる。
【0173】
ある実施形態において、本開示の化合物は、免疫療法によって制御不能な細胞増殖の障害および/または細菌および/またはウイルスによって引き起こされる疾患を治療するものであり、それは、当該化合物が、これらの疾患の治療をもたらす免疫療法応答を誘起することを意味している。
【0174】
本明細書に開示された化合物は、各種の制御不能な細胞増殖の障害に関する治療、予防、改善、管理またはリスク低下のために有用である。
【0175】
開示された化合物、組成物または医薬の使用方法も提供される。一態様において、その使用方法は、障害の治療に関するものである。さらなる態様において、開示された化合物を、単一薬剤として、または1以上のその他の薬剤との組み合わせにおいて(薬剤の組み合わせが、いずれの薬剤単独の場合より安全または有効である場合に)、当該化合物またはその他の薬剤が有用である上記疾患、障害および状態の治療、予防、管理、改善またはリスク低下に用いることができる。前記その他の薬剤は、開示された化合物と同時または順に、その薬剤について一般的に使用される経路および量で投与することができる。開示された化合物を1以上のその他の薬剤と同時に使用する場合、そのような薬剤および開示された化合物を含む単位剤形での医薬組成物が好ましい。しかしながら、その併用療法は、重複スケジュールで行うこともできる。1以上の有効成分および開示された化合物の組み合わせが、単一薬剤としてのいずれのものより効力が高いことも想到される。
【0176】
提供される化合物を用いて治療できる障害の例示には、制御不能な細胞増殖の障害がある。実施形態において、制御不能な細胞増殖の障害はがんである。特定の態様において、そのがんは白血病である。別の特定の態様において、そのがんは肉腫である。さらに別の態様において、そのがんは固形腫瘍である。さらに別の態様において、そのがんはリンパ腫である。
【0177】
がんが、通常、制御不能な細胞増殖を特徴とする哺乳動物における生理状態を指すか、またはそれを説明するものであることは理解される。がんは、多剤耐性(MDR)または薬剤感受性であり得る。がんの例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫および白血病などがあるが、これらに限定されるものではない。前記がんのより特定の例には、乳がん、前立腺がん、結腸がん、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、消化管がん、膵臓がん、子宮頸がん、卵巣がん、腹膜がん、肝臓がん、例えば、肝臓がん、膀胱がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎臓がんおよび甲状腺がんなどがある。
【0178】
様々なその他の態様において、がんのさらなる例は、基底細胞がん、胆道がん;骨がん;脳およびCNSがん;絨毛癌;結合組織がん;食道がん;眼がん;頭頸部のがん;胃がん;上皮内新生物;喉頭がん;ホジキンおよび非ホジキンリンパ腫などのリンパ腫;メラノーマ;骨髄腫;神経芽細胞腫;口腔がん(例えば、口唇、舌、口および咽頭);網膜芽細胞腫;横紋筋肉腫;直腸がん;呼吸系のがん;肉腫;皮膚がん;胃がん;精巣がん;子宮がん;泌尿器系のがん、ならびにその他の癌および肉腫である。
【0179】
別の実施形態において、がんは、血液がんである。さらに別の態様において、その血液がんは、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ球性白血病(CLL)、ヘアリー細胞白血病、慢性骨髄単球性白血病(CMML)、若年性骨髄単球性白血病(JMML)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、孤立性骨髄腫、限局性骨髄腫、および髄外骨髄腫から選択される。さらに別の態様において、そのがんは、慢性リンパ性白血病、小リンパ球性リンパ腫、B細胞非ホジキンリンパ腫および大B細胞リンパ腫から選択される。
【0180】
別の実施形態において、前記がんは、脳のがんである。特定の態様において、脳のがんは、神経膠腫、髄芽細胞腫、未分化神経外胚葉性腫瘍(PNET)、聴神経腫、神経膠腫、髄膜腫、下垂体腺腫、神経鞘腫、CNSリンパ腫、未分化神経外胚葉性腫瘍、頭蓋咽頭腫、脊索腫、髄芽腫、大脳神経芽腫、中枢性神経細胞腫、松果体細胞腫、松果体芽細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、軟骨肉腫、軟骨腫、脈絡叢癌、脈絡叢乳頭腫、頭蓋咽頭腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、神経節細胞腫、胚細胞腫、血管芽細胞腫、血管周皮腫および転移脳腫瘍から選択される。さらに別の態様において、神経膠腫は、上衣細胞腫、星状細胞腫、乏突起膠腫および乏突起星細胞腫から選択される。さらに別の態様において、神経膠腫は、若年性毛様細胞性星細胞腫、上衣下巨細胞性星細胞腫、神経節膠腫、上衣下腫、多形黄色星細胞腫、退形成性星細胞腫、多形膠芽細胞腫、脳幹神経膠腫、乏突起膠腫、上衣細胞腫、乏突起星細胞腫、小脳星細胞腫、線維形成性乳児星細胞腫、上衣下巨細胞星状細胞腫、びまん性星細胞腫、混合性神経膠腫、視神経膠腫、脳神経膠腫症、多発性神経膠腫腫瘍、多中心性膠芽細胞腫多形性腫瘍、傍神経節腫および神経節芽腫から選択される。
【0181】
ある実施形態において、がんは、血液、脳、尿路、消化管、結腸、直腸、乳房、腎臓、リンパ系、胃、肺、膵臓および皮膚のがんから選択され得る。さらなる実施形態において、がんは、前立腺がん、多形性膠芽細胞腫、子宮内膜がん、乳がんおよび大腸がんから選択される。別の実施形態において、がんは、乳房、卵巣、前立腺、頭部、頸部および腎臓のがんから選択される。さらに別の態様において、がんは、血液、脳、尿路、消化管、結腸、直腸、乳房、肝臓、腎臓、リンパ系、胃、肺、膵臓および皮膚のがんから選択される。別の態様において、がんは、肺および肝臓のがんから選択される。さらに別の態様において、そのがんは、乳房、卵巣、睾丸および前立腺のがんから選択される。
【0182】
その他の実施形態において、ENPP1機能不全に関連する障害には、神経変性疾患がある。別の実施形態において、神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病およびハンチントン病から選択される。
【0183】
当該化合物はさらに、本明細書に記載した疾患、障害および状態の予防、治療、管理、改善またはリスク低下する方法において有用である。当該化合物はさらに、その他の薬剤と組み合わせた前記疾患、障害および状態を予防、治療、管理、改善またはリスク低下するための方法において有用である。
【0184】
本開示はさらに、がんなどの制御不能な細胞増殖障害に関する文脈において治療結果を改善するためのENPP1阻害剤の投与に関するものである。即ち、ある実施形態において、本開示は、哺乳動物に、がん治療法と組み合わせて、有効な量および用量の少なくとも一つの本開示の化合物を投与する工程を含む併用療法に関するものである。
【0185】
さらなる態様において、投与によって、がん療法に関する文脈において治療結果が改善される。がん療法との関連における投与とは、連続的または間欠的であり得る。投与は、治療法と同時である必要はなく、治療法の前、途中および/または後に行うことができる。例えば、がん療法は、化合物投与の前または後の1、2、3、4、5、6、7日内に提供することができる。さらなる例として、がん療法は、化合物投与の前または後の1、2、3または4週間以内に提供することができる。さらに別の例として、認知療法または行動療法は、投与される化合物の1、2、3、4、5、6、7、8、9または10半減期の期間内に投与前または投与後に提供することができる。
【0186】
ある実施形態において、本開示の化合物を、1以上のその他の薬剤と組み合わせて、本開示の化合物またはその他の薬剤が有用であり得る疾患または状態の治療、予防、管理、改善またはリスク低下において用いることができ、その場合の薬剤の組み合わせはいずれの薬剤単独の場合よりも安全かつ有効である。前記その他の薬剤は、本開示の化合物と同時または順に、通常使用される経路および量で投与することができる。本開示の化合物を、1以上のその他の薬剤と同時に使用する場合、その他の薬剤および開示された化合物を含む単位剤形での医薬組成物が好ましい。しかし、併用療法は、本開示の化合物および1以上のその他の薬剤を、異なった重複するスケジュールで投与する療法を含むことも可能である。本開示の化合物およびその他の有効成分を、1以上の他の有効成分と組み合わせて、それぞれを単独で用いる場合よりも低い用量で用いることができることも考えられる。
【0187】
従って、当該医薬組成物は、本開示の化合物に加えて、1以上のその他の有効成分を含む医薬組成物を包含する。
【0188】
上記の組み合わせは、1つのその他の活性化合物だけでなく、2以上のその他の活性化合物と本開示の化合物との組み合わせを含む。同様に、開示された化合物を、開示された化合物が有用である疾患または状態の予防、治療、管理、改善またはリスク低下において用いられるその他の薬剤と併用することが可能である。前記その他の薬剤は、本開示の化合物と同時または順に、前記薬剤について一般に用いられる経路および量で投与することができる。本発明の化合物を1以上の他の薬剤と同時に用いる場合、本開示の化合物に加えて前記その他の薬剤を含む医薬組成物が好ましい。従って、当該医薬組成物は、本開示の化合物に加えて1以上の他の有効成分も含む組成物を包含する。
【0189】
開示された化合物と第2の有効成分の重量比は変動し得るものであり、各成分の有効用量によって決まる。一般には、それぞれの有効用量を用いる。従って、例えば、本開示の化合物を、別の薬剤と組み合わせる場合、本開示の化合物:その他の薬剤の重量比は、通常、約1000:1~約1;1000であり、好ましくは約200:1~約1:200である。本発明の化合物および他の有効成分の組み合わせも、上記の範囲に含まれるが、各場合で、各有効成分の有効用量を用いるべきである。
【0190】
そのような組み合わせにおいて、開示された化合物およびその他の活性薬剤は、別々に、または一緒に投与することができる。さらに、一方の要素の投与は、他方の薬剤の投与の前、同時または後に行うことができる。
【0191】
従って、当該化合物は、単独で、または対象者の適応症において有用であることが知られているその他の薬剤または本開示の化合物の効力、安全性、簡便性を高めるか、あるいは望ましくない副作用または毒性を軽減する受容体または酵素に影響を及ぼすその他の薬剤と組み合わせて用いることができる。当該化合物およびその他の薬剤は、併用療法で、または固定された組み合わせで共投与することができる。
【0192】
ある実施形態において、当該化合物は、抗がん治療剤またはその他の既知の治療剤と組み合わせて用いられ得る。
【0193】
ENPP1の阻害または負の調節を必要とする状態の治療において、適切な用量レベルは、通常、約0.01~1000mg/kg患者体重/日であり、それは単回投与または複数回投与することができる。好ましくは、その用量レベルは、約0.1~約250mg/kg/日;より好ましくは約0.5~約100mg/kg/日である。好適な用量レベルは、約0.01~250mg/kg/日、約0.05~100mg/kg/日または約0.1~50mg/kg/日であることができる。この範囲内では、用量は0.05~0.5、0.5~5または5~50mg/kg/日であることができる。経口投与の場合、当該組成物は、好ましくは、治療される患者への用量の症状に応じた調節のために、1.0~1000ミリグラムの有効成分、特には1.0、5.0、10、15、20、25、50、75、100、150、200、250、300、400、500、600、750、800、900および1000ミリグラムの有効成分を含む錠剤の形態で提供される。当該化合物は、1日1~4回、好ましくは1日1回または2回の投与方法で投与することができる。この投与レジメンを調節して、最適な治療応答を提供することができる。しかし、特定の患者のための具体的な用量レベルおよび投与回数は、変動し得るものであり、多様な要素、例えば、使用される具体的な化合物の活性、その化合物の代謝安定性および作用の長さ、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与の形態および時刻、排出速度、併用薬剤、特定の状態の重度、および治療を受ける宿主によって変動することは理解されるであろう。
【0194】
従って、ある実施形態において、本開示は、少なくとも一つの細胞中のENPP1を阻害または負の調節する方法であって、前記少なくとも一つの細胞を、例えば前記少なくとも一つの細胞におけるENPP1活性応答を調節または活性化させる上で有効な量での少なくとも一つの本発明の化合物と接触させる工程を含む方法に関するものである。さらなる態様において、当該細胞は、哺乳動物のもの、例えばヒトのものである。さらなる態様において、当該細胞は、前記接触させる工程の前に対象者から単離されたものである。別の態様において、接触させるとは、対象者への投与によるものである。
【0195】
ある実施形態において、本開示は、少なくとも1つの細胞においてCdnPを阻害または負に調節するための方法であって、少なくとも1つの細胞において、例えばCdnP活性応答を調節または活性化するのに有効な量の、少なくとも1つの本開示の化合物と少なくとも1つの細胞を接触させる工程を含む方法に関する。別の実施形態では、細胞は、哺乳類、例えば、ヒトである。別の実施形態では、細胞は、接触工程の前に対象者から単離されている。別の実施形態では、接触は対象者への投与を介して行われる。
【0196】
製造方法
構造(I)、(II)または(III)の化合物は、当技術分野で公知の方法および本明細書に開示される方法に従って製造することができる。一般に、出発物質は、Sigma Aldrich, Lancaster Synthesis, Inc, Maybridge, Matrix Scientific, TCI and Fluorochem USAなどの供給源から入手するか、当業者に周知の供給源に従って合成され得る(例えば、Advanced Organic Chemistry: Reactions, Mechanisms, and Structure, 5th edition (Wiley, December 2000)を参照されたい)。
【0197】
一般反応スキーム1
【化9】
一般的な反応スキーム1は、構造(I)の化合物を製造するための例示的な方法を提供するものであり、式中のR
7aはOであり、R
7bおよびR
7cは、各々独立して、-O
-または-OHである。一般的な反応スキーム1において、L
1、G
2、G
3、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、本明細書で定義する通りである。A2上のX基は、A1およびA2との間の塩基促進型カップリング反応(例えば、Xが、Br、ClまたはOTfであり、反応に用いられる塩基は、例えば、TEAまたはK
2CO
3である)を促進するように選択される反応基である。A4上のZ基は、A3およびA4との間の縮合反応を促進してA5を提供することができる一過性の官能基を表す(例えば、A4は、テトラエチルメチレンジホスホネートであり、この反応は、塩基(例えば、NAHまたはKOtBu)の存在下で行われる)。A5を標準的な条件下(例えば、H
2、Pd/C)で還元してA6を得て、このA6は、例えば、DCM中のTMS-BrまたはNMP中のNaBrおよびTMS-Clを用いて加水分解を受けて、ホスホン酸A7を提供する。A7の塩A8(ここで、M
+は適切なカチオン種を示す)への変換は、例えば、A7を適切な塩基(例えば、NaOH、ここでM
+がNa
+である)で処理することによって達成され得る。化合物A7およびA8は、構造(I)の各化合物である。
【0198】
一般反応スキーム2
【化10】
一般的な反応スキーム2は、構造(I)の化合物の前駆体を製造するための例示的な方法を提供するものであり、式中のR
7aはOであり、R
7bおよびR
7cは、各々独立して、-O
-または-OHである。一般的な反応スキーム2におけるR
6は、本明細書において定義された通りである。化合物B1は、その反応性を低下させるために、窒素原子上に保護基(PG)を含む。PGは、反応スキーム全体を考慮して、その他の合成工程(例えば、B5およびB6をカップリングさせて、B7を形成するのに必要な条件)との適合性に基づいて選択(および、必要に応じて別のものに変更)され得る。PGとしては、Boc、ベンジル、DMBまたはCbzを挙げることができるが、これらに限定するものではない。B2上のZ基は、B1およびB2の間の縮合反応を促進させて、B3を提供することができる一過性の官能基を表す(例えば、B2は、エチル2-(ジエトキシホスホリル)アセテートであり、この反応は、塩基、例えばNAH、またはKOtBuの存在下で行われる)。B3は、標準的な条件下(例えば、H
2、Pd/C)で還元されてB4となり、さらなる還元を受けて(例えば、-78℃でDIBAL-H/DCMを使用して)、アルデヒドB5を提供する。B5およびB6の間の別のZ基の促進型縮合により、不飽和ホスホネートのB7(例えば、B6は、テトラエチルメチレンジホスホン酸であり、この反応は、NaHまたはKOtBuなどの塩基の存在下で行われる)が得られる。B7は、標準的な条件下(例えば、H
2、Pd/C)で還元されて、B8となり、これを脱保護して(例えば、PGが、Bocの場合は、TFA/CH
2-Cl
2を用いる)、第2級アミンB9を提供する。
【0199】
当業者であれば、本明細書に記載されるように、L1基を変更することにより、構造(I)の化合物を合成する容易な方法を提供するための一般的な反応スキーム2の有用性を認識するであろう。当業者であれば、試薬および基質に関する賢明な選択を通じて上記の順序に改変を行うことにより、所望のL1基を選択して、第二級アミン前駆体であるB9を得ることができる。構造(I)の化合物は、本明細書に記載のカップリング方法を用いて、以下の一般反応スキーム3に示すように、B9から製造することができる。
【0200】
一般反応スキーム3
【化11】
一般反応スキーム3は、構造(I)の化合物を製造するための例示的な方法を提供するものであり、式中のR
7aはOであり、R
7bおよびR
7cは、各々独立して、-O
-または-OHである。一般的な反応スキーム1において、L
1、G
2、G
3、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5およびR
6は、本明細書において定義される通りである。複素環C1は、その反応活性を低下させるために、窒素原子上に保護基(PG)を含む。PGは、反応スキーム全体を考慮して、その他の合成ステップ(例えば、C1およびC2をカップリングさせてC3を形成するのに必要な条件)との適合性に基づいて選択され得る(必要に応じて、別のものに変更することもできる)。PGとしては、Boc、ベンジル、DMBまたはCbzを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。C2上のZ基は、C1とC2との間の縮合反応を促進してC3を提供することができる一過性の官能基を表す(例えば、C2がテトラエチルメチレンジホスホネートである場合、反応は、NAHまたはKOtBuなどの塩基の存在下で行われる。C3を、標準的な条件下(例えば、H
2、Pd/C)で還元してC4を得て、その後これを脱保護して(例えば、PGがBocである場合、TFA/CH
2-Cl
2を用いる)、二級アミンであるC5を得る。C6上のX基は、C7を得るために、C5とC6との間の所望の塩基促進カップリング反応(例えば、XがBr、ClまたはOTfである場合、反応に使用される塩基は、例えば、TEAまたはK
2CO
3である)を促進するように選択される反応基である。その後、化合物C7は、例えば、DCM中のTMS-Br;またはNMP中のNaBrおよびTMS-Clを用いて、加水分解され、ホスホン酸C8を提供する。C8の塩C9への変換(ここで、M
+は、適切なカチオン性種を表す)は、例えば、A7を適切な塩基(例えば、NaOH、ここでM
+はNa
+である)で処理することにより達成することができる。化合物C8およびC9は、各々構造(I)の化合物である。
【0201】
構造(I)または(III)の化合物を製造するための様々な別法が、当業者に利用可能であることに留意されたい。例えば、構造(I)または(III)のその他の化合物は、適切な出発材料を用いて、類似の方法に従って製造することができる。また、構造(I)または(III)の化合物を製造するための方法において、中間化合物の官能基は、適切な保護基によって保護される必要があり得ることは当業者には理解されよう。前記官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプトおよびカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0202】
構造(III)の化合物を、当業者により利用可能な様々なストラテジーを用いて製造できる;即ち、PCT公開公報WO2019/051269に概説される通りであるが、これは参照によりその全てを本明細書に組み込まれる。
【0203】
一般反応スキーム4
【化12】
一般的な反応スキーム1は、構造(II)(式中、G
6、L
5、L
6、R
25およびR
26、は、本明細書で定義される通りである)の化合物を製造するための例示的な方法を提供する。化合物A1およびA2は、市販されているか、または当技術分野の既知の方法に従って製造される。G
1は、反応スキームの条件に耐えることができ、構造(II)の化合物を得るために、保護基の除去または追加の化学変換(複数可)を介して変換され得る官能基である。A1上のX基とA2上のY基は、A1とA2の間のカップリング反応を促進させて、カップリング生成物であるA3を提供するように選択された補完的な反応性基である。G
1の性質に応じて、1以上の工程が、A3を構造(II)の化合物に変換するために必要とされる場合がある。
【0204】
ある例においては、Xはハロゲン原子または反応性等価物(例えば、Cl、Br、OTf)であり、Yは-OHであり、このカップリング反応を、塩基性条件下で(例えば、NaH/ジオキサン)続行して、A3を得た。
【0205】
別の例において、Xはハロゲン原子または反応性等価物(例えば、Cl、Br、OTf)であり、Yは-NH2であり、このカップリング反応を、塩基性条件下で(例えば、過剰アミン/THF)続行して、A3を得た。
【0206】
またさらなる例において、Xはチオール基(-SH)であり、Yはハロゲン原子または反応性等価物(例えば、Cl、Br、OTf)であり、このカップリング反応を、塩基性条件下で(例えば、K2CO3/DMFまたはNaH/THF)続行して、A3を得た。
【0207】
ある例において、Xはハロゲン原子または反応性等価物(例えば、Cl、Br、OTf)であり、Yは-NHRx(式中、Rxはアルキルである)であり、このカップリング反応を、塩基性条件下で(例えば、K2CO3/DMFまたはNaH/ジオキサン)続行して、A3を得た。
【0208】
別の例において、Xはハロゲン原子または反応性等価物(例えば、Cl、Br、OTf)であり、Yはボロン酸、ボロン酸エステルまたはトリフルオロボロン酸塩(例えば、-B-F3K+)であり、この反応を、パラジウム触媒性クロスカップリング条件下で(例えば、Pd(dppf)Cl2、ジオキサン:H2O中のNa2CO3、またはXPhos Pd G2、THF:H2O中のK3PO4)続行して、A3を得た。
【0209】
構造(II)の化合物を製造するための様々な代替ストラテジーが、当業者に利用可能であることに留意されたい。例えば、構造(II)の他の化合物は、適切な出発材料を用いて類似の方法に従って製造することができる。また、構造(II)の化合物を製造するための工程において、中間化合物の官能基は、適切な保護基によって保護される必要があり得ることは、当業者には理解されよう。そのような官能基には、ヒドロキシ、アミノ、メルカプトおよびカルボン酸が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0210】
ヒドロキシのための適切な保護基は、トリアルキルシリルまたはジアリールアルキルシリル(例えば、t-ブチルジメチルシリル、t-ブチルジフェニルシリルまたはトリメチルシリル)、テトラヒドロピラニル、ベンジルなどが挙げられるが、これらに限定するものではない。アミノ、アミジノおよびグアニジノのための適切な保護基は、t-ブトキシカルボニル(「Boc」)、ベンジルオキシカルボニルなどが挙げられる。保護基は、当業者には既知の標準的な技術に従って、本明細書に記載される通り、所望により付加または除去される。保護基の使用は、Green, T.W. and P.G.M. Wutz, Protective Groups in Organic Synthesis (1999), 3rd Ed., Wileyに詳細に説明されている。当業者であれば理解できるであろうが、保護基は、Wang樹脂、Rink樹脂または2-クロロトリチルクロリド樹脂などのポリマー樹脂であってもよい。
【0211】
また、本開示の化合物の前記保護誘導体は、それ自体では薬理学的活性を有していないが、それらが哺乳動物に投与された後に、体内で代謝されて薬理学的に活性である本開示の化合物を形成し得ることは、当業者によって理解されよう。従って、このような誘導体は、「プロドラッグ」として記載される場合がある。本開示の化合物のプロドラッグは、本発明の実施形態の範囲に含まれる。
【0212】
以下に示される実施例および製造方法は、構造(I)の化合物および前記化合物の製造方法をさらに説明し、かつ例示するものである。本開示の範囲は、以下の実施例および製造方法の範囲によっていかなる意味でも限定されないことが理解されよう。以下の実施例ならびに本明細書および特許請求の範囲全体において、単一の立体中心を有する分子は、別段の記載が無い限り、ラセミ混合物として存在する。2つ以上の立体中心を有する分子は、別段の記載が無い限り、ジアステレオマーのラセミ混合物として存在する。単一のエナンチオマー/ジアステレオマーは、当業者に公知の方法によって得ることができる。
【実施例】
【0213】
実施例
以下の実施例は、例示目的のために提供される。表1に例示される構造(I)の他の化合物を、当技術分野において日常的手順、類似の手順に従って製造した。例えば、構造(I)の化合物をもたらす以下の実施例について、上記したような一般的な反応スキームIを、別段の記載が無い限り、一般的に使用する。
【0214】
実施例1
(((2-(1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)ピペリジン-4-イル)エチル)ホスホリル)ビス(オキシ))ビス(メチレン)ビス(2-メチルプロパノエート)(化合物I-3)の合成
【化13】
アゼパン-4-オン塩酸塩の合成:
tert-ブチル4-オキソアゼパン-1-カルボキシレート(3g,14.08mmol)/1,4-ジオキサン(10mL)の攪拌した溶液に、4M HCl/ジオキサン(5.0mL)を、RTで加えて、この反応溶液を、RTで16時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、混合溶液を、減圧下で濃縮して、粗製化合物を得た。粗製物質を、エーテルでトリチュレートし、アゼパン-4-オン塩酸塩(1.5g,10.06mmol,71%収率)を、淡褐色の固体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) 9.45(s, 2H), 3.19-3.36(m, 4H), 2.74-2.77(m, 2H), 2.59-2.62(m, 2H), 1.90-1.96(m, 2H).
【0215】
1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-オンの合成:
4-クロロ-6,7-ジメトキシキナゾリン(2g,8.9mmol)/DMF(20mL)の攪拌した溶液に、炭酸カリウム(3g,22.25mmol)およびアゼパン-4-オン塩酸塩(1.5g,13.35mmol)を加えて、反応溶液を、80℃で6時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、水(100mL)を加えて、混合溶液を、酢酸エチル(2x50mL)で抽出した。有機相を合わせて、ブライン(50mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧下で濃縮した。粗製物質を、コンビクロマトグラフィーにより精製して、純粋な1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-オン(950mg,3.15mmol,35%収率)を、淡黄色固体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.44(s, 1H), 7.17(s, 1H), 7.12(s, 1H), 3.99(t, 2H), 3.86-3.90(m, 8H), 2.82-2.85(m, 2H), 2.62-2.65(m, 2H), 2.03-2.05(m, 2H).
LCMS:(M+H) +: m/Z: 302.2.
【0216】
ジエチル(E)-((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イリデン)メチル)ホスホネートの合成:
テトラエチルメチレンビス(ホスホネート)(0.545mL,2.19mmol)/トルエン(6mL)の攪拌した溶液に、60%NaH(159mg,3.98mmol)を、0℃で加えて、混合溶液を、15分間攪拌した後に、1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-オン(600mg,1.99mmol)を、一度に0℃で加えた。反応混合溶液を、RTで16時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、水(50mL)を加えて、混合溶液を、酢酸エチル(2x20mL)で抽出した。有機相を合わせて、ブライン(10mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧下で濃縮した。粗製物質を、コンビフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、純粋なジエチル(E)-((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イリデン)メチル)ホスホネート(300mg,0.689mmol,35%収率)を、淡褐色固体として得た。
LCMS:(M+H) +: m/Z: 436.4.
【0217】
ジエチル((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネートの合成:
ジエチル(E)-((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イリデン)メチル)ホスホネート(300mg,0.68mmol)/メタノール(15mL)の攪拌した溶液に、10%Pd/C(60mg)を加えて、反応混合溶液を、バルーン水素雰囲気下において、室温で16時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、混合溶液を、Celiteにより濾過して、フィルターベッドを、5%メタノール/ジクロロメタン(50mL)で洗った。濾液を、減圧下で濃縮して、ジエチル((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネート(500mg,1.689mmol,98%収率)を、黄色固体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.37(s, 1H), 7.3(s, 1H), 7.14(s, 1H), 4.07(m, 4H), 3.97-3.98(m, 6H), 2.5(s, 1H), 2.4(m, 2H), 2.2(m, 2H), 1.38(m, 2H),1.94-1.90(m, 2H), 1.78-1.72(m, 2H), 1.27-1.19(m, 6H).
LCMS:(M+H+): m/Z: 438.4
【0218】
((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホン酸の合成:
ジエチル((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネート(400mg,0.915mmol)/DCM(100体積)の攪拌した溶液に、TMS-Br(1.2mL,10.0eq)を、-20℃で滴加した。反応混合溶液を、室温で48時間攪拌した。反応の完了後(TLCによるモニター)、過剰な溶媒を、減圧下で蒸発させて、粗生成物を得た。粗製物質を、エーテルで洗い、((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホン酸(250mg,0.656mmol,71%収率)を、淡褐色固体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.73(s, 1H), 7.48(s, 1H), 7.17(s, 1H), 4.27-4.31(m, 2H), 3.96(s, 3H), ), 3.92(s, 3H), 3.85-3.89(m, 2H), 2.31-2.32(m, 1H), 2.03-2.05(m, 1H), 2.02-1.91(m, 3H), 2.0(m, 2H), 2.0(m, 2H),1.27-1.29(m, 1H).
LCMS:(M+H) +: m/Z: 382.0.
【0219】
ナトリウム((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネート(I-3)の合成
((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホン酸(25mg,0.065mmol)/H2O(2mL)の攪拌した溶液に、0℃で、NaOH(5mg,1.8eq)を加えた。反応混合溶液を、室温で1時間攪拌した後、反応混合溶液を、凍結乾燥下に保持して、I-3(26mg,0.027mmol,96%収率)を、淡褐色固体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.03(s, 1H), 6.69-6.84(m, 2H), 3.81-3.82(m, 3H), 3.82-3.84(m, 5H), 3.47-3.63(m, 2H), ), 2.11(m, 1H), 2.0(m, 2H), 1.8(brs, 2H), 1.5(m, 1H), 1.36(dd, 2H), 1.12-1.21(m, 1H).
LCMS:(M+H)+: m/Z: 382.3.
【0220】
実施例2
ナトリウム(3-(1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホネート(化合物I-5)の合成
【化14】
tert-ブチル(E)-4-(2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アゼパン-1-カルボキシレートの合成:
エチル 2-(ジエトキシホスホリル)アセテート(31g,140.8mmol)/テトラヒドロフラン(70mL)の攪拌した溶液に、60%NaH(3.7g,93.9mmol)を0℃で加えて、混合溶液を、30分間攪拌して、その後tert-ブチル 4-オキソアゼパン-1-カルボキシレート(10g,46.95mmol)を、0℃で少量ずつ加えた。反応混合溶液を、室温で16時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、水(500mL)を加えて、混合溶液を、酢酸エチル(2x300mL)を用いて抽出した。有機相を合わせて、ブライン(400mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧下で濃縮し、粗製化合物を得た。粗製物質を、コンビフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、10%酢酸エチル/石油エーテルで溶出し、純粋なtert-ブチル(E)-4-(2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アゼパン-1-カルボキシレート(8g,28.26mmol,61%収率)を、無色の油状液体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 5.683-5.770(m, 1H), 4.138-4.192(m, 2H), 3.351-3.521(m, 5H), 3.063-3.092(m, 1H), 2.819-2.833(m, 1H), 2.516-2.543(m, 1H), 2.383-2.412(m, 1H), 1.754-1.830(m, 2H), 1.451(s, 9H), 1.265-1.313(m, 3H).
【0221】
tert-ブチル 4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)アゼパン-1-カルボキシレートの合成:
tert-ブチル(E)-4-(2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アゼパン-1-カルボキシレート(4.1g,14.49mmol)/エタノール(50mL)の攪拌した溶液に、10%Pd/C(500mg,10%w/w)を加えて、反応混合溶液を、バルーン水素雰囲気下で、室温で16時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、混合溶液を、Celiteにより濾過して、フィルターベッドを、10%メタノール/ジクロロメタン(50mL)で洗った。濾液を、減圧下で濃縮して、tert-ブチル 4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)アゼパン-1-カルボキシレート(2g,7.017mmol,48%収率)を、無色の油状液体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 3.901-4.053(m, 2H), 3.086-3.432(m, 2H), 1.651-1.978(m, 3H), 1.320-1.535(m, 6H), 1.145-1.264(m, 5H), 0.797-0.842(m, 1H).
【0222】
tert-ブチル 4-(2-オキソエチル)アゼパン-1-カルボキシレートの合成:
tert-ブチル 4-(2-エトキシ-2-オキソエチル)アゼパン-1-カルボキシレート(2g,7.017mmol)/ジクロロメタン(40mL)の攪拌した溶液に、1M DIBAL-H(10.5mL,10.5mmol)を-78℃で加えて、反応混合溶液を、1時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、反応混合溶液を、飽和塩化アンモニウム(100mL)でクエンチして、ジクロロメタン(2x100mL)で抽出した。有機相を合わせて、ブライン(200mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧下で濃縮した。粗製物質を、20%酢酸エチル/石油エーテルで溶出するコンビフラッシュクロマトグラフィーにより精製し、tert-ブチル 4-(2-オキソエチル)アゼパン-1-カルボキシレート(700mg,2.904mmol,41%収率)を、無色の油状液体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 9.775(s, 1H), 3.155-3.831(m, 7H), 2.410-2.427(d, 2H), 2.327-2.345(d, 1H), 2.033-2.095(bs, 1H), 1.823-1.869(m, 4H), 1.702-1.757(m, 1H), 1.486(s, 9H), 1.267-1.327(m, 2H).
【0223】
tert-ブチル(E)-4-(3-(ジエトキシホスホリル)アリル)アゼパン-1-カルボキシレートの合成:
テトラエチルメチレンビス(ホスホネート)(1.25g,4.357mmol)/トルエン(10mL)の攪拌した溶液に、60%NaH(174mg,2.904mmol)を0℃で加えて、混合溶液を、30分間攪拌した後、tert-ブチル 4-(2-オキソエチル)アゼパン-1-カルボキシレート(700mg,2.904mmol)を、0℃で少量ずつ加えて、反応混合溶液を、室温で16時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、水(100mL)を加えて、混合溶液を、酢酸エチル(2x100mL)で抽出した。有機相を合わせて、ブライン(100mL)で洗った。硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧下で濃縮し、tert-ブチル(E)-4-(3-(ジエトキシホスホリル)アリル)アゼパン-1-カルボキシレート(1.2g,粗製物)の粗製化合物を、淡褐色油状液体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 6.675-6.767(m, 1H), 5.594-5.700(dt, 1H), 4.036-4.202(m, 5H), 3.214-3.619(m, 5H), 2.176-2.2.209(t, 2H), 1.690-1.890(m, 4H), 1.459(s, 9H), 1.309-1.371(t, 6H).
【0224】
tert-ブチル 4-(3-(ジエトキシホスホリル)プロピル)アゼパン-1-カルボキシレートの合成:
tert-ブチル(E)-4-(3-(ジエトキシホスホリル)アリル)アゼパン-1-カルボキシレート(1.2g,3.2mmol)/エタノール(30mL)の攪拌した溶液に、10%Pd/C(200mg,10%w/w)を加えて、反応混合溶液を、バルーン水素雰囲気下において、室温で16時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、混合溶液を、Celiteにより濾過して、フィルターベッドを、10%メタノール/ジクロロメタン(50mL)で洗った。濾液を、減圧下で濃縮して、tert-ブチル 4-(3-(ジエトキシホスホリル)プロピル)アゼパン-1-カルボキシレート(700mg,1.856mmol,2工程全体で63%収率)を、無色油状液体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 3.899-3.998(m, 4H), 3.076-3.442(m, 4H), 1.610-1.739(m, 5H), 1.405-1.530(m, 3H), 1.374(s, 8H), 1.275-1.287(m, 2H), 1.184-1.220(t, 6H), 1.060-1.143(m, 1H).
【0225】
ジエチル(3-(アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホネートトリフルオロアセテートの塩の合成:
tert-ブチル 4-(3-(ジエトキシホスホリル)プロピル)アゼパン-1-カルボキシレート(80mg,mmol)/ジクロロメタン(2mL)の攪拌した溶液に、トリフルオロ酢酸(0.2mL)を0℃で加えた後、室温で3時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、混合溶液を、減圧下で濃縮して、ジエチル(3-(アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホネートトリフルオロアセテート塩(105mg,粗製物)の粗製化合物を、淡褐色油状液体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.402-8.489(d, 1H), 3.947-4.042(m, 3H), 2.903-3.234(m, 2H), 1.657-1.847(m, 4H), 1.322-1.560(m, 5H), 1.214-1.262(t, 6H).
【0226】
ジエチル(3-(1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホネートの合成:
4-クロロ-6,7-ジメトキシキナゾリン(410mg,1.833mmol)/DMF(10mL)の攪拌した溶液に、炭酸カリウム(760mg,5.499mmol)およびジエチル(3-(アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホネートトリフルオロアセテート塩(900mg,1.833mmol)を加えて、反応溶液を、90℃で2時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、水(100mL)を加えて、混合溶液を、酢酸エチル(2x50mL)で抽出した。有機相を合わせて、ブライン(50mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧下で濃縮した。粗製物質を、5%メタノール/ジクロロメタンで溶出するコンビフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、純粋なジエチル(3-(1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホネート(550mg,1.182mmol,64%収率)を、褐色ガム状固体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.529(s, 1H), 7.254-7.264(d, 1H), 7.206(s, 1H), 3.965-4.132(m, 5H), 3.991(s, 3H), 3.965(s, 3H), 3.673-3.734(m, 2H), 3.493(s, 1H), 2.034-2.071(m, 2H), 1.869-1.929(m, 2H), 1.685-1.757(m, 4H), 1.338-1.427(m, 2H), 1.261-1.320(t, 3H).
【0227】
(3-(1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホン酸の合成:
ジエチル(3-(1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホネート(40mg,0.086mmol)/ジクロロメタン(4mL)の攪拌した溶液に、TMS-Br(132mg,0.860mmol)を、0℃で滴加して、反応混合溶液を、室温で48時間攪拌した。反応の完了後、混合溶液を、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗製物質を、エーテルで洗い、(3-(1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホン酸(25mg,0.061mmol,71%収率)を、褐色固体として得た。
LCMS:(M+H) +: m/Z: 410.39.
【0228】
ナトリウム(3-(1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホネート(I-5)の合成:
(3-(1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホン酸(25mg,0.061mmol)/アセトニトリル(0.5mL)および水(0.5mL)の攪拌した溶液に、NaOH(4.6mg,0.116mmol)を、0℃で加えて、反応溶液を、真空凍結下で16時間攪拌して、純粋なナトリウム(3-(1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)プロピル)ホスホネートI-5(27mg,0.059mmol,98%収率)を、オフホワイトの固体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.118(s, 1H), 6.945(s, 1H), 6.854(s, 1H), 3.917(s, 3H), 3.801(s, 3H), 3.705-3.774(m, 2H), 3.474-3.570(m, 2H), 2.001-2.026(m, 2H), 1.783-1.871(m, 2H), 1.440-1.513(m, 6H), 1.297-1.325(bs, 2H), 1.139-1.186(m, 1H).
LCMS:(M+H) +: m/Z: 410.50(M-2Na+).
【0229】
実施例3
ナトリウム((1-(3-シアノ-6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネート(化合物I-7)の合成
【化15】
【0230】
tert-ブチル(E)-4-((ジエトキシ ホスホリル)メチレン)アゼパン-1-カルボキシレートの合成:
テトラエチルメチレンビス(ホスホネート)(1g,3.52mmol)/トルエン(10mL)の攪拌した溶液に、60%NaH(141mg,5.868mmol)を、0℃で加えて、その後混合溶液を、30分間攪拌して、tert-ブチル 4-オキソアゼパン-1-カルボキシレート(500mg,2.347mmol)を、0℃で一度に加えた。反応混合溶液を、室温で16時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、水(100mL)を加えて、混合溶液を、酢酸エチル(2x100mL)で抽出した。有機相を合わせて、ブライン(100mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧下で濃縮して、tert-ブチル(E)-4-((ジエトキシホスホリル)メチレン)アゼパン-1-カルボキシレート(500mg,粗製物)の粗製化合物を、淡褐色ガム状液体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 5.672-5.686(m, 1H), 4.038-4.134(m, 4H), 3.475-3.492(m, 4H), 2.283-2.573(m, 4H), 1.461(s, 9H), 1.294-1.370(t, 3H), 0.829-0.881(m, 2H).
【0231】
Tert-ブチル 4-((ジエトキシホスホリル)メチル)アゼパン-1-カルボキシレート:
tert-ブチル(E)-4-((ジエトキシホスホリル)メチレン)アゼパン-1-カルボキシレート(500mg,1.441mmol)/エタノール(10mL)の攪拌した溶液に、10%Pd/C(70mg)を加えて、反応混合溶液を、バルーン水素雰囲気下において、室温で16時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、混合溶液を、Celiteにより濾過して、フィルターベッドを、10%メタノール/ジクロロメタン(50mL)で洗った。濾液を、減圧下で濃縮して、tert-ブチル4-((ジエトキシホスホリル)メチル)アゼパン-1-カルボキシレート(250mg,0.716mmol,2工程全体で30%収率)を、無色油状液体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 3.900-3.999(m, 4H), 3.107-3.408(m, 4H), 1.897(s, 1H), 1.652-1.774(m, 5H), 1.469-1.495(m, 1H), 1.378(s, 9H), 1.317-1.3352(m, 1H), 1.162-1.262(m, 7H).
【0232】
ジエチル(アゼパン-4-イルメチル)ホスホネート化合物のトリフルオロ酢酸塩の合成:
tert-ブチル 4-((ジエトキシホスホリル)メチル)アゼパン-1-カルボキシレート(200mg,0.573mmol)/ジクロロメタン(2mL)の攪拌した溶液に、トリフルオロ酢酸(0.5mL)を、0℃で加えて、反応溶液を、室温で3時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、混合溶液を、減圧下で濃縮して、ジエチル(アゼパン-4-イルメチル)ホスホネートの粗製化合物のトリフルオロ酢酸塩(320mg,粗製物)を、淡褐色油状液体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.481-8.534(d, 2H), 3.936-4.043(m, 4H), 3.120-3.186(m, 2H), 2.963-3.057(m, 2H), 1.911-2.042(m, 3H), 1.557-1.854(m, 5H), .323-1.413(m, 1H), 1.216-1.251(m, 6H).
【0233】
ジエチル((1-(3-シアノ-6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネートの合成:
4-クロロ-6,7-ジメトキシキノリン-3-カルボニトリル(232mg,0.936mmol)/DMF(5mL)の攪拌した溶液に、炭酸カリウム(452mg,3.278mmol)およびジエチル(アゼパン-4-イルメチル)ホスホネート化合物のトリフルオロ酢酸塩(340mg,0.936mmol)を加えて、この反応溶液を、90℃で2時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、水(100mL)を加えて、混合溶液を、酢酸エチル(2x50mL)で抽出した。有機相を合わせて、ブライン(50mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧下で濃縮した。粗製物質を、コンビフラッシュクロマトグラフィーにより精製して、純粋なジエチル((1-(3-シアノ-6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネート(200mg,2.169mmol,46%収率)を、褐色ガム状固体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.626(s, 1H), 7.369(s, 1H), 7.325(s, 1H), 3.940-4.006(m, 10H), 3.55-3.3.70(m, 4H), 1.557-2.166(m, 9H), 1.20-1.1.25(t, 6H).
LCMS:(M+H) +: m/Z: 462.33.
【0234】
((1-(3-シアノ-6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホン酸の合成:
ジエチル((1-(3-シアノ-6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネート(200mg,0.433mmol)/ジクロロメタン(15mL)の攪拌した溶液に、TMS-Br(465mg,3.036mmol)を0℃で滴加した。反応混合溶液を、室温で48時間攪拌した。反応の完了後、混合溶液を、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗製物質を、エーテルで洗い、((1-(3-シアノ-6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホン酸(70mg,0.173mmol,40%収率)を、淡褐色ガム状固体として得た。
LCMS:(M+H) +: m/Z: 406.0.
【0235】
ナトリウム((1-(3-シアノ-6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネート(I-7)の合成:
((1-(3-シアノ-6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホン酸(70mg,0.173mmol)/アセトニトリル(0.5mL)および水(0.5mL)の攪拌した溶液に、NaOH(14mg,0.35mmol)を加えた後、この反応溶液を、真空凍結下で16時間攪拌して、粗製化合物を得た。粗製物質を、prepHPLC方法により精製した。しかし、prepHPLCの間に、二ナトリウム塩は淡黄色固体として、遊離酸の((1-(3-シアノ-6,7-ジメトキシキノリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホン酸 I-7(20mg,0.044mmol,23%収率)へと解離した。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.615(s, 1H), 7.361(s, 1H), 7.340(s, 1H), 3.938(s, 3H), 3.932(s, 3H), 3.654-3.710(t, 2H), 3.553-3.587(t, 2H), 2.052-2.174(m, 3H), 1.912-1.964(m, 1H), 1.746-1.832(m, 1H), 1.489-1.746(m, 4H).
LCMS:(M+H) +: m/Z: 406.0.
【0236】
実施例4
((((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホリル)ビス(オキシ))ビス(メチレン)ビス(2-メチルプロパノエート)(化合物I-10)の合成
【化16】
【0237】
ジエチル((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネートの合成:
4-クロロ-6,7-ジメトキシキナゾリン(300mg,1.33mmol)/アセトニトリル(3mL)の攪拌した溶液に、トリエチルアミン(0.56mL,4.01mmol)およびジエチル(アゼパン-4-イルメチル)ホスホネート(360mg,1.469mmol,遊離塩基として実施例3に従って製造される)を加えて、この反応溶液を、80℃で2時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、水(100mL)を加えて、混合溶液を、酢酸エチル(2x50mL)で抽出した。有機相を合わせて、ブライン(50mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧濃縮した。粗製物質を、コンビクロマトグラフィーにより精製して、純粋なジエチル((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネート(400mg,0.915mmol,68%収率)を、淡黄色固体として得た。
LCMS:(M+H)+: m/Z: 438.1.
【0238】
((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホン酸の合成:
ジエチル((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホネート(400mg,0.915mmol)/DCM(100vol)の攪拌した溶液に、TMS-Br(1.2mL,10.0eq)を-20℃で滴加した。反応混合溶液を、室温で48時間攪拌した。反応の完了を、TLCによりモニタリングした後、混合溶液を、減圧下で濃縮して、粗生成物を得た。粗製物質を、エーテルで洗い、((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホン酸(250mg,0.656mmol,71%収率)を、淡褐色固体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.73(s, 1H), 7.48(s, 1H), 7.17(s, 1H), 4.27-4.31(m, 2H), 3.96(s, 3H), ), 3.92(s, 3H), 3.85-3.89(m, 2H), 2.31-2.32(m, 1H), 2.03-2.05(m, 1H), 2.02-1.91(m, 3H), 2.0(m, 2H), 2.0(m, 2H),1.27-1.29(m, 1H).
LCMS:(M+H)+: m/Z: 382.0.
【0239】
((((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホリル)ビス(オキシ))ビス(メチレン)ビス(2-メチルプロパノエート)(I-10)の合成:
((1-(6,7-ジメトキシキナゾリン-4-イル)アゼパン-4-イル)メチル)ホスホン酸(150mg,0.393mmol)/DMF(5mL)の攪拌した溶液に、K2CO3(190mg,1.37mmol)およびクロロメチルイソブチレート(240mg,0.979mmol)を加えて、この反応溶液を、RTで16時間攪拌した。反応の進行を、TLCによりモニタリングした。反応の完了後、水(100mL)を加えて、混合溶液を、酢酸エチル(2x50mL)で抽出した。有機相を合わせて、ブライン(50mL)で洗い、硫酸ナトリウムで乾燥させて、減圧下で濃縮した。粗製物質を、prep-HPLCに供し、純粋なI-10(30mg,0.051mmol,13%収率)を、オフホワイトの固体として得た。
1H NMR:(400 MHz, DMSO) δ 8.37(s, 1H), 8.16(s, 1H), 7.30(s, 1H), 7.15(s, 1H), 5.55-5.62(m, 5H), 3.38-3.98(m, 10H), 3.62-3.73(s, 4H), 2.12-2.15(m, 3H), 1.89-1.93(m, 12H), 1.36-1.41(m, 2H), 1.06-1.09 (m, 12H).
LCMS:(M+H) +: m/Z: 582.0.
【0240】
実施例5
ENPP1阻害アッセイ
材料:
アッセイ緩衝液:1mM CaCl2,0.2mM ZnCl2,50mM Tris(pH9.0)
基質:8mM チミジン5'-モノホスフェート p-ニトロフェノールエステルナトリウム塩(Sigma Cat # T4510)
酵素:96ウェルの透明なアッセイプレートにおいて、5ng/L 組換えヒトENPP-1タンパク質(R&D Cat #6136-EN-010)/DMSO
方法:
薬剤の8点連続希釈液を、アッセイ緩衝液で10×に調製し、10μM、3μM、1μM、0.3μMおよび0μMの最終アッセイ濃度で開始する。DMSOの希釈液をコントロールとして含めた。各ウェルは二連にして、アッセイプレートを次の通りに設定した:81μLのアッセイ緩衝液+10μLのENPP1阻害剤またはDMSO+5μLの基質+4μLの酵素。酵素および基質の両方を、ウェルの反対側に加えて、全てのウェルが両方の成分を有するまで、確実に相互作用しないようにした。次いで、プレートを10秒間軽く遠心分離し、その後37℃で45分間インキュベートした。Envisionプレートリーダーを使用して405nmでの吸光度を測定することによって、この反応を定量化した。
【0241】
IC50の計算:
IC50値は、GraphPad Prism5ソフトウェアを使用して決定される。データは、薬物の各濃度の阻害パーセントとしてソフトウェアにX-Yプロットとして入力した。薬剤の濃度値を対数変換し、GraphPadソフトウェア内の「シグモイド用量応答(可変グラジエント)」オプションを使用して、非線形回帰を実施して、データをモデル化し、IC50値を計算した。報告されるIC50値は、50%阻害に達した薬剤の濃度である。
【0242】
【0243】
実施例6
BPNPP基質を用いたCndPアッセイ
材料:
アッセイ緩衝液:50mM Hepes,150mM NaCl,2mM KCl,5mM MnCl
2:pH8.0(pH設定後にMnCl
2を添加)
基質:1mM ビス(p-ニトロフェニル)ホスフェートナトリウム塩(BPNPP)(ストック:10mM(10X))。酵素:8ng/L 組換えCndP(ストック:2.343 mg/mL)
DMSO
96ウェルの透明なアッセイプレート
方法:
薬剤の10点連続希釈液を、アッセイ緩衝液で10×に調製し、100μM、30μM、10μM、3μM、1uM、0.3uM、0.1μM、0.03μM、0.01μM、0.003μMの最終アッセイ濃度で開始する。DMSOの希釈液をコントロールとして含めた。各ウェルは二連にして、アッセイプレートを次の通りに設定した:70μL アッセイ緩衝液+10μL 酵素(80ng)+10μL 薬剤またはDMSO+10μL 基質。その後、プレートを10秒間軽く遠心分離し、37℃で45分間インキュベートした。Envisionプレートリーダーを使用して405nmでの吸光度を測定することによって、反応を定量化した。データは、GraphPad Prism 8.0を使用して分析した。
【表30】
【0244】
実施例7
C-DI-AMP基質を用いるCdnP HPLCアッセイ
材料:
アッセイ緩衝液:50mM TRIS(pH7.5), 1mM MnCl2
基質:1000μM c-di-AMP(Invivogen: tlrl-nacda)
酵素:20μM 組換えCdnPタンパク質(ストック:2.343mg/mL)
AMP(Sigma: A1752-5G)
5'-pApAナトリウム塩(Invivogen: tlrl-napapa)
DMSO
反応停止緩衝液:0.5M EDTA(Thermo: AM9261)
水 HPLCグレード(Fisher Scientific, catalog: W5-4)
アセトニトリル HPLCグレード(Fisher Scientific, catalog: A955-4)
HCOOH(Sigma Aldrich, Catalog F0507)
【0245】
方法:
薬剤の8点連続希釈液を、アッセイ緩衝液で10×に調製し、10μM、3μM、1μM、0.3μM、0.1μM、0.03μM、0.01μM、0.003μMの最終アッセイ濃度で開始する。DMSOの希釈液をコントロールとして含めた。各チューブ2本にして、アッセイを、次の通りに設定した:14μL アッセイ緩衝液+2μL CdnP阻害剤またはDMSO+2μL 基質+2μL 酵素(2μM)。その後、チューブを10秒間軽く遠心分離し、37℃で120分間インキュベートした。反応を、2μLのEDTAを用いてクエンチし、78μLの水で希釈した。次に、各サンプル20μLを、C-18逆相カラム(4.6×100mm, 3.5μm, Eclipse pulse C-18, Agilent PN:959961-902)を備えたAgilent 1100 series HPLCにより室温で分析した。移動相B(0.1%HCOOH/水)および移動相C(100%アセトニトリル)の溶液を、超音波装置を用いて脱気した。移動相の流速は、0.7mL/minであった。HPLCの分離は、連続グラジエント溶出を用いて行った。溶出プログラムは、以下の通りである:0分で、100%B,0%C;10分で、100%B,0%C;20分で、95%B,5%C;25分で、90%B,10%C;30分で、50%B、50%C;35分で、50%B,10%C;および37分で100%B,0%C。ピークを、254nmで検出し、ピーク面積は、装置に備えられたAgilent ChemStation 1100 HPLCソフトウェアを用いて計算した。サンプル中のAMP、c-di-AMP、pApAは、標準物質の保持時間と比較することにより同定された。AMP標準曲線は、HPLC法の線形応答を確認するために作成した。AMPの8つの希釈液(500、200、100、50、20、10、5および2μM)を、原液から水を用いて調製した。各サンプル(20μL)を、HPLCにインジェクションし、ピーク面積を計算してAMPピーク面積対濃度の標準曲線を作成した。標準曲線は、完全な線形応答を示した。コントロール反応(基質と酵素のみの反応、薬剤無添加)におけるAMPピーク面積を、酵素活性100%と見なした。薬剤存在下での阻害%は、その反応におけるAMPピーク面積を計算し、コントロールの反応と比較することにより決定した。代表的な化合物の結果を、下記の表5に示す。
【表31】
【0246】
実施例8
医薬組成物の例示
これらの実施例にわたって使用される「有効成分」とは、1以上の本開示の化合物またはその医薬的に許容される塩、溶媒和物、多形体、水和物および立体化学異性体に関するか、またはそれらから得られる医薬組成物に関する。
【0247】
本開示の製剤についての処方の代表例は、下記に示した通りである。本開示に従って所望の用量で本開示の化合物を用いる様々なその他の剤型、例えば、充填ゼラチンカプセル、乳濁液/懸濁液、軟膏、坐剤またはチュアブル錠を、本明細書において用いることができる。好適な剤形を製造するための様々な従来技術を用いて、本明細書に開示されたような、また標準的な参考文献(例えば、英国および米国薬局方, Remington's Pharmaceutical Sciences(Mack Publishing Co.) and Martindale The Extra Pharmacopoeia(London The Pharmaceutical Press)にあるような医薬組成物を製造することができる。これら参考文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0248】
【0249】
あるいは、1錠当たり、開示された化合物(約100mg)、ラクトース(一水和物)(50mg)、トウモロコシデンプン(国産)(50mg)、ポリビニルピロリドン(PVP25)(例えば、BASF, Ludwigshafen, Germany)(10mg)およびステアリン酸マグネシウム(2mg)を用いる。有効成分、ラクトースおよびデンプンの混合物を、5%(質量比)PVP水溶液と共に造粒する。乾燥後、顆粒を、ステアリン酸マグネシウムと5分間混和する。この混合物を、一般的な打錠プレス(例えば、錠剤フォーマット:直径8mm、曲率半径12mm)を用いて成形する。加える成形圧力は、典型的には約15kNである。
【0250】
あるいは、開示された化合物を、経口用に製剤化された懸濁液にて投与することができる。例えば、所望の開示された化合物(約100~5000mg)、エタノール(96%)(1000mg)、キサンタンガム(400mg)および水(99g)を、攪拌しながら合わせる。所望の開示された化合物(約10~500mg)の単回用量を、経口懸濁液(10mL)によって提供することができる。
【0251】
これらの実施例において、有効成分は、同じ量の本開示の任意の化合物で、特に同じ量の実施例化合物で置き換えられ得る。ある状況においては、例えば、錠剤の形態に代えて、カプセル(例えば、充填ゼラチンカプセル)を用いるのが望ましい場合がある。錠剤またはカプセルの選択は、部分的には、使用される特定の開示された化合物の生理化学的特徴により決まる。
【0252】
経口製剤を製造するための有用な別の担体の例は、ラクトース、ショ糖、デンプン、タルク、ステアリン酸マグネシウム、結晶セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、グリセリン、アルギン酸ナトリウム、アラビアガムなどである。これらの別の担体を、所望の溶解、吸収および製造上の特徴に必要な場合には、上記の所定のものに代えて用いることができる。
【0253】
ヒトに使用するための医薬組成物に使用するための錠剤当たりの開示された化合物の量は、適切な動物モデル(例えば、ラットおよび少なくとも一つの齧歯類以外の種)で得られた毒性データおよび薬物動態データの両方から決定され、ヒトの臨床試験データに基づいて調節される。例えば、開示された化合物は、約10~1000mg/錠剤用量単位レベルで存在することが適切であると考えられる。
【0254】
【0255】
あるいは、静脈注射用の医薬組成物を用いることが可能であり、この組成物は、生理食塩中の開示された化合物(約100~5000mg)、ポリエチレングリコール400(15g)および水(250g)を、所望により最大約15%のCremophor EL、所望により最大15%のエチルアルコールおよび所望により最大2当量の医薬的に好適な酸(例えば、クエン酸または塩酸)と共に含み得る。前記注射用組成物の製造は、以下の通りに行うことができる:開示された化合物およびポリエチレングリコール400を、攪拌しながら水に溶かす。溶液を、滅菌濾過し(孔径0.22μm)、無菌条件下で加熱滅菌済みの点滴用ボトルに充填する。点滴用ボトルを、ゴムシールで密閉する。
【0256】
さらなる実施例において、静脈内注射のための医薬組成物を用いることが可能であり、この組成物は、開示された化合物(約10~500mg)、標準生理食塩水を、所望により最大15重量%のCremophor EL、所望により最大15重量%のエチルアルコールおよび所望により最大2当量の医薬的に好適な酸(例えば、クエン酸もしくは塩酸)と共に含み得る。組成物の製造は、以下の通りに行うことができる:所望の開示された化合物を、攪拌しながら生理食塩水に溶かす。所望によりCremophor EL、エチルアルコールまたは酸を加える。溶液を滅菌濾過し(孔径0.22μm)、無菌条件下で加熱滅菌済みの点滴用ボトルに充填する。点滴用ボトルを、ゴムシールで密閉する。
【0257】
本実施例においては、有効成分は、同量の本発明のいずれかの化合物、特に同量の実施例化合物に置き換えることができる。
【0258】
ヒト用の医薬組成物に使用されるアンプル当たりの開示された化合物の量は、適切な動物モデル(例えば、ラットおよび少なくとも一つの齧歯類以外の種)から得られた毒性データおよび薬物動態データの両方から決定され、ヒトの臨床試験データに基づいて調整される。例えば、本開示の化合物は、錠剤あたり約10~1000mgの用量単位レベルで存在することが適切であると考えられる。
【0259】
非経口製剤に適切な担体は、例えば、水、生理食塩水などであり、それは可溶化剤またはpH調節剤として役立つトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウムなどと共に用いることができる。非経口製剤は、好ましくは、用量単位当たり開示された化合物50~1000mgを含む。
【0260】
上述した様々な実施形態は、さらなる実施形態を提供するために組み合わされ得る。本明細書において言及され、および/または出願データシートに記載されている米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許文献は、全てその全てが参照により本明細書に組み込まれる。実施形態の側面は、またさらなる実施形態を提供するために、様々な特許、出願および刊行物の概念を採用するために、必要に応じて改変することができる。
【0261】
2020年12月9日に提出した米国仮出願番号第63/123,287号および2020年12月9日に提出した米国仮出願番号第63/123,304号は、参照によりその全てを本明細書に組み込まれる。
【0262】
これらおよびその他の変更は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に対して為され得る。一般的に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を、明細書および特許請求の範囲に開示された特定の実施形態に限定するように解釈されるべきではなく、特許請求の範囲に記載の権利範囲と等価の全ての範囲と共に、全ての可能な実施形態を含むように解釈されるべきである。従って、特許請求の範囲は、本開示内容により限定されるものではない。
【国際調査報告】