IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アルバダ セラピューティクス インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-500250COVID-19の治療のためのDSG2組成物及び方法
<>
  • 特表-COVID-19の治療のためのDSG2組成物及び方法 図1
  • 特表-COVID-19の治療のためのDSG2組成物及び方法 図2A
  • 特表-COVID-19の治療のためのDSG2組成物及び方法 図2B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-05
(54)【発明の名称】COVID-19の治療のためのDSG2組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20231225BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20231225BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20231225BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231225BHJP
   C07K 14/47 20060101ALI20231225BHJP
   C07K 16/00 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20231225BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231225BHJP
【FI】
C07K19/00 ZNA
A61P9/00
A61P37/06
A61P31/14
A61K39/395 Y
C07K14/47
C07K16/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023560254
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-12
(86)【国際出願番号】 US2021063433
(87)【国際公開番号】W WO2022132854
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/125,583
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/274,715
(32)【優先日】2021-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523223191
【氏名又は名称】アルバダ セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ARVADA THERAPEUTICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】フー、シー イン
(72)【発明者】
【氏名】タイラー、ライアン エドワード
【テーマコード(参考)】
4B065
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA83X
4B065AA87X
4B065AA90X
4B065AA90Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C085AA33
4C085BB11
4C085BB31
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB42
4C085CC21
4C085CC22
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA41
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は主に、本明細書に開示される組成物を投与することによってCOVID-19を治療する組成物及び方法に関する。この方法は、本開示に記載される組成物を使用した、COVID-19後症候群及び心筋症の治療も含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
デスモグレイン2(DSG2)融合ポリペプチドを含む単離ポリペプチドであって、前記DSG2融合ポリペプチドは、
a.DSG2タンパク質(配列番号1)の全体又は一部;及び
b.免疫グロブリンタンパク質の全体又は一部
を含む、単離ポリペプチド。
【請求項2】
前記DSG2融合ポリペプチドは、前記DSG2タンパク質の一部を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項3】
前記DSG2タンパク質の前記一部は、前記DSG2タンパク質の細胞外領域の全体又は一部である、請求項2に記載の単離ポリペプチド。
【請求項4】
DSG2タンパク質の前記一部は、DSG2タンパク質の細胞外領域全体である、請求項3に記載の単離ポリペプチド。
【請求項5】
DSG2タンパク質の前記細胞外領域全体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む、請求項4に記載の単離ポリペプチド。
【請求項6】
前記DSG2タンパク質の前記一部は、前記DSG2タンパク質の細胞外領域の一部である、請求項3に記載の単離ポリペプチド。
【請求項7】
前記DSG2タンパク質の細胞外領域の前記一部は少なくとも1つのドメインを含み、前記少なくとも1つのドメインは、細胞外カドヘリンドメイン1(EC1)、細胞外カドヘリンドメイン2(EC2)、細胞外カドヘリンドメイン3(EC3)、細胞外カドヘリンドメイン4(EC4)、又は細胞外アンカードメイン(EA)である、請求項6に記載の単離ポリペプチド。
【請求項8】
前記DSG2タンパク質の細胞外領域の前記一部は2つのドメインを含む、請求項7に記載の単離ポリペプチド。
【請求項9】
前記DSG2タンパク質の細胞外領域の前記一部は、EC4EA、EC1EC2、EC2EC3、EC3EC4、EC1EA、EC1EC3、EC2EC4、又はEC3EAである、請求項8に記載の単離ポリペプチド。
【請求項10】
前記DSG2タンパク質の細胞外領域の前記一部は3つのドメインを含む、請求項7に記載の単離ポリペプチド。
【請求項11】
前記DSG2タンパク質の細胞外領域の前記一部は、EC1EC3EA、EC1EC4EA、EC1EC3EA、EC3EC4EA、EC1EC2EC3、EC2EC3EC4、又はEC2EC4EAである、請求項10に記載の単離ポリペプチド。
【請求項12】
前記DSG2タンパク質の細胞外領域の前記一部は4つのドメインを含む、請求項7に記載の単離ポリペプチド。
【請求項13】
前記DSG2タンパク質の細胞外領域の前記一部は、EC1EC2EC4EA、EC2EC3EC4EA、EC1EC2EC3EC4EA、EC1EC2EC3EC4、又はEC1EC2EC3EAである、請求項12に記載の単離ポリペプチド。
【請求項14】
前記DSG2融合ポリペプチドは、免疫グロブリンタンパク質の一部を含む、請求項1に記載の単離ポリペプチド。
【請求項15】
前記免疫グロブリンタンパク質は、IgG、IgM、IgA、IgD、又はIgEである、請求項1又は14に記載の単離ポリペプチド。
【請求項16】
前記免疫グロブリンはIgGである、請求項15に記載の単離ポリペプチド。
【請求項17】
前記IgGは、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4である、請求項16に記載の単離ポリペプチド。
【請求項18】
前記免疫グロブリンタンパク質の前記一部は、Fc領域、Fab領域、重鎖可変(VH)ドメイン、重鎖定常ドメイン、軽鎖可変(VL)ドメイン、又は軽鎖定常ドメインである、請求項14に記載の単離ポリペプチド。
【請求項19】
前記免疫グロブリンタンパク質の前記一部はFc領域である、請求項18に記載の単離ポリペプチド。
【請求項20】
前記Fc領域は、IgG1Fc領域(配列番号5)、IgG2Fc領域(配列番号7)、IgG3Fc領域(配列番号9)、又はIgG4Fc領域(配列番号11)である、請求項19に記載の単離ポリペプチド。
【請求項21】
前記免疫グロブリンタンパク質の前記一部は重鎖定常ドメインである、請求項18に記載の単離ポリペプチド。
【請求項22】
前記重鎖定常は、IgG1重鎖定常ドメイン(配列番号4)、IgG2重鎖定常ドメイン(配列番号6)、IgG3重鎖定常ドメイン(配列番号8)、又はIgG4重鎖定常ドメイン(配列番号10)である、請求項21に記載の単離ポリペプチド。
【請求項23】
前記DSG2融合ポリペプチドはリンカーをさらに含む、請求項1~22のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド。
【請求項24】
前記リンカーは約5アミノ酸から約50アミノ酸の長さである、請求項23に記載の単離ポリペプチド。
【請求項25】
前記リンカーはGGGGS(配列番号12)である、請求項24に記載の単離ポリペプチド。
【請求項26】
前記リンカーはEAAAK(配列番号13)である、請求項24に記載の単離ポリペプチド。
【請求項27】
前記DSG2融合ポリペプチドはシグナル配列をさらに含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド。
【請求項28】
請求項1~27のいずれか一項に記載の単離ポリペプチドを発現する細胞。
【請求項29】
血清抗DSG2抗体に関連する状態を治療する方法であって、対象を請求項1~27のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は請求項28に記載の細胞と接触させることを含む方法。
【請求項30】
前記状態は心筋症である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記状態は自己免疫疾患である、請求項29又は30に記載の方法。
【請求項32】
対象におけるCOVID-19後症候群を治療する方法であって、
(i)対象を請求項1~27のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は請求項28に記載の細胞と接触させること、及び
(ii)不整脈、心筋炎、心不全、息切れ、疲労、浮腫、起座呼吸、運動の制限(limitations to exertion)、認知能力の低下、動悸、めまい、失神、及び立ちくらみからなる群から選択されるCOVID-19後症候群に関連する1つ以上の症状を評価すること
を含み、前記治療は、COVID-19後症候群に関連する前記1つ以上の症状を改善するのに有効である、方法。
【請求項33】
前記対象の血清は、抗DSG2抗体を含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記対象は以前にCOVID-19と診断されている、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記対象の血清は、抗SARS-CoV-2抗体を含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記対象の血清は、抗SARS-CoV-2抗体を含まない、請求項34に記載の方法。
【請求項37】
対象におけるCOVID-19を治療する方法であって、
(i)前記対象を請求項1~27のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は請求項28に記載の細胞と接触させること、及び
(ii)発熱又は悪寒、咳、息切れ又は呼吸困難(difficulty breathing)、疲労、筋肉又は体の痛み、頭痛、味覚・嗅覚障害、喉の痛み、鼻づまり又は鼻水、吐き気又は嘔吐、下痢、呼吸困難(trouble breathing)、胸部の持続的な痛み又は圧迫感からなる群から選択されるCOVID-19に関連する1つ以上の症状を評価すること
を含み、前記治療は、COVID-19に関連する前記1つ以上の症状を改善するのに有効である、方法。
【請求項38】
対象における心筋症を治療する方法であって、
(i)前記対象を請求項1~27のいずれか一項に記載の単離ポリペプチド又は請求項28に記載の細胞と接触させること、及び
(ii)不整脈、動悸、心筋炎、心不全、低心拍出量、及び駆出率の低下からなる群から選択される心筋症に関連する1つ以上の症状を測定すること
を含む方法。
【請求項39】
前記心筋症は不整脈原性右室心筋症である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記心筋症は、ウイルス、細菌、寄生虫、又は真菌によって引き起こされる、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記心筋症はウイルスによって引き起こされ、前記ウイルスは、SARS-CoV2、アデノウイルス、肝炎ウイルス、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、エコーウイルス、エプスタイン・バーウイルス、風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、又はHIVである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記心筋症は細菌によって引き起こされ、前記細菌は、ブドウ球菌、レンサ球菌、又はボレリアである、請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記心筋症は寄生虫によって引き起こされ、前記寄生虫はトリパノソーマ又はトキソプラズマである、請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記心筋症は真菌によって引き起こされ、前記真菌はカンジダ、アスペルギルス、又はヒストプラズマである、請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記対象の血清は、抗DSG2抗体を含む、請求項38に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
配列表
本出願は、電子形式の配列表とともに提出されている。配列表ファイルは2021年12月10日に作成された。配列表の電子形式の情報は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
開示分野
本開示は、主に、本明細書に開示される組成物を投与することによってCOVID-19を治療するためのDSG2に基づく方法に関する。この方法には、COVID-19の長期的影響(COVID-19後症候群やCOVID-19後心臓症候群などであるが、これらに限定されない)に関連する、心筋の炎症及び/又は駆出率の低下/心不全/心筋症などの治療適応症の治療、ならびにDSG2自己抗体に関連する疾患、例えば不整脈原性右室心筋症(ARVC)、サルコイドーシスの治療も含まれる。
【背景技術】
【0003】
2019年初頭、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)がパンデミックを引き起こし、数百万人がコロナウイルス感染症(COVID-19と呼ばれる)に感染した(非特許文献1)。これにより、世界中で100万人以上の死者が出ている。SARS-CoV-2に感染した患者は、無症状から重篤な疾患に至るまで、様々な臨床症状を経験し得る。最近の研究では、場合によっては、たとえ軽症であった人でも、最初の回復後も症状が継続する可能性があることが示唆されている。この状態は、COVID-19後症候群、又は「long COVID-19」と呼ばれている。さらに、患者は、COVID-19の急性感染が治まった後でも、駆出率の低下や心筋症を発症する可能性がある。COVID-19後の心臓の兆候や症状は、他の臓器系への影響と共存する場合もあるが、単独で存在する場合もある。COVID後の心筋症患者は、無症状の患者から劇症型心不全、不整脈、及び/又は心臓突然死を患う患者まで多岐にわたる。
【0004】
COVID-19ウイルス、SARS-CoV-2は、多数の臓器系、特に肺及び心臓に影響を与える。心臓バイオマーカー、特に高感度トロポニン及び/又はクレアチンキナーゼMBの上昇が、COVID-19感染症患者で一般的に観察されている。Bavishiらによって実施された臨床分析のレビューで、心筋損傷がCOVID-19感染症患者の20%で発生していることが発見された(非特許文献2)。COVID-19に関連する心筋損傷の考えられるメカニズムには、1)心筋炎を引き起こす病的なT細胞及び単球を介した過剰炎症及びサイトカインストーム、2)心筋細胞の損傷を引き起こす呼吸不全及び低酸素血症、3)ACE2発現の下方制御とそれに続く心筋細胞における保護シグナル伝達経路、4)凝固亢進と冠状微小血管血栓症の発症、5)びまん性内皮損傷、及び/又は6)冠状動脈プラーク破裂又は供給と需要の不調和を引き起こして心筋虚血/心筋梗塞をもたらす炎症及び/又はストレスが含まれるが、これらに限定されない。
【0005】
COVID-19後症候群は、心血管損傷を含む複数の臓器損傷とも関連している。COVID-19感染症から回復して数箇月後に行われた画像検査では、軽度のCOVID-19感染症の症状しか経験しなかった人であっても、心筋への持続的な損傷が示された。COVID-19後症候群は、不整脈のリスク増加を伴う心筋炎及び/又は心筋症とも関連しているようである。
【0006】
現在、COVID-19及びCOVID-19後症候群の治療及び/又は管理のための治療戦略が不足している。COVID-19の心臓症状は、これらの患者に多大なリソースと潜在的な集中治療支援を必要とするため、すでにパンク状態にある医療システムに多大なストレスを与えている。特に、COVID-19及びCOVID-19後症候群に関連する心筋損傷の発生率及び死亡率を低下させるために、炎症反応を阻害する治療法の開発が急務となっている。本開示は、COVID-19、COVID-19後症候群及び/又はCOVID-19後心臓症候群などであるがこれらに限定されない疾患を治療するためのDSG2融合ポリペプチドベースの組成物及び方法を提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Wu et al.,2020 Nature 579,265-269
【非特許文献2】Prog Cardiovasc Dis.2020年9月~10月;63(5):682-689
【発明の概要】
【0008】
本開示は、単離ポリペプチドを含む組成物を提供する。本開示のポリペプチドは、DSG2タンパク質の全体又は一部を含み得る。いくつかの実施形態において、単離ポリペプチドはデスモグレイン2(DSG2)融合ポリペプチドである。DSG2融合ポリペプチドは、(a)DSG2タンパク質(配列番号1)の全体又は一部;及び/又は(b)免疫グロブリンタンパク質の全体又は一部を含み得る。一実施形態において、DSG2ポリペプチドは、DSG2タンパク質の一部を含み得る。DSG2タンパク質の前記一部には、DSG2タンパク質の細胞外領域が含まれ得る。いくつかの態様において、DSG2の細胞外領域全体が融合ポリペプチドに含まれ得る。一実施形態において、DSG2の細胞外領域全体は、配列番号3のアミノ酸配列を含む。本開示の実施形態はまた、DSG2の細胞外領域の一部を含み得る。例えば、細胞外領域の一部は、細胞外カドヘリンドメイン1(EC1)、細胞外カドヘリンドメイン2(EC2)、細胞外カドヘリンドメイン3(EC3)、細胞外カドヘリンドメイン4(EC4)、及び/又は細胞外アンカードメイン(EA)であり得る。いくつかの態様において、DSG2融合ポリペプチドは、細胞外領域の2つのドメインを含む。例えば、前記2つのドメインは、EC4EA、EC1EC2、EC2EC3、EC3EC4、EC1EA、EC1EC3、EC2EC4、及び/又はEC3EAであり得る。いくつかの態様において、DSG2融合ポリペプチドは、細胞外領域の3つのドメインを含む。例えば、前記3つのドメインは、EC1EC3EA、EC1EC4EA、EC1EC3EA、EC3EC4EA、EC1EC2EC3、EC2EC3EC4、及び/又はEC2EC4EAであり得る。いくつかの態様において、DSG2融合ポリペプチドは、細胞外領域の4つのドメインを含み得る。例えば、前記3つのドメインは、EC1EC2EC4EA、EC2EC3EC4EA、EC1EC2EC3EC4EA、EC1EC2EC3EC4、及び/又はEC1EC2EC3EAであり得る。
【0009】
DSG2融合ポリペプチドは、免疫グロブリンの一部を含み得る。前記一部は、Fc領域、Fab領域、重鎖可変(VH)ドメイン、重鎖定常ドメイン、軽鎖可変(VL)ドメイン、及び/又は軽鎖定常ドメインであり得る。一態様において、免疫グロブリンの前記一部はFc領域であり得る。免疫グロブリンは、IgG、IgM、IgA、IgD、及び/又はIgEであり得る。非限定的な例は、免疫グロブリンはIgGであり得る。組成物は、IgG1、IgG2、IgG3、及び/又はIgG4などのIgGを含み得る。本開示において有用な免疫グロブリンの一部の非限定的な例には、IgG1Fc領域(配列番号5)、IgG2Fc領域(配列番号7)、IgG3Fc領域(配列番号9)、IgG4Fc領域(配列番号11)、IgG1重鎖定常ドメイン(配列番号4)、IgG2重鎖定常ドメイン(配列番号6)、IgG3重鎖定常ドメイン(配列番号8)、IgG4又は重鎖定常ドメイン(配列番号10)が挙げられる。
【0010】
本開示のポリペプチドは、リンカー及び/又はシグナル配列をさらに含み得る。リンカーは、約5アミノ酸から約50アミノ酸の長さであり得る。一実施形態において、リンカーはGGGGS(配列番号12)であり得る。別の態様において、リンカーはEAAAK(配列番号13)であり得る。
【0011】
本開示はまた、本明細書に記載の組成物を使用する治療方法も提供する。いくつかの実施形態において、本開示は、COVID-19後症候群を治療する方法を提供する。このような方法は、i)対象を本開示の単離ポリペプチドと接触させること、及び(ii)不整脈、心筋炎、心不全、息切れ、疲労、浮腫、起座呼吸、運動の制限(limitations to exertion)、認知能力の低下、動悸、めまい、失神、及び/又は立ちくらみからなる群から選択されるCOVID-19後症候群に関連する1つ以上の症状を測定することを含み得る。本開示のポリペプチドによる治療は、COVID-19後の心臓症候群に関連する1つ以上の症状を改善するのに有効であり得る。いくつかの態様において、COVID-19後の対象は、当技術分野で知られている方法を使用して以前にCOVID-19と診断されている。一態様において、対象の血清は、検出可能なレベルの抗SARS-CoV-2抗体を有する。いくつかの実施形態において、対象の血清は、検出可能なレベルの抗SARS-CoV-2抗体を有しない。また、本明細書では、本明細書に記載の組成物を投与することによって、COVID-19を有する対象を治療する方法も提供される。いくつかの実施形態において、COV1D-19又はCOVID-19後の対象の血清は、抗DSG2抗体を有し得る。
【0012】
本開示はまた、血清DSG2自己抗体に関連する状態を治療する方法を提供する。このような方法は、本明細書に記載の組成物又は本明細書に記載の組成物を発現する細胞を対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、前記状態は心筋症であり得る。いくつかの態様において、前記状態は自己免疫疾患であり得る。
【0013】
本開示は、対象における心筋症を治療する方法を提供する。このような方法は、対象を本開示の単離ポリペプチド又は細胞と接触させ、続いて不整脈、動悸、心筋炎、心不全、低心拍出量、及び/又は駆出率の低下などの心筋症に関連する1つ以上の症状を測定することを含み得る。非限定的な例として、心筋症は不整脈原性右室心筋症(ARVC)であり得る。心筋症は、ウイルス(例えば、SARS-CoV2、アデノウイルス、肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、パルボウイルス、単純ヘルペスウイルス、エコーウイルス、エプスタイン・バーウイルス、風疹、サイトメガロウイルス、又はHIV)、細菌(ブドウ球菌、レンサ球菌、又はボレリア)、寄生虫(トリパノソーマ又はトキソプラズマ)、又は真菌(カンジダ、アスペルギルス、又はヒストプラズマ)によっても引き起こされ得る。いくつかの実施形態において、対象は、血清中に検出可能なレベルの抗DSG2抗体を有し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
本開示の特定の実施形態の前述の及び他の目的、特徴及び利点は、以下の説明及び添付の図面から明らかになるであろう。図面は必ずしも縮尺どおりではない。代わりに、本開示の様々な実施形態の原理を説明することに重点が置かれている。
図1図1は、健康対照(N=152)、COVID-19後(N=300)、及び不整脈原性右室心筋症サンプル(N=5)における抗DSG2抗体シグナルのレベルの比較を示すグラフである。HCは健康対照、PCはCOVID-19後、ARVCは不整脈原性右室心筋症、S/NCはシグナル/陰性対照。個々の菱形は、それぞれ単一の血清サンプルを表す。箱及びひげの限界は、それぞれ25-75パーセンタイル及び10-90パーセンタイルを表す。P値は、ノンパラメトリックランクベースのウィルコクソン・マン・ホイットニー両側検定に基づいている。
図2A図2Aは、COVID-19感染後の採取月ごとに分析された全サンプルにおける6か月目及び9か月目の抗DSG2抗体シグナルを示す棒グラフである(N=300)。
図2B図2Bは、COVID-19感染後の採取月ごとに分析されたペアサンプルにおける6か月目及び9か月目の抗DSG2抗体シグナルを示す棒グラフである(N=17)。
【発明を実施するための形態】
【0015】
詳細な説明
I.導入
COVID-19の最近の流行は、人間に重篤な呼吸器疾患を引き起こし、世界中で人間の健康を脅かしている。COVID-19を引き起こす新型ウイルスは、国際ウイルス分類委員会(ICTV)によって重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)と命名された。これは、SARS-CoV-2がSARSウイルスと密接に関連しているためである。
【0016】
SARS-CoV-2粒子は、特殊な表面糖タンパク質(スパイクタンパク質)を使用して、肺のII型肺胞上皮細胞に最も豊富に存在するアンジオテンシン変換酵素2(ACE2)に結合することにより、宿主細胞に侵入する。その後、コロナウイルスのゲノムが宿主細胞内で複製される。各組織のACE2受容体の密度は、その組織におけるCOVID-19感染症の重症度と相関する。ACE2受容体は、動脈、心臓、腎臓、及び腸の細胞の外表面にも発現する。その結果、COVID-19は非常に重篤な症例では多臓器不全を引き起こす可能性がある。
【0017】
COVID-19の症状は、軽度(例えば、発熱、咳、息切れ)から、肺炎や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症や敗血症性ショック、急性腎障害を含む多臓器不全、及び心臓損傷などの重篤なものまで多岐にわたる。呼吸器疾患はCOVID-19感染症の主な臨床症状であるが、多臓器不全も発生する可能性がある。COVID-19の死亡症例を分析したある多施設共同研究では、症例の40%で心筋損傷が死因であることが観察された(Ruan Q.et al.Intensive Care Med.2020;46(5):846-848)。不整脈、心筋炎、急性心筋損傷など、様々な心臓合併症が活動性COVID-19感染症に関連している。全身性炎症、心筋細胞の直接損傷、サイトカインストーム、及び低酸素症は、多因子性病態生理学で提案されているメカニズムの一部である。COVID-19に関連する不整脈は、QT延長を引き起こす可能性のあるアジスロマイシン、ヒドロキシクロロキン、及び一部の抗ウイルス薬による治療に起因することもある。COVID-19における急性心筋損傷は、無症候性の心筋トロポニンの上昇から劇症型心筋炎や循環性ショックまで多岐にわたる。心筋損傷は、単独で現れることもあれば、感染の臨床経過に基づいて不整脈と一緒に起こることもある。
【0018】
COVID-19における炎症促進環境と交感神経刺激の増加は、不整脈、既存の心不全(HF)の悪化、又は新たなHFの発症などの心血管合併症のリスクをさらに高める可能性がある。重篤な疾患を患っている患者では、低酸素症と電解質障害により不整脈のリスクがさらに高まる可能性がある。
【0019】
場合によっては、患者は患者サンプルからウイルス粒子が検出されてから数週間、数か月、又は数年後に症状を経験する可能性がある(本願では、COVID-19後症候群又は「long COVID-19」又はポストウイルス症候群と呼ばれる)。COVID-19後症候群は心臓症状と関連することもあり、本明細書ではCOVID-19後心臓症候群と呼ばれる。COVID-19から回復した多くの患者は、MRIで測定すると、心筋に持続的な炎症を示す。ある研究では、症候性及び無症候性のCOVID-19患者の最大60%が、COVID-19の急性期からの回復後平均71日で進行中の心筋炎症のMRI証拠を示した(Puntmann et al.JAMA Cardiol.2020;5(11):1265-1273;その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。より小規模な研究では、アスリートの15%に、COVID-19からの回復後に心筋炎の兆候が見られた(Metzel et al.2020,HSS Journal、第16巻、第102-107頁)。COVID-19後症候群の患者のかなりの割合が、その後、心不全の明らかな症状を伴い又は伴わずに、心臓機能の低下、特に駆出率の低下を発症する。明確にするために、COVID-19後の心臓症状を有する患者を、本願ではCOVID-19後心臓症候群と呼ぶ場合がある。COVID-19後症候群の患者は、診断されていない心拍出量の低下によって引き起こされ得る慢性疲労症候群も経験する。症状には、息切れ、疲労、浮腫、起座呼吸、低心拍出量による運動の制限及び認知能力の低下(「ブレインフォグ」)、不整脈、動悸、めまい、失神、立ちくらみ、心不全、心不全及び/又は不整脈による入院などが含まれ得る。場合によっては、心不全及び/又は不整脈の結果として死亡する可能性がある。いくつかの実施形態において、COVID-19後症候群は心臓症状と関連しない場合がある。
【0020】
不整脈を含む心臓症状は、不整脈原性右室心筋症(ARVC)などであるがこれに限定されない他の疾患と関連している。ARVCと同様に、COVID-19及び/又はCOVID-19後症候群の患者はまた、身体活動時に心機能の悪化を示す。ARVCの場合、Chatterjeeらは、心臓のデスモグレイン2(DSG2)タンパク質に対する自己抗体を、ARVC患者の血清における共通の特徴として同定した(Chatterjee D et al.,Eur Heart J.2018;39(44):3932-3944;その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。これらの自己抗体は、2つの独立した対照血清セットにも、他の形態の遺伝性心筋症の患者の血清にも本質的に存在しないため、ARVCに特異的であった。DSG2抗体は、心臓など(ただしこれに限定されない)の器官に肉芽腫を引き起こす全身性炎症性疾患であるサルコイドーシスの一部の症例でも見られることがある。抗DSG2抗体は、心臓病変を伴うサルコイド患者にも見られる(Suna et al.2020,Eur.Heart Journal、第41巻、付録2号、2020年11月、ehaa946.2127;その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。拡張型心筋症と診断された患者は、ARVCに関連する同じデスモソームタンパク質に変異を有し得る。これらの知見は、一部の拡張型心筋症患者は実際にはDSG2抗体を介したARVC様疾患を患っている可能性があるが、ARVCに関連する典型的な年齢や症状に適合しないために拡張型心筋症と診断されている可能性があることを示唆している。抗DSG2自己抗体は、心筋細胞の損傷と免疫系の活性化が組み合わさった場合に、典型的には心筋に直接影響を与えることが知られている感染症の状況で生じると考えられている。病因の観点から見ると、COVID-19などのウイルス感染症は通常、ウイルス排除に重要な活発な免疫応答を引き起こし、自然免疫系と獲得免疫系の両方が関与する事象のカスケードが発生する。直接的及び間接的な心筋傷害は、COVID-19感染症によっても引き起こされ、これにより心筋タンパク質が活性化された免疫系にさらされる。COVID-19感染症患者では免疫学的変化も観察される。これらは、不適応な(maladaptive)免疫応答及び異常なサイトカイン/ケモカイン産生から、T細胞の過剰活性化及び活性化された単球、マクロファージ及び好中球の数の増加にまで及ぶ(Chang,S.E.,et al.Nature Communications 2021;12:5417;Liu,Y.,et al.Curr.Opin.Rheumatol.2021;33:155-162;Lee,C.C.E.,et al.Diseases 2021;9:47;それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0021】
COVID-19は現在までに世界中で少なくとも2億人に感染しており、COVID-19感染症による死者数は約450万人となっている。COVID-19感染症が様々な長期後遺症を引き起こす可能性があるという認識が高まっているが、このうち、心臓病変はその症状が他の器官系に起因する可能性があるため、最も認識されていないようである。
【0022】
COVID-19感染症は、既往症、急性疾患の重症度や全体的な経過、及び最初の診断からの時間とは無関係に、心筋の関与と順調に回復している不整脈を示すMRI証拠と関連づけられている。後に駆出率の低下を発症する患者の割合は今のところよく理解されていないが、COVID-19後の患者では明らかな心筋症が報告されている。
【0023】
心筋症の所見と不整脈へのなりやすさは、不整脈原性右室心筋症(ARVC)でも観察される。デスモソームタンパク質デスモグレイン2(DSG2)に対する抗体は、ARVC患者に存在することが示されている(Diptendu Chatterjee D.,etal.EHJ 2018(39)3932-3944;その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。抗DSG2抗体の濃度は不整脈負荷と正の相関があり、境界線ARVC症例におけるこれらの抗体の存在は劇症型ARVCの発症を予測する。iPSC由来心筋細胞を抗DSG2抗体に曝露すると、ギャップ結合機能が低下し、これは直接的な心毒性を反映している可能性がある。これらのデータを総合すると、抗DSG2抗体が心臓病理に関与している可能性があることが示唆される。本開示はまた、抗DSG2抗体レベルが、診断後6~9か月経ってもCOVID-19患者において上昇していることを示す証拠を提供する。
【0024】
COVID-19を含むウイルス感染は、例えば、損傷細胞上の以前は隠されていた潜在性(cryptic)エピトープを活性化された免疫系にさらすことによって、自己免疫応答に寄与するという仮説が立てられている(Ehrenfeld M.,et al.Autoimmunity Reviews 2020 102597;その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。COVID-19感染症で見られる心臓病変の高い発生率は、その結果として抗DSG2自己抗体が生成される可能性があることを示している。
【0025】
不整脈の存在と、COVID-19、COVID-19後症候群及びARVCの進行における免疫系の役割は合わせて、これらの疾患の病因におけるDSG2自己抗体の関与を示唆している。したがって、抗DSG2抗体(例えば、DSG2自己抗体)を標的とする戦略は、COVID-19、COVID-19後症候群及び/又はARVCの治療に有益であり得る。
【0026】
本開示は、抗DSG2抗体を標的とするためのDSG2融合ポリペプチドに関連する組成物及び方法を提供する。したがって、本開示のDSG2融合ポリペプチドは、COVID-19、COVID-19後心臓症候群、及び/又はARVCの治療において実行可能な治療戦略となり得る。DSG2融合ポリペプチドはまた、不整脈原性心筋症(AC)、サルコイドーシス、抗DSG2自己抗体による拡張型心筋症、及び、コクサッキーウイルス、アデノウイルス、エコーウイルス、パルボウイルス、風疹及び/又はサイトメガロウイルスによって引き起こされるものを含むがこれらに限定されないウイルス感染症などの、しかしこれらに限定されない、心臓細胞損傷に関連する他の疾患の治療にも使用され得る。
【0027】
II.組成物
いくつかの実施形態において、本開示は、DSG2融合ポリペプチドを含む組成物を提供する。本明細書に記載の組成物は、抗DSG2抗体に結合し又はそれと相互作用し得る。一実施形態において、本開示の組成物は、抗DSG2抗体の活性を調節し得る。一実施形態において、本開示の組成物は、抗DSG2抗体の活性を阻害し得る。
【0028】
いくつかの実施形態において、本開示はDSG2タンパク質を含む。いくつかの態様において、DSG2タンパク質は、DSG2タンパク質全体又はDSG2タンパク質の一部であり得る。いくつかの実施形態において、DSG2タンパク質は、任意の他のタンパク質又はタンパク質のフラグメントに融合され得る。
【0029】
本開示のDSG2融合ポリペプチドは、DSG2タンパク質の全体又は一部、及び免疫グロブリンタンパク質の全体又は一部を含み得る。いくつかの実施形態において、DSG2融合ポリペプチドは、リンカー及び/又はシグナルペプチドをさらに含み得る。いくつかの実施形態において、DSG2タンパク質の全体又は一部は、免疫グロブリンではないタンパク質に融合され得る。DSG2タンパク質は、インビトロ又はインビボでDSG2タンパク質の発現を改善することができるタンパク質又はタンパク質のフラグメントに融合され得る。
【0030】
心臓細胞の介在板内のDSG2変異は、不整脈、拡張型心筋症、特にARVC(不整脈原性右室心筋症)を含む心疾患に関与すると考えられている。Chatterjeeらは、ARVC患者の血清における共通の特徴として心臓のDSG2タンパク質に対する自己抗体を同定した(Chatterjee D et al.,Eur Heart J.2018;39(44):3932-3944;その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)。これらの自己抗体は、2つの独立した対照血清セットにも、他の形態の遺伝性心筋症の患者の血清にも本質的に存在しないため、ARVCに特異的であった。Chatterjeeらによって同定されたDSG2自己抗体の存在は、DSG2抗体を標的にすることが、ARVC及び/又はCOVID-19などであるがこれらに限定されない疾患に関連する心筋症の治療における治療戦略となる可能性があることを示唆している。本開示は、DSG2自己抗体を標的とするための治療戦略としてDSG2融合ポリペプチドを提供する。いくつかの実施形態において、本開示のDSG2融合ポリペプチドは、DSG2自己抗体に結合し得る。いくつかの実施形態において、本開示のDSG2融合ポリペプチドのDSG2自己抗体への結合は、対象における内因性DSG2への自己抗体の結合を不可能にする。本開示のこの態様において、DSG2融合ポリペプチドは、デコイタンパク質又はリガンドトラップとして機能する。
【0031】
Chatterjeeらは、DSG2タンパク質がエピトープを含んでいる可能性があり、このエピトープはDSG2変異の結果として細胞間空間及び/又は循環系に露出又は放出され得ることを提案している。これらのエピトープの露出は、心臓損傷(例えば、感染性心筋炎及び/又は心臓外傷などであるがこれらに限定されない)によっても生じる可能性がある。いくつかの実施形態において、本開示の組成物はいかなる変異も含まないものであり得る。このように放出されたDSG2タンパク質は、抗原提示細胞と結合してT細胞応答を刺激し、観察される自己抗体を生成し得る。遺伝子変異による潜在性エピトープの露出は、他の形態の自己免疫に寄与する可能性がある。いくつかの実施形態において、本開示のDSG2融合ポリペプチドは、DSG2に1つ以上の変異を含むエピトープを含み得る。
【0032】
DSG2融合ポリペプチドは、可溶性及び/又は組換えポリペプチドであり得る。DSG2融合ポリペプチドにおける構成要素の配置は、適切なタンパク質発現及び/又は意図された治療効果を達成するために最適化され得る。いくつかの実施形態において、DSG2融合ポリペプチドは、本明細書に記載されるフォーマットを含み得る。本明細書で提供されるフォーマットには、構成要素間の「;」によって区切られたN末端からC末端までの構成要素が含まれる。DSG2融合ポリペプチドのフォーマットの非限定的な例には、(i)DSG2タンパク質の全体又は一部;Fc領域(ii)Fc領域;DSG2タンパク質の全体又は一部(iii)シグナル配列;DSG2タンパク質の全体又は一部;Fc領域(iv)シグナル配列;Fc領域;DSG2タンパク質の全体又は一部(v)DSG2タンパク質の全体又は一部;リンカー;Fc領域(vi)Fc領域;リンカー;DSG2タンパク質の全体又は一部(vii)シグナル配列;DSG2タンパク質の全体又は一部;リンカー;Fc領域(viii)シグナル配列;Fc領域;リンカー;DSG2タンパク質の全体又は一部が挙げられる。
【0033】
DSG2タンパク質
いくつかの実施形態において、本開示のDSG2融合ポリペプチドは、DSG2タンパク質全体を含み得る。デスモソームカドヘリンデスモグレイン2(DSG2)は、心臓、腸、表皮などの上皮組織及び非上皮組織で広く発現される膜貫通型細胞接着タンパク質である。DSG2は、増殖及びアポトーシスを含む多くの細胞プロセスを調節することが示されている。上皮細胞及び筋細胞では、DSG2は細胞間接着構造の構成要素であり、その細胞質尾部は、細胞接着調節因子及び細胞間結合/細胞型調節因子と直接接触する一連のタンパク質と相互作用する。いくつかの実施形態において、DSG2タンパク質は、1,118アミノ酸からなり、配列番号1のアミノ酸配列を含むヒトDSG2タンパク質(UniProt ID:Q14126;ENSEMBLタンパク質ID:ENSP00000261590.8)である。一実施形態において、DSG2タンパク質は、配列番号2(NCBI参照配列:NM_001943.5;ENSMBL ID:ENST00000261590.13)の核酸配列によってコードされ得る。
【0034】
いくつかの実施形態において、本開示のDSG2融合ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸50~1118を含む完全にプロセシングされたDSG2タンパク質であり得る。
DSG2タンパク質はまた、配列番号1の配列に対して1つ以上の変異を含み得る。いくつかの実施形態において、DSG2タンパク質変異は、疾患状態に関連する変異であり得る。一実施形態において、疾患状態は、不整脈原性右室異形成/心筋症であり得る。いくつかの実施形態において、本開示のDSG2融合ポリペプチドは、DSG2に1つ以上の変異を含むエピトープを含み得る。非限定的な例として、DSG2融合ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸485~531及び/又はアミノ酸586~610の領域に1つ以上の変異を含み得る。
【0035】
DSG2は細胞接着タンパク質のカドヘリンスーパーファミリーに属し、細胞外領域、膜貫通ドメイン、及び細胞内シグナル伝達領域の3つの異なる領域を共通の特徴とする。いくつかの実施形態において、DSG2の細胞外領域は、配列番号1のアミノ酸50~609である配列番号3のアミノ酸配列を含み得る。カドヘリンファミリーのタンパク質の細胞外領域は、カドヘリンモチーフ又はECドメインとして知られる、カルシウム結合モチーフの繰り返しを様々な数で含む。DSG2は、本願ではEC1、EC2、EC3、及びEC4と呼ばれる4つのECドメインを含む。DSG2は、膜の近位にある細胞外アンカー(EA)ドメインも含む。いくつかの実施形態において、本開示のDSG2融合ポリペプチドは、DSG2の細胞外領域全体を含み得る。いくつかの態様において、DSG2融合ポリペプチドは、EC1、EC2、EC3、EC4、及び/又はEAなどであるがこれらに限定されない少なくとも1つのドメインを含み得る。いくつかの実施形態において、EC1ドメインは、配列番号1のアミノ酸50~155であり得る。いくつかの実施形態において、EC2ドメインは、配列番号1のアミノ酸151~268であり得る。いくつかの実施形態において、EC3ドメインは、配列番号1のアミノ酸264~384であり得る。いくつかの実施形態において、EC4ドメインは、配列番号1のアミノ酸382~495であり得る。いくつかの実施形態において、EAドメインは、配列番号1のアミノ酸491~608であり得る。表1は、DSG2タンパク質のアミノ酸配列及びDSG2の細胞外領域のアミノ酸配列を示す。いくつかの実施形態において、本開示のDSG2タンパク質は、表1の配列又は表1の配列のフラグメントのいずれかと少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%の同一性を有し得る。
【0036】
【表1】
【0037】
本開示のDSG2融合ポリペプチドは、DSG2の細胞外領域の1つ以上のドメインを含み得る。DSG2の細胞外領域のドメインは、ECドメイン又はEAドメインのうちの1つ以上の繰り返しを直列に又は混合順序で含み得る。例えば、DSG2融合ポリペプチドは、EC1、EC2、EC3、EC4、又はEAドメインの2つ、3つ、又はそれ以上の繰り返しを含み得る。DSG2の細胞外領域の複数のドメイン及び/又はドメインの複数の繰り返しが存在する場合、それらのドメインは、本明細書に記載のリンカーを介して作動可能に連結され得る。
【0038】
いくつかの実施形態において、DSG2融合ポリペプチドは、DSG2の細胞外領域の2つのドメインを含み得る。本開示の融合ポリペプチドに存在するDSG2の細胞外領域のドメインの非限定的な例には、EC1EC2、EC1EC3、EC1EC4、EC1EA、EC2EC1、EC2EC3、EC2EC4、EC2EA、EC3EC1、EC3EC2、EC3EC4、EC3EA、EC4EC1、EC4EC2、EC4EC3、EC4EA、EAEC1、EAEC2、EAEC3、及び/又はEAEC4が挙げられる。
【0039】
いくつかの実施形態において、DSG2融合ポリペプチドは、DSG2の細胞外領域の3つのドメインを含み得る。本開示の融合ポリペプチドに存在するDSG2の細胞外領域のドメインの非限定的な例には、EC1EC2EC3、EC1EC2EC4、EC1EC2EA、EC1EC3EC2、EC1EC3EC4、EC1EC3EA、EC1EC4EC2、EC1EC4EC3、EC1EC4EA、EC1EAEC2、EC1EAEC3、EC1EAEC4、EC2EC1EC3、EC2EC1EC4、EC2EC1EA、EC2EC3EC1、EC2EC3EC4、EC2EC3EA、EC2EC4EC1、EC2EC4EC3、EC2EC4EA、EC2EAEC1、EC2EAEC3、EC2EAEC4、EC3EC1EC2、EC3EC1EC4、EC3EC1EA、EC3EC2EC1、EC3EC2EC4、EC3EC2EA、EC3EC4EC1、EC3EC4EC2、EC3EC4EA、EC3EAEC1、EC3EAEC2、EC3EAEC4、EC4EC1EC2、EC4EC1EC3、EC4EC1EA、EC4EC2EC1、EC4EC2EC3、EC4EC2EA、EC4EC3EC1、EC4EC3EC2、EC4EC3EA、EC4EAEC1、EC4EAEC2、EC4EAEC3、EAEC1EC2、EAEC1EC3、EAEC1EC4、EAEC2EC1、EAEC2EC3、EAEC2EC4、EAEC3EC1、EAEC3EC2、EAEC3EC4、EAEC4EC1、EAEC4EC2、及び/又はEAEC4EC3が挙げられる。
【0040】
いくつかの実施形態において、DSG2融合ポリペプチドは、DSG2の細胞外領域の4つのドメインを含み得る。本開示の融合ポリペプチドに存在するDSG2の細胞外領域のドメインの非限定的な例には、EC1EC2EC3EC4、EC1EC2EC3EA、EC1EC2EC4EC3、EC1EC2EC4EA、EC1EC2EAEC3、EC1EC2EAEC4、EC1EC3EC2EC4、EC1EC3EC2EA、EC1EC3EC4EC2、EC1EC3EC4EA、EC1EC3EAEC2、EC1EC3EAEC4、EC1EC4EC2EC3、EC1EC4EC2EA、EC1EC4EC3EC2、EC1EC4EC3EA、EC1EC4EAEC2、EC1EC4EAEC3、EC1EAEC2EC3、EC1EAEC2EC4、EC1EAEC3EC2、EC1EAEC3EC4、EC1EAEC4EC2、EC1EAEC4EC3、EC2EC1EC3EC4、EC2EC1EC3EA、EC2EC1EC4EC3、EC2EC1EC4EA、EC2EC1EAEC3、EC2EC1EAEC4、EC2EC3EC1EC4、EC2EC3EC1EA、EC2EC3EC4EC1、EC2EC3EC4EA、EC2EC3EAEC1、EC2EC3EAEC4、EC2EC4EC1EC3、EC2EC4EC1EA、EC2EC4EC3EC1、EC2EC4EC3EA、EC2EC4EAEC1、EC2EC4EAEC3、EC2EAEC1EC3、EC2EAEC1EC4、EC2EAEC3EC1、EC2EAEC3EC4、EC2EAEC4EC1、EC2EAEC4EC3、EC3EC1EC2EC4、EC3EC1EC2EA、EC3EC1EC4EC2、EC3EC1EC4EA、EC3EC1EAEC2、EC3EC1EAEC4、EC3EC2EC1EC4、EC3EC2EC1EA、EC3EC2EC4EC1、EC3EC2EC4EA、EC3EC2EAEC1、EC3EC2EAEC4、EC3EC4EC1EC2、EC3EC4EC1EA、EC3EC4EC2EC1、EC3EC4EC2EA、EC3EC4EAEC1、EC3EC4EAEC2、EC3EAEC1EC2、EC3EAEC1EC4、EC3EAEC2EC1、EC3EAEC2EC4、EC3EAEC4EC1、EC3EAEC4EC2、EC4EC1EC2EC3、EC4EC1EC2EA、EC4EC1EC3EC2、EC4EC1EC3EA、EC4EC1EAEC2、EC4EC1EAEC3、EC4EC2EC1EC3、EC4EC2EC1EA、EC4EC2EC3EC1、EC4EC2EC3EA、EC4EC2EAEC1、EC4EC2EAEC3、EC4EC3EC1EC2、EC4EC3EC1EA、EC4EC3EC2EC1、EC4EC3EC2EA、EC4EC3EAEC1、EC4EC3EAEC2、EC4EAEC1EC2、EC4EAEC1EC3、EC4EAEC2EC1、EC4EAEC2EC3、EC4EAEC3EC1、EC4EAEC3EC2、EAEC1EC2EC3、EAEC1EC2EC4、EAEC1EC3EC2、EAEC1EC3EC4、EAEC1EC4EC2、EAEC1EC4EC3、EAEC2EC1EC3、EAEC2EC1EC4、EAEC2EC3EC1、EAEC2EC3EC4、EAEC2EC4EC1、EAEC2EC4EC3、EAEC3EC1EC2、EAEC3EC1EC4、EAEC3EC2EC1、EAEC3EC2EC4、EAEC3EC4EC1、EAEC3EC4EC2、EAEC4EC1EC2、EAEC4EC1EC3、EAEC4EC2EC1、EAEC4EC2EC3、EAEC4EC3EC1、及び/又はEAEC4EC3EC2が挙げられる。
【0041】
いくつかの実施形態において、DSG2融合ポリペプチドは、DSG2の細胞外領域の5つのドメインを含み得る。本開示の融合ポリペプチドに存在するDSG2の細胞外領域のドメインの非限定的な例には、EC1EC2EC3EC4EA、EC1EC2EC3EAEC4、EC1EC2EC4EC3EA、EC1EC2EC4EAEC3、EC1EC2EAEC3EC4、EC1EC2EAEC4EC3、EC1EC3EC2EC4EA、EC1EC3EC2EAEC4、EC1EC3EC4EC2EA、EC1EC3EC4EAEC2、EC1EC3EAEC2EC4、EC1EC3EAEC4EC2、EC1EC4EC2EC3EA、EC1EC4EC2EAEC3、EC1EC4EC3EC2EA、EC1EC4EC3EAEC2、EC1EC4EAEC2EC3、EC1EC4EAEC3EC2、EC1EAEC2EC3EC4、EC1EAEC2EC4EC3、EC1EAEC3EC2EC4、EC1EAEC3EC4EC2、EC1EAEC4EC2EC3、EC1EAEC4EC3EC2、EC2EC1EC3EC4EA、EC2EC1EC3EAEC4、EC2EC1EC4EC3EA、EC2EC1EC4EAEC3、EC2EC1EAEC3EC4、EC2EC1EAEC4EC3、EC2EC3EC1EC4EA、EC2EC3EC1EAEC4、EC2EC3EC4EC1EA、EC2EC3EC4EAEC1、EC2EC3EAEC1EC4、EC2EC3EAEC4EC1、EC2EC4EC1EC3EA、EC2EC4EC1EAEC3、EC2EC4EC3EC1EA、EC2EC4EC3EAEC1、EC2EC4EAEC1EC3、EC2EC4EAEC3EC1、EC2EAEC1EC3EC4、EC2EAEC1EC4EC3、EC2EAEC3EC1EC4、EC2EAEC3EC4EC1、EC2EAEC4EC1EC3、EC2EAEC4EC3EC1、EC3EC1EC2EC4EA、EC3EC1EC2EAEC4、EC3EC1EC4EC2EA、EC3EC1EC4EAEC2、EC3EC1EAEC2EC4、EC3EC1EAEC4EC2、EC3EC2EC1EC4EA、EC3EC2EC1EAEC4、EC3EC2EC4EC1EA、EC3EC2EC4EAEC1、EC3EC2EAEC1EC4、EC3EC2EAEC4EC1、EC3EC4EC1EC2EA、EC3EC4EC1EAEC2、EC3EC4EC2EC1EA、EC3EC4EC2EAEC1、EC3EC4EAEC1EC2、EC3EC4EAEC2EC1、EC3EAEC1EC2EC4、EC3EAEC1EC4EC2、EC3EAEC2EC1EC4、EC3EAEC2EC4EC1、EC3EAEC4EC1EC2、EC3EAEC4EC2EC1、EC4EC1EC2EC3EA、EC4EC1EC2EAEC3、EC4EC1EC3EC2EA、EC4EC1EC3EAEC2、EC4EC1EAEC2EC3、EC4EC1EAEC3EC2、EC4EC2EC1EC3EA、EC4EC2EC1EAEC3、EC4EC2EC3EC1EA、EC4EC2EC3EAEC1、EC4EC2EAEC1EC3、EC4EC2EAEC3EC1、EC4EC3EC1EC2EA、EC4EC3EC1EAEC2、EC4EC3EC2EC1EA、EC4EC3EC2EAEC1、EC4EC3EAEC1EC2、EC4EC3EAEC2EC1、EC4EAEC1EC2EC3、EC4EAEC1EC3EC2、EC4EAEC2EC1EC3、EC4EAEC2EC3EC1、EC4EAEC3EC1EC2、EC4EAEC3EC2EC1、EAEC1EC2EC3EC4、EAEC1EC2EC4EC3、EAEC1EC3EC2EC4、EAEC1EC3EC4EC2、EAEC1EC4EC2EC3、EAEC1EC4EC3EC2、EAEC2EC1EC3EC4、EAEC2EC1EC4EC3、EAEC2EC3EC1EC4、EAEC2EC3EC4EC1、EAEC2EC4EC1EC3、EAEC2EC4EC3EC1、EAEC3EC1EC2EC4、EAEC3EC1EC4EC2、EAEC3EC2EC1EC4、EAEC3EC2EC4EC1、EAEC3EC4EC1EC2、EAEC3EC4EC2EC1、EAEC4EC1EC2EC3、EAEC4EC1EC3EC2、EAEC4EC2EC1EC3、EAEC4EC2EC3EC1、EAEC4EC3EC1EC2、及び/又はEAEC4EC3EC2EC1が挙げられる。
【0042】
DSG2タンパク質の一部の非限定的な例、及びDSG2融合ポリペプチドに存在する可能な立体配置を表2に示す。表2に記載のDSG2ドメインはいずれも、本明細書に提供されるリンカー又は当技術分野で公知のリンカーのいずれかを使用して、融合ポリペプチド内の別のドメイン又は別のDSG2ドメインに作動可能に連結され得る。本開示の組成物は、表2に記載のドメインのいずれかの一部又はフラグメントを含み得る。本開示のポリペプチドに含まれる配列番号1又は配列番号3のドメイン又はドメインの組み合わせは、表2で定義されたドメインの上流又は下流に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、又は50アミノ酸だけ拡張され得る。いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドに含まれる配列番号1又は配列番号3のドメイン又はドメインの組み合わせは、表2で定義されたドメインのN末端又はC末端において、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、又は50アミノ酸だけトランケートされ得る。非限定的な例として、DSG2タンパク質の細胞外領域は、配列番号1の50~610にわたるアミノ酸から拡張され得る。
【0043】
【表2】
【0044】
免疫グロブリンタンパク質
いくつかの実施形態において、本開示のDSG2融合ポリペプチドは、免疫グロブリンタンパク質の全体又は一部を含み得る。免疫グロブリンタンパク質は、IgG、IgM、IgA、IgD、及びIgEであり得る。一実施形態において、免疫グロブリンタンパク質はIgGであり得る。IgGの非限定的な例は、IgG1、IgG2、IgG3及び/又はIgG4であり得る。DSG2融合ポリペプチドは、免疫グロブリンの領域又は一部を含み得る。免疫グロブリンの領域の非限定的な例には、Fc領域、Fab領域、重鎖可変(VH)ドメイン、重鎖定常ドメイン、軽鎖可変(VL)ドメイン、及び/又は軽鎖定常ドメインなどが挙げられる。
【0045】
DSG2融合ポリペプチドは、免疫グロブリンの1つ以上のFc領域を含み得る。いくつかの実施形態において、Fc領域は、第1の定常領域免疫グロブリンドメイン(例えば、CH1)又はその一部、場合によってはヒンジの一部を含み得る。他の態様において、Fc領域は、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除外する。したがって、Fcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン(例えば、CH2及びCH3)、IgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、及びこれらのドメインへのフレキシブルヒンジのN末端を指す場合がある。IgA及びIgMの場合、FcはJ鎖を含み得る。IgGの場合、Fcドメインは免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3(Cγ2及びCγ3)、ならびにCγ1(Cγ1)とCγ2(Cγ2)との間の下部ヒンジ領域を含む。いくつかの実施形態において、Fcは、免疫グロブリンのトランケートされたCH1ドメイン、ならびにCH2及びCH3を指す。Fc領域の境界は様々であり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常、そのカルボキシル末端に残基E216又はC226又はP230を含むように定義され、ここでのナンバリングは、Kabat抗体ナンバリング配列にあるようにEUインデックスに従うものである。
【0046】
いくつかの実施形態において、免疫グロブリンタンパク質は、追加の細胞標的化モジュール(本願では細胞標的化抗体CTABと呼ばれる場合がある)を含み得る。
免疫グロブリンの部分の配列の非限定的な例を表3に示す。いくつかの実施形態において、DSG2融合ポリペプチドは、表3の配列又は表3の配列のフラグメントのいずれかと少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又は100%の同一性を有する免疫グロブリンタンパク質又はその一部を含み得る。
【0047】
【表3】
【0048】
シグナル配列
シグナル配列(シグナルペプチド、ターゲティングシグナル、標的ペプチド、局在化配列、トランジットペプチド、リーダー配列又はリーダーペプチドと呼ばれることもある)は、タンパク質(例えば、本開示のポリペプチド)をそれらの指定された細胞及び/又は細胞外位置に導く。シグナル配列は、大部分の新たに合成されたタンパク質のN末端に存在する、特定の位置に向かうようにする短い(約5~50アミノ酸長の)ペプチドであり得る。シグナル配列はシグナル認識粒子(SRP)によって認識され、I型及びII型シグナルペプチドペプチダーゼを使用して切断される。ヒトタンパク質に由来するシグナル配列は、本開示のDSG2融合ポリペプチドとして組み込まれて、本開示のポリペプチドを特定の細胞及び/又は細胞外位置に向けることができる。これらのシグナル配列は実験的に検証されており、切断することができる(Zhang et al.,Protein Sci.2004,13:2819-2824)。
【0049】
いくつかの実施形態において、シグナル配列は、本開示のポリペプチドのN末端又はC末端に位置することができ、必ずしもではないが、本明細書で述べられるように、このポリペプチドから切断されることで「成熟」ポリペプチドが得られる。
【0050】
いくつかの例では、シグナル配列は、天然に分泌されるタンパク質に由来する分泌シグナル配列、及びそのバリアントであり得る。
場合によっては、本開示のポリペプチドを標的細胞の表面膜に導くシグナル配列が使用され得る。標的細胞の表面上での本開示のポリペプチドの発現は、標的としない生体内環境への本開示のポリペプチドの拡散を制限するために有用であり、それによって本開示のポリペプチドの安全性プロファイルを潜在的に改善することができる。さらに、本開示のポリペプチドの膜提示は、生理学的及び定性的なシグナル伝達を可能にし、また、より長い半減期をもたらすポリペプチドの安定化及び再利用を可能にし得る。
【0051】
シグナル配列は、本開示のポリペプチドを核などの特定の細胞部位に導くことができる、ウイルス、酵母及び細菌などの他の生物からの異種シグナル配列であってもよい(例えば、EP1209450)。他の例には、酵素などの融合タンパク質の分泌を増加させることができる、トリコデルマ(Trichoderma)由来のアスパラギン酸プロテアーゼ(NSP24)シグナル配列(例えば、Cervin及びKimの米国特許第8,093,016号)、細菌リポタンパク質シグナル配列(例えば、Lau及びRiouxのPCT公開番号1991/09952)、大腸菌エンテロトキシンIIシグナルペプチド(例えば、Kwonらの米国特許第6,605,697号)、大腸菌分泌シグナル配列(例えば、Malleyらの米国特許出願公開第2016/090404号)、メチロトローフ酵母由来のリパーゼシグナル配列(例えば、米国特許第8,975,041号)、及びコリネバクテリウム(Coryneform bacteria)に由来するDNaseのシグナルペプチド(例えば、米国特許第4,965,197号)が挙げられる。それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0052】
リンカー
いくつかの実施形態において、本開示のDSG2融合ポリペプチドは、少なくとも1つのリンカーを含み得る。リンカーは、本開示のポリペプチドの1つ以上の領域の間に位置し得る。一実施形態において、リンカーは、DSG2タンパク質の全体又は一部と免疫グロブリンタンパク質の全体又は一部との間に位置し得る。一態様において、リンカーは、DSG2タンパク質の1つ以上のドメインの間に位置し得る。
【0053】
いくつかの実施形態において、リンカーはポリペプチドであり得る。いくつかの実施形態において、リンカーはアミノ酸残基の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態において、リンカーは約1~50個のアミノ酸残基を含み得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30、35、40、45、又は50個のアミノ酸残基を含み得る。
【0054】
本開示のリンカーは、約1~100アミノ酸の長さであってよく、エフェクターモジュールの任意のドメイン/領域を連結する(ペプチドリンカーとも呼ばれる)。リンカーは、1~40アミノ酸長、又は2~30アミノ酸長、又は20~80アミノ酸長、又は50~100アミノ酸長であり得る。リンカーの長さは、ポリペプチドの構成の種類に応じて、及びポリペプチドの結晶構造に基づいて最適化することもできる。場合によっては、より短いリンカー長さが好ましく選択されてもよい。いくつかの態様において、ペプチドリンカーは、ペプチド結合によって互いに連結されたアミノ酸、好ましくはペプチド結合によって連結された1~20個のアミノ酸から構成され得、ここで、アミノ酸は、グリシン(G)、アラニン(A)、バリン(V)、ロイシン(L)、イソロイシン(I)、セリン(S)、システイン(C)、スレオニン(T)、メチオニン(M)、プロリン(P)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、ヒスチジン(H)、リジン(K)、アルギニン(R)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、アスパラギン(N)、及びグルタミン(Q)の20種類の天然アミノ酸から選択される。これらのアミノ酸のうちの1つ以上は、当業者に理解されているようにグリコシル化されてもよい。いくつかの態様において、ペプチドリンカーのアミノ酸は、アラニン(A)、グリシン(G)、プロリン(P)、アスパラギン(R)、セリン(S)、グルタミン(Q)、リジン(K)から選択され得る。
【0055】
いくつかの実施形態において、リンカーは、フレキシブルリンカー又はリジッドリンカーであり得る。フレキシブルリンカーは、小分子非極性アミノ酸(例えば、Gly)又は小分子極性アミノ酸(例えば、Ser又はThr)で構成され得る。これらのアミノ酸はサイズが小さいためフレキシブル性をもたらし、連結する機能ドメインの可動性を可能にする。最も広く使用されるフレキシブルリンカーは、主にGly及びSer残基のストレッチからなる配列(「GS」リンカー)を有する。最も広く使用されるフレキシブルリンカーの一例は、(Gly-Gly-Gly-Gly-Ser)nの配列を有する。コピー数「n」を調整することで、このGSリンカーの長さを最適化し、機能ドメインの適切な分離を達成すること、又は必要なドメイン間相互作用を維持することができる。いくつかの実施形態において、リンカーは、フレキシブル性を維持するためのThrやAlaなどの追加のアミノ酸、ならびに溶解性を改善するためのLysやGluなどの極性アミノ酸を含み得る。いくつかの実施形態において、DSG2融合ポリペプチドは、純粋にグリシン残基からなる(Gly)8(配列番号14)などのフレキシブルリンカーを含み得る。リンカー配列は、水溶液中で良好な溶解性を維持するために、大きな疎水性残基を避けた。
【0056】
いくつかの実施形態において、リンカーはリジッドリンカーであってもよい。リジッドリンカーの非限定的な例には、(EAAAAK)n(n=2~5)(配列番号15)の配列を有するリンカーが挙げられる。いくつかの実施形態において、リジッドリンカーは、プロリンリッチ配列(XP)nを有してもよく、Xは任意のアミノ酸、好ましくはAla、Lys、又はGluを表す。
【0057】
いくつかの実施形態において、リンカーはGGGGS(配列番号12)であり得る。いくつかの実施形態において、リンカーは、GGGGGS(配列番号16)及びEAAAK(配列番号13)であり得る。
【0058】
ポリヌクレオチド
いくつかの実施形態において、本開示のポリペプチドは、本明細書に記載のポリヌクレオチド又はそのバリアントによってコードされる。例示的な核酸又はポリヌクレオチドには、限定するものではないが、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、トレオース核酸(TNA)、グリコール核酸(GNA)、ペプチド核酸(PNA)、ロック核酸(LNA、これにはβ-D-リボ配置を有するLNA、a-L-リボ配置を有するα-LNA(LNAのジアステレオマー)、2’-アミノ官能化を有する2’-アミノ-LNA、及び2’-アミノ官能化を有する2’-アミノ-a-LNAが含まれる)、エチレン核酸(ENA)、シクロヘキセニル核酸(CeNA)、又はそれらのハイブリッドもしくは組み合わせが挙げられる。
【0059】
このように、参照配列に対する置換、挿入及び/又は付加、欠失、及び共有結合修飾を含むペプチド又はポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、特に、そのポリペプチド配列が本明細書に開示される。例えば、1つ以上のリジンなどの配列タグ又はアミノ酸を、本明細書に記載のペプチド配列に(例えば、N末端又はC末端に)付加することができる。配列タグは、ペプチドの精製又は局在化に使用できる。リジンは、ペプチドの溶解度を高めるために、又はビオチン化を可能にするために使用できる。あるいは、ペプチド又はタンパク質のアミノ酸配列のカルボキシ及びアミノ末端領域に位置するアミノ酸残基を任意に欠失させることで、トランケートされた配列を提供してもよい。あるいは、可溶性の又は固体支持体に連結されたより大きな配列の一部としての配列の発現など、配列の用途に応じて、特定のアミノ酸(例えば、C末端残基又はN末端残基)を欠失させてもよい。
【0060】
上記の特徴のいずれかが、本明細書に記載されるポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの所望の構成要素として同定又は定義されると、これらの特徴のいくつかの操作及び/又は修飾のうちの任意のものが、移動、交換、反転、削除、ランダム化、又は重複によって実行され得る。さらに、特徴の操作は、本明細書に記載の分子に対する修飾と同じ結果をもたらし得ることが理解される。例えば、ドメインの欠失を伴う操作は、全分子の長さより短い分子をコードするように核酸を修飾するのと同様に、分子の長さの変化をもたらすであろう。
【0061】
III.医薬組成物及び送達
本明細書に記載の融合ポリペプチドは、治療薬として使用することができる。いくつかの実施形態において、本開示は、少なくとも1つの薬学的に許容される担体及び融合ポリペプチドを含む医薬組成物を提供する。
【0062】
いくつかの実施形態において、組成物はヒト、ヒト患者、又は対象に投与される。本明細書に提供される医薬組成物の説明は主にヒトへの投与に適した医薬組成物に向けられているが、そのような組成物は総じて他の動物、例えば非ヒト動物、例えば、ヒト以外の哺乳動物への投与にも適していることを当業者は理解するであろう。ヒトへの投与に適した医薬組成物を様々な動物への投与に適したものにするために、その医薬組成物を改変することはよく理解されており、通常の技術を有する獣医薬理学者は、通常の実験程度でそのような改変を設計及び/又は実施することができる。医薬組成物の投与が見込まれる対象には、ヒト及び/又は他の霊長類;哺乳動物(イヌ、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ネコ、マウス、及び/又はラットなどの商業関連の哺乳動物を含む);及び/又は鳥類(家禽、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、及び/又はシチメンチョウなどの商業関連の鳥類を含む)が含まれるが、これらに限定されない。非限定的な例として、本開示の組成物は、ARVCを治療するためにイヌに投与され得る。
【0063】
本明細書では、融合ポリペプチド、及び、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて使用できるその医薬組成物が提供される。
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤には、限定するものではないが、所望の特定の剤形に適したものとされるあらゆる溶媒、分散媒、希釈剤、又は他の液体ビヒクル、分散助剤又は懸濁助剤、界面活性剤、等張剤、増粘剤又は乳化剤、防腐剤、固体結合剤、潤滑剤、着香剤、安定剤、酸化防止剤、浸透圧調整剤、pH調整剤などが含まれる。医薬組成物を製剤化するための様々な賦形剤及び組成物を調製するための技術は当技術分野で知られている(Remington:The Science and Practice of Pharmacy,第21版、A.R.Gennaro(Lippincott,Williams&Wilkins,Baltimore,Md.,2006;参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照)。従来の賦形剤媒体の使用は、任意の従来の賦形剤媒体が、例えば、望ましくない生物学的効果を生じることにより、又は、他の構成要素と有害な方法で相互作用することにより、医薬組成物の物質又はその誘導体と不適合である場合を除いて、本開示の範囲内で企図され、その使用は、本開示の範囲内であると考えられる。
【0064】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の純度であり得る。いくつかの実施形態において、賦形剤はヒトへの使用及び獣医学的使用が承認されている。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国食品医薬品局によって承認され得る。いくつかの実施形態において、賦形剤は医薬品グレードのものであり得る。いくつかの実施形態において、賦形剤は、米国薬局方(USP)、欧州薬局方(EP)、英国薬局方、及び/又は国際薬局方の基準を満たし得る。
【0065】
医薬組成物の製造に使用される薬学的に許容される賦形剤は、限定するものではないが、不活性希釈剤、分散及び/又は造粒剤、界面活性剤及び/又は乳化剤、崩壊剤、結合剤、防腐剤、緩衝剤、潤滑剤、及び/又は油を含む。このような賦形剤は、任意選択で医薬組成物に含まれ得る。組成物はまた、カカオバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤、着色剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び/又は着香剤を含んでもよい。
【0066】
例示的な希釈剤には、限定するものではないが、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、リン酸カルシウム、リン酸二カルシウム、硫酸カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸ナトリウム、乳糖、スクロース、セルロース、微結晶セルロース、カオリン、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、塩化ナトリウム、乾燥デンプン、コーンスターチ、粉砂糖など、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0067】
例示的な造粒及び/又は分散剤には、限定するものではないが、ジャガイモデンプン、トウモロコシデンプン、タピオカデンプン、デンプングリコール酸ナトリウム、粘土、アルギン酸、グアーガム、柑橘類パルプ、アガー、ベントナイト、セルロース及び木製品、天然スポンジ、陽イオン交換樹脂、炭酸カルシウム、ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、架橋ポリビニルピロリドン)(クロスポビドン)、カルボキシメチルデンプンナトリウム(グリコール酸デンプンナトリウム)、カルボキシメチルセルロース、架橋カルボキシメチルセルロース(クロスカルメロース)ナトリウム、メチルセルロース、アルファ化デンプン(スターチ1500))、微結晶性デンプン、水不溶性デンプン、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(VEEGUM(登録商標))、ラウリル硫酸ナトリウム、第四級アンモニウム化合物など、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0068】
例示的な界面活性剤及び/又は乳化剤には、限定するものではないが、天然乳化剤(例えば、アカシア、アガー、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、トラガカント、コンドルックス(chon-drux)、コレステロール、キサンタン、ペクチン、ゼラチン、卵黄、カゼイン、ラノリン、コレステロール、ワックス、及びレシチン)、コロイド状粘土(例えば、ベントナイト(ケイ酸アルミニウム)及びVEEGUM(登録商標)(ケイ酸アルミニウムマグネシウム)、長鎖アミノ酸誘導体、高分子量アルコール(例えば、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール、モノステアリン酸トリアセチン、ジステアリン酸エチレングリコール、モノステアリン酸グリセリル、及びモノステアリン酸プロピレングリコール、ポリビニルアルコール)、カルボマー(例えば、カルボキシポリメチレン、ポリアクリル酸、アクリル酸ポリマー、及びカルボキシビニルポリマー)、カラギーナン、セルロース誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、粉末セルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース)、ソルビタン脂肪酸エステル(例えば、モノラウリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(TWEEN(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタン(TWEEN(登録商標)60)、モノオレイン酸ポリオキシエチレンソルビタン(TWEEN(登録商標)80)、モノパルミチン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)40)、モノステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)60)、トリステアリン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)65)、モノオレイン酸グリセリル、モノオレイン酸ソルビタン(SPAN(登録商標)80)、ポリオキシエチレンエステル(例えば、ポリオキシエチレンモノステアレート(MYRJ(登録商標)45)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエトキシ化ヒマシ油、ポリオキシメチレンステアレート、及びSOLUTOL(商標))、ショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル(例えば、CREMOPHOR(登録商標))、ポリオキシエチレンエーテル(例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(BRIJ(登録商標)30)、ポリ(ビニルピロリドン)、ジエチレングリコールモノラウレート、オレイン酸トリエタノールアミン、オレイン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、オレイン酸エチル、オレイン酸、ラウリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、PLURONIC(登録商標)F68、POLOXAMER(商標)188、臭化セトリモニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンザルコニウム、ドクサートナトリウムなど、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0069】
例示的な結合剤には、限定するものではないが、デンプン(例えば、コーンスターチ及びデンプンペースト)、ゼラチン;糖類(例えば、スクロース、グルコース、デキストロース、デキストリン、糖蜜、乳糖、ラクチトール、マンニトール);アミノ酸(例えば、グリシン);天然及び合成ガム(例えば、アカシア、アルギン酸ナトリウム、アイリッシュモス抽出物、パンワール(panwar)ガム、ガティガム、イサポールハスク(isapol husk)の粘液、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、微結晶セルロース、酢酸セルロース、ポリ(ビニルピロリドン)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム(VEEGUM(登録商標))、及びカラマツアラボガラクタン(arabogalactan));アルギン酸塩;ポリエチレンオキシド;ポリエチレングリコール;無機カルシウム塩;ケイ酸;ポリメタクリレート;ワックス;水;アルコール等;及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0070】
例示的な防腐剤には、限定するものではないが、抗酸化剤、キレート剤、抗菌防腐剤、抗真菌防腐剤、アルコール防腐剤、酸性防腐剤、及び/又は他の防腐剤が挙げられる。酸化は、mRNA、特に液体mRNA製剤の潜在的な分解経路である。酸化を防ぐために、抗酸化剤を配合物に添加することができる。例示的な抗酸化剤には、限定するものではないが、αトコフェロール、アスコルビン酸、パルミチン酸アコルビル、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシアニソール、EDTA、m-クレゾール、メチオニン、ブチル化ヒドロキシトルエン、モノチオグリセロール、メタ重亜硫酸カリウム、プロピオン酸、没食子酸プロピル、アスコルビン酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、メタ亜硫酸水素ナトリウム、チオグリセロール及び/又は亜硫酸ナトリウムが挙げられる。例示的なキレート剤には、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸一水和物、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二カリウム、エデト酸、フマル酸、リンゴ酸、リン酸、エデト酸ナトリウム、酒石酸、及び/又はエデト酸三ナトリウムが挙げられる。例示的な抗菌防腐剤には、限定するものではないが、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、ベンジルアルコール、ブロノポール、セトリミド、塩化セチルピリジニウム、クロルヘキシジン、クロロブタノール、クロロクレゾール、クロロキシレノール、クレゾール、エチルアルコール、グリセリン、ヘキセチジン、イミド尿素、フェノール、フェノキシエタノール、フェニルエチルアルコール、硝酸フェニル水銀、プロピレングリコール、及び/又はチメロサールが挙げられる。例示的な抗真菌防腐剤には、限定するものではないが、ブチルパラベン、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸、安息香酸カリウム、ソルビン酸カリウム、安息香酸ナトリウム、プロピオン酸ナトリウム、及び/又はソルビン酸が挙げられる。例示的なアルコール防腐剤には、限定するものではないが、エタノール、ポリエチレングリコール、フェノール、フェノール化合物、ビスフェノール、クロロブタノール、ヒドロキシ安息香酸塩、及び/又はフェニルエチルアルコールが挙げられる。例示的な酸性防腐剤には、限定するものではないが、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンE、ベータカロチン、クエン酸、酢酸、デヒドロ酢酸、アスコルビン酸、ソルビン酸、及び/又はフィチン酸が挙げられる。他の防腐剤には、限定するものではないが、トコフェロール、酢酸トコフェロール、メシル酸デテロキシム、セトリミド、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、エチレンジアミン、ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、ラウリルエーテル硫酸ナトリウム(SLES)、亜硫酸水素ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、メタ重亜硫酸カリウム、GLYDANTPLUS(登録商標)、PHENONIP(登録商標)、メチルパラベン、GERMALL(登録商標)115、GERMABEN(登録商標)、NEOLONE(登録商標)、KATHON(登録商標)、及び/又はEUXYL(登録商標)が挙げられる。
【0071】
いくつかの実施形態において、安定性を向上させるために、医薬溶液のpHはpH5からpH8の間に維持される。pHを制御するための例示的な緩衝剤には、限定するものではないが、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、ヒスチジン(又はヒスチジン-HCl)、炭酸ナトリウム、及び/又はリンゴ酸ナトリウムが挙げられる。別の実施形態において、上に挙げた例示的な緩衝剤を、追加の一価の対イオン(カリウムを含むが、これに限定されない)とともに使用することができる。二価カチオンを緩衝対イオンとして使用してもよい。ただし、これらは複合体を形成するため、及び/又はmRNAを分解するため、好ましくない。
【0072】
例示的な緩衝剤には、限定するものではないが、クエン酸緩衝液、酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、塩化アンモニウム、炭酸カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸カルシウム、グルビオン酸カルシウム、グルセプト酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、D-グルコン酸、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、プロパン酸、レブリン酸カルシウム、ペンタン酸、第二リン酸カルシウム、リン酸、第三リン酸カルシウム、水酸化リン酸カルシウム、酢酸カリウム、塩化カリウム、グルコン酸カリウム、カリウム混合物、第二リン酸カリウム、第一リン酸カリウム、リン酸カリウム混合物、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸二ナトリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸ナトリウム混合物、トロメタミン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、アルギン酸、パイロジェンフリー水、等張食塩水、リンゲル液、エチルアルコールなど、及び/又はそれらの混合物も挙げられる。
【0073】
例示的な潤滑剤には、限定するものではないが、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、シリカ、タルク、モルト、ベヘン酸グリセリル、水添植物油、ポリエチレングリコール、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、ロイシン、ラウリル硫酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウムなど、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0074】
例示的な油には、限定するものではないが、アーモンド、アプリコット核、アボカド、ババス、ベルガモット、カシス種子、ルリヂサ、ケード、カモミール、キャノーラ、キャラウェイ、カルナバ、ヒマシ、シナモン、カカオバター、ココナッツ、タラレバー、コーヒー、トウモロコシ、綿実、エミュー、ユーカリ、月見草、魚、亜麻仁、ゲラニオール、ヒョウタン、ブドウ種子、ヘーゼルナッツ、ヒソップ、ミリスチン酸イソプロピル、ホホバ、ククイナッツ、ラバンジン、ラベンダー、レモン、リツェアクベバ、マカデミアナッツ、マロウ、マンゴー種子、メドウフォーム種子、ミンク、ナツメグ、オリーブ、オレンジ、オレンジラフィー、ヤシ、パーム核、モモ核、ピーナッツ、ケシの実、カボチャ種子、ナタネ、米ぬか、ローズマリー、ベニバナ、サンダルウッド、サスクアナ(sasquana)、セイボリー、シーバックソーン、ゴマ、シアバター、シリコーン、大豆、ヒマワリ、ティーツリー、アザミ、ツバキ、ベチバー、クルミ、及び小麦胚芽の油が挙げられる。例示的な油には、限定するものではないが、ステアリン酸ブチル、カプリル酸トリグリセリド、カプリン酸トリグリセリド、シクロメチコン、セバシン酸ジエチル、ジメチコン360、ミリスチン酸イソプロピル、鉱油、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、シリコーン油、及び/又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0075】
カカオバター及び坐剤ワックスなどの賦形剤、着色剤、コーティング剤、甘味料、香味料、及び/又は香料を、配合者の判断に従って組成物中に存在させることができる。
例示的な添加剤には、生理学的に生体適合性の緩衝剤(例えば、トリメチルアミン塩酸塩)、キレート剤(例えば、DTPA又はDTPA-ビスアミドなど)又はカルシウムキレート錯体(例えば、カルシウムDTPA、CaNaDTPA-ビスアミドなど)の添加、又は任意選択で、カルシウム塩又はナトリウム塩(例えば、塩化カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、グルコン酸カルシウム又は乳酸カルシウム)の添加が挙げられる。さらに、酸化防止剤及び懸濁化剤を使用することもできる。
【0076】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、治療的に有効な結果をもたらす任意の経路によって投与され得る。これらには、限定するものではないが、経腸(腸の中へ)、経胃腸、硬膜外(epidural)(硬膜の中へ)、経口(口から)、経皮、硬膜外(peridural)、大脳内(大脳の中へ)、脳室内(脳室の中へ)、皮膚上(皮膚への塗布)、皮内(皮膚自体の中へ)、皮下(皮膚の下)、経鼻投与(鼻から)、静脈内(静脈の中へ)、静脈内ボーラス、静脈内点滴、動脈内(動脈の中へ)、筋肉内(筋肉の中へ)、心臓内(心臓の中へ)、骨内注入(骨髄の中へ)、鞘内(脊柱管の中へ)、腹腔内(腹膜内への注入又は注射)、膀胱内注入、硝子体内、(眼から)、陰茎海綿体内(intracavernous)注射(病理学的腔の中へ)、腔内(陰茎の根元の中へ)、膣内投与、子宮内、羊水外投与、経皮(全身に分布させるための無傷の皮膚を通した拡散)、経粘膜(粘膜を通した拡散)、経膣、吸入(鼻から吸う)、舌下、唇下、浣腸、点眼(結膜上に)、点耳薬、耳介(耳の中又は耳を通して)、頬側(頬に向けて)、結膜、皮膚、歯科(1つの歯又は複数の歯に対して)、電気浸透、子宮頸管内、副鼻腔内、気管内、体外(extracorporeal)、血液透析、浸潤、間質性、腹腔内、羊膜内、関節内、胆管内、気管支内、滑液包内(intrabursal)、軟骨内(軟骨の中)、尾内(馬尾中)、槽内(intracisternal)(大槽小脳延髄槽中)、角膜内(角膜の中)、歯冠内、冠状動脈内(冠動脈の中)、海綿体内(陰茎の海綿体の拡張可能な空間内)、椎間板内(椎間板の中)、管内(腺管の中)、十二指腸内(十二指腸の中)、硬膜内(硬膜の中又は下)、表皮内(表皮へ)、食道内(食道へ)、胃内(胃の中)、歯肉内(歯肉の中)、回腸内(小腸の遠位部分の中)、病変内(局所病変の中、又は局所病変に直接導入)、管腔内(管の内腔の中)、リンパ内(リンパの中)、髄内(骨の髄腔の中)、髄膜内(髄膜の中)、眼内(眼の中)、卵巣内(卵巣の中)、心膜内(心膜の中)、胸膜内(胸膜の中)、前立腺内(前立腺の中)、肺内(肺又はその気管支の中)、洞内(鼻又は眼窩周囲洞の中)、脊髄内(脊柱の中)、滑膜内(関節の滑膜腔の中)、腱内(腱の中)、精巣内(精巣の中)、鞘内(脳脊髄軸における任意のレベルの脳脊髄液内)、胸腔内(胸腔の中)、管内(器官の細管の中)、腫瘍内(腫瘍の中)、中耳内(中耳の中)、血管内(単数又は複数の血管の中)、静脈内(静脈の中)、イオントフォレシス(可溶性塩のイオンを体の組織の中へ移動させる電流を用いる)、洗浄(開いた創傷や体腔を浸し又は洗い流すため)、喉頭(喉頭に直接)、経鼻胃(鼻を通して胃の中へ)、閉塞性ドレッシング技術、眼科(外眼部へ)、口腔咽頭(口及び咽頭に直接)、非経口、経皮、関節周囲、硬膜周囲、神経周囲、歯周、直腸、呼吸器(局所的又は全身的な効果のための口又は鼻からの吸入による気道の中)、眼球後(橋の後方又は眼球の後方)、心筋内(心筋に入る)、軟組織、くも膜下、結膜下、粘膜下、経胎盤(胎盤を通る、又は胎盤を横切る)、経気管(気管の壁を通して)、経鼓膜(鼓室を横切って、又は鼓室を通して)、尿管(尿管へ)、尿道(尿道へ)、膣、腔、仙骨麻酔、診断、神経ブロック、胆汁灌流、心臓灌流、フォトフェレーシス又は脊椎が含まれる。特定の実施形態において、組成物は、血液脳関門、血管関門、又は他の上皮関門を通過できる方法で投与され得る。
【0077】
治療有効量は当業者によって容易に決定され、疾患の重症度及び経過、患者の健康状態及び治療に対する反応、及び治療する医師の判断に依存する。
IV.使用方法
本明細書では、本開示のDSG2融合ポリペプチド組成物の使用方法が提供される。いくつかの実施形態において、本開示のDSG2融合ポリペプチドは、対象における本明細書に記載の1つ以上の疾患又は状態を治療するために使用され得る。このような方法は、対象をDSG2融合ポリペプチドと接触させることを含み得る。いくつかの実施形態において、対象と接触させることは、DSG2融合ポリペプチドを対象に投与することを含み得る。いくつかの実施形態において、対象と接触させることは、本開示のDSG2融合ポリペプチドで対象を治療することを含み得る。一実施形態において、本開示の組成物は、DSG2自己抗体に関連する疾患を治療するために使用され得る。一実施形態において、本開示の組成物は、DSG2抗体に関連する心毒性を軽減する。
【0078】
いくつかの実施形態において、心筋の炎症に関連する任意の治療対象疾患が、本明細書に記載のDSG2融合ポリペプチドで治療され得る。このような適応症の非限定的な例には、不整脈原性右室心筋症(ARVC)、サルコイドーシス、拡張型心筋症、感染後心筋症、心機能低下、駆出率の低下、心不全、不整脈及び心筋炎が挙げられる。
【0079】
疾患の治療又は改善の有効性は、例えば、疾患の進行、疾患の寛解、症状の重症度、痛みの軽減、生活の質、治療効果を維持するのに必要な薬の量、疾患マーカー、又は、治療又は予防の対象となる所与の疾患に適したその他の測定可能なパラメータを測定することによって評価することができる。このようなパラメータのいずれか1つ、又はパラメータの任意の組み合わせを測定することによって、治療又は予防の有効性を監視することは、当業者の能力の範囲内である。融合ポリペプチド又はその医薬組成物の投与に関連して、疾患又は障害「に対して有効」とは、臨床的に適切な方法で投与すると、少なくとも一部の患者に、症状の改善、治癒、疾患負荷の軽減、寿命の延長、生活の質の改善、輸血の必要性の低下、又はその特定の種類の病気や障害の治療に精通した医師によって一般的に好ましいと認識されている他の効果などの有益な効果がもたらされることを指す。
【0080】
治療又は予防効果は、疾患状態の1つ以上のパラメータにかなりの改善がある(多くの場合統計的に有意である)場合、又は予期される症状の悪化や発症が見られない場合に明らかである。一例として、疾患の測定可能なパラメータにおける少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、30%、40%、50%、又はそれ以上の好ましい変化は、効果的な治療の指標となり得る。所与の化合物又は組成物の有効性は、当技術分野で知られているように、所与の疾患の実験動物モデルを使用して判断することもできる。実験動物モデルを使用する場合、マーカー又は症状に統計的に有意な変化が観察された場合、治療の有効性が証明される。
【0081】
COVID-19
本明細書に記載のDSG2融合ポリペプチド又はその融合ポリペプチドを含む組成物は、COVID-19又はCOVID-19の長期影響を治療するために投与することができる。
【0082】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、COVID-19及び/又はSARS-CoV-2に感染した個体の治療に有用であり得る。感染者には、症候性、発症前、及び無症候性の場合がある。世界保健機関(WHO)によると、COVID-19の感染は、SARS-CoV-2に感染した症候性、発症前、及び無症候性の人々から生じる可能性がある。症候性の感染とは、ある人が症状を経験する前に生じる感染を指す場合がある。発症前感染とは、COVID-19の症状が現れる前に生じる感染を指す場合がある。
【0083】
COVID-19は、限定するものではないが、発熱又は悪寒、咳、息切れ又は呼吸困難(difficulty breathing)、疲労、筋肉又は体の痛み、頭痛、味覚・嗅覚障害、喉の痛み、鼻づまり又は鼻水、吐き気又は嘔吐、下痢、呼吸困難(trouble breathing)、胸部の持続的な痛み又は圧迫感などの1つ以上の症状を伴う場合がある。
【0084】
DSG2融合ポリペプチドは、COVID-19疾患の1つ以上の段階を治療するために使用され得る。通常、SARS-CoV-2感染症の成人は、以下の重症度カテゴリーに分類される。ただし、各カテゴリーの基準は、臨床ガイドライン及び臨床試験によっては重複したり、異なる場合があり、また、患者の臨床状態は時間の経過とともに変化する場合がある(COVID-19治療ガイドラインパネル。コロナウイルス疾患2019(COVID-19)治療ガイドライン。国立衛生研究所。www.covid19treatmentguidelines.nih.gov/から入手可能。2020年12月11日にアクセス)。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、無症候性感染又は発症前感染を治療するために使用されてもよく、これにはウイルス検査(すなわち、核酸増幅検査又は抗原検査)を使用してSARS-CoV-2検査で陽性となったがCOVID-19感染症と一致する症状がない個体が含まれ得る。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、COVID-19の様々な兆候及び症状(例えば、発熱、咳、喉の痛み、倦怠感、頭痛、筋肉痛、吐き気、嘔吐、下痢、味覚障害、嗅覚障害)のいずれかを有するが、息切れ、呼吸困難、又は胸部画像異常がない個体を含む軽度の疾患を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、臨床評価又は画像検査中に下気道疾患の証拠を示し、海抜ゼロメートルにおける室内空気で酸素飽和度(SpO2)≧94%を有する個人を含む中等度の疾患を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、海抜ゼロメートルにおける室内空気でSpO2<94%、吸気酸素分圧に対する動脈血酸素分圧の比(PaO2/FiO2)<300mmHg、呼吸数>30回/分、又は肺浸潤>50%である個体を含む重篤な疾患を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、呼吸不全、肺炎、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症、敗血症性ショック、多臓器不全、及び/又は、急性腎損傷及び心臓損傷を含む多臓器不全を有する個体を含む重篤な疾患を治療するために使用され得る。
【0085】
COVID-19に関連する1つ以上の状態を予防する方法も本明細書で提供される。一実施形態において、ウイルスへの曝露と症状発現との間に潜伏期間があるため、本開示の組成物は、症状の発症前であるがウイルスへの曝露後に対象に提供され得る。新しいコロナウイルスSARS-CoV-2の潜伏期間は通常2~14日間で、平均は5日間である(Lombardi et al.,J.Hosp.Infect.2020doi:10.1016/j.jhin.2020.03.003;その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0086】
本開示の組成物は、COVID-19の治療における使用が推奨される1つ以上の治療薬と組み合わせて投与することもできる。いくつかの実施形態において、本明細書に記載のDSG2融合ポリペプチドは、限定するものではないが、レムデシビル、クロロキン、ヒドロキシクロロキン、ループ利尿薬、アジスロマイシン、ロピナビル、リトナビル、イベルメクチン、インターロイキン阻害剤、インターフェロン、キナーゼ阻害剤、糖質コルチコステロイド、及び/又はSARS CoV-2モノクローナル抗体(例えば、バムラニビマブ、カシリビマブ、イムデビマブ)などの1つ以上の治療薬と組み合わせて使用することができる。
【0087】
COVID-19後症候群
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、COVID-19後症候群を治療するために使用され得る。急性COVID-19から回復した後に持続する症状を経験する患者の報告が増えており、本願ではこれを「COVID-19後症候群」と呼び、これらの症状に苦しむ個人は一般に「ロング・ホーラー」と呼ばれる。いくつかの実施形態において、患者は、SARS CoV-2感染後1つ以上の症状を最長1か月、最長2か月、最長3か月、最長4か月、最長5か月、最長6か月、最長7か月、最長8か月、最長9か月、最長10か月、最長11か月、最長1年又はそれ以上にわたり患っている場合、COVID-19後症候群を患っているとみなされ得る。いくつかの実施形態において、対象は、SARS CoV-2感染後に症状を示さないことがある。いくつかの実施形態において、対象は既知のCOVID-19又はSARS CoV2感染を有しない可能性があるが、血清抗DSG2抗体を有する場合がある。
【0088】
本開示の組成物は、COVID-19後症候群における心臓血管系に関連する1つ以上の症状(すなわち、COVID-19後心臓症候群)を治療するために使用され得る。COVID-19から最近回復した患者100人を含むある研究では、心臓磁気共鳴画像法により、78人(78%)の患者で心臓病変が明らかになり、60人(60%)の患者で進行中の心筋炎症が明らかになったが、これは既存の症状、重症度、及び急性疾患の全体的な経過、ならびに最初の診断からの時間とは無関係であった(Puntmann et al.JAMA Cardiol.2020;5(11):1265-1273)。より小規模な研究では、アスリートの15%で急性COVID-19から回復した後に心筋炎の証拠が見られた。一実施形態において、DSG2融合ポリペプチドは、COVID-19後症候群を有する対象における心筋炎を治療するために使用され得る。
【0089】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される組成物は、いかなる心臓の兆候とも関連しないCOVID-19後症候群を治療するために使用され得る。
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、COVID-19の最初の診断後、最大数週間、数箇月、及び/又は数年間、COVID-19の症状を示す対象を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態において、COVID-19後症候群患者は、COVID-19の最初の診断から1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、7週間、8週間、9週間、10週間、11週間、12週間、1か月、2か月、3か月、4か月、5か月、6か月、7か月、8か月、9か月、10か月、11か月、12か月、1年、2年、3年、4年、5年、又はそれ以上の間及び/又はその後に症状を示し得る。COVID-19の診断は、当技術分野で知られている方法(例えば、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応及び/又は抗体検査)を使用して確立され得る。いくつかの実施形態において、COVID-19後症候群に罹患している対象は、最長1週間、最長1か月、及び/又は最長1年間、本開示の組成物で治療され得る。
【0090】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、心不全の明白な症状を伴うか又は伴わない、心臓機能の低下、最も顕著には駆出率の低下を有する、又は発症するCOVID-19患者を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、不整脈を治療するために使用され得る。
【0091】
本開示の組成物は、COVID-19後症候群に関連する1つ以上の症状を改善することができる。いくつかの実施形態において、COVID-19後症候群の症状は、急性COVID-19と同じであり得る。いくつかの態様において、COVID-19後症候群に関連する症状は、息切れ、疲労、浮腫、起座呼吸、運動の制限、認知能力の障害、動悸、めまい、失神、立ちくらみ、心不全、及び/又は不整脈であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、COVID-19のない患者でも報告されている集中治療後症候群と重複する症状を伴うCOVID-19後症候群を治療するために使用され得る。
【0093】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、心血管系(例えば、心筋の炎症)、呼吸器系(肺機能異常)、腎臓系(急性腎障害)、皮膚障害(発疹、脱毛)、神経障害(嗅覚及び味覚の問題、睡眠障害、集中力の低下、記憶障害)、及び/又は精神障害(うつ病、不安、気分の変化)に関連する1つ以上の長期合併症を有する可能性があるCOVID-19後症候群の対象を治療するために使用され得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、1つ、2つ又はそれ以上の関連する併存疾患を有する可能性があるCOVID-19後症候群の対象を治療するために使用され得る。併存疾患の非限定的な例には、限定するものではないが、高血圧(hypertension)、甲状腺疾患、免疫障害、COPD(慢性閉塞性肺疾患)、高血圧(high blood pressure)、肥満、精神的健康状態、及び糖尿病が挙げられる。
【0095】
COVID-19に関連する自己免疫
病因の観点から見ると、COVID-19などのウイルス感染症は、一般に、ウイルス除去に不可欠な、自然免疫系と獲得免疫系の両方が関与する事象のカスケードを伴う活発な免疫反応を引き起こす。直接的及び間接的な心筋損傷は、COVID-19感染症によっても引き起こされ、活性化された免疫系に心臓タンパク質がさらされる可能性がある。免疫学的変化は、COVID-19感染症患者でも観察される。これらは、不適応免疫応答や異常なサイトカイン/ケモカイン産生から、T細胞の過剰活性化や活性化された単球、マクロファージ、好中球の数の増加まで多岐にわたる。
【0096】
多くの自己免疫疾患で発生することが知られている自己抗体が、COVID-19患者から検出された。COVID-19感染症は免疫寛容を破壊し、自己免疫反応を引き起こす可能性があるため、臨床的自己免疫も誘発する可能性がある。COVID-19患者で検出された自己抗体には、抗核抗体(ANA)、抗リン脂質(APL)、ループスアンチコアグラント、寒冷凝集素、抗Ro/シェーグレン症候群A(SSA)抗体、抗Caspr2抗体、抗GD1b抗体、抗ミエリンオリゴデンドロサイト糖タンパク質(MOG)抗体、及び赤血球結合抗体が含まれていた(Liu,Y.,et al.Curr.Opin.Rheumatol.2021;33:155-162;それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、COVID-19又はSARS CoV2感染中に生成される自己抗体をブロックするために使用され得る。
【0097】
ある研究では、147人の入院しているCOVID-19患者の血清中の、膠原病に関連するIgG自己抗体、抗サイトカイン抗体、及び抗ウイルス抗体の反応を測定するために3つのタンパク質アレイが組み立てられた。自己抗体は患者の約50%で同定されたが、健康な対照者では15%未満であった。自己抗体は主に、筋炎、全身性硬化症、及びオーバーラップ症候群などの稀な疾患に関連する自己抗原を標的としていることが判明した。しかしながら、従来の自己抗原又はサイトカインを標的とする自己抗体のサブセットが、COVID-19感染後に新たに発生した(Chang,S.E., et al.Nature Communications 2021;12:5417;それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、COVID-19感染後に発生する自己抗体をブロックするために使用され得る。
【0098】
重症及び重篤な症例では、COVID-19における強力な免疫反応を抑えるために、炎症誘発性サイトカインを標的とする免疫調節薬や生物学的製剤が適用されてきた。コルチコステロイド、JAK阻害剤、IL-1遮断薬、IL-6受容体拮抗薬がCOVID-19患者の治療に使用されている。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、炎症誘発性サイトカインを標的とする免疫調節薬及び生物学的製剤と組み合わせて使用され得る。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、コルチコステロイド、JAK阻害剤、IL-1遮断薬及びIL-6受容体アンタゴニストと組み合わせて使用することができる。
【0099】
ChAdOx1 nCov-19(AstraZeneca)ワクチン接種後、及び潜在的にはAd26.COV2.S(Johnson&Johnson)ワクチン接種後の血栓塞栓性事象が報告されている。稀ではあるが、大脳静脈や内臓静脈などの異常な部位で血栓症が発生することが観察された。血小板減少症及び血小板第4因子ポリアニオン複合体に対する抗体の上昇が観察されたことに基づいて、これは免疫介在反応であることが示唆されている(Lee,C.C.E.,et al.Diseases 2021;9:47;それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0100】
ある研究では、迅速細胞外抗原プロファイリング(REAP)として知られるハイスループットの自己抗体発見法を実施して、COVID-19患者172人と軽症又は無症候性感染の医療従事者22人とからなる、COVID-19に感染した194人のコホートを、2,770の細胞外及び分泌タンパク質(エキソプロテオームのメンバー)に対する自己抗体についてスクリーニングした。患者サンプルのスクリーニング後、広範囲の組織にわたる多数のタンパク質標的の同定と免疫学的及び生理学的機能の検証を行った。これらの自己抗体は強力な機能活性を有しており、COVID-19患者のサンプル内の様々なウイルス学的、免疫学的、及び臨床パラメータとインビボで直接相関している可能性がある。分析により、これらの自己抗体の一部はおそらく感染以前から存在する一方、その他の自己抗体は感染後に誘導されたことが示唆された。さらに、これらの自己抗体のマウス代替物は、COVID-19感染症のマウスモデルにおいて疾患の重症度を増加させた。これらの結果は、自己抗体がSARS-CoV2に対する免疫応答と組織恒常性を乱すことにより、COVID-19の経過を変化させることができるという証拠を提供する(Wang,E.Y.,et al.Nature 2021;595:283;それぞれの内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、COVID-19感染以前に存在した自己抗体をブロックするために使用され得る。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、COVID-19感染後に誘導され得る自己抗体をブロックするために使用され得る。
【0101】
心筋症
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、心筋症を治療するために使用され得る。心筋症とは、心腔の筋肉壁の構造及び機能の進行性障害を指す。本開示の組成物は、限定するものではないが、拡張型心筋症、肥大型心筋症及び/又は拘束型心筋症などの1種以上の心筋症を治療するために使用され得る。一実施形態において、心筋症患者は、血清中に血清DSG2自己抗体を示す場合がある。
【0102】
一実施形態において、本開示の組成物は、不整脈原性右室心筋症(ARVC)を治療するために使用され得る。不整脈原性右室心筋症/異形成(ARVC/ARVD)は、心室不整脈、心不全、及び突然死を伴う心筋疾患である。ARVCは、心室機能の進行性喪失と不整脈を特徴とする変性心疾患である。心筋細胞デスモソームの構造タンパク質及びシグナル伝達タンパク質の遺伝子変異に加えて、患者の免疫系もARVC疾患の病理に関与していることが知られている。DSG2タンパク質の変異はARVCと関連しており、DSG2を標的とする自己抗体がこの疾患の患者で同定されている。ARVC患者の約50%には既知のデスモソーム変異がない。それにもかかわらず、これらの患者はDSG2抗体を発現する。いくつかの実施形態において、DSG2融合タンパク質は、DSG2タンパク質に1つ以上の変異を有するARVC患者を治療するために使用され得る。いくつかの態様において、DSG2融合タンパク質は、DSG2タンパク質に既知の変異がないARVC患者を治療するために使用され得る。いくつかの実施形態において、本開示のDSG2融合ポリペプチドは、ARVCに関連するDSG2自己抗体を標的とし得る。
【0103】
心筋症は炎症を伴う場合があり、本願では心筋炎と呼ぶ。いくつかの実施形態において、心筋炎は、ウイルス、細菌、寄生虫、及び/又は真菌によって引き起こされ得る。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、ウイルスに関連する心筋炎を治療及び/又は予防するために使用され得る。心筋炎に関連するウイルスの非限定的な例には、風邪を引き起こすアデノウイルス、COVID-19;B型肝炎及びC型肝炎;パルボウイルス(通常、小児に軽度の発疹を引き起こす(第5病));及び/又は単純ヘルペスウイルス、胃腸感染症を引き起こすエコーウイルス、単核球症を引き起こすエプスタイン・バーウイルス、風疹、サイトメガロウイルス、及びHIVが挙げられる。
【0104】
心血管合併症は、COVID-19に関連して、さらには感染から数箇月後にも頻繁に発生している。これらの心血管合併症には、心筋損傷及び心筋炎、急性冠症候群、心不全、不整脈、及び血栓塞栓性事象が含まれる。さらに、最初の感染から数週間ないし数箇月後に、心臓症状、動悸、胸痛、及び呼吸困難が患者に観察される。(Lee,C.C.E.,et al.Diseases 2021;9:47;それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、心筋損傷や心筋炎、急性冠症候群、心不全、不整脈、及び血栓塞栓性事象などの心血管合併症などの治療に使用され得る。
【0105】
いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、細菌によって引き起こされる心筋炎を治療及び/又は予防するために使用され得る。心筋炎に関連する細菌の非限定的な例には、ブドウ球菌、レンサ球菌、及び/又はボレリアが挙げられる。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、寄生虫によって引き起こされる心筋炎を治療及び/又は予防するために使用され得る。心筋炎に関連する寄生虫の非限定的な例には、クルーズトリパノソーマ(Trypanosoma cruzi)及びトキソプラズマが挙げられ、これらには昆虫によって伝播され、シャーガス病と呼ばれる症状を引き起こし得るものが含まれる。いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、真菌によって引き起こされる心筋炎を治療及び/又は予防するために使用され得る。心筋炎に関連する真菌の非限定的な例には、カンジダ、アスペルギルス;及びヒストプラズマなどの他の真菌が挙げられる。
【0106】
V.定義
ドメイン:ポリペプチドに言及する場合、本願で使用される「ドメイン」という用語は、1つ以上の識別可能な構造的又は機能的特徴又は特性(例えば、タンパク質間相互作用の部位として機能する結合能力)を有するポリペプチドのモチーフを指す。
【0107】
発現ベクター:本願で使用される「発現ベクター」という用語は、転写可能な遺伝子産物の少なくとも一部をコードする核酸配列を含むベクターを指す。発現ベクターは、様々な制御配列を含むことができ、制御配列とは、特定の宿主生物内で作動可能に連結されたコード配列の転写、及び場合によっては翻訳に必要な核酸配列を指す。転写と翻訳を制御する制御配列に加えて、ベクター及び発現ベクターは、他の機能を果たす核酸配列も含み得る。この用語には、インビトロ又はインビボで宿主細胞に送達されるポリヌクレオチドを含む組換えプラスミド又はウイルスも含まれる。いくつかの実施形態において、宿主細胞は一過性細胞株又は安定細胞株である。いくつかの実施形態において、それは、CHO、HEK293、及びNSOからなる群から選択される。
【0108】
特徴:ポリペプチドに言及する場合の「特徴」は、分子のはっきりと区別できるアミノ酸配列に基づく構成要素として定義される。本明細書に記載のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドの特徴は、局所的なコンフォメーション形状、折り畳み、ループ、ハーフループ、ドメイン、ハーフドメイン、部位、末端、又はそれらの任意の組み合わせを含む。
【0109】
融合タンパク質:本願で使用される「融合タンパク質」又はキメラタンパク質という用語は、同じポリペプチド中に天然には存在しないアミノ酸又はその活性フラグメントの2つ以上の配列を含むタンパク質又はポリペプチドを指す。いくつかの実施形態において、2つ以上の別個のポリペプチドは作動可能に共有結合している、例えば、化学的に結合しているか、又はペプチド結合によって一緒に融合している。組換え融合ポリペプチドは、組換えDNA技術によって人工的に作成される。
【0110】
ハーフドメイン:ポリペプチドに言及する場合、本願で使用される「ハーフドメイン」という用語は、それが由来するドメインの少なくとも半分の数のアミノ酸残基を有する同定されたドメインの一部を意味する。ドメインが常に偶数のアミノ酸残基を含むとは限らないことが理解されている。したがって、あるドメインが奇数のアミノ酸を含む、又は含むことが同定された場合、その奇数番号のドメインのハーフドメインは、ドメインの整数部分又は次の整数部分(ドメインのアミノ酸の数/2±0.5アミノ酸)を構成する。例えば、7アミノ酸ドメインとして同定されたドメインは、3アミノ酸又は4アミノ酸のハーフドメインを生成し得る(7/2=3.5+1-0.5は3又は4)。ドメイン内又はハーフドメイン内でサブドメインが同定され得ることも理解されており、これらのサブドメインは、それらが由来するドメイン又はハーフドメインで同定された構造的又は機能的特性のすべてを保有するわけではない。また、本願におけるドメインタイプのいずれかを含むアミノ酸は、ポリペプチドの骨格に沿って連続している必要はない(すなわち、隣接しないアミノ酸が構造的に折り畳まれることで、ドメイン、ハーフドメイン、又はサブドメインを生成する場合がある)ことも理解されている。
【0111】
免疫応答:本願で使用される「免疫応答」という用語は、炎症、外傷、免疫障害、又は感染症もしくは遺伝性疾患に関連する状態を指す。これらの状態は、細胞及び全身の防御システムに影響を与える可能性のある、サイトカイン、ケモカイン、その他のシグナル伝達分子などの様々な因子の発現によって特徴づけられる。
【0112】
リンカー:本願で使用される「リンカー」は、共有結合で2つ以上のポリペプチドを結合している官能基(例えば、化学物質又はポリペプチド)を指す。本願で使用される「ペプチドリンカー」は、2つのタンパク質を互いに結合するために使用される2つ以上のアミノ酸である。
【0113】
調節:本願で使用される「調節」という用語は、当技術分野で認識されており、応答の上方制御(すなわち、活性化又は刺激)、下方制御(すなわち、阻害又は抑制)、又はこれら2つを組み合わせて又は別々に指す。
【0114】
ポリヌクレオチド:本願で使用される「ポリヌクレオチド」という用語は、ホスホジエステル結合によって連結されたヌクレオチドの配列を指す。ポリヌクレオチドは、本願では5’から3’への方向で提示される。ポリヌクレオチドは、デオキシリボ核酸(DNA)分子又はリボ核酸(RNA)分子であり得る。ポリヌクレオチドがDNA分子である場合、その分子は遺伝子又はcDNA分子であり得る。ヌクレオチド塩基は、本願ではアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、シトシン(C)、イノシン(I)、及びウラシル(U)の一文字コードで示される。ポリヌクレオチドは、当業者に周知の標準的な技術を使用して調製することができる。
【0115】
ポリペプチド:いくつかの実施形態において、本開示の組成物は、ポリペプチド又はタンパク質又はそれらのバリアントである。本開示によれば、任意のアミノ酸ベースの分子(天然又は非天然)は「ポリペプチド」と呼ばれることがあり、この用語は「ペプチド」、「ペプチド模倣物」、及び「タンパク質」を包含する。本願で使用される場合、「ポリペプチド」は、ほとんどの場合ペプチド結合によって互いに結合されたアミノ酸残基(天然又は非天然)のポリマーを意味する。本願で使用されるこの用語は、任意のサイズ、構造、又は機能のタンパク質、ポリペプチド、及びペプチドを指す。「ペプチド模倣物」又は「ポリペプチド模倣物」は、その分子が天然のポリペプチド(すなわち、20種類のタンパク質形成アミノ酸のみから構成されるポリペプチド)には見出されない構造要素を含むポリペプチドである。いくつかの実施形態において、ペプチド模倣物は、天然ペプチドの生物学的作用を再現又は模倣することができる。
【0116】
ポリペプチドバリアント:「ポリペプチドバリアント」という用語は、天然又は参照配列とはアミノ酸配列が異なる分子を指す。アミノ酸配列バリアントは、天然又は参照配列と比較して、アミノ酸配列内の特定の位置に置換、欠失、及び/又は挿入を有し得る。通常、バリアントは、天然又は参照配列に対して少なくとも約50%の同一性(相同性)を有し、好ましくは、それらは天然又は参照配列に対して少なくとも約80%、より好ましくは少なくとも約90%同一(相同)である。
【0117】
組換え:本願で使用される「組換え」という用語は、自然界で一般に見出されるものとははっきりと区別できる遺伝的実体を指す。ポリヌクレオチド又は遺伝子に適用される場合、これは、そのポリヌクレオチドが、自然界に見出されるポリヌクレオチドとははっきりと区別できる構築物の生成をもたらす、クローニング、制限及び/又はライゲーションステップ、及び他の手順の様々な組み合わせの産物であることを意味する。
【0118】
サンプル:本願で使用される「サンプル」という用語は、供給源から採取された、及び/又は分析又は処理のために提供されたアリコート又は一部を指す。いくつかの実施形態において、サンプルは、組織、細胞、又は構成部分(例えば、血液、粘液、リンパ液、滑液、脳脊髄液、唾液、羊水、羊膜臍帯血、尿、膣液及び精液を含むがこれらに限定されない体液)などの生物学的供給源に由来する。いくつかの実施形態において、サンプルは、生物体全体、又はその組織、細胞もしくは構成部分のサブセット、あるいはその画分もしくは一部から調製されたホモジネート、ライセートもしくは抽出物であってもよく、又はそれらを含んでもよい。これらには、限定するものではないが、例えば、血漿、血清、脊髄液、リンパ液、皮膚の外部セクション、呼吸器、腸管、及び泌尿生殖器管、涙液、唾液、乳、血球、腫瘍、又は器官が含まれる。いくつかの実施形態において、サンプルは、タンパク質などの細胞成分を含み得る栄養ブロス又はゲルなどの培地であるか、又はそれを含む。いくつかの実施形態において、「一次」サンプルは、供給源のアリコートである。いくつかの実施形態において、一次サンプルは、分析又は他の使用のためのサンプルを調製するために、1つ以上の処理(例えば、分離、精製などの)ステップに供される。
【0119】
実質的に:本願で使用される「実質的に」という用語は、対象の特性又は性質の全体的又はほぼ全体的な範囲又は程度を示す定性的条件を指す。生物学的技術の当業者であれば、生物学的及び化学的現象が完全に完了に至ること及び/又は完了するまで進み又は絶対的に結果を達成し又は回避することは極めて起こりにくいことを理解するであろう。したがって、「実質的に」という用語は、多くの生物学的及び化学的現象に固有の完全性の潜在的な欠如を表現するために本願で使用される。
【0120】
末端:ポリペプチドに言及する場合、本願で使用される「末端」という用語は、ペプチド又はポリペプチドの端を指す。このような端は、ペプチド又はポリペプチドの最初又は最後の部位のみに限定されず、末端領域の追加のアミノ酸を含み得る。本願に記載されるポリペプチドベースの分子は、N末端(遊離アミノ基(NH2)を有するアミノ酸によって終結する)及びC末端(遊離カルボキシル基(COOH)を有するアミノ酸によって終結する)の両方を有するものとして特徴づけられ得る。本願に記載されるタンパク質は、場合によっては、ジスルフィド結合又は非共有結合力によって結合された複数のポリペプチド鎖から構成される(マルチマー、オリゴマー)。この種のタンパク質は複数のN末端とC末端を有することになる。あるいは、ポリペプチドの末端は、場合によっては、有機複合体などの非ポリペプチドベースの部分で開始又は終了するように修飾されてもよい。
【0121】
治療有効量:本願で使用される「治療有効量」という用語は、疾患、障害、及び/又は状態に罹患している、又は罹患しやすい対象に投与した場合に、その疾患、障害、及び/又は状態を治療し、その症状を改善し、診断し、予防し、及び/又は発症を遅らせるのに十分な、送達される薬剤の量を意味する。
【0122】
治療する(treating):本願で使用される「治療する」という用語は、特定の疾患、障害、及び/又は状態の1つ以上の症状又は特徴を、部分的に又は完全に、緩和し(alleviating)、改善し(ameliorating)、改善し(improving)、緩和し(relieving)、その発症を遅らせ、その進行を阻害し、その重症度を軽減し、及び/又はその発生率を低下させることを指す。治療は、疾患、障害、及び/又は状態の兆候を示さない対象、及び/又は疾患、障害、及び/又は状態の初期の兆候のみを示す対象に、その疾患、障害、及び/又は状態に関連する病状を発症するリスクを低下させる目的で施されてもよい。
【0123】
治療(treatment):本願で使用される「治療する(treat)」、「治療」などの用語は、病理学的過程の緩和を指す。本開示の文脈において、それは、本明細書において以下に列挙される他の状態のいずれかに関し、「治療する」、「治療」などの用語は、そのような状態に関連する少なくとも1つの症状を軽減もしくは緩和すること、又はそのような状態の進行又は予想される進行を遅らせ又は逆転させることを意味する。
【0124】
治療用量:本願で使用される場合、「治療用量」は、治療適応症に対処又はそれを軽減する過程で投与される治療薬の1回以上の用量を指す。治療用量は、体液又は生体系における治療薬の所望の濃度又は活性レベルを維持するために調整され得る。
【0125】
VI.均等物及び範囲
本開示では、本開示の様々な実施形態が特に示され説明されてきたが、本明細書に開示され、及び添付の特許請求の範囲に記載されている実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更が可能であることが当業者には理解されるであろう。
【0126】
当業者は、本明細書に記載される特定の実施形態に対する多くの均等物を日常的な実験のみを使用して認識するか、確認することができるであろう。本開示の範囲は、上記の説明に限定されるものではなく、むしろ添付の特許請求の範囲に記載されるとおりである。
【0127】
特許請求の範囲において、「1つ」、「その」、及び「前記」などの冠詞は、そうでないことが示されない限り、又は文脈から明らかでない限り、1つ又は複数を意味する場合がある。グループの1つ以上のメンバー間に「又は」を含む請求項又は説明は、そうでないことが示されない限り、又は文脈から明らかでない限り、そのグループメンバーのうちの1つ、複数、又はすべてが所与の製品又は方法に存在するか、使用されるか、又はその他の方法で関連する場合に満たされると見なされる。本開示には、グループのただ1つのメンバーが所与の製品又は方法に存在するか、使用されるか、又はその他の方法で関連する実施形態が含まれる。本開示には、複数の又はすべてのグループメンバーが所与の製品又は方法に存在するか、使用されるか、又はその他の方法で関連する実施形態が含まれる。
【0128】
また、「含む」という用語はオープンであることを意図しており、追加の要素又はステップの包含を許容するが必須ではないことにも留意されたい。したがって、「含む」という用語が本願で使用される場合、「からなる」及び「又は含有する」という用語も包含され、開示される。
【0129】
範囲が示されている場合は、境界値も含まれる。さらに、別段の指示がない限り、又は文脈及び当業者の理解から明らかでない限り、範囲として表現される値は、本発明の様々な実施形態において、記載された範囲内の任意の特定の値又は部分範囲を、文脈上明らかに別段の指示がない限り、その範囲の下限の単位の10分の1まで想定し得ることを理解されたい。
【0130】
さらに、従来技術に該当する本開示の任意の特定の実施形態は、いずれか1つ以上の請求項から明示的に除外され得ることを理解されたい。このような実施形態は当業者には既知であるとみなされるため、本明細書に明示的に除外が記載されていなくても、除外することができる。本明細書に開示される組成物の任意の特定の実施形態は、先行技術の存在に関するか否かにかかわらず、任意の理由で、任意の1つ以上の請求項から除外され得る。
【0131】
本明細書で引用される、例えば参考文献、刊行物、データベース、データベースエントリ、及び本明細書で引用する技術などのすべての出典は、引用文に明示的に記載されていない場合でも、参照により本願に組み込まれる。出典と本願の記述が矛盾する場合には、本願の記述を優先するものとする。
【0132】
セクション及び表の見出しは、限定を意図したものではない。
実施例
例1.DSG2融合ポリペプチドの合成法
本明細書に記載のDSG2融合ポリペプチドは、所望のポリペプチドをコードするDNAを合成することによる組換えDNA技術によって生成される。所望のポリペプチドのコード配列が合成又は単離されると、それらは発現に適したベクターにクローニングされる。
【0133】
発現ベクターは、形質転換、形質導入、及び/又はトランスフェクションによって適切な宿主細胞に挿入される。DSG2融合ポリペプチドの配列は、宿主細胞において最大の発現をもたらすように最適化され得る。宿主細胞は、組換えタンパク質の発現に関して当技術分野で知られている任意の宿主細胞である。アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から入手可能な不死化細胞株を含む多くの哺乳類細胞株が当技術分野で知られており、例えば、限定するものではないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、HeLa細胞、HEK293、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、HepG2)、マディン・ダービーウシ腎臓(「MDBK」)細胞、肉腫などのがん細胞に由来するNOS細胞、及びその他がある。細菌種も宿主細胞として使用することができる。非限定的な例には、大腸菌、枯草菌、及びレンサ球菌が挙げられる。本開示において有用な酵母宿主細胞の非限定的な例には、とりわけ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)、カンジダ・マルトーサ(Candida maltosa)、ハンセヌラ・ポリモルファ(Hansenula polymorpha)、クルイベロミセス・フラジリス(Kluyveromyces fragilis)、クルイベロミセス・ラクティス(Kluyveromyces lactis)、ピキア・グイリエルモンディ(Pichia guillerimondii)、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、及びヤロウイア・リポリティカ(Yarrowia lipolytica)が挙げられる。
【0134】
選択された発現系及び宿主に応じて、本開示の融合ポリペプチドは、目的のタンパク質が発現される条件下で発現ベクターを発現する宿主細胞を増殖させることによって製造される。次に、タンパク質は宿主細胞から単離され、精製される。
【0135】
あるいは、本開示の融合ポリペプチドは、当技術分野で知られている従来の技術、例えば、固相ペプチド合成などの化学合成によって合成することができる。
例2.COVID-19後の血清サンプル中の抗DSG2抗体
COVID-19を含むウイルス感染は、例えば、損傷を受けた細胞上の以前は隠されていた潜在的なエピトープを活性化された免疫系にさらすことによって、自己免疫応答に寄与するとの仮説が立てられている(Ehrenfeld M,et al.,Autoimmunity Reviews 2020;102597;その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。COVID-19感染症に見られる心臓病の発症率が高いことを考慮すると、結果として抗DSG2自己抗体が生成されるのではないかという仮説が立てられた。
【0136】
300個の回復期血清サンプルを、2020年10月から2021年2月までの東アジア人集団のCOV1D-19感染後患者のグループから採取した。研究対象集団の平均年齢は37歳(範囲は21~65歳)であった。154個のサンプルはCOVID-19感染の6か月後に採取され、146個のサンプルはCOVID感染の9か月後に採取された。17個のサンプルは6か月目と9か月目の時点で同じ患者から得られた(症状の状態は不明)。陰性対照群の血清は、自己申告した健康人の商業供給源から入手した。陽性対照ARVC血清は、医薬品規制調和国際会議(ICH)のガイドラインに基づいて入手した。抗薬物抗体(ADA)形式のアッセイを抗DSG2抗体の検出に使用した。図1に示すように、COVID-19後のサンプルにおける抗DSG2抗体の平均シグナル強度は、健康な対照集団のものよりも大幅に高かった(COVID-19後のサンプルでは19±83.2に対し、健康な対照集団では2.1±6.8、p値<0.001)。特に、COVID-19後のサンプルの29.3%が対照集団の90パーセンタイルよりも高いシグナルを示し、8.7%がARVC患者で見られる中央値よりも高いシグナルを有した。COVID-19感染の6~9か月後に採取されたサンプル中に抗DSG2抗体が存在することは、その抗体が急性期の反応物ではないことを示唆している。結果を表4及び表5にも併せて示す。
【0137】
【表4】
【0138】
【表5】
【0139】
6か月のサンプルと9か月のサンプルとの間のシグナル強度には、相互に有意な差はなかった(p=0.529)。これは、すべての6か月及び9か月のサンプルを非同期的に評価したとき(N=300、図2A)、ならびに、COVID-19感染後の採取月ごとに6か月と9か月のサンプルをペアにして分析したとき(N=17、図2B)に観察された。
【0140】
結論として、回復したCOVID-19患者は、健康な対照集団と比較して有意に高く、ARVCと診断されたグループのレベルと同等の、持続した抗DSG2自己抗体レベルを示した。注目すべきことに、これらの血清は急性COVID-19感染のかなり後に得られたものであり、これらの抗体が長期間持続する可能性があることを示唆している。
図1
図2A
図2B
【配列表】
2024500250000001.app
【国際調査報告】