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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】熱暴走のトリガ方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20231226BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
H01M10/42 Z
H01M10/48 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023529095
(86)(22)【出願日】2022-03-14
(85)【翻訳文提出日】2023-05-16
(86)【国際出願番号】 CN2022080645
(87)【国際公開番号】W WO2023092896
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】202111436998.6
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513196256
【氏名又は名称】寧徳時代新能源科技股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Contemporary Amperex Technology Co., Limited
【住所又は居所原語表記】No.2,Xingang Road,Zhangwan Town,Jiaocheng District,Ningde City,Fujian Province,P.R.China 352100
(74)【代理人】
【識別番号】100159329
【弁理士】
【氏名又は名称】三縄 隆
(72)【発明者】
【氏名】蒲 玉杰
(72)【発明者】
【氏名】李 耀
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 玉峰
(72)【発明者】
【氏名】柯 ▲劍▼煌
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 小波
【テーマコード(参考)】
5H030
【Fターム(参考)】
5H030AA06
5H030AS20
5H030FF51
(57)【要約】
電池技術分野に関し、熱暴走のトリガ方法を提供する。熱暴走のトリガ方法は、電池セル(100)及び電池セル(100)内に設置される加熱部材(200)を提供するステップと、加熱部材(200)によって電池セル(100)の内部を加熱し、それにより電池セル(100)を熱暴走させるステップと、を含む。加熱部材(200)を電池セル(100)の内部に設置し、加熱部材(200)が電池セル(100)の内部を加熱し、それにより電池セル(100)を熱暴走させ、短時間のうちに電池セル(100)が熱暴走するまで電池セル(100)の内部を加熱することができる。電池セル(100)の内部空間が減少するため、加熱部材(200)から電池セル(100)の内部で拡散する範囲が小さく、加熱部材(200)の熱損失が少なく、外部から小さいエネルギーを追加導入するだけで電池セル(100)の熱暴走をトリガすることができる。該方法は電池セル(100)の構造を破壊せず、測定対象の電池セル(100)の気密性を保証し、電池セル(100)の実際の熱暴走により近い挙動過程をシミュレーションすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池セル及び前記電池セル内に設置される加熱部材を提供するステップと、
前記加熱部材によって前記電池セルの内部を加熱し、それにより前記電池セルを熱暴走させるステップと、を含む熱暴走のトリガ方法。
【請求項2】
前記加熱部材によって電池セルの内部を加熱する前記ステップは、
前記加熱部材によって前記電池セルの電極アセンブリのセパレータを加熱することにより、前記セパレータを溶融破壊し、前記電池セルを内部短絡させるステップを含む、請求項1に記載の熱暴走のトリガ方法。
【請求項3】
前記加熱部材によって前記電池セルの電極アセンブリのセパレータを加熱する前記ステップは、
前記セパレータに接続された前記加熱部材によって前記セパレータを加熱するステップを含む、請求項2に記載の熱暴走のトリガ方法。
【請求項4】
前記加熱部材によって前記電池セルの内部を加熱する前記ステップの前に、前記熱暴走のトリガ方法は、
外部電源を前記加熱部材に電気的に接続するステップをさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱暴走のトリガ方法。
【請求項5】
前記電池セルが熱暴走した後に前記加熱部材への前記外部電源を切断し、それにより前記加熱部材が前記電池セルの内部を加熱することを停止するステップをさらに含む、請求項4に記載の熱暴走のトリガ方法。
【請求項6】
電池セル及び加熱部材を提供する前記ステップは、
前記加熱部材を前記電池セルの電極アセンブリに接続するステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の熱暴走のトリガ方法。
【請求項7】
前記加熱部材を前記電池セルの電極アセンブリに接続する前記ステップは、
前記加熱部材を前記電極アセンブリのセパレータに接続するステップを含む、請求項6に記載の熱暴走のトリガ方法。
【請求項8】
前記加熱部材を前記電池セルの電極アセンブリに接続する前記ステップの後、電池セル及び加熱部材を提供する前記ステップは、
前記電極アセンブリをハウジングの開口から前記ハウジング内に収容するステップと、
エンドカバーを前記開口に被せるステップと、をさらに含む、請求項6又は7に記載の熱暴走のトリガ方法。
【請求項9】
エンドカバーを前記開口に被せる前記ステップの前に、電池セル及び加熱部材を提供する前記ステップは、
前記加熱部材に接続されたリード線を前記エンドカバー上の貫通孔から引き出すステップをさらに含み、
前記加熱部材によって前記電池セルの内部を加熱する前記ステップの前に、前記熱暴走のトリガ方法は、
外部電源を前記リード線に電気的に接続するステップをさらに含む、請求項8に記載の熱暴走のトリガ方法。
【請求項10】
前記加熱部材に接続されたリード線を前記エンドカバー上の貫通孔から引き出す前記ステップの後、電池セル及び加熱部材を提供する前記ステップは、
シール部材を前記貫通孔に挿設することにより、前記エンドカバーと前記リード線を密封するステップをさらに含む、請求項9に記載の熱暴走のトリガ方法。
【請求項11】
前記シール部材は、リード線を引き出すための取り付け孔及び前記リード線を前記取り付け孔に係入させるための切り欠きを含み、
シール部材を前記貫通孔に挿設するステップの前に、電池セル及び加熱部材を提供する前記ステップは、
前記リード線を前記切り欠きから前記取り付け孔に係入するステップをさらに含む、請求項10に記載の熱暴走のトリガ方法。
【請求項12】
前記リード線は前記取り付け孔と一対一に対応して設置され、
前記リード線を前記切り欠きから前記取り付け孔に係入するステップは、
前記リード線を前記切り欠きから当該切り欠きに対応する前記取り付け孔に係入するステップを含む、請求項11に記載の熱暴走のトリガ方法。
【請求項13】
前記加熱部材を絶縁部材で被覆した後、前記絶縁部材で被覆された前記加熱部材を前記電極アセンブリに接続するステップをさらに含む、請求項6~12のいずれか一項に記載の熱暴走のトリガ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2021年11月29日に出願された、発明の名称が「熱暴走のトリガ方法」である、中国特許出願202111436998.6、の優先権を主張し、当該出願内容の全体は参照により本明細書に組み込まれる。
本願は電池技術分野に関し、具体的には、熱暴走のトリガ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電池はエネルギー貯蔵装置として、電子製品、電気自動車、エネルギー貯蔵発電所等の多くの分野に広く応用されている。電池の安全性が使用要件を満たすか否かは、現在広く研究されている課題である。電池の熱暴走は電池の安全問題の1つであり、電池が熱暴走すると電池内の温度が上昇し、最終的に熱暴走の連鎖反応を引き起こし、電池の発火、爆発につながる。同時に、熱暴走の過程は熱暴走の伝播を引き起こす。熱暴走及び熱暴走の伝播による事故は、いずれも人の死傷及び財産の損失を容易に生じさせる。
【0003】
現在は主に特定の電池セルの熱暴走をトリガすることにより、電池モジュールにおける熱量の伝播状況を観察して電池の安全性の問題を分析しているが、従来の熱暴走をトリガする方式は、実際の熱暴走過程をシミュレーションしにくい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願の実施例は、シミュレーションされる電池の熱暴走過程を電池の実際の熱暴走過程により近づけた熱暴走のトリガ方法を提供する。
【0005】
本願の実施例は、
電池セル及び前記電池セル内に設置される加熱部材を提供するステップと、
前記加熱部材によって前記電池セルの内部を加熱し、それにより前記電池セルを熱暴走させるステップと、を含む熱暴走のトリガ方法を提供する。
【0006】
上記技術的解決手段において、加熱部材を電池セルの内部に設置し、加熱部材が電池セルの内部を加熱し、それにより電池セルを熱暴走させ、短時間のうちに電池セルが熱暴走するまで電池セルの内部を加熱することができる。加熱部材は電池セルの内部に設置され、電池セルの内部空間が減少するため、加熱部材から電池セルの内部で拡散する範囲が小さく、加熱部材の熱損失が少なく、外部から小さいエネルギーを追加導入するだけで電池セルの熱暴走をトリガすることができる。加熱部材は電池セルの内部で加熱し、電池セルの構造を破壊せず、測定対象の電池セルの気密性を保証し、電池セルの実際の熱暴走により近い挙動過程をシミュレーションすることにより、シミュレーションされた熱暴走の過程に基づいて、電池セルの熱暴走を減少させる手段及び電池セルの熱暴走時の損失を軽減する手段を決定することができる。
【0007】
本願のいくつかの実施例において、前記加熱部材によって電池セルの内部を加熱する前記ステップは、
前記加熱部材によって前記電池セルの電極アセンブリのセパレータを加熱することにより、前記セパレータを溶融破壊し、前記電池セルを内部短絡させるステップを含む。
【0008】
上記技術的解決手段において、セパレータを溶融破壊することによって電池セルの内部短絡を引き起こし、それにより電池セルの熱暴走をトリガすることから、セパレータを溶融破壊するために必要な熱量が小さく、追加導入されるエネルギーを減少させる。また、セパレータの厚さが小さいため、溶融破壊速度が速く、電池セルの熱暴走をトリガする時間を短縮させる。
【0009】
本願のいくつかの実施例において、前記加熱部材によって前記電池セルの電極アセンブリのセパレータを加熱する前記ステップは、
前記セパレータに接続された前記加熱部材によって前記セパレータを加熱するステップを含む。
【0010】
上記技術的解決手段において、加熱部材をセパレータに接続すると、加熱部材が発生させた熱量はセパレータを溶融破壊するために十分に利用することができ、追加導入されるエネルギーを減少させることができる。加熱部材をセパレータに接続すると、加熱部材が発生させた熱量はセパレータに迅速に伝達され、セパレータを急速に溶融破壊して、熱暴走をトリガする時間を短縮させることができる。
【0011】
本願のいくつかの実施例において、前記加熱部材によって前記電池セルの内部を加熱する前記ステップの前に、前記熱暴走のトリガ方法は、
外部電源を前記加熱部材に電気的に接続するステップをさらに含む。
【0012】
上記技術的解決手段において、外部電源を介して加熱部材に電力を供給し加熱部材に電池セルの内部を加熱させ、この方式は、外部電源と加熱部材との間の電気的接続を導通又は切断することにより、加熱部材が電池セルの内部を加熱することを開始又は停止するように制御することができ、加熱時間及び加熱出力をいずれも制御しやすい。
【0013】
本願のいくつかの実施例において、前記熱暴走のトリガ方法は、
前記電池セルが熱暴走した後に前記加熱部材への前記外部電源を切断し、それにより前記加熱部材が前記電池セルの内部を加熱することを停止するステップをさらに含む。
【0014】
上記技術的解決手段において、電池セルが熱暴走した後、外部電源と加熱部材との間の電気的接続を切断し、外部電源が加熱部材に電気エネルギーを供給することを停止し、それにより加熱部材の加熱を停止させる。外部電源と加熱部材との間の電気的接続を切断することで、外部エネルギーの消費を削減し、他の安全上の問題の誘発を回避することができる。
【0015】
本願のいくつかの実施例において、電池セル及び加熱部材を提供する前記ステップは、
前記加熱部材を前記電池セルの電極アセンブリに接続するステップを含む。
【0016】
上記技術的解決手段において、加熱部材を電池セルの電極アセンブリに接続し、加熱部材が電極アセンブリを直接加熱するようにして、電池セルの熱暴走をより容易にトリガすることができる。
【0017】
本願のいくつかの実施例において、前記加熱部材を前記電池セルの電極アセンブリに接続する前記ステップは、
前記加熱部材を前記電極アセンブリのセパレータに接続するステップを含む。
【0018】
上記技術的解決手段において、加熱部材をセパレータに接続すると、加熱部材が発生させた熱量はセパレータを溶融破壊するために十分に利用することができ、追加導入されるエネルギーを減少させることができる。加熱部材をセパレータに接続すると、加熱部材が発生させた熱量はセパレータに迅速に伝達され、セパレータを急速に溶融破壊して、熱暴走をトリガする時間を短縮させることができる。
【0019】
本願のいくつかの実施例において、前記加熱部材を前記電池セルの電極アセンブリに接続する前記ステップの後、電池セル及び加熱部材を提供する前記ステップは、
前記電極アセンブリをハウジングの開口から前記ハウジング内に収容するステップと、
エンドカバーを前記開口に被せるステップと、をさらに含む。
【0020】
上記技術的解決手段において、加熱部材を電極アセンブリに接続した後、加熱部材が接続された電極アセンブリをハウジングの開口からハウジング内に入れ、電極アセンブリをハウジングに入れると同時に加熱部材をハウジング内に設置することができ、加熱部材を電極アセンブリに接続しやすく、組み立ての生産効率を向上させる。
【0021】
本願のいくつかの実施例において、エンドカバーを前記開口に被せる前記ステップの前に、電池セル及び加熱部材を提供する前記ステップは、
前記加熱部材に接続されたリード線を前記エンドカバー上の貫通孔から引き出すステップをさらに含み、
前記加熱部材によって前記電池セルの内部を加熱する前記ステップの前に、前記熱暴走のトリガ方法は、
外部電源を前記リード線に電気的に接続するステップをさらに含む。
【0022】
上記技術的解決手段において、エンドカバーをハウジングに被せる前に、加熱部材に接続されたリード線をエンドカバー上の貫通孔から引き出して、エンドカバーをハウジングに被せた後、リード線の一端は電池セルの外に位置し、リード線と外部電源との電気的接続を容易にする。
【0023】
本願のいくつかの実施例において、前記加熱部材に接続されたリード線を前記エンドカバー上の貫通孔から引き出す前記ステップの後、電池セル及び加熱部材を提供する前記ステップは、
シール部材を前記貫通孔に挿入することにより、前記エンドカバーと前記リード線を封止するステップをさらに含む。
【0024】
上記技術的解決手段において、リード線及びエンドカバーをシール部材で封止して、電池セルの気密性を保証することができ、実際の熱暴走の状況をシミュレーションすることができ、エンドカバーに貫通孔が設置されることで電池セルから貫通孔を介して排気がなされ、シミュレーション効果が低下することを回避する。
【0025】
本願のいくつかの実施例において、前記シール部材は、リード線を引き出すための取り付け孔及び前記リード線を前記取り付け孔に係入させるための切り欠きを含み、
シール部材を前記貫通孔に挿入するステップの前に、電池セル及び加熱部材を提供する前記ステップは、
前記リード線を前記切り欠きから前記取り付け孔に係入するステップをさらに含む。
【0026】
上記技術的解決手段において、リード線をシール部材の切り欠きからシール部材が取り付けられる取り付け孔内に係入し、リード線がシール部材を貫通しやすく、且つ切り欠きはさらにシール部材と貫通孔の孔壁との締まり嵌めに圧縮代を提供することができる。
【0027】
本願のいくつかの実施例において、前記リード線は前記取り付け孔と一対一に対応して設置され、
前記リード線を前記切り欠きから前記取り付け孔に係入するステップは、
前記リード線を前記切り欠きから当該切り欠きに対応する前記取り付け孔に係入するステップを含む。
【0028】
上記技術的解決手段において、リード線と取り付け孔は一対一に対応して設置され、リード線は切り欠きからそれに対応する取り付け孔に係入され、即ち1つのリード線が1つの取り付け孔内に穿設され、取り付け孔の孔壁とリード線の周壁がより良好に密着して、封止性能を保証することができる。
【0029】
本願のいくつかの実施例において、前記熱暴走のトリガ方法は、
前記加熱部材を絶縁部材で被覆した後、前記絶縁部材で被覆された前記加熱部材を前記電極アセンブリに接続するステップをさらに含む。
【0030】
上記技術的解決手段において、加熱部材を絶縁部材で被覆した後、絶縁部で被覆された加熱部材を電極アセンブリに接続することで、加熱部材と電極アセンブリが電気的接続を形成して他の安全上の問題が生じることを回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本願の実施例の技術的解決手段をより明確に説明するために、以下に実施例に必要な図面を簡単に紹介し、理解すべきことは、以下の図面は本願のいくつかの実施例を示しているに過ぎず、範囲を限定するものと見なすべきではなく、当業者であれば、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の関連する図面を取得することができる。
【0032】
図1】本願のいくつかの実施例に係る電池セルの分解図である。
図2】本願のいくつかの実施例に係る組み立て前のエンドカバーアセンブリ及びシール部材の概略図である。
図3】本願のいくつかの実施例に係るエンドカバーアセンブリ及びシール部材の組み立て後の断面図である。
図4】本願のいくつかの実施例に係る熱暴走のトリガ方法のフローチャートである。
図5】本願の別の実施例に係る熱暴走のトリガ方法のフローチャートである。
図6】本願のさらに別の実施例に係る熱暴走のトリガ方法のフローチャートである。
図7】本願の他の実施例に係る熱暴走のトリガ方法のフローチャートである。
図8】本願のさらに他の実施例に係る熱暴走のトリガ方法のフローチャートである。
図9】本願のいくつかの実施例に係る電池セル及び加熱部材を提供する方法のフローチャートである。
図10】本願のいくつかの実施例に係るシール部材の軸測図である。
図11】リード線がシール部材と係合した概略図である。
図12】本願のいくつかの実施例に係るシール部材の正面図である。
図13】本願のさらに別の実施例に係る熱暴走のトリガ方法のフローチャートである。
図14】加熱部材、リード線及び絶縁部材の三者の接続関係の概略図である。
図15】加熱部材、リード線及び絶縁部材の三者が電極アセンブリに接続された概略図である。
図16】加熱部材、リード線及び絶縁部材の三者が2つの電極アセンブリの間に接続された概略図である。
図17】電池セル、加熱部材及びシール部材が組み立てられた後の概略図である。
図18】電池セル、外部電源及び電気制御装置の接続関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本願の実施例の目的、技術的解決手段及び利点をより明確にするために、以下に本願の実施例における図面を参照しながら、本願の実施例における技術的解決手段を明確、完全に説明し、明らかに、説明される実施例は本願の一部の実施例であり、全ての実施例ではない。本明細書の図面に記載され示される本願の実施例の構成要素は、一般的に様々な異なる構成で配置及び設計され得る。
【0034】
したがって、図面に提供される本願の実施例の以下の詳細な説明は、特許請求される本願の範囲を限定することを意図するものではなく、本願の選択された実施例のみを示すものである。本願の実施例に基づき、当業者が創造的な労力を要することなく取得した全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0035】
なお、本願における実施例及び実施例における特徴は、矛盾しない限り、互いに組み合わせることができる。
【0036】
なお、類似の符号及びアルファベットは以下の図面において類似の項目を示し、従って、ある項目が1つの図面において定義されていれば、後続の図面においてそれをさらに定義し且つ解釈する必要はない。
【0037】
本願の実施例の説明において、指示方位又は位置関係は図面に示す方位又は位置関係に基づき、又は該出願の製品を使用する時に通常配置する方位又は位置関係であり、又は当業者が通常理解する方位又は位置関係であり、本願の説明を容易にして、説明を簡略化するためのものであるに過ぎず、対象の装置や素子が特定の方位を有し、特定の方位で構成され及び操作されるべきであることを示す又は暗示するものではなく、従って本願を限定するものと理解すべきではない。さらに、「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、区別して説明するためのものであるに過ぎず、相対的な重要性を示す又は暗示するものと理解すべきではない。
【0038】
現在、市場の情勢が発展していることから、動力電池の応用はますます広がっている。動力電池は水力、火力、風力及び太陽光発電所等のエネルギー貯蔵電源システムへの応用にとどまらず、電動自転車、電動バイク、電気自動車等の電動車両、及び軍事装備及び航空宇宙等の複数の分野に広く応用されている。動力電池の応用分野が絶えず拡大するのに伴って、市場におけるその需要量も絶えず拡大している。
【0039】
電池の製造欠陥又は不適切な使用等の原因により、リチウムイオン電池には極端な状況で熱暴走現象が発生し、電池内部の温度が上昇し、最終的に熱暴走の連鎖反応を引き起こし、電池の発火、爆発につながる。熱暴走の過程は熱暴走の伝播を引き起こす。熱暴走及び熱暴走の伝播による事故は、いずれも人の死傷及び財産の損失を容易に生じさせる。実際のところ、電池の熱暴走は避けることができず、発生の可能性を低下させるか又は電池の熱暴走後の損害を軽減させることができるに過ぎず、電池の熱暴走及び暴走の伝播挙動による最大の損害を事前に評価する必要がある。
【0040】
発明者らは、電池の熱暴走及び暴走の伝播挙動による最大の損害を評価するために、主に電池の熱暴走をトリガすることをシミュレーションし、電池の熱暴走及び暴走の伝播を観察することに注目した。現在一般的に使用されている電池セルの熱暴走をトリガする方法は針刺し、外部加熱、過充電等がある。針刺しトリガの方式は外部から電池セルの内部を刺し、それにより電池セルの内部を短絡させるものであるが、針刺しトリガは電池セル又は電池パックシステムの外部構造又は密封構造を破壊し、熱暴走挙動のシミュレーションの歪みを招く。外部加熱は電池セルの外部から電池セルを加熱し、それにより電池セルの内部の材質を劣化させ又は内部圧力が暴走するなどして、電池セルの熱暴走を引き起こすものである。過充電は電池セルにその定格電気エネルギーを超えて電気エネルギーを補充し、電池セルの熱暴走を引き起こすものであり、外部加熱及び過充電はいずれも大量のエネルギーを追加注入する必要がある。且つ従来のトリガ方法は、電池の実際の熱暴走過程をシミュレーションすることが困難である。また、既存のトリガ方法に装備された装置は空間の大きさの影響を受け、実際に電池セル又は電池内に組み立てることが困難であり、他の構造部材を犠牲にして組み付けなければならない。
【0041】
これらを考慮した結果、電池の熱暴走及び熱暴走の伝播挙動をよりリアルにシミュレーションし及び追加のエネルギー入力を減少させるために、発明者は鋭意研究を経て、加熱部材を電池セルの内部に設置し、加熱部材が電池セルの内部を加熱することにより、電池セルを熱暴走させる熱暴走のトリガ方法を提供する。
【0042】
加熱部材を電池セルの内部に設置し、加熱部材が電池セルの内部を加熱し、それにより電池セルを熱暴走させ、短時間のうちに電池セルが熱暴走するまで電池セルの内部を加熱することができる。加熱部材は電池セルの内部に設置され、電池セルの内部空間が減少するため、加熱部材から電池セルの内部で拡散する範囲が小さく、加熱部材の熱損失が少なく、外部から小さいエネルギーを追加導入するだけで電池セルの熱暴走をトリガすることができる。加熱部材は電池セルの内部で加熱し、電池セルの構造を破壊せず、測定対象の電池セルの気密性を保証し、電池セルの実際の熱暴走により近い挙動過程をシミュレーションすることにより、シミュレーションされた熱暴走の過程に基づいて、電池セルの熱暴走を減少させる手段及び電池セルの熱暴走時の損失を軽減する手段を決定することができる。
【0043】
本願の実施例が開示する熱暴走のトリガ方法は、車両、船舶又は航空機等に使用される電池セル又は電池の熱暴走をトリガすることに用いることができ、それにより異なる使用環境における電池セル又は電池の熱暴走及び熱暴走の伝播挙動をシミュレーションする。
【0044】
以下の実施例では説明の便宜上、本願の実施例が提供する電池セル100を例として、熱暴走のトリガ方法を説明する。
【0045】
図1を参照すると、電池セル100は、ハウジング10、電極アセンブリ20及びエンドカバーアセンブリ30を含む。ハウジング10は開口11を有し、電極アセンブリ20はハウジング10内に収容され、エンドカバーアセンブリ30は開口11をカバーするために用いられる。
【0046】
ハウジング10は円筒、直方体等の様々な形状であってもよい。ハウジング10の形状は、電極アセンブリ20の具体的な形状によって決定される。例えば、電極アセンブリ20が円筒構造である場合、ハウジング10は円筒構造を選択することができ、電極アセンブリ20が直方体構造である場合、ハウジング10は直方体構造を選択することができる。図1は、ハウジング10及び電極アセンブリ20が方形である場合を例示的に示す。
【0047】
ハウジング10の材質はいくつもあり、例えば、銅、鉄、アルミニウム、ステンレス鋼、アルミニウム合金等であってもよく、本願の実施例はこれについて特に限定しない。
【0048】
電極アセンブリ20は正極シート(図示せず)、負極シート(図示せず)及びセパレータ(図示せず)を含むことができる。電極アセンブリ20は、正極シート、セパレータ及び負極シートを捲回して形成された捲回式構造であってもよく、正極シート、セパレータ及び負極シートを積層配置して形成された積層式構造であってもよい。電極アセンブリ20はさらに正極タブ(図示せず)及び負極タブ(図示せず)を含み、正極シートにおける正極活物質層が塗布されていない正極集電体を正極タブとし、負極シートにおける負極活物質層が塗布されていない負極集電体を負極タブとすることができる。電極アセンブリ20は、捲回式電極アセンブリであってもよく、積層式電極アセンブリであってもよい。
【0049】
電池セル100は、1つ又は複数の電極アセンブリ20を含むことができる。複数とは2つ以上を意味する。
【0050】
エンドカバーアセンブリ30はハウジング10の開口11をカバーして、密閉された収容空間(図示せず)を形成するために用いられ、収容空間は電極アセンブリ20を収容するために用いられる。収容空間はさらに電解質、例えば電解液を収容するために用いられる。エンドカバーアセンブリ30は電極アセンブリ20の電気エネルギーを出力する部材として、エンドカバーアセンブリ30における電極端子は電極アセンブリ20と電気的に接続するために用いられ、即ち電極端子は電極アセンブリ20のタブに電気的に接続され、例えば、電極端子とタブはアダプタ40を介して接続されて、電極端子とタブの電気的接続を実現する。
【0051】
なお、ハウジング10の開口11は1つであってもよく、2つであってもよい。ハウジング10の開口11が1つであれば、エンドカバーアセンブリ30も1つであってもよく、エンドカバーアセンブリ30に2つの電極端子を設置することができ、2つの電極端子はそれぞれ電極アセンブリ20の正極タブ及び負極タブと電気的に接続されることに用いられ、エンドカバーアセンブリ30における2つの電極端子はそれぞれ正極電極端子及び負極電極端子である。ハウジング10の開口11が2つであれば、例えば、2つの開口11はハウジング10の対向する両側に設置され、エンドカバーアセンブリ30は2つであってもよく、2つのエンドカバーアセンブリ30はそれぞれハウジング10の2つの開口11をカバーする。この場合、1つのエンドカバーアセンブリ30における電極端子が正極電極端子であり、電極アセンブリ20の正極タブと電気的に接続するために用いられ、他方のエンドカバーアセンブリ30における電極端子が負極電極端子であり、電極アセンブリ20の負極シートと電気的に接続するために用いられるものであってもよい。
【0052】
引き続き図1を参照すると、エンドカバーアセンブリ30は、エンドカバー31、第1電極端子32、第2電極端子33、減圧機構34を含むことができる。
【0053】
第1電極端子32及び第2電極端子33はいずれもエンドカバー31に取り付けられ、第1電極端子32及び第2電極端子33はそれぞれ正極タブ及び負極タブに電気的に接続される。減圧機構34はエンドカバー31に設けられ、減圧機構34は少なくとも一部が第1電極端子32と第2電極端子33との間に位置し、減圧機構34は電池セル100の内部圧力又は温度が閾値に達した時に作動して電池セル100の内部の圧力を逃がすように構成される。
【0054】
図2図3を参照すると、熱暴走のトリガ方法を実行する装置の取り付けを容易にするために、いくつかの実施例において、エンドカバー31にさらに貫通孔35が設けられ、貫通孔35は、熱暴走のトリガ方法を実行する装置の構造の一部又は全部が電池セル100の内部に通し又は引き出して通過させることに用いられる。
【0055】
電池の熱暴走をトリガする時に電池セル100の気密性を保証するために、いくつかの実施例において、電池セル100はシール部材50をさらに含み、シール部材50は貫通孔35内に挿設されて、貫通し通過する熱暴走のトリガ方法を実行する装置の構造の一部又は全部と貫通孔35を封止する。
【0056】
図4を参照すると、本願の実施例は、
電池セル100及び電池セル100内に設置される加熱部材200(図14に示す)を提供するステップS100と、
加熱部材200によって電池セル100の内部を加熱し、それにより電池セル100を熱暴走させるステップS200と、を含む熱暴走のトリガ方法を提供する。
【0057】
ステップS100において、加熱部材200は電池セル100内に設置され、実際には加熱部材200は電池セル100のハウジング10内に設置される。加熱部材200及び電極アセンブリ20は、いずれもハウジング10の開口11からハウジング10の内部に入れられる。ハウジング10内において、加熱部材200はハウジング10の内壁に接続されてもよく、加熱部材200はハウジング10内の電極アセンブリ20に接続されてもよい。加熱部材200は、電極アセンブリ20をハウジング10に入れる前にハウジング10内に設置してもよく、加熱部材200は、電極アセンブリ20をハウジング10に入れた後にハウジング10内に設置してもよい。まず加熱部材200を電極アセンブリ20に接続し、次に電極アセンブリ20と一緒にハウジング10内に設置してもよい。
【0058】
加熱部材200は電熱線であってもよく、電池セル100の内部の材質と接触して発熱反応を起こす物質が設けられた部材であってもよい。
【0059】
ステップS200において、加熱部材200が発生させた熱量は電池セル100の内部気圧又は温度を急激に上昇させ、電池セル100の熱暴走を引き起こすものであってもよい。又は加熱部材200が発生させた熱量は電池セル100の内部の環境温度を上昇させ、それにより電池セル100の内部の構造(例えば電極アセンブリ20及び電解液)が、高温環境下にあることで材質が劣化し、それにより電池セル100の熱暴走を引き起こすものであってもよい。又は加熱部材200の熱量が電池セル100の内部を短絡させ、それにより電池セル100の熱暴走を引き起こすものであってもよい。
【0060】
加熱部材200を電池セル100の内部に設置し、加熱部材200が電池セル100の内部を加熱し、それにより電池セル100を熱暴走させ、短時間のうちに電池セル100が熱暴走するまで電池セル100の内部を加熱することができる。加熱部材200は電池セル100の内部に設置され、電池セル100の内部空間が減少するため、加熱部材200から電池セル100の内部で拡散する範囲が小さく、加熱部材200の熱損失が少なく、外部から小さいエネルギーを追加導入するだけで電池セル100の熱暴走をトリガすることができる。加熱部材200は電池セル100の内部で加熱し、電池セル100の構造を破壊せず、測定対象の電池セル100の気密性を保証し、電池セル100の実際の熱暴走により近い挙動過程をシミュレーションすることにより、シミュレーションされた熱暴走の過程に基づいて、電池セル100の熱暴走を減少させる手段及び電池セル100の熱暴走時の損失を軽減する手段を決定することができる。
【0061】
図5に示すように、いくつかの実施例において、加熱部材200によって電池セル100の内部を加熱するステップS200は、
加熱部材200によって電池セル100の電極アセンブリ20のセパレータを加熱することにより、セパレータを溶融破壊し、電池セル100を内部短絡させるステップを含む。
【0062】
電極アセンブリ20の正極シート及び負極シートは、正極シート及び負極シートが接触して電池セル100の内部短絡を引き起こすことを防止するために、セパレータによって分離される。加熱部材200がセパレータを加熱すると、セパレータが溶融破壊し、正極シートと負極シートが接触することにより、電池セル100の内部短絡を引き起こすことができ、それにより電池セル100の熱暴走をトリガする。
【0063】
セパレータを溶融破壊することによって電池セル100の内部短絡を引き起こし、それにより電池セル100の熱暴走をトリガすることから、セパレータを溶融破壊するために必要な熱量が小さくなり、追加導入されるエネルギーを減少させる。また、セパレータの厚さが小さいため、溶融破壊速度が速く、電池セル100の熱暴走をトリガする時間を短縮させる。
【0064】
図6に示すように、いくつかの実施例において、加熱部材200によって電池セル100の電極アセンブリ20のセパレータを加熱するステップは、
セパレータ上に接続された加熱部材200によってセパレータを加熱するステップを含む。
【0065】
セパレータ上に接続された加熱部材200とは、加熱部材200がセパレータに密着しており、加熱部材200の熱量が非常に短い時間及び伝達距離でセパレータに到達することが可能であることを指す。加熱部材200はセパレータに直接接続されてもよく、セパレータに間接的に接続されてもよい。
【0066】
加熱部材200をセパレータに接続すると、加熱部材200が発生させた熱量はセパレータを溶融破壊するために十分に利用することができ、追加導入されるエネルギーを減少させることができる。加熱部材200をセパレータに接続すると、加熱部材200が発生させた熱量はセパレータに迅速に伝達され、セパレータを急速に溶融破壊して、熱暴走をトリガする時間を短縮させることができる。
【0067】
図7に示すように、いくつかの実施例において、前記加熱部材200によって電池セル100の内部を加熱するステップの前に、前記熱暴走のトリガ方法は、
外部電源400(図17に示す)を加熱部材200に電気的に接続するステップS300をさらに含む。
【0068】
外部電源400とは、電池セル100の外部にあり、熱暴走をシミュレーションする電池セル100以外に用いられる他の電源のことである。外部電源400は加熱部材を発熱させる電力を供給するために用いられ、加熱部材200は金属導体で構成された電熱線であってもよく、金属導体は銅であってもよい。金属導体の抵抗範囲は、0Ω~100Ωに設計される。外部電源400と加熱部材200はリード線300を介して接続され、外部電源400と加熱部材200との間にさらに電気制御装置500(図17に示す)が設置されてもよく、電気制御装置500は装置スイッチ510、電流調整部520、電圧調整部530及びデジタルディスプレイ540を含む。装置スイッチ510は外部電源400と加熱部材200との間の電気的接続を導通又は切断することに用いられ、電流調整部520は出力される電流の大きさを調整し及び交流電流を直流電流に変換することに用いられ、電圧調整部530は出力される電圧の大きさを調整することに用いられ、デジタルディスプレイ540は現在の電流及び電圧の大きさ、電流が直流であるか交流であるか等の情報を表示することに用いられる。これにより、電気制御装置500は加熱部材200の加熱出力を正確に制御するために必要な電圧及び電流値を設定することができ、熱暴走シミュレーション試験の結果が高い再現性を有することを保証する。
【0069】
外部電源400を介して加熱部材200に電力を供給し加熱部材200に電池セル100の内部を加熱させ、この方式は、外部電源400と加熱部材200との間の電気的接続を導通又は切断することにより、加熱部材200が電池セル100の内部を加熱することを開始又は停止するように制御することができ、加熱時間及び加熱出力をいずれも制御しやすい。
【0070】
図8に示すように、いくつかの実施例において、熱暴走のトリガ方法は、
電池セル100が熱暴走した後に加熱部材200への外部電源400を切断し、それにより加熱部材200が電池セル100の内部を加熱することを停止するステップS400をさらに含む。
【0071】
加熱部材200への外部電源400を切断することは、実際には外部電源400と加熱部材200との間の電気的接続を切断することであり、それにより外部電源400の電気エネルギーが加熱部材200に伝達されない。加熱部材200への外部電源400の切断は、電子制御装置500によって実現することができる。電池セル100が熱暴走した後、外部電源400が加熱部材200にエネルギーを供給し続けると、加熱部材200が発熱し続け、他の安全上の問題を引き起こす可能性がある。
【0072】
電池セル100が熱暴走した後、外部電源400と加熱部材200との間の電気的接続を切断し、外部電源400が加熱部材200に電気エネルギーを供給することを停止し、それにより加熱部材200の加熱を停止させる。外部電源400と加熱部材200との間の電気的接続を切断することで、外部エネルギーの消費を削減し、他の安全上の問題の誘発を回避することができる。
【0073】
図9に示すように、いくつかの実施例において、電池セル100及び加熱部材を提供するステップS100は、
加熱部材200を電池セル100の電極アセンブリ20に接続するステップを含む。
【0074】
加熱部材200は電極アセンブリ20の正極シート、負極シート又はセパレータに接続されてもよく、実際の必要に応じて加熱部材200の接続位置を選択する。
【0075】
電極アセンブリ20の加熱部材200と接続するための位置は平面である必要はなく、例えば電極アセンブリ20が円筒形の電極アセンブリ20である実施例において、電極アセンブリ20の外周面は曲面であり、加熱部材200は電極アセンブリ20の形状に適応する必要があり、それにより加熱部材200と電極アセンブリ20の外形が一致せず電極アセンブリ20を損傷することを回避する。いくつかの実施例において、加熱部材200は優れた柔軟性を有することができ、それ自体の柔軟性を利用して電極アセンブリ20の外形に適応させることができ、それにより加熱部材200を電極アセンブリ20に密着させる。又は加熱部材200を電極アセンブリ20の外形と一致した形状に製造し、それにより加熱部材200を電極アセンブリ20に密着させる。
【0076】
加熱部材200を電池セル100の電極アセンブリ20に接続し、加熱部材200が電極アセンブリ20を直接加熱するようにして、電池セル100の熱暴走をより容易にトリガすることができる。
【0077】
引き続き図9を参照すると、いくつかの実施例において、加熱部材200を電池セル100の電極アセンブリ20に接続するステップは、
加熱部材200を電極アセンブリ20のセパレータに接続するステップを含む。
【0078】
加熱部材200は、電極アセンブリ20の最外層のセパレータに接続されてもよく、内層に位置するセパレータに接続されてもよい。
【0079】
加熱部材200をセパレータに接続すると、加熱部材200が発生させた熱量はセパレータを溶融破壊するために十分に利用することができ、追加導入されるエネルギーを減少させることができる。加熱部材200をセパレータに接続すると、加熱部材200が発生させた熱量はセパレータに迅速に伝達され、セパレータを急速に溶融破壊して、熱暴走をトリガする時間を短縮させることができる。
【0080】
引き続き図9を参照すると、いくつかの実施例において、加熱部材200を電池セル100の電極アセンブリ20に接続するステップの後、電池セル100及び加熱部材200を提供するステップS100は、
電極アセンブリ20をハウジング10の開口11からハウジング10内に収容するステップと、
エンドカバー31を開口11に被せるステップと、をさらに含む。
【0081】
電極アセンブリ20をハウジング10内に収容する前に、加熱部材200を電極アセンブリ20に接続することで、加熱部材200と電極アセンブリ20を一体としてハウジング10の開口11からハウジング10内に入れることができる。他の実施例において、電極アセンブリ20をハウジング10内に入れた後、加熱部材200をハウジング10内に位置する電極アセンブリ20に接続してもよい。
【0082】
加熱部材200を電極アセンブリ20に接続した後、加熱部材200が接続された電極アセンブリ20をハウジング10の開口11からハウジング10内に入れ、電極アセンブリ20をハウジング10に入れると同時に加熱部材200をハウジング10内に設置することができ、加熱部材200を電極アセンブリ20に接続しやすく、組み立ての生産効率を向上させる。
【0083】
引き続き図9を参照すると、いくつかの実施例において、エンドカバー31を前記開口11に被せるステップの前に、電池セル100及び加熱部材200を提供するステップS100は、
加熱部材200に接続されたリード線300(図11に示す)をエンドカバー31上の貫通孔35から引き出すステップをさらに含み、
加熱部材200によって電池セル100の内部を加熱するステップの前に、熱暴走のトリガ方法は、
外部電源400をリード線300に電気的に接続するステップをさらに含む。
【0084】
加熱部材200が外部電源400からの電気エネルギーを介して電池セル100の内部を加熱する実施例において、外部電源400と加熱部材200はリード線300を介して接続され、リード線300の一端は電池セル100内に位置して加熱部材200に接続され、リード線300の他端は電池セル100の外部に延出して外部電源400に接続される必要がある。エンドカバー31をハウジング10の開口11に被せた後、リード線300を電池セル100内に入れて加熱部材200に接続したり、リード線300を電池セル100内から引き出して外部電源400に接続したりすることは困難である。まずリード線300の一端を加熱部材200に接続し、エンドカバー31上に貫通孔35が設置され、リード線300の他端はエンドカバー31上の貫通孔35を貫通し且つ電池セル100の外部に延伸し、エンドカバー31はリード線300の外周に嵌設される。さらにエンドカバー31をハウジング10の開口11に被せる。
【0085】
エンドカバー31をハウジング10に被せる前に、加熱部材200に接続されたリード線300をエンドカバー31上の貫通孔35から引き出して、エンドカバー31をハウジング10に被せた後、リード線300の一端は電池セル100の外部に位置し、リード線300と外部電源400との電気的接続を容易にする。
【0086】
引き続き図9を参照すると、いくつかの実施例において、加熱部材200に接続されたリード線300をエンドカバー31上の貫通孔35から引き出すステップの後、電池セル100及び加熱部材200を提供するステップS100は、
シール部材50を貫通孔35に挿入し、エンドカバー31とリード線300を封止するステップをさらに含む。
【0087】
エンドカバー31上にリード線300を引き出すための貫通孔35が設置されると、電池セル100の気密性に影響を与え、電池セル100内部のガスが貫通孔35から排出され、シミュレーションの熱暴走は実際の状況下での電池の熱暴走及び熱暴走の伝播状況を反映できない。シール部材50を貫通孔35内に挿設することは、エンドカバー31をハウジング10の開口11に被せる前又は後に実行することができる。
【0088】
シール部材50が貫通孔35内に挿設されることにより、リード線300及びエンドカバー31の封止を実現して、電池セル100の気密性を保証することができ、実際の熱暴走の状況をシミュレーションすることができ、エンドカバー31に貫通孔35が設置されることで電池セル100から貫通孔35を介して排気がなされ、シミュレーションに歪みが生じることを回避する。
【0089】
図9図10図11図12を参照すると、いくつかの実施例において、シール部材50は、リード線300を引き出すための取り付け孔51及びリード線300を取り付け孔51に係入させるための切り欠き52を含み、
シール部材50を貫通孔35に挿設するステップの前に、電池セル100及び加熱部材200を提供するステップは、
リード線300を切り欠き52から取り付け孔51に係入するステップをさらに含む。
【0090】
図10図11及び図12に示すように、取り付け孔51は、シール部材50の内外両端を貫通しており、リード線300は取り付け孔51を貫通する。リード線300は、熱暴走のトリガ方法を実行する上述の装置の構造の一部又は全部である。
【0091】
切り欠き52はシール部材50の外周面に設置され且つ取り付け孔51と連通し、切り欠き52はシール部材50の内外両端を貫通し、リード線300は切り欠き52から取り付け孔51に係入される。シール部材50の内外両端とは、シール部材50の貫通孔35の軸線方向に位置する両端のことである。シール部材50は挿着部53及び遮蔽部54を含み、挿着部53の一端は遮蔽部54に接続され、挿着部53は貫通孔35内に挿設するために用いられる。挿着部53は第1テーパ部531及び第2テーパ部532を含み、第1テーパ部531の大端部は遮蔽部54に接続され、第1テーパ部531の小端部は第2テーパ部532の大端部に接続され、第1テーパ部531のテーパは第2テーパ部532のテーパより小さく、挿着部53を貫通孔35内に挿設しやすい。遮蔽部54は電池セル100の外部に位置し、貫通孔35を遮蔽することに用いられ、遮蔽部54はエンドカバー31の外表面に当接させることができ、それによりシール部材50のエンドカバー31及びリード線300に対する封止性能を向上させ、及び不純物が貫通孔35から電池セル100内に落ちることを防止する。
【0092】
リード線300を切り欠き52から取り付け孔51に係入することは、エンドカバー31をハウジング10の開口に被せる前又は後に実行することができる。
【0093】
リード線300をシール部材50の切り欠き52からシール部材50が取り付けられる取り付け孔51内に係入することで、リード線300がシール部材50を貫通しやすくなり、且つ切り欠き52はさらにシール部材50と貫通孔35の孔壁との締まり嵌めに圧縮代を提供することができる。
【0094】
いくつかの実施例において、リード線300は取り付け孔51と一対一に対応して設置され、リード線300を切り欠き52から取り付け孔51に係入するステップは、
リード線300を切り欠き52から切り欠き52に対応する取り付け孔51に係入するステップを含む。
【0095】
図10図11図12に示すように、リード線300の数は2つであり、シール部材50に間隔をあけて配置された2つの取り付け孔51が設けられ、2つの取り付け孔51はいずれも切り欠き52と連通する。リード線300を対応する取り付け孔51から引き出す。
【0096】
リード線300と取り付け孔51は一対一に対応して設置され、リード線300は切り欠き52からそれに対応する取り付け孔51に係入され、即ち1つのリード線が1つの取り付け孔51内に穿設され、取り付け孔51の孔壁とリード線300の周壁がより良好に密着して、封止性能を保証することができる。
【0097】
図13に示すように、いくつかの実施例において、熱暴走のトリガ方法は、
加熱部材200を絶縁部材600で被覆した後、絶縁部材600で被覆された加熱部材200を電極アセンブリ20に接続するステップS500をさらに含む。
【0098】
加熱部材200を絶縁部材600で被覆することは、絶縁部材600により加熱部材200を密封することに相当し、リード線300の一端は加熱部材200に接続された後、他端は絶縁部材600から引き出される。絶縁部材600の材質は耐熱(例えば300℃超)、耐腐食性の材質を用いることができ、例えば絶縁部材600の材質はエポキシ樹脂類、ポリイミド、フッ素ゴム又はシリコーンゴム等であってもよい。
【0099】
加熱部材200を絶縁部材600で被覆した後、絶縁部で被覆された加熱部材200を電極アセンブリ20に接続することで、加熱部材200と電極アセンブリ20が電気的接続を形成して他の安全上の問題が生じることを回避することができる。
【0100】
図13図17に示すように、本願の実施例は電池セル100の熱暴走のトリガ方法を提供し、図14に示すように、リード線300の一端を加熱部材200に接続し且つ加熱部材200を絶縁部材600で密封する。図15に示すように、絶縁部材600で密封された加熱部材200を電極アセンブリ20の最外層のセパレータに接続し、それにより電極アセンブリ20、リード線300及び絶縁部材600が被覆された加熱部材200は1つの一体構造を形成する。図16に示すように、電池セル100が複数の電極アセンブリ20を有する実施例において、リード線300及び絶縁部材600が被覆された加熱部材200(図16に図示せず)は、2つの電極アセンブリ20の間に設置されてもよい。図17に示すように、加熱部材200が接続された電極アセンブリ20をハウジング10の開口11からハウジング10内に収容する。リード線300の他端をエンドカバー31の貫通孔35から引き出す。次にエンドカバー31をハウジング10の開口11に被せる。リード線300のエンドカバー31の貫通孔35から引き出される部分を、シール部材50の切り欠き52から対応する取り付け孔51内に係入し、次にシール部材50をエンドカバー31の貫通孔35内に挿設する。図18に示すように、リード線300の電池セル100の外部に位置する一端を外部電源400に接続し、電気制御装置500は、電池セル100が熱暴走するまで、加熱部材200と外部電源400との間の電気的接続の導通、電圧及び電流の大きさ等を制御し、電気制御装置500は加熱部材200と外部電源400との電気的な接続を切断し、外部電源400は加熱部材200への電気エネルギーの供給を停止する。電池セル100の熱暴走及び熱暴走の伝播の状況を観察する。複数の電池セル100を含む電池パックの熱暴走をシミュレーションした試験では、そのうちの1つの電池セル100のみをトリガして、電池セル100の熱暴走及び熱暴走の伝播の状況を観察することができる。
【0101】
以上の記載は本願の好ましい実施例に過ぎず、本願を限定するものではなく、当業者にとって、本願は様々な修正及び変更が可能である。本願の主旨及び原則の範囲内でなされる任意の修正、等価置換、改良等は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0102】
100・・・電池セル
10 ・・・ハウジング
11 ・・・開口
20 ・・・電極アセンブリ
30 ・・・エンドカバーアセンブリ
31 ・・・エンドカバー
32 ・・・第1電極端子
33 ・・・第2電極端子
34 ・・・減圧機構
35 ・・・貫通孔
40 ・・・アダプタ
50 ・・・シール部材
51 ・・・取り付け孔
52 ・・・切り欠き
53 ・・・挿着部
531・・・第1テーパ部
532・・・第2テーパ部
54 ・・・遮蔽部
200・・・加熱部材
300・・・リード線
400・・・外部電源
500・・・電気制御装置
510・・・装置スイッチ
520・・・電流調整部
530・・・電圧調整部
540・・・デジタルディスプレイ
600・・・絶縁部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
【国際調査報告】