(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】トカマクにおける現場金属堆積
(51)【国際特許分類】
G21B 1/25 20060101AFI20231226BHJP
C23C 4/08 20160101ALI20231226BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231226BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231226BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20231226BHJP
H01J 37/16 20060101ALI20231226BHJP
G21B 1/13 20060101ALI20231226BHJP
G21B 1/05 20060101ALI20231226BHJP
H05H 1/46 20060101ALI20231226BHJP
H05H 1/32 20060101ALI20231226BHJP
B22F 10/20 20210101ALI20231226BHJP
【FI】
G21B1/25
C23C4/08
B33Y10/00
B33Y30/00
H01J37/317 E
H01J37/16
G21B1/13
G21B1/05
H05H1/46 A
H05H1/32
B22F10/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023534346
(86)(22)【出願日】2021-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-07-26
(86)【国際出願番号】 EP2021083751
(87)【国際公開番号】W WO2022122501
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512317995
【氏名又は名称】トカマク エナジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100111235
【氏名又は名称】原 裕子
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】バンバー、 ロブ
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン、 マイク
【テーマコード(参考)】
2G084
4K018
4K031
5C101
【Fターム(参考)】
2G084AA02
2G084AA03
2G084AA04
2G084AA05
2G084AA08
2G084AA15
2G084AA16
2G084BB25
2G084BB26
2G084BB30
2G084CC23
2G084CC33
2G084DD01
2G084DD11
2G084FF01
2G084HH42
2G084HH45
2G084HH56
4K018AA19
4K018AA21
4K018AA40
4K018BA03
4K018BA09
4K018BA20
4K031AA01
4K031AB02
4K031CB39
5C101AA36
5C101CC01
5C101DD03
(57)【要約】
トカマクプラズマ容器内のダイバータ又は第一壁の表面を修復する方法が開示される。ダイバータ又は第一壁の表面は、融点が少なくとも2000oCの耐火金属を含む。プラズマ容器の動作終了後に、25mbar未満の圧力がプラズマ容器内に維持される。積層造形、物理蒸着、溶射、アークイオンプレーティング、ダイオードレーザクラッド、及び化学蒸着の中の1つの堆積プロセスを介して、プラズマ容器内のダイバータ又は第一壁の表面に耐火金属を堆積させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トカマクプラズマ容器内のダイバータ又は第一壁の表面を修復する方法であって、前記ダイバータ又は第一壁の表面は、融点が少なくとも2000
oCの耐火金属を含んでおり、
前記プラズマ容器の動作終了後に、前記プラズマ容器内の圧力を25mbar未満に維持するステップと、
積層造形、物理蒸着、溶射、アークイオンプレーティング、ダイオードレーザクラッド、及び化学蒸着の中の1つの堆積プロセスを介して、前記プラズマ容器内の前記ダイバータ又は第一壁の表面に前記耐火金属を堆積させるステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記堆積プロセスは積層造形であり、
前記プラズマ容器内に耐火金属源を提供するステップと、
前記耐火金属源からの前記耐火金属の一部を加熱するステップと、
前記ダイバータ又は第一壁の表面における標的部位に対して前記耐火金属の前記一部を堆積させ、前記標的部位上に前記耐火金属の前記一部を溶融させるステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記標的部位に対して前記耐火金属の前記一部を堆積させる前に、前記標的部位を加熱するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第一壁の表面の領域内の複数の標的部位に対して、前記耐火金属の一部を加熱するステップを実行することにより、前記耐火金属で前記領域をコーティングするステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記耐火金属は粉末として提供され、前記耐火金属源は、前記標的部位に前記耐火金属の粉末を分配するように構成される粉末ディスペンサを含む、請求項2から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記粉末ディスペンサは不活性ガス源を備えており、前記粉末ディスペンサは、耐火金属粉末源から出力チャネルを介して前記標的部位に前記耐火金属の粉末を吹き付けることによって、前記耐火金属の粉末を分配する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記耐火金属源は、耐火金属線を含んでおり、
前記耐火金属源の前記一部は、前記耐火金属線の一端である、請求項2から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的部位及び/又は前記耐火金属の前記一部を加熱するステップは、レーザを用いた加熱、又は電子ビーム加熱を含む、請求項2から7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記堆積プロセスは、物理蒸着であり、
前記真空チャンバ内に耐火金属源を提供するステップと、
前記耐火金属源からの耐火金属を気化させるステップと、
前記気化した金属を前記第一壁又はダイバータの表面の標的部位に向けるステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記堆積プロセスは熱溶射であり、
前記ダイバータ又は第一壁に前記耐火金属の加熱粒子を噴射するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記堆積プロセスは、アークイオンプレーティングであり、
前記プラズマ容器内、又は前記プラズマ容器と流体連通する領域内に耐火金属源を提供するステップと、
前記耐火金属源が気化して電荷を有する前記耐火金属のプラズマを形成するように、前記耐火金属源と電極との間にアーク放電を形成するステップと、
前記耐火金属のプラズマの前記電荷と反対の電荷を有するように、前記ダイバータ又は第一壁の表面に電圧を供給するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記電圧は、前記第一壁の表面の選択された領域に供給される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記堆積の方法は、ダイオードレーザクラッドであり、
前記第一壁又はダイバータの表面の一部が溶融するように、前記第一壁又はダイバータの表面の標的部位を加熱するステップと、
前記第一壁又はダイバータの表面の溶融した部分に対して耐火金属を接触させるステップであって、前記耐火金属は線材又は粉末として提供されるステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記堆積プロセスは化学蒸着であり、
1つ以上の試薬をポートを介してガス状又はプラズマ状で前記チャンバに供給するステップであって、前記試薬は結合して前記耐火金属及びガス状副産物を形成するステップと、
前記耐火金属を形成するように前記試薬を反応させるために十分な温度に前記ダイバータ又は第一壁の表面を加熱するステップと、
前記耐火金属の堆積後に、前記ガス状副産物及び過剰な試薬を前記チャンバから除去するステップと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記試薬は六フッ化タングステン及び水素であり、前記耐火金属はタングステンであり、前記ガス状副産物はフッ化水素である、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記耐火金属を堆積させる前に、修復が必要な領域を特定するために前記ダイバータ又は第一壁の表面をスキャンするステップを含み、
前記耐火金属を堆積させるステップは、前記修復が必要な領域に前記耐火金属を堆積させることを含む、請求項1から15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記耐火金属を堆積させる前に前記ダイバータ又は第一壁の表面の一部にマスクを提供するステップと、前記耐火金属の堆積後に前記マスクを除去するステップとを含む、請求項1から16のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
堆積後に前記耐火金属を堆積した前記ダイバータ又は第一壁の表面の一部をフライス加工するステップを含む、請求項1から17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
前記トカマクプラズマ容器は、第1及び第2の真空ポンプシステムを備え、
前記第1の真空ポンプシステムは、前記トカマクプラズマ容器の通常動作中に使用され、前記第2の真空ポンプシステムは、前記耐火金属の堆積中に、並びに前記堆積及び/又はその後のフライス加工からの廃棄物の除去中に使用される、請求項1から18のいずれか1項に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の真空ポンプシステムは、スクロールポンプを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
トカマクプラズマ容器を動作させる方法であって、
前記プラズマ容器内に第1のプラズマを形成しかつ維持するステップと、
前記第1のプラズマを消滅させるステップと、
請求項1から20のいずれか1項に記載の方法によって前記プラズマ容器のダイバータ又は第一壁を修復するステップと、
前記プラズマ容器内に第2のプラズマを形成するステップと
を含み、
前記プラズマ容器内の圧力は、前記第1のプラズマが消滅してから前記第2のプラズマが形成されるまでの間、25mbar未満のままである、方法。
【請求項22】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内の圧力を25mbar未満に維持するように構成される真空維持システムと、
融点が2000
oCを超える耐火金属を含む表面をそれぞれ有する第一壁及びダイバータと、
耐火金属堆積システムと
を備えるトカマクプラズマ容器において、
前記耐火金属堆積システムは、
耐火金属源、
前記耐火金属源の前記耐火金属の一部を加熱するように構成される加熱システム、
前記第一壁又はダイバータの表面の任意の領域に前記耐火金属源の耐火金属及び熱源を配置するように構成される位置決めシステム、
コントローラ
を備え、
前記コントローラは、
前記加熱システムによって前記耐火金属源からの前記耐火金属の一部を加熱させ、前記位置決めシステム及び/又は前記耐火金属源によって前記ダイバータ又は第一壁の表面における標的部位に対して前記耐火金属の前記一部を堆積させ、前記標的部位上に前記耐火金属の前記一部を溶融させるように構成される、トカマクプラズマ容器。
【請求項23】
前記加熱システムは、前記第一壁又はダイバータの表面の標的部位を加熱するようにさらに構成される、請求項22に記載の装置。
【請求項24】
前記コントローラは、前記第一壁の表面の領域内の複数の標的部位に対して前記耐火金属の一部を加熱するステップを実行し、それによって前記耐火金属で前記領域をコーティングするようにさらに構成される、請求項21又は22に記載の装置。
【請求項25】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内の圧力を25mbar未満に維持するように構成される真空維持システムと、
融点が2000
oCを超える耐火金属を含む表面をそれぞれ有する第一壁及びダイバータと、
耐火金属堆積システムと
を備えるトカマクプラズマ容器において、
前記耐火金属堆積システムは、
耐火金属、及び前記耐火金属を気化させるように構成される気化システム、及び排出口を含む耐火金属源、
気化した耐火金属が前記第一壁又はダイバータの表面の任意の領域に向けられるように前記耐火金属源の前記排出口を配置するように構成される位置決めシステム、
コントローラ
を備え、
前記コントローラは、
気化したときに、耐火金属が前記第一壁又はダイバータの表面の標的部位に向けられるように、前記位置決めシステムによって前記排出口を配置し、
前記耐火金属源によって前記耐火金属の一部を気化させ、それによって前記耐火金属で前記標的部位をコーティングするように構成される、トカマクプラズマ容器。
【請求項26】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内の圧力を25mbar未満に維持するように構成される真空維持システムと、
融点が2000
oCを超える耐火金属を含む表面をそれぞれ有する第一壁及びダイバータと、
耐火金属堆積システムと
を備えるトカマクプラズマ容器において、
前記耐火金属堆積システムは、
耐火金属源、
ヒータ、及び
スプレーユニット
コントローラ
を備え、
前記コントローラは、
前記耐火金属源によって前記ヒータに耐火金属を供給させ、
前記スプレーユニットによって前記ヒータから前記ダイバータ及び/又は第一壁の表面に前記耐火金属の加熱粒子を噴射させるように構成される、トカマクプラズマ容器。
【請求項27】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内の圧力を25mbar未満に維持するように構成される真空維持システムと、
融点が2000
oCを超える耐火金属を含む表面をそれぞれ有する第一壁及びダイバータと、
耐火金属堆積システムと
を備えるトカマクプラズマ容器において、
前記耐火金属堆積システムは、
耐火金属源、
電極と前記耐火金属源との間にアークを生じさせるように構成される電極、
前記ダイバータ及び/又は第一壁が前記アークによって引き起こされるプラズマの電荷とは反対の電荷を得るように、前記ダイバータ及び/又は第一壁に電圧を供給するように構成される電圧源を備える、トカマクプラズマ容器。
【請求項28】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内の圧力を25mbar未満に維持するように構成される真空維持システムと、
融点が2000
oCを超える耐火金属を含む表面をそれぞれ有する第一壁及びダイバータと、
耐火金属堆積システムと
を備えるトカマクプラズマ容器において、
前記耐火金属堆積システムは、
耐火金属源、
前記第一壁又はダイバータの表面の標的部位を加熱するように構成される加熱システム、
前記第一壁又はダイバータの表面の任意の領域に前記耐火金属源の耐火金属及び熱源を配置するように構成される位置決めシステム、
コントローラを備え、
前記コントローラは、
前記表面が前記標的部位において溶融するように、前記加熱システムによって前記ダイバータ又は第一壁の表面における標的部位を加熱させ、
前記標的部位上に前記耐火金属の前記一部を溶融させるように、前記位置決めシステム及び/又は耐火金属源によって前記標的部位に対して前記耐火金属の前記一部を接触させるように構成される、トカマクプラズマ容器。
【請求項29】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内の圧力を25mbar未満に維持するように構成される真空維持システムと、
融点が2000
oCを超える耐火金属を含む表面をそれぞれ有する第一壁及びダイバータと、
耐火金属堆積システムと
を備えるトカマクプラズマ容器において、
前記耐火金属堆積システムは、
1つ以上の試薬をポートを介してガス状又はプラズマ状で前記チャンバに供給するように構成される化学反応物供給システムであって、前記試薬は前記耐火金属及びガス状副産物を形成するように反応する、化学反応物供給システムと、
前記耐火金属を形成するように前記試薬を反応させるために十分な温度に前記ダイバータ又は第一壁の表面を加熱するように構成されるヒータと
を備え、
前記真空維持システムは、前記耐火金属の堆積後に前記ガス状副産物及び過剰な試薬を前記チャンバから除去するように構成される、トカマクプラズマ容器。
【請求項30】
前記真空チャンバはポートを備え、
前記耐火金属堆積システムの少なくとも一部は、前記ポートを介して前記真空チャンバに入るように構成される、請求項22から29のいずれか1項に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項31】
前記真空維持システムは、第1及び第2の真空ポンプシステム及びコントローラを備え、
前記コントローラは、前記第1の真空ポンプシステムを使用して前記トカマクプラズマ容器の通常動作中に真空を維持し、前記第2の真空ポンプシステムを使用して前記耐火金属の堆積中に、及び前記堆積及び/又はその後のフライス加工からの廃棄物の除去中に真空を維持するように構成される、請求項22から29のいずれか1項に記載のトカマクプラズマ容器。
【請求項32】
前記第2の真空ポンプシステムは、スクロールポンプを含む、請求項31に記載のトカマクプラズマ容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トカマクプラズマ容器に関する。特に、本発明は、トカマクのダイバータ及び第一壁に耐火金属を堆積させる方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイバータはトカマクプラズマ容器内にあるデバイスであり、トカマクが動作している間に、プラズマから廃棄材及びパワーを除去することを可能にする。廃棄材は、磁気的に閉じ込められたプラズマコアから粒子が拡散するときに自然に生じる。廃棄粒子は、燃料(ジュウテリウム及びトリチウム)、核融合生成物(ヘリウム灰)、及び壁から放出されるより重いイオンの組み合わせである。プラズマを閉じ込めるべく、トカマクは磁場を利用する。しかしながら、粒子はゆっくりかつランダムに拡散し、最終的に、高流束のイオンに耐えるように構成される複数のダイバータ表面の1つに衝突する。
【0003】
図1には、典型的なトカマクの一側面を通るポロイダル断面が示されている。トカマク100は、トロイダルプラズマ容器101を含む。ポロイダル磁場コイルは、(電流を搬送している)プラズマを閉じ込めるポロイダル磁場を生成する。プラズマ粒子、乱流、波又は他のそのような現象の間に衝突が存在しなければ、(荷電粒子から作られる)プラズマは、(一定のポロイダル磁束113の線として表すことができる)磁力線に実質的に結び付けられる。プラズマは、「プラズマコア」内の一定ポロイダル磁束の線上に閉じ込められるといわれる。これは、一定磁束の線が閉じているからであり、これはいわゆる「閉磁束面」と呼ばれる。衝突及び他のそのようなプロセスを通して、プラズマは、プラズマコアからゆっくり拡散する。一端(通常は下端)にヌル点112を有する「最終閉磁束面」111が、閉じ込められたコアのエッジを画定する。プラズマコアのすぐ外側の磁束線(「スクレイプオフ層」)114は、ヌルより下にある機外の(すなわち径方向外側の)ダイバータ表面121(この例においてはプラズマ容器の下部のチャネルの底に配置される)、及び機内の(すなわち径方向内側の)ダイバータ表面122という2つの表面と交差する。これらの表面上に廃棄粒子及びパワーが堆積され、その廃棄粒子及びパワーの大部分は機外のダイバータ表面に与えられる(機内と機外との正確な分離は、スクレイプオフ層内の乱流物理学に依存する)。
【0004】
図2には、第2の典型的なトカマクを通る断面が示される。このトカマクは「ダブルヌル」ダイバータを有する。「ダブルヌル」ダイバータの原理は、ヌル及び対応するダイバータ表面221、222、223、224がプラズマコア210の上側エッジ及び下側エッジの双方に設けられることを除いて、
図1における「シングルヌル」ダイバータと同じである。ダブルヌル構成の利点は、各ダイバータ表面上の熱流束が、シングルヌル構成が受ける熱流束のほぼ半分となる点にある。
【0005】
図3は、ダブルヌルダイバータ構成のトカマクのより完全な図を示している。図面では左右及び上下の両方で対称であり、明確にするために、対称構成要素に関して参照番号は重複していない。
図3は、トカマクの中心を横切る垂直面で切り取った断面であり、プラズマチャンバ壁300及びその中の構成要素を示している。トカマクは、プラズマを制御するための複数のポロイダル磁場コイル301及びトロイダル磁場コイル(図示せず)を備える。各ダイバータアセンブリ310は、プラズマがダイバータに衝突する場所に位置するダイバータ表面311、及びバッフル312を備える。バッフル312はプラズマを整形し、かつバッフルの後方に位置する構成要素を保護する役割を有する。
【0006】
ダイバータ表面は高い熱負荷及び著しいエロージョンを受ける。したがって、それは高熱に耐えることができ、かつそのようなエロージョンに耐性のある材料、又はいかなるエロージョンもプラズマを汚染しないように、ベリリウム又はリチウム等の原子番号の低い金属から作られなければならない。また、ダイバータ内にトリチウムが滞留する可能性を減らすために、ダイバータ表面は金属から作られることが好ましい。そのため、ダイバータ面に適した材料には、耐火金属、リチウム、及びベリリウムが含まれる。
【0007】
耐火金属は、融点が2,000°Cを超える金属元素であり、ニオブ、モリブデン、タンタル、タングステン、及びレニウムを含む。また、プラズマエロージョン等による摩耗にも非常に耐性がある。しかしながら、これらの金属をダイバータ表面として使用しても、摩耗は依然として発生し、ダイバータは定期的に交換又は修復する必要がある。ダイバータの交換又は修復には、融合路を停止し、プラズマ容器を再加圧する必要があり、これには、プラズマ容器の動作を再開する前に、チャンバを真空に戻す必要があるため、かなりのダウンタイムが必要であり、それにはチャンバ壁に吸着された残留ガスを除去するための長い脱ガスプロセスが必要である。
【0008】
同様の考慮は、プラズマ容器の「第一壁」、すなわち、プラズマチャンバ内のコイル上のカバー等、プラズマに直接面するチャンバ内壁の部分にも適用される。これもプラズマとの相互作用によって生じる熱及び摩耗により損なわれ、これらの不安定性による損傷を緩和するために定期的に修復する必要がある。
【発明の概要】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、トカマクプラズマ容器内のダイバータ又は第一壁の表面を修復する方法が提供される。前記ダイバータ又は第一壁の表面は、融点が少なくとも2000oCの耐火金属を含む。前記プラズマ容器の動作終了後に、前記プラズマ容器内の圧力を25mbar未満に維持する。積層造形、物理蒸着、溶射、アークイオンプレーティング、ダイオードレーザクラッド、及び化学蒸着の中の1つの堆積プロセスを介して、前記プラズマ容器内の前記ダイバータ又は第一壁の表面に耐火金属を堆積させる。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、トカマクプラズマ容器を動作させる方法が提供される。プラズマ容器内に第1のプラズマが形成されかつ維持される。前記第1のプラズマを消滅させる。プラズマ容器のダイバータ又は第一壁は、第1の態様に従った方法により修復される。プラズマ容器内に第2のプラズマが形成される。前記プラズマ容器内の圧力は、前記第1のプラズマが消滅してから前記第2のプラズマが形成されるまでの間、25mbar未満のままである。
【0011】
さらなる態様によると、トカマクプラズマ容器が提供される。トカマクプラズマ容器は、真空チャンバ、真空維持システム、第一壁、ダイバータ、及び耐火金属堆積システムを備える。前記真空維持システムは、内の圧力を25mbar未満に維持するように構成される。前記第一壁及びダイバータは、融点が2000oCを超える耐火金属を含む表面をそれぞれ有する。耐火金属堆積システムは、さらなる態様の間で異なる。
【0012】
第3の態様では、耐火金属堆積システムは、耐火金属源、加熱システム、位置決めシステム、及びコントローラを備える。前記加熱システムは、前記耐火金属源の前記耐火金属の一部を加熱するように構成される。前記位置決めシステムは、前記第一壁又はダイバータの表面の任意の領域に前記耐火金属源の耐火金属及び熱源を配置するように構成される。前記コントローラは、前記加熱システムによって前記耐火金属源からの前記耐火金属の一部を加熱させ、前記位置決めシステム及び/又は前記耐火金属源によって標的部位に対して前記耐火金属の一部を堆積させ、前記標的部位上に前記耐火金属の一部を溶融させるように構成される。
【0013】
第4の態様では、耐火金属堆積システムは、耐火金属源、位置決めシステム、及びコントローラを備える。前記耐火金属源は、耐火金属、及び前記耐火金属を気化させるように構成される気化システム、及び排出口を備える。位置決めシステムは、気化した耐火金属が第一壁又はダイバータの表面の任意の領域に向けられるように、耐火金属源の排出口を配置するように構成される。前記コントローラは、気化したときに、耐火金属が前記第一壁又はダイバータの表面の標的部位に向けられるように、前記位置決めシステムによって前記排出口を配置し、前記耐火金属源によって前記耐火金属の一部を気化させ、それによって前記耐火金属で前記標的部位をコーティングするように構成される。
【0014】
第5の態様では、耐火金属堆積システムは、耐火金属源、ヒータ、スプレーユニット、及びコントローラを備える。前記コントローラは、前記耐火金属源によって前記ヒータに耐火金属を供給させ、前記スプレーユニットによって前記ヒータから前記ダイバータ及び/又は第一壁の表面に前記耐火金属の加熱粒子を噴射させるように構成される。
【0015】
第6の態様では、耐火金属堆積システムは、耐火金属源、電極、及び電圧源を備える。前記電極は、前記電極と前記耐火金属源との間にアークを生じさせるように構成される。前記電圧源は、前記ダイバータ及び/又は第一壁が前記アークによって引き起こされるプラズマの電荷とは反対の電荷を得るように、前記ダイバータ及び/又は第一壁に電圧を供給するように構成される。
【0016】
第7の態様では、耐火金属堆積システムは、耐火金属源、加熱システム、位置決めシステム、及びコントローラを備える。前記加熱システムは、前記第一壁又はダイバータの表面の標的部位を加熱するように構成される。前記位置決めシステムは、前記第一壁又はダイバータの表面の任意の領域に前記耐火金属源の耐火金属及び熱源を配置するように構成される。前記コントローラは、前記表面が前記標的部位において溶融するように、前記加熱システムによって前記ダイバータ又は第一壁の表面における標的部位を加熱させ、
前記標的部位上に前記耐火金属の一部を溶融させるように、前記位置決めシステム及び/又は耐火金属源によって前記標的部位に対して前記耐火金属の一部を接触させるように構成される。
【0017】
第8の態様では、耐火金属堆積システムは、化学反応物供給システム及びヒータを備える。前記化学反応物供給システムは、1つ以上の試薬をポートを介してガス状又はプラズマ状で前記チャンバに供給するように構成され、前記試薬は前記耐火金属及びガス状副産物を形成するように反応する。前記ヒータは、前記耐火金属を形成するように前記試薬を反応させるために十分な温度に前記ダイバータ又は第一壁の表面を加熱するように構成される。前記真空維持システムは、前記耐火金属の堆積後に前記ガス状副産物及び過剰な試薬を前記チャンバから除去するように構成される。
【0018】
さらなる実施形態は、請求項2以降に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】シングルヌルダイバータを設定したトカマクの概略図である。
【
図2】ダブルヌルダイバータを設定したトカマクの概略図である。
【
図3】ダブルヌルダイバータを設定したトカマクの断面図であり、追加構成要素を示している。
【
図5】ダイバータ又は第一壁の表面を修復する方法のフローチャートである。
【
図7】典型的な耐火金属堆積システムの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
プラズマ容器を再加圧する必要なしに修復を可能にするために、現場でトカマクプラズマ容器のダイバータ又は第一壁を再生するシステム及び方法を以下に提案する。提案された解決策は、耐火金属での使用に適した真空内堆積技術を使用して、真空が維持されるようにプラズマ容器内にこれらを提供することを含む。これにより、このような修復中のプラズマ容器のダウンタイムが短縮される。すなわち、長い再加圧、減圧、脱ガス手順の代わりに、真空下に置いたままプラズマ動作を一時的に停止し、修復を完了した後で、ほぼ即時にチャンバを再利用することができる(必要に応じて、堆積プロセスの副産物を除去するステップがある)。
【0021】
図4は、例示的なプラズマ容器の概略図を示している。プラズマ容器400は、第一壁401、ダイバータ表面402、ポート403、及び耐火金属堆積システム404a、b、c、dを備える。プラズマ容器の動作中、ダイバータ及び第一壁に摩耗が発生する。この摩耗を修復するために、プラズマ容器は停止されるが、真空に保たれ、耐火金属堆積システム404a、b、c、dを使用して、ダイバータ402及び/又は第一壁301に耐火金属を堆積させる。使用される堆積技術に応じて、耐火金属堆積システムは、常に融合路内にある構成要素(例えば、電極404a)、ダイバータ及び/又は第一壁に組み込まれている構成要素(例えば、ヒータ404b)、ポートを介して挿入可能なアームに存在する構成要素(例えば、耐火金属源404c)、及び/又はチャンバの保護領域内に位置する構成要素(例えば、スプレーシステム404d)を含んでもよい。
【0022】
一般に、耐火金属堆積システムの構成要素は、保護領域(すなわち、プラズマが及び得ないトカマクの領域)にある場合、又はプラズマを妨害するほどチャンバ内に突出していない場合は、融合路内に含まれてもよく、チャンバ内の状態に耐えるために十分な耐火性及び耐摩耗性を持たせることができる。それ以外の場合、堆積中にチャンバ自体へのアクセスを必要とする構成要素は、チャンバの真空を保つために「ロードロック」又は同様の手段を使用して、ポートを介して導入され得るように提供されてもよい。
【0023】
次に、様々な堆積技術を使用したいくつかの例示的な堆積システムについて説明する。しかしながら、その金属を備える表面に耐火金属を適用するのに適し、かつ真空中で動作可能な場合は、任意の堆積技術が使用され得ることに留意されたい。標準文献では、多くの堆積技術は、真空を提供する第1のステップ、構成要素から水分を除去するステップ、又は同様の脱ガス手順を含む。プラズマ容器は既に真空下にあり、脱ガスされているので、これらのステップは一般的には必要ない。いくつかの技術は、通常はイオン衝撃によって、表面酸化物を除去するために構成要素をエッチングするステップを含む。ここでも、ダイバータ及び第一壁は既にプラズマによって効果的にエッチングされているので、これは必要なくてもよい(そして実際、この「エッチング」は修復が必要な摩耗である)。
【0024】
提示される第1の例はアークイオンプレーティングである。アークイオンプレーティングは真空下において清浄な表面に対して行われる。他の応用では、これは加熱して水分を除去してから、イオンエッチングして表面の不純物を除去することによって洗浄される。しかしながら、トカマクで使用する場合、表面の水分はなく、プラズマが効果的にイオンエッチングとして機能するので、これらのステップは任意選択的である。アーク放電は、耐火金属を正に帯電したプラズマに気化させるために、耐火金属源とアースとの間に形成される。ターゲット表面(すなわち、修復を必要とするダイバータ又は第一壁の領域)に負電圧が印加されると、耐火金属のイオンが引き寄せられ、それによってそれらが表面に堆積する。代替的に、プラズマは負に帯電し、ターゲットが正に帯電してもよい。
【0025】
トカマクにおいて現場で使用するために、アークイオンプレーティングは、チャンバ内又はポート内のいずれかに耐火金属源(例えば、タングステン)、帯電したプラズマを発生させるために金属源にアークを生じさせるように構成される電極、ダイバータ及び/又は第一壁に電圧を供給するように構成される装置を提供することによって実装されてもよい。アークイオンプレーティングが第一壁の修復に使用される場合、電圧は、例えば、著しい摩耗が発生したか、又は予想される標的領域等、第一壁の特定の領域のみに局所的に適用されてもよい。
【0026】
提示される第2の例は、化学蒸着(CVD)である。化学蒸着は、加熱されたターゲットの表面で熱的に誘起される化学反応を使用するコーティングプロセスであり、ガスとして試薬が供給される。例えば、タングステンはWF6+3H2=W+HFという反応を介して堆積されてもよい。反応は加熱されたターゲット(すなわち、ダイバータ、第一壁、又は選択された第一壁セクション)で起こり、反応副産物は真空に戻すことによりチャンバから除去できるガスである。
【0027】
化学蒸着は、ダイバータ及び/又は第一壁内に加熱要素を提供し、標的領域をCVDに必要な温度(通常600°Cから1100°Cの間)に加熱し、ポートを介してプラズマ容器に試薬を導入することによって、トカマクに実装されてもよい。反応が完了すると、残りの試薬又はガス状の副産物をプラズマ容器からポンプで送り出すことができる。
【0028】
CVDの変形がプラズマ支援CVD(PACVD)であり、放電を使用して試薬をプラズマ化することにより反応を加速する。PACVDのコーティング速度は一般に従来のCVDよりも低いが、これはトカマクでは必要な反応物の圧力が低いため部分的に相殺され、真空を回復するために必要なポンピングが減少する。
【0029】
第3の例として、使用される堆積方法は溶射であってもよい。溶射では、耐火金属の軟化又は溶融した多数の小さな粒子がターゲット表面に投射され、それらが平坦になって付着し、均一な被覆を提供する。溶射では通常、必要な温度を達成するために熱源を通過してからダイバータに溶射される材料供給源を含む。真空環境を実装する場合、熱源はプラズマであることが多い。
【0030】
熱溶射は、プラズマ容器の内部に修正を加えることを必要とせずに、ポートを介して装置をトカマクに提供することによって、トカマクに実装されてもよい。
【0031】
第4の例として、積層造形技術が使用されてもよい。このような技術を耐火金属に適用する場合、熱源(例えば、レーザ又は電子ビーム)を使用して金属を適用するスポットを加熱した後で、例えば、粉末状の耐火金属をそのスポットに吹き付けるか、又は耐火金属線の端をそのスポットに接触させることによって、耐火金属を適用する。適用された耐火金属にさらに熱を加え、それを小さな溶接としてターゲットスポット上に溶融させる。これは、被覆される領域にわたって、必要な深さまで繰り返される。任意選択的に、ターゲットスポットを加熱するステップは省略されてもよく、適用される耐火金属のみが加熱される。
【0032】
耐火金属の積層造形技術の分解能は低い場合がある。すなわち、耐火金属を適用するための最小スポットサイズが大きすぎて、欠陥を正確に充填し、又は許容可能な表面仕上げを行うことができない場合がある。そのため、積層造形は必要な厚さ及び面積をわずかに超えて継続され、過剰な部分は削り落とされるか、又は除去されてもよい。
【0033】
トカマク内では、熱源及び耐火金属源を有するロボット(及び任意選択的にフライス加工又は他の耐火金属除去デバイス)を提供することによって積層造形が実装されてもよく、これはポートから入り、修復が必要な場所に移動され得る。積層造形は任意のレベルの真空で行うことができる。
【0034】
第5の例は物理蒸着(PVD)である。PVDでは、第1に、堆積させる耐火金属を気相中に浮遊させ、次に表面に堆積又は凝縮させる。金属は、例えば、スパッタリング、抵抗ヒータ等のヒータによる気化、電子ビーム加熱、真空アーク加熱、又はその他の適切な技術によって、「蒸発セル」内で気相に気化される。蒸発セル内の開口部から蒸気が飛び出すことが許され、開口部は蒸気をターゲット表面に向けるように成形及び配置される。これは「視線(line of sight)」堆積プロセスであるため、蒸気の円錐内にある任意のものはその上に耐火金属が堆積し、ターゲット上に段差又は隆起がある場合はシャドウ効果が生じる。
【0035】
トカマク内では、蒸発セルは、標的部位に向けられるように、アームにおけるポートから入ってもよい。代替的に、蒸発セルは静止していてもよく、アームにおける排出口ホースを使用して蒸気の流れを標的部位に向けてもよい。PVDは、例えば、10-6mbar以下のような強力な真空下で行われてもよい。
【0036】
上記の堆積技術の多くは、トカマクの特定の領域に適用されてもよい。そのため、修復及び再生が必要な領域を特定する利点がある。再生の必要性の初期の検出は、(例えば、第一壁に対する衝突を識別するために)プラズマを監視すること、(例えば、部分的に溶融又は昇華した可能性の高い領域を特定するために)第一壁要素の温度を監視すること、又はその他の同様の監視によって行われてもよい。再生プロセスの間、上記の技術の1つによって耐火金属を適用する前に、より詳細なスキャン方法を使用して、第一壁の損傷の程度及び/又は必要な修復を決定してもよい。これには、光学スキャン、深度マッピングカメラ等のカメラ、LIDAR撮像、又は損傷した表面をマッピングするためのその他の深度センシングが含まれてもよく、これにより表面の3Dモデル又は損傷を判断できる2D画像が生成されてもよい。その後、このスキャンの結果が堆積プロセスのコントローラによって使用されて、修復がそれを必要とする領域に集中し、それらの領域外の材料の追加堆積を制限するように堆積を制御することができる。このようなスキャンのための装置は、ロボットアーム又は同様の位置決め手段を介してトカマクに挿入されてもよく、これは上記の堆積技術を実装する装置を配置するために使用される位置決め手段と同じであってもよい。
【0037】
上記の技術のいくつかは、修復後にトカマク内で粉末、フライスデブリ、又は類似のものを生じさせる。堆積装置は、堆積プロセス及び/又はその後のフライス加工によって残された粉末又はデブリを収集するデブリ除去システムを含んでもよい。これは、ポンプが動作するときにチャンバ内の残留ガス(又は堆積中に加えられた任意のガス)が移動することによってデブリがポンプに流れ込むため、真空ポンプによって実装されてもよい。トカマク用の(複数の)一次真空ポンプは、一般的にかなりの量の粉末又はフライスデブリに耐えられるほど十分に弾力的ではないため、スクロールポンプのように、ポンプにデブリが入るのに耐えられるタイプの二次真空ポンプ(又は複数のポンプ)が提供されてもよい。これを補助するために、圧力を所望の閾値未満に維持しながら、少量のガスがチャンバに加えられてもよい。
【0038】
上記の技術で粉末をチャンバに導入する必要がある場合、これはアルゴン等の不活性ガスの流れで粉末をチャンバに流すことによって行われてもよい。これにより部分的に真空を失うことになるが、それでも大気圧よりもかなり低い圧力を維持することができる。前述のように、不活性ガスをポンプで送り出すことは、チャンバ内の粉末又はその他のデブリを除去するのに役立つという追加の効果がある。
【0039】
上記の技術にさらなる精度を提供するためにマスキングが使用されてもよい。これは、標的部位の周りに取り外し可能なマスクを適用することによって行われてもよく、これは堆積後に除去される。或いは、耐火金属が堆積する領域を制限する堆積装置の一部としてマスクを提供することによって行われてもよい。
【0040】
一般に、領域を制限し、又は表面の滑らかさを向上させるためのマスキング及び/又はフライス加工は必須ではない。上記の堆積技術により、ミクロンからミリメートルのオーダーの層の厚さがもたらされ、この追加の厚さは第一壁に大きな影響を与えない。表面の滑らかさを向上させるためのフライス加工は、一般的に、より滑らかな表面がプラズマの衝突によってエロージョンを受けることが少なくかつ/又はより予測可能であるという点で、わずかな利点を提供する。修復を必要とする領域外への堆積を防ぐためのマスキング又はフライス加工は、結果がより均一な第一壁となり、より予測可能にエロージョンを受けかつ熱を伝導する(すなわち、意図しないホットスポットがない)という点で、わずかな利点を提供する。しかしながら、これらの影響は小さく、マスキング及びフライス加工の追加的な複雑さと、フライス加工からデブリを除去する必要性とのバランスを取る必要がある。
【0041】
上記の例から分かるように、トカマクプラズマ容器のダイバータ及び/又は第一壁を再生するために使用できる様々な堆積技術がある。繰り返しになるが、上記の例で示されたものよりも多くの技術があり、耐火金属を使用して真空中で達成できる堆積技術は、ダイバータ及び/又は第一壁に金属を現場で堆積させることによって得られる一般的な利点を提供できることに留意すべきである。チャンバを再加圧し、大気圧から真空を再確立する必要がないという一般的な利点に加えて、個々の技術は他の技術よりも利点がある。
【0042】
例えば、上記で説明した技術のうち、アークイオンプレーティング及びCVDは、材料源とターゲット(すなわち、ダイバータ又は第一壁)との間の視線を必要としない。アークイオンプレーティング及び溶射では、(CVD及び他の技術によって残される反応副産物と比較して)動作を再開する前にポンプで取り出す必要のある最小限の材料のみがチャンバ内に残される。溶射はダイバータ又は第一壁自体に特定の修正を必要としない。すなわち、標的部位を加熱し、又は電荷を供給する必要がないため、プラズマ容器の他の設計上の考慮事項とは無関係に容易に組み込むことができる。
【0043】
堆積中にターゲット(すなわち、ダイバータ又は第一壁)の加熱が必要な場合、これはターゲットの内部又は背後に組み込まれた抵抗加熱素子によって、又はターゲットに直接電流を流すことによって提供されてもよい。代替的に、これは、必要な温度を達成するために、ダイバータ又は第一壁の冷却剤チャネルを通して高温ガスをポンピングすることによって達成されてもよい。水分を除去するために堆積前に加熱が必要とされる堆積方法の場合、これは一般的に必要ではない。
【0044】
ターゲットが電荷を必要とする場合、そのような電荷を提供するためにターゲットに電気構成要素が組み込まれてもよい。
【0045】
堆積の前にターゲットを洗浄するために、エッチングシステム、例えば、イオンエッチングシステムが使用されてもよい。これは任意選択的であり、通常そのようなエッチングを必要とする堆積方法であっても、ターゲット上のプラズマの作用によってターゲットが清浄になる可能性が高い。追加的に、ターゲットは、ダイバータ板又は第一壁に吸収された水素を脱ガスする前に加熱されてもよい。
【0046】
上で「真空」という用語が使用されている場合、完全な真空は実際には達成できないことが理解されるであろう。いくつかのシナリオでは、プラズマ容器の内圧は、プラズマが冷却された後に得られるプラズマ容器の圧力、例えば、プラズマが冷却された後に得られる圧力の1桁以内、又は、例えば、2から7x10-8mbarの間に維持されてもよい。別の例として、プラズマ容器の内圧は、中真空、すなわち、25mbar未満に維持されてもよい。さらに別の例として、プラズマ容器の内圧が高真空に、すなわち、プラズマ容器内の粒子の平均自由行程がプラズマ容器の半径よりも小さくなるように維持されてもよい。これらは非常に異なるグレードの真空を表しているが、中真空以下に容器を維持することでさえ、ダイバータ又は第一壁セクションを除去するために容器を大気圧に戻す必要がある現在の方法よりもかなりの改善であることが理解されるであろう。
【0047】
上記はトカマクプラズマ容器を指しているが、これは特にトカマク核融合炉で使用されるものであり、ダイバータ及び第一壁の摩耗はより冷たいプラズマと比較して著しく、(効率的な実験の実行、そして最終的には経済的な発電を可能にするために)ダウンタイムを回避する必要性がより高い可能性があることに留意されたい。
【0048】
上記の方法を実装する装置は、コントローラによって制御されてもよく、これは1つ以上のプロセッサで実行されるソフトウェアとして実装されてもよい。コントローラは、プラズマ容器のハードウェアに組み込まれてもよく、又はプラズマ容器及び堆積装置の機能にアクセスできるリモートコンピュータで実行されるソフトウェアとして実装されてもよい。コントローラは、複数のコンピュータで実行される分散ソフトウェアとして実装されてもよい。
【0049】
図5は、トカマクプラズマ容器内のダイバータ又は第一壁の表面を修復する方法のフローチャートであり、ダイバータ又は第一壁の表面は、融点が少なくとも2000
oCの耐火金属を備える。ステップS501では、プラズマ容器の動作終了後に、プラズマ容器内の圧力を25mbar未満に維持する。ステップS502では、積層造形、物理蒸着、溶射、アークイオンプレーティング、ダイオードレーザクラッド、及び化学蒸着のいずれかの堆積プロセスを介して、プラズマ容器内のダイバータ又は第一壁の表面に耐火金属を堆積させる。
【0050】
図6は、トカマクプラズマ容器の概略図である。トカマクプラズマ容器は、真空チャンバ601と、真空チャンバ内の圧力を25mbar未満に維持するように構成される真空維持システム602と、融点が2000
oCを超える耐火金属を備える表面をそれぞれ有する第一壁603及びダイバータ604と、例えば上記の例で説明されているような耐火金属堆積システム605とを備える。
【0051】
この例では、耐火金属堆積システムの構成要素がポートを介して真空チャンバに入ることができるように、耐火金属堆積システムはポート606に配置されている。
【0052】
図7は、上記の例の積層造形用に構成される例示的な耐火金属堆積システムの概略図である。耐火金属堆積システム700は、耐火金属源701と、例えば、電子銃又はレーザ等、耐火金属源の耐火金属の一部を加熱するように構成される加熱システム702と、例えば、ロボットアーム等、第一壁又はダイバータの表面の任意の領域に耐火金属源の耐火金属及び熱源を配置するように構成される位置決めシステム703と、加熱システムに耐火金属源からの耐火金属の一部を加熱させ、位置決めシステム及び/又は耐火金属源がダイバータ又は第一壁の表面における標的部位に対して耐火金属の一部を堆積させ、標的部位に耐火金属の一部を溶融させるように構成されるコントローラ704とを備える。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トカマク
におけるダイバータ又は第一壁の表面を修復する方法であって、
前記トカマクは、
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内の圧力を25mbar未満に維持するように構成される真空維持システムと、
融点が
2000
oC
を超える耐火金属を含
む表面をそれぞれ有する第一壁及びダイバータと、
耐火金属源、加熱システム、及び位置決めシステムを備える耐火金属堆積システムと
を備えており、
前記方法は、
前記真空維持システムによって、前記
トカマクの動作終了後に、前記
真空チャンバ内の圧力を25mbar未満に維持するステップと、
堆積プロセスを介して、
前記ダイバータ又は第一壁の表面に前記耐火金属を堆積させるステップ
であって、
前記加熱システムによって、前記耐火金属源の前記耐火金属の一部を加熱すること、
前記位置決めシステムによって、前記第一壁又はダイバータの表面の標的部位に前記耐火金属源の耐火金属及び熱源を配置すること、
前記位置決めシステム及び/又は前記耐火金属源によって、前記ダイバータ又は第一壁の表面における標的部位に対して前記耐火金属の前記一部を堆積させ、前記標的部位上に前記耐火金属の前記一部を溶融させること
を含むステップと
を含む、方法。
【請求項2】
前記標的部位に対して前記耐火金属の前記一部を堆積させる前に、前記標的部位を加熱するステップを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記第一壁の表面の領域内の複数の標的部位に対して、前記耐火金属の一部を加熱するステップを実行することにより、前記耐火金属で前記領域をコーティングするステップを含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記耐火金属は粉末として提供され、前記耐火金属源は、前記標的部位に前記耐火金属の粉末を分配するように構成される粉末ディスペンサを含む、請求項
1から
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記粉末ディスペンサは不活性ガス源を備えており、前記粉末ディスペンサは、耐火金属粉末源から出力チャネルを介して前記標的部位に前記耐火金属の粉末を吹き付けることによって、前記耐火金属の粉末を分配する、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
前記耐火金属源は、耐火金属線を含んでおり、
前記耐火金属源の前記一部は、前記耐火金属線の一端である、請求項
1から
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記標的部位及び/又は前記耐火金属の前記一部を加熱するステップは、レーザを用いた加熱、又は電子ビーム加熱を含む、請求項
1から
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記耐火金属を堆積させる前に、修復が必要な領域を特定するために前記ダイバータ又は第一壁の表面をスキャンするステップを含み、
前記耐火金属を堆積させるステップは、前記修復が必要な領域に前記耐火金属を堆積させることを含む、請求項1から
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記耐火金属を堆積させる前に前記ダイバータ又は第一壁の表面の一部にマスクを提供するステップと、前記耐火金属の堆積後に前記マスクを除去するステップとを含む、請求項1から
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
堆積後に前記耐火金属を堆積した前記ダイバータ又は第一壁の表面の一部をフライス加工するステップを含む、請求項1から
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記トカマク
は、第1及び第2の真空ポンプシステムを備え、
前記第1の真空ポンプシステムは、前記トカマク
の通常動作中に使用され、前記第2の真空ポンプシステムは、前記耐火金属の堆積中に、並びに前記堆積及び/又はその後のフライス加工からの廃棄物の除去中に使用される、請求項1から
3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の真空ポンプシステムは、スクロールポンプを含む、請求項
11に記載の方法。
【請求項13】
トカマク
を動作させる方法であって、
前記
トカマク内に第1のプラズマを形成しかつ維持するステップと、
前記第1のプラズマを消滅させるステップと、
請求項1から
3のいずれか1項に記載の方法によって前記
トカマクのダイバータ又は第一壁を修復するステップと、
前記
トカマク内に第2のプラズマを形成するステップと
を含み、
前記
トカマク内の圧力は、前記第1のプラズマが消滅してから前記第2のプラズマが形成されるまでの間、25mbar未満のままである、方法。
【請求項14】
真空チャンバと、
前記真空チャンバ内の圧力を25mbar未満に維持するように構成される真空維持システムと、
融点が2000
oCを超える耐火金属を含む表面をそれぞれ有する第一壁及びダイバータと、
耐火金属堆積システムと
を備えるトカマク
において、
前記耐火金属堆積システムは、
耐火金属源、
前記耐火金属源の前記耐火金属の一部を加熱するように構成される加熱システム、
前記第一壁又はダイバータの表面の任意の領域に前記耐火金属源の耐火金属及び熱源を配置するように構成される位置決めシステム、
コントローラ
を備え、
前記コントローラは、
前記加熱システムによって前記耐火金属源からの前記耐火金属の一部を加熱させ、前記位置決めシステム及び/又は前記耐火金属源によって前記ダイバータ又は第一壁の表面における標的部位に対して前記耐火金属の前記一部を堆積させ、前記標的部位上に前記耐火金属の前記一部を溶融させるように構成される、トカマク
。
【請求項15】
前記加熱システムは、前記第一壁又はダイバータの表面の標的部位を加熱するようにさらに構成される、請求項
14に記載の
トカマク。
【請求項16】
前記コントローラは、前記第一壁の表面の領域内の複数の標的部位に対して前記耐火金属の一部を加熱するステップを実行し、それによって前記耐火金属で前記領域をコーティングするようにさらに構成される、請求項
14又は
15に記載の
トカマク。
【請求項17】
前記真空チャンバはポートを備え、
前記耐火金属堆積システムの少なくとも一部は、前記ポートを介して前記真空チャンバに入るように構成される、請求項
14又は15に記載のトカマク
。
【請求項18】
前記真空維持システムは、第1及び第2の真空ポンプシステム及びコントローラを備え、
前記コントローラは、前記第1の真空ポンプシステムを使用して前記トカマク
の通常動作中に真空を維持し、前記第2の真空ポンプシステムを使用して前記耐火金属の堆積中に、及び前記堆積及び/又はその後のフライス加工からの廃棄物の除去中に真空を維持するように構成される、請求項
14又は15に記載のトカマク
。
【請求項19】
前記第2の真空ポンプシステムは、スクロールポンプを含む、請求項
18に記載のトカマク
。
【国際調査報告】