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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】併用療法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/4985 20060101AFI20231226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20231226BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
A61K31/4985
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61P31/18
C12N15/13 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534373
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 US2021061697
(87)【国際公開番号】W WO2022125378
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/122,031
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521396042
【氏名又は名称】ヴィーブ、ヘルスケア、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】VIIV HEALTHCARE COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】ジー、ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー、リー、ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】ブライアン、アルビン、ジョーンズ
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー、スパルテンステイン
(72)【発明者】
【氏名】エミール、ジョハン、ベルジュイセン
【テーマコード(参考)】
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085BB31
4C085BB41
4C085BB43
4C085BB44
4C085CC23
4C085EE03
4C085GG01
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA55
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZC55
(57)【要約】
本発明は、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質の組合せに関する。本発明はまた、治療上有効な量のカボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩および治療上有効な量のgp120結合タンパク質の併用投与を用いるヒト免疫不全ウイルス(HIV)を治療する方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質を含んでなる組合せであって、前記gp120結合タンパク質が、HIV-1を中和する、前記組合せ。
【請求項2】
前記gp120結合タンパク質が、モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含んでなる、請求項1に記載の組合せ。
【請求項3】
前記gp120結合タンパク質が、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなる重鎖可変領域(VH)および軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、
前記重鎖相補性決定領域(CDRH)が、配列番号15と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH3アミノ酸配列を有し、
前記軽鎖相補性決定領域(CDRL)が、配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL1アミノ酸、配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL2アミノ酸配列および配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRHL3アミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載の組合せ。
【請求項4】
前記gp120結合タンパク質が、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなるVHおよび軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなるVLを含んでなり、
前記重鎖相補性決定領域(CDRH)が、配列番号15で示されるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16で示されるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17で示されるCDRH3アミノ酸配列を有し、
前記軽鎖相補性決定領域(CDRL)が、配列番号18で示されるCDRL1アミノ酸配列、配列番号19で示されるCDRHLアミノ酸配列および配列番号20で示されるCDRHL3アミノ酸配列を有する、請求項1または2に記載の組合せ。
【請求項5】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項6】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号1で示される可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項7】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項8】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号2で示される可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項1~6のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項9】
前記gp120結合タンパク質が抗原結合フラグメントを含んでなる、請求項1~8のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項10】
前記抗原結合フラグメントがFv、Fab、F(ab’)、scFVまたはscFVフラグメントを含んでなる、請求項9に記載の組合せ。
【請求項11】
前記モノクローナル抗体が、非修飾定常ドメインに比べて、胎児性Fc受容体への結合を増強する修飾を含んでなる組換え定常ドメインを含んでなり、前記組換え定常ドメインが、M428LおよびN434S変異を含んでなるIgG1定常ドメインである、請求項1~10のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項12】
前記組合せが、ヒトに1か月毎に1回、2か月毎に1回または3か月毎に1回投与される、請求項1~11のいずれか一項に記載の組合せ。
【請求項13】
それを必要とするヒトにおいてHIVを治療する方法であって、前記方法が、ヒトに治療上有効な量のカボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩および治療上有効な量のgp120結合タンパク質を併用投与する工程を含んでなり、前記gp120結合タンパク質がHIV-1を中和する、前記方法。
【請求項14】
前記gp120結合タンパク質がモノクローナル抗体またはそのフラグメントを含んでなる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記gp120結合タンパク質が、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなる重鎖可変領域(VH)および軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、
前記重鎖相補性決定領域(CDRH)が、配列番号15と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH3アミノ酸配列を有し、
前記軽鎖相補性決定領域(CDRL)が、配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL1アミノ酸、配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL2アミノ酸配列および配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRHL3アミノ酸配列を有する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項16】
前記gp120結合タンパク質が、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなるVHおよび軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなるVLを含んでなり、
前記重鎖相補性決定領域(CDRH)が、配列番号15で示されるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16で示されるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17で示されるCDRH3アミノ酸配列を有し、
前記軽鎖相補性決定領域(CDRL)が、配列番号18で示されるCDRL1アミノ酸配列、配列番号19で示されるCDRHLアミノ酸配列および配列番号20で示されるCDRHL3アミノ酸配列を有する、請求項13または14に記載の方法。
【請求項17】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号1で示される可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項13~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号2で示される可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項13~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記gp120結合タンパク質が抗原結合フラグメントを含んでなる、請求項13~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗原結合フラグメントがFv、Fab、F(ab’)、scFVまたはscFVフラグメントである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記モノクローナル抗体が、非修飾定常ドメインに比べて、胎児性Fc受容体への結合を増強する修飾を含んでなる組換え定常ドメインを含んでなり、前記組換え定常ドメインが、M428LおよびN434S変異を含んでなるIgG1定常ドメインである、請求項13~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
カボテグラビルおよびgp120結合タンパク質の併用投与が逐次投与である、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
カボテグラビルおよびgp120結合タンパク質の併用投与が同時投与である、請求項13~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が、カボテグラビルおよびgp120結合タンパク質を非経口投与することを含んでなる、請求項13~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が、カボテグラビルおよびgp120結合タンパク質をヒトに1か月毎に1回、2か月毎に1回、3か月毎に1回または6か月毎に1回投与することを含んでなる、請求項13~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
HIVの治療における使用のための、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質を含んでなる組合せであって、前記gp120結合タンパク質がHIV-1を中和する、前記組合せ。
【請求項29】
前記gp120結合タンパク質がモノクローナル抗体またはそのフラグメントを含んでなる、請求項28に記載の使用のための組合せ。
【請求項30】
前記gp120結合タンパク質が、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなる重鎖可変領域(VH)および軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、
前記重鎖相補性決定領域(CDRH)が、配列番号15と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH3アミノ酸配列を有し、
前記軽鎖相補性決定領域(CDRL)が、配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL1アミノ酸、配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL2アミノ酸配列および配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRHL3アミノ酸配列を有する、請求項28または29に記載の使用のための組合せ。
【請求項31】
前記gp120結合タンパク質が、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなるVHおよび軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなるVLを含んでなり、
前記重鎖相補性決定領域(CDRH)が、配列番号15で示されるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16で示されるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17で示されるCDRH3アミノ酸配列を有し、
前記軽鎖相補性決定領域(CDRL)が、配列番号18で示されるCDRL1アミノ酸配列、配列番号19で示されるCDRHLアミノ酸配列および配列番号20で示されるCDRHL3アミノ酸配列を有する、請求項28または29に記載の使用のための組合せ。
【請求項32】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項28~31のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項33】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号1で示される可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項28~31のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項34】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項28~33のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項35】
前記gp120結合タンパク質が、配列番号2で示される可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなる、請求項28~33のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項36】
前記gp120結合タンパク質が抗原結合フラグメントを含んでなる、請求項28~35のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項37】
前記抗原結合フラグメントがFv、Fab、F(ab’)、scFVまたはscFVフラグメントである、請求項36に記載の使用のための組合せ。
【請求項38】
前記モノクローナル抗体が、非修飾定常ドメインに比べて、胎児性Fc受容体への結合を増強する修飾を含んでなる組換え定常ドメインを含んでなり、前記組換え定常ドメインが、M428LおよびN434S変異を含んでなるIgG1定常ドメインである、請求項28~36のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項39】
前記組合せが、逐次に併用投与される、請求項28~38のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項40】
前記組合せが、同時に併用投与される、請求項28~38のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項41】
前記組合せが、非経口的に併用投与される、請求項28~38のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項42】
前記ヒトに1か月毎に1回、2か月毎に1回、3か月毎に1回または6か月毎に1回併用投与される、請求項28~41のいずれか一項に記載の使用のための組合せ。
【請求項43】
HIVの治療における使用のための医薬の製造における、請求項1~13のいずれか一項に記載のカボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質の使用。
【請求項44】
インテグラーゼ鎖転移阻害剤カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびHIV-1を中和するgp120結合タンパク質を含んでなるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年12月7日出願の米国仮特許出願第63/122,031号の優先件を主張するものである。本願の内容は、参照により全体が本明細書の一部とされる。
【0002】
発明の分野
本発明は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の治療方法に関する。特に、本発明は、HIV感染の治療のための注射可能な組合せに関する。
【背景技術】
【0003】
1型ヒト免疫不全ウイルス(HIV-1)感染、およびその結果としての後天性免疫不全症候群(AIDS)は、抗HIV-1治療薬を開発するための広範な努力にもかかわらず、世界的な公衆衛生の脅威となり続けている。HIV-1は変異率が高く、組み換え頻度も高いため、ウイルスの複製が十分に阻害されないと、薬剤耐性バリアントが急速に出現する可能性がある。Iyidogan, P., & Anderson, K. S. (2014). Current perspectives on HIV-1 antiretroviral drug resistance. Viruses, 6(10), 4095-4139。投与レジメンへのコンプライアンスの問題、忍容性の低さおよび抗レトロウイルス療法への過去の曝露も、患者をHIV-1薬剤耐性株発症の危険にさらす。Obasa AE, Mikasi SG, Brado D, et al. Front Microbiol. 2020;11:438; Rossouw TM, Feucht UD, Melikian G, et al. PLoS One. 2015;10(7)。
【0004】
高活性抗レトロウイルス療法(HAART)は、複数のメカニズム、特にHIV複製酵素であるプロテアーゼ、インテグラーゼおよびトランスアミナーゼによってウイルス複製を阻害する異なる薬剤の併用投与に焦点を当てている。1つの薬剤に耐性のあるウイルスの増殖は、他の2つの薬剤の作用によって阻害されるようになるため、複数のメカニズムの阻害が必要である。Shafer RW, Vuitton DA. Biomed Pharmacother. 1999 Mar;53(2):73-86。残念なことに、HIV薬剤耐性は複数のメカニズムの阻害の有効性を低下または消失させる。
【0005】
HIV-1薬剤耐性との絶え間ない戦いにおける新たな戦略としては、投与回数を減らすために長時間作用型製剤に焦点を当てた抗レトロウイルス療法がある。薬剤耐性を回避するためのもう1つの治療戦略には、広域中和抗体(bNAb)によるHIV-1の中和がある。中和とは、抗体分子が宿主細胞の外にあるウイルスの完全な感染形態であるビリオンと結合した際に起こる感染性の喪失と定義される。特異的bNAbは、ウイルス膜糖タンパク質gp120のHIV-1エンベロープCD4結合部位に結合し、ビリオンがT細胞に付着してそのRNAを伝達する能力を中和する。様々な認識と糖タンパク質アミノ酸配列が保存されている十分な領域を有するHIV-1を同定する中和抗体が開発されている。Burton, D., Mascola, J. Nat Immunol 16, 571-576 (2015)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
現在、当技術分野では、より少ない投与量で投与コンプライアンスを向上させることで
感染を治療するHIV-1治療レジメンを開発する必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様によれば、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩と、gp120結合タンパク質とを含んでなる組合せであって、gp120結合タンパク質がHIV-1を中和する、組合せが提供される。
【0008】
本発明の第2の態様によれば、それを必要とするヒトにおいてHIVを治療する方法であって、ヒトに治療上有効な量のカボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩と、治療上有効な量のgp120結合タンパク質とを併用投与する工程を含んでなり、gp120結合タンパク質はHIV-1を中和する、方法が提供される。
【0009】
本発明の第3の態様によれば、HIVの治療における使用のための、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩とgp120結合タンパク質とを含んでなる組合せであって、gp120結合タンパク質がHIV-1を中和する、組合せが提供される。
【0010】
本発明のさらなる態様によれば、HIVの治療における使用のための医薬の製造における、請求項1~13に記載のカボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質の使用が提供される。
【0011】
本発明の最後の態様によれば、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩と、HIV-1を中和するgp120結合タンパク質とを含んでなるキットが提供される。
【0012】
本発明は多くの点で有利である。具体的には、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩と、gp120結合タンパク質との併用投与の方法は、安全で、長期間安定で、HIV治療に有効であり得る。カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩と、gp120結合タンパク質とを含んでなる本発明による組合せは、HIV感染からの保護およびHIV中和を提供し得る。
【発明を実施するための形態】
【0013】
定義
本明細書で使用する場合、用語「医薬組成物」は、薬学的使用に適切な組成物を意味する。
【0014】
本明細書で使用する場合、用語「組合せ」は、併用投与する少なくとも2つの治療薬を指す。本明細書で使用する場合、用語「治療薬」は、組織、系、動物、哺乳動物、ヒトまたはその他の対象に所望の効果をもたらす物質を意味すると理解される。例えば、非固定用量の組合せが企図される。
【0015】
本明細書で使用する場合、用語「併用投与」は、治療上有効な量の化合物がともに患者の体内に存在するような同時投与または逐次投与を指す。用語「併用投与」はまた、非固定用量の一部として、任意に2つ以上の製剤で同時に投与することを指す。用語「併用投与」はまた、異なるスケジュールでの投与も指すが、所定の治療サイクル内で投与され得る。併用投与には、インテグラーゼ鎖転移阻害剤およびgp120結合タンパク質の医薬組成物の投与、例えば、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質の互いの投与から数秒、数分、数時間、数日または数週間以内の投与が含まれる。例えば、いくつかの実施形態では、インテグラーゼ鎖転移阻害剤またはgp120結合タンパク質の一方の単位用量が最初に投与され、次いで数秒または数分以内に他方が同じ経路または異なる経路のいずれかで投与される。
【0016】
本明細書で使用する場合、用語「薬学上許容可能な塩」は、対象化合物の所望の生物学的活性を保持し、望ましくない毒物学的影響が最小である塩を指す。これらの薬学上許容可能な塩は、化合物の最終的な単離および精製中にその場で調製することもできるし、遊離酸または遊離塩基の形態で精製した化合物を、それぞれ適切な塩基または酸と別々に反応させることによって調製することもできる。
【0017】
薬学上許容可能な塩としては、とりわけ、Berge, J. Pharm. Sci., 1977, 66, 1-19に記載されているもの、またはP H Stahl and C G Wermuth, editors, Handbook of Pharmaceutical Salts; Properties, Selection and Use, Second Edition Stahl/Wermuth: Wiley- VCH/VHCA, 2011 (http://www.wiley.com/WileyCDA/WileyTitle/productCd-3906390519.html参照)に挙げられているものが含まれる。
【0018】
適切な薬学上許容可能な塩としては、酸または塩基付加塩を含み得る。本発明の適切な薬学上許容可能な塩には、塩基付加塩が含まれる。
【0019】
代表的な薬学上許容可能な塩基付加塩としては、限定されるものではないが、アルミニウム、2-アミノ-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール(TRIS、トロメタミン)、アルギニン、ベネタミン(N-ベンジルフェネチルアミン)、ベンザチン (N,N’-ジベンジルエチレンジアミン)、ビス-(2-ヒドロキシエチル)アミン、ビスマス、カルシウム、クロロプロカイン、コリン、クレミゾール(1-pクロロベンジル-2-ピロリルジン-1’-イルメチルベンズイミダゾール)、シクロヘキシルアミン、ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、ジエチルトリアミン、ジメチルアミン、ジメチルエタノールアミン、ドーパミン、エタノールアミン、エチレンジアミン、L-ヒスチジン、鉄、イソキノリン、レピジン、リチウム、リシン、マグネシウム、メグルミン(N-メチルグルカミン)、ピペラジン、ピペリジン、カリウム、プロカイン、キニーネ、キノリン、ナトリウム、ストロンチウム、t-ブチルアミンおよび亜鉛が挙げられる。
【0020】
「治療上有効な量」または「有効量」とは、病態を予防するか、または治療される障害の1または2以上の症状をある程度緩和する、投与される化合物の量を指す。本明細書での使用に適切な医薬組成物には、有効成分が、意図された目的を達成するのに十分な量で含有される組成物が含まれる。治療上有効な量の決定は、特に本明細書に提供される詳細な開示に照らせば、当業者の能力の範囲内である。
【0021】
本明細書で使用する場合、治療方法に関して用語「治療」または「治療する」は、特定の状態を緩和すること、病態の症状を除去または軽減すること、病態の進行、浸潤または拡散を緩徐化または排除すること、および過去に罹患した対象における病態の再発を軽減または遅延させることを指す。本発明はさらに、それを必要とする哺乳動物(例えば、ヒト)におけるいくつかの状態の治療のための医薬の調製のための、本発明の化合物または組成物の使用を提供する。
【0022】
本明細書で使用する場合、治療方法に関して用語「非経口」または「非経口的に」は、経口投与以外の医薬化合物または組成物の投与経路を指す。本明細書での使用に適切な、非経口投与経路としては、注射、注入、移植または消化管以外の他のいくつかの経路が挙げられる。非経口注射投与経路としては、静脈内、筋肉内および皮下が挙げられる。
【0023】
本明細書で使用する場合、用語「gp120結合タンパク質」は、エンベロープ糖タンパク質GP120に結合し得る抗体およびその他のタンパク質構築物、例えばドメインを指す。用語「gp120結合タンパク質」および「抗原結合タンパク質」は、本明細書で互換的に使用される。これには天然の同族リガンドまたは受容体は含まれない。gp120結合タンパク質の例として、相補性決定領域(CDR)配列番号1、2、15、16、17、18、19または20を有する米国特許第10,562,960号に開示されている抗体N6が挙げられる。N6LSは、相補性決定領域(CDR)配列番号1、2、15、16、17、18、19または20を有し、かつ、M428LおよびN434S変異を含んでなるIgG1定常ドメインを有するgp120結合タンパク質960である。
【0024】
本明細書で使用する場合、用語「抗体」は、本明細書では最も広義で、免疫グロブリン様ドメインを有する分子(例えば、IgG、IgM、IgA、IgDまたはIgE)を指して使用され、モノクローナル抗体またはそのフラグメント、組換え抗体、ポリクローナル抗体、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、広域中和抗体、二重特異性抗体を含む多重特異性抗体、およびヘテロコンジュゲート抗体;単一可変ドメイン(例えば、ドメイン抗体(DAB))、抗原結合抗体フラグメント、Fab、F(ab’)2、Fv、ジスルフィド結合Fv(disulphide linked Fv)、単鎖Fv、ジスルフィド結合scFv(disulphide-linked scFv)、ダイアボディ、TANDABなど、ならびに上記のいずれかの修飾形態を指す(別の「抗体」形式の概要は、Holliger and Hudson, Nature Biotechnology, 2005, Vol 23, No. 9, 1126-1136参照)。
【0025】
本明細書で互換的に使用される完全抗体、全抗体またはインタクトな抗体という用語は、分子量約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質を指す。インタクトな抗体は、共有結合性ジスルフィド結合で連結された2本の同一の重鎖(HC)と2本の同一の軽鎖(LC)から構成される。このH2L2構造は、折り畳まれて、「Fab」フラグメントとして知られる2つの抗原結合フラグメントと「Fc」結晶化可能フラグメントを含んでなる3つの機能的ドメインを形成する。Fabフラグメントは、アミノ末端の可変ドメインとしての可変重鎖(VH)または可変軽鎖(VL)、およびカルボキシル末端の定常ドメインとしてのCH1(重鎖)およびCL(軽鎖)から構成される。Fcフラグメントは、対をなすCH2領域とCH3領域の二量体化によって形成される2つのドメインから構成される。Fcは免疫細胞上の受容体に結合するか、古典的補体経路の第一成分であるC1qに結合することにより、エフェクター機能を発揮し得る。抗体の5つのクラスIgM、IgA、IgG、IgEおよびIgDは、それぞれμ、α、γ、εおよびδと呼ばれる異なる重鎖アミノ酸配列によって定義され、各重鎖はκ軽鎖またはλ軽鎖のいずれかと対になることができる。血清中の抗体の大部分はIgGクラスに属し、ヒトIgGには4つのアイソタイプ(IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4)があり、その配列は主にヒンジ領域で異なっている。
【0026】
完全ヒト抗体は、酵母ベースのライブラリーまたはヒト抗体のレパートリーを産生できるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を用いるなど、様々な方法を用いて得ることができる。対象とする抗原に結合するヒト抗体を表面に提示する酵母は、FACS(蛍光活性化細胞選別)ベースの方法または標識抗原を用いたビーズ上への捕捉を用いて選択することができる。ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現するように改変したトランスジェニック動物を対象とする抗原で免疫し、B細胞選別技術を用いて抗原特異的ヒト抗体を単離することができる。次に、これらの技術を用いて産生されたヒト抗体は、親和性、開発可能性および選択性などの所望の特性について特性評価を行うことができる。
【0027】
代替の抗体形式としては、抗原結合タンパク質の1または2以上のCDRをアフィボディ、SpAスキャフォールド、LDL受容体クラスAドメイン、アビマー(例えば、米国特許出願公開第2005/0053973号、第2005/0089932号、第2005/0164301号参照)またはEGFドメインなどの適切な非免疫グロブリンタンパク質スキャフォールドまたは骨格上に配置することができる代替スキャフォールドが挙げられる。
【0028】
本明細書で使用する場合、用語「抗原結合部位」は、抗原に特異的に結合し得る、抗原結合タンパク質の部位を指す。抗原結合部位は単一可変ドメインであってもよいし、または標準的な抗体に見出せるようなVH/VLドメイン対であってもよい。単鎖Fv(ScFv)ドメインもまた抗原結合部位を提供し得る。
【0029】
本明細書で使用する場合、用語「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる抗原結合部位を含んでなる抗体を指す。これらの抗原結合部位のそれぞれは異なるエピトープに結合することができ、これらは同じ抗原にあっても異なる抗原にあってもよい。多重特異性抗原結合タンパク質は、2つ以上の抗原、例えば、2つの抗原または3つの抗原または4つの抗原に特異性を有し得る。
【0030】
二重特異性抗体の分類および形式は、Labrijn et al 2019およびBrinkmann and Kontermann 2017に総説として包括的に記載されている。二重特異性は、一般に対称型または非対称型に分類することができる。二重特異性はFcを有してもよいし、またはフラグメントベース(Fcを欠く)であってもよい。フラグメントベースの二重特異性は、Fc領域を有しない1分子に複数の抗原結合抗体フラグメントを組み合わせ、例えば、Fab-scFv、Fab-scFv2、直交性Fab-Fab(orthogonal Fab-Fab)、Fab-Fv、タンデムscFc(例えば、BiTEおよびBiKE分子)、ダイアボディ、DART、TandAb、scダイアボディ、タンデムdAbなどがある。
【0031】
対称形式は、Fc融合タンパク質であるフラグメントベース形式および抗体フラグメントが通常の抗体分子に融合された形式を含む、単一のポリペプチド鎖または単一のHL対に複数の結合特異性が組み合わされている。対称形式の例としては、DVD-Ig、TVD-Ig、CODV-Ig、(scFv)4-Fc、IgG-(scFv)2、四価DART-Fc、F(ab)4CrossMab、IgG-HC-scFv、IgG-LC-scFv、mAb-dAbなどが挙げられる。
【0032】
非対称形式は、3本(共通重鎖または軽鎖を使用する場合)または4本のポリペプチド鎖の共発現の際に、適正なHL鎖の対形成を強制すること、および/またはH鎖のヘテロ二量化を促進することで、天然抗体の本来の構造を可能な限り保持し、例えば、Triomab、asymmetric reengineering technology immunoglobulin(ART-Ig)、CrossMab、Biclonics共通軽鎖、ZW1共通軽鎖、DuoBodyおよびノブ・イントゥ・ホール(KiH)、DuetMab、κλボディ、Xmab、YBODY、HET-mAb、HET-Fab、DART-Fc、SEEDbody、マウス/ラットキメラIgGが挙げられる。
【0033】
二重特異性形式にはまた、Affimab、Fynomab、Zybodyおよびアンチカリン-IgG融合体、ImmTACなどの非Igスキャフォールドに融合された抗体も含む。
【0034】
本明細書で使用する場合、用語「キメラ抗原受容体」(「CAR」)は、細胞外抗原結合ドメイン(通常、モノクローナル抗体またはそのフラグメント、例えば、scFv形態のVドメインおよびVドメインに由来する)、場合により、スペーサー領域、膜貫通領域および1または2以上の細胞内エフェクタードメインからなる遺伝子工学操作された受容体を指す。CARは、キメラT細胞受容体またはキメラ免疫受容体(CIR)とも呼ばれてきた。CARは、一般に、T細胞の特異性を所望の細胞表面抗原に向け直すためにT細胞などの造血細胞に導入してCAR-T治療薬とする。
【0035】
用語「スペーサー領域」は、本明細書で使用する場合、標的結合ドメインに膜貫通ドメインを連結する働きをするオリゴペプチドまたはポリペプチドを指す。この領域は、「ヒンジ領域」または「スターク領域(stalk region)」と呼ばれることもある。スペーサーのサイズは、CAR:標的結合時に設定距離(例えば、14nM)を維持するために、標的エピトープの位置によって可変である。
【0036】
用語「膜貫通ドメイン」は、本明細書で使用する場合、細胞膜を横切るCAR分子の部分を指す。
【0037】
用語「細胞内エフェクタードメイン」(「シグナル伝達ドメイン」とも呼ばれる)は、本明細書で使用する場合、抗原結合ドメインが標的に結合した後に細胞内シグナル伝達を担うCAR内のドメインを指す。細胞内エフェクタードメインは、CARが発現される免疫細胞の通常のエフェクター機能の少なくとも1つの活性化を担う。例えば、T細胞のエフェクター機能は、細胞溶解活性、またはサイトカインの分泌を含むヘルパー活性であり得る。
【0038】
本明細書で開示されるVおよび/またはVドメインは、例えばscFvの形態でCAR-T治療薬に導入され得るということが当業者に認識されるであろう。
【0039】
本明細書で使用する場合、本明細書を通じて使用される用語「中和する」は、in vitroまたはin vivoにおいて、本明細書に記載される抗原結合タンパク質の存在下で、抗原結合タンパク質の不在下でのgp120の活性に比べて、gp120の生物活性が低下することを意味する。中和は、gp120がその受容体に結合するのを遮断すること、gp120がその受容体を活性化するのを妨げること、gp120またはその受容体を下方調節すること、またはエフェクター機能に影響を及ぼすことの1または2以上によるものであり得る。
【0040】
本明細書で使用する場合、用語「CDR」は、抗原結合タンパク質の相補性決定領域アミノ酸配列として定義される。これらは、免疫グロブリン重鎖および軽鎖の超可変領域である。免疫グロブリンの可変領域には、3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDR(またはCDR領域)が存在する。よって、「CDR」は、本明細書で使用する場合、3つ総ての重鎖CDR、3つ総ての軽鎖CDR、総ての重鎖および軽鎖CDR、または少なくとも2つのCDRを指す。
【0041】
本明細書を通して、可変ドメイン配列中のアミノ酸残基および完全長の抗原結合配列内の可変ドメイン領域中のアミノ酸残基、例えば、抗体重鎖配列又は抗体軽鎖配列内のアミノ酸残基は、Kabatナンバリング規則に従って符番される。同様に、実施例で使用される用語「CDR」、「CDRL1」、「CDRL2」、「CDRL3」、「CDRH1」、「CDRH2」、「CDRH3」は、Kabatナンバリング規則に従う。さらに詳しくは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第4版, U.S. Department of Health and Human Services, National Institutes of Health (1987)を参照のこと。
【0042】
可変ドメイン配列および完全長の抗体配列中のアミノ酸残基についての別のナンバリング規則が存在することは、当業者には自明である。CDR配列についての別のナンバリング規則も存在し、例えば、Chothia et al. (1989) Nature 342: 877-883に提示されているナンバリング規則である。抗原結合タンパク質の構造及びタンパク質フォールディングは、他の残基がCDR配列の一部とみなされることを意味し、当業者にはそのように理解される。
【0043】
当業者に利用可能なCDR配列の他のナンバリング規則として、「AbM」(University of Bath)および「contact」(University College London)法がある。
【0044】
以下の表1に、各CDRまたは結合単位に関して各ナンバリング規則を用いた1つの定義を示す。表1では、可変ドメインアミノ酸配列の符番にKabatナンバリング法を用いている。CDR定義の一部は使用した個々の刊行物によって異なる場合があることに留意されたい。
【0045】
【表1】
【0046】
よって、以下のCDRアミノ酸配列のいずれか1つまたは組合せを含んでなる抗原結合タンパク質が提供される。
配列番号15のCDRH1:AHILF
配列番号16のCDRH2:WIKPQYGAVNFGGGFRD
配列番号17のCDRH3:DRSYGDSSWALDA
配列番号18のCDRL1:QTSQGVGSDLH
配列番号19のCDRL2:HTSSVED
配列番号20のCDRL3:QVLQF
【0047】
本発明のある実施形態では、CDRは、少なくとも1つのアミノ酸の置換、欠失または付加によって改変されていてもよく、このバリアント抗原結合タンパク質は実質的に、N6またはN6LSなどの非改変タンパク質の生物学的特徴を保持する。
【0048】
CDR H1、H2、H3、L1、L2、L3のそれぞれは、単独でまたはいずれかの他のCDRと組み合わせて、任意の順列もしくは組合せで改変されてもよいことが認識されるであろう。1つの実施形態では、CDRは、3個までのアミノ酸、例えば、1または2個のアミノ酸、例えば、1個のアミノ酸の置換、欠失または付加により改変される。一般に、改変は、置換、特に、例えば以下の表2に示されるような保存的置換である。
【0049】
【表2】
【0050】
例えば、バリアントCDRにおいて、別の定義、例えば、KabatまたはChothiaの一部としてCDRを含んでなる隣接残基は、保存的アミノ酸残基で置換してもよい。
【0051】
上記のようなバリアントCDRを含んでなるこのような抗原結合タンパク質は、本明細書では「機能的CDRバリアント」と呼ぶ場合がある。
【0052】
本明細書で使用する場合、用語「エピトープ」は、抗原結合タンパク質の特定の結合ドメインと接触する抗原の部分を指し、パラトープとも呼ばれる。エピトープは、直鎖状であっても、立体配座型/不連続であってもよい。立体配座型または不連続エピトープは、他の配列によって分離されているアミノ酸残基、すなわち、ポリペプチド鎖の三次元折り畳みによって組み立てられた抗原の一次配列において連続した配列にないアミノ酸残基を含んでなる。残基はポリペプチド鎖の異なる領域からのものであってもよいが、抗原の三次元構造では近接している。多量体抗原の場合、立体配座型または不連続エピトープは、異なるペプチド鎖の残基を含み得る。エピトープに含まれる特定の残基は、コンピュータモデリングプログラム、またはX線結晶学などの当技術分野で公知の方法によって得られる三次元構造によって決定することができる。エピトープマッピングは、Methods in Molecular Biology ‘Epitope Mapping Protocols’, Mike Schutkowski and Ulrich Reineke (volume 524, 2009) and Johan Rockberg and Johan Nilvebrant (volume 1785, 2018)などの刊行物に記載されているような当業者に公知の様々な技術を用いて実施することができる。例示的な方法としては、pepscanなどのペプチドに基づくアプローチが挙げられ、この方法では、ELISAなどの技術を使用して、あるいは、例えばファージによる、ペプチドまたはタンパク質変異体の大規模なライブラリーのin vitroディスプレイを用いて一連の重複するペプチドが結合についてスクリーニングされる。エピトープの詳細な情報は、X線結晶構造解析、溶液核磁気共鳴(NMR)分光法および低温電子顕微鏡(cryo-EM)を含む構造的技術によって決定することができる。アラニンスキャニングなどの変異誘発は、エピトープマッピングのために結合喪失の分析を使用する効果的なアプローチである。別法として、水素/重水素交換(HDX)とタンパク質分解および液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS)との組合せによる、不連続または立体配座エピトープの特性決定を行う方法もある。
【0053】
本発明のgp120結合タンパク質と参照gp120結合タンパク質、例えば、参照抗体との間の競合は、ELISA、FMAT、表面プラズモン共鳴(SPR)またはFORTEBIO OCTETバイオレイヤー干渉(BLI)などの当業者に公知の1または2以上の技術によって決定することができる。このような技術はエピトープビニングとも呼ばれる。この競合には可能性のあるいくつかの理由が存在し、2つのタンパク質が同じもしくは重複するエピトープに結合するか、結合の立体的阻害が存在するか、または第1のタンパク質の結合が抗原の立体配座変化を引き起こし、第2のタンパク質の結合を妨げるもしくは低下させるなどであり得る。
【0054】
生物活性の低下または阻害は、部分的であっても全面的であってもよい。本発明のある実施形態では、gpl20に結合する治療上有効な量の開示抗体または抗原結合フラグメントの投与は、HIV-1感染(例えば、細胞の感染により、またはHIV-1に感染した対象の数もしくはパーセンテージにより、または感染対象の生存期間の延長により測定される)を、所望の量、例えば、適切な対照に比べて少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%またはさらには少なくとも100%低減または阻害することができる(検出可能なHIV-1感染の排除または抑制)。中和は、当業者に公知のまたは本明細書に記載の1または2以上のアッセイを用いて決定または測定することができる。
【0055】
クエリー核酸配列と対象核酸配列の間の「同一性パーセント」は、BLASTN、FASTA、ClustalW、MUSCLE、MAFFT、EMBOSS Needle、T-CoffeeおよびDNASTAR Lasergeneなどの好適なアルゴリズムまたはソフトウエアを用いてペアワイズグローバル配列アラインメントを行った後に、クエリー配列の全長にわたってBLASTN、FASTA、DNASTAR Lasergene、GeneDoc、Bioedit、EMBOSS needleまたはEMBOSS infoalignなどの好適なアルゴリズムまたはソフトウエアを用いて計算される、パーセンテージで表される「同一性」の値である。重要なこととして、クエリー核酸配列は、本明細書の1または2以上の請求項で特定される核酸配列により記載され得る。
【0056】
クエリーアミノ酸配列と対象アミノ酸配列の間の「同一性パーセント」は、BLASTP、FASTA、ClustalW、MUSCLE、MAFFT、EMBOSS Needle、T-CoffeeおよびDNASTAR Lasergeneなどの好適なアルゴリズムまたはソフトウエアを用いてペアワイズグローバル配列アラインメントを行った後に、クエリー配列の全長にわたってBLASTP、FASTA、DNASTAR Lasergene、GeneDoc、Bioedit、EMBOSS needleまたはEMBOSS infoalignなどの好適なアルゴリズムまたはソフトウエアを用いて計算される、パーセンテージで表される「同一性」値または「同一である」値である。重要なこととして、クエリー核酸配列は、本明細書の1または2以上の請求項で特定されるアミノ酸配列により記載され得る。
【0057】
クエリー配列は対象配列と100%同一であり得るか、または同一性%が100%未満であるように、対象配列と比較して特定の整数個までのアミノ酸またはヌクレオチドの変化を含み得る。例えば、クエリー配列は、対象配列と少なくとも50、60、70、75、80、85、90、95、96、97、98または99%同一である。このような変化は、少なくとも1つのアミノ酸欠失、置換(保存的置換および非保存的置換を含む)または挿入を含み、変化は、クエリー配列のアミノ末端位置またはカルボキシ末端位置で起こり得、あるいは、それらの末端位置の間の、クエリー配列内のアミノ酸もしくはヌクレオチド間に個別に散在する任意の場所、またはクエリ配列内の1もしくは2以上の連続した群に散在する任意の場所で起こり得る。
【0058】
同一性%は、CDRを含むクエリー配列の全長にわたって決定されてもよい。あるいは、同一性%は、CDRの1または2以上または総てを除外してもよく、例えば、CDRは総て、対象配列と100%同一であり、同一性%の変動はクエリー配列の残りの部分、例えば、フレームワーク配列に存在し、従って、CDR配列は固定され、インタクトである。
【0059】
バリアント配列は、gp120などの非改変タンパク質の生物学的特徴を実質的に保持する。
【0060】
配列のバリエーションについては、VHもしくはVL(またはHCもしくはLC)配列は、最大10個のアミノ酸の置換、付加または欠失を有するバリアント配列であり得る。例えば、バリアント配列は、最大9、8、7、6、5、4、3、2または1個のアミノ酸置換、付加または欠失を有し得る。
【0061】
HC配列は、最大20%の配列のバリエーションを有するバリアント配列であり得る。
【0062】
LC配列は、最大20%の配列のバリエーションを有するバリアント配列であり得る。
【0063】
配列のバリエーションは、1または2以上または総てのCDRを除外してもよく、例えば、CDRはVHもしくはVL(またはHCもしくはLC)配列と同じであり、バリエーションはVHもしくはVL(またはHCもしくはLC)配列の残りの部分にあるため、CDR配列は固定され、インタクトである。
【0064】
一般に、バリエーションは置換、特に、例えば表2に示されるような保存的置換である。
【0065】
バリアント配列は、gp120などの非改変タンパク質の生物学的特徴を実質的に保持する。
【0066】
本明細書で使用する場合、「耐性に対する遺伝的障壁」という用語は、医薬組成物に耐性を付与するための必要な変異の数を指す。耐性に対する遺伝的障壁が低い医薬組成物は、ウイルスが変異した後、または変異の数が少なくても、効果が低下する。耐性に対する遺伝的障壁が高い医薬組成物は、数回の変異の後でもウイルスに対する生物学的活性を失わない。
【0067】
本明細書で使用する場合、用語「インテグラーゼ鎖転移阻害剤」は、宿主細胞のDNAにウイルスゲノムを挿入するウイルス酵素であるインテグラーゼの作用を遮断するように設計されたある種の抗レトロウイルス薬を指す。特定の理論に縛られることを望むものではないが、HIVゲノム組込みの阻害は、レトロウイルスの複製を停止させてさらなるウイルスの拡散を止める。
【0068】
発明の記載
本発明、組合せおよび方法は、HIVを処置または中和するために使用することができ、HIVはさらに明示されない限り、HIV-1を意味することを意図する。別の実施形態として、方法および組合せは、HIV-2に対しても、またはHIV-1/HIV-2の二重感染を有する患者に対しても有効であり得る。
【0069】
第1の態様によれば、本発明は、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質を含んでなる組合せであって、gp120結合タンパク質がHIV-1を中和する組合せを提供する。
【0070】
カボテグラビル(N-((2,4-ジフルオロフェニル)メチル)-6-ヒドロキシ-3-メチル-5,7-ジオキソ-2,3,5,7,11,11aヘキサヒドロ(1,3)オキサゾロ(3,2-a)ピリド(1,2-d)ピラジン-8-カルボキサミド)は、US8,129,385の実施例Z-1に記載されている。カボテグラビルの経口投与は、許容可能な安全性および忍容性プロファイルを示し、半減期は長く、薬物相互作用がほとんどないことが示されている。カボテグラビルは、経口および非経口の投与形態の両方においてHIVの処置および予防に有効であることが証明されており、例えば、Margolis DA, Brinson CC, Eron JJ, et al. 744 and Rilpivirine as Two Drug Oral Maintenance Therapy: LAI116482 (LATTE) Week 48 Results. 21st Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections (CROI); March 3-6, 2014; Boston, MA, Margolis DA, Podzamczer D, Stellbrink H-J, et al. Cabotegravir + Rilpivirine as Long-Acting Maintenance Therapy: LATTE-2 Week 48 Results. 21st International AIDS Conference; July 18-22, 2016; Durban, South Africa, Abstract THAB0206LB. Levin: Conference reports for National AIDS Treatment Advocacy Project (NATAP); 2016, and Markowitz M, Frank I, Grant R, et al. ECLAIR: Phase 2A Safety and PK Study of Cabotegravir LA in HIV-Uninfected Men. Abstract presented at: 23rd Conference on Retroviruses and Opportunistic Infections (CROI); February 22-25, 2016; Boston, MA.を参照のこと。ビクテグラビルもインテグラーゼ鎖転移阻害剤である。本明細書では、ビクテグラビルとgp120結合分子の組合せが開示される。
【0071】
本発明のある実施形態では、カボテグラビルは遊離酸として存在する。本発明の別の実施形態では、カボテグラビルは、ナトリウム塩として存在する。
【0072】
本発明のある実施形態では、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩は、医薬組成物として提供される。本カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩は、経口的にまたは非経口的に投与され得る。経口投与の場合、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩は、従来の製剤として、例えば、錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などの固体薬剤;水溶液薬剤;油性懸濁液;またはシロップおよびエリキシルなどの液体薬剤の任意の投与形として使用することもできる。
【0073】
非経口投与の場合、化合物は、水性もしくは油性懸濁注射剤、または点鼻剤として使用され得る。その調製の際には、従来の賦形剤、結合剤、滑沢剤、水性溶媒、油性溶媒、乳化剤、沈殿防止剤、保存剤、安定剤などが使用可能である。
【0074】
本発明のある実施形態では、医薬組成物は、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩および界面活性剤系を含んでなる。本発明のある実施形態では、界面活性剤系は、1~3か月の期間にわたってカボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩の放出をもたらすポリマーの組合せさらに含んでなる。適切なポリマーの組合せは、例えば、ポリソルベート20およびポリエチレングリコール3350である。本発明のある実施形態では、界面活性剤系はマンニトールを含んでなる。本発明のある実施形態では、カボテグラビルは、<200nmにナノ粉砕される。
【0075】
本発明のある実施形態では、経口投与されるカボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩の用量は、約1mg/日~約50mg/日、好ましくは5mg/日~約30mg/日、より好ましくは30mg/日をもとに計算される。
【0076】
本発明の別の実施形態では、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩は、1週間、1か月、2か月、3か月または6か月当たり約10mg~約1000mgの用量で非経口的に投与される。1つの実施形態によれば、化合物またはその塩は、400mg、600mgまたは900mgのいずれかで投与される。
【0077】
本発明のある実施形態では、上記に定義されるような医薬組成物は、毎日、毎週、毎月、隔月(2か月毎に1回)または3か月おき(3か月毎に1回)投与され得る。
【0078】
本発明のある実施形態では、組合せは、gp120結合タンパク質を提供する。GP120結合タンパク質は、HIVビリオン上に見られる露出したエンベロープ糖タンパク質120に結合し、ビリオンがT細胞の細胞表面に見られるCD4受容体に付着するのを阻害する。CD4受容体への結合を遮断することにより、ビリオンは、T細胞の共受容体と結合して、ビリオンの膜をT細胞膜と融合させ、ビリオンの遺伝情報を細胞に送り込むことができなくなる。
【0079】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含んでなる。用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体集団から得られるような抗体の特徴を示し、いずれかの特定の方法による抗体の生産を必要とすると解釈されるべきではない。本発明のある実施形態では、モノクローナル抗体は、上記で定義されるVHおよびVLを有する。
【0080】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなる重鎖可変領域(VH)および軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなり、重鎖相補性決定領域(CDRH)は、配列番号15と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH3アミノ酸配列を有し、軽鎖相補性決定領域(CDRL)は、配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL1アミノ酸、配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL2アミノ酸配列および配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRHL3アミノ酸配列を有する。
【0081】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなるVHおよび軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなるVLを含んでなり、重鎖相補性決定領域(CDRH)は、配列番号15で示されるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16で示されるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17で示されるCDRH3アミノ酸配列を有し、軽鎖相補性決定領域(CDRL)は、配列番号18で示されるCDRL1アミノ酸配列、配列番号19で示されるCDRHLアミノ酸配列および配列番号20で示されるCDRHL3アミノ酸配列を有する。
【0082】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなる。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号1で示される可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなる。
【0083】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなる。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号2で示される可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなる。
【0084】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変重鎖領域アミノ酸配列および配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなる。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号1で示される可変重鎖領域アミノ酸配列および配列番号2で示される可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなる。
【0085】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号15と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRH1および配列番号16と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRH2を有し得る。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号15と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRH1および配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRH3を有し得る。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号16と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRH2および配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRH3を有し得る。
【0086】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号15のアミノ酸配列を有するCDRH1および配列番号16のアミノ酸配列を有するCDRH2を有し得る。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号15のアミノ酸配列を有するCDRH1および配列番号17のアミノ酸配列を有するCDRH3を有し得る。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号16のアミノ酸配列を有するCDRH2および配列番号17のアミノ酸配列を有するCDRH3を有し得る。
【0087】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRL1および配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRL2を有し得る。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRL1および配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRL3を有し得る。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRL2および配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一のアミノ酸配列を有するCDRL3を有し得る。
【0088】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号18のアミノ酸配列を有するCDRL1および配列番号19のアミノ酸配列を有するCDRL2を有し得る。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号18のアミノ酸配列を有するCDRL1および配列番号20のアミノ酸配列を有するCDRL3を有し得る。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、配列番号19のアミノ酸配列を有するCDRL2および配列番号20のアミノ酸配列を有するCDRL3を有し得る。
【0089】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、抗原結合フラグメントである。本発明のある実施形態では、抗原結合フラグメントは、上記に定義されるVHおよびVLを有する。本発明のある実施形態では、抗原結合フラグメントは、Fv、Fab、F(ab’)、scFVまたはscFVフラグメントを含んでなる。抗原結合フラグメントのさらなる例としては、限定されるものではないが、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFV)および抗体フラグメントから形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0090】
本発明のある実施形態では、抗体の定常領域は、抗体のin vivo半減期を最適化するために1または2以上のアミノ酸置換を含む。IgG Abの血清半減期は、胎児性Fc受容体(FcRn)により調節される。よって、いくつかの実施形態では、抗体は、FcRnへの結合を増強するアミノ酸置換を含む。いくつかのこのような置換は、IgG定常領域T250QおよびM428L(例えば、Hinton et al, J Immunol, 176:346-356, 2006参照);M428LおよびN434S(「LS」変異、例えば、Zalevsky, et al, Nature Biotechnology, 28:157-159, 2010参照);N434A(例えば、Petkova et al, Int. Immunol, 18:1759-1769, 2006参照);T307A、E380AおよびN434A(例えば、Petkova et al, Int. Immunol, 18:1759-1769, 2006参照);ならびにM252Y、S254TおよびT256E(例えば、Dall'Acqua et al, J. Biol. Chem., 281:23514-23524, 2006参照)における置換など、当業者に公知である。開示される抗体および抗原結合フラグメントは、上記に挙げた置換のいずれかを含むFcポリペプチドに連結することができ、例えば、Fcポリペプチドは、M428LおよびN434S置換を含み得る。よって、本発明のある実施形態では、モノクローナル抗体は、非改変定常ドメインに比べて胎児性Fc受容体への結合を増強する改変を含んでなる組換え定常ドメインを含んでなり、組換え定常ドメインは、M428LおよびN434S変異を含んでなるIgG1 定常ドメインである。
【0091】
本発明のある実施形態では、抗体の定常領域は、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)を最適化するように1または2以上のアミノ酸置換を含む。ADCCは主として、密接に関連する1組のFey受容体により媒介される。いくつかの実施形態では、抗体は、FcyRIIIaへの結合を増強する1または2以上のアミノ酸置換を含む。このようないくつかの置換は、IgG定常領域S239DおよびI332E(例えば、Lazar et al, Proc. Natl, Acad. Sci. U.S.A., 103:4005-4010, 2006参照);ならびにS239D、A330LおよびI332E(例えば、Lazar et al, Proc. Natl, Acad. Sci. U.S.A., 103:4005-4010, 2006参照)における置換など、当業者に公知である。
【0092】
本発明のある実施形態では、上記置換の組合せはまた、FcRnおよびFcyRIIIaへの結合が増強されたIgG定常領域を作出するために含まれる。これらの組合せは、抗体の半減期を延長し、ADCCを増強する。例えば、このような組合せには、Fc領域に以下のアミノ酸置換を有する抗体が含まれる:(1)S239D/I332EおよびT250Q/M428L;(2)S239D/I332EおよびM428L/N434S;(3)S239D/I332EおよびN434A;(4)S239D/I332EおよびT307A/E380A/N434A;(5)S239D/I332EおよびM252Y/S254T/T256E;(6)S239D/A330L/I332Eおよび250Q/M428L;(7)S239D/A330L/I332EおよびM428L/N434S;(8)S239D/A330L/I332EおよびN434A;(9)S239D/A330L/I332EおよびT307A/E380A/N434A;または(10)S239D/A330L/I332EおよびM252Y/S254T/T256E。いくつかの例では、これらの抗体またはそれらの抗原結合フラグメントは、感染細胞に対して直接細胞傷害性を示すように改変され、あるいは、補体、抗体依存性細胞傷害活性(ADCC)またはマクロファージによる貪食作用などの自然防御を使用するように改変される。
【0093】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、gp120結合タンパク質組成物として提供される。ある実施形態では、gp120結合タンパク質組成物は、gp120特異的抗体、抗原結合フラグメント、コンジュゲート、CAR、CAR発現T細胞または本明細書に開示される分子をコードする核酸分子のうち1または2以上を担体中に含む。gp120結合タンパク質組成物は、例えば、HIV-1感染の治療または検出に有用である。gp120結合タンパク質組成物は、対象への投与のために単位投与形態で調製することができる。投与の量および時機は、所望の目的を達成するために治療医の裁量にある。gp120特異的抗体、抗原結合フラグメント、コンジュゲート、CAR、CAR発現T細胞またはそのような分子をコードする核酸分子は全身投与または局所投与用に調合することができる。一例では、gp120特異的抗体、抗原結合フラグメント、コンジュゲート、CAR、CAR発現T細胞またはそのような分子をコードする核酸分子は、静脈内投与などの非経口投与用に調合される。
【0094】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質組成物は、抗体、抗原結合フラグメントまたはそのコンジュゲートを、少なくとも70%(例えば、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%または少なくとも99%)の純度で含んでなる。特定の実施形態では、これらの組成物が含有する高分子夾雑物、例えば、他の哺乳動物(例えば、ヒト)タンパク質は、10%未満(例えば、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、またはなお少ない)である。
【0095】
投与用のgp120結合タンパク質組成物は、水性担体などの薬学上許容可能な担体に溶解させた、gpl20特異的抗体、抗原結合フラグメント、コンジュゲート、CAR、CAR発現T細胞またはそのような分子をコードする核酸分子の溶液を含み得る。例えば緩衝生理食塩水などの様々な水性担体が使用可能である。これらの溶液は無菌であり、一般に望ましくない物質を含まない。これらの組成物は、従来の周知の滅菌技術によって滅菌することができる。これらの組成物は、生理学的条件に近づけるために必要であれば、pH調整剤および緩衝剤、毒性調整剤など、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどの薬学上許容可能な補助物質を含有し得る。これらの調合物中の抗体の濃度は広く変更可能であり、主として、選択される特定の投与様式および対象の必要に応じて液体容量、粘度、体重などに基づいて選択される。
【0096】
静脈内投与用の典型的なgp120結合タンパク質組成物は、1日1対象当たり約0.01~約30mg/kgの抗体もしくは抗原結合フラグメントまたはコンジュゲート(または相当する用量の抗体もしくは抗原結合フラグメントを含むコンジュゲート)を含み得る。投与可能な組成物を調製するための実施の方法は、当業者に公知であるか自明であり、Remington's Pharmaceutical Science, 第22版, Pharmaceutical Press, London, UK (2012)などの刊行物により詳しく記載されている。いくつかの実施形態では、これらの組成物は、1または2以上の抗体、抗原結合フラグメント(例えば、gpl20と特異的に結合する抗体または抗原結合フラグメント)を約0.1mg/mL~約20mg/mL、または約0.5mg/mL~約20mg/mL、または約1mg/mL~約20mg/mL、または約0.1mg/mL~約10mg/mL、または約0.5mg/mL~約10mg/mL、または約1mg/mL~約10mg/mLの濃度範囲で含む液体製剤であり得る。
【0097】
抗体もしくはその抗原結合フラグメントまたはコンジュゲートまたはそのような分子をコードする核酸は、既知の濃度の無菌溶液でも提供されるが、凍結乾燥形態で提供し、使用前に無菌水で再水和することができる。その後、抗体溶液、もしくは抗原結合フラグメントまたはそのような抗体もしくは抗原結合フラグメントをコードする核酸を、0.9%塩化ナトリウム、USPを含有する点滴バッグに添加し、一般には、0.5~15mg/kg体重の用量で投与することができる。1997年にリツキサン(登録商標)が承認されて以来、米国で販売されている抗体薬剤の投与において、当技術分野では豊富な経験を利用できる。抗体、抗原結合フラグメント、コンジュゲートまたはそのような分子をコードする核酸は、静脈内注射やボーラス投与ではなく、緩徐点滴で投与することができる。一例では、高い負荷量を投与し、その後の維持量は低レベルで投与する。例えば、4mg/kgの初回負荷量を約90分かけて点滴し、その後、前回の用量が良好な忍容性を示した場合には、4~8週間にわたり毎週2mg/kgの維持用量を30分かけて点滴する。
【0098】
本発明のある実施形態では、上記に定義されるようなgp120結合タンパク質またはgp120結合タンパク質組成物は、約1、1.25、1.5、2、2.5、3、3.5、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5または10mg/kgの範囲の用量、または治療医によって適当と見なされる他の用量で投与される。本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質またはgp120結合タンパク質組成物は、対象に約0.5~約40mg/kg、例えば、約1~約30、約1~約20、約1~約15、約1~約10、約1~約5、約1~約3、約0.5~約40mg/kg、例えば、約0.5~約30、約0.5~約20、約0.5~約15、約0.5~約10、約0.5~約5、約0.5~約3、約3~約7、約8~約12、約15~約25、約18~約22、約28~約32、約10~約20、約5~約15、または約20~約40mg/kgの用量で投与することができる。本明細書に記載の用量は、限定するものではないが、毎日、毎週、2週間毎、毎月、隔月、3か月毎、4か月毎、5か月毎、6か月毎、9か月毎または12か月毎を含む、本明細書に記載の投与頻度/投与の頻度に従って投与することができる。
【0099】
本発明のある実施形態では、この組合せは、任意の適切な手段によって投与される。1つの実施形態では、この組合せは、非経口的に投与される。この組合せは、注射剤の形態で投与してもよい。本発明のある実施形態では、この組合せは、筋肉内投与される。本発明のある実施形態では、この組合せは、皮下投与される。本発明のある実施形態では、この組合せは、静脈内投与される。
【0100】
本発明のある実施形態では、この組合せは、ヒトに1か月毎に1回、2か月毎に1回または3か月毎に1回投与される。本発明のある実施形態では、この組合せは、1か月毎に1回投与される。本発明のある実施形態では、この組合せは、2か月毎に1回投与される。本発明のある実施形態では、この組合せは、3か月毎に1回投与される。本発明のある実施形態では、この組合せは、6か月毎に1回投与される。
【0101】
本発明のある実施形態では、カボテグラビルおよびgp120結合タンパク質は、ヒトによって自己投与される。用語「自己投与される(self-administered)」とは、本明細書で使用する場合、医療専門家以外の誰かによる投与を意味し、例えば、患者が医薬組成物を自分自身に投与してもよく、または医療専門家以外の他者が医薬組成物を患者に投与してもよい。別の実施形態では、カボテグラビルおよびgp120結合タンパク質は、医療専門家によって投与される。
【0102】
本発明のある実施形態では、gp120結合タンパク質は、広域中和抗体(bNAb)である。HIV-1に対する広域中和抗体は、循環中の高パーセンテージの多くのタイプのHIV-1を中和するという点でHIV-1に対する他の抗体とは異なる。いくつかの実施形態では、HIV-1に対する広域中和抗体は、循環中の高パーセンテージ(例えば、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%)の多くのタイプのHIV-1を中和するという点でHIV-1に対する他の抗体とは異なる。
【0103】
本発明の第2の態様によれば、本発明は、それを必要とするヒトにおいてHIVを治療する方法であって、ヒトに治療上有効な量のカボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩および治療上有効な量のHIV-1を中和するgp120結合タンパク質を併用投与する工程を含んでなる方法を提供する。カボテグラビルは、第1の態様で上記された通りである。gp120結合タンパク質は、第1の態様で上記された通りである。
【0104】
本発明のある実施形態では、この方法は、モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。
【0105】
本発明のある実施形態では、この方法は、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなる重鎖可変領域(VH)および軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなるgp120結合タンパク質であって、重鎖相補性決定領域(CDRH)が、配列番号15と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH3アミノ酸配列を有し、軽鎖相補性決定領域(CDRL)が、配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL1アミノ酸、配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL2アミノ酸配列および配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRHL3アミノ酸配列を有するgp120結合タンパク質を提供する。
【0106】
本発明のある実施形態では、この方法は、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなるVHおよび軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなるVLを含んでなるgp120結合タンパク質であって、重鎖相補性決定領域(CDRH)が、配列番号15で示されるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16で示されるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17で示されるCDRH3アミノ酸配列を有し、軽鎖相補性決定領域(CDRL)が、配列番号18で示されるCDRL1アミノ酸配列、配列番号19で示されるCDRHLアミノ酸配列および配列番号20で示されるCDRHL3アミノ酸配列を有するgp120結合タンパク質を提供する。
【0107】
本発明のある実施形態では、この方法は、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。本発明のある実施形態では、この方法は、配列番号1で示される可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。
【0108】
本発明のある実施形態では、この方法は、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。本発明のある実施形態では、この方法は、配列番号2で示される可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。
【0109】
本発明のある実施形態では、この方法は、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列および配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。
【0110】
本発明のある実施形態では、この方法は、配列番号1で示される可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなるgp120結合タンパク質および配列番号2で示される可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。
【0111】
本発明のある実施形態では、この方法は、抗原結合フラグメントを含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。本発明のある実施形態では、この方法は、Fv、Fab、F(ab’)、scFVまたはscFVフラグメントである抗原結合フラグメントを提供する。
【0112】
本発明のある実施形態では、この方法は、非改変定常ドメインに比べて、胎児性Fc受容体への結合を増強する改変を含んでなる組換え定常ドメインを含んでなるモノクローナル抗体を提供し、この組換え定常ドメインは、M428LおよびN434S変異を含んでなるIgG1定常ドメインである。
【0113】
本発明のある実施形態では、この方法は、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質の併用投与を提供する。本発明のある実施形態では、この方法は、カボテグラビルとgp120結合タンパク質の逐次併用投与を提供する。本発明のある実施形態では、この方法は、カボテグラビルとgp120結合タンパク質の同時併用投与を提供する。本発明のある実施形態では、併用投与は同時ではない。これらの化合物は、異なるスケジュールで投与されてもよいが、所与の治療サイクルで投与することができる。本発明のある実施形態では、化合物の併用投与は、数秒、数分、数時間、数日、数週間または数か月以内に行う。ある実施形態では、併用投与は、任意の適切な手段によって行う。本発明のある実施形態では、この方法は、カボテグラビルおよびgp120結合タンパク質を非経口的に投与することを含んでなる。カボテグラビルおよびgp120結合タンパク質は、注射剤の形態で非経口的に投与され得る。本発明のある実施形態では、各注射剤は独立に、筋肉内投与され得る。本発明のある実施形態では、各注射剤は独立に、皮下投与され得る。本発明のある実施形態では、この方法は、カボテグラビルとgp120結合タンパク質を併用投与することを含んでなり、各注射剤は独立に、静脈内投与され得る。
【0114】
本発明のある実施形態では、この方法は、カボテグラビルおよびgp120結合タンパク質をヒトに1か月毎に1回、2か月毎に1回、3か月毎に1回または6か月毎に1回投与することを含んでなる。
【0115】
本発明の第3の態様によれば、HIVの治療における使用のための、上記のようなカボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質を含んでなる組合せであって、gp120結合タンパク質がHIV-1を中和する、組合せが提供される。
【0116】
本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。
【0117】
本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなる重鎖可変領域(VH)および軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなる軽鎖可変領域(VL)を含んでなるgp120結合タンパク質であって、重鎖相補性決定領域(CDRH)が、配列番号15と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRH3アミノ酸配列を有し、軽鎖相補性決定領域(CDRL)が、配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL1アミノ酸、配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRL2アミノ酸配列および配列番号20と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなるCDRHL3アミノ酸配列を有するgp120結合タンパク質を提供する。
【0118】
本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなるVHおよび軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなるVLを含んでなるgp120結合タンパク質であって、重鎖相補性決定領域(CDRH)が、配列番号15で示されるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16で示されるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17で示されるCDRH3アミノ酸配列を有し、軽鎖相補性決定領域(CDRL)が、配列番号18で示されるCDRL1アミノ酸配列、配列番号19で示されるCDRHLアミノ酸配列および配列番号20で示されるCDRHL3アミノ酸配列を有するgp120結合タンパク質を提供する。
【0119】
本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、配列番号1と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、配列番号1で示される可変重鎖領域アミノ酸配列を含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。
【0120】
本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、配列番号2と少なくとも80%、85%、90%、95%、98%または99%同一の配列を含んでなる可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、配列番号2で示される可変軽鎖領域アミノ酸配列を含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。
【0121】
本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、抗原結合フラグメントを含んでなるgp120結合タンパク質を提供する。本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、Fv、Fab、F(ab’)、scFVまたはscFVフラグメントである抗原結合フラグメントを提供する。
【0122】
本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、非改変定常ドメインに比べて胎児性Fc受容体への結合を増強する改変を含んでなる組換え定常ドメインを含んでなるモノクローナル抗体を提供し、この組換え定常ドメインは、M428LおよびN434S変異を含んでなるIgG1定常ドメインである。
【0123】
本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、逐次に併用投与される組合せを提供する。本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、同時に併用投与される組合せを提供する。本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、非経口的に併用投与される組合せを提供する。
【0124】
本発明のある実施形態では、使用のための組合せは、ヒトに1か月毎に1回、2か月毎に1回、3か月毎に1回または6か月毎に1回併用投与される組合せを提供する。
【0125】
本発明のさらなる態様によれば、本発明は、HIVの治療における使用のための医薬の製造における、本明細書で定義されるようなカボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質の使用を提供する。
【0126】
本発明のさらなる態様によれば、本発明は、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質を含んでなるキットを提供する。1つの実施形態では、キットは、本明細書に開示されるインテグラーゼ鎖転移阻害剤および本明細書に記載されるgp120結合タンパク質を含んでなる。1つの実施形態では、キットは、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質を含んでなり、gp120結合タンパク質は、配列番号15で示されるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16で示されるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17で示されるCDRH3アミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなるVHと、配列番号18で示されるCDRL1アミノ酸配列、配列番号19で示されるCDRHLアミノ酸配列および配列番号20で示されるCDRHL3アミノ酸配列を含んでなる軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなるVLとを含んでなる。1つの実施形態では、キットは、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質を含んでなり、gp120結合タンパク質は、配列番号15で示されるCDRH1アミノ酸配列、配列番号16で示されるCDRH2アミノ酸配列および配列番号17で示されるCDRH3アミノ酸配列を有する重鎖相補性決定領域(CDRH)を含んでなるVHと、配列番号18で示されるCDRL1アミノ酸配列、配列番号19で示されるCDRHLアミノ酸配列および配列番号20で示されるCDRHL3アミノ酸配列を有する軽鎖相補性決定領域(CDRL)を含んでなるVLと、M428LおよびN434S変異を含んでなるIgG1定常ドメインとを含んでなる。1つの実施形態では、キットは、本発明の医薬組成物を含んでなるシリンジおよび使用説明書を含んでなるリーフレットを含んでなる。
【0127】
特定の理論に縛られることを望むものではないが、カボテグラビルまたはその薬学上許容可能な塩およびgp120結合タンパク質の投与は、HIV生活環の2つの異なる部分を標的として妨害すると考えられる。さらに、耐性に対する遺伝的障壁が高い化合物であるカボテグラビルと、耐性に対する遺伝的障壁が低い化合物であるgp120結合分子を投与することで、ウイルスの遺伝コードの変異に起因する治療活性の喪失を低減できると考えられる。
【0128】
以下、限定されない実施例により本発明を説明する。
【実施例
【0129】
実施例1:カボテグラビルの調製
【0130】
【表3】
【0131】
カボテグラビル、マンニトール、ポリソルベート20、PEG 3350および注射用水を配合し、湿式ビーズミルを用いて粉砕した。得られた懸濁液を3mLのUSPタイプIガラスバイアルに充填量1.5mLで充填し、バイアルに栓をして密封した。
【0132】
実施例2:2剤併用
2剤併用におけるN6LSの抗HIV評価
薬剤調製
以下に、カボテグラビルとの2剤併用試験におけるN6LSの抗HIV-1活性および細胞傷害性の評価を示す。N6LSは、当技術分野で記載されている標準的な方法を用いて調製した。原液は表4に記載されているように調製し、アッセイセットアップの各日に室温で解凍し、その日のアッセイで使用する新鮮な検量線用薬剤希釈液を作製した。検量線用希釈液は、異なる日に実施されるその後の実験での再使用のためには保存しなかった。各併用アッセイで、N6LSは20nMの高濃度試験薬と7回の連続半対数希釈を加えて評価した。N6LSの各希釈液を、抗HIV薬カボテグラビルの5つの希釈液と組み合わせて試験した。総ての場合で、最終的なDMSO濃度は0.25%未満であり、この濃度は記載のアッセイで影響を及ぼさないことが事前に示されていた。
【0133】
【表4】
【0134】
MT-4細胞における有効性評価
細胞調製では、MT-4細胞(NIH AIDS Research and Reference Reagent Programから入手)を、抗ウイルスアッセイに使用する前にT-75フラスコで継代培養した。アッセイ前日に、感染時に細胞が指数関数的増殖期にあることを保証するために細胞を1:2に分割した。全細胞と生存率の定量は、血球計数装置とトリパンブルー排除を用いて行った。細胞をアッセイに利用するためには、細胞生存率が95%を超える必要があった。細胞を組織培養培地に再懸濁させ、薬剤含有マイクロタイタープレートに110μLの容量で、5.0×10細胞/ウェルの播種密度で添加した。
【0135】
ウイルスの調製には、CXCR4向性ウイルス株HIV 1NL4-3を用いた。このウイルスはNIH AIDS Research and Reference Reagent Programから入手し、ストックウイルスプールの作製のためにMT-4細胞で増殖させた。各アッセイでは、力価測定済みウイルスアリコートを冷凍庫(-80℃)から取り出し、生物学的安全キャビネット内で室温までゆっくり解凍した。ウイルスを再懸濁させ、組織培養培地で希釈し、50μLの容量で各ウェルに添加したウイルス量は、感染後6日目に85~95%の細胞を障害すると決定された量であった。MT-4細胞での終点滴定によるTCID50の計算では、これらのアッセイの感染多重度は約0.01であることが示された。
【0136】
プレート形式については、チェッカーボードプレート形式を使用して、5つの濃度のカボテグラビルと8つの濃度のN6LSを試験した。併用抗ウイルス効果は、細胞対照ウェル(細胞のみ)およびウイルス対照ウェル(細胞+ウイルス)を含む3つの同一のアッセイプレート(すなわち、3反復測定)で評価した。併用細胞傷害性は、細胞対照ウェルを含む2つの同一のアッセイプレート(すなわち、2反復測定)で並行して評価した。抗ウイルス効果と細胞傷害性は、実験終点でMTS染色によりモニタリングした。
【0137】
細胞生存率のMTSエンドポイントでは、アッセイ終了時に、可溶性テトラゾリウム系色素MTS(CellTiter 96 Reagent、Promega)を各ウェルに添加して細胞生存率を測定し、化合物の毒性を定量化した。MTSは代謝活性の高い細胞のミトコンドリア酵素によって代謝され、可溶性ホルマザン産物を生成するため、細胞生存率と化合物の細胞傷害性の迅速な定量分析を可能とする。この試薬は、使用前に調製する必要のない安定した単一溶液である。アッセイ終了時、HIV細胞保護アッセイのために、1ウェルあたり20μLのMTS試薬を加え、次いでマイクロタイタープレートを37℃、5%COで3~4時間インキュベートし、このインキュベーション間隔は、最適なMTS減少のために実験的に決定された時間に基づいて選択された。蓋の代わりに粘着性プレートシーラーを使用し、密封したプレートを数回反転させて可溶性ホルマザン産物を混合し、Molecular Devices SpectraMax i3プレートリーダーを用いて490/650nmで分光光度的にプレートを読み取った。
【0138】
データ解析
上記のように、HIV-1NL4-3を利用したMT-4細胞を用いて併用抗ウイルスアッセイを実施した。各併用アッセイでは、5つの濃度のカボテグラビルと8つの濃度のN6LSを試験した。3反復を用いて併用抗ウイルス効果を測定し、2反復を用いて未感染のMT-4における併用細胞傷害を測定した。各併用アッセイは3回実施した。
【0139】
薬物併用アッセイデータは、データ解析と統計的評価のためにMacSynergy IIプログラムを用いて、Prichard and Shipman (Antiviral Research 14:181-206 [1990])の方法に従って分析した。簡単に述べれば、MacSynergy IIプログラムは、薬物-薬物相互作用に対する期待される効果のBliss Independence数学的定義に基づいて、薬物の理論的な相加的相互作用を計算する。Bliss Independenceモデルは統計的確率に基づくもので、薬剤が独立にしてウイルス複製に影響を及ぼす働きをすると仮定し、この独立効果モデルはDual-Site(DS)モデルとも呼ばれ、本明細書で報告される総ての併用解析に使用される。
【0140】
理論的相加的相互作用は、別個に使用された各薬剤の用量反応曲線から計算した。この計算された相加的な表面は、予測される相互作用または相加的な相互作用を表し、次に非相加的な活性の領域を明らかにするために、実験的に決定された用量反応表面から計算された相加的な表面を差し引いた。結果として得られた表面は、相互作用が単に相加的であった場合、計算された阻害率0%の水平面として現れる。この相加平面より上にピークがあれば、相乗作用を示す。同様に、相加平面より下に窪みがあれば拮抗作用を示す。実験的な用量反応表面の周りの95%信頼区間を用いてデータを統計的に評価し、ピーク/窪みの体積を計算し、生じた相乗作用/拮抗作用の体積を定量化した。相乗作用のプロットで観察されたピークの体積(濃度×パーセントの単位;例えば、μM%、nM%、nMμM%など)は、プログラムによって計算した。このピーク体積は、3次元用量反応曲面下の面積の3次元的な対応物であり、相乗作用または拮抗作用の定量的尺度である。これらの研究では、相乗作用は50を超える相乗体積をもたらす薬剤の組合せとして定義される。やや相乗的な活性および高い相乗的な活性は、それぞれ50~100および100を超える相乗体積をもたらすものとして実施上定義されている。相加的な薬物相互作用は-50~50の範囲の相乗体積を示し、-50~-100の間の相乗体積はやや拮抗的であり、-100未満は高い拮抗作用があると考えられる。
【0141】
結果
表5は、MT-4におけるHIV-1NL4-3に対するN6LSの抗ウイルス試験の結果をまとめたものである。表5にまとめられるように、本試験のN6LSとカボテグラビルの併用は、主として相乗的または相加的な相互作用をもたらした。
【0142】
【表5】
【0143】
配列表
添付の配列表に記載されている核酸配列およびアミノ酸配列は、37C.F.R. 1.822に定義されているように、ヌクレオチド塩基については標準的な文字略号、アミノ酸については3文字のコードを用いて示される。各核酸配列の一方の鎖のみが示されているが、表示されているいずれの鎖にも相補鎖が含まれると理解される。
【0144】
【表6】
【配列表】
2024500322000001.app
【国際調査報告】