(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】固形腫瘍を治療するためのKRASG12C阻害剤及びEGFR阻害剤を含む方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/517 20060101AFI20231226BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20231226BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20231226BHJP
A61K 31/5355 20060101ALI20231226BHJP
A61K 31/506 20060101ALI20231226BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20231226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K31/517
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K9/20
A61K9/48
A61K31/5355
A61K31/506
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P11/00
A61P1/00
A61P1/18
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534595
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 US2021061980
(87)【国際公開番号】W WO2022125427
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】エヴァンジェリスタ, マリー
(72)【発明者】
【氏名】マーチャント, マーク アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】シュッツマン, ジェニファー リー
(72)【発明者】
【氏名】リン, ティン-クン マーク
(72)【発明者】
【氏名】チョ, ステファニー ロイヤー
(72)【発明者】
【氏名】マンドルカール, サンディハ ヴィナイアーク
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC15
4C076CC16
4C076CC27
4C076CC46
4C076FF70
4C084AA19
4C084MA02
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4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
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4C085GG02
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4C086AA01
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4C086BC46
4C086BC73
4C086GA02
4C086GA07
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4C086GA14
4C086MA02
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4C086MA37
4C086MA52
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA59
4C086ZA66
4C086ZB26
4C086ZC75
(57)【要約】
KRas
G12C阻害剤(例えば、化合物1)及びEGFR阻害剤を含む併用療法、並びにかかる併用療法を使用する方法が本明細書において提供される
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)EGFR阻害剤と
を含む、併用療法。
【請求項2】
化合物1がそのアジピン酸塩である、請求項1に記載の併用療法。
【請求項3】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される、請求項1又は2に記載の併用療法。
【請求項4】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、錠剤又はカプセル剤として経口投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項5】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約50mg~500mgの量で投与される、請求項1~4のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項6】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、又は800mgの量で投与される、請求項1~5のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項7】
前記EGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ若しくはアファチニブ、又は抗EGFR抗体である、請求項1~6のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項8】
前記EGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、又はアファチニブである、請求項1~7のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項9】
前記EGFR阻害剤がエルロチニブである、請求項1~8のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項10】
エルロチニブが、前記第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される、請求項9に記載の併用療法。
【請求項11】
前記EGFR阻害剤が、約100mg又は150mg QDの量で投与されるエルロチニブである、請求項1~10のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項12】
エルロチニブが約100mg QDの量で投与される、請求項11に記載の併用療法。
【請求項13】
エルロチニブが約150mg QDの量で投与される、請求項11に記載の併用療法。
【請求項14】
前記EGFR阻害剤が、パニツムマブ又はセツキシマブを含む抗EGFR抗体である、請求項1~7のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項15】
前記EGFR阻害剤がセツキシマブである、請求項1~7又は14のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項16】
前記EGFR阻害剤が、前記第1の21日サイクルの1日目に開始するQ1Wで投与されるセツキシマブである、請求項1~7又は14~15のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項17】
前記EGFR阻害剤が、前記21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、その後に約250mg/m2 Q1Wの量で投与されるセツキシマブである、請求項1~7又は14~16のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項18】
KRas
G12C変異を含む肺がんの治療における使用のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項19】
前記肺がんが非小細胞肺癌(NSCLC)である、請求項18に記載の併用療法。
【請求項20】
KRas
G12C変異を含む膵臓がんの治療における使用のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項21】
KRas
G12C変異を含む結腸直腸がん(CRC)の治療における使用のための、請求項1~7又は14~17のいずれか一項に記載の併用療法。
【請求項22】
(a)第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)前記第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与されるエルロチニブと
を含む、併用療法。
【請求項23】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が約50mg~500mgの量で投与され、エルロチニブが約100mg又は150mgの量で投与される、請求項22に記載の併用療法。
【請求項24】
KRas
G12C変異を含む肺がんの治療における使用のための、請求項22又は23に記載の併用療法。
【請求項25】
KRas
G12C変異を含む膵臓がんの治療における使用のための、請求項22又は23に記載の併用療法。
【請求項26】
(a)第1の21日サイクル1~21日目にQDで投与される化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)前記第1の21日サイクルの1日目に開始するQ1Wで投与されるセツキシマブと
を含む、併用療法。
【請求項27】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が約50mg~500mgの量で投与され、セツキシマブが、前記21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、その後に約250mg/m2 Q1Wの量で投与される、請求項26に記載の併用療法。
【請求項28】
KRas
G12C変異によって媒介される肺がんを有する患者におけるそのような肺がんを治療する方法であって、
(a)第1の21日サイクル1~21日目にQDで投与される化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)EGFR阻害剤と
を含む、有効量の併用療法を投与することを含む、方法。
【請求項29】
前記肺がんがNSCLCである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記肺がんが、腺癌、扁平上皮肺癌、又は大細胞肺癌である、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記EGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、又はアファチニブである、請求項28~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記EGFR阻害剤がエルロチニブである、請求項28~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記EGFR阻害剤が、前記第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与されるエルロチニブである、請求項28~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記EGFR阻害剤が、約150mg QDの量で投与されるエルロチニブである、請求項28~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
結腸直腸がん(CRC)を有する患者における、KRas
G12C変異によって媒介されるCRCを治療する方法であって、
(a)第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)EGFR阻害剤と
を含む、有効量の併用療法を投与することを含む、方法。
【請求項36】
前記EGFR阻害剤が、パニツムマブ又はセツキシマブを含む抗EGFR抗体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記EGFR阻害剤がセツキシマブである、請求項35又は36に記載の方法。
【請求項38】
前記EGFR阻害剤が、前記21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、その後に約250mg/m2 Q1Wの量で投与されるセツキシマブである、請求項35~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
KRas
G12C変異によって媒介される膵臓がんを有する患者における、そのような膵臓がんを治療する方法であって、
(a)第1の21日サイクル1~21日目にQDで投与される化合物1
又はその薬学的に許容され得る塩と
(b)EGFR阻害剤と、
を含む、有効量の併用療法を投与することを含む、方法。
【請求項40】
前記EGFR阻害剤がエルロチニブである、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記EGFR阻害剤が、前記第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与されるエルロチニブである、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
前記EGFR阻害剤が、約100mg QDの量で投与されるエルロチニブである、請求項39~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
化合物1がそのアジピン酸塩である、請求項28~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、錠剤又はカプセル剤として経口投与される、請求項28~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約50mg~500mgの量で投与される、請求項28~44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、又は800mgの量で投与される、請求項28~45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記患者が、感受性EGFR変異、ALK再構成、ROS1再構成、BRAF V600E変異、NTRK融合、及びRET融合、又はそれらの組合せからなる群から選択される変異を有しないと診断される、請求項28~46のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
本明細書に記載の肺がん、CRC、又は膵臓がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とEGFR阻害剤とを含む、併用療法の使用。
【請求項49】
前記がんが肺がん又は膵臓がんであり、前記EGFR阻害剤がエルロチニブであり、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)エルロチニブを前記第1の21日サイクルの1~21日目に投与することと、を含む投薬レジメンを更に含む、請求項48に記載の使用。
【請求項50】
前記がんがCRCであり、前記EGFR阻害剤がセツキシマブであり、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)前記21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、その後に約250mg/m2 Q1Wの量で投与することと、を含む投薬レジメンを更に含む、請求項48に記載の使用。
【請求項51】
肺がん、CRC又は膵臓がんを治療するための医薬の製造のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤とを含む、併用療法の使用。
【請求項52】
前記がんが肺がん又は膵臓がんであり、前記EGFR阻害剤がエルロチニブであり、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)エルロチニブを前記第1の21日サイクルの1~21日目に投与することと、を含む投薬レジメンを更に含む、請求項51に記載の使用。
【請求項53】
前記がんがCRCであり、前記EGFR阻害剤がセツキシマブであり、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)前記21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、その後に約250mg/m2 Q1Wの量で投与することと、を含む投薬レジメンを更に含む、請求項51に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年12月8日に出願された米国仮特許出願第63/122,702号の利益を主張し、その全体があらゆる目的のために本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
KRasG12C阻害剤(例えば、化合物1)及びEGFR阻害剤を含む併用療法、並びにそのような併用療法を使用する方法が本明細書において提供される。
【背景技術】
【0003】
カーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(KRAS)は、細胞の増殖、分化、及び生存を調節するために細胞外増殖因子シグナルを伝達するタンパク質の細胞内ネットワークであるRAS/MAPKシグナル伝達経路の中心的構成要素である。KRASにおける変異は、固形腫瘍に一般的に見られ、腫瘍形成及び攻撃的な腫瘍成長に関連するグリシン12(G12)、グリシン13及びグルタミン61を含むいくつかのアミノ酸に変化をもたらし得る(Der et al.Proc Natl Acad Sci U S A 1982;79:3637-40;Parada et al.Nature 1982;297:474-8;Santos et al.Nature 1982;298:343-7;Taparowsky et al.Nature 1982;300:762-5;Capon et al.Nature 1983;304:507-13)。G12からシステイン(G12C)への変化をもたらす発癌性KRAS変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)(約12%)、結腸直腸がん(CRC)(約4%)、及び他の腫瘍型(≦4%)で一般的である(Bailey et al.Nature 2016;531:47-52;Campbell et al.Nat Genet 2016;48:607-16;Giannakis et al.Cell Reports 2016;15:857-65;Hartmaier et al.Genome Med 2017;9(16);Jordan et al.Cancer Discov 2017;7:596-609)。
【0004】
例えば、肺がん(例えば、NSCLC)、CRC及び膵臓がんを含む、KRasG12C変異を持つ進行期腫瘍(以下、KRasG12C陽性腫瘍と呼ぶ)は不治であり、予後不良である(Roman et al.Mol Cancer 2018;17:33;Wan et al.World J Gastroenterol 2019;25:808-23)。更に、進行期KRasG12C陽性がんを有する患者は、選択された化学療法及び標的化療法から得られる利益が限られている可能性があり、したがって有効な利用可能な治療選択肢が制限される(Roman et al.2018)。
【0005】
したがって、KRasG12C変異を持つ肺がん、結腸直腸がん、及び膵臓がん等のがんを治療するための有効な療法及び併用療法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本明細書では、当技術分野におけるこれら及び他の課題に対する解決策が提供される。
【0007】
一態様では、本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤とを含む併用療法が本明細書で提供される。一実施形態において、EGFR阻害剤は、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ若しくはアファチニブ、又は抗EGFR抗体である。一実施形態において、EGFR阻害剤は、エルロチニブ又はセツキシマブである。
【0008】
別の態様において、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与されるエルロチニブとを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0009】
別の態様において、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、第1の21日サイクルの1日目に開始するQ1Wで投与されるセツキシマブとを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0010】
別の態様において、KRasG12C変異によって媒介される肺がんを有する患者における、そのような肺がんを治療する方法であって、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される本明細書に記載の化合物1又は薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤とを含む、有効量の併用療法を投与することを含む方法が本明細書で提供される。一実施形態において、肺がんはNSCLCである。
【0011】
別の態様において、結腸直腸がん(CRC)を有する患者における、KRasG12C変異によって媒介されるCRCを治療する方法であって、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤とを含む、有効量の併用療法を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0012】
別の態様では、KRasG12C変異によって媒介される膵臓がんを有する患者における、そのような膵臓がんを治療する方法であって、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤とを含む、有効量の併用療法を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0013】
別の態様では、本明細書に記載の肺がん、CRC、又は膵臓がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤とを含む併用療法の使用が本明細書で提供される。
【0014】
別の態様では、肺がん、CRC又は膵臓がんの治療のための医薬の製造のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤とを含む併用療法の使用が本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、ヌードマウスにおけるNCI-H2122 NSCLC腫瘍異種移植片において、単独で又は組み合わせて投薬された化合物1及びエルロチニブの効果を示す。ビヒクル=0.5%(w/v)メチルセルロース;0.5%(w/v)メチルセルロース、0.2%Tween 80(商標)。21日間にわたり単独で又は組み合わせてQDで投薬された化合物1又はエルロチニブの経口投与後の群適合腫瘍体積を示す。用量レベルは、遊離塩基当量として表される。
【0016】
【
図2】
図2は、ヌードマウスにおけるNCI-H2122 NSCLC異種移植片において、単独又は組み合わせて投薬された化合物1及びエルロチニブによる治療後の個体の体重を示す。QD=1日1回(21回)。ビヒクル=0.5%(w/v)メチルセルロース(150μL)、0.5%(w/v)メチルセルロース/0.2%Tween 80(商標)(100μL)
【0017】
【
図3】
図3は、ヌードマウスにおけるCR6256結腸直腸患者由来異種移植モデルにおいて、単独で又は組み合わせて投薬された化合物1及びセツキシマブの効果を示す。ビヒクル=0.5%(w/v)メチルセルロース;0.5%(w/v)メチルセルロース、0.2%Tween 80(商標)。21日間にわたり単独で又は組み合わせてPO、QDで投薬された化合物1、又はIP、BIWで投薬されたセツキシマブの経口投与後の群適合腫瘍体積を示す。用量レベルは、遊塩基当量として表される。
【0018】
【
図4】
図4は、ヌードマウスにおけるCR5048結腸直腸患者由来異種移植モデルにおいて、単独で又は組み合わせて投薬された化合物1及びセツキシマブの効果を示す。ビヒクル=0.5%(w/v)メチルセルロース;0.5%(w/v)メチルセルロース、0.2%Tween 80(商標)。21日間にわたり単独で又は組み合わせてPO、QDで投薬された化合物1、又はIP、BIWで投薬されたセツキシマブの経口投与後の群適合腫瘍体積を示す。用量レベルは、遊離塩基当量として表される。
【0019】
【
図5】
図5は、ヌードマウスにおけるCR6243結腸直腸患者由来異種移植モデルにおいて、単独で又は組み合わせて投薬された化合物1及びセツキシマブの効果を示す。ビヒクル=0.5%(w/v)メチルセルロース;0.5%(w/v)メチルセルロース、0.2%Tween 80(商標)。21日間にわたり単独で又は組み合わせてPO、QDで投薬された化合物1、又はIP、BIWで投薬されたセツキシマブの経口投与後の群適合腫瘍体積を示す。用量レベルは、遊離塩基当量として表される。
【0020】
【
図6】
図6は、ヌードマウスにおけるCR6927結腸直腸患者由来異種移植モデルにおいて、単独で又は組み合わせて投薬された化合物1及びセツキシマブの効果を示す。ビヒクル=0.5%(w/v)メチルセルロース;0.5%(w/v)メチルセルロース、0.2%Tween 80(商標)。21日間にわたり単独で又は組み合わせてPO、QDで投薬された化合物1、又はIP、BIWで投薬されたセツキシマブの経口投与後の群適合腫瘍体積を示す。用量レベルは、遊離塩基当量として表される。
【0021】
【
図7】
図7は、ヌードマウスにおけるCR2528結腸直腸患者由来異種移植モデルにおいて、単独で又は組み合わせて投薬された化合物1及びセツキシマブの効果を示す。ビヒクル=0.5%(w/v)メチルセルロース;0.5%(w/v)メチルセルロース、0.2%Tween 80(商標)。21日間にわたり単独で又は組み合わせてPO、QDで投薬された化合物1、又はIP、BIWで投薬されたセツキシマブの経口投与後の群適合腫瘍体積を示す。用量レベルは、遊離塩基当量として表される。
【0022】
【
図8】
図8は、ヌードマウスにおけるCR1451結腸直腸患者由来異種移植モデルにおいて、単独で又は組み合わせて投薬された化合物1及びセツキシマブの効果を示す。ビヒクル=0.5%(w/v)メチルセルロース;0.5%(w/v)メチルセルロース、0.2%Tween 80(商標)。21日間にわたり単独で又は組み合わせてPO、QDで投薬された化合物1、又はIP、BIWで投薬されたセツキシマブの経口投与後の群適合腫瘍体積を示す。用量レベルは、遊離塩基当量として表される。
【発明を実施するための形態】
【0023】
定義
特に定義されていない限り、本明細書で用いられる全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解される意味と同じ意味を有する。例えば、Singleton et al.,DICTIONARY OF MICROBIOLOGY AND MOLECULAR BIOLOGY 2nd ed.,J.Wiley&Sons(New York,NY 1994);Sambrook et al.,MOLECULAR CLONING,A LABORATORY MANUAL,Cold Springs Harbor Press(Cold Springs Harbor,NY 1989)を参照されたい。本発明の実施においては、本明細書に記載されるものと類似した又は同等の任意の方法、装置、及び材料を使用することができる。
【0024】
以下の定義は、本明細書で頻繁に用いられる特定の用語の理解を容易にするために提供されており、本開示の範囲を限定することを意味するものではない。本明細書で言及されている全ての参照文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【0025】
本明細書で使用される場合、特に明記されていない限り、「約」及び「およそ」という用語は、組成物又は剤形の成分の用量、量、又は重量パーセントを指すときには、指定された用量、量、又は重量パーセントから得られるものと同等の薬理的効果を提供するために、当業者によって認識される用量、量、又は重量パーセントを意味する。等価用量、量、又は重量パーセントは、指定された用量、量、又は重量パーセントの30%、20%、15%、10%、5%、1%、又はそれ未満の範囲内であり得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「KRasG12C阻害剤」は、残基12に対応する位置にGlyからCysへの変異を含む変異KRasタンパク質に特異的に結合する共有結合阻害剤を指す。
【0027】
「化合物1」は、構造:
を有し、化学名1-((S)-4-((R)-7-(6-アミノ-4-メチル-3-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)-6-クロロ-8-フルオロ-2-(((S)-1-メチルピロリジン-2-イル)メトキシ)キナゾリン-4-イル)-3-メチルピペラジン-1-イル)プロパ-2-エン-1-オンを有する。一実施形態において、化合物1はアジピン酸塩である。
【0028】
「エルロチニブ」は、構造:
を有し、化学名:N-(3-エチニルフェニル)-6,7-ビス(2-メトキシエトキシ)-4-キナゾリンアミンを有する。一実施形態において、エルロチニブは、TARCEVA(登録商標)の商品名で市販されている。
【0029】
「ゲフィチニブ」は、構造:
を有し、化学名:4-キナゾリンアミンN-(3-クロロ-4-フルオロフェニル)-7-メトキシ-6-[3-(4-モルホリニル)プロポキシ]を有する。一実施形態において、ゲフィチニブは、IRESSA(登録商標)の商品名で市販されている。
【0030】
「オシメルチニブ」は、構造:
を有し、化学名:N-(2-{2-ジメチルアミノエチル-メチルアミノ}-4-メトキシ-5-{[4-(1-メチルインドール-3-イル)ピリミジン-2-イル]アミノ}フェニル)プロパ-2-エンアミドメシレート塩を有する。一実施形態において、オシメルチニブは、TAGRISSO(登録商標)の商品名で市販されている。
【0031】
「アファチニブ」は、構造:
を有し、化学名:2-ブテンアミド、N-[4-[(3-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-[[(3S)-テトラヒドロ-3-フラニル]オキシ]-6-キナゾリニル]-4-(ジメチルアミノ)-,(2E)-,(2Z)-2-ブテンジオエート(1:2)を有する。一実施形態において、アファチニブは、GILOTRIF(登録商標)の商品名で市販されている。
【0032】
「ダコミチニブ」は、構造:
を有し、化学名:(2E)-N-{4-[(3-クロロ-4-フルオロフェニル)アミノ]-7-メトキシキナゾリン-6-イル}-4-(ピペリジン-1-イル)ブタ-2-エンアミド一水和物を有する。一実施形態において、ダコミチニブは、VIZIMPRO(登録商標)の商品名で市販されている。
【0033】
「薬学的に許容され得る」という用語は、動物、例えばヒトに適切に投与された場合に、副作用、アレルギー反応、又は他の副反応を生み出さない、分子実体及び組成を指す。
【0034】
本発明の化合物は、薬学的に許容され得る塩等の塩の形態であってもよい。「薬学的に許容され得る塩」は、酸付加塩と塩基付加塩の両方を含む。「薬学的に許容され得る酸付加塩」とは、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、炭酸、リン酸等の無機酸と共に形成される、遊離塩基の生物学的有効性及び性質を保持し、かつ生物学的又は別様において望ましい塩を意味し、有機酸は、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、リンゴ酸、マレイン酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、アスパラギン酸、アスコルビン酸、グルタミン酸、アントラニル酸、安息香酸、ケイ皮酸、マンデル酸、エンボニン酸、フェニル酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、サリチル酸等の有機酸の脂肪族、脂環式、芳香族、芳香脂肪族、複素環式、カルボン酸、及びスルホン酸の部類から選択され得る。一実施形態において、塩はアジピン酸で形成される。
【0035】
「薬学的に許容され得る塩基付加塩」としては、ナトリウム、カリウム、リチウム、アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛、銅、マンガン、アルミニウムの塩等の無機塩基に由来する塩が挙げられる。具体的な塩基付加塩は、アンモニウム塩、カリウム塩、ナトリウム塩、カルシウム塩、及びマグネシウム塩である。薬学的に許容され得る有機無毒性塩基に由来する塩としては、一級、二級、及び三級アミン、天然に存在する置換アミン、環式アミン、及び塩基性イオン交換樹脂を含む置換アミン、例えばイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、エタノールアミン、2-ジエチルアミノエタノール、トロメタミン、ジシクロヘキシルアミン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、カフェイン、プロカイン、ヒドラバミン、コリン、ベタイン、エチレンジアミン、グルコサミン、メチルグルカミン、テオブロミン、プリン、ピペラジン、ピペリジン、N-エチルピペリジン、ポリアミン樹脂等の塩が挙げられる。具体的な有機無毒性塩基としては、イソプロピルアミン、ジエチルアミン、エタノールアミン、トロメタミン、ジシクロヘキシルアミン、コリン、及びカフェインが挙げられる。
【0036】
いくつかの実施形態では、塩は、塩酸塩、臭化水素酸塩、トリフルオロ酢酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、乳酸塩、クエン酸塩、ピルビン酸塩、コハク酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、重硫酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、マロン酸塩、キシナホ酸塩、アスコルビン酸塩、オレイン酸塩、ニコチン酸塩、サッカリン酸塩、アジピン酸塩、ギ酸塩、グリコール酸塩、パルミチン酸塩、L-乳酸塩、D-乳酸塩、アスパラギン酸塩、リンゴ酸塩、L-酒石酸塩、D-酒石酸塩、ステアリン酸塩、フロ酸塩(例えば、2-フロ酸塩又は3-フロ酸塩)、ナパジシル酸塩(ナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩、又はナフタレン-1(スルホン酸)-5-スルホン酸塩)、エジシル酸塩(エタン-1,2-ジスルホン酸塩、又はエタン-1-(スルホン酸)-2-スルホン酸塩)、イソチオン酸塩(2-ヒドロキシエチルスルホン酸塩)、2-メシチレンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、2,5-ジクロロベンゼンスルホン酸塩、D-マンデル酸塩、L-マンデル酸塩、ケイ皮酸塩、安息香酸塩、アジピン酸塩、エシル酸塩、マロン酸塩、メシチル酸塩(2-メシチレンスルホン酸塩)、ナプシル酸塩(2-ナフタレンスルホン酸塩)、カンシル酸塩(カンファー10-スルホン酸塩、例えば(1S)-(+)-10-カンファー-スルホン酸塩)、グルタミン酸塩、グルタル酸塩、馬尿酸(2-(ベンゾイルアミノ)酢酸塩)、オロチン酸塩、キシル酸塩(p-キシレン-2-スルホン酸塩)、及びパモ酸塩(2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ジナフチルメタン-3,3’-ジカルボン酸塩)から選択される。
【0037】
「阻害する」及び「低減/減少させる」という用語、又はこれらの用語のあらゆる変形は、所望の結果を達成するための、測定可能なあらゆる低減/減少又は完全な阻害を含む。例えば、約、最大で約、又は少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、又はそれ以上、又はこれらの任意の範囲変数の減少、通常と比較しての活性の低下が存在し得る。
【0038】
「EGFRアンタゴニスト」、「EGFR阻害剤」、又は「EGFR特異的アンタゴニスト」という用語は、本明細書では互換的に使用され、EGFRに結合し、EGFR発現レベルを低下させ、又はEGFRの生物学的活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減、若しくは干渉することができる分子を指す。本発明の方法において有用なEGFR特異的アンタゴニストとしては、本明細書に提供される化合物と並んで、EGFRに特異的に結合するポリペプチド、抗EGFR抗体及びその抗原結合断片、並びにEGFRに特異的に結合し、それにより、1つ以上の受容体又はリガンドに対するその結合を封じる分子及び誘導体が含まれる。EGFR特異的アンタゴニストとしてはまた、EGFRポリペプチドのアンタゴニストバリアント、EGFRポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも断片に相補的なアンチセンス核酸塩基オリゴマー、EGFRポリペプチドをコードする核酸分子の少なくとも断片に相補的な低分子RNA、EGFRを標的とするリボザイム、EGFRに対するペプチボディ、及びEGFRアプタマーが挙げられる。したがって、「EGFR活性」という用語は、具体的には、EGFRのEGFR媒介性生物学的活性を含む。特定の実施形態では、EGFRアンタゴニストは、EGFRの発現レベル又は生物学的活性を、少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%以上低減させる、又は阻害する。
【0039】
「抗EGFR抗体」は、本明細書で定義されるEGFR阻害剤であり、十分な親和性及び特異性でEGFRに結合する抗体である。特定の実施形態では、抗体は、EGFRに対して十分に高い結合親和性を有し、例えば、抗体は、100nM~1pMのKd値でhEGFRに結合し得る。抗体親和性は、例えば、表面プラズモン共鳴系アッセイ(PCT出願公開第WO2005/012359号に記載されているようなBIAcore(登録商標)アッセイ等)、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、及び競合アッセイ(例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA))によって決定され得る。
【0040】
特定の実施形態では、EGFR阻害剤(例えば、本明細書に記載の化合物、又は本明細書に記載の抗EGFR抗体)は、EGFR活性が関与する疾患又は症状を標的とし、かつそれを妨害する際に治療剤として使用され得る。また、EGFR阻害剤は、例えば治療薬としてのその有効性を評価するために、他の生物学的活性アッセイに供され得る。そのようなアッセイは当技術分野で公知であり、抗EGFR抗体の場合、標的抗原及び抗体の意図する用途に依存する。一実施形態において、抗EGFR抗体はモノクローナル抗体である。別の実施形態では、抗EGFR抗体は、組換えヒト化抗EGFRモノクローナル抗体である。
【0041】
本明細書で使用される場合、「セツキシマブ」は、ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)の細胞外ドメインに特異的に結合する組換えヒト/マウスキメラモノクローナル抗体である。セツキシマブは、ヒトIgG1重鎖定常領域及びカッパ軽鎖定常領域を有するマウス抗EGFR抗体のFv領域で構成され、152kDaのおおよその分子量を有する。セツキシマブは、哺乳動物(マウス骨髄腫)細胞培養において産生される。一実施形態において、セツキシマブは、ERBITUX(登録商標)の商品名で市販されている。
【0042】
本明細書で使用される場合、「パニツムマブ」は、遺伝子操作された哺乳動物(チャイニーズハムスター卵巣)細胞で産生される、おおよその分子量が147kDaのヒトIgG2カッパモノクローナル抗体を指す。パニツムマブは、正常細胞及び腫瘍細胞の両方のEGFRに特異的に結合し、EGFRに対するリガンドの結合を競合的に阻害する。一実施形態において、パニツムマブは、VECTIBIX(登録商標)の商品名で市販されている。
【0043】
「がん」という用語は、身体の一部における異常細胞の制御されない分裂によって引き起こされる疾患を指す。一実施形態において、がんは肺がんである。別の実施形態では、がんはNSCLCである。別の実施形態では、がんは結腸直腸がん(例えば、転移性CRC)である。別の実施形態では、がんは膵臓がんである。本明細書で使用される場合、「がん」は、KRasG12C変異を有することを特徴とするがんを指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「治療すること」は、有効量の治療剤(例えば、EGFR阻害剤又は化合物1)又は治療剤の組合せ(例えば、EGFR阻害剤及び化合物1)による治療を含む。一実施形態において、治療することは、有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩、及びエルロチニブによる治療を示す。一実施形態において、治療することは、有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩、及びセツキシマブによる治療を示す。治療は、第一選択治療(例えば、患者は以前に治療されていない可能性がある、又は事前の全身療法を受けたことがない)又は第二選択治療若しくはそれ以降の治療であり得る。例えば、患者は、がん性細胞の増殖の低減(又は破壊)、疾患に起因する症候の軽減、疾患に罹患している者の生活の質の向上、疾患の治療に必要な他の薬物療法の用量の低減、及び/又は患者の生存期間の延長を含むが、これらに限定されない、本明細書に記載のがんに関連する1つ以上の症候が軽減又は排除された場合、「治療」に成功する。
【0045】
疾患の「進行の遅延」という用語は、本明細書に記載のがんの発症を先延ばしにする、妨げる、遅延させる、遅らせる、安定化する、及び/又は延期することを指す。この遅延は、治療されている本明細書に記載のがん及び/又は患者の病歴に応じて、様々な時間長であり得る。当業者には明らかであるように、十分又は有意な遅延は、患者ががんを発症しないという点で予防を事実上包含し得る。
【0046】
本明細書において、「有効量」は、治療結果を達成する本明細書に記載の治療剤(例えば、EGFR阻害剤及び/又は化合物1)の量を指す。いくつかの例では、治療剤又は治療剤の組合せの有効量は、本明細書で提供される臨床エンドポイントを達成する薬剤又は薬剤の組合せの量である。一実施形態において、有効量は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の量及びエルロチニブの量を指す。一実施形態において、有効量は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の量及びセツキシマブの量を指す。本明細書における有効量は、患者の疾患状態、年齢、性別、及び体重、並びに患者における所望の応答を誘発する薬剤の能力等の要因に応じて異なり得る。有効量は、治療上有益な作用が治療の何らかの毒性作用又は有害作用を上回るものでもある。いくつかの実施形態において、有効量の薬物は、がん細胞の数を減少させ、腫瘍サイズを低減させ、がん細胞の末梢器官への浸潤を阻害し(すなわち、遅らせるか、又は停止し)、腫瘍転移を阻害し(すなわち、遅らせるか、又は停止し)、腫瘍成長を阻害し(すなわち、遅らせるか、又は停止し)、及び/又は疾患に関連する症候のうちの1つ以上を軽減する効果を有し得る。有効量を1回以上の投与で投与することができる。本明細書に記載の薬物、化合物、薬学的組成物、又は併用療法の有効量は、直接的又は間接的に治療的治療を達成するのに十分な量であり得る。
【0047】
「客観的奏効率」又は「ORR」とは、RECIST v1.1に従って治験責任医師が決定して、≧4週間離れた2回の連続した機会における、完全奏効又は部分奏効が確認された患者の割合を指す。
【0048】
「奏効期間」又は「DOR」とは、記録された客観的応答の最初の発生から、RECIST v1.1に従って治験責任医師が決定した疾患の進行、又は何らかの原因による死亡のうち、いずれか早い方の日付までの時間を指す。
【0049】
「無増悪生存」又は「PFS」とは、登録から、RECIST v1.1を使用して治験責任医師が決定した、最初の記録された疾患の進行の発生又は何らかの原因による死亡のうち、いずれか早い方の日付までの時間を指す。
【0050】
本明細書で使用される場合、「完全奏効」及び「CR」は、全ての標的病変の消失及び(該当する場合)腫瘍マーカーレベルの正常化を指す。
【0051】
本明細書で使用される場合、「部分奏効」及び「PR」は、1つ以上の非-標的病変の持続及び/又は(適用可能な場合)腫瘍マーカーレベルの正常限界を超える維持を指す。PRはまた、CR、新しい病変、及び非標的病変における明白な進行の不存在下での標的病変の直径の合計の≧30%の減少も指す場合がある。
【0052】
「投与期間」又は「サイクル」とは、本明細書に記載の1つ以上の薬剤(例えば、化合物1及びEGFR阻害剤)の投与を含む期間、及び本明細書に記載の1つ以上の薬剤の投与を含まない任意の期間を指す。例えば、サイクルは合計21日間とすることができ、サイクルの各日に本明細書に記載の1つ以上の薬剤(例えば、化合物1及びEGFR阻害剤)の投与を含む。別の例では、サイクルは合計28日間とすることができ、21日間及び7日間の休薬期間にわたる本明細書に記載の1つ以上の薬剤(例えば、化合物1及びEGFR阻害剤)の投与を含む。「休薬期間」は、本明細書に記載の薬剤の少なくとも1つ(すなわち、化合物1及びEGFR阻害剤)が投与されない期間を指す。一実施形態において、休薬期間は、本明細書に記載の薬剤(すなわち、化合物1及びEGFR阻害剤)のいずれも投与されない期間を指す。本明細書で提供される休薬期間は、場合によっては、化合物1又はEGFR阻害剤ではない別の薬剤の投与を含むことができる。このような場合、休薬期間中の別の薬剤の投与は、本明細書に記載の薬剤の投与の妨害になったり、不利益を与えたりすべきではない。一例では、本明細書で使用されるサイクルは、休薬期間のない21日間のサイクルを指す。
【0053】
「投薬レジメン」とは、1回以上のサイクルを含む、本明細書に記載の薬剤の投与期間を指し、各サイクルは、本明細書に記載の薬剤の投与を異なる時間又は異なる量で含むことができる。
【0054】
「QD」は、本明細書に記載の薬剤を1日1回投与することを指す。
【0055】
「BID」は、本明細書に記載の薬剤を1日2回投与することを指す。
【0056】
「Q1W」は、本明細書に記載の薬剤を毎週1回投与することを指す。
【0057】
「PO」は、本明細書に記載の薬剤の経口投与を指す。
【0058】
「IV」は、本明細書に記載の任意の薬剤の静脈内投与を指す。
【0059】
等級付けされた有害事象とは、NCI CTCAEによって確立された重症度の等級付け尺度を指す。一実施形態において、有害事象は、以下の表に従って等級付けされる。
【0060】
「患者」という用語は、ヒト患者を指す。患者は成人であってもよい。
【0061】
「抗体」という用語は、具体的には、それらが所望の生物学的活性を示す限り、モノクローナル抗体(全長モノクローナル抗体等)、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及び抗体断片を包含する。一例では、抗体は完全長モノクローナル抗体である。
【0062】
本明細書で使用される場合、IgG「アイソタイプ」又は「サブクラス」という用語は、それらの定常領域の化学的及び抗原的特性によって定義される免疫グロブリンのサブクラスのうちのいずれかを意味する。
【0063】
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、抗体(免疫グロブリン)は、異なるクラスに割り当てられ得る。免疫グロブリンには5つの主なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかを、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分ける場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、γ、ε、γ、及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び三次元構成が周知であり、例えば、Abbas et al.Cellular and Mol.Immunology,4th ed.(W.B.Saunders,Co.,2000)に一般的に記載されている。抗体は、抗体と1つ以上の他のタンパク質又はペプチドとの共有又は非共有会合によって形成されるより大きい融合分子の一部であり得る。
【0064】
「全長抗体」、「インタクトな抗体」、及び「全抗体」という用語は、以下に記載の抗体断片ではない、その実質的にインタクトな形態の抗体を指すために本明細書で同義に使用される。この用語は、Fc領域を含む抗体を指す。
【0065】
「Fc領域」という用語は、本明細書では定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、ネイティブ配列Fc領域とバリアントFc領域を含む。一態様では、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226から、又はPro230から、重鎖のカルボキシル末端までに及ぶ。しかしながら、宿主細胞によって産生される抗体は、重鎖のC末端から1つ以上の、特に1つ又は2つのアミノ酸の翻訳後開裂を受けてもよい。したがって、完全長重鎖をコードする特定の核酸分子の発現によって、宿主細胞によって産生する抗体は、完全長重鎖を含んでいてもよく、又は完全長重鎖の開裂したバリアントを含んでいてもよい。これは、重鎖の最後の2つのC末端アミノ酸がグリシン(G446)及びリジン(K447)である場合にあり得る。したがって、Fc領域のC末端リジン(Lys447)、又はC末端グリシン(Gly446)及びリジン(Lys447)が存在してもよい、又は存在していなくてもよい。Fc領域を含む重鎖のアミノ酸配列は、別途示されない限り、本明細書ではC末端リジン(Lys447)なしで示される。一態様では、本明細書に開示される抗体に含まれる、本明細書で明記したFc領域を含む重鎖は、更なるC末端グリシン-リジンジペプチド(G446及びK447)を含む。一態様では、本明細書に開示される抗体に含まれる、本明細書で明記したFc領域を含む重鎖は、更なるC末端グリシン残基(G446)を含む。一態様では、本明細書に開示される抗体に含まれる、本明細書で明記したFc領域を含む重鎖は、更なるC末端リジン残基(K447)を含む。一実施形態において、Fc領域は、重鎖の単一アミノ酸置換N297Aを含む。本明細書で特に明記されない限り、Fc領域又は定常領域におけるアミノ酸残基のナンバリングは、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載される、EUインデックスとも呼ばれる、EUナンバリングシステムに従う。
【0066】
「ネイキッド抗体」とは、異種部位(例えば、細胞毒性部位)又は放射性標識に結合していない抗体を指す。ネイキッド抗体は、医薬組成物中に存在していてもよい。
【0067】
「抗体断片」は、好ましくはその抗原-結合領域を含む、インタクトな抗体の一部を含む。いくつかの例では、本明細書に記載の抗体断片は、抗原結合断片である。抗体断片の例としては、Fab、F(ab’)2、及びFv断片、ダイアボディ、直鎖状抗体、一本鎖抗体分子(例えば、scFv)、並びに抗体断片から形成される多重特異性抗体が挙げられる。
【0068】
「モノクローナル抗体」という用語は、本明細書で使用される場合、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体を指し、すなわち、例えば、天然に存在する変異又はモノクローナル抗体調製物の製造中に生じる変異を含む、可能性のあるバリアント抗体(そのようなバリアントは一般的に少量存在する)を除いて、集合を構成する個々の抗体は同一である及び/又は同じエピトープを結合する。様々な決定基(エピトープ)に対する様々な抗体を通常含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように解釈すべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部を含むトランスジェニック動物を利用する方法を含むがこれらに限定されない種々の技術によって作製されてもよい。
【0069】
本明細書で使用される場合、「超可変領域」又は「HVR」という用語は、配列において超可変性であり、抗原結合特異性を決定する、抗体可変ドメインの領域、例えば「相補性決定領域」(CDR)のそれぞれを指す。
【0070】
一般に、抗体は6つのCDRを含み、3つがVHにあり(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、3つがVLにある(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)。本明細書における例示的なCDRとしては、以下が挙げられる:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で生じる超可変ループ(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987);
(b)アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)及び95-102(H3)に存在するCDR(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD(1991));並びに
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)で生じる抗原接触(MacCallum et al.J.Mol.Biol.262:732-745(1996))。
【0071】
特に指定されない限り、CDRは、上記のKabat et al.に従い決定される。当業者は、CDRの表記は、上記Chothia、上記McCallum、又は、任意の他の科学的に認可された命名システムに従い決定することができることを理解するであろう。
【0072】
「フレームワーク」又は「FR」は、相補性決定領域(CDR)以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3及びFR4の4つのFRドメインからなる。したがって、CDR及びFR配列は、一般的に、VH(又はVL)において次の配列で出現する:FR1-CDR-H1(CDR-L1)-FR2-CDR-H2(CDR-L2)-FR3-CDR-H3(CDR-L3)-FR4。
【0073】
「Kabatにあるような可変ドメイン残基ナンバリング」又は「Kabatにあるようなアミノ酸位置ナンバリング」という用語、及びそれらの変形は、Kabat et al.(上記参照)における抗体の編集物の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに使用されるナンバリングシステムを指す。このナンバリング方式を使用して、実際の直鎖状アミノ酸配列は、可変ドメインのFR若しくはHVRの短縮、又はそれへの挿入に対応する、より少ないアミノ酸又は追加のアミノ酸を含み得る。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入(Kabatに従う残基52a)を含み、重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatに従う残基82a、82b、及び82c等)を含み得る。残基のKabatナンバリングは、所与の抗体に対して、抗体の配列と「標準の」Kabatによってナンバリングされた配列との相同領域での整列によって決定され得る。
【0074】
Kabatナンバリングシステムは、一般に、可変ドメイン中の残基(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)を指す場合に使用される(例えば、Kabat et al.,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991))。「EUナンバリングシステム」又は「EU指標」は、一般に、免疫グロブリン重鎖定常領域における残基について言及する際に使用される(例えば、Kabat et al.(上記参照)で報告されるEU指標)。「KabatにおけるようなEUインデックス」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基ナンバリングを指す。
【0075】
「添付文書」という用語は、そのような治療用製品の使用に関する適応症、使用法、投与量、投与、併用療法、禁忌及び/又は警告に関する情報を含む、治療用製品の市販のパッケージに慣習的に含まれている説明書を指すために使用される。
【0076】
本明細書で使用される場合、「と組み合わせて」とは、別の治療様式、例えば、本明細書に記載のEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)及び化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の投与を含む治療レジメンに加えて、1つの治療様式を投与することを指す。したがって、「と組み合わせて」とは、患者への他の治療様式の投与前、投与中、又は投与後の1つの治療様式の投与を指す。
【0077】
1つ以上の他の薬物と「同時に」投与される薬物は、同一治療サイクル中、1つ以上の他の薬物と同じ治療日に、また必要に応じて1つ以上の他の薬物と同じ時間に投与される。例えば、3週間ごとに施されるがん療法の場合、同時に投与される薬物はそれぞれ、3週間のサイクルの1日目に投与される。
併用療法
【0078】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と、本明細書に記載のEGFR阻害剤とを含む併用療法(組成物)が本明細書に提供される。一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)とゲフィチニブとを含む併用療法が本明細書で提供される。別の実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)とオシメルチニブとを含む併用療法が本明細書で提供される。別の実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)とダコミチニブとを含む併用療法が本明細書で提供される。更に別の実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)とアファチニブとを含む併用療法が本明細書で提供される。更に別の実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)とパニツムマブとを含む併用療法が本明細書で提供される。好ましい一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)と、エルロチニブ又はセツキシマブとを含む併用療法が本明細書で提供される。別の好ましい実施形態において、併用療法はエルロチニブを含む。別のそのような実施形態において、併用療法はセツキシマブを含む。
【0079】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)及びEGFR阻害剤化合物(例えば、ゲフィチニブ、エルロチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、又はアファチニブ)を含む併用療法(組成物)を、本明細書に更に提供する。そのような一実施形態において、EGFR阻害剤はエルロチニブである。
【0080】
更に、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と、抗EGFR抗体(例えば、パニツムマブ又はセツキシマブ)とを含む併用療法(組成物)が本明細書に提供される。そのような一実施形態において、抗EGFR抗体はセツキシマブである。
【0081】
一態様では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)及びEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)を含む併用療法が本明細書で提供される。一実施形態において、本明細書に記載の併用療法は、KRasG12C変異を含む特定の固形腫瘍の治療に有用である。そのような一実施形態において、併用療法は、EGFR阻害剤がそのような腫瘍における投与について承認されていない、KRasG12C変異を含む特定の固形腫瘍の治療に有用である。
【0082】
一実施形態において、本明細書に記載の併用療法は、KRasG12C変異を含む本明細書に記載の特定の種類の肺がんの治療に有用である。そのような一実施形態において、肺がんは、KRasG12C変異を含む非小細胞肺がん(NSCLC)である。
【0083】
別の実施形態では、本明細書に記載の併用療法は、KRasG12C変異を含む結腸直腸がんの治療に有用である。そのような一実施形態において、KRasG12C変異を含む結腸直腸がんの治療に有用な本明細書に記載の併用療法を、1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて投与する。別のそのような実施形態において、追加の薬剤はイリノテカンである。別のそのような実施形態において、追加の薬剤は、FOLFIRI(すなわち、ロイコボリン、フルオロウラシル及びイリノテカンの投与)を含む。別のそのような実施形態において、追加の薬剤はFOLFOX(すなわち、ロイコボリン、フルオロウラシル及びオキサリプラチンの投与)を含む。
【0084】
別の実施形態では、本明細書に記載の併用療法は、KRasG12C変異を含む膵臓がんの治療に有用である。そのような一実施形態において、KRasG12C変異を含む膵臓がんの治療に有用な本明細書に記載の併用療法を、1つ以上の追加の薬剤と組み合わせて投与する。そのような一実施形態において、追加の薬剤はゲムシタビンを含む。
【0085】
一態様では、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)とを含む併用療法が本明細書で提供される。そのような実施形態では、併用療法は、本明細書に記載のKRasG12C変異を含む固形腫瘍(例えば、肺がん、結腸直腸がん、膵臓がん)の治療に有用である。
【0086】
一態様では、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、第1のサイクルの1~21日目にQDで投与されるベエルロチニブとを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0087】
別の態様において、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、第1の21日サイクルの1日目に開始するQ1Wで投与されるセツキシマブとを含む併用療法が本明細書で提供される。
【0088】
本明細書に記載の併用療法の一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、固定用量のQD投与として投与される。一実施形態において、投与は経口(PO)であり、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、錠剤又はカプセル剤として製剤化される。そのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、フィルムコーティング錠として製剤化(及び投与)される。
【0089】
本明細書に記載の併用療法の一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約5mg~600mg、5mg~500mg、5mg~400mg、5mg~300mg、5mg~250mg、5mg~200mg、5mg~150mg、5mg~100mg、5mg~50mg、5mg~25mg、25mg~600mg、25mg~500mg、25mg~400mg、25mg~300mg、25mg~250mg、25mg~200mg、25mg~150mg、25mg~100mg、25mg~50mg、50mg~800mg、50mg~700mg、50mg~600mg、50mg~500mg、50mg~400mg、50mg~300mg、50mg~250mg、50mg~200mg、50mg~150mg、又は50mg~100mgの量でQDで投与される。別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約5mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg又は500mgの量で投与される。別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、又は800mgの量で投与される。そのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約300~600mgの量で投与される。別のそのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約400mgの量で投与される。好ましい一実施形態において、本明細書に記載の併用療法の化合物1は、アジピン酸塩として投与される。そのような実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の量は、遊離塩基形態に対する量として投与される。
【0090】
本明細書に記載の併用療法の一実施形態において、EGFR阻害剤は添付文書に従って投与される。
【0091】
一実施形態において、本明細書に記載される併用療法は、エルロチニブを含み、エルロチニブは、約25mg~200mg、25mg~150mg、25mg~100mg又は25mg~50mgの量で投与される。一実施形態において、エルロチニブは、約100mgの量で投与される。別の実施形態において、エルロチニブは、約150mgの量で投与される。
【0092】
一実施形態において、エルロチニブは、本明細書に記載される併用療法の成分として、150mg QDの量で投与される。別の実施形態において、エルロチニブは、本明細書に記載される併用療法の成分として、100mg QDの量で投与される。そのような実施形態において、エルロチニブは、21日サイクルでの各薬剤QDの投与を含む投薬レジメンにおいて、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と組み合わせて投与され得る。そのような一実施形態において、エルロチニブは、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と同時に、用量間で水と共に投与される。一実施形態において、本明細書に記載される併用療法において投与されるエルロチニブの量が低減され得る。一実施形態において、エルロチニブの量は、25mg又は50mgの増分で減少低減される。
【0093】
別の実施形態では、本明細書に記載の併用療法はセツキシマブを含み、セツキシマブは約200~400mg/m2の量で投与される。一実施形態において、セツキシマブは、第1の用量/初回用量として約400mg/m2の量で投与される。別の実施形態では、セツキシマブは約250mg/m2の量で投与される。そのような一実施形態において、セツキシマブは、第1の21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、第1の21日サイクルの250mg/m2 Q1Wで投与される。
【0094】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩及びゲフィチニブを含む併用療法も本明細書に提供され、ゲフィチニブは、各21日サイクルについて250mg QDの量で投与される。
【0095】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩及びオシメルチニブを含む併用療法が本明細書に更に提供され、オシメルチニブは、各21日サイクルについて80mg QDの量で投与される。
【0096】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩及びダコミチニブを含む併用療法が本明細書に更に提供され、ダコミチニブは、各21日サイクルについて45mg QDの量で投与される。
【0097】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩及びアファチニブを含む併用療法が本明細書において尚更に提供され、アファチニブは、各21日サイクルについて40mg QDの量で投与される。
【0098】
化合物1又はその薬学的に許容され得る塩及びパニツムマブを含む併用療法が本明細書において尚更に提供され、パニツムマブは、各21日サイクルについて6mg/kg Q2Wの量で投与される。
【0099】
好ましい一実施形態において、本明細書に記載される併用療法は、QDで投与される本明細書に記載される化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、エルロチニブとを含み、エルロチニブは約150mg QDの用量で患者に投与される。別の好ましい実施形態では、本明細書に記載される併用療法は、QDで投与される本明細書に記載される化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、セツキシマブとを含み、セツキシマブは、第1の21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、第1の21日サイクルの250mg/m2 Q1Wで投与される。
【0100】
一実施形態において、本明細書に記載の併用療法は、KRasG12C変異を含む肺がんを治療するために使用される。そのような一実施形態において、併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)と、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ又はアファチニブからなる群から選択されるEGRF阻害剤化合物とを含む。別のそのような実施形態において、併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)及びエルロチニブを含み、該併用療法は、本明細書に記載されるようなKRasG12C変異を含む肺がんを治療するためのものである。一実施形態において、本明細書に記載される併用療法は、KRasG12C変異を含む肺がんを治療するために使用され、該併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)及び抗EGFR抗体(例えば、パニツムマブ)を含む。そのような実施形態において、肺がんは非小細胞肺癌(NSCLC)である。そのような一実施形態において、肺がんは、腺癌、扁平上皮肺癌又は大細胞肺癌である。肺がんはステージI又はステージIIの肺がんであり得る。一実施形態において、肺がんはステージIII又はステージIVの肺がんである。
【0101】
別の実施形態では、KRasG12C変異を含む肺がんの治療に有用な併用療法であって、該併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)を含み、化合物1は、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与され、エルロチニブは、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される。好ましい一実施形態において、肺がんはNSCLC(例えば転移性NSCLC)である。
【0102】
更に別の実施形態では、KRasG12C変異を含む肺がんの治療に有用な併用療法であって、該併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)を含み、化合物1は、第1の21日サイクルの1~21日目に約50mg~500mgの量でQDで投与され、エルロチニブは、第1の21日サイクルの1~21日目に約150mgの量でQDで投与される。好ましい一実施形態において、肺がんはNSCLCである。一実施形態において、エルロチニブは添付文書に従って投与される。
【0103】
更に別の実施形態においては、KRasG12C変異を含むCRCの治療に有用な本明細書に記載の併用療法である。特定の一実施形態において、併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)と、セツキシマブ又はパニツムマブから選択される抗EGFR抗体とを含み、併用療法は、本明細書に記載のKRasG12C変異を含むCRCを治療するためのものである。好ましい一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)及びセツキシマブを含む併用療法であり、併用療法は、本明細書に記載のKRasG12C変異を含むCRCを治療するためのものである。そのような一実施形態において、CRCは転移性CRC(mCRC)である。一実施形態において、併用療法は、KRasG12C変異を含むCRCの第一選択使用治療のためのものである。別の実施形態では、併用療法は、KRasG12C変異を含むCRCの第二選択治療のためのものである。そのような一実施形態において、患者は、KRasG12C阻害剤で以前に治療されたことがある疾患が以前に進行している。
【0104】
併用療法が化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)及びセツキシマブを含み、KRasG12C変異を含むCRCを治療するのに有用であるそのような実施形態においては、本明細書に記載の患者にFOLFIRIレジメン又はイリノテカンを投与してもよい。
【0105】
併用療法が化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)及び抗EGFR抗体(例えば、パニツムマブ)を含み、KRasG12C変異を含むCRCを治療するのに有用であるそのような実施形態においては、本明細書に記載の患者にFOLFOXレジメンを投与してもよい。
【0106】
別の実施形態においては、KRasG12C変異を含むCRCの治療に有用な併用療法であり、併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)を含み、化合物1は、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与され、セツキシマブは、第1の21日サイクルの1日目に約400 mg/m2の量で、第1の21日サイクルの250 mg/m2 Q1Wで投与される。好ましい一実施形態において、CRCは転移性CRC(mCRC)である。
【0107】
別の実施形態においては、KRasG12C変異を含むCRCの治療に有用な併用療法であり、併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)を含み、化合物1は、第1の21日サイクルの1~21日目に約50mg~500mgの量でQDで投与され、セツキシマブは、第1の21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、第1の21日サイクルの250 mg/m2 Q1Wで投与される。好ましい一実施形態において、CRCは転移性CRC(mCRC)である。一実施形態において、セツキシマブは添付文書に従って投与される。
【0108】
一実施形態において、本明細書に記載の併用療法は、KRasG12C変異を含む膵臓がんを治療するために使用される。特定の一実施形態において、併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)とエルロチニブとを含み、該併用療法は、本明細書に記載のKRasG12C変異を含む膵臓がんを治療するためのものである。
【0109】
そのような一実施形態において、併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)を含み、化合物1は、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与され、エルロチニブは、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される。
【0110】
別のそのような実施形態において、併用療法は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)を含み、化合物1は、第1の21日サイクルの1~21日目に約50mg~500mgの量でQDで投与され、エルロチニブは、第1の21日サイクルの1~21日目に100mg又は150mgの量でQDで投与される。そのような一実施形態において、エルロチニブは、本明細書に記載される約150mg QDの量で投与される。別のそのような実施形態において、エルロチニブは、本明細書に記載される約100mg QDの量で投与される。一実施形態において、エルロチニブは添付文書に従って投与される。
治療方法
【0111】
本明細書に記載のそのような固形腫瘍(例えば、肺がん、CRC、又は膵臓がん)を有する患者におけるKRasG12C変異を含む固形腫瘍を治療する方法も本明細書で提供される。一実施形態においては、KRasG12C変異を含む肺がん、CRC又は膵臓がんを有する患者における、そのような固形腫瘍を治療する方法であって、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)と、本明細書に記載されるEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ若しくはアファチニブからなる群から選択されるEGFR阻害剤化合物、又はパニツムマブ若しくはセツキシマブを含む抗EGFR抗体)とを含む、有効量の併用療法を患者に投与することを含む方法である。一実施形態においては、KRasG12C変異を含む肺がん、CRC又は膵臓がんを有する患者における、そのような固形腫瘍を治療する方法であって、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)と、エルロチニブ又はセツキシマブとを含む、有効量の併用療法を患者に投与することを含む方法である。
【0112】
一態様において、KRasG12C変異を含む肺がんを有する患者における、そのような肺がんを治療する方法であって、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)と、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ又はアファチニブからなる群から選択されるEGFR阻害剤化合物とを含む有効量の併用療法を患者に投与することを含む方法が本明細書に提供される。一態様では、KRasG12C変異によって媒介される肺がんを有する患者における、そのような肺がんを治療する方法であって、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)とエルロチニブとを含む有効量の併用療法を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0113】
本明細書で提供される一実施形態において、肺がんは非小細胞肺癌(NSCLC)である。本明細書で提供される方法の別の実施形態では、肺がんは、腺癌、扁平上皮肺癌又は大細胞肺癌である。そのような一実施形態において、がんは肺腺癌である。別のそのような実施形態では、肺がんは小細胞肺癌である。別の実施形態において、肺がんは小細胞肺癌である。更に別の実施形態では、肺がんは腺腫瘍、カルチノイド腫瘍、又は未分化癌である。肺がんはステージI又はステージIIの肺がんであり得る。一実施形態において、肺がんはステージIII又はステージIVの肺がんである。
【0114】
また、KRasG12C変異を含むNSCLCを有する患者における、そのようながんを治療する方法であって、(i)有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQD投与することと、(ii)有効量のエルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む、有効量の本明細書に記載の併用療法を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。本明細書で提供される方法の一実施形態において、方法は腺癌を治療するためのものである。本明細書で提供される方法の一実施形態において、方法は2回以上のサイクルを含む。そのような一実施形態において、方法は、第1選択NSCLCを治療するためのものである。
【0115】
また、KRasG12C変異を含むNSCLCを有する患者における、そのようながんを治療する方法であって、(i)50mg~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)約150mg/kgのエルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む有効量の本明細書に記載の併用療法を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0116】
別の態様では、CRCを有する患者におけるKRasG12C変異を含むCRCを治療する方法であって、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と、本明細書に記載の抗EGFR抗体(例えば、パニツムマブ又はセツキシマブ)とを含む、有効量の併用療法を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。上記方法の別の実施形態において、CRCを有する患者におけるKRasG12C変異を含むCRCを治療する方法であって、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と、セツキシマブとを含む、有効量の併用療法を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0117】
また、KRasG12C変異を含むCRCを有する患者における、そのようながんを治療する方法であって、(i)有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQD投与することと、(ii)有効量のセツキシマブを第1の21日サイクルの1日目に開始するQ1Wで投与することと、を含む投薬レジメンを含む、有効量の本明細書に記載の併用療法を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。そのような一実施形態において、本明細書に記載の250又は400mg/m2。本明細書で提供される方法の一実施形態において、方法は2回以上のサイクルを含む。
【0118】
また、KRasG12C変異を含むCRCを有する患者における、そのようながんを治療する方法であって、(i)50mg~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)約400mg/m2のセツキシマブを第1の21日サイクルの1日目に投与し、続いてその後に約250mg/m2のセツキシマブをQ1Wで投与することと、を含む投薬レジメンを含む、有効量の本明細書に記載の併用療法を投与すること、を含む方法が本明細書で提供される。
【0119】
KRasG12C変異を含むCRCを治療するためのそのような方法の一実施形態において、そのような方法は、本明細書に記載される有効量のFOLFIRI又はイリノテカンを患者に投与することを更に含む。
【0120】
また、KRasG12C変異を含む膵臓がんを有する患者における膵臓がんを治療する方法であって、本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)とエルロチニブとを含む有効量の併用療法を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0121】
別の実施形態では、KRasG12C変異を含む膵臓がんを有する患者における、そのようながんを治療する方法であって、(i)有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQD投与することと、(ii)有効量のエルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む、有効量の本明細書に記載の併用療法を患者に投与することを含む方法が本明細書で提供される。そのような一実施形態において、エルロチニブは、本明細書に記載されるように約100mg又は150mgの量で投与される。一実施形態において、エルロチニブは100mgの量で投与される。別のそのような実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、本明細書に記載のように約50mg~500mgの量で投与される。
【0122】
本明細書に記載の方法の一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約5mg~600mg、5mg~500mg、5mg~400mg、5mg~300mg、5mg~250mg、5mg~200mg、5mg~150mg、5mg~100mg、5mg~50mg、5mg~25mg、25mg~600mg、25mg~500mg、25mg~400mg、25mg~300mg、25mg~250mg、25mg~200mg、25mg~150mg、25mg~100mg、25mg~50mg、50mg~800mg、50mg~700mg、50mg~600mg、50mg~500mg、50mg~400mg、50mg~300mg、50mg~250mg、50mg~200mg、50mg~150mg、又は50mg~100mgの量でQDで投与される。別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約5mg、25mg、50mg、100mg、150mg、200mg、250mg、300mg、400mg又は500mgの量で投与される。別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、又は800mgの量で投与される。そのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約300~600mgの量で投与される。別のそのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約400mgの量で投与される。好ましい一実施形態において、本明細書に記載の併用療法の化合物1は、アジピン酸塩として投与される。そのような実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の量は、遊離塩基形態に対する量として投与される。
【0123】
本明細書で提供される方法は、投薬レジメンの一部として、本明細書に記載の併用療法の投与を含み得る。そのような一実施形態において、投薬レジメンは、1回以上のサイクルを含む。別の実施形態では、投薬レジメンは、少なくとも2回のサイクルを含む。別の実施形態では、投薬レジメンは、2~3回のサイクルを含む。別の態様では、本明細書で提供される投薬レジメンは、2、3、4、5、6、8、10、12、16、18、20、24、30、36、42、48、54、60、66又は72回のサイクルを含む。更に別の実施形態では、投薬レジメンは、約2~72、2~66、2~60、2~54、2~48、2~42、2~36、2~30、2~24、2~18、2~12又は2~6回のサイクルを含む。一実施形態において、投薬レジメンは、所望の応答(例えば、PFS、OS、ORR、及び/又はDOR)が所望の転帰に達するまでの(例えば、本明細書に記載の対照と比較して、PFS、OS、ORR、及び/又はDORが増加)、本明細書に記載の併用療法の任意の回数のサイクルでの投与を含む。別の実施形態では、投薬レジメンは、毒性が発現するか、又は患者が他の方法で更なる投与を妨げる1つ以上の有害事象(AE)を経験するまでの、任意の回数のサイクルでの本明細書に記載の併用療法の投与を含む。更に別の実施形態では、投薬レジメンは、疾患進行までの任意のサイクル数での本明細書に記載の併用療法の投与を含む。
【0124】
本明細書に記載される方法の一実施形態において、患者には、合計1~50用量、例えば、1~50用量、1~45用量、1~40用量、1~35用量、1~30用量、1~25用量、1~20用量、1~15用量、1~10用量、1~5用量、2~50用量、2~45用量、2~40用量、2~35用量、2~30用量、2~25用量、2~20用量、2~15用量、2~10用量、2~5用量、3~50用量、3~45用量、3~40用量、3~35用量、3~30用量、3~25用量、3~20用量、3~15用量、3~10用量、3~5用量、4~50用量、4~45用量、4~40用量、4~35用量、4~30用量、4~25用量、4~20用量、4~15用量、4~10用量、4~5用量、5~50用量、5~45用量、5~40用量、5~35用量、5~30用量、5~25用量、5~20用量、5~15用量、5~10用量、1~50用量、1~45用量、1~40用量、1~35用量、1~30用量、1~25用量、1~20用量、1~15用量、1~10用量、1~8用量、1~6用量、1~5用量、10~50用量、10~45用量、10~40用量、10~35用量、10~30用量、10~25用量、又は10~20用量の抗EGFR抗体が投与される。そのような一実施形態において、患者に合計1~10用量の抗EGFR抗体(例えばセツキシマブ)を投与する。別のそのような実施形態では、患者に合計5、6、7、8、9又は10用量の抗EGFR抗体(例えばセツキシマブ)を投与する。好ましい一実施形態において、抗EGFR抗体(例えばセツキシマブ)の用量を静脈内投与する。
【0125】
特定の実施形態では、本明細書に記載の併用療法の治療剤(例えば、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩、及びエルロチニブ又はセツキシマブ)は、当技術分野で公知の任意の適切な方法で投与され得る。例えば、EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩として連続的に(異なる日に)、又は同時に(同日又は同じ治療サイクル中に)投与され得る。一実施形態において、EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の投与後に投与される。いくつかの例において、EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)は、化合物1若しくはその薬学的に許容され得る塩の投与後、又は化合物1若しくはその薬学的に許容され得る塩の投与と同日に投与される。一実施形態において、EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)は、化合物1若しくはその薬学的に許容され得る塩の投与後、又は化合物1若しくはその薬学的に許容され得る塩の投与と同日に投与され得る。例えば、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、各サイクルの1日目にEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)を投与する前に各サイクルの1日目に投与することができ、次いで、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、21日サイクルの次の20日間QDで投与される。
【0126】
好ましい実施形態では、セツキシマブは、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の後(例えば約120分)に静脈内投与される。1回目の注入が許容され得る場合、セツキシマブの2回目の投与は60分±10分にわたってIV投与される。いくつかの例では、セツキシマブは静脈内プッシュ又はボーラスとして投与される。
【0127】
KRasG12C変異を含む肺がんを有する患者における、そのようながんを治療する方法も本明細書で提供され、該方法は、有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、アジピン酸塩)と、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、又はアファチニブからなる群から選択されるEGFR阻害剤化合物(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)とを含む治療レジメンを患者に投与することを含む。そのような方法の一実施形態において、化合物1はアジピン酸塩であり、EGFR阻害剤化合物はエルロチニブである。そのような方法の別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、本明細書に記載のQDで、及び本明細書に記載の量(例えば50mg~500mg)で投与される。そのような方法の別の実施形態では、エルロチニブは、本明細書に記載のQDで、及び本明細書に記載の量(例えば、150mg)で投与される。そのような方法では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩及びEGFR阻害剤は、本明細書に記載されるように投与され得る。そのような方法では、肺がんは、KRasG12C変異を含むNSCLCであり得る。
【0128】
KRasG12C変異を含むCRCを有する患者における、そのようながんを治療する方法も本明細書で提供され、該方法は、有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、アジピン酸塩)及び本明細書に記載の抗EGFR抗体(例えば、セツキシマブ)を含む治療レジメンを患者に投与することを含む。そのような方法の一実施形態において、化合物1はアジピン酸塩であり、本明細書に記載の抗EGFR抗体はセツキシマブである。そのような方法の別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、本明細書に記載のQDで、及び本明細書に記載の量(例えば50mg~500mg)で投与される。そのような方法の別の実施形態では、セツキシマブは、第1の21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量のセツキシマブで投与され、続いてその後に約250mg/m2のセツキシマブQ1Wで投与される。そのような方法では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩及びセツキシマブは、本明細書に記載のように投与され得る。
【0129】
別の実施形態では、KRasG12C変異を含むCRCを有する患者における、そのようながんを治療する方法であり、該方法は、(i)約50mg~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、アジピン酸塩)を第1の21日サイクルの間の1~21日目にQDで投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目に約400mg/m2のセツキシマブを投与し、続いてその後に約250mg/m2のセツキシマブQ1Wを投与することとを含む、治療レジメンを患者に投与することを含む。
【0130】
KRasG12C変異を含む膵臓がんを有する患者における、そのようながんを治療する方法も本明細書で提供され、該方法は、有効量の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、アジピン酸塩)、及び本明細書に記載のEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ)を含む治療レジメンを患者に投与することを含む。そのような方法の一実施形態において、化合物1はアジピン酸塩であり、本明細書に記載のEGFR阻害剤化合物はエルロチニブである。そのような方法の別の実施形態では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、本明細書に記載のQDで、及び本明細書に記載の量(例えば50mg~500mg)で投与される。そのような方法の別の実施形態において、エルロチニブは、本明細書に記載されるようにQDで、約100mg又は150mgの量で投与される。そのような方法では、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩及びエルロチニブは、本明細書に記載のように投与され得る。
【0131】
別の実施形態において、KRasG12C変異を有する患者における、そのようながんを含む膵臓がんを治療する方法であり、該方法は、(i)約50mg~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、アジピン酸塩)を第1の21日サイクルの間の1~21日目に患者にQDで投与することと、(ii)100mg又は150mgのエルロチニブを第1の21日サイクルの間の1~21日目に患者にQDで投与することを含む治療レジメンを患者に投与することを含む。
【0132】
いくつかの例では、治療レジメンは、1つ以上の追加の療法の投与を含み、追加の療法は、1つ以上の副作用制限剤(例えば、治療の副作用の発生及び/又は重症度を軽減することを意図した薬剤、例えば、抗悪心剤、コルチコステロイド(例えば、プレドニゾン又は同等物、例えば1~2mg/kg/日の用量)、ホルモン補充薬(複数可)等)である。
【0133】
本明細書で提供される患者は、評価されなければならず、本明細書に記載のKRasG12C変異についての確認された試験結果を有さなければならない。一実施形態において、本明細書中に記載される患者は、CRCに対するKRasG12C変異についての確認された試験結果を有する。そのような一実施形態において、患者は、1つ以上の事前の療法で治療されたことがある。NSCLCと診断され、KRasG12C変異の検査結果が確認された本明細書に記載の患者は、既知の付随する第2の発癌性ドライバ(例えば、NSCLCの場合:感受性EGFR変異、ALK再構成、ROS1再構成、BRAF V600E変異、NTRK融合、RET融合;又は結腸若しくは直腸の腺癌の場合:BRAF V600E変異、ERBB2増幅)を有してはならない。そのような一実施形態において、患者は、1つ以上の事前の療法で治療されたことがある。一実施形態において、そのような第2の発癌性ドライバは、NGS(例えば、Foundation Medicine,Inc.(FMI)によるNGSアッセイ)を使用して決定される。
【0134】
本明細書に記載の患者がセツキシマブを含む併用療法で治療される、本明細書に提供される方法の一実施形態において、そのような患者は、少なくとも1つの以前の化学療法レジメン(例えば、FOLFOX、FOLFIRI、FOLFOXIRI±ベバシズマブ)に対する疾患の進行又は不耐性を経験したことがある。
【0135】
本明細書で提供される方法の別の実施形態において、本明細書に記載の患者がエルロチニブを含む併用療法で治療される場合、そのような患者は、少なくとも1回の事前の全身療法(例えば、単剤、又は治験用の若しくは承認されたPD-L1/PD-1阻害剤との併用療法)に対して疾患の進行又は不耐性を経験している。
【0136】
一実施形態において、本明細書に記載の患者は、KRasG12C特異的阻害剤による事前の治療を受けたことがある。
【0137】
別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、以下を除いて、本明細書に記載の併用療法の投与前3週間以内に化学療法、免疫療法若しくは抗がん療法としての生物学的療法、又は本明細書に記載の併用療法の投与前2週間以内に内分泌療法による治療を受けたことがない:
(a)内分泌感受性がん(例えば、前立腺がん、子宮内膜がん、ホルモン受容体陽性乳がん)に対するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト又はアンタゴニストを用いたホルモン療法;
(b)任意の薬物関連毒性が完全に消散しているならば、規制当局によって承認されたキナーゼ阻害剤を、本明細書に記載の併用療法の投与の2週間前まで使用してもよい;或いは
(c)本明細書に記載の併用療法の投与前の3週間又は5半減期(いずれか短い方)以内の治験薬による治療。
【0138】
別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、本明細書に記載の併用療法の投与開始前4週間以内に、がん療法として放射線療法(上記の骨転移に対する緩和放射線照射及びCNS転移に対する放射線照射以外)を受けていない。更に別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、本明細書に記載の併用療法の投与前2週間以内に骨転移に対する緩和放射線照射を受けていない。
【0139】
別の実施形態において、本明細書に記載の患者は、特発性肺線維症、器質化肺炎(例えば、閉塞性細気管支炎)、薬物誘発性間質性肺炎(drug-induced pneumonitis)、若しくは特発性間質性肺炎の病歴、又はスクリーニング胸部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンでの活動性間質性肺炎の証拠を有していない。
【0140】
本明細書に記載の肺がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、又はアファチニブからなる群から選択されるEGFR阻害剤化合物とを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UL1)を、本明細書に更に提供する。一実施形態において、本明細書に記載の肺がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、エルロチニブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UL2)が本明細書で提供される。そのような一実施形態において、肺がんはNSCLCである。
【0141】
更に、本明細書に記載の肺がんを治療するための化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とエルロチニブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UL3)であって、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)エルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む使用が本明細書で提供される。そのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約50~500mgの量で投与される。別のそのような実施形態において、エルロチニブは、約150mgの量で投与される。
【0142】
更に、本明細書に記載の肺がんを治療するための化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とエルロチニブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UL4)であって、(i)約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)約150mgのエルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む使用が本明細書で提供される。そのような一実施形態において、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。
【0143】
本明細書に記載の肺がんの治療のための医薬の製造のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、又はアファチニブからなる群から選択されるEGFR阻害剤化合物とを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UL5)を、本明細書に更に提供する。そのような一実施形態において、EGFR阻害剤はエルロチニブである。
【0144】
更に、本明細書に記載の肺がんを治療するための医薬を製造するための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とエルロチニブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UL6)であって、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)エルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む使用が本明細書で提供される。そのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約50~500mgの量で投与される。別のそのような実施形態において、エルロチニブは、約150mgの量で投与される。
【0145】
更に、本明細書に記載の肺がんを治療するための医薬を製造するための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とエルロチニブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UL7)であって、(i)約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)約150mgのエルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む使用が本明細書で提供される。そのような一実施形態において、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。
【0146】
本明細書に記載の使用のそのような実施形態では、肺がんはNSCLCであり得る。本明細書に記載の使用の別のそのような実施形態では、本明細書に記載の患者は、KRasG12C変異によって媒介されるNSCLCと診断される。
【0147】
本明細書に記載のCRCの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、セツキシマブ又はパニツムマブからなる群から選択される抗EGFR抗体とを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UC1)を、本明細書に更に提供する。一実施形態においては、本明細書に記載のCRCを治療するための化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とセツキシマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UC2)である。そのような一実施形態において、CRCはmCRCである。
【0148】
更に、本明細書に記載のCRCを治療するための化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とセツキシマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UC3)であって、(i)第1の21日サイクルの1~21日目に化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)21日サイクルの1日目に約400mg/m2のセツキシマブを投与することと、を含む投薬レジメンを含む使用が本明細書に提供される。そのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約50~500mgの量で投与される。別のそのような実施形態において、第1の21日サイクルの1日目にセツキシマブを約400mg/m2の量で投与し、続いてその後にセツキシマブを約250mg/m2 Q1Wの量で投与する。
【0149】
更に、本明細書に記載の肺がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、セツキシマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UC4)であって、(i)約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目に約400mg/m2のセツキシマブを投与し、続いてその後に約250mg/m2のセツキシマブQ1Wを投与することと、を含む投薬レジメンを含む、使用が本明細書で提供される。
【0150】
本明細書に記載のCRCの治療のための医薬の製造のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、セツキシマブ又はパニツムマブからなる群から選択される抗EGFR抗体とを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UC5)を、本明細書に更に提供する。そのような一実施形態において、抗EGFR抗体はセツキシマブである。
【0151】
本明細書に記載される使用のそのような実施形態において、本明細書に記載される患者は、KRasG12C変異によって媒介されるCRCと診断される。
【0152】
更に、本明細書に記載のCRCを治療するための医薬を製造するための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とセツキシマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UC6)であって、(i)第1の21日サイクルの1~21日目に化合物1又はその薬学的に許容され得る塩をQD投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目に開始するQ1Wでセツキシマブを投与することと、を含む投薬レジメンを含む使用が本明細書に提供される。そのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約50~500mgの量で投与される。別のそのような実施形態において、第1の21日サイクルの1日目にセツキシマブを約400mg/m2のセツキシマブの量で投与し、続いてその後にセツキシマブを約250mg/m2 Q1Wの量で投与する。
【0153】
更に、本明細書に記載のCRCを治療するための医薬を製造するための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とセツキシマブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UC6)であって、(i)約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)第1の21日サイクルの1日目に約400mg/m2のセツキシマブを投与し、続いてその後に約250mg/m2のセツキシマブQ1Wを投与することと、を含む投薬レジメンを含む、使用が本明細書に提供される。そのような一実施形態において、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。
【0154】
更に、本明細書に記載の膵臓がんを治療するための化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とエルロチニブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UP1)が本明細書で提供される。
【0155】
更に、本明細書に記載の膵臓がんを治療するための化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とエルロチニブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UP2)であって、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)エルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む、使用が本明細書で提供される。そのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約50~500mgの量で投与される。別のそのような実施形態において、エルロチニブは、約100mgの量で投与される。
【0156】
更に、本明細書に記載の膵臓がんを治療するための化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とエルロチニブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UP3)であって、(i)約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)約100mgのエルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む使用が本明細書で提供される。そのような一実施形態において、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。
【0157】
更に、本明細書に記載の膵臓がんを治療するための医薬を製造するための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とエルロチニブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UP4)が本明細書で提供される。
【0158】
更に、本明細書に記載の膵臓がんを治療するための医薬を製造するための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とエルロチニブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UP5)であって、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)エルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む、使用が本明細書で提供される。そのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約50~500mgの量で投与される。別のそのような実施形態において、エルロチニブは、約100mgの量で投与される。
【0159】
更に、本明細書に記載の膵臓がんを治療するための医薬を製造するための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩とエルロチニブとを含む本明細書に記載の併用療法の使用(UP6)であって、(i)約50~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)約100mgのエルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む使用が本明細書で提供される。そのような一実施形態において、投薬レジメンは、本明細書に記載されるサイクルを2回以上含む。
【0160】
併用治療の開発は、例えば、許容され得る毒性を維持しつつ有効性の改善につながり得る併用療法のための薬剤の選択を含めて、課題を有している。1つの特定の課題は、併用の漸進的な毒性を識別する必要性である。本明細書に記載の方法の一実施形態において、本明細書に記載の併用療法(例えば、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩、及びエルロチニブ又はセツキシマブ)は、時差投薬スケジュールを含む投薬レジメンで投与される。そのような一実施形態において、患者は、対照(例えば、SOC療法、本明細書に記載の1つの薬剤(例えば、化合物1、又はエルロチニブ若しくはセツキシマブ)単独による治療)に匹敵する有害事象(AE)の数の減少又はグレードの低下を有する。
【0161】
有害事象が発生した場合、次の4つの選択肢が存在すると一般的に理解されている:(1)任意の付随療法を用いてそのまま治療を継続;(2)投薬レジメンにおける1つ以上の薬剤の用量を調整;(3)投薬レジメンにおける1つ以上の薬剤の投与を一時中断;又は、(4)投薬レジメンにおける1つ以上の薬剤の投与を中止。一実施形態において、化合物1の量は変更されない。別の実施形態において、投与されるエルロチニブの量は変更されない。別の実施形態では、投与されるセツキシマブの量は変更されない。一実施形態において、エルロチニブ又はセツキシマブの投与が中断される場合、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の次の投与は、エルロチニブ又はセツキシマブの投与が再開されるのと同じ日に行われる。一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、食物なしで投与される(すなわち、患者は投与の少なくとも2時間前及び1時間後に食事をしてはならない)。そのような一実施形態において、セツキシマブの投与は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の投与の少なくとも20、30、45又は60分後である。別のそのような実施形態において、エルロチニブの投与は、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩の投与後である。
【0162】
一実施形態において、本明細書に記載の患者は、グレード2以下のAEとして胃腸毒性を経験する。そのような一実施形態において、胃腸毒性は、下痢、悪心又は嘔吐である。別の実施形態では、本明細書に記載の患者は光毒性を経験する。そのような実施形態では、患者は、屋外で日焼け止め及び防護服を着用すべきである。
【0163】
一実施形態において、セツキシマブを含む併用療法を投与された本明細書に記載の患者は、皮膚反応、低マグネシウム血症、又はIRRを経験する。別の実施形態において、エルロチニブを含む併用療法を投与された本明細書に記載の患者は、皮膚毒性、間質性肺疾患(ILD)、肝損傷、胃腸(GI)液喪失、GI穿孔、又は眼毒性を経験する。
【0164】
本明細書に記載の患者には、以下を含む付随療法を投与することもできる:(a)抗痙攣薬又はワルファリン;(b)経口避妊薬又は他の可能な維持療法;(c)制吐薬及び下痢止め薬は、研究薬による初回治療の前に、そのような薬物治療を予防的に投与すべきでないことを条件とする;(d)標準的な臨床診療に従って投与される鎮痛薬;(e)骨転移若しくは骨減少症/骨粗鬆症のためのビスホスホネート及びデノスマブ療法;又は(f)マルチビタミン、カルシウム、並びにビタミンC、D及びEサプリメント。
【0165】
本明細書に記載の患者は、(1)強力/中程度のCYP3A4阻害剤(例えば、アタザナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、サキナビル、クラリスロマイシン、テリスロマイシン、エリスロマイシン、トロレアンドマイシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、アプレピタント、コニバプタン、フルボキサミン、ジルチアゼム、ネファゾドン、ミベフラジル、ベラパミル、及びグレープフルーツジュース又はグレープフルーツサプリメント);(2)強力/中程度のCYP3A4誘導剤(例えば、リファンピン、カルバマゼピン、フェニトイン、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、エファビレンツ、ネビラピン、エトラビリン、モダフィニル、ハイパーフォリン(セントジョーンズワート)及びシプロテロン)を含む療法を同時に服用しない場合がある。
【0166】
別の実施形態において、本明細書に記載の患者は、プロトンポンプ阻害剤又はH2受容体アンタゴニスト等の胃酸産生を減少させる薬物を投与されない。別の実施形態において、エルロチニブを含む併用療法を投与された患者は、抗血管新生剤及び非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の慢性的使用を有するべきではない。
【0167】
別の実施形態では、本明細書に記載の患者は、以下のいずれの療法も投与されない:
(a)本明細書に記載の併用療法の投与前の3週間若しくは5半減期のいずれか短い方、又はそのような治療中の任意の他の治験療法(化合物1、又はエルロチニブ若しくはセツキシマブを除く);
(b)以下を除く、化学療法、放射線療法、免疫療法、生物学的療法、ハーブ療法、又はホルモン療法を含む、FDAによって承認されているか実験的であるかにかかわらずがんの治療を意図した付随療法:
(i)内分泌感受性がん(例えば、前立腺がん、子宮内膜がん、ホルモン受容体陽性乳がん)に対するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト又はアンタゴニストを用いたホルモン療法;
(ii)ホルモン補充療法又は経口避妊法;
(c)以下のとおりの全身応答の状況における新たな脳転移を除いて、明確な進行性疾患に対する放射線療法:全身性疾患の制御を示した患者(臨床的利益[すなわち、≧3ヶ月間にわたるPR、CR又はSD]を受けたと定義される)であるが、放射線照射で治療可能な脳転移を発症した患者は、(治験責任医師の評価に基づいて)疾患の全身性進行及び/又は脳における更なる進行のいずれかを経験するまで、研究中に化合物1による療法を継続して受けることが可能になる。
(d)キニジン若しくは他の抗不整脈剤;或いは
(e)第1のサイクルの1日目の7日前からの造血コロニー刺激因子(CSF;例えば、顆粒球CSF;フィルグラスチム、顆粒球/マクロファージCSF;サルグラモスチム、ペグフィルグラスチム、エリスロポエチン、ダルベポエチン及びトロンボポエチン)の開始又は用量の増加;
【0168】
そのような方法の一実施形態において、患者は、本明細書で記載されるがんを有すると診断される。そのような方法の別の実施形態では、試料は、対象から採取した腫瘍試料である。そのような一実施形態において、試料は、本明細書に記載の任意の療法の投与前に採取される。別のそのような実施形態では、試料は、本明細書に記載の少なくとも1つの薬剤の投与前に採取される。いくつかの実施形態では、治療を評価するために、本明細書に記載の併用療法による治療中に指定の間隔で腫瘍試料を採取することができる。
【0169】
腫瘍又はがんがKRasG12C変異を含むか否かを決定することは、K-Rasタンパク質をコードするヌクレオチド配列を評価することにより、K-Rasタンパク質のアミノ酸配列を評価することにより、又は推定されるK-Ras変異タンパク質の特性を評価することにより、実施することができる。野生型ヒトK-Rasの配列(例えば受託番号NP203524)は当技術分野で公知である。そのような一実施形態において、本明細書に記載の患者からの試料を、例えば免疫組織化学(IHC)又はNGSシーケンシングを使用してKRasG12C変異について評価する。
【0170】
本明細書に記載の併用療法を投与することによって、KRasG12C変異を含む臓器横断的がんを治療する方法を、本明細書に更に提供する。そのような方法の一実施形態において、該方法は以下を含む:
(a)がんの疑いがあると診断された患者から採取した試料における、KRasG12C変異の有無を測定すること、及び
(b)有効量の本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤とを含む本明細書に記載の併用療法を患者に投与すること。
【0171】
そのような一実施形態において、EGFR阻害剤は、エルロチニブ又はセツキシマブである。そのような一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩は、約50~500mgの量でQDで投与される。別のそのような実施形態において、エルロチニブは、約100mg又は150mgの量でQDで投与される。更に別の実施形態では、第1の21日サイクルの1日目にセツキシマブを約400mg/m2の量で投与し、その後にセツキシマブを約250mg/m2 Q1Wの量で投与する。
【0172】
更に、KRasG12C変異を含む臓器横断的がんを治療する方法であって、
(a)がんの疑いがあると診断された患者から採取した試料における、KRasG12C変異の有無を測定すること、及び
(b)患者に、(i)50mg~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)100又は150mgのエルロチニブを第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、を含む投薬レジメンを含む本明細書に記載の併用療法を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0173】
更に、KRasG12C変異を含む臓器横断的がんを治療する方法であって、
(a)がんの疑いがあると診断された患者から採取した試料における、KRasG12C変異の有無を測定すること、及び
(b)患者に、(i)50mg~500mgの化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与すること、(ii)第1の21日サイクルの1日目に約400mg/m2のセツキシマブを投与し、続いてその後に約250mg/m2のセツキシマブQ1Wを投与することと、を含む投薬レジメンを含む、本明細書に記載の併用療法を投与することを含む方法が本明細書で提供される。
【0174】
本明細書に提供される本発明の一実施形態において、患者は、本明細書に提供される方法による併用療法を用いた治療後に、CRを有すると診断される。本明細書に提供される本発明の一実施形態において、患者は、本明細書に提供される方法による併用療法を用いた治療後に、PRを有すると診断される。本明細書に提供される本発明の一実施形態において、患者は、本明細書に提供される方法による併用療法を用いた治療後に、SDを有すると診断される。
【0175】
本明細書に記載の併用療法を適用することによる、本明細書に記載の患者における腫瘍成長を阻害する方法又は腫瘍退縮を生じる方法もまた、本明細書で提供される。一実施形態において、本明細書に記載の1回以上の21日サイクルで、本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)とを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載のがんを有する患者における腫瘍成長を阻害する方法が、本明細書に提供される。一実施形態において、本明細書に記載の1回以上の21日サイクルで、本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)とを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載のNSCLC、CRC、又は膵臓がんを有する患者における腫瘍成長を阻害する方法が、本明細書に提供される。
【0176】
一実施形態において、本明細書に記載の1回以上の21日サイクルで、本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)とを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載のがんを有する患者における腫瘍退縮を生じさせる又は腫瘍退縮を改善する方法が、本明細書に提供される。一実施形態において、本明細書に記載の1回以上の21日サイクルで、本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)とを投与することを含む併用療法を投与することによって、本明細書に記載のNSCLC、CRC、又は膵臓がんを有する患者における腫瘍退縮を生じさせる又は腫瘍退縮を改善する方法が、本明細書に提供される。
キット
【0177】
本明細書に記載の併用療法は、投与のための本明細書に記載の1つ以上の薬剤を含むキットとして提供され得る。一実施形態において、キットは、本明細書に記載のEGFR阻害剤(例えば、本明細書に記載のエルロチニブ又はセツキシマブ)と組み合わせて投与するための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)を含む。別の実施形態では、キットは、本明細書に記載のEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)と共に包装された化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1のアジピン酸塩)を含み、キットは、各薬剤の別々の製剤化された投与量を含む。
【0178】
また、本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と、EGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)とを含む製造品又はキットも本明細書で提供される。いくつかの例では、製造品は、固形腫瘍(例えば、本明細書に記載の肺がん、CRC又は膵臓がん)を治療するため、又はその進行を遅延させるために、本明細書に記載のEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)を使用するための説明書を含む添付文書を更に含む。そのような一実施形態において、がんはNSCLCである。一実施形態において、製造品は、患者におけるNSCLCを治療するため、又はその進行を遅延させるために、本明細書に記載のEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ)を、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を更に含む。一実施形態において、製造品は、患者における膵臓がんを治療するため、又はその進行を遅延させるために、本明細書に記載のEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ)を、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を更に含む。一実施形態において、製造品は、患者におけるCRCを治療するため、又はその進行を遅延させるために、本明細書に記載のEGFR阻害剤(例えば、セツキシマブ)を、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)と組み合わせて使用するための説明書を含む添付文書を更に含む。
【0179】
いくつかの例では、本明細書に記載のEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)、及び化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)は、同じ容器又は別々の容器に入っている。好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが挙げられる。容器は、ガラス、プラスチック(ポリ塩化ビニル若しくはポリオレフィン等)、又は金属合金(ステンレス鋼若しくはハステロイ等)等の様々な材料から形成され得る。いくつかの例では、容器は、製剤を保持し、容器上のラベル又は容器に関連するラベルは、使用上の指示を示し得る。製造品又はキットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジ、及び使用説明書付きの添付文書を含む、商業的観点及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含み得る。いくつかの例では、製造品は、1つ以上の別の薬剤(例えば、更なる化学療法剤又は抗新生物剤)を更に含む。1つ以上の薬剤に好適な容器としては、例えば、ボトル、バイアル、袋、及びシリンジが挙げられる。
【0180】
本明細書に記載の任意の製造品又はキットは、本明細書に記載の方法のいずれかに従って化合物1又はその薬学的に許容され得る塩(例えば、化合物1アジピン酸塩)及び/又は本明細書に記載のEGFR阻害剤(例えば、エルロチニブ又はセツキシマブ)を患者に投与するための説明書を含み得る。
バイオマーカー
【0181】
一実施形態において、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩によるKRasG12Cのアルキル化が患者において測定される。そのような一実施形態において、測定は、試料を使用して実施され、本明細書で提供されるKRasG12Cのアルキル化について試験される。別の実施形態では、末梢血からのctDNAバイオマーカー(例えば、KRasG12C)の評価を行う。
【0182】
一実施形態において、対になった治療前及び治療中の新鮮な腫瘍生検の分析による、KRAS/MAPK標的遺伝子(例えば、DUSP6、SPRY4)、経路成分(例えば、pERK、pS6)及び関連バイオマーカー(例えば、Ki67)の調節を行う。
実施形態
【0183】
本発明のいくつかの例示的な実施形態を以下に提供する。
【0184】
実施形態番号1:併用療法であって、
(a)本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)EGFR阻害剤と、
を含む、併用療法。
【0185】
実施形態番号2:化合物1がそのアジピン酸塩である、実施形態1に記載の併用療法。
【0186】
実施形態番号3:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される、実施形態1又は2に記載の併用療法。
【0187】
実施形態番号4:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、錠剤又はカプセル剤として経口投与される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の併用療法。
【0188】
実施形態番号5:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が約50mg~500mgの量で投与される、実施形態1~4のいずれか1つに記載の併用療法。
【0189】
実施形態番号6:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、又は800mgの量で投与される、実施形態1~5のいずれか1つに記載の併用療法。
【0190】
実施形態番号7:前記EGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ若しくはアファチニブ、又は抗EGFR抗体である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の併用療法。
【0191】
実施形態番号8:前記EGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、又はアファチニブである、実施形態1~7のいずれか1つに記載の併用療法。
【0192】
実施形態番号9:前記EGFR阻害剤がエルロチニブである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の併用療法。
【0193】
実施形態番号10:エルロチニブが、前記第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される、実施形態9に記載の併用療法。
【0194】
実施形態番号11:前記EGFR阻害剤が、約100mg又は150mg QDの量で投与されるエルロチニブである、実施形態1~10のいずれか1つに記載の併用療法。
【0195】
実施形態番号12:エルロチニブが約100mg QDの量で投与される、実施形態11に記載の併用療法。
【0196】
実施形態番号13:エルロチニブが約150mg QDの量で投与される、実施形態11に記載の併用療法。
【0197】
実施形態番号14:前記EGFR阻害剤が、パニツムマブ又はセツキシマブを含む抗EGFR抗体である、実施形態1~7のいずれか1つに記載の併用療法。
【0198】
実施形態番号15:前記EGFR阻害剤がセツキシマブである、実施形態1~7又は14のいずれか1つに記載の併用療法。
【0199】
実施形態番号16:前記EGFR阻害剤が、前記第1の21日サイクルの1日目に開始するQ1Wで投与されるセツキシマブである、実施形態1~7又は14~15のいずれか1つに記載の併用療法。
【0200】
実施形態番号17:前記EGFR阻害剤が、前記21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、その後に約250mg/m2 Q1Wの量で投与されるセツキシマブである、実施形態1~7又は14~16のいずれか1つに記載の併用療法。
【0201】
実施形態番号18:KRasG12C変異を含む肺がんの治療における使用のための、実施形態1~13のいずれか1つに記載の併用療法。
【0202】
実施形態番号19:前記肺がんが非小細胞肺癌(NSCLC)である、実施形態18に記載の併用療法。
【0203】
実施形態番号20:KRasG12C変異を含む膵臓がんの治療における使用のための、実施形態1~13のいずれか1つに記載の併用療法。
【0204】
実施形態番号21:KRasG12C変異を含む結腸直腸がん(CRC)の治療における使用のための、実施形態1~7又は14~17のいずれか1つに記載の併用療法。
【0205】
実施形態番号22:併用療法であって、
(a)第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)前記第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与されるエルロチニブと、
を含む、併用療法。
【0206】
実施形態番号23:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が約50mg~500mgの量で投与され、エルロチニブが約100mg又は150mgの量で投与される、実施形態22に記載の併用療法。
【0207】
実施形態番号24:KRasG12C変異を含む肺がんの治療における使用のための、実施形態22又は23に記載の併用療法。
【0208】
実施形態番号25:KRasG12C変異を含む膵臓がんの治療における使用のための、実施形態22又は23に記載の併用療法。
【0209】
実施形態番号26:併用療法であって、
(a)第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)前記第1の21日サイクルの1日目に開始するQ1Wで投与されるセツキシマブと、
を含む、併用療法。
【0210】
実施形態番号27:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が約50mg~500mgの量で投与され、セツキシマブが、前記21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、その後に約250mg/m2 Q1Wの量で投与される、実施形態26に記載の併用療法。
【0211】
実施形態番号28:KRasG12C変異によって媒介される肺がんを有する患者における、そのような肺がんを治療する方法であって、
(a)第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)EGFR阻害剤と、
を含む、有効量の併用療法を投与することを含む、方法。
【0212】
実施形態番号29:前記肺がんがNSCLCである、実施形態28に記載の方法。
【0213】
実施形態番号30:前記肺がんが、腺癌、扁平上皮肺癌、又は大細胞肺癌である、実施形態28に記載の方法。
【0214】
実施形態番号31:前記EGFR阻害剤が、エルロチニブ、ゲフィチニブ、オシメルチニブ、ダコミチニブ、又はアファチニブである、実施形態28~30のいずれか1つに記載の方法。
【0215】
実施形態番号32:前記EGFR阻害剤がエルロチニブである、実施形態28~31のいずれか1つに記載の方法。
【0216】
実施形態番号33:前記EGFR阻害剤が、前記第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与されるエルロチニブである、実施形態28~32のいずれか1つに記載の方法。
【0217】
実施形態番号34:前記EGFR阻害剤が、約150mg QDの量で投与されるエルロチニブである、実施形態28~33のいずれか1つに記載の方法。
【0218】
実施形態番号35:結腸直腸がん(CRC)を有する患者におけるKRasG12C変異によって媒介されるCRCを治療する方法であって、
(a)第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)EGFR阻害剤と、
を含む、有効量の併用療法を投与することを含む、方法。
【0219】
実施形態番号36:前記EGFR阻害剤が、パニツムマブ又はセツキシマブを含む抗EGFR抗体である、実施形態35に記載の方法。
【0220】
実施形態番号37:前記EGFR阻害剤がセツキシマブである、実施形態35又は36に記載の方法。
【0221】
実施形態番号38:前記EGFR阻害剤が、前記21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、その後に約250mg/m2 Q1Wの量で投与されるセツキシマブである、実施形態35~37のいずれか1つに記載の方法。
【0222】
実施形態番号39:KRasG12C変異によって媒介される膵臓がんを有する患者における、そのような膵臓がんを治療する方法であって、
(a)第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与される本明細書に記載の化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、
(b)EGFR阻害剤と、
を含む、有効量の併用療法を投与することを含む、方法。
【0223】
実施形態番号40:前記EGFR阻害剤がエルロチニブである、実施形態39に記載の方法。
【0224】
実施形態番号41:前記EGFR阻害剤が、前記第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与されるエルロチニブである、実施形態39又は40に記載の方法。
【0225】
実施形態番号42:前記EGFR阻害剤が、約100g QDの量で投与されるエルロチニブである、実施形態39~41のいずれか1つに記載の方法。
【0226】
実施形態番号43:化合物1がそのアジピン酸塩である、実施形態28~42のいずれか1つに記載の方法。
【0227】
実施形態番号44:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、錠剤又はカプセル剤として経口投与される、実施形態28~43のいずれか1つに記載の方法。
【0228】
実施形態番号45:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が約50mg~500mgの量で投与される、実施形態28~44のいずれか1つに記載の方法。
【0229】
実施形態番号46:化合物1又はその薬学的に許容され得る塩が、約100mg、200mg、300mg、400mg、500mg、600mg、700mg、又は800mgの量で投与される、実施形態28~45のいずれか1つに記載の方法。
【0230】
実施形態番号47:前記患者が、感受性EGFR変異、ALK再構成、ROS1再構成、BRAF V600E変異、NTRK融合、及びRET融合、又はそれらの組合せからなる群から選択される変異を有しないと診断される、実施形態28~46のいずれか1つに記載の方法。
【0231】
実施形態番号48:本明細書に記載の肺がん、CRC、又は膵臓がんの治療のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤とを含む、併用療法の使用。
【0232】
実施形態番号49:前記がんが肺がん又は膵臓がんであり、前記EGFR阻害剤がエルロチニブであり、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)エルロチニブを前記第1の21日サイクルの1~21日目に投与することと、を含む投薬レジメンを更に含む、実施形態48に記載の使用。
【0233】
実施形態番号50:前記がんがCRCであり、前記EGFR阻害剤がセツキシマブであり、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)前記21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、その後に約250mg/m2 Q1Wの量で投与することと、を含む投薬レジメンを更に含む、実施形態48に記載の使用。
【0234】
実施形態番号51:肺がん、CRC又は膵臓がんを治療するための医薬の製造のための、化合物1又はその薬学的に許容され得る塩と、EGFR阻害剤とを含む、併用療法の使用。
【0235】
実施形態番号52:前記がんが肺がん又は膵臓がんであり、前記EGFR阻害剤がエルロチニブであり、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)エルロチニブを前記第1の21日サイクルの1~21日目に投与することと、を含む投薬レジメンを更に含む、実施形態51に記載の使用。
【0236】
実施形態番号53:前記がんがCRCであり、前記EGFR阻害剤がセツキシマブであり、(i)化合物1又はその薬学的に許容され得る塩を、第1の21日サイクルの1~21日目にQDで投与することと、(ii)前記21日サイクルの1日目に約400mg/m2の量で、その後に約250mg/m2 Q1Wの量で投与することと、を含む投薬レジメンを更に含む、実施形態51に記載の使用。
【0237】
以下の実施例を、限定ではなく、例示として提示する。
【実施例】
【0238】
実施例1:化合物1とエルロチニブとの組合せ
【0239】
カーステンラット肉腫ウイルス癌遺伝子ホモログ(KRAS)遺伝子は、細胞増殖及び生存シグナル伝達の媒介において中心的役割を果たすGTPアーゼをコードする。グリシン12(G12)、グリシン13(G13)及びグルタミン61(Q61)におけるアミノ酸置換をもたらすKRASにおける変異は、腫瘍において共通しており、腫瘍形成及び浸潤性の腫瘍成長の維持に関連する(Der et al.Nature 1983;304(5926):507-13;Parada et al.Nature 1982;297(5866):474-8;Santos et al.Nature 1982;298(5872):343-7;Taparowsky et al.Nature 1982;300(5894):762-5;Capon et al.Nature 1983;304(5926):507-13)。KRASG12C変異は、非小細胞肺がん(NSCLC)、結腸直腸がん、及び他の腫瘍型において一般的である(Prior et al.Cancer Res 2012;72(10):2457-67;Vogelestein et al.Science 2013;339(6127):1546-58)。
【0240】
化合物1は、KRASG12Cを選択的に標的とし、KRASG12Cの共有結合性の及び不可逆的な阻害をもたらす経口抗がん剤である。化合物1は、KRAS、KRASの野生型形態、又はRASファミリーの他のメンバーにおける他の突然変異を標的としない。化合物1によるKRASG12C陽性細胞又は腫瘍の治療は、KRAS経路シグナル伝達の減少、細胞/腫瘍細胞増殖の抑制、及びアポトーシスの誘導をもたらす。
【0241】
NCI-H2122(KRASG12C)NSCLC異種移植片腫瘍モデルにおいて、化合物1(50mg/kg、PO、QD)単独で又はエルロチニブ(50mg/kg、PO、QD)と組み合わせた化合物1のin vivo抗腫瘍有効性を評価した。単剤の化合物1の治療は腫瘍静止(93%腫瘍成長阻害(TGI))をもたらしたが、エルロチニブによる単剤治療はわずか48%のTGIの腫瘍成長阻害をもたらすにすぎなかった。化合物1とエルロチニブとの組合せにより抗腫瘍効果の改善(117%TGI)が観察された。
【0242】
試験材料.化合物1(遊離塩基)を、0.5%(w/v)メチルセルロース中8.333mg/mLの濃度(遊離塩基当量として表す)の溶液として提供した。エルロチニブ(Tarceva(商標))を、7.5%Captisol中12.5mg/mLの濃度(遊離塩基当量として表す)の溶液として提供した。全ての濃度を、この研究で使用したヌードマウス系統の平均体重25gに基づいて計算した。ビヒクル対照は、0.5%(w/v)メチルセルロース及び0.5%(w/v)メチルセルロース/0.2%Tween 80(商標)であった。試験薬剤を、4℃~7℃の温度範囲を維持するように設定された冷蔵庫に保存した。全ての治療及びビヒクル対照の投薬溶液を3週間にわたって週に1回調製した。
【0243】
平均体重が24.5gの9~10週齢の雌ヌードマウスを、Charles River Laboratory(カリフォルニア州ホリスター)から得た。マウスを標準的なげっ歯類マイクロ-アイソレータケージに収容し、腫瘍細胞移植の少なくとも3日前に研究条件に順応させた。健康であるように見え、明らかな異常がない動物のみを研究に使用した。
【0244】
ヒト非小肺癌NCI-H2122細胞を、American Type Culture Collection(メリーランド州ロックビル)から入手し、これはK-RASにG12C発がん性変異を持っていた。細胞をin vitroで培養し、対数増殖-期に採取し、マトリゲル(BD Biosciences;カリフォルニア州サンノゼ)を1:1の比で含有するハンクス平衡塩類溶液(HBSS)に再懸濁した。次いで、160匹のヌードマウスの右側胸部の皮下に細胞を移植した。各マウスに100μLの体積で10×106個の細胞を注射した。腫瘍を、平均腫瘍体積150~290mm3に達するまで監視した。マウスを腫瘍体積に基づいて10の群に分配し、1群当たりn=10匹のマウスとした。10個全ての群にわたる平均腫瘍体積は、投与開始時に213mm3であった。
【0245】
マウスに、ビヒクル(150μLの0.5%MC及び100μLの0.5%MCT)、50mg/kgの化合物1(遊離-塩基当量として表される)、又は50mg/kgのエルロチニブを与えた。全ての治療を、21日間にわたって強制経口投与によって毎日(QD)経口(PO)投与した。腫瘍サイズ及びマウス体重を記録し、腫瘍体積が2000mm3を超えたとき、又は体重減少が開始体重の≧20%であったとき、マウスを直ちに安楽死させた。
【0246】
【0247】
腫瘍体積を、Ultra Cal-IVノギス(モデル54-10-111;Fred V.Fowler Co.;マサチューセッツ州ニュートン)を使用して二次元(長さ及び幅)で測定し、Excel、バージョン14.2.5(Microsoft Corporation;ワシントン州レドモンド)を使用して分析した。腫瘍体積を以下の式を用いて計算した:
腫瘍サイズ(mm3)=(より長い測定×より短い測定2)×0.5
【0248】
抗腫瘍応答が認められ、部分奏効(PR)は初期腫瘍体積からの>50%の減少として定義され、完全奏効(CR)は腫瘍体積の100%の減少として定義された。
【0249】
抗腫瘍効果を、化合物1(50mg/kg、PO、QD)単独による治療の後のヒトNCI-H2122 NSCLC異種移植片を有するヌードマウスにおいて、単剤エルロチニブ(50mg/kg、PO、QD)、又は組み合わせた場合と比較して評価した。単剤治療は腫瘍成長阻害(TGI)をもたらし、ビヒクル対照に対して、化合物1は93%のTGIをもたらし、エルロチニブは48%のTGIをもたらした(表2及び
図1を参照)。化合物1とエルロチニブとの組合せで抗腫瘍薬の改善が観察され、117%のTGI及び3/10の部分奏効(PR)が得られた(
図2)。
【0250】
【表2】
CI=信頼区間;CR=完全奏効;PR=部分奏効;QD=1日1回;TI=腫瘍発生率。
ビヒクル=0.5%(w/v)メチルセルロース;0.5%(w/v)メチルセルロース/0.2%Tween 80(商標)。
【0251】
NCI-H2122ヒトNSCLC異種移植腫瘍モデルにおいて、併用抗腫瘍有効性試験を実施し、KRASG12C阻害剤である化合物1が単剤として腫瘍成長(93%TGI、PRなし)を抑制することを実証した。EGFR阻害剤であるエルロチニブを用いた単剤活性も腫瘍成長阻害をもたらした(48%TGI、PRなし)。化合物1とエルロチニブとの組合せは、抗腫瘍効果の改善をもたらした(117%TGI、3/10のPR)。これらのデータは、KRASG12C阻害剤である化合物1とエルロチニブとの組合せが、NCI-H2122ヒトNSCLCヒト異種移植片腫瘍モデルにおいて部分的な腫瘍退縮につながる抗腫瘍活性の改善をもたらしたことを実証する。
【0252】
実施例2:雌BALB/cヌードマウスにおけるPDX CR6256結腸直腸がん異種移植モデルにおける化合物1及びセツキシマブの組合せ
【0253】
化合物1とセツキシマブとのin vivo治療有効性の組合せを、雌BALB/cヌードマウスにおける皮下PDX CR6256結腸がん異種移植モデルの治療において前臨床的に評価した。
【0254】
雌のBALB/cヌードマウスを標準的なポリスルホンIVCケージに収容した。マウスは最初の接種時に5~9週齢であった。化合物1を30mg/kg QDで21日間PO投与した。セツキシマブを20mg/kg BIWで3週間腹腔内(IP)投与した。
【0255】
ストックマウス由来の腫瘍断片を採取し、マウスへの接種に使用した。腫瘍発生のため、各マウスの右後側腹部に原発性ヒト腫瘍異種移植モデルCR6256腫瘍断片(直径2~3mm)を皮下接種した。腫瘍細胞接種後、罹患率及び死亡率について動物を毎日確認した。日常的なモニタリングの間、動物を、運動性、食物及び水の消費、体重の増加/減少(体重は無作為化後に週に2回測定される)、目/毛のつやの消失(matting)、及び任意の他の異常等の挙動に対する腫瘍成長及び治療の影響について確認した。個々の動物について、死亡率及び観察された臨床徴候を詳細に記録した。
【0256】
腫瘍体積を、ノギスを使用して二次元で無作為化した後、週に2回測定し、体積を、以下の式を使用してmm3で表した:V=(L×W×W)/2、式中、Vは腫瘍体積であり、Lは腫瘍長さ(最長腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍幅(Lに垂直な最長腫瘍寸法)である。投薬、並びに腫瘍及び体重の測定をクリーンベンチで行った。体重及び腫瘍体積を、Study Director(商標)ソフトウェア(バージョン3.1.399.19)を使用して測定した。
【0257】
腫瘍成長阻害(TGI):TGI%は抗腫瘍活性の指標であり、以下のように表される:TGI(%)=100×(1-T/C)。T及びCは、それぞれ所与の日における治療群及び対照群の平均腫瘍体積(又は重量)である。
【0258】
化合物1(30mg/kg、経口、1日1回)単独の又はセツキシマブと組み合わせた化合物1のin vivo抗腫瘍効果を、CR6256(KRasG12C)結腸直腸患者由来腫瘍モデルにおいて評価した。単剤の化合物1の治療は腫瘍静止から退縮をもたらした(108%腫瘍成長阻害[TGI])が、単剤セツキシマブは中程度からわずかな腫瘍成長阻害を示した(74%)。化合物1とセツキシマブとの組合せは、単剤と比較して改善された併用有効性(133%)を示した。
【0259】
【0260】
実施例3:雌NOD-SCIDマウスにおけるPDXがんモデルCR5048における化合物1及びセツキシマブの組合せ。
【0261】
化合物1とセツキシマブとのin vivo治療有効性の組合せを、雌NOD-SCIDマウスにおけるPDXがんモデルCR5048の治療において前臨床的に評価した。動物を、平均腫瘍体積が185.67 mm3に達した0日目に無作為化し、1日目に投与を開始した。動物に、化合物1を毎日(QD)21日間、並びにセツキシマブをBIW×3.5週間(7回の総用量)、単独で及び組み合わせて投薬した。全ての動物を最終投与の8時間後(試験21日目)に屠殺した。試験期間中、動物を週2回測定した。試験終了時に、試験中の全ての動物から腫瘍及び血液を収集した。腫瘍を半分に分割し、両方の小片を別々のチューブ内の液体窒素中で急速凍結した。心臓穿刺によって血液を収集し、血漿に処理した。
【0262】
CR5048(KRasG12C)結腸直腸患者由来腫瘍モデルにおける化合物1(30mg/kg、経口、1日1回)単独又はセツキシマブと組み合わせたin vivo抗腫瘍効果を測定した。単剤の化合物1の治療は腫瘍成長阻害(90%腫瘍成長阻害[TGI])をもたらしたが、単剤セツキシマブ治療は中程度から軽微な腫瘍成長阻害(59%TGI)を示した。化合物1とセツキシマブとの組合せは、単剤と比較して改善された併用有効性(110%)を示した。
【0263】
【0264】
実施例4:雌BALB/cヌードマウスにおけるPDX CR6243結腸直腸がん異種移植モデルにおける化合物1及びセツキシマブの組合せ
【0265】
化合物1とセツキシマブとのin vivo治療有効性の組合せを、雌BALB/cヌードマウスにおける皮下PDX CR6243結腸がん異種移植モデルの治療において前臨床的に評価した。
【0266】
雌のBALB/cヌードマウスを標準的なポリスルホンIVCケージに収容した。マウスは初回接種時に5~9週間であった。化合物1を30mg/kg QDで21日間PO投与した。セツキシマブを20mg/kg BIWで3週間腹腔内(IP)投与した。
【0267】
ストックマウス由来の腫瘍断片を採取し、マウスへの接種に使用した。腫瘍発生のため、各マウスの右後側腹部に原発性ヒト腫瘍異種移植モデルCR6243腫瘍断片(直径2~3mm)を皮下接種した。
【0268】
平均腫瘍サイズがおよそ192mm3に達したときに無作為化を開始した。腫瘍細胞接種後、罹患率及び死亡率について動物を毎日確認した。日常的なモニタリングの間、動物を、運動性、食物及び水の消費、体重の増加/減少(体重は無作為化後に週に2回測定される)、目/毛のつやの消失(matting)、及び任意の他の異常等の挙動に対する腫瘍成長及び治療の影響について確認した。個々の動物について、死亡率及び観察された臨床徴候を詳細に記録した。
【0269】
腫瘍体積を、ノギスを使用して二次元で無作為化した後、週に2回測定し、体積を、以下の式を使用してmm3で表した:V=(L×W×W)/2、式中、Vは腫瘍体積であり、Lは腫瘍長さ(最長腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍幅(Lに垂直な最長腫瘍寸法)である。投薬、並びに腫瘍及び体重の測定をクリーンベンチで行った。体重及び腫瘍体積を、Study Director(商標)ソフトウェア(バージョン3.1.399.19)を使用して測定した。
【0270】
腫瘍成長阻害(TGI):TGI%は抗腫瘍活性の指標であり、以下のように表される:TGI(%)=100×(1-T/C)。T及びCは、それぞれ所与の日における治療群及び対照群の平均腫瘍体積(又は重量)である。
【0271】
CR6243(KRASG12C)結腸直腸患者由来腫瘍モデルにおける化合物1(30mg/kg、経口、1日1回)単独の又はセツキシマブと組み合わせたin vivo抗腫瘍有効性。単剤の化合物1の治療は腫瘍静止から退縮をもたらした(89%腫瘍成長阻害[TGI])が、単剤セツキシマブは中程度からわずかな腫瘍成長阻害を示した(47%TGI)。化合物1とセツキシマブとの組合せは、単剤と比較して改善された併用有効性(104%)を示した。
【0272】
【0273】
実施例5:雌BALB/cヌードマウスにおけるPDX CR6927結腸直腸がん異種移植モデルにおける化合物1及びセツキシマブの組合せ
【0274】
化合物1とセツキシマブとのin vivo治療有効性の組合せを、雌BALB/cヌードマウスにおける皮下PDX CR6927結腸がん異種移植モデルの治療において前臨床的に評価した。
【0275】
雌のBALB/cヌードマウスを標準的なポリスルホンIVCケージに収容した。マウスは初回接種時に5~9週間であった。化合物1を30mg/kg QDで21日間PO投与した。セツキシマブを20mg/kg BIWで3週間腹腔内(IP)投与した。
【0276】
ストックマウス由来の腫瘍断片を採取し、マウスへの接種に使用した。腫瘍発生のため、各マウスの右後側腹部に原発性ヒト腫瘍異種移植モデルCR6927腫瘍断片(直径2~3mm)を皮下接種した。
【0277】
平均腫瘍サイズがおよそ194mm3に達したときに無作為化を開始した。腫瘍細胞接種後、罹患率及び死亡率について動物を毎日確認した。日常的なモニタリングの間、動物を、運動性、食物及び水の消費、体重の増加/減少(体重は無作為化後に週に2回測定される)、目/毛のつやの消失(matting)、及び任意の他の異常等の挙動に対する腫瘍成長及び治療の影響について確認した。個々の動物について、死亡率及び観察された臨床徴候を詳細に記録した。
【0278】
腫瘍体積を、ノギスを使用して二次元で無作為化した後、週に2回測定し、体積を、以下の式を使用してmm3で表した:V=(L×W×W)/2、式中、Vは腫瘍体積であり、Lは腫瘍長さ(最長腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍幅(Lに垂直な最長腫瘍寸法)である。投薬、並びに腫瘍及び体重の測定をクリーンベンチで行った。体重及び腫瘍体積を、Study Director(商標)ソフトウェア(バージョン3.1.399.19)を使用して測定した。
【0279】
腫瘍成長阻害(TGI):TGI%は抗腫瘍活性の指標であり、以下のように表される:TGI(%)=100×(1-T/C)。T及びCは、それぞれ所与の日における治療群及び対照群の平均腫瘍体積(又は重量)である。
【0280】
CR6927(KRASG12C)結腸直腸患者由来腫瘍モデルにおける化合物1(30mg/kg、経口、1日1回)単独の又はセツキシマブと組み合わせたin vivo抗腫瘍有効性。単剤の化合物1及びセツキシマブ抗腫瘍薬(それぞれ29%及び10%の腫瘍成長阻害[TGI])。化合物1とセツキシマブとの組合せは、単剤と比較して改善された併用有効性(70%)をもたらした。試験した全ての用量及び組合せは、体重及び全体的な動物症状の最小変化に基づいて許容された。
【0281】
【0282】
実施例6:雌BALB/cヌードマウスにおけるPDX CR2528結腸直腸がん異種移植モデルにおける化合物1及びセツキシマブの組合せ
【0283】
化合物1とセツキシマブとのin vivo治療有効性の組合せを、雌BALB/cヌードマウスにおける皮下PDX CR2528結腸がん異種移植モデルの治療において前臨床的に評価した。
【0284】
雌のBALB/cヌードマウスを標準的なポリスルホンIVCケージに収容した。マウスは初回接種時に8~10週間であった。化合物1を30mg/kg QDで21日間PO投与した。セツキシマブを20mg/kg BIWで3週間腹腔内(IP)投与した。
【0285】
ストックマウス由来の腫瘍断片を採取し、マウスへの接種に使用した。腫瘍発生のため、各マウスの右後側腹部に原発性ヒト腫瘍異種移植モデルCR2528腫瘍断片(直径2~3mm)を皮下接種した。
【0286】
平均腫瘍サイズがおよそ202mm3に達したときに無作為化を開始した。腫瘍細胞接種後、罹患率及び死亡率について動物を毎日確認した。日常的なモニタリングの間、動物を、運動性、食物及び水の消費、体重の増加/減少(体重は無作為化後に週に2回測定される)、目/毛のつやの消失(matting)、及び任意の他の異常等の挙動に対する腫瘍成長及び治療の影響について確認した。個々の動物について、死亡率及び観察された臨床徴候を詳細に記録した。
【0287】
腫瘍体積を、ノギスを使用して二次元で無作為化した後、週に2回測定し、体積を、以下の式を使用してmm3で表した:V=(L×W×W)/2、式中、Vは腫瘍体積であり、Lは腫瘍長さ(最長腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍幅(Lに垂直な最長腫瘍寸法)である。投薬、並びに腫瘍及び体重の測定をクリーンベンチで行った。体重及び腫瘍体積を、Study Director(商標)ソフトウェア(バージョン3.1.399.19)を使用して測定した。
【0288】
腫瘍成長阻害(TGI):TGI%は抗腫瘍活性の指標であり、以下のように表される:TGI(%)=100×(1-T/C)。T及びCは、それぞれ所与の日における治療群及び対照群の平均腫瘍体積(又は重量)である。
【0289】
CR2528(KRASG12C)結腸直腸患者由来腫瘍モデルにおける化合物1(30mg/kg、経口、1日1回)単独の又はセツキシマブと組み合わせたin vivo抗腫瘍有効性。単剤の化合物1の治療は腫瘍静止をもたらした(65%腫瘍成長阻害[TGI])が、単剤セツキシマブは中程度の増殖阻害を示した(40%TGI)。化合物1とセツキシマブとの組合せは、単剤と比較して改善された併用有効性(117%TGI)をもたらした。試験した全ての用量及び組合せは、体重及び全体的な動物症状の最小変化に基づいて許容された。
【0290】
【0291】
実施例7:雌BALB/cヌードマウスにおけるPDX CR1451結腸直腸がん異種移植モデルにおける化合物1及びセツキシマブの組合せ
【0292】
化合物1とセツキシマブとのin vivo治療有効性の組合せを、雌BALB/cヌードマウスにおける皮下PDX CR1451結腸がん異種移植モデルの治療において前臨床的に評価した。
【0293】
雌のBALB/cヌードマウスを標準的なポリスルホンIVCケージに収容した。マウスは初回接種時に5~9週間であった。化合物1を30mg/kg QDで21日間PO投与した。セツキシマブを20mg/kg BIWで3週間腹腔内(IP)投与した。
【0294】
ストックマウス由来の腫瘍断片を採取し、マウスへの接種に使用した。腫瘍発生のため、各マウスの右後側腹部に原発性ヒト腫瘍異種移植モデルCR1451腫瘍断片(直径2~3mm)を皮下接種した。
【0295】
平均腫瘍サイズがおよそ182mm3に達したときに無作為化を開始した。腫瘍細胞接種後、罹患率及び死亡率について動物を毎日確認した。日常的なモニタリングの間、動物を、運動性、食物及び水の消費、体重の増加/減少(体重は無作為化後に週に2回測定される)、目/毛のつやの消失(matting)、及び任意の他の異常等の挙動に対する腫瘍成長及び治療の影響について確認した。個々の動物について、死亡率及び観察された臨床徴候を詳細に記録した。
【0296】
腫瘍体積を、ノギスを使用して二次元で無作為化した後、週に2回測定し、体積を、以下の式を使用してmm3で表した:V=(L×W×W)/2、式中、Vは腫瘍体積であり、Lは腫瘍長さ(最長腫瘍寸法)であり、Wは腫瘍幅(Lに垂直な最長腫瘍寸法)である。投薬、並びに腫瘍及び体重の測定をクリーンベンチで行った。体重及び腫瘍体積を、Study Director(商標)ソフトウェア(バージョン3.1.399.19)を使用して測定した。
【0297】
腫瘍成長阻害(TGI):TGI%は抗腫瘍活性の指標であり、以下のように表される:TGI(%)=100×(1-T/C)。T及びCは、それぞれ所与の日における治療群及び対照群の平均腫瘍体積(又は重量)である。
【0298】
CR1451(KRASG12C)結腸直腸患者由来腫瘍モデルにおける化合物1(30mg/kg、経口、1日1回)単独の又はセツキシマブと組み合わせたin vivo抗腫瘍有効性。単剤の化合物1の治療は腫瘍静止をもたらした(64%腫瘍成長阻害[TGI])が、単剤セツキシマブは増殖阻害の遅延を示した(48%TGI)。化合物1とセツキシマブとの組合せは、単剤と比較して改善された併用有効性(83%TGI)をもたらした。試験した全ての用量及び組合せは、体重及び全体的な動物症状の最小変化に基づいて許容された。
【0299】
【0300】
実施例8:KRASは、がんの最大25%において最も頻繁に変異した癌遺伝子であり、標準治療の選択に対する耐性及び全体的な予後不良に関連している。選択的阻害剤は、RAS/MAPK経路の他のノードを標的とする抗がん療法として開発されているが、KRAS癌タンパク質は、スイッチIIポケット(Ostrem,et al.Nature 2013;503:548-51)の最近の発見までは薬にならないと考えられていた。この知見により、KRAS、具体的にはKRASG12C変異を標的とすることを目的とする共有結合性小分子阻害剤が初期の臨床開発で評価されている。
【0301】
他のKRASG12C阻害剤.AMG 510(ソトラシブ)は、KRASG12Cを、その不活性なGDP結合状態でロックすることによって不可逆的に阻害する小分子である。AMG-510は現在、進行中の臨床研究で調査されている。これらの研究の患者は、研究に入る前に、中央値3(0~11の範囲)の転移性疾患に対する抗がん療法の先行ラインを受けた。全体として、治療関連有害事象が患者の56.6%で報告され、患者の11.6%が治療関連のグレード3又は4の事象を経験し、患者の1.6%が治療関連の重篤な有害事象を経験した。複数の患者で発生するグレード3の事象としては、ALT増加、下痢、貧血、AST増加、及びアルカリホスファターゼ増加が挙げられる。1人の患者はグレード4の治療関連ALT増加を経験し、1人の患者はグレード3の治療関連のALT及びASTの増加のためにAMG 510を中止した。抗腫瘍活性が報告されているが、AMG-510に関連する有害事象が存在する。患者は、NSCLC患者の32.2%において確認された客観的奏効を有し、奏効期間の中央値は患者において10.9ヶ月(1.1+から13.6の範囲)であった。PFS中央値は、NSCLC患者において6.3ヶ月(0.0+から14.9+の範囲)であると報告された(Hong et al.New Eng J Med 2020;383:1207-17)。
【0302】
MRTX849は、KRASG12C変異を有する進行性固形腫瘍を有する患者の臨床研究において評価されている変異選択的小分子KRASG12C阻害剤である。最近、合計17人の患者(NSCLC患者10人及びCRC患者4人を含む)からのデータが報告され、そのうち12人の患者が少なくとも1回の治療中の腫瘍評価を受けた(NSCLC患者6人及びCRC患者4人を含む)。ほとんどの患者は、研究参加前に3回以上の事前の抗がんレジメンを受けていた(17人中12人の患者、71%)。以下の治療関連有害事象が患者の>10%で報告された:下痢、悪心、AST増加、嘔吐、疲労、ALT増加、クレアチニン増加、腹部膨満、腹痛、ALP増加、貧血、食欲不振、脱水、口渇、味覚異常、呼吸困難、QT延長、低マグネシウム血症、及び発疹。グレード3の事象には、疲労、食欲不振、及び呼吸困難(それぞれ1名の患者)が含まれた。PRによる抗腫瘍活性が、評価された全ての用量レベルにわたって、NSCLC患者6名中3名及びCRC患者4名中1名において達成された(Jaenne et al.AACR-NCI-EORTC International Conference on Molecular Targets and Cancer Therapeutics October 2019)。
【0303】
化合物1.KRASG12Cに対する化合物1の特異性は、その作用機序と共にKRASG12Cの強力かつ不可逆的な阻害をもたらし、治療関連毒性を最小限に抑えながら抗腫瘍活性を最大化する広範な治療指数を可能にすると予想される。KRASG12C陽性がんを目的とした特異的療法は、KRASG12Cを持つ進行期がんを有する患者にとってより忍容性が高く効果的な治療選択肢を提供し得る。
【0304】
in vitro及びin vivoの薬理学研究は、化合物1がKRASG12Cの非常に強力かつ選択的な共有結合阻害剤であり、KRASG12C陰性がん細胞株よりもKRASG12C陽性がん細胞株に対する増殖阻害において20,000倍を超える選択性を示すことを実証している。化合物1を用いた作用機序研究は、DUSP6及びSPRY4等のKRAS標的遺伝子に加えて、リン酸化(p)ERK及びpS6等の下流MAPK経路成分が阻害され、KRASG12C陽性がん細胞株においてアポトーシス誘導が観察されることを実証している。更に、化合物1は強力な単剤活性を有し、KRASG12C陽性肺腫瘍のいくつかの非臨床異種移植モデルにおいて腫瘍成長を阻害する。これらのin vitro及びin vivo薬理研究は、局所進行性又は転移性のKRASG12C陽性固形腫瘍を有する患者の治療のための化合物1の使用を支持する。
【0305】
今日までに完了した非臨床毒物学研究の結果は、化合物1の毒性プロファイルの堅固な特徴付けを提供し、がんを有する患者における化合物1の投与を支持する。化合物1の潜在的な単回用量及び反復用量の経口毒性、遺伝毒性、光毒性及び安全性薬理を評価するために、包括的な非臨床毒性研究を完了した。KRASG12C変異は健康な動物には存在しないため、KRASG12C阻害に薬理学的に関連する非臨床種はない。
【0306】
セツキシマブは、ヒト上皮増殖因子受容体(EGFR)の細胞外ドメインに特異的に結合する組換えヒト/マウスキメラモノクローナル抗体である。セツキシマブは、ヒトIgG1重鎖定常領域及びカッパ軽鎖定常領域を有するマウス抗EGFR抗体のFv領域で構成され、152kDaのおおよその分子量を有する。セツキシマブは、哺乳動物(マウス骨髄腫)細胞培養において産生される。一実施形態において、セツキシマブは、ERBITUX(登録商標)の商品名で市販されている。
【0307】
セツキシマブは、転移性結腸直腸がん及び頭頸部がんを含むいくつかの異なる固形腫瘍型の治療について承認されている。エルロチニブは、非小細胞肺がん(NSCLC)、特に、少なくとも1つの事前の化学療法レジメン後の進行後に一次、維持若しくは二次、又はそれ以上の治療を受ける、FDA承認試験によって検出される上皮増殖因子受容体(EGFR)エクソン19の欠失又はエクソン21の置換変異(L858R)を有するNSCLC腫瘍の治療について承認されている。エルロチニブはまた、ゲムシタビンと組み合わせた局所進行性、切除不能又は転移性の膵臓がんの第一選択治療についても承認されている。
【0308】
単剤としてのAMG 510及びMRTX849の進行中の研究からの初期第I相臨床データは、KRASG12C阻害剤が忍容性であり、転移性のNSCLC及びCRCを有する患者において有望な抗腫瘍活性を有することを示した(Janne et al.2019;Hong et at.New Eng J Med 2020;383:1207-17)。しかしながら、このクラスの阻害剤を単剤として用いてNSCLC及びCRCにおいて報告される抗腫瘍活性及び耐久性を改善する一方で、更に重要ないことには、それらの忍容可能な安全性プロファイルを保持するという大きな満たされていない必要性が依然として存在する。
【0309】
EGFR阻害剤との併用療法の根拠.いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、RTK-RAS-MAPK経路の機構的理解に基づいて、RTK阻害剤によるKRASG12Cの上流の阻害は、KRASG12C阻害を潜在的に増強し得ると仮定されている。細胞株における実施例1に記載される非臨床研究は、野生型EGFRの活性を阻害する小分子又は抗EGFR抗体のいずれかによるEGFR阻害が、KRASG12C阻害を相乗的に増強したことを示すことによってこの戦略を裏付けている(Lito et al.Science 2016;351:604-8;Canon et al.Nature 2019;575:217-23;Amodio et al.Cancer Disc 2020;10:1129-39;Hallin et al.Cancer Disc 2020;10:54-71)。EGFR阻害がKRASG12C阻害剤の効果を増強する可能性のある機構には、ヌクレオチド交換を減少させてKRASG12CのGDP結合状態を促進すること(Lito et al.2016)、及びKRASG12C阻害時のRTKシグナル伝達のリバウンド増強を減少させること(Amodio et al.2020)が含まれる。
【0310】
セツキシマブとの組合せin vivoマウス研究では、化合物1とセツキシマブとの組合せを使用したCRC PDXによるマウスの治療は、化合物1単独で見られる腫瘍成長を超えて腫瘍成長を減少させた。非臨床的証拠(
図3~
図8及び実施例2~実施例7を参照)は、CRCにおけるEGFR阻害とKRAS
G12C阻害との間の相乗効果を示す。化合物1と組み合わせたセツキシマブの開始用量は、21日サイクルにおいて、1日目の120分間のIV注入としての400mg/m
2の初回用量、続いて毎週60分間のIV注入としての250mg/m
2である。薬剤の潜在的な重複毒性としては、胃腸毒性及び肝臓トランスアミナーゼの上昇が挙げられる。
【0311】
エルロチニブとの組合せ複数のKRAS
G12C陽性細胞株において、エルロチニブと組み合わせた化合物1は、化合物1単独で見られる効果よりも大きいpERK及びpS6の対応する減少と共に、細胞増殖の阻害に対する相乗効果を示した。in vivoマウス研究では、NSCLC異種移植片の腫瘍成長におけるより大きな低下が、化合物1単独と比較して、化合物1及びエルロチニブにより達成された。非臨床的証拠(
図1及び
図2を参照)は、NSCLCにおけるEGFR阻害とKRAS
G12C阻害との間の相乗効果を示す。化合物1と組み合わせたエルロチニブの開始用量は、21日サイクルにおいて150mgの経口QDとなる。薬剤の潜在的な重複毒性としては、胃腸毒性及び肝臓トランスアミナーゼの上昇が挙げられる。
【0312】
バイオマーカー.この研究は、単剤としての、又はEGFR阻害剤と組み合わせた化合物1に対する応答を予測する(すなわち、予測バイオマーカー)、活性の早期代替物、より重症な疾患状態への進行に関連する(すなわち、予後バイオマーカー)、KRASG12C阻害剤(例えば、化合物1)に対する獲得耐性に関連する、有害事象の発生に対する感受性に関連する、又は有害事象の監視若しくは調査の改善をもたらし得る(すなわち、安全性バイオマーカー)、EGFR阻害剤と組み合わせた化合物1の活性の証拠を提供し得る(すなわち、薬力学的[PD]バイオマーカー)、又は疾患生物学及び薬物安全性の知識及び理解を高め得るバイオマーカーを同定及び/又は評価する。対応するバイオマーカーエンドポイントには、血液、血漿、及び腫瘍組織における探索的バイオマーカーと、安全性、PK、活性、又は他のバイオマーカーエンドポイントとの間の関係が含まれる。
【0313】
患者は、最大28日間の期間、続いて治療期間、及び研究薬の最終投薬後又は別の抗がん療法を受けるまで(どちらか先に起こる方)の治療特異的期間の安全性転帰について患者が追跡される安全性追跡期間にわたってスクリーニングされる。
【0314】
治験責任医師により判断される、許容されない毒性、及び明確な疾患の進行がない場合、患者は、試験終了まで、化合物1による治療を継続し得る。
【0315】
全ての患者は、研究を通して有害事象について、及び研究治療の最終用量後又は別の抗がん療法の開始まで(どちらか先に起こる方)の治療特異的期間について綿密に監視される。有害事象はNCI CTCAE v5.0に従って等級付けされる。
【0316】
化合物1の開始用量は、50mg PO QDとなる。単一患者用量漸増コホートを、漸増用量レベルの化合物1で治療する。
【0317】
患者には、単剤又は併用療法を含み得る少なくとも1つの事前の全身療法に対して疾患の進行又は不耐性を有する局所進行性、再発性又は転移性の不治のKRasG12C陽性腫瘍(例えば、NSCLC、CRC又は膵臓がん)を有する患者が含まれる。NSCLC、CRC、又は膵臓がんを有する患者は、KRasG12C陽性についてスクリーニングされる。
【0318】
組織及び循環腫瘍DNA評価からのKRasG12C変異状態.NSCLCのおよそ12%、CRCの4%、膵臓がんの2%、及び多くの他の固形腫瘍(それぞれ≦4%の有病率)がKRasG12C変異を持つ。化合物1は、KRasG12Cを標的とする強力かつ高度に選択的な阻害剤であるが、KRAS、KRASの野生型形態、又はRASファミリーの他のメンバーにおける他の変異は標的としない。したがって、KRasG12C変異を有する腫瘍を持つ患者のみが、本明細書に記載の併用療法の投与に適格である。KRAS変異の状態を、FoundationOne(登録商標) CDx(F1CDx)アッセイ、米国食品医薬品局(FDA)承認のブロードコンパニオン診断(CDx)アッセイ、FoundationOne(登録商標) Liquid CDx(F1L CDx)アッセイ、並びに臨床検査室改善修正法(Clinical Laboratory Improvement Amendments(CLIA))で検証された又は同等に認証された実験室で行われる他のFDA承認(FDA 2020)された又は十分に検証された実験室開発試験を用いて判定してもよい。以前の研究は、KRasG12C変異の発生が初期事象であることを示しており(amal-Hanjani et al.N Engl J Med 2017;376:2109-21)、保管組織の分析が化合物1治療のためのKRasG12C陽性腫瘍を有する患者の選択の十分な代替物であることを示唆している。
【0319】
薬力学的経路調節.化合物1は、KRasG12Cのアルキル化によって下流のMAPKシグナル伝達を抑制することにより、KRasG12Cをその不活性なGDP結合状態にロックするKRasG12C阻害剤である。非臨床モデルでは、化合物1によるKRasG12Cアルキル化のレベル及びMAPK経路抑制の程度は、化合物1に対する応答と相関する。治療前及び治療中の腫瘍組織収集は、MAPK経路抑制及び抗腫瘍活性と化合物1治療との相関の評価を可能にするであろう。MAPK経路抑制の程度を、MAPK標的遺伝子のRNA分析(例えば、DUSP6、SPRY4)又はリン酸化下流マーカー(例えば、pERK、pS6)の免疫組織化学(IHC)分析を使用して評価することができる。更に、治療中の腫瘍組織生検は、化合物1によるKRasG12Cアルキル化のレベルの直接評価を可能にし得る。これらのPDバイオマーカーの評価は、将来の用量選択の情報を与え得る。
【0320】
化合物1に対する耐性に関連する遺伝子のシーケンシング.標的化次世代シーケンシング(NGS)及び全エクソームシークエンシング等のDNAシークエンシング技術は、化合物1に対する応答及び/又は耐性のバイオマーカーを同定する独自の機会を提供し得る。がん関連遺伝子のシーケンシングは、化合物1に対するde novo耐性及び獲得耐性機構の同定をもたらし得る。
【0321】
タンパク質、RNA及びDNA分析.タンパク質の変異活性化に加えて、RNAの発現レベル又はDNAの変化もまた、シグナル伝達経路の活性を調節し得る。腫瘍のRNAプロファイリングは、研究に登録された患者の固有のサブタイピングを可能にする。サブタイプと患者の転帰との間の潜在的な関連性の分析は、化合物1に応答する可能性が最も高い患者の亜集団を同定し得る。
【0322】
体細胞腫瘍変異分析及び他のバイオマーカーのための血漿試料.がんを有する患者の血液標本から得られた無細胞DNAが、腫瘍内の細胞のDNA及び変異状態を表すctDNAを含むという証拠が増えつつある(Diehl et al.2008;Maheswaran et al.2008)。血漿からがん関連変異(例えば、KRAS)を検出するためのアッセイが検証されている。これらのアッセイの結果は、腫瘍標本の分析から決定された変異状態と相関し得る。治療に対する応答を監視するためのctDNAの使用は、非常に興味深い領域であり、特異的な療法の候補を特定し、がんの変異状態を経時的に監視するために臨床現場で使用するための早期の非侵襲的かつ定量可能な方法を可能にし得る(Wan et al.Nat Rev Cancer 2017;17:223-38)。研究治療中及び患者が化合物1で進行した後の様々な時点で収集されたctDNAの分析は、研究治療に対する応答耐性及び獲得耐性の機構を同定するのに役立ち得る。
【0323】
次世代シーケンシングのための血液試料.次世代シーケンシング(NGS)技術は、大量のシーケンシングデータを生成することができる。腫瘍DNAは、腫瘍形成プロセスのために、報告された染色体変化と報告されていない染色体変化の両方を含み得る。以前に報告されていないゲノム変化における配列決定コールの制御を助けるために、投薬前の血液試料を採取して、変化が体細胞性であるかどうかを決定する。
【0324】
選択基準.患者は次の研究登録基準を満たさなければならない:
● 年齢≧18歳;
● RECIST v1.1による評価可能又は測定可能な疾患;
● 0又は1の、米国東海岸癌臨床試験グループ(ECOG)パフォーマンスステータス
● ≧12週の平均余命;
● 以下により定義される、研究治療開始前、14日間以内の適切な血液学的機能及び臓器機能:
〇 絶対好中球数≧1200/μL;
〇 ヘモグロビン≧9g/dL;
〇 血小板数≧100,000/μL;
〇 総ビリルビン≦1.5×ULN;
〇 血清アルブミン≧2.5g/dL;
〇 AST及び≦2.5×ULN、ただし以下の例外がある:
● 実証された肝転移を有する患者は、AST及び/又はALT≦5.0×ULNを有し得る。
〇 血清クレアチニン≦1.5×ULN又はクレアチニンクリアランス≧50mL/分(Cockcroft-Gault糸球体濾過量の推定に基づく):
(140-年齢)×(kg単位の体重)×(女性の場合0.85)
72×(血清クレアチニン(mg/dL))
● 妊娠可能な女性の場合:禁欲を維持する(異性間の性交を控える)こと、又は避妊法を使用すること、及び卵の提供を控えることの同意。
● 避妊手術を受けていない男性の場合:禁欲を維持する(異性間の性交を控える)こと、又は避妊法を使用すること、及び精子の提供を控えることの同意。
● バイオマーカー適格性の確認:KRasG12C変異の存在を実証する血液の中央検査、又は血液若しくは腫瘍組織の各施設の検査のいずれかからの妥当な結果(例えば、CLIA又は同等の認定を受けた実験室で行われる検証済みポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ベースアッセイ又はNGSアッセイ)。
【0325】
追加の選択基準:
● FMI NGSアッセイによって、又は、各施設のCLIA認定又は同等の認定を受けた実験室で行われる、治験依頼者が承認した検証済みのPCRベースアッセイ又はNGSアッセイによって決定される、既知の付随する第2の発癌性ドライバ(例えば、BRAF V600E変異、ERBB2増幅)を伴わない、結腸又は直腸の組織学的に実証された、局所進行性、再発性又は転移性の不治腺癌。
〇 虫垂腫瘍を有する患者は除外される。
〇 患者は、少なくとも1つの事前化学療法レジメン(例えば、FOLFOX、FOLFIRI、FOLFOXIRI±ベバシズマブ)に対して疾患の進行又は不耐性を経験していなければならない。
● FMI NGSアッセイによって、又は、各施設CLIA認定若しくは同等の認定を受けた実験室で行われる、治験依頼者が承認した検証済みのPCRベースアッセイ若しくはNGSアッセイによって決定される、既知の付随する第2の発癌性ドライバ(例えば、感受性EGFR変異、ALK再構成、ROS1再構成、BRAF V600E変異、NTRK融合、RET融合)を伴わない、組織学的に実証された、局所進行性、再発性又は転移性の不治NSCLC。
〇 疾患の進行又は少なくとも1回の事前の全身療法に対する不耐性。これには、治験中又は承認されたPD-L1/PD-1阻害剤の単剤又はそれとの併用療法が含まれ得る。
● 患者は、KRasG12C特異的阻害剤による事前治療を受けていてもよい。
【0326】
一般的な除外基準.以下の基準のいずれかを満たす患者は除外される:
● 丸剤を嚥下することができない又は嚥下したくない;
● 研究及び追跡手順を遵守することができない;
● 吸収不良症候群又は経腸吸収を妨げる他の症状;
● 既知及び未治療の、又は活動性の中枢神経系(CNS)転移;
● 治療されたCNS転移の病歴を有する患者は、以下の基準の全てを満たすことを条件とする:
〇 CNS外の測定可能又は評価可能な疾患;
〇 頭蓋内出血又は脊髄出血の病歴なし;
〇 CNS転移の療法としてのコルチコステロイドに対する継続的な必要性はなく、コルチコステロイドは本明細書に記載の薬剤の投与前に≧2週間中止され、CNS転移に起因する進行中の症候はない;
〇 サイクル1の1日目の前の7日間以内に定位放射線照射なし、又は14日間以内に全脳放射線照射なし;
〇 CNSに向けられた療法の完了とスクリーニング放射線検査との間の暫定的な進行の証拠なし;
● 軟膜疾患又は癌性髄膜炎;
● 隔週又はより頻繁に再発性ドレナージ操作を必要とする、制御されない胸水、心膜液貯留、又は腹水;
〇 患者が操作から十分に回復しており、血流力学的に安定して症候的に改善している場合、留置型の胸腔又は腹部カテーテルが可能となり得る;
● 患者の安全性に影響を及ぼし得る任意の活動性感染症、又はサイクル1の1日目の前7日間以内に抗生物質の静脈内投与を必要とする重篤な感染症;
● ウイルス性若しくはその他の肝炎、現在のアルコール乱用、又は硬変を含む、臨床的に顕著な肝疾患の病歴;
● 既知のHIV感染症;
● 制御されない高カルシウム血症(>1.5mmol/Lのイオン化カルシウム若しくはカルシウム>12mg/dL、又は補正血清カルシウム≧ULN)、又はビスホスホネート療法若しくはデノスマブの継続的な使用を必要とする症候性高カルシウム血症;
● サイクル1の1日目の前、4週間以内の顕著な外傷性傷害又は大きな外科的治療;
● 慢性下痢、短腸症候群又は胃切除術を含む重大な上部胃腸手術、炎症性腸疾患(例えば、クローン病又は潰瘍性大腸炎)の病歴又は何らかの活動性腸炎症(憩室炎を含む)を有する患者;
●、免疫療法若しくは生物学的療法、又は本明細書に記載の薬剤の投与前2週間以内の内分泌療法による治療:
〇 内分泌感受性がん(例えば、前立腺がん、子宮内膜がん、ホルモン受容体陽性乳がん)に対するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト又はアンタゴニストを用いたホルモン療法;
〇 規制当局によって承認されたキナーゼ阻害剤は、研究治療の開始の2週間前まで使用してもよい;
〇 本明細書に記載の薬剤の投与前の3週間又は5半減期(どちらか短い方)以内の治験薬による治療。
● 本明細書に記載の薬剤の投与前4週間以内のがん療法としての放射線療法(骨転移に対する緩和的放射線照射及びCNS転移に対する放射線照射以外);
● 化合物1の投与前2週間以内の骨転移に対する緩和的放射線照射;
● 消散していない以前の抗がん療法からの有害事象;
● スクリーニング前5年以内の他の悪性腫瘍の病歴;
● 以下を含む、臨床的に有意な心血管機能不全の病歴又は活動性の臨床的に重大な心血管機能不全:
〇 本明細書に記載の薬剤の投与前6ヶ月以内の脳卒中又は一過性虚血発作の病歴;
〇 本明細書に記載の薬剤の投与前6ヶ月以内の心筋梗塞の病歴;
〇 ニューヨーク心臓病学会クラスIII又はIVの心疾患又は薬物療法を必要とする鬱血性心不全
〇 制御されない不整脈、薬物療法を必要とする又は活動性の心室性不整脈の病歴;
〇 症候性又は不安定狭心症である冠動脈心疾患;
〇 フリデリシア式(QTcF)を用いて補正した先天性QT延長症候群又はQT間隔>470ms;
〇 QT間隔を延長させることが知られている薬物療法による現在の治療;
● 妊娠中若しくは授乳中、又は研究中若しくは化合物1の最終投与後6ヶ月以内に妊娠することを意図している;或いは
● 特発性肺線維症、器質化肺炎(例えば、閉塞性細気管支炎)、薬物誘発性間質性肺炎(drug-induced pneumonitis)、若しくは特発性間質性肺炎の病歴、又はスクリーニング胸部コンピュータ断層撮影(CT)スキャンでの活動性間質性肺炎の証拠
【0327】
研究治療製剤、包装及び取扱い
【0328】
化合物1は、以下の3つの強度の活性医薬成分(API)粉末カプセル(PIC)製剤として供給される:5mg、25mg及び100mg(遊離塩基当量)。更に、100mg(遊離塩基当量)の用量強度のフィルムコーティング錠製剤も臨床使用のために供給される。化合物1の製剤は、86°F(30℃)以下で保存し、水分から保護すべきである。
【0329】
化合物1の用量を家庭で投与するためには、次の来院まで、又は1サイクルにわたって持続するのに十分な数のカプセル又は錠剤を患者に分配すべきである。患者は、患者がクリニックを訪問するときを除いて、本明細書に提供されるような化合物1を自己投与するであろう。患者は、別段の指示がない限り、化合物1を毎日ほぼ同じ時に服用すべきである。患者は、割り当てられた用量レベル及びスケジュールに従い、服用するカプセル剤又は錠剤の数及び強度に関して指示を受ける。
【0330】
別段の指示がない限り、化合物1は空の胃に摂取されるべきであり、すなわち、投与の少なくとも2時間前及び1時間後に食物を避けるべきである。水分摂取に制限はない。重要なことに、化合物1のカプセル又は錠剤は、最低240mL(8液量オンス)の水で完全に(噛まずに)嚥下される。患者が化合物1の任意の用量を逃すか、又はカプセル若しくは錠剤を吐き出す場合、その用量をスキップし、次の予定された用量での投薬を再開するように患者に指示すべきである。服用し忘れた用量は補充しない。
【0331】
セツキシマブは、市販の製剤で供給される。セツキシマブは、1日目に120分間のIV注入として400mg/m2の初回用量で投与され、続いて21日サイクルで毎週60分間のIV注入として250mg/m2で投与される。最大注入速度は10mg/分を超えてはならない。セツキシマブは、化合物1の投与後に投与すべきである。
【0332】
セツキシマブの投与は、訓練された人員並びに潜在的に重篤な反応を管理するための適切な機器及び薬に直ちにアクセスできる監視された状況で行われる。最初の注入の前に、参加者は抗ヒスタミン剤及びコルチコステロイドによる前投薬を受けなければならない。この前投薬は、その後の全ての注入の前に推奨される。注入中及び注入終了後少なくとも1時間は綿密な監視が必要である。
【0333】
エルロチニブは、25mg、100mg及び150mgの強度で錠剤として供給されるであろう。エルロチニブは、150mgから開始して21日サイクルで、その間に水を一口飲んで、化合物1と同時に、PO QDで投与される。エルロチニブの全ての用量は、空の胃(すなわち、投与の少なくとも2時間前及び1時間後に食物を避けるべきである)に対して服用されるべきである。
【0334】
所与のサイクルでの有害事象により、エルロチニブ又はセツキシマブの投与が一時停止される場合、次回の投薬サイクルは、エルロチニブ又はセツキシマブ投与が再開可能になるまで開始してはならない。したがって、現在のサイクルを21日間を過ぎて延長してもよく、患者は化合物1を受け続けてもよい。次のサイクルの1日目は、エルロチニブ又はセツキシマブの投与が再開される時点に対応しなければならない。
【0335】
付随療法.付随療法は、本明細書に記載の少なくとも1つの薬剤の最初の投与の7日前から本明細書に記載の少なくとも1つの薬剤の最後の投与までに、本明細書に記載の薬剤に加えて患者によって使用される任意の薬物療法(例えば、処方薬、市販薬、ワクチン、ハーブ療法又はホメオパシー療法、栄養補助食品)からなる。
【0336】
許可された療法.患者は、(a)抗痙攣薬又はワルファリン;(b)適格基準で指定されている経口避妊薬又は他の可能な維持療法を服用してもよく、(c)制吐薬及び下痢止め薬は、研究薬による初回治療の前に予防的に投与すべきではなく、(d)鎮痛薬;(e)骨転移若しくは骨減少症若しくは骨粗鬆症のためのビスホスホネート及びデノスマブ療法;又はマルチビタミン、カルシウム、並びにビタミンC、D及びEサプリメントが許容され得る。
【0337】
注意を要する療法。CYP酵素及び化合物1に関連する効果のために注意を払って与えられる薬物療法としては、例えば、(1)強力/中程度のCYP3A4阻害剤(限定されないが、アタザナビル、リトナビル、インジナビル、ネルフィナビル、サキナビル、クラリスロマイシン、テリスロマイシン、エリスロマイシン、トロレアンドマイシン、フルコナゾール、イトラコナゾール、ケトコナゾール、ボリコナゾール、ポサコナゾール、アプレピタント、コニバプタン、フルボキサミン、ジルチアゼム、ネファゾドン、ミベフラジル、ベラパミル、及びグレープフルーツジュース又はグレープフルーツサプリメントを含む);(2)強力/中程度のCYP3A4誘導剤(限定されないが、リファンピン、カルバマゼピン、フェニトイン、オクスカルバゼピン、フェノバルビタール、エファビレンツ、ネビラピン、エトラビリン、モダフィニル、ハイパーフォリン(セントジョーンズワート)及びシプロテロンを含む)が挙げられる。INR及び/又はaPTTが、本明細書に記載の任意の薬剤の投与前、14日間以内に(施設の基準に従って)治療限界内にあり、かつ、患者が、研究治療の開始前の≧1週間、安定した用量の抗凝固剤を服用している限り、治療目的のための全用量の経口抗凝固剤又は非経口抗凝固剤の使用。薬物療法のリストは包括的であることを意図していない。
【0338】
クマリン(Coumadin(登録商標)、ワルファリン)は、エルロチニブ療法の間は強く阻止される。患者が抗凝固療法を必要とする場合、臨床的に実行可能であれば、クマリンの代わりに低分子量ヘパリンの使用が推奨される。クマリンの臨床的に実現可能な代替物がない場合、INR及びプロトロンビン時間の頻繁なモニタリングを行わなければならない。
【0339】
プロトンポンプ阻害剤又はH2受容体アンタゴニスト等の胃酸産生を減少させる薬物は、エルロチニブ曝露を減少させることが示されている。したがって、これらの薬物とエルロチニブとの同時投与は避けるべきである。エルロチニブによる治療中に制酸薬の使用が必要であると考えられる場合、それらは、エルロチニブの1日用量の少なくとも4時間前又は2時間後に服用されるべきである。
【0340】
エルロチニブを受けている患者は、GI穿孔のリスクを増大させ得るため、抗血管新生剤及び非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の慢性的な使用は許容されない。NSAIDの急性使用は、発熱を管理するために、又はエルロチニブが保持されている期間中に許容される。
【0341】
禁止される療法以下の付随療法の使用は、本明細書に記載の薬剤の最初の投与中及び投与前少なくとも7日間は禁止される:
● 本明細書に記載の薬剤の最初の投与前の3週間又は5半減期(どちらか短い方)以内の治験療法
● 以下を除く、化学療法、放射線療法、免疫療法、生物学的療法、薬草療法、又はホルモン療法を含む、FDAによって承認されているか実験的であるかにかかわらずがんの治療を意図した付随療法:
〇 内分泌感受性がん(例えば、前立腺がん、子宮内膜がん、ホルモン受容体陽性乳がん)に対するゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト又はアンタゴニストを用いたホルモン療法;
〇 ホルモン補充療法又は経口避妊法。
● 全身応答の状況における新たな脳転移を除いて、明確な進行性疾患に対する放射線療法:全身性疾患の制御を示した患者(臨床的利益[すなわち、≧3ヶ月間にわたるPR、CR又はSD]を受けたと定義される)であるが、放射線照射で治療可能な脳転移を発症した患者は、(治験責任医師の評価に基づいて)疾患の全身性進行及び/又は脳における更なる進行のいずれかを経験するまで、研究中に化合物1による療法を継続して受けることが可能になる;
● キニジン又は他の抗不整脈薬;
● 第1のサイクルの1日目の7日前からの造血コロニー刺激因子(CSF;例えば、顆粒球CSF;フィルグラスチム、顆粒球/マクロファージCSF;サルグラモスチム、ペグフィルグラスチム、エリスロポエチン、ダルベポエチン及びトロンボポエチン)の開始又は用量の増加
【0342】
化合物1に関連するリスク.化合物1の投与は、下痢、悪心、嘔吐、口腔粘膜刺激、最小から軽度のトランスアミナーゼ上昇、及び光毒性に関連している。
【0343】
セツキシマブに関連するリスク.セツキシマブの望ましくない効果には、80%超の患者で起こる皮膚反応、10%超の患者で起こる低マグネシウム血症、及び10%超の患者で軽度から中等度の症候、1%超の患者で重症症候で起こるIRRが含まれる。セツキシマブ投与による重篤な注入反応のリスクは、ダニに噛まれたことがあるか又は赤身肉アレルギーを有する患者において増加し得る。
【0344】
エルロチニブに関連するリスク.エルロチニブは、以下のリスクに関連している:皮膚毒性、間質性肺疾患(ILD)、肝損傷、胃腸(GI)液喪失、GI穿孔、及び眼毒性。現在の喫煙者は、喫煙者におけるエルロチニブの血漿中濃度が非喫煙者と比較して低下するため、喫煙を止めるように助言されるべきである。低下の程度は臨床的に有意である可能性が高い。CYP3A4の強力な誘導剤はエルロチニブの有効性を低下させ得るが、CYP3A4の強力な阻害剤は毒性の増加をもたらし得る。エルロチニブは、CYP1A1の強力な阻害剤、並びにCYP3A4及びCYP2C8の中程度の阻害剤、並びにin vitroでのUGT1A1によるグルクロン酸抱合の強力な阻害剤である。完全な薬物-薬物相互作用情報についてはエルロチニブSmPCを参照されたい。
【0345】
治療の中断.化合物1が毒性のために以前の研究治療から>21日間保持される場合、研究治療を再開すべきではない。化合物1は、研究治療の毒性又は疾患進行に関連しない予期しない併発する医療事象のために最大21日間停止され得る。
【0346】
有害事象.本明細書で定義される有害事象は、原因の帰属にかかわらず、本明細書に記載の併用療法において本明細書に記載の薬剤を投与された臨床試験対象における任意の不都合な医学的発生を指す。「重症」及び「重篤」という用語は、同義語ではない。重症度は、有害事象の強度(例えば、軽度、中等度、若しくは重度と評価されるか、又はNCI CTCAEに従う)を指し、事象自体は、比較的医学的に重大ではない可能性がある(更なる所見のない重度の頭痛等)。
【0347】
監視すべき有害事象としては、悪心、嘔吐、下痢、口内炎、粘膜炎、肝炎、又はALT若しくはASTの上昇、ビリルビン上昇又は臨床的黄疸、全身性エリテマトーデス、腎炎、過敏症を示唆する事象、注入媒介反応、CRS、インフルエンザ様疾患、及び全身性炎症反応症候群、心房細動、心筋炎、心膜炎、血管炎、筋炎、ブドウ膜炎、網膜炎、視神経炎、自己免疫性溶血性貧血、スティーブンス・ジョンソン症候群、水疱性皮膚炎及び中毒性表皮壊死症が挙げられる。
【0348】
本明細書及び特許請求の範囲全体を通じて、「含む(comprise、comprises、及びcomprising)」という語句は、文脈上別段の必要がある場合を除き、非排他的な意味で用いられる。本明細書に記載の実施形態は、「からなる」及び/又は「から本質的になる」実施形態を含むことが理解される。
【0349】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確な別段の指示がない限り、範囲の上限及び下限と、その記載された範囲内の任意の他の記載された値又は介在する値との間の、下限の単位の10分の1までの各介在値が、本明細書に包含されるものと理解されたい。より小さい範囲(rangers)に独立して含めることができるこれらの小さい範囲の上限及び下限もまた、記載された範囲における具体的に除かれる限界値を条件として、本明細書に包含される。記載された範囲に限界値の一方又は両方が含まれる場合、それらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除く範囲もまた、本明細書に含まれる。
【0350】
本明細書に記載された発明の多くの修正及び他の実施形態は、これらの発明が、前述の説明及び関連する図面に提示された教示の恩恵を受けて関連する当業者には思い浮かぶであろう。したがって、本発明は、開示された具体的な実施形態に限定されるべきではなく、変更及び他の実施形態は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることを理解されたい。本明細書では特定の用語が使用されているが、これらは、一般的で説明的な意味でのみ使用されており、限定を目的とするものではない。
【国際調査報告】