(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】解剖学的血管壁を横断するための方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20231226BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534599
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 US2021062198
(87)【国際公開番号】W WO2022125543
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518202312
【氏名又は名称】エムブイアールエックス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ウー パトリック ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ラハデルト デイビッド エイ.
(72)【発明者】
【氏名】チャイルズ リチャード ティー.
(72)【発明者】
【氏名】トルフセン デイビッド アール.
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC05
4C097CC18
4C097SB10
(57)【要約】
対象の解剖学的血管壁を横断するための方法が提供されている。本発明は、動脈、静脈、食道、腸、又は気道などの1つの解剖学的管腔から組織を通り別の解剖学的管腔若しくは空洞内に入る、又は組織の固体塊内に入る、ワイヤの横断を可能にする。いくつかの態様において、本発明は、横断を容易にするための左心房内の別のデバイスに依存することなく、大心臓静脈(GCV)から左心房内へのワイヤの横断を可能にする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルを、血管壁を有する第1の解剖学的管腔内に入れ第1の場所まで前進させることであって、前記カテーテルが、前記カテーテルの長さに沿って延在する管腔と、遠位に配置された開口部と、安定化要素と、を備える、ことと、
前記第1の管腔内の前記カテーテルを前記第1の場所で前記安定化要素を介して安定化することと、
前記遠位に配置された開口部に向かって前記第1の場所まで前記カテーテルの前記管腔に沿って貫通ガイドワイヤを前進させることであって、前記貫通ガイドワイヤが、先端を備え、前記先端が、形状記憶を有し、かつ前記血管壁を横断するときに捕捉構造を形成するように構成されている、ことと、
前記遠位に配置された開口部の外へ前記貫通ガイドワイヤを前進させることによって前記血管壁を貫通し、前記血管壁を横断して第2の解剖学的管腔又は組織内に入れ、それによって前記血管壁を横断させることと
を含む、血管壁を横断するための方法。
【請求項2】
前記安定化要素が、拡張可能なバルーン又はステントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記捕捉構造が、フック又はループ構造を含み、任意選択的に、前記フープ又は前記ループが、約90度超、100度超、110度超、120度超、130度超、140度超、150度超、160度超、170度超、180度超、又は190度超の角度を有する屈曲セクションを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記カテーテルの前記管腔を介して前記第1のアンカーを前記第1の場所まで前進させることを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のアンカーが、ブリッジ要素を含み、前記ブリッジ要素が、前記ブリッジ要素の第1の端部で前記アンカーに結合されている、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ブリッジ要素の第2の端部を、前記第1の場所で、前記貫通された血管壁を通って前進させることを更に含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
第2の管腔内の又は前記第2の管腔に近接した第2の場所まで、第2のアンカーを前進させ、前記第2の場所で前記第2のアンカーを展開すること、を更に含み、前記第1のアンカーが、前記ブリッジ要素の前記第1の端部に結合されており、前記第2のアンカーが、前記ブリッジ要素の前記第2の端部に結合されている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ブリッジ要素に張力を加えることを更に含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の場所が、心腔に近接している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の場所が、前記心腔内にあるか又は前記心腔に近接している、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記心腔が、左心房であり、前記第1の場所が、大心臓静脈内にある、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記ブリッジ要素が、心腔にまたがり、前記ブリッジ要素に張力を加えることが、前記心腔を再成形する、10に記載の方法。
【請求項13】
ガイドワイヤを前記捕捉構造に結合することを更に含む、請求項2に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のアンカーが、ガイドワイヤを介して前記第1の場所まで前進させられる、請求項4に記載の方法。
【請求項15】
前記カテーテルの前記管腔に沿って前記ガイドワイヤを後退させることによって前記ガイドワイヤから前記第1のアンカーを解放することを更に含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
第1の位置を決定するために前記第1の管腔内への前記カテーテルの挿入深度を決定することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
血管アクセス部位を通してカテーテルを挿入し、血管壁を有する第1の解剖学的管腔に沿って前記カテーテルを、前記対象の心臓に近接する第1の場所まで前進させることであって、前記カテーテルが、前記カテーテルの長さに沿って延在する管腔と、遠位に配置された開口部と、安定化要素と、を備える、ことと、
前記第1の管腔内の前記カテーテルを前記第1の場所で前記安定化要素を介して安定化することと、
前記遠位に配置された開口部に向かって前記第1の場所まで前記カテーテルの前記管腔に沿って貫通ガイドワイヤを前進させることと、
前記遠位に配置された開口部の外へ前記貫通ガイドワイヤを前進させることによって前記血管壁を貫通し、前記血管壁を横断して心腔に入れることであって、前記貫通ガイドワイヤが、先端を備え、前記先端が、形状記憶を有し、かつ前記血管壁を横断するときに捕捉構造を形成するように構成されている、ことと、
前記カテーテルの前記管腔を介して第1のアンカーを前記第1の場所まで前進させることであって、前記第1のアンカーが、前記ブリッジ要素の第1の端部で前記第1のアンカーに結合される、ことと、
前記ブリッジ要素の第2の端部を、前記第1の場所で、前記貫通された血管壁を通って前進させることと、
前記ブリッジ要素に沿って第2のアンカーを前進させ、前記心臓内の又は前記心臓に近接する第2の場所で前記第2のアンカーを展開することであって、前記ブリッジ要素が、前記心腔にまたがる、ことと、
前記ブリッジ要素の長さを短くすることによって前記心臓の腔を再成形し、前記心臓の前記腔が再成形されたままであるように前記心臓の前記腔が再成形されている間に、前記ブリッジ要素の前記第2の端部を前記展開された第2のアンカーに結合し、それによって前記対象の僧帽弁逆流を治療することと
を含む、対象における僧帽弁逆流を治療する方法。
【請求項18】
前記安定化要素が、拡張可能なバルーン又はステントを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記捕捉構造が、フック又はループ構造を含み、かつ任意選択的に、前記フープ又は前記ループが、約90度超、100度超、110度超、120度超、130度超、140度超、150度超、160度超、170度超、180度超、又は190度超の角度を有する屈曲セクションを備える、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記心腔が、左心房であり、前記第1の場所が、大心臓静脈内にある、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記第1のアンカーが、ガイドワイヤを介して前記第1の場所まで前進させられる、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記カテーテルの前記管腔に沿って前記ガイドワイヤを後退させることによって前記ガイドワイヤから前記第1のアンカーを解放することを更に含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記第1の位置を決定するために前記第1の管腔内への前記カテーテルの挿入深度を決定することを更に含む、請求項17に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で2020年12月8日に出願された米国仮特許出願第63/122,843号の優先権の利益を主張する。先行出願の開示は、本出願の開示の一部とみなされ、参照により組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、概して、医療処置に関し、より具体的には、心臓疾患の治療のためのものを含む、外科的処置中に対象の解剖学的血管壁を横断するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景情報
交換弁の両方、並びにインプラントを使用することによって弁の修復及び再成形を容易にする多くのアプローチを含む、僧帽弁逆流の治療は広く多様である。多くのそのようなアプローチは、インプラントの血管内送達に依存するが、これらは、しばしば繰り返し交換される複数のカテーテルのシステムを利用し、これは、しばしば複雑で時間のかかるプロセスである。ヒトの心臓内でのインプラントの送達及び展開と関連する困難及び課題を理解するために、心臓の解剖学的構造の様々な態様、並びに僧帽弁逆流の治療のためにインプラントを展開する従来の方法を理解することが有用である。
【0004】
健康な心臓の解剖学
図2Aで見ることができるように、ヒトの心臓は両面(左右)の自己調整ポンプであり、その部分は、体の全ての部分に血液を推進するために一致して働く。心臓の右側は、上大静脈及び下大静脈から体から不十分に酸素化された(「静脈」)血液を受け取り、酸素を供給するために肺動脈を通って肺に送り出す。左側は、肺静脈を通って肺から十分な酸素化(「動脈」)血液を受け取り、体に分配するために大動脈に送り出す。
【0005】
心臓には4つの腔があり、両側に2つ、右心房と左心房、及び右心室と左心室がある。心房は、血液を心室に送り出す血液受容腔である。心室は、血液排出腔である。心房中隔と呼ばれる線維性及び筋肉性部分で構成される壁は、右心房と左心房を分離する(
図2B~
図2Dを参照)。心房中隔の解剖学的ランドマークは、
図2Cに示す卵形窩又は卵円窩(FO)と呼ばれる楕円形の指紋サイズの凹部であり、これは、胎児の卵形孔及びその弁の残骸であり、したがって、弁構造、血管、及び伝導経路などの重要な構造を含まない。心臓の左右の同期的なポンピング作用は、心周期を構成する。周期は、心室拡張期と呼ばれる心室弛緩の期間から始まる。周期は、心室収縮の期間で終了し、心室収縮3と呼ばれる。心臓には、心周期中に血液が間違った方向に流れないようにする4つの弁(
図2B及び2Cを参照)があり、つまり、血液が心室から対応する心房に逆流しないようにするため、又は動脈から対応する心室に逆流しないようにするためである。左心房と左心室との間の弁は、僧帽弁である。右心房と右心室との間の弁は、三尖弁である。肺動脈弁は、肺動脈の開口部にある。大動脈弁は、大動脈の開口部にある。
【0006】
心室拡張期(心室充填)の開始時に、動脈から心室への逆流を防ぐために、大動脈弁及び肺動脈弁は閉鎖される。
【0007】
その後まもなく、
図2Bに示すように、三尖弁及び僧帽弁が開いて、心房から対応する心室への流れを可能にする。心室収縮(心室排出)が開始された直後に、
図2Cに示すように、三尖弁及び僧帽弁が閉じて、心室から対応する心房への逆流を防止し、大動脈弁及び肺弁が開いて、対応する心室から動脈への血液の排出を可能にする。
【0008】
心臓弁の開閉は、主に圧力差の結果として起こる。例えば、僧帽弁の開閉は、左心房と左心室の圧力差の結果として生じる。心室拡張中、心室が弛緩すると、静脈血が肺静脈から左心房に戻ると、心房内の圧力が心室内の圧力を超える。その結果、僧帽弁が開き、血液が心室に入ることができる。心室収縮中に心室が収縮すると、心室内圧は、心房の圧力を超えて上昇し、僧帽弁を押して閉じる。
【0009】
図2B及び
図2Cが示すように、僧帽弁輪の前方(A)部分は、大動脈弁の非冠動脈弁尖と密接である。注目すべきことに、僧帽弁輪は、左冠動脈の回旋枝(左心房、左心室の可変量、及び多くの人ではSAノードを供給する)及びAVノード(SAノードと共に心周期を調整する)などの他の重要な心臓構造の近くにある。後方(P)僧帽弁輪の近傍には、冠静脈洞及びその支流がある。これらの血管は、左冠動脈によって供給される心臓の領域を排出する。冠静脈洞とその支流は、冠状静脈血の約85%を受け入れる。
図2Cからわかるように、冠静脈洞は、右心房の後方、卵円窩の前方及び下方にある。冠静脈洞の支流は、大心臓静脈と呼ばれ、これは、後方僧帽弁輪の大部分と平行に進行し、後方僧帽弁輪よりも約9.64+/-3.15ミリメートルの平均距離だけ上にある。
【0010】
僧帽弁機能障害の特徴と原因
左心室が左心房からの血液で満たされた後に収縮すると、心室の壁が内側に移動し、乳頭筋及びコードから緊張の一部を解放する。血液が僧帽弁の弁尖の下部表面に押し上げられ、僧帽弁の輪平面に向かって上昇する。輪に向かって進行するにつれて、前後の弁尖の前縁が一緒になってシールを形成し、弁を閉じる。健康な心臓では、弁尖の接合は、僧帽弁輪の平面の近くで起こる。血液は、大動脈に排出されるまで左心室で加圧され続ける。乳頭筋の収縮は、心室の収縮と同時に起こり、心室が及ぼすピーク収縮圧で健康な弁の弁尖をしっかり閉じるのに役立つ。
【0011】
健常な心臓(
図2E及び
図2Fに示される)において、僧帽弁輪の寸法は、解剖学的形状及び張力を生じさせ、その結果、弁尖は、ピーク収縮圧で、堅い接合部を形成する。弁尖が輪の反対側の内側(CM)及び側面(CL)側で接合する場所は、弁尖交連と呼ばれる。弁の誤動作は、腱索(コード)が伸び、場合によっては引き裂かれることに起因する可能性がある。コードが引き裂かれると、弁尖が振り回る結果が生じる。また、通常構造化された弁は、弁輪の拡大又は形状変化のために正しく機能しないことがある。この状態は、輪の拡張と称され、一般に心筋不全から生じる。加えて、弁は、出生時又は後天性疾患のために欠陥がある可能性がある。原因にかかわらず、
図2Gに示すように、弁尖がピーク収縮圧で接合しないと、僧帽弁の機能障害が発生する可能性がある。そのような場合には、2つの弁尖の接合線は、心室収縮期に緊密ではない。その結果、左心室から左心房への望ましくない血液の逆流が発生する可能性があり、これは、一般に僧帽弁逆流として知られている。これには2つの重要な結果がある。まず、心房に戻ってくる血液は、高心房圧を引き起こし、肺から左心房への血液の流れを減少させる可能性がある。血液が肺系統内に戻ると、液体が肺に漏れ、肺水腫を引き起こす。第2に、心房に向かう血液量は、大動脈に向かって前進する血液量を減少させ、心拍出量を低下させる。心房の過剰な血液は、各心周期中に心室を過剰に満たし、左心室の容積過負荷を引き起こす。
【0012】
僧帽弁逆流は、i)有機的又は構造的、及びii)機能的の2つの主要なタイプに分類される。有機僧帽弁逆流は、収縮期に弁の弁尖を漏出させる構造的に異常な弁コンポーネントから生じる。機能性僧帽弁逆流は、原発性うっ血性心不全による輪拡張に起因し、それ自体は一般的に外科的に治療不可能であり、重度の不可逆的虚血又は原発性弁状心疾患のような原因によるものではない。有機僧帽弁逆流は、破裂したコード又は乳頭筋が弁尖の殻を作るために弁尖の自由な前縁部でシールの破壊が発生したときに見られるか、あるいは弁尖組織が冗長である場合、弁は、心室収縮期に心房内のより高い位置で弁を開き、接合が心房内へより高い位置で起こるレベルまで低下する可能性がある。機能性僧帽弁逆流は、心不全に続発する心臓及び僧帽弁輪の拡張の結果として生じ、ほとんどの場合、冠動脈疾患又は特発性拡張性心筋症の結果として生じる。健康な輪と不健康な輪を比較すると、不健康な輪が拡張され、特に、小軸(線P-A)に沿った前後距離が増加する。その結果、輪によって定義される形状及び張力は、より楕円形ではなく、より丸くなる。この状態は、拡張と呼ばれる。輪が拡張されると、ピーク収縮圧での接合に有利な形状及び張力が徐々に悪化する。
【0013】
治療前の治療モダリティ
うっ血性心不全を患う600万人のアメリカ人のうち、25パーセントがある程度機能的な僧帽弁逆流を起こすと報告されている。これは、機能的な僧帽弁逆流を有する150万人を構成する。僧帽弁逆流の治療では、利尿薬及び/又は血管拡張薬を使用して、左心房に戻って流れる血液の量を減らすことができる。大動脈内バルーンカウンターパルセーションデバイスは、投薬で状態が安定していない場合に使用される。慢性又は急性の僧帽弁逆流の場合、僧帽弁を修復又は交換するための手術がしばしば必要である。
【0014】
進行性機能性僧帽弁逆流のサイクルを中断することにより、外科的患者では生存率が増加し、実際には多くの患者で前方排出率が増加することが示されている。外科的治療の問題は、外科的修復と関連する高い罹患率及び死亡率を有するこれらの慢性疾患患者に重大な損傷を課していることである。
【0015】
現在、僧帽弁手術の患者選択基準は非常に選択的であり、通常、正常な心室機能、一般的に健康、3~5年を超える予測寿命、NYHAクラスIII又はIVの症状、及び少なくともグレード3の逆流を有する患者のみに実施される。これらの要件を満たしていない患者、典型的には健康状態が悪い高齢の患者は、外科的処置、特に開放外科的処置の良い候補者ではない。そのような患者は、弁機能を改善する短期間で侵襲性の低い外科的処置から大きな利益を得る。しかしながら、そのような患者は、そのような弁治療及び修復インプラント、システムを展開するための低侵襲外科的処置の更なる改善から利益を得ることができ、送達システムの複雑さ及び処置の持続時間、並びに一貫性、信頼性及び使いやすさを低減する。
【0016】
したがって、かかる送達システムの複雑さを低減する更なる改善の必要性、並びに処置の持続時間を短縮し、僧帽弁逆流の治療のための心臓インプラントの展開における臨床医のための一貫性、信頼性及び使用の容易さを改善する送達の改善された方法に対する必要性が存在する。
【発明の概要】
【0017】
本発明は、対象の解剖学的血管壁を横断するための方法を提供する。様々な態様では、本発明は、動脈、静脈、食道、腸、又は気道などの1つの解剖学的管腔から組織を通って別の解剖学的管腔若しくは空洞内への又は組織の固体塊内への、ワイヤの横断を可能にする。いくつかの態様において、本発明は、横断を容易にするための左心房内の別のデバイスに依存することなく、大心臓静脈(GCV)から左心房内へのワイヤの横断を可能にする。
【0018】
したがって、一実施形態では、本発明は、血管壁を横断するための方法を提供する。方法は、カテーテルを、血管壁を有する第1の解剖学的管腔内に入れ第1の場所まで前進させることであって、カテーテルが、カテーテルの長さに沿って延在する管腔と、遠位に配置された開口部と、安定化要素と、を備える、ことと、第1の管腔内のカテーテルを第1の場所で安定化要素を介して安定化することと、遠位に配置された開口部に向かって第1の場所までカテーテルの管腔に沿って貫通ガイドワイヤを前進させることであって、貫通ガイドワイヤが、先端を備え、先端が、形状記憶を有し、かつ血管壁を横断するときに捕捉構造を形成するように構成されている、ことと、遠位に配置された開口部の外へ貫通ガイドワイヤを前進させることによって血管壁を貫通し、血管壁を横断して第2の解剖学的管腔又は組織内に入れ、それによって血管壁を横断することと、を含む。
【0019】
別の実施形態において、本発明は、対象の心腔を再成形することによって対象における僧帽弁逆流を治療する方法を提供する。方法は、血管アクセス部位を通ってカテーテルを挿入し、血管壁を有する第1の解剖学的管腔に沿ってカテーテルを、対象の心臓に近接する第1の場所まで前進させることであって、カテーテルが、カテーテルの長さに沿って延在する管腔と、遠位に配置された開口部と、安定化要素と、を備える、ことと、第1の管腔内のカテーテルを第1の場所で安定化要素を介して安定化することと、遠位に配置された開口部に向かって第1の場所までカテーテルの管腔に沿って貫通ガイドワイヤを前進させることと、遠位に配置された開口部の外へ貫通ガイドワイヤを前進させることによって血管壁を貫通し、血管壁を横断して心腔に入れることであって、貫通ガイドワイヤが、先端を備え、先端が、形状記憶を有し、かつ血管壁を横断するときに捕捉構造を形成するように構成されている、ことと、カテーテルの管腔を介して第1のアンカーを第1の場所まで前進させることであって、第1のアンカーが、ブリッジ要素の第1の端部で第1のアンカーに結合される、ことと、ブリッジ要素の第2の端部を、第1の場所で、貫通された血管壁を通って前進させることと、ブリッジ要素に沿って第2のアンカーを前進させ、心臓内の又は心臓に近接する第2の場所で第2のアンカーを展開することであって、ブリッジ要素が、心腔にまたがる、ことと、ブリッジ要素の長さを短くすることによって心臓の腔を再成形し、心臓の腔が再成形されたままであるように、心臓の腔が再成形されている間に、ブリッジ要素の第2の端部を展開された第2のアンカーに結合し、それによって対象の僧帽弁逆流を治療することと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】僧帽弁逆流の治療のための心臓インプラントの血管内送達のための従来のカテーテルシステムの概要を示す。
【
図2A】ヒトの心臓の解剖学的前方図であり、部分が分離されており、内部心腔及び隣接する構造を見るための断面を有する。
【
図2B】右心房の三尖弁、左心房の僧帽弁、及びその間の大動脈弁を示し、三尖弁及び僧帽弁が開き、心周期の心室拡張(心室充填)中に大動脈弁及び肺動脈弁が閉じている、ヒトの心臓の断面の解剖学的上方図である。
【
図2C】三尖弁及び僧帽弁が閉じられ、心周期の心室収縮(心室排出)中に大動脈弁及び肺動脈弁が開いている、
図2Bに示されるヒトの心臓の断面の解剖学的上方図である。
【
図2D】左右の心房の解剖学的前方斜視図であり、部分が分離されており、心腔の内部及び関連する構造(例えば、卵円窩、冠静脈洞、及び大心臓静脈)を示す断面を有する。
【
図2E】心室収縮中に弁尖が閉じられ、ピーク収縮圧で凝固する、健康な僧帽弁の上方図である。
【
図2F】
図2Eに示される正常な僧帽弁が、心周期の心室収縮(心室排出)中に閉じている、ヒトの心臓の断面の解剖学的上方図である。
【
図2G】心室収縮中のピーク収縮圧中に弁尖が接合されず、僧帽弁の逆流につながる状態である、機能不全の僧帽弁の上方図である。
【
図3】本発明の一態様における本発明の方法を介した血管壁の貫通及び単一のカテーテルを使用してアンカーの展開を示す。
【
図4】本発明の一態様における本発明の方法を介した血管壁の貫通及び単一のカテーテルを使用してアンカーの展開を示す。
【
図5】本発明の一態様における単一のカテーテルを使用する本発明の方法を介したアンカーの展開を示す。
【
図6A】左右の心房の解剖学的前方斜視図であり、部分が分離され、本発明の方法を使用する送達に好適である大心臓静脈に位置する後方アンカーと心房中隔内の前方アンカーとの間の僧帽弁輪にまたがる心房間ブリッジ要素を備えたインプラントシステムの存在を示す断面を有する。
【
図6B】左右の心房の解剖学的前方斜視図であり、部分が分離され、本発明の方法を使用する送達に好適である大心臓静脈に位置する後方アンカーと心房中隔内の前方アンカーとの間の僧帽弁輪にまたがる心房間ブリッジ要素を備えたインプラントシステムの存在を示す断面を有する。
【
図7A】心房中隔の卵円窩内に展開された前方アンカー及び大心臓静脈内に展開された後方アンカーを示す詳細図である。
【
図7B】心房中隔の卵円窩内に展開された前方アンカー及び大心臓静脈内に展開された後方アンカーを示す詳細図である。
【
図8A】心房中隔の卵円窩開存内に固定するのに好適であるインプラントの例示的な前方アンカーの詳細図を示す。
【
図8B】心房中隔の卵円窩開存内に固定するのに好適であるインプラントの例示的な前方アンカーの詳細図を示す。
【
図9】
図9Aは、インプラントの前方アンカーに対してブリッジ要素をロックするための例示的なロックブリッジストップを示す。
図9Bは、インプラントの前方アンカーに対してブリッジ要素をロックするための例示的なロックブリッジストップを示す。
【
図10】
図10Aは、本発明の態様に従う、血管内送達に好適な心臓インプラントの代替例を示す。
図10Bは、本発明の態様に従う、血管内送達に好適な心臓インプラントの代替例を示す。
【
図11】
図11Aは、本発明の態様に従う、血管内送達に好適なインプラントのためのブリッジ要素に取り付けられた後方アンカーの代替例を示す。
図11Bは、本発明の態様に従う、血管内送達に好適なインプラントのためのブリッジ要素に取り付けられた後方アンカーの代替例を示す。
【
図12】
図12Aは、本発明の態様に従う、血管内送達に好適な心臓インプラントの後方アンカーの代替例を示す。
図12Bは、本発明の態様に従う、血管内送達に好適な心臓インプラントの後方アンカーの代替例を示す。
【
図13】本発明の一態様における、遠位に配置された安定化要素(例えば、拡張可能なバルーン)、及び放射線不透過性マーカーを有するカテーテルを使用して、貫通ガイドワイヤ(例えば、横断ワイヤ)の展開を介した本発明の方法を介した血管壁の貫通を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
本明細書で考察されるように、本発明は、対象の解剖学的血管壁を横断するための方法を提供する。本開示は、GCV等の心臓血管壁の左心房への横断を示すが、本発明の方法論は、動脈、静脈、食道、腸、又は気道等の1つの解剖学的管腔から組織を通り別の解剖学的管腔若しくは空洞内に入る、又は固体の組織塊内に入る、ワイヤの横断を達成するために、任意の解剖学的血管を含む処置において利用され得ることが理解されるであろう。
【0022】
血管壁横断を達成するために、従来の技術は、磁気吸引等によって、1つの管腔内のカテーテル及び隣接する空洞内の別のカテーテルが各々物理的に係合することを必要とする。ワイヤは、一方のカテーテルから組織壁を通って他方のカテーテル内に入り、前進する。
【0023】
図1は、僧帽弁逆流の治療において心腔を再成形するために使用される従来のカテーテルベースの送達システムの例を示す。送達システムは、別々の血管アクセスポイントから前進し、かつ心臓内の組織にわたって磁気的に結合された、一対の磁気カテーテルを利用する。一対のカテーテルは、頸静脈から導入され、かつ上大静脈(SVC)アプローチに沿ってGCVまで前進する、大静脈(GCV)アンカー送達カテーテル50と、大腿静脈に導入され、かつ下大静脈(IVC)アプローチに沿って、心房中隔を横断して左心房に導入される、左心房(LA)カテーテル60と、を含む。各カテーテルは、その遠位部分に沿った磁気ヘッド(カテーテル50の磁気ヘッド52、及びカテーテル60の磁気ヘッド62)を含み、その結果、磁気的に結合されると、カテーテルは、LAとGCVとの間の組織壁の貫通、及びその後のGCVカテーテル50を通ってLAカテーテル60への穿刺ガイドワイヤ54の前進を促進するための安定した領域を提供する。穿刺ガイドワイヤ54の後端は、ブリッジ要素12の一方の端部に取り付けられ(例えば、縫合)、もう一方の端部は、GCVカテーテル50の遠位部分に配置された後方アンカー18に取り付けられる。このような構成により、磁気ヘッドが互いに磁気的に結合されたままでいる間に、穿刺ガイドワイヤ54をLAカテーテル60を通って前進させて大腿静脈から出すことによって、ブリッジ要素12が左心房を横断して前進することができる。
【0024】
従来のカテーテルシステム及び処置とは異なり、本発明は、血管壁の横断を達成するために1つのカテーテルのみを必要とする。血管壁横断を達成するために単一のカテーテルを使用することは、材料及びコンポーネントと関連するコストを低減するだけでなく、外科的処置を簡素化する。
【0025】
したがって、一実施形態では、本発明は、解剖学的血管壁を横断するための方法を提供する。方法は、カテーテルを、血管壁を有する第1の解剖学的管腔内に入れ第1の場所まで前進させることを含む。カテーテルが解剖学的管腔内に入り所望の位置まで前進すると、カテーテルは、安定化要素を使用して管腔内で安定化される。
【0026】
したがって、様々な態様では、カテーテル100は、
図3に示されるように、カテーテルの長さに沿って延在する管腔と、遠位に配置された開口部105と、安定化要素110と、を含む。いくつかの態様において、安定化要素110は、安定化要素が展開されるときに、安定化要素110が遠位カテーテル開口部105に隣接して位置付けられるように、カテーテルの長さ上に遠位に配置される。
【0027】
図3は、GCV内に配置され、かつ左心房に隣接して位置付けられたカテーテル100を示す。カテーテル100は、拡張可能なバルーンとして構成された安定化要素110を含む。カテーテル開口部がGCV内の所望の位置に移動すると、バルーンの膨張は、血管壁が穿刺され、かつ1つ以上のアンカー120が展開される間に、カテーテル100の移動を防止するためにGCV内のバルーンの場所を安定化する。一態様において、安定化要素110は、拡張可能なバルーンである。別の態様では、安定化要素110は、拡張可能なステントである。いくつかの態様において、ステントは、ステントがカテーテルを安定させるために展開されると、血管を通る血流を遮断しないように、編組又はメッシュで構成される。
【0028】
安定化要素110が展開されると、貫通ガイドワイヤ115は、カテーテルの管腔に沿って遠位に配置された開口部105に向かって前進する。
図3に示すように、横断ワイヤとも称される貫通ガイドワイヤ115は、遠位に配置された開口部105の外へ前進させられ、かつ血管壁を横断して、左心房などの隣接する解剖学的管腔内に到達する。
【0029】
本明細書で考察されるように、本発明の方法は、
図3でTバーアンカーとして示されるアンカー120を、カテーテル100を介して、血管壁が貫通される部位まで前進させることを更に含み得る。本明細書で考察されるように、アンカー120は、
図5に示されるように、ブリッジ要素130を介して心腔、例えば、左心房の形状を変更するために使用される、インプラント構造の一部であり得る。一態様において、ブリッジ要素130は、第1の端部を介してアンカー120に結合され、本明細書で更に考察されるように、心腔内に展開されるか、又は第2の場所において心腔に近接して展開される第2のアンカーまで、心腔を横断して延在する。
【0030】
図4に示すように、貫通ガイドワイヤ115は、先端122が血管壁を横断すると、ループ又はフックなどの捕捉構造125を形成する形状記憶材料で構成される、先端122を含み得る。これは、第2のガイドワイヤ又はカテーテルを介してなどで、ガイドワイヤ115を捕捉することを可能にし、インプラントの1つ以上の追加のアンカーの配置及び/又は展開を可能にする。
図4に示すように、先端がガイドワイヤ115上に戻ってカールして、捕捉構造125を形成し、これは、カテーテルの管腔に引っ掛かるか、又は前進させられ得る。
図4は、捕捉構造125がカテーテル127の管腔内に案内されることを可能にする、フレア形状又はファネル形状の遠位端を有する、カテーテル127を示している。
【0031】
本明細書で考察されるように、貫通ガイドワイヤは、形状記憶材料で構成される先端を含む。これにより、ガイドワイヤの先端は、GCVに沿って、第1の概して真っ直ぐな構成で容器壁を横断して前進し、次に、捕捉構造を形成する第2の屈曲構成に遷移することができる。いくつかの態様において、先端は、第2の構成においてフック又はV字形を形成する。いくつかの態様において、先端は、第2の構成においてループ形状を形成する。様々な態様では、捕捉構造は、捕捉構造が引っ掛かり、血管空洞内又は第2のカテーテルの管腔内に引き込まれることを可能にする、少なくとも約90度、100度、110度、120度、130度、140度、150度、160度、170度、180度、もしくは190度の角度、又は、約90度超、100度超、110度超、120度超、130度超、140度超、150度超、160度超、170度超、180度超、もしくは190度超の角度を形成する、曲がった又は弓形のセクションを含む。様々な態様では、形状記憶材料は、形状記憶金属、合金、又はプラスチックで構成される。いくつかの態様において、形状記憶材料は、ニッケルチタン(NiTi)又は銅-アルミニウム-ニッケル合金で構成される。
【0032】
本明細書で考察されるように、本明細書で説明される方法及びデバイスは、例えば、左心房を再成形することによって、心臓の腔を再成形することによって、僧帽弁逆流の治療に特に有用である。したがって、本発明はまた、対象の心腔を再成形することによって、対象の僧帽弁逆流を治療する方法を提供する。方法は、血管アクセス部位を通ってカテーテルを挿入し、血管壁を有する第1の解剖学的管腔に沿ってカテーテルを、対象の心臓に近接する第1の場所まで前進させることであって、カテーテルが、カテーテルの長さに沿って延在する管腔と、遠位に配置された開口部と、安定化要素と、を備える、ことと、第1の管腔内のカテーテルを第1の場所で安定化要素を介して安定化することと、遠位に配置された開口部に向かって第1の場所までカテーテルの管腔に沿って貫通ガイドワイヤを前進させることと、遠位に配置された開口部の外へ貫通ガイドワイヤを前進させることによって血管壁を貫通し、血管壁を横断して心腔に入れることと、カテーテルの管腔を介して第1のアンカーを第1の場所まで前進させることであって、第1のアンカーが、ブリッジ要素の第1の端部で第1のアンカーに結合される、ことと、ブリッジ要素の第2の端部を、第1の場所で、貫通された血管壁を通って前進させることと、ブリッジ要素に沿って第2のアンカーを前進させ、心臓内の又は心臓に近接する第2の場所で第2のアンカーを展開することであって、ブリッジ要素が、心腔にまたがる、ことと、ブリッジ要素の長さを短くすることによって心臓の腔を再成形し、心臓の腔が再成形されたままであるように、心臓の腔が再成形されている間に、ブリッジ要素の第2の端部を展開された第2のアンカーに結合し、それによって対象の僧帽弁逆流を治療することと、を含む。
【0033】
図5は、GCV内のアンカーの展開を示す。示されるように、アンカー120のブリッジ要素130は、安定化要素が展開される間にカテーテルから展開される貫通ガイドワイヤによって形成される穴を介して組織壁を横断する。いくつかの態様では、ガイドワイヤ115の後退は、アンカー120をガイドワイヤ115から取り外し、ガイドワイヤ115がブリッジ要素130を介して別の場所の心腔内に又はそれに近接して配置される1つ以上の追加のアンカーに結合され得るようにGCV内に留まらせる。
【0034】
図13は、本発明の一態様における遠位に配置された安定化要素110を有するカテーテル100、及び放射線不透過性マーカー116を使用した、貫通ガイドワイヤ115の展開を介した本発明の方法による、血管壁の貫通を示している。様々な態様では、カテーテル100は、心臓表面、又は例えば、冠静脈洞、GCVなどの解剖学的血管等の曲率を模倣する事前に湾曲したシャフトを含む。様々な態様では、放射線不透過性マーカー116は、処置中及び血管壁を横断する貫通ガイドワイヤ115の横断中の適切な配置のために、安定化要素110の特定の向き及び配置をユーザに示す独自の形状を有する。
【0035】
心臓弁輪の治療/修復のための心臓インプラント
本発明と共に使用するための例示的なインプラント構造
図6A及び
図6Bは、僧帽弁輪にまたがる、概して前後方向に左心房を横断して延在するようにサイズが決められ、構成されたインプラント10の実施形態を示す。インプラント10は、後方アンカー領域14及び前方アンカー領域16を有する、スパニング領域又はブリッジ要素12を備える。
【0036】
後方アンカー領域14は、ブリッジ要素12が後方僧帽弁輪の上の心房組織の領域に配置されることを可能にするようにサイズが決められ、構成される。この領域が好ましいのは、一般に、後方僧帽弁輪にあるか又は後方僧帽弁輪に隣接する組織領域よりも多く、後方アンカー領域14を獲得するための組織塊が存在するからである。この上記の輪状位置での組織の係合はまた、環屈冠動脈への損傷のリスクを減少させることができる。少数の症例では、回旋枝冠動脈は、左大心臓静脈の左心房側面の大心房静脈を通過し、かつその内側に通過し、大心臓静脈と左心房の心内膜との間に横たわる可能性がある。しかしながら、後方アンカー領域内の力は、左心房に対して上向き及び内向きであり、かつ大心臓静脈の長軸に沿った収縮的な様式ではないため、この分野の他の技術と比較して、回旋枝動脈圧縮の可能性は低く、大心臓静脈の組織を収縮させる。それにもかかわらず、冠動脈造影により回旋枝動脈狭窄が明らかになった場合、対称形状の後方アンカーは、T字形部材の一方の肢が他方の肢よりも短いなどの非対称形状のアンカーに置き換えられ得、したがって、回旋枝動脈の横断点の圧迫が回避される。非対称形態はまた、配置前血管造影に基づいて最初に選択されてもよい。
【0037】
非対称後方アンカーは、他の理由でも利用され得る。非対称後方アンカーは、患者が重度の狭窄遠位大心臓静脈を有することが見出され、非対称アンカーがその血管の閉塞を回避するのにより良好に機能する場合に選択され得る。加えて、非対称アンカーは、後方僧帽弁輪に沿って異なる点に差別的かつ優先的に力を加えることを選択して、例えば、奇形な又は非対称の僧帽弁の場合に、治療を最適化する際に使用するために選択され得る。
【0038】
前方アンカー領域16は、ブリッジ要素12が、中隔を通って右心房に入ると、右心房内又はその近くに隣接する組織に配置されることを可能にするようにサイズが決められ、かつ構成される。例えば、
図6A及び
図6Bに示されるように、前方アンカー領域16は、心房中隔内の線維組織の領域に隣接するか又は当接することができる。示されるように、アンカー部位16は、望ましくは、後方アンカー領域14の高度とほぼ同じ高度又はそれよりも高い位置で前方僧帽弁輪よりも上方にある。図示される実施形態では、前方アンカー領域16は、卵円窩の下縁に近接しているか又はその近くにある。代替的に、前方アンカー領域16は、中隔内のより上方の位置、例えば、卵円窩の上縁部又はその近くに位置することができる。前方アンカー領域16はまた、アンカー部位が領域内の組織に害を及ぼさないことを条件に、卵円窩から離れた中隔内のより上方又は下方の位置に位置することができる。
【0039】
代替的に、前方アンカー領域16は、中隔を通って右心房に入ると、周囲の組織内又は周囲の領域に位置する1つ以上の追加のアンカー、例えば、上大静脈(SVC)又は下大静脈(IVC)内に位置する1つ以上の追加のアンカー内に位置付けられるか、又はそうでなければ延在することができる。
【0040】
使用中、スパニング領域又はブリッジ要素12は、2つのアンカー領域14及び16の間に張力を加えて配置され得る。これにより、インプラント10は、左心房を横断する後方から前方に概して直接的な機械的力を加える役割を果たす。直接的な機械的力は、輪の短い軸(
図2Eの線P-Aに沿う)を短くするのに役立つことができる。そうすることで、インプラント10はまた、その長軸(
図2Eの線CM-CL)に沿って輪を反応的に再成形することができ、かつ/又は他の周囲の解剖学的構造を反応的に再成形することができる。しかしながら、インプラント10の存在は、短軸又は長軸の長さに影響を与えることなく、心臓弁輪に隣接する組織を安定化するのに役立つことができることを理解されたい。
【0041】
また、他の弁構造内に位置する場合、周囲の解剖学的構造に起因して、影響を受ける軸は、「長軸」及び「短軸」ではない場合があることも理解されたい。加えて、治療的であるために、インプラント10は、心臓サイクルの一部の間、例えば、心室収縮の発症時に心臓が最も血液で満たされているときに、ほとんどの僧帽弁漏出が起こるときの拡張期後期及び収縮期早期の間に、輪を再成形するだけでよい。例えば、インプラント10は、輪が拡張するにつれて、心腔拡張緩和後期の間の輪の外向き変位を制限するようなサイズにすることができる。
【0042】
左心房を横断してインプラント10によって加えられる機械的力は、より正常な解剖学的形状及び張力を心臓弁輪及び弁尖に復元することができる。より正常な解剖学的形状及び張力は、心室拡張後期及び心室収縮初期に弁尖の接合を促進し、これにより僧帽弁の逆流が減少する。
【0043】
最も基本的な形態では、インプラント10は、生体適合性のある金属若しくはポリマー材料、又は生体適合性を付与するために材料で適切にコーティング、含浸、若しくは他の方法で処理された金属若しくはポリマー材料、又はそのような材料の組み合わせから作られる。材料はまた、望ましくは放射線不透過性であるか、又はX線透視の視覚化を容易にするために放射線不透過性な特徴を組み込む。
【0044】
いくつかの実施形態では、インプラント10、又はその少なくとも一部分は、可撓性若しくは剛性、又は非弾性若しくは弾性の機械的特性、又はそれらの組み合わせを有することができる、金属又はポリマーワイヤフォーム構造の曲げ、成形、接合、機械加工、成形、又は押し出しによって形成され得る。他の実施形態において、インプラント10、又はその少なくとも一部分は、金属又はポリマー糸状又は縫合糸材料から形成され得る。インプラント10を形成することができる材料には、ステンレス鋼、ニチノール、チタン、シリコーン、めっき金属、Elgiloy(商標)、NP55、及びNP57が挙げられるが、これらに限定されない。
【0045】
本明細書に記載されるインプラントのいずれかにおいて、ブリッジ部材は、実質的に非弾性材料、例えば、ねじ状又は縫合材料から形成され得る。
【0046】
後方アンカー領域
後方アンカー領域14は、左心房内又は上記の輪状位置の左心房に配置されるように、例えば、後僧帽弁輪の上方の左心房壁内又は左心房壁の近くに位置付けられるようにサイズが決められ、かつ構成される。
【0047】
図示される実施形態では、後方アンカー領域14は、後方僧帽弁輪の大部分に隣接して、かつ平行に移動する、大心臓静脈のレベルに概して配置されることが示されている。冠静脈洞のこの延長は、放射線不透過性デバイスを冠静脈洞内に配置するか、造影剤を冠静脈洞内に注射する際に、強力で信頼性の高いX線透視ランドマークを提供することができる。前述のように、この上記の輪状位置にブリッジ要素12を固定することはまた、僧帽弁輪に直接的に適用される処置と比較して、回旋枝冠動脈への侵害及び損傷のリスクを軽減する。更に、上記の輪状位置は、弁の弁尖との接触を確実にしないため、接合を可能にし、機械的損傷のリスクを低減する。
【0048】
また、大心臓静脈は、比較的薄い非線維性心房組織を容易に増強及び強化することができる部位を提供する。本質的に非線維性心臓組織である後方アンカー領域14の保持又は購入を強化し、インプラント10によって加えられる力の分布を改善するために、後方アンカー領域14は、大心臓静脈及び当接する静脈組織内に配置された後方アンカー18を含み得る。これにより、心臓の非線維性部分に後方アンカー領域14を固定することが可能になり、それにもかかわらず、臨床的に適切な時間枠で表現された、裂開することなくかなりの期間にわたってその組織上での相当な保持又は獲得を維持することができる。
【0049】
前方アンカー領域
前方アンカー領域は、ブリッジ要素12が、心房中隔の右心房側の線維組織及び周囲の組織に隣接して又はその近くにしっかりと所定の位置にとどまることを可能にするようにサイズが決められ、かつ構成される。この領域の線維性組織は、筋肉と比較して優れた機械的強度及び完全性を提供し、デバイスの引き抜きに強く耐えることができる。中隔は、心臓内のそれ自体の範囲で最も線維状の組織構造である。
【0050】
外科的に処理される心臓組織は、通常、実際に縫合糸を配置することができる唯一の心臓組織のうちの1つであり、綿撒糸なく、又は筋肉組織を深く掴む必要がある場合には、筋肉組織を深く掴むことなく保持することが期待され得る。
【0051】
図6A及び
図6Bに示すように、前方アンカー領域16は、前方僧帽弁輪の平面の上方の上記の輪状位置で中隔壁を通過する。前方側の上記の輪状距離は、一般に、後方側の上記の輪状距離以上であり得る。前方アンカー領域16は、隔壁組織及び周囲の構造への害を防止する必要性を考慮して、卵円窩内外で他のより下方又はより上方の部位を使用することができるが、卵円窩の下縁又はその近くに示されている。
【0052】
ブリッジ要素12を右心房内のこの上記の輪状レベルに配置することによって、左心房の外側に完全にあり、前僧帽弁輪の上に十分に間隔を置いて配置されているため、インプラント10は、前僧帽弁輪に血管内結合の非現実性を回避し、前僧帽弁輪には、前方弁尖によって前方に、大動脈流出路によって下方に、及び伝導系の房室結節によって内側に結合されている輪組織の非常に薄い縁がある。前方僧帽弁輪は、大動脈弁の非冠動脈弁尖が中央線維体を介して僧帽弁輪に付着する部位である。インプラント10の右心房内(中隔内又は静脈内のいずれか)の上記の輪状レベル内の前方場所は、大動脈弁及び房室結節の両方の侵害及び損傷のリスクを回避する。
【0053】
線維性隔壁組織における前方アンカー領域16の獲得は、隔壁部材30又は前方アンカー20、又はその両方の組み合わせによって増強されることが望ましい。
図8A及び
図8Bは、隔壁部材30を含む前方アンカー領域を示している。隔壁部材30は、拡張可能なデバイスであってもよく、隔壁オクルーダー、例えば、Amplatzer(登録商標)PFOオクルーダー等の市販のデバイスであってもよい。隔壁部材30は、好ましくは、線維性組織部位における前方アンカー領域16の保持又は獲得を機械的に増幅する。隔壁部材30はまた、インプラント10の位置を確実にするために、中隔の隣接する解剖学的構造への依存を少なくとも部分的に増加させることが望ましい。加えて、隔壁部材30はまた、移植処置中に卵円窩又は周囲領域に作成された小さな開口部を塞ぐ又は閉塞するのに役立ち得る。
【0054】
ピンポイントの引っ張り力が前方アンカー領域16によって中隔に加えられることを予想して、隔壁部材30に作用する力は、弁、血管、又は伝導組織に衝突を引き起こすことなく、中等度の領域に広がるべきである。引っ張り力や張力を輪に伝達することで、短軸の短縮が達成される。ブリッジ要素の張力が高くなるにつれて、左心房のブリッジ要素の張力方向における焦点が狭くならない傾向があるため、屈曲的に剛性のある隔壁部材が好ましい。隔壁部材30はまた、心臓内に展開されるデバイスの血栓形成を減少させるために、低プロファイル構成及び高度に洗浄可能な表面を有するべきである。隔壁部材はまた、折りたたまれた構成及び展開された構成を有し得る。隔壁部材30はまた、アンカー20の取り付けを可能にするために、ハブ31(
図8A及び
図8Bを参照)を含み得る。隔壁ブレースはまた、隔壁部材30及び前方アンカー20と併用して、中隔に沿って力を均一に分散させることができる。代替的に、IVC又はSVC内のデバイスを、中隔に限定される代わりに、アンカー部位として使用することができる。
【0055】
それぞれ、上記の輪状組織部位に放射線不透過性ブリッジロック及びよく区切られたX線透視ランドマークを有する後方及び前方アンカー領域14及び16の位置は、例えば、回転動脈、房室結節、並びに大動脈弁の左冠動脈及び非冠動脈突起への主な重要な構造損傷又は局所衝突からの自由を提供するだけでなく、上記の輪状集束部位もまた、組織と直接の張力荷重貫通/咬合/保持組織付着機構との間の獲得に依存しない。代わりに、機械的レバー及びブリッジロックの取り付け又は当接をよりよく収容し、潜在的な組織引き裂き力をよりよく分配することができる、ステント、T字形部材、及び隔壁部材などの物理的構造及び力分布機構を使用することができる。更に、アンカー部位14、16は、オペレータが複雑なイメージングを使用することを必要としない。埋め込み後又は埋め込み中の埋め込み位置の調整も、これらの制約なしに容易になる。アンカー部位14、16はまた、インプラント10が出現する左心房壁の両側で血管内スネアリングし、次にブリッジ要素12を切断することによって、インプラント10の完全な心房内回収を可能にする。
【0056】
ブリッジ要素の向き
図6A及び
図6Bに示される実施形態では、インプラント10は、僧帽弁輪のおおよその中点よりも上方の後方焦点から始まり、中隔の前方焦点領域に直接的に概して直線的な経路で前方方向に進む、左心房にまたがることが示されている。インプラント10のスパニング領域又はブリッジ要素12は、配置の後方領域と前方領域との間の標高の差によって決定される場合を除き、輪の平面に向かって又はそれから離れる標高の有意な偏差なしに、弁の平面上のこの本質的に直線な経路で延在するように予め形成されるか、又はそうでなければ構成され得る。そのようなインプラントは、横方向若しくは内側方向の偏差及び/又は上方若しくは下方の偏差を有するブリッジ部材を含むことができ、剛性若しくは半剛性及び/又は長さが実質的に固定されたブリッジ部材を含むことができることが理解される。
【0057】
後方及び前方アンカー
後方アンカー又は前方アンカーを含む、本明細書に記載されるようなアンカーは、ブリッジ要素12を張力状態で解放可能に保持し得る装置を説明することを理解されたい。
図7A及び
図7Bで見ることができるように、それぞれのアンカー20及び18は、ブリッジ要素12に解放可能に固定されて示されており、アンカー構造は、張力が低下するか又はゼロになる可能性があるときの心臓周期の一部の間、心房中隔及び大心臓静脈の内壁から独立して前後に移動することができる。
【0058】
代替的な実施形態がまた記載されており、これらの全てがこの機能を提供し得る。また、後方アンカー及び前方アンカーの一般的な説明は、アンカー機能に限定されないこと、例えば、後方アンカーを前方に使用してもよく、前方アンカーを後方に使用してもよいことも理解されたい。
【0059】
ブリッジ要素が隔壁部材(例えば、前方アンカー)又はT字形部材(例えば、後方アンカー)に当接関係にある場合、例えば、アンカーは、ブリッジ要素が隔壁部材又はT字形部材内又はその周囲で自由に移動することを可能にし、例えば、ブリッジ要素が隔壁部材又はT字形部材に接続されないことを可能にする。この構成では、ブリッジ要素は、ロックブリッジストップによって張力で保持され、それによって、隔壁部材又はT字形部材は、ブリッジ要素によって加えられた力をより大きな表面積にわたって分散する役割を果たす。代替的に、アンカーは、例えば、ブリッジストップが隔壁部材ハブ上に位置付けられ、かつ隔壁部材ハブに固定されるときに、隔壁部材又はT字形部材に機械的に接続され得る。この構成では、ブリッジ要素は、隔壁部材の位置に対して固定されており、隔壁部材の周りを自由に移動することはできない。
【0060】
図9A及び
図9Bは、本発明による例示的なロックブリッジストップ20の斜視図を示している。各ブリッジストップ20は、好ましくは、固定上部本体302及び可動下部本体304を含む。代替的に、上部本体302は、可動であり得、下部本体304は、固定され得る。上部本体302及び下部本体304は、管状形状のリベット306に隣接して位置付けられている。上部本体302及び下部本体304は、リベットヘッド308及びベースプレート310によって所定の位置に保持されることが好ましい。リベット306及びベースプレート310は、ブリッジストップ300がガイドワイヤ上に設置されることを可能にするようなサイズの所定の内径312を含む。ばねワッシャ314などのばね、又は機械技術分野ではベルヴィルばねとしても知られているばねは、リベット306に隣接し、リベットヘッド308と上部本体302との間に位置付けられ、下部本体304に上向きの力を加える。下部本体304は、ブリッジロック解除位置(
図9A参照)とブリッジロック位置(
図9B参照)との間で移動可能である。ブリッジロック解除位置では、下部本体304と上部本体302とが接触していないため、上部本体302と下部本体304との間に溝320が形成される。ブリッジロック位置では、スプリングワッシャ314の軸方向力は、下部本体304を上部本体302と接触又は接触に近い状態に付勢し、それによって、溝320内に位置付けられているブリッジ要素12は、下部本体304の軸方向力が上部本体302に印加されることによって所定の位置にロックされる。使用中、ブリッジ要素12は、下部本体304がブリッジロック解除位置316に維持されている間に、溝320内に位置付けられる。ブリッジストップ300は、隔壁部材30に対して位置付けられ、ブリッジ要素12は、適切な張力に調整される。次に、下部本体304が上部本体302に向かって移動することを可能にし、それによって、ブリッジ要素12上のブリッジストップ300の位置を固定する。この実施例は、特定のロックブリッジストップ設計を示すが、米国特許出願公開第2017/0055969号に記載されるタイプのいずれをも含む、任意の好適なロックを使用することができることが理解される。
【0061】
図10A及び
図10Bは、本明細書に記載の方法での送達に好適な代替の心臓インプラントを示している。
図10Aは、大心臓静脈内にT字形の後方アンカー18及びT字形の前方アンカー70を有するインプラント10’を示している。前方T字形ブリッジストップ75は、説明されるT字形ブリッジストップの実施形態のうちのいずれかの構造であってもよい。T字形部材75は、T字形部材の長さに対して垂直なT字形部材75を通って延在する管腔75を含む。ブリッジ要素12は、前述のように自由浮遊ブリッジストップによって固定され得る。
図10Bは、大心臓静脈内にT字形の後方アンカー18及び格子様式の前方アンカー76を有するインプラント10’を示している。格子77は、卵円窩で、又は卵円窩の近くで中隔壁に位置付けられている。任意選択で、格子77は、ブリッジ要素12の張力を隔壁上のより大きな領域に分配するための補強ストラット78を含んでもよい。前方格子様式のブリッジストップ76は、ブリッジ要素12がその中心を通過する展開カテーテル内に詰め込まれ得る。格子77は、好ましくは、自己膨張であり、プランジャによって展開され得る。ブリッジ要素12は、前述のように自由浮遊ブリッジストップによって固定され得る。本明細書に記載の方法で送達及び展開するために上述のインプラントと同じ概念を利用する様々な他のそのようなインプラントが考案され得ることが理解される。
【0062】
図11A及び
図11Bは、ブリッジ要素12をT字形の後方アンカーに接続する代替方法を示している。
図11Aは、T字形部材18を示しており、ここにおいて、ブリッジ要素12は、T字形部材の中心部分の周りに巻かれている。ブリッジ要素12は、例えば、ブリッジ要素12の上に配置された接着剤712、結び目、又は固定バンドによって固定され得る。代替的に、ブリッジ要素12は、まず、T字形部材の長さを垂直にしてT字形の後方アンカー18を通って延在する管腔714を通ってねじ込まれてもよい。ブリッジ要素12は、次いで、T字形部材の周りに巻かれ、例えば、接着剤712、固定バンド、又は結び目によって固定されてもよい。
図11Bは、ブリッジ要素12がプレート716に溶接又は鍛造される、T字形部材18を示している。次いで、プレート716は、T字形部材710内に埋め込まれてもよく、又は代替的に、例えば、接着又は溶接によってT字形部材710に固定されてもよい。様々な他の結合を使用して、ブリッジ要素12及び後方アンカー18を固定し、本明細書に記載の方法で送達を容易にすることができることが理解される。
【0063】
図12A及び
図12Bは、本発明による心臓インプラント内の後方アンカーとしての使用に好適な代替アンカーを示している。
図12Aは、血管内ステント80、及び任意選択で補強ストラット81を含む、T字形アンカー18’の斜視図である。ステント80は、バルーン拡張可能又は自己拡張可能なステントであり得る。前述のように、T字形アンカー18’は、ブリッジ要素12の所定の長さに接続されることが好ましい。ブリッジ要素12は、前述のようなブリッジロックのうちのいずれかを使用することによって、T字形のブリッジストップ80の内側、その上、若しくはその周りに保持されてもよく、又は例えば、結び付ける、溶接する、若しくは接着することによって、若しくは任意の組み合わせによって、T字形のアンカー18に接続されてもよい。
図12Bは、所定の長さ、例えば、3~8センチメートルを有する可撓性チューブ90、及び少なくともガイドワイヤが通過することを可能にするサイズの内径91を含む、T字形アンカー18”を示している。チューブ90は、好ましくは編組されているが、同様に固体であってもよく、ポリマー材料でまたコーティングされてもよい。チューブ90の各端部は、好ましくは、T字形アンカーの位置決め及び位置付けを補助するための放射線不透過性マーカー92を含む。チューブ90はまた、好ましくは、血管壁を保護するための非外傷性端部を含む。チューブは、概して大心臓静脈又は心房中隔の湾曲した形状に適合し、かつ周囲の組織に対する外傷が少ないように、屈曲的に湾曲又は予め形成され得る。補強センターチューブ93はまた、アンカーに剛性を追加するために含まれ得、アンカーの大心臓静脈及び左心房壁からの出口を防止することを補助する。ブリッジ要素12は、補強センターチューブ93の内側の中央穴94を通って延在する。記載されたアンカーの各々は、解剖学的構造に対応するように、形状が直線的若しくは曲線的であるか、又は可撓性であることができる。様々な他のタイプのアンカーが、本明細書に記載の方法で送達及び展開するためにブリッジ要素12に取り付けられた後方アンカー18を使用することができることが理解される。
【0064】
送達及び移植の一般的な方法
本明細書に記載のインプラントシステム10は、様々な方式で心臓弁輪内に埋め込むことができる。いくつかの態様では、インプラント10は、画像誘導下で大腿静脈又は頸静脈(IVC又はSVCを介して)などの末梢静脈アクセス部位を介して、又は画像誘導下でも大腿動脈から大動脈を通って左心房への動脈内逆行アプローチを介してカテーテルベースの技術を使用して埋め込まれる。前述のように、インプラント10は、体内で組み立てられてインプラントを形成し、単一又は複数のカテーテルの相互作用を介して体の外側から体に送達及び組み立てられる、独立したコンポーネントを備える。しかしながら、心臓組織の浸透は、単一のカテーテルとの相互作用を介して行われる。
【0065】
本発明は上記の実施例を参照して説明されているが、変更及び変形は本発明の趣旨及び範囲内に包含されることを理解されたい。したがって、本発明は、以下の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【国際調査報告】