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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】編み具
(51)【国際特許分類】
   D04B 35/02 20060101AFI20231226BHJP
   D04B 35/04 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
D04B35/02
D04B35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534709
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2021081984
(87)【国際公開番号】W WO2022128297
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20214742.7
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】102021119011.8
(32)【優先日】2021-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500131561
【氏名又は名称】グロッツ-ベッケルト・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】弁理士法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ザウター,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ジンメンディンガー,ローラント
【テーマコード(参考)】
4L054
【Fターム(参考)】
4L054AA01
4L054LA01
4L054LA02
4L054LA03
4L054LA04
4L054NA04
(57)【要約】
近年、編み具の分野では、摩擦や摩耗の低減に着目した開発が行われている。本発明による編み具(1)および本発明による編み装置(27)は、従来の編み具に比べて、編み機における摩擦や汚れ(23)の蓄積を低減するのに適している。この目的のため、編み具(1)の機能部分(5)は、重心線(4)の勾配の絶対値が0より大きい部分(7)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
編み具(1)が編み動作中に移動する実質的に編み具の長手方向(z)に延びるシャンク部(2)を備え、
前記シャンク部(2)は、その長さに沿ったすべての点において、編み具の長手方向(z)に対して直角に広がり、横方向(y)および高さ方向(x)によって定まる断面(8)を有し、
これらの断面(8)の各々は重心(9)を有し、該重心を通って、編み具の長手方向(z)に沿ってすべての断面(8)の重心(9)を相互接続する仮想的な重心線(4)が延び、
前記シャンク部(2)は、少なくとも1つの機能部分(5)を有し、
該機能部分において前記重心線(4)は高さを変化させ、
前記断面(8)の高さは、前記機能部分(5)の長さに沿ったすべての点において、前記機能部分(5)内のシャンク部高さ(6)よりも小さく、該シャンク部高さは、高さ方向(x)において、前記機能部分(5)内の前記シャンク部(2)の高さ方向(x)における最低点と前記シャンク部(2)の高さ方向(x)における最高点の間の距離であり、
前記機能部分(5)は、編み具(1)全体の長さの20%よりも大きい、ただし好ましくは、25%よりも大きい長さを有し、
前記機能部分(5)は、前記重心線(4)の勾配の絶対値が0と∞の間である部分区間(7)を有している、ことを特徴とする編み具(1)。
【請求項2】
編み具(1)は、少なくとも1つのバット部(18)を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の編み具(1)。
【請求項3】
前記機能部分(5)は、少なくとも2つの小部分(33)から構成され、それぞれの小部分(33)は、前記重心線(4)の勾配の絶対値が0と∞の間である部分空間(7)を有しており、これらの小部分(33)は、編み具の長手方向(z)において互いに離隔している、ことを特徴とする請求項1または2に記載の編み具(1)。
【請求項4】
編み具(1)は、編み具の長手方向(z)に見て前記バット部(18)に先行する前記機能部分(5)の少なくとも1つの前記小部分(33)と、編み具の長手方向(z)に見て前記バット部に後続する前記機能部分(5)の少なくとも1つの前記小部分(33)を有する、ことを特徴とする請求項3に記載の編み具(1)。
【請求項5】
前記機能部分(5)の少なくとも1つの、ただし好ましくは2つの、前記小部分(33)は、前記バット部(18)に直接隣接するか、または前記バット部(18)から、編み具の長手方向(z)に、編み具全体の長さの10%以下の距離だけ離隔している、ことを特徴とする請求項3または4に記載の編み具(1)。
【請求項6】
前記機能部分(5)は、前記重心線(4)の少なくとも1つの高さの局所的な最小点(15)または最大点(14)である極値点を有し、この少なくとも1つの極値点では、前記重心線(4)の勾配はゼロである、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の編み具(1)。
【請求項7】
前記シャンク部(2)の編み具(1)の正の高さ方向(x)を向く面である頂面(10)は、編み具の長手方向(z)において、前記重心線(4)の少なくとも2つの前記局所的な最大点(14)の位置で同じ高さを有する、および/または、前記シャンク部(2)の編み具(1)の負の高さ方向(x)を向く面である底面(13)は、前記重心線(4)の少なくとも2つの前記局所的な最小点(15)の位置で同じ高さを有する、ことを特徴とする請求項6に記載の編み具(1)。
【請求項8】
前記シャンク部(2)の横方向(y)を向く側面のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの前記極値点(14)の位置で前記機能部分(5)の大部分に対して横方向(y)に隆起している、ことを特徴とする請求項6または7に記載の編み具(1)。
【請求項9】
前記シャンク部(2)は、前記重心線(4)の前記局所的な最大点(14)の位置において、前記機能部分(5)の最小シャンク部高さ(11)から離隔し、前記シャンク部(2)は、前記重心線(4)の前記局所的な最小点(15)の位置において、前記機能部分(5)の最大シャンク部高さ(12)から離隔している、ことを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の編み具(1)。
【請求項10】
前記機能部分(5)の少なくとも1つの前記小部分(33)は、x-z平面において、前記機能部分(5)の横方向(y)の全体にわたる少なくとも1つの三角形状の凹部(19)および/または少なくとも1つの波状の凹部(20)を含む、ことを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の編み具(1)。
【請求項11】
前記シャンク部(2)の、編み具(1)の正の高さ方向(x)を向く面である頂面(10)は、編み具の延伸方向を指す編み具の正の長手方向(z)において、前記重心線の少なくとも1つの高さの局所的な最大点(14)の前に局所的勾配最大値(40)を持つ勾配経路を有する、
および/または、
前記シャンク部(2)の、編み具(1)の負の高さ方向(x)を向く面である底面(13)は、編み具の延伸方向を指す編み具の正の長手方向(z)において、前記重心線(4)の少なくとも1つの高さの局所的な最小点(15)の前に局所的勾配最小値(41)を持つ勾配経路を有する、ことを特徴とする請求項1から10のいずれか1項に記載の編み具(1)。
【請求項12】
前記頂面(10)の局所的勾配最大値(40)の絶対値および/または前記底面(13)の局所的勾配最小値(41)の値は、0.57と2.75の間である、ことを特徴とする請求項11に記載の編み具(1)。
【請求項13】
前記シャンク部(2)の編み具(1)の正の高さ方向(x)を向く面である頂面(10)と前記シャンク部(2)の編み具(1)の負の高さ方向(x)を向く面である底面(13)は、前記機能部分(5)の前記部分区間(7)において実質的に互いに平行である、ことを特徴とする請求項1から12のいずれか1項に記載の編み具(1)。
【請求項14】
前記機能部分(5)の前記重心線(4)の、編み具の負の長手方向(z)に見て最後の局所的な最大点(14)は、大域的な最大点(42)である、ことを特徴とする請求項1から13のいずれか1項に記載の編み具(1)。
【請求項15】
少なくとも1つの針用スロット(28)を有する編み装置(27)であって、該針用スロット(28)は、編み具(1)を受け入れ、かつ動作中に、編み具(1)を案内するように構成されており、さらに、請求項1に記載の少なくとも1つの編み具(1)を有する編み装置。
【請求項16】
前記針用スロット(28)の編み具(1)の長手方向(z)における長さ、
前記機能部分(5)の編み具(1)の長手方向(z)における到達範囲、および、
編み動作中の編み具(1)の編み動作のストローク(34)の大きさ
は、編み具(1)の前記機能部分(5)の、編み具の長手方向(z)における到達範囲の少なくとも80%、有利には90%、ただし好ましくは100%が、編み動作中に前記針用スロット(28)内に留まるように相互に調整される、ことを特徴とする請求項15に記載の編み装置(27)。
【請求項17】
前記針用スロット(28)の上縁(36)は、前記シャンク部の編み具(1)の正の高さ方向(x)を向く面である頂面(10)の最高点(39)から、高さ方向(x)に最大で0.5mm、ただし好ましくは最大で0.3mmだけ離隔している、ことを特徴とする請求項15または16に記載の編み装置(27)。
【請求項18】
前記編み具(1)は、前記機能部分(5)に対して正の高さ方向(x)に隆起したバット部(18)を有し、該バット部(18)は、編み装置(27)の凹部であるカム曲線(30)に係合し、前記シャンク部の編み具(1)の正の高さ方向(x)を向く面である頂面(10)の最高点(39)は、編み具の長手方向(z)において前記カム曲線(30)から離隔している、ことを特徴とする請求項15から17のいずれか1項に記載の編み装置(27)。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
産業用編み機で使用される編み具は、19世紀以来、さらなる発展を遂げるととともに、編み機分野のさらなる進歩によってもたらされる新たな課題に絶えず対応していかなければならない。近年、特にエネルギー価格や生産コストの上昇を背景に、摩擦および摩耗の低減が重要視されている。従来の編み具は、シャンク部を有し、このシャンク部は、編み具の長手方向に延び、少なくとも機能部分において、編み機(丸編み機および平編み機の両方)の針用スロットに案内され、この針用スロットにおいて、所定の作動領域内で、編み機の長手方向に実質的に直線状の編み動作を行うように設計されている。この編み動作のための力は、バット部を介して編み具に伝達され、このバット部は、編み具のシャンク部上に、編み具の長手方向と直角な高さ方向に突出する。バット部には、編み具の長手方向と高さ方向に対して直角な横方向の力も作用する。この横方向の力は、針用スロット内での編み具の傾きをもたらし、針用スロットの側壁との接触により支持される。編み具の傾きにより、編み具は上部と下部においてのみ針溝に線状に接触する。針用スロット内での編み具の傾きは、欧州特許出願公開第1860219号の図2に、接触位置が楕円で示されて、明確に示されている。
【0002】
仏国実用新案証特許発明第2260262号には、高い編み速度の時に発生するフック(ループ形成手段)の振動を低減し、針折れを防止することを意図した編み具が記載されている。この目的のため、バット部(図1の5)に隣接する針のリアシャンク部は、波形の形状を有している(図1の4cおよび4d)。この波形の形状は、針の長手方向の振動を減衰させるためのものである。
【0003】
独国特許出願公開第3612316号には、改善された衝撃吸収特性を有することを意図した編み具が記載されている。この目的のため、編み具は、シャンク部の長手方向に延びる少なくとも1つの細長い溝を有する。図4には、この種の編み具の特別な例示的実施形態が示されており、この編み具は、シャンク部に沿って弧状の切り欠き部(図4の11)を有している。これらの切り欠き部は、ブリッジの形成をもたらし、編み針の重量を軽減し、その部分にバネ弾性を与えることを目的としている。
【0004】
独国特許出願公開第3213158号には、フック要素(ループ形成手段)と閉鎖要素を有する編み具が記載されており、フック要素のフックは、閉鎖要素とフック要素との間の相対運動によって閉鎖可能である。この種の編み具は、複合針とも呼ばれる。図5は、この編み具の特定の例示的実施形態を示しており、糸を受けるために適した凹部(図5、7、9)を有している。これらの凹部(図5、7、9)は、長手方向においてフック要素に直接隣接しており、針用スロットには案内されていない。
【0005】
欧州特許出願公開第2927360号には、厚さが減少した部分を有し、それによって編み具と針用スロットとの間の摩擦を減少させる蛇行シャンク部を有する編み具が記載されている。蛇行シャンク部は、高さ向に相互にオフセットされ、それぞれ編み具の長手方向に延びる複数のシャンク部を有する。これらのシャンク部は、高さ方向に延びるブリッジによって相互に接続されている。蛇行シャンク部には、編み具の長手方向に対して傾斜した部分はない。すべてのシャンク部は、編み具の長手方向を正確に向くか、編み具の長手方向に対して90°の角度を有する。
【0006】
上述した欧州特許出願公開第1860219号には、シャンク部が機能部分を有する編み具が記載されている。高さ方向と横方向によって定まる平面における編み具の断面の重心の高さは、機能部分内で編み具の長手方向における断面の位置によって変化する。これは、いわゆる「浮き部分」によって実現される。これらの「浮き部分」は、編み具の下側からも、編み具の上側からも間隔をあけて配置されている。「浮き部分」は、機能部分の残りの部分と同様に、編み具が挿入される編み機の針用スロットの床部と平行に、すなわち実質的に編み機の長手方向に延びる。したがって、「浮き部分」内の重心の高さは一定である。「浮き部分」は、編み具と針穴との接触面を減らす目的で、編み具の頂面および底面から間隔を空けて配置されている。「浮き部分」は、シャンク部によって相互に連結されている。これらは、実質的に編み具の長手方向に延び、編み具の上側および下側に配置され、針用スロットとの直線状の接触面を形成することを意図している。この種の編み具の実施形態では、「浮き部分」の上下に空間が存在し、そこに編み動作中に汚れが溜まる可能性がある。
【発明の概要】
【0007】
したがって、本発明の目的は、従来の編み具および編みシステムと比較して、摩擦が低減され、加えて、汚れの付着が低減された編み具および編みシステムを提供することにある。
【0008】
その目的は、請求項1および12の2つの請求項によって達成される。編み具は、
編み具が編み動作中に移動する実質的に編み具の長手方向に延びるシャンク部を備え、
シャンク部は、その長さに沿ったすべての点において、編み具の長手方向に対して直角に広がり、横方向および高さ方向によって定まる断面を有し、
これらの断面の各々は重心を有し、それらの重心を通って、編み具の長手方向に沿ってすべての断面の重心を相互接続する仮想的な重心線が延び、
シャンク部は、少なくとも1つの機能部分を有し、
機能部分において重心線は高さを変化させ(すなわち、重心線は、重心線の高さが一定である区間、すなわち実質的に編み具の長手方向に延びる区間、を有しない。したがって、勾配がゼロの場合、重心線の二次導関数はゼロに等しくはない)、
断面の高さ(断面高さ)は、機能部分の長さに沿ったすべての点において、機能部分内のシャンク部高さよりも小さく(シャンク部高さは、高さ方向において、機能部分内のシャンク部の高さ方向における最低点とシャンク部の高さ方向における最高点の間の距離である)、
機能部分は、編み具全体の長さの20%よりも大きい、ただし好ましくは25%よりも大きい長さを有し、
機能部分は、重心線の勾配の絶対値が0と∞の間である部分区間を有している、ことを特徴とする。
したがって、重心線の勾配の絶対値は、0より大きい。重心線の2点間の勾配は、重心線のこれら2点間の高さ方向の高低差と編み具の長手方向の長さの差の商に相当する(勾配=高低差/長さの差)。この方法で勾配を算出できない編み具の領域(例えば、重心線の2点間の長さの差がゼロの場合)は、本特許出願で定義される部分区間ではない。部分区間における重心線の勾配の絶対値が0と3の間であると、有利である。好ましくは、重心線の勾配の絶対値は0と1の間である。重心線の勾配の絶対値が、部分区間の長さの少なくとも50%において、0.01と0.8の間、好ましくは0.025と0.6の間であると有利である。重心線は、最短経路で重心を結ぶ。機能部分の部分区間において、重心線はその高さを連続的に変化させる。言い換えれば、重心線の高さは一定ではなく、編み具の長手方向の経路に沿って高さ方向に上昇および/または下降する。重心線が、x-z平面で見て「振動」するように高さを変化させると有利である。重心線の形状は、実質的にx-y平面における編み機の断面に関する変化によるものであり、密度または材料の変化によるものではない。このような変化は、単に断面が高さ方向に変位することであってもよい。編み具は、打抜き加工(スタンピング)によって製造されると有利である。編み具が一体の打ち抜かれた部品であれば特に有利である。この場合、編み具全体が、好ましいことに、単一の材料からなり、全体として実質的に同じ密度を有する。重心線の勾配のため、シャンク部領域の汚れは、編具の長手方向における編み具の移動中に、シャンク部から正の高さ方向において上方に、したがって編具の作動領域の外に、押し出される。ここで、作動動領域とは、編み具がその編み動作の間に滞在できる領域のことである。編み具は、実質的に編み具の長手方向に移動する。この移動中に機能部分に接触した汚れには、接触点で編み具の表面に対して直角方向を向く力が作用する。重心線の形状から、この力は編み具の移動方向および高さ方向の方向成分を持つ。このため、作業領域における自己清掃作用が生じ、汚れが除去され、その結果、編み具の信頼性および耐用年数が向上する。
【0009】
少なくとも1つのバット部を有する本発明に従う編み具によって、さらなる利点が提供される。バット部は、実質的に高さ方向に延びる。バット部は、有利には、高さ方向において、編み具の周囲の領域よりも上に突出する。駆動力および駆動運動は、バット部を介して編み具に伝達され得る。編み機で使用する場合、このバット部は、円弧状のカム曲線を有するカムに係合する。このカム曲線は、編み機と固定カムとの間の相対的な動きにより、編み機の長手方向の編み動作をバット部に伝達することができる。少なくとも2つのバット部を有する編み具によって、さらなる利点が提供される。本発明による教示は、2つ以上のバット部を含む編み具にも有利に使用することができる。
【0010】
また、機能部分が少なくとも2つの小部分から構成され、それぞれの小部分は、重心線の勾配の絶対値が0と∞の間である部分空間を有しており、これらの小部分が、編み具の長手方向において互いに離隔していると、有利である。機能部分が少なくとも2つの小部分から構成されることは、これらの少なくとも2つの小部分の間に、編み具の機能部分には属さない領域が存在することを意味する。これは、例えば、編み具の断面の重心がその高さを変化させない、すなわち、その高さが一定である領域であってもよい。少なくとも2つの小部分の間の距離が、編み具の長手方向におけるバット部の長さ(すなわちバット部長さ)と、少なくとも正確に同じ大きさ、好ましくは1.5倍の大きさであると、特に有利である。また、バット部が少なくとも2つの小部分の間に位置していると有利である。
【0011】
編み具が、編み具の長手方向に見てバット部に先行する機能部分の少なくとも1つの小部分と、編み具の長手方向に見てバット部に後続する機能部分の少なくとも1つの小部分を有する場合、さらなる利点が得られる。編み動作中の駆動力の力伝達点であるバット部には、高い負荷がかかる。機能部分の先行する小部分と後続する小部分は、編み動作中に伝達される駆動力を分散して支持することができる。
【0012】
機能部分の少なくとも1つの、ただし好ましくは2つの、小部分が、バット部に直接隣接するか、またはバット部から、編み具の長手方向に、編み具全体の長さの10%以下の距離だけ離隔している場合、有利である。この距離は、特に、編み具全体の長さの5%よりも小さい場合、有利である。
【0013】
機能部分が、重心線の少なくとも1つの高さの極値点(局所的な最小点または局所的な最大点)を有すると、有利である。この少なくとも1つの極値点では、重心線の勾配はゼロである。これらの極値点には、重心線の勾配が0と∞の間である上述の部分区間が両側に隣接している。針用スロット内で編み具に作用する横方向の力は、局所的な最小点および局所的な最大点の近傍で編み具を傾かせて針用スロットの側壁に接触させる。その結果、横方向の力がそこで支持され、接触点が形成され、編み具による編み動作の結果として、摩擦も発生する。局所的な最小点および局所的な最大点の近傍において、シャンク部は、編み動作中にここに生じる接触点のそれぞれが小さな接触面を有するように構成されていると、特に有利である。
【0014】
重心線の少なくとも2つの高さの極値点が同じ高さを有する場合、さらなる利点が得られる。少なくとも2つの局所的な最小点および/または2つの局所的な最大点が同じ高さを有すると、特に有利である。少なくとも2つの局所的な最大点が同じ高さを有し、第3の局所的な最大点がより低い高さを有する場合には、さらなる利点が得られる。同様に、少なくとも2つの局所的な最小点が同じ高さを有し、第3の局所的な最小点がより大きな高さを有すると、有利である。重心線の高さが同じである少なくとも2つの極値点が大域的な最大点または最小点である場合、すなわち、どの点における重心線の高さも、その点よりも大きくない(大域的な最大点)または小さくない(大域的な最小点)場合、特に有利である。
【0015】
シャンク部の編み具の正の高さ方向(すなわち、バット部が編み具の周囲領域の上方に突出する方向)を向く面(以下、頂面という)が、編み具の長手方向において、重心線の少なくとも2つの局所的な最大点の位置で同じ高さを有する、および/または、シャンク部の編み具の負の高さ方向(すなわち、編み動作中に針用スロットの床に向かう下方を指す方向)を向く面(以下、底面という)が、重心線の少なくとも2つの局所的な最小点の位置で同じ高さを有する場合、有利である。正の高さ方向と負の高さ方向は、互いに正反対である。重心線の大域的な最大点の位置で頂面が同じ高さを有する、および/または重心線の大域的な最小点の位置で底面が同じ高さを有する場合、特に有利である。
【0016】
少なくとも1つの極値点が、機能部分の大部分の表面に対して横方向に隆起している表面を有する場合も、本発明に従う編み具によって利点が提供される。上述したように、編み機で使用される編み具は、極値点の近傍で針用スロットと接触する。機能部分の残りの部分に対してこれらの位置で表面を隆起させると、隆起された位置で明確に定まる接触面が形成され、例えば製造上の不正確さのために、編み具の他の領域が編み機の部品と接触点を形成することを防ぐことができる。さらに、編み動作中に編み機との間に主として点状の接触点が形成されるように表面を隆起させれば、さらなる利点が得られる。
【0017】
シャンク部が、重心線の局所的な最大点の位置において、機能部分の最小シャンク部高さから離隔し、重心線の局所的な最小点の位置において、機能部分の最大シャンク部高さから離隔していると、有利である。この離隔距離が、機能部分の最大シャンク部高さの少なくとも半分の大きさであると特に有利である。
【0018】
機能部分の少なくとも1つの小部分が、x-z平面において、機能部分の横方向の全体にわたる少なくとも1つの三角形状の凹部および/または少なくとも1つの波状の凹部を含む場合、さらなる利点が得られる。高さ方向における凹部の高さが、シャンク部高さの少なくとも50%、好ましくは少なくとも65%であると特に有利である。
【0019】
シャンク部の、編み具の正の高さ方向を向く面(頂面)が、編み具の正の長手方向(すなわち、編み具の延伸方向)において、重心線の少なくとも1つの高さの局所的な最大点の前に局所的勾配最大値を持つ勾配経路を有する、および/または、シャンク部の、編み具の負の高さ方向を向く面(底面)が、編み具の正の長手方向(すなわち、編み具の延伸方向)において、重心線の少なくとも1つの高さの局所的な最小点の前に局所的勾配最小値を持つ勾配経路を有する場合、本発明に従う編み具によって利点が提供される。編み具の正の長手方向、すなわち編み具の延伸方向は、シャンク部のループ形成要素が配置されている端部に向かう編み具方向である。底面および頂面は、上述したい位置において、このように「汚れ受け部」を形成する。汚れ受け部は、表面の勾配経路により、汚れを、好ましくは編み具の負の長手方向に移動させる。その結果、汚れは、形成されたループまたは繊維製品から遠ざけられる。
【0020】
シャンク部の編み具の正の高さ方向を向く面(頂面)の局所的勾配最大値および/または編み具の負の高さ方向を向く面(底面)の局所的勾配最小値の絶対値が、0.57と2.75の間であると、有利である。ただし好ましくは、頂面の局所的勾配最大値および/または底面の局所的勾配最小値の絶対値は、0.83と1.74の間である。底面の局所的勾配最小値の絶対値が、頂面の局所的勾配最大値の絶対値よりも大きい場合、さらなる利点が得られる。
【0021】
シャンク部の編み具の正の高さ方向を向く面(頂面)とシャンク部の編み具の負の高さ方向を向く面(底面)が、機能部分の部分区間において実質的に互いに平行であると、さらなる利点が得られる。頂面と底面とは、少なくとも各部分区間において互いに平行である。その結果、材料および応力分布は、これらの部分区間において一貫している。頂面と底面が機能部全体において実質的に平行であると、特に有利である。
【0022】
機能部分の重心線の、延伸方向とは反対方向の編み具の負の長手方向に見て最後の局所的な最大点が、大域的な最大点であると、有利である。編み具の長手方向におけるこの最後の最大点が、編み具の負の長手方向で見たときの編み具の端部から最大で30mm、ただし好ましくは最大で15mmだけ離隔していると、さらなる利点が得られる。このようにして、編み具が横方向に延びる軸回りに傾くまたはねじれることが防止され、編み機における編み具の良好な案内が達成される。
【0023】
また、本発明の目的は、少なくとも1つの針用スロットを有する編み装置であって、この針用スロットは、編み具を受け入れ、かつ、動作中に、編み具を案内するように構成されており、
少なくとも1つの編み具は、
編み具が編み動作中に移動する実質的に編み具の長手方向に延びるシャンク部を備え、
シャンク部は、その長さに沿ったすべての点において、編み具の長手方向に対して直角に広がり、横方向および高さ方向によって定まる断面を有し、
これらの断面の各々は重心を有し、それらの重心を通って、編み具の長手方向に沿ってすべての断面の重心を相互接続する仮想的な重心線が延び、
シャンク部は、少なくとも1つの機能部分を有し、
機能部分において重心線は高さを変化させ、
断面の高さは、機能部分の長さに沿ったすべての点において、機能部分内のシャンク部高さよりも小さく(シャンク部高さは、高さ方向において、機能部分内のシャンク部の高さ方向における最低点とシャンク部の高さ方向における最高点の間の距離である)、
機能部分は、編み具全体の長さの20%よりも大きい、ただし好ましくは25%よりも大きい長さを有し、
機能部分は、重心線の勾配の絶対値が0と∞の間である部分区間を有している、編み装置によって達成される。
従って、各部分区間において、重心線は、編み具の長手方向に対して0°よりも大きくかつ90°よりも小さい角度をなす。これは、特に、各部分区間において、重心線が編み具の長手方向と平行でないことを意味する。この重心線の形状は、x-y平面における編み具の断面に関する変化または「ずれ」によるものであり、密度または材料の変化によるものではない。
【0024】
針用スロットの編み具の長手方向における長さ、機能部分の編み具の長手方向における到達範囲、および編み動作中の編み具の編み動作のストロークの大きさが、編み具の機能部分の、編み具の長手方向における到達範囲の少なくとも80%、有利には90%、ただし好ましくは100%が、編み動作中に針用スロット内に留まるように相互に調整されると、さらなる利点が得られる。機能部分の編み具の長手方向における到達範囲は、機能部分の編み具の長手方向における編み具の他の部分に対する位置を記述するものである。機能部分の編み具の長手方向における到達範囲は、編み具の長手方向において、機能部分の編み具の長手方向における前方限界と後方限界との間の領域である。機能部分が、編み具の長手方向において互いに離隔して配置された複数の小部分を有する場合、機能部分の到達範囲は、これらの小部分の間に位置する編み具の領域、例えば2つの小部分の間に位置するバット部、も含む。編み具は、その機能部分において針用スロットによって案内され、駆動力は針用スロットで支持される。編み具の機能部分と針用スロットの間には、接触部分が存在する。もし、編み動作中に機能部分の針用スロットから出る部分が大きすぎると、結果的に針の案内が悪化する。上記のように選択された範囲は、編み具の良好な案内を保証するために有利であることが判明している。理想的には、編み具の案内部分は、編み動作の全体にわたって針スロット内に完全に留まる、すなわち、特に編み具の長手方向において針用スロットから突出しないものである。
【0025】
針用スロットの上縁が、シャンク部の編み具の正の高さ方向を向く面(すなわち、頂面)の最高点から、高さ方向に最大で0.5mm、ただし好ましくは最大で0.3mmだけ離隔していると、さらなる利点が得られる。この距離は、以下、高さ方向距離と呼ばれる。高さ方向距離は、できるだけ小さい方が有利である。針用スロットの上縁が、正の高さ方向において最も高い位置で頂面と同じか頂面よりも高い位置にある場合、利点が得られる。このようにして、編み具の機能部分が、少なくとも1つの局所的な最大点の位置で針用スロットとの接触部を形成し、特に、機能部分の小部分において針用スロットとの接触部が形成されないことが保証される。上縁が、正の高さ方向において最も高い位置で頂面と高さ方向において実質的に同じ高さを有していると、特に有利である。
【0026】
また、編み装置の編み具が、機能部分に対して正の高さ方向に隆起したバット部を有し、バット部は、編み装置の凹部(カム曲線)に係合し、シャンク部の編み具の正の高さ方向を向く面(頂面(10))の最高点は、編み具の長手方向(z)においてカム曲線から離隔している場合も、有利である。このようにして、編み具の頂面がこれらの点でカム曲線に偶発的に係合することが防止される。偶発的な係合は、編み具の引っかかりを引き起こし、その結果、編み具および/または編み装置が損傷する可能性がある。正の高さ方向における最高点とカム曲線との間の編み具の長手方向における距離は、安全距離である。安全距離は、有利にはゼロより大きい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1図1は、機能部分(5)を有する編み具(1)を示す図である。
図2図2は、重心線(4)の極大点(14)の位置で編み具(1)の機能部分(5)を通るA-A断面図である。
図3図3は、重心線(4)の極小点(15)の位置で編み具(1)の機能部分(5)を通るB-B断面図である。
図4図4は、機能部分(5)に三角形状の凹部(19)を有する編み具(1)を示す図である。
図5図5は、機能部分(5)に波状の凹部(20)を有する編み具(1)を示す図である。
図6図6は、重心線(4)の極小点(15)と極大点(14)の領域における表面に、汚れ受け(21)を有する編み具(1)を示す図である。
図7図7は、編み具(1)の作動領域(24)から汚れ(23)を除去する3つのサブステップを示す。
図8図8は、3つの針用スロット(28)を含み、それらのうちの1つに編み具(1)が装着された編み装置(27)を示す図である。
図9図9は、編み装置(27)4つのカム要素(29)と編み具(1)を示す図である。
図10図10は、3つの針用スロット(28)を有する編み装置(27)の上面図であり、それぞれの針用スロットには編み具(1)が装着されている。
図11図11は、編み具(1)が装着された針用スロット(28)を通る、x-z平面での断面図である。
図12図12は、頂面(10)の局所的勾配最大値(40)の絶対値が底面(13)の局所的勾配最小値(41)の絶対値より小さい場合の編み具(1)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1には、シャンク部2を有する編み具1が示されており、シャンク部2は、主として編み具の長手方向zに延び、編み具の正の長手方向zの第1の端部にフックの形状をしたループ形成要素3を有する。シャンク部2は、編み具の長手方向におけるその長さに沿ったすべての点において、横方向yと高さ方向xによって定まる平面内にある断面8を有する。機能部分5において、高さ方向xにおけるこの断面8の高さ、すなわち断面高さ22は、すべての点においてシャンク部高さ6よりも小さい。シャンク部高さ6は、機能部分5の高さ方向xにおける最小延長と最大延長との間の高さである。断面8と断面の重心9は、図2に例示的に示されている。図1には、シャンク部のこれらの断面8のすべての重心9を最短経路で相互接続する重心線4が示されている。図1に示す例示的な実施形態では、この重心線4は、3つの極大点(局所的な最大点)14と3つの極小点(局所的な最小点)15を含む。ただし、編み具1の他の有利な実施形態において、より多くのまたはより少ない極大点14および/または極小点15を有するものであってもよい。3つの極大点14の領域において、頂面10は、同じ高さを有する。3つの極小点15の領域において、底面13は、高さ方向xにおいて同じ高さを有する。機能部分5の部分区間7では、重心線4はゼロよりも大きい勾配を有する。したがって、これらの部分区間7では、シャンク部2は、編み具の長手方向zに対して傾いており、特に、編み具の長手方向zに対して平行に延びていない。
【0029】
図2は、図1に位置が示されているA-A断面を示しており、機能部分5において重心線4の極大点14の位置でシャンク部2を通る断面である。機能部分5の一部が図示されており、機能部分5は、全体として、シャンク部高さ6の全体にわたって延在している。シャンク部高さ6は、最大シャンク部高さ12によって正の高さ方向xに区切られ、最小シャンク部高さ11によって負の高さ方向xに区切られる。断面8はハッチングで示され、高さ方向xおよび横方向yで見て断面8の中心に「ある」重心9を有している。断面8は、負の高さ方向xにおいて、編み具1の底面13によって下方に区切られている。底面13は、図2においても、断面の外側に位置し、断面8の下側に続く領域として見ることができる。断面8は、編み具1の頂面10によって、正の高さ方向xにおいて上方に区切られている。頂面10は、最大シャンク部高さ12の位置にある。対照的に、断面8の位置において底面13(したがってシャンク部2)は、最小シャンク部高さ11から底面距離16だけ離隔している。言い換えれば、極大点14の下には、負の高さ方向xにおいて、シャンク部2と最小シャンク部高さ11との間に「クリアランス」が存在する。
【0030】
図3は、図1に位置が示されているB-B断面を示しており、機能部分5において重心線4の極小点15の位置でシャンク部2を通る断面である。機能部分5の一部が図示されており、機能部分5は、全体として、シャンク部高さ6の全体にわたって延在している。シャンク部高さ6は、最大シャンク部高さ12によって正の高さ方向xに区切られ、最小シャンク部高さ11によって負の高さ方向xに区切られる。断面8はハッチングで示され、高さ方向xおよび横方向yで見て、断面8の中心に「ある」重心9を有している。断面8は、正の高さ方向xにおいて、編み具1の頂面10によって上方に区切られている。頂面10は、図3においても、断面の外側に位置し、断面8の上側に続く領域として見ることができる。断面8は、編み具1の底面13によって、負の高さ方向において下方に区切られている。図3において、底面13は、最小シャンク部高さ11の位置にある。対照的に、断面8の位置において頂面10は、最大シャンク部高さ12から頂面距離17だけ離隔している。言い換えれば、極大点15の上には、正の高さ方向xにおいて、シャンク部2と最大シャンク部高さ12との間に「クリアランス」が存在する。
【0031】
図4には、バット部18を有する本発明に従う編み具1が示されており、バット部18は、編み物中に、駆動力および駆動運動を取り込み、それらを編み具1に伝達するために適している。バット部18の編み具の正の長手方向zにおける前と後に、機能部分5の2つの隣接する小部分33がある。2つの小部分33は、合わせて機能部分5を形成する。2つの少部分33は、編み具の長手方向zにおいて、バット部18のバット部長さ32の約1.5倍である機能部分距離31だけ互いに離隔している。この例示的な実施形態では、バット18は、機能部分5の2つの小部分33の間に位置している。機能部分5の小部分33におけるシャンク部2の形状は、複数の三角形状の凹部19を有する。これらの三角形状の凹部19は、x-z平面において実質的に三角形の形状を有し、編み具1のシャンク部2の横方向の「全体にわたる」ものである。シャンク部2の頂面10と底面13は、機能部分5において互いに実質的に平行である。
【0032】
図5には、本発明に従う編み具1が示されており、この編み具も、バット部18と、2つの小部分33を有する機能部分5を含む。図4の実施形態の形状とは対照的に、小部分33におけるシャンク部2の形状は、複数の波状の凹部20を有している。これらの波状の凹部20は、x-z平面において実質的に波状または円弧状の形状を有し、編み具1のシャンク部2の横方向の「全体にわたる」ものである。2つの小部分33のうちの一方は、編み具の長手方向zにおいてバット部18の前に配置され、2つの小部分33のうちの他方は、編み具の長手方向zにおいてバット部18の後ろに配置される。2つの小部分33は、バット部18に直接隣接している。したがって、編み具の長手方向において、小部分33とバット部18との間に空間は存在しない。機能部分5の重心線4の、編み具の負の長手方向zに見て、延伸方向と反対側の最後の極大点は、機能部分5の大域的な最大点である。編み具1は、横方向yに延びる軸回りに傾くことが防止されるという点で、この大域的な最大点によって特に良好に支持および案内される。
【0033】
図6には、本発明に従う編み具1が示されており、この編み具は、バット部18と案内部分5とを含み、案内部分5は、2つの小部分33を含む。案内部分5において、シャンク部2は、シャンク部2および重心線4が実質的に直線状であり、編み具の長手方向zに対して一定の角度で傾いている(したがって、重心線4の勾配の絶対値はゼロよりも大きい)小部分7を有する。シャンク部2の頂面10は、各極大点14の領域に汚れ受け部21を有する。シャンク部2の底面13は、各極小点15の領域に汚れ受け部21を有する。編み具の正の長手方向に見て重心線4の極大点14の前に位置する汚れ受け部21の場合、シャンク部2の頂面10は、重心線4の極大点14の手前に極大値(局所的勾配最大値)を有する勾配を有している。編み具の正の長手方向に見て重心線4の極小点15の前に位置する汚れ受け部21の場合、シャンク部2の底面13は、重心線4の極小点15の前で極小値(局所的勾配最小値)を有する勾配を有している。したがって、頂面10および底面13は、編み具の長手方向に対してより強く傾いており、言い換えれば、勾配の絶対値は、シャンク部2の隣接する小部分7における勾配の絶対値よりも大きい。編み具1の編み具の負の長手方向zへの逆進移動の間、汚れ受け部21は、編み具の負の長手方向zへの汚れの輸送を増大させる。このようにして、編み具1のループ形成要素3を含む部分から汚れが遠ざけられ、形成されたループおよび繊維製品が汚れる可能性が低減される。
【0034】
図7は、編み具の「自己清掃」が機能する原理を、例として3つのステップで示す図である。開始位置(ここでは、ステップa))において、汚れ23は、編み具1の作動領域24に溜まっている。この例では、汚れ23は、多数の繊維、塵埃、および摩耗粒子で構成され得る。重心線4は、より明確にするためにこの図面には示されていないが、極大点14と極小点15の間に延び、明らかにゼロよりも大きい勾配を有する。図7のステップb)では、前進移動25の間の編み具1が示されている。小部分7における重心線4の上昇のために、汚れ23は、編み具1の前進移動25の間に編み具の正の長手方向zおよび高さ方向xに押される。図7のステップc)では、逆進移動26の間の編み具1が示されている。編み具1の移動および重心線4の上昇のため、汚れ23は、編み具の負の長手方向zおよび高さ方向xに押される。図では、編み具1は、編み具の長手方向zが直立方向であるように編み機内に配置されており、したがって、重力加速度gは、編み具の負の長手方向zを指している。したがって、作動領域24から押し出されたために高さ方向において編み具の上方に突出した汚れ23は、地球の加速度gから生じるその重量のために編み機から落ちる。本発明による教示のすべての実施形態において、作動領域24から突出した汚れ23は、編み具1とカム要素29またはダイアル(水平に配置される編み具の場合)の間の相対運動によって、さらに「摩耗」されるであろう。したがって、編み具1および編み装置27の汚れが低減される。
【0035】
図8には、3つの針用スロット28を含む編み装置27の一部が示されている。図8の3つの針用スロット28のうちの左端の針用スロットには、編み具1(この場合、ループ形成要素3がフックである編み針)が装着されている。真ん中と右側の針用スロット28には、針用スロット28をよりよく示すことができるように、編み具1は装着されていない。通常、編み立ての際には、全ての針用スロット28に編み具1が装着される。編み具1は、バット部18を含み、このバット部18は、高さ方向xにおいて編み具1の他の部分および針用スロットよりも上方に突出している。
【0036】
図9には、編み具1および4つのカム要素29が示されており、それぞれのカム要素はカム曲線30を含んでいる。編み具1のバット部18は、4つのカム曲線のそれぞれに係合し、それぞれの編み具1における編み具の長手方向の動きを開始することができる。この動きは、編み具1とカム要素29との間の相対移動に起因している。編み具1に対するカム要素29の位置およびカム曲線の形状をより明確に示すため、カム要素29は、編み具の長手方向zの軸回りに90°回転した形で描かれている。正しい設置位置では、カム曲線30の凹部は、実際には負の高さ方向xに開いており、編み具のバット部18が高さ方向xにおいてカム曲線30の1つに係合できるようになっている。編み具1の重心線4は、2つの極大点14を有し、その位置には、頂面10の正の高さ方向xにおける最高点も配置される。分かりやすくするために、図では、重心線4全体は示されておらず、その2つの極大点14のみが示されている。頂面10のこれらの最高点は、編み具の長手方向zにおいて、カム曲線30からゼロよりも大きい安全距離38だけ離隔している。このようにして、編み具1のシャンク部2がカム曲線30のうちの1つと不必要に「引っかかり」、編み具1の駆動運動に影響を与えること、または編み具1が詰まる原因となることが防止される。
【0037】
図10は、3つの針用スロット28を含む編み装置27の上面図である。3つの針用スロット28の各々には、2つの小部分33を有する機能部分5を含む編み具1が存在する。3つの編み具1のうち最も上の編み具と最も下の編み具は、延伸状態で示されている。それらは、延伸状態の2つの異なる変形例を示す。1つの編み動作に対して、延伸状態は1つだけである。しかし、図10では、両方の変形例が1つの図面に示されている。延伸状態において、編み具は、編み具の正の長手方向zにおける編み動作の最も遠い位置に達している。図10に示す3つの編み具1のうちの最も上の編み具1で示される第1の延伸状態の態変形例の場合、編み具1の機能部分5は、最も上の針用スロット28に完全に収容され、針用スロット28の前縁に対する縁部距離35を有する。中間の編み具1は、格納された状態で示されている。それは、編み具の負の長手方向zにおける編み動作の最も遠い位置に到達している。図10における中間の編み具と最も上の編み具のループ形成要素3の間の、編み具の長手方向zにおける距離は、編み動作のストローク34に相当する。図における最も下の編み具1は、延伸状態の第2の変形例で示されている。この場合、ストローク34の大きさは、機能部分5が編み動作中に針用スロット28から出るほど大きい。編み具1の機能部分5の、編み具の長手方向zにおける長さの少なくとも80%は、編み動作中常に針用スロット28内に留まる。
【0038】
図11は、編み装置27の断面図である。この断面は、x-z平面にあり、編み具1が装着された針用スロット28を通るものである。針用スロット28の上縁36は、編み具1の頂面10の最高点39から(したがって、シャンク部2からも)高さ方向距離37だけ離隔して配置される。上縁36は、正の高さ方向xにおいて、頂面10の最高点よりも高い位置にある。また、上縁36が頂面10の最高点と正の高さ方向xにおいて同じ高さにある針スロット28も、本発明のすべての実施形態にとって有利である。この場合、高さ方向距離37はゼロとなる。
【0039】
図12には、図6の編み具1と基本的に同じ特徴を有する編み具1のさらなる例示的な実施形態が示されている。この編み具1は、図6と比較して、底面13の局所的勾配最小値41よりも小さい絶対値を有する局所的勾配最大値40を備える頂面10を有する。この種の編み具1は、頂面10の勾配がより平坦であることによって、編み動作中、編み具1がより良好に案内され、かつより滑らかな動きが可能となるため、編み装置の針用スロットにおいて生じる摩擦力が低減される。この編み具1は、機能部分5の重心線4の、編み具の負の長手方向z(すなわち延伸方向と反対方向)で見て最後の極大点14が大域的な最大点42である点で、図6に示す編み物用具1とさらに異なる。この大域的な最大点42は、編み具の長手方向zにおいて、編み具1の端部から、その負の長手方向zで見て、間隔が空いているが、その距離は、できるだけ小さくなるように選択される。このようにして、編み具1が横方向yに延びる軸回りに傾くこと、またはねじれることが防止される。この手段も、編み動作中の編み具1の案内および滑らかな動きを改善するものである。上述の特徴は、図6の例示的な実施形態と比較して、頂面10によって形成される汚れ受け部21の形状を変えるが、この形態の汚れ受け部21が段落〔0034〕で上述した自己清掃作用を支持することが判明した。
【符号の説明】
【0040】
1:編み具
2:シャンク部
3:ループ形成要素
4:重心線
5:機能部分
6:シャンク部高さ
7:部分区間
8:断面
9:重心
10:頂面
11:最小シャンク部高さ
12:最大シャンク部高さ
13:底面
14:重心線4の極大点
15:重心線4の極小点
16:底面距離
17:頂面距離
18:バット部
19:三角形状の凹部
20:波状の凹部
21:汚れ受け部
22:断面高さ
23:汚れ
24:作動領域
25:前進移動
26:逆進移動
27:編み装置
28:針用スロット
29:カム要素
30:カム曲線
31:機能部分距離
32:バット部(18)の長さ
33:機能部分(5)の小部分
34:編み動作のストローク
35:縁部距離
36:針用スロット(28)の上縁
37:高さ方向距離
38:安全距離
39:頂面(10)の最高点
40:頂面(10)の局所的勾配最大値
41:底面(13)の局所的勾配最小値
42:重心線(4)の大域的な最大点
x:高さ方向
y:横方向
z:編み具の長手方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】