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特表2024-500343腎不全患者におけるGLP-2アナログの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】腎不全患者におけるGLP-2アナログの使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/26 20060101AFI20231226BHJP
   A61P 1/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231226BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20231226BHJP
   C07K 14/605 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K38/26
A61P1/00
A61P13/12
A61P43/00 121
A61P29/00
A61K45/00
C07K14/605 ZNA
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534938
(86)(22)【出願日】2021-12-15
(85)【翻訳文提出日】2023-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2021085846
(87)【国際公開番号】W WO2022129142
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20214763.3
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21166078.2
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502453045
【氏名又は名称】ジーランド ファーマ アクティーゼルスカブ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】キム ソネ
(72)【発明者】
【氏名】ミゲル アスケーア エーヤスナプ
(72)【発明者】
【氏名】キム マーク クヌスン
【テーマコード(参考)】
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084CA59
4C084DB35
4C084MA02
4C084MA17
4C084MA63
4C084MA66
4C084NA06
4C084NA14
4C084ZA661
4C084ZA662
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZC751
4C084ZC752
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA18
4H045BA19
4H045CA40
4H045EA20
4H045FA10
4H045FA33
(57)【要約】
本発明は、腎不全患者におけるグルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)アナログ、および特にZP1848(グレパグルチド)の投与のための投薬計画(dosage regimes)に関する。他のGLP-2アナログ、たとえばテデュグルチドと異なり、ZP1848は腎障害を有する患者において正常に除去されることが見出されている。その結果、患者の腎機能に応じてZP1848の投与量を調整する必要はない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも中等度の腎障害を有する対象における、それに応答する状態の予防または治療における使用のための、ZP1848またはその薬学的に許容される塩であって、ここでZP1848または該塩の用量調整が不要である、ZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
前記対象が調整された用量のテデュグルチドで以前に治療されている、請求項1に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項3】
腎障害の結果として調整された用量のテデュグルチドが必要となる対象における、それに応答する状態の予防または治療における使用のための、ZP1848またはその薬学的に許容される塩であって、ここでZP1848または該塩の用量調整が不要である、ZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項4】
前記対象が、調整された用量のテデュグルチドで以前に治療されている、請求項3に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項5】
腎障害に起因して調整された用量のテデュグルチドを受けた対象における、それに応答する状態の予防または治療における使用のための、ZP1848またはその薬学的に許容される塩であって、ここでZP1848または該塩の用量調整が不要である、ZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
前記対象が中等度の腎障害、重度の腎障害、または末期腎不全(ESRD)を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項7】
治療される状態が胃または腸関連疾患である、請求項1~6のいずれか一項に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項8】
前記胃または腸関連疾患が、潰瘍、消化障害(digestion disorder)、吸収不良症候群、短腸症候群(short-gut syndrome)、炎症性腸疾患、セリアックスプルー(celiac sprue;たとえば、グルテン過敏性腸症またはセリアック病に起因するもの)、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症性スプルー、腸炎、限局性腸炎(クローン病)、潰瘍性大腸炎、小腸損傷(small intestine damage)、または短腸症候群(short bowel syndrome;SBS)である、請求項7に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項9】
前記状態が、非経口サポート(parenteral support;PS)を受けている対象における短腸症候群(SBS)である、請求項8に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項10】
前記状態が放射線腸炎、感染性腸炎もしくは感染後腸炎(post-infectious enteritis)、または毒物(toxic agents)もしくは他の化学療法剤による小腸損傷(small intestinal damage)である、請求項7に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項11】
前記状態が、ヒト対象における化学療法または放射線治療の副作用である、請求項7に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項12】
少なくとも中等度の腎障害を有する対象における腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大において使用するためのZP1848またはその薬学的に許容される塩であって、ここでZP1848または該塩の用量調整が不要である、ZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項13】
前記対象が、調整された用量のテデュグルチドで以前に治療されている、請求項12に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項14】
腎障害の結果として調整された用量のテデュグルチドが必要となる対象における、腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大において使用するためのZP1848またはその薬学的に許容される塩であって、ここでZP1848または該塩の用量調整が不要である、ZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項15】
前記対象が、調整された用量のテデュグルチドで以前に治療されている、請求項14に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項16】
腎障害に起因して調整された用量のテデュグルチドを受けた対象における、腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大において使用するためのZP1848またはその薬学的に許容される塩であって、ここでZP1848または該塩の用量調整が不要である、ZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項17】
前記対象が中等度の腎障害、重度の腎障害、またはESRDを有する、請求項12~16のいずれか一項に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項18】
前記対象が短腸症候群(SBS)に罹患しており、場合により非経口サポートを受けている、請求項12~17のいずれか一項に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項19】
前記ZP1848または薬学的に許容される塩が、2日、2.5日、3日、3.5日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、または12日の間隔で、たとえば3日、3.5日、4日、5日、6日、7日、または8日の間隔で、たとえば3日、3.5日、4日、または7日の間隔で、複数回の用量または一連の用量を含む投与計画(dosing regime)を介して投与される、請求項1~18のいずれか一項に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項20】
前記投与計画が週に1回または2回の投与計画である、請求項19に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項21】
個別の未調整の用量が、対象当たり1用量当たり1mg以上20mg以下である、たとえば対象当たり1用量当たり5mg以上15mg以下である、7mg以上12mg以下である、または9mg以上11mg以下である、請求項1~20のいずれか一項に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項22】
前記個別の未調整の用量が対象当たり1用量当たり約10mgである、請求項21に記載の使用のためのZP1848またはその薬学的に許容される塩。
【請求項23】
ZP1848またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも中等度の腎障害を有する対象にZP1848の用量調整が不要であるという情報を含む、医薬品キット(pharmaceutical kit)。
【請求項24】
前記ZP1848または薬学的に許容される塩が、薬学的に許容される担体または賦形剤と組み合わせた前記ZP1848または塩を含む医薬組成物として提供される、請求項23に記載のキット。
【請求項25】
ZP1848または前記塩の一つまたは複数の個別の測定された用量を含む請求項23または24に記載のキットであって、ここで各前記用量は1mg以上20mg以下である、たとえば5mg以上15mg以下である、7mg以上12mg以下である、または9mg以上11mg以下である、キット。
【請求項26】
各個別用量が約10mgである、請求項25に記載のキット。
【請求項27】
一つまたは複数の化学療法剤をさらに含む、請求項23~26のいずれか一項に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腎不全患者におけるグルカゴン様ペプチド-2(GLP-2)アナログ、および特にZP1848(グレパグルチド)の投与のための投薬計画(dosage regimes)に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒGLP-2は、以下の配列を持つ33アミノ酸のペプチドである: Hy-His-Ala-Asp-Gly-Ser-Phe-Ser-Asp-Glu-Met-Asn-Thr-Ile-Leu-Asp-Asn-Leu-Ala-Ala-Arg-Asp-Phe-Ile-Asn-Trp-Leu-Ile-Gln-Thr-Lys-Ile-Thr-Asp-OH。これは、腸の腸管内分泌L細胞および脳幹の特定の領域におけるプログルカゴンの特異的な翻訳後プロセシングに由来する。GLP-2は、クラスIIグルカゴンセクレチンファミリーに属する単一のGタンパク質共役受容体に結合する。
【0003】
GLP-2は、陰窩における幹細胞増殖の刺激および絨毛におけるアポトーシスの阻害を介して、小腸粘膜上皮の顕著な成長を誘導することが報告されている(Drucker et al.,1996, Proc.Natl.Acad.Sci. USA 93:7911-7916)。GLP-2は結腸に対しても成長効果を有する。さらに、GLP-2は胃内容排出および胃酸分泌を阻害し(Wojdemann et al.,1999,J.Clin.Endocrinol.Metab. 84:2513-2517)、腸管のバリア機能を強化し(Benjamin et al.,2000,Gut 47:112-119)、グルコーストランスポーターの上方制御を介して腸管のヘキソース輸送を刺激し(Cheeseman,1997,Am.J.Physiol. R1965-71)、腸管の血流量を増加させる(Guan et al.,2003,Gastroenterology,125:136-147)。GLP-2およびその特性のレビューについては、Burrin et al.,2001, The Journal of Nutrition,131(3),March 2001,709-712を参照されたい。
【0004】
グルカゴン様ペプチド-2受容体アナログが腸疾患の治療の可能性を有することは、当技術分野において認識されている。しかしながら、しかし、33アミノ酸の胃腸ペプチドであるネイティブhGLP-2は、ヒトにおける半減期が、完全長GLP-2[1~33]で約7分、および短縮型GLP-2[3~33]で約27分と非常に短いため、臨床現場では有用ではない。半減期が短いのは主に、酵素ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV)による分解に起因する。したがって、当技術分野では、特にGLP-2分子の半減期を改善するために、より良好な薬物動態特性を有するGLP-2受容体アゴニストを開発する試みがなされてきた。例として、置換を有するGLP-2アナログ、たとえば半減期を7分間(ネイティブGLP-2)から約2時間に増加させる2位のGly置換を含むGLP-2アナログ([hGly2]GLP-2、テデュグルチド)等が提案されている。テデュグルチドは、Gattex(米国)およびRevestive(欧州)という名称で短腸症候群(short bowel disease)の治療薬として承認されている。
【0005】
国際公開第2006/117565号(Zealand Pharma A/S)は、[hGly2]GLP-2と比較して1つ以上の置換を含み、インビボでの生物活性を向上させ、および/またはたとえばインビトロ安定性アッセイで評価した場合の化学的安定性を向上させたGLP-2アナログを記載している。
【0006】
国際公開第2006/117565号に開示されている分子の中には、液体製剤中で安定性であるように設計されたZP1848(グレパグルチド)がある。ZP1848およびその代謝産物を含むGLP-2アナログの投薬計画は国際公開第2018/229252号に記載されており、これらの化合物が腸の縦方向の成長を増加させるのに有効であることも示している。
【0007】
胆汁酸合成、肝臓胆汁酸含量、または腸胆汁酸含量に関連する状態を治療するための、ZP1848を含むGLP-2アナログの使用は、国際公開第2020/020904号に記載されている。
【0008】
ZP1848のすぐに使用できる製剤は、国際公開第2020/065064号に記載されている。
【発明の概要】
【0009】
テデュグルチドのクリアランスは、腎機能障害のある対象、特に中等度または重度の腎障害、または末期腎不全(ESRD)を有する患者において障害されている。したがって、中等度の腎障害、重度の腎障害、またはESRDを有する患者に対しては、テデュグルチドの通常の用量を50%減らすことが推奨される。たとえば、Nave, R et al.,Eur.J.Clin.Pharmacol.2013,69(5):1149-1155、Revestive(登録商標)の製品特性の概要(欧州医薬品庁)、欧州医薬品庁(2012) Revestive(登録商標)の欧州公的評価報告書を参照されたい。
【0010】
ZP1848もGLP-2アナログであるため、同様の考慮事項が適用されることが合理的に予想されるであろう。
【0011】
しかし、驚くべきことに、腎障害患者ではZP1848が正常に除去されることが見出された。その結果、患者の腎機能に応じてZP1848の投与量を調整する必要はない。これにより、多くの利点が得られる。第一に、これは、腎機能に障害のある患者が、たとえば活性薬剤への過剰暴露によって起こる望ましくない副作用を引き起こすことなく、治療上有効な用量を完全に摂取できることを意味する。さらに、ZP1848を処方する前に患者の腎機能を検査する必要がなくなり、その結果、より効率的かつ経済的な治療が可能になる。さらに、すでにZP1848の投与を受けている患者が腎障害の一種を発症した場合でも、腎イベントを考慮して用量を調整する必要がないため、安全性が向上するはずである。
【0012】
したがって、第一の態様では、本発明は、少なくとも中等度の腎障害を有する対象における、それに応答する状態の予防または治療における使用のための、ZP1848またはその薬学的に許容される塩を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0013】
本発明はさらに、少なくとも中等度の腎障害を有する対象における、それに応答する状態の予防または治療の方法であって、ZP1848またはその薬学的に許容される塩を該対象に投与する工程を含む方法を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0014】
本発明はさらに、少なくとも中等度の腎障害を有する対象における、それに応答する状態の予防または治療のための医薬の調製における、ZP1848またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0015】
「少なくとも中等度の」腎障害という用語は、本明細書においては、中等度の腎障害、重度の腎障害、またはESRDを有する対象を含むために使用される。
【0016】
したがって、同一の状態の治療のためにテデュグルチドが処方される場合、対象は通常、調整された用量のテデュグルチドを必要とするであろう。対象は、以前にたとえば調整された用量のテデュグルチドによる治療を受けていても、受けていなくてもよい。
【0017】
さらなる態様では、本発明は、腎障害の結果として調整された用量のテデュグルチドが必要となる対象における、それに応答する状態の予防または治療における使用のための、ZP1848またはその薬学的に許容される塩を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0018】
本発明はさらに、腎障害の結果として調整された用量のテデュグルチドが必要となる対象における、ZP1848に応答する状態の予防または治療の方法であって、ZP1848またはその薬学的に許容される塩を上記対象に投与する工程を含む方法を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0019】
本発明はさらに、腎障害の結果として調整された用量のテデュグルチドが必要となる対象における、それに応答する状態の予防または治療のための医薬の調製における、ZP1848またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0020】
したがって、対象は少なくとも中等度の腎障害、たとえば中等度の腎障害、重度の腎障害、またはESRDを有する可能性がある。
【0021】
同一の状態の治療のためにテデュグルチドが処方される場合、対象は通常、調整された用量のテデュグルチドを必要とするであろう。対象は、以前にたとえば調整された用量のテデュグルチドによる治療を受けていても、受けていなくてもよい。
【0022】
さらなる態様では、本発明は、腎障害に起因して調整された用量のテデュグルチドを受けた対象における、それに応答する状態の予防または治療における使用のための、ZP1848またはその薬学的に許容される塩を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0023】
本発明はさらに、腎障害に起因して調整された用量のテデュグルチドを受けた対象における、ZP1848に応答する状態の予防または治療の方法であって、ZP1848またはその薬学的に許容される塩を上記対象に投与する工程を含む方法を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0024】
本発明はさらに、腎障害に起因して調整された用量のテデュグルチドを受けた対象における、それに応答する状態の予防または治療のための医薬の調製における、ZP1848またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0025】
したがって、対象は、同一の状態の治療のために、調整された用量でテデュグルチドを以前に受けているであろう。典型的には、対象は少なくとも中等度の腎障害、たとえば中等度の腎障害、重度の腎障害、またはESRDを有する。
【0026】
治療される状態は、GLP-2アナログによる治療に対して治療的に応答する任意の状態であってよく、たとえば治療により、1つ以上の症状の改善、根底にある病態の改善、発症の遅延、および/または増悪の抑制がもたらされる。したがって、予防は治療(treatment)または療法(therapy)とみなすことができる。
【0027】
このような状態は、潰瘍、消化障害(digestion disorder)、吸収不良症候群、短腸症候群(short-gut syndrome)、炎症性腸疾患、セリアックスプルー(celiac sprue;たとえば、グルテン過敏性腸症またはセリアック病に起因するもの)、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症性スプルー、腸炎、限局性腸炎(クローン病)、潰瘍性大腸炎、小腸損傷(small intestine damage)、または短腸症候群(short bowel syndrome;SBS)等の胃および腸関連疾患を含む。
【0028】
短腸症候群(SBS)の治療のための使用は、特に非経口サポート(parenteral support;PS)を受けている対象において特に興味深いものとなり得る。
【0029】
さらなる状態は、放射線腸炎、感染性腸炎もしくは感染後腸炎(post-infectious enteritis)、または毒物(toxic agents)もしくは他の化学療法剤による小腸損傷(small intestinal damage)等の胃および腸関連疾患を含む。この場合、GLP-2アナログによる治療は、場合により、一つまたは複数の抗がん療法と組み合わせることができ、したがって、対象に一つまたは複数の化学療法剤を投与すること、または対象を放射線療法で治療することを含んでもよい。
【0030】
したがって、この状態は、ヒト対象における化学療法または放射線治療の副作用である可能性がある。
【0031】
「対象」および「患者」という用語は、本明細書では互換的に使用される。対象(または患者)は哺乳動物であり、典型的にはヒトであることが理解されるであろう。
【0032】
ZP1848は、特に小腸における、腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長において効果的である。
【0033】
したがって、さらなる態様では、本発明は、少なくとも中等度の腎障害を有する対象における腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大において使用するためのZP1848またはその薬学的に許容される塩を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0034】
本発明はさらに、ZP1848またはその薬学的に許容される塩を上記対象に投与する工程を含む、少なくとも中等度の腎障害を有する対象における腸管の質量を増大させる方法、および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大させる方法を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0035】
本発明はさらに、少なくとも中等度の腎障害を有する対象における腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大のための医薬の調製における、ZP1848またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0036】
したがって、同一の目的のためにテデュグルチドが使用される場合、対象は通常、調整された用量のテデュグルチドを必要とするであろう。対象は、以前にたとえば調整された用量のテデュグルチドによる治療を受けていても、受けていなくてもよい。
【0037】
さらなる態様では、本発明は、腎障害の結果として調整された用量のテデュグルチドが必要となる対象における、腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大において使用するためのZP1848またはその薬学的に許容される塩を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0038】
本発明はさらに、ZP1848またはその薬学的に許容される塩を上記対象に投与する工程を含む、腎障害の結果として調整された用量のテデュグルチドが必要となる対象における、腸管の質量を増大させる方法、および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大させる方法を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0039】
本発明はさらに、腎障害の結果として調整された用量のテデュグルチドが必要となる対象における、腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大のための医薬の調製における、ZP1848またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0040】
したがって、対象は少なくとも中等度の腎障害、たとえば中等度の腎障害、重度の腎障害、またはESRDを有する可能性がある。
【0041】
同一の目的のためにテデュグルチドが処方される場合、対象は通常、調整された用量のテデュグルチドを必要とするであろう。対象は、以前にたとえば調整された用量のテデュグルチドによる治療を受けていても、受けていなくてもよい。
【0042】
さらなる態様では、本発明は、腎障害に起因して調整された用量のテデュグルチドを受けた対象における、腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大において使用するためのZP1848またはその薬学的に許容される塩を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0043】
本発明はさらに、ZP1848またはその薬学的に許容される塩を上記対象に投与する工程を含む、腎障害に起因して調整された用量のテデュグルチドを受けた対象における、腸管の質量を増大させる方法、および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大させる方法を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0044】
本発明はさらに、腎障害に起因して調整された用量のテデュグルチドを受けた対象における、腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大のための医薬の調製における、ZP1848またはその薬学的に許容される塩の使用を提供し、ここでZP1848または該塩の用量調整は不要である。
【0045】
したがって、対象は、たとえば同一の目的のために、以前に調整された用量のテデュグルチドを投与されているだろう。典型的には、対象は少なくとも中等度の腎障害、たとえば中等度の腎障害、重度の腎障害、またはESRDを有する。
【0046】
そのような態様では、対象は、腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大が望ましい、たとえば治療的である、状態に罹患している可能性がある。これは、本明細書の他の場所に記載されている状態のいずれかを含み、特に短腸症候群(SBS)に罹患しており、たとえば非経口サポートを受けている対象を含んでいてもよい。
【0047】
さらなる態様では、本発明は、ZP1848またはその薬学的に許容される塩、および少なくとも中等度の腎障害を有する対象にZP1848の用量調整が不要であるという情報を含む、医薬品キット(pharmaceutical kit)を提供する。
【0048】
上記ZP1848または薬学的に許容される塩は、典型的には薬学的に許容される担体または賦形剤と組み合わせたZP1848または上記塩を含む医薬組成物として提供されるであろう。
【0049】
上記キットは、ZP1848または上記塩の一つまたは複数の個別の測定された用量を含んでもよく、ここで各個別の測定された用量は、本明細書の他の場所に記載されている調整された用量である。
【0050】
個別の用量は、本明細書の他の場所に記載されている投与計画(dosing regime)を介して投与することができる。
【0051】
キットは、一つまたは複数の化学療法剤をさらに含んでもよく、これらはZP1848またはその塩とは別の医薬組成物として提供されてもよい。
【0052】
本発明のいずれかの態様に従って治療される対象は、典型的には、テデュグルチド(および任意の他のGLP-2受容体アゴニスト)の代わりにZP1848またはその薬学的に許容される塩を投与されることになる、すなわち、ZP1848または関連する塩が典型的には対象の治療において使用される唯一のGLP-2となることが理解されるであろう。同様に、本明細書で定義される組成物およびキットは、典型的には、唯一のGLP-2受容体アゴニストとしてZP1848または関連する塩を含む。
【0053】
本発明の関連で、「調整された」用量とは、腎障害を考慮して減量された用量である。したがって、少なくとも中等度の腎障害を有する対象に投与する場合、テデュグルチドの用量は、そのような患者の全身からの薬物のクリアランス障害を考慮し、そして薬物への患者の過剰曝露を避けるために50%減量される。
【0054】
ZP1848およびその塩の場合、患者の腎障害を考慮して用量を調整する必要はない。したがって、そのような対象に対する用量は、正常な腎機能を有する、それ以外の点では同等の対象に投与されるものと同じであってもよい。これは、「通常の(normal)」、「標準」、または「未調整」用量と呼ばれる場合がある。それでもなお、「調整された」用量とはみなされずに、たとえば+/-10%等の少量の変動が許容されることが理解されよう。通常、「調整された」用量は30%より多く、たとえば40%より多く、たとえば約50%変動するだろう。
【0055】
もちろん、「通常の」用量は、特定の対象に応じて、たとえば年齢、性別、体重、病状等、および/または意図された投薬計画(dosage regime)に応じて決定することができることが理解されるであろう。繰り返しになるが、そのような変動は、本発明の意味の範囲内で「調整された」用量をもたらすものと考えるべきではない。むしろ、文脈上別段の要求がない限り、「調整された」は、「腎機能を考慮して調整された」または同様の意味を意味すると解釈されるべきである。
【0056】
投与は、任意の適切な投与計画に従ってよい。
【0057】
たとえば、投与は1日1回であってもよい。
【0058】
しかしながら、国際公開第2018/229252号に記載されているとおり、ZP1848は予想外に長い半減期を有しており、特に皮下注射で送達される場合には、週に1回または2回の投与等の代替投与計画(alternative regime)が可能になり得る。理論に束縛されるものではないが、ZP1848の半減期は、皮下デポーの形成、および皮下デポーからゆっくり放出され、GLP-2受容体に対してアゴニストでもある代謝産物の形成の組み合わせによるものである可能性があると考えられている。皮下デポーは、皮下区画(subcutaneous compartment)におけるZP1848のリジン尾部とヒアルロン酸との間の反応を介して、投与時に形成され得る。
【0059】
したがって、投与計画(dosing regime)は、2日、2.5日、3日、3.5日、4日、5日、6日、7日、8日、9日、10日、11日、または12日の間隔での、複数回の用量または一連の用量を含む。好ましい実施形態では、用量は、3日、3.5日、4日、5日、6日、7日、または8日の間隔で区切られている。好ましい実施形態では、用量は、3日、3.5日、4日、または7日の間隔で区切られている。当技術分野で理解されるように、投与間の時間は、それぞれの投与が正確に同じ時間だけ離れていないように、ある程度変動していてもよい。これは多くの場合、医師の裁量の下で指示される。したがって、用量は、臨床的に許容される時間範囲、たとえば約2日~約10日、または約3日または4日~約7日または8日で区切ることができる。
【0060】
典型的な「通常の」または「未調整」用量は、投与ごとに対象当たり0.5mg以上25mg以下の範囲であってもよい。
【0061】
たとえば、それは、対象当たり1用量当たり1mg以上20mg以下、たとえば対象当たり1用量当たり1mg以上10mg以下、たとえば対象当たり1用量当たり2mg以上7mg以下、たとえば対象当たり1用量当たり5mg以上7mg以下、または対象当たり1用量当たり2mg以上5mg以下であってもよい。
【0062】
あるいは、それは、対象当たり1用量当たり5mg以上15mg以下、たとえば対象当たり1用量当たり7mg以上12mg以下、たとえば対象当たり1用量当たり9mg以上11mg以下であってもよい。
【0063】
一部の実施形態では、一部の実施形態では、本発明に従って使用されるGLP-2アナログの用量は、対象当たり1用量当たり約10mgである(「約」は+/-10%を意味する)。
【0064】
一部の実施形態では、本発明に従って使用されるGLP-2アナログの用量は、対象当たり10mgの固定用量である。
【0065】
このような用量は、いかなる投薬計画にも適しているが、特に週に1回または2回の投薬計画に適している可能性がある。
【0066】
治療過程において、患者が摂取する用量は、医師の指示に従って同一で場合もあれば、異なる場合もある。
【0067】
場合によっては、たとえば間隔をあけた注射部位、たとえば少なくとも5cmの注射部位の間隔をあけて投与する場合、総用量を複数の(たとえば、2つまたは3つの)別個の用量または投与に分割することが望ましい場合がある。このような空間的に別個の投与は、通常、実質的に同時に、たとえば同じ日に、互いに1時間以内、またさらに近い時間で提供される。
【0068】
以下、本発明の実施形態を限定ではなく例として説明する。しかしながら、本発明のさらなる様々な態様および実施形態は、本開示を考慮すれば当業者には明らかとなるであろう。
【0069】
文脈により別段の指示がない限り、上記の特徴の記載および定義は、本発明の特定の態様または実施形態に限定されず、記載されるすべての態様および実施形態に等しく適用される。
【0070】
発明の詳細な説明
本明細書および特許請求の範囲全体を通じて、天然アミノ酸に対する従来の一文字および三文字コードを使用する。記載された化合物中のすべてのアミノ酸残基は、通常はL-配置である。
【0071】
化合物
ZP1848は、たとえば国際公開第2006/117565号に記載されているように、以下の化学式を有するペプチドである:
H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH
N末端「H-」は、遊離N末端アミン(NH-)基を示すことが理解されるであろう。C末端「NH-」はC末端アミド基を示す。ZP1848とグレパグルチドという用語は、互換的に使用することができる。
【0072】
本発明は、以下により詳細に説明するように、ZP1848の薬学的に許容される塩の使用を包含する。任意の適切な塩を使用することができるが、酢酸塩が好ましい場合がある。
【0073】
ZP1848が皮下(SC)区画に注射されると、2つの機能的に活性な代謝産物、ZP2469およびZP2711(両方ともZP1848のC末端切断型アナログ)が形成される。したがって、ZP1848の全体的なPKプロファイルは、ZP1848およびその2つの主要代謝産物の効果で構成される。
【0074】
ZP2469は、以下の化学式を有するペプチドである:
H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDK-OH
【0075】
ZP2711は、以下の化学式を有するペプチドである:
H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKK-OH
ここで、N末端「H-」は上記のとおりであり、C末端「-OH」は遊離のC末端カルボン酸基を示す。
【0076】
テデュグルチドは、以下の化学式を有するペプチドである:
H-HGDGSFSDEMNTILDNLAARDFINWLIQTKITD-OH
ここで、N末端「H-」およびC末端「-OH」は上記のとおりである。
【0077】
腎機能とその測定
腎機能は通常、糸球体濾過量(GFR)または推算糸球体濾過量(eGFR)を参照して定義される。
【0078】
GFR(単位ml/分)は、イヌリン、51Cr-EDTA、99mTc-DTPA、イオタラム酸またはイオヘキソール等の適切な濾過マーカーを使用して測定することができる。当業者は、たとえば24時間等の所与の期間にわたる尿中の関連マーカーの排泄のモニタリングに基づく、適切な方法をよく知っているであろう。
【0079】
eGFRは、標準化された血清クレアチニン(SCr)値から計算することができる。たとえば、腎疾患における食事療法の修正(Modification of Diet in Renal Disease;MDRD)式(Levey AS et al., Clin Chem. Apr 2007;53(4):766-772)に従って計算することができ、これは、体表面積1.73mに正規化された値をml/分/1.73m2の単位で提供する。
【0080】
[式1]
eGFR=175×標準化SCr-1.154×年齢-0.203×1.212[if黒人]×0.742[if女性]
[SCr(mg/dL)]
【0081】
または
【0082】
[式2]
eGFR=30849×標準化SCr-1.154×年齢-0.203×1.212[if黒人]×0.742[if女性]
[SCr(μmol/L)]
【0083】
あるいは、腎機能は、Cockcroft-Gault式を使用してクレアチニンクリアランス(Ccr)によって定義される場合もある(Cockcroft DW and Gault MH, Nephron 16: 31-41 (1976)):
【0084】
[式3]
Ccr=[(140-年齢)(体重(kg))]/[72×SCr(mg/100ml)]
【0085】
これは成人男性の場合である;成人女性では15%減少する。
【0086】
小児および青少年(1~18歳)のeGFRを計算するには、クレアチニンに基づく「ベッドサイドSchwartz」式等の代替式を使用することもできる(Schwartz GJ and Work DF, J Am Soc Nephrol. 2009; Nov; 4(11): 1832-643; Schwartz GJ et al., J Am Soc Nephrol. 2009; 20: 629-637):
【0087】
[式4]
eGFR=0.413×(身長/SCr) [身長はcmで表される; SCr mg/100ml]
【0088】
成人の場合、MDRD式を使用してeGFRを計算することが好ましい場合がある。
【0089】
eGFRを計算する目的で、標準化された血清クレアチニンレベルを、たとえばStoeckl and Reinauer, Clin. Chem. 1993;39:993-1000によって記載されているように、同位体希釈ガスクロマトグラフィー/質量分析法(ID-GC/MS)によって測定することができる。これはクレアチニン測定の「ゴールドスタンダード」である。
【0090】
酵素法、またはクレアチニンがアルカリ性ピクリン酸塩との反応後に着色生成物を形成するヤッフェ反応等の比色法を含む、他の方法および市販のキットが血清クレアチニンを測定するために利用可能であることが理解されるであろう。このような方法では通常、たとえばタンパク質およびケトン等のビリルビンおよび疑似クレアチニン色原体(pseudo-creatinine chromogen)からの干渉を最小限に抑えることにより、ゴールドスタンダードの結果をより正確に反映するために、様々な補正(compensation)または補正係数(correction factor)が使用される。例は、Cobas(登録商標) CREJ2 (クレアチニンヤッフェ第2世代)キット(Roche)を含む。
【0091】
腎機能障害専用の研究に関する現在の腎機能の分類は、「腎機能障害患者における産業薬物動態(Industry Pharmacokinetics)に関するガイダンス-研究デザイン、データ分析、および投与への影響、米国保健福祉省、食品医薬品局、FDA医薬品評価センター(Center for Drug Evaluation and Research;CDER)、2020年9月」、または対応する欧州の「腎機能低下患者における医薬品の薬物動態の評価に関するガイドライン、欧州医薬品庁、2015年」において見出すことができる。
【0092】
現在の臨床ガイドラインでは、正常な腎機能はGFR(またはCcr)≧90mL/分、またはeGFR≧90mL/分/1.73mと定義することができる。
【0093】
軽度の腎障害は、GFR(またはCcr)60~90mL/分未満、またはeGFR 60~90mL/分/1.73m未満と定義することができる。
【0094】
中等度の腎障害は、GFR(またはCcr)30~60mL/分未満、またはeGFR 30~60mL/分/1.73m未満と定義することができる。
【0095】
重度の腎障害は、GFR(またはCcr)15~30mL/分未満、またはeGFR 15~30mL/分/1.73m未満と定義することができる。
【0096】
末期腎不全(ESRD)は通常、GFR(またはCcr)15mL/分未満、またはeGFR 15mL/分/1.73m未満と特性評価することができる。
【0097】
以前のガイドラインでは、中等度の腎障害の閾値が60mL/分未満ではなく50mL/分未満に設定されており、その結果、テデュグルチドの元のガイダンスでは、GFRが50mL/分未満の患者については50%の用量減量が示されていた。したがって、GFR(またはCcr)50mL/分未満またはeGFR 50mL/分/1.73m未満を有する対象には用量調整が不要であることが理解されるであろう。特定の状況下では、この値を中等度の腎障害の閾値とみなすことが適切な場合がある。したがって、少なくとも中等度の腎障害を有する対象は、GFR(またはCcr)50mL/分未満またはeGFR 50mL/分/1.73m未満を有する対象であると考えることができる。
【0098】
本発明の目的のために、標準化されたSCrの測定に基づいて、例えばMDRD式によって計算されるeGFRの測定に基づいて対象の分類を基準として用いることが好ましい場合がある。SCrは、好ましくは、たとえば上記のように、ID-GC/MSによって決定される。
【0099】
医薬組成物および投与
記載された活性剤は、保存または投与のために調製され、薬学的に許容される担体中に治療有効量の活性剤を含む医薬組成物として製剤化することができる。
【0100】
関連する活性薬剤の治療上有効な量は、投与経路、治療される哺乳動物の種類(典型的にはヒト)、および検討中の特定の哺乳動物の身体的特徴に依存するであろう。これらの要因およびこれらとこの量の決定との関係は、医療分野の当業者にはよく知られている。この量および投与方法は、ペプチドを腸に送達するために最適な有効性を達成するように調整することができるが、体重、食事、同時投薬および医療分野の当業者にはよく知られている他の要因等の要因に依存するであろう。
【0101】
活性薬剤は、典型的には、対象における関連状態の予防または治療、たとえば胃および腸関連疾患の治療または予防、対象の腸における、腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の促進もしくは増大に有効な量で存在する。
【0102】
薬学的に許容される塩の例は、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”,17th edition. Ed. Alfonso R. Gennaro (Ed.), Mark Publishing Company, Easton,PA,U.S.A.,1985および最新版、ならびにEncyclopaedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0103】
適切な塩は、酸付加塩および塩基性塩を含む。酸付加塩の例は、塩酸塩、クエン酸塩、塩化物塩、および酢酸塩を含む。好ましくは、塩は酢酸塩である。一般に、塩は塩化物塩ではないことが好ましい。塩基性塩の例は、カチオンが、ナトリウムおよびカリウム等のアルカリ金属、カルシウム等のアルカリ土類金属、およびアンモニウムイオンN(R(R)から選択される塩を含み、式中、RおよびRは、独立して、必要に応じて置換されているC1-6-アルキル、必要に応じて置換されているC2-6-アルケニル、必要に応じて置換されているアリール、または必要に応じて置換されているヘテロアリールを表す。
【0104】
酢酸塩が特に好ましい。本文脈において、「ZP1848-酢酸塩」という用語は、ZP1848分子が酢酸塩の形態であることを指す。ZP1848の酢酸塩は、式(ZP1848)、x(CHCOOH)、ここで、xは1.0~8.0(すなわち、xは1.0、2.0、3.0、4.0、5.0、6.0、7.0または8.0である)によって表すことができる。どのような組成でも、異なる数の酢酸分子を含む分子が存在する可能性があるため、xは必ずしも整数ではない。場合によっては、xは4.0~8.0、xは6.0~8.0、またはxは4.0~6.5である。場合によっては、xは4.0~6.0、xは2.0~7.0、xは3.0~6.0、xは4.0~6.0、またはxは4.0~8.0である。
【0105】
医療分野の当業者には明らかなように、本発明のペプチドまたは医薬組成物の「治療有効量」は、年齢、体重および治療を受ける哺乳類の種、使用される特定の化合物、特定の投与様式、ならびに所望の効果および治療適応に応じて変動し得る。これらの因子およびこれらとこの量の決定との関係は医学分野でよく知られているため、治療上有効な投与量レベル、所望の結果(たとえば、本明細書に記載の腸および胃関連疾患、ならびに本明細書に開示の他の医学的適応症を予防および/または治療すること、または対象の腸における、腸管の質量の増大および/または縦方向の腸管の成長の誘導もしくは増大)を達成するのに必要な量の決定は、当業者の範囲内である。
【0106】
本明細書で使用される場合、「治療有効量」は、所与の状態または病態の症状を軽減し、好ましくは、その状態または病態を有する個体の生理応答を正常化する量である。症状の軽減または生理応答の正常化は、当技術分野で日常的な方法を使用して決定することができ、所与の状態または病態によって異なっていてもよい。一態様では、治療有効量は、測定可能な生理学的パラメータを、状態または病態のない個体におけるパラメータの実質的に同じ値(好ましくは値の+30%以内、より好ましくは+20%以内、さらにより好ましくは10%以内)に回復させる量である。
【0107】
本発明の一実施形態では、本発明の化合物または医薬組成物の投与は、より低い用量レベルで開始され、腸および胃関連疾患等の関連する医学的適応症の予防/治療の所望の効果、または縦方向の腸管の成長が得られるまで用量レベルが増加する。これは治療有効量を定義することになる。適切な個別の用量に関するガイダンスは、本明細書の他の場所で提供される。しかしながら、当業者であれば、代替の投与計画が選択された場合には、これらの用量を調整することができるであろう。
【0108】
治療用途の場合、活性薬剤は、薬学的に許容され、選択された投与経路によってペプチドを送達するのに適切な担体とともに製剤化される。本発明の目的のために、末梢非経口経路は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内の投与経路を含む。一実施形態では、投与経路は皮下経路または皮下投与である。
【0109】
投与が静脈内、皮下、または筋肉内等の非経口である場合、注射可能な医薬組成物は、水溶液または懸濁液のいずれかとして従来の形態で調製することができる; 凍結乾燥された固体形態は、使用直前に再構成するか、注射前に液体に懸濁するか、またはエマルションとして適している。
【0110】
凍結乾燥製品を再構成するための希釈剤は、適切な緩衝液、たとえばヒスチジン緩衝液、メシル酸緩衝液、酢酸緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、TRIS緩衝液、Bis-Tris緩衝液およびMOPS緩衝液から選択される緩衝液、水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、スクロース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩;またはTween(登録商標) 20、Tween(登録商標) 80、ポロクサマー(プルロニック(登録商標)F-68またはプルロニック(登録商標)F-127等)、ポリエチレン グリコールなどの界面活性剤を添加した注射用水、および/またはパラ-、メタ-、およびオルト-クレゾール、メチル-およびプロピルパラベン、フェノール、ベンジルアルコール、安息香酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ベンジル、ソルビン酸、プロパン酸、p-クレゾール等の防腐剤を添加した注射用水、および/またはエタノール、酢酸、クエン酸、ラクトース、またはそれらの塩等の有機改質剤(organic modifier)を添加した注射用水であってもよい。
【0111】
さらに、必要に応じて、注射可能な医薬組成物は、湿潤剤またはpH緩衝剤等の少量の非毒性補助物質を含んでもよい。吸収を促進する調製物(たとえば、リポソーム、界面活性剤、および有機酸)を利用してもよい。
【0112】
本発明の一実施形態では、化合物は、たとえば、完全非経口栄養療法を受けている患者(たとえば、新生児、または悪液質もしくは食欲不振に苦しむ患者)のための液体栄養補助食品として使用される場合には、注入による投与、または注射による投与用に製剤化される。 したがって、無菌かつ発熱物質を含まない形態の水溶液として利用され、必要に応じて生理学的に許容されるpH、たとえば弱酸性または生理学的pHに緩衝される。筋肉内投与用の製剤は、植物油、たとえばキャノーラ油、コーン油または大豆油の溶液または懸濁液に基づいていてもよい。これらの油ベースの製材は、抗酸化剤、たとえば、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)およびBHT(ブチル化ヒドロキシトルエン)によって安定化され得る。
【0113】
したがって、本発明のペプチド化合物は、蒸留水または生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水、5%デキストロース溶液、または油などのビヒクル中で投与することができる。活性薬剤の溶解度は、必要に応じて、界面活性剤および乳化剤等の溶解促進剤を組み込むことによって高めることができる。
【0114】
水性担体またはビヒクルは、注射剤として使用するために、所望の作用部位への活性薬剤の徐放のために、注射部位またはその近くに活性剤をデポーするのに役立つ量のゼラチンを補充することができる。ヒアルロン酸等の代替のゲル化剤もデポー剤として有用である可能性がある。
【0115】
たとえば注射による、皮下投与が特に好ましい場合がある。
【0116】
活性剤はまた、延長投与および持続投与(sustained administration)のための徐放性移植デバイスとして製剤化することもできる。このような徐放性製剤は、身体の外側に配置されるパッチの形態であってもよい。徐放性製剤の例は、ポリ(乳酸)、ポリ(乳酸-コ-グリコール酸)、メチルセルロース、ヒアルロン酸、シアル酸、ケイ酸塩、コラーゲン、リポソーム等の生体適合性ポリマーの複合体を含む。徐放性製剤は、高い局所濃度の活性薬剤を提供することが望ましい場合に特に興味深い場合がある。
【0117】
患者の治療に最も適した治療用量および治療計画は、当然のことながら、治療される疾患または状態によって、また患者のパラメータによって異なる。いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、患者当たり0.1~25mgの用量、およびより短いまたはより長い治療期間または治療頻度により、特に小腸質量の統計的に有意な増大等、治療上有用な結果が得られる可能性があると予想される。場合によっては、治療計画は、初期治療の中止後に起こる組織退縮を防ぐのに適切な維持用量の投与を含んでもよい。ヒトへの使用に最も適した用量サイズおよび投与計画は、本発明によって得られた結果によって導かれる可能性があり、さらなる臨床試験で確認される可能性がある。
【0118】
ZP1848のヒト用量は、約0.01mg/kg体重~100mg/kg体重、たとえば約0.01mg/kg体重~10mg/kg体重、たとえば10~100μg/kg体重の用量で使用することができる。さらなる実施形態では、ZP1848のヒト用量(総用量)は、患者当たり約0.1mg以上25mg以下(between and including 0.1 mg and 25 mg per patient)、患者当たり0.5mg以上20mg以下(between and including 0.5 mg and 20 mg per patient)、たとえば患者当たり1mg以上15mg以下(between and including 1 mg and 15 mg per patient)、たとえば患者当たり1mg以上10mg以下(between and including 1 mg and 10 mg per patient)を週1回または2回、あるいは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、または14日の間隔をあけて本明細書に定義される複数回投与として投与することができる。場合によっては、固定用量のZP1848を、本明細書に開示する投与パターンに従って使用することができ、すなわち、患者の体重に関係なく同じ用量を週に1回または2回投与することができる。例として、固定用量は、5mg、6mg、7mg、8mg、9mg、10mg、11mg、12mg、13mg、14mg、または15mgの用量であってもよい。好都合には、10mgの固定用量を使用することができる。固定用量の使用には、コンプライアンスが向上し、体重に基づいて投与される用量を誤って計算するリスクを含む、患者の投与ミスのリスクが軽減されるという利点がある。
【0119】
好ましい実施形態では、製剤は、国際公開第2020/065064号に記載されているようなすぐに使用できる製剤である。本明細書で使用される「すぐに使用できる」という用語は、指定された投与経路で使用する前に、所定量の希釈剤、たとえば注射用水または他の適切な希釈剤で構成または希釈する必要がない製剤を指す。
【0120】
本明細書に記載されるように、本発明のGLP-2アナログの液体製剤は、緩衝剤、非イオン性の浸透圧調整剤(tonicity modifier)、および最終製剤のpHを提供するのに十分なアルギニンを含む。通常の薬学的慣行に従って、本発明の製剤は滅菌されており、および/または還元剤を含まない。場合によっては、本発明の液体製剤は水性の液体製剤である。場合によっては、本発明の液体製剤は非水性の液体製剤である。
【0121】
本明細書で使用される「緩衝剤」という用語は、医薬製剤のpHを安定化する薬学的に許容される賦形剤を意味する。適切な緩衝液は当技術分野でよく知られており、文献で見つけることができる。実施例におけるスクリーニング実験は、本発明の製剤は、好ましくはヒスチジン緩衝液、メシル酸緩衝液、酢酸緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、TRIS緩衝液、Bis-Tris緩衝液およびMOPS緩衝液から選択される緩衝液を含むことを示す。なぜなら、これらの緩衝液は、GLP-2アナログが溶解し、ペプチド薬物を粘稠にしたり、濁らせたり、沈殿させたりしない安定な製剤を提供するからである。好ましい実施形態では、緩衝液はヒスチジン緩衝液、たとえばL-ヒスチジン緩衝液である。一般に、緩衝液は、約5mM~約50mMの濃度で、より好ましくは約5mM~約25mMの濃度で、最も好ましくは約15mMの濃度で存在するであろう。好ましくは、緩衝液は、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸/トリス緩衝液、および/またはコハク酸緩衝液ではない。
【0122】
本明細書で使用される用語「浸透圧調節剤(tonicity modifier)」は、製剤の浸透圧を調節するために使用される薬学的に許容される等張化剤(tonicity agent)を意味する。本発明の製剤は、好ましくは等張性である、すなわち、ヒト血清と実質的に同じ浸透圧を有する。製剤中で使用される浸透圧調節剤は、好ましくは非イオン性浸透圧調節剤であり、好ましくはマンニトール、スクロース、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される。好ましい非イオン性浸透圧調節剤(non-ionic tonicity modified)はマンニトール、たとえばD-マンニトールである。浸透圧調節剤の濃度は、特に製剤が等張であることが意図されている場合には、製剤の他の成分の濃度に依存するであろう。典型的には、非イオン性浸透圧調節剤は、約90mM~約360mMの濃度で、より好ましくは約150mM~約250mMの濃度で、最も好ましくは約230mMの濃度で使用される。
【0123】
一般に、液体製剤の成分および量は、約6.6~約7.4のpH、より好ましくは約6.8~約7.2のpH、最も好ましくは約7.0のpHを有する製剤を提供するように選択される。所望のpH範囲内になるようにpHを調整するために、アルギニンを十分な量(適量)添加してもよい。実施例に示される実験から、pH調整は塩酸または水酸化ナトリウムを使用して行われないことが好ましい。
【0124】
一実施形態では、液体製剤は、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のZP1848、たとえばその酢酸塩、ヒスチジン緩衝液、メシル酸緩衝液、酢酸緩衝液、グリシン緩衝液、リジン緩衝液、TRIS緩衝液、Bis-Tris緩衝液およびMOPS緩衝液からなる群から選択される緩衝液(緩衝液は約5mM~約50mMの濃度で存在する)、マンニトール、スクロース、グリセロール、ソルビトール、およびトレハロースからなる群から選択される非イオン性浸透圧調節剤(約90mM~約360mMの濃度)、約6.6~約7.4のpHを提供するのに十分な量のアルギニンからなる。
【0125】
一実施形態では、液体製剤は、約2mg/mL~約30mg/mLの濃度のZP1848、たとえばその酢酸塩、ヒスチジン緩衝液、メシル酸緩衝液、および酢酸緩衝液からなる群から選択される緩衝液(緩衝液は約5mM~約50mMの濃度で存在する)、マンニトール、スクロース、グリセロール、およびソルビトールからなる群から選択される非イオン性浸透圧調節剤(約90mM~約360mMの濃度)、約6.6~約7.4のpHを提供するのに十分な量のアルギニンからなる。
【0126】
さらなる実施形態では、液体製剤は、約20mg/mLの濃度のZP1848、たとえばその酢酸塩、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトール、および約7.0のpHを提供するのに十分な量のアルギニンを含む。
【0127】
さらなる実施形態では、液体製剤は、約20mg/mLの濃度のZP1848、たとえばその酢酸塩、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHは約7.0である。
【0128】
さらなる実施形態では、液体製剤は、約20mg/mLの濃度のZP1848酢酸塩(ZP1848-acetate)またはHGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH acetate(配列番号:1)、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトール、および約7.0のpHを提供するのに十分な量のアルギニンを含む。
【0129】
さらなる実施形態では、液体製剤は、約20mg/mLの濃度のZP1848酢酸塩またはHGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH acetate(配列番号:1)、約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHは約7.0である。
【0130】
さらなる実施形態では、液体製剤は、約20mg/mLの濃度の以下の式を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログの酢酸塩:
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH), x(CHCOOH)、
約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHは約7.0であり、ここで、xは1.0~8.0である。
【0131】
さらなる実施形態では、液体製剤は、1日1回または2回の投与計画で約20mg/mLの濃度の以下の式を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログの酢酸塩:
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH), x(CHCOOH)、
約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHは約7.0であり、ここで、xは1.0~8.0である。
【0132】
さらなる実施形態では、液体製剤は、週に1回または2回の投与計画で約20mg/mLの濃度の以下の式を有するグルカゴン様ペプチド2(GLP-2)アナログの酢酸塩:
(H-HGEGTFSSELATILDALAARDFIAWLIATKITDKKKKKK-NH), x(CHCOOH)、
約15mMの濃度のヒスチジン緩衝液、約230mMの濃度のマンニトールを含み、pHは約7.0であり、ここで、xは1.0~8.0である。
【0133】
場合によっては、本発明の液体製剤はさらに防腐剤を含む。場合によっては、防腐剤は、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、メチルパラベン、およびソルビン酸カリウムからなる群から選択されるものである。一般に、防腐剤は、最終製剤体積の約0.1%~約1%の濃度で存在する。
【0134】
医学的状態
本発明のペプチドは、本明細書に記載のZP1848またはその塩の有効量を投与することによって、食道の上部胃腸管を含む胃腸障害に罹患している個体を予防または治療するための薬剤として有用である。胃および腸関連疾患は、あらゆる病因の潰瘍(たとえば、消化性潰瘍(peptid ulcer)、薬物誘発性潰瘍、感染症または他の病原体に関連する潰瘍)、消化障害、吸収不良症候群、短腸症候群(short-gut syndrome)、炎症性腸疾患、セリアックスプルー(たとえば、グルテン過敏性腸症またはセリアック病に起因するもの)、熱帯性スプルー、低ガンマグロブリン血症性スプルー、腸炎、潰瘍性大腸炎、小腸損傷(small intestine damage)、および化学療法誘発性下痢/粘膜炎(CID)を含む。
【0135】
一般的に上述したように、小腸の質量の増大、ならびにその結果ならびに/または正常な小腸粘膜の構造および機能の維持から恩恵を受ける個体は、ZP1848またはその塩による治療の候補である。ZP1848で治療することができる特定の状態は、熱によるα-グリアジンへの毒性反応から生じ、グルテン過敏性腸症またはセリアック病の結果である可能性があり、小腸絨毛(villae)の重大な喪失を特徴とするセリアックスプルー;感染によって生じ、絨毛(villae)の部分的な平坦化が特徴的な熱帯性スプルー;一般的に様々な免疫疾患または低ガンマグロブリン血症を有する患者によく観察され、絨毛の高さの大幅な減少を特徴とする低ガンマグロブリン血症性スプルーを含む、様々な形態のスプルーを含む。ZP1848またはその塩による治療の治療効果は、絨毛の形態を検査するための腸生検によって、栄養吸収の生化学的評価によって、患者の体重増加によって、またはこれらの状態に関連する症状の改善によってモニタリングすることができる。
【0136】
ZP1848もしくはその塩で治療することができる、またはZP1848もしくはその塩が治療的および/または予防的に有用であり得る別の特定の症状は、短腸症候群(short gut syndrome)または単に短腸(short gut)としても知られる短腸症候群(short bowel syndrome;SBS)である。これは、外科的切除、先天性欠損、または疾患に関連した腸での吸収喪失によって生じ、その後患者は従来の食事で水分、電解質、および栄養素のバランスを維持できなくなる。一般に切除後2年以内に適応が起こるにもかかわらず、SBS患者の食事摂取量および水分喪失量は減少している。
【0137】
SBSを有するヒト患者のクラスは、SBS腸管不全(SBS-intestinal failure;SBS-IF)を有する患者、およびSBS腸管不全(SBS-intestinal insufficiency;SBS-II)とSBS腸不全(SBS-IF)との間の境界にある患者を含む。場合によっては、SBS腸管不全(SBS-IF)を有する患者が非経口サポートに依存している場合はSBS-PSとも呼ばれ、SBS腸管不全(SBS-II)を有する患者が非経口サポートに依存していない場合はSBS非PSとも呼ばれる。
【0138】
SBSの患者タイプの範囲は、Jeppensen, Journal of Parenteral and Enteral Nutrition, 38(1), 8S-13S, May 2014, doi: 10.1177/0148607114520994でレビューされている。SBS患者のタイプは、Schwartz et al., Clinical and Translational Gastroenterology (2016) 7, e142; doi:10.1038/ctg.2015.69で記載されている線に沿ってさらに分類することができる。これにより、SBS患者はアーリーレスポンダーとレイトレスポンダー/スローレスポンダーに分類される。アーリーレスポンダーは、いくつかある効果の中でも特に、小腸の幅/直径の増加によって引き起こされる、ZP1848等のGLP-2アナログによる治療に対して早期の効果を示す患者であると考えられている。一方、レイトレスポンダーまたはスローレスポンダーは、小腸の長さの増加によって引き起こされるGLP-2アナログによる治療でほとんどまたは最初の恩恵を受ける患者であると考えられている。対象がアーリーレスポンダーであるかレイトレスポンダーであるかの決定は、GLP-2アナログによる治療計画の期間、非経口サポートを減らす臨床決定のタイミング、および非経口サポートの削減が可能かどうかを決定するための検査間の間隔を決定するために使用することができる。したがって、一実施形態では、患者はレイトレスポンダーまたはスローレスポンダーである。小腸の長さは、たとえば、CTスキャン(コンピュータ断層撮影スキャン)、MRI(磁気共鳴画像法)、組織学、腹腔鏡検査、または当技術分野で知られている他の測定法または技術によって測定することができる。
【0139】
本文脈において、用語「非経口サポート」または「PS」は、GLP-2療法を受けている対象に、必要としているが、該対象の状態により、完全には吸収できない栄養素および/または水分を提供する手段として、栄養素および/または水分を提供することを含む。
【0140】
治療され得る、またはZP1848もしくはその塩が予防的に有用であり得る他の状態は、放射線腸炎、感染性腸炎もしくは感染後腸炎(post-infectious enteritis)、およびがん化学療法剤もしくはは毒物(toxic agents)による小腸損傷(small intestinal damage)を含む。
【0141】
これには、下痢、腹部疝痛、嘔吐等の化学療法の副作用を軽減し、結果として生じる化学療法または放射線療法に起因する腸上皮の構造的および機能的損傷を軽減するために、一連の化学療法または放射線療法の前、同時、または後にZP1848またはその塩を投与する必要がある場合がある。好ましくは、投与は、化学療法または放射線サイクルの開始の1、2、3、4、5、6または7日前に開始される。好ましくは、投与は、化学療法または放射線サイクルによる治療の開始の前日または同日に開始され、その後は週に1回または2回行われる。
【0142】
腸の損傷および機能不全は、がん化学療法の副作用としてよく知られている。化学療法の投与は、粘膜炎、下痢、細菌移行、吸収不良、腹部疝痛、胃腸出血、および嘔吐等の胃腸系に関連した望ましくない副作用を伴うことがよくある。これらの副作用は、腸上皮の構造的および機能的損傷の臨床結果であり、多くの場合、化学療法の用量および頻度を減らす必要がある。ZP1848またはその塩の投与は、腸陰窩における栄養効果を増強し、化学療法後の損傷した腸上皮を置き換えるための新しい細胞を迅速に提供する可能性がある。最終的な目標は、がん治療に最適な化学療法計画を作成しながら、化学療法を受けている患者の胃腸損傷に関連する罹患率を軽減することである。本発明に従って、放射線療法を受けている患者、または放射線療法を受けようとしている患者に、同時の予防的または治療的処置を提供することができる。
【0143】
小腸粘膜の幹細胞は、増殖速度が速いため、化学療法の細胞傷害作用の影響を特に受けやすい(Keefe et al., Gut 2000;47:632-7)。化学療法による小腸粘膜の損傷は、臨床的には胃腸粘膜炎と呼ばれることが多く、小腸の吸収障害およびバリア障害を特徴とする。たとえば、広く使用されている化学療法剤、5-FU、イリノテカン、メトトレキサートはアポトーシスを増加させ、げっ歯類の小腸における絨毛萎縮および陰窩低形成を引き起こすことが示されている(Keefe et al., Gut 47: 632-7, 2000; Gibson et al., J Gastroenterol Hepatol. Sep;18(9):1095-1100,2003;Tamaki et al., J Int Med Res. 31(1):6-16,2003)。化学療法剤は、投与後24時間で腸陰窩のアポトーシスを増加させ、その後、ヒトにおける化学療法の3日後に絨毛面積、陰窩長、陰窩あたりの有糸分裂数、および腸細胞の高さを減少させることが示されている(Keefe et al., Gut 2000;47:632-7)。したがって、小腸内の構造変化は腸の機能不全に直接つながり、場合によっては下痢を引き起こす。
【0144】
がん化学療法後の胃腸粘膜炎は、徐々に寛解するものの、一度発症すると基本的に治療不可能であることは、増加している問題である。一般的に使用される細胞増殖抑制剤である5-FUおよびイリノテカンを用いて行われた研究では、これらの薬剤を用いた効果的な化学療法は主に小腸の構造的完全性および機能に影響を与える一方、結腸は感受性が低く、主に粘液形成の増加で応答することが実証されている(Gibson et al., J Gastroenterol Hepatol. Sep;18(9):1095-1100, 2003;Tamaki et al., J Int Med Res. 31(1):6-16,2003)。
【0145】
ZP1848は、胃腸損傷および化学療法剤の副作用の予防および/または治療に有用である可能性がある。この潜在的に重要な治療への応用は、現在使用されている以下のような化学療法剤に適用することができるが、これらに限定されない: 5-FU、アルトレタミン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クリサンタスパーゼ(Crisantaspase)、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、リポソームドキソルビシン(Liposomal doxorubicin)、ロイコボリン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、ストレプトゾシン、テガフールウラシル、テモゾロミド、チオテパ、チオグアニン/チオグアニン(Tioguanine/Thioguanine)、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビノレルビン、ブレオマイシン、ブスルファン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クリサンタスパーゼ、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エトポシド、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、ヒドロキシカルバミド、イダルビシン、イホスファミド、イリノテカン、リポソームドキソルビシン、ロイコボリン、ロムスチン、メルファラン、メルカプトプリン、メトトレキサート、マイトマイシン、ミトキサントロン、オキサリプラチン、パクリタキセル、ペメトレキセド、ペントスタチン、プロカルバジン、ラルチトレキセド、ストレプトゾシン、テガフールウラシル、テモゾロミド、チオテパ、チオグアニン/チオグアニン、トポテカン、トレオスルファン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、およびビノレルビン。
【0146】
本発明のさらなる態様は、患者、たとえばヒト患者における腸管の質量の増大または縦方向の腸管の成長、特に小腸を増大させることに関する。ZP1848またはその塩は、国際公開第2018/229252号に示されているように、対照治療と比較して縦方向の腸管の成長を増加させることができる。
【0147】
この性能は、治療を中止した後も吸収能力の増加につながるため、SBS患者にとって特に価値がある。このような患者は、腸管の縦方向の成長を誘導する目的で、少なくとも1~3年、たとえば少なくとも1~4年、たとえば1~10年、たとえば1~20年、たとえば1~35年治療されるであろう。
【0148】
したがって、本明細書で既に記載されているように、腸不全(SBS-II)またはSBS-PS患者および腸不全(SBS-IF)またはSBS非PSとの境界にあるSBS患者は、1~3年間の治療コースで腸を延長するが特別な価値を有する可能性がある。その後、たとえば治療期間中週1回または週2回の投与を行うことにより、腸不全(intestinal failure)のリスクが減少する。これにより、中心静脈カテーテルの必要性およびその使用に伴う敗血症のリスクが軽減される。
【0149】
活性薬剤はまた、たとえば悪液質および食欲不振に起因する栄養失調の治療にも使用され得る。
【発明を実施するための形態】
【0150】
実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい態様を説明するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。本明細書に記載の投薬計画に従って投与されるGLP-2アナログは、その内容はその全体が参照により明示的に組み込まれる国際公開第2006/117565号パンフレットに記載の固相ペプチド合成等の方法に従って作製することができる。
【0151】
実施例1: 様々な程度の腎機能を有する対象におけるグレパグルチドおよびその2つの主要な活性代謝物の薬物動態(PK)プロファイル
目的
グレパグルチド(ZP1848、グレパグルチド1-39)は、短腸症候群(SBS)の治療に関して現在第3相段階にある強力な長時間作用型GLP-2アナログである。グレパグルチドは39個のL-アミノ酸で構成されており、そのすべては天然に存在する。グレパグルチドは、天然のGLP-2と比較して9個のアミノ酸置換と6個のリジン残基からなるC末端テールを有しており、これらすべてにより安定した長期持続性の液体製剤が可能になる。
【0152】
グレパグルチドの皮下注射後、C末端内の切断から2つの機能的に活性な代謝物、すなわちZP2469(18481-34)およびZP2711(ZP18481-35)が形成される。
【0153】
短腸症候群(short bowel syndrome)の患者は腎障害に罹患するリスクがあり、その場合にはグレパグルチドの用量調整が正当化される可能性があるため、腎障害を有する対象と正常な腎機能を有する対象との単回投与後のグレパグルチドの薬物動態を調査する臨床第1相試験が実施された。
【0154】
臨床研究プロトコール、その修正/更新、インフォームド・コンセントフォーム(ICF)およびその修正は、スクリーニングの前に独立倫理委員会(IEC)によって検討され、承認された。
【0155】
方法
本研究は、様々な程度の腎機能を有する対象を対象とし、10mgのグレパグルチドを単回皮下投与した場合のPKを評価する、2段階デザインの非盲検、多施設(multi-center)、非ランダム化試験として設計された。腎機能は、腎疾患における食事療法の修正(Modification of Diet in Renal Disease;MDRD)式に従って推算糸球体濾過率(eGFR)によって計算された。
【0156】
16人のコーカサス人種の対象が登録され、そのうち4人は透析を受けていない末期腎不全(ESRD)(eGFR<15mL/分)、4人は重度の腎障害(eGFR<30mL/分)、8人は正常な腎機能(eGFR>90mL/分)を有する適合対照であった(表1)。eGFRを除く人口動態は、群全体で同様であった(表1)。
【0157】
グレパグルチド(ZP1848、10 mg)は、グレパグルチド濃度20mg/mLの皮下注射用の無色透明溶液1mL(抽出可能容量0.5mL)を含む単回使用バイアルで提供された。
【0158】
腹部に10mgのグレパグルチドを単回投与した後、14日間にわたってPK血液試料を収集した。GLPで検証されたLC/MS/MSアッセイを使用して、PK試料のグレパグルチド、ZP2469、およびZP2711を分析した。
【0159】
一次PKパラメータは、用量と最後の測定可能な濃度の間の曲線下面積(AUC)を無限大に外挿し(AUCinf)、0~168時間(AUC0-168)で計算したもの、および最大血漿濃度(Cmax)であり、グレパグルチド、ZP2469、ZP2711について計算された。構築された分析物「総グレパグルチド(glepaglutide-total)」(グレパグルチド+ZP2469+ZP2711)を主要評価項目として使用し、ノンコンパートメントアプローチを使用して分析した。
【0160】
結果
重度の腎障害およびESRDを有する対象では、健康な適合対象と比較した場合、一次PKパラメータに統計的に有意な差はなかった。特に、単回皮下投与後のグレパグルチドの総曝露(AUC0-168h)およびピーク血漿濃度(Cmax)に関して、重度の腎障害/ESRDを有する対象と正常な腎機能を有する対象との間に臨床的に関連する差異はなかった。
【0161】
グレパグルチド合計の幾何平均比は、AUC0-168については0.96[90%CI: 0.69-1.35]、Cmaxについては0.90[90%CI: 0.62-1.31]であった。したがって、腎障害を有する対象のグレパグルチド総曝露量は、2つのPKパラメータに関して健常対象と比較してそれぞれ4%および10%低かったが、これは臨床的に関連するとは考えられない。
グレパグルチド合計の曝露量は、腎障害を有する対象と腎機能が正常な健常対象で同様であった。これは、腎機能がグレパグルチドの全身曝露に影響を与えていないこと、したがって腎障害患者におけるグレパグルチドの用量調整は不要であることを示唆している。
【0162】
ZP2469の幾何平均比は、AUC0-168については0.96[90%CI: 0.667-1.38]、Cmaxについては0.91[90%CI: 0.595-1.39]であった。
【0163】
ZP2711の幾何平均比は、AUC0-168については0.89[90%CI: 0.616-1.29]、Cmaxについては0.81[90%CI: 0.572-1.15]であった。
【0164】
【表1】
【0165】
eGFRは、腎疾患における食事療法の修正(MDRD)式(Levey AS et al., Clin Chem. Apr 2007;53(4):766-772)に従って計算された。
【0166】
本発明を上述の例示的な実施形態に関連して説明してきたが、本開示が与えられれば、当業者には多くの同等の改変および変形が明らかとなるであろう。したがって、記載された本発明の例示的な実施形態は、例示的なものであり、限定的なものではないと考えられる。本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、説明した実施形態に様々な変更を加えることができる。ここで引用したすべての文書は、参照により明示的に組み込まれる。
【配列表】
2024500343000001.app
【国際調査報告】