(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ヒドロホルミル化反応方法
(51)【国際特許分類】
C07C 47/02 20060101AFI20231226BHJP
C07C 45/50 20060101ALI20231226BHJP
B01F 23/232 20220101ALI20231226BHJP
B01F 23/2375 20220101ALI20231226BHJP
B01F 25/27 20220101ALI20231226BHJP
B01F 25/53 20220101ALI20231226BHJP
B01F 35/71 20220101ALI20231226BHJP
B01F 35/222 20220101ALI20231226BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
C07C47/02
C07C45/50
B01F23/232
B01F23/2375
B01F25/27
B01F25/53
B01F35/71
B01F35/222
C07B61/00 300
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535347
(86)(22)【出願日】2021-11-18
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 US2021059813
(87)【国際公開番号】W WO2022139989
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508168701
【氏名又は名称】ダウ テクノロジー インベストメンツ リミティド ライアビリティー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147212
【氏名又は名称】小林 直樹
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン エフ.ジャイルズ
(72)【発明者】
【氏名】プリティッシュ エム.カマート
(72)【発明者】
【氏名】グレン エー.ミラー
(72)【発明者】
【氏名】ジョージ アール.フィリップス
(72)【発明者】
【氏名】チー-ウェイ ツァン
(72)【発明者】
【氏名】チュアン ユアン
【テーマコード(参考)】
4G035
4G037
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4G035AB07
4G035AB10
4G035AC16
4G035AC30
4G035AC31
4G035AE02
4G035AE13
4G037AA02
4G037EA01
4H006AA02
4H006AB84
4H006AC45
4H006BA24
4H006BD84
4H006BE20
4H006BE40
4H039CA62
4H039CC10
(57)【要約】
本発明は、ヒドロホルミル化反応方法に関する。一態様では、ヒドロホルミル化反応方法は、(a)反応器内の均一触媒の存在下でオレフィンを水素及び一酸化炭素と接触させて反応流体を提供することであって、反応器は1つ以上の反応ゾーンを含む、ことと、(b)反応流体の一部分を第1の反応ゾーンから除去することと、(c)除去された反応流体の少なくとも一部分を剪断混合装置に通して、除去された反応流体の一部分の中に気泡を生成することであって、反応器に提供される水素及び一酸化炭素の少なくとも一部分が剪断混合装置を通して導入される、ことと、(d)除去された反応流体を、1つ以上のノズルを通して第1の反応ゾーンに戻すことであって、各ノズルから出る戻される反応流体はジェットである、ことと、を含み、ジェットによって反応器に提供される混合エネルギー密度が、500ワット/m3以上である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロホルミル化反応方法であって、
(a)反応器内の均一触媒の存在下でオレフィン、水素、及び一酸化炭素を接触させて反応流体を提供することであって、前記反応器は1つ以上の反応ゾーンを含む、ことと、
(b)前記反応流体の一部分を第1の反応ゾーンから除去することと、
(c)前記除去された反応流体の少なくとも一部分を剪断混合装置に通して、前記除去された反応流体の一部分の中に気泡を生成することであって、前記反応器に提供される水素及び一酸化炭素の少なくとも一部分が前記剪断混合装置を通して導入される、ことと、
(d)前記除去された反応流体を、1つ以上のノズルを通して第1の反応ゾーンに戻すことであって、各ノズルから出る前記戻される反応流体はジェットである、ことと、
を含み、
前記ジェットによって前記反応器に提供される混合エネルギー密度が、以下の式:
【数1】
(式中、Vは、第1の反応ゾーン内の前記反応流体の体積(m
3)であり、Nは、各ジェットがi=1からi=N(1刻み)までの自然数を使用して一意に識別されるように第1の反応ゾーンに戻されるジェットの総数であり、ρ
iは、i番目のジェットを通って第1の反応ゾーンに戻される前記反応流体のノズルポートにおける平均密度(kg/m
3)であり、Q
iは、i番目のジェットを通って第1の反応ゾーンに戻される前記反応流体の体積流量(m
3/s)であり、A
iは、前記反応流体が流れるi番目のノズルの、前記反応流体が前記ノズルを出て第1の反応ゾーンに入る位置での断面積(m
2)である)
を満たす、
方法。
【請求項2】
前記剪断混合装置を通る前記反応流体の流量が、以下:
q
SM>525(μ
o/ρ
o)P
SM
(式中、q
SMは、前記剪断混合装置に入る前記反応流体の流量(m
3/s)であり、ρ
oは、前記剪断混合装置に入る前の前記反応流体の密度(kg/m
3)であり、μ
oは、前記剪断混合装置に入る前の前記反応流体の粘度(Pa・s)であり、P
SMは、前記剪断混合装置内部の液体流の断面の最小湿潤周囲長である)
を満たす、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも2つのノズルが、前記除去された反応流体を前記反応器に戻し、各ノズルは、水平面に対する前記ノズルの角度(アルファ)が+75°~-75°であるように配向され、アルファ、前記反応器の中心を通る垂直面に対する前記ノズルの角度(ベータ)、及びベータがゼロである場合に前記反応器の中心を通る前記垂直面からの距離(ファイ)が全て非ゼロである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
水素及び一酸化炭素が合成ガスとして提供され、第1の反応ゾーンに提供される合成ガスの少なくとも20%が、第1の反応ゾーンに入る前に前記剪断混合装置を通過する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
水素及び一酸化炭素が合成ガスとして提供され、前記合成ガスの少なくとも一部分が、第1の反応ゾーンの反応流体充填高さの50%未満の高さでスパージャを通して前記円筒型の反応器内に導入される、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応器は、前記反応器の内壁に取り付けられた水平に配向されたリングバッフルを含み、前記リングバッフルは、第1の反応ゾーン内の液体反応流体の高さの90%未満の高さに配置され、前記リングバッフルの中実部分が、前記反応器の直径の5~30%に及ぶ、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記円筒型の反応器内に配置された撹拌器を更に含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記撹拌器及び前記戻される反応流体は、前記円筒型の反応器内に混合エネルギー密度を提供する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記撹拌器は動作しない、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記反応器は垂直に配向される、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器は第2の反応ゾーンを更に含み、前記反応流体は、配管なしで第1の反応ゾーンから第2の反応ゾーンに流れる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第1の反応ゾーンと第2の反応ゾーンとは、有孔板によって分離される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記反応器は第3の反応ゾーンを更に含み、前記反応流体は、配管なしで第2の反応ゾーンから第3の反応ゾーンに流れる、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
第2の反応ゾーンと第3の反応ゾーンとは、有孔板によって分離される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記剪断混合装置によって生成される前記気泡の平均気泡サイズが、10ナノメートル~3,000ミクロンである、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応器は、前記反応器の下部分に配置された生成物出口ノズルを含み、前記反応器は、前記反応器の底部容積内に配置された、ガス同伴を防止するための手段を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般に、ヒドロホルミル化反応方法に関する。
【0002】
序論
ヒドロホルミル化とは、有機リン配位子で修飾された均一ロジウム触媒の存在下でのオレフィンとH2及びCOとの反応であり、下記の式に従ってアルデヒドを生成する。
【0003】
【0004】
典型的には、ヒドロホルミル化反応は、合成ガス(H2とCOのガス混合物)が液体オレフィン、生成物アルデヒド、重質物、及び均一ロジウム/配位子触媒を含む反応流体にスパージングされた液相で行われる。
【0005】
反応を起こすためには、H2とCOを反応流体に溶解する必要があるため、効果的な気液混合がヒドロホルミル化反応の開始と維持の両方において重要である。
【0006】
加えて、発熱性ヒドロホルミル化反応により発生する熱を除去し、反応器の温度を所望の反応条件で制御する必要がある。これは、典型的には、内部冷却コイルにより、若しくは、外部の熱交換器を介して反応流体を再循環させ、冷却された反応流体を反応器に戻すことにより、又はこれらの双方によって実現される。
【0007】
更に、上記のヒドロホルミル化反応と同じ条件下で、得られたアルデヒドが更に反応し、その場(in situ)で水素化されて対応するアルコールが得られてもよい。そして、アミノ化条件下でのヒドロホルミル化は、ヒドロホルミル化反応の変種とみなされ得る。
【0008】
いくつかのヒドロホルミル化触媒の別の二次触媒活性は、二重結合(例えば、内部二重結合を有するオレフィン)の飽和炭化水素又はα-オレフィンへの水素化又は異性化、及びその逆である。反応器内の特定のヒドロホルミル化反応条件を確立し且つ維持するためには、これらのヒドロホルミル化触媒の二次反応を回避することが重要である。プロセスパラメーターからのわずかな偏差であっても、望まない二次生成物のかなりの量の形成につながる可能性があり、したがって、ヒドロホルミル化反応器内の反応液全体の体積にわたって実質的に同一のプロセスパラメーターを維持することは非常に重要なものであり得る。更に、合成ガスが充分に分散又は溶解されていない反応器内の容積は、反応にも反応器の生産性にも寄与しない。加えて、多くの加水分解可能な触媒は、反応温度で合成ガスの非存在下、触媒の劣化を示し、低分散又は溶解された合成ガスの領域は、触媒性能の低下に寄与する。あるいは、多くのロジウムホスフィン触媒は高CO環境で分解を示すため、過度に溶解された合成ガス濃度の領域も避ける必要がある。したがって、(高いガスの停滞又はガス分率によって決定されるように)高度に分散された均一なガス混合が最も望ましい結果である。概して、有機リン配位子で修飾された均一ロジウム触媒によるオレフィンのヒドロホルミル化においては、液体反応媒体に溶解した水素と一酸化炭素の最適な濃度を確立することが有利である。
【0009】
反応液中の溶存一酸化炭素(CO)の濃度は特に重要であり、ヒドロホルミル化反応器の重要な制御変数である。反応液中の溶存CO濃度を直接測定することはできないが、典型的には、オンライン分析装置を使用して監視及び近似させ、反応液相と平衡状態にあると推定される反応器の蒸気空間のCO分圧を測定する。この近似は、反応器内の反応流体がより均一に混合されて、古典的なCSTRモデルなどの完全に支持混合された(backed-mixed)反応混合物により良く近似する場合に改善される。
【0010】
高い変換率を達成するためには、米国特許第5,728,893号に記載されているものなどの複数のゾーンを有する反応器が好ましい。しかしながら、2つ以上の反応ゾーンを有する反応器では、上部空間のCO分圧を測定しても、上部ゾーンのCO濃度が示されるだけであり、必ずしも下部反応ゾーンのCO濃度が示されるとは限らない。このことは、上部反応ゾーンが逆混合(back-mixed)反応器でない場合により重要になる。後者の場合、可能な限り均一な及び/又は予測可能なCO分布を達成するためには、非逆混合反応ゾーンへの供給物が可能な限り均一であることが更により重要である。
【0011】
炭化水素(パラフィン)形成反応、アルデヒドの高沸点縮合物(すなわち、高沸点物又は「重質物」)の形成、及び有機リン-ロジウム系触媒の分解速度もまた、反応温度の影響を受ける。逆混合反応器の場合、反応温度及び反応器内に存在する反応液の体積中の溶存COの濃度に関して勾配が形成されることを回避することが重要である。換言すれば、全液体体積にわたってほぼ同一の動作条件が確立され、維持されることが重要である。したがって、反応ゾーン内での反応物及び温度の不均一な分布を回避することが好ましい。しかしながら、プラグフロー反応器及び気泡反応器などの他の非逆混合反応器は勾配を有し、したがってこれらの反応器をこのように制御することはより困難であることが知られている。
【0012】
合成ガスを供給し、良好な分配を確保する手段は、以前から認識されている。学術論文が、例えば撹拌速度に焦点を当てており、機械的撹拌器を使用しない逆混合反応器についての国際公開第2018/236823号に開示されている技術は、合成ガスの良好な分布が良好な反応性及び反応器性能にとって重要であることを教示している。
【0013】
したがって、機械的撹拌器を使用せずに反応器内に高度に分散された均一な合成ガス及び温度分布を提供し、良好な初期合成ガス分布を確立するヒドロホルミル化反応器設計、好ましくはマルチゾーンヒドロホルミル化反応器設計を有することが望ましい。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、全般に、オレフィンを液相中で一酸化炭素及び水素ガスと反応させることによってアルデヒドを調製するヒドロホルミル化反応方法に関する。触媒の存在下、50℃~145℃の高温及び1~100バールの圧力の様々な実施形態で、これらのガスの一部分は反応液中に気泡の形態で分散され、別の部分は反応液中に溶解される。本発明の実施形態は、有利には、機械的撹拌器を使用せずに、反応器内での反応流体の徹底的な気液混合を提供することができる。
【0015】
高速流体流を利用して、(1)合成ガスを微細気泡の十分に分布した流れとして導入し、(2)反応液に運動量及び剪断力を付与して、反応器内容物を混合するだけでなく合成ガス気泡を分散させることによって、気泡を均一に分布させて反応ゾーン全体を混合することができることが分かった。従来のベンチュリ気液混合反応器の設計のように反応器の上部に位置していないにもかかわらず、本発明の一部の実施形態では、反応器の流体全体が、反応器内のより高くより均一なガス分率又はガス負荷、及び一定かつ均一な温度によって証明されるように、目立って均一な温度及び気液混合を達成することができる。加えて、均一に混合された微細気泡は、ベンチュリ型反応器設計では困難である、気泡塔又はプラグフロー反応器などの非逆混合反応ゾーンへのプロセス流体の導入を容易にする。
【0016】
一態様では、ヒドロホルミル化反応方法は、(a)反応器内の均一触媒の存在下でオレフィンをガス状水素及び一酸化炭素と接触させて反応流体を提供することであって、反応器は1つ以上の反応ゾーンを含む、ことと、(b)反応流体の一部分を第1の反応ゾーンから除去することと、(c)除去された反応流体の少なくとも一部分を剪断混合装置に通して、除去された反応流体の一部分の中に気泡を生成することであって、反応器に提供される水素及び一酸化炭素の少なくとも一部分が剪断混合装置を通して導入される、ことと、(d)除去された反応流体を、1つ以上のノズルを通して第1の反応ゾーンに戻すことであって、各ノズルから出る戻される反応流体はジェットである、ことと、を含み、ジェットによって反応器に提供される混合エネルギー密度が、以下の式:
【0017】
【数2】
(式中、Vは、第1の反応ゾーン内の反応流体の体積(m
3)であり、Nは、各ジェットがi=1からi=N(1刻み)までの自然数を使用して一意に識別されるような、第1の反応ゾーンに戻されるジェットの総数であり、ρ
iは、i番目のジェットを通って第1の反応ゾーンに戻される反応流体のノズルポートにおける平均密度(kg/m
3)であり、Q
iは、i番目のジェットを通って第1の反応ゾーンに戻される反応流体の体積流量(m
3/s)であり、A
iは、反応流体が流れるi番目のノズルの、反応流体がノズルを出て第1の反応ゾーンに入る位置での断面積(m
2)である)を満たす。
【0018】
これら及び他の実施形態は、「発明を実施するための形態」において、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態によるヒドロホルミル化反応方法に使用することができるヒドロホルミル化反応器及び関連機器の一例を示す概略図である。
【
図2】本発明の一部の実施形態による、ノズルが反応器内で配向され得る角度及び他のパラメータを示す概略図である。
【
図3】本発明の一部の実施形態で使用することができる剪断混合装置の2つの実施形態を示し、「G」は、剪断混合装置に入るガスを表し、「L」は、剪断混合装置に入る液体を表す。
【
図4】本発明の一部の実施形態による、反応器内のノズルの異なる位置、ジェットに対する1つ以上のドーナツバッフルの異なる位置、及びノズルから出るジェットの角度を示す一連の図である。
【
図5】比較例A並びに本発明の実施例1及び2のガス体積分率色分け図を示す。
【
図6】比較例A並びに本発明の実施例1及び2の物質移動係数(KLa)の平均値の色分け図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
ヒドロホルミル化方法は、概して、成分として遷移金属及び有機リン配位子を含む触媒の存在下で、少なくとも1種のアルデヒド生成物を形成するのに十分なヒドロホルミル化条件下で、CO、H2、及び少なくとも1種のオレフィンを接触させることを含む。任意選択の方法成分には、アミン及び/又は水が含まれる。
【0021】
元素の周期表およびその中の様々な族に対する全ての言及は、CRC Handbook of Chemistry and Physics,72nd Ed.(1991-1992)CRC Press、page I-10で公開されたバージョンに対する。
【0022】
反対のことが記述されていない限り、又は文脈から黙示的でない限り、全ての部及び百分率は重量に基づくものであり、全ての試験方法は本出願の出願日現在のものである。本明細書で使用される場合、「ppmw」という用語は、重量百万分率を意味する。米国特許実務の目的のために、任意の参照される特許、特許出願又は公開の内容は、特に定義の開示(具体的に本開示で提供されるいずれの定義とも矛盾しない範囲)及び当該技術分野での全般的知識に関して、参照によりそれらの全体が組み込まれる(又はその同等の米国版がそのように参照により組み込まれる)。
【0023】
本明細書で使用される場合、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つ」、及び「1つ以上」は互換的に使用される。「含む(comprise)」、「含む(include)」、およびそれらの変形は、これらの用語が明細書および特許請求の範囲に現れる場合に限定的な意味を有しない。したがって、例えば、「a」疎水性ポリマーの粒子を含む水性組成物は、組成物が「1つ以上の」疎水性ポリマーの粒子を含むことを意味すると解釈することができる。
【0024】
また、本明細書において、端点による数値範囲の列挙は、その範囲に包含される全ての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。本発明の目的のために、当業者が理解することと一致して、数値範囲は、その範囲に含まれる可能性のある全ての部分範囲を含み、かつ支持することを意図することを理解されたい。例えば、1~100の範囲は、1.01~100、1~99.99、1.01~99.99、40~60、1~55などを伝達することを意図している。
【0025】
本明細書で使用されるとき、用語「ヒドロホルミル化」は、限定されるものではないが、1つ以上の置換若しくは非置換オレフィン系化合物又は1つ以上の置換若しくは非置換オレフィン系化合物を含む反応混合物を、1つ以上の置換又は非置換アルデヒド又は1つ以上の置換若しくは非置換アルデヒドを含む反応混合物に変換することを伴う、全ての許容される非対称及び非対称でないヒドロホルミル化方法を含むことが意図される。
【0026】
本明細書において、用語「反応流体」、「反応媒体」、及び「触媒溶液」は互換的に使用され、(a)金属-有機リン配位子錯体触媒、(b)遊離有機リン配位子、(c)反応において形成されるアルデヒド生成物、(d)未反応の反応物(例えば、水素、一酸化炭素、オレフィン)、(e)前述の金属-有機リン配位子錯体触媒及び前述の遊離有機リン配位子のための溶媒、並びに、任意選択的に、(f)反応において形成される酸化物及びリン酸性化合物などの1つ以上の配位子分解生成物(均一又は不均一であってもよく、これらの化合物は、プロセス機器の表面に付着したものを含む)を含み得るがこれらに限定されない。反応流体はガスと液体の混合物であり得ることを理解すべきである。例えば、反応流体は、液体内に同伴される気泡(例えば、水素及び/又はCO及び/又は不活性物質)又は液体に溶解したガス(例えば、水素及び/又はCO及び/又は不活性物質)を含み得る。反応流体は、限定されないが、(a)反応ゾーン内の流体、(b)分離ゾーンへ向かう途中の流体流、(c)分離ゾーン内の流体、(d)再循環流、(e)反応ゾーン又は分離ゾーンから引き出された流体、(f)緩衝水溶液で処理された引き出された流体、(g)反応ゾーン又は分離ゾーンに戻された処理された流体、(h)外部冷却器内へ向かう途中の流体、(i)外部冷却器内の流体、(j)外部冷却器から反応ゾーンに戻される流体、並びに(k)配位子分解生成物及びそれらの塩、を含むことができる。
【0027】
本明細書で使用される場合、複数の反応ゾーン反応器又は反応列における「第1の反応ゾーン」という用語は、触媒の大半が導入される反応ゾーン(例えば、本発明の一部ではない上流反応器からの再循環触媒又は触媒含有反応流体)を指す。「第2の反応ゾーン」は、触媒の大半が第1の反応ゾーンから第2の反応ゾーンに流れるという点で、第1の反応ゾーンに続き、以下同様である。このタイプの反応スキームの利点は、米国特許第5,728,893号に記載されている。本発明の目的のために、用語「第1の反応ゾーン」は、オレフィン、合成ガス、及び触媒の大部分が反応器に導入される反応ゾーンに関する。次いで、この第1の反応ゾーンを出る反応流体の大部分は、中間配管なしで有孔板を通って「第2の反応ゾーン」に輸送される。この文脈において、「第1」及び「第2」は、この反応器中の触媒の大半がたどる経路に関連し、本発明に含まれないこの反応器本体の前に反応ゾーンが存在し得ることが認識される。
【0028】
本発明は、概して、オレフィンを液相中で一酸化炭素及び水素ガスと反応させることによってアルデヒドを調製するヒドロホルミル化反応方法に関する。本発明の実施形態は、一酸化炭素及び/又は水素ガスの少なくとも一部分を、反応流体中に小さな気泡の形態で有利に分散させる。一部の実施形態では、本発明の方法は、機械的撹拌器を使用せずに反応流体の徹底的な気液混合を有利に提供することができる。
【0029】
一実施形態では、本発明のヒドロホルミル化方法は、(a)反応器内の均一触媒の存在下でオレフィン、水素、及び一酸化炭素を接触させて反応流体を提供することであって、反応器は1つ以上の反応ゾーンを含む、ことと、(b)反応流体の一部分を第1の反応ゾーンから除去することと、(c)除去された反応流体の少なくとも一部分を剪断混合装置に通して、除去された反応流体の一部分の中に気泡を生成することであって、反応器に提供される水素及び一酸化炭素の少なくとも一部分が剪断混合装置を通して導入される、ことと、(d)除去された反応流体を、1つ以上のノズルを通して第1の反応ゾーンに戻すことであって、各ノズルから出る戻される反応流体はジェットである、ことと、を含み、ジェットによって反応器に提供される混合エネルギー密度が、以下の式:
【0030】
【数3】
(式中、Vは、第1の反応ゾーン内の反応流体の体積(m
3)であり、Nは、各ジェットがi=1からi=N(1刻み)までの自然数を使用して一意に識別されるような、第1の反応ゾーンに戻されるジェットの総数であり、ρ
iは、i番目のジェットを通って第1の反応ゾーンに戻される反応流体のノズルポートにおける平均密度(kg/m
3)であり、Q
iは、i番目のジェットを通って第1の反応ゾーンに戻される反応流体の体積流量(m
3/s)であり、A
iは、反応流体が流れるi番目のノズルの、反応流体がノズルを出て第1の反応ゾーンに入る位置での断面積(m
2)である)を満たす。一部の実施形態では、剪断混合装置を通して反応器に提供される水素及び一酸化炭素に加えて、不活性ガス(例えば、メタン、CO
2、アルゴン、窒素など)もまた、剪断混合装置を通して反応器に提供される合成ガス中に存在してもよい。一部の実施形態では、剪断混合装置によって生成される気泡の平均気泡サイズは、10ナノメートル~3,000ミクロンである。一部の実施形態では、剪断混合装置によって生成される気泡の平均気泡サイズは、100ミクロン~800ミクロンである。
【0031】
剪断混合装置を通る反応流体の流量は、反応流体の適切な混合を促進するために重要であり得る。一実施形態では、剪断混合装置を通る反応流体の流量は、以下:
qSM>525(μo/ρo)PSM
(式中、qSMは、剪断混合装置に入る反応流体の流量(m3/s)であり、ρoは、剪断混合装置に入る前の反応流体の密度(kg/m3)であり、μoは、剪断混合装置に入る前の反応流体の粘度(Pa・s)であり、PSMは、剪断混合装置内部の液体流の断面の最小湿潤周囲長である)を満たす。
【0032】
一部の実施形態では、除去された反応流体は、少なくとも2つのノズルを通って第1の反応流体に戻され、各ノズルは、水平面に対するノズルの角度(アルファ)が+75°~-75°であるように配向され、アルファ、反応器の中心を通る垂直面に対するノズルの角度(ベータ)、及びベータがゼロである場合に反応器の中心を通る垂直面からの距離(ファイ)が全て非ゼロである。
【0033】
一部の実施形態では、水素及び一酸化炭素が合成ガスとして提供され、第1の反応ゾーンに提供される合成ガスの少なくとも20%が、第1の反応ゾーンに入る前に剪断混合装置を通過する。
【0034】
一部の実施形態では、合成ガスの少なくとも一部分が、第1の反応ゾーンの反応流体充填高さの50%未満の高さでスパージャを通して円筒型の反応器内に導入される。
【0035】
一部の実施形態では、反応器は、反応器の内壁に取り付けられた水平に配向されたリングバッフルを含み、リングバッフルは、第1の反応ゾーン内の液体反応流体の高さの90%未満の高さに配置され、リングバッフルの中実部分が、反応器の直径の5~30%に及ぶ。
【0036】
一部の実施形態では、撹拌器が反応器内に配置される。一部の実施形態では、撹拌器は動作しない。一部の実施形態では、撹拌器及び戻される反応流体は、円筒型の反応器内に混合エネルギー密度を提供する。
【0037】
一部の実施形態では、反応器は垂直に配向される。
【0038】
反応器は、一部の実施形態では、第2の反応ゾーンを更に含み、反応流体は、配管なしで第1の反応ゾーンから第2の反応ゾーンに流れる。一部の更なる実施形態では、第1の反応ゾーンと第2の反応ゾーンとは、有孔板によって分離される。反応器は、一部の実施形態では、第3の反応ゾーンを更に含み、反応流体は、配管なしで第2の反応ゾーンから第3の反応ゾーンに流れる。一部の更なる実施形態では、第2の反応ゾーンと第3の反応ゾーンとは、有孔板によって分離される。
【0039】
一部の実施形態では、反応器は、反応器の下部分に配置された生成物出口ノズルと、反応器の底部容積内に配置された、ガス同伴を防止するための手段と、を含む。
【0040】
本発明のヒドロホルミル化方法は、反応器内の均一触媒の存在下でオレフィン、水素、及び一酸化炭素を接触させて反応流体を提供することであって、反応器は1つ以上の反応ゾーンを含む、ことを含む。
【0041】
水素及び一酸化炭素は、石油分解(クラッキング)及び精製作業を含む任意の好適な供給源から取得してもよい。合成ガス混合物は、水素及びCOの好ましい供給源である。合成ガス(syngas)(合成ガス(synthesis gas))は、様々な量のCO及びH2を含有するガス混合物に与えられる名称である。生成方法は、よく知られている。水素及びCOは、典型的には、合成ガスの主成分であるが、合成ガスは、CO2並びにN2及びArなどの不活性ガスを含有し得る。H2のCOに対するモル比は大きく変動するが、概ね1:100~100:1、通常は1:10~10:1の範囲である。合成ガスは、市販されており、多くの場合、燃料源として、又は他の化学物質の生成のための中間体として使用される。化学生成のためのH2:COモル比は、多くの場合、3:1~1:3であり、通常、ほとんどのヒドロホルミル化用途のためには約1:2~2:1が目標とされる。
【0042】
ヒドロホルミル化方法の典型的な実施形態では、溶媒が有利に用いられる。ヒドロホルミル化方法を過度に妨害しない任意の好適な溶媒を使用してもよい。実例として、ロジウム触媒によるヒドロホルミル化方法に好適な溶媒としては、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号、同第5,312,996号、及び同第5,929,289号に開示されているものが挙げられる。好適な溶媒の非限定的な例としては、飽和炭化水素(アルカン)、芳香族炭化水素、水、エーテル、アルデヒド、ケトン、ニトリル、アルコール、エステル、及びアルデヒド縮合生成物が挙げられる。溶媒の具体的な例としては、テトラグライム、ペンタン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、キシレン、トルエン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ブチルアルデヒド、及びベンゾニトリルが挙げられる。有機溶媒はまた、飽和限界までの溶解水を含有し得る。例示的な好ましい溶媒としては、ケトン(例えば、アセトン及びメチルエチルケトン)、エステル(例えば、酢酸エチル、ジ-2-エチルヘキシルフタレート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールモノイソブチレート)、炭化水素(例えば、トルエン)、ニトロ炭化水素(例えば、ニトロベンゼン)、エーテル(例えば、テトラヒドロフラン(THF))、及びスルホランが挙げられる。ロジウム触媒によるヒドロホルミル化方法では、例えば、米国特許第4,148,830号及び同第4,247,486号に記載されているように、生成されることが望まれるアルデヒド生成物、及び/又は、例えば、ヒドロホルミル化方法中にその場で生成され得るより高沸点のアルデヒド液体縮合副生成物に対応するアルデヒド化合物を主な溶媒として採用することが望ましい場合がある。主な溶媒は、通常は最終的に、連続方法の性質上、アルデヒド生成物とより高沸点のアルデヒド液体縮合副生成物(「重質物」)の両方を含む。溶媒の量は特に重要なものではなく、反応媒体に所望の量の遷移金属濃度を提供するのに十分であればよい。典型的には、溶媒の量は、反応流体の総重量に基づいて、約5重量パーセント~約95重量パーセントの範囲である。溶媒の混合物を用いてもよい。
【0043】
本発明の実施形態は、遊離有機リン配位子の存在下で行われる、アルデヒドを製造するための従来の連続混合気相/液相CSTRロジウム-リン錯体触媒ヒドロホルミル化方法の改善に適用可能である。そのようなヒドロホルミル化方法(「オキソ」方法とも称する)及びその条件は、例えば、米国特許第4,148,830号の連続液体再循環方法、米国特許第4,599,206号及び同第4,668,651号のホスファイトベースの方法によって例示されるように、当技術分野で周知である。また、米国特許第5,932,772号及び同第5,952,530号に記載されているものなどの方法も含まれる。そのようなヒドロホルミル化方法は、概して、可溶性ロジウム-有機リン錯体触媒、遊離有機リン配位子、及びより高沸点のアルデヒド縮合副生成物を含む液体反応媒体中で、オレフィン化合物を水素及び一酸化炭素ガスと反応させることによるアルデヒドの生成を伴う。概して、遊離金属として算出される、約10重量ppm~約1000重量ppmの範囲のロジウム金属濃度は、ほとんどのヒドロホルミル化方法において十分である。いくつかの方法では、遊離金属として算出される約10~700重量ppmのロジウム、多くの場合、25~500重量ppmのロジウムが使用される。
【0044】
したがって、ロジウム-有機リン錯体触媒の場合のように、任意の従来の有機リン配位子を遊離配位子として使用することができ、そのような配位子、及びそれらの製造方法は当技術分野で周知である。本発明では、多種多様な有機リン配位子を使用できる。例としては、ホスフィン、ホスファイト、ホスフィノホスファイト、ビスホスファイト、ホスホナイト、ビスホスホナイト、ホスフィナイト、ホスホラミダイト、ホスフィノホスホアミダイト、ビスホスホラミダイト、フルオロホスファイトなどが挙げられるが、これらに限定されない。配位子はキレート構造を含んでもよく、及び/又はポリホスファイト、ポリホスホラミダイトなどの複数のP(III)部分、及びホスファイト-ホスホラミダイト、フルロホスファイト-ホスファイトなどの混合P(III)部分を含んでもよい。もちろん、必要に応じて、そのような配位子の混合物も使用できる。したがって、本発明のヒドロホルミル化方法は、任意の過剰量の遊離リン配位子、例えば、反応媒体中に存在するロジウム金属1モル当たり少なくとも0.01モルの遊離リン配位子で実施することができる。概して、使用される遊離有機リン配位子の量は、所望のアルデヒド生成物、並びに使用されるオレフィン及び錯体触媒のみに依存する。したがって、反応媒体中に存在する遊離リン配位子の量が、(遊離金属として測定される)存在するロジウム1モル当たり約0.01~約300以上の範囲であることが、ほとんどの目的に適している。例えば、概して、満足のいく触媒活性及び/又は触媒安定化を達成するために、ロジウム1モル当たり50モル超、場合によっては100モル超の遊離配位子などの大量の遊離トリアリールホスフィン配位子、例えばトリフェニルホスフィンが使用されてきた一方で、他のリン配位子、例えばアルキルアリールホスフィン及びシクロアルキルアリールホスフィンは、反応媒体に存在する遊離配位子の量が、存在するロジウム1モル当たりわずか1~100モル、及び、場合によっては、15~60モルの場合でも、特定のオレフィンのアルデヒドへの変換を過度に妨げることなく、許容できる触媒の安定性と反応性を提供するのに役立ち得る。加えて、他のリン配位子(例えば、ホスフィン、スルホン化ホスフィン、ホスファイト、ジオルガノホスファイト、ビスホスファイト、ホスホルアミダイト、ホスホナイト、フルオロホスファイト)は、反応媒体に存在する遊離配位子の量が、存在するロジウム1モル当たりわずか0.01~100モル、及び、場合によっては、0.01~4モルの場合でも、特定のオレフィンのアルデヒドへの変換を妨げることなく、許容できる触媒安定性と反応性を提供するのに役立ち得る。
【0045】
より具体的には、例示的なロジウム-リン錯体触媒及び例示的な遊離リン配位子としては、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号、同第4,247,486号、同第4,283,562号、同第4,400,548号、同第4,482,749号、欧州特許出願公開第96,986号、同第96,987号及び同第96,988号(全て1983年12月28日公開)、並びに国際公開第80/01690号(1980年8月21日公開)に開示されているものが挙げられる。言及され得るより好ましい配位子及び錯体触媒の中には、例えば、米国特許第3,527,809号、同第4,148,830号及び同第4,247,486号のトリフェニルホスフィン配位子及びロジウム-トリフェニルホスフィン錯体触媒、米国特許第4,283,562号のアルキルフェニルホスフィン及びシクロアルキルフェニルホスフィン配位子、並びにロジウム-アルキルフェニルホスフィン及びロジウム-シクロアルキルフェニルホスフィン錯体触媒、米国特許第4,599,206号及び米国特許第4,668,651号のジオルガノホスファイト配位子及びロジウム-ジオルガノホスファイト錯体触媒がある。
【0046】
上記で更に述べたように、ヒドロホルミル化反応は、典型的には、より高沸点のアルデヒド縮合副生成物の存在下で実施される。本明細書で使用できる連続ヒドロホルミル化反応の性質は、例えば、米国特許第4,148,830号及び同第4,247,486号でより完全に説明されているように、ヒドロホルミル化方法中にそのようなより高沸点のアルデヒド副生成物(例えば、二量体、三量体及び四量体)をその場で生成するものである。そのようなアルデヒド副生成物は、液体触媒再循環方法のための優れたキャリアを提供する。例えば、最初に、ヒドロホルミル化反応は、ロジウム錯体触媒の溶媒として少量のより高沸点のアルデヒド縮合副生成物の非存在下、若しくは、存在下で行うことができ、又は、反応は、総液体反応媒体全体に基づいて、70重量パーセント以上、更には90重量パーセント、更に多くのそのような縮合副生成物の存在下で実施することができる。概して、約0.5:1から約20:1までの範囲内のアルデヒドとより高沸点のアルデヒド縮合副生成物との重量比は、ほとんどの目的において十分である。そのうえ、必要に応じて、少量の他の従来の有機共溶媒が存在し得ることを理解されたい。
【0047】
上記のように、ヒドロホルミル化反応条件は広い範囲で変化する可能性があるが、概して、水素、一酸化炭素、及びオレフィン不飽和出発化合物の合計ガス圧約3100キロパスカル(kPa)未満で、より好ましくは約2415kPa未満で方法を実施することがより好ましい。反応物の最小合計圧は特に重要ではなく、主に所望の反応速度を得るために必要な反応物の量によってのみ制限される。より具体的には、本発明のヒドロホルミル化反応方法の一酸化炭素分圧は約1~830kPa、場合によっては約20~620kPaであることができ、一方、水素分圧は約30~1100kPa、場合によっては約65~700kPaであることができる。概ね、ガス状水素と一酸化炭素とのH2:COのモル比は、約1:10~100:1以上、場合によっては約1:1.4~約50:1の範囲であってもよい。
【0048】
更に、上記のように、本発明のヒドロホルミル化反応方法は、約50℃~約145℃の反応温度で実施することができる。しかしながら、概ね、約60℃~約120℃、又は約65℃~約115℃の反応温度でのヒドロホルミル化反応が典型的である。
【0049】
もちろん、ヒドロホルミル化反応が実施される特定の方法及び使用される特定のヒドロホルミル化反応条件は、本発明にとって厳密に重要なものではなく、個々のニーズに合わせて広く変更及び調整して特定の所望のアルデヒド生成物を生成し得ることを理解されたい。
【0050】
内部冷却コイルだけでは十分な熱除去能力(コイル体積当たりの限られた熱伝達面積)が不足することが多いため、外部冷却ループ(外部熱交換器(冷却器)を介した反応器内容物のポンプ循環)は、典型的には、低炭素オレフィン(C2からC5)などの高発熱性ヒドロホルミル化反応に使用される。加えて、内部冷却コイルは内部の反応器の容積を変位させ、所定の生産率に対して反応器のサイズを大きくする。しかしながら、一部の実施形態では、少なくとも1つの内部冷却コイルが、反応器の内側に、典型的には第1の反応ゾーンに配置される。一部の実施形態では、そのような内部冷却コイルを、外部冷却ループに追加することができる。好ましい実施形態では、ジェットを生成するために(別個に、又は高剪断マイクロバブル発生器の変形とともに)使用される液体プロセス流体は、同じ反応ゾーンに再導入される前に、(好ましくはマイクロバブル発生器の前の)熱交換器を通過する。冷却されたプロセス流体の流れは、例えば米国特許第9,670,122号(特に
図3)に教示されているように、反応ゾーンが最適に温度制御されるように変化させることができる。
【0051】
本発明で反応物として使用することのできるオレフィンの好ましい例としては、エチレン、プロピレン、ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-オクタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、2-ブテン、2-メチルプロペン、2-ペンテン、2-ヘキセン、2-ヘプテン、2-エチルヘキセン、2-オクテン、スチレン、3-フェニル-1-プロペン、1,4-ヘキサジエン、1,7-オクタジエン、3-シクロヘキシル-1-ブテン、酢酸アリル、酪酸アリル、メタクリル酸メチル、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、アリルエチルエーテル、n-プロピル-7-オクテノエート、3-ブテンニトリル、5-ヘキセンアミド、4-メチルスチレン、4-イソプロピルスチレンなどが挙げられる。異性体の混合物(例えば、ブテンラフィネート)も使用できる。得られたアルデヒド生成物は、水素化され、溶媒として、又は可塑剤の調製に使用さ得る対応するアルコールに変換されるか、又は高級アルデヒドへのアルドール縮合、対応する酸への酸化、又は対応する酢酸エステル、プロピオン酸エステル、又はアクリル酸エステルを生成するためのエステル化などの他の後続の反応が施され得る。
【0052】
オレフィン出発物質は、ガス(任意選択的に、入ってくる合成ガス供給物とともに)、反応器内の液体、又は反応器に入る前の再循環ループの一部として、任意の便利な技術によって反応器に導入される。1つの特に有用な方法は、ジェット又は任意選択の合成ガススパージャの隣又は下方に別個のオレフィンスパージャ(後述)を使用して、オレフィン供給物と合成ガス供給物とを互いに極めて近接して導入することである。
【0053】
本発明のヒドロホルミル化反応方法の一部の実施形態の動作の説明を助けるために、ここで
図1を参照する。
図1は、本発明の一実施形態によるヒドロホルミル化反応方法を実施するために使用することができる円筒型の反応器1の非限定的な例を示す。反応器1は、オレフィン、水素、一酸化炭素、均一触媒、アルデヒド生成物、溶媒、及び他の成分の混合物である反応流体を含む。反応器は、3つの反応ゾーン1A、1B、1Cを有する。反応流体の一部分は、反応器の底の出口3を通って第1の反応ゾーン1Aから除去される。除去された反応流体の少なくとも一部分は、2つの剪断混合装置4を通過し、
図3a又は
図3bに示すように、(不活性物質を含むか又は含まない)新鮮な又は再循環された合成ガスが導入されて、除去された反応流体の一部分の中に気泡を発生させる。除去された反応流体は、2つのノズル5を介して第1の反応ゾーン1Aに戻される。ノズル及びそれらの配向については、以下で更に説明する。除去された反応流体は、戻される反応流体の1つ以上の液体ジェットを形成するノズル5を通って第1の反応ゾーン1Aに戻され、この液体ジェットは大半の反応器流体に運動量及び気液混合を付与する。剪断混合装置は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,845,993号に記載されているものなどである。
【0054】
流れ2を介して反応器1の底から除去される反応流体に関して、粗生成物及び触媒混合物を、生成物-触媒分離ゾーン(図示せず)を介して流れ2から除去することができる。この流れ2はまた、戻されるプロセス流体が冷却されて反応ゾーンを冷却するように、熱除去プロセスを通過してもよい。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語「剪断混合装置」、「高剪断混合装置」、「マイクロバブル発生器」、及び「高剪断マイクロバブル発生器」は、互換的に使用され、流体中に平均サイズ3,000ミクロン以下の気泡を発生させることができる機器を指す。本発明の実施形態で使用することができる剪断混合装置の重要な特徴及び利点は、全体が(例えば、可動部品を含まないか、又は機械的シールを必要とせず、保守の必要性がなく、漏れ/故障点が生じる可能性がない)静的配管構成要素から構成され、したがって、本来の安全性、機械的信頼性、環境への低放出性、及びプラント稼働時間を向上させることである。本発明の実施形態で使用することができる剪断混合装置の例は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,845,993号に記載されている。概して、剪断混合装置は、有孔表面によって分離された単一(又は複数)の乱流液体流と接触する加圧ガス導管又はチャンバを含む。ガスは、液体流によって生成される剪断応力によって駆動されて、穿孔を通って液体流に入る。このような剪断混合装置の2つの典型的な実施形態を
図3に示す。例えば、一実施形態(
図3a)では、剪断混合装置は、液体流(L)を運ぶ内部チャネルを有する。これには、加圧ガス入口(G)に接続された外側同心ジャケットが取り付けられる。外側ジャケットによって包まれた内側チャネルの一部分は、多数の穿孔により有孔である。これらの穿孔は、外側ジャケットからのガス(G)が、小さな気泡から構成される液体中ガス分散体の形態で内側チャネル内の液体(L)流に入る場所である。本発明において、液体(L)は、第1の反応ゾーンに戻される除去された反応流体の少なくとも一部分であり、ガス(G)は合成ガスである。
【0056】
一部の実施形態では、合成ガスの一部分は、剪断混合装置を介して導入される合成ガスに加えて、(例えば、国際公開第2018/236823号に開示されている)従来のスパージャリングを介して第1の反応ゾーンに導入されてもよい。他の実施形態では、第1の反応ゾーンに提供される合成ガスの唯一の供給源は、剪断混合装置を介する。
【0057】
本発明の実施形態では、気泡は剪断混合装置によって生成されるため、従来のスパージャリングを使用せずに第1の反応ゾーンに導入される混合エネルギーは、国際公開第2018/236823号とは異なる。剪断混合装置を通る流れによって生成される運動量は、ノズルの出口から始まる反応流体全体にわたって均一に気泡を分配する必要がある。ノズルを出るジェットからの運動量の大部分は、従来のスパージャリングが使用される一部の実施形態では、第1の反応ゾーンの底に到達する必要はなく、第1の反応ゾーン全体にわたって気泡を分配することのみを必要とする。好適な混合及びガス分散を達成するために、以下で更に説明するように対処する必要がある反応器及びノズル設計に関するいくつかの考慮事項がある。
【0058】
以下の混合エネルギー密度式に示すように、本発明者らは、ジェットによって提供される混合エネルギー密度(単位体積当たりに供給される出力)が500W/m3を超える場合、優れた結果が達成されることを見出した。そのような混合エネルギーが存在しない場合、反応流体の乱流が少ない(又はゼロである)ため、ガス気泡のサイズが大きくなり、浮力の増加と液体からの離脱により、気液界面に急速に上昇して、反応器内のガス停滞が減少する。小さな気泡を生成して維持することは、より良い気液混合、ガスの停滞、及びより再現性のある反応器性能を提供する均一な反応流体を生成するために重要である。気泡が小さくなることにより、最大のガスの停滞が得られ、気泡と合成ガスを溶解する液体との間の質量移動面積が最大化される(最適化されたガス体積/表面比)。逆に、(例えば、外部再循環ポンプ/熱交換器への、又は反応器生成物出口の)出口ノズルの近くの液体の流線内に非常に小さな気泡が捕捉される場合があり、これは下流の機器に悪影響を及ぼす場合があるため、本発明の重要な特徴は、適切なサイズ範囲の気泡を一貫して生成する能力である。
【0059】
再び
図1を参照すると、反応流体は、出口3を介して反応器1の底から除去され、分流器プレート又は制限ノズル(後述)で任意選択的に終端する2つ以上のノズル5を介して反応器に戻される。一部の実施形態では、2つ以上のノズル5は、対称的な対、対称的な三連構造、又は他の対称的な配置に配向されてもよい。
【0060】
ノズル5は、液体ジェットを下方向若しくは上方向又はその両方に向けるように配向されてもよい。一部の実施形態では、ノズルは、液体ジェットが反応器1の中心縦軸に向かないように(例えば、反応器の中心軸に向かないように)配向されてもよい。液体ジェットは、厳密に水平若しくは厳密に垂直方向に、又は反応器の垂直軸若しくは中心に直接向かって配向されないことが好ましい。ノズルの配向については、
図2に関連して以下で更に説明する。
【0061】
一部の実施形態では、対称ノズルの複数のセットは、反応器1内の異なるノズル配向(半径方向位置)及び/又は異なる高さに配置させることができる。一部の実施形態では、様々な液体供給物(例えば、液体オレフィン供給物、上流反応器の液体触媒流、生成物-触媒分離ゾーンからの液体触媒流など)を、剪断混合装置4を介して反応器1に提供することができる。一部の実施形態では、そのような供給物のうちの1つ以上が、戻される除去された反応流体と組み合わせられ、少なくとも1つの剪断混合装置を介して反応器1に提供されてもよい。液体供給物が上流の反応器からのものである場合、いくらかの合成ガスが存在し得るが、これは、剪断混合装置4によって導入される合成ガスと比較して少量の合成ガスに相当する。
図1に示す実施形態では、新鮮な液体オレフィン供給物6は、戻される反応流体7と組み合わされ、剪断混合装置を介して反応器1に提供される。
【0062】
戻される除去された反応流体は、ジェットとして各ノズル5を出る。本明細書で使用される場合、用語「ジェット」、「向けられたジェット」、及び「向けられた流れ」は互換的に使用され、合成ガスがスパージャリングではなく1つ以上の剪断混合装置によって供給されることを除いて、国際公開第2018/23623号に記載されている。ジェットは、(剪断混合装置とは別個に、又は剪断混合装置と併せて)第1の反応ゾーンを混合するために特に設計された1つ以上の剪断混合装置の出力又は別個の流れであってもよい。
【0063】
ジェットは、下向きの逆流を提供して、気泡の自然浮力を相殺し、逆混合反応器全体を循環する液体中の気泡の同伴を維持し、その結果、逆混合液相全体にわたる合成ガス気泡のより均一な分布をもたらす。合成ガスが溶解して反応すると、気泡が収縮し、これは逆混合液相内での分布の維持と液相への良好なガス質量移動の促進に更に役立つ。この均一に混合された液体反応流体は、有孔仕切板(後述)などの透過性物理障壁を横切って非撹拌反応ゾーン内に移動するので、一部の実施形態では、外部混合エネルギーを供給する必要なしに制御された方法で反応する。
【0064】
戻される反応流体のジェットは、反応流体中の反応物を適切に混合して反応を促進するために、反応流体に混合エネルギー密度を提供する。
【0065】
一部の実施形態では、ジェットは、撹拌器又は機械的混合エネルギーの他の機械的供給源が必要とされないような、十分な混合エネルギー密度を提供する。ジェットは、以下の式:
【0066】
【数4】
(式中、Vは、第1の反応ゾーン内の反応流体の体積(m
3)であり、Nは、各ジェットがi=1からi=N(1刻み)までの自然数を使用して一意に識別されるような、第1の反応ゾーンに戻されるジェットの総数であり、ρ
iは、i番目のジェットを通って第1の反応ゾーンに戻される反応流体のノズルポートにおける平均密度(kg/m
3)であり、Q
iは、i番目のジェットを通って第1の反応ゾーンに戻される反応流体の体積流量(m
3/s)であり、A
iは、反応流体が流れるi番目のノズルの、反応流体がノズルを出て第1の反応ゾーンに入る位置での断面積(m
2)である)を満たす混合エネルギー密度を提供する。明確にするために、V(第1の反応ゾーン内の反応流体の体積(m
3))は、(脱気された液体体積とは対照的に)方法が実行されるときのガス充填液体レベルを指す。この体積(V)は、ソナーレベルインジケータ又はテイクオフノズルなどの既知の方法によって決定することができる。同様に、ρ
iは、剪断混合装置に供給される反応流体と合成ガスとの相対流量によって容易に計算することができる。i番目のジェットを通って第1の反応ゾーンに戻される反応流体のノズルポートにおける平均密度(ρ)(kg/m
3)、i番目のジェットを通って第1の反応ゾーンに戻される反応流体の体積流量(Q
i)(m
3/s)、及び反応流体が流れるi番目のノズルの断面積(A
i)(m
2)は、本明細書の教示に基づいて当業者に公知の技術を使用して測定又は決定することができる。ジェットは、500ワット/m
3以上の(上記式で定義されるような)混合密度エネルギーを提供することによって、第1の反応ゾーンに適切な混合を提供すると考えられる。言い換えれば、一部の実施形態では、ジェットは、従来の機械的撹拌器を必要とせずに十分に混合することができる。
【0067】
剪断混合装置を通る反応流体の流量はまた、適切な混合エネルギーが第1の反応ゾーンに確実に提供されるようにするために重要であり得る。したがって、一部の実施形態では、剪断混合装置を通る反応流体の流量は、以下:
qSM>525(μo/ρo)PSM
(式中、qSMは、剪断混合装置に入る反応流体の流量(m3/s)であり、ρoは、剪断混合装置に入る前の反応流体の密度(kg/m3)であり、μoは、剪断混合装置に入る前の反応流体の粘度(Pa・s)であり、PSMは、剪断混合装置内部の液体流の断面の最小湿潤周囲長である)を満たす。剪断混合装置に入る反応流体の流量(qSM)(m3/s)、剪断混合装置に入る前の反応流体の密度(ρo)(kg/m3)、及び剪断混合装置に入る前の反応流体の粘度(μo)(Pa・s)は、本明細書の教示に基づいて当業者に公知の技術を使用して測定することができる。剪断混合装置内部の液体流の断面の最小湿潤周囲長(PSM)は、以下のように決定することができる。剪断混合装置を通して反応流体を輸送する従来の管の場合、PSMは、πに管の内径を乗じたものである(PSM=IDtube)。場合によっては、内管も存在し、反応流体が内管の外壁と外管の内壁との間の環状領域を流れてもよい。この場合、PSMは、πに内管の外径と外管の内径との和を乗算したものである(PSM=π(ODinner tube+IDouter tube))。
【0068】
一実施形態では、ジェットの全てが剪断混合装置からのものである。他の実施形態では、一部のジェットは混合エネルギー密度を付与するためだけのものであり、他のジェットは、1つ以上の剪断混合装置からのものである。別の実施形態では、マルチゾーン反応器は、反応器内の複数の反応ゾーン内に剪断混合装置ジェットループを有し、各ジェットループは、除去されたのと同じゾーンから取り出された流体を再循環させる。別の実施形態では、マルチゾーン反応器は、第1の反応ゾーンから反応流体を除去し、反応流体を、剪断混合装置を介してジェットとして第2の反応ゾーンに戻すように構成することができる。更なる実施形態では、反応器本体内の全てのゾーンは、高剪断混合装置からのジェットを有する。好ましい実施形態では、第2の反応ゾーンは、逆混合反応器ではなく、気泡塔反応器、プラグフロー反応器、ピストン流反応器、ガス又は気泡リフト(管状)反応器、充填床反応器、又はベンチュリ型反応器から選択される。非逆混合反応器の例としては、米国特許第5,367,106号、同第5,105,018号、同第7,405,329号、及び同第8,143,468号が挙げられる。
【0069】
反応器内のノズルの位置及び配向は、特に2つ以上のノズルが設けられる場合に重要である。例えば、ノズルから出るジェットが互いに直接に配向されるように2つのノズルを配置することは全般的に避けるべきである。
図2は、本発明の一部の実施形態によるノズル105の位置及び配向を示すための円筒型の反応器100の側面図及び2つの上面図の概略図である。
図2はまた、反応器100内のノズル105の下に配置されたドーナツバッフル110(以下で更に説明する)を示す。アルファ(α)は、水平面に対するノズルの角度である。一部の実施形態では、水平角が0°である場合、αは、75°(上向きの角度)と-75°(下向きの角度)との間の範囲であり得る。一部の実施形態では、水平角が0°である場合、αは、45°(上向きの角度)と-60°(下向きの角度)との間の範囲であり得る。ベータ(β)は、ノズルが中心線に対して左又は右に配向される角度である。一部の実施形態では、ノズルが反応器を横切って真っ直ぐに向く配向が0°である場合、βは概ね5°~90°(反応器の上部から見てノズルが時計回りに向いている)又は-5°~-90°(反応器の上部から見てノズルが反時計回りに向いている)である。βは、ファイ(φ)が0°より大きい場合、-5°~5°であるべきである。ファイ(φ)は、上から見たときにノズルが反応器の中心線からずれている距離である。φは、反応器の断面直径の50%以下であるべきである。少なくとも2つのノズルが除去された反応流体を反応器に戻す一部の実施形態では、各ノズルは、水平面に対するノズルの角度(アルファ(α))が+75°~-75°であるように配向され、アルファ(α)、反応器の中心を通る垂直面に対するノズルの角度(ベータ(β))、及びベータがゼロである場合に反応器の中心を通る垂直面からの距離(ファイ(φ))は、全て非ゼロである。
【0070】
一部の実施形態では、戻される反応流体の流れは単一ラインではないが、単一のノズルで反応器に戻る反応流体の大部分は、α値及びβ値の比較的狭い範囲内にあることを理解されたい。本出願の目的のために、「垂直」及び「水平」という用語が流体分流器での戻される反応流体の流れに関連して使用される場合、それらの用語はそれぞれ角度α及びβを使用して理解され得る。すなわち、「垂直流れ」又は「垂直ジェット」は、非ゼロのα、本質的にゼロのβで上向き及び/又は下向きに配向される。「水平流れ」又は「水平ジェット」は、本質的にゼロのα、非ゼロのβで左向き及び/又は右向きに配向される。「向けられた流れ」という用語は概して、αとβとの両方が非ゼロである流れを指す。「向けられた流れ」は、剪断混合装置からの流れ、又は剪断混合装置に戻るが通過しない他の流れを含んでもよい。
【0071】
更に
図2を参照すると、デルタ(δ)は、ノズルが反応器壁から反応器内に突出する距離である。一部の実施形態では、δは反応器の直径の50%未満である。一部の実施形態では、δは、円筒型の反応器の半径の50%以下である。一部の実施形態では、δは円筒型の反応器の半径の少なくとも10%である。一部の実施形態では、δは、円筒型の反応器の半径の10%~45%である。一部の実施形態では、分流器の端部は、δが円筒型の反応器の半径の約0%となるように、反応器壁と概ね同一平面にすることができる。
【0072】
一部の実施形態では、
図2に示すように同じ若しくは異なる高さで、又は異なる角度(α及び/又はβ)でノズルの追加のセットを提供することができる。
図4は、本発明の一部の実施形態による、反応器200内のノズル205の異なる位置、ジェット(符号が付されていないが、ノズル205のポートを出る矢印によって表されている)に対する1つ以上のドーナツバッフル210の異なる位置、及びノズル205を出るジェットの角度を示す一連の図である。剪断混合装置215も示されているが、
図4の各図には符号が付されていない。
【0073】
ファイ(ψ)は、(反応流体充填高さの百分率としての)ノズルの先端が位置する距離である。本明細書で使用される場合、「反応流体充填高さ」は、反応器の底からの反応器内の液体の高さを指す。
図2に示すように、反応器が底部分にヘッドスペースを有する実施形態では、反応器の底から測定されるものとして参照される全ての高さは、ヘッドスペースの真上の反応器を横切る接線102から測定される。
図2に更に示すように、反応器が平坦な底を有する場合、反応器の底から測定されるものとして参照される全ての高さは、物理的な底から測定される。ψは、反応流体充填高さの100%未満である。一部の実施形態では、ψは、反応流体充填高さの90%未満である。一部の実施形態では、ψは、反応流体充填高さの75%~80%である。
【0074】
各剪断混合装置は、除去された反応流体に合成ガス気泡を導入するように設計される。理論に束縛されるものではないが、本発明の実施形態によって提供される高い液体速度及び小さい初期気泡サイズでの徹底的な混合は、合成ガスの気泡合体を最小限にし、剪断による気泡サイズの縮小を促進し、反応ゾーン全体にわたって気液分布及び温度を均一にする。小さな合成ガス気泡のそれら自体の自然な浮力による動きは、液体の粘性及び液体塊の乱流によって相殺される。同様に、非撹拌反応ゾーンが第1の反応ゾーンの上方にある場合、2つのゾーンを分離する格子又は有孔板などの透過性物理障壁まで上昇してこれを越える自然浮力は、液体の粘性及び液体塊の乱流によって相殺される。過度に大きな気泡はあまりにも急速に上昇するため、ガスの停滞が少なくなり、分布が不均一になる。一部の実施形態では、剪断混合装置によって生成される気泡の平均サイズは、10ナノメートル~3,000ミクロンであり得る。一部の実施形態では、剪断混合装置によって生成される気泡の平均は、3ミクロン~3,000ミクロンである。一部の実施形態では、剪断混合装置によって生成される気泡の平均は、30ミクロン~3,000ミクロンである。一部の実施形態では、剪断混合装置によって生成される気泡の平均サイズは、100ミクロン~800ミクロンである。
【0075】
反応流体が戻される方法は、提供される混合エネルギーの有効性に影響する。一部の実施形態では、反応流体は、配管の末端部に設置された1つ以上の分流器プレートを有する配管を使用して戻され、反応器の再循環戻りノズルを通して挿入されてそれに取り付けられてもよい。一部の実施形態では、反応流体は、以下で更に説明するように、配管の末端部に配置されたノズル又はフローオリフィスを使用して戻され、反応器の再循環戻りノズルを通して挿入されてそれに取り付けられる。各々の場合において、得られた液体ジェットの速度は、ノズル又はオリフィスの流れ面積、又は分流器プレートと配管の内壁との間に作られる流れ面積、及び戻される反応流体の質量流量と密度の関数である。流れ面積と流速の組み合わせにより、反応器内の反応流体のジェットが生じ、それが運動量を与え、反応器内のバルク流体の気液混合及び液液混合を引き起こす。更に、戻される反応流体は分割され、複数の方向に向けられる。
【0076】
「分流器」という用語は、本明細書では、反応器再循環戻り管内に配置されたノズルと分流器プレートの両方を包含する。いずれの場合でも、分流器は、戻される反応流体の流れを方向付ける。以下で更に説明するように、一部の実施形態では、分流器は、戻される反応流体の流れを水平に向ける。一部の実施形態では、分流器は、戻される反応流体の流れを垂直に向ける。一部の実施形態では、分流器は、戻される反応流体の流れを水平及び垂直の両方に方向付ける。管の端部に配置された分流器プレートを含む分流器は、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2018/236823号に更に詳細に記載されている。
【0077】
一部の実施形態では、ノズルの上又は下の水平ドーナツバッフルが、ジェットからの反応器内の流れ又はチャネリング効果を軽減するために使用される。ドーナツバッフルは、反応器壁に沿ったチャネリング流を分流させるように機能する中央開口部を有する、反応器壁に固定された平坦なリングプレートである。そのような水平ドーナツバッフルの配置の非限定的な例を、
図1(参照番号14)、
図2(参照番号110)及び
図4(参照番号210)に示す。
図2に示すように、ドーナツバッフル110は、反応器壁から距離(γ)だけ延びる。一部の実施形態では、ドーナツバッフルは、反応器の直径の5%~25%である距離(γ)だけ反応器壁から延びる。一部の実施形態では、反応器内のドーナツバッフルの垂直位置も重要であり得る。
図2に示すように、ドーナツバッフル110は、反応器の底からの特定の高さ(λ)に配置される。一部の実施形態では、ドーナツバッフルは、反応流体充填高さの90%以下である反応器の底からの高さ(λ)に配置されてもよい。ジェットとして反応器に入る反応流体からの流れ又はチャネリング効果の可能性を最小限に抑えるために、他の手法を使用してもよい(例えば、
図1のドーナツバッフル14及び
図4のドーナツバッフル210の位置を参照されたい)。
【0078】
図1に示す実施形態などの一部の実施形態では、反応流体は、第1の反応ゾーンから反応器の底にある生成物出口ノズル3を通る。このような実施形態では、反応器は、反応器の底部容積内に配置されたガス同伴防止手段8を含むことができる。このような手段は、同伴分離器、円錐形凝集器、1つ以上の有孔板、又は充填床の形態であり得る。充填床8を
図1に示す。このようなガス同伴手段8は、ジェットが下方に傾斜している場合に特に望ましいが、再循環ポンプが小さな同伴ガス気泡に耐えることができる場合には不要であってもよい。
【0079】
一部の実施形態では、単一の反応器が複数の反応ゾーンを含む場合、有孔仕切板を反応ゾーン間に配置することができる。例えば、
図1に示すように、第1の反応ゾーン1Aからの反応流体は、有孔仕切板10を上方に通過して第2の反応ゾーン1Bに入る。有孔仕切板10は、第2の反応ゾーン1B内に上昇する反応流体が均一となり、継続的な反応のためにかなりの量の合成ガスが確実に含まれるようにするのに役立ち得る。これは、反応物が非常に均一であり、拡散が制限されないという点で、気泡反応器、プラグフロー反応器、及び充填カラム反応器にとって特に望ましい。
【0080】
図1に示す実施形態では、第2の有孔仕切板12が、第2の反応ゾーン1Bを第3の反応ゾーン1Cから分離する。
【0081】
効果的であるためには、有孔仕切板の穿孔は、上昇する流体を反応器の断面にわたって均一に分散させるように均一に分布しているべきである。プラグフロー反応器又は充填床カラム反応器では、穿孔は、各管又はカラムが同じ流体流を得るように流れを方向付けるべきである。有孔仕切板又はトレイの設計は、当該技術分野で周知である。典型的な有孔仕切板/トレイの多孔率は、15~40%(好ましくは20~30%)であり、穿孔が表面全体に均一に分布しているべきである。穿孔は均一であってもよいし、典型的には1/8インチ~2インチの範囲の同等の孔直径の異なる直径を有していてもよい。孔は、円形、正方形、スロット、又は他の形状であってもよく、追加の特徴(例えば、皿穴、隆起穴など)を有してもよいが、有孔仕切板の下に大量のガスを蓄積するものではない必要がある。一部の実施形態では、ワイヤメッシュ又は同様の堅固に支持された材料を、有孔仕切板の代替として使用してもよい。
【0082】
垂直のバッフルを第1の反応ゾーンの内壁に取り付けて、容器の壁から半径方向の流線を剪断して持ち上げることにより、更なる混合を提供し、回転流を最小限としてもよい。
【0083】
図1に戻ると、最終反応ゾーン1Cには、反応流体を次の反応器又は生成物-触媒分離ゾーン(図示せず)に運ぶための反応器出口9が存在する。
【0084】
加えて、複数の反応器が直列に配置される実施形態では、反応器1からの任意選択のガスパージ流14が排出され、広がり、プラント燃料ガスヘッダ又は別の反応器に送られてもよい。このパージ流14の分析は、反応制御のために上部反応ゾーン内のCO分圧を測定する便利な手段を提供することができる。
【0085】
図1には示されていないが、システムには、ポンプ、熱交換器、冷却コイル、バルブ、レベルセンサ、温度センサ、及び圧力センサなどの、当業者が容易に認識して実装できる他の標準的な機器の部品も含まれる。
【0086】
一部の実施形態では、1つ以上のノズルを通して第1の反応ゾーンに戻される除去された反応流体は、総混合エネルギー密度の少なくとも50%を第1の反応ゾーンに提供することができる。一部の実施形態では、1つ以上のノズルを通して第1の反応ゾーンに戻される除去された反応流体は、総混合エネルギー密度の少なくとも85%を第1の反応ゾーンに提供することができる。一部の実施形態では、戻される反応流体は、総混合エネルギー密度の実質的に全て又は100%を第1の反応ゾーンに提供することができる。総混合エネルギー密度は、動作中の撹拌器(存在する場合)、戻される反応流体のジェット、又はその他の混合エネルギー密度源によって提供される混合エネルギーを含むが、合成ガス、オレフィン、又はその他の反応物を反応器に導入することによって提供される僅少な混合エネルギー密度のいずれも含まれないことを理解されたい。例えば、第1の反応ゾーンから後続の反応ゾーンを通る(例えば、存在する場合には仕切板を透過して通る)液体反応流体の液圧流によって供給されるいくらかの僅少な混合エネルギー密度が存在するが、これも含まれない。戻される反応流体によって生成される液体ジェットが混合エネルギー密度の実質的に全て又は100%を提供する実施形態では、反応器は撹拌器を含まないか、又は動作していない撹拌器を含む。
【0087】
撹拌器が存在し、動作する場合、撹拌器からの混合エネルギー密度の寄与は、以下の式:
P=Npg×ρN3 D5
(式中、Npgは、インペラのガス化(gassed)動力数、ρは反応流体の密度、Nは撹拌器の回転速度(rev/s)、Dはインペラの直径である)を用いて計算することができる。
【0088】
驚くべきことに、本明細書に記載の剪断混合装置を使用することにより、反応流体の同じレベルの気液混合及び液液混合を提供しながら、撹拌器を動作させることなく、ヒドロホルミル化反応器の動作を可能にすることができることが分かった。戻される反応流体の流量を増加させることにより、撹拌器を作動させることなく安定した動作を可能にし、液化反応流体への優れたガス分散を容易にすることができる。本発明の一部の実施形態は、撹拌器モータ、撹拌器シール、撹拌器シャフト/インペラ、定常軸受又は同様の撹拌器関連の問題がある場合に、撹拌器を使用せずに反応器内で適切な混合を提供することにより、ユニットをシャットダウンして修理を行うことができるようになるまで、撹拌器を有する反応器の連続動作を可能にすることができ、そうして計画外の生産損失を回避できるという利点を有する。換言すれば、後付けの場合は、本発明の一部の実施形態は、既存の撹拌器を動作させずに、及び/又は反応器の動作を継続させながら修理することを可能にし得る。新しい反応器の場合、本発明の一部の実施形態は、撹拌器のコスト、並びにメンテナンス/交換を必要とする撹拌器シール及び安定したベアリングの必要性を有利に排除でき、シール漏れを排除できる。
【0089】
ここで、本発明の一部の実施形態を以下の実施例において詳細に説明する。
【実施例】
【0090】
本実施例では、計算流体力学(「CFD」)ツールを使用して、3つの設計の性能が評価された。比較例Aは、機械的撹拌器を使用した先行技術の代表例である。本発明の実施例1及び2は、機械的撹拌器なしで剪断混合装置を利用する本発明の実施形態を表す。目的は、従来の機械的に撹拌される設計(比較例A)に対する、本発明の撹拌器を含まない設計(本発明の実施例1及び本発明の実施例2)の性能基準に関する同等性及び/又は改善を示すことである。本実施例では、CFDを使用して、(a)混合効率(すなわち、混合時間)、(b)ガス分散(すなわち、ガス体積分率及び全体的なガス停滞の均一性)、(c)脱気(すなわち、底部再循環ライン内のガスの体積%)、及び(d)質量移動(すなわち、第1の反応ゾーン内の質量移動係数(KLa)の平均値)に関して性能を評価した。
【0091】
合成ガス分散の重要性
いくつかの理由から、反応器内に高度にかつ十分に分散された合成ガスを有することが重要である。反応流体に分散及び溶解されている合成ガスのみが反応できるため、反応器に導入された合成ガスは、気泡として気液界面に上昇する代わりに反応流体に迅速に分散及び溶解され、反応器の蒸気空間から外れて入り、反応に使用できなくなる。更に、合成ガスが分散又は溶解されていない反応器内の容積は、反応物が欠乏しているため、反応又は反応器の生産性に寄与しない。したがって、高度に分散され(高いガスの停滞又はガス分率)且つ均一なガス混合が最も望ましい結果である。
【0092】
CFDにおける有効性の評価方法
本発明の混合特性を評価するためには、CFDモデリングからガス分布を調べて、ガス分布の均一性とガス負荷の範囲の両方を特定することが便利である。十分に撹拌されたCSTR反応器を用いた商業上の経験では、ガス負荷値は5~12%の範囲である。CFDモデリングプログラムを使用して、反応器全体での全体又は平均のガス負荷値を予測できるが、これにより、ガス負荷が高い又は低い領域と滞留時間が短い領域の局所的な影響が強調を弱められる場合がある(例えば、配管の入口/出口、近くの撹拌器インペラなど)。
【0093】
混合の有効性:混合時間θmix
・十分に混合されたシステムの場合、混合時間θmixは、典型的には平均液体滞留時間θresの10%未満~20%であるべきである。(以下を参照されたい:Paul,E.L.,V.A.Atiemo-Obeng及びS.M.Kresta,eds.2004.Handbook of Industrial Mixing:Science and Practice.John Wiley & Sons,Inc.)。
・本CFDシミュレーションでは、各実施例における第1の反応ゾーンについて、混合時間θmixを評価した。
・周知のトレーサ注入法を実施した。シミュレーションを、最初にトレーサなしで実行した。定常状態に達してから、トレーサを新鮮な供給物の入口に連続的に注入し、その濃度を第1の反応ゾーンで追跡した。各シミュレーション時間ステップにおいて、変動係数(CoV)を、濃度の、その体積平均に対する体積標準偏差として評価した。
・混合時間を、CoVが5%に達する流動時間として定義した。
【0094】
ガス分散:ガス体積分率及び全体的なガス停滞の均一性
・本発明の混合特性を評価するために、CFDモデリングからガス分布を調べて、ガス分布の均一性とガス負荷の程度の両方を特定することが便利である。
・十分に撹拌されたCSTR反応器を用いた商業上の経験では、ガス負荷値は5~12%の範囲である。
【0095】
脱気:底部再循環ライン内のガスの体積%
・反応容器の底部出口は、典型的には、流体を再循環させるために使用される遠心ポンプに通じる。
・合成ガスの気泡は、十分に小さい場合、出口に同伴される場合がある。同伴が十分に大きい場合、ガスの存在がポンプを損傷させる場合がある。
・安全なポンプ動作のためには、底部再循環ライン内のガス体積分率を3%未満~5%に保つことが不可欠である。
・CFDモデリングでは、この体積分率を追跡し、この値を各事例について報告した。
【0096】
質量移動:
・ヒドロホルミル化システムなどの気液システムの反応の全体的な有効性は、合成ガス成分(CO及びH2)が液相に移動する速度に基づく。
・任意の反応ゾーンにおける液相への合成ガスの質量移動速度は、その反応ゾーンにおける質量移動係数(kLa)の平均値に正比例する。
・本実施例では、第1の反応ゾーンにおける質量移動係数(KLa)の平均値を直接得るためにCFDモデリングを使用した。この目的のために、文献に十分に記載されている方法を使用した。Gimbun,Reilly and Nagy「Modelling of mass transfer in gas-liquid stirred tanks agitated by Rushton turbine and CD-6 impeller:A scale-up study」Chemical engineering research and design 87(2009)437-451を参照されたい。
・同じ動作条件及び供給条件で同じ気液反応を行う2つの反応器の性能を同等とするためには、全体の体積KLa値は同等であるべきである。概して、より高いKLa値が好ましい。
【0097】
動作条件及びパラメータ
実施例の各々について、以下の動作条件及びパラメータを使用した。動作圧力はおよそ15バール(絶対圧)である。この圧力で、液体プロピレンの密度は約775kg/m3であり、合成ガスの密度は約9.06kg/m3である。各実施例の合成ガス及び液体プロピレンの供給流量も表1に示す。液体プロピレンの粘度は3.8×10-4Pa.s、合成ガスの粘度は1.8×10-5Pa.sとする。合成ガスと液体プロピレンの間の気液表面張力は、同様の有機物の典型的な値に合わせて、18ダイン/cm(0.018N/m)とする。
【0098】
比較例A
元の反応器は、直径5.5メートル、円筒形部分の高さ10メートルの機械的に撹拌されるタンクであり、2つの同一の2:1半楕円体のヘッドによって上部及び下部がキャップされた。タンクの容積は、2つの水平バッフルによって3つの反応ゾーン(下から上に1~3の番号が付けられている)に垂直に分割された。バッフルは、タンクと同じ直径及び直径0.7メートルの単一の中央オリフィスを有する同一のステンレス鋼板である。加えて、タンクには、反応器壁に沿って90°間隔で配置された4つの同一の垂直バッフルが取り付けられた。
【0099】
合成ガスを、第1の反応ゾーン(下接線の0.2m上方)及び第2の反応ゾーン(下部水平バッフルの0.2m上方)に位置する2つの同一のリングスパージャを使用して導入した。撹拌器は、3つのインペラ、すなわち、底部区画内の標準的なガス分配タービンと、第2及び第3の反応ゾーン内の2つのハイドロフォイルとを取り付けたシャフトである。撹拌器は89rpmで動作する。
【0100】
反応器本体と同心の脱気リングが、底部再循環ノズルの周りの底部皿状ヘッドに取り付けられた。
【0101】
表1に、反応器の寸法及び流量を要約する。
【0102】
【0103】
本発明の実施例1
反応器寸法(直径及びL/D)は、比較例Aと同一である。撹拌器は存在せず、代わりに第1の反応ゾーンに入る再循環ジェットを使用して混合及びガス分散を実施した。加えて、比較例Aに対して以下の他の変更を行った。
1.液体再循環流量を16倍に増加させた。
2.ガス導入及び気泡サイズ:スパージャリングを取り外した。ここで、合成ガスを、各々が再循環入口ノズルのすぐ上流に位置する2つの剪断混合装置を使用して再循環流に直接導入した。これらの剪断混合装置は、300ミクロンの平均気泡直径でガスを反応器に導入するように設計された。剪断混合装置の詳細は、実施例セクションの最後の剪断混合装置の部分に記載されている。
3.水平バッフル:比較例Aの設計の水平バッフルを、ステンレス鋼有孔板に置き換えた。これらの板は、二相(気液)反応流体が底部区画から中間区画まで上方に垂直に通過することを可能にするために、20%の開口領域を有する。
4.ノズル:再循環入口ノズルからウェッジインサートを取り外した。各再循環入口ノズルは、端部に湾曲部を備え、それにより、
a.気液ジェットが、20度の垂直角(α)(反応器の中心軸に沿って下向き)及び30度の方位角(β)(反応器の中心軸を中心に反時計回り)で入り、
b.ノズル直径を、標準的な円錐形のレジューサ(12インチ×7インチ)を使用して、端部で7インチの公称サイズに縮小させ、
c.二相ジェットが第1の反応ゾーンに入るノズル開口を、反応器の下接線の2.52m上方、かつ反応容器の内壁から半径方向内側に0.45mの高さ(δ)に配置した。
5.内部の脱気:脱気リングを取り外した。その場所に、空隙率36%及び全高1.375mの充填床を設置した。
6.内部:第2の反応ゾーンへのガスのチャネリングを防止するために、ドーナツバッフルを第1の反応ゾーンに追加した。幅0.59mのドーナツバッフルを、下接線の2m上方に配置した。
7.底部再循環ノズル:ノズルサイズを元のサイズの16インチから22インチに上げて、反応器から出る液体速度を低下させた。
【0104】
表2は、本発明の実施例1の様々な寸法及び他のパラメータを要約したものである。
【0105】
【0106】
前述のように、
図2は、反応器内のノズルの配向及び位置を特徴付けるための様々なパラメータを定義する。表3は、本発明の実施例1及び実施例2について、これらのパラメータの値を提供するものである。
【0107】
【0108】
本発明の実施例2
本発明の実施例2は、以下の変更を除いて、本発明の実施例1と同じである。
1.内部の脱気:充填床を除去した。その場所で、3枚の水平有孔板の積層体を使用した。開口面積分率は、30%(上層板)、20%(中間層板)、15%(下層板)である。板間の間隙は0.25mである。
【0109】
結果
CFDモデリングの結果を表4A及び表4Bに示す。
【0110】
【0111】
【0112】
表4に示すように、本発明の実施例1及び2は、機械的撹拌器を有していないにもかかわらず、比較例Aに対して同等の性能(例えば、混合時間、KLa、及び再循環ライン内のガスの体積%)を有する。本発明の実施例1及び2はまた、著しく低い電力消費(P/Vを参照)を有する。
【0113】
図5及び
図6は、比較例A並びに本発明の実施例1及び2についてのガス体積分率色分け図及びKLa色分け図を示している。
図5に示すように、本発明の実施例は、非常に均一なガス体積分率を有する。
【0114】
剪断混合装置
本発明の実施例1及び2で使用した剪断混合装置は、米国特許第5,845,993号に記載されているタイプのものである。各装置は、有孔表面によって分離された単一(又は複数)の乱流液体流と接触する加圧ガス導管又はチャンバからなる。ガスは、液体流によって生成される剪断応力によって駆動されて、穿孔を通って液体流に入る。
【0115】
本発明の実施例1及び2について、
図3aに示すように、剪断混合装置は、液体流を運ぶ内部チャネルから構成される。これには、加圧ガス入口に接続された外側同心ジャケットが取り付けられた。外側ジャケットによって包まれた内側チャネルの一部分は、多数の穿孔により有孔である。これらの穿孔は、外側ジャケットからのガスが、小さな気泡から構成される液体中ガス分散体の形態で内側チャネル内の液体流に入る場所である。本発明の実施例1及び2では、液体は反応器から除去された反応流体であり、ガスは合成ガスである。
【0116】
剪断混合装置は、300ミクロンの平均気泡サイズを提供するように構成された。この平均気泡サイズを提供するための剪断混合装置における寸法及び流量を表5に示す。
【0117】
【国際調査報告】