(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】MOFナノ粒子
(51)【国際特許分類】
A61K 9/14 20060101AFI20231226BHJP
A61K 9/51 20060101ALI20231226BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20231226BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20231226BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20231226BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231226BHJP
A61K 47/36 20060101ALI20231226BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
A61K9/14
A61K9/51
A61K9/08
A61K9/107
A61K47/02
A61K47/34
A61K47/36
A61K47/32
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535380
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 EP2021085108
(87)【国際公開番号】W WO2022122983
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503421575
【氏名又は名称】ケンブリッジ エンタープライズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】ヒメネス,デイヴィッド フェアレン
(72)【発明者】
【氏名】チェン,シュー
【テーマコード(参考)】
4C076
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA22
4C076AA29
4C076AA65
4C076DD21
4C076EE06
4C076EE23
4C076EE26
4C076EE37
(57)【要約】
本願は、金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子、特に、コーティングされたMOFナノ粒子、当該コーティングされたMOFナノ粒子の製造方法、及び当該コーティングされたMOFナノ粒子の使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた、1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含有する乾燥粉末薬学的組成物であって、
各ナノ粒子は、複数の金属イオンと複数の有機配位子とを含むMOFを含有し、約25nm~約450nmの粒径を有し、
前記ポリマーは、1つ以上の金属イオンに結合し、
少なくとも1つの活性薬剤成分が、前記凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の上、及び/又は中に存在する、組成物。
【請求項2】
請求項1のいずれかに記載の前記乾燥粉末薬学的組成物を液体中に混合された状態で含む薬学的組成物であって、好ましくは、前記液体が水性であり、好ましくは、前記組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含み、好ましくは、前記賦形剤が、溶媒、共溶媒、緩衝剤、安定剤、酸化防止剤、保存剤、キレート剤、乳化剤、香料、潤滑剤、懸濁化剤、等張化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁補助剤、分散剤、保湿剤、増粘剤、着色剤、湿潤剤、消泡剤、粘度調整剤、甘剤及びその組み合わせからなる群から選択される、組成物。
【請求項3】
ポリマーでコーティングされた1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含有する乾燥粉末組成物を製造する方法であって、各ナノ粒子は、複数の金属イオンと複数の有機配位子とを含むMOFを含有し、前記ポリマーは、1つ以上の金属イオンと結合し、前記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の粒径は約25nm~約450nmであり、前記方法は、
a)
複数の金属イオンと複数の有機配位子とを混合して、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を形成することと、
b)
前記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を前記ポリマーと混合し、前記ポリマーが前記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の1つ以上の金属イオンに結合して、前記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供することと、
c)
任意で、溶媒を除去することにより、前記ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子懸濁液の濃度を高めることと、
d)
凍結乾燥により、前記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子を乾燥させることと、
を含む、方法。
【請求項4】
好ましくはステップb)の前に、好ましくは活性成分を前記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液と混合することによって、前記活性成分を、前記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の中に封入するか、及び/又は前記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の上に存在させる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子の懸濁液を製造する方法であって、前記方法は、請求項3又は請求項4に従って製造された乾燥粉末組成物を取得し、前記組成物を液体中に再懸濁するステップを含み、好ましくは、前記液体が水性である、方法。
【請求項6】
前記ポリマーが、リン酸-金属配位によって各ナノ粒子の1つ以上の金属イオンに結合している、請求項1~5のいずれかに記載の組成物又は方法。
【請求項7】
前記複数の金属イオンが、ジルコニウム、鉄、亜鉛、及びハフニウムからなる群から選択される金属イオンから本質的になる、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物又は方法。
【請求項8】
前記ポリマーが実質的に直鎖状である、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物又は方法。
【請求項9】
前記ポリマーが、リン酸基、好ましくは末端リン酸基を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の組成物又は方法。
【請求項10】
前記ポリマーが、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ヘパリン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、及びそれらの誘導体及びコポリマーからなる群から選択され、好ましくは、前記ポリマーがポリエチレングリコール又はその誘導体を含み、好ましくはリン酸基末端のmPEGを含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物又は方法。
【請求項11】
前記ポリマーが、構造Aによるリン酸基末端のmPEGである、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物又は方法。
【化1】
式中、nは約40~約250である。
【請求項12】
前記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の粒径が、約100nm~約250nm、好ましくは約100nm~約200nmである、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物又は方法。
【請求項13】
前記1つ以上のMOFナノ粒子が少なくとも部分的に非晶質である、請求項3~5の前記方法のいずれかに従って製造された組成物、及び/又は請求項1、2又は6~11のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
凍結乾燥された複数のMOFナノ粒子の再分散を改善するためのポリマーの使用であって、前記ポリマーは凍結乾燥前に前記MOFナノ粒子上にコーティングされる、使用。
【請求項15】
治療に使用するための、請求項1、2又は6~13のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子、特に、コーティングされたMOFナノ粒子、当該コーティングされたMOFナノ粒子の製造方法、及び当該コーティングされたMOFナノ粒子の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子(nanoMOF)は、多孔質で結晶性のハイブリッド材料の比較的新しいファミリーで、ガスの貯蔵や分離、センシング、触媒等様々な用途での可能性を示している。その調整可能な構造と永久的な空隙に照らせば、有機配位子と無機ノード(金属イオン)は、その内面及び外面に機能性を組み込むためのプラットフォームを提供する。生体系において、イメージングや治療への応用を目的として、合成後に修飾することによりナノMOFの外面を機能化する検討が行われている。
【0003】
ナノMOFが有望視されている一方で、公知の表面機能化ナノMOFには制限がある。例えば、公知の表面機能化ナノMOFを乾燥させると、容易に再分散できないことが本発明者らによって見出された。そのため、一般的には、使用する前に懸濁状態に保つ必要があった。このことから、公知の表面機能化ナノMOFはドラッグデリバリー等の分野では魅力のないものとされていた。それは溶液中の公知のナノ粒子MOFが凝集、及び/又は薬物の早期又は未制御な放出、及び/又は活性の劣化等により、保存期間が限られてしまう場合があることによる。さらに、放出プロファイルを調整可能なドラッグデリバリーシステムに対するニーズは、長年にわたって継続的に存在している。
【0004】
本発明は、公知のMOFナノ粒子に関連するこれらの、及び他の問題を解決するものである。
【発明の概要】
【0005】
したがって、第1の態様において、本発明は、ポリマーでコーティングされた1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含有する組成物を提供する。
【0006】
各ナノ粒子は、複数の金属イオン(無機ノード)と複数の有機配位子を含むMOFを含有する。好ましくは、複数の金属イオンは、(複数として)、ジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、及びカリウムからなる群から選択される金属のイオンから本質的になる(つまり、MOFナノ粒子内の金属イオンの実質的に全てが同じである)か、又はジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、及びカリウムからなる群から選択される金属のイオンからなるものであってもよく、より好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウム及び鉄から選択されるイオンから本質的になるか、又はジルコニウム及び鉄から選択されるイオンからなるものであってもよく、最も好ましくは、複数の金属イオンはジルコニウムのイオンから本質的になるか、又はジルコニウムのイオンからなるものであってもよい。
【0007】
上記ポリマーは、リン酸-金属配位により各ナノ粒子の1つ以上の金属イオンに結合している。好ましくは、上記ポリマーはリン酸基を含み、より好ましくは、上記ポリマーは末端にリン酸基を有する。好ましくは、各ポリマーは、単一の末端リン酸基を有する。典型的には、上記ポリマーは、リン酸基で官能基化されたポリマー(ベースポリマー)を含む。好ましくは、上記ベースポリマーは親水性である。好ましくは、上記ポリマー(及び/又はベースポリマー)は、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ヘパリン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、及びそれらの誘導体及びコポリマーからなる群から選択される。より好ましくは、上記ポリマーは、ポリエチレングリコール又はその誘導体を含む。
【0008】
実施形態において、上記ポリマーがポリエチレングリコール又はその誘導体を含む場合、好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体である。好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、主に直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体であり、より好ましくは、上記ポリマーは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体から本質的になるか、又は直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体からなるものであってもよい。好ましくは、上記ポリマーは、分岐したポリエチレングリコール又はその分岐した誘導体でないか、又は分岐したポリエチレングリコール又はその分岐した誘導体を含まない。
【0009】
好ましくは、ポリエチレングリコール又はその誘導体は、約40~約250個の繰り返し単位を含んでいる。
【0010】
好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状アルコキシポリエチレングリコール(PEG)を含むか、又は本質的にPEGからなり、このとき上記アルコキシ基は、好ましくは炭素数1~5のアルコキシ、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシである。さらにより好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状メトキシポリエチレングリコール(mPEG)を含むか、又は本質的にmPEGからなる。
【0011】
最も好ましくは、上記ポリマーは構造Aに従ったリン酸基末端mPEGである。
【化1】
【0012】
好ましくは、nは約40~約250である。
【0013】
典型的には、mPEGの分子量は、約2000g/mol~約10000g/mol(mPEG2000~mPEG10000)、好ましくは約3000g/mol~約9000g/mol(mPEG3000~mPEG9000)、約4000g/mol~約8000g/mol(mPEG4000~mPEG8000)、約5000g/mol~約7000g/mol(mPEG5000~mPEG7000)、約5000g/mol~約6000g/mol(mPEG5000~mPEG6000)であってもよい。好ましくは、mPEGの分子量は、約5000g/mol(mPEG5000)である。
【0014】
上記ポリマーは、各MOFナノ粒子の1つ以上の金属イオン、好ましくは実質的に全てのMOFナノ粒子に結合している。好ましくは、上記ポリマーは、各MOFナノ粒子の外面に存在する金属イオンに結合している。好ましくは、各MOFナノ粒子の外面は、上記ポリマー内で実質的にコーティングされている。外面とは、外側の表面を指し、例えば孔の内面のような内面は含まない。
【0015】
上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の粒径は、約25nm~約450nm、より好ましくは約100nm~約250nm、最も好ましくは約100nm~約200nmであり得る。好ましくは、活性成分は、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の中に封入され、及び/又は上記1つ以上のMOFナノ粒子の上に存在させることができる。好ましくは、上記活性成分は、薬学的活性成分、農薬、殺虫剤、及び染料からなる群から選択され得る。
【0016】
本発明の第1の態様に係る組成物は、改善された安定性と調整可能な放出プロフィールとを有することができ、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子が著しく凝集しないように凍結乾燥及び/又は、溶液中での組成物の分散を容易にし得るので、特に有利である。本発明の第1の態様に係る組成物の利点は、本明細書に記載される実施例及び図において実証される。
【0017】
第2の態様において、本発明は、凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含む乾燥粉末薬学的組成物を提供する。各ナノ粒子は、複数の金属イオン(無機ノード)と複数の有機配位子を含むMOFを含有する。
【0018】
前の態様と同様に、好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウム、鉄、亜鉛、及びハフニウムからなる群から選択される金属のイオンから本質的になるか、又はジルコニウム、鉄、亜鉛、及びハフニウムからなる群から選択される金属のイオンからなるものであってもよく、より好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンから本質的になるか、又はジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンからなるものであってもよく、最も好ましくは複数の金属イオンが、ジルコニウムのイオンから本質的になるか、又はジルコニウムのイオンからなるものであってもよい。
【0019】
上記ポリマーは、リン酸-金属配位によって各ナノ粒子の1つ以上の金属イオンに結合することができる。好ましくは、上記ポリマーはリン酸基を含み、より好ましくは、上記ポリマーは末端にリン酸基を有する。好ましくは、各ポリマーは、単一の末端リン酸基を有する。典型的には、上記ポリマーは、リン酸基で官能基化されたポリマー(ベースポリマー)を含む。好ましくは、上記ベースポリマーは親水性である。
【0020】
好ましくは、上記ポリマー(及び/又はベースポリマー)は、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ヘパリン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、及びそれらの誘導体及びコポリマーからなる群から選択される。より好ましくは、上記ポリマーは、ポリエチレングリコール又はその誘導体を含む。
【0021】
実施形態において、上記ポリマーがポリエチレングリコール又はその誘導体からなる場合、好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体である。好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、主に直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体であり、より好ましくは、上記ポリマーは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体から本質的になるか、又は直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体からなるものであってもよい。好ましくは、上記ポリマーは、分岐したポリエチレングリコール又はその誘導体でないか、又は分岐したポリエチレングリコール又はその誘導体を含まない。
【0022】
好ましくは、ポリエチレングリコール又はその誘導体は、約40~約250の繰り返し単位を含んでいる。
【0023】
好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状アルコキシポリエチレングリコール(PEG)を含むか、又は本質的にPEGからなり、このとき上記アルコキシ基は、好ましくは炭素数1~5のアルコキシ、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシである。さらにより好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状メトキシポリエチレングリコール(mPEG)を含むか、又は本質的にmPEGからなる。
【0024】
より好ましくは、上記ポリマーは構造Aに従ったリン酸基末端mPEGである。
【化2】
【0025】
好ましくは、nは約40~約250である。
【0026】
典型的には、mPEGの分子量は、約2000g/mol~約10000g/mol(mPEG2000~mPEG10000)、好ましくは約3000g/mol~約9000g/mol(mPEG3000~mPEG9000)、約4000g/mol~約8000g/mol(mPEG4000~mPEG8000)、約5000g/mol~約7000g/mol(mPEG5000~mPEG7000)、約5000g/mol~約6000g/mol(mPEG5000~mPEG6000)であってもよい。好ましくは、mPEGの分子量は、約5000g/mol(mPEG5000)である。
【0027】
好ましくは、第2の態様の、上記凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の粒径は、約25nm~約450nm、より好ましくは約100nm~約250nm、最も好ましくは約100nm~約200nmであってもよい。
【0028】
ポリマーは、各MOFナノ粒子の1つ以上の金属イオン、好ましくは実質的に全てのMOFナノ粒子に結合する。好ましくは、上記ポリマーは、各MOFナノ粒子の外面に存在する金属イオンに結合している。好ましくは、各MOFナノ粒子の外面は、ポリマーで実質的にコーティングされている。
【0029】
好ましくは、上記ポリマーは、金属配位を介して、より好ましくはリン酸-金属配位によって、各ナノ粒子の1つ以上の金属イオンに結合され得る。
【0030】
少なくとも1つの活性薬剤成分が、凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の中、及び/又はその上に存在する。好ましくは、上記1つの活性薬剤成分は、ポリマーでコーティングされる前の1つ以上のMOFナノ粒子の中及び/又は上にあり、好ましくは、活性薬剤成分、典型的には溶液中の活性薬剤成分、及び懸濁液中のコーティングされていないMOFナノ粒子を含む懸濁液からの拡散によって配置される。
【0031】
本発明の第2の態様に係る乾燥粉末薬学的組成物では、この組成物が改善された安定性を有すること、及び/又はこれらの乾燥粉末は、水性媒体中に容易に再分散され、再分散された、凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた薬剤含有MOFナノ粒子が実質的に凝集しないことから、特に有利である。さらに、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子からの活性薬剤成分の放出は、コーティングするポリマーの量及び/又は種を変えることによって調整することができる。本発明の第2の態様の組成物の利点は、本明細書に記載される実施例及び図において実証される。
【0032】
好ましくは、上記乾燥粉末薬学的組成物は、バイアルでの使用のために提供され、好ましくは、バイアルが約5ml~約25mlの体積を有する。好ましくは、製造中に、上記乾燥粉末薬学的組成物はバイアル内で凍結乾燥される。通常、使用時には、上記乾燥粉末薬学的組成物はバイアル内の液体ビヒクル中に再分散される。
【0033】
上記ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子は、薬学的活性成分を含むことができる。上記薬学的活性成分は、ポリマーでコーティングされた、薬剤を含有するMOFナノ粒子の総重量に対して、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、少なくとも約2%、又は少なくとも約4%の量で存在することができる。実施形態において、上記成分は、ポリマーでコーティングされた、薬剤を含有するMOFナノ粒子の総重量に対して、多くとも約10%、多くとも約15%、多くとも約20%、多くとも約25%、多くとも約35%、多くとも約50%、又は多くとも約65%の量で存在している。一実施形態において、上記成分は、ポリマーでコーティングされた、薬剤を含有するMOFナノ粒子の総重量に対して、多くとも30重量%の量で存在する。ポリマーでコーティングされた、薬剤を含有するMOFナノ粒子の総重量に対して、約0.5%~約60%、又は約10%~約50%の範囲が好ましい。
【0034】
あるいは、上記活性薬剤成分は、ポリマーでコーティングされた、薬剤を含有するMOFナノ粒子の総重量に対して、多くとも約0.5%、多くとも約1%、多くとも約2%、又は多くとも約4%の量で存在することができる。上記活性薬剤成分は、ポリマーでコーティングされた、薬剤を含有するMOFナノ粒子の総重量に対して、少なくとも約0.001%、少なくとも約0.005%、少なくとも約0.01%、少なくとも約0.05%、又は少なくとも約0.1%の量で存在することができる。
【0035】
実施形態において、MOFナノ粒子は、少なくとも部分的に非晶質であってもよく、好ましくは実質的に非晶質であってもよい。疑義を避けるために、金属-有機構造体それ自体は、少なくとも部分的に非晶質であってもよく、好ましくは実質的に非晶質である。好ましくは、上記MOFナノ粒子は、(好ましくはMOFナノ粒子のポリマーコーティングが行われる前に、好ましくは更にその凍結乾燥の前に)上記薬学的活性成分が上記MOFナノ粒子内にあると非晶質化する。金属-有機構造体を非晶質化するための好適な方法は、下記及び参照により本明細書に援用されるWO2016/207397に開示されており、例えばボールミリングである。
【0036】
アモルファス化は、結晶性金属-有機構造体の中に存在する長い距離での秩序を破壊することを目的としている。アモルファス金属-有機構造体は、高度に無秩序な骨格構造を持ち、長い距離での秩序を欠く。しかし、アモルファス骨格は、結晶性金属-有機構造体にも存在する基本的な金属-配位子連結性を保持している。アモルファス化は、結晶性金属-有機構造体の構造的な崩壊をもたらすと言えるかもしれない。この構造的な崩壊により、使用時に、MOFナノ粒子からの薬学的活性成分の放出を遅くしたり、増大させたりすることがある。
【0037】
金属-有機構造体の結晶構造から非晶質構造への変化は、X線回折法、特に粉末X線回折法により立証することができる。通常、結晶性金属-有機構造体は、PXRDパターンにおいて明確なブラッグ反射を有している。アモルファス化した金属-有機構造体のPXRDパターンにおいて、これらのブラッグ反射は失われている。
【0038】
有利なことに、本発明者らは、非晶質化がMOFナノ粒子のポリマーコーティングを補完し、(典型的にはどちらか一方の技術だけでは達成できない程度まで)活性薬剤の放出プロファイルにさらなる調整可能性を与えることを発見した。
【0039】
第3の態様において、本発明は、第2の態様に係る乾燥粉末薬学的組成物を液体(すなわち、ビヒクル)に混合された状態で含む薬学的組成物を提供する。ビヒクルとは、液体製剤中の活性薬剤成分のための1つ以上の賦形剤から構成される担体であることが理解されよう。第3の態様の薬学的組成物は、溶液、懸濁液、又はコロイドとして、好ましくは、水溶液、水性懸濁液、又は水性コロイドとして提供することができる。水相は、水、ウシ血清アルブミン、リン酸緩衝生理食塩水、血漿、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(EMEM)、ギブコ・ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地、マッコイズ5A培地、及び/又はハンクス平衡塩溶液(HBSS)でもよく、好ましくは上記水相は水である。通常、乾燥粉末薬学的組成物は、使用直前に液体ビヒクルと混合される。
【0040】
好ましくは、薬学的組成物は、薬学的に許容される賦形剤をさらに含み、好ましくは、賦形剤は、緩衝剤、安定剤、保存剤、着色剤、香味剤、共溶媒、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0041】
いくつかの実施形態において、薬学的に許容される賦形剤は、薬学的活性成分を含有する、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子と混合される液体ビヒクル中に提供され得る。追加として、又は代替として、薬学的に許容される賦形剤は、液体ビヒクルと組み合わせる前に、乾燥粉末組成物薬学的活性成分を含有する、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子と予め混合することができる。
【0042】
本発明の第3の態様に係る薬学的組成物は、再分散された、凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子が概ね凝集しないので、特に有利である。追加として、又は代替として、活性薬剤成分は、投与前に液体ビヒクル中にある間、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子の中、及び/又は上に実質的に留まり得る。さらに、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子からの活性薬剤成分の放出を調整することができる。これは、例えば、各MOFナノ粒子の外面上のポリマーコーティングの量を変化させることによって達成することができ、次いで、コーティング期間を増加又は減少させることによって変化させ得る。追加として、又は代替として、ナノ粒子をコーティングするために使用されるポリマーの種を変えることができる。追加として、又は代替として、ナノ粒子MOFの金属-有機構造体は、本明細書で議論されるように(完全に又は部分的に)非晶質化され得る。本発明の第3の態様に係る組成物の利点は、本明細書に記載される実施例及び図において実証される。
【0043】
全ての態様において、ポリマーコーティングが生じる期間(すなわち、コーティング期間)は、所望の特性によって決定され得る。典型的には、コーティング時間は、MOFナノ粒子の外面の金属サイトが実質的に飽和する(例えば、実質的にコーティングされる)のに十分であり、好ましくは、MOFナノ粒子の空隙率の減少を制限するか又は実質的に減少させない時間である。典型的には、コーティング時間は、約3時間未満、好ましくは約2時間未満、好ましくは約1分~約180分、好ましくは約30分~約150分、好ましくは約5分~約60分である。
【0044】
好ましくは、ポリマーでコーティングされたナノ粒子MOFのN2吸着取り込み量は、理想的なN2取り込み量の約80%よりも大きく、好ましくは約90%よりも大きい。
【0045】
好ましくは、ポリマーコーティングは、ポリマーコーティングされたナノ粒子MOFの約40重量%未満、好ましくは約30重量%未満、より好ましくは約10重量%~約40重量%、好ましくは約20重量%~約35重量%を構成する。
【0046】
第4の態様において、本発明は、ポリマーでコーティングされた1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含む乾燥粉末組成物を製造する方法を提供する。各ナノ粒子は、複数の金属イオン(無機ノード)と複数の有機配位子を含むMOFを含有する。
【0047】
前の態様と同様に、好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、及びカリウムからなる群から選択される金属のイオンから本質的になるか、又はジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、及びカリウムからなる群から選択される金属のイオンからなるものであってもよく、より好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンから本質的になるか、又はジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンからなるものであってもよく、最も好ましくは複数の金属イオンが、ジルコニウムのイオンから本質的になるか、又はジルコニウムのイオンからなるものであってもよい。
【0048】
上記ポリマーは1つ以上の金属イオンと結合している。好ましくは、上記ポリマーはリン酸基を含み、より好ましくは、上記ポリマーは末端にリン酸基を有し、好ましくは、上記ポリマーは単一の末端のリン酸基を有する。典型的には、上記ポリマーは、リン酸基で官能基化されたベースポリマーを含む。好ましくは、上記ベースポリマーは親水性である。
【0049】
好ましくは、上記ポリマーは、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ヘパリン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、及びそれらの誘導体及びコポリマーからなる群から選択される。
【0050】
実施形態において、上記ポリマーがポリエチレングリコール又はその誘導体からなる場合、好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体である。好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、主に直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体であり、より好ましくは、上記ポリマーは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体から本質的になるか、又は直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体からなるものであってもよい。好ましくは、上記ポリマーは、分岐したポリエチレングリコール、又はその誘導体でない、及び/又は分岐したポリエチレングリコール、又はその誘導体を実質的に含まない。
【0051】
好ましくは、ポリエチレングリコール又はその誘導体は、約40~約250の繰り返し単位を含んでいる。
【0052】
好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状アルコキシポリエチレングリコール(PEG)を含むか、又は本質的にPEGからなり、このとき上記アルコキシ基は、好ましくは炭素数1~5のアルコキシ、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシである。さらにより好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状メトキシポリエチレングリコール(mPEG)を含むか、又は本質的にmPEGからなる。
【0053】
最も好ましくは、上記ポリマーは構造Aに従ったリン酸基末端mPEGである。
【化3】
【0054】
好ましくは、nは約40~約250である。
【0055】
典型的には、mPEG(構造Aのもの等)の分子量は、約2000g/mol~約10000g/mol(mPEG2000~mPEG10000)、好ましくは約3000g/mol~約9000g/mol(mPEG3000~mPEG9000)、約4000g/mol~約8000g/mol(mPEG4000~mPEG8000)、約5000g/mol~約7000g/mol(mPEG5000~mPEG7000)、約5000g/mol~約6000g/mol(mPEG5000~mPEG6000)であってもよい。好ましくは、mPEGの分子量は、約5000g/mol(mPEG5000)である。
【0056】
上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の粒径は、約25nm~約450nm、好ましくは約100nm~約250nm、最も好ましくは約100nm~約200nmであってもよい。
【0057】
第4の態様の方法は、以下のステップを含む:複数の金属イオン(無機ノード)及び複数の有機配位子を混合し、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を形成するステップ;コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液をポリマーと混合し、ポリマーが、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の1つ以上の金属イオンに結合することによりポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供するステップ;及び凍結乾燥(すなわち、フリーズドライ)によって乾燥させるステップ。
【0058】
任意に、本発明の方法は、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子溶液をより濃縮させる(すなわち、濃縮スラリー)濃縮ステップを含んでもよい。典型的には、例えば遠心分離、蒸発、又は他の適切な方法によって溶媒を除去することによって、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子懸濁液の濃度を増加させることにより行ってもよい。
【0059】
好ましくは、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液は、凍結乾燥前の懸濁液の総重量を基準として、約1%~約25%、好ましくは約2%~約10%の固形分量を有する。好ましくは、上記懸濁液は水性懸濁液である。
【0060】
好ましくは、活性成分は、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の中に存在する(即ち内部に封入されている)か、及び/又はその上に存在し、好ましくは、ポリマーでコーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液とポリマーとを混合し、ポリマーを、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の1つ以上の金属イオンに結合させることにより、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供するようにするステップの前に、活性成分がコーティングされていないMOFナノ粒子の中に封入され、及び/又はコーティングされていないMOFナノ粒子の上に存在する。
【0061】
好ましくは、活性成分を上記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液と混合することによって、活性成分は、上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の中に封入されるか、及び/又はその上に配置される。好ましくは、上記活性成分は、薬学的活性成分、農薬、殺虫剤、及び染料からなる群から選択され得る。
【0062】
本発明の第4の態様に係る方法は、この方法の凍結乾燥ステップによって、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の凝集が低減された状態で、その後水性媒体中に再分散され得る乾燥粉末組成物が提供されるので、特に有利である。これは、常温乾燥では実現できないことである。有利なことに、このような乾燥組成物は、対応する水性懸濁液よりも良好な保存性を有する場合がある。本発明の第4の態様に係る方法の利点は、本明細書に記載される実施例及び図において実証される。
【0063】
好ましくは、上記乾燥粉末薬学的組成物は、バイアルでの使用のために提供され、好ましくは、バイアルが約5ml~約25mlの体積を有する。好ましくは製造時に、ポリマーでコーティングされた、薬剤を含有するMOFナノ粒子を含む、上記バイアルの1つ以上に含まれる液体スラリー、好ましくはポリマーでコーティングされた、薬剤を含有するMOFナノ粒子を含む液体スラリーをそれぞれ含む複数のバイアルを凍結乾燥することによって形成された乾燥粉末薬学的組成物を同時に凍結乾燥させる。
【0064】
好ましくは、使用時に、乾燥粉末薬学的組成物は、上記バイアル内の液体ビヒクル中に再分散される。
【0065】
第5の態様において、本発明は、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子の懸濁液を製造する方法を提供し、この方法は、第4の態様に従って製造された乾燥粉末組成物を取得し、その組成物を液体中に再懸濁させる工程を含む。
【0066】
好ましくは、液体は水性であり、好ましくは、水、ウシ血清アルブミン、リン酸緩衝生理食塩水、血漿、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(EMEM)、ギブコ・ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地、マッコイズ5A培地、及びハンクス平衡塩溶液(HBSS)からなる群から選択される水性液体が挙げられる。好ましくは、上記水性液体は水である。
【0067】
本発明の第5の態様に係る方法は、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子が凝集しないようにポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子を液体中に分散させることができるため、特に有利である。本発明の第5の態様に係る方法の利点は、本明細書に記載される実施例及び図において実証される。
【0068】
第6の態様において、本発明は、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含有する組成物を製造する方法を提供する。各ナノ粒子は、複数の金属イオン(無機ノード)と複数の有機配位子を含むMOFを構成する。
【0069】
好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、又はカリウムからなる群から選択される金属のイオンから本質的になるか、又はジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、又はカリウムからなる群から選択される金属のイオンからなるものであってもよく、より好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンから本質的になるか、又はジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンからなるものであってもよく、最も好ましくは複数の金属イオンが、ジルコニウムのイオンから本質的になるか、又はジルコニウムのイオンからなるものであってもよい。
【0070】
好ましくは、上記少なくとも1つの活性成分は、薬学的活性成分、農薬、殺虫剤、及び染料からなる群から選択され得る。
【0071】
第6の態様に係る、上記ポリマーでコーティングされた1つ以上の活性成分を含有するMOFナノ粒子の粒径は、約25nm~約450nm、好ましくは約100nm~約250nm、最も好ましくは約100nm~約200nmであってもよい。
【0072】
上記ポリマーは、金属配位、好ましくはリン酸-金属配位によって、1つ以上の金属イオンに結合している。好ましくは、上記ポリマーはリン酸基を含み、より好ましくは、上記ポリマーは末端にリン酸基を有する。典型的には、上記ポリマーは、リン酸基で官能基化されたベースポリマーを含む。
【0073】
好ましくは、ポリマー(又はベースポリマー)は、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ヘパリン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、及びこれらの誘導体及びコポリマーからなる群から選択され得る。
【0074】
実施形態において、上記ポリマーがポリエチレングリコール又はその誘導体からなる場合、好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体である。好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、主に直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体であり、より好ましくは、上記ポリマーは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体から本質的になるか、又は直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体からなるものであってもよい。好ましくは、ポリマーは、分岐ポリエチレングリコールではない、及び/又は、分岐ポリエチレングリコールを実質的に含まない。
【0075】
好ましくは、ポリエチレングリコール又はその誘導体は、約40~約250個の繰り返し単位を含んでいる。
【0076】
好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状アルコキシポリエチレングリコール(PEG)を含むか、又は本質的にPEGからなり、このとき上記アルコキシ基は、好ましくは炭素数1~5のアルコキシ、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシである。さらにより好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状メトキシポリエチレングリコール(mPEG)を含むか、又は本質的にmPEGからなる。
【0077】
好ましくは、上記ポリマーは、構造Aによるリン酸基末端mPEGである。
【化4】
【0078】
好ましくは、nは約40~約250である。
【0079】
典型的には、mPEG(構造AのmPEG等)の分子量は、約2000g/mol~約10000g/mol(例えばmPEG2000~mPEG10000)、好ましくは約3000g/mol~約9000g/mol(例えばmPEG3000~mPEG9000)、約4000g/mol~約8000g/mol(例えばmPEG4000~mPEG8000)、約5000g/mol~約7000g/mol(例えばmPEG5000~mPEG7000)、約5000g/mol~約6000g/mol(例えばmPEG5000~mPEG6000)であってもよい。好ましくは、mPEGの分子量は、約5000g/mol(例えば、mPEG5000)である。
【0080】
好ましくは、上記ポリマーは、各MOFナノ粒子の外面に存在する金属イオンに結合している。好ましくは、各MOFナノ粒子の外面は、上記ポリマー内で実質的にコーティングされている。
【0081】
第6の態様の方法は、以下のステップを含む。i)複数の金属イオン(無機ノード)及び複数の有機配位子を混合して、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を形成するステップ;ii)コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子内に活性成分を封入して、活性成分を含有する、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供するステップ;iii)その後、活性成分を含有する、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を、リン酸基で官能基化されたポリマーと混合し、リン酸基で官能基化されたポリマーを、活性成分を含有する、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の1つ以上の金属イオンに配位させることにより、活性成分を含有する、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供するステップ;iv)任意に、凍結乾燥によって、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上のMOFナノ粒子を乾燥させるステップ;及びv)任意に、その後、水性媒体中に、凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有するMOFナノ粒子を再分散させるステップ。
【0082】
好ましくは、水性再分散媒体は水、ウシ血清アルブミン、リン酸緩衝生理食塩水、血漿、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)、イーグル最小必須培地(EMEM)、ギブコ・ロズウェルパーク記念研究所(RPMI)1640培地、マッコイズ5A培地、及びハンクス平衡塩溶液(HBSS)からなる群から選択される。好ましくは、上記水性再分散媒体は水である。
【0083】
好ましくは、1つ以上のポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子の懸濁液は、凍結乾燥前の懸濁液の総重量の約1%~約25%、好ましくは約2%~約10%の固形分量を有する。
【0084】
典型的には、配位ステップ(iii)は、MOFナノ粒子の外面の金属サイトが実質的に飽和するのに十分な時間(コーティング時間)、好ましくはMOFナノ粒子の空隙率の減少を制限するか又は実質的に減少させないポリマーを用いて実施される。典型的には、ステップiii)は、約3時間未満、好ましくは約2時間未満、好ましくは約1分~約180分、好ましくは約30分~約150分、好ましくは約5分~約60分継続する。
【0085】
好ましくは、ポリマーでコーティングされたナノ粒子MOFのN2吸着取り込み量は、理想的なN2取り込み量の約80%よりも大きく、好ましくは約90%よりも大きい。
【0086】
好ましくは、ポリマーコーティングは、ポリマーでコーティングされたナノ粒子MOFの約40重量%未満、好ましくは約30重量%未満、より好ましくは約10重量%~約40重量%、好ましくは約20重量%~約35重量%を構成する。
【0087】
本発明の第6の態様に係る方法は、この方法がポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上のMOFナノ粒子の安定した懸濁液を生成するため、特に有利であり、これは保存中の安定性が改善されているものと考えられる。さらに、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上のMOFナノ粒子が凍結乾燥によって調製される場合、組成物は貯蔵中に安定であり、その後、再分散すると、凝集が減少した、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供し得る。本発明の第6の態様に係る方法の利点は、本明細書に記載される実施例及び図において実証される。
【0088】
第7の態様において、本発明は、メトキシポリエチレングリコール(mPEG)でコーティングされた1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含有する組成物を製造する方法を提供する。このとき、各ナノ粒子は、複数の金属イオン(無機ノード)及び複数の有機配位子を含むMOFを含有する。
【0089】
好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、及びカリウムからなる群から選択される金属のイオンから本質的になるか、又はジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、及びカリウムからなる群から選択される金属のイオンからなるものであってもよく、より好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンから本質的になるか、又はジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンからなるものであってもよく、最も好ましくは複数の金属イオンが、ジルコニウムのイオンから本質的になるか、又はジルコニウムのイオンからなるものであってもよい。
【0090】
メトキシmPEGでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の粒径は、約25nm~約450nm、好ましくは約100nm~約250nm、最も好ましくは約100nm~約200nmであってもよい。mPEGは、金属配位、好ましくはリン酸-金属配位によって、1つ以上の金属イオンに結合している。
【0091】
好ましくは、mPEGは、構造Aによるリン酸基末端mPEGである。
【化5】
【0092】
好ましくは、nは約40~約250である。
【0093】
典型的には、mPEGの分子量は、約2000g/mol~約10000g/mol(mPEG2000~mPEG10000)、好ましくは約3000g/mol~約9000g/mol(mPEG3000~mPEG9000)、約4000g/mol~約8000g/mol(mPEG4000~mPEG8000)、約5000g/mol~約7000g/mol(mPEG5000~mPEG7000)、約5000g/mol~約6000g/mol(mPEG5000~mPEG6000)であってもよい。好ましくは、mPEGの分子量は、約5000g/mol(mPEG5000)である。
【0094】
第7の態様の方法は、以下のステップを含む:複数の金属イオン及び複数の有機配位子を混合して、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を形成するステップ;コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液をmPEG-PO3の溶液と混合し、mPEG-PO3を、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の1つ以上の金属イオンに配位させるようにし、mPEGでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供するステップ;任意で、その後、凍結乾燥によってmPEGでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子を乾燥させるステップ;及び任意で、凍結乾燥された、mPEGでコーティングされたMOFナノ粒子を、液体(例えば、水性媒体)中等で、必要に応じて超音波処理を使用して、再分散させるステップ。
【0095】
好ましくは、活性成分はmPEGでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の中に封入され、好ましくは、上記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液をmPEG-PO3の溶液と混合し、mPEG-PO3が上記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の1つ以上の金属イオンに配位させることにより、上記mPEG-PO3でコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供するステップの前に、活性成分はmPEGでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の中に封入される。
【0096】
好ましくは、活性成分を、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液と混合するステップによって、活性成分がmPEGでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の中に封入される。典型的には、上記活性成分は、薬学的活性成分、殺虫剤、殺虫剤、及び染料からなる群から選択され得る。
【0097】
好ましくは、mPEGでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液は、凍結乾燥ステップの前の懸濁液の総重量の約1重量%~約25重量%、好ましくは約2重量%~約10重量%の固形分量を有する。好ましくは、上記懸濁液は水性懸濁液である。
【0098】
本発明の第7の態様に係る方法は、この方法がmPEGでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の安定した懸濁液を生成するため、特に有利であり、これは保存中の安定性が改善されているものと考えられる。本発明の第7の態様に係る方法の利点は、本明細書に記載される実施例及び図において実証される。
【0099】
第8の態様において、本発明は、本明細書に開示された方法のいずれか、特に本発明の第4、第5、第6、又は第7の態様の方法に従って製造される組成物を提供する。上記組成物は、凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた、1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含む乾燥粉末薬学的組成物であってもよい。あるいは、上記組成物は、活性成分を含有し、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の液体懸濁液であってもよい。任意に、組成物は、水性媒体中に再分散された、凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子であってもよい。
【0100】
本発明の第8の態様に係る組成物は、MOFの改善された安定性をもたらし、凍結乾燥を容易にし、及び/又は液体媒体中での再分散を容易にし得るので、特に有利である。さらに、組成物は、使用前の貯蔵における安定性が改善し得る。本発明の第8の態様に係る組成物の利点は、本明細書に記載される実施例及び図において実証される。
【0101】
第9の態様において、本発明は、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上の非晶質金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含有する組成物を製造する方法を提供する。好ましくは、各MOFナノ粒子は非晶質である。非晶質MOFナノ粒子は、部分的及び/又は実質的に完全に非晶質であってもよい。各ナノ粒子は、複数の金属イオン(無機ノード)と複数の有機配位子を含むMOFを構成する。
【0102】
好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、又はカリウムからなる群から選択される金属のイオンから本質的になるか、又はジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、又はカリウムからなる群から選択される金属のイオンからなるものであってもよく、より好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンから本質的になるか、又はジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンからなるものであってもよく、最も好ましくは複数の金属イオンが、ジルコニウムのイオンから本質的になるか、又はジルコニウムのイオンからなるものであってもよい。
【0103】
好ましくは、上記少なくとも1つの活性成分は、薬学的活性成分、農薬、殺虫剤、及び染料からなる群から選択され得る。
【0104】
第9の態様に係る、上記ポリマーでコーティングされた、1つ以上の活性成分を含有する非晶質MOFナノ粒子の粒径は、約25nm~約450nm、好ましくは約100nm~約250nm、最も好ましくは約100nm~約200nmであってもよい。
【0105】
上記ポリマーは、金属配位、好ましくはリン酸-金属配位によって、1つ以上の金属イオンに結合している。好ましくは、上記ポリマーはリン酸基を含み、より好ましくは、上記ポリマーは末端にリン酸基を有し、好ましくは、上記ポリマーは単一の末端のリン酸基を有する。典型的には、上記ポリマーは、リン酸基で官能基化されたベースポリマーを含む。
【0106】
好ましくは、ポリマー(又はベースポリマー)は、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ヘパリン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、及びこれらの誘導体及びコポリマーからなる群から選択され得る。
【0107】
実施形態において、上記ポリマーがポリエチレングリコール又はその誘導体からなる場合、好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体である。好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、主に直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体であり、より好ましくは、上記ポリマーは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体から本質的になるか、又は直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体からなるものであってもよい。好ましくは、ポリマーは、分岐ポリエチレングリコールではない、及び/又は、分岐ポリエチレングリコールを実質的に含まない。
【0108】
好ましくは、ポリエチレングリコール又はその誘導体は、約40~約250個の繰り返し単位を含んでいる。
【0109】
好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状アルコキシポリエチレングリコール(PEG)を含むか、又は本質的にPEGからなり、このとき上記アルコキシ基は、好ましくは炭素数1~5のアルコキシ、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシである。さらにより好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状メトキシポリエチレングリコール(mPEG)を含むか、又は本質的にmPEGからなる。
【0110】
好ましくは、上記ポリマーは、構造Aによるリン酸基末端mPEGである。
【化6】
【0111】
好ましくは、nは約40~約250である。
【0112】
典型的には、mPEG(構造AのmPEG等)の分子量は、約2000g/mol~約10000g/mol(例えばmPEG2000~mPEG10000)、好ましくは約3000g/mol~約9000g/mol(例えばmPEG3000~mPEG9000)、約4000g/mol~約8000g/mol(例えばmPEG4000~mPEG8000)、約5000g/mol~約7000g/mol(例えばmPEG5000~mPEG7000)、約5000g/mol~約6000g/mol(例えばmPEG5000~mPEG6000)であってもよい。好ましくは、mPEGの分子量は、約5000g/mol(例えば、mPEG5000)である。
【0113】
好ましくは、上記ポリマーは、各MOFナノ粒子の外面に存在する金属イオンに結合している。好ましくは、各MOFナノ粒子の外面は、上記ポリマー内で実質的にコーティングされている。
【0114】
第9の態様の方法は、以下のステップを含む。i)複数の金属イオン(無機ノード)及び複数の有機配位子を混合して、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を形成するステップ;ii)コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子内に活性成分を封入して、活性成分を含有する、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供するステップ;iii)活性成分を含有する、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子を非晶化することにより、活性成分を含有する、コーティングされていない1つ以上の非晶質(又は部分的非晶質)MOFナノ粒子を形成するステップ;iv)その後、活性成分を含有する、コーティングされていない1つ以上の非晶質MOFナノ粒子の懸濁液をリン酸基で官能基化されたポリマーと混合し、リン酸基で官能基化されたポリマーを、活性成分を含有する、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の1つ以上の金属イオンに配位させることにより、活性成分を含有する、ポリマーでコーティングされた1つ以上の非晶質MOFナノ粒子の懸濁液を提供するステップ;v)任意に、凍結乾燥によって、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上の非晶質MOFナノ粒子を乾燥させるステップ;及びvi)任意に、その後、水性媒体中に、凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する非晶質MOFナノ粒子を再分散させるステップ。
【0115】
好ましくは、非晶質化ステップiii)は、MOFナノ粒子をボールミル、熱処理、又は照射することによって実施される。
【0116】
好ましくは、水性再分散媒体は、水、ウシ血清アルブミン、リン酸緩衝生理食塩水、血漿、及びダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)からなる群から選択される。好ましくは、上記水性再分散媒体は水である。
【0117】
好ましくは、ポリマーでコーティングされた1つ以上の非晶質MOFナノ粒子の懸濁液は、凍結乾燥の前の懸濁液の総重量の約1重量%~約25重量%、好ましくは約2重量%~約10重量%の固形分量を有する。好ましくは、上記懸濁液は水性懸濁液である。
【0118】
典型的には、配位ステップiv)は、MOFナノ粒子の外面の金属サイトが実質的に飽和するのに十分な時間(コーティング時間)、好ましくは非晶質MOFナノ粒子の空隙率の減少を制限するか又は実質的に減少させないポリマーを用いて実施される。典型的には、ステップiv)は、約3時間未満、好ましくは約2時間未満、好ましくは約1分~約180分、好ましくは約30分~約150分、好ましくは約5分~約60分持続する。
【0119】
好ましくは、ポリマーコーティングは、ポリマーコーティングされたナノ粒子MOFの約40重量%未満、好ましくは約30重量%未満、より好ましくは約10重量%~約40重量%、好ましくは約20重量%~約35重量%を構成する。
【0120】
本発明の第9の態様に係る方法は、この方法がポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上の非晶質MOFナノ粒子の安定した懸濁液を生成するため、特に有利であり、これは保存中の安定性が改善されているものと考えられる。本発明の第9の態様に係る方法の利点は、本明細書に記載される実施例及び図において実証される。
【0121】
さらに、非晶質化を利用することで、MOFナノ粒子からの活性成分の放出をさらに制御することができる。理論に縛られるわけではないが、ポリマーコーティングと非晶質化の組み合わせは、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上の非晶質MOFナノ粒子からの活性成分の放出をよりよく制御し、特に、各技術を単独で用いた場合と比較して活性成分の放出の制御を改善し得ると考えられる。
【0122】
さらに、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上の非晶質MOFナノ粒子が凍結乾燥によって調製される場合、組成物は貯蔵中に安定であり、その後、再分散すると、凝集が減少した、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上の非晶質MOFナノ粒子の懸濁液を提供し得る。
【0123】
第10の態様において、本発明は、1つ以上のMOFナノ粒子をコーティングするための、リン酸基で官能基化されたポリマーの使用を提供する。このとき、活性成分は、コーティングされる1つ以上のMOFナノ粒子内に存在する。
【0124】
好ましくは、上記ポリマーは、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ヘパリン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、及びそれらの誘導体及びコポリマーからなる群から選択される。より好ましくは、上記ポリマーは、ポリエチレングリコール又はその誘導体を含む。
【0125】
実施形態において、好ましくは、上記ポリマーは、末端にリン酸基を有し、好ましくは、上記ポリマーは、単一の末端リン酸基を有する。
【0126】
実施形態において、上記ポリマーがポリエチレングリコール又はその誘導体からなる場合、好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体である。好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、主に直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体であり、より好ましくは、上記ポリマーは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体から本質的になるか、又は直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体からなるものであってもよい。好ましくは、ポリマーは、分岐ポリエチレングリコールではない、及び/又は、分岐ポリエチレングリコールを実質的に含まない。
【0127】
好ましくは、ポリエチレングリコール又はその誘導体は、約40~約250個の繰り返し単位を含んでいる。
【0128】
好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状アルコキシポリエチレングリコール(PEG)を含むか、又は本質的にPEGからなり、このとき上記アルコキシ基は、好ましくは炭素数1~5のアルコキシ、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシである。さらにより好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状メトキシポリエチレングリコール(mPEG)を含むか、又は本質的にmPEGからなる。
【0129】
最も好ましくは、上記ポリマーは、構造Aによるリン酸基末端mPEGである。
【化7】
【0130】
好ましくは、nは約40~約250である。
【0131】
典型的には、mPEGの分子量は、約2000g/mol~約10000g/mol(mPEG2000~mPEG10000)、好ましくは約3000g/mol~約9000g/mol(mPEG3000~mPEG9000)、約4000g/mol~約8000g/mol(mPEG4000~mPEG8000)、約5000g/mol~約7000g/mol(mPEG5000~mPEG7000)、約5000g/mol~約6000g/mol(mPEG5000~mPEG6000)であってもよい。好ましくは、mPEGの分子量は、約5000g/mol(mPEG5000)である。典型的には、上記ポリマーは、リン酸-金属配位によって1つ以上の金属イオンに結合する。
【0132】
本発明の第10の態様に係る使用は、MOFナノ粒子の改善された安定性をもたらし、凍結乾燥を容易にし、及び/又は液体媒体中での再分散を容易にし得るので、特に有利である。本発明の第10の態様に係る使用の利点は、本明細書に記載される実施例及び図において実証される。
【0133】
第11の態様において、本発明は、凍結乾燥された複数のMOFナノ粒子の再分散を改善するためのポリマーの使用を提供する。このとき上記ポリマーは、凍結乾燥前にMOFナノ粒子上にコーティングされる。
【0134】
好ましくは、上記ポリマーは、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ヘパリン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、及びそれらの誘導体及びコポリマーからなる群から選択される。より好ましくは、上記ポリマーは、ポリエチレングリコール又はその誘導体を含む。
【0135】
上記ポリマーがポリエチレングリコール又はその誘導体からなる場合の実施形態において、好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体であり、好ましくは、上記ポリエチレングリコールは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体を主体とし、より好ましくは上記ポリマーは、直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体から本質的になるか、又は直鎖状ポリエチレングリコール又はその誘導体からなり得る。好ましくは、上記ポリマーは、分岐ポリエチレングリコール、又はその誘導体ではない。
【0136】
好ましくは、上記直鎖状ポリエチレングリコールは、約40~約250個の繰り返し単位からなる。
【0137】
好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状アルコキシポリエチレングリコール(PEG)を含むか、又は本質的にPEGからなり、このとき上記アルコキシ基は、好ましくは炭素数1~5のアルコキシ、より好ましくは炭素数1~3のアルコキシである。さらにより好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端直鎖状メトキシポリエチレングリコール(mPEG)を含むか、又は本質的にmPEGからなる。
【0138】
最も好ましくは、上記ポリマーは、構造Aによるリン酸基末端mPEGである。
【化8】
【0139】
好ましくは、nは約40~約250である。
【0140】
典型的には、mPEGの分子量は、約2000g/mol~約10000g/mol(mPEG2000~mPEG10000)、好ましくは約3000g/mol~約9000g/mol(mPEG3000~mPEG9000)、約4000g/mol~約8000g/mol(mPEG4000~mPEG8000)、約5000g/mol~約7000g/mol(mPEG5000~mPEG7000)、約5000g/mol~約6000g/mol(mPEG5000~mPEG6000)であってもよい。好ましくは、mPEGの分子量は、約5000g/mol(mPEG5000)である。典型的には、上記ポリマーは、金属配位、好ましくはリン酸金属配位によって1つ以上の金属イオンに結合する。
【0141】
本発明の第11の態様に係る使用は、複数のMOFナノ粒子の再分散が改善され得るので、特に有利である。本発明の第11の態様に係る使用の利点は、本明細書に記載される実施例及び図において実証される。
【0142】
第12の態様において、本発明は、本発明の第1、第2、第3、及び第8の態様に係る組成物を患者に投与することによって、疾患又は病状を治療する方法を提供する。
【0143】
第13の態様において、本発明は、治療に使用するための、本発明の第1、第2、第3、及び第8の態様に係る組成物を提供する。
【0144】
第14の態様において、本発明は、薬剤の製造のための、本発明の第1、第2、第3、及び第8の態様に係る組成物の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0145】
次に、本発明を以下の図を参照しながら説明するが、これらの図は発明を限定することを意図しない。
【
図1】PCN-222及びPCN-222@PEG-PO
3の合成の模式図である。
【
図2】PCN-222のシミュレーションされたPXRDパターンとPCN-222、PCN-222@PEG-PO
3、及びmPEG-PO
3の実験によるPXRDパターンである。
【
図3】PCN-222@PEG-PO
3及びmPEG-PO
3の31P SSNMRスペクトルである。
【
図4】PCN-222@PEG-PO
3及びPCN-222のXPSサーベイスペクトルである。
【
図5】PCN-222とPCN-222@PEG-PO
3の高分解能Zr 3dスペクトルである。
【
図6】PCN-222の懸濁液(緑線)、PCN-222@PEG-PO
3(青線)、及びPCN-222@PEG-PO
3(ピンク線)の水中再分散液(n=3)の強度平均径を示す図である。
【
図7】PCN-222及びPCN-222@PEG-PO
3の水懸濁液のゼータ電位を示す図である。
【
図8】ドロップキャストしたPCN-222のTEM像である。
【
図9】ドロップキャストしたPCN-222@PEG-PO
3のTEM像である。
【
図10】凍結乾燥されたPCN-222@PEG-PO
3のSEM像であって、挿入図は凍結乾燥されたPCN-222@PEG-PO
3(左)とその再分散液(右)の光学像である。スケールバーは500nmである。
【
図11】PCN-222@PEG-PO
3形成の提案された模式図である。
【
図12】シミュレーションされたPXRDパターンと実験によるPXRDパターンとを示す。異なる時間間隔(2時間、4時間、12時間、及び16時間)で記録した特性評価。
【
図13】77KでのN
2等温線を示す。異なる時間間隔(2時間、4時間、12時間、及び16時間)で記録した特性評価。
【
図14】NLDFT方式で得られたPSDを示す。異なる時間間隔(2時間、4時間、12時間、及び16時間)で記録した特性評価。
【
図15】PCN-222(Hf)のシミュレーションされたPXRDパターンと実験によるPXRDパターンである。
【
図16】
図PCN-222(Hf)のHAADF-STEM像を示す図である。スケールバーは500nmである。
【
図17】UiO-66、MOF-808、NU-901、及びPCN-128のシミュレーションされたPXRDパターンと、UiO-66とUiO-66@PEG-PO
3、MOF-808とMOF-808@PEG-PO
3、NU-901とNU-901@PEG-PO
3、及びPCN-128とPCN-128@PEG-PO
3の実験によるPXRDパターンである。
【
図18】凍結乾燥されたUiO-66@PEG-PO
3のSEM像である。
【
図19】凍結乾燥されたMOF-808@PEG-PO
3のSEM像である。
【
図20】凍結乾燥されたNU-901@PEG-PO
3のSEM像である。
【
図21】凍結乾燥されたPCN-128@PEG-PO
3のSEM像である。
【
図22】親ナノMOF(緑線)の懸濁液、MOF@PEG-PO
3(青線)、及びMOF@PEG-PO
3(ピンク線)の水中再分散懸濁液の強度平均径(n=3)を示す図である。MOF=UiO-66、MOF-808、NU-901、及びPCN-128。スケールバーは500nmである。
【
図23】mPEG-PO
3の1H NMRスペクトルである。
【
図24】mPEG-PO
3の31P NMRスペクトルである。
【
図25】mPEG-PO
3(5k)のGPCトレースである。
【
図26】TFA添加量に依存した異なるサイズのPCN-222のSEM像を示す図である。
【
図27】PCN-222のTEM及びHAADF-STEM像(挿入図)を示す図である。スケールバー、500nm(左)、200nm(右)(挿入部、15nm)。
【
図28】PCN-222@PEG-PO
3のTEM及びHAADF-STEM像(挿入図)を示す図である。スケールバー、500nm(左)、200nm(右)(挿入部、15nm)。
【
図29】a:UiO-66、b:MOF-808、c:NU-901、d:PCN-128のSEM像の図である。bの挿入図,300nm。
【
図30】同じ質量(60mg)のPCN-222@PEG-PO
3をa:風乾したものとb:凍結乾燥したものの光学像である。
【
図31】風乾したPCN-222@PEG-PO
3の異なる倍率でのSEM画像である。
【
図32】凍結乾燥されたPCN-222@PEG-PO
3の異なる倍率でのSEM画像である。
【
図33】FT-IRスペクトルであって、aはフルスペクトル、bは拡大スペクトルである。
【
図34】PCN-222@PEG-PO
3のTGAプロファイルであって、aはPEG化2時間、bはPEG化4時間、cはPEG化12時間、dはPEG化16時間の場合を示す。
【
図35】PCN-222@PEG-PO
3のP 2p XPSスペクトルである。
【
図36】PCN-222(Hf)及びPCN-222(Hf)@PEG-PO
3のXPSスペクトルであって、aはXPSサーベイスペクトル、bはPCN-222(Hf)@PEG-PO
3のP 2pスペクトルの高解像度化である。
【
図37】PCN-222及び2時間PEG化した物のN2吸着等温線とPSDであって、a及びbはmPEG-PO
3の含有量を差し引く前、c及びdはmPEG-PO
3の含有量を差し引いた後を示す。
【
図38】4、12、及び16時間後のPEG化物のN2吸着等温線とPSDであって。a、bはmPEG-PO
3の含有量を差し引く前、c、dはmPEG-PO
3の含有量を差し引いた後を示す。
【
図39】PCN-222と16時間後のPEG化物のN2吸着等温線とPSDを示す。a及びbは吸着前、c及びdはmPEG-PO
3の含有量を差し引いた後を示す。
【
図40】PCN-222(Hf)のN
2吸着等温線を示す。
【
図41】MOF@PEG-PO
3のN
2等温線とPSDを示す図である。a:UiO-66@PEG-PO
3、b:MOF-808@PEG-PO
3@PEG-PO
3、c:NU-901@PEG-PO
3、及びd:MOF-128@PEG-PO
3。
【
図42-1】素のMOF(緑線)とMOF@PEG-PO
3をそれぞれH
2OとPBSに懸濁した場合の長期分散性を示す図である。n=3である。
【
図42-2】素のMOF(緑線)とMOF@PEG-PO
3をそれぞれH
2OとPBSに懸濁した場合の長期分散性を示す図である。n=3である。
【
図43】PCN-222及びPCN-222@PEG-PO
3からのドキソルビシン(DOX)の制御放出プロファイルを示す図である。
【
図44】DOXのUV-可視スペクトルであり、MOF封入とPEG化の前後を示す。
【
図45】PBS(pH=7.4)中のDOX@MOF及びDOX@MOF@PEG-PO
3からのDOXの累積放出プロファイルを示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0146】
本発明は、金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子、特に、コーティングされたMOFナノ粒子、当該コーティングされたMOFナノ粒子の製造方法、及び当該コーティングされたMOFナノ粒子の使用に関する。
【0147】
金属-有機構造体(MOF)は、金属カチオン等の金属イオンと、多座の有機配位子との配位結合からなる結晶性物質である。MOF構造は、多孔質であり得るオープンフレームワークによって特徴付けられる。
【0148】
MOFナノ粒子は、金属-有機構造体からなり、3次元的な構造を持つことがある。本明細書に開示されるMOFナノ粒子は、一般に棒状、球状、又は立方体であってもよい。好ましくは、本明細書に開示されるMOFナノ粒子は、概して棒状である。本発明のポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子は、それぞれ、複数の金属イオン(無機ノード)と複数の有機配位子を含むMOFを含有する。このとき、上記ポリマーが各ナノ粒子の1つ以上の金属イオンに結合していてもよい。
【0149】
本発明による好ましいMOFナノ粒子は、PCN-222、UiO-66、MOF-808、NU-901、及びPCN-128であってよく、より好ましくはPCN-222である。コーティングされたMOFナノ粒子は、MOF@ポリマーと命名する。例えば、ポリマーコーティングが、リン酸配位を介して結合したmPEGであるPCN-222は、PCN-222@mPEG-PO3と表記される。
【0150】
1つ以上のポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子の粒径は、約25nm~約450nmである。誤解を避けるために、特に断らない限り、本明細書に開示された粒径は、コーティングされたMOFナノ粒子に関する。好ましくは、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の粒径は、約100nm~約250nm、より好ましくは、約100nm~約200nmである。
【0151】
ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の粒径は、本明細書に開示される動的光散乱(DLS)法に従って測定することができる。粒径とは、流体力学的直径のことで、調査対象の粒子と同じ速度で拡散する仮想的な球体の半径として定義することができる。
【0152】
好ましくは、コーティングされていないMOFナノ粒子は、実質的に単分散である。コーティングされていないMOFナノ粒子は、例えば、約0.250nm未満、約0.120nm未満、好ましくは約0.100nm~約0.250nmの多分散性指数を有し得る。
【0153】
通常、MOFナノ粒子は、金属イオンの単一種のみを含んでいる。したがって、複数の金属イオン(無機ノード)は、ジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、及びカリウムからなる群から選択される金属のイオンから本質的になる(又はジルコニウム、鉄、亜鉛、ハフニウム、マグネシウム、及びカリウムからなる群から選択される金属のイオンからなる)ものであってもよい。複数の金属イオン(無機ノード)は、ジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンから本質的になる(又はジルコニウム及び鉄からなる群から選択される金属のイオンからなる)ものであってもよい。好ましくは、複数の金属イオンは、ジルコニウムのイオンから本質的になる(又は、ジルコニウムのイオンからなる)。典型的には、選択される金属イオンは、生体適合性があるか、薬学的に許容されるものである。
【0154】
本発明によるMOFに含まれる有機配位子は、多座配位子であってもよい。多座有機配位子とは、錯形成反応において2対以上の電子を供与し、2つ以上の配位結合を形成することができる有機配位子のことである。有機配位子は、2つ以上の配位結合を形成するために一対の電子を供与するのに適した2つ以上の酸素原子及び/又は窒素原子を含んでいてもよい。好ましくは、酸素原子は、カルボキシレート基又はニトロ基として存在することができる。好ましくは、窒素原子は、アミン基として存在し得る。典型的には、複数の有機配位子は、芳香族カルボキシレート、芳香族アミン及び/又は芳香族ニトロであり得る。好ましくは、複数の有機配位子は、テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)、1,4-ベンゼンジカルボン酸(BDC)、1,3,5-ベンゼンジカルボン酸(H3BTC)、1,3,5,8-(p-ベンゾエート)ピレンリンカー(H4TBAPy)、及び4’,4”’,4’””,4’”””-(エテン-1,1,2,2-テトライル)テトラキス(([1,1’-ビフェニル]-3-カルボン酸))(H4ETTC)からなる群から選択され得る。典型的には、選択される有機配位子は、生体適合性があるか、薬学的に許容されるものであろう。
【0155】
上記ポリマーは、リン酸-金属配位によって各ナノ粒子の1つ以上の金属イオンに結合することができる。有利なことに、これは複雑な化学を必要とすることなく、比較的強い結合を提供する。本発明の目的のためのポリマーは、40以上の繰り返し単位を有することができ、交互、周期的、ランダム、ブロック、及びグラフトコポリマーを含むホモポリマー及びコポリマーを含み得る。好ましくは、ポリマーは、実質的に直鎖状である。分岐ポリマーは、典型的には好ましくない。典型的には、選択されるポリマーは、生体適合性があるか、薬学的に許容されるものであろう。
【0156】
一般に、オリゴマーは含まれない。本発明の目的のために、オリゴマーは、分子の特性が1つ又は数個のユニットの除去によって著しく変化するような、いくつかの繰り返し単位を含む分子であると理解される。オリゴマーは、30以下の繰り返し単位を含むことができ、例えば、10以下の繰り返し単位を含むことができる。特に、オリゴヌクレオチドやシクロデキストリンは除外することができる。
【0157】
好ましくは、上記ポリマーは、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ヘパリン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、及びそれらの誘導体及びコポリマーからなる群から選択される。典型的には、上記ポリマーは、リン酸基、好ましくは末端リン酸基を含んでいる。好ましくは、上記ポリマーは、実質的に枝分かれしていない状態からなる。
【0158】
好ましくは、上記ベースポリマーは親水性である。
【0159】
上記ポリマーは、約2000g/mol~約10000g/mol、好ましくは約3000g/mol~約9000g/mol、約4000g/mol~約8000g/mol、約5000g/mol~約7000g/mol、約5000g/mol~約6000g/molの分子量(Mw)を有してよい。分子量は、本明細書に記載されるように、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて決定することができる。
【0160】
より好ましくは、上記ポリマーは、ポリエチレングリコール又はその誘導体、好ましくはリン酸基末端アルコキシポリエチレングリコール(アルコキシPEG)を含み、ここで、アルコキシ基は好ましくは炭素数1~5のアルコキシ、好ましくは炭素数1~3のアルコキシである。さらにより好ましくは、上記ポリマーは、リン酸基末端メトキシポリエチレングリコール(mPEG)を含む。
【0161】
最も好ましくは、ポリマーは構造Aによるリン酸基末端mPEGである。好ましくは、nは約40~約250である。
【化9】
【0162】
理論に縛られるわけではないが、リン酸基末端ポリマーは、MOFナノ粒子の表面に吸着された活性成分を置換すると考えられる。これは、リン酸基末端ポリマーが、MOFナノ粒子の中に封入された活性成分を保持しつつMOFナノ粒子の表面から余分な活性成分を除去すると共に、MOFナノ粒子からの活性成分の放出を制御するのに役立ち得るため特に有利である。したがって、理論に縛られるわけではないが、ポリマーコーティングステップの前に活性成分封入ステップを実施することが特に有利である場合がある。
【0163】
活性成分とは、MOFナノ粒子の意図した使用の条件下で意図した効果をもたらす剤であり、典型的にはMOFナノ粒子の外部の環境において使用される。本発明による活性成分は、薬学的活性成分、農薬、殺虫剤、香料、及び染料であってもよい。
【0164】
薬学的活性成分とは、人又は動物の身体の疾患や病状に対して治療的又は予防的な効果を有する成分である。
【0165】
特に限定されないが、本発明における使用に適した薬学的活性成分の例としては、抗生物質、鎮痛剤、α-ブロッカー、抗アレルギー剤、抗喘息剤、(アレルギー性鼻炎用剤、慢性蕁麻疹用剤)、抗炎症剤、制酸剤、駆虫剤、抗不整脈剤、抗関節炎剤、抗菌剤、抗不安剤、抗凝固剤、抗うつ剤、抗糖尿病剤、下痢止め剤、抗利尿剤、抗てんかん剤、抗真菌剤、抗痛風剤、抗高血圧剤、抗失禁剤、抗不眠剤、抗マラリア剤、抗片頭痛剤、抗ムスカリン剤、抗悪性腫瘍・免疫抑制剤、抗原虫剤、抗リウマチ剤、抗鼻炎剤、抗痙攣剤、抗甲状腺剤、抗ウイルス剤、抗不安剤、鎮静剤、催眠剤・神経弛緩剤、β-ブロッカー、抗前立腺肥大症剤(BHP)、強心剤、コルチコステロイド、鎮咳剤、細胞毒性剤、鼻づまり薬、利尿剤、酵素、抗パーキンソン病剤、胃腸薬、ヒスタミン受容体拮抗薬、ホルモン補充療法、脂質調整薬、局所麻酔薬、神経筋剤、硝酸塩及び抗狭心症薬、抗疼痛薬、吐き気止め、栄養剤、オピオイド鎮痛薬、ワクチン、タンパク質、ペプチド及び遺伝子組換え薬剤、化学療法誘発性及び術後の吐き気と嘔吐の予防薬、プロトンポンプ阻害剤、性ホルモン及び避妊剤、殺精子剤、動物用薬剤、糖尿病性胃うっ滞の治療剤、不妊症治療剤、子宮内膜症治療剤、月経障害治療剤、乗り物酔い止め、運動障害治療剤、統合失調症治療剤、発作・パニック障害治療剤、性機能障害(男性及び女性)治療剤、刺激性排尿障害治療剤等、あるいはこれらの組み合わせが挙げられる。癌の治療に有用な細胞毒性薬学的活性成分の使用は特に好ましい。
【0166】
薬学的組成物は、固体、懸濁液、好ましくは乾燥粉末、又は水性懸濁液として提供することができる。本明細書における懸濁液には、コロイド状懸濁液が含まれる。好ましくは、懸濁液はコロイド懸濁液である。これは、赤色レーザーを使ってチンダル効果を観察することで確認できる。
【0167】
薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤をさらに含むことができる。好ましくは、賦形剤は、溶媒、共溶媒、緩衝剤、安定剤、酸化防止剤、保存料、キレート剤、乳化剤、香料、潤滑剤、懸濁化剤、等張化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁補助剤、分散剤、保湿剤、増粘剤、着色剤、湿潤剤、消泡剤、粘度調整剤、甘剤及びその組み合わせからなる群から選択することが好ましい。
【0168】
本発明の乾燥粉末薬学的組成物は、薬学的活性成分を含有する、凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子の組成物全体の割合として、約50重量%~約100重量%、約60重量%~約90重量%、約70重量%~約80重量%を含み得る。
【0169】
好ましくは、薬学的活性成分を含有する、凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子は、水溶液中で最初の6時間にわたって約30重量%未満の活性成分を放出し、好ましくは約25重量%未満、より好ましくは約20重量%未満の活性成分を放出する。通常、水溶液は25℃でダルベロッコのPBS、pH7.4である。
【0170】
本発明による薬学的組成物の投与方法としては、経口、非経口(例えば、静脈内、皮下、筋肉内、関節内)、皮膚(例えば、局所)、又は吸入投与が挙げられ、静脈内投与が特に好ましい。薬学的組成物は、液状組成物であってもよい。
【0171】
凍結乾燥(フリーズドライ、クライオデシケイションとも呼ばれる)は、低温で行われる乾燥プロセスである。一般に凍結乾燥は、物質の三重点以下まで温度と圧力を下げ、凍結した溶媒(水氷等)を昇華させて除去する。本明細書に開示されるような水性組成物の場合、凍結乾燥は、約-50℃~-80℃、好ましくは約-70℃の温度、及び約1000Pa(0.01バール)~約100Pa(0.001バール)、好ましくは約800Pa(0.008バール)の圧力で実施され得る。
【0172】
好ましくは、凍結乾燥は、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子の濃縮水性スラリーに対して行われ、典型的には、水性スラリーは、約5ml~約25mlの体積を有する複数のバイアル内で凍結乾燥される。
【0173】
再分散は、以前に乾燥させた固体材料(例えば、本発明の凍結乾燥組成物)を、2回又はそれ以上の回数、懸濁液に分散させる工程である。好ましくは、再分散された懸濁液は、コロイド懸濁液である。典型的には、コロイド懸濁液は少なくとも1週間は安定である。
【0174】
ポリマーコーティングされたナノ粒子MOFが封入された活性成分を含む場合、好ましくは、封入されていない余剰の活性成分を除去するために、凝縮工程と凍結乾燥の間に洗浄される。典型的には、水を使って洗浄する。
【実施例】
【0175】
次に、以下の非限定的な実施例を参照することにより、本発明を実証する。
【0176】
特に断りのない限り、室温は20℃(293.15K、68°F)、圧力は1atm(14.696psi、101.325kPa)をそれぞれ表す。
実験的手法
本書で言及されている場合、以下の方法及び手順が採用された。
粉末X線回折(PXRD)
【0177】
粉末X線回折(PXRD)データは、Bruker D8 DAVINCI回折計で298K(24.85℃)、CuKα放射線を用いて収集した。計算されたPXRDパターンは、Mercuryプログラム及び単結晶反射データを用いて作成した。
熱重量分析(TGA)
【0178】
測定は、TA Instruments社製Q500熱重量分析装置を用いて行った。測定は、室温から800℃まで、窒素下で5℃/分の昇温速度で集めた。
ガス取り込み量
【0179】
N2吸着等温線測定は、Micromeritics社製3Flexアナライザーを用いて77K(-196.15℃)で実施した。内蔵ターボポンプを使用し、120℃、20時間の真空下で試料を脱気した。BET面積はBrunauer-Emmett-Teller(BET)方程式を適用して推定した。
動的光散乱(DLS)
【0180】
測定値は、633nmで動作するHe-Neレーザーを備えたZetasizer NanoZS,(Malvern Instrument Ltd.,英国)で水懸濁液中で25℃で記録し、Zetasizer Softwareを使って分析した。
誘導結合プラズマ-光学発光分光法(ICP-OES)
【0181】
ICP-OESは、Perkin Elmer ICP-OES Optima 2100DVを用いて実施した。試料を硝酸2mLと塩酸6mLに分散させ、全ての反応が停止するまで、ドラフト内で少なくとも1時間、室温で放置した。その後、サンプルを90℃で10時間加熱し、完全に消化した。測定前に750倍に希釈した。
X線光電子分光法(XPS)
【0182】
XPS分析は、Thermo Fisher Scientific ESCALAB 250Xi XPSシステムを用いて実施した。全ての試料に単色Al-Kα源(1486.74eV)と電荷中和器を使用した。サーベイスキャンは、パスエネルギー100eV、1スキャン、ドエルタイム50msで取得した。高解像度データは、50eVのパスエネルギー、50スキャン、ドエルタイム50ms、標準的な磁気レンズを用いて取得した。
液体核磁気共鳴分光法(NMR)
【0183】
液体NMRは、Bruker 400MHz Avance III HD Smart Probe Spectrometerを用いて実施した。
固体核磁気共鳴分光法(NMR)
【0184】
固体NMR実験は、4.7T磁石(ラーモア周波数に対応:ν0(1H)=200MHz及びν0(31P)=81.0MHz)を備えたBruker Avance III 200MHz分光器で実施した。ブルカー社製1.3mmダブルチャンネルマジックアングルスピニング(MAS)プローブを使用した。スピニング周波数は60kHzであった。スペクトルは、ローター同期ハーンエコー実験により、励起とリフォーカスのパルス長をそれぞれ1.56μsと3.12μsに最適化して取得した。全ての実験で1秒のリサイクル遅延を使用し、4096(mPEG-PO3サンプル)又は8192(MOFサンプル)のトランジェントが収集された。スペクトルは、50Hzの指数関数的アポダイゼーション、ゼロフィリングで処理し、その後フーリエ変換を行った。31P化学シフトは、外部参照としてH2O中の85%H3PO4(δiso(31P)=0ppm)を用いて校正した。
紫外-可視蛍光分光法
【0185】
Tecan Spark(R) Multimode Microplate Readerを用いて、UV-可視及び蛍光スペクトルを記録した。
フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)
【0186】
FT-IRは、Bruker Tensor 27 FTIRを用い、減衰全反射法(ATR法)で実施した。
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)
【0187】
GPCは、LC-20AD Pump、SIL-20Aオートサンプラー、CTO-20Aカラムオーブン、CBM-20A制御ユニットからなる島津HPLCシステムで実施した。
走査型電子顕微鏡(SEM)
【0188】
SEMテスト用のサンプルは、Pt又はAuを40秒間コーティングし、FEI Nova Nano SEM 450を用いて画像化した。
透過型電子顕微鏡(TEM)
【0189】
TEM試験用のサンプルは、超音波を利用してエタノールに分散させることで作製した。その後、カーボン支持膜付き銅グリッドに少量の懸濁液をドロップキャストした。TEM顕微鏡写真は、Tecnai F20で加速電圧200kVで収集した。
高角度暗視野走査型透過電子顕微鏡(HAADF-STEM)イメージング
【0190】
サンプルは、水溶液から湿式分散法で作製した。走査型透過電子顕微鏡(STEM)は,FEI Tecnai Osirisを用い,OneView CMOSカメラを用いて200kVで実施した.エネルギー分散型X線(EDX)化学マップは、Super-X検出器セットアップを用い、全取得立体角0.9srで取得した。EDXデータは、ES Visionを用いて分析した。
多角度光散乱によるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC-MLAS)
【0191】
SEC-MLASは、LC-20AD Pump、SIL-20Aオートサンプラー、CTO-20Aカラムオーブン、CBM-20A制御ユニットからなる島津HPLCシステムで実施した。カラムセットは、1x PSS SUPREMA analytical 100Å(8×300mm)と2x PSS SUPREMA analytical 3000Å(8×300mm)で構成されていた。Wyatt DAWN HELEOS-II多角度光散乱(MALS)検出器(レーザーはλ=658nm)とWyatt Optilab rEX微分屈折率(DRI)検出器(658nm光源)でデュアル検出を実現した。0.1mol/L硝酸ナトリウムと0.01mol/Lアジ化ナトリウムを含むMilliQ Waterを溶離液として、1.0mL/minの流速で使用した。カラム温度と検出器温度は30℃に保った。全てのデータ解析は、Wyatt Astra V6.1.1ソフトウェアを用いて行った。水中でのポリ(エチレングリコール)のdn/dcの文献値(0.134ml/g)(Hasseら、Macromolecules 1995,28(10),3540-3552参照)を用いて、全てのサンプルの分子量を決定した。
分子動力学(MD)シミュレーション
【0192】
PCN-222の構造は、Fengらの研究から引用した(Angew.Chem.Int.Ed.2012,51(41),10307-10310)。mPEG-PO3(128個のモノマーユニットからなる)の構造をMaterial Studioで作成する。ポリマーとフレームワークの両方の形状最適化は、Materials StudioのForciteモジュールを使って行われる。フレームワークとPEGの電荷は、EQeqプロトコルを用いて計算した(Wilmerら,J.Phys.Lett.2012,3(17),2506-2511を参照のこと).全てのシミュレーションは、ユニバーサルフォースフィールド(UFF)(Rappeら,J.Am.Chem.Soc.1992,114(25),10024-10035)パラメータを用い、LAMMPS(Plimpton,J.Comput.Phys.1995,117(1),1-19.)分子動力学パッケージを用いて行い、レナード-ジョーンズ、結合、角度、二面角及び不適切なねじれポテンシャルを記述する。シミュレーションボックスは、PCN-222の2x2x2セル(これは有限サイズ効果を避けるために十分に大きいと考えられている)と、フレームワークの外面に置かれた1本のmPEG-PO3鎖で構成されている。3次元全てで周期的な境界条件が適用される。最初に、NVEアンサンブルを用いて、298K(24.85℃)の温度に達するまで、モデルのエネルギー最小化(平衡化実行)を行う。次に、カノニカルアンサンブル(NVT)を用いて、1.5nsの期間、本番を実施する。全てのMDシミュレーションは、1fsのタイムステップを用いて行われる。能勢-フーバーサーモスタット(Evansら,J.Chem.Phys.1985,83(8),4069-4074)を用い、ダンピングファクターを0.1psとして温度を維持した。長距離静電相互作用はエワルド総和を用いて計算され、精度は1×10-4に設定されている。非結合ファンデルワールス相互作用はレナード-ジョーンズポテンシャル、短距離静電相互作用はクーロンポテンシャルを用いて計算し、いずれも12.5Aでカットオフした。軌道は0.01nsごとにサンプリングし、VMDを用いて表示した(Humphreyら.,J.Mol.Graph.1996,14(1),33-38を参照のこと)。
物質及び合成
【0193】
特に断りのない限り、全ての試薬は市販品から入手し、さらに精製することなく使用した。
mPEG5K-ホスフェート(mPEG-PO
3)の合成
【化10】
【0194】
ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(Mn=5000、37.0mmol)を乾燥テトラヒドロフラン(THF)150mLに溶解し、撹拌しながらPOCl3(44.4mmol,1.2equiv)を滴下した。得られた溶液をN2流下で60℃に10時間加熱し、反応中に生成したHClを除去した。室温まで冷却した後、蒸留水(40ml)を加え、その後、混合物をさらに3時間60℃まで再加熱し、再び室温まで冷却した。THFを真空下で除去し、分子量3,500カットオフの透析チューブを用いた透析により原料を精製し、次いで残留水を除去することにより、mPEG-PO3を白色固体として得た(154.8g,31.45mmol,85%)。1H NMR(D2O,400MHz),δ:3.63(s,448H,-CH2OCH2-),3.31(s,3H,-OCH3) 31P NMR δ:(D2O,162MHz)δ:0.22.
Zr6クラスターの合成
【0195】
Zr6クラスターは、報告されている手順に従い合成した(Nohら,Chem.Mater.2018,30(7),2193-2197)。n-ブタノール中のZr(OBu)4(5mmol)の80%溶液15mlを、n-プロパノール300ml中の安息香酸100g(818.8mmol)の溶液に加えると、透明な混合溶液が得られた。混合物をさらに一晩還流させると、白色固体状の沈殿が現れる。濾過後、10.2g(収率:63%)の固体を分離し、無水n-プロパノールで5回洗浄し、真空下で乾燥させた。
PCN-222ナノ粒子の、粒径が制御された合成
【0196】
テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)(22.5mg、28.5μmol)、Zr6クラスター(38mg、14.2μmol)、8mLのDMF、及びXμLのTFAを、20mLネジ付きバイアル内で超音波で溶解させた。得られた混合物を、120℃のブロックヒーターに5時間入れた。室温まで冷却した後、得られた紫色のサンプルを高速遠心分離で集め、次いで新しいジメチルホルムアミド(DMF)で3回洗浄し、エタノールで3回交換した後、最終生成物をエタノールに再分散させてさらに使用した。(X=80、130、180及び400μL、関連サイズ=~80、~120、~280及び~620nm)。
【0197】
PCN-222の粒径を制御するために、異なる含有量のトリフルオロ酢酸(TFA)を利用することができる。
PCN-222(Hf)の合成
【0198】
TCPP(10mg、12.6μmol)、HfOCl2・8H2O(25mg、62.1μmol)、8mLのDMF、200μLのTFAを20mLネジ付きバイアルに超音波で溶解させた。得られた混合物を、120℃のブロックヒーターに5時間入れた。室温まで冷却した後、得られた紫色のサンプルを高速遠心分離で集め、次いで新しいDMFで3回洗浄し、エタノールで3回交換した後、最終生成物をエタノールに再分散してさらに使用した。
UiO-66(~430nm)の合成
【0199】
1,4-ベンゼンカルボン酸(BDC)(320mg、1.93mmol)、ZrCl4(466mg、2.00mmol)、安息香酸(2.44g、20mmol)、及び36mLのDMFを100mLネジ付きバイアル中で超音波で溶解させ、次いで濃HCl(0.33mL)を添加した。混合物を120℃で48時間加熱した。室温まで冷却した後、得られたサンプルを高速遠心分離で回収し、次いで新しいDMFで3回洗浄し、エタノールで3回交換し、最終生成物をエタノールに再分散させてさらに使用した。
MOF-808(~90nm)の合成
【0200】
1,3,5-ベンゼントリカルボン酸(70mg、0.33mmol)、ZrCl4(233mg、1.00mmol)、ギ酸(5.6mL)及びDMF(10mL)を50mLのネジ付きバイアル中で超音波で溶解させた。混合物を120℃で48時間加熱した。室温まで冷却した後、得られたサンプルを高速遠心分離で回収し、次いで新しいDMFで3回洗浄し、エタノールで3回交換し、最終生成物をエタノールに再分散させてさらに使用した。
NU-901の合成(~240nm)
【0201】
1,3,6,8-テトラキス(p-安息香酸)ピレン(H4TBAPy)(25mg、40.4μmol)、ZrOCl2・8H2O(121mg、375.5μmol)、4-アミノ安息香酸(400mg、2.92mmol)、TFA(200μL)、及びDMF(20mL)を50mLネジ付きバイアル中で超音波で溶解させた。混合物を140℃で50分間加熱したところ、黄色の懸濁液が形成された。室温まで冷却した後、得られたサンプルを遠心分離で集め、次いで新しいDMFで3回洗浄し、エタノールで3回交換した後、最終生成物をエタノールに再分散してさらに使用した。
PCN-128(~160nm)の合成
【0202】
(4’,4”’,4’””,4’”””-(エテン-1,1,2,2-テトライル)テトラキス([1,10-ビフェニル]-4-カルボキシレート)(ETTC)(10mg、12.3μmol)、Zr6クラスター(20mg、7.5μmol)、DMF(4mL)、及びTFA(100μL)を6mLネジ付きバイアル中で超音波で溶解させた。その後、トリエチルアミン(TEA)(20μL)を添加した。混合物を120℃で24時間加熱した。室温まで冷却した後、得られたサンプルを高速遠心分離で回収し、次いで新しいDMFで3回洗浄し、エタノールで3回交換し、最終生成物をエタノールに再分散させてさらに使用した。
PCN-222の、粒径が制御された合成と特性評価
【0203】
PCN-222は、Zr(IV)ベースのポルフィリン系MOFの一例である。PCN-222は、テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)リンカーに接続された8つの端部を持つZr6クラスターからなり、それぞれ1.7nmと3.6nmの直径の1次元マイクロ及びメソ多孔性チャネルを備えている。
【0204】
まず、上述のようにZr
6クラスターを合成した。ナノPCN-222は、前述のように、トリフルオロ酢酸(TFA)を調整剤として用い、TCPPとZr
6クラスターとのソルボサーマル反応により調製した(
図1)。PCN-222の粒径は、TFAの使用量を調整することにより調節することができる。TFAの量を多くすると、粒径が大きくなったnanoPCN-222を得ることができる(
図26)。粒径約120nmのnanoPCN-222が選択された。
【0205】
粉末X線回折(PXRD)では、単結晶構造から予測(シミュレーション)されるパターンと一致するブロードなピークが存在することが示され、nanoPCN-222の相純度が確認された(
図2)。
図13は、PCN-222の77Kにおける典型的なType IV N
2吸着等温線である。
【0206】
透過型電子顕微鏡(TEM)イメージングによれば、PCN-222ナノ粒子は棒状の形態を有し、大きさが均一であること確認され、高角度環状暗視野走査透過型電子顕微鏡(HAADF-STEM)イメージングでは、高配向のメソポアの存在が確認されている(
図27)。
【0207】
PCN-222の動的光散乱(DLS)は、流体力学的直径の平均値が118.0nm±0.8nm、多分散性指数が0.104nm±0.009nmであった(
図6参照)。ゼータ電位(DLS)は31.7mV±0.4mV(
図7)であり、表面上の優勢な末端基は金属(無機ノード)ユニットであることが示唆されている。
PCN-222@PEG-PO
3の合成と特性評価
【0208】
mPEG-PO
3は、ポリ(エチレングリコール)メチルエーテル(Mn=5000g/mol)のベースポリマーから71%の全体収率で調製された。
【化11】
【0209】
核磁気共鳴(NMR)とゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のスペクトルから、mPEG-PO
3が生成していることとその純度が確認された(
図23、24、25)。
31P NMR(
図24)では、1つの一重項のみが観測され、リン酸基に1つ又は2つのPEG鎖が結合していることが示されたが、GPC(
図25)から得られたMnは、1つのPEG鎖の存在をさらに示している。
PCN-222のPEG化(PCN-222@PEG-PO
3)の手順
【0210】
mPEG-PO3溶液(10mL、H2O中25mg/mL)を、PCN-222(5mL、10mg/mL)の水懸濁液に添加した。室温で16時間撹拌した後、反応混合物を純脱イオン水に対して12時間透析(分子量カットオフ、12,000g/mol~14,000g/mol)して未反応の試薬を除去した。脱イオン水をデキャンタし、4時間ごとに新しいもの(20mL、80mM)を補充した。得られたPCN-222@PEG-PO3懸濁液をTelstar LyoQuest卓上型凍結乾燥機(0.008mBar、-70℃)を用いて凍結乾燥し、比較的低密度の茶色の生成物を得るか、遠心分離(18000rpm、35分)により回収してエタノールで洗浄し、風乾すると比較的高密度で濃色の生成物を得ることができた。
【0211】
なお、PCN-222@PEG-PO3ナノ粒子における最終的なPEG担持量は、以下の表1に示すように、ジルコニウム(PCN-222)に対するリン酸塩(mPEG-PO3)の比で決定した。
【0212】
UiO-66@PEG-PO3、MOF-808@PEG-PO3、NU-901@PEG-PO3及びPCN-128@PEG-PO3のPEG化方法は、PCN-222@PEG-PO3のそれと実質的に同じである。
乾燥PCN-222@PEG-PO3
【0213】
PCN-222@PEG-PO3を乾燥させる方法が、得られる乾燥粉末の形態に影響を与えることが示された。
【0214】
上記の最終製品水懸濁液をスピンダウンさせ、エタノールで交換した後、周囲条件(常温常圧)で乾燥させたところ、比較的緻密で濃い色の試料が得られた(
図30a)。
【0215】
一方、懸濁液を凍結乾燥すると、茶色で比較的低密度の物質が得られた(
図10の挿入図及び
図30b)。
【0216】
その結果、風乾したものは大部分が凝集していたが、凍結乾燥した試料は超音波処理によって容易に再分散されてピンク色の懸濁液になることがわかった(
図10、挿入図)。赤色レーザー光を通すと特徴的なチンダル効果が見られ、再分散した懸濁液がコロイド状であることが明らかになった。
【0217】
PCN-222@PEG-PO
3中のmPEG-PO
3の存在を可視化するために、乾燥サンプルの走査型電子顕微鏡観察(SEM)を実施した(
図31及び32)。SEM画像から、PCN-222@PEG-PO
3が密に充填され、均一に分散しており、棒状の形態をしていることが明らかになった。
【0218】
凍結乾燥したPCN-222@PEG-PO
3では、マトリックス内にしっかりと埋め込まれたナノMOFがはっきりと観察された。理論に縛られるわけではないが、表面に結合したmPEG-PO
3分子(
図7、
図32)が粒子の仕切りとして機能し得ることで、独立したPCN-222@PEG-PO
3粒子が形成され、それによりマトリックスが形成されると考えられる。
【0219】
一方、風乾したPCN-222@PEG-PO3のSEMでは、単分散の粒子がセンチメートルサイズの三次元超構造にランダムに詰め込まれており、凍結乾燥サンプルでは観察されたマトリックスが存在しないことがわかった。このことから、風乾したサンプルでは、mPEG-PO3分子が粒子の周囲に密着していることがわかる。また、風乾したPCN-222@PEG-PO3のナノMOFの表面は、親PCN-222と比較して粗く、これは風乾したPCN-222@PEG-PO3の表面の特徴が、キャップポリマーのバルクによって支配され、表面上にナノ乳頭突起を形成するので表面が比較的粗くなるためである。
PCN-222@PEG-PO3へのmPEG-PO3の組込み
【0220】
表1によると、誘導結合プラズマ-光学発光分光法(ICP-OES)を用いて、Zrに対するPの比を測定することにより、PCN-222@PEG-PO
3におけるmPEG-PO
3の組み込み量が、コーティング粒子の重量に対して32.9%であることがわかる。
【表1】
【0221】
材料は、PCN-222のPEG化を実証するために特性評価された。PCN-222@PEG-PO
3のPXRDは、親パターン及びシミュレーションパターンとよく相関し、これによりPEG化後のPCN-222の結晶性を確認した。2θ=19.0°及び23.2°を中心とする2つの新しいピークの存在は、PCN-222@PEG-PO
3中の高分子量及び半結晶PEGに由来する(
図12)。
【0222】
フーリエ変換赤外(FT-IR)スペクトルは、mPEG-PO
3の存在をさらに証明するものであった。2866cm
-1と1088cm
-1の2つの新しいバンドの出現は、mPEG-PO
3分子のC-HとP-Oの伸縮振動にそれぞれ起因すると考えられる(
図33a)。特に、PCN-222@PEG-PO
3のP-O結合のFT-IR吸収は、mPEG-PO
3のそれと比較して、1095cm
-1から1088cm
-1へのシフトが観察され(
図33b)、Zr
6クラスターとリン酸基の間の相互作用の存在を示すと共に、組み込まれたmPEG-PO
3の全てのリン酸基が配位に参加し、単に外面に吸着されているのではない事実を示している。
【0223】
ドロップキャストしたPCN-222@PEG-PO
3のTEM画像からは、親MOFのよく保存された形態と、全体的に単分散した粒子とがはっきりと確認できる(それぞれPCN-222とPCN-222@PEG-PO
3の
図8と
図9)。さらに、HAADF-STEMイメージングにより、PEG化後も高度に秩序化されたメソポアが維持されていることが示されている(
図28)。
【0224】
PCN-222の分散性に及ぼすPEG化の影響を調べるために、DLSをさらに採用した。PCN-222をPEG化した結果、粒径129.7nm±0.9nmの粒子が得られ、親PCN-222よりわずかに大きくなった(
図6)。同時に、多分散性指数も0.076nm±0.004nmと低下した。理論に縛られるわけではないが、これはPEG化の過程で親PCN-222の小さな凝集体が分散されたためと説明できる。
【0225】
図7より、PCN-222サンプルの外面に末端リン酸基が結合したことにより、ゼータ電位が親PCN-222の31.7mV±0.4mVからPCN-222@PEG-PO
3の-43.9mV±1.2mVへと負の値になったことがわかる。
【0226】
31P固体核磁気共鳴(SSNMR)及びX線光電子(XPS)スペクトルを用いて、mPEG-PO
3とフレームワークの相互作用を検討した。
図3は、固体状態の遊離mPEG-PO
3とPCN-222@PEG-PO
3におけるリン共鳴の化学シフトを示したものである。遊離のmPEG-PO
3は-0.30ppm付近に鋭いピークを示し、PCN-222のPEG化後はピークがブロードになり、-8.39ppmにアップシフトした。リン共鳴のシフトは、mPEG-PO
3のリン酸基とMOFとの間の相互作用を示す。XPS調査及びP 2pスペクトルの高分解能化により、PCN-222@PEG-PO
3にリンが存在することが確認され(
図4及び
図35)、これは組み込まれたmPEG-PO
3のリンに属する。
【0227】
さらに、高分解能Zr 3dスペクトルでは、親PCN-222のZr(IV)の3d
3/2と3d
5/2に帰する184.4eVと182.0eV付近の2つのメインピークがそれぞれ183.5eVと181.1eVにダウンシフトしている(
図5参照)。
【0228】
理論に縛られるわけではないが、結合エネルギーが低エネルギー側にシフトしたのは、PCN-222のZr-Oクラスターに配位したTFAが、PCN-222@PEG-PO
3内のmPEG-PO
3と置換されたためではないかと考えられる。TFAのトリフルオロ酢酸基に比べ、mPEG-PO
3のリン酸基は電気陰性度が低い。この結合により、Zrの電子密度の損失が少なくなり、3d電子の結合エネルギーが減少する。
図4から、親PCN-222の688.2eVのF 1sピークがPEG化後に著しく弱くなっており、TFA結合量が減少していることがわかる。
【0229】
これらを総合すると、PEG化後の化学共鳴と結合エネルギーのシフトは、Zr-O-P配位結合が形成されていることを示している。
mPEG-PO3が内部空隙に与える影響
【0230】
次に、PCN-222の内部空隙にmPEG-PO
3を組み込むことによる影響を調べるために、77KでN
2取り込み実験を行った。
図13に示すように、PCN-222及びPCN-222@PEG-PO
3は、P/P0=0.8でそれぞれ526cm
3g
-1及び129cm
3g
-1のN
2を吸着している。
【0231】
含有されるmPEG-PO3がnanoPCN-222の外面にあると仮定すると、P/P0=0.8における理想的なN2取り込み量は、含有されるmPEG-PO3量を差し引いた353cm3g-1となり(表2)、今回得られた実際の値(129cm3g-1N2)は、理想的なN2取り込み量の36.5%となる。
【0232】
理論に縛られるわけではないが、理想値と実験値の間の不一致は、PEG化を16時間行った後、nanoPCN-222の内部空隙にmPEG-PO
3分子が浸透したためであると考えられる。さらに、非局所密度汎関数理論(NLDFT)法を用いて得られた細孔径分布(PSD)も、空隙率の減少を明らかにしており(
図14)、本発明が、空隙率を部分的に犠牲にしながらMOFナノ粒子表面を改質することをさらに実証している。
時間依存の検討
【0233】
PCN-222のPEG化を、反応時間を変えてクエンチすることにより、時間依存性の検討を行い、いくつかのex situ分光学的及び顕微鏡的特性評価で中間体を分析した。これらの得られたPEG化PCN-222は、x(x=2、4、12、16)を反応時間として、PEG化xhと名付けた。
時間依存性検討のための合成
【0234】
120nmサイズのPCN-222(10mg/mL)の5mL水懸濁液を含む4つの同一のバイアルに、それぞれ10mLのmPEG-PO3溶液(H2O中25mg/mL)を添加した。混合物を室温で2、4、12及び16時間攪拌(800rpm)した。
【0235】
各時点で、1つのサンプルを遠心分離して未反応のmPEG-PO3を除去し、続いてそれを透析チューブ(分子量カットオフ、12,000g/mol~14,000g/mol)に入れ、純脱イオン水に対して12時間透析した。脱イオン水をデキャンタし、4時間ごとに新しいもの(20mL、80mM)を補充した。
【0236】
得られた懸濁液をTelstar LyoQuest卓上型凍結乾燥機(0.008mBar、-70℃)を用いて凍結乾燥することにより、PEG化xh(xは反応時間)と名付けた所望の生成物を得、さらなる特性評価に使用した。
時間依存性検討の結果
【0237】
図12と
図33aは、PEG化プロセス全体を通して、それらのPXRDパターンとFT-IRスペクトルに大きな変化がないことを示している。ICP-OESは、Pに対するZrの比を測定することにより、異なるPEG化時間で取り込まれたmPEG-PO
3の量を定量化する(表1)。その結果、2時間後のmPEG-PO
3の担持量は27.8重量%であり、反応時間を長くすると33重量%付近でプラトーとなることがわかった。
【0238】
さらに、熱重量分析(TGA)プロファイルも同様の傾向を示す(
図34)。mPEG-PO
3の封入量は、最初のプラトー(376℃~452℃)のTGA曲線との差に基づいて算出した。
【0239】
反応時間を変えた場合のmPEG-PO
3の位置を調べるため、N
2吸着特性を調べた。2時間後、P/P
0=0.8でのN
2取り込み量は348cm
3g
-1に減少し(
図13)、理想のN
2取り込み量の91.6%を占めた(表2)。理論に縛られるわけではないが、これはPEG化が主に表面で起こり、少量のmPEG-PO
3分子又は表面結合したmPEG-PO
3のPEG鎖が空隙に浸透するためと考えられる。
【表2】
【0240】
2時間後の空隙率に対するmPEG-PO
3の効果は、結合したmPEG-PO
3の量を差し引くと、より簡単に観察することができる。
図37に示すように、N
2等温線とPSDの結果は、そのN
2等温線とPSDの低下がわずかであることを示している。これも理論に縛られるわけではないが、この結果からも、PEG化は主に初期段階で表面で起こることが示唆される。その後、4時間の連続PEG化により、mPEG-PO
3量は33.3重量%まで増加し(表1)、P/P
0=0.8での対応N
2取り込み量は124cm
3g
-1に減少した。これは理想的なN
2取り込み量の35.3%を占める(表2)。これらの値は12時間、16時間とより長時間の反応でも一定となり(
図13)、このことはPEG化が平衡状態に到達してmPEG-PO
3分子は粒子の孔に入り込んだことがわかる。理論に縛られるわけではないが、過剰なmPEG-PO
3分子は、外面の利用可能な結合部位を実質的に完全に占有した後、チャネルへの浸透を開始すると考えられる。
【0241】
以上の結果から、PCN-222のmPEG-PO
3による2段階のPEG化プロセスが提案されたことが示される。理論に縛られるわけではないが、正電荷を持つPCN-222と負電荷を持つmPEG-PO
3との静電的相互作用により、まず外面でPEG化が行われる。表面で利用可能な結合部位を占有した後、未反応のmPEG-PO
3分子はPCN-222の内部チャネルに入り始め、空隙率を低下させる(
図11)。
元素マッピング
【0242】
STEMでエネルギー分散型X線分光法(EDX)を用いて、元素マッピングを行った。しかしながら、ZrのLa線は2.042keV、PのKa線は2.012keVであることから、PのエネルギーウィンドウはZrのそれと重なり、元素の誤認識につながる。
【0243】
そこで、ZrベースのPCN-222をHfベースのPCN-222(PCN-222(Hf)と表記)に置き換えることにより、ポリマーでコーティングされた代替のナノ粒子MOFを形成することで、この問題を解決した。PXRDとN
2等温線により、PCN-222(Hf)の結晶性と空隙率を確認し(
図15、38、40)、STEMイメージングとXPSスペクトルはPCN-222(Hf)のロッドモルフォロジーとHfの存在を明確に示した(
図16、
図36)。
【0244】
ZrベースのPCN-222と同じPEG化条件で、2時間、4時間、12時間、16時間後のPCN-222(Hf)のex situ STEM-EDXが得られ、PとHfの分布がマッピングされた。2時間後、Hfのシグナルは粒子全体に均一に分布しているのに対し、Pのシグナルは主に端部から発生していることがわかった。このことは、mPEG-PO3分子が主に初期段階で表面にグラフトすることを示す、さらなる証拠となった。反応時間が4時間から16時間へと進むにつれて、Pシグナルは粒子全体に均一に分布している。
【0245】
さらに、16時間PEG化した後のPCN-222(Hf)のEDXラインスキャンも行い、これにより単一粒子に沿ってHfとPが均質に分布していることが実証された。ここで観測された結果は、前述のTGA、N
2取り込み、ICP-OESと非常に一致しており、PCN-222及びPCN-222(Hf)ナノ粒子のmPEG-PO
3によるPEG化が2段階で進むことが確認された(
図11)。
リン酸配位PEG化法の多用途性
【0246】
上記のPEG化法を、UiO-66、MOF-808、NU-901、及びPCN-128の4種類の追加のZrベースのMOFにまで拡張した(
図29)。関連する凍結乾燥PEG化MOFを無事に取得することができ、PCN-222に対するものと同じ命名法を用いて、MOF@PEG-PO
3と表記した。
【0247】
このMOF@PEG-PO
3に赤色レーザーを通すと、顕著なチンダル効果が記録された。
図17は、PEG化後の結晶性の保持と半結晶PEGの存在を示し、それらをPXRD試験で証明したものである。N2等温線とPSDから、PCN-222@PEG-PO
3と同様に、浸透したmPEG-PO
3によって空隙が全て部分的に塞がれていることがわかる(
図39及び41)。
【0248】
ICP-OESにより評価された、取り込まれたmPEG-PO3分子の担持量は、UiO-66@PEG-PO3、MOF-808@PEG-PO3、NU-901@PEG-PO3、及びPCN-128@PEG-PO3の場合、それぞれ37.7重量%、38.5重量%、30.6重量%、及び34.1重量%である(表1)。
【0249】
凍結乾燥されたMOF@PEG-PO
3はいずれも比較的低密度で、凍結乾燥されたMOF@PEG-PO
3のSEM画像は、取り込まれたmPEG-PO
3分子によって形成されたマトリックス内に粒子が均一に分布していることを示す(
図18、19、20、及び21)。
【0250】
重要なことは、MOF@PEG-PO
3ナノ粒子の全てが、穏やかな超音波処理後に容易に水中に再分散することができたことである。その流体力学的直径は、凍結乾燥前の懸濁液と比較して、大きな差はなかった(
図22)。
【0251】
これらのMOF@PEG-PO
3の水及びリン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH=7.4)中でのコロイド安定性を評価した。
図41及び
図42から、PEG化MOFの水中懸濁液は、その流体力学的粒径に有意な変化がなく7日後まで安定であり、時間の経過とともに著しく凝集する素のMOFより優れることが示された。PBS(pH=7.4)の場合、MOF@PEG-PO
3は36時間、その流体力学的粒径を維持することができる。
【0252】
一方、素のMOFナノ粒子は、例えば1日以内という非常に短い時間で析出した。
【0253】
これらの結果から、本明細書にて開示されたポリマーコーティング法は、水や生体媒体中での凝集を遅らせるだけでなく、MOFベースのドラッグキャリアの長期保存のための代替手段として、多用途的なストラテジーとして機能することが確認された。
制御放出の検討-DOX@PCN-222@PEG-PO3
【0254】
本発明の、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子は、本明細書で上述したように、活性成分を封入するために使用することができる。ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子からの封入された活性成分の放出プロファイルは、コーティングされていないMOFナノ粒子の活性成分放出プロファイルと比較して、特に有利である。
【0255】
なお、活性成分を封入したMOFナノ粒子は、コーティングされていないMOFナノ粒子の場合は活性成分@MOF、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子の場合は活性成分@MOF@ポリマーと命名する。例えば、PCN-222やPCN-222@PEG-PO3に封入されたドキソルビシン(DOX)は、それぞれDOX@PCN-222、DOX@PCN-222@PEG-PO3と表記する。
DOX@PCN-222の調製
【0256】
20mgのPCN-222を15mg/mLのドキソルビシン(DOX)の脱イオンH2O中溶液に浸し、室温で24時間浸漬した。その後、得られたDOX担持PCN-222(DOX@PCN-222)を14000rpmで20分間遠心分離して回収し、脱イオン水で洗滌することにより表面の生理吸着DOX分子を除去した。その後、得られたDOX@PCN-222を室温で24時間、真空オーブンで乾燥させた。
DOX@PCN-222@PEG-PO3の調製
【0257】
20mgのPCN-222を15mg/mLのDOXの脱イオンH2O中溶液に室温で24時間浸漬した。その後、得られたDOX担持PCN-222(DOX@PCN-222)を14000rpmで20分間遠心分離して回収し、5当量(質量比)のmPEG-PO3を加えてさらに16時間撹拌した。最終サンプルを14000rpmで20分間遠心分離して回収し、脱イオン水で洗滌して表面の物理吸着DOX分子を除去した。次に、得られたDOX@PCN-222@PEG-PO3をTelstar LyoQuest卓上型凍結乾燥機(0.008mBar、-70℃)で乾燥した。
【0258】
薬物(DOX)の担持の程度を調べるために、遠心分離した溶液の上澄みを集め、482nmでUV-可視分光分析に供した。薬剤の濃度を特定するために、記録された吸収強度を、遊離DOXについてプロットされた検量線と比較した。
制御放出試験
【0259】
8mgのDOXを担持したサンプルを透析バッグ中で保持した(分子カットオフ:12,000~14,000Da)。透析バッグを30mLの脱イオン水に浸し、室温で攪拌した。上澄み液3mLを取り出し、UV-可視分光計で482nmで分析することにより、2時間ごとに放出されたDOX濃度を測定した。各測定の終了後、除去した溶媒を加えて容量を一定にした。
【0260】
図43に示すように、コーティングされていないMOFナノ粒子(PCN-222)からのDOXの放出は、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子(PCN-222@PEG-PO
3)からのDOXの放出より有意に速い。DOX@PCN-222から6時間後に約40%のDOX放出が記録された。一方、DOX@PCN-222@PEG-PO
3からは、40時間後に約40%のDOX放出が記録された。
制御放出の検討-さらなる例示的なDOX@MOF@PEG-PO
3
【0261】
さらに、本発明の、ポリマーでコーティングされた金属-有機構造体ナノ粒子からの、活性成分、特に活性薬剤成分の、有利で制御された持続性放出を実証するための検討を行った。
DOXを担持するMOF
【0262】
DOX@MOF:DOX水溶液(15mg/mL、4mL)に、合成したままのnanoMOF(5mg/mL、6mL)の水性懸濁液を加え、その後、室温で48時間攪拌した。その後、遠心分離(15,000rpm、35分)によりDOXを担持したnanoMOFを回収し、水で3回洗浄した。得られたDOX@MOFは、真空下で乾燥させるか、水に再分散させ、今後の使用に備えた。未担持のDOXを合わせて最終容量500mLに希釈し、DOX担持量を決定した。
【0263】
DOX@MOF@PEG-PO3;DOX水溶液(15mg/mL、4mL)に、合成したままのnanoMOF(5mg/mL、6mL)水性懸濁液を加え、その後、混合物を室温で48時間攪拌した。その後、mPEG-PO3水溶液(6mL、25mg/mL)を直接加え、得られた混合物をさらに16時間撹拌した。その後、反応混合物を遠心分離(15,000rpm、35分)して未反応のmPEG-PO3と未担持のDOXを除去し、水に再分散させ、次いで水に対する透析(MWCO、12,000~14,000)を12時間行った。水をデキャンタし、4時間ごとに新しい水を補充した最終懸濁液は凍結乾燥(0.008mBar、-70℃)又は真空乾燥した。未担持のDOXを合わせて最終容量500mLに希釈し、DOX担持量を決定した。
【0264】
吸光度は、UV-可視分光法で測定した(最大吸光度は486nm)。UV-可視吸光度を検量線と比較することにより、濃度を算出した。
【0265】
薬物担持量(重量%)=(使用した薬物の質量-担持されていない薬物の質量)/MOFの質量×100
薬物放出
【0266】
10mgのDOX@MOF及びDOX@MOF@PEG-PO3を2mLのPBS(pH=7.4)に懸濁し、2mLのPBS(pH=7.4)で分散した透析バッグ(MWCO;1,2000~1,4000)に入れ、室温で磁気撹拌下にPBS(pH=7.4)(28mL)と透析を行った。一定時間ごとに1mLのPBS(pH=7.4)を取り出し、新しいものと入れ替えた。放出された薬物は、486nmで励起されたときに595nmでミッション最大となる検量線と比較することにより、蛍光分光法により分析した。
薬物担持の結果
【0267】
UV-可視分光法では、素のUiO-66、MOF-808、NU-901、PCN-128、及びPCN-222について、21.3重量%、16.8重量%、28.5重量%、22.1重量%、及び30.2重量%のDOX担持量が確認された。PEG化では、それぞれ17.8重量%、15.5重量%、25.3重量%、15.8重量%、18.4重量%とわずかな減少しか見られなかった(
図44参照)。理論に縛られるものではないが、これは少量の担持されたDOXがmPEG-PO
3の浸潤によって置換されたためであると考えられる。
薬物放出結果
【0268】
DOX@MOFとDOX@MOF@PEG-PO
3の両方について、PBS(pH=7.4)中で最大200時間の累積放出をモニターした。
図45に、NU-901、PCN-128、及びPCN-222のそれぞれの放出動態を示す。
【0269】
NU-901、PCN-128、及びPCN-222に対しては、DOX@MOF@PEG-PO3の放出プロファイルは、PEG化した試料では、素の(コーティングされていない)ナノMOFの放出プロファイルと比較して劇的に減少し、最初の6時間で、封入されたDOXの20重量%以下しか放出されなかった。対照的に、素のnanoMOFはそれぞれ38.4重量%、40.1重量%、52.5重量%のDOXを放出した。
【0270】
これらの結果から、ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子では、よりゆっくりでより持続的な放出が可能であることが実証された。これは、活性成分の持続的な送達、特に薬剤の持続的な送達に特に有利であると考えられる。この持続的な放出は、とりわけ、直接的な薬剤の送達又はコーティングされていないMOFナノ粒子からの薬剤の送達と比較して、薬剤の投与回数の減少を促し得る。
【0271】
理論に縛られることなく、本発明のポリマーでコーティングされたナノ粒子は、ポリマーとMOFナノ粒子の間の比較的強い結合(例えば、リン酸-金属配位)の結果として、溶液中のポリマーの放出(ダンピング)とその後の薬剤の急速な分散を回避し、特に効果的であり得ると考えられる。使用するポリマーの量や種類を変えることで、薬物放出プロファイルを調整することができる。
【0272】
特に、直鎖状ポリマーの使用、特に直鎖状ポリエチレングリコール及びその誘導体の使用が効果的であることが分かっている。理論に縛られるわけではないが、これは、ポリマーの直線的な性質が、ナノ粒子を十分に離し、再分散させるのに役立っているためと考えられる。
【0273】
したがって、有利なことに、凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた、薬剤を含有するMOFナノ粒子は、保存の際の寿命が改善され、凝集を低減して再分散を容易にし、調整可能で持続的な放出を提供し得る。
【0274】
本明細書に引用された全ての文書(相互参照又は関連する特許又は出願を含む)は、明示的に除外されているか、又はその他の制限がない限り、参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0275】
添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、示された実施形態に様々な修正を加えることができることが理解されるであろう。
【0276】
本発明の態様は、以下の番号の付された項を参照してさらに説明される。
1.
凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた、1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含有する乾燥粉末薬学的組成物であって、
各ナノ粒子は、複数の金属イオンと複数の有機配位子とを含むMOFを含有し、約25nm~約450nmの粒径を有し、
上記ポリマーは、1つ以上の金属イオンに結合し、
少なくとも1つの活性薬剤成分が、上記凍結乾燥され、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の上、及び/又は中に存在し、好ましくは、上記ポリマーが、リン酸-金属配位によって各ナノ粒子の1つ以上の金属イオンと結合している、組成物。
2.
項1の上記乾燥粉末薬学的組成物を液体中に混合された状態で含む薬学的組成物であって、好ましくは、上記液体が水性であり、好ましくは、上記組成物が薬学的に許容される賦形剤をさらに含み、好ましくは、上記賦形剤が、溶媒、共溶媒、緩衝剤、安定剤、酸化防止剤、保存剤、キレート剤、乳化剤、香料、潤滑剤、懸濁化剤、等張化剤、界面活性剤、可溶化剤、懸濁補助剤、分散剤、保湿剤、増粘剤、着色剤、湿潤剤、消泡剤、粘度調整剤、甘剤及びその組み合わせからなる群から選択される、組成物。
3.
ポリマーでコーティングされた1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含有する組成物であって、各ナノ粒子は、複数の金属イオンと複数の有機配位子とを含むMOFを含有し、上記ポリマーは、リン酸-金属配位により各ナノ粒子の1つ以上の金属イオンに結合し、上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の粒径は約25nm~約450nmである、組成物。
4.
活性成分が、上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の中に封入されるか、及び/又は上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の上に存在し、好ましくは、上記活性成分が活性薬剤成分である、項3に記載の組成物。
5.
ポリマーでコーティングされた1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含有する乾燥粉末組成物を製造する方法であって、各ナノ粒子は、複数の金属イオンと複数の有機配位子とを含むMOFを含有し、上記ポリマーは、1つ以上の金属イオンと結合し、上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の粒径は約25nm~約450nmであり、上記方法は、
a)
複数の金属イオンと複数の有機配位子とを混合して、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を形成することと、
b)
上記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を上記ポリマーと混合し、上記ポリマーが上記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の1つ以上の金属イオンに結合して、上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供することと、
c)
任意で、溶媒を除去することにより、上記ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子懸濁液の濃度を高めることと、
d)
凍結乾燥により、上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子を乾燥させることと、
を含み、
好ましくはステップb)の前に、好ましくは活性成分を上記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液と混合することによって、上記活性成分を、上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の内に封入するか、及び/又は上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の上に存在させる、方法。
6.
ポリマーでコーティングされたMOFナノ粒子の懸濁液を製造する方法であって、上記方法は、項5に従って製造された乾燥粉末組成物を取得し、上記組成物を液体中に再懸濁するステップを含み、好ましくは、上記液体が水性である、方法。
7.
ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含有する組成物を製造する方法であって、各ナノ粒子は、複数の金属イオンと複数の有機配位子とを含み、且つ約25nm~約450nmの粒径を有するMOFを含有し、上記ポリマーは、リン酸-金属配位によって1つ以上の金属イオンに結合し、上記方法は、
a)
複数の金属イオンと複数の有機配位子を混合して、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を形成することと、
b)
活性成分を上記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の中に封入する、及び/又は活性成分を上記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の上に存在させることにより、上記活性成分を含有する、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供することと、
c)
上記活性成分を含有する、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液をリン酸基で官能基化されたポリマーと混合し、上記リン酸基で官能基化されたポリマーを、上記活性成分を含有する、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の1つ以上の金属イオンに配位させることにより、活性成分を含有する、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供することと、
d)
任意で、溶媒を除去することにより、上記活性成分を含有する、ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液の濃度を高めることと、
e)
任意で、凍結乾燥により、ポリマーでコーティングされた、活性成分を含有する1つ以上のMOFナノ粒子を乾燥させることと、
f)
任意で、その後、凍結乾燥された、ポリマーでコーティングされた活性成分を含有するMOFナノ粒子を水性媒体中に再分散させることと、
を含む方法。
8.
メトキシポリエチレングリコール(mPEG)でコーティングされた1つ以上の金属-有機構造体(MOF)ナノ粒子を含有する組成物を製造する方法であって、各ナノ粒子は、複数の金属イオン及び複数の有機配位子を含み、約25nm~約450nmの粒径を有するMOFを含み、ここでmPEGは、リン酸-金属配位によって1つ以上の金属イオンに結合し、上記方法は、
a)
複数の金属イオンと複数の有機配位子を混合して、コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を形成することと、
b)
上記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液をmPEG-PO
3の溶液と混合し、mPEG-PO
3を上記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の1つ以上の金属イオンに配位させることにより、上記mPEG-PO
3でコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液を提供することと、
c)
任意で、溶媒を除去することにより、上記mPEGでコーティングされたMOFナノ粒子懸濁液の濃度を高めることと、
d)
任意で、凍結乾燥により、上記mPEGでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子を乾燥させることと、
e)
任意で、凍結乾燥したmPEGコーティングMOFナノ粒子を、好ましくは超音波処理によって、再分散させることと、を含み、
好ましくはステップb)の前に、好ましくは活性成分を上記コーティングされていない1つ以上のMOFナノ粒子の懸濁液と混合するステップによって、活性成分を、上記m-PEGでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の上に存在させるか、及び/又は、上記m-PEGでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の中に封入する、方法。
9.
上記複数の金属イオンが、ジルコニウム、鉄、亜鉛、及びハフニウムからなる群から選択される金属イオンから本質的になる、項1~8のいずれか1項に記載の組成物又は方法。
10.
上記ポリマーが、リン酸基、好ましくは末端リン酸基を含み、好ましくは、上記ポリマーが、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、ヘパリン、キトサン、ポリビニルアルコール、ポリグルタミン酸、及びそれらの誘導体及びコポリマーからなる群から選択され、好ましくは、上記ポリマーがポリエチレングリコール又はその誘導体、好ましくはリン酸基末端mPEGを含み、好ましくは、ポリマー及び/又はmPEG-PO
3が構造Aによるリン酸基末端mPEGである、項1~7、及び項1~7に従属する場合の項9のいずれか1項に記載の組成物又は方法。
【化12】
式中、nは約40~約250である。
11.
上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の粒径が、約100nm~約250nm、好ましくは約100nm~約200nmである、項1~10のいずれか1項に記載の組成物又は方法。
12.
上記1つ以上のMOFナノ粒子が少なくとも部分的に非晶質である、項5~8の上記方法のいずれかに従って製造された組成物、及び/又は項1~4又は9~11のいずれか1項に記載の組成物。
13.
1つ以上のMOFナノ粒子をコーティングするための、リン酸基で官能基化されたポリマーの使用であって、活性成分が、上記ポリマーでコーティングされた1つ以上のMOFナノ粒子の中及び/又は上に存在する、使用。
14.
凍結乾燥された複数のMOFナノ粒子の再分散を改善するためのポリマーの使用であって、上記ポリマーは凍結乾燥前に上記MOFナノ粒子上にコーティングされる、使用。
15.
項1~4又は9~12のいずれか1項に記載の組成物を患者に投与することにより、疾患又は病状を治療する方法。
【国際調査報告】