(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】ヘテロ二量体化のための直交変異
(51)【国際特許分類】
C07K 16/46 20060101AFI20231226BHJP
C12N 15/01 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
C07K16/46 ZNA
C12N15/01 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535392
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 US2021062951
(87)【国際公開番号】W WO2022125986
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514194417
【氏名又は名称】インベンラ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】デイビス, ジョナサン ハリー
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル, ニコラス エム.
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA40
4H045DA75
4H045EA20
4H045FA74
4H045GA26
(57)【要約】
ヘテロ二量体化を駆動する直交変異を有するヘテロ二量体化ドメイン、特にヘテロ二量体化抗体CH3ドメイン、そのようなヘテロ二量体化ドメインを含むヘテロ二量体ポリペプチド、およびそのようなヘテロ二量体ポリペプチドを含む抗体構築物が提供される。本発明者らは、複数のポリペプチド鎖の特異的なヘテロ二量体化を駆動することができ、ポリペプチドの高忠実度会合を促進することができる、特に多価多重特異性抗体構築物に有用な、新しい直交変異を操作した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘテロ二量体タンパク質であって、
第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、
a)前記第1のポリペプチド鎖が第1のCH3ドメインを含み、前記第2のポリペプチド鎖が第2のCH3ドメインを含み、
b)前記第1のCH3ドメインのY349がシステイン(C)に置換されており(Y349C)、
c)前記第2のCH3ドメインのS354がシステイン(C)に置換されており(S354C)、
d)前記第2のCH3ドメインのE357が疎水性アミノ酸または芳香族アミノ酸で置換されており、
位置はE
Uインデックスに従ってナンバリングされている、ヘテロ二量体タンパク質。
【請求項2】
前記疎水性アミノ酸残基が、アラニン(A)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、プロリン(P)およびバリン(V)からなる群から選択される、請求項1に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項3】
前記第2のCH3ドメインのE357が疎水性アミノ酸で置換されている、請求項1または請求項2に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項4】
前記疎水性アミノ酸残基がメチオニン(M)(E357M)である、請求項3に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項5】
前記芳香族アミノ酸残基が、ヒスチジン(H)、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)およびチロシン(Y)からなる群から選択される、請求項1または請求項2に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項6】
E357が芳香族アミノ酸で置換されている、請求項1、2または5のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項7】
前記芳香族アミノ酸残基がトリプトファン(W)(E357W)である、請求項6に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項8】
前記第2のCH3ドメインのS364が、アラニン(A)、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、ヒスチジン(H)、リジン(K)、ロイシン(L)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)およびチロシン(Y)からなる群から選択されるアミノ酸残基で置換されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項9】
前記第2のCH3ドメインのS364がアルギニン(R)で置換されている(S364R)、請求項1~8のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項10】
前記第1のCH3ドメインのK370が、アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、フェニルアラニン(F)、ヒスチジン(H)、メチオニン(M)、アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、アルギニン(R)、セリン(S)、トレオニン(T)、トリプトファン(W)およびチロシン(Y)からなる群から選択されるアミノ酸残基で置換されている、請求項1~7のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項11】
前記第1のCH3ドメインのK370がアルギニン(R)で置換されている(K370R)、請求項10に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項12】
各CH3ドメインが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgGA1またはIgGA2 CH3ドメインから独立して選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項13】
両方のCH3ドメインが、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgGA1またはIgGA2 CH3ドメインから同一であるように選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項14】
両方のCH3ドメインがヒトIgG1ドメインである、請求項13に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項15】
両方のCH3ドメインがヒトIgG4ドメインである、請求項13に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項16】
前記第1または第2のCH3ドメインに追加の操作された変異がない、請求項1~15のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項17】
前記第1および/または第2のCH3ドメインに少なくとも1つの追加の操作された変異がある、請求項1~15のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項18】
前記少なくとも1つの追加の操作された変異の少なくとも1つが、前記第1のCH3ドメイン中のノブ変異および前記第2のCH3ドメイン中のホール変異である、請求項17に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項19】
前記第1のCH3ドメイン中にホール変異があり、前記第2のCH3ドメイン中にノブ変異がある、請求項17に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項20】
前記ノブ変異がT366Wである、請求項18または請求項19記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項21】
前記ホール変異が、T366S、L368A、F405TまたはY407Vから選択される、請求項18~20のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項22】
前記ホール変異がF405Tである、請求項21に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項23】
前記少なくとも1つの追加の操作された変異のうちの少なくとも1つが操作された電荷対である、請求項17~22のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項24】
前記第1のCH3ドメインがL351D変異を含み、前記第2のCH3ドメインがT366K変異を含む、請求項23に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項25】
前記第2のCH3ドメインがL351D変異を含み、前記第1のCH3ドメインがT366K変異を含む、請求項23に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項26】
前記第1および第2のポリペプチド鎖の各々が免疫グロブリン可変ドメインをさらに含む、請求項1~25のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項27】
前記第1のポリペプチドが、配列番号1または配列番号17のアミノ酸配列を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項28】
前記第2のポリペプチドが、配列番号2または配列番号18のアミノ酸配列を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項29】
前記第1および第2のポリペプチド鎖の両方がV
Hドメインを含む、請求項26に記載のヘテロ二量体タンパク質。
【請求項30】
請求項26に記載のヘテロ二量体タンパク質であって、
(a)前記第1のポリペプチド鎖がV
Hドメインを含み、前記第2のポリペプチド鎖がV
Lドメインを含むか、または
(b)前記第1のポリペプチド鎖がV
Lドメインを含み、前記第2のポリペプチド鎖がV
Hドメインを含み、
前記第1および第2のポリペプチドの可変ドメインが会合して第1の抗原結合部位(ABS)を形成し、前記ヘテロ二量体タンパク質が抗体構築物を形成する、ヘテロ二量体タンパク質。
【請求項31】
請求項30に記載の抗体構築物であって、前記V
Hドメインを含む前記ポリペプチド鎖がCH2ドメインおよび第3のCH3ドメインをさらに含み、前記ドメインがN末端からC末端に、
a)V
H-第1のCH3-CH2-第3のCH3、
b)V
H-第2のCH3-CH2-第3のCH3、
c)V
H-第3のCH3-CH2-第1のCH3、または
d)V
H-第3のCH3-CH2-第2のCH3
の順序である、抗体構築物。
【請求項32】
請求項31に記載の抗体構築物であって、前記V
Hドメインを含む前記ポリペプチド鎖の前記ドメインが、N末端からC末端に、
a)V
H-第1のCH3-CH2-第3のCH3、または
b)V
H-第2のCH3-CH2-第3のCH3
の順序である、抗体構築物。
【請求項33】
前記V
Lドメインを含む前記ポリペプチド鎖が、CH2ドメインおよび第3のCH3ドメインをさらに含み、前記ドメインが、N末端からC末端に以下:
【表6】
の順序である、請求項30に記載の抗体構築物。
【請求項34】
前記V
Lドメインを含む前記ポリペプチド鎖の前記ドメインが、N末端からC末端に以下:
【表7】
の順序である、請求項33に記載の抗体構築物。
【請求項35】
前記V
Lドメインを含む前記ポリペプチド鎖の前記ドメインおよび前記V
Hドメインを含む前記ポリペプチド鎖の前記ドメインがそれぞれ、N末端からC末端に以下:
【表8】
の順序である、請求項34に記載の抗体構築物。
【請求項36】
請求項35に記載の抗体構築物であって、第3のポリペプチド鎖および第4のポリペプチド鎖をさらに含み、
(a)前記第3のポリペプチド鎖は、ドメインH、ドメインI、ドメインJ、およびドメインKを含み、前記ドメインは、N末端からC末端にH-I-J-Kの向きで配置され、ドメインHは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインIは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインJはCH2アミノ酸配列を有し、Kは定常領域ドメインアミノ酸配列を有する;
(b)前記第4のポリペプチド鎖は、ドメインLおよびドメインMを含み、前記ドメインは、N末端からC末端にL-Mの向きで配置されており、ドメインLは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインMは定常領域ドメインアミノ酸配列を有する;
(c)前記第3および前記第4のポリペプチドは、第2の抗原結合部位(ABS)を形成する前記Hドメインと前記Lドメインとの間の相互作用および前記Iドメインと前記Mドメインとの間の相互作用を介して会合している;かつ
(d)前記第1および第3のポリペプチドは、前記Dドメインと前記Jドメインとの間の相互作用および前記Eドメインと前記Kドメインとの間の相互作用を介して会合している、
抗体構築物。
【請求項37】
ドメインHがV
Lドメインであり;
ドメインIがC
Lドメインであり;
ドメインJがCH2ドメインであり;かつ
ドメインKが第4のCH3ドメインである、
請求項36に記載の抗体構築物。
【請求項38】
ドメインLがV
Hドメインであり;かつ
ドメインMがCH1ドメインである、
請求項37記載の抗体構築物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
1.関連出願への相互参照
本出願は、2020年12月10日に出願された米国仮出願第63/123,915号の利益および優先権を主張し、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
2.配列表
本出願は、EFS-Webを介して提出された配列表を含み、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。202X年XX月XXに作成された当該ASCIIコピーは、XXXXX_sequencelisting.txtという名前であり、サイズはXXXバイトである。
【背景技術】
【0003】
3.本発明の背景
細胞内のタンパク質ヘテロ二量体の適切な集合は、構成ポリペプチド鎖のホモ二量体化よりもヘテロ二量体化を促進するタンパク質:タンパク質相互作用を必要とする。タンパク質中のポリペプチドの数が増加するにつれて、異なるポリペプチド鎖の特異的な会合を駆動する必要性が増加する。例えば、2つの異なる重鎖および2つの異なる軽鎖を有する二価二重特異性抗体の正しい集合は、第1の軽鎖の第1重鎖への特異的なヘテロ二量体化、第2の軽鎖の第2重鎖への特異的なヘテロ二量体化、および第1重鎖の第2重鎖への特異的なヘテロ二量体化を必要とする。効率的な集合は、様々なヘテロ二量体の会合を駆動するタンパク質:タンパク質相互作用が、そのようなヘテロ二量体対ごとに異なることを必要とする。
【0004】
特定の操作された抗体ドメインの優先的なヘテロ二量体化を駆動する様々な直交変異が開発されており、ノブインホール(KIH)変異(例えば、米国特許第5,731,168号;同5,807,706号;および同5,821,333号を参照のこと)、電荷対変異(例えば、米国特許第9,358,286号を参照のこと)、ジスルフィド安定化KIH変異(例えば、米国特許第7,951,917号;同8,642,745号および同9,409,989号を参照のこと)などが含まれる。
当技術分野では、単独でおよび既知のヘテロ二量体化特徴と組み合わせて使用される、特異的なヘテロ二量体化および多量体化を駆動するさらなるアプローチが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5,731,168号明細書
【特許文献2】米国特許第5,807,706号明細書
【特許文献3】米国特許第5,821,333号明細書
【特許文献4】米国特許第9,358,286号明細書
【特許文献5】米国特許第7,951,917号明細書
【特許文献6】米国特許第8,642,745号明細書
【特許文献7】米国特許第9,409,989号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
4.本発明の概要
本発明者らは、複数のポリペプチド鎖の特異的なヘテロ二量体化を駆動することができ、ポリペプチドの高忠実度会合を促進することができる、特に多価多重特異性抗体構築物に有用な、新しい直交変異を操作した。
【図面の簡単な説明】
【0007】
5.図面のいくつかの図の簡単な説明
本発明のこれらおよび他の特徴、態様、および利点は、以下の説明および添付の図面を参照することによってよりよく理解されるであろう。
【0008】
【
図1A】
図1A~
図1Eは、本発明の例示的な直交変異を有するヘテロ二量体CH3ドメインを示す。
図1Aは、追加の変異のない二量体化CH3ドメインを示す。
図1Bは、ノブがE357W変異と同じドメインにある追加のノブインホール変異を有する二量体化CH3ドメインを示す。
図1Cは、ノブがE357W変異とは反対側のドメインにある追加のノブインホール変異を有する二量体化CH3ドメインを示す。
図1Dは、E357W変異を有するドメインとは反対側のCH3ドメインにおけるさらなる「カスケード」変異を示す。
図1Eは、E357W変異を含むCH3ドメインにおけるさらなる「カスケード」変異を示す。
【
図1B】
図1A~
図1Eは、本発明の例示的な直交変異を有するヘテロ二量体CH3ドメインを示す。
図1Aは、追加の変異のない二量体化CH3ドメインを示す。
図1Bは、ノブがE357W変異と同じドメインにある追加のノブインホール変異を有する二量体化CH3ドメインを示す。
図1Cは、ノブがE357W変異とは反対側のドメインにある追加のノブインホール変異を有する二量体化CH3ドメインを示す。
図1Dは、E357W変異を有するドメインとは反対側のCH3ドメインにおけるさらなる「カスケード」変異を示す。
図1Eは、E357W変異を含むCH3ドメインにおけるさらなる「カスケード」変異を示す。
【
図1C】
図1A~
図1Eは、本発明の例示的な直交変異を有するヘテロ二量体CH3ドメインを示す。
図1Aは、追加の変異のない二量体化CH3ドメインを示す。
図1Bは、ノブがE357W変異と同じドメインにある追加のノブインホール変異を有する二量体化CH3ドメインを示す。
図1Cは、ノブがE357W変異とは反対側のドメインにある追加のノブインホール変異を有する二量体化CH3ドメインを示す。
図1Dは、E357W変異を有するドメインとは反対側のCH3ドメインにおけるさらなる「カスケード」変異を示す。
図1Eは、E357W変異を含むCH3ドメインにおけるさらなる「カスケード」変異を示す。
【
図1D】
図1A~
図1Eは、本発明の例示的な直交変異を有するヘテロ二量体CH3ドメインを示す。
図1Aは、追加の変異のない二量体化CH3ドメインを示す。
図1Bは、ノブがE357W変異と同じドメインにある追加のノブインホール変異を有する二量体化CH3ドメインを示す。
図1Cは、ノブがE357W変異とは反対側のドメインにある追加のノブインホール変異を有する二量体化CH3ドメインを示す。
図1Dは、E357W変異を有するドメインとは反対側のCH3ドメインにおけるさらなる「カスケード」変異を示す。
図1Eは、E357W変異を含むCH3ドメインにおけるさらなる「カスケード」変異を示す。
【
図1E】
図1A~
図1Eは、本発明の例示的な直交変異を有するヘテロ二量体CH3ドメインを示す。
図1Aは、追加の変異のない二量体化CH3ドメインを示す。
図1Bは、ノブがE357W変異と同じドメインにある追加のノブインホール変異を有する二量体化CH3ドメインを示す。
図1Cは、ノブがE357W変異とは反対側のドメインにある追加のノブインホール変異を有する二量体化CH3ドメインを示す。
図1Dは、E357W変異を有するドメインとは反対側のCH3ドメインにおけるさらなる「カスケード」変異を示す。
図1Eは、E357W変異を含むCH3ドメインにおけるさらなる「カスケード」変異を示す。
【0009】
【
図2】
図2は、本明細書中に記載される様々な二価抗体構築物についての概略的な構造を、それぞれの命名規則とともに示す。
【0010】
【
図3】
図3は、例示的な二価抗体構築物「BC1」のドメイン内容を示す概略図を示す。本明細書に記載の直交変異は、E:K対ドメインにさらに操作することができる。
【0011】
【
図4】
図4は、例示的な二価抗体構築物「BC6」のドメイン内容を示す概略図を示す。本明細書に記載の直交変異は、E:K対ドメインにさらに操作することができる。
【0012】
【
図5】
図5は、例示的な二価抗体構築物「BC28」のドメイン内容を示す概略図を示す。本明細書に記載の直交変異は、B:G対ドメインまたはE:K対ドメインにさらに操作することができる。
【0013】
【
図6】
図6は、例示的な二価抗体構築物「BC44」のドメイン内容を示す概略図を示す。本明細書に記載の直交変異は、B:G対ドメインまたはE:K対ドメインにさらに操作することができる。
【0014】
【
図7】
図7は、本明細書に記載の様々な直交変異を含む例示的な二価抗体構築物「BC-96」のドメイン内容を示す概略図を示す。
【0015】
【
図8A】
図8A~
図8Dは、BC96および様々な代替物のCH1精製後のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析の結果を示す。
図8Aは、ドメインBがK370変異を欠き、ドメインGがE357変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Bは、ドメインBがK370変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Cは、ドメインGがE357変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Dは、ドメインBにおけるK370R変異およびドメインGにおけるE357W変異の両方を含有するBC96からの結果を示す。
【
図8B】
図8A~
図8Dは、BC96および様々な代替物のCH1精製後のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析の結果を示す。
図8Aは、ドメインBがK370変異を欠き、ドメインGがE357変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Bは、ドメインBがK370変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Cは、ドメインGがE357変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Dは、ドメインBにおけるK370R変異およびドメインGにおけるE357W変異の両方を含有するBC96からの結果を示す。
【
図8C】
図8A~
図8Dは、BC96および様々な代替物のCH1精製後のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析の結果を示す。
図8Aは、ドメインBがK370変異を欠き、ドメインGがE357変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Bは、ドメインBがK370変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Cは、ドメインGがE357変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Dは、ドメインBにおけるK370R変異およびドメインGにおけるE357W変異の両方を含有するBC96からの結果を示す。
【
図8D】
図8A~
図8Dは、BC96および様々な代替物のCH1精製後のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析の結果を示す。
図8Aは、ドメインBがK370変異を欠き、ドメインGがE357変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Bは、ドメインBがK370変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Cは、ドメインGがE357変異を欠くという点でBC96とは異なるバリアントからの結果を示す。
図8Dは、ドメインBにおけるK370R変異およびドメインGにおけるE357W変異の両方を含有するBC96からの結果を示す。
【0016】
【
図9】
図9は、個々の変異によって付与される直交度を評価するために作成された構築物の概略図を示す。所望の生成物および夾雑物に対応するバンドを示す代表的なSDS-PAGEゲルを、ホモ二量体夾雑物の概略図と共に示す。
【0017】
【
図10A】
図10A~
図10Cは、様々な構築物のプロテインA精製後のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)およびSDS-PAGE分析の結果を示す。
図10Aは、第1のCH3ドメインがS354C変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
図10Bは、第1のCH3ドメインがS354CおよびE357W変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
図10Cは、第1のCH3ドメインがS354C、E357WおよびS364R変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
【
図10B】
図10A~
図10Cは、様々な構築物のプロテインA精製後のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)およびSDS-PAGE分析の結果を示す。
図10Aは、第1のCH3ドメインがS354C変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
図10Bは、第1のCH3ドメインがS354CおよびE357W変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
図10Cは、第1のCH3ドメインがS354C、E357WおよびS364R変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
【
図10C】
図10A~
図10Cは、様々な構築物のプロテインA精製後のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)およびSDS-PAGE分析の結果を示す。
図10Aは、第1のCH3ドメインがS354C変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
図10Bは、第1のCH3ドメインがS354CおよびE357W変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
図10Cは、第1のCH3ドメインがS354C、E357WおよびS364R変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
【0018】
【
図11A】
図11A~
図11Bは、様々な構築物のCH1精製後のSECおよびSDS-PAGE分析の結果を示す。
図11Aは、第1のCH3ドメインがS354CおよびE357W変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
図11Bは、第1のCH3ドメインがS354C、E357WおよびS364R変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
【
図11B】
図11A~
図11Bは、様々な構築物のCH1精製後のSECおよびSDS-PAGE分析の結果を示す。
図11Aは、第1のCH3ドメインがS354CおよびE357W変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
図11Bは、第1のCH3ドメインがS354C、E357WおよびS364R変異を含有し、第2の反対側のCH3ドメインがY349C変異を含有する構築物からの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
6.本発明の詳細な説明
6.1.定義
本明細書で他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。
【0020】
本明細書で使用される場合、以下の用語は、以下に記載される意味を有する。
【0021】
「抗原結合部位」(「ABS」)とは、所与の抗原またはエピトープを特異的に認識するかまたはそれに結合する抗体構築物の領域を意味する。ABS、およびそのようなABSを含む抗体構築物は、ABSが特異的に結合するエピトープ(またはより一般的には、抗原)を「認識する」と言われ、エピトープ(またはより一般的には、抗原)は、ABSの「認識特異性」または「結合特異性」であると言われる。
【0022】
ABSは、特定の親和性でその特異的抗原またはエピトープに結合すると言われる。本明細書に記載される場合、「親和性」は、ある分子と別の分子との間の非共有結合分子間力の相互作用の強さを指す。親和性、すなわち相互作用の強さは、解離平衡定数(KD)として表すことができ、KD値が低いほど分子間の相互作用が強いことを示す。抗体構築物のKD値は、バイオレイヤー干渉法(例えば、Octet/FORTEBIO(登録商標))、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、Biacore(登録商標))、および細胞結合アッセイを含むがこれらに限定されない、当技術分野で周知の方法によって測定される。特に明記しない限り、本明細書の目的のために、親和性は、Octet/FORTEBIO(登録商標)を用いたバイオレイヤー干渉法によって測定される解離平衡定数である。
【0023】
本明細書で使用される「特異的結合」は、KD値が10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、または10-10M.未満である、ABSとその同族抗原またはエピトープとの間の親和性を指す。
【0024】
本明細書に記載の抗体構築物中のABSの数は、抗体構築物の「結合価」を定義する。単一のABSを有する抗体構築物は「一価」である。複数のABSを有する抗体構築物は、「多価」であると言われる。2つのABSを有する多価抗体構築物は「二価」である。3つのABSの多価抗体構築物は「三価」である。4つのABSを有する多価抗体構築物は「四価」である。
【0025】
抗体構築物の様々な多価実施形態では、複数のABSのすべてが同じ認識特異性を有する。そのような構築物は、「単一特異性」「多価」抗体構築物である。他の多価実施形態では、複数のABSのうちの少なくとも2つは、異なる認識特異性を有する。そのような抗体構築物は多価かつ「多重特異性」である。ABSが集合的に2つの認識特異性を有する多価実施形態では、結合分子は「二重特異性」である。ABSが集合的に3つの認識特異性を有する多価実施形態では、結合分子は「三重特異性」である。
【0026】
ABSが同じ抗原上に存在する異なるエピトープに対して複数の認識特異性を集合的に有する多価実施形態では、抗体構築物は「多重パラトピック」である。ABSが同じ抗原上の2つのエピトープを集合的に認識する多価実施形態は「二重パラトピック」である。
【0027】
様々な多価実施形態において、抗体構築物の多価性は、特異的標的に対する結合分子の結合活性を改善する。本明細書に記載される場合、「結合活性」は、2つまたはそれを超える分子間、例えば特定の標的に対する多価結合分子の相互作用の全体的な強度を指し、結合活性は、複数のABSの親和性によって提供される相互作用の累積強度である。上記のように、親和性を決定するために使用されるのと同じ方法によって、結合活性を測定することができる。特定の実施形態では、特異的標的に対する結合分子の結合活性は、相互作用が特異的結合相互作用であり、2つの分子間の結合活性が10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、または10-10M未満のKD値を有するようなものである。特定の実施形態では、特異的標的に対する結合分子の結合活性は、相互作用が特異的結合相互作用であるようなKD値を有し、個々のABSの1またはそれを超える親和性は、それらのそれぞれの抗原またはエピトープ自体に特異的に結合するような適格なKD値を有さない。特定の実施形態では、結合活性は、共有される特異的標的または複合体上の別々の抗原、例えば個々の細胞上に見られる別々の抗原に対する複数のABSの親和性によって提供される相互作用の累積強度である。特定の実施形態では、結合活性は、共有される個々の抗原上の別々のエピトープに対する複数のABSの親和性によって提供される相互作用の累積強度である。
【0028】
本明細書で使用される「B-Body」は、第1および第2のポリペプチド鎖を含む
図2に示す抗体構築物を指し、(a)第1のポリペプチド鎖は、ドメインA、ドメインB、ドメインD、およびドメインEを含み、ドメインは、N末端からC末端にA-B-D-Eの向き(orientation)で配置されており、ドメインAはVLアミノ酸配列を有し、ドメインBはCH3アミノ酸配列を有し、ドメインDはCH2アミノ酸配列を有し、ドメインEは定常領域ドメインアミノ酸配列を有する;(b)第2のポリペプチド鎖は、ドメインFおよびドメインGを含み、ドメインは、N末端からC末端にF-Gの向きで配置されており、ドメインFはVHアミノ酸配列を有し、ドメインGはCH3アミノ酸配列を有し;(c)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合して、抗体構築物を形成する。B-ボディは、米国特許出願公開第2018/0118811号および国際公開第2019/204522号にさらに詳細に記載されており、それらの開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
本明細書に記載の「直交改変」または同義的に「直交変異」は、直交改変の非存在下での第1および第2のドメインの結合と比較して、相補的な直交改変を有する第2のドメインに対する直交改変を有する第1のドメインの結合の親和性を変化させる、抗体ドメインのアミノ酸配列における1またはそれを超える操作された変異である。いくつかの実施形態では、直交改変は、直交改変の非存在下での第1および第2のドメインの結合と比較して、相補的な直交改変を有する第2のドメインに対する直交改変を有する第1のドメインの結合の親和性を低下させる。いくつかの実施形態では、直交改変は、直交改変の非存在下での第1および第2のドメインの結合と比較して、相補的な直交改変を有する第2のドメインに対する直交改変を有する第1のドメインの結合の親和性を変化させない。好ましい実施形態では、直交改変は、直交改変の非存在下での第1および第2のドメインの結合と比較して、相補的な直交改変を有する第2のドメインに対する直交改変を有する第1のドメインの結合の親和性を増加させる。特定の好ましい実施形態では、直交改変は、相補的な直交改変を欠くドメインに対する直交改変を有するドメインの親和性を低下させる。
【0030】
特定の実施形態では、直交改変には、以下により詳細に記載されるように、操作されたジスルフィド架橋、ノブインホール変異、および電荷対変異が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、直交改変は、操作されたジスルフィド架橋、ノブインホール変異、および電荷対変異から選択されるがこれらに限定されない直交改変の組み合わせを含む。
【0031】
6.2.他の解釈規則
別段特定されない限り、本明細書における「配列」へのすべての言及は、アミノ酸配列に対するものである。「内因性配列」または「天然配列」とは、生物、組織または細胞に由来し、人工的に改変または変異されていない、文脈が指示する核酸およびアミノ酸配列を含む任意の配列を意味する。
【0032】
別段特定されない限り、抗体定常領域残基のナンバリングは、www.imgt.org/IMGTScientificChart/Numbering/Hu_IGHGnber.html#refsに記載されるようなEuインデックスに従い、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれ、本明細書に記載の抗体構築物の鎖内の残基の物理的位置にかかわらず、内因性定常領域配列内のその位置に従って残基を同定する。
【0033】
別段特定されない限り、相補性決定領域(CDR)へのすべての言及は、Kabat定義のCDRである。
【0034】
ポリペプチド鎖に関して使用される場合、用語「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など(例えば、「第1」のポリペプチド鎖、「第2」のポリペプチド鎖など、またはポリペプチド「鎖1」、「鎖2」など)は、本明細書では、多量体分子を形成する特定のポリペプチド鎖の固有の識別子として使用され、抗体構築物内の異なるポリペプチド鎖の順序または量を暗示することを意図しない。
【0035】
「第1」、「第2」、「第3」、「第4」などの用語は、CH3ドメインに関して使用される場合、特定のドメインを指定するために使用され、ドメインの順序または量を含意するものではない。
【0036】
本開示において、「含み(comprises)」、「含む(comprising)」、「含有する(containing)」、「有する(having)」、「含む(includes)」、およびそれらの言語変形は、米国特許法においてそれらに帰される意味を有し、明示的に列挙されたものを超える追加の構成要素の存在を可能にする。
【0037】
本明細書で提供される範囲は、列挙された終点を含む範囲内のすべての値の省略表現であると理解される。例えば、1から50の範囲は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、および50からなる群からの任意の数、数の組み合わせ、または部分範囲を含むと理解される。
【0038】
特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「または(or)」という用語は包括的であると理解される。特に明記しない限り、または文脈から明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「a」、「an」、および「the」という用語は、単数または複数であると理解される。
【0039】
特に明記しない限り、または文脈からそうでないことが明らかでない限り、本明細書で使用される場合、「約(about)」という用語は、当技術分野における通常の許容範囲内、例えば平均の2標準偏差以内であると理解される。「約」は、記載された値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、または0.01%以内と理解することができる。特に明記しない限り、「約」は、記載された値の10%以内を意味する。
【0040】
6.3.ヘテロ二量体タンパク質
第一の局面では、ヘテロ二量体タンパク質が提供される。ヘテロ二量体タンパク質は、第1のポリペプチド鎖および第2のポリペプチド鎖を含み、
a)第1のポリペプチド鎖は第1のCH3ドメインを含み、第2のポリペプチド鎖は第2のCH3ドメインを含み、
b)第1のCH3ドメインのY349はシステイン(C)に置換されており(Y349C)、
c)第2のCH3ドメインのS354はシステイン(C)に置換されており(S354C)、
d)第2のCH3ドメインのE357は疎水性アミノ酸または芳香族アミノ酸で置換されており、
位置はEuインデックスに従ってナンバリングされている。
【0041】
種々の実施形態において、疎水性アミノ酸残基は、アラニン(A)、イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、プロリン(P)およびバリン(V)からなる群から選択される。種々の実施形態において、芳香族アミノ酸残基は、ヒスチジン(H)、トリプトファン(W)、フェニルアラニン(F)およびチロシン(Y)からなる群から選択される。
【0042】
特定の実施形態において、第2のCH3ドメインのE357は、疎水性アミノ酸で置換される。特定の実施形態では、疎水性アミノ酸残基はメチオニン(M)(E357M)である。
【0043】
特定の実施形態において、第2のCH3ドメインのE357は、芳香族アミノ酸で置換される。特定の実施形態では、芳香族アミノ酸残基はトリプトファン(W)(E357W)である。
【0044】
6.3.1.CH3ドメイン
本明細書中に記載のヘテロ二量体タンパク質のCH3ドメインは、上記の変異が操作される抗体重鎖のC末端に天然に位置するドメインに由来するアミノ酸配列を有する。
【0045】
様々な実施形態において、CH3配列は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、CH3配列はヒト配列である。特定の実施形態において、CH3配列は、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgM、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4アイソタイプに由来する。特定の実施形態では、CH3配列はIgGアイソタイプに由来する。好ましい実施形態では、CH3配列はIgG1アイソタイプに由来する。いくつかの実施形態では、CH3配列はIgAアイソタイプに由来する。
【0046】
特定の実施形態において、CH3配列は、IgEまたはIgMアイソタイプ由来のCH4配列である。
【0047】
特定の実施形態では、CH3配列は内因性配列である。特定の実施形態では、CH3配列は、UniProt受託番号P01857アミノ酸224~330である。様々な実施形態では、CH3配列は、内因性CH3配列のセグメントである。特定の実施形態では、CH3配列は、N末端アミノ酸G224およびQ225を欠く内因性CH3配列を有する。特定の実施形態では、CH3配列は、C末端アミノ酸P328、G329、およびK330を欠く内因性CH3配列を有する。特定の実施形態では、CH3配列は、N末端アミノ酸G224およびQ225ならびにC末端アミノ酸P328、G329、およびK330の両方を欠く内因性CH3配列を有する。
【0048】
特定の実施形態では、CH3配列は、あるアロタイプの特定のアミノ酸を別のアロタイプのアミノ酸で置き換えることによって免疫原性を低減するように操作される(本明細書ではイソアロタイプ変異と呼ぶ)、より詳細にSticklerら(Genes Immun.2011 Apr;12(3):213-221)に詳細に記載されており、これは、それが教示する全てについて参照により本明細書に組み込まれる。特定の実施形態では、G1m1アロタイプの特定のアミノ酸が置き換えられる。好ましい実施形態では、イソアロタイプ変異D356EおよびL358MがCH3配列において作製される。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1または第2のCH3ドメインには追加の操作された変異はない。いくつかの実施形態では、CH3配列は、以下に記載されるように、上記のものに追加の1またはそれを超える操作された変異を有する内因性配列である。
【0050】
6.3.2.CH3ドメインにおける追加の操作された直交変異
いくつかの実施形態では、第1および/または第2のCH3ドメインに操作された少なくとも1つの追加の直交変異が存在する。
【0051】
6.3.2.1 カスケード変異
様々な実施形態では、第1および/または第2のCH3ドメインは、E357W変異などのE357変異によって新たに可能になった変異(「カスケード」変異)をさらに含む。
【0052】
いくつかの実施形態では、E357変異を含有するのと反対側のCH3ドメインは、K370における変異をさらに含む。様々な実施形態では、リジン(K)は、A、D、E、F、G、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、W、またはYに変異している。特定の実施形態では、リジン(K)は、D、E、F、H、M、N、Q、R、S、T、W、またはYに変異している。特定の実施形態では、変異はK370Rである。
【0053】
いくつかの実施形態では、E357変異を含有するCH3ドメインは、S364における変異をさらに含む。様々な実施形態では、セリン(S)は、A、D、E、F、G、H、I、K、L、M、N、P、Q、R、T、V、W、またはYに変異している。特定の実施形態では、セリンは、A、D、E、H、K、L、N、Q、R、T、WまたはYに変異している。好ましい実施形態では、セリンをRに変異している。
【0054】
いくつかの実施形態では、E357変異を含有するのと反対側のCH3ドメインは、K370における変異をさらに含み、E357変異を含有するドメインは、S364における変異をさらに含む。様々な実施形態において、K370は、D、E、F、H、M、N、Q、R、S、T、W、またはYに変異している。特定の実施形態では、変異はK370Rである。様々な実施形態において、S364は、A、D、E、H、K、L、N、Q、R、T、WまたはYに変異している。
【0055】
6.3.2.2 ノブインホール
様々な実施形態において、第1および第2のCH3ドメインは、直交ノブインホール(「K-I-H」)変異をさらに含む。
【0056】
本明細書で使用される場合、ノブインホール変異は、第1のドメインが相補的な立体変異を有する第2のドメインと、相補的な立体変異のないドメインとの会合と比較して優先的に会合するように、第1のドメインの表面の立体的特徴を変化させる変異である。ノブインホール変異は、米国特許第5,821,333号および同8,216,805号にさらに詳細に記載されており、その各々はその全体が本明細書に組み込まれる。
【0057】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の操作された変異は、第1のCH3ドメイン中のノブ変異および第2のCH3ドメイン中のホール変異である。いくつかの実施形態では、第1のCH3ドメイン中にホール変異があり、第2のCH3ドメイン中にノブ変異がある。
【0058】
特定の実施形態では、ノブ変異は、T366WまたはT366Yである。
【0059】
特定の実施形態では、ホール変異は、T366S、L368A、F405T、Y407VまたはY407Tから選択される。特定の実施形態では、ホール変異はF405Tである。
【0060】
特定の実施形態では、ノブインホール変異は、第1のCH3ドメイン中のT366W変異および第2のCH3ドメイン中のY407A変異である。特定の実施形態では、ノブインホール変異は、第2のCH3ドメインにおけるT366W変異および第1のCH3ドメインにおけるY407A変異である。
【0061】
特定の実施形態では、ノブインホール変異は、第1のCH3ドメインにおけるT366Y変異および第2のメインにおけるY407T変異である。特定の実施形態では、ノブインホール変異は、第2のCH3ドメインにおけるT366Y変異および第1のメインにおけるY407T変異である。
【0062】
特定の実施形態では、ノブインホール変異は、第1のCH3ドメイン中のT394Wおよび第2のCH3ドメイン中のF405Aである。特定の実施形態では、ノブインホール変異は、第2のCH3ドメイン中のT394Wおよび第1のCH3ドメイン中のF405Aである。
【0063】
特定の実施形態では、ノブインホール変異は、第1のCH3ドメイン中のT366Y変異およびF405A、ならびに第2のCH3ドメイン中のT394W変異およびY407T変異である。特定の実施形態では、ノブインホール変異は、第2のCH3ドメイン中のT366Y変異およびF405A、ならびに第1のCH3ドメイン中のT394W変異およびY407T変異である。
【0064】
6.3.2.3 操作された電荷対
様々な実施形態において、第1および第2のCH3ドメインは、直交電荷対変異をさらに含む。
【0065】
本明細書で使用される場合、電荷対変異は、ドメインが相補的な電荷対変異を有する第2のドメインと、相補的な電荷対変異のないドメインとの会合と比較して優先的に会合するように、ドメインの表面におけるアミノ酸の電荷に影響を及ぼす変異である。特定の実施形態では、電荷対変異は、特定のドメイン間の直交会合を改善する。電荷対変異は、米国特許第8,592,562号;同9,248,182号;および同9,358,286号にさらに詳細に記載されており、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0066】
特定の実施形態では、電荷対変異は、第1のCH3ドメイン中のT366K変異および第2のCH3ドメイン中のL351D変異である。特定の実施形態では、電荷対変異は、第2のCH3ドメイン中のT366K変異および第1のCH3ドメイン中のL351D変異である。
【0067】
6.4.抗体構築物
6.4.1.可変ドメイン
様々な実施形態では、ヘテロ二量体タンパク質の第1および第2のポリペプチド鎖の少なくとも1つは、免疫グロブリン可変ドメインをさらに含む。
【0068】
いくつかの実施形態では、第1および第2のポリペプチド鎖の両方が、免疫グロブリン可変ドメインをさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、第1および第2のポリペプチド鎖の両方がVHドメインを含む。いくつかの実施形態では、第1および第2のポリペプチド鎖の両方がVLドメインを含む。
【0070】
いくつかの実施形態では、第1のポリペプチド鎖はVHドメインを含み、第2のポリペプチド鎖はVLドメインを含むか、または第1のポリペプチド鎖はVLドメインを含み、第2のポリペプチド鎖はVHドメインを含む。これらの実施形態において、第1および第2のポリペプチドの可変ドメインが会合して第1の抗原結合部位(ABS)を形成し、ヘテロ二量体タンパク質は抗体構築物である。
【0071】
ある特定の抗体構築物において、VHドメインを含むポリペプチド鎖はCH2ドメインおよび第3のCH3ドメインをさらに含み、ドメインはN末端からC末端に、
a)VH-第1のCH3-CH2-第3のCH3、
b)VH-第2のCH3-CH2-第3のCH3、
c)VH-第3のCH3-CH2-第1のCH3、または
d)VH-第3のCH3-CH2-第2のCH3
の順序である。特定の実施形態において、VHドメインを含むポリペプチド鎖のドメインは、N末端からC末端に、
a)VH-第1のCH3-CH2-第3のCH3、または
b)VH-第2のCH3-CH2-第3のCH3
の順序である。
【0072】
ある特定の抗体構築物の実施形態において、V
Lドメインを含むポリペプチド鎖は、CH2ドメインおよび第3のCH3ドメインをさらに含む。
図2を参照する特定の実施形態において、ドメインは、N末端からC末端に以下:
【表3】
の順序である。
【0073】
図2を参照する特定の実施形態において、V
Lドメインを含むポリペプチド鎖のドメインは、N末端からC末端に以下:
【表4】
の順序である。
【0074】
図2を参照する特定の実施形態において、V
Lドメインを含むポリペプチド鎖のドメインおよびV
Hドメインを含むポリペプチド鎖のドメインはそれぞれ、N末端からC末端に以下:
【表5】
の順序である。
【0075】
図2を参照する種々の実施形態において、抗体構築物は、第3のポリペプチド鎖および第4のポリペプチド鎖をさらに含み、ここで:
(a)第3のポリペプチド鎖は、ドメインH、ドメインI、ドメインJ、およびドメインKを含み、ドメインは、N末端からC末端にH-I-J-Kの向きで配置され、ドメインHは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインIは定常領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインJはCH2アミノ酸配列を有し、Kは定常領域ドメインアミノ酸配列を有する;
(b)第4のポリペプチド鎖は、ドメインLおよびドメインMを含み、ドメインは、N末端からC末端にL-Mの向きで配置されており、ドメインLは可変領域ドメインアミノ酸配列を有し、ドメインMは定常領域ドメインアミノ酸配列を有する;
(c)第3および第4のポリペプチドは、第2の抗原結合部位(ABS)を形成するHドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合している;および
(d)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合している。
【0076】
特定の実施形態において、ドメインHはVLドメインであり;ドメインIはCLドメインであり;ドメインJはCH2ドメインであり;かつドメインKは第4のCH3ドメインである。特定の実施形態において、ドメインLはVHドメインであり;かつドメインMはCH1ドメインである。
【0077】
特定の実施形態では、ドメインAはVL抗体ドメイン配列を有し、ドメインFはVH抗体ドメイン配列を有する。いくつかの実施形態では、ドメインAはVH抗体ドメイン配列を有し、ドメインFはVL抗体ドメイン配列を有する。
【0078】
いくつかの実施形態では、抗体構築物は、天然抗体構造を含み、ドメインAおよびHはVHアミノ酸配列を含み、ドメインFおよびLはVLアミノ酸配列を含み、ドメインBおよびIはCH1を含み、ドメインGおよびMはCLを含み、ドメインDおよびJはCH2を含み、ドメインEおよびKはCH3を含む。
【0079】
いくつかの実施形態では、抗体構築物はB-Body(商標)である。B-Body(商標)抗体構築物は、米国特許出願公開第2018/0118811号および国際公開第2019/204522号に記載されており、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、具体的な実施形態は、以下にさらに記載される。
【0080】
いくつかの実施形態では、抗体構築物はCrossMab(商標)である。CrossMab(商標)抗体は、米国特許第8,242,247号;同9,266,967号;および同8,227,577号、米国特許出願公開第20120237506号、米国特許出願公開第20090162359号、国際公開第2016016299号、国際公開第2015052230号に記載されている。いくつかの実施形態では、抗体構築物は、a)第1抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖および重鎖と、b)第2の抗原に特異的に結合する抗体の軽鎖および重鎖抗体の軽鎖および重鎖とを含む二価二重特異性抗体であり、第2の抗原に特異的に結合する抗体由来の定常ドメインCLおよびCH1は互いに置き換えられている。
【0081】
いくつかの実施形態では、抗体構築物は、米国特許第8,871,912号および国際公開第2016/087650号に記載されている一般的な構造を有する抗体である。いくつかの実施形態では、抗体構築物は、VL-CH3で構成される軽鎖(LC)と、VH-CH3-CH2-CH3を含む重鎖(HC)とを含むドメイン交換抗体であり、LCのVL-CH3は、HCのVH-CH3と二量体化し、それにより、CH3LC/CH3HCドメイン対を含むドメイン交換LC/HC二量体を形成する。
【0082】
いくつかの実施形態では、抗体構築物は、国際公開第2017/011342号に記載されている通りである。いくつかの実施形態では、抗体構築物は、国際公開第2006/093794号に記載されている通りである。
【0083】
6.4.1.1.1 VHドメイン
様々な実施形態では、VHドメインは、ヒト配列、ヒト化配列、合成配列、またはヒト、非ヒト哺乳動物、および/または合成配列の組み合わせを含む哺乳動物配列であるアミノ酸配列を有する。様々な実施形態では、VHアミノ酸配列は、天然に存在する配列の変異配列である。
【0084】
6.4.1.1.2 VLドメイン
様々な実施形態では、VLドメインは、ヒト配列、ヒト化配列、合成配列、またはヒト、非ヒト哺乳動物、および/または合成配列の組み合わせを含む哺乳動物配列であるアミノ酸配列を有する。様々な実施形態では、VLアミノ酸配列は、天然に存在する配列の変異配列である。
【0085】
特定の実施形態では、VLアミノ酸配列は、ラムダ(λ)軽鎖可変ドメイン配列である。特定の実施形態では、VLアミノ酸配列は、カッパ(κ)軽鎖可変ドメイン配列である。
【0086】
6.4.1.1.3 相補性決定領域
本明細書に記載の抗体構築物のVHドメインおよびVLドメインは、「相補性決定領域」(CDR)と呼ばれる高度に可変な配列、典型的には3つのCDR(CDR1、CD2およびCDR3)を含む。様々な実施形態において、CDRは、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、CDRはヒト配列である。様々な実施形態では、CDRは天然に存在する配列である。様々な実施形態では、CDRは、特定の抗原またはエピトープに対する抗原結合部位の結合親和性を変化させるように変異された天然に存在する配列である。特定の実施形態では、天然に存在するCDRは、親和性成熟および体細胞高頻度変異によってインビボ宿主において変異されている。特定の実施形態では、CDRは、PCR変異誘発および化学変異誘発を含むがこれらに限定されない方法によってインビトロで変異されている。様々な実施形態において、CDRは、ランダム配列CDRライブラリおよび合理的に設計されたCDRライブラリから得られたCDRを含むがこれらに限定されない合成配列である。
【0087】
6.4.1.1.4 フレームワーク領域およびCDRグラフティング
本明細書に記載の抗体構築物のVHドメインおよびVLドメインは、「フレームワーク領域」(FR)配列を含む。FRは、一般に、散在するCDRの足場として作用する保存された配列領域、典型的にはFR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4配列(N末端からC末端)である。様々な実施形態において、FRは、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、FRはヒト配列である。様々な実施形態では、FRは天然に存在する配列である。様々な実施形態では、FRは、限定されないが、合理的に設計された配列を含む合成配列である。
【0088】
様々な実施形態では、FRおよびCDRは両方とも、同じ天然に存在する可変ドメイン配列に由来する。様々な実施形態では、FRおよびCDRは異なる可変ドメイン配列に由来し、CDRはFR足場上にグラフトされ、CDRは特定の抗原に対する特異性を提供する。特定の実施形態では、グラフトCDRはすべて、同じ天然に存在する可変ドメイン配列に由来する。特定の実施形態では、グラフトCDRは、異なる可変ドメイン配列に由来する。特定の実施形態では、グラフトCDRは、ランダム配列CDRライブラリおよび合理的に設計されたCDRライブラリから得られたCDRを含むがこれらに限定されない合成配列である。特定の実施形態では、グラフトCDRおよびFRは同じ種に由来する。特定の実施形態では、グラフトCDRおよびFRは異なる種に由来する。好ましいグラフトCDRの実施形態では、抗体は「ヒト化」され、グラフトCDRは、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバおよびヤギ配列を含むがこれらに限定されない非ヒト哺乳動物配列であり、FRはヒト配列である。ヒト化抗体は、米国特許第6,407,213号においてより詳細に議論されており、その全体が参照によりその教示のすべてについてここに組み込まれる。様々な実施形態では、ある種由来のFRの部分または特異的配列を使用して、別の種のFRの部分または特異的配列を置き換える。
【0089】
6.4.2.CH1およびCLドメイン
様々な実施形態では、抗体構築物の第1および第2のポリペプチド鎖の少なくとも1つは、免疫グロブリンCH1ドメインをさらに含む。様々な実施形態では、ヘテロ二量体タンパク質の第1および第2のポリペプチド鎖の少なくとも1つは、免疫グロブリンCLドメインをさらに含む。
【0090】
様々な実施形態では、第1のポリペプチドはCH1ドメインをさらに含み、第2のポリペプチドはCLドメインをさらに含む。様々な実施形態では、第2のポリペプチドはCH1ドメインをさらに含み、第1のポリペプチドはCLドメインをさらに含む。
【0091】
様々な実施形態では、CH1配列は内因性配列である。様々な実施形態において、CH1配列は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、CH1配列はヒト配列である。特定の実施形態において、CH1配列は、IgA1、IgA2、IgD、IgE、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、またはIgMアイソタイプに由来する。好ましい実施形態では、CH1配列はIgG1アイソタイプに由来する。好ましい実施形態では、CH1配列は、UniProt受託番号P01857アミノ酸1~98である。
【0092】
本明細書に記載の抗体構築物のCLドメインは、抗体軽鎖定常ドメインである。特定の実施形態では、CLドメインは、内因性配列である配列を有する。様々な実施形態において、CL配列は、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、イヌ、ネコ、ラクダ、ロバ、ヤギおよびヒト配列を含むがこれらに限定されない哺乳動物配列である。好ましい実施形態では、CL配列はヒト配列である。
【0093】
特定の実施形態では、CLアミノ酸配列は、ラムダ(λ)軽鎖定常ドメイン配列である。特定の実施形態では、CLアミノ酸配列は、ヒトラムダ軽鎖定常ドメイン配列である。好ましい実施形態では、ラムダ(λ)軽鎖配列は、UniProt受託番号P0CG04である。
【0094】
特定の実施形態では、CLアミノ酸配列は、カッパ(κ)軽鎖定常ドメイン配列である。好ましい実施形態では、CLアミノ酸配列は、ヒトカッパ(κ)軽鎖定常ドメイン配列である。好ましい実施形態では、カッパ軽鎖配列は、UniProt受託番号P01834である。
【0095】
特定の実施形態では、CH1配列およびCL配列は両方とも内因性配列である。
【0096】
CH1ドメインフォールディングは、典型的には、IgGの分泌における速度制限工程である(Feigeら、Mol Cell.2009 Jun 12;34(5):569-79;その全体が参照により本明細書に組み込まれる)。したがって、CH1含有ポリペプチド鎖の速度制限成分に基づいて本明細書に記載の抗体構築物を精製することは、不完全な鎖から完全な複合体を精製する手段、例えば、1またはそれを超える非CH1含有鎖のみを有する複合体から、制限CH1ドメインを有する複合体を精製する手段を提供することができる。
【0097】
CH1の発現を制限することは、いくつかの態様では利点であり得るが、論じられるように、CH1が完全な抗体構築物の全体的な発現を制限する可能性がある。したがって、特定の実施形態では、CH1配列を含むポリペプチド鎖の発現は、完全な複合体を形成する抗体構築物の効率を改善するように調整される。例示的な例では、CH1配列を含むポリペプチド鎖を発現するように構築されたプラスミドベクターの比は、他のポリペプチド鎖を発現するように構築されたプラスミドベクターと比較して増加させることができる。別の実例では、CL配列を含むポリペプチド鎖と比較した場合のCH1配列を含むポリペプチド鎖は、2つのポリペプチド鎖のうちの小さい方であり得る。別の特定の実施形態では、CH1配列を含むポリペプチド鎖の発現は、どのポリペプチド鎖がCH1配列を有するかを制御することによって調整することができる。例えば、CH1ドメインが、4ドメインポリペプチド鎖(例えば、本明細書に記載の第3のポリペプチド鎖)中のCH1配列の天然の位置の代わりに、2ドメインポリペプチド鎖(例えば、本明細書に記載の第4のポリペプチド鎖)中に存在するように抗体構築物を操作して、CH1配列を含むポリペプチド鎖の発現を制御することができる。しかしながら、他の態様では、他の鎖と比較して高すぎるCH1含有鎖の相対的発現レベルは、CH1鎖を有するが他の各鎖は有さない不完全な複合体をもたらし得る。したがって、特定の実施形態では、CH1配列を含むポリペプチド鎖の発現は、CH1含有鎖を含まない形成不完全複合体を減少させること、およびCH1含有鎖を含むが完全な複合体中に存在する他の鎖を含まない形成不完全複合体を減少させることの両方のために調整される。
【0098】
特定の実施形態では、CH1配列およびCL配列は、以下により詳細に考察されるように、内因性CH1およびCL配列においてそれぞれ直交改変を別々に含む。好ましくは、CH1配列における直交変異は、CH1ドメインと精製に使用されるCH1特異的結合試薬との間の特異的結合相互作用を排除しない。
【0099】
6.4.2.1 CH1およびCL直交改変
特定の実施形態では、CH1配列およびCL配列は、内因性CH1およびCL配列のそれぞれ直交改変をさらに含む。CH1/CL直交改変は、CH1ドメイン中の改変残基とCLドメイン中の対応する改変または非改変残基との間の相互作用を介してCH1/CLドメイン対形成に影響を及ぼし得る。
【0100】
特定の実施形態では、直交改変は、イソアロタイプ変異などの免疫原性を低下させるアミノ酸置換と組み合わせることができる。
【0101】
他の実施形態では、CH1/CL対の一方の配列は少なくとも1つの改変を含み、CH1/CL対の他方の配列はそれぞれの直交アミノ酸位置に改変を含まない。
【0102】
CH1配列およびCL配列はまた、CH1配列を有するドメインまたはその一部が、CH1配列を有するドメインまたはその一部と会合することができるように、内因性配列または改変配列のいずれかのその一部であり得る。さらに、本明細書に記載のCH1配列の一部を有する抗体構築物は、CH1結合試薬によって結合され得る。
【0103】
6.4.2.1.1 例示的なCH1/CL直交改変:操作されたジスルフィド架橋
CH1/CL直交改変のいくつかの実施形態は、CH1およびCL中の操作されたシステインの間に操作されたジスルフィド架橋を含む。そのような操作されたジスルフィド架橋は、改変CH1を含むポリペプチドと対応する改変CLを含むポリペプチドとの間の相互作用を安定化し得る。
【0104】
操作されたジスルフィド架橋を含む直交CH1/CL改変は、ほんの一例として、EUインデックスによってナンバリングされる128、129、138、141、168、または171の位置に操作されたシステインを有するCH1ドメインを含むことができる。操作されたジスルフィド架橋を含むそのような直交CH1/CL改変は、ほんの一例として、EUインデックスによってナンバリングされる116、118、119、164、162、または210の位置に操作されたシステインを有するCLドメインをさらに含んでもよい。
【0105】
例えば、CH1/CL直交改変は、米国特許第8,053,562号および同9,527,927号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)においてより詳細にナンバリングされ議論されているように、CH1配列の位置138およびCL配列の位置116、CH1配列の位置128およびCL配列の位置119、またはCH1配列の位置129およびCL配列の位置210における操作されたシステインから選択され得る。いくつかの実施形態では、CH1/CL直交改変は、EUインデックスによってナンバリングされるCH1配列の141位およびCL配列の118位に操作されたシステインを含む。
【0106】
いくつかの実施形態では、CH1/CL直交改変は、EUインデックスによってナンバリングされるCH1配列の168位およびCL配列の164位に操作されたシステインを含む。いくつかの実施形態では、CH1/CL直交改変は、EUインデックスによってナンバリングされるCH1配列の128位およびCL配列の118位に操作されたシステインを含む。いくつかの実施形態では、CH1/CL直交改変は、EUインデックスによってナンバリングされるCH1配列の171位およびCL配列の162位に操作されたシステインを含む。いくつかの実施形態では、CL配列は、CL-ラムダ配列である。好ましい実施形態では、CL配列はCL-カッパ配列である。いくつかの実施形態では、操作されたシステインは、EUインデックスによって番号付けされるCH1配列の位置128およびCLカッパ配列の位置118にある。
【0107】
以下の表1は、EUインデックスによってナンバリングされるCH1とCLとの間の操作されたジスルフィド架橋を含む例示的なCH1/CL直交改変を提供する。
【表1】
【0108】
一連の好ましい実施形態では、非内因性(操作された)システインアミノ酸を提供する変異は、Euインデックスによってナンバリングされる、CL配列中のF118C変異とCH1配列中の対応するA141C、またはCL配列中のF118C変異とCH1配列中の対応するL128C、CL配列中のT164C変異とCH1配列中の対応するH168C変異、またはCL配列中のS162C変異とCH1配列中の対応するP171C変異である。
【0109】
6.4.2.1.2 CH1/CL直交改変:操作された電荷対変異
様々な実施形態において、CL配列およびCH1配列における直交改変は、電荷対変異である。
【0110】
特定の実施形態では、電荷対変異は、Euインデックスによってナンバリングされ、それが教示するすべてについて参照により本明細書に組み込まれるBonischら(Protein Engineering,Design&Selection,2017,pp.1-12)により詳細に記載されているように、CL配列中のF118S、F118AもしくはF118V変異とCH1配列中の対応するA141L、またはCL配列中のT129R変異とCH1配列中の対応するK147Dである。
【0111】
いくつかの場合において、CH1/CL電荷対変異は、Euインデックスによってナンバリングされる、CL配列中のN138K変異とCH1配列中の対応するG166D、またはCL配列中のN138D変異とCH1配列中の対応するG166Kである。いくつかの実施形態では、電荷対変異は、CH1配列中のP127E変異と、対応するCL配列中の対応するE123K変異である。いくつかの実施形態では、電荷対変異は、CH1配列中のP127K変異と、対応するCL配列中の対応するE123(変異していない)である。
【0112】
以下の表2は、例示的なCH1/CL直交電荷対改変を提供する。
【表2】
【0113】
6.4.2.1.3 CH1/CL直交改変の組み合わせ
特定の実施形態では、単一のCH1/CL対のCH1およびCLドメインは、内因性CH1およびCL配列に2つまたはそれを超えるそれぞれ直交改変を別々に含む。例えば、CH1およびCL配列は、内因性CH1およびCL配列における第1の直交改変および第2の直交改変を含んでもよい。内因性CH1およびCL配列における2つまたはそれを超えるそれぞれ直交改変は、本明細書に記載のCH1/CL直交改変のいずれかから選択することができる。
【0114】
いくつかの実施形態では、第1の直交改変は、直交電荷対変異であり、第2の直改変は、直交する操作されたジスルフィド架橋である。いくつかの実施形態では、第1の直交改変は、表2に記載されるような直交電荷対変異であり、追加の直交改変は、米国特許第8,053,562号および同9,527,927号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)においてより詳細にナンバリングされ議論されているように、CH1配列の位置138およびCL配列の位置116、CH1配列の位置128およびCL配列の位置119、またはCH1配列の位置129およびCL配列の位置210における操作されたシステインから選択され得る操作されたジスルフィド架橋を含む。
【0115】
いくつかの実施形態では、第1の直交改変は、表2に記載の直交電荷対変異であり、追加の直交改変は、表1に記載の操作されたジスルフィド架橋を含む。いくつかの実施形態では、第1の直交改変は、CH1配列中のL128C変異およびCL配列中のF118C変異を含み、第2の直交改変は、同じCH1配列中の残基166の修飾および同じCL配列中の残基138の修飾を含む。
【0116】
いくつかの実施形態では、第1の直交改変は、CH1配列中のL128C変異およびCL配列中のF118C変異を含み、第2の直交改変は、CH1配列中のG166D変異およびCL配列中のN138K変異を含む。いくつかの実施形態では、第1の直交改変は、CH1配列中のL128C変異およびCL配列中のF118C変異を含み、第2の直交改変は、CH1配列中のG166K変異およびCL配列中のN138D変異を含む。
【0117】
6.4.3.CH2ドメイン
様々な実施形態では、抗体構築物の第1および第2のポリペプチド鎖の少なくとも1つは、CH2ドメインをさらに含む。様々な実施形態では、第1のポリペプチドと第2のポリペプチドの両方がCH2ドメインを含む。
【0118】
いくつかの実施形態では、抗体構築物は、1つよりも多くの対になったCH2ドメインセットを有する。これらの実施形態の様々なものにおいて、対になったCH2ドメインの第1のセットは、第1のアイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列および別のアイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列の1またはそれを超えるオルソロガスセットを有する。本明細書に記載のオルソロガスCH2アミノ酸配列は、共有アイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列と相互作用することができるが、抗体構築物中に存在する別のアイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列とは有意に相互作用しない。
【0119】
特定の実施形態では、CH2アミノ酸配列の第1のセットは、抗体構築物中の他の非CH2ドメインと同じアイソタイプに由来する。特定の実施形態では、第1のセットはIgGアイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列を有し、1またはそれを超えるオルソロガスセットはIgMまたはIgEアイソタイプ由来のCH2アミノ酸配列を有する。
【0120】
特定の実施形態では、CH2アミノ酸配列のセットの1またはそれを超えるものが内因性CH2配列である。他の実施形態では、CH2アミノ酸配列のセットの1またはそれを超えるものが、1またはそれを超える変異を有する内因性CH2配列である。特定の実施形態では、1またはそれを超える変異は、直交ノブホール変異、直交電荷対変異、または直交疎水性変異である。本明細書に記載の抗体構築物に有用なオルソロガスCH2アミノ酸配列は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる国際PCT出願WO2017/011342およびWO2017/106462により詳細に記載されている。
【0121】
特定の実施形態では、CH2アミノ酸配列の全てのセットは同じ種に由来する。好ましい実施形態では、CH2アミノ酸配列の全てのセットがヒトCH2アミノ酸配列である。他の実施形態では、CH2アミノ酸配列のセットは、異なる種に由来する。
【0122】
6.4.4.特異的二価抗体構築物
様々な実施形態において、抗体構築物は、
図2に示される構造を有する。
【0123】
6.4.4.1 ドメインA
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインAは可変領域ドメインアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、ドメインAはVL抗体ドメイン配列を有し、ドメインFはVH抗体ドメイン配列を有する。いくつかの実施形態では、ドメインAはVH抗体ドメイン配列を有し、ドメインFはVL抗体ドメイン配列を有する。
【0124】
本明細書に記載の抗体構築物では、ドメインAのC末端はドメインBのN末端に接続されている。特定の実施形態では、ドメインAは、ドメインAとドメインBとの間の接合部におけるそのC末端において変異しているVLアミノ酸配列を有する。
【0125】
6.4.4.2 ドメインB
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインBは定常領域ドメイン配列を有する。
【0126】
いくつかの実施形態では、ドメインBは、CH3配列を有する。
【0127】
特定の実施形態では、ドメインBは、「ノブインホール」(「KIH」)直交変異を含むCH3配列を有する。
【0128】
特定の実施形態において、ドメインBは、CH3配列と、直交変異を含有するCH3ドメインとの操作されたジスルフィド架橋を形成するS354CまたはY349C変異のいずれかとを有する。
【0129】
特定の実施形態では、ドメインBは、第1のCH3ドメイン配列を有し、第1のCH3ドメインのY349は、システイン(C)で置換され(Y349C)、位置は、Euインデックスにしたがってナンバリングされている。
【0130】
特定の実施形態では、ドメインBは第2のCH3ドメイン配列を有し、第2のCH3ドメインのS354はシステイン(C)で置換され(S354C)、第2のCH3ドメインのE357は疎水性または芳香族アミノ酸で置換され、位置はEuインデックスにしたがってナンバリングされている。特定の実施形態では、第2のCH3ドメインは、E357W変異を有する。
【0131】
特定の実施形態では、ドメインBは、以下の変異の変化を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有する:P343V;Y349C;およびトリペプチド挿入、445P、446G、447K。他の好ましい実施形態では、ドメインBは、以下の変異の変化を有するヒトIgG1 CH3配列を有する:T366K;およびトリペプチド挿入、445K、446S、447C。さらに他の好ましい実施形態では、ドメインBは、以下の変異の変化を有するヒトIgG1 CH3配列を有する:Y349C;およびトリペプチド挿入、445P、446G、447K。
【0132】
遠く亭の実施形態では、ドメインBは、その他は内因性であるCH3配列に組み込まれたK447C変異を有するヒトIgG1 CH3配列を有する。
【0133】
いくつかの実施形態では、定常領域配列は、オルソロガスCH2配列である。いくつかの実施形態では、ドメインBは、IgE由来のCH2配列を有する。いくつかの実施形態では、ドメインBは、IgM由来のCH2配列を有する。
【0134】
いくつかの実施形態では、例えば、結合分子の結合価が3またはそれを超える場合、定常領域配列はCH1またはCL配列である。いくつかの実施形態では、ドメインBは、CH1配列を有する。いくつかの実施形態では、定常領域配列はCL配列である。いくつかの実施形態では、CH1またはCL配列は、本明細書に記載の1またはそれを超えるCH1またはCL直交改変を含む。
【0135】
本明細書に記載の抗体構築物では、ドメインBのN末端はドメインAのC末端に接続されている。特定の実施形態では、ドメインBは、ドメインAとドメインBとの間の接合部におけるそのN末端において変異しているCH3アミノ酸配列を有する。
【0136】
本明細書に記載の抗体構築物では、ドメインBのC末端はドメインDのN末端に接続されている。特定の実施形態では、ドメインBは、ドメインBとドメインDとの間の接合部のC末端で伸長されるCH3アミノ酸配列を有する。
【0137】
いくつかの実施形態では、ドメインBはヒトIgA CH3配列を含む。いくつかの実施形態では、IgA CH3配列はCH3リンカー配列を含む。
【0138】
6.4.4.3 ドメインD
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインDは定常領域アミノ酸配列を有する。
【0139】
好ましい一連の実施形態において、ドメインDはCH2アミノ酸配列を有する。特定の実施形態では、CH2配列は内因性配列である。特定の実施形態では、配列は、UniProt受託番号P01857アミノ酸111~223である。好ましい実施形態では、CH2配列は、N末端可変ドメイン定常ドメインセグメントをCH2ドメインに連結するN末端ヒンジ領域ペプチドを有する。いくつかの実施形態では、CH2配列は、エフェクター機能を調整する1またはそれを超える変異を含む。特定の実施形態では、CH2配列は、エフェクター機能を低下させる1またはそれを超える変異を含む。いくつかの実施形態では、CH2配列は、FcRN結合を調整する1またはそれを超える変異を含む。特定の実施形態では、CH2配列は、FcRN結合を低下させる1またはそれを超える変異を含む。
【0140】
本明細書に記載の抗体構築物では、ドメインDのN末端はドメインBのC末端に接続されている。特定の実施形態では、ドメインBは、ドメインDとドメインBとの間の接合部のC末端で伸長されるCH3アミノ酸配列を有する。
【0141】
6.4.4.4 ドメインE
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインEは定常領域ドメインアミノ酸配列を有する。
【0142】
特定の実施形態では、定常領域配列はCH3配列である。
【0143】
特定の実施形態では、ドメインEは、「ノブインホール」(「KIH」)直交変異を含むCH3配列を有する。
【0144】
特定の実施形態において、ドメインEは、CH3配列と、直交変異を含有するCH3ドメインとの操作されたジスルフィド架橋を形成するS354CまたはY349C変異のいずれかとを有する。
【0145】
特定の実施形態では、ドメインEは、第1のCH3ドメイン配列を有し、第1のCH3ドメインのY349は、システイン(C)で置換されている(Y349C)。
【0146】
特定の実施形態では、ドメインEは第2のCH3ドメイン配列を有し、第2のCH3ドメインのS354はシステイン(C)で置換され(S354C)、第2のCH3ドメインのE357は疎水性または芳香族アミノ酸で置換され、位置はEuインデックスにしたがってナンバリングされている。特定の実施形態では、第2のCH3ドメインは、E357W変異を有する。
【0147】
特定の実施形態では、定常領域ドメイン配列はCH1配列である。特定の実施形態では、ドメインEのCH1アミノ酸配列は、結合分子中の唯一のCH1アミノ酸配列である。特定の実施形態では、CH1ドメインのN末端は、CH2ドメインのC末端に接続している。
【0148】
特定の実施形態では、定常領域配列はCL配列である。特定の実施形態では、CLドメインのN末端は、CH2ドメインのC末端に接続している。
【0149】
6.4.4.5 ドメインF
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインFは可変領域ドメインアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、ドメインFはVH抗体ドメイン配列を有する。いくつかの実施形態では、ドメインFはVL抗体ドメイン配列を有する。
【0150】
6.4.4.6 ドメインG
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインGは定常領域アミノ酸配列を有する。
【0151】
いくつかの実施形態では、ドメインはG、CH3アミノ酸配列を有する。
【0152】
特定の実施形態では、ドメインGは、以下の変異の変化を有するヒトIgG1 CH3配列を有する:S354C;およびトリペプチド挿入、445P、446G、447K。いくつかの実施形態では、ドメインGは、以下の変異の変化を有するヒトIgG1 CH3配列を有する:S354C;および445P、446G、447Kトリペプチド挿入。いくつかの好ましい実施形態では、ドメインGは、以下の変化を有するヒトIgG1 CH3配列を有する:L351D、および445G、446E、447Cのトリペプチド挿入。
【0153】
特定の実施形態では、ドメインGは、「ノブインホール」(「KIH」)直交変異を含むCH3配列を有する。
【0154】
特定の実施形態において、ドメインGは、CH3配列と、直交変異を含有するCH3ドメインとの操作されたジスルフィド架橋を形成するS354CまたはY349C変異のいずれかを有する。
【0155】
特定の実施形態では、ドメインGは、第1のCH3ドメイン配列を有し、第1のCH3ドメインのY349は、システイン(C)で置換されている(Y349C)。
【0156】
特定の実施形態では、ドメインGは第2のCH3ドメイン配列を有し、第2のCH3ドメインのS354はシステイン(C)で置換され(S354C)、第2のCH3ドメインのE357は疎水性または芳香族アミノ酸で置換され、位置はEuインデックスにしたがってナンバリングされている。特定の実施形態では、第2のCH3ドメインは、E357W変異を有する。
【0157】
いくつかの実施形態では、ドメインGはヒトIgA CH3配列を有する。
【0158】
いくつかの実施形態では、ドメインGは、CL配列を有する。
【0159】
いくつかの実施形態では、ドメインGは、IgE由来のCH2配列を有する。いくつかの実施形態では、ドメインGは、IgM由来のCH2配列を有する。
【0160】
特定の実施形態では、例えば、結合分子の結合価が3またはそれを超える場合、定常領域配列はCH1またはCL配列である。ドメインBがCL配列であるいくつかの実施形態では、ドメインGはCH1配列である。いくつかの実施形態では、CH1またはCL配列は、本明細書に記載の1またはそれを超えるCH1またはCl直交改変を含む。
【0161】
いくつかの実施形態では、ドメインGのC末端は、ドメインDのN末端に接続されている。特定の実施形態では、ドメインGは、ドメインGとドメインDとの間の接合部のC末端で伸長されるCH3アミノ酸配列を有する。
【0162】
6.4.4.7 ドメインH
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインHは可変領域ドメインアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、ドメインHはVL抗体ドメイン配列を有する。いくつかの実施形態では、ドメインHはVH抗体ドメイン配列を有する。
【0163】
6.4.4.8 ドメインI
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインIは定常領域ドメインアミノ酸配列を有する。
【0164】
結合分子の一連の好ましい実施形態では、ドメインIはCLアミノ酸配列を有する。別の一連の実施形態において、ドメインIはCH1アミノ酸配列を有する。
【0165】
6.4.4.9 ドメインJ
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインJはCH2アミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、CH2アミノ酸配列は、ドメインJをドメインIに接続するN末端ヒンジ領域を有する。いくつかの実施形態では、CH2配列は、エフェクター機能を調整する1またはそれを超える変異を含む。特定の実施形態では、CH2配列は、エフェクター機能を低下させる1またはそれを超える変異を含む。いくつかの実施形態では、CH2配列は、FcRN結合を調整する1またはそれを超える変異を含む。特定の実施形態では、CH2配列は、FcRN結合を低下させる1またはそれを超える変異を含む。
【0166】
ドメインJのC末端は、ドメインKのN末端に接続されている。特定の実施形態では、ドメインJは、CH1アミノ酸配列またはCLアミノ酸配列を有するドメインKのN末端に接続している。
【0167】
6.4.4.10 ドメインK
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインKは定常領域ドメインアミノ酸配列を有する。
【0168】
いくつかの実施形態では、ドメインKは、CH3配列を有する。
【0169】
特定の実施形態では、ドメインKは、「ノブインホール」(「KIH」)直交変異を含むCH3配列を有する。
【0170】
特定の実施形態において、ドメインKは、CH3配列と、直交変異を含有するCH3ドメインとの操作されたジスルフィド架橋を形成するS354CまたはY349C変異のいずれかとを有する。
【0171】
特定の実施形態では、ドメインKは、第1のCH3ドメイン配列を有し、第1のCH3ドメインのY349は、システイン(C)で置換されている(Y349C)。
【0172】
特定の実施形態では、ドメインKは第2のCH3ドメイン配列を有し、第2のCH3ドメインのS354はシステイン(C)で置換され(S354C)、第2のCH3ドメインのE357は疎水性または芳香族アミノ酸で置換され、位置はEuインデックスにしたがってナンバリングされている。特定の実施形態では、第2のCH3ドメインは、E357W変異を有する。
【0173】
いくつかの実施形態では、ノブインホール直交変異は、イソアロタイプ変異と組み合わされる。特定の実施形態では、ノブ変異は、T366WまたはT366Yである。特定の実施形態では、ホール変異は、T366S、L368A、F405T、Y407VまたはY407Tから選択される。特定の実施形態では、ホール変異はF405Tである。
【0174】
特定の実施形態では、定常領域ドメイン配列はCH1配列である。特定の実施形態では、ドメインKのCH1アミノ酸配列は、結合分子中の唯一のCH1アミノ酸配列である。特定の実施形態では、CH1ドメインのN末端は、CH2ドメインのC末端に接続している。特定の実施形態では、定常領域配列はCL配列である。特定の実施形態では、CLドメインのN末端は、CH2ドメインのC末端に接続している。
【0175】
6.4.4.11 ドメインL
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインLは可変領域ドメインアミノ酸配列を有する。好ましい実施形態では、ドメインLはVH抗体ドメイン配列を有する。いくつかの実施形態では、ドメインLはVL抗体ドメイン配列を有する。
【0176】
6.4.4.12 ドメインM
図2を参照すると、本明細書に記載の抗体構築物の様々な実施形態では、ドメインMは定常領域ドメインアミノ酸配列を有する。一連の好ましい実施形態では、ドメインIはCH1アミノ酸配列を有し、ドメインMはCLアミノ酸配列を有する。別の一連の好ましい実施形態では、ドメインIはCLアミノ酸配列を有し、ドメインMはCH1アミノ酸配列を有する。
【0177】
6.4.4.13 ドメインAとドメインFの対形成
図2に示す抗体構築物では、ドメイン「A」VLまたはVHアミノ酸配列および同族ドメイン「F」VHまたはVLアミノ酸配列が会合し、抗原結合部位(ABS)を形成する。A:F抗原結合部位(ABS)は、抗原のエピトープと特異的に結合することができる。
【0178】
様々な多価実施形態では、ドメインAおよびF(A:F)によって形成されるABSは、結合分子内の1またはそれを超える他のABSと配列が同一であり、したがって、結合分子内の1またはそれを超える他の配列同一のABSと同じ認識特異性を有する。
【0179】
様々な多価実施形態では、A:F ABSは、結合分子内の1またはそれを超える他のABSと配列が同一ではない。特定の実施形態では、A:F ABSは、結合分子中の1またはそれを超える他の配列非同一ABSの認識特異性とは異なる認識特異性を有する。特定の実施形態では、A:F ABSは、結合分子中の少なくとも1つの他の配列非同一性ABSによって認識される抗原とは異なる抗原を認識する。特定の実施形態では、A:F ABSは、結合分子中の少なくとも1つの他の配列非同一性ABSによっても認識される抗原の異なるエピトープを認識する。これらの実施形態では、ドメインAおよびFによって形成されるABSは抗原のエピトープを認識し、結合分子内の1またはそれを超える他のABSは同じ抗原を認識するが、同じエピトープを認識しない。
【0180】
6.4.4.14 ドメインBとドメインGの対形成
図2に示される抗体構築物では、ドメイン「B」定常領域アミノ酸配列とドメイン「G」定常領域アミノ酸配列とが会合している。
【0181】
いくつかの実施形態では、ドメインBおよびドメインGはCH3アミノ酸配列を有する。
【0182】
特定の実施形態では、ドメインBは第1のCH3ドメインであり、ドメインGは第2のCH3ドメインであり、第1のCH3ドメインのY349はシステイン(C)で置換され(Y349C)、第2のCH3ドメインのS354はシステイン(C)で置換され(S354C)、第2のCH3ドメインのE357は疎水性または芳香族アミノ酸で置換され、位置はEuインデックスにしたがってナンバリングされている。
【0183】
特定の実施形態では、ドメインBは第2のCH3ドメインであり、ドメインGは第1のCH3ドメインであり、第1のCH3ドメインのY349はシステイン(C)で置換され(Y349C)、第2のCH3ドメインのS354はシステイン(C)で置換され(S354C)、第2のCH3ドメインのE357は疎水性または芳香族アミノ酸で置換され、位置はEuインデックスにしたがってナンバリングされている。
【0184】
様々な実施形態では、BドメインおよびGドメインのアミノ酸配列は同一である。特定のこれらの実施形態では、配列は内因性CH3配列である。配列は、ヒトIgG1由来のCH3配列であってもよい。配列は、ヒトIgA由来の配列であってもよい。
【0185】
様々な実施形態では、BドメインおよびGドメインのアミノ酸配列は異なり、内因性CH3配列中にそれぞれ直交改変を別々に含み、BドメインはGドメインと相互作用し、BドメインもGドメインも、直交改変を欠くCH3ドメインと有意に相互作用しない。
【0186】
特定の実施形態では、ドメインBまたはG含有CH3配列と、同じくCH3配列を含有するドメインEおよびKとの望ましくない会合を減少させることが望ましい。そのような場合、ドメインBおよび/またはGにおけるヒトIgA(IgA-CH3)由来のCH3配列の使用は、そのような望ましくない会合を減少させることによって抗体の集合および安定性を改善し得る。結合分子のいくつかの実施形態では、ドメインEおよびKはIgG-CH3配列を含み、ドメインBおよびGはIgA-CH3配列を含む。
【0187】
6.4.4.15 ドメインEとドメインKの対形成
特定の実施形態では、ドメインEは第1のCH3ドメインであり、ドメインKは第2のCH3ドメインであり、第1のCH3ドメインのY349はシステイン(C)で置換され(Y349C)、第2のCH3ドメインのS354はシステイン(C)で置換され(S354C)、第2のCH3ドメインのE357は疎水性または芳香族アミノ酸で置換され、位置はEuインデックスにしたがってナンバリングされている。
【0188】
特定の実施形態では、ドメインEは第2のCH3ドメインであり、ドメインKは第1のCH3ドメインであり、第1のCH3ドメインのY349はシステイン(C)で置換され(Y349C)、第2のCH3ドメインのS354はシステイン(C)で置換され(S354C)、第2のCH3ドメインのE357は疎水性または芳香族アミノ酸で置換され、位置はEuインデックスにしたがってナンバリングされている。
【0189】
特定の実施形態では、異なる配列は、内因性CH3配列中にそれぞれ直交改変を別々に含み、EドメインはKドメインと相互作用し、EドメインもKドメインも、直交改変を欠くCH3ドメインと有意に相互作用しない。特定の実施形態では、直交改変には、操作されたジスルフィド架橋、ノブインホール変異、および電荷対変異が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、直交改変は、操作されたジスルフィド架橋、ノブインホール変異、および電荷対変異から選択されるがこれらに限定されない直交改変の組み合わせを含む。
【0190】
特定の実施形態では、直交改変は、イソアロタイプ変異などの免疫原性を低下させるアミノ酸置換と組み合わせることができる。
【0191】
様々な実施形態では、EドメインおよびKドメインのアミノ酸配列は同一である。
【0192】
6.4.4.16 ドメインHとドメインLの対形成
様々な実施形態では、ドメインHはVL配列を有し、ドメインLはVH配列を有し、ドメイン「H」VLドメイン「L」VHアミノ酸配列が会合して、抗原結合部位(ABS)を形成する。H:L抗原結合部位(ABS)は、抗原のエピトープと特異的に結合することができる。
【0193】
好ましい実施形態では、ドメインHはVLアミノ酸配列を有し、ドメインIはCLアミノ酸配列を有し、ドメインLはVHアミノ酸配列を有し、ドメインMはCH1アミノ酸配列を有する。
【0194】
様々な実施形態では、HドメインおよびLドメインのアミノ酸配列は、内因性配列中にそれぞれ直交改変を別々に含み、HドメインはLドメインと相互作用し、HドメインもLドメインも、直交改変を欠くドメインと有意に相互作用しない。一連の実施形態では、Hドメインにおける直交変異はVL配列にあり、Lドメインにおける直交変異はVH配列にある。特定の実施形態では、直交変異は、VH/VL界面における電荷対変異である。好ましい実施形態では、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるIgawaら(Protein Eng.Des.Sel.,2010,vol.23,667-677)により詳細に記載されているように、VH/VL界面における電荷対変異は、VH中のQ39EとVL中の対応するQ38K、またはVH中のQ39KとVL中の対応するQ38Eである。
【0195】
特定の実施形態では、AドメインとFドメインとの間の相互作用は第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し、HドメインとLドメインとの間の相互作用は第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する。特定の実施形態では、AドメインとFドメインとの間の相互作用は第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成し、HドメインとLドメインとの間の相互作用は第1の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する。
【0196】
6.4.4.17 ドメインIとドメインMの対形成
様々な実施形態では、ドメインIはCL配列を有し、ドメインMはCH1配列を有する。
【0197】
様々な実施形態では、IドメインおよびMドメインのアミノ酸配列は、内因性配列中にそれぞれ直交改変を別々に含み、IドメインはMドメインと相互作用し、IドメインもMドメインも、直交改変を欠くドメインと有意に相互作用しない。一連の実施形態では、Iドメインにおける直交変異はCL配列にあり、Mドメインにおける直交変異はCH1配列にある。
【0198】
6.4.4.18 ドメイン接合部
6.4.4.18.1 VLドメインとCH3ドメインとを接続する接合部
様々な実施形態では、VLドメインのC末端とCH3ドメインのN末端との間の接合部を形成するアミノ酸配列は、操作された配列である。
【0199】
特定の実施形態では、1またはそれを超えるアミノ酸が、VLドメインのC末端において欠失または付加される。特定の実施形態では、A111が、VLドメインのC末端において欠失される。特定の実施形態では、1またはそれを超えるアミノ酸が、CH3ドメインのN末端において欠失または付加される。特定の実施形態では、P343が、CH3ドメインのN末端において欠失される。特定の実施形態では、P343およびR344が、CH3ドメインのN末端において欠失される。特定の実施形態では、1またはそれを超えるアミノ酸が、VLドメインのC末端およびCH3ドメインのN末端の両方に欠失または付加される。特定の実施形態では、A111がVLドメインのC末端において欠失され、P343がCH3ドメインのN末端において欠失される。好ましい実施形態では、A111およびV110が、VLドメインのC末端において欠失される。別の好ましい実施形態では、A111およびV110がVLドメインのC末端において欠失しており、CH3ドメインのN末端はP343V変異を有する。
【0200】
6.4.4.18.2 VHドメインとCH3ドメインとを接続する接合部
様々な実施形態では、VHドメインのC末端とCH3ドメインのN末端との間の接合部を形成するアミノ酸配列は、操作された配列である。
【0201】
特定の実施形態では、1またはそれを超えるアミノ酸が、VHドメインのC末端において欠失または付加される。特定の実施形態では、K117およびG118が、VHドメインのC末端において欠失している。特定の実施形態では、1またはそれを超えるアミノ酸が、CH3ドメインのN末端において欠失または付加される。特定の実施形態では、P343が、CH3ドメインのN末端において欠失される。特定の実施形態では、P343およびR344が、CH3ドメインのN末端において欠失される。特定の実施形態では、P343、R344、およびE345が、CH3ドメインのN末端において欠失される。特定の実施形態では、1またはそれを超えるアミノ酸が、VHドメインのC末端およびCH3ドメインのN末端の両方に欠失または付加される。好ましい実施形態では、T116、K117、およびG118が、VHドメインのC末端において欠失している。
【0202】
6.4.4.18.3 CH3のC末端とCH2のN末端とを接続する接合部(ヒンジ)
本明細書に記載される抗体構築物のいくつかの実施形態では、CH2ドメインのN末端は、「ヒンジ」領域アミノ酸配列を有する。本明細書で使用される場合、ヒンジ領域は、抗体のN末端可変ドメイン定常ドメインセグメントと抗体のCH2ドメインとを連結する抗体重鎖の配列である。さらに、ヒンジ領域は、典型的には、N末端可変ドメイン定常ドメインセグメントとCH2ドメインとの間の柔軟性、ならびに重鎖(例えば、第1および第3のポリペプチド鎖)間のジスルフィド架橋を形成するアミノ酸配列モチーフの両方を提供する。
【0203】
様々な実施形態では、CH3アミノ酸配列は、CH3ドメインのC末端とCH2ドメインのN末端との間の接合部のC末端において伸長される。特定の実施形態では、CH3アミノ酸配列は、CH3ドメインのC末端とヒンジ領域との間の接合部のC末端で伸長され、ヒンジ領域がCH2ドメインのN末端に接続される。好ましい実施形態では、CH3アミノ酸配列は、CH3アミノ酸伸長配列(「CH3リンカー配列」または「CH3リンカー」)を挿入することによって伸長される。いくつかの実施形態では、CH3アミノ酸伸長配列の後には、IgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフが続く。いくつかの実施形態では、CH3アミノ酸伸長配列は、3~10アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、CH3アミノ酸伸長配列は、3~8アミノ酸長である。いくつかの実施形態では、CH3アミノ酸伸長配列は、3~6アミノ酸長である。
【0204】
いくつかの実施形態では、CH3アミノ酸伸長配列はPGKトリペプチドである。いくつかの実施形態では、CH3アミノ酸伸長配列はAGCトリペプチドである。いくつかの実施形態では、CH3アミノ酸伸長配列は、GECトリペプチドである。いくつかの実施形態では、CH3アミノ酸伸長配列はAGKCである。いくつかの実施形態では、CH3アミノ酸伸長配列はPGKCである。いくつかの実施形態では、CH3アミノ酸伸長配列はAGKGCである。いくつかの実施形態では、CH3アミノ酸伸長配列はAGKGSCである。
【0205】
特定の実施形態では、CH3ドメインのC末端での伸長は、別のCH3ドメインの直交C末端伸長とジスルフィド結合を形成することができるアミノ酸配列を組み込む。好ましい実施形態では、CH3ドメインのC末端での伸長は、KSCトリペプチド配列を組み込み、その後に、カッパ軽鎖のGECモチーフを組み込む別のCH3ドメインの直交C末端伸長とジスルフィド結合を形成するIgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフが続く。
【0206】
結合分子のいくつかの実施形態では、ドメインBおよびGはCH3アミノ酸配列を含み、ドメインBは第1のCH3リンカー配列を含み、ドメインGは第2のCH3リンカー配列を含む。いくつかの実施形態では、第1のCH3リンカー配列は、第1および第2のCH3リンカー配列のシステイン残基間のジスルフィド架橋の形成によって第2のCH3リンカー配列と会合する。いくつかの実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは同一である。いくつかの実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは同一ではない。いくつかの実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは、1~6アミノ酸長が異なる。いくつかの実施形態では、第1のCH3リンカーおよび第2のCH3リンカーは、1~3アミノ酸長が異なる。
【0207】
好ましい実施形態では、第1のCH3リンカーはAGCであり、第2のCH3リンカーはAGKGSCである。いくつかの実施形態では、第1のCH3リンカーはAGKGCであり、第2のCH3リンカーはAGCである。いくつかの実施形態では、第1のCH3リンカーはAGKGSCであり、第2のCH3リンカーはAGCである。いくつかの実施形態では、第1のCH3リンカーはAGKCであり、第2のCH3リンカーはAGCである。
【0208】
6.4.4.18.4 CLのC末端とCH2のN末端とを接続する接合部(ヒンジ)
様々な実施形態では、CLアミノ酸配列は、そのC末端を介してヒンジ領域に連結され、次にヒンジ領域はCH2ドメインのN末端に連結される。
【0209】
6.4.4.18.5 CH2のC末端を定常領域ドメインに接続する接合部
様々な実施形態において、CH2アミノ酸配列は、そのC末端を介して定常領域ドメインのN末端に連結される。好ましい実施形態では、CH2配列は、その内因性配列を介してCH3配列に連結される。他の実施形態では、CH2配列はCH1またはCL配列に連結されている。CH2配列をCH1またはCL配列に連結することを議論する例は、米国特許第8,242,247号にさらに詳細に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0210】
6.4.4.19 二価二重特異性B-Body「BC1」
図2および
図3を参照すると、一連の実施形態において、抗体構築物は、第1、第2、第3および第4のポリペプチド鎖を有し、(a)第1のポリペプチド鎖は、ドメインA、ドメインB、ドメインDおよびドメインEを含み、ドメインは、N末端からC末端にA-B-D-Eの向きで配置されており、ドメインAは、第1のVLアミノ酸配列を有し、ドメインBは、T366K変異およびIgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフが後に続くKSCトリペプチド配列を組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し、ドメインDは、ヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、ドメインEは、S354CおよびT366W変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸を有する;(b)第2のポリペプチド鎖は、ドメインFおよびドメインGを有し、ドメインは、N末端からC末端にF-Gの向きで配置され、ドメインFは、第1のVHアミノ酸配列を有し、ドメインGは、L351D変異およびGECアミノ酸ジスルフィドモチーフを組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有する;(c)第3のポリペプチド鎖は、ドメインH、ドメインI、ドメインJおよびドメインKを有し、ドメインは、N末端からC末端にH-I-J-Kの向きで配置されており、ドメインHは、第2のVLアミノ酸配列を有し、ドメインIは、ヒトCLカッパアミノ酸配列を有し、ドメインJは、ヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、Kは、Y349C、D356E、L358M、T366S、L368A、およびY407V変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有する;(d)第4のポリペプチド鎖は、ドメインLおよびドメインMを有し、ドメインは、N末端からC末端にL-Mの向きで配置され、ドメインLは、第2のVHアミノ酸配列を有し、ドメインMは、ヒトIgG1 CH1アミノ酸配列を有する;(e)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合する;(f)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合する;(g)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合し、結合分子を形成する;(h)ドメインAおよびドメインFは、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成する;(i)ドメインHおよびドメインLは、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する。
【0211】
本明細書に記載の直交変異は、個の構築物のE:K対ドメインにさらに操作することができる。
【0212】
6.4.4.20 二価二重特異性B-Body「BC6」
図2および
図4を参照すると、一連の実施形態において、結合分子は、第1、第2、第3および第4のポリペプチド鎖を有し、(a)第1のポリペプチド鎖は、ドメインA、ドメインB、ドメインDおよびドメインEを含み、ドメインは、N末端からC末端にA-B-D-Eの向きで配置されており、ドメインAは、第1のVLアミノ酸配列を有し、ドメインBは、IgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフが後に続くKSCトリペプチド配列を組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し、ドメインDは、ヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、ドメインEは、S354CおよびT366W変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸を有する;(b)第2のポリペプチド鎖は、ドメインFおよびドメインGを有し、ドメインは、N末端からC末端にF-Gの向きで配置され、ドメインFは、第1のVHアミノ酸配列を有し、ドメインGは、GECアミノ酸ジスルフィドモチーフを組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有する;(c)第3のポリペプチド鎖は、ドメインH、ドメインI、ドメインJおよびドメインKを有し、ドメインは、N末端からC末端にH-I-J-Kの向きで配置されており、ドメインHは、第2のVLアミノ酸配列を有し、ドメインIは、ヒトCLカッパアミノ酸配列を有し、ドメインJは、ヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、Kは、Y349C、D356E、L358M、T366S、L368A、およびY407V変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有する;(d)第4のポリペプチド鎖は、ドメインLおよびドメインMを有し、ドメインは、N末端からC末端にL-Mの向きで配置され、ドメインLは、第2のVHアミノ酸配列を有し、ドメインMは、ヒトIgG1アミノ酸配列を有する;(e)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合する;(f)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合する;(g)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合し、結合分子を形成する;(h)ドメインAおよびドメインFは、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成する;(i)ドメインHおよびドメインLは、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する。
【0213】
本明細書に記載の直交変異は、E:K対ドメインにさらに操作することができる。
【0214】
6.4.4.21 二価二重特異性B-Body「BC28」
図2および
図5を参照すると、一連の実施形態において、結合分子は、第1、第2、第3および第4のポリペプチド鎖を有し、(a)第1のポリペプチド鎖は、ドメインA、ドメインB、ドメインDおよびドメインEを含み、ドメインは、N末端からC末端にA-B-D-Eの向きで配置されており、ドメインAは、第1のVLアミノ酸配列を有し、ドメインBは、Y349C変異およびIgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフが後に続くPGKトリペプチド配列を組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し、ドメインDは、ヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、ドメインEは、S354CおよびT366W変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸を有する;(b)第2のポリペプチド鎖は、ドメインFおよびドメインGを有し、ドメインは、N末端からC末端にF-Gの向きで配置され、ドメインFは、第1のVHアミノ酸配列を有し、ドメインGは、S354C変異およびPGKトリペプチド配列を組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有する;(c)第3のポリペプチド鎖は、ドメインH、ドメインI、ドメインJおよびドメインKを有し、ドメインは、N末端からC末端にH-I-J-Kの向きで配置されており、ドメインHは、第2のVLアミノ酸配列を有し、ドメインIは、ヒトCLカッパアミノ酸配列を有し、ドメインJは、ヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、Kは、Y349C、D356E、L358M、T366S、L368A、およびY407Vを有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有する;(d)第4のポリペプチド鎖は、ドメインLおよびドメインMを有し、ドメインは、N末端からC末端にL-Mの向きで配置され、ドメインLは、第2のVHアミノ酸配列を有し、ドメインMは、ヒトIgG1 CH1アミノ酸配列を有する;(e)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合する;(f)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合する;(g)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合し、結合分子を形成する;(h)ドメインAおよびドメインFは、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成する;(i)ドメインHおよびドメインLは、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する。
【0215】
本明細書に記載の直交変異は、B:G対ドメインまたはE:K対ドメインにさらに操作することができる。
【0216】
6.4.4.22 二価二重特異性B-Body「BC44」
図2および
図6を参照すると、一連の実施形態において、結合分子は、第1、第2、第3および第4のポリペプチド鎖を有し、(a)第1のポリペプチド鎖は、ドメインA、ドメインB、ドメインDおよびドメインEを含み、ドメインは、N末端からC末端にA-B-D-Eの向きで配置されており、ドメインAは、第1のVLアミノ酸配列を有し、ドメインBは、Y349C変異、P343V変異、およびIgG1ヒンジ領域のDKTHTモチーフが後に続くPGKトリペプチド配列を組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有し、ドメインDは、ヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、ドメインEは、S354C変異およびT366W変異を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸を有する;(b)第2のポリペプチド鎖は、ドメインFおよびドメインGを有し、ドメインは、N末端からC末端にF-Gの向きで配置され、ドメインFは、第1のVHアミノ酸配列を有し、ドメインGは、S354C変異およびPGKトリペプチド配列を組み込んだC末端伸長を有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有する;(c)第3のポリペプチド鎖は、ドメインH、ドメインI、ドメインJおよびドメインKを有し、ドメインは、N末端からC末端にH-I-J-Kの向きで配置されており、ドメインHは、第2のVLアミノ酸配列を有し、ドメインIは、ヒトCLカッパアミノ酸配列を有し、ドメインJは、ヒトIgG1 CH2アミノ酸配列を有し、Kは、Y349C、T366S、L368A、およびY407Vを有するヒトIgG1 CH3アミノ酸配列を有する;(d)第4のポリペプチド鎖は、ドメインLおよびドメインMを有し、ドメインは、N末端からC末端にL-Mの向きで配置され、ドメインLは、第2のVHアミノ酸配列を有し、ドメインMは、ヒトIgG1アミノ酸配列を有する;(e)第1および第2のポリペプチドは、AドメインとFドメインとの間の相互作用およびBドメインとGドメインとの間の相互作用を介して会合する;(f)第3および第4のポリペプチドは、HドメインとLドメインとの間の相互作用およびIドメインとMドメインとの間の相互作用を介して会合する;ならびに(g)第1および第3のポリペプチドは、DドメインとJドメインとの間の相互作用およびEドメインとKドメインとの間の相互作用を介して会合し、結合分子を形成する;(h)ドメインAおよびドメインFは、第1の抗原に特異的な第1の抗原結合部位を形成する;(i)ドメインHおよびドメインLは、第2の抗原に特異的な第2の抗原結合部位を形成する。
【0217】
本明細書に記載の直交変異は、B:G対ドメインまたはE:K対ドメインにさらに操作することができる。
【実施例】
【0218】
6.5.実施例
以下に、本発明を実施するための具体的な実施形態の例を示す。実施例は、例示のみを目的として提供されており、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。使用される数(例えば、量、温度など)に関して正確性を確保するための努力がなされているが、当然ながら、いくらかの実験誤差および偏差が許容されるべきである。
【0219】
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業者の技術の範囲内で、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術および薬理学の従来の方法を使用する。そのような技術は、文献で十分に説明されている。
【0220】
6.5.1.実施例1-「BC96」二価抗体構築物
本発明者らは、特定のヘテロ二量体化を駆動するために様々な直交変異を組み込んだ、第1の抗原「抗原A」および第2の抗原「抗原B」に特異的な「BC96」と呼ばれる新しい二価二重特異性構築物を構築した。例示的な「BC96」構造の顕著な特徴を
図7に示す。
【0221】
より詳細には、
図2によるドメインおよびポリペプチド鎖の言及、括弧内に示されている野生型配列からの変異、および以下のセクション5に記載されている配列では、構造は以下の通りである。
第1のポリペプチド鎖(配列番号1)
ドメインA=VL(「抗原A」)
ドメインB=CH3(Y349C;K370R)(配列番号5)
ドメインD=CH2(配列番号6)
ドメインE=CH3(T366W)(配列番号7)
第2のポリペプチド鎖(配列番号2)
ドメインF=VH(「抗原A」)
ドメインG=CH3(G341A;S354C;E357W)(配列番号8)
第3のポリペプチド鎖(配列番号3)
ドメインH=VL(「抗原B」)
ドメインI=CL(κ)(配列番号9)
ドメインJ=CH2(配列番号10)
ドメインK=CH3(D356E、L358M、T366S、L368A、Y407V)(配列番号11)
第4のポリペプチド鎖(配列番号4):
ドメインL=VH(「抗原B」)
ドメインM=CH1(配列番号12)。
【0222】
AドメインおよびFドメインは、「抗原A」に特異的な抗原結合部位(A:F)を形成する。HドメインとLドメインとが会合して、「抗原B」に特異的な抗原結合部位(H:L)が形成される。
【0223】
Bドメイン(配列番号5)は、2つの変異:Y349CおよびK370Rを有するヒトIgG1 CH3の配列を有する。Y349C変異は、ドメインG内に同族C354変異を有するジスルフィドを形成することができるシステインを導入するが、K370R変異は、鎖G内の357W変異のコンテキストに含まれる場合、正確に形成された分子の収量を増加させることができる。
【0224】
ドメインD(配列番号6)はヒトIgG1 CH2の配列を有する
【0225】
ドメインE(配列番号7)は、変異T366Wを有するヒトIgG1 CH3の配列を有する。366Wは「ノブ」変異である。
【0226】
ドメインG(配列番号8)は、以下の変異を有するヒトIgG1 CH3の配列を有する:G341A、S354C、およびE357W。G341A変異は、正しく形成された分子の収率を増加させることができ、354C変異は、ドメインB内の同族349C変異とジスルフィド結合を形成することができるシステインを導入し、E357W変異は、ヘテロ二量体界面の直交性を改善し、正しく形成された分子の収率を増加させることができる。
【0227】
ドメインI(配列番号9)は、ヒトCカッパ軽鎖(Cκ)の配列を有する
【0228】
ドメインJ(配列番号10)は、ヒトIgG1 CH2ドメインの配列を有し、ドメインDの配列と同一である。
【0229】
ドメインK(配列番号11)は、以下の変化を有するヒトIgG1 CH3の配列を有する:D356E、L358M、T366S、L368A、Y407V。356EおよびL358Mは、免疫原性を低下させるイソアロタイプアミノ酸を導入する。366S、368Aおよび407Vは、「ホール」変異である。
【0230】
ドメインM(配列番号12)は、ヒトIgG1 CH1領域の配列を有する。
【0231】
配列は、以下のセクション5に提供され、野生型から変異したすべての位置には、配列番号1~12において下線が引かれている。4つの可変ドメインの配列は完全には提供されず、代わりに抗原結合部位「A」および「B」についてそれぞれ<VL-A>、<VH-A>および<VL-B>、<VH-B>と示される。接合部融合の点を示すために、典型的なヒトκVLドメインの最後の3つのアミノ酸「EIK」を含めて斜体で示し、典型的なヒトVHドメインの最後の3つのアミノ酸「VSS」を含めて斜体で示す。
【0232】
構築物BC-1、BC-6、BC-28およびBC-44とは対照的に、
図7に示すBC-96の実施形態は、ドメインE:Kにおける操作されたジスルフィドを省略している。図示された構造とは異なる代替の実施形態は、(a)ドメインE:K内の操作されたジスルフィド結合を含むこと;(b)ドメインE:K間のノブインホール変異を反転させること;(c)ドメインB:G内のY+K:S+E対を反転させること;またはそれらの任意のサブセットもしくは組み合わせを含む。さらに、ドメインE:Kにおいて、ノブインホール変異に加えて、またはその代わりに、CH3ドメインにおける他の公知の直交変異を使用することができる。
【0233】
「BC96」は、100μg/mlを超える濃度で哺乳動物発現を使用して高レベルで容易に発現され得る。本発明者らは、ThermoFisher製のCH1特異的CaptureSelect(商標)親和性樹脂を使用して、一段階で二価二重特異性「BC96」タンパク質を容易に精製できることを見出した。
【0234】
BC96タンパク質を、BC96の適切な集合への様々な変異の寄与を調べるための代替物と共に発現させた。各構築物のCH1精製後のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)分析の結果は、第1のCH3ドメイン中のE357W変異および第1のCH3ドメインの反対側の第2のCH3ドメイン中のK370R変異の存在が、適切に集合した生成物のより高い純度をもたらすのに有意であることを実証している(
図8A~
図8D)。ドメインBのK370変異とドメインGのE357変異の両方を欠くBC96バリアント(
図8A)、ドメインBのK370変異を欠くがドメインGのE357W変異を含むもの(
図8B)、およびドメインBのK370R変異を含むがドメインGのE357変異を欠くもの(
図8C)を、ドメインBのK370R変異とドメインGのE357W変異の両方を含むBC96(
図8D)と比較した。結果は、第1のCH3ドメインにおけるE357W変異および反対側のCH3ドメインにおけるK370R変異の存在が、2つのドメインの二量体化の効率およびBC96抗体構築物の適切な集合を有意に改善することを実証している。
【0235】
6.5.2.実施例2-改善されたCH3二量体化のためのCH3改変の評価
個々の変異によって付与される直交度を評価するために、明確に異なる質量を有する2つの面からなる非対称抗体構築物を生成した(
図9)。Fc領域のCH3ドメイン(ドメインEおよびK)に変異を作製した。構築物の各側を構成するポリペプチドを共発現させ、SDS-PAGEおよびサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、所望のヘテロ二量体生成物およびホモ二量体夾雑物の集合を評価した(
図10A~
図10Cおよび
図11A~
図11B)。
【0236】
評価した各構築物は、Y349C変異を有するCH3ドメイン(ドメインE)およびS354C変異を有する反対側のCH3ドメイン(ドメインK)を含み、適切に集合した生成物中の2つのCH3ドメイン間に操作されたジスルフィドをもたらした(
図9)。ドメインKのCH3配列に追加の置換を行って、E357Wおよび/またはS364R変異も含む構築物を生成した。精製後、大きなホモ二量体夾雑物(夾雑物1)および小さなホモ二量体夾雑物(夾雑物2)の存在を、SDS-PAGEゲルを使用したサイズによって所望のヘテロ二量体と容易に区別することができた。
【0237】
結果は、ドメインKのCH3配列におけるE357およびS364変異の両方の非存在下での両方のホモ二量体夾雑物の有意な集合を実証した(
図10A)。ドメインKのCH3配列がE357W変異を含むがS364変異を含まない場合、より少ない夾雑物1ホモ二量体が生成された(
図10Bおよび
図11A)。対照的に、ドメインKのCH3配列がE357W変異およびS364R変異の両方を含有する場合、夾雑物1ホモ二量体は実質的に検出できなかった(
図10Cおよび
図11B)。
【0238】
図10A~10Cの結果は、プロテインAによる精製後のSECおよびSDS-PAGEによる生成物の分析を示す。
図11A~11Bの結果は、CH1による精製後のSECおよびSDS-PAGEによる生成物の分析を示す。
【0239】
これらの結果は、第1のCH3ドメインにS354C、E357WおよびS364R変異が存在し、第1のCH3ドメインとは反対側の第2のCH3ドメインにY349C変異が存在すると、第1および第2のCH3ドメインの二量体化を必要とする生成物の集合効率を有意に改善できることを示唆している。
7.配列
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【0240】
8.均等物および参照による組み込み
本発明は、好ましい実施形態および様々な代替の実施形態を参照して特に示され説明されてきたが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の様々な変更を行うことができることが当業者には理解されよう。
【0241】
本明細書の本文内で引用されたすべての参考文献、発行された特許および特許出願は、あらゆる目的のために、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】