(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】関連づけられた抗原および関連づけられたアジュバントを有する2つのポリマーソーム集団を投与することによる、Th1/Th2免疫応答の調整方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/00 20060101AFI20231226BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20231226BHJP
A61K 39/39 20060101ALI20231226BHJP
A61K 39/12 20060101ALI20231226BHJP
A61K 39/215 20060101ALI20231226BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20231226BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20231226BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20231226BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20231226BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20231226BHJP
A61K 39/145 20060101ALI20231226BHJP
C12N 15/117 20100101ALI20231226BHJP
C07K 14/165 20060101ALI20231226BHJP
C07K 14/17 20060101ALI20231226BHJP
C07K 14/11 20060101ALI20231226BHJP
C07K 14/77 20060101ALI20231226BHJP
C12N 15/44 20060101ALN20231226BHJP
C12N 15/50 20060101ALN20231226BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20231226BHJP
【FI】
A61K39/00 A
A61P37/02 ZNA
A61K39/39
A61K39/12
A61K39/215
A61P31/04
A61P31/12
A61P31/14
A61P35/00
A61P31/16
A61K39/145
C12N15/117 Z
C07K14/165
C07K14/17
C07K14/11
C07K14/77
C12N15/44
C12N15/50
C12N15/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023535468
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2021085366
(87)【国際公開番号】W WO2022123070
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】520272743
【氏名又は名称】エイシーエム バイオラブズ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ナラニ マドハバン
(72)【発明者】
【氏名】ラム ジャン ハン
(72)【発明者】
【氏名】デカイヨ ファビアン
(72)【発明者】
【氏名】コーネル トーマス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】カーン アミット クマル
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA03
4C085AA38
4C085BA07
4C085BA51
4C085BA55
4C085BA71
4C085BB01
4C085EE01
4C085EE06
4C085FF14
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG06
4C085GG08
4C085GG10
4H045AA11
4H045BA10
4H045CA01
4H045CA40
4H045DA70
4H045DA86
4H045EA31
(57)【要約】
本発明は、関連づけられた抗原を有するポリマーソームの集団を、関連づけられたアジュバントを有するポリマーソームの集団と一緒に投与することによって、Th1/Th2免疫応答を調整する方法、ならびに該2つのポリマーソーム集団を含む組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原およびアジュバントを投与することによって対象における免疫応答を調整する方法であって、
該抗原が、ポリマーソームの第1集団と関連づけられ、
該アジュバントが、ポリマーソームの第2集団と関連づけられ、
該2つのポリマーソーム集団が、対象に投与され、
該2つの別個の集団の投与が、遊離型のアジュバントを対象に投与する場合と比較しておよび/またはポリマーソームの第1集団と関連づけられた抗原だけを投与する場合と比較して、IFNγ-、TNFα-、IL-2およびIL-12からなる群より選択される1種または複数種のTh1サイトカインを発現するCD4+T細胞の数を増加させることによって、該免疫応答を調整する、方法。
【請求項2】
免疫応答が、Th1免疫応答とTh2免疫応答とを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項3】
アジュバントが、CpGオリゴヌクレオチドである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項4】
免疫応答が、適応免疫応答を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項5】
免疫応答が、体液性免疫応答を含み、好ましくは、該体液性応答が、抗抗原免疫グロブリンG(IgG)抗体を含み、さらに好ましくは、該IgG抗体が、IgG1抗体および/またはIgG2抗体を含み、最も好ましくは、該IgG抗体が、IgG1抗体および/またはIgG2b抗体を含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項6】
前記2つのポリマーソーム集団が、Th1免疫応答とTh2免疫応答との間の免疫バランスを調整することができ、好ましくは、該2つのポリマーソーム集団が、Th2免疫応答に対してTh1免疫応答が優勢になるように、Th1免疫応答とTh2免疫応答との間の免疫バランスを調整することができる、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
ポリマーソームの第1集団と関連づけられた抗原が、該ポリマーソームの第1集団内に封入され、および/またはポリマーソームの第2集団と関連づけられたアジュバントが、該ポリマーソームの第2集団内に封入される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、関連づけられていない抗原および/または関連づけられていないアジュバントを実質的に含まず、好ましくは、非封入抗原および/または非封入アジュバントを実質的に含まない、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、均一なサイズ分布を有し、好ましくは、均一なサイズ分布が、約100nm~約200nmの範囲内にあり、さらに好ましくは、該均一なサイズ分布が、約130nm~約185nmの範囲内の平均直径を有し、最も好ましくは、該サイズが、動的光散乱(DLS)法を使って決定される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、二重層コンフォメーションを有し、好ましくは、約5nm~約35nmの範囲、好ましくは約7nm~約20nmの範囲の二重層厚さを有する、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項11】
前記2つのポリマーソーム集団が、経口投与、鼻腔内投与、粘膜表面への投与、吸入、皮内投与、腹腔内投与、皮下投与、静脈内投与および筋肉内投与からなる群より選択される投与経路によって投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記2つのポリマーソーム集団が、同時にまたは連続して投与される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記2つのポリマーソーム集団が、前記投与に先立って、互いに混合され、好ましくは、該2つのポリマーソーム集団の混合物が、50:50v/v混合物であり、さらに好ましくは、前記アジュバントが、前記抗原の分解を低減することができ、最も好ましくは、前記ポリマーソームの第2集団が、該抗原の分解を低減することができる、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
対象が、ヒトを含む哺乳動物、または非哺乳動物である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
対象が哺乳動物であり、前記方法が、がん、ウイルス感染症および細菌感染症からなる群より選択される疾患に対するワクチン接種方法であり、該対象が好ましくはヒトであり、好ましくはコロナウイルス感染症に対してワクチン接種され、コロナウイルスが、好ましくはMERS-CoV、SARS-CoV-2またはSARS-CoV-1である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
封入抗原が、可溶性のまたは可溶化された抗原である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項17】
抗原、好ましくは可溶性のまたは可溶化された封入抗原が、
i)ポリペプチド、
ii)糖質、
iii)アンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、好ましくはDNA分子もしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、
iv)i)および/またはii)および/またはiii)の組合せ
からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、酸化安定性である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
封入抗原が、膜タンパク質(MP)または膜結合型ペプチド(MAP)の可溶性部分を含み、好ましくは該抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは該抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項20】
ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、以下の特性のうちの1つまたは複数を有する、前記請求項のいずれか一項記載の方法:
i)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、酸化安定性膜を含む、および/または
ii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、合成物である、および/または
iii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、非封入抗原を含まないか、または非封入抗原と混合されている、および/または
iv)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、両親媒性ポリマーの膜を含み、好ましくは、該両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)(PCL-PEO)、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)(PLA-PEO)、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)-ポリ(エチレンオキシド)(PLGA-PEO)、ポリ(n-ブチルアクリレート)-ポリ(エチレンオキシド)(PnBA-PEO)、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)、ポリ(ジメチルシロキサン-b-エチレンオキシド)(PDMS-PEO)からなる群より選択される、および/または
v)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、ベシクル膜を形成する両親媒性合成ブロック共重合体を含む、および/または
vi)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、70nm超の直径を有し、好ましくは該直径が、約100nm~約1μm、または約100nm~約750nm、または約100nm~約500nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲にあり、最も好ましくは該直径が、約200nm、さらに最も好ましくは約100nm~約200nmである、および/または
vii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、ベシクルの形態を有する、
viii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、自己集合性である、
ix)ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、本質的に非免疫原性または本質的に非抗原性であり、好ましくはブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、非免疫原性または非抗原性である、
x)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、両親媒性ポリマーからなる膜を含み、該両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)(PCL-PEO)、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)(PLA-PEO)、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)-ポリ(エチレンオキシド)(PLGA-PEO)、ポリ(n-ブチルアクリレート)-ポリ(エチレンオキシド)(PnBA-PEO)、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)、ポリ(ジメチルシロキサン-b-エチレンオキシド)(PDMS-PEO)からなる群より独立して選択される。
【請求項21】
ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、ジブロックまたはトリブロック(A-B-AまたはA-B-C)共重合体を含むかもしくは同共重合体からなる両親媒性ポリマーを含むか、または同両親媒性ポリマーから形成される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
(a)両親媒性ポリマーが、共重合体ポリ(N-ビニルピロリドン)-b-PLAを含み、
(b)両親媒性ポリマーが、ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PB-PEO)ジブロック共重合体であるか、両親媒性ポリマーが、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(PDMS-PEO)ジブロック共重合体、またはポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)であり、PB-PEOジブロック共重合体が、好ましくは5~50ブロックPBおよび5~50ブロックPEOを含み、またはPB-PDMSジブロック共重合体が、好ましくは5~100ブロックPDMSおよび5~100ブロックPEOを含み、
(c)両親媒性ポリマーが、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PLA-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくはPLA-PEO/POPCが、75対25(例えば75/25)のPLA-PEO対POPC(例えばPLA-PEO/POPC)の比を有し、
(d)両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PCL-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくはPCL-PEO/POPCが、75対25(例えば75/25)のPCL-PEO対POPC(例えばPCL-PEO/POPC)の比を有し、
(e)両親媒性ポリマーが、ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)であり、および/または
(f)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、ジブロック共重合体PBD
21-PEO
14(BD21)および/またはトリブロック共重合体PMOXA
12-PDMS
55-PMOXA
12を含む、
前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、脂質ポリマーを含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
ポリマーソームの第2集団と関連づけられたアジュバントが、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(すなわちCpG ODN)、細菌およびマイコバクテリアの細胞壁由来の構成要素ならびにタンパク質からなる群より選択される、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記請求項のいずれか一項記載のポリマーソームの第1集団および第2集団を含む、組成物またはキット。
【請求項26】
医薬としておよび/または治療において使用するための、前記請求項のいずれか一項記載の組成物またはキット。
【請求項27】
がん、ウイルス感染症および細菌感染症からなる群より選択される疾患の処置および/または防止方法において使用するための、前記請求項のいずれか一項記載の組成物またはキットであって、好ましくは、該ウイルス感染症がコロナウイルス感染症であり、コロナウイルスが、さらに好ましくは、MERS-CoV、SARS-CoV-2またはSARS-CoV-1である、組成物またはキット。
【請求項28】
がん、ウイルス感染症および細菌感染症からなる群より選択される疾患の処置および/または防止用の医薬の製造のための、前記請求項のいずれか一項記載の組成物またはキットの使用であって、好ましくは、該ウイルス感染症がコロナウイルス感染症であり、コロナウイルスが、さらに好ましくは、MERS-CoV、SARS-CoV-2またはSARS-CoV-1である、使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月11日欧州特許庁に出願された欧州特許出願第20213488.8号の優先権を主張し、その内容は、参照により、あらゆる目的で本明細書に組み入れられる。
【0002】
配列表
本願はコンピュータ可読形式の配列表を含んでおり、これは参照により本明細書に組み入れられる。
【0003】
技術分野
本発明は、関連づけられた抗原を有するポリマーソームの集団を、関連づけられたアジュバントを有するポリマーソームの集団と一緒に共投与(すなわち同時に投与)することによって、Th1/Th2免疫応答を調整する方法、ならびに前記2つのポリマーソーム集団を含む組成物に関する。本発明は、そのような2つのポリマーソーム集団を含む組成物およびそのような2つのポリマーソーム集団の治療的使用にも関係する。抗原は、免疫応答を誘発することができる任意の抗原であってよく、例えばポリペプチド、糖質、ポリヌクレオチド、およびそれらの組合せでありうる。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
免疫処置は確立したプロセスであるが、免疫原または抗原が異なると、誘発される応答も相違する。例えば膜タンパク質は低レベルの応答を生じる抗原の1クラスを形成するが、これは結果として、免疫応答を所望のレベルまで生成させまたは誘発するには、多量の膜タンパク質が必要であることを意味する。膜タンパク質は合成が難しいことで知られており、界面活性剤が存在しなければ水に不溶である。そのため、膜タンパク質は高価であり、免疫処置のために十分な量の膜タンパク質を得ることは困難である。さらにまた、膜タンパク質は、正しく機能するために、適正なフォールディングを必要とする。正しく折りたたまれたネイティブ膜タンパク質の免疫原性は、生理学的に意味のある形では折りたたまれていない可能性があるそれらの可溶化型よりも、通例、はるかに良好である。したがって、そのような可溶化抗原の免疫原性をブーストするためにアジュバントを使用することができるとしても、それは、あまり大きな利点のない非効率的な方法である(例えばWO2014/077781A1)。
【0005】
インビボで効率的でありうる抗体を単離するチャンスを増加させるために、膜タンパク質抗原の提示には、トランスフェクト細胞および脂質ベースの系が使用されてきたが、これらの系は、多くの場合、不安定(例えば酸化感受性)であり、手間とコストがかかる。そのうえ、そのような膜タンパク質抗原については、免疫処置のために不活性なウイルス様粒子を使用することが、現在の先端技術である。
【0006】
一方、感染性疾患を主とする疾患を予防するには、ワクチンが最も効率のよい方法である[例えばLiu et al.,2016]。現時点では、認可されたワクチンの大半が、生ウイルスまたは死滅ウイルスのどちらかでできている。そのようなワクチンは、ウイルスの伝播および細胞への進入を防ぐ目的で体液性免疫(抗体媒介性応答)を生成させるには有効であるものの、そのようなワクチンの安全性には懸念が残る。過去数十年の間に、科学の進歩は、非複製組換えウイルスであるワクチンベクターを工学的に作出することにより、そのような問題を克服するのに役立ってきた。並行して、より安全な代替物として、タンパク質ベースの抗原またはサブユニット抗原が検討されている。しかし、そのようなタンパク質ベースのワクチンによって誘発される免疫は(体液性応答も細胞性応答も)典型的には不十分である。抗原の免疫原特性を改良するために、いくつかのアプローチが使用されてきた。例えば、ポリマーへの抗原のマイクロカプセル化は広範囲に研究されており、それにより免疫原性を強化することはできたものの、抗原の凝集および変性は未解決のままである[例えばHilbert et al.,1999]。さらにまた、より顕著な体液性応答および細胞性応答を誘発するために、アジュバント(例えば水中油型エマルションまたはポリマーエマルション)[例えばUS9636397B2、US2015/0044242A1]が、抗原と一緒に使用される。これらの進歩にもかかわらず、それらは取込みおよびクロスプレゼンテーションの効率が低い。クロスプレゼンテーションを促進するために、ウイルスによる感染時の免疫系の利用可能な情報に基づいて、そのような特性を模倣するウイルス様粒子が開発されている。抗原が封入されているリポソームなどの合成アーキテクチャは特に魅力的である。リポソームは脂質でできた自己集合性単層構造であり、カチオン性リポソームは、抗原提示細胞(APC)によって効率よく取り込まれることから、送達媒体として、より魅力的であり、有望である[例えばMaji et al.,2016]。さらにまた、リポソームには、受容体を介して免疫細胞を刺激するtoll様受容体(TLR)アゴニストである免疫調節物質、例えばモノホスホリルリピドA(MPL)、CpGオリゴデオキシヌクレオチドなどを組み込むこともできる。このような送達媒体にはこれらの有利な条件があるにも関わらず、限定要因の1つとなるのが、血清成分存在下でのリポソームの安定性である。リポソームの安定性の問題は、PEG化、高融点脂質のローディングによって、多少は低減する。よく特徴づけられたそのような例の1つは、脂質を連結する短い共有結合性架橋で多層ベシクルを安定化することによって形成される二重層間架橋多層ベシクル(interbilayered-crosslinked multilamellar vesicle)(ICMV)である[例えばMoon et al.,2011]。他のナノ粒子アーキテクチャも、ナノディスク[例えば、Kuai et al.,2017]またはpH感受性粒子[例えばLuo et al.,2017]を使った免疫処置の成功につながっている。しかし、そのような戦略は依然としてアジュバントを必要とするか、またはプロトタイプの卵白アルブミン(OVA)モデル以外では、あまり効率がよくない。
【0007】
加えて、リポソームの安定代替物としてポリマーソームが提供され、膜タンパク質を組み込んで免疫応答を誘発するために使われてきた[例えばQuer et al.,2011,WO2014/077781A1]。抗原とアジュバントとを樹状細胞に放出するために、タンパク質抗原もまた、ポリマーソームの化学的に改変された膜(ただし酸化感受性の膜)に封入された[例えばStano et al.,2013]。
【0008】
ポリマーの使用によってなされたこの進歩をもってしてもなお、とりわけ感染性疾患、がんおよび自己免疫疾患の処置および/または防止のために、免疫応答を誘発しおよび/または調整する代替的方法を提供する必要は、依然として存在している。さらにまた、Th2免疫応答に対してTh1免疫応答が優勢になるように、Th1免疫応答とTh2免疫応答との間の免疫バランスを調整する必要性が、特に残されている。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、抗原とアジュバントとを投与する(例えば共投与する、例えば同時に投与する、連続的に投与する、例えば実質的に同時の投与、この場合、投与は、例えば、同時にまたはほぼ同時に、例えば互いに1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、30分以内に投与される2回の別個の注射によって行われうる)ことによって、対象における免疫応答を調整する方法であって、抗原がポリマーソームの第1集団と関連づけられ、アジュバントがポリマーソームの第2集団と関連づけられ、前記2つのポリマーソーム集団が対象に投与され、前記2つの別個の集団の投与が、IFNγ-、TNFα-、IL-2およびIL-12からなる群より選択される1種または複数種のTh1サイトカインを発現するCD4+T細胞の数を、遊離型のアジュバントを対象に投与する場合と比較しておよび/またはポリマーソームの第1集団と関連づけられた抗原だけを投与する場合と比較して、増加させることによって、該免疫応答を調整し、好ましくは、前記2つのポリマーソーム集団が、Th1免疫応答とTh2免疫応答との間の免疫バランスを調整することができ、好ましくは、前記2つのポリマーソーム集団が、Th2免疫応答に対してTh1免疫応答が優勢になるように、Th1免疫応答とTh2免疫応答との間の免疫バランスを調整することができる、方法に関する。
【0010】
本発明は、抗原とアジュバントとの投与によって対象における免疫応答を誘発する方法であって、抗原がポリマーソームの第1集団と関連づけられ、アジュバントがポリマーソームの第2集団と関連づけられ、それら2つのポリマーソーム集団が対象に投与される、方法に関する。
【0011】
そのような方法において、抗原は、ポリマーソームの第1集団内への抗原の封入によって、ポリマーソームの第1集団のポリマーソームの周囲膜への抗原の組込みによって、共有結合によるポリマーソームの外表面への抗原のコンジュゲーションによって、および/または非共有結合によるポリマーソームの外表面への抗原のコンジュゲーションによって、ポリマーソームの第1集団と関連づけられうる。
【0012】
そのような方法において、アジュバントもまた、ポリマーソームの第2集団内へのアジュバントの封入によって、ポリマーソームの第2集団のポリマーソームの周囲膜へのアジュバントの組込みによって、共有結合によるポリマーソームの外表面へのアジュバントのコンジュゲーションによって、および/または非共有結合によるポリマーソームの外表面へのアジュバントのコンジュゲーションによって、ポリマーソームの第2集団と関連づけられうる。
【0013】
本方法の諸態様において、抗原は、ポリペプチド、糖質、ポリヌクレオチドおよびそれらの組合せからなる群より選択されうる。
【0014】
さらに本発明は、それら2つのポリマーソーム集団の生産方法に関する。さらに本発明は、本発明の2つのポリマーソーム集団を含む組成物、本発明のポリマーソームまたは組成物に曝露された、単離された抗原提示細胞およびハイブリドーマ細胞に関する。本発明は、本発明の2つのポリマーソーム集団を含むワクチン、それを必要とする対象に本発明のポリマーソームを提供する工程を含む、免疫応答を誘発および/または調節する方法、またはがん、自己免疫疾患もしくは感染性疾患を処置、改善、予防もしくは診断するための方法にも関係する。
【0015】
本発明は、2つのポリマーソーム集団であって、少なくとも一方のポリマーソーム集団または両方の集団が、約120nm以上または140nm以上の平均直径を有し、ポリマーソームの集団が、抗原またはアジュバント、例えば可溶性の封入抗原または封入アジュバントを、ポリマーソームと関連づけており、該抗原が、
(i)ポリペプチド(例えば、タンパク質もしくはペプチド)、
(ii)糖質、
(iii)好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、さらに好ましくはDNA分子もしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、
(iv)脂質、または
(v)(i)~(iv)のいずれかの組合せ
からなる群より選択されうる、2つのポリマーソーム集団の、免疫応答を誘発および/または調節するための使用にも関係する。
【0016】
本発明は、2つのポリマーソーム集団であって、少なくとも一方の集団または両方の集団が、約120nm以上または約140nm以上の平均ポリマーソーム直径を有し、集団のポリマーソームが抗原、例えば可溶性封入抗原、またはアジュバントのどちらか一方と関連している、2つのポリマーソーム集団の、免疫応答を誘発および/または調節するための使用にも関係する。抗原は、
(i)ポリペプチド(例えば、タンパク質もしくはペプチド)、
(ii)糖質、
(iii)好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、さらに好ましくはDNA分子もしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、
(iv)脂質、または
(v)(i)~(iv)のいずれかの組合せ
からなる群より選択されうる。
【0017】
代替的一態様において、本発明は、抗原とアジュバントとの投与によって対象における免疫応答を誘発および/または調節する方法であって、抗原がポリマーソームの第1集団と関連づけられ、ポリマーソームの第2集団がアジュバントとして作用し、それら2つのポリマーソーム集団が対象に投与される、方法を提供する。
【0018】
本発明では、2つの別個のポリマーソーム集団であって、一方のポリマーソーム集団が抗原と関連づけられ、他方のポリマーソーム集団がアジュバントのみと関連づけられている、2つの別個のポリマーソーム集団の投与が、免疫応答の増加につながることが見出された。さらにまた、本発明のポリマーソームを提供することにより、(該ポリマーソームに)封入された可溶性の(または可溶化された)抗原は、(アジュバントを伴うまたはアジュバントを伴わない遊離の抗原と比較して)より強い体液性免疫応答を生じさせると共に、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発することが可能になることが本発明の過程でわかった。その結果、対象における抗体生産効率の増加が達成される。効率の増加は、アジュバントを使用しても使用しなくても得ることができる。さらにまた、本発明のポリマーソームがCD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発できることは、免疫治療用抗原送達・提示系としてのそれらの潜在能力を劇的に増加させる。
【0019】
ポリマーソームによって可溶性(例えば可溶化)封入抗原が提示されるので、本発明のポリマーソームの使用および本発明の方法によって生産される抗体は、さまざまな溶液ベースの抗体応用例において使用した場合に、より高い生産成功率と、それぞれの対応するインビトロまたはインビボ標的に対するより高いアフィニティー、および相応に改良された感度とを有することになるだけでなく、遊離抗原の注射を用いる従来の方法では抗体生産をトリガーすることができなかった難しい抗原に対する抗体を容易に生じさせ、かつ/またはそのような抗体生産手順に必要な抗原の量を減少させ、よってそのような生産のコストを減少させることも可能にするであろう。さらにまた、本発明のポリマーソームによって提示される可溶性(例えば可溶化)封入抗原はCD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発することもでき、そのことが、対応するポリマーソームの使用を細胞媒介性免疫に拡張し、それゆえに、それらの免疫治療能および抗原送達・提示能を改良する。
【0020】
したがって本願は、本明細書において以下に記載し、特許請求の範囲において特徴づけ、添付の実施例および図面によって例示する、投与された場合に抗原の免疫原特性を改良する2つの別個のポリマーソーム集団、そのような2つのポリマーソーム集団の生産方法およびそのような2つのポリマーソーム集団を含む組成物を提供することによって、前記の需要を満たす。
【0021】
配列表の概要
本明細書で述べるように、UniProtKBアクセッション番号(別段の表示がある場合、その他固有の場合を除き、http://www.uniprot.org/、例えばUniProtKB Release 2017_12で利用できるもの)に言及する。
【0022】
本明細書で述べるように、別段の表示がある場合、その他固有の場合を除き、GenBankアクセッション番号(例えば、GenBankリリース239.0(8/18/2020)で利用できるもの)に言及する。
【0023】
SEQ ID NO:1は、大腸がんMC-38マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ポリペプチドReps1 P45Aのアミノ酸配列である。
【0024】
SEQ ID NO:2は、大腸がんMC-38マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ペプチドAdpgk R304Mのアミノ酸配列である。
【0025】
SEQ ID NO:3は、大腸がんMC-38マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ペプチドDpagt1 V213Lのアミノ酸配列である。
【0026】
SEQ ID NO:4は、ニワトリ卵白アルブミン(OVA)、UniProtKBアクセッション番号P01012のアミノ酸配列である。
【0027】
SEQ ID NO:5は、インフルエンザAウイルス(A/ニューヨーク/38/2016(H1N1))ヘマグルチニン、UniProtKBアクセッション番号A0A192ZYK0のアミノ酸配列である。
【0028】
SEQ ID NO:6は、インフルエンザAウイルス(A/ブタ/4/メキシコ/2009(H1N1))ヘマグルチニン、UniProtKBアクセッション番号D2CE65のアミノ酸配列である。
【0029】
SEQ ID NO:7は、インフルエンザAウイルス(A/プエルトリコ/8/1934(H1N1))ヘマグルチニンのアミノ酸配列である。
【0030】
SEQ ID NO:8は、インフルエンザAウイルス(A/カリフォルニア/07/2009(H1N1))ヘマグルチニンのアミノ酸配列である。
【0031】
SEQ ID NO:9は、黒色腫B16-F10マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ポリペプチドCD8 Trp2 173-196のアミノ酸配列である。
【0032】
SEQ ID NO:10は、黒色腫B16-F10マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ポリペプチドCD4 M30 Kif18b K739Nのアミノ酸配列である。
【0033】
SEQ ID NO:11は、黒色腫B16-F10マウスモデルに由来する腫瘍ネオ抗原ポリペプチドCD4 M44 Cpsf3l D314Nのアミノ酸配列である。
【0034】
SEQ ID NO:12は、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDv)スパイクタンパク質(Sタンパク質)(UniProtKBアクセッション番号V5TA78)の可溶性部分(アミノ酸残基19~1327)のアミノ酸配列である。
【0035】
SEQ ID NO:13は、PEDvスパイクタンパク質(Sタンパク質)のS1領域(アミノ酸残基19~739)のアミノ酸配列である。
【0036】
SEQ ID NO:14は、PEDvスパイクタンパク質(Sタンパク質)のS2領域(アミノ酸残基739~1327)のアミノ酸配列である。
【0037】
SEQ ID NO:15は、高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)のアミノ配列である。
【0038】
SEQ ID NO:16はCD8 T細胞ペプチドエピトープの配列(SIINFEKL)である。
【0039】
SEQ ID NO:17はCD8 T細胞ペプチドエピトープの配列(SVYDFFVWL)である。
【0040】
SEQ ID NO:18は、InvivoGenから入手することができるクラスB CpGオリゴデオキシヌクレオチドCpG ODN1826(5’-tccatgacgttcctgacgtt-3’)である。
【0041】
SEQ ID NO:19は、UniProtKBアクセッション番号P0DTC2によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0042】
SEQ ID NO:20は、GenBankアクセッション番号QII57278.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0043】
SEQ ID NO:21は、GenBankアクセッション番号YP_009724390.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0044】
SEQ ID NO:22は、GenBankアクセッション番号QIO04367.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0045】
SEQ ID NO:23は、GenBankアクセッション番号QHU79173.2によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0046】
SEQ ID NO:24は、GenBankアクセッション番号QII87830.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0047】
SEQ ID NO:25は、GenBankアクセッション番号QIA98583.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0048】
SEQ ID NO:26は、GenBankアクセッション番号QIA20044.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0049】
SEQ ID NO:27は、GenBankアクセッション番号QIK50427.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0050】
SEQ ID NO:28は、GenBankアクセッション番号QHR84449.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0051】
SEQ ID NO:29は、GenBankアクセッション番号QIQ08810.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0052】
SEQ ID NO:30は、GenBankアクセッション番号QIJ96493.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0053】
SEQ ID NO:31は、GenBankアクセッション番号QIC53204.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0054】
SEQ ID NO:32は、GenBankアクセッション番号QHZ00379.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0055】
SEQ ID NO:33は、GenBankアクセッション番号QHS34546.1によるSARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0056】
SEQ ID NO:34は、UniProtKBアクセッション番号P0DTC2の16~1213番目に対応するSARS-CoV-2スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0057】
SEQ ID NO:35は、UniProtKBアクセッション番号P0DTC2の14~1204番目に対応するSARS-CoV-2スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0058】
SEQ ID NO:36は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0059】
SEQ ID NO:37は、UniProtKBアクセッション番号P0DTC2の16~685番目に対応するSARS-CoV-2スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0060】
SEQ ID NO:38は、UniProtKBアクセッション番号P0DTC2の686~1213番目に対応するSARS-CoV-2スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0061】
SEQ ID NO:39は、UniProtKBアクセッション番号P0DTC2の646~1204番目に対応するSARS-CoV-2スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0062】
SEQ ID NO:40は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0063】
SEQ ID NO:41は、UniProtKBアクセッション番号P0DTC2の318~524番目に対応するSARS-CoV-2スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0064】
SEQ ID NO:42は、UniProtKBアクセッション番号K0BRG7によるMERS-CoVスパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0065】
SEQ ID NO:43は、UniProtKBアクセッション番号K0BRG7の1~1297番目に対応するMERS-CoVスパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0066】
SEQ ID NO:44は、UniProtKBアクセッション番号K0BRG7の18~725番目に対応するMERS-CoVスパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0067】
SEQ ID NO:45は、UniProtKBアクセッション番号K0BRG7の726~1296番目に対応するMERS-CoVスパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0068】
SEQ ID NO:46は、UniProtKBアクセッション番号K0BRG7の377~588番目に対応するMERS-CoVスパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0069】
SEQ ID NO:47は、UniProtKBアクセッション番号P59594によるSARS-CoV-1スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0070】
SEQ ID NO:48は、UniProtKBアクセッション番号P59594の14~1195番目に対応するSARS-CoV-1スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0071】
SEQ ID NO:49は、UniProtKBアクセッション番号P59594の14~667番目に対応するSARS-CoV-1スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0072】
SEQ ID NO:50は、UniProtKBアクセッション番号P59594の668~1195番目に対応するSARS-CoV-1スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0073】
SEQ ID NO:51は、UniProtKBアクセッション番号P59594の306~527番目に対応するSARS-CoV-1スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0074】
SEQ ID NO:52は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のフューリン切断部位のアミノ酸配列である。
【0075】
SEQ ID NO:53は、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の変異型フューリン切断部位のアミノ酸配列である。
【0076】
SEQ ID NO:54は、フォルドン(foldon)ドメインのアミノ酸配列である。
【0077】
SEQ ID NO:55は、GCN4ドメインのアミノ酸配列である。
【0078】
SEQ ID NO:56は、イムノサイレント化された(immunosilenced)GCN4ドメインのアミノ酸配列である。
【0079】
SEQ ID NO:57は、ミツバチメリチンリーダー配列のアミノ酸配列である。
【0080】
SEQ ID NO:58は、MERS-CoVスパイクタンパク質のフューリン切断部位のアミノ酸配列である。
【0081】
SEQ ID NO:59は、MERS-CoVスパイクタンパク質の変異型フューリン切断部位のアミノ酸配列である。
【0082】
SEQ ID NO:60は、SARS-CoV-1スパイクタンパク質のフューリン切断部位のアミノ酸配列である。
【0083】
SEQ ID NO:61は、SARS-CoV-1スパイクタンパク質の変異型フューリン切断部位のアミノ酸配列である。
【0084】
SEQ ID NO:62は、CpGオリゴヌクレオチドODN2006のヌクレオチド配列である。
【0085】
SEQ ID NO:63は、CpGオリゴヌクレオチドODN2007のヌクレオチド配列である。
【0086】
SEQ ID NO:64は、CpGオリゴヌクレオチドODN2216のヌクレオチド配列である。
【0087】
SEQ ID NO:65は、UniProtKBアクセッション番号P0DTC2の19~1204番目に対応するが変異型フューリン切断部位を持つ、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の可溶性フラグメントのアミノ酸配列である。
【0088】
SEQ ID NO:66は、UniProtKBアクセッション番号P0DTC2の19~1273番目に対応するが変異型フューリン切断部位を持つ、SARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸配列である。
【0089】
SEQ ID NO:67は、Sino Biologicalから購入したSARS-CoV-2スパイクタンパク質S2サブユニットのアミノ酸配列である。
【0090】
SEQ ID NO:68は、ACRO Biosystemsから購入した三量体SARS-CoV-2スパイクタンパク質(#SPN-C52H8)のアミノ酸配列である。
【0091】
SEQ ID NO:69は、CpGオリゴヌクレオチドODNクラスAの例示的なヌクレオチド配列である(https://www.invivogen.com/cpg-odns-classesから引用して、
図41に図示する)。
【0092】
SEQ ID NO:70は、CpGオリゴヌクレオチドODNクラスBの例示的なヌクレオチド配列である(https://www.invivogen.com/cpg-odns-classesから引用して、
図41に図示する)。
【0093】
SEQ ID NO:71は、CpGオリゴヌクレオチドODNクラスCの例示的なヌクレオチド配列である(https://www.invivogen.com/cpg-odns-classesから引用して、
図41に図示する)。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【
図1】抗原を封入した本発明のポリマーソームによる免疫処置ならびに体液性応答および細胞性応答の測定の模式図である。
【
図2A】本発明のポリマーソームに関する動的光散乱結果の結果を表す。
図2Aは、173.1nm(直径)の単分散集団であるOVA封入ポリマーソームの動的光散乱プロットである。
図2Bは、さまざまな抗原が封入されたさまざまなポリマーソームに関してDLSによって測定された平均直径(Z平均)の表である。括弧内に示す製剤の名前、例えば「ACM-OVA」、「ACM-CpG」、「ACM-OVA-CpG」および「ACM-Trp2」は、本願の他の項において使用される。
【
図3】サイズ排除クロマトグラフィーにおけるOVA封入ポリマーソームの溶出プロファイルを表す。
【
図4】OVA封入ポリマーソームのドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を表す。
【
図5A】本発明のポリマーソームへの核酸(ここでは高感度緑色蛍光タンパク質(eGFP)のコード遺伝子)の封入および核酸が封入されているポリマーの細胞への取込みの結果を表す。
図5Aは、細胞内部へのさまざまなポリマーソームの蛍光強度取込み、およびポリマーソームに封入されたDNAに基づくeGFP発現を表す。
図5Bは、DNA封入ポリマーソームがトランスフェクトされた細胞の蛍光像を表す。
図5Cは、DNA封入ポリマーソームがトランスフェクトされた細胞の蛍光像を表す。
【
図6】PBS、OVAのみ、OVAとSASアジュバント、アジュバントなしのOVA封入ポリマーソームで免疫処置されたマウス血清からの抗体力価を表す。OVAを封入したACM(以下「ACM」とは本発明のポリマーソームを指す)だけがIgG力価を誘導することができた。
【
図7】PBS、HAのみ、およびアジュバントなしのHA封入ポリマーソームで免疫処置されたマウス血清からの抗体力価を表す。HAを封入したACM(本発明のポリマーソーム)はIgG力価を誘導することができた。
【
図8】MC-38マウス腫瘍モデルに関する結果を表す。遊離ペプチド(白抜きの丸)、ACMに封入されたペプチド(黒四角、本発明のポリマーソーム)または抗PD1抗体処置を伴うACMに封入されたペプチド(黒い三角)で免疫処置したマウスにおいて、腫瘍体積をモニターした。腫瘍の成長は、ACMに封入されたペプチド(本発明のポリマーソーム)により、遊離ペプチドと比較して改変された。また、それは抗PD1抗体の添加によってさらに増強される。どの群にもアジュバントは加えなかった。
【
図9】PBSおよび本明細書に記載するように使用されるポリマーソームに封入されたPEDv Sタンパク質の可溶性フラグメント(「スパイクタンパク質が封入されたポリマーソーム」)で免疫処置されたマウス血清からの、ならびに比較対象として、死滅PEDウイルス(「死滅PEDv」)およびACMポリマーソームのみ(すなわち抗原なし、「ポリマーソームのみ」)で免疫処置されたマウス血清からの、IgG抗体力価およびウイルス中和反応(PEDv USA/コロラド/2013(CO/13)株に対するもの)を表す。
図9のIgG力価から、ACMに封入されたPEDv Sタンパク質のフラグメントと死滅ウイルスが、どちらもIgG力価を誘導することは明白である。ウイルス中和反応データからは、ACMに封入されたPEDv Sタンパク質だけが有意な中和力価をもたらし、一方、陰性対照(抗原を一切含まないACMポリマーソーム)および死滅PEDウイルスは無視できる程度の中和反応しか示さなかったことがわかる。
【
図10】PBSおよびさまざまなポリマーソーム(例えば完全長可溶性PEDスパイクタンパク質(「可溶性Sタンパク質を含むBD21」)またはそのS1もしくはS2フラグメント(他のすべての場合)のいずれかを封入する、BD21(後述)、PDMS
46-PEO
37(図では単に「PDMS」と記す)、PDMS
46-PEO
37と添加された脂質としてのDSPE-PEG(ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン[DSPE]ポリエチレングリコール)、アゾレクチン脂質(大豆由来の市販のリン脂質)が添加されたポリエチレングリコール-ポリ乳酸(PLA-PEG))による免疫処置後にマウスから生成した血清からのウイルス中和反応データ(PEDv USA/コロラド/2013(CO/13)株に対するもの)を表す。PBS試料で免疫処置されたマウスの群がいかなるウイルス中和反応も示さないのに対し、ポリマーソーム製剤は、それらが完全長タンパク質を封入しているか、そのフラグメントを封入しているかとは関わりなく、すべてがさまざまな程度のウイルス中和反応を示すことは、
図10から明らかである。
【
図11】アジュバントを使わずにACMに封入されたPEDv Sタンパク質で経口免疫処置されたブタからのIgA抗体力価を表す。力価は糞便スワブからの値である。
図11に見られるように、力価は経時的に上昇する。これは、PEDv Sタンパク質を封入して経口投与された本発明のポリマーソームが、ブタにおける免疫応答を誘発できることを示している。
【
図12】ブタ流行性下痢ウイルス(PEDv)スパイクタンパク質(Sタンパク質)(UniProtKBアクセッション番号V5TA78)、ならびに本明細書に記載するようにポリマーソームへの可溶性Sタンパク質の封入とそれに続くマウスおよびブタの免疫処置/ワクチン接種に使用された、SEQ ID NO:12(アミノ酸残基19~1327)、SEQ ID NO:13(アミノ酸残基19~739)およびSEQ ID NO:14(アミノ酸残基739~1327)の可溶性フラグメントの模式的表現である。
【
図13】ACM OVA製剤の予防的ワクチン接種後の腫瘍増殖曲線を表す。異なるOVA製剤を投与した後に10
5個のB16-OVA細胞を接種したマウスについての腫瘍増殖曲線。
図13Aは、PBS群、遊離OVAおよびCpG投与群、ならびにACMに封入されたOVAおよび遊離CpG共投与群を表し、
図13Bは、PBS群、共投与されたACMに封入されたOVAおよびACMに封入されたCpG、ならびにOVAとCpGとが一緒に封入されたACMを表す。
【
図14A】ACM OVA製剤の治療的ワクチン接種後の腫瘍増殖曲線を表す。異なるACM OVA製剤をワクチン接種した後に10
5個のB16-OVA細胞を接種したマウスについての腫瘍増殖曲線。
図14A)PBS群、遊離OVAおよびCpG投与群、ならびにACMに封入されたOVAおよび遊離CpGとの共投与群、B)PBS群、遊離OVAおよびCpG封入ACM、ならびに共投与されたACMに封入されたOVAおよびCpGが封入されたACM、C)CD8 T細胞SIINFEKL(SEQ ID NO:16)ペプチドエピトープに特異的なデキストラマー(dextramer)を使って定量されたOVA特異的CD8 T細胞。
【
図15A】10
5個のB16F10細胞を接種したマウスのACM黒色腫B16F10製剤の治療的ワクチン接種の腫瘍成長曲線を表す。
図15Aは、PBS群、共投与された遊離Trp2(SEQ ID NO:9)およびCpG、共投与されたTrp2が封入されたACMおよびCpG、共投与された遊離Trp2およびACMに封入されたCpG、ならびに一緒に共投与されたACMに封入されたTrp2およびACMに封入されたCpGを表し、
図15Bは、CD8 T細胞SVYDFFVWL(SEQ ID NO:17)ペプチドエピトープに特異的なペンタマー(pentamer)を使って血中で定量されたTrp2特異的CD8特異的T細胞を表し、
図15Cは腫瘍におけるCD8 T細胞浸潤を表す。
【
図16】OVAコンジュゲートACMの動的光散乱(DLS)スペクトルを表す。
【
図17】OVAコンジュゲートACMの特性解析を表し、
図17AはOVAコンジュゲートACMのサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)プロファイルを表しており、
図17Bは、SECピークからの試料をローディングして銀染色法を使って染色したSDS-PAGEを表している。
【
図18】HAコンジュゲートACMのDLSスペクトルを表す。
【
図19】ACMコンジュゲートHA試料のイムノブロットを表す。カップリングしたHAと遊離HAとでは移動度が異なる。
【
図20】すべての収集フラクションで実施したELISAシグナル(O.D.450、黒色のトレース)と重ね合わせた、HAコンジュゲートACMのSECプロファイル(mAU、薄灰色のトレース)を表す。
【
図21】PBS、遊離OVA、遊離OVAおよびSAS、BD21封入OVAおよびBD21コンジュゲートOVAで免疫処置されたC57Bl/6マウスの血清からの抗体力価を表す(p<0.01)。
【
図22】PBS、遊離HA、BD21封入HAおよびBD21コンジュゲートHAで免疫処置されたBalb/cマウスの血清からの抗体力価を表す。
【
図23A】
図23Aは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)スパイクタンパク質(Sタンパク質)(UniProtKBアクセッション番号:P0DTC2)ならびにSEQ ID NO:34(アミノ酸残基16~1213)、SEQ ID NO:37(アミノ酸残基16~685)およびSEQ ID NO:38(アミノ酸残基685~1213)の可溶性フラグメントの模式的表現である。UniProtKBによれば、アミノ酸1214~1234は膜貫通領域を形成し、1235~1273番目はウイルス内領域を形成する。S1およびS2セグメントの端点、膜貫通領域、および/またはウイルス内領域は、予測ソフトウェアによって異なりうる。
図23Bは、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を封入しているACMによるマウスの免疫処置のためのプロトコールを表す。
図23Cは、以下の製剤で免疫処置された35日目のBalb/cマウスにおいて測定されたIgG力価を表す:アジュバントと共投与されるBD21封入可溶性S1およびS2セグメント(第1群)、BD21封入可溶性S1およびS2セグメント(第2群)、封入アジュバントと共投与されるBD21封入可溶性S2セグメント(第3群)、および陰性対照としてのPBS(第4群)。
【
図24】ACMに封入された完全長可溶性封入SARS-CoV-2スパイクタンパク質で免疫処置されたマウスのプロトコールとその結果を表す。
図24Aは免疫処置プロトコールを表す。
図24Bは、4つの群に関する第1免疫処置の28日後のSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対するIgG抗体の力価を表す。以下の製剤を調製した:(i)遊離組換えスパイクタンパク質「fSpike」)、(ii)BD21ポリマーソーム封入スパイクタンパク質(「ACM-Spike」)、(iii)遊離スパイクタンパク質と遊離CpGアジュバントとの混合物(「fSpike fCpG」)、(iv)BD21ポリマーソーム封入スパイクタンパク質とBD21ポリマーソーム封入CpGとの混合物(「ACM-Spike ACM-CpG」)。
【
図25】異なる経路で投与された、CpGを封入しているACMと混合されたPEDv S2スパイクタンパク質を封入しているACMによるモルモットの免疫処置後の、ウイルス中和アッセイ(PEDv)の結果を表す。
【
図26】MERSスパイクタンパク質を封入しているACMで免疫処置されたマウスのプロトコールとその結果を表す。
図26Aは免疫処置プロトコールを表し、
図26BはMERS-CoVスパイクタンパク質S1ドメインに対するELISAの結果を表す。
図26Cはウイルス中和アッセイ(MERS-CoV)の結果を表す。
【
図27】PEDvスパイクタンパク質のS1ドメインもしくはS2ドメインまたはS1およびS2ドメインの混合物のいずれかを封入しているACMで免疫処置されたマウスに関するウイルス中和アッセイ(PEDv)の結果を表す。
【
図28-1】ACM-ワクチンの特性解析を表す。a. ACM-ワクチン調製の模式図。抗原およびCpGアジュバントが個々のACMポリマーソーム内に封入された。最終ワクチン製剤としてACM-抗原とACM-CpGの50:50v/v混合物をマウスに投与した。b. この研究において使用されたスパイクタンパク質バリアントの概略図。S1S2タンパク質は社内で発現させて精製し、S2および三量体は供給業者から購入した。NTD:N末ドメイン。RBD:受容体結合ドメイン。FP:融合ペプチド。TM:膜貫通。c. SYPRO Ruby全タンパク質染色(total protein stain)。レーンL:Precision Plusタンパク質標準(Bio-Rad)。レーン1:S2。レーン2:三量体。レーン3:S1S2。d. SARS-CoV-2スパイクに対して産生させたマウス免疫血清を使ったウェスタンブロット。ウェスタンブロット-反応性S1S2バンドが*で示されている。e. 三量体、S2およびS1S2のACE2結合曲線。f. ACM-抗原(ACM-三量体、ACM-S2およびACM-S1S2)およびACM-CpGの動的光散乱(DLS)測定。ACM粒子は直径100~200nmであると決定された。g~i. ACM-S1S2、ACM-CpG、およびACM-S1S2+ACM-CpGの混合物のクライオEM像は、158±25nmの平均直径を持つベシクル状アーキテクチャを示している(スケールバー200nm)。挿入図(各像の左下)は、白い矢印で示される領域におけるベシクルの二重層膜の拡大図である。星印で強調した領域はレース状カーボンである。
【
図29-1】ACM-S1S2+ACM-CpGワクチンが、活発なSARS-CoV-2特異的抗体応答を誘発したことを表す。a. 免疫処置と採血のスケジュール。C57BL/6マウスに、1回あたり5μgの抗原(別段の言明がある場合を除く)で2回、皮下免疫処置を行った。b. スパイク特異的全IgG。スパイクタンパク質でコーティングされたプレート上で、エンドポイントELISA IgG価を決定した。c. 代用ウイルス中和試験。RBDとACE2受容体の間の相互作用を遮断する抗体を評価するELISAベースのcPass(商標)キットを使って、中和活性を決定した。20%阻害のカットオフ(水平の破線)を使って血清陽性試料を同定した。評価したさまざまなワクチン製剤をX軸上に示す。統計的比較は、二元配置ANOVAとダネットの多重比較を使って、各時点において、PBS対照に対して行った。*:P≦0.05;**:P≦0.01;***:P≦0.001;****:P≦0.0001;ns:有意差なし。
【
図30-1】ACM-S1S2+ACM-CpGワクチンが、ロバストで永続的な中和抗体応答を誘発したことを表す。a. 重要な5つの群からの28日目血清をSARS-CoV-2スパイクシュードタイプレンチウイルス粒子に対して試験することで、IC
50価を決定した。b. SARS-CoV-2スパイクシュードタイプレンチウイルス粒子に対して決定された54日目のIC
50中和価。c. 生SARS-CoV-2に対して決定された54日目のIC
100中和価。検出下限は水平の破線で示されており、閾未満の試料には名目値1が割り当てられる。評価したさまざまなワクチン製剤をX軸上に示す。統計的比較は、通常の一元配置ANOVA(ordinary one-way ANOVA)とダネットの多重比較を使って、ACM-S2群またはPBS群に対して行った。*:P≦0.05;**:P≦0.01;***:P≦0.001;ns:有意差なし。d. ACM-S1S2+ACM-CpG免疫処置マウスからの中和価の動態。
【
図31A】ACM-S1S2+ACM-CpGワクチンが機能的メモリーCD4
+およびCD8
+T細胞を誘発したことを表す。54日目(ブーストの40日後)に脾臓を収集し、脾細胞(PBS対照からのものを含む)を、SARS-CoV-2スパイクタンパク質を覆うオーバーラップしたペプチドのプールにより、エクスビボで刺激した。T細胞応答は細胞内サイトカイン染色によって決定した。a. CD44
hiCD4
+T細胞によるTh1サイトカイン(IFNγ、TNFαおよびIL-2)およびTh2サイトカイン(IL-4およびIL-5)の生産。b. CD44
hiCD8
+T細胞によるIFNγ、TNFαおよびIL-2の生産。PBS対照に従ってベースライン(水平の破線)を割り当て、それらを上回る読みを抗原特異的であるとみなす。評価したさまざまな製剤をX軸上に示す。統計的比較は、通常の一元配置ANOVAとダネットの多重比較を使って、PBS対照に対して行った。*:P≦0.05;**:P≦0.01;***:P≦0.001;****:P≦0.0001;ns:有意差なし。c. 54日目血清のスパイク特異的IgG1およびIgG2b価。スパイクタンパク質でコーティングされたプレート上でエンドポイント力価を決定した。平均IgG1:IgG2b比が棒グラフの上に示されている。
【
図32】サイズ排除クロマトグラフィーによるS1S2タンパク質の特性解析を表す。細いトレース:較正曲線。太いトレース:精製S1S2タンパク質。
【
図33】ACM製剤のエンドトキシン測定を表す。InvivoGen製のHEK Blue細胞ベースの比色エンドトキシン検出アッセイは、すべてのACM製剤について負のエンドトキシンレベルを示し、遊離S1S2タンパク質および遊離三量体タンパク質については0.2EU/ml未満のエンドトキシンレベルを示した。
【
図34】SDS-PAGEとそれに続くSYPRO Ruby染色による、封入タンパク質の量の評価を表す。a. 三量体。b. S1S2。c. S2。*残存非封入タンパク質の量を推定するための並行対照実験。白い矢印:ACMポリマーによって生じたスメア。
【
図35-1】4℃におけるACM-S1S2の安定性試験を表す。a、b. 1日目および20週目におけるACM封入S1S2の量。ACMベシクルを溶解し、タンパク質をSDS-PAGEとSYPRO染色とによって分析した。1日目の濃度は遊離S1S2タンパク質標準を使って計算し、20週目の濃度はS1S2タンパク質がなかったので遊離BSA標準を使って計算した。*残存非封入タンパク質の量を推定するための並行対照実験。白い矢印:ACMポリマーによって生じたスメア。c. 1日目および20週目におけるACMポリマーソームのDLS測定により、ACM-S1S2ベシクルのサイズとPDIには変化がないことが示唆された。d. 1日目および20週目におけるACM-S1S2のACE2結合アッセイにより、活性の喪失はごくわずかであることが示された。封入S1S2タンパク質はTriton-X100でベシクルを溶解することによって放出させた。
【
図36】遊離S1S2、ACM-S1S2、遊離S1S2+遊離CpG、およびACM-S1S2+ACM-CpGの37℃で28時間の安定性試験を表す。a. 28日間にわたってさまざまな製剤中に存在するS1S2タンパク質の量。b、c. ACMベシクルのサイズおよび多分散性(PDI)。
【
図37】シュードウイルス中和試験と生ウイルス中和試験との間の相関関係を表す。54日目の非ワクチン接種マウスおよびワクチン接種マウスからの75ペアのデータポイント間で両側ピアソン相関を行った。
【
図38】免疫処置マウスからのメモリーCD4
+およびCD8
+T細胞のサイトカインプロファイルを表す。a、b. S2製剤または三量体製剤で免疫処置したマウスのCD4
+およびCD8
+T細胞サイトカインプロファイル。PBS対照に従ってベースライン(水平の破線)を割り当て、それらを上回る読みを抗原特異的であるとみなす。統計的比較は、通常の一元配置ANOVAとダネットの多重比較を使って、PBS対照に対して行った。**:P≦0.01;***:P≦0.001;****:P≦0.0001;ns:有意差なし。
【
図39】遊離CpGまたはACM-CpGによるcDCの活性化。a、b. cDC1およびcDC2におけるCD86およびCD80活性化マーカーの発現を表す代表的ヒストグラム。マウスに、PBS、空のACM、遊離CpGまたはACM-CpGをSC注射し、2日後に鼠径部リンパ節からのcDCを調べた。c、d. 処置群間のCD86
+およびCD80
+cDC1およびcDC2の比較。
【
図40】遊離CpG-BまたはACM封入CpG-Bのサイトカインプロファイル。a~c. 遊離CpG-A、遊離CpG-BまたはACM-CpG-Bと共にインキュベートした後のヒトPBMCによるIL-6生産。d~f. IFNα生産。個々の用量応答曲線が示されている。健常ドナーの識別番号が右下に示されている。
【
図41】https://www.invivogen.com/cpg-odns-classesから引用して変更を加えた例示的なCpG ODNクラス。例示的なCpG-A ODNは、それらがPO中央CpG含有パリンドロームモチーフおよびPS修飾3'ポリGストリングを含むことを特徴とする。例示的なCpG-B ODNは、それらが、1つまたは複数のCpGジヌクレオチドを持つ完全PSバックボーンを含むことを特徴とする。例示的なCpG-C ODNは、それらがクラスAとクラスBの両方の特徴を併せ持つことを特徴とする。
【発明を実施するための形態】
【0095】
発明の詳細な説明
以下の詳細な説明では添付の実施例と図面に言及するが、それらは本発明を実施する際にとりうる具体的詳細および態様を、例示のために示している。これらの態様は、当業者が本発明を実施することができるように、十分に詳しく記載されている。本発明の範囲から逸脱することなく、構造的、論理的および取捨選択的な変更を加えうるような形で、他の態様も利用しうる。本発明の局面は1つまたは複数の他の局面と組み合わされて本発明の新しい態様を形成することができるので、本明細書に記載する本発明のさまざまな局面は必ずしも相互排他的ではない。
【0096】
本発明は、ポリマーソームの第1集団が抗原のみと関連づけられ、ポリマーソームの第2集団がアジュバントのみと関連づけられた2つの別個のポリマーソーム集団が、一緒に投与された場合に、抗原に対する免疫応答を改良し、それによって、例えば感染性疾患またはがんなどに対する免疫処置または治療効果をもたらすという、驚くべき発見に基づく。(例えば本願の実施例7~9または実施例19を参照されたい。ここで、実施例8は、抗原を封入している第1ポリマーソーム集団を、CpG(アジュバント)を封入している別個の第2ポリマーソーム集団と一緒に投与すれば、マウスにおいて、腫瘍量とT細胞浸潤の両方に相関する免疫応答を生じることを示し、実施例9は、ポリマーソームの第1集団に封入された免疫原性腫瘍ネオ抗原Trp2ペプチドを、第2の(別個の)集団に封入されたCpGオリゴヌクレオチド(アジュバント)と一緒に投与すれば、例えば遊離Trp2ペプチドと比較して、はるかに強い抗腫瘍応答を示すことを示し、また実施例19は、Sars-CoV-2のスパイクタンパク質をポリマーソームの第1集団に封入し、CpGオリゴヌクレオチド(アジュバント)を第2の(別個の)集団に封入した場合に、Sars-CoV-2ウイルスのスパイクタンパク質に対する免疫応答が最も高いことを示している。そのような2つの別個のポリマーソーム集団が改良された免疫応答をもたらすという発見には、2つのポリマーソーム集団を互いに別々に/独立して生産することを可能にするという追加の利点がある。これは、結果として、例えば各ワクチン組成物または治療組成物のGMP生産を単純にする。というのも、ポリマーソームの第1集団、例えばポリマーソームに封入された抗原またはポリマーソームの表面にコンジュゲートされた抗原を含むものを、標準化されたGMP条件下で生産することができ、その一方で、ポリマーソームの第2集団、例えばポリマーソームに封入されたアジュバントまたはポリマーソームの表面にコンジュゲートされたアジュバントを含むものも、標準化された条件下で生産することができるからである。次に、これら2つの集団は、(共投与用に両ポリマーソーム集団を併せ持つ組成物を得るために)製造プロセスにおいて組み合わせるか、または対象に別々に投与することができる。そのような薬物/ワクチン製造プロセスは、例えば抗原とアジュバントの両方を同じポリマーソーム集団に封入することよりも、はるかに管理が容易である。
【0097】
抗原は、抗原とポリマーソームの第1集団との考えうる任意の相互作用によって、ポリマーソームの第1集団と関連づけることができる。例えば抗原は、参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる2019年1月25日に出願された同時係属中のPCT出願PCT/EP2019/051853に記載されているように、ポリマーソームの第1集団内に封入されうる。あるいは、抗原は、国際出願WO2014/077781に記載されているように、ポリマーソームの第1集団のポリマーソームの周囲膜に組み込みうる。また、参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる2018年9月12日に出願された同時係属中の欧州特許出願第18193946.3号に記載されているように、第1ポリマーソーム集団のポリマーソームの外表面に共有結合を介して抗原をコンジュゲートすることも可能である。
【0098】
さらに、第1ポリマーソーム集団のポリマーソームの外表面に非共有結合を介して抗原をコンジュゲートすることも可能である。そのような非共有結合の例として、ポリマーソームの表面または抗原の表面に存在する正荷電残基と負荷電残基の間の塩橋などといった静電相互作用が挙げられる。例えば塩橋は正荷電アミノ基(NH2基)と負荷電カルボン酸基(COOH)の間に形成させることができる。第1ポリマーソーム集団と抗原との間のそのような非共有結合相互作用のさらにもう一つの具体例は、ストレプトアビジンとビオチン、アビジンとビオチン、ストレプトアビジンとストレプトアビジン結合ペプチド、またはアビジンとアビジン結合ペプチドの間の結合ペアである。例えば、ビオチン基がポリマーソーム表面に配置されているポリマーソームは、Broz et al「Cell targeting by a generic receptor-targeted polymer nanocontainer platform」Journal of Controlled Release. 2005;102(2):475-488に記載されているように調製することができ、ストレプトアビジンまたはアビジンにコンジュゲートされた抗原と反応させることができる。ポリマーソームと抗原との非共有結合的ビオチン-ストレプトアビジンコンジュゲートは、Egli et al「Functionalization of Block Copolymer Vesicle Surfaces Polymers」2011,3(1),252-280に記載されているように調製することもできる。これに関連して、本明細書において使用される「ポリマーソームの第1集団と関連づけられた抗原」という用語は、1種の特定抗原だけがポリマーソームの第1集団と関連づけられていることを意味するのではなく、2種以上の、例えば2種またはそれ以上の抗原をポリマーソームの第1集団と関連づけることができることも包含する。具体的一例として、例えば2種またはそれ以上の免疫原性ペプチドを、本発明のポリマーソームの第1集団と関連づけることができる。また、1種または複数種の免疫原性ペプチドおよびそれらのペプチドをコードする各核酸分子を、本明細書にいうポリマーソームの第1集団と関連づけることも、可能である。本明細書において使用される「ポリマーソームの第1集団と関連づけられた抗原」という用語は、それぞれが異なる抗原を保持している2種またはそれ以上の第1ポリマーソーム集団を使用できることも意味する。例えば、2つの異なる抗原性ペプチドを使用し、それらのそれぞれを本発明の別個の第1ポリマーソーム集団と関連づけることが可能である。
【0099】
アジュバントも、抗原とポリマーソームの第1集団との関連づけが起こりうるのと同じようにして、考えうる任意の相互作用により、ポリマーソームの第2集団と関連づけることができる。つまり、アジュバントは、参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる2019年1月25日に出願された同時係属中のPCT出願PCT/EP2019/051853に記載されているように、ポリマーソームの第1集団内に封入されうる。あるいは、アジュバントは、国際出願WO2014/077781に記載されているように、ポリマーソームの第1集団のポリマーソームの周囲膜に組み込みうる。(第2ポリマーソーム集団の)ポリマーソームの周囲膜に組み入れる/組み込むことができるアジュバントの具体例として、合成モノホスホリルリピドA(これについてはJean-Francois Jeannin編『Lipid A in Cancer Therapy』(2009,Landes Bioscience and Springer)のCluff著「Monophosphoryl Lipid A(MPL)as an Adjuvant for Anti-Cancer Vaccines:Clinical Results」を参照されたい)、ポリソルベート80、アルファ-DL-トコフェロール、ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)、カチオン性脂質1-[2-(オレオイルオキシ)エチル]-2-オレイル-3-(2-ヒドロキシエチル)イミダゾリニウムクロライド(DOTIM)(Bernstein et al「The Adjuvant CLDC Increases Protection of a Herpes Simplex Type 2 Glycoprotein D Vaccine in Guinea Pig」Vaccine. 2010 May 7;28(21):3748-3753参照、または合成両親媒性物質ジメチルジオクタデシルアンモニウム(DDA)(Smith Korsholm et al「The adjuvant mechanism of cationic dimethyldioctadecylammonium liposomes」Immunology,121,216-226参照)が挙げられるが、これらはほんの一例に過ぎない。これに関連して、本明細書にいう第2ポリマーソーム集団のポリソームに1種または複数種のアジュバントが存在できることは明白である。例えば、第2ポリマーソーム集団は、CpGオリゴヌクレオチドなどの封入アジュバント、およびモノホスホリルリピドAまたはDOTAPなどの、ポリマーソームの周囲膜に組み込まれたアジュバントを含みうる(ただし上記の開示に従い、第2ポリマーソーム集団には抗原は含まれない。つまり、第2ポリマーソーム集団はいかなる抗原も含有しない)。
【0100】
上記に沿って、参照によりその内容全体が本明細書に組み入れられる2018年9月12日に出願された同時係属中の欧州特許出願第18193946.3号に記載されているように、第1ポリマーソーム集団のポリマーソームの外表面に共有結合を介してアジュバントをコンジュゲートすることも当然ながら可能である。あるいは、ポリマーソームの外表面へのアジュバントのコンジュゲーションは、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用などの非共有結合を介して行ってもよい。クラスB CpGオリゴデオキシヌクレオチドCpG ODN1826(5’-tccatgacgttcctgacgtt-3’、SEQ ID NO:18)などのCpGオリゴヌクレオチドは、ビオチン化された形態で入手することができ、したがって、前掲のBroz et al「Journal of Controlled Release. 2005に記載されているようにストレプトアビジンで「修飾」されたビオチン化ポリマーソームと容易に反応させることができる点に、ここでは留意されたい。またこの例から、第2ポリマーソーム集団が、2(種)以上のアジュバント、例えばポリマーソームの外表面に共有結合または非共有結合でコンジュゲートされたCpGオリゴヌクレオチドと、ポリマーソームの周囲膜に組み込まれたモノホスホリルリピドAまたはDOTAPなどのさらなるアジュバントとを保持しうることも明白である。同じアジュバントを異なる方法で第2ポリマーソーム集団と関連づけうること、例えばCpGオリゴヌクレオチドを、ポリマーソームに封入すると同時に、ポリマーソームの外表面に共有結合的または非共有結合的にコンジュゲートできることは、さらに明白である。そうすることにより、所望であれば、より多量のアジュバントを投与に供することができる。
【0101】
上記の開示に沿って、抗原およびアジュバントが第1ポリマーソーム集団および第2ポリマーソーム集団にどのように関連づけられるかとは無関係に、あらゆる種類の第1ポリマーソーム集団を、あらゆる種類の第2ポリマーソーム集団と共に、投与のために使用することができる。例えば、ポリマーソームの第1集団は、ポリマーソーム内に封入された抗原を有し、そしてまた、ポリマーソームの第2集団は、ポリマーソーム内に封入されたアジュバントを有しうる。あるいは、ポリマーソームの第1集団は、ポリマーソームの外表面に共有結合または非共有結合によってコンジュゲートされた抗原を有することができ、一方、ポリマーソームの第2集団は、ポリマーソームの外表面に共有結合または非共有結合によってコンジュゲートされたアジュバントを有する。さらにもう一つの純粋に説明のための一例として、ポリマーソームの第1集団は、ポリマーソームの周囲膜に組み込まれた抗原を有し、そしてまた、ポリマーソームの第2集団は、ポリマーの周囲膜に組み込まれたアジュバントを有しうる。さらなる具体例として、ポリマーソームの第1集団は、ポリマーソーム内に封入された抗原を有し、一方、ポリマーソームの第2集団は、(a)ポリマーソームの外表面に共有結合または非共有結合によってコンジュゲートされたアジュバント、または(b)ポリマーソームの周囲膜に組み込まれたアジュバントを有しうる。さらにもう一つの具体例として、ポリマーソームの第1集団は、ポリマーソームの外表面に共有結合によってコンジュゲートされた抗原を有し、ポリマーソームの第2集団は、ポリマーソーム内に封入されたアジュバントを有しうる。
【0102】
ここで、本発明の2つのポリマーソーム集団の投与について詳述すると、ポリマーソームの第1集団およびポリマーソームの第2集団は、同時に(すなわち同じ時点で)投与することも、異なる時点で投与することもできる。2つの集団を同時に投与する場合、2つのポリマーソーム集団は一緒に(すなわち共投与によって)投与しうる。その場合、2つのポリマーソーム集団は、投与に先立って、一つに混和または混合されるので、同じ組成物、例えば薬学的に許容される担体(例えば生理緩衝液または経口投与に適した固形製剤)中に存在する。しかし、同じ時点で投与する場合、2つのポリマーソーム集団のそれぞれを個別に投与することも可能である。その場合、2つのポリマーソーム集団は、もちろん、投与に先立って互いに混和されず、例えば2回以上の別個の注射によって投与されうる。
【0103】
2つのポリマーソーム集団は、対象における免疫応答を誘発および/または調節する(例えば、共投与もしくは逐次投与もしくは実質的に同時の投与、例えば、同時もしくはほぼ同時に投与される2回の別個の注射により投与が行われる)ことが知られており、所与の対象にポリマーソーム集団を投与するのに適した、任意の方法で、選ばれた対象に投与することができる。魚類またはニワトリ、ブタもしくはヒツジなどの農用動物が免疫処置される場合は、例えば経口投与を使用し、本発明の2つのポリマーソーム集団を含有する組成物を食品添加物として製剤化することが有利になりうる。あるいは、農用動物には注射銃またはジェットインジェクターを利用する皮内投与を使用しうる。ヒトの場合、侵襲的投与および非侵襲的投与を使用することができる。ヒトと非ヒト動物の両方に適した投与経路として、経口投与、鼻腔内投与、粘膜表面への投与、吸入、投与、腹腔内投与、皮下投与、静脈内投与または筋肉内投与が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。
【0104】
第1ポリマーソーム集団または第2ポリマーソーム集団のどちらかのポリマーソームの外表面への抗原および/またはアジュバントのコンジュゲーションについて詳述すると、共有結合は、抗原(例えば本発明の抗原)またはアジュバントを本発明のポリマーソームの外表面にコンジュゲートすることができる任意の適切な共有結合であることができる。本発明の共有結合を生じさせるコンジュゲーション反応は、当技術分野では周知である(例えばNHS-EDCコンジュゲーション、還元的アミノ化コンジュゲーション、スルフヒドリルコンジュゲーション、「クリック」および「光クリック」コンジュゲーション、ピラゾリンコンジュゲーションなど)。そのような共有結合とその生成方法の非限定的な例を、本明細書では以下に列挙する。したがっていくつかの局面において、本発明の抗原またはアジュバントを本発明のポリマーソームの外表面にコンジュゲートするための共有結合は、(i)アミド部分(例えば、本明細書の「実施例」に記載するもの)、および/または(ii)第二級アミン部分(例えば本明細書の「実施例」に記載するもの)、および/または(iii)1,2,3-トリアゾール部分(例えばvan Dongen et al.,2008,Macromol. Rapid Communications,2008,29,321-325頁に記載されているもの)、好ましくは1,2,3-トリアゾール部分は1,4-二置換[1,2,3]トリアゾール部分または1,5-二置換[1,2,3]トリアゾール部分(例えばBoren et al.,2008に記載されているもの)、および/または(iv)ピラゾリン部分(例えばde Hoog et al.,Polym. Chem.,2012,3,302-306に記載されているもの)、および/またはエーテル部分を含む。これに関連して、ポリマーソームの外表面と抗原との間のコンジュゲーション/共有結合の形成には、ポリマーソームと抗原、例えばタンパク質とを、どちらも修飾する必要があるかもしれないことに留意されたい。上述の古典的な化学的コンジュゲーションケミストリー(反応)だけでなく、酵素反応によってポリマーソームの外表面と抗原との間の共有結合を形成させることも可能である。
【0105】
いくつかの局面において、本発明は、本発明のポリマーソームに抗原をコンジュゲートする例示的代替方法のうちの1つであるNHS-EDCコンジュゲーション(すなわち、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)と1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド(EDC)に基づくコンジュゲーション))に関する。この方法では、カルボン酸基がEDCと反応して中間体O-アシルイソ尿素を生成し、次にそれが第一級アミンと反応して、該カルボキシル基とのアミド部分を形成する。
【0106】
いくつかの局面において、本発明は、本発明のポリマーソームに抗原またはアジュバントをコンジュゲートするもう一つの例示的代替方法である還元的アミノ化コンジュゲーションに関する。この方法では、アルデヒド含有化合物がアミン含有化合物にコンジュゲートされてシッフ塩基中間体を形成し、次にそれが還元を受けて、安定な第二級アミン部分を形成する。
【0107】
いくつかの局面において、本発明は、本発明のポリマーソームに抗原またはアジュバントをコンジュゲートするもう一つの例示的代替方法であるスルフヒドリルコンジュゲーションに関する。この方法では、スルフヒドリル(-SH)含有化合物(例えばシステインの側鎖中に存在するもの)が、アルキル化またはジスルフィド交換によってスルフヒドリル反応性化学基(例えばマレイミド)にコンジュゲートされて、それぞれチオエーテル結合またはジスルフィド結合を形成する。
【0108】
いくつかの局面において、本発明は、本発明のポリマーソームに抗原をコンジュゲートするもう一つの例示的代替方法であるポリマーソーム表面でのいわゆる「クリック」反応(「アジド-アルキン付加環化」としても公知である)(例えば前掲のvan Dongen et al.,2008に記載されているもの)に関する。この方法では、アジド官能化抗原(例えばポリペプチド)の水溶液をポリマーソームの分散系に加え、次に、結果として生じたポリマーソームの分散系に、前もって混合されたCu(II)SO4・5H2Oとアスコルビン酸ナトリウムの水溶液およびバソフェナントロリンリガンドを加えてから、4℃で60時間放置し、次に該分散系を100nmカットオフで濾過し、遠心乾固することで、1,2,3-トリアゾール部分を生成させる。これに関連して、アジド-アルキン付加環化の銅触媒反応(CuAACとしても公知である)では特異的に1,4-二置換位置異性体の合成が可能になり、一方、アジド-アルキン付加環化のルテニウム触媒反応(RuAACとしても公知である)(例えば触媒としてCp*RuCl(PPh3)2を使用するもの)では1,5-二置換トリアゾールの生産が可能になる(R.Johansson,Johan&Beke-Somfai,Tamas&Said Stalsmeden,Anna&Kann,Nina.(2016). Ruthenium-Catalyzed Azide Alkyne Cycloaddition Reaction:Scope,Mechanism,and Applications. Chemical Reviews. 116.10.1021/acs.chemrev.6b00466参照)ことにも、留意されたい。
【0109】
いくつかの局面において、本発明は、本発明のポリマーソームに抗原をコンジュゲートするもう一つの例示的代替方法であるニトリルイミン中間体(例えばビスアリール-テトラゾールから生成するもの)の光誘起生成およびアルケンへのその付加環化(いわゆる光誘起付加環化または「光クリック」反応、例えば前掲のde Hoog et al.,2011に記載されているもの)に関する。この方法では、ABAブロックコポリマーを、ニトリルイミン中間体の光誘起生成により、テトラゾールで、メタクリレート(MA)末端化またはヒドロキシル末端化して、MA-ABAコポリマーおよびヒドロキシル末端化ABAコポリマーを含有するABAポリマーソームを生産し、次に該ポリマーソームをテトラゾール含有抗原(HRP)とUV照射下で反応させることで、ピラゾリン部分を生成させる。
【0110】
ポリマーソームの外表面に抗原またはアジュバントをコンジュゲートする共有結合は、ポリマーソームの周囲膜の(中に存在する)一部である両親媒性ポリマーなどの分子の原子/基との間に形成させることができる。あるいは、抗原または抗原とポリマーの外表面との間の共有結合は、ポリマーソームの周囲膜の(中に存在する)一部である分子に取り付けられたリンカー部分を介して形成される。リンカーは、任意の適切な長さを有してよく、1主鎖原子の長さを有することができる(例えばリンカーが、共有結合を形成するアミドまたはエステル部分をもたらす単純なカルボニル基(C=O)である場合)。1主要原子の長さを持つそのような「1原子/リンカー部分」の具体例は、BD21-CHO(すなわち末端アルデヒド基)を得るために「実施例」において実行されるデス-マーチン・ペルヨージナンによる両親媒性ポリマーBD21の修飾であり、これは次に、選択された抗原(実験項では純粋に説明のための抗原の一例としてヘマグルチニンが使用される)とのアミン結合を形成させるために使用される。あるいは、リンカー部分は、例えばポリペプチドと関心対象の分子とのコンジュゲーション(共有結合カップリング)によく使用されるポリエチレングリコール(PEG)などの部分であれば、数百個またはそれ以上の主鎖原子の長さを有しうる。純粋に説明のための一例として、後述し、本願の「実施例」において使用する、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン[DSPE]ポリエチレングリコール(DSPE-PEG)コンジュゲートを参照されたい。「実施例」において使用されるDSPE-PEG(3000)リンカー部分は、約65個のエチレンオキシド(CH2-CH2-O)サブユニット、したがってPEG部分だけで約325主鎖原子を有し、全体では約408主鎖原子の長さを有する。上記の例示的態様に沿って、リンカー部分は、1~約550個の主鎖原子、1~約500個の主鎖原子、1~約450個の主鎖原子、1~約350個の主鎖原子、1~約300個の主鎖原子、1~約250個の主鎖原子、1~約200個の主鎖原子、1~約150個の主鎖原子、1~約100個の主鎖原子、1~約50個の主鎖原子、1~約30個の主鎖原子、1~約20個の主鎖原子、1~約15個の主鎖原子、または1~約12個の主鎖原子、または1~約10個の主鎖原子を含んでよく、ここで、主鎖原子は、N、O、PおよびSからなる群より選択される1つまたは複数のヘテロ原子で置き換えられていてもよい炭素原子である。
【0111】
上記の開示によれば、リンカー部分は、ペプチドリンカーまたは直鎖もしくは分岐鎖炭化水素ベースのリンカーでありうる。リンカー部分は、異なるブロック長を持つコポリマーであってもよい。本発明において使用されるリンカー部分は、ポリマーソームの膜にリンカー部分を組み込む膜アンカードメイン(membrane anchoring domain)を含みうる。そのような膜アンカードメインは、リン脂質または糖脂質などの脂質を含みうる。膜アンカードメインに使用される糖脂質は、広く使用されている膜アンカードメインであるグリコホスファチジルイノシトール(GPI)を含みうる(例えば国際特許出願WO2009/127537およびWO2014/057128参照)。本発明のリンカーにおいて使用されるリン脂質はスフィンゴリン脂質またはグリセロリン脂質でありうる。そのようなリンカーの具体例において、スフィンゴリン脂質は、膜アンカードメインとして、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン[DSPE](DSPE-PEG)を含みうる。そのようなコンジュゲートにおいて、DSPE-PEGは、任意の適切な数のエチレンオキシド、例えば2~約500個のエチレンオキシド単位を含みうる。具体例として、DSPE-PEG(1000)、DSPE-PEG(2000)またはDSPE-PEG(3000)が挙げられるが、これらはほんの一例に過ぎない。あるいは、リン脂質(スフィンゴリン脂質またはグリセロリン脂質)は、膜アンカードメインとしてコレステロールを含みうる。コレステロールベースの膜アンカードメインは、例えばAchalkumar et al,「Cholesterol-based anchors and tethers for phospholipid bilayers and for model biological membranes」Soft Matter,2010,6,6036-6051に記載されている。例示的態様において、そのような膜アンカードメインのリンカー部分は、1~約550個の主鎖原子、1~約500個の主鎖原子、1~約450個の主鎖原子、1~約350個の主鎖原子、1~約300個の主鎖原子、1~約250個の主鎖原子、1~約200個の主鎖原子、1~約150個の主鎖原子、1~約100個の主鎖原子、1~約50個の主鎖原子、1~約30個の主鎖原子、1~約20個の主鎖原子、1~約15個の主鎖原子、または1~約12個の主鎖原子、または1~約10個の主鎖原子を含んでよく、ここで、主鎖原子は、N、O、PおよびSからなる群より選択される1つまたは複数のヘテロ原子で置き換えられていてもよい炭素原子である。
【0112】
本発明では、関連づけられた抗原またはアジュバントにとって担体として機能することができるポリマーソームである限り、あらゆる種類のポリマーソームを使用することができる。ポリマーソームは、例えばStano et al.「Tunable T cell immunity towards a protein antigen using polymersomes vs. solid-core nanoparticles,Biomaterials 34(2013):4339-4346」またはHubbelの米国特許第8,323,696号に記載の酸化感受性ポリマーソームであることができる。あるいは、ポリマーソームは酸化に対して非感受性であってもよい。化学的安定性(酸化に対して感受性または非感受性である可能性を含む)とは無関係に、本発明において、ポリマーソームとはポリマー膜を持つベシクルであり、これは、典型的には、ジブロックおよびトリブロック(A-B-AまたはA-B-C)などのさまざまなタイプであることができる1種または複数種の両親媒性ブロック共重合体の希薄溶液の自己集合によって形成されるが、必ずしもそうではない。本発明のポリマーソームはテトラブロック共重合体またはペンタブロック共重合体でも形成されうる。トリブロック共重合体の場合、中心ブロックはその隣接ブロックによって環境から遮蔽されることが多いが、ジブロック共重合体は二重層に自己集合して、2つの疎水性ブロックを尾-尾状に配置することで、ほぼ同じ効果を発揮する。ほとんどの場合、ベシクル膜は不溶性の中間層と可溶性の外側層とを有する。自己集合によるポリマーソーム形成の駆動力は、自らを水との接触から遮蔽するために会合する傾向を示す不溶性ブロックのミクロ相分離であると考えられる。本発明のポリマーソームは、構成共重合体の大きな分子量ゆえに、注目すべき特性を有する。ブロック共重合体の総分子量が増加するとベシクル形成が有利になる。結果として、(ポリマー状)両親媒性物質の拡散は、脂質および界面活性剤によって形成されるベシクルと比べて、極めて少ない。ベシクル構造に凝集したポリマー鎖の可動性はこのように低いため、安定したポリマーソーム形態を得ることが可能である。別段の明言がある場合を除き、本明細書において使用する「ポリマーソーム」および「ベシクル」という用語は、類似していると解釈され、相互可換的に使用されうる。重要なことに、本発明のポリマーソームは、1種類のブロック共重合体から形成させるか、2種類以上のブロック共重合体から形成させることができる。つまり、ポリマーソームは、ポリマーソームの混合物から形成させることもでき、したがって2種以上のブロック共重合体を含有することができる。いくつかの局面において、本発明のポリマーソームは酸化安定性である。
【0113】
いくつかの局面において、本発明は、対象における可溶性(例えば可溶化)封入抗原に対する免疫応答を誘発および/または調節するための方法に関する。本方法は、両親媒性ポリマーの膜(例えば周囲膜)を有するポリマーソーム(例えば担体または媒体)を含む組成物を対象に注射するのに適している。組成物は、本発明のポリマーソームの両親媒性ポリマーの膜(例えば周囲膜)によって封入された可溶性(例えば可溶化)抗原を含む。抗原は以下のうちの1つまたは複数でありうる:(i)ポリペプチド、(ii)糖質、(iii)ポリヌクレオチド(例えばポリヌクレオチドはアンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、好ましくはポリヌクレオチドはDNA分子またはメッセンジャーRNA(mRNA)分子である)、または(i)および/もしくは(ii)および/もしくは(iii)の組合せ。
【0114】
いくつかのさらなる局面において、本発明は、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発することができるポリマーソームに関する。
【0115】
いくつかの局面において、本発明は、リンパ節常在性マクロファージおよび/またはB細胞をターゲティングする能力を有するポリマーソームに関する。本発明によって想定される例示的な非限定的ターゲティング機序には、(i)T細胞活性化(CD4および/またはCD8)のための樹状細胞(DC)への封入抗原(例えばポリペプチドなど)の送達が含まれる。もう1つの機序は、(ii)DCへの経路となり、力価(B細胞)もトリガーするであろう、折りたたまれた抗原全体(例えばタンパク質など)の送達である。
【0116】
いくつかの局面において、本発明は、(i)自己抗原、(ii)非自己抗原、(iii)非自己免疫原および(iv)自己免疫原からなる群より選択される抗原を封入したポリマーソームに関する。したがって、本発明の産物および方法は、例えば自己免疫疾患を標的とする場合など、誘導性寛容の状況下(例えば臨床状況下)での使用に適している。
【0117】
いくつかの局面において、本発明は、脂質ポリマーを含む本発明のポリマーソームに関する。
【0118】
本発明のポリマーソームは、1種または複数種のアジュバントを共封入(すなわち抗原に加えて封入)していてもよい。アジュバントの具体例を少しだけ挙げると、Toll様受容体9を発現する細胞(ヒトの形質細胞様樹状細胞およびB細胞を含む)がTh1および炎症誘発性サイトカインの生産を特徴とする先天性免疫応答を開始するためのトリガーとなりうる非メチル化CpGモチーフを含有する合成オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)、インターロイキン-1、インターロイキン-2またはインターロイキン-12などのサイトカイン、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、血清アルブミン、ウシチログロブリン、または大豆トリプシンインヒビターなどがある。
【0119】
本発明のポリマーソームは、そのポリマーソームが免疫応答を誘発できる限り、任意のサイズであることができる。例えばポリマーソームは70nm超の直径を有してもよい。ポリマーソームの直径は約100nm~約1μm、または約100nm~約750nm、または約100nm~約500nmの範囲であってもよい。ポリマーソームの直径は、さらに、約125nm~約175nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲であってもよい。ポリマーソームの直径は、例えば約200nm、約205nmまたは約210nmであってもよい。免疫応答を誘発するために(第1および第2の)集団として使用する場合、ポリマーソームの集団は、典型的には単分散性の集団である。使用されるポリマーソームの集団の平均直径は、典型的には70nm超、または120nm超、または125nm超、または130nm超、または140nm超、または150nm超、または160nm超、または170nm超、または180nm超、または190nm超である(この点で
図2も参照されたい)。ポリマーソームの集団の平均直径は、例えば、上述した個々のポリマーソームの範囲にあってもよい。つまり、ポリマーソームの集団の平均直径は、100nm~約1μmの範囲、または約100nm~約750nmの範囲、または約100nm~約500nmの範囲、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、もしくは約220nm~約180nm、もしくは約190nm~約210nmの範囲にあってもよい。ポリマーソームの集団の平均直径は、例えば約200nm、約205nmまたは約210nmであってもよい。直径は、例えば動的光散乱(DLS)計器により、好ましいDLSパラメータであるZ-平均(d,nm)を使って決定することができる。Z-平均サイズは強度加重調和平均粒径(intensity weighted harmonic mean particle diameter)である(実施例1および実施例2参照)。これに関連して、Hubbelらの米国特許第8,323,696号によれば、免疫応答を誘発することができるように、ポリマーソームの集合体/集団は70nm未満の平均直径を有するべきとされていることに留意されたい。同様に、前掲のStano et al,2013は、もっと小さなポリマーソームを使用することを望みつつも、技術的制約から、免疫応答を誘発するために125nm±15nmの直径を有するポリマーソームを使用した。このように、例えば150nm超の平均直径を持つ本発明のポリマーソームの集団/集合体が、細胞性免疫応答と体液性免疫応答をどちらも誘導できることは(「実施例」参照)、驚くべきことである。そのようなポリマーソームの集合体は、例えば注射または経口投与によって免疫応答を誘発および/または調節するのに適した形態をとりうる。
【0120】
いくつかの局面において、本発明は、皮内、腹腔内、皮下、静脈内、もしくは筋肉内注射、または本発明の抗原の非侵襲的投与、例えば経口投与または吸入投与または経鼻投与に適した、本発明の組成物に関する。組成物は、両親媒性ポリマーの膜(例えば周囲膜)を有する本発明のポリマーソーム(例えば担体)を含みうる。組成物は、ポリマーソームの両親媒性ポリマーの膜によって封入された可溶性(例えば可溶化)抗原を、さらに含む。本発明の組成物は、治療目的(例えば罹患している対象の処置、またはワクチン接種などによる罹患の防止)に使用するか、抗体の発見、ワクチンの発見、または標的送達に使用することができる。
【0121】
いくつかの局面において、本発明のポリマーソームはその表面にヒドロキシル基を有する。いくつかのさらなる局面において、本発明のポリマーソームはその表現にヒドロキシル基を有しない。
【0122】
いくつかの局面において、本開示に従って免疫応答を誘発しおよび/または調整するための方法は、ナイーブCD8+T細胞のプライミングおよび/または活性化を含む。いくつかの局面において、本開示に従って免疫応答を誘発しおよび/または調整するための方法は、CD4+T細胞のプライミングおよび/または活性化を含む。いくつかの局面において、本開示に従って免疫応答を誘発しおよび/または調整するための方法は、IFNγ発現CD4+T細胞の増加を誘導することを含む。いくつかの局面において、本開示に従って免疫応答を誘発しおよび/または調整するための方法は、TNFα発現CD4+T細胞の増加を誘導することを含む。いくつかの局面において、本開示に従って免疫応答を誘発しおよび/または調整するための方法は、IL-2発現CD4+T細胞の増加を誘導することを含む。いくつかの局面において、本開示に従って免疫応答を誘発しおよび/または調整するための方法は、IFNγ発現CD8+T細胞の増加を誘導することを含む。いくつかの局面において、本開示に従って免疫応答を誘発しおよび/または調整するための方法は、機能的メモリーCD4+T細胞を誘導することを含む。好ましくは、免疫処置の約40日後に、そのような機能的メモリーCD4+T細胞を検出することができる。いくつかの局面において、本発明に従って免疫応答を誘発しおよび/または調整するための方法は、機能的メモリーCD8+T細胞を誘導することを含む。好ましくは、免疫処置の約40日後に、そのような機能的メモリーCD8+T細胞を検出することができる。いくつかの局面において、本発明に従って免疫応答を誘発しおよび/または調整するための方法は、スパイクタンパク質に特異的なCD8+T細胞を誘導することを含む。いくつかの局面において、本発明に従って免疫応答を誘発しおよび/または調整するための方法は、スパイクタンパク質に対する抗体を誘導することを含む。好ましくは、そのような抗体は、該スパイクタンパク質を含むウイルスを中和することができる。好ましくは、そのような抗体は、スパイクタンパク質でシュードタイプ化したウイルスを中和することができる。好ましくは、そのような抗体は、HCoV-229E、HCoV-NL63、SARS-CoV-1、SARS-CoV-2、MERS-CoV、HCoV-OC43およびHCoV-HKU1からなる群より選択されるウイルス、好ましくはMERS-CoVまたはSARS-CoV-2、最も好ましくはSARS-CoV-2を中和することができる。好ましくは、本方法は、前述したウイルスのうちの1つを中和することができる力価の抗体を誘導することを含み、前記力価は、好ましくは、血清において決定されうる血中での力価である。好ましくは、そのような中和価は、ポリマーソームまたはポリマーソームの組合せの最後の投与後、少なくとも40日間持続する。好ましくは、抗体はIgG抗体である。好ましくは、本方法は、約1未満のIgG1:IgG2b比を誘導することを含む。これは、特に本開示の組合せを適用した場合に、IgG1抗体より多くのIgG2b抗体が誘導されることを意味する。好ましくは、本開示の組成物(下記実施例20~23に示すものを参照されたい)の投与(例えば共投与)により、前述の効果のいずれかが達成される。
【0123】
この文脈において、「調整する」という用語は、本明細書において使用される場合、制御しおよび/または変化させるという意味、例えば免疫応答を制御しおよび/または変化させるという意味を有しうる。
【0124】
この文脈において、「ポリペプチド」という用語は、本明細書では「タンパク質」という用語と同等に使用されうる。タンパク質(そのフラグメント、好ましくは生物学的に活性なフラグメント、およびペプチド、通常は30個未満のアミノ酸を有するものを含む)は、ペプチド共有結合を介して互いにカップリングされた(結果としてアミノ酸の鎖を生じる)、1つまたは複数のアミノ酸を含む。
【0125】
この文脈において、T細胞表面糖タンパク質CD4(すなわち分化抗原群(cluster of differentiation)4、例えばUniProtKB-P01730)は、免疫細胞、例えばTヘルパー細胞の表面に見出すことができる糖タンパク質である。「CD4+T細胞」は、その表面にT細胞表面糖タンパク質CD4を有するTヘルパー細胞である。
【0126】
この文脈において、「サイトカイン」という用語は、本明細書において使用される場合、細胞シグナル伝達に関与するタンパク質を指しうる。サイトカインは、免疫応答を制御するために免疫細胞によって分泌されうる。
【0127】
この文脈において、「Tヘルパー(Th)細胞」という用語は、本明細書では、独特なサイトカインプロファイルを持つCD4+T細胞のサブセットを指すために使用されうる(例えばKaiko et al 2007)。Th1型(Th1)細胞によって分泌されるサイトカインには、インターフェロンガンマ(IFNγ、例えばUniProtKBアクセッション番号:P01579を有するもの)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα、例えばUniProtKBアクセッション番号:P01375を有するもの)、インターロイキン-2(IL-2、例えばUniProtKBアクセッション番号:P60568を有するもの)および/またはインターロイキン12(IL-12、例えばUniProtKBアクセッション番号:P29459またはP29460を有するもの)が含まれうる。Th2型(Th2)細胞によって分泌されるサイトカインには、インターロイキン4(IL-4、例えばUniProtKBアクセッション番号:P05112を有するもの)および/またはインターロイキン5(IL-5、例えばUniProtKBアクセッション番号:P05113を有するもの)が含まれうる。
【0128】
「関連づけられる」という用語は、本明細書で使用される場合、2つ以上の実体が結びつけられ、連結され、または接合されている状態を指しうる。本発明の「関連づけられる」の非限定的な例には、封入されていることが含まれる。
【0129】
本願に関して、「封入(された)」という用語は、膜(例えば本発明のポリマーソームの膜)に囲まれる(例えば該ポリマーソームの内腔内に包含される)ことを意味する。抗原に関して「封入(された)」という用語は、抗原が膜(例えば本発明のポリマーソームの膜)に組み込まれてもいないし、共有結合もしていないし、コンジュゲートもしていないことを、さらに意味する。本明細書に記載するポリマーソームのベシクル構造のコンパートメント化に関して、「封入(された)」という用語は、内側のベシクルが外側のベシクルの内部に完全に含まれ、外側ベシクルのベシクル膜に囲まれていることを意味する。外側ベシクルのベシクル膜に囲まれた閉鎖空間が1つのコンパートメントを形成する。内側ベシクルのベシクル膜に囲まれた閉鎖空間がもう1つのコンパートメントを形成する。
【0130】
本願に関して、「抗原」という用語は、免疫系成分によって特異的に結合されうる任意の物質を意味する。免疫応答を誘発(または惹起もしくは誘導)することができる抗原だけが免疫原性であるとみなされ、「免疫原」と呼ばれる。例示的な非限定的抗原は、タンパク質の可溶性部分に由来するポリペプチド、封入のために可溶性にされた疎水性ポリペプチド、ならびに凝集物として可溶性である凝集ポリペプチドである。抗原は、体内に起源を持つか(「自己抗原」)、または外部環境に起源を持ちうる(「非自己」)。
【0131】
膜タンパク質は、典型的には低レベルの免疫応答を生じる抗原の1クラスを形成する。特に興味深いことに、可溶性(例えば可溶化)膜タンパク質(MP)ならびに膜結合ペプチド(MAP)およびそのフラグメント(すなわち一部分)(例えば本明細書において言及する抗原)はポリマーソームによって封入され、そのことが、それらが生理学的に意味のある形で折りたたまれることを可能にしうる。これは、そのような抗原の免疫原性を強くブーストするので、遊離の抗原と比較した場合、より少量の対応する抗原を使って、同じレベルの免疫応答を生じさせることができる。さらにまた、ポリマーソームのサイズが(遊離の膜タンパク質と比べて)大きいことは、それらが免疫系によってより容易に検出されることを可能にする。
【0132】
本願に関して、「B16ペプチド」という用語は、自然発生C57BL/6由来B16黒色腫モデル(例えば黒色腫B16-F10マウスモデル)に由来する任意のネオ抗原ポリペプチドを指す。その非限定的な例としてSEQ ID NO:9、10および11のペプチドが挙げられる。
【0133】
本願に関して、「MC38ペプチド」という用語は、大腸がんMC38マウスモデルに由来する任意のネオ抗原ポリペプチドを指す。その限定的な例としてSEQ ID NO:1、2および3のペプチドが挙げられる。
【0134】
本願に関して、「インフルエンザヘマグルチニン(HA)」という用語は、インフルエンザウイルスの表面に見出される糖タンパク質を指す。HAは少なくとも18種の異なる抗原を有し、それらはすべて本発明の範囲内である。これらのサブタイプはH1~H18と名付けられる。「インフルエンザヘマグルチニン(HA)」サブタイプH1の非限定的な例としてSEQ ID NO:5、6、7および8のポリペプチドが挙げられる。
【0135】
本願において「ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)」という用語は、ブタに特有のインフルエンザウイルスのファミリーであるブタインフルエンザウイルスの表面に見出される糖タンパク質を指す。「ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)」の非限定的な例として、SEQ ID NO:6のサブタイプH1が挙げられる。
【0136】
本願に関して、「コロナウイルス」という用語は、エンベロープを持つプラス-センス一本鎖RNAウイルスのファミリーであるコロナウイルス科の亜科のウイルスを指す。コロナウイルスは、哺乳動物および鳥類において疾患を引き起こしうる。この亜科には、アルファコロナウイルス、ベータコロナウイルス、ガンマコロナウイルスおよびデルタコロナウイルスという4つの属がある。ヒトにおいて、コロナウイルスは気道感染を引き起こしうる。これは軽症である場合もあるし、SARS、MERSおよびCOVID-19など、致死的である場合もある。ヒト病原性コロナウイルスは一般にアルファコロナウイルス属またはベータコロナウイルス属に属する。アルファコロナウイルス属に属するウイルスは、例えば、PEDv、伝染性胃腸炎ウイルス(TGEV)、ネコ腸コロナウイルス(FECV)およびネコ感染性腹膜炎ウイルス(FIPV)を含むネココロナウイルス(FCoV)、イヌコロナウイルス(CCoV)、またはヒト病原性コロナウイルスであるヒトコロナウイルス229E(HCoV-229E)およびヒトコロナウイルスNL63(HCoV-NL63)などである。ベータコロナウイルス属内では、サルベコウイルス亜属およびメルベコウイルス亜属が本開示に最も関連し、これらには種SARS-CoV-1、SARS-CoV-2およびMERS-CoVが含まれる。他のヒト病原性ベータコロナウイルスは、ヒトコロナウイルスOC43(HCoV-OC43)、ヒトコロナウイルスHKU1(HCoV-HKU1)である。ヒト病原性コロナウイルスについては、Corman VM,Muth D,Niemeyer D,Drosten C.,Hosts and Sources of Endemic Human Coronaviruses. Adv Virus Res. 2018;100:163-188に総説がある。
【0137】
本願に関して、「スパイクタンパク質」という用語は、ウイルスキャプシドまたはウイルスエンベロープの表面に存在する糖タンパク質をいう。スパイクタンパク質は、宿主細胞上の一定の受容体に結合するので、宿主特異性にとってもウイルスの感染性にとっても重要である。
【0138】
本願に関して、「PEDv Sタンパク質」という用語は、ブタにおけるコロナウイルスのファミリーであるブタ流行性下痢ウイルス(PEDV)の表面に存在するスパイク糖タンパク質を指す。本明細書において使用されうる可溶性「PEDv Sタンパク質」の非限定的な例としては、ブタ流行性下痢ウイルス(PEDv)スパイクタンパク質(Sタンパク質)(UniProtKBアクセッション番号V5TA78)の、SEQ ID NO:12のアミノ酸配列を有するS1領域とS2領域とからなる可溶性フラグメント全体、SEQ ID NO:13のS1領域の可溶性フラグメント、またはSEQ ID NO:14のS2領域の可溶性フラグメントが挙げられる。S1領域およびS2領域の可溶性フラグメント全体の、またはS1領域もしくはS2領域のどちらか一方のみの、より短いフラグメントを使用することも、もちろん可能である(この点については
図12参照)。本発明のポリマーソームにおいて、S1の一部とS2の一部とを含有するフラグメント、例えばスパイクタンパク質の寄託された配列のアミノ酸500~939を使用することも、もちろん可能である。本発明のポリマーソームが、スパイクタンパク質の1種または複数種の異なる可溶性フラグメント、例えばS1領域、S2領域ならびに/またはS1領域とS2領域の全体などを封入していてもよいことにも留意されたい。本発明のポリマーソームの例示的な態様では、本発明のポリマーソームは、その中に、1タイプの可溶性フラグメント(例えばS1領域のみ)、2つの異なるタイプの可溶性フラグメント(例えばS1領域およびS2領域)、3つの異なるタイプの可溶性フラグメント(S1領域、S2領域、およびSEQ ID NO:12のS1とS2の全可溶性フラグメント(アミノ酸残基19~1327))、さらには4つの異なるタイプのフラグメント(例えば、S1領域、S2領域、SEQ ID NO:12のS1とS2の全可溶性フラグメント(アミノ酸残基19~1327)、および4番目のタイプとして、S1の一部とS2の一部とを含有する上述のフラグメント、例えばスパイクタンパク質配列のアミノ酸500~939)を封入している。ここで、スパイクタンパク質の1つまたは複数の異なる可溶性フラグメントを封入している本発明のポリマーソームが、好ましい一態様では、ブタ流行性下痢ウイルスに対する経口ワクチンとして使用されることにも留意されたい。
【0139】
本願に関して、「MERS-CoV Sタンパク質」または「MERS-CoVスパイクタンパク質」という用語は、ヒト病原性コロナウイルスである中東呼吸器症候群関連コロナウイルス(MERS-CoV)の表面に存在するスパイク糖タンパク質を指す。本開示のMERS-CoVスパイクタンパク質は、UniProtKBアクセッション番号:2020年2月26日のK0BRG7バージョン40(GenBankアクセッション番号AFS88936、バージョンAFS88936.1)またはSEQ ID NO:42に示される配列を有する。本発明において使用されうる可溶性「MERS-CoV Sタンパク質」の非限定的な例として、MERS-CoVスパイクタンパク質の1~1297番目に対応しうる、またはSEQ ID NO:43に示すアミノ酸配列を有する、MERS-CoVスパイクタンパク質(Sタンパク質)のS1およびS2領域の全可溶性フラグメントが挙げられる。本発明において使用されうる可溶性「MERS-CoV Sタンパク質」の非限定的な例としては、MERS-CoVスパイクタンパク質(Sタンパク質)の18~725番目に対応し、またはSEQ ID NO:44のアミノ酸配列を有する、S1領域も挙げられる。本発明において使用されうる可溶性「MERS-CoV Sタンパク質」の非限定的な例としては、MERS-CoVスパイクタンパク質(Sタンパク質)の726~1296番目に対応しうる、またはSEQ ID NO:45のアミノ酸配列を有する、S2領域の可溶性フラグメントも挙げられる。S1およびS2領域の全可溶性フラグメントの、またはS1領域もしくはS2領域のどちらか一方単独の、さらに短いフラグメントを使用することも、もちろん可能であり、例えばフラグメントは、MERS-CoVスパイクタンパク質の377~588番目に対応し、またはSEQ ID NO:46のアミノ酸配列を有する、受容体結合ドメイン(RBD)を含みうる。本発明のポリマーソームが、スパイクタンパク質の1種または複数種の異なる可溶性フラグメント、例えばS1領域、S2領域、もしくはそれらの可溶性フラグメント、S1およびS2領域の全可溶性フラグメント、ならびに/またはRBDなどを封入しうることにも、ここでは留意されたい。本発明のポリマーソームの例示的な態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、1タイプの可溶性フラグメント(例えばS1およびS2領域の全可溶性フラグメントのみ)、2つの異なるタイプの可溶性フラグメント(例えばS1およびS2領域の全可溶性フラグメントならびにS1領域全体またはS2領域の可溶性フラグメント)、3つの異なるタイプの可溶性フラグメント(S1領域、S2領域の可溶性フラグメント、およびSEQ ID NO:42のS1とS2の全可溶性フラグメント(アミノ酸残基1~1297))、さらには4つの異なるタイプのフラグメント(例えば、S1領域、S2領域の可溶性フラグメント、SEQ ID NO:42のS1とS2の全可溶性フラグメント(アミノ酸残基1~1297)、および4番目のタイプとして、RBD)を封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、完全長MERS-CoVスパイクタンパク質のアミノ酸残基18~725に対応するS1領域を含むか、同領域から本質的になるか、または同領域からなる可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、完全長MERS-CoVスパイクタンパク質のアミノ酸残基726~1296に対応するS2領域の可溶性フラグメントを含むか、同可溶性フラグメントから本質的になるか、または同可溶性フラグメントからなる可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、完全長MERS-CoVスパイクタンパク質のアミノ酸残基1~1297に対応するS1およびS2領域を含むか、同領域から本質的になるか、または同領域からなる可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、完全長MERS-CoVスパイクタンパク質のアミノ酸残基1~1327に対応するS1およびS2領域を含むか、同領域から本質的になるか、または同領域からなるフラグメントを封入している。これに関連して、「から本質的になる」とは、フラグメントのN末端点および/またはC末端点が、限られた範囲内で、例えば25アミノ酸位置まで、例えば20アミノ酸位置まで、例えば15アミノ酸位置まで、10アミノ酸位置まで、5アミノ酸位置まで、4アミノ酸位置まで、3アミノ酸位置まで、2アミノ酸位置まで、または1アミノ酸位置までの範囲内で、変動しうることを意味する。一具体例として、完全長MERS-CoVスパイクタンパク質のアミノ酸726~1296から本質的になるフラグメントは、完全長MERS-CoVスパイクタンパク質の716~1296番目、736~1296番目、726~1286番目、または726~1306番目、716~1286番目、736~1286番目、736~1306番目、または716~1306番目からなりうる。
【0140】
本開示のMERS-CoVスパイクタンパク質は、上述した配列のバリアントも含みうる。このバリアントには、MERS-CoVの他の分離株の天然のバリアントも、MERS-CoV Sタンパク質の配列に導入することができる人工的修飾も含まれる。一具体例として、変異は、発現されるタンパク質の形成を変化させるために導入することができる。この目的のために、SEQ ID NO:42の754~757番目に位置するフューリン切断部位を変異させうる。発現後切断の低減は、このアミノ酸配列の塩基性を低減することによって達成されうる。例えば、残基アルギニン754および/または757を、それより塩基性の低いアミノ酸、例えばグリシン(位置番号はSEQ ID NO:42に示すアミノ酸配列に対応する)または他の低塩基性アミノ酸に変異させうる。したがって、RSVR(SEQ ID NO:58)というネイティブ配列を有するフューリン切断部位を、GSVG(SEQ ID NO:59)に変異させうる。さらなる修飾として、三量体化ドメインを、好ましくはタンパク質のC末に付加することを挙げることができ、これは、S1および/またはS2ドメインのネイティブなフォールドを増加させるのに役立ちうる。そのような三量体化ドメインとしては、フォルドンドメイン(例えばSEQ ID NO:54)、GCN4ベースの三量体化ドメイン(SEQ ID NO:55またはSEQ ID NO:56など)、または当業者に周知の他のモチーフを挙げることができる。さらに、分泌リーダー配列をタンパク質のN末に付加してもよく、これにより、生産ならびに/または後続の処理、例えば単離および精製が改良されうる。そのようなリーダー配列の一具体例はミツバチメリチンリーダー配列(SEQ ID NO:57)である。他にも有用なリーダー配列が当業者には周知である。したがって、本開示のスパイクタンパク質の可溶性フラグメントには、明細書において明示的または暗示的に開示するスパイクタンパク質の可溶性フラグメントの特定配列の、同一性の高いバリアントも含まれる。例えば、本開示のスパイクタンパク質の可溶性フラグメント、特に本開示のMERS-CoV Sタンパク質の可溶性フラグメントに対して、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するバリアント。一具体例として、本開示のSフラグメントの可溶性フラグメントは、SEQ ID NO:43~46からなる群より選択される配列に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含むか、同配列から本質的になるか、または同配列からなりうる。
【0141】
上記に代えて、または上記に加えて、本開示のポリマーソームは、1種または複数種の核酸、例えば、本開示の1つまたは複数種のMERS-CoVスパイクタンパク質またはその可溶性フラグメントをコードするmRNA、自己増幅mRNA、DNAを封入していてもよい。
【0142】
好ましい一態様では、MERS-CoVスパイクタンパク質の1つまたは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長MERS-CoVスパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームが、ヒト疾患、特にヒト病原性コロナウイルスによる感染症、特に中東呼吸器症候群(MERS)に対するワクチンとして使用されることにも、ここでは留意されたい。したがって、MERS-CoVスパイクタンパク質の1つもしくは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長MERS-CoVスパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームは、発熱、咳、喀痰、息切れ、肺炎および/または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置(防止を含む)に使用されうる。
【0143】
好ましい一態様において、MERS-CoVスパイクタンパク質の1つもしくは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長MERS-CoVスパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームは、筋肉内に投与される。好ましい一態様において、MERS-CoVスパイクタンパク質の1つもしくは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長MERS-CoVスパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームは、鼻腔内に投与される。好ましい一態様において、MERS-CoVスパイクタンパク質の1つもしくは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長MERS-CoVスパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームは、吸入によって投与される。
【0144】
本願に関して、「SARS-CoV-2 Sタンパク質」または「SARS-CoV-2スパイクタンパク質」という用語は、ヒト病原性コロナウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の表面に存在するスパイク糖タンパク質を指す。本開示のSARS-CoV-2スパイクタンパク質は、UniProtKBアクセッション番号:2020年4月22日のP0DTC2バージョン1(GenBankアクセッション番号MN908947、バージョンMN908947.3)またはSEQ ID NO:19に示される配列を有する。本発明において使用されうる可溶性「SARS-CoV-2 Sタンパク質」の非限定的な例として、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の16~1213番目もしくは14~1204番目もしくは19~1204番目に対応し、またはSEQ ID NO:34もしくはSEQ ID NO:35もしくはSEQ ID NO:65に示すアミノ酸配列を有する、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sタンパク質)のS1およびS2領域からなる全可溶性フラグメントが挙げられる。本発明において使用されうる可溶性「SARS-CoV-2 Sタンパク質」の非限定的な例としては、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sタンパク質)の16~685番目に対応し、またはSEQ ID NO:37のアミノ酸配列を有する、S1領域も挙げられる。本発明において使用されうる可溶性「SARS-CoV-2 Sタンパク質」の非限定的な例としては、SARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sタンパク質)の686~1213番目もしくは646~1204番目に対応し、またはSEQ ID NO:38もしくはSEQ ID NO:39のアミノ酸配列を有する、S2領域も挙げられる。S1およびS2領域の全可溶性フラグメントの、またはS1領域もしくはS2領域のどちらか一方単独の、さらに短いフラグメント、例えば、受容体結合ドメインとしてSARS-CoV-2 タンパク質の318~524のアミノ酸配列(SEQ ID NO:41、この点については
図23Aを参照されたい)を使用することも、もちろん可能である。一具体例として、S2領域のさらに短いフラグメントは、SEQ ID NO:19の686~1204番目に対応するアミノ酸を含むか、同アミノ酸から本質的になるか、または同アミノ酸からなる。一具体例において、スパイクタンパク質の可溶性フラグメントは、SEQ ID NO:19の646~1204番目に対応するアミノ酸を含むか、同アミノ酸から本質的になるか、または同アミノ酸からなる。一具体例において、スパイクタンパク質の可溶性フラグメントは、SEQ ID NO:34~36およびSEQ ID NO:65のいずれかに示す配列を含むか、同配列から本質的になるか、または同配列からなる。本発明のポリマーソームが、スパイクタンパク質の1種または複数種の異なる可溶性フラグメント、例えばS1領域もしくはそのフラグメント、S2領域もしくはそのフラグメントおよび/または全S1およびS2領域もしくはS1領域の一部とS2領域の一部とを含むそのフラグメントなどを封入しうることにも、ここでは留意されたい。本発明のポリマーソームの例示的な態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、1タイプの可溶性フラグメント(例えばS1領域のみまたはそのフラグメント)、2つの異なるタイプの可溶性フラグメント(例えばS1およびS2領域またはS1および/もしくはS2領域のフラグメント)、3つの異なるタイプの可溶性フラグメント(S1領域またはそのフラグメント、S2領域またはそのフラグメント、およびSEQ ID NO:19のS1とS2の全可溶性フラグメント、さらには4つの異なるタイプのフラグメント(例えば、S1領域またはそのフラグメント、S2領域またはそのフラグメント、SEQ ID NO:19のS1とS2の全可溶性フラグメントまたはS1領域の一部とS2領域の一部とを含むそのフラグメント、および4番目のタイプとして、S1の一部とS2の一部とを含有する上述のフラグメント、例えばスパイクタンパク質配列のアミノ酸14~1204)を封入している。
【0145】
SARS-CoV-2 Sタンパク質のバリアントは、例えばGeneBankアクセッション番号QII57278.1(SEQ ID NO:20)、GeneBankアクセッション番号YP_009724390.1(SEQ ID NO:21)、GeneBankアクセッション番号QIO04367.1(SEQ ID NO:22)、GeneBankアクセッション番号QHU79173.2(SEQ ID NO:23)、GeneBankアクセッション番号QII87830.1(SEQ ID NO:24)、GeneBankアクセッション番号QIA98583.1(SEQ ID NO:25)、GeneBankアクセッション番号QIA20044.1(SEQ ID NO:26)、GeneBankアクセッション番号QIK50427.1(SEQ ID NO:27)、GeneBankアクセッション番号QHR84449.1(SEQ ID NO:28)、GeneBankアクセッション番号QIQ08810.1(SEQ ID NO:29)、GeneBankアクセッション番号QIJ96493.1(SEQ ID NO:30)、GeneBankアクセッション番号QIC53204.1(SEQ ID NO:31)、GeneBankアクセッション番号QHZ00379.1(SEQ ID NO:32)、およびGeneBankアクセッション番号QHS34546.1(SEQ ID NO:33)など、当技術分野ではいくつか公知である。SEQ ID NO:19と比べて、これらのバリアントでは、28、49、74、145、157、181、221、307、408、528、614、655、797、930番目に対応する配列位置に、変異を見出すことができる。SARS-CoV-2 Sタンパク質の配列には、さらなる修飾を導入することができる。一具体例として、変異は、発現されるタンパク質の形成を変化させるために導入することができる。この目的のために、SEQ ID NO:19の679~685番目に位置するフューリン切断部位を変異させうる。発現後切断の低減は、このアミノ酸配列の塩基性を低減することによって達成されうる。例えば、残基Pro681、Arg682および/またはArg683を、それより塩基性の低いアミノ酸、例えばPro681→Asn、Arg682→Glnおよび/またはArg683→Ser(位置番号はSEQ ID NO:19に示すアミノ酸配列に対応する)または他の低塩基性アミノ酸に変異させうる。したがって、NSPRRAR(SEQ ID NO:52)というネイティブ配列を有するフューリン切断部位を、NSNQSAR(SEQ ID NO:53)という配列に変異させうる。変異型フューリン切断部位を有するSARS-CoV-2スパイクタンパク質の可溶性フラグメントの一具体例をSEQ ID NO:65に示す。変異型フューリン切断部位を有するSARS-CoV-2スパイクタンパク質の一具体例をSEQ ID NO:66に示す。さらなる修飾として、三量体化ドメインを、好ましくはタンパク質のC末に付加することを挙げることができ、これは、S1および/またはS2ドメインのネイティブなフォールドを増加させるのに役立ちうる。そのような三量体化ドメインとしては、フォルドンドメイン(例えばGuethe et al.,J. Mol. Biol.(2004)337,905-915に記載の
)、GCN4ベースの三量体化ドメイン、イムノサイレント化されたそのバリアントを含む(例えばSliepen et al. J. Biol. Chem.(2015)290(12):7436-7442に記載の
もしくは
)、または当業者に周知の他のモチーフを挙げることができる。さらに、分泌リーダー配列をタンパク質のN末に付加してもよく、これにより、生産ならびに/または後続の処理、例えば単離および精製が改良されうる。そのようなリーダー配列の一具体例はミツバチメリチンリーダー配列
である。他にも有用なリーダー配列が当業者には周知である。したがって、本開示のスパイクタンパク質の可溶性フラグメントには、明細書において明示的または暗示的に開示するスパイクタンパク質の可溶性フラグメントの特定配列の、同一性の高いバリアントも含まれる。例えば、本開示のスパイクタンパク質の可溶性フラグメント、特に本開示のSARS-CoV-2 Sタンパク質の可溶性フラグメントに対して、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するバリアント。一具体例として、本開示のSフラグメントの可溶性フラグメントは、SEQ ID NO:19(SARS-CoV-2スパイクタンパク質)の16~1213番目、16~685番目、686~1213番目、686~1204番目、646~1204番目、または14~1204番目からなる群より選択される配列に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含むか、同配列から本質的になるか、または同配列からなりうる。もう一つの具体例として、本開示のSフラグメントの可溶性フラグメントは、SEQ ID NO:34~41およびSEQ ID NO:65からなる群より選択される配列に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を有しうる。
【0146】
好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、SEQ ID NO:19に示す完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸残基16~685に対応するS1領域を含むか、同領域から本質的になるか、もしくは同領域からなり、またはSEQ ID NO:37のアミノ酸配列を有する、可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、SEQ ID NO:19に示す完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸残基686~1213に対応するS2領域を含むか、同領域から本質的になるか、もしくは同領域からなり、またはSEQ ID NO:38のアミノ酸配列を有する、可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、SEQ ID NO:19に示す完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸残基16~1213に対応するS1およびS2領域を含むか、同領域から本質的になるか、もしくは同領域からなり、またはSEQ ID NO:34のアミノ酸配列を有する、可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、SEQ ID NO:19に示す完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸残基686~1204に対応するアミノ酸配列を含むか、同アミノ酸配列から本質的になるか、または同アミノ酸配列からなる。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、SEQ ID NO:19に示す完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸残基646~1204に対応するアミノ酸配列を含むか、同アミノ酸配列から本質的になるか、もしくは同アミノ酸配列からなり、またはSEQ ID NO:39のアミノ酸配列を有する、可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、SEQ ID NO:19に示す完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸残基14~1204に対応するアミノ酸配列を含むか、同アミノ酸配列から本質的になるか、もしくは同アミノ酸配列からなり、またはSEQ ID NO:35のアミノ酸配列を有する、可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、SEQ ID NO:19に示す完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸残基19~1204に対応するアミノ酸配列を含むか、同アミノ酸配列から本質的になるか、もしくは同アミノ酸配列からなり、またはSEQ ID NO:65のアミノ酸配列を有する、可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、SEQ ID NO:19(SARS-CoV-2スパイクタンパク質)の16~1213番目、16~685番目、686~1213番目、686~1204番目、646~1204番目、14~1204番目、または19~1204番目に対応する配列からなる群より選択される配列に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含むか、同配列から本質的になるか、または同配列からなる可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、SEQ ID NO:36、40および/または65からなる群より選択される配列に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含むか、同配列から本質的になるか、または同配列からなる可溶性フラグメントを封入している。これに関連して、「から本質的になる」とは、フラグメントのN末端点および/またはC末端点が、限られた範囲内で、例えば25アミノ酸位置まで、例えば20アミノ酸位置まで、例えば15アミノ酸位置まで、10アミノ酸位置まで、5アミノ酸位置まで、4アミノ酸位置まで、3アミノ酸位置まで、2アミノ酸位置まで、または1アミノ酸位置までの範囲内で、変動しうることを意味する。一具体例として、完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質のアミノ酸646~1204から本質的になるフラグメントは、完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質の641~1204番目、651~1204番目、646~1209番目、または646~1199番目、641~1209番目、または651~1199番目からなりうる。
【0147】
上記に代えて、または上記に加えて、本開示のポリマーソームは、1種または複数種の核酸、例えば、本開示の1つまたは複数種のSARS-CoV-2スパイクタンパク質またはその可溶性フラグメントをコードするmRNA、自己増幅mRNA、DNAを封入していてもよい。
【0148】
好ましい一態様では、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の1つまたは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/またはそれをコードする核酸を封入している本発明のポリマーソームが、ヒト疾患、特にヒト病原性コロナウイルスによる感染症、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)に対するワクチンとして使用されることにも、ここでは留意されたい。したがって、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の1つまたは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/またはそれをコードする核酸を封入している本発明のポリマーソームは、発熱、咳、息切れ、肺炎、臓器不全、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、疲労、筋肉痛、下痢、咽頭痛、嗅覚喪失および/または腹痛の処置(防止を含む)に使用されうる。
【0149】
好ましい一態様において、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の1つもしくは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームは、筋肉内に投与される。好ましい一態様において、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の1つもしくは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームは、鼻腔内に投与される。好ましい一態様において、SARS-CoV-2スパイクタンパク質の1つもしくは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長SARS-CoV-2スパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームは、吸入によって投与される。
【0150】
本願に関して、「SARS-CoV-1 Sタンパク質」または「SARS-CoV-1スパイクタンパク質」という用語は、ヒト病原性コロナウイルスである重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoVまたはSARS-CoV-1)の表面に存在するスパイク糖タンパク質を指す。本開示のSARS-CoV-1スパイクタンパク質は、UniProtKBアクセッション番号:2019年12月11日のP59594バージョン134またはSEQ ID NO:48に示される配列を有する。本発明において使用されうる可溶性「SARS-CoV-1 Sタンパク質」の非限定的な例として、SARS-CoV-1スパイクタンパク質の14~1195番目に対応しうる、またはSEQ ID NO:48に示すアミノ酸配列を有する、SARS-CoV-1スパイクタンパク質(Sタンパク質)のS1およびS2領域の全可溶性フラグメントが挙げられる。本発明において使用されうる可溶性「SARS-CoV-1 Sタンパク質」の非限定的な例としては、SARS-CoV-1スパイクタンパク質(Sタンパク質)の14~667番目に対応し、またはSEQ ID NO:49のアミノ酸配列を有する、S1領域も挙げられる。本発明において使用されうる可溶性「SARS-CoV-1 Sタンパク質」の非限定的な例としては、SARS-CoV-1スパイクタンパク質(Sタンパク質)の668~1198番目に対応しうる、またはSEQ ID NO:50のアミノ酸配列を有する、S2領域の可溶性フラグメントも挙げられる。S1およびS2領域の全可溶性フラグメントの、またはS1領域もしくはS2領域のどちらか一方単独の、さらに短いフラグメントを使用することも、もちろん可能であり、例えばフラグメントは、SARS-CoV-1スパイクタンパク質の306~527番目に対応し、またはSEQ ID NO:51のアミノ酸配列を有する、受容体結合ドメイン(RBD)を含みうる。本発明のポリマーソームが、スパイクタンパク質の1種または複数種の異なる可溶性フラグメント、例えばS1領域、S2領域、もしくはそれらの可溶性フラグメント、S1およびS2領域の全可溶性フラグメント、ならびに/またはRBDなどを封入しうることにも、ここでは留意されたい。本発明のポリマーソームの例示的な態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、1タイプの可溶性フラグメント(例えばS1およびS2領域の全可溶性フラグメントのみ)、2つの異なるタイプの可溶性フラグメント(例えばS1およびS2領域の全可溶性フラグメントならびにS1領域全体またはS2領域の可溶性フラグメント)、3つの異なるタイプの可溶性フラグメント(S1領域、S2領域の可溶性フラグメント、およびSEQ ID NO:47のS1とS2の全可溶性フラグメント(アミノ酸残基14~1195))、さらには4つの異なるタイプのフラグメント(例えば、S1領域、S2領域の可溶性フラグメント、SEQ ID NO:47のS1とS2の全可溶性フラグメント(アミノ酸残基14~1195)、および4番目のタイプとして、RBD)を封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、完全長SARS-CoV-1スパイクタンパク質のアミノ酸残基14~667に対応するS1領域を含むか、同領域から本質的になるか、または同領域からなる可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、完全長SARS-CoV-1スパイクタンパク質のアミノ酸残基668~1195に対応するS2領域の可溶性フラグメントを含むか、同可溶性フラグメントから本質的になるか、または同可溶性フラグメントからなる可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、完全長SARS-CoV-1スパイクタンパク質のアミノ酸残基14~1195に対応するS1およびS2領域を含むか、同領域から本質的になるか、または同領域からなる可溶性フラグメントを封入している。好ましい一態様において、本発明のポリマーソームは、その中に、完全長SARS-CoV-1スパイクタンパク質のアミノ酸残基14~1255に対応するS1およびS2領域を含むか、同領域から本質的になるか、または同領域からなるフラグメントを封入している。これに関連して、「から本質的になる」とは、フラグメントのN末端点および/またはC末端点が、限られた範囲内で、例えば25アミノ酸位置まで、例えば20アミノ酸位置まで、例えば15アミノ酸位置まで、10アミノ酸位置まで、5アミノ酸位置まで、4アミノ酸位置まで、3アミノ酸位置まで、2アミノ酸位置まで、または1アミノ酸位置までの範囲内で、変動しうることを意味する。
【0151】
本開示のSARS-CoV-1スパイクタンパク質は、上述した配列のバリアントも含みうる。このバリアントには、SARS-CoV-1の他の分離株の天然のバリアントも、SARS-CoV-1 Sタンパク質の配列に導入することができる人工的修飾も含まれる。一具体例として、変異は、発現されるタンパク質の形成を変化させるために導入することができる。この目的のために、SEQ ID NO:47の761~767番目に位置するフューリン切断部位を変異させうる。発現後切断の低減は、このアミノ酸配列の塩基性を低減することによって達成されうる。例えば、残基Arg764および/またはArg767を、それより塩基性の低いアミノ酸、例えばGly(位置番号はSEQ ID NO:47に示すアミノ酸配列に対応する)または他の低塩基性アミノ酸に変異させうる。したがって、EQDRNTR(SEQ ID NO:60)というネイティブ配列を有するフューリン切断部位を、EQDGNTG(SEQ ID NO:61)という配列に変異させうる。さらなる修飾として、三量体化ドメインを、好ましくはタンパク質のC末に付加することを挙げることができ、これは、S1および/またはS2ドメインのネイティブなフォールドを増加させるのに役立ちうる。そのような三量体化ドメインとしては、フォルドンドメイン(例えばSEQ ID NO:54)、GCN4ベースの三量体化ドメイン(SEQ ID NO:55またはSEQ ID NO:56など)、または当業者に周知の他のモチーフを挙げることができる。さらに、分泌リーダー配列をタンパク質のN末に付加してもよく、これにより、生産ならびに/または後続の処理、例えば単離および精製が改良されうる。そのようなリーダー配列の一具体例はミツバチメリチンリーダー配列(SEQ ID NO:57)である。他にも有用なリーダー配列が当業者には周知である。したがって、本開示のスパイクタンパク質の可溶性フラグメントには、明細書において明示的または暗示的に開示するスパイクタンパク質の可溶性フラグメントの特定配列の、同一性の高いバリアントも含まれる。例えば、本開示のスパイクタンパク質の可溶性フラグメント、特に本開示のSARS-CoV-1 Sタンパク質の可溶性フラグメントに対して、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有するバリアント。一具体例として、本開示のSフラグメントの可溶性フラグメントは、SEQ ID NO:48~51からなる群より選択される配列に対して少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、または少なくとも約99%の配列同一性を有する配列を含むか、同配列から本質的になるか、または同配列からなりうる。
【0152】
上記に代えて、または上記に加えて、本開示のポリマーソームは、1種または複数種の核酸、例えば、本開示の1つまたは複数種のSARS-CoV-1スパイクタンパク質またはその可溶性フラグメントをコードするmRNA、自己増幅mRNA、DNAを封入していてもよい。
【0153】
好ましい一態様では、SARS-CoV-1スパイクタンパク質の1つまたは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長SARS-CoV-1スパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームが、ヒト疾患、特にヒト病原性コロナウイルスによる感染症、特に重症急性呼吸器症候群(SARS)に対するワクチンとして使用されることにも、ここでは留意されたい。したがって、SARS-CoV-1スパイクタンパク質の1つもしくは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長SARS-CoV-1スパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームは、発熱、筋肉痛、嗜眠、咳、咽頭痛、息切れ、肺炎および/または急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の処置(防止を含む)に使用されうる。
【0154】
好ましい一態様において、SARS-CoV-1スパイクタンパク質の1つもしくは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長SARS-CoV-1スパイクタンパク質を封入しているポリマーソームは、筋肉内に投与される。好ましい一態様において、SARS-CoV-1スパイクタンパク質の1つもしくは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長SARS-CoV-1スパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームは、鼻腔内に投与される。好ましい一態様において、SARS-CoV-1スパイクタンパク質の1つもしくは複数の異なる可溶性フラグメントおよび/もしくはそれをコードする核酸または完全長SARS-CoV-1スパイクタンパク質を封入している本発明のポリマーソームは、吸入によって投与される。
【0155】
本願に関して、「酸化安定性」という用語は、例えばScott et al.,2012が記載した方法を用いる、ポリマーソーム(または対応するポリマーもしくは膜)の酸化に対する耐性の尺度を指す。この方法では、封入抗原を持つポリマーソームが過酸化水素の0.5%溶液中でインキュベートされ、(放出された)遊離抗原の量をUV/蛍光HPLCで定量することができる。これらの酸化条件下で封入抗原の実質的部分またはすべてを放出するポリマーソームは、酸化感受性であるとみなされる。ブロック共重合体が、そしてそれゆえに結果として得られるポリマーソームが酸化安定性であるか酸化感受性であるかを決定する別の一方法は、米国特許第8,323,696号の第16カラムに記載されている。この方法によれば、酸化感受性の官能基を持つポリマーは温和な酸化剤によって化学的に改変されることになり、その試験手段は、インビトロで20時間での10%過酸化水素への溶解性の強化である。例えばポリ(プロピレンスルフィド)(PPS)は酸化感受性ポリマーである(例えば前掲のScott et al 2012およびUS8,323,696参照)。PPSは、関心対象のポリマーとそれぞれの関心対象のポリマーソームが酸化感受性であるか酸化安定性であるかを決定するための基準として役立ちうる。例えば、同じ抗原が封入されているPPSポリマーソームから放出される量と比べて、同じかそれ以上の量の抗原、または約90%以上の量、もしくは約80%以上、もしくは約70%以上、もしくは約60%以上が、関心対象のポリマーソームから放出されるのであれば、そのポリマーソームは酸化感受性とみなされる。同じ抗原が封入されているPPSポリマーソームから放出される量と比べて、約0.5%以下、または約1.0%以下、または約2%以下、または約5%以下、または約10%以下、または約20%以下、または約30%以下、または約40%以下、または約50%以下の抗原しか、関心対象のポリマーソームから放出されないのであれば、そのポリマーソームは酸化安定性であるとみなされる。したがってこれに沿って、米国特許第8,323,696号に記載のPPSポリマーソーム、またはPPS-bl-PEGポリマーソーム、例えばStano et alに記載されているように構成要素としてのポリ(プロピレンスルフィド)(PPS)とポリ(エチレングリコール)(PEG)とでできているものは、本発明の意味での酸化安定性ポリマーソームではない。同様に、PPS30-PEG17ポリマーソームも本発明の意味での酸化安定性ポリマーソームではない。酸化安定性測定の他の非限定的な例としては、血清成分(例えば哺乳動物血清、例えばヒト血清の成分)の存在下での安定性の測定、または例えばエンドソーム内部での安定性の測定が挙げられる。
【0156】
本願に関して、「還元安定性」という用語は、ポリマーソームの還元環境における還元に対する耐性の尺度を指す。
【0157】
本願において「血清」という用語は、凝固タンパク質が除去された血漿を指す。
【0158】
本願に関して、「酸化非依存的放出」という用語は、ポリマーソームを形成するポリマーの酸化を伴わない、または本質的に伴わない、ポリマーソーム内容物の放出を指す。
【0159】
「ポリペプチド」という用語は、本明細書では「タンパク質」という用語と等価に使用される。タンパク質(そのフラグメント、好ましくは生物学的に活性なフラグメント、およびペプチド、通常は30個未満のアミノ酸を有するものを含む)は、ペプチド共有結合を介して互いにカップリングされた(結果としてアミノ酸の鎖を生じる)、1つまたは複数のアミノ酸を含む。本明細書において使用する「ポリペプチド」という用語は、一群の分子、例えば30個を上回るアミノ酸からなるものをいう。ポリペプチドは、二量体、三量体およびさらに高次のオリゴマーなどといった多量体、すなわち2つ以上のポリペプチド分子からなるものを、さらに形成しうる。そのような二量体、三量体などを形成するポリペプチド分子同士は同一であっても同一でなくてもよい。したがって、そのような多量体の対応する高次構造は、ホモ二量体またはヘテロ二量体、ホモ三量体またはヘテロ三量体などと呼ばれる。ヘテロ多量体の一例は抗体分子であり、これは、その天然型では、2つの同一軽ポリペプチド鎖と2つの同一重ポリペプチド鎖とからなる。「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は、天然に修飾されたポリペプチド/タンパク質も指し、この場合、修飾は、例えばグリコシル化、アセチル化、リン酸化などのような翻訳後修飾によって達成される。そのような修飾は当技術分野では周知である。
【0160】
本願において「糖質」という用語は、化学量論式Cn(H2O)nを有する(例えばそれゆえに「炭水化物」である)アルドースおよびケトースなどの化合物を指す。「糖質」という総称には、単糖、オリゴ糖および多糖、ならびにカルボニル基の還元(アルジトール)、1つまたは複数の末端基のカルボン酸への酸化、または水素原子、アミノ基、チオール基などの基による1つもしくは複数のヒドロキシ基の置き換えによって、単糖から誘導される物質が包含されるが、それらに限定されるわけではない。これらの化合物の誘導体も包含される。
【0161】
本願に関して、「ポリヌクレオチド」(「核酸」ともいい、これは「ポリヌクレオチド」という用語と相互可換的に使用することができる)という用語は、例えば、一定のピリミジン塩基またはプリン塩基(通常はアデニン、シトシン、グアニン、チミン、ウラシル)、d-リボースまたは2-デオキシ-d-リボースおよびリン酸への加水分解が可能でありうるヌクレオチド単位で構成された高分子を指す。「ポリヌクレオチド」の非限定的な例として、DNA分子(例えばcDNAまたはゲノムDNA)、RNA(mRNA)、それらの組合せ、またはDNAとRNAとで構成されるハイブリッド分子が挙げられる。核酸は二本鎖または一本鎖であることができ、二本鎖フラグメントと一本鎖フラグメントとを同時に含有しうる。最も好ましいのは二本鎖DNA分子およびmRNA分子である。
【0162】
本願において「アンチセンスオリゴヌクレオチド」という用語は、核酸ポリマーであって、少なくともその一部分が正常細胞または罹患細胞中に存在する核酸に対して相補的であるものを指す。例示的な「アンチセンスオリゴヌクレオチド」として、アンチセンスRNA、siRNA、RNAiが挙げられる。
【0163】
本願において「CD8(+)T細胞媒介性免疫応答」という用語は、細胞傷害性T細胞(TC、細胞傷害性Tリンパ球、CTL、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、CD8(+)T細胞またはキラーT細胞としても公知である)によって媒介される免疫応答を指す。細胞傷害性T細胞の例として抗原特異的エフェクターCD8(+)T細胞が挙げられるが、それに限定されるわけではない。T細胞受容体(TCR)がクラスI MHC分子に結合するには、クラスI MHC分子の定常部分に結合するCD8と呼ばれる糖タンパク質が、TCRに付随していなければならない。それゆえにこれらのT細胞はCD8(+)T細胞と呼ばれる。ひとたび活性化されると、TC細胞は、T細胞にとっての増殖分化因子であるサイトカイン・インターロイキン-2(IL-2)の助けを借りて、「クローン拡大」を起こす。これにより、標的抗原に特異的な細胞の数が増加し、次にそれらは抗原陽性体細胞を捜して体中を移動することができる。
【0164】
本願において「抗原特異的CD8(+)T細胞のクローン拡大」という用語は、標的抗原に特異的なCD8(+)T細胞の数の増加を指す。
【0165】
本願において「細胞性免疫応答」という用語は、抗体が関わるのではなく、食細胞の活性化、抗原特異的細胞傷害性Tリンパ球、抗原に応答して起こるさまざまなサイトカインの放出が関わる、免疫応答を指す。
【0166】
本願において「抗原特異的CD8(+)T細胞の細胞傷害性表現型」という用語は、抗原特異的CD8(+)T細胞の細胞傷害性機能に関する同細胞の観察可能な一組の特徴を指す。
【0167】
本願において「リンパ節常在性マクロファージ」という用語は、全身にある小さなマメ状の腺であるリンパ節中に存在して、貪食というプロセスを使って粒子を飲み込み、次いでそれらを消化する、我々の免疫系の不可欠な一部である大きな白血球であるマクロファージを指す。
【0168】
本願において「体液性免疫応答」という用語は、分泌された抗体、補体タンパク質、および一定の抗微生物ペプチドなどといった、細胞外液中に見出される高分子によって媒介される免疫応答を指す。抗体が関与するその局面は、しばしば抗体媒介性免疫と呼ばれる。
【0169】
本願において「B細胞」という用語は、Bリンパ球としても公知であり、リンパ球サブタイプの白血球の一タイプである。それらは、抗体を分泌することにより、適応免疫系の体液性免疫成分において機能する。
【0170】
本明細書において使用する場合、「抗体」とは、実質的にまたは部分的に免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによってコードされている、(1つまたは複数の結合ドメイン、好ましくは抗原結合ドメインを含む)1つまたは複数のポリペプチドを含むタンパク質である。「免疫グロブリン」(Ig)は本明細書では「抗体」と相互可換的に使用される。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。特に、本明細書において使用される場合、「抗体」とは、典型的には、それぞれおよそ25kDaである2本の軽(L)鎖とそれぞれおよそ50kDaである2本の重(H)鎖とで構成される四量体型のグリコシル化されたタンパク質である。抗体にはラムダおよびカッパと呼ばれる2タイプの軽鎖を見出しうる。重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンはA、D、E、G、およびMという5つの主要クラスに割り当てることができ、これらのうちのいくつかは、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1およびIgA2などのサブクラス(アイソタイプ)にさらに分割しうる。本発明との関連ではIgGが好ましい。IgG2は、そのジスルフィド構成に基づいて、3つの主要な形態IgG2A、IgG2BおよびIgG2A/Bで存在することができる(例えばThomson CA,Encyclopedia of Immunobiology,2016およびそこで言及されているDillon et al.,2008;Martinez et al.,2008;Ryazantsev et al.,2013)。IgG2Aは、標準的なY字状IgG分子の典型であり、Fab部分のジスルフィド結合はヒンジ中のジスルフィド結合とは独立している。IgG2Bは、Fabアームがジスルフィド結合によってヒンジに共有結合されているので、より強く束縛されており、T字状の分子として描写することができる(例えばThomson CA,in Encyclopedia of Immunobiology,2016)。
【0171】
本発明に関係する抗体として、Fcイプシロン受容体Iによって結合されるIgE定常ドメインまたはその一部分を有するものも想定される。IgM抗体は、5つの基本的ヘテロ四量体ユニットとJ鎖と呼ばれる追加ポリペプチドとからなり、10個の抗原結合部位を含有する。一方、IgA抗体は2~5個の基本的4鎖ユニットを含み、それらは多量体化することでJ鎖と組み合わされた多価集合物を形成することができる。IgGの場合、4鎖ユニットは一般に約150,000ダルトンである。各軽鎖は、N末端の可変(V)ドメイン(VL)と定常(C)ドメイン(CL)とを含む。各重鎖は、N末端のVドメイン(VH)、3つまたは4つのCドメイン(CH)およびヒンジ領域を含む。定常ドメインは抗体を抗原に結合させることに直接的には関与しないが、抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)への参加など、さまざまなエフェクター機能を呈することができる。抗体がADCCを発揮すべき場合、その抗体はIgG1サブタイプであることが好ましく、IgG4サブタイプはADCCを発揮する能力を有しないだろう。
【0172】
「抗体」という用語には、モノクローナル抗体、単一特異性抗体、多特異性または多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、ヒト抗体、単鎖抗体、キメラ抗体、合成抗体、組換え抗体、ハイブリッド抗体、変異抗体、移植抗体、およびインビトロ生成抗体も包含されるが、それらに限定されるわけではなく、キメラ抗体またはヒト化抗体は好ましい。「ヒト化抗体」という用語は、一般に、HCおよびLCの特異性をコードしているCDRが適当なヒト可変フレームワークに移入(「CDR移植」)されている抗体に対して定義されている。「抗体」という用語は、scFv、一本鎖抗体、ダイアボディまたはテトラボディ、ドメイン抗体(dAb)およびナノボディも包含する。本発明に関して「抗体」という用語は、数個の抗原結合部位を有する二量体、三量体もしくは多量体型または二機能性、三機能性もしくは多機能性抗体も包含するものとする。
【0173】
さらにまた、本発明において使用される「抗体」という用語は、本明細書に記載する抗体の誘導体(フラグメントを含む)にも関係する。抗体の「誘導体」は、アミノ酸残基の置換、欠失または付加の導入によって改変されたアミノ酸配列を含む。加えて、誘導体には、抗体またはタンパク質に任意のタイプの分子が共有結合することによって修飾された抗体も包含される。そのような分子の例として、糖類、PEG、ヒドロキシル基、エトキシ基、カルボキシ基またはアミン基が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。要するに、共有結合による抗体の修飾は、グリコシル化、PEG化、アセチル化、リン酸化、アミド化などにつながるが、それらに限定されるわけではない。
【0174】
本発明に関係する抗体は好ましくは「単離された」抗体である。「単離された」とは、本明細書に開示する抗体を説明するために使用される場合は、その生産環境の構成要素から同定され、分離されかつ/または回収された抗体を意味する。好ましくは、単離された抗体は、その生産環境からの他のどの構成要素とも関連を持たない。その生産環境の夾雑構成要素、例えば組換えトランスフェクト細胞に起因するものは、当該ポリペプチドの診断または治療への使用を典型的には妨害するであろう材料であり、これには酵素、ホルモンおよび他のタンパク質性または非タンパク質性の溶質が含まれうる。好ましい態様において、抗体は、(1)スピニングカップシークエネーター(spinning cup sequenator)を利用して、N末端アミノ酸配列または内部アミノ酸配列のうちの少なくとも15残基を得るのに十分な程度まで精製されるか、または(2)非還元条件下または還元条件下のSDS-PAGEにより、クーマシーブルー染色または好ましくは銀染色を使って、均一に精製されることになる。しかし通常は、単離された抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製されることになる。
【0175】
「本質的に非免疫原性」という用語は、本発明のブロック共重合体または両親媒性ポリマーが適応免疫応答を誘発しないこと、すなわち封入された免疫原と比較して、ブロック共重合体または両親媒性ポリマーは30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、特に好ましくは9、8、7、6または5%未満の免疫応答を示すことを意味する。
【0176】
「本質的に非抗原性」という用語は、本発明のブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、適応免疫性を有する一定の産物群(例えばT細胞受容体または抗体)と特異的に結合しないこと、すなわち封入された抗原と比較して、ブロック共重合体または両親媒性ポリマーは30%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、特に好ましくは9、8、7、6または5%未満の結合を示すことを意味する。
【0177】
典型的には、結合アフィニティーが10-6Mより高い場合に、結合は特異的であるとみなされる。好ましくは、結合アフィニティーが約10-11~10-8M(KD)、好ましくは約10-11~10-9Mである場合に、結合は特異的であるとみなされる。必要であれば、結合条件を変化させることにより、特異的結合には実質的に影響を及ぼすことなく、非特異的結合を低減することができる。
【0178】
「アミノ酸」または「アミノ酸残基」という用語は、典型的には、当技術分野において認識されているその定義を有するアミノ酸、例えばアラニン(AlaまたはA)、アルギニン(ArgまたはR)、アスパラギン(AsnまたはN)、アスパラギン酸(AspまたはD)、システイン(CysまたはC)、グルタミン(GlnまたはQ)、グルタミン酸(GluまたはE)、グリシン(GlyまたはG)、ヒスチジン(HisまたはH)、イソロイシン(HeまたはI)、ロイシン(LeuまたはL)、リジン(LysまたはK)、メチオニン(MetまたはM)、フェニルアラニン(PheまたはF)、プロリン(ProまたはP)、セリン(SerまたはS)、スレオニン(ThrまたはT)、トリプトファン(TrpまたはW)、チロシン(TyrまたはY)、およびバリン(ValまたはV)からなる群より選択されるアミノ酸を指すが、所望に応じて修飾アミノ酸、合成アミノ酸、または希少アミノ酸を使用してもよい。一般に、アミノ酸は、非極性側鎖を有するもの(例えばAla、Cys、He、Leu、Met、Phe、Pro、Val)、負荷電側鎖を有するもの(例えばAsp、Glu)、正荷電側鎖を有するもの(例えばArg、His、Lys)、または非荷電極性側鎖を有するもの(例えばAsn、Cys、Gln、Gly、His、Met、Phe、Ser、Thr、Trp、およびTyr)に分類することができる。
【0179】
「エフェクター細胞」、好ましくはヒトエフェクター細胞は、1つまたは複数のFcRを発現してエフェクター機能を履行する白血球である。好ましくはこれらの細胞は、少なくともFcγRmを発現し、ADCCエフェクター機能を履行する。ADCCを媒介するヒト白血球の例としては、末梢血単核球(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞および好中球が挙げられる。エフェクター細胞は、ネイティブな供給源、例えば血液から単離することができる。
【0180】
「免疫処置する」という用語は、ヒト非ヒト動物に、その動物内で抗体が生じうるように、1つまたは複数の抗原を投与する1つまたは複数の工程を指す。
【0181】
具体的に述べると、非ヒト動物は、アジュバントと混合されていてもよいポリペプチド(抗原)で、好ましくは少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回、免疫処置される。「アジュバント」とは免疫応答の非特異的刺激剤である。アジュバントは、以下の構成要素のうちのどちらか一方または両方を含む組成物の形態をとりうる:(a)抗原を急速な異化作用から保護する付着物(deposit)を形成するように意図された物質(例えば鉱油、ミョウバン、水酸化アルミニウム、リポソームまたは界面活性剤(例えばプルロニックポリオール));および(b)免疫処置された宿主動物の免疫応答を(例えばそこでのリンホカインレベルを増加させることなどによって)非特異的に刺激する物質。
【0182】
本明細書にいう「がん」は、身体における異常細胞の無制御な成長を特徴とする幅広い一群の疾患を指す。無秩序な細胞分裂は悪性腫瘍または隣接組織に侵入する細胞の形成をもたらし、リンパ系または血流を介して身体の遠隔部に転移しうる。
【0183】
がんの非限定的な例としては、扁平上皮がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、扁平非小細胞肺がん(NSCLC)、非NSCLC、神経膠腫、胃腸がん、腎がん(例えば明細胞がん)、卵巣がん、肝がん、結腸直腸がん、子宮内膜がん、腎がん(例えば腎細胞がん(RCC))、前立腺がん(例えばホルモン不応性前立腺腺がん)、甲状腺がん、神経芽細胞腫、膵がん、膠芽腫(多形性神経膠芽腫)、子宮頸がん、胃がん、膀胱がん、ヘパトーマ、乳がん、大腸がん、および頭頸部がん(またはがん)、胃がん、胚細胞性腫瘍、小児肉腫、副鼻腔ナチュラルキラー、黒色腫(例えば転移性悪性黒色腫、例えば皮下または眼内悪性黒色腫)、骨がん、皮膚がん、子宮がん、肛門部がん、精巣がん、ファロピウス管がん、子宮内膜がん、子宮頸部がん、膣がん、外陰がん、食道がん、小腸がん、内分泌系がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟部組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、小児の固形腫瘍、尿管がん、腎盂がん、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管新生、脊髄軸腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮がん、扁平上皮細胞がん、T細胞性リンパ腫、環境誘発がん、例えばアスベストによって誘発されるもの、ウイルス関連がん(例えばヒトパピローマウイルス(HPV)関連腫瘍)、2つの主要血液細胞系譜、すなわち骨髄細胞系(顆粒球、赤血球、血小板、マクロファージおよび肥満細胞を産生する)またはリンパ細胞系(B細胞、T細胞、NK細胞および形質細胞を産生する)のどちらか一方から派生する血液学的悪性疾患、例えばあらゆるタイプの白血病(luekemias)、リンパ腫および骨髄腫、例えば急性、慢性、リンパ球性および/または骨髄性白血病、例えば急性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、および慢性骨髄性白血病(CML)、未分化AML(M0)、骨髄芽球性白血病(M1)、骨髄芽球性白血病(M2;細胞成熟を伴う)、前骨髄球性白血病(M3またはM3バリアント[M3V])、骨髄性単球性白血病(M4または好酸球性を伴うM4バリアント[M4E])、単球性白血病(M5)、赤白血病(M6)、巨核芽球性白血病(M7)、孤立性顆粒球肉腫、および緑色腫;リンパ腫、例えばホジキンリンパ腫(HL)、非ホジキンリンパ腫(NHL)、B細胞性リンパ腫、T細胞性リンパ腫、リンパ形質細胞性リンパ腫、単球様B細胞性リンパ腫、粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫、未分化(例えばKi1+)大細胞リンパ腫、成人T細胞性リンパ腫/白血病、マントル細胞リンパ腫、血管免疫芽細胞性T細胞性リンパ腫、血管中心性リンパ腫、腸管T細胞性リンパ腫、原発性縦隔B細胞性リンパ腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病(T-Lbly/T-ALL)、末梢性T細胞リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫、移植後リンパ増殖性障害、組織球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、リンパ芽球性リンパ腫(LBL)、リンパ系の造血器腫瘍、急性リンパ芽球性白血病、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫、濾胞性リンパ腫、びまん性組織球性リンパ腫(DHL)、免疫芽球性大細胞型リンパ腫、前駆Bリンパ芽球性リンパ腫、皮膚T細胞性リンパ腫(CTLC)(菌状息肉腫またはセザリー症候群とも呼ばれる)、およびワルデンストレーム・マクログロブリン血症を伴うリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、骨髄腫、例えばIgG型骨髄腫、軽鎖骨髄腫、非分泌性骨髄腫、くすぶり型骨髄腫(無症候性骨髄腫とも呼ばれる)、孤立性形質細胞腫、および多発性骨髄腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、ヘアリー細胞リンパ腫;骨髄系の造血器腫瘍、線維肉腫および横紋筋肉腫を含む間葉起源の腫瘍;精上皮腫、奇形がん、中枢神経系および末梢神経系の腫瘍、例えば星状細胞腫、シュワン腫;線維肉腫、横紋筋肉腫および骨肉腫を含む間葉起源の腫瘍;ならびに他の腫瘍、例えば黒色腫、色素性乾皮症、角化性棘細胞腫、精上皮腫、甲状腺濾胞がんおよび奇形がん、リンパ系の造血器腫瘍、例えばT細胞腫瘍およびB細胞腫瘍、限定するわけではないが、例えば小細胞型および大脳様細胞型(cerebriform cell type)を含むT前リンパ性白血病(T-PLL)などのT細胞障害;大型顆粒リンパ球白血病(LGL)、好ましくはT細胞型のもの;a/d T-NHL肝脾リンパ腫;末梢性/胸腺後T細胞リンパ腫(多形性亜型および免疫芽細胞亜型);血管中心性(鼻)T細胞性リンパ腫;頭頸部のがん、腎がん、直腸がん、甲状腺のがん;急性骨髄リンパ腫(acute myeloid lymphoma)、ならびに前記のがんの任意の組合せが挙げられる。本明細書に記載する方法は、転移がん、不応性がん(例えば以前の免疫治療、例えばCTLA-4またはPD-1またはPD-L1遮断抗体によるものに不応性であるがん)および再発がんの処置に使用することもできる。
【0184】
「対象」という用語は生体を包含するものとする。対象の例として、哺乳動物、例えばヒト、イヌ、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、およびトランスジェニック非ヒト動物が挙げられる。ただし対象(動物)は鳥類または魚類などの非哺乳動物であってもよい。本発明のいくつかの好ましい態様において対象はヒトであり、他のいくつかの好ましい態様では対象は農用動物であってもよく、農用動物は哺乳動物または非哺乳動物のどちらかであることができる。そのような非哺乳動物の例は、鳥類(例えばニワトリ、カモ、ガチョウまたはシチメンチョウなどの家禽)、魚類(例えばサケ、マス、またはティラピアなどの養殖魚)または甲殻類(シュリンプ(shrimp)またはプローン'(prawn)など)である。哺乳類(家畜)動物の例としては、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ブタまたはロバが挙げられる。他の哺乳動物には、例えばネコ、イヌ、マウスおよびウサギが含まれる。例示的態様において、本発明のポリマーソームは、ウイルス感染に対する上記農用動物(哺乳類農用動物と非哺乳類農用動物(鳥類、魚類、甲殻類)の両方)のワクチン接種または免疫処置に使用される(これについては「実施例」を参照されたい)。したがってそのような場合、本発明のポリマーソームは、可溶性の完全長ウイルスタンパク質または完全長ウイルスタンパク質の可溶性フラグメントを、そこに封入しうる。
【0185】
ヒトおよび非ヒト動物のどちらのワクチン接種に使用する場合にも、本発明のポリマーソームまたは本発明のポリマーソームを含む組成物は、適切な(薬学的に許容される)緩衝液、例えばリン酸緩衝食塩水(PBS)または0.9%生理食塩水(オスモル濃度が308mOsm/Lである0.90%w/v NaClの等張液)に溶解して、それぞれの対象に経口投与しうる(ここでも「実施例」を参照されたい)。ポリマーソームはアジュバントとさらに混合されうる。経口投与した場合、アジュバントは、ポリマーソームを胃の酸性環境から保護するのに役立ちうる。そのようなアジュバントは、水混和性であるか、水-油エマルション、例えば水中油型エマルションまたは油中水型エマルションを形成する能力を有しうる。そのようなアジュバントの具体例は、水中油型エマルション、油中水型エマルション、モノホスホリルリピドA、および/またはトレハロースジコリノミコレートであり、ここで油は、好ましくは、鉱油、シメチコン、スパン(Span)80、スクアレン、およびそれらの組合せを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる。さらなる具体例は、水中油(スクアレンなど)型エマルションの形態をとりうるモノホスホリルリピドA(例えばサルモネラ・ミネソタ(Salmonella Minnesota)由来のもの)、トレハロースジコリノミコレート、またはそれらの混合物である。該エマルションは乳化剤(例えばポリソルベート、例えばポリソルベート80)を含みうる。あるいは、天然ポリマーでコーティングすることなどによってポリマーソームを修飾するか、アルギナートもしくはキトサンなどの天然ポリマーの粒子中に、またはポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)(PLG)、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(g-グルタミン酸)(g-PGA)[31,32]もしくはポリ(エチレングリコール)(PEG)などの合成ポリマーの粒子中に、ポリマーソームを処方することができる。これらの粒子は、マイクロメートル域の粒子(「マクロビーズ」)もしくはナノ粒子、またはマクロビーズに組み入れられたナノ粒子のいずれかであることができ、これらはいずれも当技術分野では周知である。例えばHari et al「Chitosan/calcium-alginate beads for oral delivery of insulin」Applied Polymer Science,Volume 59,Issue11,14 March 1996,1795-1801、Sosnikの総説「Alginate Particles as Platform for Drug Delivery by the Oral Route:State-of-the-Art」ISRN Pharmaceutics Volume 2014,Article ID 926157、Machado et al「Encapsulation of DNA in Macroscopic and Nanosized Calcium Alginate Gel Particles」Langmuir 2013,29,15926-15935、国際特許出願WO2015/110656、Liang Zhaoらの総説「Nanoparticle vaccines」Vaccine 32(2014)327-337またはLi et al「Chitosan-Alginate Nanoparticles as a Novel Drug Delivery System for Nifedipine」Int J Biomed Sci vol. 4 no. 3 September 2008,221-228を参照されたい。これらのポリマーソームおよび経口製剤の例示的態様において、ワクチン接種に使用されるポリマーソームは、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、VP1、VP2もしくはVP3コートタンパク質などの口蹄疫(FMD)ウイルスタンパク質(VP1コートタンパク質はFMDビリオンの主要抗原決定基を含有しているので、その配列の変化はこのウイルスの高い抗原多様性の原因となっているはずである)、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢(PED)ウイルススパイクタンパク質、MERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質などのヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質の可溶性部分を含むウイルス抗原を、そこに封入している。インフルエンザヘマグルチニンまたはVP1、VP2もしくはVP3コートタンパク質などの口蹄疫(FMD)ウイルスタンパク質の可溶性部分を含むポリマーソームの使用から明らかであるように、ウイルス疾患は鳥類および哺乳動物を含む任意の動物を侵すことができ、哺乳動物はヒトであることもできる。
【0186】
「有効量」または「有効投薬量」という用語は、所望の効果を達成するのに十分な量または所望の効果を少なくとも部分的に達成するのに十分な量と定義される。「治療有効量」という用語は、既に疾患に侵されている患者における疾患およびその合併症を治癒させ、または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量と定義される。この用途に有効な量は、感染症の重症度および対象自身の免疫系の一般的状態に依存するだろう。「患者」という用語は、予防的処置または治療的処置のいずれかを受けるヒトおよび他の哺乳動物対象を包含する。
【0187】
抗体またはその抗原結合部分の適当な投薬量または治療有効量は、処置される状態、状態の重症度、前治療、ならびに患者の臨床歴および治療剤に対する応答に依存するだろう。適正な用量は、主治医の判断に従って、患者に一度に、または一連の投与として投与することができるように、調節することができる。薬学的組成物は、唯一の治療薬として投与するか、必要に応じて追加の治療と組み合わせて投与することができる。
【0188】
薬学的組成物が凍結乾燥されている場合は、投与に先立って、その凍結乾燥材料をまず適当な液体に再構成する。凍結乾燥材料は、例えば静菌性注射用水(BWFI)、生理食塩水、リン酸緩衝食塩水(PBS)、または凍結乾燥前にタンパク質が入っていたものと同じ製剤に再構成することができる。
【0189】
注射用の薬学的組成物は、単位剤形で、例えばアンプルに入れて、または保存剤が添加された多用量型容器に入れて、提示することができる。加えて、新しい薬物送達アプローチもいくつか開発されており、本発明の薬学的組成物は、これらの新しい方法、例えばInject-ease、Genject、Genenなどのペン型注射器、ならびにMediJectorおよびBioJectorなどの無針デバイスを使った投与に適している。本薬学的組成物は、まだ発見されていない投与方法にも適合させることができる。Langer,1990,Science,249:1527-1533も参照されたい。
【0190】
薬学的組成物は、鼻腔内投与用または吸入投与用、例えば気道および/または肺への局所投与用に調製されうる。物質を吸入投与するための手段および装置は当業者には公知であり、例えばWO94/017784AおよびElphick et al.(2015)Expert Opin Drug Deliv,12,1375-87に開示されている。そのような手段およびデバイスとして、ネブライザー、定量吸入器、粉末吸入器、および鼻スプレーが挙げられる。薬物またはワクチンの吸入投与を指示するのに適した手段およびデバイスは当技術分野では他にも知られている。気道および/または肺への局所投与の好ましい経路はエアロゾル吸入によるものである。肺薬物送達、すなわちエアロゾルの吸入によるか(これは鼻腔内投与でも使用することができる)、気管内滴下によるものについては、例えばPatton,J. S.,et al.(2004)Proc. Amer. Thoracic Soc.,1,338-344に総説がある。ネブライザーは溶液からエアロゾルを生じさせるのに役立ち、一方、定量吸入器、乾燥粉末吸入器などは、小粒子エアロゾルを生成させるのに有効である。したがって、薬学的組成物は、エアロゾル(混合物)、スプレー、ミストまたは粉末の形態に製剤化されうる。
【0191】
粘膜病原体、例えばSARS-CoV-2、MERSまたはSARS-CoV1のような呼吸器コロナウイルスに対する薬学的組成物は、全身レベルでも粘膜レベルでも持続的な防御免疫を付与すべきである。したがって本開示の薬学的組成物は、好ましくは、吸入投与または鼻腔内投与などの粘膜投与用に調製されうる。実施例14に示すように、コロナウイルスワクチンの鼻腔内投与は、粘膜免疫応答だけでなく全身性免疫応答も誘発することができる。本開示の薬学的組成物は、筋肉内投与などの全身性投与用にも、好ましく調製されうる。
【0192】
ネブライザーは、肺に吸入されるミストの形態で投薬するために使用される薬物送達デバイスである。さまざまなタイプのネブライザーが当業者には公知であり、ジェットネブライザー、超音波ネブライザー、振動メッシュ技術、ソフトミスト吸入器などがある。一部のネブライザーは霧状溶液の連続流を与える。すなわち、それらは、対象がそれを吸入するかしないかにかかわらず、長期間にわたる連続噴霧をもたらすことになる。一方、他のネブライザーは呼吸作動式である。すなわち対象は、自身でそこから吸入した場合にのみ、何らかの投薬量を得る。本発明のワクチン、特にMERS、COVID-19、またはSARSなどのヒト病原性コロナウイルス感染症のワクチンは、ネブライザーでの使用のために調合され、ネブライザーに含まれるか、ネブライザーを使って投与されうる。
【0193】
定量吸入器(MDI)は、特定量の薬剤を、液体エアロゾル化医薬の短いバーストという形で肺に送達するデバイスである。そのような定量吸入器は一般に、投与される製剤を含むキャニスター、定量された量の製剤を作動ごとに分配することを可能にする計量バルブ、および患者によるデバイスの操作を可能にして液体エアロゾルを肺に向かわせるアクチュエータ(またはマウスピース)という3つの主要構成要素からなる。本発明のワクチン、特にMERS、COVID-19、またはSARSなどのヒト病原性コロナウイルス感染症のワクチンは、MDIでの使用のために調合され、MDIに、特にMDI用のキャニスターに含まれるか、MDIを使って投与されうる。
【0194】
乾燥粉末吸入器(DPI)は、薬剤を乾燥粉末の形態で肺に送達するデバイスである。乾燥粉末吸入器は、定量吸入器などといったエアロゾルベースの吸入器に代わる選択肢である。薬剤は一般に、用手装填用のカプセルに保持されるか、吸入器内部に配置された専用ブリスター包装に保持される。本発明のワクチン、特にMERS、COVID-19、またはSARSなどのヒト病原性コロナウイルス感染症のワクチンは、DPIでの使用のために調合され、DPIに、特にMDI用のカプセルまたはブリスター包装に含まれるか、MDIを使って投与されうる。
【0195】
鼻スプレーは、薬物を鼻から吹き入れる経鼻投与に使用することができる。本発明のワクチン、特にMERS、COVID-19、またはSARSなどのヒト病原性コロナウイルス感染症のワクチンは、鼻スプレーとして調合され、鼻スプレーボトルに含まれるか、鼻スプレーとして投与されうる。
【0196】
薬学的組成物をデポー調製物として製剤化することもできる。そのような長時間作用性製剤は、植込み(例えば皮下、靱帯内もしくは腱内、滑液膜下または筋肉内への植込み)、滑液膜下注射または筋肉内注射によって投与しうる。したがって例えば、製剤は、適切なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば許容される油中のエマルションとして)またはイオン交換樹脂で修飾するか、やや溶けにくい誘導体として、例えばやや溶けにくい塩として、修飾することができる。
【0197】
薬学的組成物は、反応性組成物を提供するための投与に使用される、さまざまな従来のデポー型であってもよい。それらには、例えば、溶液または懸濁液、スラリー、ゲル、クリーム、バーム、エマルション、ローション、粉末、スプレー、フォーム、ペースト、オイントメント(ointment)、サルブ(salve)、バームおよび液滴などの固形、半固形および液状剤形が含まれる。
【0198】
所望であれば薬学的組成物は、活性成分を含有する1または複数の単位剤形を含有しうる、バイアル、パックまたはディスペンサーデバイスに入れて提示することができる。一態様において、ディスペンサーデバイスは、すぐに注射できる液状製剤の単回用量を有するシリンジを含むことができる。シリンジには投与に関する説明書を添付することができる。
【0199】
薬学的組成物は薬学的に許容される追加の構成要素をさらに含みうる。本明細書に記載するタンパク質には、Remington's Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.Ed.(1980)に記載されているものなど、他の薬学的に許容される担体、賦形剤、または安定剤も、それらが製剤の望ましい特徴に有害な影響を及ぼすのでない限り、含めることができる。本明細書にいう「薬学的に許容される担体」とは、薬学的投与と適合する、ありとあらゆる溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤を意味する。薬学的に活性な物質のためのそのような媒質および作用物質の使用は当技術分野において周知である。許容される担体、賦形剤または安定剤は使用される投薬量および濃度においてレシピエントにとって無毒性であり、追加の緩衝剤;保存剤;共溶媒;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸およびメチオニン;キレート剤、例えばEDTA;金属錯体(例えばZn-タンパク質錯体);生分解性ポリマー、例えばポリエステル;塩形成対イオン、例えばナトリウム、多価糖アルコール;アミノ酸、例えばアラニン、グリシン、アスパラギン、2-フェニルアラニン、およびスレオニン;糖類または糖アルコール、例えばラクチトール、スタキオース、マンノース、ソルボース、キシロース、リボース、リビトール、ミオイニシトース(myoinisitose)、ミオイニシトール(myoinisitol)、ガラクトース、ガラクチトール、グリセロール、シクリトール(例えばイノシトール)、ポリエチレングリコール;含硫黄還元剤、例えばグルタチオン、チオクト酸、チオグリコール酸ナトリウム、チオグリセロール、[アルファ]-モノチオグリセロール、およびチオ硫酸ナトリウム;低分子量タンパク質、例えばヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、ゼラチン、または他の免疫グロブリン;および親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドンを含む。
【0200】
本明細書に記載の製剤は、それを必要とする患者における本明細書に記載の病態医学的状態の処置および/または防止において、薬学的組成物として有用である。「処置」という用語は、治療的処置と予防的もしくは防止的措置の両方を指す。処置には、ある疾患/障害、疾患/障害の症状、または疾患/障害の素因を有する患者の身体、単離された組織または細胞に、その疾患、疾患の症状または疾患の素因を治癒(cure、heal)させ、緩和し、軽減し、改変し、矯正し、改善し、改良し、またはそれらに影響を及ぼす目的で、製剤を適用または投与することが含まれる。
【0201】
本明細書において使用する「処置する」および「処置」という用語は、治療有効量の本発明の薬学的組成物を対象に投与することを指す。「治療有効量」とは、疾患または障害を処置または改善し、疾患の発症を遅延させ、または疾患の処置もしくは管理において何らかの治療的利益を得るのに十分な、薬学的組成物または抗体の量を指す。
【0202】
本明細書において使用する「予防」という用語は、疾患または障害の発症を防止するための作用物質の使用を指す。「予防有効量」は、疾患の発症または再発を防止するのに十分な活性構成要素または薬学的作用物質の量を規定する。
【0203】
本明細書において使用する「障害」および「疾患」という用語は、対象における状態を指すために、相互可換的に使用される。特に、「がん」という用語は「腫瘍」という用語と相互可換的に使用される。
【0204】
本明細書において使用される場合、「CpGオリゴヌクレオチド」という用語は、(例えばBode et al.,CpG DNA as a vaccine adjuvant.Expert Rev Vaccines.2011 April;10(4):499-511に記載されているように)非メチル化CpGモチーフを含有する任意の合成または天然オリゴデオキシヌクレオチド(ODN)を指しうる。したがって本発明では、適切なCpGオリゴヌクレオチドをどれでも使用しうる。CpGオリゴヌクレオチドは、例えば、構造的特徴と、ヒト末梢血単核球(PBMC)、特にB細胞および形質細胞様樹状細胞(pDC)に対する活性とに基づいて同定された(刺激性)CpG ODNの3つの主要クラスのうちのどれに属してもよい。それら3つのクラスは、クラスA(例えばPS-PO(ホスホロチオエート化ホスホジエステル)バックボーン;D型としても公知である)、クラスB(例えばPS(ホスホロチオエート化)バックボーン;K型としても公知である)およびクラスC(例えばPS(ホスホロチオエート化)バックボーン)である。CpG-A ODNは、通常、PO(ホスホジエステル)中央CpGを含有するパリンドロームモチーフとPS修飾(すなわちホスホロチオエート化修飾)3'ポリGストリングとを特徴とし、一方、CpG-B ODNは、1つまたは複数のCpGジヌクレオチドを持つ完全PSバックボーンを含有する。CpG-C ODNは、クラスAおよびクラスB両方のCpGオリゴヌクレオチドの特徴を併せ持つ。例示的な本発明のCpG ODNを、本明細書の
図41に、さらに図示する(https://www.invivogen.com/cpg-odns-classesから引用して変更を加えたもの)。本発明の好ましいCpG-A ODNは、TLR9依存的NF-κBシグナル伝達および炎症性サイトカイン(例えばIL-6)生産を刺激することよりも、主として、形質細胞様樹状細胞(pDC)からのIFN-α生産を、誘導することができる。本発明の好ましいCpG-B ODNは、IFN-α分泌を刺激することよりも、主として、B細胞およびTLR9依存的NF-κBシグナル伝達の活性化を、誘導することができる。本発明の好ましいCpG-C ODNは、(i)TLR9依存的NF-κBシグナル伝達および炎症性サイトカイン(例えばIL-6)生産を刺激することよりも、主として、形質細胞様樹状細胞(pDC)からのIFN-α生産を、誘導すると共に、(ii)IFN-α分泌を刺激することよりも、主として、B細胞およびTLR9依存的NF-κBシグナル伝達の活性化を、誘導することができる。
【0205】
本発明のキットは、典型的には、上述の容器と、例えば緩衝液、希釈剤、フィルター、針、シリンジおよび使用説明書を含む添付文書などといった商業的観点および使用者の観点から望ましい材料を含む1つまたは複数の他の容器とを含むであろう。
【0206】
本願に関して、「リポソーム」という用語は、少なくとも1つの脂質二重層を有する球場のベシクルを指す。
【0207】
本願に関して、「エンドソーム」という用語は、真核細胞内の膜で区切られたコンパートメント(すなわち液胞)を指し、エンドサイトーシスによって取り入れられた材料はそこに送達される。
【0208】
本願に関して、「後期エンドソーム」という用語は、内腔pHが低くタンパク質組成が異なることによって初期エンドソームとは区別される、プレリソソームエンドサイトーシス細胞小器官を指す。後期エンドソームは初期エンドソームよりも球形であり、大部分が核近傍にあって、微小管形成中心近くに濃縮されている。
【0209】
本願に関して、「Tヘルパー細胞」(TH細胞または「エフェクターCD4(+)T細胞」とも呼ばれる)という用語は、形質細胞およびメモリーB細胞へのB細胞の成熟や細胞傷害性T細胞およびマクロファージの活性化を含む免疫学的プロセスにおいて、他の白血球を支援するTリンパ球を指す。これらの細胞は、その表面にCD4糖タンパク質を発現するので、「CD4(+)T細胞」としても公知である。ヘルパーT細胞は、抗原提示細胞(APC)の表面に発現したMHCクラスII分子によって、例えばペプチド抗原を提示されると、活性化される。
【0210】
本明細書において使用する「自己抗原」という用語は、ある生物の任意の分子または化学基であって、別の生物では抗体形成の誘導において抗原として作用するが、親生物の健常な免疫系はそれに対して寛容であるものを指す。
【0211】
本明細書において使用する「%同一性」という用語は、www.clustal.orgから入手可能なClustalW法もしくはClustalX法またはそれらと等価な技法で例示されるような最適な配列アラインメントで2つのアミノ酸配列を比較した場合に、配列内の対応する位置における同一アミノ酸残基のパーセンテージを指す。したがって、両方の配列(リファレンス配列と関心対象の配列)をアラインメントし、両配列間の同一アミノ酸残基を同定し、同一アミノ酸の総数を、アミノ酸の総数(アミノ酸長)で割る。この割り算の結果がパーセント値、すなわちパーセント同一性値/パーセント同一度である。
【0212】
本発明の免疫処置法は、完全長可溶性封入抗原(例えばタンパク質)または前記タンパク質のフラグメントを、その適正なフォールディングを可能にする合成環境で使用することによって実行することができるので、インビボで対応する抗原(例えば膜タンパク質)を検出する能力を有する抗体が単離される確率は高くなるだろう。そのうえ、本免疫処置および抗体生成は、ペプチドベースの免疫処置アプローチを使用する場合には本来必要になるであろう膜タンパク質構造に関する知識が事前に何もなくても、実行することができる。
【0213】
さらに、他の技法と比べると、本発明の方法は、酸化安定性膜環境に封入された膜タンパク質の迅速で費用対効果の高い生産を可能にする。
【0214】
いくつかの局面において、本発明は、対象における抗原(例えば免疫原)に対する免疫応答を誘発および/または調節するための方法に関する。本方法は、両親媒性ポリマーの膜(例えば周囲膜)を有する本発明のポリマーソームを含む組成物を対象に投与する工程を含みうる。本組成物は、本発明のポリマーソームの両親媒性ポリマーの膜によって封入された可溶性抗原を、さらに含む。免疫原は膜結合型タンパク質でありうる。いくつかのさらなる局面において、本発明のポリマーソームは脂質ポリマーを含む。投与は、例えば経口投与、外用投与、気道への局所投与、肺への局所投与、吸入投与、鼻腔内投与、または注射など、任意の適切な方法で実行されうる。
【0215】
当業者は、所望する応答のレベルに応じて、投与(例えば経口投与または注射)の頻度を決定し、調節することができる。例えば、対照(これは哺乳動物を含みうる)には、本発明のポリマーソームの週1回または2週に1回の投与(例えば経口投与または注射による投与)を与えることができる。免疫応答は、本発明のポリマーソームに封入された抗原の初期量に対して哺乳動物における抗体の血中濃度レベル(力価)を定量することによって測定することができる(「実施例」参照)。
【0216】
ポリマーソームの構造は、ベシクル状に自己集合してさまざまな抗原(例えば可溶性タンパク質など)を封入している両親媒性ブロック共重合体を含むことができ、抗原は、溶媒再水和(solvent re-hydration)の方法、直接的分散、または自発的自己集合によって封入される(例えば本明細書に記載の実施例1)。
【0217】
本願に関して、本明細書において使用する「可溶性抗原」という用語は、溶解することができるまたは液状にすることができる抗原を意味する。一具体例として、可溶性抗原は、膜タンパク質の細胞外領域および/または細胞内領域のアミノ酸からなりうる。ただし、可溶性抗原は、その抗原を依然として溶解または液化させることができる限り、膜タンパク質の細胞外領域および/または細胞内領域のアミノ酸と、膜タンパク質の膜貫通領域に属するさらに1つまたは複数のアミノ酸とを含むこともできる。一具体例として、SEQ ID NO:43のMERS-CoVスパイクタンパク質の可溶性フラグメントは、膜貫通領域に属するアミノ酸(1297番目)を1つ含んでいるが、本開示の意味での可溶性抗原である。ただし可溶性抗原は、好ましくは、膜貫通領域の少なくとも一部分または膜貫通領域全体を欠くと想定される。「可溶性抗原」という用語は、「可溶化された」抗原、すなわち洗浄剤または他の薬剤の作用によって可溶性にされた、または特に水への、溶解度を増した抗原を包含する。例示的で非限定的な本発明の可溶性抗原としては、タンパク質の非可溶性部分に由来するポリペプチド、封入のために可溶性にされた疎水性ポリペプチド、ならびに凝集物として可溶性である凝集ポリペプチドが挙げられる。
【0218】
いくつかの局面において、本発明の抗原(例えば膜タンパク質)は、洗浄剤、界面活性剤、温度変化またはpH変化を使って可溶化される。両親媒性ブロック共重合体によって提供されるベシクル構造は、抗原(例えば膜タンパク質)が生理的に正しく機能的な形で折りたたまれることを可能にすることで、標的哺乳動物の免疫系が該抗原を検出し、それによって強い免疫応答を生じることを可能にする。
【0219】
いくつかの局面において、本発明の組成物の注射は、腹腔内注射、皮下注射もしくは静脈内注射、筋肉内注射、または非侵襲的投与を含みうる。他のいくつかの局面において、本発明の組成物の注射は皮内注射を含みうる。
【0220】
他のいくつかの局面では、本発明のポリマーソームを含む組成物にアジュバントを含めることによって、免疫応答レベルをさらに高め、またはブーストすることができる。アジュバントは封入アジュバントまたは非封入アジュバントでありうる。アジュバントは、本発明のポリマーソームまたは本発明の組合せと混合されていてもよい。アジュバントは水に可溶であるか、水-油エマルションの形態をとりうる。そのような局面において、ポリマーソームとアジュバントは対象に同時に投与することができる。
【0221】
いくつかの局面において、本発明のポリマーソームのブロック共重合体または両親媒性ポリマーは、免疫賦活加薬でもアジュバントでもない。
【0222】
他のいくつかの局面において、本発明のブロック共重合体または両親媒性ポリマーは免疫賦活薬および/またはアジュバントである。
【0223】
いくつかのさらなる局面において、本発明のポリマーソームは免疫原性である。
【0224】
いくつかのさらなる局面において、本発明のポリマーソームは非免疫原性である。
【0225】
いくつかの局面において、アジュバントは、本発明のポリマーソームを含む本発明の組成物の投与とは別個に投与しうる。アジュバントは、本発明の抗原を封入したポリマーソームを含む組成物を投与する前に、またはその投与と同時に、またはその投与後に、投与しうる。例えば、アジュバントは、本発明の抗原を封入したポリマーソームを含む組成物を注射した後に、対象に注射しうる。いくつかの局面において、アジュバントは、抗原と一緒にポリマーソームに封入することができる。他の好ましい局面において、アジュバントは、別個のポリマーソームに封入される。つまり、アジュバントは、抗原とは別々に封入されるので、抗原は1種類目のポリマーソームに封入され、アジュバントは2種類目のポリマーソームに封入されることになる。ここでは、アジュバントとポリマーソームを、同じ両親媒性ポリマーから形成されるポリマーソームに封入できることに留意されたい。各抗原と、例示的アジュバントとしてのCpGオリゴデオキシヌクレオチド(例えば、
または
)が、どちらもBD21ポリマーソームに封入される、本願の実施例7~9または実施例14または実施例18を参照されたい。あるいは、抗原の封入に使用される両親媒性ポリマーは、アジュバントの封入に使用される両親媒性ポリマーとは異なってもよい。純粋に説明のための一例として、抗原をBD21ポリマーソームに封入する一方で、アジュバントをPDMS
12-PEO
46ポリマーソームまたはPDMS
47PEO
36ポリマーソームに封入しうる。
【0226】
本発明では公知のアジュバントをどれでも使用することができ、注入されるアジュバントのタイプが、免疫応答を誘発および/または調節するために使用される抗原のタイプに依存しうることは、当業者には容易に認識され、理解される。アジュバントは、細菌、ウイルスまたは真菌由来の抗原でありうる。アジュバントは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(「CpG ODN」としても公知であり、または本明細書では「CpG」ともいう)などの核酸でありうる。CpG分子は、特定の配列コンテキスト(CpGモチーフ)で非メチル化CpGジヌクレオチドを含有する細菌由来の天然オリゴヌクレオチドである。これらのCpGモチーフは、細菌DNA中には、哺乳動物DNAと比較して20倍高い頻度で存在する。CpG ODNはToll様受容体9(TLR9)によって認識されて強い免疫刺激効果をもたらし、広く市販されている。市販のCpG ODNの具体例としては、配列
(SEQ ID NO:62、Miltenyi Biotechからカタログ番号130-100-106として市販されている)を有する24マーであるODN2006、配列
を有する22マーであるODN2007、配列
を有する20マーである、先に挙げたODN1826、または配列
を有する20マーであるODN2216が挙げられ、最後の3つはいずれもInvivoGenから市販されている。天然DNA分子であるから、塩基はホスホジエステル結合(PO
4)によって一つに連結されている。しかしこの結合はヌクレアーゼによる分解に対して感受性である。保護要素を何も伴わずにアジュバントとして使用した場合、体内での天然CpG分子の半減期は極めて短い。この短い半減期を避けるために、酸素原子の1つを硫黄原子に変えることによって、ホスホジエステル結合をホスホロチオエート結合で置き換えうる。この置換はヌクレアーゼによる分解を防止し、修飾されたCpGの半減期を延ばす。例えばCpG分子ODN2006、ODN2007またはODN1826は、それらをヌクレアーゼ耐性にするために、完全ホスホロチオエートバックボーン型で提供されている。あるいは、CpGは、ヌクレアーゼによる分解を避けるために、カチオン性リポソームに封入される。本発明では、CpGの他にも、ポリイノシン:ポリシチジン酸(ポリ(I:C))(TLR3)、リポ多糖(LPS)(TLR4)、モノホスホリルリピド(MPL)(TLR5)など、広く使用されている他の多くのToll様受容体アゴニストを、1つまたは複数のアジュバントとして使用することができる。さらにまた、細菌細胞またはマイコバクテリア細胞壁由来の構成要素、例えばSigma Adjuvant System中またはフロイントのアジュバント中に存在する構成要素、またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)などのタンパク質も、本発明において同様に使用することができるアジュバントのさらなる具体例である。本発明において使用することができる適切なアジュバントのさらなる具体例として、Sigma Adjuvant System(SAS)またはシメチコンまたはアルファ-トコフェロールが挙げられる。他の抗原-アジュバントペアも本発明の方法における使用に適している。
【0227】
これに関連して、本明細書において使用される「アジュバント」という用語は、(例えば上述のアジュバントがそうであるように)他の作用物質の効果を修飾する薬理学的または免疫学的作用物質に限定されるわけではなく、「免疫系の作用を刺激する任意の物質」を意味する。したがって、免疫系の作用を刺激するチェックポイント阻害剤も、本明細書において使用するアジュバントという用語に包含される。例えば、細胞表面に存在するPD-L1は、免疫細胞活性を阻害する免疫細胞表面上のPD1に結合する。したがって、例えばPD-1またはPD-L1のどちらかに結合してPD1とPD-L1の相互作用を遮断する抗体は、T細胞が腫瘍を攻撃することを可能にしうるので、「そのような正のチェックポイント阻害剤」である。
【0228】
いくつかの局面において、本発明において抗原として使用される膜タンパク質は、膜貫通タンパク質のフラグメントまたは細胞外ドメインを含みうる。また抗原は、(完全長)膜貫通タンパク質、Gタンパク質共役受容体、神経伝達物質受容体、キナーゼ、ポリン、ABC輸送体、イオン輸送体、アセチルコリン受容体および細胞接着受容体であってもよい。膜タンパク質はタグに融合またはカップリングしてもよいし、タグを含まなくてもよい。膜タンパク質にタグ付けする場合、タグは、例えばVSV、His-タグ、Strep-tag(登録商標)、Flag-タグ、インテイン-タグまたはGST-タグなどの周知のアフィニティータグ、またはビオチンもしくはアビジンなどの抗アフィニティー結合ペアのパートナー、または蛍光ラベル、酵素ラベル、NMRラベルもしくは同位体ラベルなどのラベルから選択することができる。
【0229】
いくつかの局面において、膜タンパク質またはそのフラグメント(もしくは一部分)は、封入前に用意されてもよいし、無細胞発現系によるタンパク質の生産と同時に封入されてもよい。無細胞発現系はインビトロ転写・翻訳系であってよい。
【0230】
無細胞発現系は、ウサギ網状赤血球、小麦胚芽抽出物または昆虫抽出物に基づくTNT系などの真核無細胞発現系、原核無細胞発現系または古細菌無細胞発現系であることもできる。
【0231】
本開示の抗原またはそのフラグメント(もしくは一部分)はインビボで生産されうる。抗原またはそのフラグメント(もしくは一部分)は、例えば、細菌宿主生物または真核宿主生物において生産し、その宿主生物またはその培養物から単離することができる。抗原またはそのフラグメント(もしくは一部分)を、例えばインビトロ翻訳系を使用することなどによって、インビトロで生産することも可能である。好ましい発現系はバキュロウイルス発現系である。バキュロウイルスタンパク質発現系の利用は、遅くて高価であると見られているため、見過ごされることが多い。しかし、バキュロウイルス系の大きな利点の1つは、細胞株を生じさせて、ウイルスに依存せずに維持することができることである。これは、新しい細胞株について規制当局の承認を得る必要がない、新しいサブユニット抗原の迅速な生産を可能にし、MERS-CoVおよびSARS-CoV-1のようなウイルスの配列の迅速な変化を考えれば有用なツールである。そのうえ、バキュロウイルス系は哺乳動物系と比較して新規なグリコシル化プロファイルを持つ抗原を生産し、それは免疫応答を強化することが示されている。例えば、SARS-CoV-1およびMERS-CoVの場合、スパイクタンパク質の全可溶性(S1~S2)ドメインを、Sf9細胞で発現させることができる。これらのタンパク質は、Balb/cマウスに免疫処置されると、単独で投与されても、ミョウバンまたはMatrix M1アジュバントと共に投与されても、高いウイルス中和力価を示し、この中和は少なくとも45日間は持続しうる。したがって本開示の抗原は、好ましくは真核宿主細胞、好ましくは昆虫細胞、例えばSf9細胞を使って、または好ましくはバキュロウイルス発現系を使って、生産される。
【0232】
上述のとおり、ポリマーソームは、両親媒性ジブロックまたはトリブロック共重合体で形成されうる。さまざまな局面において、両親媒性ポリマーは、カルボン酸、アミド、アミン、アルキレン、ジアルキルシロキサン、エーテルまたはアルキレンスルフィドのモノマー単位を少なくとも1つ含みうる。
【0233】
いくつかの局面において、両親媒性ポリマーは、オリゴ(オキシエチレン)ブロック、ポリ(オキシエチレン)ブロック、オリゴ(オキシプロピレン)ブロック、ポリ(オキシプロピレン)ブロック、オリゴ(オキシブチレン)ブロックおよびポリ(オキシブチレン)ブロックからなる群より選択されるポリエーテルブロックでありうる。ポリマーに含まれうるブロックのさらなる例としては、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリスチレン、ポリ(ブタジエン)、ポリ(2-メチルオキサゾリン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(e-カプロラクトン)、ポリ(プロピレンスルフィド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート)、ポリ(2-ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)、ポリ(2-メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン、ポリ(イソプレン)、ポリ(イソブチレン)、ポリ(エチレン-co-ブチレン)およびポリ(乳酸)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。適切な両親媒性ポリマーの例としては、ポリ(エチルエチレン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PEE-b-PEO)、ポリ(ブタジエン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PBD-b-PEO)、ポリ(スチレン)-b-ポリ(アクリル酸)(PS-PAA)、ポリ(ジメチルシロキサン-b-エチレンオキシド)としても公知であるポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(本明細書ではPDMS-PEOという)、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)、例えばMay et al.,2013が使用したPMOXA20-PDMS54-PMOXA20(ABA)などのトリブロック共重合体を含むポリ(2-メチルオキサゾリン)-b-ポリ(ジメチルシロキサン)-b-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-bPDMS-bPMOXA)、ポリ(2-メチルオキサゾリン)-b-ポリ(ジメチルシロキサン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PMOXA-b-PDMS-b-PEO)、ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(プロピレンスルフィド)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PEO-b-PPS-b-PEO)およびポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ブチレンオキシド)ブロック共重合体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ブロック共重合体は、共重合体中に含まれるそれぞれのブロックの平均ブロック長によってさらに指定することができる。したがって、PBMPEONは、長さMのポリブタジエンブロック(PB)と長さNのポリエチレンオキシド(PEO)ブロックとの存在を示す。MおよびNは、独立して選択される整数であり、これは例えば約6~約60の範囲内で選択されうる。したがってPB35PEO18は、平均長35のポリブタジエンブロックと平均長18のポリエチレンオキシドブロックとの存在を示す。一定の局面において、PB-PEOジブロック共重合体は、5~50ブロックPBと5~50ブロックPEOとを含む。同様に、PB10PEO24は、平均長10のポリブタジエンブロックと平均長24のポリエチレンオキシドブロックとの存在を示す。本発明において使用することができる適切なPB-PEOジブロック共重合体の具体例としては、ジブロック共重合体PBD21-PEO14(市販もされている)および[PBD]21-[PEO]12(WO2014/077781A1およびNallani et al.,2011参照)が挙げられる。さらなる一例として、EOBPは、長さOのエチレンオキシドブロック(E)と長さPのブタジエンブロック(B)の存在を示す。したがってOおよびPは独立して選択される整数であり、例えば約10~約120の範囲にある。したがってE16E22は平均長16のエチレンオキシドブロックと平均長22のブタジエンブロックとの存在を示す。
【0234】
次に、本発明のポリマーソームを形成させるために使用されるもう1つの好ましいブロック共重合体であるポリ(ジメチルシロキサン-b-エチレンオキシド)(PDMS-PEO)について考えると、ここでは線状PDMS-PEOとくし型PDMS-PEOをどちらも使用できることに留意されたい(PDMS-PEOから形成されたポリマーソームを記載しているGaspard et al「Mechanical Characterization of Hybrid Vesicles Based on Linear Poly(Dimethylsiloxane-b-Ethylene Oxide)and Poly(Butadiene-b-Ethylene Oxide)Block Copolymers」Sensors 2016,16(3),390参照)。
【0235】
線状PDMS-PEOの構造を以下に式(I):
として示し、くし型PDMS-PEOの構造を以下に式(II):
として示す。構造式(I)に沿って、PDMS
n-PEO
mという術語は、長さnのポリジメチルシロキサン(PDMS)ブロックと長さmのポリエチレンオキシド(PEO)ブロックとの存在を示す。mおよびnは独立して選択される整数であり、それぞれ例えば約5もしくは約6~約100、約5~約60、または約6~約60、または約5~50の範囲で選択することができる。例えば、PDMS
12-PEO
46またはPDMS
47PEO
36などの線状PDMS-PEOは、カナダ・ケベック州ドーバル(モントリオール)のPolymer Source Inc.から市販されている。したがってPDMS-PEOブロック共重合体は、5~100ブロックPDMSと5~100ブロックPEO、6~100ブロックPDMSと6~100ブロックPEO、5~100ブロックPDMSと5~60ブロックPEO、または5~60ブロックPDMSと5~60ブロックPEOを含みうる。
【0236】
上記に従って、本発明は、一局面において、対象における免疫応答を誘発および/または調節する方法であって、抗原を担持するPDMS-PEOから形成されたポリマーソームを対象に投与する工程を含む方法に関する。抗原は任意の適切な形でPDMS-PEOポリマーソームと会合/物理的に連結することができる。例えばPDMS-PEOポリマーソームは、本発明に記載するように、その中に封入された可溶性抗原を有しうる。上記に代えて、または上記に加えて、ポリマーソームは、WO2014/077781A1に記載されているように、ポリマーソームの周囲膜に組み込まれた/組み入れられた抗原を有しうる。この場合、抗原は、PDMS-PEO-ポリマーソームの周囲膜にその(1つまたは複数の)膜貫通ドメインが組み込まれる膜タンパク質である。組込みは、WO2014/077781A1またはNallani et al「Proteopolymersomes:in vitro production of a membrane protein in polymersome membranes」Biointerphases,1 December 2011,page 153に記載されているように達成することができる。抗原がPDMS-PEOポリマーソームに封入される場合、それは、ポリペプチド、糖質、ポリヌクレオチドおよびそれらの組合せからなる群より選択される可溶性抗原でありうる。本発明はさらに、PDMS-PEOポリマーソーム中のそのような封入抗原の生産方法および該方法によって生産されたポリマーソームに関する。
【0237】
本発明はさらに、抗原を担持するPDMS-PEOポリマーソームを含む組成物に関する。ここでもやはり、これらの組成物において、抗原は任意の適切な形でPDMS-PEOポリマーソームと会合/物理的に連結することができる。例えばPDMS-PEOポリマーソームは、本発明に記載するように、その中に封入された可溶性抗原を有しうる。上記に代えて、または上記に加えて、ポリマーソームは、WO2014/077781A1に記載されているように、ポリマーソームの周囲膜に組み込まれた/組み入れられた抗原を有しうる。本発明は、抗原を担持するそのようなPDMS-PEOポリマーソームを含むワクチン、免疫応答を誘発および/または調節する方法、またはがん、自己免疫疾患もしくは感染性疾患を処置、改善、予防または診断するための方法であって、それを必要とする対象に抗原を担持するPDMS-PEOポリマーソームを与える工程を含む方法にも関係する。
【0238】
上記に従って、本発明は、免疫応答を誘発および/または調節するのに適した形での、抗原を担持(または輸送)するPDMS-PEOポリマーソームのインビトロ使用およびインビボ使用にも関係する。抗原はPDMS-PEOポリマーソームに封入するか、例えばWO2014/077781A1に記載されているように、ポリマーソームの周囲膜に組み入れることができる。
【0239】
もう一つの好ましいブロック共重合体はポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)である。PDMS-PAAは、長さMのポリ(ジメチルシロキサン)(PDMS)ブロックと長さNのポリ(アクリル酸)(PAA)ブロックの存在を示すPDMSM-PAANでありうる。MとNは独立して選択される整数であり、それらは例えば約5~約100の範囲から選択されて、ブロックの平均長さを表す。PDMS-PAAは、好ましくは、5~100ブロックPDMSおよび5~100ブロックPAAを含む。好ましくは、PDMS-PAAは、5~50、好ましくは10~40ブロックのPDMSおよび/または5~30、好ましくは5~25、好ましくは5~20ブロックのPAAを含む。PDMS-PAAは、好ましくは、PDMS30-PAA14、PDMS15-PAA7またはPDMS34-PAA16からなる群より選択される。
【0240】
一定の局面において、本発明のポリマーソームは、1つまたは複数のコンパートメント(「マルチコンパートメント」と別称される)を含有しうる。ポリマーソームのベシクル構造のコンパートメント化は、生きている細胞における複雑な反応経路の併存を可能にし、細胞内で多くの活動を空間的、時間的に分離するのに役立つ。したがって2タイプ以上の抗原を本発明のポリマーソームに封入しうる。異なる抗原は同じアイソフォームまたは異なるアイソフォームを有しうる。各コンパートメントも同じ両親媒性ポリマーまたは異なる両親媒性ポリマーで形成されうる。さまざまな局面において、2つ以上の異なる抗原は両親媒性ポリマーの周囲膜に組み込まれる。各コンパートメントはペプチド、タンパク質、および核酸のうちの少なくとも1つを封入しうる。ペプチド、タンパク質、ポリヌクレオチドまたは糖質は免疫原性でありうる。
【0241】
適切なマルチコンパートメント化ポリマーソームのさらなる詳細はWO20121018306に見出され、その内容は参照によりあらゆる目的でそのまま本明細書に組み入れられる。
【0242】
また、ポリマーソームは独立していてもよいし、例えばWO2010/1123462(その内容は参照によりあらゆる目的でそのまま本明細書に組み入れられる)に記載されているもののように、表面に固定化されていてもよい。
【0243】
ポリマーソーム担体が2つ以上のコンパートメントを含有する場合、それらのコンパートメントは、外側ブロック共重合体ベシクルと、外側ブロック共重合体ベシクルの内側に封入された少なくとも1つの内側ブロック共重合体ベシクルとを含みうる。いくつかの局面において、外側ベシクルおよび内側ベシクルのブロック共重合体のそれぞれは、ポリ(オキシエチレン)ブロック、ポリ(オキシプロピレン)ブロック、およびポリ(オキシブチレン)ブロックなどのポリエーテルブロックを含む。共重合体中に含まれうるブロックのさらなる例として、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリスチレン、ポリ(ブタジエン)、ポリ(2-メチルオキサゾリン)、ポリ(ジメチルシロキサン)、ポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)、ポリ(e-カプロラクトン)、ポリ(プロピレンスルフィド)、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(2-(ジエチルアミノ)エチルメタクリレート)、ポリ(2-(ジイソプロピルアミノ)エチルメタクリレート)、ポリ(2-(メタクリロイルオキシ)エチルホスホリルコリン)およびポリ(乳酸)が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。適切な外側ベシクルおよび内側ベシクルの例としては、ポリ(エチルエチレン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PEE-b-PEO)、ポリ(ブタジエン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PBD-b-PEO)、ポリ(スチレン)-b-ポリ(アクリル酸)(PS-b-PAA)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(カプロラクトン)(PEO-b-PCL)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(乳酸)(PEO-b-PLA)、ポリ(イソプレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PI-b-PEO)、ポリ(2-ビニルピリジン)-ポリ(エチレンオキシド)(P2VP-b-PEO)、ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PEO-b-PNIPAm)、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(プロピレンスルフィド)(PEG-b-PPS)、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)、ポリ(メチルフェニルシラン)-ポリ(エチレンオキシド)(PMPS-b-PEO-b-PMPS-b-PEO-b-PMPS)、ポリ(2-メチルオキサゾリン)-b-ポリ-(ジメチルシロキサン)-b-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-b-PDMS-b-PMOXA)、ポリ(2-メチルオキサゾリン)-b-ポリ(ジメチルシロキサン)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PMOXA-b-PDMS-b-PEO)、ポリ[スチレン-b-ポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)](PS-b-PIAT)、ポリ(エチレンオキシド)-b-ポリ(プロピレンスルフィド)-b-ポリ(エチレンオキシド)(PEO-b-PPS-b-PEO)およびポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ブチレンオキシド)(PEO-b-PBO)ブロック共重合体が挙げられるが、それらに限定されるわけではない。ブロック共重合体は、共重合体中に含まれるそれぞれのブロックの平均数によってさらに指定することができる。したがって、PSM-PIATNは、繰り返し単位数Mのポリスチレンブロック(PS)と繰り返し単位数Nのポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)(PIAT)ブロックとの存在を示す。したがってMおよびNは独立して選択される整数であり、それらは例えば約5~約95の範囲内で選択しうる。したがってPS40-PIAT50は、繰り返し単位数が平均で40のPSブロックと繰り返し単位数が平均で50のPIATブロックとの存在を示す。
【0244】
いくつかの局面において、本開示のポリマーソームは脂質を含み、それは好ましくはブロック共重合体または両親媒性ポリマーと混合されている。脂質の含量は、典型的には、ブロック共重合体または両親媒性ポリマーの量と比較して低い。典型的には、脂質は、ポリマーソーム膜を形成する構成要素の最大約50%、最大約45%、最大約40%、最大約35%、最大約30%、最大約20%、最大約15%、最大約10%、最大約5%、最大約2%、最大約1%、最大0.5%、最大約0.2%、最大約0.1%であるだろう(百分率は重量で与えられている)。脂質の添加は封入効率を向上させうる。脂質は、合成脂質、天然脂質、脂質混合物、または合成脂質と天然脂質の組合せでありうる。脂質の非限定的な例は、リン脂質、例えばホスファチジルコリン、例えばPOPC、レシチン、セファリン、またはホスファチジルイノシトール、またはリン脂質、例えば大豆リン脂質、例えばアゾレクチンを含む脂質混合物である。脂質のさらなる非限定的な例として、コレステロール、コレステロール硫酸、1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP)が挙げられる。脂質は好ましくは非抗原性である。いくつかの局面において、本開示のポリマーソームは、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、約0.2%未満、約0.1%未満のサポニンを含むか、またはサポニンを本質的に含まない(百分率は重量で与えられている)。
【0245】
いくつかの局面において、本発明は、ポリマーソーム中の封入抗原を生産するための方法であって、(i)本発明の両親媒性ポリマーをクロロホルムに溶解する工程であって、好ましくは両親媒性ポリマーがポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)である、工程、(ii)ポリマーフィルムを形成させるために、溶解した両親媒性ポリマーを乾燥させる工程、(iii)可溶化された抗原を工程(ii)の乾燥両親媒性ポリマーフィルムに加える工程であって、該抗原が、(a)ポリペプチド、好ましくは本発明の抗原であるポリペプチド、(b)糖質、(c)(a)および/または(b)および/または(c)の組合せからなる群より選択される、工程、(iv)ポリマーベシクルを形成させるために、工程(iii)のポリマーフィルムを再水和する工程、(v)任意で、ポリマーベシクル単分散ベシクルを精製するために、工程(iv)のポリマーベシクルを濾過する工程、および/または(vi)任意で、工程(iv)または工程(v)のポリマーベシクルを非封入抗原から単離する工程を含む、方法に関する。
【0246】
他のいくつかの局面において、本発明は、抗原の水性溶液へのポリマーの非水性溶液の混合、対応するポリマーと抗原との混合溶液の超音波処理、または対応するポリマーと抗原との混合溶液の押出しに基づく方法を含む、ポリマーソーム中の封入抗原を生産するための別の方法に関する。例示的な方法として、Rameez et al,Langmuir 2009およびNeil et al Langmuir 2009,25(16),9025-9029に記載の方法が挙げられる。
【0247】
いくつかの局面において、本発明は、抗原およびアジュバントを投与することによって対象における免疫応答を調整する方法であって、抗原がポリマーソームの第1集団と関連づけられ、アジュバントがポリマーソームの第2集団と関連づけられ、前記2つのポリマーソーム集団が対象に投与され、前記2つの別個の集団の投与が、遊離型のアジュバントを対象に投与する場合と比較しておよび/またはポリマーソームの第1集団と関連づけられた抗原だけを投与する場合と比較して、IFNγ-、TNFα-、IL-2およびIL-12からなる群より選択される1種または複数種のTh1サイトカインを発現するCD4+T細胞の数を増加させることによって、該免疫応答を調整する、方法に関する。
【0248】
いくつかの局面において、本発明は、抗原(例えばSARS-CoV-2スパイクタンパク質、下記実施例23の記載を参照されたい)に対して、Th1に偏った(Th1-biased)機能的メモリーT細胞を誘導することができる方法および組成物に関する。
【0249】
いくつかの局面において、同時投与される(または連続して投与される、例えば実質的に同時の投与、この場合、投与は、例えば、同時にまたはほぼ同時に投与される2回の別個の注射によって行われうる)本発明の組成物(例えばACM-S1S2+ACM-CpG製剤)は、抗原に応答して、IFNγ、TNFαまたはIL-2を発現するCD4+T細胞の著しく有意な増加を誘導することができる。目を引くことに、アジュバント(例えばCpG)の共投与(または連続して投与される、例えば実質的に同時の投与、この場合、投与は、例えば、同時にまたはほぼ同時に投与される2回の別個の注射によって行われうる)によって、IL-5の生産は、強く抑制されうる。特に、同時投与される(または連続して投与される、例えば実質的に同時の投与、この場合、投与は、例えば、同時にまたはほぼ同時に投与される2回の別個の注射によって行われうる)本発明の組成物(例えばACM-S1S2+ACM-CpG製剤)は、明確なTh1分極(Th1-polarized)プロファイルを生じることができ、これはIgG1:IgG2b比<1にも反映されうる。CD8+T細胞については、同時投与される(または連続して投与される、例えば実質的に同時の投与、この場合、投与は、例えば、同時にまたはほぼ同時に投与される2回の別個の注射によって行われうる)本発明の組成物(例えばACM-S1S2+ACM-CpG)に対する主な応答は、IFNγでありうる。本発明のいくつかの局面において、CD4+T細胞はTh1偏向(Th1-skewed)サイトカインプロファイルを呈することができ、それはIgG1に対するIgG2bの優位性にも反映されうる。
【0250】
要約すると、ACM-S1S2+ACM-CpGは、最後の投与の40日後に検出することができる機能的メモリーCD4+およびCD8+T細胞を誘導することができる。効率よく交差提示するcDC1の能力を考えると、CD8+T細胞免疫を生成させるには、cDC1によるACMベシクルの効率のよい取込みがおそらく重要だろう。本研究において、ACM-S1S2をワクチン接種したマウスでは、スパイク特異的CD8+T細胞応答が実証されたが、遊離S1S2タンパク質ではそうはならなかった。
【0251】
ワクチン製剤にCpGを含めることによって、いくつかの利益が得られる。これは、DCを強力に活性化して、CD40、CD80およびCD86を含む共刺激分子をアップレギュレートし、それがT細胞活性化ならびにB細胞の抗体クラススイッチおよび抗体分泌を促進する。TLR-9へのCpGの結合は、炎症性サイトカイン生産およびTh1偏向免疫応答をもたらすMAPKおよびNF-kBシグナル伝達をトリガーする。本研究では、そのような分極が、CpG含有ワクチン製剤のCD4+T細胞のサイトカインプロファイルおよびIgG1:IgG2b比によって、明確に実証される。CpGの非存在下では、IL-5生産が一貫して観察されたが、これは、ウイルス起源および非ウイルス起源のタンパク質抗原を使った免疫処置による固有のTh2偏向という、より広範な像に合致している。安全面からいうと、これは、全粒子不活化RSVワクチンを代表的な例とするTh2免疫病理の潜在的リスクを表す。したがってそのようなワクチンは、実際の感染時にはTh2に偏った(Th2-biased)応答を与えるように免疫系をプライミングし、その結果として起こるTh2サイトカインの生産は、粘液生産、好酸球動員および気道反応亢進の増加を促進した。それゆえに、CpGによるTh1への免疫応答の偏向は、ワクチンの安全性を改良することができる。
【0252】
全IgGの迅速な減少にも関わらず、中和価は安定な状態を保ちうることが示されており、これはヒトにおけるSARS-CoV-2感染と合致する。これは、弱い結合物質を排除しつつ、アビディティが高くて強く中和する抗体を漸進的に選択する親和性成熟によるのだろう。加えて、シンガポールでリクルートされた回復期患者において測定された中和価と比較して、本開示のワクチン製剤は、より効率よく中和抗体をトリガーしうるようである。Covid-19における抗体の役割はまだ確立されていないが、中和抗体を防御の潜在的相関因子とみなすことは合理的である。検出可能な中和応答がない少数派を含めて、生産される中和抗体レベルが大きく異なる無症候性患者または軽症患者の報告は、自然感染が予測不可能であることを強調している。この点で、本開示のワクチンは、より一様な中和抗体応答の誘導を容易にすることができる。
【0253】
SARS-CoV-2におけるT細胞の役割が、抗体よりさらに明確でないことは、ほぼ間違いない。それでもなお、いくつかの研究により、感染に続くT細胞応答の誘導が確認されている。SARS-CoV-2に対する適応免疫応答の初期において、T細胞はロバストに活性化される。2003年にSARSから回復した患者は、17年後に検出することができるメモリーT細胞を有した。加えて、SARS、Covid-19の病歴がなく、SARSおよび/またはCovid-19であった個体との接触歴もない個体が、他のベータコロナウイルスによる過去の感染によって生成したと思われる交差反応性T細胞を持っていた。これらのデータから、SARS-CoV-2特異的T細胞応答も同様に永続的でありうることが示唆された。Covid-19回復期患者のT細胞特異性を調べた研究では、スパイク特異的CD4+T細胞が一貫して検出され、一方、CD8+T細胞は大半の被験者に存在した。これは、スパイクベースのワクチンが、CD8+T細胞レパートリーは狭いものの、自然感染のCD4+T細胞プロファイルをおおむね再現する細胞性免疫応答を生成しうることを含意している。
【0254】
パンデミックワクチンを作出する際の大きな課題の一つは、世界的需要を迅速に満たす十分な用量の高品質な抗原を生成させることである。したがって、用量削減戦略が重大な意味を持ち、それは伝統的にアジュバントを使って達成されてきた。この研究に基づき、ACM技術はアジュバントと共に、用量削減効果をさらに強化することができると考えられる。いくつかの態様ではワクチンの免疫原性が著しく改良されて、10分の1の用量でさえ、十分なレベルの効力を保持することが明らかになった。この研究は、パンデミックにおける抗原の限られた入手可能性に対処するためのACM技術の使用を強く裏付けている。
【0255】
既存の取込み・クロスプレゼンテーション媒体およびそれらに基づく方法と比較して、本発明のポリマーソームには、なかんずく以下の利点があり、それらも本発明の局面である。
・本ポリマーソームは取込みおよび免疫系へのクロスプレゼンテーションの効率が非常に高い
・免疫応答がCD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含む
・ポリマーソームが酸化安定性である
・体液性応答が、アジュバントありまたはアジュバントなしの遊離抗原ベースの技法によって生じるものと比べて強い
・本発明のポリマーソームによって誘導される免疫応答は、アジュバントを使ってより一層ブーストすることができる
・本発明のポリマーソームのポリマーは本質的に頑強であり、体内での循環時間が増加するように適応させ、または官能基化することができる
・本発明のポリマーソームは血清成分の存在下で安定である
・ポリマーソームのポリマーは安価であり、迅速に合成される
・本発明の方法によって免疫応答を誘発するのに必要な抗原の量は、アジュバントありまたはアジュバントなしの遊離抗原ベースの技法と比較して少ない。
・対象に共投与される2つのポリマーソーム集団はTh1免疫応答とTh2免疫応答との間の免疫バランスを調整することができ、好ましくは、前記2つのポリマーソーム集団は、Th2免疫応答に対してTh1免疫応答が優勢になるように、Th1免疫応答とTh2免疫応答との間の免疫バランスを調整することができる
・ACM封入は、CpGの生物学的機能を強化した
・ACM-CpGは、遊離CpGと比べて、優れたアジュバント活性を呈した
・ACM-CpGは、遊離CpGよりも幅広いサイトカインプロファイルを誘導した
【0256】
本発明は以下の項目も特徴とする。
1.ポリマーソーム(例えば可溶性封入抗原を含む酸化安定性ポリマーソーム)であって、
該可溶性封入抗原が、
(i)ポリペプチド、
(ii)糖質、
(iii)好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、さらに好ましくはDNA分子もしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、
(iv)(i)および/または(ii)および/または(iii)の組合せ
からなる群より選択される、
ポリマーソーム。
2.ポリマーソームが、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発する能力を有し、好ましくは該誘発がインビボ、エクスビボまたはインビトロでの誘発である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
3.抗原が、膜タンパク質(MP)または膜結合ペプチド(MAP)の可溶性部分を含み、好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、およびSEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、SEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
4.ポリマーソームが、血清成分の存在下で安定性であり、好ましくは該安定性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの安定性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
5.ポリマーソームが、エンドソーム内で安定であり、好ましくは該安定性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの安定性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
6.ポリマーソームが、リポソームの対応する酸化安定性と比較して改良された酸化安定性を有し、好ましくは該改良された安定性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの改良された安定性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
7.ポリマーソームが、可溶性封入抗原を含むその内容物を酸化非依存的に放出して、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答をトリガーする能力を有し、好ましくは該放出が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの放出である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
8.ポリマーソームが、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含む細胞性免疫応答を誘発する能力を有し、好ましくは該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの免疫応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
9.ポリマーソームが、細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を誘発する能力を有し、細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含み、好ましくは免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの免疫応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
10.体液性免疫応答が、特異的抗体の生産を含み、さらに好ましくは該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの免疫応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
11.ポリマーソームが、エフェクターCD4(+)T細胞の出現頻度を強化する能力を有し、好ましくは該強化が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの強化である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
12.細胞性免疫応答が、T細胞媒介性免疫応答を含み、好ましくは該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの免疫応答である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
13.ポリマーソームが、遊離の抗原と比較して抗原特異的CD8(+)T細胞のクローン拡大を強化する能力を有し、好ましくは該拡大が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの拡大である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
14.ポリマーソームが、抗原特異的エフェクターCD8(+)T細胞を誘導する能力を有し、好ましくは該誘導が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの誘導である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
15.ポリマーソームが、抗原特異的CD8(+)T細胞の細胞傷害性表現型を強化する能力を有し、好ましくは該強化が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの強化である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
16.ポリマーソームが、リンパ節常在性マクロファージおよび/またはB細胞をターゲティングする能力を有し、好ましくは該ターゲティングが、インビボ、エクスビボまたはインビトロでのターゲティングである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
17.ポリマーソームが、還元安定性であり、好ましくは該ポリマーソームが、血清成分の存在下で還元安定性であり、さらに好ましくは該還元安定性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの還元安定性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
18.ポリマーソームが、低減した透過性を有し、好ましくは該低減した透過性が、リポソームの対応する透過性との比較であり、さらに好ましくは該透過性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの透過性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
19.ポリマーソームが、エンドソーム内でその内容物を放出する能力を有し、好ましくは該エンドソームが後期エンドソームであり、さらに好ましくは該放出が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの放出である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
20.以下の能力のうちの1つまたは複数を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム:
(i)細胞性免疫応答を誘発する能力であって、好ましくは該細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答を含み、さらに好ましくは該細胞性免疫応答が、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答であり、最も好ましくは該細胞性免疫応答が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する応答であり、さらに最も好ましくは該細胞性免疫応答が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する応答である、細胞性免疫応答を誘発する能力;
(ii)エンドソーム内でポリマーソーム内容物を放出する能力であって、好ましくは該エンドソームが後期エンドソームであり、さらに好ましくは該内容物が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくは該内容物が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む、エンドソーム内でポリマーソーム内容物を放出する能力;
(iii)ポリマーソーム内容物を酸化非依存的に放出してCD8(+)T細胞媒介性免疫応答をトリガーする能力であって、好ましくは該内容物が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは該内容物が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む、ポリマーソーム内容物を酸化非依存的に放出してCD8(+)T細胞媒介性免疫応答をトリガーする能力;
(iv)抗原に対する免疫応答を刺激する能力であって、好ましくは該抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは該抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む、抗原に対する免疫応答を刺激する能力;
(v)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする能力であって、好ましくは該応答が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する応答であり、さらに好ましくは該応答が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する応答である、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする能力;
(vi)ペプチドまたはタンパク質を抗原提示細胞(APC)に送達する能力であって、好ましくは該ペプチドまたはタンパク質が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含むか、または該可溶性部分に由来し、さらに好ましくは該ペプチドまたはタンパク質が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含むか、該ポリペプチドに由来する、ペプチドまたはタンパク質を抗原提示細胞に送達する能力;
(vii)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーする能力であって、好ましくは該応答が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する応答であり、さらに好ましくは該応答が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する応答である、CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーする能力;
(viii)対象における免疫応答を刺激する能力であって、好ましくは該応答が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する応答であり、さらに好ましくは該応答が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する応答である、対象における免疫応答を刺激する能力;
(ix)非ヒト動物を免疫処置する能力であって、好ましくは該免疫処置が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する免疫処置であり、さらに好ましくは該免疫処置が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する免疫処置である、非ヒト動物を免疫処置する能力;
(x)ポリマーソームが、該ポリマーソームなしでの抗原の対応する抗原性と比較して、改変された抗原性を有することであって、好ましくは該抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分であり、さらに好ましくは該抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドである、改変された抗原性を有すること;
(xi)ポリマーソームが、該ポリマーソームなしでの抗原の対応する免疫原性と比較して、改変された免疫原性を有することであって、好ましくは該免疫原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分であり、さらに好ましくは該免疫原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドである、改変された免疫原性を有すること。
21.以下の特性のうちの1つまたは複数を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム:
(i)ポリマーソームが、酸化安定性膜を含む、および/または
(ii)ポリマーソームが、合成物である、および/または
(iii)ポリマーソームが、非封入抗原を含まないか、または遊離の非封入抗原と混合されている、および/または
(iv)ポリマーソームが、両親媒性ポリマーの膜を含む、および/または
(v)ポリマーソームが、ベシクル膜を形成する両親媒性合成ブロック共重合体を含む、および/または
(vi)ポリマーソームが、70nm超の直径を有し、好ましくは該直径が、約100nm~約1μm、または約120nm~約250nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲である、および/または
(vii)ポリマーソームが、ベシクルの形態を有する、
(viii)ポリマーソームが、自己集合性である。
22.ポリマーソームが、ポリマーソームの集合体の形態にあり、ポリマーソームの集合体の平均直径が、約100nm~約1μm、または約100nm~約750nm、または約100nm~約500nm、または約120nm~約250nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲にある、項目21記載のポリマーソーム。
23.抗原が、免疫原である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
24.抗原が、(i)自己抗原、(ii)非自己抗原、(iii)非自己免疫原および(iv)自己免疫原からなる群より選択される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
25.抗原が、以下:
(i)ウイルスポリペプチド配列と少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドであって、好ましくは該ウイルスポリペプチド配列がインフルエンザヘマグルチニンまたはブタインフルエンザヘマグルチニンであり、さらに好ましくは該ウイルスポリペプチド配列が、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8からなる群より選択される、ポリペプチド;
(ii)細菌ポリペプチド配列と少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチド;
(iii)哺乳類ポリペプチド配列または鳥類ポリペプチド配列と少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドであって、好ましくは該哺乳類ポリペプチド配列または該鳥類ポリペプチド配列が、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質と少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチド、B16ペプチドまたはMC38ペプチドであり、さらに好ましくは該哺乳類ポリペプチド配列または該鳥類ポリペプチド配列が、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択される、ポリペプチド
からなる群より選択される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
26.哺乳類ポリペプチド配列が、ヒト、齧歯類、ウサギおよびウマのポリペプチド配列からなる群より選択される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
27.抗原が、抗体またはそのフラグメントである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
28.抗原が、以下:
(i)インフルエンザヘマグルチニン(HA)、好ましくはSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8からなる群より選択されるもの、
(ii)ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)、好ましくはSEQ ID NO:6、
(iii)卵白アルブミン(OVA)、好ましくはSEQ ID NO:4、
(iv)スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルス(PED)スパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、好ましくはSEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65、
(v)B16ペプチド、好ましくはSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11からなる群より選択されるもの、
(vi)MC38ペプチド、好ましくはSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3からなる群より選択されるもの、
(vii)B16ペプチドおよびMC38ペプチド、好ましくは該ペプチドは、群:(i)SEQ ID NO:1~3および(ii)SEQ ID NO:9~11から独立して選択される、
からなる群より選択される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
29.カチオン性、アニオン性およびノニオン性ポリマーソーム、ならびにそれらの混合物からなる群より選択される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
30.ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、本質的に非免疫原性または本質的に非抗原性であり、好ましくはブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、非免疫原性または非抗原性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
31.ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、酸化安定性である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
32.ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、免疫賦活薬でもアジュバントでもない、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
33.両親媒性ポリマーが、ジブロックまたはトリブロック(A-B-AまたはA-B-C)共重合体を含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
34.両親媒性ポリマーが、共重合体ポリ(N-ビニルピロリドン)-b-PLAを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
35.両親媒性ポリマーが、カルボン酸、アミド、アミン、アルキレン、ジアルキルシロキサン、エーテルまたはアルキレンスルフィドのモノマー単位を少なくとも1つ含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
36.両親媒性ポリマーが、オリゴ(オキシエチレン)ブロック、ポリ(オキシエチレン)ブロック、オリゴ(オキシプロピレン)ブロック、ポリ(オキシプロピレン)ブロック、オリゴ(オキシブチレン)ブロックおよびポリ(オキシブチレン)ブロックからなる群より選択されるポリエーテルブロックである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
37.両親媒性ポリマーが、ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PB-PEO)ジブロック共重合体である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
38.PB-PEOジブロック共重合体が、5~50ブロックPBと5~50ブロックPEOとを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
39.両親媒性ポリマーが、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(PDMS-PEO)ジブロック共重合体であり、好ましくは該PB-PEOジブロック共重合体が、好ましくは、5~100ブロックPDMSと5~100ブロックPEOとを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
40.ポリマーソームが、ブロック共重合体または両親媒性ポリマーだけで構成されるか、脂質と混合されたブロック共重合体または両親媒性ポリマーで構成されうる、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
41.脂質が、合成脂質もしくは天然脂質、または合成脂質混合物もしくは天然脂質混合物、または合成脂質と天然脂質との組合せで構成される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
42.両親媒性ポリマーが、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PLA-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくはPLA-PEO/POPCが、50:50以上(例えば50/50または75/25または90/10)のPLA-PEO対POPC(例えばPLA-PEO/POPC)の比を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
43.両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PCL-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくはPCL-PEO/POPCが、50:50以上(例えば50/50または75/25または90/10)のPCL-PEO対POPC(例えばPCL-PEO/POPC)の比を有する、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
44.両親媒性ポリマーが、ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)またはポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(PDMS-PEO)ジブロック共重合体またはポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)ジブロック共重合体である、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
45.ポリマーソームが、ジブロック共重合体PBD21-PEO14(本明細書では「BD21」という)、PDMS47-PEO36(PDMS-PEO)またはトリブロック共重合体PMOXA12-PDMS55-PMOXA12を含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
46.1つまたは複数のコンパートメントを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
47.ポリマーソームが、1つまたは複数のコンパートメントを含み、該1つまたは複数のコンパートメントのそれぞれが、少なくとも1つのペプチド、タンパク質、および核酸を封入し、好ましくは該ペプチド、タンパク質、および核酸のうちの該少なくとも1つが、免疫原性または抗原性であり、さらに好ましくは該1つまたは複数のコンパートメントのそれぞれが、同じ両親媒性ポリマーまたは異なる両親媒性ポリマーで構成される、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
48. ポリマーソームが2つ以上のコンパートメントを含み、該コンパートメントが、外側ブロック共重合体ベシクルと少なくとも1つの内側ブロック共重合体ベシクルとを含み、該少なくとも1つの内側ブロック共重合体ベシクルが、外側ブロック共重合体ベシクルの内部に封入され、好ましくは外側ブロック共重合体ベシクルが、
(i)ポリ[スチレン-b-ポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)](PS-PIAT)、
(ii)ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PBD-PEO)、
(iii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(カプロラクトン)(PEO-PCL)、
(iv)ポリ(エチルエチレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PEE-PEO)、
(v)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(乳酸)(PEO-PLA)、
(vi)ポリ(イソプレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PI-PEO)、
(vii)ポリ(2-ビニルピリジン)-ポリ(エチレンオキシド)(P2VP-PEO)、
(viii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PEO-PNIPAm)、
(ix)ポリ(スチレン)-ポリ(アクリル酸)(PS-PAA)、
(x)ポリ(エチレングリコール)-ポリプロピレンスルフィド)(PEG-PPS)、
(xi)ポリ(2-メチルオキサゾリン)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-PDMS-PMOXA)、
(xii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PEO-PDMS-PMOXA)、
(xiii)ポリ(メチルフェニルシラン)-ポリ(エチレンオキシド)(PMPS-PEO-PMPS-PEO-PMPS)、および
(xiv)ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)
からなる群より独立して選択される共重合体で形成されたポリマーソームであり、さらに好ましくは該少なくとも1つの内側ブロック共重合体ベシクルが、
(xv)ポリ[スチレン-b-ポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)](PS-PIAT)、
(xvi)ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PBD-PEO)、
(xvii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(カプロラクトン)(PEO-PCL)、
(xviii)ポリ(エチルエチレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PEE-PEO)、
(xix)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(乳酸)(PEO-PLA)、
(xx)ポリ(イソプレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PI-PEO)、
(xxi)ポリ(2-ビニルピリジン)-ポリ(エチレンオキシド)(P2VP-PEO)、
(xxii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PEO-PNIPAm)、
(xxiii)ポリ(スチレン)-ポリ(アクリル酸)(PS-PAA)、
(xxiv)ポリ(エチレングリコール)-ポリプロピレンスルフィド)(PEG-PPS)、
(xxv)ポリ(2-メチルオキサゾリン)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-PDMS-PMOXA)、
(xxvi)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PEO-PDMS-PMOXA)、
(xxvii)ポリ(メチルフェニルシラン)-ポリ(エチレンオキシド)(PMPS-PEO-PMPS-PEO-PMPS)、および
(xxviii)ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)
からなる群より独立して選択される共重合体で形成されたポリマーソームである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
49.脂質ポリマーを含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
50.封入されたアジュバントをさらに含む、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム。
51.ポリマーソーム中の封入抗原を生産するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
(i)両親媒性ポリマーをクロロホルムに溶解する工程であって、好ましくは両親媒性ポリマーがポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)である、工程、
(ii)ポリマーフィルムを形成させるために、溶解した両親媒性ポリマーを乾燥させる工程、
(iii)可溶化された抗原を工程(ii)の乾燥両親媒性ポリマーフィルムに加える工程であって、抗原が、
(a)ポリペプチドであって、好ましくはポリペプチド抗原が前記項目のいずれか一項に記載のとおりであり、さらに好ましくはポリペプチド抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくはポリペプチド抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11およびSEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、ポリペプチド、
(b)糖質、
(c)アンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、好ましくはDNA分子またはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、
(d)(a)および/もしくは(b)および/もしくは(c)の組合せ
からなる群より選択される工程、
(iv)ポリマーベシクルを形成させるために、工程(iii)のポリマーフィルムを再水和する工程、
(v)任意で、ポリマーベシクル単分散ベシクルを精製するために、工程(iv)のポリマーベシクルを濾過する工程、ならびに/または
(vi)任意で、工程(iv)もしくは工程(v)のポリマーベシクルを非封入抗原から単離する工程。
52.ポリマーソームが、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソームである、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム中の封入抗原を生産するための方法。
53.前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム中の封入抗原を生産するための方法によって生産された、ポリマーソーム。
54.前記項目のいずれか一項記載のポリマーソームを含む、組成物。
55.薬学的組成物または診断組成物である、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
56.免疫原性組成物、抗原性組成物または免疫治療組成物である、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
57.1つまたは複数の免疫賦活薬および/または1つもしくは複数のアジュバントをさらに含む、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
58.ワクチンである、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
59.皮内、腹腔内、筋肉内、皮下、静脈内注射、または粘膜表面への非侵襲性投与のために製剤化された、前記項目のいずれか一項記載の組成物。
60.前記項目のいずれか一項記載のポリマーソームまたは組成物に曝露された、単離された抗原提示細胞またはハイブリドーマ細胞。
61.樹状細胞を含む、前記項目のいずれか一項記載の抗原提示細胞。
62.マクロファージを含む、前記項目のいずれか一項記載の抗原提示細胞。
63.B細胞を含む、前記項目のいずれか一項記載の抗原提示細胞。
64.前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞またはハイブリドーマを含み、かつ薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む、ワクチン。
65.(i)抗原が、インフルエンザヘマグルチニン(HA)を含み、ワクチンが、インフルエンザワクチンであり、好ましくは該インフルエンザヘマグルチニン(HA)が、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8からなる群より選択されるポリペプチドと少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(ii)抗原が、ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)を含み、ワクチンがブタインフルエンザワクチンであり、好ましくは該ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)が、SEQ ID NO:6と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(iii)抗原が、卵白アルブミン(OVA)を含み、ワクチンががんワクチンであり、好ましくは該卵白アルブミン(OVA)が、SEQ ID NO:4と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(iv)抗原が、スパイクタンパク質(PEDv S)を含み、ワクチンがPEDワクチンであり、好ましくはブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質(Sタンパク質)が、SEQ ID NO:12~14のポリペプチドと少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(v)抗原が、B16ペプチドを含み、ワクチンががんワクチンであり、好ましくは該ペプチドが、SEQ ID NO:9~11からなる群より選択される、
(vi)抗原が、MC38ペプチドを含み、ワクチンががんワクチンであり、好ましくは該ペプチドが、SEQ ID NO:1~3からなる群より選択される、
(vii)抗原が、B16ペプチドおよびMC38ペプチドを含み、ワクチンががんワクチンであり、好ましくは該ペプチドが、群:(i)SEQ ID NO:1~3および(ii)SEQ ID NO:9~11から独立して選択される、
(viii)抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であり、ワクチンががんワクチンである、
(ix)抗原が、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばSEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質を含み、ワクチンが、MERS-CoV、SARS-CoV-2またはSARS-CoV-1などのヒト病原性コロナウイルスに対するワクチンである、
前記項目のいずれか一項記載のワクチン。
66.前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンを含む、キット。
67.対象(例えばヒト)における免疫応答を誘発する方法であって、以下の工程を含む、方法:
(i)前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンを該対象に提供する工程、
(ii)該ポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンを該対象に投与する工程であって、好ましくは該投与が、皮内、腹腔内、筋肉内、皮下、静脈内注射、または粘膜表面への非侵襲性投与である、工程。
68.免疫応答が広範な免疫応答である、前記項目のいずれか一項記載の免疫応答を誘発する方法。
69.免疫応答がCD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む、前記項目のいずれか一項記載の免疫応答を誘発する方法。
70.その必要がある対象(例えばヒト)において感染性疾患、がんまたは自己免疫疾患を処置または防止するための方法であって、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンの治療有効量を対象に投与する工程を含み、好ましくは感染性疾患がウイルス感染性疾患または細菌感染性疾患である、方法。
71.非ヒト動物を免疫処置するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
(i)前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンを用意する工程、
(ii)該ポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンで非ヒト動物を免疫処置する工程。
72.抗体を調製するための方法であって、以下の工程を含む、方法:
(i)前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンで非ヒト哺乳動物を免疫処置する工程、
(ii)工程(i)で得られた抗体を単離する工程。
73.抗体が、モノクローナル抗体(mAb)である、前記項目のいずれか一項記載の方法。
74.医薬として使用するための、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチン。
75. 以下の方法のうちの1つまたは複数において使用するための、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチン:
(i)抗体を発見および/またはスクリーニングおよび/または調製する方法、
(ii)ワクチンを発見および/またはスクリーニングおよび/または調製する方法、
(iii)免疫原性組成物または免疫賦活組成物を生産または調製する方法、
(iv)タンパク質および/またはペプチドの標的送達の方法であって、好ましくは標的送達が、前記項目のいずれか一項記載の抗原性タンパク質および/またはペプチドの標的送達であり、さらに好ましくは抗原性タンパク質および/または抗原性ペプチドが、膜タンパク質(MP)または膜結合ペプチド(MAP)の可溶性部分を含み、最も好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であり、さらに最も好ましくは標的送達が対象において実行される、方法、
(v)抗原に対する免疫応答を刺激する方法であって、好ましくは抗原が、前記項目のいずれか一項記載の抗原であり、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であり、さらに最も好ましくは対象における該抗原に対する免疫応答の刺激に使用するための、方法、
(vi)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする方法、好ましくは前記項目のいずれか一項記載の抗原に対するCD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする方法であって、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、方法、
(vii)前記項目のいずれか一項記載の抗原提示細胞(APC)にペプチドおよび/またはタンパク質を送達する方法であって、好ましくはペプチドおよび/またはタンパク質が前記項目のいずれか一項記載の抗原であり、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、方法、
(viii)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーする方法であって、好ましくは応答が、前記項目のいずれか一項記載の抗原に対する応答であり、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは応答が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である抗原に対する応答である、方法、
(ix)感染性疾患の処置、改善、予防または診断のための方法、好ましくは感染性疾患がウイルス感染性疾患または細菌感染性疾患であり、さらに好ましくはウイルス感染性疾患が、インフルエンザ感染症、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症からなる群より選択される、方法、
(x)がんまたは自己免疫疾患の処置、改善、予防または診断のための方法、
(xi)がん細胞を化学治療に対して感作させるための方法、
(xii)がん細胞におけるアポトーシスを誘導するための方法、
(xiii)対象における免疫応答を刺激するための方法、
(xiv)非ヒト動物を免疫処置するための方法、
(xv)ハイブリドーマの調製方法、
(xvi)前記項目のいずれか一項記載の方法、
(xvii)インビボおよび/またはエクスビボおよび/またはインビトロでの方法である、前記(i)~(xvi)のいずれか一項記載の方法、
(xviii)抗原が、該抗原が使用される環境にとって異種である、前記(i)~(xvii)のいずれか一項記載の方法。
76.以下のうちの1つまたは複数のための、前記項目のいずれか一項記載のポリマーソーム、組成物、抗原提示細胞、ハイブリドーマまたはワクチンの使用:
(i)抗体を発見および/またはスクリーニングおよび/または調製するため、
(ii)ワクチンを発見および/またはスクリーニングおよび/または調製するため、
(iii)免疫原性組成物または免疫賦活組成物を生産または調製するため、
(iv)タンパク質および/またはペプチドの標的送達のためであって、好ましくは標的送達が、抗原性タンパク質および/または抗原性ペプチドの標的送達であり、さらに好ましくは標的送達が、対象において実行される、標的送達のため、
(v)抗原に対する免疫応答を刺激するためであって、好ましくは対象における抗原に対する免疫応答を刺激するのに使用するため、
(vi)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーするため、
(vii)抗原提示細胞(APC)にペプチドまたはタンパク質を送達するためであって、好ましくはペプチドまたはタンパク質が抗原であり、さらに好ましくはペプチドまたはタンパク質が、免疫原性または免疫治療用である、送達のため、
(viii)CD8(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーするため、
(ix)感染性疾患の処置、改善、予防または診断のための方法であって、好ましくは感染性疾患が、ウイルス感染性疾患または細菌感染性疾患であり、さらに好ましくはウイルス感染性疾患が、インフルエンザ感染症、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症からなる群より選択される、感染性疾患の処置、改善、予防または診断のための方法において、
(x)がんまたは自己免疫疾患の処置、改善、予防または診断のため、
(xi)がん細胞を化学治療に対して感作させるため、
(xii)がん細胞におけるアポトーシスの誘導のため、
(xiii)対象における免疫応答を刺激するため、
(xiv)非ヒト動物を免疫処置するため、
(xv)ハイブリドーマの調製のため、
(xvi)前記項目のいずれか一項記載の方法において、
(xvii)インビボおよび/またはエクスビボおよび/またはインビトロでの使用である、前記(i)~(xvi)のいずれか一項記載の使用のため、
(xviii)抗原が、該抗原が使用される環境にとって異種である、前記(i)~(xvii)のいずれか一項記載の使用のため。
77.対象における免疫応答を誘発する方法であって、抗原を担持するPDMS-PEOから形成されたポリマーソームを対象に投与する工程を含む、方法。
78.抗原がPDMS-PEOポリマーソーム内に封入される、項目77記載の方法。
79.PDMS-PEOポリマーソームに封入される抗原が可溶性抗原である、項目78記載の方法。
80.抗原が、ポリペプチド、糖質、ポリヌクレオチドおよびそれらの組合せからなる群より選択される、項目79記載の方法。
81.抗原が、PDMS-PEOポリマーソームの周囲膜に組み込まれる、項目77記載の方法。
82.抗原を担持する、PDMS-PEOポリマーソーム。
83.抗原が、PDMS-PEOポリマーソーム内に封入される、項目82記載のポリマーソーム。
84.PDMS-PEOポリマーソームに封入される抗原が、可溶性抗原である、項目83記載のポリマーソーム。
85.抗原が、ポリペプチド、糖質、ポリヌクレオチドおよびそれらの組合せからなる群より選択される、項目84記載のポリマーソーム。
86.抗原が、PDMS-PEOポリマーソームの周囲膜に組み込まれる、項目85記載のポリマーソーム。
87.抗原が、膜結合型タンパク質または脂質抗原である、項目86記載のポリマーソーム。
88.膜結合型タンパク質が、膜貫通タンパク質、Gタンパク質共役受容体、神経伝達物質受容体、キナーゼ、ポリン、ABC輸送体、イオン輸送体、アセチルコリン受容体および細胞接着受容体からなる群より選択される、項目87記載のポリマーソーム。
89.項目82~88のいずれか一項記載のポリマーソームを含む薬学的組成物。
90.免疫応答を誘発するための、項目82~88のいずれか一項記載のPDMS-PEOまたは項目89記載の薬学的組成物のインビトロおよびインビボでの使用。
91. 免疫応答を誘発するための、
(i)ポリペプチド、
(ii)糖質、
(iii)好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、さらに好ましくはDNA分子もしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、または
(iv)(i)および/もしくは(ii)および/もしくは(iii)の組合せ
からなる群より選択される可溶性封入抗原を含む、約120nm以上の直径を有するポリマーソーム、好ましくは項目1~50のいずれか一項記載のポリマーソームの使用。
92. ポリマーソームの直径が、約120nm~約1μm、または約140nm~約750nm、または約120nm~約500nm、または約140nm~約250nm、約120nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲にある、項目91記載の使用。
93. 免疫応答を誘発するための、
(i)ポリペプチド、
(ii)糖質、
(iii)好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、さらに好ましくはDNA分子もしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、または
(iv)(i)および/もしくは(ii)および/もしくは(iii)の組合せ
からなる群より選択される可溶性封入抗原を含む、約120nm以上の平均直径を有するポリマーソームの集合体、好ましくは項目1~50のいずれか一項に規定したポリマーソームの集合体の使用。
94. ポリマーソームの集合体の平均直径が、約120nm~約1μm、または約120nm~約750nm、または約120nm~約500nm、または約120nm~約250nm、約120nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲にある、項目93記載の使用。
95. 対象がウイルス感染症に対してワクチン接種される、項目91~94のいずれか一項記載の使用。
96. ポリマーソームまたはポリマーソームの集合体が、経口投与、鼻腔内投与、粘膜表面への投与、吸入、皮内投与、腹腔内投与、皮下投与、静脈内投与および筋肉内投与からなる群より選択される投与経路によって投与される、項目91~95のいずれか一項記載の使用。
97. 対象が、ヒトを含む哺乳動物、または非哺乳動物である、項目91~96のいずれか一項記載の使用。
98. 対象が、哺乳動物であり、がん、ウイルス感染症および細菌感染症からなる群より選択される疾患に対してワクチン接種される、項目97記載の使用。
99. 対象が、ヒトであり、コロナウイルス感染症に対してワクチン接種される、項目98記載の使用。
100. コロナウイルスが、ヒト病原性である、項目99記載の使用。
101. コロナウイルスが、ベータ-コロナウイルスである、項目99または項目100記載の使用。
102. コロナウイルスが、サルベコウイルスまたはメルベコウイルスである、項目99~101のいずれか一項記載の使用。
103. 20. コロナウイルスが、MERS-CoV、SARS-CoV-2またはSARS-CoV-1である、項目99記載の使用。
104. 対象が、非哺乳動物であり、ウイルス感染症および細菌感染症からなる群より選択される疾患に対してワクチン接種される、項目97記載の使用。
105. 非哺乳動物が、鳥類(例えばニワトリ、カモ、ガチョウまたはシチメンチョウなどの家禽)、魚類または甲殻類である、項目104記載の使用。
106. 鳥類が、ニワトリ、カモ、ガチョウまたはシチメンチョウである、項目105記載の使用。
107. 魚類が、サケ、マスまたはティラピアである、項目105記載の使用。
108. 甲殻類が、シュリンプ、プローン、またはカニである、項目105記載の使用。
109. 哺乳動物が、ヤギ、ヒツジ、ウシ、またはブタである、項目97記載の使用。
110. 動物が、ブタであり、ブタ流行性下痢ウイルスに対してワクチン接種される、項目109記載の使用。
111. 動物が、有蹄動物であり、口蹄疫ウイルスに対してワクチン接種される、項目109記載の使用。
【0257】
本発明は以下の態様も特徴とする。
1. 抗原とアジュバントとの投与によって対象における免疫応答を誘発する方法であって、抗原はポリマーソームの第1集団と関連づけられ、アジュバントはポリマーソームの第2集団と関連づけられ、それら2つのポリマーソーム集団が対象に投与される方法。
2. 抗原が、ポリマーソームの第1集団内への抗原の封入によって、ポリマーソームの第1集団のポリマーソームの周囲膜への抗原の組込みによって、共有結合によるポリマーソームの外表面への抗原のコンジュゲーションによって、および/または非共有結合によるポリマーソームの外表面への抗原のコンジュゲーションによって、ポリマーソームの第1集団と関連づけられる、態様1記載の方法。
3. アジュバントが、ポリマーソームの第2集団内へのアジュバントの封入によって、ポリマーソームの第2集団のポリマーソームの周囲膜へのアジュバントの組込みによって、共有結合によるポリマーソームの外表面へのアジュバントのコンジュゲーションによって、および/または非共有結合によるポリマーソームの外表面へのアジュバントのコンジュゲーションによって、ポリマーソームの第2集団と関連づけられる、態様1または態様2記載の方法。
4. ポリマーソームの第1集団が、ポリマーソーム内に封入された抗原を有し、ポリマーソームの第2集団が、ポリマーソーム内に封入されたアジュバントを有する、態様2または態様3記載の方法。
5. ポリマーソームの第1集団が、ポリマーソームの外表面に共有結合または非共有結合によってコンジュゲートされた抗原を有し、ポリマーソームの第2集団が、ポリマーソームの外表面に共有結合または非共有結合によってコンジュゲートされたアジュバントを有する、態様2または態様3記載の方法。
6. ポリマーソームの第1集団が、ポリマーソームの周囲膜に組み込まれた抗原を有し、ポリマーソームの第2集団が、ポリマーの周囲膜に組み込まれたアジュバントを有する、態様2または態様3記載の方法。
7. ポリマーソームの第1集団が、ポリマーソーム内に封入された抗原を有し、ポリマーソームの第2集団が、ポリマーソームの外表面に共有結合によってコンジュゲートされたアジュバントを有する、態様2または態様3記載の方法。
8. ポリマーソームの第1集団が、ポリマーソームの外表面に共有結合によってコンジュゲートされた抗原を有し、ポリマーソームの第2集団が、ポリマーソーム内に封入されたアジュバントを有する、態様2または態様3記載の方法。
9. ポリマーソームの第1集団とポリマーソームの第2集団が、同時に(同じ時点で)または異なる時点で投与される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
10. ポリマーソームの第1集団とポリマーソームの第2集団を同時に投与する工程が、それら2つのポリマーソーム集団を一緒に(共投与)すること、またはそれら2つのポリマーソーム集団のそれぞれを個別に投与することを含む、態様9記載の方法。
11. 2つのポリマーソーム集団が、別々に調製される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
12. 2つのポリマーソーム集団が、投与に先立って一つに混合される、態様11記載の方法。
13. 2つのポリマーソーム集団が、経口投与、鼻腔内投与、粘膜表面への投与、吸入、皮内投与、腹腔内投与、皮下投与、静脈内投与および筋肉内投与からなる群より選択される投与経路によって投与される、態様1~12のいずれか一項記載の方法。
14. 対象が、ヒトを含む哺乳動物、または非哺乳動物である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
15. 対象が、哺乳動物であり、がん、ウイルス感染症および細菌感染症からなる群より選択される疾患に対してワクチン接種される、態様14記載の方法。
16. 対象が、ヒトであり、コロナウイルス感染症に対してワクチン接種される、態様15記載の方法。
17. コロナウイルスが、ヒト病原性である、態様16記載の方法。
18. コロナウイルスが、ベータコロナウイルスである、態様16または態様17記載の方法。
19. コロナウイルスが、サルベコウイルスまたはメルベコウイルスである、態様16~18のいずれか一項記載の方法。
20. コロナウイルスが、MERS-CoV、SARS-CoV-2またはSARS-CoV-1である、態様19記載の方法。
21. 対象が、非哺乳動物であり、ウイルス感染症および細菌感染症からなる群より選択される疾患に対してワクチン接種される、態様14記載の方法。
22. 非哺乳動物が、鳥類(例えばニワトリ、カモ、ガチョウまたはシチメンチョウなどの家禽)、魚類または甲殻類である、態様21記載の方法。
23. 鳥類が、ニワトリ、カモ、ガチョウまたはシチメンチョウである、態様21記載の方法。
24. 魚類が、サケ、マスまたはティラピアである、態様21記載の方法。
25. 甲殻類が、シュリンプ、プローン、またはカニである、態様1621記載の方法。
26. 哺乳動物が、ヤギ、ヒツジ、ウシ、またはブタである、態様14記載の方法。
27. 動物が、ブタであり、ブタ流行性下痢ウイルスに対してワクチン接種される、態様26記載の方法。
28. 動物が、有蹄動物であり、口蹄疫ウイルスに対してワクチン接種される、態様26記載の方法。
29. 封入抗原が、可溶性のまたは可溶化された抗原である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
30. 抗原、好ましくは可溶性のまたは可溶化された封入抗原が、
(i)ポリペプチド(例えば、タンパク質もしくはペプチド)、
(ii)糖質、
(iii)アンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、好ましくはDNA分子もしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、
(iv)(i)および/または(ii)および/または(iii)の組合せ
からなる群より選択される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
31. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、可溶性の封入抗原または封入アジュバントを含む酸化安定性ポリマーソームであるか、ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、可溶性の封入抗原または封入アジュバントを含む酸化感受性ポリマーソームである、態様14記載の方法。
32. アミド部分、および/または(ii)第二級アミン部分、および/または(iii)好ましくは1,4-二置換[1,2,3]トリアゾール部分もしくは1,5-二置換[1,2,3]トリアゾール部分である、1,2,3-トリアゾール部分、および/または(iv)ピラゾリン部分、および/または(vi)エステル部分、および/または(vii)カルバメート部分および/またはカーボネート部分、前記態様のいずれか一項記載の方法。
33. 第1ポリマーソーム集団および/または第2ポリマーソーム集団の外表面に抗原またはアジュバントをコンジュゲートする共有結合が、ポリマーソームの外表面に存在する反応性基を抗原またはアジュバントの反応性基と反応させることによって形成される、態様32記載の方法。
34. 共有結合が、(i)カルボキサミド結合、(ii)1,4-二置換[1,2,3]トリアゾールまたは1,5-二置換[1,2,3]トリアゾール結合、(iii)置換ピラゾリン結合からなる群より選択される、態様33記載の方法。
35. (i)ポリマーソームの外表面に存在する反応性基がアルデヒド基であり、抗原またはアジュバントの反応性基がアミン基であって、それによりカルボキサミド基を形成するか、または(ii)ポリマーソームの外表面に存在する反応性基がアルキン基であり、抗原またはアジュバントの反応性基がアジド基であって、それにより、好ましくは銅またはルテニウム触媒アジド-アルキン付加環化によって、1,2,3-トリアゾール基、さらに好ましくは1,4-二置換または1,5-二置換である1,2,3-トリアゾールを形成するか、または(iii)ポリマーソームの外表面に存在する反応性基がメタクリレートおよび/またはヒドロキシル基であり、抗原またはアジュバントの反応性基がテトラゾール基であって、それによりピラゾリン基を形成し、好ましくは該ピラゾリン基の形成がニトリルイミン中間体を含む、態様34記載の方法。
36. カルボキサミド結合を還元剤とさらに反応させることで第二級アミンが形成している、態様35記載の方法。
37. 共有結合が、リンカー部分によって形成される、態様32~36のいずれか一項記載の方法。
38. リンカー部分Lが、ペプチドリンカーまたは直鎖もしくは分岐鎖炭化水素ベースのリンカーである、態様37記載の方法。
39. リンカー部分が、1~約550個の主鎖原子、1~約500個の主鎖原子、1~約450個の主鎖原子、1~約350個の主鎖原子、1~約300個の主鎖原子、1~約250個の主鎖原子、1~約200個の主鎖原子、1~約150個の主鎖原子、1~約100個の主鎖原子、1~約50個の主鎖原子、1~約30個の主鎖原子、1~約20個の主鎖原子、1~約15個の主鎖原子、または1~約12個の主鎖原子、または1~約10個の主鎖原子を含み、ここで、主鎖原子が、N、O、PおよびSからなる群より選択される1つまたは複数のヘテロ原子で置き換えられていてもよい炭素原子である、態様37または態様38記載の方法。
40. リンカー部分が、ポリマーソームの膜にリンカー部分を組み込む膜アンカードメインを含む、態様37~39のいずれか一項記載の方法。
41. 膜アンカードメインが、脂質を含む、態様40記載の方法。
42. 脂質が、リン脂質または糖脂質である、態様41記載の方法。
43. 糖脂質が、グリコホスファチジルイノシトール(GPI)を含む、態様42記載の方法。
44. リン脂質が、スフィンゴリン脂質またはグリセロリン脂質である、態様42記載の方法。
45. スフィンゴリン脂質が、ポリエチレングリコール(PEG)にコンジュゲートされたジステアロイルホスファチジルエタノールアミン[DSPE](DSPE-PEG)またはコレステロールベースのコンジュゲートを含む、態様44記載の方法。
46. DSPE-PEGが、2~約500個のエチレンオキシド単位を含む、態様45記載の方法。
47. リンカーが、生理的条件下で非加水分解性および/または非酸化性である、態様32~46のいずれか一項記載の方法。
48. ポリマーソームの周囲膜に組み込まれる抗原が、膜結合型タンパク質または脂質抗原である、態様2~47のいずれか一項記載の方法。
49. 膜結合型タンパク質が、膜貫通タンパク質の細胞外フラグメントまたは細胞外ドメインを含む、態様48記載の方法。
50. 膜結合型タンパク質が、膜貫通タンパク質、Gタンパク質共役受容体、神経伝達物質受容体、キナーゼ、ポリン、ABC輸送体、イオン輸送体、アセチルコリン受容体、または細胞接着受容体である、態様48または態様49記載の方法。
51. 脂質抗原が、合成脂質または天然脂質である、態様48~50のいずれか一項記載の方法。
52. 抗原および/またはアジュバントを第1ポリマーソーム集団および/または第2ポリマーソーム集団のポリマーソームの外表面にコンジュゲートするための非共有結合が、ストレプトアビジンとビオチン、アビジンとビオチン、ストレプトアビジンとストレプトアビジン結合ペプチド、およびアビジンとアビジン結合ペプチドからなる群より選択される結合ペアを含むか、または静電相互作用である、態様2~51のいずれか一項記載の方法。
53. ポリマーソームの第1集団およびポリマーソームの第2集団が、同じ少なくとも1つの両親媒性ポリマーを含むか、または同じ少なくとも1つの両親媒性ポリマーから形成される、態様1~52のいずれか一項記載の方法。
54. ポリマーソームの第1集団およびポリマーソームの第2集団が、異なる少なくとも1つの両親媒性ポリマーを含むか、または異なる少なくとも1つの両親媒性ポリマーから形成される、態様1~52のいずれか一項記載の方法。
55. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、酸化安定性である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
56. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団の投与が、CD8
(+)T細胞媒介性免疫応答を誘発する能力を有し、好ましくは該誘発がインビボ、エクスビボまたはインビトロ誘発である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
57. 封入抗原が、膜タンパク質(MP)または膜結合型ペプチド(MAP)の可溶性部分を含み、好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む、前記態様のいずれか一項記載の方法。
58. 封入抗原が、ウイルススパイクタンパク質のフラグメントを含み、フラグメントが、スパイクタンパク質のS1部分、スパイクタンパク質のS2部分、スパイクタンパク質のS1部分とS2部分の組合せ、スパイクタンパク質の受容体結合ドメイン(RBD)、またはそれらの組合せを含むか、それらから本質的になるか、またはそれらからなる、前記態様のいずれか一項記載の方法。
59. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、血清構成要素の存在下で酸化安定性であり、好ましくは該酸化安定性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ酸化安定性である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
60. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、エンドソーム内で安定であり、好ましくは該安定性がインビボ、エクスビボまたはインビトロ安定性である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
61. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、対応するリポソームの酸化安定性と比較して改良された酸化安定性を有し、好ましくは該改良された安定性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロでの改良された安定性である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
62. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、可溶性封入抗原を含むその内容物を酸化非依存的に放出して、CD8
(+)T細胞媒介性免疫応答をトリガーする能力を有し、好ましくは該放出が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ放出である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
63. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、CD8
(+)T細胞媒介性免疫応答を含む細胞性免疫応答を誘発する能力を有し、好ましくは該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
64. 第1集団および/または第2集団ポリマーソームが、CD8
(+)T細胞媒介性免疫応答を含む細胞性免疫応答および/または体液性免疫応答を誘発する能力を有し、好ましくは免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
65. 体液性免疫応答が、特異的抗体の生産を含み、さらに好ましくは該免疫応答が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答である、態様64記載の方法。
66. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、エフェクターCD4
(+)T細胞の頻度を強化する能力を有し、好ましくは該強化が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ強化である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
67. 細胞性免疫応答がT細胞媒介性免疫応答を含み、好ましくは該免疫応答がインビボ、エクスビボまたはインビトロ免疫応答である、態様64記載の方法。
68. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、遊離の抗原と比較して抗原特異的CD8
(+)T細胞のクローン拡大を強化する能力を有し、好ましくは該拡大がインビボ、エクスビボまたはインビトロ拡大である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
69. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、抗原特異的エフェクターCD8
(+)T細胞を誘導する能力を有し、好ましくは該誘導が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ誘導である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
70. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、抗原特異的CD8
(+)T細胞の細胞傷害性表現型を強化する能力を有し、好ましくは該強化が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ強化である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
71. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、リンパ節常在性マクロファージおよび/またはB細胞のターゲティングを行う能力を有し、好ましくは該ターゲティングが、インビボ、エクスビボまたはインビトロターゲティングである、前記態様のいずれか一項記載の方法。
72. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、還元安定性であり、好ましくはポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、血清構成要素の存在下で還元安定性であり、さらに好ましくは該還元安定性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ還元安定性である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
73. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、低減した透過性を有し、好ましくは該低減した透過性が、対応するリポソームの透過性との比較であり、さらに好ましくは該透過性が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ透過性である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
74. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、エンドソーム内でその内容物を放出する能力を有し、好ましくは該エンドソームが後期エンドソームであり、さらに好ましくは該放出が、インビボ、エクスビボまたはインビトロ放出である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
75. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、以下の能力のうちの1つまたは複数を有する、前記態様のいずれか一項記載の方法:
(i)細胞性免疫応答を誘発する能力;好ましくは該細胞性免疫応答はCD8
(+)T細胞媒介性免疫応答を含み、さらに好ましくは該細胞性免疫応答はCD8
(+)T細胞媒介性免疫応答であり、最も好ましくは該細胞性免疫応答は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する細胞性免疫応答であり、さらに最も好ましくは該細胞性免疫応答は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する細胞性免疫応答である;
(ii)ポリマーソームの内容物をエンドソーム内で放出する能力;好ましくは該エンドソームは後期エンドソームであり、さらに好ましくは該内容物は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくは該内容物は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11 SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む;
(iii)ポリマーソームの内容物を酸化非依存的に放出してCD8
(+)T細胞媒介性免疫応答をトリガーする能力;好ましくは該内容物は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは該内容物は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む;
(iv)該抗原に対する免疫応答を刺激する能力;好ましくは該抗原は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは該抗原は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む;
(v)CD8
(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする能力;好ましくは該応答は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する応答であり、さらに好ましくは該応答は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、13および14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、ならびにSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する応答である;
(vi)ペプチドまたはタンパク質を抗原提示細胞(APC)に送達する能力;好ましくは該ペプチドまたはタンパク質は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含むか、それに由来し、さらに好ましくは該ペプチドまたはタンパク質は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、13および14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、ならびにSEQ ID NO:65~68;からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含むか、それに由来する;
(vii)CD8
(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4
(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーする能力;好ましくは該応答は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、卵白アルブミン(OVA)、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する応答であり、さらに好ましくは該応答は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、13および14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、ならびにSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する応答である;
(viii)対象における免疫応答を刺激する能力;好ましくは該応答は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する応答であり、さらに好ましくは該応答は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、13および14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、ならびにSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する応答である;
(ix)非ヒト動物を免疫処置する能力;好ましくは該免疫処置は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分に対する免疫処置であり、さらに好ましくは該免疫処置は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドに対する免疫処置である;
(x)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団は、該ポリマーソームなしでの抗原の対応する抗原性と比較して、改変された抗原性を有する;好ましくは該抗原は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分であり、さらに好ましくは該抗原は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、13および14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、ならびにSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドである;
(xi)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団は、該ポリマーソームなしでの抗原の対応する免疫原性と比較して、改変された免疫原性を有する;好ましくは該免疫原は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分であり、さらに好ましくは該免疫原は、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドである。
76. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が以下の特性のうちの1つまたは複数を有する、前記態様のいずれか一項記載の方法:
(i)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団は酸化安定性膜を含む、および/または
(ii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団は合成物である、および/または
(iii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団は非封入抗原を含まないか、または非封入抗原と混合されている、および/または
(iv)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団は両親媒性ポリマーの膜を含み、好ましくは、該両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)(PCL-PEO)、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)(PLA-PEO)、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)-ポリ(エチレンオキシド)(PLGA-PEO)、ポリ(n-ブチルアクリレート)-ポリ(エチレンオキシド)(PnBA-PEO)、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)、ポリ(ジメチルシロキサン-b-エチレンオキシド)(PDMS-PEO)からなる群より選択される、および/または
(v)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団は、ベシクル膜を形成する両親媒性合成ブロック共重合体を含む、および/または
(vi)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団は70nm超の直径を有し、好ましくは該直径は約100nm~約1μm、または約100nm~約750nm、または約100nm~約500nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲にあり、最も好ましくは該直径は約200nmであり、さらに最も好ましくは約100nm~約200nmである、および/または
(vii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団はベシクルの形態を有する、
(viii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団は自己集合性である、
(ix)該ポリマーソームの第1集団および/または第2集団は、両親媒性ポリマーからなる膜を含み、該両親媒性ポリマーは、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)(PCL-PEO)、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)(PLA-PEO)、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)-ポリ(エチレンオキシド)(PLGA-PEO)、ポリ(n-ブチルアクリレート)-ポリ(エチレンオキシド)(PnBA-PEO)、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)、ポリ(ジメチルシロキサン-b-エチレンオキシド)(PDMS-PEO)からなる群より独立に選択される。
77. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団の平均直径が、約100nm~約1μm、または約100nm~約750nm、または約100nm~約500nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲にある、前記態様のいずれか一項記載の方法。
78. 抗原が、免疫原である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
79. 抗原が、(i)自己抗原、(ii)非自己抗原、(iii)非自己免疫原および(iv)自己免疫原からなる群より選択される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
80. 抗原が、
(i)ウイルスポリペプチド配列と少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチド;好ましくは該ウイルスポリペプチド配列は、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、MERS-CoVスパイクタンパク質、またはSARS-CoV-2スパイクタンパク質であり、さらに好ましくは該ウイルスポリペプチド配列は、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7 およびSEQ ID NO:8、SEQ ID NO:12、13および14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、ならびにSEQ ID NO:65~68からなる群より選択される;
(ii)細菌ポリペプチド配列と少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチド;
(iii)哺乳類ポリペプチド配列または鳥類ポリペプチド配列と少なくとも80%以上(例えば少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチド;好ましくは該哺乳類ポリペプチド配列または該鳥類ポリペプチド配列は卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドであり、さらに好ましくは該哺乳類ポリペプチド配列または該鳥類ポリペプチド配列は、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11からなる群より選択される、
からなる群より選択される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
81. 哺乳動物抗原が、ヒト、齧歯類動物、ウサギおよびウマのポリペプチド配列からなる群より選択されるポリペプチド配列を含む、態様3~80のいずれか一項記載の方法。
82. 抗原が、抗体またはそのフラグメントである、前記態様のいずれか一項記載の方法。
83. 抗原が、
(i)インフルエンザヘマグルチニン(HA)、好ましくはSEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8からなる群より選択されるもの、
(ii)ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)、好ましくはSEQ ID NO:6、
(iii)卵白アルブミン(OVA)、好ましくはSEQ ID NO:4、
(iv)B16ペプチド、好ましくはSEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10およびSEQ ID NO:11からなる群より選択されるもの、
(v)MC38ペプチド、好ましくはSEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2およびSEQ ID NO:3からなる群より選択されるもの、
(vi)B16ペプチドおよびMC38ペプチド、好ましくは該ペプチドは、群:(i)SEQ ID NO:1~3および(ii)SEQ ID NO:9~11から独立して選択される、
(vii)ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質およびその可溶性フラグメント、好ましくはSEQ ID NO:12、13または14のフラグメント
(viii)MERS-CoVスパイクタンパク質およびその可溶性フラグメント、好ましくはSEQ ID NO:42~46のうちのいずれか一つのスパイクタンパク質(フラグメント)、
(ix)SARS-CoV-2スパイクタンパク質およびその可溶性フラグメント、好ましくはSEQ ID NO:19~41およびSEQ ID NO:65~66のうちのいずれか一つのスパイクタンパク質(フラグメント);および
(x)SARS-CoV-1スパイクタンパク質およびその可溶性フラグメント、好ましくはSEQ ID NO:47~51のうちのいずれか一つのスパイクタンパク質(フラグメント)
からなる群より選択される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
84. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、カチオン性ポリマーソーム、アニオン性ポリマーソーム、非イオン性ポリマーソームおよびそれらの混合物からなる群より選択される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
85. ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、本質的に非免疫原性または本質的に非抗原性であり、好ましくはブロック共重合体または両親媒性ポリマーが非免疫原性または非抗原性である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
86. ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、免疫賦活薬でもアジュバントでもない、態様85記載の方法。
87. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、ジブロックまたはトリブロック(A-B-AまたはA-B-C)共重合体を含むか同共重合体からなる両親媒性ポリマーを含むか、または同両親媒性ポリマーから形成される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
88. 両親媒性ポリマーが、共重合体ポリ(N-ビニルピロリドン)-b-PLAを含む、態様21~87のいずれか一項記載の方法。
89. 両親媒性ポリマーが、カルボン酸、アミド、アミン、アルキレン、ジアルキルシロキサン、エーテルまたはアルキレンスルフィドのモノマー単位を少なくとも1つは含む、態様21~88のいずれか一項記載の方法。
90. 両親媒性ポリマーが、オリゴ(オキシエチレン)ブロック、ポリ(オキシエチレン)ブロック、オリゴ(オキシプロピレン)ブロック、ポリ(オキシプロピレン)ブロック、オリゴ(オキシブチレン)ブロックおよびポリ(オキシブチレン)ブロックからなる群より選択されるポリエーテルブロックである、態様21~89のいずれか一項記載の方法。
91. 両親媒性ポリマーが、ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PB-PEO)ジブロック共重合体であるか、両親媒性ポリマーが、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(PDMS-PEO)ジブロック共重合体、またはポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)である、態様21~90のいずれか一項記載の方法。
92. PB-PEOジブロック共重合体が、5~50ブロックPBおよび5~50ブロックPEOを含むか、PB-PEOジブロック共重合体が、好ましくは5~100ブロックPDMSおよび5~100ブロックPEOを含む、態様91記載の方法。
93. 両親媒性ポリマーが、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PLA-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくは該PLA-PEO/POPCが、75対25(例えば75/25)のPLA-PEO対POPC(例えばPLA-PEO/POPC)の比を有する、態様21~92のいずれか一項記載の方法。
94. 両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PCL-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくは該PCL-PEO/POPCが、75対25(例えば75/25)のPCL-PEO対POPC(例えばPCL-PEO/POPC)の比を有する、態様21~93のいずれか一項記載の方法。
95. 両親媒性ポリマーが、ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)である、態様21~94のいずれか一項記載の方法。
96. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、ジブロック共重合体PBD
21-PEO
14(BD21)および/またはトリブロック共重合体PMOXA
12-PDMS
55-PMOXA
12を含む、態様21~95のいずれか一項記載の方法。
97. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、1つまたは複数のコンパートメントを含む、前記態様のいずれか一項記載の方法。
98. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、1つまたは複数のコンパートメントを含み、1つまたは複数のコンパートメントのそれぞれが、少なくとも1つのペプチド、タンパク質、および核酸を封入し、好ましくは該ペプチド、タンパク質、および核酸のうちの該少なくとも1つが、免疫原性または抗原性であり、さらに好ましくは1つまたは複数のコンパートメントのそれぞれが、同じ両親媒性ポリマーまたは異なる両親媒性ポリマーで構成される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
99. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、2つ以上のコンパートメントを含み、該コンパートメントが、外側ブロック共重合体ベシクルと少なくとも1つの内側ブロック共重合体ベシクルとを含み、該少なくとも1つの内側ブロック共重合体ベシクルが、外側ブロック共重合体ベシクルの内部に封入され、好ましくは外側ブロック共重合体ベシクルが、
(i)ポリ[スチレン-b-ポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)](PS-PIAT)、
(ii)ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PBD-PEO)、
(iii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(カプロラクトン)(PEO-PCL)、
(iv)ポリ(エチルエチレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PEE-PEO)、
(v)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(乳酸)(PEO-PLA)、
(vi)ポリ(イソプレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PI-PEO)、
(vii)ポリ(2-ビニルピリジン)-ポリ(エチレンオキシド)(P2VP-PEO)、
(viii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PEO-PNIPAm)、
(ix)ポリ(スチレン)-ポリ(アクリル酸)(PS-PAA)、
(x)ポリ(エチレングリコール)-ポリプロピレンスルフィド)(PEG-PPS)、
(xi)ポリ(2-メチルオキサゾリン)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-PDMS-PMOXA)、
(xii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PEO-PDMS-PMOXA)、
(xiii)ポリ(メチルフェニルシラン)-ポリ(エチレンオキシド)(PMPS-PEO-PMPS-PEO-PMPS)、および
(xiv)ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)
からなる群より独立して選択される共重合体で形成されたポリマーソームであり、さらに好ましくは該少なくとも1つの内側ブロック共重合体ベシクルは
(i)ポリ[スチレン-b-ポリ(L-イソシアノアラニン(2-チオフェン-3-イル-エチル)アミド)](PS-PIAT)、
(ii)ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PBD-PEO)、
(iii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(カプロラクトン)(PEO-PCL)、
(iv)ポリ(エチルエチレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PEE-PEO)、
(v)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(乳酸)(PEO-PLA)、
(vi)ポリ(イソプレン)-ポリ(エチレンオキシド)(PI-PEO)、
(vii)ポリ(2-ビニルピリジン)-ポリ(エチレンオキシド)(P2VP-PEO)、
(viii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PEO-PNIPAm)、
(ix)ポリ(スチレン)-ポリ(アクリル酸)(PS-PAA)、
(x)ポリ(エチレングリコール)-ポリプロピレンスルフィド)(PEG-PPS)、
(xi)ポリ(2-メチルオキサゾリン)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PMOXA-PDMS-PMOXA)、
(xii)ポリ(エチレンオキシド)-ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(2-メチルオキサゾリン)(PEO-PDMS-PMOXA)、
(xiii)ポリ(メチルフェニルシラン)-ポリ(エチレンオキシド)(PMPS-PEO-PMPS-PEO-PMPS)、および
(xiv)ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)
からなる群より独立して選択される共重合体で形成されたポリマーソームである、前記態様のいずれか一項記載の方法。
100. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、脂質ポリマーを含む、前記態様のいずれか一項記載の方法。
101. ポリマーソームの第2集団と関連づけられたアジュバントが、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(すなわちCpG ODN)、細菌およびマイコバクテリアの細胞壁由来の構成要素ならびにタンパク質からなる群より選択される、好ましくは、CpGオリゴデオキシヌクレオチドが、CpG-A ODN、CpG-B ODN、およびCpG-C ODN(例えば、本明細書の
図41に描かれている)からなる群より選択され、より好ましくは、CpG-A ODNが、TLR9依存性NF-kBシグナリングおよび炎症誘発性サイトカイン(例えばIL-6)産生を刺激するよりも、形質細胞様樹状細胞(pDC)からのIFN-α産生を優先的に誘導することができ、かつ/またはCpG-B ODNが、IFN-α分泌を刺激するよりも、B細胞およびTLR9依存性NF-kBシグナリングを優先的に活性化することができ、かつ/またはCpG-C ODNが、(i)TLR9依存性NF-kBシグナリングおよび炎症誘発性サイトカイン(例えばIL-6)産生を刺激するよりも、形質細胞様樹状細胞(pDC)からのIFN-α産生を優先的に誘導することができ、ならびに(ii)IFN-α分泌を刺激するよりも、B細胞およびTLR9依存性NF-kBシグナリングを優先的に活性化することができる、前記態様のいずれか一項記載の方法。
102. 以下の工程を含む、ポリマーソーム中の封入抗原または封入アジュバントを生産するための方法:
(i)両親媒性ポリマーをクロロホルムに溶解する工程であって、好ましくは両親媒性ポリマーがポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)である工程、
(ii)溶解した両親媒性ポリマーを乾燥させることで、ポリマーフィルムを形成させる工程、
(iii)工程(ii)の両親媒性ポリマーフィルムに、可溶化された抗原または可溶性アジュバントを加える工程であって、該アジュバントが、好ましくは、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(すなわちCpG ODN)、細菌およびマイコバクテリアの細胞壁由来の構成要素ならびにタンパク質からなる群より選択され、該抗原が
(a)ポリペプチド、好ましくはポリペプチド抗原は前記態様のいずれか一項に従い、さらに好ましくはポリペプチド抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質もしくはSARS-CoV-2スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくはポリペプチド抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12~14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(b)糖質、
(c)アンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、好ましくはDNA分子またはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、
(d)(a)および/または(b)および/または(c)の組合せ
からなる群より選択される工程、
(iv)工程(iii)のポリマーフィルムを再水和することで、ポリマーベシクルを形成させる工程、
(v)任意で、工程(iv)のポリマーベシクルを濾過することで、ポリマーベシクル単分散ベシクルを精製する工程、および/または
(vi)任意で、工程(iv)または工程(v)のポリマーベシクルを非封入抗原から単離する工程。
103. 態様1~101のいずれか一項に規定したポリマーソーム中の封入抗原または封入アジュバントを生産するための方法。
104. 態様102または態様103に規定したポリマーソーム中の封入抗原または封入アジュバントを生産するための方法によって生産される、ポリマーソーム。
105. 態様1~102のいずれか一項に規定したポリマーソームの第1集団および第2集団を含む、組成物。
106. 薬学的組成物または診断組成物である、態様105記載の組成物。
107. 免疫原性組成物、抗原性組成物または免疫治療組成物である、態様105または態様106記載の組成物。
108. ワクチンである、態様105または態様106記載の組成物。
109. 経口用、鼻腔内用、吸入用、皮内用、腹腔内用、筋肉内用、皮下用、静脈用、または粘膜表面への投与用に製剤化された、態様105~108のいずれか一項記載の組成物。
110. 態様1~101のいずれか一項に規定したポリマーソームの第1集団および第2集団または態様105~109に規定した組成物を含み、薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含むワクチン。
111. (i)抗原が、インフルエンザヘマグルチニン(HA)を含み、ワクチンが、インフルエンザワクチンであり、好ましくは該インフルエンザヘマグルチニン(HA)が、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7およびSEQ ID NO:8からなる群より選択されるポリペプチドと少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(ii)抗原が、ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)を含み、ワクチンが、ブタインフルエンザワクチンであり、好ましくは該ブタインフルエンザヘマグルチニン(HA)が、SEQ ID NO:6と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(iii)抗原が、ブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質を含み、ワクチンが、PEDワクチンであり、好ましくは該スパイクタンパク質が、SEQ ID NO:12、13または14のポリペプチドと少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(iv)抗原が、卵白アルブミン(OVA)を含み、ワクチンが、がんワクチンであり、好ましくは該卵白アルブミン(OVA)は、SEQ ID NO:4と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(v)抗原が、B16ペプチドを含み、ワクチンが、がんワクチンであり、好ましくは該ペプチドが、SEQ ID NO:9~11からなる群より選択される、
(vi)抗原が、MC38ペプチドを含み、ワクチンが、がんワクチンであり、好ましくは該ペプチドが、SEQ ID NO:1~3からなる群より選択される、
(vii)抗原が、B16ペプチドおよびMC38ペプチドを含み、ワクチンが、がんワクチンであり、好ましくは該ペプチドが、群:(i)SEQ ID NO:1~3および(ii)SEQ ID NO:9~11から独立して選択される、
(viii)抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であり、ワクチンが、がんワクチンである、
(ix)抗原が、MERS-CoVスパイクタンパク質またはそのフラグメントを含み、ワクチンが、MERSワクチンであり、好ましくは該スパイクタンパク質が、SEQ ID NO:42~46のいずれか一つのポリペプチドと少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
(x)抗原が、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはそのフラグメントを含み、ワクチンが、COVID-19ワクチンであり、好ましくは該スパイクタンパク質が、SEQ ID NO:19~41およびSEQ ID NO:65~66、67~68のいずれか一つのポリペプチドと少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、または
(xi)抗原が、SARS-CoV-1スパイクタンパク質またはそのフラグメントを含み、ワクチンが、COVID-19ワクチンであり、好ましくは該スパイクタンパク質が、SEQ ID NO:19~41のいずれか一つのポリペプチドと少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、
態様110記載のワクチン。
112. 態様1~101に規定したポリマーソームの第1集団および第2集団または態様105~109に規定した組成物を含む、キット。
113. 感染性疾患、がんまたは自己免疫疾患を処置または防止する必要がある対象(例えばヒト)において感染性疾患、がんまたは自己免疫疾患を処置または防止するための方法であって、態様1~101に規定したポリマーソームの第1集団および第2集団または態様105~109に規定した組成物の治療有効量を対象に投与する工程を含み、好ましくは感染性疾患がウイルス感染性疾患または細菌感染性疾患である、方法。
114. 以下の工程を含む、ヒトまたは非ヒト動物を免疫処置するための方法:
i. 態様1~101に規定したポリマーソームの第1集団および第2集団または態様105~109に規定した組成物を用意する工程、
ii. 非ヒト動物に該ポリマーソームの第1集団および第2集団または該組成物を投与する工程。
115. 医薬として使用するための、態様1~101のいずれか一項に規定したポリマーソームの第1集団および第2集団または態様105~109に規定した組成物。
116. 以下の方法の1つまたは複数において使用するための、態様1~101のいずれか一項に規定したポリマーソームの第1集団および第2集団または態様105~109に規定した組成物:
(i)抗体を発見および/またはスクリーニングおよび/または調製する方法、
(ii)ワクチンを発見および/またはスクリーニングおよび/または調製する方法、
(iii)免疫原性組成物または免疫賦活組成物を生産または調製する方法、
(iv)タンパク質および/またはペプチドの標的送達の方法であって、好ましくは標的送達が、前記態様のいずれか一項記載の抗原性タンパク質および/またはペプチドの標的送達であり、さらに好ましくは抗原性タンパク質および/または抗原性ペプチドが、膜タンパク質(MP)または膜結合ペプチド(MAP)の可溶性部分を含み、最も好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51およびSEQ ID NO:65、66、67、68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であり、さらに最も好ましくは標的送達が、対象において実行される、方法、
(v)抗原に対する免疫応答を刺激する方法であって、好ましくは抗原が、前記態様のいずれか一項記載の抗原であり、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であり、さらに最も好ましくは対象における該抗原に対する免疫応答の刺激に使用するための、方法、
(vi)CD8
(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする方法、好ましくは前記態様のいずれか一項記載の抗原に対するCD8
(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーする方法であって、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、方法、
(vii)前記態様のいずれか一項記載の抗原提示細胞(APC)にペプチドおよび/またはタンパク質を送達する方法であって、好ましくはペプチドおよび/またはタンパク質が、前記態様のいずれか一項記載の抗原であり、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、最も好ましくは抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、13、14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である、方法、
(viii)CD8
(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4
(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーする方法であって、好ましくは応答が、前記態様のいずれか一項記載の抗原に対する応答であり、さらに好ましくは抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは応答が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、13、14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、およびSEQ ID NO:65~68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一である抗原に対する応答である、方法、
(ix)感染性疾患の処置、改善、予防または診断のための方法であって、好ましくは感染性疾患が、ウイルス感染性疾患または細菌感染性疾患であり、さらに好ましくはウイルス感染性疾患が、インフルエンザ感染症、PEDウイルス感染症、口蹄疫ウイルス感染症、呼吸器合胞体ウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症からなる群より選択される、方法、
(x)がんまたは自己免疫疾患の処置、改善、予防または診断のための方法、
(xi)がん細胞を化学治療に対して感作させるための方法、
(xii)がん細胞におけるアポトーシスを誘導するための方法、
(xiii)対象における免疫応答を刺激するための方法、
(xiv)ヒトまたは非ヒト動物を免疫処置するための方法、
(xv)ハイブリドーマの調製方法、
(xvi)前記態様のいずれか一項記載の方法、
(xvii)インビボおよび/またはエクスビボおよび/またはインビトロでの方法である、前記(i)~(xvi)のいずれか一項記載の方法、
(xviii)抗原が、該抗原が使用される環境にとって異種である、前記(i)~(xvii)のいずれか一項記載の方法。
117. 以下のうちの1つまたは複数のための、態様1~101のいずれか一項に規定したポリマーソームの第1集団および第2集団または態様105~109のいずれか一項に規定した組成物の使用:
(i)抗体を発見および/またはスクリーニングおよび/または調製するため、
(ii)ワクチンを発見および/またはスクリーニングおよび/または調製するため、
(iii)免疫原性組成物または免疫賦活組成物を生産または調製するため、
(iv)タンパク質および/またはペプチドの標的送達のためであって、好ましくは標的送達が、抗原性タンパク質および/または抗原性ペプチドの標的送達であり、さらに好ましくは標的送達が、対象において実行される標的送達のため、
(v)抗原に対する免疫応答を刺激するためであって、好ましくは対象における抗原に対する免疫応答を刺激するのに使用するため、
(vi)CD8
(+)T細胞媒介性免疫応答によって誘導される交差防御をトリガーするため、
(vii)抗原提示細胞(APC)にペプチドまたはタンパク質を送達するためであって、好ましくはペプチドまたはタンパク質が、抗原であり、さらに好ましくはペプチドまたはタンパク質が、免疫原性または免疫治療用である送達のため、
(viii)CD8
(+)T細胞媒介性免疫応答および/またはCD4
(+)T細胞媒介性免疫応答を含む免疫応答をトリガーするため、
(ix)感染性疾患の処置、改善、予防または診断のための方法において、好ましくは感染性疾患が、ウイルス感染性疾患または細菌感染性疾患であり、さらに好ましくはウイルス感染性疾患が、インフルエンザ感染症、PEDウイルス感染症、呼吸器合胞体ウイルス化燃焼、ヘルペスウイルス感染症からなる群より選択される、感染性疾患の処置、改善、予防または診断のための方法において、
(x)がんまたは自己免疫疾患の処置、改善、予防または診断のため、
(xi)がん細胞を化学治療に対して感作させるため、
(xii)がん細胞におけるアポトーシスの誘導のため、
(xiii)対象における免疫応答を刺激するため、
(xiv)ヒトまたは非ヒト動物を免疫処置するため、
(xv)ハイブリドーマの調製のため、
(xvi)前記態様のいずれか一項記載の方法において、
(xvii)インビボおよび/またはエクスビボおよび/またはインビトロ使用である、前記(i)~(xvi)のいずれか一項記載の使用のため、
(xviii)抗原が、該抗原が使用される環境にとって異種である、前記(i)~(xvii)のいずれか一項記載の使用のため。
118. 免疫応答を誘発するための、アジュバントのみまたは抗原のみと関連づけられた、好ましくはポリマーソーム内に可溶性封入アジュバントのみまたは可溶性封入抗原のみを封入している、約120nm以上の平均直径を有するポリマーソーム集団の使用であって、可溶性封入抗原が、好ましくは
(i)ポリペプチド(例えば、タンパク質もしくはペプチド)、
(ii)糖質、
(iii)好ましくはアンチセンスオリゴヌクレオチドでなく、さらに好ましくはDNAもしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、または
(iv)(i)および/もしくは(ii)および/もしくは(iii)の組合せ
からなる群より選択される、使用。
119. ポリマーソーム集団の平均直径が、約120nm~約1μm、または約140nm~約750nm、または約120nm~約500nm、または約140nm~約250nm、約120nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲にある、態様118記載の使用。
120. ポリマーソームが、カチオン性ポリマーソーム、アニオン性ポリマーソームおよびノニオン性ポリマーソームからなる群より選択される、態様118~119のいずれか一項記載の使用。
121. ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、本質的に非免疫原性または本質的に非抗原性であり、好ましくはブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、非免疫原性または非抗原性である、態様120記載の使用。
122. ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、免疫賦活薬でもアジュバントでもない態様118~121のいずれか一項記載の使用。
123. 両親媒性ポリマーが、ジブロックまたはトリブロック(A-B-AまたはA-B-C)共重合体を含む、態様118~122のいずれか一項記載の使用。
124. 両親媒性ポリマーが、共重合体ポリ(N-ビニルピロリドン)-b-PLAを含む、態様118~123のいずれか一項記載の使用。
125. 両親媒性ポリマーが、カルボン酸、アミド、アミン、アルキレン、ジアルキルシロキサン、エーテルまたはアルキレンスルフィドのモノマー単位を少なくとも1つは含む、態様118~124のいずれか一項記載の使用。
126. 両親媒性ポリマーが、オリゴ(オキシエチレン)ブロック、ポリ(オキシエチレン)ブロック、オリゴ(オキシプロピレン)ブロック、ポリ(オキシプロピレン)ブロック、オリゴ(オキシブチレン)ブロックおよびポリ(オキシブチレン)ブロックからなる群より選択されるポリエーテルブロックである、態様118~124のいずれか一項記載の使用。
127. 両親媒性ポリマーが、ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PB-PEO)またはポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(PDMS-PEO)ジブロック共重合体またはポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)である、態様118~126のいずれか一項記載の使用。
128. PB-PEOジブロック共重合体が、5~50ブロックPBおよび5~50ブロックPEOを含むか、好ましくはPB-PEOジブロック共重合体が、好ましくは5~100ブロックPDMSおよび5~100ブロックPEOを含む、態様127記載の使用。
129. 両親媒性ポリマーが、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PLA-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくは該PLA-PEO/POPCが75対25(例えば75/25)のPLA-PEO対POPC(例えばPLA-PEO/POPC)の比を有する、態様118~128のいずれか一項記載の使用。
130. 両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PCL-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくは該PCL-PEO/POPCが75対25(例えば75/25)のPCL-PEO対POPC(例えばPCL-PEO/POPC)の比を有する、態様118~129のいずれか一項記載の使用。
131. 両親媒性ポリマーが、ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)である、態様118~130のいずれか一項記載の使用。
132. ポリマーソームが、ジブロック共重合体PBD
21-PEO
14(BD21)またはPDMS
47PEO
36もしくはトリブロック共重合体PMOXA
12-PDMS
55-PMOXA
12を含む、態様118~131のいずれか一項記載の使用。
133. 抗原とアジュバントとの投与によって対象における免疫応答を誘発する方法であって、抗原が、ポリマーソームの第1集団と関連づけられ、ポリマーソームの第2集団が、アジュバントとして作用し、それら2つのポリマーソーム集団が対象に投与される方法。
134. 抗原とアジュバントとを投与する(例えば共投与する、例えば同時に投与する、または実質的に同時の投与、この場合、投与は、例えば、同時にまたはほぼ同時に、例えば連続的に、投与される2回の別個の注射によって行われうる)ことによって、対象における免疫応答を調整する方法であって、抗原が、ポリマーソームの第1集団と関連づけられ、アジュバントが、ポリマーソームの第2集団と関連づけられ、前記2つのポリマーソーム集団が、対象に投与(例えば共投与)され、前記2つの別個の集団の投与が、遊離型のアジュバントを対象に投与する場合と比較しておよび/またはポリマーソームの第1集団と関連づけられた抗原だけを投与する場合と比較して、IFNγ-、TNFα-,IL-2およびIL-12からなる群より選択される1種または複数種のTh1サイトカイン(好ましくは1種のTh1サイトカインだけ)を発現するCD4+T細胞の数を増加させることによって、該免疫応答を調整し、好ましくは、該抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質もしくはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは、該抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含み、最も好ましくは、該IFNγが、UniProtKBアクセッション番号:P01579を有し、該TNFαが、UniProtKBアクセッション番号:P01375を有し、該IL-2が、UniProtKBアクセッション番号:P60568を有し、および/または該IL-12が、UniProtKBアクセッション番号:P29459もしくはP29460を有する、方法。
135. 免疫応答が、Th1免疫応答とTh2免疫応答とを含み、好ましくは、該Th2免疫応答が、インターロイキン4(IL-4、例えばUniProtKBアクセッション番号:P05112を有するもの)およびインターロイキン5(IL-5、例えばUniProtKBアクセッション番号:P05113を有するもの)からなる群より選択される1種または複数種のサイトカインの(例えばTh2細胞による)分泌を含み、さらに好ましくは、該Th1免疫応答が、インターフェロンガンマ(IFNγ、例えばUniProtKBアクセッション番号:P01579を有するもの)、腫瘍壊死因子アルファ(TNFα、例えばUniProtKBアクセッション番号:P01375を有するもの)、インターロイキン-2(IL-2、例えばUniProtKBアクセッション番号:P60568を有するもの)および/またはインターロイキン12(IL-12、例えばUniProtKBアクセッション番号:P29459またはP29460を有するもの)からなる群より選択される1種または複数種のサイトカインの(例えばTh1細胞による)分泌を含む、前記態様のいずれか一項記載の方法。
136. アジュバントが、CpGである、前記態様のいずれか一項記載の方法。
137. 免疫応答が、適応免疫応答を含む、前記態様のいずれか一項記載の方法。
138. 免疫応答が、体液性免疫応答を含み、好ましくは、該体液性応答が、抗抗原免疫グロブリンG(IgG)抗体を含み、さらに好ましくは、該IgG抗体が、IgG1抗体および/またはIgG2抗体を含み、最も好ましくは、該IgG抗体が、IgG1抗体および/またはIgG2b抗体を含む、前記態様のいずれか一項記載の方法。
139. 前記2つのポリマーソーム集団が、Th1免疫応答とTh2免疫応答との間の免疫バランスを調整することができ、好ましくは、前記2つのポリマーソーム集団が、Th2免疫応答に対してTh1免疫応答が優勢になるように、Th1免疫応答とTh2免疫応答との間の免疫バランスを調整することができる、前記態様のいずれか一項記載の方法。
140. ポリマーソームの第1集団と関連づけられた抗原が、該ポリマーソームの第1集団内に封入され、および/またはポリマーソームの第2集団と関連づけられたアジュバントが、該ポリマーソームの第2集団内に封入される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
141. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、関連づけられていない抗原および/または関連づけられていないアジュバントを実質的に含まず、好ましくは、非封入抗原および/または非封入アジュバントを実質的に含まない、前記態様のいずれか一項記載の方法。
142. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、均一なサイズ分布を有し、好ましくは、均一なサイズ分布が、約100nm~約200nmの範囲内にあり、さらに好ましくは、該均一なサイズ分布が、約130nm~約185nmの範囲内の平均直径を有し、最も好ましくは、該サイズが、動的光散乱(DLS)法を使って決定される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
143. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、二重層コンフォメーションを有し、好ましくは、約5nm~約35nmの範囲、好ましくは約7nm~約20nmの範囲の二重層厚さを有する、前記態様のいずれか一項記載の方法。
144. 2つのポリマーソーム集団が、経口投与、鼻腔内投与、粘膜表面への投与、吸入、皮内投与、腹腔内投与、皮下投与、静脈内投与および筋肉内投与からなる群より選択される投与経路によって投与される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
145. 2つのポリマーソーム集団が、同時にまたは連続して投与される(例えば実質的に同時の投与、この場合、投与は、例えば、同時にまたはほぼ同時に投与される2回の別個の注射によって行われうる)、前記態様のいずれか一項記載の方法。
146. 2つのポリマーソーム集団が、投与に先立って、互いに混合され、好ましくは、該2つのポリマーソーム集団の混合物が、50:50v/v混合物であり、さらに好ましくは、該アジュバントが、該抗原の分解を低減することができ、最も好ましくは、該ポリマーソームの第2集団が、該抗原の分解を低減することができる、前記態様のいずれか一項記載の方法。
147. 対象が、ヒトを含む哺乳動物、または非哺乳動物である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
148. 対象が、哺乳動物であって、該方法が、がん、ウイルス感染症および細菌感染症からなる群より選択される疾患に対するワクチン接種方法であり、対象が、好ましくはヒトであって、好ましくはコロナウイルス感染症に対してワクチン接種され、コロナウイルスが、好ましくはMERS-CoV、SARS-CoV-2またはSARS-CoV-1である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
149. 封入抗原が、可溶性のまたは可溶化された抗原である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
150. 抗原、好ましくは可溶性のまたは可溶化された封入抗原が、
i)ポリペプチド(例えばタンパク質またはペプチド)、
ii)糖質、
iii)アンチセンスオリゴヌクレオチドではなく、好ましくはDNA分子もしくはmRNA分子である、ポリヌクレオチド、
iv)i)および/またはii)および/またはiii)の組合せ
からなる群より選択される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
151. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、酸化安定性である、前記態様のいずれか一項記載の方法。
152. 封入抗原が、膜タンパク質(MP)または膜結合型ペプチド(MAP)の可溶性部分を含み、好ましくは該抗原が、インフルエンザヘマグルチニン、ブタインフルエンザヘマグルチニン、スパイクタンパク質、例えばブタ流行性下痢ウイルススパイクタンパク質、ヒト病原性コロナウイルスのスパイクタンパク質、例えばMERS-CoVスパイクタンパク質、SARS-CoV-2スパイクタンパク質、またはSARS-CoV-1スパイクタンパク質、卵白アルブミン(OVA)、B16ペプチドまたはMC38ペプチドの可溶性部分を含み、さらに好ましくは該抗原が、SEQ ID NO:1、SEQ ID NO:2、SEQ ID NO:3、SEQ ID NO:4、SEQ ID NO:5、SEQ ID NO:6、SEQ ID NO:7、SEQ ID NO:8、SEQ ID NO:9、SEQ ID NO:10、SEQ ID NO:11、SEQ ID NO:12、SEQ ID NO:13、SEQ ID NO:14、SEQ ID NO:43~46、SEQ ID NO:34~41、SEQ ID NO:48~51、SEQ ID NO:65、SEQ ID NO:66、SEQ ID NO:67およびSEQ ID NO:68からなる群より選択されるポリペプチド配列と少なくとも60%以上(例えば少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%または100%)同一であるポリペプチドを含む、前記態様のいずれか一項記載の方法。
153. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、以下の特性のうちの1つまたは複数を有する、前記態様のいずれか一項記載の方法:
i)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、酸化安定性膜を含む、および/または
ii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、合成物である、および/または
iii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、非封入抗原を含まないか、または非封入抗原と混合されている、および/または
iv)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、両親媒性ポリマーの膜を含み、好ましくは、該両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)(PCL-PEO)、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)(PLA-PEO)、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)-ポリ(エチレンオキシド)(PLGA-PEO)、ポリ(n-ブチルアクリレート)-ポリ(エチレンオキシド)(PnBA-PEO)、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)、ポリ(ジメチルシロキサン-b-エチレンオキシド)(PDMS-PEO)からなる群より選択される、および/または
v)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、ベシクル膜を形成する両親媒性合成ブロック共重合体を含む、および/または
vi)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、70nm超の直径を有し、好ましくは該直径が、約100nm~約1μm、または約100nm~約750nm、または約100nm~約500nm、または約125nm~約250nm、約140nm~約240nm、約150nm~約235nm、約170nm~約230nm、または約220nm~約180nm、または約190nm~約210nmの範囲にあり、最も好ましくは該直径が、約200nm、さらに最も好ましくは約100nm~約200nmである、および/または
vii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、ベシクルの形態を有する、
viii)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、自己集合性である、
ix)ブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、本質的に非免疫原性または本質的に非抗原性であり、好ましくはブロック共重合体または両親媒性ポリマーが、非免疫原性または非抗原性である、
x)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、両親媒性ポリマーからなる膜を含み、該両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)(PCL-PEO)、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)(PLA-PEO)、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)-ポリ(エチレンオキシド)(PLGA-PEO)、ポリ(n-ブチルアクリレート)-ポリ(エチレンオキシド)(PnBA-PEO)、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)、ポリ(ジメチルシロキサン-b-エチレンオキシド)(PDMS-PEO)からなる群より独立して選択される。
154. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、ジブロックまたはトリブロック(A-B-AまたはA-B-C)共重合体を含むもしくは同共重合体からなる両親媒性ポリマーを含むか、または同両親媒性ポリマーから形成される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
155.(a)両親媒性ポリマーが、共重合体ポリ(N-ビニルピロリドン)-b-PLAを含み、
(b)両親媒性ポリマーが、ポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(PB-PEO)ジブロック共重合体であるか、両親媒性ポリマーが、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(PDMS-PEO)ジブロック共重合体、またはポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(アクリル酸)(PDMS-PAA)であり、PB-PEOジブロック共重合体が、好ましくは5~50ブロックPBおよび5~50ブロックPEOを含み、またはPB-PDMSジブロック共重合体が、好ましくは5~100ブロックPDMSおよび5~100ブロックPEOを含み、
(c)両親媒性ポリマーが、ポリ(ラクチド)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PLA-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくはPLA-PEO/POPCが、75対25(例えば75/25)のPLA-PEO対POPC(例えばPLA-PEO/POPC)の比を有し、
(d)両親媒性ポリマーが、ポリ(カプロラクトン)-ポリ(エチレンオキシド)/1-パルミトイル-2-オレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリン(PCL-PEO/POPC)共重合体であり、好ましくはPCL-PEO/POPCが、75対25(例えば75/25)のPCL-PEO対POPC(例えばPCL-PEO/POPC)の比を有し、
(e)両親媒性ポリマーが、ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(BD)であり、および/または
(f)ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、ジブロック共重合体PBD
21-PEO
14(BD21)および/またはトリブロック共重合体PMOXA
12-PDMS
55-PMOXA
12を含む、
前記態様のいずれか一項記載の方法。
156. ポリマーソームの第1集団および/または第2集団が、脂質ポリマーを含む、前記態様のいずれか一項記載の方法。
157. ポリマーソームの第2集団と関連づけられたアジュバントが、CpGオリゴデオキシヌクレオチド(すなわちCpG ODN)、細菌およびマイコバクテリアの細胞壁由来の構成要素ならびにタンパク質からなる群より選択される、前記態様のいずれか一項記載の方法。
158. 前記態様または項目のいずれか一項記載のポリマーソームの第1集団および第2集団を含む、組成物またはキット。
159. 医薬としておよび/または治療において使用するための、前記態様のいずれか一項記載の組成物またはキット。
160. がん、ウイルス感染症および細菌感染症からなる群より選択される疾患の処置および/または防止方法において使用するための、前記態様のいずれか一項記載の組成物またはキットであって、好ましくは、ウイルス感染症がコロナウイルス感染症であり、コロナウイルスが、さらに好ましくは、MERS-CoV、SARS-CoV-2またはSARS-CoV-1である、前記態様のいずれか一項記載の組成物またはキット。
161. がん、ウイルス感染症および細菌感染症からなる群より選択される疾患の処置および/または防止用の医薬の製造のための、前記態様のいずれか一項記載の組成物またはキットの使用であって、好ましくは、ウイルス感染症がコロナウイルス感染症であり、コロナウイルスが、さらに好ましくは、MERS-CoV、SARS-CoV-2またはSARS-CoV-1である、使用。
162. 以下の実施例の節、好ましくは下記実施例20~23に記載するように、実行、生産および/または測定される、前記態様のいずれか一項記載の方法、組成物、キットまたは使用。
【実施例】
【0258】
本発明の実施例
本発明が容易に理解され、容易に実用化されうるように、本発明のいくつかの局面を、以下に非限定的な例を挙げて説明する。
【0259】
材料および方法
実施例1:ポリマーソームへの卵白アルブミン、アジュバント、ペプチド、可溶性HA、PEDvスパイクタンパク質およびeGFP DNAの封入
ポリブタジエン-ポリエチレンオキシド(本明細書では「BD21」という)の100mg/ml原液をクロロホルムに溶解する。次に、100μLの100mg/ml BD21原液を、ホウケイ酸(12×75mm)培養チューブに入れ、窒素ガスの気流下でゆっくり乾燥させることで、薄いポリマーフィルムを形成させる。そのフィルムを乾燥器中で6時間、減圧下でさらに乾燥した。次に、1×PBS緩衝液に溶解した1~5mg/mlの可溶化卵白アルブミン(OVA)タンパク質1mLを培養チューブに加えた。その混合物を600rpm、4℃で少なくとも18時間撹拌することで、フィルムを再水和し、ポリマーベシクルを形成させた。その濁った懸濁液を孔径200nmのWhatman Nucleoporeメンブレンを通して押出機(Avanti 1mLリポソーム押出機、21ストローク)で押し出すことにより、単分散ベシクルを得た[例えばFu et al.,2011、Lim.S.K,et al.,2017]。その混合物を1Lの1×PBSに対して透析膜(300kDa MWCO、セルロースエステルメンブレン)を使って透析することにより、タンパク質含有BD21ポリマーベシクルを非封入タンパク質から精製した。
【0260】
最終ベシクル混合物を、サイズ排除クロマトグラフィーを使って非封入タンパク質について分析した。SECからのベシクルピークの画分を使って、タンパク質封入量をSDS-PAGEで定量した。ベシクルサイズおよび単分散性は動的光散乱計器(英国、Malvern)で特徴づけた(1×PBSで100倍希釈)。ポリマーソームに封入されたOVAを定量するために、試料を20%DMSOで前処理してから試料緩衝液で処理し、その後にSDS-PAGE分析にローディングした。
【0261】
ペプチドの封入(SEQ ID NO:1、2および3のMC38ネオ抗原ペプチドで例証)については、同様のプロトコールに従った。封入用にPBSに溶解したペプチド濃度は0.5~0.3mg/mlであった。透析後に、Cary Eclipse分光測光器(Agilent)を使用し、フェニルアラニン蛍光(励起波長270nm/蛍光波長310nm)を使って、封入されたペプチドの量を決定した。3種すべてのペプチドの封入を個別に行ったところ、濃度はすべてのペプチドについて20~30ug/mlと決定された。3種の封入ペプチドのそれぞれを等量ずつ、マウスへの注射の直前に、1つに混合した。
【0262】
Trp2ペプチドの封入については、共溶媒法またはナノ沈殿法に従った。10mMホウ酸緩衝液、125mM NaCl、10%グリセロール、pH8.5を含有する緩衝液1mlに、0.4mgのTrp2 173~196ペプチド(QPQIANCSVYDFFVWLHYYSVRDT、SEQ ID NO:9)を希釈した。その溶液に、THFに溶解した4.25μmolのBD21/0.75μmolのジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP脂質)の混合物を、4~5時間激しく撹拌しながらゆっくり加えた。押出しおよび透析は、透析工程にわずかな変更を加えて、上記のように行った。簡単に述べると、次にベシクルを0.22μmフィルター(PESメンブレン、Millipore)で濾過し、48時間にわたって緩衝液交換を3回行う透析に供した。封入されたTrp2の濃度をHPLCで決定した。Trp2の最終濃度は160μg/mlである。
【0263】
アジュバントCpG(InvivoGenから入手できるSEQ ID NO:18のクラスB CpG-オリゴデオキシヌクレオチドを使用)を封入するために、4.25μmolのBD21/0.75μmolのジオレオイル-3-トリメチルアンモニウムプロパン(DOTAP脂質)の混合物をクロロホルムに溶解した。次に、結果として得られた混合物を、ホウケイ酸(12×75mm)培養チューブに入れ、窒素ガスの気流下でゆっくり乾燥させることで、薄いポリマーフィルムを形成させた。そのフィルムを乾燥器中で6時間、減圧下でさらに乾燥した。100μgのCpGを、10mMホウ酸緩衝液、125mM NaCl、10%グリセロールに溶解した。試料を押し出し、次に、48時間にわたって透析し、緩衝液交換を3回行った。SYBR-Safe色素を使用し、既知量のCpGを使って標準曲線を作成することにより、CpGを定量した。ACM試料を破裂させ、RTで30分インキュベートし、定量用の黒色プレートに移した(Ex500nm:Em530nm)。封入CpG濃度は、通常、70~90μg/ml前後だった。
【0264】
HAの封入については、同様のプロトコールに従った。封入のために組換えHA(H1N1/A/プエルトリコ/8/1934株)を10ug/mlの濃度でPBSに溶解した。透析後に、封入されたペプチドの量をウェスタンブロットで決定した。封入後のHA濃度は1ug/ml前後と決定された。100ulをマウスに注射した。
【0265】
BD21ポリマーソームへのPEDvスパイクタンパク質の封入については、上述のように、同様のプロトコールに従った。バキュロウイルス発現系を使ってPEDvスパイクタンパク質(さまざまなコンストラクト、SEQ ID NO:12~14)を発現させた。昆虫細胞から単離されたタンパク質を封入のために加えた。一方、ポリ(ジメチルシロキサン)-ポリ(エチレンオキシド)(カナダ・ケベックのPolymer Sourceから入手したPDMS46-PEO37)またはブロック共重合体と脂質との混合物、例えばPDMS46-PEO37/DSPE-PEG、PLA-PEG/POPC、PLA-PEG/アゾレクチンで作製されたポリマーソームへのPEDvスパイクタンパク質の封入については、本方法の普遍性を示すために異なるプロトコールに従った。ポリマーおよび/またはポリマー脂質混合物をエタノールまたは任意の水混和性溶媒に溶解し、タンパク質溶液に滴下することで自己集合させた。タンパク質は自己集合中にポリマーソームに封入される。非封入タンパク質をPBSを使った透析によって除去した。透析後に各ポリマーソーム試料封入タンパク質の量をデンシトメトリーによって決定した。封入後のタンパク質の濃度は、これらのポリマーソーム製剤のそれぞれについて1μg/ml前後と決定された。ポリマーソームに可溶性スパイクタンパク質(SEQ 12)またはスパイクタンパク質のS1領域(SEQ 13)およびスパイクタンパク質のS2領域(SEQ 14)のいずれかを封入した。マウスには100~200μlのポリマーソーム(可溶性スパイクタンパク質だけを含むか、ポリマーソームとスパイクタンパク質のS1領域およびS2領域との混合物を含むもの)を注射し、ブタには1mlの同ポリマーソームを経口投与した。
【0266】
eGFR DNA封入については、OVA封入と同様のプロトコールに従った。簡単に述べると、ブロック共重合体、例えばポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(BD21)、ポリ(エチレンオキシド)鎖の末端が官能基(例えばNH2、COOH)で修飾されたポリ(ブタジエン)-ポリ(エチレンオキシド)(BD21-NH2)、ブロック共重合体と脂質との混合物、例えばPLA-PEG/POPC、PLA-PEG/アゾレクチン、ジメチルアミノエタン-カルバモイル(DC)-コレステロール、1,2-ジオレイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)をクロロホルムに溶解し、ガラス管に移し、窒素ガスの気流下でゆっくり乾燥させることで、薄いフィルムを形成させた。そのフィルムを乾燥器中で6時間、減圧下でさらに乾燥した。1μgのeGFP DNAをフィルムに加え、一晩、再水和させた。その後、試料を0.2umポリカーボネートフィルターで押し出し、HEPES緩衝液中で透析した。
【0267】
実施例2:HEK293T細胞を用いるeGFP DNA封入ポリマーソームのトランスフェクション
HEK293T細胞を50,000細胞/ウェルの密度で48ウェルプレートに播種した。トランスフェクション(Lipofectamine 2000トランスフェクション)のために、1,000μLのOpti-MEM I(Invitrogen)、2μLのLipofectamine 2000(Invitrogen)、および1μgのSF-GFP PC DNA(または1μgのSF-GFP PC DNAを含有するポリマーソーム製剤)を混合した。トランスフェクション複合体は、RTで20分間のインキュベーション中に形成された。トランスフェクションのために、lipofectamine複合体を細胞に加え、37Cおよび5%CO2で24時間~72時間インキュベートした。トランスフェクションの効率は、GFP蛍光(励起波長485nm、蛍光波長520nm)によって測定した。細胞取込みについては、蛍光を励起波長530nm、蛍光波長560nmで測定した。イメージング用に、細胞培地を吸引した後、細胞をDPBS(Ca2+/Mg2+含有)で洗浄し、4%p-ホルムアルデヒドで固定した。次に、ガラス製カバーグラスを取り出し、DAPIを含む20ulの封入剤1滴をのせたスライドガラスにはじき落とした。最後にカバーグラスをマニキュアでシールし、後のイメージングのために4Cで保存した。イメージングには蛍光顕微鏡法を使用した。
【0268】
実施例3:抗体力価のためのOVA封入ポリマーソームによる免疫処置
Sigma Adjuvant System(SAS)を含むまたは含まない遊離OVAおよびOVA封入ACM(ポリマーソーム)を使用し、プライムと21日後のブーストを行うことによって、C57bl/6マウスを免疫処置した。すべての免疫処置は5~10ug OVA/注射/マウスの最終OVA量で行った。最終採血はプライムの42日後に行った。次に力価を評価するためにELISAを行った。すなわち、OVAをMaxiSorpプレート(1ug/ml)上に一晩コーティングした。プレートをPBS中の3%BSAを使ってRTで1時間ブロッキングした。すべての血清を1:100に希釈し、RTで1時間、プレート上でインキュベートした。PBS+0.05%Tween 20による3回の洗浄後に、抗マウスIgG-HRP結合二次抗体を、RT(室温)において、1:10,000の希釈率で、1時間インキュベートした。PBS/Tween 20緩衝液で3回洗浄した後、TMB基質を加え、1M HClを使って反応を停止した。光学密度を450nmで定量した。
【0269】
実施例4:抗体力価のためのHA封入ポリマーソームによる免疫処置
同様に、PBS中の遊離HAタンパク質(SEQ ID NO:7)、ACMに封入されたHA(ポリマーソーム)またはPBS対照で、Balb/cマウスを免疫処置した。すべての免疫処置は100ng HA/注射/マウスの同じ最終HA量で行った。プライムの42日後に最終採血を行い、プレートのコーティングに1ug/ml HAを使ってELISAを上記のように行った。
【0270】
実施例5:細胞性応答のためのMC38ネオ抗原ペプチド封入ポリマーソームによる免疫処置
免疫処置後の特異的CD8 T細胞応答を観察するために、本発明者らはMC-38同系腫瘍モデルを使用した。腫瘍を発生させるために、C57bl/6マウスの右側腹部の皮下に0.1mlPBS中のMC-38腫瘍細胞(3×105個)を接種した。接種の日を0日目と定義する。動物を体重に基づいてランダム化し、接種後4日目に免疫処置を開始した。免疫処置は、遊離ペプチド、市販の抗PD-1抗体による同時処置ありおよびなしでのACMに封入されたペプチド(ポリマーソーム)からなった。ペプチドは、Reps1 P45A(SEQ ID NO:1)、Adpgk R304M(SEQ ID NO:2)およびDpagt1 V213L(SEQ ID NO:3)であり、Genscriptから入手した。4日目、11日目および18日目に200ulのペプチドおよびACM中のペプチドを皮下に免疫処置した。ACM中のペプチドの濃度は20~30μg/mlと決定された。一方、単独のペプチドについてはマウス1匹につき注射1回あたり10μgを使用した。抗PD1抗体は、5mg/kgの投薬量で、5、8、12、15、19および22日目に腹腔内注射した。腫瘍成長および処置が、移動性などの正常行動、食物および水の消費、体重増/体重減(体重は週に3回測定される)に何らかの効果を及ぼすかどうか、動物をチェックした。腫瘍サイズは、週に3回、カリパスを使って二次元で測定し、式:V=0.5a×b2(式中、aおよびbはそれぞれ腫瘍の長径および短径である)を使って体積をmm3の単位で表した。
【0271】
実施例6:PEDvスパイクタンパク質封入ポリマーソームによるマウスおよびブタの免疫処置
マウスをACMに封入されたPEDvスパイクタンパク質(コロナウイルスに対するワクチンの説明的実例として)で免疫処置し、21日後に2回目の投与でブーストした。免疫処置にはPEDvスパイクタンパク質が封入された150ul~200μlのポリマーソームを使用した。最終採血から血清を収集し、ELISAに使用した。さらにこれらの血清を、従来のウイルス中和反応により、PEDV株USA/コロラド/2013(CO/13)を中和する能力について試験した。さらにまた、PEDスパイクタンパク質が封入された1mlのポリマーソームを、離乳ブタに経口ワクチン接種した(1日目のプライムおよび14日目のブースト後)。経口ワクチン接種には簡単な生理溶液を使用した。
【0272】
実施例7:B16-OVA腫瘍予防モデルとしての、OVAタンパク質封入ポリマーソームとアジュバントCpG(共注射)またはCpG封入ポリマーソームとによる、マウスの免疫処置
4つの異なるOVAタンパク質免疫処置プロトコールをマウスに実施した。C57BI/6マウスの皮下に7日の間隔を置いてプライムおよびブーストとして、1. 遊離OVAと遊離CpGとの共投与、2. BD21ポリマーソームによって封入されたOVAと、遊離CpGとの共投与、3. 遊離OVAと、BD21ポリマーソームによって封入されたCpG、および、4. BD21ポリマーソームによって封入されたCpG(本発明において使用されるポリマーソームの第2集団に相当)と、BD21ポリマーソームによって封入されたOVA(本発明において使用されるポリマーソームの第1集団に相当)の共投与。次に、免疫処置と同じ側の右側腹部に、105個のB16-OVA細胞を接種した。腫瘍の発生を30日間モニターした。
【0273】
実施例8:B16-OVA腫瘍治療モデルとしての、OVAタンパク質封入ポリマーソームとアジュバントCpG(共注射)またはCpG封入ポリマーソームとによる、マウスの免疫処置
腫瘍成長のためのB16-OVA細胞105個をマウスに接種し、B16-OVA細胞の接種後に、3つの異なるOVAタンパク質製剤(1. 遊離OVAとCpGの共投与、2. OVA封入BD21ポリマーソームと遊離CpGの共投与、3. OVA封入BD21ポリマーソーム(本発明において使用されるポリマーソームの第1集団に相当)と別個のCpG封入ポリマーソーム(本発明において使用されるポリマーソームの第2集団に相当)を、プライムおよび2回のブーストとして(5日目、10日目および14日目に)免疫処置した。免疫処置試料はいずれもマウス1匹あたり5~10μgのOVA、8μgのCpGからなる。腫瘍の発生を20日超にわたってモニターし、異なるOVA製剤についての腫瘍応答を直接相関させるために、デキストラマー染色用の血液試料を20日目に収集した。
【0274】
実施例9:黒色腫B16F10腫瘍治療モデルとしての、Trp2ペプチド封入ポリマーソームとアジュバントCpG(共注射)またはCpG封入ポリマーソームとによる、マウスの免疫処置
C57BI/6マウスにまず105個のB16F10細胞を接種し、次に、免疫処置のために異なるTrp2(抗原としてのチロシナーゼ関連タンパク質-2)製剤を投与した。製剤はいずれも、マウス1匹につき注射されるTrp2ペプチド16μgからなる。ワクチン接種後に、腫瘍成長をモニターし、異なるTrp2製剤についての腫瘍応答を直接相関させるために、動物(n=4)を屠殺することによって腫瘍試料を17日目に収集し、腫瘍成長をモニターした動物については21日目に血液試料を収集した。
【0275】
実施例10:ACMポリマーソームへのCpGアジュバントのコンジュゲーション
CpG ODNは、5’端または3’端を介して官能基とコンジュゲートすることができる。5’端または3’端のどちらかにアミン(-NH2)官能性および遊離チオール(-SH)官能性ODNをカスタム合成することができる。以下により詳しく説明する3つのコンジュゲーション戦略は、いずれも、CpG ODNなどのアジュバントを官能性ポリマーおよび表面官能性ACM粒子に効果的にコンジュゲートするために使用することができる。(1)SH-ODN/ACM-マレイミドコンジュゲーション、(2)NH2-ODN/ACM-NHS(N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル)、(3)NH2-ODN/ACM-アルデヒド。ACMへのODNの共有結合的コンジュゲーションに加えて、加水分解可能なリンカーまたは切断可能なリンカーを、ODNとポリマー鎖との間に導入することもできる。抗原提示細胞においてCpGを放出するために、酸切断可能リンカー(ヒドラゾン、オキシム)、酵素切断可能リンカー(ジペプチドベースのリンカーVal-Cit-PABCおよびPhe-Lys)またはグルタチオン切断可能ジスルフィドリンカーを導入することができる。
【0276】
SH-ODNとポリマー-マレイミド(ポリマー-MAL)を用いるACM-ODNコンジュゲーション戦略:
5’スルフヒドリルISS CpG-ODNまたは3’スルフヒドリルISS CpG-ODNへのジスルフィド前駆体を700mMトリス-(2-カルボキシエチル)ホスフィン(TCEP)溶液で処理した。これは、HBSE(1mM EDTAを含有する10mM HEPESで緩衝化した140mM NaCl緩衝液)pH7中に作って、5モル過剰に使用することで、ジスルフィド-ODNを40℃で2時間還元した。PD-10脱塩カラム(GE Healthcare)を使って残存TCEPを除去し、HBSE pH6.5で溶出させた。還元されたSH-ODNは直ちに使用するか、使用時まで-80℃で貯蔵した。予め、アミン官能性ポリマーとNHS-PEG-MALリンカー基とを使って、ポリマー-MALを調製しておいた。ACM-ODN複合体は、ODNをポリマーに前もってコンジュゲートしてからACMを形成させるか、予め形成されたACMにODNをコンジュゲートすることによって、調製することができる。SH-ODNとポリマーMALの事前コンジュゲーションは、HBSE緩衝液pH7中、DMFの存在下、40℃、暗所で、4時間行うか、油中水型エマルション(HBSE緩衝液:エーテル、2:1比)により、40℃、暗所で、4時間行うことができる。有機溶媒および水は、ローターエバポレーターとそれに続く凍結乾燥によって除去した。乾燥ODN-ポリマーを使用し、非官能性ポリマーと混合して、ACMを形成させた。予め形成されたACM-MALは、10~20%の官能性ポリマー-MALを80~90%の非官能性ポリマーと共に使用し、薄膜再水和技法によって調製され、HBSE緩衝液pH7中で再水和させた。還元されたSH-ODNを、HBSE緩衝液pH7中、40℃で4時間、予め形成されたACM-MALとコンジュゲートした。コンジュゲートされていないSH-ODNは、Sepharose CL-4Bサイズ排除クロマトグラフィーまたは透析によって、ACM-ODNコンジュゲートから除去した。
【0277】
NH2-ODNとポリマー-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(ポリマー-NHS)を用いるACM-ODNコンジュゲーション戦略:
アミン官能性5’CpG-ODNまたは3’CpG-ODNをN-ヒドロキシスクシンイミジルエステル官能化ポリマー(ポリマー-NHS)とコンジュゲートした。予め、ヒドロキシル官能性ポリマーおよびN,N’-ジスクシンイミジルカーボネートから、DMAPの存在下、乾燥アセトン/ジオキサン混合物中で、ポリマー-NHSを調製しておいた。
【0278】
ACM-ODN複合体は、ODNをポリマーに前もってコンジュゲートしてからACMを形成させるか、予め形成されたACMにODNをコンジュゲートすることによって、調製することができる。NH2-ODNとポリマー-NHSの事前コンジュゲーションは、乾燥DMFの存在下、室温で8時間、行うことができる。有機溶媒は凍結乾燥によって除去した。乾燥ODN-ポリマーを使用し、非官能化ポリマーと混合して、薄膜再水和技法により、ACM-ODNを形成させた。
【0279】
予め形成されたACM-NHSは、20~30%の官能性ポリマー-NHSを70~80%の非官能性ポリマーと共に使用し、リン酸緩衝液pH6.8中で、薄膜再水和技法によって調製した。NH2-ODNを、PB緩衝液pH6.8中、4℃で、予め形成されたACM-NHSに加え、一晩反応させた。コンジュゲートされていないNH2-ODNは、Sepharose CL-4Bサイズ排除クロマトグラフィーまたは透析によって、ACM-ODNコンジュゲートから除去した。
【0280】
NH2-ODNとポリマー-アルデヒド(ポリマー-CHO)を用いるACM-ODNコンジュゲーション戦略:
アミン官能性5’CpG-ODNまたは3’CpG-ODNをアルデヒド官能化ポリマー(ポリマー-CHO)とコンジュゲートすることでイミン結合を形成させ、それを、シアノ水素化ホウ素ナトリウム(NaCNBH4)処理により、さらに還元して安定なアミン結合を形成させた。予め、ヒドロキシル官能性ポリマーから、デス-マーチン・ペルヨージナン存在下での、アルコールのアルデヒドへの選択的酸化により、ポリマー-CHOを調製しておいた。
【0281】
ACM-ODN複合体は、ODNをポリマーに前もってコンジュゲートしてからACMを形成させるか、予め形成されたACMにODNをコンジュゲートすることによって、調製することができる。
【0282】
NH2-ODNとポリマー-CHOの事前コンジュゲーションは、乾燥DMFの存在下、室温で16時間行うことができる。これによりイミン結合形成が起こり、それは、NaCNBH4により、アミンへとさらに還元される。PD-10脱塩カラム(GE Healthcare)を使って残存NaCNBH4を除去し、水/DMF混合物で溶出させた。有機溶媒は凍結乾燥によって除去した。乾燥ODN-ポリマーを使用し、非官能性ポリマーと混合して、薄膜再水和技法により、ACM-ODNを形成させた。
【0283】
予め形成されたACM-CHOは、30~40%の官能性ポリマー-CHOを60~70%の非官能性ポリマーと共に使用し、薄膜再水和技法によって調製され、10mMホウ酸緩衝液pH8.2中で再水和させた。ホウ酸緩衝液pH8.2中でNH2-ODNを予め形成されたACM-CHOに加え、室温で一晩反応させることで、イミン結合を形成させた。さらに、4℃で一晩、NaCNBH4で処理して、イミン結合を安定なアミン結合に還元した。コンジュゲートされていないNH2-ODNおよび遊離NaCNBH4は、Sepharose CL-4Bサイズ排除クロマトグラフィーまたは透析によって、ACM-ODNコンジュゲートから除去した。
【0284】
卵白アルブミン(OVA)へのBD21ベシクルのコンジュゲーション:
BD21+5%DSPE-PEG(3000)-マレイミドベシクル形成:
CHCl3中のBD21(100mg/mL)100μLを25mLの一口RBF(丸底フラスコ)に移し、そこに80.89μLのDSPE-PEG-マレイミド(CHCl3中、10mg/mL)を加えた。溶媒を減圧下、35℃でゆっくり蒸発させることで、拡がった薄膜を得て、デシケーター中、真空下で6時間、乾燥した。1mLのNaHCO3緩衝液(10mM、0.9%NaCl、pH6.5)を再水和のために薄膜に加え、25℃で16~20時間、撹拌することで、乳状の均一溶液を形成させた。16~20時間の再水和後に、その溶液を25℃において200nm Whatmanメンブレンで21回、押し出した。その溶液を透析バッグ(MWCO(質量カットオフ):300KD)に移し、NaHCO3緩衝液(10mM、0.9%NaCl、pH6.5)中で透析した(500mL×2および1L×1;最初の2回の透析はそれぞれ3時間行い、最後の透析は16時間行った)。ベシクルサイズおよび単分散性は動的光散乱計器(英国Malvern)で特徴づけた(1×PBSで100倍希釈)。
【0285】
OVAへのBD21+DSPE-PEG(3000)-マレイミド(5%)のコンジュゲーション:
OVA(0.5mg)を200μLのNaHCO3緩衝液(10mM、0.9%NaCl、pH6.5)に溶解し、そこに2.5mgのTCEP-HCl(100μLの同じNaHCO3緩衝液に溶解)を加え、20分間インキュベートした。1N NaOH溶液(約10μL)を使って反応のpHを約2.0から6~7へと調節した。次に、350μLのポリマーソーム(10mg/mLのBD/DSPE-PEG(3000)-マレイミド、10Mm NaHCO3中5%、0.9%NaCl緩衝液、pH7.0)をタンパク質混合物に加え、反応のpHをpH7.0に調節した(反応のpHが7でなかった場合)。遮光下で反応を24℃で3時間インキュベートした。反応溶液(約660μL)を透析バッグ(MWCO:1000KD)に移し、NaHCO3緩衝液(10mM、0.9%NaCl、pH7.0)中で透析した(1L×3;最初の2回の透析はそれぞれ3時間行い、最後の透析は16時間行った)。透析された溶液100μLをSECクロマトグラフィーによって精製し、96ウェルプレートに収集した。対応するACMピークフラクションを合わせて、SDS-PAGEによる定量のために凍結乾燥した。
【0286】
比較のために、BD21のみへのOVAの封入も行った。そのために、CHCl3に溶解した100μlの100mg/ml BD21原液を使って、上記のように薄膜を作った。次に、1×PBS緩衝液中の0.5mg/ml可溶化OVAタンパク質の溶液1mLを加えることによって再水和を行った。その混合物を、600rpm、4℃で少なくとも18時間撹拌することでポリマーベシクルを形成させ、上述のように押し出し、透析した。
【0287】
ヘマグルチニン(HA)へのBD21ベシクルのコンジュゲーション:
BD21からのBD21-CHOの調製:
無水CH2Cl2(6mL)に溶解して一口RBF中で撹拌したBD21(100mg)の溶液に、デス-マーチン・ペルヨージナン(10mg、0.4当量)を0℃で一度に加えた。反応を25℃で4時間撹拌した。次に、飽和NaHCO3およびNa2S2O3の1:1混合物(20mL)を加え、同じ温度で2時間撹拌した。有機層を分離し、水相をCH2Cl2(20mL)で抽出し、有機層を分離した。合わせた有機層を飽和NaHCO3およびNa2S2O3の1:1混合物(20mL)、ブライン(20mL)で洗浄し、無水Na2SO4で乾燥し、減圧下で蒸発させることにより、無色の粘稠油状物(100mg、定量的)を得た。修飾収率はNMRで30%前後と見積もられた。
【0288】
HAへのBD-CHOのコンジュゲーション:
10mgの修飾BD21-CHO(無色の粘稠油状物)を25mLの一口RBF中で0.5mLのCHCl3に溶解し、Rotavapを使って35℃で10分間、減圧下でゆっくり溶媒を蒸発させることで、拡がった薄膜を得た。その膜をデシケーター中、真空下で6時間乾燥した。その膜を400μlのホウ酸緩衝液(ホウ酸10mM、150mM NaCl、pH7.5)中で30分間再水和させてから、0.5mgのHA(これを透析によってホウ酸緩衝液中で前もって平衡化することで、150μlのHAを調製した)を加えた。反応を25℃で16時間撹拌した。次に、その溶液に20μLのNaCNBH4を加え(調製:126mgのNaCNBH4を1mLのMillipore水に溶解し、その溶液を25℃で30分撹拌することにより、過剰のH2ガスを脱気した)、25℃でさらに8~16時間、撹拌を続けた。200nm Whatmanメンブレンを使って25℃で21回、コンジュゲートされたポリマーソームを押し出した。反応溶液を透析バッグ(MWCO:1000KD)に移し、PBS緩衝液(1×、pH7.4)中で透析した(1L×3;最初の2回の透析はそれぞれ3時間行い、最後の透析は16時間行った)。透析後に、透析された溶液400μLをSECクロマトグラフィー(サイズ排除クロマトグラフィー)で精製し、96ウェルプレートに収集した。カップリングされたHAの存在は、ウェスタンブロットとELISAアッセイ(酵素結合免疫吸着アッセイ)の両方を使って検出した。ベシクルサイズおよび単分散性は動的光散乱法で特徴づけた(1×PBSで100倍希釈)。
【0289】
比較のために、BD21のみへのHAの封入も行った。そのために、CHCl3に溶解した100μlの100mg/ml BD21原液を使って、上記のように薄膜を作った。次に、1×PBS緩衝液中に20μgのHAタンパク質を含有する1mLの溶液を加えることによって、再水和を行った。その混合物を、600rpm、4℃で少なくとも18時間撹拌することでポリマーベシクルを形成させ、上述のように押し出し、透析した。
【0290】
カップリングされたHAおよびOVAの定量:
カップリングされたタンパク質の存在を検出するために、いくつかの技法を使用した。100~300μlの透析された試料を、Sephacrylカラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC、Akta)にローディングした。ACMベシクルのピークに対応するSECフラクションを、SDS-PAGEおよび/またはELISAによって分析するために、プールするか、そのまま使用した。SDS-PAGEの場合、各フラクションのうち20~40μlをDMSOと混合し(20%v/v)、よくボルテックスしてから、ローディング緩衝液を加えた。定量のために、さまざまな量の遊離BSA(ウシ血清アルブミン)、HAまたはOVAを加えた。泳動後に、ゲルを銀染色法で染色するか(OVA)、メンブレン転写とウサギポリクローナル抗体による免疫ブロッティングに使用した(HA)。HAがポリマーにカップリングされていることをさらに保証するために、25ulの全SECフラクションをMaxisorp384ウェルプレートに、4℃で一晩コーティングした。3%BSAでブロッキングした後、ウサギポリクローナル抗HA抗体を一次抗体として使用し、次に、抗ウサギ抗体にカップリングされたHRP(セイヨウワサビペルオキシダーゼ)を二次抗体として使用した。TMB基質を加え、1M HClを使って反応を停止した。光学密度を450nmで定量した。
【0291】
マウス免疫処置および力価決定(mAb):
さまざまなOVA製剤、すなわちPBS(陰性対照)、Sigma Adjuvant System(SAS)ありまたはSASなしの遊離OVA、OVA封入ACM またはOVAコンジュゲートACMで、C57bl/6マウスを免疫処置した。さまざまなHA製剤、すなわちPBS(陰性対照)、遊離HA、HA封入ACMまたはHAコンジュゲートACMで、Balb/cマウスを免疫処置した。どちらの試行も、プライムを投与し、21日後にブーストを投与することによって、行った。免疫処置はすべて各試行内では同じ最終量の抗原、すなわち5~10μg OVA/注射/マウスまたは100~200ng HA/注射/マウスで行った。最終採血はプライムの42日後に収集した。次に、力価を評価するためにELISAを行った。すなわち、OVAまたはHAをMaxiSorpプレート上に一晩コーティングした(炭酸緩衝液中1μg/ml)。PBS中の3%BSAを使ってプレートをRTで1時間ブロッキングした。血清はすべて1:100希釈し、プレート上、RTで1時間インキュベートした。PBS+0.05%Tween20で3回洗浄した後、二次抗体HRP結合抗マウスIgGを、1:10,000でRT(室温)で1時間インキュベートした。PBS/Tween20緩衝液で3回洗浄した後、TMB基質を加え、1M HClを使って反応を停止した。光学密度を450nmで定量した。
【0292】
実施例11:OVAへのACMポリマーソームのカップリング
5%DSPE-PEG(3000)-マレイミドで調製されたポリマーソーム(ACM(人工細胞膜)ともいう)を使用し、利用可能なシステインを介してOVAをカップリングした。少なくとも1つのシステインは溶媒にとってアクセス可能であることが示されている(Tatsumi et al.,1997)。カップリング条件はpH制御環境で達成された。
【0293】
実施例12:HAへのBD21-CHOポリマーソームのカップリング
BD21ポリマーを「方法」で述べたように修飾した。アルデヒド修飾百分率はNMRにより30~40%前後と見積もられた。BD21に付加されたアルデヒド部分が、HAのリジン残基およびアルギニン残基の第一級アミンと反応することになる。カップリングを一晩行い、次に十分に透析を行った後、その結果得られたベシクルを特性解析した。
【0294】
実施例13:免疫処置および血清力価決定
以下の製剤でC57bl/6マウスを免疫処置した:陰性対照(PBS)、Sigma Adjuvant System(SAS)ありまたはSASなしの遊離OVA、BD21封入OVAおよびBD21コンジュゲートOVA。免疫処置はすべて、同量のOVA、すなわちマウス1匹あたり注射1回あたり4μgにした。ブーストの21日後に、ELISAによって力価を決定するために、血清を収集した。
【0295】
加えて、Balb/cマウスを以下の製剤で免疫処置した:陰性対照(PBS)、遊離HA、BD21封入HAおよびBD21コンジュゲートHA。十分に透析した後でもHAコンジュゲートポリマーソーム試料には多少の残存遊離HAが観察されたので、プールしたSECのフラクションを免疫処置に使用した。免疫処置はすべて、同量のHA、すなわちマウス1匹あたり注射1回あたり100~200ngにした。
【0296】
結果
実施例1のタンパク質およびDNAの封入:
OVA封入ポリマーソームを、透析およびサイズ排除カラム(SEC)で精製することで、非封入タンパク質を除去し、動的光散乱法で分析した。
図2A、
図3および
図4に示すように、SECからのOVA封入ポリマーソームの溶出プロファイルおよび単分散集団が観察された。
【0297】
OVA、PEDvスパイクタンパク質またはeGFP DNAが封入されているさまざまなポリマーソームについて動的光散乱(DLS)データを
図2Bに提示する。好ましいDLSパラメータであるZ-平均(d,nm)を使って測定すると、それらはいずれも平均直径120nm~180nmである。Z-平均サイズは強度加重調和平均粒径であり、それらの値は、ポリマーソームの以前のデータ[Fu et al.,2011、Lim.S.K,et al.,2017]とよく一致する。
【0298】
実施例2の封入eGFP DNAおよびトランスフェクションデータ:
HEK293T細胞を使ってeGFP DNA封入ポリマーソームをトランスフェクトし、トランスフェクション後に、ACMポリマーソームの取込みを蛍光プレートリーダーによって励起波長530nmおよび蛍光波長560nmで測定し、トランスフェクション効率はGFP蛍光(励起波長485nm、蛍光波長520nm)で測定した。
図5に示すように、DNAを含むポリマーソームが細胞中に侵入し、DNAを放出してそのDNAをタンパク質に発現させうることは明らかであり、ポリマーソーム製剤はいずれも細胞に取り込まれてDNAを放出することができ、一方、ポリマーソーム放出対タンパク質発現の比は、その安定性および生分解性とよく相関する(
図5A)。BD21などの非生分解性ポリマーソームは、生分解性ポリマーソームと比較して、取り込まれる量が少なく、発現レベルも低かった。同様の結果は細胞の蛍光像からも観察された(
図5Bおよび
図5C)。
【0299】
実施例3の封入OVAおよび力価:
プライムおよび21日後のブーストの投与によるC57bl/6マウスの免疫処置にOVA封入ポリマーソームを使用した。最後の採血を使ってELISAを行った。
図6に示すように、遊離OVA、アジュバントを伴うOVA、または対照試料(PBSのみ)と比較して、OVA封入ポリマーソームが、力価をトリガーできる唯一の製剤であることは明らかである。SASを伴うOVAで力価が生じなかった理由は、治験に使用されたOVAの量が少なかったためかもしれない(1回の注射につき5ug前後)。したがってACMに封入されたOVAは、OVAに対するB細胞応答を、卵白アルブミンに特異的なIgG血清力価の形で、トリガーすることができた。
【0300】
実施例4の封入HAおよび力価:
プライムおよび21日後のブーストの投与によるBalb/cマウスの免疫処置にHA(H1N1/A/プエルトリコ/8/1934株、SEQ ID NO:7)封入ポリマーソームを使用した。最後の採血を使ってELISAを行った。
図7に示すように、遊離HAまたは対照試料(PBSのみ)と比較して、HA封入ポリマーソームが、力価をトリガーできる唯一の製剤であることは明らかである。遊離HAで力価が生じなかった理由は、治験に使用されたHAの量が少なかったためかもしれない(1回の注射につき100ng前後)。したがってACMに封入されたHAは、HAに対するB細胞応答を、HAに特異的なIgG血清力価の形で、トリガーすることができた。
【0301】
実施例5の封入MC-38ネオ抗原ペプチドおよびCD8 T細胞応答:
ACMに封入された抗原がCD8 T細胞応答をトリガーできることを示すために、本発明者らは、公知のCD8抗原性ペプチドの送達に依拠する詳しく特徴づけられたMC-38同系マウス腫瘍モデルを使用した。アジュバントと組み合わされた大量のこれらのペプチドは、治療マウスモデルにおける腫瘍制御をトリガーすることが示されている(例えばKuai et al.,2017、Luo et al.,2017)。加えて、これらの効果は、マウス血中のペプチド特異的CD8 T細胞の存在と明らかに相関した。したがって、群間の腫瘍成長の相違はいずれも、CD8 T細胞のペプチド特異的プールの存在に直接的に起因すると考えることができるだろう。MC-38細胞株を接種した4日後に、本明細書の「材料および方法」で述べたように、遊離のペプチド、または抗PD1抗体処置ありおよび抗PD1抗体処置なしでのACMに封入されたペプチド(ポリマーソーム)のいずれかを使って、マウスを免疫処置した。
図8に示すように、封入ペプチドによる免疫処置は、遊離のペプチドと比較して、腫瘍成長阻害効果をトリガーすることができた。この効果は、抗PD1抗体注射を加えると常に、劇的に増強された。このデータにより、ACMに封入されたペプチド(ポリマーソーム)は、おそらくは樹状細胞へのこれらのペプチドの送達によって、ペプチド特異的CD8 T細胞応答をトリガーでき、それが腫瘍制御をもたらすということが実証された。この効果は、抗PD1抗体などのチェックポイント阻害剤の添加によって増加した。事実、MC-38は、腫瘍内部でT細胞の殺傷活性を阻害することが公知であるPD-L1分子を、その細胞表面に発現することが示されている。したがって、PD1/PD-L1相互作用を遮断する抗体によるそのような相互作用の阻害は、腫瘍特異的T細胞の存在をより一層明らかにすることが知られている。このデータは全体として、ACMに封入された抗原(ポリマーソーム)がアジュバントの添加なしで抗原特異的CD8 T細胞応答をトリガーできることを、明確に実証している。
【0302】
実施例6の封入PEDvスパイクタンパク質およびIgG、IgAおよびウイルス中和応答:
マウスをACMに封入されたPEDvスパイクタンパク質で免疫処置し、21日後に2回目の投与でブーストした。最終採決から血清を収集してELISAに使用した。
図8に見られるように、ELISAプレートにコーティングされたスパイクタンパク質に結合する抗体および力価は、ACMワクチン接種マウスと比較して、死滅ウイルスをワクチン接種した動物に類似するレベルだった。さらにこれらの血清を、従来のウイルス中和反応実験により、PEDV株USA/コロラド/2013(CO/13)を中和する能力について試験した(
図9)。ここでは、ACMワクチン(すなわちACMに封入されたPEDスパイクタンパク質)で免疫処置されたマウスからの血清だけにウイルス中和反応が見出されることが観察され、死滅ウイルスをワクチン接種したマウスからの血清では中和反応は観察されなかった。さらにまた、完全長可溶性タンパク質が封入されたさまざまなポリマーソーム(例えばBD21、PDMS
46-PEO
37(
図10では「PDMS」とだけ記している)、PDMS
46-PEO
37/DSPE-PEG、PLA-PEG/アゾレクチン脂質)ならびにS1領域およびS2領域を含有するポリマーソーム混合物を免疫処置に使用し、血清をウイルス中和反応について試験した(
図10)。PBS試料で免疫処置されたマウスの群がいかなるウイルス中和反応も示さないのに対し、他のポリマーソーム製剤はいずれも、さまざまな程度のウイルス中和反応を示すことは、
図10から明らかである。さらにまた、離乳ブタにACMに封入されたPEDスパイクタンパク質を経口ワクチン接種したところ、(1日目のプライムおよび14日目のブースト後に)ウイルスに対する特異的IgA抗体の増加が、収集した糞便スワブから観察され、ELISAで測定された(
図11参照)。
【0303】
封入OVAおよびCpG封入ポリマーソーム製剤ならびに実施例7のB16-OVA予防モデルにおける腫瘍成長に対するその効果
マウスに、プライムおよびブーストとして、C57BI/6マウスの皮下に、7日の間隔をあけてさまざまな製剤を投与した後、10
5個のB16-OVA細胞を免疫処置と同じ側の右側腹部に接種した。PBS対照群を除くすべての群において、CpGをアジュバントとして使用した。PBS対照で免疫処置されたマウスはすべて腫瘍を発生した(
図13Aおよび
図13B)。可溶性OVAを与えたマウスも、免疫処置の効果は明らかにあるものの、腫瘍を生じる傾向を示した。ACM-OVA群では、腫瘍の発生が、ACMのターゲティング効果ゆえに、さらに遅延した。より一層顕著なことに、OVAとCpGを同じポリマーソームに共封入した群、または別個に封入した群(すなわち2つの別個のBD21ポリマーソーム集団に封入してから、共投与した群)では、マウスが腫瘍を発生することは一切なかった(
図13B)。ここで使用される図での説明(適用可能な場合は他の図でも同様)は以下のとおりである:「PBS」=リン酸緩衝食塩水対照、「遊離OVA+CpG」=遊離CpGと共投与される遊離OVA、「ACM-OVA+CpG」=遊離CpGと共投与される、BD21ポリマーソームによって封入されたOVA、「ACM-OVA-CpG」=BD21ポリマーソームによって共封入された遊離OVAとCpG、および「ACM-OVA+ACM-CpG」=BD21ポリマーソームによって封入されたCpGの別個の集団(本発明の第2ポリマーソーム集団に相当する)と一緒に共投与される、BD21ポリマーソームによって封入されたOVA(本発明の第1ポリマーソーム集団に相当する)。これらの結果は、ACMに製剤化された抗原(ACM formulated antigen)が、CpGなどのアジュバントと一緒に、またはCpGなどのアジュバントと並行して、腫瘍細胞を効率よく殺すことができるT細胞のはるかに大きなプールを作り出していることを示唆している。
【0304】
封入OVAおよびCpG封入ポリマーソーム製剤ならびに実施例8のB16-OVA治療モデルにおける腫瘍成長に対するその効果
マウスを実施例8で述べたように処置した。この実験では、PBS対照を除く群において、CpGをアジュバントとして使用した。可溶性OVAおよびACM-OVAの皮下免疫処置(
図14Aおよび
図14B)は、PBS対照群と比較して腫瘍の出現を遅延させることができたが、どちらの群もマウスの全生存を改良することはなかった。しかし、遊離OVAをACM-CpG(BD21ポリマーソームに封入されたCpG)と共投与した群、およびOVA封入ACM(BD21ポリマーソームに封入されたOVA、本発明の第1ポリマーソーム集団に相当する)をCpG封入ACM(本発明の第2ポリマーソーム集団に相当する)と共投与した群では、腫瘍の遅延が遅く、マウス8匹中4匹は39日間無腫瘍のままだった(データ省略)。これらの結果は、ACM中のCpGがACMに封入された抗原の免疫原性を改良したことを示している。上記のデータを、OVA特異的T細胞の存在と直接相関させるために、デキストラマー染色用の血液試料を20日目に収集した(
図14C)。腫瘍量に関して得られた結果と相関して、ACMに封入されたOVAによる群またはACMに封入されたOVAとACMに封入されたCpGとの組合せによる群だけが、有意なデキストラマー染色を示す。さらにまた、ACMに封入されたOVA(BD21ポリマーソームに封入されたOVA)と別個のACMに封入されたCpG(BD21ポリマーソームに封入されたCpG)とが投与された群の場合にのみ、腫瘍量とデキストラマー染色の両方が相関する。
図14における図での説明は、
図13について説明したものと同じである。
【0305】
封入Trp2およびCpG封入ポリマーソーム製剤ならびに実施例9の黒色腫B16F10治療モデルにおける腫瘍成長に対するその効果
B16F10腫瘍モデルにおいて、マウスをさまざまなACM製剤で処置した。このモデルでは、腫瘍原性が内在的に発現される腫瘍ペプチド抗原に依拠する。そこで、このモデルにおいて免疫原性であると既に記載されているSEQ ID NO:9のペプチド(チロシナーゼ関連タンパク質-2、Trp2)を、免疫処置用の抗原として選んだ。10
5個のB16F10細胞をまずC57BI/6マウスに接種し、次に、以下のさまざまな製剤による免疫処置を行った:1. PBS、2. CpGと共投与される遊離Trp2(図での説明「遊離Trp2+CpG」)、3. 遊離CpGと共投与されるACM(BD21)封入Trp2(図での説明「ACM Trp2+CpG」)、4. ACM(BD21)封入CpGと共投与される遊離Trp2(図での説明「遊離Trp2+ACM-CpG」)および5. 別個のACM(BD21)封入CpG集団と共投与されるACM(BD21)封入Trp2(図での説明「ACM-Trp2+ACM-CpG」)。各群を腫瘍成長についてモニターした(
図15A)。すべての群のうち、CpGと共投与される、ACMに封入されたTrp2で処置されたマウスと、別個のACMに封入されたCpGと共投与される、ACMに封入されたTrp2で処置されたマウスが、はるかに強い腫瘍応答を示した。これは、血液における17日目のCD8腫瘍細胞(
図15B)および腫瘍におけるCD8 T細胞浸潤(
図15C)とよく相関する。
【0306】
実施例11のOVAへのACMポリマーソームのカップリング:
図16は、本発明のこれらの例示的ポリマーソームの標準的特徴と合致しているOVA結合ポリマーソームからの動的光散乱(DLS)プロファイルを表している(ポリマーソームの集団/集合体の平均(average、mean)サイズ:152nm;pdi:0.229)。
【0307】
十分な透析後に、100μlの試料をSECを使って分離し(
図17A)、180μl前後のフラクションを48個収集した。ピークに対応するプールしたフラクションを凍結乾燥し、500μlに再懸濁した。20ulをいくつかのBSA標準と一緒にSDS-PAGEにローディングした(
図17B)。OVAタンパク質に対応するサイズのバンドが検出され、OVAはACMベシクルにうまくカップリングされたことが示唆された。カップリングされたOVAの量は20μg/ml前後と見積もられた。注目すべきことに、OVAタンパク質へのBD
21のカップリングは、HAに見られたようにその泳動性を修飾することはなかった(下記参照)。これは、おそらく、OVAがOVAタンパク質1つにつき1つのシステインでしか修飾されず、他の5つのシステインはすべて埋没しているか、ジスルフィド結合に関わっている可能性が高いという事実によるのだろう。
【0308】
実施例12のHAへのBD
21-CHOポリマーソームのカップリング
DLSは、わずかに小さいサイズ(平均サイズ:104nm)および許容できるpdi(pdi:0.191)を示した(
図18)。
【0309】
400μlの最終生成物を上記のようにSECで分離した(
図19参照、薄灰色のトレース)。ピークに対応するフラクションをSDS-PAGEに個別にローディングした後、免疫ブロッティングのためにメンブレン転写を行った。高分子量のバンドが検出された。これはピーク外の後方のフラクションでは減少するようであったことから、このバンドはコンジュゲートHAに対応することが示唆された。観察された高分子量は、数多くのポリマー分子がHAにカップリングされてその分子量を増加させるからだろう。加えて、共有結合したポリマーは、ローディング緩衝液のSDSの結合と部分的に競合して、最終的な荷電状態を遊離HAと比べて減少させるかもしれない。負の電荷が少ないほど、コンジュゲートHAタンパク質の移動度は小さくなると予期され、その結果、見かけの分子量は大きくなるだろう。透析された試料(SECで分離されていないもの)は、おそらく透析されえなかった凝集HAから来る残存遊離HAを示す。コンジュゲートHAの濃度は1μg/ml前後と決定された。
【0310】
HAタンパク質が粒子の表面においてアクセス可能であることを確かめるために、BD
21ベシクルを捕捉することができるMaxisorpプレート上にコーティングされたすべての収集フラクションに対して、ELISAを行った。HAタンパク質がはっきり検出され、ELISAプロファイルをSECに重ね合わせると、両プロファイルはよく相関した(
図20、黒いトレース)ことから、HAはBD
21にカップリングされ、抗体にとってアクセス可能であることが確認された。
【0311】
実施例13の免疫処置および血清力価決定:
図21に示すように、アジュバントありまたはアジュバントなしの遊離OVAは、IgG応答を誘発することができなかった。興味深いことに、類似する用量で、コンジュゲートOVAは、封入OVAよりもはるかに強い力価応答をトリガーすることができた。
【0312】
Balb/cマウスを以下の製剤で免疫処置した:陰性対照(PBS)、遊離HA、BD
21封入HAおよびBD
21コンジュゲートHA。十分に透析した後でもHAコンジュゲートポリマーソーム試料には多少の残存遊離HAが観察されたので、プールしたSECのフラクションを免疫処置に使用した。免疫処置はすべて、同量のHA、すなわちマウス1匹あたり注射1回あたり100~200ngにした。
図22に示すように、遊離HAはIgG応答を誘発することができなかったが、これは、注射されたHAの量が少なかったことを考えると予想されることだった。コンジュゲートHAは、この場合は封入HAよりわずかに高い応答をトリガーすることができた。実施例7~9(アジュバント封入の場合)または実施例10(アジュバントコンジュゲーションの場合)に例示するように、アジュバントと関連づけられたポリマーソームの第2集団を加えれば、応答はさらに高くなるはずである。
【0313】
実施例14:さまざまな投与経路によるPEDvスパイクタンパク質封入ポリマーソームを使ったモルモットの免疫処置
バキュロウイルス系を使ってPEDvスパイクタンパク質を発現させた。細胞溶液を清澄化し、関心対象のタンパク質を封入するために、必要な添加剤と一緒に、ACMポリマーを加えた。封入は実施例1で述べたように行った。CpG ODN2007(5’-TCG TCG TTG TCG TTT TGT CGT T-3’、SEQ ID NO:63、InvivoGenからカタログ番号tlrl-2007として市販されている)を使用して、CpGも、実施例1で述べたように封入した。
【0314】
モルモット(I.M.についてはN=4;他の群についてはN=5)を、経口、経鼻およびI.M.という3通りの方法で免疫処置した。各方法は、ACMに封入されたPEDvスパイクタンパク質とACMに封入されたCpGの1:1混合物40μlで投薬し、21日後に2回目の投薬でブーストした。血清を最終採血から収集し、ELISAに使用した(データ省略)。さらにこれらの血清を、従来のウイルス中和反応により、PEDV株USA/コロラド/2013(CO/13)を中和する能力について試験した(
図25)。
【0315】
実施例15:MERSスパイクタンパク質封入ポリマーソームによるマウスの免疫処置
バキュロウイルス系を使ってMERS-CoVスパイクタンパク質の可溶性フラグメント(SEQ ID NO:43、UniProtKBアクセッション番号K0BRG7の1~1297番目に対応)を発現させ、精製した。BD21ポリマー10mgの薄膜を10ml丸底フラスコ中に形成させ、徹底的に乾燥した。その丸底フラスコに1mlのタンパク質溶液を加え、150rpmのロータリーエバポレーターで4時間回転させた。試料をフラスコから取り出し、400nmフィルターで押し出し、次に200nmフィルターで押し出した。ACM-タンパク質と遊離タンパク質とを含有する押し出された試料をサイズ排除クロマトグラフィーを使って分離した。ACM/タンパク質フラクションに対応するフラクションを収集し、マウスへの免疫処置に使用した。封入ACM-MERS-CoVおよび対照ACMを使用し、プライムと21日後のブーストとを投与することにより、C57bl/6マウスを免疫処置した。最終採血はプライムの42日後に収集した。次に力価を評価するためにELISAを行った。すなわち、MERS-CoVをMaxisorpプレート(1ug/ml)上に一晩コーティングした。3%BSAを使ってプレートをRTで1時間ブロッキングした。血清はすべて1:100希釈し、プレート上、RTで1時間インキュベートした。PBS+0.05%Tween 20で3回洗浄した後、二次抗体抗マウスHRPを、1:10,000希釈で、RTにおいて1時間インキュベートした。TMB基質を加え、1M HClを使って反応を停止した。光学密度を450nmで定量した(
図26A)。すべての血清試料をMERS-CoV中和抗体についてプラーク低減中和アッセイ(PRNT)を使って試験した(
図26B)。
【0316】
実施例16:PEDvスパイクタンパク質の異なるドメインによるマウスの免疫処置
異なるスパイクタンパク質ドメインをバキュロウイルス系(Baculo)で発現させた。細胞培養物を清澄化し、その溶液をACM形成に使用した。PEDvスパイクタンパク質S1ドメイン、S2ドメイン、ならびにS1およびS2ドメインの混合物を使用し、アジュバントなしで、6~8週齢のBalb/c雌マウス(n=5)に、用量200μlのI.M.で、免疫処置した。
【0317】
21日後に2回目の投薬で動物をブーストした。血清を最終採血から収集し、ELISAに使用した。さらにこれらの血清を、従来のウイルス中和反応により、PEDV株USA/コロラド/2013(CO/13)を中和する能力について試験した(
図27)。
【0318】
実施例17:バキュロウイルス発現系を用いるスパイクタンパク質SARS-CoV-2の発現および精製
バキュロウイルス系を使ってSARS-CoV-2スパイクタンパク質の可溶性フラグメント(SEQ ID NO:36、40および65)を発現させ、従来のNi-NTAアフィニティー精製を使って培地から精製した。BD21ポリマー10mgの薄膜を10ml丸底フラスコ中に形成させ、徹底的に乾燥した。その丸底フラスコに1mlのタンパク質溶液を加え、150rpmのロータリーエバポレーターで4時間回転させた。試料をフラスコから取り出し、400nmフィルターで押し出し、次に200nmフィルターで押し出した。ACM-タンパク質と遊離タンパク質とを含有する押し出された試料をサイズ排除クロマトグラフィーを使って分離した。
【0319】
実施例18:SARS-CoV-2スパイクタンパク質の異なるドメインによるマウスの免疫処置
最初の研究では、S1-S2領域(SEQ ID NO:36)が封入されているACMを、アジュバントと共に、またはアジュバントなしで、使用した。アジュバントありの場合は、ACMに封入されたスパイクタンパク質を、1:1の比のSigma Adjuvant System(水中油型エマルションは2%油(スクアレン)-Tween80-水中のサルモネラ・ミネソタ由来のモノホスホリルリピドA(無毒化エンドトキシン)0.5mgと合成トレハロースジコリノミコレート0.5mgとからなる)と混合した。アジュバントありまたはアジュバントなしでS1-S2領域(SEQ ID NO:36)が封入されているACMを、アジュバントありのS2領域(SEQ ID NO:40)が封入されているACM、およびPBS対照と比較した。
【0320】
封入ACM-SARS-CoV2および対照ACMを使用し、プライムと21日後のブーストとを投与することにより、マウスを免疫処置した。最終採血はプライムの35日後に収集した(
図23B)。次に、SARS-CoV-2に対するIgG抗体力価を評価するために、ELISAを行った。
図23Cは、以下の製剤で免疫処置された35日目のBalb/cマウスにおいて測定されたIgG力価を表す:アジュバントと共投与される、BD21ポリマーソーム封入可溶性S1およびS2セグメント(第1群)、BD21ポリマーソーム封入可溶性S1およびS2セグメント(第2群)、アジュバントと共投与される、BD21ポリマーソーム封入可溶性S2セグメント(第3群)、および陰性対照としてのPBS(第4群)。最も高いIgG1力価は、可溶性のS1およびS2セグメントが封入されているBD21ポリマーソームによるワクチン接種、またはアジュバントと共投与される可溶性S2セグメントが封入されているBD21ポリマーソームによるワクチン接種(それぞれ第1群および第3群)に観察され、一方、BD21ポリマーソームに封入された可溶性のS1およびS2セグメント(第2群)をアジュバントなしで単独で投与することによって誘導される免疫応答は、それより低かった。
【0321】
加えて、プラーク低減中和アッセイ(PRNT)を使ったSARS-CoV-2中和抗体の評価も行われるだろう。
【0322】
2つ目の研究では、単独での、またはACMに封入されたCpGと組み合わせた、S1-S2領域(SEQ ID NO:65)が封入されているACM、S2領域(SEQ ID NO:40)が封入されているACMの、異なる投与様式、すなわちIMおよびINを比較した。
【0323】
封入ACM-SARS-CoV2および対照ACMを使用し、プライムと14日後のブーストとを投与することにより、マウスを免疫処置した。最終採血はプライムの56日後に収集した。次に、SARS-CoV-2に対する抗体力価を評価するために、ELISAを行った。加えて、プラーク低減中和アッセイ(PRNT)を使ったSARS-CoV-2中和抗体の評価も行われるだろう。さらにまた、肺気道を洗浄することにより、気管支肺胞洗浄液(BALF)が収集されるだろう。BALFは分泌IgAおよび中和抗体を測定するために使用されるだろう。中和アッセイの場合は、SARS-CoV-2シュードウイルスが、連続希釈した血清またはBALFと共にインキュベートされる。
【0324】
実施例19:ACMに封入されたSARS-CoV-2スパイクタンパク質、およびACMに封入されたCpGアジュバントによる、マウスの免疫処置
この実験では、BD21封入SARS-CoV-2スパイクタンパク質を、CpGアジュバントを使用して、またはCpGアジュバントを使用することなく、ワクチンとして試験した。この実験には、バキュロウイルス/昆虫細胞系の場合と同様に生産された完全長可溶性SARS-CoV-2スパイクタンパク質(SEQ ID NO:65)を使用した。タンジェンシャルフロー濾過とイオン交換クロマトグラフィーを併用することで、タンパク質を培地から精製した。スパイクタンパク質抗原およびCpGアジュバントの免疫原性に対する封入の効果を決定するために、以下の製剤を調製した:(i)遊離組換えスパイクタンパク質(SEQ ID NO:65、「fSpike)、(ii)BD21ポリマーソーム封入スパイクタンパク質(「ACM-Spike」)、(iii)遊離スパイクタンパク質と遊離CpGアジュバントとの混合物(「fSpike fCpG)、(iv)BD21ポリマーソーム封入スパイクタンパク質とBD21ポリマーソーム封入CpGとの混合物(ACM-Spike ACM-CpG)。
【0325】
その後、6~8週齢の雌C57BL/6マウスを、0日目および14日目に(
図24A参照)、皮下経路により、4つの製剤で免疫処置した。SARS-CoV2スパイクタンパク質に対する抗体力価を評価するために、血液を28日目に収集した。PBS陰性対照と比較して、すべての免疫処置マウスに血清中IgGの明らかな増加が観察されて、セロコンバージョンを示した(
図24B)。fSpike群とBD21ポリマーソーム封入スパイク群の間では、後者にIgG力価の増加傾向が見られ、スパイクタンパク質の免疫原性の改良に関するポリマーソーム封入の利益が示唆された。fSpikeとfCpGの共投与は、fSpike単独と比較して高いIgG力価をもたらしたが、
図24Bは、抗体応答の規模および一様性に関するさらなる改良が、(ポリマーソームの第1集団としての)ポリマーソーム封入スパイクタンパク質とポリマーソーム封入CpG(ポリマーソームの第2集団としてのアジュバント)の共投与によって達成されたことを示している。全体として、これらのデータは、抗原としてのポリマーソーム封入スパイクタンパク質とアジュバントとしてのポリマーソーム封入CpGの共投与が、単独でまたは組み合わせて送達される非封入物と比較して、目に見える利益を付与したことを示唆している。
【0326】
実施例20:材料および方法
実施例21~23では以下の材料および方法を適用した。
【0327】
20.1 材料。マウスCpG1826はInvivoGenから購入した。ローダミンB末端化PEG13-b-PBD22はPolymer Source Inc.から購入した。DQ卵白アルブミンタンパク質(OVA-DQ)はLife Technologies,Thermo Fisher Scientificから購入した。1,2-ジオレオイル-3-トリメチルアンモニウム-プロパン(DOTAP)はAvanti Polar Lipidsから入手した。Triton X-100はMP Biomedicalsから入手した。他の化学物質は、別段の言明がある場合を除き、すべてSigma-Aldrichから購入した。三量体スパイクタンパク質(SEQ ID NO:68)はACROBiosystems(#SPN-C52H8)から購入し、S2ドメインタンパク質(SEQ ID NO:67)はSino Biologicalから購入した。
【0328】
20.2 タンパク質発現。SEQ ID NO:36に示す配列を有するエクトドメインだけを含有する組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質(ここでは「S1S2」という)は、トリコプルシア・ニ(T.ni)昆虫細胞(Hi5、Thermo Fisher Scientific)によって発現させた。関心対象の遺伝子をBac-to-Bacシステム(Thermo Fisher Scientific)に入れ、Sf9細胞(Thermo Fisher Scientific)において、高力価が達成されるまで、トランスフェクションと継代培養を行った。1.5×106細胞/mlに希釈したトリコプルシア・ニ細胞を0.1のMOIで感染させ、インキュベートしておいた(27℃で96時間、125rpmで振とう)。細胞培養物を収集し、遠心分離(4℃、3,500×gで、15分間)によって細胞を除去し、0.22μm濾過によって清澄化した。関心対象のタンパク質を含有する培地をまずタンジェンシャルフロー濾過中空糸カセット(10kDa中空糸カセット;Cytiva)によって元の体積の十分の一まで濃縮し、次に、IEX結合緩衝液(20mMリン酸、50mM NaCl、5%スクロース、5%グリセロール、0.025%tween 20、1mM EDTA、pH4.6)への5体積相当のダイアフィルトレーションを行った。最初に、2ml/分に設定した、UnicornソフトウェアをローディングしたGE AKTAシステムを使用し、まずはHiTrap-FF SPカラム(5ml;Cytiva)において試料を結合させることによって、タンパク質を精製した。試料をローディングし、5カラム体積のIEX結合緩衝液で洗浄したら、IEX溶出緩衝液(20mMリン酸、50mM NaCl、5%スクロース、5%グリセロール、0.025%tween 20、1mM EDTA、pH7.6)に切り替えることによって、関心対象のタンパク質をカラムから溶出させた。溶出した試料を、Vivaspin濃縮器(10kDa、15ml、PES;Sartorius)を使って、体積5mlまで濃縮した。5mlローディングループ中の試料2.5mlをHiload 16/60 Superdex 200分取用(Prep Grade)カラムにローディングし、1ml/分のSEC緩衝液(20mMリン酸、150mM NaCl、5%スクロース、pH7.6)で作動させることによって、タンパク質を精製した。精製されたタンパク質を、100μlの試料をSuperdex 200 increase 10/300 GLカラムに注入することにより、0.75ml/分で作動するGE AKTAシステムを使って、サイズについて分析した。タンパク質の分子質量は、ゲル濾過較正キットHMW(チログロブリン、フェリチン、アルドース(Aldose)およびコンアルブミンの混合物を含有する;Cytiva)との比較によって算出した。
【0329】
20.3 ACM-抗原ポリマーソームの調製。SARS-CoV-2スパイク三量体、S1S2およびS2タンパク質を封入したACMポリマーソームは、溶媒分散法とそれに続く押出しによって調製した。テトラヒドロフラン(THF)に固形DOTAPおよびポリマーを溶解することによって、DOTAPおよびPEG13-b-PBD22ポリマーの400mg/ml原液を調製した。0.15当量(1.5μmol)のDOTAP原液と0.85当量(8.5μmol)のポリマー原液とを2mlガラスバイアルで混合し、ボルテックスすることにより、溶液Aを調製した。混合後に、溶液Aを50μlハミルトンガラスシリンジに吸引した。100μg/ml抗原の1ml溶液を5mlガラス試験管に入れた(溶液B)。溶液Aを1mlの溶液Bに、室温で絶えず混合(600~700rpm)しながら、ゆっくり加えた。濁った溶液が得られた。結果として生じた溶液を、1mlミニエクストルーダー(Avanti Polar Lipids)を使って、200nmメンブレンフィルタ(Avanti Polar Lipids)越しに21回押し出すことで、単分散ACM-抗原ベシクルを得た。一晩の透析によって非封入抗原を除去した。Fiji ImageJソフトウェア(v.1.52a)において、公知のBSA標準を使った密度分析によって、抗原の封入を定量した。
【0330】
20.4 ACM-CpGポリマーソームの調製。ACM-CpGポリマーソームは、上記の溶媒分散法とそれに続く押出しによって調製した。DOTAPおよびPEG13-b-PBD22ポリマーを含有する400mg/ml原液50μlを、1mlのCpG溶液に滴下した。濁った溶液が得られた。結果として生じた溶液を、1mlミニエクストルーダーを使って、200nmメンブレンフィルタ越しに21回押し出すことで、単分散ACM-CpGポリマーソームを得た。300kDa分子量カットオフ(MWCO)再生セルロースメンブレン(Spectrum Laboratories Inc.)を使った、PBS、pH7.4に対する4℃で一晩の透析により、非封入CpGを除去した。
【0331】
20.5 ACM-ローダミンおよびACM-ローダミン-OVA-DQの調製。ACM-ローダミンおよびACM-ローダミン-OVA-DQは、薄膜再水和法と、それに続く押出しによって調製した。クロロホルム中のPEG13-b-PBD22ポリマー9.9mgを、クロロホルム中のローダミンB末端化PEG13-b-PBD22 0.1mgと、99:1 w/vの比で混合し、丸底フラスコ中で振とうした。混合後に、ロータリーエバポレーターでクロロホルムを除去し、次に高真空下で1時間乾燥した。ACM-ローダミン-OVA-DQの調製には、100μg/ml OVA-DQの溶液1mlをフラスコに入れ、ACM-ローダミンの場合は、1mLの緩衝液を加えた。その溶液を4℃において一晩、600~700rpmで撹拌した。ピンク色の濁った溶液が得られた。結果として生じた溶液を、1mLミニエクストルーダー(Avanti Polar Lipids)を使って、200nmメンブレンフィルタ(Avanti Polar Lipids)越しに21回押し出すことで、単分散ACMナノ粒子を得た。1×PBSに対する一晩の透析によって非封入OVA-DQを除去した。
【0332】
20.6 動的光散乱(DLS)による粒径測定。DLSはZetasizer Nano ZSシステム(Malvern Panalytical)で実施した。20倍希釈した精製濾過試料100μlを、マイクロキュベット(Eppendorf(登録商標)UVette;Sigma-Aldrich)に入れ、173°検出器を使って平均30ラン(1ランあたり10秒)を収集した。
【0333】
20.7 SDS-PAGEによるSARS-CoV-2スパイクタンパク質の定量。既知濃度のACM-スパイクタンパク質または遊離スパイクタンパク質20μlを、マイクロ遠心チューブに加えた。2μlの25%Triton X-100を各試料に加え、25℃で30分間インキュベートすることで、ACMベシクルを溶解した。次に、20μlの1×ゲルローディング色素緩衝液を加え、チューブを95℃で10分間振とうした。4-12%ビス-トリスSDS-PAGEゲル上で、20μlの各試料を、140Vで40分間、泳動させた。完了したゲルを固定し、次に、SYPRO(登録商標)Rubyタンパク質ゲルステイン(Molecular Probes、Thermo Fisher Scientific)で染色した。
【0334】
20.8 ウェスタンブロット。iBlot 2 Dry Blotting System(Thermo Fisher Scientific)を使ってタンパク質をSDS-PAGEゲルからPVDFメンブレンに転写した。そのメンブレンを、TBST(0.1%v/v Tween-20を含むトリス緩衝食塩水)に溶解した5%w/v無脂肪乳により、室温で1時間ブロッキングした。組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質(Sino Biologicalから購入)に対して産生させたマウス血清を1:6,000希釈し、室温で1時間、メンブレンと共にインキュベートした。メンブレンをTBSTで3回、合計30分間洗浄してから、1:10,000希釈のHRPコンジュゲートヤギ抗マウス二次抗体と共に、室温で1時間インキュベートした。TBSTによる最後の洗浄を3回行った後、メンブレンをECL基質(Pierce、Thermo Fisher Scientific)と共に手短にインキュベートした。ImageQuant LAS 500システム(Cytiva)を使って、化学ルミネセンスシグナルを捕捉した。
【0335】
20.9 蛍光によるCpGの定量。既知濃度のACM-CpGまたは遊離CpG 20μlを384ウェルブラックプレートに加えた。10%Triton X-100を含むPBS 20μlを各ウェルに加え、そのプレートを25℃で30分間インキュベートすることでACMベシクルを溶解してから、10μlの20×SYBR(商標)Safe DNAゲルステイン(Invitrogen、Thermo Fisher Scientific)を加えた。そのプレートを25℃で5分間インキュベートし、プレートリーダー(Biotek)を使って蛍光を測定した(励起波長-500nm;蛍光波長-530nm)。
【0336】
20.10 低温透過型電子顕微鏡法(クライオTEM)。クライオTEMのために、ACM-S1S2、ACM-CpG、およびACM-S1S2+ACM-CpGベシクルを含有する試料(5mg/ml)4μLを、200メッシュサイズのレース状の穴あき(lacey holey)カーボン被覆Cuグリッド(Electron Microscopy Sciences)に吸着させた。使用前に、そのグリッドを、グロー放電により、20秒間、表面処理した。表面処理後に、4μlの試料を加え、グリッドを、Whatman濾紙(GE Healthcare Bio-Sciences)により、ブロットフォース(blot force)1で、2秒間、ブロットしてから、Vitrobot(FEI Company)を使って、-178℃の液体エタンに浸漬した。直接電子検出器(Falcon II;Fei Company)を装備したFEG 200keV透過型電子顕微鏡(Arctica;FEI Company)を使って、クライオグリッドを撮像した。画像はFiji ImageJソフトウェア(v.1.52a)で解析し、少なくとも20粒子を計数することによってベシクルの膜厚を算出した。
【0337】
20.11 マウス(ワクチン接種)。この研究はBiological Resource Center(シンガポール科学技術研究庁)において実施された。雌C57BL/6マウスをInVivosから購入し、8~9週齢時に使用した。別段の言明がある場合を除き、各ワクチン製剤に7~8匹のマウスが割り当てられた。マウスには、5μgの各抗原(遊離または封入)を、5μgのCpGアジュバント(遊離または封入)と共にまたはCpGアジュバントなしで、1回あたり200μlの体積で、14日の間隔をあけて、1回のプライムおよび1回のブーストとして、皮下経路で投与した。13日目、28日目、40日目および54日目に血液を収集した。脾臓は54日目の最終時点で収集した。この研究は、承認されたIACUCプロトコール181137に従って行われた。
【0338】
20.12 フローサイトメトリーのためのマウス組織調製およびデータ解析。マウスに、100mlのPBS、100mlのACM-ローダミンまたは100mlのACM-ローダミン-OVA-DQを皮下注射し、注射後、1日目、3日目または6日目に解析した。注射部位から背皮を収集し、ディスパーゼを含有するRPMI1640(Gibco,Thermo Fisher Scientific)に、37℃で90分間入れた。次に、その背皮および皮膚流入領域LNを、DNaseI(Roche)およびコラゲナーゼ(Sigma-Aldrich)を含有するRPMI1640に(別々に)移し、剪刀またはピンセットを使って崩壊させ、37℃で30分間消化した。PBS+10mM EDTAを加えることによって消化を停止し、70μmナイロンメッシュシーブ越しに細胞懸濁液を新しいチューブに移した。必要であれば、RBC溶解緩衝液(eBioscience(商標))を使って赤血球を溶解し、さらなる使用の前に、単一細胞懸濁液を70μmナイロンメッシュシーブに通した。次に、標準的プロトコールに従って単一細胞懸濁液をフローサイトメトリー解析用に染色した。Ly6C(クローンHK1.4)、CD11b(クローンM1/70)、EpCAM(クローンG8.8)、CD64(クローンX54-5/7.1)およびF4/80(クローンBM8)に対するモノクローナル抗体はBioLegendから購入し、CD11c(クローンN418)、CD103(クローン2E7)、CD8a(クローン53-6.7)およびMHC-II(クローンM5/114.15.2)に対するモノクローナル抗体はeBioscienceから購入し、CD24(クローンM1/69)、CD3(クローン500A2)、CD45(クローン30-F11)、CD49b(クローンHMa2)およびLy6G(クローン1A8)に対するモノクローナル抗体はBD Bioscienceから購入し、CD19(クローン1D3)およびビオチン化抗体のコンジュゲーション用のストレプトアビジンに対するモノクローナル抗体はBD Horizonから購入した。細胞ダブレットおよび死細胞の同定を可能にするために、DAPI染色を使用した。フローサイトメトリーの取得は、5レーザーLSR II(BD)でFACSDivaソフトウェアを使って実施し、続いてFlowJo v.10.5.3(Tree Star)を使ってデータを解析した。
【0339】
20.13 細胞内サイトカイン染色。各脾臓を70μmセルストレーナーに通すことによって脾細胞の単一細胞懸濁液を生成させた。赤血球は、1×RBC溶解緩衝液(eBioscience,Thermo Fisher Scientific)を使って室温で5分間、溶解した。脾細胞を完全細胞培養培地(10%v/v熱非働化FBS、50μM β-メルカプトエタノール、2mM L-glutamax、10mM HEPESおよび100U/ml Pen/Strepを捕捉したRPMI1640;材料はすべてGibco,Thermo Fisher Scientificから購入した)に再懸濁し、96ウェルU底プレートに1ウェルあたり約300万の密度で播種した。脾細胞を、スパイクタンパク質を覆うオーバーラップしたペプチドのプール(JPT製品PM-WCPV-S-1バイアル1および2)ならびに機能的抗マウスCD28およびCD49d抗体と共に、37℃、5%CO2で一晩、インキュベートした。ペプチドおよび抗体はそれぞれ1μg/mlで使用した。陰性対照ウェルは、脾細胞を培養培地および共刺激抗体と共にインキュベートすることによって作成した。陽性対照ウェルは、脾細胞を20ng/ml PMA(Sigma-Aldrich)および1μg/mlイオノマイシン(Sigma-Aldrich)と共にインキュベートすることによって作成した。翌朝、サイトカイン分泌を、1×ブレフェルジンA(eBioscience)および1×モネンシン(eBioscience)で6時間、遮断した。次に、細胞を、PBS中、1:1000のFixable Viability Dye eFluor(商標)455UV(eBioscience)を使って、4℃で30分間染色した。細胞をFACS緩衝液(2%v/v熱非働化FBSおよび1mM EDTAを捕捉した1×PBS)で洗浄し、BioLegend、eBioscienceおよびBDから購入した以下の抗体で、表面マーカーについて染色した:BUV395-CD45(30-F11)、Brilliant Violet 785(商標)-CD3(17A2)、Alexa Fluor 700-CD4(GK1.5)、APC-eFluor 780-CD8(53-6.7)およびPE/Dazzle(商標)594-CD44(IM7)。抗体をFACS緩衝液で1:200希釈し、細胞と共に4℃で30分間インキュベートした。Cytofix/Cytoperm(商標)キット(BD)を使用し、製造者の説明書に従って、固定および透過処理を行った。細胞内サイトカインは以下の抗体で染色した:Alexa Fluor 488-IFNγ(XMG1.2)、Brilliant Violet 650-TNFα(MP6-XT22)、APC-IL-2(JES6-5H4)、PerCP-eFluor 710-IL-4(11B11)およびPE-IL-5(TRFK5)。抗体を1×透過処理緩衝液で1:200希釈し、細胞と共に4℃で30分間インキュベートした。細胞を1×透過処理緩衝液で洗浄してから、LSR IIフローサイトメーター(BD)による解析のために、FACS緩衝液に再懸濁した。各試料についておよそ600,000の全イベントを記録した。データ解析はFlowJo V10.6.2ソフトウェアを用いて実施した。免疫処置マウス群についてのサイトカイン陽性イベントのパーセンテージをPBS対照群と比較した。PBS対照群のバックグラウンドを上回る応答をスパイク特異的とみなした。
【0340】
20.14 ACE2結合アッセイ。SARS-CoV-2スパイクタンパク質を、96ウェルEIA/RIA高結合プレート(Corning)上に、炭酸-重炭酸緩衝液(15mmol/L Na2CO3、35mmol/L NaHCO3;pH9.6)中、各ウェル200ng、4℃で一晩、コーティングした。プレートを、TBS+0.05%v/v Tween-20中の2%BSAにより、37℃で1.5時間、ブロッキングした。0.5%w/v BSAを含有するTBS緩衝液中に組換えhACE2-Fcタンパク質の3倍段階希釈液(12,000ng/ml~0.61ng/ml;GenScript)を調製し、プレートに、37℃で1時間適用した。HRPコンジュゲートヤギ抗ヒトIgG(Fc特異的;Sigma Aldrich)を1:10,000希釈し、プレートに37℃で1時間適用した。TMB基質(Sigma-Aldrich)を室温で15分間加えることによってACE2結合を可視化し、停止溶液(Stop Solution)(Invitrogen,Thermo Fisher Scientific)で反応を停止させた。マイクロプレートリーダー(Biotek)を使って450nmで吸光度を測定した。バックグラウンド吸光度を差し引き、GraphPad Prismバージョン8.4.3を使って、5パラメータ非線形回帰で、タイトレーション曲線のEC50値を決定した。
【0341】
20.15 SARS-CoV-2スパイク特異的血清IgG。SARS-CoV-2スパイクタンパク質を、96ウェルEIA/RIA高結合プレート(Corning)上に、PBS中、各ウェル100ng、4℃で一晩、コーティングした。プレートを、PBS+0.1%v/v Tween-20中の2%w/v BSAにより、37℃で1.5時間、ブロッキングした。マウス血清を、1:100の初期値から、ブロッキング緩衝液で連続希釈し、37℃で1時間、プレートに適用した。HRPコンジュゲートヤギ抗マウスIgG(H/L)、抗マウスIgG1または抗マウスIgG2b(それぞれBioRadから購入)をブロッキング緩衝液に、それぞれ1:10,000、1:4,000および1:4,000希釈し、プレートに37℃で1時間、適用した。TMB基質を室温で10分間加えることによって抗体結合を可視化し、停止溶液(Stop Solution)で反応を停止させた。450nmにおいて吸光度を測定した。各タイトレーション曲線を5パラメータ非線形回帰(GraphPad Prism V8.4.3)によって解析することで、プレートバックグラウンドの3倍の吸光度を生じる最高希釈度と定義されるエンドポイント力価を算出した。
【0342】
20.16 競合ELISAによる血清中和抗体。cPass(商標)SARS-CoV-2代用ウイルス中和試験キット(GenScript)を、製造者の説明書に従って使用した。簡単に述べると、各血清試料を試料希釈緩衝液(Sample Dilution Buffer)で1:10希釈し、等体積のHRP-RBD溶液と共に、37℃で30分間インキュベートした。次にその混合物を、37℃で15分間ACE2タンパク質でプレコーティングされた8ウェルストリップに適用した。TMB基質を室温で15分間加えることによってRBD-ACE2結合を可視化した。停止溶液(Stop Solution)を使って反応を停止させ、吸光度を450nmで測定した。RBD-ACE2結合の阻害は次式を使って算出した。
【0343】
20.17 シュードウイルス中和試験。293FT細胞へのS発現プラスミドとエンベロープ欠損pNL4-3.Luc.R-E-ルシフェラーゼレポーターベクターの共トランスフェクションによって、SARS-CoV-2スパイク糖タンパク質(S-pp)を保持するシュードタイプレンチウイルス粒子を生成させた。S発現プラスミドは、シュードタイプ化効率を強化するための19アミノ酸C末切断を伴うコドン最適化スパイク遺伝子(GenBankアクセッションQHD43416.1による)をpTT5哺乳類発現ベクターにクローニングすることによって構築された(pTT5LnX-coV-SP、シンガポールDSO National Laboratories、Biological Defence ProgramのBrendon John Hanson氏からのご厚意による寄贈)。トランスフェクションの48~72時間後にウイルス上清を収集し、遠心分離によって清澄化し、使用時まで-80℃で保存した。レンチウイルス関連p24 ELISAキット(Cell Biolabs,Inc.、カリフォルニア州サンディエゴ)を使ってS-pp価を決定した。ヒトACE2を安定に過剰発現するCHO細胞(CHO-ACE2)を形質導入の24時間前に96ウェルプレートに播種した。マウス血清試料を培養培地で1:20希釈し、56℃で30分間非働化し、Ultrafree-MC遠心分離フィルタ(Millipore、マサチューセッツ州バーリントン)を使って滅菌した。S-pp中和アッセイのために、血清試料を6回、2倍連続希釈し、S-ppと共に室温で1時間インキュベートしてから、その混合物を三つ一組のウェル中の標的細胞に加えた。細胞を37℃で48時間インキュベートしてから、Bright-Glo(商標)ルシフェラーゼアッセイシステム(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を使って、ルシフェラーゼ活性について試験した。プレートリーダー(Tecan Infinite M200)を使ってルミネセンスを測定し、バックグラウンドルミネセンスの差し引き後に、データを、血清なし(細胞+S-ppのみ)で得られた読み(これを100%に設定した)のパーセンテージとして表現した。GraphPad Prism 8を使って4パラメータ非線形回帰で用量応答曲線をプロットし、中和価を、50%のS-pp侵入を遮断する血清希釈度(IC50)として報告した。インプット血清希釈度(1:40)において50%中和を達成しなかった試料は1と表現し、最も高い血清希釈度(1:1280)で50%を上回る中和を達成した試料の中和価は1280と報告した。
【0344】
20.18 SARS-CoV-2中和試験。血清試料を、5%v/v FBSを補足したDMEMで、1:10の初期値から、2倍連続希釈し、等体積のウイルス懸濁液(1×104TCID50/ml)と共に、37℃で90分間インキュベートした。その混合物をVero-E6細胞に移し、37℃で1時間インキュベートした。接種物を取り除き、細胞をDMEMで1回洗浄した。新鮮な培養培地を加え、細胞を37℃で4日間インキュベートした。アッセイは二重に実施した。中和価は、細胞変性効果(CPE)を完全に阻害した最高血清希釈度と定義した。
【0345】
実施例21:スパイクタンパク質の精製およびACMポリマーソームへの封入
SARS-CoV-2スパイクタンパク質は免疫原性であり、T細胞および強い中和抗体の標的となることから、非常に魅力的なサブユニットワクチン標的である。さまざまなウイルスタンパク質およびがんタンパク質を使った以前の研究に基づいて(データ省略)、タンパク質の免疫原性はACMポリマーソーム内への封入によって著しく改良されうることが立証された。そのうえ、Toll様受容体(TLR)9アゴニストCpGなどといった適当なアジュバントの共投与によって、免疫応答のさらなる増加を達成することができる。そこで、本アプローチでは、共投与のために、スパイクタンパク質とCpGアジュバントの両方を封入した(
図28a)。スパイクタンパク質を生成させるために、S1ドメインとS2ドメインは保っているが疎水性膜貫通ドメインが排除され、それによってタンパク質の溶解性が改良されている、スパイクバリアント(これを「S1S2」という;
図28b)を発現するように、トリコプルシア・ニ細胞を操作した。加えて、以後の免疫原性試験における対照として使用するために、S2フラグメントおよび三量体スパイクタンパク質(
図28b)を供給業者から購入した。S2は、強い中和エピトープを欠く対照として役立ち、三量体スパイクは、それがこのウイルスタンパク質の天然コンフィギュレーションを最もよく表していると考えて、対照として使用した。
【0346】
これら3つのスパイクバリアントを、SDS-PAGEとそれに続くSYPRO Ruby染色(
図28c)およびSino Biologicalから購入した組換えSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対して産生させたマウス免疫血清を使ったウェスタンブロット(
図28d)によって解析した。SYPRO色素を使った全タンパク質染色はS1S2タンパク質が、150kDa位置に接近して移動する2本の主要バンドならびに75kDaおよび50kDaのそれより小さな2本のバンドを含む数本のバンドからなることを示した(
図28c)。ウェスタンブロットでは4本のバンドすべてがスパイク特異的抗体によって認識されたことから(
図28d)、それらはスパイクタンパク質の全部または一部であることが確認された。150kDa位置にある2本のバンドのうち、重い方のバンドは高度にグリコシル化された完全長スパイクタンパク質に対応し、一方、軽い方のバンドは、それより軽度のグリコシル化プロファイルを有すると推定された。残り2本のウェスタンブロット反応性バンドはおそらく完全長タンパク質の切断型であった。興味深いことに、分析サイズ排除クロマトグラフィーデータは、S1S2タンパク質が、より高次の構造を形成しうることを示した(311kDa;
図32)。これは、予想されるモノマー(180kDa)より大きく、三量体化ドメインが存在しないにもかかわらずオリゴマーが存在することを示唆しうる。機能的には、S1S2タンパク質のアビディティは三量体スパイクと比べると低いものの、S1S2タンパク質は139.6ng/mlのEC50値でACE2に強く結合した(
図28e)。
【0347】
総合すると、このデータは、機能的な受容体結合ドメイン(RBD)を提示する正しく折りたたまれたスパイクタンパク質を示唆している。正しいコンフォメーションをとることは、免疫処置の観点からは本質的に重要である。スパイクタンパク質のRBD以外の領域も報告はされているものの、強力な中和抗体はRBDを標的とするからである。ウイルス抗原(スパイク三量体、S2およびS1S2タンパク質)とCpGアジュバントは、それぞれACM-三量体、ACM-S2、ACM-S1S2およびACM-CpGとして、個々のベシクルに、別々に封入された。ベシクルを、100~200nmの直径範囲内に押し出した後、溶媒、封入されていない抗原およびアジュバントを除去するための透析を行った。最終ワクチン製剤は、投与前に、ACM-S1S2とACM-CpGの50:50v/v混合物であった。試料はすべて、HEK Blue細胞ベースの比色アッセイを使ったエンドトキシン試験で、陰性だった(
図33)。
【0348】
ACM-抗原およびACM-CpGのサイズおよび形態を動的光散乱(DLS)および低温透過型電子顕微鏡法(クライオTEM)でそれぞれ評価した。概して、ACMポリマーソームのサイズは一様であり(
図28f)、158±25nmの平均z平均流体力学直径(mean z-average hydrodynamic diameter)を持つ単峰性強度重み付け分布(unimodal intensity-weighted distribution)に従った。さまざまなACM-抗原調製物のサイズは同等だった-ACM-三量体:133nm(PDI 0.192);ACM-S1S2:139nm(PDI 0.181);およびACM-S2、143nm(PDI 0.178)。一方、ACM-CpGはわずかに大きく183nm(PDI 0.085)だった。最終ワクチン製剤(ACM-S1S2+ACM-CpG)は、個々のベシクルのサイズ分布と同等のサイズ分布を示した(
図28f)。電子顕微鏡像により、均一なサイズ分布を持つベシクル状アーキテクチャが明らかになり、トポグラフィー的に一様なベシクルが示唆された(
図28g~i)。ラインプロファイル測定から、ACM-S1S2、ACM-CpGおよびACM-S1S2+ACM-CpGの二重層の厚さは、それぞれ9.0±0.8nm、10.3±1.0nmおよび9.9±1.1nmと見積もられた。
【0349】
ベシクル内へのタンパク質封入を評価するために、ACM-抗原粒子を2.5%非イオン性界面活性剤Triton X100で溶解してから、遊離タンパク質較正用標準と並行して、SDS-PAGEで特性解析した。封入タンパク質の濃度は、SDS-PAGEとそれに続くSYPRO Ruby染色から、密度測定法によって定量した(
図35a~c)。ACMポリマーはSYPROステインと相互作用して、レーンの最下部に明確なスメアを生成し、このスメアとタンパク質バンドとの共局在により、封入が起こっていることが確認された。封入された三量体、S1S2およびS2の量は、100μg/mlの出発濃度から、それぞれ48μg/ml、46μg/mlおよび25.7μg/mlであると決定された。封入を免れた遊離タンパク質を除去するために、すべてのACM調製物を透析した。各ACM調製物中に残っている遊離タンパク質の量を決定するために、遊離タンパク質対照を使った並行透析実験を行った。SYPRO染色は、100μg/mlの出発タンパク質濃度から、透析後に残存する19.8μg/mlの遊離三量体、7.5μg/mlの遊離S1S2タンパク質および0μg/mlの遊離S2を示したことから(
図34a~c)、非封入タンパク質の大部分がACM-S1S2およびACM-S2調製物から除去され、一方、ACM-三量体試料では、40%近くの遊離タンパク質がまだ残っていることが示された。三量体除去の効率の低さは、S1S2またはS2と比較してそのサイズが大きく、それが透析膜を横切る三量体の拡散を低減させることが原因でありうる。ACMベシクルに封入されたCpGの濃度を定量するには、DNA結合色素SYBR Safeを使用した。530nmの蛍光放射に基づいて、ACM-CpGの封入は、効率60%の480μg/mlと決定された。
【0350】
地域流通および広域流通との関連での貯蔵寿命および製品安定性の重要性を考慮して、遊離S1S2タンパク質、ACM-S1S2、遊離CpG、ACM-CpG、遊離S1S2+遊離CpG、およびACM-S1S2+ACM-CpGに関して、4℃および37℃における安定性試験を実施した。初期観察結果は、極めて安定なベシクルを示し、それぞれDLS、SDS-PAGEとそれに続くSYPRO染色、およびELISAによるACE2結合アッセイで測定したところ、4℃で20週まで、ACM-S1S2製剤のサイズおよびPDIに変化はなく、S1S2タンパク質内容物の分解はなく、活性の喪失も最小限であった(
図35a~d)。しかし、37℃における加速安定性試験は、遊離S1S2とACM-S1S2の両方について、1週間後にはタンパク質濃度の減少を示し(
図36a)、高温でのタンパク質分解を示した。予想外なことに、CpGを含有する試料(ACM-S1S2+ACM-CpGまたは遊離S1S2+遊離CpGのいずれか)は、タンパク質分解の低減を呈した。さらに、ACM-S1S2+ACM-CpGだけが、そのタンパク質含量を28日目まで維持し、他の製剤は完全なタンパク質分解を示した(
図36a)。CpGが37℃におけるタンパク質の安定性をどのようにして維持できるのかはまだ不明だが、もしかすると、負に荷電したCpGがS1S2試料中に不純物として存在するプロテアーゼと会合して、S1S2タンパク質のタンパク質分解を妨げるのかもしれない。対照的に、ACM製剤のサイズおよびPDIは、28日間にわたって安定なままだった(
図36b、c)。
【0351】
要約すると、ACE2に高いアビディティで結合する機能的SARS-CoV-2スパイク(「S1S2」)タンパク質が、トリコプルシア・ニ細胞から発現し、精製された。これは、中和抗体の誘導に必要な、正しく折りたたまれたタンパク質を示唆した。そのタンパク質とCpGアジュバントとを、最終ワクチン製剤として共投与する目的で、ACMポリマーソームに別々に封入した。安定性試験において、ACM封入S1S2タンパク質は、37℃では迅速に分解したが、4℃では少なくとも20週にわたって無傷のままだった。貯蔵、輸送および流通時に4℃での適切な温度管理を行えば、ACM-S1S2製剤は、長期間にわたって機能性を維持すると予想されるだろう。
【0352】
実施例22:ACM-S1S2+ACM-CpG製剤は、マウスにおいて、SARS-CoV-2に対するロバストで永続的な中和抗体を誘導した。
ACMポリマーソームのDC標的特性を立証したので、C57BL/6マウスにおいてACM-スパイクワクチン製剤を評価することにした。各製剤を皮下注射により、2週間の間隔で、2回、投与し、血清抗体を13日目(ブースト前)および28、40および54日目(ブースト後)に調べた(
図29a)。すべての抗原を1回あたり5μg注射した。加えて、1つのマウス群には、限られた用量の削減を調査するために、ACM-S1S2+ACM-CpG製剤を10分の1量(0.5μg)で与えた。13日目のスパイク特異的IgG価は、どの製剤の単回投与後も、中~低だったが、ブースト後の28日目には、21~255倍に劇的に増加した(
図29b)。遊離抗原とACM封入抗原(S2、三量体またはS1S2)との間では、後者の方が、特にブースト後は、IgG価が高い傾向が観察されたことから、ACM技術は各抗原の免疫原性を強化することが示唆された。封入された三量体またはS1S2タンパク質で免疫処置されたマウスの間では、28日目平均IgG価がそれぞれ1.0×10
5および0.9×10
5と同等であったことから、類似する免疫原性が示唆された。S1S2タンパク質に注目すると、CpGアジュバントの共投与、特にACM封入CpGの共投与によって、28日目IgG価の漸進的増加が見られた。最も高いIgG応答は、ACM-S1S2+ACM-CpG製剤(8.5×10
5の平均力価)で達成され、これは10分の1の用量でさえ、ロバストなIgG応答を誘発した(7.5×10
5の平均力価)。IgG応答の耐久性を決定するために、マウスを54日目まで監視し続けた。本発明者らが知る限り、これほど遅い時点までマウスにおける抗体応答を調べたサブユニットワクチン開発者は、他にはない。自然SARS-CoV-2感染後に似たIgG価の着実な減少が各製剤に観察された(
図29b)。それでもなお、IgGの減少にもかかわらず、ウイルス中和価は安定なままであると報告されたので、次に中和応答を調べた。
【0353】
BSL-3での生ウイルスに対する最終バリデーションを行う前に、潜在的に中和性の血清試料をBSL-1/2環境で同定するために、多段階アプローチを採用した。第1段階では、組換えRBDタンパク質と組換えACE2タンパク質の間の相互作用を遮断する中和抗体を測定するFDA承認済みの競合ELISAベースのアッセイであるcPass(商標)キットを使用した。とりわけ重要なことに、このキットは患者血清および生SARS-CoV-2に対してバリデートされており、99.93%の特異度および95~100%の感度で、患者を健常対照と識別することが示された。13日目の低いIgG価(
図29b)と合致して、さまざまなワクチン製剤による免疫血清は一般に、1:20の希釈度で、RBD-ACE2結合の阻害をほとんどまたは全く示さなかった(
図29c)が、fS1S2+fCpGマウス群とACM-S1S2+ACM-CpGマウス群は例外で、これらはそれぞれ7/8および5/7のセロコンバージョン率を呈した。次に、ブースト後に収集した血清に注目した。遊離S2タンパク質またはACM封入S2タンパク質を投与したマウスは、28日目から54日目までは阻害活性をほとんどまたは全く示さない状態が続き(
図29c)、S2には中和エピトープが存在しないことが確認された。スパイク三量体タンパク質およびS1S2タンパク質(遊離または封入)は、28日目にばらつきの大きい応答を生成し、それらは後続の時点では迅速に低下した。目を引くことに、ACM-S1S2+ACM-CpG製剤は、28日目に1:20の血清希釈度で、すべてのマウスにおいて高レベルの活性を誘発し、平均阻害率は94%だった。そのうえ、活性のレベルは54日目まで一様に高いままであり、永続的な応答を示した。これらの知見を確認するために、シュードウイルス中和試験を、重要な5つの群、ACM-S2、ACM-三量体、ACM-S1S2、およびACM-S1S2+ACM-CpG(投薬量0.5μg群および5μg群)からの28日目血清で、実施した。予想どおり、ACM-S2はSARS-CoV-2スパイクシュードタイプウイルスに対する中和抗体を生成させることができなかった(IC
50価<40;
図30a)。ACM-三量体マウス群およびACM-S1S2マウス群については、部分的セロコンバージョンが、それぞれ7/8および4/8のマウスに観察され、陽性応答を示した(IC
50価≧40)。最後に、ACM-S1S2+ACM-CpGマウス群は、完全なセロオンバージョンを示し、平均IC
50価は789だった。興味深いことに、10分の1(0.5μg)の用量でも著しく有効なままで、5/5のマウスにセロコンバージョンを誘発し、平均力価は773だった。
【0354】
次に、最後の時点(54日目)からの血清を、シュードウイルス中和試験および生SARS-CoV-2中和試験によって試験した(
図30b、c)。どのマウス群でも中和応答は一般的には中~低であり、多くのマウスはそれぞれの検出限界未満になった。ACM-S1S2+ACM-CpG群だけは高い中和価を保っていて、シュードウイルスに対する平均IC
50価は475(
図30b)、生SARS-CoV-2に対するIC
100価は359(
図30c)だった。10分の1の用量でさえ良好な効力を示し、シュードウイルスに対して416の平均IC
50価、SARS-CoV-2に対して276のIC
100価を誘導した。上記2つの中和アッセイ間での結果は概してよく一致していた(ピアソン相関係数:0.83;
図37)。ACM-S1S2+ACM-CpGワクチン接種後の中和応答の動態をより良く理解するために、13日目および40日目からの血清も、生ウイルス中和試験によって評価した(
図30d;28日目血清は先のシュードウイルス試験であるため利用できない)。ACM-S1S2+ACM-CpGは、13日目に平均IC
100価47の部分的セロコンバージョンを誘発したが、2回の投与は40日目にIC
100価の737への急激に上昇をもたらした。先の血清IgGデータと共に、これにより、ロバストな中和価を誘導するためのプライム-ブーストレジ面が、強く支持された。全体として、ACM-S1S2+ACM-CpGは5μgの用量ですべてのマウスにおいて高レベルの中和抗体を誘導することが実証された。そのうえ、中和価は最後の投与後、少なくとも40日は持続し、永続的な応答を示唆した。
【0355】
実施例23:ACM-S1S2+ACM-CpG製剤は、マウスにおいてSARS-CoV-2スパイクタンパク質に対するTh1に偏った機能的メモリーT細胞を誘導した。
スパイク特異的T細胞応答を評価するために、54日目にすべてのマウスから脾細胞を収集し、スパイクタンパク質を覆うオーバーラップしたペプチドのプールを使って、エクスビボで刺激した。細胞内サイトカイン染色によってT細胞機能を測定した。この遅い時点(ブーストの40日後)では、活性化T細胞は、初期拡大期を超えて進行しており、収縮/メモリー期に入っているだろう。本発明者らが知る限り、ブースト後7週という遅い時点でマウスT細胞応答を調べているのは、Modernaだけである。それぞれのCD44
hi亜集団にゲートをかけることによってメモリー表現型のCD4
+およびCD8
+T細胞を同定した。S1S2ワクチン群では、ACM-S1S2+ACM-CpG製剤(用量5または0.5μg)だけが、スパイクペプチド刺激に応答して、IFNγ、TNFαまたはIL-2を発現するCD4
+T細胞の高度に有意な増加を誘導した(
図31a。S2マウス群および三量体マウス群では、ベースラインを上回るTh1サイトカイン生産CD4
+T細胞数の有意な増加は検出されなかった(
図38a)。Th2サイトカインについては、IL-4はどのマウス群でも検出されなかったが、IL-5は、アジュバントなしのS1S2-、S2-または三量体-免疫処置マウスでは一貫して上昇したことから(それぞれ
図30aおよび
図38a)、Th2に偏った免疫応答が示された。Th2偏向はIgG1:IgG2b比からも明らかだった(
図31c)。目を引くことに、IL-5の生産はCpGの共投与によって強く抑制された。特に、ACM-S1S2+ACM-CpG製剤(用量5または0.5μg)は、明確なTh1分極プロファイルを生じ、それはIgG1:IgG2b比<1にも反映された(それぞれ
図31aおよびc)。CD8
+T細胞については、ACM-S1S2+ACM-CpG(用量5μg)群においてIFNγが主要な応答であり、すべてのマウスがベースラインを上回る活性を示した(
図31b)。加えて、一部のマウスはTNFαおよびIL-2のわずかな発現を有した。ただし、応答細胞の平均頻度は有意には上昇しなかった。類似するサイトカインプロファイルがACM-S1S2群でも見られたが、ベースラインを上回るIFNγ応答を有したのは5/8のマウスだけだった。残りのマウス群の場合、CD8
+T細胞応答は有意には上昇しなかった(
図31bおよび
図38b)。総合すると、ACM-S1S2+ACM-CpG(用量5μg)は、すべてのマウスにおいて、最後の投与から40日後でさえ容易に検出される機能的メモリーCD4
+およびCD8
+T細胞を誘導した。加えて、CD4
+T細胞はTh1偏向サイトカインプロファイルを呈し、それはIgG1に対するIgG2bの優位性にも反映された。
【0356】
要約すると、ACM-S1S2+ACM-CpGは、最後の投与の40日後に検出することができる機能的メモリーCD4+およびCD8+T細胞を誘導した。効率よく交差提示するcDC1の能力を考えると、CD8+T細胞免疫を生成させるには、cDC1によるACMベシクルの効率のよい取込みがおそらく重要だろう。本研究において、ACM-S1S2をワクチン接種したマウスでは、スパイク特異的CD8+T細胞応答が実証されたが、遊離S1S2タンパク質ではそうはならなかった。
【0357】
ワクチン製剤にCpGを含めることによって、いくつかの利益が得られる。これは、DCを強力に活性化して、CD40、CD80およびCD86を含む共刺激分子をアップレギュレートし、それがT細胞活性化ならびにB細胞の抗体クラススイッチおよび抗体分泌を促進する。TLR-9へのCpGの結合は、炎症性サイトカイン生産およびTh1偏向免疫応答をもたらすMAPKおよびNF-kBシグナル伝達をトリガーする。本研究では、そのような分極が、CpG含有ワクチン製剤のCD4+T細胞のサイトカインプロファイルおよびIgG1:IgG2b比によって、明確に実証される。CpGの非存在下では、IL-5生産が一貫して観察されたが、これは、ウイルス起源および非ウイルス起源のタンパク質抗原を使った免疫処置による固有のTh2偏向という、より広範な像に合致している。安全面からいうと、これは、全粒子不活化RSVワクチンを代表的な例とするTh2免疫病理の潜在的リスクを表す。したがってそのようなワクチンは、実際の感染時にはTh2に偏った(Th2-biased)応答を与えるように免疫系をプライミングし、その結果として起こるTh2サイトカインの生産は、粘液生産、好酸球動員および気道反応亢進の増加を促進した。それゆえに、CpGによるTh1への免疫応答の偏向は、ワクチンの安全性を改良する可能性が高い。
【0358】
全IgGの迅速な減少にも関わらず、中和価は安定な状態を保ちうることが示されており、それはヒトにおけるSARS-CoV-2感染と合致する。これは、弱い結合物質を排除しつつ、アビディティが高くて強く中和する抗体を漸進的に選択する親和性成熟によるのだろう。加えて、シンガポールでリクルートされた回復期患者において測定された中和価と比較して、本開示のワクチン製剤は、より効率よく中和抗体をトリガーしうるようである。Covid-19における抗体の役割はまだ確立されていないが、中和抗体を防御の潜在的相関因子とみなすことは合理的である。検出可能な中和応答がない少数派を含めて、生産される中和抗体レベルが大きく異なる無症候性患者または軽症患者の報告は、自然感染が予測不可能であることを強調している。この点で、本開示のワクチンは、おそらく、より一様な中和抗体応答の誘導を容易にすることができるだろう。
【0359】
SARS-CoV-2におけるT細胞の役割は、ほぼ間違いなく、抗体よりさらに明確でない。それでもなお、いくつかの研究により、感染に続くT細胞応答の誘導が確認されている。SARS-CoV-2に対する適応免疫応答の初期において、T細胞はロバストに活性化される。2003年にSARSから回復した患者は、17年後に検出することができるメモリーT細胞を有した。加えて、SARS、Covid-19の病歴がなく、SARSおよび/またはCovid-19であった個体との接触歴もない個体が、他のベータコロナウイルスによる過去の感染によって生成したと思われる交差反応性T細胞を持っていた。これらのデータから、SARS-CoV-2特異的T細胞応答は同様に永続的でありうることが示唆された。Covid-19回復期患者のT細胞特異性を調べた研究では、スパイク特異的CD4+T細胞が一貫して検出され、一方、CD8+T細胞は大半の被験者に存在した。これは、スパイクベースのワクチンが、CD8+T細胞レパトアは狭いものの、自然感染のCD4+T細胞プロファイルをおおむね再現する細胞性免疫応答を生成しうることを含意している。
【0360】
パンデミックワクチンを作出する際の大きな課題の一つは、世界的需要を迅速に満たす十分な用量の高品質な抗原を生成させることである。したがって、用量削減戦略が重大な意味を持ち、それは伝統的にアジュバントを使って達成されてきた。この研究に基づき、ACM技術はアジュバントと共に、用量削減効果をさらに強化することができると考えられる。いくつかの態様ではワクチンの免疫原性が著しく改良されて、10分の1の用量でさえ、十分なレベルの効力を保持することが明らかになった。この研究は、パンデミックにおける抗原の限られた入手可能性に対処するためのACM技術の使用を強く裏付けている。
【0361】
実施例24:ACM封入はCpGの生物学的機能を強化し、ACM-CpGは遊離CpGと比べて優れたアジュバント活性を呈した。
クラスB CpGは、エンドソームToll様受容体9(TLR9)に結合して、樹状細胞(DC)の活性化、炎症性サイトカインの生産、およびB細胞の分化と抗体分泌を含むいくつかの免疫学的効果を誘導する。クラスB CpGは、これらの属性ゆえに、ワクチンアジュバントとして貴重である。この研究では、C57BL/6マウスに5μgの遊離マウスCpG1826またはACM-CpG1826を皮下(SC)注射して、古典的樹状細胞(cDC)を活性化するそれらの相対的能力を比較した。2日後に、DC活性化を評価するために、鼠径部リンパ節(注射部位から流入するリンパ節)を収集した。空のACMポリマーソームを注射したマウスは、PBS対照と比較した場合に、cDC1上(
図39a、c)またはcDC2上(
図39b、d)のCD86またはCD80活性化マーカーをアップレギュレートしなかったことから、ACMポリマーソームの非免疫原性が示された。遊離CpGの投与は、PBS対照または空のACM対照と比較して、cDC2におけるCD86およびCD80発現の有意な増加を誘導したが(
図39b、d)、cDC1ではそうならなかった(
図39a、c)。対照的に、ACM-CpGの投与は、cDC2上(
図39b、d)およびcDC1上(
図39a、c)のCD86およびCD80を有意にアップレギュレートした。総合すると、このデータは、遊離CpGの効果がcDC2に限定されるのに対して、ACM-CpGは両方のDCサブセットを活性化することができ、より優れたアジュバント活性を示すことを実証している。そのうえ、ACMポリマーソームだけでは非免疫原性であることから、強化されたDC活性化は、エンドソームTLR9へのCpGの効率のよい送達によるものだった。
【0362】
実施例25:ACM-CpGは遊離CpGよりも幅広いサイトカインプロファイルを誘導した。
CpGによるTLR9活性化のアウトカムはアゴニストのクラスに依存する。クラスA CpGは、IRF7経路によるシグナル伝達を可能にしてIL-6と並んでIFNαの生産をもたらす多量体構造を有する。マウスCpG1826およびヒトCpG7909を含むクラスB CpGは単量体型であり、上記とは異なり、NFκB経路を介してシグナル伝達することで、IL-6を生産するが、IFNαは生産しない。にもかかわらず、CpG-Bは、ACMポリマーソーム内での凝集によって再編成されてCpG-Aと類似することにより、両方の特性を獲得する。
【0363】
エクスビボ実験では、6人の健常ドナーからの末梢血単核球(PBMC)を、増加する濃度(0.62、1.25、2.5および5μM)の遊離CpG-A、遊離CpG-B(7909)またはACM-CpG-Bで刺激した。培養上清中に分泌されたIL-6およびIFNαのレベルをELISAによって測定した。CpG-AまたはCpG-Bと共にインキュベートした後は、すべてのドナーにおいて、IL-6が低~中程度の量で検出され、そのレベルは1.25μM CpG前後ですぐに飽和した(
図40a、b)。遊離CpG-BとACM-CpG-Bとでは、類似する用量応答プロファイルが観察された(
図40b、c)。IFNαについては、CpG-Aによる強力な生産が見られたのに対し(
図40d)、CpG-Bではほとんどまたは全く検出されなかった(
図40e)。興味深いことに、ACMポリマーソーム内にCpG-Bを封入することで、0.62~1.25μM CpGの範囲内でIFNα生産を刺激する能力が付与された(
図40f)。総合すると、このデータは、ACM-CpG-Bは、おそらくはポリマーソーム内でのCpG分子の凝集性により、ヒトPBMCにおいてIFNαおよびIL-6を誘導できることを示した。これらのサイトカインはそれぞれ、DCを刺激して成熟させ、またB細胞を刺激して増殖させ抗体を生産させるので、両方のサイトカインを誘導できることは有利であった。
【0364】
本発明が、それを実行し、上述のそしてそこに内在する目的および利点を得るのに適していることは、当業者には容易に理解されるだろう。さらに、本発明の範囲および要旨から逸脱することなく、本明細書に開示された発明にさまざまな置換および変更を加えうることは、当業者には一目瞭然であるだろう。本明細書に記載された組成物、方法、手順、処置、分子および具体的化合物は、現時点において一定の態様を代表するものであり、例示的であって、本発明の範囲の限定を意図していない。そこでの改変および他の使用であって、本発明の要旨に包含され、請求項の範囲によって規定されるものを、当業者は思いつくであろう。以前に公開された文書の本明細書における一覧または考察は、必ずしも、その文書が技術水準の一部であることまたは共通一般知識であることの認知であると解釈されるべきではない。
【0365】
本明細書に例示的に記載された発明は、本明細書に具体的に開示されていない1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限が存在しなくても、適切に実施されうる。したがって、例えば「を含む」(comprising、including、containing)などの用語は、限定されることなく、拡張的に読解されるものとする。加えて、本明細書で使用される用語および表現は、限定ではなく説明の用語として使用されており、そのような用語および表現の使用に、表示され説明された特徴またはその一部分のいかなる等価物も除外する意図はなく、請求項に係る発明の範囲内でさまざまな変更が考えられると認識される。したがって、例示的な態様および随意の特徴によって本発明を具体的に開示したが、当業者であれば、本明細書に具体化された発明の改変および変形に頼ることができ、そのような変更および変形が本発明の範囲内とみなされることは、理解すべきである。
【0366】
本明細書では本発明を広く上位概念によって記載した。上位概念の開示に包含される下位概念および下位分類のそれぞれも、本開示の一部を形成する。これには、削除される事項が本明細書において具体的に言明されているか否かにかかわらず、上位概念からいずれかの対象事項を除外する但し書きまたは消極的限定を伴う、上位概念による本発明の説明が包含される。本明細書において言及する文書は、特許出願および科学的刊行物を含めてすべて、参照により、あらゆる目的で本明細書に組み入れられる。
【0367】
他の態様は添付の請求項の範囲内にある。加えて、本発明の特徴または局面がマーカッシュ群によって記載されている場合、本発明が、それにより、そのマーカッシュ群の任意の個々のメンバーまたはメンバーの部分群によっても記載されていることは、当業者には理解されるだろう。
【0368】
【配列表】
【国際調査報告】