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特表2024-500370内燃機関からのNH3及びNOx排出の削減のための触媒装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】内燃機関からのNH3及びNOx排出の削減のための触媒装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 29/76 20060101AFI20231226BHJP
   B01J 35/57 20240101ALI20231226BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20231226BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20231226BHJP
   F01N 3/10 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B01J29/76 A ZAB
B01J35/04 301L
B01D53/94 222
B01D53/94 228
F01N3/08 B
F01N3/10 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535924
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-06-13
(86)【国際出願番号】 EP2021084091
(87)【国際公開番号】W WO2022128523
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20213804.6
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マッシモ・コロンボ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・ザイラー
(72)【発明者】
【氏名】アンケ・シューラー
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル・ベントリヒ
【テーマコード(参考)】
3G091
4D148
4G169
【Fターム(参考)】
3G091AA18
3G091AB09
3G091AB15
3G091BA14
3G091CA17
3G091GB06W
3G091GB07W
3G091GB09W
4D148AA06
4D148AA08
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4G169AA03
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4G169BA05C
4G169BA07A
4G169BA07B
4G169BA10C
4G169BA13A
4G169BA13B
4G169BA17
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4G169BC22C
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4G169BC66A
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4G169EC28
4G169EC29
4G169EE06
4G169EE09
4G169FA06
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4G169FC08
4G169ZA07A
4G169ZA14A
4G169ZA14B
4G169ZA19A
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4G169ZD06
4G169ZF02A
4G169ZF02B
4G169ZF04A
4G169ZF05A
4G169ZF05B
(57)【要約】
リーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するための触媒装置を開示し、触媒装置は、上流SCR触媒であって、担体基材と、第1のSCR触媒活性組成物SCR第1及び任意で少なくとも1種の第1のバインダを含む第1のウォッシュコートであって、担体基材に塗布された第1のウォッシュコートとを含む上流SCR触媒と、下流ASC触媒であって、担体基材と、酸化触媒及び任意で少なくとも1種の第3のバインダを含む第3のウォッシュコートを含む下層であって、担体基材上に直接塗布された下層と、第2のSCR触媒活性組成物SCR第2及び任意で少なくとも1種の第2のバインダを含む第2のウォッシュコートを含む上層であって、下層の上に塗布された上層とを含む下流ASC触媒を含み、上流SCR触媒及び下流ASC触媒は単一の担体基材上に存在するか、又は2つの異なる担体基材上に存在し、第1及び第2のSCR触媒活性組成物は、互いに同じであるか又は異なり、任意で含まれる少なくとも1種の第1、第2及び第3のバインダは、互いに同じであるか又は異なり、第1及び第2のウォッシュコート中のg/Lで与えられる第1及び第2のSCR触媒活性組成物の担持量の比(AA)は、1.2:1~2:1である。第1及び第2のSCR触媒活性組成物は、好ましくはモレキュラーシーブを含み、酸化触媒は、好ましくは白金族金属を含む。触媒装置は、リーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するために使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するための触媒装置であって、
a.上流SCR触媒であって、
i.担体基材と、
ii.第1のSCR触媒活性組成物SCR第1及び任意で少なくとも1種の第1のバインダを含む第1のウォッシュコートであって、前記担体基材に塗布された第1のウォッシュコートとを含む上流SCR触媒、
b.下流ASC触媒であって、
i.担体基材と、
ii.酸化触媒及び任意で少なくとも1種の第3のバインダを含む第3のウォッシュコートを含む下層であって、前記担体基材上に直接塗布された下層と、
iii.第2のSCR触媒活性組成物SCR第2及び任意で少なくとも1種の第2のバインダを含む第2のウォッシュコートを含む上層であって、前記下層上に塗布された上層とを含む下流ASC触媒を含み、
-前記上流SCR触媒及び前記下流ASC触媒が単一の担体基材上に存在するか、又は2つの異なる担体基材上に存在し、
-前記第1及び第2のSCR触媒活性組成物が、互いに同じであるか又は異なり、
-前記任意で含まれる少なくとも1種の第1、第2及び第3のバインダが、互いに同じであるか又は異なり、
-前記第1及び第2のウォッシュコート中のg/Lで与えられる前記第1及び第2のSCR触媒活性組成物の担持量の比
【数1】
が、1.2:1~2:1である、触媒装置。
【請求項2】
前記第1及び第2のSCR触媒活性組成物が互いに独立して、モレキュラーシーブから選択される、請求項1に記載の触媒装置。
【請求項3】
前記モレキュラーシーブが、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、BEA、BIK、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、ESV、ETL、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、並びにこれらの骨格タイプのうちの少なくとも1種を含有する混合物及び連晶から選択される結晶性アルミノシリケートゼオライトである、請求項2に記載の触媒装置。
【請求項4】
前記結晶性アルミノシリケートゼオライトが5~100のSAR値を有する、請求項3に記載の触媒装置。
【請求項5】
前記結晶性アルミノシリケートゼオライトが銅で促進されており、銅対アルミニウムの原子比が0.005~0.555の範囲である、請求項3又は4に記載の触媒物品。
【請求項6】
前記アルミノシリケートゼオライトが鉄で促進されており、鉄対アルミニウムの原子比が0.005~0.555の範囲である、請求項3又は4に記載の触媒物品。
【請求項7】
前記アルミノシリケートゼオライトが銅及び鉄の両方で促進されており、(Cu+Fe):Alの原子比が0.005~0.555の範囲である、請求項3又は4に記載の触媒物品。
【請求項8】
前記酸化触媒が、白金族金属、白金族金属酸化物、2種以上の白金族金属の混合物、2種以上の白金族金属酸化物の混合物、又は少なくとも1種の白金族金属と少なくとも1種の白金族金属酸化物との混合物を含み、前記白金族金属が、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム及び白金から選択される、請求項1~7のいずれか一項に記載の触媒装置。
【請求項9】
前記第1、第2及び第3のバインダが互いに独立して、アルミナ、シリカ、非ゼオライトシリカ-アルミナ、天然粘土、TiO、ZrO、CeO、SnO並びにそれらの混合物及び組み合わせから選択される、請求項1~8のいずれか一項に記載の触媒装置。
【請求項10】
前記第1及び第2のウォッシュコート中のg/Lで与えられる前記第1及び第2のSCR触媒活性組成物の担持量の比
【数2】
が1.2:1~2:1であるという条件で、前記第1のSCR触媒活性組成物のウォッシュコート担持量が100~230g/Lであり、前記第2のSCR触媒活性組成物のウォッシュコート担持量が70~170g/Lである、請求項1~9のいずれか一項に記載の触媒装置。
【請求項11】
前記第3のウォッシュコートのウォッシュコート担持量が10~100g/Lであり、前記第3のウォッシュコート中の白金族金属濃度が0.5~25g/ftである、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒装置。
【請求項12】
前記上流SCR触媒及び前記下流ASC触媒が1つの単一の担体基材上に2つの隣接するゾーンとして存在し、
a.前記上流SCR触媒が、上流端から前記担体基材の全長の40~80%まで前記担体基材の軸方向長さ上に延在し、
b.前記下流ASC触媒が、下流端から前記担体基材の全長の40~80%まで前記担体基材の軸方向長さ上に延在し、
c.前記SCR触媒ゾーンと前記ASC触媒ゾーンとの間に実質的に重なりも間隙も存在せず、両方のゾーンの長さが前記担体の軸方向全長の100%を占める、請求項1~11のいずれか一項に記載の触媒装置。
【請求項13】
前記担体基材が、セラミック、金属及び波形担体基材から選択される、請求項12に記載の触媒装置。
【請求項14】
前記担体基材が、フロースルー担体基材及びウォールフローフィルタから選択されるセラミック担体基材である、請求項13に記載の触媒装置。
【請求項15】
前記上流SCR触媒及び前記下流ASC触媒が、互いに直接隣接する2つの異なる担体基材上に存在する、請求項1~10のいずれか一項に記載の触媒装置。
【請求項16】
前記担体基材が互いに独立して、セラミック、金属及び波形担体基材から選択される、請求項15に記載の触媒装置。
【請求項17】
前記担体基材が、フロースルー担体基材及びウォールフローフィルタから互いに独立して選択されるセラミック担体基材である、請求項16に記載の触媒装置。
【請求項18】
リーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するためのシステムであって、
a.アンモニア又はアンモニア前駆体溶液を排気流に注入するための手段と、
b.a)のアンモニア又はアンモニア前駆体溶液を注入するための手段のすぐ下流に配置された、請求項1~17のいずれか一項に記載の触媒装置とを含む、システム。
【請求項19】
請求項18に記載のリーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するためのシステムであって、揮発性有機化合物、一酸化炭素及び炭化水素を酸化するための酸化触媒を更に含み、前記触媒が前記アンモニア又はアンモニア前駆体溶液を排気システムに注入するための手段のすぐ上流に位置する、システム。
【請求項20】
請求項18又は19に記載のリーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するためのシステムであって、粒子状物質を除去するためのフィルタを更に含み、前記フィルタが、前記酸化触媒のすぐ下流、かつ前記アンモニア又はアンモニア前駆体溶液を排気流に注入するための手段のすぐ上流に配置される、システム。
【請求項21】
リーンバーン燃焼機関からの排気ガスの後処理のための、請求項1~19のいずれか一項に記載のリーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するためのシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関、特にディーゼルエンジンのようなリーン運転エンジンからのNH及びNO排出の削減のための触媒装置、触媒装置の作製方法、並びに排気後処理システムにおけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現代の内燃機関は、有害な排出物を低減して新しい法令基準を遵守するために、触媒後処理システムを使用しなければならない。
【0003】
一酸化炭素CO、炭化水素HC、及び窒素酸化物NOに加えて、ディーゼルエンジンの生の排気ガスは、最大15体積%の比較的高い酸素含有量を含有する。煤残留物及びおそらくは有機凝集物から主になり、エンジンのシリンダー内での部分的に不完全な燃料の燃焼から生じる粒子排出物も含有される。
【0004】
触媒活性コーティングの有無にかかわらずディーゼル微粒子フィルタが粒子の排出の除去に好適である一方、一酸化炭素と炭化水素は好適な酸化触媒上での酸化によって無害化される。酸化触媒は文献に広く記載されている。それらは、例えば、酸化アルミニウムなどの大面積の多孔質高融点酸化物上に必須の触媒活性成分として白金及びパラジウムなどの貴金属を担持するフロースルー基材である。
【0005】
窒素酸化物は、酸素の存在下でアンモニアによってSCR触媒上で窒素と水に変換される。SCR触媒は文献に広く記載されている。それらは一般に、特にバナジウム、チタン及びタングステンを含有するいわゆる混合酸化物触媒、又は金属交換された、特に細孔ゼオライトを含むいわゆるゼオライト触媒のいずれかである。SCR触媒活性材料は、フロースルー基材上又はウォールフローフィルタ上に担持されてもよい。
【0006】
還元剤として使用されるアンモニアは、熱分解及び加水分解されてアンモニアを形成するアンモニア前駆体化合物を排気ガスに供給することによって利用することができる。そのような前駆体の例は、カルバミン酸アンモニウム、ギ酸アンモニウム、及び好ましくは尿素である。あるいは、アンモニアは排気ガス中の触媒反応によって形成されてもよい。
【0007】
SCR触媒における窒素酸化物の変換率を改善するためには、必要量よりも約10~20%高い量、すなわち化学量論量を超える量でアンモニアを供給しなければならない。次にこれにより排気ガス中に未反応のアンモニアが生じ、それは、その毒性の影響の観点から望ましくない。アンモニアの排出は排気ガス法においてますます制限されている。
【0008】
アンモニアの排出を避けるために、いわゆるアンモニアスリップ触媒(ASC)が開発されてきた。これらの触媒は通常、可能な限り低い温度でアンモニアを酸化するための酸化触媒を含む。そのような酸化触媒は、少なくとも1種の貴金属、好ましくは、例えばパラジウムなどの白金族金属(PGM)、特に白金を含む。しかしながら、貴金属を含む酸化触媒は、窒素(N)にだけではなく、一酸化二窒素(NO)や窒素酸化物(NO)などのような有害な種にもアンモニアを酸化する。NHの窒素、NO、NO又はNOへの酸化をそれぞれ、式(1)~(4)に示す。
4NH+3O→2N+6HO (1)
6NH+6O→3NO+9HO (2)
4NH+5O→4NO+6HO (3)
4NH+7O→4NO+6HO (4)
【0009】
アンモニアの酸化の窒素への選択性は、酸化触媒をSCR触媒と組み合わせることによって改善することができる。そのような組み合わせは様々な方法で行うことができ、例えば、両方の成分を混合してもよく、及び/又は、それらをそれぞれ担体基材上の別々の層の中に存在させてもよい。層状に配置する場合、通常SCR層が上層であり、下層である酸化層上にコーティングされる。ASC触媒は通常、フロースルー基材又はウォールフローフィルタのようなモノリシック担体基材上にコーティングされる。
【0010】
高いNO変換率を実現するためには、多量の活性SCR材料がASC中に必要とされる。一方、多量のSCR材料でPGM成分を覆うと、そのアンモニア変換活性を著しく低下させる。したがって、このトレードオフを解決する必要がある。
【0011】
米国特許出願公開第2015/151288(A1)には、CHA骨格を有し、少なくとも40のシリカ対アルミナのモル比(SAR)、及び少なくとも1.25の銅対アルミニウムの原子比を有するゼオライトを含む触媒組成物が開示されている。銅-CHAゼオライトは、アンモニアの酸化を促進するために使用することもできる。したがって、銅-CHAゼオライトを、特に、SCR触媒の下流(例えば、アンモニアスリップ触媒(ASC)などのアンモニア酸化(AMOX)触媒)で通常遭遇するアンモニアの濃度において、酸素によるアンモニアの酸化に有利に働くように配合することができる。この実施形態では、触媒を酸化下層の上に上層として配置することができ、ここで、下層は白金族金属(PGM)触媒又は非PGM触媒を含む。下層中の触媒成分は、好ましくは高表面積の担体、例えばアルミナ上に担持される。他の実施形態では、米国特許出願公開第2015/181288(A1)の銅-CHAであるSCR触媒はウォールフローフィルタの上流側に配置することができ、アンモニアスリップ触媒がフィルタの出口側に配置されている。別の実施形態では、SCR触媒がフロースルー基材の上流側に配置され、ASC触媒がその下流側に配置されている。更に、SCR触媒とASC触媒は、SCR触媒ブリックがアンモニアスリップ触媒ブリックの上流に配置されるという条件で、互いに隣接し、かつ接触している別々のブリック上に配置することができる。
【0012】
国際公開第2016/160953(A1)には、フィルタの多孔質壁に沿って軸方向に少なくとも2つのゾーンを形成する少なくとも3つのコーティングを含む触媒化微粒子フィルタが開示されており、ここで、第1のコーティングは第1のSCR触媒コーティングであり、第2のコーティングは第2のSCR触媒コーティングであり、第3のコーティングは白金族金属コーティングである。白金族金属コーティングを、第1のSCR触媒コーティングと第2のSCR触媒コーティングとの間に挟むことができる。あるいは、フィルタが少なくとも3つのゾーンを含んでもよく、ここで、第1のSCR触媒が第1の上流ゾーンに存在し、第2のSCR触媒が中間ゾーンに存在し、PGMグループが第3の下流ゾーンに存在し、ゾーンは互いに隣接して配置される。更に、別の実施形態では、第1のSCR触媒が上流ゾーンに存在し、第2のSCR触媒と白金族金属触媒は下流ゾーンで混合される。第1及び第2のSCR触媒は互いに独立して、ゼオライト、好ましくはAEI、AFX及びCHAから選択される。ゼオライトは遷移金属、好ましくは銅又は鉄で促進される。第1及び第2のSCR触媒並びに白金族金属触媒の適切なウォッシュコート濃度は与えられている。しかしながら、国際公開第2016/160953(A1)では、ウォッシュコート濃度の比については言及されていない。
【0013】
国際公開第2017/037006(A1)には、統合されたSCR及びアンモニア酸化触媒が開示されている。触媒は、小細孔モレキュラーシーブ上の銅又は鉄を含み、白金族金属を実質的に含まない第1のウォッシュコートゾーンと、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア及び耐火性金属酸化物の混合物並びに組み合わせを含む耐火性金属酸化物担体上の白金と混合された小細孔モレキュラーシーブ上の銅又は鉄を含む第2のウォッシュコートゾーンとを含む。第1のウォッシュコートゾーンは、第2のウォッシュコートゾーンの上流に位置する。第2のゾーンにおいて、白金又は白金とロジウムとの混合物がそれぞれ3~20g/ftの量で存在し、それは0.106~0.706g/Lに相当する。ゼオライトは、Cu又はFeで促進され、好ましくは、CuOとして計算して0.1~10重量%、好ましくは0.1~5重量%のCuで促進される。しかしながら、国際公開第2017/037006(A1)では、2つのゾーンにおけるゼオライトの適切なウォッシュコート濃度について言及がなく、また、第1及び第2のゾーンそれぞれにおけるゼオライトの濃度比についても言及されていない。
【0014】
国際公開第2010/062730(A2)には、NOとNHの混合物のNへの変換の触媒に有効な上流ゾーンと、アンモニアのNへの変換に有効な下流ゾーンとを含む触媒系が開示されている。上流ゾーン及び下流ゾーンは単一のモノリス上に存在してもよく、又は、それらは2つの隣接するモノリス上に存在してもよい。SCR触媒である、NOとNHの混合物をNに変換する触媒は、シリコアルミネート又はシリコアルミノホスフェートゼオライトである。好ましくは、ゼオライトは、FAU、MFI、MOR、BEA及びCHAの骨格タイプから選択される。ゼオライトは遷移金属、好ましくは銅又は鉄で促進される。AMOXと略されるアンモニア酸化触媒である、アンモニアのNへの変換に有効な触媒は、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金及びそれらの混合物から選択される貴金属成分を含む。任意で、NH酸化組成物は、アンモニアSCR機能に活性な成分を含有してもよい。
【0015】
AMOX触媒はアンダーコート層として存在し、SCR触媒はオーバーコート層として存在する。SCR触媒とAMOX触媒の両方が単一のモノリス基材上に存在する場合、両方の触媒はモノリスの全長のそれぞれ少なくとも5~100%を覆い、オーバーコートはアンダーコートの少なくとも一部を覆う。
【0016】
NH酸化組成物を含むウォッシュコートを最初にモノリス上に塗布し、このようにしてアンダーコート層を形成する。その後、SCR触媒組成物を、上述のアンダーコートの少なくとも一部を覆うように塗布する。したがって、上流ゾーンにおけるSCR触媒の層の厚さとウォッシュコート担持量のそれぞれ、及びNH3酸化組成物を覆うSCR触媒の厚さとウォッシュコート担持量のそれぞれは同じである。
【0017】
任意で、モノリスは、その全長にわたってSCR触媒組成物の複数の層でコーティングしてもよい。SCR機能とNH酸化機能が同じモノリス上に存在する実施形態では、SCR機能を含む前方ゾーン長の全基材長に対する比は、少なくとも0.4、好ましくは0.5~0.9、最も好ましくは0.6~0.8である。
【0018】
上述のように、国際公開第2016/062730(A2)の別の実施形態では、触媒系は、SCR機能とNH酸化機能のための物理的に別個の組成物を有する「二機能性触媒」である。このようなモジュール型触媒システムによって、より大きな柔軟性が得られ、2つの機能の反応速度を独立して調整することができる。しかしながら、2つの機能の反応速度のこの調整をどのように実行しなければならないかについては開示されていない。
【0019】
国際公開第2018/183457(A1)には、粒子状物質、炭化水素、一酸化炭素及びアンモニアを含有する排気ガス流を処理するための触媒物品が開示されており、この物品は、(a)軸方向長さを画定する入口端と出口端を有する基材と、(b)1)モレキュラーシーブ上に分配された白金族金属、及び2)モレキュラーシーブ上に分配された卑金属を含む第1の触媒コーティングと、(c)1)モレキュラーシーブ上に分配された白金族金属、及び2)モレキュラーシーブ上に分配された卑金属を含む第2の触媒コーティングとを含む。白金族金属は、好ましくは白金、パラジウム、又はそれらの組み合わせである。モレキュラーシーブは、小細孔、中細孔又は大細孔ゼオライトであってもよい。好ましくは、モレキュラーシーブは小細孔ゼオライトであり、最も好ましくは、CHA、LEV、AEI、AFX、ERI、LTA、SFW、KFI、DDR及びITEから選択される。卑金属は、好ましくは銅、鉄、又はそれらの混合物である。したがって、第1及び第2の触媒コーティングは両方とも、アンモニアスリップ触媒(ASC又はAMOX)並びに選択的触媒還元(SCR)触媒を含む。層の1つにおいてPGM担持量が高いほど、層におけるASC活性が高い。一方、層の1つにおいてPGM担持量が低いほど、ASC反応性はより高く選択的である。ASC層における選択性が高いほど、Nの形成がNO、NO及びNOの形成よりも優先される(上記の式(1)~(4)参照)。国際公開第2018/183457(A1)では、2つの触媒層を互いの上に配置することができ、ここで、「上に」とは上層が下層を完全に覆うこと、又は下層の一部のみを覆うことを意味する。全ての場合において、下層は他のそれぞれの層よりも高いASC活性を有し、上層は他のそれぞれの層よりも高いASC選択性を有さなければならない。これは、PGM担持量を調整することによって実現することができ、国際公開第2018/183457(A1)の様々な実施形態において、上層中のPGM担持量は、下層中のPGM担持量以下である。上層及び下層のPGM担持量の好適な数値範囲がそれぞれ示されている。しかしながら、国際公開第2018/183457(A1)では、SCR触媒の担持量については言及していない。ASC触媒を上流のSCR機能と組み合わせることができる。同じモノリス上で、SCR機能を上流に、ASC機能を下流に配置してもよく、又はSCR機能を別個のモノリス上に配置してもよい。
【0020】
国際公開第2018/057844(A1)には、ルチル相及び基材を含む担体上の、第1のSCR触媒と、ルテニウム又は白金とルテニウムの混合物などのルテニウム混合物を含む酸化触媒とを含むアンモニアスリップ触媒(ASC)が開示されている。SCR触媒は、好ましくは銅又は鉄で促進された小細孔、中細孔又は大細孔モレキュラーシーブであってもよく、あるいはSCR触媒は、卑金属又は卑金属の酸化物、例えばバナジウム又は酸化バナジウムであってもよい。ルチル系担体上のルテニウムは、白金系アンモニアスリップ触媒と比較して優れたNO選択性を提供する。更に、ルチル触媒上のルテニウムは、非ルチル構造の担体上に担持されたルテニウムよりも高い安定性、並びにより良好な活性を提供する。NHスリップ用途におけるより低いNO選択性を、他のルテニウム系触媒よりも改善された安定性と共に高い活性を保持しながら得ることができる。アンモニアスリップ触媒は、互いに混合されたSCR触媒と酸化触媒を含んでもよい。アンモニアスリップ触媒はまた、基材上に配置されてもよく、第2のSCR触媒の少なくとも一部がASCの少なくとも一部の上に配置される。別の実施形態では、アンモニアスリップ触媒は、第1のSCR触媒の上層と酸化触媒を含む下層とを有する二層であってもよい。更に別の実施形態では、図16を参照した図21に示されるように、ASC触媒は、第1のSCR触媒を含む上層と酸化触媒を含む下層とを有する二層であり、第2のSCR触媒が、ASC層にも隣接して配置され、ASC層も完全に覆う。しかしながら、国際公開第2018/057844(A1)では、SCR触媒の適切な担持量について言及していない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
アンモニアを変換する良好な活性だけでなく、可能な限り多くのアンモニアを上記の式(1)に従って窒素に変換し、式(2)、(3)、及び(4)に従ったNO、NO、又はNOには変換しないことを意味する良好な選択性も示す改善されたASC触媒が常に必要とされている。
【0022】
発明が解決しようとする課題
本発明の目的は、窒素酸化物から窒素への高い変換率と、アンモニアから窒素への変換についての良好な活性及び良好な選択性とを示す、リーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するための触媒装置を提供することである。本発明の別の目的は、本発明の触媒装置を含むリーンバーン燃焼機関の排気ガスの処理のためのシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0023】
技術的解決策
窒素酸化物から窒素への高い変換率と、アンモニアから窒素への変換の良好な活性及び良好な選択性とを示す、リーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するための触媒装置を提供するという目的は、リーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するための以下を含む触媒装置によって解決され、触媒装置は、
(a)上流SCR触媒であって、
(i)担体基材と、
(ii)第1のSCR触媒活性組成物SCR第1及び任意で少なくとも1種の第1のバインダを含む第1のウォッシュコートであって、担体基材に塗布された第1のウォッシュコートとを含む上流SCR触媒、
(b)下流ASC触媒であって、
(i)担体基材と、
(ii)酸化触媒及び任意で少なくとも1種の第3のバインダを含む第3のウォッシュコートを含む下層であって、担体基材上に直接塗布された下層と、
(iii)第2のSCR触媒活性組成物SCR第2及び任意で少なくとも1種の第2のバインダを含む第2のウォッシュコートを含み、下層上に塗布された上層とを含む下流ASC触媒を含み、
-上流SCR触媒及び下流ASC触媒は単一の担体基材上に存在するか、又は2つの異なる担体基材上に存在し、
-第1及び第2のSCR触媒活性組成物は、互いに同じであるか又は異なり、
-任意で含まれる少なくとも1種の第1、第2及び第3のバインダは、互いに同じであるか又は異なり、
-第1及び第2のウォッシュコート中のg/Lで与えられる第1及び第2のSCR触媒活性組成物の担持量の比
【0024】
【数1】
【0025】
は、1.2:1~2:1である。
【0026】
驚くべきことに、a)窒素酸化物の窒素への高い変換率、及びb)アンモニアを窒素に変換するための良好な活性、並びにc)良好な選択性との組み合わせは、第1及び第2のSCR触媒活性組成物の担持量の比
【0027】
【数2】
【0028】
に依存することを見出した。
【0029】
リーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物を除去するための触媒装置、リーンバーン燃焼機関の排気ガスからの触媒装置を含むリーンバーン燃焼機関の排気ガスを処理するためのシステム、及びその製造方法を下に説明し、本発明は下に示される全ての実施形態を、個々に、及び互いに組み合わせて包含する。
【0030】
「上流」及び「下流」は、排気管路における排気ガスの通常の流れ方向に対する用語である。「ゾーン又は触媒2の上流に位置するゾーン又は触媒1」とは、ゾーン又は触媒1が、ゾーン又は触媒2よりも排気ガス源の近く、すなわちモーターの近くに配置されていることを意味する。流れの方向は、排気ガス源から排気管に向かう方向である。したがって、この流れ方向において、排気ガスはその入口端で各ゾーン又は触媒に入り、その出口端で各ゾーン又は触媒を出る。
【0031】
単に「担体基材」とも呼ばれる「触媒担体基材」は、触媒活性組成物を付着させて最終触媒を形成する支持体である。このように、担体基材は触媒活性組成物の担体である。
【0032】
「触媒活性組成物」とは、排気ガスの1つ以上の成分を他の1つ以上の成分に変換することができる物質又は物質の混合物である。このような触媒活性組成物の例は、例えば、揮発性有機化合物及び一酸化炭素を二酸化炭素に、又はアンモニアを窒素酸化物に変換することができる酸化触媒組成物である。このような触媒の別の例は、例えば、窒素酸化物を窒素と水とに変換することができる選択的還元触媒(SCR触媒)組成物である。本発明の文脈において、SCR触媒とは、担体基材とSCR触媒活性組成物を含むウォッシュコートとを含む触媒である。アンモニアスリップ触媒(ASC)とは、担体基材と、酸化触媒を含むウォッシュコートと、SCR触媒活性組成物を含むウォッシュコートとを含む触媒である。
【0033】
本発明で使用される「ウォッシュコート」とは、触媒活性組成物及び任意で少なくとも1種のバインダの水性懸濁液である。適切なバインダである材料は、例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、二酸化ジルコニウム、又はそれらの混合物、例えばシリカとアルミナの混合物である。本発明の文脈において、第1、第2及び第3のウォッシュコートのそれぞれは互いに独立して、バインダを含んでも含まなくてもよい。第1、第2及び第3のウォッシュコートの少なくとも2つ又は3つ全てが少なくとも1種のバインダを含む場合、これらのウォッシュコートは、同じバインダ又は異なるバインダを含むことができる。
【0034】
好ましい実施形態では、第1、第2及び第3のウォッシュコートは全て、少なくとも1種のバインダを含む。
【0035】
触媒担体基材に付着されたウォッシュコートは、「コーティング」と呼ばれる。2つ以上のウォッシュコートを担体基材に付着させることもまた可能である。当業者には、「レイヤリング」又は「ゾーニング」によって2つ以上のウォッシュコートを単一の担体基材上に付着させることが可能であり、レイヤリングとゾーニングとを組み合わせることもまた可能であることが知られている。レイヤリングの場合、ウォッシュコートを担体基材上に次々に連続して付着させる。最初に付着され、したがって担体基材と直接接触しているウォッシュコートは「下層」であり、最後に付着されたウォッシュコートは「上層」である。ゾーニングの場合、第1のウォッシュコートを、担体基材の第1の面側Aから他方の面側Bに向かって担体基材上に付着させるが、担体基材の全長にわたってではなく、面側AとBとの間の終点までにのみ付着させる。その後、第2ウォッシュコートを、面側Bから開始して面側BとAとの間の終点まで担体上に付着させる。第1及び第2ウォッシュコートの終点は同一である必要はなく、それらが同一である場合は、両方のウォッシュコートゾーンは互いに隣接する。しかし、両方ともが担体基材の面側AとBとの間に位置する2つのウォッシュコートゾーンの終点が同一でない場合、第1のウォッシュコートゾーンと第2のウォッシュコートゾーンとの間に間隙が存在してもよく、又はそれらが重なってもよい。上述のように、例えば、一方のウォッシュコートが担体基材の全長にわたって塗布され、他方のウォッシュコートが一方の面側から両方の面側の間の終点までのみ塗布される場合、レイヤリングとゾーニングとを組み合わせることもできる。
【0036】
本発明の文脈において、「ウォッシュコート担持量」とは、担体基材の体積当たりの触媒活性組成物の質量である。
【0037】
当業者はウォッシュコートが懸濁液及び分散液の形態で調製されることを知っている。
【0038】
懸濁液及び分散液とは、固体粒子と溶媒とを含む不均一な混合物である。固体粒子は溶解しないが、溶媒の体積全体にわたって懸濁し、媒体中に自由に浮遊したままである。固体粒子が1μm以下の平均粒径を有する場合、混合物は分散液と呼ばれ、平均粒径が1μmより大きい場合、混合物は懸濁液と呼ばれる。本発明の意味におけるウォッシュコートは、溶媒、通常は水と、1種以上の触媒活性組成物の粒子で表される溶媒粒子と、任意で上記の少なくとも1種のバインダの粒子とを含む。この混合物は、多くの場合「ウォッシュコートスラリー」と呼ばれる。スラリーを担体基材に塗布し、続いて乾燥させて、上記のコーティングを形成する。本発明の文脈において、「ウォッシュコート懸濁液」という用語は、溶媒と、個々の又は平均の粒径に関係なく、1種以上の触媒活性組成物の粒子と、任意で少なくとも1種のバインダの粒子との混合物に使用される。これは、本発明の「ウォッシュコート懸濁液」において、1種以上の触媒活性固体粒子の個々の粒径並びに平均粒径が、1μm未満であっても、1μmに等しくても、及び/又は1μmより大きくてもよいことを意味する。
【0039】
本発明の文脈で使用される「混合物」という用語は、物理的に組み合わされた2つ以上の異なる物質から構成され、各成分がそれ自体の化学的特性及び構造を保持する材料である。その成分に化学的変化がないという事実にもかかわらず、混合物の物理的特性、例えばその融点は、成分の物理的特性とは異なり得る。
【0040】
「触媒物品」又は「ブリック」とも呼ばれる「触媒」は、触媒担体基材及びウォッシュコートで構成され、ウォッシュコートは、触媒活性組成物及び任意で少なくとも1種のバインダを含む。
【0041】
本発明の文脈で使用される「装置」とは、特定の目的を果たすか、又は特定の機能を実行するように設計された機器の一部である。本発明の触媒装置は、リーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアの両方を除去するという目的を果たし、その機能を有する。本発明で使用される「装置」は、上で定義された「触媒物品」又は「ブリック」とも呼ばれる1つ以上の触媒からなっていてもよい。
【0042】
本発明の上流SCR触媒及び下流ASC触媒は、他の成分の中でも特に、第1及び第2のSCR触媒活性組成物SCR第1及びSCR第2をそれぞれ含む。
【0043】
第1及び第2のSCR触媒活性組成物SCR第1及びSCR第2はそれぞれ、互いに独立して、モレキュラーシーブから選択することができる。
【0044】
モレキュラーシーブは、均一な大きさの細孔、すなわち非常に小さい穴を有する材料である。これらの細孔の直径は小分子と大きさが類似し、したがって、大分子は侵入又は吸着することができないが、より小さい分子は侵入又は吸着することができる。本発明の文脈において、モレキュラーシーブは、ゼオライトであっても、非ゼオライトであってもよい。ゼオライトは頂点共有四面体のSiO及びAlOユニットからなる。それらはまた「シリコアルミネート」又は「アルミノシリケート」とも呼ばれる。本発明の文脈において、これら2つの用語は同義的に使用される。
【0045】
本明細書で使用される場合、「非ゼオライトモレキュラーシーブ」という用語は、四面体の部分の少なくとも一部がケイ素又はアルミニウム以外の元素によって占有されている頂点共有四面体骨格を指す。全てではないが一部のケイ素原子がリン原子によって置換されている場合、それはいわゆる「シリコアルミノホスフェート」又は「SAPOs」とされる。全てのケイ素原子がリンによって置換されている場合、それは、アルミノホスフェート又は「AlPOs」とされる。
【0046】
「骨格タイプ」とも称される「ゼオライト骨格タイプ」は、四面体に配位した原子の頂点共有ネットワークを表す。最大細孔口径の環サイズによって定義されるそれらの細孔径によりゼオライトを分類することは一般的である。大きい細孔径を有するゼオライトは、12個の四面体原子の最大環サイズを有し、中程度の細孔径を有するゼオライトは、10個の最大細孔径を有し、小さい細孔径を有するゼオライトは、8個の四面体原子の最大細孔径を有する。公知の小細孔ゼオライトは、特にAEI、CHA(チャバザイト)、ERI(エリオナイト)、LEV(レビナイト)、AFX及びKFI骨格に属する。大きい細孔径を有する例は、フォージャサイト(FAU)の骨格タイプのゼオライト及びゼオライトベータ(BEA)である。
【0047】
「ゼオタイプ」は、特定のゼオライトの構造に基づいた材料のファミリーのいずれかを含む。したがって、特定の「ゼオタイプ」は、例えば、特定のゼオライトの骨格タイプの構造に基づいたシリコアルミネート、SAPOs及びAIPOsを含む。したがって、例えば、チャバザイト(CHA)、シリコアルミネートSSZ-13、Linde R及びZK-14、シリコアルミノホスフェートSAPO-34及びアルミノホスフェートMeAlPO-47は全てチャバザイト骨格タイプに属する。当業者は、どのシリコアルミネート、シリコアルミノホスフェート及びアルミノホスフェートが同じゼオタイプに属するかを知っている。更に、同じゼオタイプに属するゼオライト及び非ゼオライトモレキュラーシーブは、国際ゼオライト学会(IZA)のデータベースに列挙されている。当業者は、特許請求の範囲から逸脱することなく、この知識及びIZAデータベースを使用することができる。
【0048】
本発明の好ましい実施形態では、モレキュラーシーブは小細孔結晶性アルミノシリケートゼオライトである。
【0049】
好適な結晶性アルミノシリケートゼオライトは、例えば、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、BEA,BIK、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、ESV、ETL、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON、並びにこれらの骨格タイプのうちの少なくとも1種を含有する混合物及び連晶から選択されるゼオライト骨格タイプの材料である。本発明の好ましい実施形態では、第1及び第2のSCR触媒活性組成物SCR第1及びSCR第2は互いに独立して、これらのモレキュラーシーブから選択される。
【0050】
本発明のより好ましい実施形態では、結晶性小細孔アルミノシリケートゼオライトは、8個の四面体原子の最大細孔径を有し、AEI、AFT、AFX、CHA、DDR、ERI、ESV、ETL、KFI、LEV、UFI及びそれらの混合物及び連晶から選択される。更により好ましい実施形態では、ゼオライトは、AEI、BEA、CHA、AFX、並びにこれらの骨格タイプのうちの少なくとも1種を含有する混合物及び連晶から選択される。特に好ましい実施形態では、ゼオライトはAEIである。別の特に好ましい実施形態では、ゼオライトはCHAである。
【0051】
ゼオライトの「連晶」は、少なくとも2つの異なるゼオライト骨格タイプ、又は同じ骨格タイプの2つの異なるゼオライト組成物を含む。
【0052】
「表面連晶」ゼオライトでは、一方の骨格構造が他方の骨格構造の上で成長する。したがって、「表面連晶」は、「連晶」の種を表し、「連晶」は属である。
【0053】
本発明において、SCR触媒として又はSCR触媒組成物の成分として使用されるゼオライト及び非ゼオライトモレキュラーシーブは、遷移金属を含有する。好ましくは、遷移金属は、銅、鉄及びそれらの混合物から選択される。
【0054】
本発明においてSCR触媒活性組成物として使用される結晶性アルミノシリケートゼオライトは、5~100、好ましくは10~50のシリカ対アルミナ比を有する。シリカ対アルミナ比、SiO:Alを、以後は「SAR値」又は「SAR」と称する。
【0055】
好ましくは、本発明においてSCR触媒活性組成物として使用される結晶性アルミノシリケートゼオライトは、銅、鉄、又は銅と鉄の混合物から選択される遷移金属で促進される。
【0056】
一実施形態では、ゼオライトは銅で促進される。好ましくは、銅対アルミニウムの原子比は、0.005~0.555、より好ましくは0.115~0.445、更により好ましくは0.175~0.415の範囲である。当業者には、合成中に、又はイオン交換によって導入される銅の量をどのように調整して所望の銅対アルミニウムの比を得るかが知られている。当業者は、特許請求の範囲から逸脱することなく、この知識を利用することができる。
【0057】
別の実施形態では、ゼオライトは鉄で促進される。好ましくは、鉄対アルミニウムの原子比は、0.005~0.555、より好ましくは0.115~0.445、更により好ましくは0.175~0.415の範囲である。当業者には、合成中に又はイオン交換によって導入される鉄の量をどのように調整して所望の鉄対アルミニウムの比を得るかが知られている。当業者は、特許請求の範囲から逸脱することなく、この知識を利用することができる。
【0058】
更に別の実施形態では、ゼオライトは銅と鉄の両方で促進される。好ましくは、(Cu+Fe):Alの原子比は、0.005~0.555、より好ましくは0.115~0.445、更により好ましくは0.175~0.415の範囲である。
【0059】
本発明の上流SCR触媒は、第1のSCR触媒活性組成物を含む。第1のSCR触媒活性組成物は、1種以上のモレキュラーシーブを含有する。第1のSCR触媒活性組成物が2種以上のモレキュラーシーブを含む実施形態では、モレキュラーシーブは、以下の特徴のうちの少なくとも1つにおいて互いに異なる:
-それらが異なる骨格構造を有する、及び/又は
-それらが同じ骨格構造に属するが、異なるゼオタイプである、及び/又は
-それらが同じ骨格タイプに属するが、第1及び第2の組成物が、シリコアルミネート及びシリコアルミノホスフェート、又はシリコアルミネート及びアルミノホスフェート、又はシリコアルミノホスフェート及びアルミノホスフェートから選択される、及び/又は
-それらが異なる遷移金属で促進される、及び/又は
-それらの遷移金属元素量が異なる、及び/又は
-シリコアルミネートのそれらのSAR値が異なる。
【0060】
例えば、それらの骨格構造が異なるため、AEI及びCHAを第1及び第2のSCR触媒活性組成物として使用することができ、ここで、両方のゼオライトは、シリコアルミネートであり、同じSAR値を有し、同じ量の銅で促進される。更に、2つのCHAシリコアルミネートゼオライト又は2つのAEIシリコアルミネートゼオライトもまた、それらが異なるSAR値を有する場合、又はそれらが異なる量の銅で促進される場合に、「異なる」とみなされる。また、CHA骨格タイプを有する2つのシリコアルミネートは、例えば、一方がSSZ-13であり、他方がZK-14である場合には、それらが同じSAR値及び銅含有量を有する場合であっても、それらが異なるゼオタイプに属するため、「異なる」とみなされる。
【0061】
本発明の下流ASC触媒は、第2のSCR触媒活性組成物を含む。第2のSCR触媒活性組成物は、1種以上のモレキュラーシーブを含有する。第2のSCR触媒活性組成物が2種以上のモレキュラーシーブを含む実施形態では、モレキュラーシーブは、第1のSCR触媒活性組成物について上で与えられた特徴の少なくとも1つにおいて互いに異なる。
【0062】
本発明の一実施形態では、第1及び第2のSCR触媒活性組成物はそれらの物理化学的性質に関して同一である。第1及び第2のSCR触媒活性組成物のそれぞれは、互いに独立して、上記の1種以上のモレキュラーシーブを含有してもよい。このことは、SCR触媒及びASC触媒のSCR触媒活性組成物が、それらのウォッシュコート担持量についてのみ異なることを意味し、第1及び第2のウォッシュコートにおけるg/Lで与えられる第1及び第2のSCR触媒活性組成物の担持量の比
【0063】
【数3】
【0064】
は、上述のように1.2:1~2:1である。
【0065】
本発明の別の実施形態では、第1及び第2のSCR触媒活性組成物はそれらの物理化学的性質に関して異なる。第1及び第2のSCR触媒活性組成物のそれぞれは、互いに独立して、上記の1種以上のモレキュラーシーブを含有してもよい。この実施形態では、SCR触媒及びASC触媒のSCR触媒活性組成物は、以下の特徴のうちの少なくとも1つにおいて異なる:
-少なくとも1種の骨格構造がSCR触媒活性組成物の1つにのみ存在する、及び/又は
-両方のSCR触媒活性組成物中のモレキュラーシーブが、同じ骨格構造に属するが、異なるゼオタイプである、及び/又は
-両方のSCR触媒活性組成物中のモレキュラーシーブが、同じ骨格タイプに属するが、第1及び第2の組成物が、シリコアルミネート及びシリコアルミノホスフェート、又はシリコアルミネート及びアルミノホスフェート、又はシリコアルミノホスフェート及びアルミノホスフェートから選択される、及び/又は
-両方のSCR触媒活性組成物中のモレキュラーシーブが異なる遷移金属で促進される、及び/又は
-それらの遷移金属量が異なる、及び/又は
-シリコアルミネートのそれらのSAR値が異なる。
【0066】
この実施形態では、第1及び第2のウォッシュコート中のg/Lで与えられる第1及び第2のSCR触媒活性組成物の担持量の比
【0067】
【数4】
【0068】
はまた、上記のように1.2:1~2:1である。
【0069】
第3のウォッシュコートに含まれる酸化触媒は、白金族金属、白金族金属酸化物、2種以上の白金族金属の混合物、2種以上の白金族金属酸化物の混合物、又は少なくとも1種の白金族金属と少なくとも1種の白金族金属酸化物との混合物である。以後はPGMと略記する白金族金属は、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム及び白金である。本発明において、PGMは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム及び白金から選択される。当業者にはこれらの白金族金属酸化物のそれぞれの酸化物が知られており、特許請求の範囲から逸脱することなく、それらを本発明の文脈において使用することができる。好ましくは、酸化触媒は、白金族金属又は2種以上の白金族金属の混合物である。より好ましくは、酸化触媒は、白金、並びに白金及びパラジウム又は白金及びロジウムの混合物から選択される。
【0070】
第3のウォッシュコートのウォッシュコート担持量は、10~100g/L、好ましくは20~75g/Lである。ウォッシュコート中のPGMの濃度は、0.5~25g/ft、好ましくは1.5~10g/ftである。
【0071】
本発明の好ましい実施形態では、第1、第2及び第3のウォッシュコートは全てバインダを含む。バインダは、アルミナ、シリカ、非ゼオライトシリカ-アルミナ、天然粘土、TiO、ZrO、CeO、SnO並びにそれらの混合物及び組み合わせから選択することができる。好ましくは、バインダは、アルミナ、TiO、ZrO並びにそれらの混合物及び組み合わせから選択される。第1、第2及び第3のウォッシュコートのバインダは、互いに同じであっても異なっていてもよい。
【0072】
驚くべきことに、第1及び第2のウォッシュコート中のg/Lで与えられる第1及び第2のSCR触媒活性組成物の担持量の比
【0073】
【数5】
【0074】
が、1.2:1~2:1、好ましくは1.3:1以上、更により好ましくは、1.4:1以上でなければならないことを見出した。第1及び第2のSCR触媒活性組成物の担持量の
【0075】
【数6】
【0076】
の上限は、好ましくは1.6:1以下である。まとめると、第1及び第2のウォッシュコート中のg/Lで与えられる第1及び第2のSCR触媒活性組成物の担持量の比
【0077】
【数7】
【0078】
は、好ましくは1.3:1~1.6:1であり、より好ましくは、1.4:1~1.6:1である。
【0079】
好ましくは、第1及び第2のウォッシュコート中のg/Lで与えられる第1及び第2のSCR触媒活性組成物の担持量の比
【0080】
【数8】
【0081】
が、上で説明した範囲の好ましい下限及び上限である1.2:1~2:1の間であるという条件で、第1のSCR触媒活性組成物のウォッシュコート担持量は、100~230g/L、好ましくは140~200g/Lであり、第2のSCR触媒活性組成物のウォッシュコート担持量は、70~170g/L、好ましくは90~140g/Lである。
【0082】
上流SCR触媒及び下流ASC触媒は、単一の担体基材上に存在するか、又は2つの異なる担体基材上に存在する。
【0083】
一実施形態では、単一の担体基材又は2つの異なる担体基材は、それぞれ、いわゆるフロースルー基材又はウォールフローフィルタから選択される。
【0084】
フロースルー基材及びウォールフローフィルタの両方とも、炭化ケイ素、チタン酸アルミニウム、コージライト、又は金属などの不活性材料からなり得る。そのような担体基材は、当業者に周知であり、市場で入手可能である。
【0085】
当業者は、ウォールフローフィルタの場合、それらの平均細孔径と、本発明の第1のSCR触媒活性組成物の平均粒径及び/又は酸化触媒の平均粒径とを、このようにして得られたコーティングがウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔質壁上に配置されるように(オンウォールコーティング)、互いに調整できることを知っている。しかしながら、平均細孔径と、第1のSCR触媒活性組成物の平均粒径及び/又は酸化触媒の平均粒径とは、好ましくは、本発明の第1のSCR触媒活性組成物及び/又は酸化触媒が、ウォールフローフィルタのチャネルを形成する多孔質壁内に位置するように互いに調整される。この好ましい実施形態において、細孔の内面は、コーティングされる(インウォールコーティング)。この場合、本発明の第1のSCR触媒活性組成物及び/又は酸化触媒の平均粒径は、ウォールフローフィルタの細孔内に入り込むことができるように十分に小さくなければならない。第2のSCR触媒活性成分を含む第2のウォッシュコートは、酸化層をコーティングした後に上層としてコーティングされ、酸化触媒を含む下層上にコーティングされる。第2のウォッシュコートの触媒活性組成物の粒径が十分に小さい場合、第2のウォッシュコートは壁内にコーティングされる。第2のウォッシュコートの触媒活性組成物の粒径がウォールフローフィルタの多孔質壁の細孔よりも大きい場合、第2のウォッシュコートは壁上にコーティングされる。酸化層及び第2のSCR触媒活性成分を含む第2のウォッシュコートがウォールフローフィルタ上にオンウォール層としてコーティングされる場合、それらは出口チャネルの表面上にコーティングされる。
【0086】
別の実施形態では、担体基材は、波形の触媒化基材モノリスである。基材は、少なくとも50g/lであるが300g/l以下の壁密度、及び少なくとも50%の気孔率を有する。基材モノリスは、高シリカ含有量ガラスの紙又はEガラス繊維の紙である。紙は珪藻土の層又はチタニアの層を有し、触媒は本発明のゼオライトである。この波形の基材モノリスは、燃焼機関の始動及び停止中に触媒ゼオライト層がモノリス基材から剥離しないという利点を有する。SCR触媒活性材料を平板又は波板の形状を有するモノリス基材上に塗布する。基材は、Eガラス繊維のシートから、又は高いケイ素含有量を有する並びにTiO又は珪藻土の層を有するガラスのシートから作製される。高ケイ素含有量ガラスは、94~95重量%のSiO、4~5重量%のAl及びいくらかのNaOを含有し、これらの繊維は、8~10μmの繊維径で2000~2200g/lの密度を有する。一つの例は市販のSILEXステープルファイバーである。Eガラスは、52~56重量%のSiO、12~16重量%のAl、5~10重量%のB、0~1.5重量%のTiO、0~5重量%のMgO、16~25重量%のCaO、0~2重量%のKO/NaO及び0~0.8重量%のFeを含有する。基材の材料は、基材の密度が少なくとも50g/lの材料であるが300g/lの材料以下であり、基材壁の気孔率が材料の少なくとも50体積%であるように選択される。モノリス基材の気孔率は50μm~200μmの深さ及び1μm~30μmの直径を有する細孔によって得られる。SCR触媒活性材料は10~150μmの厚さの層として基材上に塗布される。SCR触媒活性材料は本発明のゼオライトである。触媒は、モノリス基材をゼオライト、バインダ及び消泡剤の微粒子の水性スラリー中に浸漬して塗布する。粒子の大きさは50μm以下である。バインダは好ましくはシリカゾルバインダであり、消泡剤はシリコーン消泡剤である。コーティングした基材を乾燥させ、続いて400~650℃、好ましくは540~560℃、最も好ましくは550℃で焼成する。触媒要素は平板によって互いに分離された波板の層を含む。触媒要素は箱又は円筒の形状にすることができる。波形基材モノリス及びそれらの製造は、国際公開第2010/066345(A1)に開示されており、その教示を、特許請求の範囲から逸脱することなく本発明に適用することができる。
【0087】
本発明の一実施形態では、上流SCR触媒及び下流ASC触媒は、1つの単一の担体基材上に2つの隣接するゾーンとして存在し、
(a)上流SCR触媒が、上流端から担体基材の全長の40~80%まで担体基材の軸方向長さ上に延在し、
(b)下流ASC触媒が、下流端から担体基材の全長の40~80%まで担体基材の軸方向長さ上に延在する。
【0088】
ゾーン化された触媒のこの実施形態では、上流SCR触媒ゾーンと下流ASC触媒ゾーンは、重なり合うことなく互いに直接隣接してもよく、又はそれらは重なり合ってもよく、又はそれらの間に間隙が存在してもよい。2つのゾーンの間に間隙がある場合、間隙の長さは担体の軸方向全長の最大で20%を占める。隣接するゾーンの場合、SCR触媒ゾーンとASC触媒ゾーンとの間に実質的に重なりも間隙もなく、両方のゾーンの長さは担体の軸方向全長の100%を占める。重なる場合、ASC触媒ゾーンがSCR触媒ゾーンに重なる。このことは、ASC触媒ゾーンの下層が、バインダ及び第1のSCR触媒活性組成物SCR第1を含むSCR触媒ゾーンに重なり、ASC触媒の下層が、第2のバインダ及び第2のSCR触媒活性組成物SCR第2を含む第2のウォッシュコートを含む上層で覆われることを意味する。
【0089】
上流SCR触媒と下流ASC触媒が1つの単一の担体基材上に2つの隣接ゾーンとして存在するこの実施形態では、担体基材は、上記のセラミック、金属及び波形担体基材から選択される。好ましくは、担体基材は、フロースルー基材及びウォールフローフィルタから選択されるセラミック基材である。
【0090】
本発明の別の実施形態では、上流SCR触媒と下流ASC触媒は、互いに直接隣接する2つの異なる担体基材上に存在する。
【0091】
上流SCR触媒と下流ASC触媒が2つの異なる担体基材上に存在するこの実施形態では、担体基材は、上記のセラミック、金属及び波形担体基材から選択される。好ましくは、担体基材は、フロースルー基材及びウォールフローフィルタから選択されるセラミック基材である。
【0092】
本発明の触媒装置を含むリーンバーン燃焼機関の排気ガスの処理のためのシステムを提供する目的は、リーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するための以下を含むシステムによって解決され、システムは、
(a)アンモニア又はアンモニア前駆体溶液を排気流に注入するための手段、
(b)a)のアンモニア又はアンモニア前駆体溶液を注入するための手段のすぐ下流に配置された本発明の触媒装置を含む。
【0093】
当業者は、SCR反応が還元剤としてアンモニアの存在を必要とすることを知っている。アンモニアは、適切な形態、例えば液体アンモニアの形態又はアンモニア前駆体の水溶液の形態で供給することができ、アンモニア又はアンモニア前駆体を注入するための手段を介して必要に応じて排気ガス流に添加することができる。好適なアンモニア前駆体は、例えば、尿素、カルバミン酸アンモニウム及びギ酸アンモニウムである。広く普及している方法は、尿素水溶液を搬送し、必要に応じて上流のインジェクタ及び投入ユニットを介して本発明の触媒に投入する方法である。アンモニアを注入するための手段、例えば上流インジェクタ及び投入ユニットは当業者によく知られており、特許請求の範囲から逸脱することなく本発明において使用することができる。
【0094】
したがって、本発明はまた、リーン燃焼エンジンから放出される排気ガスを浄化するためのシステムにも言及し、このシステムは、本発明による触媒を、好ましくは担体基材上のコーティングの形態で又は担体基材の成分として含み、かつ尿素水溶液のためのインジェクタを含み、このインジェクタは、本発明の触媒の上流に配置されることを特徴としている。
【0095】
本発明の触媒装置を含むリーンバーン燃焼機関の排気ガスの処理のためのシステムは、揮発性有機化合物、一酸化炭素及び炭化水素の酸化のための酸化触媒を更に含んでもよく、触媒は、アンモニア又はアンモニア前駆体溶液を上のa)の排気システムに注入するための手段のすぐ上流に位置する。
【0096】
別の実施形態では、本発明の触媒装置を含むリーンバーン燃焼機関の排気ガスを処理するためのシステムは、揮発性有機化合物、一酸化炭素及び炭化水素を酸化するための酸化触媒に加えて、粒子状物質を除去するためのフィルタを更に含んでもよく、フィルタは、酸化触媒のすぐ下流かつアンモニア又はアンモニア前駆体溶液を排気流に注入するための手段のすぐ上流に配置される。
【0097】
上に開示したリーンバーン燃焼機関の排気ガスから窒素酸化物及びアンモニアを除去するためのシステムは、リーンバーン燃焼機関からの排気ガスの後処理のために更に使用することができる。
【0098】
本発明の触媒装置は、当技術分野で公知のプロセスによって製造することができる。SCR触媒活性組成物又は酸化触媒及び任意で少なくとも1種のバインダの粉末を水と混合する。任意で、混合物を粉砕して粒径を調整してもよい。それぞれのウォッシュコート中の固体の濃度を、所望のウォッシュコート担持量に従って調整する。次いで、ウォッシュコートを触媒基材の面側AとBに対して垂直な方向に触媒基材上に塗布する。それは、好ましくはウォッシュコートを圧力下で上面側から底面側の方向に塗布することによって、上から下に塗布することができる。あるいは、ウォッシュコートは、好ましくはそれを減圧下で底面側から上面側まで浸漬することによって、下から上に塗布することができる。続いて、過剰のウォッシュコートを、好ましくは減圧下でそれを吸い出すことによって、又は加圧下でそれをパージすることによって除去する。最後に、ウォッシュコートされた担体基材を乾燥させ、オーブン中で焼成する。2つ以上のウォッシュコートを塗布する場合、それぞれのウォッシュコートスラリーを調製する工程、それを塗布する工程、過剰なウォッシュコートを除去する工程、及び乾燥させて焼成する工程を繰り返す。このようなプロセスは当業者に公知であり、特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明の文脈において適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
図1】実施例1及び比較例1のSCR/ASC触媒の入口における温度、体積質量流量、NH、NO及びNO量を、実施形態1のα値1.4の場合について示す。
図2a】実施形態1の世界統一試験サイクル(World Harmonized Transient Cycle、WHTC)で測定された実施例1及び比較例1のα値に対するNH変換率を示す。
図2b】実施形態1の世界統一試験サイクル(WHTC)で測定された実施例1及び比較例1のα値に対するNO変換率を示す。
図3a】実施形態1の世界統一試験サイクル(WHTC)で測定された比較例1及び比較例2のα値に対するNH変換率を示す。
図3b】実施形態1の世界統一試験サイクル(WHTC)で測定された比較例1及び比較例2のα値に対するNO変換率を示す。
図4】実施形態2の連邦試験手順(FTP)サイクルで測定された実施例1及び比較例1のSCR/ASC触媒の入口における温度、体積質量流量、NH、NO及びNO量を示す。
図5a】実施形態2の連邦試験手順(FTP)サイクルで測定された実施例1及び比較例1のα値に対するNH変換率を示す。
図5b】実施形態2の連邦試験手順(FTP)サイクルで測定された実施例1及び比較例1のα値に対するNO変換率を示す。
図6a】実施形態3の250~500℃の温度範囲における実施例1及び比較例1のNHスリップを示す。
図6b】実施形態3の250~500℃の温度範囲における実施例1及び比較例1のNOスリップを示す。
図6c】実施形態3の250~500℃の温度範囲における実施例1及び比較例1のNO形成を示す。
図7a】実施形態3の世界統一試験サイクル(WHTC)で測定された実施例2及び実施例3のα値に対するNH変換率を示す。
図7b】実施形態3の世界統一試験サイクル(WHTC)で測定された実施例2及び実施例2のα値に対するNO変換率を示す。
図8a】実施形態4の連邦試験手順(FTP)サイクルで測定された実施例2及び実施例3のα値に対するNH変換率を示す。
図8b】実施形態4の連邦試験手順(FTP)サイクルで測定された実施例2及び実施例3のα値に対するNO変換率を示す。
図9a】FDT試験における実施例2(破線)及び実施例3(実線)のNHスリップを示す。
図9b】FDT試験における実施例2(破線)及び実施例3(実線)のNOスリップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0100】
実施形態
実施例1
同じ担体基材上でSCRゾーンが上流に位置し、ASCゾーンが下流に位置する、本発明の触媒装置を製造する。担体基材は、8インチ(20.32cm)の全長及び10.5インチ(26.67cm)の直径を有するコージライトフロースルー担体である。400cpsi(1平方インチ当たりのセル数)、4ミル。
【0101】
SCR部におけるSCR触媒組成物:194g/Lの触媒活性材料(Cu-CHA)、SAR=13;5.5重量%のCu(ゼオライトの総重量を基準としてCuOとして計算)。SCRゾーンの長さ:6インチ(15.24cm)
【0102】
ASC部:
酸化触媒:TiO上に担持されたPt粒子、担持量25g/L、2g/ft(0.0707g/L)の貴金属担持量。
SCR触媒:135g/Lの触媒活性材料(Cu-CHA)、SAR=13;5.5重量%のCu(ゼオライトの総重量を基準としてCuOとして計算)。
ASCゾーンの長さ:2インチ(5.08cm)。
比SCR第1/SCR第2は1.4である。
SCR及びASCゾーンの両方においてSCR触媒に使用されるバインダはアルミナである。
【0103】
比較例1
同じ担体基材上でSCRゾーンが上流に位置し、ASCゾーンが下流に位置する触媒装置を製造する。担体基材は、8インチ(20.32cm)の全長及び10.5インチ(26.67cm)の直径を有するコージライトフロースルー担体である。400cpsi(1平方インチ当たりのセル数)、4ミル。SCR及びASCゾーンの両方におけるSCR触媒活性材料の担持量は同じである。
【0104】
SCR部におけるSCR触媒組成物:180g/Lの触媒活性材料(Cu-CHA)、SAR=13;5.5重量%のCu(ゼオライトの総重量を基準としてCuOとして計算)。SCRゾーンの長さ:6インチ(15.24cm)
【0105】
ASC部:
酸化触媒:TiO上に担持されたPt粒子、担持量25g/L、2g/ft(0.0707g/L)の貴金属担持量。
SCR触媒:180g/Lの触媒活性材料(Cu-CHA)、SAR=13;5.5重量%のCu(ゼオライトの総重量を基準としてCuOとして計算)。
比SCR第1/SCR第2は1.0である。
SCR及びASCゾーンの両方においてSCR触媒に使用されるバインダはアルミナである。
【0106】
比較例2
同じ担体基材上でSCRゾーンが上流に位置し、ASCゾーンが下流に位置する触媒装置を製造する。担体基材は、8インチ(20.32cm)の全長及び10.5インチ(26.67cm)の直径を有するコージライトフロースルー担体である。400cpsi(1平方インチ当たりのセル数)、4ミル。SCRゾーンにおけるSCR触媒活性材料の担持量はASCゾーンにおける担持量よりも少ない。
【0107】
SCR部におけるSCR触媒組成物:171g/Lの触媒活性材料(Cu-CHA)、SAR=13;5.5重量%のCu(ゼオライトの総重量を基準としてCuOとして計算)。SCRゾーンの長さ:6インチ(15.24cm)
【0108】
ASC部:
酸化触媒:TiO上に担持されたPt粒子、担持量25g/L、2g/ft(0.0707g/L)の貴金属担持量。
SCR触媒:207g/Lの触媒活性材料(Cu-CHA)、SAR=13;5.5重量%のCu(ゼオライトの総重量を基準としてCuOとして計算)。
比SCR第1/SCR第2は0.83である。
SCR及びASCゾーンの両方においてSCR触媒に使用されるバインダはアルミナである。
【0109】
実施形態1:
この実施形態では、実施例1、比較例1及び比較例2の性能を世界統一試験サイクル(WHTC)で評価する。SCR/ASC触媒の上流では、ディーゼル酸化触媒(DOC)及びコーティングされたディーゼル微粒子フィルタ(cDPF)を使用する。
【0110】
3回の連続したWHTCサイクルを実施して、3回目の試験の結果を示す。SCR触媒に入るNHの量を、α値が0.9~1.5の値で変化するようにSCR触媒に入るNOxの量に基づいて調整し、ここでα値はNH濃度をNO濃度で割ったものである。
【0111】
【数9】
【0112】
α値が1.4の場合について、SCR/ASC触媒の入口における温度、体積質量流量、NH、NO及びNO量を図1に示す。
【0113】
この実施形態の実施例1及び比較例1のNH及びNO変換率を表1並びに図2a及び2bに示す。
【0114】
【表1】
【0115】
図2aにα値に対するNH変換率を示す。比較例1におけるASCのSCR層中の200g/Lと比較して、実施例1の第2のウォッシュコートの150g/Lのウォッシュコート担持量によって、より高いNH変換率が得られる。
【0116】
図2bにα値に対するNO変換率を示す。より多くのNHがWHTCにおいて酸化されるという事実から、実施例1のNO変換率は比較例1のそれよりもわずかに低い。
【0117】
【表2】
【0118】
図3aにα値に対するNH変換率を示す。比較例1におけるASCのSCR層中の200g/Lと比較して、比較例2の第2のウォッシュコートの230g/Lのウォッシュコート担持量によって、より低いNH変換率が得られる。
【0119】
図3bにα値に対するNO変換率を示す。比較例1と比較例2との間に差異は観察されない。
【0120】
実施形態2:
この実施形態において、実施例1及び比較例1に示した両方の触媒構成を、連邦試験手順(FTP)サイクルで評価する。SCR/ASC触媒の上流では、ディーゼル酸化触媒(DOC)及びコーティングされたディーゼル微粒子フィルタ(cDPF)を使用する。
【0121】
3回の連続したFTPサイクルを実施して、3回目の試験の結果を示す。SCR触媒に入るNHの量を、SCR触媒に入るNOxの量に基づいて、α値が0.9~1.5の値で変化するように調整し、ここでα値は実施形態1と同様に定義される。α値が1.2の場合について、SCR/ASC触媒の入口における温度、体積質量流量、NH、NO及びNOの量を図4に示す。
【0122】
この実施形態の実施例1及び比較例1のNH及びNO変換率を表3及び図5に示す。
【0123】
【表3】
【0124】
図5aにα値に対するNH変換率を示す。比較例1におけるASCのSCR層中の200g/Lと比較して、実施例1の第2のウォッシュコートの150g/Lのウォッシュコート担持量によって、より高いNH変換率が得られる。
【0125】
図5bにα値に対するNO変換率を示す。より多くのNHがFTPにおいて酸化されるという事実から、実施例1のNO変換率は比較例1のそれよりもわずかに低い。
【0126】
実施形態3:
この実施形態では、750ppmのNH、500ppmのNO、5%のO、5%のHO、及びバランスガスとしてのNの供給物を、定常状態に達するまで実施例1及び比較例1に通す。この間の温度は200℃で一定に保持し、空間速度は60000h-1である。定常状態に達した後(すなわち、測定されるガス種の濃度及び温度に変動がない)、以下の供給物の修正を同時に行なう:NHを供給から除き、空間速度を100000h-1に急激に増加させ、温度を250K/分の速度で500℃に上昇させる。供給条件のこの突然の変化は、実際の運転条件の間の負荷の変化を模倣するために行なわれ、これによって、NHスリップを伴うSCR及びASC触媒にストレスを与える。以後はこの試験を高速脱離試験(Fast Desorption Test、FDT)と呼ぶ。
【0127】
温度上昇中の実施例1(破線)及び比較例1(実線)におけるNHスリップ、NOスリップ、及びNO形成を、それぞれ図6a、6b、及び6cに示す。ここで、比較例1と比較して、NH及びNOスリップが減少するという実施例1の利点を見ることができる。
【0128】
実施例2
同じ担体基材上でSCRゾーンが上流に位置し、ASCゾーンが下流に位置する、本発明の触媒装置を製造する。担体基材は、8インチ(20.32cm)の全長及び10.5インチ(26.67cm)の直径を有するコージライトフロースルー担体である。400cpsi(1平方インチ当たりのセル数)、4ミル。
【0129】
SCR部におけるSCR触媒組成物:200g/Lの触媒活性材料(Cu-CHA)、SAR=13;5.5重量%のCu(ゼオライトの総重量を基準としてCuOとして計算)。SCRゾーンの長さ:6インチ(15.24cm)
【0130】
ASC部:
酸化触媒:TiO上に担持されたPt粒子、担持量25g/L、2g/ft(0.0707g/L)の貴金属担持量。
SCR触媒:125g/Lの触媒活性材料(Cu-CHA)、SAR=13;5.5重量%のCu(ゼオライトの総重量を基準としてCuOとして計算)。
ASCゾーンの長さ:2インチ(5.08cm)。
比SCR第1/SCR第2は1.6である。
SCR及びASCゾーンの両方においてSCR触媒に使用されるバインダはアルミナである。
【0131】
実施例3
同じ担体基材上でSCRゾーンが上流に位置し、ASCゾーンが下流に位置する、本発明の触媒装置を製造する。担体基材は、8インチ(20.32cm)の全長及び10.5インチ(26.67cm)の直径を有するコージライトフロースルー担体である。400cpsi(1平方インチ当たりのセル数)、4ミル。
【0132】
SCR部におけるSCR触媒組成物:200g/Lの触媒活性材料(Cu-CHA)、SAR=13;5.5重量%のCu(ゼオライトの総重量を基準としてCuOとして計算)。SCRゾーンの長さ:5インチ(12.7cm)
【0133】
ASC部:
酸化触媒:TiO上に担持されたPt粒子、担持量25g/L、2g/ft(0.0707g/L)の貴金属担持量。
SCR触媒:150g/Lの触媒活性材料(Cu-CHA)、SAR=13;5.5重量%のCu(ゼオライトの総重量を基準としてCuOとして計算)。
ASCゾーンの長さ:3インチ(7.62cm)。
比SCR第1/SCR第2は1.3である。
SCR及びASCゾーンの両方においてSCR触媒に使用されるバインダはアルミナである。
【0134】
実施形態4:
実施例2及び3の性能を、実施形態1の記載と同じ方法でWHTCサイクルで評価する。
【0135】
【表4】
【0136】
図7aにα値に対するNH変換率を示す。実施例3におけるASCのSCR層中の125g/Lと比較して、実施例2の第2のウォッシュコートの150g/Lのウォッシュコート担持量によって、より高いNH変換率が得られる。
【0137】
図7bにα値に対するNO変換率を示す。より多くのNHがWHTCにおいて酸化されるという事実から、実施例3のNO変換率は実施例2のそれよりもわずかに低い。
【0138】
実施例2及び実施例3のNH及びNO変換率を表4並びに図7a及び7bに示す。
【0139】
実施形態5:
実施例2及び3の性能を、実施形態2の記載と同じ方法でFTPサイクルで評価する。
【0140】
実施例2及び実施例3のNH及びNO変換率を表5並びに図8a及び8bに示す。
【0141】
【表5】
【0142】
図8aにα値に対するNH変換率を示す。実施例2におけるASCのSCR層中の125g/Lと比較して、実施例3の第2のウォッシュコートのウォッシュコート担持量150g/Lによって、より高いNH変換率が得られる。
【0143】
図8bにα値に対するNO変換率を示す。より多くのNHがFTPにおいて酸化されるという事実から、実施例3のNO変換率は実施例2のそれよりもわずかに低い。
【0144】
実施形態6
実施例2及び実施例3について、実施形態3の記載と同じ方法でFDT試験を行った。
【0145】
図9aに実施例2(破線)及び実施例3(実線)のNHスリップを示す。実施例2におけるASCのSCR層中の125g/Lと比較して、実施例3の第2のウォッシュコートの150g/Lのウォッシュコート担持量によって、より低いアンモニアスリップが得られる。
【0146】
図9bに実施例2(破線)及び実施例3(実線)のNOスリップを示す。実施例2におけるASCのSCR層中の125g/Lと比較して、実施例3の第2のウォッシュコートの150g/Lのウォッシュコート担持量によって、より低いNOスリップが得られる。
図1
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5a
図5b
図6a
図6b
図6c
図7a
図7b
図8a
図8b
図9a
図9b
【国際調査報告】