(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】光学表面を清掃するための装置
(51)【国際特許分類】
B08B 7/02 20060101AFI20231226BHJP
B60S 1/02 20060101ALI20231226BHJP
B60S 1/62 20060101ALI20231226BHJP
【FI】
B08B7/02
B60S1/02 800
B60S1/62 120D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535957
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-08
(86)【国際出願番号】 EP2021085494
(87)【国際公開番号】W WO2022128919
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518202367
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ ド リール
(71)【出願人】
【識別番号】522111633
【氏名又は名称】セントラール リール アンスティテュート
(71)【出願人】
【識別番号】522111644
【氏名又は名称】ユニベルシテ ポリテクニーク オー-ド-フランス
(71)【出願人】
【識別番号】500531141
【氏名又は名称】セントレ・ナショナル・デ・ラ・レシェルシェ・サイエンティフィーク
(71)【出願人】
【識別番号】512092737
【氏名又は名称】ヴァレオ システム デシュヤージュ
【氏名又は名称原語表記】VALEO SYSTEMES D’ESSUYAGE
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100198029
【氏名又は名称】綿貫 力
(72)【発明者】
【氏名】ミカエル、ボードワン
(72)【発明者】
【氏名】ラビンダー、シュタニ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリック、ブルタグノル
(72)【発明者】
【氏名】アドリアン、ペレ
【テーマコード(参考)】
3B116
3D225
【Fターム(参考)】
3B116AA01
3B116AA02
3B116AB51
3B116BC05
3B116CD41
3D225AA01
3D225AA04
3D225AA11
3D225AC18
3D225AD02
3D225AD09
3D225AD12
3D225AD22
(57)【要約】
光学表面を清掃するための装置(5)であって、この装置が、-透明な光学表面(10)、-圧電層(20)及び少なくとも2つの波トランスデューサ(45)を備える、光学表面を清掃するための清掃ユニット(15)、を備え、各波トランスデューサが、圧電層と接触している反対の極性の電極(40)を備え、かつ光学表面内を伝播する少なくとも1つの表面超音波(Ws)又はラム波(WL)を発生させるために光学表面と音響的に結合されており、トランスデューサが、さらに光学表面の周縁部上に配置されている、装置(5)が開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
-透明な光学表面(10)、
-圧電層(20)及び少なくとも2つの波トランスデューサ(45)を備える光学表面清掃ユニット(15)、
を備え、
各波トランスデューサが、前記圧電層と接触している正反対の極性の電極(40)を備え、かつ前記光学表面内を伝播する少なくとも1つの超音波表面波(W
S)又はラム波(W
L)を発生させるために前記光学表面と音響的に結合されており、
前記トランスデューサが、さらに前記光学表面の周縁部に配置されている、
装置(5)。
【請求項2】
前記波トランスデューサが、前記光学表面の縁部から、前記光学表面の長さの10%未満、又はさらには5%未満の距離にわたって延在する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記トランスデューサが、前記光学表面の縁部(27)から、30mm未満、好ましくは20mm未満、好ましくは10mm未満の距離にわたって延在する、請求項1及び2のいずれか一項に記載の装置。
【請求項4】
前記圧電層が、前記光学表面の1つの面の上に延在する少なくとも1つのストリップを形成する、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記光学表面が、前記トランスデューサと重なっていない光学関心対象の領域(65)を備え、前記圧電層が、前記光学関心対象の領域を少なくとも部分的に枠付ける包囲部を形成する、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記波トランスデューサが、前記光学表面と接触しており、例えば前記光学表面に接着されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記光学表面が、好ましくはガラスで作製された音響伝導部分(80)を備え、前記波トランスデューサが、前記音響伝導部分に音響的に結合されている、請求項1から6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記圧電層が、前記音響伝導部分と接触して配置されている、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記光学表面が、互いに積み重ねられた音響絶縁部分(75)と前記音響伝導部分(80)とを備えるスタックを備える、請求項7及び8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記音響伝導部分が、前記音響絶縁部分上に取り外し可能に装着されている、請求項9に記載の装置。
【請求項11】
各トランスデューサの前記電極が、スパッタリング又は印刷、例えばインクジェット印刷によって得られる、請求項1から10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
各トランスデューサの前記電極が、例えば可撓性熱可塑性材料から作製された箔上に印刷されており、前記箔を前記圧電層上に転写することによって加えられている、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記圧電層の厚さが、とりわけ0.1MHz~60MHzに含まれる周波数を有する超音波表面波に対して、5*λ以下、好ましくは1.5*λ以下、好ましくはλ以下、又はさらには0.5*λ以下である、請求項1から12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
前記圧電層が、1μm~300μmに含まれる厚さを有する、請求項1から13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
-オートバイ運転者の頭蓋骨を保護するように意図されたシェル(125)を備えるオートバイ用ヘルメット(120)であって、前記光学表面が、前記オートバイ運転者の顔の全部又は一部を保護するように前記シェル上に装着されたバイザである、オートバイ用ヘルメット(120)、
-建物のガラス張り要素(180)であって、前記光学表面が、窓ガラス(200)である、ガラス張り要素(180)、並びに
-自動車車両(160)であって、前記光学表面が、前記車両のフロントガラス(165)である、自動車車両(160)、
-自動化された自動車車両であって、前記光学表面が、光学センサ(215)及び/又は光学エミッタ、例えばライダ、写真撮影機器、カメラ、レーダ、赤外線センサ、若しくは超音波テレメータを覆う、自動化された自動車車両、並びに
-例えば、ヘッドランプモジュール、「ポッド」とも呼ばれる様々なセンサの集合体を包有するシステム、少なくとも1つのサイドウィンドウ、フロントスクリーン又はリアスクリーン、及び運転支援ユニットから選択された、とりわけ自動化された、自動車車両の構成要素、
から選択された、請求項1から14のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を使用して光学表面に接触している物体を取り除く装置に関する。
【背景技術】
【0002】
様々な分野において、光学表面上の物体、とりわけ雨滴、氷、又は雪の蓄積に関連する影響を克服することが必要である。
【0003】
液滴を表面から除去するために、液滴を回転させる手法が知られている。しかしながら、そのような技術は、表面の面積が数平方センチメートルよりも大きい表面には適していない。
【0004】
表面の疎水性を制御するための電場の使用は、例えば、韓国特許出願公開第20180086173号明細書からも知られている。頭字語EWOD(装置上のエレクトロウェッティング(ElectroWetting On Devices)の略)によって知られるこの技術は、表面を電気的に分極させ、その濡れ性を変化させるように、2つの電極間に電位差を印加することで構成されている。その場合、分極の場所を制御することにより、滴を移動させることができる。しかしながら、この技術は、特定の材料でのみ実装することができ、かつ電極は、濡れ性が制御される表面全体にわたって特に正確に位置決めされる必要がある。
【0005】
また、例えば自動車車両のフロントガラス上のワイパによって液体に機械的な力を加える手法もよく知られている。しかしながら、ワイパは、運転者がアクセス可能な視野を制限する。また、フロントガラスの表面上に堆積した脂っぽい粒子を広げる。また、ワイパブレードゴムを定期的に交換する必要がある。
【0006】
国際公開第2015/011064号パンフレットは、超音波表面波を使用してフロントガラスを清掃するための装置を記載している。しかしながら、国際公開第2015/011064号パンフレットの装置は、多数のトランスデューサをフロントガラスに接着する必要があるため、製造が複雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国特許出願公開第20180086173号明細書
【特許文献2】国際公開第2015/011064号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、光学表面から物体を除去するための、製造が容易な装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、この必要性を満たすことを目的とし、
-透明な光学表面、
-圧電層及び少なくとも2つの波トランスデューサを備える、光学表面清掃ユニット、
を備え、
各波トランスデューサが、圧電層と接触している正反対の極性の電極を備え、かつ光学表面内を伝播する少なくとも1つの超音波表面波又はラム波を発生させるために光学表面と音響的に結合されており、
トランスデューサが、さらに光学表面の周縁部に配置されている、
装置を提案する。
【0010】
したがって、本発明による装置は、超音波表面波又はラム波を伝播させることによって光学表面を覆う1つ以上の物体、例えば水の滴を移動させることにより、光学表面を効果的に清掃することを可能にする。
【0011】
さらに、装置は製造が容易である。例えば、まず、圧電層が光学表面上に堆積され、例えば光学表面に接着され、次いで、様々なトランスデューサの電極が、例えば印刷又はスクリーン印刷を用いて単一のステップで圧電層上に堆積される。さらに、それらが光学表面の周縁部に位置決めされるという事実により、例えば光学表面を支持しかつトランスデューサを覆い得る構造によって、トランスデューサを保護することがより容易になる。
【0012】
通常「層」とは、表面に加えられたか又は表面上に堆積された均一な広がりを意味する。
【0013】
好ましくは、各波トランスデューサは、光学表面の縁部から、光学表面の長さの10%未満、又はさらには5%未満の距離にわたって延在する。「光学表面の長さ」とは、光学表面の1つの面に沿った光学表面の2つの対向する縁部を隔てる距離を意味する。
【0014】
好ましくは、各波トランスデューサは、光学表面の縁部から、30mm未満、好ましくは20mm未満、好ましくは10mm未満の距離にわたって延在する。
【0015】
波トランスデューサは、好ましくは光学表面と接触している。
【0016】
波トランスデューサは、様々な方法で光学表面に固定され得る。
【0017】
例えば、波トランスデューサは、光学表面上に転写された箔の形態をとり得る。「箔」とは、とりわけ100μm未満の厚さを有する薄く可撓性の膜を意味する。
【0018】
トランスデューサは、とりわけまたトランスデューサを光学表面に音響的に結合するポリマー接着剤によって光学表面に接着され得る。接着剤は、UV硬化性であり得る。例えば、接着剤はエポキシ樹脂である。トランスデューサは、分子接着によって、又は光学表面を圧電層に貼り付ける薄い金属層によって取り付けられ得る。層は、低融点を有する、すなわち200℃未満の融点を有する金属又は合金、例えばインジウム合金から作製され得る。代替例として、金属層は、200℃よりも高い融点を有する金属又は合金、例えばアルミニウム及び/又は金合金から作製され得る。
【0019】
分子接着を介した接着の一例は、J.Xuらによる「Glass-on-LiNbO3 heterostructure formed via a two-step plasma activated low-temperature direct bonding method」、Applied Surface Science 459(2018)621-629、doi:10.1016/j.apsusc.2018.08.031に記載されている。別の代替例では、トランスデューサは、圧電層の一部及び/又は光学表面の一部を融解させるステップと、その後、圧電層及び光学表面を一緒に圧迫することからなるステップと、を含む方法によって光学表面に固定され得、光学表面及び圧電層のそれぞれの融解部分は互いに接触している。別の代替例では、トランスデューサは、トランスデューサの一部上及び光学表面の一部にそれぞれ低融点合金から作製された接着層を堆積させ、該接着層を少なくとも部分的に融解させ、次いで圧電層及び光学表面を圧迫することを含む方法によって光学表面に固定され得、光学表面及び圧電層に面する面とは反対の面である接着層の面は、圧迫中に互いに接触させられる。接着層は、カソードスパッタリングによって、又は薄層の堆積の分野で用いられる蒸着技術を用いて堆積され得る。
【0020】
好ましくは、圧電層は、光学表面の1つの面の上、例えば光学表面の2つの対向する縁部間に延在するストリップの形態をとる。好ましくは、ストリップは、光学表面の1つの縁部に沿って、好ましくは該縁部に対して平行に延在する。
【0021】
特に、光学表面は、トランスデューサと重なっていない光学関心対象の領域を備え得、圧電層は、光学関心対象の領域を少なくとも部分的に、とりわけ完全に枠付ける包囲部を形成し得る。包囲部の外側輪郭及び/又は内側輪郭は、圧電層がその上に配置されている光学表面のその面の輪郭と相似的であり得る。
【0022】
圧電層の厚さは、超音波表面波の波長λに応じて選択され得る。好ましくは、圧電層の厚さは、とりわけ0.1MHz~60MHzに含まれる周波数を有する超音波表面波に対して、5*λ以下、好ましくは1.5*λ以下、好ましくはλ以下、又はさらには0.5*λ以下である。
【0023】
圧電層は、1μm~300μmに含まれる厚さを有し得る。圧電層は、100μm以下、50μm未満、又はさらには10μm未満の厚さを有し得る。
【0024】
圧電層の厚さに対する光学表面の厚さの比は、好ましくは2よりも大きく、好ましくは10よりも大きく、又はさらには50よりも大きい。
【0025】
層は、物理蒸着、化学蒸着、マグネトロンスパッタリング、及び電子サイクロトロン共鳴から選択された方法を使用して光学表面上に堆積され得る。
【0026】
圧電層は、ニオブ酸リチウム、窒化アルミニウム、酸化亜鉛、チタン酸ジルコン酸鉛、及びそれらの混合物によって形成された群から選択された材料から作製され得る。
【0027】
圧電層は、光に対して不透明であり得る。したがって、包囲部は、観察者が光学関心対象の領域を通して視線を集中させるのを促し得る。
【0028】
代替例では、圧電層は透明であり得る。その場合、トランスデューサは、ユーザには見えないように感じられ得る。
【0029】
「透明」とは、可視の光放射及び/又は赤外線の放射及び/又は紫外線の放射に対する透明性を意味する。
【0030】
各トランスデューサの電極は正反対の極性を有し、すなわち、電極は正反対の符号の電圧で電力を供給されるように意図されている。
【0031】
各トランスデューサの正反対の極性の電極は各々、フィンガがそこから延在する枝部を備える櫛部を有し得る。櫛部は、好ましくは交差指形である。
【0032】
櫛部のフィンガの各々は、4で割った超音波表面波又はラム波の基本波長に等しい幅を有し得、櫛部の2つの連続するフィンガ間の間隔は、4で割った超音波表面波又はラム波の基本波長に等しくあり得る。フィンガ間の間隔は、当業者が容易に決定することができるトランスデューサの共振周波数を決定する。正反対の極性の電極に交流電圧を印加すると、圧電材料に機械的応答が誘起され、その結果、超音波表面波又はラム波が発生し、これが光学表面内を伝播する。
【0033】
電極は、金属で作製され得る。電極は、クロム若しくはアルミニウム、又はチタンなどの接着促進層と金などの導電層との組合せで作製され得る。
【0034】
代替例では、電極は、例えば、インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープ酸化亜鉛、及びそれらの混合物から選択された導電性透明酸化物から作製され得る。特に、各トランスデューサは透明であり得、そのような電極から、及びニオブ酸リチウム又は酸化亜鉛で作製された透明な圧電層から形成され得る。
【0035】
電極は、蒸着又はスパッタリングプロセスによって圧電層に加えられ、フォトリソグラフィを用いて成形され得る。
【0036】
電極は、例えばインクジェット印刷を用いて、とりわけ圧電層上に印刷され得る。特に、電極は、例えば可撓性熱可塑性材料から作製された箔上に印刷され、箔を圧電層上に転写することによって加えられ得る。電極を転写するためのこのような方法は、実装が特に簡単である。
【0037】
トランスデューサは、0.1MHz~1000MHzに含まれ得る、好ましくは10MHz~100MHzに含まれ得る、例えば40MHzに等しくあり得る基本周波数、及び/又は1ナノメートル~500ナノメートルに含まれ得る振幅を有する超音波表面波若しくはラム波を放射するように構成され得る。波の振幅は、超音波表面波がその上を伝播している光学表面の面の垂直変位に対応する。光学表面の面の垂直変位は、レーザ干渉法を用いて測定することができる。
【0038】
光学表面が超音波表面波の波長よりも大きい厚さを有する場合、超音波表面波はレイリー波であり得る。レイリー波は、波エネルギーの最大割合が、レイリー波がその上を伝播する光学表面の面上に集中し、光学表面上にある物体、例えば雨滴に伝達され得るため、好ましい。
【0039】
好ましくは、装置は、3つ以上のトランスデューサ、例えば6つ以上、又はさらには11個以上のトランスデューサを備える。
【0040】
トランスデューサは、平行又は正割の方向に伝播する音響表面波を放射するように構成され得る。例えば、装置は、発生させることができる波の伝播の方向が共通の場所で交差するように構成された、少なくとも3つのトランスデューサを備える。
【0041】
トランスデューサは、トランスデューサがその上に配置されている光学表面の面の輪郭にわたって均等に分配され得る。
【0042】
光学表面は、それ自体の自重で破損することなく、とりわけ弾性的に変形することができるという意味で、自己支持性であり得る。
【0043】
各トランスデューサによって放射された超音波表面波又はラム波がその上を伝播する光学表面の面は、平面であり得る。光学表面の面はまた、面の曲率半径が超音波表面波の波長よりも大きい限り、湾曲していてもよい。該面は、粗面であってもよい。粗度長は、超音波表面波の伝播に大きく影響することを避けるように、超音波表面波の基本波長よりも短いことが好ましい。
【0044】
光学表面は、平面であるか又は一方向に少なくとも1つの曲率を有する、シートの形態をとり得る。光学表面の厚さは、100μm~5mmに含まれ得る。プレートの長さは、1mmよりも長くてもよく、又はさらには1cmよりも長くてもよく、又はさらには1mよりも長くてもよい。
【0045】
「光学表面の厚さ」は、超音波表面波又はラム波がその上を伝播する表面に対して垂直な方向に測定される光学表面の最短寸法とみなす。
【0046】
光学表面は、水平に対して平坦に設定され得る。代替例として、光学表面は、10°よりも大きい、又はさらには20°よりも大きい、又はさらには45°よりも大きい、又はさらには70°よりも大きい角度αだけ水平に対して傾斜していてもよい。光学表面は、垂直に設定されていてもよい。
【0047】
光学表面は、好ましくは、少なくともスペクトルの可視部分の光に対して透明である。好ましくは、光学表面は、紫外線の放射又は赤外線の放射に対して不透明である。
【0048】
さらに、光学表面は、音響伝導部分の1つの面を覆う単層又は多層コーティングを有し得る。
【0049】
コーティングは、とりわけ、疎水性層、反射防止層、又はこれらの層のスタックを含み得る。例えば、疎水性層は、OTSの自己組織化単層からなるか、又はフッ素系プラズマの堆積によって生成され得る。コーティングは、意図される用途(可視、IRなど)に応じて、1つ以上の反射防止コーティング層を包有し得る。
【0050】
各トランスデューサは、音響伝導部分と接触し得、疎水性層は、トランスデューサを水との接触から保護するために、トランスデューサを完全に覆い得る。代替例では、コーティングは、トランスデューサと音響伝導部分との間に位置決めされている。
【0051】
好ましくは、光学表面は音響伝導部分を備え、各トランスデューサは音響伝導部分に音響的に結合されており、好ましくは音響伝導部分と接触している。
【0052】
音響伝導部分は、好ましくは透明である。
【0053】
音響伝導部分は、好ましくは、光学表面の減衰長よりも長い、又はさらには光学表面の減衰長の10倍よりも長い、又は実際には光学表面の減衰長の100倍よりも長い減衰長を有する。
【0054】
音響伝導部分は、超音波表面波又はラム波を伝播することができる任意の材料から作製され得る。好ましくは、音響伝導部分は、1MPaよりも大きい、例えば10MPaよりも大きい、又はさらには100MPaよりも大きい、又は実際にはさらに1000MPaよりも大きい、又は実にさらに10,000MPaよりも大きい弾性率を有する材料から作製される。このような弾性率を示す材料は、超音波表面波又はラム波の伝播に特に適した剛性を有する。
【0055】
好ましくは、音響伝導部分は、ガラス又はplexiglas(登録商標)の商品名でも知られるポリ(メタクリル酸メチル)で作製されている。
【0056】
光学表面は、音響伝導部分からなり得る。
【0057】
代替例では、光学表面は、光学表面の長さよりも短い、又はさらには光学表面の長さの0.1倍未満の距離にわたって、つまり超音波表面波又はラム波を吸収する部分である音響絶縁部分を備え得る。音響絶縁部分は、音響伝導部分と重なっていることが好ましい。音響絶縁部分は、音響伝導部分を完全に覆い得る。好ましくは、音響絶縁部分はポリカーボネートで作製されている。他のゴム状又はプラスチック材料も想定され得る。
【0058】
音響絶縁部分は、透明であることが好ましい。
【0059】
特に、音響絶縁部分及び音響伝導部分は、互いに積み重ねられ得、好ましくは互いに接触し得る。特に、音響伝導部分は、音響絶縁部分の厚さよりも少なくとも5倍小さい厚さを有し得る。したがって、音響絶縁部分は、光学表面上に機械的強度を与え得、一方、音響伝導部分は、超音波を伝えることによって清掃を実行する機能を実行することを可能にする。
【0060】
音響伝導部分は、音響絶縁部分上に取り外し可能に装着され得る。したがって、装置が動いているときに、例えば固体の物体、例えば石との接触後に損傷した場合に、該部分のうちの1つを容易に交換することが可能である。
【0061】
特に、音響伝導部分は、可逆性接着剤を使用して音響絶縁部分に接着され得る。
【0062】
装置は、ユーザの頭蓋骨を保護するように意図されたシェルを備えるオートバイ用ヘルメットであり得、光学表面は、オートバイ運転者の顔の全部又は一部を保護するようにシェル上に装着されたバイザであり得る。
【0063】
波トランスデューサは、ユーザの頭部をシェルの内側に入れたユーザの視界から完全に又は部分的に隠され得る。光学表面は、波トランスデューサとシェルの内側との間に位置決めされ得る。
【0064】
代替例として、装置は建物のガラス張り要素であり得、光学表面は窓ガラスである。特に、ガラス張り要素、例えば開口窓は、光学表面を枠付ける構造を備える。光学表面は、トランスデューサと、ガラス張り要素がその上に装着されることが意図されている建物の内部との間に位置決めされ得る。
【0065】
別の代替例では、装置は自動車車両、とりわけ自動車又はトラックであり、光学表面は車両のフロントガラスである。波トランスデューサは、車両の座席に座っている車両の乗員の視界から隠され得る。光学表面は、トランスデューサと車両のシートとの間に位置決めされ得る。
【0066】
別の代替例では、装置は、自動化された車両、とりわけ自動車又はトラックであり、光学表面は、光学センサ及び/又は光学エミッタ、例えばライダ、写真撮影機器、カメラ、レーダ、赤外線センサ、若しくは超音波テレメータを覆う。
【0067】
さらに別の代替例では、装置は、例えばヘッドランプモジュール、「ポッド」とも呼ばれる様々なセンサの集合体を包有するシステム、少なくとも1つのサイドウィンドウ、フロントスクリーン又はリアスクリーン、及び運転支援ユニットから選択された、とりわけ自動化された自動車車両の構成要素である。
【0068】
特に、装置は、トランスデューサの上に完全に又は部分的に重ねられたカバーを備え得る。特に、トランスデューサはカバーによって保護され得る。トランスデューサは、とりわけ、カバー及び光学支持体によって完全に覆われ得る。
【0069】
例えば、ヘルメットのシェル又は車体又は枠付け構造は、このようなカバーを備え得る。
【0070】
さらに、清掃ユニットは、各トランスデューサが電気供給信号を超音波表面波又はラム波に変換するように、各トランスデューサに電力を供給するための発電機を備え得る。
【0071】
本発明はまた、光学関心対象の領域から光学表面と接触している物体を除去するための本発明による装置の使用に関する。
【0072】
使用は、物体が固体状態にあるときに物体を融解させるために、かつ/又は光学表面の温度が物体が凝固する温度よりも低いときに物体を液体状態に保つために、清掃ユニットに電力を供給することを伴い得る。物体は、例えば氷又は雪である。
【0073】
液体状態の物体は、少なくとも1つの滴又は少なくとも膜の形態をとり得る。超音波表面波のエネルギーは、液体状態の物体を光学表面の面の上で移動させるのに十分であり得る。物体は水様であり得、とりわけ雨水又は結露である。光学表面の温度は、0℃未満であってもよい。
【0074】
本発明は、その非限定的で例示的な実施形態の以下の詳細な説明を読むこと、及び添付の図面を検討することによって、よりよく理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【
図1】本発明による装置の例を正面から見て概略的に描写する。
【
図2】本発明による装置の例を正面から見て概略的に描写する。
【
図3】本発明による装置の例を断面で見て概略的に描写する。
【
図4】本発明による装置の例を断面で見て概略的に描写する。
【
図5】本発明による装置の例を断面で見て概略的に描写する。
【
図6】本発明による装置のさらなる例を概略的に示す。
【
図7】本発明による装置のさらなる例を概略的に描写する。
【
図8】本発明による装置のさらなる例を概略的に描写する。
【
図9】本発明による装置のさらなる例を概略的に描写する。
【発明を実施するための形態】
【0076】
明確にするために、図面を構成する要素は、必ずしも一定の縮尺で描かれていない。
【0077】
図1は、正面から見た、本発明による装置5の第1の例を示している。
【0078】
装置は、光学表面10及び透明な光学表面清掃ユニット15を備える。
【0079】
光学表面はプレートの形態をとり、形状が異なる場合があり、例えば図示のように長方形である。
【0080】
光学表面清掃ユニット15は、光学表面の2つの対向する縁部25、26間に平行なストリップ状に延在する圧電層20を備える。圧電層は、対向する縁部25、26を連結する第3の縁部27に沿って、光学表面の周縁部上にさらに延在する。
【0081】
装置は、正反対の極性を有し、かつ交差指形であり、かつ圧電層と接触している、3対の電極40を備え、したがって、3つの波トランスデューサ45を形成する。当然ながら、このトランスデューサの数は、2つ以上であれば非限定的である。トランスデューサの数は、光学表面の最適な清掃を提供するために、装置のサイズにふさわしいように適合され得る。
【0082】
トランスデューサは光学表面に音響的に結合されているため、トランスデューサが発生させる波は光学表面内を伝播することができる。清掃ユニットは、図中に描写されていない電気回路によってトランスデューサに電力を供給するための電流発生器50をさらに備え得る。
【0083】
トランスデューサは各々、圧電層がその上に位置決めされている光学表面の面と接触し得る物体55、例えば雨滴を移動させるために、光学表面内を伝播する超音波表面波WS又はラム波WLを発生させ得る。
【0084】
装置は、トランスデューサが、圧電層20がそれに沿ってストリップとして延在する縁部27に対向する縁部28に向かって超音波を放射するように構成され得る。したがって、物体は、波の伝播の方向Sに移動させられ、縁部28を介して光学表面から除去され得る。
【0085】
図1に示す装置は、製造が容易である。圧電層は、例えば、カソードスパッタリング技術を用いて加えられ、次いで、電極が、例えばシングルパスで光学表面上に印刷される。したがって、トランスデューサを1つずつ適所に接着する必要がある、本発明者らに知られている先行技術の装置とは異なり、圧電層上にかなりの数の電極を迅速に位置決めしてトランスデューサを形成することが可能である。代替例として、電極は、箔上に予め印刷されてもよく、この場合、これは例えば転写の方法で、電極を圧電層上に転写するように圧電層に加えられる。
【0086】
図2に描写する装置は、圧電層が光学関心対象の領域65を枠付ける包囲部60の境界を定めるという点で、
図1に示す装置とは異なる。包囲部は、例えば長方形である。圧電層は不透明であり得、観察者が光学関心対象の領域65を通して見て該領域の範囲を容易に判定することを可能にする。包囲部は、圧電層がその上に加えられた光学表面の面の輪郭75と一致する外側輪郭70を有する。さらに、トランスデューサが、包囲部を回って均一に配置され得る。したがって、例えば、参照により組み込まれる仏国特許出願第1910589号明細書に記載されているように、物体に加えられる外力の大きさに従って物体を移動させるために、トランスデューサのうちのいくつかのみを動作させることが可能である。
【0087】
【0088】
図3に示す例では、光学表面はモノリシックであり、音響伝導性材料、例えばガラスから作製されており、圧電層は光学表面と接触しており、縁部27の傍の光学表面の周縁部に位置決めされている。圧電層20は、様々なトランスデューサの電極40と光学表面10との間にさらに位置決めされている。電力が供給されたとき、トランスデューサは、超音波表面波W
S又はラム波を発生させ、超音波表面波W
S又はラム波は、超音波表面波W
S又はラム波と接触する物体に到達するまで光学表面内を伝播する。当業者は、物体を光学表面の上で移動させるために波の周波数及び振幅をどのように決定するかを当然知っている。
【0089】
図4に示す例は、光学表面10が、例えばガラスで作製された音響伝導部分80を完全に覆う音響絶縁部分75を備える点で、
図3に示す例とは異なる。音響伝導層は、音響絶縁層上に、例えば可逆性接着剤を使用して取り外し可能に装着され得る。さらに、これは任意選択であるが、光学表面は、例えば、雨滴40が光学表面10にわたって広がるのを防止し、それらを除去し易くするように、音響伝導部分の一面95を完全に覆い、かつ反射防止層100と疎水性層105とのスタックで構成された、コーティング90を有する。圧電層は、音響伝導部分の反対側にコーティングと接触するように位置決めされている。コーティングは、好ましくは、トランスデューサによって発生した表面波の波長に対して十分に小さい厚さを有する。したがって、音響伝導部分とトランスデューサとは音響的に結合されている。
【0090】
図5に示す装置は、トランスデューサ45が疎水性層100と音響伝導部分80との間に挟まれている点で、
図6に示す装置とは異なる。したがって、疎水性層はトランスデューサを保護する。
【0091】
図6は、オートバイ用ヘルメット120を概略的に描写している。ヘルメットは、オートバイ運転者の頭部を保護するためのシェル125を備え、開口部130と、オートバイ運転者の頭部を降雨、投射物、及び昆虫から保護するための透明で湾曲したバイザの形態の光学表面135と、を有する。
【0092】
バイザは、回転可能にシェル上に装着されており、バイザが開口部を閉じる閉位置と、空気が開口部を通ってオートバイ運転者の頭部に向かって通過することを可能にする開位置との間で移動させられ得る。
【0093】
バイザは、音響伝導性材料から作製されてもよく、又は
図4に示すように、音響絶縁部分及び音響伝導部分を有してもよい。
【0094】
圧電層20が、バイザ135の周縁部に配置されている。
図6では、圧電層20はバイザの上縁部140に沿って位置決めされている。しかしながら、他の配置も考えられる。例えば、圧電層20は、下縁部141及び/又は側縁部142、143の傍に位置決めされて、
図2に示すように包囲部を形成してもよい。
【0095】
好ましくは、トランスデューサは、降雨から保護されるようにバイザ135とシェル125との間に配置されている。少なくとも閉構成では、圧電層は、シェル125上、例えばシェルの外側150上に完全に重ねられ得る。このようにして、トランスデューサはオートバイ運転者の視界から隠される。
【0096】
別の代替例が
図7に示されている。描写された装置5は、フロントガラス165を有する自動車車両160である。ストリップ状の圧電層20が、フロントガラスに沿って位置決めされており、フロントガラスの下縁部170及び上縁部171に沿った周縁部かつフロントガラスの側縁部172、173間に延在する。圧電層は、車室とは反対側のフロントガラスの面上に配置され得る。正反対の極性の電極40の群が、各圧電層に加えられている。したがって、トランスデューサは各々、フロントガラスと接触している降雨を取り去るために超音波表面波又はラム波を発生させ得る。このような車両は、好適には、ワイパを装備しなくてもよい。
【0097】
別の代替例が
図8に示されている。そこに描写された装置5は、建物180の窓である。
【0098】
窓は、例えば、固定枠185と、固定枠にヒンジ結合された、例えば図示のように2つなどの、1つ以上の開口部190と、を備える。
【0099】
各開口部は、窓ガラス200がその中に嵌め込まれた枠付け構造195を備える。圧電層20は、好ましくは窓ガラスの上部に沿って、窓ガラスの周縁部に配置されており、少なくとも2つの電極の群が、重力Gの影響下で滴の移動を容易にするように、上から下に向けられた音波Wを発生させるように位置決めされている。図示の例では、圧電層は、枠付け構造と重なっていない部分を有する。描写されていない代替例では、圧電層は、窓ガラスを通して見る観察者の視界から隠されるように、例えば枠付け構造195と窓ガラス200との間に完全に挟まれてもよい。建物の任意の他のガラス張り要素が自然に想定され得る。
【0100】
最後に、
図9は、自動化された車両の一部である、本発明による装置5のさらに別の代替例を示している。
【0101】
装置は、光学表面10、光学表面清掃ユニット15、及び装備品210を備える。
【0102】
装備品は、放射線Rを捕捉するためのセンサ215と、放射線Rをセンサに向けて誘導するためのレンズと、を備える。代替例として、又は加えて、放射線を放射するエミッタを備えてもよい。例えば、装備品は、レーザ放射線を放射し、折り返しとしてオブジェクトによって反射されたこのレーザ放射線の一部を捕捉するように構成された、ライダを備える。
【0103】
また、レンズ220は任意選択である。描写されていない一例では、装備品は1つではない。
【0104】
装備品は、放射線を捕捉することができる空間の部分に対応する光学フィールドCOを画定する。この光学フィールドの外側では、たとえ放射線がセンサに到達することができる場合があるとしても、センサはそれを捕捉することができない。
【0105】
さらに、光学表面はセンサを完全に覆う。
【0106】
図示の例では、光学表面は、厚さepが例えば0.5mm~5mmに含まれる、ディスクの形態をとる。代替例では、光学表面は湾曲していてもよく、例えば、レンズの形状を有し得る。
【0107】
装置は、図示のように、センサを収容するチャンバ230を画定するハウジング225を備え得る。チャンバは、とりわけ、気密及び水密になるように、ハウジングの中実壁235及び光学表面10によって境界が定められ得る。したがって、センサは悪天候から保護される。
【0108】
特に、光学表面は、ハウジング225を閉鎖し得る。例えば、光学表面は、ハウジング上にねじ止めされたリング240上に装着されている。
【0109】
その場合、光学表面は取り外し可能であり、損傷したときに容易に交換することができる。
【0110】
光学表面清掃ユニットは、光学表面10と接触して配置されておりかつ光学表面10に音響的に結合された、トランスデューサ45を備える。トランスデューサは、同じ圧電層を共有する。清掃ユニットは、トランスデューサに電力を供給するための電流発生器50をさらに備える。
【0111】
図9に示す例では、トランスデューサは、清掃される面255とは反対側の光学表面10の面250上に配置されている。トランスデューサは、清掃される面に到達するラム波を発生させるように構成されていることが好ましい。
【0112】
さらに、トランスデューサは、トランスデューサと重なっていない光学関心対象の領域65の境界を定める。
【0113】
好ましくは、光学関心対象の領域65の一部は、装備品の光学フィールドCO内に包有されている。換言すれば、トランスデューサは、装備品の光学フィールドの外側に位置決めされており、その結果、トランスデューサは、光学関心対象の領域を通過しかつセンサによって捕捉される放射線とほとんど干渉しない。
【0114】
嵩を減らすために、
図9に示すように、トランスデューサは光学表面の周縁部に配置されている。このようにして、光学関心対象の領域の表面積を最大化することができる。
【0115】
もちろん、本発明は、非限定的で例示的な例として提供された本発明の例示的な実施形態に限定されない。
【国際調査報告】