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▶ ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポールの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-09
(54)【発明の名称】2次元電解質
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/194 20170101AFI20231226BHJP
   C01B 32/198 20170101ALI20231226BHJP
   A61K 47/56 20170101ALI20231226BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20231226BHJP
【FI】
C01B32/194
C01B32/198
A61K47/56
B82Y40/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535967
(86)(22)【出願日】2021-12-06
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 SG2021050753
(87)【国際公開番号】W WO2022132039
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】10202012491S
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507335687
【氏名又は名称】ナショナル ユニヴァーシティー オブ シンガポール
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【弁理士】
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【弁理士】
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【弁理士】
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【弁理士】
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】カルデイラ フェラズ ダ コスタ マリアナ
(72)【発明者】
【氏名】カストロ ネト アントニオ ヘリオ デ
(72)【発明者】
【氏名】スポロン マランゴニ ヴァレリア
【テーマコード(参考)】
4C076
4G146
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076EE59
4C076FF31
4C076FF68
4C076FF70
4G146AA01
4G146AB07
4G146AB08
4G146AD40
4G146CB22
4G146CB35
(57)【要約】
本明細書で開示されるのは、表面を有する修飾2次元ナノマテリアルから形成されるナノマテリアル電解質であって、前記表面は、修飾2次元ナノマテリアルの表面上で、イミン、スルホン酸、スルホンアミド、アミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミドからなる群のうち1または複数から選択される、複数の官能基によって修飾され、前記ナノマテリアル電解質は、その周囲環境への変化に応じて、平坦な2次元配座またはスクロールした1次元配座を可逆的に採ることができる。ある形態から別の形態へ(そして再び戻す)配座を変化させる方法もまた、開示される。具体的な実施形態において、2次元ナノマテリアルは、酸化グラフェンまたはグラフェンであり、周囲環境における変化は、pHの変化である。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ナノマテリアル電解質の配座(conformation)を変化させる方法であって、
前記方法は、以下の各ステップを含み:
(a)第1の状態を有する混合物を供給するために、水性媒体中にナノマテリアル電解質を供給するステップ;
および
(b)第2の状態にある混合物を供給するために、前記混合物に、pH、イオン強度、温度、圧力、超音波処理(sonication)、および光のうち1または複数の変化を加えるステップ;
前記混合物の前記第1の状態は、前記ナノマテリアル電解質が主として平坦な2次元配座またはスクロールした1次元配座であることに対応し;
および
前記混合物の前記第2の状態は、前記ナノマテリアル電解質が主として前記第1の状態と反対の配座であること、すなわち、前記ナノマテリアル電解質が前記第1の状態において主として平坦な2次元配座である場合、前記第2の状態においては主としてスクロールした1次元配座であること、またはその逆であることに対応し;
前記ナノマテリアル電解質は、表面を有する修飾2次元ナノマテリアルを含み;
前記表面は、前記修飾2次元ナノマテリアルの前記表面上で、イミン、スルホン酸、スルホンアミド、アミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミドからなる群(group)のうち1または複数から選択される、複数の官能基によって修飾され;
前記ナノマテリアル電解質は、その周囲環境への変化に応じて、平坦な2次元配座またはスクロールした1次元配座を可逆的に採ることができ;
前記周囲環境における前記変化は、前記周囲環境におけるpH、イオン強度、温度、圧力、超音波処理、および光のうち1または複数の変化に起因し;
および
前記複数の官能基の量は、同じ2次元ナノマテリアルの未修飾形態に存在する量よりも多い
方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法であって、
前記方法は:
(c)前記混合物を前記第1の状態に戻すために、すなわち、前記ナノマテリアル電解質が前記第1の状態における形態に戻るために、前記混合物に、前記周囲環境におけるpH、イオン強度、温度、圧力、超音波処理、および光のうち1または複数の変化を加えるステップ;
をさらに含む
方法
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載された方法であって、
前記周囲環境における前記変化は、以下の変化:
(a)前記周囲環境における温度、塩濃度、pH、イオン強度、および超音波処理のうち1または複数;
(b)前記周囲環境におけるpH、イオン強度、および超音波処理のうち1または複数;
または
(c)前記周囲環境におけるpHおよび超音波処理の一方または両方;
である
方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載された方法であって、
前記修飾2次元ナノマテリアルは、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン(reduced graphene oxide)、六方晶窒化ホウ素、および遷移金属ダイカルコゲナイド(transition metal dichalcogenide)のうち1または複数から選択され;
ここで前記修飾2次元ナノマテリアルは、任意選択で:
(a)グラフェンおよび酸化グラフェンのうち1または複数から選択され;
および/または
(b)遷移金属ダイカルコゲナイドであり;
前記遷移金属ダイカルコゲナイドは、二硫化モリブデンであってもよく;
および/または
(c)単層であり、または2~5層から形成され;
てもよい;
方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載された方法であって、
前記複数の官能基は、以下からなる群のうち1または複数から選択される:
(a)アミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミド;または
(b)アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、およびチオール;または
(c)ヒドロキシル、カルボン酸、およびチオール;または
(d)カルボン酸およびチオール;または
(e)アミンおよびイミン;または
(f)ヒドロキシル、カルボン酸、およびスルホン酸;または
(g)チオールおよびスルホンアミド;または
(h)アミンおよびカルボン酸;
方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載された方法であって:
(a)前記ナノマテリアル電解質は、ポリマー、タンパク質、炭水化物、およびナノ粒子からなる群のうち1または複数から選択される材料でさらに被覆され;
前記ナノマテリアル電解質は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、タンパク質、シリカ、デキストラン、金ナノ粒子、金ナノロッド、銀ナノ粒子、白金ナノ粒子、二酸化チタンおよびシリカナノ粒子からなる群のうち1または複数から選択される材料で被覆されてもよく;
および/または
(b)前記ナノマテリアル電解質は、前記表面に共有結合した蛍光性基をさらに含む;
方法。
【請求項7】
ナノマテリアル電解質であって:
前記ナノマテリアル電解質は、表面を有する修飾2次元ナノマテリアルを含み;
前記表面は、前記修飾2次元ナノマテリアルの前記表面上で、イミン、スルホン酸、スルホンアミド、アミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミドからなる群のうち1または複数から選択される、複数の官能基によって修飾され;
前記ナノマテリアル電解質は、その周囲環境への変化に応じて、平坦な2次元配座またはスクロールした1次元配座を可逆的に採ることができ;
前記周囲環境における前記変化は、前記周囲環境におけるpH、イオン強度、温度、圧力、超音波処理、および光のうち1または複数の変化に起因し;
および
前記複数の官能基の量は、同じ2次元ナノマテリアルの未修飾形態に存在する量よりも多い
ナノマテリアル電解質。
【請求項8】
請求項7に記載されたナノマテリアル電解質であって、
前記ナノマテリアル電解質は、水性周囲環境にある
ナノマテリアル電解質。
【請求項9】
請求項7または請求項8に記載されたナノマテリアル電解質であって、
前記周囲環境における前記変化は、以下の変化:
(a)前記周囲環境における温度、塩濃度、pH、イオン強度、および超音波処理のうち1または複数;
または
(a)前記周囲環境におけるpH、イオン強度、および超音波処理のうち1または複数;
または
(b)前記周囲環境におけるpHおよび超音波処理の一方または両方;
に起因する
ナノマテリアル電解質。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載されたナノマテリアル電解質であって、
前記修飾2次元ナノマテリアルは、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、六方晶窒化ホウ素、および遷移金属ダイカルコゲナイドのうち1または複数から選択され、
ここで、任意選択で:
(a)前記修飾2次元ナノマテリアルは、グラフェンおよび酸化グラフェンのうち1または複数から選択され;
および/または
(b)前記修飾2次元ナノマテリアルは、遷移金属ダイカルコゲナイドであり;
前記遷移金属ダイカルコゲナイドは、二硫化モリブデンであってもよく;
および/または
(c)前記修飾2次元ナノマテリアルは、単層であり、または2~5層から形成され;
てもよい;
ナノマテリアル電解質。
【請求項11】
請求項7~10のいずれか一項に記載されたナノマテリアル電解質であって、
前記複数の官能基は、以下からなる群のうち1または複数から選択される:
(a)アミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミド;または
(b)アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、およびチオール;または
(c)ヒドロキシル、カルボン酸、およびチオール;または
(d)カルボン酸およびチオール;または
(e)アミンおよびイミン;
(f)ヒドロキシル、カルボン酸、およびスルホン酸;または
(g)チオールおよびスルホンアミド;または
(h)アミンおよびカルボン酸;
ナノマテリアル電解質。
【請求項12】
請求項7~11のいずれか一項に記載されたナノマテリアル電解質であって:
(a)前記ナノマテリアル電解質は、ポリマー、タンパク質、炭水化物、およびナノ粒子からなる群のうち1または複数から選択される材料でさらに被覆され;
前記ナノマテリアル電解質は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、タンパク質、シリカ、デキストラン、金ナノ粒子、金ナノロッド、銀ナノ粒子、白金ナノ粒子、二酸化チタンおよびシリカナノ粒子からなる群のうち1または複数から選択される材料で被覆されてもよく;
および/または
(b)前記ナノマテリアル電解質は、前記表面に共有結合した蛍光性基をさらに含む;
ナノマテリアル電解質。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか一項に記載されたナノマテリアル電解質を形成する方法であって、
前記方法は、以下の各ステップ:
(i)未修飾2次元ナノマテリアルを供給するステップ;
および
(ii)ナノマテリアル電解質を供給するために、溶媒の存在下で、前記未修飾2次元ナノマテリアルを1または複数の官能化試薬と反応させるステップ;
を含む
方法。
【請求項14】
請求項13に記載された方法であって、
前記未修飾2次元ナノマテリアルは、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、六方晶窒化ホウ素、および遷移金属ダイカルコゲナイドのうち1または複数から選択され;
ここで前記未修飾2次元ナノマテリアルは、任意選択で:
(a)グラフェン、酸化グラフェンおよび遷移金属ダイカルコゲナイドのうち1または複数から選択され;
前記遷移金属ダイカルコゲナイドは、二硫化モリブデンであってもよく;
および/または
(b)グラフェンおよび酸化グラフェンのうち1または複数から選択され;
および/または
(c)遷移金属ダイカルコゲナイドであり;
前記遷移金属ダイカルコゲナイドは、二硫化モリブデンであってもよく;
および/または
(d)単層であり、または2~5層から形成され;
てもよい;
方法。
【請求項15】
請求項13または請求項14に記載された方法であって、
前記1または複数の官能化試薬は、イミン、スルホン酸、スルホンアミド、またはより具体的にはアミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミドからなる群から選択される1または複数の官能基を、ナノマテリアル電解質に与える化合物から選択され、
前記1または複数の官能化試薬は、以下からなる群のうち1または複数から選択される1または複数の官能基を、ナノマテリアル電解質に与える化合物から選択されてもよい:
(a)アミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミド;または
(b)アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、およびチオール;または
(b)ヒドロキシル、カルボン酸、およびチオール;または
(c)カルボン酸およびチオール;または
(d)アミンおよびイミン;または
(e)ヒドロキシル、カルボン酸、およびスルホン酸;または
(f)チオールおよびスルホンアミド;または
(g)アミンおよびカルボン酸;
方法。
【請求項16】
請求項15に記載された方法であって、
前記1または複数の官能化試薬は、チオアミン、二官能性スルホン酸、アミノシラン、カルボキシルシラン、チオールシラン、二官能性アミン、多官能性アミン、アジド化合物、ジエノフィル、チオ酸、およびハロアセトアミドからなる群のうち1または複数から選択され、
ここで、任意選択で:
(a)前記1または複数の官能化試薬は、スルファニル酸、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル(aercaptopropyl))メチルジメトキシシラン、エチレンジアミン(ethidenediamine)(EA)、1,6-ヘキサンジアミン(HA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、アジド-OH、アジド-COOH、アジド-NH、アジドポリマー、リポ酸(LA)、リポ酸誘導体、メルカプトプロピオン酸(MPA)、チオグリセロール(TG)、システイン、ヨウ化メチル、およびヨードアセトアミドからなる群のうち1または複数から選択されてもよく;
または
(b)前記1または複数の官能化試薬は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)メチルジメトキシシラン、エチレンジアミン(EA)、1,6-ヘキサンジアミン(HA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、5-アジドペンタン酸、アジド-dPEG-アミン、アジド-dPEG-酸、3-アジド-1-プロパノール、3-アジド-1-プロパンアミン、アゾメチンイリド、リポ酸(LA)、リポ酸誘導体、メルカプトプロピオン酸(MPA)、チオグリセロール(TG)、システイン、ヨウ化メチル、およびヨードアセトアミドからなる群のうち1または複数から選択されてもよい;
方法。
【請求項17】
請求項13~16のいずれか一項に記載された方法であって、
以下のうち1または複数が適用される:
(a)請求項13におけるステップ(ii)は、活性化分子を使用して行われ;
前記活性化分子は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、および塩化チオニルSOClからなる群から選択されてもよく;
(b)請求項13におけるステップ(ii)の反応生成物は、ステップ(iii)において還元を受け、還元するステップは、溶媒の存在下で、ステップ(ii)の前記反応生成物を還元剤と反応させるステップを含み;
前記還元は、アスコルビン酸、ヒドラジン、および水素化ホウ素ナトリウムからなる群のうち1または複数から選択された還元剤を使用して行われてもよく;
および
(c)請求項13におけるステップ(ii)の前記反応生成物は、溶媒の存在下で、ステップ(iv)において蛍光剤との反応を受け;
前記蛍光剤は、フルオレセイン(fluorescin)イソチオシアネートイソマーI型であってもよく、およびステップ(ii)の前記反応生成物は、チオール官能基を含んでもよい;
方法。
【請求項18】
薬物送達デバイスであって、
前記薬物送達デバイスは:
請求項7~12のいずれか一項に記載されたナノマテリアル電解質;
および
前記ナノマテリアル電解質の表面に結合された薬物;
を含み;
前記ナノマテリアル電解質は、スクロールした1次元配座で供給され、その結果、前記薬物は、前記スクロールした1次元配座の内部にカプセル封入され、酸性または塩基性環境にさらされて、前記ナノマテリアル電解質が平坦な2次元配座を採るときに放出される;
薬物送達デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2次元電解質およびそれらの応用、および、周囲環境への変化によって2次元電解質の配座(conformation)を変化させる方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
本明細書における先行文献のリストまたは議論は、その文献が技術水準の一部である、または技術常識であるということを、必ずしも認めるものではない。炭素の主な特徴の1つは、異なる次元数を有する多数の同素体が存在することである:フラーレンは分子であるため0次元(0D)であり、カーボンナノチューブは1次元(1D)構造であり、グラフェンは2次元(2D)構造であり、グラファイトおよびダイヤモンドは3次元(3D)構造である。炭素の別個の次元数は、炭素系材料の特有の機能性に起因するさまざまな応用につながった。2004年におけるグラフェンの単離以来、2D材料の分野は、それらの特別な特性および多数の産業分野における応用への可能性のため、劇的に発展してきた。一般的な3D材料とは異なり、2D材料は、それらの低い次元数に起因する特別な特性を有し、「ソフト」および「ハード」材料の特徴を共有する。2D材料において、電子的(ハード)特性は、配座(ソフト特性)によって制御されることができ、構造と機能性との間の複雑な相互作用に至る(V. M. Pereira & A. H. Castro Neto, Phys. Rev. Lett. 2009, 103, 046801)。しかしながら、外部刺激応答の結果として可逆的な次元変換を受けることができるインテリジェント材料としてのそれらの役割は、あまり探究されていない。構造の可逆的な形態制御は、材料の特性を調整する重要なメカニズムである(Y. Xia et al., Adv. Mater. 2003, 15, 353-389およびY. Zhang et al., Nat. Commun. 2015, 6, 6165)。これらのシステムは、薬物送達、水素貯蔵、センサ、濾過用膜、および生物システムを模倣する構造を含む、いくつかの応用に大きな関連性がある。例えば高分子電解質懸濁液において、静電相互作用が温度およびpH変化に対するそれらの応答の起源であり、それらの微細なバランスが分子鎖(1D)から球状物体(0D)への可逆的な形態転移の要因である(M. Muthukumar, Macromolecules 2017, 50, 9528-9560;およびT. Zhu et al., Nat. Commun. 2018, 9, 4329)。クーロン力および弾性力は次元数を増加させる傾向にあり、一方ファンデルワールス力は次元数を減少させる傾向にあるため、そのような次元の減少は普遍的な現象である(例えば、図1参照)。物理的および化学的な観点から、2D材料における表面電荷間の電気的反発は、平坦な配座をもたらす。分散液の電荷量を変えることにより、2D材料の表面電荷密度を電気的にスクリーンすることができ、その弾性によって、2D材料は異なる形態を形成することにより配座変化を受けることができ、最も安定している形態は、1D様構造すなわちスクロールとなる。2D材料からスクロールを生成する多数の戦略の中で、液体窒素による衝撃冷却とそれに続く凍結乾燥(freeze-drying or lyophilisation)は、酸化グラフェン(GO)スクロールを調製するための最も人気のある方法の1つである(T. Fan et al., Nanoscale Res. Lett. 2015, 10, 1-8;およびL. Gao et al., RSC Adv. 2018, 8, 19164-19170)。スクロールを作製する他の戦略には、レーザー照射下の渦流体内の高剪断応力(T. M. D. Alharbi et al., Carbon N. Y. 2018, 137, 419-424)、およびラングミュア・ブロジェット(LB)法(Y. Gao et al., Carbon N. Y. 2010, 48, 4475-4482)などがある。しかしながら、外部条件の変化の関数としての官能化2D材料の可逆的な形態転移は、これまで報告されていない。
【0003】
それゆえ、環境条件への変化の結果として可逆的な形態変換を受けることができる、新しいクラスの帯電2D材料を発見する必要がある。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の態様において、ナノマテリアル電解質の配座を変化させる方法が与えられ、
前記方法は、以下の各ステップを含み:
(a)第1の状態を有する混合物を供給するために、水性媒体中にナノマテリアル電解質を供給するステップ;および
(b)第2の状態にある混合物を供給するために、前記混合物に、pH、イオン強度、温度、圧力、超音波処理(sonication)、および光のうち1または複数の変化を加えるステップ;
前記混合物の前記第1の状態は、前記ナノマテリアル電解質が主として平坦な2次元配座またはスクロールした1次元配座であることに対応し;および
前記混合物の前記第2の状態は、前記ナノマテリアル電解質が主として前記第1の状態と反対の配座であること、すなわち、前記ナノマテリアル電解質が前記第1の状態において主として平坦な2次元配座である場合、前記第2の状態においては主としてスクロールした1次元配座であること、またはその逆であることに対応し;
前記ナノマテリアル電解質は、表面を有する修飾2次元ナノマテリアルを含み;
前記表面は、前記修飾2次元ナノマテリアルの前記表面上で、イミン、スルホン酸、スルホンアミド、またはより具体的にはアミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミドからなる群(group)のうち1または複数から選択される、複数の官能基によって修飾され;
前記ナノマテリアル電解質は、その周囲環境への変化に応じて、平坦な2次元配座またはスクロールした1次元配座を可逆的に採ることができ;
前記周囲環境における前記変化は、前記周囲環境におけるpH、イオン強度、温度、圧力、超音波処理、および光のうち1または複数の変化に起因し;および
前記複数の官能基の量は、同じ2次元ナノマテリアルの未修飾形態に存在する量よりも多い。
【0005】
本発明の第2の態様において、ナノマテリアル電解質が与えられ、
前記ナノマテリアル電解質は、表面を有する修飾2次元ナノマテリアルを含み;
前記表面は、前記修飾2次元ナノマテリアルの前記表面上で、イミン、スルホン酸、スルホンアミド、またはより具体的にはアミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミドからなる群のうち1または複数から選択される、複数の官能基によって修飾され;
前記ナノマテリアル電解質は、その周囲環境への変化に応じて、平坦な2次元配座またはスクロールした1次元配座を可逆的に採ることができ;
前記周囲環境における前記変化は、前記周囲環境におけるpH、イオン強度、温度、圧力、超音波処理、および光のうち1または複数の変化に起因し;および
前記複数の官能基の量は、同じ2次元ナノマテリアルの未修飾形態に存在する量よりも多い。
【0006】
本発明の第3の態様において、本発明の第2の態様に記載されたナノマテリアル電解質を形成する方法が与えられ、
前記方法は、以下の各ステップ:
(i)未修飾2次元ナノマテリアルを供給するステップ;および
(ii)ナノマテリアル電解質を供給するために、溶媒の存在下で、前記未修飾2次元ナノマテリアルを1または複数の官能化試薬と反応させるステップ;
を含む。本発明の第4の態様において、薬物送達デバイスが与えられ、
前記薬物送達デバイスは:
本発明の第2の態様に記載されたナノマテリアル電解質;および
前記ナノマテリアル電解質の表面に結合された薬物を含み;
前記ナノマテリアル電解質は、スクロールした1次元配座で供給され、その結果、前記薬物は、前記スクロールした1次元配座の内部にカプセル封入され、酸性または塩基性環境にさらされて、前記ナノマテリアル電解質が平坦な2次元配座を採るときに放出される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】分散液中の2D電解質および高分子電解質の形態転移の図解を示す:(a)2D電解質は、pH変化下の分散液中で、平坦な2D(上)構成からスクロール様の1D(下)構成に変化する;および(b)高分子電解質の溶液中での同等の図であり、その中で1D分子鎖が0D球状構造に変化する。
図2】典型的な2D形態転移過程の模式図を示す。
図3】様々な2D電解質の特性評価(characterisation)を図示する:(a-b)pH3.0での還元型官能化酸化グラフェン(rGO-SH-FITC)を含む分散液の光学画像であり、平坦な2D構造が観察される;(c-d)pH9.0での分散液中の同じ材料であり、スクロールが見られる;(e)官能化グラフェン(G-COOH)スクロール;(f)その層間距離ありの、HR-STEM画像;および(g,j)pH3.0(平坦);および(h,i,k,l)pH9.0(スクロール)での、rGO-SH-FITCのAFM画像およびそれぞれの高さプロファイル。
図4】アルキメデスの螺旋の幾何学および(10,5)-スクロールの最適化された構造を使用した、スクロールのパラメータ化を図示する:(a)dは層間距離(HR-STEM画像から測定)であり、最初φ、最終φ角度として選択されたパラメータ表示は、内側および外側半径rin=r(φ=φ),rout=r(φ)を意味する(また顕微鏡画像から得られる);(b)完全なスクロール;および(c)層間間隔に酸素を有するスクロール。
図5】pH4.5での2D電解質のスクロールメカニズムに対する超音波処理の効果を図示する:(a)超音波処理ありおよびなしの、酸化グラフェン(GO)の走査型電子顕微鏡(SEM)画像;および(b)超音波処理ありおよびなしの、G-COOHのHR-STEM画像(薄い灰色の構造は、TEM格子上のレース状炭素支持フィルムに相当する)。
図6】様々な2D電解質について、pHの関数として形態的な構成を図示する。(a)GO;(b)rGO-SH;(c)rGO-SH-FITC;および(d)G-COOHの、SEM画像である。すべての試料のpHは、超音波処理下でHClとKOHとを使用して調整された。
図7】様々なpHでのGOの形態転移のAFM画像を、それぞれの高さプロファイルとともに図示する。(a,b)pH4.5(オリジナル、2D平坦)でのGO;(c-e)pH6.0(1Dスクロール);および(f,g)pH3.0(1Dスクロール)からpH4.5(2D平坦)に再調整後のpH4.5。
図8】様々な2D電解質の特性評価を図示する:(a)GO、GO-SH、およびrGO-SHの高分解能C1s X線光電子分光法(XPS)スペクトル;(b)rGO-SHの高分解能S2p XPSスペクトル;(c)pHの関数としてのゼータ電位;(d)官能化(GO-SH)および水熱還元(rGO-SH)後の、GOのDバンドの相対強度のわずかな増加を示すラマンスペクトル;(e)rGO-SHおよびrGO-SH-FITCの、pHの関数としてのゼータ電位;および(f)GO-SH、rGO-SH、FITC、およびrGO-SH-FITCの、FTIRスペクトル。破線の楕円は、FITCスペクトルのS=C=N結合を強調する。
図9】FITC対照およびrGO-SH-FITC(2D電解質)の光学画像を図示する:2D電解質で(a)pH3.0では、2D平面シートが観察される;および(b)pH9.0では、1Dスクロール構造が観察される。
図10】グラフェンおよびG-COOHの特性評価を図示する:(a)グラフェンおよびG-COOHのラマンスペクトル;(b)2D平坦構造のHR-STEM画像;グラフェンおよびG-COOHの、高分解能(c)C1s;および(d)N1sスペクトル。
図11】水性分散液中の2D電解質:(a)G-COOH;および(b)rGO-SHの相図を示す。ζ電位対pHの実験点は、形態的な状態に応じて、正方形(2D平坦)および円(1Dスクロール)により示される。所与の平均フレークの大きさ(G-COOHおよびrGO-SHで、それぞれ0.48μMおよび2.33μM)での、理論上の不安定領域は、塗りつぶしにより示される。曲げ剛性は、柔らかいGO様材料で0.025eVである(P. Poulin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 2016, 113, 11088-11093)。ハマーカー定数(Hamaker constant)は、グラフェン様材料で0.624eVであるが(R. R. Dagastine, D. C. Prieve & L. R. White, J. Colloid Interface Sci. 2002, 249, 78-83)、しかしpH>7のr-GO-SHでは、アルカリ性条件下で形成される強い共有S-S結合を模するために、非常に大きい。
図12】様々なpHの分散液中で識別された様々なタイプの2D電解質形態のSEM画像、およびそれらの近似平均アスペクト比(r)を図示する:(a)2D平面孤立シート、1<r<3;(b)2D平面凝集シート、1<r<3;(c)2D折り畳みシート(矢印参照)、3<r<5;(d)孤立1Dスクロール、単一フレークにより形成、5<r<15;および(e)ねじれ1Dスクロール、多数の凝集フレークにより形成、6<r<20。
図13】様々なpHでの2D電解質:(a)GO、(b)rGO-SH、および(c)G-COOHの統計分析を、それぞれのアスペクト比(r=長さ/幅)の分布曲線とともに図示する。この図は、F(r)=[C/σr(2π)1/2]exp[-(ln r/r/2σ]により与えられる対数正規分布によってフィッティングされ、ここでrは、rを中央値とするアスペクト比であり、C,σはフィッティングパラメータである。
図14】pH4.5での統計分析、および様々なpHでのGOの形態の分布を図示する:(a)超音波処理なしの、pH4.5でのGOのアスペクト比のサイズ分布曲線であり、平面シートが主に観察された;および(b)統計分析に基づく様々なpHでの形態の分布。
図15】形態転移の可逆性を図示する。pH3.0での、およびpH4.5への再調整後の、GOの代表的なSEM画像。
図16】2D電解質(rGO-SHおよびG-COOH)の統計分析を図示する:(a)rGO-SHのpHの関数としての平均アスペクト比は、pHの増加とともにスクロール形成する傾向を示す。点は、pH10.2から3.1まで、pH再調整後に達成された値を示す;(b)様々なpHの試料中で識別されたrGO-SHの形態(スクロール(ねじれおよび孤立構造の両方を含む)、折り畳み、および平面)の統計分布;(c)それぞれpH10.2での1Dスクロール構造からpH3.1での2D平坦シートへの、rGO-SHの可逆効果を示すSEM画像;(d)pHの増加とともに2D平坦構造の増加を示す、平均アスペクト比;(e)G-COOHの構造の統計分布;(f)G-COOHの可逆過程を示すHR-STEM画像;および(g)官能化グラフェン(G-COOH)のpHの関数としてのゼータ電位。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の態様において、ナノマテリアル電解質が与えられ、
前記ナノマテリアル電解質は、表面を有する修飾2次元ナノマテリアルを含み;
前記表面は、前記修飾2次元ナノマテリアルの前記表面上で、イミン、スルホン酸、スルホンアミド、またはより具体的にはアミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミドからなる群のうち1または複数から選択される、複数の官能基によって修飾され;
前記ナノマテリアル電解質は、その周囲環境への変化に応じて、平坦な2次元配座またはスクロールした1次元配座を可逆的に採ることができ;
前記周囲環境における前記変化は、前記周囲環境におけるpH、イオン強度、温度、圧力、超音波処理、および光のうち1または複数の変化に起因し;および
前記複数の官能基の量は、同じ2次元ナノマテリアルの未修飾形態に存在する量よりも多い。
【0009】
本明細書の実施形態において、単語「含む(comprising)」は、言及された特徴を必要とするが、しかし他の特徴の存在を制限しないと解釈されうる。あるいは、単語「含む」はまた、記載された構成要素/特徴のみ存在することが意図されている状況にも関連しうる(例えば、単語「含む」は、句「~からなる(consists of)」または「本質的に~からなる(consists essentially of)」によって置き換えられうる)。より広い解釈とより狭い解釈の両方が、本発明のすべての態様および実施形態に適用されうることが、明示的に意図される。言い換えれば、単語「含む」およびその同義語は、句「~からなる」または句「本質的に~からなる」またはそれらの同義語によって置き換えられてもよく、その逆も同様である。句「本質的に~からなる」およびその同義語は、軽微な不純物が存在しうる材料を指すと、本明細書において解釈されうる。例えば、材料は、90%以上の純度、例えば95%を超える純度、例えば97%を超える純度、例えば99%を超える純度、例えば99.9%を超える純度、例えば99.99%を超える純度、例えば99.999%を超える純度、例えば100%の純度でありうる。本明細書で使用される、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈上そうでないことが明らかな場合を除き、複数の指示物を含む。従って例えば、「組成物(a composition)」への言及は、2以上のそのような組成物の混合物などを含む。
【0010】
本明細書で使用される場合、「2次元ナノマテリアル(two-dimensional nanomaterial)」という用語は、ナノまたはマイクロスケールにおける10層までの原子厚さおよび他の寸法を有する材料を指す。本明細書で使用される場合、「修飾2次元ナノマテリアル(modified two-dimensional nanomaterial)」という用語は、官能基の付加および/または置換を通じて変化した2次元ナノマテリアルを指す。これは、本質的に官能基を欠いた材料(例えば、グラフェン)への官能基の付加による、または材料に存在していた官能基の付加および/または変化によるもののいずれかでありうる。後者の例として、未修飾酸化グラフェンは、エポキシド、アルコールおよびカルボン酸を含みうる。本明細書で開示される化学を通して、エポキシドは、さらなる分子の付加によって開環されてもよく、それによりヒドロキシル基の量を増加し、およびまた材料の表面上にさらなる官能基(例えば、アミノ基)を導入しうる。
【0011】
ある実施形態において、官能基を予め持つ修飾材料に存在する官能基の数は、増加しうる。このことは、任意の適切な方法によって測定および定量化されうる。例えば、官能基は、材料(例えば、修飾前および後)の各試料における官能基のタイプを識別するために、元素の原子パーセントを計算することによって、X線光電子分光法(XPS)により検証および定量化されうる。各元素の相対的なピークを考慮することにより、元素の原子パーセントを含む定量化報告が提供される。官能化の程度は、官能基のタイプおよび行われる反応に依存するであろう。例えばSHで官能化された酸化グラフェンの場合、高分解能C1スペクトルは、C-SiおよびC-Sに起因し、官能化に使用された分子(例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン)に由来する、デコンボリューションされたピークを示すであろう。このスペクトルおよび官能化前の官能化されていない酸化グラフェンのスペクトルから、官能化の推計を行うことは可能であり、2次元材料上に存在する官能基の数が全体的に増加していることを示しうる。赤外およびラマン分光法などの他の技術もまた、この調査において定性的に使用されうる。
【0012】
おわかりのように、ナノマテリアル電解質は、それ自体材料として提供されうる一方、また水性環境などの適切な媒体中の電解質製剤としても提供されうる。この水性環境は、ナノマテリアル電解質が、pHの変化などによる周囲環境の変化に起因して、その形態の変化を受けることを可能にしうる。おわかりのように、複数の官能基は、イミン、スルホン酸、スルホンアミド、またはより具体的にはアミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミドからなる群のうち1または複数から選択されうる一方、これらの基は、それらがさらされるpH(または他の環境条件)に応じて、イオン性(例えば、アンモニウム、カルボン酸)または遊離塩基/遊離酸の形態で存在しうる。従って、本明細書で言及されうる本発明の実施形態において、周囲環境の変化は、周囲環境における温度、塩濃度、pH、イオン強度、および超音波処理のうち1または複数の変化に起因しうる。本明細書で言及されうる具体的な実施形態において、周囲環境の変化は、周囲環境におけるpH、イオン強度、および超音波処理のうち1または複数;または周囲環境におけるpHおよび超音波処理の一方または両方、の変化に起因しうる。
【0013】
以下の実施例に示されるように、pHの変化は、本明細書に開示される2次元電解質の表面上の電荷を変化させるかもしれず、ある方向の変化(より高いまたはより低いpH)は、材料が実質的に平坦な配座を採ることにつながるかもしれず、一方第2の方向の変化は、材料が実質的にスクロールした配座を採る結果になるかもしれない。本明細書で使用される場合、「実質的にX配座(substantially X conformation)」という用語は、材料の少なくとも55%、例えば65%、例えば70%、例えば75%、例えば80%、例えば85%、例えば90%、例えば95%、例えば99%、例えば99.99%、例えば100%が、配座Xを採る材料を指しうる。ある実施形態において、pHを使用して配座を制御する場合、配座変化を可能にするためにシステムに追加のエネルギーを供給する必要がありうる(例えば、スクロールへの転移は、弾性エネルギーの増加のためエネルギー的に好ましくないかもしれない)。このことは、温度、遠心分離、および光照射、またはより具体的には超音波処理の変化の使用など、任意の適切な方法によって達成されうる。2次元電解質のすべてが、平坦な配座またはスクロールした配座のいずれかを採るわけではないことが理解されよう。2次元電解質の一部は、以下の実施例の節で議論されるように、一部が平坦で一部が折り畳まれる、折り畳み配座を採りうる。
【0014】
本明細書の実施形態において使用される修飾2次元ナノマテリアルは、その表面の官能化を受け入れる能力を有する、任意の適切な2次元ナノマテリアルでありうる。適切な2次元ナノマテリアルの例には、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン(reduced graphene oxide)、六方晶窒化ホウ素、遷移金属ダイカルコゲナイド(transition metal dichalcogenide)、およびそれらの組み合わせを含むが、それらに限定されない。本明細書で言及されうる具体的な実施形態において、修飾2次元ナノマテリアルは、以下から選択されうる:グラフェン、酸化グラフェン、および遷移金属ダイカルコゲナイド(例えば、二硫化モリブデン)のうち1または複数;グラフェンおよび酸化グラフェンのうち1または複数;遷移金属ダイカルコゲナイド(例えば、二硫化モリブデン)。本明細書で言及されうる本発明の実施形態において、修飾2次元ナノマテリアルは、単層であってもよく、または2~5層から形成される。
【0015】
複数の官能基は、本明細書で言及されるそのような基の任意の組み合わせから選択されうる。実際、2以上の官能基が同じ結合部分に存在しうるということが可能である(例えば、アミン官能基およびカルボン酸が、システインで官能化されたグラフェン表面などのアミノ酸部分に存在してもよく、そこではチオール基がグラフェン表面への共有結合を形成する)。例えば、複数の官能基は、以下からなる群のうち1または複数から選択されうる:
(a)アミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミド;または(b)アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、およびチオール;または(c)ヒドロキシル、カルボン酸、およびチオール;または(d)カルボン酸およびチオール;または(e)アミンおよびイミン;または(f)ヒドロキシル、カルボン酸およびスルホン酸;または(h)チオールおよびスホンアミド;または(h)アミンおよびカルボン酸。理論に縛られることを望むものではないが、修飾2Dナノマテリアル内に導入された複数の官能基が、任意の具体的な使用に適合するようにナノマテリアルの形態的挙動の挙動を調整することを可能にすると考えられる。例えば、本明細書で議論されるように、周囲環境条件の具体的な設定に反応するように調整することによってである。
【0016】
ある実施形態において、記載された電解質は、追加の機能性を提供するために、さらなる材料で被覆されてもよい。例えば、電解質は、ポリマー、タンパク質、炭水化物、およびナノ粒子からなる群のうち1または複数から選択される材料で被覆されてもよく、ナノマテリアル電解質は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(メチルメタクリレート)(PMMA)、タンパク質、シリカ、デキストラン、金ナノ粒子、金ナノロッド、銀ナノ粒子、白金ナノ粒子、二酸化チタンおよびシリカナノ粒子からなる群のうち1または複数から選択される材料で被覆されてもよい。この追加の被覆は、2D電解質構造と物理的または共有結合的に関連付けられうる。いくつかの実施形態において、これらの被覆は、デバイスの作製中に2D電解質構造を保護するために有用でありうる。これらの被覆のいくつかはまた、例えばPEG、タンパク質およびシリカのように、毒性の減少または循環寿命の延長を示しうるため、生物医学的応用にも興味深いものでありうる。いくつかの実施形態において、これらの追加の被覆は、太陽電池および電気化学などのエネルギー応用に有用でありうる。例えば金属ナノ粒子被覆は、光を吸収し、局所的な表面プラズモン共鳴により、局所的な加熱効果を引き起こし、2D電解質の形態転移を誘発しうる。加えて、またはその代わりに、ナノマテリアル電解質は、表面に共有結合した蛍光性基を組み込みうる。官能化剤は蛍光分子であってもよく、条件の変化もまた分子発光の変化をもたらしうる。これは、検出およびセンサ応用に特に有用でありうる。
【0017】
本明細書で開示されるナノマテリアル電解質は、周囲環境の環境が変化するときに配座を変化させる能力により、特に有用である。従って本発明のさらなる態様において、本明細書に前述されたナノマテリアル電解質の配座を変化させる方法が開示され、前記方法は以下の各ステップを含む:(a)第1の状態を有する混合物を提供するために、水性媒体中にナノマテリアル電解質を供給するステップ;および(b)第2の状態にある混合物を提供するために、前記混合物に、pH、イオン強度、温度、圧力、超音波処理、および光のうち1または複数の変化を加えるステップ;前記混合物の前記第1の状態は、前記ナノマテリアル電解質が主として平坦な2次元配座またはスクロールした1次元配座であることに対応し;および前記混合物の前記第2の状態は、前記ナノマテリアル電解質が主として前記第1の状態と反対の配座であること、すなわち、前記ナノマテリアル電解質が前記第1の状態において主として平坦な2次元配座である場合、前記第2の状態においては主としてスクロールした1次元配座であること、またはその逆であることに対応する。この材料は、環境条件の変化に応じて、平坦な配座からスクロールした配座に可逆的に相互変換されうる。従って、前記方法は:(c)前記混合物を前記第1の状態に戻すために、すなわち、前記ナノマテリアル電解質が前記第1の状態における形態に戻るために、前記混合物に、前記周囲環境におけるpH、イオン強度、温度、圧力、超音波処理、および光のうち1または複数の変化を加えるステップ;をさらに含みうる。
【0018】
現在開示されている方法に関連する利点は、可逆的な形態転移をもたらすために、大きな温度変化または溶媒の使用を必要としないことである。加えて、配座シフトの過程は、水性環境中で行われうるため環境に優しく、このことはまた、電解質が使用されうる潜在的な応用を増加させる。さらに方法は、単純で、汎用性があり、テンプレートおよび溶媒を使用せず、かつ可逆的であり、このことは、スマート応答材料(例えば、薬物送達システム)、バッテリー、およびセンサなど、多くの分野への応用を可能にする。おわかりのように、周囲環境における任意の適切な変化により、配座変化を可能にしうる。例えば変化は、周囲環境における温度、塩濃度、pH、イオン強度、および超音波処理のうち1または複数の変化であってもよく、変化は、周囲環境におけるpHおよび超音波処理の一方または両方の変化であってもよい。より具体的には、周囲環境における変化は、以下の変化に起因しうる:周囲環境におけるpH、イオン強度、および超音波処理のうち1または複数;または周囲環境におけるpHおよび超音波処理の一方または両方。
【0019】
おわかりのように、本方法において使用されるナノマテリアル電解質は、本明細書で上述されたものと同じである。それゆえ簡潔のために、この材料における可能な変種についての議論は繰り返さない。
【0020】
本発明のさらなる態様において、本明細書に前述されたナノマテリアル電解質を形成する方法が開示され、前記方法は、以下の各ステップを含む:(i)未修飾2次元ナノマテリアルを供給するステップ;および(ii)ナノマテリアル電解質を供給するために、溶媒の存在下で、前記未修飾2次元ナノマテリアルを1または複数の官能化試薬と反応させるステップ。
【0021】
未修飾2次元ナノマテリアルは、任意の適切な材料から選択されうる。適切な未修飾2次元ナノマテリアルの例には、グラフェン、酸化グラフェン、還元型酸化グラフェン、六方晶窒化ホウ素、および遷移金属ダイカルコゲナイドを含むが、それらに限定されない。具体的な実施形態において、未修飾2次元ナノマテリアルは、グラフェン、酸化グラフェン、および遷移金属ダイカルコゲナイド(例えば、二硫化モリブデン)のうち1または複数から選択される。より具体的には、未修飾2次元ナノマテリアルは、グラフェンおよび酸化グラフェンのうち1または複数から選択されうる。あるいは、未修飾2次元ナノマテリアルは、遷移金属ダイカルコゲナイド(例えば、二硫化モリブデン)でありうる。本明細書で言及されうる本発明の実施形態において、未修飾2次元ナノマテリアルは、単層である、または2~5層から形成される。
【0022】
官能化剤は、官能基の1つによって2D材料の表面に結合されることができ、および(pHなど)環境変化に応答する少なくとも1の他の官能基を有する、任意の二官能性(または三官能性、四官能性など)分子でありうる。本明細書で言及されるすべてのタイプの2D電解質について、官能化剤は、複数のタイプの分子でありうる。リンカーは、分子/基および官能基のタイプを拡張するために選択されうる。例えば酸化グラフェンについて、官能化剤は、酸化グラフェン(GO)表面に結合されることができ、および特定の状況下でプロトン化または脱プロトン化できる官能基を有する、任意の二官能性(または三官能性など)分子でありうる。分子は、GO上のエポキシ基またはヒドロキシル基を通して結合されうる。例としては、アミノシラン、カルボキシルシラン、チオールシラン、例えば(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)メチルジメトキシシランなどを含むが、それらに限定されない。シラン分子での官能化はまた、シラン化とも呼ばれる。GO官能化剤はまた、GO表面上のエポキシまたはカルボキシル官能基に結合する、求核剤でありうる。この場合、アミノ化またはエステル化が行われうる。例としては、エチレンジアミン(EA)、1,6-ヘキサンジアミン(HA)、トリエチレンテトラミン(TETA)などの二官能性または多官能性アミンを含むが、それらに限定されない。ある実施形態において、官能基を活性化し、および反応の収率を向上させるために、いくつかの中間分子が使用されうる。例としては、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、または塩化チオニルSOClを含むが、それらに限定されない。GO官能化は、GO分子の還元と組み合わされて、スクロール/アンスクロール過程中のGO表面上の残存基の干渉を最小化しうる。還元は、温度制御処理によって熱的に行われ、または、アスコルビン酸、ヒドラジン、または水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤を使用して化学的に行われうる。
元のグラフェン(pristine graphene)の官能化剤は、グラフェンのsp炭素原子を攻撃する分子でありうる。反応は、ジアゾニウム塩およびアジド分子を用いて、DMF、DMSO、NMP、DMSOなどの有機溶媒中で行われうる。分子の例としては、5-アジドペンタン酸、アジド-dPEG-アミン、アジド-dPEG-酸、3-アジド-1-プロパノール、3-アジド-1-プロパンアミンなどの、任意のアジド化合物(例えば、アジド-OH、アジド-COOH、アジド-NH、アジドポリマー)を含むが、それらに限定されない。元のグラフェンの官能化剤はまた、ジエノフィルでありうる。例としては、DMFなどの有機溶媒中で1,3-双極子環化付加反応を起こすアゾメチンイリドを含むが、それらに限定されない。
【0023】
2次元電解質の他の非限定的な例には、単層または数層の遷移金属ダイカルコゲナイドを含む。例えばMoSは、硫黄空孔において官能基で、または1T相において負電荷を利用して、官能化されうる。第1の場合、チオール基を含む二官能性分子が使用されうる。例としては、リポ酸(LA)および誘導体、メルカプトプロピオン酸(MPA)、チオグリセロール(TG)、システインを含むが、それらに限定されない。第2の場合、ヨードアセトアミドなどの求電子剤が使用されうる。
【0024】
従ってより一般的には、1または複数の官能化試薬は、イミン、スルホン酸、スルホンアミド、またはより具体的にはアミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミドからなる群から選択される1または複数の官能基を、ナノマテリアル電解質に与える化合物から選択されうる。これらの例には、以下の各組を含み、これらの組は、共に導入されうる官能基の組を含みうる。例えば、1または複数の官能化試薬は、以下からなる群のうち1または複数から選択される1または複数の官能基を、ナノマテリアル電解質に与える化合物から選択される:(a)アミン、ヒドロキシル、カルボン酸、チオール、およびアミド;(b)アミノ、ヒドロキシル、カルボン酸、およびチオール;(c)ヒドロキシル、カルボン酸、およびチオール;(d)カルボン酸およびチオール;(e)アミンおよびイミン;(f)ヒドロキシル、カルボン酸およびスルホン酸;(g)チオールおよびスルホンアミド;および(h)アミンおよびカルボン酸(例えば、アミノ酸)。
【0025】
具体的な実施形態において、1または複数の官能化試薬は、チオアミン、二官能性スルホン酸、アミノシラン、カルボキシルシラン、チオールシラン、二官能性アミン、多官能性アミン、アジド化合物、ジエノフィル、チオ酸、およびハロアセトアミドからなる群のうち1または複数から選択されうる。より具体的には、1または複数の官能化試薬は、スルファニル酸、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル(aercaptopropyl))メチルジメトキシシラン、エチレンジアミン(EA)、1,6-ヘキサンジアミン(HA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、アジド-OH、アジド-COOH、アジド-NH、アジドポリマー、リポ酸(LA)、リポ酸誘導体、メルカプトプロピオン酸(MPA)、チオグリセロール(TG)、システイン、ヨウ化メチル、およびヨードアセトアミドからなる群のうち1または複数から選択されうる。さらに具体的には、1または複数の官能化試薬は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、(3-アミノプロピル)トリメトキシシラン、(3-メルカプトプロピル)メチルジメトキシシラン、エチレンジアミン(EA)、1,6-ヘキサンジアミン(HA)、トリエチレンテトラミン(TETA)、5-アジドペンタン酸、アジド-dPEG-アミン、アジド-dPEG-酸、3-アジド-1-プロパノール、3-アジド-1-プロパンアミン、アゾメチンイリド、リポ酸(LA)、リポ酸誘導体、メルカプトプロピオン酸(MPA)、チオグリセロール(TG)、システイン、ヨウ化メチルおよびヨードアセトアミドからなる群のうち1または複数から選択されうる。
【0026】
上述のように、前記方法のステップ(ii)は、活性化分子(例えば、活性化分子は、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)、および塩化チオニルSOClからなる群から選択されてもよい)を使用して行われうる。ある実施形態において、前記方法のステップ(ii)の反応生成物は、ステップ(iii)において還元を受けてもよく、還元するステップは、溶媒の存在下で、ステップ(ii)の反応生成物を還元剤と反応させるステップを含む(例えば、還元は、アスコルビン酸、ヒドラジン、および水素化ホウ素ナトリウムからなる群のうち1または複数から選択される還元剤を使用して行われてもよい)。ある実施形態において、前記方法におけるステップ(ii)の反応生成物は、溶媒の存在下で、ステップ(iv)において蛍光剤との反応を受けてもよい(例えば、蛍光剤は、フルオレセイン(fluorescin)イソチオシアネートイソマーI型であってもよく、およびステップ(ii)の反応生成物は、チオール官能基を含んでもよい)。
【0027】
本発明のさらなる態様において、以下を含む薬物送達デバイスが開示される:本明細書に前述されたナノマテリアル電解質;および前記ナノマテリアル電解質の表面に結合した薬物;前記ナノマテリアル電解質は、スクロールした1次元配座で供給され、その結果、前記薬物は、前記スクロールした1次元配座の内部にカプセル封入され、酸性または塩基性環境にさらされて、前記ナノマテリアル電解質が平坦な2次元配座を採るときに放出される。
【実施例
【0028】
[材料]
酸化グラフェン(GO;HO中2mg/mL)は、Sigma-Aldrichから購入された。グラフェンフレーク(XPグレード粉末)は、2D Materials Pte.Ltd.から購入された。
【0029】
[分析技術]
試料懸濁液は、XPSおよびSEM分析用にシリコン(Si)基板上に、および、ラマン分光法および原子間力顕微鏡(AFM)用に300nm二酸化ケイ素を有するSi基板(Si/SiO)上に、ドロップキャストされた。
【0030】
[XPS]
XPS測定は、Kratos AXIS UltraDLD(Kratos Analytical Ltd)において行われ、分散液は、Si基板上にドロップキャストされた。すべてのスペクトルは、基板からのSiピーク(99.4ev)を使用して校正された。シャーリー型(Shirley-type)バックグラウンド、ピークフィッティング、および定量化は、CasaXPSソフトウェア(バージョン2.1.19)によって分析され、C1sスペクトルは、非対称グラファイトピーク(~284.5eV)にデコンボリューションされ、残りのピークは、ガウス関数-ローレンツ関数(Gaussian-Lorentzian)GL(30)線型を使用してフィッティングされた。
【0031】
[AFM]
AFM測定は、ScanAsystタッピングモード、および512のスキャンラインで、周囲条件下で操作される、Bruker Dimension Icon Microscope(Bruker Corporation、ビレリカ(Billerica)、マサチューセッツ州、米国)において行われた。
【0032】
[光学顕微鏡]
25μLのチオラートGO(rGO-SH)(0.01mg/mL)が、あらかじめ洗浄されたスライドガラス上に堆積された。分散液は、8mm×8mmの開口部を有するパラフィルムの薄いウェルによって囲まれた。続いて、あらかじめ洗浄されたカバースリップが使用され、液滴およびパラフィルムの両方を覆った。カバースリップは、メニスカスの形成を防ぎ、溶液の蒸発速度を減少させる。最後に、エッジはエポキシ接着剤で密閉された。正立蛍光顕微鏡において100倍イマージョンレンズを使用して、明視野モード下で、さらなる特性評価(characterization)が行われた。
【0033】
[フーリエ変換赤外分光法(FTIR)]
ALPHA Platinum-ATR(Bruker Corporation、ビレリカ、マサチューセッツ州、米国)装置が使用された。このために、GOの水性懸濁液が凍結乾燥されて、KBrディスク法によって調製され、および減衰全反射(ATR)モードでスペクトルが取得された。
【0034】
[ラマン分光法]
ラマン分光法は、WITec Alpha 300R(WITec Wissenschaftliche Instrumente und Technologie GmbH、ドイツ)において、励起波長532nm、100倍対物レンズで行われた。
【0035】
[SEM]
SEMは、FEI Verios 460 L FESEM(FEI Company、ヒルズボロ(Hillsboro)、オレゴン州、米国)を使用して、Lacey炭素金透過型電子顕微鏡(TEM)グリッド(TedPella)上で行われた。
【0036】
[高分解能走査型透過電子顕微鏡(HR-STEM)]
HR-STEM分析は、JEOL JEM-ARM200F(日本電子株式会社、昭島市、日本)原子分解能分析電子顕微鏡を使用して、Lacey炭素金透過型電子顕微鏡(TEM)グリッド(TedPella)上で行われた。
【0037】
[実施例1.2D電解質の合成]
2D電解質は、反応種として有機分子を使用して合成され、共有結合的修飾によってGOおよびグラフェンに様々な官能性を付加した。以下に述べる官能化ルートは、多くの例の中のほんの一例に過ぎない。
【0038】
[GO-SHおよびrGO-SH]
はじめに、GOが、遠心分離によってエタノール(1mg/mL)中に分散された。次に、5μLの(3-メルカプトプロピル)トリメトキシシランが、5mLのGO分散液に加えられた。分散液は、室温で24時間撹拌下に保たれ、その後、エタノール中で2回、脱イオン水(DI水)中で1回遠心分離され、シラン分子の残留物を除去して、GO-SHを得た。官能化(GO-SH)後、軽い水熱還元が行われ、エッジからCOOH基の一部を除去して、スクロールメカニズムを誘導するためにはるかに制御された化学表面を得た。反応は、アスコルビン酸(7.5mg)をGO懸濁液(15mL)に、攪拌およびN雰囲気下で加えることによって行われた。15分後、温度を約60℃まで50分間上昇させた。最後に、システムはDI水で洗浄され、rGO-SHを得た。
【0039】
[rGO-SH-FITC]
フルオレセイン(fluorescein)イソチオシアネートイソマーI型(FITC)は、さらに精製することなく使用された。官能化のために、FITCはまず、無水DMSO中に1mg/mLで溶解された。次に、このFITC溶液1mLが、30mLのrGO-SH(0.2mg/mL,pH=6~7)に加えられた。システムは、室温で6時間攪拌下に置かれ、最後に超純水で透析が行われ、余分なFITCを除去した。対照として、pH3.0および9.0のFITC溶液が、Si/SiO(300nm厚)基板上にドロップキャストされ、それらには大きな構造がないことが明らかであった。グラフェン表面上への蛍光分子の挿入は、例えば生物医学分野などでの応用を広げることができ、これらの材料の多機能性を実証している。
【0040】
[G-COOH]
グラフェンは、アジド(N )基の分解を介して、5-アジドペンタン酸で官能化された(図2)。熱活性化すると、Nの放出、およびDMSO中のグラフェン上へのニトレン(R-N)の付加により、分子が組み入れられるようになり、結果としてカルボン酸(-COOH)で官能化されたグラフェンが得られた(J. Choi et al., J. Phys. Chem. C. 2009, 113, 9433-9435;L. H. Liu, M. M. Lerner & M. Yan, Nano Lett. 2010, 10, 3754-3756;およびM. Zhao et al., Sci. Rep. 2016, 6, 37112)。典型的には、官能化グラフェン、GOシート、および他の2D材料の配座は、媒質の特性(pH)、および結果としてグラフェンの表面電荷を修飾することによって調整される(図2)。反応は以下のように行われた:DMSO中の0.2mg/mLのグラフェン40mLが、N環境下で丸底フラスコ中に調製され、および18℃で15分間超音波処理された。それからシステムはコンデンサに接続され、磁気撹拌下、5-アジドペンタン酸(250mg)が加えられた。反応は、45℃でN雰囲気および72時間撹拌下に保たれた。グラフェンシートの最初の曲げは弾性エネルギーの増加により好ましくないため、この転移は超音波処理によって補助される必要がある。具体的には、反応混合物は超純水で希釈され、10℃で10分間超音波処理された。超音波処理中に、酸(HSO)または塩基(KOH)溶液が懸濁液に加えられて所望のpHに達し、システムは10℃でさらに20分間超音波処理された。超音波処理の時間および温度は、2Dシステムによって異なりうる。その後、システムは遠心分離され、イソプロパノール中に懸濁された。この過程が繰り返され、その後、水で洗浄し、10℃で5分間超音波処理されて、G-COOHを得た。グラフェンは、官能化後に水中で良好な安定性を示した。
【0041】
[実施例2.GO、GO-SH、rGO-SH、rGO-SH-FITCおよびG-COOHの特性評価]
2D電解質は、pHの関数としての液体分散液中の形態転移を示すために、光学顕微鏡を介して特性評価された。様々なpHでの分散液中で、2Dから1D(平坦様からスクロール様)構造への可逆的な転移が観察された(図3a~d)。スクロールは、HR-STEM(図3e~f)および乾燥状態下でのAFM(図3g~i)を使用して、それぞれの高さプロファイル(図3j~l)を含めて、顕微鏡的に特性評価された。形態の変化は、これらすべての特性評価技術において遍在していた。図3e~fは、官能化グラフェン、G-COOHのHR-STEM画像を示し、そこではスクロール構造が、その層とともに観察されうる(図4a)。G-COOHの層状構造を見ることができ、これは元の形態において(J. H. Lehman et al., Carbon N. Y. 2011, 49, 2581-2602)および開かれた(unzipped)形態において(J. Lim et al., Nat. Commun. 2016, 7, 10364;およびL. Xue et al., Nat. Commun. 2018, 9, 3819)の両方で、多層カーボンナノチューブを想起させる。従って、スクロールは、層間距離d~0.43nmのアルキメデスの螺旋構造を有し、グラファイトの層間距離(0.34nm)よりもわずかに大きい。
【0042】
GOは、非晶質で非化学量論的な材料であり、親水性であり、水中に分散されたとき酸の性質を有し、2D平坦構造を有する。しかしながら、超音波処理後、この特定のpHでスクロールの形成が認められた(図5)。様々なpH下でのGOの形態転移が、SEM(図6a)およびAFM(図7)によって観察されうる。GOは不均質な化学表面上に多くの酸素化官能基を有するため、pH調整後に超音波処理を行うと、広い範囲のpH値(図6a)において、強酸性(pH2.5~3.0)またはアルカリ性(pH11)分散液などの極端な場合でさえ、我々は1Dスクロール形態をSEMにより観察した。中間的なpH値(pH6)で、いくつかの1Dスクロール構造もまた観察された。図6bにおいて、pHの増加につれてスクロール様構造が主として形成されることを、我々は示した。チオール基は、より高いpHで脱プロトン化することができ(SH→S)、超音波処理によって刺激を受けると、内部で結合してジスルフィド結合を形成して、スクロール様形態に至る。一方、低いpHでは2D平坦構造が支配的であった。ジスルフィド結合の可逆的な形成は、1D電解質であるタンパク質によってその3次構造を維持するために使用されるメカニズムである(C. S. Sevier & C. A. Kaiser, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2002, 3, 836-847)。
【0043】
GO試料はまた、pH4.5でのGO平坦シート(図7a~b)、pH6.0でのスクロール構造(図7c~e)、およびpH再調整後(pH3.0からpH4.5まで)のpH4.5でのGO平坦シート(図7f~g)の、高さプロファイルを画像化して割り当てるために、AFMを介して特性評価され、スクロールメカニズムの可逆性を示した。GOスクロールに関する従前の報告(Y. Gao et al., Carbon N. Y. 2010, 48, 4475-4482;Y. K. Kim & D. H. Min, Carbon N. Y. 2010, 48, 4283-4288;R. L. D. Whitby et al., ACS Nano. 2012, 6, 3967-3973;B. Tang et al., Chem. Mater. 2018, 30, 5951-5960;およびT. M. D. Alharbi et al., Carbon N. Y. 2018, 137, 419-424)とは異なり、任意の2D電解質に共通する形態転移の可逆性および一般性を、我々は示した。
【0044】
GO、GO-SH、およびrGO-SHのXPS特性評価は、図8および表1に示される。元素の化学状態およびGOの官能基の存在が、XPSによって調査された(図8a)。高分解能C1s領域のデコンボリューション後、5つの異なる化学的状態が識別されうる:284.34eV(C=C)、285.03eV(C-C)、286.96eV(C-O)、287.41eV(C=O)、および288.38eV(O-C=O)。図8aの高分解能C1s XPSスペクトルは、官能化後、C-SiおよびC-Sの結合エネルギーに関連する領域で相対強度が増加したことを示し、シランおよびチオール基がGO表面上にうまく導入されたことを示す(P. C. Ma, J. K. Kim & B. Z. Tang, Carbon N. Y. 2006, 44, 3232-3238)。またrGO-SHの高分解能S2pスペクトルは、C-S結合の形成を示す(図8b)。加えて還元後は、COOH基が除去されたため、GO-SHと比較して、C=O(濃い緑色)、およびO-C=O(紫色)などの酸素化基の割合が約50%減少した(表1)。結果として得られたrGO-SHの色は、GO-SHよりもわずかに濃く、従って還元と一致した。
【0045】
【0046】
GO-SHおよびrGO-SHのゼータ電位が、様々なpH(2~12)で測定され、分散液の安定性およびそれらの表面電荷密度を検証した(図8c)。予想通り、還元後のカルボキシル基のpK(pH4~5)よりも高いpHでは、ゼータ電位値はわずかにマイナスが少なかった。しかしながら、ゼータ電位値はなお高いマイナスであり、そのことはS-H基の寄与を分離することを困難にする。全体として、SH基のpKは約pH8-9であった。SH基のpKは、塩基性pHであるため、pHの増加につれて、チオール基が脱プロトン化し(SH→S)、超音波処理によって刺激を受け、内部で結合して可逆的なジスルフィド結合を形成し(C. S. Sevier & C. A. Kaiser, Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2002, 3, 836-847)、スクロール形態を保つ。そのため、GO-SHとrGO-SHの間に有意な変化は観察されなかった。ラマンスペクトル(図8d)は、官能化および還元後、Dバンドの相対強度がわずかに増加したことを明らかにする。このことは、化学基および欠陥の数が増加し、反応後にフォノン振動が変化することから予想される。
【0047】
FTIRは、すべてのSi基板上で取得された。図8fは、FITC、GO-SH、rGO-SH、およびrGO-SH-FITCのスペクトルを比較する。イソチオシアネート基(S=C=N)がrGO-SHのチオール(S-H)基に結合することが予想される。結合形成後FITC分子中のイソチオシアネート基S=C=Nに起因する2051cm-1でのピークが、FTIRスペクトルから消失しており、FITC分子のrGO-SHとの共有結合が、別の2D電解質であるrGO-SH-FITCの形成に至ったことを示している。GO-SHを軽く還元すると、rGO-SHの酸素化基に起因するピークの強度が減少する。pHの関数としてのゼータ電位は、FITCの結合による有意な変化を示さず、遊離チオール基が依然としてGO表面に結合し、形態転移に生き残ったことを示した(図8e)。さらに、rGO-SHの場合と類似して、rGO-SH-FITCの2D平坦構造は低いpHで観察され、1Dスクロールはより高いpH値で観察されており(図6c)、フルオレセイン分子の付加が、2D電解質のその形態を変化させるpH応答能力を損なわなかったことを示す。具体的には、pH3.0で2D平坦シートが見られうる一方、pH9.0で1Dスクロール構造が見られうる(図9)。
【0048】
G-COOHは、ラマン、HR-STEM、およびXPSによって特性評価された(図10)。ラマンスペクトルにおけるID/IG比の増加(図10a)は、共有結合性の官能化の証拠を示す。G-COOHシートの典型的な横方向の大きさは、0.5~2umの範囲にある(図10b)。様々なpH下でのG-COOHの形態は、STEMによって調査された(図6d)。元のpH(約6)から、グラフェンの表面電荷を修飾する意図で、酸または塩基が加えられた。pHが減少するにつれて、1Dスクロールが観察された。pH7では2D平坦構造が主に観察され、一方pH5未満では折り畳み構造または部分的なスクロール構造が支配的であった。酸性pHでの、より暗いコントラストおよび減少した横方向の大きさは、1Dスクロール構造の形成を示す。これらの結果は、相図(図11a)を裏付ける。我々は、2つの主な要因がスクロール形成において重要であることを観察した:(i)分散濃度;ここで低濃度(0.04mg/mL)では、1Dスクロール構造が積層および凝集に対して有利である(B. Tang et al., Chem. Mater. 2018, 30, 5951-5960);および(ii)超音波処理の効果;これにより1Dスクロール収率がかなり改善される(図5)。G-COOHの高分解能C1s XPSスペクトルのデコンボリューションは、284.4eVでの非対称C=Cピークの他に、少数の酸素含有官能基の存在に起因する他の小さなピークを示す(図10c)。それらは、285.9eVでのヒドロキシル(C-O)、286.7eVでのエポキシ/エーテル(C-O-C)、287.5eVでのカルボニル(C=O)、および288.4eVでのカルボン酸(O-C=O)とされる。291~294eVのピークは、π-π遷移に起因する(V. Datsyuk et al., Carbon N. Y. 2008, 46, 833-840;およびH. Estrade-Szwarckopf, Carbon N. Y. 2004, 42, 1713-1721)。両C1sスペクトルを比較することにより、5-アジドペンタン酸での官能化後、sp結合および酸素/窒素基の相対的な増加が観察でき、表面修飾の証拠を裏付ける。官能化の第1ステップ後の高分解能N1sスペクトル(図10d)は、400.3eVおよび401.3eVの2つのピークに分解されうる。これらのエネルギーは、アジド基(N=N=N)に期待されるものとは異なり(G. Zorn et al., J. Phys. Chem. C. 2014, 118, 376-383)、第三級アミンおよびアミドの特徴であり、Nの除去によるグラフェン表面上への結合と一致する(P. C. Ma et al., Carbon N. Y. 2010, 48, 1824-1834)。
【0049】
[実施例3.統計分析]
本研究で使用された2D材料フレークの大きさおよび厚さの分布によって、形態転移は統計的性質を持つため、SEMおよびSTEMによって収集された情報もまた、統計的手段によって結果を解釈するために使用された。懸濁液中に形成された1Dスクロールの割合をpHの関数として推計するために、統計分析が使用された。様々なpHの分散液が、適切な基板(GOおよびその官能化形態にはシリコン、およびG-COOHにはTEMグリッド)上にドロップキャストされ、少なくとも100の構造が画像化されて、その横方向の寸法(長さL(最大寸法として定義)および幅W)を取得した。1Dスクロールの割合だけでなく、我々は他の形態構成も識別した。観察された構造は、その形態に応じて、平面、折り畳み、スクロールかつ孤立、またはスクロールかつねじれに、さらに分類された(図12)。このように、アスペクト比(r=L/W≧l)の関数としての複数の構造に基づくカウント数が、図13の大きさ分布チャートで与えられた。
【0050】
[結果および考察]
統計分析から、GOが広いpH範囲(観察された最低pHから最高pHまで)でスクロールを形成することを我々は示したが、このことは主にこの材料の化学表面の不均質性に起因する(図13)。GO(図13a)およびrGO-SH(図13b)分散液中では、スクロールの長さおよび幅の両方がpHに依存するため、平均アスペクト比がpHとともに変化した。変化する長さは、様々なpHで調製された各分散液中で、試料の大きさもまた異なることを示す。G-COOH分散液(図13c)中では、アスペクト比は主に幅に起因して変化し、その中央値はpHとともに急速に減少し、酸性溶液中では約120nmで飽和した。長さは、検討されたすべての分散液中で、ほぼ同じままであった(長さの中央値は約440nmであった)。このことは、フレークの大きさが検討された各pHで同じであることを示唆し、従って、幅の中央値は、外側スクロール直径の中央値と見なすことができた。層間距離(d=0.43nm)を考慮すると、スクロールの最大巻き数をNmax=D/(2d)として、最大約140巻きという結果となったと、本発明者らは推計した(図3f)。実際の巻き数は、内側の巻きがφ≫2πから始まるため(図4a)、明らかにより少なかった。興味深いことに、GOはすべてのpH範囲を通してかなりの量のスクロール種を示したが(図13a)、しかしGOの2つの状況下で検出されたスクロールの量は劇的に減少した:元のpH4.5での(i)超音波処理なし(図14a)、および(ii)pH3.0から4.5までpH再調整後(pH3.0-4.5R)(図13a)。これらの結果は、この材料の可逆的な形態転移能力を示す(図15)。
【0051】
一方、化学表面がより制御されたアニオン性2D電解質rGO-SHでは、2D平坦シートは主にpH2.9で形成された一方、1Dスクロールはより高いpHで主に見出された。pHを3から10まで変化させて戻る大きさ分布分析を示す、この過程の可逆性は、図13aに見ることができる。図16aに見られるように、2D平坦シートの平均アスペクト比は約2.5であった。しかしながら、pHがアルカリ性領域まで上昇するにつれて、1Dスクロール構造の存在が増加するため、平均アスペクト比が約7.0まで大幅に増加することがわかる。rGO-SH(図16b)では、明らかな傾向が現れ、pHの増加とともにスクロール含有量の増加を示し(1Dスクロール構造のpH2.9での9.5%からpH10.2での79.4%へ)、一方2D平坦構造の量が減少し(2D平坦構造のpH2.9での65%からpH10.2での1.3%へ)、折り畳み構造も同様に減少する。図16cにおいて、pH10.2での1Dスクロール構造の大部分が、外部条件に応答してpH3.1で展開されることを、我々は示した。pH再調整後、平均アスペクト比は元の約2.9まで減少し(図16a)、より低いpH値の平面シートで観察されたのとほぼ同じになった(図13b)。従って、図16aおよびcは、この過程の可逆性を示す。ジスルフィド結合の可逆的な形成は、高分子電解質の一種であるタンパク質によってその3次構造を維持するために使用される、重要なメカニズムである。
【0052】
G-COOHでは、rGO-SHで見られたのと反対の挙動、すなわちpHの増加に応答してスクロールの割合が減少することを、我々は観察した(図16d~e)。前述のように、これらの形態変化は、G-COOHの表面電荷密度の修飾によって説明されうる。pHが等電点(約4.9)以下に近づくにつれ、カルボキシル基が完全にプロトン化され、結果として疎水性が増加し、折り畳み、積層、および沈殿が生じる結果となる(R. L. D. Whitby et al., ACS Nano. 2012, 6, 3967-3973)。より高いpHでは、カルボン酸(COOH)のカルボキシラート(COO)基への解離により、負の表面エネルギーが増加し(ζ電位≧-30mV、図16g)、2D平坦形態に有利となる。従って、より低いpHからより高いpHへのpH再調整後に、そこでは平面構造が認められ、スクロールメカニズムの可逆性が示された(図16f)。極端なpH値間の相互作用は、2D電解質が可逆的な形態転移を受ける能力を示す。
【0053】
2D電解質の2つの例(rGO-SHおよびG-COOH)の反対の応答は、2D材料表面に結合した官能基に基づいて、刺激応答挙動を調節する可能性を強調する。さらに、この方法は可逆的で、環境に優しく、テンプレートおよび溶媒を使用しないため、2D電解質は、バッテリーおよびセンサから薬物送達システムまで、広い範囲の応用にその使用を拡大できる。
図1
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図3
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図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図13C
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図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
【国際調査報告】